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- 内科疾患
- 内科疾患、その他
左脇腹の痛みが突然起こると「危険な症状ではないか」「病気が隠れているのでは?」と不安になる方も多いでしょう。 つるような痛みやチクチクした違和感、動くと痛む症状など、似た経験をしたことがある人は少なくありません。 左脇腹の痛みは原因が多岐にわたり、緊急を要する場合もあれば、様子を見ながら受診を検討できるケースもあります。落ち着いて症状を観察し、緊急性の有無を見極めることが大切です。 本記事では、左脇腹の痛みで考えられる原因や受診の目安について詳しく解説します。今あらわれている症状から、今取るべき対応を冷静に判断するための参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。左脇腹の痛みについて気になる点があればぜひ一度公式LINEにご登録ください。 【セルフチェック】左脇腹の痛みで受診すべき目安 左脇腹の痛みには、すぐに医療機関を受診すべきケースと、緊急性は高くないものの早めに相談した方が良いケースがあります。 ここでは、左脇腹の痛みで注意したい症状を中心に、受診の目安を解説します。痛みの強さや経過、ほかに伴う症状をもとに、今すぐ受診が必要かどうかを見極めましょう。 すぐに受診すべきケース 次のような症状がみられる場合は、緊急性が高い可能性があるため、早めに医療機関を受診することが重要です。 我慢できないほど強い痛みが急に出た場合 発熱、吐き気、嘔吐、冷や汗などを伴う場合 時間の経過とともに痛みが強くなっている場合 安静にしても痛みがまったく軽減されない場合 日常生活が困難になるほどの痛みがある場合 状態によっては、早期の治療が必要となるケースも考えられます。自己判断せず、できるだけ早く医師の診察を受けてください。 必要に応じて受診すべきケース 以下のような症状は、緊急受診のサインではないケースが多いものの、早めに医療機関を受診することをおすすめします。 軽度の痛みが数日以上続いている場合 つるような痛みやズキズキする痛みを繰り返す場合 動くと痛む、伸ばすと痛む状態が改善しない場合 痛み以外に違和感や体調不良が続いている場合 痛みの原因に心当たりがなく不安が強い場合 朝だけ腹痛が起こるなど、一定のパターンがある場合 これらは緊急性は高くないものの、早めに医療機関へ相談することで、原因の特定や今後の対応を考えやすくなるケースが多い傾向です。 症状が続く場合や気になる点があるときは、無理に我慢せず受診するようにしましょう。 また、左脇腹の痛みは、大腸がんをはじめとする重篤な病気が背景にあるケースもゼロではありません。より詳しい情報を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 左脇腹の痛みで考えられる主な原因 左脇腹の痛みは、病気だけでなく、姿勢やストレスなど日常生活の過ごし方が影響して起こることもあります。 ここでは、左脇腹の痛みで比較的よくみられる原因について解説します。思い当たる節のある方は参考にしてみてください。 筋肉や姿勢 長時間同じ姿勢で座り続ける、片側だけで荷物を持つなど体の使い方に偏りがあると、脇腹周辺の筋肉に負担がかかりやすくなり、筋肉痛のような症状を感じるケースも少なくありません。 また、筋肉が緊張してつるような痛みや一時的な違和感があらわれるケースもあります。特にデスクワークの方や、無意識に同じ側へ重心をかけている方は、日頃の姿勢や体の使い方を一度振り返ってみましょう。 これらが原因で左脇腹の痛みが出ている場合、安静にすることや姿勢を見直すことで改善が期待できます。 ただし、痛みが長引いたり強くなったりする場合には、別の原因が関係している可能性もあるため、自己判断せずに医療機関の受診を検討しましょう。 ストレスや自律神経の乱れ ストレスが続くと体が緊張状態になり、自律神経のバランスが乱れると、左脇腹をはじめとする腹痛を引き起こす場合があります。自律神経は、腸の動きと深く関係しているためです。(文献1) ストレスや自律神経の乱れによる腹痛の代表例として、「過敏性腸症候群(IBS)」が挙げられます。過敏性腸症候群とは、強いストレスや緊張などが原因で腹痛や下痢・便秘症状を繰り返す状態です。(文献2) ただし、腹痛の原因がすべてストレスによるものとは限りません。症状の出方や経過には個人差があるため、痛みが続く場合や悪化する場合には、経過を観察しながら医療機関で相談することを検討しましょう。 なお、朝だけ腹痛が出るパターンも、ストレスや自律神経の乱れが一因となっている可能性があります。詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 消化器や内臓の異常 左脇腹の周辺には、胃や腸などの消化器、腎臓などの泌尿器が位置しています。これらの内臓が関係している場合、筋肉の痛みとは異なり、鈍い痛みや持続的な違和感として症状があらわれることがあります。 また、発熱や吐き気、食欲不振など、ほかの症状を伴う場合には注意が必要です。内臓由来の痛みが疑われるときは、病気が関係している可能性も考えられます。 左脇腹の痛みで考えられる病気の種類 左脇腹の痛みは、さまざまな病気が関係している可能性があります。原因を大きく整理することで、自分の症状を客観的に捉えやすくなるでしょう。 本章では、左脇腹の痛みから考えられる病気の種類について解説します。 ただし、紹介している内容はあくまで可能性の一例です。痛みの位置や感じ方だけで原因や病気を特定することは困難なため、症状が続く場合や不安がある場合は医療機関へ相談してください。 胃腸(消化器)の病気 胃や腸などの消化器が関係する場合、左脇腹から上腹部・下腹部にかけて痛みを感じることがあります。 考えられる疾患 痛むことが多い部位の例 症状の傾向 胃炎・胃潰瘍 左上腹部から脇腹 食後に腹部が痛むケースが多い 急性膵炎 左脇腹からみぞおち 痛みが徐々に強くなるケースが多い 過敏性腸症候群 左脇腹を含む腹部 腹痛や便通異常を繰り返すケースが多い 痛みの感じ方は多岐にわたり、鈍い痛みやズキズキする痛みだけでなく、チクチクした違和感としてあらわれることも少なくありません。 腎臓(泌尿器)の病気 腎臓や尿路に異常がある場合、背中から左脇腹、腰にかけて痛みを感じることがあります。筋肉の痛みと異なり、動作による影響を受けにくいのが特徴です。 以下は、左脇腹の痛みに関連して考えられる泌尿器系の疾患と、痛みが出やすい部位や症状の傾向の一例です。 考えられる疾患 痛むことが多い部位の例 症状の傾向 尿路結石 脇腹から背中 ・強い痛みを感じるケースがある ・血尿や吐き気を伴うことがある 腎盂腎炎 左脇腹や背中・腰 ・発熱やだるさなどの全身症状を伴うことがある ・膀胱炎に似た症状(残尿感や排尿痛など)を伴うことがある 腎外傷 脇腹 脇腹の痛みのほか、血尿を伴うことがある 泌尿器の病気が関係している場合、左脇腹の痛みだけでなく、血尿や排尿時の違和感など、尿に関する症状を伴うことも少なくありません。 腎臓の病気が疑われるときは、脇腹の痛みとあわせて、尿の変化にも目を向けてみましょう。 筋肉・神経の病気 筋肉や神経が関係する場合に可能性のある病気は以下の通りです。 考えられる疾患 痛むことが多い部位の例 症状の傾向 肋間神経痛 脇腹付近・胸から背中 鋭い痛みを感じることが多い 帯状疱疹 全身(脇腹に多く見られる) 皮膚にピリピリする痛みを感じたり水疱ができたりするケースが多い 肉離れ 足の筋肉・腹筋 筋肉が切れる感覚や音で気づき、その後痛みを感じるケースが多い 筋肉や神経が関係する場合は、動かしたときや姿勢を変えたときに痛みが強くなることがあります。筋肉や神経からくる病気の可能性を疑う際は、整形外科への受診を検討しましょう。 【女性の場合】婦人科系の病気 女性の場合、女性ホルモンの影響や体調の変化によって、左脇腹や下腹部に痛みを感じることがあります。 女性ホルモンに関する痛みには婦人科系の疾患が関係している可能性もあるため、注意が必要です。可能性のある疾患と症状の傾向は、以下のとおりです。 考えられる疾患 痛むことが多い部位の例 症状の傾向 子宮筋腫 左下腹部から脇腹 下腹部で圧迫痛を感じることもある 子宮外妊娠 下腹部から脇腹 下腹部の激しい痛みや不正出血を伴うことがある 子宮内膜症 下腹部 生理中に痛みが強くなるケースがある 婦人科系の疾患は、月経周期やホルモンバランスが影響することもあります。痛みが続く場合や強くなる場合は、早めに婦人科へ相談しましょう。 左脇腹の痛みを和らげるための対処法 左脇腹の痛みの原因が緊急を要する病気でない場合、生活習慣や体の使い方を少し工夫するだけで、不快な症状が軽減される可能性も少なくありません。 本章では、自宅ですぐに取り組める具体的な対処法について解説します。 また、東洋医学的なアプローチとしてツボ押しが痛みの緩和に役立つこともあります。詳細な方法は以下の記事も参考にしてください。 姿勢や動き方を見直して痛みの悪化を防ぐ 筋肉疲労や神経圧迫が痛みの原因となっている場合、患部への物理的な負担を減らすことが第一の対処法となります。 特にデスクワークや長時間の運転など、同じ姿勢が続くと血行不良を招き、筋肉が凝り固まって痛みを悪化させる要因となりかねません。 日頃から以下のポイントを意識し、特定の部位に負荷が集中しないよう心がけることが大切です。 痛みが出る動作は無理に続けない 長時間同じ姿勢を避け、適度に姿勢を変える 急な動きや無理なストレッチを控える 寝る姿勢を工夫する 痛みが強い時は安静が原則ですが、動ける範囲で姿勢を調整することは、筋肉の過度な緊張を解くうえで有効です。無理のない範囲で、日々の生活動作を見直してみてください。 自分に合ったリラックス方法を取り入れる 精神的なストレスや緊張状態が続くと、自律神経のバランスが乱れ、痛みに対する感受性が高まってしまうことがあります。 特に左脇腹には大腸の一部が存在するため、ストレスによる腸の蠕動(ぜんどう)運動の異常が、痛みの引き金になるケースも珍しくありません。以下のような習慣を取り入れ、ストレスをため込まないよう心がけることが大切です。 ウォーキングなどで血行を促し、筋肉をほぐす 瞑想や深呼吸で、意識的に呼吸を整え、心の緊張を和らげる ぬるめのお湯にゆっくり浸かり、副交感神経を優位にする 就寝前のスマホを控え、質の高い睡眠を確保する 自身のライフスタイルに合わせ、継続しやすい方法を取り入れていきましょう。 左脇腹の痛みの対処法とあわせて、より詳しい治療法やケア方法を知りたい方は、以下のページもご覧ください。 左脇腹の痛みの原因と症状をチェックして適切に対処しよう 左脇腹の痛みは、筋肉や姿勢、ストレスなど日常生活が関係している場合もあれば、消化器や腎臓など病気が関係していることもあります。自己判断で決めつけず、まずは症状を整理し、緊急性があるかどうかを確認することが大切です。 痛みが軽く一時的なものであれば、姿勢の見直しやリラックスなどのセルフケアで様子を見る選択も考えられます。ただし、痛みが続く場合や不安が強い場合は、早めに医療機関へ相談するようにしましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療に関する情報提供や簡易的なオンライン診断を行っています。腹痛の症状について気になることや不安がある方は、情報収集の一つとして、公式LINEのご案内も参考にしてみてください。 左脇腹の痛みに関するよくある質問 左脇腹がつるように痛むのはなぜですか? 左脇腹がつるように痛む原因のひとつに、筋肉の緊張や神経への刺激が挙げられます。長時間同じ姿勢を続けていたり、急な動きによって筋肉が緊張したりすると、脇腹周辺に一時的なつっぱり感やつるような痛みを感じることがあります。 また、腹部にガスがたまることでも、腸が内側から押されるような感覚が生じ「つるような違和感」としてあらわれる場合も少なくありません。特に食生活の乱れやストレスが続いていると、こうした症状が起こりやすくなることがあるため、注意が必要です。 痛みが頻繁に起こる場合や強くなる場合は他の原因が関係している可能性もあるため、医療機関への受診も検討してみてください。 お腹の左側が痛むのはストレスが原因ですか? お腹の左側の痛みは、ストレスが関係しているケースも少なくありません。ストレスが続くと自律神経のバランスが乱れて腸の動きに影響が出て腹痛や違和感としてあらわれることがあるためです。 ただし、左側の腹痛がすべてストレスによるものとは限りません。筋肉や姿勢の影響、消化器や泌尿器の不調など、他の原因が関係しているケースもあります。痛みが続く場合や、発熱・吐き気などの症状を伴う場合は、ストレスだけと決めつけず、医療機関で相談することも大切です。 参考文献 (文献1) 自律神経と消化器症状|本郷 道夫 (文献2) 日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)|日本消化器病学会
2026.01.31 -
- 再生治療
「専門用語が多すぎて、iPS細胞のことがよくわからない」 「iPS細胞に関する資料や文献がわかりにくくて困っている」 iPS細胞の話題を目にする機会が増え、「医療の可能性が広がっているらしい」となんとなく理解している方は多い一方で、ニュースや資料を見るたびに「専門用語が多すぎて、何が何だかわからない」という声もよく聞かれます。 医学に精通していなくとも「iPS細胞について詳しく知りたい」と考えている方のために本記事では、現役医師がiPS細胞とはどんな細胞なのかをわかりやすく解説します。 iPS細胞の作り方 iPS細胞が注目される理由 iPS細胞を用いた治療のメリット iPS細胞を用いた治療のデメリット iPS細胞で治療が期待できる病気 記事の最後には、iPS細胞に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 再生医療に興味のある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 iPS細胞とは 項目 詳細 iPS細胞とは 普通の細胞を「どんな細胞にもなれる状態」に戻した細胞 イメージ 一度リセットして、いろいろな細胞へ変身できる力を持つ細胞 作り方のポイント 皮膚や血液などの細胞に特別な遺伝子を加えて能力を再設定した細胞 医療で注目される理由 失われた組織を再生する可能性、薬づくりを進める助けとなる細胞 再生医療での期待 心臓・神経・角膜など、傷んだ部位を修復するための新しい細胞の供給源 創薬での役割 患者由来の細胞で薬の効果や副作用を確かめられる研究モデル 発見の背景 2006年に京都大学の山中教授がマウスで成功し、その後ヒトでも実現した技術 現在の進み具合 目の病気、パーキンソン病などでの臨床研究の進展 未来の期待 難病治療の選択肢拡大、再生医療と創薬の発展 iPS細胞は、皮膚や血液などの細胞に特定の因子を加えて作られた、さまざまな細胞へ変化できる特殊な細胞です。 元の細胞を初期化し、生まれ変わった状態に戻すことで、神経・筋肉・血液など多様な細胞へ変化できる性質を持ちます。 この特徴により、失われた組織の再生、難病の研究、薬の効果や安全性の確認など、幅広い分野での活用が期待されています。 まだ研究段階の内容も多く、現時点では応用が限られていますが、今後の医療を支える基盤技術として大きな意義があるといえるでしょう。 以下の記事では、iPS細胞について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】ES細胞とiPS細胞の違いとは?共通点や課題をわかりやすく解説 iPS細胞と再生医療とは?仕組みや実用化事例・今後の課題までわかりやすく解説 iPS細胞の作り方 手順 詳細 1.普通の細胞を取り出す 皮膚や血液から採取した、ごく一般的で決められた働きを持つ細胞 2.細胞に特別な遺伝子を入れる 初期化因子と呼ばれる4つの遺伝子を入れて、細胞をリセットする作業 3.細胞を「赤ちゃんの状態」に戻す 成長した細胞を、どんな細胞にも変われる柔軟な状態へ戻す工程 4.「何にでもできる細胞」への変化 神経・心筋・肝臓など、体のさまざまな細胞に変わる力を持つ段階 5.iPS細胞の完成 リセットされた細胞が「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」と呼ばれる状態に到達した段階 iPS細胞は、身体の細胞に「初期化因子」と呼ばれる複数の因子を導入して作製されます。 これによって、成熟した細胞がさまざまな細胞に変化できる状態へ戻ります。この工程には高度な専門技術が必要であり、細胞の状態管理や品質確認が欠かせません。 作製されたiPS細胞は、培養して数を増やし、必要な細胞へ誘導する工程を経て研究や治療に活用されます。すべての工程に綿密なチェックが必要であり、安定した品質の確保が重要な課題とされています。 iPS細胞が注目される理由 注目される理由 詳細 あらゆる細胞に変化できる多能性により難病治療が期待される 神経・心臓・目など、傷んだ組織を新しい細胞で補う可能性 患者自身の細胞を使うため拒絶反応や倫理的な問題が少ない 患者本人の細胞を使うことで、身体になじみやすい傾向である 新薬開発や病気の研究に役立つ 病気の状態を再現した細胞を使い、薬の効果や安全性を確かめる仕組み iPS細胞が注目される背景には、治療と研究の両面で幅広い可能性が示されていることがあります。 神経細胞や心筋細胞など、これまで再生が難しかった組織への応用も検討され、失われた機能の回復をめざす研究が進んでいます。 さらに、患者自身の細胞をもとに作ることで、拒絶反応の心配を抑えやすいのも利点のひとつです。 薬の効果や副反応を調べる際にも利用され、病気の仕組みを理解するための手がかりとして役立つ点が評価されています。 あらゆる細胞に変化できる多能性により難病治療が期待される 病名 iPS細胞でできること パーキンソン病 壊れてしまった神経細胞の代わりを作製し、動きの症状を和らげる可能性 心臓病 弱っている心臓の細胞を補い、心臓の働きを支える可能性 加齢黄斑変性 視力に関わる網膜の細胞を補い、見えにくさの改善をめざす可能性 糖尿病(主に1型) インスリンを作れなくなった細胞を補い、血糖のコントロールを助ける可能性 (文献1) iPS細胞は、神経・血液・筋肉など多様な細胞へ変化できる力を持つ細胞です。 この特性により、治療の選択肢が限られている難病の研究や新しい治療法の開発が進んでいます。 とくに神経細胞が徐々に失われる病気では、失われた細胞を補う手段として大きな期待が寄せられており、将来の治療に結びつく可能性が示されています。 患者自身の細胞を使うため拒絶反応や倫理的な問題が少ない iPS細胞が注目される理由として、患者自身の細胞から作製できる点が挙げられます。 自分の細胞を使うため、移植の際に起こりやすい拒絶反応が起こりにくく、身体に受け入れられやすいと考えられています。 また、受精卵を使うES細胞とは違い、倫理的な問題が生じにくい点も大きな利点です。 こうした特徴から、iPS細胞は安全性と受け入れやすさの両面で期待され、将来の医療に役立つ可能性が注目されています。 新薬開発や病気の研究に役立つ iPS細胞は、治療だけでなく新薬づくりや病気の研究にも役立つ点が高く評価されています。 心臓や脳の細胞は採りにくいため、これまでの研究は動物実験に頼ることが多く、人の身体との違いが課題でした。 iPS細胞を使うことで患者の細胞から心臓や神経など必要な細胞を作製できます。そのため、薬の効き方や副作用をより正しく調べられます。 また、病気の進み方を再現して原因を探ることも可能です。こうした特徴から、新薬開発でも重要な役割を担っています。 iPS細胞を用いた治療のメリット メリット 詳細 患者自身の細胞を使えるため拒絶反応を抑えやすい 自分の細胞をもとに作ることで、体に受け入れられやすい状態 失われた組織を再生できる可能性がある 傷んだ神経・心臓・目などの細胞を補う治療へのつながり 治療法がなかった難病への応用が期待できる 従来対応が難しかった病気に新しい選択肢を生む可能性 iPS細胞を使った治療には、患者自身の細胞を用いることで拒絶反応を抑えやすい利点があります。また、失われた組織を補える可能性がある点も重要です。 さらに、これまで治療法がなかった難病でも応用が検討されており、細胞の性質を活かし機能低下した部位へ新しい細胞を届けることで、症状の改善につながる可能性が示されています。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 患者自身の細胞を使えるため拒絶反応を抑えやすい 項目 詳細 なぜ自分の細胞を使うのか もともと身体にあった細胞なので、身体が受け入れやすい 一般的な移植の問題点 他人の細胞だと「異物」と判断され、身体が攻撃してしまう(拒絶反応) iPS細胞のメリット 皮膚や血液など、自分の細胞から作製できるため拒絶反応が起こりにくい 治療への良い影響 強い免疫抑制の薬を減らせる可能性があり、身体への負担が小さくなる 倫理面でのメリット 他人の細胞や受精卵を使わないため、倫理的な問題が少ない (文献2)(文献3) iPS細胞のメリットとして、患者自身の細胞をもとに作製できることが注目されています。 自分の細胞であれば身体が受け入れやすく、移植で起こりやすい拒絶反応を抑えられる可能性があります。 そのため、強い薬で免疫をおさえる必要が少なくなる点が期待されています。また、他人の細胞や受精卵を使わないため、倫理的な問題が少ないことも大きな利点です。 失われた組織を再生できる可能性がある 項目 詳細 再生が難しい理由 壊れた細胞は自然には元に戻りにくい状態 iPS細胞の強み 心臓・神経・網膜など、さまざまな細胞へ変化できる柔軟さ 期待される病気 パーキンソン病・心臓病・加齢黄斑変性・糖尿病などで活用が検討される仕組み 治療の狙い 不足した細胞を新たに作り、機能回復をめざす治療へのつながり 現時点の状況 研究段階のものも多いが、新しい治療の候補として注目される状態 (文献4) iPS細胞が注目される大きな理由は、病気やけがで失われた細胞を補う可能性がある点です。心臓や神経のように自然には再生しにくい組織でも、iPS細胞から新しい細胞を作製できる可能性が示されています。 パーキンソン病や心臓病、加齢黄斑変性、糖尿病などで研究が進んでおり、壊れた部分を補って機能を取り戻す治療法として期待されています。 治療法がなかった難病への応用が期待できる 項目 詳細 これまでの課題 壊れた細胞を元に戻せず、病気の進行を抑える治療が中心だった状態 iPS細胞の強み 神経・心臓・網膜など、身体のさまざまな細胞を作製できる柔軟さ 研究が進む病気 パーキンソン病・脊髄損傷・加齢黄斑変性・心不全などでの新しい治療候補 期待される効果 減ってしまった細胞を補い、機能回復をめざす治療へのつながり 現状と見通し 研究段階が多いものの、従来できなかった治療への道を広げる可能性 (文献1)(文献5) iPS細胞は、これまで治療の選択肢が限られていた難病に対して、新しい可能性を開く技術として注目されています。 再生が難しい神経や心臓の細胞を作り出せるため、パーキンソン病、脊髄損傷、加齢黄斑変性、心不全などで研究が進んでいます。 減少してしまった細胞を補うという、従来にはなかった治療の考え方を実現できる点が大きな特徴です。まだ研究段階ではあるものの、将来の治療につながる可能性が期待されています。 iPS細胞を用いた治療のデメリット デメリット 詳細 腫瘍化リスク(がん化の可能性)がある 作られた細胞が増えすぎるなど、予期しない変化を起こす可能性 安定した品質での製造が課題となる 治療に使う細胞を毎回一定の状態で作ることが難しい現状 治療コストが高く患者負担が大きくなる可能性がある 複雑な工程や設備が必要で、治療費が高額になりやすい状況 iPS細胞を使った治療には大きな期待がある一方で、いくつかの注意点もあります。作られた細胞が予想以上に増えてしまい、腫瘍のような変化を起こす可能性があります。 また、治療に使う細胞を毎回同じ品質で作ることが難しく、安全性を保つためには慎重な管理が必要です。さらに、工程が複雑で高度な設備を要するため、治療費が高額になり、患者の負担が大きくなる可能性もあります。 腫瘍化リスク(がん化の可能性)がある 項目 詳細 リスクが生じる背景 iPS細胞の作製過程で細胞が急速に増えやすい状態になること 増えすぎる危険性 増殖の制御がうまく働かないと、細胞が過剰に増えて塊になる可能性 遺伝子の変化 作製中に遺伝子の働きや構造が予期せず変わる場合がある 研究で進む対策 遺伝子を組み込まない方法や、危険な細胞を取り除く技術の開発 現在の課題 リスクを完全にゼロにできないため、安全管理が欠かせない現状 (文献6)(文献7) iPS細胞は大きな可能性を持つ一方で、いくつかの課題もあります。作る過程で細胞が必要以上に増え続け、腫瘍のような塊ができてしまうリスクが指摘されています。 遺伝子の働きが予期せず変わったり、細胞が分裂する際に異常が起きたりすることで、がん化につながる恐れもあります。 そのため、より安定的に使えるようにする研究が続けられていますが、現時点ではリスクをゼロにすることは難しく、慎重な管理が欠かせません。 安定した品質での製造が課題となる 項目 詳細 毎回同じ細胞にならない可能性 初期化や培養の条件で細胞の性質に差が出ること 細胞の混ざりやばらつき 成長スピードや遺伝子の働きが細胞ごとに異なること 品質基準の維持が難しい 治療に使える状態かどうかを厳しく確認する必要があること 大量生産の難しさ 細胞を増やす過程で性質が変化しやすいこと 安定性確保の負担 無菌管理・不純物チェック・遺伝子検査など多くの工程が必要なこと (文献8)(文献9) iPS細胞を治療に使うためには、毎回同じ品質の細胞を作製することが欠かせません。 しかし、初期化や培養の条件がわずかに違うだけで、細胞の性質や成長の速さにばらつきが生じることがあります。 さらに、大量に増やす過程で細胞の性質が変わってしまうことも課題です。治療に適した品質かどうかを確かめるには多くの検査や慎重な管理が必要です。 治療コストが高く患者負担が大きくなる可能性がある iPS細胞を使った治療は、高度な技術が必要なため費用が高額になりやすい課題があります。細胞を作製するには、清潔な専用施設や特殊な機器、専門スタッフによる厳格な管理が欠かせず、準備だけで大きなコストがかかります。 さらに、安全性を確認する検査や、治療に使える量まで細胞を増やす工程にも時間と費用を要します。患者一人ひとりに合わせて細胞を作製する場合、大量生産ができないため費用はさらに膨らみます。 現時点では保険適用が限られており、患者自身の経済的負担が大きくなる点も課題となっています。 iPS細胞で治療が期待できる病気 治療が期待できる病気 詳細 脳・神経の病気(パーキンソン病など) 減少してしまった神経細胞を補い、動きや症状の改善をめざす仕組み 目の病気(加齢黄斑変性など) 傷んだ網膜の細胞を置き換え、見えにくさの改善をめざす治療 心臓・血管の病気 弱った心筋細胞を補い、心臓の働きを支える治療へのつながり その他、研究が進められている分野(糖尿病・血液疾患など) インスリンを作製する細胞や血液の細胞を補う治療への応用 iPS細胞は、これまで治療が難しかった病気に対して、新しい選択肢を生み出す可能性があります。神経細胞や網膜の細胞、心臓の細胞など、身体の大切な部分を作り出せるため、パーキンソン病や加齢黄斑変性、心臓病などで研究が進んでいます。 また、糖尿病や血液の病気でも失われた細胞を補う治療が期待されており、まだ研究段階ながら将来の治療につながる可能性を持つ技術です。 以下の記事では、iPS細胞で治療が期待できる病気について詳しく解説しています。 脳・神経の病気(パーキンソン病など) 項目 内容 病気の状態 脳のドパミン神経細胞の減少により、身体の動きが悪くなる病気 従来の治療 薬でドパミンを補う方法。失われた神経細胞そのものは補えない iPS細胞治療の仕組み 患者の細胞からドパミン神経細胞を作製し、脳に移植 期待される効果 失われた神経細胞を直接補い、症状の改善を目指す 現在の状況 研究段階。安全性と効果の確認を慎重に進めている (文献10)(文献11) パーキンソン病では、脳の中でドパミンと呼ばれる物質を作る神経細胞が減ってしまいます。現在の治療は薬でドパミンを補う方法が中心ですが、失われた神経細胞そのものを元に戻すことはできません。 iPS細胞を用いることで、患者自身の細胞から新しい神経細胞を作り、脳に移植して失われた機能を取り戻せる可能性があります。 脳の神経細胞は一度失われると自然には再生しないため、この技術は大きな期待を集めています。ただし、現在はまだ研究段階であり、実用化には効果やリスクの慎重な確認が必要です。 以下の記事では再生医療とパーキンソン病の関係性について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の実用化はいつ?効果や課題を解説 パーキンソン病が治る時代になる?注目の先進医療を紹介 目の病気(加齢黄斑変性など) 項目 内容 病気の状態 網膜の中心部(黄斑)がダメージを受け、物がゆがんで見えたり中心が暗く見える病気 従来の治療 病気の進行を抑える方法が中心。傷ついた網膜細胞は元に戻せない iPS細胞治療の仕組み 患者の細胞から、網膜色素上皮細胞を作り、シート状にして移植 期待される効果 失われた網膜細胞を補い、視力の維持や改善を目指す 現在の状況 日本で臨床研究が進行中。効果やリスクの確認段階 (文献12) 加齢黄斑変性は、網膜の中心部分がダメージを受けることで、物がゆがんで見えたり、見たい部分が暗くなったりする病気です。現在の治療では進行を遅らせることが中心で、傷ついた網膜細胞を元に戻すことはできません。 iPS細胞を用いることで、患者自身の細胞から網膜の細胞を作り、シート状にして目に移植することで失われた機能を補える可能性があります。 網膜の細胞は一度傷つくと自然には再生しないため、この技術は視力を守る新しい選択肢として期待されています。 心臓・血管の病気 項目 内容 病気の状態 心筋梗塞や心不全で心臓の筋肉がダメージを受け、心臓の力が低下する 従来の治療 薬やカテーテル治療で症状を抑える方法が中心。失われた心筋細胞は元に戻せない iPS細胞治療の仕組み 患者の細胞から、心筋細胞や血管内皮細胞を作り、傷んだ部分に補う 期待される効果 失われた心筋を補い、心臓の働きを回復させる。血流の改善も目指す 現在の状況 研究段階。効果やリスクを段階的に確認中 (文献13) 心筋梗塞や心不全では、心臓の筋肉である心筋細胞がダメージを受け、心臓のポンプ機能が低下します。現在の治療は薬で症状を抑える方法が中心ですが、失われた心筋細胞を元に戻すことはできません。 iPS細胞を用いることで、患者自身の細胞から新しい心筋細胞や血管の細胞を作り出して傷んだ部分を補い、心臓の働きを回復できる可能性があります。 心筋細胞は一度失われると自然には再生しないため、この技術は心臓病治療の新しい選択肢として期待されています。 【関連記事】 以下の記事では不整脈について詳しく解説しています。 更年期の動悸・不整脈が気になる方へ|原因と対処法を解説 不整脈になりやすい人の特徴を現役医師が解説 その他・研究が進められている分野(糖尿病・血液疾患など) 疾患 治療の課題 iPS細胞による研究内容 現在の進捗 1型糖尿病 インスリンを作る膵β細胞が壊れ、血糖の調整が困難 患者の細胞から膵β細胞を作製し、インスリン分泌機能の再建を目指す 細胞作製の研究段階 血液疾患 血液を作る造血幹細胞に異常があり、正常な血液細胞が作れない 造血幹細胞を作り出し、病気の仕組みを解明。遺伝子異常の影響を調べる 病態解明の研究が進行中 (文献14) 糖尿病や血液の病気は、これまで根本的な治療が難しい領域でした。1型糖尿病では、本来インスリンを作るはずの膵臓の細胞が壊れてしまうため、毎日のインスリン注射が欠かせません。 血液疾患では、血液を作り出す大元の細胞に問題があり、正常な血液が作製できなくなります。iPS細胞の技術により、これらの病気で失われた細胞を人工的に作り出せる道が開けてきました。 とくに血液疾患では、患者の細胞から病気を再現することで、どこに問題があるのかを詳しく調べられるようになっています。実用化にはまだ時間がかかりますが、治療の選択肢を増やす研究として進められています。 【関連記事】 【医師監修】糖尿病とは|症状や原因・予防法までを詳しく解説 【医師監修】iPS細胞と糖尿病治療の関係性は?実用化後の可能性や課題について紹介 iPS細胞をわかりやすく表現すると将来の医療を変える可能性を持つ技術 iPS細胞は、さまざまな細胞へ変化できる性質を持つことから、再生医療や研究の基盤として期待されています。現時点では研究段階の領域も多いものの、将来の医療を大きく変える可能性がある技術として位置付けられています。 再生医療を用いた治療を検討されている方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、再生医療を応用した治療を提供しています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 iPS細胞に関するよくある質問 iPS細胞を用いた治療は保険適用されますか? 現在、iPS細胞を使った治療の多くは研究段階であるため、保険適用はされません。実際に行われているのは、安全性を確かめるための臨床研究が中心で、一般の医療機関で受けられる治療ではありません。 今後、効果と安全性がしっかり確認され、国の承認を受けることで保険が使える可能性がありますが、現時点では慎重に評価が続けられています。 iPS細胞を用いた治療はどうすれば受けられますか? 現在、iPS細胞を使った治療は一般の医療として受けられる段階ではありません。多くは臨床研究として行われており、治療を希望する場合は研究に参加する方法のみとなります。 参加には病気や健康状態などの条件があり、必ずしも効果が得られるわけではないため、十分な説明を受けた上で検討する必要があります。 iPS細胞が実用化されるのはいつですか? iPS細胞を使った治療には大きな期待がありますが、現在のところ「いつ実用化されるか」は断言できません。 日本ではパーキンソン病や加齢黄斑変性などで臨床研究が進んでいますが、これは一般に治療として提供する前の段階です。そのため現時点では、すぐに医療機関で受けられる状況ではありません。 参考文献 (文献1) 指定難病の疾患特異的iPS細胞リソースを構築―希少難病の病態解明や治療法開発に役立つ疾患iPS細胞を多数作製―|京都大学 iPS細胞研究所 CiRA(サイラ) (文献2) iPS細胞を利用した移植:拒絶反応なく定着-マウスiPS細胞とES細胞の免疫原性※1比較に成功-|国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 (文献3) 再生医療における移植モデルの開発に初めて成功―iPS細胞を用いた移植医療への貢献に期待―|国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (文献4) iPS細胞の誕生から医療応用まで|Glycoforum (文献5) 疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究|再生医療実現拠点ネットワーク事業 再生医療実現拠点ネットワークプログラム (文献6) iPS細胞の安全性について|Personal iPS (文献7) iPS細胞における造腫瘍性リスク評価に関して|国立がん研究センター がんゲノミクス研究分野 柴田 龍弘 (文献8) ヒトiPS細胞の品質評価と安定供給への取り組み|産総研 TODAY 2012-06 (文献9) 再生医療用細胞加工物の品質・安全性確保のための科学的課題|国立医薬品㣗品衛生研究所 再生・細胞医療製品 (文献10) Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease|nature (文献11) 2018年度 研究事業成果集 iPS細胞を用いたパーキンソン病に対する細胞移植治療の医師主導治験がスタート|国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (文献12) 加齢黄斑変性に対する自己iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植-安全性検証のための臨床研究結果を論文発表-|京都大学 iPS細胞研究所 CiRA(サイラ) (文献13) iPS細胞から作製した心筋細胞シートの医師主導治験の実施~治験計画前半の移植実施報告~|国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (文献14) 「iPS由来膵島細胞シート移植に関する医師主導治験」の開始について|京都大学医学部附属病院
2026.01.29 -
