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膝の痛み、特に立ち上がりや階段の昇り降りで感じていませんか? それは、変形性膝関節症の初期症状かもしれません。実は、この変形性膝関節症、40代から増加し始め、60代では多くの方が経験すると言われています。加齢だけが原因ではなく、体重、過去の怪我、遺伝、さらには関節リウマチなどの他の疾患も関係していることをご存じでしょうか? この記事では、変形性膝関節症の症状、原因、そして初期から末期までのステージ分類を詳しく解説。さらに、日常生活での予防策や、効果的な治療法についてもご紹介します。将来の膝の健康を守るための第一歩として、ぜひご一読ください。 変形性膝関節症の症状を詳しく解説 膝の痛みや違和感。それらは、変形性膝関節症の初期症状である可能性があります。初期症状は軽く、日常生活に大きな影響がないため、放置してしまう方も少なくありません。しかし、変形性膝関節症は進行性の疾患であり、放置すると日常生活に深刻な支障をきたす可能性があります。早期発見・早期治療が非常に重要です。 この記事では、変形性膝関節症の症状を初期、中期、末期の段階に分け、具体的な症状やメカニズムを分かりやすく解説します。 初期の自覚症状 初期の変形性膝関節症では、立ち上がりや歩き始めなど、動作開始時に軽い痛みを感じることがあります。これは、安静にしている間に膝関節内に溜まった滑液が、動き出す際に一時的に痛みを生じるためです。階段の上り下りや正座など、膝に負担がかかる動作でも痛みを感じやすくなります。 この段階では、休むことで痛みが軽減することが多く、日常生活への影響は比較的軽微です。朝のこわばりも30分以内におさまることが一般的です。この初期症状は、関節の軽度の炎症や軟骨のすり減り始めによって引き起こされます。健康な軟骨はクッションの役割を果たし、骨同士の摩擦を防いでいますが、軟骨がすり減ると骨同士が直接接触しやすくなり、痛みや炎症が生じるのです。 多くの場合、初期症状は「年のせいかな」「少し休めば治るだろう」と安易に考えてしまいがちです。しかし、これらの症状が続く場合は、変形性膝関節症の初期段階である可能性を考慮し、医療機関への受診をおすすめします。早期に適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、日常生活の質を維持することができます。 中期の自覚症状 中期になると、痛みの程度が強まり、持続時間も長くなります。安静時にも痛みを感じるようになり、日常生活にも支障が出始めます。例えば、15分以上続けて立っていたり、歩いたりすることが難しくなる、階段の上り下りで手すりが必要になる、椅子から立ち上がる際に痛みでためらう、といった症状が現れます。 また、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、可動域が制限されます。正座が困難になる、深くしゃがめないといった動作の制限も顕著になります。さらに、関節内に炎症性の液体が溜まり、膝が腫れて熱を持つ、といった症状が現れることもあります。日常生活動作の制限や痛みの増強により、QOL(生活の質)の低下が見られるようになります。 末期の自覚症状 末期の変形性膝関節症では、常に強い痛みがあり、日常生活に大きな支障をきたします。歩くことも困難になり、杖や歩行器、車椅子などの補助具が必要になることもあります。膝の変形が進行し、O脚やX脚が目立つようになります。関節の隙間がほとんどなくなり、骨と骨が直接擦れ合うことで、耐え難いほどの強い痛みを生じます。 夜間にも痛みが続くようになり、睡眠不足や疲労の蓄積につながることもあります。日常生活の多くの動作が制限され、入浴や着替え、トイレなどの基本的な動作にも介助が必要になることもあります。 変形性膝関節症に伴う様々な痛み 変形性膝関節症の痛みは、炎症、軟骨のすり減り、骨棘の形成など、様々な要因が複雑に絡み合って引き起こされます。炎症による痛みは、ズキズキとした拍動性の痛みであることが多いのに対し、軟骨のすり減りによる痛みは、鈍い痛みや違和感として感じられることが多いです。 骨棘は、骨の端にできる突起物であり、これが神経を刺激することで鋭い痛みを引き起こします。痛みの種類や程度は、疾患の進行度や個々の状態によって大きく異なります。 関節水腫(水が溜まる) 関節水腫は、炎症によって関節内に過剰な滑液が溜まることで起こります。膝が腫れぼったくなり、熱感や圧痛を伴うこともあります。関節水腫は、変形性膝関節症の中期から末期にかけてよく見られる症状です。炎症が強い時期には関節液が黄色みを帯びることがあり、細菌感染が疑われる場合は関節液を採取して検査を行うこともあります。 変形によるO脚、X脚 変形性膝関節症が進行すると、膝関節の変形が進行しO脚やX脚になることがあります。これは、関節軟骨のすり減りや靭帯の緩み、骨棘形成、筋肉のアンバランスなど、複数の要因が複雑に絡み合って生じます。O脚やX脚は、見た目の問題だけでなく、膝への負担をさらに増やし、症状を悪化させる可能性があります。進行した変形性膝関節症では、O脚変形がより多くみられます。 クリック音、ロッキング 変形性膝関節症では、膝を動かした際にクリック音やゴリゴリとした音が鳴ることがあります。これは、軟骨の表面が粗くなったり、骨棘が形成されたりすることで起こります。また、ロッキングという症状が現れることもあります。ロッキングとは、膝が急に動かなくなったり、曲がったまま伸びなくなったりする症状です。これは、関節内の遊離体(剥がれた軟骨片など)が関節の動きを妨げることで起こります。ロッキングは、半月板損傷でも同様の症状が現れるため、鑑別が必要です。 変形性膝関節症は進行性の疾患であるため、早期発見・早期治療が重要です。少しでも気になる症状があれば、整形外科を受診し、適切な検査と治療を受けることをお勧めします。 変形性膝関節症の原因5選 膝の痛み、特に立ち上がりや階段の上り下りで痛む場合、変形性膝関節症が疑われます。加齢や体重以外にも様々な原因が考えられますので、5つの原因に分けて解説します。 加齢による軟骨の老化 年齢を重ねると、肌のハリが失われるように、膝関節の軟骨もすり減ってしまいます。軟骨は骨同士のクッションの役割を果たしています。この軟骨が加齢により薄くなったり、ひび割れたりすることで、骨同士が直接こすれ合い、炎症や痛みを引き起こします。 40代以降から増加し始め、60代では多くの方が経験すると言われています。これは、軟骨を構成するコラーゲンやプロテオグリカンといった成分が、加齢とともに変化し、水分含有量が減少するためです。結果として、軟骨の弾力性や強度が低下し、損傷しやすくなります。加齢は誰にも訪れるものですが、その進行を遅らせるための努力は可能です。適度な運動やバランスの取れた食事を心がけることは軟骨の健康維持に繋がり、変形性膝関節症の予防に繋がります。 肥満による膝への負担増加 体重が増加すると膝への負担も増大します。変形性膝関節症は体重増加と強い関連性があります。体重が1kg増えるごとに、膝には3~6kgの負担がかかると言われています。10kgの体重増加は、膝に最大60kgもの負担をかけることになります。肥満は、軟骨のすり減りを加速させ、炎症を悪化させる可能性があるため、変形性膝関節症の大きなリスク要因です。 肥満の方の手術においては、術後合併症のリスクが高いことが報告されています。適切な術前評価、術中管理、術後サポートは安全な手術のために不可欠です。体重管理は変形性膝関節症の予防と治療において非常に重要です。目標体重を定め、医師や栄養士の指導のもと、無理なく継続できる食生活の改善や運動療法に取り組みましょう。 遺伝的要因 変形性膝関節症は遺伝的要因も影響します。両親や祖父母が変形性膝関節症の場合、発症リスクが高まる可能性があります。これは、軟骨の質や骨の形状などが遺伝的に受け継がれるためと考えられています。具体的には、コラーゲン遺伝子の変異や、軟骨の代謝に関わる遺伝子の多型などが、変形性膝関節症のリスクを高めることが報告されています。遺伝的要因は自身でコントロールできませんが、遺伝的リスクが高い場合でも、生活習慣を改善することで発症リスクを軽減したり、症状の進行を遅らせたりすることが可能です。 スポーツなどによる膝への過度な負担、外傷 スポーツ選手のように、膝に繰り返し大きな負担がかかる活動をしている方は、変形性膝関節症のリスクが高くなります。ジャンプやランニングなどの動作は、膝関節に大きな衝撃を与え、軟骨の損傷や炎症を引き起こす可能性があります。 特に、スポーツによる急激な方向転換や、不適切なフォームでの運動は、膝関節に過剰なストレスをかけ、半月板や靭帯の損傷に繋がる可能性があります。これらの損傷は、将来的に変形性膝関節症のリスクを高めるため、注意が必要です。過去に膝の怪我を経験した人も、変形性膝関節症を発症しやすいため、適切なリハビリテーションと、再発予防のための運動指導を受けることが重要です。 その他の要因(関節リウマチ、痛風など) 関節リウマチや痛風などの疾患も、変形性膝関節症の原因となることがあります。関節リウマチは自己免疫疾患であり、免疫システムが自身の関節組織を攻撃することで炎症が生じます。痛風は、尿酸が関節に蓄積し結晶化することで炎症を引き起こす疾患です。 これらの疾患は慢性的な炎症を引き起こし、軟骨の破壊を促進するため、変形性膝関節症の進行を加速させる可能性があります。また、細菌感染による化膿性関節炎も、軟骨の損傷を引き起こし、変形性膝関節症のリスクを高めます。これらの疾患が疑われる場合は、早期に専門医を受診し、適切な治療を受けることが重要です。 変形性膝関節症とは 整形外科医が徹底解説 変形性膝関節症のステージ分類と診断方法 膝の痛みは、多くの人が経験するありふれた症状です。しかし、その裏には深刻な疾患が潜んでいる可能性があります。変形性膝関節症は、まさにその代表格と言えるでしょう。初期には「年のせいかな」「少し休めば治るだろう」と軽く考えがちですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 変形性膝関節症は、大きく分けて0~4の5つのステージに分類されます。ご自身の膝の状態を把握し、適切な治療を受けるために、まずはこのステージ分類について理解を深めていきましょう。 ステージ0(正常) ステージ0は、まさに健康な膝の状態です。X線検査で異常所見は見られず、関節軟骨は滑らかで、骨にも変形はありません。痛みや違和感といった自覚症状もありません。 この状態を維持するためには、日頃から膝の健康に気を配ることが重要です。具体的には、適度な運動、バランスの取れた食事、適切な体重管理などが挙げられます。若い頃からこれらの習慣を身につけることで、将来の変形性膝関節症リスクを低減することができます。 ステージ1(軽度) ステージ1では、X線検査でわずかな骨棘という骨の突起が見られることがあります。骨棘とは、骨の端にできる小さな骨の隆起です。これは、骨がわずかに変形し始めているサインと言えるでしょう。 関節軟骨のすり減りは軽度であり、自覚症状もほとんどありません。しかし、激しい運動後などに軽い痛みや違和感を感じることがあります。階段の上り下りや立ち上がりといった動作で、違和感や軽い痛みを感じる場合も、ステージ1の可能性があります。 この段階では、日常生活への影響は軽微ですが、膝への負担を軽減するよう心がけることが大切です。長時間の立ち仕事や重いものを持つ作業などを控え、膝を労わるようにしましょう。 ステージ2(中等度) ステージ2になると、X線検査で関節裂隙の狭小化が明らかになります。関節裂隙とは、大腿骨と脛骨の間の隙間のことです。この隙間が狭くなるということは、関節軟骨がすり減ってきていることを意味します。 骨棘も大きくなり、膝の変形も徐々に目立つようになってきます。階段の上り下りや正座で痛みを感じることが多くなり、日常生活にも支障が出始めます。15分以上続けて立っていたり、歩いたりすることが難しくなる方もいます。 この段階では、薬物療法やリハビリテーションなどの保存療法が中心となります。痛みを我慢せず、医療機関を受診し、専門医の適切な指導を受けることが重要です。 ステージ3(重度) ステージ3では、関節軟骨のすり減りがさらに進行し、X線検査で関節裂隙がほとんど消失しているように見えます。骨棘はさらに発達し、軟骨下骨と呼ばれる骨の部分が硬くなっているのが確認できます。軟骨下骨は、関節軟骨の下にある骨の層です。この部分が硬くなることで、さらに痛みが増強されます。 膝の痛みは強くなり、安静時にも痛みを感じるようになります。日常生活動作にも大きな制限が生じ、歩行が困難になることもあります。杖や歩行器が必要になる方もいます。夜間の痛みで睡眠が妨げられ、生活の質が著しく低下します。 このステージでは、手術療法が検討されることもあります。患者さんの状態や生活スタイル、希望などを考慮し、最適な治療法を選択していきます。 ステージ4(末期) ステージ4は、変形性膝関節症の末期です。関節軟骨はほとんど消失し、骨と骨が直接ぶつかり合う状態になっています。X線検査では、関節裂隙が完全に消失し、骨の変形も著明です。 強い痛みのため、歩行が非常に困難になり、日常生活のほとんどの動作に介助が必要となる場合もあります。入浴や着替え、トイレといった基本的な動作にも苦労するようになります。 このステージでは、人工関節置換術が有効な治療法となることが多いです。人工関節置換術とは、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。この手術により、痛みを軽減し、日常生活の活動性を向上させることができます。 X線検査、MRI検査、CT検査、血液検査 変形性膝関節症の診断には、X線検査が最も重要です。X線検査では、骨棘の形成、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化などの特徴的な所見を確認することができます。変形性膝関節症のステージ分類も、X線検査の結果に基づいて行われます。 MRI検査は、関節軟骨や靭帯、半月板などの軟部組織の状態を詳しく評価する際に有用です。軟部組織とは、骨以外の組織、つまり筋肉、靭帯、腱、軟骨などを指します。これらの組織の状態を詳しく見ることで、より正確な診断が可能になります。 CT検査は、骨の変形の程度をより詳細に把握するために用いられることがあります。CT検査では、X線を使って体の断面画像を撮影します。これにより、骨の微細な構造まで確認することができます。 血液検査は、他の関節疾患との鑑別や、炎症の有無などを確認するために実施されることがあります。例えば、関節リウマチなどの炎症性疾患では、血液検査で炎症反応が上昇することがあります。 これらの検査を組み合わせて、患者さんの状態を正確に診断し、適切な治療計画を立てていきます。膝の痛みや違和感を感じたら、自己判断せずに、医療機関を受診し、専門医の診察を受けることをお勧めします。早期発見・早期治療が、変形性膝関節症の進行を抑制し、より良い生活を送るための鍵となります。 変形性膝関節症の治療法4選とそれぞれのメリット・デメリット 膝の痛みは、日常生活に大きな影を落とします。特に、立ち上がる時、歩き出す時、階段を昇り降りする時の痛みは、変形性膝関節症のサインかもしれません。 この記事では、変形性膝関節症の治療法を4つのカテゴリーに分けて解説します。それぞれの治療法のメリット・デメリットを理解し、ご自身の状態に合った治療法を見つけるための一助としてください。 保存療法(薬物療法、注射、リハビリテーションなど) 保存療法は、手術を行わずに症状の改善を目指す治療法です。具体的には、薬物療法、注射療法、リハビリテーションなどがあります。 保存療法のメリットは、身体への負担が少ないことです。手術のような大きな侵襲がないため、日常生活への影響を最小限に抑えながら治療を進めることができます。高齢者や合併症のある方でも比較的安全に受けることができます。また、変形性膝関節症の初期段階では、保存療法だけで症状が改善する場合も多いです。 一方で、保存療法では変形の進行を完全に止めることは難しいです。症状が一時的に改善しても、時間の経過とともに再び悪化することがあります。また、重度の変形性膝関節症の場合、保存療法では十分な効果が得られないこともあります。 保存療法は、変形が軽度から中等度の段階で、日常生活に支障がない程度の痛みの場合に特に有効です。Hussainらの研究(2016)でも、保存療法は地域社会で実施可能な治療法として推奨されています。 手術療法(骨切り術、人工関節置換術) 保存療法で効果がない場合や、変形が進行している場合は、手術療法が検討されます。手術療法には、大きく分けて骨切り術と人工関節置換術の2種類があります。 骨切り術は、骨を切って変形を矯正する手術です。比較的若い患者さんや、変形が軽度から中等度で、膝の内側に変形が集中している場合に適応されます。この手術の最大のメリットは、自分の関節を残せることです。Zhangらのメタ分析(2023)では、高位脛骨骨切り術(HTO)は単顆人工膝関節置換術(UKA)に比べて再手術率が低いことが示されています。しかし、骨がくっつくまでに数ヶ月かかり、スポーツへの復帰にはさらに時間を要します。 人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。痛みが強い、変形が高度な場合に適応されます。人工関節置換術には、関節の一部分だけを置き換える単顆置換術と、関節全体を置き換える全置換術があります。単顆置換術は、手術の侵襲が少なく、術後の回復も早いというメリットがありますが、適応が限られます。全置換術は、より多くの患者さんに適応できますが、手術の侵襲が大きく、術後のリハビリテーションに時間を要します。Rossiら(2019)は、重度の内反膝変形に対する人工膝関節置換術で良好な転帰が得られると報告しています。 薬物療法(痛み止め、ヒアルロン酸注射) 薬物療法は、痛みや炎症を抑えることを目的とした治療法です。飲み薬、湿布薬、座薬などさまざまな種類があり、痛みの程度や患者さんの状態に合わせて使い分けられます。 痛み止めは、炎症や痛みを抑えることで日常生活を楽にする効果があります。比較的速やかに効果が現れることが期待できますが、根本的な治療法ではありません。痛み止めは対症療法であり、変形性膝関節症の原因そのものを取り除くことはできません。 ヒアルロン酸注射は、関節内のヒアルロン酸を補うことで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減する効果が期待できます。ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節のクッションの役割を果たしています。変形性膝関節症では、関節内のヒアルロン酸が減少しているため、ヒアルロン酸注射によって関節機能の改善が期待できます。しかし、効果の持続期間には個人差があり、定期的な注射が必要となる場合もあります。 理学療法、運動療法 理学療法、運動療法は、膝関節周囲の筋肉を鍛え、関節の安定性を高め、痛みの軽減と機能改善を図る治療法です。具体的には、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)のトレーニングや、ストレッチなどが行われます。 これらの運動は、痛みが強くない範囲で行うことが重要です。理学療法士の指導のもと、適切な運動プログラムを作成してもらい、無理なく継続していくことが大切です。運動療法は、継続して行うことで効果を発揮し、変形の進行を遅らせる効果も期待できます。 変形性膝関節症は進行性の疾患であり、放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。少しでも気になる症状があれば、整形外科を受診し、適切な検査と治療を受けることをお勧めします。 変形性膝関節症の予防と日常生活の注意点 膝の痛みは、日常生活の質を大きく左右します。特に、立ち上がる、歩き出す、階段を昇り降りするといった動作で痛みを感じる場合、変形性膝関節症の初期症状かもしれません。変形性膝関節症は、加齢とともに罹患率が上昇する代表的な関節疾患です。初期は自覚症状が乏しいことも多く、「年のせい」と片付けてしまいがちですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 しかし、適切な予防策を実践し、日常生活で膝への負担を軽減する工夫をすることで、発症リスクを下げ、進行を遅らせることが可能です。ご自身の膝の健康を守るためにも、今からできる予防と日常生活の注意点について理解を深めていきましょう。 適度な運動 適度な運動は、膝関節の健康維持に不可欠です。