-
- 幹細胞治療
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 再生治療
PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)は、切らずに施術できる椎間板ヘルニア治療として注目されていますが、術後に予期せぬ症状が現れることもあります。 「しびれが残る」「痛みが強まる」「ヘルニアが再発した」といったケースもあり得るため、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。 本記事では、PLDDによって生じる恐れのある後遺症やリスク要因、近年注目されている再生医療による治療の可能性について詳しく解説します。 なお、椎間板ヘルニアに対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 椎間板ヘルニアのお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 PLDDの後遺症・合併症 PLDDは低侵襲な椎間板ヘルニア治療法として注目されていますが、すべての患者において合併症や後遺症のリスクがゼロになるわけではありません。 術後にさまざまな症状が発生する可能性があるため、リスクを事前に把握しておくことは治療の選択において重要です。 ここでは、PLDDにおける代表的な後遺症や合併症について詳しく解説します。 神経障害 PLDDでは、レーザー照射で椎間板の中心にあるゼリー状の組織「髄核(ずいかく)」を減圧しますが、熱や操作によって神経に以下のような影響が及ぶリスクがあります。 知覚異常(しびれ、感覚鈍麻) 運動麻痺(筋力低下、動作困難) 神経痛の持続または悪化 これらの症状は手術直後に発症するケースが多く、早期の対応により回復が見込まれることもあります。 神経障害が疑われる場合には、速やかな診察と神経学的検査が必要です。 炎症 PLDDによる熱処理は、局所的な炎症を引き起こす可能性があります。 術後にみられる主な炎症反応は、以下のとおりです。 浮腫や腫脹による神経圧迫 滑膜炎や線維化による可動域の制限 発痛物質の増加による痛覚過敏 これらの症状は術後の痛みや違和感の一因となる場合があり、アイシングや消炎鎮痛薬が必要です。 症状が強い場合は画像検査などで評価し、追加の治療が検討されます。 ヘルニアの再発 PLDDは根治的な手術ではなく、髄核の圧力を一時的に軽減する治療方法です。 以下の要因により、再発のリスクを伴います。 髄核減圧が不十分だった場合 椎間板変性が進行している場合 術後に過度な負荷がかかった場合 再発した場合には再度の保存療法やPLDDの再施行、もしくは別の治療が必要になるケースがあります。 椎間板損傷 PLDDでは、レーザーの熱によって椎間板自体が損傷を受ける可能性があります。 主な損傷例としては以下のとおりです。 椎間板の線維輪に亀裂が生じる 組織のタンパク質が変性し、弾性が低下する 椎間板変性が加速する これらは術後の疼痛や運動制限の原因となり、長期的には椎間板の機能低下につながる恐れがあります。 症状が持続する場合は、MRIなどで評価と追加の治療の検討が必要です。 感染症 PLDDは切開を伴わない低侵襲手技ですが、穿刺操作があるため感染のリスクを完全になくせるわけではありません。 以下のような感染症のリスクがあります。 椎間板炎(椎間板内への細菌感染) 硬膜外膿瘍(硬膜外腔への波及) 皮膚および皮下組織の感染 感染が進行すると激しい痛みや発熱が起こるため、術後の経過観察が重要です。 感染が疑われる場合は、抗生剤の投与や外科的処置が必要になるケースもあります。 PLDD術後に症状が悪化するケースとその原因 PLDDは、切開を伴わない低侵襲治療として注目されていますが、術後にかえって症状が悪化するケースが報告されています。 ここでは、PLDD術後に症状が悪化する代表的な原因を2つの視点から見ていきましょう。 術後の痛みが増す理由 PLDDの術後に痛みが増す理由としては、以下のようなレーザー照射による炎症反応が挙げられます。 椎間板組織や周囲の組織が熱刺激を受けることで炎症が起こる 炎症による浮腫(むくみ)や発痛物質が神経根を圧迫・刺激する 術後早期に一時的な痛みの増強が見られることがある 次に、神経そのものへの刺激や損傷も痛みの原因となります。 照射位置や針の操作がずれた場合、神経線維を損傷するリスクがある 熱や機械的刺激により、神経性疼痛が発生しやすくなる しびれやビリビリとした感覚が持続することがある また、PLDDの構造的な限界として、ヘルニア突出部が直接取り除かれない点が挙げられます。 髄核の一部を蒸発させるだけで、飛び出た部分はそのまま残る 除圧が不十分な場合、残存ヘルニアが神経を継続的に刺激し続ける 結果として、術前よりも強い痛みを感じる場合がある さらに、交感神経の過敏化や疼痛感作といった慢性痛の機序も関与します。 手術による神経刺激が自律神経系を介し、痛みの過敏化を引き起こす 中枢神経での痛覚調整が乱れ、慢性的な痛みが残ることがある このように、PLDD術後に痛みが増す要因には、複数の要素が複合的に関係しているため、術後の経過観察と適切な対応が不可欠です。 PLDDが失敗する要因 PLDDが十分な効果を発揮しない、あるいは術後に症状が悪化する原因には複数の要因が複雑に関係しています。 以下のような症例では、PLDDの効果が限定的です。 脱出型・遊離型のヘルニア:突出が大きく、髄核の蒸発だけでは物理的な除圧が不十分になる 高度な椎間板変性:構造が劣化しており、減圧効果が発揮されにくい 症状と画像所見の不一致:痛みの原因と照射対象が合致していない 以下のような術中操作の不備も失敗の一因となります。 照射量が少なすぎる:十分な髄核蒸発が得られず、除圧効果が不十分 照射方向の誤り:標的に正確に照射できず、効果が局所に偏る 熱損傷や血腫形成:神経や周辺組織を損傷し、痛みやしびれを悪化させる さらに、術後管理の不適切さも見逃せません。 安静期間が不十分:早期の過度な動作が治癒を妨げ、炎症を助長 再突出のリスク:負荷管理が徹底されていないと、再発や隣接椎間板の障害につながる 上記のリスクを最小限に抑えるためには、適応の厳密な判断と術中の精密な操作、術後の継続的フォローアップが不可欠です。 LDDを成功させるためには単に手技を実施するだけでなく、患者ごとの状態を的確に把握し、全過程を通じて一貫した管理が求められます。 PLDD術後後遺症の神経障害に対する再生医療の可能性とは 再生医療の「幹細胞治療」がPLDD術後後遺症への新たな希望となるかもしれません。 従来、神経が傷ついてしまうと完全にもとに戻すことは難しいとされてきました。 そのため椎間板ヘルニアの術後後遺症が残ってしまっても、薬やブロック注射などの対症療法を行うことしかできなかったのです。 しかし、再生医療の幹細胞治療により、神経の回復を目指せるのではないかと期待されています。 幹細胞治療は、他の細胞に変化できる「幹細胞」を使用するのが特徴で、体への負担が少ない低侵襲な新しい治療法です。 PLDDの術後の後遺症が心配な方、椎間板ヘルニアの症状でお困りの方はチェックしてみてください。 PLDDの基本知識 ここでは、PLDDを理解するために必要な椎間板ヘルニアの発症メカニズムから、PLDDの具体的な治療内容・メリット・リスク・適応条件までわかりやすく解説します。 治療を検討しているなら、まず基本知識から理解を深めていきましょう。 椎間板ヘルニアのメカニズム 椎間板ヘルニアは、椎間板内部の構造の破綻によって、神経が圧迫されることで発症する疾患です。 人間の背骨は椎骨(ついこつ)という骨が縦に積み重なって形成されており、その間には「椎間板」という軟らかい組織が存在します。 椎間板は、以下の2つの構造で構成されています。 髄核(ずいかく):中心部にあるゲル状の柔らかい組織で、水分を多く含み、衝撃を吸収する役割を担っている 線維輪(せんいりん):髄核を外側から包む硬い繊維性の組織で、椎間板全体の形を保持する 通常、髄核は線維輪の内部に収まっていますが、過度な負荷や加齢による変性が進行すると、線維輪に亀裂が生じる場合があります。 髄核が亀裂から外へ飛び出し、近くを走行する神経根を物理的に圧迫すると、椎間板ヘルニアは発症するというメカニズムです。 圧迫が生じると、以下のような神経症状が引き起こされます。 痛み(神経の圧迫による電気が走るような感覚) しびれ(知覚神経の障害) 筋力低下や麻痺(運動神経の障害) 腰椎や頚椎など、神経が密集している部位で髄核が飛び出すと、症状が強く現れる傾向があります。 したがって、治療では圧迫状態をいかに早く緩和するかが重要なポイントです。 治療方法 PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)は、レーザーによって椎間板内の圧力を下げ、神経への圧迫を軽減する低侵襲の治療法です。 背中から極細の針を刺して、内部にレーザーファイバーを通し、椎間板の中心部へレーザーを照射します。 照射されたレーザーは髄核の一部を熱で蒸散させて椎間板内の内圧を下げます。その結果、次のような変化が期待されます。 髄核の体積が減少し、内部の圧力が緩和される 椎間板の膨らみが小さくなり、神経の圧迫がやわらぐ 神経根への圧迫が軽減され、痛みやしびれの改善が期待できる メスを使用しない手術であり、皮膚に針を刺すだけの処置で切開・縫合は不要です。 ごく小さな刺し傷ができるのみで、出血や傷跡も最小限に抑えられます。 さらに、PLDDは体への負担が少ないため入院を必要とせず、医療機関によっては日帰り手術も可能です。 治療を検討する際は、MRIなどの画像検査をもとに、担当医と十分に相談しながら決めることが大切です。 メリット・デメリット PLDDは、体への負担が少ない低侵襲手術として注目されていますが、デメリットも存在します。 以下に、主なメリットとデメリットをまとめました。 <主なメリット> メスを使わないため、出血や傷跡がほとんど残らない 局所麻酔で施術でき、全身麻酔が不要 針穴程度の傷のみで、体への侵襲が極めて少ない 1椎間あたりの手術時間が短い 入院不要な場合が多く、日帰り手術が可能 術後の回復が早く、社会復帰までの時間が短い 神経や周辺組織への影響が少なく、合併症リスクが比較的低い <主なデメリット> 健康保険が適用されず、自費診療となる 効果が現れるまで1〜3カ月かかることがある すべての椎間板ヘルニアが適応になるわけではない 術者の技量や施設によって治療成績に差が出る可能性がある 稀に感染症や椎間板炎、神経障害などの合併症リスクがある 一度で十分な効果が得られない場合、再施術が必要になる 上記の特性を把握したうえで後遺症の状態やヘルニア形態などを総合的に考慮し、治療を検討することが重要です。 PLDD治療のメリット・デメリットについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。 安全性 PLDDは比較的安全性の高い手術法であり、日帰り手術でも実施されています。 出血や大きな傷がほとんどなく、周辺組織への直接的な損傷リスクが小さい点も特徴です。 ただし、術中・術後の合併症リスクはゼロではありません。 レーザーによる神経合併症の報告もあるため、治療の検討はさまざまな点を考慮しながら慎重に進めましょう。(文献1) 適している人 PLDDは、すべての椎間板ヘルニアに適応できるわけではありません。 比較的効果が期待できる患者には、以下のような条件が挙げられます。 膨隆型・突出型のヘルニア:髄核の飛び出しが比較的小さく、線維輪を突き破っていない 椎間板の変性が軽度:加齢による変化が進みすぎておらず、椎間板に弾力性・可動性が残っている 保存療法で効果が見られないケース:薬物療法やリハビリを3カ月以上行っても、症状が改善しない 中等度の神経圧迫があるが、重度ではない:痛みやしびれはあるが、明確な麻痺や排尿障害は認められない 一方で、以下のような症例ではPLDDの効果が限定される、あるいは適応外となる場合があります。 脱出型・遊離型の大きなヘルニア 高度に変性した椎間板 脊柱管狭窄症など、骨性の圧迫が主因 広範囲な神経障害や運動麻痺、膀胱直腸障害を伴う重症例 このように、PLDDは限られた症例に対して効果が期待される治療法である点に留意しておきましょう。 費用目安 PLDDは自由診療(保険適用外)として提供している施設が多く、治療の費用は医療機関によって大きく異なります 一般的な相場は30万〜50万円程度ですが、施設によって価格設定が異なるため、事前に確認が必要です。 また、2カ所以上の複数椎間に対して行う場合には、追加の費用が発生するのが一般的です。 なお、費用に術前の検査費用や術中管理費用、術後フォロー費用がすべて含まれるかどうかも施設ごとに異なるので、しっかり確認しておきましょう。 PLDD治療と費用に関しては、以下の記事もご覧ください。 まとめ|PLDD術後後遺症に対する治療法をチェック PLDDの術後に後遺症が起こらないことが一番ですが、どのようなリスクや症状があるのかを知っておくことは、治療法を検討するうえで大切です。 万が一後遺症が起こってしまった場合には、再生医療という選択肢もあります。 再生医療の幹細胞治療は、PLDDをはじめとした椎間板ヘルニアの術後後遺症に対応する新しい治療法のひとつです。 幹細胞治療では、患者様自身から採取・培養した幹細胞を患部に投与します。 幹細胞が他の細胞に変化する「分化能」という能力を活用する治療法です。 一般的には培養した幹細胞を冷凍保存して使用しますが、当院では患者様ごとに「その都度」培養を実施。細胞を凍結せずに保存・輸送することで、新鮮で生存率・活動率の高い幹細胞の提供に努めています。 以下は、当院のヘルニアに対する再生医療の症例です。 椎間板ヘルニアのお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」までお気軽にご相談ください。 PLDDの後遺症に関するよくある質問 PLDDの術後に悪化するケースはありますか? PLDDは低侵襲な治療法ですが、術後に新たな腰痛やしびれ、太ももの筋肉の張りなどを感じるケースがあります。 術中の熱刺激や炎症反応によって周囲組織が過敏になったり、神経への一時的な負担が生じたりするのが主な原因です。 多くは一過性の症状で、時間の経過とともに軽快する傾向がありますが、症状が強い場合は早期に医師に相談しましょう。 ヘルニアの治療でPLDDが失敗するケースはある? PLDDは比較的安全な治療法ですが、効果が十分に得られない・後遺症が残る・再発するといった結果により、患者が「失敗した」と感じるケースがあります。 なかでも、脱出型ヘルニアや変性が進んだ椎間板、複数部位の神経圧迫では効果が限定される可能性があるのです。 適応症の見極めや術者の技量、術後の管理が失敗を防ぐ上で重要となります。 以下の記事では、PLDD治療前のチェックポイントを解説しているので参考にしてみてください。 PLDDは先進医療として厚生労働省に指定されていますか? PLDDは、かつて厚生労働省の先進医療に指定されていましたが、2012年に先進医療の対象から除外されています。 現在は公的医療保険の対象外であり、自由診療として各医療機関が独自に提供しているのが現状です。 治療を受ける際は費用や提供体制について、事前にしっかりと確認しておきましょう。 参考文献 (文献1) 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版|日本内科学会雑誌(J-STAGE)
2024.03.08 -
- 幹細胞治療
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 再生治療
