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椎間板ヘルニアと診断され、座ると腰がズキズキする 椎間板ヘルニアで座れなくて辛い 椎間板が外に突出し、神経を圧迫すると腰や脚に不快感を引き起こすのが椎間板ヘルニアの特徴です。 不快感や違和感をずっと腰に抱え、座ることもままならない状態は不安でいっぱいかもしれません。しかし椎間板ヘルニアは座り方を工夫すれば、長時間は難しくとも、ある程度座ったときの違和感や不快感を軽減できます。 椎間板ヘルニアと診断され、お悩みの方に向けて本記事では、椎間板ヘルニアの座り方を解説します。 椎間板ヘルニアにおける座位が辛いと感じる理由 椎間板ヘルニアとは、椎間板の一部が変形して外に飛び出してしまい、飛び出した部分が坐骨神経に当たり、腰や手足の痺れ、違和感などの症状を引き起こします。 椎間板ヘルニアのときに座ると辛いと感じる理由としては、姿勢は腰椎にかかる圧力を増加させるためです。 座ることで椎間板が圧縮され、突出した部分が坐骨神経を刺激し、症状を悪化させます。腰痛の中でも椎間板ヘルニアは最も重症度が高いといわれており、放置や無理な負荷をかけてしまうと神経麻痺などの重篤な障害を引き起こす可能性があります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげる床の座り方 座り方のポイント 内容 背筋をまっすぐに保つ 背中をまっすぐに保つことで、腰椎にかかる圧力を減らし、症状の悪化を防げます。 クッションを使う 腰部にクッションを使うことで、背骨の自然なカーブを支え、圧力を分散させて負担を軽減します。 長時間同じ姿勢で座らない 長時間座り続けると圧力が増加するため、定期的に姿勢を変えることで、腰の負担を軽減できます。 重心が偏らないようにあぐらをかく あぐらをかくことで、骨盤が安定し、腰椎への負担が分散されます。姿勢を均等に保ちやすくなります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげるには床の座り方が重要です。ポイントを意識し、座ることで腰にかかる負荷を軽減できます。 自宅でも簡単にできる方法なので、ぜひ実践いただけますと幸いです。 1.背筋をまっすぐに保つ 椎間板ヘルニアの負担を和らげるには背筋をまっすぐに保つことが大切です。 猫背や前かがみの姿勢は腰椎に負担をかけます。負担をかけないためにもまっすぐな姿勢を保つことで、坐骨神経への刺激を軽減し、症状の悪化を防げます。 背筋をまっすぐに保つためには、まず骨盤を正しい位置に保つことが大切です。床に座ったときに、骨盤が後ろに倒れていないか、前に傾きすぎていないかを確認しましょう。 背筋をまっすぐに保つと、腰の筋肉が無理なく使われるため、筋肉の疲労も軽減されます。(文献1)正しい姿勢を保つことで、腰椎への負担が軽減され、ヘルニアの症状を和らげられます。 2.クッションを使う クッションを使うことで、座面の圧力を分散させ、腰椎にかかる負担を軽減できます。腰の部分にクッションを当てることで、背骨のS字カーブを自然に保てます。 応急処置程度であれば、家庭用のクッションで問題ありません。 後述で解説しますが、クッションを使用したからといって長時間座るのは禁物です。クッションを使用する場合でも、30分に1回程度は立ち上がり、負担のかからない程度に動くようにしましょう。 3.長時間同じ姿勢で座らない 長時間同じ姿勢で座り続けることで、腰にかかる圧力が高くなります。腰にかかる圧力が強くなると坐骨神経を刺激してしまい、症状が悪化する可能性があります。 症状を悪化させないためにも、同じ姿勢はできるだけ避け、30分に1回程度は立ち上がり、無理のない範囲でストレッチなどを行いましょう。 ストレッチや軽く動くことで、腰部の血行が促進され、筋肉の緊張を緩和できます。 4.重心が偏らないようにあぐらをかく 普段無意識に重心が片方に傾く人は要注意です。重心が一方に傾くことで、腰や脚などにかかる圧力が強くなり、坐骨神経への負担が高くなります。その対策として、あぐらをかく座り方は有効です。 あぐらをかく姿勢は重心が左右均等に分散され、腰椎への負担が軽減されます。あぐらをかく際は片足だけを上げるような座り方は禁物です。 片足だけをあげることで重心が傾くため、骨盤の歪みを引き起こす可能性があります。あぐらをかくことで、腰への圧力を減らし、長時間座っても疲れにくくなるメリットがあります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげる椅子の座り方 座り方のポイント 内容 背骨のS字カーブが維持できる椅子を選ぶ 背もたれが腰部をしっかり支え、骨盤が自然に前傾する椅子を選ぶと、腰の圧力が軽減され、ヘルニアの症状が和らぎます。 足の裏全体を床につける 足の裏を床につけ、膝が直角になるように調整し、骨盤が安定。腰椎にかかる負担が分散されます。 背筋をピンと伸ばす 背筋を伸ばし、自然な姿勢を保つことで腰椎に過度な圧力がかかるのを防ぎ、ヘルニアの症状が悪化しにくくなります。 長時間椅子に座り続けない 1〜2時間ごとに立ち上がり、軽いストレッチや歩行で、腰の筋肉が緊張しすぎず、ヘルニアの症状が悪化しにくくなります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげるには椅子の座り方も重要です。 椅子に座る際は足がふらつくものを選ぶのではなく、足の裏全体が床につくものや、背骨のS字カーブが維持できる椅子を選ぶのが大切です。 以下でポイントを詳しく解説します。 1.背骨のS字カーブが維持できる椅子を選ぶ 椎間板ヘルニアを和らげるためには、背骨の自然なS字カーブを保つ椅子を選びましょう。背骨が正しい位置でサポートされることは、腰にかかる負担を減らすために役立ちます。 背もたれが腰部をしっかり支え、骨盤が自然に前傾するような椅子を選ぶことで、腰部の圧力が軽減され、ヘルニアの症状を抑えられます。 椅子の背もたれの高さや角度を調整できるものを選ぶと、さらに効果的に腰をサポートでき、おすすめです。 2.足の裏全体を床につける 足が宙でふらつくと骨盤が不安定になり、腰椎に不均等な圧力がかかりやすくなります。 椅子に座る際は足の裏全体が床につくものを選びましょう。高さを調整できるものがおすすめです。理想の高さとしては、太ももとふくらはぎの角度が90度くらいになるようにするのがポイント。 足が床からういてしまう場合は足台を使い、足が底につくようにすると良いでしょう。 3.背筋をピンと伸ばす 背もたれにもたれかかりすぎず、背筋をまっすぐに伸ばすことで、腰の圧力が軽減され、ヘルニアの症状が和らげます。 床の座り方同様に姿勢が猫背であったり、前のめりだったりすると腰椎に過度な圧力がかかり、坐骨神経を圧迫する可能性があります。 椅子に座った際はまっすぐな姿勢を意識し、腰に負荷をかけないよう意識しましょう。 4.長時間椅子に座り続けない 床に座るとき同様に長時間椅子に座り続けることはせず、30分に1回は立ち上がり、軽くストレッチをしたり、負荷のかからない程度に動くようにしましょう。 長時間椅子に座り続けることで、坐骨神経を圧迫する可能性があります。デスクワークだと、時間を忘れ長時間椅子に座ってしまうこともあるでしょう。 時間を忘れそうなときはタイマーをつけたり、立ち上がる時間を決めたりすれば、長時間座りっぱなしの状態を防げます。 椎間板ヘルニアのNGな座り方 NGな座り方 起こりうる影響 猫背や前かがみの姿勢 背骨のS字カーブが崩れ、腰椎に負担が集中し、椎間板が後方へ突出しやすくなる。 足を組んで座る 骨盤が左右どちらかに傾き、腰椎のバランスが崩れて片側に負担が集中。筋肉の緊張が偏り、ヘルニアの悪化リスクが高くなる。 長時間同じ姿勢で座る 腰椎の圧力が持続的に増加し、血流が悪化。筋肉の緊張が強まり、腰への負担が増す。 椎間板ヘルニアの症状を悪化させないためには、正しい座り方が大切です。 癖になっている人は意識して座るようにするだけで、腰にかかる負担を軽減できます。 以下でNGな座り方を詳しく解説します。 1.猫背や前かがみの姿勢 猫背や前かがみの姿勢は、腰椎に余計な負担をかけます。長時間猫背や前かがみの姿勢を維持すれば、椎間板への圧力が増し、ヘルニアの症状が悪化につながります。 とくに前かがみの姿勢を続けると、椎間板の後方(背中側)へ圧力がかかり、内部の髄核(ゼリー状の部分)が外へ押し出されやすくなります。 また、猫背姿勢は肩こりや首こり、頭痛などを招く恐れがあるため、注意が必要です。普段猫背や前かがみで座るのが癖になっている人は、背筋をまっすぐに保つように意識しましょう。 2.足を組んで座る 足を組んで座ることで、骨盤が歪み、背骨のS字カーブが崩れ、腰に負担がかかります。 足を組むと骨盤が左右どちらかに傾き、腰椎のバランスが崩れて片側に負担が集中します。片側に負担がかかることで、筋肉の緊張が片方に集中し、椎間板ヘルニア悪化のリスクが高くなるでしょう。 椎間板ヘルニアを悪化させないためにも足を組まず、背もたれを活用しつつ、背骨のS字カーブを保つことや、こまめに姿勢を正すことが大切です。 また、足を普段組むことが癖になっている人は両足を地面につけることを意識し、習慣化するのがおすすめです。 3.長時間同じ姿勢で座る 同じ姿勢で長時間座り続けると、腰にかかる負担が増え、椎間板ヘルニアの症状が悪化する可能性があります。症状の悪化を防ぐためには、定期的に立ち上がったり、姿勢を変えたりするのが大切です。 軽く立ち上がることで腰周りの筋肉がほぐれ、血流がスムーズになります。その結果、腰への圧力が分散され、長時間座ることで生じるこわばりや疲労を防ぎやすくなります。 長時間座るのが常態化している人はタイマーをセットするなど、椅子から離れる時間を決めておくと良いでしょう。 椎間板ヘルニアの症状を改善する方法 方法 内容 保存療法 初期治療として一般的。薬物療法や理学療法で症状を和らげる。 手術療法 保存療法で改善しない場合や重症時に実施。摘出手術や内視鏡手術で神経の圧迫を解消する。術後のリハビリが重要。 姿勢の改善・適度な運動 正しい姿勢を維持し、腰椎を支える筋肉を鍛えることで症状の悪化を防ぐ。 座り方以外にも、椎間板ヘルニアの症状を改善する方法があります。 初期症状としては保存療法が一般的であり、改善しない場合に手術療法が用いられます。 以下で椎間板ヘルニアの症状を改善する方法を詳しく解説します。 1.保存療法 治療法 内容 薬物療法 症状に応じて鎮痛剤、抗炎症薬、神経の働きを助ける薬を処方。症状の軽減や神経修復を促進する。 理学療法 理学療法士の指導でストレッチ・運動・マッサージを実施。血行を促進し、症状を和らげる。 安静 症状が重い場合は安静が必要。炎症が治まるが、長期間の安静は筋力低下につながるため注意。 椎間板ヘルニアの初期治療として、保存療法から始めるのが一般的です。保存療法は手術を行わずに症状を和らげることが目的です。 保存療法には主に薬物療法・理学療法・安静の3つがあります。保存療法を6週間〜3カ月ほど続け、症状が改善すれば、手術は行いません。 しかし、期間内に改善が見込めない場合や、悪化した場合は手術療法を検討する必要があります。 椎間板ヘルニアの保存療法・手術療法については以下の記事でわかりやすく解説しております。 2.手術療法 手術法 特徴 メリット デメリット 従来の手術法 背中側から切開し、椎弓や椎間板を除去。 根本的な治療が見込める。 皮膚・筋肉・骨に負担が大きく、入院期間が長い(2〜3週間) PELD 7mmの細い筒を使い、内視鏡でヘルニアを摘出。 低侵襲、局所麻酔や日帰り手術、回復が早い。 適応できる症例が限られる(大きなヘルニア・脊柱管狭窄症には不向き) MED 内視鏡を使用し、やや大きめの器具で摘出。 複数の椎間に対応しやすく、実施病院が多い。 筋肉や骨への負担がPELDより大きい。 保存療法で改善が見られない場合や症状が重篤な場合、手術療法が検討されます。手術療法の内容は、摘出手術や内視鏡手術で神経の圧迫を解消するものです。 手術療法には従来の背中側から切開し、椎弓や椎間板を除去する手法の他にPELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板切除術)とMED(内視鏡下ヘルニア摘出術)と呼ばれるものがあります。 それぞれメリットデメリットが存在するため、手術療法を実施する際は医師に相談するのがおすすめです。手術後は日常生活を不自由なく送るために、リハビリを行います。 以下の記事では椎間板ヘルニアの手術療法について詳しく解説しています。 3.姿勢の改善や適度な運動 椎間板ヘルニアの症状を予防するためには、姿勢の改善と適度な運動が不可欠です。とくに適度な運動は身体の柔軟性や筋力の強化、持久力の増強、有酸素運動能力の向上などが期待できます。(文献2) 実践しやすい運動例としては、以下の3つが挙げられます。 体幹トレーニング(プランクやドローインなど) ストレッチ(太ももや腰回りの筋肉をほぐす) ウォーキング(無理のない範囲で継続する) どれも無理のない範囲で行える運動で、ヘルニアの予防・症状の軽減につながります。(文献3)(文献4) 座ると辛い椎間板ヘルニアは当院にご相談ください 座ると辛い椎間板ヘルニアですが、座り方を意識するだけで腰にかかる負担を軽減できます。 椎間板ヘルニアは座り方を意識するのも大切ですが、症状改善に向けて保存療法や適度な運動を取り入れることも忘れてはいけません。 もし、椎間板ヘルニアで悩みを抱えているのであれば、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。当院「リペアセルクリニック」では、手術を必要としない再生医療を提案できます。 椎間板ヘルニアで毎日が不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 公益財団法人中国労働衛生協会「NHKテキスト きょうの健康10月号.2021、WHO身体活動・座位行動ガイドライン」2023年 https://churou-wp.sub.jp/wordpress2/wp-content/uploads/2023/11/62df06838dfbcc1fceb62b758b9eb0e0.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献2) 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第 3 版)」2018年 https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/cervical_spine_200915.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献3) 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会「腰痛診療ガイドライン改訂版」2019年 https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/guideline.pdf(最終アクセス:2025年2月24日) (文献4) 厚生労働省「腰痛予防のための運動指導」 https://www.mhlw.go.jp/content/000656471.pdf(最終アクセス:2025年2月24日)
2025.02.28 -
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腰に違和感を感じる 腰の違和感のせいで生活に支障をきたしている 腰の違和感はぎっくり腰の前兆であると同時に、椎間板ヘルニアの可能性もあります。ぎっくり腰と椎間板ヘルニアは放置しておくと症状が悪化する恐れがあり、対処方法が異なるのです。 また、ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの症状は酷似している点も多く、見分け方が難しい側面もあわせもっています。 そこで本記事では、以下について解説します。 ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違い ぎっくり腰と椎間板ヘルニアが併発する可能性 ぎっくり腰になったときの対処法 ヘルニアになったときの対処法 ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違いを知ることで適切に対処できます。ぜひ最後までご覧いただき、ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違いを理解しましょう。 ぎっくり腰とヘルニアの違いとは? 項目 ぎっくり腰(急性腰痛症) 椎間板ヘルニア 発症の仕方 急な動作、重い物を持つ、前かがみの姿勢、朝起きたときなど 椎間板の変性、加齢、長期間の負担、急激な負荷や外傷 主な症状 急に訪れる腰痛(ある瞬間に発生) 徐々に悪化する場合と急激に悪化する場合がある 神経症状 基本的に神経症状はない あり(脚のしびれ・感覚異常・筋力低下など) 診断方法 問診・身体診察が基本 神経学的所見+MRI・CT・X線など画像検査(文献1)(文献2) 治療方法 安静・鎮痛薬・物理療法・ストレッチなど 保存療法(薬・理学療法)、改善しない場合は手術を検討する必要あり ぎっくり腰とヘルニアの症状には上記のような違いがあります。どちらも発症の仕方や症状が似ている部分はありますが、一般的にヘルニアの方が重い症状です。 ぎっくり腰とヘルニアの症状について詳しく解説していきます。 ぎっくり腰の症状 前提としてぎっくり腰の原因は特定できませんが、以下3つの要因で症状が引き起こされます。 筋肉疲労の蓄積 急な動作や重い荷物を持つなど 骨格の歪み ぎっくり腰の症状としては、腰にズキッとした違和感を感じ、動くのが難しい状態のことを指します。(文献3) 病院での診断方法は主に問診・身体診察が基本です。治療方法としては安静・鎮痛薬・物理療法・ストレッチなどが挙げられます。 以下記事ではぎっくり腰の症状を詳しく解説しております。ぎっくり腰は自己判断や放置にリスクが伴いますので、早めの受診がおすすめです。 ヘルニアの症状 ヘルニアの症状には種類があります。その中でも代表的なのは椎間板ヘルニアです。 主な症状は手足のしびれや筋力の低下などの違和感や腰痛のようなズキッとした感覚に襲われます。 ぎっくり腰は問診・身体診察が基本なのに対し、代表的な椎間板ヘルニアは神経学的所見+MRI・CT・X線など画像検査が必要です。(文献1)(文献2)保存療法(薬・理学療法)で改善しない場合は手術も視野に入れる必要があります。 以下記事ではヘルニアの症状について詳しく解説しております。ヘルニアに対しての自己判断はリスクが高いため、早期発見が大切です。 ぎっくり腰とヘルニアは併発する可能性がある 起因 併発の仕組み 症状の特徴 ヘルニア 椎間板ヘルニアによる神経圧迫や腰部の負担増加が原因でぎっくり腰を発症する可能性あり。 長時間座っていると違和感が増すことが多い。 ぎっくり腰 ぎっくり腰で急激な腰の負担がかかり、椎間板が損傷してヘルニアを引き起こすことがある。 ぎっくり腰の違和感が長引き、脚にしびれや違和感が出ることがある。 ぎっくり腰とヘルニアは互いに影響し、併発する可能性があります。併発するケースを解説するので、参考にしていただけますと幸いです。 ヘルニアが原因でぎっくり腰を発症する場合 ヘルニアが原因でぎっくり腰を発症するケースは主に椎間板ヘルニアによる神経圧迫や腰部の負担増加です。椎間板ヘルニアの症状があると、腰の筋肉が緊張しやすくなったり、腰のストレスがかかりやすくなります。 そのため、急な動作や前かがみになった際にぎっくり腰を発症しやすくなります。椎間板ヘルニアの方は急な動作や重い荷物を持つなど、腰にストレスのかかる動作には注意が必要です。 ぎっくり腰が原因で椎間板ヘルニアを発症する場合 ぎっくり腰で腰にかかる負荷が大きくなると、椎間板(背骨のクッション部分)にも強い圧力がかかり、椎間板の内部を傷つけることになります。 椎間板の内部に負荷がかかることで、髄核(ゼリー状の組織)が飛び出してしまい、椎間板ヘルニアの発症につながります。 ぎっくり腰が長引く・違和感を感じる際は椎間板ヘルニアを併発する前に早めの受診が大切です。 ぎっくり腰になったときの対処法 ぎっくり腰になったときの対処法は以下の5つです。 楽な姿勢で安静にする 市販の鎮痛剤や鎮静成分を含む湿布を使用する 負担のかからない程度に適度に動く 15分程度の患部の冷却 医療機関の受診 ぎっくり腰になったときは重いものを持ち上げたり、姿勢を急に変えたりする行動は控えましょう。 以下で対処法を詳しく紹介します。 また、ぎっくり腰の原因や治療については以下の記事で詳しく解説しています。ぎっくり腰にお悩みの方はぜひ参考にしていただけますと幸いです。 1.楽な姿勢で安静にする ぎっくり腰になったときは無理な姿勢は取らず、腰に負担のかからない楽な姿勢をとることが大切です。 ぎっくり腰になった人の大半は仰向けで脚を伸ばして寝るのが難しい状態といえます。 発症直後、腰に違和感を感じるときは腰に負担がかからない楽な姿勢をとるようにする、膝の下にクッションを入れ、腰と膝を軽く曲げて寝る、膝を軽く曲げて横向きに寝るなどが有効です。 大半の場合、症状は1週間ほどで和らぎますが、改善が見られない場合は当院の受診をおすすめします。 2.市販の鎮痛剤や鎮静成分を含む湿布を使用する 応急処置として、湿布やロキソニンなどの市販薬の使用が効果的です。 湿布を選ぶ際は鎮静成分が含まれている、ロキソプロフェン・ジクロフェナク・インドメタシンなどの成分が含まれているものを選びましょう。(文献4) 湿布の中には鎮静成分が含まれていないもの(例:保湿成分メインの湿布や局所刺激成分のみの湿布など)もあるので、不安な方は薬局に相談するのがおすすめです。 また、湿布で肌荒れやかゆみを感じる場合はすぐに使用を中断する様にしましょう。 3.負担のかからない程度に適度に動く ぎっくり腰になったときは負担のかからない程度に適度に動くことも大切です。腰痛を気にするあまり動かないでいると、筋力低下や慢性化のリスクがあります。 どうしても動けないときに無理する必要はないものの、簡単な家事や近くのものを取りに行く程度であれば、回復を促進してくれます。症状が軽減した段階で適度に動くことは、筋肉の硬直を防ぐために重要です。 無理のない範囲で少しずつ、身体を動かすようにしましょう。 4.15分程度の患部の冷却 方法 内容 目安時間 冷却(初期対応) 氷嚢や冷却パックをタオル越しに使用する 15〜20分おき、1時間おきに繰り返す 症状が引いたら 入浴や蒸しタオル、カイロで血行促進 症状の軽減後に行う ぎっくり腰で炎症を起こした患部の冷却は応急処置としても有効な手段です。楽な姿勢で身体への負担を減らし、症状始めの48時間ほどは患部を冷やすと炎症を抑えられます。 氷嚢や冷却パックをタオル越しに15〜20分冷やします。この流れを1時間おきに繰り返しましょう。症状が引いてきた段階で入浴や蒸しタオル、カイロを使って血行を促進し、筋肉の強張りを和らげられます。 ただし症状が引いてきた段階で血行がよくなるという理由で入浴や蒸しタオルで温めすぎるのは逆効果です。温めすぎると引いた炎症が再発する可能性があるので、注意が必要です。 5.医療機関の受診 治療法 内容 薬物療法 消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を使用し、炎症を抑える 理学療法 ストレッチやリハビリを行い、筋力を強化して負担を軽減する(文献5) 神経ブロック療法 症状を感じる神経に局所麻酔薬やステロイドを注射し、一時的に症状を抑える 椎間板内酵素注入療法 椎間板に酵素(コンドリアーゼ)を注入し、飛び出た髄核を縮小させる 手術療法 突出した椎間板を取り除く手術を実施する(内視鏡手術や除圧術など) ぎっくり腰が改善しない場合は、医療機関の受診をおすすめします。自己判断での対処はリスクを伴います。 なかなか改善しない、治るのか不安と感じているなら、医師に相談すれば不安が解消できるかもしれません。 少しでも気になることがあれば、医師に相談し、ぎっくり腰の改善に前向きな気持ちになれます。前向きな気持ちは治療にとっても大切です。 早くから治療を始めた方が効果を得やすいため、気になる場合は気軽にご相談ください。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。 ヘルニアになったときの対処法 治療法 内容 薬物療法 消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を使用し、炎症を抑える 理学療法 ストレッチやリハビリを行い、筋力を強化して負担を軽減する(文献5) 神経ブロック療法 症状を感じる神経に局所麻酔薬やステロイドを注射し、一時的に症状を抑える 椎間板内酵素注入療法 椎間板に酵素(コンドリアーゼ)を注入し、飛び出た髄核を縮小させる 手術療法 突出した椎間板を取り除く手術を実施する(内視鏡手術や除圧術など) ヘルニアになったときの対処法は以下の5つ。 