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頸椎椎間板ヘルニアの初期症状とは?症状のレベルも解説
- ・頸椎椎間板ヘルニアの症状とはどのようなもの?
- ・初期症状はどう見分ければいい?
- ・症状の程度を知りたい
このように考えている方は多いでしょう。
頸椎椎間板ヘルニアには独特の症状があり、事前に理解していれば判断できます。
この記事では頸椎椎間板ヘルニアの症状や治療に関して解説します。
目次
頚椎椎間板ヘルニアの初期に見られやすい3つのチェックポイント
頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎(首の骨)間のクッションである「椎間板」組織の一部がなんらかの理由で本来の場所から逸脱することで起こる疾患です。
この椎間板は年齢とともに成分である水分がぬけてきて、脆くなりヘルニアとして突出してきます。
「ヘルニア」という言葉は臓器や組織が本来あるべき場所からはみ出してしまうことを指します。
初期症状のチェックポイントは以下3点。
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①首の痛み
首の痛みは頚椎椎間板ヘルニアの最初期の症状で、具体的には以下のような状態になります。
- ・首の後ろ側が痛くなる(顕著な場合は肩甲骨あたりまで痛む)
- ・左右に捻ったときだけ痛みを感じる
- ・寝違えたような痛みがある
このような症状が、突発的に現れるのが、頸椎椎間板ヘルニアの特徴です。
②片方の腕や手の痛み・痺れ
片方の肩から腕、手にかけての痛みや痺れは「神経根の圧迫」が起こることで認められる症状の典型例です。
「神経根」とは脊髄から体の各部位に伸びる神経の付け根のことです。
各椎体と椎体の間から、左右それぞれに1本ずつ神経の束が伸びていきます。
神経根が出てくるのは椎体の外側やや後ろです。
椎間板組織がやや斜め後ろに飛び出すことにより神経根の圧迫が起こると、その神経の領域を中心に強い痛みをはじめとした症状が起こります。
頚椎から伸びる神経は主に肩から腕、手にかけて分布する神経です。
そのため頚椎椎間板ヘルニアの神経根症状は主に肩・腕・手に認められます。
症状は圧迫された側のみに起こるため、左右どちらか一方のみが痛んだり痺れたりします。
神経根圧迫による症状は「電気が走るような」「ビリッとした」などと表現されることが多いです。
ときに激痛となり、日常生活が困難になる人もいます。
③両手の痺れ・感覚障害
片手でなく両手が痺れる場合はヘルニアによる「脊髄」のダメージが起こっている可能性があります。
脊髄は椎体(いわゆる背骨)の真後ろを走っています。椎間板の組織が体の後方へ飛び出すことで、脊髄が圧迫されます。
脊髄の圧迫による症状は指先から始まり、徐々に範囲が広がっていくことが多いです。
片側から始まることも多いですが、最後には両手に認めます。感覚も鈍くなります。
その後はさらに体幹部や足へも症状が広がっていきます。
神経根の圧迫と異なり、脊髄の圧迫では強い痛みはあまり感じません。
「なんとなく痺れた感じがする」程度の症状が、実は脊髄圧迫のサインであるかもしれないのです。
鑑別診断として、ALSなど神経系疾患、糖尿病の合併症である末梢神経障害、手根管症候群、足根管症候群なども注意しなければいけません。
頸椎椎間板ヘルニアの症状レベル4段階
頸椎椎間板ヘルニアの症状レベルは以下4段階に分けられます。
- ・初期
- ・発症期
- ・中期
- ・末期
それぞれでどのような症状があるか解説します。
初期|首や肩の違和感
初期症状が起こるのが前兆期です。以下のような症状が見られます。
- ・軽微な首や肩の痛み
- ・下半身のわずかな痺れや感覚の鈍麻
- ・片手もしくは両手の痺れや感覚の鈍麻
初期症状として先述したとおりの症状が起こります。
ただしいずれも軽微であり、大きな問題にはなりません。
しかし症状が軽微であるがゆえ、診察や治療の意義を見出せず、対応が遅れがちです。
初期症状が見られたら、重篤化する前に医師の診察を受けるのが大切です。
発症期|鈍痛と痺れの併発
前兆期をすぎ、初期に入ると、先述した首や肩の痛み、手足の痺れなどが強まります。
痛みはいわゆる鈍痛であり、各部位も動かしにくくなります。
このあたりで、なんらかの疾患を疑い出すケースが多いでしょう。
また痛みも痺れも、日常生活や仕事に差し障るレベルになります。
運動の困難も一部見受けられ、箸を使う、ボタンを止めるといった動作がややむずかしくなります。
中期|首や肩の可動域の低下
中期に入ると、明らかな鈍痛や痺れとともに、首や肩の可動域が低下したのを感じるようになります。