PLDD治療と費用、再生医療の可能性について解説します 椎間板ヘルニアは多くの人々が抱える健康問題であり、その治療法は常に進化を続けています。そこで近年、注目を集めているの先進医療をご紹介いたします。それが「PLDD(Percutaneous Laser Disc Decompression )」といわれるもので日本語に直すと「経皮的レーザー椎間板減圧術」といわれるものです。 この治療法は、レーザーを用いて椎間板の圧力を軽減し、痛みを和らげるもので、従来の手術に比べて身体への負担が少ないことが特徴というものです。 本記事では、PLDDについてと、その治療メカニズムと併せて気になる健康保険の適用や医療費控除の適用、費用に関する解説をします。 また後遺症の治療における再生医療の可能性について詳しく解説します。 PLDDとは PLDDは、1980年代初頭に開発されたレーザーを用いた最新の治療法です。主に頚椎や腰椎の椎間板ヘルニアに対して行われます。 治療は局所麻酔のもと、針を椎間板に挿入し、レーザーを照射して椎間板内の圧力を低下させ、ヘルニアを小さく縮ませることで神経の圧迫を押さえて痛みを軽減させるものです。 この方法の大きな利点は、局所麻酔下で行うことができるので入院の必要がなく、日帰りで行えるため、患者の負担が少ないことです。従来の外科手術に比べて侵襲が少なく、術後の回復も早いという利点もあります。また針を刺して行うため傷口が大きくならない点も利点です。 手術もレーザー用の注射痕程度になるため、感染による合併症の心配も少ないと言えます。 PLDDが最も適応するのは、「膨隆型(ぼうりゅうがた:椎間板が膨らんだような形になり、神経を少し圧迫しているタイプのヘルニア)」とされています。 ただし、椎間板の変性が進んでしまったケースでは、PLDDを行っても椎間板ヘルニアの症状が改善しないことがあるようです。 PLDDの利点 治療:レーザーによる手術 入院:不要(日帰りで可能) 手術痕:レーザーを照射するための針穴のみ 手術:局所麻酔 手術:合併症(細菌感染等)の可能性が低い レーザー治療の仕組み PLDD治療は、局所麻酔のもとで行われます。まず、針を椎間板に挿入し、その後レーザーをファイバーを通して照射します。レーザー光によって椎間板内の水分が蒸発し、ヘルニアが縮小するため、神経への圧力が減少します。これにより、神経根への圧迫が緩和され、痛みが軽減されるという仕組みです。 治療時間は約30分程度で、多くの場合は日帰りでの治療が可能です。 PLDDの費用と保険適用の現状 PLDDの費用は、クリニックによって異なりますが一般的には30万円から50万円程度が相場とされています。現在、PLDDは日本では健康保険の適用外となっています。そのため、治療費は全額自己負担となりますが、医療費控除の対象となる可能性があります。 医療費控除とは、一定期間内に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた分について所得税から控除される制度です。PLDDの治療費も、他の医療費と合わせて年間10万円を超える場合は医療費控除の対象となる可能性があります。しかしながら、医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。 健康保険:適用外 費用感:30万円~50万円 先進医療とPLDD 頚椎椎間板ヘルニアに対するPLDDは、厚生労働省による先進医療の指定を受けていましたが、数年前に取り消されています。 その理由としては、PLDDは日本での普及がまだ進んでいないからといったものです。 しかし、その後もPLDDの効果や安全性については多くの臨床研究によって実証されており、今後は保険適用の対象となることが 期待されています。 PLDDはどんな病院で受けられるのか PLDDを受けられるクリニックは全国にありますが、施設によって技術や設備に差があります。 治療を受ける際には、事前に情報を収集し信頼できる施設 を選ぶことが重要です。また、治療後のフォローアップ体制も確認しておくと安心です。 後遺症の治療と再生医療 PLDD治療は、傷口も少なく身体に与える負担はとても小さい治療です。そのため、PLDDそのものによる後遺症はほとんどないと考えられます。 その一方で、ヘルニアそのものによる症状が残ることもあり、後遺症となってしまう場合があります。このようなヘルニアの後遺症に対しては、脊髄神経の再生を目的とする再生医療 による治療が有効な場合があります。 再生医療では、患者自身の幹細胞を用いて損傷した脊髄神経の再生を目指します。具体的には、患者様ご自分の血液や脂肪を採取し、培養「自己間葉系幹細胞 」として損傷部位に投与するものです。 この自己間葉系幹細胞 には、脊髄神経の再生を促したり 、部分的に再生したりするといった能力があるとされますが、厚生労働省の許認可が無ければできない先端医療です。 脊髄の再生医療では、手術やPLDD治療ではできない、脊髄神経そのももの再生が可能となるのです。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE まとめ・PLDD治療と費用、再生医療の可能性について 今回は、PLDDはどのようなものなのか、費用、保険適用、医療費控除、どのような病院で受けられるのか、そして後遺症の治療における再生医療の可能性について解説しました。 PLDDは、レーザーを活用した医療技術として、椎間板ヘルニア の治療に新たな選択肢を提供しています。費用は自己負担となりますが、医療費控除の対象となる可能性があります。 治療を検討する際には、クリニック選びやフォローアップ体制にも注意が必要です。PLDDは今後、さらなる普及と発展が期待される治療法です。 一方で、PLDDを行っても頚椎あるいは腰椎の椎間板ヘルニアによる後遺症が残ってしまうこともあります。こうした場合には、再生医療による治療も選択肢として上がります。 当院では、脊髄損傷 に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。 これは、自分の脂肪組織や血液から幹細胞を抽出、培養し、点滴で静脈注射、 あるいは当院独自技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内 ダイレクト注射療法もあります。 再生医療にご興味のある方や、治療を考えたいという方は、 ぜひ一度当院までご相談ください。 参考文献 レーザーによる経皮的椎間板減圧術 (PLDD法) の経験.中四整会誌.1997;10 (2): 229-233. Hellinger J. "Technical aspects of percutaneous laser disc decompression (PLDD)." Lasers in Surgery and Medicine, 1999.Dec;16(6):325-31. 【保険適用外の手術費用の補助】保険適用外の手術(ヘルニアのレーザー手術)を受けたのですが、その費用(約50万円)は高額医療費として一部支給されないのでしょうか?また、支給を受けるためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか? | よくある質問 | 日本アイ・ビー・エム健康保険組合 既存の先進医療に関する保険導入等について 平成 22 年1月 20 日 先進医療の各技術の概要|厚生労働省 Mochida J, et al. "Regeneration of intervertebral disc by mesenchymal stem cells: Potentials, limitations, and future direction." European Spine Journal,2006 Aug;15(Suppl 3): 406–413. ▼以下もご参照いただけます ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!?
2024.03.07 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアの治療でPLDDを検討している方の中には、「本当に効果があるのか」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。 PLDDは体への負担が少ない低侵襲の治療として注目されていますが、選択する際には医学的な根拠に基づいた理解が欠かせません。 本記事では、PLDDにどのような効果があるのか、信頼性の高い論文データに基づいて解説していきます。 また、合併症のリスクも解説するので、PLDDで治療すべきか迷っている方は参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、PLDD後の後遺症に対する治療として再生医療を導入しており、公式LINEにて情報提供および簡易オンライン診断を行っております。 PLDDの術後後遺症に不安をお持ちの方は、ぜひご登録ください。 PLDDの効果【データを基に解説】 PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)は、腰椎椎間板ヘルニアに対する治療法のひとつですが、その効果に関しては信頼できるデータに基づいた理解が重要です。 ここでは、医学論文に記載された統計データをもとに、PLDDの有効性と安全性について詳しく解説します。 保存療法と比較して約7倍の疼痛改善効果 PLDDの疼痛軽減効果は、従来の保存療法と比較して大幅に優れていることが示されています。 医学論文によれば、薬物療法や理学療法などの保存的治療を受けた患者群では、6カ月後の痛みの程度を示すスコア(VASスコア:視覚的アナログスケール)が平均4.1%しか減少しなかったのに対し、PLDDを受けた群では同期間で平均30%もの有意な減少が確認されました。(文献1) さらに、機能評価のひとつである「Macnab基準」においても、PLDDを受けた患者の約39.8%が「優良」または「良好」と評価され、生活の質の改善が裏付けられています。 この報告から、PLDDは保存療法と比べて、約7倍の疼痛軽減効果を示す治療法といえます。 成功率70〜89%|合併症率は0.3〜1.0% PLDDの有効性は、長期的かつ国際的なデータでも明らかにされています。 オーストリアのグラーツ大学脳神経外科によると、1986〜2009年にかけての23年間の集計で、PLDDの成功率は70〜89%という高水準で推移していたと報告しています。(文献2) 一方で、合併症発生率は0.3〜1.0%と非常に低く、主な合併症は椎間板炎に限られていました。また、再発率も4~5%に抑えられており、長期的な予後も比較的安定しています。 これらの結果から、PLDDは高い成功率と低い合併症率を兼ね備えた、安全性と有効性の両面で信頼性のある治療法といえます。 3年後も効果が持続|年齢に関わらず有効 PLDDの治療効果は一時的なものではなく、長期的に維持されることが示されています。 42名を対象とした3年間の追跡研究では、治療後3カ月で臨床症状が有意に改善し、その効果が3年間にわたり持続していました。(文献3) また、年齢別の効果比較においても、45歳以下および45歳超の両グループで同様に良好な治療成績が確認されています。 年齢によって治療効果に差は見られず、PLDDは幅広い年代の患者にとって有効な選択肢のひとつです。 手術後の日常生活への復帰は平均1週間 PLDDのメリットのひとつが、術後の回復が早い点です。 複数の研究によれば、PLDDの治療が成功した患者は、平均して1週間以内に通常の日常生活に復帰していました。(文献2) 外来で実施できるため全身麻酔を必要とせず、身体への負担が少ないという特徴が背景にあります。 また、手術後のリハビリテーションが短期間ですむことも、早期回復に寄与しています。 結果として、仕事や家庭生活への影響を最小限に抑え、早期の社会復帰を可能にしています。 PLDDは効果が期待できても合併症のリスクがある PLDDは、椎間板ヘルニアに対する低侵襲な治療法として注目されています。 成功率が高く回復も早い一方で、一定の合併症リスクが存在します。 ここでは、PLDDの主な合併症リスクについて解説します。 神経障害 PLDDでは、レーザーの熱によって神経根に障害が及ぶリスクがあります。 主に照射範囲の誤りや過剰な出力が原因で、まれに術後のしびれや感覚異常、疼痛の悪化が現れることがあります。術者の技術と経験が重要な治療法です。 とくに、術中に使用する針の挿入角度やレーザーのパルス設定が適切でないと、周辺神経への熱損傷を引き起こす可能性があります。 また、術後の神経学的評価も欠かせません。 炎症 PLDDの治療では、椎間板内での熱反応や物理的刺激により、非感染性の炎症(無菌性椎間板炎)が生じるケースがあります。 炎症によって術後一時的に疼痛が強くなる場合もありますが、通常は消炎鎮痛薬で管理可能です。 エネルギー設定と照射時間の適切な管理が重要であり、実績がある医療機関で施術してもらう必要があります。 また、治療後数日以内に発熱や局所の痛みが増した場合は、感染症との鑑別が重要となるため、医師の診察を早期に受けましょう。 ヘルニアの再発 PLDDの術後も、椎間板にかかる力や加齢による変性によって再発が生じる場合があります。 蒸散量が不十分な場合や、術後の生活管理が不適切な場合に再発リスクが高まるのです。 報告によると、PLDDの再発率は約4~5%とされています。(文献2) ただし、肥満や重労働など椎間板に過度な負担がかかる状況では再発率が上昇する可能性があるため、医師による生活指導とフォローアップが極めて重要です。 椎間板損傷 レーザー照射による過熱や針の位置が不適切な場合、椎間板の線維輪に損傷を与えることがあります。 損傷が進行すると椎間板の変性や再突出の原因となるため、術者による照射出力の調整と正確な針の操作が重要です。 また、椎間板損傷は術中には見逃されやすいため、術後の画像検査や定期的なモニタリングによって早期に変性の兆候を見つける体制が望まれます。 感染症 PLDDは皮膚から椎間板にアプローチするため、無菌操作が不十分な場合には感染症のリスクがあります。 とくに、椎間板炎は重大な合併症であり、予防のためには抗生物質の使用や術中の滅菌管理が不可欠です。 早期の症状把握と治療介入が重症化を防ぐ鍵となります。 感染予防としては、術直前の抗菌薬投与やディスポーザブル機器の使用、清潔操作の徹底が基本です。 術後は倦怠感や発熱、患部の疼痛増強がないか、注意深く観察する必要があります。 PLDDを避けたい方へ|再生医療という治療選択肢 手術を伴う治療に不安を感じる方には、再生医療という選択肢もあります。 再生医療とは、本来の機能を失った組織や細胞に対して、自分自身の幹細胞や血液を用いる治療法です。 幹細胞は、細胞環境に応じて異なる細胞に変化する能力を持ち、PRP(多血小板血漿)に含まれる成長因子には、炎症を抑える働きがあります。 体への負担を抑えた治療を検討している方にとって、手術を伴わない選択肢になっています。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪由来の幹細胞を用いた治療や、PRP療法を実施しています。 いずれの治療法も入院や手術は不要で、日帰りでの対応が可能です。 当院のヘルニアに対する再生医療について、詳しくは以下をご覧ください。 まとめ|PLDDの効果と合併症リスクを見極めよう PLDDは体への負担が少なく、日常生活への早期復帰を希望する方にとって検討しやすい治療法のひとつです。 一方で、神経障害などの合併症リスクもあるため、慎重な検討が求められます。 とくに、保存療法や他の選択肢と比較検討する際には、医師による十分な説明と理解が不可欠です。 当院「リペアセルクリニック」では、椎間板ヘルニアの術後の後遺症や神経に関する悩みに対して、再生医療の「自己脂肪由来の幹細胞治療」を提供しています。 幹細胞の投与方法として、静脈点滴に加え、脊髄腔内への直接投与も行っており、損傷部位への到達経路の工夫に取り組んでいます。 公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を行っています。 再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひご登録ください。 PLDDの効果に関するよくある質問 PLDDの費用は? PLDDは公的健康保険の対象外であるため、治療にかかるすべての費用が自己負担です。 手術そのものの費用にとどまらず、適応の判断に必要な診察や検査、治療後の薬剤処方なども含まれます。 医療機関によって金額は異なりますが、数十万円程度の費用がかかるケースが一般的です。 PLDDの費用感については、以下の記事でも詳しく解説しています。 PLDDの手術中や手術後の痛みはどのくらい? PLDDは、皮膚に小さな針を刺すだけの低侵襲な治療法であり、一般的な手術に比べて術中や術後の痛みが少ない点が特徴です。 施術ではまず局所麻酔を行い、針を刺したときの痛みを感じにくくする工夫がされています。 また、メスで皮膚を切開する必要がないため、術後に傷口の痛みで悩まされることもありません。 PLDDは身体への負担が少なく、手術に伴う痛みを抑えやすい治療法といえるでしょう。 PLDDに治療のデメリットはある? PLDDは体への負担が少ない治療法とされていますが、いくつかの注意点もあります。 たとえば、術後に新たな腰痛やしびれ、筋肉の張りを感じるなど、今までになかった症状が現れるケースがあるのです。 術前より悪化するとは限りませんが、まれに数週間続く場合もあります。 また、神経根炎や椎間板炎、感染症などの合併症が起こる恐れもあり、適応を誤ると十分な改善が得られません。 PLDDを選択する際には、リスクも含めて事前に十分な説明を受けた上で慎重に検討しましょう。 PLDDに後遺症はある? PLDDは、術後に後遺症が残る可能性も完全には否定できません。 後遺症には、次のような症状があります。 神経障害:術後に新たなしびれや感覚異常が残る 慢性的な痛み:炎症が長引き、椎間板や隣接組織の変性により疼痛が継続する 椎間板の変性・損傷進行:照射による熱刺激が線維輪や隣接構造に影響を与える 再発性ヘルニア:時間の経過とともに症状が再燃する 頻度として高くはないものの、術前適応の判断や術中操作、術後管理を慎重に行わなければリスクが高まる点に留意しておきましょう。 PLDDは厚生労働省に認可されている先進医療? かつては、厚生労働省が定める「先進医療」として認められていた時期があり、手術費用のみが自費扱いで、診察や検査などは保険適用が可能でした。 しかしながら、平成24年に「有効性や効率性が十分に示されていない」として、先進医療の対象から除外されています。 したがって、現在ではすべてが自由診療として取り扱われており、治療を検討する際には事前に費用の確認が重要です。 ヘルニアの治療でPLDDに失敗はある? PLDDは低侵襲で体への負担が少ない治療法とされていますが、効果が得られず失敗と感じるケースもあります。 治療の適応が不十分だった場合や、椎間板の変性が進行していた場合などは、症状が改善しないことがあるのです。 また、再発や別の治療を検討せざるを得ないケースもあるため、PLDDを検討する際は、事前に治療の限界や再施術の可能性についても確認しておきましょう。 PLDD手術で失敗があるかに関しては、以下の記事もご覧ください。 参考文献 (文献1) Comparative Efficacy of Percutaneous Laser Disc Decompression (PLDD) and Conservative Therapy for Lumbar Disc Herniation: A Retrospective, Observational, Single-Center Study|PubMed (文献2) 23rd Anniversary of Percutaneous Laser Disc Decompression (PLDD)|PubMed (文献3) Efficacy evaluation of percutaneous laser disc decompression in the treatment of lumbar disc herniation|PubMed
