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「膝に血が溜まる理由は?」 「転んで膝に血が溜まるときの治療方法は?」 膝関節血腫とは、さまざまな原因によって関節内に血が溜まる症状のことです。 なかには出血を繰り返すケースもあり、関節の破壊につながる可能性もあります。 どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うと改善や予防が可能です。 この記事では、膝に血が溜まる理由や治療方法を始め、自宅でできる運動の対策をお話しします。 症状があるときは必ず医療機関を受診しましょう。医師に相談しながら、予防法として日常生活での運動も取り入れてみてください。 膝に血が溜まる理由とは【膝関節血腫について】 膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血が溜まる症状です。 膝関節血腫が起こる理由は、以下の2つに分けられます。 ・外傷性のもの:主にスポーツによるけがで起こる ・反復性のもの:特定の要因で繰り返し起こる 外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や骨折により組織が出血すると発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こる場合が多いです。 一方、反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)などの使用により、関節内が出血しやすい状態となり再発を繰り返す症状です。 原因は人工関節の手術が一番多く、手術で0.17〜1.6%の確率で起こるのがわかっています。 外傷性の症状は、けがの回復とともに改善していきます。 しかし反復性の症状は、放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させる恐れがあるため、場合によっては手術の適応となります。(文献1)(文献4)(文献5) 【各用語の解説】 ※変形性膝関節症:膝関節内にある軟骨が加齢ですり減り、膝関節が変形する病気。 膝に痛みがみられるため、膝を動かしたり、歩いたりするのが困難になる ※血友病:血を止める仕組みが生まれつき上手く働かず、出血しやすくなる病気(文献3) ※滑膜:関節包をおおう膜状の組織。 滑膜から分泌される関節液が、関節の動きをなめらかにする油のような役割をもつ 関節内の出血を繰り返した際に起こる「友病性関節症」の詳細については、以下の記事が参考になります。 膝に血が溜まるときの症状と診断方法 膝関節血腫の症状は、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。 診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像で血腫の存在を確認します。 外傷性の症状は、受傷後すぐに出る場合がほとんどです。ただ、人工関節の手術による症状は、術後数カ月〜数年後に初めて出る場合が多い傾向にあります。 膝に血が溜まるときの治療方法【転んだときにも】 膝に血が溜まるときの治療方法として、自宅での初期対応のケアを始め、医療機関で適切な治療を行うと改善を図れます。 転んだときは必ず医療機関を訪れるようにしながら、今後の治療方法を知るためにも参考にしてみてください。 ・自宅でできる初期対応 ・医療機関での治療オプション 自宅でできる初期対応 症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。 初期対応ができると、膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復を早める効果が期待できます。 ただし、安静の時間が続くと患部の筋力低下が進みます。足首や足の指を積極的に動かして予防に努めるのも大切です。 医療機関での治療オプション 医療機関では、関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。 しかし、治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。 選択的動脈塞栓術とは、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。 足に局所麻酔を行ったあと、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管を見つけ、血を止める物質を挿入します。(文献2) 選択的動脈塞栓術は、出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善にも期待できます。(文献6)(文献7) 膝に血が溜まるのを予防する運動方法 膝関節血腫を予防するには、日常生活で膝を守る運動を行いましょう。以下では、自宅でできるストレッチやトレーニングの運動方法を解説します。 無理をしないように注意しながら、必ずかかりつけの医師に相談して運動を行ってみてください。 ※現在、膝関節血腫の症状がある方は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、自己判断で運動をせず医師の指示にしたがいましょう ・膝蓋骨のモビライゼーション ・ハムストリングスのストレッチ ・大腿四頭筋のストレッチ ・ハーフスクワット ・膝関節伸筋の筋力トレーニング ・膝関節屈筋の筋力トレーニング 膝蓋骨のモビライゼーション 膝関節血腫を予防するには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つのが大切です。 【膝蓋骨のモビライゼーションのやり方】 1.膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ 2.膝蓋骨を上下や左右に動かす ※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスとは、太ももの後面についている筋肉です。大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)を含めてストレッチを行いましょう。 【ハムストリングスのストレッチのやり方】 1.両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける 2.両手でタオルをひっぱりながら足首をお腹側にそらし、太もも後面の筋肉を伸ばす 3.太もも後面の筋肉が伸び、痛みのない状態で20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう 大腿四頭筋のストレッチ 【大腿四頭筋のストレッチのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる 2.太もも前面の筋肉が伸びた位置で、20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう また、日常生活では以下の点に注意しましょう。 ・立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けるのを避ける ・膝まわりが熱くなったり、痛みが出たりするときは、 激しい動きを避けて冷却する 日常生活で膝への負担を減らせると、けがや再発の予防にもつながります。 ハーフスクワット ハーフスクワットは、太もも前後面やお尻の筋肉を鍛えたいときにおすすめです。膝を守るためにも、膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。 【ハーフスクワットのやり方】 1.足を肩幅に広げて立つ(※膝関節はつま先と同じ方向に向ける) 2.股関節と膝関節を曲げながら、お尻を膝より少し上の高さまで下ろす。 お尻を下ろしたときに、膝の位置がつま先より前方に出ないように注意する 3.太もも前後面やお尻の筋肉のはたらきを感じながら10回、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節伸筋の筋力トレーニング 膝を伸ばすトレーニングも効果的です。 【膝関節伸筋の筋力トレーニングのやり方】 1.椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように、 足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ 2.ゴムバンドによる抵抗を太もも前面で感じながら、ゆっくり膝を伸ばす 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節屈筋の筋力トレーニング 【膝関節屈筋の筋力トレーニングのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける 2.おもりによる抵抗を太もも後面で感じながら、ゆっくりと膝を曲げる 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ただし、上記で紹介してきた運動は、膝に痛みや熱感があるときに行うと、炎症を悪化させる可能性があります。 症状が落ち着いている時期に、かかりつけの医師や専門家に相談しながら、無理のない範囲で行いましょう。 膝に血が溜まる症状に悩まれておられる方は、再生医療による治療方法もございます。 膝まわりに関して気になる症状があるときは、当院のメールや電話にてお気軽にご相談ください。 参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152(文献8) まとめ|膝に血が溜まるのを予防するには運動が大切 膝関節血腫には、スポーツによるけがで起こる外傷性のものを始め、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものがあげられます。 どちらも、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などの症状が起こります。 膝に血が溜まる症状が出たときは状況に応じて、関節から血腫を吸引する治療などを行う流れです。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性もあります。 膝関節血腫を予防するには、かかりつけの医師に相談しながら、日常生活で膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを行いましょう。 膝まわりのお悩みを抱えている方は、当院にぜひ一度ご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 ・メール相談 ・来院予約 ・電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 膝に血が溜まる理由に関わるQ&A 膝に血が溜まる理由に関わる内容について、よくある質問と答えをまとめています。 Q.膝関節血腫はいつ治りますか? A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。 反復性の症状は、再発を繰り返す点から長期にわたりやすく、数カ月〜数年かかる可能性もあります。 症状が長引くほど、関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。 Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか? A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。 けがをした直後は、松葉杖で歩いていただく場合もあります。 反復性の場合で症状があるときは、できるだけ安静に過ごして、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。 参考文献 文献1 整形外科シリーズ14 膝靭帯損傷 文献2 人工膝関節全置換術後の反復性関節内血腫に対して経カテーテル的動脈塞栓術を行った3例 文献3 ヘモフィリア・ヴィレッジ 血友病についてのQ&A 文献4 日本整形外科学会 膝関節捻挫 文献5 スポーツ損傷シリーズ 6.膝前十字靭帯損傷 文献6 人工膝関節置換術後に反復する関節内血腫に対し,関節切開下滑膜切除を行った一例 文献7 Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis 文献8 明解 スポーツ理学療法 Takuji Yamagami, Rika Yoshimatsu, Hiroshi Miura, et al.Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis.Diagn Interv Radiol. 2013. 9(5). p423-426
2024.06.20 -
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失ったはずの腕や脚が痛むのはどうして? 幻肢痛に効果的な治療法はあるの? この記事に辿り着いたあなたは、幻肢痛に悩んでおり、なんとかして痛みを和らげたいと感じているのではないでしょうか。 幻肢痛の治療法には「薬物療法」や「鏡療法」などの選択肢があり、複数の方法を組み合わせて治療を進めることもあります。ご自身の状態に合った治療法を試すことが大切です。 本記事では、幻肢痛でよく用いられる治療法やセルフケア、そして新しい治療法について解説します。幻肢痛に悩んでいる、また幻肢痛に苦しむ方の力になりたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。 幻肢痛に対する4つの治療法 幻肢痛(げんしつう)とは、事故や病気で四肢を切断したあと、失ったはずの腕や足に痛み・しびれを感じる現象です。四肢の切断によって脳内にある身体の地図が書き換わり、認識と感覚の不一致が生じて起こるといわれています。 幻肢痛の一般的な治療方法は、以下の4つです。 薬物療法 鏡療法 電気刺激療法 リハビリテーション ひとつの治療法で痛みが緩和され、一定の効果が得られる場合もありますが、さまざまな方法を組み合わせて治療を進めていくケースが多いです。 本章を参考に、幻肢痛における治療法の選択肢を知っておきましょう。 薬物療法 薬物療法では、以下のような種類の薬を使用します。 鎮痛薬 抗けいれん薬 抗うつ薬 抗てんかん薬 抗不整脈薬 オピオイド系鎮痛薬(モルヒネやドラマドール)が使われるケースもありますが、依存や乱用のリスクが高く副作用も懸念されるため、使用は慎重におこなうべきだと考えられています。 また、局所療法として、カプサイシンクリームの塗布やリドカインスプレーの噴霧などがおこなわれる場合があります。 いずれにしても、薬物療法は作用と副作用のバランスを考え投与するのが望ましいため、主治医と十分コミュニケーションを取りましょう。 鏡療法 鏡療法は、ミラーセラピーとも呼ばれている方法です。 健常な四肢を幻肢があるかのように鏡に映します。健常な四肢を動かすと、鏡にも同様に映るため、あたかも幻肢を動かしていると錯覚するのです。 これを繰り返すうちに、「幻肢が思った通りに動いている」と脳が認識するようになります。知覚と運動の情報伝達が脳内で再構築され、幻肢痛が軽減していきます。 具体的な方法は以下のとおりです。 1. 身体の正面中央付近に適切な大きさの鏡を設置します。 2. 切断部位が見えないようにし、健常肢が鏡に映るように調整します。 3. 鏡に映った健常肢の像がちょうど幻肢の位置と重なるようにします。 4. 健常肢側から鏡を見ると、幻肢があるかのように鏡に映ります。 5. その状態で健常肢でさまざまな動きをし、鏡の像を集中して見ます。 鏡療法をおこなう時間は決められていませんが、15分~30分程度おこなうのが一般的です。ただし、疲労状況や集中できる時間を考慮して、調整しましょう。 電気刺激療法 電気刺激療法には、3つの種類があります。 脊髄刺激 視床刺激 大脳皮質刺激 脊髄刺激を与えると、痛みが脳に伝わりにくくなります。刺激を与えると、痛みの伝達を抑制する物質が増加するため、神経の興奮を抑制して痛みの緩和につながるのです。 また、大脳皮質にある一時運動野や視床へ電気刺激を与えても、幻肢痛を和らげるケースが報告されています。刺激を与える部位は、切断部位や神経の残っている部分によって治療方法が異なります。 リハビリテーション 義肢や装具には、失った機能や役割を補うだけでなく、幻肢痛を和らげる効果があります。 義肢や装具の装着は、鏡療法と同様に脳に失った四肢を認識させるため、義肢の装着が日常的になると幻肢痛も消失していく場合が多いです。 ただし、幻肢痛がひどく、義肢や装具の装着ができない場合もあります。リハビリは、医師をはじめ、理学療法士や義肢装具士など、医療者と相談しながら進めていきましょう。幻肢痛は、常に一定に感じているわけではなく、突然襲われる場合もあります。 寝ていても飛び起きてしまうような突然の痛みに襲われたり、失った手足が締め付けられるように感じたり、痙攣している、幻肢がねじれる、しみるなど、感じ方や程度はさまざまです。 数年で幻肢痛がなくなる方もいれば、長年痛みに苦しめられる方もいます。そのため治療法の選択は、医師をはじめとするさまざまな医療者と相談し、それぞれの痛みの程度やライフスタイルに合わせた継続できる治療法の選択が必要でしょう。 幻肢痛治療経験者の中には、治療に成功し、徐々に痛みが緩和され消失した方もたくさんいます。 「なるべく痛みではなく、他に意識が向くようにしていると徐々に痛みが引いた」「義足をつけてリハビリを続けていると幻肢痛が緩和した」など、幻肢痛はすぐになくすことはできませんが、治療を続け徐々に痛みから解放された方は多くいます。 しかし、長年幻肢痛に悩まされているケースもあります。幻肢痛の治療は、根気強く治療を続けていくモチベーションが必要です。 幻肢痛のセルフケア方法2つ 幻肢痛のセルフケアをする方法として、以下2つが挙げられます。 ストレスをコントロールする 家族・支援者によるサポートを受ける 本章で幻肢痛のセルフケア方法を知り、医療機関での治療以外にできることがないか検討してみましょう。 ストレスをコントロールする 適切なストレス管理で痛みを和らげることもできます。 幻肢痛患者は、痛みによって、不安や怒り、恐れなど、さまざま感情が入り混じっている心理状態です。慢性的なストレスは、痛みを過敏に感じさせるため、幻肢痛が悪化する原因にもつながります。 自分でできるストレスのコントロール方法は、以下の通りです。 趣味に没頭する 散歩をする 映画やドラマを見る 好きな物を食べる お風呂にゆっくりつかる 規則的な睡眠をとる 香りを楽しむ 声を出して笑う 日光を浴びる 過度な運動などの幻肢痛が悪化するようなものは避け、まずは自分ができそうなものから始めてみましょう。暴飲暴食、過度な飲酒・喫煙などはかえって体調不良や睡眠不足の原因となり、痛みの悪化を招くため注意が必要です。 家族・支援者によるサポートを受ける ストレス管理は本人だけでなく、周囲からのサポートが必要になるケースもあります。 なるべくストレスを抱え込まず、周りの人の力を借りながらうまくコントロールすることが大切です。 家族・支援者ができるサポートは、以下の通りです。 痛みが一番のストレスなら、残存した方の腕や足を軽くマッサージしてもらう リハビリがストレスなら、リハビリのやり方やメニューを主治医と相談する 生活の不自由さがストレスなら、補助グッズの使用や利用できる支援の導入を検討する まずは自分がストレスに感じていることは何かを、家族やサポートしてくれる人に話して理解してもらう必要があります。 また、精神的に不安定になっている場合は、心療内科・精神科の受診やカウンセリングを受けることなども検討しましょう。 新たな技術を用いた幻肢痛の治し方2選 四肢の一部を失った方が、幻肢痛を乗り越え、生活の再構築をしていくのは、とても困難な道のりでしょう。 幻肢痛には、従来先述したような4つの治療法が用いられていますが、IT技術の進化に伴い、以下2つのような新しい治療法も登場しています。 VR技術による「遠隔セラピー」 BCI(ブレインコンピューターインターフェイス)による「脳のトレーニング」 体験を行う交流会もあるため、積極的に参加することで新たな発見があるかもしれません。お住まいの地域での開催がないか調べてみましょう。 VR技術による「遠隔セラピー」 VR空間のなかで、失った四肢を補間し、脳を錯覚させるセラピーも開発されています。幻肢痛を感じる患者とセラピストが一緒にVR空間の中に入り、手足を動かすイメージを共有する手法です。 3Dを利用したリアルな空間なので、実際にリハビリをしているような雰囲気が味わえます。 さらに、VR空間でセラピーを行うため、セラピストが近くにいなくても、いつでもどこでも実施が可能です。 鏡療法は切断部位によって有効でない場合もありますが、VR技術による遠隔セラピーならばより多くのケースに対応できます。 BCI(ブレインコンピューターインターフェイス)による「脳のトレーニング」 BCIによる「脳のトレーニング」では、脳活動を計測し、得られた計測信号から脳情報を読み解き、それに基づいて架空の手足の映像をオンラインで動かします。 架空の手足を動かすことで、脳の変化を促し、新しい感覚を得られたり、治療につながっていくことを目的としたものです。 この訓練を3日間行うことで、訓練後5日間の痛みが30%以上減弱した調査結果もあります。 まとめ|自分に適した幻肢痛の治療法を検討しよう 本記事では、幻肢痛の治療法とセルフケアの方法について詳しく解説しました。 治療の際には、失った部位や痛みの状態に合わせた方法を選択する必要があります。 また、IT技術を活かし、リアルに失った四肢を感じられるような遠隔セラピーやBCIによるトレーニングといった新しい治療法も開発されています。日々情報収集をおこないながら、自分に合った治療法を見つけましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、幹細胞の働きを活かし、本来の機能ができなくなった臓器や骨などを修復する「再生医療」を扱うクリニックです。再生医療には、膝や腰の痛みを改善させる治療もあります。再生医療に興味を持たれた方は、ぜひ当院のホームページをご覧ください。 参考文献一覧 (文献1) 住谷昌彦 幻肢の感覚表象と幻肢痛 バイオメカニズム学会誌Vol. 39,No.2(2015) (文献2) インタビュー「最先端の幻肢痛治療に見る、「脳のリプログラミング」の可能性」 (文献3) UTokyo バーチャルリアリティー治療で緩和される幻肢痛の特徴 (文献4) 住谷昌彦、宮内哲ほか 幻肢痛の脳内メカニズム 日本ペインクリニック学会誌Vol.17No.1 2017 (文献5) UTokyo 失った手足の痛みを感じる仕組み (文献6) 日本ペインクリニック学会 「神経障害制疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」 (文献7) 緒方徹、住谷昌彦「幻肢痛の機序と対応」Jpn J Rehabil Med 2018;55:384-387 (文献8) ミラーセラピーについて | 脳梗塞集中リハビリセンター │ 社会医療法人 生長会 (文献9) 大内田裕 「幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚」2017年 (文献10) 片山容一、笠井正彦 「幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚」2017年 (文献11) 落合芙美子 日本義肢装具学会誌「義肢装具に対するチームアプローチ」日本義肢装具学会誌Vol.13 No.2 1997 (文献12) 幻肢痛VR遠隔多人数セラピーシステム|JDP (文献13) 事故で失った幻の手の痛みが脳活動を変える訓練により軽減 - ResOU
2024.06.19 -