特に、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは、膝関節の安定性を高め、軟骨への負担を軽減する効果があります。適切な運動は、膝関節周囲の筋肉を強化し、関節の安定性を向上させるため、変形性膝関節症の予防に繋がります。 おすすめの運動 ウォーキング: 毎日30分程度のウォーキングを目標に、無理のない範囲で続けましょう。平坦な道を選び、正しい姿勢で歩くことが大切です。 水中ウォーキング/水中体操: 水中では浮力によって膝への負担が軽減されるため、膝に痛みがある方にも最適です。水中でのウォーキングや水中体操は、膝関節周りの筋肉を効果的に鍛え、柔軟性を向上させることができます。 サイクリング: サイクリングも膝への負担が少ない有酸素運動です。景色を楽しみながら自分のペースで運動できるので、運動習慣のない方にもおすすめです。 ストレッチ: 運動の前後には、必ずストレッチを行いましょう。大腿四頭筋やハムストリングス、ふくらはぎの筋肉など、膝関節周りの筋肉を伸ばすことで、柔軟性を維持し、怪我の予防にも繋がります。 運動時の注意点 膝に痛みを感じたら、すぐに運動を中止し、安静にしてください。 運動強度は、徐々に上げていくようにしましょう。急に激しい運動を行うと、膝を痛める可能性があります。 運動の種類や時間、頻度などは、医師や理学療法士に相談し、ご自身の状態に合った適切な運動プログラムを作成してもらいましょう。 適切な体重管理 体重管理は、変形性膝関節症の予防と治療において非常に重要です。体重が増加すると、膝関節への負担が大きくなり、軟骨のすり減りを加速させる可能性があります。1kgの体重増加は、膝関節には3〜6kgの負担増に相当すると言われています。つまり、10kgの体重増加は、膝に30~60kgもの負担をかけることになります。肥満気味の方は、適正体重を維持するために、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。医師や管理栄養士の指導を受けることで、より効果的な減量を行うことができます。また、肥満の方は手術における術後合併症のリスクも高まるため、体重管理は変形性膝関節症の予防と治療の両面から重要です。 バランスの良い食事 バランスの良い食事は、健康な身体を維持するために不可欠です。骨や軟骨の健康維持に役立つ栄養素を積極的に摂取することで、変形性膝関節症の予防に繋げましょう。特に、カルシウム、ビタミンD、コラーゲン、グルコサミンなどは、骨や軟骨の構成成分となる重要な栄養素です。これらの栄養素を含む食品をバランス良く摂取しましょう。 栄養素 含まれる食品 カルシウム 牛乳、チーズ、ヨーグルト、小魚、豆腐、小松菜、ひじきなど ビタミンD 魚類(鮭、さんま、いわしなど)、きのこ類、卵など コラーゲン 豚肉、鶏肉、魚類、ゼラチンなど グルコサミン えび、かにの甲羅、軟骨など 膝への負担を軽減する工夫 日常生活の中で、膝への負担を軽減する工夫を意識的に行うことは、変形性膝関節症の予防に大きく貢献します。Michael JWらの研究(2010)でも、変形性膝関節症の予防における生活習慣改善の重要性が指摘されています。 洋式トイレの使用: 和式トイレに比べて洋式トイレの方が膝への負担が少ないため、積極的に洋式トイレを使用するようにしましょう。 椅子に座るときは膝を高くする: 椅子に座るときは、膝の位置を腰よりも高くすることで、膝への負担を軽減することができます。クッションや座布団などを活用してみましょう。 重い荷物は持たない: 重い荷物を持つと膝に大きな負担がかかります。買い物袋などは、両手に均等に持つ、リュックサックを使用するなど工夫しましょう。 長時間の正座は避ける: 正座は膝関節に大きな負担がかかる姿勢です。正座を長時間続けることは避け、どうしても必要な場合は、クッションなどを使いましょう。 階段の上り下りは手すりを使う: 階段の上り下りは、手すりを使って膝への負担を軽減しましょう。 サポーターや装具の活用 膝関節をサポートするサポーターや装具は、膝の痛みを軽減し、関節の安定性を高める効果があります。様々な種類のサポーターや装具があるので、ご自身の状態に合ったものを選ぶことが大切です。医師や理学療法士に相談しながら、適切なサポーターや装具を選びましょう。 定期的な検診 変形性膝関節症は、初期段階では自覚症状がない場合もあります。定期的に整形外科を受診し、早期発見、早期治療に努めることが大切です。特に、40歳以上の方や、肥満気味の方、家族に変形性膝関節症の方がいる方は、定期的な検診を心がけましょう。 専門医への相談 膝に痛みや違和感を感じたら、自己判断せずに、早めに専門医に相談しましょう。整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。Hussainらの研究(2016)では、変形性膝関節症の治療において、患者教育と適切な医療介入の重要性が強調されています。 まとめ 変形性膝関節症について、症状、原因、ステージ分類、診断方法、治療法、予防法など、幅広く解説しました。 変形性膝関節症は、加齢や肥満、遺伝、過度な負担などが原因で発症し、初期症状は軽いため見過ごされがちです。しかし、進行すると日常生活に大きな支障をきたすため、早期発見・早期治療が重要です。 少しでも膝に違和感や痛みを感じたら、自己判断せずに整形外科を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることで、症状の進行を抑制し、快適な日常生活を送ることができます。 この記事が、あなたの膝の健康管理の一助となれば幸いです。 参考文献 Zhang B, Qian H, Wu H, Yang X. 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2025.02.13 -
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人工関節手術。それは、痛みや動きの制限からの解放、そして活動的な人生への回帰を約束する希望の光です。日本では年間約20万件もの人工関節手術が行われており、多くの人々がこの手術によって人生の質を向上させています。しかし、手術後のリハビリや仕事復帰、日常生活における注意点など、気になる点も多いのではないでしょうか? この記事では、人工関節手術後のリハビリテーションから仕事復帰、そして日常生活の注意点まで、整形外科医師が詳しく解説します。具体的なリハビリの段階や内容、痛みの管理、合併症の予防、そして職場復帰支援制度の活用方法まで、網羅的にご紹介します。手術を控えている方、手術後の方、そしてそのご家族の方々にとって、きっと有益な情報となるでしょう。さあ、人工関節手術後の明るい未来への扉を開きましょう。 人工関節手術後のリハビリと仕事復帰までの流れ 人工関節手術は、激しい関節痛や動きの制限を改善し、より快適な生活を送るための重要な一歩です。手術を受ける決断は大きなものですが、その先には、リハビリテーションを通じて少しずつ身体の機能を取り戻し、再び活動的な日々を送る未来が待っています。 この手術は、まるで身体に新しい部品を組み込むような大がかりなものです。術後の経過は人それぞれとなります。焦らず、一歩ずつ、着実に進んでいきましょう。リハビリテーションと仕事復帰までの道のりについて、一緒に確認していきましょう。 リハビリテーションの段階と内容 リハビリテーションは、手術直後から始まります。初期のリハビリは、ベッドの上でできる簡単な運動からスタートし、徐々に難易度を上げていきます。術後のリハビリテーションは、術後の回復を促進し、合併症を予防するために非常に重要です。 術後早期(術後1日目~): この時期は、手術の侵襲による身体への負担が大きいため、安静が最優先されます。しかし、安静にしすぎることで血栓症や肺炎などの合併症のリスクが高まるため、ベッド上でもできる運動が推奨されます。具体的には、足首の運動、深呼吸、寝返りなどです。これらの運動は、血液循環を促進し、呼吸機能を維持するのに役立ちます。 術後1~2週間: 痛みが徐々に軽減し始め、より積極的なリハビリテーションが開始されます。ベッド上での運動に加えて、座位、立位、歩行練習などが行われます。この段階では、関節可動域の拡大と筋力強化を図ることが目標です。理学療法士の指導のもと、杖や歩行器などの補助具を使用しながら、徐々に歩行距離を伸ばしていきます。 術後2~4週間: 歩行が安定してくると、日常生活動作の練習が中心となります。歩行器や杖を使った歩行練習、階段昇降、トイレへの移動、着替えなど、日常生活に必要な動作を繰り返し練習することで、自宅での生活にスムーズに戻れるよう準備していきます。 術後1~3ヶ月: この時期になると、さらに積極的なリハビリテーションプログラムが組まれます。自転車エルゴメーターや水中歩行など、関節への負担が少ない運動を取り入れながら、関節可動域の維持・拡大、筋力強化を図ります。また、退院後の生活を見据え、趣味や軽い運動なども徐々に再開していきます。 リハビリテーションの内容は、一人ひとりの状態に合わせて調整されます。年齢、手術前の活動レベル、合併症の有無など、様々な要因が考慮されます。理学療法士などの専門家と相談しながら、無理なく進めていきましょう。最新の研究では、Enhanced Recovery After Surgery(ERAS)というプログラムが注目されており、術前から術後の包括的な管理を行うことで、より早期の回復と社会復帰を目指しています。 痛みの管理と合併症の予防 人工関節手術後は、痛みや腫れが出ることがあります。これは手術による組織の損傷や炎症反応によるもので、自然な経過です。しかし、痛みを我慢しすぎると、リハビリテーションへの意欲が低下し、回復が遅れてしまう可能性があります。 痛みの管理には、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。薬物療法としては、痛み止め(鎮痛剤)や消炎鎮痛剤が処方されます。医師や看護師の指示に従って、正しく服用しましょう。非薬物療法としては、冷却や温罨法、マッサージなどがあります。 人工関節手術後の合併症として、感染症、血栓症、脱臼、人工関節の緩みなどが挙げられます。感染症は、手術部位に細菌が侵入することで起こります。血栓症は、手術後に血栓(血液の塊)ができて血管を詰まらせてしまうことです。脱臼は、人工関節が本来の位置からずれてしまうことです。人工関節の緩みは、人工関節が骨にしっかりと固定されなくなってしまうことです。 これらの合併症を予防するために、清潔を保ち、医師の指示に従った予防策を講じることが重要です。定期的な創部の観察と消毒、弾性ストッキングやフットポンプの使用、早期離床と適度な運動などが有効です。 仕事復帰までの期間と流れ 仕事復帰までの期間は、仕事内容や回復状況によって大きく異なります。事務職であれば術後数週間で復帰できる場合もありますが、肉体労働など身体に負担のかかる仕事の場合は、数ヶ月かかることもあります。 仕事復帰までの流れとしては、まず主治医との相談が重要です。現在の身体の状態やリハビリテーションの進捗状況を踏まえ、仕事復帰の時期や方法について話し合います。職場の上司や同僚との連携も大切です。仕事復帰に向けて、職場環境の調整(勤務時間、業務内容など)が必要となる場合もあります。必要な場合は、産業医への相談も検討します。 焦らずに、自分のペースで復帰を目指しましょう。復帰後も、定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行うことが重要です。 職場復帰支援制度の活用 仕事復帰に向けて、さまざまな支援制度を活用することができます。傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだ場合に、生活費の一部を補填する制度です。高齢者の医療の確保に関する法律は、75歳以上の方の医療費自己負担割合を軽減する制度です。障害年金は、病気やケガによって障害が残った場合に、生活を保障するための制度です。 これらの制度は、経済的な不安を軽減し、安心してリハビリテーションに専念するために役立ちます。必要に応じて、主治医やソーシャルワーカーに相談してみましょう。 人工関節手術後の生活と注意点 人工関節手術は、痛みや動きの制限から解放され、活動的な生活を取り戻すための大きな一歩です。しかし、手術を受けた後も、新しい関節と長く付き合っていくためには、日常生活での注意点と工夫が欠かせません。まるで身体に新しい相棒を迎えたように、その特徴を理解し、適切に扱うことで、より快適で安心な生活を送ることができるでしょう。 日常生活の注意点と工夫 人工関節は、自分の骨と完全に一体化しているわけではありません。そのため、過度な負担や不適切な動きは、人工関節の寿命を縮めたり、脱臼などの合併症を引き起こす可能性があります。日常生活では、以下の点に注意しながら、人工関節を大切に扱いましょう。 1. 人工関節への負担を減らす工夫 重いものを持つ: 買い物かごやリュックサックなどを活用し、片側だけに負担がかからないようにしましょう。どうしても重いものを持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とした姿勢で、両手で持ち上げるようにしてください。 無理な姿勢: 中腰での作業や、足を組む、あぐらをかくといった姿勢は、人工関節に負担をかけるだけでなく、脱臼のリスクも高めます。なるべく避け、どうしても必要な場合は時間を短くし、休憩を挟むようにしましょう。 同じ姿勢を長時間続ける: デスクワークや車の運転など、同じ姿勢を長時間続ける場合は、1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチをする、足を動かすなど、血行を促進し、関節の柔軟性を保つように心がけましょう。 和式トイレ: 和式トイレは、股関節を深く曲げる必要があるため、人工関節に大きな負担がかかり、脱臼のリスクも高まります。可能であれば、洋式トイレを使用するか、和式トイレに補助具を設置するなど、工夫しましょう。 入浴: 入浴は、血行を促進し、筋肉の緊張を緩和する効果があるため、積極的に行いましょう。ただし、滑りやすい場所なので、手すりや滑り止めマットなどを設置し、転倒防止に十分注意してください。また、湯船の出入りは、ゆっくりと行い、急な動作は避けましょう。 2. 転倒防止 転倒は、人工関節に大きな衝撃を与え、破損や脱臼の原因となる可能性があります。家の中だけでなく、外出先でも転倒のリスクを意識し、予防策を講じることが重要です。具体的には、床に物を置かない、段差に注意する、滑りにくい靴を履く、階段では手すりを持つ、など、基本的なことを徹底しましょう。夜間は足元を明るくし、必要に応じて杖や歩行器を使用することも有効です。 3. 感染症の予防 人工関節は、感染症に弱いため、傷口のケアや衛生管理には特に気を配る必要があります。傷口は清潔に保ち、医師の指示に従って適切な処置を行いましょう。また、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、人工関節に感染が波及するリスクがあるため、手洗いやうがい、マスクの着用など、感染予防を徹底することが大切です。歯科治療を受ける際も、人工関節手術を受けたことを必ず伝え、抗菌薬の予防投与が必要かどうか相談しましょう。 スポーツや趣味の再開時期 人工関節手術後、日常生活動作が問題なく行えるようになったら、スポーツや趣味の再開を検討することができます。人工膝関節全置換術(TKA)と人工股関節全置換術(THA)を受けた患者さんには、フォーマルな監督下での活動プログラムだけでなく、非監督下での活動も推奨されています。これは、ご自身のペースで、日常生活の中で身体を動かすことが重要であるということです。 しかし、すべてのスポーツがすぐに再開できるわけではありません。激しい運動や、関節に大きな負担がかかる運動は、人工関節の寿命を縮めたり、合併症を引き起こす可能性があります。再開する際は、必ず主治医に相談し、許可を得てから行うようにしましょう。 許可される運動(例): ウォーキング、水泳、サイクリング、ゴルフ、卓球など。これらの運動は、関節への負担が比較的少なく、筋力や柔軟性を維持・向上させる効果があります。 禁止される運動(例): ジョギング、サッカー、バスケットボール、スキー、スノーボードなど。これらの運動は、関節への衝撃が大きく、人工関節に負担がかかりすぎるため、避けるべきです。 スポーツや趣味を再開する際には、以下の点に注意しましょう。 痛みが生じる場合は、無理せず中止する 徐々に運動強度や時間を増やしていく 適切なウォーミングアップとクールダウンを行う 定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行う 手術前の活動レベルに回復するには個人差がありますが、焦らず、医師の指示に従いながら、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 まとめ 人工関節手術後、仕事に復帰するには、リハビリテーションと日常生活の注意点、そして職場復帰支援制度の活用が重要です。 手術後は、段階的なリハビリを通して身体機能の回復を目指します。 日常生活では、人工関節への負担を減らす工夫や転倒防止、感染症予防を心がけ、スポーツや趣味の再開は医師と相談の上、徐々に進めていきましょう。 仕事復帰までの期間は仕事内容や回復状況によって異なり、職場との連携も大切です。 焦らず、自分のペースで復帰を目指し、様々な支援制度を活用しながら、快適な生活を取り戻しましょう。 参考文献 Soffin EM, Wainwright TW. "Hip and Knee Arthroplasty." Anesthesiology clinics 40, no. 1 (2022): 73-90. Šťastný E, Trč T, Philippou T. "[Rehabilitation after total knee and hip arthroplasty]." Casopis lekaru ceskych 155, no. 8 (2016): 427-432. Fortier LM, Rockov ZA, Chen AF, Rajaee SS. "Activity Recommendations After Total Hip and Total Knee Arthroplasty." The Journal of bone and joint surgery. American volume 103, no. 5 (2021): 446-455. Wainwright TW, Gill M, McDonald DA, Middleton RG, Reed M, Sahota O, Yates P, Ljungqvist O. "Consensus statement for perioperative care in total hip replacement and total knee replacement surgery: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS(®)) Society recommendations." Acta orthopaedica 91, no. 1 (2020): 3-19. Canovas F, Dagneaux L. "Quality of life after total knee arthroplasty." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S41-S46. 監修医師 リペアセルクリニック 理事長 医師 坂本貞範
2025.02.11 -
- ひざ関節
