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「歩くと足がしびれて休まないと進めない」 「このまま歩けなくなったらどうしよう」 年齢を理由に放置していたら症状が進み、今さら治療しても手遅れなのではと不安に思う方もいるでしょう。 脊柱管狭窄症は、放置すると神経への圧迫が進み、回復が難しくなる疾患です。しかし、早期に治療を始めれば症状の改善が期待できます。 本記事では、脊柱管狭窄症が手遅れになるリスクについて詳しく解説します。治療法や予防法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 当院リペアセルクリニックでは、電話相談も実施しております。脊柱管狭窄症の症状が手遅れなのか不安な方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 脊柱管狭窄症を放置して手遅れになるリスク 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されて起こる疾患です。 脊柱管狭窄症を放置すると、神経への圧迫が徐々に強まり、日常生活に深刻な支障をきたすようになります。最初は腰や脚の軽いしびれ程度でも、進行すると歩行困難や排尿障害など取り返しのつかない症状へと悪化するケースもあるため、注意が必要です。 脊柱管狭窄症を放置すると起こるリスクを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。 歩行障害 脊柱管狭窄症が進行して手遅れに近づくと現れる症状の1つが「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」の悪化です。間欠性跛行とは、歩いて足に痛みやしびれが生じた際に、少し前かがみで休むと症状が和らぎ再び歩けるようになる状態です。 初期では15分ほど歩けた状態でも、放置すると10分、5分と連続して歩ける時間が短くなっていきます。最終的には、家の近所のゴミ出しやスーパーでの短い買い物など、ごくわずかな距離でさえ、途中で何度も立ち止まらなければ移動できなくなります。 この状態は、単に移動が不便になるだけではありません。外出そのものが億劫になり、自分の足で好きな場所へ行けるという、当たり前だった自由が失われる深刻な障害です。 足の筋力低下・麻痺 神経への圧迫が長期間にわたって続くと神経そのものがダメージを受けるため、足の筋力が徐々に低下し、やがて麻痺に至る危険性があります。 初期症状のサインの具体例は、以下のとおりです。 自分では意識していないのにスリッパが脱げる カーペットの縁など、何もないはずの場所でつまずく 症状がさらに進行すると、足首がだらりと垂れ下がったままになる「下垂足(かすいそく)」という状態になり、歩行が著しく難しくなります。最終的には、足がほとんど動かせなくなり、車椅子が必要になるケースも珍しくありません。 転倒による骨折のリスクも格段に高まり、自立した生活を維持するのが困難になる「手遅れ」といえる状態です。 強い痛み 脊柱管狭窄症は慢性的な痛みが続きますが、進行すると症状が一層強くなり、安静にしていても痛みやしびれが続くようになります。 脊柱管狭窄症の痛みは長時間立つ・歩く・背筋を伸ばすなどの動作で増し、座るとやや楽になるのが特徴です。 しかし、放置すれば痛みが慢性化し、夜間も眠れないほど強まる場合があります。安静にしていても激しい痛みが続くため、良質な睡眠を妨げたり、日常生活に影響を及ぼしたりと、心身ともに疲弊する原因につながります。 神経への圧迫が長期間続くと、神経自体の機能が低下し、治療しても痛みやしびれが残る「神経障害性疼痛」を引き起こすケースも少なくありません。 脊柱管狭窄症が進行すると、強い痛みへの恐怖から身体を動かすのを避けるようになり、結果として筋力低下や症状を悪化させます。 排尿・排便障害 脊柱管狭窄症が進行すると、膀胱や直腸のコントロールが難しくなり、排尿・排便障害を引き起こします。排尿・排便障害の原因は、脊柱管のもっとも下部に位置する神経の束である「馬尾(ばび)神経」の圧迫です。 具体的な症状は、以下のとおりです。 尿意を感じにくい トイレが近くなる 残尿感がある 失禁 便意を感じられない 便秘 排尿・排便に関する症状が出現した場合、手術などの治療を早急に受ける必要があります。放置すれば、自力での排泄が困難になる可能性もあるため、ただちに専門医による診断と治療が必要です。 【手遅れになる前に確認】脊柱管狭窄症の重症度評価 脊柱管狭窄症は、症状の進行度や代表的な症状である「間欠性跛行」を目安に軽度から最重度まで4段階に分けられます。それぞれの進行度と症状は、以下のとおりです。 進行度 主な症状 歩行能力の目安 軽度 ・腰や足に痛みやしびれが出る ・少し休めば回復する 30分以上は連続で歩ける 中等度 ・間欠性跛行の症状がはっきりと現れる ・少し休まないと先に進めない 10〜20分程度の歩行で休憩が必要 重度 ・安静時でも腰や足に痛みやしびれが現れる ・足に力が入りにくい ・何もないところでつまずく 10分未満の歩行で間欠性跛行が生じる 最重度 ・足の痛みやしびれ、筋力低下が見られる ・排尿・排便障害が現れる 5分未満の歩行で間欠性跛行が生じる 軽度の症状では「年のせい」と放置するケースも珍しくありません。しかし、放置して症状が重度以上に進行した場合、神経組織は回復が難しいほどのダメージを受け始めています。 神経は一度深く傷つくと、手術しても完全に元通りになるのが難しくなるため、早期に適切な対応できるか否かが治療後の経過に大きく左右します。放置して手遅れになる前に、早めに整形外科を受診しましょう。 脊柱管狭窄症の治し方 脊柱管狭窄症の治療は、症状の重さや生活への影響度に応じて選択されます。軽度〜中等度の段階では、保存療法を中心に痛みの軽減や機能回復を目指します。(文献1) 改善が見られない場合や神経障害が進行している重度以上では、手術療法の検討が必要です。近年では、再生医療を取り入れた治療法も登場し、体への負担を抑えながら回復を促す選択肢が広がっています。 それぞれの治療方法について解説するので、参考にしてください。 保存療法 保存療法は、脊柱管狭窄症の軽度〜中等度の症状に対して行われる基本的な治療で、神経の圧迫を和らげ、痛みやしびれを軽減するのを目的としています。具体的な治療方法を以下にまとめました。 治療方法 治療内容 薬物療法 消炎鎮痛剤や血流改善薬・ブロック注射などで痛みやしびれを抑える 装具療法 コルセットを装着し、姿勢を安定させて狭窄を起きにくくする 理学療法 熱を利用して、痛みの軽減や筋肉の緊張緩和・血流を改善する リハビリ 姿勢の改善や背筋・腹筋の強化を通じて脊柱への負担を軽くする 薬物療法では、痛みに対して内服薬や湿布などの消炎鎮痛剤が処方されます。症状の程度により、血流を改善して症状を和らげる血流改善薬や、神経の炎症に働きかけるブロック注射も用いられるケースも多いです。 コルセットを装着する装具療法では、姿勢を安定させて狭窄を起きにくくできるため、痛みの軽減が期待できます。 ほかにも、温熱療法を用いた理学療法や、腹筋・背筋を鍛えて背骨を支える力を高めるリハビリも脊柱管狭窄症に対する保存療法の1つです。 保存療法は狭くなった脊柱管を元に戻す治療ではありませんが、症状を上手にコントロールし、日常生活の支障を減らすのを目的としています。 手術療法 保存療法を数カ月続けても症状の改善が乏しい場合や、あるいは歩行障害が著しく日常生活に大きな支障をきたしている場合に検討されるのが手術療法です。手術療法には、主に以下の2つが挙げられます。 手術の種類 内容 除圧術 狭くなった脊柱管内の骨や靭帯を取り除き、神経への圧迫を解消する 固定術 不安定な脊柱管やゆがんだ背骨を金属製のスクリューやボルトで固定する 除圧術は、狭窄の原因となっている骨や靭帯の一部を切除し、物理的に神経の圧迫を取り除く方法です。固定術は、背骨の不安定性を改善する方法で、除圧術と併用されるケースもみられます。 近年では内視鏡を用いた手術も普及し、体への負担が少なく入院期間も短縮されています。手術により歩行機能の改善や痛みの軽減が期待できる一方、回復には一定期間のリハビリが欠かせません。 医師と十分に相談し、手術の適応を慎重に判断するのが重要です。 手術療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 再生医療 再生医療は、自身の脂肪から抽出した成分を利用して、組織の修復能力を高め、痛みの改善を目指す新しい治療の選択肢です 当院では、脂肪から採取した幹細胞を脊髄腔内に直接注射する「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を実施しています。脊髄腔ダイレクト注射療法は、抗炎症作用や組織修復作用を持つ注入成分によって、神経周囲の環境を改善し、痛みやしびれを和らげる効果が期待されている治療法です。 体への負担が少なく、手術を避けたい方や高齢者にも適しています。脊柱管狭窄症に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報提供や簡易オンライン診断を実施しております。脊柱管狭窄症の症状にお悩みの方は、ぜひご登録ください。 脊柱管狭窄症を手遅れにしない予防法 脊柱管狭窄症の進行を食い止め、手遅れにしないためには、以下の生活習慣を見直すのが重要です。 正しい姿勢で背中への負担を減らすように意識する 適度な運動を習慣化する 腰への負担を減らす 腰を反らす姿勢は脊柱管を狭めるため、できるだけ正しい姿勢を心がけましょう。日常生活では、少し前かがみの姿勢を意識するのが有効です。 次に、腹筋や背筋といった体幹の筋肉を鍛えると、背骨を支える天然のコルセットの役割を果たし、腰への負担を大きく軽減します。なかでも、ウォーキングや水泳など、腰に負担をかけずにできる運動がおすすめです。 また、腰への負担を減らすように意識するのも、重要です。長時間同じ姿勢を避けたり、重いものを持つ際は腰を曲げないようにしたりと地道に努力すると、症状の進行を食い止める効果が期待できます。 脊柱管狭窄症は手遅れになる前に受診しよう 脊柱管狭窄症は、放置するほど神経への圧迫が進み、歩行障害や排尿障害など手遅れな状態に陥る恐れがあります。 しかし、早期発見と適切な治療で多くの症状は改善が期待できます。症状の重症度を見極め、保存療法・手術療法・再生医療などを状況に合わせて選択するのが大切です。 日常生活では、正しい姿勢や腰に負担がかからないように意識し適度な運動を習慣化すると、手遅れな状態に進行するのを防げます。「年のせいかも」と自己判断で放置せず、違和感を感じたら整形外科を受診しましょう。 脊柱管狭窄症の手遅れな状態に関するよくある質問 脊柱管狭窄症は手術しないで治すことができますか? 脊柱管狭窄症の症状のうち、軽度から中等度では、薬物療法・リハビリなどの保存療法で症状の改善が期待できます。 ただし、狭くなった脊柱管を物理的に元通りに広げて完治させるのは、手術以外の方法では困難です。とくに、歩行障害や排尿障害が現れた場合は、神経の損傷が進んでいる可能性があり、保存療法での回復が難しくなります。 手術が必要な状態まで脊柱管狭窄症が進行しないようにするためにも、早めの受診が欠かせません。 脊柱管狭窄症の手術後に後遺症はありますか? 脊柱管狭窄症の手術後、多くのケースでは歩行障害や痛みの改善を実感しますが、まれに後遺症が残る場合があります。後遺症の症状は以下のとおりです。 手術後の痛み しびれや焼けるような痛み 手術後は、傷口だけでなく、周辺筋肉・関節などにも痛みが現れるケースがあります。また、手術時に神経が刺激されるため、しびれや痛みを伴う場合があるのも事実です。 手術は神経の圧迫を除去する目的で実施されますが、傷ついた神経を完全に回復できるわけではありません。ただし、後遺症は時間とともに改善するケースも多く、リハビリを継続すると機能回復を促せます。 痛みが強い場合は、我慢せずに主治医に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 腰部脊柱管狭窄症の診断治療|日本医科大学整形外科学教室
2025.12.13 -
- その他、整形外科疾患
加齢や閉経をきっかけに「骨密度が低下している」と指摘され、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。 骨が弱くなる病気には代表的なものとして「骨粗鬆症」と「骨軟化症」があります。これらは一見よく似ているものの、原因や症状、治療のアプローチは決して同じではありません。 自己判断で放置すると必要な治療が遅れる恐れがあるため、専門医の診断を受けることが大切です。 この記事では、骨軟化症と骨粗鬆症の違いと診断方法や治療・予防のポイントまで詳しく紹介します。「自分はどちらに当てはまるのか知りたい」「骨の状態を今より良くしたい」という方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 骨軟化症や骨粗鬆症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 骨軟化症と骨粗鬆症における症状の違い 骨軟化症と骨粗鬆症はいずれも骨が弱くなる病気ですが、両者の特徴や症状には以下のような違いがあります。(文献1)(文献2) 骨軟化症 骨粗鬆症 特徴 骨はつくられるものの、カルシウムがうまく沈着せず骨が柔らかくなる 骨密度が低下する 症状 ・初期は無症状な場合が多い ・骨が痛む ・進行すると筋力低下や歩行障害が見られる ・初期は無症状な場合が多い ・骨折しやすくなる ・背中が丸くなる ・身長が縮む 早期対応につなげるために、まずは両疾患の特徴を整理しましょう。 骨軟化症|骨が柔らかくなる病気 骨軟化症とは、骨を硬くするカルシウムやリンが十分に沈着せず、骨が固まらない状態になる病気です。 骨量は保たれていても、石灰化が不十分なため、柔らかく変形しやすくなります。 主な原因は以下のとおりです。(文献1) ビタミンD不足 腸のトラブルによるリン吸収の低下 腎臓の働きが低下したことで起こる低リン血症 FGF23(血中リン濃度を下げるホルモン)の過剰な働き これらの影響で骨の石灰化に必要なミネラルが不足し、骨が十分に硬化しない状態になります。 その結果、全身の骨痛、筋力低下による歩行障害、骨折のしやすさなどの症状が現れます。放置すると日常生活に大きな影響が出るため、早めの受診と適切な治療が重要です。 骨粗鬆症|骨密度が低下になる病気 骨粗鬆症は、骨の強度が低下することで骨がもろくなる病気です。 骨の強さは「骨密度」と「骨質」の2つで決まり、その強さに影響する割合は、一般的に骨密度が約70%、骨質が残りの約30%とされています。(文献2) 人の骨は普段から「壊す働き(骨吸収)」と「つくる働き(骨形成)」を繰り返しています。しかし、骨吸収が骨形成を上回ると骨密度が低下するメカニズムです。(文献3) 骨吸収と骨形成のバランスが崩れる主な原因は次のとおりです。(文献4) 加齢 閉経による女性ホルモンの減少 カルシウム不足 運動量の低下 ステロイド薬の長期使用 自覚症状がないまま進行することも多く、気づいたときには背骨の圧迫骨折や手首や大腿骨の骨折、腰背部痛などが生じていることもあります。 日常のちょっとした動作や軽い転倒でも骨折しやすくなるため、予防と早めの検査が大切です。骨粗鬆症の症状やセルフチェックについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 骨軟化症と骨粗鬆症の診断基準の違い 骨軟化症と骨粗鬆症は、症状が似ていても診断に用いる主な検査方法が異なります。 骨軟化症|血液検査とレントゲン 骨粗鬆症|骨密度検査 本章では、それぞれの診断方法の特徴を解説し、さらに画像検査で見られる違いについても紹介します。 受診前に「どの検査が行われるのか」を把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。 骨軟化症|主に血液検査とレントゲン 骨軟化症であるかどうかを判断する際は、主に血液検査とレントゲン(X線検査)を用いた評価が行われます。 なかでも血液検査においては、以下に示すような数値の変動が診断の重要な手がかりとなるでしょう。(文献1) 高骨型アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇 リンの低下(低リン血症) 血中25-水酸化ビタミンDの低値(ビタミンD欠乏性骨軟化症の場合) 一方、画像検査では「Looser帯」と呼ばれる骨の小さなヒビのような像が確認されるケースも少なくありません。また、血液検査とレントゲンだけでは判断が難しい場合、必要に応じて骨生検を行い、石灰化不良の状態を直接確かめることで確定診断につなげることもあります。 骨粗鬆症|主に骨密度検査 骨粗鬆症は、骨密度測定(DXA法)を中心とした検査で、以下のいずれかに該当すると診断されます。(文献5) 骨密度に限らず、背骨または大腿骨の脆弱性骨折がある 背骨と大腿骨以外の箇所の脆弱性骨折があり、YAMが80%未満である 脆弱性骨折はないが、YAMが70%以下またはSD値-2.5以下である 腰椎や大腿骨付近部の骨密度を測定し、脆弱性骨折の有無を加味した上で、若年成人平均値(YAM)と比較して評価します。なお、脆弱性骨折とは、強い衝撃がなくても、日常のちょっとした動作(転倒・つまづき・尻もちなど)で起こってしまう骨折のことです。 さらに血液検査で骨形成マーカーや骨吸収マーカーなどの骨代謝マーカーを測定し、現在の骨代謝バランスを確認することもあります。 より詳しい骨粗鬆症の検査方法について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 骨軟化症と骨粗鬆症の違いは画像検査でもわかる 骨軟化症と骨粗鬆症は、画像検査によっても違いが顕著に現れます。 骨は、硬く石灰化した部分と、骨がつくられる前段階にある柔らかい「類骨(るいこつ)」とで構成されているのが通常です。 骨軟化症のレントゲン画像は以下のとおりです。 骨軟化症の画像検査では、小さな不完全骨折線(Looser's zone)が特徴として見られます。 一方、骨粗鬆症のX線画像は、以下のとおりです。 骨粗鬆症の場合、骨の量(骨密度)が低下し、骨の内部が一部空洞の状態に陥っています。 そのためX線画像上では、次のような変化を読み取ることができるでしょう。 骨の網目がはっきり減る 骨全体の透過性が増し、画像が黒っぽく見える レントゲン画像だけでは判断が難しい場合でも、骨密度測定や血液検査を組み合わせることで、識別診断が可能です。 骨軟化症と骨粗鬆症の治療法の違い 骨軟化症と骨粗鬆症の主な治療方法は以下のとおりです。 骨軟化症|原因に応じた栄養補充 骨粗鬆症|骨吸収と骨形成のバランスを改善 自身でも違いをあらかじめ把握しておくことは、納得して適切な治療を受けるための助けとなります。 ここからは、それぞれの具体的な治療内容について詳しく見ていきましょう。 骨軟化症|原因に応じた栄養補充がメイン 骨軟化症の治療は、原因に応じて不足している栄養素を補うことが基本です。血液検査の結果から、ビタミンDやリンを補充するケースが多く見られます。(文献6) 普段の食生活に合わせて、病院で治療薬が処方される場合も少なくありません。骨軟化症のタイプごとに不足している栄養分を補充する方法は以下のとおりです。 骨軟化症のタイプ 栄養の補充方法 ビタミンD欠乏型骨軟化症 ・活性型ビタミンD製剤の内服 ・ビタミンDを多く含む食品の摂取 低リン血症性骨軟化症 ・活性型ビタミンD製剤の内服 ・リン製剤の投与 ・FGF23抑制薬の使用 また、薬剤や腎疾患などが原因の場合は、原疾患の治療や原因薬剤の中止・調整が行われます。 骨痛や歩行障害が強い場合は、リハビリや鎮痛剤を併用し、日常生活の維持を目指します。 骨粗鬆症|骨吸収と骨形成のバランスを改善 骨粗鬆症の治療は、最初に食事・運動などの生活改善から始まり、必要に応じて薬物療法を組み合わせます。 骨粗鬆症治療薬には、「骨を壊す働きを抑える薬」と「骨をつくる働きを促す薬」の2種類があります。状況に応じて使い分け、骨代謝のバランスを整えます。 さらに、骨の形成を助けるためにカルシウムやビタミンDを補うこともあります。(文献5) 日常生活では、荷重運動やバランス訓練が骨強度の維持に有効であり、医師から運動療法を勧められることも少なくありません。 治療効果は定期的な骨密度検査で確認し、その結果に応じて薬や治療方針を調整します。症状がなくても定期的な受診は欠かさないようにしましょう。 骨粗鬆症の治療についてより詳しくは、以下の記事もご覧ください。 【共通】骨軟化症・骨粗鬆症を予防する生活習慣のポイント 骨軟化症と骨粗鬆症はいずれも日常生活を整えることで進行を防ぎやすくなります。今すぐできる生活習慣のポイントは、以下の2つです。 食事|ビタミンDとカルシウムをバランスよく摂る 運動|定期的に日光浴と運動を行う これらを日常生活に取り入れ、骨の健康を守りましょう。 食事|ビタミンDとカルシウムをバランスよく摂る 骨の健康を保つためには、ビタミンDとカルシウムを日々の食事でバランスよく摂ることが大切です。これらの栄養素は、次のような食品に多く含まれています。(文献7) 栄養素 食品の例 ビタミンD ・魚介類(かつお、いわしなど) ・きのこ類 カルシウム ・乳製品 ・えび、かに類 ただし、食事だけでは必要量を満たしきれない場合もあります。補給が難しいと感じたら、医師に相談の上でサプリメント併用も検討しましょう。 骨粗鬆症の方におすすめの食事療法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 運動|定期的に日光浴と運動を行う 屋外での軽い運動は、日光によるビタミンD生成と骨への適度な刺激により、骨軟化症・骨粗鬆症のどちらにも有効です。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で継続してみましょう。 また、転倒予防のために、スクワットやかかと上げなどの簡単な筋トレで下半身を鍛えることも大切です。厚生労働省の報告でも、筋力トレーニングが高齢者の転倒・骨折リスクの低減につながると示されています。(文献8) このように、一見無関係に見えても日光浴や運動は骨の健康に深く関連します。ただし、骨軟化症の方は骨が柔らかくなっているため、足腰に強い負担をかける運動は控えることが大切です。 無理のない範囲で、ウォーキングなど続けやすい運動から取り入れてみてください。 骨粗鬆症の運動療法については以下の記事にて詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。 骨軟化症と骨粗鬆症の違いを理解して適切な治療や対策をしよう 骨軟化症と骨粗鬆症はいずれも骨が弱くなる病気ですが、特徴の違いから症状や治療法は異なります。 いずれの診断を受けた際も、早期発見と適切な治療が重要です。「自分はどちらに当てはまるのか」「症状が当てはまるかもしれない」と感じたら、早めに専門医へ相談しましょう。 また、骨が弱くなると膝や股関節の痛みや歩きにくさなど、関節に症状が現れるケースも少なくありません。 当院「リペアセルクリニック」では、このような慢性的な関節痛や機能低下に対し、自己細胞を用いた再生医療による改善サポートを行っています。 現在、公式LINEにて簡易診断や無料相談が可能です。「手術は避けたい」「根本的に痛みを改善したい」という方は、以下のリンクからご登録の上、お気軽にご相談ください。 骨軟化症と骨粗鬆症に関するよくある質問 骨軟化症とくる病の違いは何ですか? くる病と骨軟化症の最も大きな違いは、発症する年齢と骨の成長段階です。 「くる病」は骨の成長期にある小児に起こる病気で、「骨軟化症」は成長期が終了した成人に見られます。(文献1) どちらの病気も、骨が十分に硬くならないという点では同じ仕組みで起こります。年代によって呼び方が変わるものの、基本的には共通したメカニズムの病気と理解するとわかりやすいでしょう。 骨軟化症と骨粗鬆症は同時に起こることがありますか? 骨軟化症と骨粗鬆症は原因やメカニズムが異なる病気ですが、同時に起こることもあります。とくに高齢者や腎機能障害のある方では、栄養不良や骨代謝の乱れが重なることで、併発した症例が報告されています。(文献9) 両者が重なると骨折リスクがさらに高まり、腰椎の圧迫骨折や大腿骨近位部骨折につながることも少なくありません。気になる症状がある場合は、早めに詳しい検査を受け、専門医による総合的な評価を受けるようにしましょう。 参考文献 (文献1) 骨軟化症|一般の皆様へ|一般社団法人 日本内分泌学会 (文献2) 骨粗鬆症とは>どんな病気?>なったらどうなる|公益財団法人 骨粗鬆症財団 (文献3) 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)|厚生労働省 健康日本21アクション支援システム (文献4) 骨粗鬆症とは>どんな病気?>どんな人がなりやすい|公益財団法人 骨粗鬆症財団 (文献5) 骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン 2025 年版|骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 (文献6) ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(指定難病238)|公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター (文献7) 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年|文部科学省 (文献8) 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023|厚生労働省 (文献9) 高齢者における骨粗鬆症と骨軟化症の合併症例|整形外科と災害外科
2025.12.13 -
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「骨がもろくなってきた気がする」 「親が骨粗鬆症だったから、自分も将来が心配」 このような不安を抱えていませんか。 病院に行くほどではなくても、まずは自分でできる対策があるのか知りたいと考えている方もいるかもしれません。 骨粗鬆症は、年齢とともに骨密度が低下し、軽い転倒でも骨折しやすくなる病気です。進行を抑えるためには、普段の食事や運動などの生活習慣を見直すことが大切です。 この記事では、骨粗鬆症の予防法を解説し、年代別の対策や日々の工夫、薬によるサポートまで紹介します。 当院リペアセルクリニックでは、骨粗鬆症に関するご相談や再生医療に関するご質問を公式LINEで受け付けています。 不安や疑問の解消にお役立ていただければ幸いです。 骨粗鬆症を予防する3つの方法 骨粗鬆症の予防には、骨を丈夫にする生活習慣が大切です。なかでも重要なのが、食事・運動・日光浴の3つです。順番にみていきましょう。 なお、骨粗しょう症の原因についてはこちらの記事で詳しく解説しています。 食事|カルシウム・ビタミンD・たんぱく質を意識 私たちの骨は、食べたものから作られています。 なかでも骨の主成分であるカルシウムは、不足すると骨粗鬆症のリスクが高まります。(文献1) これをサポートするのが、ビタミンDやビタミンK、そしてたんぱく質です。 意識したい栄養素と、多く含む食品を以下にまとめました。 栄養素 多く含む食品 カルシウム 乳製品・魚介類・大豆製品など ビタミンD 魚介類・きのこ類・卵など ビタミンK 納豆・葉物野菜など たんぱく質 肉類・魚介類・卵・大豆製品など 特定の食品に偏らず、さまざまな食材を組み合わせて摂取しましょう。(文献2) 運動|骨に適度な負荷をかけることが大切 骨は刺激を受けることで強くなる性質があります。そのため、骨粗鬆症の予防には運動が大切です。(文献2)とくに、継続的に骨に負荷がかかる以下のような運動が効果的です。(文献3) ウォーキング ジョギング 筋力トレーニング 筋力がつくと骨の負担が減り、転倒予防にもつながります。医師や理学療法士のアドバイスも参考にしながら、運動を心がけましょう。 骨粗鬆症におすすめの運動についてはこちらの記事をご覧ください。 日光浴|直接浴びてビタミンDを合成 骨の健康を守るには、日光にあたってビタミンDをつくることも欠かせません。 ビタミンDは、食事から摂るほかに、日光に含まれる「紫外線」を浴びたときに皮膚でもつくられる栄養素です。海外では必要量の7〜8割を日光浴でまかなえるともいわれますが、皮膚でつくられる量は季節や住む地域による紫外線量の違いや年齢、日焼け止め使用の有無などによっても異なります。 なお、晴れた日に、顔や手などの小さな範囲でも10~20分ほど日光に当たると、ビタミンDの合成に役立つとされています。(文献4) 長時間の日焼けは避けつつ、負担のない範囲で取り入れると良いでしょう。(文献5) たとえば買い物や運動など、歩くついでに日光を浴びるように意識すると、運動と日光浴、どちらも一石二鳥で取り組めます。 【年代別】骨粗鬆症を予防する具体的な対策 年齢に応じて、骨の状態や骨粗鬆症の予防に必要なケアも変わります。ここからは、年代別に骨粗鬆症の予防につながるポイントをみていきましょう。 10〜30代|骨をしっかりと育てる時期 人生における最大の骨量が決まるのは、10代の「成長期」です。10代~20代にかけて最大となった骨量は、代謝を繰り返しながら30代になってからも維持されます。 将来の骨粗鬆症リスクを減らすには、この時期にしっかりと骨を育て、維持することが重要です。 過度なダイエットや栄養不足、日光を避けすぎる生活、喫煙などは骨の成長や維持を妨げます。 若いうちこそ、バランスの取れた食事と適切な運動を習慣化し、骨の健康を意識し続けることが大切です。(文献6) 40〜50代|運動や食事を意識し始める時期 40代を過ぎると骨密度は少しずつ低下します。とくに女性は、閉経後のホルモンバランスの変化により、骨量が急激に減ることがあります。(文献2) 必要な栄養をしっかり摂取する、筋力維持を目的とした運動を習慣にするなど、これまでの生活を見直しましょう。 また、1年に1回程度は骨密度検査を受けて、自分の骨の状態を知っておくことも予防の一環になります。(文献6) 年齢に応じた対策については、骨粗鬆症の運動・注意点もチェックしてみてください。 60代以降|転倒・骨折対策を始める時期 60代を過ぎると「骨を強くすること」に加えて「転倒して骨折しないように備えること」がより大切になります。 筋力やバランス感覚が少しずつ落ちてきたり、視力や認知機能の変化が重なったりすることで、つまずきやすくなるためです。 転倒により骨折すると、活動量が減って骨への刺激が失われ、さらに骨密度が低下するという悪循環に陥ります。 ふらつきを防ぐには、無理のない範囲でウォーキングや軽い筋力トレーニングを続け、筋力をつけることが効果的です。 また、背中や腰に痛みがあれば早めに受診しましょう。骨の状態を知るために、定期的な骨量測定を受けることも、安心につながります。(文献6) 骨粗鬆症の予防のために意識したい生活の工夫 骨粗鬆症予防のためには、骨に負担をかけず、かつ刺激を与える工夫ができると理想的です。具体的には、以下2つを意識してみましょう。 ながら運動や姿勢改善で骨への刺激を意識 ストレス・睡眠不足も骨の健康に影響 毎日の生活の中で、ぜひ取り入れてみてください。 ながら運動や姿勢改善で骨への刺激を意識 運動が大切とわかっていても、忙しい毎日のなかでは時間を取るのが難しいという方も多いのではないでしょうか。 そのような方でも取り入れやすいのが、「何かをしながら運動する(ながら運動)」習慣です。 たとえば、以下のような運動があります。 歯みがき中に片足立ち バス停で待つ間かかと落としをする テレビを見ながらスクワットする こうした「ながら運動」であれば、忙しい方や運動するのを忘れがちな方でも無理なく続けられます。 また、猫背や前かがみといった姿勢は背骨に負担がかかるため、日常生活でも良い姿勢を意識するようにしましょう。 運動についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 ストレス・睡眠不足も骨の健康に影響 骨の健康というと、食事や運動ばかりに目が向きがちですが、実は「心と体のコンディション」も大切です。 たとえば、強いストレスが続いたり、睡眠不足が積み重なったりすると、体内で「コルチゾール」というホルモンが過剰に分泌されます。 コルチゾールには骨の形成を妨げる働きがあり、骨の健康に悪影響を与えることがあるのです。 ストレスや睡眠不足をできるだけ避け、心身のバランスを整えることも、骨粗鬆症の予防につながります。 夜はスマートフォンの使用を控える、決まった時間に起床する、リラックスできる音楽や香りを取り入れるなど、日常生活でできる小さな工夫を積み重ねてみてください。 「骨を守る生活」は、特別なことを頑張るよりも、心地良い習慣を続けていくことが大切です。 骨粗鬆症を予防する薬の種類 骨密度の低下が進み骨折のリスクが高い方(骨粗鬆症と診断された方)は、薬による治療も選択肢のひとつです。 骨粗鬆症の薬には、以下のような種類があります。 骨吸収を抑える薬剤 骨をつくる薬剤 補助的な薬 これらは骨粗鬆症の「治療薬」ですが、結果として骨折による体力や筋力低下を防ぎ、骨粗鬆症の進行を予防する効果も期待できます。 薬を使わずに骨粗鬆症を予防したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。 骨を守る薬剤 骨粗鬆症薬の主体は、壊す力(骨吸収)を抑えるタイプの薬です。(文献2) 私たちの骨は、常に「壊す(骨吸収)」と「作る(骨形成)」をくり返していますが、加齢やホルモンの変化により骨吸収が優位になると、骨密度が低下します。 この流れを食い止めるのが、ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸・ミノドロン酸など)や抗RANKL抗体(デノスマブ)といった薬です。どちらも広く使用されており、効果が認められています。 なお、どの薬が合うかは、現在の骨密度や生活状況、体調などによっても異なります。服用方法に注意が必要だったり、定期的な検査が必要だったりもするため、現在の状況を医師へ伝えて相談してみましょう。 骨をつくる薬剤 骨が壊れるのを抑えるだけでなく、新しくつくる力(骨形成)を高める薬もあります。これは、骨密度が著しく低く、骨折リスクが高い方によく用いられる治療薬です。 「副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド)」や「抗スクレロスチン抗体薬(ロモソズマブ)」などがあります。なお、ロモソズマブには、骨吸収を抑える効果もあるため、「作る」「守る」の両方の効果があります。(文献7) ただし、これらの薬は使用期間に上限があり、使用には条件もあるため医師の慎重な判断が必要です。 骨粗鬆症の注射については、以下の記事でも解説しています。 補助的な薬 主に食事や生活習慣を補うのに使われるのが、補助的な薬です。 単独で骨粗鬆症を治すものではありませんが、他の薬や生活改善と組み合わせることで、骨密度低下の予防効果を高められます。補助的な薬には「活性型ビタミンD3薬」や「カルシウム製剤」などがあります。(文献7) 骨粗鬆症の薬物治療は継続が重要です。効果を実感しにくいため途中でやめてしまう方もいますが、自己判断で中断せず医師の指示に従って服用を続けましょう。 骨粗鬆症を予防するには日々の工夫と医療機関のサポートが大切 骨粗鬆症は、自覚症状がないまま進行し、ある日突然の骨折で気づくケースも少なくありません。「今は大丈夫」と感じていても、日々の積み重ねと早めの対策がとても大切です。 まずは、栄養・運動・生活習慣を整えることから始めましょう。そして必要であれば、検査や治療について医療機関に相談してみましょう。 一人で悩むのではなく、専門家のサポートを受けることで、自分に合った予防法を見つけやすくなります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報提供や、簡単なオンライン診断も実施しています。 「自分の骨の状態が気になる」「どこから対策すれば良いかわからない」などのお悩みがあれば、ぜひお気軽にご登録ください。 また、骨粗鬆症の治療については、以下の記事もあわせてご覧ください。 骨粗鬆症を予防することに関するよくある質問 骨粗鬆症を予防するには日光浴は何分必要ですか? 骨の健康維持に欠かせないビタミンDは、皮膚が日光(紫外線)を浴びることによって体内でも生成できる栄養素です。 国際骨粗鬆症財団の資料によると、晴れた日に1日10~20分程度、顔や手、腕などを日光に当てることで、多くの人が必要量を合成できると報告されています。(文献4) ただし、以下のようなケースにおいては、日光からのビタミンD合成が不十分になりかねません。 冬場や曇りの日が続いているとき 日焼け止めをしっかり塗っているとき 大気が汚染されていて紫外線が十分届かないとき さらに、季節によっても得られる紫外線量には差が生じます。過度な日焼けや熱中症に気を付けながら、無理のない範囲で日光浴を取り入れてみてください。 骨粗鬆症を予防する上で食べてはいけないものはありますか? 骨に良い食べ物を意識するのも大事ですが「骨の健康を損なう可能性があるもの」を控える意識もとても大切です。 とくに以下のような食品や習慣には注意しましょう。(文献8)(文献9) 注意が必要なもの 理由やポイント 塩分 ・摂りすぎると尿と一緒にカルシウムが排泄されやすくなり、骨のカルシウムが失われる可能性がある ・加工食品や漬け物、外食のスープなどには意外と多くの塩分が含まれているため、注意が必要 リン ・肉や魚、牛乳に多く含まれ、カルシウムの吸収を妨げるといわれている ・加工食品や清涼飲料水の添加物として使用されていることもあるため、過剰摂取しないよう注意する カフェイン ・カルシウムの排出を促進したり、骨の代謝に影響を与える可能性がある これらを絶対に食べてはいけないと考える必要はありませんが、摂取の頻度や量の見直しが骨を守る第一歩になります。 参考文献 (文献1) 骨粗鬆症の予防のための食生活|厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ (文献2) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版|骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 (文献3) 骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を|厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ (文献4) Vitamin D|International Osteoporosis Foundation (文献5) 体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定-札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-|国立研究開発法人国立環境研究所 (文献6) 年代別予防のポイント|公益財団法人骨粗鬆症財団 (文献7) 治療の基本方針|公益財団法人骨粗鬆症財団 (文献8) 予防について|公益財団法人骨粗鬆症財団 (文献9) リンの働きと1日の摂取量|公益社団法人長寿科学振興財団