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肝硬変の食事療法|非代償期における食事の注意点 非代償期肝硬変の治療において、食事療法はとても重要です。 腹水や肝性脳症などの合併症の改善のためには、水分・塩分・糖分・タンパク質を控えた、バランスの良い食事が必要となります。以下で詳しく解説していきます。 https://youtu.be/zA8QdURHEQU?si=sxhDupVHSR8Ekpl7 肝硬変における食事療法の重要さ 肝硬変は、B型・C型肝炎ウィルス感染やアルコール、自己免疫性疾患などが原因となり、慢性的に肝細胞の破壊と再生が繰り返された末、線維化によって硬くなり、肝臓の機能が低下し、進行すると肝癌や肝不全となり、死に至る怖い疾患です。 肝硬変になると低栄養に陥ってしまうことが多く、この低栄養が生命予後に関わってくると報告されています。また、低栄養が問題視される一方で、肥満や過栄養を呈する患者さんもいます。肥満による糖代謝異常は肝臓での発癌率を上げるため、注意が必要です。 身体の状態に合わせた栄養制限や栄養付与を行い、バランスのとれた食事を摂取するのが「食事療法」です。 医療を受けるだけでなく、食事という日常生活の大事な要素を自ら見直すことで、肝硬変症状を改善させたり、進行を食い止められる可能性があります。 この記事では、非代償期肝硬変の食事療法を中心に説明していきます。必要な知識を学び、効果的な食事療法による治療を目指していきましょう。 非代償期肝硬変での栄養スクリーニング 非代償期肝硬変において、食事療法を始める前にまず栄養状態を評価し、どのような栄養介入が必要か検討されます。 肝硬変における重症度は、Child-Pugh分類を用いて判断します。 下記の表に記すように、肝硬変の合併症の程度や採血検査の結果を点数化し、重症度を評価します。 アルブミンはタンパク質量、ビリルビンは肝臓の機能を表す値、そしてプロトロンビン時間は血液を固める能力を示します。 5~6点なら軽度、7~9点は中等度、10~15点をなら重度とみなし、中等度以上は非代償性肝硬変となります。 Child Pugh 分類 判定基準 1点 2点 3点 アルブミン(g/dL) 3.5< 2.8〜3.5 <2.8 ビリルビン(mg/dL) <2.0 2.0〜3.0 3.0< 腹水 なし 軽度 コントロール可能 中等度 コントロール困難 肝性脳症(度) なし 1〜2 3〜4 プロトロンビン時間(秒、延長) (%) <4 (70<) 4〜6 (40〜70) 6< (<40) Child-Pughスコアによる重症度評価を欧州肝臓学会のガイドライン4)を参考に、以下の図にまとめ詳しく解説していきます。 図に登場するサルコペニアですが、これは筋肉量と筋力の低下を意味し、通常は加齢に伴って起こる現象ですが、肝疾患においては栄養状態や代謝異常によって年齢に関係なく起こりうるため、評価する際には年齢制限がありません。 ・中等度肝硬変の場合、次にBMIを評価し、その結果に応じて対応が変わってきます。 ・肥満(30≦)の場合、栄養評価とともに運動や生活習慣などライフスタイルへの介入、さらにサルコペニアの評価を行います。 ・BMIが低体重や肥満の基準に入らない18.5~29.9の場合、タンパク質量や全体の栄養状態を評価したのちに、低栄養リスクがどの程度か判断されます。 ・そしてBMIが低体重(<18.5)を示す場合、重度肝硬変と同様に低栄養リスクは高度となります。 ・低栄養リスクが軽度の患者さんに対しては、年に1回程度のフォローアップで良いとされます。 ・低栄養リスクが中等度の患者さんにおいては、より詳細な栄養評価によって低栄養の有無が判断されます。 ・低栄養リスクが高度の患者さんには、より詳細な栄養評価の他、サルコペニアの評価も同時に行われます。 ・低栄養がなければ年に1回程度のフォローアップとなりますが、低栄養やサルコペニアを認めた際には適切な栄養補給と適切なフォローアップが求められます。 さらに、図には記載されておりませんが、腹水やタンパク質減少による体液貯留を認める場合、身体の水分が適切である体重を密に検討していくこととなります。 非代償期肝硬変が引き起こす身体の変化 代償期には肝臓の機能がまだ保たれているため、合併症は基本的にみられません。 しかし、非代償期になると肝臓の働きが障害され、関連する他の臓器にも影響を及ぼし、全身に以下のような様々な合併症を引き起こします。 ※非代償期肝硬変とは:肝硬変が進行し、本来の肝機能を代償する(果たすことがことできない)ことができず、肝硬変としての症状が現れる状態 代表的な合併症の一例 ・黄疸 ・腹水、浮腫 ・門脈圧亢進症 ・食道静脈瘤 ・消化管出血 ・肝性脳症 ・肝性糖尿病 等 合併症とそれぞれに合った食事療法 代償期の食事療法の基本は主に以下の内容となります。 代償期の食事療法 ・健康的で規則正しい生活 ・バランスの取れた食事 ・便秘の予防 ・年齢や身体活動レベルに見合ったカロリー摂取 ・アルコールを断つ ・生ものは避ける しかし、非代償期では症状に合わせて食事の工夫や調整を加えていかなければなりません。 食事療法で改善を見込める、あるいは悪化を予防できる合併症は、腹水・浮腫や食道静脈瘤、肝性脳症、肝性糖尿病となります。 これらの合併症が起きる機序とその合併症に見合った食事療法をそれぞれみていきましょう。 腹水や浮腫が生じる機序と食事療法 腹水はお腹の中にタンパク質を含んだ液が大量に貯留した状態をいい、浮腫は主に手足のむくみとして現れます。 肝臓はアルブミンと呼ばれるタンパク質を生成する働きを持ちますが、肝機能の低下とともにアルブミンも減少していきます。このアルブミンは血管内に水分を留める役割も担っているため、不足すれば水分は血管外へと漏れ、腹水や浮腫となって現れるのです。 また、体内を循環する血液量が減少すると、それを補おうと腎臓が水分やナトリウムを再吸収するのですが、それが腹水や浮腫を増悪させる原因となります。 腹水や浮腫に対する食事療法のポイント 上記の通り、腎臓での水分・ナトリウム再吸収が腹水や浮腫を悪化させています。 よって、食事療法で重要なのは塩分と水分を控えることです。 塩分は1日5~7g程度に抑えましょう。 具体的には、味噌や醤油などの調味料は減塩にし、かつ使用する量も控えなくてはなりません。塩味の代わりに、酸味や出汁、新鮮な食材そのものの風味を活かすような調理をしましょう。 外食や加工食品はどうしても塩分が多くなりがちなので、自炊が推奨されます。 汁物はスープに塩分が多く含まれるので、スープは飲まない方が良いでしょう。 腹水や浮腫:食事療法のポイント ・塩分は1日5~7g程度に抑える ・味噌や醤油などの調味料は減塩に ・使用量のコントロールをする ・酸味や出汁で塩味を代用する ・外食や加工食品は控え自炊する ・汁物は飲まないようにする 水分コントロールに関しては、すでに利尿薬を内服している方も多いかと思います。 塩分制限や利尿薬だけでは不十分と判断された場合は、身体に見合った水分量を示す体重(ドライウェイト) も参考にしながら、水分制限にも努めましょう。 ドライウェイトの設定には、In Bodyという身体に微弱な電流を流して体内の水分量や筋肉量などを測定する機器を用いたり、医療者が胸部レントゲン画像や浮腫の程度などをみて決定していきます。 食道静脈瘤が生じる機序と食事療法 食道静脈瘤は門脈圧亢進症の影響で生じる合併症です。 門脈は、腸管などの腹部臓器からの血流を集めて肝臓に戻す大きな静脈のことを指します。 肝硬変になると、組織の線維化で肝臓が硬くなり、血流が阻害され、結果として門脈の圧が上昇します。門脈圧亢進で肝臓を通れなくなった血流は、別の血管を通って食道や胃に逆流していきます。そうすると食道表面の静脈がうねって凸凹してコブ状になり、食道静脈瘤となります。 食道静脈瘤に対する食事療法のポイント 食道静脈瘤の治療法として、内視鏡的に血管を縛る方法が一般的です。しかし、食事療法で静脈瘤の破裂を防ぐことはできます。 食道静脈瘤破裂は吐血を引き起こし、時に大量出血で命を脅かす怖い疾患です。 食道は食べ物の通り道になっているので、その表面上にある膨らんだ血管に尖ったものや硬いものが当たると、破裂する可能性が出てきます。 そのため、硬い食べ物や刺激になるような食べ物はなるべく避け、調理する際にはやわらかく仕上げましょう。 例えば、せんべいや小魚のおやつ、ナッツ、骨のある魚、フランスパンなどは硬いので適しません。また、香辛料の多いカレーやコーヒーは刺激が強いので、避けるべきです。 食道静脈瘤:食事療法のポイント ・硬い食べ物や刺激的な食べ物はなるべく避ける ・調理する際にはやわらかく仕上げる ・刺激の多いカレーやコーヒーは避ける 逆に好ましい食品は、茶碗蒸しや麺類(うどんやそうめんなど)、お米、プリン、ヨーグルトなどの消化しやすい柔らかい食べ物です。 肝性脳症が生じる機序と食事療法 タンパク質を消化する際に生成されるアンモニアという毒素は、通常は肝臓で代謝して無毒化し、体外に排出されます。 しかし肝機能が低下するとアンモニアは代謝されなくなり、毒素のまま身体に溜まっていきます。 血液中のアンモニア値が高くなり脳にまで達すると、脳の機能が損なわれ、肝性脳症となって様々な神経症状を引き起こします。 具体的には、性格・行動変化や睡眠障害、意識障害、ひどくなると昏睡状態になります。 肝性脳症に対する食事療法のポイント タンパク質を多く摂取するとアンモニアが生成されてしまうため、タンパク質の制限は肝性脳症の予防や改善につながります。 肉は肝性脳症を引き起こしやすくするので、大豆などの植物性タンパク質をメインに摂りましょう。 また、アンモニアは腸管で生成されるのですが、便秘になると腸管環境が乱れ、悪玉菌が増加します。そうするとアンモニアの増殖が起こり、結果的に肝性脳症も悪化します。よって、便秘を防ぐためキノコなどの食物繊維を積極的に摂ることが推奨されます。 肝性脳症:食事療法のポイント ・大豆などの植物性タンパク質を摂る ・便秘を防ぐためキノコなどの食物繊維を摂る また、肝硬変による低タンパク血症は、アミノ酸製剤で補います。 実は肝臓の他にも筋肉でタンパク質を生成することができるのですが、その際に必要なのが分岐鎖アミノ酸と呼ばれるもので、これは体内で産生できないので外から摂取する必要があるのです。 この分岐鎖アミノ酸製剤は、経口剤の他にも点滴があるので、経口摂取できない方でも大丈夫です。症状が落ち着いていれば、食事でのタンパク質摂取は0.5~1.0g/kg程度可能になるかと思います。上記の食事に気を付けながら摂取しましょう。 肝性糖尿病が生じる機序と食事療法 肝臓は糖代謝においてとても重要な役割を担っています。 腸管で吸収された糖は血流に乗って肝臓に届けられ、そのほとんどはグリコーゲンという物質に変換されたのち、エネルギー源として貯蔵されます。残りの糖は身体を巡り、血糖の維持のため筋肉や脂肪で利用されます。 肝硬変によって肝機能が低下すると、肝臓での糖代謝も障害され、糖がそのまま血液へ流れ込んでしまい、食後高血糖を引き起こします。 慢性的な高血糖はやがて血糖を正常に戻す能力に害を及ぼし、二次性の糖尿病が生じるのです。 肝性糖尿病に対する食事療法のポイント 食後の血糖が急激に上がらないよう、一度に大量に食べることは避け、少量の食事をこまめに摂るほか、時間をかけてゆっくり食べましょう。 また、砂糖の入った菓子類や果物、炭水化物は効率良く糖分が吸収されるため、控えなければなりません。 肝性糖尿病:食事療法のポイント ・少量の食事をこまめに摂る ・時間をかけてゆっくり食べる ・菓子類や果物、炭水化物などの糖分を控える 夜食を食べた方がいい? 前項の肝性糖尿病の機序で述べたように、肝臓は糖分をエネルギー源に変換して貯蔵する役割を持ちます。しかし、肝機能の低下によってエネルギー源への変換ができなくなると、貯蔵もできなくなります。 よって、食事を摂らない就寝中にエネルギーが枯渇し、倦怠感やこむら返りなどの症状を生じることがあるのです。 これを予防するため、肝硬変患者さんには夜食療法が推奨されているのです。 カロリーの摂りすぎは良くないので、朝昼晩の食事を少し減らし、その分を夜食に回すのがポイントです。 大体200kcal程度で、メニューとしては例えば、 ・おにぎり一個+お茶 ・バナナ1本+牛乳 ・フレンチトースト+牛乳 等のすぐに栄養として吸収されるものが理想です。 まとめ・肝硬変の非代償期における食事療法は重要! 当サイトにて非代償期肝硬変での食事療法について知りたい情報は得られましたでしょうか。 低栄養や肥満の進行を食い止め、合併症を改善・予防する上で食事療法はとても重要です。しかし、食事療法を開始する前に、自分の疾患について理解し、知識として身につける必要があります。 さらに、医療者による評価や診断を経て、どのような治療介入が必要か見極める栄養スクリーニングも大切です。その時の症状や栄養状態に合わせて工夫や調整を行う必要があるので、適宜消化器内科の医師や栄養士とも相談しながら効果的な食事療法を目指しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献一覧 Enomoto H, Ueno Y,et al. Transition in the etiology of liver cirrhosis in Japan : a nation- wide survey. J Gastroenterol. 2020;55;353-362. Plauth M, Bernal W, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in liver disease. Clin Nutr. 2019;38:485-521. Wu D, Hu D, et al. Glucose-regulated phosphorylation of TET2 by AMPK reveals a pathway linking diabetes to cancer. Nature. 2018;559:637-641. European Association for the Study of the Liver. EASL Clinical Practice Guidelines on nutrition in chronic liver disease.J Hepatol. 2019;70:172-193. ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.06.18 -
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野球選手の肩の怪我で多い野球肩には種類があります!原因と最新治療法について メジャーリーグのドジャース山本由伸選手の肩の怪我は、最新の治療方法である「再生医療」で治療できる可能性が高いといえます。 投球やバッティングなど、腕の動作を繰り返す野球選手にとって「肩の怪我」は珍しいことではありません。 肩に問題を生じたら速やかに治療を開始する必要がありますが、どのような原因で、どのような症状を呈するのかについて知っておくことも重要です。 そこで、野球選手の肩の怪我の原因や症状、治療法について解説します。また、最近注目を集めている再生医療についてもご紹介します。 野球選手の肩の怪我は野球肩が原因の可能性が高い! 野球選手の肩の怪我の主な原因は「野球肩」によるものであると考えられます。 野球肩とは、野球の投球動作のように腕を大きく振る動作を繰り返すことにより、肩関節に関わる腱や筋、骨が損傷や炎症を起こしている状態の総称です。 そして、野球肩には種類があります。 野球肩の種類 ・腱板損傷 ・上腕骨骨端線離開(リトルリーグショルダー) ・動揺性肩関節症(ルーズショルダー) ・肩甲上神経損傷 ・インピンジメント症候群 「腱板損傷」とは 肩の中にある筋肉の腱の複合体である腱板が損傷を起こしている症状で、日常生活における肩の痛みにより生活の質を大きく落とす可能性が高いです。 「上腕骨骨端線離開」とは 「リトルリーグショルダー」とも呼ばれ、成長期に起こる投球障害です。成長期における過度の投球により成長軟骨が損傷することで、投球時や投球後に痛みを生じます。 「動揺性肩関節症」とは「ルーズショルダー」とも呼ばれています。上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯などが先天的に緩い状態にあり、その状態で肩を酷使することで周囲の組織を損傷してしまい、肩の痛みや不安定感を覚えます。 「肩甲上神経損傷」とは、 棘下筋を支配する肩甲上神経が投球動作により引っ張られる、或いは圧迫されるなどによって損傷を起こし、肩の痛みや肩の疲労感を覚えます。 「インピンジメント症候群」とは、 野球肩の中で最も多くみられる症状で、靭帯や肩峰に上腕骨頭が衝突することで腱板が挟まれ、炎症を起こすことで肩の痛みを生じます。 メジャーの山本由伸選手の肩の怪我は再生医療で早期回復を目指せる 野球選手の肩の怪我はさまざまで、その症状次第で適切な治療法は異なります。そして、概ね数週間から、長ければ年単位での肩の安静が必要です。 そこで注目されているのが「再生医療」です。 再生医療は有名野球選手も利用実績のある治療法であり、手術や入院を避けることができるため、体への負担が少なく、治療にかかる期間が短めであるというメリットがある治療法です。 肩の症状を早く改善し、スポーツへの早期復帰を目指せる可能性がある治療法として、画期的な方法です。最近非常に注目されています。 もしも、早くスポーツに復帰したいと考えるのであれば「再生医療」を検討してみる価値が大いにあります。 まとめ・野球選手の肩の怪我で多い野球肩の種類!原因と最新治療法について 野球選手にとって肩の怪我は避けられないリスクの一つですが、その中でも「野球肩」一般的に起こりえる問題です。 野球肩とは、投球動作やバッティングなど、腕を激しく使うことで肩関節周囲の筋や腱、骨が損傷や炎症を起こす状態を指します。この野球肩には、腱板損傷、リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線離開)、ルーズショルダー(動揺性肩関節症)、肩甲上神経損傷、インピンジメント症候群など、さまざまな種類があります。 各症状は投球時や日常生活での痛み、肩の不安定感、疲労感などを引き起こし、生活の質を大きく損なう可能性があります。従来の治療法としては、痛みの軽減や肩の安静を目的としたリハビリテーションや、重症の場合は手術というものでしたが、これらの方法は長期の休養が必要な場合も多く、選手にとって大きな負担となることがあります。 そこで注目されているのが「再生医療」です。 再生医療は、体への負担が少なく、手術や入院を避けることができるため、治療期間が短縮されるというメリットがあります。この治療法は、多くの有名野球選手も実績があり、スポーツへの早期復帰を目指すための画期的な方法として今注目の最新の治療方法です。 メジャーリーグのドジャースに所属する山本由伸選手も、ぜひ再生医療を用いた治療を考えて欲しものです。なぜなら、選手生命を護ることが出来るからです。 肩の痛みや違和感を感じたら、早めの受診と適切な診断を受けることが重要です。肩の怪我を適切に治療し、スポーツを続けるためには最新の医療情報を活用し、専門医の指導を受けることが肝要です。 スポーツ選手は自分を護るためにも再生医療といった最新の治療法を知ることも大切です。 早期の回復を目指せる再生医療は、肩の怪我に悩む野球選手の救世主となり得ます。再生医療に興味があれば豊富な実績で症例数をリードする当院までお問い合わせください。 ▼肩の腱板損傷の回復を目指す再生医療とは https://fuelcells.org/treatment/shoulder/ ▼スポーツ選手の選手生命を護る再生医療をご存知でしょうか https://fuelcells.org/treatment/sports/
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メジャーリーグ(ドジャース)山本由伸選手が発症!肩腱板損傷とは? 負傷者リストに入ってしまったようで心配です。野球選手にも多い肩腱板の損傷についてその原因と治療法を詳しく説明いたします。 日常生活の中で何気なく動かしているように思う肩ですが、思わぬケガが原因で強い痛みが出たり、動かせなくなったりすることがあります。 スポーツ障害でも多い腱板損傷は、そのような状態を引き起こすもののひとつです。 今回は、その腱板損傷について詳しくご紹介します。 肩腱板損傷とは?その症状について 腱板は肩に存在する筋で、板のように広がっているので腱板といいます。 腱板を構成するのは「肩甲下筋腱」「棘上筋腱」「棘下筋腱」「小円筋腱」という4つの筋肉です。これらが肩の骨を囲み、肩関節の安定性に働きかける重要な存在です。 その腱板が部分的、または完全に断裂するのが腱板損傷です。主な症状は痛みですが、軽い場合もあれば、動かせないほどの激痛、夜間に起こる痛みなど程度に差があります。 部分的な断裂では、肩を動かせないということはあまりありません。損傷が激しい場合、腕が上がらなくなったり、肩が動かしにくいという症状が出ることもあります。 肩腱板損傷の原因とは? 腱板損傷の原因について見ていきましょう。腱板損傷の原因は大きく3つにわけられます。 外傷 腱板損傷の原因で多いのが外傷、つまりケガです。転んで肩を強く打つ、手をついたときに肩に衝撃が加わるというのが腱板を傷つけてしまうことがあるのです。 オーバーユース スポーツ医療でも注目される腱板損傷ですが、ケガというよりも肩の使い過ぎが原因のことが多いです。 その代表的なスポーツが野球です。何度も繰り返しボールを投げることで、肩関節や腱板に負荷がかかってしまうのです。 加齢によるもの 加齢によって腱板損傷が起こることもあります。年齢を重ねると腱や軟骨など、身体の組織も衰えてしまいます。そのため、自分でも気が付かないうちに腱板が傷ついていることもあるのです。 肩腱板損傷の治療法とは? 肩の腱板損傷の治療法をご紹介します。近年期待されている治療方法についても見ていきましょう。 保存療法 肩の腱板損傷の治療は基本的には保存療法です。急性期には三角巾で固定し、患部の安静を保ちます。痛みや腫れがある場合は痛み止めの注射やヒアルロン注射を行うこともあります。 また、腱板が損傷した状態で無理に動かすと再発したり、ひどくなったりすることがあるので、リハビリも大切です。 手術 保存療法で痛みが改善しない、損傷がひどく肩の動きが悪いという場合には手術を検討します。損傷した腱板を手術によって直接修復するというものです。 近年は関節鏡といって皮膚を大きく切らない手術が行われています。術後1~2週間ほどで痛みが落ち着くことが多いですが、正常な肩関節の状態に戻すにはリハビリ期間を含めて6か月程度かかることが多いです。 再生医療 これまで腱板損傷の治療は保存療法と手術がメインでした。しかし、手術となれば治療やリハビリを含めてスポーツ復帰までの期間が長くなります。 そんな中、近年、腱板損傷の治療法として再生医療が注目されています。 再生医療は、自身の脂肪から採取した幹細胞を肩腱板に注射します。そして幹細胞が傷ついた腱板や組織を修復するというものです。 外科的な手術をしないで治療できるため、治療期間の短縮も期待できます。 まとめ・メジャーリーグ(ドジャース)山本由伸が発症!肩腱板損傷について 今回は肩の腱板損傷についてご紹介しました。 今回の山本由伸選手をはじめとして、肩を酷使する野球などのスポーツで使い過ぎによって肩の腱板が傷つくことがありますし、加齢によって腱板損傷を起こすこともあります。 プロの選手のように日常からケアをしていても、発症することがあるため、注意が必要です。プロ野球選手のように選手生命という問題がある場合は無理もできません。 そこで近年、治療法として注目を集めているのが再生医療です。特に幹細胞治療は、自分の幹細胞を用いるので、副作用のリスクが少なく、治療期間も短くて済むというメリットがありスポーツをされている方に最適です。 もちろん、再生医療はスポーツ選手ではなくとも有効です。 肩の痛み、肩の腱板損傷でお悩みの方は、再生医療による治療を検討してみてはいかがでしょうか。お気軽にご相談ください。 ▼肩の腱板損傷の回復を目指す再生医療とは https://fuelcells.org/treatment/shoulder/ ▼スポーツ選手の選手生命を護る再生医療をご存知でしょうか https://fuelcells.org/treatment/sports/
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NHKの教育番組「おかあさんといっしょ」にて「体操のお兄さん」として活躍した佐藤弘道さんが、2024年、脊髄梗塞による下半身麻痺のため、芸能活動を一時休止すると発表しました。 脊髄梗塞は誰にでも発症する可能性がある疾患です。 とくに背中の痛みや両手足の痺れを感じているなら、すでに初期症状が現れているかもしれません。 本記事では脊髄梗塞の概要や症状、診断方法などを解説します。 脊髄梗塞とはどのような状態? 脊髄とは、脳から腰までの背骨の内部を走る、神経群を指します。 脊髄は、主に脳からの指令を体の各部に伝え、また体が受けた刺激を脳に伝える役割を果たします。 私たちが自由に手足を動かしたり、何かに接触したときに反応したりできるのは、脊髄のはたらきがあるからに他なりません。 脊髄は、いわば「情報伝達の高速道路」のような役割を担っています。そして、高速道路を機能させるためには、酸素と栄養を供給する血液が欠かせません。 しかしなんらかの原因で血管が詰まると、脊髄に対して血液が行き届かなくなり、酸素と栄養も十分に行き渡りません。この状態を脊髄梗塞と呼びます。 脊髄梗塞になると、脊髄は正常に機能しません。 また酸素と栄養の供給が絶たれたことにより、脊髄がダメージを被り、身体に以下のような症状が現れます。 ・突然の背中の痛み ・両手足の痺れ、感覚の喪失 ・筋力の低下 ・排泄の障害 症状が重篤な場合は、「歩くのも難しい」状態に陥ります。 脳梗塞のようにただちに生命が危ぶまれるものでないものの、適切な治療と十分なリハビリが必要になるでしょう。 メール相談 オンラインカウンセリング 脊髄梗塞の発生頻度 脊髄梗塞はまれな疾患であり、発生率は年間10万人中3.1人と報告されています。 広い年齢層で症状が見られますが、50〜60代での発症例がとくに多く報告されています。 また性差はありません。男女ともに同程度の可能性での発症がありえます。 参考:日本関東救急医学会|J-STAGE 脊髄梗塞は治るのか?後遺症は? 脊髄梗塞を根本的に治療する方法は、現時点で確立されていません。 一方で早期発見や専門的治療、適切なリハビリにより、症状を緩和したり、機能を回復させることは可能です。 とくにリハビリの効果は高く評価されており、約7割のケースで歩行可能な状態に回復します。 参考:JCHO大阪病院 関連記事:脊髄梗塞は治るのか?治療法や後遺症のリハビリについて解説 脊髄梗塞の症状・前兆 脊髄梗塞の前兆として、以下があげられます。 ・突然の背中の痛み ・両側の手足の筋肉の弛緩 ・両側の感覚の喪失 それぞれ以下で詳しく解説します。 突然の背中の痛み 脊髄梗塞の一般的な症状としては、突然現れる背中の痛みから始まることが多いです。 とくに予兆もなく突然症状が現れるのは、血管の詰まりや破裂を引き起こす病気の特徴です。 脊髄梗塞もこのケースに当てはまり、脊髄を栄養する動脈が詰まったり破裂したりして、突然の痛みの発生へとつながります。 また、症状は背中だけにとどまらないこともあり、肩などにも広がりやすいです。 両側の手足の筋肉の弛緩 両手足の筋肉が弛緩し、力が入らなくなるのも前兆のひとつです。 具体的には以下の症状が現れます。 ・両足がふらつく ・物を強く握れなくなる 症状の進行は急速であり、数時間で歩行が困難になるケースも存在します。 また左右一方ではなく、両手足同時に症状が現れるのも、脊髄梗塞の前兆の特徴です。 両側の感覚の喪失 身体の感覚は脊髄を通して脳へと伝わりますが、この経路にある脊髄が障害されてしまうため、両側の感覚までもが障害を受けてしまいます。 また、脊髄梗塞の感覚障害にはある特徴が見受けられます。 それは、痛覚や温覚を伝える神経経路が主に障害されるため、痛みや温度が感じにくくなります。 その一方で、触覚(触れている感覚)や振動覚(振動を感じる感覚)、また自分の手足がどの位置にあるのかなどの感覚を伝える神経経路は比較的障害を受けない場合もあります。 このように脊髄梗塞では突然の症状に襲われて、これまで経験をしたことがないような背中の痛みや手足の脱力感、感覚の異常を経験します。 後ほど治療法についても詳しく説明しますが、脊髄梗塞に対してはまだまだ確立された治療法がなく、苦しい日々を送っている方がたくさんおられます。 再生医療を専門とするリペアセルクリニックでは、この稀な疾患である脊髄梗塞に対しても治療実績があり、高い効果が得られており、300名以上の脊髄疾患の方が治療に来られています。 通常では点滴により投与される幹細胞治療ですが、当院では国内でも珍しく脊髄腔内へ直接幹細胞を投与しております。 詳しくはこちらの動画をご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=9S4zTtodY-k メール相談 オンラインカウンセリング 脊髄梗塞の原因とは? 脊髄梗塞の原因にはさまざまな要因が考えられますが、ここでは身体の構造にしたがって原因を分類します。 脊髄動脈の疾患 脊髄は前方と後方の2方向から血液が供給されています。 前方の血管を前脊髄動脈と言い、脊髄の前方3分の2を栄養しています。 そして、後方の血管を後脊髄動脈と言い、脊髄の後方3分の1を栄養しています。 