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膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなった!その原因と対策 はじめに 膝のご病気をかかえている方で、定期的に膝にヒアルロン酸の注射を行っている方は非常に多いです。その中で、『最初は注射すると膝の痛みがひいたのに、最近は効かなくなってきた』『注射しても効かないどころか、余計にひどくなった気がする』という経験をしている方も少なくないと思います。 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法について紹介していきます。 膝のヒアルロン酸注射について 『ヒアルロン酸』とは、水分をたくさん含む物質で、我々の身体の色々な場所で様々は役割を担当している物質です。目や皮膚に対しては潤いを保つように働きかけています。関節の中では動きをよくする潤滑油のような役割を担っています。 ヒアルロン酸を治療のために使用する場面はたくさんあります。眼の乾燥にもヒアルロン酸の目薬を行いますし、最近では美容目的に皮膚にヒアルロン酸の注射を行うこともあります。 たくさんの用途に用いられるヒアルロン酸ですが、膝にヒアルロン酸の注射を行う必要がある病気もたくさんあります。その中で、変形性膝関節症などの病気が代表的で、膝にヒアルロン酸注射を行うことの一番の目的は、膝の関節の動きを滑らかにすることです。 もともと、膝の関節の中はヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液という物質で満たされています。この滑液という液体が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねることや、外傷や他の疾患などの影響で、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ることがあります。ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすことが難しくなってしまいます。すると、膝にある骨や軟骨がこすれて、次第に膝に痛みが出現するようになります。 そのような際に、ヒアルロン酸注射を膝に行うことで、膝の動きが滑らかになり、痛みも軽減するのです。 ヒアルロン酸注射が効かなくなる原因 変形性関節症の初期ではヒアルロン酸注射を行うと動きも滑らかになり痛みも速やかに改善することが多いです。 しかし、病気が進行し、膝の変形が重度になってくると、ヒアルロン酸注射をしても効果が得られなくなります。もともと年齢を重ねると進行してくる病気なので、誰でも変形が強くなることは起こりますが、体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりすることも、変形が進行する原因になると言われています。 また、膝自体に炎症があるときはヒアルロン酸の注射は効かないことが多いです。さらに膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射をすること自体が余計に症状を悪化させてしまうこともあります。 膝の変形性関節症の重症度や膝の組織を評価するために、病院では、レントゲン検査やM R I検査などの画像検査が行われます。 M R I検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板という組織が傷ついていないかも診ることもできるため治療方法の選択をするためにも非常に重要な検査です。 膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなったら ヒアルロン酸注射は徐々に効かなくなるときがあります。そのためまず、ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大事です。まず、膝変形性関節症には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療がたくさんあります。体重が重い方については、体重を減量することも治療のために非常に重要です。 その他には運動療法を実施することも非常に大事であると言われており、規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくことが大事です。膝をサポーターで保護することや、テーピングを実施することも推奨されていますので実施していくのがよいでしょう。 また、超音波を用いて行う超音波療法や、温める温泉療法なども推奨されています。 膝に炎症があるときは、ヒアルロン酸の注射ではなく、ステロイドという薬を膝に注射する必要があることもあります。また炎症を抑える薬を飲む必要があることもあります。 重症になってしまい、注射が効かない状態になると手術が必要になります。手術では人工関節と言い関節の代用となる部品を、実際の関節の変わりに埋め込むという治療が行われます。そのため、皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 全身麻酔とは寝た状態で手術を行う麻酔の方法なので、患者さんの目が覚めた時には手術は終わっています。手術は、傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院で行われます。 入院自体は数日〜数週間の期間のことが多いですが、もともとの歩行状態に戻るためには膝のリハビリが必要で、数ヶ月程度のリハビリが必要になります。最近では手術の代わりにPRP療法という新しい治療が行われることもあります。 これは、患者さんの血液から抽出した『多血小板血漿(P R P)』を傷んでいるところに注射する「再生医療」です。 PRP療法は副作用もほとんどなく、手術を行う必要もないので、非常に安全に行え、傷も残りにくく、入院の必要もないので患者さんの負担は非常に少ない治療法です。 まとめ・膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなった!その原因と対策 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために非常に有用な治療法です。 しかし、患者さんによって効果が得られない状態かもしれないので、効果が乏しいのに漫然と注射を行うのは良くないでしょう。ヒアルロン酸の注射以外の治療が必要な時もあります。 ヒアルロン酸の注射の効果が減ってきなと、感じている人は、漫然と治療を継続するのではなく、医療機関をはじめ、かかりつけ医など、専門家の評価を受けて、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 No.073 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症や半月板損傷、その他膝の不具合や痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
2022.06.30 -
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膝に溜った水を抜いたあとに、注意しておきたいこととは 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。 膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものがあります。 この症状のある方は医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が往々にしてあります。この記事では、主に膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説したいと思います。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ・膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節は、関節包というもので覆われ、更にその中には、滑膜と言われる膜があり、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は、健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。 これが半月板損傷や、変形性関節症など関節の炎症をはじめとして、骨折や何らかの感染や外傷、靭帯損傷、痛風、偽痛風、関節リウマチなどといった原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起こります。 膝に水が溜る原因 ・半月板損傷 ・変形性関節症 ・何らかの関節の炎症 ・骨折 ・何らかの感染や外傷 ・靭帯損傷 ・痛風、偽痛風 ・関節リウマチ ・膝の水はどういう時に抜く? 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断): 膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療): 膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の合併症 関節穿刺を行った後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。関節穿刺後の一般的な合併症について解説します。 ①感染 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺を行うことで体の表面にいた細菌が関節内に移行することがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ③その他 そのほかの合併症として、特に関節内に薬剤を注射した場合などに起こりやすいものもあります。例えば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症しますので医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意しておきたい観察項目 関節穿刺後に気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目についても解説します。 ・症状の持続時間が長い: 通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなる: 処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝に溜った水を抜いたあとに、注意しておきたいこととは 今回の記事では膝に溜った水を抜いたあとの注意点について解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 No.072 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症をはじめ膝の障害に対する新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