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「飲み薬を続けていたのに、骨密度がなかなか上がらない」「医師から注射治療をすすめられたけれど、不安がある」 このようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。 骨粗鬆症では、内服薬での効果が不十分な場合に注射薬への切り替えが検討されます。 ただし、注射薬にはいくつか種類があり、打つ頻度やあらわれやすい副作用はそれぞれ異なります。 この記事では、骨粗鬆症注射の種類や効果、副作用、値段、デメリットについて解説します。 注射治療を検討する際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 骨粗鬆症の注射について気になることがある方は、お気軽にご登録ください。 骨粗鬆症の治療において注射が有効なケース 骨粗鬆症の治療では、以下の場合に注射薬の使用が検討されます。 内服薬での治療効果が不十分である 内服薬の飲み忘れリスクがある 骨折経験がある・骨密度が非常に低い状態 注射薬を使用する理由を、詳しく見ていきましょう。 内服薬での治療効果が不十分である 内服薬で治療を続けても、骨密度の改善が見られない場合があります。 これは薬の吸収率の個人差や骨密度の程度、胃腸の状態、服用方法など、さまざまな要因が関係しているためです。 たとえば、体に吸収されにくい薬を注射タイプに切り替えると、消化管を経由せず血液中に直接届くため、より確実な効果が期待できます。(文献1) 内服薬の飲み忘れリスクがある 骨粗鬆症の飲み薬は「週1回」「月1回」など定期的に服用する必要があり、服用方法にも「起床後すぐに飲み、30分間は横にならない」といった細かいルールが指定されているものもあります。(文献2) そのため飲み忘れや飲み間違いが起きやすく、正しく服用できない状態が続くと十分な効果が得られません。 その点、医療機関での注射治療は、医師や看護師の管理のもとで実施されます。受診の必要はあるものの自宅で薬を管理する必要がないため、治療の確実性が高い点がメリットです。 とくに複数の薬を服用している方や飲み忘れが心配な方、認知症で薬の管理が難しい方などに適しています。 骨折経験がある・骨密度が非常に低い状態 骨粗鬆症の注射薬の中には、内服薬にはない強力な骨形成促進作用(骨をつくる働きを促す作用)を持つものがあります。 これらは、骨を壊す働き(骨吸収)を抑えるだけでなく、新しい骨を作る働き(骨形成)を高め、骨密度を内服薬よりも効率的に改善する効果が期待できます。 そのため、すでに骨折を経験されている方や骨密度が極めて低い方など、骨折の危険性が高い方は、注射薬による治療が有効な選択肢となり得るのです。 骨粗鬆症が進行し、大腿骨近位部(太ももの付け根)や椎体(背骨)を骨折すると、寝たきりや生活の質(QOL)の低下につながります。 こうした重篤な事態を防ぐためにも、骨折リスクの高い方には早期かつ積極的な治療が重要です。 【一覧】骨粗鬆症注射の種類と主な副作用 現在よく使われている骨粗鬆症の注射薬には、作用機序の異なる4つのタイプがあります。 それぞれ効果や副作用が異なるため、患者の状態に応じて適切な薬剤が選択されます。 薬剤名(商品名) 作用機序 主な副作用(発現頻度が高いもの) 重大な副作用(とくに注意すべきもの) テリパラチド(フォルテオ、テリボン) 骨形成促進 吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、倦怠感 ショック、アナフィラキシー、意識消失 ビスホスホネート(ボンビバ、リクラストなど) 骨吸収抑制 胃炎、頭痛、背中や関節の痛みなど 顎骨壊死、大腿骨を中心とした非定型骨折 デノスマブ(プラリア) 骨吸収抑制 貧血、湿疹、低リン酸血症、高血圧、胃炎、背中の痛みなど 低カルシウム血症、顎骨壊死、顎骨骨髄炎、アナフィラキシー、大腿骨を中心とした非定型骨折、皮膚感染症 ロモソズマブ(イベニティ) 骨形成促進・骨吸収抑制(デュアル作用) 注射部位の痛み・赤み、鼻咽頭炎、関節痛など 低カルシウム血症、顎骨壊死、顎骨骨髄炎、大腿骨を中心とした非定型骨折 骨吸収を抑える薬剤には、低カルシウム血症や顎骨壊死(がっこつえし:あごの骨が失われる状態)といった重大な副作用リスクがあるため、定期的な検査と歯科治療前の相談が重要です。 それぞれの薬の特徴を詳しく解説します。 テリパラチド:骨形成促進薬 骨形成促進薬は骨をつくる骨芽細胞(こつがさいぼう)を増やす薬で、代表薬としてテリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボン)があげられます。 フォルテオは1日1本、ペン型注射器を使用して皮下注射をおこないます。(文献3) テリボンは1回1本を週に2回自己注射、もしくは週1回通院で注射するタイプです。(文献4) なお、どちらの薬も最長24カ月(約2年)の制限があります。(文献3)(文献4) 投与直後から数時間後にかけて、一過性の血圧低下に伴うめまいやふらつきが起こることがあります。おさまるまで座った状態または横になった状態で休み、帰宅後に強い症状が出た場合は医療機関に連絡するのが望ましいでしょう。(文献5) ビスホスホネート系:骨吸収抑制薬 骨吸収抑制薬には、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑えて骨を守る作用があります。 国内でよく用いられる骨吸収抑制薬の一つが「ビスホスホネート」です。 飲み薬で良く使われるタイプですが注射剤もあり、代表的なものにはアレンドロネートとゾレドロン酸の点滴製剤、イバンドロネートの静脈内注射剤があります。(文献1) 内服薬で効果が乏しかった方や経口摂取が難しい方に対して使用される傾向です。(文献1) デノスマブ:骨吸収抑制薬 代表薬はデノスマブ(商品名:プラリア)です。(文献6) デノスマブはビスホスホネート系と同じ「骨吸収抑制薬」ですが、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤に分類され、異なるメカニズムで効果を発揮します。デノスマブは半年に1回の皮下注射で効果が持続するため、通院の手間が少なく続けやすい治療法です。(文献6) 投与を中止すると骨吸収が一時的に亢進するため、骨密度が急激に低下し、骨折リスクを高める可能性があります。(文献7) このためデノスマブの投与を中止する際は、骨吸収抑制作用を持つ別の薬に切り替え、骨密度の急激な低下を防ぐ必要があります。(文献8) ロモソズマブ:骨形成促進・骨吸収抑制併用薬 骨形成促進・骨吸収抑制併用薬とは、「骨をつくる働きを促進しながら、骨を壊す働きを抑える」という2つの作用を持つ骨粗鬆症治療薬です。 代表薬はロモソズマブ(商品名:イベニティ)という抗スクレロスチン抗体薬です。 ロモソズマブは、1カ月に1回、医療機関で2本(105mgを2本、計210mg)の皮下注射を12カ月間受けるのが一般的で、比較的短期間で骨密度を大きく増加させる効果が期待できます。(文献9) 臨床試験において、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系イベントの発生率がビスホスホネート系薬剤より高かったとの報告があり、心血管系の既往歴がある患者への投与は慎重に検討されます。(文献9) 骨粗鬆症注射のデメリット 骨粗鬆症注射は効果的な治療法ですが、以下のようなデメリットもあります。 注射薬特有の副作用や合併症のリスク 自己負担費用が高め 使用期間の制限 注射治療は効果が高い反面、継続的な医療機関への通院や経済的負担を伴います。 また、一部の薬剤では中止時のリバウンド現象や投与期間の制限があるため、長期的な治療計画を医師と十分に相談することが重要です。 骨粗鬆症の注射の値段 骨粗鬆症の皮下注射薬は種類によって費用が大きく異なります。以下に、主な皮下注射薬の費用目安(3割負担)をまとめました。 薬剤名(商品名) 注射の頻度 1カ月の薬剤費用の目安(3割負担) テリパラチド(フォルテオ) 毎日(※1本で約28日分) 約7,000円~8,000円 テリパラチド(テリボン) ※自己注射の場合 週2回 約1万4,000円~1万5,000円 ビスホスホネート 月1回もしくは年1回(製剤により異なる) 約830円~1100円 デノスマブ(プラリア) 半年に1回 約1,200円~1,300円 ロモソズマブ(イベニティ) 月1回(※2本投与) 約1万4,000円~1万5,000円 (薬価は2025年11月地点での価格) 上記は先発医薬品の価格を記載しているため、ジェネリック医薬品を使用する場合は費用が少なく済むでしょう。また、薬の費用のみの目安であるため、診察料や検査費、処方料などは別途かかります。 医療機関や地域によって費用は異なるため、事前確認をおすすめします。 骨粗鬆症治療における注射以外の選択肢 骨粗鬆症の治療は注射だけではありません。 食事や運動、生活習慣の改善といった基本的な対策に加え、再生医療という新しい選択肢もあります。 詳しく解説します。 食事内容の見直し 骨粗鬆症の予防・治療には、骨の主成分であるカルシウムとタンパク質、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの栄養素が不可欠です。 日常の食事で取り入れやすい食材は、以下のとおりです。 栄養素 主な食材 カルシウム 牛乳、チーズ、小魚、大豆製品、小松菜など タンパク質 肉、魚、卵、大豆製品など ビタミンD 鮭、さんま、きのこ類、卵黄など なかでもカルシウムは、骨粗鬆症の予防・治療に1日1000~1500mgが必要だともいわれています。(文献10) 牛乳なら約1L、プロセスチーズなら約10切分(150g)に相当します。 単一の食品だけで必要量を満たすのは難しいため、複数の食材を組み合わせて摂取しましょう。 適度な運動の習慣化 骨は、程良い力が加わることで強くなる性質があり、ウォーキングや筋力トレーニング、水中運動などが骨密度の上昇に有効と報告されています。(文献5) 運動習慣は骨を強くするだけでなく、筋力やバランス力も高めるため転倒予防にもつながります。 まずは無理のない範囲で、1日30分程度の運動を週2〜3回から始めてみましょう。 生活習慣の改善 骨を健康に保つためには、禁煙や節酒、十分な睡眠など、毎日の規則的な生活習慣が欠かせません。 喫煙は、腸からのカルシウム吸収が低下する上に尿中への排泄が増えるほか、女性ホルモンも減少しやすくなるため、骨密度を下げる要因として知られています。(文献1) 喫煙を続けている方は、大腿骨付近部骨折のリスクが女性で約1.3倍、男性で約1.6倍に高まることが報告されています。(文献1) また、アルコールを摂りすぎると必要なカルシウムが尿に排出されてしまうため、飲酒量が多いほど骨折のリスクも上昇するとされているのです。(文献1) こうしたことから、生活習慣の改善によって骨粗鬆症の進行を抑えられると期待できます。 自己の幹細胞を用いた再生医療 自分の脂肪由来の幹細胞を使った再生医療も選択肢の一つです。幹細胞が持つ組織修復能力を活性化させることで、骨の健康維持をサポートする治療法です。 当院リペアセルクリニックでは、膝や肩などの関節痛、腰部脊柱管狭窄症などに対して脂肪由来の幹細胞を使った再生医療を提供しています。 再生医療について詳しく知りたい方は、当院リペアセルクリニックの公式LINEへ登録し、情報収集にご活用ください。 骨粗鬆症の注射について正しく理解して前向きな治療を選択しましょう 骨粗鬆症の注射治療は、骨折のリスクを減らし、QOLを守るための大切な治療法です。副作用や費用といった懸念はありますが、正しい知識を持つことで不安は軽減できます。 大切なのは「治療を続けること」、そして「自分に合う方法を選ぶこと」です。 注射治療だけでなく、食事や運動といった生活改善や、再生医療を含めた複数の選択肢について、医師と一緒に自分に適した治療方針を考えましょう。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 骨粗鬆症の注射について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 骨粗鬆症注射に関するよくある質問 骨粗鬆症の注射は一生続けなければなりませんか? 薬の種類や骨密度の回復状況によって異なります。 たとえばテリパラチドは最長約2年間、ロモソズマブは最長約1年間と使用期間が決まっており、そのあとは別の治療法に切り替えるのが一般的です。(文献9) デノスマブは使用期限の上限が設けられていません。骨密度が十分に改善し安定すれば他の種類の内服薬に切り替えることもあります。 定期的に骨密度を測定しながら、医師と相談して治療方針を決めていきましょう。 骨粗鬆症の注射をやめると元に戻ってしまいますか? 治療を中断すると、骨密度が再び低下するケースがあります。 とくにデノスマブは、中止後に急激に骨密度が低下しやすいことが知られています。 このため、プラリアを中止する際は、別の骨粗鬆症薬への切り替えが必要です。 医師の指示なく自己判断でやめることは避け、必ず相談しながら治療計画を立てましょう。 骨粗鬆症の注射は痛いですか? 注射部位の痛みは個人差がありますが、通常は軽いチクッとした刺激です。 自己注射タイプ(フォルテオ、テリボンなど)はペン型の注射器で簡単に打てるよう設計されており、細い針を使用しているため、痛みは最小限で済むことがほとんどです。 医療機関での処置であれば、痛みを抑える工夫をしてくれることもあります。 いずれの場合も不安があるときは、事前に医師や看護師に相談しましょう。 参考文献 文献1 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年度版|日本骨代謝学会 文献2 薬品インタビューフォームアレンドロン酸錠35mg|一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC) 文献3 フォルテオ®皮下注キット 600μg医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会 文献4 テリボン®皮下注 28.2µgオートインジェクター医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会 文献5 テリパラチド皮下注用56.5μg医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会 文献6 プラリア皮下注 60mg シリンジ医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会 文献7 Vertebral Fractures Following Denosumab Discontinuation in Patients with Prolonged Exposure to Bisphosphonates|PubMed 文献8 骨粗鬆症の薬物療法|岡田洋右ら 文献9 イベニティ皮下注105mgシリンジ医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会 文献10 カルシウムの摂り方|公益財団法人骨粗鬆症財団
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「冬になると頭痛が増える」「外に出るとこめかみがズキッと痛む」などの経験はありませんか。 寒さで血管が急激に変化したり、筋肉がこわばったり、自律神経が乱れたりすると、頭痛が引き起こされることがあります。 とくに片頭痛や緊張型頭痛を抱えている方には、冷えが頭痛の誘因になるケースも多いでしょう。 この記事では、寒いときに起こる頭痛の原因やタイプ別の特徴、日常でできるセルフケア、そして注意が必要な症状について詳しく解説します。 不調が続く方は、リペアセルクリニックの公式LINEもご活用ください。 気になる症状があったときに、気軽に相談が可能です。まずはお気軽に登録してご活用ください。 【なぜ?】寒いと頭痛が起こる3つの原因 寒い日に頭が痛くなるのは、単なる気のせいではありません。 冷たい空気や風、氷などに触れると、頭や顔まわりに「寒冷刺激(寒さ・冷たさによる刺激のこと)」が加わります。 すると血管や神経が反応して頭が痛くなることがあるのです。(文献1) 詳しくはまだ解明されていない部分もありますが、主に以下3つのメカニズムが関わっていると考えられています。 寒さで血管が急激に収縮・拡張する 首や肩の筋肉が冷えて緊張する 寒暖差や冷えで自律神経が乱れる それぞれの原因について、順番に解説します。 寒さで血管が急激に収縮・拡張する 私たちの血管は、気温にあわせて収縮・拡張する性質があります。 寒い場所から暖かい場所へ移動した際に起こる血管の急激な変化は、脳の血管を取り巻く「三叉神経(さんさしんけい)」への刺激となりえます。(文献2) 刺激を受けた三叉神経は、痛みの感受性を高めてしまうため、普段なら問題ないような血管の変化でも頭痛として感じられてしまうのです。 外出時や室内に入った時に頭痛を感じやすい方は、この血管と神経の反応が関係している可能性が考えられます。(文献3) 首や肩の筋肉が冷えて緊張する 寒さにさらされると、首や肩の筋肉は無意識に力が入り、こわばりやすくなります。 筋肉の緊張が続くと、痛みを起こす物質が放出されて神経が過敏な状態になります。 その結果、痛みを感じやすくなり、普段は感じないような弱い刺激でもこめかみや後頭部に痛みが生じるのです。(文献4) 首こりからくる頭痛やめまいについては以下の記事でも解説しているので、あわせてチェックしてみてください。 寒暖差や冷えで自律神経が乱れる 自律神経の乱れも、頭痛の原因の一つです。 私たちの体温は、自律神経によって無意識に調整されています。 しかし、寒暖差が大きすぎたり、冷えが続いたりすると、自律神経が過剰に働いて疲弊してしまいます。 これを「寒暖差疲労」といい、エネルギーを多く消耗することで、頭痛・肩こり・倦怠感などの不調を引き起こすのです。(文献5) 寒さで起こる頭痛の種類 寒さによる頭痛は、以下の2種類に分類されます。 片頭痛|ズキズキ・吐き気を伴う 緊張型頭痛|締めつけられるような痛み 本章をもとに、それぞれの頭痛の症状や原因を整理しておきましょう。 片頭痛|ズキズキ・吐き気を伴う 片頭痛は、頭の片側にズキズキと拍動するような強い痛みが出る頭痛です。 吐き気や、光・音に対する過敏さを伴うこともあり、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。(文献6) 気圧や気温の変化、寝不足やホルモンバランスの変化など、さまざまな要因が引き金になり、寒暖差もその一つです。(文献7) 吐き気を伴う頭痛については、こちらの記事もご覧ください。 緊張型頭痛|締めつけられるような痛み 緊張型頭痛は、後頭部や側頭部が締めつけられるような痛みが特徴です。 長時間のデスクワークやストレス、姿勢の悪さなどが原因ですが、寒さで筋肉がこわばることも頭痛があらわれるきっかけとなります。 ストレッチやマッサージなどで筋肉をほぐすと症状の軽減が期待できることも、緊張型頭痛の特徴です。(文献8) 寒いと頭痛がするときの対処法・セルフケア 寒さによる頭痛は、日常生活の中でできる工夫で予防・緩和できる場合があります。 こちらの記事でも頭痛の対処法を紹介しているので併せてご覧ください。 寒さや寒暖差を避ける 外出時はマフラーやニット帽を活用し、首や頭を冷やさないようにしましょう。 とくに首・手首・足首のいわゆる「三首」は太い血管が通っており、ここを温めると全身を効率よく温められます。(文献9) また、室内外の温度差が大きくならないよう、エアコンや衣服の調整でこまめに対応しましょう。 温かい飲み物や入浴などで体を温める 体の内側から温めることも、冷え対策として有効です。 根菜・生姜などを含む体を温める食事や温かい飲み物は、血流改善に効果的です。 また、湯船にゆっくり浸かると全身の筋肉がほぐれ、自律神経のバランスも整いやすくなります。 ただし、片頭痛の発作中に体を温めると、かえって痛みが悪化することがあります。発作中は無理をせず、静かな場所で休むようにしましょう。(文献1) ストレッチや深呼吸で筋肉と神経をゆるめる 首・肩のストレッチや深呼吸は、筋肉のこわばりを和らげ、自律神経の安定にも役立ちます。(文献5) 短時間でも良いので、こまめに体を動かす時間をとるようにしましょう。 肩甲骨まわりの軽い体操や、深い呼吸を意識するだけでもリラックス効果があります。 具体的なストレッチ方法については、こちらの記事も参考にしてください。 寒さで起こる頭痛と脳の病気の見分け方 寒さによる頭痛は比較的軽度なことが多いのですが、なかには重大な病気が隠れていることもあります。 以下のような症状がある場合は、すみやかに医療機関を受診してください。 突然、これまでにない激しい頭痛が起こった 高熱や嘔吐を伴っている 手足のしびれやまひがある 視野の異常やろれつが回らないといった神経症状がある これらは、くも膜下出血や脳出血、髄膜炎などが起こるサインかもしれません。(文献8) いつもと違う痛みを感じたときは、自己判断せずに専門医の診察を受けましょう。 脳出血の後遺症や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳出血に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 脳の病気については、以下の記事も併せてご覧ください。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 くも膜下出血の前兆?首の後ろの痛みを伴う激しい頭痛は危険! 寒いと頭痛する症状が続くときは我慢せず医療機関を受診しよう 寒さをきっかけに頭痛が起こる場合、症状が長引いたり頻繁に繰り返したりするようなら、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。 また、「いつもと違う痛みがある」「最近強くなってきた」「日常生活に支障が出ている」などのサインがある場合は、早めに専門医の診察を受けましょう。 なお、市販の鎮痛薬で一時的に症状を和らげることは可能ですが、薬の使いすぎによって頭痛が悪化するケースも報告されています。 症状に合った対処や薬の選び方について迷う場合も、医師に相談すると安心です。 痛み止めについては、こちらの記事で詳しく解説しています。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療についての情報発信や簡易オンライン診断を実施しております。頭痛について気になることがあれば、ぜひご登録ください。 寒いと頭痛が起こることに関するよくある質問 寒いと頭痛がするのですが、漢方は効きますか? 寒さによる頭痛には、冷え・血流の悪化・自律神経の乱れなど、さまざまな要因が複雑に関わっています。 漢方薬は、こうした不調の背景にある体質の乱れを整えることを目的としており、根本的な改善をめざすアプローチのひとつです。 実際に、片頭痛や緊張型頭痛に対しては「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」や「五苓散(ごれいさん)」などの処方が使われることがあり、一定の効果が報告されています。(文献1) ただし、漢方薬は一人ひとりの体質や症状に合わせて選ぶ必要があるため、自己判断での服用はおすすめできません。 気になる方は、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、自分に合った処方を見つけるようにしましょう。 寒さで頭痛がするとき、こめかみや目の奥が痛むのは異常ですか? 寒さで頭痛がするとき、こめかみや目の奥にも痛みを感じることは珍しくありません。 寒さや冷たいものを食べたときの刺激による頭痛は、おでこや頭の横側、目の奥に痛みが出る一過性の反応とされています。 多くは30分以内におさまりますが、痛みが強い、長引く、しびれやまひなどを伴う場合には、脳の病気が関与している可能性もあります。(文献10) 気になる症状があるときは、早めに専門医の診察を受けましょう。 こめかみの痛みに不安がある場合は、以下の記事も参考にしてください。 参考文献 (文献1) 頭痛の診療ガイドライン2021|日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 (文献2) 内科医の馬渕知子先生がアドバイス!|デコ活 環境省 (文献3) 片頭痛の病態における三叉神経の役割|日本頭痛学会誌 (文献4) 緊張型頭痛の発症メカニズム|日本頭痛学会誌 (文献5) 「寒暖差疲労」とは|奈良県医師会 (文献6) 片頭痛とはどういう病気なのか|植草学園大学研究紀要 (文献7) Weather and Migraine|american migraine foundation (文献8) 頭痛の原因は?|国立研究開発法人国立長寿医療研究センター (文献9) エコジン|環境省 (文献10) 4. Other primary headache disorders|IHS Classification ICHD-3
2025.12.13 -
- ひざ関節
- オスグッドシュラッター病
「オスグッドになると身長が止まるという噂で聞いた」 「子どもの身長が止まってしまったらどうしよう」 SNSや保護者の間で「オスグッドを発症すると身長が止まる」という噂を耳にし、不安を抱く方は少なくありません。しかし実際には、オスグッドで身長が止まる医学的根拠はありません。 オスグッドは、成長期に起こる骨と腱の一時的なトラブルであり、骨の成長そのものを止める疾患ではありません。したがって、適切に対処すればスポーツと成長を両立できます。 本記事では、オスグッドが原因で身長の伸びが止まるという医学的な根拠はないことについて、現役の医師が詳しく解説します。記事の最後には、オスグッドと身長に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オスグッドについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください オスグッドで身長が止まるという医学的根拠は存在しない 結論、オスグッドで身長の伸びが止まるという医学的根拠はありません。 オスグッドは、成長期に膝下の脛骨粗面に過度な負荷がかかることで生じる一時的な炎症であり、骨の成長を妨げる病気ではありません。身長の伸びは主に骨端線(成長板)の働きや、ホルモン・遺伝・栄養状態などによって決まります。 オスグッドは成長期に多く発症するため、身長の伸びが鈍化する時期と重なることがあります。「成長が止まった」と誤解されがちですが、適切な安静と治療で自然に軽快し、将来的な成長への影響はほとんどありません。 オスグッドと成長期(身長)の関係性 観点 詳細 骨と成長軟骨の関係 成長期の骨端に存在する成長軟骨への繰り返し牽引負荷による局所的炎症 炎症と身長への影響 脛骨粗面部の炎症は局所的変化であり、身長の伸びを止める根拠なし 筋肉・腱と骨の伸びのズレ 骨の急速な成長に筋肉・腱の伸びが追いつかず生じる緊張と牽引負荷 発症時期の特徴 身長の急伸期と重なることが多く、成長停止との誤解を生じやすい時期 成長軟骨の閉鎖時期との重なり 思春期終盤での成長軟骨閉鎖と症状軽快の時期が重なる偶然的現象 発育への影響 適切な安静・ストレッチ・運動制限により成長への影響ほぼなし 望ましい対応 負荷調整・柔軟性維持・医師の定期的フォロー (文献1)(文献2) オスグッドは、身長が急激に伸びる時期に多く発症します。成長期では骨の成長に筋肉の柔軟性が追いつかず、大腿四頭筋が膝下の骨を強く引っ張ることで炎症が起こります。身長の伸びとオスグッドの発症は同時期に起こりやすいだけで、因果関係はありません。 むしろ、活発に運動する健康な成長期の子どもに多く見られる傾向があります。適切な休養とストレッチを取り入れれば、成長とスポーツを両立できます。医師の診断を受け、無理のない範囲で身体を動かすことが、将来的な健康を守るために欠かせません。 以下の記事では、オスグッドの症状について詳しく解説しています。 オスグッドで身長が止まるといわれる理由 理由 詳細 身長が伸びる時期と発症が重なるため 成長期のピークに骨の急速な伸びとオスグッドの発症が重なるため、因果関係があるように誤解される 運動制限や成長軟骨に関する誤解 症状緩和のための一時的運動制限や成長軟骨損傷が成長停止につながると誤解される状況 SNSやネットで広まる根拠のない情報 医学的証拠のない投稿や体験談の拡散による誤った情報の受け取り 「オスグッドで身長が止まる」と言われるのは、主に誤解や情報の混乱によるものです。オスグッドは成長期の骨の急速な伸びと発症時期が重なるため、因果関係があるように見えることがあります。 また、痛みによる一時的な運動制限や患部の炎症が「成長を妨げる」と誤解されることもあります。さらに、SNSやネット上で根拠のない体験談が拡散され、誤った印象を強めています。 身長が伸びる時期と発症が重なるため 理由 詳細 成長スパート期に発症しやすい 骨や軟部組織の急成長期に発症しやすく、発症後に身長の伸びが鈍ったように感じる記憶による因果関係の錯覚 骨・筋肉・腱の成長のズレ 骨の急速な伸びと筋肉・腱の伸びの差による牽引応力が膝下へ加わり、「身長伸びの停止」と結びつけられる誤認 成長板閉鎖時期と症状改善時期の近さ 成長板が閉じる時期とオスグッド症状の改善期が重なり、「治ったら背が伸びなくなった」と感じる誤解 誤解を生みやすい条件の重なり 成長期の変化と発症・改善時期の一致による因果関係の錯覚と情報の混同 (文献3) オスグッドは、ちょうど身長が急激に伸びる思春期前後に発症しやすいため、「身長が伸びなくなった原因では」と誤解されやすい疾患です。しかし、炎症は膝下の限られた部位に生じるもので、骨全体の成長を止めることはありません。 発症と成長のタイミングが重なるため、因果関係があるように見えてしまうのです。また、痛みのために運動を控えると一時的に成長が緩やかに感じられることもありますが、これは自然な一時的変化であり、身長の最終的な伸びには影響しません。 運動制限や成長軟骨に関する誤解 誤解・要因 詳細 運動制限が身長に影響すると考えられる 痛みによる運動制限と成長ホルモン分泌低下の混同による誤認 成長軟骨への炎症=身長の伸びの停滞と誤認される 局所炎症を骨端線全体の成長停止と結びつける誤解 発症時期と身長の伸びの重なり 成長スパート期と発症期の一致による因果関係の錯覚 (文献4) オスグッドは、成長期に大腿四頭筋の強い牽引によって膝下の成長軟骨に炎症が起こるスポーツ障害です。運動制限が続くと「成長に悪影響では」と心配されますが、実際には成長への影響はありません。 成長板の働きは全身のホルモンや栄養状態に左右されるため、局所的な安静によって成長が止まることはありません。オスグッドの炎症は膝の一部に限られており、骨全体の成長を妨げることはないのです。 むしろ、炎症を抑える適切な休養は回復を促進し、結果的に成長にも良い影響を与えます。発症時期が成長期と重なるため誤解が生じやすい点に注意が必要です。 SNSやネットで広まる根拠のない情報 要因 詳細 体験談が誇張されて伝わる 個人の体験がSNSで拡散し、オスグッドで身長が止まるなどの誤情報が広まる構図 複雑な身体の仕組みが簡単に解釈されがち 骨と筋肉の成長や炎症の関係を単純化し、誤った理解に至る傾向 医学的な解説が不足している 医師による説明不足で感情的な意見が優先されるため、正確な情報が届きにくい現状 医学的に正しい情報 オスグッドは骨成長と筋肉のバランスのズレによる局所炎症であり、身長成長には影響を与えない事実 オスグッドで成長が止まるという情報は、SNSやインターネット上の体験談から広まった誤解です。医学的には、オスグッドが骨の成長を妨げた事例は報告されていません。 このような誤情報に惑わされず、症状がある場合は医療機関で診断を受けることが大切です。医師から正確な説明を受けることで、不安を解消し、適切な治療方針を立てられます。 成長期のオスグッドに対する治療法 治療法 詳細 保存療法 安静・ストレッチ・物理療法による炎症軽減と再発予防の基本的治療 薬物療法 鎮痛薬や抗炎症薬の使用による痛みと炎症の緩和 手術療法 骨片の除去や膝蓋腱付着部の整復による重症例への対応 再生医療 成長軟骨や腱付着部の修復を促す細胞治療やPRP療法による組織再生の促進 オスグッドの治療は、症状の程度に応じて段階的に選択されます。基本は安静やストレッチ、物理療法を中心とした保存療法で、多くの症例がこれで改善します。 痛みが強い場合には、鎮痛薬や抗炎症薬を併用します。保存療法で改善がみられない重症例では、骨片の除去などを行う手術療法を検討します。 近年では、成長軟骨の修復を促すPRP療法などの再生医療も選択肢のひとつです。ただし、実施できる医療機関が限られており、症状によっては適用できない場合もあります。治療の選択は医師と相談して決めることが大切です。 保存療法 項目 詳細 基本方針 成長期の骨・筋肉の急激な変化に対応する非侵襲的治療の選択 安静の重要性 高負荷運動の制限による脛骨粗面への牽引力軽減と自然治癒の促進 ストレッチと筋力強化 大腿四頭筋の柔軟性向上と筋力強化による膝負担の軽減 リハビリテーション 医師による動作改善と筋肉バランス調整による再発予防 (文献5) オスグッドは、成長期に起こる筋肉と骨の成長バランスの乱れによる一時的な症状です。治療は保存療法が中心となります。 具体的には、運動を一時的に制限して膝への負担を減らし、必要に応じて冷却やストレッチ、サポーターを併用して炎症を鎮めます。無理をせず安静を保つことで、多くの症例は自然に回復していきます。 運動制限・ストレッチ・理学療法・痛み止めの活用を組み合わせ、医師や理学療法士の指導のもと適切に治療を進めることが重要です。 薬物療法 項目 詳細 炎症と痛みの急性緩和 NSAIDsによる炎症抑制と疼痛軽減による生活・運動制限の最小化 炎症の早期鎮静化と回復促進 腫れや熱感の軽減による回復期間の短縮と慢性化防止 症状コントロールと生活維持 強い痛みへの対応と日常生活・学業・運動の維持 一時的対処であり根本治療ではない点 筋肉負荷やバランス改善と併用すべき補助的治療手段 オスグッドにおける薬物療法は、炎症や腫れが強い場合に医師の判断で行われます。消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服や外用により炎症を抑え、痛みを和らげることで、日常生活への支障や運動制限を最小限に抑えます。 ただし、薬物療法はあくまで症状を緩和する一時的な補助手段であり、根本的な原因を治すものではありません。そのため、運動量の調整・ストレッチ・リハビリなどを組み合わせる保存療法が不可欠です。 手術療法 項目 詳細 手術療法が検討される主なケース 成長期終了後の持続痛や運動障害、剥離骨片残存による慢性炎症、保存療法無効例での膝機能障害 手術の内容と効果 剥離骨片摘出と脛骨粗面整形による疼痛除去、術後リハビリによる筋力回復と運動機能改善 手術が最終手段となる理由 成長終了後の自然治癒傾向、保存療法による高い改善率、手術負担と合併症リスクの回避方針 オスグッドの治療は、まず保存療法が基本です。早期に適切な治療を行えば、手術に至るケースは少ないです。 手術療法は、保存療法で改善せず骨の隆起が強く残り、日常生活や運動に支障をきたす重症例に限って検討されます。多くは成長期を過ぎた後に行われ、痛みの原因となる剥離骨片の摘出や膝蓋腱付着部の整形を目的とします。 手術後は理学療法によるリハビリテーションを通じて、膝の機能回復と再発予防を図ります。手術は最終手段であるため、成長期の段階は医師と相談しながら無理のない治療計画を立てることが不可欠です。 再生医療 オスグッドに対する再生医療は、体の自然治癒力を高めて炎症を抑え、組織の修復を促す先進的な治療法です。 代表的なPRP療法(多血小板血漿療法)では、患者自身の血液から抽出した血小板成分を患部に注入します。血小板中の成長因子が組織修復を促進し、保存療法・リハビリの併用で手術回避が期待できます。 ただし、再生医療を実施できる医療機関は限られており、治療の適用可否は症状や年齢などを考慮して医師が判断します。 以下の記事では、オスグッドに対する再生医療について詳しく解説しています。 【保護者向け】オスグッドを発症した子どもに対するケアについて 子どもに対するケア 詳細 運動量と休息の適切な管理 痛みの程度に応じた運動制限と十分な休養による膝への負担軽減 ストレッチ習慣のサポート 大腿四頭筋や太もも周囲の柔軟性維持による再発防止と回復促進 栄養面と精神的ケアを怠らないようにする 成長に必要な栄養補給と、痛みに対する不安を和らげる心理的支援 オスグッドの子どもには、保護者による適切なケアが欠かせません。まず、痛みの程度に応じて運動量を調整し、十分な休養をとらせることで膝への負担を軽減します。次に、大腿四頭筋や太もも周辺のストレッチを習慣化し、柔軟性を維持して再発を防ぎます。 また、成長期に必要な栄養をしっかり補給するとともに、痛みによる不安を和らげる精神的なサポートも大切です。これらを総合的に行うことで、回復が促進されます。 運動量と休息の適切な管理 項目 詳細 骨と筋肉の成長速度のズレによる負荷軽減 成長期の骨と筋肉のアンバランスによる膝への牽引力の軽減と筋肉の柔軟性促進 運動のやりすぎを防ぎ慢性化を予防 成長軟骨への過剰な負担による炎症や骨変形の防止と早期回復の促進 スポーツを続けながら安定的にケアするため 痛みのない範囲での軽運動やストレッチによる筋力維持と柔軟性向上 保護者の役割 子どもの痛みや成長に合わせた運動量調整と適切な休息支援 オスグッドの治療では、運動量と休息バランスの適切な管理が大切です。成長期は骨の成長に筋肉が追いつかず、膝への負担がかかりやすい時期です。そのため、痛みがあるときは無理に運動を続けず、安静を保つことで炎症の悪化や慢性化を防ぎます。 症状が落ち着いた後は、段階的な運動再開が回復を早めるポイントです。回復期には、痛みのない範囲でストレッチや軽い運動を行い、柔軟性を保つことがスポーツ復帰につながります。保護者は子どもの様子をよく観察し、適切な休養を促すサポートが求められます。 ストレッチ習慣のサポート 項目 詳細 筋肉の柔軟性向上で膝への負担を軽減 大腿四頭筋や膝周囲の筋肉の柔軟化による脛骨粗面への牽引力の軽減 成長期の身体変化に対応するために継続が必要 骨の急成長に伴う筋肉・腱の柔軟性維持による成長負担の軽減 子どもへの継続的な声かけと楽しい工夫が効果的 保護者の声かけや遊び感覚での実践によるストレッチ習慣の定着 無理なく安定的に行うことが重要 痛みを伴わない範囲での実施と医師による正しい指導の活用 オスグッドの改善と再発予防には、ストレッチを継続して筋肉の柔軟性を保つことが重要です。とくに大腿四頭筋や太もも周囲のストレッチは、膝下の牽引力を和らげ、膝への負担を軽減します。 成長期は骨の伸びに筋肉が追いつきにくいため、毎日少しずつ無理のない範囲で続けることが大切です。保護者が見守りながら声をかけ、楽しく取り組める環境を作ることで、子どもも継続しやすくなります。 ストレッチ中に痛みを感じる場合は中止し、医師や理学療法士の指導を受けて正しい方法で行いましょう。 以下の記事では、オスグッドの改善に役立つストレッチ・テーピングについて詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】オスグッドのテーピング方法|簡単な巻き方と効果的な貼り方を解説 【医師監修】オスグッドにおけるストレッチのやり方を解説|悪化を防ぐポイントも紹介 栄養面と精神的ケアを怠らないようにする 項目 詳細 栄養面でのサポートの理由 骨・筋肉の成長を支えるカルシウム・たんぱく質・ビタミンD・マグネシウムの十分な摂取による組織強化 たんぱく質の重要性 筋肉や腱、骨の構成成分であるコラーゲン生成を支える栄養補給 栄養不足のリスク 柔軟性低下や回復遅延による症状悪化・再発リスクの増大 効率的な補助摂取 プロテイン補助食品による効率的な栄養補給と食事バランスの維持 精神的ケアの重要性 痛みや運動制限によるストレス・不安の軽減と前向きな気持ちの支援 保護者の関わり 子どもの話を聞き、励ますことで心理的安定を促し、回復意欲を高める支援 復帰へのサポート 運動休止による寂しさや焦りへの共感と適切な復帰時期の見極め オスグッドの回復には、身体のケアだけでなく栄養面と精神的サポートも重要です。成長期の子どもには、たんぱく質・カルシウム・ビタミンD・マグネシウムなどを含むバランスの良い食事が欠かせません。 偏食や栄養不足は回復を遅らせる要因となるため、食事で十分に摂取できない場合は、医師に相談の上サプリメントの利用を検討します。 また、運動制限によるストレスや不安に寄り添い、焦らず回復を待てるよう支えることが大切です。 オスグッドと身長の関係性を理解し適切な治療・ケアを実施しよう オスグッドは成長期に一時的に起こる疾患で、適切な治療とケアを行えば身長の伸びに影響しません。早期に医療機関を受診し、運動・休養・栄養のバランスを整えることが大切です。 正しい知識を持って対応すれば、成長とスポーツの両立が可能です。SNSなどの誤った情報に惑わされず、医師の指導のもとで適切にケアすれば、子どもの健やかな発達と将来の健康を守る第一歩になります。 改善が難しいオスグッドにお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、オスグッドに対して再生医療を用いた治療を行っています。 PRP(多血小板血漿)などの生体由来成分を注入し、成長因子の働きで膝蓋腱付着部の炎症を抑え、組織の修復を促進します。すべての症例に適応できるわけではありませんが、症状や状態に応じて有効な治療選択肢として検討できます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 オスグッドと身長に関するよくある質問 オスグッドで身長が伸びることはありますか? オスグッドが身長の伸びに影響を与えることはありません。膝下の一部に炎症が生じる局所的な疾患であり、骨全体の成長や身長を促す作用はありません。 発症時期が、身長の伸びが活発な成長期と重なるため「発症後に背が伸びた」と感じることがあります。しかし、これは自然な成長によるものです。成長期にみられる一時的な現象として正しい理解が大切です。 子どものオスグッドを早く治す方法はありますか? オスグッドに特効薬や裏技はなく、成長に伴い自然に改善する場合が多いため、治療は運動量の調整や休養などの保存的療法が基本です。 適切なケアを継続することで、症状を和らげながら再発を防止できます。 以下の記事では、オスグッドの治療について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Osgood-Schlatter Disease|Medscape (文献2) Osgood-Schlatter Disease|JOHNS HOPKIBNS (文献3) Osgood-Schlatter Disease|Physiopedia (文献4) Osgood-Schlatter Disease|National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information (文献5) A systematic review on conservative treatment options for OSGOOD-Schlatter disease|PubMed
2025.12.13 -
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- オスグッドシュラッター病