栄養を送る血管の損傷 心臓からつながる動脈には栄養が豊富に含まれています。 そのなかでもとくに太い血管である大動脈の動脈硬化や大動脈解離などが発症すると、脊髄へ送られる栄養が行き届かなくなり、脊髄梗塞が起きてしまいます。 また病気が原因ではなく、手術中の手技により脊髄へ栄養を送る動脈が損傷されてしまい、脊髄梗塞となることも事例もあります。 脊髄梗塞の診断方法 脊髄梗塞の診断は、主に以下二つの検査でおこなわれます。 ・MRI検査 ・CT脊髄造影検査 最初にMRI検査を実施します。 脊髄梗塞が疑われる段階では、急性横断性脊髄炎、脱髄疾患、脊髄炎、転移性硬膜外腫瘍などを発症している可能性もあり、正確に疾患名を特定できません。 しかしMRI検査によって、何を発症しているか判断ができます。 MRI検査でも判断が難しい場合は、CT脊髄造影検査をおこない、疾患名を特定します。 脊髄梗塞の治療法やリハビリ、後遺症や予後については以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事:脊髄梗塞は治るのか?治療法や後遺症のリハビリについて解説 脊髄梗塞の治療法 脊髄梗塞を発症した場合、脊髄や周辺がダメージを被っています。 そのダメージを取り除く根本的な治療法は確立されていません。 したがって根治ではなく、症状の緩和や機能の部分的な回復を目的とした、以下の治療法が用いられます。 ・リハビリ|地道に筋力や感覚の回復を目指す ・血行再建術|手術による血行を回復させる ・血栓溶解療法|薬剤注入により血栓を解消する それぞれ以下で解説します。 メール相談 オンラインカウンセリング リハビリ|地道に身体機能を目指す 脊髄梗塞の治療では、身体機能を回復させるためのリハビリが用いられます。 リハビリはほとんどの症例で必要となるでしょう。 とくに運動療法による股関節や膝関節の訓練を重視し、歩行をはじめとした基本的な動作を取り戻すことを目指します。 また食事や入浴、更衣などの日常生活動作を取り戻すリハビリもおこなわれます。 また心理的なサポートを目的としたカウンセリングが用いられるケースもあるでしょう。 脊髄梗塞による症状改善を目指すリハビリは長期にわたるため、精神的な支援が必要だからです。 なお長期的なリハビリは、脊髄梗塞からの回復に対して効果的だとされており、たと例えばJCHO大阪病院は、約7割の人が歩行回復なまでに回復すると述べています。 参考:JCHO大阪病院 血行再建術|手術により血行を回復させる 血行再建術とは、血管が詰まった、閉じた状態を改善し、血流を活発化させるための手術です。 先ほど脊髄梗塞は血管がなんらかの原因で詰まることで発症すると解説しました。 したがって詰まりを放置していると症状が悪化すると考えられ、看過できません。 しかし血行再建術の実施により、詰まりが解消されれば、脊髄に酸素や栄養が十分に行き渡ります。 症状の程度によりますが、手術後の症状の悪化は避けられるでしょう。 また早期に実施できれば脊髄梗塞による症状を軽微な状態でとどめられます。 なお血行再建術だけでは、現在の症状の改善は期待できません。 すでに生じた神経の壊死などを回復する手術ではないからです。 症状の回復は、後述のリハビリにて目指します。 血栓溶解療法|薬剤の注入により血栓を解消する 血栓溶解療法とは、アルテプラーゼなどの特殊な薬剤を血管に注入し、つまりの原因である血栓を溶かす治療法です。 血栓が解消されれば、脊髄梗塞の症状の悪化は避けられるでしょう。 早期に血栓溶解療法を実施できた場合、脊髄梗塞の症状を軽微な状態でとどめられます。 ただし血栓溶解療法が有効なのは、発症から6〜8時間以内とされています。 それ以上経過した場合、症状の改善や治療はリハビリや血行再建術などで図られるでしょう。 まとめ・脊髄梗塞は早期診断・治療が大切 この記事では脊髄梗塞の症状の経過や診断方法、原因などについてまとめました。 記事の中でも触れたように、脊髄梗塞は稀な疾患で、明確な治療方法が確立している病気ではありません。 また、急激な背中の痛みは脊髄梗塞かどうかに関わらず、とても危険な状態であると示す身体からの信号です。 そのような痛みを感じたときには、すぐにお近くの医療機関に連絡するようにしましょう。 メール相談 オンラインカウンセリング 参考文献 脊髄への血流遮断 - 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 - MSDマニュアル家庭版 脊髄梗塞 - 07. 神経疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 診断に難渋した脊髄梗塞の 1 例 脊髄梗塞 14 例の臨床像および予後の検討 ▼こちらもあわせてご参考ください。
2024.06.14 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝硬変と言われたらどうする?知っておきたい治療法や合併症 肝臓の慢性的な炎症により、肝臓が線維化して硬くなる疾患が「肝硬変」です。肝硬変により肝臓の機能が障害されると、代謝や血液の循環動態に大きな影響を及ぼします。そのため、様々な合併症を引き起こします。 肝硬変の根本的な治療は肝臓の移植を行う他ありません。しかし、肝硬変の方で移植が受けられるのはごく一部です。そのため、多くの方はつらい症状に対する対症療法を行なっていくのが現実的です。 では肝硬変と診断された際、以下のような疑問はありませんか? ・肝硬変の合併症ってなにがあるの? ・肝硬変を治すことはできるのか? この記事では、肝硬変と診断された時に知っておきたい合併症や様々な治療法、また肝硬変に起こる がん についても解説しています。さらに最先端の治療である再生医療の可能性についても触れています。 肝硬変による5つの合併症とその治療法 肝臓は解毒・代謝など体にとって重要な役割を果たしていますが、肝硬変になるとその働きが落ちます。肝硬変が進行すると肝臓に流れ込む「門脈」という血管の圧が上がるため、全身の血液の流れに大きな変化を及ぼします。その結果、肝臓自体による症状以外にも、全身に様々な合併症を引き起こします。 ここからは肝硬変に起こりやすい5つの合併症とその治療法について、一つ一つ解説していきます。 ①肝性脳症 肝性脳症とは、肝硬変により代謝できなくなったアンモニアなどの毒素による脳の機能障害です。 肝性脳症による症状は異常行動や意識障害など様々です。なかでも特徴的なものに「羽ばたき振戦」があります。その検査の仕方は次の通りです。 羽ばたき振戦の検査方法 ①手のひらを下にしたまま腕を前に伸ばす ②そこから手首を90度立てて手のひらを正面に見せる様にする 羽ばたき振戦があると、手のひらを正面に見せておくことができず、羽ばたいているように手が細かく震えるのです。 肝性脳症には便秘・脱水・体内のアミノ酸バランスの異常・栄養素の不足などが影響していると考えられます。誘因を除去し、不足している栄養素を補うことが治療の上で重要です。患者さんの栄養状態を把握し、適切な栄養管理を行います。さらに以下のような薬物療法を行うこともあります。 〈肝性脳症の薬物療法の例〉 非吸収性合成二糖類 代表的なのは「ラクツロース」です。 便秘を改善したり、腸内のpHを調整したりする効果があります。 分子鎖アミノ酸製剤(BCAA) アミノ酸バランスを整えることで肝性脳症を改善します。 腸管非吸収性抗菌薬 腸内でアンモニアを産生する菌の増殖を抑制します。 亜鉛製剤 不足している亜鉛を補うことで症状を改善させます。 カルニチン製剤 肝硬変の人が不足しがちなカルニチンを補充することで効果を発揮します。 患者さんの病気の状態に合わせて治療の選択をしていきます。 ②食道胃静脈瘤 食道胃静脈瘤は血液を肝臓に流す「門脈」の血圧が肝硬変により高くなることにより起こる合併症です。門脈圧亢進により門脈を介した血流が滞ると、相対的に他のところの血流を増やさなければなりません。 その結果、食道や胃などの静脈に血流が増えます。血流が増えた血管は拡張し、瘤のようになるのです。基本的には無症状で胃カメラをしなければ発見できません。しかし、とても破れやすく、消化管出血をきたします。 治療は出血を防ぐ待機的治療と出血をした場合の緊急治療があります。代表的なものは下記です。 〈食道胃静脈瘤の治療の例〉 EIS(内視鏡的硬化療法) 内視鏡下に静脈瘤に硬化剤を注入します。 食道静脈瘤の待機的治療として行われることが多いです。 EVL(内視鏡的食道静脈瘤結紮術) 内視鏡に専用の輪ゴムを装着して静脈瘤を結紮します。 食道静脈瘤の緊急治療や待機的治療として行われることが多いです。 CA法(内視鏡的シアノアクリレート系組織接着剤注入法) X線透視装置と内視鏡を用いて、造影剤と組織接着剤を混ぜたものを静脈瘤に注入して硬化させます。 胃静脈瘤の緊急治療・待機的治療として行われることが多いです。 SB-tube 食道静脈瘤の出血量が多く、内視鏡での視野が確保できない場合に行われます。 鼻からチューブを挿入し、2つのバルーンを膨らませることで圧迫止血を行います。 止血できた後にEISやEVLなどによる追加治療が必要です。 BRTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術) 足の付け根の静脈からカテーテルを進め、硬化剤とバルーンで静脈瘤の血流を遮断して硬化させます。 胃静脈瘤の待機的治療として行われることが多いです。 静脈瘤の形や場所・患者さんの状態・肝機能の程度・医療機関の状況などにより選択されます。 ③肝腎症候群 肝硬変により体をめぐる血液のボリュームが低下し、腎臓への血流が悪くなり腎機能障害が起こった状態が「肝腎症候群」です。腹水を伴う、進行した肝硬変に起こります。 腎機能は血液検査の「クレアチニン」という項目で判断します。クレアチニンが1.5mg/dL以上を超えていることが診断の条件の一つです。そのほか、脱水やショック、薬剤による腎障害や腎臓そのものの異常がないことなどいくつかの項目をみたすと診断が確定します。急速に進む1型と緩徐に進行する2型に分類されます。1型はとくに予後不良です。 治療では、血液内に水分を引き寄せるアルブミンという血液製剤を投与したり、血圧を上げる薬を一時的に使用したりします。 〈肝腎症候群の治療の例〉 ・アルブミン血液製剤を投与 ・血圧を上げる薬を一時的に使用 など ④肝肺症候群 肝肺症候群とは、肝硬変が原因で肺のガス交換に異常をきたし、血中の酸素濃度が低くなった状態です。肝硬変により血管拡張物質が代謝されないことで、肺の血管が拡張します。肺の血液量が増え、酸素の供給が間に合わなくなります。さらに、動脈と静脈にシャントと呼ばれる異常な交通ができます。シャントでは動脈血と静脈血が混じりあい、血中の酸素濃度が低くなります。 肝肺症候群の特徴的な症状は座ったり立ったりした時に息苦しさを感じることです。 診断は特殊な心エコーなどの画像検査で肺のシャントを証明することで行われます。肝肺症候群に有効な内科的治療はなく、後述する肝移植が唯一の治療方法です。 ⑤肺高血圧症 肝硬変による門脈圧亢進症に伴う血流の変化は肺の動脈にも影響を及ぼします。心臓から肺へ伸びる肺動脈圧が上昇した状態が「肺高血圧」です。肺へ血液を送る心臓の右側の部屋(右心系)に負担がかかり、やがて心不全へと至ります。 息苦しさ・足のむくみ・動悸・失神などが主な症状です。 レントゲンや心電図、心エコーなどで右心系の負荷がかかっていないかを確認します。診断の確定には右心カテーテル検査で実際の肺動脈圧を調べることが必要です。 治療は肺動脈を拡張させる薬剤を使用します。 肝硬変が進行し、肝臓の機能が保てなくなる「肝不全」では、これらの合併症により他の臓器にも影響を及ぼします。連鎖的に他の臓器の機能不全が起こると、命にも関わりかねません。 肝硬変に合併する がん について 肝硬変がある肝臓には、がんもできやすいことがわかっています。 肝硬変では慢性的な肝臓の障害により肝臓の細胞が傷付いては再生を繰り返しています。このような肝細胞は遺伝子の変化などの異常が起こりやすいため、肝がん(肝細胞がん)のリスクが高まります。 肝がんの検査と治療 肝硬変と診断された方は、定期的な腹部エコーなどの画像検査を行い、がんがないか経過観察を行うことが重要です。また、がんがあるときに高値になりやすい血液検査の「腫瘍マーカー」も参考になります。最終的な診断は生検といって組織を針などで取って顕微鏡で観察する必要があります。 治療法としては、手術や一般的な抗がん剤治療のほか、体表から特殊な針をがんに刺して焼いたり、がんの近くまで直接的に抗がん剤を注入したり、がんの栄養血管を詰めたりするなどの方法があります。 〈肝がんの治療の例〉 ・手術や一般的な抗がん剤治療 ・体表から特殊な針をがんに刺して焼く ・がんの近くまで直接的に抗がん剤を注入 ・がんの栄養血管を詰める など がんの治療は、その大きさ・数・肝硬変の程度や患者さんの状態によりさまざまです。 肝硬変の治療法 肝硬変の合併症が命に関わるなら、肝硬変を治療すれば良いと考えるかたもいるかもしれません。しかし、一度肝硬変が起こってしまうと線維化は不可逆で、肝臓そのものの治療は臓器移植しかありません。現実的には肝移植ができる患者さんは限られています。 ここからは肝硬変と診断された後にどのような内科的な治療を行うのか、また移植はどんな時に考えるかもみてみましょう。さらに、肝臓の再生医療の可能性についても解説します。 肝硬変診断後の内科的治療 肝硬変と診断されたら、まずは食事摂取の調整などの栄養療法、B型・C型肝炎ウイルスやアルコール多飲などの原因別治療を行います。 診断直後はあまり症状がない患者さんも多くいます。しかし、肝硬変が進むと、前述の合併症の他にも様々な症状に悩まされるようになります。肝硬変の症状は生活の質を下げ、適切な医療を行う妨げになることもあるのです。それぞれに応じて必要性に応じて治療を行います。 〈肝硬変の症状に対する対策の例〉 皮膚のかゆみ 黄疸のため皮膚のかゆみが強い場合は、かゆみを感じる受容体に作用する「ナルフラフィン塩酸塩」という薬剤を用います。 こむら返り 芍薬甘草湯という漢方が有名ですが、肝硬変の場合は他に「カルニチン」というアミノ酸を補うことで改善することもあります。 血小板減少 肝硬変の人が処置・手術が必要な時に血小板を増やす目的で血小板産生を促す「ルストロンボパグ」という薬剤を処方します。 腹水 利尿薬を用いたり、針を刺して腹水を抜いたりすることがあります。 ▼なお、腹水の治療については以下の記事でさらに詳しく解説をしています。 このような対症療法とともに、前述の合併症の治療を行っていくことが多いです。 肝移植について 肝硬変が進行し、多くの合併症が起こり他の治療法が効果を示さない場合、肝移植が考慮されます。 ダメージを受けた肝臓を取り除き、健康な肝臓に置き換えることで機能を回復させるための治療法です。ただし、肝移植を受けられるかどうかは、患者さんの健康状態や肝硬変の原因など、さまざまな要因に依存します。また、移植手術は非常に専門性が高く、どこの病院でもできるわけではありません。 肝移植には「生体肝移植」と「脳死肝移植」の2つの方法があります。 生体肝移植 健康なドナー(主に配偶者や家族など)の肝臓の一部を患者さんに移植する方法が「生体肝移植」です。 ドナーに年齢や健康状態などの条件はありますが、移植までの待機時間が少ないのはメリットです。ただし、ドナーの体にもメスをいれることになります。 脳死肝移植 脳死状態となり臓器提供の意思を示した方から肝臓を提供してもらう方法が「脳死肝移植」です。 最大の利点は、肝臓全体を移植できることです。しかし、いつ肝臓を提供してもらえるかは予測が難しく、待機時間が長くなる可能性があります。待っている間にさらに病状が進行して命を失うこともあり得ます。 いずれの肝移植にも手術が必要であり、危険性が伴います。 肝移植のリスクと適応 例えば、全身麻酔による合併症の可能性や、肝臓を取り除く際に周囲の臓器を損傷するリスク、さらに手術後の感染リスクなどです。 ・全身麻酔による合併症 ・手術時の臓器損傷 ・手術後の感染 また、移植後は拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を服用し続けなければなりません。 肝移植は、すべての肝硬変患者が受けられるわけではありません。肝硬変の原因や患者さんの全体的な健康状態などに基づいて、適応が判断されます。適応基準を満たさない場合は、症状を緩和する治療を続けます。 肝移植は最終的な治療手段として、肝硬変の患者さんの命を救う可能性がありますが、その適応には慎重な判断が必要です。 肝硬変に対する再生医療について 最後に、少しだけ最先端の治療「再生医療」についてお話しします。 これまでの治療では、一度線維化してしまった肝臓は元に戻らないとされていました。しかし、再生医療により、この常識が覆されるかもしれません。 肝硬変に対する再生医療では「幹細胞」を利用します。幹細胞は体内の多様な細胞に分化する能力がある万能細胞です。この幹細胞を培養し、点滴で投与することで肝細胞の修復や再生を促します。幹細胞は損傷した肝組織に働きかけ、肝細胞の再生と修復を促進します。 これにより、従来肝移植をする以外に改善する手立てがなかった肝臓の線維化が改善する可能性があるのです。 残念ながら肝臓の再生医療は医療保険の適用外の治療です。現状では厚生労働省に届出して受理されている医療機関は多くありません。 当院はその数少ない施設の一つです。患者さん本人の脂肪細胞から幹細胞を採取して培養し、点滴での幹細胞治療を行っています。 独自の細胞培養技術により、冷凍保存をせずに幹細胞を輸送・保存することができます。そのため、生き生きとしたフレッシュな幹細胞を治療に用いることが可能です。 ▼こちらの動画で当院の幹細胞治療について詳しく解説しています。ぜひご参考にされてください。 https://www.youtube.com/watch?v=NeS1bk2i5Gs&t=96s まとめ・肝硬変に対する再生医療も選択肢のひとつに この記事では、肝硬変の合併症や治療法について解説を行いました。 ・肝硬変の合併症 ・肝硬変の治療法 ・最新の治療法「再生医療」 全身に起こる多様な合併症や肝がんは、命に関わる合併症です。 肝硬変そのものの治療としては栄養療法・原因治療に加え、症状の緩和が必要になります。しかし、内科的治療では線維化の進行を止めることはできません。肝移植も検討されますが、可能な方は限られます。 肝硬変に対する再生医療は線維化が進んでしまった肝臓を回復させる可能性のある治療ですが、まだ行える病院やクリニックは多くないのが現状です。当院では幹細胞治療による再生医療を提供しています。治療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。 参考文献 赤羽たけみ, 吉治仁志. 診断と治療 111(1): 93-98, 2023. 赤澤直樹. 消化器ナーシング 28(1): 41-51, 2023. 橋本法修. 月刊薬事 64(2): 251-253, 2022 川口巧, 鳥村拓司. 日本医事新報 (5120): 42-43, 2022. 森野杏子, 小林誠一, 赤羽武弘, 玉渕智昭, 矢内勝. 日内会誌 105:1282-1286, 2016. 肝硬変診療ガイドライン2020 ▼肝硬変の症状や原因については以下で詳しく解説している記事をご覧ください。
2024.06.11 -
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肝硬変の症状や原因を徹底解説!沈黙の臓器の初期サインとは 肝硬変とは、肝臓に線維組織が増え、硬くなってしまった状態を指します。慢性的な炎症により肝細胞が傷つき修復を繰り返す過程で線維組織が増加することで起こります。 長期に持続的に肝臓にダメージを与える病態があると肝硬変に進行します。その原因はウイルスやアルコール、肥満やメタボリックシドロームなど多岐にわたります。 肝臓は「沈黙の臓器」であり、肝硬変初期までは自覚症状はほとんどありません。 しかし、肝硬変が進行すると、倦怠感・黄疸やむくみ様々な症状が認められます。正常な肝臓が行ってきたタンパク質の合成や不用物・有害物質の代謝・排出ができなくなるために起こるのです。 この記事では以下の内容をご紹介します。 ・肝硬変の原因 ・肝硬変の診断につながる検査 ・肝硬変の初期症状や進行症状 ・肝硬変の予防方法 肝硬変について詳しく知りたい方は、ぜひご参考にされてください。 ▼肝硬変の治療法については以下で詳しく解説しています。 肝硬変の主な原因 従来、肝硬変の最大の原因はウイルス性、特にC型肝炎ウイルスの感染によるものでした。現在でも肝硬変の最大の原因はC型肝炎です。しかし、その割合は徐々に低下してきています。 一方で脂肪性肝炎からの肝硬変は増加傾向です。肝臓に脂肪が貯まる「脂肪肝」が進行すると炎症細胞が集まり、炎症を起こします。これが脂肪性肝炎です。脂肪性肝炎には2つの原因があります。一つは長期・過量のアルコール摂取がかかわる「アルコール性肝炎」です。もう一つはアルコール以外が主な原因の「非アルコール性脂肪性肝」炎です。その他にも自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎などがあります。 このように、肝硬変の原因はさまざまです。以下で詳しく解説していきます。 ウイルス性肝炎 B型慢性肝炎 B型肝炎ウイルスは出生時に母子感染を起こすことで、9割以上が持続感染となります。持続感染をした場合は一部の患者さんは慢性肝炎に移行し、そこから肝硬変や肝細胞がんが起こる可能性があります。 近年は治療によりウイルス量を減らし、肝炎を沈静化することができるようになっています。 また、B型肝炎ウイルスを持つ母親から出生した乳児にB型肝炎に対する抗体やワクチンを投与することで母子感染を防ぐ取り組みが行われています。これにより、B型肝炎の母子感染は減少しています。 なお、B型肝炎ウイルスは成人期に性交渉などで感染することもあります。この場合は急性肝炎を起こしますが、多くの方は持続感染に移行することなく治癒します。 C型慢性肝炎 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。注射器を使い回したり、汚染された器具を使用して入れ墨を掘ったりピアスを開けたりすることなどが感染経路です。母子感染や性行為による感染もありますがB型肝炎ほど多くはありません。 C型肝炎ウイルスに感染すると、7割の方は慢性肝炎となります。慢性肝炎の自覚症状はほとんどありませんが、放置すると肝硬変へと進展していきます。 かつてC型肝炎治療はインターフェロンという注射によるものでした。しかし、インターフェロン治療は副作用が強く、また治療しても効果がない患者さんもいました。 しかし、その後様々な治療法が開発され、現在95%を超える患者さんがウイルスを体内から排除することができるようになったのです。 そのため、C型肝炎による肝硬変の患者さんは今後も減少していくでしょう。 脂肪性肝炎 アルコール性肝炎 一般的に、純アルコール量で60g以上を毎日飲み続けるとアルコール性肝障害をもたらすと言われています。 しかし、代謝には個人差があるので、人によってはこれより少ない量でもアルコール性の脂肪肝をきたすかもしれません。 特に女性やアルコールに弱い体質の方はこの3分の2程度の飲酒量でもアルコール性肝障害となりうると言われています。 純アルコール量(g)は、 摂取量(mL)×アルコール濃度(度数%÷100)×0.8(アルコールの比重) 上記の式で求めることができます。 たとえば、日本酒(アルコール度数15%)1合180mLの純アルコール量は180×15 ÷100×0.8=21.6gとなります。 つまり2〜3合の日本酒を毎日飲むと、アルコール性肝障害になる可能性が高くなるのです。 非アルコール性脂肪性肝炎 過剰な飲酒以外では、肥満・メタボリックシンドロームなども脂肪肝の原因です。最近ではこのようなアルコールと関連のない肝炎が注目されています。 アルコール多飲と関連しない脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディーあるいはナッフルド)と呼びます。 一部のNAFLDの患者さんは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)に分類されます。NASHでは脂肪が沈着するとともに肝臓に炎症が起こるのです。NASHは放置すると肝硬変に至り、肝がんを発症することがあります。 自己免疫疾患 他にも自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎などがあります。 ▼自己免疫性肝炎については以下で詳しく解説しているのでご参照ください。 肝硬変の診断に必要な3つの検査 肝硬変の診断には以下のような検査を行います。 ①肝生検 肝硬変の診断の王道は「肝生検」です。肝臓に細い針を刺して組織を採取し、線維化が進んでいるかを判断します。しかし、肝生検は出血などのリスクがあり、肝硬変が疑われる患者さん全員に行える検査ではありません。 多くの場合、肝硬変の診断は様々な血液検査や画像検査を組み合わせて行います。 ②血液検査 血液検査では、肝臓が合成するアルブミンや、肝臓から排出されるビリルビンなどが肝臓の機能を反映していると考えられています。 また、肝臓の硬さの指標として用いられるのがFib4-indexです。Fib4-indexはAST,ALT,血小板, 年齢から算出される数字です。 ③画像検査 腹部エコー検査やMRIなども参考になります。超音波装置を利用した肝硬度測定であるフィブロスキャンは痛みなく短時間で肝臓の硬さを測定することができる検査です。 これらの検査を総合的に判定し、肝硬変に進行しているかを判断します。それでも診断がはっきりしない場合は肝生検が考慮されるのです。 肝硬変が起こる前に出る初期サイン 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。それは、肝硬変が起こる前や肝硬変になったばかりの頃はほとんど症状がないからです。そのため分かりやすく初期症状を感じることはほぼありません。 しかし、肝硬変が起こる前の初期サインとして、血液検査での肝障害の指摘をされることがあります。症状がない頃から、AST,ALTなどの肝障害を示す数値が上昇していることが多くあります。 体調に変化がなくても、検査の異常が高度であったり長期に持続したりする場合は、肝硬変の原因になるものがないか専門の肝臓内科で精査を受けましょう。 肝硬変が進むと出る症状 肝硬変がある程度進行して様々な自覚症状が出てしまった状態を「非代償性肝硬変」と言います。倦怠感や易疲労感、食欲不振などと共に、肝臓が正しく機能できていないことによる種々の症状が現れます。 エストロゲン(女性ホルモン)の分解ができなくなるため、次のような症状が起こります。 ・手掌紅斑 手のひら(とくに指の付け根や親指・小指側)が赤くなる ・クモ状血管腫 蜘蛛が足を広げたような血管の集まりで上半身に多くできる ・女性化乳房 男性でも女性の様に乳房が大きくなります また、タンパク質の一種、アルブミンの合成障害が起こります。アルブミンは血管内に水を保持する働きがあるため、低アルブミン血症になると血管外に水が漏れ出します。その結果、起こるのが次の様な症状です。 ・浮腫 足が浮腫む ・腹水 お腹に水がたまり腹部が張ったような感じがする 肝硬変ではビリルビンという物質の処理も難しくなります。寿命を終えた赤血球から生じるビリルビンは肝臓に運ばれ、胆汁という消化液を介して排出されます。肝硬変になると、処理しきれないビリルビンが血中に大量に残ります。その結果、次の様な症状が起こります。 ・黄疸 全身の皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる ・皮膚の痒み 皮膚に沈着したビリルビンは強い痒みを引き起こします また、出血傾向が起こるのも肝硬変の特徴です。代償的に血流が増えた脾臓により血小板が多く破壊されることや、出血を止める凝固親子の合成が低下するのがその理由です。鼻血が出やすくなったり、歯磨きをしている時に歯茎から血が出てきたりということが起こります。 肝硬変の方は、「こむら返り」(足がつること)も起こりやすいです。こむら返りは就寝中などに起こりやすく、睡眠障害にも関わります。原因として、脱水・電解質異常・糖やアミノ酸の代謝異常などが考えられています。 肝硬変の予防方法 肝硬変の予防は、原因を除去・改善することです。 原因を突き止め、対処することで、肝硬変への進展を予防することができます。 B型肝炎・C型肝炎は治療の進歩により、ウイルスを沈静化させる・体外へ排出するなどの治療が可能になりました。そのため、検査したことがない方はまずはウイルス感染の有無を検査で確認をすることをおすすめします。 節度を守って飲酒をすることも重要です。厚生労働省は、生活習慣病のリスクを高める純アルコール量を男性40g以上、女性20g以上と定義しています。(健康日本21(第三次)より) 肝臓病のみならず、様々な病気を防ぐ意味でも、飲酒量を適切にすることが大切です。 肥満や高血圧・脂質異常・高血糖などの改善も、肝硬変の予防に重要です。食事を見直し、カロリーや塩分などを摂りすぎていないかチェックしましょう。 ・ウイルス感染の有無を検査 ・適度な飲酒量 ・肥満や高血圧・脂質異常・高血糖などの改善 ・食生活の見直し 「肝障害がある」と言われたら、まずは原因を探しましょう。そして解決のためにできることに取り組むことが大切です。 まとめ・肝硬変で症状が出るころには進行の危険! 今回は肝硬変の原因や症状、診断につながる検査や予防法について詳しく解説しました。 ・肝硬変の原因 ・肝硬変の診断につながる検査 ・肝硬変の初期症状や進行症状 ・肝硬変の予防方法 肝硬変の原因は肝炎ウイルス・アルコール・肥満など多岐にわたります。特に、ウイルスによるものが減少している反面、生活習慣が大きな影響を及ぼしていることが注目されています。 沈黙の臓器である肝臓は、症状が出るころには既に肝硬変が進行してしまっていることが多いです。 進行した肝硬変では、特徴的な皮膚症状・黄疸・浮腫や腹水などを起こします。また出血をしやすくなったり、こむら返りが起こりやすくなったりもします。 肝臓を守るために大切なことは、初期サインである肝臓の検査異常に早期に対応し、肝硬変の症状が起こる前に原因への対処をすることです。健康診断などでご自身の「肝障害」がないかをしっかりと確かめ、必要であれば早期の専門科受診を心がけましょう。 参考文献 赤羽たけみ, 吉治仁志. 診断と治療 111(1): 93-98, 2023. 田中康雄. 消化器ナーシング 28(1): 12-17, 2023. 内野康志, 近藤真由子, 大木隆正. 消化器ナーシング 29(3): 214-231, 2024. 日本消化器病学会・日本肝臓病学会. 肝硬変診療ガイドライン2020 (改訂第3版) 厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
2024.06.04 -
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肝硬変で腹水が溜まると余命は長くないって本当? 肝硬変の腹水を根本的に治療する方法はないの? この記事を読んでいるあなたは、肝硬変で腹水の症状が出たときの余命がどのくらいなのか調べているのではないでしょうか。 腹水は肝硬変の中期から末期によくみられる症状であり、「もう先は長くないのではないか」と不安になるかもしれません。 結論からいえば、肝硬変における腹水は「非代償性肝硬変」に突入したサインの可能性があり、余命(中央値)は約2年というデータもあります。医療機関で適切な治療を受けることで、予後を改善できる場合があるため、前向きに治療を受けることが大切です。 本記事では、肝硬変における腹水の症状がある場合の余命年数や、治療法について解説します。 記事を最後まで読めば、肝硬変中期から末期の状況を正しく理解し、今後受けるべき治療法を判断できるでしょう。 肝硬変で腹水が溜まったときの余命は約2年といわれている 腹水とは、腹腔内にあるタンパク質の含まれた液体のことです。 通常、腹水は人間の腹腔内に一定量存在しますが、病気によって過剰生成・排出不良が起こり、溜まってしまうことがあります。 腹水は「非代償性」と呼ばれる中期から末期の肝硬変でみられる症状です。非代償性肝硬変の場合、余命年数は約2年(中央値)ともいわれており、予後が良いとはいえません。(文献1) まずは本章を参考に、肝硬変の重症度や予後についての基礎知識を身につけましょう。 肝硬変には「代償性」と「非代償性」がある 肝硬変は、程度によって「代償性」と「非代償性」に区分されます。 肝硬変の区分 段階 代償性 ・肝硬変の初期 ・肝機能に大きな問題はみられない状態 非代償性 ・肝硬変の中期~末期 ・肝機能に障害が出ている状態 代償性肝硬変は初期段階で、身体症状が現れないことが多く、症状があっても風邪などと見分けがつきにくいのが特徴です。 一方、非代償性肝硬変は中期から末期にあたる段階で、腹水や黄疸、浮腫などの身体症状があらわれるようになります。 肝硬変の症状や原因については、以下の記事もご覧ください。 肝硬変の程度によって生存率に差がある 肝硬変の予後について、以下のようなデータがあります。(文献2) 5年生存率 代償性 72.3% 非代償性 37.9% 10年生存率 代償性 53.3% 非代償性 24.0% 肝硬変の生存率(5年・10年)は、肝硬変の程度によって30%前後の差があります。 腹水などの症状がある非代償性肝硬変の場合、予後は良いとはいえません。 ただ、非代償性肝硬変であっても、適切な治療や肝移植をおこなうことで、改善する見込みもあります。 肝硬変による腹水は治療で改善する可能性がある 肝硬変による腹水は、内科的治療もしくは外科的治療で改善する見込みがあります。 肝硬変で腹水などの症状が発現している場合「非代償」期に突入している可能性が高いと考えられます。つまり、肝硬変の病状が進行し、肝機能を補えないほどの状態まで悪化しているという意味です。 とはいえ、非代償性肝硬変であっても、内科的な治療をおこなえば、腹水の改善がみられることが多くあります。 ただし、難治性腹水で内科的治療に反応しない場合は、外科的な治療をおこなうこともあります。 本章では、肝硬変における腹水の内科的治療・外科的治療について解説します。今自覚している腹水が肝硬変による可能性があると思われた方は、すぐに医療機関に相談しましょう。 また、肝硬変の治療法については以下の記事も参考にしてください。 肝硬変による腹水の内科的治療 非代償性肝硬変による腹水の症状がみられる場合は、内科的治療からおこないます。 具体的な治療法は以下のとおりです。 塩分の制限 利尿薬の処方 アルブミン療法 腎機能に影響する薬剤の制限 以下で詳しく解説します。 塩分の制限 はじめにおこなう内科的治療として、食事療法が挙げられます。とくに腹水の改善には塩分制限が有用で、1日の塩分摂取は5-7gとします。 肝硬変では、ナトリウムが溜まりやすくなるため、塩分の制限が必要です。 実際に塩分制限により、腹水の早期減少や入院期間の短縮、利尿薬の減量が得られたと報告されています。 肝硬変の食事療法については、以下の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。 利尿薬の処方 食事療法のみでは効果が不十分と判断された場合、利尿薬を処方し、尿からのナトリウム排泄を促進する治療をおこないます。 少量からはじめ、効果と合わせて徐々に増量するケースが一般的です。 アルブミン療法 アルブミンとは、主に肝臓で作られている血液中のタンパク質です。 肝機能の低下によりアルブミンの値が低下すると、血管内の血液の浸透圧バランスが乱れ、浮腫や腹水が起こりやすくなります。 非代償性肝硬変によりアルブミンの低下がみられる場合、アルブミン製剤を使用することもあります。 腎機能に影響する薬剤の制限 腹水がある場合、専門医と相談の上で、腎機能に影響する成分が含まれた薬剤の服用を中止することもあります。 たとえば、腎機能を悪くするような痛み止めや血圧を下げる薬は、腹水治療の妨げとなる可能性があります。これらの薬剤を利用している人は、継続の可否について医師に確認しましょう。 肝硬変による腹水の外科的治療 肝硬変における腹水の症状は、内科的治療によって改善できるケースが大半です。しかし、内科的治療への反応が乏しい場合は「難治性腹水」として外科的治療に切り替えることもあります。 ある研究では、難治性腹水の特徴として、腎機能の悪化や交感神経系の亢進、そして腎臓に作用して血圧を上昇させようとする内分泌系の調節機構(レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系)の亢進がみられ、さらに門脈圧亢進もその発生に関与しているだろうと報告されています。(文献3) 難治性腹水の治療法は以下のとおりです。 穿刺排液 腹水濾過濃縮再静注法(CART)によるタンパク質の補充 経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS) 腹腔−静脈シャント術 肝移植 以下で詳しく解説します。 穿刺排液 まず、腹水貯留による腹部膨満感や呼吸困難の改善のため、穿刺排液をおこないます。 基本的には超音波の機械を用いて穿刺できる場所を選択しますが、解剖学的に安全と思われる箇所を狙って刺すこともあります。 居所麻酔をおこなったのち、針を使って穿刺し、管を留置して自然に排液させます。 穿刺の頻度は主に1-2週間ごと、量は1回につき最大でも8Lまでとされています。 また、5L以上の腹水を引く場合には、血液中のタンパク質である「アルブミン」の補充も併せておこなわれます。 腹水濾過濃縮再静注法(CART)によるタンパク質の補充 腹水濾過濃縮再静注法(以下、CART)をおこない、血液中のタンパク質を補充することもあります。 腹水濾過濃縮再静注法(CART)とは、排液した腹水を濾過器や濃縮器にかけて取り出した自己のタンパク質を点滴で体内に戻す方法です。 自分のタンパク質を体内に戻す治療であるため、アルブミン製剤の投与時に生じうるアナフィラキシーショックなどの副作用を回避しやすいのがメリットです。 経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS) 難治性腹水に有用といわれている外科的治療として、「経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS)」と呼ばれる血管内治療があげられます。 全身麻酔下で血管内に細い管を挿入し、門脈と肝静脈の間にシャントと呼ばれる短絡路を作成し、門脈圧を下げます。 腹腔−静脈シャント術 また、「腹腔−静脈シャント術」と呼ばれる外科的治療をおこなうこともあります。 腹腔−静脈シャント術とは、皮下を経由して腹腔内と中心静脈をつなぎ、腹水を血管内に還流させる治療法です。 基本的には局所麻酔のみでおこなうことが可能ですが、長時間仰向けの体勢を保てないなどの際には全身麻酔を施すこともあります。 肝移植 難治性腹水が見られる場合、肝移植を実施することもあります。 脳死肝移植だけでなく、生きている人から肝臓の一部をもらう生体肝移植もあります。生体・死体合わせて、2021年と2022年はどちらも約420件の肝移植が施行されました。 肝移植は、非代償性肝硬変の根本的治療をおこなえるのがメリットです。ただし限られた医療機関でしか受けられない上に、待機時間も長いのは問題点といえます。 まとめ|肝硬変の腹水は余命にかかわるため適切な治療を受けよう 本記事では、肝硬変で腹水の症状がある場合の余命や治療法を解説しました。 肝硬変による腹水は、基本的に食事療法などの内科的治療で改善しますが、腹水穿刺や手術療法など外科的治療をおこなうこともあります。 当院「リペアセルクリニック」では、肝臓の再生医療として幹細胞治療をおこなっています。約1億個の幹細胞を投与することで、硬くなった肝臓の組織を溶解・修復させ、肝機能を改善させる効果が期待できるでしょう。 肝硬変における腹水の症状に悩んでいる方や、肝移植以外で肝硬変の根本治療を検討している方は、一度当院にご相談ください。 非代償性の肝硬変は予後が良好とはいえませんが、症状の改善に向けて前向きに治療を進めていきましょう。 肝硬変の余命についてよくある質問 肝硬変の終末期の症状は? 肝硬変の終末期では、以下の身体症状がみられます。 黄疸 腹水 胸水 食道胃静脈瘤 浮腫(むくみ) 感染症 など 終末期など重度の肝硬変を根本的に治療するには、ドナー登録の上で肝移植を受ける選択肢があります。 肝硬変で腹水が溜まるとどうなるのでしょうか? 肝硬変で腹水が溜まるのは、中期から末期である「非代償性肝硬変」に入ったサインの可能性があります。 大量の腹水が内臓を圧迫し、食欲不振や嘔吐、便秘などの消化器症状が出ることもあるでしょう。細菌性腹膜炎などの感染症を引き起こす場合もあるため、早めに医療機関での治療を受ける必要があります。 肝硬変による腹水は、利尿剤の投与など内科的治療、または腹水穿刺吸引など外科的治療をおこなうのが一般的です。 参考文献一覧 (文献1) D’Amico G, Garcia-Tsao G, et al. Natural history and prognostic indicators of survival in cirrhosis: A systematic review of 118 studies. J Hepatol. 2006;44:217-231. (文献2) 糸島達也、島田 宜浩ほか.肝硬変の予後-肝表面像による検討-.日本消化器病学会 雑誌.1973;70:42-49. (文献3) 楢原義之,金沢秀典ほか. 肝硬変における難治性腹水臨床像に関する検討. 日門充会誌.2002;8:251-257.
2024.05.28 -
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女性に多い肝臓の病気|症状・検査・治療法を解説します 「飲酒はほとんどしないし、脂肪肝も肝炎ウイルスの感染も指摘されたことがない。それなのに血液検査で肝臓の数値が高くなっていると言われた。」 それは、もしかしたら自己免疫性肝炎かもしれません。 自己免疫性肝炎は人体のなかで最大の臓器である肝臓に起こる病気で、特に女性に多く認められます。初めは異常に気が付きにくいことも多いです。しかし、放置すると肝硬変・肝不全・肝がんという重大な病態に至ることもあります。 なぜ自己免疫性肝炎は起こるのでしょうか。注意するべき症状はあるのでしょうか。どのような検査が必要で、どんな治療法があるのでしょうか? この記事では、自己免疫性肝炎の原因や疫学、また症状や検査・内科的治療について解説します。 女性に多い自己免疫性肝炎とは(肝障害の原因) 自己免疫性肝炎は、一般的に慢性に進行する肝障害をきたす病気です。 発症は60歳ごろがピークとされ、中年に多いとされています。男女比は1:4.3と、男性よりも女性に多いことがわかっています。日本には3万人強の患者さんがいると推定されています。 自己免疫性肝炎は国の定める指定難病です。一定の重症度を満たす場合は医療費が公費補助の対象となります。 自己免疫性肝炎の原因と合併症 自己免疫性肝炎の原因はまだ完全に明らかになっていません。しかしながら、さまざまな要素から、免疫が自身の身体を攻撃するために起こる「自己免疫疾患」と考えられています。実際に、自己免疫性肝炎では肝臓に免疫細胞が多く集まり炎症をきたしている所見が確認できます。 アルコールを全く摂取しない人でも、ウイルス性肝炎を起こすB型肝炎やC型肝炎の感染がなくても、この病気を発症することがあるのです。 特定の遺伝因子を持つ人が発症しやすいと言われています。しかし、一般的に行われている検診などで発症のしやすさを判定することはできません。また、家族内での発症も多くはないとされています。 自己免疫性肝炎は他の自己免疫疾患との合併が多く認められます。 たとえば下記のような疾患を患っている方は自己免疫性肝炎も発症するリスクが高まります。 〈自己免疫性肝炎に多い合併症の例〉 ・慢性甲状腺炎(橋本病) ・首が腫れる ・無気力になる ・体重が増える ・甲状腺に炎症が起こり機能低下する ・シェーグレン症候群 ・目が乾く ・唾液が出にくく、口が乾燥する疾患 ・関節リウマチ ・手、指などの小関節を中心とした腫れ ・痛み、こわばりなどを起こす疾患 自己免疫性肝炎の症状|セルフチェックは難しい? 残念ながら、「この症状があれば自己免疫性肝炎が疑われる」という特徴的なものはありません。 早期に発見される契機 は、無症状のまま健康診断などで肝障害を指摘されることが多いです。肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれています。肝障害は、自分では早期に 気が付きにくいのです。 一方で、急激な経過をたどる場合は以下のような自覚症状を認めること があります。下記の症状は自己免疫性肝炎に特異的ではありませんが、複数のものが該当する時は急激に進む重度の肝障害が起こっている可能性があるため早期に受診しましょう。 〈急性肝炎として発症する場合の症状の例〉 ・全身倦怠感 ・だるい感じがする ・易疲労感 ・ちょっとしたことでつかれやすい ・食欲不振 ・食欲低下のため食事が摂れない ・黄疸 ・全身の皮膚や白眼が黄色くなる ・尿の色が濃くなる また、一部の方は気付かない うちに病状がかなり進行して、肝硬変をきたしていることがあります。 自己免疫性肝炎の診断に必要な検査 様々な検査を行い、総合的に診断をします。 まず、血液検査で肝臓の障害があるか、またその程度を判断します。 ①AST(GOT)/ALT(GPT) ・健康診断でよく見る AST(GOT)/ALT(GPT)の上昇が参考になる所見です。 ・肝臓の機能に何らかの異常がある可能性を示しています。 ②IgG・自己抗体検査 ・免疫の関連の検査としてIgG(免疫の成分である抗体の量を見る検査)。 ・いくつかの自己抗体(自分の体を攻撃する抗体についての検査)も重要です。 ③B型・C型肝炎ウイルス検査 ・肝臓にダメージを与えるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどの感染の有無 ④画像検査 ・エコー、CTなどの肝臓の画像検査も必須です ・肝障害をきたす脂肪肝などの他疾患の有無、肝臓の硬さ、悪性腫瘍(とくに肝がん)の合併の有無を評価 ⑤肝生検 肝生検とは? ・診断において特に重要なのは肝臓の組織の検査、肝生検です ・肝生検には「経皮的肝生検」と「腹腔鏡下肝生検」」という2つがあります ・多くの場合は体に負担の少ない「経皮的肝生検」が行われます ・経皮的肝生検では実際にエコー下に肝臓を確認しながら、細い針を刺して組織を採取します ・出血などのリスクがある検査で終了後の安静が必要であるため、短期間の入院が必要です 肝生検で採取した組織は特殊な染色を行い、顕微鏡で観察します。 これにより、 ・どこにどのような炎症があるか ・肝細胞のダメージはどうか ・肝臓の硬さ(線維化) ・進行具合 などを確かめることができます。 自己免疫性肝炎で特徴的なのは、インターフェイス肝炎(Interface hepatitis)と呼ばれるものです。 肝臓へ血液を運ぶ肝動脈、門脈や胆汁を運ぶ胆管が集まった「門脈域」に、リンパ球や形質細胞(一部のリンパ球が成熟した細胞)などの炎症細胞が集まります。 周囲の肝細胞を破壊しながら炎症がさらに広がっていく様子が認められます。 このような所見は全例で見られるわけではありませんが、認められれば診断への重要な手掛かりとなります。 肝生検は他の原因を除外し、自己免疫性肝炎の診断を確実にするために重要視されている検査です。 ただし、患者さんの体の状態が悪く、肝生検が安全ではない ケースには行いません。 自己免疫性肝炎の治療法と副作用 治療の基本はステロイドです。 ステロイドは副腎皮質という臓器から分泌されるホルモンをもとにつくられた薬剤です。強力な抗炎症作用や免疫抑制作用をもつため、自己免疫性肝炎をはじめとする様々な自己免疫疾患の治療に用いられています。 プレドニゾロンというステロイドホルモン薬を体重1Kgあたり 0.6mg以上で開始します。例えば50Kgの人は1日あたり30mg以上が開始量です。重症度に応じてもっと多い量を使用することもあります。 開始後は、最低でも2週間程度は初期量の継続が必要です。以降は肝機能の数値(主にALT)を見ながら徐々に減量します。急いで減量・中止すると、再燃のリスクがあるからです。 他に、肝機能の改善を助けるウルソデオキシコール酸が処方されることがありますます 。また、治療困難例やステロイドを多く使えない場合にはという免疫抑制薬がステロイドと併用で用いられることもあります。 最も頻繁に使われるステロイドですが、長期に大量に使用すると様々な副作用をきたします。以下に副作用の例をご紹介します。 〈ステロイドの副作用の例〉 ・感染状態 ・骨粗鬆症 ・食欲亢進 ・高血圧、脂質異常、糖尿病などの生活習慣病の出現や悪化 ・体重増加、肥満 ・躁状態、うつ状態、不眠などの精神神経症状 ・消化管潰瘍 ・緑内障、白内障 副作用がないか適宜検査を行い、予防可能なものには対策をしていきます。気になる症状があれば主治医と相談をしましょう。 日常生活を送る上で気をつけること 日常生活では、栄養バランスの取れた食事をとり間食を控えることが大切です。また、外出時には人混みを避け、手洗い・マスク着用・うがいなどの感染予防行動を徹底しましょう。 注意しておきたいのが、続発性副腎機能不全です。ステロイド薬の内服により引き起こされた副腎皮質ホルモンの不足のことを指します。 生理的な量を超えるホルモンを長期で内服すると、副腎は本来のホルモン分泌を怠るようになります。長期内服者が薬を自己中断してしまうとホルモン不足が起こるかもしれません。また、手術や重症感染症のときにもステロイドの必要量が増えるのに十分量 が分泌できないため、対策が必要です。 副腎皮質機能不全となるとだるさ・脱力感・血圧低下・吐き気・嘔吐・発熱などの症状が認められます。重症になると意識を失ったりショック状態になったりすることもあるのです。 ステロイドを自己判断で減量、 中止をしてしまうと、病状悪化だけでなく命に関わる副腎機能不全をきたすリスクもあります。そのため、必ず医師の指示通りに内服をしてください。 進行するとどうなる?悪化を防ぐために 自己免疫性肝炎の多くは治療が有効である一方、最初は軽症でも放置をすれば命に関わる事態になります。 自己免疫性肝炎を放置すると炎症が沈静化せず、肝臓の線維化が進みます。肝臓の線維化が進行し、 固くなった状態が「肝硬変」です。 肝臓では栄養素の代謝やエネルギー貯蔵、有害物質の分解や解毒などが行われていますが、肝硬変が進むとその機能障害が起こります。肝臓の働きが大きく損なわれてしまった状態を「肝不全」と呼びます。 さらに、肝硬変は肝がんの発生が起こりやすいこともわかっています。肝がんは治療しても再発しやすい厄介ながんです。 肝硬変・肝不全・肝がんへの進行を防ぐのに重要なのは、早期から適切な治療を受けることです。自己免疫性肝炎では、治療により AST,ALT を基準値内に保つことができれば生命予後は良好とされています。 自己免疫性肝炎についてよくある質問 ここまで自己免疫性肝炎について記してまいりましたが実際に患者様からよくお聞きする質問から以下を抜粋いたしました。 Q:自己免疫性肝炎では、最終的にステロイドを止めることはできますか? A:経過によっては中止することが可能ですが、全員ではありません。中止できる場合も、多くの場合は年単位の時間がかかります。 また、中止した場合には再燃をするリスクもあります。減量や中止については個々のケースで大きく異なるので、主治医とよく相談するのが良いでしょう。 Q:原発性胆汁性胆管炎という病気も肝臓の自己免疫疾患と聞きましたが、違いはなんですか? A:どちらも中年以降の女性に多い自己免疫性疾患ですが、障害が起こる部位が異なります。自己免疫性肝炎では、肝細胞の障害が中心です。 原発性胆汁性胆管炎で起こるのは肝臓内の胆汁が通る管(胆管)の破壊です。そのため、胆汁の流れが滞り、ALPやγ-GTPなど胆道系酵素や黄疸 をきたすビリルビン値の上昇が目立ちます。 進行すると黄疸や皮膚のかゆみを生じます。こちらの病気も放置すると肝硬変へ進展します。各種検査で自己免疫性肝炎との鑑別を行いますが、2つの病態が合併していることもあります。 自己免疫性肝炎の症状・診断・治療のまとめ 心配な時は内科受診を! 自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありませんが、時にだるさや黄疸などをきたすことがあります。無症状で発見されることも多いです。 診断は血液検査・画像検査などを総合的に判断して行います。組織の検査は非常に重要とされています。 治療の第一選択薬はステロイドです。副作用も多いですが、対策をしながら長期に使用します。自己免疫性肝炎を放置すると命に関わる「肝硬変」に進展するため、診断を受けたら定期的に通院をして服薬 を続けてください。 健康診断で肝臓の数値が高いと言われた方や、肝臓が悪い時の症状に思い当たることがある方は、まずは医療機関で 精査を受けましょう。 参考文献 厚労省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 自己免疫性肝炎(AIH)診療ガイドライン2021年 厚労省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 患者さん・家族のための自己免疫性肝炎(AIH)ガイドブック第2版 難病情報センター 自己免疫性肝炎 難病情報センター 原発性胆汁性胆管炎 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.05.21 -