2022.06.29 -
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膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 膝関節に変形や炎症が起きたりする病気があると、膝に人工関節を入れなくてはいけない状態になることもあります。膝の人工関節の手術をする決断する前に、手術の流れや合併症、手術に備えて準備するべきことなどを知ることは非常に大事です。 膝関節とは まず、膝関節とは何かについて述べていきます。膝関節は3つの骨で支えられています。太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨、いわゆる膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨の3つです。 その3つの骨と、太ももの筋肉である大腿四頭筋と、膝の腱である膝蓋腱で膝関節をつくっています。これらの3つの骨と筋肉、腱が支え合うことで、私たちが、走ったり、飛んだり、座ったりするときに安定するようになっています。 膝関節の病気 膝関節の病気については様々なものがあります。変形性膝関節症、膝靭帯損傷、関節リウマチなど様々な病気があります。また、スポーツ外傷でも膝の慢性的な障害を起こしたりします。それらの病気の中で、変形性膝関節症や関節リウマチは、変形や炎症が強くなった時に、人工膝関節置換術という、人工関節のための手術を行う必要のある病気です。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝が痛くなり水が貯まる病気です。最初は歩き始めに痛い程度ですが、徐々に階段を登ることが難しくなり、最終的には、休んでいる時も痛みが取れなくなるような病気です。 変形性膝関節症では、膝が変形して、伸ばすことができなくなります。変形性膝関節症の治療法は、症状が軽いうちは、炎症を抑える薬を飲んだり、膝関節にヒアルロン酸の注射をしたり、リハビリを行なったりします。しかし、重症になると、人工関節の手術をするか否かの選択が必要になります。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節内にある『滑膜』とよばれる組織が、異常に増えることが原因で、関節の中に炎症が起きる病気です。関節リウマチでは身体の中のいろいろな関節が破壊されるので、膝だけでなく、手や足など様々な関節に変形を起こします。 関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬や、炎症を抑える薬、免疫抑制剤、ステロイド剤などの薬を飲むことが一番大事です。お薬の治療に併用して、ヒアルロン酸の関節内注射やリハビリなどが行われることもあります。 関節リウマチも治療が遅れたりして重傷になると、人工関節のための手術を行うか同課の選択が必要になります。 膝の人工関節とは 膝の人工関節は、金属や、ポリエチレンやセラミックなどで作られます。変形性膝関節症や関節リウマチなどの病気で、変形し傷ついた膝関節を取り出して、手術によって膝用の人工関節を変わりに入れます。悪くなってた関節を置換えるイメージです。 この人工関節は、膝の動きを再現するために3つの部品から作られています。人工関節の3つの部品は、実際の膝を構成している3つの骨(大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部)の部分をそれぞれ担当しています。 膝の人工関節のための手術 膝の人工関節を入れるためには手術が必要です。手術が必要ということは、もちろん入院も必要です。昨今の新型コロナウイルスの関係で、入院生活は、家族や友人との面会が制限されているところが多いです。 入院前に入院生活のために必要な物品や、家族や友人との連絡手段を事前に決めておく必要があります。手術は全身麻酔をかけて眠った状態で行われます。そのため、麻酔から覚めて、目が覚めると手術が終わっている状態になります。 手術自体は、膝の皮膚を切り開いて、骨が見える状態になったら、器械を使って傷のある膝の部分を削り、人工関節の形に合わせて残りの骨の形を調整します。形の調整ができたら人工関節をはめ込みます。しっかりと固定できていることを医師が確認したら、縫い合わせます。 手術の傷口にたまった血液を出すための管を入れて傷口をふさぎ手術が終わります。手術の時間は、平均2−3時間程度のことが多いですが、もともとの病気や膝の状態に応じて手術の時間は変わってきます。 膝・人工関節の手術後 手術が終わればすぐに退院できるという訳ではありません。手術した関節を安定させるために、リハビリを開始します。リハビリは手術後の状態に応じて開始時期が異なりますが、早ければ手術翌日から段階的に始めることが多いです。 リハビリは、寝たまま膝を伸ばしたりして筋力をつけることから始まり、だんだんと平行棒などを使用したり、歩行器などで歩く練習などへと移行していくのが一般的です。 外来通院でリハビリを実施できる患者さんは退院が早くなりますが、外来に通院するのが難しい患者さんは、手術した病院からリハビリ専門の病院に転院してリハビリを行うことになります。 そのため入院期間は患者さんによって異なりますが、多くは2週〜4週くらいのことが多いです。 膝・人工関節手術の合併症 人工関節のための手術で一番気をつけなくてはいけないのが、手術した場所に悪い菌が感染することです。感染すると、腫れたり、発熱したりします。 手術した場所に感染が起きると抗生物質による治療が行われますが、多くの場合、再び手術のやり直しが必要になることがあります。そのほかには麻酔によるアレルギー反応や、手術によって身体が防御反応を示し、血液が固まりやすい状態になることから血栓症の心配もあります。 手術中はもちろん、手術後にじゃ身体を動かすことができないことから、血の流れが滞ることで静脈内に血栓という血液が固まったものができる事がああります。これが深部静脈血栓症です。この血の塊が血液の中に混じって肺へ移動することで、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、生命の危機にもかかわりかねないため注意が必要です。 その他、術後としては、人工関節のゆるみや、歩けるようになったことで逆に転倒し、脱臼や、その周りの骨を骨折するという心配もあります。もちろんこれらのリスクには予防法があります。手術に際しては主治医から説明を受け、十分に納得して挑んで頂ければと思います。 人工膝関節手術の一般的なリスク ・最近による感染症(抗生物質、再手術) ・麻酔によるアレルギー反応 ・肺塞栓症、深部静脈血栓症 ・人工関節は、緩むことがある ・転倒による脱臼や骨折の可能性 ・その他 まとめ・膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 人工関節のための手術のためには入院が必要です。入院期間は短くはなってきましたが1か月ほどは見ておきたいものです。また、手術を行うことによる合併症のリスクもあります。できれば膝に違和感を感じたり、痛みを感じるようになった時には早めにリハビリや投薬などの保存的治療を受けて手術を避けることが一番です。 ただ、既に症状が進んでしまった場合は、しっかりと説明を受けて納得して手術を受けましょう。近年は医学が発達、「再生医療」という新しい先端医療を選択できる道ができました。これ方法なら手術が不要で、入院も不要という興味深い方法です。 手術に不安をお待ちの方は、当院のような再生医療専門の医療機関に問い合わせてみても良いでしょう。いずれにしまして人工関節になると、元には戻せないだけによく理解してお取組みください。 また、昨今は新型コロナウイルスの関係で面会が制限されています。家族と会えない数週間は、患者さんにとって、とても寂しくつらい期間です。手術のために入院する患者さんは、家族や友人とビデオ通話ができるように準備などをしてのぞむのも一つ方法ではないかと思います。 以上、膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきことについて記載させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 No.070 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝関節の治療を変える! 手術不要、入院も必要ない日帰りで治療する膝関節症の新たな選択肢、再生医療
2022.06.21 -