「大腸がんと痔の血便の違いは?」 「見分けるポイントはある?」 大腸がんと痔の血便や出血は、病状によって類似するため見分けることが困難な場合があります。そのため、血便の頻度やそのほかの大腸がんの症状を確認することが重要です。 本記事では、大腸がんと痔の血便や出血の違いをはじめとして以下を解説します。 血便や出血以外の大腸がんの症状 大腸がんと痔の血便や出血の見分け方 早期発見するための検査 大腸がんの予防方法 大腸がんは40歳以降からリスクが高まるとされています。(文献1)血便など気になる症状が現れている方は参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな病気の治療に応用されている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEをご利用ください。 大腸がんと痔の血便や出血の違いとは? 大腸がんと痔の血便や出血は、似ていることがあるため見分けるのが困難な場合があります。 病名 血便や出血の違い 大腸がん がんの場所により赤色の便が出たり赤黒い便が出たりする いぼ痔(痔核) 痛みのない鮮やかな赤色の血便が多い 切れ痔(裂肛) 強い痛みを伴う鮮やかな赤色の血便が多い 以上のように大腸がんと痔の血便は似ているため、「出血は痔によるもの」と放置されることがあります。また、大腸がんはがんができる場所によっては、血便がはっきりと現れないため見逃されることもあるため注意が必要です。 以下では、それぞれの血便や出血の違いについて詳しく解説します。 大腸がん|がんの場所により赤色の便が出たり赤黒い便が出たりする 大腸がんは初期症状がほとんど現れません。ある程度進行すると血便や便通異常などの症状が現れます。 また、がんができる部位によって血便の症状が以下のように異なります。 部位 血便の特徴 大腸の右半分 わかりにくい 大腸の左半分 赤黒い血便や粘液と血が混ざった便 直腸 赤色の便 以上のように大腸がんの血便の症状は大きく分けると3通りあり、血便だけで大腸がんと判断するのは困難です。また、肛門を拭いた際に、ペーパーに鮮やかな赤色の血が付くと「痔によるもの」と思うことが多いかもしれません。しかし、直腸がんの場合は、排便後にペーパーに鮮やかな赤色の血が付くことがあります。 ただ、これらの血便や出血だけでは判断ができないため「血便の頻度や持続期間はどれくらいか」「そのほかの大腸がんの症状は現れていないか」などの確認が重要です。症状が血便や出血だけであっても、頻度が多いのであれば医療機関の受診を推奨します。 いぼ痔(痔核)|痛みのない鮮やかな赤色の血便が多い いぼ痔は肛門の血管がうっ血して腫れ、いぼ状になった状態です。下痢や便秘、排便時のいきみが原因で引き起こされます。 出血が起きると鮮やかな赤色の血便が見られ、出血量が多いとポタポタと血が落ちることもあります。 そのほかのいぼ痔の症状の特徴は以下のとおりです。 排便時に出血が多い 多くの場合は痛みが現れない 重度であると粘液で下着が汚れる 肛門付近に血栓ができるタイプのいぼ痔(血栓性外痔核)の場合は強い痛みが現れます。 切れ痔(裂肛)|強い痛みを伴う鮮やかな赤色の血便が多い 切れ痔は、便秘などによって肛門の内側に裂け目ができている状態です。便秘気味の20〜40歳代の女性に多く見られます。出血が起きると強い痛みとともに少量の鮮やかな赤色の血便が現れるのが特徴です。 多くは硬い便を無理に出そうとするのが原因ですが、長期間続く下痢により、肛門が炎症して起こることもあります。 血便や出血以外の大腸がんの症状 大腸がんはある程度進行すると、血便や出血以外にも以下のような症状が現れることがあります。 大腸がんの症状 大腸の右側にがんができた場合 大腸の左側にがんができた場合 血便 まれに起こる 発見のきっかけになることが多い 腹痛や嘔吐 まれに起こる 比較的起こる 貧血 発見のきっかけになることが多い 比較的起こる 細い便 現れないことが多い 比較的起こる 排便習慣の変化 (便秘や下痢など) まれに起こる 比較的起こる 腹部の張り 比較的起こる まれに起こる なお、大腸がんの痛みは、がんそのものから発生するわけではありません。がんにより腸の内容物の通過が妨げられることで現れます。そのため、がんによる腹痛は、現れては治まるを繰り返す特徴があります。 大腸がんと痔の血便や出血の見分け方 大腸がんが発症してある程度進行すると、赤黒い血便が現れることが多いです。しかし「右側の大腸がんでは血便がわかりにくいことがある」「直腸がんでは痔と同様の鮮やかな赤色の血便が現れる」などの理由により、血便だけでは大腸がんを見分けることは難しいです。 そのため、血便や出血だけでなく、以下のような大腸がんの主な症状のいずれかが現れていないか確認しなければなりません。 血便がある 貧血または立ちくらみがする 便秘や下痢を繰り返している 便が細い 何度もトイレに行く 以上の症状のうち1つでも頻繁にかつ長い期間現れている場合は、大腸がんのおそれがあるため医療機関の受診を推奨します。(文献2) 大腸がんを早期発見するための検査 大腸がんを早期発見するための代表的な検査には、便潜血検査や大腸内視鏡検査があります。これらの検査について詳しく解説します。 便潜血検査 便潜血検査とは、便の中に含まれる微量な血液を調べる検査です。出血の有無により大腸がんが発生していないかを調べることができます。陽性となった場合は精密検査が必要です。 自覚症状が現れていない大腸がんを発見するためにも有効な検査です。便潜血検査は、1日法と2日法の2種類がありますが、2日分の便を検査する2日法が推奨されています。がんからの出血は毎日起きているわけではないためです。 便潜血検査では、痔からの出血により陽性となることもあります。しかし「痔の出血によるもの」と決めつけず、陽性となった際は精密検査を受けることが推奨されています。 大腸内視鏡検査 大腸内視鏡検査は、内視鏡という細い管の先端に小型カメラがついた医療器具を用いて、腸内を直接観察する精密検査です。肛門から内視鏡を挿入して大腸全体を調べます。 早期の大腸がんやポリープを発見するのに有効です。がんが疑われる部位を発見した際は、内視鏡により一部を採取して病理検査(顕微鏡でさらに詳しく調べる検査)を行います。 なお、検査中にポリープの切除も可能です。便潜血検査により陽性となった方は、大腸内視鏡検査を受ける必要があります。 大腸がんの予防方法 大腸がんの予防において、まず重要なことは定期的に検診を受けることです。便潜血検査においては、40歳以上の方は年に1回の間隔で受けることを推奨されています。(文献3)日常生活における予防方法としては、食生活の改善や適度な運動が重要です。 例えば以下のような内容です。 食物繊維を十分に摂る 肉類の過剰摂取は避ける 加工肉の摂取は極力避ける 適正な体重を維持する 適度な運動習慣を定着させる がん予防において、これらの食生活の改善や運動習慣の定着によって、免疫力を高めることも重要とされています。 なお、免疫力を活用したがん予防として「免疫細胞療法」があります。詳しくは以下のページをご覧ください。 まとめ|排便時に血便や出血が続く場合は検査を受けよう 大腸がんと痔の血便や出血は、症状が似ているため見分けるのが難しい場合があります。 直腸がんでは、いぼ痔や切れ痔と同じように鮮やかな赤色の血便が出ることがあります。一方、がんの部位によっては血便がはっきり現れないこともあり、注意が必要です。 大腸がんであるかどうかを判断するには、血便や出血だけでなく、そのほかの大腸がんの症状である貧血、下痢、便秘、「便が細い」「何度もトイレへ行く」などの確認が重要です。これらの症状が一つでも頻度が多く長い期間続いているのであれば、自己判断しないで早めに医療機関を受診してください。 当院「リペアセルクリニック」では、がん予防を目的とした免疫細胞療法を行っております。詳しくは以下をご覧ください。 大腸がんと痔の違いに関するよくある質問 「痔だと思ったらがんだった」は20〜30歳代でもある? 20〜30歳代において「痔だと思っていた血便の原因が大腸がんだった」というケースが多いかは不明です。しかし、20〜30歳代でも大腸がんはまれに見つかっています。(文献4)年齢関係なく気になる症状が現れている方は、医療機関を受診してください。 大腸がんの血便や出血は何日続く? 大腸がんからの出血は常に起きているとは限りません。しかし、多くの場合は少量の持続性の出血です。少量の出血であるため気づかないことが多く、検診などで貧血が見つかり、その後の精密検査にて大腸がんが発見される場合もあります。 参考文献 (文献1) 大腸がんとは|国立がん研究センター中央病院 (文献2) 直腸がん|恩賜財団済生会 (文献3) 大腸がん(最新:2024年度版)|がん対策研究所 (文献4) 当施設における若年者大腸腫瘍症例の臨床的検討|日本人間ドック・予防医療学会誌
2026.01.26 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
大腸がんの治療中に「何を食べれば良いのか」「手術前後で食事はどう変わるのか」と悩む方は少なくありません。 医師から食事制限のアドバイスをされても、具体的にどのような食材を選べば良いのかわからず、不安を感じることもあるでしょう。 食事管理は大腸がん治療を支える重要な要素のひとつです。適切な食事を心がけることで体への負担を抑え、回復を後押しできます。 本記事では、治療段階ごとの食事の注意点や取り入れたい食品・避けたい食品、さらに取り入れやすいレシピまで解説します。正しい食事管理を知り、より適した治療を行うための参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる方は今すぐ登録して、内容をチェックしてみてください。 大腸がんにおける「食事」の重要性 大腸がんの治療では、手術や抗がん剤といった医療行為だけでなく、日々の食事が体調や回復を左右する重要な要素となります。 ここでは、大腸がんの治療段階ごとに、食事でとくに気をつけたいポイントを解説します。本章を参考に、該当する治療段階の食事の注意点を把握しましょう。 手術前後|腸への負担軽減と合併症(腸閉塞)予防 大腸がんの手術前後は、腸への負担を抑え、腸閉塞などの合併症を防ぐことが重要です。 手術前は、過度な食物繊維や高脂肪食、胃腸に負担のかかる食品を控え、消化の良い食事を心がけましょう。手術前日は食事を中止することが多いため、医師の指示の確認が必要です。 手術後は腸が回復途中のため、引き続き腸への刺激を避けた食事管理が必要です。入院中は流動食から始めて徐々に常食へ移行しますが、その後も海藻やきのこ、ごぼうなど食物繊維を多量に含む食品や揚げ物、刺激物は控えましょう。 退院後も術後3カ月程度は腸の動きが不安定なため、水分を十分に摂り、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。とくに便秘や下痢の症状が生じているときは、こまめな水分補給を心がけましょう。 抗がん剤治療中|副作用による食欲不振対策・体力の維持 抗がん剤治療中は、薬の副作用として食欲不振や味覚の変化などが起こりやすく、普段どおりの食事が難しくなる場合があります。 副作用が強い日は無理に食べようとせず、こまめな水分補給が優先されます。また、抗がん剤の副作用は人によって異なるため、症状に合わせて以下のように食事の摂り方を工夫するのもおすすめです。 症状 対応方法の例 食欲低下 1回量を少なめにし、回数を増やして少量ずつ食べる 味覚異常 甘さや酸味など、味覚の変化に合わせた味付けを試す このような対策を取り入れながら、無理のない範囲で栄養不足を防ぎ、体力の維持を心がけましょう。 予防・再発防止|発症リスクを下げるための腸内環境づくり 大腸がんの予防や再発防止を目的とする場合、腸内環境を整える生活習慣と食事が重要です。過度な飲酒や喫煙は大腸がんの発症リスクを高めるため、できるだけ控えましょう。 食事面では、カルシウムや食物繊維の適切な摂取が、腸内環境の改善や大腸がんリスク低下につながるとされています。(文献1)(文献2) ただし、治療中や術後は腸閉塞を招く恐れがあるため、食物繊維には注意が必要です。治療中は控え、医師の許可が出てから予防・再発防止として取り入れるようにしましょう。 また、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉の過剰摂取は控えることが推奨されます。加工肉に含まれる亜硝酸塩や、調理・加工の過程で生成される発がん性物質が大腸に悪影響を及ぼすリスクがあるためです。 予防や再発防止の観点から、加工肉の摂取は意識的に減らしていきましょう。 大腸がんの治療・予防におすすめの食事 治療や予防のための食事では、消化が良く栄養バランスの整った食品を選ぶことが大切です。とくに治療中や術後は、腸への負担を抑えながら、体力の回復や維持に役立つ食材を意識して取り入れましょう。 以下は、大腸がんの治療中や術後におすすめの食品例です。 食品群 おすすめの食品例 たんぱく質類 ・鶏ささみ ・卵 ・乳製品(ヨーグルト・牛乳など) 果物 ・バナナ ・桃 ・りんご ※缶詰を使う、軟らかく加熱調理するなどの工夫がおすすめ 主食 ・おかゆ ・うどん ・食パン とくに術後は腸への負担を考慮しながら、消化に良く体力の回復に役立つ食品を毎食に少しずつ取り入れるようにしましょう。 また、大腸がんの予防には全粒穀類(玄米やオートミールなど)、食物繊維を含む食品、乳製品などを積極的に取り入れるのもおすすめです。 大腸がんの治療・予防のために避けたい食事 大腸がんの治療中や術後、また予防・再発防止を意識する段階では、腸に負担をかける食事を避けることが重要です。治療・予防のいずれの場合でも、以下のような食品は腸への負担となりやすいため、過度な摂取は控えましょう。 高脂肪食(揚げ物、脂身の多い肉など) アルコール・カフェインを含む飲み物 辛味や塩味が強い刺激物 その他、とくに注意したいのが食物繊維を過剰に含む食品です。海藻類・きのこ類・ごぼう・たけのこなどは食物繊維が豊富で、予防の観点では有用とされています。(文献2)ただし、治療中や術後は腸内で詰まりやすく、腸閉塞のリスクを高める恐れがあるため控えましょう。 また、大腸がんの予防の観点では、赤肉と呼ばれる牛、豚、羊、馬、ヤギの肉も、過剰摂取を控えるべきとされています。 病状や治療内容によって必要な食事制限は異なります。医師や管理栄養士から個別に指示がある場合は、それを最優先で守るようにしましょう。 大腸がんの食事でおすすめのレシピ ここからは、治療や目的の段階に応じたおすすめレシピの一例をご紹介します。 手術前後の場合 抗がん剤治療中の場合 発症予防・再発防止が目的の場合 それぞれの体調や治療状況に合わせ、毎日の食事づくりの参考にしてください。 手術前後の場合 大腸がんの手術後は、消化に負担をかけない食品から始め、腸の回復を促す段階的な食事が大切です。とくに食物繊維や消化の悪い食品は控える必要があります。 以下は、手術前後に取り入れやすい消化に優しいメニューの一例です。 分類 メニュー例 主食 おかゆ、食パン 主菜 ロールキャベツ、魚の塩焼き 汁物 ポトフ、味噌汁 食事は1日3食を基本に、小分けにして少量ずつ摂ると腸への負担がさらに軽減します。退院後も腸の状態に合わせて少しずつ通常の食材や食感へ戻していきましょう。 医師や管理栄養士から個別に栄養指導があった場合は、その内容・方針を厳守してください。 抗がん剤治療中の場合 抗がん剤治療中は、副作用として食欲不振や味覚の変化、吐き気などが出やすく、普段の食事が負担に感じられることがあります。 治療中で食事に支障を感じている場合は、症状に合わせて食べやすいメニューを選ぶことが大切です。以下は、症状別に取り入れやすいレシピの一例です。 症状 おすすめのレシピ例 食欲不振・吐き気 ・麺類 ・豆腐や卵料理 ・塩分抑えめの漬物や酢料理 味覚障害 ・蒸し野菜(好みの味のソースやタレをかける) ・酢料理 ・だしを効かせた料理 また、調理の際は食材を細かく刻んだり、とろみをつけたりすることで、のど越しが良くなり摂取しやすくなります。 副作用が強いときは体調に合わせて食べられそうなものを選び、少量を数回に分けて食べることを心がけましょう。 発症予防・再発防止が目的の場合 大腸がんの発症予防や再発防止を目指す場合、腸に負担をかけにくい食品を基本に、栄養バランスの整った食事を継続することが大切です。 糖質や脂質を過度に摂り過ぎないよう注意しながら、たんぱく質・ビタミン・ミネラルをバランス良く取り入れましょう。 以下は、予防を意識したメニューの一例です。 分類 メニュー例 主食 雑穀ご飯、玄米入りご飯 主菜 焼き魚、豆腐ハンバーグ 副菜 納豆、温野菜 汁物 具材を豊富に入れた味噌汁 大腸がんの発症または再発予防を目的とした食事は、日々の食習慣の積み重ねが大きく影響します。無理に特別な食品を増やさずに毎日の食事でバランスを意識し、手に入れやすい食材で続けられる食生活を心がけましょう。 正しい食事管理で大腸がんの治療を支えよう 正しい食事管理は、大腸がんの治療や合併症の予防、生活の質を支える重要な要素です。手術前後や抗がん剤治療中など、それぞれの段階に合った食事を選び、必要な栄養を補う食習慣を身につけましょう。 本記事でご紹介した内容が、ご自身やご家族の治療中・治療後の食生活を支える一助になれば幸いです。 栄養管理や治療後の体調に不安のある方は、再生医療を専門とするリペアセルクリニックの公式LINEでの無料相談もご活用ください。 大腸がんの食事についてよくある質問 食事が原因で大腸がんになることはある? 大腸がんは、特定の食品を「1つ食べたら必ず発症する」といった単純な原因で起こるものではありません。ただし、長年にわたる食習慣は、発症リスクに影響する懸念があるとされています。(文献3) たとえば以下のような食事を多く摂る生活が続くと、発症リスクが高まる可能性が考えられます。 ハムやソーセージなどの加工肉 糖質・甘味料が過剰に含まれた飲み物(清涼飲料水等) 揚げ物やステーキなどの高脂肪食 これらの食品を日常的に摂り過ぎないよう意識し、栄養バランスの整った食事を心がけることが、大腸がん予防につながります。 なお、大腸がんの原因については以下の記事にてより詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 大腸がんの予防におすすめの食事は? 予防におすすめの食事は以下の通りです。 おすすめの食事 具体例 食物繊維が豊富な野菜・果物 ※ 大腸がんの治療中や術後など、腸に負担をかけたくない時期は控える ・野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど) ・根菜類(にんじん、ごぼうなど) ・果物(バナナ、りんごなど) カルシウム・ビタミンDが豊富な食材 ・牛乳 ・小魚 発酵食品 ・納豆 ・味噌 ・ヨーグルト 大腸がんの予防は、一時的な食事制限ではなく、日々の食習慣の積み重ねでリスクを下げていくことが大切です。 バランスの良い食事は、体の免疫力や回復力を高める土台にもなります。無理なく続けられる食品選びと調理方法を意識し、健康な食生活を目指しましょう。 生活習慣の改善は大腸がん予防の基本ですが「体の内側から免疫機能を高めたい」とお考えの方には、再生医療を活用する選択肢もあります。 リペアセルクリニックでは、免疫細胞の働きに着目した再生医療(免疫細胞療法)に関する情報提供を行っております。再生医療についての情報は、公式LINEで受け取ることができます。「まずは情報だけ知りたい」「自分や家族の状態でも相談できるのか不安」とお考えの方は、ぜひ登録してみてください。 大腸がんの手術後、食事制限はいつまで続きますか? 大腸がんの手術後の食事制限は、一般的に3カ月程度が目安です。術後は腸の機能がまだ十分に回復していないため、食物繊維を多量に含む食品や消化しにくい食べ物は控えましょう。 手術直後の入院中から重湯やおかゆなどの消化の良い食事から開始し、腸の状態を確認しながら段階的に食事内容を進めていくのが一般的です。問題がなければ、徐々に普通食へと戻します。 ただし、食事制限が必要な期間は、切除した腸の範囲や手術方法、術後の回復状況によって個人差があります。食事について医師から指示があれば、必ず従いましょう。 参考文献 文献1 Dietary calcium, vitamin D, and the risk of colorectal cancer - PubMed 文献2 食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 文献3 Dietary patterns and colorectal cancer risk in middle-aged adults: A large population-based prospective cohort study - PubMed
2026.01.26 -
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なぜ「65歳以上の大腸がんの内視鏡検査はやめなさい」という意見があるのでしょうか。それは高齢になるほどに、腸閉塞や腸穿孔などの合併症のリスクが高まるためであると考えられます。 本記事では「65歳以上の大腸がんの内視鏡検査はやめなさい」という意見がある理由の詳細をはじめとして以下を解説します。 高齢者の検査のリスク 検査を受ける必要性 検査を受けられない人 検査の流れと費用 大腸がんの予防方法 検査を受けるべきかどうかは、その人の健康状態によって異なります。リスクを考慮した選択をするために本記事を参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな病気の治療に応用されている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 がん予防に関する再生医療について知りたい方は、ぜひ一度公式LINEをご利用ください。 なぜ「65歳以上の大腸がんの内視鏡検査はやめなさい」という意見があるのか 「65歳以上の大腸がんの内視鏡検査はやめなさい」という意見がある理由は、高齢者に対する内視鏡検査は、身体に与える負担や合併症のリスクが高いためと考えられます。 年齢が上がるほどリスクも増加し合併症の発生率は50〜64歳の方と比較して、75〜85歳の方は3倍ほど高いとの報告があります。(文献1)検査の利益がリスクを上回らない場合もあるため、慎重な選択をしなければなりません。 高齢者の大腸内視鏡検査のリスク 高齢者は大腸内視鏡検査により、以下のような合併症のリスクが高まるため、慎重に判断する必要があります。 腸閉塞 腸管穿孔 敗血症 それぞれの合併症について詳しく解説します。 腸閉塞 腸閉塞とは、なんらかの原因により腸管が塞がれてしまった状態のことです。もともと腸が狭くなっている方は、検査前に下剤や腸管洗浄剤を服用することで腸閉塞が誘発されるリスクがあります。 腸閉塞を疑う症状は以下の通りです。 冷汗 腹痛 吐き気・嘔吐 腹部の張り とくに自宅で下剤を服用する場合は、これらの徴候が見逃されるおそれがあります。検査前に腸管の通過障害がないか確認が必要です。 腸管穿孔 腸管穿孔とは、胃や腸に穴があいてしまった状態のことです。前処置で行う下剤や腸管洗浄剤を服用したことにより、腸管の内圧が急激に上昇して引き起こされることがあります。 腸管穿孔が起きると以下のような症状が現れます。 激しい腹痛 腹部の張り 吐き気・嘔吐 発熱 こちらも腸管の通過障害がリスクとなるため、検査の前に評価をしなければなりません。 敗血症 敗血症とは、感染症がきっかけとなり体の防御反応が過剰に働いてしまうことで、全身に深刻な影響が及ぶ状態を指します。 進行すると意識障害や全身への血流低下などが現れ、命に関わる危険な状態になるおそれがあります。大腸内視鏡検査においては、腸閉塞や腸管穿孔が起きた際に敗血症が発症するリスクがあります。 腸閉塞や腸管穿孔により、腸管を保護する機能が壊れてしまい、腸管の細菌や毒素が体内に巡ってしまうためです。敗血症のリスクもあるため、腸閉塞や腸管穿孔を疑う症状には十分な注意が必要です。 65歳以上の方が大腸内視鏡検査を受ける必要性 大腸がんの発症率は40歳代あたりから上昇します。とくに50歳代以降からは年齢が上がるにつれて、発症率が高くなっています。(文献2)しかし、65歳以上の方が大腸内視鏡検査を受けるかどうかの必要性は、本人の健康状態と医師の判断によります。 なお、国立がん研究センターによる有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン(2024年度版)においては、大腸内視鏡検査を対策型検診(公共政策として行う検診)として実施しないことを推奨しています。(文献1) これは年代関係なく初回の大腸内視鏡検査が「異常なし」であったにも関わらず、大腸内視鏡検査を継続的に受けることは、得られる利益よりも不利益が上回るためです。さらに、利益と不利益に関する情報について検査を受ける人と医療者で、適切に共有して判断できる仕組みを整えることが必要だと言われています。 大腸内視鏡検査を受けられない人 以下に該当する方は、腸閉塞や腸管穿孔のリスクがあるため大腸内視鏡検査を受けることは困難です。 急激に発症した腹痛がある方 腹膜に炎症がある方 腸管の通過障害がある方 そのほかにも、検査への協力が困難な障害者や認知症の患者様は、検査方法を個別に検討する必要があります。 一般的な大腸内視鏡検査の流れと費用 大腸内視鏡検査には、入院して下剤を服用する院内法と自宅で下剤を服用する在宅法があります。 下剤や腸管洗浄剤を服用して、準備が整ったら以下のように検査は進みます。 検査着に着替えて検査室に案内してもらう 腸の働きを抑える鎮痙剤(ちんけいざい)を注射する 体の左側を下にして検査台に横になる 肛門から内視鏡を挿入して腸管内を観察する 鎮痛剤や鎮静剤を投与した場合は、検査終了後にリカバリールームで1時間ほど安静にする 検査が始まると内視鏡を適切に挿入するために体の向きを変えたり、腹部を押さえたりすることもあります。強い痛みが現れた際は医師に伝えてください。 検査自体は通常15〜30分程度で終了します。便潜血検査で陽性となり、医師が検査を必要と判断した場合は保険が適用され自己負担は3割になります。費用は医療機関によって異なるため、受診予定の医療機関のホームページなどを確認してください。 大腸がんの予防方法 大腸がんの予防方法として以下が挙げられます。 定期的に検診を受ける 食生活の乱れを改善する 免疫力を高める それぞれの詳細を解説します。 定期的に検診を受ける 大腸がんを予防するには、定期的に検診を受けることが重要です。便潜血検査では、微量な出血でもポリープを発見できる可能性があるためです。がん化するおそれのあるポリープを早期に発見して、取り除くことができれば大腸がんの予防につながります。 日本においては、40歳以上の方は年に1回の便潜血検査が推奨されています。(文献3)便潜血検査で陽性反応が出た場合は、大腸内視鏡検査や大腸CT検査が選択肢として挙げられます。 食生活の乱れを改善する 大腸がんは食生活と密接に関連しており、食生活の改善で予防できる可能性があります。 以下のポイントを参考にして食生活の改善を心がけましょう。 食生活の改善のポイント 詳細 食物繊維を十分に摂る ・十分な量の食物繊維の摂取は大腸がんの予防効果があるとされている ・しかし、多数ある食物繊維に関する研究結果は一致していない 肉類の過剰摂取は避ける ・赤身肉を多量に摂取すると大腸がんのリスクが高まる ・赤身肉の摂取量は週に500gまでとする 加工肉の摂取は極力避ける ・ソーセージやハム、ベーコンなどはがんのリスクを高める ・1日50gの摂取で大腸がんのリスクが1割増加すると報告がある お酒を飲み過ぎない ・毎日2合以上お酒を飲む人は飲まない人と比較して、2.1倍の大腸がんのリスクがある ・飲酒しないことが最も良いとされている (文献4)(文献5)(文献6) そのほかにも適正体重の維持や適度な運動習慣も重要とされています。 免疫力を高める 免疫力が低下すると、発生したがん細胞を消滅させることができなくなり、がんの発症リスクが高まります。免疫力を高めるには、前述した食生活の改善などが重要です。 また、免疫力を高める食生活の一例として以下が挙げられます。 炭水化物やたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取する 青魚に豊富に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)の摂取割合を増やす 強い抗酸化作用のある緑黄色野菜や淡色野菜などを積極的に摂取する ほかにも、免疫力を高める再生医療という選択肢もあります。当院「リペアセルクリニック」では、がん予防のために免疫力を高める再生医療を行っています。詳しくは、以下のページをご覧ください。 まとめ|65歳以上の方で大腸内視鏡検査を受けるかは医師に相談しよう 65歳以上の方が大腸内視鏡検査を受けるべきかは、本人の健康状態と医師の判断によって異なります。年齢が上がるほどに、検査時の腸閉塞や腸管穿孔、敗血症などのリスクが高まります。これらのリスクを考慮して、自身で納得できる判断をしなければなりません。 また、入院をする院内法を選択すれば、合併症を疑う症状が現れた際に迅速な対応ができます。しかし、自宅で下剤を服用して検査を受ける在宅法の場合は、医療機関に到着するまで対応が遅れることを考慮する必要があります。これらの検査の受け方も十分に検討しましょう。 65歳以上の大腸内視鏡検査に関するよくある質問 Q.高齢者が受けるには入院が必要? 大腸内視鏡検査では、自宅で下剤を服用する在宅法と、入院して下剤を服用する院内法を選択できます。院内法では、医療者が患者様の状態を確認できるため、合併症が疑われた際に迅速な対応が可能です。 Q.70、80、90歳代でも受けるべき? 70歳以上の方が受けるべきかどうかは、その人の健康状態と医師の判断によります。検査による利益と不利益を考慮して、医師と相談しながら検討する必要があります。 Q.異常なしから何年後に受けるべき? 大腸内視鏡検査を受けたあと「異常なし」と診断された場合は、通常の検診に戻ります。ポリープが発見された場合は、数や大きさによって大腸がんのリスクが高まるため、1〜5年後の間で再度大腸内視鏡検査を受けることを推奨されます。 Q.何歳まで受けられるのか? 日本の場合は年齢制限を設けていません。任意であれば何歳でも受けることができます。しかし、高齢であるほどに事前の診察と医師との相談が重要になります。 参考文献 (文献1) 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版|国立がん研究センター (文献2) 大腸がんとは|国立がん研究センター (文献3) 大腸がん検査について|国立がん研究センター (文献4) がん予防|厚生労働省 (文献5) 大腸がん予防及び治療後の再発予防のための食事|耳原総合病院 (文献6) 米飯摂取と大腸がんとの関連について|がん対策研究所
2026.01.26 -
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大腸がんは日本で死亡数・罹患率ともに上位にある深刻な疾患です。「余命はどれくらいなのか」と不安を抱える方は少なくありません。とくに家族は何を知り、本人をどう支えるべきか悩む場面も多いでしょう。 大腸がんの余命は進行度で大きく異なりますが、現代では治療法の選択肢が広がり、末期でも延命や苦痛緩和が期待できます。 この記事では余命の目安や末期症状、治療法から家族ができる支援をまとめて解説します。正しい情報を得て、納得のいく治療の選択にお役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる方はぜひご登録し、内容をチェックしてみてください。 大腸がんの余命は進行度(ステージ)で変わる 大腸がんの余命(生存率)は、がんが大腸の壁のどこまで進み、リンパ節や遠隔臓器に転移しているかで大きく変わります。 具体的には、進行具合によって次のような5つのステージで分類されます。(文献1)(文献2) ステージ 定義 余命 (5年生存率) ステージ0 がんが大腸の粘膜内にとどまっている状態 93~97.6% ステージ1 がんが固有筋層の深さまで広がっている状態 93.1% ステージ2 がんが固有筋層を越えて、大腸の外側近くまで浸潤している状態 76.4~88.3% ステージ3 がんの深さにかかわらず、周囲のリンパ節に転移が認められる状態 65.8~91.5% ステージ4 がんの深さにかかわらず、他の臓器に転移が認められる状態 26.7% 5年生存率はステージが早いほど高く、他の臓器への転移を伴うステージ4では大きく低下します。ただし、生存率は多数の患者をまとめた統計上の目安であり、年齢や全身状態、合併症などによって個人差が生じます。 余命の数字にとらわれすぎず、主治医と現在の状態や治療の目的を共有し、最適な方針を検討することが大切です。 【ステージ別】大腸がんの余命(5年生存率)と主な症状 大腸がんは、ステージによって余命の目安や症状が異なります。本章では、ステージ別の余命と進行度ごとに目立つ症状・注意点を解説します。 ご自身やご家族の状況を理解し、適切な治療選択やサポートの参考にしてください。 ステージ1|93.1% ステージ1は、がんが大腸壁の比較的浅い層にとどまっている段階で、リンパ節や他臓器への転移は認められません。早期がんに分類される病期です。(文献1) この段階では自覚症状が認められないことが多く、健康診断や大腸内視鏡検査をきっかけに偶然発見されるケースが少なくありません。血便や便秘・下痢などの便通異常がみられることもありますが、症状が軽いため見過ごされやすい点が特徴です。 治療は外科的切除や内視鏡治療など、手術が中心となります。(文献3)適切にがんを切除できれば、術後は定期的な経過観察により再発リスクは低く抑えられます。 定期的な経過観察を行うことで、良好な予後を期待できるステージと言えるでしょう。 ステージ2|88.3~76.4% 固有筋層を越えてがんが広がっているものの、リンパ節への転移は認められない段階が、ステージ2です。ステージ2では便通異常に加え、腹痛や全身の倦怠感、息切れなどの症状が生じることがあります。 ステージ2の大腸がんの治療は手術がメインです。がん本体と、がんが広がっている可能性のある大腸部分、その周辺のリンパ節の切除(リンパ節郭清)を行います。(文献3) 5年生存率はがんがどの程度の深さまで進行しているかによって異なり、76.4〜88.3%とされています。ステージ1より5年生存率は低いものの、早期の治療により良好な予後が期待できるステージです。 ステージ3|91.5~65.8% 周囲のリンパ節に転移が認められる段階が、ステージ3です。 ステージ3では、ステージ2でみられる症状に加えて、体重減少や食欲不振といった症状が出現します。また、腫瘍の進行により腸閉塞を起こすと、強い腹痛や嘔吐、腹部の膨満感などの症状がみられることもあります。 ステージ3では、がん部分の大腸や転移が認められたリンパ節を手術で切除した上で、再発予防を目的とした抗がん剤治療を行うのが一般的です。(文献3)リンパ節転移の数や範囲によって予後は大きく異なり、再発リスクも高くなります。5年生存率はがんの浸潤している深さによって65.8~91.5%と幅がありますが、定期検査と適切な治療を継続することで、予後の改善が期待できるでしょう。 ステージ4|26.7% ステージ4はがんの深さに関わらず、肝臓や肺など他臓器への転移が認められる状態です。ステージ3までにみられた腹部の症状に加え、転移した部位に応じて黄疸や咳・呼吸困難などの症状が出現することがあります。 ステージ4では根治を目指す治療が難しいケースが多く、5年生存率は26.7%と、他のステージと比較して低い数値です。 延命や症状の緩和を目的として、手術や抗がん剤治療、免疫療法、放射線療法を組み合わせた治療が行われます。 ステージ4の大腸がんは余命(生存率)が大きく下がる 前述のとおり、ステージ4の大腸がんでは、5年生存率が大きく下がります。ただし、治療の選択や本人との関わり方によって、生活の質(QOL)や過ごし方は大きく変わる可能性があります。 本章では、ステージ4について症状や治療法をより詳しく解説します。 大腸がんのステージ4でみられる症状 大腸がんがステージ4まで進行すると、全身に影響を及ぼすようになり、日常生活の質が低下しやすくなります。進行した大腸がんでは、これまでの局所的な症状に加え、全身症状が目立つようになるのが特徴です。 ステージ4でみられる主な末期症状には、以下のようなものがあります。 血便や便秘・下痢などの消化器症状 体重減少や強い倦怠感 食欲の低下や疲れやすさ これらの症状により、これまで通りの生活を送ることが難しくなるケースも少なくありません。 さらに、転移した部位に応じた特有の症状が生じることがあります。肝臓に転移した場合は黄疸や腹部の張り、肺に転移した場合は咳や息切れ、呼吸困難、胸の痛みなどが代表的です。 大腸がんステージ4の主な治療法 大腸がんステージ4では、治療の目的が根治よりも「延命」と「症状の緩和」に置かれるケースが多いのが特徴です。 病状や本人の希望に応じて、以下のような複数の治療法を組み合わせながら進めていきます。(文献3) 治療法 詳細 手術 ・症状の改善や合併症の予防を目的として、がんのある部分を切除する ・がんが広がっている場合には、周辺の腸管やリンパ節、他臓器の一部を切除するケースもある 抗がん剤治療 ・手術後の再発予防や、手術でがんを取り切れない場合に行われる ・一般的には、複数の薬を組み合わせて治療する ・副作用が強く出た場合には、減量や一時的な中止など、体調に応じた調整が行われることもある 免疫療法 ・がん細胞に作用する抗がん剤とは異なり、体内の免疫細胞に働きかけてがんを抑える ・すべての患者が対象となるわけではなく、がんの性質や遺伝子の特徴によって適応が判断される(文献4) 緩和ケア ・痛みや不安感などの身体的・精神的苦痛を和らげ、生活の質(QOL)を高めることを目的とした治療である ・症状の緩和だけでなく、気持ちの落ち込みや経済的な不安への支援も含まれる ・患者本人だけでなく、家族の負担やつらさを和らげる役割もある これらの治療は、病状や体調、本人の希望によって選択や組み合わせが異なるため、主治医と十分に相談しながら方針を決めることが大切です。 大腸がんから転移しやすい部位と余命 大腸がんは、血流やリンパの流れに乗って転移しやすく、進行すると他の臓器へ広がることがあります。(文献2) とくにステージ4では、転移の有無や部位が余命や治療方針に大きく影響します。大腸がんで比較的多くみられる転移先は、以下の臓器です。(文献5) 肝臓 肺 腹膜播種 これらの部位に転移が認められた場合でも、すべてが予後不良とは限りません。転移の数や広がりが限られており、外科的に切除できる場合には、長期生存が期待できるケースも報告されています。 実際に、転移部位を切除した症例では、以下のような5年生存率が報告されています。 転移部位 切除できた場合の5年生存率 肝臓 (文献3) 35〜58% 肺 (文献6) 約60% このように、大腸がんは転移があっても、病状に応じた適切な治療を行うことで予後が変わる可能性があります。 転移の部位や数、全身状態を踏まえ、主治医と十分に相談しながら治療方針を検討することが重要です。 大腸がんで余命宣告された患者の家族ができること 大腸がん患者の家族ができることとして、以下の3つがあります。 治療方針の選択は本人の意思を尊重する 病院と密にコミュニケーションをとる 日常生活をサポートする 患者と家族が納得のいく時間を過ごすためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。 治療方針の選択は本人の意思を尊重する 本人が告知を受けている場合は、できるだけ患者本人の意思を尊重することが望ましいとされています。 治療において何を優先したいかは人それぞれです。延命を重視したいのか、症状の緩和を大切にしたいのかなど、考え方は異なります。 家族は「代わりに決めてあげる」のではなく、本人の気持ちを丁寧にくみ取り、寄り添いながら意思決定を支える姿勢が大切です。 一方で、看病や療養生活が長引くと、家族自身が心身ともに疲れてしまうことも少なくありません。患者だけでなく家族自身も無理をせず、自分を大切にできる選択を心がけましょう。 病院と密にコミュニケーションをとる 診察時には余命や治療について向き合う上で、担当医や医療スタッフとの連携が大切です。治療を進める際は、以下の点を意識しながら、病院とこまめに情報共有を行いましょう。 不安点があれば医師や看護師に伝え、疑問点を解消する 自宅での過ごし方や体調の変化、症状の有無を具体的に共有する 治療の目的や選択肢、今後の見通しについて、家族も情報を理解し、医療スタッフと一緒に治療やケアの方針を考えていくことが大切です。家族が気づいた変化を共有することで、より本人に合った治療につなげられるでしょう。 日常生活をサポートする 日常生活において、患者本人ができることは見守りながら、必要な場面でサポートする姿勢が大切です。衣食住のサポートや通院の付き添いなど、無理のない範囲で本人の体調や様子を観察しながら支えていきましょう。 また、身体的な支えだけでなく、共感をもって話を聞き、気持ちに寄り添うことも大切です。病気の話題に限らず、これまで通りの会話を心がけることは、患者が「普段の自分」でいられることにつながります。 一方で、家族も無理をしすぎないことを意識し、必要に応じて外部の支援を頼ることが大切です。 たとえば、全国の医療機関に設置されている「がん相談支援センター」では、治療や療養生活の不安、介護や経済面の相談などを無料で受け付けています。(文献7)こうした支援機関を活用し、家族だけで抱え込まないような工夫も大切です。 なお、大腸がん治療中に適した食事については以下の記事にて詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 大腸がんの余命を把握して納得のいく治療を選択しよう 大腸がんの余命は、ステージや転移の有無、治療内容によって大きく異なります。進行するほど5年生存率は低下するため、数字だけをみると不安になる方も多いかもしれません。 余命は「どのように病気と向き合い、どんな治療を選ぶか」を考えるための大切な判断材料です。 治療の選択肢は一つではありません。患者本人の価値観や希望を大切にしながら家族との気持ちをすり合わせ、納得できる方針を主治医と相談するようにしましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。治療の選択肢について情報を集めたい方や、今後の方向性に悩んでいる方は、ひとつの相談先としてご活用ください。 大腸がんの余命についてよくある質問 大腸がんステージ4が完治することはある? 大腸がんステージ4は、一般的に根治が難しい段階です。ただし、早い段階から主治医と相談し、病状や希望に応じた治療を検討することで予後が良好となるケースもみられます。 また、早期に治療を行うことで症状の進行を抑え、生活の質(QOL)を維持しながら過ごせる期間を延ばせる可能性もあります。 大腸がんにならないための予防策は? 大腸がんの予防と早期発見には、定期的な「検診」と「生活習慣の改善」の両方が重要です。 年齢や家族歴に応じて、自治体が実施する大腸がん検診を定期的に受けましょう。もし異常が見つかった場合は、必ず大腸カメラによる精密検査を受けてください。 あわせて、栄養バランスの良い食事、節酒・禁煙、適度な運動習慣の実践なども、大腸がんのリスク低下に効果的です。これらを並行して行いましょう。 なお、大腸がんの検査については以下の記事にて詳しく解説しています。気になる方はこちらもあわせてご覧ください。 大腸がんになりやすい年代は? 大腸がんは加齢とともに発症リスクが高まる病気で、統計的には50代から80代前半まで罹患率が上昇し始めます。死亡率についても60代から増加し、それ以降の年代でも高くなる傾向があります。 50歳を過ぎたら自覚症状がなくても定期的に大腸がん検診を受けることが大切です。もし気になる症状があれば、早めに消化器内科を受診してください。 大腸がんの進行速度と年齢の関係についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 参考文献 文献1 大腸がんのステージ(病期)について | 国立がん研究センター 中央病院 文献2 大腸がんファクトシート 2024 | Colorectal Cancer Factsheet 2024 | 国立がん研究センター 文献3 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版|大腸癌研究会 文献4 免疫療法 もっと詳しく:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] 文献5 Stage IV大腸癌の診療実態と予後|日本消化器外科学会雑誌 文献6 結腸・直腸癌肺転移における肺切除後予後予測因子に関する 臨床病理学的検討|日呼外会誌 文献7 「がん相談支援センター」とは:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