f膝の痛...それを解消する強力なアイテムとなるのが「膝サポーター」です。日本では、特に高齢化社会に伴い、膝のトラブルを抱える方が増加しており、その対策としてサポーターへの注目が集まっています。しかし、ドラッグストアやネット通販で手軽に買えるようになった反面、種類が多すぎてどれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? ここでは、最新の研究データに基づいたエビデンスも交えながら、サポーターの効果と限界についても明らかにしていきます。 自分にぴったりのサポーターを見つけることで、痛みを軽減し、快適な日常生活を取り戻す第一歩を踏み出しましょう。 膝サポーターの種類と特徴 膝の痛みや違和感を感じた時、多くの方がまず手にするのが膝サポーターではないでしょうか。ドラッグストアやスポーツ用品店、オンラインショップなど、様々な場所で手軽に購入できるため、利用されている方も多いと思います。しかし、一口に膝サポーターと言っても、その種類は実に様々です。ご自身の膝の状態に合わないものをつけると、かえって逆効果となります。この章では、様々な種類のサポーターの特徴を一つずつわかりやすく解説していきますので、サポーター選びの際の参考にしていただければ幸いです。 スポーツ用サポーター(バスケットボール、サッカー、バレーボールなど) スポーツ用サポーターは、膝への負担を和らげたり、ケガを未然に防いだりするために使われます。スポーツの種類によって、求められる機能も大きく異なります。 例えば、バスケットボールのようにジャンプや着地動作が多いスポーツでは、いかに膝への衝撃を少なくするかが大事となります。厚みのあるパッドが付いたサポーターや、特殊な素材で衝撃を分散させる機能を持つサポーターを選ぶと良いでしょう。 サッカーでは、急な方向転換やストップ動作が頻繁に行われます。このような動作は、膝関節にねじれの力を加え、靭帯を痛めてしまいます。膝関節をしっかりと固定し、不意のねじれから保護するタイプのサポーターがおすすめです。 バレーボールでは、ジャンプの着地時だけでなく、レシーブの際に床に滑り込むなど、膝を捻るリスクが非常に高い競技です。2023年に発表されたシステマティックレビュー(※複数の臨床研究をまとめて分析したもの)でも、膝蓋骨脱臼に対する手術療法と非手術療法の有効性について、依然として明確な結論が出ていないことが示されています。つまり、サポーターによる予防が非常に重要であると言えるでしょう。バレーボールでは、膝のお皿(膝蓋骨)の周囲をサポートし、脱臼を防ぐサポーターが有効です。 スポーツ用サポーターを選ぶ際には、行うスポーツの特徴を考慮し、適切な機能を持つサポーターを選びましょう。また、通気性の良い素材を選ぶことで、汗による不快感を軽減し、快適にスポーツを楽しむことができます。 日常生活用サポーター 日常生活用サポーターは、家事や仕事、買い物など、日常生活での膝の痛みや不安定感を少なくする効果があります。 高齢になると、膝の軟骨がすり減り、変形性膝関節症を発症する方が多くいらっしゃいます。初期は動き始めが痛いだけですが、放置すると歩行時や夜間にも痛みが出てしまい、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 具体的には、階段の上り下りや、椅子からの立ち上がり動作が楽になるようにサポートしてくれるサポーターや、膝のぐらつきを抑えて安定感を高めるサポーターなどがあります。装着が簡単なものや、薄手で服の下に着けても目立ちにくいものなど、多種多様の製品があり、ご自身の生活スタイルや好みに合わせて選ぶと良いでしょう。 また、最近では関節の動きをサポートするだけでなく、保温効果を高めたものや、通気性に優れた素材を使用したものなど、機能性も重視されています。 医療用サポーター 医療用サポーターは、変形性関節症や靭帯損傷などの特定の疾患に対応するために使用されます。一般的には、医師の指導のもとで使用します。 変形性膝関節症では、膝関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接擦れ合うことで炎症や痛みが発生します。医療用サポーターは、膝関節を安定させることで痛みを軽減し、変形の進行を遅らせる効果が期待できます。 靭帯損傷は、スポーツなどでの急激な動作や外力によって、膝の安定に必要な靭帯がケガすることです。前十字靭帯や内側側副靭帯の損傷は特に多く、初期治療が大切です。サポーターは、損傷した靭帯を保護し、関節の安定性を高めることで、怪我を治す期間を縮めてくれます。 機能別サポーター(保温、固定など) 膝サポーターは、その機能によっても分類することができます。代表的な機能として、保温機能と固定機能が挙げられます。 保温機能を重視したサポーターは、膝周りの保温性を高めることで、血行を促進し、痛みを和らげる効果があります。冬季のスポーツ時や冷えから膝を守りたい方におすすめです。 固定機能を重視したサポーターは、膝関節をしっかりと固定することで、関節の安定性を向上させます。スポーツ時の怪我予防や、膝の不安定感が強い方、靭帯損傷後のリハビリテーション時などに使用されます。 最近では、保温と固定の両方の機能を兼ね備えたサポーターも販売されています。 素材別サポーター(ネオプレン、ナイロンなど) 膝サポーターは、素材によっても特徴が異なります。 ネオプレン素材のサポーターは、保温性と伸縮性に優れているため、フィット感が良く、膝関節をしっかりと包み込むような装着感が特徴です。保温効果が高いことから、冷え性の方や、冬季のスポーツに適しています。また、水に強く、汚れにくいというメリットもあります。 ナイロン素材のサポーターは、軽量で通気性が良く、速乾性にも優れているため、暑い季節でも快適に使用できます。耐久性も高く、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいというメリットがあります。 膝サポーターの効果とデメリット、選び方のポイント 膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させる悩ましい症状です。歩くのも、階段の上り下りも、椅子から立ち上がるのも、痛みが伴うと億劫になってしまいますよね。 自分に合ったサポーターを装着することで、ケガを予防してくれたり、症状の悪化を防いでくれます。しかし、その種類は多岐にわたり、自分に合わないものをつけてしまうと、痛みが増強することもよくあるので注意しましょう。 この章では、膝サポーターの効果とデメリット、そして選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。ご自身にぴったりのサポーター選びの参考になれば幸いです。 膝サポーターの効果:痛み軽減、関節の安定化、怪我予防 膝サポーターの効果は大きく分けて「痛み軽減」「関節の安定化」「怪我予防」の3つです。 まず「痛み軽減」についてですが、サポーターを装着することで膝関節を適度に圧迫し、保温効果によって血行が促進されます。温かいタオルで患部を温めると痛みが和らぐのと同じですね。また、圧迫によって、関節内の炎症によって生じた腫れを抑える効果も期待できます。 次に「関節の安定化」ですが、膝関節が不安定な状態だと、少しの動きでも痛みを感じたり、転倒のリスクが高まったりします。サポーターは、関節を外部から支えることで安定性を高め、ぐらつきを抑えてくれます。不安定な積み木にそっと手を添えるように、サポーターが膝関節をサポートしてくれるイメージです。 最後に「怪我予防」についてです。スポーツや重労働などで膝に大きな負担がかかる際、サポーターは関節や靭帯を保護し、怪我のリスクを軽減するのに役立ちます。膝への負担が大きい動作を行うスポーツでは、サポーターによる保護が重要です。 膝サポーターのデメリット:締め付けによる不快感、皮膚トラブル、筋力低下 膝サポーターは多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。 まず、サポーターによる締め付けが強すぎると、不快感や痛み、血行障害などを引き起こす可能性があります。また、サポーターの素材によっては、皮膚にかぶれやかゆみなどのアレルギー反応が生じることもあります。特に、汗をかきやすい夏場や、長時間サポーターを装着している場合は注意が必要です。 さらに、サポーターに頼りすぎることで、膝周りの筋肉をあまり使わなくなり、筋力が低下する可能性も懸念されます。これは、怪我をした際にギプスで固定し続けると、その部分の筋肉が衰えてしまうのと同じ原理です。サポーターはあくまで補助的な役割であり、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 『膝のサポーターをするととても楽です』と言われる患者様には、必ず、『サポーターをつけると、筋肉が落ちるので、必ず筋トレも忘れずにしましょうね』と言います。筋トレをせずにいて、筋力低下を起こすと、ますますサポーターがなくては生活ができなくなるという悪循環に陥るので注意が必要です。 サイズの選び方:適切なサイズで効果を最大化 膝サポーターは、サイズが合ってないと、関節を痛めることとなり、さらに締め付けによる不快感や血行障害を引き起こす可能性があります。 サポーターのサイズを選ぶ際は、必ず膝周りのサイズを正確に測り、商品ごとのサイズ表と照らし合わせて選びましょう。一般的には、膝のお皿の上約10cmの太ももの周囲の長さを基準とします。メジャーを使用して、立った状態で計測するのがおすすめです。 膝サポーターに関するエビデンスと研究データ 膝サポーターは、スポーツ選手から高齢者まで幅広く利用されています。その効果について、様々な意見を耳にすることがあるかもしれません。「効果がある」という人もいれば、「効果がない」という人もいます。一体どちらが正しいのでしょうか? 実は、膝サポーターの効果については、多くの研究が行われており、その結果も様々です。この章では、科学的根拠(エビデンス)に基づいて、膝サポーターの効果と限界について、わかりやすく解説します。 具体的な研究データに基づいた解説 膝サポーターの効果を検証した研究は、世界中で数多く行われています。例えば、サッカー選手を対象とした研究では、膝サポーターが前十字靭帯(ACL)損傷の予防に役立つ可能性が示唆されています。ACLは膝関節の中にある靭帯の一つで、これが損傷すると、歩行やスポーツに大きな支障をきたします。特に、急な方向転換やジャンプの着地時など、膝に大きな負担がかかる動作で、サポーターの効果が期待できるという研究結果が出ています。 また、ランナーを対象とした研究では、サポーターがランニング中の膝の安定性を向上させる可能性が示唆されています。これは、サポーターが膝関節を外部から支えることで、関節のぐらつきを抑え、安定性を高めるためだと考えられます。 さらに、変形性膝関節症の患者さんを対象とした研究では、サポーター装着によって痛みや歩行機能が改善したという報告もあります。 スクワット時の膝への影響 スクワットのように、膝を深く曲げる運動をするとき、膝サポーターはどのような影響を与えるのでしょうか? 研究によると、スクワット時の膝への負担は、膝の曲げ角度によって変化し、特に60~90度の屈曲で大きくなる傾向があります。サポーターはこの負担を軽減する効果があるとされています。 しかし、一方でサポーターの過度な使用は、膝周りの筋肉のトレーニング効果を弱める可能性も指摘されています。これは、サポーターが膝関節を支える役割を果たすため、筋肉が本来担うべき役割を奪ってしまうためと考えられます。サポーターはあくまで補助的な役割として使用し、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 動的膝外反への効果 動的膝外反とは、運動中に膝が内側に入ってしまう状態のことです。ジャンプの着地時やランニング中などに、膝が内側に倒れこむように曲がってしまうと、膝関節や靭帯に大きな負担がかかり、痛みや怪我につながる可能性があります。 研究によると、適切なエクササイズと併用することで、サポーターは動的膝外反の改善に役立つ可能性があると考えられています。特に、シングルレッグスクワットやシングルレッグランディングといった片足での運動時に効果的です。これらの運動は、バランス能力や体幹の安定性を向上させる効果があり、動的膝外反の予防・改善に繋がります。サポーターは、これらの運動を行う際に、膝の怪我の予防に活躍してくれます。 参考文献 Pereira PM, Baptista JS, Conceição F, Duarte J, Ferraz J, Costa JT. "Patellofemoral Pain Syndrome Risk Associated with Squats: A Systematic Review." International journal of environmental research and public health 19, no. 15 (2022). Smith TO, Gaukroger A, Metcalfe A, Hing CB. "Surgical versus non-surgical interventions for treating patellar dislocation." The Cochrane database of systematic reviews 1, no. 1 (2023): CD008106. Alentorn-Geli E, Myer GD, Silvers HJ, Samitier G, Romero D, Lázaro-Haro C, Cugat R. "Prevention of non-contact anterior cruciate ligament injuries in soccer players. Part 1: Mechanisms of injury and underlying risk factors." Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA 17, no. 7 (2009): 705-29. Wilczyński B, Zorena K, Ślęzak D. "Dynamic Knee Valgus in Single-Leg Movement Tasks. Potentially Modifiable Factors and Exercise Training Options. A Literature Review." International journal of environmental research and public health 17, no. 21 (2020). 監修医師 リペアセルクリニック 理事長 医師 坂本貞範
2025.02.11 -
- 半月板損傷
膝の痛み、気になりますよね? 半月板は膝のクッションの役割を果たす重要な組織。ここでは、半月板損傷の原因から治療まで、医師がわかりやすく丁寧に解説します。加齢や激しいスポーツ、肥満などが原因で起こるこの損傷、実は放置すると変形性膝関節症のリスクを高めることも。早期発見・早期治療が肝心です。あなたの膝の健康を守るための知識を、ぜひここで手に入れてください。 半月板損傷の原因から治療まで解説 膝の痛み、もしかして半月板損傷かも?と心配になりますよね。この記事では、半月板損傷について、原因や症状、診断方法まで、わかりやすく丁寧に解説します。一緒に見ていきましょう。 半月板の役割と構造 半月板は、膝関節の中にあって、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間にあるC字型の軟骨です。左右の膝に1つずつ、合計2つあります。例えるなら、お寺の鐘の中にある撞木(しゅもく)のような形をしています。 半月板の役割は、大きく分けて2つあります。1つ目はクッションの役割です。ジャンプやランニングなどで膝に体重の何倍もの力が加わるとき、半月板が衝撃を吸収し、膝への負担を軽減します。ちょうど、トランポリンのように衝撃を和らげる働きをしています。2つ目は、膝関節を安定させる役割です。半月板があることで、大腿骨と脛骨の接触面がより広くなり、関節が安定し、スムーズな動きが可能になります。これは、積み木を安定させるために、間に小さな積み木を挟むようなイメージです。 半月板は主に水分とコラーゲンでできています。コラーゲンは、体の中の様々な組織を構成するたんぱく質の一種で、皮膚や骨、軟骨などにも含まれています。年齢とともに、この水分とコラーゲンが減少し、半月板はもろくなります。みずみずしいゼリーが乾燥して固くなる様子を想像してみてください。そのため、加齢とともに、以前は問題なかった動きでも、半月板に負担がかかり、損傷しやすくなるのです。 半月板損傷の主な原因3つ 半月板損傷の主な原因は3つあります。 加齢:半月板の水分やコラーゲンが年齢とともに減少し、もろくなるため、損傷しやすくなります。若い頃は何ともなかった動きでも、年齢を重ねると膝への負担が大きくなり、損傷のリスクが高まります。50代以降は特に注意が必要です。 激しいスポーツ:バスケットボール、サッカー、テニスなど、ジャンプや急な方向転換を伴うスポーツは、膝に大きな負担がかかります。特に、プロのスポーツ選手のように、毎日激しいトレーニングを行うと、半月板が損傷するリスクが非常に高くなります。成長期の子供に起こるオスグッド・シュラッター病とは異なり、スポーツによる半月板損傷は大人にも起こりうる疾患です。 肥満:体重が増加すると、膝にかかる負担も増えます。特に、体重がかかった状態で膝をひねると、半月板損傷のリスクが大幅に上昇します。健康的な体重を維持することは、半月板損傷だけでなく、変形性膝関節症などの他の膝の疾患の予防にもつながります。 半月板損傷の症状5つ 半月板損傷の症状は、損傷の程度や場所によって様々です。初期症状は軽微な場合もあり、違和感や音が鳴る程度の場合もあります。しかし、放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたす可能性があります。 痛み:損傷した部分に炎症が起こり、痛みが生じます。特に、階段の上り下りや正座など、膝を深く曲げたときに強い痛みを感じることが多いです。 腫れ:炎症によって関節内に水が溜まり、膝が腫れることがあります。腫れがひどい場合は、膝のお皿が隠れてしまうこともあります。 関節可動域の制限:痛みや腫れによって、膝の曲げ伸ばしが難しくなります。靴下を履く、椅子に座るといった動作が困難になることもあります。 膝の引っ掛かり感:半月板が裂けると、膝の曲げ伸ばしの際に引っ掛かり感やクリック音を感じることがあります。これは、半月板が裂けて、その裂けた部分が膝関節の動きを妨げているために起こります。 ロッキング:膝が急に動かなくなる状態をロッキングといいます。これは、半月板の一部が剥がれて関節に挟まってしまうことで起こります。ロッキングが起こると、非常に強い痛みを伴い、自力で膝を動かすことが難しくなります。 半月板損傷の診断方法 半月板損傷の診断には、問診、徒手検査、画像検査など、複数の方法を組み合わせて行います。 まず、医師は患者さんの症状について詳しく聞きます(問診)。いつから痛み始めたのか、どのような時に痛むのか、過去に膝を怪我したことがあるかなど、詳細な情報を収集します。次に、医師が膝を触ったり動かしたりして、損傷の有無や程度を調べます(徒手検査)。 レントゲン検査では、骨の状態を確認できます。半月板自体はレントゲンに写りませんが、骨の状態をチェックすることで、他の疾患の可能性を検討したり、MRI検査の必要性を判断したりすることができます。半月板損傷の確定診断には、MRI検査が不可欠です。MRI検査では、半月板の状態を詳細に確認できます。損傷の程度や種類、損傷部位などを正確に把握することができ、適切な治療方針を決定する上で重要な情報となります。近年では、内側半月板根部修復は、部分的な半月板切除や手術をしない治療と比較して、変形性膝関節症や人工関節置換術に至る確率を下げることが示されています。半月板を修復することで、膝関節の機能をより長く維持できる可能性が高まります。また、半月板修復術は、半月板の一部を取り除く手術に比べ、術後の機能的な回復が良好で、時間の経過とともに変性変化も少ないと報告されています。これは、できるだけ半月板を残すことが、長期的な膝関節の健康にとって重要であることを示唆しています。 半月板損傷と間違えやすい疾患 膝に痛みを感じると、「半月板損傷かな?」と不安になりますよね。確かに半月板損傷は膝の痛みの原因として一般的ですが、似たような症状を引き起こす疾患は他にもあります。今回は、半月板損傷と間違えやすい疾患について、それぞれの特徴や違いを詳しく解説します。正しく理解することで、適切な治療に繋がるため、ぜひ最後までお読みください。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、加齢や肥満、激しい運動、遺伝的要因などによって、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じる病気です。半月板損傷と同じように、痛み、腫れ、動きの悪さなどが現れます。実は、半月板損傷を適切に治療しないと、将来的に変形性膝関節症のリスクが高まることが知られています。半月板は膝関節のクッションの役割を果たしているため、損傷によってクッション機能が低下すると、関節への負担が増加し、軟骨のすり減りを加速させてしまうのです。 