「昔の膝の違和感がまた出てきた」 「子どもの頃の症状がぶり返した気がする」 子どもの頃にオスグッドを発症し、完治したと思っていたのに、時間が経ってから膝の違和感や痛みを感じる人は少なくありません。オスグッドは成長期の10代に多い疾患とされますが、大人になってから再発するケースもあります。 再発は、運動による膝への負担や柔軟性の低下、筋力のアンバランスなどが原因で起こることがあり、適切な治療で改善が見込める一方、放置や自己流のケアは症状を悪化させるおそれがあります。 本記事では、現役医師が、大人になって再発したオスグッドについて詳しく解説し、最後によくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オスグッドについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください 【結論】オスグッドは大人でもなる(再発する) オスグッドは成長期特有の疾患と思われがちですが、実際には大人になってからも発症・再発するケースが存在します。10代で発症した方の中には、完治しないまま成人を迎え、なんらかのきっかけで症状が再燃する例が少なくありません。 とくに学生時代にスポーツで膝を酷使していた方は、成長期に生じた骨や腱へのダメージが完全には修復されず、潜在的な脆弱性を残している可能性があります。 大人のオスグッドは、成長期の後遺症が顕在化したものと捉えられます。若い頃は無症状だった場合でも、運動習慣の変化や体重増加、加齢による筋力低下などが重なると、膝蓋腱付着部への負荷が増大し、炎症や骨の変形が進行します。 成人後のオスグッドは一定数みられるため、膝下の違和感や腫れに気づいたら早めに医療機関を受診しましょう。以下の記事では、オスグッドの症状について詳しく解説しています。 大人になってからオスグッドが再発する原因 区分 内容 詳細 基本的な発症概念 成長期発症と遺残という考え方 成長期に発症し、骨や腱に変化が残ったまま成人期に再燃する疾患 成人期の遺残オスグッド 成長期のオスグッド後に骨隆起や骨片が残存し、再発の原因となる状態 再発・痛み出現の主な要因 残存した骨隆起・骨片・変形 成長期に残った骨の隆起や剥離片が刺激源となる状態 筋・腱のアンバランス・柔軟性低下 大腿四頭筋の硬さや姿勢不良による膝への牽引ストレス増加 過剰使用・再度の高負荷運動 ジャンプやダッシュなどの繰り返し動作による負荷蓄積 再発しやすい状況・リスク要因 既往歴 成長期にオスグッドを発症した既往 急な運動量増加 トレーニング負荷の急変による膝への過剰ストレス 柔軟性不足 太もも・膝周囲筋のストレッチ不足による牽引増加 姿勢・動作バランス不良 重心のズレや体幹不安定による膝への偏った負担 疲労・休息不足 回復不十分のまま運動を継続し、炎症再燃 再発時の注意点 鑑別の重要性 成人期遺残オスグッドと他疾患(膝蓋腱炎・滑液包炎など)の区別 負荷軽減とバランス改善 残存部位への刺激を減らし、筋力・柔軟性を整える重要性 早期対応 痛み出現時の運動制限・アイシング・整形外科受診の重要性 大人の再発には、筋肉や腱の柔軟性低下が大きく関係しています。成長期に損傷を受けた膝蓋腱付着部は治癒後も弱点として残り、筋肉の緊張や運動習慣の変化により再び炎症を起こすことがあります。 デスクワーク中心の生活で太もも前面(大腿四頭筋)が硬くなり、膝蓋腱への牽引が強まると再発しやすくなります。さらに冷えや体重増加による膝への負担も誘因となるため、若年期のケガを軽視せず柔軟性を保つことが再発防止に重要です。 大人のオスグッドは成長期の後遺症や慢性化した膝の障害 区分 内容 脛骨粗面の隆起・骨変形の残存 成長期発症時の骨隆起の残存。皮膚や軟部組織との摩擦による刺激・圧迫。屈伸時の繰り返し負荷による再燃リスク増加 持続的な圧痛・不快感の残存 隆起周囲の圧痛の継続。階段昇降・しゃがみ・膝をつく動作での違和感 運動時痛・過負荷時の再燃 高負荷運動での痛み再出現。柔軟性低下・筋力バランス不良による局所ストレス増大 関節可動域制限・筋・腱の短縮 膝の柔軟性低下による可動域制限。大腿四頭筋や腱の短縮による牽引ストレス増加 二次的な膝関節・軟骨への負担 隆起や変形による運動軸・力線の変化。軟骨・半月板・滑膜への負担増加。変形性膝関節症などの合併症リスク上昇 日常生活・スポーツ機能への支障 慢性的な違和感による曲げ伸ばし・しゃがみ・階段動作の困難。代償動作による他部位への負担波及 成長期にオスグッドを繰り返すと、脛骨粗面(膝下の骨)が隆起したまま固まり、その隆起が膝蓋腱を刺激して炎症や膝前部痛を引き起こすことがあります。 また、小さな骨片(遊離骨片)が残る場合があり、これが慢性的な膝前部痛の原因となることがあります。これらの変化は自然に改善しにくく、放置すると痛みの再発や膝の可動域制限を招くため、注意が必要です。 成人にみられるオスグッドは、成長期の後遺症が顕在化したものと考えられます。治療では、骨の隆起だけでなく、大腿四頭筋や膝蓋腱など筋・腱の柔軟性やバランスを含め、膝全体の状態を総合的に評価・管理することが重要です。 久しぶりの運動再開や体重増加がきっかけになるケース 区分 主な要因 解説 久しぶりの運動再開が引き金になる理由 急激な負荷の増加 長期間の運動休止後に急に強い運動を行うことで、膝周囲の筋肉・腱・関節に過度な負担が集中 残存した骨隆起の刺激 成長期に残った脛骨粗面の骨隆起や骨片が刺激点となり、再び牽引ストレスが加わることで炎症を誘発 高衝撃動作による牽引ストレス ジャンプ・ダッシュ・方向転換などの動作による膝蓋腱から脛骨粗面への過剰な牽引 筋力・柔軟性の低下 運動不足による筋力低下や柔軟性の減少による膝安定性の低下、わずかな負荷でも過剰なストレス発生 体重増加が影響を与えるメカニズム 膝への負荷増大 体重増加により歩行や階段昇降などで膝にかかる力が比例的に増加 牽引・摩耗刺激の増加 隆起部や周囲組織への垂直・前後・ねじれ方向のストレス増大 動作バランスの乱れ 体重増加による股関節・足関節の動作バランス変化、歩行・動作パターンの偏りによる膝への負担が集中 耐性低下による炎症誘発 増加した体重下での運動により、筋・腱・関節が耐性限界で働く状態。炎症再燃の引き金 大人のオスグッドは、長期間運動を休んでいた人が急にスポーツを再開した際に再発することがあります。筋肉や腱が硬い状態で膝に負担をかけると、膝蓋腱付着部に強い牽引力が加わり、炎症や痛みを引き起こします。 また、体重が増えた状態で運動を行うと、膝への負荷がさらに高まり、症状が悪化しやすくなります。ジョギングやスクワットは段階的に強度と量を上げましょう。運動を再開する前には、ストレッチや筋力トレーニングで下肢の柔軟性と安定性を整えることが予防につながります。 【大人向け】オスグッドが疑われる症状 疑われる症状 詳細 膝下の骨の隆起・圧痛・腫れ 脛骨粗面(膝下の出っ張り)の盛り上がりや硬いしこりの出現。押すと痛みを感じる圧痛や軽い腫れの残存 運動時・運動後の痛みや違和感 ランニング、ジャンプ、スクワットなどの動作時に現れる膝前部の痛みや張り感。運動後に残る鈍い違和感 正座や膝の深い屈曲での痛み 膝を深く曲げた際に脛骨粗面や膝蓋腱部に生じる圧迫痛や突っ張り感。正座姿勢の困難 安静時は軽減・動作開始で症状再発 休んでいる間は痛みが落ち着くが、立ち上がりや歩行開始時に再び生じる膝前部の違和感や痛み 慢性化による日常生活での違和感・痛み持続 階段昇降や長時間歩行など日常動作でも続く膝下の不快感や鈍痛 大人のオスグッドは、成長期に比べて痛みの現れ方が異なり、慢性的な違和感として続くのが特徴です。主な症状は、膝下の骨(脛骨粗面)の隆起や押すと痛む圧痛、膝の屈伸時に感じる突っ張り感や違和感です。 軽度では運動後にのみ痛みが出ますが、進行すると正座やしゃがみ動作、階段の上り下りなど日常生活にも支障をきたすようになります。 とくに不快感が長引いたり、立ち上がり時に痛みが再発する場合は注意が必要です。症状が続く場合や再発が疑われるときは、早期に整形外科でレントゲンなどの画像検査を受け、原因を明確にすることが大切です。 膝下の骨の隆起・圧痛・腫れ 要因 詳細 成長期の過剰な牽引刺激の遺残 成長期に膝蓋腱の強い牽引で脛骨粗面に微小剥離や刺激が発生。骨隆起や骨片として残存し成人期で刺激源となる状態 残存した隆起や骨片への物理的刺激 骨の突出や骨片が腱・滑液包・皮下組織と摩擦や圧迫を起こす構造。動作時の接触や擦れによる炎症・腫れの誘発 局所の炎症反応 隆起周囲の微小損傷や刺激による炎症細胞の浸潤。血管拡張や浮腫による腫れ・熱感。感受性亢進による刺激過敏 圧痛の発生 炎症部の骨腱移行部に分布する感覚神経の刺激。押圧時に痛覚が強まりやすい状態 運動・再負荷での刺激増強 屈伸・ジャンプ・ダッシュなどで隆起部への牽引・摩擦応力が加わる動作。体重増加や筋力バランス不良によるストレス集中と炎症再燃 (文献1) 膝蓋腱が付着する脛骨粗面の隆起や圧痛、周囲の腫れは、オスグッドの代表的な症状です。成長期に生じた炎症や微小損傷が原因で、骨の突出や骨片が残存し、成人後も物理的な隆起として残ることがあります。 運動再開や膝への過負荷により、これらの残存部が再び刺激を受けると、炎症や腫れが再燃しやすくなります。腱や滑液包などの軟部組織が繰り返し摩擦を受けると炎症が慢性化し、神経が過敏になってわずかな刺激でも違和感や痛みを感じやすくなるため、早期の対処が必要です。 運動時・運動後の痛みや違和感 要因 詳細 過剰な筋力負荷による炎症 ジャンプやダッシュなどで大腿四頭筋が強く収縮し、脛骨粗面に加わる牽引力による炎症 軟骨や腱付着部への微小損傷 繰り返しの運動によって軟骨や腱の付着部に生じる小さな損傷 炎症性の腫れと熱感 炎症反応による軟部組織の腫れや熱感の出現 骨隆起や肥厚した腱の影響 成長期に残った骨隆起や厚くなった腱が運動時に受ける物理的刺激 慢性的な負荷の蓄積 長期間にわたる膝への繰り返し負担による痛みや違和感の持続 大人のオスグッドは、運動中よりも運動後に違和感として現れることが多く、運動後に膝下がズキッと痛んだり、翌日に突っ張る感覚が残ったりする場合は膝蓋腱への過負荷が疑われます。 とくにランニングやジャンプなど膝の屈伸を繰り返すスポーツでは再発しやすく、放置すると慢性化して軽い動作でも違和感が続くことがあります。症状が現れた時点で無理をせず休むことが大切です。 正座や膝の深い屈曲での痛み 要因 詳細 脛骨粗面への圧迫と牽引ストレスの増加 正座や深い屈曲時に脛骨粗面が床などに圧迫され、大腿四頭筋の牽引力が増す状態 炎症を起こした骨や軟部組織への物理的刺激 曲げ伸ばし動作で隆起部が押され、炎症部位や滑液包が刺激される状態 筋肉の硬さと柔軟性不足 太ももの筋肉の緊張による牽引力増加と痛みの助長 慢性的な組織変性や骨変形の影響 残存した骨隆起が屈曲時に障害となることで生じる痛みや違和感 姿勢や身体のバランスの崩れによる二次的負担 姿勢の歪みや筋力の偏りによって膝関節にかかる負担が増す状態 大人のオスグッドでは、正座や深く膝を曲げる動作で違和感が出ることが多くみられます。膝蓋腱が脛骨粗面を引っ張る角度が強まり、過去に炎症を起こした部位に刺激が加わるためです。 とくに床に座る、しゃがみ込む、和式トイレを使う動作などで違和感を訴えるケースが多く、放置すると可動域が狭まりやすくなります。 痛みが強い時期は正座を避け、膝を過度に曲げない姿勢を意識しましょう。長引く場合は骨の隆起や腱付着部の変化が関係している可能性もあり、整形外科での確認が推奨されます。 安静時は軽減・動作開始で症状再発 要因 詳細 負荷の軽減による炎症緩和 安静によって膝への牽引力が減り、炎症や腫れが落ち着く状態 動作開始時の筋肉・腱の緊張増加 動き出しで筋肉や腱に急激な負荷がかかり、脛骨粗面への牽引力が高まる状態 繰り返されるストレスによる刺激増大 継続的な膝の使用による炎症部位への再刺激や症状の再燃 神経過敏状態の影響 炎症や組織肥厚による神経の過敏化で、軽い動きでも痛みを感じやすい状態 安静時は症状が落ち着いていても、動き始めに違和感が戻るのはオスグッド再発によく見られる特徴です。膝蓋腱付着部の炎症が完全に治癒していない段階で動作を再開すると、膝下に再び負担が集中しやすくなります。 とくに朝の立ち上がりや通勤・通学など歩行開始時に違和感を感じる場合は注意が必要です。放置すると膝周囲の筋肉がこわばり、膝前部への慢性的な負担につながることがあります。再発を防ぐためには、ストレッチなどで柔軟性を保ち、無理のない範囲で段階的に活動量を増やすことが重要です。 慢性化による日常生活での違和感・痛み持続 要因 詳細 慢性的な炎症による組織の障害 繰り返す炎症で骨や軟部組織の修復が追いつかず、障害が残る状態 骨や腱の変形と硬化 骨隆起や腱の肥厚が固定化し、物理的刺激となって痛みを生じる状態 可動域制限と筋肉の硬直 膝関節の動きの制限や筋肉・靭帯の硬直による動作時の違和感 動作回避や不自然な姿勢の習慣化 痛みを避けようとする姿勢の崩れや他部位への負担の増加 慢性痛による生活の質低下 持続する痛みや違和感による日常生活・仕事・運動への支障 大人のオスグッドを放置すると、炎症が慢性化し、膝に違和感を抱えるようになります。立ち上がりや階段の上り下りなどの軽い動作でも痛みが再発し、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。 この段階では一時的な安静では改善が難しく、物理療法やリハビリなどを含む、医療機関の治療が必要です。再発を繰り返す場合は、早めに整形外科を受診し、根本的なケアを受けることが大切です。 大人から再発するオスグッドの放置リスク 放置リスク 詳細 症状の慢性化と日常生活への支障 炎症の持続による膝前部の痛みや違和感の慢性化、立ち上がり・歩行・階段昇降への支障 骨変形・関節可動域の制限 膝下の骨隆起や腱の肥厚による骨変形と膝の曲げ伸ばしの制限 スポーツ活動や競技復帰への影響 運動時の痛みや再発リスク増大によるパフォーマンス低下や活動制限 二次的な膝疾患の併発リスク 負担の偏りによる膝蓋腱炎や滑液包炎などの併発 オスグッドは自然に軽快する場合もありますが、大人になってから再発した場合は放置してはいけません。長期間負担がかかると、骨や腱の変形、関節可動域の制限、他の膝疾患の誘発につながるおそれがあります。 初期は軽度でも慢性化しやすく、生活や仕事に支障が出ることもあります。違和感が続く場合は早めの受診が必要です。画像検査で炎症や骨変化を確認し、適切な治療を受けることで再発を防ぎ、膝の機能を維持できます。 症状の慢性化と日常生活への支障 オスグッドを放置すると膝下の炎症が繰り返されて組織損傷が蓄積し、骨隆起や腱の肥厚が固定化します。その結果、膝の曲げ伸ばしが制限され、痛みや違和感が慢性的に続くようになります。 痛みをかばう動作が習慣化すると姿勢が悪化し、他部位への負担が増え、症状がさらに悪化する場合があります。持続する痛みは仕事や生活の質に影響を及ぼすため、慢性化を防ぐには早期に医師の診断を受け、リハビリや物理療法などを含む根本的な治療が必要です。 骨変形・関節可動域の制限 要因 詳細 骨の隆起や変形による物理的制約 脛骨粗面の骨隆起が膝の屈伸動作を妨げる物理的障害 筋肉の硬直や短縮による可動域制限 大腿四頭筋など膝周囲の筋肉の硬直による柔軟性低下 炎症による関節周辺組織の肥厚と癒着 慢性炎症による腱・靭帯・滑液包の肥厚や癒着による動作制限 隣接関節(股関節・足首)の可動域不足による代償負担 股関節や足首の柔軟性低下による膝関節への過剰負担 姿勢の悪化による関節の負担増化 骨盤や脊椎の歪みに伴う膝関節へのストレス増加 成長期に生じた炎症が長期間続くと、脛骨粗面が隆起したまま固まり、成人後もその骨変形が残ることがあります。膝の屈伸時に腱が骨隆起と擦れることで可動域が制限され、進行するとしゃがみ動作や正座が難しくなるため、注意が必要です。 さらに、筋肉の硬直や炎症による組織の癒着、股関節や足首の可動域不足、姿勢の歪みなどが重なることで膝の動きがさらに悪化します。骨変形が強い場合は骨片除去手術が検討されることがあり、膝の動かしにくさや違和感を感じた際には放置せず早めに医師へ相談して適切な治療を受けましょう。 スポーツ活動や競技復帰への影響 放置リスク 詳細 痛みの継続による競技への制限 ジャンプ・ダッシュ・方向転換が困難となり、競技パフォーマンスが低下する。症状によってはスポーツ活動の一時中止が必要 筋力低下と柔軟性不足の悪循環 運動制限により大腿四頭筋の筋力と柔軟性が低下し、膝への負担が増えて再発リスクが増加 リハビリテーションの重要性 医師の指導のもとで筋力強化やストレッチ、動作修正を行うことが、痛みなく競技に復帰するための基盤となる 競技復帰までの期間 軽症では2〜4週間、中等症では6〜8週間の休養とリハビリが目安。医療機関の判断に基づき段階的に復帰を目指すことが重要 早期復帰のリスクと注意点 痛みを我慢して早期に復帰すると、症状の再発や悪化を招くおそれがある。十分な休養と段階的な回復が必要 精神的な影響とモチベーション管理 長期休養によって意欲や集中力が低下しやすいため、心理的支援により復帰へのモチベーション維持が大切 オスグッドを放置したままスポーツを続けると、膝下の痛みや違和感によってジャンプや着地が不安定になり、ランニングでの推進力も低下して競技パフォーマンスが大きく落ちます。 また、方向転換の多い競技では膝への不安から動きが制限され、痛みをかばうことでフォームが崩れて他部位に負担が広がる傾向にあります。瞬発力や持久力も低下してパフォーマンスの維持が難しくなるため、早期の治療とリハビリが欠かせません。 二次的な膝疾患の併発リスク 併発しやすい疾患 詳細 変形性膝関節症 膝関節のバランス崩壊と慢性炎症による軟骨のすり減り・関節変形 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 大腿四頭筋の過剰な牽引力による膝蓋腱への炎症と痛みの発生 膝蓋下脂肪体炎 膝蓋腱周囲の負担増加による脂肪体の炎症と腫れ 滑液包炎 膝の屈伸動作の繰り返しによる滑液包の炎症と腫脹 靭帯損傷・筋腱障害 過剰負荷や補償動作による靭帯や筋腱の損傷・炎症 オスグッドを放置すると、膝蓋腱炎や滑液包炎、変形性膝関節症などの二次的な膝疾患を併発するおそれがあります。炎症が慢性化すると膝関節のバランスが崩れ、周囲の組織にも負担がかかるためです。 違和感が続く段階で早期に治療を行えば、これらの合併症を未然に防止できます。再発を繰り返す場合は、整形外科で検査と治療を受け、原因を特定する必要があります。 当院「リペアセルクリニック」で行っている変形性膝関節症に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 また、以下の記事では、膝疾患について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】靭帯損傷とは|症状・原因・全治までの期間を現役医師が解説 ジャンパー膝とオスグッド病の違いは?原因や症状、治療法を比較解説 大人から再発するオスグッドの治療法 治療法 詳細 保存療法 安静・アイシング・ストレッチ・物理療法による炎症軽減と負担軽減 薬物療法 消炎鎮痛薬や湿布による痛み・炎症の緩和と症状コントロール 手術療法 骨隆起や遊離骨片の除去、腱付着部の修復による疼痛の根治的改善 再生医療 炎症や組織損傷部位への自己修復を促す再生因子注入による治癒促進 大人のオスグッド治療は、症状の程度に応じて保存療法・薬物療法・手術療法・再生医療を単独または併用して行い、保存療法では安静やアイシング、ストレッチ、物理療法によって炎症を抑えて膝への負担を軽減します。 薬物療法では消炎鎮痛薬や湿布を使用して痛みを和らげ、日常生活への支障を軽減します。症状が長引き、骨隆起や骨片が原因で痛みが続く場合は手術が検討されます。近年は再生医療も注目されていますが、実施できる医療機関が限られ、適用できる症状も限定されるため、医師と相談の上で適切な治療方針の決定が重要です。 以下の記事では、オスグッドの治療法について詳しく解説しています。 保存療法 要因 詳細 身体への負担が少ない治療法 手術を行わず薬物・物理療法やリハビリで炎症を抑える方法。身体への負担が少なく日常生活を維持可能な治療 安静と運動制限による炎症の鎮静 膝への過度な負荷回避と安静維持による炎症抑制。組織修復促進と痛み軽減への寄与 筋力強化やストレッチによる膝周囲の機能改善 理学療法やストレッチによる大腿四頭筋の柔軟性・筋力改善。膝負担軽減と再発予防への効果 副作用の少なさと継続しやすさ 身体への副作用が少なく、継続しやすい治療。根本的な改善を目指す保存的対応 手術適応は限定的 重症例や骨片剥離例を除き、多くは保存療法で改善が可能な状態。治療の第一選択とされる方法 大人のオスグッドでは、まず保存療法が基本となります。安静と運動制限によって炎症の進行を抑え、膝周囲の筋肉をゆるめるストレッチや温熱療法を併用します。 急性期には冷却が、炎症が落ち着いた後は温熱療法による血流改善が効果的です。痛みが強い場合は、医師の判断で固定具やサポーターの使用も検討されます。日常動作の中で膝への負担を減らしながら、段階的にリハビリを行うことで、再発防止につながります。 以下の記事では、オスグッドのテーピング方法について詳しく解説しています。 薬物療法 薬物療法について 詳細 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用 イブプロフェンやロキソプロフェンなどによる炎症・痛みの抑制。内服や湿布で症状軽減と回復促進を図る方法 対症療法としての位置づけ 一時的に痛みや炎症を和らげる治療。リハビリや筋力強化と併用する補助的手段 副作用への注意 内服による胃腸障害や腎機能への負担への配慮。外用薬では皮膚のかぶれなど局所反応への注意 痛み強度に応じた使い分け 強い痛みには内服薬、軽度や慢性期の痛みには外用薬を用いる対応 注射療法について 炎症抑制を目的とした局所注射の実施例。ステロイド使用時には副作用を考慮した慎重な対応が必要な方法 薬物療法は、オスグッドによる痛みや炎症を和らげるための補助的な治療法です。非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などを用いることで、急性期の炎症や腫れを抑え、日常生活での不快感を軽減できます。 ただし、薬物療法はあくまで症状を一時的に緩和する対症療法であり、根本的な治癒を目的とするものではありません。長期的な使用は胃腸障害や腎機能への影響などの副作用を招くおそれがあるため、医師の指導のもとで適切に使用する必要があります。薬物療法は物理療法やリハビリとの併用で、より効果的な回復を目指す治療の一環となります。 手術療法 大人のオスグッドに対する手術療法は、保存療法や薬物療法、装具療法で改善がみられず、日常生活やスポーツに支障が出る重症例に適応される最終的な治療法です。 主に脛骨粗面に残った遊離骨片が慢性的な炎症や痛みの原因となる場合に行われ、代表的な手術は遊離骨片摘出術です。隆起した骨や骨片を除去して脛骨粗面を整えることで、痛みの根本改善を図ります。 手術は局所または全身麻酔下で行われ、短期間の入院とリハビリで筋力や関節の可動域を回復させ、痛みの根本改善と安定した運動復帰を目指しますが、一定のリスクもあるため医師と相談の上慎重な判断が必要です。 再生医療 大人のオスグッドに対する再生医療は、患者自身の細胞や血液中の成分を利用し、炎症の抑制や損傷組織の修復をサポートする治療法です。代表的な方法にPRP療法(多血小板血漿療法)があり、採取した血液を遠心分離して得た血小板成分を患部に注入することで、炎症を和らげる効果が期待されます。 また、脂肪由来の幹細胞を用いた治療もあり、培養した細胞を点滴や局所投与で用い、損傷部位の機能回復を目指します。ただし、再生医療は限られた医療機関でのみ提供され、適応となる症状も限定的なため、治療を希望する際は医師と十分に相談し、適切な方法の検討が大切です。 以下の記事では、オスグッドに対する再生医療について詳しく解説しています。 大人になってからオスグッドを再発させないためのポイント 再発させないためのポイント 詳細 膝への負担管理 長時間の立位や過度な運動を避け、膝への衝撃や負荷を最小限に抑える生活環境の整備。痛み出現時の早期休息による炎症悪化の予防 ストレッチと筋力維持 大腿四頭筋やハムストリングスを中心とした柔軟性と筋力の維持による膝への牽引ストレスの軽減。継続的なストレッチと筋力トレーニングの実践 姿勢と動作の改善 歩行や屈伸時の膝の軌道修正による前傾姿勢やねじれの防止 装具・サポーターの活用 膝蓋腱ベルトやサポーターの使用による膝下への負担分散。スポーツ時の再発予防を目的とした装具の活用 定期的な医療機関での経過観察 定期的な整形外科での膝状態の確認による炎症・骨変形の早期発見。再発防止に向けた継続的なフォローアップ オスグッドの再発を防ぐには、日常生活での継続的なケアが欠かせません。膝への負担を管理し、急な運動負荷の増加を避けて段階的にトレーニングを行うことが大切です。適正体重の維持で膝関節への圧力を軽減できます。 さらに、大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性を高めるストレッチと、筋力トレーニングによる膝周囲の安定性向上が有効です。加えて、正しい姿勢やフォームの習得により、日常動作や運動時の膝へのストレスを最小限に抑えます。 装具やサポーターを活用すれば、負担を分散して再燃を防止できます。定期的な整形外科での経過観察も、早期発見と再発防止において重要です。 膝への負担管理 オスグッドの再発予防には、膝への負担管理が大切です。脛骨粗面には大腿四頭筋の牽引力が集中するため、過度な運動や不適切な動作を繰り返すと、炎症や痛みが再発しやすくなります。とくに大人では骨変形や慢性炎症が残っていることが多く、負担の蓄積が症状悪化の要因となります。 ジャンプやランニングなど膝に強い負荷をかける動作は控え、正しい立ち座り動作や姿勢を意識しましょう。痛みが出た際は早期に安静を保ち、アイシングや休息で炎症を鎮めることが回復を早めます。膝蓋腱バンドやサポーターの活用も有効です。膝へのストレスを軽減し、再発防止に役立ちます。 ストレッチと筋力維持 項目 詳細 大腿四頭筋・ハムストリングス・股関節屈筋群の柔軟性向上 太ももや股関節周囲の筋肉を柔軟に保ち、膝の脛骨粗面への牽引力を軽減する。痛みや再発を予防 痛みが増さない範囲でのストレッチ実施 無理な動作を避け、痛みのない範囲でゆっくり行うことで筋肉や腱への刺激を最小限に抑える 定期的な継続による柔軟性維持 毎日のストレッチ習慣化による筋肉の硬さ改善と膝への長期的な負担軽減 膝周囲の筋力維持・強化 大腿四頭筋・ハムストリングス・大殿筋などの筋力強化による膝関節の安定性向上と動作時負担の分散 具体的なトレーニング例 ヒップリフト、タオルギャザー、ランジスクワットなどの自重トレーニングによる下肢筋力の強化 姿勢を意識した体幹トレーニング 姿勢の崩れ防止と骨盤・体幹筋の強化による膝への過剰負担の抑制 太もも前面(大腿四頭筋)やハムストリングスの柔軟性を高めることで、膝蓋腱への牽引力を軽減できます。日常的なストレッチで筋肉バランスを整え、再発を防ぐことが大切です。 また、太ももやお尻の筋力を維持すれば、膝関節の安定性が向上します。無理のない範囲で筋トレやストレッチの継続が重要ですが、痛みがある場合は医師の指導のもとで行うようにしましょう。 以下の記事では、オスグッドのストレッチ方法について詳しく解説しています。 姿勢と動作の改善 改善ポイント 詳細 骨盤を前に出すような立ち姿勢を意識する 骨盤を立てて背筋を伸ばし、膝への前方負担を軽減する正しい姿勢の維持 膝を曲げる時は股関節も一緒に屈曲させる 膝単独の動きを避け、股関節と連動させて屈伸することで膝蓋腱への牽引を分散 階段の上り下りでは足全体を使い、ゆっくり動作する 膝への急激な衝撃を防ぎ、関節や筋肉への負担を軽減する動作の実践 長時間同じ姿勢や動作を続けないようにする 一定姿勢による筋緊張や血流低下の防止と、膝周囲の柔軟性維持 ジャンプや急な方向転換など膝に強い負荷がかかる動作を控える 繰り返しの衝撃や牽引による炎症や再発の予防 姿勢と動作を正しく整えることは膝への負担軽減につながり、重心が後方に偏ることで生じる大腿四頭筋の過緊張や脛骨粗面への過度な牽引を防止できます。 また、左右の筋力バランスを整えることで膝への偏ったストレスを防ぎ、骨盤や股関節の動きも改善されます。全身の姿勢を意識することが、再発予防と膝機能の維持に効果的です。 装具・サポーターの活用 項目 詳細 痛みの軽減と膝下骨への負担軽減 膝蓋腱を圧迫し、脛骨粗面への牽引力を分散・軽減でジャンプやダッシュ時の痛みを緩和 膝全体の安定性向上と保温効果 膝全体を包み込むことで関節の安定性を高め、保温により筋肉の緊張を緩和し再発を予防 使い方と装着時の注意点 適度な締め付けの維持と長時間装着の回避による血流障害・皮膚トラブル防止 日常生活やスポーツ時の負担軽減 膝への衝撃や負荷を軽減し、痛みを抑えながらリハビリや活動を継続可能とする補助 装具やサポーターは、膝蓋腱への負担を軽減し、オスグッドの再発を防ぐ有効な手段です。代表的な膝蓋腱サポーターバンドは、膝蓋骨の下に装着して腱への張力を分散させ、脛骨粗面への牽引力を和らげます。 運動時に使用することで、痛みや炎症の再発予防に役立ちます。また、膝全体を支えるスリーブタイプのサポーターは関節の安定性を高め、過度な動きを抑制します。 さらに、足のアライメントを整える足底板(インソール)も膝への負荷軽減に有効です。症状や体型に合った装具を医師や専門スタッフと相談の上で選ぶことが大切です。 定期的な医療機関での経過観察 項目 詳細 症状の変化・再燃の早期発見 痛みや違和感の再出現を早期に把握し、治療方針を迅速に修正するための指標 構造変化・進行の把握 レントゲンやMRIなどで骨や腱の変化を定期的に確認し、進行や形態異常を把握するための手段 リハビリ・運動負荷の進行管理 ストレッチや筋力トレーニングの進行度を確認し、運動強度や内容を適切に調整するための評価 二次的膝疾患・合併症の早期発見 変形性膝関節症や軟骨損傷などの合併症を早期に検出し、重症化を防ぐための観察 患者のモチベーション維持 医師の定期チェックによる治療とセルフケア継続への意欲向上 治療方針見直しの判断材料 症状の改善が見られない場合に、手術や再生医療など次の治療選択を検討するための判断基準 (文献2) オスグッドの既往がある方は、痛みがなくても定期的に医療機関で膝の状態を確認しましょう。経過観察により、再発の兆候や膝への過度な負担を早期に把握でき、症状が軽いうちに治療や対応が期待できます。 また、痛みがある場合は、医師が安静や休息の必要性を適切に判断し、再び運動を始めるタイミングを見極めることができます。自己判断を避け、定期的な診察を受けて膝の健康を維持することが再発予防に重要です。 大人になって再発したオスグッドのお悩みは当院へご相談ください 成長期に治ったと思っていたオスグッドが、大人になって再発する例は珍しくありません。慢性化を防ぐには、原因を正しく見極め、早期に治療を始めることが大切です。 大人になって再発したオスグッドについてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、大人のオスグッドに対して再生医療を用いた治療を行っています。再生医療は、膝蓋腱付着部から脛骨粗面にかけて生じる炎症や微小損傷、組織の治癒遅延に対して行う治療です。 PRP(多血小板血漿)などの生体由来製剤を用いることで、成長因子の働きにより炎症を抑え、組織の修復を促します。すべての症例に適応するわけではありませんが、症状や状態に応じた有効な治療の選択肢となります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 大人のオスグッドに関するよくある質問 オスグッドは大人になっても痛いですか? 成人後もオスグッドによる痛みが生じることがあります。膝に違和感や痛みが続く場合は、放置せず医療機関を受診しましょう。 適切な治療を受けることで、多くのケースで症状の改善が期待できます。 仕事や運動は継続しても大丈夫ですか? 大人のオスグッドでは、痛みの程度に応じた運動制限と負荷調整が必要です。強い痛みや腫れがある場合は安静を保ち、症状が落ち着いているときもジャンプなどの膝に負担がかかる動作は控えましょう。 ストレッチや筋力強化などのリハビリを併用し、段階的に運動を再開することが再発予防につながります。 オスグッドを発症すると身長が止まってしまいますか? 通常、身長の伸びが止まることはありません。炎症は脛骨粗面の限られた部位で起こるもので、成長板全体には影響しません。 ただし、痛みにより運動量が減ると骨への刺激が不足し、間接的に成長に影響する可能性があるため、痛みを我慢せず適切に治療を行うことが大切です。 以下の記事では、オスグッドと身長の関係性について詳しく解説しています 参考文献 (文献1) Osgood-Schlatter disease|Radiopaedia (文献2) Osgood-Schlatter病の病態と治療発症から復帰までの現状と今後の課題|日本アスレティックトレーニング学会誌 第4巻 第1号
2025.12.13 -
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「オスグッドを緩和するためにストレッチを取り入れたい」 「ストレッチをすればオスグッドが良くなると耳にした」 オスグッドに対しては、ストレッチが有効な治療および予防手段のひとつです。適切なストレッチを行うことで、症状の改善や再発予防が期待できます。 しかし、誤った方法で実施すると、痛みの悪化や治癒の遅れにつながるため、ストレッチは医師の指導のもと、正しい方法を理解し、無理のない範囲で行うことが重要です。 本記事では、オスグッドにおけるストレッチのやり方を詳しく解説しています。記事の最後には、オスグッドのストレッチに関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オスグッドについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください オスグッドにおけるストレッチのやり方 ストレッチのやり方 詳細 大腿四頭筋を伸ばすストレッチ 横向きで上の膝を曲げ、かかとをお尻に近づけて太もも前面を伸ばす ハムストリングスを伸ばすストレッチ 仰向けで片脚を上げ、太もも裏の伸びを感じながら反動をつけずに保持 ふくらはぎを伸ばすストレッチ 壁に手をつき、片脚を後ろに引いてかかとを床につけ、ふくらはぎを伸ばす 股関節周囲を伸ばすストレッチ 片膝を曲げて座り、上体を前に倒して内ももと股関節を伸ばす オスグッド・シュラッター病において、ストレッチは膝への負担軽減に重要な役割を果たします。成長期の膝は骨や腱の成熟が不十分であり、太ももやふくらはぎの筋肉が硬い状態では牽引力が増大し、炎症を助長する可能性があります。 ストレッチの基本は、痛みのない範囲で筋肉をゆっくりと伸ばすことです。実施時期は、運動前後や入浴後など、筋肉が十分に温まったタイミングが適しています。とくに大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋(ふくらはぎ)、股関節周囲の柔軟性をバランスよく向上させることが、症状の緩和と再発予防に有効です。 大腿四頭筋を伸ばすストレッチ 手順 内容 1.準備の姿勢 横向きに寝て、下側の足を軽く曲げて安定 2.足首を持つ ストレッチする足の足首を同じ側の手で掴む動作 3.かかとをお尻に近づける ゆっくりかかとをお尻側へ引き寄せ、大腿四頭筋の伸張感 4.姿勢の注意 腰の反りや身体のズレを避け、まっすぐな姿勢維持 5.保持 心地良い範囲で約30秒間のキープ 6.反対側も同様に もう片方の足も同じ手順での実施 横向きに寝た状態で行う大腿四頭筋のストレッチです。下側の足を軽く曲げて身体を安定させ、上側の足首を同じ側の手でつかみ、かかとをゆっくりお尻へ近づけます。太ももの前面が心地よく伸びていることを感じながら、腰を反らさず身体をまっすぐ保ちましょう。無理のない範囲で約30秒キープし、反対側も同様に行います。 腰を反らさず、骨盤をやや後傾させる意識を持つことがポイントです。ストレッチ中に膝下の痛みが強まる場合は直ちに中止し、反動をつけずにゆっくり行います。入浴後や軽い運動後など、身体が温まった状態で実施すると良いでしょう。継続的な実施で膝蓋腱への負担を軽減し、運動時の痛み予防につながります。 ハムストリングスを伸ばすストレッチ 手順 内容 1.準備の姿勢 床に座り、両脚を前に伸ばした姿勢。伸ばす脚をまっすぐ保ち、もう片方は軽く曲げた状態 2.上体を前に倒す 骨盤を前に傾け、背筋を伸ばしたまま上体をゆっくり前方に倒す動作。おへそを前脚の方向へ近づけて太もも裏の伸張 3.つま先を手で引く 届く範囲でつま先を体の方向へ軽く引く動作。足首を90度に保つことで効果的な伸張 4.保持 心地良い伸びを感じる位置で20〜30秒間の保持。無理な引き伸ばしは避ける 5.ゆっくり戻す 反動をつけずに上体を徐々に起こし、元の姿勢に戻す 6.反対側も同様に実施 もう片方の脚も同じ手順での実施 太ももの裏側に位置するハムストリングスが硬くなると、膝や腰に過度な負担がかかり、痛みや違和感の原因となります。床に座り、片脚を前に伸ばしてつま先を上に向け、背筋を伸ばしたまま上体を前方へ倒します。 太もも裏に心地良い伸びを感じる位置で20〜30秒間保持し、呼吸を止めずに行うことが大切です。背中を丸めず、骨盤を前傾させるよう意識すると良いでしょう。 筋肉の硬さが強い場合は、膝を軽く曲げても問題ありません。ストレッチ中に鋭い痛みを感じた際は直ちに中止し、無理のない範囲で行います。 ふくらはぎを伸ばすストレッチ 手順 内容 1.準備の姿勢 壁など支えになる場所の近くに立ち、両腕で身体を安定させる姿勢 2.脚を前後に開く 片脚を前に出し、もう一方を後方に引く動作。後脚側のふくらはぎを伸ばす対象 3.前脚の膝を曲げて重心を移す 前脚の膝を曲げ、壁方向へ身体をゆっくり倒す姿勢。後脚のかかとを床に固定 4.伸びを感じたところで保持 ふくらはぎに心地良い伸張感を感じる位置で10〜20秒間の静止 5.ゆっくり戻す 重心を元に戻し、脚を静かに戻す動作。反動をつけるのは避ける 6.反対側も同様に 左右を入れ替えて同様の手順で実施 ふくらはぎの筋肉である腓腹筋とヒラメ筋は、ジャンプやダッシュなどの動作で強く働く重要な筋肉です。壁に手をつき、片脚を後ろに引いてかかとを床につけたまま身体を前方に傾けます。後ろ脚のふくらはぎに伸びを感じる位置で20〜30秒間保持します。 膝を伸ばすと腓腹筋、軽く曲げるとヒラメ筋を効果的に伸ばせます。かかとを床から離さず、背筋を伸ばして正しい姿勢を保ちましょう。また、ストレッチ中に痛みが生じた場合は直ちに中止します。身体が温まった状態で行うと筋の柔軟性が高まり、膝関節への衝撃を和らげる効果が期待できます。 股関節周囲を伸ばすストレッチ 手順 内容 1.座った姿勢で準備 床に座り、両足の裏を合わせて膝を外側に開く姿勢。バタフライポーズの体勢 2.足を引き寄せる 両手で足先を持ち、できる範囲で身体に引き寄せる姿勢 3.膝を床に近づけるよう圧をかける 肘で膝をゆっくり床方向へ押し、股関節内側の伸張感 4.姿勢の注意 背筋を伸ばし、猫背を避ける姿勢維持 5.保持時間 心地良い伸びを感じる位置で約30秒間の静止 6.繰り返す 身体を軽く前に倒して伸ばす動作の追加による柔軟性向上 股関節周囲の柔軟性が低下すると、太ももや膝への負担が増し、痛みやフォームの乱れにつながることがあります。そこで効果が期待できるのが股関節のストレッチです。 まず、あぐらをかくように座り、両足の裏を合わせて膝を外側に開き、背筋を伸ばします。両肘で膝を軽く押しながら、股関節の内側がじんわりと伸びる位置で20〜30秒保持します。また、太ももの外側を伸ばすには、仰向けで片脚を反対側へ倒すストレッチも効果的です。 実践する際は、反動をつけず、呼吸を止めずにゆっくり行いましょう。無理に押さず、痛みを感じた場合はすぐに中止してください。このストレッチを定期的に行うことで、股関節の柔軟性が高まり、膝への牽引負担を軽減し、安定した動作を維持しやすくなります。 オスグッドにストレッチが有効とされる理由 有効とされる理由 詳細 大腿四頭筋の柔軟性が膝への負担を軽減する 太もも前面の筋緊張を緩和し、膝蓋腱への牽引を軽減 下肢全体の柔軟性バランスが衝撃を分散させる 太もも・ふくらはぎ・股関節の連動性向上による衝撃吸収の促進 関節可動域の維持が代償動作を防ぐ 可動域低下による不自然な姿勢や動作の予防 ストレッチはオスグッド病の回復と再発予防に重要であり、膝下の骨(脛骨粗面)に付着する腱は太ももの筋肉と連動しているため、筋肉が硬くなると腱への牽引が強まり膝への負担が増加します。 柔軟性を高めることで膝周囲の緊張が和らぎ、下肢全体のバランスが整うことで衝撃が分散しやすくなります。ストレッチは痛みの軽減と再発防止に有効なセルフケアです。 無理に伸ばさず、痛みを感じた場合は中止してください。継続的に行うことで、股関節を含む下肢の柔軟性が向上します。 大腿四頭筋の柔軟性が膝への負担を軽減する 項目 詳細 筋肉が硬いとどんな問題が起こるのか 大腿四頭筋の硬さによる膝蓋腱を介した脛骨粗面への過剰な牽引。ジャンプやダッシュ時の衝撃による成長軟骨への負担 ストレッチで柔軟性を高めると負担が減る理由 筋肉の伸張性向上による膝蓋腱への牽引力の軽減。柔らかい筋組織による成長軟骨へのストレス緩和 筋肉の緊張が緩和されることで得られる効果 慢性的な筋緊張の緩和による脛骨粗面への圧力低減。組織修復の促進による症状改善 衝撃吸収能力が向上する 柔軟な大腿四頭筋による着地衝撃の分散。膝関節や腱への直接的負担の軽減 継続的な実施で効果を促進させる 継続的なストレッチによる筋線維の伸張性改善。日常的実践による膝負担の長期的軽減 (文献1) 大腿四頭筋は膝蓋腱を介して膝下の骨につながっており、この筋肉が硬いとジャンプや走行時に膝蓋腱が強く引っ張られます。オスグッドは、この繰り返しの牽引力によって膝下の成長軟骨部分が炎症を起こす状態です。 大腿四頭筋のストレッチで筋肉の柔軟性を高めると、膝蓋腱への牽引力が緩和され、症状の軽減や悪化予防につながります。とくに成長期は筋肉が硬くなりやすいため、運動前後のストレッチ習慣が重要です。また、柔軟性の向上は動作時の衝撃吸収能力を高め、膝への負担を分散させます。 下肢全体の柔軟性バランスが衝撃を分散させる 項目 詳細 関節と筋肉が連動する運動連鎖の理解 足首・膝・股関節の連動による柔軟性バランスの重要性 股関節や足首の柔軟性不足が膝に負担をかけるリスク 股関節や足首の可動制限による膝関節への代償負担の増加 下肢全体の柔軟性が衝撃吸収につながる 筋肉と関節の柔軟性による着地衝撃の吸収と分散 柔軟性バランスを整えることで動作が安定する 柔軟性の均衡によるフォーム安定と膝へのストレス軽減 ハムストリングスやふくらはぎなど下肢の複数の筋肉に柔軟性があると、着地やキック動作時の衝撃を脚全体で吸収できます。