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「健康診断を受けたら便潜血が陽性だった。精密検査はどんな内容なのだろう」 「大腸がんの検査では、どのようなことをするの?」 このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 大腸がんは、早期発見・治療により、治癒が見込まれる疾患です。そのためには、定期的な検査と、必要に応じた精密検査が欠かせません。 この記事では、大腸がんの主な検査方法やその流れ、費用の目安、受けるべきタイミングなどをわかりやすく解説します。大腸がん検査の全体像を把握することで、不安を払拭し、早期受診への一助となれば幸いです。 なお、当院リペアセルクリニックでは、がんの予防医療の観点から、公式LINEによるご相談も受け付けております。「将来的なリスク管理として相談先を確保したい」「最新の医療情報を定期的に得たい」とお考えの方はぜひご登録ください。 大腸がんの検査の種類 大腸がんの検査にはいくつかの種類があり、目的や方法、負担の大きさが異なります。代表的な検査方法は以下の通りです。 便潜血検査 直腸指診 大腸内視鏡検査 注腸X線検査 CT検査、MRI検査、超音波検査 PET検査 以下に詳しく解説します。 便潜血検査 会社の健康診断や人間ドックなどの集団検診で広く行われているのが、便潜血検査です。(文献1) 便潜血検査は、肉眼では確認できない微量な血液が便に混じっていないかを調査するものです。大腸がんやポリープなどの病変によるわずかな出血を捉え、病変の有無をスクリーニングします。 なお、便潜血検査には主に以下の2種類が存在します。 化学法 免疫法 日本で主流となっているのは、食事や服薬の制限のない「免疫法」です。痛みがなく、自宅での検体採取が可能な点が特徴です。 定期的に受けることで大腸がんによる死亡リスクを下げる効果が報告されており、最初のスクリーニング検査として有効といえます。(文献2) 直腸指診 直腸指診は、医師が指を挿入し、直腸および周囲のしこりや硬結(硬さ)等の異常を触診によって確認する検査です。(文献1)事前準備が不要かつ短時間で実施できるため、必要に応じて初期の診察時に取り入れられることがあります。(文献3) 直腸指診は肛門に近い直腸の病変を見つける目的で行われますが、検査の範囲は指の届く範囲に限られるため、大腸の奥のほうにある病変までは確認できません。 大腸内視鏡検査 症状があるときや、便潜血検査で陽性となったときは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)でより詳しく調べます。 カメラのついた細い管を肛門から挿入し、大腸全体の粘膜を直接観察します。ポリープやがんがあればその場で切除したり、組織の一部を採取する「生検」を行って詳しく調べたりすることも可能です。(文献1) 検査前には下剤を服用した腸管洗浄を行い、大腸内を空にする前処置が必要です。 注腸X線検査 注腸X線検査は、大腸に造影剤(バリウム)を注入してX線撮影を行い、腸の形や狭くなっている部分、腫瘍の有無などを確認する検査です。 大腸の全体像を確認したい場合や、腹部の手術歴・大腸の状態などによって内視鏡が奥まで入りにくい場合などに選択されます。 ただし、凹凸の少ないがんや小さな病変は見つけにくい傾向があり、内視鏡のように検査をしながらの大腸の組織採取はできない点はデメリットです。 なお、正確な検査のためには、大腸内視鏡検査と同様に、事前に下剤を服用して大腸を空にする必要があります。(文献1) CT検査、MRI検査、超音波検査 CTやMRI、超音波検査といった画像検査は、大腸がんの正確な位置や周囲への広がりの程度を評価するために行われます。 これらの検査は、がんの「ステージ(病期)」を判定するために欠かせません。がんの深さや、リンパ節・他の臓器への転移の有無などを確認し、治療方針を決める上で重要な情報を得る役割を果たします。(文献1) PET検査 PET検査は、がん細胞がブドウ糖を活発に取り込む性質を利用し、全身のがんの広がりを一度に調べる画像検査です。「形」を見るCTやMRIと異なり、「がん細胞の活動性」を調べられる点がPET検査の特徴です。 一般的には、がんが疑われたあと、ステージ(病期)の分類や治療方針の決定、転移・再発の確認などに用いられます。 検査当日は、5〜6時間前から糖分を含む飲食物の摂取を控える必要があります。正確な検査の実施のためにも、医師や技師の指示を必ず守りましょう。(文献4) 大腸がんの検査にかかる費用の目安 大腸がんの検査費用は、保険診療の自己負担3割の場合で以下のとおりです。 検査 自己負担3割の場合の費用 便潜血検査 数百円 直腸指診 診察料に含まれる 大腸内視鏡検査 約6,000円 注腸X線検査 約5,000円 CT・MRI 約10,000円 超音波検査 約2,000円 PET検査 数万円(保険適用は限られる) ただし、実際にかかる費用は、医療機関の方針や検査内容、造影剤の使用の有無などによって変わります。 便潜血検査は自治体によるがん検診でも広く取り入れられており、保険適用にはならないものの0円~1,000円程度で受診できるケースが多く見られます。 補助を受けずに自主的に検診を受ける場合の費用は、1,000円~2,000円程度が目安です。具体的な検査費用は、受診前に医療機関へ確認しておきましょう。 大腸がんの検査の流れ 大腸がんの検査の一般的な進め方と所要時間は、以下の通りです。(文献1) ステップ 検査内容 所要時間 1 健康診断で便潜血検査を実施、または症状を医師に伝える 採便:数分(自宅で実施) 結果:数日〜1週間 2 便潜血が陽性、または症状がある場合は精密検査へ進む ・大腸内視鏡検査 ・注腸X線検査(大腸バリウム) ・大腸CT検査(CTコロノグラフィー) ・大腸内視鏡検査:10〜30分(※前処置含め半日程度) ・注腸X線検査(大腸バリウム):約15〜30分 ・大腸CT検査(CTコロノグラフィー):約10〜20分 3 大腸内視鏡検査で異常が確認されたらポリープ切除や生検を実施し、がんであるかの確定診断を行う ポリープ切除を含む大腸内視鏡検査:15〜30分 結果:1~2週間 4 CTや超音波検査によりがんの広がりやステージを確認、治療方針を決定する ・腹部CT検査:10〜30分 ・腹部超音波検査(エコー検査):10~15分 なお、それぞれの検査によって事前の準備や注意点、所要時間は異なるため、受診前には必ず医師や医療機関からの指示をよく確認しておきましょう。 大腸がんの検査を受けるタイミング 検査を受ける目安は、年齢や症状の有無などによって異なります。ここでは、以下のような代表的な目安を解説します。 40歳を超えたら1年に1回 健康診断で「要精密検査」となったとき 便に血が混じる、いつもと便が違うなどの症状が現れたとき 本章を参考に、ご自身の適切な受診タイミングをご検討ください。 40歳を超えたら1年に1回 日本のがん検診ガイドラインでは、40歳以上の成人に対して年に1回の便潜血検査が推奨されています。大腸がんは、早期の場合、自覚症状がないケースも多いため、定期的な検診が重要です。(文献5) 毎年の検査を習慣にすることで、早期発見による治癒率の向上が期待できます。 健康診断で「要精密検査」となったとき 健診や人間ドックで「要精密検査」や「便潜血陽性」といった判定を受けた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 便潜血検査で陽性だった場合は、大腸内視鏡検査をはじめとする精密検査が必要です。(文献6)がん以外の要因で便に血が混じっている可能性もありますが、放置すると重大な病気を見逃す恐れがあります。 不安を放置せず、医学的な診断を得ることが精神的な安定にもつながるでしょう。 便に血が混じる、いつもと便が違うなどの症状が現れたとき 血便や排便時の出血、細くなった便など、便の様子に変化が見られるときは、早めの受診がすすめられます。また、便秘と下痢を繰り返す、腹痛、貧血気味などの症状も見逃せません。(文献1) このような変化は、大腸がんの症状のひとつでもあります。とくに40代以降でこうした症状が続く場合は、がんの有無にかかわらず、一度しっかりと検査を受けておくと安心です。 便の異常と大腸がんの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 大腸がん検査による早期発見の重要性 大腸がんは、早期発見によって治癒率を高められ、体への負担も最小限に抑えられます。本章では、大腸がんのステージ基準や早期発見できた場合の予後について解説します。 大腸がん検査で判定される進行度(ステージ)の基準 大腸がんの進行度は、「ステージ(病期)」と呼ばれる分類で判断されます。これは、がんの大きさや深さ、リンパ節や遠隔臓器への転移の有無によって決まるものです。(文献1) ステージ 状態 ステージ0 がんが粘膜の中にとどまっている ステージⅠ がんが大腸の壁にとどまっている ステージⅡ がんが大腸の壁の外まで広がっている ステージⅢ がんがリンパ節に転移している ステージⅣ 腹腔内でがん細胞が散らばる、あるいは広範囲への転移が認められる ステージの進行度に応じて、がんが腸の壁を越えて周囲に広がったり、他の臓器に転移したりするリスクが高まります。このステージ分類は、今後の治療方針を決める上でも重要な指標です。 大腸がんの進行速度については、以下の記事を参考にしてください。 検査で早期発見できれば予後は良好 大腸がんは、早期に見つかれば治る可能性の高いがんとされています。 下の表は、大腸がんのステージ別の5年生存率です。5年生存率とは、「がんと診断されてから5年後に生存している人の割合」を指します。(文献1) ステージ 5年生存率 ステージⅠ 92% ステージⅡ 84% ステージⅢ 65~81% ステージⅣ 21% がんを早期に発見することで、命にかかわるリスクを大きく減らせます。定期的に大腸がん検査を受診しましょう。 大腸がんは治療後も定期的な検査が必要 大腸がんは、治療が終わったあとも再発に注意が必要です。治療後も5年ほどは定期的な検査や経過観察が欠かせません。再発が見つかった場合は、再治療を行い治癒を目指します。(文献7) 治療が終わっても安心せず、医師の指示に従って定期検査を継続することが、長期的な健康維持につながります。 大腸がん検査を受けて早期発見・早期治療につなげよう 大腸がんは、早期の段階で見つかれば治療の選択肢も広がり、良好な経過が期待できる病気です。症状が出にくいがんでもあるため、定期的な検査を受けておくことが、健康を守る上で重要です。 とくに40歳を過ぎた方や、ご家族に大腸がんの既往がある方、便に異常を感じた方は、早めに医療機関での検査をご検討ください。 検査によって現在の状態を正確に把握することが、安心にもつながります。 当院では、大腸がんに関する相談を受け付けています。受診に関するご相談は、公式LINEからも受け付けておりますので、「検査について詳しく知りたい」「不安なことを気軽に相談したい」といった方は、お気軽にお問い合わせください。 大腸がんの検査に関するよくある質問 大腸がんの検査は何科を受診すれば良いですか? 大腸がんの検査を希望する場合は、「消化器科」や「胃腸科」「肛門科」といった専門の診療科を受診するのが一般的です。 受診先に迷う場合は、かかりつけの内科に相談するのも一つの選択肢です。必要に応じて、検査ができる専門機関を紹介してもらえる場合があります。 また、市区町村など自治体が実施しているがん検診を活用するのも良いでしょう。対象年齢や検査内容、費用の助成制度などが設けられている場合もあるため、お住まいの自治体の広報や保健センターの案内を確認してください。(文献8) 大腸がん検査でひっかかったらどうすれば良いですか? 健康診断や自治体のがん検診で便潜血検査が「陽性」と判定された場合は、できるだけ早めに精密検査を受けることが大切です。(文献6) 通常は、消化器内科や胃腸科などを受診し、大腸内視鏡検査を行う流れになります。内視鏡検査では、がんやポリープなどの異常があった場合、その場で組織を採取する「生検」や、必要に応じてポリープの切除を行うことも可能です。 検査後は、採取した組織を病理検査で詳しく調べた上で、数日後に結果が説明されます。 大腸がんとポリープの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版|大腸癌研究会 (文献2) 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024 年度版|国立がん研究センター がん対策研究所 (文献3) 1.大腸がん検診検査法のまとめ|がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター (文献4) PET検査とは|がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター (文献5) 「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」2024年度版|国立がん研究センターがん対策研究所 (文献6) 大腸がん検査について|国立がん研究センター中央病院 (文献7) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター (文献8) 大腸がん検診|前橋市
2026.01.26 -
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「便に血が混じる」 「お腹の調子が悪い日が続いている」 「検診で要精密検査と言われた」 このような症状や検査結果に、不安を感じていませんか。 大腸がんは、日本人でもっとも罹患数が多いがんですが、早期に発見できれば治癒率が高いことが知られています。一方で、初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないまま進行してしまうケースも少なくありません。 この記事では、大腸がんの主な症状や原因、検査方法、治療について解説します。 病院を受診すべきか迷っている方や検診結果を正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 大腸がんについて気になることがある方は、お気軽にご登録ください。 大腸がんとは 大腸がんは、大腸の粘膜から発生するがんの総称です。(文献1) 大腸の壁は、内側から「粘膜」、「粘膜下層」、「固有筋層」、「漿膜(しょうまく)下層」、「漿膜」の5つの層でできており、がんは粘膜から発生して次第に深い層へと侵入していくのが特徴です。(文献1) がんの中でも新たに診断される頻度が高く、推計では全がんの中でもっとも罹患数が多い部位として大腸がんは報告されています。(文献2) ここでは、大腸がんの発生部位とその分類、進行度合によって判別されるステージ分類について解説します。 大腸がんの発生部位と分類 大腸は、長さ約1.5〜2mの臓器で「結腸」と「直腸」に分けられ、結腸はさらに盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に細かく分かれます。(文献1) 発生した部位によってがんの呼び名は変わり、日本人の大腸がんの多くは「直腸がん」と「S状結腸がん」です。(文献1) 大腸がんは、その広がり方(深達度)によって「早期がん」と「進行がん」に分類されます。(文献3) 早期がん:がんが粘膜または粘膜下層にとどまっている状態 進行がん:がんが固有筋層に達している状態 また、顕微鏡で見たがん細胞の様子によっても細かく分けられ、その多くは「腺がん」と呼ばれる種類です。(文献1) 大腸がんのステージ(病期)分類 大腸がんの治療方針を決める上で、がんがどのくらい進行しているかを示す「ステージ(病期)」分類は重要な指標です。 ステージは、以下の3つの要素を組み合わせて総合的に判断されます。(文献4) T因子:がんの深さ(壁への広がり、深達度) N因子:リンパ節への転移の有無 M因子:他の臓器やがんができた場所から離れたリンパ節への転移(遠隔転移)の有無 これらをもとにステージ0からステージIVまでの5段階に分類されます。(文献4) ステージ T因子(がんの深さ) N因子(リンパ節転移) M因子(遠隔転移) がんの状態 0 Tis(粘膜内) なし なし 粘膜の一番浅い層にとどまっている Ⅰ T1、T2(粘膜下層~固有筋層) なし なし 粘膜下層または固有筋層まで達しているが、リンパ節転移はない Ⅱ T3、T4(漿膜下層~他臓器へ浸潤) なし なし 大腸の壁の外まで広がっている可能性があるが、リンパ節転移はない Ⅲ T1~T4(深さは問わない) あり なし がんの深さに関わらず、リンパ節への転移が認められる Ⅳ T1~T4(深さは問わない) N因子の有無は問わない あり 肝臓や肺など、大腸から離れた他の臓器への転移(遠隔転移)が認められる ステージによってがんの状態や適した治療は異なるため、正確な治療にはステージ診断が欠かせません。 大腸がんの症状 大腸がんの早期にはほとんど症状が出ない一方、進行すると血便や腹痛など、日常生活に影響する症状があらわれます。 とくに血便は大腸がんで頻度の高い症状でありながらも、痔などがん以外の疾患でも起こるため、「一時的なもの」と放置する方も少なくありません。(文献1) 大腸がんをできる限り早期に発見するためにも、気になる症状があれば早めの受診が推奨されます。本章では、初期症状の特徴と、進行に伴ってあらわれるサインを詳しく解説します。 自覚症状が少ない初期症状の特徴 粘膜内にとどまる0期のがんや、粘膜下層までの早期大腸がんの多くは無症状です。「症状がない自分が大腸がんになることはない」と考えて何も対策しないと、もしがんができていた際に発見が遅れる恐れがあります。 無症状のうちにがんを見つける唯一の方法は、市区町村や健康保険組合などでおこなわれる「がん検診」です。 検診でおこなわれる便潜血検査は、目には見えない微量の血液を検出でき、大腸がんの死亡率を減少させるといわれています。 日本では40歳以上の方に、症状がなくても1年に1回検診を受けることが推奨されています。(文献5) 進行に伴ってあらわれる症状 大腸がんが進行すると、出血や腸の通過障害によってさまざまな症状があらわれます。 自覚症状のなかで高頻度で現れるものが、血便や下血(肛門から血液が排出されること)です。(文献1)出血が慢性的に続くと貧血を起こし、めまいやふらつきなどを自覚する場合もあります。 また、がんが大きくなることで腸の内側の通り道(内腔)が狭くなると、便の通過が妨げられ、次のような症状がみられるようになります。(文献1) 便秘や下痢が続く 便が細くなる 便が残る感じがある おなかが張る さらに進行して腸が塞がると「腸閉塞」を起こし、便が出なくなったり、強い腹痛や嘔吐が出現したりすることもあります。このような症状があらわれた際は、早急な受診が必要です。(文献1) 大腸がんの原因 大腸がんの発生には、遺伝的要因と環境的要因、その他の要因が関与しています。(文献6)(文献7) 大腸がんの要因 具体例 環境的要因 ・肥満 ・加齢 ・過度の飲酒 ・喫煙 ・運動不足 ・高身長 ・赤肉(牛・豚・羊など)の過剰摂取 ・加工肉(ハム・ソーセージなど)の過剰摂取 遺伝的要因 ・家族性大腸腺腫症 ・リンチ症候群 その他の要因 ・炎症性腸疾患 大腸がんは誰にでも起こりうる疾患です。しかし、生活習慣の改善によってリスクを下げたり検診によって早期発見できたりもします。ご自身に当てはまる要因がないかを確かめ、必要に応じて医療機関で相談しましょう。 【関連記事】 大腸がんの原因は?なりやすい人の特徴や症状・検査・治療方法を解説 | リペアセルクリニック東京院 大腸がんと痔の血便や出血の違いとは?見分け方のポイントを解説 大腸がんの検査と診断 大腸がんが疑われる場合におこなう検査の種類と目的は、以下のとおりです。(文献8) 検査の種類 目的 直腸指診 直腸内のしこりや異常の有無を確認する 注腸造影検査 がんの位置や大きさ、形、腸の狭さを調べる 大腸内視鏡検査・生検 大腸全体を詳しく観察し、組織を採取して確定診断する CT検査・MRI検査・腹部超音波検査 周囲臓器への広がりや転移の有無を調べる PET検査 がんの活動性を調べる (他の検査で転移や再発が確定できないケースでおこなう) がん遺伝子検査 薬物療法の選択に役立てる 腫瘍マーカー検査 経過観察や治療効果の判定に用いる 大腸がんの診断は、大腸内視鏡検査で病変を確認し、生検(病理検査)で確定する流れが一般的です。(文献8) がんと確定したあとにCT検査やMRI検査などで、がんの広がりや転移の有無を調べ、治療方針を決めます。 大腸がんの治療に関しては以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。 大腸がんの治療法 大腸がんの治療には、内視鏡治療や外科治療(手術)、薬物療法、放射線治療など、さまざまな選択肢があります。(文献9) 治療の種類 適応・目的 内視鏡治療 がんが粘膜下層の浅部にとどまり(浸潤が1mm未満)、リンパ節転移の可能性が低い場合 外科治療(開腹・腹腔鏡・ロボット手術) 内視鏡治療が難しい場合に、がんとリンパ節を切除 薬物療法 薬を使用して手術後の再発予防や進行がんの治療をおこなう場合 免疫療法 特定の遺伝子検査で適応となった場合は、免疫チェックポイント阻害薬を使用 放射線治療 局所の進行抑制や痛み・嘔吐などのコントロール、直腸がんの術前治療 どの治療が推奨されるかは、がんの深さ(深達度)、転移や浸潤の有無、腹膜播種の有無などから総合的に判断して決定します。本章で、大腸がんの治療法について詳しくみていきましょう。 内視鏡治療 内視鏡治療は、がんが大腸の粘膜内や浅い層にとどまっている早期の場合におこなわれる治療法です。(文献9) 高周波メスや「スネア」と呼ばれる細いワイヤとカメラが一体となった大腸内視鏡を使って、大腸の内側から病変部を切除し、腹部を切らずに治療できる点が特徴です。 病理検査の結果、がんの広がりが浅くリンパ節転移のリスクが低いと判断された場合は、内視鏡治療のみで治療が完結するケースもあります。 一方で、切除後の結果によっては、追加の外科治療が必要になる場合もあります。(文献9) 外科治療(開腹・腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術) 外科治療は大腸がん治療の中心となる治療法で、がんを含む腸管と周囲のリンパ節を切除するいわゆる「手術」です。(文献9) 手術方法には、開腹手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術があり、がんの進行度や患者の状態に応じて選択されます。 また、直腸がんの外科治療では、一時的もしくは永久的な「人工肛門(ストーマ)」を造るケースもあります。(文献9) 薬物療法 大腸がんの薬物療法は、手術後の再発予防や、大腸がんの進行・再発治療としておこなわれます。(文献9) 主に使用される薬は、以下のとおりです。(文献9) 種類 作用 細胞障害性抗がん薬 細胞が増える仕組みの一部を阻害して、がんを攻撃する薬 分子標的薬 がん細胞の増殖にかかわるタンパク質や特徴的な分子を狙って作用する薬 免疫チェックポイント阻害薬 免疫のブレーキを解除し、からだの免疫力でがんを攻撃しやすくする薬 薬物療法の内容は、がんの進行度や遺伝子検査の結果、全身状態などを考慮して決定されます。副作用の種類や程度には個人差があるため、体調の変化を医師に相談しながら治療を進めます。 免疫療法 免疫療法とは、患者自身の免疫機能を活性化してがん細胞を攻撃する治療法です。大腸がん治療における免疫療法は、先述の「免疫チェックポイント阻害薬」が用いられるため、薬物療法の一種ともいえます。(文献9) 免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫のブレーキをかける仕組みを解除し、免疫細胞が腫瘍を認識・攻撃しやすくする薬です。すべての大腸がん患者に適応されるわけではなく、がんの遺伝子検査の結果をもとに適応が判断されます。 例えば、DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)や高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)といった分子的特徴があるタイプの大腸がんでは、一部の従来の標準的な薬物療法では十分な効果が得られにくいことがあります。このようなケースでは、免疫チェックポイント阻害薬が有効です。(文献9)(文献10) また、細胞培養技術を活用し、ご自身の免疫作用に着目した取り組み(再生医療)をおこなう場合もあります。大腸がんの治療として直接結びつくものは2025年12月時点で多くありませんが、再生医療は標準治療の代替ではなく、治療を受ける過程での体調管理や治療を助ける選択肢の一つとして検討されるものです。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報提供に加え、簡易的なオンライン診断を実施しています。 大腸がん治療中の体調管理や、再生医療について気になる点がある方は、情報収集の一環として公式LINEをご活用ください。 放射線治療 放射線治療は、主に直腸がんで用いられる治療法です。(文献9)手術前におこなってがんを小さくする目的や、手術後の再発予防、症状を和らげる目的でおこなわれることがあります。 また、肝臓や肺、脳などへ転移したがんによる症状にも効果が期待できます。 放射線治療は、大腸がん全体では適応が限られますが、がんの位置や進行度によっては重要な選択肢です。放射線治療をおこなうかどうかは、手術や薬物療法との組み合わせを含めて総合的に判断されます。 大腸がんの早期発見には検診が必須 大腸がんは早期のうちに自覚症状がほぼないため、検診によって早期発見できるかが治療や予後に影響します。(文献5) 日本では40歳以上を対象に、便潜血検査と問診による大腸がん検診が市区町村単位で実施されています。 便潜血検査は目には見えない微量の血液を検出できる検査です。(文献5)検査は食事制限の必要もなく、2日間に分けて便を採取するだけで済み、からだへの負担がありません。 結果が「要精密検査」となった場合は必ず消化器内科を受診し、大腸内視鏡検査を受けましょう。1回の検診ではがんが見つからないこともあるため、症状がなくても毎年検診を受けることが推奨されます。 大腸がんの予防法 大腸がんの予防には、がんのリスクを上げる日常生活における要因(環境的要因)の改善が重要です。(文献7) 禁煙する 過度な飲酒をひかえる バランスの良い食事をとる 適度に運動する 肥満を防ぐ 感染を予防する とくに運動は、大腸がんの予防に効果的です。食事では食物繊維やカルシウムの摂取を心がけ、赤肉や加工肉を過剰にとらないよう意識しましょう。(文献7) 大腸がんで気になる症状があれば消化器内科を受診しよう 大腸がんは、早期には自覚症状がほとんどなく、検診や検査によって初めて見つかることが多い病気です。 一方で、早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、からだへの負担を抑えた治療が可能になる場合もあります。 血便や便通の変化、おなかの張りなど、これまでと違う症状に気づいた場合は、自己判断せず消化器内科を受診しましょう。また、症状がなくても40歳を過ぎたら、定期的に大腸がん検診を受けることが早期発見につながります。 治療を検討する過程では、標準治療を理解した上で、自分に合った選択肢を知ることも大切です。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報提供に加え、簡易的なオンライン診断をおこなっています。治療や体調管理について情報を集めたい方は、選択肢を知る手段として公式LINEをご活用ください。 大腸がんに関するよくある質問 大腸がんの余命(生存率)はどのくらいですか? 大腸がんの予後は、発見時のステージによって異なります。大腸がんのステージごとの5年生存率(ネット・サバイバル:がんのみが死因となる状況)は、以下のとおりです。(文献11) ステージ ネット・サバイバル Ⅰ期 92.3% Ⅱ期 85.5% Ⅲ期 75.5% Ⅳ期 18.3% ステージⅠの大腸がんにおける5年後の生存率は90%以上であり、早期発見ができれば、治癒率も高い傾向といえるでしょう。 ただし、これらの数値はあくまで統計的なデータであり、実際の余命は個々の状態や治療への反応によって異なります。 大腸がんに気づいたきっかけは何が多いですか? 大腸がんに気づくきっかけは、早期がんと進行がんで異なります。早期がんは自覚症状がほとんどないため、検診でおこなう便潜血検査で発見されるケースが多く見られます。 一方、進行がんでは、以下のような症状などがきっかけで受診し、発見されることもあります。(文献1) 血便 下血 便の変化や残便感 おなかの張り 原因不明の貧血やめまい ただし、大腸がんに症状としてよく見られる「血便」は、痔をはじめとする良性の病気でも起こるため、受診して出血の原因を明らかにすることが重要です。気になる症状がある場合は自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 大腸がんの初期症状でおならに変化はありますか? 大腸がんの初期は、多くの場合で自覚症状がありません。初期のうちはおならに変化がないケースもあります。 ただし、がんが進行すると腸の内腔が狭くなってガスの通りが悪くなり、おならの回数や量が変化したり、おなかの張りを感じたりするケースもみられます。 おなかの張りや排便習慣の変化、血便などの症状が気になる場合は、自己判断せずに消化器内科を受診してください。 参考文献 文献1 大腸がん(結腸がん・直腸がん)について|がん情報サービス 文献2 最新がん統計|がん情報サービス 文献3 早期大腸がんの低侵襲な内視鏡治療 | 国立がん研究センター 中央病院 文献4 大腸がんのステージ(病期)について | 国立がん研究センター 中央病院 文献5 大腸がん検診について|がん情報サービス 文献6 大腸がんとは|国立がん研究センター 中央病院 文献7 大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診|がん情報サービス 文献8 大腸がん(結腸がん・直腸がん)検査|がん情報サービス 文献9 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|がん情報サービス 文献10 大腸癌治療ガイドライン医師用2022年版の改定ポイントとミスマッチ修復機能欠損大腸癌の話題|日本外科系連合学会誌 文献11 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム|がん情報サービス
2026.01.26 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