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人間ドックなどの検査で急に「肝血管腫疑い」と言われたら、不安になりますよね。 肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性腫瘍です。基本的には消化器内科で診てもらう病態になります。 無症状かつ小さな病変であれば基本的に治療は不要ですが、定期的な検査が推奨されており、万が一有症状になった場合には治療の検討も必要です。 この記事では、皆さんが肝血管腫について正しい知識を得られるよう解説していきます。 肝血管腫とは? 先にも述べましたが、肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性の腫瘍です。肝臓は元々血管が多い臓器のため、血管腫ができやすいとされています。 肝血管腫は、「海綿状血管腫」と「血管内皮種」の2種に大きく分けられますが、ほとんどの症例は前者と診断され、そして臨床上問題を生じるのもほとんど前者となっています。 基本的には無症状のため、昔は剖検で見つかることが多かったのですが、近年の画像診断技術の発展に伴い、他の病気を探すための検査や人間ドックなどで偶然発見されることが多くなりました。基本的には消化器内科で診てもらう病態です。 成人の発生頻度は5%程度とされ、一般的には男性に比べて女性にやや多いと言われています。 肝血管腫の原因やリスク因子 肝血管腫が形成される原因は明らかになっていませんが、先天的な要素が大きいと考えられています。 乳児期に肝血管腫が生じる場合もありますが、通常は自然に消失していきます。 成人になって肝血管腫が発見された女性患者の調査報告では、女性ホルモン補充療法を施行した女性において肝血管腫の増大が見られ、結果として女性ホルモンとの関連が示唆されました。 女性ホルモンが実際にどのように肝血管腫に影響を及ぼしているのかまでは未だはっきりと解明されていませんが、妊娠や女性ホルモン療法は肝血管腫増大のリスクになり得ると考えられています。 ピルの服用が肝血管腫を増大させるかに関してとある研究がなされましたが、そちらでは有意に増大させないとの結果でした。ただし、ピルの長期服用は肝機能障害や肝腫瘍のリスクを上昇させる上、ピルと肝血管腫増大の関連を考える報告があるのも事実です。 肝血管腫の症状 多くの場合は無症状で、特徴的な症状はありません。 腫瘍が大きくなってくると徐々に周囲の臓器を圧迫し、結果として不快感や腹痛、右上腹部の膨満感、嘔気・嘔吐などが引き起こされます。 他の関連症状としては、頻度は少ないものの、発熱や黄疸(皮膚や白眼の黄染)、呼吸困難、心不全なども確認されています。 ・不快感や腹痛 ・右上腹部の膨満感 ・嘔気、嘔吐 ・発熱 ・黄疸(皮膚や白眼の黄染) ・呼吸困難 ・心不全 また、稀ではありますが、巨大血管腫を生じるカサバッハ・メリット症候群という病態があり、出血や多臓器不全で命に関わることがあります。カサバッハ・メリット症候群は基本出生児、あるいは幼少時期に巨大血管腫を生じるものですが、成人になって発症する例もあります。 上記のような症状を認めた際にはすぐに医師の診察を受けましょう。 肝血管腫の診断 無症状のうちは通常血液検査での異常も見られないため、画像的診断が行われます。 主な検査方法として、以下のものが挙げられます。 超音波(エコー)検査 超音波検査とは、体に超音波の出る機械を当て、それぞれの臓器から跳ね返ってきた超音波を画像化する検査です。 腹部超音波検査ではお腹をグッと押される感覚はありますが、被曝や痛みはありません。 低侵襲な検査で肝血管腫を発見するという点では優れますが、肝細胞癌や肝臓への転移癌との鑑別がしにくいという欠点があります。 その場合、造影超音波検査を用いることも可能ですが、患者さんの体格や術者の技量によって左右されてしまうため、通常はCT検査やMRI検査の画像と合わせて総合的に判断されています。 CT(造影コンピュータ断層撮影)検査 CT検査は、ベッドの上に上向きに寝た状態でトンネル状の装置に入り、X線の吸収率の違いを利用して体の断面を画像化する検査法です。 造影剤を使用しない単純CTでは肝血管腫の検出率は低いですが、造影剤を使用した造影CTであれば格段に検出率が上がります。 肝血管腫は他の肝臓癌と比べて血流の流れが遅いため、造影剤を使用すると全体がゆっくり染まるのです。 ただし、過去にアレルギーが出た人や糖尿病薬を服用している人、腎機能障害のある人、授乳中の人などは造影剤を使用する際に注意が必要となります。 該当される方は医師と注意事項に関してご確認ください。 CT検査は断面像が見られるので腫瘍の詳細を知ることができますが、被曝の問題や肝血管腫においては造影剤を使用しなければならない点が欠点となります。 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI検査とは、強力な磁場が発生したトンネル状の機械に入り、ラジオ波を体に当てることで様々な角度から断面像を作り出す検査です。 超音波検査やCT検査同様、必要時には造影剤も使用できます。 造影を含めたMRI検査が肝血管腫の確定診断において最も有用であると言われています。 こちらは被曝の心配なく腫瘍の詳細を知るのに適していますが、狭いトンネルの中に入る必要があるので狭所恐怖症の人には不向きな上、超音波検査やCT検査と比べてコストが高くなるのが難点です。 また、病院にもよりますが他の検査と比較して予約が取りにくいかもしれません。 肝血管腫の治療法や増大予防 治療方針を決定する際に重要なのが以下の点になります。 ・自覚症状 ・血管腫の増大傾向 ・血管腫が原因の合併症 小さな病変かつ無症状であれば、基本的に経過観察のみと考えて良いでしょう。 大きくても増大傾向がなく、かつ無症状であれば経過観察可能と判断される可能性が高いと思われます。 自覚症状があり、かつ大きい肝血管腫を指摘されている場合は、それ以上大きくならないよう、女性ホルモン補充療法やピルの中断が推奨されています。 妊娠に関しては判断が難しいところで、大きな血管腫が発見された場合には妊娠を勧めるべきでないと主張する報告もある一方で、巨大血管腫がありながらも合併症を生じることなく妊娠継続ができたとの報告もあります。 巨大血管腫があるために産婦人科領域の治療について相談したい方や妊娠をご希望の場合には、産婦人科の医師に加え、消化器内科や消化器外科の医師ともよく話し合いましょう。 治療の際には、消化器内科の医師より消化器外科や放射線科の医師へ紹介され、共に適切な治療を検討していきます。 稀ですが、次のような条件下では手術療法やカテーテル治療などの積極的治療が必要とされます。 ・カサバッハ・メリット症候群 ・血管腫の急速な増大 ・血管腫の増大とともに症状の増悪 ・血管腫が原因となった合併症が中等度以上 ・血管腫の破裂 カテーテル治療とは、血管内より血管腫に栄養を送る動脈へアクセスし、挿入した細い管を使って動脈を塞ぐ“肝動脈塞栓術”が施行されます。 肝動脈塞栓術は手術療法と異なり、根本的治療には至らず、多くの場合腫瘍の縮小はみられませんが、症状改善には有効とされています。 また、前段階として一旦肝動脈塞栓術を施行し、全身状態を改善してから手術に臨む症例もあります。 手術療法に関しては、腫瘍が肝臓から引き剥がせると判断された場合は“腫瘍摘出術”が選択され、それが難しい場合には腫瘍を肝臓の一部とともに取り除く“肝切除術”となります。破裂による緊急手術を除いて、手術成績は良好と報告されています。 何らかの理由で上記の治療が行えないと判断された場合には、放射線治療やステロイド治療も考慮されます。どちらも副作用があるため、患者に合わせて放射線量やステロイド量を適切に調整する必要があります。 2024年現在は血管腫を薬で治す研究も進められており、今後新しい治療法が出てくるかもしれません。 肝血管腫の診断が出たら気をつけるべきことは? 肝血管腫と診断された場合、やはり一番気になるのはサイズの変化です。 ある研究において、平均12ヶ月の経過観察を行なった結果を調べたところ、ほとんどの症例でサイズの変化がなかったものの、少数ながら増大する症例もあったのです。肝血管腫は10cmを超えると破裂のリスクが高まり、そして破裂した場合には命に関わります。 お近くのクリニックや内科での定期検査はぜひ行なってください。そしてもし気になるような症状や異変を感じた場合には、すぐ診療してもらいましょう。 無症状であれば、日常生活は基本的に普段通りで構いません。しかし、稀ではあるものの、スポーツの最中にボールが腹部に当たって肝血管腫が破裂した例や、歩行中に足を滑らせて転落した際に肝血管腫が破裂したなどの症例報告はあります。 外傷性破裂を防ぐため、高いところからの転落や腹部に強い衝撃が当たるようなリスクは避けるのが望ましいかと思われます。 まとめ・肝血管腫は定期的な検査を心掛けましょう 当記事の内容で肝血管腫に関する知識は十分得られましたでしょうか?肝血管腫は良性腫瘍であり、基本的には怖い病気ではありません。小さく、無症状なうちは治療も不要です。 しかし、大きくなってくると色々な症状を招くほか、破裂の危険が出てきます。自分の身を守るためにも、定期的な検査を心掛けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献 松井昭義, 小野寺博義ほか. がん・生活習慣病検診における肝血管腫の検出状況について. 人間ドック.2007;22:35-39. Glinkova V, Shevah O, et al. Hepatic haemangiomas: possible association with female sex hormones. Gut. 2004;53:1352-1355. Ozakyol A, Kebapci M. Enhanced growth of hepatic hemangiomatosis in two adults after postmenopausal estrogen replacement therapy. Tohoku J Exp Med. 2006;210:257-261. Gemer O, Moscovici O, et al. Oral contraceptives and liver hemangioma: a case-control study. Acta Obstet Gynecol Scand. 2004;83:1199-1201. Mathieu D, Zafrani ES, et al. Association of focal nodular hyperplasia and hepatic hemangioma. Gastroenterology. 1989; 97: 154–7. Mikami T, Hirata K, et al. Hemobilia caused by a giant benign hemangioma of the liver: report of a case. Surg Today. 1998;28:948–952. Huang SA, Tu HM, et al. Severe hypothyroidism caused by type 3 iodothyronine deiodinase in infantile hemangiomas. N Engl J Med. 2000;343:185-189. Liu X, Yang Z, et al. Fever of Unknown Origin Caused by Giant Hepatic Hemangioma. J Gastrointest Surg. 2018;22:366-367. Smith AA, Nelson M. 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Demircan O, Demiryurek H, et al. Surgical approach to symptomatic giant cavernous hemangioma of the liver. Hepatogastroenterology. 2005;52:183-6. Tait N, Richardson AJ, et al. Hepatic cavernous hemangioma:a 10 year review. Aust N Z J Surg. 1992;62:521-4. 井田勝也,神谷隆,ほか. 鈍的外傷により破裂した肝血管腫の1例. 日臨外医会誌1996;57:155-158. 中山雄介,田村淳ほか. TAEと待機的腫瘍切除術で治療した外傷性肝血管腫破裂の1例.日臨外会誌2010;71:2687- ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.05.16 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
肝嚢胞とは、肝臓の組織に液体がたまって袋状になったものです。 健康診断や人間ドックで発見されるケースが多く、実際に約5人に1人の割合で健康診断の検査項目に含まれる腹部超音波検査で肝嚢胞が見つかるデータもあります。(文献1) そのため、突然の診断に不安をもつ方もいるのではないでしょうか。 肝嚢胞の多くは良性で無症状のケースが多い傾向にあります。しかし、肝嚢胞が大きくなったり、肝嚢胞が炎症を起こしたりすると腹痛や発熱などの症状を引き起こす可能性もあります。症状に応じた適切な治療を選択できるように、肝嚢胞の特徴をよく理解しておきましょう。 本記事では、肝嚢胞の原因や症状などを詳しく解説します。治療法も紹介しているので、肝嚢胞の診断を受けて不安を感じている方は参考にしてみてください。 肝嚢胞(肝のう胞)とは 肝嚢胞とは、肝臓にできる液体がたまった袋状のものを指します。 出典:Liver Cyst Symptoms & Treatment | Nexus Surgical 肝嚢胞の種類は、大きくわけて以下の2つです。 ・孤発性肝嚢胞 ・多発肝嚢胞 「孤発性肝嚢胞」は、肝嚢胞の数が1〜3個程度で単発的に発生する肝嚢胞です。肝嚢胞の大きさが5cm以下程度の小さいものであれば無症状のケースが多くなります。 まれにサイズが5〜10cmを超えるような大きい肝嚢胞もできます。このサイズになると、周りの臓器が圧迫されてお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があるので覚えておきましょう。ただし、肝臓自体への影響は少なく、血液検査で肝機能の異常が見つかるケースはほとんどありません。 「多発肝嚢胞症」は、肝嚢胞が肝臓に多発する病気です。こちらは孤発性とは異なり、嚢胞の数が増えたり大きくなったりするケースが多く、それによる周囲への圧迫症状が見られやすくなります。また、嚢胞内の感染や出血で炎症を引き起こし発熱や肝機能異常をおよぼす可能性もあります。 肝嚢胞以外の脂肪肝や肝硬変、肝炎といった肝臓の病気には「再生医療」の治療法が効果的です。再生医療とは、人間の自然治癒力を活用し、損傷した肝臓の組織を修復する最新の医療技術です。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 以下の記事では、肝臓の働きや肝臓の病気について解説しています。詳細が気になる方は、参考にしてみてください。 肝嚢胞の原因 肝嚢胞の発生原因は、現時点では明確にわかっていません。 肝嚢胞ができるのは40歳から60歳の女性に多いことから、女性ホルモンの1種であるエストロゲンが関連しているという説があります。 以下の記事では、女性に多い肝臓の病気を解説しています。検査方法や合併症に関する情報も紹介しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 なお、肝嚢胞は、エキノコックスという寄生虫の感染によって肝嚢胞ができるケースがあります。エキノコックスは、キツネやイヌの糞に含まれており、口を介して感染します。(文献2) 肝嚢胞の症状 くりかえしですが、肝嚢胞はほとんどが良性なので、肝嚢胞そのものが体に悪い影響をおよぼす可能性は高くありません。 肝嚢胞が5cm以下ほど小さめのサイズであれば、無症状のケースが大半です。 5〜10cmを超えるような大きいサイズの肝嚢胞になると、周りの臓器を圧迫してお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があります。 また、嚢胞内の感染や出血で炎症が起これば、発熱や肝機能異常を引き起こす可能性があります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 肝嚢胞の検査 冒頭で述べた通り、肝嚢胞は健康診断や人間ドックの腹部超音波検査検診で見つかるケースが多い傾向にあります。つまり、腹部超音波検査検診は肝嚢胞を発見する有効な検査といえるでしょう。 ほかには、腹部CTやMRIによっても確認できます。 CTやMRIでは、嚢胞の壁や嚢胞液の性状を詳しく調べられる検査です。超音波検査で嚢胞の性状が通常と異なっている場合や、嚢胞に対して治療を検討する場合にさらに詳しい情報を得るための検査としておこなわれます。 肝嚢胞の治療法 肝嚢胞は、圧迫症状がなければ治療はおこなわず、経過観察で良いものになります。 肝嚢胞のサイズが大きく圧迫による腹部症状をきたしている場合や、嚢胞内感染などを起こしている場合には治療をおこないます。 治療方法は、注射で嚢胞内の液を吸引して肝嚢胞を縮小させる方法です。超音波で嚢胞を確認しながらおこないます。その後、エタノールを注入して嚢胞内に再び液体がたまらないようにします。 根本的な治療としては、嚢胞を切開、切除する手術です。近年では腹腔鏡による手術もおこなわれ、より体に負担の少ない治療方法が広まっています。 傷付いた肝臓組織を修復する治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、手術のように身体への大きな負担はありません。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 まとめ|肝嚢胞への理解を深めて適切な対応をとろう 肝嚢胞は多くの場合、無症状で偶然見つかるもので、症状がなければ経過観察で良いものになります。したがって、肝嚢胞と診断されても極端に心配する必要はありません。 しかし、大きい嚢胞では腹痛やお腹の圧迫感の症状が現れることがあるほか、まれにがん化する事例も報告されています。気になる症状があれば早めに専門の医療機関に相談しましょう。 損傷した肝臓組織を修復するなら「再生医療」がおすすめです。本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 肝嚢胞に関するよくある質問 最後に肝嚢胞に関するよくある質問と回答をまとめます。 肝嚢胞が何センチになったら手術が必要ですか? 手術の必要性を判断する明確なサイズの基準はありません。 嚢胞のサイズよりも、症状の有無や生活への影響が重要な判断材料となります。たとえば、嚢胞が腹部を圧迫して腹痛が生じたり、胃を圧迫して食欲不振になったりするなどです。 注射で肝嚢胞の液体を吸引する治療法もあるので、専門医と相談して自分の状態に合った治療法を選択していくのが良いでしょう。 肝嚢胞になったらどうすればいいの? 肝嚢胞と診断を受けた時点で、担当医に今後の治療方針を相談しましょう。 無症状であれば、定期的な経過観察を推奨される可能性があります。肝嚢胞がほかの臓器を圧迫して圧迫感や痛みを感じる場合は、注射吸引による液体の除去や肝嚢胞を切開・切除する手術などが進められます。 肝嚢胞でがんを発症するリスクはありますか? 肝嚢胞が、がん化した事例も報告されています。(文献3) がんの場合、早期発見が重要になります。体調不良や身体の違和感が長期間続く場合は、迷わず医療機関で検査を受けましょう。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/65/1/65_15-10/_pdf 文献2:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/338-echinococcus-intro.html 文献3:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/68/3/68_3_654/_article/-char/ja/
2024.05.09 -
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高血圧の薬(降圧薬)は血圧を下げる薬で、多くの種類があります。降圧薬にはどのような違いがあるのかわからず、副作用を心配する方もいるのではないでしょうか。 高血圧の治療では、まずは運動や食事管理などによる生活習慣の見直しによって血圧の改善を図ります。 しかし、それでも難しい場合は降圧薬が使用されます。降圧薬にはそれぞれ作用のメカニズムや副作用が異なるため、服用には注意が必要です。 この記事では、降圧薬の種類やその特徴について専門医が解説します。降圧薬についての正しい情報を身につけて健康な時間をすごせるよう、ぜひ最後までお読みください。 高血圧の薬(降圧薬)を飲む際の基準値 まず前提として、現在のガイドライン上では「最高血圧120mmHg/最低血圧80mmHg未満」を正常血圧としており、これが降圧薬を処方する目安の1つです。 詳細は後述しますが、よく使用される降圧薬には大きく分けて7種類あります。また、複数の種類を組み合わせた配合薬もあります。 近年ではより厳格な血圧管理が重要視されるようになり、130〜139/80〜89mmHgになると、「高値血圧」と呼ぶようになりました。さらに140/90mmHg以上になると「高血圧症」と診断されます。 高血圧の薬(降圧薬)の種類一覧と副作用 主な降圧薬の種類としては、以下の7つです。 ・カルシウム拮抗薬 ・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) ・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) ・利尿薬 ・β(ベータ)遮断薬 ・α(アルファ)遮断薬 ・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRI拮抗薬) ここでは、それぞれの降圧薬の特徴について詳しく解説します。 ①カルシウム拮抗薬:最も多く使われている薬 カルシウム拮抗薬は、末梢の血管を拡張させることで血圧を下げる作用の薬です。副作用が少ないため、現在国内で最も多く処方されている降圧薬です。 高血圧の治療を開始する場合、このカルシウム拮抗薬が第一選択として選ばれることが多い傾向にあります。 副作用としては、以下のような血圧の下がりすぎによる症状があげられます。 ・めまい感 ・動悸 ・頭痛 ・ほてり感 ・顔面紅潮 ・むくみ ・歯茎の肥厚 など ②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB):2番目に多く使われている薬 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は、カルシウム拮抗薬に次いで多く使用されている降圧薬です。アンジオテンシンⅡ受容体は血管等に分布しており、アンジオテンシンという物質が結合して強力な血管収縮作用を持ちます。 ARBによってアンジオテンシンの結合を防ぎ、血管収縮作用を抑えて血圧の低下につながります。 この薬も副作用が少なく使用しやすい薬の一つです。治療の第一選択として使用することもあり、カルシウム拮抗薬でも十分に降圧が得られない場合に併用するケースも少なくありません。 注意すべき副作用として、内服中に血中のカリウムが上昇する可能性がある点です。 腎臓の機能が悪い方が服用する場合、定期的に腎機能やカリウム濃度等をチェックする必要があります。また、妊婦の方や授乳中の方の服用は、赤ちゃんへの悪影響があるため禁忌です。 高血圧と腎臓機能との関係性について、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味がある方はこちらもご覧ください。 ③アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)とは、ARBと似た名前のとおり、アンジオテンシン系に作用する薬です。 ARBは、アンジオテンシンⅡが結合する受容体に作用する薬です。一方でACE阻害薬はアンジオテンシンⅡ自体の産生を阻害し、血管収縮作用を抑えて血圧を低下させます。 ACE阻害薬の副作用として有名なのが、「空咳(からぜき)」です。これはブラジキニンという物質の増強作用によるもので、とくに日本人を含むアジア人に多いとされています。 この副作用を利用して、咳を誘発させることで誤嚥性肺炎を予防する目的で使用する場合もあります。 ACE阻害薬もARBと同様に、妊婦の方や授乳中の方の服用は禁忌です。 ④利尿薬 利尿薬は、塩分(ナトリウム)を含めた水分を尿として体外に排泄し、血液量を減少させて血圧を下げる薬です。血圧の話でよく「塩分の摂りすぎに注意」と聞きますが、日本人の塩分摂取量は欧米人と比較しても多いことがわかっています。 具体的に欧米人の1日の塩分摂取量は8〜9g程度なのに対し、日本人は1日10g程度とされています。塩分を取りすぎると、浸透圧によって水分が血管の中に引き込まれ、血液量が増加して血圧上昇につながるのです。 利尿薬は、高血圧だけでなく心臓の機能が悪くむくみがある方や、これまで説明した薬の効果が不十分な場合などに併用することがあります。 利尿薬は体内の水分を排泄させる作用があるため、副作用として電解質の異常をきたすことがあります。具体的には低ナトリウム血症や低カリウム血症などがあり、症状としては以下のとおりです。 ・ぼんやり感 ・倦怠感 ・手足の力の入りにくさ など 高尿酸血症や高中性脂肪血症など、代謝系への影響にも注意が必要です。そのほかにも、トイレに行く回数や量が増える点も副作用の1つです。 ⑤β(ベータ)遮断薬 心臓の筋肉に分布する「β受容体」を遮断させて心拍数を減少させたり、心臓の収縮力を抑制したりする作用のある薬です。β(ベータ)遮断薬は、高血圧治療の第一選択になることはあまりありません。 しかし、心筋梗塞の発症後の高血圧症や、交感神経が亢進した状態の病気(状腺機能亢進症など)に合併する高血圧症に対して積極的に使用されます。交感神経の作用で脈が速くなっている場合にも有効で、これまで紹介した降圧薬と併用して使うケースも多い薬です。 気管支喘息などの呼吸器疾患を持っており、吸入を行っている方が使用する場合、作用が変化して症状の悪化を招く危険性があり注意が必要です。 また、薬を急に中断すると狭心症や高血圧発作が起こる危険性があります。