2024.03.05 -
- 幹細胞治療
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニア手術を受ける予定だけど、手術後の生活のイメージが掴めない」「仕事復帰できるのはいつ頃から?」 このような不安や疑問を抱えていませんか? 本記事では、椎間板ヘルニア手術後のリハビリや仕事の再開時期を解説します。 手術後の生活で気をつけることや注意点も紹介しているので、参考にしてみてください。 痛みやしびれの回復具合に合わせてリハビリを続け、医師の指示を受けながら徐々に日常生活へと戻していきましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活|仕事復帰までのステップ 椎間板ヘルニア手術後の生活はどのように変化するのでしょうか。 ここでは、リハビリや仕事復帰、運転などの再開までの流れや期間を解説します。 痛み・しびれ リハビリ期間 仕事復帰 運転 性行為 手術後の生活プランを立てる際の参考にしてみてください。 痛み・しびれは手術後1カ月ほど続く 手術後は、神経の修復に時間がかかるため、痛みやしびれが1カ月ほど続く可能性があります。 痛みやしびれが出ているときは、神経が敏感な状態にあるため、生活のなかで不便さを感じる場面があるでしょう。 そこで、無理に体を動かすと、症状を悪化させたり、再発につなげたりしかねません。 症状が落ち着くまでは安静に過ごす意識をもつようにしてください。 リハビリを始めるのは手術後1カ月ほど リハビリは、手術後1カ月ほどから開始します。 リハビリは手術後すぐに取り組むものというイメージがあるかもしれませんが、実際には手術後すぐにリハビリに取り組む必要性は認められていません。(文献1) 椎間板ヘルニア手術後におけるリハビリの目的は、腰回りの筋肉を強化して再発を防ぎ、日常生活への円滑な復帰を促すことです。 以下に効果的なリハビリの運動例を紹介します。 【お腹を鍛える運動】 お腹を意識しながら腹式呼吸 仰向けになって膝を立て、首を軽く起こしてお腹をのぞき込む腹筋運動 など 【お尻を鍛える運動】 仰向けになって膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げるブリッジに似た運動 うつ伏せになり曲げた片足をゆっくり上げ下げする運動 など 動作中に強い痛みがあるときは、回数や力の入れ方を調整しましょう。 仕事復帰できるのは手術後から1.5カ月ほど 手術後、仕事復帰までの期間は、受けた手術の種類や仕事内容によって異なりますが、平均すると1.5カ月程度です。 背中の患部付近を切開する従来の手術法の場合、傷口の完全な回復を待つ必要があるため、復帰までの期間が長くなる傾向にあります。一方で、小さな切開で済む内視鏡手術法の場合は、手術の回復が比較的早く、仕事復帰までの期間が短縮しやすいです。 仕事内容においては、腰を使う重労働業務の場合は、復帰までに時間がかかるケースがあります。 ある調査では、重労働業務における復職までの平均期間は44日ほどと報告されています。(文献2) 運転できるのは手術後2週間ほど 短い距離の運転なら手術後2週間ほどで、運転を再開できます。 ただし、以下のように特殊な状況がある場合は、運転の再開時期が遅れる可能性があります。 旅行や出張など長距離の運転をする場合 バスやタクシーのドライバー 農業や工事現場の重機操縦者 自己判断で運転を再開してしまうと、腰に負担がかかり症状が悪化する恐れがあります。 安全に運転を再開するためにも、医師と相談しながら慎重に復帰の時期を決めましょう。 性行為は手術後2週間ほど控える 性行為は、手術後2週間ほどは控えたほうが安心とされています。 手術後は、傷口の修復や、腰まわりの痛み・しびれが落ち着いていない場合があるためです。 少しでも違和感や痛みがあるうちは、無理をしないことが大切です。腰に負担がかかる動きは、回復を遅らせるほか、再発してしまう恐れもあります。 体の回復を優先し、無理のない範囲で行動を選びましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活でやってはいけないこと・注意点 椎間板ヘルニア手術後の生活でやってはいけないこと・注意点を解説します。 主に以下3つの行動は、回復を遅らせたり、再発リスクを高めたりする可能性があります。 リハビリの中断 腰に負担がかかる運動 腰に負荷がかかる姿勢や動作 順番に見ていきましょう。 リハビリの中断 椎間板ヘルニアの手術後にやってはいけないことは、リハビリの中断です。 手術後は安静にする時間が長くなり、体を支える筋肉が弱まりやすくなります。 続けてきたリハビリを中断してしまうと、再び体に負担がかかりやすくなり、症状の悪化や再発の原因になりかねません。 痛みが和らいだとしても、自分で判断してリハビリを中断せず、医師の指示に従って継続する意識が大切です。 なお「仕事やスポーツでリハビリの時間を確保するのが難しい」という方は、再生医療の治療を検討してみてください。主に注射または点滴を使った治療なので、手術後のリハビリや後遺症の心配はいりません。 腰に負担がかかる運動 手術後3カ月ほどは、腰に強い負担がかかる運動はしばらく控える必要があります。 無理をすると、傷口が開いたり、再発したりする恐れがあるためです。 具体的には以下のような運動は控えましょう。 腰をひねる体操 ダッシュやジャンプなどの衝撃が強い運動 ゴルフやテニスなど腰をひねる動きが多いスポーツ これらは腰部への負担が大きく、早期の復帰はリスクが高いといえます。 ただし、まったく体を動かさないのも良くありません。軽いストレッチや簡単な体操など、筋力を保つ適度な運動は回復に役立つため、医師の指導のもとで取り入れましょう。 腰に負荷がかかる姿勢や動作 椎間板ヘルニアの手術後1週間ほどは、腰に負荷がかかる姿勢や動作は避けるようにしてください。 たとえば、落ちた物を拾うときに腰を曲げてかがむのは負荷のかかる姿勢です。物を拾う際は、膝を曲げてしゃがむようにすれば、腰への負担を減らせます。 また、腰をひねる動きも症状悪化や再発のきっかけになります。 たとえば、後ろに振り向く動作は、腰にねじれの動きが入り負荷がかかります。後ろを振り向きたいときは、足を使って身体ごと向きを変えると腰への負担が少ないです。 日常生活を振り返り、腰に負荷のかかる姿勢や動作があれば、改善していきましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活で脊髄損傷が起こるリスク 椎間板ヘルニア手術後にやってはいけないことや注意点をお話ししてきましたが、手術後早期に腰を曲げたり、腰をひねったりすると、脊椎の中を通る神経の束である脊髄が傷ついてしまい、脊髄損傷を起こしてしまうリスクがあります。 脊髄損傷の主な症状は以下のとおりです。 知覚鈍麻 痛みや痺れ 麻痺脊髄損傷は一度起こってしまうと自然には治りません。手術後に脊髄損傷が疑われる症状が現れたら、すぐに手術をした医療機関に連絡をしましょう。 椎間板ヘルニア・脊髄損傷でお悩みの方へ「再生医療」を紹介 一般的に、損傷した大きな神経は修復することができません。 椎間板ヘルニア手術で脊髄損傷した場合、下肢の麻痺により、歩行困難や車いすでの生活が余儀なくされる可能性もあります。 そんな脊髄損傷の治療法の一つに、幹細胞を用いる「再生医療」があります。 幹細胞とは、体のさまざまな組織に変化できる細胞です。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身の脂肪を採取・培養した幹細胞を用いる治療を提供しております。 再生医療について気になる点などございましたら、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ まとめ|椎間板ヘルニア手術後はリハビリを継続して仕事復帰を目指そう 手術後の生活では、リハビリを続けて、日常生活で無理な姿勢や動作をしない意識を持つことが回復への近道です。 腰への負担を避け、正しいリハビリを継続すれば、再発リスクを抑えながら仕事復帰を目指せます。 本記事で紹介した注意点やリハビリ内容を参考に、ご自身のペースで回復に向けた生活習慣を整えていきましょう。 なお、椎間板ヘルニアや手術後の脊髄損傷に対しては「再生医療」という治療法もあります。 再生医療の幹細胞を使った治療では、体のさまざまな組織に変化をする幹細胞を損傷した患部に投与します。再生医療をご検討、あるいは気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 宮本 雅史,中嶋 隆夫.「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版」日本内科学会雑誌 105 巻 11 号pp1〜5 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/11/105_2210/_pdf/-char/ja (最終アクセス:2025年4月16日) (文献2) 廣田 勝也, 島﨑 功一.「腰椎椎間板ヘルニア術後における重労働者のホームエクササイズ実施状況と復職状況との関連因子の検討」日本理学療法士協会 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_H2-207_2/_article/-char/ja/?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年4月16日)
2024.03.01 -
- 幹細胞治療
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアの治療として注目されているMED(内視鏡下椎間板摘出術)とPELD(経皮的内視鏡下椎間板摘出術)は、いずれも内視鏡を用いた低侵襲手術です。 しかしながら、手術の方法や適応となる症状、術後の回復や合併症リスク、費用などに違いがあります。 本記事では、MEDとPELD(PED)の主な違いをわかりやすく整理して解説します。 椎間板ヘルニアの手術を検討している方は、自分に合った術式を選ぶための参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、MEDとPELD(PED)の後遺症治療の選択肢となっている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を行っています。 椎間板ヘルニアの治療で不明な点があれば、ぜひご登録ください。 MEDとPELD(PED)の違い MEDとPELD(PED)の違いを項目ごとにまとめました。 項目 MED PELD 手術 背部から16mm程度の切開。筋肉を押し分けて椎間板を摘出。全身麻酔が必要。 7mm程度の小切開から椎間孔経由で摘出。局所麻酔で実施が可能。 適応 重度のヘルニアや骨の切除が必要な場合、癒着のある複雑な症例にも対応可能。 軽〜中等度のヘルニアで骨切除を必要としない症例に適応。 手術後 術後に筋肉痛や張り感が残ることがある。回復にやや時間がかかる。 傷が小さく、術後の痛みや回復が軽度。当日または翌日から歩行可能。 メリット 術中に目で見える範囲を確保しやすく、再発例や複雑なケースにも対応可能。 低侵襲で回復が早く、高齢者や麻酔リスクがある患者にも適応可能。 デメリット 切開が大きく、PELDと比べて筋肉や骨への侵襲が大きい。全身麻酔が必要。 操作視野が狭く、高度な技術が必要。適応症例が限定される。 入院期間 約7日間の入院が必要。術後経過観察と安静が必要。 日帰りまたは1泊2日での退院が可能。 合併症リスク 骨や筋肉の操作により神経損傷や硬膜損傷のリスクがある。 合併症リスクは低いものの、視認性制限による誤操作のリスクがある。 手術費用 保険適用で20〜30万円前後が目安。自由診療は少ない。 保険適用で20〜30万円前後が目安だが、先進医療機器使用で追加費用の可能性あり。 以下では、それぞれの項目について詳しく解説します。 手術の違い MEDとPELD(PED)は、いずれも内視鏡を用いた低侵襲手術ですが、進入経路や切開の大きさ、術中に扱う組織に違いがあります。(文献1) MEDは、背中側から皮膚を約16mm切開し、筒状の器具(ダイレーター)を用いて筋肉を押し分け、椎間板ヘルニアを摘出する手法です。 骨や靱帯を一部削る場合もあります。 一方、PELD(PED)は直径7mmの小さな切開から椎間孔を通して患部へアプローチする方法で、筋肉や骨への侵襲を最小限に抑えられるのが特徴です。 MEDが全身麻酔が一般的なのに対し、PELD(PED)は局所麻酔で行われることが多く、手術中に患者とコミュニケーションを取りながら進められる利点もあります。 以下の表にそれぞれの手術についてまとめたので、参考にしてみてください。 特徴 PELD MED 従来の手術法 皮膚の切開の大きさ 7mm程度 16mm程度 3〜4cm 麻酔の方法 局所麻酔可能 全身麻酔 全身麻酔 手術の時間 1時間程度 2時間程度 1時間程度 術後の入院期間 日帰り可能 1週間程度 1週間程度 体に与える負担 軽い 軽いがPELDに比べると骨や筋肉などに侵襲が大きい 傷口が大きいため負担になる可能性あり 適応の違い||どんな人・症状に向いている? MEDとPELD(PED)は、いずれも椎間板ヘルニアに対する内視鏡手術ですが、対象となる患者の状態やヘルニアの形態によって適応が異なります。 MEDは骨の一部切除を必要とする中等度から重度のヘルニアや、突出範囲が広いタイプにも対応可能です。 また、癒着が強い例や複雑な解剖構造を伴う場合でも施術できます。 一方、PELD(PED)は、神経に接するように突出したヘルニアが明確に存在し、かつ骨の除去が不要なケースに向いています。 神経の圧迫が軽度から中等度で、椎間孔から安全にアプローチできる症例が理想です。 手術後の違い|傷の大きさ・痛み・回復 MEDは16mmほどの切開と筋肉の牽引が必要なため、術後に筋肉痛や張りを感じることがあります。 傷の小ささや痛みの少なさを重視する場合には、PELDの方が適しているでしょう。 PELD(PED)は、直径6〜8mmの小さな切開で行うため、筋肉や靱帯への負担が非常に少なく、術後の痛みも軽度に抑えられます。 手術直後からの起立・歩行も可能です。 MEDはやや大きな切開と組織剥離が伴うため、術後の痛みや違和感が数日続く場合があり、回復にもやや時間を要します。 PELDは体への侵襲が少ないため、術後の回復が早いのが特徴です。 当日や翌日の歩行が可能なケースもあり、早く社会復帰して日常生活への影響を最小限に抑えたい方に適しています。 メリットの違い MEDは視野が広く、やや複雑な病変や癒着のあるケースにも対応できるのがメリットです。 再発例や重度のヘルニアにも柔軟に対処できます。 PELDは小さな切開で行われるため、身体への負担が少なく、術後の回復が早いことが最大のメリットです。 局所麻酔下で実施できる点から、高齢者や全身麻酔が困難な方にも適しています。 デメリットの違い MEDには、切開が比較的大きく、PELDと比べて筋肉や骨への侵襲がやや大きいというデメリットがあります。 術後には筋肉痛や腰部の違和感が数日間残ることがあり、入院や安静期間もPELDより長くなる傾向があります。 また、手術には全身麻酔が必要となるため、高齢者や持病を抱える方にとっては負担となる場合がある点に留意しておきましょう。 一方、PELDは体への負担が少なく局所麻酔で実施可能ですが、適応症例が限定されています。 重度の椎間板ヘルニアや椎間孔が狭い場合は、適応外となる点に注意です。 さらに、操作範囲が狭いため術中の視野確保が難しく、術者の高度な技術が必要とされます。 入院期間の違い MEDは切開部がやや大きく、筋肉や骨に対する操作も加わるため、術後に安静期間が必要です。 