一方で、特定の筋肉だけが硬いと、その分の負担が膝に集中します。 下肢全体をバランスよく伸ばすストレッチは、膝への過度な負担を防ぎ、症状の軽減に有効です。また、股関節やふくらはぎの柔軟性が不足すると動作の連動性が損なわれ、膝への負担が増すため、下肢全体を意識した総合的なケアが不可欠です。 関節可動域の維持が代償動作を防ぐ 項目 詳細 可動域制限があると他部位で代替しようとする 股関節や膝の動きが制限されることで、腰や他の関節に負担が集中 正しい軌道で動けないと負荷が偏る 可動域低下による関節軌道の乱れと特定部位への過剰な負担 複数関節が協調して動く運動連鎖が崩れにくくなる 足首・膝・股関節の連動性維持による力の分散と動作の安定 筋肉や腱の働きがバランスよく使われやすくなる 可動域保持による筋・腱の均等な張力と代償動作の抑制 (文献2) 膝や股関節の可動域が狭くなると、動作時に他の部位で無理をしてしまい代償動作が起こります。これが続くと姿勢の崩れや別の部位の痛みを招く恐れがあります。 ストレッチによって関節の動きを保つことで、正しいフォームを維持でき、運動時の負担を軽減できます。とくに成長期の選手は、筋肉の伸びに対して骨の成長が追いつかないことがあるため、定期的な柔軟性チェックが重要です。 【悪化を防ぐ】オスグッドのストレッチにおける注意点 注意点 詳細 症状に応じてストレッチを中止・調整する 痛みや腫れが強い場合の一時中止と、症状に合わせた可動範囲の調整 適切な強度と姿勢で実施する 無理な伸張の回避と、正しいフォームによる筋への均等な負荷 身体が温まっている状態で行う 入浴後や軽い運動後など、筋温上昇時の実施による伸張効果の向上 オスグッドのストレッチは、やり方を誤ると逆効果になることがあります。痛みが強いときは無理に行わず、症状に応じて中止や調整を行うことが大切です。勢いをつけたり、反動を使ったりすると組織を傷める恐れがあります。 また、筋肉が冷えている状態では伸びにくいため、入浴後や軽い運動後など、身体が温まったタイミングで実施しましょう。正しい姿勢と適切な強度の意識がストレッチの効果を引き出します。 以下の記事では、オスグッドの身長に関して詳しく解説しています。 症状に応じてストレッチを中止・調整する 中止するべき状態 詳細 ストレッチ中に膝に鋭い感覚がある 神経や腱への過剰な刺激による炎症悪化の可能性 ストレッチ後に膝が腫れる・熱を持つ 炎症反応や過負荷による組織損傷の可能性 夜間に違和感が強くなり睡眠が妨げられる 炎症の進行や慢性化による痛みの増悪 歩行や階段昇降が困難になる 膝関節への負担増加による機能低下や悪化の兆候 オスグッド病では、症状に応じてストレッチの中止または調整が重要です。炎症が強い急性期に無理にストレッチを行うと、膝下の成長軟骨部に過度な牽引力がかかり、痛みや炎症が悪化する恐れがあります。 ストレッチ中に痛みを感じる場合は、筋肉や骨に過剰な負担が生じているサインです。そのため、継続は禁物です。回復期以降は柔軟性の改善を目的にストレッチの効果が期待できます。しかし、炎症期には安静や冷却が優先されます。 症状の段階に合わせて強度や範囲を調整し、痛みのない範囲で行うことが早期回復につながります。必要に応じて、医師の指導を受けることが推奨されます。 適切な強度と姿勢で実施する 項目 詳細 過度な強度は炎症を悪化させる 強すぎる伸張による脛骨粗面や腱・靭帯への過剰な牽引。痛みに変わる前で止める意識 姿勢の乱れは負担を偏らせる 骨盤や腰の傾きによる不均等な負荷と目的筋への刺激不足。正しいフォームの維持 継続的な効果を得るため 適切な姿勢と強度の反復による柔軟性の段階的改善。無理のない継続の重要性 再発予防や他部位の障害防止にもつながる 正しい姿勢での実施による下肢全体の柔軟性維持と代償動作の予防 ストレッチでは、伸びている感覚は必要ですが、強い違和感を我慢してまで伸ばす必要はありません。筋肉が心地よく伸びる程度の強度で、リラックスして行うのが基本です。 姿勢が崩れると目的の筋肉に十分な効果が得られないだけでなく、他の部位に負担がかかります。たとえば大腿四頭筋のストレッチで腰を反らせると、腰への負担が増して効果が低下します。鏡で姿勢の確認や保護者や指導者にチェックしてもらうのも有効です。 呼吸を止めずにゆっくり息を吐きながら行うと、筋肉の緊張が和らぎ、より効果的なストレッチが期待できます。 身体が温まっている状態で行う 冷えた状態で無理に伸ばすと損傷のリスクが高まります。ウォーミングアップ後や入浴後など、筋肉が柔らかくなっているタイミングで行うのがおすすめです。体温の上昇により筋肉の血流が促進され、筋繊維が柔らかく伸びやすくなります。 冷えた状態で無理に伸ばすと筋肉を傷める恐れがあるため、入浴後や軽い運動後の実施が推奨されます。また、温まることで筋肉の疲労物質や老廃物の排出が促され、硬直した筋肉の緊張が緩みやすくなります。 柔軟性が高まることで膝関節への負担が減り、オスグッド病の症状改善や再発予防にも効果的です。ストレッチの前に身体をしっかり温める習慣を取り入れることが、効率的なケアにつながります。 ストレッチと併用できるオスグッドの予防法 オスグッドの予防法 詳細 運動量の調整と適切な休息 練習量や負荷の管理による膝への過剰なストレス軽減。十分な休息確保による組織回復の促進 身体機能の向上とフォームの改善 体幹・下肢筋力の強化と正しい動作フォームの習得による負担分散 栄養と睡眠による身体づくり タンパク質やカルシウムなど成長期に必要な栄養摂取と十分な睡眠による組織修復の促進 ストレッチと並行して行いたいのが、運動量の調整や生活習慣の見直しです。痛みが出やすい時期は、ジャンプやダッシュを控え、練習メニューを一時的に軽減しましょう。日常的に身体の使い方を意識し、オーバーユースを防ぐことが大切です。 体幹や下肢の筋力を整えるトレーニングも並行して取り組むと効果的です。筋力バランスが整うことで、膝への負担を軽減できます。また、十分な睡眠と栄養の確保が早期回復を促し、再発リスクを軽減させます。 以下の記事では、オスグッドの予防に効果が期待できるテーピングについて詳しく解説しています。 運動量の調整と適切な休息 オスグッド病の予防には、運動量の調整と適切な休息が欠かせません。成長期の膝下(脛骨粗面)は繰り返しの負荷により炎症を起こしやすいため、運動量を調整し過度なストレスを防止します。 十分な休息は、筋肉や腱の回復を促し、炎症の悪化を防ぐ上で大切です。痛みのない範囲で運動を継続することで、筋力や柔軟性を維持しながらスポーツ活動を続けられます。 また、成長期は骨や筋肉の発達が不均衡になりやすいため、負担を考慮したケアが必要です。運動量の調整とストレッチを併用し、痛みや疲労のサインに応じて運動内容を見直すことが、オスグッド病の発症予防と早期回復につながります。 身体機能の向上とフォームの改善 身体機能の向上と正しい動作フォームの習得は、オスグッドの改善と再発予防において重要です。ストレッチや運動療法によって、大腿四頭筋、ハムストリングス、股関節周囲の筋肉の柔軟性とバランスが整います。これにより膝への過剰な負担が軽減されます。 正しいフォームを身につけることで、ジャンプや走行時の衝撃が分散され、膝への無理な力がかかりにくくなります。 フォームが安定すると代償動作を防ぎ、膝周囲の支持力が高まるため、症状の再発予防にも有効です。これらの取り組みは、スポーツへの早期復帰を促し、運動パフォーマンスの向上にもつながります。 栄養と睡眠による身体づくり オスグッドの改善や予防には、ストレッチなどの運動療法に加え、栄養と睡眠による身体づくりが欠かせません。成長期は骨や筋肉が急速に発達するため、タンパク質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンCなどをバランスよく摂取しましょう。これらの栄養素は組織の修復を促し、炎症の改善に役立ちます。 一方、甘い飲料やお菓子の過剰摂取は筋肉や骨の質を低下させるため注意が必要です。また、6〜8時間の良質な睡眠を確保することで、筋肉や骨の再生が促され、回復が早まります。栄養と睡眠の確保が、成長期の健康維持とオスグッドの再発予防につながります。 ストレッチで改善しないオスグッドは医療機関を受診しよう ストレッチを行っても改善しない場合は、自己判断で継続せず整形外科を受診しましょう。医療機関では画像検査で骨や腱の状態を確認し、炎症の程度に応じた治療方針を立てます。痛み止めの処方や物理療法、リハビリなど、医師の指導のもとで適切にケアを受ける必要があります。 ストレッチだけで改善が難しいオスグッドについてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、オスグッドに対して再生医療を用いた治療をご提案しています。再生医療は、オスグッド病における膝蓋腱付着部から脛骨粗面にかけて生じる炎症や微小損傷、治癒遅延に対して行う治療です。再生医療をストレッチと組み合わせることで、筋肉や腱の柔軟性を保ちながら治癒を促進し、オスグッドの改善を手助けする可能性があります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 オスグッドのストレッチに関するよくある質問 オスグッドを早く治す方法はありますか? 成長期に多いオスグッドは、骨や軟骨の発達が関係するため即時改善は困難です。 回復を促すには、運動量の調整、休養、ストレッチやアイシングによるケア、医療機関での評価が基本となります。過度な練習継続は悪化の原因となるため、段階的な回復計画が重要です。 以下の記事では、オスグッドの治療について詳しく解説しています。 オスグッドはストレッチだけで改善しますか? オスグッド病はストレッチだけで完全に改善することは少なく、運動量の調整、適切な休息、筋力強化、正しいフォームの習得などを組み合わせた総合的なケアが必要です。 ストレッチは筋肉の柔軟性を高める上で有効です。しかし、痛みがある場合は無理をせず、症状に応じた調整が大切です。また、医師の診断や指導のもとで段階的に取り組むことが再発予防には不可欠です。 ストレッチで改善しないオスグッドは手術が必要ですか? オスグッド病は成長期終了後に自然寛解することが多く、手術を要する症例はまれです。保存療法で改善が見られない場合も、物理療法、装具療法、運動指導などの保存的治療が優先されます。 骨性隆起や疼痛が成人期まで持続し、日常生活に支障をきたす場合に限り、外科的治療が検討されます。 参考文献 (文献1) ジャックナイフストレッチが下肢筋タイトネスとキック動作に与える影響|デサントスポーツ科学 Vol.40 (文献2) 代償動作(代償運動)による問題|健康長寿ネット
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「膝の下が腫れて、運動後につらそうにしている」 「大事な試合までに間に合うだろうか」 お子さんのオスグッドを早く治したいという声をよく耳にします。オスグッドは、活発にスポーツをする10〜15歳の子どもによく見られる疾患です。 成長期の大切な時期だからこそ、「早く治してあげたい」気持ちと「無理はさせたくない」思いの間で悩む親御さんも多いでしょう。ただし、治療を焦ると逆効果になることもあります。治療期間の目安を理解し、適切な治療を行うことが大切です。 本記事では、現役医師がオスグッドを早く治す方法・治る期間の目安を詳しく解説します。オスグッドの再発予防で実施すべきポイントも合わせて紹介し、記事の最後にはよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オスグッドについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください オスグッドが治る期間の目安 治る期間の目安 詳細 軽度|1〜2カ月程度 痛みが軽く、運動を控えれば早期に改善する状態 中等度|3カ月〜1年程度 膝への負担が続き、安静やリハビリが必要な状態 重度|1年以上かかる場合も 骨の隆起や炎症が強く、長期的な治療や再発防止対策が必要な状態 オスグッドの回復期間は、症状の程度や生活習慣によって異なります。成長期の膝は骨端部が未成熟なため、炎症が治まるまでに時間を要するケースがあります。軽症の場合は1〜2カ月ほどで改善することもありますが、無理に運動を続けると回復が遅れるため注意が必要です。 安静を保ち、適切な治療を行うことで、回復を早めながら再発を防止できます。痛みが長引く場合や日常生活に支障があるときは、整形外科で状態を確認し、回復の段階に合わせた治療計画を立てることが大切です。 以下の記事では、ジャンパー膝とオスグッドの違いについて詳しく解説しています。 軽度|1〜2カ月程度 オスグッドの軽症例では、早期に適切な対応を行えば約1〜2カ月で症状が軽快することがあります。これは炎症や軟部組織の損傷が軽度で、安静やアイシング、太ももの前面のストレッチによって膝への負担を減らすことで回復が促されるためです。 ただし、1〜2カ月で治るのは早期対応と十分なケアが徹底できた場合に限られ、実際には多くの症例で3カ月以上かかることもあります。 中等度|3カ月〜1年程度 中等度のオスグッドでは、膝周囲の炎症や痛みが強く、慢性化しやすいため、回復までに3カ月から1年ほどかかることがあります。成長期には骨の発達速度・筋肉の柔軟性・運動量に個人差があり、これらの違いが治癒期間に影響します。 治療では安静に加え、理学療法士の指導によるリハビリやストレッチ、筋力強化の継続が欠かせません。痛みが軽減しても再発しやすいため、膝への負担を管理しながら慎重に運動を再開しつつ、定期的な経過観察が推奨されます。 重度|1年以上かかる場合も 重度のオスグッドでは、膝の炎症や痛みが強く慢性化しやすいため、回復までに1年以上かかる場合があります。重度の場合は膝にかかる負担が大きく、炎症や組織損傷を繰り返すことで治癒が遅れることが多く、痛みを我慢して運動を続けるとさらに悪化するおそれがあります。 成長期の骨が未成熟な間は、膝への負荷を慎重に調整し、長期的にリハビリを続けることが重要です。症状が重い場合は、専門的な治療や理学療法が必要になることがあり、まれに手術も検討されます。 再発を防ぐためにも、医師や理学療法士の指導のもとで根気強く治療を継続します。 オスグッドを早く治す方法 早く治す方法 詳細 運動制限とアイシングで炎症を抑える 膝への負担を減らし、炎症部位の安静を保つための運動制限と冷却による炎症コントロール ストレッチで筋肉の柔軟性を高める 大腿四頭筋やハムストリングのストレッチによる膝周囲の筋緊張緩和と負担軽減 医療機関での治療と生活習慣の改善 整形外科での診察・理学療法の実施。姿勢・運動習慣の見直しによる再発予防 オスグッドを早く治すには、治療の回復を補助を継続的に行うことが大切です。基本は、炎症を抑えながら膝への負担を減らすことに注力します。 まず運動を制限し、アイシングで炎症を鎮めて痛みの悪化を防ぐことが不可欠です。次に、大腿四頭筋や太もものストレッチで筋肉の柔軟性を高め、膝蓋腱への負担を軽減します。さらに、医療機関での治療と姿勢・生活習慣の改善を並行して行うことで、回復を早め、再発の予防に役立ちます。 運動制限とアイシングで炎症を抑える 方法 理由 詳細 運動制限 膝への負担を減らす 成長期の軟らかい骨への牽引を防ぎ、自然修復の時間を確保するため 症状の悪化を防ぐ 軽症のうちに休ませることで、悪化や手術リスクを防止 炎症の悪循環を断つ 炎症・腫れ・熱感の繰り返しを抑え、治癒を早めるため アイシング 炎症と腫れを抑える 冷却により血管を収縮させ、炎症物質の拡散を防ぐ 組織の修復を助ける 微細な損傷の蓄積を防ぎ、回復を促進する 再発を防ぐ 運動後の冷却習慣で慢性的な炎症の再発を予防 運動制限とアイシングを併用することで、オスグッドの回復をより効果的に促せます。運動制限は膝への負担を減らし、骨の剥離や炎症の進行を防ぐ予防策です。一方、アイシングは炎症や腫れを抑える対処法のため、運動後や入浴後に実施し、血流を適切にコントロールします。 両者を組み合わせることで自然治癒力が高まり、痛みの軽減が期待できます。痛みを伴う動作は避け、医師の指導のもとで段階的に運動を再開しましょう。 ストレッチで筋肉の柔軟性を高める 項目 内容 脛骨粗面への牽引力を軽減 大腿四頭筋の柔軟性向上による骨への負担軽減 血行を促進し回復を早める 血流改善による酸素・栄養供給と老廃物排出の促進 筋肉の緊張をほぐす 膝周囲の筋緊張緩和による不快感軽減と動作の円滑化 再発予防に不可欠 柔軟性維持による再発リスクの低減 筋肉の柔軟性を高めることは、オスグッドの改善と再発予防に欠かせません。太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が硬くなると、膝蓋腱を介して脛骨粗面を強く引っ張り、痛みや骨の剥離を引き起こします。 成長期には骨の伸びに筋肉の発達が追いつかず、筋肉が硬くなりやすいため注意が必要です。 ストレッチは呼吸を止めず、反動をつけずに「痛気持ち良い」程度で行うのが基本です。入浴後など身体が温まった状態で行うと効果的で、継続的な実施が再発防止にもつながります。 医療機関での治療と生活習慣の改善 区分 内容 詳細 医療機関での治療が有効な理由 正確な診断 画像検査による原因特定と誤った自己判断の防止 保存的治療による回復支援 消炎鎮痛薬・サポーター・理学療法による症状改善 運動復帰の適切な判断 医師の経過観察による復帰時期の判断 生活習慣の改善が有効な理由 栄養バランスの改善 タンパク質・カルシウム・ビタミンDによる骨・筋肉の回復促進 睡眠と休養の確保 成長ホルモン分泌促進による修復力の向上 膝への負担軽減 正座・階段昇降など日常動作の見直しによる炎症悪化の防止 自己判断で放置すると長期化するおそれがあります。整形外科では、画像検査で骨や腱の状態を確認し、治療方針を立てます。 リハビリ指導を受けることで、筋肉のバランスやフォーム改善にも取り組めます。また、睡眠・食事・姿勢といった生活習慣の見直しも欠かせません。適切な医療管理と日常ケアを並行して行うことで、より早い回復が期待できます。 オスグッドを早く治すための治療法 治療法 詳細 保存療法 安静・冷却・ストレッチ・サポーターによる膝への負担軽減と自然回復の促進 リハビリテーション(理学療法) 筋力バランスの調整と柔軟性の回復による膝関節機能の改善 薬物療法 炎症や腫れに対して消炎鎮痛薬を用いた症状の緩和 手術療法 骨片の除去や変形修正による重度症例への対応 再生医療 自己組織を利用した修復促進と回復力の向上への応用 オスグッドの治療は、症状の程度に応じて段階的に行われます。基本は安静と炎症抑制を目的とした保存療法で、必要に応じてリハビリや薬物療法を組み合わせます。 改善が見られない場合は、手術や再生医療を検討します。ただし、再生医療は対応施設や適用条件が限られるため、成長期の膝に配慮しながら医師の指導のもとで慎重に進めることが重要です。いずれの治療も日常生活でのケアと並行させることが早期回復につながります。 保存療法 オスグッドの治療では、まず手術を行わない保存療法が基本です。膝に負担をかける動作(ジャンプやダッシュなど)を控え、安静を保つことで炎症の鎮静化を図ります。 さらに、アイシングや消炎鎮痛薬の使用により痛みや腫れを抑え、理学療法士によるストレッチや筋力トレーニングで柔軟性と筋バランスを整えます。スポーツや日常生活への復帰は、自己判断ではなく医師の指導のもと、段階的に行うことが大切です。 以下の記事では、オスグッドの保存療法で使用されるテーピングのやり方について詳しく解説しています。 リハビリテーション(理学療法) オスグッドのリハビリテーション(理学療法)は、痛みや炎症を軽減し、膝の回復を促す効果があります。超音波や低周波など、物理療法の併用で筋肉や腱への負担を和らげ、炎症を抑える効果が期待できます。 さらに、ストレッチで大腿四頭筋やハムストリングの柔軟性を高めると膝への力が分散し、炎症の悪化を防ぎます。加えて、筋力強化により膝関節の安定性が向上し、再発予防にもつながります。とくにスポーツ復帰を目指す場合、競技特性に合わせたリハビリを段階的に進めることが大切です。 以下の記事では、オスグッドのストレッチについて詳しく解説しています。 薬物療法 オスグッドの薬物療法は、炎症と痛みを抑え日常生活の負担を軽減する治療法です。主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用され、強い痛みや腫れを和らげる効果があります。内服薬は全身に作用しますが、副作用として胃腸や腎臓への影響が出る場合があるため、医師の指示に従うことが大切です。 湿布や塗り薬などの外用薬は局所的に効果を発揮し、副作用が少ない特徴があります。必要に応じてステロイド注射などが行われますが、薬物療法はあくまで一時的な対症療法であり、根本的な改善には安静やリハビリなどの併用が欠かせません。 手術療法 区分 詳細 遊離骨片摘出手術 皮膚切開による剥離骨片除去と炎症源解消による根本的改善 骨の隆起部分の削除 膝前面の突出骨削除による刺激軽減と動作時不快感の緩和 手術後のケア 理学療法による柔軟性・筋力回復と段階的運動復帰による再発防止 注意点 保存療法後も改善しない場合の最終的治療選択と慎重な判断の必要性 (文献1) 多くの場合、オスグッドは成長とともに自然改善しますが、保存療法で十分な効果が得られない重症例では手術が検討されます。手術では、剥がれた骨片の除去や骨の隆起部分の削除を行い、炎症や慢性的な痛みの原因を根本的に取り除きます。 対象となるのは、骨の隆起が大きく、成長後も症状が続く場合や、痛みで日常生活に支障をきたすケースです。術後は医師の指導のもとでリハビリを行い、筋肉の柔軟性と筋力を回復させて膝の安定性を取り戻します。 手術は最終手段であり、まずは安静やストレッチ、サポーター、リハビリなどの保存療法を十分に行った上で、医師と相談しながら慎重な判断が求められます。 再生医療 再生医療は、患者自身の幹細胞や血液から採取した成分を利用し、身体の自己修復力を高めて炎症や損傷の回復を促す治療法です。オスグッドに対しては、膝蓋腱や脛骨粗面の炎症が長引く場合に、血小板や幹細胞から放出される成長因子が炎症を抑え、損傷した腱や骨付着部の修復を助けます。 痛みの軽減や組織再生が促進され、従来の保存療法よりも早い回復が期待できます。とくに強い痛みが続く方や、早期のスポーツ復帰を目指す方に有効な治療法です。ただし、再生医療は対応できる医療機関が限られ、症状や年齢によって適応が異なるため、医師への相談が必要です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 【関連記事】 オスグッド病(成長痛)の原因と治し方を解説! 再生医療とは オスグッドの再発予防で実施すべきポイント ポイント 詳細 筋肉ケアと柔軟性維持 太ももやふくらはぎのストレッチ習慣化による膝への負担軽減と再発予防 運動量・環境の調整 練習頻度や強度の見直しと休養日の確保による疲労の蓄積防止 膝サポートの装具活用 サポーターやテーピングによる膝の安定化と負担軽減 栄養と生活習慣の管理 骨・筋肉強化を支えるタンパク質・カルシウム・ビタミンDの摂取と十分な睡眠 医療機関での定期チェック 経過観察と成長段階に応じた治療方針の継続的見直し オスグッドは再発する可能性があります。そのため、負担の適切な管理が大切です。筋肉の柔軟性を保ち、練習量や環境を見直すことで再発リスクを軽減できます。 さらに、サポーターの使用や、栄養・生活習慣の管理も効果的です。医療機関で定期的に状態を確認し、成長に合わせたケアを続けることで、スポーツを楽しめる身体を維持できます。 筋肉ケアと柔軟性維持 太ももやふくらはぎの筋肉が硬くなると膝蓋腱への負担が増し、オスグッドの再発につながります。運動前後のストレッチやマッサージを習慣化して柔軟性を保つことが再発予防の基本です。 とくに大腿四頭筋やハムストリングを伸ばすことで、膝蓋腱を引っ張る力を軽減し、痛みや炎症を防げます。運動前はウォーミングアップで筋肉を温め柔軟性を高め、運動後はクールダウンで疲労物質を排出し筋肉の硬直を防ぐことが大切です。 さらに、骨盤や股関節の動きを整えることで膝への負担を分散し、関節の安定性を高められます。成長期は筋肉が硬くなりやすいため、継続的なケアが再発防止において重要なポイントです。 運動量・環境の調整 オスグッドの再発を防ぐには、膝への負担を減らす運動量と環境の調整が不可欠です。痛みがあるときに無理をすると炎症が悪化し、治癒が遅延します。症状が落ち着くまでは運動を控え、回復に合わせて少しずつ負荷を増やしましょう。 硬い地面での練習は避け、クッション性のある靴で衝撃を和らげます。ジャンプや急停止など膝に負担をかける動作を控え、水泳やサイクリングなど膝に優しい運動へ切り替えるのも効果的です。定期的に休息を取りながら運動量を調整し、膝の状態を確認しつつ続けることが再発予防につながります。 膝サポートの装具活用 オスグッドの再発予防には、膝サポート用装具の活用が有効です。サポーターやオスグッドバンドを装着すると、膝下の脛骨粗面を適度に圧迫し、大腿四頭筋が引っ張る力を分散させることで膝への負担を軽減します。また、装具は膝の安定性を高めることで再発防止にも役立ちます。 ただし、サポーターだけで根本的な改善は難しく、ストレッチやリハビリなどとの併用が大切です。サイズや装着位置が合わないと逆効果になる場合もあるため、医師の指導のもとで適切な装具を選び、正しく使用しましょう。 栄養と生活習慣の管理 項目 内容 タンパク質 筋肉・腱・骨の材料となる栄養素。肉・魚・大豆製品・卵・乳製品からの摂取 カルシウム・ビタミンD 骨の成長と強化を助ける栄養素。乳製品・小魚・きのこ・日光浴での補給 鉄分 成長期に不足しやすく、筋肉機能を維持する栄養素。レバー・赤身肉・ほうれん草の摂取 糖質・ビタミンB群 エネルギー補給と代謝を支える栄養素。主食と野菜・果物のバランス摂取 糖分の過剰摂取制限 お菓子や清涼飲料水の摂りすぎによるタンパク質劣化(糖化)の予防 規則正しい生活 成長と回復を支える生活リズムの確立 十分な睡眠 骨や筋肉の修復を促す6〜8時間の良質な睡眠 休養と運動のバランス 膝の痛みに応じた運動量調整と安静確保 姿勢の管理 座り方・歩き方の改善による膝・骨盤への負担軽減 成長期の骨や筋肉を健康に保つには、栄養バランスの取れた食事と十分な休養が必要です。カルシウム、タンパク質、ビタミンDは骨の強化と筋肉の成長に欠かせない栄養素です。 カルシウムは乳製品や小魚、豆腐、緑黄色野菜から摂取し、タンパク質は肉・魚・卵・大豆製品を中心にバランスよく取り入れましょう。 ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるため、魚やきのこ類を摂取するほか、適度な日光浴も有効です。また、成長ホルモンの分泌を促すため、6〜8時間の良質な睡眠を確保しましょう。 医療機関での定期チェック 項目 内容 症状の経過観察と早期発見 膝の痛みや炎症の変化を確認し、再発や悪化を早期に見つけるための定期検査 画像検査による精密な評価 レントゲン・超音波・MRIによる脛骨粗面や炎症状態の詳細確認 治療効果の確認と調整 改善状況に応じたリハビリ内容・運動制限・薬物療法の見直し 再発防止のための指導 医師による運動・生活習慣・セルフケア方法の継続的サポート 症状が軽くなっても、オスグッドが完全に治癒していない場合があります。定期的に整形外科を受診し、膝の成長状態や運動量、筋肉の柔軟性を確認することが大切です。再発を繰り返す場合は、姿勢やフォームの問題が関係するため、医師による継続的なフォローが有効です。 医療機関では、膝下の腫れや痛み、筋力の状態、画像検査による炎症や剥離の有無などを確認し、治療やリハビリの方針を適切に調整します。自己判断で運動を再開せず、医師の指導のもとで段階的に回復を目指すことが、再発予防につながります。 オスグッドを早く治したいお悩みは当院にご相談ください オスグッドは成長期の子どもに多くみられますが、適切な治療と生活管理を行えば回復が期待できます。自己判断で治そうとすると炎症が慢性化し、長期間にわたって運動に支障をきたすおそれがあります。 オスグッドの治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、オスグッドに対して再生医療を用いた治療をご提案しています。再生医療は、オスグッドによる膝蓋腱付着部から脛骨粗面にかけての炎症や微細な損傷、治りにくい症状に対して行う治療法です。 PRP(多血小板血漿)などの生体由来製剤を使用し、成長因子の働きで炎症を抑え、組織の修復を促します。すべての症例に適応するわけではありませんが、症状や状態に応じて有効な治療法のひとつです。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 オスグッドを早く治したい方からよくある質問 オスグッドを発症すると身長が止まるのは本当ですか? オスグッドと身長の伸びに直接的な関係は確認されていません。成長期に発症しやすいのは、骨の成長に筋肉や腱の伸びが追いつかないためです。 適切に治療すれば身長の発達に影響はありませんが、無理に運動を続けると炎症が長引くことがあります。焦らず治療を進めることが、健やかな成長につながります。 以下の記事では、オスグッドと身長の関係性について詳しく解説しています。 オスグッドでやってはいけないことは? オスグッドでは、痛みを我慢して運動を続けることや強いマッサージ、無理なストレッチは避けましょう。膝をひねる・深く曲げる動作も炎症を悪化させる原因になります。 サポーターの締めすぎや過度なアイシングも血行不良や回復遅延を招くため、医師の指導のもとで適切に行うことが大切です。 オスグッドは整形外科と接骨院どちらを受診するべきですか? オスグッドが疑われる場合は、まず整形外科を受診しましょう。整形外科ではレントゲンなどの画像検査で骨や腱の状態を確認し、炎症の程度に応じた治療方針を立てられます。 接骨院では画像検査が行えないため、初期診断は医師から受けましょう。 参考文献 (文献1) オスグッド・シュラッター病における手術前後の疼痛の経時的変化|Jpn J Rehabil Med 2014
2025.12.13 -
- ひざ関節
- オスグッドシュラッター病
「成長期の子どもが膝の痛みを訴えている」 「膝の痛みを軽減するテーピング方法を知りたい」 オスグッドに対してテーピングを検討する方は多くいます。正しい巻き方・貼り方を実践すれば痛みの軽減効果が期待できる一方、誤った方法では逆効果になる恐れがあります。 なお、テーピングはオスグッドの根本的な治療法ではありません。症状が強い場合は、悪化する前に医療機関を受診しましょう。 本記事では、現役医師がオスグッドのテーピング方法について詳しく解説します。 オスグッドのテーピングを始める前のポイント オスグッドに対するテーピングの簡単な巻き方・貼り方 オスグッドのテーピングで期待できる効果 オスグッドのテーピングにおける注意点 記事の最後には、オスグッドのテーピングに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オスグッドについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 オスグッドのテーピングに必要な道具と準備事項 項目 内容 テーピング用テープ 伸縮性のあるキネシオロジーテープ、または固定力の高いホワイトテープの使用。初心者には肌に馴染みやすく動きに追従するキネシオロジーテープの使用を推奨 ハサミ テープ専用ハサミの準備。刃先が丸いタイプの使用。角を丸く切ることで剥がれにくくなるように工夫する アンダーラップ(必要に応じて) 皮膚が弱い場合やかぶれやすい体質への使用。テープ下に敷いて皮膚トラブルの予防 皮膚の準備 汗や皮脂を拭き取った清潔な状態の保持。入浴後やシャワー後の実施による粘着性の向上 姿勢の準備 膝を軽く曲げた約90度屈曲位での座位保持。膝蓋腱を出しやすくする姿勢 貼付部位の確認 膝蓋骨下から脛骨粗面までのラインの触診。テープを貼る位置の確認 テーピングはオスグッドの不快感を和らげ、膝の動きを支える補助的な手段です。しかし、誤った貼り方をすると逆効果になります。まず膝の状態を確認し、腫れや熱感がある場合は控えましょう。 テーピングは一時的なサポートであり、痛みを根本的に治すものではありません。成長期の子どもは骨や軟部組織が未成熟なため、無理な固定は可動域を制限する恐れがあります。貼る前に皮膚を清潔にし、汗や油分を拭き取ることが大切です。 テーピングが適しているケースと適さないケース ケース 状況 詳細 適しているケース 運動前・試合中の一時的なサポート 練習や競技中の膝への負担軽減 軽度〜中等度の症状 動作時の違和感はあるが日常生活に支障が少ない状態 運動を休めない場合の補助 部活動や大会で練習量を減らせない状況での一時的対応 医師の指導下での使用 医師や理学療法士から正しい巻き方を学んだ場合の補助療法 適していないケース 強い腫れや熱感 炎症が強い状態でのテーピングによる悪化リスク 安静時の強い痛み テーピングでは改善せず、医療機関での診断・治療が優先 皮膚トラブル 湿疹・かぶれ・傷がある場合のテープによる悪化リスク 長期間の貼りっぱなし あくまで一時的な補助であり、治療の代替手段ではない 日常生活への支障 歩行困難など生活に支障が出る場合は受診が優先 テーピングを行う際は、キネシオテープや伸縮性のあるスポーツテープ、ハサミ、固定用テープの3点を用意します。テープは皮膚に直接貼るため、通気性がよく肌に優しい素材を選ぶことが重要です。 貼付前には、膝周囲の皮膚を清潔に保ち、毛が多い場合は軽く整えると密着性が高まります。とくに運動前など汗をかきやすい状況では、汗拭きシートなどで皮脂を除去してから貼ることで剥がれにくくなります。 なお、巻き方を誤ると十分なサポート効果が得られないため、初めて行う場合は指導者の補助のもと実施すると良いでしょう。貼付後に違和感を感じた場合はすぐに外し、皮膚の赤みやかゆみが続く場合は使用を中止してください。 【オスグッドのテーピング】簡単な巻き方・貼り方 手順 内容 1.基点を貼る 膝蓋骨(お皿)のすぐ下にテープを横向きで仮止め。圧迫を感じやすい部分の保護 2. U字形に貼る(左右外側方向) 基点から左右に分け、内側と外側を回り込むように膝上へ貼付。お皿を「U字」で囲む形 3.下方向からの支えを貼る 脛骨粗面から上方向へ貼付。下から上へ持ち上げるように支える貼り方 4.隙間を補強する 内側・外側に短いテープを追加し、ズレや弱い部分を補強。ただし重ねすぎに注意 5.なじませる テープの表面を手のひらで軽くこすり、体温で粘着を安定させる。剥がれるのを防止 オスグッドに対するテーピングは、膝蓋腱への負担を和らげ、運動時のサポートを目的として行います。使用するテープはキネシオロジーテープや伸縮性テープが適しており、あらかじめ25〜50mm幅で膝を覆える長さに切っておきましょう。 角を丸くカットすると剥がれにくくなります。貼付時は膝を軽く曲げ、皮膚を清潔にした状態で行うことが重要です。強く引っ張りすぎず、仮止め後に動きを確認します。長時間の貼付は避け、練習や試合後には速やかに外すことが大切です。 かゆみや発疹が出た場合は直ちに使用を中止してください。テーピングは膝へのストレスを軽減する補助的手段であり、根本的な治療ではありません。痛みや腫れが強い場合は整形外科を受診しましょう。 オスグッドのテーピングで期待できる効果 期待できる効果 詳細 膝蓋腱への負担を軽減する 膝蓋腱への引っ張りを分散し、局所の負担を軽くする効果 運動時の動きをサポートする 膝関節の安定性を高め、動作時のブレを抑える効果 大腿四頭筋の牽引を調整する 大腿四頭筋から膝蓋骨への引っ張りを適切に整える作用 セルフケアとして活用できる 日常生活や運動時に簡単に実践できる補助的ケア方法 テーピングは、膝蓋腱や大腿四頭筋の動きをサポートし、成長期に多いオスグッド病による不快感を和らげます。膝の下部にかかる牽引力を分散させ、過度な引っ張りを抑えることで、練習時の動作をスムーズにします。 また、筋肉の緊張を和らげる作用があり、姿勢やフォームの乱れを防ぐ効果が期待できますが、テーピングは一時的なサポートにすぎません。使用中は無理をせず、運動量の調整やストレッチ、リハビリなどと組み合わせることが重要です。 以下の記事では、オスグッドを早く治す方法について詳しく解説しています。 膝蓋腱への負担を軽減する オスグッドは、大腿四頭筋の強い牽引が膝蓋腱を介して脛骨粗面に過度なストレスを与えることで発症します。そのため、膝蓋腱への負担を軽減することは、原因部位への直接的なアプローチとなり、痛みや炎症を抑える上で有効です。 テーピングを適切に行うことで、ジャンプやダッシュ時に膝蓋腱へ集中する力を分散させ、局所への刺激を軽減できます。また、腱付着部への繰り返し負荷を抑えることで炎症の悪化を防ぎ、運動時の違和感を和らげる効果が期待されます。 運動時の動きをサポートする テーピングによって膝関節の安定性を高めることは、オスグッドに伴う痛みや不安定感の軽減に有効です。ジャンプや方向転換などで膝に大きな負荷がかかる際も、テーピングは関節周囲の筋肉や腱の動きを補助し、ぐらつきを抑える効果があります。 テーピングは、膝蓋腱や大腿四頭筋に集中するストレスを分散させ、適度なサポートでフォームの乱れや他部位への負荷を防ぎ、動作時の負担を軽減してスムーズな動きを保てます。 大腿四頭筋の牽引を調整する オスグッドは大腿四頭筋の牽引による脛骨粗面への負担で発症しますが、テーピングで牽引力を調整することで過度なストレスを軽減できます。大腿四頭筋からの力を分散させることで、膝蓋腱や脛骨への局所的なストレスを和らげ、動作時に繰り返される刺激を抑制します。 さらに、成長期の柔らかい骨端部への影響を抑える効果もあり、炎症の悪化や症状の進行を防ぐ上で有効です。牽引の調整は、痛みの軽減と運動継続を両立するための重要なサポート手段です。 セルフケアとして活用できる オスグッド病の改善には、テーピングと併せて自宅でのセルフケアが必要です。大腿四頭筋のストレッチを行い筋肉の柔軟性を高めることで、膝蓋腱への牽引力を軽減できます。 運動後や痛みが強い場合は、15〜20分程度のアイシングで炎症を抑え、安静を保つことが大切です。大腿四頭筋や膝周囲のマッサージ・筋膜リリースは、血流促進や柔軟性向上に有効です。さらに、クッション性のある靴を選び、硬い路面を避けるなど、膝への衝撃を減らす工夫も推奨されます。 テーピングは医療機関での治療を補助するものであり、正しく行えば日常生活のサポートとして有用です。ただし、痛みが強い場合や長引く場合は自己判断を避け、医師の診察を受けることが重要です。 以下の記事では、オスグッドにおけるストレッチの方法を詳しく解説しています。 オスグッドのテーピングにおける注意点 注意点 詳細 強く引っ張りすぎない 過度なテンションによる血流障害や皮膚トラブルを防ぐ 長時間貼りっぱなしにしない 皮膚トラブルを防ぐため定期的に貼り替える 皮膚の状態を確認する かゆみや赤みなどの確認を怠らない 貼り方を間違えないようにする 正しい貼り方で適切なサポート効果を得る テーピングだけに頼らない 他の治療やケアと併用して根本改善を図る テーピングは正しく行えば有用ですが、方法を誤ると逆効果になることがあります。強く巻きすぎると血行不良や皮膚トラブルを招き、長時間貼り続けると、かぶれの原因になります。 練習や試合後は必ずテープを剥がし、皮膚を清潔に保つことが大切です。また、貼る位置や方向を誤ると十分なサポート効果が得られません。使用の目的を理解し、医師の指導のもとで正しく実施することが重要です。テーピングはあくまで補助的手段であり、痛みの改善には休養とリハビリが欠かせません。 強く引っ張りすぎない テーピングは、強く引っ張りすぎてはいけません。過度なテンションは血流を妨げ、回復を遅らせる上に、皮膚トラブルを招くおそれがあります。 また、テープを強く貼ると膝の可動域が制限され、パフォーマンスが低下するおそれがあります。テーピングは関節の動きを補助して負担を軽減するための手段であり、強く貼ることを目的とするものではありません。 軽く伸ばして貼るだけでも十分な効果が得られるため、強く貼るほど効果があるという考えは誤りです。適切な張力と正確な貼付位置を意識することが、テーピングを効果的に活用する上で重要です。 長時間貼りっぱなしにしない テーピングは長時間貼りっぱなしにしないことが大切です。汗や皮脂の蓄積により皮膚が刺激を受け、かゆみ、かぶれ、発赤などのトラブルを起こしやすくなります。とくに成長期の子どもは皮膚が敏感なため注意が必要です。 また、通気性の悪化により湿気や蒸れが生じ、皮膚炎の原因となることもあります。さらに、時間の経過とともにテープがずれたり剥がれたりし、サポート効果が低下します。テーピングは練習や試合など膝に負担がかかる場面で短時間の使用が望ましいです。 皮膚の状態を確認する テーピングを行う際は、皮膚の状態を確認することが重要です。テープは直接皮膚に貼るため、子どもや敏感肌の方ではかぶれや発赤が起こりやすく、貼付前に皮膚を確認することで悪化を防止できます。 擦り傷や湿疹がある部位に貼ると治癒が遅れたり症状が悪化したりするため、事前のチェックが欠かせません。皮膚トラブルが悪化すると、テーピング自体が継続できず膝のケアに支障をきたすこともあります。 貼付前は汗や皮脂を拭き取り、清潔な状態にすることで粘着力が安定し、効果も高まります。発赤やかゆみを感じた場合はすぐに使用を中止し、必要に応じて医師への相談が大切です。 貼り方を間違えないようにする ポイント 詳細 膝を約90度に曲げた状態で貼ること 膝を約90度に曲げ安定した体勢で行う。痛みあれば無理せず角度調整 テープの引き加減は強すぎずに適度 最大伸縮率の約80%程度で貼り、血行障害防止 テープの端は1~2cmは引っ張らずに貼る 始まりと終わりは引っ張らず優しく貼り皮膚のかぶれ防止 お皿の下の骨っ張り部分を包み込むように貼る Y字にカットしたテープで膝蓋骨内外側を通し骨の出っ張りを押さえるようにする テーピングは貼る位置や方向、張りの強さによって効果が大きく変化します。誤った貼り方は十分な効果を得られないだけでなく、膝への負担や可動域の制限を招くおそれがあるため、貼付前に正しい手順を確認し、動画や図解を参考に練習することが大切です。 貼付後は膝の屈伸を行って違和感がないかを確認し、動かしにくい場合は貼り直しが必要です。自己流のまま続けると誤った方法が習慣化するため、定期的に正しい貼り方を見直すようにしましょう。 テーピングだけに頼らない テーピングは膝への負担を軽減する有効な手段ですが、根本治療にはなりません。オスグッド病は成長期にみられる骨や筋肉のアンバランスが原因であり、テーピングだけで改善することは困難です。 症状が強い場合は、運動量の調整や休養が必要です。また、大腿四頭筋の柔軟性を高めるストレッチや、体幹・下肢の筋力バランスを整えるリハビリを併用することで、長期的な回復につながります。痛みが続く場合や悪化する場合は、医療機関での評価を受けることが重要です。 テーピングはあくまで補助的な手段であり、休養・リハビリ・医師の診察と組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。 適切なテーピングでオスグッドの悪化を防ごう オスグッドは成長期の一時的な症状であることが多いですが、対応を誤ると長期化するおそれがあります。テーピングを正しく活用すれば、日常動作や練習時の膝への負担を軽減し、悪化を防止できます。大切なのは、テープを貼ることよりも、適切な使い方を理解することです。 テーピングだけで改善が難しいオスグッドについてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、オスグッドに対して再生医療を用いた治療をご提案しています。再生医療は、オスグッド病における膝蓋腱付着部から脛骨粗面にかけて生じる炎症や微小損傷、治癒遅延に対して行う治療です。 PRP(多血小板血漿)などの生体由来製剤を用い、成長因子の作用によって腱付着部の炎症を抑制し、組織の修復を促進することを目的としています。すべての症例に適応できるわけではありませんが、症状や状態に応じて治療の選択肢として検討できます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 オスグッドのテーピングに関するよくある質問 オスグッドはテーピングをすれば練習や試合に出ても大丈夫ですか? テーピングは膝蓋腱への負担を一時的に軽減し、運動中のサポートとして有効ですが、根本的な治療ではありません。 症状が軽い場合は補助として練習や試合を続けられますが、痛みが強い場合は運動量を減らし、医療機関で適切な診断を受けることが大切です。 オスグッドに対してテーピング以外に有効な対策や治療法はありますか? テーピングはあくまで補助的な手段であり、根本的な改善には総合的なケアが欠かせません。まず、練習や試合の負荷を調整し、膝への繰り返し刺激を減らすことが基本です。 あわせて、大腿四頭筋など太ももの前面を中心にストレッチを行い、柔軟性を高めます。運動後にはアイシングで炎症の悪化を防ぐことが有効です。 症状が続く場合は整形外科を受診し、適切な治療を受けましょう。