「手足のしびれや歩きにくさを感じる」 「手足が自由に動かせず、生活に支障をきたしている」 その症状は、後縦靭帯骨化症と呼ばれる指定難病によって起こっている可能性があります。 後縦靭帯骨化症とは、背骨の中を走る後縦靭帯が骨のように硬くなり、脊髄や神経を圧迫してしまう疾患です。 進行すると日常生活に大きな支障をきたしますが、早期発見と適切な治療・生活管理により、症状の進行を抑えられるケースも少なくありません。 本記事では、現役医師監修のもと、後縦靭帯骨化症の症状・原因・治療法についてわかりやすく解説します。 後縦靭帯骨化症の症状 後縦靭帯骨化症の原因 後縦靭帯骨化症を放置するリスク 後縦靭帯骨化症の治療法 後縦靭帯骨化症における日常で気を付けるべきこと 記事の最後には、後縦靭帯骨化症についてよくある質問をまとめていますので、ぜひご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 後縦靭帯骨化症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 後縦靭帯骨化症とは 項目 内容 疾患の概要 背骨内を走行する後縦靭帯が骨化し、脊髄や神経根を圧迫する疾患。日本人に多く認められ、指定難病に分類されている 起きる場所 主に頸椎に発生し、胸椎・腰椎に広がる場合もある。頸椎では上肢症状、胸椎・腰椎では下肢症状が主体となる傾向がある 原因 遺伝的素因、糖尿病などの代謝異常、カルシウム代謝異常、頸部への慢性的負荷など、複合的要因の関与が示唆されている 症状の進み方 初期は軽微な感覚異常から始まり、骨化の進行に伴って脊髄圧迫が増強し、運動機能や感覚障害が顕在化していく経過をたどる 進行速度 数年単位で緩徐に進行することが多く、無症状で経過する例もある (文献1)(文献2) 後縦靭帯骨化症は、脊椎の後縦靭帯が骨化して脊髄や神経根を圧迫する疾患です。 頸椎に多く発症し、手足のしびれや歩行障害、巧緻運動障害などが現れます。初期は軽い違和感程度ですが、進行すると日常生活動作に支障をきたします。 原因は遺伝的素因、加齢、代謝異常など複数の要因が関与すると考えられています。 後縦靭帯骨化症の症状 症状 詳細 手足のしびれ・感覚の変化 指先や足先のしびれ、感覚鈍麻、巧緻動作障害(ボタン操作困難、物の落下など)を呈し、温痛覚の低下を伴う場合がある症状 歩行・運動機能の低下 足のもつれやふらつき、階段昇降困難、長距離歩行時の易疲労性、転倒リスクの増加など、歩行の安定性低下を示す症状 排尿・排便障害(進行した場合) 排尿困難、残尿感、便秘、失禁傾向など、自律神経障害により生じる排泄機能異常であり、進行の指標となる重要な症状 後縦靭帯骨化症の症状は、脊髄や神経根の圧迫によって生じます。初期には手足のしびれや感覚の鈍さ、細かい動作のしにくさが現れ、進行すると歩行障害やふらつき、転倒しやすさが目立ちます。 さらに重症化すると排尿・排便のコントロールが困難になり、症状は緩やかに進行しても一度悪化すると改善が難しいため、手足のしびれや歩きにくさを感じた場合は早急に医療機関を受診しましょう。 手足のしびれ・感覚の変化 区分 詳細 原因 後縦靭帯の骨化による脊柱管狭窄と脊髄・神経根圧迫に伴う神経伝達障害 頸椎の場合(上肢中心) 手指や腕のしびれ・異常感覚、物をつかみにくい巧緻運動障害、片側に偏る症状 胸椎・腰椎の場合(下肢中心) 足のしびれ・張り感、歩行時のふらつき、骨化部位より下の感覚異常や歩行不安定 進行による悪化メカニズム 骨化拡大に伴う圧迫増強、しびれの範囲拡大と持続、感覚消失や筋力低下の進行 (文献2) 靭帯が硬く厚くなることで脊髄や神経が圧迫され、手足のしびれや感覚異常が起こります。 頸椎では手指のしびれや細かい動作の障害が目立ち、胸椎・腰椎では足のしびれや歩きにくさが現れます。 症状は骨化が進むほど強くなり、範囲も広がります。進行すると感覚が失われたり筋力が低下する場合があり、早期の受診と経過観察が重要です。 以下の記事では、手足のしびれについて詳しく解説しています。 【関連記事】 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 手足のしびれとピリピリ感の関係は?症状の原因や治し方を解説 歩行・運動機能の低下 区分 詳細 原因 後縦靭帯の骨化による脊柱管の狭窄、脊髄や運動神経への慢性的圧迫、神経伝達の障害 頸椎骨化の場合(四肢・体幹への影響) 足の筋力低下、膝反射の過剰反応、歩幅の減少や足引きずりの出現、体幹バランスの不安定化 胸椎・腰椎骨化の場合(下肢特異的) 下肢の神経障害、張り感や足のつっぱり、長距離歩行後の疲れやすさ、スリッパが脱げる、足がもつれるといった症状の発生 進行メカニズムと急性悪化要因 神経の血流低下、神経変性の進行、転倒による急性麻痺の発症、年齢による靭帯硬化の進行 (文献3) 後縦靭帯骨化症では、硬くなった靭帯が脊髄や運動神経を圧迫し、足の筋力低下や筋肉のこわばりを引き起こすことで歩行が不安定になります。 初期は軽いふらつきですが、進行すると足を引きずる、歩幅が狭くなるなど症状が顕著になります。 頸椎では広範囲に、胸椎・腰椎では下半身に症状が現れ、転倒で急速に悪化するため早期診断が必要です。 以下の記事では、後縦靭帯骨化症による寝たきりのリスクについて詳しく解説しています。 排尿・排便障害(進行した場合) 区分 詳細 原因 骨化による脊柱管の狭窄、脊髄への圧迫、自律神経中枢の障害、神経信号の伝達異常 頸椎・胸椎骨化の場合(広範影響) 膀胱収縮力の低下、排尿時の勢いの減少、残尿感、直腸感覚の鈍化、夜間頻尿や便秘の出現 腰椎骨化の場合(下部特異的) 尿意切迫感や排便困難、進行に伴う両側性失禁、尿路感染の合併リスク 進行メカニズムと緊急性 神経変性と血流低下、転倒などによる急性悪化、完全失禁への進行、緊急受診の必要性 (文献3)(文献4) 後縦靭帯骨化症が進行すると、骨化による脊柱管狭窄が脊髄や自律神経を圧迫し、排尿・排便機能が障害されます。 膀胱直腸障害として残尿感、夜間頻尿、便秘、尿意切迫感が現れ、進行すると失禁や尿路感染をきたします。 慢性的圧迫による神経変性に加え、転倒などを契機に急性悪化する場合もあり、完全失禁に至ることがあるため、早期評価と適切な対応が重要です。 後縦靭帯骨化症の原因 原因 詳細 遺伝的な要因が関与するとされている 家族内発症の報告があり、骨・靭帯の骨化傾向に関連する体質や特定遺伝子型の関与が示唆されている 加齢や基礎疾患が影響する可能性 加齢に伴う代謝変化や靭帯硬化に加え、糖尿病・肥満・高血圧などの生活習慣病、長期的な姿勢負荷の影響が関与していると考えられている 複数の要因が絡み合って発症する疾患である 遺伝・代謝・加齢・生活習慣など多因子的背景が重なり、慢性的に進行する複合的な病態である 後縦靭帯骨化症の原因は完全には解明されておらず、遺伝的素因、加齢、代謝異常など複数の要因が関与すると考えられています。 糖尿病や肥満との関連も指摘されており、生活習慣や基礎疾患が影響する可能性があります。 骨化の進行や症状の出現には個人差があり、発症を完全に予防することは困難です。診断後は適切な管理により進行を緩やかにし、身体機能の維持を図ることが欠かせません。 遺伝的な要因が関与するとされている 後縦靭帯骨化症は遺伝的素因が主要因とされ、特定の遺伝子多型が靭帯組織の異常骨化を促進します。 ある研究では、家族性発症率は兄弟で約30%、一卵性双生児で85%と高く、患者の血縁者の23%に骨化がみられました。(文献2) また、全ゲノム解析(GWAS)では6p21.1、8q23.1など6つの疾患感受性領域が同定され、遺伝的寄与率は53%に達するとされています。(文献5) 一方で、遺伝素因を持つ方に糖尿病や肥満などの環境因子が加わることで発症や進行が誘発される可能性が示唆されており、遺伝と環境が複合的に影響する疾患と考えられています。 加齢や基礎疾患が影響する可能性 後縦靭帯骨化症は、加齢や基礎疾患が骨化進行に影響する可能性が指摘されています。 50歳前後から靭帯の石灰化・硬化が進み、代謝変化(ビタミンD低下)により異常骨形成が誘発され、中年以降の変性蓄積が骨化閾値を超えて進行を加速すると報告されています。 また、後縦靭帯骨化症患者には糖尿病や肥満、脂質異常などの代謝異常を合併する例が多いのも特徴です。(文献6) 糖尿病や肥満・過体重のある人では後縦靭帯骨化症の発症や進行リスクが高いことが示されています。(文献7) さらに代謝異常(糖・脂質代謝異常、内臓脂肪蓄積など)が靭帯の異所性骨化に強く関連する可能性も報告されています。(文献8) 複数の要因が絡み合って発症する疾患である 後縦靭帯骨化症は、遺伝的要因(疾患感受性遺伝子多型)と環境要因(糖尿病・肥満・機械的ストレス)が相互作用する多因子疾患です。 単一遺伝子病ではなく、複数のSNPと生活習慣の複合が発症閾値を超えることで骨化が誘発されます。全ゲノム解析(GWAS)では遺伝的寄与率53%が示され、残りは環境因子とのエピジェネティックな相互作用とされています。(文献5) 遺伝素因保有者に代謝異常が加わると炎症性サイトカインを介して骨化が促進されますが、家族内発生率は30%であり環境因子との相互作用が必要です。(文献9) 後縦靭帯骨化症を放置するリスク 放置するリスク 詳細 しびれや動作の障害が進むことがある 手足のしびれの悪化、細かい作業の困難、物を落としやすくなる動作障害 歩行が不安定になり転倒の危険が高まる 足のもつれやふらつき、段差や階段での転倒リスクの増加 排尿・排便のトラブルが生じることがある(重度の場合) 尿が出にくい、失禁しやすい、便秘や排便困難などの排泄障害 後縦靭帯骨化症は進行性の疾患であり、初期の軽い症状を放置すると重大な機能障害につながる恐れがあります。 初期には手足のしびれや動作のしにくさから始まり、進行すると歩行が不安定になり転倒しやすくなるため、注意が必要です。 さらに重症化すると脊髄への圧迫が強まり排尿・排便のコントロールが困難になります。 しびれや動作の障害が進むことがある 後縦靭帯骨化症を放置すると、骨化が徐々に拡大し脊髄への圧迫が進行します。慢性的な圧迫により脊髄虚血や神経変性が生じ、手足のしびれの範囲が広がり、歩行や細かい動作の障害が徐々に悪化します。 とくに注意すべきは、軽度の転倒でも骨化部の微小移動や脊髄外傷が発生し、急性麻痺(しびれの急増・四肢機能低下)が誘発されることです。この場合、回復率は50%未満とされています。(文献1) 長期間の脊髄圧迫は神経の回復力を低下させ、筋萎縮や関節拘縮を伴い、手術が遅れると、術後であっても神経障害の改善が難しく、後遺症が出る可能性があります。(文献10) 歩行が不安定になり転倒の危険が高まる 後縦靭帯骨化症では、骨化した靭帯による脊髄圧迫により運動神経と感覚神経の働きが妨げられます。 これにより下肢の筋力低下、感覚の鈍化、反射の異常が生じ、歩行に必要な神経の連携が乱れます。 バランス保持が不安定になると、階段、段差、滑りやすい床などで転倒しやすくなるため注意が必要です。 後縦靭帯骨化症の患者では、歩行障害やバランス感覚の低下、転びやすさを訴えるケースが報告されています。 症状は進行性であり、軽度の転倒でも急激な症状悪化を招く恐れがあるため、早期の対応と転倒予防が重要です。 排尿・排便のトラブルが生じることがある(重度の場合) 区分 詳細 脊髄・神経根の圧迫 脊柱管の狭窄による脊髄・神経根の圧迫、膀胱・直腸を支配する自律神経への影響 進行による障害範囲の拡大 骨化の進行による圧迫範囲の増加、手足の症状から排泄機能障害への進展 排泄制御の神経障害 神経因性膀胱・神経因性腸による排尿困難、頻尿、残尿感、失禁、便秘 軽微な外力による急変 軽い転倒や姿勢変化による神経圧迫の急増、排泄障害の急発症 リスクが高い状況 頸椎・胸椎・腰椎など複数部位に骨化が存在する場合の排泄障害発生リスク 後縦靭帯骨化症では、骨化による脊髄や神経根の圧迫により排尿・排便を制御する自律神経が障害されます。 初期はしびれのみですが、進行すると排尿困難、頻尿、残尿感、便秘、失禁などが現れるのが特徴です。 実際、後縦靭帯骨化症の重症例では膀胱直腸障害を含む報告が多く、尿意がわかりにくい、尿や便が出にくい、失禁が起こるなどの症状がみられます。(文献11) 軽い転倒や姿勢変化で急に悪化する場合もあるため、早期の受診と生活上の工夫が欠かせません。 後縦靭帯骨化症の治療法 治療法 詳細 保存療法(薬物療法・装具療法・生活調整) 痛みやしびれの緩和、装具による姿勢補助、生活活動の調整による症状悪化予防 リハビリテーション(身体機能の維持・悪化予防) 筋力維持、柔軟性改善、転倒予防のための運動療法、日常動作の指導 手術療法 脊髄や神経の圧迫を解除し、症状進行を抑える外科的治療 再生医療 損傷した神経機能の回復を目指す新しい治療戦略、研究段階の医療技術 後縦靭帯骨化症の治療は、症状の進行や生活への影響に応じて保存療法、リハビリテーション、手術療法を組み合わせて行います。 保存療法やリハビリは痛みや機能低下の進行抑制を目的とし、手術は脊髄圧迫を解除して症状の悪化を防ぎます。 また、再生医療は神経機能の回復を目指す新しい治療として注目されていますが、実施している医療機関も限られるため、実施の有無を確認し医師への相談が必要です。 保存療法(薬物療法・装具療法・生活調整) 治療法 詳細 薬物療法 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬による炎症と筋緊張の抑制、神経根痛やしびれの軽減、急性増悪時の第一選択 装具療法 頸椎カラーで首の動きを制限し、後屈動作による脊髄への動的圧迫を防ぐための固定 生活調整・リハビリ 首の反らし動作や重労働の回避、リハビリで筋力を維持し、転倒予防と日常生活動作の維持を図る取り組み 軽度から中等度の症状には保存療法を選択します。症状の緩和と進行の抑制を目的とし、骨化そのものを元に戻すことはできません。 保存療法は現状維持と進行抑制が目的のため、定期的な画像検査と神経所見のチェックが不可欠です。症状が進行する場合は、適切なタイミングで手術療法への移行を検討します。 リハビリテーション(身体機能の維持・悪化予防) 区分 詳細 リハビリの目的 筋力低下や関節硬直の予防、血流改善、バランス向上による転倒予防と日常生活動作の維持 筋力強化訓練の理由 体幹や下肢の筋力向上による姿勢安定、骨化部位への負担分散、歩行安定と筋萎縮予防 ストレッチ・可動域訓練の理由 筋緊張の緩和、関節可動域の維持、神経圧迫の軽減、動作の滑らかさの改善 歩行・バランス訓練の理由 協調性の向上、ふらつき改善、杖や動作指導による適切な歩行の獲得 リハビリの注意点 骨化を元に戻す治療ではないこと、無理な動作で悪化する可能性、医師の指導のもと実施する必要性 (文献12) リハビリテーションは症状の安定と日常生活の維持に重要な役割を果たします。 筋力訓練で姿勢や歩行を安定させ、ストレッチで筋肉のこわばりを軽減し、さらに歩行やバランス練習でふらつきや転倒を防ぐことで生活の自立に役立ちます。 ただし、リハビリは骨化を戻す治療ではなく、悪化しにくい身体づくりを目的とするため、無理な動作は避け、医師や理学療法士の指導のもとで行うことが大切です。 手術療法 区分 詳細 手術療法 骨化による脊柱管狭窄を解除し、神経圧迫を除去・緩和する治療 前方除圧固定術 骨化した靭帯を直接切除し、椎体固定によって圧迫を確実に解除する方法 後方椎弓形成術 椎弓を開いて脊髄を後方へ移動させ、前方からの圧迫を避ける方法 適応判断 筋力低下や歩行障害、排尿障害が出現した場合や画像検査で脊髄障害を認める場合の治療選択 神経症状が進行した場合や保存療法で改善しない場合に手術療法を検討します。手術は骨化による脊髄圧迫を取り除き、神経障害の進行を抑えることが目的です。 前方除圧固定術は骨化部を直接取り除く方法で、強い圧迫がある場合に有効です。後方椎弓形成術は脊髄を後方へ移動させて圧迫を回避する方法で、多椎体に適しています。 症状悪化の早期段階で適切なタイミングで手術を行うことが、生活機能の維持と後遺症の予防につながります。 後縦靭帯骨化症の手術成功率について 後縦靭帯骨化症の手術成績については、複数の報告があります。 ある報告では、手術後の成績評価で良好な結果が約89%、中等度が約11%でした。(文献13) 別の長期追跡研究では、手術後14年にわたる経過観察で満足できる結果が得られています。(文献14) 前向き研究では、手術から2年後の機能改善と生活の質(QOL)において、他の頸椎疾患と比べても遜色ない成績が示されています。(文献15) 一方、長期フォローでは術後1年時点で約70%だった有効性が、10年以上後には約50%に低下しました。(文献16) 手術は症状改善と悪化予防の有力な手段ですが、医師と慎重に相談して判断することが大切です。 再生医療 再生医療は神経修復と組織再生を促進し、残存症状の改善を目指す治療として注目されています。 幹細胞治療では、患者自身の脂肪由来幹細胞を用いて神経細胞の再生、血管新生、抗炎症作用を促します。 再生医療は、将来的に骨化抑制や脊髄修復を目的とした根本治療への発展が期待されています。 後縦靭帯骨化症に対する再生医療を用いた治療例は以下の記事をご覧ください。 後縦靭帯骨化症における日常で気を付けるべきこと 日常で気を付けるべきこと 詳細 首や腰への負担を減らす工夫 首を反らす動作や重い荷物の持ち運びを避け、正しい姿勢やクッション性のある椅子で負担軽減 転倒予防と生活環境づくり 段差や滑りやすい場所の対策、明るい照明や手すり設置による転倒防止 身体機能の維持と症状の自己管理 軽い運動やストレッチによる筋力維持、症状変化の観察と早期受診 後縦靭帯骨化症を悪化させないためには、日常生活の工夫が欠かせません。首や腰に負担をかけない姿勢や動作を心がけることで、神経への圧迫を増やさない効果が期待できます。 また、ふらつきや転倒が起こりやすいため、住環境の整備や適切な対策が必要です。 さらに、適度な運動やストレッチで筋力や柔軟性を保つことが、歩行や姿勢の安定に役立ちます。症状が変化した際には自己判断せず、早期に医療機関を受診しましょう。 首や腰への負担を減らす工夫 後縦靭帯骨化症では、骨化した靭帯が脊髄を圧迫しているため、首や腰への過度な負荷が症状悪化や急性麻痺につながる可能性があります。 首を後ろに反らす、急にひねる動作は脊髄への圧迫を強め、しびれや歩行障害を悪化させます。そのため、枕の調整やスマートフォンの位置を工夫し、自然な姿勢を保つことが大切です。 重い荷物の持ち上げや長時間同じ姿勢でいることは、筋緊張や椎間内圧の上昇を招き、神経圧迫を持続させます。負担を軽減させるためにも適宜休憩やストレッチを行いましょう。 また、ふらつきや転倒は、軽微な外傷でも骨化部の変位や脊髄損傷を引き起こすリスクがあります。ふらつきや転倒事故を防ぐため、手すりの設置や段差の解消など、住環境の整備も大切です。 転倒予防と生活環境づくり 軽微な転倒でも骨化部の変位や脊髄損傷を引き起こし、急性麻痺や歩行不能に至る恐れがあるため、転倒予防と環境整備が欠かせません。 歩行補助具として、杖やシルバーカー、滑り止め靴を活用することでバランスを支え、転倒頻度を低減できます。医師の指導のもと、適切なサイズを選択しましょう。 住宅環境では、手すりの設置、段差のスロープ化、滑り止めマット、足元灯の配置により転倒リスクを最小化します。とくに転倒事故が起きやすい浴室、階段、廊下での対策は怠らないように注意が必要です。 身体機能の維持と症状の自己管理 後縦靭帯骨化症による筋萎縮や関節硬直、血流低下の進行を防ぐためにも日常的な運動と症状のモニタリングが不可欠です。適切な自己管理により身体機能を維持し、悪化の早期発見が可能になります。 定期的なストレッチと運動習慣として、首・肩・背筋のゆっくりしたストレッチや軽いウォーキング、水泳が有効です。 筋緊張の緩和と血流促進により、しびれの軽減と可動域の確保が図れます。長時間同じ姿勢を避け、適宜休憩を挟むことが重要です。 また、睡眠と栄養バランスも欠かせません。適切な枕の使用、飲酒を控えつつ野菜や魚中心の食事により炎症を抑制し、骨代謝を正常化します。 後縦靭帯骨化症のお悩みは当院へご相談ください 後縦靭帯骨化症の進行を抑えるためには、早期発見と適切な管理が大切です。症状や生活への影響には個人差があるため、医療機関で正しい評価を受け、治療方針を決定する必要があります。 後縦靭帯骨化症の症状でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、後縦靭帯骨化症の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は幹細胞を用いた治療のひとつです。後縦靭帯骨化症における神経損傷を回復させるための効果が期待されています。再生医療は手術を必要としないため、感染症や後遺症のリスクが少ない利点があります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 後縦靭帯骨化症に関するよくある質問 後縦靭帯骨化症と寿命は関係ありますか? 後縦靭帯骨化症は寿命を直接縮める疾患ではありません。また、生命予後が大きく短くなる根拠は乏しいとされています。 しかし、重症化して歩行障害や排尿・排便障害から寝たきりになると、肺炎や尿路感染症などを起こし健康寿命が低下する可能性があるため、適切な治療と予防が欠かせません。 後縦靭帯骨化症で死亡するケースはありますか? 後縦靭帯骨化症が直接の死因となることは極めてまれです。 しかし、重症化して四肢麻痺や寝たきりになると、肺炎や尿路感染症、褥瘡などの合併症により死亡に至ることがあります。(文献17) 転倒や手術合併症が急性悪化の要因となるため、早期治療と予防管理が重要です。 後縦靭帯骨化症が治った事例はありますか? 後縦靭帯骨化症が「治った」という報告はなく、骨化が元に戻る完治は現時点で期待できません。 後縦靭帯骨化症は靭帯が骨化する構造変化を伴い、現在の医療では骨化した靭帯を元の柔らかい組織に戻す方法は確立されていません。 手術や保存療法、リハビリで神経圧迫を改善し症状を和らげることは可能です。しかし、骨化そのものが消失したり正常靭帯に戻ったとする医学的報告は確認されていません。 後縦靭帯骨化症でやってはいけないことはありますか? 首の後屈、急激な動作、飲酒後の転倒、無資格マッサージは脊髄圧迫の増大や急性麻痺を引き起こすため避けるべきです。 他にも以下の行動や医学的根拠のない治療法にも注意が必要です。 注意すべき行動 理由 首後屈・急ひねり動作 骨化部が脊髄に当たり、四肢麻痺や歩行不能を招くリスク 高枕・背中反らしストレッチ 首が大きく反り、神経圧迫が悪化するリスク 飲酒後の階段・夜間歩行 協調障害や視認性低下で転倒し、脊髄外傷を起こすリスク 泥酔・単独行動 転倒時の対応が遅れ、重症化の危険 無資格マッサージ・強い矯正 首の強い矯正で脊髄損傷を誘発する危険 はり・灸など代替療法 症状が悪化する可能性があり、十分な医学的根拠が乏しいものも含まれる 医師や理学療法士以外の運動指導 不適切な運動による悪化リスク (文献1) これらの行動は避けるようにし、迷った際は自己判断せず必ず医師に相談しましょう。 後縦靭帯骨化症の家族ができるサポートや注意すべきことはありますか? 家族は転倒予防のために歩行介助や環境整備を行い、服薬管理や通院同行で治療継続を支えることが重要です。 段差解消や手すり設置により適切な生活環境を整え、精神的なサポートも欠かせません。 また、遺伝性の可能性も報告されている疾患であることから、家族も定期的な健康診断を受けることが推奨されます。 後縦靭帯骨化症を発症した有名人はいますか? 後縦靭帯骨化症を発症したことが、メディアで取り上げられている有名人として、以下の方々が挙げられます。 北方大地(格闘家) ISSOP(ダンサー) 加藤大晴(元力士) Suwa(元プロレスラー) 後縦靭帯骨化症は、選手生命を脅かす指定難病です。しかし、症状や治療に直面しながらも、引退後に活躍を続けている方もいます。 参考文献 (文献1) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)|難病情報センター (文献2) 後縦靭帯骨化症の原因|公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット (文献3) 歩行や排せつに障害が出ることも「後縦靭帯骨化症」|一般社団法人 千葉市医師会 (文献4) 後縦靭帯骨化症の症状|公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット (文献5) 脊柱後縦靭帯骨化症の発症原因の一端を解明 -日本人を対象とした世界最大規模のゲノム解析-(共同プレスリリース)|静岡県公立大学法人 静岡県立大学 (文献6) I区.研究成果の刊行物・別刷 (文献7) Cervical Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament: A Computed Tomography–Based Epidemiological Study of 2917 Patients|Sage Journals Home (文献8) The relationship between OPLL and metabolic disorders|Bone Research (文献9) 頚椎後縦靱帯骨化症になぜなるのか?どういった症状が出るのか?(成因・病理・病態) (文献10) Prognostic factors for surgical outcome in spinal cord injury associated with ossification of the posterior longitudinal ligament (OPLL)|PMC PubMed Central® (文献11) 病気を知る後縦靭帯骨化症(OPLL)|KOMPAS (文献12) 後縦靭帯骨化症のケア|公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット (文献13) Surgical outcome in patients with cervical ossified posterior longitudinal ligament: A single institutional experience|PMC PubMed Centra® (文献14) Surgical outcome in patients with cervical ossified posterior longitudinal ligament: A single institutional experience|ORIGINAL ARTICLE (文献15) Comparison of Outcomes of Surgical Treatment for Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament Versus Other Forms of Degenerative Cervical Myelopathy: Results from the Prospective, Multicenter AOSpine CSM-International Study of 479 Patients|PubMed® (文献16) isho.jp 医学専門雑誌・書籍の電子配信サービス|特集 脊椎外科最近の進歩―長期予後からみた問題点を中心として―(第28回日本脊椎外科学会より) (文献17) No.171 「後縦靱帯骨化症除去前方除圧術により患者に重篤な後遺障害が発生。手術の除圧幅について、ガイドラインの内容に照らして不適切であると判断し、市立病院の医師の過失を認めて市に損害賠償を命じた地裁判決」|Medsafe.Net 医療安全推進者ネットワーク
2026.01.26 -
- その他、整形外科疾患
「健康診断でビタミンD不足を指摘された」 「最近、骨がもろくなったと感じる」 このような場合、骨軟化症の可能性があります。骨軟化症は、骨がカルシウムやリンで十分に石灰化されず、骨組織が軟らかくなる疾患です。主な原因はビタミンD欠乏、低リン血症、腎機能低下などです。 適切な診断と治療により改善が期待できますが、放置すると骨変形や日常動作に支障を来す可能性があります。早期の受診と治療が重要です。 本記事では、現役医師が骨軟化症について詳しく解説します。 骨軟化症の症状 骨軟化症の種類 骨軟化症の原因 骨軟化症を放置するリスク 骨軟化症の治療法 記事の最後には、骨軟化症に関するよくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 骨軟化症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 骨軟化症とは 項目 内容 疾患の概要 骨を硬くする成分(カルシウム・リン)が十分に沈着せず、骨が軟らかくなる状態 主な原因 ビタミンD不足、カルシウム・リンの摂取不足、腎臓・肝臓・腸の働きの異常、日光不足 起こる仕組み 栄養やビタミンDの不足により、骨の硬化が不十分な状態 主な症状 身体のだるさ、筋力の低下、歩きにくさ、階段の上り下りのしにくさ 放置した場合の影響 骨の変形、骨折の起こりやすさ、生活動作の制限 骨粗鬆症との違い 骨粗鬆症は「骨の量」が減る。骨軟化症は「骨の質(硬さ)」が低下する 診断に必要な検査 血液検査(ビタミンD・カルシウム・リン)、X線、骨密度検査 治療の基本 ビタミンDやカルシウムの補充、原因となる病気の治療、生活習慣の改善 注意が必要な人 日光をあまり浴びない人、偏食・制限食の人、腎臓や肝臓に疾患がある人、高齢者 (文献1)(文献2) 骨軟化症は、カルシウムやリンが骨に十分沈着せず、骨が軟化する疾患です。 主な原因はビタミンD欠乏で、その背景として日光不足や栄養の偏り、腎・肝機能障害などがあります。倦怠感、筋力低下、歩行困難などの症状が現れ、進行すると骨変形や骨折のリスクが高まります。 早期に診断し適切な治療を行うことで、骨の強化と症状改善が期待できます。血液検査やX線検査により診断し、ビタミンDやカルシウムの補充が治療の中心となります。 高齢者や日光を浴びる機会が少ない方、食事制限をしている方はとくに注意が必要です。 骨軟化症と骨粗鬆症の違い 比較項目 骨軟化症 骨粗鬆症 疾患の性質 骨のミネラル化が不十分で、骨が柔らかくなる状態 骨の量(骨密度)が減って、骨がもろくなる状態 主な原因 ビタミンD不足、カルシウム・リン不足、吸収不良、腎臓や肝臓の異常 加齢、閉経後のホルモン変化、骨吸収の促進 骨の変化 骨の質(硬さ・強度)の低下 骨の量(密度)の低下 主な症状 筋力低下、歩行の不安定さ、だるさ、骨の変形、骨折しやすさ 自覚症状が乏しく、骨折して初めて気づくことが多い 診断方法 血液検査でビタミンD・カルシウム・リンを確認、X線による骨の硬化不全の確認 骨密度検査(DEXA法)で骨量の減少を判定 治療の基本 ビタミンD・カルシウム・リンの補充、原因疾患の治療、栄養と生活習慣の見直し 骨吸収抑制薬・骨形成促進薬の使用、運動・食事の改善 特徴的な発見のきっかけ 歩行の違和感や筋力低下から気づくことが多い 検診や骨折後の画像検査で見つかることが多い (文献1)(文献3) 骨軟化症と骨粗鬆症は、どちらも骨が弱くなる点は似ていますが、病態は異なります。骨軟化症は、ビタミンDやカルシウム・リンの不足により骨の石灰化が障害され、骨の質が低下します。 一方、骨粗鬆症は加齢やホルモン変化により骨の量が減少し、骨密度が低下する疾患です。 骨軟化症は血液検査で、骨粗鬆症は骨密度検査で診断されます。原因を見極め、適切な治療を受けることが大切です。 以下の記事では、骨粗鬆症について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】骨軟化症と骨粗鬆症の違いとは|症状や診断基準の観点から詳しく解説 骨粗しょう症の原因は?骨がもろくなる要因や骨量を上げる予防策を解説 骨軟化症とくる病との違い 観点 くる病 骨軟化症 発症時期 成長期の子どもでの発症 成長が終わった成人での発症 骨の状態 成長軟骨帯の石灰化障害による成長異常 既存骨の石灰化不良による質の低下 主な変化 骨の変形や身長の伸び悩み 骨のもろさ・変形・骨折しやすさ 主な症状 O脚・X脚、胸郭や歯の異常 筋力低下、歩行不安定、疲れやすさ 診断・治療目的 骨の成長と形の正常化 骨の強度回復と骨折予防 (文献1)(文献4) くる病と骨軟化症はいずれも骨の石灰化が妨げられる疾患であり、発症年齢と骨の発達段階が異なるのが特徴です。くる病は成長期の子どもに発症し、成長軟骨帯の障害により骨変形や身長の伸び悩みがみられます。 一方、骨軟化症は成人に発症し、既に形成された骨の質が低下して骨折しやすく、歩行障害を生じやすくなります。いずれもビタミンDやカルシウム不足が背景にあり、適切な診断と治療により改善が期待できる疾患です。 以下の記事では、くる病について詳しく解説しています。 骨軟化症の症状 症状 詳細 歩行時の違和感・疲れやすさ 歩く際のふらつきや重だるさ、長距離歩行での疲労増加 下肢の筋力低下と動作の不安定さ 立ち上がりや階段昇降の困難、バランス低下による転倒リスク 骨の変形や骨折しやすくなる変化 背骨や下肢の形態変化、軽微な負荷での骨折発生 骨軟化症の症状は、初期には歩行時のふらつきや重だるさ、長距離歩行での疲労感として現れます。進行すると下肢の筋力低下により、立ち上がりや階段昇降が困難となり、バランス低下から転倒リスクが高まります。 放置すると背骨や下肢の変形が進行し、軽い負荷でも骨折しやすくなります。一方で、症状は徐々に進むため早期には気づきにくいのが特徴です。違和感を覚えた場合には、早めの受診が重要です。 歩行時の違和感・疲れやすさ 原因・仕組み 詳細 骨のミネラル化不全による支持力低下 骨の石灰化不足により骨が柔らかくなり、体重支持能力が低下する状態 筋肉への負担増加と筋力低下 骨の弱さを補うため筋肉に過剰な負担がかかり、とくに下肢・骨盤周囲の筋力低下を招く状態 骨の変形やバランス不良 骨格の歪みや関節への過負荷により身体バランスが不安定になる状態 微小骨折(偽骨折)による負荷感 骨の脆弱化に伴う小さな骨損傷が蓄積し、歩行時の違和感や疲労感が増強する状態 初期症状の自覚しづらさ 明らかな変形や骨折がない初期段階では、だるさや歩きにくさが加齢や運動不足と誤認されやすい状態 (文献5) 骨軟化症における歩行時の違和感や疲れやすさは、骨の石灰化不足により体重支持能力が低下することが原因です。 骨の弱さを補うため筋肉に過剰な負担がかかり、下肢や骨盤周囲の筋力低下を招きます。さらに骨格の歪みによりバランスが不安定となり、微小骨折が蓄積することで負荷感が増強します。 初期段階では明らかな変形がなく、症状が加齢や運動不足と誤認されやすいため、見過ごされることが多い点に注意が必要です。 以下の記事では、膝蓋軟骨軟化症(ランナー膝)の原因を詳しく解説しています。 下肢の筋力低下と動作の不安定さ 原因・仕組み 詳細 骨の石灰化不足による支持力低下 骨のミネラル沈着不全による骨の柔軟化と下肢・骨盤の支持力低下 近位筋の筋力低下(太もも・骨盤まわり) 骨異常に関連した筋機能低下と立ち上がり・歩行時の負荷増加 骨・筋肉の協調性の乱れ 骨不安定性を補う過剰な筋活動に伴う動作時の不安定性と疲労蓄積 バランス障害と歩行の不安定化 骨・筋・関節機能の総合的低下による動作・姿勢保持の困難 加齢や他疾患との見分けの難しさ 症状進行が緩徐で、加齢性筋力低下や整形外科疾患と類似した経過 (文献1) 骨軟化症では、骨の石灰化が不十分となり骨が弱くなることで、下肢の体重支持能力が低下します。その結果、歩行時に筋肉や関節に過剰な負担がかかり、下肢の筋力低下や疲労が生じやすくなります。 骨の脆弱性と筋力低下に伴う関節負荷の増大でバランスが崩れ歩行障害や転倒リスクが高まるため、加齢や運動不足と区別するための適切な検査と栄養評価が必要です。 骨の変形や骨折しやすくなる変化 原因・仕組み 詳細 骨の石灰化不足による硬さの低下 カルシウム・リンの沈着不全に伴う骨軟化と強度の著明な低下 オステオイド(未石灰化骨)の蓄積 骨基質へのミネラル沈着不全により、弾力のみで硬度を欠く骨の増加 骨への日常負荷による変形進行 体重負荷や動作反復による骨のたわみ・歪曲、下肢・脊椎の変形 偽骨折(微小骨折)の発生 外傷を伴わずに骨内部に微小な亀裂・損傷が生じる病態 骨構造の不安定化による姿勢変化 支持性低下に起因する姿勢乱れ、歩行バランス障害、O脚・X脚傾向 (文献1) 骨軟化症では、カルシウムやリンが骨に十分沈着せず、硬さと強度が低下します。日常の体重負荷により徐々に変形や偽骨折が進行し、姿勢や歩行に影響を及ぼします。 これは骨量が減る骨粗鬆症とは異なり、石灰化不足が原因です。変形が進行すると元に戻りにくいため、早期の診断と治療、ビタミンDや栄養状態の評価が必要です。 骨軟化症の種類 種類 詳細 ビタミンD関連の骨軟化症 ビタミンD不足や代謝低下による骨の硬化不全 低リン血症による骨軟化症 リン不足に伴う骨形成障害や骨脆弱化 薬剤性の骨軟化症 抗てんかん薬などの薬剤によるビタミンD代謝障害 骨軟化症にはいくつかのタイプがあり、原因によって治療の方向性が異なります。ビタミンD関連の骨軟化症は、加齢や栄養不足、腎機能低下によりビタミンDが十分に働かず、骨が硬化しにくい状態になります。 低リン血症による骨軟化症は、リンが不足することで骨形成が障害され、骨が脆くなることが特徴です。 また、薬剤性の骨軟化症は抗てんかん薬などが影響し、ビタミンD代謝が乱れることで起こります。原因に応じた治療が必要となるため、血液検査や服薬歴の評価が欠かせません。 ビタミンD関連の骨軟化症 種類 原因 特徴 ビタミンD欠乏性骨軟化症 食事からのビタミンD不足、日光不足、消化吸収障害による吸収低下 骨の石灰化不十分による骨の柔らかさ・弱さ、成人で頻度が高い ビタミンD抵抗性骨軟化症 ビタミンDの作用不全、FGF23過剰による低リン血症 骨のミネラル化不良、骨変形や歩行障害、血液検査で低リン血症・高ALP (文献2)(文献6)(文献7) 骨軟化症には、ビタミンDが不足する欠乏性と、十分に働かない抵抗性があります。欠乏性は栄養や日光の不足、吸収障害が原因で、骨の石灰化が障害されます。 一方、抵抗性はホルモン異常により低リン血症が生じ、骨変形や歩行障害が現れるのが特徴です。 抵抗性では通常のビタミンD補充のみでは改善が得られず、リン製剤や特殊治療を要します。いずれも早期診断と原因に応じた治療が重要です。 低リン血症による骨軟化症 項目 内容 病態の特徴 骨の石灰化に必要なリンの不足や過剰排泄による骨の硬さ低下 遺伝性タイプ FGF23過剰産生による尿中リン排泄増加、X染色体優性低リン血症(XLH)など 後天性タイプ 腎疾患や腫瘍によるリン排泄促進、腫瘍性骨軟化症など メカニズム 骨基質にリンが沈着しにくく未石灰化骨が増加し、骨の質の低下 臨床像 若年期から成人に発症(遺伝性)、中高年に筋力低下や歩行障害(後天性) 検査所見 低リン血症、骨代謝マーカー上昇(ALP高値) その他の要因 アルミニウムなどのミネラル化妨害因子による骨軟化症の悪化 (文献1)(文献2) 低リン血症による骨軟化症は、骨の石灰化に必要なリンが不足、または過剰に排泄されることで骨の硬さが低下する病態です。 背景には、遺伝性のFGF23過剰産生による尿中リン排泄増加(XLHなど)や、腎疾患・腫瘍による後天性のリン排泄促進(腫瘍性骨軟化症など)があります。 リンが不足して未石灰化骨が増えることで骨の質が低下し、年齢により発症や筋力低下・歩行障害が起こります。 薬剤性の骨軟化症 項目 内容 発症のしくみ ビタミンDの働きやカルシウム・リンの利用を妨げる薬剤の影響による石灰化不良 主な影響部位 腎臓・腸管のミネラル代謝障害、尿細管からのミネラル喪失 起こりやすい薬剤 抗てんかん薬、胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)、アルミニウム含有制酸剤、鉄剤など 臨床像・特徴 筋力低下、歩行異常、骨の脆弱化、骨折しやすさ 検査所見 血液中のカルシウム・リン・ビタミンD代謝異常、骨代謝マーカーの異常 治療のポイント 薬剤の影響を評価し、可能な薬の見直しや補充療法の実施 (文献8)(文献9) 薬剤性の骨軟化症は、一部の薬がビタミンDやカルシウム・リンの利用や代謝に影響し、骨の石灰化が不十分になり骨が弱くなる状態です。 抗てんかん薬、胃酸分泌抑制薬、アルミニウムを含む制酸剤などが関与することがあり、腎臓でのミネラル喪失を引き起こす場合もあります。 筋力低下や歩行の異常がみられるほか、検査でミネラルや骨代謝マーカーの異常が認められることがあります。 治療では薬剤との関連性を確認し、必要に応じて薬の見直しを検討しましょう。 骨軟化症の原因 原因 詳細 ビタミンD不足・代謝異常 食事・日光不足や吸収障害、腎機能低下によるビタミンDの不足や代謝低下 リンの代謝異常 腎疾患や遺伝性疾患によるリン不足や過剰排泄による骨の硬化不全 抗てんかん薬などの薬剤性 薬剤によるビタミンDやミネラル代謝への影響による骨の石灰化不良 骨軟化症の原因は、主にビタミンD関連、リン代謝異常、薬剤性の3つに分類されます。ビタミンD欠乏では、食事や日光不足、吸収障害、腎機能低下による代謝障害が背景にあります。 リン代謝異常では、腎疾患や遺伝性疾患によるリンの不足や過剰排泄により、骨の石灰化が障害されます。 薬剤性では、抗てんかん薬などの長期服用がビタミンDやミネラル代謝に影響を及ぼすことが原因です。 ビタミンD不足・代謝異常 項目 詳細 発症のメカニズム ミネラル沈着不良による骨の硬化不全 ビタミンDの役割 カルシウム・リン吸収促進と骨への供給補助 不足・異常が起こりやすい要因 日光不足、食事不足、消化吸収障害、代謝異常 骨への影響 未石灰化骨の蓄積による骨の柔軟化と強度低下 臨床所見 骨折や変形のリスク増大、血中ミネラル異常、骨代謝マーカー異常 改善の意義 ミネラル化の回復と骨の強度改善の可能性 (文献10) ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収と骨への沈着を促す重要な栄養素です。