したがって、一般的に平均7日程度の入院が必要とされており、術後の経過観察や痛みの管理を慎重に行う必要があります。 一方、PELD(PED)は体への侵襲が非常に少なく、術後の痛みも軽度に抑えられるため、日帰りまたは1泊2日での退院が可能です。 合併症リスクの違い MEDでは比較的広い術野を確保するべく、筋肉や骨の操作が必要になる場合があり、術中に神経根や硬膜を損傷するリスクがあります。 とくに、癒着が強い症例では、術中の出血や術後の神経障害が起こる可能性が否定できません。 一方、PELD(PED)は切開が非常に小さく、筋肉や靱帯をほとんど傷つけずに行うため、全体として合併症のリスクは低いとされています。 ただし、操作スペースが限られることから、神経周囲の視認性に制限があり、不完全摘出や術中誤操作のリスクも一定程度存在します。 どちらの術式も、医師の技術と適切な術前評価が合併症リスクを左右します。 手術費用の違い|保険は適用されるのか MEDとPELD(PED)ともに、国内の多くの医療機関で保険診療として提供されており、原則として健康保険が適用されます。 術式や入院期間、医療機関によって費用は異なるものの、いずれも3割負担の場合、入院費用を含めて20〜30万円程度が目安です。(文献2) ただし、医療機関によっては、個室料金や特殊な医療機器の使用料など、保険適用外の費用が別途発生する場合があります。 とくに、日帰り手術や先進的機器を用いるケースでは追加費用が発生することもあるため、事前の確認が必要です。 いずれの術式も高額療養費制度の対象であるため、一定の範囲内で自己負担額を抑えられます。 PELD(PED)の費用については、以下の記事もご覧ください。 MED・PELD(PED)の後遺症に対する再生医療の可能性 MEDやPELD(PED)による内視鏡手術は体への負担が少ない一方で、術後に残存する神経症状や、慢性的な腰痛といった後遺症が完全に防げるわけではありません。 また、手術そのものに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。 このような場合の治療法として、再生医療という選択肢があります。 再生医療とは、本来の機能を失った組織や細胞に対して、自分自身の幹細胞や血液を用いる治療法です。再生医療には主に2つの方法があります。 他の細胞に変化する能力を持つ幹細胞を患部に投与する「幹細胞治療」と、血液中の血小板に含まれる成長因子の働きを活用する「PRP療法」です。成長因子には炎症を抑える働きがあります。 いずれの治療法も入院や手術は不要で、日帰りでの対応が可能です。体への負担を抑えた治療を検討している方にとって、手術を伴わない選択肢となっています。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪由来の幹細胞を用いた治療や、PRP療法を実施しています。ヘルニアに対する再生医療について詳しくは、当院の症例を紹介している以下の記事をご覧ください。 まとめ|MEDとPELD(PED)の違いを理解して治療を検討しよう MEDとPELD(PED)は、いずれも術式の特性や適応範囲、術後の経過などに違いがあります。 MEDは視野が広く再発や重症例にも対応しやすい一方で、切開や侵襲がやや大きくなる傾向があります。 対して、PELDは傷が小さく回復が早いものの、適応症例に制限があるなど、それぞれの特性を正しく理解し、症状や生活の状況に合った手術法を選ぶことが重要です。 手術に対して不安を抱えている方には、再生医療という治療の選択肢があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、ヘルニアの治療や手術後の後遺症に対する再生医療情報発信、および簡易オンライン診断を実施しています。 椎間板ヘルニアの治療でお困りのことがあれば、ぜひご登録ください。 MEDとPELD(PED)に関するよくある質問 PELD(PED)手術で失敗はある? PELD(PED)の手術は低侵襲で身体への負担が少なく、成功率も高いとされていますが、結果的に失敗と感じられるケースがあります。 たとえば、術後に十分な症状改善が得られない場合や、ヘルニアの再発、神経症状の残存などが患者にとって「効果がなかった」と捉えられるケースがあるのです。 また、患者様の症状やヘルニアの状態によっては、PELDが適さない場合があります。 適応を誤ると、期待した効果が得られない可能性があるため、術前の十分な検査と評価が重要です。 PELD(PED)手術の名医を教えてください。 PELD(PED)手術において「名医」と断定できる公的な基準はありませんが、技術的な信頼性の目安として「日本脊椎内視鏡下手術・技術認定医」の資格が挙げられます。 日本PED研究会によって認定された制度で、厳格な審査と実績に基づいて付与されるものです。 資格を持つ医師が在籍する医療機関は、日本PED研究会の公式サイトで一覧確認が可能です。(文献3) PELD(PED)を検討する際は、認定医が在籍する施設をチェックしておきましょう。 PELD(PED)手術の流れを知りたい PELD(PED)の流れの一例をご紹介します。(文献2) 1.手術前日(入院・準備) 入院して術前の準備を行います。飲食は夕食まで可能で、飲水は夜9時まで摂取できます。 2.手術当日 点滴や注射などの準備をした後、手術室へ移動して手術が行われ、術後は病室に戻ります。 飲食・飲水は腸が動くまではできませんが、立ち上がりや歩行は可能です。 3.退院後〜1週間 食事は問題ありません。軽い運動は可能ですが、体をねじる動作や立ったまま・座ったままでの腰の運動は避けます。 消毒は不要で、絆創膏は7日後に外します。日中はコルセットを着用しますが、就寝時は外して構いません。 4.術後2〜3週間 学校や職場に復帰できますが、1時間ごとに立ち上がって腰を伸ばし、少し歩いてから再び座るようにします。 1週目と同様に、腰をねじる・かがむ姿勢は避けます。入浴は可能で、車の運転も1時間以内であれば許可されます。 5.術後3週間〜3か月 きつすぎない労働や、事務作業・家事・勉強などの日常動作は通常通り行えます。 6.術後3か月以降 重労働も可能になります。椎間板の状態を確認するため、レントゲン検査やMRI検査を行います。 7.術後6〜12か月 定期的に受診し、腰の状態を診察します。その後は、痛みや違和感などがある場合に随時受診します。 ただし、上記はあくまで一例です。 医療機関によって異なる点にご注意ください。 参考文献 (文献1) Japanese Journal of ORTHOPAEDIC SPORTS MEDICINE|一般社団法人日本整形外科スポーツ医学会 (文献2) PEDとは?|出沢明PEDクリニック (文献3) PED手術病院 一覧(認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医 在籍施設)|日本PED研究会
2024.02.28 -
- 幹細胞治療
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
低侵襲治療という言葉を耳にしても、どのような治療かイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。 低侵襲治療とは、手術や検査に伴う体への負担をできるだけ抑える医療を指します。身体を大きく切らずに済む内視鏡やカテーテル、ロボット支援手術など、患者への負担を軽減するさまざまな方法が実用化されています。 この記事では、低侵襲治療の概要、メリット・デメリット、治療の種類や対象疾患について解説します。ご自身やご家族の治療法を検討する際の参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 手術を必要としない再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 低侵襲治療とは 低侵襲治療とは、手術や検査に伴う痛み、出血、発熱などの身体への負担(侵襲)をできるだけ抑える治療法です。 内視鏡やカテーテルなど、体を大きく切らずにすむ医療機器を用いて術後の痛みや回復までの時間を軽減します。高齢者や持病のある方でも治療できる場合があり、幅広い人にとって負担の少ない治療の選択肢となりえます。 低侵襲治療のメリット 低侵襲治療の主なメリットは、以下の通りです。 手術時の痛みや出血が少ない 傷口が小さく、体表へのダメージが少ない 回復が早く、入院期間が比較的短い 早期の日常生活や社会復帰が見込める 低侵襲治療は、患者様の心身の負担を軽減しながら治療に臨めます。手術が不安な方にも、前向きに検討しやすい治療法です。 低侵襲治療のデメリット 低侵襲治療の主なデメリットは、以下の通りです。 すべての疾患に適用できるわけではない 症状や病気の進行などによっては適用できない場合がある 高度な医療機器が必要 術者の技術差が結果に大きく影響する 低侵襲治療は、高度な専門性と設備が欠かせません。また、患者様に適しているとは限らず、病状や施設の体制によっては従来の治療法が選ばれることもあります。 デメリットを十分に理解した上で、医師と相談し慎重に治療法を選びましょう。 低侵襲治療の種類と対象疾患 低侵襲治療の種類と対象疾患は下記の通りです。 治療名 主な対象疾患 治療の特徴 鏡視下手術(PELD) 椎間板ヘルニア 小さな穴から内視鏡を入れて行う手術 内視鏡手術 消化管の早期がん 胃や大腸にカメラを入れて病変を切除 経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD) 椎間板ヘルニア 細い針とレーザーで椎間板の圧迫を緩和 ロボット手術 がん治療 自在に動くロボット器具で難所の手術を実現 カテーテル手術 血管の狭窄 狭心症など カテーテルを血管内に挿入し、血管を広げる 体外衝撃波治療 足底腱膜炎 石灰性腱炎 テニス肘など 衝撃波を当てて痛みや炎症を軽減する 放射線治療 がん治療 放射線でがん細胞のDNAを破壊し死滅 それぞれの治療の特長や適応疾患、治療の流れなどを知ることで、自分に合った治療法を検討する際の参考にしてください。 鏡視下手術・PELD|椎間板ヘルニアや消化器がんなど 鏡視下手術は、体に小さな穴を数カ所開けてカメラや特殊な手術器具を挿入し、モニター映像を見ながら行う治療法です。とくに、椎間板ヘルニアに対して行う鏡視下手術は、PELD(経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術)と呼ばれます。 手術部位を切開して行う従来の手術に比べて出血が少なく、痛みや傷跡も最小限で済むため、早期の回復や社会復帰が期待できます。 鏡視下手術が検討される可能性がある疾患は、以下の通りです。 椎間板ヘルニア、膝半月板損傷などの整形外科疾患 食道がん、胃がんなどの消化器疾患 肺がん、転移性肺腫瘍などの呼吸器疾患 膀胱がん、尿路結石などの泌尿器疾患 子宮筋腫、子宮腺筋症などの婦人科疾患 鏡視下手術はすべての症例に適しているわけではなく、病状や施設の設備によっては従来の手術が選ばれる場合もあります。治療の選択肢として検討する場合は、医師と十分に相談しましょう。 内視鏡手術|消化管の早期がんやポリープ切除 内視鏡手術は、口や肛門から胃カメラ・大腸カメラを挿入し、消化管の内側から病変を切除する治療法です。主に食道・胃・十二指腸・大腸の早期がんに対して行われます。 体内に傷をつけないので、身体への負担が少ないのが特徴です。 がんの進行が浅く局所に限られている場合に適応されるため、早期発見と正確な診断が重要です。内視鏡手術に関心がある方は、医師に相談してみましょう。 経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)|椎間板ヘルニア 経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)は、椎間板ヘルニアに対する低侵襲の治療法です。 経皮的レーザー椎間板減圧術の手順の一例は、以下の通りです。 背中の皮膚から、細い針を椎間板内の中心まで挿入する 針を通して、椎間板内の中心にレーザーファイバーを照射する 椎間板の内圧が下がり、突出していた部分が引っ込み神経の圧迫を緩和する 手術時間は30分程度が一般的で、針穴のみの小さな傷ですみ、入院も半日~1泊程度と短期間です。 重度のヘルニアには適応されなかったり、保険適用外の自由診療となったりするため、事前の検査と医師の判断が必要です。 ロボット手術|泌尿器科や消化器などのがんなど ロボット支援手術は、腹腔鏡手術の進化形といえる治療法です。「ダヴィンチ」は代表的なロボットで、関節のように自在に動く器具により、人の手では届きにくい部位の精緻な手術が可能です。 主な手順は以下の通りです。 患者様の体に小さな穴をあける ロボットアームと内視鏡を挿入する 医師は別の操作台から3D画像を見ながらロボットを遠隔操作する 前立腺がんや胃がん、直腸がん、子宮筋腫など多くのがん手術で導入されており、創が小さく出血も少ないため、術後の痛みが軽く回復も早いのが特徴です。一方、触覚がないことや緊急対応の難しさといった課題もあるため、経験豊富なチームによる対応が不可欠です。 ロボット支援手術は、開腹手術に抵抗がある方や、早期回復を望む方にとって有力な選択肢となります。 カテーテル手術|心臓や脳など カテーテル手術は、心臓や脳、血管などの病気に対し、体への負担を抑えて行う低侵襲治療です。 主な手術の手順は、以下の通りです。 細い管(カテーテル)を、手首や足の付け根から血管内に挿入する X線透視下で狭窄や閉塞部位まで誘導する バルーンを膨らませて血管を広げたり、再狭窄を防ぐために金属製のメッシュで作られた管(ステント)を挿入したりする カテーテル手術は、脳梗塞の原因となる血管の狭窄や狭心症などが対象です。 手術時間は1〜2時間程度と短く、回復も早いのが特徴です。 体外衝撃波治療|足底腱膜炎や石灰沈着性腱板炎、テニス肘など 体外衝撃波治療は、皮膚の上から衝撃波を患部にあてて痛みや炎症を和らげる治療法です。衝撃波によって神経や血管が刺激され再生が促されると考えられています。 メスを使わず入院も不要なため、アスリートや手術に抵抗がある方、保存療法で改善がみられなかった方に用いられています。 体外衝撃波治療の対象となる主な疾患は、以下の通りです。 足底腱膜炎 石灰性腱炎 アキレス腱痛症 テニス肘 早期の骨壊死 疲労骨折 尿路結石 1回の治療は5分程度で、4〜6回の通院で完了するのが一般的です。 放射線治療|がん治療 放射線治療は、がんに対する三大治療の一つで、患部に放射線を照射し、がん細胞のDNAを破壊して死滅させる治療法です。手術のように臓器を取り除くことなく、体の外からがん細胞にアプローチできる点が特徴です。 主に、リニアックと呼ばれる照射装置を用いるのが一般的です。 治療中に痛みはなく、日常生活を続けながら受けられるため、高齢者や体力に不安のある方にも適しています。 喉頭がん、食道がん、子宮頸がん、脳腫瘍など多くのがん種が対象となり、手術や薬物療法と組み合わせる場合もあります。 1回の治療は15分程度で、回数は症状により異なりますが、1〜40回が目安です。治療期間中は効果や体への影響を確認するため、定期的に診察を受けましょう。 身体の負担が少ない再生医療も治療の選択肢 手術や入院が不要で、身体への負担が少ない再生医療は、以下の症状に対して治療の選択肢になる場合があります。 椎間板ヘルニア 変形性膝関節症 変形性股関節症 足底腱膜炎 肩腱板断裂 再生医療は、自身の血液や細胞を用いて、痛みや炎症にアプローチします。治療は注射や点滴で完了するケースが多く、入院せずに通院で受けられる点も魅力です。 手術に不安がある方や、できるだけ早く日常生活に復帰したい方にとって、再生医療は有力な治療法のひとつです。再生医療の詳細を知りたい方は、お気軽に当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 まとめ|身体への負担を抑えた治療法が、質の高い回復につながる 低侵襲治療とは、手術や処置に伴う痛みや出血などの身体的負担(侵襲)を最小限に抑える治療法です。 内視鏡やカテーテル、ロボット支援手術などを用いるので、手術の傷口が小さく早期の復帰が見込める点がメリットです。一方、すべての疾患に適用できるわけではなく、高度な設備や技術を要するなどのデメリットもあります。 また、注射や点滴で行う再生医療も身体への負担が少ない治療法の一つです。いずれの治療にも向き・不向きがあるため、医師とよく相談し、自分の症状や生活状況に合った治療法を選びましょう。 低侵襲の治療に関するよくある質問 低侵襲手術の入院期間は? 低侵襲手術の入院期間の目安は、以下の通りです。 手術の種類 疾患 目安の入院期間 鏡視下手術 変形性膝関節症 2日〜3日 内視鏡手術 食道や胃などの早期癌 8~10日 経皮的レーザー椎間板減圧術 椎間板ヘルニア 日帰り ロボット手術 前立腺全摘除術 2週間 カテーテル手術 心房細動 2~4日 体外衝撃波治療 足底腱膜炎 日帰り 放射線治療 がん治療 日帰り 手術の内容や症状によって異なるので、詳しい日数は医師に相談してみましょう。 低侵襲手術に欠点はありますか? 低侵襲手術は、すべての疾患に適応できるわけではなく、症状の進行具合や患者様の状態によっては従来の手術が優先されることもあります。また、高度な医療機器や熟練した術者が必要とされるため、医療機関の設備や体制にも左右されます。 欠点を把握した上で医師と十分に相談し、自分に合った方法を慎重に選びましょう。 脊柱管狭窄症の手術は何歳までできますか? 脊柱管狭窄症の手術には、明確な年齢制限は設けられていません。しかし、以下のような持病や既往歴がある場合には、術後の合併症リスクが高くなるため、手術が見送られる可能性もあります。 糖尿病を患っている 呼吸困難や慢性閉塞性肺疾患など呼吸機能に障害がある ステロイド薬を継続的に服用している また、過去に腰椎などの手術を受けた経験や、他疾患による入院歴がある方も、合併症の発生リスクが高まる可能性があります。 手術を検討する際は、年齢だけでなく、全身の健康状態やこれまでの医療歴も含めて、医師と十分に相談しましょう。