薬物療法 理学療法 神経ブロック療法 椎間板内酵素注入療法 手術療法 これから紹介する対処法は、必ず医師の診断を受けた上で行いましょう。 1.薬物療法 薬物療法とは消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を使用し、炎症を抑える療法です。 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第 3 版によると腰椎椎間板ヘルニアにより生じる腰下肢痛に対する薬物療法として、世界各国で鎮痛薬、筋弛緩薬、抗うつ薬などによる治療が一般的に行われています。(文献5) しかし、薬物の効果が現在の医学研究において信頼性の高い証拠(エビデンス)がまだ見つかっていません。 薬物療法は根本的な治療ではなく、あくまで対症療法として有効です。薬物療法は根本的な解決ではなく、症状を一時的に和らげるものであることは覚えておきましょう。 2.理学療法 理学療法とはストレッチやリハビリを行い、筋力を強化して負担を軽減する療法です。腰椎椎間板ヘルニアの治療では、運動療法(筋力トレーニング・ストレッチ・持久力強化)が効果的とされています。 ただし、この療法は発症を防ぐ1次予防としての効果は十分に証明されていません。 一方で、再発を防ぐ2次・3次予防として期待を寄せられており、運動を続けることでVAS値の軽減、休業期間の短縮、再発率の低下が期待されています。 コルセットについては、ヘルニア発症自体を防ぐ効果(1次予防)は証明されていません。しかし回復の手助けや、再発防止に役立つとされています。(文献5) また、認知行動療法(不安やストレスを軽減する心理療法)はヘルニアの再発防止に効果があると期待されています。 3.神経ブロック療法 神経ブロック療法の種類 特徴 硬膜外ブロック療法 脊髄を包む膜(硬膜)の外側にある空間に局所麻酔薬を注入する。炎症を抑える効果もある 神経根ブロック療法 X線画像を見ながら、圧迫されている神経に局所麻酔薬と抗炎症薬を直接注入する ブロック療法(椎間板造影) X線画像を用いて障害された椎間板を特定し、そこに局所麻酔薬と抗炎症薬を注入する 神経ブロック療法とは症状の原因になっている神経の部位やその周りに細い特殊な神経ブロック針で局所麻酔などを注入する療法です。 神経ブロック療法は一時的な療法や診断には有効ではあるものの、根本的な治療として有効であるエビデンスが存在しないため、リハビリや生活習慣の改善と併用が推奨されています。(文献5) 4.椎間板内酵素注入療法 コンドリアーゼと呼ばれる酵素を椎間板内に注入し、髄核を化学的に溶解して神経の圧迫を軽減する療法です。 慶應義塾大学病院の医療・健康情報サイトによると椎間板内酵素注入療法の成績は、治療後13週で有効率は約70%のデータがあります。(文献6) 椎間板内酵素注入療法の所要時間はおおむね30〜60分で、3時間の安静後にゆっくり歩行を開始します。手術の時間は30〜60分程度で、入院は1日程度で短期間なのもメリットです。 注意点としては、アナフィラキシー(かゆみ、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛、吐き気などの消化器症状、視野が狭くなるなどの視覚症状)を引き起こさないために、コンドリアーゼの投与は生涯に1度のみ投与が許可されています。 神経や血管、消化管に近い部位を針で刺すため、損傷のリスクがあります。国内第Ⅱ/Ⅲ相試験及び第Ⅲ相試験(薬剤発売前の臨床試験)では、一時的な腰痛や下肢痛の悪化が約30%報告されています。 しかし、2019年の時点では椎間板内酵素注入療法で死亡した事例は報告されていません。椎間板内酵素注入療法を受ける際は、必ず医師と相談し、過去にコンドリアーゼの投与歴がないことを確認した上で進めましょう。 5.手術療法 椎間板ヘルニアの治癒は原則、薬物療法、理学療法、神経ブロック療法などの保存療法が中心で行われます。しかし3か月間の保存療法で改善されない場合や3カ月も待機できない場合には手術が推奨されています。 手術ではLOVE法と呼ばれる一部骨を削った後に脊髄をよけてヘルニアを切除する手術を行い、手術後1〜2日で歩行練習やリハビリを開始します。 薬物療法、理学療法、神経ブロック療法でも症状が改善しない場合は、医師に相談し、手術を検討するのも1つの方法です。 腰に違和感を感じる方は早めの受診がおすすめ 腰に違和感を感じる方はぎっくり腰・間板ヘルニアに限らず早めの受診をおすすめします。ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの症状には似た部分も多いものの、対処法が異なります。 ぎっくり腰が原因で間板ヘルニアを併発することもあれば、ヘルニアが原因で併発することもあるので、少しでも不安に感じた方は早めに当院に相談ください。 当院「リペアセルクリニック」では、ぎっくり腰・椎間板ヘルニアをはじめとする症状に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療(幹細胞治療)は損傷した椎間板や神経組織の再生を目指し、症状の軽減や機能の回復を期待できます。 腰に関するちょっとした悩みでも当院「リペアセルクリニック」にご相談いただけますと幸いです。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 参考文献 (文献1) 松本守雄ほか「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第 3 版)」pp.1-132 https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/cervical_spine_200915.pdf(最終アクセス:2025年2月21日) (文献2) 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第 3 版)」2018年 https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/guideline.pdf(最終アクセス:2025年2月21日) (文献3) 公益社団法人日本整形外科学会「症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/acute_low_back.html(最終アクセス:2025年2月21日) (文献4) 厚生労働省 「鎮痛・鎮痒・収れん・消炎薬(パップ剤を含む)製品群No. 57」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/01/s0117-9d36.html¥(最終アクセス:2025年2月21日) (文献5) 伊藤俊一 「エビデンスに基づく理学療法 ―理学療法診療ガイドラインを読み解く―」 連載第9 回 腰椎椎間板ヘルニア 理学療法診療ガイドライン」『理学療法学 第 42 巻第 6 号』pp.1-6,2015年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/6/42_42-6kikaku_ito_toshikazu/_pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月21日) (文献6) 「腰椎椎間板ヘルニアの新たな治療 ~コンドリアーゼによる椎間板髄核融解術~ ―整形外科―」慶應義塾大学病院医療・健康情報サイトKOMPAS ,2019年3月1日 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/presentation/201903_02.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月21日)
2025.02.28 -
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「最近、手がしびれる…」そう感じたことはありませんか? 手のしびれでよく思いつくのは、首のヘルニア、脳梗塞や脳出血などでしょう。 しかし、他にも、『これ知っておけばよかった』という病気もあります。 今回は、手のしびれを引き起こす5つの主な原因と、そのメカニズムを分かりやすく解説します。 最近は、スマホやパソコンを長時間使う環境が増えてきましたよね。あと重たいものをよく持つ方も、注意が必要です。 さらに、ご自身でもある程度、セルフチェックできるような項目も紹介します。 手のしびれの原因5選とメカニズム 「最近、手がしびれるなぁ…」と感じて、不安を抱えていませんか?手のしびれは、人生で一度は経験することがあるぐらい、よく見られる症状です。 軽いしびれだからと言って、放っておくと後々治療しにくくなることもあります。 神経の障害というものは一度傷ついてしまうと、一生後遺症として残ることもよく見られます。 今回は、手のしびれの原因で、私が診察でよく経験してきた、5つの病気について、詳しく説明したいと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。 頚椎症・椎間板ヘルニア まず、首の骨(頚椎)に原因がある場合があります。 頚椎症:頚椎症は例えるなら、長年使い続けた家の柱や梁が歪んだり、ひびが入ったりするようなものです。 加齢とともに、首の骨も変形したり、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげができたりします。 その結果、首の骨の近くを通る神経が圧迫され、手のしびれを引き起こします。特に、長時間のパソコン作業などで猫背姿勢になっている方は要注意です。 椎間板ヘルニア:椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材(椎間板)が、まるでパンパンに膨らんだ風船のように飛び出し、神経を圧迫する病気です。 若い方でも、急に重いものを持ち上げた時などに発症することがあります。 ぎっくり腰のように、激しい痛みやしびれに突然襲われることもあります。 頸椎のヘルニアだと、手と足がしびれる可能性があり、腰椎ヘルニアだと、手のしびれは出ませんが足はしびれることはあります。 胸郭出口症候群 次に、胸郭出口症候群について説明します。 胸郭出口症候群は、首から腕、指先へと伸びる神経や血管の通り道である「胸郭出口」が狭くなり、神経や血管が圧迫されて手のしびれや痛み、だるさなどを引き起こします。 胸郭出口は、鎖骨と肋骨の間の狭い通路のような場所です。なで肩の方や、重い荷物を持つことが多い方は、この通路がさらに狭くなりやすい傾向があります。 神経や血管の通り道が、圧迫されて狭くなることで、しびれや冷感などの症状がでてきます。 整形外科の外来では、この胸郭出口症候群の症例は少ないので、医師からしても、なかなか診断に至るまで、時間がかかることがよくあります。 そして、診断されたら、私はまずリハビリと筋トレをしっかりやっていただいてます。経験上、リハビリと筋トレすることで、多くの方は治っています。 手根管症候群 手首にも、手のしびれを引き起こす原因が潜んでいます。 手根管症候群は、手首の手根管と呼ばれるトンネルの中で、正中神経という神経が圧迫されることで起こります。 この神経は、親指、人差し指、中指、そして薬指の半分に感覚を伝える役割を担っています。 手根管症候群になると、これらの指にしびれや痛み、時には腫れぼったい感じも現れます。特に、妊娠中や更年期を迎えた女性に多く見られます。 これは、ホルモンバランスの変化によって手根管が腫れやすくなるためと考えられています。また、手をよく使う仕事や趣味を持つ方にも発症しやすいです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 末梢神経障害 末梢神経は、脳や脊髄から体の各部につながる神経のネットワークです。 末梢神経障害は、このネットワークが障害されることで、手足のしびれや痛み、感覚の異常などが現れます。 糖尿病やビタミン不足などが原因となることが多く、両手両足にしびれが現れることが多いです。 私の経験では、糖尿病を持っている方は、頚椎や腰椎のヘルニアによるしびれがでやすい方が多かったです。 やはり、糖尿病では神経が障害を受ける分、しびれやすくなるのでしょう。 脳卒中 最後に、最も注意が必要な原因として脳卒中があります。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が障害される病気です。 手のしびれだけでなく、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害など、重篤な症状が現れます。 手のしびれが片側だけに現れる場合や、他の神経症状を伴う場合は、脳卒中の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診する必要があります。 脳出血を起こしても、小さかったり、初期の時は、ほとんど症状が現れない場合が多く、少し進行して、歩くときに膝折れがする、しびれが出てきたなどを感じて、病院に行く方もよくおられました。 その時点で、CTやMRIをとらなければ、見過ごされることも考えられますので、疑いがあれば、CTやMRIを、医師に相談して撮影してもらいましょう。 手のしびれは、様々な原因で起こります。原因によって治療法も異なりますので、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 手のしびれの前兆とセルフチェック 「最近、手がしびれる…」と感じたら、放っておかずに、まずはセルフチェックしてみましょう。 手のしびれは、誰しも一度は経験する身近な症状ですが、実は重大な病気のサインである可能性も潜んでいます。 早期発見・早期治療のためにも、ご自身のしびれをよく観察し、セルフチェック項目を確認することで、適切な医療機関の受診につなげることができます。 しびれの場所・範囲・時間帯 しびれの場所 手のしびれを感じた時、まず確認すべきことは「どこがしびれているか」です。 親指、人差し指、中指にしびれがある場合は、手根管症候群の可能性が考えられます。これは、手首にある神経の通り道が狭くなることで、神経が圧迫されて起こる病気です。 Point! 薬指の内側と外側を、指でなぞってみてください。もし中指側だけが痺れているなら、高い確率で手根管症候群と思われます。 そして、両手の母指球筋を比べてみて、平らになって、筋肉が痩せていると注意です。これがみられたら、進行した手根管症候群となります。 経験上、痺れが弱くても、母指球筋が小さくなっていたら、手術をして、これ以上悪くならないようにした方がいいでしょう。 進行すると、服のボタンが付けにくくなったり、お箸が持ちにくくなります。そうなると、手術しても、後遺症として戻らなくなる確率が高くなるのです。 一方、小指や薬指にしびれがある場合は、肘部管症候群の可能性も考えられます。これは、肘の神経の通り道が狭くなることで起こるしびれです。 よく、椅子などに肘の内側をぶつけると、指まで痺れることがありますよね。それは、肘部管症候群の原因である尺骨神経によるものです。 また、手の甲側がしびれる場合は、橈骨神経麻痺の可能性も考えられます。橈骨神経麻痺は、腕の外側から手の甲にかけて走る神経が圧迫されることで起こります。 例えば、腕枕をして寝てしまった後に、手がしびれている経験はありませんか? これは、橈骨神経が圧迫されたことによる一時的な麻痺によるものと考えられます。ひどい場合は、手のひらがだらんと垂れて、動かなくなることもよくみられます。 『朝起きたら、いきなり手が動かない』と心配されますが、2〜3ヶ月ほどリハビリなどをして様子を見れば、ほとんどの方は治ります。 急に手が動かなくなると、脳の病気かな?とかなり驚きますよね。。。 しびれの範囲 しびれの範囲も重要なポイントです。 もし、しびれが手全体に広がっている場合は、頸椎症や胸郭出口症候群などの、首や肩の神経が圧迫される病気が原因かもしれません。 手根管症候群では、手首より先の方しかしびれは出ません。 さらに、片方の手だけがしびれる場合は、脳卒中の可能性も考えられます。 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、手足の麻痺や言語障害など、命に関わる危険な症状を引き起こす可能性があります。 もちろん、頚椎症でも、片方だけのしびれもよくみられます。 しびれの時間帯 しびれが続く時間にも注目しましょう。 一日中しびれが続いているのか、特定の時間帯だけなのか、あるいは一時的なものなのか。こうした時間的な変化も、診断の重要な手がかりとなります。 例えば、夜間や早朝にしびれが強くなる場合は、手根管症候群の可能性が高くなります。 動作との関連性(特定の姿勢、動作で悪化など) 次に、手のしびれと、特定の姿勢や動作との関連性をチェックしてみましょう。 例えば、パソコン作業やスマートフォン操作など、手首を酷使する作業の後でしびれが悪化する場合は、手根管症候群の可能性があります。 また、首を後ろに反らすと手のしびれが悪化する場合は、頸椎症の可能性が高まります。 逆に、腕を頭の上に上げることでしびれが軽減する場合は、胸郭出口症候群の可能性も考えられます。 日常生活の中で、どのような姿勢や動作がしびれを悪化させるのか、または軽減させるのかを把握することは、原因を特定する上で非常に重要です。 随伴症状(痛み、感覚異常、脱力など) 手のしびれとともに、他の症状が現れることもあります。これらの随伴症状も、原因特定の重要な手がかりとなります。 例えば、しびれとともに、鋭い痛みを感じる場合は、神経腫瘍の可能性も考えられます。 神経腫瘍とは、神経に発生する腫瘍のことで、良性のものから悪性のものまで様々な種類があります。 稀なケースでは、指の神経に叢状(そうじょう)シュワン腫という良性腫瘍が発生し、鋭い痛みやしびれを伴うことがあります。 また、しびれとともに脱力感や、感覚が鈍くなるなどの症状が現れる場合は、神経の損傷がより深刻な状態である可能性があります。 その他、手のむくみや冷感なども、しびれの原因疾患によっては伴うことがあります。 過去の病歴 過去の病歴も、手のしびれの原因を特定する上で重要な情報です。 糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、末梢神経障害という合併症を引き起こし、手のしびれにつながる可能性があります。 また、過去に神経系の疾患を患ったことがある場合も、再発や新たな病気が隠れている可能性も考慮に入れる必要があります。 健康診断の結果や過去の治療歴なども含め、できるだけ詳細な情報を医師に伝えましょう。 ▼高血圧の症状はありませんか?併せてお読みください。 危険信号(麻痺の進行、意識障害など) 手のしびれとともに、麻痺の進行や意識障害、ろれつが回らない、激しい頭痛などの症状が現れた場合は、一刻を争う事態です。 これらは脳卒中のサインである可能性が非常に高く、緊急の医療処置が必要となります。 また、片側の手足だけがしびれる、顔の半分がしびれる、言葉が出てこない、呂が回らないといった場合も、脳卒中の前兆である可能性があります。 これらの症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼ぶか、近くの医療機関に連絡してください。 手のしびれの治療法と予防ケア 「手のしびれ」と聞くと、つい軽く考えてしまいがちですが、実は様々な原因が潜んでおり、中には放置すると深刻な事態を招く病気も存在します。 早期発見・早期治療が何よりも重要です。適切な治療とケアによって、しびれを軽減し、快適な日常生活を取り戻せる可能性は十分にあります。 ここでは、手のしびれの主な治療法と、日常生活での予防ケアについてご説明します。 薬物療法 手のしびれの原因や症状に合わせて、様々な薬が用いられます。 例えば、神経の炎症や痛みを抑える薬、血行を改善する薬、神経の働きを助けるビタミン剤などがあります。 神経の炎症が強い場合は、ステロイド薬を使う場合もあります。これは、強力な消炎効果を持つ薬ですが、副作用にも注意が必要です。 また、糖尿病性の神経障害には、血糖コントロールを改善する薬も重要です。 しびれに効く薬は、最近色々と出てきてはいますが、しびれは薬でなかなか治りにくい部類となります。 どの薬を使うかは、医師があなたの症状や体質を考慮して慎重に判断しますので、自己判断で薬を飲んだり、やめたりすることは絶対に避けてください。 理学療法・作業療法 薬物療法だけでなく、理学療法や作業療法も重要な役割を担います。 理学療法:理学療法では、ストレッチやマッサージ、温熱療法などによって、硬くなった筋肉や関節を柔らかくし、血行を促進することで、しびれを和らげます。 胸郭出口症候群では、両腕の重みを支える筋肉をしっかり鍛えることが大切です。 作業療法:作業療法では、日常生活動作の練習や、自助具(日常生活を補助する道具)の使用指導などを通して、しびれがあっても支障なく生活できるようサポートします。 例えば、手根管症候群の患者さんには、手首のストレッチや、手首を安静に保つための装具の使用指導が行われます。 装具療法 手首や指を固定するサポーターや、頸椎を支えるコルセットなどの装具は、患部を安静に保ち、神経への負担を軽くしてくれます。 特に、手根管症候群や腱鞘炎など、手首の使い過ぎが原因で起こるしびれには効果的です。 装具の種類や使用方法も様々ですので、医師や理学療法士の指導のもと、自分に合った装具を選び、正しく使用することが大切です。 例えば、就寝時に手首を固定する装具を装着することで、夜間のしびれを軽減できる場合があります。 手術療法 多くの場合、薬物療法、理学療法、装具療法などの保存療法で症状が改善します。 しかし、神経の圧迫が非常に強い場合や、保存療法で効果が見られない場合には、手術が必要となることもあります。 例えば、手根管症候群では、母指球筋が痩せてきたり、服のボタンが付けにくくなる巧緻障害などが出た場合は、速やかに、神経を圧迫している靭帯を切開して神経を解放する手術が必要です。 頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアが原因の場合は、首の骨の手術が必要になることもあります。 我々の手術の基準として、筋力低下、尿が出にくいなどの膀胱直腸障害となります。しびれに関しては、我慢ができないぐらいなら、手術を選択することもあります。 手術療法は最終手段であり、患者さんの状態に合わせて慎重に判断されます。 日常生活での注意点と予防法 日常生活での心がけも、手のしびれの予防や改善に大きく貢献します。 長時間同じ姿勢を続けることや、手首や指に負担がかかる作業を繰り返すことは避けましょう。 パソコン作業やスマートフォンの操作をする際は、こまめに休憩を取り、ストレッチをすることを心がけてください。 また、デスクワークをする際は、正しい姿勢を保ち、椅子や机の高さを調整することも重要です。 正しい姿勢を保つことで、首や肩への負担を軽減し、胸郭出口症候群などの予防にもつながります。 栄養バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠も、健康な神経を維持するために不可欠です。 そして、もし手のしびれを感じたら、自己判断せずに、早めに医療機関を受診しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 MacGillis KJ, Mejia A, Siemionow MZ. "Hand compression neuropathy: An assessment guide." The Journal of family practice 65, no. 7 (2016): 462-71. Saeki Y, Hattori Y, Mane SA, Doi K. "Plexiform Schwannoma of Digital Nerve." The journal of hand surgery Asian-Pacific volume 28, no. 5 (2023): 609-613. Thapa L, Amatya R, Maharjan S, Gaurishankar N, Shrestha AM, Bhattarai S, Singh SN, Gongal DN, Devkota UP. "Cheiro-Oral Syndrome." Kathmandu University medical journal (KUMJ) 16, no. 62 (2018): 196-198. Slouma M, Zarrouk Z, Maatoug F, Dhahri R, Amorri W, Gharsallah I, Metoui L, Louzir B. "Fibrolipoma of the Median Nerve: An Overview." Current rheumatology reviews 18, no. 4 (2022): 298-304.