靭帯損傷 靭帯は、骨と骨をつなぎとめる丈夫な紐のような組織です。膝関節には、前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯の4つの主要な靭帯があり、これらが損傷すると、半月板損傷と同様に、痛み、腫れ、関節の不安定感などが現れます。特に、損傷した直後は強い痛みを感じることが多く、膝関節内で出血を起こすこともあります。 半月板損傷との違いは、靭帯損傷の場合、「膝がぐらつく」「外れる感じがする」といった不安定感を伴うことが多い点です。また、損傷の程度によっては、手術が必要になることもあります。特に、前十字靭帯損傷は、スポーツ活動中に多く発生し、半月板損傷を合併することも少なくありません。 鵞足炎(がそくえん) 鵞足とは、膝の内側にある3つの筋肉(縫工筋、薄筋、半腱様筋)の腱が合流する部分のことで、この部分に炎症が起きることを鵞足炎といいます。ランニングやジャンプなどの繰り返しの動作で、鵞足部に摩擦や牽引力が加わり、炎症を引き起こします。 鵞足炎の主な症状は、膝の内側の痛みです。半月板損傷でも膝の内側に痛みを感じることがあるため、鑑別が難しい場合があります。鵞足炎の特徴は、膝を曲げ伸ばしした時や、鵞足の部分を押すと痛みが増すことです。また、安静時にも鈍い痛みを感じることもあります。 オスグッド・シュラッター病 オスグッド・シュラッター病は、成長期の子供、特にスポーツをしている子供に多く見られる疾患です。ジャンプやダッシュなど、膝に負担がかかる運動を繰り返すことで、膝のお皿の下にある脛骨粗面(けいこつそめん)という骨の突起部に炎症が起こります。 オスグッド・シュラッター病の主な症状は、膝の前面の痛みや腫れ、脛骨粗面の圧痛です。運動後に痛みが増強し、安静にすると軽減するのが特徴です。半月板損傷でも似たような症状が出る場合がありますが、オスグッド・シュラッター病は成長期の子供に特有の疾患であるため、年齢である程度区別できます。成長痛と勘違いされることもありますが、適切な治療が必要です。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎:しつがいけんえん) ジャンパー膝は、ジャンプ動作を繰り返すことで、膝蓋腱(膝のお皿と脛骨をつなぐ腱)に炎症が起こる病気です。バスケットボールやバレーボールなどのジャンプ動作が多いスポーツ選手に多く見られます。 ジャンパー膝の主な症状は、膝のお皿の下に痛みを感じることです。ジャンプやランニングなど、膝に負担がかかる動作で痛みが増強します。半月板損傷でも似たような症状が出る場合がありますが、ジャンパー膝の場合は、膝のお皿の下を押すと痛みを感じることが特徴です。安静にしていても鈍い痛みを感じることもあります。 これらの疾患は、症状が似ているため自己判断は難しく、医療機関を受診して適切な診断を受けることが重要です。特に、変性半月板病変に対する関節鏡手術は、運動療法と比較して長期的な改善効果が示されていないという研究結果もあり、安易に手術を選択するのではなく、保存療法から始めることが推奨されています。どの疾患も早期発見、早期治療が大切です。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 半月板損傷の治療法4選 半月板損傷は、スポーツ選手だけでなく、日常生活の中でも起こりうる身近な怪我です。この章では、半月板損傷の治療法について、保存療法と手術療法のそれぞれの特徴や種類、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。 保存療法(リハビリテーション、薬物療法、注射) 保存療法とは、手術を行わずに、リハビリテーション、薬物療法、注射などを用いて、痛みや腫れなどの症状を和らげ、膝の機能を回復させる治療法です。 まずリハビリテーションについてですが、これはストレッチや筋力トレーニングを通して、膝関節の安定性を高め、関節の動きをスムーズにすることを目的としています。プールでの水中運動のように、膝への負担が少ない運動から始めることで、痛みを悪化させることなくリハビリを進めることができます。痛みが強い時期は無理せず、痛みの様子を見ながら徐々に運動量を増やしていくことが大切です。 薬物療法では、炎症や痛みを抑える薬を使用します。炎症が強い場合は、消炎鎮痛剤の内服薬や湿布薬が処方されるでしょう。痛みが強い場合は、医師と相談して適切な薬を処方してもらいましょう。自己判断で市販薬を服用するのではなく、医師の指示に従って薬を服用することが重要です。 注射による治療では、ヒアルロン酸を関節内に注射することで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減します。ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節のクッションの役割を果たしています。加齢や損傷によってヒアルロン酸が減少すると、関節の動きが悪くなり、痛みが生じやすくなります。ヒアルロン酸注射は、これらの症状を改善する効果が期待できます。 保存療法は体に負担が少ない治療法ですが、症状が改善しない場合や損傷の程度が大きい場合は、手術療法が検討されます。 手術療法の種類 保存療法で症状が改善しない場合や、半月板が大きく断裂している場合は、手術療法が選択されます。手術療法には、大きく分けて半月板修復術と半月板切除術の2種類があります。半月板修復術は損傷した半月板を縫合する手術で、半月板切除術は損傷した半月板の一部または全部を切除する手術です。 手術のメリット・デメリット 手術療法のメリットは、半月板の損傷を直接修復または切除することで、痛みや腫れなどの症状を早期に改善できる可能性があることです。損傷が大きく、日常生活に支障が出ている場合は、手術によって速やかに症状を改善できる可能性があります。 しかし、手術療法にはデメリットもあります。手術による傷や感染症のリスク、術後のリハビリテーション期間の長さ、そして手術費用などが挙げられます。また、半月板切除術では、半月板の一部または全部を取り除くため、将来的に変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があることも知られています。半月板は膝関節のクッションの役割を果たしているため、切除によってクッション機能が低下すると、関節への負担が増加し、軟骨のすり減りを加速させてしまう可能性があります。 半月板修復術と半月板切除術 半月板修復術は、損傷した半月板を縫合糸などで修復する手術です。半月板の機能を温存できるため、術後の変形性膝関節症のリスクが低いというメリットがあります。近年では、ハイブリッド型オールインサイドインプラントを用いる方法が一般的で、CT関節造影検査と関節鏡検査で治癒が確認されているという報告があります。これは、半月板修復術の有効性を示す重要な知見です。しかし、半月板の損傷部位や程度によっては、修復が難しい場合もあります。例えば、半月板の辺縁部など、血流が乏しい部位の損傷は治癒しにくいため、修復術が適さない場合があります。 一方、半月板切除術は、損傷した半月板の一部または全部を切除する手術です。修復術に比べて手術時間が短く、回復も早いというメリットがあります。しかし、半月板の機能が失われるため、長期的には変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。 どちらの手術法が適しているかは、損傷の部位や程度、年齢、活動レベルなどによって異なります。医師とよく相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。 最新の治療 保険診療での半月板損傷に対する手術は、根本的に半月板を修復させるものではありません。たとえ半月板を縫合しても、数年後には40%の割合で再断裂を起こします。縫合したところの半月板が、またくっつくという訳ではないのです。 そこで、リペアセルクリニックでは幹細胞による再生医療で、根本治療を目指します。多くの患者様が手術をしなくても、手術以上の効果を実感していただいております、詳しくはこちらで説明しています。 https://youtu.be/lSv3oWA6mdk?si=YqKSqLchKDWSndF4 半月板損傷を予防するための対策 半月板損傷を予防するためには、日頃から膝への負担を減らす工夫を心がける必要があります。具体的には、以下のような対策が有効です。 ウォーミングアップとクールダウン: 運動前後のウォーミングアップとクールダウンは、筋肉や関節の柔軟性を高め、怪我のリスクを軽減する上で非常に重要です。特に、膝関節周辺のストレッチを入念に行うことで、半月板への急激な負荷を避け、損傷のリスクを減らすことができます。ウォーミングアップでは、軽いジョギングやストレッチで体を温め、クールダウンでは、ストレッチで筋肉の緊張をほぐしましょう。 適切な筋力トレーニング: 太ももの筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)やふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を鍛えることで、膝関節を安定させ、衝撃を吸収しやすくなります。具体的には、スクワットやランジなどの下半身の筋力トレーニングが効果的です。これらの筋肉が強化されると、膝関節への負担が軽減され、半月板損傷の予防につながります。筋力トレーニングは、週に2~3回程度行い、無理のない範囲で徐々に負荷を上げていくことが大切です。 体重管理: 体重が増加すると、膝関節にかかる負担も大きくなり、半月板損傷のリスクが高まります。適正体重を維持することで、膝への負担を軽減し、半月板損傷のリスクを減らすことができます。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、健康的な体重を維持しましょう。 正しい姿勢と動作: 姿勢が悪い、または間違った動作を繰り返すと、膝関節に過剰なストレスがかかり、半月板損傷のリスクが高まります。日常生活動作やスポーツ動作を見直し、正しい姿勢と動作を意識することで、膝への負担を軽減し、半月板損傷の予防につなげることができます。例えば、重い荷物を持つ際は、膝を曲げて持ち上げるようにし、腰への負担を軽減することも重要です。 適切な靴の選択: クッション性の高い靴を選ぶことで、地面からの衝撃を吸収し、膝への負担を軽減することができます。特に、ウォーキングやランニングなどの運動をする際は、スポーツ専用のシューズを着用し、足への負担を軽減することが大切です。 参考文献 Kennedy MI, Strauss M, LaPrade RF. "Injury of the Meniscus Root." Clinics in sports medicine 39, no. 1 (2020): 57-68. Krych AJ, Hevesi M, Leland DP, Stuart MJ. "Meniscal Root Injuries." The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 28, no. 12 (2020): 491-499. Rotini M, Papalia G, Setaro N, Luciani P, Marinelli M, Specchia N, Gigante A. "Arthroscopic surgery or exercise therapy for degenerative meniscal lesions: a systematic review of systematic reviews." Musculoskeletal surgery 107, no. 2 (2023): 127-141. Feehan J, Macfarlane C, Vaughan B. "Conservative management of a traumatic meniscal injury utilising osteopathy and exercise rehabilitation: A case report." Complementary therapies in medicine 33, no. (2017): 27-31. Beaufils P, Pujol N. "Management of traumatic meniscal tear and degenerative meniscal lesions. Save the meniscus." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 103, no. 8S (2017): S237-S244. Chirichella PS, Jow S, Iacono S, Wey HE, Malanga GA. "Treatment of Knee Meniscus Pathology: Rehabilitation, Surgery, and Orthobiologics." PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 11, no. 3 (2019): 292-308. Wells ME, Scanaliato JP, Dunn JC, Garcia EJ. "Meniscal Injuries: Mechanism and Classification." Sports medicine and arthroscopy review 29, no. 3 (2021): 154-157. Beaufils P, Pujol N. "Meniscal repair: Technique." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S137-S145. 監修医師 リペアセルクリニック 理事長 医師 坂本貞範
2025.02.08 -
- 頭部
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突然の頭痛、生理痛、歯痛…痛みは日常生活を大きく阻害する悩みの種です。ドラッグストアには様々な痛み止めが並び、どれを選べば良いか迷う方も多いのではないでしょうか? 市販の痛み止め「ロキソニン」と「カロナール」の徹底比較を医師が解説し、それぞれの特徴、効果的な症状、価格、そして副作用のリスクまで、幅広くお伝えします。 例えば、ロキソニンは、筋肉の痛みや生理痛に対してとても有効ですが、胃腸への負担が懸念されます。一方、カロナールはロキソニンに比べて副作用は弱いが、その分、効き目も弱くなります。 さらに、最新の研究結果に基づいた、2歳未満の乳幼児への服用に関する情報や、妊娠中・授乳中の方への注意点も詳しく解説。薬剤師への相談の重要性も改めて強調します。 この記事を読むことで、痛みから解放されるための知識が得られます。さあ、痛みと賢く付き合う方法を学びましょう。 市販薬の選び方とランキング 皆さんは、急な頭痛や発熱時、どの市販薬を選べば良いか迷ったことはありませんか?ドラッグストアの棚には様々な鎮痛薬が並んでおり、どれが自分に合っているのか分からず、途方に暮れてしまう方もいるかもしれません。 この章では、市販薬の選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。 人気の市販薬とその特徴 数ある市販薬の中でも、ロキソニンとカロナールは特に知名度が高く、多くの方に利用されています。 ロキソニンは頭痛、歯痛、生理痛、腰痛、筋肉痛などによく服用されます。患部で炎症を引き起こす物質であるプロスタグランジンの生成を抑える効果があります。 一方、カロナール(一般名:アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されており、脳神経に直接働きかけて炎症を止めます。ロキソニンと比較すると作用は穏やかで、小児や高齢者、妊娠中・授乳中の方にも使用できる場合があります。 2歳未満の乳幼児における発熱や疼痛の治療において、アセトアミノフェンとイブプロフェンはどちらも広く処方されていますが、最新の研究では、イブプロフェンの方が24時間以内の体温低下と疼痛軽減効果が高いという結果が出ています。ただし、安全性は両剤とも同等とされています。 薬剤名 主な作用 適した症状 注意点 ロキソニン 炎症を抑える、痛みを抑える 頭痛、生理痛、歯痛、腰痛、筋肉痛など 胃腸障害に注意、空腹時の服用は避ける カロナール 熱を下げる、痛みを抑える 熱、頭痛、歯痛など 肝臓に負担があるため、過剰摂取に注意する 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 値段比較とコストパフォーマンス ロキソニンとカロナールの価格を比較すると、一般的にロキソニンの方がややコストがかかります。販売店や容量によって異なりますが、ロキソニンは1箱12錠入りで約1,000円前後、カロナールは1箱12錠入りで約800円前後が相場です。 薬剤名 1箱(12錠)あたりの価格 コストパフォーマンス ロキソニン 約1,000円 やや低い カロナール 約800円 やや高い しかし、価格だけで判断せず、症状や体質、そして副作用のリスクも考慮して選ぶことが重要です。ロキソニンは胃腸障害のリスクがあるため、胃腸の弱い方はカロナールを選ぶ方が良い場合もあります。 薬局で購入する際のポイント 市販薬を購入する際は、自己判断せず、薬剤師に相談することを強くお勧めします。薬剤師は、あなたの症状や体質、他の薬との飲み合わせなどを考慮し、適切な薬を提案してくれます。薬の効果や副作用、服用方法など、疑問があればどんな些細なことでも相談しましょう。特に、妊娠中・授乳中の方、持病のある方、高齢の方は、注意が必要です。 急性痛の治療には、NSAIDs(ロキソニンなど)、アセトアミノフェン(カロナールなど)、メタミゾール、コルチコステロイドなど、様々な薬剤が使用されます。これらの薬剤はそれぞれ異なる作用機序と臨床応用を持ち、最新の科学的エビデンスに基づいて使用されるべきです。 例えば、グラピプラントという生薬も抗炎症作用を持つことが報告されており、NSAIDsのような副作用が少ないとされています。薬剤師や医師と相談し、ご自身の症状に最適な薬剤を選択することが重要です。 症状別のロキソニンとカロナールの効果比較 痛みは、私たちにとって非常に不快な感覚であり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。上手に痛み止めを選び、痛みをコントロールし、より快適な生活を送ることが可能になります。 ここでは市販薬として購入できるロキソニンとカロナールについて、どちらが効果的なのか、医師の視点から分かりやすく解説します。 頭痛に対する効果の違い ズキズキ、ガンガン、締めつけられるような…頭痛の症状は実に様々です。片頭痛のように血管が拡張することで起こる頭痛、緊張型頭痛のように筋肉の緊張が原因となる頭痛など、その種類は多岐に渡ります。 ロキソニンは、炎症を伴う頭痛、例えば風邪に伴う頭痛や副鼻腔炎による頭痛などに高い効果があります。 一方、カロナールは、解熱鎮痛薬であり、緊張型頭痛や片頭痛など、炎症を伴わない頭痛に適しています。 筋肉痛に対する効能 筋肉痛は、身体活動後に筋肉に微細な損傷が生じることで起こります。損傷した筋肉は炎症を起こし、発痛物質が放出されることで痛みを感じます。 ロキソニンは、こういう筋肉痛にはよく効きます。 一方、カロナールは筋肉痛への効果は限定的です。 腰痛や関節痛への効果 腰痛や関節痛の原因は多様であり、加齢による変形性関節症や、急に発症するぎっくり腰、スポーツによる外傷など、様々な要因が考えられます。これらの痛みの原因や病態に応じて薬を選定しましょう。 ロキソニンの抗炎症作用は強く、炎症を伴う腰痛や関節痛、例えばぎっくり腰や変形性関節症などに効果があります。変形性関節症では関節軟骨がすり減り、炎症が生じることで痛みが発生します。この時はロキソニンがよく効きます。 一方、カロナールですが、近年、変形性関節症の疼痛と機能改善において、アセトアミノフェン(カロナール)は、従来考えられていたほど効果的ではない可能性が示唆されています。痛みが軽い場合や、ロキソニンを服用できない場合に代替薬として処方されることもありますが、ロキソニンと比較すると効果は劣る可能性があります。 ▼関節症の痛み止め「ステロイド」の使用について、併せてお読みください。 