2024.02.22 -
- 幹細胞治療
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニアの手術にはどんなリスクがある?」「手術の後遺症が不安……。」 椎間板ヘルニアの手術を勧められたものの、リスクが気になり決断できない人も多いのではないでしょうか。 手術には合併症や後遺症、再発のリスクが伴います。これらを正しく理解した上で、手術を受けるべきか判断することが大切です。 本記事では、椎間板ヘルニア手術のリスクとその対策を医師が詳しく解説します。リスクを理解した上で適切な治療方法を選択できるように、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。 椎間板ヘルニアの症状でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 椎間板ヘルニア手術による合併症リスク 椎間板ヘルニアの手術は、症状を改善する有効な治療法ですが、合併症のリスクも伴います。椎間板ヘルニアの手術による主な合併症リスクには以下の4つが挙げられます。 出血や血腫形成 術後感染(化膿)や骨髄炎の可能性 硬膜損傷による髄液漏れ 血栓症や癒着 本章を参考に、椎間板ヘルニアの手術にはどのようなリスクがあるのか、理解を深めておきましょう。 出血や血腫形成 手術では出血が避けられませんが、過度な出血や血腫が形成されると、神経の圧迫による痛みの悪化や運動機能の低下を引き起こす場合があります。 内視鏡下椎間板摘出術(FELD)では、止血操作が困難な場合があり、顕微鏡下手術に切り替える可能性もあります。(文献1) リスクを最小限に抑えるためには、手術中の止血処置が重要です。 また、抗凝固薬を服用している方は、手術前に医師へ相談しておきましょう。 術後感染(化膿)や骨髄炎の可能性 手術部位の感染が起こると、創部が化膿するだけでなく、重症化して骨髄炎を引き起こす場合があります。 術後の免疫力低下や傷口の管理不足が原因となる場合が多く、全内視鏡下手術(FELD)では、約0.5%の確率で細菌感染が発生すると報告されています。(文献1) 感染を防ぐためには、術後の傷口の清潔を保ち、医師の指示に従って抗生物質を適切に服用することが重要です。 硬膜損傷による髄液漏れ 椎間板ヘルニアの手術では、脊髄を包む硬膜が損傷し、髄液が漏れ出すリスクがあります。 とくに、内視鏡下手術(FELD)では、硬膜に穴が開く場合があり、術後3~30日後に髄液漏が発生する可能性もあるため、注意が必要です。(文献1) 髄液漏れが発生すると、術後に強い頭痛を伴い、場合によっては髄膜炎を引き起こすケースもあります。 そのため、硬膜損傷を防ぐためには、経験豊富な医師のもとで手術を受けるのが良いでしょう。 血栓症や癒着 術後に長時間動かずにいると、血流が滞り血栓が形成されるリスクが高まります。 たとえば、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症は重篤な合併症となる可能性があるため、注意が必要です。(文献2) また、手術部位の組織が癒着すると、神経が圧迫され、術後の痛みが長引くケースもあります。(文献5) そのため、術後のリハビリは、合併症を防ぐためにも非常に重要です。 医師の指示に従い、適切なタイミングで開始するのが良いでしょう。 椎間板ヘルニアの手術後に起こり得る後遺症リスク 手術後の経過が順調でも、しびれや痛みが一時的に残る場合があります。これは、神経が圧迫されている状態が続いていた場合、手術後もしばらく神経の回復に時間がかかるためです。 本章では、椎間板ヘルニアの手術後に起こり得る後遺症リスクとして、以下の2つを紹介します。 一時的なしびれ・痛みのリスク 神経の損傷による麻痺・筋力低下のリスク それぞれ詳しくみていきましょう。 一時的なしびれ・痛みのリスク 椎間板ヘルニアの手術後には、しびれや痛みが一時的に悪化するケースがあります。 これは、術中に神経根や神経節が圧迫されるために起こる現象です。(文献1) 術後のしびれや痛みを軽減するには、リハビリやストレッチが有効です。 神経の回復には時間がかかるため、焦らず経過を見守る必要があります。 術後1〜2カ月で症状が軽減するケースが多く、長引く場合は医師と相談し、追加の治療を検討しましょう。 神経の損傷による麻痺・筋力低下のリスク 手術時の器具操作によって神経が傷つくと、運動麻痺や筋力低下が残る可能性があります。(文献1) このリスクを減らすためには、経験豊富な医師を選ぶことが重要です。 また、術後のリハビリを積極的に行い、神経機能の回復を促すのも大切だといえます。 椎間板ヘルニアに関する手術後の後遺症や治療法については以下の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。 椎間板ヘルニア手術後の再発リスク 椎間板ヘルニアの手術は痛みを軽減する有効な手段ですが、再発の可能性があることも理解しておく必要があります。 ヘルニアの再発率は6〜10%前後といわれています。(文献1) 椎間板ヘルニアは、飛び出した椎間板の一部を取り除く手術ですが、完全に除去できるわけではありません。残った部分が再び突出することで、ヘルニアが再発するケースもあります。 また、過度な運動や姿勢の悪さ、椎間板の老化なども再発リスクを高める要因です。とくに、手術後すぐに無理な動作を行うと再発の可能性が高まります。 再発予防のためにも、適切なリハビリを行いつつ、普段の生活習慣の見直しを行いましょう。 椎間板ヘルニア手術の麻酔時のリスク 手術には麻酔が不可欠ですが、全身麻酔と局所麻酔のそれぞれにリスクが存在します。 麻酔の種類 リスク 副作用 全身麻酔 血圧低下、呼吸抑制、心肺機能への負担 術後の吐き気、めまい、のどの違和感 局所麻酔 神経損傷、麻酔が効かない場合の痛み 注射部位の違和感、軽度のしびれ 本章では、全身麻酔と局所麻酔のリスクや副作用について、さらに詳しく解説します。 全身麻酔のリスクと副作用 全身麻酔は、意識を完全に失わせるため、呼吸や血圧の管理が重要です。 麻酔の影響で血圧が低下し、心肺機能に負担をかける場合があり、術後には、吐き気やめまい、のどの違和感が生じるケースもあります。 また、これらの副作用は一時的なものですが、高齢者や持病を持つ人は注意が必要です。 手術前に医師と相談し、適切な麻酔方法を選ぶことでリスクを軽減できます。 局所麻酔によるリスクや副作用 局所麻酔は、手術部位のみに作用し、意識を保ったまま行う方法です。 全身麻酔に比べて体への負担は少ないですが、神経損傷や血圧変動が起こる可能性があります。 また、局所麻酔が十分に効かない場合、手術中に痛みを感じる場合もあるとされています。 そのため、麻酔が適切に作用しているかを医師が確認しながら進めるのが一般的です。 椎間板ヘルニア手術の後遺症には再生医療も検討しよう 手術による後遺症が出る場合、近年注目されている再生医療を検討するのも選択肢の一つです。 神経損傷や筋力低下が長引く場合には、幹細胞治療やPRP療法など、再生医療による治療が有効な可能性があります。 手術後の回復が思わしくない場合は、再生医療の専門医に相談してみるのも良いでしょう。 以下の記事では、術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて、再生医療に期待できる有効性を紹介しています。 治療法の選択肢を広げたい方は、ぜひあわせてご覧ください。 【関連記事】 ヘルニア治療|PELD(PED)術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!? まとめ|椎間板ヘルニアの手術はリスクを理解した上で医療機関を選ぼう! 椎間板ヘルニアの手術には、合併症や後遺症、再発、麻酔のリスクが伴います。 成功率が高いとはいえ、リスクを軽視すると術後のトラブルにつながる可能性があります。 そのため、手術を検討する際は、医師と十分に相談し、自身の症状に合わせた治療方法を選ぶことが重要です。 また、手術後のリハビリや生活習慣の見直しも、回復や再発予防のために欠かせません。 リスクを理解し、信頼できる医療機関を選択することで、安全かつ納得のいく治療が受けられるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。 椎間板ヘルニア手術の後遺症でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 椎間板ヘルニア手術のリスクに関するQ&A 椎間板ヘルニアの手術で失敗する確率は? 手術効果や手術の有効性は70〜80%といわれています。(文献1) そのため、「失敗」の定義にもよりますが、再発リスクを含めると20%程度はなんらかのトラブルを考慮する必要があるでしょう。 ただし、合併症の多くは一時的なものであったり、適切な処置で改善が見込めます。 ヘルニア手術はしたほうがいいですか? 手術はあくまで選択肢の一つです。 保存療法で改善が見込まれる場合は、無理に手術を受ける必要はありません。 また、手術を検討する際は、医師と相談し、他の治療法と比較した上で適切な選択をすることが重要です。 椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術に関する詳細や、メリットについては以下の記事も参考にご覧ください。 リペアセルクリニックは再生医療専門クリニックです。 椎間板ヘルニアの手術でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献 (文献1) 香川労災病院「全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出手術」 https://www.kagawah.johas.go.jp/wp-content/themes/kagawarousai/assets/doc/hospital/department/neurosurgery/department-neurosurgery_002.pdf(最終アクセス:2025年2月26日) (文献2) 日本整形外科学会「術後肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症」 https://www.joa.or.jp/public/pdf/joa_033.pdf(最終アクセス:2025年2月26日)
2024.02.19 -
- 脊椎
- 胸椎椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニアの手術って、どれくらい入院するんだろう?」 「できれば短期間で済ませたいけど、どんな手術法があるのかも気になる…」 このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか? 椎間板ヘルニアの手術は、症状の程度や選択する手術法によって入院期間が異なります。 日帰りで受けられるケースもあれば、1〜2週間の入院が必要になる場合もあります。 仕事やスポーツの復帰時期を考慮したい方は、以下の各手術の入院期間を把握しておきましょう。 手術の種類 入院期間 LOVE法 約2週間 MED法(内視鏡下椎間板摘出術) 4〜7日間程度 PED法(経皮的髄核摘出術) 日帰りもしくは数日間入院 脊椎固定術 1〜2週間程度 レーザー手術(PLDD) 1〜2日程度 本記事では、椎間板ヘルニア手術における各手法の入院期間を解説します。 あわせて、手術のリスクや費用も紹介しているので、参考にしてみてください。 椎間板ヘルニア手術の入院期間|手法や費用も紹介 椎間板ヘルニア手術の種類は、複数あります。 ここでは代表的な以下5つの手術をピックアップし、それぞれの入院期間を解説します。 LOVE法 MED法(内視鏡下椎間板摘出術) PED法(経皮的髄核摘出術) 脊椎固定術 レーザー手術(PLDD) 手法や費用も紹介するので、参考にしてみてください。 LOVE法 |入院期間は約2週間 LOVE法は、背中側から皮ふを切開し、ヘルニアの周辺にある骨を少し削って、目で確認しながら患部を取りのぞく手術です。 この治療法は、日本でもっとも多く選ばれている手法です。 LOVE法の入院期間は、約2週間かかります。 手術時間は1時間程度ですが、全身麻酔を用いるため、体をしっかり休める時間が必要です。 手術・入院に必要な費用は、15万円〜30万円ほどとされています。 治療方法 背中側から皮ふを切開し、骨の一部を削ってヘルニアを目で確認しながら取りのぞく治療法 入院期間 約2週間 費用(3割負担) 15〜30万円ほど MED法(内視鏡下椎間板摘出術)|入院期間は4〜7日間程度 MED法は、椎間板ヘルニアに対して内視鏡を使って治療する方法です。 背中側を小さく切開し、カメラで映し出された映像を見ながらヘルニアを取りのぞきます。 LOVE法と似た手法ですが、目で直接見るのではなく、モニターを通じて治療を進める点が特徴です。 皮ふや筋肉への負担が少なく、手術後の痛みが和らぐ効果が期待できます。 MED法の入院期間は、約4〜7日間です。LOVE法同様に、全身麻酔を用いて治療を進めます。 手術・入院に必要な費用は、20万円〜25万円ほどです。 治療方法 小さな切開から内視鏡を使い、モニターを見ながらヘルニアを除去する手術 入院期間 約4〜7日間 入院費用(3割負担) 20〜25万円ほど PED法(経皮的髄核摘出術) |日帰りもしくは数日間入院 PED法は、局所麻酔で細い器具を体内に挿入し、レントゲンで位置を確認しながら脱出した髄核の一部を取りのぞく手術です。 神経を圧迫している部分を直接取りのぞくため、ヘルニアによる痛みやしびれが和らぐ可能性があります。 傷が小さく、体への負担も少ないため、日帰りや数日の入院で済むケースが多いです。 手術・入院に必要な費用は、20万円〜25万円ほどです。 治療方法 局所麻酔で細い器具を入れ、レントゲンを確認しながら脱出した髄核を除去する手術 入院期間 日帰りもしくは数日の入院 入院費用(3割負担) 20〜25万円ほど 脊椎固定術|入院期間は1〜2週間程度 脊椎固定術は、ヘルニアの治療のために椎間板や骨の一部を処置したあと、自家骨や人工骨、金属プレートなどを使って脊椎を安定させる手術です。 入院期間は約1〜2週間が目安で、脊椎の骨がしっかり癒合するまでには3〜6カ月程度かかります。 手術・入院に必要な費用は、3割負担の場合で30〜40万円ほどが目安ですが、症状や手術内容によって変動します。 治療方法 骨を削ったあと、骨や金属プレートで脊椎を安定させる治療法 入院期間 約1〜2週間 入院費用(3割負担) 30〜40万円ほど レーザー手術(PLDD) |入院期間は1〜2日程度 PLDDは、椎間板の内部にレーザーを照射し、ヘルニアを部分的に蒸発させて縮める治療です。 ヘルニアが小さくなると、神経にかかる圧力が弱まり、痛みやしびれの和らぎにつながります。 短時間で処置が終わるケースが多く、入院期間は約1〜2日です。 レーザー手術は保険が使えない治療に分類されており、手術・入院に必要な費用は30万円〜60万円ほどが目安です。 治療方法 椎間板の内部にレーザーを照射し、ヘルニアを蒸発・縮小させる方法 入院期間 約1〜2日 入院費用(3割負担) 30〜60万円ほど 椎間板ヘルニア手術のリスクや失敗例 椎間板ヘルニアの手術には、合併症や後遺症のリスクがあります。 椎間板ヘルニアの手術で起こりうる合併症は以下のとおりです。 出血や血腫(血のかたまり)形成 傷口経由の感染や骨髄炎 硬膜損傷による髄液漏れ 手術後の長期間安静による血栓症や組織癒着 合併症が発症すれば、追加治療や入院期間の延長が必要になる場合があります。 椎間板ヘルニアの手術後に出る可能性のある後遺症は以下のとおりです。 後遺症 要因 一時的なしびれや痛み 手術中に神経が刺激されたり、長く圧迫されたりする影響 手足のまひや筋力の低下 手術中に神経を傷つけてしまうことによる影響 手術中に神経を傷つけてしまい、後遺症が残ったことで医療裁判を起こしたケースもあります。 椎間板ヘルニアの手術を検討する際は、これらのリスクを理解した上で、信頼できる医師を探して治療を進めていく姿勢が大切です。 なお、手術を伴わない治療法に「再生医療」の選択肢があります。入院や後遺症の心配が不要な治療法です。 詳しくはメール相談もしくはオンラインカウンセリングにて、お気軽にご相談ください。 