2025.02.15 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
腰からお尻、足にかけて電気が走るような痛みやしびれ… それ、坐骨神経痛かもしれません。人体で最も太く長い坐骨神経が圧迫されると、痛みやしびれといった不快な症状が現れます。 実は、この坐骨神経痛、坐骨神経痛を放置してしまうと、徐々に歩行に支障をきたすことがあります。 主な原因は椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などですが、長時間のデスクワークや運動不足も関係していると言われています。 この記事では、医師が効果的なストレッチ方法を解説します。 >>坐骨神経痛をやわらげるストレッチをすぐに見たい方はここをタップ<< 【予備知識】坐骨神経痛の症状と原因 坐骨神経痛は、腰部から臀部、下肢へと続く坐骨神経に圧力がかかったり、刺激されたりすることで、痛みやしびれなどの症状が現れる状態です。 この神経は、人体で最も太く長い神経であり、まるで電線のように腰から足の先まで電気信号を送っています。 しかし、何らかの原因でこの「電線」が圧迫されると、電気がうまく流れなくなり、痛みやしびれなどの不快な症状を引き起こすのです。 症状の特徴:痛みやしびれ、放置するとどうなる? 坐骨神経痛の症状は、人によって様々です。 電気が走るような鋭い痛み、ジンジンするようなしびれ、足の感覚が鈍くなる、といった症状が現れることがあります。 痛みやしびれは、お尻から太もも、ふくらはぎ、すね、そして足の甲や足の裏まで、坐骨神経が通っている場所ならどこにでも現れる可能性があります。 これらの症状は、長時間同じ姿勢を続けていたり、くしゃみや咳などお腹に力が入る動作をした際に悪化することがあります。 症状が重い場合は、歩いたり立ったりすることさえ難しくなることもあります。 坐骨神経痛を放置すると、痛みが慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 また、しびれがずっと残ったり、足に力が入らなくなって歩行が困難になるケースもあります。 特に、腰部脊柱管狭窄症の場合、放置すると排尿障害などの深刻な合併症を引き起こす可能性も懸念されます。 筋力が落ちたり、尿が出にくくなったり、便秘がちになると命に関わるため、我々医師は手術を勧めることになります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 原因:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群など 坐骨神経痛の原因は様々ですが、代表的なものとして椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などが挙げられます。 椎間板ヘルニアは、背骨のクッションの役割をしている椎間板の一部が飛び出し、坐骨神経を圧迫することで起こります。 20代に最も多く発症し、次に30~40代に多く見られます。 脊柱管狭窄症は、背骨に存在する神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで起こります。50歳以上の中高年に多く発症します。 ▼脊柱管狭窄症について、併せてお読みください。 梨状筋症候群は、お尻にある梨状筋という筋肉が坐骨神経を圧迫することで起こります。 その他にも、腰椎すべり症や腫瘍、感染症などが原因となる場合もあります。 ▼梨状筋症候群について、併せてお読みください。 ストレッチが必要!坐骨神経痛になりやすい人の特徴 坐骨神経痛になりやすい人の特徴としては、長時間のデスクワーク、猫背姿勢、運動不足などが挙げられます。 一定の姿勢で長時間座り続けるオフィスワークは、腰に大きな負担をかけ、坐骨神経痛を引き起こしやすくなります。 猫背姿勢も腰への負担を増大させるため、坐骨神経痛のリスクを高めます。運動不足は筋肉を弱らせ、腰を支える力を低下させるため、坐骨神経痛になりやすくなります。 また、冷えや肥満も坐骨神経痛を悪化させる要因となります。 体が冷えると血液の流れが悪化し、筋肉が固くなることで、坐骨神経痛の具合が悪化しやすく、坐骨神経痛の症状を悪化させやすく、注意が必要です。 坐骨神経痛をやわらげるストレッチ3選|効果的な方法と注意点も つらい痛みを何とかしたい、でも手術や薬には頼りたくない、そんな風に考えている方もいるかもしれません。 ご安心ください。ストレッチは、坐骨神経痛からくる症状を改善する効果的な対処法の一つといえます。 適切なストレッチを行うことで、硬くなった筋肉をほぐし、神経への圧迫を軽減することができます。 ここでご紹介するストレッチは、自宅で簡単に行えるものばかりです。ぜひ、試してみてください。 ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスは、太ももの裏側にある筋肉です。 この筋肉が硬くなると、骨盤が後ろに傾き、坐骨神経を引っ張ってしまうことがあります。結果として、痛みやしびれといった坐骨神経痛の症状を引き起こすのです。 ハムストリングスの柔軟性を高めることは、体幹の安定性にも繋がります。体幹が安定すると、腰への負担が軽減され、坐骨神経痛の予防にも効果的です。 ハムストリングスのストレッチ①|椅子に座って行う方法 椅子に浅く腰掛け、片方の足を前に伸ばします。 つま先を天井に向け、かかとを床につけたまま、上半身を前に倒していきます。 太ももの裏側に伸びを感じるところで、30秒間キープします。息を止めないように、ゆっくりと呼吸を続けましょう。 反対側の足も同様に行います。 ハムストリングスのストレッチ②|床に仰向けになって行う方法 仰向けになり、片方の足を天井に向けて伸ばします。 伸ばした足の膝を軽く曲げ、タオルやベルトなどを足の裏にかけます。 タオルやベルトを両手で持ち、息を吐きながら、足をゆっくりと自分の方に引き寄せます。 太ももの裏側に伸びを感じるところで、30秒間キープします。この時も、深い呼吸を心がけましょう。 反対側の足も同様に行います。 梨状筋のストレッチ 梨状筋はお尻の奥にある筋肉です。この筋肉が硬くなると、坐骨神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こすことがあります。 梨状筋症候群は、この梨状筋が原因で起こる坐骨神経痛です。 梨状筋のストレッチ①|床に座って行う方法 床に座り、両足を伸ばします。 ストレッチしたい側の足を反対側の太ももの上にのせます。 上半身を前に倒し、お尻の奥に伸びを感じるところで30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 梨状筋のストレッチ②|椅子に座って行う方法 椅子に座り、ストレッチしたい側の足を反対側の太ももの上にのせます。 上半身をゆっくりと前に倒し、30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 お尻のストレッチ お尻の筋肉は、人体で最も大きな筋肉の一つである大殿筋をはじめ、中殿筋、小殿筋など複数の筋肉で構成されています。 これらの筋肉は、歩いたり、走ったり、階段を上ったりする際に重要な役割を果たしています。 お尻の筋肉が硬くなると、骨盤の歪みや姿勢が悪くなり、坐骨神経痛を引き起こすことがあります。 お尻のストレッチ|寝て行う方法① 仰向けになり、両膝を立てます。 片方の足を反対側の太ももの上にのせます。 反対側の手で太ももを持ち、胸に引き寄せます。 お尻に伸びを感じるところで、30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 お尻のストレッチ|寝て行う方法② 仰向けになり、両膝を立てます。 片方の足首を反対側の膝の上に乗せます。 両手で反対側の太ももを抱え、胸の方に引き寄せます。 お尻に伸びを感じるところで、30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 ストレッチは、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。もし、ストレッチ中に痛みやしびれが増強する場合は、すぐに中止してください。 また、ストレッチの効果を高めるためには、毎日継続して行うことが重要です。1回5~10分程度、1日数回行うのが効果的です。 お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うと、より効果的です。 ストレッチは坐骨神経痛の症状緩和に役立ちますが、根本的な解決にならない場合もあります。 症状が改善しない場合や悪化する場合は、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Kim B, Yim J. "Core Stability and Hip Exercises Improve Physical Function and Activity in Patients with Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial." The Tohoku journal of experimental medicine 251, no. 3 (2020): 193-206. Deyo RA, Mirza SK. "CLINICAL PRACTICE. Herniated Lumbar Intervertebral Disk." The New England journal of medicine 374, no. 18 (2016): 1763-72. Owen PJ, Miller CT, Mundell NL, Verswijveren SJJM, Tagliaferri SD, Brisby H, Bowe SJ, Belavy DL. "Which specific modes of exercise training are most effective for treating low back pain? Network meta-analysis." British journal of sports medicine 54, no. 21 (2020): 1279-1287.
2025.02.15 -
- ひざ関節
膝がポキポキ鳴る… 誰しも一度は経験のあるこの音、実はただの老化現象や運動不足と安易に考えて放置すると、将来的な膝のトラブルにつながる可能性があることをご存知ですか? 階段の上り下り、立ち上がり、何気ない動作で鳴るこの音。 その原因は関節液の気泡、関節構造の問題、靭帯や腱の動きの3つに大きく分けられます。 世界中で推定6億5400万人が罹患している変形性膝関節症も、初期症状としてこのポキポキ音が挙げられるケースがあり、45歳以上の方で活動時に膝の痛みや朝のこわばりがある方は特に注意が必要です。 この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を詳しく解説し、適切な対処法や自宅でできるストレッチ、日常生活での注意点まで、健康な膝を維持するための情報を網羅的にご紹介します。 膝がポキポキ鳴る原因3選 膝がポキポキ鳴る、という症状、多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。 椅子から腰を上げる時や、ふとした拍子に膝を屈伸させるときなど、日常生活の様々な場面で経験する、ありふれた症状です。 実は、このポキポキ音、ただの老化現象や運動不足と考えずに、きちんと原因を探ることが大切です。 なぜなら、放置すると将来的に大きな問題につながる可能性があるからです。 この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を3つのカテゴリーに分けて解説します。 原因を正しく理解することで、適切な対処法を見つけ、健康な膝を維持することにつながります。 ①膝がポキポキ鳴るメカニズム 膝がポキポキ鳴る原因のメカニズムは、大きく分けて以下の3つに分類できます。 関節液の中の気泡 膝の関節の中には、関節液という滑液があります。これは関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割を果たしています。 関節を動かすと、この関節液の圧力が変化し、小さな気泡が発生することがあります。この気泡が弾ける時に、「ポキッ」という音が鳴るのです。 炭酸飲料の蓋を開けた時にプシュッと音が鳴るのと似ています。これはキャビテーションと呼ばれ、特に問題のないケースが多いです。 関節の構造的な問題 膝の関節は、骨、軟骨、靭帯、腱など、様々な組織で構成されています。 これらの組織に何らかの異常があると、関節を動かす際にポキポキと音が鳴ることがあります。 例えば、軟骨部分が磨耗していたり、半月板に傷みが生じていたりすると、関節の表面がデコボコになり、音が鳴りやすくなります。 これは、ギシギシいうドアを無理やり開けるようなイメージです。スポーツによるケガや加齢などが原因で起こり得ます。 靭帯や腱の動き 靭帯や腱は、骨と骨をつないで関節を安定させる役割を担っています。 これらの組織が骨の上を滑る時に、ポキポキと音が鳴ることがあります。 これは、運動不足や筋肉のバランスが崩れている人に多く見られます。 椅子に座りっぱなしのデスクワークや、同じ姿勢を長時間続ける作業などで、特定の筋肉が硬くなってしまうと、靭帯や腱の動きが制限され、音が鳴りやすくなります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ②運動不足と膝がポキポキ鳴る関係 運動不足と膝のポキポキ音には、密接な関係があります。 運動不足になると、膝関節周辺の筋肉が衰え、関節を支える力が弱まります。 すると、関節のバランスが崩れ、関節液の中に気泡ができやすくなってポキポキ音が鳴りやすくなるのです。 また、筋肉の力が衰えると関節が硬くなり、靭帯や腱の滑らかな動きが阻害されるため、これもポキポキ音の原因となります。 例えば、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が弱くなると、膝のお皿(膝蓋骨)の位置がずれ、関節面との摩擦が増えて音が鳴りやすくなります。 さらに、運動不足は変形性膝関節症のリスクも高めます。 変形性膝関節症は、軟骨がすり減って骨同士がぶつかり、痛みや炎症を引き起こす病気です。 ③加齢による軟骨の摩耗 加齢もまた、膝がポキポキ鳴る原因の一つです。 年齢を重ねると、どうしても軟骨がすり減ってきます。 クッションの役割を担う軟骨が徐々に薄くなることで、骨同士が擦れ合う状態となり、関節を動かすたびにパキパキやコリコリという音が聞こえるようになります。 このような症状は、膝の変形性関節症が始まっているサインかもしれません。 運動不足で起こる膝のトラブル5選 膝がポキポキ鳴る、なんとなく違和感がある… それ、もしかしたら運動不足が原因かもしれません。 放っておくと、将来大きなトラブルにつながる可能性も。 今回は、運動不足が原因で起こる膝のトラブルを5つご紹介し、それぞれの症状や対処法をわかりやすく解説します。 ①膝の痛み 運動不足になると、膝周りの筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)や後ろの筋肉(ハムストリングス)が弱くなってしまいます。 椅子に座りっぱなしの生活を想像してみてください。これらの筋肉はあまり使われていませんよね。するとどうなるでしょうか? 筋肉は、膝関節を支える重要な役割を担っています。 筋肉の力が衰えると、支える機能が低下し、膝関節への重みがかかりやすくなります。これが痛みの原因となるのです。 最初は、立ち上がったり、階段を上り下りする時に軽い痛みを感じる程度かもしれません。 しかし、そのまま運動不足の状態が続くと、歩くだけでも痛むようになり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 痛みを感じ始めたら、まずは運動を控え、膝を安静にすることが重要です。 痛みが強い場合は、整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。 ▼おすすめの膝サポーターについて、併せてお読みください。 ②関節の違和感、こわばり 運動不足は、膝関節の周りの筋肉や靭帯を硬くしてしまいます。 筋肉や靭帯は、関節をスムーズに動かすために必要不可欠な組織です。 これらの組織が硬くなると、どうなるでしょうか? 関節の動きが悪くなり、「膝が重だるい」「何となく動きが悪い」といった漠然とした違和感を感じ始めます。 さらに、朝起きた時に「膝が硬くて曲げづらい」といった明らかなこわばりを感じることもあります。 これは、関節液の循環が悪くなっていることも原因の一つです。 関節液は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たしていますが、運動不足になるとこの循環が悪くなり、こわばりを引き起こすのです。 このような症状は、特に運動不足の人に多く見られます。日頃から意識的に体を動かす習慣をつけることが大切です。 ③関節の可動域制限 関節の違和感やこわばりが進むと、関節の可動域、つまり膝を曲げ伸ばしできる範囲が狭くなります。 最初は正座がしづらくなるなど、特定の動作で制限を感じる程度かもしれません。 しかし、悪化すると歩く、しゃがむといった日常の動作にも支障が出てきます。 これは、関節の軟骨がすり減り、骨の表面がデコボコになることが原因の一つです。 なめらかに動いていた関節が、古い扉のように固くぎこちなくなってしまいます。 さらに、関節周囲の筋肉や靭帯が硬くなることで、関節の動きが制限されることも原因として挙げられます。 関節の可動域制限も、運動不足が大きな原因の一つです。 適切な運動を継続することで、関節の柔軟性を維持し、可動域制限を予防することができます。 ④筋力低下、バランス能力の低下 運動不足は、膝関節を支える筋肉、特に大腿四頭筋やハムストリングスの筋力低下を招きます。 これらは、膝の安定性を確保する上で、極めて大切な役割を持っています。 筋肉が弱くなると、膝関節が不安定になり、バランス能力も低下します。 その結果、つまずきやすくなったり、転倒のリスクが高まったりします。 高齢者の場合、転倒は骨折などの大きな怪我につながる可能性があるため、特に注意が必要です。 ⑤変形性膝関節症のリスク増加 運動習慣の不足により膝の周りの筋力が低下すると、軟骨にかかる圧力が増し、磨耗が加速します。 また、運動不足による体重増加も加わることで、膝関節への負荷がさらに大きくなっていき、変形性膝関節症のリスクを高めます。 ある研究では、膝のポキポキ音がいつも鳴る人は、全く音がしない人に比べて変形性膝関節症の発症リスクが3倍高いというデータもあります。 運動不足が続くと、膝の違和感や痛み、こわばり、可動域制限といった様々なトラブルを引き起こす可能性があります。 これらのトラブルは、日常生活の質を低下させるだけでなく、将来的に変形性膝関節症などの深刻な病気を引き起こすリスクも高めます。 日頃から適度な運動を心がけ、健康な膝を維持しましょう。 膝がポキポキ鳴る時の対処法3選 膝がポキポキ鳴ると、不安になりますよね。 もしかしたら病気のサイン?放っておいて大丈夫?と心配になる方もいるでしょう。 この記事では、膝がポキポキ鳴る時の対処法を4つご紹介します。 安心できる情報をお届けしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。 具体的な治療方法(運動療法、薬物療法、手術) 膝のポキポキ鳴る原因や症状によって、適切な治療方法は異なります。 主な治療法は以下の3つです。 運動療法 膝周りの筋肉を鍛えることで、関節を安定させ、痛みを軽減します。 ストレッチで関節の柔軟性を高めることも効果的です。 例えば、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることで、膝のお皿(膝蓋骨)の動きを安定させ、ポキポキ音を軽減することができます。 薬物療法 痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めやヒアルロン酸注射などがあります。 ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする役割を果たしています。 手術 人工関節置換術など、重症の場合にのみ行われます。 変形性膝関節症が進行し、日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合に検討されます。 人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に入れ替える手術です。手術により痛みを軽減し、関節の機能を回復させることができます。 保存的治療(運動療法や薬物療法)で効果がない場合や、半月板の異常などの明確な疾患が背景にある状況では、手術が必要となることもあります。 半月板は、膝関節にあるC型の軟骨で、クッションの役割を果たしています。 半月板が損傷すると、膝の痛みや引っかかり、ポキポキ音などの症状が現れます。 ▼半月板断裂と損傷の違い、痛みの特徴や原因・治療法ついて、併せてお読みください。 家庭でできるストレッチ、運動 家庭でできるストレッチや運動をご紹介します。 膝下ストレッチ:椅子に座り、両足を床につけた状態で行います。 膝から下の骨を内側にねじるように動かします。左右10回ずつ繰り返します。 ふくらはぎの筋肉を伸ばし、膝関節の柔軟性を高める効果があります。 膝曲げ伸ばし運動:椅子に座り、片方の足をまっすぐ伸ばします。 伸ばした足をゆっくりと曲げ、また伸ばします。左右10回ずつ繰り返します。 大腿四頭筋を強化し、膝関節の安定性を高める効果があります。 フロッグ:仰向けに寝て、両膝を曲げ、足の裏を合わせます。 かかとをお尻に近づけ、両膝を床に近づけるようにします。 10秒間キープし、5回繰り返します。 内ももの筋肉を伸ばし、股関節の柔軟性を高める効果があります。 ランジ:足を前後に開き、両膝を90度に曲げます。 前の膝がつま先より前に出ないように注意します。 10秒間キープし、左右5回ずつ繰り返します。 太ももの筋肉を鍛え、バランス能力を高める効果があります。 これらの運動は、膝周りの筋肉を強化し、関節の柔軟性を高める効果があります。 毎日続けることで、膝のポキポキ音を軽減し、膝の健康を維持することができます。 日常生活での注意点 日常生活で気を付けるべきことをご紹介します。 体重管理:適正体重を維持することで膝への負担を軽減します。 肥満は膝関節への負担を増大させ、変形性膝関節症のリスクを高めるため、注意が必要です。 適切な運動:ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ない運動を選びましょう。 激しい運動は、膝関節に大きな負担をかけるため、避けるべきです。 ストレッチ:毎日、入浴後などにストレッチを行いましょう。 ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、関節の動きをスムーズにする効果があります。 靴の選び方:低いヒールで、クッション性のある靴を選びましょう。 高いヒールやクッション性のない靴は、膝関節への負担を増大させるため、避けるべきです。 長時間同じ姿勢を避ける:デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽い運動をしましょう。 同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が硬くなり、関節の動きが悪くなるため、注意が必要です。 膝のポキポキ音は、必ずしも病気のサインではありませんが、放置すると将来的に大きな問題につながる可能性もあります。 日頃から膝のケアを心がけ、健康な膝を維持しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Lavie CJ, Ozemek C, Carbone S, Katzmarzyk PT, Blair SN. "Sedentary Behavior, Exercise, and Cardiovascular Health." Circulation research 124, no. 5 (2019): 799-815. Duong V, Oo WM, Ding C, Culvenor AG, Hunter DJ. "Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review." JAMA 330, no. 16 (2023): 1568-1580.
2025.02.15 -
- 腱板損傷・断裂
肩の痛み、腕が上がらない… もしかしたら、それは肩腱板断裂のサインかもしれません。 150万人を超える患者がいると言われるこの症状、手術が必要となるケースも少なくありません。 一体どんな手術があるのか、入院期間は?費用は? 不安でいっぱいのあなたのために、肩腱板断裂の手術方法4つの選択肢、リバース型人工関節、内視鏡手術、腱板移植、それぞれのメリット・デメリット、そして気になる入院期間、リハビリ、費用まで、医師が解説します。 肩腱板断裂の手術方法4つの選択肢 肩の痛みや腕が上がらないといった症状に悩まされ、肩腱板断裂と診断された時、手術が必要と言われたら不安になるのも当然です。 手術にはどんな種類があるのか、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか、気になることでしょう。 この章では、肩腱板断裂の手術方法について、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。 手術方法を選択する上で重要なポイントとなる、腱板の状態(断裂の大きさや筋肉の質)、年齢、生活スタイル、そして患者さん自身の価値観についてもお伝えします。 ▼肩腱板損傷、断裂について、併せてお読みください。 鏡視下腱板修復術 肩腱板を修復する手術では、内視鏡技術を活用した最小限の切開で実施されます。 肩周辺に1cm弱の複数の小さな穴を開けます。 これらの穴から細径の内視鏡カメラを挿入し、手術の全工程をモニター画面で確認しながら進めていきます。 腱板の修復では、骨に専用の固定具(アンカー)を設置し、それに取り付けられた縫合糸を用いて断裂部位を引き寄せ、結合させます。 ただし、損傷の程度が深刻な場合、通常の修復が難しいケースもあります。 そのような状況では、患者さんの大腿部から採取した組織を補強材として使用したり、可能な範囲での部分的な修復を行ったりするなど、状況に応じた対応が必要となります。 術後は、以下のような装具を約6週間必要とします。約3ヶ月ごろから、徐々に筋力トレーニングを開始して、術後半年ぐらいまでリハビリを行います。 腱板移植 腱板移植は、自分の体の一部から腱を採取し、断裂した腱板に移植する手術です。 主に、腱板の断裂が大きく、縫い合わせることが難しい場合に選択されます。 腱を採取する部位としては、太ももの裏側や背中などが用いられます。 移植した腱が周囲の組織とくっつき、新たな腱板として機能するまでには、時間と適切なリハビリが必要です。 メリット 自分の組織を使うため、拒絶反応のリスクがない。 比較的若い方やスポーツなど肩を活発に動かす必要のある方で、腱板の損傷が大きい場合に適応されることが多い。 デメリット 腱の採取部位に痛みや違和感が残る可能性がある。 移植した腱がうまくくっつかず、再断裂するリスクもゼロではない。 手術の難易度が高く、手術時間や入院期間が長くなる場合がある。 リバース型人工関節置換術 リバース型人工関節置換術は、特殊な人工関節を用いた手術方法です。 通常の肩関節とはボールとソケットの位置が逆になっているため、「リバース型」と呼ばれています。 私たちの肩関節は、上腕骨側にボール、肩甲骨側にソケットがあり、腱板がこのボールをソケットに引き寄せ、肩の安定性を保っています。 しかし、腱板が断裂すると、ボールがソケットから外れてしまい、腕をスムーズに動かせなくなります。 リバース型人工関節置換術では、このボールとソケットの位置を逆転させ、肩甲骨側にボール、上腕骨側にソケットを取り付けます。 これにより、断裂した腱板がなくても、三角筋という筋肉の力を使って腕を上げることができるようになります。 メリット 腱板が大きく断裂していても、腕を上げられるようになる可能性が高い。 比較的早期にリハビリを開始でき、日常生活への復帰も早い傾向にある。特に、高齢者や腱板の状態が悪い方に向いている。 デメリット 肩甲骨にボールがあるため、腕を内側に回す動き(内旋)が制限される場合がある。 例えば、背中に手を回す動作が難しくなることがある。 手術後、肩を動かす際に金属音がすることがある。 これは人工関節の特性によるもので、ほとんどの場合、日常生活に支障はない。 以前は65歳以上の方に適応されることが多かったが、近年では、より若い方にも適応が広がっている。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 通常の人工関節置換術とその違い 通常の人工関節置換術は、肩関節本来の構造を模倣し、上腕骨側にボール、肩甲骨側にソケットを取り付けます。 この手術は、腱板の機能がある程度残っている場合に適応されます。 リバース型人工関節置換術は、ボールとソケットの位置を逆にすることで、腱板がなくても三角筋の力を使って腕を上げられるようにします。 これは、腱板が大きく断裂している場合や、筋肉の質が悪く修復が難しい場合に有効な選択肢です。 それぞれの術式にはメリット・デメリットがあり、最適な手術方法は患者さんの状態によって異なります。 肩腱板断裂の手術をしても、再断裂や、術後に関節が固まる拘縮などの後遺症で、思うように痛みが取れないことが多く見られます。 そういった理由で、我々整形外科医の間では、よほどの痛みがあったり、生活が困難でないと手術は行わないようにしています。 そんな中で、幹細胞による再生医療が今、注目されています。 再生医療 肩腱板断裂の症状が、なかなか改善しない時の選択肢として、今、注目の再生医療があります。 リペアセルクリニックでは、再生医療分野で豊富な経験を持つ専門医たちが、10,000症例の実績に基づく確かな技術と独自の培養方法で、患者様一人一人に最適な治療プランをご提案いたします。 国内で唯一の最新の『分化誘導技術』を用い、当院は『新時代の再生医療』による治療を提供します。 そんな再生医療に興味のある方は、こちらから当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=VZP1_3i_qEwcVrsQ 肩腱板断裂の手術後の入院期間・リハビリ・費用 肩腱板断裂の手術後、気になるのは入院期間やリハビリ、そして費用ですよね。不安な気持ち、痛いほどよく分かります。 私も医師として、患者さんのそういった不安に寄り添い、少しでも安心して治療に臨めるようにサポートしたいと思っています。 この章では、肩腱板断裂の手術後の入院期間、リハビリテーション、費用、そして日常生活での注意点について、具体的な例を交えながら分かりやすく説明します。 一緒に一つずつ確認していきましょう。 手術後の入院期間 入院期間は、手術の方法や患者さんの状態によって大きく異なります。 内視鏡手術:例えば、傷口が小さい内視鏡手術の場合、最短3泊4日で退院できるケースもあります。 これは、お腹を数cm切開する虫垂炎(いわゆる盲腸)の手術で、5~7日程度の入院が必要になるケースと比較すると、かなり短い期間と言えるでしょう。 リバース型人工関節置換術:一方で、リバース型人工関節置換術などのように、より身体への負担が大きい手術の場合は、1~2週間程度の入院が必要になることが多いです。 これは、人工関節を入れることで身体への負担が大きくなるため、術後の経過観察をしっかり行う必要があるためです。 手術方法 入院期間の目安 関節鏡手術 3泊4日~1週間 リバース型人工関節置換術 1~2週間 また、高齢の方や一人暮らしの方の場合は、手術後の状態が安定するまで、少し長めの入院が必要となることもあります。 これは、自宅での生活に不安がある場合や、退院後のサポート体制が整っていない場合などに、入院中にリハビリテーションを進め、日常生活動作の練習を行うためです。 装具を装着する期間は約3週間程度ですが、その期間中ずっと入院する必要はありません。 医師や看護師、理学療法士と相談しながら、ご自身の状況に合った入院期間を決めていきましょう。 手術後のリハビリテーション 肩腱板断裂の手術後は、リハビリテーションがとても大切です。 手術で損傷した組織の修復を促し、肩の機能を回復させるためには、適切なリハビリテーションを行う必要があります。 リハビリテーションは、多くの場合手術の翌日から開始します。 入院中は、理学療法士の指導のもと、肩関節の可動域訓練や筋力強化訓練を行います。 退院後も、週に1回から3回程度、通院してリハビリテーションを継続することが推奨されます。 リハビリテーションの内容は、腱の治癒段階に基づいて調整されます。 初期のリハビリテーションでは、痛みを軽減し、肩関節の動きをスムーズにすることに重点を置きます。 その後のリハビリテーションでは、徐々に負荷を上げていき、筋力や持久力を強化していきます。 最近の研究では、ウェアラブルデバイス(手首や腕、頭など身に着けて使用するコンピューターデバイス)を使用して運動や姿勢のモニタリングを行うことで、より精密なリハビリテーションが可能になることが示唆されています。 肩腱板断裂の手術後のリハビリテーションに関する研究では、保存的なリハビリテーションと早期可動域訓練を比較した結果、可動域や機能状態に大きな差は見られませんでした。 しかし、早期可動域訓練は機能的な転帰にわずかな利点がある可能性がありますが、一方で再断裂のリスクもわずかに高まる可能性があることが示唆されています。 どちらのリハビリテーションプロトコルも、安全で再現性のある短期・長期的な転帰が示されています。 自宅でも、理学療法士に教えてもらったストレッチやエクササイズを毎日行うことが重要です。 手術から約3ヶ月後には、軽い作業ができるようになり、約6ヶ月後には、重労働やスポーツにも復帰できるようになります。 しかし、これはあくまで目安であり、実際には個人差があります。 手術費用 手術費用は、手術の方法、入院期間、使用する医療材料などによって異なります。 また、健康保険の種類や、高額療養費制度の利用によっても自己負担額が変わります。 費用の詳細は、事前に医療機関に確認することをおすすめします。 一般的には、関節鏡手術の方がリバース型人工関節置換術よりも費用が安くなる傾向があります。 これは、関節鏡手術の方が入院期間が短く、使用する医療材料も少ないためです。 費用の目安としては、関節鏡手術で20万円~40万円程度、リバース型人工関節置換術で50万円~80万円程度かかることが多いです。 しかし、これはあくまでも目安であり、実際には医療機関によって大きく異なる場合があります。 手術後の生活の注意点 手術後、日常生活で特に注意すべきことは、再断裂を防ぐことです。 再断裂は、手術後の無理な動きや過度な負担によって起こります。 特に、手術後3ヶ月間は、重いものを持つ、硬いものを切る、雑巾がけなど、肩に負担のかかる動作は控えましょう。 また、手術後しばらくは、肩の痛みや動かしにくさが残る場合もあります。 痛みがあるときは、無理せず安静にすることが大切です。 日常生活動作で痛みが出る場合は、装具や補助具を使用するなど、工夫してみましょう。 そして、医師の指示に従ってリハビリテーションを継続することも重要です。 リハビリテーションによって、肩の機能を回復させ、再断裂のリスクを減らすことができます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Bandara U, An VVG, Imani S, Nandapalan H, Sivakumar BS. "Rehabilitation protocols following rotator cuff repair: a meta-analysis of current evidence." ANZ journal of surgery 91, no. 12 (2021): 2773-2779. Longo UG, Risi Ambrogioni L, Candela V, Berton A, Carnevale A, Schena E, Denaro V. "Conservative versus surgical management for patients with rotator cuff tears: a systematic review and META-analysis." BMC musculoskeletal disorders 22, no. 1 (2021): 50. Di Benedetto P, Mancuso F, Tosolini L, Buttironi MM, Beltrame A, Causero A. "Treatment options for massive rotator cuff tears: a narrative review." Acta bio-medica : Atenei Parmensis 92, no. S3 (2021): e2021026. Longo UG, Risi Ambrogioni L, Berton A, Candela V, Carnevale A, Schena E, Gugliemelli E, Denaro V. "Physical therapy and precision rehabilitation in shoulder rotator cuff disease." International orthopaedics 44, no. 5 (2020): 893-903.