ロキソニンとカロナールの副作用と注意点 痛みや熱が出た時、身近な薬として頼りになるロキソニンとカロナール。ドラッグストアで手軽に手に入りますが、その効果の違いや副作用について正しく理解しているでしょうか? 適切な薬を選ぶことは、症状の改善を早めるだけでなく、副作用のリスクを減らすことにも繋がります。 この章では、ロキソニンとカロナールの副作用と注意点について、医師の視点から詳しく解説します。 一般的な副作用とその対処法 ロキソニン(ロキソプロフェン)は、抗炎症作用は強いのですが、副作用として腎障害に注意する必要があります。吐き気、胃痛、胸やけといった症状が現れる可能性があり、特に空腹時に服用すると副作用が出やすいため、食後や胃を保護する薬と一緒に服用することが推奨されます。 稀に、ですが、肝機能障害や腎機能障害といった副作用を認めることがあります。早期に分かれば、内服するのを中止すると大抵は正常に戻ります。 カロナール(アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されており、比較的副作用が少ない薬です。主な副作用としては、発疹やかゆみなどのアレルギー症状が挙げられます。 稀ではありますが、重症の皮膚障害である中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群など重篤な副作用が発生する可能性も否定できません。服用後に皮膚に異常を感じた場合は、直ちに中止してかかりつけ医に受診しましょう。 薬の種類 主な副作用 対処法 ロキソニン 吐き気、胃痛、胸やけ、肝機能障害、腎機能障害 食後に服用、胃薬と併用、症状が続く場合は医師に相談 カロナール 発疹、かゆみ、重症の皮膚障害 服用を中止し医師に相談 また、2歳未満の乳幼児における発熱や疼痛に対する使用については、イブプロフェン(ロキソニンの成分)の方がアセトアミノフェン(カロナールの成分)よりも効果が高いという研究結果も出ています。24時間以内の体温低下と疼痛軽減効果において、イブプロフェンの優位性が示されています。ただし、重篤な副作用はどちらの薬も稀であり、安全性は同等と考えられています。 妊娠中・授乳中の服用に関する注意事項 妊娠中や授乳中の薬の服用は、胎児や乳児への影響を考慮する必要があります。 ロキソニンは、妊娠後期に服用すると、胎児の動脈管収縮や陣痛抑制といった影響を及ぼす可能性があるため、服用は避けるべきです。特に妊娠32週以降は、早産や胎児への影響のリスクが高まるため、ロキソニンを含むNSAIDsの使用は禁忌とされています。 カロナールは、妊娠中や授乳中に服用しても比較的安全とされています。ただし、あくまで「比較的」安全であるというだけで、全く影響がないわけではありません。 他の薬との飲み合わせについて ロキソニンやカロナールは、他の薬と一緒に飲むことで、抗炎症作用の効果が落ちたり、副作用が強くなることがあります。特に、ワーファリンなどの血液をサラサラにする薬や、喘息治療薬、一部の抗うつ薬などとの飲み合わせには注意が必要です。 ▼薬とフルーツの飲み合わせについて、併せてお読みください。 市販薬の選び方とランキング 皆さんは、急な頭痛や発熱時、どの市販薬を選べば良いか迷ったことはありませんか?ドラッグストアの棚には様々な鎮痛薬が並んでおり、どれが自分に合っているのか分からず、途方に暮れてしまう方もいるかもしれません。 この章では、市販薬の選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。現状の痛みや持病などを考慮しながら、適切な薬を選びましょう。 人気の市販薬とその特徴 数ある市販薬の中でも、ロキソニンとカロナールは特に知名度が高く、多くの方に利用されています。 ロキソニンはカロナールよりも抗炎症作用は強いです。 一方、カロナール(一般名:アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されています。小児や高齢者、妊娠中・授乳中の方にも使用できる場合がありますが、必ずかかりつけ医と相談しましょう。 値段比較とコストパフォーマンス ロキソニンとカロナールの価格です。ロキソニンSは1箱12錠入りで約1,000円前後、カロナールは1箱12錠入りで約800円前後が相場です。 薬剤名 1箱(12錠)あたりの価格 コストパフォーマンス ロキソニン 約1,000円 やや低い カロナール 約800円 やや高い 価格だけで判断せず、症状や体質、副作用のリスクも考慮して選ぶことが重要です。ロキソニンは胃腸障害のリスクがあるため、胃腸の弱い方はカロナールを選ぶ方が良い場合もあります。また、持病のある方や他の薬を服用している方は、かかりつけ医と相談しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Tan E, Braithwaite I, McKinlay CJD, Dalziel SR. "Comparison of Acetaminophen (Paracetamol) With Ibuprofen for Treatment of Fever or Pain in Children Younger Than 2 Years: A Systematic Review and Meta-analysis." JAMA network open 3, no. 10 (2020): e2022398. Richard MJ, Driban JB, McAlindon TE. "Pharmaceutical treatment of osteoarthritis." Osteoarthritis and cartilage 31, no. 4 (2023): 458-466. Antiinflammatory Drugs.
2025.02.01 -
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- 膝部、その他疾患
「ジャンパー膝とオスグッド病の違いは何?」「スポーツを続けるために必要な方法は?」 ジャンパー膝とオスグッド病は症状がよく似ていて、見分けがつかないケースも多いのではないでしょうか。 どちらもジャンプ競技で繰り返し膝を使うことで発症しますが、痛みが出る膝の部位が異なります。 この記事では、ジャンパー膝とオスグッド病の原因と症状の違いや、それぞれの治療法について解説していきます。 ジャンパー膝とオスグッド病の一般的な見分け方や対処法について気になる方は、ぜひ最後までお読みください。 ジャンパー膝とオスグッド病の基本 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプスポーツが原因で膝まわりの痛みが出るため似たような疾患に見えがちです。 しかし、発症する原因や影響を受ける膝の部位が異なります。 ジャンパー膝 オスグッド病 定義 膝蓋腱炎の炎症 脛骨粗面の剥離(はくり) 原因 ジャンプ動作や走行が多いスポーツ ジャンプ動作や走行が多いスポーツ 症状 スポーツ時の膝蓋腱の痛み・腫れ 脛骨粗面の突出、スポーツ時の脛骨粗面の痛み・腫れ 影響を受ける部位 膝蓋腱(膝蓋骨の下の靭帯) 脛骨粗面(膝蓋骨の下にある突出している骨) はじめに、それぞれの定義と一般的な原因を説明していきます。 ジャンパー膝の定義と一般的な原因 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 バレーボールやバスケットボール、サッカーなどのスポーツで多くみられ、繰り返し行うジャンプ動作が主な原因です。 ジャンプスポーツによる膝の使いすぎ(オーバーユース)が続くと、膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の定義と一般的な原因 オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)は小学校高学年から中学生の成長期に、脛骨粗面(膝蓋骨の下にあるわずかに突出している骨の部分)の軟骨が剥がれる疾患です。 原因はジャンパー膝と同じで、ジャンプや走行、ボールを蹴る動作などで膝を頻回に使うことで生じます。 この時期は軟骨から骨に成長する時期なので、膝を伸ばす動作の繰り返しで脛骨粗面の軟骨が剥がれることにより痛みが増します。 症状の比較 ジャンパー膝とオスグッド病に見られる主な症状は、どちらもスポーツ中の膝まわりの痛みです。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝に見られる典型的な症状 ジャンパー膝に見られる典型的な症状は、ジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに見られる膝蓋腱の痛みです。 膝蓋腱の痛みは程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始期と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 重症化して膝蓋腱に断裂がある場合は、手術が必要になる可能性もあります。 軽症や中等度のうちは専門家と相談した上でスポーツの継続が可能ですが、症状を悪化させないためにも、毎日ケアを続けることが大切です。 オスグッド病に見られる典型的な症状 オスグッド病に見られる症状は、脛骨粗面の痛みや腫れ、突出です。痛みはスポーツ中に見られ、休んでいるときに軽快する点がジャンパー膝とよく似ています。 症状は脛骨粗面以外の部位には見られません。症状が悪化すると、剥がれた骨片を取り出す手術が必要になる可能性もあります。 発症部位と影響 ジャンパー膝とオスグッド病の発症部位はそれぞれ膝蓋腱と脛骨粗面です。どちらの疾患も、膝の曲げ伸ばしによる大腿四頭筋の作用が影響して発症します。 以下に詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の影響を受ける膝の部位 ジャンパー膝で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる膝蓋腱です。膝蓋腱は大腿四頭筋の伸び縮みに伴って脛骨(すねの骨)や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしを可能としています。 スポーツをしている時のジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し行っているため、膝蓋腱の負担も大きいのです。 この状態が続くと膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の影響を受ける膝の部位 オスグット病で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋の下端が付着する脛骨粗面です。膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、大腿四頭筋の伸び縮みによって脛骨粗面に刺激が加わります。 小学生から中学生にかけて骨が成長している時期は、この刺激により脛骨粗面の軟骨が急激に剥がれやすくなるのです。 軟骨が剥がれると、脛骨粗面まわりに炎症が起き、痛みや腫れを発症させます。 診断と治療方法 ジャンパー膝やオスグッド病が疑われる場合は、整形外科で問診や触診、画像診断などの診断と鎮痛薬や外用薬の投与による治療を行います。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝の診断プロセスと治療オプション ジャンパー膝の診断では問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。膝蓋腱をゆびで圧迫した時に痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断となります。 ジャンパー膝の治療は、患部の安静や練習量を減らすこと、炎症を抑えるための鎮痛剤や外用薬を使用することです。膝蓋腱に負担のかかるジャンプやダッシュの練習を減らすだけでも、症状の改善に効果があります。 また、医薬品は市販ではなく医師に処方されたものを使用しましょう。症状によってはステロイド注射を行うこともあります。 オスグッド病の診断プロセスと治療オプション オスグッド病の診断は問診や触診、レントゲン検査で可能です。問診で実際の話を聞きながら、痛みが出るときの状況や、痛みが出る部位を確認します。 脛骨粗面の状態を触診やレントゲン検査で確認し、痛みや腫れ、突出、軟骨の剥離が認められると確定診断になります。 オスグッド病の症状を治すためには、スポーツを控えて安静にすることが大切です。軟骨から骨に成長する3〜6ヶ月間は痛みが出やすい時期なので、負担をかけないようにできるだけ休息をとりましょう。 痛みが強いようなら、医師から処方された飲み薬やぬり薬などを使用することもあります。 予防と管理 ジャンパー膝やオスグッド病の予防や、スポーツを継続するときの管理方法には、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、膝蓋腱バンドの装着などがあります。痛みの症状に悩んでいる方は、専門医と相談しながらこれらの方法を行うようにしましょう。詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の予防策 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋のストレッチや筋力トレーニングが大切です。症状を管理しながらスポーツを続けていく場合は、スポーツ直後のアイシングや、スポーツ中の膝蓋腱バンドの装着も必要になります。 過去の論文ではジャンパー膝の予防策に、傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 参考文献:P Jonsson, H Alfredson.Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: a prospective randomised study.2005. 39(11). p847-850 ジャンパー膝の予防に重要な、片脚立ちスクワットや大腿四頭筋のストレッチの方法について見ていきましょう。 片脚立ちスクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ (※傾斜台がなければ、スロープやタオルを使用して、立った姿勢で踵の位置が上がるように工夫する) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続で行い、1日3セットほど行う。きつく感じるようであれば、必要に応じて手すりを持ちながら行う 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げても痛みがでない場合の方法) ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う オスグッド病の予防策 オスグッド病の予防策と管理方法は、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、ベルトの装着です。 オスグッド病は痛みが出なければスポーツが可能ですが、症状を悪化させないためにこれらを継続して行うことが大切です。 アイシング 練習直後にアイシングを15〜30分ほど行いましょう。激しい運動の後は脛骨粗面のまわりにより炎症が起こりやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。氷を入れた袋を患部に持続的に当てるか、弾性包帯で巻きつけて固定すると効果的です。 バンドを装着する ジャンパー膝やオスグッド病の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツ中の膝蓋腱や脛骨粗面に対する過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 まとめ ジャンパー膝とオスグッド病の違いについてお話ししました。 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプ競技で膝を伸ばす動作を繰り返すことで起こる症状です。 しかし症状の出る部位が異なり、ジャンパー膝が膝蓋腱に痛みが出るのに対して、オスグッド病は脛骨粗面に痛みが出ます。どちらの場合もスポーツを続けるときは、以下の内容をよく守って行いましょう。 どちらの疾患であっても効果的なアプローチ ジャンパー膝とオスグッド病の両方に効果があるアプローチは、アイシングと大腿四頭筋のストレッチ、バンドの装着です。これらはスポーツ直後に起きた膝の炎症を抑えたり、脛骨粗面や膝蓋腱、大腿四頭筋の負担を減らしたりする効果があります。 症状の悪化につながらないためにも、スポーツをするときは必ず継続して行いましょう。 スポーツ選手としての健康管理の重要 ジャンパー膝やオスグッド病の症状と付き合いながらスポーツを続ける場合は、専門家に相談しながら無理のない範囲で行いましょう。 どちらの症状も悪化させると手術が必要になる可能性もあるため、痛みが強い場合は休んだり、練習量を減らしたりすることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献一覧 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会, 2023, 「運動器疾患とスポーツ外傷・障害」, vol.1, 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 日本整形外科スポーツ医学会広報委員会,2023「スポーツ損傷シリーズ」,1.オスグッド病 明解 スポーツ理学療法-図と動画で学ぶ基礎と実践 Visnes, H., Hoksrud, A., Cook, J., & Bahr, R. (2005). Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: A prospective randomised study. British Journal of Sports Medicine, 39(11), 847-850. https://doi.org/10.1136/bjsm.2005.018630 体力科学,1999,48,227〜232,"ジャンパー膝"
2024.10.02 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