椎間板ヘルニアを手術なしで治療する方法 ここでは、椎間板ヘルニアを手術なしで治療する方法を5つ紹介します。 温熱療法 運動療法 薬物療法 ブロック療法 再生医療 症状が比較的軽度で、保存的治療に適している方は、手術なしでの改善を目指してみてください。 温熱療法 温熱療法は、痛みやしびれを和らげるために体の一部を温める治療法です。 温めることで血の流れが良くなり、筋肉のこわばりがほぐれて、痛みがおさまりやすくなります。 治療の対象は症状が出ている部分で、椎間板ヘルニアの原因そのものを治す方法ではありません。 一時的に症状を楽にするための対処療法として使われています。 運動療法 運動療法は、ストレッチや体操などによって血の流れを改善して痛みを和らげる治療法です。 痛みを軽くしながら、筋肉を強化し関節の可動域を広げる目的もあります。 運動療法は、病院以外に接骨院や整形外科クリニックなどでもおこなわれています。 こちらも根本的に椎間板ヘルニアが治るわけではありません。 薬物療法 薬物療法は、腰や背中の痛みに対して飲み薬や湿布を使い、症状を和らげる方法です。 椎間板ヘルニアの原因自体を治すものではなく、あくまで対症療法です。 飲み薬には炎症をおさえる薬や痛み止めがあり、湿布は痛む部分に直接貼って痛みや炎症をおさえる効果があります。 薬は主に病院で処方されますが、医師の指導があれば、市販薬の利用も可能です。 ブロック療法 ブロック療法は、神経の近くに痛み止めの注射を打ち、強い痛みを一時的に和らげる方法です。 こちらも椎間板ヘルニアの原因を取りのぞく治療ではないため、根本改善にはつながりません。 対処療法の1つとして覚えておくと良いでしょう。 なお、ブロック療法は、人によっては注射の効果が出にくい場合もあります。 再生医療 https://youtu.be/5JqLxbYwLJ4 椎間板ヘルニアの治療や手術の後遺症における治療法に「再生医療」の選択肢が挙げられます。 再生医療とは、幹細胞やPRP(多血小板血漿)を用いる治療法です。 椎間板ヘルニアの症状である手足のしびれ・歩きにくさに対してのアプローチをしていきます。 当院(リペアセルクリニック)では、患者様の脂肪から採取・培養した幹細胞を、神経の損傷部位へピンポイントで投与する「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行っています。 この治療法は、点滴など従来の方法と比べて損傷部位により多くの幹細胞を届けることが可能で、手術で改善が難しかったしびれや痛みの改善も期待されます。 以下のような方は再生医療をご検討ください。 手足の痺れや痛みがあるが手術適応ではないと診断された方 まだ一度も手術をしていないが、どうしても手術を避けたい方 手術をしたが後遺症がある、または手術をしたが症状が再発・悪化した方 詳しい治療法については、再生医療を専門とする当院「リペアセルクリニック」にお問い合わせください。 まとめ|椎間板ヘルニア手術の入院期間を把握して準備を進めよう 椎間板ヘルニアの手術方法は多様で、選択する手術法によって入院期間が大きく異なります。 入院期間の目安 LOVE法:約2週間 MED法:4〜7日間 PED法:日帰りから数日 脊椎固定術:1〜2週間 レーザー手術:1〜2日程度 それぞれ費用や身体への負担も異なるため、ライフスタイルや症状に合わせた選択が重要です。 また、手術にはリスクや後遺症の可能性があることも理解しておきましょう。 手術以外にも運動療法や薬物療法、再生医療など手術に頼らない選択肢もあります。 治療法を検討する際は、入院期間や回復時間、費用、リスクなどを総合的に考慮して、専門医と相談しながら最適な方法を選びましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 椎間板ヘルニア手術に関するよくある質問 椎間板ヘルニアの手術後における痛みはいつまで続きますか? 手術後の痛みは、通常の回復の場合、1カ月ほど続きます。 大きく体を動かしたり、重い物をもったりするような場合は、3カ月程度かかるでしょう。 椎間板ヘルニアの手術後はどのような生活になりますか? 手術後の生活では、体に無理のない日常を意識する必要があります。 手術後すぐは安静を保ちつつ、専門家の指示を受けながら、少しずつリハビリや軽い運動を始めます。 日常生活においては、腰に強い負担がかかる姿勢や動きは控え、再発を防ぐために正しい体の使い方を身につける意識が大切です。 たとえば、椅子に長時間座るときは背すじを伸ばし、重い荷物を運ぶときは腰ではなくひざを使うなど、生活の中で意識的に工夫をしていきます。 手術後におけるリハビリの継続や正しい姿勢の意識が、早期回復につながります。 椎間板ヘルニアで手術するレベルはどれくらいですか? 日常生活や仕事に支障が出る状態になった場合、手術が検討されます。 椎間板ヘルニアではまず保存療法で様子を見ますが、症状が改善しないケースでは手術の判断が必要になります。 たとえば、以下のような状況です。 保存療法を試しても回復しない 腰の痛みで睡眠が妨げられる 足のしびれが悪化し歩行が困難になる 生活や仕事をする上で症状がつらいと感じた場合は、早めに専門医に相談し、適切な治療法を検討しましょう。
2024.02.14 -
- 幹細胞治療
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 再生治療
「ヘルニアの内視鏡手術って本当に安全なの?」 「PELDやPEDってよく聞くけど、デメリットもあるのかな?」 このような疑問をお持ちではないでしょうか? 腰椎椎間板ヘルニアの代表的な手術に、 PELD(経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)とPED(経皮的内視鏡下椎間板摘出術) があります。 これらの手術は、傷口が小さく回復が早いというメリットがありますが、すべての患者様に適しているわけではありません。 たとえば、再発のリスクや適応範囲の限界 など、事前に知っておくべきポイントがあります。 そこで本記事では、ヘルニアの内視鏡手術(PELD・PED)のデメリットについて詳しく解説します。手術の詳細がわかれば、後悔のない選択ができるでしょう。 【前提知識】椎間板ヘルニアの内視鏡手術PELD(PED)とは? 椎間板ヘルニアを手術する方法のひとつに、経皮的内視鏡下椎間板摘出術(Percutaneous Endoscopic Discectomy:PED)があります。 PEDのうち、特に腰椎に対して行うものを経皮的内視鏡的腰椎椎間板摘出術(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy:PELD)と呼びます。 この手術は7mmか8mmの細い内視鏡を使い、生理食塩水を流しながらヘルニアを取り除きます。 手術の目的は、神経を圧迫しているヘルニアの部分だけを取り除くことです。健康な椎間板はできるだけ残すため、手術後に腰痛が起こるリスクを減らせます。 この手術が適応となる疾患には、主に神経根型の椎間板ヘルニアなどの変性疾患や、化膿性椎間板炎という炎症性疾患があります。 PED/PELDは神経を圧迫しているヘルニアの突出部分を取り除き、痛みやしびれを軽減することを目的としています。 ただし、これらの手術は、すべてのヘルニア患者に適しているわけではありません。 手術を受ける前には、詳細をよく理解し、医師としっかり相談することが大切です。 なお、椎間板ヘルニアの治療においては「再生医療」も選択肢として挙げられます。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した医療技術で、自身の幹細胞を培養して患部に注射し、損傷している組織の修復と再生を促します。 具体的な治療方法が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお問い合わせください。 椎間板ヘルニア内視鏡手術のデメリット 内視鏡手術は体への負担が少なく、回復が早いとされていますが、いくつかのデメリットもあります。 後悔しない治療選択をするために、注意すべきポイントを5つ紹介します。 手術後に合併症や後遺症が出る可能性がある 再発のリスクがある 手術ができないケースもある 手術できる病院が限られる 1回で2箇所以上の手術ができない 手術を検討している方は、リスクも含めてしっかりと理解しておきましょう。 手術後に合併症や後遺症が出る可能性がある 頻度としては低いものの、ヘルニアを摘出する際の神経損傷や脊髄損傷が起こり、後遺症として手足のしびれや麻痺などが出てしまう場合があります。 また、椎間板の再突出などの合併症が生じる可能性もあります。 再発のリスクがある 椎間板ヘルニアの内視鏡手術を受けたとしても、症状が再び現れる可能性はゼロではありません。 なぜなら、手術で取り除けるのは、あくまでも飛び出した椎間板の一部だからです。 手術後に、残った椎間板に負担がかかったり、別の場所が新たに飛び出したりすると、再び痛みやしびれなどの症状があらわれることがあります。 手術ができないケースもある 内視鏡手術は、すべての椎間板ヘルニアに適用できるわけではありません。 PELDは細い内視鏡を使用するため、ヘルニアの突出が大きい場合は、手術ができない場合があります。 また、骨の変形がひどいと、内視鏡を正しい位置に挿入できず、手術自体が危険になる可能性があります。 そのため、PELDを受ける前には、MRIを含む画像検査でヘルニアの状態を詳しく調べ、医師とよく相談した上で手術方法を決める意識が大切です。 手術できる病院が限られる 内視鏡手術は、どの病院でも受けられるわけではありません。 高度な技術が必要なため、経験豊富な医師がいる医療機関でのみ対応しています。専門的な知識と技術が求められ、設備が整っていない病院では対応が難しいです。 通院可能な範囲に手術ができる病院があるとは限らず、遠方まで行く必要がある場合もあります。 手術を希望する場合は、対応している病院を事前に調べ、適切な医療機関を選びましょう。 1回で2箇所以上の手術ができない 椎間板ヘルニアの内視鏡手術では、一度に2箇所以上の手術ができない場合があります。 手術は身体への負担が大きく、一度に多くの場所を手術すると、回復に時間がかかったり、合併症のリスクが高まったりするからです。 椎間板ヘルニアが2箇所以上にある場合は、症状がとくにひどい場所から手術をおこないます。そして、手術後の状態を見ながら、症状が改善しないようであれば、数カ月後に別の場所を手術する流れがよく採用されます。 椎間板ヘルニア内視鏡手術のメリット 次に、椎間板ヘルニア内視鏡手術における主なメリットを解説します。 体に与えるダメージが低い 脊柱周囲のダメージを抑えられる 局所麻酔下でも手術が行える 日帰りで手術が行える 手術成績が良好である メリットを把握すれば、手術を決断した際の不安が軽減されるでしょう。 体に与えるダメージが低い 内視鏡手術は、体への負担が少ない治療法です。 皮膚の切開が小さく済むため、傷跡が目立ちにくく、回復も早くなります。 開放手術では大きく切開するため、術後の痛みが強くなる傾向がありますが、内視鏡を使う方法なら最小限のダメージで済みます。そのため、日常生活への復帰もスムーズに進みやすいです。 負担の少ない治療法を選びたい方に適しているでしょう。 脊柱周囲のダメージを抑えられる 内視鏡手術は、背骨の周りの筋肉や組織へのダメージを最小限におさえられます。内視鏡を使ってヘルニアの部分に直接アプローチできるからです。 従来の切開手術では、背骨の周りの筋肉を大きく切開する必要がありました。しかし、内視鏡手術では小さな穴から内視鏡を挿入するだけで済みます。 手術後の筋肉や組織のダメージが少ないため、入院期間が短縮され、早期の社会復帰が期待できます。 局所麻酔下でも手術が行える 内視鏡手術では、部分的な麻酔(局所麻酔)で手術が受けられる場合があります。 麻酔は、高齢者や肥満の方に負担がかかります。そのため、局所麻酔を選択できるのは、麻酔が負担になる患者さんにとって大きなメリットといえるでしょう。 ただし、局所麻酔では、手術中に痛みを感じれば、治療を中断せざるを得ません。強い痛みを伴う場合は、全身麻酔が推奨されます。 日帰りで手術が行える 日帰り手術が可能な点も、内視鏡手術のメリットです。内視鏡手術は、小さな切開で済むため、入院せずに治療を終えられる可能性があります。 長期の入院が難しい人や、仕事や家庭の都合で休みを取りづらい人にとって、大きな利点となるでしょう。 手術成績が良好である 多くの研究で内視鏡手術の高い成功率が報告されています。とくに、足のしびれや痛みの緩和に効果が高いです。 身体への負担が少ない手術なので、合併症のリスクも低いことがわかっています。 椎間板ヘルニアの治療や術後の後遺症には「再生医療」の選択肢もある 椎間板ヘルニアの治療や術後の後遺症における治療法に「再生医療」の選択肢が挙げられます。 再生医療とは人間の自然治癒力を活用した新しい医療技術です。 椎間板ヘルニアの症状である手足のしびれ・歩きにくさが改善した症例が数多く報告されています。 当院リペアセルクリニックでは、椎間板ヘルニアの治療についてご相談を受け付けております。メール相談やオンラインカウンセリングより気軽にお問い合わせください。 まとめ|椎間板ヘルニアの内視鏡手術のデメリットも理解した上で手術を検討しましょう 内視鏡手術が失敗してしまう可能性は低いと考えられていますが、脊髄損傷や神経損傷の可能性は「0」ではありません。 しかし、内視鏡手術は体への負担が少ない手術なので、早期の社会復帰が期待できます。 手術のメリット・デメリットの両面を理解した上で治療方針を固めていくと、不安が軽減されるでしょう。 体に負担の少ない治療においては再生医療も選択肢として挙げられます。 椎間板ヘルニアの治療や後遺症などにお悩みの方で再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。 参考文献 尾原裕康ほか「経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望」『脊髄外科』VOL30(2)pp.152-158 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/2/30_152/_pdf(最終アクセス:2025年2月21日) 平野仁祟ほか「腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界」『脳外誌』:26(5)pp.346-352. p347 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/26/5/26_346/_pdf(最終アクセス:2025年2月21日) 平野仁祟ほか「経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy:PELD)の現状と今後の展望」『脊髄外科』VOL28(3)pp.310-312 2014年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/28/3/28_310/_pdf(最終アクセス:2025年2月21日)
2024.02.08 -
- 幹細胞治療
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 再生治療