2025.12.13 -
- その他、整形外科疾患
「最近、腰が痛くなってきた」「身長が縮んだ気がする」といった変化を感じていませんか。 もしかしたらそれは、骨粗鬆症のサインかもしれません。 骨粗鬆症は、50代以降の女性にとくに多く見られる病気ですが、初期には自覚症状がほとんどありません。 気づいたときには骨がもろくなり、ちょっとした転倒で骨折してしまって発覚するケースも多いのです。 この記事では、骨粗鬆症の基礎知識から、原因、症状、検査方法、治療法、予防法まで解説します。 ご自身の骨の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 骨粗鬆症について気になることがある方は、ぜひご登録ください。 骨粗鬆症とは 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨の密度(骨密度)が低下してもろくなり、骨折のリスクが高まる病気です。(文献1) 健康な骨では、古い骨を壊して新しい骨をつくる「骨の新陳代謝(骨代謝)」がくり返されます。骨代謝は骨を吸収する破骨細胞と新しい骨を形成する骨芽細胞のバランスがつり合い、骨の強度が保たれるのです。(文献2) しかし、閉経による女性ホルモンの減少や加齢による骨形成(新しい骨を作る力)の働きの低下によって骨吸収が骨形成を上回ると、骨の破壊と形成のバランスが崩れてしまいます。この状況が長期間続くと骨密度が徐々に低下し、骨粗鬆症を発症するのです。(文献2) 進行すると、転倒などの軽い衝撃でも骨折しやすくなり、とくに高齢者では寝たきりの原因にもなります。 日本では約1,590万人が骨粗鬆症と推定されており、そのうち約1,180万人が女性です。(文献3) 骨粗鬆症の症状 初期の骨粗鬆症は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行してしまうのが特徴です。とくに背骨の骨折は気づかないうちに起こることも少なくありません。(文献4) しかし、骨粗鬆症が進行すると、次のような変化があらわれることがあります。(文献4) 立ち上がるときや重いものを持つと、背中や腰が痛む 背中や腰が曲がってきた 身長が縮んできた 軽い衝撃で骨折した これらの症状が出た時点では、すでに骨が弱くなっている可能性も考えられます。 骨粗鬆症になると転倒や軽い衝撃でも骨折が起きやすくなるため、これらのサインに気づいたら早めの検査・受診を心がけましょう。 骨粗鬆症の原因 骨粗鬆症を発症する原因として、主に以下があげられます。 カルシウムやビタミンDの不足 女性ホルモンの減少 加齢による骨をつくる力の弱まり これらの要因が重なると、骨吸収が骨形成を上回り、骨密度が徐々に低下していきます。 骨粗鬆症を引き起こす主な原因を見ていきましょう。 カルシウム・ビタミンDの不足 骨をつくる主な材料であるカルシウムと、その吸収を助けるビタミンDが不足すると、骨密度の低下を招きかねません。 カルシウムは骨を強くする以外にも、筋肉や神経の正常なはたらきを支える効果があり、全カルシウムの約1%は血液や細胞などに存在しています。 通常は食事からカルシウムを摂取しますが、摂取量が不足すると、身体は血液中の濃度を一定に保つために骨からカルシウムを溶かし出して利用してしまうのです。(文献2)その結果、骨の中身が減少し、骨密度の低下を引き起こす原因となります。 また、ビタミンDが不足することで腸でのカルシウム吸収が滞り、カルシウム不足になるケースもあります。 腎臓や腸の働きが弱い方や高齢の方は、よりカルシウムが不足しやすい傾向にあるため、十分な注意が必要です。 女性ホルモンの減少 女性ホルモン(エストロゲン)には骨を壊す細胞(破骨細胞)の活性化を抑え、骨を守る働きがあります。(文献1) しかし閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が急激に減り、破骨細胞が活発になります。 その結果、骨の形成が追いつかず、骨密度が急速に低下しやすくなるのです。 とくに閉経前後の50歳前後は、エストロゲンの分泌が急激に低下するため、骨量が減少しやすい時期です。そのため、閉経後数年間はとくに注意が必要です。(文献5) 骨を作る力の弱まり 人の骨は一生を通して作り替えられますが、加齢とともに骨形成が弱まります。(文献6) また、加齢に伴い活性型ビタミンDが作られにくくなり、腎臓や腸管でのカルシウム吸収が低下することも、骨粗鬆症の要因になると考えられます。 運動不足によって骨への刺激が少なくなることも骨を作る力を低下させるため、運動の機会が減る高齢者ほどリスクは高くなるといえるでしょう。 骨粗鬆症になりやすい人の特徴 骨粗鬆症は、加齢だけでなく遺伝や生活習慣、閉経の影響を受ける複合的な疾患です。とくに以下のような特徴に当てはまる方は、発症リスクが高いといわれています。(文献7) 閉経後の女性 高齢者(とくに60歳以上) 運動不足の人 カルシウムやビタミンDの摂取が少ない人 喫煙・過度な飲酒習慣がある人 痩せ型・筋肉量が少ない人 家族に骨粗鬆症の人がいる人 ステロイド薬を長期間使用している人 なお、卵巣摘出や糖尿病、慢性肝障害、ステロイド薬など、ほかの病気や薬が原因で起きる骨粗鬆症は、年齢や性別に関係なく発症します。(文献7) 該当する方は、骨密度測定を早めに受けておくと良いでしょう。 骨粗鬆症で折れやすい部位 骨粗鬆症になると、健康な方では問題ない、少しの刺激でも骨折しやすくなります。骨折が生じやすい部位は、以下のとおりです。(文献8) 背骨 手首 太ももの付け根 なかでも背骨の骨折が起こると、背中や腰が痛くなったあとに背中が丸くなったり身長が縮んだりします。(文献8) 太ももの付け根の骨折は、寝たきりの原因にもなるため注意が必要です。 骨粗鬆症の検査と診断基準 骨粗鬆症の検査は、骨密度測定を中心に、レントゲン撮影や血液・尿検査を組み合わせておこなわれます。 主な検査方法は以下のとおりです。(文献9)(文献10) 検査方法 調べる内容 特徴・目的 骨密度測定 骨に含まれるミネラル成分の量 骨の強さを数値化し、骨粗鬆症の診断に活用 血液・尿検査 骨を壊す・作るサイクルの状態 骨が壊れやすい・作られにくいなど、代謝の異常を把握 レントゲン検査 骨折・変形・骨密度の低下の有無 自覚のない骨折や背骨の変形を早期発見 身長測定 身長の変化 背骨の圧迫骨折による身長低下の早期発見 骨折の有無や若い人の骨密度と比較してどれだけ低下しているか(YAM)で骨粗鬆症かを判断します。 一般的には、以下の3つのうちいずれかを満たした場合、骨粗鬆症と診断されます。(文献1) 脆弱性骨折はないものの、YAMが70%未満 太ももや背骨以外の部分に骨量減少による骨折があり、YAMが80%未満 太ももの付け根もしくは背骨に骨折がある(骨密度に関わらず診断される) なお、詳しい検査の方法は、以下の記事をご覧ください。 骨粗鬆症の治療法 骨粗鬆症の治療は、食事療法・運動療法・薬物治療の3つを組み合わせておこないます。治療の目的は骨折の予防と、骨の健康・生活の質(QOL)の維持です。(文献1) それぞれの治療法について詳しく解説します。 食事療法 食事内容の見直しは、骨粗鬆症の基本的な治療の一つです。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では、以下の栄養素が治療に重要とされています。(文献1) カルシウム ビタミンB6、B12、葉酸 ビタミンC ビタミンD ビタミンK タンパク質 カルシウムはビタミンDと一緒に摂取すると吸収率が上がるため、「しらすトーストと牛乳」「鮭のホイル焼きとヨーグルト」のように、組み合わせてみると良いでしょう。 運動療法 骨粗鬆症に対する運動療法は、骨密度の上昇と骨折リスクの低減に効果的である可能性が示されており、なかでも以下にあげる運動は、閉経後女性や骨粗鬆症の50歳以上の成人で骨密度の上昇が報告されています。(文献1) ウォーキング 筋力トレーニング 太極拳 水中運動 運動は骨に適度な負荷をかけることで、骨形成を促進します。骨粗鬆症に対する運動効果については以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。 薬物治療 骨粗鬆症の治療に用いられる主な薬は、以下のとおりです。(文献1) 治療薬 主な成分名 主な特徴 カルシウム薬 L-アスパラギン酸カルシウム リン酸水素カルシウム カルシウムを補充する 女性ホルモン薬 エストロゲン 閉経後骨粗鬆症に対応する 活性型ビタミンD3薬 アルファカルシドール カルシトリオール エルデカルシトール 他剤との併用で骨密度上昇の報告がある ビタミンK2 メナテトレノン とくに腰の骨粗鬆症に効果を示す可能性がある ビスホスホネート薬 エチドロネート アレンドロネート リセドロネート ミノドロン酸 イバンドロネート ゾレドロン酸 破骨細胞の活性を抑制し骨吸収を抑制する SERM(選択的エストロゲン受容体修飾薬) ラロキシフェン バゼドキシフェン 閉経後骨粗鬆症の女性を主な対象とし、バゼドキシフェンは骨格系および脂質代謝に対して選択的にエストロゲン作用を示す カルシトニン薬 エルカトニン 破骨細胞に直接作用して骨吸収を抑制する 副甲状腺ホルモン薬 テリパラチド アバロパラチド 骨形成促進薬で、骨粗鬆症による骨折リスクが高い患者に使用される 抗RANKL抗体薬 デノスマブ RANKLを阻害し破骨細胞の働きを抑制する 抗スクレロスチン抗体薬 ロモソズマブ 骨形成促進と骨吸収抑制の二重の作用がある どの薬をどのように使うかは、年齢や性別、骨折歴、骨密度などによって、医師が判断します。治療は長期にわたるため、自己判断で中止せず医師と相談しながら続けることが大切です。 骨粗鬆症の予防法 骨粗鬆症の治療法で紹介した食事や運動は、予防にも効果的です。加えて、以下のような生活習慣にも予防効果の向上が期待できます。 日光を浴びる習慣を身につける カルシウムやビタミンDを意識したバランスの良い食事を摂る 毎日適度な運動を続ける 喫煙・過度な飲酒を避ける こうした工夫を続けながら、定期的に骨密度測定を受けて骨の状態を知り、骨量の減少を最小限におさえましょう。 骨粗鬆症かもと感じたら整形外科を受診 「腰や背中が痛い」「身長が縮んだ気がする」「転びやすくなった」などの変化があれば、早めに整形外科を受診しましょう。 骨密度測定で現状を把握し、必要に応じて治療を受けることで、骨折や寝たきりのリスクを大きく減らせます。 すでに骨折を経験している方や、薬物治療以外の方法を相談したい方には、再生医療という選択肢もあります。ご自身の状態に合った治療法について、専門医に相談してみてはいかがでしょうか。 再生医療について詳しく知りたい方は、当院リペアセルクリニックの公式LINEにご登録ください。公式LINEで提供する再生医療に関する情報は、新しい治療選択肢を検討する際にお役立ていただけます。 骨粗鬆症は早めの気づきと対策が大切 骨粗鬆症は年齢や体質だけでなく、生活習慣にも影響される病気です。しかし、原因を理解し、早めに対策を取れば十分に予防・改善が可能です。 とくに閉経後の女性や高齢の方は、定期的な骨密度測定を受け、食事・運動・必要に応じた薬物療法を組み合わせることで、骨折のリスクを大きく減らせます。 日常の食事や運動を見直しながら、不安があれば専門の医師に相談してみましょう。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 骨粗鬆症について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 骨粗鬆症に関するよくある質問 骨粗鬆症はサプリメントで良くなりますか? サプリメントはあくまで食事で不足する栄養分の補助として使うもので、治療薬の代わりにはなりません。 カルシウムやビタミンDの摂取に役立つものの、すでに骨密度が低下している場合はサプリメントだけでは不十分です。 食事での栄養摂取を基本とし、必要に応じて医師が処方する治療薬を服用することが大切です。 骨粗鬆症の検査を受けるタイミングはいつが良いですか? 骨粗鬆症の検査を受けるタイミングは、以下のような時期が適しています。 市町村の健診時期 40歳を超えたとき 関節痛・背が縮んだ感覚など気になる症状があらわれたとき とくに閉経後の女性は骨量が急速に減少しやすいため、整形外科医の定期的な検診を受けることが推奨されます。 骨粗鬆症で一度骨がもろくなってしまっても骨密度は回復しますか? 食事・運動療法を中心に、内服薬や注射による薬物治療を組み合わせることで、骨密度の上昇や骨折リスクの低減が期待できます。ただし、回復には時間がかかるため、根気よく治療を続けることが重要です。 また、骨密度が改善しても治療を自己中断すると再び低下する恐れがあるため、医師の指示に従って継続しましょう。 参考文献 文献1 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年度版|日本骨代謝学会 文献2 骨代謝とは|日本骨代謝学会 文献3 数字でみる骨粗しょう症|公益社団法人骨粗鬆症財団 文献4 骨粗しょう症|大阪医療センター 文献5 閉経後骨粗鬆症|日本内分泌学会 文献6 骨の老化と加齢性骨粗鬆症の形態学的解析|東華岳,久保金弥 文献7 どんな人がなりやすい|公益社団法人骨粗鬆症財団 文献8 「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」|日本整形外科学会 文献9 骨粗鬆症の検査|公益社団法人骨粗鬆症財団 文献10 骨密度検査|北海道大学放射線部
2025.12.13 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
股関節の奥にズキズキとした痛みがあり、整形外科で「股関節唇損傷」と診断されることがあります。 聞き慣れない病名で、治るのかもよくわからず不安に思っている方もいるのではないでしょうか。 股関節唇損傷は、スポーツだけでなく日常動作でも起こる可能性があります。 この記事では、股関節唇損傷の症状や原因、治療法、日常で避けたい動作などを解説します。 手術だけでなく、リハビリや再生医療といった選択肢も紹介するため、治療方法を見直したい人のお役に立てれば幸いです。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療に関するご相談を公式LINEで受け付けています。自分に合った治療法が知りたい方は、まずはお気軽に登録してご利用ください。 股関節唇損傷とは「股関節を安定させる軟骨が傷ついている状態」 股関節唇損傷は、関節を支えるクッションの役割をもつ「関節唇(かんせつしん)」という軟骨が傷ついた状態です。 関節唇とは? 関節唇は、関節の骨と骨のすき間をふちどるようにして囲んでいる、やわらかい軟骨です。 関節を包み込むようにして、骨の動きをなめらかにしたり、衝撃を吸収したり、股関節を安定させたりする働きをしています。(文献1) 関節唇が損傷するとどうなる? 関節唇が傷つくと、股関節の安定性が下がり、動かす際に痛みや違和感が出やすくなります。 たとえば、足の付け根の痛みや引っかかるような感覚などが特徴です。(文献1) 進行すると、軟骨がすり減ることで変形性股関節症へ進むおそれがあります。 変形性股関節症について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 股関節唇損傷の症状 股関節唇損傷の程度や動かし方によって、痛みや違和感の出方はさまざまです。 股関節の前側や足のつけ根(鼠径部)に痛みが出ることが多く、ときにはお尻も痛むことがあります。 また、関節の安定性が失われることで、痛み以外に動かしにくさや引っかかり感といった違和感が出るのが特徴です。(文献1) 代表的な症状は以下の通りです。 足の付け根の痛み お尻の痛み 股関節のポキポキ音やパキッという音 動かしたときの引っかかり感、カクッとした動き 股関節が外れそうなぐらつき、不安定な感覚 関節が動かなくなる「ロッキング現象」 うまく股関節がはまっていないような違和感 痛みが長く続く場合は、早めの受診と適切な対応が必要となります。 股関節唇損傷の主な原因 股関節の関節唇が損傷する背景には、以下のように骨の形や動きのクセ、年齢による変化などが関係しています。 FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント) 繰り返しの動作やスポーツによる負担 加齢による変性や関節の不安定さ 各原因の特徴を、順番に見ていきましょう。 FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント) 股関節唇損傷の原因のひとつとされるのが、股関節の痛みや動かしづらさにつながるFAI(エフエーアイ:大腿骨寛骨臼インピンジメント)です。(文献1) FAIとは、股関節の骨の形により、大腿骨の先端と受け皿となる骨盤側のくぼみ(寛骨臼)がぶつかりやすくなってしまう状態です。(文献2) 関節の動きのなかで骨が繰り返し接触することで、関節唇や軟骨にストレスがかかり、少しずつ軟骨がすり減ってしまいます。 また、FAIでは、股関節の痛みに加えて、股関節を曲げられる角度が少なくなることも特徴です。 繰り返しの動作やスポーツによる負担 関節唇損傷は、小さな負荷の積み重ねも原因のひとつです。股関節を曲げたりねじったりするスポーツや仕事をしている人は、日常的に大きな負担がかかりやすい状態です。(文献1) とくに以下のような競技では、関節唇に負荷が集中しやすいといわれています。 バレエ サッカー ラグビー ゴルフ など 違和感や痛みを感じながら無理を続けると、損傷が進行するおそれがあるため、早めのケアが大切です。 加齢による変性や関節の不安定さ 関節唇は、加齢とともに変性(劣化)していき、傷つきやすくなります。 筋力が落ちて股関節をうまく支えられなくなると、関節の動きが不安定になり、そのぶん関節唇への負担も大きくなるのです。 また、交通事故や股関節の脱臼などのケガも股関節唇損傷につながります。(文献1) 年齢を重ねても股関節を守るためには、日ごろから無理のない動きと適度な筋力を保つことが大切です。 股関節唇損傷の診断方法 股関節唇損傷の診断は、症状の聞き取りや画像検査が中心です。 まずは問診で、痛みが出る動作や期間、生活の中で支障を感じる場面などを確認し、股関節を動かして痛みの場所や動きにくさを確かめる診察が行われます。 画像検査では、レントゲンで骨の形や位置を確認したあと、MRIや造影MRI(MRA)を使って関節唇や軟骨の損傷を詳しく調べます。 さらに、関節に麻酔を注射して痛みが一時的に軽くなるかを確認する股関節内ブロックテストも、診断を確定する手がかりのひとつです。(文献1) 股関節唇の治療方法 股関節唇損傷においては、痛みの程度や関節の状態に応じて、保存療法・手術・再生医療などから治療法が選ばれます。 股関節唇損傷の治療については、以下の記事でも詳しく解説しているため併せてご覧ください。 保存療法|安静・薬・リハビリ 保存療法とは、手術をせずに痛みを軽減し、関節の機能を回復させていく方法です。(文献1) あぐらやしゃがみ込みなど股関節唇への負荷がかかる動作の回避と安静 痛みや炎症を抑える薬の使用 筋力強化や動かしづらさを改善するリハビリテーション 症状を見ながら、これらを組み合わせて治療していきます。 また、以下の記事では、肩の関節唇損傷時の治療について詳しく書かれています。 併せてご覧ください。 手術療法|股関節鏡視下手術 保存療法で効果が出ない場合や損傷が広範囲な場合は、手術が検討されます。 状況に応じて、損傷部位の修復や痛み・違和感を引き起こす原因となる部分の切除などが行われます。(文献1) また、股関節唇損傷の手術では、関節鏡(内視鏡)を使った手術も選択肢のひとつです。 関節鏡視下手術は、傷口が小さく、入院期間も短くてすむのが特徴です。 再生医療|幹細胞治療 再生医療による治療は、股関節唇損傷の新しい治療法です。 再生医療とは、患者自身の脂肪や骨髄から採取した幹細胞(他の細胞に変化する能力がある細胞)を関節に注入する方法です。 また、手法によっては手術・入院が不要なケースもあるため、手術に不安がある人や入院は避けたい人にとって、選択肢の一つとなるでしょう。 当院リペアセルクリニックでは、手術以外の治療法として、股関節唇損傷に対して再生医療をご提案しています。股関節の痛みにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 当院の股関節治療の再生医療については、以下の記事もご覧ください。 股関節唇損傷でやってはいけないこと 股関節に負担をかけるような動きは、回復を妨げる原因になります。 股関節に強い負荷がかかる動作 以下のような負荷は、関節唇に大きなストレスを与えます。 深くしゃがむ 高くジャンプする 股関節を勢いよくひねる 重いものを持った状態でスクワットをする 痛みや違和感がある動作を無理に続けると、損傷が悪化したり、回復が遅れたりする原因になります。関節に負担がかかる運動は控え、回復までは安静を意識しましょう。 長時間の同じ姿勢 あぐらや正座、脚を組む姿勢など、股関節に負荷がかかる姿勢を長時間続けると、関節の一部に力が集中しやすくなります。 とくにデスクワークや長時間の運転、立ち仕事などでは注意が必要です。同じ姿勢が続かないようにする工夫や仕事環境を調整しましょう。 無理なストレッチ 「よかれと思ってやったストレッチ」がかえって逆効果になることもあります。 痛みを我慢して関節を強く伸ばしたり、可動域を無理に広げたりすると、関節唇にさらなるダメージが加わるおそれがあります。 ストレッチは痛みのない範囲で行い、できれば理学療法士や専門家の指導を受けながら進めるのが安心です。 こちらの記事では、股関節唇損傷の改善に役立つストレッチを詳しく紹介しているため、ぜひご覧ください。 股関節唇損傷はひとりで悩まず専門医へ相談しよう 股関節唇損傷は、放っておくと悪化したり、関節の変形につながったりするおそれがあるため、状態に応じた適切な対応が欠かせません。 とくに、痛みが続いているのに我慢して動かし続けていると、関節の中の軟骨や周囲の組織にもダメージが広がる可能性があります。 違和感や動かしづらさが長引くときは、なるべく早めに整形外科や股関節の専門医を受診しましょう。 治療には、安静・リハビリといった保存療法のほか、関節鏡手術や再生医療といった選択肢もあります。 からだにかかる負担や生活スタイルも考慮しながら、自分に合った治療法を見つけるために、まずは専門の医師に相談することが大切です。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 股関節唇損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度ご登録ください。 股関節唇損傷に関するよくある質問 股関節唇損傷が自然治癒することはありますか? 関節唇は一度損傷すると、自然に元の状態に戻ることは難しいとされています。 ただし、損傷の範囲が小さい場合や、痛みの原因が主に炎症や筋肉の緊張であるケースでは、保存療法によって症状の改善がみられることもあります。 その後痛みが改善しても元の生活に戻ると再発することがあるため、医師に指示された生活上の指示を守るようにしましょう。(文献1) 股関節唇損傷の安静期間はどのくらいですか? 安静にすべき期間は、損傷の程度や治療内容によって異なりますが、保存療法では2カ月半~3カ月程度がひとつの目安とされています。(文献1) 最初は炎症を抑えるために安静を保ち、痛みが落ち着いてきたら、リハビリで筋力や柔軟性を徐々に回復させていきましょう。 参考文献 (文献1) A comprehensive review of hip labral tears|Curr Rev Musculoskelet Med (文献2) 大腿骨寛骨臼インピンジメント (FAI)に対する鏡視下手術の up to date|第 40 回日本整形外科スポーツ医学会学術集会
2025.12.13 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
中心性脊髄損傷とは、主に頚髄の中心部分が傷つくことで腕の麻痺やしびれが現れる脊髄損傷の一つです。転倒や交通事故などが原因で起こりやすく、とくに高齢者に発症するケースが多く見られます。 本記事では、中心性脊髄損傷の症状や原因、診断方法などを解説します。治療期間の目安やよくある質問もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。中心性脊髄損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 中心性脊髄損傷とは 中心性脊髄損傷とは、主に首にあたる頚髄の中心部が損傷し、手足の麻痺やしびれが現れる脊髄損傷の一種です。頚髄の中心部分には上肢の神経が多く通っているため、この部分が傷つくと腕や手の動きに障害が出やすくなります。 脊髄の損傷程度によっては、適切なリハビリの継続により日常生活動作の回復が期待できます。 中心性脊髄損傷は上肢に症状が現れやすい点が特徴です。診断後は早期に治療方針を決定し、継続的にケアを進めることが重要です。 【関連記事】 軽度の脊髄損傷とは|知っておきたい症状・治療法と後遺症の可能性を医師が解説 脊髄損傷急性期とは|症状回復の重要な期間といわれる理由や治療法を医師が解説 中心性脊髄損傷の症状 中心性脊髄損傷の主な症状には、上肢の麻痺や手・指のしびれ、感覚障害などがあります。以下でそれぞれ見ていきましょう。 上肢の麻痺 中心性脊髄損傷では、下肢よりも上肢に麻痺が現れやすい点が特徴です。脊髄は部位ごとに支配する身体の領域が決まっており、頚髄は上肢の機能と深く関わっています。脊髄の中心部が損傷すると、上肢へ向かう神経の伝達が妨げられるため、腕の動作や力の入りにくさが生じやすくなります。 物を持ち上げたり腕を動かしたりといった動きが難しくなり、日常生活に支障が出るケースも少なくありません。上肢の麻痺は中心性脊髄損傷の代表的な症状であり、特徴を把握することが治療やリハビリ方針の判断に役立ちます。 手や指のしびれ 手や指のしびれが生じるのも中心性脊髄損傷の症状の一つです。上肢に向かう感覚の神経は脊髄を通って伝わるため、この部分が傷つくと感覚が鈍くなったりしびれが現れたりします。 また、以下のような動作が困難になり日常生活に支障が出る場合があります。 ボタンを留める 箸を使う 細かな物をつまむ など なお、感覚や巧緻性(細かい動作を行う能力)の変化を確認する方法の一つが「10秒テスト」です。左右の手それぞれで10秒間グーパー動作を繰り返し、回数を測定します。20回を下回る場合、巧緻運動障害の可能性があります。 手や指のしびれの程度を把握することで、適切な治療につなげやすくなるでしょう。 感覚障害 中心性脊髄損傷では、手指を中心に温度や痛みの感じ方が変化し、感覚が鈍くなるケースがあります。感覚に関わる神経は脊髄を通って伝達されるため、損傷があると刺激を正しく受け取りにくくなるのです。 触れたときの感覚が弱くなったり、痛みを感じにくくなったりする変化がみられます。また、損傷の範囲によっては、排尿や排便といった自律的な働きにも影響を及ぼすケースがあります。 感覚が鈍くなるとケガに気づきにくくなるため、日常の動作では注意が必要です。 中心性脊髄損傷の原因 中心性脊髄損傷の原因は以下のとおりです。 転倒 交通事故 加齢に伴う脊柱管の狭窄 スポーツ中の接触や外傷 など 頚髄は衝撃の影響を受けやすく、強い外力が加わると中心部が損傷しやすくなります。転倒や交通事故は幅広い年代でみられる要因の一つです。とくに高齢者は加齢による脊柱管の狭窄があると、損傷が起きやすくなります。また、重い物を持ち上げた際の負荷が引き金になるケースも少なくありません。 外部からの衝撃だけでなく、加齢による頸椎の変化も関与するため、自身の年齢や生活環境に応じたリスクを理解しておくことが重要です。 中心性脊髄損傷の治療期間の目安 中心性脊髄損傷の治療期間は、受傷後おおむね半年〜1年が目安とされています。脊髄の機能は時間の経過とともに安定していき、回復が期待できる期間は限られているためです。 とくに受傷後数カ月〜1年の間は、動作や感覚の改善がみられるケースがありますが、その後は大きな変化が出にくくなります。ただし、年齢や損傷範囲によって回復の経過には個人差があります。 中心性脊髄損傷の診断方法 中心性脊髄損傷の診断方法には、MRIによる画像診断に加えて反射テストや知覚検査などの神経学的検査を実施するのが一般的です。以下で代表的な検査を解説するので、参考にしてください。 MRIによる画像診断 中心性脊髄損傷の診断には、MRIによる画像診断が欠かせません。MRIは脊髄や周囲の構造を詳細に描出でき、損傷の状態を正確に評価できるためです。 脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症(こうじゅんじんたいこっかしょう)の有無を確認できるほか、脊髄内部の信号変化を評価すると、損傷の範囲や重症度を把握できます。また、MRIは脊髄の圧迫や腫れの状態も評価できるため、手術適応を検討する際にも有効です。 MRIによる画像診断で得られる所見は、治療方針を検討する際の重要な情報です。 神経学的検査 神経学的検査では、反射・筋力・感覚の変化を確認し、神経損傷の範囲や程度を評価します。脊髄に損傷があると、反射の異常や筋力低下、感覚の鈍さが生じるため、身体の反応を調べることで影響の度合いが把握できます。 神経学的検査の例を下表にまとめました。 検査名 内容 反射テスト 腱や指を刺激し、反射の強さや異常反射を確認する 徒手筋力テスト 上肢の筋肉を動かす力を6段階で評価する 知覚検査 触覚・温度覚・痛覚の変化を調べる 巧緻性の評価 指先の器用さや細かな動作を確認する 上記のような複数の検査を組み合わせることで、神経の状態を総合的に判断しやすくなります。 中心性脊髄損傷の治療法 中心性脊髄損傷は早期の治療が重要です。主な治療法は、保存療法・手術療法・再生医療の3つで、損傷の程度や治療目的に応じて適切な方法が選ばれます。ここでは、それぞれの治療法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 中心性脊髄損傷の初期治療では、安静や頸椎の固定、薬物治療などの保存療法が基本です。受傷直後は脊髄への負担を最小限に抑え、炎症や腫れを広げないように管理することが重要です。 また、状態が安定した段階でリハビリを開始し、動作や筋力の改善を図ります。リハビリは機能の維持や改善に有効です。 高齢者においてもリハビリを継続した症例では歩行機能の維持が確認されており、訓練継続の有効性が報告されています。(文献1)受傷直後から適切な保存療法を進めることが大切です。 手術療法 中心性脊髄損傷では、脊柱管の狭窄や骨の変形により神経が圧迫されている場合に手術療法が検討されます。 骨の変形が強い場合や脊柱管が著しく狭窄しているケースでは、脊髄の圧迫を解除するために除圧術や固定術が行われます。ただし、中心性脊髄損傷は保存療法で改善が見られる例も多く、すべての患者に手術が推奨されるわけではありません。 手術療法は、年齢や損傷の範囲、日常生活への影響などを踏まえて慎重に判断されます。医師と相談しながら適切な治療方法を検討することが大切です。 再生医療 再生医療は、中心性脊髄損傷の治療法の一つです。自分の幹細胞を利用することで、身体が本来持つ再生能力を引き出し、炎症の抑制や組織の修復を目指します。 代表的な方法に、自己の幹細胞を用いる「幹細胞治療」や、血液中の成分を活用する「PRP療法」があります。当院では、おへその横からごく少量の脂肪を採取するだけで幹細胞を培養できる治療を採用しており、身体への負担が少ない点が特徴です。 術後の回復が比較的早いとされているため、手術に抵抗がある方や薬では十分な改善が見られない場合の選択肢として検討されます。 幹細胞治療によって頚髄損傷が改善した症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 中心性脊髄損傷は治療とリハビリの早期開始が重要 中心性脊髄損傷は、転倒や交通事故などの衝撃により頚髄の中心部が損傷し、上肢の麻痺やしびれ、感覚障害などが現れる疾患です。高齢者では脊柱管の狭窄が発症の要因になっているケースもあります。回復は受傷後半年から1年間が目安とされており、この期間にどれだけ機能改善を図れるかが重要です。 薬物治療やリハビリを早期に開始し、継続して取り組むことで日常生活への影響を軽減します。医療機関と相談しながら、自分に合った治療法を選択することが大切です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。中心性脊髄損傷で気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 中心性脊髄損傷に関するよくある質問 中心性脊髄損傷のリハビリに禁忌事項はありますか? 中心性脊髄損傷のリハビリでは、損傷部位に強い負荷がかかる動作や、頸部に過度な負担がかかる姿勢は避けたほうがよいとされています。また、血流が悪くなるような不自然な姿勢を長時間続けることも控えてください。 リハビリは本人の損傷状態に合わせた強度で進めることが重要です。医師や理学療法士の指導のもとで適切な運動量を調整しながら進めましょう。 中心性脊髄損傷にステロイドは効果がありますか? 脊髄損傷には、衝撃で神経細胞が直接傷つけられる「一次損傷」と、その後に起こる炎症反応によってさらに組織が傷つく「二次損傷」があります。神経機能の回復には二次損傷の予防が大事であり、その予防にステロイドが期待されています。 ただし、ステロイドは副作用が強く、効果にも個人差があるため、必ずしもすべての患者に有効とは限りません。医療者の間でも有効性について意見が分かれる部分があるため、使用には慎重な判断が必要です。 参考文献 (文献1) 中心性頸髄損傷リハビリテーションの実学|日本リハビリテーション医学会 学術集会
2025.12.08 -
- 靭帯損傷
- ひざ関節
- その他、整形外科疾患