ビタミンDが不足すると、骨にミネラルが十分沈着せず骨が軟化し、骨軟化症を引き起こします。 日光や食事の不足、消化吸収障害、代謝異常などが原因となり、ビタミンD不足が長期化すると骨折や変形のリスクが高まります。 リンの代謝異常 項目 詳細 過剰なリンの腎からの排泄(腎性リン喪失) 腫瘍や遺伝性障害によるFGF23過剰産生に伴うリン再吸収不全 先天性の遺伝子異常 X連鎖性低リン血症(XLH)などによるリン保持不全 腎臓や尿細管の機能異常 腎機能低下や尿細管障害によるリン再吸収障害 ミネラル供給不足 血中リン低下による骨へのミネラル供給不足 未石灰化骨の増加 骨基質にミネラルが沈着できず未石灰化骨が蓄積 骨の脆弱化 骨の強度低下による骨変形・骨折・歩行異常 (文献7)(文献10) リンは骨の石灰化に不可欠なミネラルで、その代謝異常により骨軟化症が発症します。 主な原因は、腫瘍や遺伝性疾患によるFGF23過剰産生に伴う腎性リン喪失、X連鎖性低リン血症などの遺伝子異常、腎機能低下や尿細管障害によるリン再吸収障害です。 血中リン濃度が低下すると骨へのミネラル供給が不足し、未石灰化骨が蓄積します。その結果、骨の強度が低下し、骨変形や骨折、歩行障害を引き起こします。 抗てんかん薬などの薬剤性 項目 詳細 ビタミンDの働き低下 抗てんかん薬によるビタミンDの不活性化促進 カルシウム不足 腸管でのカルシウム吸収低下と低カルシウム血症 副甲状腺ホルモンの増加 二次性副甲状腺機能亢進による骨吸収促進 リンの喪失 尿細管障害によるリン再吸収障害と低リン血症 骨の弱化 未熟な骨基質の蓄積による骨痛・変形・骨折 発症リスク増大 長期服用、併用薬、日光不足などによる影響 (文献11)(文献12) 抗てんかん薬は肝臓の薬物代謝酵素を誘導し、ビタミンDの分解を促進することで活性型ビタミンDを減少させます。 その結果、カルシウム吸収が低下し、血中カルシウム濃度の低下や副甲状腺ホルモンの過剰分泌により骨軟化症を引き起こします。 尿細管障害によるリン喪失も加わり、長期投与や多剤併用でリスクが高まるため、定期的なビタミンD補充と骨代謝のモニタリングが重要です。 骨軟化症を放置するリスク 放置するリスク 詳細 歩行困難・身体機能低下の進行 筋力低下や痛みによる歩行障害、日常動作の制限 骨折リスクの上昇 軟化した骨の脆弱性による軽微な外傷での骨折 骨の変形や姿勢の変化が進む可能性 骨の弱化・未石灰化による骨変形や姿勢異常の進行 骨軟化症を放置すると、症状は徐々に進行し生活の質が著しく低下します。筋力低下や骨痛により歩行が困難となり、日常動作にも支障をきたします。 骨の脆弱化が進むと、軽微な外傷でも骨折を起こしやすくなり、脊椎や大腿骨の骨折は寝たきりの原因となります。 さらに骨の変形が進行すると、背骨の湾曲や下肢の変形により姿勢異常が生じ、一度変形した骨を元に戻すことは困難です。早期に診断し適切な治療を開始することで、これらの合併症を予防し症状の改善が期待できます。 歩行困難・身体機能低下の進行 骨軟化症を放置すると、歩行困難や身体機能の低下が進行します。これは、ビタミンDやリンの不足により骨の石灰化不全となり、下肢の骨が体重を支えにくくなるためです。 骨が弱い状態では、太ももや臀部の筋肉に負担がかかり、筋力低下や疲労感、歩行時のふらつきが生じます。症状が進行すると、骨変形や偽骨折により歩行バランスが崩れ、階段昇降や長距離歩行が困難となり、転倒リスクが高まります。 低リン血症を伴う場合は筋肉痛やけいれん、全身倦怠感が増強し、重症例では歩行不能や寝たきりに至ることもあります。そのため、早期診断と治療により進行を防ぎ、生活の質を維持することが欠かせません。 以下の記事では歩行障害について詳しく解説しています。 骨折リスクの上昇 項目 内容 骨の偽骨折の進展 未石灰化骨による細かな亀裂が日常動作で拡大し骨折へ進展 軽微な衝撃での骨折 骨強度低下による転倒・階段昇降での骨折発生 骨癒合の遅延と変形 低リン血症やFGF23異常による骨形成障害と変形癒合 多発骨折とQOL低下 多部位骨折による機能障害・呼吸不全・寝たきりリスク (文献1) 骨軟化症では、骨の石灰化が不十分なため骨が軟化し、微小骨折が徐々に進行して完全骨折に至ります。 軽微な外傷でも大腿骨や脊椎の骨折を起こしやすく、骨折治癒の遅延により再骨折を繰り返し、歩行能力が低下します。 低リン血症があると骨形成がさらに障害され、変形したまま治癒して慢性的な機能障害を残す可能性があり、早期の治療が必要です。 以下の記事では、骨折について詳しく解説しています。 【関連記事】 【病期別】脊椎圧迫骨折のリハビリの方法は?禁忌や病院の探し方も解説! 足首の疲労骨折とは?捻挫との違いや痛みの特徴、治療法を解説 骨の変形や姿勢の変化が進む可能性 項目 内容 下肢変形の進行 骨の軟化による体重負荷でのO脚・X脚の進行 類骨蓄積と変形固定 未石灰化骨基質の増加による骨変形と姿勢異常の固定 筋力低下と痛みによる悪循環 下肢筋力低下と疼痛による変形進行と歩行障害 胸郭・脊椎変形 肋骨・脊椎の変形による呼吸障害と姿勢異常 (文献1) 骨軟化症では、骨が軟化し体重を支えきれず、O脚やX脚などの下肢変形が徐々に進行します。 未石灰化骨の蓄積により骨が変形しやすくなり、放置すると姿勢異常が固定化することが、骨変形や姿勢変化が進行する主な原因です。 筋力低下や疼痛により歩行障害がさらに悪化し手術が必要になる場合があり、胸郭や脊椎の変形により呼吸機能や姿勢にも影響が及んで生活の質が低下します。 骨軟化症の治療法 治療法 詳細 栄養補充療法(ビタミンD補充・カルシウム補充・リン補充) 低栄養や代謝異常に伴うミネラル不足の是正による骨の石灰化促進 原因疾患に対する治療 腎疾患・遺伝性疾患・内分泌異常など原因疾患の改善による骨代謝正常化 原因薬剤の調整 薬剤性骨軟化症を想定した薬剤の評価と必要な見直しや変更 骨軟化症の治療は、原因に応じた多角的なアプローチが基本となります。最も重要なのは、ビタミンDやカルシウム、リンの補充による栄養療法で、骨の石灰化を促進します。 とくにビタミンD不足が関与する例では、活性型ビタミンD製剤の投与が効果的です。また、腎疾患や遺伝性疾患、内分泌異常など背景にある原因疾患の治療も並行して行います。 さらに、特定の薬剤が原因となっている場合には、薬剤の見直しや変更も検討されます。治療は長期にわたることが多いため、医師の指導のもとで継続することが大切です。 栄養補充療法(ビタミンD補充・カルシウム補充・リン補充) 項目 詳細 ビタミンD補充 腸管でのカルシウム・リン吸収改善による骨石灰化の再開 カルシウム補充 低カルシウム血症の是正と副甲状腺過剰抑制による骨密度改善 リン補充 低リン血症の改善による骨形成材料の供給とミネラル化促進 (文献6) ビタミンDやカルシウム、リンが不足すると骨の石灰化が進まず、柔らかい骨が増えて骨の強度が低下します。栄養補充療法では、これらの不足を補うことで腸管吸収が正常化し、血中のミネラル濃度が改善されます。 カルシウム補充は副甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑え、骨折予防や筋力維持に効果があるため、医師の指導のもと継続しましょう。 原因疾患に対する治療 骨軟化症の治療では、栄養補充とともに原因疾患への対応が重要です。たとえば腫瘍性骨軟化症(TIO)では、腫瘍がFGF23などのホルモンを過剰に産生し、腎臓でリンが過剰に排泄されることで骨が脆弱化します。 この場合、原因となる腫瘍を摘出することが第一選択とされており、摘出により血中リン濃度や骨のミネラル化が改善し、多くの患者で骨の強度回復が報告されています。(文献12) また、薬剤性骨軟化症の場合は、原因となる薬剤を中止または変更することで症状が改善するケースもありますが、自己判断はせずに医師の判断のもと行いましょう。(文献1) このように、栄養補充だけでは根本的な改善につながらないことがあるため、原因疾患の特定と治療が再発防止や長期的な改善に不可欠です。 原因薬剤の調整 原因薬剤の調整は、薬剤性骨軟化症の進行を抑える上で欠かせません。 抗てんかん薬やリファンピシンはビタミンDの代謝を妨げ、イホスファミドはリンの喪失を引き起こします。 これらの薬剤を中止または変更することで血中ビタミンDやリンが自然に改善し、骨の石灰化が再開されます。 また、アルミニウム含有製剤の変更で未石灰化骨の蓄積を防ぎ、てんかん治療では非酵素誘導型薬剤への変更で発作管理と骨保護の両立が可能です。 さらに、こうした薬剤調整を栄養補充療法と併用することで改善が促進され、歩行機能の回復や変形進行の抑制が期待されます。 骨軟化症の症状や原因を把握して早期治療に努めよう 骨軟化症は、適切な診断と治療により改善が期待できる疾患です。腰や脚の違和感、歩行時の疲れやすさ、筋力低下などに気づいた場合は、加齢の影響と決めつけず医療機関を受診しましょう。 早期発見と治療により骨の状態を改善し、日常生活の質を維持できる可能性があります。 ビタミンD不足の指摘を受けた方、慢性腎臓病や消化器疾患のある方、抗てんかん薬を長期服用している方は骨軟化症のリスクが高いため、定期的な血液検査や画像検査で骨の状態を確認しましょう。 骨軟化症の症状でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、骨軟化症の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は自身の細胞を利用し、骨の修復や組織再生を促進する治療法です。幹細胞治療やPRP療法により、炎症を抑えながら骨の癒合を促し、運動機能の回復が期待できます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 骨軟化症に関するよくある質問 骨軟化症は完治しますか? 原因を特定し適切に治療することで改善が期待できます。 ビタミンDやリン不足が原因の場合は栄養補充で骨のミネラル化が回復しますが、腎疾患や腫瘍が背景にある場合はその治療が不可欠です。 ビタミンD不足は日光浴だけで補えますか? 日光浴で皮膚がビタミンDを生成しますが、季節・居住地域・外出時間・服装などに左右されるため、必要量を安定して確保するのは難しいです。 したがって、日光浴だけに頼らず、医師の指導のもと食事療法などを組み合わせることが現実的といえます。 骨軟化症と診断された際に受けられる助成制度はありますか? 制度 詳細 指定難病医療費助成制度 一部の骨軟化症(ビタミンD抵抗性・FGF23関連など)が対象 助成内容 通院・検査・薬の費用負担を軽減 対象条件 指定された病型に該当する場合のみ 申請方法 診断書や申請書などを自治体に提出 注意点 すべての骨軟化症が対象ではないため事前確認が必要 骨軟化症のうち、特定の病型は指定難病として医療費助成の対象となりますが、すべてが該当するわけではありません。 助成を受けるには診断書などの申請手続きが必要です。対象となるか、また申請方法については、主治医や自治体の窓口で確認しましょう。 参考文献 (文献1) 骨軟化症|一般社団法人日本内分泌学会 (文献2) ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(指定難病238)|難病情報センター (文献3) 骨粗鬆症と骨軟化症の鑑別|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献4) くる病・骨軟化症の診断マニュアル (文献5) Osteomalacia|Penn Medicine (文献6) ビタミンD欠乏症および依存症|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献7) 238 ビタミン D 抵抗性くる病/骨軟化症 (文献8) Drugs that may harm bone: Mitigating the risk|Cleveland Clinic Journal of Medicine (文献9) 慢性B型肝炎治療薬adefovirにより生じた薬剤性骨軟化症による全身痛の1例|J-STAFGE (文献10) 低リン血症と内分泌疾患|日本内科学会雑誌 109 巻 4 号 (文献11) 科学研究費補助金研究成果報告書 (文献12) Diagnosis and Management of Tumor-induced Osteomalacia: Perspectives From Clinical Experience|Journal of the Endocrine Society AN OPEN ACCESS PUBLICATION
2026.01.26 -
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指の変形や痛みに悩み、「エクオールは本当に効くのか」「飲んでも意味がないのではないか」と不安を感じていませんか。 ヘバーデン結節に対するエクオールの効果については、さまざまな情報があり、判断に迷う方も多いはずです。 結論からいうと、エクオールはヘバーデン結節を根本的に治す治療ではありません。ただ、症状緩和の観点から研究が行われている成分の一つです。 本記事では、ヘバーデン結節とエクオールの関係について、医学的な根拠をもとに整理し、保険適用の可否や市販サプリメントの選び方、十分な変化を感じられなかった場合の選択肢までをわかりやすく解説します。 ご自身に合った治療法を検討する際の参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ヘバーデン結節について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ヘバーデン結節へのエクオール摂取は緩和と予防目的 ヘバーデン結節の治療において、エクオールは補助的な選択肢に位置づけられています。軟骨のすり減りや関節変形そのものを元に戻す作用はないため、注意が必要です。 ヘバーデン結節におけるエクオールの主な目的は、以下のとおりです。 痛みや違和感の緩和 炎症が起こりやすい状態の調整 進行スピードの抑制を期待する補助ケア それぞれ詳しく解説します。 ヘバーデン結節とエクオールの関係性 ヘバーデン結節の発症には、更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少が関与していると考えられています。エストロゲンは、関節や腱の健康維持に関わるホルモンであり、分泌量が低下すると、手指の関節に負担がかかりやすくなります。 一方でエクオールは、エストロゲンと似た構造を持つ成分です。関節や腱に存在するエストロゲン受容体に結合すると、ホルモン不足による影響を補う働きがあるとされています。 そのため、更年期に発症しやすいヘバーデン結節において、痛みなどの症状を和らげる目的で補助的に用いられることがあります。(文献1) エクオールで期待されるのは「痛みの緩和」と「進行抑制」 エクオールは、ヘバーデン結節そのものを治すものではありませんが、痛みの緩和や症状の進行を穏やかにする目的で補助的に用いられます。 ヘバーデン結節に関する臨床試験では、エクオールを摂取した人で「痛みの軽減がみられた」と報告されており、科学的根拠に基づいたケアといえます。(文献2) また、ヘバーデン結節と併発しやすい手指腱鞘炎でも、エクオール摂取のみで痛みの軽減が確認されました。 こうした知見から、手指の痛みや炎症が関与する疾患に対し、症状の悪化を抑える目的でエクオールは活用されています。 日本人の2人に1人はエクオールを作れない点に注意 エクオールは、大豆に含まれるイソフラボンが体の中で変化してできる物質です。大豆食品を食べると、体内でエクオールが作られる場合がありますが、そのためには腸内細菌の働きが必要になります。 ただ、腸内細菌の状態により日本人の約50%は、体の中でエクオールを十分に作り出せない体質であるとされています。必要な腸内細菌を持たない場合、大豆食品を摂取してもエクオールは体内で作られません。 エクオールを摂取しても「効かない」と感じる場合には、こうした体質が関係している可能性があるのです。 自分がエクオールを体内で作れる体質かどうかは、ソイチェック(尿検査)などで確認できます。エクオールを含むサプリメントの利用を検討する際には、事前に自身の体質を把握する方法の一つとして参考にしてみてください。 エクオールは保険適用になる?病院処方と市販品の違い 結論からいうと、エクオールは医薬品として認可されていません。ただし、医療機関で取り扱われる製品と市販品とでは、位置づけや考え方が異なります。 ここでは、以下のポイントに分けて整理します。 現在は「食品(サプリメント)」扱いのため保険適用外 整形外科で販売されるエクオールの特徴 エクオール利用を検討する際の参考にしてください。 現在は「食品(サプリメント)」扱いのため保険適用外 エクオールは、医薬品として認可されておらず、サプリメントを含む「食品」として扱われています。 そのため、医療機関で推奨や販売が行われた場合でも、健康保険は適用されません。 また、エクオールは一定期間の継続摂取が前提となることが多いです。そのため、製品ごとの特徴だけでなく、継続した場合の金額負担も含めて、利用を検討しましょう。 整形外科で販売されるエクオールの特徴 エクオールを含むサプリメントの中には、医療機関でのみ取り扱われる「医療機関専売品」があります。医療機関専売品は、医師の管理や説明のもとでの使用を想定しており、流通経路が限定されている点が特徴です。 整形外科などで取り扱われる製品は、臨床研究で使用された成分設計や品質管理基準に準じて製造されているものもあります。 成分や製造体制を重視する方は、選択肢の1つとして参考にしてください。 エクオール市販品の失敗しない選び方 エクオールサプリメントは医薬品ではないため、製品によって品質にばらつきがあります。エクオールサプリメント選びに失敗しないための基準として、以下のポイントを確認してください。 確認項目 確認時のポイント エクオール含有量 ・臨床研究で用いられている目安は1日10mg ・1日あたり10mgを摂取できる設計かを確認 ・含有量が少ない場合、十分な作用が得られない可能性がある メーカーの信頼性 ・医療機関で取り扱われている実績があるか ・製造過程や原材料の管理体制が明示されているか ・品質管理に関する情報が確認できるか これらのポイントを整理しながら比較すると、自身の目的や継続のしやすさに合った製品を選びやすくなります。 エクオールが効かない場合のヘバーデン結節の治療法は? エクオールを取り入れても痛みや症状の変化が見られない場合、症状の程度や日常生活への影響に応じて、医療機関で以下の治療法が検討されます。 保存療法 薬物療法 手術療法 また、以下の記事では治療法の他にも予防法を紹介しています。ぜひ参考にしてください。 保存療法 ヘバーデン結節の基本となる治療法は、局所の安静です。第1関節をできるだけ動かさないようにし、テーピング固定や指用サポーター(装具)を用いて関節への負担を軽減します。 また、温熱療法(パラフィン浴など)を行うことで、関節周囲の血行を促し、痛みの緩和を図る方法もあります。(文献3) 薬物療法 痛みが強い場合には、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の内服や、湿布などの外用薬が用いられます。これらは炎症を抑え、痛みを和らげる目的で処方されるものです。 また、急性期で痛みが強い場合には、少量の関節内ステロイド注射(トリアムシノロンなど)が実施されることもあります。 ただし、ステロイド注射は繰り返し行うことで軟骨や腱への悪影響が懸念されるため、使用については医師が慎重に判断します。 手術療法 保存療法や薬物療法でも十分な効果が得られず、変形や痛みにより日常生活に支障をきたす場合には、手術療法が検討されます。 手術法には、関節を固定する関節固定術や、関節形成術などがあり、稀に人工指関節置換術が行われることもあります。 ただし、手術後に関節の可動域が制限される場合もあるため、治療の目的や生活への影響について、医師と十分に話し合っておくことが大切です。(文献3) ヘバーデン結節の新しい治療法「再生医療」 保存療法や薬物療法では十分な効果が得られないものの、手術は避けたい方には、再生医療も選択肢の一つです。 再生医療には、主に幹細胞治療とPRP療法の2つの治療法があります。 幹細胞治療では、患者様自身から採取した幹細胞を培養し、患部に投与します。幹細胞が他の細胞に変化する能力「分化能」を活用する治療法です。 一方、PRP療法(多血小板血漿注入)では、患者様の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、患部に注入します。血小板には、成長因子と呼ばれる組織の修復を促す成分や、炎症を抑える成分が含まれています。ただし、PRP療法は軟骨を新たに作り出す治療ではなく、炎症を抑えて症状の緩和を目指すものです。 再生医療について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。 まとめ|ヘバーデン結節のケアにはエクオールを補助的に取り入れよう ヘバーデン結節は完治が難しい疾患ですが、適切なケアにより症状のコントロールは可能です。 エクオールは副作用の少ない「緩和・予防」の補助ツールとして有用であり、科学的根拠に基づいたアプローチとして活用できます。まずは3カ月を目安に試してみてください。 それでも効果が実感できない場合は、医療機関での専門的な治療を検討しましょう。薬物療法や再生医療など、手術以外の選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供や簡易オンライン診断を行っております。ヘバーデン結節による痛みでお悩みの方は、ぜひご登録ください。 ヘバーデン結節とエクオールに関するよくある質問 男性のヘバーデン結節にもエクオールは使える? 男性でもエクオールは使用可能です。ただし、ヘバーデン結節に対するエクオールの効果は、主に女性ホルモンの減少を補うことにあるため、男性ではホルモン作用への期待は薄いといえます。 一方で、エクオールには抗炎症作用や抗酸化作用もあるため、健康維持目的での摂取は問題ありません。ただし、女性ほどの劇的な緩和効果は保証されていない点に注意してください。 エクオールはどれくらい飲み続ければ良いの? エクオールの効果を実感するためには、細胞の代謝サイクルを考慮して最低3カ月の継続をおすすめします。 3カ月経過しても変化が感じられない場合は、体質的な問題や他の原因が考えられるため、医師への相談を検討してください。 痛みが落ち着く「静止期(変形完了後)」になれば減量・中止しても良いですが、骨粗鬆症予防なども兼ねて継続する方も多くいらっしゃいます。 参考文献 (文献1) Hand osteoarthritis, menopause and menopausal hormone therapy|Maturitas (文献2) 手指腱鞘炎に対するエクオール摂取,ステロイド腱鞘内注射の治療成績|日本手外科学会雑誌 (文献3) ヘバーデン結節|日本整形外科学会
2025.12.31 -
- CM関節症
- 手部
親指の付け根あたりが痛む母指CM関節症を発症し、「ペットボトルの蓋が開けられない」「洗濯バサミがつまめない」など、当たり前だった日常動作がつらくなっていませんか。 「このまま痛みと付き合い続けるしかないのか」「手術しかないのか」と不安を抱える方も多いはずです。 しかし、母指CM関節症は自宅でできるリハビリ(運動療法)によって、症状を緩和し、関節の機能を維持・改善できる可能性があります。 本記事では、効果的で正しいリハビリの方法と、リハビリでも改善しない場合に検討したい治療法について詳しく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 母指CM関節症について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 母指CM関節症はリハビリで改善を目指せる 母指CM関節症は、靭帯の緩みや構造的な不安定性により、CM関節に過剰な負担がかかることで発症します。この状態が続くと、骨同士の接触が増え、軟骨の摩耗や痛み、変形が進行していきます。(文献1) リハビリでは、CM関節周囲筋を鍛えながら関節の支持性を補い、負担の軽減を図ります。 すり減った軟骨を元に戻すことはできませんが、関節の不安定性を抑え、症状をコントロールしやすくすることが目的です。 ただし、変形が進行している場合や安静時にも痛みが続く場合は、リハビリのみでは改善が難しいです。 その際は、治療方針を検討するために医療機関を受診しましょう。 自宅でできる母指CM関節症のリハビリ5選 母指CM関節症の痛みを緩和し、関節の安定化を目指すために、以下のリハビリ・エクササイズを無理のない範囲で試してみましょう。 母指内転筋ストレッチ 親指の外転・伸展ストレッチ 母指球(親指の付け根)のマッサージ 第一背側骨間筋のエクササイズ 母指対立筋のエクササイズ それぞれ具体的な手順を紹介します。 1.母指内転筋ストレッチ 母指内転筋は、親指を内側に引き寄せる働きをする筋肉です。この筋肉が硬くなると、CM関節への負担が増えやすくなります。 ストレッチの手順は、以下を参考にしてください。 痛みのある手のひらを上に向け、リラックスした状態で開く 反対の手を手の甲側から回し、親指の付け根(母指球)を軽く支えながら親指が閉じないように固定する 人差し指〜小指を、付け根から伸ばす 心地良い伸びを感じる位置で、10〜20秒キープ 力を抜いて元に戻す なお、痛みが強い場合は無理に伸ばさず、「心地よく伸びている」と感じる程度にストレッチしましょう。 2.親指の外転・伸展ストレッチ 親指を手の外側へ軽く引っ張る動作により、CM関節周辺の柔軟性を高めるストレッチです。 ストレッチの手順は、以下を参考にしてください。 手を机の上に置き、手のひらを横向きにする 親指を外側(手の甲側)へゆっくりと伸ばす 10秒ほど保持し、ゆっくり戻す 上記ストレッチは、朝起きたときや、手を使う作業の前後に行うと効果的です。 3.母指球(親指の付け根)のマッサージ 親指の付け根にある膨らみ(母指球)をほぐすと、周囲の筋肉の緊張が和らぎ、血流を促進します。 マッサージの手順は、以下を参考にしてください。 テニスボールや野球ボールをテーブルに置く 親指の付け根の膨らみ(母指球)をボールに当てる 手の力を抜いて、体重をかけずに優しく圧をかける 小さな円を描くように、ゆっくりとボールを転がす 1〜2分程度、心地良いと感じる範囲で続ける なお、マッサージを実施する際に痛みが強い場合は、深い圧をかけないでください。強く押しすぎると炎症を悪化させる恐れがあります。 4.第一背側骨間筋のエクササイズ 第一背側骨間筋は、人差し指を左右に動かす筋肉です。第一背側骨間筋のエクササイズは、親指のCM関節を直接動かす必要がないため、痛みが出にくく取り組みやすいのが特徴です。 エクササイズの手順は、以下を参考にしてください。 手を机の上に置き、手のひらを横向きにする 親指は動かさず、人差し指だけを天井方向へ持ち上げる ゆっくり下ろす 10〜15回繰り返す 上記エクササイズは、人差し指に輪ゴムをかけて軽い抵抗を加える方法も効果的です。 5.母指対立筋のエクササイズ 親指と他の指を合わせる動作で母指対立筋を鍛えると、CM関節の安定性が高まり、日常動作での負担軽減につながります。 エクササイズの手順は、以下を参考にしてください。 手を軽く開いた状態からスタートする 親指の先端と人差し指の先端を合わせ、軽く押し合う 2〜3秒キープし、離す 同様に、中指~小指と順番に合わせていく 各指3〜5回ずつ行う 上記エクササイズを行う際は、痛みを感じたら無理をせず、押し合う力を弱めてください。痛みと相談しながら、できる範囲で行いましょう。 母指CM関節症のリハビリを行う際の注意点 母指CM関節症のリハビリを行う際は、痛みを我慢しながら実施しないでください。 「痛いほど効いている」という考え方は適切ではありません。リハビリ中に強い痛みを感じたり、翌日まで痛みが残ったりする場合は、負荷が過剰になっている可能性があります。 そのようなときは無理をせず、一度中止して休息を取り、痛みが落ち着いてから負荷を下げて再開しましょう。 また、母指CM関節症のリハビリは、短期間で効果を実感できるものではありません。 1回に長時間行う必要はなく、毎日数分程度でも良いので、無理のない範囲で継続しましょう。歯磨きのように日常生活の中に組み込むと、負担なく続けやすくなります。 母指CM関節症がリハビリで改善しない場合の治療法 母指CM関節症は、リハビリを一定期間続けても十分な変化を感じられない場合があります。そのようなケースでは、病状の進行度に応じて、次の治療段階を検討する必要があるため、医療機関への受診が必要です。 リハビリ以降に検討される主な治療法は、以下を参考にしてください。 治療法 内容・特徴 注意点 保存療法(対症療法) ・ステロイド注射による炎症の抑制 ・サポーターやスプリントによる関節の固定 ・関節への負担軽減を目的とした治療 ・痛みの緩和が主な目的 ・関節の変形そのものを改善する治療ではない 手術療法 ・変形が進行した場合に検討される治療法 ・関節固定術、関節形成術などがある ・入院が必要になることが多い ・術後は手を使いにくい期間が生じる ・ダウンタイムが数週間〜数カ月に及ぶ場合がある (文献1) なお、リハビリで十分な改善がみられない場合でも、すぐに手術が必要になるとは限りません。 症状の程度や生活への影響、治療に対する希望を踏まえながら、医師と相談しつつ治療方針を検討しましょう。 以下の記事では、母指CM関節症の治療法について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 手術を伴わない治療法「再生医療」という選択肢 「保存療法では十分な変化を感じにくい一方で、手術については慎重に検討したい」と考える方は、手術をしない治療法として再生医療も選択肢の一つです。 母指CM関節症における再生医療では、主に以下のような治療法が実施されます。 幹細胞治療:患者様から採取した幹細胞を用いる治療法 PRP療法:患者様の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を用いる治療法 ※軟骨を新たに生成する治療ではありません これらの治療法は、幹細胞が持つ「他の細胞に変化する能力(分化能)」や、血小板に含まれる成長因子による「組織の修復・炎症を抑える働き」を活かしたものです。 患者様自身の細胞や血液を用いるため、拒否反応のリスクが少ないのが再生医療のメリットです。 当院「リペアセルクリニック」のCM関節症に対する再生医療については、以下の症例をご覧ください。 まとめ|軽度な母指CM関節症はリハビリで改善を目指そう 母指CM関節症は、早期に正しいリハビリを行えば、痛みをコントロールできる可能性があります。本記事で紹介したストレッチやエクササイズを、無理のない範囲で毎日続けてみてください。 ただし、2〜3カ月リハビリを続けても痛みが取れない場合は、医療機関への受診をおすすめします。 専門医に相談し、再生医療などの選択肢も含めて、ご自身に合った治療法を検討しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供や簡易オンライン診断を行っております。母指CM関節症による痛みでお悩みの方は、ぜひご登録ください。 母指CM関節症のリハビリに関するよくある質問 母指CM関節症は自分で治せる? 初期(ステージ1〜2)であれば、セルフケア(リハビリ・安静・装具)によって改善が期待できます。 ただし、一度すり減った軟骨が完全に元通りになる(完治する)わけではありません。 症状が落ち着いた後も、継続的なケアを行い、関節への負担を減らす生活習慣を心がけましょう。 リハビリを続けても治らない場合はどうすれば良い? 自己判断で漫然とリハビリを続けると、逆に関節を傷め、変形を進行させてしまうリスクがあります。 2〜3カ月続けても改善しない、あるいは痛みが増している場合は、リハビリの適応範囲を超えている可能性が高いです。 そのような場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 母指CM関節症(親指の付け根の関節の変形性関節症)|日本整形外科学会
2025.12.31 -
- CM関節症
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「痛みでペットボトルの蓋が開けられない」「親指の付け根がズキズキ痛む」このような症状に悩んでいませんか。 CM関節症は、「手の使いすぎ」だけが原因ではありません。親指特有の構造や、加齢に伴うホルモンバランスの変化が深く関係しています。 本記事では、CM関節症の発症原因や、なりやすい人の特徴から治療法までをわかりやすく解説します。 ご自身の症状レベルを把握し、痛みのない生活を取り戻すためのヒントとしてお役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 CM関節症について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 CM関節症が発症する3つの主な原因 CM関節症は、一つの要因だけで発症するわけではありません。以下3つの要素が複合的に重なることで症状が現れます。 関節軟骨の摩耗 親指特有の構造的弱点 加齢と女性ホルモンの減少による関節の緩み ここでは、それぞれ詳しく解説します。 1.関節軟骨の摩耗 CM関節症の痛みは、骨から生じるトゲのような突起(骨棘:こつきょく)が神経を刺激することで起こります。 人間の関節には、クッションの役割を果たす「軟骨」が存在しますが、長年の使用による摩擦で徐々にすり減っていきます。 加齢などで軟骨がすり減ると、骨同士が接触しやすくなります。体はこの負荷に対応しようとして骨の端に骨棘を形成します。(文献1) 結果的に骨棘が神経を刺激し、CM関節症を発症してしまいます。 2.親指特有の構造的弱点 CM関節は「鞍状関節(あんじょうかんせつ)」と呼ばれる、馬の鞍のような形状をしています。この構造により、親指は広い可動域を持ち、物をつまむ・握るといった繊細な動作が可能になっているのです。 しかし、よく動く反面、構造的には不安定で脱臼しやすい弱点があります。 また、指先にかかる力の約10倍もの負荷が鞍状関節に集中するため、日常的な動作の繰り返しによって損傷しやすく、CM関節症を発症しやすいのです。 3.加齢と女性ホルモンの減少による関節の緩み CM関節症は、40代以降の女性に多く発症する傾向にあります。その最大の要因は、エストロゲン(女性ホルモン)の減少です。 エストロゲンには、関節内の滑膜(かつまく)の炎症を抑えたり、軟骨を保護したりする働きがあります。 更年期を迎えてエストロゲンが急激に減少すると、関節を守るバリア機能が低下してしまいます。その結果、滑膜に炎症が起きやすくなり、CM関節症を発症しやすくなるのです。(文献2) CM関節症になりやすい人の特徴 CM関節症は、年齢や生活習慣、過去の怪我などが関係し、特定の条件を持つ方に発症しやすい傾向があります。 具体的な特徴は、以下のとおりです。 特徴 理由・背景 50代以上の女性 更年期に伴うエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下により、関節を保護する働きが弱まり、関節の炎症や軟骨の摩耗が進みやすくなると考えられている 手を酷使する職業・趣味を持つ人 調理師や美容師、マッサージ師など、日常的に親指を使う動作が多い職業や、園芸・手芸・楽器演奏などの趣味では、CM関節への負担が蓄積しやすい 過去に親指周辺を怪我したことがある人 骨折や脱臼、靱帯損傷など、過去に親指周辺を怪我した経験がある人は、関節の安定性が低下し、軟骨や靱帯への負担が残ることで関節の変性が進みやすくなる可能性がある なお、これらの特徴に当てはまる場合でも、必ずしもCM関節症を発症するわけではありません。ただし、親指の付け根に違和感や痛みを感じた際は、早めに医療機関を受診しましょう。 CM関節症の具体的な症状 CM関節症の症状は、進行度によってステージが分かれています。 ステージ1~2(初期~中期) ステージ3~4(進行期~末期) ここでは、各ステージの特徴を解説します。 ステージ1~2(初期~中期) CM関節症のステージ1~2は、発症初期から中期にあたる段階で、関節の変形がまだ目立たない状態を指します。 初期から中期にかけての主な症状は、以下のとおりです。 ビンの蓋を開ける、ドアノブを回すなどの「動作時痛」が中心 つまむ動作で親指の付け根に違和感や痛みを感じる 朝起きたときに手がこわばる 発症初期から中期の段階では、レントゲン上で関節の隙間が残っているか、わずかに狭くなっている程度です。そのため「腱鞘炎だろう」と自己判断して放置する方も少なくありません。 しかし、初期の段階で適切な治療を開始すれば、変形の進行を食い止めやすくなります。親指の付け根に違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診しましょう。 ステージ3~4(進行期~末期) CM関節症のステージ3~4は、進行期から末期にあたる段階で、関節の変形がはっきりと現れてくる状態を指します。 この段階では、関節の構造そのものに変化が生じ、痛みや動作の制限が強くなる傾向があります。 進行期から末期にかけて見られる主な症状は、以下のとおりです。 親指の付け根が外側に出っ張るように変形し(亜脱臼)、親指を開きにくくなる 動かしていないときでも痛みを感じる「安静時痛」や、夜間に痛みが強くなる「夜間痛」が現れる 親指に力が入りにくくなり、握力が低下する 進行期から末期になると、軟骨がほぼ消失して骨同士が直接ぶつかり、関節の変形が進行した状態となります。 症状が進行する前に、医療機関を受診しましょう。 CM関節症の3つの治療法 CM関節症の治療法には、症状の程度や患者様の希望に応じて、以下のような選択肢があります。 保存療法(対症療法) 手術療法 再生医療 それぞれ詳しく解説します。 保存療法(対症療法) 保存療法は、症状を緩和するための治療です。具体的には以下の治療法が実施されます。 サポーターや装具による関節の固定 痛み止め(内服薬・湿布)の使用 ステロイド注射による炎症の抑制 なお、これらはあくまで症状を和らげるための対症療法です。すり減った軟骨そのものを元の状態に戻したり、ホルモンバランスの変化に直接働きかけたりするものではありません。 一時的に痛みが軽減しても、原因そのものが解消されるわけではない点を理解しておきましょう。(文献1) 以下の記事では、CM関節症のリハビリ方法を詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 手術療法 保存療法で改善が見られない場合や、変形が進行している場合には、手術が検討されます。 代表的な手術療法は以下のとおりです。 関節固定術:関節を固定して安定させる手術 切除関節形成術:大菱形骨の一部を切除し、靱帯を再建する手術 (文献1) 手術療法には入院が必要となり、術後の固定期間やリハビリ期間(ダウンタイム)が長くなる傾向にあります。 仕事や家事への復帰に時間がかかる点は、事前に考慮しておきましょう。 再生医療 CM関節症は、手術療法以外の選択肢の一つとして、再生医療が検討されることがあります。 CM関節症における再生医療では、主に以下のような治療法が実施されます。 幹細胞治療:患者様から採取した幹細胞を用いる治療法 PRP療法:患者様の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を用いる治療法 ※軟骨を新たに生成する治療ではありません これらの治療法は、幹細胞が持つ「他の細胞に変化する能力(分化能)」や、血小板に含まれる成長因子による「組織の修復・炎症を抑える働き」を活かしたものです。 再生医療は入院・手術を必要としないのも特徴です。 当院「リペアセルクリニック」のCM関節症に対する再生医療については、以下の症例をご覧ください。 まとめ|CM関節症の原因や症状を把握して適切な治療法を選ぼう CM関節症は「ホルモンの減少」や「構造的弱点」が原因であり、放置して自然に治る疾患ではありません。 ステージが進行し、骨が変形してしまう前に、適切な治療を行いましょう。 また、万が一症状が悪化した際は、手術以外の治療法として再生医療も選択肢の一つです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供や簡易オンライン診断を行っております。CM関節症による痛みでお悩みの方は、ぜひご登録ください。 CM関節症の原因や症状に関するよくある質問 CM関節症に効果的なストレッチ方法はある? CM関節症に対しては、母指内転筋のストレッチなどが役立つとされています。 ただし、ストレッチをやりすぎるとかえって負担になる場合があるため、痛みの出ない範囲で無理なく行いましょう。 具体的なストレッチ方法や実施時の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 CM関節症はどれくらいで治る? CM関節症を発症した場合、すり減った軟骨が自然に再生することはなく、放置していても治ることはありません。 ただし、適切な治療を行えば、数カ月で炎症が沈静化し、痛みのない生活を取り戻すことは十分に可能です。 症状が軽いうちに治療を開始すると、良好な経過が見込めます。 参考文献 (文献1) 母指CM関節症(親指の付け根の関節の変形性関節症)|日本整形外科学会 (文献2) Hand osteoarthritis, menopause and menopausal hormone therapy.|Maturitas
