- 足底腱膜炎
足底筋膜炎やってはいけないこと 整形外科医が徹底解説
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朝起きた時の激しい踵の痛み、長時間立っていた後のズキッとした痛み… 足の裏の痛みは、日常生活を大きく阻害する悩みのタネです。これは放置すると慢性化し、日常生活に支障をきたすことも。「痛みに耐えて運動を続ける」「急に激しい運動をする」「ストレッチを怠る」「適切な靴を履かない」「自己判断で治療する」…この行為は症状悪化につながります。
さらに、足底筋膜炎とよく似た「足底腱膜炎」との違いについても解説。それぞれの症状や原因を理解することで、適切なケアを選び、痛みから解放される一歩を踏み出せます。
足の裏の痛みでお悩みの方、そして予防したいと考えている方は必見です。この記事で、快適な毎日を取り戻しましょう。
足底筋膜炎の治療法とやってはいけないこと5つ
足底筋膜炎は、踵(かかと)の痛みを引き起こす一般的な原因の一つです。40歳から70歳代の女性に多く、踵に痛みが出て、徐々に進行するのが特徴です。多くの場合、保存療法で改善が見られます。保存療法とは、手術以外の治療法を指します。具体的には、ストレッチ、安静、アイシング、痛み止めや消炎鎮痛剤などの薬物療法、そして足底板やサポーターの使用などがあります。また、運動療法やマッサージも有効です。
最近の研究では、体外衝撃波療法も効果的であることが示されています。これは、組織の修復を促進する治療法です。衝撃波というと少し怖いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、治療の痛みはそれほどありません。
保存療法でなかなか改善しかったり、腱が断裂した時は手術も検討します。
さて、日常生活の中で、足底筋膜炎を悪化させてしまう行動には、どのようなものがあるでしょうか?以下に、5つご紹介します。
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痛みに耐えて運動を続ける: 使いすぎや過負荷によって引き起こされます。ランニングやジャンプなどの動作を繰り返すことで、負担がかかり、炎症を起こしてしまうのです。痛みを感じたら、安静にすることが大切です。
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急に激しい運動をする: 安静にしていたからといって、急に激しい運動をするのは禁物です。急な力が加わると、炎症が悪化することがあります。運動を再開する場合は、ウォーキングなどの軽い運動から始め、徐々に強度を上げていくようにしましょう。
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ストレッチを怠る: ストレッチを怠ると、足底筋膜が硬くなり、痛みが悪化しやすくなります。朝起きた時や夜寝る前など、毎日欠かさずストレッチを行いましょう。特に、ふくらはぎの筋肉を伸ばすストレッチは効果的です。
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適切な靴を履かない:靴の相性はとても大切です。かかとが高い靴や底が薄い靴は、負担を増大させます。かかとをしっかりサポートしてくれる、クッション性の高い靴を選びましょう。
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自己判断で治療する: 市販の湿布薬やサポーターを使用するだけで治そうとするのは危険です。必ず医師の指示に従い、適切な治療を受けるようにしましょう。複数の治療法を組み合わせることで、最良の結果が得られることが多いです。
足底筋膜炎と足底腱膜炎の主な違い4つ
足の裏の痛み、特に朝起きた時や、しばらく座っていた後に立ち上がるときのズキッとした痛みは、一日を憂鬱な気分にさせてしまいますよね。実は、この足の裏の痛み、原因が「足底筋膜炎」と「足底腱膜炎」というよく似た2つの病気であるケースが多いのです。
それぞれの特徴を正しく理解することで、適切なケアや治療に繋がりますので、一緒に詳しく見ていきましょう。
まず、両者の大きな違いは4つあります。
- 腱と筋膜はそもそも組織の種類が違います。
- 痛む場所が違います。
- 炎症の有無が違います。
- 発生原因が違います。
足底筋膜炎の特徴と症状
足底筋膜炎は、足の裏のかかとからつま先にかけて張っている「足底筋膜」という膜に炎症が起きる病気です。この足底筋膜は、土踏まずのアーチを支え、歩いたり走ったりする際の衝撃を吸収する、いわばクッションのような役割を果たしています。
しかし、この足底筋膜に繰り返し負荷がかかり続けると、炎症を起こし、痛みを生じてしまうのです。
代表的な症状は以下の通りです。
- かかとや土踏まずに痛みが生じる
- 朝起きた時や、長時間座っていた後に立ち上がった時の最初の数歩で、特に強い痛みを感じる
- 長時間立っていたり、歩いたりした後に痛みが強くなる
- かかとを押すと痛みが増す
これらの症状に心当たりがある方は、足底筋膜炎の可能性があります。
特に、朝起きた時の最初の数歩で強い痛みを感じるのは、睡眠中に足底筋膜が収縮した状態になっているためです。歩行を開始することで足底筋膜が急に伸展され、細かな損傷が起こり、痛みが出現しやすくなります。
足底腱膜炎の特徴と症状
足底腱膜炎は、足底筋膜炎と名前が似ていますが、実は腱の「炎症」ではなく「変性」です。つまり、腱自体が炎症を起こしているのではなく、腱の組織が変性している状態を指します。変性とは、組織の構造や機能が変化することを意味します。