「腫れて動かしづらい」 「しばらくすれば治ると思ったのに改善しない」 その靭帯の痛みが続くのであれば、靭帯損傷の可能性があります。靭帯は関節を安定させる重要な組織であり、損傷すると歩行や運動に支障をきたします。こうしたケガはスポーツだけでなく、段差での転倒や日常の動作でも起こることがあります。「全治までどのくらいかかるのか」「手術は必要なのか」といった不安を感じる人も多いでしょう。 しかし、受傷の原因や症状を正しく理解し、適切な治療やリハビリを行えば、回復までの道筋を明確にできます。 本記事では、現役医師が靭帯損傷について詳しく解説します。 記事の最後には、靭帯損傷に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 靭帯損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください 靭帯損傷とは 項目 説明 靭帯の役割 骨と骨をつなぐ強靭な線維組織。関節の過度な動きを制御し、安定性を保つ 靭帯の構造 主成分はコラーゲン線維。伸縮性は乏しく、頑丈なロープのような構造をもつ 損傷の発生機序 許容範囲を超える外力によって、靭帯線維が部分的または完全に断裂することで発生 靭帯損傷の定義 捻挫のうち、靭帯自体が損傷したもの。スポーツ活動や日常動作中にも起こり得る 主な原因 急な方向転換、他者との接触、転倒、段差の踏み外しなどによる強い負荷 主な症状 受傷時の「ブチッ」とした音や感覚、関節の腫れ、痛み、可動域の制限 靭帯損傷は、関節を安定させる靭帯が、過度な力で伸ばされたり切れたりした状態を指します。 靭帯を損傷すると関節の動きが制限され、体重をかけた際に違和感が生じます。足首・膝・手首など負荷がかかりやすい部位に多く発生します。適切な治療で回復が見込めますが、放置すると再発や慢性的な関節不安定を招くため、早めの受診が必要です。 以下の記事では、肘関節の外側にある靭帯が傷つくことで引き起こされる肘外側側副靭帯損傷について詳しく解説しています。 靭帯損傷が起こりやすい部位 部位 主な損傷部位・特徴 主な原因 足首(足関節) 外側靭帯の損傷が最も多く、内反捻挫で発生する 段差の踏み外し、着地時のバランス崩れ、スポーツ中のひねり動作 膝(膝関節) 前十字靭帯・後十字靭帯・内外側側副靭帯の損傷がみられる サッカーやバスケットボールなどでの急な方向転換や他者との接触 手首(手関節) 転倒時に手をついた際の衝撃で損傷し、骨折を伴うこともある 転倒や転落、スポーツ・日常動作での手をつく動作 指 母指MP関節側副靭帯損傷(スキーヤーズサム)などが代表的 球技での突き指、スキー中の転倒による衝撃 肩 肩関節脱臼に伴い靭帯が損傷することが多い コンタクトスポーツや転倒時の強い外力 靭帯損傷は全身の関節で起こり得ます。とくに多いのは足首(前距腓靭帯)と膝(前十字靭帯・内側側副靭帯)です。これらの部位は体重を支えながら複雑に動くため、ねじれや外力の影響を受けやすい構造をしています。 スポーツでは急な方向転換やジャンプの着地などで損傷しやすく、日常生活でも段差の踏み外しや転倒によって発生することがあります。また、肩・肘・手首なども転倒や無理な動作で負担がかかると損傷することがあります。靭帯の部位によって治療法や回復期間が異なるため、正確な診断と早期の対応が必要です。 以下の記事では、外側側副靭帯の損傷で引き起こされる、外側側副靭帯損傷について詳しく解説しています。 靭帯損傷の初期症状 初期症状 詳細 受傷時の音や違和感 「ブチッ」「プチッ」といった断裂音や関節のずれを感じる。受傷直後の違和感や不安定な感触 腫れと関節内出血 靭帯損傷による炎症反応や出血による関節周囲の腫脹。皮下出血や内出血による赤紫色の変化 関節の不安定性と運動制限 関節を支える靭帯の損傷によるぐらつきや支えにくさ。痛みによる可動域の制限 (文献1) 靭帯損傷の初期には、関節周囲に腫れや熱感が生じ、動かしにくくなります。受傷直後に「何かが切れたような感覚」や「関節を支えられないほどの違和感」が主な特徴です。 靭帯が損傷すると内部で出血や炎症が起こり、数時間以内に腫れが強くなることがあります。 軽度の損傷でも放置すると症状が悪化し、見た目の腫れが引いても関節の不安定さが残る場合があります。早期に整形外科を受診し、必要に応じて画像検査を行いましょう。 以下の記事では、靭帯損傷の初期症状に関連する内容を詳しく解説しています。 【関連記事】 膝が痛い時に疑われる病気を一覧表で解説|立ったり座ったりがつらい方は要チェック 捻挫の後遺症とは|症状のチェック項目や治し方を現役医師が解説 受傷時の音や違和感 靭帯損傷の初期には、関節の内部で「ブチッ」「プツッ」といった音がすることがあります。これは靭帯の線維が断裂する際に生じる音で、中等度から重度の損傷でみられます。ただし、音がしなくても損傷している場合があり、音の有無だけで重症度を判断できません。 受傷直後には「じんわりとした違和感」や「関節が外れたような感覚」を伴うことがあります。これは靭帯損傷による安定性の低下や内部出血、炎症反応が関係しています。 損傷部位に触れると熱を帯びているように感じることもあり、これは炎症に伴う血流増加によるものです。こうした初期症状は損傷のサインであり、放置せず早めに整形外科で診察と画像検査を受けることが重要です。 腫れと関節内出血 症状・特徴 詳細 急速な腫れの出現 受傷後まもなく関節が腫れ、張ったように感じる状態。24時間以内の腫れは関節内出血の可能性 関節の張り感・圧迫感 関節内に血液や液体がたまり、関節包が膨らむような感覚 熱感・発赤 炎症や出血により患部が温かくなり、赤みを帯びる状態 可動域制限・動かしにくさ 出血や炎症による液体貯留で関節の動きが制限される状態 振動・打撲感(鈍痛) 関節内の血液や浮遊物質が刺激となり生じる不快感や違和感 (文献2) 靭帯損傷による腫れや関節内出血は、損傷した靭帯や周囲組織から血液や体液が関節包内に流れ込み、炎症によって関節が膨らむことで起こります。 関節の張り感や圧迫感、熱感が現れ、膝や足首では皮下出血を伴うことがあり、腫れが急速に強まったり動かした際に強い痛みを感じたりする場合は関節内出血が疑われます。 出血が多いと関節内圧が高まり、軟骨や滑膜に負担がかかることもあるため、冷却と安静を保ちながら速やかに整形外科を受診しましょう。 関節の不安定性と運動制限 症状 詳細 関節の不安定性 損傷した靭帯の支えが失われ、関節がぐらつきやすくなる状態。歩行時や動作時に膝が抜けるような感覚や膝くずれを伴うこともある。関節のずれやすさによる再受傷や変形のリスク 運動制限 腫れや痛み、関節内出血による可動域の制限。関節の曲げ伸ばしが困難となり、日常生活やスポーツ動作に支障をきたす状態。炎症や損傷部位の引っかかりも要因 靭帯が損傷すると関節を支える力が弱まり、不安定性が生じます。歩行時に膝が「ガクッ」と抜けるような感覚や、足首が繰り返し捻れる症状が代表的です。 軽度では運動時のみ、重度では日常動作でも関節の不安定性や可動域制限が現れ、膝の前十字靭帯損傷では階段昇降やしゃがむ動作が困難になります。 無理に動かし続けると関節軟骨や半月板など他の組織にも負担がかかり、二次的な損傷を招きます。不安定性を感じたら装具で固定し、医師の指導のもと段階的にリハビリを進めることが重要です。 靭帯損傷の原因 原因 詳細 スポーツによる靭帯損傷 急な方向転換やジャンプの着地、他者との接触によって生じる過度な関節への負荷 転倒や事故・外部からの強い衝撃 転倒時に手足をついた際の衝撃や交通事故によって加わる急激な関節への外力 加齢や慢性的な負荷 加齢による靭帯組織の変性や、長期間の過使用によって生じる持続的なストレス 靭帯損傷は、関節に通常を超える力が加わったときに発生します。とくに急な方向転換やジャンプ後の着地、段差での踏み外しなど、関節がねじれる動作で起こりやすいのが特徴です。 スポーツ中の衝撃だけでなく、日常生活での転倒や無理な姿勢でも生じます。加齢とともに靭帯の柔軟性や強度が低下すると、わずかな外力でも損傷しやすくなります。 再発を防ぐためには、原因を理解した上で正しい動作の習得や筋力バランスの改善に取り組むことが重要です。 以下の記事では、膝の痛みについて詳しく解説しています。 スポーツによる靭帯損傷 スポーツによる靭帯損傷は、ジャンプの着地や急な方向転換、急停止などで関節に強い力やねじれが加わることで発生します。サッカーやバスケットボールなどでは、対人接触による衝撃が直接靭帯に及ぶこともあります。 筋力不足や誤ったフォーム、同じ動作の繰り返しによる疲労は靭帯損傷のリスクを高めるため、予防には正しいフォームの習得と筋力の強化、十分な休養が不可欠です。 転倒や事故・外部からの強い衝撃 原因 詳細 転倒時の関節のねじれや過伸展 階段の踏み外しや路面での滑倒による急なねじれや過伸展による靭帯損傷 交通事故やスポーツでの衝突による外力 自転車・自動車事故やコンタクトスポーツの衝突によって生じる強い外力の集中 高所からの転落による着地衝撃 高い場所からの飛び降りや転落による着地時の過度な負荷の集中 スポーツ以外の日常生活でも起こり得る 段差でのつまずきや歩行中の転倒による関節への急激な衝撃 予期せぬ外的要因で回避動作ができない 突発的な事故や不意の衝突によって防御姿勢が取れず生じる靭帯への直接負荷 転倒や交通事故など、外部から強い力が加わった場合にも靭帯損傷は発生します。とくに膝や足首、手首は衝撃を受けやすく、転倒時に手をついたり膝をひねったりすると損傷が起こります。 衝撃が大きい場合には、複数の靭帯や関節包が同時に損傷する重症例もみられます。高所からの転落やスポーツ中の接触プレーでは、一瞬で強い外力が加わるため、早期の医療介入が必要です。 外傷後に関節の腫れや動かしづらさが続く場合は、速やかに整形外科を受診してください。 加齢や慢性的な負荷 加齢により靭帯の弾力性や強度が低下し、柔軟性が失われることで、わずかな負荷でも損傷しやすくなります。関節軟骨のすり減りや筋力低下によって靭帯への負担が増し、長時間の立ち仕事や無理な姿勢の継続も損傷を進行させる要因となります。 とくに肥満や偏った動作を繰り返す場合はリスクが高く、高齢者では転倒や身体機能の低下により靭帯損傷の危険性が増すため、注意が必要です。 靭帯損傷の全治までの期間 全治までの期間 詳細 軽度|Ⅰ度 靭帯の一部が軽く伸ばされた状態。回復までの目安は約2〜4週間程度。安静と固定による自然治癒 中度の損傷|Ⅱ度 靭帯の部分断裂がみられる状態。全治の目安は約4〜8週間(1〜2カ月)。安静・固定・リハビリの併用 重度の損傷|Ⅲ度 靭帯の完全断裂が生じた状態。全治まで3〜6カ月を要することが多く、手術や集中的リハビリが必要 靭帯損傷の全治期間は損傷の程度によって異なり、軽度のⅠ度損傷では数週間で日常生活に復帰できることが多いのに対し、完全断裂を伴うⅢ度損傷では回復までに数カ月から半年以上を要する場合があります。 回復期間は損傷部位や年齢、治療開始の時期、リハビリへの取り組み方によって異なり、膝の靭帯損傷では歩行が可能になる時期とスポーツ復帰が許可される時期に差が生じます。 焦って無理をすると再損傷のリスクが高まり、回復が遅れることもあります。医師の診断に基づいて段階的にリハビリを進めることが回復への近道です。 以下の記事では、捻挫の重症度について詳しく解説しています。 軽度|Ⅰ度 軽度の靭帯損傷の全治期間は、一般的に2〜4週間程度です。膝の軽度損傷では、炎症や腫れが落ち着くと日常生活レベルの動作まで回復することが多くみられます。 ただし、この期間は固定や安静、リハビリなどの保存療法を適切に行った場合の目安です。年齢や基礎体力、栄養状態、他組織の損傷有無、治療への取り組み方によって回復速度は異なります。 軽度の損傷でも自己判断で放置したりリハビリを怠ると、関節の不安定性が残ったり慢性化したりする恐れがあります。 中度の損傷|Ⅱ度 中等度の靭帯損傷の全治期間は、一般的に4〜8週間(約1〜2カ月)が目安とされています。回復期間は損傷部位や範囲、治療の適切さに加え、血流や可動性、年齢、体力、基礎疾患などによって大きく異なります。 リハビリを早く始めたり、無理に負荷をかけたりすると治癒が遅れる場合があるため、医師の指導のもとで段階的に運動を再開することが重要です。 重度の損傷|Ⅲ度 重度の靭帯損傷の全治期間は、一般的に3〜6カ月程度を要します。重度損傷では靭帯再建術を行うことが多く、とくに膝の前十字靭帯完全断裂では回復に半年以上を要する場合があります。 若年者や体力のある方は回復が早い傾向にありますが、リハビリの質と進度が機能回復の鍵となるため、医師の指導のもと計画的に進めることが大切です。 靭帯損傷の治療法 治療法 詳細 保存療法(固定・安静・リハビリ) 損傷の軽度〜中等度に行う基本治療。ギプスやサポーターでの固定、安静の保持、段階的なリハビリによる関節機能の回復 薬物療法 炎症や痛みの軽減を目的とした治療。消炎鎮痛薬や湿布、注射薬などによる炎症反応の抑制と疼痛緩和 手術療法 靭帯の完全断裂や保存療法で改善が難しい場合に実施。靭帯再建術や縫合術による関節安定性の回復 再生医療 損傷部位の自然治癒を促す治療法。PRP(多血小板血漿)療法や幹細胞治療による組織再生の促進 軽度〜中等度の損傷では、固定・安静・リハビリを中心とした保存療法で回復を図り、必要に応じて炎症や痛みを抑える薬物療法を併用します。重度の損傷や再発を繰り返す場合は、靭帯再建術などの手術療法が検討されます。 近年では、自己修復力を高めるPRP療法や幹細胞治療といった再生医療も選択肢のひとつです。早期に正確な診断を受け、個々の状態に合わせた治療計画を立てることが回復につながります。 以下の記事では、膝の皿が痛い原因と治療法について詳しく解説しています。 保存療法(固定・安静・リハビリ) 施策 詳細 固定と安静 サポーターや装具で損傷部位を固定し、関節の動きを制限。炎症と腫れを抑え、靭帯回復を助ける治療 RICE療法(安静・冷却・圧迫・挙上) 受傷直後に患部を冷却・圧迫し、心臓より高い位置に挙上して安静を保つ処置。腫れや炎症の抑制 リハビリテーション 急性期後に行う関節可動域訓練や筋力強化、バランス訓練による段階的回復法 日常生活指導 動作の工夫や休息の取り方、再損傷防止のためのリスク管理 保存療法は軽度から中等度の靭帯損傷に有効な治療法です。靭帯は一定の修復能力を持つため、ギプスやサポーターで固定し安静を保つことで自然治癒を促します。 炎症が落ち着いたら理学療法で可動域と筋力を段階的に回復させます。身体への負担が少なく入院の必要もないため、日常生活への影響を最小限に抑えられます。過度な安静は筋力低下を招くため、医師の指導のもと計画的にリハビリを進めることが重要です。 以下の記事では、保存療法で使用される膝サポーターについて詳しく解説しています。 薬物療法 薬物 詳細 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 痛みや腫れ、炎症の抑制を目的とした内服薬や湿布の使用。長期使用時の副作用への注意 鎮痛薬 強い痛みの軽減を目的とした一時的な使用。症状に応じた用量と期間の調整 ヒアルロン酸注射(関節症や疼痛緩和など目的限定) 関節内の潤滑改善と軟骨保護を目的とした注射療法。痛み軽減への応用 薬物療法は靭帯損傷における補助的な治療法です。消炎鎮痛薬を用いて炎症と症状を抑えることで、早期のリハビリ参加を促し治癒を促進します。 しかし、薬物療法だけで靭帯を完全に再生させるのは困難です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)では胃腸障害や腎機能への影響、注射薬では感染リスクなどの副作用に注意が必要です。 手術療法 手術法 詳細 靭帯再建術 患者自身の腱(ハムストリング腱・膝蓋腱など)を用いて新たな靭帯を作成。関節鏡で行うため傷口が小さく回復が比較的早い手術法 靭帯縫合術 部分断裂や複合損傷に対して断裂部を縫合。完全断裂では適応外となる場合が多い手術法 手術後の流れと期間 リハビリで筋力と柔軟性を回復。スポーツや日常生活への復帰まで6カ月〜1年を要する経過 手術療法は、靭帯が完全に断裂した場合や保存療法で改善しない場合に実施されます。手術による靭帯再建は関節の安定性を回復させ、半月板や関節軟骨の二次的な損傷、再断裂、変形性関節症のリスクを減らします。 手術は身体への負担が大きく長期間のリハビリを要するため、生活スタイルや損傷の程度を踏まえて医師と相談し治療法を選択することが重要です。 再生医療 再生医療は、損傷した靭帯の自己修復を促す治療法です。靭帯や関節の組織は血流が少なく自然治癒しにくいですが、血小板に含まれる成長因子や脂肪由来の幹細胞を利用することで修復を促進します。 代表的なPRP療法では、患者自身の血液から血小板成分を抽出して損傷部位に注入します。成長因子が炎症を抑え、症状の軽減に寄与します。 ただし、すべての症例に適応できるわけではなく、実施できる医療機関も限られます。治療を希望する場合は、医師と相談して適応を確認しましょう。 前十字靭帯断裂に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 スポーツ外傷に対する再生医療についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。 靭帯損傷の予防法 予防法 詳細 運動前後のウォーミングアップとクールダウン 関節や筋肉を温め可動域を広げ、運動後に筋や靭帯を緩める習慣 筋力強化とバランストレーニング 関節周囲の筋力向上と姿勢制御力の向上による負荷分散 適切なフォームと装具の活用 動作の改善とサポーターなどの使用による関節保護 日常生活でのケアと体調管理 無理な動作回避と休養、疲労や体調不良時の負荷調整 靭帯損傷は、正しい知識と日常的なケアによって予防できます。運動前後のストレッチやウォーミングアップは関節や筋肉の柔軟性を高め、急な動きへの対応を助けます。筋力とバランスを整えるトレーニングも関節の安定性向上に有効です。 正しいフォームの習得やサポーターの活用によって関節への負担を軽減し、再発を防止できます。疲労をためない体調管理も重要です。 運動前後のウォーミングアップとクールダウン 靭帯損傷の予防には、日常的な準備運動と整理運動の習慣が欠かせません。ウォーミングアップで筋肉や関節を温めることで急な負荷への耐性が高まり、クールダウンは柔軟性を保ち損傷リスクを減らします。 加えて、関節周囲の筋力強化やバランストレーニングで安定性を高め、適切なフォームや装具の活用、無理のない生活と体調管理を徹底することで、靭帯への負荷を軽減できます。 筋力強化とバランストレーニング 筋力強化とバランストレーニングは靭帯損傷の予防に欠かせません。膝周囲の大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えることで関節への負担が分散され、靭帯への過度なストレスを軽減できます。 スクワットやランジ、バランスボール、片足立ち、バランスボードなどのトレーニングは、筋力と神経系の反応速度を高め、関節の安定性を向上させて転倒リスクを減らします。 筋力強化とバランストレーニングを組み合わせて行うことで相乗効果が得られ、関節の安定性が高まるため、定期的に正しいフォームで実施することが重要です。 適切なフォームと装具の活用 正しい運動フォームの習得は靭帯損傷予防の基本です。スクワットやランジでは膝がつま先より前に出ないようにし、膝が内側に入らないよう注意します。体幹をまっすぐ保ち、不適切なフォームによる靭帯へのストレスを避ける必要があります。 運動強度は自分の体力に合わせて段階的に進め、適切な休息を取り入れることが大切です。テーピングやサポーターは関節の動きを補助し、不安定な動きを制限して靭帯への負担を軽減します。 とくにスポーツ時やリハビリ初期に有効ですが、医師の指導を受けて正しく使用することが不可欠です。 日常生活でのケアと体調管理 項目 内容 RICE療法の実施 安静・冷却・圧迫・挙上の4つの基本処置で炎症と腫れを抑制 膝への負担軽減 無理な動作や長時間の立ち仕事を避け、杖やサポーターで関節を保護 栄養管理 タンパク質・ビタミンC・亜鉛を含むバランスの良い食事で組織修復を促進 十分な睡眠 疲労回復と治癒促進に不可欠な休養時間の確保 適切な運動療法 症状が落ち着いた段階でのストレッチや筋力トレーニングの継続 日常生活でのケアと体調管理は靭帯損傷の回復を大きく左右します。受傷直後はRICE療法を速やかに実施し、炎症や腫れを最小限に抑えることが重要です。 回復期には膝に過度な負担をかけず、栄養と休養をしっかり取り入れることが必要です。痛みや腫れが落ち着いた段階で、医師や理学療法士の指導のもと、痛みのない範囲で徐々に運動療法を進めます。 急な激しい運動は避け、段階的に負荷を上げることが再発防止と早期回復につながります。 靭帯損傷でお悩みの方は当院へご相談ください 靭帯損傷を放置すると慢性的な痛みや関節の不安定性につながり、将来的に変形性関節症を招く可能性もあります。早期に診断を受け、適切な治療を始めることが回復への第一歩です。 靭帯損傷の治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、靭帯損傷に対して再生医療を用いた治療をご提案しています。 再生医療は、患者自身の細胞が持つ修復力を活かし、損傷した靭帯組織の再生を促す治療法です。従来の治療法と比べて身体への負担が少なく、自然な回復を期待できるのが特徴です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 靭帯損傷に関するよくある質問 靭帯損傷は歩いて治りますか? 軽度の損傷であれば、適切な固定と安静により数週間で改善する可能性がありますが、歩行だけでは十分な治癒は得られません。 中等度以上の損傷では、無理に歩き続けると靭帯や関節に負担がかかり、治癒が遅れたり慢性的な関節不安定性を残したりする恐れがあります。 靭帯損傷の治療には、損傷の程度に応じた固定、段階的なリハビリ、医師による経過観察が不可欠です。 靭帯損傷が疑われる場合は、まず整形外科を受診し、画像検査による正確な診断を受けてください。損傷の程度を評価した上で、保存療法か手術療法かを含めた治療方針を決定します。 以下の記事では、歩けるけど痛い肉離れの症状について詳しく解説しています。 靭帯損傷でやってはいけないことは? 受傷直後に無理に動かしたり、痛みを我慢して運動を続けたりすることは避けましょう。アイシングや固定をせずに放置すると炎症が長引き、回復が遅れます。 また、自己判断でマッサージやストレッチを強く行うと組織修復を妨げる恐れがあります。受診を先延ばしにせず、早期に整形外科で診断を受けることが重要です。 以下の記事では、靭帯損傷でやってはいけないことについて詳しく解説しています。 膝の靭帯損傷の応急処置でやってはいけないことは?RICE処置の正しい方法から病院での治療まで解説 靭帯損傷を早く治す食べ物は? 特定の食品だけで靭帯損傷が早く治ることはありません。しかし、適切な栄養摂取は組織修復を支えます。 靭帯損傷の回復には、タンパク質・ビタミンC・亜鉛・鉄分・オメガ3脂肪酸を含むバランスの良い食事と十分な水分補給が重要です。 靭帯損傷でお風呂はいつから入れますか? 靭帯損傷の急性期は炎症や腫れが強いため、湯船は避けシャワーで済ませましょう。患部を温めると炎症が悪化する恐れがあります。 痛みが落ち着いた回復期には短時間の入浴が可能ですが、異常を感じた場合は冷却などの対処を行い、医師に相談してください。 靭帯断裂は自然治癒しますか? 靭帯が完全に断裂した場合、血流が乏しいため自然治癒はほとんど期待できません。放置すれば関節の不安定性が残ります。 部分断裂など軽度の損傷は固定やリハビリで回復する場合もありますが、完全断裂では手術が必要となることが多いです。 靭帯損傷は整形外科と整骨院どちらを受診するべきですか? 靭帯損傷が疑われる場合は、まず整形外科を受診してください。整形外科では画像検査により損傷の程度を正確に診断し、保存療法から手術まで適切な治療を受けられます。 整骨院では画像診断や医療行為ができないため、初期診断には不十分です。 参考文献 (文献1) 膝のねんざおよび関連する損傷(前十字靱帯断裂、半月板損傷、内側側副靱帯断裂、後十字靱帯断裂)|MSD マニュアル 家庭版 (文献2) NATIONWIDE CHILDREN'S When your child needs a hospital, everything matters.|Swelling: The Body's Reaction to Injury
2025.11.26 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
手足の震えや動作の遅れ、歩行のしづらさなどは「年齢のせいかも」と見過ごされがちな症状ですが、実はパーキンソン病が原因かもしれません。 進行性の神経疾患であるパーキンソン病は、早期の気づきと適切な対処が大切です。 予防や進行を遅らせるためにも、正しい知識を身につけておきましょう。 本記事では、パーキンソン病の原因や症状、診断・治療の選択肢まで、患者や家族が知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、パーキンソン病の治療で研究が進められている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 パーキンソン病とは パーキンソン病は、脳内のドパミンを産生する神経細胞が減少して発症する神経変性疾患です。 主に以下のような運動症状(体の動きに関わる症状)があります。 手足の震え 筋肉のこわばり 動作の遅れ 姿勢のバランス障害 中高年に多く見られる疾患ですが、40歳未満で発症する若年性パーキンソン病も存在するため、若い人でも油断できません。 なお、パーキンソン病は厚生労働省により「指定難病」に分類されています。 指定難病とは、原因不明で治療法が確立していない長期療養が必要な疾患のうち、医療費助成の対象とされるものを指します。 パーキンソン病の初期症状・進行期症状 パーキンソン病は進行性の神経疾患であり、症状は段階的に変化していきます。 初期には、以下のような軽微な兆候が見られるのが特徴です。 片側の手足に震えが現れる 歩行時の腕の振りが小さくなる 動作が遅くなる 表情が乏しくなる 字が小さくなる 上記の症状は加齢による変化と区別がつきにくく、見過ごされてしまう場合がある点に注意が必要です。 やがて進行すると、以下のような症状が目立ってきます。 姿勢の不安定性による転倒 筋肉のこわばり 歩行障害(すくみ足、小刻み歩行) 嚥下障害(えんげしょうがい)や言語障害 自律神経症状(便秘、起立性低血圧など) 認知機能の低下や幻覚 進行期には日常生活に大きな支障をきたすようになり、介助が必要となるケースも少なくありません。 早期発見と適切な治療が、症状の進行を遅らせる鍵となります。 パーキンソン病の初期症状や進行度別の症状については、以下の記事でも解説しているので参考にしてみてください。 パーキンソン病の原因 パーキンソン病は、中脳にある「黒質」と呼ばれる部位の神経細胞が減少し、神経伝達物質であるドパミンの分泌が低下することで発症します。 ドパミンは、脳内で運動を円滑に調整する役割を担っており、不足すると手足の震えや動作の遅れなどの運動障害が現れるのが特徴です。 しかしながら、黒質の神経細胞がなぜ壊れてしまうのか、その根本的な原因はいまだ明らかにされていません。 遺伝的要因や加齢、環境因子(農薬や重金属など)が関与する可能性が示唆されていますが、決定的な因果関係は解明されていないのが現状です。 したがって、パーキンソン病の予防法や根治療法の確立には、さらなる研究が必要とされています。 パーキンソン病の診断 パーキンソン病の診断では、特徴的な運動症状の確認に加え、複数の補助的検査を組み合わせます。 ここでは、代表的な検査法を見ていきましょう。 血液検査 パーキンソン病は血液検査の結果だけで診断できないものの、甲状腺機能異常や肝機能障害など、類似の症状が現れる他疾患の除外診断に有効です。 また、特定の医薬品の副作用としてパーキンソン病に似た症状が現れる「薬物性パーキンソニズム」の原因となる、代謝異常や感染症の評価にも用いられています。 全身状態を把握し、安全な治療方針を立てるためにも欠かせない検査のひとつです。 MIBG心筋シンチグラフィー検査 MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)心筋シンチグラフィーは、自律神経機能の低下を評価する画像検査です。 MIBGとは放射性医薬品で、心臓の交感神経系の機能を調べるために使われています。 パーキンソン病においては、心筋へのMIBG取り込みが低下する傾向がある点を利用する方法ですが、あくまで補助手段として有用な検査です。 また、脳の神経細胞にできる異常なたんぱく質の塊が神経を壊すことで発症する「レビー小体型認知症」との鑑別や、診断の裏づけとしても用いられています。 DATスキャン DATスキャンは、脳内で運動を調整する役割を持つ「ドパミン神経」がどの程度機能しているか、画像として映し出す検査です。 「核医学検査」とも呼ばれ、微量の放射性薬剤を体内に注射し、薬剤が脳内のどこにどのくらい集まるかを特殊なカメラで調べます。 とくに調べるのは、運動制御に重要な部位「線条体(せんじょうたい)」にある「ドパミントランスポーター」というたんぱく質です。 ドパミントランスポーターの数が減っていると、ドパミン神経が減少していると判断されます。 パーキンソン病ではドパミン神経が少なくなっているため、DATスキャンでその変化を捉えることが可能です。 手の震えが見られる「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」など、他の病気との区別にも役立ち、より正確な診断につながります。 頭部CT・MRI検査 頭部CTやMRIは主に、脳出血や脳腫瘍、脳梗塞など他の神経疾患による症状との区別に用いられます。 パーキンソン病では、これらの検査で明確な異常が見られないケースが多いものの、進行した症例では黒質の萎縮などが確認される場合もあるため、鑑別診断としても不可欠な検査です。 脳血流スペクト検査 脳血流スペクト検査は、脳の各領域の血流状態を評価する検査方法です。 パーキンソン病では特定の部位に血流低下が見られる場合があり、進行度の把握や認知機能障害との関連性を確認するための補助的な検査として行われています。 また、レビー小体型認知症など、他の神経疾患との鑑別にも用いられています。 パーキンソン病の治療法 パーキンソン病の治療は、ドパミンの不足によって生じる症状を改善し、日常生活の質を維持することが目的です。 現在のところ根治療法は存在しておらず、主に薬物療法によって神経伝達のバランスを整えることが基本となります。 治療内容は、病状の進行や症状の現れ方に応じて段階的に見直されていきますが、薬でのコントロールが難しくなる進行期には、手術療法やデバイス補助療法も選択肢のひとつです。 個々の症状に合わせた適切な治療計画の立案が、長期的な病状管理には不可欠となります。 薬の種類 パーキンソン病の薬物療法では、ドパミンの補充・模倣・維持を目的とした複数の薬が使われます。 以下に主な薬剤をまとめました。 薬の種類 主な役割 特徴 レボドパ製剤 脳内でドパミンに変換される 最も効果的で広く使用される第一選択薬 ドパミンアゴニスト ドパミンのように働く 効果はやや穏やかだが作用時間が長い MAO-B阻害薬 ドパミンの分解を抑える 他の薬との併用で効果を補強する COMT阻害薬 レボドパの効果持続時間を延長する 薬効の「切れ」を緩和 抗コリン薬 アセチルコリンの作用を抑制する 震えに効果があるが副作用に注意 アマンタジン ドパミン放出を促進する 初期症状やジスキネジアに効果がある 薬剤は単独または組み合わせて使用され、患者の年齢、症状の程度、副作用リスクなどを考慮して処方されます。 手術療法 パーキンソン病では、内服薬による治療で十分な効果が得られなくなった場合、手術療法やデバイス補助療法が検討されます。 代表的な手術法が、脳深部刺激療法です。 脳の視床下核などの特定部位に電極を埋め込み、電気刺激を加えて異常な神経活動を抑制し、手の震えや動作の遅れなどの症状を改善します。 また、胃に設けた小さな穴にチューブを通し、薬を直接小腸に送り続けて薬の効果を安定させるレボドパ持続経腸投与療法も治療法のひとつです。 体内の薬の濃度を一定に保ち、薬の効き目が突然切れる「オン・オフ現象」の改善を目指します。 以下の記事では、パーキンソン病に対する先進医療や研究について紹介しているので、参考にしてみてください。 パーキンソン病における「再生医療」という選択肢 パーキンソン病の研究分野では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療の開発が進められています。 iPS細胞にはさまざまな種類の細胞に変化できる「分化能」があり、細胞からドパミン神経前駆細胞を作り出して移植する臨床研究が行われているのです。(文献1) また、遺伝子を脳に注入することで、パーキンソン病の症状を改善する方法も試みられています。(文献2) 再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 パーキンソン病の予防法 パーキンソン病は原因が完全には解明されておらず、確実な予防法は確立されていません。 ただし、以下のような生活習慣が発症のリスク低減につながる可能性があります。 定期的な運動やウォーキングなどの身体活動 バランスの取れた食生活 十分な睡眠やストレスの軽減 上記のような生活習慣がパーキンソン病の発症を防げると断定されてはいませんが、健康維持の観点からも意識的に取り入れることが推奨されます。 健康的な生活を続けていくためにも、適度な運動やバランスの取れた食生活、十分な睡眠を心がけていきましょう。 まとめ|パーキンソン病は適切な対処で進行を遅らせよう パーキンソン病は進行性の神経疾患ですが、早期の診断と適切な治療、生活管理によって症状の進行を遅らせることは不可能ではありません。 現在では薬物療法が中心ではあるものの、運動や食生活、睡眠などの生活習慣や予防も含めて重要な要素です。 病気と上手に向き合い、医療機関との連携も欠かさずに生活の質を高めていきましょう。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、パーキンソン病など神経の病気でも研究が進められている再生医療を行っております。 また、公式LINEでは再生医療に関する情報を提供するとともに、簡易オンライン診断をご利用いただけますので、お気軽にご登録ください。 パーキンソン病に関するよくある質問 パーキンソン病が治った人はいますか? 現在の医療では、パーキンソン病を根本的に治す治療法は存在していません。 主な治療は症状の進行を抑えたり、生活の質を維持したりする対症療法です。 ドパミン神経細胞の減少を完全に回復させる方法は、現段階で確立されていない点に留意しておきましょう。 コーヒーはパーキンソン病の進行に影響しますか? 一部の研究では、カフェインを含むコーヒーの摂取がパーキンソン病の発症リスクを下げる可能性があるとしています。 ただし、進行を遅らせる効果が医学的に証明されているわけではありません。 予防や治療の手段として推奨されているわけでもないため、健康に配慮した上で適切な量を摂取すると良いでしょう。 コーヒー摂取の一般的な健康への影響については、以下の記事でも詳しく解説しています。 パーキンソン病になりやすい性格は? パーキンソン病の患者には、以下のような性格の傾向があるとされています。 几帳面で細かいことにこだわる 変化を好まず、新しいことに慣れにくい ただし、これらの性格が直接的な原因になるとの確証があるわけではなく、あくまで統計的な傾向にすぎません。 パーキンソン病にかかった有名人はいますか? 国内外には、パーキンソン病を公表した著名人がいます。 海外では俳優のマイケル・J・フォックスやボクサーのモハメド・アリ、日本ではみのもんたさんのほか、故・岡本太郎氏や作家の三浦綾子氏などが挙げられます。 病気と向き合いながら活動を続けた方もいるので、パーキンソン病患者の励みになっているといえるでしょう。 パーキンソン病の寿命はどのくらいですか? パーキンソン病は進行性の病気ですが、生命予後が悪いわけではありません。 統計的には、平均寿命は一般の人と比べて2〜3年程度短くなるとされています。 適切な治療やリハビリテーションにより、発症から10年以上にわたって自立した生活を送ることも可能です。(文献3) パーキンソン病は何科を受診すれば良いですか? パーキンソン病の診療は、神経内科または脳神経内科が担当します。 専門的な診断や治療が必要となるため、最初は地域の医療機関やかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらいましょう。 (文献1) Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease|Nature (文献2) パーキンソン病の病態理解と治療の最前線|J-STAGE(日本内科学会雑誌) (文献3) 6 パーキンソン病|厚生労働省
2025.11.26 -
- 足部、その他疾患
- 下肢(足の障害)
- 足部
- スポーツ外傷
- その他、整形外科疾患
「走るたびにすねの内側がズキズキとする」 「足の痛みが日に日に強くなっている」 その症状はシンスプリントかもしれません。シンスプリントは、部活動やランニングに励む人が一度は経験することが多い代表的なスポーツ障害です。運動による負担の蓄積が骨膜の炎症を引き起こす主な原因です。初期対応を誤ると競技への復帰まで時間がかかることもあります。 本記事では、シンスプリントについて現役医師が詳しく解説します。 シンスプリントの原因 シンスプリントの初期症状 シンスプリントの治し方(治療法) シンスプリントはどこで診てもらうべきか シンスプリントの予防方法 記事の最後にはシンスプリントに関する質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 シンスプリントについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 シンスプリントとは 項目 内容 主な原因 筋肉の使い過ぎや足の構造・靴の問題によって骨膜に負担がかかること 症状の特徴 運動時や安静時に、すね内側へ広がる鈍い痛みが生じる 治療と予防のポイント 安静と運動量の調整を行い、ストレッチや靴の見直しで再発を防ぐことが重要 (文献1) シンスプリントは、すねの内側下方に生じる運動関連の骨膜炎で、脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれます。ランニングやジャンプ動作を繰り返すスポーツで発症しやすく、陸上競技、バスケットボール、サッカーなどの競技者に多くみられます。 原因は、下腿の筋群が脛骨の骨膜を過度に引っ張ることで、繰り返しストレスが加わり、微小な損傷と炎症が起こるためです。 初期には運動開始時の軽い違和感にとどまりますが、放置すると疲労骨折に移行する可能性があります。早期の発見と適切な対応が、競技復帰を早める鍵となります。 シンスプリントの原因 原因 詳細 オーバーユース(過度な練習や反復動作) 長時間の練習や繰り返し動作による骨膜への過剰な負担 筋力・柔軟性・体幹機能の不均衡 下腿や体幹の筋力不足、柔軟性低下による衝撃吸収力の低下 足部アライメントやフォームの乱れ 扁平足や回内足、誤ったランニングフォームによる負担の偏り 環境・個体差による影響 硬い路面、不適切な靴、成長期や体質による負荷の蓄積 シンスプリントは、骨膜に繰り返し負担がかかることで発症するスポーツ障害です。長時間の練習や急激な運動量の増加は骨膜へのストレスを高めます。 筋力や柔軟性の低下、足部のアライメント異常、環境要因などが重なり、骨膜への負担が蓄積してシンスプリントを発症すると考えられます。 以下の記事では、シンスプリントの原因について詳しく解説しています。 オーバーユース(過度な練習や反復動作) 原因 詳細 骨膜への繰り返しストレス 走行やジャンプ動作の反復による脛骨骨膜への牽引ストレスと微細損傷の蓄積 修復と負荷のバランスの乱れ 急激な運動量の増加や休養不足による修復機能の低下とダメージの慢性化 特定動作の反復による負担集中 長距離走や方向転換動作の繰り返しによる脛骨内側への局所的ストレスの集中 シンスプリントの主な原因は、運動負荷の過剰と回復期間の不足による不均衡です。急激なトレーニング量の増加や休息を取らない反復運動によって骨膜に小さな損傷が繰り返し起こり、累積したストレスが炎症を引き起こします。 運動量の急増や硬い路面での長時間の運動などによるオーバーユースが、シンスプリント発症の主な要因とされています。 筋力・柔軟性・体幹機能の不均衡 原因 詳細 筋力不足 ふくらはぎや足底の筋力低下による衝撃吸収力の低下と骨膜への負担集中 柔軟性低下 下腿後面やアキレス腱の硬さによる骨膜への牽引ストレスの増大 体幹機能低下 体幹の不安定さによるフォームの乱れと下肢への負担の偏り シンスプリントの原因は、筋力・柔軟性・体幹機能のバランスが崩れることです。ふくらはぎや足底の筋力が不足すると衝撃を十分に吸収できず、脛骨への負担が増加します。 さらに、柔軟性の低下により骨膜への牽引力が強まり、微細な損傷が起こりやすくなります。体幹の不安定さによってランニングフォームが乱れると、片側のすねに過剰な負担が集中します。 足部アライメントやフォームの乱れ 原因 詳細 足部アライメント異常 扁平足や過回内による足のアーチ機能低下と脛骨内側の負担増加 フォームの乱れ 体幹の不安定さや偏った接地による同一部位への繰り返し負荷 微小外傷の蓄積 小さなストレスの反復による骨膜・筋付着部の損傷蓄積と炎症誘発 シンスプリントの発症には、足部のアライメント異常やフォームの乱れが大きく関与しています。扁平足や過回内では足のアーチ構造が崩れ、着地時の衝撃を十分に吸収できず、脛骨内側に負担が集中して骨膜炎を起こしやすくなります。 ランニングやジャンプ動作で体幹が不安定になり接地が偏ると、毎回のステップで同じ部位に強いストレスがかかり、とくに片脚への荷重の偏りが炎症を助長します。 こうした不適切な動作が繰り返されることで、骨膜や筋付着部に微細な損傷が蓄積し、炎症が慢性化します。予防には、正しいフォームの習得や、インソール・靴による足部アライメントの補正が不可欠です。 環境・個体差による影響 原因 詳細 運動環境の影響 硬い路面や不整地でのトレーニングにより、着地時の衝撃が増し、足部に負担が集中 運動量・強度の急激な変化 トレーニング量や強度の急増による筋肉・骨膜への過剰負荷と疲労蓄積 個体差(足の形状・筋力など) 扁平足や回内足、筋力不足や柔軟性低下による骨膜へのストレス増大 身体的・技術的要因の複合効果 体幹の不安定やフォームの乱れと環境・個体差が重なることで発症リスク上昇 シンスプリントの発症には環境要因と個人の身体特性が関与しています。硬い路面や不整地での練習、クッション性の低いシューズは着地時の衝撃を増大させます。 運動量の急激な増加、扁平足や回内足などのアライメント異常、筋力不足や柔軟性低下が過剰な負荷と疲労蓄積の原因です。体幹の不安定性やフォームの乱れが加わると、発症リスクはさらに高まります。環境調整と身体機能改善の両面から対策を講じることが重要です。 シンスプリントの初期症状 初期症状 詳細 運動時の痛み・違和感 ランニングやジャンプ動作時に感じるすね内側の鈍い痛みや違和感 運動後の痛み・不快感 運動後に現れる鈍い痛みや重だるさ、不快感の持続 すねの圧痛・筋肉の張り すね内側を押したときの痛みや、ふくらはぎ全体の張りやこわばり シンスプリントの初期には、運動時のすね内側に鈍い痛みや違和感が現れます。症状が進行すると運動後にも重だるさや不快感が残るようになります。 また、すねの内側を押すと痛みを感じ、ふくらはぎの筋肉に張りやこわばりがみられます。初期段階で適切に対応すれば改善が期待できるため、早期発見と休養が重要です。 以下の記事では、シンスプリントの症状チェックのやり方を詳しく解説します。 運動時の痛み・違和感 初期症状 詳細 運動時の痛み・違和感 運動開始直後の骨膜および筋腱移行部への牽引ストレスによる鈍い痛みや違和感 運動後の痛み・不快感 運動終了後の休息時にも続く違和感や圧痛 骨膜・軟部組織のストレス 骨膜や周囲軟部組織への繰り返しの牽引ストレスや衝撃による微細な炎症・ストレス反応 シンスプリントは、すねの骨膜に繰り返しストレスがかかることで起こる障害です。ランニングやジャンプなどの運動により骨膜に微小な炎症が生じ、とくに運動開始直後に痛みや違和感が現れます。 初期段階では体が温まると症状が軽減することがありますが、これは異常反応のシグナルと捉えるべきです。症状が進行すると運動後や安静時にも違和感や圧痛が残るようになります。この段階での違和感を軽視せず、運動量の調整や医療機関を早めに受診することが重要です。 運動後の痛み・不快感 要因 詳細 骨膜・軟部組織への微小炎症 運動による繰り返しストレスで骨膜や筋付着部に炎症が起こり、運動後に痛みや不快感が出現 筋肉疲労と牽引ストレスの残留 ヒラメ筋や後脛骨筋の疲労により柔軟性が低下し、骨膜への牽引力が持続・増強 血流変化による炎症の顕在化 運動後の血流変化で炎症が表面化し、安静時に痛みを感じやすくなる状態 シンスプリントは、すねの骨膜やその周囲組織に繰り返しストレスがかかることで発症する障害です。運動後に痛みや不快感が強くなることが初期段階の典型的なサインです。 運動を続けることで、骨膜や筋付着部には微小な炎症が生じ、疲労した筋肉が硬くなることで骨膜への牽引ストレスが残りやすくなります。実際、シンスプリントは「繰り返しストレスによって発生する足の痛み・不快感」とされ、運動後に症状が強くなることが知られています。(文献2) また、運動中は血流が活発になり炎症反応を感じにくい一方で、運動を終えると筋肉の緊張緩和や循環の変化によって炎症が顕在化し、痛みや不快感が現れやすくなります。 運動直後よりも安静時のほうが痛みを感じやすくなるため、この段階で生じる違和感を放置せず、早めに休養を取り医療機関を受診することが重要です。 すねの圧痛・筋肉の張り シンスプリントでは、繰り返しの運動によって脛骨周囲の骨膜が引っ張られ、脛骨内側の骨膜炎により圧痛が生じます。また、ふくらはぎの主にヒラメ筋や後脛骨筋が疲労して硬くなると、筋肉の柔軟性が低下し、骨膜への牽引ストレスが増加します。これが筋肉の張りや痛みの原因となり、運動中や運動後に症状が強まります。 炎症が進行する前段階では、動作時や直後に押すと痛む、筋肉が硬いといった違和感が先行することが多く、これらは早期発見の重要なサインです。 炎症の拡大が疑われる場合、自己流のマッサージや強いストレッチは避けてください。違和感が続く場合は、整形外科での診察と適切な治療を受けることが重要です。 