胸椎を押すと痛い!そのとき考えられる5つの病気とは?
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胸椎を押すと痛い!そのとき考えられる5つの病気とは?
胸椎は、頚椎と腰椎の間にある背骨のことです。
12個の骨から成り立っており、それぞれが左右12本ずつある肋骨とつながっています。頚椎や腰椎とは異なり、胸椎はほとんど動かないという特徴があります。
今回の記事では、胸椎を押した時に痛みが生じる際、考えられる病気について解説していきます。
胸椎を押すと痛む原因
胸の高さにおける背中の真ん中辺りを押すと、胸椎椎体の後ろの出っ張りにあたる棘突起(きょくとっき)に圧力がかかります。特に胸椎のレベルでの圧痛がみられる場合には、まずは神経や筋、骨格系の病気の可能性を考えます。
ここでは、身体の表面から胸椎を押した際に痛みが出る可能性がある病気を5つ紹介していきます。
①脊椎過敏症(せきついかびんしょう)
背骨を押すと圧痛が生じる病態として、脊椎過敏症があります。
この病気の症状としては、背部や棘突起のあたりの痛みや押した際の痛み(圧痛)が出ます。
脊椎過敏症では、背部の痛み以外には特に症状はなく、予後も比較的良好です。この脊椎過敏症は、20歳代の女性、特に事務労働者や主婦に多く、背中が丸まったような悪い姿勢などの原因があるのではないかと考えられています。数ヶ月から数年の間で自然に治っていくことが普通です。
②胸椎椎間板ヘルニア(きょうついついかんばんヘルニア)
胸椎椎間板ヘルニアは、胸椎の椎体と椎体との間にあるクッションのような構造である椎間板が変性し、脊椎の外側に飛び出し、脊髄を圧迫する病気です。
胸椎椎間板ヘルニアの症状として、背部痛(背中の痛み)が生じることもあります。その他の症状として、体幹から下半身の感覚が低下することや、筋力低下がみられます。
胸椎椎間板ヘルニアは、外傷などの明らかな原因がない場合がほとんどです。
また胸椎椎間板ヘルニアは腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアと比べてその頻度は少なく、歩行障害などの症状が現れた場合には手術を要することが多いです。
③肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)
胸椎椎間板では、椎間板の中にある髄核(ずいかく)という構造が脊髄の真ん中を圧迫するですが、左右方向に髄核が飛び出すと神経根という脊髄から神経が出ていく部分を圧迫することもあります。
すると、肋間神経痛の症状が現れます。肋間神経痛の症状としては、背中から胸にかけて、肋骨に沿ったような鋭い痛みが生じるというものです。
④強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)
強直性脊椎炎は、仙腸関節という関節や腰、背中、首の脊椎の靱帯付着部に炎症が生じる病気です。さらに、胸椎の椎間関節にも炎症は起こります。
症状の多くは腰痛やお尻の痛みから始まり、徐々に背中全体や首にまで広がっていきます。症状が進むと、体を曲げ伸ばしすることが難しくなり、前屈みの姿勢となっていきます。体のだるさや疲れやすさ、体重減少、微熱、高熱などの全身の症状がでることもあります。
また、4人に1人の確率で目の病気である虹彩炎(こうさいえん)が起こりますが、早めに眼科治療を受ければ予後は良好です。
⑤胸椎骨折(きょうついこっせつ)
骨粗鬆症や、腫瘍が骨に転移した際に、背骨が圧迫骨折をきたすことがあります。この場合にも、圧痛や体動時痛といった症状が生じることがあります。
骨折の程度によっては、脊髄損傷をきたすこともあり、胸椎と腰椎の移行部に骨折が生じた場合には、両下肢の麻痺症状などを引き起こす可能性もあります。
骨折の原因が骨粗鬆症などで軽度の圧迫骨折を来している際には、安静と簡易コルセットなどの外固定をすることで、3〜4週間でほとんどの症状が改善するとされています。
転移性骨腫瘍が原因である場合には、癌そのものに対する化学療法やホルモン治療が行われます。骨転移による痛みが強い場合には、放射線治療が有効な場合もあります。骨破壊が進行しており、脊髄への圧迫がみられるような際には、脊椎固定術も行われます。
胸椎を押して痛い時にはどうすればいいか
今まで述べてきたように、胸椎を押して痛い場合、つまり背部の棘突起を押して痛い場合には様々な原因があります。
脊椎過敏症のように、胸椎を押して痛いという症状以外に特に症状がなく、治療をしなくても自然に症状が改善していくこともあります。
一方で、胸椎椎間板ヘルニアなどでは、下半身の筋力低下や感覚低下などの神経症状がみられます。こうした場合には、基本的には手術が必要となりますので、早めに整形外科などの専門医療機関を受診することをお勧めします。
まとめ・胸椎を押すと痛い!そのとき考えられる5つの病気とは?
今回の記事では、胸椎を押して痛い病気には何があるのか、その治療などについても解説しました。
胸椎椎間板ヘルニアなどの神経を圧迫する疾患では、治療が遅れると脊髄の神経が傷つき、麻痺が完全に治らない場合もあります。現在の医療では、一度傷ついた神経細胞を完全に修復することは難しいとされていました。
しかし、当院では自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療を脊髄損傷にも応用しています。
脊髄損傷に対しての治療には点滴が一般的ですが、当院では脊髄腔内ダイレクト注射療法として、損傷した脊髄の部位に直接投与を行うことで幹細胞を注入する方法もあります。
また、静脈注射で血管に幹細胞を注入する方法もあります。こちらは点滴された幹細胞が全身を巡り、直接注射ができない場所にある組織や臓器の修復や機能の回復を促すことができます。
▼胸椎を押して痛い病気の中には、胸椎椎間板ヘルニアのように後々まで症状が残る場合もあります。こうした病気の後遺症にお悩みの方で再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。
No.162
監修:医師 加藤 秀一
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