2025.12.31 -
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「親指の付け根がズキッと痛む」「ビンのふたが開けづらい」といった違和感を感じていませんか? それは、母指CM関節症の初期症状かもしれません。 更年期以降の女性に多く見られ、放置すると関節の変形や日常生活への支障につながる恐れがあるため注意が必要です。 本記事では、母指CM関節症の症状や原因、治療法、セルフケアを詳しく解説するので参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな関節痛の治療にも用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。気になる症状があれば、ぜひご活用ください。 母指CM関節症は何もしない自然治癒は期待できない 母指CM関節症は、親指の付け根にある関節がすり減ってしまう「変形性関節症」の一種です。 関節の軟骨が少しずつ摩耗していく状態であり、放っておいても自然に回復することは期待できません。 逆に、何もしないまま放置しておくと、関節の変形や痛みが進んでしまうリスクがあるため要注意です。 ただし、症状がまだ軽いうちであれば、関節を安静に保つことで痛みを軽減できる可能性があります。 早めに負担を減らすことができれば、日常生活への影響を小さく抑えることも可能です。 母指CM関節症の治療法 ここでは、治療法の特徴や効果が出るまでの期間、放置による悪化のリスクについて解説します。 保存的治療 母指CM関節症の治療の基本は、関節への負担を軽くする「保存的治療」です。 親指の付け根をできるだけ動かさずに、休ませます。 親指を支えるサポーターや専用器具で関節を固定し、1日中着けたままの状態で2〜3か月続ける処置が一般的です。 症状が軽い段階であれば、湿布や塗り薬といった外用薬や消炎鎮痛剤の内服を併用する場合もあります。 また、患部を温めて血行を良くすることも、補助的な治療として有効です。 ステロイド注射 痛みや腫れが強く、仕事や家事に大きな支障が出ている場合には「ステロイド注射」が治療の選択肢になります。 関節内にステロイド薬を直接注入し、炎症や腫れ、強い痛みを一時的に抑えることが目的です。 通常、数日から1〜2週間ほどで痛みを和らげる効果が現れます。 ただし、効果は永続的ではなく、時間とともに薄れていく点に留意しておきましょう。 また、短期間に繰り返し注射を行うと、関節軟骨にダメージを与える可能性があり、合併症を引き起こすリスクもあります。 あくまでも痛みを一時的に和らげる補助的な治療であり、基本となる保存療法と組み合わせて行うことが重要です。 外科手術 保存療法やステロイド注射を続けても痛みが改善せず、関節に亜脱臼や「白鳥の首変形(スワンネック変形)」と呼ばれる高度な変形が現れている場合には、手術が選択肢になります。 手術には、大きく分けて以下の2つの方法があります。 切除関節形成術:親指の関節を構成する大菱形骨(だいりょうけいこつ)の一部またはすべてを取り除き、周囲の靱帯を再建する方法 関節固定術:関節の表面を削って固定し、動かないようにする方法。 手術後は数週間のギプス固定を行い、その後リハビリをスタートし、術後およそ3か月を目安に握力を必要とする動作の回復を目指します。 母指CM関節症はどれくらいで治るのか 母指CM関節症の治療期間は、症状の進み具合や選択する治療方法によって大きく異なります。 保存的治療の場合、一般的に数週間から数か月ほどで痛みや腫れが落ち着くケースが多いとされています。 一方、関節内へのステロイド注射は数日から1〜2週間ほどで痛みが和らぐことが多いですが、効果が長期間持続するわけではない点に注意が必要です。 手術を受けた場合は数週間のギプス固定後、さらに数週間から数か月のリハビリが必要になります。 日常生活で手を問題なく使えるようになるまでには、手術後おおよそ3か月が目安です。 ただし、関節がしっかりと安定した状態まで回復するには、半年以上かかるケースもあります。 放置するとどうなるのか 母指CM関節症を「そのうち自然に良くなるだろう」と放置してしまうと、症状が徐々に悪化していくリスクがあります。 はじめは、親指の付け根にだるさや鈍い痛みを感じる程度です。 しかし、軟骨のすり減りが進行すると、ズキッとするような鋭い痛みに変わり、関節の周囲が腫れて膨らんでくるケースがあるのです。 さらに進行すると、親指の第1関節が曲がり、第2関節が過度に反る「白鳥の首変形(スワンネック変形)」や、関節がずれてしまう「亜脱臼」が起こる場合があります。 物をつまむ・握るといった動作が困難になるなど、日常生活にも大きな支障が出てしまう恐れがあるため、早い段階で治療を始めることが進行を防ぐ上で重要です。 母指CM関節症のステージ別症状 母指CM関節症の初期の症状としては、ビンやペットボトルのふたを開ける、タオルを絞るといった動作で、親指の付け根に痛みを感じることから始まります。 とくに、更年期の女性に多いのが特徴です。 病気が進行すると、次のような症状が現れます。 関節の腫れや熱っぽさ 指の不安定な感覚 「くの字」に曲がるような変形 動かせる範囲が狭くなる可動域の制限 握力やつまみ力の低下 以下のように、進行の程度を表すステージによって、症状の現れ方が異なります。 ステージ1 ステージ1は、レントゲン検査をしても大きな異常は見られない初期の段階です。 フタを開ける・タオルを絞るなど、強くつまむ・握る動作をしたときに痛みが出やすく、親指の付け根に違和感や痛みが現れはじめます。 痛みは一時的で、手を休めると自然におさまることが多く、関節の腫れや変形もほとんど見られません。 まだ外見には大きな変化がないため、見過ごされやすい時期でもあります。 ステージ2 ステージ2になると、レントゲン上で関節のすき間が狭くなり、軟骨のすり減りが明確に確認できるようになるのが特徴です。 つまむ・握るといった動作をした際の痛みが強まり、関節のまわりに軽い腫れや熱っぽさを感じることもあります。 痛みの頻度が増えてきますが、外から見てわかるような大きな変形はまだ見られません。 症状は徐々に進行しますが、適切な対処を行えば、日常生活を大きく妨げる前に痛みをコントロールすることも可能です。 ステージ3 ステージ3に進行すると、親指の付け根の関節に明らかな変形が現れ、「くの字変形」と呼ばれる独特の外見が目立つようになります。 関節の安定性が失われて不安定感が強くなるほか、腫れや熱感に加えて、動かせる範囲が狭まり、握力やつまみ力の低下がはっきりしてくるのが特徴です。 ビンのふたを開ける、硬いものをつまむといった動作が難しくなり、日常生活にも大きな支障をきたします。 レントゲン検査では、関節がずれかかっている「亜脱臼」に近い状態が確認される場合もあります。 ステージ4 ステージ4に進行すると母指CM関節だけでなく、その周囲の関節にも変化が広がるのが特徴です。 関節の変形や不安定性はさらに深刻になり、強い痛みに加えて、物をつまむ・握るといった基本的な動作が大きく制限されるようになります。 握力やつまみ力の低下も顕著で、ボタンを留める、袋を開けるといった日常の動作すら困難になる場合も少なくありません。 保存的治療だけで症状を改善することは難しく、多くのケースで手術による治療が選択肢になります。 母指CM関節症の主な原因 母指CM関節症は、ひとつの原因だけではなく、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。 主な原因の背景を知り、発症や進行を予防するための工夫につなげていきましょう。 加齢による関節軟骨の摩耗 母指CM関節症の根本的な原因のひとつに、加齢による関節軟骨のすり減りがあります。 親指の付け根の関節は、物をつまむ・ひねるといった動作で日常的に大きな負担がかかりやすく、年齢を重ねるとともに軟骨が摩耗しやすくなるのです。 軟骨が薄くなると骨同士のすき間が狭くなり、動かすたびに関節にかかる圧力が集中し、炎症や痛み、関節の変形が進行しやすくなります。 親指への過剰な負担 親指の使い過ぎは、母指CM関節症の大きな原因のひとつです。 たとえば、ペットボトルのふたを開ける、タオルを絞る、細かい作業を繰り返す仕事をしているといった日常動作は、親指の付け根に常に負担がかかっています。 手を頻繁に使う方ほど発症リスクが高くなるため、日常の負担を意識的に軽減することが重要です。 更年期の女性ホルモンの変化 母指CM関節症は、女性ホルモンの変化が関係しているとされており、更年期以降の女性に多く見られます。 女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには、関節や軟骨の健康を保つ役割がありますが、閉経の前後に分泌が減少すると関節の変性(軟骨のすり減りや変形)が進みやすくなると考えられています。 さらに、更年期の時期は家事や育児、仕事などで手を使う機会が多く、親指の関節にかかる負担が重なりやすい点も見逃せません。 母指CM関節症の予防法 母指CM関節症は、早い段階で負担を減らし、関節を守るセルフケアを続けることが大切です。 ここでは、日常生活の中で取り入れやすい予防・悪化防止のポイントをご紹介します。 自覚症状が出たらサポーターなどで保護・固定する 親指の付け根に痛みや違和感を感じ始めたら、できるだけ早い段階でサポーターやテーピングを使って母指CM関節を保護・固定しましょう。 関節を固定すると余計な動きを抑えられ、関節を安静に保てます。 長期的に症状をコントロールするには、初期の段階での適切な対処が重要です。 大豆製品をバランスよく食べる 母指CM関節症の予防には、日々の食事に大豆製品を取り入れると良いとされています。 豆腐、納豆、煮豆、みそなどに含まれる「大豆イソフラボン」は、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」に似た働きを持っているのです。 エストロゲンは、関節や軟骨の健康を保つうえで重要な役割を果たしており、大豆イソフラボンをバランスよく摂取することで、関節の炎症を抑える効果が期待できます。 ただし、大豆イソフラボンの効果には個人差があります。サプリメントでの過剰摂取は避け、食品から摂取しましょう。 母指内転筋のストレッチ 母指CM関節症の予防には、親指を閉じる筋肉(母指内転筋)のストレッチが有効です。 1.両手のひらを上に向け、手首を体の前で交差させる 2.症状の出ている親指の付け根の筋肉に、反対側の手の指を添える 3.親指の付け根を外側へと開くように伸ばす 親指の付け根の筋肉が伸びていることを意識しながら行うのがポイントです。 母指対立筋のエクササイズ 母指CM関節症の予防には、母指の対立運動を行う筋肉(母指対立筋)のエクササイズも効果的です。 1.手を開いて、親指と人差し指の先端同士を触れ合わせる 2.小さな粒を摘まむくらいの力を入れながら、10秒そのまま保持する 3.親指と中指、親指と薬指、親指と小指も同様に行う 4.反対側の手も同様に行う ただし、痛みが強いという場合には無理をせず、安静を保ってください。 まとめ|母指CM関節症は早期に対処すれば改善できる 母指CM関節症は、早期に発見して適切な治療や生活上の工夫を行えば、進行を防ぎながら症状の改善を目指せます。 違和感や痛みを放置せず、早めに整形外科を受診して診断を受けましょう。 正しい知識と予防対策を実践し、無理のない範囲で親指をいたわることが、健康な手の機能を長く保つ鍵となります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな関節痛の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しておりますので、ぜひご利用ください。 母指CM関節症に関するよくある質問 仕事を休んだり、辞めたりする必要はある? 母指CM関節症を発症しても、仕事を完全に休んだり辞めたりする必要はありません。 職種や日々の作業内容によって対応は異なりますが、作業時間を調整したり、道具の持ち方や使い方を工夫したりなどにより、関節への負担を減らしながら仕事を続けられるケースが多くあります。 無理をせず、適切なケアを取り入れることで、治療と仕事の両立は十分に可能です。 母指CM関節症のセルフケアチェック方法を知りたい 母指CM関節症かどうかは、以下のセルフチェックで確認できます。 ペットボトルやビンのふたを開けるときに親指の付け根が痛む ドアノブを回すときに痛みが出る タオルを絞るときに痛みを感じる 親指の付け根が腫れている 字を書くときに親指に痛みがある 親指が動かしにくい、または変形している これらの症状が続いている場合、母指CM関節症の可能性があります。 母指CM関節症でやってはいけないことは? 母指CM関節症は、親指に過度な負担がかかる動作を続けると、症状が悪化しやすくなります。 痛みや変形を防ぐためには、以下のような行動を避けましょう。 重い物を片手だけで持ち上げる 親指を使って強くひねる、つまむ動作を繰り返す 痛みを我慢して同じ作業を続ける これらの動作を無理に続けると、関節の炎症や変形が進行するリスクが高まります。 親指に違和感や痛みを感じた段階で、早めに作業内容を見直すことが重要です。
2025.12.31 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「視野が欠けるまたは狭くなる原因は?」 「どのような見え方の種類があるのかを知りたい」 「視野が欠ける」症状を視野欠損と言い、脳や網膜などがなんらかの原因で障害されると引き起こされます。視野欠損が起きる原因には、脳梗塞や脳出血などの病気が隠れているおそれがあるため放置してはいけません。 本記事では視野欠損に関する以下のことを解説します。 起きる原因 実際の見え方の種類 引き起こす病気 回復させる方法 視野欠損を引き起こす病気には、緩やかに進行するものから、数時間で急激に進行するものがあります。視野欠損を引き起こす病気の理解を深めるために本記事を参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな病気の治療に応用されている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEをご利用ください。 視野欠損とは視野が欠ける症状のこと 視野欠損とは、見える範囲(視野)の一部が欠ける症状のことです。 視野欠損は大別すると以下のように分けられます。 種類 見え方 視野狭窄 視野の一部または全体が狭くなる 暗点 視野の中に見えない部分がある 半盲 視野の右半分または左半分が見えなくなる そのほかにも、視野がぼやけたり、カーテンがかかったように見えたりとさまざまな見え方があります。これらの症状は病気により現れ方が異なります。 視野欠損が起きる原因 視野欠損が起きる原因は多岐にわたります。 例えば、以下のような部位が障害されることで視野欠損が引き起こされます。 部位 障害されると視野欠損が起きる部位 後頭葉 ・視覚の機能に関わる脳の一部 ・脳卒中や脳腫瘍などが原因となる 網膜 ・眼球の内側にある神経の膜で光を感じ取る役割を持つ ・網膜が剥がれたり、網膜の血管が詰まったりすることが原因となる 黄斑 ・網膜の中心部分で神経繊維が密集しており、ものを見るときに最も重要な部位 ・加齢や打撲などによって痛んでしまうことが原因となる 原因によって治療方法や緊急性が異なるため、専門医による正確な診断と適切な治療が重要です。 視野欠損が起きた際の見え方の種類 視野欠損が起きた際の見え方には、以下のような種類があります。 種類 見え方 同名半盲 (どうめいはんもう) 両目ともまたは片眼どちらかの視野半分が欠損する 水平性視野欠損 視野のすべてもしくは上半分、下半分、一部が欠損する 両耳側半盲 両目の視野の外側半分すべてまたは一部が欠損する 両鼻側視野欠損 両目の視野の内側半分すべてまたは一部が欠損する 弓状暗点 視野の中に弓のような形をした暗点が現れる 中心暗点 視野の中心が黒っぽく見えなくなる 閃輝暗点 (せんきあんてん) 視野の一部にギザギザした光の波が現れ一部が見えにくくなる これらの症状は、危険な病気を示す場合もあります。自己判断はしないで医療機関の受診を推奨します。 緊急性が高い視野欠損を引き起こす病気 緊急性が高い視野欠損を引き起こす病気には、以下のようなものがあります。 病名 起こりうる視野障害 脳卒中(脳梗塞・脳出血) 同名半盲、四分盲 網膜中心動脈閉塞症 (もうまくちゅうしんどうみゃくへいそくしょう) 突然の急激な視力低下、視野の一部欠損 閉塞隅角緑内障 (へいそくぐうかくりょくないしょう) 急激な視野狭窄 裂孔原性網膜剥離 (れっこうげんせいもうまくはくり) カーテンをかぶせられたような視野の一部欠損 それぞれの病気について詳しく解説します。 脳卒中(脳梗塞・脳出血) 脳卒中は、脳の重要な血管が詰まったり破れたりする病気です。高血圧や糖尿病、脂質異常症などによる動脈硬化によって、引き起こされることが多いです。 脳卒中では、後遺症として同名半盲や視野が4分の1欠損する四分盲が現れることがあります。 また、他にも以下のようなさまざまな後遺症が現れるおそれがあります。 片側の手足の麻痺やしびれ 呂律がまわらない 他人の言うことが理解できない 立位や歩行のバランスがとれない また、これらは後遺症としてではなく、発症した際の症状としても現れることがあります。後遺症の程度は発症してからどれくらい経過したかによって変わります。疑われる症状が現れている場合は、速やかに救急車を要請してください。 脳卒中の後遺症に対する再生医療 脳卒中の後遺症の治療や再発予防の選択肢に再生医療があります。再生医療とは、人が本来持つ再生能力を活用した治療方法です。 例えば、以下のような後遺症が治療の対象です。 手足のしびれや麻痺 歩行や立位のバランス感覚の低下 関節や筋肉の痛み 言語能力や飲み込む力の低下 排泄に関する障害 当院「リペアセルクリニック」で行っている、脳卒中の後遺症に対する再生医療については以下の症例をご覧ください。 網膜中心動脈閉塞症 網膜中心動脈閉塞症とは、血栓(けっせん:血の塊)や塞栓(そくせん:脂肪などの異物)により網膜の血管が詰まり、突然急激な視力低下が起きる病気です。多くは片眼だけですが、まれに両目に起きることもあります。視野の一部だけが欠けることもあります。 血栓や塞栓ができる原因は、高血圧や糖尿病、動脈硬化、脳血管障害などです。ほかにも、手術やカテーテル検査により発生するケースもあります。 この病気は、発症から24時間以内(1〜2時間以内が望ましい)に血管を広げる治療などをしなければなりません。(文献1)突然の視力低下や視野欠損が起きた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作) 閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作)とは、眼圧が急激に上昇する緑内障のことです。 発作が起きた際は以下のような症状が現れます。 激しい眼の痛み 眼の充血 眼のかすみ 頭痛 吐き気 この状態が続くと急激に視野狭窄が進行します。閉塞隅角の状態にある方は、急性発作を予防する治療を受けることが重要です。治療方法にはレーザーによる手術や白内障手術などの選択肢があります。医師に十分な相談をして検討してください。 裂孔原性網膜剥離 裂孔原性網膜剥離とは、網膜に孔(あな)が開き、眼の中にある水分がその孔に入り込んで網膜が剥がれる病気です。網膜剥離の中でも最も多く見られる種類です。進行すると、カーテンをかぶせられたように視野の一部が欠ける症状が現れます。 また、視野欠損の症状が起きる前触れとして、以下のような症状が現れることもあります。 前触れとなる症状 詳細 飛蚊症(ひぶんしょう) 視野の中に小さな糸くず状やゴマ状のようなものが見える 光視症 光源がないにも関わらず視野の中にチカチカと閃光のようなものが見える これらの症状は現れないこともあります。網膜剥離は放置すると失明するおそれがあります。疑われる症状が現れている際は、速やかに医療機関を受診して適切な治療を受けてください。 継続治療が必要な視野欠損を引き起こす病気 継続治療が必要な視野欠損を引き起こす病気には、以下のようなものがあります。 病名 起こりうる視野障害 緑内障 視野狭窄 糖尿病網膜症 視野狭窄、視力低下 網膜色素変性症 夜盲、視野狭窄、視力低下 加齢黄斑変性 中心暗点、視力低下 それぞれの病気について詳しく解説します。 緑内障 緑内障とは、眼圧上昇により眼から脳へ視覚情報を伝える神経線維が障害されて、視野が徐々に狭くなる病気です。緑内障にはいくつか種類があり、最も多いのが開放隅角緑内障です。原因ははっきりしていませんが、加齢や遺伝、免疫などさまざまなことが関与していると考えられています。 症状の進行が非常にゆっくりであるため、その変化に気づかないことが多いです。ある程度進行して視野欠損が広がると、自覚できます。初期段階に視野検査を行うと視野欠損を発見できます。 眼圧の上昇で障害された神経線維は回復しません。基本治療となる眼圧を下げる点眼などを早期から始めることが重要です。 糖尿病網膜症 糖尿病網膜症は、高血糖により網膜の細かい血管が障害される病気です。高血糖状態は、血液の流れが悪くなってしまい、とくに網膜のような細かい血管は影響を受けやすいです。進行すると視野狭窄や視力低下が起きてしまいます。 糖尿病網膜症はかなり進行しても自覚症状がほとんど現れません。明らかな視野狭窄や視力低下が起こるころには、重度の状態になっているケースがあります。糖尿病の方は、定期的に眼の検査を受けることが推奨されます。 網膜色素変性症 網膜色素変性症とは、網膜に異常が見られる遺伝性の病気です。 進行すると以下のような順番で症状が現れる傾向があります。 暗いところが見えにくい「夜盲」が初めに現れる 視野狭窄が現れる 視力低下を自覚するようになる この病気の進行は非常にゆっくりで、数年から数十年かけて進行します。ただし、個人差があり症状の出る順番も人により異なります。根本的な治療方法なく、症状を遅らせる薬物療法は行われていますが、十分な効果は証明されていません。 加齢黄斑変性 加齢黄斑変性とは、物を正面からはっきり見るために重要な「黄斑」という部分が、年齢とともに障害される目の病気です。原因は老化や喫煙、遺伝、生活習慣などが関連しています。 進行すると以下のような症状が現れます。 中心暗点 視力低下 色覚異常(色が識別できなくなる) 中心がゆがんで見えることもあります。この病気には萎縮型と滲出型があり、萎縮型には明確な治療方法はありません。 滲出型であれば、視力が正常に戻ることは難しいですが、薬物療法やレーザー凝固療法などいくつかの治療方法があります。加齢黄斑変性は早期発見が重要です。疑われる症状が現れていたら早期に医療機関を受診してください。 視野欠損を回復させる方法 視野欠損を引き起こす病気は、病気それぞれによって治療方法は異なり、回復の可能性も変わります。いずれにしても、早期に発見して適切な治療を受けることが重要です。 緑内障や糖尿病網膜症、網膜色素変性症などでは、視野欠損に気づきにくいことがあります。「物によくぶつかるようになった」「車の運転で急な飛び出しに気づきにくくなった」などは、視野の一部が欠けている徴候の可能性もあります。 まとめ|視野欠損が起きたら医療機関を受診しよう 視野欠損はさまざまな原因で起こり、緊急性の高いものから徐々に進行するものまであります。突然の視野欠損や視力低下、目の痛み、頭痛などを伴う場合は、脳卒中や網膜中心動脈閉塞症、閉塞隅角緑内障などのおそれもあるため、速やかに医療機関を受診してください。 また、緩やかに進行する病気が原因の場合は、視野欠損に気づかない場合もあります。視力低下や視野狭窄を自覚したころには、重度となっているおそれもあります。 「物によくぶつかるようになった」「車の運転で急な飛び出しに気づきにくくなった」などは、自覚のない視野欠損が起きている可能性もあります。とくになんらかの生活習慣病を持っている方は注意してください。 視野欠損の原因の一つである脳卒中の予防や後遺症に対する再生医療に関しては以下を参考にしてください。 視野欠損に関するよくある質問 Q.一時的なストレスにより視野が欠けることはある? 強い心理的ストレスにより、一時的に視覚障害が現れる心因性視覚障害というものがあります。主に7〜12歳の女児に多い病気です。大人もまれに起きるといわれています。視力低下や視覚異常が現れることがあります。 Q.視野が欠けて一時的に灰色に見える症状は? 片眼の血管が血栓などにより詰まり発症する一過性黒内障のおそれがあります。重度の動脈硬化が原因です。 発症すると以下のような症状が片眼に現れます。 灰色の幕が徐々に降りてきて幕は黒色に近づいていく 視野が徐々に狭窄していく 血栓が自然に溶けると症状は改善します。しかし、一過性黒内障は脳梗塞の前触れともいわれています。症状が現れた際は医療機関を受診してください。 Q.視野欠損していても運転免許は更新できる? 運転免許の更新には視力と視野の基準があります。例えば、普通免許の場合は「片方の視力が0.3に達しない場合は、もう片方の視力が0.7以上かつ視野が左右150度以上必要」とあります。(文献2)詳細は警察庁ホームページを確認してください。 参考文献 (文献1) 網膜中心動脈閉塞症とは|千葉大学大学院医学研究院眼科学 (文献2) 適性試験の合格基準|警視庁
2025.12.31 -
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「糖尿病網膜症で治療を受けているけれど、最近目のかすみや見えづらさを感じるようになった」 「網膜症が悪化しているかもしれない」 「糖尿病網膜症の場合、失明率はどのくらいなのだろう」 糖尿病網膜症と診断されている方の中には、失明を心配されている方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症の方が失明する確率は、網膜症の進行度合いによって異なります。早期の段階で治療を進めた場合は失明リスクが低く、治療が遅れた場合はリスクが高くなると知っておきましょう。 本記事では、糖尿病網膜症の失明率や失明を予防するために必要な治療と行動について解説します。失明の不安解消のためにも、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病網膜症の原因である糖尿病に関しては、再生医療による治療も選択肢の1つです。 糖尿病治療や再生医療に関して詳しく知りたい方は、ぜひ電話相談をご利用ください。 糖尿病網膜症による失明率 この章では、日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率および、糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由を解説します。 日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率 日本における糖尿病網膜症の有病率は、糖尿病患者の15%~23%とされています。これは、日本で行われている「舟形町研究」と「久山町研究」のデータから出された数字です。(文献1) 一方で、糖尿病網膜症で失明する方は網膜症患者の一部です。進行した糖尿病網膜症で失明する方や、失明の危険がある方は全糖尿病患者の20%程度と推定されています。(文献2) 糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由 糖尿病網膜症は、中途失明の主要原因の1つです。2019年度は、視覚障害の原因疾患で第3位でした。1位は緑内障で、2位は網膜色素変性症です。(文献3) 1989年には糖尿病網膜症が失明原因の第1位になっています。(文献2) 糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由は、「自覚症状が出てきた時点ですでに進行している」点です。 糖尿病網膜症の初期は自覚症状が乏しく、異変に気づいたときにはすでに進行しているケースが多いとされています。症状が現れた段階ですぐに治療を始めた場合は、視力を保てる可能性があります。しかし、症状を放置して治療を遅らせてしまうと、重症化しやすく、中途失明にもつながるのです。 糖尿病網膜症進行度と失明リスクの関係 糖尿病網膜症の進行度合いは大きく分けると以下の3段階です。 単純網膜症 前増殖性糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症 進行するスピードには個人差があり、血糖コントロールが良好な方は進みが遅いといわれています。また、40代から50代といった比較的若い方は進行が速いとされています。(文献2) 単純網膜症の場合 糖尿病網膜症の初期です。網膜にある毛細血管に小さな出血や血管瘤(けっかんりゅう)、硬性白斑(こうせいはくはん)と呼ばれる症状が見られます。 多くの場合は自覚症状がなく、視力低下もほとんど見られません。この段階では、失明リスクは低いとされています。しかし放置すると進行してしまい、失明リスクが高くなります。 前増殖性糖尿病網膜症の場合 単純網膜症より進行している段階であり、網膜血管の閉塞や酸素不足が目立ち始める時期です。眼の中では、酸素不足を補うための新生血管を作る準備が始まっています。 軟性白斑(なんせいはくはん)と呼ばれるシミが生じたり、静脈が膨れ上がったりするなどの症状が出現する時期です。 この段階では、まだ視力が保たれている場合が多いとされています。しかし、ものを見る中心部である黄斑(おうはん)にむくみが生じると、眼に関する自覚症状が出ることもあります。 増殖糖尿病網膜症の場合 糖尿病網膜症がさらに進行した重症の段階であり、失明リスクが最も高い時期です。 酸素不足を補うための新生血管が作られ、網膜や硝子体に伸びていきます。しかし、新生血管はもろくて破れやすいため、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)を起こす場合もあります。その結果、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が現れます。飛蚊症を発症すると、視野に黒い影やゴミのようなものが見えてきます。 さらに増殖組織と呼ばれる繊維状の膜が形成され、網膜を引っ張ることで網膜剥離を生じることも多い状況です。 糖尿病網膜症による失明率が治療により変化する可能性 糖尿病網膜症による失明率は、治療により変化する可能性があります。 この章では、視力回復が期待できるケースと回復が難しいケースに分けて紹介します。 視力回復が期待できるケース 網膜の損傷が軽度な段階では、視力回復も期待できるケースも少なくありません。軽度な段階とは、以下に示したような状況です。 網膜内の出血が少ない 網膜剥離が見られない 黄斑浮腫がない、もしくは軽い 視力の維持や回復のためにも、早期発見および早期治療が大切です。 回復が難しいケース すでに網膜が大きく損傷している場合は回復が難しいといえます。例をあげると、多量の硝子体出血が見られる、牽引性の網膜剥離が発生しているなどです。 糖尿病網膜症が進行した場合、視細胞や視神経も変性されているケースも少なくありません。そのため手術を行っても、日常生活に必要な視力への回復は難しいといえます。 糖尿病網膜症が失明につながる理由 糖尿病網膜症が失明につながる理由は、主に以下のような症状です。 新生血管 黄斑浮腫 硝子体出血 牽引性網膜剥離 詳細を表に示しました。 症状 詳細 新生血管 網膜の血管閉塞による網膜内の酸素不足を補うための血管 網膜や硝子体と呼ばれる部分に発生する 非常にもろくて壊れやすい 硝子体出血 新生血管が破れた結果生じる出血 硝子体とは、眼球の大部分を占める透明な組織である 牽引性網膜剥離 新生血管のまわりにできた増殖組織と呼ばれるものが網膜を引っ張ることで生じる網膜剥離 糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすい 黄斑浮腫 網膜内の黄斑と呼ばれる部分がむくむ現象 黄斑はものを見る上で重要な部分であるため、黄斑浮腫は視力低下の原因とされている 新生血管や硝子体出血、牽引性網膜剥離は、糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすいものです。これに対して黄斑浮腫は、どの段階でも発生する可能性があります。 糖尿病網膜症を治療せず放置したときに起こること 糖尿病網膜症は症状が出る前から進行する疾患です。症状が出ていないことを理由に放置すると、重症化していることに気づけません。 糖尿病網膜症が進行すると、眼内では新生血管の増殖や硝子体出血、牽引性網膜剥離などの症状が出ます。 眼科受診が遅れたり途中で受診を止めたりすると、このような症状に気づきにくいため、視力回復が難しくなります。 以下の記事で、糖尿病を放置した場合のリスクを解説していますので、あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療は、主に以下のとおりです。 レーザー光凝固術 抗VEGF薬治療 硝子体手術 以下の記事でも、糖尿病網膜症の治療について解説しています。あわせてご覧ください。 レーザー光凝固術 網膜の酸素不足を改善し、新生血管の発生や増殖を抑えることを目的とした治療法です。 網膜の一部をレーザーで焼いて新生血管による出血を予防します。この治療により、硝子体出血や網膜剥離のリスクを下げていきます。 ただし、この治療は視力を改善するものではありません。あくまでも網膜症の進行抑制や視力維持が目的です。 レーザー光凝固術を早い時期に受けると80%に有効であり、治療時期が遅れると有効率は50~60%に低下するといわれています。眼科で勧められた場合は、早めに治療を受けましょう。(文献2) 抗VEGF薬治療 VEGF(血管内皮増殖因子)のはたらきを抑え、新生血管の増殖や糖尿病黄斑浮腫を改善するための治療法です。 麻酔薬を点眼し、目の周囲および表面を消毒してから、抗VEGF薬剤を硝子体に注射します。黄斑浮腫が軽減されると視力改善が期待できます。 一度の注射で完結するケースは少なく、追加の注射や経過観察を必要とする場合が多い治療です。 また糖尿病網膜症が重症の場合は、改善に限界があるとされています。 硝子体手術 硝子体内の出血や混濁、増殖組織などを取り除いたり、剥離された網膜を元に戻したりするための治療法です。視力の回復よりも失明を防ぐための治療といえます。 比較的症状が軽い場合は、成功率が90%近いとされていますが、進行してからの手術では成功率が60%まで下がるといわれています。(文献2) 手術後も定期的な経過観察が必要です。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動は、以下の3点です。 血糖コントロール(HbA1c管理) 血圧や脂質の管理 眼科受診の継続 血糖コントロール(HbA1c管理) 高血糖の持続が糖尿病網膜症の原因であるため、血糖コントロールは大切です。 血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、網膜症の発症や進展を予防できるとされています。その一方で、重症の低血糖は糖尿病網膜症発生率を4倍に増加させるといった報告事例もあります。(文献4) 重症の低血糖とは、血糖値が下がりすぎたために意識障害やけいれんなどの症状が生じて、他者の介助を要するような状況です。 血圧や脂質の管理 高血圧は血管を傷めやすいため、糖尿病網膜症の重要なリスク因子の1つです。とくに、収縮期血圧(最高血圧)が上昇するとリスクが高まるとされています。脂質異常も、硬性白斑や黄斑浮腫といった症状のリスク上昇と関係しています。(文献4) 眼科の定期受診と並行して内科も受診し、主治医に相談しつつ血圧や脂質を管理していきましょう。糖尿病網膜症による失明予防のために大切です。 眼科受診の継続 糖尿病網膜症は無症状のまま進行するケースが多いため、症状の有無に関わらず定期的な眼科受診が必要です。 単純網膜症では半年に1回程度、前増殖網膜症では2〜3か月に1回程度の受診が目安です。増殖網膜症では病状が変化しやすいため、1か月に1回の受診が推奨されています。(文献4) 受診間隔が空くと病状の進行を見逃す可能性が高くなるため、指示された受診間隔を守ることが失明予防の鍵です。 糖尿病網膜症の失明率は行動次第で低下可能 糖尿病網膜症の失明率は20%程度とのデータもありますが、実際は一人ひとりの病状によって異なります。失明率も大切なデータですが、同じくらい大切なことは、早期に治療を受けて網膜症の進行を遅らせることです。 治療が遅れた場合は、その分失明リスクが高くなるため、糖尿病もしくは糖尿病網膜症と診断されたときは、早いうちに眼科を受診しましょう。また、血糖コントロールや血圧および脂質の管理など、失明予防の行動も必要です。 糖尿病網膜症の失明率は、ご自身の行動によって変わってくることを知っておきましょう。 糖尿病網膜症の治療と同じように大切なものが、糖尿病そのものの治療です。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。電話相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病に関する再生医療については、以下の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症の失明率に関するよくある質問 糖尿病による失明に前兆はありますか? 糖尿病による失明の前兆症状としては、目のかすみやぼやけ、見えにくさ、視野欠損、急激な視力低下などがあげられます。これらの症状は、糖尿病網膜症が進行した際に出てくるものです。 自覚症状が出てきた場合は、そのままにせず一刻も早く眼科を受診しましょう。 糖尿病による失明の前兆については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。 糖尿病で失明するまで何年かかりますか? 糖尿病で失明するまでの年数は患者によって異なるものです。糖尿病患者の中には、適切な治療により失明せずに過ごせる方もいます。 糖尿病網膜症を発症するのは、糖尿病と診断されて数年から10年くらい経過してからといわれています。(文献5) ただし、糖尿病網膜症は自覚症状がないまま進行するケースが多いため、糖尿病の方は定期的に眼科を受診して検査や治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症の治療戦略|日本視能矯正学会 (文献2) 糖尿病で失明しないために|公益社団法人日本眼科医会 (文献3) 視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超〜2018年の視覚障害認定基準改正の影響が判明〜|岡山大学 (文献4) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)|日本糖尿病眼学会 (文献5) 糖尿病網膜症|公益財団法人日本眼科学会