シンスプリントの症状進行と持続痛について 段階 状態 症状の特徴 初期段階 運動中・運動後に痛みが出現 休息により症状が軽減することが多い状態 進行段階 炎症・微細損傷の慢性化 運動中の痛みが強まり、休息後も症状が残存 重症段階 組織の修復能力を上回る負荷が継続する状態 安静時にも痛みが出現し、日常生活への支障 シンスプリントは、すねの骨膜や周囲組織に繰り返しストレスが加わることで発症します。初期段階では運動中や運動後に痛みが出現しますが、休息により症状が軽減することが多い状態です。しかし、適切なケアを行わず負荷を続けると、炎症や微細な損傷が慢性化し、症状が進行します。 骨膜や筋腱は休息や修復反応によってダメージを回復させる能力がありますが、修復が追いつかないほど負荷が加わり続けると、損傷と炎症が累積します。進行段階では運動中の痛みが強まり、休息後も症状が残存するようになります。 重症化すると安静時にも痛みが生じて日常生活に支障を来し、持続痛や強い局所痛がある場合は疲労骨折へ進展するおそれもあるため、早期対応が重要です。 シンスプリントの治し方(治療方法) 治し方(治療方法) 詳細 安静と運動調整 痛みの原因となる運動を一時的に中止し、運動量や強度を段階的に調整する休養と負荷管理 炎症抑制・物理療法 炎症や痛みを抑えるためのアイシング、超音波療法、低出力レーザー治療などの実施 ストレッチ・筋力トレーニング・リハビリ 下腿や体幹の柔軟性・筋力を整え、再発予防を目的とした段階的リハビリの実施 テーピング・装具(インソールなど) 足部アライメントを整え、衝撃や負担を軽減するためのテーピングやインソールの使用 薬物療法 炎症や痛みを緩和するための消炎鎮痛剤や外用薬の使用 再生医療 慢性化した場合に用いられる、自己修復を促すPRP療法(多血小板血漿注入)などの再生治療 シンスプリントの治療は、まず安静と運動量の調整により炎症の悪化を防ぎます。急性期にはアイシングや超音波などの物理療法で痛みと炎症を抑え、回復期にはストレッチや筋力トレーニングで柔軟性と安定性を取り戻します。 足部アライメントを整えるためのインソールやテーピングも有効です。症状が強い場合は薬物療法を併用し、慢性化例では再生医療を検討する場合もあります。ただし、再生医療は適用できる医療機関が限られており、患者の症状によっては適用できないケースもあるため、事前に医師との相談が不可欠です。 以下の記事では、治らないシンスプリントの治療法について詳しく解説しています。 安静と運動調整 シンスプリントの治療において、安静と運動調整が基本です。過度な練習や反復動作で生じた炎症は、運動を続けると悪化するため、安静により炎症を鎮静化させ、組織の修復を促します。運動を完全に止めるのではなく、症状を悪化させない範囲での運動量や内容の調整が大切です。 練習強度を下げる、回数を減らす、水泳や自転車など衝撃の少ない運動へ切り替えることで、体力を維持しながら回復を図ります。発症初期には患部に負担をかけない軽いストレッチや上半身トレーニングが推奨されます。 症状が軽快しても違和感が消えてから数日経過し再発がないことを確認した上で段階的に負荷を増やし、無理な練習継続による慢性化を避ける計画的な復帰が重要です。 炎症抑制・物理療法 シンスプリントは脛骨の骨膜に炎症が生じるため、炎症抑制と物理療法が治療の中心です。急性期には患部を安静にし、アイシングや非ステロイド性抗炎症薬で炎症を鎮めます。超音波療法などの物理療法は血流を改善し、組織修復を促進します。 症状が軽減したらストレッチや筋力強化運動を段階的に行って筋肉や骨膜の回復を促し、痛みが消えた後も急に運動強度を戻すと再発のリスクが高まるため、医師の指導に従い、段階的に運動量を増やすことが重要です。 ストレッチ・筋力トレーニング・リハビリ 項目 目的・内容 注意点 ストレッチ 筋肉や腱の柔軟性向上、関節可動域の拡大、怪我予防、血流促進 痛みの手前で止める、反動をつけない、怪我部位は専門指導のもとで実施 筋力トレーニング 筋力・持久力の向上、姿勢安定、関節保護、骨密度維持、代謝改善 正しいフォームの維持、負荷の段階的増加、呼吸を止めない、持病は医師に相談 リハビリテーション 機能回復、痛みや拘縮・筋萎縮の改善、日常・スポーツ復帰支援 過負荷を避ける、医師の計画に基づく実施、痛み時は中止、継続の徹底 ストレッチ、筋力トレーニング、リハビリテーションは、シンスプリントの根本的な改善に不可欠です。ストレッチはヒラメ筋や後脛骨筋を柔らかくし、骨膜への牽引力を軽減して痛みを和らげ、再発を防ぎます。 筋力トレーニングは足部アーチのサポート力や体幹の安定性を向上させ、運動時の負担を分散します。リハビリテーションでは痛みの程度に応じて運動負荷を段階的に調整し、筋肉や骨膜の耐久性を向上させます。これらは医師や理学療法士の指導のもと、個々の症状に応じて実施が重要です。 以下の記事では、シンスプリントに対して有効なリハビリ方法を解説しています。 テーピング・装具(インソールなど) 項目 目的・効果 注意点 テーピング 関節や筋肉の安定化、損傷部位の保護、痛みの軽減、フォーム補正 強く巻きすぎない、長時間の使用を避ける、皮膚トラブルに注意、根本治療ではなく補助的手段 装具 関節の安定・保護、変形や再発の予防、動作補助、痛み軽減、歩行や姿勢の改善 長時間使用による筋力低下に注意、医師の指示に従う、装着部の皮膚状態を確認 インソール 足部アライメントの矯正、荷重分散、歩行・ランニング効率の改善、スポーツ障害の予防 サイズや靴との相性を確認、定期的な見直し、合わない場合は使用を中止 テーピングとインソールは、シンスプリントの症状軽減と再発予防に有効な補助手段です。適切なテーピングは脛骨周囲の筋肉や骨膜を適度に圧迫し、筋肉の振動や骨膜への牽引力を抑制することで、痛みの軽減と炎症の進行予防に役立ちます。 また、足部の安定性を高め、床からの衝撃や不均等な負担を分散させることで、患部へのストレスを軽減します。さらに、テーピングは関節の過度な動きを制限し、筋肉や関節の過負荷を防ぐため、スポーツ活動時の怪我予防や再発予防に効果的です。 インソールは足部アーチをサポートし、歩行や運動時の足全体のバランスを整えることで、骨膜への負担を軽減します。これらの補助手段は、根本的な治療ではありませんが、ストレッチや筋力トレーニングと併用することで、症状の改善と長期的な再発予防が期待されます。 以下の記事では、シンスプリントにおけるテーピング方法について詳しく解説しています。 薬物療法 シンスプリントは脛骨の骨膜や筋腱付着部の炎症により発症するため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による炎症抑制が症状軽減に有効です。内服薬や外用薬は炎症と痛みを軽減し、日常生活やリハビリを行いやすくします。 ただし、薬物療法は過度な炎症反応をコントロールして自然治癒を助ける補助的な役割です。安静、物理療法、リハビリテーションと組み合わせることで効果が最大化されます。 薬物療法は短期間の使用が推奨されるため、市販薬を自己判断で長期間使用することは避け、医師の指示に従って服用してください。根本的な改善のためには、薬物療法に加えて運動量の調整や筋力・柔軟性の改善など、包括的なアプローチが欠かせません。 再生医療 シンスプリントは脛骨周囲の骨膜や筋腱付着部に繰り返しストレスが加わり、炎症や微細な損傷が生じる状態です。多くは安静や運動調整で改善しますが、症状が慢性化したり再発を繰り返したりする例も存在します。 難治性の症例では、脂肪由来幹細胞による組織修復促進や血小板に含まれる成長因子による抗炎症作用が期待される再生医療が治療の選択肢となる場合があります。 ただし、再生医療を実施できる医療機関は限られており、患者の症状や状態によっては適用できないケースもあるため、治療を検討する際には医師への相談が不可欠です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 シンスプリントはどこで診てもらうべき? 項目 医療機関(整形外科) 整体・接骨院 診断 医師が診察・画像検査で原因を特定 画像検査ができず診断不可 対応内容 医学的治療・リハビリの計画 筋肉調整やマッサージ中心 適応範囲 炎症・骨膜障害・疲労骨折など幅広く対応 軽度の筋緊張緩和のみ (文献3) シンスプリントが疑われる場合、整形外科またはスポーツ整形外科の受診が基本です。自己判断でストレッチや湿布のみで対応すると、炎症が悪化して回復が遅れる可能性があります。 整形外科では問診・触診に加え、レントゲンやMRI検査などで疲労骨折との鑑別診断を行います。これにより症状の進行度を正確に評価し、適切な治療方針を決定します。 とくにスポーツ整形外科では、アスリートや運動習慣のある方を対象に、再発予防まで含めた包括的なリハビリを提供します。理学療法士が筋肉の柔軟性や体幹バランスを評価し、段階的な運動再開をサポートします。 なお、接骨院や整体などでの施術は一時的に症状が軽減したように感じられることがありますが、根本的な改善につながる医学的根拠は十分に確立されていません。まずは医療機関での正確な診断を受けることが重要です。 シンスプリントの予防方法 予防方法 詳細 運動量と休養の調整 運動量や強度を段階的に増やし、疲労を蓄積させないスケジュール管理。十分な休養日を設け、筋肉や骨膜の回復を促すバランス調整 身体機能の改善(筋力・柔軟性・フォーム) 下腿筋群のストレッチや筋力トレーニングによる衝撃吸収力の向上。ランニングフォームや着地動作の改善による負担分散 外的要因への対応(シューズ・インソール・環境) クッション性やフィット感に優れたシューズの選択。インソールによる足部アライメントの補正。硬い路面や傾斜地での練習回避 シンスプリントの予防には、運動負荷と身体機能、環境要因への多角的なアプローチが必要です。まず、急激な運動量の増加を避け、十分な休養を確保することで組織の修復を促します。 次に、下腿筋群や体幹の筋力強化、ストレッチによる柔軟性向上、正しいランニングフォームの習得を行い、衝撃吸収能を高めて負荷を適切に分散させます。 クッション性に優れたシューズの選択や足部アライメントに合わせたインソールの使用、硬い路面を避けた練習環境の見直しも重要です。これらの要素を総合的に実践することで、シンスプリントの発症リスクを効果的に低減できます。 運動量と休養の調整 シンスプリントの予防には、運動量の段階的調整と適切な休養の確保が基本となります。加えて、筋力強化やストレッチによる柔軟性向上、正しいフォームの習得といった身体機能の改善により、下腿への負担を軽減できます。 さらに、足に合ったシューズやインソールの活用、硬い路面の回避など外的環境を整備することも重要です。これらの対策を総合的に実践することで、シンスプリントの発症・再発リスクを抑制し、継続的な運動が可能になります。 身体機能の改善(筋力・柔軟性・フォーム) シンスプリントの再発予防には、身体機能の総合的な改善が重要です。筋力強化では、ヒラメ筋や後脛骨筋を鍛えることで骨への負担を軽減します。ゴムチューブを用いたふくらはぎのトレーニングや足指でタオルを引き寄せる運動が効果的です。 柔軟性向上ではヒラメ筋を中心としたストレッチを運動前後に習慣化し、フォーム改善では適切な着地方法や膝の角度、姿勢を段階的に習得することで、炎症リスクと脛骨への衝撃を軽減します。 適切な運動量の調整や休養を取り入れながら実践することで、衝撃を吸収する力が高まり、筋肉への牽引ストレスが減少し、荷重のバランスも整いやすくなります。 外的要因への対応(シューズ・インソール・環境) シンスプリントの再発予防には、練習環境やシューズなど外的要因への配慮が重要です。クッション性が低下したシューズや足に合わない靴を使用すると、着地時の衝撃が脛骨へ直接伝わり骨膜への負担が増大します。 競技特性や足型に合ったシューズを選び、定期的に交換することが大切です。扁平足や過回内がある場合は、医療用またはスポーツ用インソールで足のアライメントを補正し、荷重バランスを整えることが有効です。 また、アスファルトなどの硬い路面ばかりで練習せず、芝生やゴムトラックなど柔らかい地面を取り入れることで衝撃を軽減できます。これらの外的要因を見直すことは、身体への負担を減らし再発予防を支える重要な要素です。 シンスプリントを理解して適切な対策を講じよう シンスプリントは、スポーツを続ける人に多く見られる下肢の障害で、脛骨周囲の骨膜や筋肉に炎症やストレスが生じることで発症します。初期の段階で適切に対応すれば回復しやすいため、違和感を放置せず早めにケアしましょう。 運動量の調整やストレッチ、シューズの見直しなど、日常の工夫で負担を軽減できます。症状が続く場合や再発を繰り返す場合は、整形外科での診断とリハビリが必要です。 シンスプリントの治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、患者さまご自身の細胞や血液成分を用いる再生医療を行っており、損傷した組織の修復をサポートする治療の選択肢としてご案内しています。症状や状態に応じて、適切な方法を検討しご提案いたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 シンスプリントに関するよくある質問 シンスプリントは休養期間を設ければ改善しますか? シンスプリントは、適切な休養を取ることで改善が期待できる場合があります。初期症状であれば約2週間の安静で痛みが和らぐこともありますが、無理な運動再開は再発の原因になります。 症状が続く場合は医療機関での診察やリハビリが必要です。筋力や柔軟性の改善を並行して行うことが回復への近道です。 以下の記事では、シンスプリントの休むべき期間について詳しく解説しています。 家族がシンスプリントになったときはどうすれば良いですか? シンスプリントの回復には、休養とセルフケアに加え、心身のサポートが重要です。お子さまが痛みを抱えているときは、無理に運動を続けさせず安静を保つことが大切です。 症状が落ち着いたら、自転車や水泳など負担の少ない運動に切り替え、段階的に練習を再開しましょう。アイシングやテーピング、インソールの使用も有効です。 思うように動けない時期は焦りや不安を感じやすいため、ご家族が寄り添い、前向きな気持ちで回復に取り組めるよう支えることも大切です。痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 シンスプリントは走りながら治すことはできますか? シンスプリントは脛骨周囲の骨膜や筋付着部に炎症が生じる障害です。痛みを抱えたまま走り続けると疲労骨折へ進行するおそれがあるため、推奨されません。 初期の違和感程度であれば、医師の診断を受けた上で運動強度や距離を調整し、路面やシューズを見直すことで回復を図れます。 治療は安静や物理療法、筋力・柔軟性の向上を基本とし、症状が落ち着いてから段階的に運動の再開が望まれます。 以下の記事では、シンスプリントを走りながら治せるかについて詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) シンスプリント|MSD マニュアル プロフェッショナル版 (文献2) Medial tibial stress syndrome: conservative treatment options|PMC PubMed Central® (文献3) Shin Splint: A Review|PMC PubMed Central®
2025.11.26 -
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病院で人工関節の手術を勧められて、不安や迷いを感じている方も多いのではないでしょうか。 人工関節置換術は、進行した関節の変形や軟骨のすり減りに対して有効な治療の一つとされています。 一方で、手術という大きな選択を前に「本当に自分に必要なのか」「術後の生活はどうなるのか」と考える方も少なくありません。 この記事では、人工関節の仕組みやメリット・デメリット、手術後に注意すべき点などを解説します。 手術を受けるか迷っている方や、他の選択肢も検討したい方は、最後までご覧ください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 人工関節について気になることがある方は、ぜひご登録ください。 人工関節とは 人工関節とは、関節のすり減った部分を補うために使用される人工のパーツのことです。 金属やセラミック、ポリエチレンなどの素材でできており、股関節や膝関節のように体重を支える部位で使われるケースが多くみられます。(文献1) 損傷した関節面の一部または全部を人工関節に置き換える手術が「人工関節置換術」です。 ここでは、人工関節の役割と仕組み、人工関節置換術を受ける人の特徴について解説します。 人工関節の役割と仕組み 人工関節は、損傷した関節の代わりに骨の端同士がスムーズに動くための「接合部」の役割を担うものです。 関節の摩耗によって軟骨がすり減ると、骨同士が直接ぶつかり、痛みがあらわれたり動作の制限が起こったりします。 人工関節は、この痛みの原因を取り除き、動きを滑らかにするために使われます。 とくに多く使用される股関節および膝関節の人工関節の仕組みは、以下のとおりです。(文献2)(文献3)(文献4)(文献5) 関節部位 置き換える部位 仕組み 股関節 ・大腿骨の骨頭 ・骨盤の臼蓋 大腿骨側に付けたボール状の部品が、骨盤側に付けたカップ状の部品内でなめらかに回転し、自然な動きを再現する 膝関節 ・大腿骨と脛骨の接合面 ・必要に応じて膝蓋骨(しつがいこつ:膝の皿) 大腿骨側の部品が脛骨側の部品の上を転がるように滑らかに動くことで、スムーズな屈伸運動を再現する 関節の状態に応じて、一部だけを置き換える「部分置換」や、関節全体を置き換える「全置換」などの種類が選ばれます。 これらの手術によって、関節の痛みを和らげて可動域を改善し、歩行や階段昇降といった日常動作の質を高めることが期待できます。 人工関節を置換する主な部位 人工関節置換術は、関節の痛みや変形が進行し、薬やリハビリテーションでの改善が難しい場合に実施されます。 主な置換部位は、次のとおりです。(文献1) 股関節 膝関節 肩関節 肘関節 足関節(足首) 手指関節 これらの部位を人工関節に置き換えることで、痛みの軽減や機能の回復を目指します。 人工関節を置換するメリット 人工関節の手術によって得られる主なメリットは、以下のとおりです。(文献6) 外出や趣味など、生活の幅が広がる 痛みのストレスから解放され、精神的な負担も減る 歩く・立ち上がる・階段を上るなどの基本動作がスムーズになる 長年痛みとともに過ごしてきた方にとっては、生活の質(QOL)を改善できるきっかけとなるでしょう。 人工関節を置換するデメリット 人工関節は、変形性関節症や大腿骨頭壊死症などに有効な治療法ですが、人工物であることから以下のような注意点とリスクがあります。(文献6) 寿命があるため、再手術の可能性がある 転倒や強い衝撃などで破損するリスクもゼロではない 感染症や血栓症などの合併症リスクがある 脱臼や早期の摩耗を防ぐため手術部位によって動きが制限されることがある 手術を受ける際は、これらのデメリットもしっかり理解した上で検討しましょう。 【関連記事】 肩の人工関節のデメリットを医師が解説|7つのリスクと再生医療という選択肢 変形性股関節症|人工関節手術のデメリット・リスクと治療の代替案を紹介 人工関節置換術を受ける人の特徴 人工関節置換術は、以下のような状態の方に検討されることが多い手術です。(文献1)(文献7) 長年の関節の痛みで、歩く、立つなどの日常生活が困難になっている 薬やリハビリなどの保存療法では効果が出なくなった 関節の変形や骨の摩耗が進んでいる 医師から「関節の形や仕組みに根本的な異常がある」といわれた 膝関節を例にあげると、変形や軟骨のすり減りが進んだ変形性膝関節症や関節リウマチが、この手術の主な対象となります。 【関連記事】 変形性股関節症とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説 大腿骨頭壊死症の原因とは?生活習慣との関連性や予防法について紹介 人工関節置換術にかかる手術費用 人工関節置換術にかかる費用は合併症の有無や入院期間によって異なり、一般的には保険適用前で200万円前後かかるとされています。 しかし、日本では公的医療保険制度が適用されるため、自己負担額は総額の1割〜3割です。 高額療養費制度や更正医療を活用すると、さらに負担額は減り、結果的に数万円〜数十万円におさえられるでしょう。(文献8)(文献9) 人工関節置換術における入院期間の目安 入院期間は、一般的に2〜3週間ほどといわれています。 手術直後からリハビリテーションが開始となり、痛みが管理されれば、座ったり立ち上がったりする訓練が始まります。 入院中に杖を使った歩行や階段昇降の練習をおこない、自宅での生活に慣れることが目標です。 手術後の経過やリハビリテーションの進行、自宅生活の準備が順調であれば退院となります。 人工関節置換術後にやってはいけないこと 人工関節の手術を受けたあとは、生活状態によって置換部位の脱臼や人工関節の破損が起きやすくなります。 人工関節を長持ちさせるには、関節に負担をかける以下の動作は避けるようにしましょう。(文献10) 置換した部位 避けるべきこと 股関節 ・重いものをもつ ・深くしゃがむ、正座をする ・内股の姿勢やあぐらをかく ・急に体をひねる ・ハードな運動やスポーツをする 膝関節 ・リハビリテーションを自己中断する ・不摂生な生活で体重を増やす ・正座の姿勢をとる ・ジャンプやランニングなどの激しい運動をする ・膝に負担の大きい生活環境を放置する 手術後は医師や理学療法士の指導に沿って、少しずつ体を慣らすことが大切です。 【関連記事】 人工股関節手術後の生活における注意点とは?気を付けることやリハビリについて【医師監修】 人工膝関節置換術後にやってはいけないこと|生活上の注意点とは? 人工関節置換術以外の治療法 人工関節の手術は有効ですが、症状や年齢、生活環境によっては他の治療法も選択できます。 主な治療法をまとめると、次のとおりです。(文献7)(文献11)(文献12) 治療法 治療内容 保存療法 痛み止めやヒアルロン酸注射、運動療法、生活指導など 関節鏡手術 小さなカメラで関節内部を確認し、損傷部分を処置する手術 幹細胞治療 体の機能を修復する役割がある幹細胞を利用した治療(自由診療) これまでは、保存療法で十分な効果が得られなかった場合に、関節鏡手術や人工関節置換術が選択されるのが一般的な流れでした。 しかし最近では、保存療法と手術の間に位置する新たな治療として、再生医療が選択肢にあがることも少なくありません。 なかでも幹細胞を用いた治療は、他の細胞に変化する「分化能」を利用した治療法で、手術以外の方法を希望する方に検討されています。 再生医療について詳しく知りたい方は、当院リペアセルクリニックの公式LINEの登録をご提案します。 公式LINEが提供する再生医療に関する情報は、手術以外の選択肢を検討する上で役立つはずです。 【関連記事】 変形性股関節症の保存療法|手術を避けて症状改善を目指す治療法 変形性膝関節症の再生治療(PRP療法)の体験談|効果・費用も紹介 人工関節の手術を検討する前に知識をつけておこう 人工関節は、股関節や膝関節などの損傷を補い、痛みを和らげて日常生活を取り戻す治療法です。 一方で、部品に寿命があるため再手術が必要になる可能性や、動作の制限、感染などのリスクもあります。費用や入院期間も無視できない要素です。 手術以外にも、保存療法や再生医療などの選択肢を理解しておくことで、自分に合った治療法を検討しやすくなります。 人工股関節置換術を選択せず、再生医療による治療を受けた症例については、以下の記事をご覧ください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 人工関節について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 人工関節に関するよくある質問 人工関節の手術後はすぐに歩けるようになりますか? 膝や股関節の人工関節置換術の場合、杖を使用して歩けるようになるまでの期間は数日〜10日ほどです。(文献13) 手術後の状態によりますが、手術翌日からベッドの端に座る、平行棒や歩行器などの補助具を使用して歩く、杖で歩くと、段階的にリハビリテーションを進めるのが一般的です。 ただし、手術前に強い痛みによって運動が制限されていた方では筋力低下が進んでいる可能性があり、回復に時間を要するケースもあります。 人工関節を入れたら障害者手帳交付の対象になりますか? 人工関節を入れたからといって、必ず障害者手帳が交付されるわけではありません。(文献14) 以前は人工関節置換術を受けるだけで一律の等級を認定されましたが、平成26年の改正によって手術後の関節機能で判断されるようになりました。(文献14) そのため、手術後に関節の痛みや動きが明らかに改善した場合には、交付の対象とならないこともあります。 人工関節の寿命はどのくらいですか? 人工関節の技術が進歩して、パーツの寿命は延びています。 入れ替え手術が必要になる方の割合については、以下の報告があります。(文献15) 置換部位 入れ替え手術が必要な方の割合 股関節 ・術後20年:6人に1人ほど ・術後30年:4人に1人ほど 膝関節 ・術後20年:6人に1人ほど 年齢や体重、日常の活動量によって変わるため、若い方や活動量が多い方では摩耗が早まる傾向です。 関節に負担をかけない生活習慣や定期的な受診を続け、再手術のリスクを下げましょう。 参考文献 (文献1) 人工関節とは | 日本人工関節学会 (文献2) 人工股関節について - 人工股関節置換術|千葉市立青葉病院 (文献3) 新・股関節がよくわかる本Web版|公益財団法人股関節研究振興財団 (文献4) 人工膝関節手術|東京女子医科大学整形外科 (文献5) 人工膝関節置換術|焼津市立総合病院 (文献6) 人工関節②人工関節手術のメリット・デメリット|日赤和歌山情報局 Hot(ほっと) (文献7) 「変形性股関節症」|日本整形外科学会 (文献8) 高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省 (文献9) 自立支援医療(更生医療)の概要|厚生労働省 (文献10) 人工股関節置換術を受ける患者さんへ|東京医科大学病院 (文献11) 「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 (文献12) 関節鏡・脊椎内視鏡ってご存知ですか?|川崎医科大学 総合医療センター (文献13) 人工膝関節について - 人工膝関節置換術|千葉市立青葉病院 (文献14) 「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」の一部改正について|厚生労働省 (文献15) よくある質問 | 日本人工関節学会
2025.11.26 -
- 脊髄損傷
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腰からお尻、脚全体にかけて痛みを感じる場合、坐骨神経痛の可能性が考えられます。坐骨神経痛は、その名のとおり、坐骨神経と呼ばれる末梢神経に痛みやしびれをきたす状態です。 痛みやしびれを放置すると、日常生活に支障をきたす可能性もあるため、違和感を覚えた際は早めに専門機関を受診しましょう。 本記事では、坐骨神経痛の概要や原因、症状について解説します。治療法や痛みを和らげる方法もまとめているので、坐骨神経痛の疑いがある方はぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 坐骨神経痛に関する気になる症状が見られる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 坐骨神経痛とは 坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは、腰からお尻、太ももから膝にかけて伸びている坐骨神経にあらわれる痛みの症状です。 坐骨神経は、腰椎と仙椎から出る神経根がいくつか集まってできる神経をいいます。 この神経が圧迫や炎症などの障害を受けると、お尻から脚にかけて痛みやしびれが生じます。坐骨神経痛は病名ではなく、こうした症状の総称です。 坐骨神経痛の原因 坐骨神経痛は好発年齢が幅広く、原因もさまざまです。主な原因には、以下の3つが考えられます。 腰部脊柱管狭窄症 腰椎椎間板ヘルニア 梨状筋症候群 ここでは、各症状の特徴を紹介するので、坐骨神経痛の原因が知りたい方はぜひ参考にしてください。 腰部脊柱管狭窄症 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは、背中にある神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫するときに生じる症状で、坐骨神経痛を発症する原因の1つです。原因はさまざまですが、主に加齢によって脊柱が変形し、神経を圧迫して発症するケースが多い傾向にあります。 腰部脊柱管狭窄症は、お尻から脚全体にかけて痛みやしびれなどの神経症状が生じます。悪化すると歩行が難しくなり、手術が必要になる可能性もあるため、気になる症状が見られた際は早めに医療機関に相談しましょう。 腰椎椎間板ヘルニア 坐骨神経痛は、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアが原因で生じる可能性もあります。腰椎椎間板ヘルニアは、背骨と各骨の間に存在し、クッションの役割を持つ椎間板と呼ばれる部位が圧迫されて痛みやしびれを発症する疾患です。 腰椎とは背骨のことで、5つの骨から成り立っています。ヘルニアは椎間板の飛び出し方によって種類が異なり、以下3つに分類されます。 正中型(せいちゅうがた)ヘルニア 傍正中(ぼうせいちゅう)ヘルニア 外側(がいそく)ヘルニア また、腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルは、軽度から重度までさまざまです。中等度レベル以降は、日常生活に支障をきたす場合があるため、軽度だからといって放置せず重症化する前に治療や改善を図る必要があります。 【関連記事】 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルと種類を医師が解説!手術するべき? 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを解説|疼痛期間や治し方を紹介 梨状筋症候群 梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)とは、脊椎の下部にある仙骨や尾骨全面から、太ももの骨の最上部に伸びている筋肉が圧迫されて痛みを発症する神経障害です。腰椎椎間板ヘルニアと症状が似ているため混同されやすいですが、梨状筋症候群では仙腸関節炎や椎間関節障害が原因で発症する報告もあります。(文献1) 梨状筋症候群は、デスクワークや運転など、長時間座っているときやゴルフや草むしりといった中腰で梨状筋に負担がかかる場合に、起こりやすい疾患です。また、梨状筋症候群は腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアに比べると、稀な疾患になります。 MRIやレントゲンなどの検査で見つけることが難しいため、原因がはっきりしない坐骨神経痛の場合は梨状筋症候群が原因の可能性も考えられます。 筋肉の衰え 坐骨神経痛の原因には、下肢筋肉の衰えも考えられます。腰回りやお尻を中心とした足腰の筋肉が衰えると、背骨を支える力が弱まり、坐骨神経に負担をかけるためです。 筋肉は、20歳をピークに1年に1%ずつ減少するといわれています。(文献2)そのため、加齢に伴う筋力低下も、坐骨神経痛の原因の1つです。 なお、足腰の筋力低下はロコモティブシンドロームの原因にもつながります。ロコモティブシンドロームになると、要介護や寝たきりになるリスクが高まるため、日頃から予防を心がけましょう。 坐骨神経痛の症状 坐骨神経痛の症状は人によって異なりますが、主に腰からお尻、脚全体にかけて、痛みやしびれが生じます。主な症状は、以下の通りです。 お尻や脚が痛くて眠れない 長時間立っていられない お尻の痛みにより長時間座り続けていられない 腰を反らすと痛みやしびれが生じる 中腰やかがむと痛みが強くなる 坐骨神経痛は、片肢に症状が出るケースがほとんどです。しかし、なかには両肢に症状が見られる場合もあります。症状が悪化すると日常生活に影響を与えるため、疑いがある方は早めに受診しましょう。 坐骨神経痛でやってはいけないこと 坐骨神経痛の発症や疑いがある場合、下肢に負担をかける動作は避けましょう。無理に負担をかけてしまうと、症状を悪化させる可能性があるためです。 坐骨神経痛でやってはいけないことには、次の行動が挙げられます。 重いものを持ち上げる 激しい運動をする 長時間座る 前屈みや背骨をねじる 体重を増やす など ただし、過度な安静はかえって回復を遅らせることがあるため、痛みの程度に応じて日常生活を送ることが大切です。 症状が強い場合や、どの程度動いてよいかわからない場合は、医師に相談しましょう。 坐骨神経痛の治療法 坐骨神経痛の治療法は、保存療法が一般的です。しかし、症状レベルによって治療法は異なるため、専門医に相談の上、適切な治療を行う必要があります。 坐骨神経痛では、主に次の治療法を行います。 薬物療法 神経ブロック療法 理学療法 認知行動療法 装具療法 手術療法 症状が重度の場合、手術療法が検討される場合もあります。治療には手術療法だけでなく、薬物療法や神経ブロック療法などの選択肢もあるため、自分に合った治療法を検討しましょう。 また、坐骨神経痛に対しては、再生医療が治療法の選択肢となるケースがあります。坐骨神経痛に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 【関連記事】 坐骨神経痛が死ぬほど痛いときはどうする?痛みの原因や治療法を医師が解説 坐骨神経痛の痛みを和らげるブロック注射とは?効果や費用など医師が解説 坐骨神経痛を和らげる方法 ここでは、坐骨神経痛を和らげる方法を6つ紹介します。 湿布を貼る 市販薬を服用する 温める ツボを押す ストレッチを行う 寝方を変える 痛みの緩和を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。 湿布を貼る 坐骨神経痛は、湿布を貼ることで症状の緩和が期待できます。しかし、湿布の貼る場所を間違えると、十分な効果を得られない可能性があるため、適切な位置を理解しておくことが大切です。 坐骨神経痛の痛みを軽減するのに効果的な場所は、以下の位置になります。 腰の下部 梨状筋 太ももの裏側 ふくらはぎ 湿布は、痛みやしびれを感じる部位にあわせて適切な位置に貼りましょう。また、湿布の種類は症状にあったものを選ぶのがポイントです。 市販薬を服用する 坐骨神経痛の痛みを和らげるためには、市販薬を服用するのも専門機関へすぐに行けない場合の対処法になります。坐骨神経痛に用いられる痛み止めは複数あり、その1つにタリージェがあります。 タリージェとは、坐骨神経痛の痛みを和らげるために処方される医薬品の1つです。末梢神経障害や、脊髄疾患による痛みに対して効果が期待できます。 ただし、タリージェは痛みの緩和が目的のため、服用したからといって症状が改善されるわけではありません。また、副作用がある点に留意の上、服用を検討する必要があります。 温める 坐骨神経痛は、患部を温めると痛みの緩和が期待できます。患部を温めることで、血行促進や神経の圧迫緩和などの効果が期待できるためです。 坐骨神経痛の場合、以下の部位を温めましょう。 腰部 お尻 太ももの裏側 温める際は湯船に浸かったり、使い捨てカイロを使ったりして痛みの緩和を図る方法があります。ただし、温めるのが良いのは慢性症状の場合です。発症の初期段階となる急性炎症期には、炎症を抑えるために冷やす必要があります。 ツボを押す 坐骨神経痛の痛みを和らげる方法には、ツボ押しがあります。ツボ押しでは血流や神経、筋肉など、体の働きにアプローチできるためです。 坐骨神経痛に効果的なツボは、以下の8つです。 部位 ツボの位置 お尻 環跳(かんちょう):お尻のやや外側 承扶(しょうふ):お尻の下に位置する横じわ中央部 手部 腰腿点(ようたいてん):手の甲にある人差し指と中指の間、および薬指と小指の間 合谷(ごうこく):親指と人差し指の付け根・親指にぶつかる部分 下肢 委中(いちゅう):膝裏の中央部 陽陵泉(ようりょうせん):膝の外側にある大きな骨の下部分 殷門(いんもん):太もも裏側の中央寄り 金門(きんもん):外くるぶしの後ろ上方・アキレス腱の外側 痛みを感じる部位のツボを押すと、症状緩和が期待できます。 ストレッチを行う ストレッチでは硬くなった筋肉をほぐせるため、神経への圧迫を軽減できます。坐骨神経痛を悪化させないためにも、ストレッチで血流を促すのが重要です。 痛みを和らげる方法には、次のようなストレッチがあります。 ハムストリングのストレッチ 梨状筋のストレッチ お尻のストレッチ ストレッチは体が温まっているときにやると効果的なため、お風呂上りに取り入れるのもおすすめです。ただし、ストレッチ中に痛みやしびれを感じた場合は、すぐに中断しましょう。 寝方を変える 坐骨神経痛により眠れない場合は、寝方を工夫するのが対処法です。症状が和らぐ寝方には、次の3つが挙げられます。 仰向けで膝を立てる 横向きで両膝の間にクッションを入れる 痛みを感じる部位を上に向ける 寝返りを打つ際は、仰向けの姿勢で両膝を立て、股関節を深く曲げるのがポイントです。腹筋に軽く力を入れ、上半身と下半身を同時に動かすと、寝返りで痛みを感じにくくなります。 また、体を冷やすと血行不良により痛みを感じやすいため、体を温めて眠るのも坐骨神経痛の痛みを緩和する方法です。 再生医療は坐骨神経痛の回復が見込めない場合の選択肢 坐骨神経痛の痛みやしびれを放置すると、日常生活に支障を及ぼします。下肢の神経治療には、再生医療も選択肢の1つです。 再生医療では、脂肪由来の幹細胞を用いて治療を行います。幹細胞治療とは、自身の身体から採取した幹細胞を外部で増殖させ、所定の量に達したら再び身体に戻す治療法です。幹細胞を採取する際は、おへその横からごくわずかな脂肪を取るため、身体の負担を最小限に抑えられます。 また、入院・手術を必要とせず日帰りの手術が可能な点も、再生医療の特徴です。ただし、幹細胞治療は幹細胞の培養に1カ月ほどかかります。手術せず治療を受けたい場合に、再生医療はおすすめです。 https://youtu.be/zYow3yFsNgw?si=lKQHoW3B5dgCm2po 坐骨神経痛は放置せず専門機関への受診が重要 坐骨神経痛は、下肢に生じる症状の総称です。好発年齢は幅広く、原因も人によって異なります。症状にはお尻から脚全体にかけての痛みやしびれがあり、悪化すると日常生活に支障をおよぼすため注意が必要です。 坐骨神経痛の疑いがある場合は重いものを持ち上げたり、長時間立ちっぱなしになったりといった行動は避けましょう。また、症状によって適切な治療を受けることが重要なため、痛みを感じた場合は早めに専門機関へ受診するのがおすすめです。 保存療法でも回復が見られない場合は、再生医療を選択するのも手段の1つになります。自分にあった治療方法で、坐骨神経痛の症状回復を目指しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。坐骨神経痛について気になる症状が見られる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 坐骨神経痛に関するよくある質問 坐骨神経痛は何科を受診すれば良いですか? 下肢に痛みやしびれが生じる場合、整形外科もしくは神経内科を受診しましょう。整形外科では、MRIやX線などを使用して神経の状態を確認した上で、原因を診断します。 また、神経内科の場合は、神経伝導検査や節電図検査などの神経系の検査から坐骨神経の異常や原因を特定します。 坐骨神経痛のときは歩いた方が良いですか? 坐骨神経痛のときは、歩いた方が良い場合と、悪い場合があります。症状が比較的軽度のときや、医師・理学療法士から勧められたときは、歩くなど積極的に体を動かすのがおすすめです。 ただし、歩くだけで痛みが生じるときや、日常生活に支障が出ているときは歩かず適切な治療を検討する必要があります。 坐骨神経痛による足のしびれの治し方はありますか? 坐骨神経痛による足のしびれは、セルフケアで痛みを緩和できる場合があります。主なセルフケアは、以下の3つです。 適度に運動する 正しい姿勢をとる 体を温める 症状に適したセルフケアにより、痛みを緩和できる場合もあるため、足の痛みにお悩みの方はぜひ実践してみてください。 参考文献 (文献1) J-STAGE|梨状筋症候群における発症機転についての考察 (文献2) 労働者健康安全機構|⾻格筋量増やすポイント
2025.11.26 -