β(ベータ)遮断薬を中止する場合は、徐々に減量する必要があります。 ⑥α(アルファ)遮断薬 末梢血管に分布するα1受容体を阻害して交感神経の働きを抑え、血管を拡張させて血圧を下げる作用がある薬です。 交感神経が活性化しやすい早朝に血圧が上昇するタイプの方の場合、寝る前にα遮断薬を飲むことで朝の血圧低下が期待できます。また、褐色細胞腫による高血圧症のコントロールにも使用される薬です。 α遮断薬は自律神経に働きかける薬のため、交感神経の作用を抑えることで以下のような副作用が起こる可能性があります。 ・起立性低血圧 ・めまい ・失神 α遮断薬を服用する場合は少量から開始し、副作用に注意しながら徐々に増やしましょう。 ⑦ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRI拮抗薬) ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRI拮抗薬)は、体内で産生されるアルドステロンというホルモンの働きを阻害する作用の薬です。 本来アルドステロンは、腎臓に作用して水を体内に吸収させて血液量を増やす働きがあります。これが阻害されると体内に水分が再吸収されなくなり、血液量が減って血圧が低下しやすくなります。 また、心臓保護効果が期待できるため、心不全を合併している方の高血圧症に使用するケースも少なくありません。 MRI拮抗薬は体液バランスを調節する薬のため、電解質異常をきたす可能性があり、高カリウム血症に注意が必要です。とくに糖尿病性腎症や、中等度異常の腎機能障害がある方への使用は禁忌です。 降圧薬の配合剤について 降圧薬の配合材は、これまで紹介した作用機序の異なる種類の薬を組み合わせた治療薬です。 配合薬によって飲む薬の数が減り、飲みやすくなることが最大のメリットといえます。薬が増えるのが嫌な方や、薬が多くて内服が大変な方におすすめです。 現在国内で処方可能な降圧薬の配合剤は、大きく分けて3種類です。 降圧薬の配合剤 詳細 カルシウム拮抗薬+ARB ・ザクラス ・アイミクス ・ミカムロ ・レザルタス ・エックスフォージ など ARB+利尿薬 ・イルトラ ・エカード ・プレミネント ・ミコンビ など カルシウム拮抗薬+ARB+利尿薬 ミカトリオ 配合薬を使用する際は、それぞれの降圧薬の副作用に注意してください。配合薬の場合、名前だけでどの薬が配合されているかがわかりにくいため、注意が必要です。 高血圧の薬(降圧薬)を服用する際の注意点 降圧薬を服用する際は、以下の点に注意しましょう。 ・グレープフルーツなどの柑橘類を避ける ・自己判断で薬を飲むことをやめる ・飲み忘れたときの対応を適切にする ここでは、それぞれの注意点を詳しく解説します。 グレープフルーツなどの柑橘類を避ける まず、降圧薬を服用した際は、グレープフルーツを含んだ柑橘類の摂取は避けてください。グレープフルーツには、フラノクマリン類という成分が含まれています。 この成分には、体内で薬物を分解する酵素の働きを阻害する作用があるとされています。酵素の働きが阻害されることで薬の効果がうまく働かず、かえって副作用のリスクを高める恐れがあるのです。 これは降圧薬だけでなく、コレステロール低下薬や抗不安薬など、さまざまな薬に対して影響があります。薬を服用する際は、柑橘類は意識的に避けましょう。 降圧薬と柑橘類の関係性についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 自己判断で薬を飲むことをやめる 自己判断で薬を飲むことをやめないでください。一時的に血圧が落ち着くことで、「もう大丈夫だろう」と薬をやめる方もいるでしょう。 しかし、途中で薬の服用をやめると、再び高血圧の状態に戻る可能性が高くなります。薬の減量・中止は自己判断で行わず、必ず医師と相談することが重要です。 また、薬を一生飲み続けないといけないのか心配になる方もいるでしょう。血圧を下げるには薬の服用が重要ですが、中には生活習慣が改善したことで徐々に減量し、降圧薬をやめられた方もいます。そのため、治療が順調であれば、薬を中止できる可能性は十分にあります。 飲み忘れたときの対応を適切にする 降圧薬を飲み忘れたときの対応は、薬の種類によって異なります。そのため、自己判断で飲むことは避け、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。 飲み忘れた場合、時間をずらして服用するケースが多いですが、1度に2回分を服用するのは必ず避けましょう。 1度にたくさんの薬を服用すると、効果が効きにくくなったり、副作用が出やすくなったりする恐れがあります。 高血圧の薬(降圧薬)以外に血圧を下げる方法 食事や運動など、生活習慣の見直しをすることで、高血圧の予防や改善が期待できます。降圧薬以外で血圧を下げる方法としては、以下のとおりです。 ・食事の改善 ・運動習慣の改善 ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。 高血圧を改善するための生活習慣(食事・運動)の工夫について、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味がある方はご覧ください。 食事の改善 食事の際は、塩分や脂肪などが多く含まれている食べ物の食べすぎは控えましょう。 とくに日本人は、高血圧の原因となりやすい塩分の摂取量が多い傾向にあるとされています。高血圧の方の場合、食塩の摂取量は6g/日未満が推奨されています。 減塩をするための工夫としては、以下のとおりです。 ・香味野菜や香辛料を活用する ・外食や加工品を控える ・食べすぎを控える ・麺類のスープは飲まない また、お酒の飲みすぎも血圧を高める原因の1つです。1日あたりのアルコール摂取量の目安は、男性で20〜30ml、女性で10〜20mlとされています。 アルコール20〜30mlは、お酒で換算すると日本酒1合、ビール中瓶1本に相当します。普段からお酒を飲む方は、この目安を守りましょう。 運動習慣の改善 食生活だけでなく、運動習慣の改善もおすすめです。高血圧を改善するための運動には、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が推奨されています。 運動時は、ややきついと感じる程度の強度でかまいません。激しい運動をすると、かえって血圧が高まる恐れがあるので、軽めの強度を心がけましょう。 運動時間は毎日30分以上、週180分以上が目安です。ただし、いきなり長時間の運動をはじめると体への負担が強くなるので、最初は無理のない範囲で進めてください。 運動の時間をうまくとれない場合は、以下のような工夫をして、普段の生活内での活動量を増やしてみましょう。 ・エレベーターではなく階段を使う ・近い場所は車ではなく歩き・自転車で移動する ・定期的に立って座りっぱなしを防ぐ まとめ|高血圧の薬(降圧薬)は医師と相談しながら正しく服用しよう この記事では、たくさんある降圧薬の作用や特徴について解説しました。高血圧の治療をするためには、降圧薬を正しく継続的に服用することが大切です。 高血圧の治療が順調であれば、降圧薬を途中でやめることもできるでしょう。 また、決して自己判断で薬の服用をやめたり、飲み忘れの際に誤った対応をしたりしないように注意してください。薬の服用の際にわからない点がある場合は、必ず主治医に確認しましょう。 参考文献 American Heart Association News2022.5.23 高血圧治療ガイドライン2019
2024.05.02 -
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高血圧の落とし穴!慢性腎臓病と生活習慣病の関係を内科医が解説 みなさんは「高血圧」と聞くとどのような印象を持ちますか? 生活習慣病の1つであり、放っておくと血管がボロボロになる、脳卒中や心筋梗塞といった怖い病気を引き起こすということは多くの方がご存じかもしれません。しかし、実は高血圧が腎臓にダメージを与え、じわじわと体を蝕んでいくということは案外知られていません。 健診で「血圧が高いですね」と言われたことがある方、「血圧なんて薬飲めばすぐ下がるだろう」と放置したままの方、いつのまにか腎臓の機能が取り返しのつかないところまで低下しているかもしれません。 今回は身近な病気である高血圧が腎臓にどのような影響を及ぼすのかをご紹介し、明日からの健康な暮らしに役立てていただきたいと思います。 高血圧とは 高血圧とは、一般的に「最高血圧が140mmHg以上もしくは最低血圧が90mmHg以上、またはその両方」である状態を指します。 血圧は変動しやすいため一時的にこの値を上回ることは良くあり、その場合は問題とはなりません。長期間にわたり基準値を超えたままですと、徐々に体への悪影響が出てきます。具体的には、動脈の硬化が進行し、脳卒中や心臓の病気(心筋梗塞)といった重篤な疾患を引き起こします。 高血圧の原因 血圧が上がる主な原因は喫煙や飲酒、肥満、高塩分食の摂取といった生活習慣に関わるものが大半を占めます。 高血圧の治療 高血圧の治療は、日本高血圧学会により作成された「高血圧治療ガイドライン 2019年版(参照)」に基づいて行われています。このガイドラインでは、治療でどのくらいの血圧を維持すべきなのかという降圧目標が定められており「最高血圧130mmHg/最低血圧80mmHg未満」と先ほど示した数値より低い値が目標となっています。 腎臓の働きと慢性腎臓病 腎臓は、体内の水分量を適切な状態に保ち、余計な塩分や水分を尿として体の外へ排出するという役割を担っています。ところがこの尿をつくる機能が徐々に障害されてしまう病気があり、これを慢性腎臓病(CKD)いいます。 具体的には、糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)という数値が60mL/min/1.73 m2未満に低下した状態が、3か月持続している方を指します。健康な方の糸球体濾過量は100mL/min/1.73 m2程度ですので、慢性腎臓病の方では正常の60%程度しかないことになります。 日本腎臓学会が作成した「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018(参照)」では国内に1330万人の慢性腎臓病患者が存在すると推定されており、どなたでもなる可能性があります。 高血圧と慢性腎臓病の関係 高血圧がどのようにして腎臓にダメージを与え、そして慢性腎臓病を引き起こすのでしょうか。 血圧が高くなると腎臓では塩分と水分をどんどん排泄しようとして尿がたくさん作られます。しかし、高血圧の状態が持続すると腎臓の負担が増え、作ることができる尿量が徐々に減っていきます。これが腎機能低下と呼ばれる状態で、慢性腎臓病の初期段階です。 その結果、体内の血液中には不要な塩分と水分が残り、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥ってしまいます。この「腎臓がダメージを受けることで血圧が上がり、さらに腎臓の機能を低下させる」というサイクルを繰り返し、慢性腎臓病が進行します。 慢性腎臓病の原因 慢性腎臓病の原因には様々なものがありますが、特に高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病と深く関係しています。また、加齢による腎機能低下も大きな原因の1つです。 ・高血圧 ・脂質異常症 ・糖尿病 ・加齢 慢性腎臓病の症状 慢性腎臓病の初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると息切れや倦怠感、むくみといった症状が現れます。 ・息切れ ・倦怠感 ・むくみ このような症状がみられた場合、自分の腎臓が正常に機能していない状態であるため治療が必要になります。 慢性腎臓病の治療 ここでとても大切なことをお伝えします。残念ながら慢性腎臓病で徐々に低下してしまった腎機能を完全に元に戻す治療法はありません。慢性腎臓病と診断された場合に行う治療には大きく分けて、進行を抑える治療、そして悪化した腎機能を人工的に維持する治療の二つになります。 ①投薬治療 まず、進行を抑える治療ですが、こちらは慢性腎臓病の原因となった生活習慣病に対する投薬治療になります。具体的には、高血圧をお持ちの方であれば降圧薬という薬を内服することが一般的です。 ②腎代替療法 次に、腎機能を人工的に維持する治療ですが、こちらは腎代替療法(血液透析や腹膜透析など)と呼ばれる治療になります。先ほど紹介したような息切れや倦怠感、むくみといった症状を伴う場合にこのような治療が必要になる可能性があります。 慢性腎臓病を予防するには? 慢性腎臓病と診断された場合、低下している腎機能を元の健康な状態に戻すことはほぼ不可能ですので、そもそも慢性腎臓病にならないようにすることが大切になります。 食生活を見直す 慢性腎臓病にはさまざまな原因がありますが、そのなかでも高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は重要な原因とされています。これらの疾患を予防するために最も大切なことは、バランスの取れた食生活を送ることです。 日々の食事では炭水化物、タンパク質、脂質といった三大栄養素が大部分を占めており、現代の日本人は特に、炭水化物や脂質を摂りすぎる傾向にあります。このような食生活を続けてしまうと肥満になり、やがて糖尿病や脂質異常症を発症する恐れがあります。摂取する炭水化物や脂質の割合を減らしつつ、タンパク質をしっかり摂ることを意識しましょう。 さらに、高血圧を防ぐためには、塩分を控えた食事も大切です。高血圧や慢性腎臓病を予防するための適切な塩分量は1日当たり6g未満とされています。 ところが、日本人が1日に摂取している塩分量の平均値は「令和元年 国民健康・栄養調査の概要(参照)」によると、男性が10.9g、女性が9.3gであり、目標値を大きく上回っています。平均すると1日当たり3.3gの減塩が必要となります。 血圧計測でコントロール また、血圧については家庭用の血圧計などを用いることで簡単にチェックすることができるため、日ごろから計測することをおすすめします。日々血圧を意識しつつ、生活習慣の改善だけで下がりきらない場合には内科のある病院を受診し、降圧薬を服用しながら適切な値にコントロールする必要があります。 健康診断を受ける 慢性腎臓病を早期に発見するためには定期的に健康診断を受けることが大切です。 慢性腎臓病の初期段階では、腎機能の低下を生じていても自覚症状がみられない場合がほとんどです。そのため、早期発見のためには健康診断の血液検査で血清クレアチニン値や血中尿素窒素など、腎臓の機能に関わる項目をチェックしましょう。 これらの項目が異常と判定された場合には慢性腎臓病の可能性がありますので、早めに内科を受診し、早期の検査をおすすめします。 まとめ・慢性腎臓病を防ぐために、予防と早期診断が大切! 高血圧の状態が長く続くと徐々に腎臓の機能が下がり慢性腎臓病を発症してしまいますが、早期に発見され適切な治療を行うことで進行を防ぐことができます。まずは高血圧にならないこと、そして健康診断などで腎機能低下を早期に発見し、適切な治療を行うことが大切になります。 ぜひとも健康な生活習慣を心がけ、腎機能低下がみられた際には早期の内科受診をお願いします。 参考文献 エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018 令和元年 国民健康・栄養調査の概要 高血圧治療ガイドライン 2019年版 ▼こちらもあわせてお読みください。 ▼茗荷谷地域にお住まいの方は「みらいメディカルクリニック」様へのご相談もおすすめです。
2024.04.30 -
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むち打ち症(頚椎捻挫)を早く治すために注意したいこと むち打ち症(頚椎捻挫)を早く治すために注意することは大きく分けて3つ有ります。今回は、この3つの注意点に対して詳しく解説していきます! 早く治すための注意点 ・受傷したらすぐに病院へ行きましょう ・急性期(症状で変わりますが受傷から約2週間くらい)は安静に しましょう ・急性期を過ぎたら痛みが出ない範囲で首や肩周りを動かしていきましょう むち打ち症(頚椎捻挫)とは? むち打ち症について解説していきます。むち打ち症は正式には頚椎捻挫といい、自動車の追突事後やスポーツ中の衝突により首が過剰に動き、首の筋肉や靭帯に損傷が起こることです。それらの症状について詳しく見ていきましょう。 むち打ち症の主な症状 ・首や腕の痛み ・腕の痺れ・頭痛 ・耳鳴り・吐き気等 ・足の感覚異常 ①首や腕が痛い(頚椎捻挫型) 自動車の交通事故やスポーツでの衝突の際に首の周りの筋肉や靭帯が引き伸ばされ、首周 りの組織(軟骨や椎間板)に損傷が生じてしまいます。首や腕の痛みの他に肩こり、頭痛 などもこの症状に含まれます。 ②腕の痺れ(神経根症状型) 自動車の交通事故やスポーツの衝突により首のから出ている神経が圧迫され脳からの指令 が伝わらなくなり、手指、手、腕の痺れや筋力低下が起こります。 ③頭痛・耳鳴り・吐き気等(バレ・リーウー型) 首の痛みと共に、頭痛・耳鳴り・吐き気・難聴・視力低下・飲みにくい等の症状が起こる タイプです。自動車事故やスポーツの衝突により自律神経の働きに異常が生じて起こるも のです。事故後の安静(急性期の対応)が不十分だと起こりやすいと言われています。 ④足の感覚異常(脊髄型) 足の痺れや感覚異常が、首の症状よりも強く起こるタイプです。自動車事故やスポーツの 衝突により脊髄が損傷されるため、足の症状と場合によっては排尿や排便がしづらくなる こともあります。 むちうち症(頚椎捻挫)の対処方法 受傷してしまった後の対処方法について解説します。 ①受傷後、すぐに病院に行くことをおすすめします。 受傷してしまった直後は あまり症状を感じていなくても時間が経ってから急速に症状が出現してくる事も有りま す。また、受傷後すぐ(急性期)は首に負担をかけないことが望ましいため、場合によっ ては頚椎カラー(首を固定するもの)の装着が必要なこともあります。 その他鎮痛剤の処方をしてくれることもあるため、まずは病院を受診しましょう。 ②受傷後2週間ほどは激しい運動は控えましょう 先ほども解説した通り首の筋肉や靭帯に損傷が起こっている状態の為、この時期は症状が軽いケースでも安静にする事が大切です。むやみに動かし過ぎると症状を長引かせる原因になることもある為注意しましょう! ③痛みが落ちつけば痛くない範囲で動かそう 今 まで解説してきたことも大事ですが、これから紹介することがとても大切になってきます。痛みが落ちつき痛みが出ない範囲で首や肩周りを動かしましょう。 実はこの頚椎捻挫(むちうち症)でとても多いのが、受傷から6ヶ月以上経っても 『強い痛みは無いけど首や肩周りが突っ張る』『なんとなくスッキリしない』といった、 慢性症状が残ってしまうケースです。 何故、慢性化してしまうかというと、自動車事故やスポーツ中の衝突により起こった筋肉の緊張した状態が治っていないからです。筋肉や靭 帯の損傷は安静にする事で治りますが、筋肉の緊張状態は安静にしていることでどんどん 固まってしまい緊張状態が強くなってしまいます。 その為、適切に動かしていくことが大切です。基本的に首や肩周りの筋肉が緊張している状態にある時は肩がすくんでいて巻き肩になっていて、顔が前に出て、顎が上がっている状態のことが多いです。 デスクワーク やスマホを見る習慣が多い現代人のほとんどがこういった姿勢となってしまっています。 この姿勢を治すためには肩甲骨や胸椎(両方の肩甲骨の間にある背骨)を動かすような体 操や顎を引く運動、胸の前の筋肉をほぐすストレッチをすることが大切です。 こうした運 動やストレッチをしておくことで症状の慢性化を防ぐことができます。 病院受診時の流れ 次に一般的な病院での受診時の流れについて解説していきます。 まず、病院といってもどんな病院に行けば良いのか疑問に思う方もいるかと思いますが、一般的には整形外科で す。また整形外科といってもリハビリテーション専門のスタッフ(理学療法士や作業療法士)がいない整形外科もある為、できれば理学療法士や作業療法士のいる整形外科へ行くのがおすすめです。 ①診断(以下を聴取します) ・医師の診断、レントゲンやMRI撮影を行う ・骨折や脱臼、脊髄への影響等を確認 ・身体所見(首の可 動範囲、痛み、筋力、感覚異常)を。 ②安静 ・患部の安静 ・投薬 症状が軽度であれば投薬や患部の安静 ・症状が強い場合は頚椎カラーをして患部の安静をサポート ・どちらにせよ患部の安静をして急性期症状を落ち着かせる必要がある ③リハビリテーション ・骨折や脱臼がない場合 ・早期からリハビリテーションで痛みがない範囲で動かす ・医師からの指示で理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションを実 ・理学療法士や作業療法士が在中していない場合、温熱療法や牽引療法、電気治療も処方 まとめ・むち打ち症(頚椎捻挫)を早く治すために注意したいこと ここまで頚椎捻挫(むち打ち症)解説してきましたがいかがでしたか。 おさらいになりますが、まずはむち打ち症(頚椎捻挫)を受傷してしまったら、直ぐに病院を受診して下さい。受傷直後は興奮状態で痛みを感じないこともありますが数日経ってから症状が出る場合もありますので早めの受診をおすすめ致します。 次に患部の痛みが落ち着くまでは安静を心がけましょう。首まわりの組織が損傷している事もある為、無理に首を動かすと組織の回復を遅らすこともあり、仏痛緩和を阻害してしまう原因となってしまいます。 最後に患部の痛みが落ち着いてきたら痛みの出ない範囲で首や肩甲骨周りを動かしていきましょう。 動かさない期間が長くなってしまうと筋肉が固まってしまい、首や背中の重だるさや 頭痛の原因となってしまい、慢性化することもある為、十分気をつけましょう。むち打ち症は、頚椎捻挫 といい、誰にでも起こる可能性がある怪我な為、この記事を読んで適切な対応を取ることの手助けになれれば幸いです. ▼以下も参考にしていただけます むちうち症(頚椎捻挫)の治療期間と治療方法について
2024.04.29 -
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むちうち症(頚椎捻挫)は、交通事故やスポーツ中の事故などにより、首の周りの筋肉や靱帯に急激に力がかかったことで痛みが生じる状態をいいます。 軽症なものであればネックカラーを装着しての安静処置やリハビリなどで徐々に軽快してきます。しかし、重症なものだと慢性的な痛みと長期間付き合っていく状態になりかねません。 そこで本記事では、むち打ち(頚椎捻挫)の治療方法と治し方を中心に、完治期間についても医師の観点から解説します。 むち打ち症(頚椎捻挫)の症状 むち打ち症の症状は、首を動かしたときの痛み・頭痛・倦怠感(だるさ)・耳鳴り・やめまい・手や腕のしびれと多岐にわたります。 中でも代表的な症状は首を動かしたときの痛みです。筋肉や靱帯に不自然な強い力がかかったことで炎症し痛みが生じます。 頭痛は脳が強く揺さぶられたことによる脳振盪症状や、頭・首・背中につながっている僧帽筋という筋肉が損傷し、全体の痛みを頭痛として捉えることもあります。 倦怠感や耳鳴り、めまいといった症状も脳振盪が原因とされ、首の損傷がさまざまな症状を引き起こします。 むち打ち症(頚椎捻挫)4つのタイプ 上記のとおり、むち打ち症には4つのタイプがあります。 最も多いのは捻挫型で、首や肩の痛み・動かしづらさを発症します。頚椎捻挫の約80%程度がこのタイプです。 神経根型は、腕や手のしびれや痛みが出現するタイプです。頸髄の神経根が筋肉や骨で圧迫されることで発症します。首を動かしたり、咳やくしゃみをしたりすると、強い痛みやしびれが出現します。 脊髄型は、下肢のしびれや知覚異常などを引き起こすタイプです。 頚椎捻挫だけでなく、脊椎椎間板ヘルニアなどが合併した場合に分類される傾向にあります。重度の場合、歩行障害や排尿困難・排便困難といった膀胱直腸障害を発症します。 Barre-Lieou型(バレー・リュー型)は首の痛みだけでなく、めまい・耳鳴り・難聴・視力障害などさまざまな症状が起こるタイプです。不眠症や不安症といった精神的な症状が合併するケースもあります。 むち打ち症(頚椎捻挫)の治療方法 交通事故やスポーツで強い衝撃が首にかかって頚椎捻挫を起こした場合、まずは意識障害や嘔吐・手足のしびれや麻痺、下半身の症状がないかを確認します。 意識障害や嘔吐がある場合、脳にも強く力がかかって調子が悪くなっている可能性があるため安静にし、必要に応じて脳神経外科の受診をします。 手足のしびれや麻痺・下半身に症状がある場合は、頚部に強い力がかかって骨の変形や骨折もありえますので、首をなるべく動かさないようにして、安静にして病院を受診します。 病院を受診した場合、まずは骨折がないかレントゲンやCTを行い確認します。もし骨折や変形があれば医療機関で治療を行い、骨折や変形がなければ、頚椎捻挫と診断されます。 頚椎捻挫は炎症が重症にならないよう、受傷直後から1〜2日程度は冷やして安静にすることが大切です。 急性期(受傷時)の治療 ・安静を保つ ・炎症が重症にならないように注意 ・冷やして安静にする(受傷直後から1~2日程度) 急性の炎症が落ち着いたら、筋肉の萎縮や硬直を防ぐためにも少しずつ動かしていきましょう。最初はストレッチや可動域訓練から始め、マッサージや軽い運動を行います。また、並行して痛み止めの内服や湿布薬を使用していきます。 急性期後の治療 ・ストレッチ(可動域訓練) ・マッサージ ・日常的な普段通りの生活 ・痛み止め(内服) ・湿布薬 ・牽引療法や温熱療法 ・ハビリテーション 急性期後は整形外科クリニックなどで、牽引療法や温熱療法や通院リハビリテーションを行うケースもあります。慢性化する場合は、さらに鍼治療・漢方薬・精神療法・認知行動療法といった、補完的な治療も必要です。 また、癒着した筋膜に生理食塩水を注入するハイドロリリースや、神経根に対して局所麻酔を投与してしびれや痛みを軽快する神経ブロックなどもペインクリニックなどで検討されます。 むち打ち症(頚椎捻挫)の完治期間 症状が軽快するまで通院を行うことが一般的です。軽症であれば1カ月弱で改善しますが、数カ月通院を必要としたり場合によっては慢性化するケースもあります。 特に交通事故やスポーツ外傷の場合は保険も関わってきますから、医師とよく相談し、必要に応じて積極的な通院が必要です。 軽いものであれば自然に軽快しますが、むち打ち症(頚椎捻挫)が完治しないうちにまた強い衝撃が加われば頚椎捻挫が重症化する可能性もあります。 とくにスポーツ外傷では軽快するまでむち打ち症になりかねない激しい運動への復帰は控えましょう。 もし、むち打ち症(頚椎捻挫)後、症状がこれ以上改善しない場合は、症状固定と判断され、行為障害診断書を発行したのち後遺障害等級の認定を受けることも検討する必要があります。 後遺症は以下の通りです。 多くの場合、14級や12級で認定します。 むち打ち症(頚椎捻挫)後遺障害等級 1級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に要介護 2級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護 3級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、生涯働けない 5級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特とくに軽易な労務以外働けなくなった 7級 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外働けなくなった 9級 神経系統の機能または精神に障害を残し、就ける仕事の程度が制限された 12級 局部に頑固な神経症状を残す 14級 局部に神経症状を残す *症状固定となると、治療費、休業補償などは打ち切られますが、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料などが受け取れるようになります。弁護士や保険会社とよく相談の上、医師に認定を相談してみてください。 *症状固定とは ケガや病気を治療する上で治療を続行したとて現在の症状以上の改善を見込むことが難しいと判断された状態を指します。 まとめ|むち打ちを早く治すなら医師の指示を守ろう むちうち症(頚椎捻挫)は交通事故やスポーツ外傷で起きてしまうことが多いです。慢性化して日々痛みに悩まされることにもなりかねません。 また、むち打ち症には4つのタイプがあり(捻挫型、神経根型、脊髄型、Barre-Lieou型)、それぞれ異なる症状を示します。 治療方法としてはまず安静にし炎症を抑えることが重要です。その後ストレッチやマッサージ、湿布薬の使用などを行い、必要に応じて整形外科での治療を受けましょう。 治療期間は症状の重さによって異なりますが、一般的には数週間から数カ月かかることがあります。慢性化した場合は、補完的な治療や後遺障害の認定を受けることも考えねばなりません。 むち打ち症状を疑う場合は最寄りの整形外科医を受診するか、当クリニックにご相談ください。ちょっとした悩みでも真摯に対応いたします。 文献 病気がみえる11:運動器・整形外科 須田万勢、小林只 痛み探偵の事件簿 炎症?非炎症?古今東西の医学 厚生労働省 身体障害者手帳HP