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ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎とは はじめに スポーツ選手は日常的に、身体を動かし、気がついたら慢性的に身体にダメージを与えていることも少なくありません。スポーツ外傷と呼ばれるものです。 走ったり、ジャンプしたりなど多くのスポーツで行う動作を慢性的に繰り返すことで起こる病気の中で、ジャンパー膝』と呼ばれる、「大腿四頭筋腱付着部炎」と呼ばれる病気があります。 この記事では、通称『ジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)』について、その症状および治療法について医師が監修し解説します。なお、本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝とは、スポーツを日常的に行い膝に負担がかかる人が起こりうる病気で、いろいろなスポーツが原因で起こります。 ジャンプしたり着地したりの動きを多く繰り返すスポーツ(バレーボールやバスケットボール、走り高飛びなどの陸上競技など)で多く起こります。また、突然走ったり止まったりを繰り返すスポーツ(サッカー、ラグビー、アメフトなど)でも起こりやすいです。 野球やソフトボール、テニス、バトミントンなどのスポーツでも生じることが多いと言われており、走ったり、ジャンプしたりをたくさんするスポーツならどのようなスポーツでも発症する可能性はあります。 競技のレベルや強度が上がってくる中学校以降の学生だけでなく、日常的にスポーツを行なっているプロスポーツ選手でも見られ、サッカー元日本代表の内田篤人選手もこの疾患に苦しんだと言われています。 膝蓋骨に付着する腱のオーバーユース(使いすぎ)による炎症であるジャンパー膝は、その炎症部位により以下の2つに分類されます。 ・大腿四頭筋腱の膝蓋骨付着部=膝蓋骨の上に付着する腱の炎症 ・膝蓋腱の膝蓋骨付着部または脛骨粗面付着部=膝蓋骨の下に付着する腱の炎症 いずれの場合も、腱のオーバーユースによる炎症という原因は変わりませんが、障害部位によって原因となる動作や症状、治療法は異なると言われています。日常的な腱のオーバーユースによる障害のため、通常は徐々に症状が進行していくためほとんどの患者は症状が出現してから数ヶ月後に受診するのが現状です。 ジャンプや走るなどの動作で慢性的に膝に加わると、膝の靭帯に負担がかかります。この膝への靭帯の慢性的な負担によって、靭帯や腱に炎症を起こしたり、筋繊維などを傷つけてしまうことが原因でジャンパー膝が起きると言われています。 ジャンパー膝の症状 症状は、最初は軽症のことが多いですが、徐々に悪化してきます。 最初の症状としては、世間で、『膝のお皿』と呼ばれている部位である『膝蓋骨』の下側を押すと痛みを感じたり、膝を動かした後に痛くなったりする程度のことが多いです。多くの場合では、スポーツの後に痛みが悪化することが多いです。 注意すべきは、痛みが強くても、走ったりジャンプしたりはできることが多いため、スポーツ選手は痛みを我慢して、運動を続け、どんどん症状が悪化してしまうということが非常に多いということにあります。 最初のうちは、スポーツは普通に行うことができ、スポーツの後に膝に違和感や、痛みを感じる程度のことから始まります。しかし、その痛みを我慢し、膝を使い続けて、徐々に悪化してしまうと、スポーツ中にも痛みを感じるようになります。そのような段階になると、膝蓋骨の下側を押すと、顔をしかめてしまうほどの激痛で、しばらくその場から動けなくなるようなことも多いようです。 それでも痛みを我慢して、スポーツを続けると、スポーツなど運動中だけに関わらず、日常の歩行をはじめ、常に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、痛みでスポーツを継続することが困難になります。さらにスポーツを続けると腱や靭帯が千切れてしまうこともあります。 ジャンパー膝は、症状が出るに至った動作・経緯である病歴とその症状から診断されることが多く、診断自体には画像検査などの特殊な検査を要しないことがほとんどです。膝関節の屈曲や進展によって誘発される、膝蓋骨の直上または直下の違和感や痛み・熱感が一般的な症状です。 しかし、膝をぶつけたなど明らかな外傷がある場合や病歴や症状が典型的でない場合は膝関節の超音波検査やMRIといった特殊な検査を要する場合もあります。 あくまでこの診断は専門家による評価を前提としているため、安易に自分や非専門家による判断を下さず、整形外科などの医療機関での評価を推奨します。 ジャンパー膝の治療 治療は重症度によって大きく変わってきます。 症状が比較的軽症の人は、膝を休めて、安静・休養をとることだけで治ります。しかし、実際には軽症のときは、スポーツ後のみの痛みで、スポーツのプレー自体に影響がないので、そのままスポーツを続けて悪化させてしまうことが多いのが現状です。 スポーツを続ける場合でも、スポーツでの膝への負担を減らし、スポーツを行う前にストレッチを行うことや、アイシングなどで冷やし炎症を抑えることも治療の一つであると言われています。 また、状況に応じては、ステロイドという薬を傷んでいる場所に注射して炎症を抑えることもありますが、腱自体を弱くしてしまい、腱を千切れさせてしまうこともあると言われています。またヒアルロン酸を注射するという治療方法もあります。 重症になってしまい、膝の靭帯や腱が千切れてしまうと、膝を伸ばすことができなくなります。このような段階になってしまうと、手術を行わなくてはなりません。 手術では膝を切り開いて行う必要があります。そのため、全身麻酔という、寝た状態で行う手術が行われることが多いです。手術した傷が感染してしまう可能性もありますし、全身麻酔でのアレルギーなどの副作用が生じる可能性もあり、1−2週間入院を行う必要があります。 ただし、手術を行い退院したからといって、すぐにスポーツに復帰できるわけではありません。手術直後は歩行するのにも練習が必要な状態です。歩けるようになった後も、リハビリを行う必要があり、スポーツへの復帰までに3−6ヶ月以上は覚悟せねばなりません。 ジャンパー膝の治療はリハビリテーションが中心となります。前に述べた通り、ジャンパー膝を含むオーバーユースによる腱の炎症の治療は一般的には以下のような過程があります。 1)原因となる動作の制限:膝関節の屈曲・伸展を中心とした炎症となる原因の動作を、理想的にはやめることが推奨されますが、やめることが困難な場合には頻度や負荷を減らすことで炎症の鎮静化を図ります。 この原因動作の制限は治療の基本となり、症状が出た後にも原因動作を続けることはしばしば症状の悪化や長期化を引き起こします。疑わしい症状が出た場合は速やかに原因動作を中止し安静を保ちながら専門家に相談しましょう。 2)鎮痛:痛みが強い場合にはそのほかの動作に支障をきたすこともあるため、症状に応じて鎮痛薬を内服したり、場合によっては膝関節周囲に注射したりすることもあります。しかし、多くの場合は原因となる動作の制限が鎮痛の効果も果たすため、原因動作の制限でも症状が改善しない場合や痛みが強い場合に鎮痛薬の使用を考慮することになります 3)原因となる動作への復帰:炎症の改善の経過を見ながら、徐々に膝関節の使用を再開します。ジャンパー膝の治療を行う医療機関では、症状に応じたリハビリテーションプログラムを使用することが多く、早期に競技へ復帰するためにこのリハビリテーションは必要不可欠となります。多くの場合は、軽い負荷から徐々に通常または重い負荷をかけて膝関節の運動を行っていきます。負荷の制御は専門のリハビリテーションプログラムに基づくステップアップを要するため、受診している医療機関での継続的な評価を受けるようにしましょう。 まとめ・ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎とは ジャンパー膝はスポーツを行う人にとって誰でも起こりうる病気です。 ジャンパー膝は、「大腿四頭筋腱」または、「膝蓋腱」のオーバーユース(使いすぎ)による炎症で、ジャンプ・着地、走る・止まるなどの急激な動作を繰り返すスポーツ外傷では比較的よく知られた疾患です。 重症度によって治療の方法は異なり、早く治療を開始することが重症化を防ぐことできる病気です。『症状が軽いから大丈夫』『スポーツが継続してできるから大丈夫だ』と考えて、無理してスポーツを継続すると、重症化してしまい、スポーツへの復帰がかえって長引いてしまいます。 個々の事例によって状況が大きく異なるため、膝に違和感を感じたら早めに医療機関等、病院を受診して医師の診察を受けることを推奨します。 以上、今回の記事ではジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)とその症状および治療法について解説しました。参考にしていただければ幸いです。 No.069 監修:医師 坂本貞範 ▼ ジャンパー膝をはじめとしたスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.06.20 -
- ひざ
- 半月板損傷
半月板損傷の手術についてメリット、デメリット疾患 半月板損傷は、激しく走ったりジャンプをしたりするアスリートの膝に、つきものであるとも言える外傷です。また加齢などによって組織がもろくなる高齢者にも起こります。治療のために手術が必要となることがありますが、手術にはメリットと、デメリットがあります。 この記事では、膝の半月板について簡単に説明をさせていただき、半月板損傷に対する手術が必要な状況や手術のメリット、デメリットについてご説明します。 半月板とは? わたしたちの両方の膝には、それぞれ膝の内側に大きい内側半月板、膝の外側に外側半月板という2つの半月板があります。C字型をしたゴムのようなクッションで、膝関節の衝撃吸収材として機能しています。 そのほかにも膝の半月板があることで、接触する面の形状が異なっている脛骨と大腿骨の接触面積が増加し、互いにフィットしやすくなります。そのために、膝関節がより安定するようになり、正しい荷重配分する役割を担っています。 また、半月板は大腿骨と脛骨の間にありますので、両方の骨と骨が直接こすれ合うのを防いでいます。半月板の損傷は、特にスポーツをする人にとって、よく起こりうるもので注意が必要です。急に体をひねったり、曲げたり、衝突したりすると、半月板が損傷してしまうことがあります。 また、高齢者もよく半月板を損傷することがあります。半月板は加齢とともに弱くなり、断裂しやすくなります。事実、半月板の断裂は、老化現象として普通に起こりうることです。 半月板が損傷すると、膝を屈曲や伸展させる動きが不安定になり、痛みや腫れが生じたり、膝が動かなくなったりすることがあります。 半月板損傷の手術 半月板を損傷しても、手術が必要な人もいれば、そうでない人もいます。 その判断は、非外科的治療への反応の程度に加え、どのような損傷を受けたのか、損傷の大きさや部位、また受傷した人の、年齢、活動レベルや、ライフスタイルなどをもとに行います。合併する靭帯損傷の有無や臨床症状も加味されます。 関節鏡下半月板手術の種類 半月板損傷に対する手術は、一般的に関節鏡を用いて行われます。その手術には、大きく分けて2種類があります。 まずは損傷された軟骨の断裂した部分を縫い合わせ、自然治癒するように修復する半月板修復術です。しかし、損傷のタイプや、損傷部位への血液供給の関係で、修復可能な事例は多くはありません。 もうひとつは、損傷した軟骨を切除し、損傷を受けていない半月板組織を残す、半月板切除術、あるいは半月板部分切除術です。 半月板損傷の手術の種類 ・半月板修復術 ・半月板部分切除術 膝半月板手術のメリットとデメリット それでは、膝半月板手術のメリットとデメリットについて、ご説明します。 膝半月板手術のメリット 半月板損傷手術には、次のようなメリットがあります。まず、痛みを軽減または、完全に取り除くことができます。その結果、スポーツやその他の活動に早期に復帰できる可能性が高まります。 