2025.02.15 -
- 再生治療
- 腱板損傷・断裂
- PRP治療
肩に痛みや動かしにくさを感じ、日常生活に支障が出ていませんか? 夜、痛みで目が覚めてしまう、腕を上げる動作で鋭い痛みが走る、といった症状はありませんか? このような症状がある場合、肩腱板断裂が疑われます。治療が遅れると、症状が重症化し、日常生活に支障をきたす可能性があります。 この記事では、肩腱板断裂の症状や原因、検査方法、治療法、リハビリテーション、再発予防などについて解説します。 具体的な症状例や治療法を知ることで、不安を解消し、適切な治療への第一歩を踏み出しましょう。 肩腱板断裂の症状4選 肩に痛みや動かしにくさを感じると、日常生活にも支障が出てきますよね。肩を使うたびに「ズキン」と痛みが走ったり、夜中の激しい痛みで眠れない日が続いたら、とても不安になりますよね。肩腱板断裂は、まさにそのような肩の痛みや動かしにくさといった症状を引き起こす代表的な疾患の一つです。 実は、肩の痛みを我慢して生活を続けていると、症状が悪化したり、他の病気を併発する可能性も出てきます。例えば、痛みが慢性化して常に肩に重だるさを感じたり、放置すると腕の動きが制限され、家事や仕事など日々の生活動作に大きな影響が出てしまうことがあります。 肩の痛み(運動時痛、夜間痛など) 肩腱板断裂による肩の痛みは、安静時だけでなく、腕を特定の角度に動かしたときにも強く感じることがあります。例えば、洗濯物を干そうとして腕を上げ下げする動作や、後ろに手を回してエプロンの紐を結ぶ動作などで、電気が走るような鋭い痛みが強くなることがあります。 また、夜間、特に患側を下にして寝ていると、肩の痛みが増強して目が覚めてしまい、睡眠の質が低下することもあります。これは、就寝時に肩への負担がかかりやすいためです。まるで肩の中に針が刺さっているかのような痛みで、安眠を妨げられることもあります。 このような痛みは、炎症が起きている証拠です。炎症は、体を守るための反応ですが、放置すると痛みが慢性化したり、肩の動きが悪くなったりする可能性があります。 痛みの種類 説明 具体的な例 運動時痛 腕を動かしたときに痛みを感じることです。特に、特に腕を肩の位置より高く持ち上げようとすると、鋭い痛みが生じることがあります。 例えば、電車のつり革につかまる時や、高いところにある物を取ろうとする時などに痛みを感じます。 夜間痛 寝ている最中に肩の痛みが強くなります。肩に負担がかかる寝姿勢をとると、痛みが増強することがあります。 特に、患側を下にして横向きに寝ていると、肩が圧迫されて痛みが増すことがあります。 安静時痛 じっとしていても痛みを感じることです。炎症が強い場合や、断裂の程度が大きい場合に起こりやすいです。 何もしていなくても、肩に鈍い痛みやズキズキとした痛みを感じることがあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 肩の動かしにくさ(可動域制限) 健康な肩は、前後左右、あらゆる方向にスムーズに動かすことができます。しかし、肩腱板が断裂してしまうと、これまで当たり前にできていた肩の動きが制限され、日常生活に支障をきたすことがあります。腕を上げにくくなったり、後ろに回せなくなったり、シャツを着る、シャンプーをするなど、日常的な動作で痛みを感じることがあります。これは、腱板が断裂することで肩関節の安定性が低下し、スムーズな動きが阻害されるためです。 動作 説明 具体的な例 腕を上げる 肩より上に腕を上げることが難しくなります。痛みを伴う場合もあります。 例えば、電車のつり革につかまるのが困難になったり、高い棚のものが取れなくなったりします。 腕を回す 腕を内側や外側に回す動作が制限されます。特に、外旋(外側に回す)動作が困難になることが多いです。 例えば、洋服のファスナーを上げる際の背中への動作や、後ろポケットに財布を入れる動作が難しくなります。 後ろに手を回す 背中側に手を回す動作が難しくなります。着替えや洗髪などの動作に支障が出ることがあります。 シャツのボタンを後ろで留める、ブラジャーのホックを後ろで留めるといった動作が困難になります。 肩の動かしにくさは、断裂の程度によって大きく異なります。軽度の断裂であれば、特定の動作で少し動かしにくいと感じる程度ですが、重度の断裂になると、腕を全く動かせなくなることもあります。 筋力低下、脱力感 肩腱板断裂は、肩の筋肉の力にも影響を及ぼします。腱板が断裂することで、肩の筋肉が弱くなり、腕に力が入らない、または脱力感を感じるといった症状が現れることがあります。これは、腱板が断裂することで肩関節の安定性が損なわれ、周囲の筋肉が正常に機能しにくくなるためです。 例えば、以前は楽に持ていた重たい買い物袋が持てなくなったり、腕を長時間上げていることができなくなったりします。このような筋力低下は、日常生活の様々な場面で支障をきたす可能性があります。 症状 説明 具体的な例 筋力低下 肩の筋肉が弱くなり、力が入りにくくなります。 ペットボトルの蓋を開けるのが難しくなったり、重い鍋を持てなくなったりします。 脱力感 腕に力が入らず、だるく感じる、または力が入らない感覚があります。 腕が重く感じ、長時間持ち上げているのが辛くなります。まるで腕に鉛の塊が付いているような感覚です。 日常生活への影響 物を持ち上げることが難しくなったり、腕を高く上げた状態を保つことができず、徐々に腕が下がってしまいます。 洗髪や更衣といった日常生活動作にも支障が出てきます。 音(クリック音、ゴリゴリ音など) 肩を動かしたときに、クリック音やゴリゴリといった音が鳴ることがあります。これは、断裂した腱板が骨と擦れ合うことで発生する音です。まるで関節の中で何かが引っかかったり、擦れたりするような感覚です。これらの音は必ずしも肩腱板断裂を示すものではありませんが、他の症状と合わせて診断の参考になります。 肩腱板断裂の原因 肩腱板断裂の原因として、加齢による腱の老化や、スポーツや仕事での肩の使いすぎなどが挙げられます。 スポーツ選手のような激しい運動だけでなく、日常生活での繰り返しの動作や、転倒・衝突などの一度の強い外力によっても発症する可能性があります。回旋腱板関連肩痛には様々な疾患が含まれており、確定診断が難しく、症状の原因や最適な治療法も未だ研究段階であるとされています。そのため、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家の診断を受けることが大切です。 肩腱板断裂の検査と治療法 肩の痛みや動かしにくさ、もしかしたら腱板断裂かも…と心配になりますよね。でも、自己判断は禁物です。まずは医療機関を受診して、適切な検査と診断を受けることが大切です。 この章では、肩腱板断裂の検査方法と様々な治療法について、現役医師がわかりやすく解説します。具体的な検査方法や治療の選択肢を知ることで、不安を軽減し、治療への第一歩を踏み出せるはずです。 診断方法(MRI検査、レントゲン検査、超音波検査など) 肩腱板断裂の診断は、問診、視診・触診、そして画像検査を組み合わせて行います。問診では、いつから痛み始めたのか、どんな時に痛みが増すのか、日常生活でどのような動作が困難になっているのかなど、詳しくお話を伺います。 視診・触診では、肩の腫れや変形、圧痛の有無などを確認します。また、腕を様々な方向に動かしてもらい、肩関節の可動域や筋力、痛みやしびれの有無などをチェックします。 これらの情報に加えて、画像検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。代表的な画像検査は以下の3つです。 レントゲン検査: 骨の状態を調べます。肩腱板は筋肉と骨をつなぐ腱なので、レントゲン写真には写りません。しかし、骨棘(こつきょく:骨の突起)といった腱板断裂に合併する症状や、他の骨の異常がないかを確認するために有用です。 超音波検査(エコー): 超音波を使って腱板の状態をリアルタイムで観察します。手軽に検査でき、腱板の断裂の有無や大きさ、炎症の程度などを評価できます。 MRI検査: 磁気と電波を使って、肩関節の断面画像を撮影します。腱板の状態を最も詳細に確認できる検査で、断裂の大きさや場所、周りの組織の状態などを正確に把握できます。レントゲンや超音波検査ではわからない小さな断裂や、断裂の周りの筋肉の状態まで詳しく知ることができます。 これらの検査結果は、診断の参考となります。場合によっては、他の病気との鑑別が必要になることもあります。 保存療法(投薬、リハビリテーション、注射など) 肩腱板断裂の治療は、断裂の大きさや症状、患者さんの年齢や生活スタイル、仕事内容などを考慮して決定します。保存療法は、手術をせずに痛みや炎症を抑え、肩関節の機能を回復させることを目的とした治療法です。 保存療法には、主に以下のような方法があります。 投薬: 痛みや炎症を抑える薬を内服します。よく使われるのは、痛み止めや炎症を抑える薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)です。胃腸障害などの副作用に注意しながら使用します。 リハビリテーション: 固まってしまった肩関節の動きを改善し、弱くなった筋力を強化するための運動療法を行います。 関節内注射: 肩関節内にヒアルロン酸やステロイドなどを注射することで、痛みや炎症を軽減します。ヒアルロン酸は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たし、炎症を強力に抑制する薬剤として、ステロイドは高い効果を発揮します。 保存療法は、比較的軽症の肩腱板断裂や、手術のリスクが高い場合、手術を希望されない場合などに選択されます。変性性腱板断裂の場合、保存療法(適切なリハビリテーションを含む)が重要な役割を果たします。 手術療法(関節鏡手術) 保存療法で効果が得られない場合や、断裂の程度が大きい場合、スポーツ選手や肉体労働者など肩を良く使う職業の方の場合には、手術療法が検討されます。手術療法は、傷ついた腱板組織を修復し、肩の機能を回復させることを目指す治療法です。 関節鏡手術: 内視鏡を用いて行う手術です。皮膚に小さな穴を数カ所開け、そこからカメラや手術器具を挿入します。モニターを見ながら手術を行うため、傷が小さく、体への負担が少ないというメリットがあります。ただし、外科的治療には、術後感染や神経障害など、様々な合併症が起こる可能性があります。 ▼肩腱板断裂の手術と入院期間について、併せてお読みください。 ただし、腱板が元の正常な組織に戻るわけではありません。手術では、あくまで腱の切れた部分を縫い合わせるだけとなります。 根本的に腱板を治すには、幹細胞による再生医療しかありません。 再生医療 近年、再生医療が注目されています。再生医療とは、損傷した組織を再生させることを目的とした治療法です。 肩腱板断裂の再生医療としては、主に幹細胞治療とPRP治療があります。 幹細胞治療: 患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、肩関節内に注射する治療法です。幹細胞は、損傷した組織の再生を促す可能性があります。 PRP治療: 患者さん自身の血液から血小板を多く含む血漿(PRP)を抽出し、肩関節内に注射する治療法です。PRPには、組織の修復を促進する成長因子が含まれており、炎症を抑えます。PRPはステロイド注射と同じく、腱板を再生させることはできず、炎症を抑えるのみとなります。 肩腱板断裂の症状がなかなか改善しない時の選択肢として、今、注目の再生医療があります。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=8fl4fHXhfIRbAIIf リペアセルクリニックでは、再生医療分野で豊富な経験を持つ専門医たちが、10,000症例の実績に基づく確かな技術と独自の培養方法で、患者様一人一人に最適な治療プランをご提案いたします。 国内で唯一の最新の『分化誘導技術』を用い、当院は『新時代の再生医療』による治療を提供します。 そんな再生医療に興味のある方は、こちらから当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 https://youtu.be/cweMZTxZFg8?si=Mfmrhepxa0Djl4dZ https://youtu.be/CFNAS_lUZKM?si=BuT0vHaajqoO-8NN 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Schmidt CC, Jarrett CD, Brown BT. "Management of rotator cuff tears." The Journal of hand surgery 40, no. 2 (2015): 399-408. Narvani AA, Imam MA, Godenèche A, Calvo E, Corbett S, Wallace AL, Itoi E. "Degenerative rotator cuff tear, repair or not repair? A review of current evidence." Annals of the Royal College of Surgeons of England 102, no. 4 (2020): 248-255. Ryösä A, Laimi K, Äärimaa V, Lehtimäki K, Kukkonen J, Saltychev M. "Surgery or conservative treatment for rotator cuff tear: a meta-analysis." Disability and rehabilitation 39, no. 14 (2017): 1357-1363. 回旋腱板関連肩痛:評価、管理、そして不確定要素
2025.02.15 -
- 肩関節
肩の前面に痛みを感じたり、腕を上げにくかったりしませんか?実は、その痛み、上腕二頭筋長頭腱炎かもしれません。 野球のピッチャーやテニスプレイヤーといったスポーツ選手だけでなく、日常生活での動作や加齢も原因となり、誰もが発症する可能性があります。放っておくと日常生活にも支障をきたすこの病気。原因、症状、検査、そして具体的な治療法まで、解説します。肩の痛みを我慢せず、快適な生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。 上腕二頭筋長頭腱炎の原因と症状 肩の前面に痛みを感じたり、腕を上げにくかったり、腕をひねりにくかったりしませんか?もしそうなら、上腕二頭筋長頭腱炎の可能性があります。日常生活で何気なく行っている動作やスポーツなどで肩に負担がかかり続けると、知らないうちに発症していることがあります。 この病気は、放っておくと日常生活にも支障をきたすことがありますので、早期の発見と適切な治療が重要です。ここでは、手の付け根付近で起こる上腕二頭筋長頭腱の炎症について、どのような原因で起こり、どんな症状が出るのかを詳しく解説していきます。 上腕二頭筋長頭腱炎とはどんな病気なの 上腕二頭筋は、力こぶを作る筋肉です。この筋肉には長頭と短頭という二つの起始部(筋肉の始まり部分)があり、長頭は肩甲骨関節窩の上方にある結節、短頭は肩甲骨の烏口突起から起始します。そして、長頭は肩関節の中を通って上腕骨に付着しています。この長頭の部分の腱が炎症を起こした状態が、上腕二頭筋長頭腱炎です。 腱とは、筋肉と骨をつなぐ、とても丈夫な組織です。この腱が炎症を起こすと、まるで擦り傷を負った時と同じように、痛みや腫れが生じます。炎症が一時的なものから、腱そのものが変性してしまうものまで、様々な段階があります。 原因:使い過ぎ、加齢、外傷 肩の使いずぎ:上腕二頭筋長頭腱炎の主な原因は、肩の使い過ぎです。野球のピッチャーやテニスプレイヤーのように、腕を頭上に上げる動作を何度も繰り返すスポーツ選手に多く見られます。 また、日常生活でも、重い物を持ち上げたり、パソコン作業などで長時間同じ姿勢を続けることでも発症することがあります。例えば、スーパーのレジ係や工場のライン作業など、毎日同じ動作を繰り返す職業の方も注意が必要です。 加齢:加齢も大きな原因の一つです。年齢を重ねると、腱の柔軟性が徐々に失われ、損傷しやすくなります。若い頃は元気に動かせていた肩も、年齢とともに負担がかかりやすくなるため、中高年の方に多く発症する傾向があります。 転倒などの外傷:さらに、転倒などによる肩への直接的な外傷も原因となる場合があります。交通事故やスポーツ中の衝突などで肩を強打すると、上腕二頭筋長頭腱に炎症が生じることがあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 上腕二頭筋長頭腱炎の具体的な症状 肩の前側~二の腕にかけての痛み: これは最も典型的な症状です。炎症を起こした腱が、肩の前側や二の腕を通っているため、これらの場所に痛みを感じます。まるで肩の内側から針で刺されるような痛みや、鈍い痛みを感じることもあります。 安静時痛: 炎症が強い場合、じっとしていてもジンジン、ズキズキとした痛みを感じることがあります。これは安静時痛と呼ばれ、炎症のサインの一つです。 動作時痛: 肩を動かしたときに痛みが強くなります。特に、腕を上げる、後ろに回す、ひねるといった動作で痛みが強くなります。 具体例 スーパーでペットボトルをもったとき 頭のシャンプーで腕を上げたとき 車の運転で、ハンドルを切ったとき 洗濯を干すため腕を上げたとき 孫を抱っこしたとき エプロンの腰紐を後ろで結ぶとき 髪の毛を後ろに束ねるとき 夜間痛: 夜寝ているときに痛みが増すことがあります。これは、寝ている姿勢によって肩が圧迫され、炎症を起こしている腱への負担が増えるためです。 圧痛: 患部を押すと痛みが増します。肩の前側にある腱を押すと、強い痛みを感じます。 上腕二頭筋長頭腱炎の主な症状は、肩の前側の痛みです。安静にしている時でも鈍い痛みを感じることがありますし、腕を上げたりひねったりする時に鋭い痛みを感じることもあります。 特に、腕を耳につけるように上げる動作や、後ろ手に背中を掻くような動作で痛みが強くなる場合は、上腕二頭筋長頭腱炎の可能性が高いです。 また、肩の前面が腫れて、熱を持っていることもあります。炎症がひどくなると、肩関節の動きが悪くなり、腕を自由に動かせなくなります。例えば、洋服を着替えたり、髪を梳かすといった動作が困難になることもあります。 これらの症状は、上腕二頭筋の損傷だけでなく、腱板の断裂や四十肩など、他の肩の疾患でも同様の症状が現れることがあります。自己判断は危険ですので、少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診して適切な検査と診断を受けることをお勧めします。 ▼肩腱板断裂について、併せてお読みください。 ▼四十肩と五十肩の違いについて、併せてお読みください。 上腕二頭筋長頭腱炎の検査と診断 この章では、上腕二頭筋長頭腱炎の検査と診断について解説していきます。 身体診察:視診、触診、運動検査 テスト 視診では、肩の見た目や形、腫れの有無、皮膚の色などを観察します。健康な肩と比較して、左右の肩の形に違いがないか、皮膚に赤みがないかなどを確認することで、炎症の有無を推測します。 次に触診を行います。医師は指で肩の腱の走行に沿って優しく押さえ、痛みや腫れ、熱感などを確認します。特に、上腕二頭筋長頭腱が通る「結節間溝」と呼ばれる部分に圧痛があるかどうかは、判断材料の一つとなります 患者さんには「ここを押すと痛みませんか?」などと質問しながら、丁寧に触診を進めていきます。 運動検査では、患者さんに腕を様々な方向に動かしてもらい、痛みの程度や肩関節の動く範囲(可動域)を確認します。 腕を耳につけるように上げる、体の前で腕を交差させる、後ろ手に背中を掻くといった動作で、腕をどこまで動かせるのか、また、どんな動きをしたときに痛みを感じるのかを詳しく診ていきます。 ヤーガソンテストとは、肘を90度に曲げ、手のひらを下に向けた状態で、医師が患者さんの前腕に外側へひねる力を加え、患者さんにはそれに抵抗してもらいます。この時、上腕二頭筋長頭腱に炎症があると、結節間溝に痛みが出ます。 アッパーカットテストとは、ボクシングのアッパーカットのように腕を斜め上に突き上げる動作で、上腕二頭筋長頭腱に炎症があると、肩の前方に痛みが出ます。これらのテストを組み合わせて、上腕二頭筋長頭腱炎の特徴的な症状を探し、診断の精度を高めます。 画像検査:レントゲン、超音波検査、MRI検査 身体診察である程度の診断はできますが、腱や骨の状態をより詳しく調べるためには画像検査が欠かせません。 骨の状態を知るために、最初にレントゲン検査を実施します。上腕二頭筋長頭腱炎では、骨自体に異常がない場合が多いのですが、骨折や他の骨の異常を除外するために重要な検査です。 石灰沈着性腱板炎なら、レントゲンで白く写るのですぐにわかります。 超音波検査では、腱の厚みや炎症の程度をリアルタイムで確認できます。レントゲンでは見えない腱の状態を詳しく観察できるため、診断の確定に役立ちます。また、腱の周囲にある滑液包という袋に炎症が起きていないかどうかも調べられます。 MRI検査では、腱やその周囲の組織の状態をさらに詳細に確認できます。特に、腱の断裂や損傷の程度を正確に把握するのに役立ちます。 どの画像検査を行うかは、患者さんの症状や身体診察の結果によって医師が判断します。 鑑別診断:他の疾患との見分け方 肩の痛みは上腕二頭筋長頭腱炎だけでなく、腱板断裂、肩関節周囲炎、石灰沈着性腱板炎など、様々な原因で起こります。 これらの疾患は上腕二頭筋長頭腱炎と症状が似ている場合があり、鑑別が難しいケースもあるため、医師は、身体診察、画像検査の結果を総合的に判断し、他の疾患の可能性も考慮しながら慎重に診断を行います。 腱板断裂では、腕を特定の角度に挙げたときに痛みや、動かす際に引っかかるような感じがすることがあります。腕を支えないと上がらない場合は、完全に断裂してる場合が多いです。 肩関節周囲炎では、肩関節の動きが全体的に制限され、腕をあらゆる方向に動かすことが困難になります。つまり関節拘縮が起こり、それが原因で痛みが助長します。 石灰沈着性腱板炎では、何も思い当たることがないのに、急に激痛が出て、痛いところを指でおすと、飛び上がるほど痛みが出ます。 上腕二頭筋長頭腱炎の治療法 この章では、上腕二頭筋長頭腱炎の治療法について、保存療法と手術療法の2つの観点から、具体的な例を交じえながら詳しく解説します。 保存療法 保存療法とは、手術をせずに、薬やリハビリテーションなどによって症状の改善を目指す治療法です。上腕二頭筋長頭腱炎の多くは、この保存療法で改善が見込めます。 安静:まず初めに、炎症が起きている腱を安静にすることが重要です。安静にする期間や程度は、症状の重さによって異なりますが、痛みが強い場合は、腕を吊るなどの処置が必要になることもあります。 薬物療法:炎症や痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの飲み薬や湿布薬を使用します。これらの薬は、炎症の原因となる物質の生成を抑えることで、痛みや腫れを軽減する効果があります。 注射:痛みが激しい時には、ステロイド注射による治療を検討することもあります。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ薬で、短期間で効果を発揮します。しかし、腱を弱くする可能性もあるため、使用回数や投与量には注意が必要です。 理学療法(リハビリテーション):炎症が落ち着いてきたら、理学療法(リハビリテーション)を開始します。理学療法では、肩関節の柔軟性や安定性を高めるための運動療法や、肩甲骨周囲の筋肉のバランスを整えるトレーニング、ストレッチングなどを行います。 例えば、初期のリハビリテーションでは、振り子運動を行います。これは、腕をリラックスさせ、前後に、左右に、円を描くようにゆっくりと振る運動です。肩関節への負担が少ないため、炎症が強い時期でも安全に行うことができます。 また、ゴムバンドなどを用いた外旋運動や内旋運動も効果的です。これらの運動は、肩関節の安定性を高めるのに役立ちます。 これらの保存療法を組み合わせることで、多くの場合、上腕二頭筋長頭腱炎は改善します。 保存療法の効果が見られない場合、または症状が重い場合には、手術療法が検討されます。最新の研究では、上腕二頭筋長頭腱炎の保存的管理に関するエビデンスは不足していることが示唆されており、今後の研究の進展が期待されます。 手術療法 薬物療法などの保存的な治療で十分な効果が見らない場合や、腱が断裂している場合などには、手術療法が必要になることがあります。 手術には、大きく分けて「上腕二頭筋腱切開術」と「上腕二頭筋腱固定術」の2つの方法があります。 上腕二頭筋腱切開術は、腱を上腕骨頭から切離する手術です。肩の不快感を和らげる効果が優れている一方、上腕二頭筋の力が弱くなる可能性があります。スポーツなどで高いパフォーマンスを必要としない方、高齢の方などに適しています。この手術は、関節鏡という細いカメラを用いて行うことが多く、傷が小さく、回復も比較的早いというメリットがあります。 上腕二頭筋腱固定術は、切離した腱を、上腕骨の別の場所に固定する手術です。上腕二頭筋の力を維持できるというメリットがありますが、手術の難易度が高く、回復に時間がかかる場合があります。スポーツ選手など、上腕二頭筋の力が必要な方、比較的若い方などに適しています。 上腕二頭筋長頭腱炎の『再生医療』 上腕二頭筋長頭炎に対する保存療法を行なっても、なかなか改善しない時の選択肢として、今注目の再生医療があります。 リペアセルクリニックでは、再生医療分野で豊富な経験を持つ専門医たちが、10,000症例以上の実績に基づく確かな技術と独自の培養方法で、患者様一人一人に最適な治療プランをご提案いたします。 国内唯一で最新の『分化誘導技術』を用い、当院は『新時代の再生医療』による治療を提供します。 そんな再生医療に興味のある方は、こちらから当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 McDevitt AW, Young JL, Cleland JA, Hiefield P, Snodgrass SJ. Physical therapy interventions used to treat individuals with biceps tendinopathy: a scoping review. Brazilian journal of physical therapy 28, no. 1 (2024): 100586. Nho SJ, Strauss EJ, Lenart BA, Provencher MT, Mazzocca AD, Verma NN, Romeo AA. Long head of the biceps tendinopathy: diagnosis and management. The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 18, no. 11 (2010): 645-56.