2024.04.29 -
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- 内科疾患
高血圧の治療において薬は中心的な役割を果たしています。 しかし、その効果は摂取する食品や飲み物によって大きく左右されることがあります。 特に、グレープフルーツが薬の代謝に影響を与えることは広く知られていますが、他にも多くの食品が薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。その中でも、今回は高血圧の薬との飲み合わせに注意したい『柑橘類』について、またその訳についても解説していきます。 グレープフルーツと降圧薬を一緒にとってはいけない理由 グレープフルーツと一部の薬を一緒に摂取することは避けるべきとされています。 以下では、グレープフルーツの成分と高血圧の薬剤との相互作用のメカニズム、影響を受ける薬剤のタイプを交えながら解説します。 相互作用の科学的背景 グレープフルーツ及びグレープフルーツジュースに含まれる特定の化学成分(主にフラノクマリン類)が、人体内で薬物を分解する酵素(特にCYP3A4というシトクロムP450酵素)の働きを阻害します。 この酵素は、薬物をより無害な形に分解し、体外へ排出するために重要です。グレープフルーツによるこの酵素の阻害は、薬物の体内での濃度を予期せず増加させることがあり、副作用のリスクを高めることがあります。 グレープフルーツで影響を受ける薬剤 グレープフルーツが影響を及ぼす薬剤には、以下のようなものがあります。 ・高血圧治療薬(例:カルシウムチャネル拮抗薬 フェロジピン) ・コレステロール低下薬(例:スタチン類) ・抗不安薬 ・免疫抑制剤 ・抗アレルギー薬 これらの薬剤は、CYP3A4酵素によって代謝されるため、グレープフルーツやグレープフルーツジュースとの同時摂取は特に注意が必要です。 注意点 グレープフルーツと一部の薬物との間には重要な相互作用が存在します。これは、薬の効果を不当に強化し、副作用のリスクを増大させるため、注意が必要です。健康を守るためにも、薬を服用している場合は、グレープフルーツジュースの摂取に関して医師や薬剤師と相談することが大切です。 グレープフルーツ以外にも注意すべき柑橘類 グレープフルーツ以外にも、高血圧治療薬と相互作用を起こしやすい柑橘類があります。 フラノクマリン類を含む柑橘類は、特定の薬剤、特に高血圧治療に用いられる拮抗薬との相互作用により、その薬剤の血中濃度を意図しないほど高めることが報告されています。 さまざまな柑橘類に含まれるフラノクマリン類の量を調べた研究の結果が以下にあります。 (下表参照) この表での「DHB換算量」とは、簡単にいうと「フラノクマリン類の量がどれくらいか」ということになります。 引用) 酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング.医療薬学.2006;32(7):693-699. p696 果汁と果皮でのフラノクマリン類含有量は異なります。 果汁の場合 果汁ではスウィーティー、メロゴールド、バンペイユおよびレッドポメロがグレープフルーツと同程度の結果でした。 そして、フラノクマリンなどの量が増えるとCYP3A4の活性が阻害(働きが妨げられること)される強さの度合いはほぼ比例すると報告されています。 そのため、スウィーティー、メロゴールド、バンペイユおよびレッドポメロはグレープフルーツと同様に、フラノクマリン類による相互作用に注意が必要であると考えられます。ダイダイ、ブンタン(ザボン)についてはやや少ないですが、これらも注意が必要です。 なお、スウィーティーとレッドポメロはすでに生物の体内でもグレープフルーツと同様にCYP3A4の働きを妨げることが報告されていますが、メロゴールドについてはまだ報告されていないとされています。 果皮の場合 また、果皮についてはメロゴールドとスウィーティー、甘夏みかんおよびサワーポメロがグレープフルーツに近い結果でした。さらに、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で、果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかりました。 相互作用の心配が少ない柑橘類 一方で、レモンや日向夏、ネーブルオレンジ、スウィートオレンジ、温州みかん、ポンカン、イヨカン、デコポン、ゆず、カボス、すだち、キンカン、バレンシアオレンジといった柑橘類については、少なくとも果汁にフラノクマリンはほぼ含まれていない(N.D.:未検出)ので、CYP3A4との相互作用の心配は少ないのではないかと考えられます。 しかし前述したように、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかっています。果汁については心配の少ない柑橘類でも、果皮については、注意が必要です。 柑橘類と降圧薬の相互作用 血圧を下げる作用を持つ薬剤(降圧薬)の一群として、『カルシウムチャネル拮抗薬』という種類の薬があります。 なお、その他の降圧薬としては、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARBs)や、α遮断薬、β遮断薬、利尿薬などがあります。 ・カルシウムチャネル拮抗薬 ・アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARBs) ・α遮断薬 ・β遮断薬 ・利尿薬 カルシウムチャネル拮抗薬は、血管を拡張させることで血圧を下げる働きをします。 しかし、グレープフルーツなどに含まれるフラノクマリン類との相互作用により、これら薬剤の効果が強まり、低血圧やめまい、倦怠感などの副作用を引き起こすリスクが高まる可能性があります。 グレープフルーツとカルシウム拮抗薬の関係 例として、グレープフルーツにより相互作用を受ける主な薬物についてご紹介します。 ・カルシウム拮抗薬(フェロジピン) →高齢者で収縮期血圧、拡張期血圧が低下、心拍数がわずかに上昇 ・カルシウム拮抗薬(二ソルジピン) →収縮期血圧、拡張期血圧が低下、頭痛 柑橘類をとる際の注意点 先ほど述べたように、柑橘類の果汁よりも「果皮」にフラノクマリンが多く含まれていることが分かっています。そのため、果皮の果物漬けや、マーマレードなどの加工食品を食べる際には、十分な注意が必要になると考えられます。 ただし、グレープフルーツ由来のフラノクマリンなどの成分は小腸のCYP3A4に数日間影響を与えます。 そのため、降圧薬を飲む場合には、グレープフルーツジュースで薬を飲むことを避けるだけでは不十分と考えられます。日常生活の中で、グレープフルーツジュースだけでなく、果汁やサワー、マーマレードなどの加工食品を摂取するのは避けた方が良いでしょう。 ミックスフルーツジュースを飲む際も、グレープフルーツが含まれているかどうかを確認する必要があります。 レモンやオレンジ、みかんは問題ないでしょう。 それでもグレープフルーツジュースが飲みたいとき ここまで述べてきたように、CYP3A4で代謝される薬物と、グレープフルーツが相互作用を起こします。ただし、もともとCYP3A4による薬の代謝能ならびにグレープフルーツの影響にはかなりの個人差があるということがわかっています。 そのため、グレープフルーツと薬物との相互作用がほぼ認められない人もいますし、かなり影響が出る人もいます。 そのため、薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせについては、専門家と相談し、ご自身の健康をよく観察しながら対応することが大切だと考えられます。 代替となる安全な飲み物や食品 グレープフルーツや特定の柑橘類が持つ特定の薬剤との相互作用は、高血圧治療薬を含むさまざまな薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。 しかし、柑橘類にはビタミンCをはじめとする、健康的な食生活にとって大切な食品であるという側面もあります。 そこで、柑橘類のように高血圧の薬との相互作用を避けるため、他のビタミンCが豊富な食品への代替が推奨されます。 ビタミンCは抗酸化作用を持ち、免疫機能のサポートやコラーゲンの生成に必要な栄養素です。 おすすめの代替食品 キウイ:キウイはビタミンCが豊富であり、1個のキウイで1日のビタミンC推奨量のほぼ100%を提供します。また、抗酸化物質、食物繊維、ビタミンKも豊富に含まれています。 赤ピーマン: 野菜の中でも特にビタミンCが豊富で、グレープフルーツや柑橘類を避ける必要がある人にとって優れた選択肢です。サラダや料理の彩りも良くしてくれ、栄養も豊富なためおすすめです。 医師と薬剤師からのアドバイスを参考に判断しよう 薬剤師や医師は、高血圧薬との飲み合わせに関する専門的な知識を持っています。 薬を服用中の患者は、新しい食品やサプリメントを摂取する前に必ず医療の専門家に相談しましょう。 例えば、主治医である血圧の診療に長けている医師や、治療薬に精通した薬剤師などは、自分の状況に合ったアドバイスをくれるでしょう。 高血圧の治療中に、自己判断で、新しいサプリメントなどを飲み始めることはあまり勧められません。 摂取すべきでない食品や飲み物、サプリメントを避けることで、高血圧の治療効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小化できるでしょう。 まとめ・グレープフルーツ以外にも柑橘類には要注意 今回の記事では、グレープフルーツやそれ以外の柑橘類と高血圧治療薬の相互作用について解説しました。 薬との飲み合わせが気になるけど、それでも柑橘が食べたいという時があると思います。上記のように、グレープフルーツ以外にも相互作用を起こしやすい柑橘類もありますが、その心配の少ない柑橘類もあります。しかし、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかっています。果汁については心配の少ない柑橘類でも、果皮については、注意が必要です。柑橘類を選ぶ際には、この記事の内容をご参考にしていただければ幸いです。 こうした知識は、安全な医薬品の使用と健康管理のためにとても重要です。 日々の生活の中で、この情報を念頭に置き、安全に食品と薬を併用できるようにしましょう。 この記事を通じて、高血圧治療薬を服用中の方々が、より安全に、効果的に治療を続けられるよう、日々の食生活における注意点について理解を深めることができれば幸いです。 参考文献 Bailey, D. G., Malcolm, J., Arnold, O., & Spence, J. D. (1998). Grapefruit juice-drug interactions. British Journal of Clinical Pharmacology, 46(2), 101-110. 酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング.医療薬学.2006;32(7):693-699. p696 3.高血圧 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会 グレープフルーツと薬物の相互作用 - 「 健康食品 」の安全性・有効性情報 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 健康豆知識(果物ジュースと薬の飲み合わせ)公益社団法人日本薬学会 Chambial S, Dwivedi S, Shukla KK, John PJ, Sharma P. Vitamin C in disease prevention and cure: an overview. Indian J Clin Biochem. 2013 Oct;28(4):314-28. ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.04.25 -
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高血圧の原因に女性ホルモンの影響が?更年期高血圧と対策 高血圧は生活習慣病の一つとして広く知られています。 しかし、高血圧の裏に別の病気が隠れていることも少なくありません。 思い当たる節がないのになぜか血圧が高いと思ったことは?その高血圧は、更年期によるものかもしれません。 40〜50代の女性が注意すべき更年期高血圧! 更年期は、女性ならば誰しもが通る道です。そして、更年期の変化によって生じる高血圧を『更年期高血圧』と呼びます。 これまで健康診断に引っかかることもなかったのに急に血圧が上がったり、生活習慣には気をつけているのに血圧を測ったら高かった、などということがあれば要注意!高血圧を放置しておくと、心臓病や脳血管障害に繋がることも。だからこそ、病態を理解し、きちんと対策を行うことが大切なのです。 女性ホルモンの減少によって生じる更年期障害 更年期とは、閉経前後それぞれ5年間を合わせた10年間を指します。日本人の平均閉経年齢は50歳とされていますが、早い人では40代前半、遅い人では60歳手前で迎えることもあります。 女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。更年期になると卵巣機能が低下し、それに伴い女性ホルモンも減少します。このうちエストロゲンの減少が、更年期障害の発症に大きく関わっていると考えられています。ホルモンバランスを保てなくなったことに対して、脳がそれを補おうと必死に身体に様々な命令を送り、それが更年期症状として現れてしまうのです。 加えて、加齢による身体的影響、性格などの心理的影響、そして家庭や仕事によるストレスが複雑に絡み合い、個々の症状に現れてきます。症状が軽度で済む人もいれば、日常生活に支障が出るくらい重い症状を呈する人もいます。軽度の場合は更年期症状、症状が重くなると更年期障害となります。 多岐にわたる更年期症状ですが、高血圧以外には以下のようなものが挙げられます。 ・血管運動に関わる症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸、息切れ、むくみなど) ・精神症状(頭痛、不眠、不安感、イライラ、抑うつ、無気力など) ・消化器症状(便秘、下痢、胃の不快感、胸焼け、吐き気など) ・皮膚症状(かゆみ、湿疹など) ・運動器に関わる症状(肩こり、腰痛、背中の痛み、関節痛など) ・そのほか(疲労感、排尿トラブル、不正出血など) それでは、どうして更年期になると血圧まで影響を受けてしまうのでしょうか? 更年期障害と高血圧の関係性 日常生活の中で、例えば運動中は血圧は上がり、運動後リラックスしている時は血圧が下がります。このように血圧の変動がある中でも、私たちの身体は常に一定の血圧を保持できるよう機能しており、高くなりすぎず、低くなりすぎないように調整されているのです。エストロゲンは、その調整因子の一つであり、血管を広げて血圧を下げる働きをします。よって、このエストロゲンが減少すると、血圧は下がりにくくなってしまうのです。 さらにもう一つ、自律神経の乱れも更年期高血圧に大きく関わる因子です。 自律神経には、交感神経と副交感神経があります。活発な時や緊張状態の時には交感神経が優位となり、血管が収縮して血圧が上昇します。逆に休んでいる時や就寝中は副交感神経が優位となり、血管は拡張して血圧が下がります。このように血圧調整にとても大切な自律神経ですが、女性ホルモン低下に追いつけないことでパニックになった脳は、様々な命令を身体に送る中で、自律神経も乱してしまうのです。自律神経の乱れは血圧変動のみならず、上記に述べたような精神症状や身体症状の原因にもなっています。 このようにエストロゲンの減少と自律神経の乱れは、本来私たちに備わっている血圧調整の歯車を狂わせ、結果的に更年期高血圧を引き起こすのです。 更年期高血圧の特徴とは? 更年期高血圧の特徴は、大きく2つあります。 特徴①40〜50代の女性に生じる まず一つ目の特徴として、更年期に生じる高血圧のため、40〜50代の女性にみられます。 それゆえ、更年期を過ぎると血圧も正常化する人もいます。しかし、加齢とともに血管の老化や自律神経の働きが低下し、更年期高血圧以降もそのまま高血圧に転じてしまう人も多くみられます。 特徴②血圧が不安定になり上がりやすくなる 二つ目の特徴は、血圧が不安定になることです。 不安やイライラなどの精神的な要素も加味され、ちょっとしたことで血圧が上がりやすくなっています。 更年期高血圧に!今日から自分でできる対策 今日からご自身で始められる、更年期高血圧の対策をいくつかご紹介いたします。 血圧の管理 まずは血圧の測定を定期的に行い、その血圧上昇が一時的なものなのか、あるいは血圧が高い状態がずっと続いているのか、そしてどのような時に高くなるのか確かめることが大切です。 ①血圧上昇が一時的なものなのか ②血圧が高い状態がずっと続いているのか ③どのような時に高くなるのか 外出時は精神的・身体的・環境的因子が血圧に影響することも多いため、自宅での血圧測定を推奨します。 定期測定は起床時と就寝前の2回、そしてめまいや動悸など、上記の更年期症状が出た際にも血圧を測定し、血圧の推移とともにどのような状況で血圧が上がったのかを書き留めておくと良いでしょう。自分の状況を把握するだけでなく、医師からの診察の際にも役立ちます。 生活習慣の見直し 次に、生活習慣の見直しも行いましょう。 冒頭で述べたとおり、塩分過多は高血圧の原因として最も多いとされています。また、肥満は動脈硬化を起こし、結果的に高血圧を生じさせます。 近年は特に、インスタント・冷凍食品の改良化や食事のデリバリー事業などが進み、便利な時代となりました。しかし、既製品や外食は塩分量とカロリーが高くなる傾向にあります。減塩調味料の使用や野菜多めの食事を心がけるようにしましょう。 運動習慣を取り入れる 仕事や家事に追われて、なかなか運動の時間をとるのが難しい方もいらっしゃいます。 1日の中で、少し早起きしてウォーキングをしてみる、パソコンで10分のエクササイズ動画を真似してみる、休日にスポーツセンターに行ってみる、一駅分歩いてみる、など小さなことで構いません。 ・ウォーキング ・10分簡易エクササイズ ・休日にスポーツセンターに行く ・一駅分歩いてみる 自分のできる範囲内で何か始めてみましょう。運動するとイライラした気持ちも収まり、身も心もスッキリします。 睡眠時間を十分に取る 睡眠不足は交感神経を刺激し、高血圧を引き起こします。 しかし更年期障害の一つに不眠もあり、夜なかなか寝付けない人もいるかと思います。 就寝時間の2時間前までに食事を摂り終える、布団に入ったらスマートフォンはいじらない、夜にカフェインやお酒は控える、リラックス効果のある香りや音楽をつけてみる、などの工夫をおすすめします。 ・就寝時間の2時間前までに食事を摂り終える ・布団に入ったらスマートフォンはいじらない ・夜にカフェインやお酒は控える ・リラックス効果のある香りや音楽をつける ここまでの対策は自身でできることですが、やはり重症化予防の鍵は早期受診となります。 高血圧を適切に治療しなかった場合、心臓や脳の血管に障害を生じ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がります。こうならないためにも、適切な治療を受けることが必要です。 循環器内科を受診しましょう 更年期症状の改善に関しては婦人科、高血圧の改善に関しては循環器内科が専門となります。今はオンライン診療やオンライン医療相談も広まってきていますので、コロナ以降病院から足が遠のいた方や忙しい人も医師に気軽に相談できます。気になる方はぜひ調べてみてください。 治療法としては、上記に述べたような生活指導の上、高血圧に対しては降圧薬、更年期症状に対しては漢方薬や抗精神薬の処方、そして必要な場合にはホルモン療法なども検討されます。 どの治療法になるかは、患者さん一人一人に合った方法を医師と相談して決めていくこととなります。 まとめ・高血圧の原因に女性ホルモンの影響が?更年期高血圧と対策 更年期高血圧は、更年期の身体の変化に伴って生じるものです。 更年期を過ぎると血圧が元に戻ることもありますが、多くの場合は加齢の変化と相まって高血圧のままとなります。命を脅かす病気に発展しないよう、血圧のコントロールを行うことが大切です。 毎日の生活習慣を改善し、早期に病院を受診しましょう。このコラムがご参考なれば幸いです。 参考文献 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019. ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.04.22 -