化膿性関節炎の術後は、関節を切除している場合、関節が不安定になってしまいます。 日常生活に戻るためには、適切なリハビリが重要です。 「早く復帰したい」と考え、無理なリハビリをおこなってしまうと、感染症や炎症の悪化につながる可能性があります。そこで本記事では、化膿性関節炎のリハビリやリスク、日常生活での注意点を解説します。 また、ハイキングやランニングでおすすめの筋トレも紹介しているため、ぜひご覧ください。 【基礎知識】化膿性関節炎の概要 化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。 まずは化膿性関節炎が発症する原因と具体的な症状について紹介していきます。 化膿性関節炎が発症する原因 化膿性関節炎は、主に細菌が関節内に侵入することによって発症します。 細菌は肺炎、尿路感染、手術後の感染、関節内注射などを通じて関節に到達することがあります。とくに、股関節・膝関節・足関節など、下肢に発症しやすい傾向にあります。 また、免疫力が低下している人や、肥満・糖尿病などがある人も化膿性関節炎を発症する可能性があります。 以下の記事では膝関節が腫れた人向けに、痛みの原因や対処法を解説しているので、ぜひご覧ください。 化膿性関節炎の症状 化膿性関節炎の主な症状は、関節の痛み・発赤・腫脹・熱感などがあり、進行すると関節や骨の破壊、発熱などの症状が現れます。 「関節炎」は、炎症を伴う関節の痛みや腫れを特徴とする病気の総称で、化膿性関節炎はその中でもとくに急性で重篤な症状を示します。 化膿性関節炎を放置すると、関節の破壊や機能障害を引き起こす可能性があるので注意してください。 他にも大腿部や膝、肩の関節に多く発生し、患部の運動が制限されるケースが大半です。 迅速な治療が求められるため、疑わしい症状が現れた場合は、速やかに医療機関での受診をおすすめします。 治療は主に、抗生物質の投与と、場合によっては関節内の膿を排出する外科的処置が行われます。また、治療後のリハビリテーションも重要で、関節の機能回復を目指した適切なケアが必要です。 化膿性関節炎を予防するためには、日常生活での感染予防や、免疫力の向上が大切です。 化膿性関節炎の治療法と術後のケア 化膿性関節炎の治療法は、感染の原因となる細菌を特定するために関節液の採取と培養がおこなわれた上で、適切な抗生物質が投与されます。 また、感染によって関節に溜まった膿を除去するために、関節の洗浄が必要となるケースもあります。 治療後は、関節の可動域を回復させるためのリハビリが重要です。 リハビリを通じて、痛みの管理や筋力の回復を図り、日常生活における関節の負荷を軽減できるかが求められます。 化膿性関節炎は、早期に適切な治療を受けると、予後が良好になる可能性が高く、症状が疑われる場合には早急な対応が必要です。 以下の記事では、より具体的に治療法を解説しているので、あわせてご覧ください。 化膿性関節炎のリハビリ内容 化膿性関節炎のリハビリは、痛みや炎症の管理・可動域訓練・筋力増強訓練の3つを軸におこないます。 とくに、痛みや炎症を悪化させないのが大切になるため、順番に解説していきます。 痛みや炎症の管理 化膿性関節炎のリハビリにおいて、炎症の管理が非常に重要です。 炎症が関節の痛みや腫れを引き起こして可動域を制限するため、リハビリ初期では炎症を抑えることに重点を置きます。 具体的なリハビリ内容は、冷却療法を用いた方法が一般的です。 氷や冷却パックを患部に当てる方法で、一時的に痛みを和らげる効果が期待できます。 可動域訓練 化膿性関節炎で手術による関節内洗浄と骨の一部を切除した場合などは、可動域訓練が重要です。 骨の切除により関節は少なからず不安定になっており、関節固定術を実施した人は関節可動域が制限されやすいためです。 リラクゼーションも併用し、組織の柔軟性を高める必要があります。 近年では、切開範囲の小さい手術が多いものの、術創部付近はとくに硬くなりやすいため、入念に可動域訓練やリラクゼーションをおこないましょう。 筋力増強訓練 化膿性関節炎の術後では、筋力増強訓練も大切です。 手術後で固定期間が長くなるほど筋力は低下します。 とくに、下肢の筋肉は日常生活で欠かせないため、筋力を回復させることが重要です。 術後すぐは、可能な範囲で等尺性筋力増強訓練を実施します。炎症が落ち着いて関節が動くようになれば、自動運動・抵抗運動などを進めていきます。 リハビリの期間と予後 化膿性関節炎でおこなうリハビリの期間は、どのような治療をしたかによって異なります。 数週間から数カ月と、リハビリ期間の幅が広いのは、抗生物質の投与のみで治療が完了する患者様もいるからです。 一方で、関節や骨の破壊まで進行しており、切除した場合は、より時間がかかります。 参考として以下に、リハビリの期間や流れ、予後をまとめました。 リハビリ期間 リハビリの内容 術後翌日~1週間 ・関節周囲組織のリラクゼーションにより組織の柔軟性を高める ・他動的な関節可動域訓練により拘縮の予防 ・等尺性筋力訓練により関節に負担をかけずに筋力強化 術後1~2週間 ・自動運動で関節の動きに伴う筋収縮の練習 ・荷重訓練により感覚入力を促して動作につなげる 術後2週以降 ・日常生活動作を練習し、元の生活になれる ・応用動作練習で、バランスも取り入れた難易度が高いリハビリを行う ※炎症状態や年齢などの要因がかかわるため、リハビリの内容や期間は異なる場合があります。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 日常生活での注意点 化膿性関節炎のリハビリをする際、日常生活での注意点は、関節に負荷をかけないことが重要です。 ここからは、化膿性関節炎のリハビリを順調に進められるよう、注意点について詳しく解説していきます。 関節への負荷を減らす 化膿性関節炎になった人は、日常生活上での動作を工夫すると、関節への負荷を減らせます。 たとえば、立ったまま家事し続けるのではなく、合間に座って足を休めるのがおすすめです。 また、重量物を持ち上げるときに身体の近くで持ち上げると、各関節への負担を減らせます。動作にプラスして、サポーターを着用すると関節への負荷が軽減します。 サポーターは、関節周囲を圧迫して感覚入力を促し、関節を安定させる機能があるため効果的です。 ストレッチや筋トレをする ストレッチや筋トレをすると、負荷を分散しやすくなるため、関節を保護や再発予防ができます。 ストレッチをすることで、筋肉や股関節の柔軟性が増し、負荷が分散しやすくなります。また、筋力が少ないと関節が不安定になりやすいため、負荷も増加しやすくなるでしょう。 筋トレをおこなう際は、正しいフォームと適切な重量設定が重要です。無理をせず、医師や理学療法士の指導のもとでおこないましょう。 初期段階では、軽めの重りや自重を使ったエクササイズから始め、徐々に負荷を増やしていくのが理想的です。 活動性が高い趣味を楽しむための工夫 化膿性関節炎の術後でもハイキングやランニング、スポーツなど、活動性が高い趣味を再びやりたい人は多いでしょう。 ハイキングとランニングを例に、実施しておきたい筋トレを紹介します。 ハイキングでおすすめの筋トレ ハイキングでは、不整地を歩くためのバランス訓練、長距離を歩くための持久力訓練が大切です。 とくに、不整地で歩くのは足首によるコントロールが必要なため、柔らかいマット上で片脚立位を保持する練習が効果的です。 通常の地面よりバランスの難易度が高く、足首の協調性に向いています。 また、持久力訓練としてはハイキングに行くまでに実際に歩きたい距離を無理なく歩けるようにしておきましょう。 歩道で同じ距離を歩けないと、不整地に行ったときに疲れやすくて怪我のリスクも高まります。 ランニングでおすすめの筋トレ ランニングでは、関節に負荷がかからない筋トレがおすすめです。 そもそもランニングは、下肢への強い負荷が繰り返しかかります。 活動性の高いランニングを楽しむためには、立ち座りの動作をゆっくりおこなう訓練を取り入れましょう。ゆっくりおこなうと、股関節・膝関節・足関節周囲の筋肉を協調的にコントロール可能です。 リハビリでも改善しない化膿性関節炎はお気軽にご相談ください 化膿性関節炎は細菌が原因になるため、抗生物質の投与・関節内洗浄などの治療が重要です。 一方で、再び日常生活に戻り趣味を楽しむためには、適切なリハビリが必要になります。 リハビリでは、術後すぐは関節が固まらないようにリラクゼーション・関節可動域訓練を実施したのちに、徐々に筋力訓練を開始します。 また、日常生活レベルに戻れたとしても、退院後の定期的な筋トレも重要です。 ハイキングやランニングのような、活動性の高い趣味がなかったとしても、日常生活で不便に感じないよう、効果的なリハビリを実施しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 化膿性関節炎のリハビリに関連したよくある質問 そもそも化膿性関節炎は何科で受診してもらうべきなの? 化膿性関節炎の受診は、多くの場合で整形外科での受診が推奨されています。 整形外科は骨や関節に関する疾患を専門とするため、化膿性関節炎の症状や進行状況を的確に評価し、必要な治療を提供できます。 また、化膿性関節炎が疑われる場合、迅速な診断と治療が重要であるため、初期症状を感じたら早急に医療機関で受診してもらうのをおすすめします。 化膿性関節炎は放置すると、関節の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期の医療介入が鍵となります。 どの診療科を選ぶかは、症状や状態に応じて柔軟に考えるのが重要ですが、整形外科を起点にするのが一般的です。 リハビリをする上での注意点は? 化膿性関節炎のリハビリをする上で注意しておきたいポイントは、再感染と炎症の悪化です。 術後すぐに術創部に菌が入ると、再感染や別の感染症を引き起こす可能性があるため、触れないように注意しましょう。 また、早期から関節を動かしすぎると炎症につながるケースもあり、過度なリハビリは避けましょう。 その他、関節破壊が進んでおり、関節の手術をおこなった場合、荷重開始時期を慎重に決める必要があります。 以下の記事では、治療を早めるべき理由について深掘りしているので、あわせてご覧ください。
2024.09.30 -
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関節の痛みや腫れ、発熱などの症状があり、日常生活に支障をきたしていませんか? これらの症状は、細菌が関節に侵入して発症する「化膿性関節炎」が原因かもしれません。 放置すると、関節の機能障害や敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性がありますが、早期治療によって改善に期待ができます。 この記事では、化膿性関節炎の原因や症状、治療法と予防法まで詳しく解説します。 化膿性関節炎は早期発見・早期治療が重要となるため、ぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みの新たな治療法として、関節の幹細胞治療を行っています。膝の痛みや腫れの症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 化膿性関節炎とは「細菌が侵入して起こる感染症」 化膿性関節炎は、細菌が関節に侵入して炎症を起こす病気です。 主な原因として、黄色ブドウ球菌をはじめとした細菌感染が挙げられます。また、免疫力が低い高齢者や持病がある方も、感染リスクが高い傾向があります。 早期に治療を始めないと、関節の機能障害や後遺症を招く場合もあるため、感染経路や予防策を知ることが大切です。 本章では、それぞれの要因について詳しく解説していきますので参考にしてください。 主な原因菌は黄色ブドウ球菌 化膿性関節炎の原因として多いのが「黄色ブドウ球菌」と呼ばれる細菌の感染です。 普段は皮膚や鼻の中に存在する細菌ですが、免疫力が低下すると体内に侵入して感染を引き起こします。 近年では抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌による感染も増加傾向にあり、治療が困難になるケースも出てきました。 化膿性関節炎に感染すると、関節の痛み・腫れ・発熱などの症状が現れるため、早急な治療が必要となります。(文献1) 皮膚の傷や注射・手術部位から発症 化膿性関節炎は、皮膚の傷や医療処置による傷口から細菌が侵入して発症するケースもあります。 とくに手術後や注射部位は感染リスクが高まりやすい状態です。 また、体の別の部分で起きた感染症から血液を通じて関節に細菌が運ばれることもあります。 感染を防ぐためには、傷口を清潔に保つなど適切な消毒が欠かせません。些細な傷でも丁寧なケアを心がけましょう。 高齢者や持病がある方は感染リスクが高い 高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある方は、免疫力が低下していることが多く、化膿性関節炎のリスクが高まります。 たとえば、関節リウマチなどで免疫抑制剤を使用している方や、人工関節を入れている方は注意が必要です。 高齢者や持病がある方は、日頃からの体調管理や手洗い・うがいの徹底、定期的な健康チェックを意識しましょう。 関節痛はもちろん、体調の変化を感じたら早めに医療機関を受診してください。 化膿性関節炎の主な3つの症状 化膿性関節炎の主な症状には以下の3つが挙げられます。 関節の激しい痛みと腫れ 38度以上の発熱と全身のだるさ 関節を動かすと痛みが強くなる 放置すると悪化して関節に後遺症が出る場合があるため、症状を早期に把握し適切な治療を受けることが重要です。 化膿性関節炎の代表的な症状についてそれぞれ詳しく解説します。 関節の激しい痛みと腫れ 化膿性関節炎の最も特徴的な症状は、関節の激しい痛みと腫れです。 通常、膝や足首などの大きな関節に現れやすく、腫れた部分を触ると熱を持っているケースが大半です。 また、片方の関節に集中して現れるのも特徴的で、痛みが夜間に悪化する場合もあります。 化膿性関節炎の早期発見のためにも、これらの症状に気づいたら医師に相談してください。 38度以上の発熱と全身のだるさ 化膿性関節炎は関節症状と同時に、38度以上の高熱がでるのも特徴です。 感染により体内で炎症が起きているため、発熱と共に全身のだるさも感じるようになります。食欲不振や吐き気を伴うこともあるでしょう。 高熱が続く場合は重症化のサインかもしれませんので、すぐに医療機関を受診しましょう。 関節を動かすと痛みが強くなる 関節を動かすと痛みが増すのも、化膿性関節炎の特徴的な症状です。 歩行や階段の上り下りなど、日常生活の動作で痛みが悪化します。 また、痛みによって関節の可動域が制限され、思うように動かせなくなることもあります。 我慢して動かし続けると症状が悪化する恐れがあるため、痛みが強い場合は安静にして医師の診察を受けましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では関節痛の新たな治療法として、再生医療を提供しています。 辛い症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 化膿性関節炎における3つの診断方法 化膿性関節炎の診断には、以下のようにいくつかの検査が必要です。 検査方法 目的 関節液の検査 細菌感染の有無を確認する 血液検査 CRPと白血球を調べる レントゲン、MRI 関節の状態を確認する また、関節液の検査や血液検査、画像検査など、複数の検査を組み合わせることで正確な診断が可能になります。 ここからは、それぞれの診断方法について詳しく紹介いたします。 関節液の検査で細菌を確認 関節液の検査は、化膿性関節炎を診断する上で重要な検査方法です。 細い針を使って腫れている関節から液体を採取し、顕微鏡で細菌の有無を調べます。 検査では細菌の種類も特定できるため、適切な抗生物質の選択にも役立つのがメリットです。 ただし、痛みを伴うこともあるため、局所麻酔を使用するケースもあります。 しかし、正確な診断のために必要不可欠な検査なので、医師の指示があった場合は受けるようにしましょう。(文献2) 血液検査でCRPと白血球を調べる 血液検査では、炎症の程度を示す「CRP」や、体内で細菌やウイルスと戦う「白血球」の値を確認します。 化膿性関節炎では、これらの値が通常よりも大幅に上昇するのが特徴です。 正常時の値や数値の解釈については以下の表でまとめています。 正常値 単位 数値の解釈 白血球 3.3~8.6 10³/μL 白血球は細菌やウイルスから感染を防ぐ役割があり、感染症やストレスで増加します。 赤沈(赤血球沈降速度) 男性:2~10 女性:3~15 mm/1h 血液内で赤血球が沈む早さを調べます。 炎症によりフィブリノゲンやグロブリンが増加すると赤血球沈降速度が早くなります。 CRP(C反応性蛋白) 0.14以下 mg/dL 炎症や感染、組織損傷により血液中に増えるタンパク質量のことです。 また、血液培養検査では血液中に細菌が侵入しているかどうかの確認もできます。 そのため、血液検査は化膿性関節炎の診断だけでなく、重症度を判断するためにも役立つといえるでしょう。 レントゲンとMRIで関節の状態を確認 レントゲンやMRIなどの画像検査では、関節の状態を詳しく調べることは可能です。 レントゲンは骨の異常や関節の破壊状態を確認するため、MRIは軟部組織の炎症や膿の貯留状態を詳細に把握するために実施します。 診断だけでなく、治療経過の確認にも重要な役割を果たしており、定期的に撮影して状態の変化を観察していきます。 画像検査の詳細や必要性については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしていただけると幸いです。 化膿性関節炎の3つの治療法 化膿性関節炎の代表的な治療法は以下の3つです。 抗生物質の投与 手術による関節内の膿の洗浄 リハビリテーション 症状や重症度に応じて、これらを組み合わせた治療を行い良好な回復が期待できます。 本章では、それぞれの治療法を詳しく解説しますので事前に理解しておきましょう。 抗生物質の投与 化膿性関節炎の治療では、抗生物質により原因菌を殺菌し、炎症を抑えます。 通常は2〜3週間ほど点滴で投与されますが、症状が改善すれば内服薬に切り替えることもあります。 ただし、効果が見られない場合や症状が重い場合は追加の治療が必要です。 手術で関節内の膿を洗浄 関節内に膿が溜まっている場合は、手術による洗浄が必要です。 化膿性関節炎の手術では、局所麻酔や全身麻酔で行われ、関節内の膿を除去して炎症を抑える効果に期待できます。 手術後には抗生物質の投与を継続し、安静にして関節の回復を促します。 リハビリテーション 治療の最終段階として、関節の可動域を広げ、筋力を回復させるためにリハビリテーションを行います。 理学療法士の指導のもと、初期は軽い運動からはじめ、徐々に負荷を増やすメニューに切り替えていきます。 焦らず段階的にリハビリを続けていけば、より確実な回復が期待できるでしょう。 また、化膿性関節炎のリハビリテーションについては、以下の記事でも紹介しています。詳しく知りたい方は併せてご覧ください。 化膿性関節炎が治るまでの期間や早期発見の重要性 症状の重さや治療の開始時期によって差はありますが、化膿性関節炎が治るまでの期間は基本的に6週間程度です。 早期発見と適切な治療で回復につながりますが、放置すると骨の破壊や敗血症などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。 本章では、化膿性関節炎の治療期間や早期発見の重要性について解説します。 基本的な治療期間は6週間程度 化膿性関節炎の標準的な治療期間は約6週間です。 抗生物質による治療から始まり、症状の改善に合わせてリハビリテーションを進めていきます。 ただし、症状の程度や個人の体力によって治療期間は変動するのが一般的です。 完全な回復には個人差がありますが、医師の指示を守り焦らずに治療を続けていきましょう。(文献3) 骨が破壊され後遺症が出るケースがある 化膿性関節炎を放置すると、細菌の感染により関節の軟骨や骨が徐々に破壊されていきます。 1度破壊された骨や軟骨は完全な回復が難しく、関節の変形や動きの制限など後遺症として残る可能性があります。 痛みや腫れを感じたら、我慢せずに速やかに医療機関を受診しましょう。 敗血症を引き起こすリスクもあり 化膿性関節炎の危険な合併症の1つが敗血症です。 関節内の細菌が血液中に入り込み、全身に広がることで生命の危険も伴う深刻な状態に陥る可能性があります。 敗血症は、高齢者や免疫力が低下している方はとくにリスクが高く、発熱や関節の痛みが続く場合は要注意です。 早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、疑わしい症状があれば迷わず医師に相談してください。 また、当院「リペアセルクリニック」では関節痛の新たな治療法として、再生医療を提供しています。 関節の痛みや炎症といった症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 化膿性関節炎を防ぐ4つの予防対策 化膿性関節炎を予防するためには、日頃からの適切なケアが重要です。 主に以下の4つを予防対策として意識してみましょう。 傷口は清潔に保つ 免疫力を高める生活を心がける 関節に負担をかけ過ぎない 日常的にストレッチを実施する 効果的な予防対策についてそれぞれ解説します。 傷口は清潔に保つ 傷口から細菌が侵入すると化膿性関節炎を発症するリスクが高まります。 そのため、傷を負った場合はすぐに流水で洗い流し、消毒液で適切な処置を行ってください。 とくに手術後や注射の跡は感染リスクが高いため、医師の指示に従って丁寧なケアが必要です。 また、包帯を使用する場合は定期的に取り替えて清潔に保ちましょう。 免疫力を高める生活を心がける 免疫力が低下すると、細菌感染のリスクが高まります。 そのため、バランスの良い食事と十分な睡眠を心がけ、適度な運動で体力の維持に努めてください。 ストレス解消も大切ですので、趣味や休養を適度に取り入れて生活リズムを整えていきましょう。 関節に負担をかけ過ぎない 過度な運動や無理な姿勢は、関節に余計な負担をかけてしまいます。 そのため、高齢者や関節に持病がある方は、無理のない範囲で活動する意識が大切です。 長時間同じ姿勢を続けることも避け、適度に休憩を取りながら活動してください。 また、過度な体重は関節への負担となりますので、適正体重の維持を心がけましょう。 日常的にストレッチを実施する 適度なストレッチは関節の柔軟性を保ち、血行を促進する効果があります。 朝晩の簡単なストレッチで、関節周辺の筋肉をほぐすことをお勧めします。 ただし、痛みを感じるような無理なストレッチは逆効果ですので、自分の体力に合わせて、ゆっくりと丁寧に行ってください。 ストレッチの継続によって、徐々に関節の可動域が広がり体調も整っていくでしょう。 まとめ|化膿性関節炎は早期発見が重要なので早めの受診を検討しよう 化膿性関節炎は、細菌感染によって引き起こされる病気で、関節の痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。 治療が遅れると、関節の機能に影響を及ぼす可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。 日頃から傷口を清潔に保ち、免疫力を高める生活を心がけ、関節に負担をかけすぎないように注意しましょう。 本記事を参考に、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。 また、リペアセルクリニックでは、膝の痛みに対する新たな選択肢として関節の幹細胞治療を提供しています。 膝関節の違和感にお悩みの方は「メール相談」や「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 化膿性関節炎に関するQ&A 化膿性関節炎は何科を受診すれば良いですか? 化膿性関節炎の治療は、整形外科の受診が適切です。 ただし、夜間や休日に急な症状が出た場合は、まず救急外来を受診しましょう。 また、原因となる感染症によっては内科医とも連携して治療を進めていきます。 かかりつけ医がいる場合は、担当医に相談して適切な医療機関を紹介してもらうのも良い方法です。 化膿性関節炎の入院期間はどのくらいですか? 化膿性関節炎の入院期間は通常2〜4週間程度ですが、症状の程度や治療経過によって変動します。 最初の1週間程度は抗生物質の点滴治療が中心で、症状が落ち着いてきたら徐々にリハビリを開始していきます。 退院後も通院での治療やリハビリが必要となりますが、仕事や日常生活への復帰時期は担当医と相談しながら決めていきましょう。 また、化膿性関節炎でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 参考文献一覧 文献1 外務省 海外安全ホームページ_薬剤耐性(AMR)について 文献2 日本医事新報社_化膿性関節炎[私の治療] 文献3 J-Stage_化膿性関節炎の治療経験(第1報― 膝関節)