2025.02.15 -
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俳優の下條アトムさんの訃報で注目された「急性硬膜下血腫」。 脳を覆う膜の下に出血し、血腫ができるこの病気は、実は誰にでも起こりうる身近な危険をはらんでいます。日常生活での転倒や交通事故など、一見軽微な外傷でも発症する可能性があり、特に高齢者は注意が必要です。頭痛や吐き気といった初期症状は他の病気と見分けにくいため、早期発見が困難なケースも少なくありません。 この記事では、急性硬膜下血腫の原因、症状、診断方法、そして治療法や予後まで、詳しく解説していきます。ご自身やご家族の健康を守るためにも、ぜひ一度、急性硬膜下血腫について理解を深めてみませんか? 急性硬膜下血腫とは?原因・症状・診断 突然ですが、皆さんは「急性硬膜下血腫」という病気を聞いたことがありますか? これは、脳を覆う膜の一つである硬膜の下に出血が起こり、血腫(血の塊)ができてしまう病気です。実は、俳優の下條アトムさんもこの病気で亡くなられました。 「脳の病気」と聞くと、どこか遠い世界の話のように感じてしまうかもしれません。しかし、日常生活での転倒や交通事故など、誰にでも起こりうる原因で発症する可能性がある病気なのです。 今回は、急性硬膜下血腫について、原因や症状、診断方法などを分かりやすく解説していきます。 急性硬膜下血腫のメカニズム 私たちの脳は、まるで3層構造のヘルメットのように、「硬膜」「くも膜」「軟膜」という3つの膜で守られています。急性硬膜下血腫は、このうち硬膜とくも膜の間に血が溜まってしまう状態です。 頭の外傷によって、脳の表面にある血管、特に「架橋静脈」と呼ばれる脆い血管が損傷し、出血が起こります。この出血が硬膜とくも膜の間に広がり、三日月のような形をした血腫を形成するのです。 この血腫が脳を圧迫することで、様々な神経症状が現れます。さらに、血腫が大きくなると、脳への圧迫が強まり、生命に関わる危険な状態に陥ることもあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 主な原因:頭部外傷(転倒、交通事故など) 急性硬膜下血腫の主な原因は、頭部外傷です。交通事故やスポーツ中の衝突など、強い衝撃が加わることで発症することが多いです。 高齢者の場合、骨が脆くなっていたり、バランス感覚が低下していたりするため、軽い転倒でも急性硬膜下血腫を発症するリスクがあります。若い世代に比べて、高齢者の硬膜下腔は広く、架橋静脈も伸びやすくなっているため、比較的軽い外傷でも架橋静脈が損傷しやすく、急性硬膜下血腫を発症しやすいのです。 また、一度の強い衝撃だけでなく、繰り返し頭部に軽い外傷を受けることでも発症する可能性があります。例えば、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで、何度も頭部に衝撃を受けていると、気づかないうちに急性硬膜下血腫を発症しているケースもあるのです。 気づきにくい症状:頭痛、吐き気、意識障害など 急性硬膜下血腫の初期症状は、頭痛、吐き気、嘔吐など、風邪や他の病気と間違えやすい症状であることが多く、見逃してしまう可能性があります。 また、症状の現れ方には個人差があり、軽微な場合や、数時間から数日経ってから現れる場合もあります。特に高齢者の場合、症状をうまく伝えられないケースもあるため、周囲の人が注意深く観察することが重要です。 意識障害は、初期には軽度で、時間経過とともに悪化していくこともあります。「いつもよりぼんやりしている」「反応が鈍い」などの変化に気づいたら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。急性硬膜下血腫は、初期の段階では症状が軽微であるため、発見が遅れてしまうことが少なくありません。しかし、適切な治療を行わないと、意識障害が進行し、最悪の場合、死に至る可能性もあります。 下條アトムさんの事例 俳優の下條アトムさんは、自宅で転倒し、頭を強打したことが原因で急性硬膜下血腫を発症し、亡くなりました。下條さんの事例は、高齢者にとって転倒がいかに危険であるかを改めて私たちに教えてくれました。 高齢者の場合、若い人に比べて骨が脆くなっていたり、バランスを崩しやすくなっていたりするため、転倒のリスクが高くなります。自宅での転倒予防対策を徹底的に行うことが重要です。具体的には、家の中の段差をなくしたり、手すりを設置したり、滑りにくい床材を使用したりするなど、転倒のリスクを減らす工夫をしましょう。 診断方法:CT検査、MRI検査 急性硬膜下血腫の診断には、CT検査とMRI検査が用いられます。CT検査では、硬膜とくも膜の間に三日月型の血腫が確認できます。MRI検査は、CT検査よりも詳細な画像を得ることができ、脳の状態をより詳しく把握するのに役立ちます。 急性硬膜下血腫は一刻を争う病気です。迅速な診断と適切な治療開始のために、これらの検査は非常に重要です。 慢性硬膜下血腫、くも膜下出血、脳内出血との違い 急性硬膜下血腫と似たような病気に、慢性硬膜下血腫、くも膜下出血、脳内出血などがあります。これらの病気は、出血の場所や症状、治療法が異なります。 慢性硬膜下血腫:急性と異なり出血がゆっくり進むため、症状が現れるまでに数週間から数ヶ月かかる場合があります。 くも膜下出血:くも膜と軟膜の間に出血が起こる病気です。バットで殴られたような激しい頭痛が特徴です。 脳内出血:脳の実質内に出血が起こる病気です。高血圧が主な原因となります。 それぞれの病気の特徴を理解しておくことが大切です。 急性硬膜下血腫の治療法と予後 下條アトムさんの訃報は、急性硬膜下血腫という病気を多くの方に知らしめるきっかけとなりました。この病気は、頭部外傷により脳を覆う硬膜の下に出血が起こり、血腫(血の塊)ができてしまう深刻な疾患です。 「血腫」と聞くと、すぐに手術が必要なのでは?と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は急性硬膜下血腫の治療法と予後について、患者さんの不安を少しでも和らげられるよう、詳しく解説します。 外科的治療:開頭血腫除去術、穿頭血腫ドレナージ術 急性硬膜下血腫の治療は、大きく分けて外科的治療と保存的治療の2種類があります。外科的治療は、文字通り手術によって血腫を取り除く方法です。 主な手術方法には、「開頭血腫除去術」と「穿頭血腫ドレナージ術」があります。 開頭血腫除去術は、頭蓋骨の一部を切開し、直接血腫を取り除く方法です。血腫が大きく、脳への圧迫が強い場合に有効です。より確実な血腫除去が可能ですが、身体への負担は大きくなります。 一方、穿頭血腫ドレナージ術は、ドリルで頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細い管を入れて血腫を吸引する方法です。開頭血腫除去術に比べて身体への負担が少ないため、高齢者や全身状態が良くない方にも行われます。しかし、血腫が硬かったり、複雑な形状をしている場合は、完全に取り除くことが難しい場合もあります。 どちらの手術方法が適切かは、患者さんの年齢、全身状態、血腫の大きさや位置などを総合的に判断して決定されます。例えば、意識レベルが著しく低下している重症患者さんでは、開頭血腫除去術が選択されることが多いです。これは、開頭することで損傷した脳組織の状態も直接確認できるため、より迅速で適切な処置が可能になるからです。GCSスコアが9未満の昏睡状態の患者さんでは、開頭術が選択されることが多いという研究結果もあります。 保存的治療:経過観察、薬物療法 血腫が小さく、症状が軽い場合は、保存的治療が選択されることもあります。保存的治療は、手術を行わずに、安静、薬物療法、経過観察などによって病状の改善を図る方法です。定期的なCT検査で血腫の大きさや症状の変化を注意深く観察しながら、脳圧を下げる薬や合併症を予防する薬などを用います。 保存的治療は身体への負担が少ないというメリットがありますが、血腫が自然に吸収されるのを待つため、外科的治療に比べて治療期間が長くなる傾向があります。また、症状が急変する可能性もあるため、慎重な経過観察が必要です。 手術のリスクと合併症 どんな手術にもリスクはつきものです。急性硬膜下血腫の手術も例外ではありません。考えられるリスクや合併症には、感染症、出血、脳腫脹、麻酔による合併症などがあります。 高齢者や持病のある方は、これらのリスクが高まる可能性があります。手術を受けるかどうかは、担当医と十分に話し合い、メリットとデメリットを理解した上で、最終的に患者さん自身が決めることが重要です。 治療期間と入院期間 治療期間と入院期間は、患者さんの状態や治療方法によって大きく異なります。軽症の場合は数週間で退院できる場合もありますが、重症の場合は数ヶ月かかることもあります。また、後遺症が残った場合は、リハビリテーションが必要となり、さらに長期間の入院が必要になる場合もあります。 後遺症(麻痺、言語障害、認知機能障害など) 急性硬膜下血腫では、麻痺、言語障害、認知機能障害などの後遺症が残る可能性があります。後遺症の重症度は、血腫の大きさや脳へのダメージの程度、治療のタイミングなどによって大きく左右されます。 日常生活に支障が出るほどの後遺症が残ってしまう場合もあります。そのため、後遺症を最小限に抑えるためには、早期発見・早期治療が何よりも重要です。 ▼脳梗塞の後遺症について、併せてお読みください。 予後(社会復帰、生活への影響) 急性硬膜下血腫の予後は、意識障害の程度と深く関係しています。意識障害が重症の場合、残念ながら死亡率が高く、社会復帰が困難になることもあります。軽症の場合でも、後遺症が残る可能性があり、日常生活や社会生活への影響は避けられません。 ある研究では、急性硬膜下血腫の死亡率は65%にも達すると報告されています。また、社会復帰できる割合は18%程度と低いという結果も出ています。高齢者や手術前に抗凝固薬や抗血小板薬を服用していた患者さんでは、特に予後が悪化する傾向があります。 急性硬膜下血腫の死亡率 急性硬膜下血腫は、迅速な診断と適切な治療が求められる深刻な病気です。死亡率は高く、早期に適切な治療を行わなければ、命に関わる危険性があります。 特に高齢者では、頭部外傷による急性硬膜下血腫のリスクが高いため、転倒などの事故には十分に注意する必要があります。 少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療が、予後を改善し、社会復帰の可能性を高めることに繋がります。 まとめ 急性硬膜下血腫は、頭部外傷による脳への出血で、深刻な症状を引き起こす可能性があります。特に高齢者は転倒などで発症しやすく、下條アトムさんの事例からもわかるように、命に関わる危険な病気です。 頭痛や吐き気など、初期症状は分かりにくいため、少しでも異変を感じたらすぐに医療機関を受診することが大切です。CTやMRI検査で診断し、血腫の大きさや症状に応じて手術や保存的治療を行います。後遺症が残る可能性もあり、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。日常生活での転倒予防など、意識して対策を行いましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Vega RA, Valadka AB. "Natural History of Acute Subdural Hematoma." Neurosurgery clinics of North America 28, no. 2 (2017): 247-255. Karibe H, Hayashi T, Hirano T, Kameyama M, Nakagawa A, Tominaga T. "Surgical management of traumatic acute subdural hematoma in adults: a review." Neurologia medico-chirurgica 54, no. 11 (2014): 887-94. Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, Gordon D, Hartl R, Newell DW, Servadei F, Walters BC, Wilberger JE and Surgical Management of Traumatic Brain Injury Author Group. "Surgical management of acute subdural hematomas." Neurosurgery 58, no. 3 Suppl (2006): S16-24; discussion Si-iv.
2025.02.13 -
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子供の頃の水ぼうそう、覚えていますか?実は、あの時のウイルスが潜伏し、再び牙を剥くことがあるのです。それが「帯状疱疹」。50歳以上の方、免疫力が低下している方は特に注意が必要です。 放置すると、帯状疱疹後神経痛といった後遺症に悩まされることも。 この記事では、帯状疱疹の初期症状から合併症、治療法、ワクチン接種まで、徹底的に解説します。あなたの健康を守るための知識を、今ここで手に入れてください。 帯状疱疹の症状と合併症 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる病気です。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経節に潜伏し、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活動を始めることで発症します。体の片側に現れるピリピリとした痛みと、特徴的な赤い発疹を伴う病気で、体のどこにでも発症する可能性があります。 帯状疱疹の症状を理解することは、早期発見・早期治療につながり、後遺症のリスクを減らすことにもつながります。 帯状疱疹の初期症状:ピリピリとした痛みやかゆみ 帯状疱疹の初期症状で一番多いのは、皮膚のピリピリとした痛みやかゆみです。まるで虫が這っているような、針で刺されたような、ヒリヒリするような感覚など、様々です。時には何も触れていないのに、服が擦れるだけでも痛いと感じることもあります。この痛みやかゆみは、再活性化した帯状疱疹ウイルスが神経に沿って広がることで起こります。ほとんどの場合、片方だけに現れ、左右対称になることはありません。 初期症状は風邪とよく似ていて、発熱や頭痛、倦怠感などを伴うこともあります。そのため、風邪と間違えてしまい、適切な治療が遅れてしまうケースも見られます。 帯状疱疹の特徴的な赤い発疹と水ぶくれ 初期症状の後、数日たつと、赤い発疹が現れます。この発疹は、帯状疱疹の最も特徴的な症状の一つです。赤い発疹は次第に水ぶくれへと変化し、最終的にはかさぶたになって治っていきます。水ぶくれの中にはウイルスが含まれており、破れるとウイルスが拡散し、他の人に水ぼうそうをうつしてしまう可能性があります。ただし、帯状疱疹自体は他の人にうつることはありません。 水痘・帯状疱疹ウイルスは神経に沿って広がるため、発疹も神経に沿って帯状に分布することが多く、これが「帯状疱疹」の名前の由来となっています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 帯状疱疹の痛み:部位や程度、持続期間 帯状疱疹の痛みは、人によって部位や程度、持続期間が大きく異なります。チクチクする軽い痛みから、焼けるような激痛まで、本当に様々です。痛みの程度は、神経へのダメージの大きさや、個人の痛みの感じ方の違いによって変わってきます。 痛みが続く期間も数週間から数ヶ月、場合によっては数年続くこともあります。 帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹のつらい後遺症 帯状疱疹の症状が治まった後も、痛みが続くことがあります。これが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症です。これは、帯状疱疹ウイルスによって神経がダメージを受けたことが原因で起こります。帯状疱疹後神経痛の痛みは、非常に強く、日常生活に大きな影響を与えてしまうこともあります。服を着ることさえも苦痛に感じたり、夜も眠れないほどの痛みを感じる人もいます。 特に高齢者や免疫力が低下している人は、帯状疱疹後神経痛を発症するリスクが高いと言われています。高齢、ストレス、他の感染症、免疫抑制が主なリスク要因となります。最近の研究では、COVID-19ワクチン接種後にも帯状疱疹の再活性化が観察されているという報告もあります。 その他の合併症:髄膜炎、脳神経麻痺など 帯状疱疹は、皮膚の症状だけでなく、様々な合併症を引き起こす可能性があります。まれに、髄膜炎(脳と脊髄を覆う膜の炎症)や脳神経麻痺(脳神経の機能障害)、 Ramsay Hunt症候群(顔面神経麻痺)や眼の合併症、血管炎、腎臓や消化器系の合併症などの重篤な合併症が起こることがあります。 顔面に帯状疱疹が出た場合は、視力や聴力に影響が出る可能性もあるため、注意が必要です。 帯状疱疹の治療と予防 帯状疱疹は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。体の片側に現れるピリピリとした痛み、赤い発疹、水ぶくれなどの症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 抗ウイルス薬による治療:アシクロビル、バラシクロビルなど 帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬が第一選択となります。ウイルスを直接攻撃し、その増殖を抑えることで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進します。抗ウイルス薬は、発疹出現後72時間以内に服用を開始するのが最も効果的です。具体的には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがよく用いられます。 これらの薬剤は、ウイルスのDNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害することで、ウイルスの複製を抑制します。これにより、ウイルスの増殖を抑え、症状の進行を食い止めます。処方された抗ウイルス薬は、指示された用法・用量を厳守し、最後まで飲み切ることが重要です。自己判断で中断すると、症状が再発したり、ウイルスが耐性を持つ可能性があります。 医師の指示に従わずに服薬を中断すると、治療効果が十分に得られないばかりか、薬剤耐性ウイルスの出現を招き、再発時の治療が困難になる可能性があります。 痛み止め:鎮痛薬や神経ブロック注射 帯状疱疹に伴う痛みは、患者さんにとって大きな負担となります。場合によっては非常に強い痛みを感じることもあります。 日常生活に支障が出るほどの痛みには、鎮痛薬の使用を検討します。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの市販薬で対応できることもありますが、痛みが強い場合は、医療機関を受診し、より強力な鎮痛薬を処方してもらう必要があるかもしれません。 ▼痛み止めについて、併せてお読みください。 [blogcardurl="https://fuelcells.org/topics/41471/"] 神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経に直接局所麻酔薬やステロイド薬を注射する治療法です。神経の興奮を抑え、痛みを緩和する効果が期待できます。痛みが特定の部位に限局している場合や、他の治療法で効果が不十分な場合に有効です。 神経ブロック注射は即効性がありますが、効果の持続期間は個人差があります。場合によっては、複数回の注射が必要となることもあります。 家庭でのケア:患部の清潔を保つ、刺激を避ける 薬物療法に加えて、家庭でのケアも重要です。適切なケアを行うことで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進することができます。患部は清潔に保ち、刺激を避けるように心がけましょう。 患部の清潔:シャワーや入浴時に、患部を清潔な石鹸と水で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすったり、タオルで強く拭いたりすると、皮膚が傷つき、症状が悪化する可能性があります。 刺激の回避:患部に衣服が擦れたり、刺激の強い石鹸や化粧品を使用したりするのは避けましょう。また、患部にテープを貼る際は、皮膚への負担が少ないものを選び、剥がす際にはゆっくりと丁寧に行うようにしてください。 患部を冷やすと、痛みやかゆみが和らぐことがあります。清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷嚢を患部に当てて、1回15分程度、1日に数回冷やすのが効果的です。 帯状疱疹ワクチン:種類、効果、費用、副反応 帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)によって引き起こされます。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、体内の神経に潜伏し、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。帯状疱疹ワクチンは、このウイルスの再活性化を抑えることで、帯状疱疹の発症リスクを低減します。 現在、日本では不活化ワクチンである組換え帯状疱疹ワクチンが使用されています。2回の接種が必要で、2回目は1回目の接種から2~6ヶ月後に接種します。 帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹の発症を完全に予防できるわけではありませんが、発症リスクを有意に減少させる効果が確認されています。また、発症した場合でも、症状を軽くしたり、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを低減したりする効果も期待できます。 副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫れなどがみられることがありますが、通常は数日で軽快します。 ワクチン接種の推奨年齢とタイミング 帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の方、または免疫機能が低下している19歳以上の方への接種が推奨されています。特に高齢者や免疫力が低下している方は、帯状疱疹を発症するリスクが高いため、ワクチン接種を検討することが重要です。 スペインでは、生ワクチンと組換えワクチンの2種類のワクチンが使用されています。組換えワクチンは免疫不全の方にも接種可能です。ただし、ワクチンの適応や公的支援については地域差があるため、詳細はお住まいの自治体にお問い合わせください。 帯状疱疹に関するよくある質問 帯状疱疹は、誰しもが経験する可能性のあるありふれた病気です。適切な治療を受ければ多くの場合、治すことができますが、放置すると後遺症として神経痛が残る場合があります。そのため、少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することをお勧めします。 帯状疱疹は人にうつる?感染経路と注意点 帯状疱疹自体は、他の人にうつる病気ではありません。しかし、帯状疱疹の原因となるウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は、水ぼうそうを引き起こすウイルスと同じです。そのため、帯状疱疹の赤い水ぶくれの中には、水ぼうそうのウイルスが含まれています。 帯状疱疹を発症している人と接触し、この水ぶくれが破れてウイルスが皮膚に直接触れることで、水ぼうそうにかかったことのない人が水ぼうそうに感染する可能性があります。 特に、妊娠中の女性や免疫力が低下している人は、水ぼうそうに感染すると重症化のリスクがあるため、十分な注意が必要です。帯状疱疹を発症している場合は、水ぶくれを触らない、清潔を保つ、水ぼうそうにかかったことのない人や抵抗力が弱い方との接触を控えるなど、周囲への配慮を心がけましょう。 帯状疱疹になったら仕事や学校はどうする? 帯状疱疹になったら、症状の程度に合わせて、仕事や学校を休むかどうかを判断する必要があります。発熱や痛みが強い場合は、安静にして休養することが重要です。皮膚症状が強い場合も、周囲に水ぼうそうをうつしてしまうリスクを減らすため、症状が落ち着くまで仕事や学校を休むことが望ましいでしょう。 仕事や学校を休む期間は、症状の程度や回復状況によって異なります。医師と相談し、適切な期間を決めるようにしましょう。 帯状疱疹の再発は予防できる? 帯状疱疹は、一度かかると再発する可能性がある病気です。特に、加齢や免疫力の低下、過労やストレスなどが再発の要因となることがあります。VZVは、非常に効果的なワクチンが利用可能な唯一の人間ヘルペスウイルスであると報告されていますが、水痘ワクチンを接種していたとしても、帯状疱疹を発症する可能性はあります。 帯状疱疹の再発を予防するためには、健康的な生活習慣を心がけ、免疫力を高めることが大切です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスをため込まないようにしましょう。規則正しい生活とストレス軽減は、免疫機能の維持に役立ちます。 帯状疱疹の治療にかかる費用は?保険適用について 帯状疱疹の治療は健康保険が適用されます。費用は医療機関や治療内容、受診回数によって異なりますが、初診料、再診料、検査費用、薬剤費用などが含まれます。自己負担額は、加入している保険の種類や年齢によって異なります。3割負担の場合は、医療費の3割を自己負担することになります。 高額療養費制度を利用できる場合もあります。医療費の負担が心配な場合は、医療機関の窓口に相談してみましょう。 帯状疱疹の専門医はどこで探せる? 帯状疱疹の専門医は、皮膚科、ペインクリニックなどで探すことができます。日本皮膚科学会のウェブサイトなどで、専門医を検索することも可能です。「帯状疱疹 専門医」などのキーワードでインターネット検索することでも、情報を得ることができます。 かかりつけ医がいる場合は、かかりつけ医に相談して、専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Molero García JM, Moreno Guillén S, Rodríguez-Artalejo FJ, Ruiz-Galiana J, Cantón R, De Lucas Ramos P, García-Botella A, García-Lledó A, Hernández-Sampelayo T, Gómez-Pavón J, González Del Castillo J, Martín-Delgado MC, Martín Sánchez FJ, Martínez-Sellés M and Bouza E. "Status of Herpes Zoster and Herpes Zoster Vaccines in 2023: A position paper." Revista espanola de quimioterapia : publicacion oficial de la Sociedad Espanola de Quimioterapia 36, no. 3 (2023): 223-235. Gershon AA, Breuer J, Cohen JI, Cohrs RJ, Gershon MD, Gilden D, Grose C, Hambleton S, Kennedy PG, Oxman MN, Seward JF and Yamanishi K. "Varicella zoster virus infection." Nature reviews. Disease primers 1, no. (2015): 15016. Patil A, Goldust M and Wollina U. "Herpes zoster: A Review of Clinical Manifestations and Management." Viruses 14, no. 2 (2022): .