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高血圧の予防と改善!高い血圧を下げるには食事・運動・薬でコントロール! 高血圧を放置すると、脳卒中・心疾患・腎臓病など命に関わる病気に発展するリスクがあります。 それにもかかわらず、国内で4300万人と推計されている高血圧罹患者のうち、適切に血圧がコントロールされているのはたった3分の1といわれています。残りの3分の2の方はコントロール不良あるいは未治療、その半数は自分が高血圧であることに気づいてすらいないのです。 高血圧は、気がつかない間に重大な病気を引き起こし得るため「サイレントキラー」とも呼ばれています。 血圧を予防・改善するには何をすれば良いのでしょうか。鍵となるのは、食事や運動の見直しと適切な薬の使用です。 本記事では、高血圧の原因や症状、基準値などの基本的な情報とともに、効果的な対策法を分かりやすく解説していきます。 高血圧の原因:何が血圧を上げるのか 高血圧には、原因別に「二次性高血圧」と「本態性高血圧」の2つがあります。 二次性高血圧 二次性高血圧は、特定の病気が原因で血圧が上昇するケースを指します。 その病気を治療することで、高血圧を改善することが期待できます。 本態性高血圧 本態性高血圧は、複合的な原因で起こる高血圧のことです。 原因として、体質や遺伝的な要素に加え、不適切な食事・肥満・運動不足・喫煙などの生活習慣が関係しています。特に日本人は塩分をとりすぎやすく、血圧上昇に大きな影響があります。血圧を下げるためには減塩をはじめとした生活習慣の改善に取り組むことが必要です。 二つの高血圧のうち、圧倒的に多いのは本態性高血圧です。この記事でも主に本態性高血圧について取り上げていきます。 高血圧診断の基本:血圧の基準値とは 高血圧の診断は、診察室と自宅それぞれの血圧測定で行います。 まず、診察室血圧が【収縮期血圧140/拡張期血圧90mmHg以上】であれば自宅で血圧を測定します。 自宅の血圧が135/85mmHgであれば高血圧の確定診断となります。自宅での血圧が測定できない場合は、診察室の血圧だけでも「高血圧」と考えます。 では、基準値より低ければ正常かというと、そうではありません。 「正常血圧」は、診察室で測った血圧が120/80mmHg未満、自宅で測った血圧が115/75mmHg未満の場合を指します。 高血圧でなくても、正常血圧より高いグレーゾーンがあるのです。 病院での測定値で120〜139/80〜89mmHg、家庭血圧で115〜134/75〜84mmHgの場合が、以下のグレーゾーンに該当します。 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019 高血圧の診断を満たさなくとも、血圧が高くなるにつれて脳卒中や心筋梗塞などの「脳心血管の疾患」が起こりやすいのです。また、グレーゾーンの方は生涯のうちに「高血圧」の基準を満たす可能性も高くなります。たとえ診断に至らなくても、血圧が高めの方は対策をとることをおすすめします。 また、自宅での血圧が高血圧に該当しなくても、診察室血圧のみが高血圧の基準を満たす場合は「白衣高血圧」といいます。白衣高血圧の方は高血圧でない方と比べて、将来的に脳心血管の病気を起こすリスクが高く、要注意です。 自宅血圧測定の方法:計測する時間帯や回数 自宅で血圧を測定することは高血圧の診断に重要ですが、それ以上に治療においても重要です。家庭血圧が降圧治療の一番の指標になるからです。 家庭血圧が正常範囲になることが、高血圧対策が有効と判断する重要な材料になるのです。高血圧と診断されたら、家庭血圧を毎日測って把握することが治療の第一歩になります。 では、家庭で血圧を測定するときのポイントをお伝えします。 家庭血圧測定のポイント 1日の中で血圧を測る時間帯は、朝と夜の両方が基本です。 朝は起きてから1時間以内に測ります。朝ごはんを食べる前、薬を飲む前、トイレに行った後が良いです。測定前に水分を取ることは構いません。夜は寝る前に測定しましょう。 血圧測定時は、1〜2分間じっと落ち着いてから行います。測る前に深呼吸をしてリラックスしましょう。急いで測定すると、正確な血圧が出ないことがあります。 血圧は原則的には、都度2回測定します。2回の結果はどちらとも記録しておきましょう。つまり、朝2回、夜2回、計4回測ります。 ・起床後 1時間以内に2回 ・就寝前 2回 2回測った血圧の値は、平均値で判断します。 高血圧の診断や治療の効果を判断するには、5〜7日間の血圧の平均値を用います。そのため、毎回の血圧測定毎に「高かった」「今日は下がっている」と一喜一憂することはあまり意味がありません。 家庭血圧測定で一番大事なことは、継続することです。ご自身の生活スタイルに合わせて測定時間を調整しましょう。 毎日決まった時間に測定することが望ましいですが、難しい場合は担当医師と相談しましょう。 高血圧の自覚症状:頭痛・肩こりとの関係と潜むリスク 高血圧のみでは自覚症状がないことが多いです。人によっては、血圧が高いと軽度の頭痛や肩こりなどの症状が現れることがあります。 一方で、血圧が急激に高くなることによって危険な状態に陥る場合もあります。それが、「高血圧緊急症」です。脳・心臓・腎臓・大きな血管などに障害をきたし、放置すると命に関わります。多くの場合は180/120mmHg以上の高度の血圧上昇により起こるものです。 高血圧緊急症の例として次のような疾患が含まれます。 〈高血圧緊急症の例〉 ・高血圧性脳症 ・脳卒中 ・急性大動脈解離 ・急性心不全 ・急性心筋梗塞 ・急性腎不全 とくに「高血圧性脳症」は耳慣れない言葉かもしれません。これは急激に血圧が上昇することで、脳の血流が必要以上に増加して脳が浮腫む病気です。 そのまま放置すると脳出血や昏睡状態を引き起こし、命を落とす危険性もあります。急激な血圧上昇に加えて悪化する頭痛・吐き気・嘔吐・視力の障害・意識障害・痙攣などの症状は、緊急で受診をする必要があります。 高血圧対策!生活習慣の見直しで予防・改善 高血圧は生活習慣病であり、生活習慣を見直すことは高血圧の予防・改善の第一歩です。 具体的に改善すべき点の例を以下に挙げます。 〈高血圧対策において見直すべき項目〉 ・塩分を控えめにしているか ・食事の内容は野菜・果物・魚などが中心になっているか ・運動習慣があるか ・適正な体重(BMI 25kg/m2未満)を維持できているか ・お酒を飲み過ぎていないか(エタノールで男性20-30mL/日、女性で10-20mL/日以下) ・タバコを吸っていないか このような項目の1つだけを見直したとしても、一気に10mmHgも20mmHgも血圧が下がるものではありません。2つ、3つと可能な限り複数合わせて取り組むことで、大きな効果をもたらす可能性はあります。 降圧薬を飲んでいる状況でも、生活習慣を改善することで薬を減らすことができるかもしれません。それぞれの項目は互いに関連することも多いため、まずはできることから始めましょう。 食事療法で高い血圧を下げるには 食事で血圧を下げるのに重要な見直しポイントは「減塩」と「食事の内容と量」です。また、「飲酒量のコントロール」も大切です。一つずつ解説していきましょう。 減塩について 減塩については、1日に6g未満を目標にします。 厚生労働省の令和元年国民健康・栄養調査によると日本人の1日の塩分摂取量の推定は10.1gとされています。多くの日本人にとって6g未満の塩分量の食事は、非常に薄味に感じるでしょう。 医療機関では尿検査で1日の塩分量の推定をすることができます。あくまで推定値で誤差はありますが、自分がどのくらいの塩分を取っているかを知る一つの目安になるでしょう。気になる方はかかりつけの病院や最寄りの医療機関で相談してみてください。 減塩のポイントは、出汁やスパイス、お酢などを上手に使うことです。また、漬物やハム・ソーセージなどの加工食品には食塩が多く含まれるためなるべく避けましょう。味噌汁やラーメン・うどんなどの汁は飲み干さないようにしましょう。 食事の内容と量 食事の内容としては、野菜・果物・魚を積極的に摂り、肉類など動物性の脂肪は控えめにすることが重要です。 野菜や果物に多く含まれるカリウムは、塩分に含まれるナトリウムを排出させて血圧を下げることがわかっています。ただし、カリウム摂取については腎臓病の方は制限が必要な場合もあります。通院中の方は主治医の指示に従いましょう。 肉や高脂肪の乳製品などに多く含まれる飽和脂肪酸が過多になると、血中のコレステロールが増え動脈硬化が進み血圧が上がります。一方で魚や多くの植物性油脂・ナッツなどに多く含まれる不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らし血圧を下げる効果があります。 そして、どんなに体に良い食事でも食べ過ぎは肥満のもとです。肥満は血圧上昇とも関連するため、腹八分目を心がけましょう。 飲酒量のコントロール 飲酒習慣は血圧を高くします。節酒も血圧を下げるのに有効です。高血圧がある方の飲酒量の目安は1日あたりエタノールで男性20-30mL、女性で10-20mL以下です。 〈1日あたりの飲酒量の目安:男性の場合〉 ・日本酒 1合 ・ビール 中瓶1本 ・焼酎 0.5合 ・ウイスキー ダブル(約60mL) ・ワイン 2杯 ※女性はこの半分を目安にしてください。 運動療法で血圧は下がる?有酸素運動のすすめ 運動は血圧を下げるだけでなく、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防や改善にも効果があります。 おすすめは有酸素運動です。ウォーキングやジョギング、エアロビクス、水泳など、ご自身が楽しいと感じるものが継続しやすいでしょう。 「少しきつい」と感じるくらいの運動強度で、1日30分以上行ってください。 毎日続けるのが難しい場合は、まずは週に1回でも運動習慣を作るところから始めてみてはいがかでしょうか。 薬物療法による高血圧のコントロールについて知ろう 高血圧の薬は様々な作用機序で血圧を下げます。代表的なものは以下の通りです。 〈代表的な降圧薬〉 ・ACE阻害薬、ARB:血圧を上昇させるホルモンの作用を阻害する ・カルシウム拮抗薬:血管を拡張させて血圧を下げる ・利尿薬:余分な水分やナトリウムを体外に排出する ・β遮断薬:交感神経を抑制して心収縮を抑えて血圧を下げる 血圧を下げる薬を内服する上で大切なことがあります。それは、血圧が下がっても自己判断で中止しないことです。 どのような降圧薬であっても、効果はあくまで一時的なものです。飲み始めて血圧が下がったからと内服をやめてしまうと、元の高い血圧に戻ってしまいます。ただし、生活習慣を良くしていくことで徐々に減薬・中止をすることができる方もいます。薬の調整は、運動や食事に気をつけながら、家庭血圧の測定結果をもとに医師と相談して決めましょう。 まとめ・高血圧は食事・運動・薬でコントロール! 本記事では高血圧の原因をはじめとした基本情報と、効果的な対策について説明しました。 高血圧の多くを占める本態性高血圧では、塩分のとりすぎをはじめとした生活習慣が大きく関わっています。症状がないからといって高血圧を放置すると、命に関わる病気を起こしかねません。 血圧が気になるのであれば、まずは定期的な血圧測定を行い日々の血圧がどのくらいかを把握するように努めましょう。 高血圧対策の第一歩は生活習慣を改善することです。一気に運動も食事も改善しようとするのが難しければ、できるところから始めてみましょう。薬をすでに処方されている方は、しっかり続けることもお忘れなく。 本コラムが皆様の健康的な生活に少しでも役立ちますと幸いです。 参考文献 厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.04.15 -
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高血圧とストレスの深い関係とは?予防法や改善策を解説します! 高血圧は世界中で数多くの人々が罹患している疾患です 。この病気は、しばしば「サイレントキラー」と呼ばれています。 高血圧自体では症状がほとんどないにもかかわらず、心臓病や脳卒中など、命に関わる病気のリスクを高めるからです。高血圧とストレスの関係は、多くの研究で注目されており、これら二つの間には密接なつながりがあることがわかっています。 本記事では、ストレスと高血圧の関係を深く掘り下げ、予防や改善のために役立つポイントを解説していきます。 高血圧とは何か 高血圧は、血液が血管壁にかかる圧力が通常よりも高い状態を指します。この状態が継続すると、心臓や血管に過剰な負担がかかり、心臓病、脳卒中、腎臓病などの重大な健康問題のリスクが高まります。 血圧は「収縮期血圧」と「拡張期血圧」の二つの数値で表されます。 収縮期血圧(上の数値)は、心臓が収縮して血液を体中に送り出す際の圧力です。拡張期血圧(下の数値)は、心臓が次の収縮に備えて血液で満たされる際の圧力です。 通常、成人の正常な血圧は収縮期が120mmHg未満、拡張期が80mmHg未満とされています。一方、高血圧は、収縮期血圧が130mmHg以上または拡張期血圧が80mmHg以上である状態を指します。 引用) 高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)作成委員会 p18 血圧は、測定する場所によって以下のように分けられています。 診察室血圧 医療機関で医療従事者が測定する血圧です。 この環境で高い血圧を示す人は、白衣高血圧の可能性があります。 白衣高血圧は、医療機関での血圧測定時にのみ高血圧の値が出る状態を指します。家庭での測定や、24時間血圧モニタリングでは正常範囲内の血圧値を示すにも関わらず、医療機関で測定すると血圧が上昇する現象です。この現象は、医療環境に対する不安や緊張が原因で起こります。 白衣高血圧自体が直接的な健康リスクを示すわけではありませんが、一部の研究では、白衣高血圧の人が将来的に持続的な高血圧(本態性高血圧)を発症するリスクが高まる可能性が指摘されています。 したがって、白衣高血圧の診断を受けた場合でも、定期的な血圧のモニタリングと、必要に応じたライフスタイルの見直しが推奨されます。 家庭血圧 患者自身が自宅で測定する血圧です。 日常生活における血圧の変動をより正確に把握できる方法とされています。 24時間血圧モニタリング(ABPM: Ambulatory Blood Pressure Monitoring) 24時間持続的に血圧を測定する方法で、患者が通常の日常生活を送りながら測定します。 昼夜の血圧の変動や、睡眠中の血圧を含めた全体的な血圧コントロール状態を評価するのに有用です。 高血圧2つのタイプと原因 高血圧には二つの主なタイプがあります。「一次性高血圧」(原因不明の高血圧)と「二次性高血圧」(特定の原因による高血圧)です。 一次性高血圧 ほとんどの高血圧はこのタイプに該当し、明確な原因は特定されていませんが、遺伝、食生活、生活習慣など複数の要因が関連していると考えられています。 二次性高血圧 何らかの病気や状況が原因で血圧が高くなるケースです。腎臓病、内分泌異常、特定の薬剤の使用などが原因で起こります。 高血圧のリスク要因として考えられること 高血圧のリスクを高める要因には、以下のようなものがあります。 ①年齢 加齢とともに血圧は高くなる傾向にあります。 ③性別 年齢によっては、 男性の方が女性より 高血圧になりやすい時期があります。 ③家族歴 高血圧の方が家族に多い場合、遺伝的要因が関係している可能性があります。 ④不健康な生活習慣 不健康な食事(特に塩分の過剰摂取)、運動不足、肥満、過度のアルコール摂取、喫煙などが高血圧のリスクを高めます。 ⑤ストレス ストレスと緊張も高血圧のリスクを高める重要な因子です。 なぜストレスがかかると血圧が上昇するのか? さて、血圧が上がる原因の一つに、ストレスがあると述べました。 ストレスは、私たちの身体に多方面から影響を及ぼします。その影響の一つとして、身体の自律神経系を活性化させることで心拍数と血圧を一時的に上昇させることが知られています。 これは、身体が直面した脅威に対処するための「戦うか逃げるか」の反応として機能し、短期間であれば自然な生理現象とみなされます。しかし、この反応は短期的なものに留まらず、ストレスが慢性化すると、高血圧を引き起こす原因となり得ます。 慢性的なストレスは、心拍数と血圧の持続的な上昇を引き起こし、高血圧につながる恐れがあります。加えて、ストレスが多い環境にいると、健康に良くない食生活や運動不足など、高血圧につながる他のリスク要因が増えがちです 。 不健康な生活習慣は、さらに血圧に悪影響を及ぼし、悪循環を生むことになります。 ストレスは交感神経を刺激し、一時的な心拍数と血圧の上昇を引き起こすだけでなく、長期間にわたるストレスの影響で高血圧症を引き起こす可能性があることが分かります。 そして、慢性的なストレスが不健康な生活習慣へと導くこともあり、さらに血圧に悪影響を及ぼす可能性があるのです。したがって、ストレス管理は血圧コントロールの観点からも非常に重要であると言えます。 高血圧を引き起こす主なストレス源 職場や家庭内でのストレスは、高血圧の主な原因の一つとして広く認識されています。 職場での過剰な負担や、期限の迫ったプロジェクト、職場内での対人関係の問題などが、ストレスレベルを高める主な要因となるのです。これらのストレスは、交感神経系を刺激し、心拍数の増加や血管の狭窄を引き起こし、結果的に血圧を上昇させる可能性があります。 家庭環境も、ストレスの大きな源となり得ます。家族間の不和、経済的な問題、子育てや介護などの責任は、個人のストレスレベルを大幅に高めることがあります。家庭内でのストレスは、しばしば外部には見えにくいため、解決されずに長期化することがあります。 このようなストレス状態が続くと、心身の健康に悪影響を及ぼします。特に血圧に関しては、その数値を大幅に高めるリスクになります。 さらに、職場と家庭の双方からのストレスは、不健康な生活習慣につながってしまうことがあります。過剰なストレスは、不安や抑うつといった精神的な問題を引き起こすことがあり、これが不健康な食事、運動不足、過度のアルコール摂取や喫煙など、高血圧に直結する生活習慣へつながるのです。 したがって、職場や家庭内でのストレス管理は、血圧を健康的なレベルに保つために、 極めて重要です。 血圧測定時にストレスの影響で血圧は変動するのか 病院や自宅で測定した血圧が正常でも、職場や家庭のストレスにさらされている昼間の時間帯の血圧が高くなることがあります。具体的には、135/85mm/Hg以上の場合、昼間高血圧と定義されています。 精神的・身体的なストレスは血圧に影響を与えることが知られています。 健康診断の際や病院での血圧は正常でも、ストレス状況にある職場で測定した血圧が高い「職場高血圧」は、肥満の方や高血圧の方が家族にいる方に多いという特徴があります。 高血圧の治療 -生活指導や薬物療法 - 高血圧治療は、患者のライフスタイルの見直しと薬物療法を組み合わせていきます。 ①ライフスタイルの改善 高血圧治療においては、生活習慣の改善が重要となります。例えば、食生活、運動習慣、禁煙、ストレス管理など、日々の生活習慣を見直していきます。 具体的には、塩分の過剰摂取を避け、果物や野菜を豊富に含むバランスの取れた食事を心がけ、規則正しい運動を行うことが推奨されます。 具体的な食塩摂取量は、「健康日本21(第三次) 」の目標値では7g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。 成人男性・・・7.5g未満 成人女性・・・6.5g未満 また、日本高血圧学会では、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にすることが勧められています。 禁煙や適度なアルコール摂取、良好な睡眠習慣、効果的なストレスマネジメントが血圧管理に役立ちます。 ②薬物療法 生活習慣の改善だけでは血圧がコントロールできない場合、薬物療法が検討されます。 血圧降下薬には、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)、カルシウムチャネルブロッカー、利尿薬、βブロッカーなどがあります。 患者の状態や既往症などを医師が総合的に判断することによって、こうした薬剤は個別に処方されます。 ストレスによる高血圧の予防法 - 生活習慣の改善 - 上記で述べたように、ストレスは高血圧と深い関係があります。そこで、ストレスに上手く対処することが血圧の上昇を防ぐために重要となります。 ここでは、ストレスへの対処法と改善策を詳しくご紹介します。 規則正しい運動 軽い有酸素運動は、ストレスを軽減し、血圧を低下させるのに役立ちます。週に数回、歩行やジョギング、水泳などを行うことをお勧めします。 バランスの取れた食事 塩分の摂取量を控えめにし、果物、野菜、全粒穀物を豊富に含む食事を心掛けてください。これらは血圧を健康的なレベルに保つのに役立ちます。 十分な睡眠 良質な睡眠はストレスレベルを低下させることができます。毎晩7〜8時間の睡眠を目指しましょう。 禁煙と節度ある飲酒 喫煙と過度の飲酒は血圧に悪影響を及ぼします。これらの習慣を控えることで、血圧の管理に役立ちます。 深呼吸や瞑想 深呼吸や瞑想は、ストレスを感じたときに交感神経の活動を鎮め、リラックス効果を促進します。日常生活にこれらの練習を取り入れることで、ストレスレベルを下げることができます。 趣味や興味の追求 好きな活動や趣味に時間を割くことで、心のリフレッシュが可能となり、ストレス軽減につながります。 社会的サポート 友人や家族との良好な関係は、ストレスの軽減に非常に重要です。信頼できる人と感情を共有することで、ストレスを効果的に管理できます。 ストレスに上手く対処することが、血圧の上昇を防ぐために重要です。日常生活にぜひ取り入れてみましょう。 まとめ・高血圧とストレスの深い関係とは?予防法や改善策を解説! 高血圧とストレスは、現代社会において無視できない健康問題です。しかし、適切なストレス管理、健康的な生活習慣、そして必要に応じて医療機関を受診し、治療を受けることによって、これらのリスクを大幅に軽減することが可能です。 生活の中で意識的にリラックスする時間を作り、バランスの取れた食事と定期的な運動を心がけましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献 高血圧 | e-ヘルスネット(厚生労働省) 高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)作成委員会 p18 高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)作成委員会 p15 高血圧:診断と治療の進歩 トピックスI.診断と病態 1.本態性高血圧の成因.日本内科学会雑誌.2007;96(1):4-8. 高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)作成委員会 p21 高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)作成委員会 p22 健康日本21(第三次) 厚生労働省 国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針 p28 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.04.10 -
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リゾトミーの術後後遺症にお悩みですか?日帰り最新医療のご紹介 「つらい腰痛が良くなると思って受けた治療で、後遺症が残ってしまった…」 そのようなお悩みはありませんか。 リゾトミーは慢性難治性腰痛の原因となる神経の伝達を遮断し、痛みをとる方法です。体への負担は少ないとされていますが、医療行為である以上は合併症のリスクからは逃れることはできません。人によっては後遺症が長期化してしまうこともあり得ます。 この記事では腰痛に対するリゾトミーの詳細と、術後後遺症としての神経損傷について、そして最新の後遺症治療の「再生医療」について解説しています。 リゾトミーとは?高周波熱凝固療法について解説 リゾトミーは英語でrhizotomyと表記されます。主に脊椎の椎間関節の痛みをもたらす脊髄神経後枝内側枝に対する「高周波熱凝固療法」のことです。整形外科、あるいは疼痛を専門に扱う「ペインクリニック」で行われています。 この高周波熱凝固療法の技術は、従来の神経ブロック注射で効果が一時的である慢性難治性疼痛に用いられるものです。リゾトミーにおいては、椎間関節ブロックによって痛みが椎間関節由来だと診断された場合に行われます。 高周波熱凝固療法では、ターゲットの神経のすぐ近くにピンポイントで高周波(ラジオ波)を流す特殊な針を刺します。ラジオ波が神経組織内のイオン分子を高速振動させることで神経組織が高温となり、熱で変性するのです。変性した神経は痛みを伝える機能を失うため、痛みを感じなくなります。 このような治療は、神経の伝達を遮断して痛みが脳に伝わらないようにするため「神経破壊法」と呼ばれています。神経を破壊するというと恐ろしく感じるかもしれませんが、長期に痛みを抑える優れた治療法として広く用いられています。 従来、リゾトミーはX線による透視画像を見ながらターゲットになる神経を探していました。一部の施設では内視鏡の技術を用いたリゾトミーも行われています。この内視鏡とは、坐骨神経痛などを起こす椎間板ヘルニアの手術(PELD手術)で実用化されているものです。内視鏡で直接ターゲットの神経を探すことで、より確実にねらった神経を遮断することができます。日本国内ではまだできる病院やクリニックは少ないですが、今後普及していくかもしれません。 リゾトミーの術後合併症としての神経損傷 リゾトミーの合併症のうち、後々まで問題になりやすいのが神経損傷です。滅多に起こることではありませんが、神経を傷つけてしまうことで、痺れ・痛み・麻痺などが起こります。 傷ついた神経の再生は非常に困難です。確実に治るという治療法はなく、内科的な投薬治療やリハビリテーションを組み合わせて自然に良くなるのを待つことになります。徐々に改善する方もいますが、症状が長期にわたって続く場合も残念ながら存在します。 術後後遺症に再生医療 術後後遺症が良くならない場合の選択肢として、「幹細胞治療」が期待されています。幹細胞治療とは、臓器や器官の機能再生を目的とした再生医療のひとつです。 幹細胞治療では、「幹細胞」と呼ばれる万能細胞を用います。幹細胞は自分自身を複製できる能力(自己複製能)と体の様々な臓器・組織の細胞に変化できる能力(分化能)をもつ細胞のことを指します。 幹細胞治療では幹細胞のもつ分化能を利用しています。傷ついた部位に幹細胞を投与することでその臓器や器官が「再生する力」を引き出しているのです。 これまで、幹細胞治療は多くの疾患への可能性が示唆されてきましたが、神経もその一つです。従来、傷ついた神経組織は回復が非常に困難と考えられていました。しかし、最先端の再生医療では、この神経の修復もできるのではと期待されています。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE 日帰り再生医療の実際 当院では様々な神経損傷に対して幹細胞治療を提供しています。実際の治療の流れを3ステップでご説明します。 ①脂肪採取 診察や各種検査の結果から、幹細胞治療を行うことが決定したら、まずは幹細胞の採取を行います。当院では、患者様ご自身の脂肪から幹細胞を採取しています。お臍の下あたりから、脂肪を米粒2~3粒ほどの少量を採取します。傷は1cmほどと小さく、局所麻酔で可能な上、痛みもほとんどありません。 ②細胞培養・増殖 取り出した脂肪から、幹細胞を取り出して培養していきます。当院の細胞加工室の技術は国内トップクラスです。他施設で用いられる牛などの血清でなく、患者様ご本人の血清を用いた培養をすることで、感染症やアレルギーのリスクを抑えています。輸送や保存の際に幹細胞を凍結しないため、フレッシュで生き生きとした状態で細胞の投与が可能です。 ③患部への投与 4〜6週間かけて幹細胞を培養したら、患者様に投与を行います。当院では点滴だけでなく、「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行なっています。背中から細い針を刺して、幹細胞を脊髄のすぐ近くに直接注入する方法です。直に幹細胞を届けることができるため、神経の再生能力がより高まることが期待されます。投与は局所麻酔下で行い、当日にご帰宅いただけます。 まとめ・リゾトミーの術後後遺症にお悩みですか?日帰り最新医療のご紹介 リゾトミーと術後後遺症、また合併症治療の最先端についてご紹介いたしました。 つらい神経障害の後遺症に対してお困りであれば、幹細胞治療をご検討されてはいかがでしょうか。 当院ではしっかりご納得いただいた上で治療を選んでいただくことを大切にしております。お電話やメールでの無料相談も受け付けております。 気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。 参考文献 伊達久. 医学と薬学. 77(1): 31-37, 2020. 山口忍, 吉村文貴, 松本茂美, 竹中元康, 飯田宏樹. 日本臨床麻酔学会誌. 34(7): 938-946, 2014. 濱口眞輔, 山田哲平. 麻酔 68(9): 959-965, 2019. 奥田泰久. 日本臨床麻酔学会誌 38(5): 622-626, 2018. 金子和生, 田口敏彦. 日本腰痛学会雑誌 12(1):72-76, 2006. 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 Chen KT, Kim JS, Huang AP, Lin MH, Chen CM. Current Indications for Spinal Endoscopic Surgery and Potential for Future Expansion. Neurospine. 2023 Mar;20(1):33-42. doi: 10.14245/ns.2346190.095. Epub 2023 Mar 31. PMID: 37016852; PMCID: PMC10080449. 再生医療ポータル 再生医療について 再生医療の現状と展望 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.03.29