つらい腰椎椎間板ヘルニアの症状にお困りではありませんか? 「薬やリハビリでは効果を感じられず、根本的に改善したい。でも、できれば体に大きな負担がかかる手術はしたくない」と、お考えの方も多いでしょう。 腰椎椎間板ヘルニアの治療に悩んでいる方でも、近年技術の進歩が目覚ましい内視鏡を用いた体への負担が少ない手術「PELD(PED)」なら、抵抗感が少ないかもしれません。 本記事では、内視鏡による椎間板ヘルニアの手術の一つである「PELD(PED)」の概要についてご説明します。 PELD(PED)の費用や合併症、術後のしびれ・痛みといった後遺症についても解説するので、治療に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、PELD(PED)合併症の後遺症に対する選択肢の一つ「再生医療」の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 PELD(PED)が適用になる腰椎椎間板ヘルニアについて、手術を避けたいとお考えの方は、ぜひ一度公式LINEから再生医療についてご覧ください。 PELD(PED)とは|腰椎椎間板ヘルニアの内視鏡手術 PELDは、Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomyの略で、日本語では「経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術」と呼びます。 7mm程度の細い筒状の手術器具を用いて、内視鏡を見ながら椎間板内に直接アプローチし、脱出したヘルニアそのものを摘出する手術です。 このPELDに対してL=Lumbar(腰)」が入っていないものをPED(Percutaneous Endoscopic Discectomy)と呼びますが、どちらも同じ椎間板ヘルニアの内視鏡手術を指します。 近年、同様の手術手技の適応が広がっており、ヘルニア以外の疾患の治療や頚椎の疾患にも用いられるため、PELDとPEDのように呼び方が異なる場合があるのです。 そのため、腰椎という意味の”Lumbar”ではなく、脊椎という意味の「スパイン」“Spine”という単語を使ってFESS: Full Endoscopic Spine Surgery(あるいはFED: Full Endoscopic Discectomy)とも呼ばれます。 椎間板ヘルニアについては、以下の記事でも医師がわかりやすく解説しているので、さらに理解を深めたい方はご覧ください。 PELD(PED)の特徴 PELD(PED)は、腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲な手術法です。 主な特徴は、以下の通りです。 皮膚切開が7mmほどと小さい 筋肉や骨への損傷がほとんどない 局所麻酔で手術が可能 術後の回復が早く、日帰りまたは1泊入院が可能 再発や合併症のリスクが比較的低い 従来の手術と比較すると術後の痛みや出血が少なく、早期の社会復帰が期待できる治療法です。 また、再発率も低いとされており、とくに高齢者や持病のある方の選択肢として有望といえます。 ただし、すべての症例に適応できるわけではありません。まずは対応している病院を受診し、専門医による精密な診断が必須です。 PELD(PED)の手術方法 PELDには、主に以下2つのアプローチ方法があり、患者のヘルニアの部位や状態に応じて選択します。(文献1) インターラミナ法 トランスフォラミナ法 インターラミナ法とは、背骨のすき間(椎間)から内視鏡を挿入する手術方法です。 ヘルニアを摘出し、硬膜管と神経根の圧迫が解放されたのを確認したら、体内に貯留した血液や体液、気体などを体外に排出するための管「ドレーン」を留置して終了となります。 トランスフォラミナ法は、椎間孔という神経の通り道からアプローチする方法です。 神経根への接触を最小限に抑えられる治療法で、腰椎の高位や側方型のヘルニアに適しています。 PELD(PED)の手術費用 PELD(PED)は、公的医療保険の対象です。手術を受ける方の状況により、1〜3割負担で治療を受けられます。 さらに、「高額療養費制度」にも対応しており、定められた上限額を超えることはありません。 保険適用時の最終的な自己負担は、数万〜20万円程度が目安です。 ただし、手術の内容や入院の有無・期間、患者の世帯の収入などによって、実際の負担額は異なります。 また、病院によっては自費診療で施術している場合もあります。検査の日程や手術器具など、さまざまな制約が生じる公的保険を適用した手術と異なり、自費診療のほうが柔軟な対応が可能です。 なお、自費診療では手術費用が高額になる場合があるほか、高額療養費制度の対象外となる点にも留意しておきましょう。 PELD(PED)のメリット PELD(PED)は従来の手術と比べて体へのダメージが少なく、回復が早い点から、多くの患者にとって有力な選択肢となっています。 以下で、PELD(PED)の具体的なメリットを見ていきましょう。 体への負担を抑えられる PELD(PED)は、筋肉や骨を大きく削らずに手術できる点が最大の特徴です。 骨のすき間や神経の通り道から内視鏡を挿入する治療法で、以下のような利点があります。 筋肉や靭帯を温存できる 術後の痛みや炎症が少ない 高齢者や持病のある方にも適応しやすい 上記のように体に優しい手術方法であり、回復期間の短縮にもつながります。 とくに、高齢者や持病を抱える方にとって、PELD(PED)の低侵襲性は大きな安心材料となるでしょう。 手術が短時間 PELD(PED)は、症例にもよりますが一般的に30〜60分程度で完了する手術です。 手術の時間が短いと、以下のような点が患者にとってメリットになります。 長時間の麻酔が不要 体力の消耗が少ない 術後の観察時間も短縮できる 短時間で終了するため、日帰りまたは1泊入院での対応も可能です。個人差はありますが、術後の経過も良好で、患者がすぐに歩行を開始できるケースも少なくありません。 入院期間の短縮だけでなく、患者自身の時間的・精神的な負担軽減にもつながる治療法といえるでしょう。 傷口が小さい PELDの皮膚切開はわずか7mm前後と小さく、以下のような利点があります。 傷口が目立ちにくい 感染や出血のリスクが低い 縫合の必要がほとんどない 見た目にも目立ちにくく、とくに傷跡を気にする方にとっては心理的な安心感があります。また、創部からの感染リスクが低く、術後の管理も容易です。 美容面と医療面の双方でメリットを実感できる点が、PELD(PED)が支持されている理由の一つといえます。 PELD(PED) のデメリット PELD(PED)は比較的低侵襲で身体に優しい手術ですが、すべての患者に適しているわけではありません。 術式の特性から、以下のようなデメリットや制限も存在します。 手術ができない可能性がある 以下のような条件では、PELD(PED)が適応とならない場合があります。 ヘルニアの位置が内視鏡では届きにくい部位にある 脊柱管狭窄症などの合併症がある 石灰化ヘルニアや重度の神経圧迫がある 上記に当てはまる場合は、従来の手術法を選択するケースが一般的です。また、PELD(PED)に対応している病院が限られる点にも留意しておきましょう。 一度に2カ所以上手術できない場合がある PELD(PED)は狭い視野での操作となるため、基本的には1回の手術で1カ所のヘルニアに限定されます。 2カ所以上の治療を行う場合には、複数回の手術が必要です。 合併症・再発のリスクがある PELD(PED)が低侵襲な治療法とはいえ、以下のようなリスクが完全にゼロになるわけではありません。 神経損傷によるしびれや麻痺 感染症や出血 椎間板の再ヘルニア 手術を検討する際には、合併症や再発のリスクに対する十分な説明と理解が必要です。 以下では、これらの合併症に焦点を当て、それぞれの特徴や注意点を掘り下げていきます。 PELD(PED)の注意したい合併症 PELD(PED)は比較的体への負担が少ない手術ですが、どのような手術でも合併症のリスクはあります。 とくに、注意すべき合併症は次の4つです。 神経障害 硬膜損傷 術後血腫 感染 では、それぞれ詳しく解説していきましょう。 神経障害 神経障害とは、手術中にヘルニアの近くの脊髄やそこから伸びる神経の根本(神経根)を触ってしまい、神経の損傷が起こる障害です。 足がしびれたり痛んだり、足の筋力が落ちたり、排尿機能の障害が起こったりする場合があります。 硬膜(こうまく)損傷 硬膜損傷とは、脊髄を包んでいる硬膜が手術によって破れてしまう障害です。 脊髄神経は硬膜に包まれて脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体に浮いていますが、硬膜が破れると脳脊髄液が漏れ出します。 とくに、起き上がった際に脳脊髄液が漏れ出して脳や脊髄を引っ張るケースが多く、頭痛の原因になります。 術後血腫 術後血腫とは、手術後に出血がコントロールできず、血の塊(血腫)を作ってしまう障害です。 脊髄から出てくる神経を血腫が圧迫してしまうと、しびれ・痛みや麻痺などの原因となります。 感染 手術の傷により、感染を起こすケースがあります。 とはいえ、PELD(PED)の傷は小さく、手術中に生理食塩水を流し続けることもあり、創の感染は他の術式に比べて少ないとされています。 PELD(PED)合併症による後遺症に対する再生医療の可能性 PELD(PED)による合併症が起こった際に心配すべきは、後遺症が残ってしまうリスクがある点です。 とくに神経の損傷が起こると、しびれや痛み・麻痺などが残ってしまう可能性があります。神経が傷つくと再生は困難と言われていました。 そんなPELD(PED)の合併症に対して現在は、再生医療という治療の選択肢があります。 当院「リペアセルクリニック」では、脊髄損傷後の後遺症に対して再生医療の「幹細胞治療」を行っております。 幹細胞治療は、他の細胞に変化する「分化能」という幹細胞の能力を利用する治療法です。患者様から採取・培養した幹細胞を、脊髄の患部に直接注射します。当院では幹細胞を冷凍せず、投与の度に採取・培養を行うため活性の高い幹細胞を多く投与できます。 再生医療は、患者様自身の幹細胞を使用しているため拒否反応のリスクが抑えられ、手術も必要としないため体の負担が少ないのが特徴です。 再生医療についてさらに詳しく知りたい方は、以下の症例紹介の記事も参考にしてみてください。 まとめ|PELD(PED)はヘルニア対して有効な治療法の一つ PELD(PED)手術は、ヘルニアのつらい症状に対して改善を目指せる治療法の一つです。 内視鏡を使用して行う治療であるため、傷が小さく体への負担も最小限に抑えられます。手術後の安静期間も短く、早い社会復帰が望める点も魅力です。 ただし、病状によっては不向きなケースもあります。 また、体への負担が少ないものの、手術による合併症のリスクがまったくないわけではありません。入手した情報をしっかり理解し、納得した上で手術を受けましょう。 何も起こらないことが一番ですが、万が一後遺症が残ってしまった場合には再生医療の「幹細胞治療」が適応になります。 もし術後の後遺症にお困りであれば、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。以下の公式LINEでは再生医療に関する情報発信を行っています。再生医療ガイドブックも無料でお渡ししているので、ぜひお受け取り下さい。 PELD(PED)に関するよくある質問 先進医療のPLDD手術とPELD(PED)の違いは何ですか? PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)は、レーザーファイバーを使って椎間板内の圧を下げる治療法です。(文献2) 一方、PELD(PED)は内視鏡を使用し、飛び出したヘルニア自体を摘出します。 どちらも低侵襲の治療法ですが、椎間板ヘルニアの形態や大きさ、発症部位、変形の度合いなどを総合的に判断し、最善の治療法を選択することが重要です。 PELD(PED)の名医を教えてください。 現時点で「名医」として、公的に認定されているPELD専門医の情報は公表されていません。 ただし、日本PED研究会の公式サイトには、PELD手術が可能な医療機関の一覧が掲載されています。(文献3) 対応できる病院はまだ限られているものの、一覧から信頼性の高い施設を探すことが可能です。 PELD(PED)手術の費用は保険適用ですか? PELD(PED)手術は、公的医療保険の適用です。 また、高額療養費制度の対象となるため、一定額を超える医療費については還付を受けることもできます。 ただし、入院費用や検査費用を含めた総額は、医療機関や入院日数によって異なる点に留意しておきましょう。 PELD(PED)手術ができないのはどんな人ですか? PELD(PED)が適応にならないのは、以下のようなケースです。 ヘルニアが石灰化している 神経に強い癒着がある 多数のヘルニアが存在する 重度の脊柱管狭窄症がある 上記に当てはまるなら、安全性の観点から他の手術法が選ばれる場合があります。 PEDとMEDの違いを教えてください。 PELD(PED)とMED(内視鏡下椎間板摘出術)は、どちらも内視鏡を用いた手術ですが、進入経路と侵襲度が異なります。 PED(PED)は皮膚切開が約6~8mmと小さく、筋肉や骨をほとんど傷つけずに椎間孔や椎弓間から進入するのが特徴です。 一方、MEDは背部を切開するため、ある程度筋肉や骨の剥離が必要で、PELD(PED)より体への負担が大きくなります。 参考文献 (文献1) 内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PED)|出沢明PEDクリニック (文献2) PLDD vs. PELD|Dclinic (文献3) PED手術病院 一覧(認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医 在籍施設)|日本PED研究会
2024.02.05 -
- 幹細胞治療
- 脳卒中
- 脊髄損傷
- 頭部
- 脊椎
- 大腿骨骨頭壊死
- 股関節
- 再生治療
減圧症とは、潜水や高圧環境から急に浮上・減圧した際に、体内のガスが気泡化して起こる疾患です。 潜水からの急浮上に伴うものが代表的であるため、「潜水病」と呼ばれることもあります。減圧症の症状は、軽い関節痛から、神経障害・麻痺などの重症例までさまざまです。 本記事では、減圧症の治し方や応急処置の手順、再圧治療(高気圧酸素療法)などの基本的な治療法を医師がわかりやすく解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 減圧症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 減圧症の治し方|応急処置の基本 減圧症が疑われたときに大切なのは、焦らずにできる範囲で正しい応急処置を行うことです。 専門的な治療ができる医療機関へ搬送されるまでの対応で、その後の回復にも大きな差が出ます。 ここでは、意識や呼吸の状態に応じた基本の対処法を紹介します。 意識なし・呼吸なしの場合 意識も呼吸もない場合は、すぐに心肺蘇生(CPR)を始めます。 胸の中央を押す胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返し、AED(自動体外式除細動器)があればすぐに使いましょう。脳の障害を防ぐため、頭を下げた姿勢にはしないよう注意します。 救助者が複数いる場合は、圧迫と呼吸を交代しながら続けましょう。 意識なし・呼吸ありの場合 呼吸はあるけれど意識がない場合は、回復体位(上図参照)をとらせます。 これは、舌が喉をふさいだり嘔吐物で窒息したりしないようにする体勢です。下あごを少し前に出し、顔を横に向けて寝かせましょう。 呼吸のリズムや顔色を観察し、変化があればすぐに知らせるようにします。体温が下がらないようにブランケットなどで保温することも大切です。 意識がある場合 意識がある場合は、まず安静にさせます。 頭を下げず、仰向けで横になりましょう。可能であれば酸素を吸わせてください。酸素は体の中に残った窒素を外に出す働きがあり、症状の悪化を防ぎます。 意識がしっかりしていれば、少しずつ水分をとるのも良いですが、むせ込みそうなときは控えます。 応急処置に関する注意点 応急処置の際は、設備がある場合に限り、高濃度の酸素を投与します。 ただし、呼吸がない場合は心肺蘇生を最優先で行います。酸素には体内の窒素を洗い出す働きがあるため、早めの対応が回復に役立ちます。 また、頭を下げる体勢は脳圧を上げる原因になるため避けましょう。体を冷やさず、毛布などでしっかり保温することも大切です。 なお、再度潜水をして症状軽減をはかる「ふかし」は絶対に行ってはいけません。ふかしは窒素の排出効率が悪く、再浮上時に症状が悪化するおそれがあります。 必ず潜水を中止し、救急搬送を優先してください。 減圧症の治療法|医療機関での対応 減圧症の疑いがある場合は、できるだけ早く高気圧治療を行える医療機関を受診することが大切です。 応急処置で症状を落ち着かせても、体の中にはまだ気泡が残っていることがあります。 医療機関では、症状の程度に応じて「再圧治療」や「酸素投与」などの治療が行われます。 ここでは主な治療法を紹介します。 再圧治療(高気圧酸素療法) 減圧症の治療の原則は「再圧治療」です。(文献1) 再圧治療の主な流れは以下の通りです。 1.治療を受ける人は、専用の治療タンク内に入ります 2.タンク内の気圧を水中で受けるほどの高い圧まで上げます 3.純酸素を吸入し、体内の気泡を圧縮して再び血液や組織中に溶かします 4.その結果、血流が改善し、組織への酸素供給が効率的に行われます 高気圧環境で純酸素を吸入すると、血液中の酸素濃度が高まり、体のすみずみまで効率よく酸素が行き渡ります。 酸素が十分に届くことで、体内に残っていた窒素が少しずつ洗い出され、肺を通して体の外へ排出されていきます。 治療では、一定時間高い気圧を維持したあと、ゆっくりと減圧していきます。これは、再び気泡ができるのを防ぐためです。 治療時間や減圧については、世界的に標準治療として使用されている「米海軍酸素再圧治療表6」に従って行うことが原則です。 1回の治療で症状が軽くなることを目指しますが、回復の程度によっては複数回にわたって再圧治療を行うこともあります。 その他の補助療法(酸素投与・輸液など) 再圧治療がすぐに行えない場合や、治療の補助として行われるのが酸素投与と輸液です。 酸素投与は、高濃度の酸素を吸入することで体内の窒素を洗い出し、気泡の縮小や血流の改善を助けます。 特別な装置がなくても、できるだけ早く酸素吸入を始めることが重要です。 また、輸液(点滴)は脱水を防ぎ、血液の流れを保つ目的で行われます。これにより、気泡が血管内で詰まるリスクを軽減し、再圧治療の効果を高めることが期待されます。 そのほかにも、体を温かく保ち、安静を維持することが回復を助ける基本的なケアになります。 減圧症の後遺症と治し方 減圧症では、早期に治療を行えば多くの場合は後遺症を残さず回復できますが、治療が遅れたり重症化したりすると、神経や関節などに障害が残ることがあります。 