今までどおり首を上下に動かせない、肩が回せないなどの症状があらわれます。
また手指がうまく使えなくなり、コップなどが持てない、手すりをつかめないなどの症状も起こりうるでしょう。
頭痛が伴うケースもあります。
末期|耳鳴りやふらつきなどの重大な症状の発生
末期になると、症状は頭部や下半身に広がります。
眼精疲労やめまい、耳鳴り、ふらつきなどの症状が生じ、日常生活に大きな支障が出ます。
痛みの悪化もひどく、手足だけでなく胸や背中に強い鈍痛が生じることも。
下半身では歩行障害が生じ、さらに尿失禁なども起こります。
この段階では入院や手術による大掛かりな治療が必要です。
初期段階で放置した場合のリスク
神経根症状の場合は悪化すると、支配神経の感覚障害や筋力低下が起こることがあります。
ただし、神経根症状の場合は安静を心がけるだけでも約2カ月から3カ月で自然治癒する方も多くいます。
一方、脊髄圧迫の症状が進行すると厄介です。
進行していくと、まず手の「巧緻(こうち)性運動障害」が起こります。
細かく指を使う動作が難しくなり、箸を使う・ボタンをかける・文字を書くなどの当たり前にできていたことができなくなるのです。
続いて、足の運動障害により歩行が難しくなります。
さらに進行すると排尿のコントロールに重要な神経の障害が起こり、頻尿・残尿感・失禁などを認めることもあります。
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関連記事:頚椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の「痺れ」という後遺症について
治療について
初期の症状のうちは保存療法が基本です。
保存療法
最も重要なのは首の安静を保つことです。
とくに後屈動作、つまり顎を上げる動作は症状悪化の原因になります。
なるべく首を動かさないように、頸椎カラーの使用を指示されることもあります。
痛みが強いときは鎮痛薬の内服やブロック注射などが選択肢です。
手術療法
一方、脊髄症状が進行してしまい、巧緻運動障害・歩行障害・排尿障害などが起こると手術を考えることになります。
また、神経根症状でも治療抵抗性の場合は手術が選択肢となります。
しかし、脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。
関連記事:頚椎椎間板ヘルニアの具体的なリハビリの方法と注意点について!
頚椎椎間板ヘルニアについてよくある質問
Q:頚椎椎間板ヘルニアが心配です。何科に受診すれば良いでしょうか?
頚椎椎間板ヘルニアをはじめとした頚椎疾患は次のいずれかの診療科で診察を受けることができます。
- ・整形外科
- ・脳神経外科
ただし、これらの診療科であっても医師によって専門領域が異なることもあります。
場合によっては他の病院や診療科に紹介となる可能性も否定できません。
受診希望時に迷うようであればあらかじめ「頚椎の病気」を診てもらえるか問い合わせをしておくとスムーズです。
Q:頚椎椎間板ヘルニアはレントゲンでわかりますか?
レントゲンで確定診断をすることはできません。
同様の症状をきたす他の病気がないかを診る目的で行います。
頚椎椎間板ヘルニアがあるかどうかはMRI撮影を行って調べます。
Q:頚椎椎間板ヘルニア発症時にやってはいけないことは?
以下のような活動や行動は避けましょう。
- ・重いものを持ち上げる
- ・首を大きくひねる
- ・長時間同じ姿勢を取る
- ・スポーツに取り組む
- ・寒い場所に行く
- ・温熱療法を自己判断でおこなう
- ・ストレスをためる
基本的に医師の指示にしたがい、安静に過ごすのが重要です。
Q:頚椎椎間板ヘルニアを発症した場合の仕事を休む期間は何日?
症状の程度にもよりますが、手術がないなら1〜3週間の休業が必要です。
手術が必要なら、1カ月以上の休養が必要になるでしょう。
まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの初期症状を見逃さないための3つのポイント
頚椎椎間板ヘルニアはときに自然治癒することもある疾患です。
しかしながら、人によっては急激に悪化し、麻痺などの重い神経症状を認めることもあります。
一度重症化してしまうと手術を行わなければならないこともあり、早期に診断して適切な治療を行うことが望ましいです。
今回ご紹介した「首の痛み」「片方の腕や手の痛み・痺れ」「両手の痺れ・感覚障害」があれば、早めに病院を受診しましょう。
この記事がご参考になれば幸いです。
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