足底腱膜炎は、足底筋膜の微細な断裂や損傷が繰り返されることで、腱の変性が起こると考えられています。肥満、過度の回内足(足が内側に倒れ込む状態)、過剰なランニング、長時間の立位などが発生リスクを高める要因として挙げられます。
足底腱膜炎の症状も足底筋膜炎と類似していますが、痛みの出方に違いがあります。
- かかとや土踏まずに慢性的な痛みがある
- 同じ体勢を長時間続けた後、動き始めるときに痛みが強くなる
- 運動後だけでなく、安静時にも痛みがある場合がある
足底筋膜炎では、動かなければ、痛みが軽減することが多い一方、足底腱膜炎では、安静時にも痛みを感じるケースがある点が特徴です。また、足底筋膜炎では朝の痛みが顕著ですが、足底腱膜炎では、長時間同じ体勢を続けた後に動き出す際に痛みを感じることが多い傾向にあります。
痛みは、日常生活に大きな支障をきたします。痛みを我慢せず、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。自己判断で治療を行うと、症状が悪化したり、慢性化したりする可能性があるので注意しましょう。
参考文献
- Díaz López AM, Guzmán Carrasco P. “Effectiveness of different physical therapy in conservative treatment of plantar fasciitis: systematic review.” Revista espanola de salud publica 88, no. 1 (2014): 157-78.
- Luffy L, Grosel J, Thomas R, So E. “Plantar fasciitis: A review of treatments.” JAAPA : official journal of the American Academy of Physician Assistants 31, no. 1 (2018): 20-24.
- Martin RL, Davenport TE, Reischl SF, McPoil TG, Matheson JW, Wukich DK, McDonough CM and American Physical Therapy Association. “Heel pain-plantar fasciitis: revision 2014.” The Journal of orthopaedic and sports physical therapy 44, no. 11 (2014): A1-33.
- Goff JD, Crawford R. “Diagnosis and treatment of plantar fasciitis.” American family physician 84, no. 6 (2011): 676-82.
- Thompson JV, Saini SS, Reb CW, Daniel JN. “Diagnosis and management of plantar fasciitis.” The Journal of the American Osteopathic Association 114, no. 12 (2014): 900-6.
追加情報
[title]: [Effectiveness of different physical therapy in conservative treatment of plantar fasciitis: systematic review].,足底筋膜炎の保存的治療における様々な理学療法の有効性:系統的レビュー
【要約】
足底筋膜炎は足部・足関節の非外傷性疼痛で最も一般的な疾患であり、40~70歳の女性に多くみられ、徐々に悪化する進行性の痛みを特徴とする。本研究は、成人における少なくとも1ヶ月以上の足底筋膜炎の保存的治療において、様々な理学療法が単独または併用で有効かどうかを明らかにすることを目的とした。
The Cochrane Library、Medline、Lilacs、IBECS、IME、PEDro、ENFISPOなどのデータベースを対象に、言語をスペイン語と英語として、日付制限なしで系統的レビューを行った。成人足底筋膜炎患者を対象としたランダム化比較試験、介入研究、前向き研究、系統的レビューを含めた。2名のレビューアが独立して、盲検化された標準化された方法で研究の適格性を評価した。分類には、PEDro尺度を用い、方法論的質の評価に加え、各要約の批判的レビューを行い、結論が出ない場合は全文の評価を行った。
32本の論文の全文をレビューした結果、最も使用されているのはストレッチと体外衝撃波療法であり、複数の治療法を組み合わせることで最良の結果が得られることが示された。体外衝撃波療法は、他の治療法が失敗した場合に有効である。
様々な研究で使用された理学療法は、疼痛軽減や足底筋膜炎症状の緩和において、程度は異なるものの有効性が証明された。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24728397,
[quote_source]: Díaz López AM and Guzmán Carrasco P. “[Effectiveness of different physical therapy in conservative treatment of plantar fasciitis: systematic review].” Revista espanola de salud publica 88, no. 1 (2014): 157-78.