2025.12.31 -
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「糖尿病があるため眼科受診を勧められた」 「糖尿病網膜症の疑いありと診断されて、網膜症分類の説明を受けたがよくわからなかった」 「糖尿病網膜症の分類とはいったい何だろう?」 糖尿病のために眼科を受診された方の中には、このような状況の方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症の分類とは網膜症の症状や進行度合いを見るもので、ご自身の現状を把握するために大切なものです。 本記事では、糖尿病網膜症の分類や病状進行との関係について解説します。進行を予防するための対策もあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病網膜症の分類について知りたい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 糖尿病網膜症分類とは? 糖尿病網膜症の分類とは、糖尿病網膜症の進行度合いを示すもので、大きく3段階にわかれています。 単純網膜症 前増殖性糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症 単純網膜症 糖尿病網膜症の初期段階です。 高血糖の影響で網膜の毛細血管がもろくなっています。その結果毛細血管の壁が盛り上がり、血管瘤(けっかんりゅう)や点状出血といった症状が生じます。 この時期は、自覚症状がほとんどありません。 前増殖性糖尿病網膜症 単純網膜症から進行した段階です。 網膜の細い血管が広い範囲で閉塞し、酸素不足になり始めます。酸素供給のために新しい血管(新生血管)を作る準備が始まります。 この時期でも、ほとんどの方は自覚症状がありません。しかし中には、目のかすみや見えにくさといった症状を訴える方もいます。 増殖糖尿病網膜症 糖尿病網膜症が進行しており重症な状況です。 酸素供給のために新生血管が作られますが、この血管は非常に弱いためすぐに破れてしまいます。その結果生じるものが、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる部分の出血です。 硝子体出血が生じると、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が出てきたり、急激な視力低下が見られたりします。 増殖組織が網膜を引っ張り、網膜剥離が生じることも少なくありません。 糖尿病網膜症分類の主な体系 糖尿病網膜症の分類には、複数の体系があります。 国際重症度分類 新福田分類 Davis分類 このように複数の体系が存在する背景としては、検査および治療方法の変化、地域や国による違いなどがあげられます。 国際重症度分類 実質的な国際標準の分類です。網膜症なし・非増殖網膜症・増殖網膜症の3つに分類した上で、非増殖網膜症を軽症・中等症・重症の3段階に分けています。(文献1) また、黄斑浮腫(おうはんふしゅ)の重症度分類がある点も特徴です。(文献1) 黄斑浮腫とは、ものを見る上で重要な部分である黄斑部にむくみが起こっている状況を指します。黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行度に関わらず発生する可能性があります。(文献2) 新福田分類 糖尿病網膜症を良性と悪性に区別している分類です。比較的軽症の糖尿病網膜症を良性、血管閉塞や新生血管が生じており、網膜光凝固治療が適応になる症例を悪性としています。 治療によって症状が沈静化した場合は、良性網膜症に組み込まれています。合併症について表記している点が、この分類の特徴です。 合併症の表記については、以下のように定められています。 黄斑病変(M) 牽引性網膜剥離(D) 血管新生緑内障(G) 虚血性視神経症(N) 光凝固(P) 硝子体手術(V) Davis分類 糖尿病網膜症の病期を、単純糖尿病網膜症、増殖前糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の3つに分けているシンプルな分類法です。 日常的な臨床場面に即した分類であるため、日本で広く用いられています。 糖尿病網膜症分類と病状進行の関係 糖尿病網膜症の分類は網膜症の進行や、軽症から重症までの経過をわかりやすく示したものです。 医療機関によって使用している分類体系は異なりますが、分類の概要を知ることで自分の現状がわかります。 糖尿病網膜症が進行すると、失明リスクが急速に高まります。受診先で使用されている分類体系を知り、自分の現状を把握した上で、適切な治療を受けましょう。 糖尿病網膜症分類からわかる失明リスクと治療方針 糖尿病網膜症は、分類が重症になるほど網膜の血管障害が悪化し、新生血管による硝子体出血や網膜剥離などによる失明リスクが急速に高まります。 軽度から中等度の非増殖性糖尿病網膜症では、経過観察が中心であり、定期的な眼科検査が推奨されます。ただし、黄斑浮腫を伴う場合は、速やかな治療が必要です。 重症の非増殖性糖尿病網膜症や増殖性糖尿病網膜症は、光凝固治療や抗VEGF薬、硝子体手術といった治療が必要な段階です。 網膜症の分類(重症度)に応じて、失明リスクや治療方針が変わってくると覚えておきましょう。 糖尿病網膜症による失明のリスクや治療方針については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 【関連記事】 糖尿病による失明の前兆を医師が解説【見え方に要注意】 糖尿病で失明する原因とは|治療法とあわせて現役医師が解説 糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策 糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策としてあげられるものは、主に以下の3点です。 定期的な眼科受診 血糖コントロール 生活習慣改善 定期的な眼科受診 基本的には、糖尿病と診断された際に眼科を受診して糖尿病網膜症の評価を受けることが推奨されます。 眼科の受診頻度は、網膜症の進行状況によって異なります。軽症の場合は半年に1回程度、中等症や重症の場合は1〜2か月ごとの受診が必要です。(文献1) 自覚症状がない場合も、年に1回は眼底検査を受けましょう。早期に異常が見つかれば、レーザー治療や抗VEGF薬注射などが可能になり、失明リスクを大幅に下げられます。 血糖コントロール 血糖コントロールは網膜症進行を予防するために重要な役割を果たします。 1~2か月間の血糖値の平均を反映し、血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、糖尿病網膜症の発症や進行を予防できるとのデータもあります。なお、血糖正常化を目指す場合の目標値は6.0%未満とされています。 医師の指導のもと、食事や運動、薬物療法などにより血糖を管理していきましょう。 糖尿病における食事療法や運動療法については、以下の記事をご覧ください。 【関連記事】 【糖尿病】食事治療とエネルギー量の関係性を現役医師が解説|計算方法もあわせて紹介 【医師監修】糖尿病予防に効果的な運動3選|続けるコツや注意点も紹介 生活習慣改善 高血圧や脂質異常症、腎機能障害、喫煙の有無も糖尿病網膜症の発症や進行に関連する因子です。 高血圧や脂質異常症の予防および改善のためにも、食事と運動が大切になってきます。 喫煙はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)を増やす因子です。加えて、心血管疾患や糖尿病腎症など、糖尿病網膜症以外の疾患のリスクも増やすため、できる限り禁煙していきましょう。 糖尿病網膜症分類を正しく理解して自分の現状を把握しよう 糖尿病網膜症分類には複数の体系がありますが、いずれにしても自分の状態を知るために必要な指標です。 そのときの数値や指標を見るだけではなく、眼科を受診する中でどのように推移しているかを見ていくことが大切です。不明な点があれば主治医に相談した上で、適切な治療を受けましょう。 糖尿病網膜症悪化予防のためには、定期的な眼科受診に加えて、血糖コントロールを含めた生活改善が必要です。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリング、LINE相談を実施しています。糖尿病および糖尿病網膜症に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 糖尿病網膜症分類に関するよくある質問 糖尿病網膜症分類のSDRとは何ですか? SDRとは、糖尿病網膜症分類の指標の1つで、単純網膜症を意味します。 高血糖が原因で網膜の血管がもろくなった結果、点状に出血したり毛細血管に瘤が出来たりしている状態です。この段階では自覚症状が出ることが少ないとされています。 この段階では血糖コントロールや眼底検査による経過観察が基本です。 糖尿病網膜症の検査方法にはどのようなものがありますか? 主に以下のような検査があげられます。 視力検査 眼圧測定 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査 眼底検査 光干渉断層計(OCT)検査 眼圧検査は、眼の中の圧力を調べるものです。糖尿病網膜症では、新生血管の影響で緑内障を発症する場合もあるため、緑内障の症状である眼圧を調べることが必要になります。 細隙灯顕微鏡検査では、角膜や結膜、眼底の状態を確認するものです。眼底の検査をするときには、特殊なレンズを使用します。 眼底検査では網膜を観察し、網膜症の診断を行います。網膜症が疑われる場合は、蛍光眼底検査も行います。 蛍光眼底検査とは、造影剤を注射した上で眼底の血管の状態を連続して撮影するものです。通常の眼底検査では発見が難しい病変を詳しく調べられます。 光干渉断層計では、糖尿病黄斑浮腫の診断を行います。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)|日本糖尿病眼学会 (文献2) 糖尿病網膜症について|日本糖尿病眼学会
2025.12.31 -
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「糖尿病網膜症の治療を受けているけれど、思っていたほど視力が回復しない」 「いつも視界がぼやけている上に、近くのものが見えにくい」 「メガネを使えば目が良くなるだろうか?」 糖尿病網膜症の方の中には、このような状況に直面している方も少なくありません。 結論からお伝えしますと、糖尿病網膜症の症状はメガネでの改善が困難なものです。 糖尿病網膜症は、目の中の網膜そのものが損傷した状態であり、カメラにたとえるとフィルム自体が傷んでいる状態であるためです。 メガネはあくまでも、日常生活の中で補助的に用いるものと考える方が良いでしょう。 本記事では、糖尿病網膜症で用いられるメガネの種類や症状に応じたメガネの選び方を解説します。メガネ購入補助を含めた公的支援制度についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病網膜症およびメガネの活用法について知りたい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 糖尿病網膜症で用いられるメガネの種類 糖尿病網膜症で用いられる主なメガネの種類は以下のとおりです。 遮光眼鏡 拡大鏡 単眼鏡 遮光眼鏡 遮光眼鏡(しゃこうめがね)とは、まぶしさを抑えられる、暗くなりにくいなどの特徴を有する医療用のフィルターレンズです。 糖尿病網膜症では、明暗を見分ける力(コントラスト感度)の低下や、まぶしさを訴える症例が多いため遮光眼鏡が有効とされています。 遮光眼鏡はまぶしさの原因になる部分だけを取り除き、それ以外の光は通すため、輪郭がすっきりして快適に感じるケースが多く存在します。 拡大鏡 拡大鏡は、手元が見えにくいときや細かい作業をするとき、文字を読んだり書いたりするときに便利なツールです。拡大倍率は2倍から12.5倍と幅広く、中にはLEDライトで見たいものを照らせるタイプもあります。(文献1) 拡大鏡の種類には、ルーペと呼ばれる手持ち型や、弱視眼鏡とも呼ばれる眼鏡式などがあります。 単眼鏡 単眼鏡(たんがんきょう)は望遠鏡の一種で、バス停の行き先や駅のホーム表示、各種掲示板、店舗の価格表示などを見たいときに便利な補助具です。拡大倍率や使いやすさ、持ちやすさなどを考慮して選びましょう。 単眼鏡は片手で操作するため、眼科や障害者リハビリテーションセンターなどで練習してから使用する場合もあります。 糖尿病網膜症でメガネを活用するためのポイント 糖尿病網膜症の方がメガネを活用するためのポイントは、主に以下の2点です。 症状別のポイント 病態別のポイント 症状別のポイント 症状別のポイントとしてあげられるものは、主に以下の3点です。 ぼやけやかすみが強い場合 強いまぶしさを感じる場合 近くのものが見えにくい場合 ぼやけやかすみが強い場合 糖尿病網膜症では網膜の血管障害のため、ものを見るときにぼやけたりかすんだりします。この場合、適切な度数で矯正するメガネや、コントラストを補うレンズの活用により見え方が改善するケースも少なくありません。 ただし、物を見る中心部である黄斑部にむくみがある場合は、メガネだけで改善しないケースも多いとされます。 強いまぶしさを感じる場合 糖尿病網膜症が進行すると、網膜の損傷や黄斑部のむくみにより、光が過剰にまぶしく感じる場合があります。屋外での強い日差しだけではなく、室内の蛍光灯や車のライトでもまぶしさを感じる場合も少なくありません。 このような場合は遮光眼鏡が有効です。遮光眼鏡は光の波長を選択的にカットするため、まぶしさが軽減されて、見やすくなります。 遮光眼鏡のレンズカラーは複数存在します。眼科を受診した上で、ご自身の症状に合ったカラーを選択しましょう。 近くのものが見えにくい場合 糖尿病網膜症では、黄斑部のむくみや眼内の出血の影響で視力が低下し、近くのものが見えづらくなります。具体的には、細かい文字が読みづらい、手元の作業がしにくい、焦点が合いにくいなどです。 近くのものが見えにくい場合は、拡大鏡や弱視眼鏡などの補助具を併用する場合が多くなります。適切な補助具は症状により異なるため、眼科での診察を受けた上で選びましょう。 病態別のポイント 糖尿病網膜症の病態は大きく3つにわかれます。 単純網膜症 前増殖網膜症 増殖網膜症 いずれの病態においても発症する可能性がある症状が、黄斑浮腫です。 単純網膜症の場合 単純網膜症とは、高血糖が原因で網膜に張り巡らされた毛細血管が障害されて、斑状出血や硬性白斑といった症状が生じている状況です。硬性白斑とは、血液中のタンパク質や脂質が網膜に沈着した状態を指します。黄斑部と呼ばれる物を見る中心部に網膜症が及ばない状態であれば、自覚症状はありません。(文献2) 近視や遠視、乱視といった屈折異常だけの場合であればメガネによる矯正が期待できますが、網膜の血管損傷による視力障害の場合、回復は難しいと言えます。 前増殖網膜症の場合 前増殖網膜症とは、単純網膜症よりも網膜症が進行した段階です。毛細血管が詰まって、網膜の神経細胞に酸素や栄養がいかなくなり、軟性白斑と呼ばれる神経のむくみや静脈の拡張などが生じます。また、網膜の神経細胞に酸素を補うため、新生血管と呼ばれる血管を作る準備が始まりつつある状態です。(文献2) 自覚症状がないケースが多いのですが、黄斑部がむくんでくると見えづらさが生じます。単純網膜症同様、メガネによる矯正が期待できるのは近視や遠視、乱視といった屈折異常に限られます。 増殖網膜症の場合 増殖網膜症とは、網膜症がさらに進行し、新生血管が多く発生する段階です。新生血管はもろく出血しやすいため、眼の中に大きな出血を引き起こします。これは硝子体出血と呼ばれるものです。加えて、繊維状の組織である増殖網が網膜全体を覆い、網膜を引っ張ります。この結果生じる症状が、網膜剥離です。(文献2) 硝子体出血や網膜剥離により、視力低下をはじめとする自覚症状が出現します。この段階では、メガネでの対応が困難であることが多いとされます。 黄斑浮腫がある場合 黄斑浮腫とは、物を見る中心部である黄斑部の毛細血管が障害されて血液中の水分が漏れ出し、むくみが生じている状態です。単純網膜症から増殖網膜症に至るまで、どの病態でも発症する可能性があります。(文献2) 黄斑浮腫は局所性とびまん性に分けられ、びまん性黄斑浮腫では黄斑部の毛細血管が高度に障害されます。 黄斑浮腫がある場合は、メガネを活用しても十分な視力を得られないケースが多い状況です。 糖尿病網膜症におけるメガネを選ぶ前に必要な検査 この章では、糖尿病網膜症のためメガネを選択する前に必要な検査を3種類紹介します。 視力およびコントラスト検査 視野検査 黄斑浮腫に関する検査 視力およびコントラスト検査 糖尿病網膜症では、視力やコントラスト感度(明暗を見分ける力)の低下が起こりやすいため、メガネを選ぶ前にこれらの検査を受けることが重要です。 視力検査では、「どの程度の矯正が必要か」「近くで見るときにどこまで見えるか」「遠くで見る場合にどこまで見えるか」などを確認します。コントラスト検査とは、文字や物体の輪郭がどれだけ認識できるかを調べる検査であり、まぶしさやかすみといった自覚症状がある場合に必要です。 視野検査 視野検査とは、まっすぐ前を見ているときに、上下・左右・前方において、どのくらいの範囲まで見えているかを調べる検査です。動的視野検査と静的視野検査の2種類があり、いずれも片目ずつ行います。 糖尿病網膜症では、出血や浮腫により視野の一部が欠けたり、見える範囲が狭くなったりする場合があります。メガネ選びの前に視野検査が必要な理由は、見えにくい部分を確認するためです。 黄斑浮腫に関する検査 黄斑浮腫に関する検査は、主に以下のとおりです。 医師による問診 視力検査 眼底検査 光干渉断層計(OCT)検査 眼底検査では、黄斑とその周辺部(眼底)を眼底鏡や顕微鏡で観察し、カメラで撮影します。OCT検査では、網膜の断面を撮影して黄斑部分の状態を確認します。黄斑周辺に膨らみがあるときは、糖尿病黄斑浮腫の疑いが強い状況です。 糖尿病網膜症に関する公的支援制度 糖尿病網膜症に関する公的支援制度としてあげられるものは、主に以下の3種類です。 身体障害者手帳 障害年金 補装具支給 身体障害者手帳 糖尿病網膜症によって視力や視野に障害が生じている場合、視覚障害があるとして身体障害者手帳が交付されます。視覚障害における手帳の等級は、1級から6級までです。(文献3) 身体障害者手帳が交付されると、医療費の助成や各種福祉サービスなどが利用可能になります。 相談先は、かかりつけ医や市区町村の障害福祉担当窓口、福祉事務所などです。 障害年金 病気やけがによって生活や仕事に支障をきたした場合に受けられる年金で、現役世代の方も対象です。障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。(文献4) 障害基礎年金は、以下のいずれかに該当する状況において、法令により定められた障害等級表(1級・2級)に該当する方に支給されるものです。 国民年金加入中 20歳になる前(年金未加入の期間) 60歳以上65歳未満(年金未加入の期間で日本に住んでいる間) 厚生年金加入中に、障害基礎年金の1級または2級に該当する障害を負ったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。 補装具支給 補装具とは、障害を持つ方が日常生活において必要動作を確保するために、損なわれている機能を補完または代替する道具です。視覚障害者のための補装具としては、メガネや盲人安全つえ、義眼などがあります。 補装具支給とは補装具の購入や修理費用のうち、所得に応じた自己負担額から差し引いた分を支給する制度です。 糖尿病網膜症の方はメガネを補助的に活用した上で適切な治療を受けよう 本記事では糖尿病網膜症の方に向けて、メガネ使用に関する内容を解説してきました。 しかし、メガネはあくまでも見えづらさやまぶしさなどを軽減するためのものであり、根本治療にはつながりません。 糖尿病網膜症においては、血糖コントロールを中心にレーザー光凝固術や抗VEGF治療、硝子体手術などの治療が必要です。加えて、網膜症の原因となっている糖尿病の治療も大切です。 糖尿病治療の主な内容は内服治療やインスリン注射などですが、再生医療も選択肢の1つとして考えられます。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。糖尿病でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病網膜症とメガネに関するよくある質問 糖尿病網膜症は治りますか? 糖尿病網膜症やそれに伴う視力低下を完全に治すことは難しい状況ですが、適切な治療を続けることで進行を遅らせることは可能です。 食事や内服、インスリン注射などによる血糖コントロールを続けつつ、定期的に眼科を受診して経過を観察していくことが求められます。 糖尿病網膜症の進行を遅らせるための自己管理や治療については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症にサングラスは有効ですか? サングラスもメガネ同様、糖尿病網膜症の症状改善効果は見込めないものです。 サングラスには、人の目に入る光を均一にカットする役割があります。そのため物を見るために必要な明るさまでカットしてしまい、かえって不便な場合も少なくありません。 サングラスとよく似たものが遮光眼鏡です。遮光眼鏡は、紫外線やまぶしさを感じる光を選択的にカットしているため、サングラスより負担が少ないとされています。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症治療後の注意点を教えてください|糖尿病サイト (文献2) 糖尿病網膜症について|日本糖尿病眼学会 (文献3) 身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)|厚生労働省 (文献4) 障害年金|日本年金機構
2025.12.31 -
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- ひざ関節
- 膝の内側の痛み
- 膝の外側の痛み
- 膝部、その他疾患
階段の上り下りで、膝に痛みを感じる人は少なくありません。 加齢やスポーツによる負荷、体重の増加、筋力の低下など、原因はさまざまですが、放置すると痛みが慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす場合もあるため注意が必要です。 本記事では、膝の痛みの主な原因やセルフケアのポイント、予防法を解説しますので参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、膝の治療にも用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。気になる症状があれば、ぜひご活用ください。 階段の上り下りで膝が痛い原因 ここでは、膝の痛みの主な原因として考えられる疾患について詳しく解説します。 50代以降に多い「変形性膝関節症」 階段の上り下りで膝が痛む場合、50代以降では「変形性膝関節症」が原因として多く見られます。 年齢とともに膝の軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかるようになったり、炎症が起きたりして痛みを感じるようになるのが特徴です。 とくに階段では、平地よりも膝にかかる負担が大きくなるため、軟骨のすり減った膝では早い段階で痛みが出やすくなります。進行すると、歩くときにも痛みが出たり、O脚のような変形が見られるケースもあるため注意が必要です。 変形性膝関節症については、以下の記事も参考にしてみてください。 スポーツで発症しやすい「鵞足炎(がそくえん)」 階段の上り下りで膝の内側に鋭い痛みを感じる場合、「鵞足炎」が原因になっている場合があります。 鵞足炎は、太ももの筋肉が膝の内側で腱として集まる部分に炎症が起こる疾患です。とくに、ランニングやサッカーなど膝を繰り返し動かすスポーツで起こりやすいことが知られています。 そのまま無理に運動を続けると炎症が悪化し、日常の動作にも影響が出るケースもあるため注意しなければなりません。 鵞足炎の痛みの原因や早く治す方法については、以下の記事をご覧ください。 加齢やスポーツが原因の「半月板損傷」 階段の上り下りで膝の奥がズキッと痛む場合、「半月板損傷」が原因かもしれません。 半月板は、膝関節の中でクッションのような役割を果たす軟骨組織で、ジャンプや急な方向転換をするスポーツなどで損傷しやすい部位です。 また、年齢を重ねると半月板がもろくなり、日常のちょっとした動作でも傷ついてしまうことがあります。さらに、変形性膝関節症と同時に起こるケースもあり、痛みが慢性的になることも少なくありません。 半月板損傷については、以下の記事でも詳しく解説しています。 成長期の10代に見られる「膝離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)」 10代の成長期で、階段の上り下りで膝の痛みが続くようであれば、「膝離断性骨軟骨炎」が原因のひとつとして考えられます。 膝離断性骨軟骨炎とは、大腿骨の関節面にある骨と軟骨の一部が傷つき、剥がれかけることで痛みや違和感を引き起こす疾患です。 成長期の骨はまだ柔らかく、スポーツなどで膝に繰り返し衝撃や負荷がかかると、関節面にダメージが蓄積しやすくなります。進行すると、将来的に変形性膝関節症につながるケースもあるため注意が必要です。 離断性骨軟骨炎についてもっと知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 30代以降は注意したい「関節リウマチ」 30代以降で、階段の上り下りの際に膝が痛むだけでなく、手指や足指など他の関節にも違和感がある場合、「関節リウマチ」の可能性があります。 関節リウマチは、免疫の異常によって関節の内側にある「滑膜(かつまく)」に炎症が起き、やがて軟骨や骨が傷ついていく病気です。 朝起きたときに、関節がこわばって動かしにくい状態が30分~1時間以上続く、左右対称に複数の関節が腫れて熱をもつ、といった症状が見られます。 そのまま放っておくと関節が変形し、歩くことや階段の上り下り自体が困難になる恐れもあるため注意しなければなりません。 関節リウマチについては、以下の記事でも詳しく解説しています。 膝の裏が痛いなら「ベーカー嚢腫(のうしゅ)」の可能性 階段の上り下りで膝の裏側に張るような痛みや圧迫感がある場合、「ベーカー嚢腫」が関係しているかもしれません。 ベーカー嚢腫とは、膝関節の中で増えた関節液が関節の後ろ側にたまり、膝裏にふくらみとして現れる状態です。 変形性膝関節症や関節リウマチなど、関節内に炎症がある病気が背景にあることが多く、それらの炎症によって関節液が過剰に分泌されてしまうのです。嚢腫が大きくなると血管や神経を圧迫し、ふくらはぎの痛みやしびれが生じる可能性もあります。 ベーカー嚢腫の症状や治し方については、以下の記事も参考にしてみてください。 10~20代がなりやすい「膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)」 10~20代で、階段の上り下りの際に膝の前側、とくにお皿のすぐ下が痛む場合、「膝蓋靭帯炎」の可能性があります。 膝蓋靭帯炎は、ジャンプやダッシュ、急なストップ動作の繰り返しで膝蓋靭帯に負担がかかり、炎症や小さな損傷が起きる疾患です。 バレーボールやバスケットボールなどの跳躍系スポーツに多くみられるため、「ジャンパー膝」とも呼ばれています。 痛みを無理して我慢しながら運動を続けると炎症が慢性化し、日常生活にも支障をきたすケースもあるため要注意です。 下半身の筋力が低下している 階段の上り下りで膝が痛むとき、下半身の筋力低下が背景にあるケースも少なくありません。 膝関節のまわりには、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)や裏側の筋肉(ハムストリングス)、おしりの筋肉(大臀筋)、股関節まわりの筋肉(腸腰筋)などの筋肉があり、体重を支えながら膝の関節にかかる負担を和らげています。 しかし、運動不足や長時間のデスクワークが続くと、こうした筋肉が衰えて関節をうまく支えられなくなり、膝の軟骨や半月板にダイレクトに負荷がかかるようになるのです。 その結果、軟骨のすり減りが進みやすくなり、階段の上り下りや立ち上がる動作で痛みを感じるようになります。 階段の上りだけで膝が痛いなら加齢が原因の可能性 階段を上るときだけ膝が痛む場合、年齢による軟骨のすり減りが影響しているかもしれません。 膝関節の軟骨は、加齢とともに少しずつすり減っていくと、クッションの役割が失われて痛みが出やすくなります。 階段を上る動作は、平地の歩行よりも膝に大きな負担がかかるため、軟骨が傷んでいると痛みが出やすくなるのです。 さらに、以下のような状態も膝への負担が増えて、若い世代でも軟骨の老化や変形性膝関節症につながる場合があります。 体重が重い 姿勢が悪い スポーツで膝に負荷がかかる動作を繰り返している また、日常的に肉体労働をしている場合も、膝に負担がかかっている可能性が高いため注意しましょう。 階段の上り下りで膝が痛いときの対処法 ここでは、簡単に取り入れやすいストレッチを中心に、膝への負担を減らす対処法を紹介します。 ストレッチで膝への負担を軽減する 階段の上り下りで膝の痛みを感じる場合、ストレッチが膝への負担軽減に有効です。 では、具体的なストレッチの方法を解説します。 太ももの前側を伸ばすストレッチ 1.壁の前に立つ 2.壁に片手をつき、反対側の膝を後ろに曲げて足のつま先を同じ側の手でつかむ 3.つま先を持った手をお尻のほうへ引き寄せて、太ももの前側が伸びるところまで動かす 4.ゆっくり息を吐きながら約30秒キープする 5.反対側の脚も同じように行い、左右それぞれ数セット繰り返す バランスをとるのが不安な場合は無理をせず、支えをしっかり確保してから行いましょう。 ふくらはぎと膝裏のストレッチ 1.椅子に深く腰掛ける 2.片方の足を持ち上げ、床と平行になるようにまっすぐ伸ばす 3.足首を床に対して垂直になるように立てて、ふくらはぎから膝裏にかけて伸びを感じるところで止める 4.その姿勢を約10秒キープする 5.反対側の足も同じように行い、左右それぞれ複数回繰り返す 勢いをつけず、ゆっくりと筋肉が伸びている感覚を保つように行いましょう。 膝サポーターで関節の安定感を高める サポーターやテーピングには、膝関節をしっかりと固定して動きを安定させ、無理な動きを防ぐことで膝への負担を軽減する効果があります。とくに、膝のぐらつきや軽度の炎症があるときに有効です。 サポーターには、膝のお皿の周りだけを部分的に支えるタイプや、膝全体を包み込むものなどさまざまな種類があるので、症状の程度や使用する場面に合わせて選びましょう。 サイズの合っていないサポーターを使うと、動きづらさを感じたり血流が悪くなったりする場合があります。 ただし、サポーターはあくまで補助として使うものであり、根本的な治療ではありません。 強い痛みや腫れがある場合は、医療機関で治療を受けることを優先してください。 膝痛を悪化させないように歩く 膝に痛みがあるからといって、動かないと筋力が落ちてしまい、かえって膝への負担が増してしまいます。膝にやさしい歩き方を心がけて、無理のない範囲でしっかり歩きましょう。 歩くときは背筋を伸ばし、膝とつま先を同じ方向に向けて、足裏全体で地面をしっかり踏みしめます。 階段を上るときは、上半身を前に倒しすぎず、太ももやお尻の筋肉を使って体を引き上げるよう意識しましょう。 逆に下るときは、膝が内側に入らないように注意しながら、かかとからそっと着地して一段ずつゆっくり進むのがポイントです。 冷やす・温める 膝をひねった直後や、長時間歩いた後に急に強い痛みが出たような「急性の痛み」は、炎症によって腫れや熱感があるケースが多いため、基本的には冷やす対応が推奨されます。 氷や保冷剤をタオルで包んで当てて、1回あたり約15分を目安に冷却すると良いでしょう。 一方、長く続く「慢性的な膝の痛み」で熱や腫れがあまり見られない場合には、温めることで筋肉や関節のこわばりがほぐれて、症状が和らぐ場合があります。 ただし、温めたことで痛みが強くなったり、腫れが出てきた場合には逆効果になる場合もあるため、冷やす処置に切り替えましょう。 医療機関で治療する さまざまな対処法を試しても膝の痛みがなかなか引かないなら、医療機関で原因を調べてもらいましょう。 整形外科では、問診や触診に加えてレントゲン検査が行われるほか、必要に応じてMRIやCT検査などで損傷の有無を詳しく確認していきます。 痛みが強い場合には、薬を使った治療や注射による対処も選択肢です。 内服薬では、痛みを和らげたり炎症を抑えたりする薬が処方されます。 また、関節内に直接注射する治療としては、関節の動きをなめらかにする働きがある「ヒアルロン酸注射」や、強い炎症をすばやく抑える効果がある「ステロイド注射」があります。 再生医療で改善を目指す 膝の治療では、「PRP療法」や「自己脂肪由来幹細胞治療」といった再生医療も選択肢のひとつです。 PRP療法は、患者様自身の血液を採取して遠心分離し、血小板を多く含む部分を取り出して膝の関節内に注入します。血小板に含まれる成長因子などによる炎症を抑える作用を活用する治療法です。 自己脂肪由来幹細胞治療は、組織の修復を助ける物質を放出する働きを利用した治療法で、患者様自身の脂肪組織から幹細胞を抽出・培養した上で関節内や静脈に投与します。 どちらも外来・日帰りで受けられるケースが多く、身体への負担が少ないのも大きな特徴です。 以下の記事では、当院「リペアセルクリニック」で行った変形性膝関節症に対する再生医療の症例をご紹介しています。 階段での膝痛を予防する対策 ここでは、階段での膝痛を予防するために自宅で行える対策をご紹介します。 筋力トレーニングで脚を強化する 階段での膝痛を予防するためには、膝関節を支える筋肉を鍛えることが重要です。とくに、太ももの前側の筋肉を鍛えると、膝への負担を減らせます。 具体的な手順は次の通りです。 1.椅子に座る 2.膝を伸ばした状態で、足を床から10cm程度持ち上げる 3.そのままの体勢で、太ももの前側に力を入れる 4.5秒キープする 5.左右10回ずつ行う 痛みが強いときは無理をせず、回数や負荷を調整しながら行いましょう。 体重を管理する 階段の上り下りで膝の痛みを防ぐためには、体重管理も重要なポイントです。体重が増えると、その分だけ膝関節にかかる負担が大きくなり、軟骨のすり減りや痛みの原因になります。 まずは食事の内容や量を見直しながら、日々の生活の中で少しずつ体重を減らしていきましょう。体重が適正に近づくと、階段の上り下りで感じる膝の負担が軽くなり、痛みや違和感の悪化を防ぎやすくなります。 膝の状態に応じて、無理のない範囲で生活習慣を整えていきましょう。 まとめ|つらい膝痛を改善・予防しよう 膝の痛みは、早めの対策と正しいケアで悪化を防ぐことが可能です。 本記事で紹介した筋力トレーニングや正しい階段の昇降方法、体重管理など、日常で実践できる工夫を取り入れてみてください。 近年は、PRP療法や幹細胞治療といった再生医療の選択肢も広がり、手術以外での治療法もご検討いただけます。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご利用ください。