2024.09.27 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、スポーツに取り組む方を中心に見られる疾患です。 とくにジャンプ動作が伴う競技では頻繁に見受けられます。 しかしジャンパー膝の症状や重症度、診断方法は、あまり知られていません。また初期症状などがほかの疾患と類似しており、判断するのが難しい部分もあります。 本記事ではジャンパー膝の症状や診断方法、セルフチェックリストや有効なストレッチなどを解説します。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは? 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は、バレーボールやバスケットボールなどのスポーツで生じやすい膝蓋腱に起こる炎症で、慢性的な膝の痛みが特徴的です。 以下に症状や診断方法、リスク要因を詳しく解説します。 膝蓋腱炎の症状・重症度・診断方法 ジャンパー膝は、膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 典型的な症状はジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに生じる膝蓋腱の痛みで、痛みの程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 ジャンパー膝の重症度の分類 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始時と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 ジャンパー膝の診断は問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。 膝蓋腱を指で圧迫したときに痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断とされます。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンプスポーツにおけるリスク要因 ジャンパー膝はバレーボールやバスケットボール、サッカーなど、ジャンプやダッシュの動作が多いスポーツで起こりやすいです。 膝蓋腱は大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる腱で、膝蓋骨と脛骨(すねの骨)に付き、膝関節を動かしたり地面からの衝撃を吸収したりしています。 大腿四頭筋の伸び縮みにともなって膝蓋腱が脛骨や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしが可能となっているわけです。 スポーツをしているときのジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し起こします。 この状態が慢性的に続くと膝蓋腱にストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こってジャンパー膝につながります。 ジャンパー膝が軽症や中等症のうちは医師に相談しながらスポーツの継続が可能です。 しかし、ストレッチやウォーミングアップ、活動後のアイシングなどをおこない、常に膝のケアに努める必要があります。 また、重症例で腱に断裂がある場合は手術が必要になる可能性もあるため、疑わしい症状がでているときに放っておくのは危険です。 関連記事:ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の症状のチェックリストと適切な対応 ジャンパー膝の症状が疑われるときは、自分で膝蓋腱に刺激を加えながらチェックできます。 家でもできる膝蓋腱の状態を確認する方法とその評価の意味を解説します。 家でできる症状チェックテスト スポーツや活動時に繰り返し膝が痛むときは、一度セルフチェックをおこない、ジャンパー膝の症状がでているか確かめてみましょう。 以下の状態が当てはまる場合は整形外科に受診してください。 膝蓋腱をゆびで押してみる 膝を曲げた状態と伸ばした状態で膝蓋腱をゆびで軽く押してみましょう。 どちらの状態でも痛む場合はジャンパー膝を疑います。(※曲げた状態のほうが痛みは走りやすいです) うつぶせで膝を曲げる うつぶせの状態で膝を曲げ、踵をお尻に近づけてみましょう。 股関節まわりが地面から浮いた場合は、ジャンパー膝が生じている可能性があります。 ジャンプする 何度かジャンプしてみましょう。 跳躍と着地の瞬間いずれか、または両方で違和感や痛みが感じられた場合、ジャンパー膝の発症が疑われます。 また痛みの懸念からジャンプを避けた、思い切り飛ばずに加減した際も、同様にジャンパー膝の発症が疑われます。 足に力が入りにくい いつものように足に力が入るか確かめてみましょう。 力が入りにくいと感じた場合には、ジャンパー膝の発症が疑われます。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)が疑われる際の対応 ジャンパー膝が疑われる際は、ただちに診断を受けることをおすすめします。 ジャンパー膝は早期に対応すれば重篤な症状を呈する炎症ではありません。 しかし初期症状があるまま放置していると、痛みや腫れが悪化し、治療に時間がかかるようになります。 最悪の場合、腱の断裂が起こり、手術が必要になるかもしれません。 ジャンパー膝が疑われる場合は、可能な限りすみやかに医療機関で受診しましょう。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の治し方 ジャンパー膝の治療は以下の方法でおこなわれます。 物理療法|冷気や電気、低周波などを当てて、直接的に炎症の修復などを図る 体外衝撃波|特殊な衝撃波を当てて、痛みや痒みの緩和、患部の修復を図る リハビリ|大腿四頭筋を中心としたリハビリで、再発を予防する PRP(再生医療)|自己脂肪由来幹細胞などを用いて、患部の修復を図る PRP(再生医療)では、従来よりも容易にジャンパー膝を完治に導く期待があります。 興味がある方は以下を参考にしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の痛みを緩和するストレッチ トレーニング前後のストレッチは、膝まわりの負担や痛みを減らすために重要です。 膝蓋腱の痛みを和らげる効果のあるストレッチや習慣づける方法を紹介します。 膝蓋腱を和らげる効果的なストレッチ 膝まわりやお尻の筋肉をストレッチで柔らかくすれば、膝蓋腱の負担軽減につながります。 以下の方法で大腿四頭筋やハムストリングス(太もも後面の筋肉)、殿筋(お尻の筋肉)のストレッチをおこないましょう。 必ず膝まわりに痛みがでない程度におこなってください。 大腿四頭筋のストレッチ ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ハムストリングスのストレッチ ①仰向けの状態でストレッチをする側の脚を上げる ②膝を伸ばしながら脚を胸に近づけ、太もも後面の筋肉を伸ばす 殿筋のストレッチ ①床に座り、ストレッチをする側の脚は膝を曲げて外側に開き、ストレッチをしない側の脚は後方に伸ばす ②上半身を前に倒しながらお尻の筋肉を伸ばす トレーニング前後のストレッチルーティン トレーニング前後では一つのストレッチを20〜30秒間かけておこない、10秒くらい休んだ後にもう一度施行しましょう。 とくに大腿四頭筋のストレッチは膝蓋腱にかかる負担が減るため、欠かさずおこなうことが大切です。 トレーニング前後のストレッチを習慣づけることで、ジャンパー膝の発症や再発の予防につながります。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)を発症している際のテーピングテクニック 正しい方法でテーピングを施行すればスポーツや活動時における膝のサポートが可能です。 競技中の痛みを抑えるためにおこなう場合は必ず整形外科で専門家に相談しましょう。 以下に方法と注意点を詳しくお話しします。 膝のサポートに役立つテーピング方法 太さ50mmほどの伸縮性のあるテーピング(すねの上側から太ももの中間までの長さ)を3枚準備して以下のようにおこないます。 ①1枚目:膝を軽く曲げた姿勢ですねの外側から膝の内側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ②2枚目:膝の下から膝の外側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ③3枚目:1枚目のテープより少し上に重ねて、すねの外側から膝の内側、太ももの内側にかけて引っ張りながら貼る テーピングの正しいやり方と注意点 膝のサポートを目的としたテーピングは、運動に支障のない範囲で関節や筋肉の動きを制限させることが大切です。 テーピングをおこなうときは以下の内容に注意します。 外傷がある部位の接触を避ける 適切な巻き方でおこなう 正しい姿勢で巻く 巻くときにシワをつくらない 血管や神経、筋肉、腱の過度な圧迫は避ける パフォーマンスが低下するほど強く巻かない 水ぶくれや肌荒れ、かぶれ、湿疹などがないか確認する 適切な方法や姿勢でおこなわないと十分な効果が得られなかったり、逆効果になったりする可能性があります。 痛みが軽快しない、パフォーマンスが低下するなどの場合は正しいやり方でないこともあるので、一度見直してみましょう。 また、テーピングは肌に直接触れるため、汗で蒸れたりすると皮膚トラブルを起こしやすいです。 皮膚に外傷があったり、肌荒れやかぶれなどができた場合はできる限り接触を避けましょう。 予防策としてのトレーニング調整 スポーツを続けていく選手にとって、症状の再発や悪化の進行に対する予防策はかかせません。 ジャンパー膝の予防に向けたトレーニングや日常生活におこなう取り組みを紹介していきます。 適切なトレーニング方法とその頻度 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋の筋力をきたえることが大切です。 また、過去の論文にはジャンパー膝に対するトレーニングに傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 トレーニングは症状が発症したばかりの時期はひかえ、専門家の指示のもとで痛みがない程度におこないましょう。 以下に方法を説明します。 大腿四頭筋の筋力トレーニング ①椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ ②ゴムバンドによる抵抗を感じながら膝を伸ばす ③5秒ほど時間をかけて1回おこない、連続10回、1日2セットおこなう スクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ(※傾斜台がなければスロープの上や、踵に折りたたんだタオルを置いた状態でおこなう) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続でおこない、1日3セットほどおこなう。きつく感じるようであれば必要に応じて手すりなどを持ちながらおこなう。 再発防止のためのエクササイズと日常生活の調整 日常生活で膝のケアをおこないながら症状の再発や悪化の進行を防ぎましょう。 バンドを装着する ジャンパー膝の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツや活動時の膝蓋腱の過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 患部の安静や練習を減らす 痛みが強いときはできるだけ患部の安静を保ち、ジャンプやランニングの練習を減らしましょう。 ジャンパー膝はジャンプ競技による膝のオーバーユース(使いすぎ)で生じることが多いので、活動量を減らすことで症状が軽快しやすいです。 重症化すると腱の断裂につながる可能性もあるため、痛みが強いときは無理をしないようにします。 練習後ににアイシングをおこなう 練習直後にアイシングを15〜30分ほどおこないましょう。 激しい運動の後は膝蓋腱により炎症が起きやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。 ジャンパー膝は皮膚から深い位置で起きている炎症なので、氷を入れた袋を弾性包帯で患部に巻きつけて固定すると効果的です。 ジャンプと着地の仕方を修正する 内股の状態で踏み切ったジャンプやバランスの悪い着地は、膝蓋腱のストレスを高める原因です。 ジャンプのフォームを客観的に確認したり、なわとびで正しいジャンプの方法を修得すれば、改善につながります。 硬い床を避ける底の厚いシューズも膝蓋腱の負担を減らせます。 炎症を抑える飲み薬やぬり薬などを使用する 痛みが強い場合は医師から処方された飲み薬やぬり薬、湿布などを使用しましょう。 医師の判断によってはステロイドの局所注射をおこなうこともあります。 炎症を抑える効果のある医薬品の使用で、スポーツや活動時の膝の痛みが抑えられます。 まとめ この記事ではジャンパー膝の概要やセルフチェックの方法、スポーツを継続するためのケアをお話ししました。 ジャンパー膝の痛みに悩まされてる方は以下の内容を守り、より長くスポーツを楽しめるようにしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング 膝蓋腱炎の総合的な管理法 ジャンパー膝の症状に付き合いながらスポーツを続けていくためには、ストレッチやアイシングなどで、トレーニング前後に膝をケアするのが大切です。 また、発症や再発、重症化をを防止するためにも、専門家の指示のもと傾斜台でのスクワットもおこないましょう。 痛みが強い場合は安静にしたり、ジャンプのフォームを修正したりするのも重要です。 専門家との連携と更なる情報ソース ジャンプ競技への復帰や継続は必ず専門家と相談しながら決めていきましょう。 テーピングやトレーニングなどは症状の軽減や予防に効果がありますが、間違った方法でおこなわないためにも、専門家の指示を受けることが大切です。
2024.07.04 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
「膝に血が溜まる理由は?」 「転んで膝に血が溜まるときの治療方法は?」 膝関節血腫とは、さまざまな原因によって関節内に血が溜まる症状のことです。 なかには出血を繰り返すケースもあり、関節の破壊につながる可能性もあります。 どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うと改善や予防が可能です。 この記事では、膝に血が溜まる理由や治療方法を始め、自宅でできる運動の対策をお話しします。 症状があるときは必ず医療機関を受診しましょう。医師に相談しながら、予防法として日常生活での運動も取り入れてみてください。 膝に血が溜まる理由とは【膝関節血腫について】 膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血が溜まる症状です。 膝関節血腫が起こる理由は、以下の2つに分けられます。 外傷性のもの:主にスポーツによるけがで起こる 反復性のもの:特定の要因で繰り返し起こる 外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や骨折により組織が出血すると発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こる場合が多いです。 一方、反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)などの使用により、関節内が出血しやすい状態となり再発を繰り返す症状です。 原因は人工関節の手術が一番多く、手術で0.17〜1.6%の確率で起こるのがわかっています。 外傷性の症状は、けがの回復とともに改善していきます。 しかし反復性の症状は、放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させる恐れがあるため、場合によっては手術の適応となります。(文献1)(文献4)(文献5) 【各用語の解説】 ※変形性膝関節症:膝関節内にある軟骨が加齢ですり減り、膝関節が変形する病気。 膝に痛みがみられるため、膝を動かしたり、歩いたりするのが困難になる ※血友病:血を止める仕組みが生まれつき上手く働かず、出血しやすくなる病気(文献3) ※滑膜:関節包をおおう膜状の組織。 滑膜から分泌される関節液が、関節の動きをなめらかにする油のような役割をもつ 関節内の出血を繰り返した際に起こる「友病性関節症」の詳細については、以下の記事が参考になります。 膝に血が溜まるときの症状と診断方法 膝関節血腫の症状は、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。 診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像で血腫の存在を確認します。 外傷性の症状は、受傷後すぐに出る場合がほとんどです。ただ、人工関節の手術による症状は、術後数カ月〜数年後に初めて出る場合が多い傾向にあります。 膝に血が溜まるときの治療方法【転んだときにも】 膝に血が溜まるときの治療方法として、自宅での初期対応のケアを始め、医療機関で適切な治療を行うと改善を図れます。 転んだときは必ず医療機関を訪れるようにしながら、今後の治療方法を知るためにも参考にしてみてください。 ・ 自宅でできる初期対応 医療機関での治療オプション 自宅でできる初期対応 症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。 初期対応ができると、膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復を早める効果が期待できます。 