2025.02.12 -
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人工関節手術。それは、痛みや動きの制限からの解放、そして活動的な人生への回帰を約束する希望の光です。日本では年間約20万件もの人工関節手術が行われており、多くの人々がこの手術によって人生の質を向上させています。しかし、手術後のリハビリや仕事復帰、日常生活における注意点など、気になる点も多いのではないでしょうか? この記事では、人工関節手術後のリハビリテーションから仕事復帰、そして日常生活の注意点まで、整形外科医師が詳しく解説します。具体的なリハビリの段階や内容、痛みの管理、合併症の予防、そして職場復帰支援制度の活用方法まで、網羅的にご紹介します。 手術を控えている方、手術後の方、そしてそのご家族の方々にとって、きっと有益な情報となるでしょう。さあ、人工関節手術後の明るい未来への扉を開きましょう。 人工関節手術後のリハビリと仕事復帰までの流れ 人工関節手術は、激しい関節痛や動きの制限を改善し、より快適な生活を送るための重要な一歩です。手術を受ける決断は大きなものですが、その先には、リハビリテーションを通じて少しずつ身体の機能を取り戻し、再び活動的な日々を送る未来が待っています。 この手術は、まるで身体に新しい部品を組み込むような大がかりなものです。術後の経過は人それぞれとなります。焦らず、一歩ずつ、着実に進んでいきましょう。リハビリテーションと仕事復帰までの道のりについて、一緒に確認していきましょう。 リハビリテーションの段階と内容 リハビリテーションは、手術直後から始まります。初期のリハビリは、ベッドの上でできる簡単な運動からスタートし、徐々に難易度を上げていきます。術後のリハビリテーションは、術後の回復を促進し、合併症を予防するために非常に重要です。 術後早期(術後1日目~): この時期は、手術の侵襲による身体への負担が大きいため、安静が最優先されます。しかし、安静にしすぎることで血栓症や肺炎などの合併症のリスクが高まるため、ベッド上でもできる運動が推奨されます。具体的には、足首の運動、深呼吸、寝返りなどです。これらの運動は、血液循環を促進し、呼吸機能を維持するのに役立ちます。 術後1~2週間: 痛みが徐々に軽減し始め、より積極的なリハビリテーションが開始されます。ベッド上での運動に加えて、座位、立位、歩行練習などが行われます。この段階では、関節可動域の拡大と筋力強化を図ることが目標です。理学療法士の指導のもと、杖や歩行器などの補助具を使用しながら、徐々に歩行距離を伸ばしていきます。 術後2~4週間: 歩行が安定してくると、日常生活動作の練習が中心となります。歩行器や杖を使った歩行練習、階段昇降、トイレへの移動、着替えなど、日常生活に必要な動作を繰り返し練習することで、自宅での生活にスムーズに戻れるよう準備していきます。 術後1~3ヶ月: この時期になると、さらに積極的なリハビリテーションプログラムが組まれます。自転車エルゴメーターや水中歩行など、関節への負担が少ない運動を取り入れながら、関節可動域の維持・拡大、筋力強化を図ります。また、退院後の生活を見据え、趣味や軽い運動なども徐々に再開していきます。 リハビリテーションの内容は、一人ひとりの状態に合わせて調整されます。年齢、手術前の活動レベル、合併症の有無など、様々な要因が考慮されます。理学療法士などの専門家と相談しながら、無理なく進めていきましょう。最新の研究では、Enhanced Recovery After Surgery(ERAS)というプログラムが注目されており、術前から術後の包括的な管理を行うことで、より早期の回復と社会復帰を目指しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 痛みの管理と合併症の予防 人工関節手術後は、痛みや腫れが出ることがあります。これは手術による組織の損傷や炎症反応によるもので、自然な経過です。しかし、痛みを我慢しすぎると、リハビリテーションへの意欲が低下し、回復が遅れてしまう可能性があります。 痛みの管理には、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。薬物療法としては、痛み止め(鎮痛剤)や消炎鎮痛剤が処方されます。医師や看護師の指示に従って、正しく服用しましょう。非薬物療法としては、冷却や温罨法、マッサージなどがあります。 人工関節手術後の合併症として、感染症、血栓症、脱臼、人工関節の緩みなどが挙げられます。感染症は、手術部位に細菌が侵入することで起こります。血栓症は、手術後に血栓(血液の塊)ができて血管を詰まらせてしまうことです。脱臼は、人工関節が本来の位置からずれてしまうことです。人工関節の緩みは、人工関節が骨にしっかりと固定されなくなってしまうことです。 これらの合併症を予防するために、清潔を保ち、医師の指示に従った予防策を講じることが重要です。定期的な創部の観察と消毒、弾性ストッキングやフットポンプの使用、早期離床と適度な運動などが有効です。 仕事復帰までの期間と流れ 仕事復帰までの期間は、仕事内容や回復状況によって大きく異なります。事務職であれば術後数週間で復帰できる場合もありますが、肉体労働など身体に負担のかかる仕事の場合は、数ヶ月かかることもあります。 仕事復帰までの流れとしては、まず主治医との相談が重要です。現在の身体の状態やリハビリテーションの進捗状況を踏まえ、仕事復帰の時期や方法について話し合います。職場の上司や同僚との連携も大切です。仕事復帰に向けて、職場環境の調整(勤務時間、業務内容など)が必要となる場合もあります。必要な場合は、産業医への相談も検討します。 焦らずに、自分のペースで復帰を目指しましょう。復帰後も、定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行うことが重要です。 職場復帰支援制度の活用 仕事復帰に向けて、さまざまな支援制度を活用することができます。傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだ場合に、生活費の一部を補填する制度です。高齢者の医療の確保に関する法律は、75歳以上の方の医療費自己負担割合を軽減する制度です。障害年金は、病気やケガによって障害が残った場合に、生活を保障するための制度です。 これらの制度は、経済的な不安を軽減し、安心してリハビリテーションに専念するために役立ちます。必要に応じて、主治医やソーシャルワーカーに相談してみましょう。 人工関節手術後の生活と注意点 人工関節手術は、痛みや動きの制限から解放され、活動的な生活を取り戻すための大きな一歩です。しかし、手術を受けた後も、新しい関節と長く付き合っていくためには、日常生活での注意点と工夫が欠かせません。まるで身体に新しい相棒を迎えたように、その特徴を理解し、適切に扱うことで、より快適で安心な生活を送ることができるでしょう。 日常生活の注意点と工夫 人工関節は、自分の骨と完全に一体化しているわけではありません。そのため、過度な負担や不適切な動きは、人工関節の寿命を縮めたり、脱臼などの合併症を引き起こす可能性があります。日常生活では、以下の点に注意しながら、人工関節を大切に扱いましょう。 1. 人工関節への負担を減らす工夫 重いものを持つ: 買い物かごやリュックサックなどを活用し、片側だけに負担がかからないようにしましょう。どうしても重いものを持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とした姿勢で、両手で持ち上げるようにしてください。 無理な姿勢: 中腰での作業や、足を組む、あぐらをかくといった姿勢は、人工関節に負担をかけるだけでなく、脱臼のリスクも高めます。なるべく避け、どうしても必要な場合は時間を短くし、休憩を挟むようにしましょう。 同じ姿勢を長時間続ける: デスクワークや車の運転など、同じ姿勢を長時間続ける場合は、1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチをする、足を動かすなど、血行を促進し、関節の柔軟性を保つように心がけましょう。 和式トイレ: 和式トイレは、股関節を深く曲げる必要があるため、人工関節に大きな負担がかかり、脱臼のリスクも高まります。可能であれば、洋式トイレを使用するか、和式トイレに補助具を設置するなど、工夫しましょう。 入浴: 入浴は、血行を促進し、筋肉の緊張を緩和する効果があるため、積極的に行いましょう。ただし、滑りやすい場所なので、手すりや滑り止めマットなどを設置し、転倒防止に十分注意してください。また、湯船の出入りは、ゆっくりと行い、急な動作は避けましょう。 2. 転倒防止 転倒は、人工関節に大きな衝撃を与え、破損や脱臼の原因となる可能性があります。家の中だけでなく、外出先でも転倒のリスクを意識し、予防策を講じることが重要です。具体的には、床に物を置かない、段差に注意する、滑りにくい靴を履く、階段では手すりを持つ、など、基本的なことを徹底しましょう。夜間は足元を明るくし、必要に応じて杖や歩行器を使用することも有効です。 3. 感染症の予防 人工関節は、感染症に弱いため、傷口のケアや衛生管理には特に気を配る必要があります。傷口は清潔に保ち、医師の指示に従って適切な処置を行いましょう。また、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、人工関節に感染が波及するリスクがあるため、手洗いやうがい、マスクの着用など、感染予防を徹底することが大切です。歯科治療を受ける際も、人工関節手術を受けたことを必ず伝え、抗菌薬の予防投与が必要かどうか相談しましょう。 スポーツや趣味の再開時期 人工関節手術後、日常生活動作が問題なく行えるようになったら、スポーツや趣味の再開を検討することができます。人工膝関節全置換術(TKA)と人工股関節全置換術(THA)を受けた患者さんには、フォーマルな監督下での活動プログラムだけでなく、非監督下での活動も推奨されています。これは、ご自身のペースで、日常生活の中で身体を動かすことが重要であるということです。 しかし、すべてのスポーツがすぐに再開できるわけではありません。激しい運動や、関節に大きな負担がかかる運動は、人工関節の寿命を縮めたり、合併症を引き起こす可能性があります。再開する際は、必ず主治医に相談し、許可を得てから行うようにしましょう。 許可される運動(例): ウォーキング、水泳、サイクリング、ゴルフ、卓球など。これらの運動は、関節への負担が比較的少なく、筋力や柔軟性を維持・向上させる効果があります。 禁止される運動(例): ジョギング、サッカー、バスケットボール、スキー、スノーボードなど。これらの運動は、関節への衝撃が大きく、人工関節に負担がかかりすぎるため、避けるべきです。 スポーツや趣味を再開する際には、以下の点に注意しましょう。 痛みが生じる場合は、無理せず中止する 徐々に運動強度や時間を増やしていく 適切なウォーミングアップとクールダウンを行う 定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行う 手術前の活動レベルに回復するには個人差がありますが、焦らず、医師の指示に従いながら、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 まとめ 人工関節手術後、仕事に復帰するには、リハビリテーションと日常生活の注意点、そして職場復帰支援制度の活用が重要です。 手術後は、段階的なリハビリを通して身体機能の回復を目指します。 日常生活では、人工関節への負担を減らす工夫や転倒防止、感染症予防を心がけ、スポーツや趣味の再開は医師と相談の上、徐々に進めていきましょう。 仕事復帰までの期間は仕事内容や回復状況によって異なり、職場との連携も大切です。 焦らず、自分のペースで復帰を目指し、様々な支援制度を活用しながら、快適な生活を取り戻しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Soffin EM, Wainwright TW. "Hip and Knee Arthroplasty." Anesthesiology clinics 40, no. 1 (2022): 73-90. Šťastný E, Trč T, Philippou T. "[Rehabilitation after total knee and hip arthroplasty]." Casopis lekaru ceskych 155, no. 8 (2016): 427-432. Fortier LM, Rockov ZA, Chen AF, Rajaee SS. "Activity Recommendations After Total Hip and Total Knee Arthroplasty." The Journal of bone and joint surgery. American volume 103, no. 5 (2021): 446-455. Wainwright TW, Gill M, McDonald DA, Middleton RG, Reed M, Sahota O, Yates P, Ljungqvist O. "Consensus statement for perioperative care in total hip replacement and total knee replacement surgery: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS(®)) Society recommendations." Acta orthopaedica 91, no. 1 (2020): 3-19. Canovas F, Dagneaux L. "Quality of life after total knee arthroplasty." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S41-S46.
2025.02.11 -
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膝の痛み...それを解消する強力なアイテムとなるのが「膝サポーター」です。 日本では、特に高齢化社会に伴い、膝のトラブルを抱える方が増加しており、その対策としてサポーターへの注目が集まっています。 しかし、ドラッグストアやネット通販で手軽に買えるようになった反面、種類が多すぎてどれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? ここでは、最新の研究データに基づいたエビデンスも交えながら、サポーターの効果と限界についても明らかにしていきます。 自分にぴったりのサポーターを見つけることで、痛みを軽減し、快適な日常生活を取り戻す第一歩を踏み出しましょう。 膝サポーターの種類と特徴 膝の痛みや違和感を感じた時、多くの方がまず手にするのが膝サポーターではないでしょうか。 ドラッグストアやスポーツ用品店、オンラインショップなど、様々な場所で手軽に購入できるため、利用されている方も多いと思います。 しかし、一口に膝サポーターと言っても、その種類は実に様々です。ご自身の膝の状態に合わないものをつけると、かえって逆効果となります。 この章では、様々な種類のサポーターの特徴を一つずつわかりやすく解説していきますので、サポーター選びの際の参考にしていただければ幸いです。 スポーツ用サポーター(バスケットボール、サッカー、バレーボールなど) スポーツ用サポーターは、膝への負担を和らげたり、ケガを未然に防いだりするために使われます。スポーツの種類によって、求められる機能も大きく異なります。 例えば、バスケットボールのようにジャンプや着地動作が多いスポーツでは、いかに膝への衝撃を少なくするかが大事となります。 厚みのあるパッドが付いたサポーターや、特殊な素材で衝撃を分散させる機能を持つサポーターを選ぶと良いでしょう。 サッカーでは、急な方向転換やストップ動作が頻繁に行われます。 このような動作は、膝関節にねじれの力を加え、靭帯を痛めてしまいます。膝関節をしっかりと固定し、不意のねじれから保護するタイプのサポーターがおすすめです。 バレーボールでは、ジャンプの着地時だけでなく、レシーブの際に床に滑り込むなど、膝を捻るリスクが非常に高い競技です。 2023年に発表されたシステマティックレビュー(※複数の臨床研究をまとめて分析したもの)でも、膝蓋骨脱臼に対する手術療法と非手術療法の有効性について、依然として明確な結論が出ていないことが示されています。 つまり、サポーターによる予防が非常に重要であると言えるでしょう。バレーボールでは、膝のお皿(膝蓋骨)の周囲をサポートし、脱臼を防ぐサポーターが有効です。 スポーツ用サポーターを選ぶ際には、行うスポーツの特徴を考慮し、適切な機能を持つサポーターを選びましょう。 また、通気性の良い素材を選ぶことで、汗による不快感を軽減し、快適にスポーツを楽しむことができます。 日常生活用サポーター 日常生活用サポーターは、家事や仕事、買い物など、日常生活での膝の痛みや不安定感を少なくする効果があります。 高齢になると、膝の軟骨がすり減り、変形性膝関節症を発症する方が多くいらっしゃいます。 初期は動き始めが痛いだけですが、放置すると歩行時や夜間にも痛みが出てしまい、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 ▼変形性膝関節症の治療について、併せてお読みください。 具体的には、階段の上り下りや、椅子からの立ち上がり動作が楽になるようにサポートしてくれるサポーターや、膝のぐらつきを抑えて安定感を高めるサポーターなどがあります。 装着が簡単なものや、薄手で服の下に着けても目立ちにくいものなど、多種多様の製品があり、ご自身の生活スタイルや好みに合わせて選ぶと良いでしょう。 また、最近では関節の動きをサポートするだけでなく、保温効果を高めたものや、通気性に優れた素材を使用したものなど、機能性も重視されています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 医療用サポーター 医療用サポーターは、変形性関節症や靭帯損傷などの特定の疾患に対応するために使用されます。一般的には、医師の指導のもとで使用します。 変形性膝関節症では、膝関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接擦れ合うことで炎症や痛みが発生します。 医療用サポーターは、膝関節を安定させることで痛みを軽減し、変形の進行を遅らせる効果が期待できます。 靭帯損傷は、スポーツなどでの急激な動作や外力によって、膝の安定に必要な靭帯がケガすることです。 前十字靭帯や内側側副靭帯の損傷は特に多く、初期治療が大切です。サポーターは、損傷した靭帯を保護し、関節の安定性を高めることで、怪我を治す期間を縮めてくれます。 ▼前十字靭帯、その症状は軽度?重度?こちらも併せてお読みください。 機能別サポーター(保温、固定など) 膝サポーターは、その機能によっても分類することができます。代表的な機能として、保温機能と固定機能が挙げられます。 保温機能を重視したサポーターは、膝周りの保温性を高めることで、血行を促進し、痛みを和らげる効果があります。冬季のスポーツ時や冷えから膝を守りたい方におすすめです。 固定機能を重視したサポーターは、膝関節をしっかりと固定することで、関節の安定性を向上させます。 スポーツ時の怪我予防や、膝の不安定感が強い方、靭帯損傷後のリハビリテーション時などに使用されます。 最近では、保温と固定の両方の機能を兼ね備えたサポーターも販売されています。 素材別サポーター(ネオプレン、ナイロンなど) 膝サポーターは、素材によっても特徴が異なります。 ネオプレン素材のサポーターは、保温性と伸縮性に優れているため、フィット感が良く、膝関節をしっかりと包み込むような装着感が特徴です。保温効果が高いことから、冷え性の方や、冬季のスポーツに適しています。また、水に強く、汚れにくいというメリットもあります。 ナイロン素材のサポーターは、軽量で通気性が良く、速乾性にも優れているため、暑い季節でも快適に使用できます。耐久性も高く、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいというメリットがあります。 膝サポーターの効果とデメリット、選び方のポイント 膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させる悩ましい症状です。歩くのも、階段の上り下りも、椅子から立ち上がるのも、痛みが伴うと億劫になってしまいますよね。 自分に合ったサポーターを装着することで、ケガを予防してくれたり、症状の悪化を防いでくれます。しかし、その種類は多岐にわたり、自分に合わないものをつけてしまうと、痛みが増強することもよくあるので注意しましょう。 この章では、膝サポーターの効果とデメリット、そして選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。ご自身にぴったりのサポーター選びの参考になれば幸いです。 膝サポーターの効果:痛み軽減、関節の安定化、怪我予防 膝サポーターの効果は大きく分けて「痛み軽減」「関節の安定化」「怪我予防」の3つです。 まず「痛み軽減」についてですが、サポーターを装着することで膝関節を適度に圧迫し、保温効果によって血行が促進されます。温かいタオルで患部を温めると痛みが和らぐのと同じですね。また、圧迫によって、関節内の炎症によって生じた腫れを抑える効果も期待できます。 次に「関節の安定化」ですが、膝関節が不安定な状態だと、少しの動きでも痛みを感じたり、転倒のリスクが高まったりします。サポーターは、関節を外部から支えることで安定性を高め、ぐらつきを抑えてくれます。不安定な積み木にそっと手を添えるように、サポーターが膝関節をサポートしてくれるイメージです。 最後に「怪我予防」についてです。スポーツや重労働などで膝に大きな負担がかかる際、サポーターは関節や靭帯を保護し、怪我のリスクを軽減するのに役立ちます。膝への負担が大きい動作を行うスポーツでは、サポーターによる保護が重要です。 膝サポーターのデメリット:締め付けによる不快感、皮膚トラブル、筋力低下 膝サポーターは多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。 まず、サポーターによる締め付けが強すぎると、不快感や痛み、血行障害などを引き起こす可能性があります。また、サポーターの素材によっては、皮膚にかぶれやかゆみなどのアレルギー反応が生じることもあります。特に、汗をかきやすい夏場や、長時間サポーターを装着している場合は注意が必要です。 さらに、サポーターに頼りすぎることで、膝周りの筋肉をあまり使わなくなり、筋力が低下する可能性も懸念されます。これは、怪我をした際にギプスで固定し続けると、その部分の筋肉が衰えてしまうのと同じ原理です。サポーターはあくまで補助的な役割であり、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 『膝のサポーターをするととても楽です』と言われる患者様には、必ず、『サポーターをつけると、筋肉が落ちるので、必ず筋トレも忘れずにしましょうね』と言います。筋トレをせずにいて、筋力低下を起こすと、ますますサポーターがなくては生活ができなくなるという悪循環に陥るので注意が必要です。 サイズの選び方:適切なサイズで効果を最大化 膝サポーターは、サイズが合ってないと、関節を痛めることとなり、さらに締め付けによる不快感や血行障害を引き起こす可能性があります。 サポーターのサイズを選ぶ際は、必ず膝周りのサイズを正確に測り、商品ごとのサイズ表と照らし合わせて選びましょう。一般的には、膝のお皿の上約10cmの太ももの周囲の長さを基準とします。メジャーを使用して、立った状態で計測するのがおすすめです。 膝サポーターに関するエビデンスと研究データ 膝サポーターは、スポーツ選手から高齢者まで幅広く利用されています。その効果について、様々な意見を耳にすることがあるかもしれません。「効果がある」という人もいれば、「効果がない」という人もいます。一体どちらが正しいのでしょうか? 実は、膝サポーターの効果については、多くの研究が行われており、その結果も様々です。この章では、科学的根拠(エビデンス)に基づいて、膝サポーターの効果と限界について、わかりやすく解説します。 具体的な研究データに基づいた解説 膝サポーターの効果を検証した研究は、世界中で数多く行われています。例えば、サッカー選手を対象とした研究では、膝サポーターが前十字靭帯(ACL)損傷の予防に役立つ可能性が示唆されています。ACLは膝関節の中にある靭帯の一つで、これが損傷すると、歩行やスポーツに大きな支障をきたします。特に、急な方向転換やジャンプの着地時など、膝に大きな負担がかかる動作で、サポーターの効果が期待できるという研究結果が出ています。 また、ランナーを対象とした研究では、サポーターがランニング中の膝の安定性を向上させる可能性が示唆されています。これは、サポーターが膝関節を外部から支えることで、関節のぐらつきを抑え、安定性を高めるためだと考えられます。 さらに、変形性膝関節症の患者さんを対象とした研究では、サポーター装着によって痛みや歩行機能が改善したという報告もあります。 スクワット時の膝への影響 スクワットのように、膝を深く曲げる運動をするとき、膝サポーターはどのような影響を与えるのでしょうか? 研究によると、スクワット時の膝への負担は、膝の曲げ角度によって変化し、特に60~90度の屈曲で大きくなる傾向があります。サポーターはこの負担を軽減する効果があるとされています。 しかし、一方でサポーターの過度な使用は、膝周りの筋肉のトレーニング効果を弱める可能性も指摘されています。これは、サポーターが膝関節を支える役割を果たすため、筋肉が本来担うべき役割を奪ってしまうためと考えられます。サポーターはあくまで補助的な役割として使用し、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 動的膝外反への効果 動的膝外反とは、運動中に膝が内側に入ってしまう状態のことです。ジャンプの着地時やランニング中などに、膝が内側に倒れこむように曲がってしまうと、膝関節や靭帯に大きな負担がかかり、痛みや怪我につながる可能性があります。 研究によると、適切なエクササイズと併用することで、サポーターは動的膝外反の改善に役立つ可能性があると考えられています。特に、シングルレッグスクワットやシングルレッグランディングといった片足での運動時に効果的です。これらの運動は、バランス能力や体幹の安定性を向上させる効果があり、動的膝外反の予防・改善に繋がります。サポーターは、これらの運動を行う際に、膝の怪我の予防に活躍してくれます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Pereira PM, Baptista JS, Conceição F, Duarte J, Ferraz J, Costa JT. "Patellofemoral Pain Syndrome Risk Associated with Squats: A Systematic Review." International journal of environmental research and public health 19, no. 15 (2022). Smith TO, Gaukroger A, Metcalfe A, Hing CB. "Surgical versus non-surgical interventions for treating patellar dislocation." The Cochrane database of systematic reviews 1, no. 1 (2023): CD008106. Alentorn-Geli E, Myer GD, Silvers HJ, Samitier G, Romero D, Lázaro-Haro C, Cugat R. "Prevention of non-contact anterior cruciate ligament injuries in soccer players. Part 1: Mechanisms of injury and underlying risk factors." Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA 17, no. 7 (2009): 705-29. Wilczyński B, Zorena K, Ślęzak D. "Dynamic Knee Valgus in Single-Leg Movement Tasks. Potentially Modifiable Factors and Exercise Training Options. A Literature Review." International journal of environmental research and public health 17, no. 21 (2020).