半月板を外科的に修正することで、手術法によっては関節損傷のリスクが軽減される、また損傷部位からの関節炎の発症を防ぐ、または遅らせることも期待できます。 2020年にAmerican Journal of Sports Medicineに掲載された論文では、外傷により半月板を損傷した45人のうち、非外科的治療を受けた15人、半月板切除術を受けた15人、半月板修復術を受けた15人をフォローしています。 この研究の結果分かったことは、半月板修復群では、変形性関節症の進行が有意に遅く、人工膝関節置換術を必要とする患者が有意に少なかったということです。 平均74ヶ月の追跡調査において、半月板切除群では40%、保存的治療群では27%が人工膝関節置換術を必要としましたが、半月板修復群では人工膝関節全置換術を必要とするほど進行した人はいませんでした。 また2019年にAmerican Journal of Sports Medicineに掲載された研究では、半月板修復術、半月板切除術、および保存的治療結果を比較した過去の論文を、科学的手法を用いて厳格に検証するメタアナリシスが実施されました。 この論文では、半月板修復術を受けた229人、半月板切除術を受けた74人、手術を行わずに保存的治療を行った41人が対象となっています。 10年後のフォローアップでは、半月板修復群では53.0%、半月板切除群では99.3%、非手術群では95.1%に変形性関節症の進行が認められました。また人工膝関節置換術の実施率は、半月板修復術群33.5%、半月板切除術群51.5%、非手術群45.5%でした。 このことから、半月板修復術が非手術群や半月板切除術より、関節損傷や関節炎のリスクを低減することは明らかです。できる限り半月板の完全性を維持することで、より長期的に大きなメリットを得られることが期待できます。 膝半月板手術のデメリット 過去数十年の間に、半月板をできるだけ多く保存することの重要性がますます明らかになってきました。先に説明したように、半月板は膝への衝撃を吸収する非常に重要な役割を担っています。半月板が破壊されると、関節軟骨の接触圧が増加するため、変形性膝関節症の進行が早まる可能性があります。 加齢などによる変性に起因する内側半月板損傷に対し、関節鏡下半月板切除術と保存的治療の臨床的・放射線学的結果を比較した研究があります。 この研究では、146人の患者(半月板切除術群、90人、保存療法群、56人)を評価対象としています。治療後、すべての臨床結果は両群で有意に改善されましたが、変形性膝関節症は、半月板切除群で有意に進行していました。 先に紹介した外傷による半月板損傷に対する治療結果の論文も含め、変性に起因する半月板損傷半月板損傷であっても半月板切除術は、変形性膝関節症をきたすデメリットがあります。 まとめ・半月板損傷の手術についてメリット、デメリット 半月板損傷に対する手術のメリット、デメリットをご説明しました。 ほんの数十年前までは、一般的に半月板損傷後は、半月板を完全に切除していましたが、最近は残された半月板を温存すること、できる限り半月板を修復することが一般的です。 半月板損傷の結果手術が必要だと判断された場合は、しっかりと担当医と相談し、メリット・デメリットを理解して手術に臨まれることをお勧めいたします。 No.068 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できます
2022.06.18 -
- ひざ
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じたとき はじめに 膝の痛みはしばしば経験する症状であるだけでなく、座る・立つ・歩くといった日常動作に深く関わるためその症状の生活への影響はとても大きいです。膝の痛みを抱える方の中には、朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じるといった症状を経験する方もいるのではないでしょうか。 この記事では、そのような特徴的な症状を含む膝の痛みを生じる疾患と、その原因および治療法について解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じる 膝の痛みの中でも、このような症状は「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」などの疾患に特徴的と言われています。それでは、なぜこのような症状が起きるのでしょうか。 関節は骨と骨のつなぎ目ですが、そこにはクッションの役割を果たす「軟骨」と、潤滑油の役割を果たす「関節液」があります。関節リウマチや、変形性膝関節症といった疾患ではこの軟骨に障害が及んだり、関節液の量の調整がうまくいかなくなったりする結果、しばらく関節を動かさないと朝起きた時や、動き始めの時にこわばりや、痛みを感じることがあります。 関節を動かしてしばらく経つと、関節液の量が自然に調節されて症状が改善することがあります。ここからは、これらの主な原因となる関節リウマチと変形性膝関節症について解説していきます。 関節リウマチ 関節リウマチは膝を含む全身の関節に起こる炎症を特徴とする疾患で、その原因には不明なところが残っているものの、関節組織に対する自己免疫の関与が考えられています。一般的には手足の指の関節から始まることが多く、左右対称制の症状、朝のこわばりなどの典型的な症状が知られています。自己免疫の関与が考えられている関節リウマチですが、関節外に目や血管に症状をきたすこともあります。 関節リウマチの診断 関節リウマチの診断は、関節症状などの病歴だけでなく、レントゲン上での関節腔の狭小化などの所見、全身の炎症を反映した血液検査でのリウマチ因子・特殊抗体などを総合的に判断してなされます。関節炎などの症状が出た場合は整形外科などへの受診をまずは考えますが、関節リウマチは膠原病内科やアレルギー内科などが専門となることがあります。適切な診療科も含めて、気になる症状がある場合はかかりつけまたは最寄りの医療機関に相談してみましょう。 関節リウマチの治療 自己免疫の関与が考えられている関節リウマチの治療法は、消炎・鎮痛といった一般的な関節痛にも共通する治療だけでなく、過剰な自己免疫を制御する免疫調整薬の使用が必要になることがあります。このような治療は専門家の詳細な評価を必要とする場合が多いため、かかりつけ医の意見をよく聞いて治療を進めるようにしましょう。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は主に加齢により発症すると考えられており、膝関節の痛みやこわばり、関節可動域の制限などといった症状が認められます。変形性関節症は膝以外にも手足や脊椎に発症することもあります。 変形性膝関節症の診断 典型的な症状や病歴があれば必ずしも画像などによる検索は必要ではないとされていますが、非典型的な症状を伴う場合には同様の症状をきたす別の疾患を想定して画像検査や血液検査を必要とすることがあります。 レントゲンでは関節腔の狭小化や骨棘などといった所見を認めることがありますが、血液検査では変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 変形性膝関節症の治療 変形性膝関節症は基本的には加齢による変化であり、痛みの制御を目的とした治療が主眼となります。具体的には消炎・鎮痛薬の使用を症状に応じて行うことになります。しかし、加齢による変化そのものは不可逆性のため、消炎・鎮痛薬の使用で症状がコントロールできない場合などは人工関節置換術といった手術による治療を考慮することもあります。 関節リウマチと変形性膝関節症の違い 今回紹介した関節リウマチと変形性膝関節症は同じ膝関節の痛みを生じる疾患ですが、異なる特徴もあります。症状については、一般的には関節リウマチは関節を動かさないと症状が悪化するという特徴があるため、朝のこわばりが特徴になります。一方で変形性膝関節症は関節の疲労で症状が悪化するため、夜のこわばりが特徴と言われています。 また関節リウマチは全身の炎症を起こすため血液検査で異常が出ることがありますが、変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 まとめ・朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じたとき 今回の記事では朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じたときに想定される疾患である関節リウマチと変形性膝関節症について解説しました。 この二つの疾患は類似点もありますが診断や治療など、大きく異なるものもあります。より詳しく知りたい場合は既に受診している、または最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 No.067 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で膝の痛み、違和感を治療する 膝の違和感への新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療とは
2022.06.17 -
- ひざ