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「背中や腰がズキズキ痛む」「発熱が続いて体を動かすのもつらい」などの症状に悩んでいる方は、化膿性脊椎炎を患っている可能性があります。 化膿性脊椎炎とは、細菌の感染によって脊椎や椎間板が炎症を起こす疾患です。早期に治療をおこなえば回復が見込めますが、放置すると骨の破壊や神経障害などを伴い、長期的な治療が必要になるケースもあるため注意が必要です。 今回は、化膿性脊椎炎の症状や原因、治療法をわかりやすく解説します。完治期間の目安や再生医療の可能性についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎とは 化膿性脊椎炎とは、主に細菌感染によって脊椎やその周囲の組織に炎症が起こり、骨の破壊や膿の形成が進行する疾患です。発症部位は腰椎が最も多く、次いで胸椎、頚椎にもみられます。 化膿性脊椎炎は、高齢者や基礎疾患がある方、免疫が低下している方の発症リスクが高い傾向にあります。 化膿性脊椎炎の主な病型 化膿性脊椎炎の主な病型は、急性発症型、亜急性発症型、慢性発症型の3つです。痛みの程度や発熱の有無など、それぞれの病型の特徴を下表にまとめました。 病型 特徴 急性発症型 腰背部の激しい痛みと高熱を伴う 発症直後から腰背部痛や高熱によって動けなくなる 亜急性発症型 腰背部の痛みと微熱を伴う 原因不明または直近の病気が完治した後に微熱が続く 慢性発症型 腰背部の軽微な痛みと間欠的な発熱を伴う 腰背部痛が慢性的に続く 化膿性脊椎炎は、同じ疾患でも病型によって症状の現れ方が異なります。痛みが軽い場合でも炎症が広がっている可能性があるため、自己判断で放置せず、違和感を感じた時点で早めに医療機関を受診しましょう。 化膿性脊椎炎の症状 化膿性脊椎炎を発症すると、主に以下のような症状が現れます。 頚部痛、背部痛、腰痛などの痛み 発熱 倦怠感 背部の腫れや圧痛 神経症状(しびれ、筋力低下、歩行障害) 排尿・排便障害 前述のとおり、化膿性脊椎炎の代表的な症状は腰背部痛や高熱です。しかし、化膿性脊椎炎が進行すると、膿が形成されて神経を圧迫し、麻痺症状が現れる可能性もあります。また、重症化すると排尿や排便障害を引き起こすケースもあるため注意が必要です。 化膿性脊椎炎の原因 化膿性脊椎炎の主な原因は細菌感染です。多くの場合、血液の流れを介して細菌が脊椎に到達する「血行性感染」によって発症します。血液中に侵入した細菌が椎体や椎間板に感染すると、炎症して骨の破壊や膿の形成を引き起こします。 原因菌として最も多いのは黄色ブドウ球菌です。ほかにも、大腸菌や緑膿菌、肺炎球菌などが原因となる場合があります。これらの細菌は、皮膚の傷口や尿路、肺炎、手術や注射の際の感染など、体内のさまざまな部位から血液の流れに乗って脊椎に到達するケースが一般的です。 また、以下のような方は感染リスクが高くなるため注意が必要です。 高齢者 糖尿病や腎不全などの基礎疾患がある方 長期間ステロイドや免疫抑制剤を使用している方 免疫力が低下している方 人工関節やカテーテルなどの医療機器を使用している方 これらの要因が重なると、体内で細菌が繁殖しやすくなり、脊椎への感染リスクが高まります。とくに原因不明の背中の痛みや微熱が続く場合は、初期の化膿性脊椎炎が疑われるでしょう。 化膿性脊椎炎における完治期間の目安 化膿性脊椎炎の完治までの期間は、一般的に約6週間が目安とされています。(文献1)ただし、感染の進行度や病型、治療開始のタイミングや基礎疾患の有無によって回復までの期間には個人差があります。 発症から早期に適切な治療を開始できた場合は、6〜8週間程度の静養で回復するケースも珍しくありません。一方で、感染が広がって骨や椎間板の破壊が進行している場合には、長期の入院や手術が必要になる場合もあります。 化膿性脊椎炎は、早期発見と迅速な治療が予後を左右する疾患です。腰背部痛や発熱が長引く場合は放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 化膿性脊椎炎の診断基準 化膿性脊椎炎は、問診と身体所見に加えて血液検査や画像検査、細菌学的検査を組み合わせて診断するケースが一般的です。(文献2) 血液検査 血液検査では、体内で感染や炎症が起きていないかを詳しく調べます。 化膿性脊椎炎が疑われる場合、CRP値(C反応性タンパク)が診断基準の一つになります。CRP値が上昇している場合は、体内で細菌感染や炎症が起きていると判断できるためです。 なお、血液データは化膿性脊椎炎の経過観察に活用し、治療効果の判定にも役立てられます。 細菌学的検査 細菌学的検査では、椎間板や椎体周囲の組織、あるいは血液から採取した検体を培養し、感染の原因となっている細菌を特定します。これにより、どの抗菌薬が最も効果的かを判断でき、治療の精度を高めることが可能です。 また、培養結果は感染の広がりや再発リスクの評価にも役立ちます。化膿性脊椎炎の治療では、細菌学的検査を基に抗生剤の種類や投与期間を決定し、より安全で効率的な回復を目指します。 画像診断 画像診断は、化膿性脊椎炎の早期発見と治療方針の決定に不可欠です。 とくに、MRI検査は椎間板や椎体の炎症、周囲組織への膿瘍形成の有無を詳細に把握でき、初期段階でも感染部位の変化を検出できる点が特徴です。一方、X線検査は骨の破壊や変形など進行した病変を確認するのに有効ですが、初期の炎症や微細な損傷は映りにくいため、早期診断にはMRIが推奨されます。 化膿性脊椎炎の診断後には、これらの検査結果を総合して治療計画が立てられます。 化膿性脊椎炎の治療法 化膿性脊椎炎の治療の目的は、主に感染の制御と脊椎の安定化です。以下で、化膿性脊椎炎の主な治療法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 抗生剤の投与 化膿性脊椎炎の基本治療は、抗生剤を使った保存療法です。(文献2)抗生剤の投与によって原因菌を早期に抑制できると病変の進行を防げます。 投与方法 治療初期には点滴で集中治療をおこなう 症状が落ち着いたら内服薬に切り替える場合もある 投与期間 通常6週間以上にわたって投与する 症状や感染の広がりによって投与期間を延長する場合もある 抗生剤の選択 血液検査や細菌培養の結果を参考に抗生剤を選択する 治療の経過に応じて抗生剤を変更する場合もある 化膿性脊椎炎の治療では、発症初期に適切な抗生剤を使用して症状の改善を図ると、骨や神経へのダメージを最小限に抑えられます。ただし、抗生剤の投与はアレルギー反応や消化器症状といった副作用のリスクもあるため、定期的に治療効果を確認しながら治療を進める必要があります。 コルセット療法 コルセット療法は、化膿性脊椎炎の治療において脊椎への負担や痛みを軽減するための補助的手段です。装具を使って背中や腰を固定すると、炎症部位の安静を保てるほか、日常動作や歩行時の痛みを和らげられます。 ただし、コルセットを長期間使用すると体幹の筋肉を十分に使わずに姿勢を支えることになるため、関節の柔軟性や筋力の低下を招くリスクがある点に注意が必要です。 そのため、医師や理学療法士の指導のもとで使用期間やコルセットの締め付け具合を調整し、必要に応じてリハビリテーションを組み合わせる必要があります。 リハビリテーション 化膿性脊椎炎の治療では、理学療法士や作業療法士が介入してリハビリテーションをおこないます。とくに、回復期のリハビリテーションは日常生活への復帰に向けて欠かせません。炎症が落ち着いたあとも、筋力の低下や関節の硬さが残る場合があり、放置すると動作制限や再発のリスクが高まるためです。 急性期はまず安静を保ち、主にベッド上で手足の関節を軽く動かす運動から始めます。その後、関節可動域訓練や段階的な歩行訓練を実施し、筋力やバランス機能を回復させます。また、日常生活での安全な動作や姿勢の指導も実施し、自宅復帰を目指す流れが一般的です。 継続的なリハビリテーションにより、再発リスクを抑えつつ、早期の日常生活への復帰が期待できます。 手術療法 化膿性脊椎炎によって麻痺症状が現れたり骨破壊が進行したりしている場合は、手術療法も検討されます。抗生剤の投与で改善が難しい症例においては、手術によって脊椎の安定化や感染の進行防止を図る必要があるためです。 化膿性脊椎炎における手術療法には、主に2つの方法があります。 手術方法 内容 脊椎固定術 病変部の脊椎を金属などで固定する 脊椎の安定化や変形防止などを目的におこなう 経皮的病巣掻爬洗浄術(けいひてきびょうそうそうはせんじょうじゅつ) 感染部位の膿や壊死組織を除去する 感染の進行防止や炎症の軽減などを目的におこなう なお、手術後も抗生剤の投与を継続することで、化膿性脊椎炎の再発防止と回復促進につながります。 化膿性脊椎炎の治療における再生医療の可能性 近年、化膿性脊椎炎の治療においても再生医療が注目されています。再生医療には、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液から血小板を分離して作製した多血小板血漿(PRP)を利用するPRP療法があります。 再生医療は、手術せずに化膿性脊椎炎を治したい方や従来の治療法で期待した効果が得られない方の選択肢になるでしょう。 ただし、保険適用外の治療も多いため、専門医との十分な相談が必要です。なお、当院の幹細胞治療では、米粒2〜3粒ほどの脂肪から治療に必要な量の細胞を培養でき、身体への負担が少なくて済みます。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。化膿性脊椎炎の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎は早めに受診して重症化を防ごう 化膿性脊椎炎は、細菌感染により脊椎や周囲組織に炎症が起こる疾患で、腰痛や発熱、手足のしびれなどの神経症状が現れます。 化膿性脊椎炎が疑われる場合は、早期に検査し、適切な治療を受けることが重症化の予防につながります。化膿性脊椎炎の治療は、抗生剤の投与をはじめ、コルセット療法やリハビリテーションなどの保存療法が基本です。ただし、重症化した場合には、必要に応じて手術療法や再生医療などを検討しなければなりません。 症状の改善と日常生活へのスムーズな復帰を目指すためにも、化膿性脊椎炎は早めに受診して重症化を防ぎましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。化膿性脊椎炎の症状でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎に関するよくある質問 化膿性脊椎炎になると後遺症が出ますか? 化膿性脊椎炎では、手足のしびれや痛み、運動能力や筋力の低下、排尿障害などの後遺症が出る場合があります。(文献3)とくに、膿の形成によって神経が圧迫されている場合は症状が長引く傾向にあります。 化膿性脊椎炎の後遺症を防ぐためには、早期に適切な抗生剤治療やリハビリをおこない、日常生活への影響を最小限にすることがポイントです。 化膿性脊椎炎で寝たきりになることがありますか? 化膿性脊椎炎は、治療が遅れると激しい腰背部の痛みや発熱に加え、神経障害が進行して歩行が困難になり、長期間寝たきりになるリスクがあります。とくに、高齢者や基礎疾患がある方は重症化しやすいため注意が必要です。 しかし、早期に適切な抗生剤治療やリハビリテーションをおこなうことで、症状の改善や回復が期待できます。 参考文献 (文献1) 化膿性脊椎炎の診断におけるMRIの有用性:3例報告|日臨救急医会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/20/6/20_757/_pdf (文献2) 四肢麻痺を呈した頸部化膿性脊椎炎の1例|日救急医会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/18/9/18_9_671/_pdf (文献3) 化膿性脊椎炎と診断されて手術に至った30症例の検討|日本ペインクリニック学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/32/6/32_24-0044/_pdf/-char/ja
2025.11.26 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した結果、肝臓に線維化が起こり機能が低下する病気です。初期段階では自覚症状が見られないため、症状が現れた時には既にかなり進行していることがあります。 肝機能の悪化や肝がんへの進行を防ぐには、早期発見・早期治療が重要です。 本記事では肝硬変の原因・症状・治療法・予防法について解説します。 なお、肝硬変を含む肝臓疾患に対しては再生医療という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しているので、肝臓疾患でお悩みの方はぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肝硬変とは?肝臓が線維化して機能が低下する重篤な疾患 肝硬変とは、肝臓が長期に及ぶ慢性的な飲酒やさまざまな疾患などにさらされた結果、肝臓が線維化と再生結節の形成により機能が衰える疾患を指します。肝臓は再生能力の高い臓器で、約7割を切除しても再生されるのが特徴です。 ただ、飲酒や疾患の影響で日常的に損傷を受け続けた場合、肝臓に炎症が発生します。炎症が発生した際にも修復は進むものの、その際にたんぱく質の一種であるコラーゲンが生成されます。コラーゲンが過剰に増えて肝臓自体が全体的に線維化が進んだ状態が肝硬変です。 肝硬変の原因 肝硬変の原因には、さまざまな要素が考えられるため、日頃から十分な注意を要します。肝硬変の原因としてよく挙げられるものが、以下のものです。 長期の過剰なアルコール摂取 乱れた生活習慣 ウイルス感染 薬物による肝障害 以上の原因をあらかじめ知った上で、肝硬変のリスクを下げることが大切です。 長期の過剰なアルコール摂取 肝硬変の原因の一つに、長期にわたる過剰なアルコールの摂取があります。 アルコールは肝臓で代謝されますが、その過程でアセトアルデヒドという有害物質が生成され、肝細胞を傷つけます。継続的な大量飲酒により肝細胞の損傷が繰り返されると、肝臓に慢性的な炎症が生じ、やがて肝硬変に進行します。 アルコール性肝疾患は段階的に肝硬変に進行する疾患です。まず肝臓に脂肪が蓄積するアルコール性脂肪肝が起こり、飲酒を続けることでアルコール性肝炎へと進行、最終的にアルコール性肝硬変に至ります。 なお、2018年から2021年の調査によると、日本国内における肝硬変の原因の内訳は以下のとおりです。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) このように、近年はアルコール性肝疾患が肝硬変の大きな原因となっています。(文献1) 肝硬変に進行する前のアルコール性肝炎の初期症状について解説している以下もご覧ください。 乱れた生活習慣 乱れた生活習慣も肝硬変の原因の一つです。具体的には、日頃の過度なストレスや運動不足、バランスの取れていない食生活などが挙げられます。 生活習慣が乱れて肥満や糖尿病のような生活習慣病を発症すると、肝臓に脂肪肝ができるケースがあります。この脂肪肝も何の対策もせずに放置すると、肝炎を経て肝硬変に発展するリスクがあるため、注意が必要です。 ウイルス性肝炎 ウイルス性肝炎から肝硬変への進行は、一般的に感染から20~30年程度の経過を経て起こります。とくにC型肝炎が肝硬変まで進行した場合、肝がんへの進展リスクが高くなるため注意が必要です。 近年、C型肝炎に対する抗ウイルス薬治療の進歩により、ウイルスの排除が可能となっています。早期にウイルスを排除することで、肝硬変や肝がんへの進行を大幅に抑制できるため、感染が判明した場合は専門医による適切な治療を受けることが重要です。 B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎は、肝硬変の主要な原因の一つです。これらのウイルスが長期間にわたって肝臓に炎症を起こし続けることで、肝細胞の壊死と再生が繰り返され、最終的に肝硬変に進行します。 とくに、高齢者や糖尿病の方は肝臓がんまで進行するリスクが高いため、注意が必要です。 薬物による肝障害 薬物の影響で発症した肝障害が肝硬変の原因になる場合があります。医薬品やサプリメントなどを適正用量を超えて摂取すると、肝臓は損傷を受けます。 また、薬物性肝障害には個人の体質が大きく関わるケースが多く、同じ薬剤でも人によって反応が全く異なります。体質に合わない薬剤では、服用量に関係なく肝障害が起こることがあり、事前の予測は非常に困難です。 肝硬変の症状 肝硬変は進行度により「代償性肝硬変」と「非代償性肝硬変」に分類されます。 代償性肝硬変とは、肝臓の一部が損傷を受けていても、残った健康な肝細胞が機能を補っている状態のことです。この段階では重篤な症状は現れず、多くの患者さんは無症状です。ただし、倦怠感・疲労感・食欲不振などの軽微な症状を感じることがあります。 これらの症状は風邪や日常的な疲労と区別がつきにくく、肝硬変と気づかずに見過ごされることが多いため、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。 病気がさらに進行し非代償性肝硬変になると、以下のような症状が現れます。 腹水 黄疸(おうだん) 食欲不振や体重減少 くも状血管腫 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) こむら返り 女性化乳房 これらの症状について解説します。 腹水 腹水はお腹を包む膜(腹膜)とお腹周りの臓器の間にある腹腔に、過剰に水が溜まる症状です。肝硬変の場合、門脈(血管)における圧力の高まりと、血液中のアルブミンの低下が腹水の主な要因です。 肝硬変の進行によって肝臓の機能が衰えると、消化器官から肝臓に向かう血管である門脈の圧力が高まって、流れが悪くなります。すると血液に含まれる成分の血漿(けっしょう)が血管の外に漏れるため、腹水を生じます。 また、肝機能の低下は、血液に含まれるアルブミンと呼ばれるたんぱく質を減少させます。アルブミンには血液中の水分を維持するはたらきがあるのが特徴です。もしアルブミンが減少すると、水分が血管から腹腔に漏れ出て腹水が発生します。 黄疸(おうだん) 黄疸とは、疾患の影響で皮膚や、目の白い部分である眼球結膜が黄色くなる症状です。黄疸もまた、肝硬変の症状が進んだ際に見られます。 黄疸の発生には、赤血球に含まれるビリルビンと呼ばれる色素が関係しています。血液に含まれる赤血球は古くなって機能しなくなると、肝臓で分解されるのが一般的です。赤血球の分解で現れたビリルビンは体外に排出されますが、肝臓の機能が衰えると血液中のビリルビンが増加します。そのために皮膚や眼球結膜が黄色くなります。 なお、皮膚などが黄色くなるほかにも、尿が異常に濃い点や便が白くなる点も特徴です。 食欲不振や体重減少 肝機能が低下した結果、食物に含まれる栄養素の消化吸収能力が衰えるとともに、食欲不振も起こります。十分な栄養を摂取できないため、体重減少や筋肉量の低下、慢性的な疲労・倦怠感が生じます。 くも状血管腫 くも状血管腫とは、皮膚上に発生する、毛細血管が赤い点からクモの足のように広がって見える症状です。肝硬変の場合、首や肩、二の腕などの上半身に起こります。 肝硬変によってくも状血管腫が発生する流れは、具体的には解明されていません。ただ、肝機能の低下でホルモンの代謝が進まなくなったことで発生すると考えられています。 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) 手掌紅斑(しゅしょうこうはん)とは、手の親指や小指の付け根部分をはじめ、手のひらに生じる赤い斑点です。紅斑自体に痛みなどの特別な症状はないものの、肝硬変が進んでいるサインとして出現するケースがあります。 こむら返り 夜中寝ている間などに足がつるこむら返りも、肝硬変によって生じる症状です。肝硬変の進行で肝機能が低下すると、体内の水分のバランスや電解質の調整がうまくいかなくなります。 加えて、肝硬変が進むと必須アミノ酸メチオニンの消費量が減ります。メチオニンは筋肉を動かす際に欠かせないタウリンやカルニチンを生み出すのに必要です。しかし、メチオニンの消費量が減る分、2つの物質の生成量も減るため、こむら返りが起きるケースが増えると考えられています。 以下の記事では、こむら返りと肝硬変との関係性について解説しているので、あわせてご覧ください。 女性化乳房 女性化乳房とは、男性の乳房や乳首が肥大化する症状です。男性にも女性ホルモンのエストロゲンはあるものの、通常であれば肝臓の機能によって分解されるため、乳房などは肥大化しません。 しかし、肝硬変を抱えている男性の場合、エストロゲンの分解能力も衰えています。このため、残ったエストロゲンのはたらきによって、男性の乳房や乳首が肥大化する女性化乳房が発生する仕組みです。 肝硬変患者の余命|腹水が溜まった場合は? 肝硬変を診断された際の余命は、病気の進行度によって大きく異なります。腹水が溜まるなどの症状が見られる場合は、肝硬変がある程度進行した状態です。 医学的な重症度分類に基づいた研究では、肝硬変患者の3年後も生存している割合は以下のように報告されています。(文献2) 症状が中程度まで進んだ場合:約71% 症状が重度まで進んだ場合:約31% ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、腹水などの症状が現れていても、適切な治療を継続することで症状の改善や病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変の検査・診断方法 肝硬変への対策には、こまめに検査や診断を受けることが大切です。肝硬変に対して用いられる検査や診断には、次のような方法があります。 血液検査 画像診断 腹腔鏡検査・肝生検検査 それぞれの検査や診断の特徴を知り、有効活用しましょう。 血液検査 血液検査では、肝機能に関する複数の指標を測定し、肝硬変の診断や病態の評価を行います。主な検査項目と基準値は以下のとおりです。 指標 指標が意味するもの 正常値 異常値 AST ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 13~36U/L 51U/L以上 ALT ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 8~36U/L 51U/L以上 γ-GTP ・アルコール性肝障害 ・胆汁の分泌がうまくいっているかどうか 9~47U/L 101U/L以上 血小板数 ・肝臓の線維化の程度 ・門脈圧亢進の指標 15.8~34.8 10⁴/μL 9.9以下・40.0以上 10⁴/μL アルブミン値 ・肝臓でつくられるたんぱく質の量 4.1~5.1g/dL 3.6g/dL以下 (文献3)(文献4) なお、血液検査は会社や自治体、学校の健康診断の一環でも行われています。定期的な健康診断の受診も、肝硬変対策として大切です。 画像診断 血液検査で肝機能の数値に異常がある場合、より精密な画像診断が必要です。画像診断はCTやMRI、腹部超音波など専門の機械によって確認されます。 診断時に撮影された画像をもとに、肝臓のサイズの変化や表面の凹凸、異常な血管の有無をチェックします。肝臓のサイズや形、表面がゴツゴツしているなどの変化が見られる場合、肝硬変の疑いが考えられます。 腹腔鏡検査・肝生検 画像診断とともに腹腔鏡検査や肝生検も行われます。腹腔鏡検査ではお腹に穴を空けた上で、腹腔鏡(内視鏡)を入れて、肝臓の状況を医師が映像で確認する検査方法です。この方法と今までの他の診断結果から肝硬変かどうかを総合的に判断します。 一方、肝生検は、肝臓組織の一部を採取して顕微鏡で観察する方法です。ただし、現在では画像や映像、超音波を用いた方法が主流になっており、肝生検には出血リスクがあることから採用されるケースは必要性が高い場合に限られています。 肝硬変の治療法 肝硬変の診断を受けた場合は、なるべく早い段階での治療が重要です。主な治療法として、以下の方法が挙げられます。 生活習慣の見直し 肝炎の治療 腹水の治療 肝臓の移植 再生医療 肝硬変の治療法を知れば、今後どのように肝硬変を治していくのかをイメージできます。 生活習慣の見直し 肝硬変の治療では、生活習慣の見直しが欠かせません。肝硬変になった際に生活習慣を見直す方法として、以下が挙げられます。 禁酒 食事療法 軽めの運動 肝硬変になっている場合は、禁酒が重要です。とくにアルコール性肝硬変を診断された場合は、それ以上の飲酒は症状をさらに悪化させ、合併症や命の危険のリスクを高めます。肝機能の数値が正常値に下がるまでお酒は控えましょう。 また、肝硬変を改善するためには普段の食事内容の見直しも大切です。野菜や果物でビタミン・食物繊維を、大豆類で良質なタンパク質を摂取しましょう。1日3回、腹八分目でよく噛んで食べると肝臓への負担を軽減できます。 とくに腹水やむくみが見られる場合は、これ以上腹水が増えないように1日に摂取する水分や塩分の制限も大切な要素です。水分は1日1リットル、塩分は1日5~7gに抑えます。(文献5) 運動は軽めに留めることが大切です。肝機能が低下している状態では、激しい運動は体調悪化を招く可能性があります。ただし、休んでいるだけでは筋肉が衰えるため、軽い体操などで筋力を維持しましょう。 肝炎の治療 肝硬変の治療では、原因に応じた肝炎の治療も行います。一言で肝炎といってもさまざまな原因があるため、それぞれに対して適切な方法で治療する必要があるためです。(文献6) 原因 投与する薬剤 B型肝炎ウイルス 抗ウイルス薬の投与: エンテカビルやテノホビルアラフェナミドフマル酸塩など C型肝炎ウイルス 経口抗ウイルス薬 (医師との相談が必要) 脂肪性肝炎 禁酒・食事療法・運動療法 自己免疫性肝炎(免疫異常による肝炎) 副腎皮質ステロイドの投与 なおB型肝炎やC型肝炎の原因ウイルスに対して抗ウイルス薬の効果が見られないときは、肝細胞の破壊を抑える薬剤の投与や、体内の鉄分を減らす瀉血(しゃけつ)療法がとられます。 腹水の治療 腹水が溜まっている状況であれば、塩分の制限とともに、利尿内服薬やアルブミン剤も投与されます。利尿内服薬は尿の生成を促し、体内の余分な水分の排出が期待できる薬剤です。もし通常の利尿内服薬で効果が見込めない場合は、より強力な利尿作用があるトルバプタンなどを使用します。 アルブミン製剤も腹水の改善によく使われる薬剤で、点滴で投与するのが一般的です。腹水を発症している状態は体内の水分量を調整するアルブミンが減少しているため、補うことで腹水の改善効果が期待できます。 肝臓の移植 薬剤の投与などの方法で症状の改善が期待できないときは、肝臓移植を行います。条件に合致する健康な親族の肝臓の一部を移植し、肝硬変自体の改善を図る方法です。 移植の判断は、病状の深刻度や移植しなかった場合に予想される死亡率をもとに判定されます。 再生医療 肝硬変の治療には再生医療をもあります。再生医療では「幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」と呼ばれる手法が一般的です。 幹細胞治療では、患者様の脂肪から採取した幹細胞を培養してから、患部に投与します。また、PRP療法は患者様の血液から採取した血漿を遠心分離によって血小板の濃度を高め、患部に注射する治療法です。 幹細胞は培養に1カ月ほどかかりますが、施術はどちらも短時間で終了します。入院・手術を必要としないのも特徴です。 当院リペアセルクリニックの肝硬変に対する治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 また、再生医療についての詳細は、以下のページをご覧ください。 肝硬変の予防法 肝硬変を予防し、肝疾患の進行を防ぐには、日常生活での取り組みが重要です。 以下の予防法を実践して、肝臓の健康を守りましょう。 適量の飲酒 バランスのとれた食事 定期的な健康診断の受診 これらの生活習慣を継続することで、肝疾患のリスクを大幅に減らせます。 適量の飲酒 普段から飲酒の習慣がある方は、飲む量の調整が欠かせません。多量のアルコールは肝臓を傷つけるとともに、脂肪肝から症状が進行すれば肝硬変になるリスクがあります。 発症のリスクを抑えるには、お酒と上手に付き合うことが大切です。1日に飲むお酒の量に上限を設けたり、週に1、2日は休肝日を設けて肝臓をいたわるのがポイントです。 なお、厚生労働省では「節度ある適度な飲酒」として、アルコール度数5%のビールであれば1日に中瓶1本分(500ml)、アルコール度数15%の清酒であれば1合180mlとしています。(文献7) バランスのとれた食事 無理な飲酒を抑えるとともに、栄養バランスのとれた食事を心掛けることも肝硬変の予防に役立ちます。 食事のメニューは主食・主菜・副菜の組み合わせを意識し、食物繊維や良質なたんぱく質の多い食材を使った料理を食べることが大切です。 なお食べる量や回数も、すでに肝硬変を発症している場合と同じく、1日3回・腹八分目を心掛けます。 一方で脂肪や塩分の多い食事は、肝臓を傷つける恐れがあるため、なるべく避けるべきです。添加物を多く含むインスタント食品も推奨できません。 定期的な健康診断の受診 肝硬変を予防するために、定期的な健康診断を受けましょう。肝硬変は症状が現れにくいため、血液検査により脂肪肝や慢性肝炎の段階で早期発見することが大切です。 健康診断で肝機能異常が見つかった場合は、専門医による詳しい検査を受けて原因を特定します。 脂肪肝であれば生活習慣の改善により改善可能で、ウイルス性肝炎の場合は抗ウイルス薬による治療でウイルスを排除できます。これらの治療により、肝硬変への進行を防ぐことができます。 年1回の健康診断を欠かさず受診し、異常が指摘された場合は早めに医療機関を受診しましょう。 まとめ|肝硬変の治療は早めの定期検診や生活習慣の見直しで対策を 肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した病気です。症状が進行するまでほとんど自覚が無く、黄疸や腹水などのはっきりした症状が現れる頃には、病気が進行しています。さらに肝硬変まで進行すると完治が難しく、命にもかかわることがあるため、定期的な健康診断による早期発見・早期治療が重要です。 肝硬変の治療法には、食事や飲酒量などの生活習慣の改善や薬剤の投与、肝臓移植、再生医療などの手段もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、肝硬変を含む肝臓疾患に対する再生医療を提供しております。肝硬変でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEにご登録いただき、再生医療に関する症例をご確認ください。 肝硬変に関するよくある質問 肝硬変の原因で最多のものは? 近年の研究では、国内で発症する肝硬変の原因として過剰なアルコール摂取が最多である結果が出ています。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) 肝硬変を予防するためには、アルコールの摂取量を適切な範囲に抑えることが大切です。 肝硬変で死ぬ前は苦しい? 進行した肝硬変では多くの場合、苦しさを伴う症状が現れます。 肝硬変の末期症状は腹水や黄疸、浮腫(むくみ)などが深刻化している状態です。なかでも腹水は症状の進行によって腹部が膨らみ、呼吸困難さえも引き起こします。 また肝機能の低下で体内のアンモニアが分解されないまま脳に達すれば、肝性脳症に陥る場合もあります。肝性脳症では昏睡状態になるケースさえあるほど危険な症状です。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021”| Hepatol Res. (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会 (文献4) 判定区分 2025年度版|日本人間ドック・予防医療学会 (文献5) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献6) 肝臓病の理解のために |日本肝臓学会 (文献7) アルコール|厚生労働省
2025.11.26 -
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側弯症(そくわんしょう)とは、背骨が左右に曲がり、ねじれが加わった状態を指します。 とくに、思春期の子どもに多く見られ、見た目に明らかな変化が出る一方で、痛みが少ないため見過ごされるケースも少なくありません。 進行して症状が重度になると、生活に支障が出る恐れもあり注意が必要です。 本記事では、側弯症の定義や種類、症状、診断方法、治療法、日常生活での注意点までを詳しく解説します。 正しい知識を身につけて、子どもの健やかな成長を支えてあげましょう。 なお、側弯症の進行に伴う神経症状や手術後の神経損傷に対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご登録ください。 側弯症とは 背骨が本来のまっすぐな状態から左右に曲がり、ねじれも加わって骨格が変形する状態が「側弯症」です。 とくに、成長期の子どもに多く見られ、放置すると曲がりが進行し、姿勢の悪化や将来の健康に影響を及ぼす可能性があるため注意しなければなりません。 学校検診の前屈検査で発見されることが多く、早期発見が治療の鍵です。 側弯症には、大きくわけて以下のような種類があります。 種類 特徴 特発性側弯症 原因不明。全体の約6~7割を占め、思春期の女子に多く見られる(文献1) 先天性側弯症 背骨の形成異常により、生まれつき曲がっている 神経・筋原性側弯症 脳性麻痺や筋ジストロフィーなどに伴って起こる 側弯症の種類によって対応が異なるため、専門医による正確な診断が必須です。 側弯症の原因 側弯症の原因はひとつではなく、いくつかのタイプに分類されます。 種類によって発症の背景が異なるため、適切な治療を行うには原因の特定が欠かせません。 構築性脊柱側弯症 特発性側弯症 ・原因が明らかではない側弯症 ・10〜15歳の女子に多く、成長期に急速に進行する場合がある 症候性側弯症 ・先天的な背骨の奇形や、筋ジストロフィー・脳性麻痺などの病気に伴って起こる ・基礎疾患への対応も必要 機能性側弯症(構築性ではない側弯症) ・背骨自体に異常はなく、姿勢や脚長差、痛みなど一時的な要因で背骨が曲がって見える ・原因が解消されると、自然に改善する 上記のように、側弯症が構造的な問題によるものか、一時的な状態かを区別し、原因に応じた対処が大切です。 側弯症の原因については、以下の記事でも詳しく解説しています。 側弯症の症状 側弯症は、進行しても痛みを感じにくい特性があります。 本人や家族が気づかないまま、見過ごされるケースも少なくありません。 ただし、見た目に明らかな変化が現れる場合もあり、以下のような代表的な外見上の変化を見逃さないように注意しましょう。 肩の高さが左右で異なる 肋骨や肩甲骨の片側が突出して見える ウエストラインが左右で不均等になっている 骨盤の高さが左右非対称になっている 上記のような変化は、学校の前屈検査や保護者によるセルフチェックで気づくケースが多く、早期発見のきっかけになります。 なお、側弯症が進行して背骨の湾曲で胸郭が変形すると、以下のような健康上の問題が起こる可能性があるため注意が必要です。 肺が圧迫され呼吸が浅くなる、息切れしやすくなる 心臓や肺の機能が低下する また、胃や腸が圧迫されて消化不良や便秘を引き起こすなど、まれに消化器系に重度な影響が生じるケースもあります。 大人の側弯症の症状 大人の側弯症は、思春期に発症して成長後もゆっくりと進行するケースと、大人になってから新たに発症するケースに分けられます。 大人になってから発症するケースは、加齢に伴う骨や椎間板の変性、姿勢の崩れなどが原因です。 背骨のゆがみにより体のバランスが崩れ、以下のような症状が現れる場合があります。 腰や背中の慢性的な痛み 長時間の立位や歩行での疲労感 身体の左右差による服のずれ 神経圧迫による足のしびれや筋力低下 大人の側弯症は、見た目の変化よりも日常生活への影響が現れやすい点が特徴です。 痛みや不調を感じた場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 側弯症の症状や治療法については、以下の記事でも詳しく解説しています。 側弯症の診断 側弯症の診断では、まず問診と身体検査を行い、X線で背骨の湾曲の程度を確認するレントゲン検査で確定診断されます。 身体検査は、背中の左右差や隆起の有無を観察する「前屈検査(前屈テスト)」が基本です。 レントゲン検査では背骨の曲がりの程度を示す「コブ角」という角度を測定し、湾曲の程度を数値化することで、治療方針を決定します。 なお、全国の中学校では2016年度から「運動器検診」が導入されており、検診をきっかけに医療機関を受診する児童生徒が増加しています。(文献2) とくに、成長期の子どもは側弯症が進行しやすいため、学校検診の結果を軽視せず、整形外科で正確な評価を受けましょう。 側弯症の治療法 側弯症の治療は、発症年齢や側弯の進行度によって異なります。 主に「思春期特発性側弯症」と「変性側弯症」に分けて治療方針が立てられ、次の治療法があります。 装具治療:進行を抑える目的で使用され、成長期の子どもに有効 運動療法:筋肉のバランスを整えるリハビリやストレッチ 手術:重度の湾曲や症状が進行した場合に検討 以下で、それぞれ詳しく解説します。 思春期特発性側弯症の治療法 思春期特発性側弯症は、成長期に突然現れる原因不明とされる側弯症です。 多くは痛みがなく、学校検診がきっかけで発見されるケースが少なくありません。 治療方針は主に、背骨の曲がりの角度「コブ角」によって決まります。 軽度(おおむね20度未満):定期的な経過観察 中等度(おおむね20〜40度):装具による治療 重度(おおむね40度以上):進行防止のため、進行状況で個別に手術を検討(文献3) とくに、成長期の子どもは軽度な状態で早期に治療を開始することで、進行を抑えられる可能性が高くなります。 中程度の場合は、装具を使用しながら日常生活を過ごせます。 ただし、重度になると手術が検討されるため、やはり早期発見と治療が欠かせません。 変性側弯症の治療法 変性側弯症は、加齢による椎間板や関節の変形が原因で、背骨が徐々に曲がっていく病気です。 中高年に多く見られ、慢性的な腰痛や神経症状を伴うケースがあり、状態に応じて以下のような対処法が検討されます。 初期〜中等度:痛みの緩和を目的とした薬物療法や運動療法 重度または神経症状あり:神経の圧迫を除去する手術を検討 治療は、症状の程度や日常生活への影響をもとに個別に判断されます。 定期的な整形外科の受診とあわせて、筋力を維持するための運動が進行予防に役立ちます。 側弯症でやってはいけないこと|腰痛に注意 側弯症は、軽度であれば日常生活に大きな制限はありませんが、日常の行動が腰痛を発症させる場合があります。 とくに、中高年の変性側弯症では、以下のような行動を避けてください。 避けるべき行動 理由 長時間の同じ姿勢 座りっぱなしや前かがみの姿勢は、背骨に負担をかける 過度な運動や重い荷物の持ち運び 左右非対称な負荷が、背骨をさらにゆがませる可能性がある 柔軟性の低いマットレスや寝具 体にフィットしない寝具は、腰や背中に悪影響を与えることがある 上記のような行動を避けるのとあわせて、痛みが出ている場合は無理せず整形外科で適切な指導を受けましょう。 側弯症でやってはいけないことについては、以下の記事も参考にしてみてください。 まとめ|側弯症が気になるから早めに受診しよう 側弯症は、正しく理解して適切に対処すれば、日常生活に大きな支障をきたさずに過ごせます。 とくに思春期特発性側弯症は、成長期に進行を抑えることが重要です。 学校検診やセルフチェックを通じて早期に気づいたら、整形外科を受診してください。 もし側弯症と診断されても、過度に不安になる必要はありません。 今回の記事を参考にしていただき、正しい知識と行動で改善を目指しましょう。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、側弯症の進行に伴う神経症状や手術後の神経損傷に対して再生医療による治療を行っています。 公式LINEでは、再生医療に関する情報や簡易オンライン診断をご利用いただけますので、 ぜひ登録してお試しください。 側弯症に関するよくある質問 側弯症に美人が多いという噂は本当ですか? 「側弯症の人は美人が多い」という説には、医学的な根拠は一切ありません。 思春期特発性側弯症は、やせ型の女子に多い傾向があるため、体型的な特徴からそのようなイメージが広まった可能性があります。 このような噂は一部の印象に過ぎず、科学的なデータに基づくものではない点を理解しておきましょう。 側弯症は老後に悪化することはありますか? 側弯症は、老後に悪化するケースがあります。 思春期に発症した側弯症が軽度でも、高齢期に入ると背骨や椎間板の変形により、少しずつ湾曲が進行する場合があるのです。 加齢による筋力の低下と、姿勢の悪さが主な要因となります。 定期的な整形外科でのチェックと適度な運動、正しい姿勢を保つ意識が大切です。 側弯症は寿命に影響しますか? 側弯症そのものが、直接寿命を縮めるという医学的根拠はありません。 しかし、進行して重度になると、肺や心臓の機能低下、慢性的な腰痛や姿勢の悪化による活動量の低下など、間接的に健康に影響を及ぼす可能性があります。 とくに、高齢期に入ってからの側弯症悪化は、転倒や骨折のリスクにもつながるため注意が必要です。 早期発見と適切な治療、日常生活での管理が健康寿命を延ばすことにつながります。 側弯症はスポーツ禁止ですか? 側弯症だからといって、スポーツが全面的に禁止されるわけではありません。 むしろ、適度な運動は筋力の維持や姿勢の安定に役立つとされています。 医師による個別の指示がある場合を除き、痛みがなければ問題ありません。 ただし、片手で行うスポーツや左右非対称な動きが多い競技(テニス、ゴルフ、野球の投球など)は、背骨に偏った負荷がかかる傾向があります。 運動を継続する際は整形外科医と相談しながら、体に無理のない範囲で行いましょう。 側弯症でクッションを活用できますか? 長時間の座位が続くと、背骨に負担がかかりやすくなります。 姿勢を安定させるための骨盤サポートクッションや低反発クッションを使用すると、腰や背中への負担を軽減できる場合があるので試してみましょう。 ただし、クッションは補助的なアイテムとして活用するものであり、根本的な治療には医師の診断と指導が欠かせません。 関東地方で側弯症の名医を教えてください。 側弯症に関する治療実績が豊富な医師は存在しますが、「名医」と断定することは難しいのが現状です。 信頼できる医療機関を探すには、日本側彎症学会の公式サイトが参考になります。(文献4) 専門医が所属する医療機関一覧が掲載されており、関東地方などの地域や病院名から検索が可能です。 参考文献 (文献1) 「側弯症」|日本整形外科学会 (文献2) 学校での運動器検診|運動器の健康・日本協会 (文献3) SRS|Surgery (文献4) 医療機関一覧|日本側彎症学会
2025.10.15