後遺症は症状の出た部位によって異なり、感覚の鈍さや手足の動かしづらさ、耳鳴り、めまいなどが代表的です。 これらの後遺症は、適切な治療とリハビリを行うことで少しずつ改善が期待できます。再圧治療をはじめ、酸素療法や薬物療法を組み合わせて、損傷した組織の回復を促します。 また、体の状態に合わせた運動療法や生活の見直しも、回復に向けて大切なステップです。 主要な後遺症の種類 減圧症による後遺症は、障害を受けた部位によって症状が大きく異なります。 以下は代表的な5つの後遺症です。 後遺症の種類 特徴 内耳障害 耳鳴りやめまい、平衡感覚の乱れが起こる。 対麻痺 下半身が動かしにくくなる。脊髄の障害による運動機能低下。 膀胱直腸障害 排尿・排便のコントロールが難しくなる。 感覚障害 手足のしびれや感覚の鈍化がみられる。 片麻痺 体の片側に力が入らない、動かしにくいなどの症状。 減圧症後のリハビリと生活管理 減圧症の治療が終わったあとも、体に残る影響を少しずつ回復させるためにリハビリが欠かせません。 筋力低下や感覚の鈍化が残る場合は、医師や理学療法士の指導のもと、関節を動かす訓練や筋力を維持する運動を続けることが大切です。 また、十分な睡眠と栄養、水分補給を意識し、体の回復をサポートしましょう。 潜水を再開する際は、再発を防ぐために無理のない計画を立て、浮上速度や休憩時間を十分にとるよう心がけてください。 さらに、減圧症の急性期を乗り越えても、時間が経ってから骨壊死(とくに大腿骨頭壊死)を発症することがあります。これは、骨の血流障害が原因で一部の骨が壊死し、股関節痛や歩行障害を引き起こすものです。 初期は無症状のことも多く、発見が遅れるケースもあります。 治療後もしばらくは定期的に検査を受け、違和感や痛みを感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 後遺症の悪化を防ぐには、適切な経過観察と生活管理が大切です。 減圧症(潜水病)の後遺症は治せるのか?再生医療の可能性について 近年、医療分野では「再生医療」という新しい治療法が進んでいます。 減圧症によって神経や関節などに後遺症が残った場合にも、この再生医療が選択肢のひとつとして検討されるようになってきました。 再生医療では、「幹細胞」と呼ばれる細胞を利用します。 幹細胞には、体内でさまざまな細胞へと変化する「分化能」という能力があり、研究分野ではこの性質を活かして損傷した組織をサポートする取り組みが行われています。 当院で扱う「自己脂肪由来幹細胞治療」は、患者様自身の脂肪から幹細胞を採取・培養し、点滴で体内に戻す方法です。自分の細胞を用いるため、アレルギーや免疫反応を起こしにくいのが特徴です。 また、「PRP(多血小板血漿)療法」という方法もあります。これは、患者様の血液から血小板を抽出し、濃縮して使用するものです。血小板に含まれる成長因子には、炎症を抑える働きがあるとされています。 どちらの治療も入院や手術を必要とせず、日帰りで行うことが可能です。これらの治療法は、減圧症の後遺症によって日常生活に支障がある方にとって、医療の選択肢となります。 実際に適応できるかどうかは、医師による診察と検査の上で判断されます。 ▼脊髄損傷に対する幹細胞治療についてはこちらの動画をご覧ください。 まとめ|減圧症を正しく理解し早期対応で後遺症を防ごう 減圧症は、症状の出方が人によって違い、軽い痛みやしびれから始まることもあります。放っておくと後遺症につながるおそれがあるため、早めの対応がとても大切です。 潜水後に少しでも体の異変を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。 また、再発を防ぐためには、潜水の前後で十分な休息と水分補給を心がけることも重要です。正しい知識を持ち、早期に対応することで、後遺症のリスクを大きく減らすことができます。 安全な潜水を続けるためにも、体のサインを見逃さず、適切に対処する意識を持ちましょう。 以下の減圧症の後遺症についての記事もあわせてご覧ください。 参考文献 (文献1) 潜水による障害,再圧治療|高気圧酸素治療法入門第6版
2024.01.22 -
- 幹細胞治療
- 脊髄損傷
- 脊椎
- 再生治療
「最近、ダイビング後に体の不調が気になる……」 「もしかして減圧症かも?でも、どうすれば良いのかわからない……」 ダイビング後の体調不良や、減圧症かもしれないという不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 減圧症は、ダイビングなどで深い位置から浅い位置に急浮上した際に起こる病気です。高圧の環境で血液や組織に溶け込んでいた窒素が気泡となり、さまざまな症状をもたらします。 本記事では、減圧症の原因から症状、有効な治療法まで、専門医が詳しく解説します。正しい知識を身につけて、ダイビングを楽しむための参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。再生医療について詳しくは、公式LINEをご確認ください。 減圧症とは?急激な気圧の変化で起こる疾患 減圧症とは、ダイビングや高所作業など、周囲の圧力が急激に低下する環境で発症する病気です。 体内に溶け込んでいた窒素が圧力の低下により気化し、気泡となって血管や組織を傷つけることで、さまざまな症状を引き起こします。(文献1) 減圧症を引き起こす現象は、ダイバーだけでなく、高所での建設作業員や航空機のパイロット、宇宙飛行士にも起こる可能性があります。 減圧症になるメカニズム 私たちの体は呼吸を通じて酸素を取り込み、二酸化炭素を排出しています。空気の約78%を占める窒素は、通常であれば体内で利用されずに排出される気体です。 しかし、水中に深く潜ると水圧によって周囲の圧力が高まるため、気体の液体への溶解度は、その気体の分圧に比例するヘンリーの法則に基づき、高圧下ではより多くの窒素が血液や組織に溶け込むのです。(文献2) 体内に多くの窒素が溶け込んだ状態で急激に浮上すると、体にかかる圧力が一気に下がり、溶け込んでいた窒素が気化して小さな泡を形成します。 形成された窒素の気泡が血流に乗って全身を巡り、血管を塞いだり組織を圧迫して減圧症特有の症状を引き起こすのです。 このメカニズムは、たとえば炭酸飲料のペットボトルの炭酸が吹き出す現象によく似ています。 フタが閉まっている高圧の状態では、炭酸ガスは液体に溶け込んでいますが、フタを開けて圧力が急に下がると、シュワシュワと音を立ててガスが気泡となって一気に飛び出してきます。 炭酸飲料のガスが気泡となって飛び出すのと同じ現象が、体内で起こっているのが減圧症です。 I型減圧症(関節・筋肉症状中心) I型減圧症は、比較的軽症とされ、主に皮膚、関節、筋肉に症状が現れるタイプです。(文献3) ダイバーの間では、体を折り曲げるほどの痛みが出ることからベンズとも呼ばれています。 症状はダイビング後数時間以内に現れることが多いですが、24時間以上経過してから発症するケースもあります。 代表的な症状は、肩、肘、膝などの関節に生じる鈍い痛みです。 関節の痛みは時間とともに増していくことがあり、動かすと悪化してしまうのも特徴です。 また、皮膚に現れる症状としては、かゆみ、発疹などがあります。 軽症とはいえ、関節痛や皮膚の発疹といった症状は、体内で窒素の気泡が形成された明確なサインです。 とくに、皮膚症状がより重篤な神経症状の前兆である可能性も指摘されています。 自己判断でただの筋肉痛やじんましんと片付けず、専門家に相談しましょう。 主な症状 症状が現れる部位 重症度 緊急性 後遺症のリスク 関節痛(ベンズ) 肩、肘、手首、膝などの関節 軽症 低い 低い(早期治療で回復) 筋肉痛・だるさ 全身の筋肉 軽症 低い 低い(早期治療で回復) 皮膚症状 上半身、肩、胸部などのかゆみ、発疹、むくみ 軽症 低い 低い(早期治療で回復) II型減圧症(神経・循環器症状) II型減圧症は、神経系、循環器系、呼吸器系に気泡が影響を及ぼす重篤なタイプです。(文献3) 生命に関わる危険性があり、緊急の治療を必要とします。 とくに頻度が高いのが、脊髄に気泡が詰まる脊髄型減圧症です。 脊髄型減圧症は手足のしびれや麻痺感覚の鈍化、排尿・排便障害などを引き起こします。脳に影響が及べば、意識障害、視覚異常、めまいなどを起こすこともあります。 また、肺の血管に多数の気泡が詰まると、チョークス(呼吸循環器型減圧症)と呼ばれる激しい胸の痛みや咳、呼吸困難に陥り、非常に危険な状態となります。 一度、脊髄のような中枢神経系が損傷を受けると、完全な回復が難しく、後遺症が出る可能性が高まります。 しびれ、めまい、呼吸の苦しさといった症状は、減圧症における最も危険なサインと認識してください。 主な症状 症状が現れる部位 重症度 緊急性 後遺症のリスク 神経症状 脊髄、脳、末梢神経 重症 高い 高い 呼吸器症状 肺(胸の痛み、咳、呼吸困難) 重症 高い 中程度 減圧症の原因 減圧症の主な原因は、水中で起こる急激な圧力の低下です。水圧が高い環境では、体内に窒素が溶け込みます。 急激に浮上して水圧が下がると、この溶け込んでいたガスが気化して気泡となり、血管や組織を塞いでさまざまな症状を引き起こします。 窒素が気泡になるというメカニズムに加え、発症には以下の要因が複合的に影響します。(文献4) 主な要因 なぜリスクとなるのか 急速な浮上 体内の窒素ガスが気化するスピードが速くなり、気泡ができやすくなるため。 潜水深度と時間 深く、長時間潜るほど、体内に溶け込む窒素量が増加するため。 反復潜水 前回の潜水で体内に残った窒素が蓄積されるため。 脱水・疲労・睡眠不足 血行不良を引き起こし、窒素の排出を妨げるため。 肥満 窒素は脂肪組織に溶け込みやすいため。 寒冷 水中で体が冷えると、血管が収縮し血行が悪くなるため。 飲酒・喫煙 脱水症状や血行不良を招くため。 上記の要因は、それぞれが単独で減圧症のリスクを高めるだけでなく、複数組み合わさることでさらに危険性が増します。 たとえば、疲労した状態で深くまで潜り、かつ急いで浮上するようなケースは、減圧症を発症するリスクが極めて高いと言えます。 安全なダイビングのためには、ダイブプランの遵守に加え、体調管理も非常に重要です。 減圧症の症状|どんな症状が現れる? 減圧症の症状は多岐にわたりますが、中でも神経症状はとくに重症度を判断する上で重要です。 症状の現れ方は、気泡が詰まる場所によって大きく変わってきます。 損傷部位によって変わる症状の特徴 脊髄は脳と全身をつなぐ神経の束であり、体の各部位に神経をつないでいるため、気泡が詰まる場所によって症状が異なります。 損傷部位 主な症状・影響範囲 頸髄(首) 腕や足を含む四肢すべてに麻痺やしびれなどの症状が及びます。 胸髄(胸) 主に下半身に影響が及び、両足が麻痺する対麻痺の状態になることがあります。 腰髄(腰) 足のしびれや脱力、排尿・排便障害といった症状が現れやすくなります。 損傷部位の中でも、減圧症では胸髄の下位から腰髄の上位にかけての損傷が最も多いとされています。 症状が現れた場合は、一刻も早く専門の医療機関を受診してください。 軽症・重症の見分け方と後遺症のリスク 症状の重症度は、生活にどれだけ支障が出るかで大まかに判断できます。 軽度のしびれや一時的な筋力低下であれば軽症に分類されることが多いですが、歩行が困難になったり、排尿・排便に異常が出たりした場合は重症と考え、一刻も早く専門医療機関を受診する必要があります。 しかし、どんな症状であっても自己判断で、軽症だから大丈夫と放置してはいけません。 減圧症は早期治療が予後を大きく左右する疾患です。 神経組織は一度損傷すると自然な回復が難しいため、発症後いかに早く治療を開始するかが、その後の人生を左右する鍵となるのです。 減圧症の治療法 減圧症の治療は、時間との勝負です。 症状の発症が疑われた時点ですぐに応急処置を開始し、根本的な治療である高気圧酸素治療へとつなげることが、後遺症のリスクを最小限に抑える上で極めて重要になります。 治療の目的は、体内で気泡化した窒素を排出し、気泡によって酸素不足に陥った組織を回復させることです。治療は段階的に行われ、まずは現場での応急処置、次に専門施設での高気圧酸素治療が中心となります。 自己判断で様子を見たり、医学的根拠のない民間療法に頼ると回復の機会を逃すことになりかねません。症状の重さにかかわらず、必ず専門の医療機関を受診してください。 発症直後の応急処置 減圧症が疑われる症状が現れたら、パニックにならず、まずは安全を確保して応急処置を開始します。 発症直後の応急処置が、その後の治療効果に大きく影響します。 【対応すべきこと】 安静を保つ:水平に寝かせ、体を動かさない 純酸素の吸入:医療用純酸素(100%)を吸入 水分補給:水かスポーツドリンク(カフェイン・アルコール不可) 保温:濡れたウェットスーツを脱がせ、タオルや毛布で保温 緊急連絡:118番/119番に連絡、ダイビング後の減圧症と伝える 医師に情報を伝えるため、発症時刻、ダイビングの深度・時間、症状の詳細をメモしておくと診断・治療に役立ちます。 【やってはいけないこと】 自己判断で放置:軽症に見えても重症化する可能性あり マッサージや激しい運動:窒素の気泡が全身に広がる 入浴やシャワー:血管拡張により症状悪化リスクあり 症状が軽い場合も、自己判断で様子を見るのではなく、必ず専門医療機関を受診してください。 応急処置は搬送までの症状悪化を防ぐためのものであり、適切な治療には医師の診断が必要です。 高気圧酸素治療 減圧症の標準的な治療法が、高気圧酸素治療です。 高気圧酸素治療は、専用の装置の中で2.8気圧程度まで気圧を高めた環境に入り、100%の純酸素を吸入する治療法です。(文献5) この治療は、物理学の法則を利用して減圧症の根本原因にアプローチします。 1.気泡の収縮・溶解(再圧) まず、チャンバー内の気圧を上げることで、体内の気泡を物理的に小さく圧縮し、再び血液や組織に溶け込ませます。これは、水中に深く潜っていくのと同じ状態を人工的に作り出します。 2.窒素の排出と組織への酸素供給 高い圧力下で純酸素を吸入すると、血液中に溶け込む酸素の量が通常の10〜20倍に増加します。これにより、体内の窒素分圧が相対的に下がり、窒素の排出が効率的に行われます。同時に、気泡で血流が滞っていた組織の隅々まで酸素が供給され、細胞の機能回復が強力に促されます。 治療は症状に応じて数時間にわたり、複数回行われることもあります。後遺症を残さないためには、いかに早くこの治療を開始できるかが最も重要です。 減圧症の予防法 減圧症を予防するためには、ダイビングにおける安全ルールを徹底して守ることが最も重要です。 ルールの一つひとつが、科学的根拠に基づいて体への負担を減らすために作られています。 安全なダイビングのためのルールと注意点 減圧症を予防するためには、ダイビングにおける安全ルールを徹底して守ることが重要です。ルールの一つひとつが、科学的根拠に基づいて体への負担を減らすために作られています。 減圧症を予防するために、以下のポイントを必ず守りましょう。 十分な睡眠をとる 疲労を避ける 飲酒後のダイビングは厳禁 ダイビング前後に十分な水分補給 潜水深度、時間、休憩時間を含むダイブプランを作成 万全の体調を整えた上で、事前に潜水深度、休憩時間などを盛り込んだダイブプランをもとにダイビングを楽しみましょう。 潜水中、とくに重要なのが浮上時の行動です。ダイブコンピューターが示す安全な浮上速度を厳守し、急浮上を避けることで、体内の窒素が急激に気泡化するのを防ぎます。 さらに浮上の最後には、減圧症予防の要となる安全停止を水深5メートル付近で最低3分間必ず行い、体内に溶け込んだ窒素を呼吸によって穏やかに排出させましょう。 そして、ダイビング後の行動も予防には欠かせません。体内に残った窒素が、気圧の低い場所で膨張するのを防ぐためです。 ダイビング後、最低でも18時間から24時間は、飛行機への搭乗や登山、峠越えといった高所への移動は避けてください。 まとめ|減圧症は早期治療が大切!症状を感じたら迷わず受診しよう 減圧症は、ダイビングなどの圧力環境の変化によって誰にでも起こりうる疾患です。 正しい知識を持ち、予防策を徹底すればそのリスクを大幅に減らします。ダイブプランの遵守と、日頃からの体調管理を常に心がけてください。 もし万が一、ダイビング後に体に少しでも異変を感じた場合は、軽症だから気のせいだろうと自己判断してはいけません。早期に高気圧酸素治療を受けることで、後遺症のリスクを最小限に抑え、健やかな生活に戻れる可能性が大きく高まります。 症状を感じたら迷わず、直ちに医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 減圧症 – 25. 外傷と中毒 | MSDマニュアル家庭版 (文献2) 減圧症 - 22. 外傷と中毒 | MSDマニュアル プロフェッショナル版 (文献3) 潜水による障害 再圧治療|高気圧酸素治療法入門第6版 (文献4) 減圧症にならない潜り方|日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 vol.45 (文献5) 減圧障害の最新治療|日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 vol.43 No.2
2024.01.18