膝に溜った水を抜いたあとの注意点とは 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。 膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものです。 この症状のある方の中には医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が多くあります。この記事では、主に膝の水を膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説します。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ・膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節の中には、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されていますが、何かの原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起きるのです。 ・膝の水はどういう時に抜く? 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断):膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療):膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の合併症 関節穿刺を行った後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。関節穿刺後の一般的な合併症について解説します。 ①感染 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺を行うことで体の表面にいた細菌が関節内に移行することがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ③その他 そのほかの合併症として、特に関節内に薬剤を注射した場合などに起こりやすいものもあります。例えば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症しますので医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意する観察項目 関節穿刺後に気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目についても解説します。 ・症状の持続時間が長い:通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなる:処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝に溜った水を抜いたあとの注意点とは 今回の記事では膝に溜った水を抜いたあとの注意点について解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 No.065 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の痛みに対する新たな選択肢、再生医療は切らずに症状を改善させます
2022.06.10 -
- ひざ
- 前十字靭帯
- 関節リウマチ
- スポーツ医療
膝の裏が痛い、その原因と考えられる病気と対策 はじめに 膝関節は、大腿骨、脛骨および腓骨、また膝蓋骨などが組み合わさって形作られており、日常生活において安定して自由な伸展運動などがスムーズに実行できるように半月板や複数個の靭帯などを始めとする周囲の構造物が補助するように働いています。 これらの膝を形成しているそれぞれの人体組織がスポーツなどの外傷、あるいは加齢や自己免疫異常などの要因に伴って異常をきたして損傷を認めるようになると、膝の裏の部位で疼痛(痛み)症状を覚えることに繋がります。 そこで、「膝の裏が痛い原因、考えられる病気と対策」と題して解説してまいります。 膝の裏が痛い、その原因と考えられる病気 膝の裏が痛む際に原因として考えられる膝疾患には、「関節リウマチ」や膝部位に存在する「靱帯の損傷」などがあります。 関節リウマチ 関節リウマチの患者数は、現時点でおおむね80万人と言われており、その発症原因は自己免疫系統の異常とされていて、自分自身の軟骨組織や骨成分を攻撃し、破壊することとなり、関節部位に炎症が引き起こします。特に膝裏部に疼痛症状を認めると考えられます。 この病気を発症しやすい年齢は、30代~50代前後の中年齢層で、性別に関しては男性よりも女性で発症率が高いことが指摘されています。初期の段階では、手足における特に手指部の関節領域が左右対称に腫れる以外にも、倦怠感や、食欲不振など自覚症状が合併することも懸念されています。 また、膝関節には4つの靱帯が存在して重要な役割を担っています。そのうち膝の左右両側にあるのが内側側副靱帯、外側側副靱帯というもので、前後部位には前十字靱帯、後十字靱帯が走行しています。 靭帯損傷について 例えば、交通事故にあう、もしくはスポーツ活動中に怪我を負うなど受傷を引き起こすことによって大きな物理的衝撃が膝関節に負荷となってかかると、膝の靱帯部に強い損傷や断裂などが起こり、膝の裏側が痛むことが十分に想定されます。 通常の場合、内側側副靱帯と前十字靱帯が外力によって損傷を受けやすいと言われていますが受傷してから3週間前後の発症してまだ間もない頃には膝痛と膝の伸展運動がしにくいなどといったサインが認められます。 受傷後1か月程度、しばらく経過した段階では、膝関節内部に血腫が貯留して腫れの所見が目立つこともありますし、損傷部位によっては膝関節の不安定さが少しずつ顕著化してくることもあります。 膝の裏が痛い場合に考えられる疾患 ・関節リウマチ ・靭帯の損傷(事故や、スポーツなど) 膝の裏が痛む疾患に対する対策とは 前章では、主に膝裏が痛む代表疾患として「関節リウマチ」、「膝靱帯損傷」に関して触れました。関節リウマチに対する治療について、近年では特に目覚ましく進歩しています。 ところが、本疾患を罹患している患者さんにおいては抗リウマチ薬のみならず、対症療法のための薬剤処方などによって多剤併用となることが多いと指摘されており、基本的には一生かけて症状と付き合っていく必要がある病気であると言えます。 関節リウマチの病勢進行を可能な限り抑制して、症状を少しでも改善させるためには普段から関節に大きな負荷をかけないように認識しながら対策を講じることが重要な観点となります。 例えば、携帯電話を操作するときに片手ではなく、両手を使って動作すると、手首の関節にも優しい姿勢になりますし、デスクワークするときに両腕部分を机やクッションなどで支えるように対策すると関節にかかる負担を軽減させることが期待できます。 また、膝の靭帯損傷については、急激にストップするような動作をした際、あるいは方向を突然転換するときに膝を強く捻ることによって発症します。 一般的に、外側側副靱帯や内側側副靱帯は、膝が左右に動くのを制御していますし、前十字靱帯は膝から足側の部分が前方に突出しないようにストップをかける役割を担っており、後十字靱帯でも前十字靭帯と協調して膝が安定的に可動するように機能しています。 これらの靱帯組織が仮に断裂して受傷してしまうと、膝の安定性が減り、下半身における踏み込み動作や切り返しの作業が難しく実施できなくなるのみならず半月板損傷など合併する場合もあります。 内側側副靭帯損傷の場合には手術せずに治療することが多く、前十字靭帯が損傷を受けたケースでは、ほとんどの症例で手術治療が適応となります。膝受傷して靱帯を損傷した直後は、迅速にアイシングを行って患部を冷却して固定して患部に極力負担が掛からないように免荷処置をしましょう。 症状によっては、手術治療を検討する場合もあります。その際は、術後に理学療法士やトレーナーなど専門職と相談しながら状況に応じて適切なリハビリテーションを実践して、筋力を鍛えて早期復帰できるように努めることになります。 特に、膝の再受傷や二次的な外傷を回避するために、体幹を鍛える、柔らかいボールなどを膝下で転がすように動かす、あるいは座位の状態になって膝を伸展させる、そして大腿部のハムストリングスを鍛えることなどが主なリハビリ療法の内容となります。 まとめ・膝の裏が痛い、その原因と考えられる病気と対策 今回は、膝の裏が痛い原因で考えられる病気と対策について詳しく解説してきました。膝裏部が痛む原因としては、主に関節リウマチや、膝靱帯損傷が考えられます。 関節リウマチについては薬剤の治療成績が著しく向上していますし、初期段階できちんと診断して的確な治療を実践すれば治癒することが期待できる病気になってきました。膝靱帯損傷した際には早期的にアイシングして患部固定することで症状緩和に繋がります。 このような対処策を自分なりに実践しても症状が軽快しない際や膝裏部の疼痛症状がひどくて悪化するような際には、早期的に整形外科など専門医を受診するように心がけましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.061 監修:医師 坂本貞範 ▼膝の痛みに再生医療という選択肢! 再生医療の幹細胞治療なら手術せずに症状を改善できます
2022.06.07 -
- ひざ
- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
膝が腫れているときに考えられる病気とは はじめに 日常生活において両足を揃えて左右を比較してみた際に両膝の大きさや形が異なっているのに気づいたことはありませんか。 また、膝が腫れてその部分に発赤所見や熱成分を認める、そして膝が急に痛みを覚えてよくよく見てみると腫脹がひどくなっているという経験をした方も少なからずいらっしゃるでしょう。 膝という人体組織は、太ももに位置する大腿骨、足のすねに存在している脛骨や腓骨、そしてお皿と呼ばれる膝蓋骨などの筋骨格系に関するパーツが組み合わさって出来ています。 膝は普段の生活を送る、もしくは運動を実行する際などに膝を曲げ伸ばしを行う動きを司り、上半身などの体重を支える重要な役割を有していますので、その膝が腫れて痛くなると、どうしても日常生活に支障をきたすことに繋がっていきます。 そこで今回、「膝が腫れているときに疑うべき病気」と題し、それらに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 膝が腫れているときに考えられる病気とは 変形性膝関節症 膝が腫れて痛む有名な病気としては「変形性膝関節症」が挙げられます。 変形性膝関節症は、加齢や遺伝的要因、もしくは肥満による重量増加が引き金になる膝関節への過度な負担によって関節部の炎症や変形を生じさせて、膝の痛みや腫れなどが引き起こされる病気と認識されています。 この疾患では、ひざ部分における関節軟骨が摩擦や摩耗などですり減ることによって膝部位に強い痛みが長期に渡って自覚される病気であり、年齢を重ねれば重ねるほど病状が進行して安静時にも痛みが緩和されずに歩行することすら困難になる進行性のある病気です。 変形性膝関節症の直接的な原因は、先にあげた加齢、肥満以外にも、O脚、閉経してからの女性ホルモンの変動などが挙げられるほか、日常生活において布団の上げ下ろしなど、膝の曲げ伸ばしを頻繁に行う行為や、正座を長時間保持するなどといった動作を日常的に行うことによってひざに負担がかかる場合に起こりやすくなります。 半月板損傷 膝の腫れを伴う症状として、「半月板損傷」も疑われます。半月板は膝関節の中にある三日月の形をした軟骨組織です。膝の内と外に2枚あって、走る、歩く、跳ねるなどの動きからくる負荷を和らげるクッションとしての役割があり、膝の安定性に欠かせない存在です。 半月板損傷の原因は、スポーツや事故などで急激な負荷や、強い衝撃、無理な動きがあった場合に傷つくことがあります。これが「半月板損傷」といわれるものです。また加齢によって組織がもろくなって起こる場合は先天的に症状を持っている場合があります。 関節リウマチ 次に、膝が腫れやすい代表疾患として「関節リウマチ」があります。