2025.12.31 -
- 健康・美容
腰痛を和らげる有効な手段のひとつが「温泉療法」です。 温泉には、体を芯から温めて血行を促進し、筋肉の緊張をほぐす効果があり、腰痛のセルフケアとして取り入れる人も多くいます。 ただし、利用方法を間違えると、かえって症状を悪化させる恐れもあるため注意が必要です。 本記事では、温泉の効果的な活用法から入浴時の注意点、入浴後のケア方法まで詳しく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、腰の治療にも用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。気になる症状があれば、ぜひご活用ください。 腰痛改善に温泉は効果あり!3つの効果を解説 慢性的な腰の痛みに悩んでいる方にとって、温泉療法は痛みを和らげるための選択肢のひとつです。 実際に、慢性腰痛の方を対象とした研究では、温泉に入ることで得られる痛みの軽減効果が、長期間にわたって続くことが示されています。(文献1) 温泉が腰痛に働きかける主な効果は、以下の3つです。 血行が促進される「温熱効果」 浮力で腰への負担を減らせる「浮力効果」 痛みが和らぐ「リラックス効果」 では、3つの効果をより詳しく見ていきましょう。 温熱効果 温泉の「温熱効果」は、慢性腰痛に伴う鈍い痛みを和らげる方法として有効です。 お湯に浸かって体が温まると、血管が広がって血行が促され、筋肉のこわばりが和らぎやすくなります。 温熱によって期待できる主な効果は以下の通りです。 痛みを和らげる作用がある 筋肉や関節のこわばりが軽くなる 動きはじめのつらさを減らせる 腰が重だるい、動かすとこわばるといった慢性腰痛の症状改善に温熱効果は役立ちます。 浮力効果 首まで湯船に浸かると、浮力の作用で体重が空気中の約9分の1程度になるといわれています。 たとえば、体重70kgの人であれば、水中では実際の重さが7〜8kg程度に感じられるわけです。(文献2) 体が軽く感じることで、腰を支える関節や筋肉への負担が減り、関節の痛みや筋肉のこわばりが和らぎやすくなります。 ストレス軽減効果 温泉は心身の緊張をほぐし、腰痛のつらさを軽減する効果が期待できます。 温熱・浮力・静水圧の作用により筋肉のこわばりがゆるみ、リラックスしやすくなるのです。 さらに、湯けむりや水の音、自然の風景も、心理的な安心感を高める要素になります。 日本温泉協会によると、温熱によって痛みを伝える神経が鈍くなり、痛みとストレスの軽減が腰痛の緩和につながるとしています。(文献3) 温泉はすべての腰痛に効果があるわけではない 温泉は腰痛対策として取り上げられることが多いものの、すべての腰痛に対して効果があるとは限りません。 ここでは、「慢性腰痛」と「急性腰痛」に分けて、温泉で温めるべきかを解説します。 温泉は慢性腰痛に効果あり 3か月以上腰の痛みが続いている慢性腰痛のある人には、温泉を活用した「温めるケア」が痛みの緩和に効果を発揮する場合があります。 ぬるめの湯にゆっくり浸かることで、血流が良くなってこわばった筋肉がゆるみ、腰の重だるさや鈍い痛みが軽減されると考えられているのです。 ただし、効果の感じ方や持続期間には、個人差があります。 また、痛みが落ち着いている状態である必要があり、お湯の温度や入浴時間などにも注意しましょう。 慢性腰痛の治療については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。 急性腰痛はアイシングが基本 急性腰痛の場合は、温めるよりも冷やすケアが基本です。 突然強い痛みが出る状態は腰に炎症が起きており、温泉で温めて血流が増えると、かえって腫れや痛みが悪化する恐れがあります。 腰痛の発症直後はお湯で温めずに、氷のうや保冷剤で患部を冷やす「アイシング」を行いましょう。 ただし、身体の冷やしすぎは良くありません。冷やすのは痛めた直後に限定し、慢性腰痛へ移行したら温泉で温める方法に切り替えましょう。 腰痛に効果的な温泉の入り方 腰痛のセルフケアとして温泉を取り入れる場合、温度や時間、入浴の姿勢、入るタイミングを意識することが大切です。 ここでは、腰痛に悩む人が温泉を利用するときに押さえておきたいポイントを解説します。 37~40℃のぬるめのお湯がベスト 腰痛を和らげる目的で温泉に入る場合は、37〜40℃ほどの少しぬるいと感じる温度が理想とされています。 体をゆっくりと温めることで筋肉のこわばりがほぐれやすくなるため、腰の重だるさを軽減する効果が期待できるのです。 一方で、熱すぎるお湯には注意が必要です。高温の湯だと体の表面だけが急速に温まり、入浴後に体温が急激に下がりやすくなります。 急な冷えにより筋肉が再び緊張し、腰の痛みをぶり返す恐れがあるため注意しましょう。 15~20分程度浸かる 温泉に入る時間も、腰痛ケアでは大切なポイントです。 温泉の温度にもよりますが、はじめは3~10分程度とし、慣れてきたら15~20分程度に伸ばしましょう。(文献4) 短すぎると温まりが不十分で血行促進や筋肉の緩和効果が得にくくなりますし、長く浸かりすぎると体力を消耗して逆効果になります。 体調やのぼせやすさに応じて調整し、途中で一度湯船から上がって休憩を挟むなど、無理のない範囲で入浴を楽しみましょう。 体に負担をかけない姿勢で入る 腰痛がある人にとって、温泉に入るときの姿勢も重要です。 湯船には足からゆっくり浸かり、少しずつ体をお湯に慣らす入り方が推奨されています。 いきなり肩まで浸かると、心臓や筋肉への負担が大きくなるため、とくに腰痛のある人は要注意です。 また、入浴中は腰に無理な負担がかからない姿勢を意識してください。 浴槽の縁にもたれて背中を支えたり、浅い場所で膝を軽く曲げて腰を安定させたりすると、筋肉が緩みやすくなります。手すりや段差も活用して、体を支えやすい姿勢で入りましょう。 さらに、長時間同じ姿勢を保つのは避け、体を預けられる安定した場所を選ぶことも大切です。 就寝する1~2時間前までに入浴する 入浴は、就寝の1〜2時間前までに済ませるのが理想です。(文献5) いったん上がった深部体温が1〜2時間の間に自然と下がり、眠気が訪れやすくなります。 一方、寝る直前の入浴では体温が高いまま布団に入ることになり、寝つきが悪くなるほか、浅い眠りが続く可能性があるため注意が必要です。 風呂上がりに汗をかいて、体の火照りが引くのには2時間ほどかかる点に留意しておきましょう。 腰痛のある人にとって、睡眠中の回復はとても重要です。入浴のタイミングを考慮し、腰痛の緩和だけでなく質の良い睡眠にもつなげていきましょう。 温泉で腰痛を悪化させないための注意点 温泉は腰痛を和らげる効果が期待できる一方で、入り方を誤ると痛みが強くなる場合もあります。 とくに、湯冷めや水分不足、強い刺激などは、腰への負担や体調悪化につながるため注意が必要です。 ここでは、腰痛を悪化させないために押さえておきたい、温泉利用時のポイントをご紹介します。 湯冷めに注意する 腰痛緩和のために温泉へ入った後は、湯冷めを防ぐことが重要です。 温泉から出た後に急激に体温が下がると、腰痛が悪化する恐れがあります。 表面の水滴をきちんと拭き取り、衣類やタオルで体を温かく保ち、せっかく温めた腰を冷やさないように注意しましょう。 温泉地までの移動で腰に負担をかけない 腰痛がある人は、温泉の入り方に加えて移動中の負担にも気を付けましょう。 長時間同じ姿勢で乗り物に座っていると筋肉がこり固まり、腰痛が悪化する場合があるのです。 とくに、夜行バスのように姿勢を変えにくい移動手段は避けてください。できるだけ近場で通いやすい温泉を選ぶと、腰への負担を減らす工夫になります。 しっかり水分補給する 温泉やサウナを利用すると汗を多くかいて、体内の水分バランスが崩れやすくなります。 体内の水分量の低下は筋肉のこわばりや疲労感を招き、腰痛を悪化させる一因になります。 温泉やサウナに入る前後はしっかりと水分補給することが大切です。 また、ミネラルを補給するためにも、栄養バランスに配慮した食事を心がけましょう。 ジェット噴射を患部に当てない 腰に痛みを感じるときに、温泉のジェット噴射を腰へ当てた経験がある方もいるのではないでしょうか。 しかし、ジェット噴射の刺激がかえって症状を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。 痛みが出ている部位は、刺激に過敏な状態にあります。 強い水圧を当てると筋肉や関節の表面がダメージを受け、強いマッサージ後の揉み返しのような反応が起こる可能性があるのです。 腰に痛みがあるときは、体への刺激をできるだけ避けるようにしましょう。 温泉に入った後にお酒を飲まない 入浴後のお酒を楽しみにしている方も多いと思いますが、腰痛が悪化しそうなときには控えることが推奨されています。 アルコールには脱水作用があり、体内の水分バランスを崩すことで腰痛やぎっくり腰を悪化させる恐れがあるのです。 とくに、腰の状態が不安定なときは、入浴時に限らず飲酒を控えましょう。 腰痛予防を目的に温泉を利用するわけですから、アルコールではなく水分補給と休息を優先してください。 腰痛持ちに効果的な温泉に入った後のセルフケア 温泉に入った後は、腰の状態を整えるセルフケアも大切です。ここでは、腰痛持ちの方が取り入れやすい方法をご紹介します。 マッサージする 温泉で体が温まったあとは、軽いマッサージで腰まわりの筋肉をほぐすと効果的です。 手のひらや指の腹を使って、腰をやさしく押したり、円を描くようにさすったりしましょう。 強く押しすぎず、心地よく感じる程度の力で行うのがポイントです。マッサージを入浴後の習慣にすれば、リラックス効果をより高められます。 ツボを押す 腰痛対策として、ツボを使ったセルフケアも有効な方法のひとつです。 腰に関係するツボとしては、背中の下部にある「胃兪(いゆ)」や「腎兪(じんゆ)」が知られています。 親指や指の腹で、痛気持ちいいと感じる程度の強さで数秒ずつ押しましょう。 とくに入浴後は筋肉が温まった状態であり、ツボを押すタイミングとして適しています。 無理に強く押さず、体の反応を見ながらやさしく行うのがポイントです。 温かいタオルや湿布を当てる 温泉から上がった後は、腰まわりを温かいタオルや温湿布で保温すると効果的です。 温めたタオルを腰に当てることで血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。 入浴後に体を冷やさないことは、腰痛の悪化を防ぐ上で重要です。 心地よい温かさを保ちながら、無理のない姿勢でしばらく休息をとるようにしましょう。 慢性腰痛でお悩みの方は「再生医療」をご検討ください 慢性腰痛が続いているものの、持病などの事情で手術が難しい方は「再生医療」をご検討ください。 再生医療は、本来の機能を失った組織や細胞に対して、自分自身の幹細胞や血液を用いる治療法です。身体への負担が少なく、治療による日常生活への影響をできるだけ抑えたい方に適しています。 たとえば、「椎間板ヘルニア」や「腰椎すべり症」など、背骨の構造そのものに変化が生じているケースでは「幹細胞治療」が用いられています。 幹細胞治療とは、患者様自身の幹細胞を採取して培養した後、痛みの原因となる部位に注射する再生医療のひとつです。 腰の痛みに関する再生医療についてもっと詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてみてください。 まとめ|腰痛改善に温泉を活用しよう 慢性腰痛の緩和には、温泉の温熱効果で血行を促進させ、筋肉の緊張を和らげるのが有効です。 ぬるめのお湯にゆっくり浸かれば、腰への負担を抑えながらリラックスできます。 ただし、急性腰痛や強い痛みがある場合は無理をせず、まずは専門医に相談しましょう。 また、手術に頼らず慢性腰痛を改善したい方には、再生医療という選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご利用ください。 参考文献 (文献1) 温泉の治療と健康増進の効果に関する無作為化比較試験のシステマティック・レビュー|日本温泉気候物理医学会雑誌 (文献2) お風呂の効能を知る!|京都市上下水道局 (文献3) 温泉の温熱効果で健康になろう!!|日本温泉協会 (文献4) 温泉で注意すること(入浴編)|日本温泉協会 (文献5) 生活習慣病などの情報|厚生労働省
2025.12.31 -
- 脳卒中
- 頭部
「最近、会話が噛み合わないと感じる」 「簡単な話が理解できず、人間関係に支障をきたしている」 言葉が通じず会話が成り立たなくなると、多くの方はまず認知症を疑います。しかし、会話や言葉の意味が理解しにくくなる原因として、ウェルニッケ失語症(感覚性失語)と呼ばれる失語症の一種が存在します。 ウェルニッケ失語症(感覚性失語)は、脳の言語理解に関わる領域が障害されることで、言葉の意味の理解が難しくなる失語症のひとつです。原因となる脳の病気が進行したり再発したりすると、認知機能や運動機能にも影響が及ぶおそれがあります。 本記事では、現役医師がウェルニッケ失語症について詳しく解説します。 ウェルニッケ失語症の原因 ウェルニッケ失語症の治療法 ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント 記事の最後にはよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ウェルニッケ失語症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ウェルニッケ失語症(感覚性失語)とは 項目 内容 原因 言語理解に関わる脳領域(ウェルニッケ野)の損傷 主な症状 流暢だが意味の伝わりにくい発話、言葉の理解困難、言い間違いの頻発 自覚の有無 発話内容や理解の問題に対する自覚の乏しい傾向 知能・記憶 知能や記憶が保たれ、他の認知機能は比較的保たれる傾向 誤解されやすい点 認知症と誤認されやすいが、主体は言語機能の障害 よく困る場面 家族との会話、電話応対、テレビ視聴での理解困難 対応のポイント 早期診断とリハビリテーション開始、医師への相談 (文献1)(文献2) ウェルニッケ失語症は、言葉を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)が損傷されることで起こる失語症です。話す量は多く流暢ですが、言葉の選び方や内容がちぐはぐになり、相手に意味が伝わりにくくなります。 音としての言葉は聞こえているものの、意味と結びつきにくいため、会話がかみ合わず認知症と誤解されることもあります。外見や日常動作からは気づきにくいため、会話の様子を注意深く観察することが重要です。 治療は、原因となる脳の病気への対応と言語理解を高める訓練を組み合わせ、日常生活での工夫や環境調整も行いながら進めていきます。 ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の違い 項目 ウェルニッケ失語症 ブローカ失語症 障害される部位 左側頭葉の言語理解の領域 左前頭葉の言語産出の領域 発話の特徴 流暢だが意味の伝わりにくい発話 言葉が出にくく非流暢な発話 言葉の理解 聞いた内容の理解が難しい傾向 聞いて理解する力は比較的保たれる 読み・書き 文章の理解や書字が難しい傾向 読む力は残るものの、書字が難しい傾向 会話の印象 話は多いが、内容が支離滅裂 話したいが言葉が出ず短い発話 本人の自覚 問題を自覚しにくい傾向 話せないもどかしさを自覚しやすい 伝わりにくさ 伝えても理解されにくい 理解できるが、表現が困難 リハビリの方向性 言語理解の再獲得と意味処理の訓練 発話生成の練習と伝達手段の確立 (文献3)(文献4) ウェルニッケ失語症の特徴は、言語理解の障害により流暢に話せても意味が伝わりにくくなることです。一方、ブローカ失語症の場合、理解は保たれるものの、言葉が出にくく非流暢な話し方になります。 両者は損傷部位が異なるため、症状や必要な支援も異なります。違いを把握し、適切なリハビリやコミュニケーション方法を医師の指導のもと選択しましょう。 以下の記事では、ブローカ野とウェルニッケ野の違いを詳しく解説しています。 ウェルニッケ失語症の症状 症状 詳細 言葉の意味が理解できない 聞こえた言葉や文章の内容が正しく理解できない状態 話す内容がまとまらない 流暢に話せるが意味が通じず支離滅裂になりやすい状態 症状への自覚が乏しい 発言の誤りや会話の不適切さに気づきにくい傾向 ウェルニッケ失語症では、脳の言語理解を担う領域が損傷されるため、聞こえた言葉の意味がつかみにくくなり、会話がかみ合いにくくなります。 発話そのものはスムーズでも、言葉の選び方や内容がまとまりにくく、支離滅裂な印象になりがちです。さらに、自分の発言の誤りや会話のずれに気づきにくいため、ご本人と周囲との間で認識のギャップが生じやすいことも特徴です。 言葉の意味が理解できない ウェルニッケ失語症は、言語理解を担う左側頭葉(ウェルニッケ野)の損傷によって生じます。 会話がかみ合わない、的外れな返答をする、話は流暢でも意味が通じない、読み書きが困難になるといった症状が現れるのが特徴です。 左側頭葉(ウェルニッケ野)は耳や目から取り込んだ言語情報に意味を付与する役割を担っているため、損傷が起こると音声や文字そのものは認識しても、その内容の理解は難しくなります。 こうした症状は、言語情報を受け取って解釈し、適切に応答するまでの過程で行われる「意味づけ」が途絶えることによって生じると考えられています。 話す内容がまとまらない ウェルニッケ失語症では、言語の意味を処理する機能が障害されるため、流暢に話せても内容がまとまらず理解しにくくなるのが特徴です。 言い間違いや実在しない言葉が混ざることも多く、話は長くても相手に伝わる情報が少ない「空虚な発話」と呼ばれる状態になることがあります。 ご本人は症状を自覚しにくいため、周囲が戸惑いやすい一方で、適切な言語訓練を継続することで、会話のわかりやすさが改善していく例も報告されています。 症状への自覚が乏しい 項目 詳細 障害される部位 言葉の意味を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)の損傷 自覚しにくい理由 自分の言葉の誤りや会話のズレを認識しづらい 症状の背景 音声の認識や発声は保たれるため、「自分は話せている」と認識しやすい 主な問題点 言葉の意味処理が障害され、問題の所在を自分で把握しにくい状態 ウェルニッケ失語症では、言葉の意味を処理する脳の領域が障害されるため、自分の発言の内容や相手の反応を正しく把握しにくくなります。 音声の認識や発話は保たれるため、ご本人は「話せている」と感じやすく、発話内容の誤りに気づきにくい傾向があります。 ウェルニッケ失語症の原因 原因 詳細 脳梗塞による左側頭葉の損傷 言語理解を担う領域への血流障害による神経細胞の損傷 脳出血によるウェルニッケ野の障害 出血による圧迫や破壊で生じる言語中枢の機能低下 その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 腫瘍や外傷、炎症による言語領域への影響 言葉の意味を理解する脳の領域が傷つくと、ウェルニッケ失語症が生じます。主な原因は、脳梗塞による血流障害や脳出血による出血・圧迫で、神経細胞の機能低下によって起こります。 そのほか、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも同じ領域が障害されることがあり、原因によって治療方針が大きく異なるため、画像検査などによる評価が欠かせません。 ウェルニッケ失語症は認知症とは性質が異なりますが、適切なリハビリテーションにより言語機能の改善がみられる場合があります。 脳梗塞による左側頭葉の損傷 ウェルニッケ失語症は、脳梗塞により左側頭葉後部が障害されることで生じます。脳梗塞は血管が詰まり血流が途絶える疾患で、とくに中大脳動脈後方枝が閉塞すると、神経細胞が急速に機能不全に陥ります。 左側頭葉後部には言語理解を担うウェルニッケ野があり、右利きでは約95.5%、左利きでは約61.4%の人が言語中枢を左半球に持つため、この領域の損傷が言語障害に直結します。 脳梗塞では、発症から短時間のうちに不可逆的な変化が進行するため、できるだけ早期に血流を再開させる治療が重要です。 以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 脳梗塞後遺症で性格が変わる?主な変化と原因を解説 脳出血によるウェルニッケ野の障害 脳出血は、長期の高血圧により脳血管が破裂し、周囲の脳組織に出血が広がる疾患です。左側頭葉後部のウェルニッケ野周辺で出血が起こると、血腫による直接的な圧迫と周囲の浮腫により神経細胞が損傷されます。 高血圧性脳出血の好発部位である被殻や視床からの出血が拡大した場合や、ウェルニッケ野を栄養する後大脳動脈分枝の細動脈が破綻した場合に、この領域が障害されます。 出血した血液成分が神経毒として働き数時間で細胞死が進行し、とくに急性期の血腫拡大が症状をさらに悪化させるため、血圧管理と早期の止血処置が不可欠です。 以下の記事では、脳出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 脳出血で後遺症なしの確率は?発症後の意識レベルによる予後や余命を解説 その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 原因 障害の起こり方 主な特徴 発症の経過 脳腫瘍 腫瘍の増大によるウェルニッケ野の圧迫・血流障害 浮腫や出血を伴い、ゆるやかに言葉の理解が低下 徐々に進行することが多い 頭部外傷 衝撃による脳の揺れや打撲でウェルニッケ野を損傷 出血や脳のむくみにより神経細胞が圧迫 怪我の後、数日以内に症状出現 脳炎 ウイルス感染による炎症や腫れでウェルニッケ野が障害 発熱や頭痛に続き急な言葉の障害が出現 数時間〜数日の急速な発症 (文献5) 脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも言語理解を担う部位が損傷し、ウェルニッケ失語症が生じることがあります。これらは脳卒中と異なり、急激に発症する場合、もしくは徐々に進行する場合もあるため、日常の変化に注意が必要です。 言葉の理解や会話の様子に違和感を覚えた場合は、画像検査と言語評価が必要です。また、治療の基本方針は、原因疾患への対応と言語症状へのリハビリテーションを並行して行います。 以下の記事では、脳腫瘍及び、脳炎の後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳膿瘍の手術で起こりうる後遺症を医師が解説|術後のリハビリ方法も紹介 脳炎で起こりうる後遺症を医師が解説|回復の見込みについても紹介 ウェルニッケ失語症の治療法 治療法 詳細 基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 原因となる疾患を治療し、脳機能の悪化を防ぐ リハビリテーション(言語理解の再学習など) 言語理解や表現を回復する訓練による機能改善の促進 コミュニケーション支援 身振りや文字、環境調整による意思疎通の補助 脳損傷に対する再生医療 幹細胞治療などによる損傷部位の機能回復を目指す ウェルニッケ失語症の治療では、まず脳梗塞や脳出血、脳炎などの基礎疾患を適切に治療し、脳機能の悪化を防ぐことが重要です。 その上で、言語理解や表現力を回復するためのリハビリテーションを継続し、身振りや文字などを活用したコミュニケーション支援を組み合わせることで、日常生活での意思疎通を補います。 近年、幹細胞を用いた再生医療に関する研究も進められていますが、現在のところ適応となる病態や条件が限られており、実施している医療機関も多くはありません。 利用を検討する際は、医師に相談し、適応条件や得られる可能性のある効果や考えられるリスクなどについて十分な説明を受けた上で判断することが大切です。 以下の記事では、ウェルニッケ失語症の原因となる脳梗塞の治療について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞の後遺症は治る?治療法や種類・症状別に医師が解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 基礎疾患 詳細 脳梗塞 血栓溶解療法により血流を回復し神経細胞の壊死を抑える対応 脳出血 血腫除去により脳への圧迫を軽減し二次損傷を防ぐ対応 脳炎 抗ウイルス薬やステロイドで炎症や浮腫を抑え神経細胞を保護する対応 脳腫瘍 手術や放射線などで腫瘍を縮小し言語中枢への圧迫を解除する対応 ウェルニッケ失語症は、言語理解に関わる脳領域が損傷されることで起こるため、まずは原因となる基礎疾患を適切に治療することが重要です。 脳梗塞では、血流をできるだけ早く回復させて神経細胞の障害を最小限に抑えることが治療の中心となります。脳出血では、必要に応じて血腫を除去し、周囲の脳への圧迫を軽減することが目標となります。 脳炎や脳腫瘍では炎症や圧迫を取り除き、神経細胞の機能を守ることが目的です。これらの治療により、言語機能の改善に向けた土台が整い、リハビリの効果が高まりやすくなります。 以下の記事では、脳梗塞のリハビリについて詳しく解説しています。 リハビリテーション(言語理解の再学習など) リハビリ内容 目的・特徴 絵カードや写真を使う練習 物の名前をいう力や言葉を思い出す力の向上 短い文章の聞き取りと応答 聞いた内容を理解し、簡単に返事する力の練習 絵や映像を言葉で説明 内容を整理して言葉で伝える力の強化 書く練習(段階的) 単語や文を書く力を少しずつ回復 ジェスチャーやノートの活用 言葉以外の手段で意思を伝える補助 家族・介護者への指導 わかりやすい話し方や環境づくりの支援 ウェルニッケ失語症では、脳の神経可塑性(しんけいかそせい)により損傷後も新しい回路を形成できるため、言語リハビリテーションが有効です。 言語聴覚士は検査結果に基づいて訓練内容を計画し、音声の識別や語彙の再学習などを行い、言語理解の回復を目指します。 急性期は意思疎通手段の確保、回復期は意味理解や文の処理を高める訓練が中心となります。 また、家庭での短時間の練習も大切です。音読やメモ書き、家族とのゆっくりとした会話を続けることで脳が刺激され、リハビリの効果を高めることが期待できます。 とくに発症後12カ月以内は言語機能が回復しやすい時期とされており、この期間に集中的なリハビリテーションを行うことが有効と報告されています。 コミュニケーション支援 方法・視点 詳細 間違い指摘を避ける 自尊心を保ち、会話意欲を維持する支援 「はい・いいえ」質問とジェスチャー 理解負荷を減らし、意思確認を容易にする支援 非言語手段の併用 絵や描画などを組み合わせ、伝達成功率を高める支援 意思汲み取りと成功体験の重視 伝えられた喜びを感じさせ、発話意欲を高める支援 言葉が通じにくい経験が続くと会話への意欲が低下しやすくなるため、相手の表現を否定せず意思疎通しやすい環境を整えることが大切です。 単純な質問やジェスチャーを組み合わせると、理解の負担を軽減できます。成功体験が増えることでコミュニケーションが円滑になります。 また、絵や文字などの非言語的手段を活用すると、伝える手段が広がり生活の質が向上します。 周囲の工夫により会話参加の意欲やリハビリの効果が高まることが期待されるため、できないことに対しても根気よく長期的な視点で取り組むことが大切です。 脳損傷に対する再生医療 ウェルニッケ失語症に対する治療の選択肢として、再生医療を用いる取り組みが検討される場合があります。 脂肪由来の幹細胞は、体内で他の細胞に変化する分化能や、生体内環境に作用する働きが報告されており、脳の損傷部位に関連した研究が進められています。 再生医療は、損傷した脳組織の修復や機能回復を目的として検討されている治療法です。しかし、疾患の状態によっては適用できない場合も多く、実施する医療機関も限られるため、希望する場合は医師に相談し、内容を十分に確認しましょう。 以下の記事では再生医療について詳しく解説しています。 ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント 悪化を防ぐためのポイント 詳細 基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 血圧管理や生活習慣改善による脳血管障害の再発予防 リハビリテーションを早期に開始し継続する 言語機能の維持と回復のための継続的な訓練 家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 理解しやすい環境づくりによる意思疎通の促進 ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血といった基礎疾患が再発すると症状が悪化する可能性があります。そのため、血圧管理や生活習慣の見直しが重要です。 言語リハビリテーションは早期に開始して継続することで機能維持につながります。また、家族や周囲が適切なコミュニケーション方法を理解し環境を整えることで、日常の意思疎通が円滑になり患者の不安や負担が軽減されます。 基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 観点 詳細 再発でウェルニッケ野の二次損傷が起きる 追加の血流障害や圧迫で言語理解機能が低下する可能性 再発率が高い 危険因子の放置による脳梗塞・脳出血の再燃リスク 服薬・生活習慣管理で再発抑制が望める 血管保護により再発リスクを低下させ残存機能を守る取り組み 定期通院で早期発見・基礎疾患を防ぐ 画像検査で血管の状態を把握し発作を未然に防ぐ取り組み (文献6) ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血が再発すると新たな脳損傷が生じ、言語理解機能がさらに低下する可能性があります。高血圧や糖尿病などの危険因子を管理し、服薬や生活習慣の改善を継続することが重要です。 また、定期的な通院によりMRIや血管検査を受けることで、再発の兆候を早期に捉えられます。再発予防は、残存する言語機能を守り、リハビリテーションの効果を維持するための重要な取り組みです。 【関連記事】 脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものとは?理想的な食事の摂り方 脳出血は再発する?再発率や血圧管理を含む予防法を解説 リハビリテーションを早期に開始し継続する リハビリテーションの早期開始と継続は、ウェルニッケ失語症の回復に極めて重要です。 脳には損傷後も神経回路を再編成する可塑性(かそせい)があり、早期から言語刺激(聞く・話す・読む・書く)を積極的に行うことで脳の再編成を促し、言語機能の回復が得られやすくなります。 実際、早期リハビリの有益性を示す報告があります。(文献7) 研究では、発症後約10日〜3カ月までに言語機能の改善が著しく、発症から6カ月頃まで改善が続くとされています。この時期に集中的な訓練を行うことは効果的です。 慢性期であっても、高頻度・高強度のリハビリにより日常会話能力が改善した報告があり、これらの介入は効果的です。(文献8) さらに、早期リハビリは廃用症候群(筋力低下、関節拘縮など)の予防にもつながります。(文献9) 継続的なリハビリにより、完全回復に至らなくても補助的コミュニケーション手段と組み合わせて日常生活で使える言葉を取り戻せる可能性があり、言語聴覚療法(SLT)が失語症後の機能改善に有効です。(文献10) 家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 観点 詳細 会話意欲低下を防ぎ言語機能を維持する 指摘を避けジェスチャーを併用し成功体験を増やす支援 二次的合併症(うつ・孤立)を防ぐ 過ごしやすい環境づくりによる心理的安定の確保 家族負担を軽減し長期継続を可能にする 医師の助言による適切な関わり方の習得 (文献11) ウェルニッケ失語症では、言葉が伝わらない経験が続くと会話を避けるようになり、言語機能の低下につながることがあります。 家族が誤りの指摘を控え、ジェスチャーや簡潔な表現を取り入れることで日常生活での成功体験が増え、発話意欲を保ちやすくなります。 また、安心してやり取りできる環境は、うつや孤立といった心理的な悪化を防ぐ上で大切な取り組みです。さらに、言語聴覚士による家族教育を受けることで適切な関わり方を学べるため、支援の負担が軽減され長期的に続けやすくなります。 ウェルニッケ失語症の症状が出た際は早期に受診しよう ご家族が急に言葉を理解できなくなったり、会話が噛み合わないと感じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 ウェルニッケ失語症は、脳梗塞や脳出血などの重大な脳疾患を原因として発症することが多く、早期の診断と治療が求められます。 とくに脳梗塞や脳出血では発症から治療開始までの時間が治療効果に影響するため、医療機関の受診が重要です。 ウェルニッケ失語症の症状でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、ウェルニッケ失語症の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は幹細胞を用いた治療のひとつで、脳機能回復を目指した研究が進められています。リハビリとの併用による相乗効果が期待されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 ウェルニッケ失語症に関するよくある質問 ウェルニッケ失語症は完治しますか? ウェルニッケ失語症では、障害された部位や範囲によっては、元の状態までの回復が難しい場合もありますが、早期から言語リハビリテーションを行うことで、会話能力の改善が期待できます。 とくに発症後2週間で自然回復が最大となり、12カ月で約40%の改善が見込まれると報告されています。 言語聴覚士による訓練を継続することで日常会話が可能になる例もみられますが、症状や損傷範囲には個人差があります。そのため、再発予防や家族のコミュニケーション支援を含めた長期的な取り組みが大切です。 ウェルニッケ失語症の平均寿命は? ウェルニッケ失語症そのものに特有の平均寿命は示されていません。 ただし、脳卒中により失語症を発症した患者は、失語のない患者と比較して死亡率が高く、機能回復率が低いとする報告があります。(文献12) 一方で、適切なリハビリテーションや支援、合併症の管理を継続することで、長期にわたり生活機能を維持できる可能性があります。 これらは寿命そのものを示すものではなく、予後や生活の質に関する指標として理解することが大切です。 ウェルニッケ失語症の家族との向き合い方を教えてください ウェルニッケ失語症の方を支える際は、失語が言語の障害であり、人格や知性が変わるわけではないことを理解し、尊重した関わりが重要です。 伝える際は短くゆっくり話し、簡単な言葉やジェスチャー、絵カードを併用すると意思疎通がしやすくなります。 質問は「はい・いいえ」や選択式が有効です。返答に時間がかかるため急かさず、静かな環境で落ち着いてやり取りをしましょう。 絵や筆談などの補助手段を活用し、判断や意思決定は可能な範囲でご本人に任せることで自立性を支えられます。また、ご家族自身も専門家や支援団体を利用し、負担を軽減することが大切です。 ウェルニッケ失語症と診断された際に受けられる助成制度はありますか? ウェルニッケ失語症は、条件を満たす場合に身体障害者手帳(音声・言語機能障害)の対象となります。また、障害者総合支援法や介護保険制度に基づき、補装具・福祉用具の助成や意思疎通支援などを利用できる場合があります。 ウェルニッケ失語症で利用できる主な助成制度は以下です。 制度名 内容 申請先・対象 身体障害者手帳 3・4級で医療費助成、税制上の優遇措置、コミュニケーション機器の給付 市区町村窓口 障害者総合支援法 補装具(意思伝達装置)・日常生活用具(AAC機器)の支給・貸与 市区町村窓口 介護保険 福祉用具貸与、訪問リハビリ、言語支援機器の利用 要介護認定者 意思疎通支援事業 支援者派遣、道具や絵を用いたコミュニケーション支援(無料) 市区町村(地域生活支援事業) 障害年金・就労支援 障害基礎年金、就労移行支援、復職時の配慮 年金事務所・支援機関 (文献13)(文献14) 制度は自治体によって異なります。具体的な利用条件や手続きについてはお住まいの自治体に相談しましょう。 参考文献 (文献1) Wernicke's Aphasia (Receptive Aphasia)|Cleveland Clinic logo (文献2) Wernicke’s Aphasia|the Aphasia library (文献3) 失語の種類|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献4) 失語症|社会福祉法人恩賜財団済生会 (文献5) 失語|MSDマニュアルプロフェッショナル版 (文献6) 脳卒中の再発予防|脳卒中療養支援シリーズ (文献7) Early Aphasia Rehabilitation Is Associated With Functional Reactivation of the Left Inferior Frontal Gyrus: A Pilot Study|Go to homepage (文献8) Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed® (文献9) Ⅶ.リハビリテーション (文献10) Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed® (文献11) 失語症者の家族から見た失語症状の認識に関する検討|川崎医療福祉学会誌 (文献12) Epidemiology of Aphasia Attributable to First Ischemic Stroke: Incidence, Severity, Fluency, Etiology, and Thrombolysis|American HeartAssociation. (文献13) 障害者支援機器の活用ガイドブック|障害者自立支援機器の活用のための支援体制構築の活性化に向けた調査研究 (文献14) 厚生労働省|意思疎通支援
2025.12.29