ただし、安静の時間が続くと患部の筋力低下が進みます。足首や足の指を積極的に動かして予防に努めるのも大切です。 医療機関での治療オプション 医療機関では、関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。 しかし、治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。 選択的動脈塞栓術とは、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。 足に局所麻酔を行ったあと、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管を見つけ、血を止める物質を挿入します。(文献2) 選択的動脈塞栓術は、出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善にも期待できます。(文献6)(文献7) 膝に血が溜まるのを予防する運動方法 膝関節血腫を予防するには、日常生活で膝を守る運動を行いましょう。以下では、自宅でできるストレッチやトレーニングの運動方法を解説します。 無理をしないように注意しながら、必ずかかりつけの医師に相談して運動を行ってみてください。 ※現在、膝関節血腫の症状がある方は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、自己判断で運動をせず医師の指示にしたがいましょう 膝蓋骨のモビライゼーション ハムストリングスのストレッチ 大腿四頭筋のストレッチ ハーフスクワット 膝関節伸筋の筋力トレーニング 膝関節屈筋の筋力トレーニング 膝蓋骨のモビライゼーション 膝関節血腫を予防するには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つのが大切です。 【膝蓋骨のモビライゼーションのやり方】 1.膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ 2.膝蓋骨を上下や左右に動かす ※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスとは、太ももの後面についている筋肉です。大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)を含めてストレッチを行いましょう。 【ハムストリングスのストレッチのやり方】 1.両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける 2.両手でタオルをひっぱりながら足首をお腹側にそらし、太もも後面の筋肉を伸ばす 3.太もも後面の筋肉が伸び、痛みのない状態で20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう 大腿四頭筋のストレッチ 【大腿四頭筋のストレッチのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる 2.太もも前面の筋肉が伸びた位置で、20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう また、日常生活では以下の点に注意しましょう。 立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けるのを避ける 膝まわりが熱くなったり、痛みが出たりするときは、激しい動きを避けて冷却する 日常生活で膝への負担を減らせると、けがや再発の予防にもつながります。 ハーフスクワット ハーフスクワットは、太もも前後面やお尻の筋肉を鍛えたいときにおすすめです。膝を守るためにも、膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。 【ハーフスクワットのやり方】 1.足を肩幅に広げて立つ(※膝関節はつま先と同じ方向に向ける) 2.股関節と膝関節を曲げながら、お尻を膝より少し上の高さまで下ろす。 お尻を下ろしたときに、膝の位置がつま先より前方に出ないように注意する 3.太もも前後面やお尻の筋肉のはたらきを感じながら10回、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節伸筋の筋力トレーニング 膝を伸ばすトレーニングも効果的です。 【膝関節伸筋の筋力トレーニングのやり方】 1.椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように、 足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ 2.ゴムバンドによる抵抗を太もも前面で感じながら、ゆっくり膝を伸ばす 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節屈筋の筋力トレーニング 【膝関節屈筋の筋力トレーニングのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける 2.おもりによる抵抗を太もも後面で感じながら、ゆっくりと膝を曲げる 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ただし、上記で紹介してきた運動は、膝に痛みや熱感があるときに行うと、炎症を悪化させる可能性があります。 症状が落ち着いている時期に、かかりつけの医師や専門家に相談しながら、無理のない範囲で行いましょう。 膝に血が溜まる症状に悩まれておられる方は、再生医療による治療方法もございます。 膝まわりに関して気になる症状があるときは、当院のメールや電話にてお気軽にご相談ください。 参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152(文献8) まとめ|膝に血が溜まるのを予防するには運動が大切 膝関節血腫には、スポーツによるけがで起こる外傷性のものを始め、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものがあげられます。 どちらも、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などの症状が起こります。 膝に血が溜まる症状が出たときは状況に応じて、関節から血腫を吸引する治療などを行う流れです。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性もあります。 膝関節血腫を予防するには、かかりつけの医師に相談しながら、日常生活で膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを行いましょう。 膝まわりのお悩みを抱えている方は、当院にぜひ一度ご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 メール相談 来院予約 電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 膝に血が溜まる理由に関わるQ&A 膝に血が溜まる理由に関わる内容について、よくある質問と答えをまとめています。 Q.膝関節血腫はいつ治りますか? A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。 反復性の症状は、再発を繰り返す点から長期にわたりやすく、数カ月〜数年かかる可能性もあります。 症状が長引くほど、関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。 Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか? A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。 けがをした直後は、松葉杖で歩いていただく場合もあります。 反復性の場合で症状があるときは、できるだけ安静に過ごして、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。 参考文献 文献1 整形外科シリーズ14 膝靭帯損傷 文献2 人工膝関節全置換術後の反復性関節内血腫に対して経カテーテル的動脈塞栓術を行った3例 文献3 ヘモフィリア・ヴィレッジ 血友病についてのQ&A 文献4 日本整形外科学会 膝関節捻挫 文献5 スポーツ損傷シリーズ 6.膝前十字靭帯損傷 文献6 人工膝関節置換術後に反復する関節内血腫に対し,関節切開下滑膜切除を行った一例 文献7 Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis 文献8 明解 スポーツ理学療法 Takuji Yamagami, Rika Yoshimatsu, Hiroshi Miura, et al.Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis.Diagn Interv Radiol. 2013. 9(5). p423-426
2024.06.20 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療は早期発見が鍵!初期症状を見逃さないために 膝に痛みを及ぼす疾患が変形性膝関節症です。 変形性膝関節症になると、人間の基本的な動作である「歩行」に影響をもたらすことで、活動量が減るなど日常生活に支障を及ぼします。その原因は、靭帯や半月板の怪我からくる場合を除いて、ほとんどは加齢に伴った関節軟骨の摩耗がきっかけです。 特に40代以降の女性に多く発生するため、中高年で感じる膝の痛みのほとんどは、変形性膝関節症からくる痛みだともいわれています。そんな変形性膝関節症の治療方針は、膝に負担のかかる生活スタイルを見直し、膝周囲の筋肉を鍛える運動療法に取り組むことです。 そうした保存療法の継続が、関節を安定させ、これまで通りの痛みのない日常につながるのです。そのためには、いかに早期に発見できるかがポイントです。そこで今回は、変形性膝関節症の初期症状から、もし当てはまった場合には、実際にどういった行動に移せば良いのかまで紹介していきます。 https://youtu.be/9VSwPk2W00c?si=IYMgxnvpsV2MHmJB 変形性膝関節症の進行度と症状 変形性膝関節症の自覚症状は、前期>初期>中期>末期の4つの段階を踏んで進行していきます。前期では、膝にほとんど痛みはありませんが、初期になると軟骨がすり減り始め、膝に痛みや違和感や感じるようになります。 進行が進んだ中期になると膝に変形がみられ、さらに進行した末期になると痛みから立つ・歩くなどの日常生活を過ごすのが困難になり、手すりや杖などに頼らないと姿勢を保てない状態になります。 症状 変形性膝関節症・進行度 前期:ほとんど痛みを感じない 初期:軟骨にすり減り、痛み、違和感を感じ始める 中期:膝に変形がみられる 末期:日常生活が困難になる、手すり杖が必要になる 変形性膝関節症の初期に現れやすい症状 変形性膝関節症は早期発見が大切です。そのためには進行が始まり、「痛み」や「違和感」を感じだす前段階で発見することが重要になります。 この段階で異変に気づき病院を受診され、変形性股関節症を早期に発見できれば、治療の選択肢が増えるだけでなく、積極的に運動療法に取り組め、重症化を防げる可能性が高くなります、。 初期症状を見逃さないポイント 朝起きた時に膝にこわばりを感じる 膝を伸ばそうとすると引っ掛かりを感じる 椅子から立ち上がろうとすると痛みが走る 歩き出しに痛みがある 正座をすると「ズキっ!」と痛みを感じる 早期発見が治療の選択肢を増やす 変形性膝関節症に早期に気づき、運動療法に取り組むことで悪化を防ぐことができます。運動療法で痛みが引かない場合、薬物療法や物理療法、装具療法などで痛みを抑えながら、運動療法に取り組めるよう工夫します。 あらゆる手を尽くしても効果がみられない場合には、観血療法という選択肢がありますが、手術の種類によっては進行しすぎていると実施できないケースがあります。 たとえば、体への侵襲が大きな人工関節置換術や高位脛骨骨切り術を、「今はしたくない」場合には、負担が少なく、術後の回復も早い関節鏡視下手術という選択肢があります。 しかし、変形が進行した状態では、関節鏡視下手術をしたところで、改善が見込めない場合があるので注意が必要です。 変形性膝関節症の初期は運動療法で悪化を防ぐ 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法ですが、初期から実施するのと、末期から実施するのでは大きな違いがあります。初期の運動療法には悪化を防ぐ目的があり、継続して行うとこれまで通りの生活を送れる可能性があります。 一方、発見が遅れた末期では、痛みが強く日常生活をまともに送るのは難しい状態です。そのため、満足に運動療法に取り組めず、これまで通りの生活を送れる可能性は低くなることから、早期発見が変形性膝関節症の治療において大切です。 変形性膝関節症と診断されるまで 中高年以降で、膝に「痛み」や「違和感」を感じたら整形外科の受診をおすすめします。 変形性膝関節症の診断は、問診・視診・触診・画像診断などの検査を複合して判断されます。問診では家族歴・半月板や靭帯損傷などの怪我の既往歴を聞き、視診では歩行状態から進行の程度を確認、触診では膝の変形具合や水がたまっていないかなどを確認します。 変形性膝関節症の進行の程度は、X線検査の後、Kellgren-Lawrence分類によって分けられます。関節の隙間が確保されているグレード0から、関節の隙間がなくなってしまった状態のグレード4まで分けられます。 しかし、必ずしも画像診断の進行度合いと自覚症状が一致するとは限りません。画像診断では進行していても、自覚症状があまり強くない場合や、その逆の場合もあります。 そのため、軽度の痛みや、ちょっとした違和感でも変形性膝関節症が進んでいる可能性があることから、注意が必要です。 変形性膝関節症と似た病気 膝に痛みがあっても、全ての膝の痛みが変形性膝関節症ではありません。膝関節以外の痛みや発熱の有無など、問診や触診の情報を元に、「関節リウマチ」「痛風」「化膿性関節炎」などを疑います。 検査では血液検査や関節液の成分を検査し、検査結果を元に変形性膝関節症以外の病気である要素を取り除いた上で、はじめて変形性膝関節症と診断されます。 まとめ・変形性膝関節症の治療は早期発見が鍵!初期症状を見逃さないために 変形性膝関節症は中高年以降の女性に多く発生する病気で、膝の痛みの多くは変形性膝関節症からだといわれています。 変形性膝関節症の症状は、痛みと変形が特徴です。初期には強い痛みや変形を感じることは少ないものの、変形性膝関節症は進行性の病気です。放っておくと取り返しがつかないところまで進行するケースがあります。 そうならないためにも、早期に変形性膝関節症に気付くことが治療の選択肢を増やし、悪化を防ぎます。 変形性膝関節症の早期発見ができれば、保存療法(運動療法、薬物療法など)や手術療法というように、あらゆる選択肢の中から、膝の状態や自分自身の意向に沿って治療に取り組めるのです。 そのため、「軽度な痛み」や「違和感」程度でも放ったらかしにしないで、整形外科を受診しましょう。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症の治療する 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せず、入院不要で症状を改善する ▼以下も参考にしてください 変形性膝関節症の進行度合!症状のステージを自覚症状から分類する
2024.02.14 -
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骨壊死、骨頭壊死|重症度の基準とステージ分類、治療法を解説します 骨壊死とは、骨に栄養を届けている血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。ただ、怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事では、「骨頭壊死」と「骨壊死」のそれぞれについて解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ます。代表的な部位としては、股関節の大腿骨頭に起きる「大腿骨頭壊死」、肩関節の上腕骨に起こる「上腕骨頭壊死」、「膝関節骨壊死」などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死の原因と重症度分類 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の重症度分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容(基準)について解説します。 特発性骨頭壊死、重症度分類(基準) Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の「内側」にあるもの Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の「外側」にあるもの 大腿骨頭壊死から進行・変形性股関節症へのステージの分類 初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって「変形性関節症」になってしまいます。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 大腿骨頭壊死の進行度についての分類 ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。 軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 次に上腕骨頭壊死について解説してまいります。 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、「外傷性」と「非外傷性」に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死の進行・ステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 上腕骨頭壊死のステージ分類 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 膝関節骨壊死について ここからは、膝関節の骨壊死ついて記してまいります。 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死の進行|ステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 膝関節骨壊死のステージ分類 ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨壊死に対する治療法・保存療法から人工関節置換術へ いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合があります。 しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には「人工関節置換術」が選択されます。 人工関節を避ける再生医療 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。 それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 https://youtu.be/ic_6QaEU5NU?si=p8rKJMhU5cjRfNE6 ▶当院は再生医療の専門院です。治療について詳しく知りたい方は動画をご覧ください。 骨壊死についてQ&A 普段、 骨壊死について患者様からよくお聞きする質問から以下を抜粋しました。 Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨壊死、骨頭壊死|重症度の基準とステージ分類、治療法について 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考にして下さい 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
2023.10.02