[title]: Plantar fasciitis: A review of treatments.,足底腱膜炎:治療法のレビュー
【要約】
アメリカ合衆国において、足底腱膜炎は踵痛の最も一般的な原因である。
多くの治療法が存在し、有効性と費用はそれぞれ異なる。
本論文では、足底腱膜炎の推定原因と様々な治療法について論じている。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29227320,
[quote_source]: Luffy L, Grosel J, Thomas R and So E. “Plantar fasciitis: A review of treatments.” JAAPA : official journal of the American Academy of Physician Assistants 31, no. 1 (2018): 20-24.
[title]: Heel pain-plantar fasciitis: revision 2014.,踵痛―足底筋膜炎:2014年改訂版
【要約】
アメリカ理学療法士協会整形外科部門(APTA)は、世界保健機関(WHO)の国際機能分類(ICF)で記述されている筋骨格系の障害を持つ患者の整形外科理学療法管理のためのエビデンスに基づいた診療ガイドラインを作成するための継続的な取り組みを行っています。
本改訂版臨床診療ガイドラインの目的は、最近の査読済み文献をレビューし、非関節性踵痛に関する推奨事項を作成することです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25361863,
[quote_source]: Martin RL, Davenport TE, Reischl SF, McPoil TG, Matheson JW, Wukich DK, McDonough CM and American Physical Therapy Association. “Heel pain-plantar fasciitis: revision 2014.” The Journal of orthopaedic and sports physical therapy 44, no. 11 (2014): A1-33.
[title]: Diagnosis and treatment of plantar fasciitis.,足底腱膜炎の診断と治療
【要約】
足底腱膜炎は、成人における踵痛の一般的な原因であり、自己限定性疾患です。年間100万人以上が発症し、その3分の2が医師の診察を求めます。
発生リスクを高める要因として、肥満、過度の回内足、過剰なランニング、長時間の立位などが挙げられます。
診断は主に病歴と身体診察に基づきます。患者の症状としては、朝の最初の歩行時や長時間座位後の踵痛、内側足底踵骨部の圧痛、受動的な足関節・母趾背屈による近位足底腱膜の不快感などが挙げられます。初期診断に画像診断は必要ありません。
超音波検査やMRIは、難治性の場合や他の踵の病気を除外するために用いられます。足底腱膜の肥厚や異常な組織信号が診断に繋がります。
保存的治療は、患者の痛みの軽減に役立ちます。初期治療としては、安静、活動の制限、アイシング、鎮痛剤の内服、ストレッチなどが数週間試されます。
踵痛が続く場合は、理学療法、装具、ナイトスプリント、コルチコステロイド注射などの医師による治療が考慮されます。
これらの保存的治療で90%の患者が改善します。
6ヶ月以上続く慢性難治性足底腱膜炎の患者は、体外衝撃波治療や足底腱膜切開術を検討できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21916393,
[quote_source]: Goff JD and Crawford R. “Diagnosis and treatment of plantar fasciitis.” American family physician 84, no. 6 (2011): 676-82.
[title]: Diagnosis and management of plantar fasciitis.,足底腱膜炎の診断と治療
【要約】
[quote_source]: Thompson JV, Saini SS, Reb CW and Daniel JN. “Diagnosis and management of plantar fasciitis.” The Journal of the American Osteopathic Association 114, no. 12 (2014): 900-6.
足底腱膜炎は、踵の痛みを引き起こす慢性的な変性疾患であり、年間約100万件の医師の診察につながっている。
患者の痛みは、1日の最初の数歩や長時間立っていた後などに最も強くなる。
本論文は、一次医療現場でよく遭遇するこの疾患の診断と治療の概要を示している。
足底腱膜炎の評価において、初期段階でのルーチン画像検査は推奨されないが、他の病理学的状態を除外するために必要となる場合もある。
複数の保存的治療法を組み合わせることで、足底腱膜炎は良好な予後を示す。
専門医への紹介が必要となる場合もある。