「関節リウマチ」という病気は、自己免疫の異常が原因となって関節部位で炎症が引き起こされて、その結果として膝の腫れや強い痛みを自覚するものです。 この疾患では、軟骨や骨組織が「免疫異常」によって攻撃されることで関節部が破壊され、変形し、健常な関節機能が喪失する病気であることが知られており、その罹患患者数は我が国で80万人程度存在すると伝えられています。 一般的に、女性に多く発症し、発症年齢としては30代~50代前後という、若年から中年層がメインです。初期段階では手足の指の関節が左右対称性に腫れあがり、それ以外にも発熱や倦怠感など全身症状を自覚することもがあります。 以前は関節リウマチに対する治療薬も限定的でありましたが、最近では生物学的製剤などの薬品開発が進歩しているため、できるだけ早期から治療に入いることができれば炎症所見を改善させて膝関節の機能の回復を見込めるようになりました。それによって日常生活内のQOLが向上することが期待することができます。 痛風 次に、膝関節部が腫脹を認める疾患として、「痛風」が考えられます。 生体内で尿酸成分が過剰に貯留されると、膝関節を始めとする関節部位に尿酸の結晶がたまることで、その部分に炎症を引き起こして腫れを生じます。 尿酸と呼ばれる成分はビールや甲殻類などに多く含まれる「プリン体」が体内で分解されて形成されるものです。この尿酸の血液中における濃度が高値である状態が慢性的に継続すると、関節内で結晶化してしまい、この結晶化した尿酸を白血球が破壊処理する反応に伴って炎症を引き起こすと考えられています。 昨今の医療技術の進歩によって良好な薬剤も開発されており、的確な治療を実施すれば健康な生活を送ることができますが、痛風状態を放置すると関節部の激痛を引き起こして膝の腫れをきたすなどを繰り返し、全身的に痛風結節と呼ぶ「こぶ」が表れ運動機能障害が起こるほか、最終的には腎不全にまで進行する可能性があるため、放置することなく、十分に手当することが大切になります。 痛風の原因となる尿酸値は、食事に大きな影響を受けるため、カロリーの高い食事や、アルコールの採りすぎなどに注意が必要です。食生活全般にわたり見直し、改善を行いましょう。 また、肥満を防ぐ意味でも、代謝を整える意味でも適度なスポーツは有効です、ただ激しいスポーツは逆効果になることもありますので注意が必要です。 その他 その他にも、膝靭帯損傷、血友病、オスグッド・シュラッター病などが考えられます。また、日常生活に関する習慣性によって膝が腫れる場合も考えられています。 普段から立ち仕事が多かったり、スポーツで膝への負担が多い場合、膝の痛みや、腫れを発症することがありますので、適当なタイミングで休憩するよう気を付けましょう。その際に、ストレッチや体操などを少しであっても挟むなど、工夫することで膝を定期的にケアするよう心がてください。 最後に肥満状態は、膝に大きな負担をかけています。肥満による体重増加は、膝の腫れを悪化させる大きな要素と考えられていますので、年齢を重ねても健全で安定した膝の良好な状態を維持するためにも適正体重を保つように注意しましょう。 まとめ・膝が腫れているときに考えられる病気とは 今回は膝が腫れているときに考えられる病気について詳しく解説してきました。膝の腫れをきたす原因の多くのは、関節疾患や骨の病気、外傷など様々です。 ふと膝が腫れていることを自覚した際には、かかりつけ医など医療機関を受診し、担当医に症状出現前後のイベントや出来事はあったか、そして普段からスポーツを活発に実践しているかどうか、あるいは膝に負担がかかりやすい仕事や、習慣、スタイルを送っていないかなどを詳細に伝えてください。 また、急激に膝部分に激しい痛みを覚えて、腫れを認める場合、そして日常動作をする際やスポーツ運動時に膝が腫れて痛みが悪化するようなケースでは、「無理に膝を動かさずに安静を保つ」ように努めて早期に専門医を受診することが重要です。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.060 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で膝の治療を行えることを知っていますか?! 膝の痛みなどの悩みに対する新たな選択肢、再生医療について
2022.06.07 -
- PRP治療
- 変形性膝関節症
- ひざ
- 幹細胞治療
幹細胞治療とPRP療法(再生医療)で治療する膝の痛みの治療法! このページでは変形性ひざ関節症について解説します。「変形性ひざ関節症」は、実は全国で3千万人ぐらいの方が悩まれている膝の病気です。ここでは、その症状だったり治療の仕方、そして最新の治療法である再生医療(幹細胞治療とPRP療法)について詳しく解説してまいりましょう。 変形性ひざ関節症は男性より女性がなりやすい! ご存知ですか?!変形性ひざ関節症は、全国で約3千万人の患者さんがいるのですが、男女比でいうと1対4と、圧倒的に女性の方が男性より多い症状なのです。 以下は、この膝の症状に対する先端医療である再生医療を解説しています。それは幹細胞治療とPRP治療と言われるものです。ご一読いただければ変形性膝関節症を治療するための新たなアプローチ方法をご理解いただけるはずです。 変形性ひざ関節症になる原因 変形性ひざ関節症のメカニズム・原因は、関節にある軟骨に起因します。具体的には次のようなものがあります。 ・年齢を重ねることによる摩耗 ・体重増加による負荷 ・O脚変形 ・遺伝性の軟骨の柔らかさの影響 年齢を重ねるにつれて軟骨が摩耗したり、体重が増えて負荷がかかると軟骨がどんどんすり減っていきます。それ以外にも、例えばO脚変形と呼ばれる、少し膝がO脚になっている方も原因になりやすいです。あとは遺伝性、つまり生まれつき軟骨が柔らかい方もいらっしゃいます。 このように、軟骨がすり減ってなくなってくると、いよいよ関節が変形して炎症を起こしてしまい、出歩くときに膝が痛かったり、あとは関節に水がたまり動きにくくなるという状態になります。 これがいわゆる変形性ひざ関節症です。 変形性ひざ関節症の症状 次に、変形性ひざ関節症の症状についてお話をしていきます。 変形性ひざ関節症になると、 ・立ち上がり時に膝が痛かったり ・階段を下りるときにも膝が痛かったり ・水が溜まって膝が腫れてしまって、正座が出来なくなったり、曲げにくかったり などと、いろんな症状があります。私が診ている患者さんの中でも、このような症状を訴えてこられる方々が、たくさん来られます。 ただ、その中でも、膝の中に水がたまってしまい、抜いても抜いても水がたまり続けてしまう方もいらっしゃいます。また、ヒアルロン酸を打っても一日や二日しか、持たなかったり、ほとんど効かないという方も大勢いらっしゃいました。 従来ならば、こういた水が溜り続ける、注射が効かない患者さんには「手術をしましょう」という話になってきました。ただ、いきなり手術となると抵抗感もあり、どうしたらいいのかと、困られている患者さんもたくさんおられました。 ・水もたまる、注射が効かないし、手術もしたくない・・・ そこで、最近注目されている再生医療という治療があります。 再生医療という新たな選択肢 そこで、この「再生医療」という新たな治療法について解説していきます。再生医療には大きく分けて2つの治療方法があります。まず1つは自己脂肪由来の幹細胞治療、そしてもうひとつはPRP治療です。 自己脂肪由来の幹細胞治療 まず自己脂肪由来幹細胞治療方法です。これは今、最先端の治療方法です。私は初めてこの治療法を知ったとき、今までの治療概念を覆されました。それほど驚きを覚えたのです。 どういうものかと言いますと、自分の細胞を少しだけ取り出します。その取り出した脂肪の中には「幹細胞」といわれる細胞があって、この幹細胞が身体のいろんな組織に変化する性質持っていて、その性質を活かして治療を行う方法です。 取り出した幹細胞は、約1ヶ月間くらいかけて培養し、たくさんの幹細胞に増殖させることができます。その培養した、たくさんの幹細胞を膝に入れることによって、幹細胞が変化し、失われた軟骨が出来上がったり、壊れた素子が修復されたりします。 これがいわゆる「幹細胞治療」です。 PRP治療 そして、もう一つの「PRP治療」を解説しましょう。 まず自分の血液を採取し、その中から血小板成分を取り出します。この血小板成分は、自分の壊れた組織を修復する能力があります。その特性を利用するため、血小板成分を凝縮して高濃度の血小板成分として取り出し、それを体に戻すことによって、壊れた組織を修復する能力を促します。 これが「PRP治療」です。 ▼こちらも合わせて読んでおきましょう 変形性膝関節症のPRP療法|その治療効果と体験談 まとめ・幹細胞治療とPRP療法、再生医療で治療する膝の痛みの治療法 変形性ひざ関節症は、次のような原因で軟骨がすり減ることで起こります。 ・年齢を重ねることによる摩耗 ・体重増加による負荷 ・O脚変形 ・遺伝性の軟骨の柔らかさの影響 従来はヒアルロン酸の注射や手術によって治療されてきましたが、最近再生医療(幹細胞治療・PRP治療)という新たな選択肢が登場しています。興味のあるかたはぜひお近くのクリニックへご相談してみてください。 以上、幹細胞治療とPRP療法、再生医療で治療する膝の痛みに対する治療法ついて記させていただきました。 ▼こちらも合わせて読んでおきましょう 膝関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのか No.050 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の痛み!変形性膝関節症の治療を変える! 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善
2022.05.12 -
- ひざ
- 半月板損傷