2025.02.11 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
激しい頭痛と吐き気…あなたは大丈夫ですか? この症状、実は様々な原因が潜んでいることをご存知ですか? 単なる風邪やストレスから、脳腫瘍など命に関わる病気を示すサインである可能性も。 年間150万人以上もの方が悩むと言われるうつ病のように、現代社会では様々な病気が増加傾向にあります。 今回の記事では、頭痛と吐き気の原因を4つに分類し、それぞれの症状の特徴や、病院へ行く目安を分かりやすく解説します。 さらに、ご自宅でできる7つの対処法もご紹介します。 「いつもの頭痛と何か違う…」と感じた時、あなたを守るための知識を手に入れましょう。 この記事を読み終える頃には、頭痛と吐き気の対処法と、受診すべきサインを理解し、安心できるはずです。 頭痛と吐き気の原因4選 頭痛と吐き気。どちらもよくある症状ですが、一緒に起こると不安になりますよね。実は、その原因は様々で、緊急性の低いものから命に関わるものまであります。今回は、頭痛と吐き気が同時に起こる原因を4つご紹介し、それぞれの症状の特徴や、病院へ行く目安などについて詳しく解説します。 緊張型頭痛 緊張型頭痛は、肩や首の筋肉の緊張が原因で起こる頭痛です。まるで頭全体を締め付けられるような痛み、あるいは後頭部が重苦しい感じが特徴です。吐き気は、痛みがひどくなった場合に現れることがあります。精神的なストレスや、長時間のパソコン作業、猫背などの悪い姿勢が原因となることが多いです。 思春期に発症することが多く、20代でピークを迎えます。30代以降は徐々に頻度が減少していく傾向にありますが、日常生活でのストレスや長時間労働などで、30代以降も緊張型頭痛に悩まされる方は少なくありません。私自身も、医療現場の激務で首や肩が凝り固まり、緊張型頭痛に悩まされた経験があります。 緊張型頭痛は一次性頭痛の中で最も多く、多くの人が経験するありふれた頭痛です。一次性頭痛とは、他の病気から引き起こされる二次性頭痛とは異なり、頭痛自体が病気であるものを指します。 緊張型頭痛の対処法として、ストレス軽減、姿勢改善、マッサージ、鎮痛薬の服用などが挙げられます。 日常生活の中で、リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむ、軽い運動をするなど、ストレスを軽減する工夫をしてみましょう。また、正しい姿勢を意識し、長時間同じ姿勢を続けないようにすることも重要です。デスクワークの方は、1時間に1回は立ち上がって軽いストレッチをすることをお勧めします。 片頭痛 ズキンズキンと脈打つような激しい痛みが特徴の片頭痛。多くの場合、頭の片側が痛みますが、両側が痛むケースもあります。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、光、音、匂いに敏感になることもあります。女性に多く、遺伝的な要因も関係していると考えられています。 片頭痛も緊張型頭痛と同様に一次性頭痛に分類され、身体活動によって悪化するのが特徴です。また、遺伝的要因や、光や音に過敏になる光恐怖症、音恐怖症なども片頭痛の特徴として挙げられます。 片頭痛の症状は人それぞれですが、代表的な症状としては、脈打つような痛み、吐き気や嘔吐、光・音・匂いへの過敏さ、めまいなどがあります。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 片頭痛の対処法としては、以下の3つが挙げられます。暗くて静かな場所で横になる、こめかみなどに冷却シートを貼って冷やす、市販の鎮痛薬や医師から処方された薬を服用するなどです。 群発頭痛 群発頭痛は、目の奥やこめかみあたりに強烈な痛みが起こり、同時に激しい吐き気が伴います。片側の目が充血したり、涙や鼻水が出たりすることもあります。男性に多く、1~2ヶ月間、毎日同じ時間帯に起こるのが特徴です。 群発頭痛は、その名の通り、一定期間に集中して起こる頭痛です。群発期と呼ばれるこの期間は、数週間から数ヶ月続くことがあり、患者さんにとっては非常に辛い時期となります。群発期が終わると、しばらくは頭痛のない期間が続きますが、再び群発期が訪れることもあります。 群発頭痛の対処法としては、医師の指示に従って酸素を吸入する、医師から処方されたトリプタン系薬剤を服用する、などが挙げられます。 脳腫瘍などの命に関わる病気 頭痛と吐き気は、脳腫瘍などの命に関わる病気のサインである場合もあります。今までに経験したことのないような激しい頭痛や、意識障害、手足の麻痺などを伴う場合は特に注意が必要です。このような症状が現れた場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに病院を受診してください。 命に関わる病気のサインを見逃さないためには、以下の症状に注意することが大切です。 突然の激しい頭痛 意識障害 手足のしびれや麻痺 ろれつが回らない ものが二重に見える けいれん 高熱 などです。 これらの症状は、脳腫瘍以外にも、くも膜下出血や髄膜炎など、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。少しでも気になる症状がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 頭痛と吐き気を和らげる7つの対処法 頭痛と吐き気。日常生活で経験する方も多いのではないでしょうか。これらの症状は、単独で起こることもあれば、同時に起こることもあり、その辛さは経験した人にしかわからないものです。 吐き気や嘔吐を伴う頭痛は、日常生活に支障をきたすだけでなく、時に命に関わる重篤な疾患のサインである可能性も否定できません。 今回は、ご自宅でできる頭痛と吐き気を和らげる7つの方法をご紹介します。これらの方法を試しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。 市販薬(鎮痛薬)を服用する 市販の鎮痛薬は、ドラッグストアなどで手軽に入手でき、多くの場合、頭痛と吐き気を和らげるのに役立ちます。代表的な鎮痛薬としては、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどがあります。 アセトアミノフェンは、必ず医師や薬剤師に相談してから服用するようにしてください。イブプロフェンは、解熱鎮痛効果に加えて、抗炎症作用も持ち合わせています。 鎮痛薬を服用する際には、用法・用量を厳守することが重要です。決められた量以上を服用したり、長期間にわたって服用し続けたりすると、胃腸障害や肝機能障害などの副作用が現れる可能性があります。 また、持病がある方や他の薬を服用している方は、医師や薬剤師に相談の上、市販薬との飲み合わせを確認することが大切です。鎮痛薬の中には、吐き気を悪化させる成分が含まれているものもありますので、注意が必要です。 ▼市販の痛み止めについて、併せてお読みください。 冷却シートで頭を冷やす ズキンズキンと脈打つような痛みを伴う片頭痛の場合、冷却シートで頭を冷やすのが効果的です。冷却シートを額やこめかみに貼ることで、血管が収縮し、痛みを和らげることができます。 冷却シートがない場合は、氷嚢や冷たいタオルでも代用可能です。ただし、長時間冷やしすぎると、凍傷を起こす可能性がありますので、15~20分程度を目安に使用してください。 温かいタオルで首や肩を温める 肩や首の筋肉の緊張が原因で起こる緊張型頭痛の場合、温かいタオルで首や肩を温めるのが効果的です。温めることで、筋肉の緊張がほぐれ、血行が促進され、頭痛が和らぎます。吐き気も、首や肩の筋肉の緊張が原因で起こることがありますので、温めることで症状が改善される可能性があります。 お風呂に浸かったり、蒸しタオルを使用したりするのも効果的です。40~42度くらいのぬるめのお湯に15~20分程度浸かるのがおすすめです。 静かな場所で休息する 頭痛や吐き気があるときは、心身ともに疲れている状態です。静かな場所で休息することで、副交感神経が優位になり、身体をリラックスさせ、症状を和らげることができます。 照明を暗くしたり、リラックスできる音楽を聴いたりするのも効果的です。また、吐き気があるときは、横になることで症状が楽になることがあります。 カフェインを控える カフェインは、血管を収縮させる作用があり、一時的には頭痛を和らげる効果がありますが、カフェインの摂取を急にやめると、反動で頭痛が悪化することがあります。「カフェイン離脱性頭痛」と呼ばれるこの頭痛は、カフェインの常用をやめた後12~24時間以内に発症し、2~9日間続くことがあります。 また、カフェインには利尿作用があり、体内の水分が失われ、脱水症状を引き起こす可能性があります。脱水症状は、頭痛や吐き気を悪化させる原因となりますので、カフェインの過剰摂取は控え、徐々に摂取量を減らしていくことが大切です。 水分を十分に摂る 脱水症状は、頭痛や吐き気を引き起こす原因となります。水分を十分に摂ることで、体内の水分バランスを維持し、症状の悪化を防ぐことができます。 常温の水やスポーツドリンクなどがおすすめです。冷たい飲み物は、胃腸を刺激し、吐き気を悪化させる可能性がありますので、避けるようにしましょう。 刺激物を避ける 強い光や音、においなどの刺激は、頭痛や吐き気を悪化させる可能性があります。これらの刺激を避けることで、症状を和らげることができます。 例えば、明るい場所にいる場合は、暗い場所に移動したり、目を閉じたりする、大きな音がする場所にいる場合は、耳栓をしたり、静かな場所に移動したりするなどの工夫をしましょう。 また、食べ物や飲み物にも注意が必要です。香辛料の効いた食べ物やアルコールなどは、胃腸を刺激し、吐き気を悪化させる可能性がありますので、避けるようにしましょう。周期性嘔吐症候群(CVS)は、片頭痛と共通の特徴を持つものの頭痛を伴わない症候群であり、数時間から数日続く吐き気、嘔吐、腹痛の発作を繰り返します。小児期に発症することが多く、大人になって初めて発症することもあります。 病院は何科?受診の目安と3つの注意点 頭痛と吐き気。多くの方が経験する症状ですが、その裏には深刻な病気が隠れている可能性もあるため、安易に考えてはいけません。 緊急性の高い症状を見極め、適切なタイミングで医療機関を受診することは、健康を守る上で非常に重要です。 緊急度の高い症状 「いつもの頭痛と何か違う」「吐き気がひどい」と感じたら、すぐに医療機関を受診すべきサインかもしれません。 特に以下の症状が現れた場合は、ためらわず救急車を呼ぶか、すぐに病院へ向かってください。一刻を争う事態の可能性があります。 意識障害:呼びかけに反応が鈍い、意識がもうろうとする ろれつが回らない、言葉が出てこない 手足のしびれや麻痺 激しい嘔吐 高熱 けいれん 首の痛みやこわばり 突発的な激しい頭痛(今まで経験したことのないような痛み) これらの症状は、くも膜下出血や脳卒中といった命に関わる病気を示唆している可能性があります。 また、慢性的な大量大麻使用によって過剰嘔吐を引き起こす、カンナビノイド過剰嘔吐症候群の可能性も考慮しなければなりません。 受診の目安 緊急性の高い症状がない場合でも、以下の項目に当てはまる場合は、医療機関への受診をおすすめします。 頭痛が慢性的に続いている(4週間以上) 吐き気が慢性的に続いている(4週間以上) 市販薬を服用しても症状が改善しない 日常生活に支障が出ている 不安が強い 慢性的な吐き気と嘔吐は、消化器系の問題(胃不全、周期性嘔吐症候群など)だけでなく、薬の副作用や内耳の異常といった消化器系以外の原因でも起こり得ます。 原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。周期性嘔吐症候群は、片頭痛と類似の特徴を持つものの頭痛を伴わず、数時間から数日間続く吐き気、嘔吐、腹痛の発作を繰り返します。小児期に発症することが多いですが、成人後に初めて発症するケースもあります。 受診する診療科 頭痛と吐き気が起こった際は、まず内科を受診してください。内科では、問診、身体診察、血液検査などを通して症状の原因を探ります。 必要に応じて、神経内科、脳神経外科、消化器内科など、専門の診療科に紹介状を書いてもらうことができます。 例えば、慢性的な頭痛と吐き気は、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などが疑われるため、内科や神経内科の受診が適切です。 胃の不快感を伴う吐き気であれば、胃腸炎や胃潰瘍の可能性があるため、内科または消化器内科を受診します。 めまいを伴う吐き気の場合は、メニエール病や良性発作性頭位めまい症が考えられるため、内科または耳鼻咽喉科の受診が適切です。 診察時に伝えること 医師に症状を正しく伝えることは、正確な診断と適切な治療を受けるために不可欠です。 以下の情報を整理して伝えられるようにしておきましょう。 症状が始まった時期 痛みの種類(ズキズキする、締め付けられるなど) 痛みの強さ(軽い、中等度、激しい) 痛む場所 吐き気の程度 その他の症状の有無(発熱、めまい、視覚異常など) 現在服用している薬 過去の病気 生活習慣(食事、睡眠、運動、喫煙、飲酒など) 受診前に準備しておくこと スムーズな診察のために、以下のものを事前に準備しておきましょう。 健康保険証 医療証(お持ちの方) 服用中の薬 過去の検査結果やお薬手帳(お持ちの方) メモした症状 医師の説明はしっかりと聞き、不明な点は積極的に質問することが大切です。 原因が特定できない場合や、治療が難しい場合(循環性嘔吐症候群など)もあります。医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけることが重要です。 まとめ 頭痛と吐き気は、原因も対処法も様々です。この記事では、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、そして命に関わる病気の可能性についても解説しました。 ご自宅でできる対処法として、市販薬の服用、冷却・温熱療法、休息、カフェインの制限、水分補給、刺激物の回避などを紹介しました。しかし、これらの方法で症状が改善しない場合、または、意識障害や激しい嘔吐などの緊急性の高い症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。 受診する際は、内科を受診し、必要に応じて神経内科や脳神経外科などに紹介されることもあります。診察時には、症状の開始時期や種類、痛みの強さ、吐き気の程度、その他の症状などを詳しく医師に伝えましょう。 頭痛と吐き気は、放置すると危険な場合もあります。少しでも不安を感じたら、早めに医療機関を受診し、安心を得てください。早期発見・早期治療が、症状の改善に繋がります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Kemper LT, Vedder IR, Ter Avest E. "Woman With Headache and Nausea." Annals of emergency medicine 79, no. 6 (2022): e109-e110. Goldman L. "Griseofulvin." The Medical clinics of North America 54, no. 5 (1970): 1339-45. Lacy BE, Parkman HP, Camilleri M. "Chronic nausea and vomiting: evaluation and treatment." The American journal of gastroenterology 113, no. 5 (2018): 647-659. Johns T, Lawrence E. "Evaluation and Treatment of Nausea and Vomiting in Adults." American family physician 109, no. 5 (2024): 417-425. Frazier R, Li BUK, Venkatesan T. "Diagnosis and Management of Cyclic Vomiting Syndrome: A Critical Review." The American journal of gastroenterology 118, no. 7 (2023): 1157-1167. Patniyot I, Qubty W. "Headache in Adolescents." Neurologic clinics 41, no. 1 (2023): 177-192. Cheema S, Matharu M. "Abdominal migraine and cyclical vomiting syndrome." Handbook of clinical neurology 198, no. (2023): 209-219. Onan D, Younis S, Wellsgatnik WD, Farham F, Andruškevičius S, Abashidze A, Jusupova A, Romanenko Y, Grosu O, Moldokulova MZ, Mursalova U, Saidkhodjaeva S, Martelletti P, Ashina S. "Debate: differences and similarities between tension-type headache and migraine." The journal of headache and pain 24, no. 1 (2023): 92.