膝半月板損傷の治療法と手術のリスク 膝の半月板とは、膝関節の太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨)の間にある、「C型」や「O型」をした線維の軟骨からなり、内側と外側の両方に存在します。 この半月板があることで上半身の負荷や、動作時の衝撃から膝を守ることができ、更に関節をスムーズに動かすことが可能となる大切な存在です。その半月板が損傷した場合の治療法と万一、手術をする場合のリスクもご説明いたします。 ひざ半月板損傷の治療、保存療法と手術療法について まずは、ひざの半月板損傷について、この半月板を治療するには、「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。保存療法では抗炎症薬の投与や、リハビリ テーションを行うことで症状が落ち着くことがあります。 しかし、保存療法を用いた治療で改善がみられない場合や、症状が顕著で日常生活に支障がでる場合には手術が適応となります。 実は、半月板には、約10~20%しか血が通っていません。そのため、一度損傷してしまうと自然に治癒することが非常に困難なのです。結果として再発防止や、スポーツ活動への復帰を考慮して保存療法ではなく、手術を選択される方もおられます。 手術療法としては、傷ついた箇所を縫い合わせる「縫合術」と、傷ついた箇所を切り取る「切除術」の2種類があり、手術方法は、関節鏡を使った関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)という手法で行われます。 手術療法 1)縫合術:傷ついた箇所を縫い合わせる 2)切除術:傷ついた箇所を切り取る ・縫合術も切除術も、どちらも手術なので、それなりのリスクは存在します ・どちらの術式を選択するか「半月板の損傷レベル」や、「損傷の程度」を診断の上、適切な方を選択します また、スポーツ選手が復帰を目指した場合などは、リハビリ期間を含めて、そのスポーツの種類や、大会の時期などに復帰に合わせて治療方法を変えるケースもあります。 各手術療法とそのリスクについて 内視鏡術の概要 画像上で半月板に損傷がみられても、症状として痛みの程度や、動作による支障があまり出ていなければ、投薬し、安静にすることで症状が軽くなる可能性を考えます。しかし、症状が長引くか、良くなっても再発する場合は、関節鏡を使用した内視鏡手術を行います。 手術は、腰椎麻酔で行うことが多く、内視鏡手術中は意識があり、モニターに膝の画像が映し出され、希望するなら説明を聞きながら手術を受けることも可能です。また、半月板を修復する際には、同時に損傷を受けやすい前十字靭帯、内側側副靭帯も損傷していないかをチェックしていきます。 縫合術 半月板は、安定した生活動作やスポーツによるパフォーマンス維持のためにも、可能な限り切除術ではなく、縫合術で行い半月板を温存する方向で進めていきます。また若年者の場合も可能な限り切除術ではなく縫合術を行うようにします。 半月板が中心で裂けるように損傷しているケースでは、縫合術の適応となります。損傷の度合いや形態を観察し、損傷箇所の激しいところを優先的に処置したあとで、血液の流れを考慮しながら、組織の状態が良好な部分は最大限に活かす方向で縫合していきます。 縫合術の方法としては、膝の外側に3cmほど切開をつくり、縫合専用の器具を使用して半月板に糸を数本通し、膝の関節の外側で結びつけて縫合していきます。このケースでは糸を膝関節の外側に通して縫合していますが、損傷箇所によっては関節の中だけで処置を終え、手術跡を作らずに済む方法もあります。 縫合手術が可能な損傷とは、半月板の辺縁部に損傷が起こる「辺縁縦断裂」になります。辺縁部は血流のあるエリアで、辺縁にそって断裂し、スポーツ外傷で起こることが多くみられます。 また、手術をすれば必ず痛みが取れるということはありません。せっかく手術をしても、痛みが取れない、手術前よりも痛くなった、という声はよく効かれます。そういう「リスク」も必ず含まれています。 > リスクを回避する再生医療という選択肢 縫合術の術後の注意 関節軟骨にかかる負担は少なくて済みますが、入院は2週間ほど必要で、術後2週間は足を床につけてはならず荷重してはいけません。術後は固定具を装着して膝を伸ばした状態を保つようにします。 術後から2週間ほど経過観察をした上で屈曲練習を開始して行きます。そして3週間目からは90°まで屈曲し、4週間目からは120°までと段階的にリハビリを行うようにします。半月板が癒合するには6週間ほど時間が必要なため、スポーツ復帰は術後3カ月が経ってからになります。 切除術 切除術は、断裂している部分に血行がないことや、断裂箇所が縫合しても改善されないほど損傷が大きいときに適応されます。損傷範囲が広い場合は、断裂している部分を専用器具で切り取り、除去します。 また、半月板の辺縁部分では血行があるため基本的には縫合術で対応しますが、断裂部分の繊維が不揃いになっているときには、切除しながら辺縁部を整えるようにします。この処置を行うことで、傷んだ半月板が膝関節部の軟骨と摩擦することがなくなり、軟骨の損傷をも防ぐことができます。 しかし、半月板は関節の機能としてなくてはならないものです。取り除くことで半月板の機能を低下させるというリスク!デメリットがあるため、可能な限り温存させる方向で必要最低限の切除にとどめた手術を行います。 また手術をした患側の足には、血栓が形成されやすいリスクがあるため、その予防に靴下を着用します。手術内容によっては、固定の為の装具を着ける場合もあります。 縫合が可能な辺縁部と切除する部分の両方が損傷している場合は、縫合術と切除術を組み合わせて手術していきます。また、生まれつき半月板が「C型」ではなく「円板状」になっている円板状半月板の人が半月板を損傷した場合は、通常の「C型」に近づけるように手術を行います。 切除術もまた縫合術と同じく、手術をすれば必ず痛みが取れるという訳ではありません。手術をした数割の人は痛みが取れない、余計に痛くなったということもあり得ます。 > そこで!「手術を回避する」再生医療という選択肢 切除術の術後 切除術のあとは、関節軟骨へのストレスが大きくなり、関節軟骨の変形が進行して膝関節症になることがあります。また、1~2ヶ月間は水が溜まりやすくむくみが生じるリスクがあります。 ただ、日常生活への復帰は縫合術に比べて早く、術後翌日からは歩行が可能になり、膝の曲げ伸ばしにも特に制限はありません。入院は術前から術後の観察までを含め、だいたい4日間ほどで退院できます。スポーツの復帰は、術後から約1~2ヶ月後となります。 手術後の合併症というリスクについて 手術後は、以下のようなリスクが存在するため、術後には注意して観察が必要となります。 1.感染リスク 半月板手術での術後感染の確率は、全体の術後感染症のなかでも低い方になり、予防として抗生物質の投与を行います 2.静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症)リスク 半月板の手術だけに起こるリスクではありませんが、下肢の手術や脊椎の手術、骨折などにより発症しやすくなります 3.しびれが発生するリスク 手術の過程で下肢への血流を遮断するため、術後に下肢のしびれが発生することがあります。術後数日で改善することがほとんどです 再生医療という新たな選択肢 このように半月板損傷の手術には、「縫合術・切除術ともにリスクを伴う」ことがわかりました。ところが、なんと幹細胞を用いた再生医療では、これらのリスクを負うことなく治療を受けることができるのです。 縫合術のリスクと比較して 例えば縫合術の場合、実は縫い合わせた半月板が再断裂する可能性があり、縫合術をして4年後に再断裂をする確率は30%と言われています。これは縫合をしても半月板がしっかりとくっついていない為に発生します。 ところが幹細胞治療では、断裂した半月板を接着剤で留めるように修復しますので、日常生活だけでなくスポーツに復帰することも可能です。また縫合術を受けると2週間は足に体重をかけられなかったり、4週間ほどの松葉杖生活を強いられることになりますが、再生医療では治療を受けたその日に歩いて帰ることができます。 切除術のリスクと比較して 切除術の場合では半月板の一部を取り除きますので、関節のクッションがなくなるのと同じです。すると数年後には関節軟骨がすり減って、変形性膝関節症になる方が多いです。 実際に切除術を行なった10年後には、一般の方の場合で30%、スポーツをしている場合では70%もの方が変形性膝関節症へと移行しています。さらに切除術をすると切った部分から再び断裂が生じることもあり、術後数週間が経過した頃より再び膝の痛みを訴えることがあります。 ところが幹細胞治療であれば半月板をそのまま温存できますので、クッションがなくなる心配がありません。これにより将来、変形性膝関節症になるリスクを大きく減らすことができます。もちろん再断裂のリスクもありません。 幹細胞治療は手術を受けた後でも有効! 切除術で半月板を切り取ってしまうと、切り取った半月板が元に戻ることはありません。後戻りができない治療を受ける前に、再生医療を検討する価値は十分にあると言えます。 そして術後の再断裂の予防にも幹細胞治療は有効です。縫合術を受けたけれども、スポーツ復帰をした後に再断裂しないか心配になる方も多いかと思いますが、縫合術を受けた後に幹細胞治療を行えば、お互いの治療が相乗効果となり、より強固に半月板が修復されることが期待できます。 また切除術を受けた後、断面に新たな亀裂が生じ痛みが再発する場合もよくあります。しかし、多くのケースで「手術は成功しています。しばらく様子を見ましょう。」と言われるでしょう。 幹細胞治療は、再発した術後の痛みの原因となっている、新たな半月板損傷の治療としても有効です。 ▼ 半月板損傷を再生医療で治療する方法があります 再生医療なら半月板損傷は、手術せず、入院せず改善を目指せます 再生医療以外の保存療法 ひざ半月板に損傷がある場合、すべてが手術の対象になるわけではありません。 早急に手術が必要なケースは、痛みにプラスして半月板の引っかかりがあり、膝を動かせないなど、にロックがかかったようになる症状(ロッキング)の場合です。 ロッキングとは、傷ついた半月板が関節の中で挟まってしまい、膝をスムーズに伸ばせなかったり、曲げられずに、膝の動作に制限がある症状のことをいいます。 そして、痛みが長く続き、繰り返し膝に水が溜まるなどの症状がある場合では、日常動作やスポーツ活動だけではなく、仕事に大きな支障をきたすようなケースでは手術が必要となります。 膝に腫れや痛みが強く出現しているときには、膝に負担がかからないよう出来る限り膝を動かさず、安静にすることが治癒をする上で大切なことになります。また、痛みが強い場合は炎症を抑えることを目的に、塗り薬や、貼り薬、消炎鎮痛剤の入った飲み薬を用いて治療を進めていきます。 しかし、膝に大量の水がたまった場合には、関節穿刺といって、膝に針を刺入して余分な体液を取り除くようにします。関節穿刺の他にも、関節の動きをヒアルロン酸で滑らかにし、炎症を鎮める効果が高い薬剤を膝関節内に注入する方法があります。 半月板のなかでも血行が良い部分を損傷した場合は、自然治癒力が働いて治っていくケースもあるため、まずは保存療法で様子をみるようにします。特にスポーツ外傷の場合、手術はリスクを勘案、あくまでも最終手段として、まずは保存療法が選択されることが多くあります。 No.0016 監修:院長 坂本貞範
2022.05.04 -
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- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
- 前十字靭帯
膝関節が痛い!そんな時、どういった病気が疑われるのか 日常生活において、膝に痛みを覚えたり違和感を自覚したことはありませんか? そもそも、膝関節という部分は大腿骨、脛骨、膝蓋骨と呼ばれる3種類の骨形成群が組み合わさって構成されています。私たちが膝を曲げ伸ばしするということは、脛骨の上を大腿骨が前後になめらかに転がっている状態だということになります。 これらの骨表面には弾力性に富んだ柔らかい軟骨というクッションで覆われており、同時に大腿骨と脛骨の間に位置する半月板と呼ばれる部分も膝関節にかかる物理的な衝撃を吸収するという役割を果たしています。 膝関節の痛みを抱えている人にとって、膝に関する正しい知識を知り、日々の適切なケアを継続することによって疼痛症状を緩和させることが期待できます。 今回は、膝関節の痛みを感じた際には「どういった病気が疑われるのか」、そして膝関節の痛みを自覚するようになった場に「どのような対応策があるのか」という2つの観点から解説してまいります。 膝関節の痛みは、どういった病気が疑われるのか 通常の場合には、膝関節の痛みを生じさせる代表的な病気には、「変形性膝関節症」と言われるものが最も多く、その他、運動などのスポーツ障害として「半月板損傷や、前十字靱帯損傷等」などが良く知られ、一部に「関節リウマチ」という場合もあります。 「膝の痛む」ときに多い疾患 変形性膝関節症 関節リウマチ 膝骨壊死症ほか 半月板損傷 前十字靱帯損傷等 後十字靱帯損傷 内側・外側々副靱帯損傷 離断性骨軟骨炎 関節ネズミ オスグッド病 軟骨損傷ほか 変形性膝関節症について、 これは加齢によることが多く、原因としては、年齢を重ねるごとに軟骨が少しずつ摩耗し、半月板が損傷、炎症が起こり関節の変形がみられるようになることです。 変形性膝関節症の初期段階では座った状態から立ち上がる瞬間や歩行動作を開始する時などに限定して膝の痛みを感じますが、休息すれば自然と症状が改善する傾向にあります。 ところが、病状が進行すると正座の姿勢を取る、あるいは階段を昇り降りすることが困難となり、さらに悪化すると安静にしている時でさえも膝の痛みがとれずに膝関節の変形が顕著になると歩行することが出来なくなってしまう怖い病気です。 本疾患における原因としては加齢に伴って膝関節内の軟骨組織が老化することのみならず、肥満体形であることや、元々の遺伝的素因、そして膝関節周囲における骨折病変や半月板損傷を始めとした外傷などの後遺症として発症することが往々にしてあります。 変形性膝関節症は進行性の病気で元の状態に回復させることが困難な病気です。いかに現状の状態を維持できるかといったことが治療の主眼となり、保存療法を中心としたリハビリが有効な治療法となります。 ただ、最終的には「人工関節」という選択を迫られる時がまいります。そのため、膝に違和感を感じたら、早めに病院等にて診察を受け、リハビリ等にて進行を、できるかぎり遅らせるようなお取組みが必要です。 関連記事 変形性膝関節症の人がしてはいけない仕事とその理由 関節リュウマチは、 膠原病という自己免疫が関連した病気で膝関節のみならず手指、手関節、肘関節などを中心に身体のあらゆる関節で炎症が引き起こされる病気です。 関節リウマチを引き起こす要因としては未だに明確なことは判明していませんが、どうやら生体の自然免疫システムが発症に深く関係していると言われており、病状が悪化するメカニズムは最近の医学研究などによって少しずつ明らかになってきています。 本疾患における初期症状としては関節自体に炎症が起こることに伴って関節部の腫れが認められ、それが膝部分で発症すると膝関節部の痛みが出現することになります。 さらに病状が進行してしまうと関節を構成している骨や軟骨などが破壊されることによって関節が変形して屈曲拘縮や関節脱臼など日常生活に多大に支障をきたす症状を自覚することに繋がっていきます。 ▼合わせて読みたい 関節リウマチ放置してはいけない!初期症状と治療法 膝骨壊死症 骨壊死の特徴として、急な痛みがあります。病気が進行することで徐々に痛みが進行していく変形性膝関節症とは違って骨壊死は、急に、突然に痛みが発症する場合が多いと報告されています。 原因としては、軟骨の土台になっている軟骨下骨に微小骨折が生じて骨の壊死が発症していくと推測されています。夜間など寝ている時や、体を動かしていないのに膝の痛みがある場合に膝骨壊死(大腿骨内顆骨壊死、脛骨内顆骨壊死)が考えられます。 半月板損傷、前十字靱帯損傷等 これらの損傷は、比較的若い世代で起こることが多く、運動や、スポーツによって強い力を受けたときに生じる外傷によって膝の痛みがみられる場合に疑われます。 半月板損傷などは、年をとって弱くなった半月板に力が掛かると損傷することもあります。この場合は、日常の軽い怪我、転んだりした場合にも起こるため、年齢を重ねた場合は転倒や、つまずきに注意すべきでしょう。 半月板損傷や前十字靱帯損傷、軟骨損傷などでは膝が伸びないロッキングと言われる症状が出ることがあったり、膝が痛みと共に、曲がらなくなったり、走れなくなる場合があります。 また、前十字靭帯損傷には完全断裂や部分断裂、弛緩といった症状があります。前十字靭帯は、膝関節の脛骨と大腿骨を繋いでいる靱帯で、この部分に強い力が加わることで断裂や伸びてしまったりして損傷が起こります。 この症状はスポーツや運動を行うことで発症することが多く、サッカーやラグビー、バレーボール、バスケットボール、スキーやスノボード。柔道や空手などの格闘技等、激しいぶつかり合いやジャンプしたり、急な捻りが起こったり、転倒が起こることで損傷することが多く見られます。 ▼こちらも合わせてご覧ください 半月板損傷は自然には治らない/その症状と治療法 膝関節の痛みを自覚する病気になった時の対応策 膝関節痛の原因が変形性膝関節症の場合には、 日常生活において、ふとももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えて、出来る限り「正座」の姿勢を取らないように心がけましょう。 また、肥満気味と指摘されれば食生活を見直して運動習慣を持って減量に努める、また膝部分を冷房などで極力冷やさずに血行を良好に保つ、そして和式トイレで長時間膝を屈曲した状態を保持せずになるべく洋式トイレを使用するように認識しておきましょう。 変形性膝関節症を患った患者さんの場合、膝関節の痛みが軽度であれば鎮痛剤を内服するあるいは湿布などの外用薬を貼付する、あるいは膝関節内にヒアルロン酸を注射する処置を実施することもあります。 その上で並行して大腿四頭筋を強化するリハビリ訓練を受ける、関節可動域を改善させるための理学療法を実践する、膝を温める物理療法を試みる、あるいは膝関節にかかる負担を補助するための足底板や膝専用装具を作成するなどの工夫策を組み合わせてみましょう。 これらの保存的な治療でも症状が改善しない場合には関節内視鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などを中心とした手術治療を考慮することになります。 関節リウマチ疾患の治療は、 膝関節の疼痛症状のみならず発熱や体重減少などの全身症状を合併することも多いため、病状の活動性が盛んな際には絶対的安静も必要になるでしょう。 本疾患の病状進行度は患者さん自身の日常生活の習慣と密接に関与していると考えられているため、周囲のサポート環境がリウマチ患者さんに日常生活指導を実践して生活習慣を改善させることで膝関節の痛みなどを代表とする症状を軽減させる効果が期待できます。 普段の食生活においてはタンパク質やビタミン成分、そして微量ミネラル元素などを中心にバランスに優れた食事内容を摂取することをお勧めしますし、体重が増加し過ぎて肥満にならないように心がけることが重要な観点となります。 関節リウマチに対する薬物療法としては、抗リウマチ薬や生物製剤を用いた免疫療法、ならびに原疾患に伴う炎症所見や痛みを緩和させる非ステロイド系鎮痛消炎剤などを用いた対症療法が主流となります。 膝関節における屈曲制限などを含めた機能障害の重症度によっては、その機能を回復させることを主目的として滑膜切除術や人工膝関節置換術などの手術療法を検討するケースも考えられます。 前十字靭帯損傷の治療について 損傷が起こった場合は、リハビリを中心とした運動療法を中心に理学療法、装具療法等の保存療法を行います。それでも症状が改善しない場合は、手術療法を検討することになります。 手術療法には、関節鏡視下にて行う低侵襲の手術であるため、術後の回復も早く、スポーツの場合では競技への復帰、また社会への復帰も早く見込めます。 ただし、注意点としては、靭帯損傷で適切な治療を行わないままに運動や、スポーツを継続すると半月板等、周囲の軟骨を損傷することとなりかねません。そうなると変形性膝関節症に移行しかねない危険性があります。 上記、どんな症状であっても初期の治療が非常に大切です。また、治りきらないまま放置したり、運動を行うのは危険であることをご理解いただければ幸いです。 まとめ・関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのか 膝関節痛を来す病気として代表的なものは変形性膝関節症や、半月板損傷、前十字靱帯損傷、関節リウマチが挙げられます。 これらの関節疾患に罹患した場合には、疼痛症状の度合い、病状の進行度、日常生活における支障度などにはそれぞれ個人差があるので、個々のケースに応じて状態を評価して綿密な治療計画を立案する必要があります。 これらの病気に対する治療や予防に関しては、まずは膝関節を含めて自分の身体の状態を適切に知ることが重要です。その詳細な症状や具体的な治療法、薬剤効果などを本人や家族自身が十分に向き合って理解することが重要な視点となります。 膝に痛みや違和感などがあって心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談されることを検討しましょう。 以上、関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのかについて記載しました。今回の記事、情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼こちらの動画も是非ご覧ください https://fuelcells.org/channel/12570/ No.S074 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療で膝の関節症を治療する 膝に起こる各種関節の問題を再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善する
2022.04.18