2025.02.10 -
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突然ですが、手足のしびれや筋力低下を感じたことはありませんか?もしかしたら、それはギラン・バレー症候群の初期症状かもしれません。 聞き慣れない病名かもしれませんが、年間10万人あたり1~2人が発症する身近な病気で、2021年のLancet誌では世界で最も一般的な急性弛緩性麻痺の原因と報告されています。 免疫システムが誤って自分の神経を攻撃してしまうこの病気、実は風邪や下痢といった感染症がきっかけで発症することも。 重症化すると呼吸困難に至るケースもありますが、早期発見・早期治療で後遺症を最小限に抑えることが可能です。 この記事では、ギラン・バレー症候群の症状、原因、治療法、予後まで、詳しく解説します。正しく理解し、もしもの時に備えましょう。 ギラン・バレー症候群を理解する3つのポイント ギラン・バレー症候群は、あまり聞き慣れない病名かもしれません。しかし、誰にでも起こりうる可能性のある病気であり、決して他人事ではありません。 正しい知識を持つことで、早期発見・早期治療につながり、後遺症を最小限に抑えることができるのです。 この章では、ギラン・バレー症候群を理解するための3つのポイントを、わかりやすく丁寧に解説します。 ギラン・バレー症候群とは? ギラン・バレー症候群は、自分の免疫システムが誤って自分の末梢神経を攻撃してしまう自己免疫疾患です。通常、免疫システムは細菌やウイルスなどの外敵から体を守る大切な役割を担っています。 しかし、ギラン・バレー症候群では、この免疫システムが正常に機能せず、味方であるはずの神経を攻撃してしまうのです。 この攻撃によって末梢神経が炎症を起こし、神経を覆うミエリン鞘という部分が損傷を受けたり、神経線維そのものが障害されたりします。 その結果、脳からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなり、手足のしびれや筋力低下といった症状が現れます。 ギラン・バレー症候群は、世界中で年間10万人あたり1~2人が発症すると言われており、年齢や性別を問わず、誰にでも起こりうる病気です。 小児から高齢者まで、どの年齢層でも発症の可能性があり、男性にやや多い傾向が見られます。 2021年のLancet誌の報告によれば、ギラン・バレー症候群は世界で最も一般的な急性弛緩性麻痺の原因であり、多くの患者さんが進行性の運動弱化の前に、上気道感染症などの先行感染症を経験するとされています。 ギラン・バレー症候群は、一般的には急速に症状が進行しますが、自然に回復していくことが多いのも特徴です。 多くの患者さんは数ヶ月で回復に向かいますが、約20%の方は1年後も何らかの後遺症が残る可能性があります。また、再発する可能性も2~5%程度存在します。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ギラン・バレー症候群の原因とメカニズム ギラン・バレー症候群の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、多くの場合、風邪や下痢などの感染症がきっかけとなって発症すると考えられています。 例えば、カンピロバクター・ジェジュニという細菌による食中毒が、ギラン・バレー症候群の引き金になることが知られています。 2022年のInternational Journal of Molecular Sciencesに掲載された研究では、ギラン・バレー症候群の約3分の1はカンピロバクター・ジェジュニ感染が原因であると報告されています。 これらの感染症に対して、私たちの体は免疫システムを活性化させ、体内に侵入してきたウイルスや細菌を攻撃します。 しかし、この免疫反応が過剰に起こったり、制御が効かなくなったりすると、本来攻撃すべきでない自分の神経を攻撃してしまうことがあるのです。 これがギラン・バレー症候群の発症メカニズムの一つと考えられています。 具体的には、病原体の表面構造と神経の構成成分が類似している場合、免疫システムがこれらを誤認識し、神経を攻撃してしまう「分子模倣」という現象が関与していると考えられています。 カンピロバクター・ジェジュニ関連のギラン・バレー症候群では、この分子模倣によって引き起こされる自己抗体媒介性免疫プロセスが関与している強力な証拠があるとされています。 ギラン・バレー症候群を引き起こす可能性のある感染症には、カンピロバクター・ジェジュニ以外にも、サイトメガロウイルスなどのヘルペスウイルス、マイコプラズマ属の細菌、腸管系のウイルスなどが挙げられます。 また、ジカウイルス感染症やCOVID-19の後に発症するケースも報告されています。 さらに、免疫チェックポイント阻害薬という、一部のがん治療薬の副作用として発症するケースもあるため、注意が必要です。 患者さんの約60%で、抗ガングリオシド抗体という物質が血液中に見つかることが知られています。 これは、免疫システムが神経の特定の部分を攻撃している証拠と考えられています。 ギラン・バレー症候群の種類と分類 ギラン・バレー症候群は、大きく分けて「脱髄」が優勢なタイプと、「軸索」が侵されるタイプの2つに分類されます。 脱髄が優勢なタイプ:神経線維を覆っているミエリン鞘という部分が壊れてしまうことで、神経の情報伝達が阻害されます。 代表的なものとして、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)が挙げられます。これはギラン・バレー症候群の中で最も一般的なタイプです。 軸索が侵されるタイプ:神経線維そのものが傷ついてしまうことで、神経の情報伝達が阻害されます。 代表的なものとして、急性運動軸索神経障害(AMAN)が挙げられます。 また、フィッシャー症候群(またはミラー・フィッシャー症候群)と呼ばれるタイプも存在します。 これは、眼球運動障害、体のバランスがとりにくくなる運動失調、腱反射の消失といった症状が見られますが、手足の筋力低下はあまり見られないという特徴があります。 2013年のNeurologic clinics誌に掲載された論文では、このフィッシャー症候群を含め、純粋感覚型変異、自律神経症状の限定的な発現、咽頭・頸部・腕神経叢型パターンなど、他のまれな表現型の変異についても報告されています。 これらの種類によって、症状や経過、予後が異なる場合があるため、正確な診断が重要です。 ギラン・バレー症候群の症状と診断 ギラン・バレー症候群は、初期症状が他の病気と似ていることが多く、診断が難しい場合があります。 風邪のような軽い症状だと安易に考えて放置してしまうと、後遺症が残ってしまう可能性もあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。 この章では、ギラン・バレー症候群の代表的な症状と、どのように診断されるのかについて詳しく解説します。 初期症状:しびれや筋力低下 ギラン・バレー症候群の初期症状は、両手足の指先にしびれやチクチクするような感覚が現れることが多いです。 まるで手袋や靴下を履いているような感覚で、左右対称に症状が現れる点が特徴です。 患者さんの中には、「最初は足が少しジンジンするだけだったのに、数日のうちに両足全体がしびれて、歩くのもつらくなった」と訴える方もいます。 このように、症状の進行は非常に速く、数時間から数日のうちに急速に悪化していく場合もあるため注意が必要です。 また、しびれと同時に、筋力低下も現れ始めます。具体的には、次のような症状が現れることがあります。 ボタンを留める、箸を使うといった細かい動作が難しくなる。 ペットボトルの蓋を開けられない。 文字を書くのが困難になる。 歩行がふらつく。 階段の上り下りが難しくなる。 これらの初期症状は、風邪や疲れなど、他の原因によるものと勘違いしやすいので注意が必要です。 特に、症状が急速に悪化する場合は、ギラン・バレー症候群の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診することが大切です。 症状の進行:歩行困難や呼吸麻痺 ギラン・バレー症候群の初期症状が現れてから数日~数週間で、筋力低下はさらに進行し、手足の麻痺へと繋がっていきます。 「最初は足がしびれる程度だったのが、今では杖がないと歩けない」というケースも珍しくありません。 症状が進行すると、歩行が困難になるだけでなく、日常生活における様々な動作に支障をきたすようになります。 例えば、衣服の着脱、食事、洗面、トイレといった動作が一人では行えなくなることもあります。 さらに重症化すると、呼吸に必要な筋肉や、食べ物を飲み込むための筋肉も麻痺し、呼吸困難や嚥下障害を引き起こす可能性があります。 最悪の場合、人工呼吸器の装着や経管栄養が必要となるケースもあり、まさに生命の危険に晒される状態となります。 2015年のPrimary care誌の報告によれば、認識されず、または治療されなかった場合、ギラン・バレー症候群は著しい罹患率と死亡率につながる可能性があります。 診断方法:神経伝導検査や髄液検査 ギラン・バレー症候群の診断は、患者さんの症状や経過、神経学的診察、神経伝導検査、髄液検査などの結果を総合的に判断して行います。 2014年のNature reviews. Neurology誌に掲載された論文では、腰椎穿刺と電気生理学的検査は、診断を裏付け、脱髄型と軸索型のGBSを鑑別するのに役立つと報告されています。 神経伝導検査:神経伝導検査では、神経に電気刺激を与えて、その伝わる速度や反応を測定します。ギラン・バレー症候群では、神経の伝導速度が遅くなったり、反応が弱くなったりするといった異常が見られます。 これは、神経線維を覆っているミエリン鞘という部分が損傷を受けたり、神経線維そのものが障害されていることを示しています。 髄液検査:髄液検査では、腰椎穿刺という方法で採取した髄液を調べます。 ギラン・バレー症候群の特徴的な所見として、髄液中のタンパク質が増加している一方で、細胞数は正常であるという「蛋白細胞解離」が見られます。これは、神経に炎症が起こっていることを示唆する重要な指標です。 ギラン・バレー症候群と類似する疾患との鑑別 ギラン・バレー症候群は、他の神経疾患と症状が似ている場合があり、鑑別が難しいケースもあります。 特に、重症筋無力症、ボツリヌス症、ポリオ、ダニ麻痺症、ウエストナイルウイルス感染症などは、ギラン・バレー症候群と似たような症状を示すことがあります。 これらの疾患とギラン・バレー症候群を鑑別するためには、症状の持続時間や対称性、感覚異常の有無、自律神経症状の有無など、様々な要素を考慮する必要があります。 医師は、これらの要素を詳細に確認することで、正しい診断を下し、適切な治療方針を決定します。 例えば、重症筋無力症は、ギラン・バレー症候群とは異なり、筋力低下が日内変動を示すことが多く、また、眼瞼下垂や複視などの眼症状を伴うことが多いです。 ボツリヌス症は、眼球運動障害や嚥下障害、構音障害などの症状が特徴的で、ギラン・バレー症候群のように四肢の筋力低下が対称性に起こることは少ないです。 このように、それぞれの疾患に特徴的な症状や経過を把握することで、鑑別が可能となります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ギラン・バレー症候群の治療法と予後 ギラン・バレー症候群は、適切な治療を行うことで多くの場合回復に向かう病気です。 しかし、重症化すると呼吸困難など生命に関わる危険性もあるため、早期の診断と治療開始が非常に重要です。 ここでは、ギラン・バレー症候群の治療法と予後について、より詳しく解説していきます。 治療方法:免疫グロブリン療法や血漿交換 ギラン・バレー症候群の治療の中心は、免疫グロブリン療法と血漿交換です。 これらの治療は、免疫システムの働きを調整することで、誤って自分の神経を攻撃している状態を鎮め、症状の改善を促します。 2021年のLancet誌の報告によれば、免疫グロブリン療法と血漿交換は同等の効果があり、どちらの治療法も発症早期に開始することが重要であるとされています。 免疫グロブリン療法:免疫グロブリン療法は、健康な人の血液から精製された免疫グロブリンを、点滴で投与する方法です。 免疫グロブリンは、過剰に反応している免疫システムのバランスを整え、神経への攻撃を抑える働きがあります。 点滴による投与のため、入院が必要となるケースが多いです。 副作用として、まれに頭痛、発熱、吐き気、血管痛などがみられることがあります。 これらの副作用は一過性であることがほとんどですが、気になる症状が現れた場合は、速やかに医師に相談することが大切です。 血漿交換:血漿交換は、血液中の液体成分である血漿を専用の機器で取り出し、神経を攻撃している抗体などを含む血漿成分を除去し、代わりに新しい血漿やアルブミン製剤を補充する方法です。 この治療法も入院が必要となります。 副作用としては、血圧の低下、アレルギー反応、出血、血栓塞栓症、低カルシウム血症などがみられることがあります。 免疫グロブリン療法と血漿交換は、どちらも有効な治療法ですが、患者さんの状態やアレルギーの有無、合併症の有無などによって、どちらが適しているかは異なります。 医師とよく相談し、最適な治療法を選択することが重要です。 2014年のNature reviews. Neurology誌に掲載された論文では、静脈内免疫グロブリンと血漿交換は効果的な治療法であることが証明されていると報告されています。 リハビリテーション:機能回復のための運動療法 ギラン・バレー症候群では、筋力低下や麻痺といった症状がみられるため、リハビリテーションも治療の重要な一部です。 リハビリテーションの目的は、低下した身体機能の回復を促し、日常生活への復帰をスムーズにすることです。 リハビリテーションの内容は、患者さんの病状の進行度や年齢、体力、合併症の有無などを考慮して、個別に設定されます。 初期段階で症状が重い時期には、関節の拘縮を防ぐため、関節可動域訓練や寝たきり状態を防ぐための体位変換などが中心となります。 症状が軽快してくると、筋力トレーニングや歩行訓練、日常生活動作訓練など、より積極的な運動療法が開始されます。 理学療法士や作業療法士などの専門家と連携しながら、無理のない範囲でリハビリテーションに取り組むことが大切です。 焦らず、少しずつ身体機能の回復を目指していくことが重要です。 予後:後遺症や再発の可能性 ギラン・バレー症候群の予後は、多くの場合良好で、数ヶ月から1年程度で回復に向かいます。 2015年のPrimary care誌の報告では、多くの症例は後遺症を残さずに回復しますが、そうでない場合は、著しい持続的な衰弱が残る可能性があるとされています。 しかし、患者さんによっては後遺症が残る場合もあり、軽度の筋力低下やしびれ、倦怠感などが挙げられます。また、稀に再発することもあります。 予後は、発症時の症状の重さ、治療への反応、年齢、基礎疾患の有無など、様々な要因によって影響を受けます。 重症例や高齢者の場合、後遺症が残る可能性が高くなる傾向があります。 再発は2~5%程度とされています。再発した場合も、初回と同様の治療が行われます。 最新の治療法と研究 ギラン・バレー症候群の治療法は、現在も研究開発が続けられています。新しい治療薬の開発や、既存の治療法の改良など、様々な研究が行われています。 例えば、補体阻害剤などの新しい治療薬の臨床試験が進行中です。これらの治療薬は、神経へのダメージをさらに軽減する効果が期待されています。 また、国際的な共同研究も盛んに行われており、ギラン・バレー症候群の病態解明や新たな治療法の開発に役立てられています。 2021年のLancet誌の報告では、全てのギラン・バレー症候群患者への治療アクセス改善と、神経損傷の程度を制限できる効果的な疾患修飾療法の開発が必要であるとされています。 ギラン・バレー症候群の日常生活の注意点 ギラン・バレー症候群を発症すると、日常生活に様々な支障が出てきます。症状が落ち着くまでは、無理をせず安静にすることが大切です。 また、日常生活を送る上での工夫も必要になります。 日常生活の注意点: 転倒のリスクを減らすために、手すりや杖などを活用する。 入浴時には、滑り止めマットを敷いたり、浴槽の縁に手すりを取り付けたり、シャワーチェアを使用するなど転倒防止に努める。 トイレには、補助便座や手すりなどを設置する。 衣服は、着脱しやすいものを選ぶ。ボタンやファスナーの代わりに、マジックテープやゴム紐を使用するのも良いでしょう。 食事の際は、介助が必要な場合は家族などに手伝ってもらう。食事内容も、食べやすいように工夫する。 また、精神的なサポートも重要です。不安や恐怖、焦りを感じやすい時期なので、家族や医療従事者と積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。 周囲の理解とサポートが、回復への大きな力となります。 まとめ ギラン・バレー症候群は、末梢神経が自分の免疫システムに攻撃される自己免疫疾患です。 手足のしびれや筋力低下といった症状が現れ、進行すると歩行困難や呼吸麻痺に至ることもあります。 原因は明確には解明されていませんが、感染症がきっかけとなることが多いと考えられています。 治療は免疫グロブリン療法や血漿交換、リハビリテーションなどがあり、多くの場合、数ヶ月から1年で回復に向かいます。 しかし、後遺症が残る場合や再発の可能性もあるので、早期発見・早期治療が大切です。少しでも異変を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。 症状が改善した後も、日常生活で無理をせず、周りのサポートを受けながら、焦らずに回復を目指してくださいね。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Shahrizaila N, Lehmann HC, Kuwabara S. "Guillain-Barré syndrome." Lancet (London, England) 397, no. 10280 (2021): 1214-1228. Finsterer J. "Triggers of Guillain-Barré Syndrome: Campylobacter jejuni Predominates." International journal of molecular sciences 23, no. 22 (2022): . Dimachkie MM, Barohn RJ. "Guillain-Barré syndrome and variants." Neurologic clinics 31, no. 2 (2013): 491-510. van den Berg B, Walgaard C, Drenthen J, Fokke C, Jacobs BC, van Doorn PA. "Guillain-Barré syndrome: pathogenesis, diagnosis, treatment and prognosis." Nature reviews. Neurology 10, no. 8 (2014): 469-82. Ansar V, Valadi N. "Guillain-Barré syndrome." Primary care 42, no. 2 (2015): 189-93. ギラン・バレー症候群ガイドライン2023
2025.02.10 -
- 内科疾患、その他
健康診断での血圧測定、気にしていますか? 実は、高血圧は自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる病気を引き起こす可能性がある“サイレントキラー”なのです。 日本高血圧学会によると、家庭血圧の正常値は115/75mmHg以下。あなたは大丈夫ですか? 年齢や生活習慣によって正常値は変化し、20歳から80歳までの平均家庭血圧は、上の数値(収縮期血圧)で115.9mmHg~133.9mmHg、下の数値(拡張期血圧)で68.1mmHg~74.5mmHgと幅があります。 この記事では、高血圧・低血圧それぞれの症状や合併症、家庭での血圧管理、最新のデバイス情報まで網羅的に解説! 知っておくだけで日々の健康管理に役立つ知識が満載です。 さあ、一緒に健康寿命を延ばすための第一歩を踏み出しましょう。 血圧の正常値とは? 健康診断で必ず測る血圧。普段は意識しないかもしれませんが、実は全身状態を反映する重要な指標です。高血圧は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こす危険因子となります。 「自分はまだ若いから大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。しかし、新生児でさえ、出生体重や在胎週数によって血圧は異なるように、年齢や身体の状態によって「正常」の範囲は変化します。若くても血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 血圧の正常値の範囲(日本高血圧学会の基準値) 血圧の正常値は、家庭で測る「家庭血圧」と病院で測る「診察室血圧」で基準が異なります。日本高血圧学会では、家庭血圧で115/75mmHg以下、診察室血圧で120/80mmHg以下を正常血圧としています。 血圧の種類 正常値 家庭血圧 115/75mmHg以下 診察室血圧 120/80mmHg以下 「正常高値血圧」や「高値血圧」にも注意が必要です。家庭血圧で115/75mmHg~135/85mmHg、診察室血圧で120/80mmHg~140/90mmHgの場合は、将来的に高血圧へと進行するリスクが高いため、早めの生活習慣の見直しが重要です。 スペインの診療ガイドラインでは、診察室血圧140/90mmHg以上を高血圧と定義し、家庭血圧測定の重要性を強調しています。家庭でリラックスした状態で血圧を測ることで、より正確な状態を把握できるからです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 年齢による血圧変化と正常値の目安 血圧は年齢とともに変化します。血管の老化などにより、年齢を重ねるごとに上昇する傾向があります。 20歳から80歳までの平均的な家庭血圧は、収縮期血圧(上の数値)が115.9mmHg~133.9mmHg、拡張期血圧(下の数値)が68.1mmHg~74.5mmHgです。 しかし、これはあくまでも平均値です。一人ひとりの体質や生活習慣によって、血圧値は大きく変わります。年齢を重ねるごとに血管は変化していくため、定期的な血圧測定と適切な管理が重要となります。 家庭血圧と診察室血圧の違い 家庭血圧は、自宅でリラックスした状態で測る血圧です。一方、診察室血圧は病院という非日常的な環境で、医師を前にした緊張から高めに出やすい傾向があります。これは「白衣高血圧」と呼ばれ、家庭血圧との差が大きい場合は、家庭血圧を基準に治療方針を決定することが多いです。 家庭血圧は、日々の血圧の状態をより正確に反映していると考えられています。多くの研究で、家庭血圧の方が診察室血圧よりも心血管疾患のリスク予測に優れていることが示されています。だからこそ、家庭での血圧測定が重要視されているのです。 測定時間帯による血圧の変化 血圧は一日の中でも常に変動しています。朝起きた直後や、運動後、食後などは一時的に上昇します。また、精神的なストレスによっても変化します。 日本高血圧学会は、起床後1時間以内と就寝前の毎日同じ時間帯に、朝食や服薬の前に血圧を測ることを推奨しています。毎日同じ時間に測定することで、血圧の変化をより正確に捉えることができるからです。 血圧の測り方:家庭での正しい測定方法 家庭で血圧を測る際は、正しい測定方法を守ることが重要です。 測定前に5分程度、椅子に座ってリラックスしましょう。トイレも済ませておきましょう。 カフ(腕に巻く帯状のもの)は心臓と同じ高さに巻き、肘の内側に指が1~2本入る程度のゆとりを持たせます。 測定中は、腕を机の上に置いて支え、話したり体を動かしたりしないようにしましょう。 1~2分間隔で2~3回測定し、平均値を記録しましょう。 正しい測定方法で得られた数値を記録することで、ご自身の血圧の状態を正しく把握し、適切な対応につなげることができます。 血圧が高い/低いとどうなる? 血圧は、健康のバロメーターとも言える重要な数値です。健康診断でチェックされる項目の一つですが、皆さんは自分の血圧をきちんと把握していますか? 「まだ若いから大丈夫」「自覚症状がないから心配ない」と考えている方もいるかもしれません。しかし、血圧の異常は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、命に関わる病気を引き起こす可能性があるのです。 高血圧も低血圧も、放置すると様々なリスクを伴います。 ここでは、高血圧と低血圧それぞれの場合に起こりうる症状や合併症、そして緊急時の対応について詳しく解説します。ご自身の血圧の状態を理解し、健康管理に役立てていただければ幸いです。 高血圧の症状と合併症(脳卒中、心臓病、腎臓病など) 高血圧は、まさに「サイレントキラー」です。初期段階ではほとんど自覚症状がないため、気づかないうちに血管に負担がかかり続け、動脈硬化を進行させます。そして、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった生命に関わる病気を引き起こす危険因子となるのです。 2017年に発表された小児・青年期高血圧症のスクリーニングと管理に関する臨床診療ガイドラインでは、高血圧は深刻な合併症のリスクを高めることが示されています。 高血圧の合併症を具体的に見ていきましょう。 高血圧が引き起こす可能性のある合併症は多岐に渡ります。例えば、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中、心臓の血管が狭くなったり詰まったりする心臓病(狭心症、心筋梗塞)、腎臓の機能が低下する腎臓病、さらには大動脈が裂ける大動脈解離など、命に関わる深刻な病気が含まれます。 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで、半身まひや言語障害などの後遺症を残す可能性があります。 心筋梗塞は、心臓の血管が詰まることで心臓の筋肉が壊死し、突然死のリスクも高い危険な病気です。 腎臓病は、腎臓の機能が低下することで、最終的には人工透析が必要になることもあります。 大動脈解離は、大動脈の壁が裂ける病気で、突然の激しい胸や背中の痛みが特徴です。迅速な治療が必要で、放置すると命に関わる危険性があります。 若いうちから血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 ▼脳卒中の後遺症について、併せてお読みください。 低血圧の症状と原因 低血圧は、高血圧とは異なり、比較的自覚症状が現れやすい傾向があります。代表的な症状としては、立ちくらみ、めまい、ふらつき、倦怠感、頭痛、吐き気などがあります。これらの症状は、脳への血流が一時的に不足することで起こります。 低血圧の原因は多岐に渡ります。体内の水分量が不足する脱水症状、血液中の赤血球が減少する貧血、自律神経のバランスが乱れる自律神経失調症、心臓の機能が低下する心臓疾患など、様々な原因が考えられます。また、特定の薬の副作用として低血圧が起こることもあります。 緊急性の高い血圧の数値と対応 家庭で血圧を測定した際に、上の数値(収縮期血圧)が180mmHg以上、または下の数値(拡張期血圧)が110mmHg以上の場合、緊急性が高い状態と判断されます。このような数値が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。 特に、激しい頭痛やめまい、吐き気、胸の痛み、呼吸困難、ろれつが回らない、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、一刻を争う事態です。迷わず救急車を呼ぶようにしましょう。 血圧の変動に影響する要因(ストレス、睡眠、飲酒、喫煙など) 血圧は、様々な要因によって変動します。日常生活におけるストレス、睡眠不足、過剰な飲酒、喫煙などは、血圧を上昇させる要因となります。また、食生活においては、塩分の過剰摂取や肥満も血圧上昇に繋がります。 ストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させることで血圧を上昇させます。睡眠不足も自律神経のバランスを崩し、血圧上昇を招きます。アルコールは、少量であれば血管を拡張させて一時的に血圧を下げますが、大量に摂取すると逆に血圧を上昇させる可能性があります。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を促進することで、将来的に高血圧のリスクを高めます。 血圧と他の病気との関係 高血圧は、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの生活習慣病との関連が深く、これらの病気を合併している人は高血圧になりやすい傾向があります。反対に、高血圧はこれらの病気を悪化させる要因にもなります。2019年に発表された難治性高血圧のガイドラインでも、適切な血圧管理の重要性が強調されており、薬物療法をきちんと行うこと(服薬アドヒアランス)、家庭血圧のモニタリングによる血圧コントロールの重要性についても言及されています. 高血圧は単独で発症するだけでなく、他の生活習慣病と密接に関連していることを理解しておく必要があります。生活習慣病は、互いに影響し合い、悪化させる可能性があるため、総合的な健康管理が重要です。 血圧を正常に保つための生活習慣 血圧のコントロールは、健康な毎日を送る上で欠かせません。血圧計の数値が気になって病院を受診した方、健康診断で血圧が高いと指摘された方、または、ご家族に血圧が高めの方がいて心配な方など、様々な方がいらっしゃると思います。 若いうちは血圧を気にしない方も多いでしょう。しかし、高血圧は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすことがあります。まさに「サイレントキラー」です。 血圧管理は、年齢に関係なく重要です。新生児でさえ、出生体重や在胎週数によって血圧が異なるように、年齢や身体の状態によって「正常」の範囲は変化します。若いうちから血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 この章では、血圧を正常な範囲に保つため、今日からすぐに始められる生活習慣の改善について、具体的に説明します。小さな積み重ねが、大きな成果につながります。一緒に、健康な未来を目指しましょう。 食事療法:高血圧/低血圧に良い/悪い食べ物 食事は、血圧コントロールに直結する重要な要素です。特に、塩分の摂りすぎは高血圧の大きな原因となります。厚生労働省は1日あたりの塩分摂取量の目標値を男性7.5g未満、女性7.0g未満に設定しています。 高血圧の方は、カリウムを多く含む食品を積極的に摂りましょう。カリウムには、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。例えば、ほうれん草、小松菜、かぼちゃなどの緑黄色野菜、バナナ、キウイ、みかんなどの果物がおすすめです。 反対に、塩分の多い加工食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、インスタントラーメンなど)、漬物などは控えましょう。 食品群 よい食べ物 控えるべき食べ物 野菜 ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、ブロッコリー、アスパラガスなど 漬物、塩蔵野菜、梅干しなど 果物 バナナ、キウイ、みかん、りんご、ぶどうなど – 肉・魚 鶏ささみ、鮭、たら、まぐろ(赤身)、いわしなど ベーコン、ハム、ソーセージなどの加工肉 乳製品 牛乳、ヨーグルト、チーズなど – 主食 玄米、全粒粉パン、そばなど 塩分の多いインスタント食品など 低血圧の方は、バランスの取れた食事を心がけ、適度に塩分を摂ることも必要です。貧血気味の場合は、鉄分やビタミンB12を多く含むレバー、赤身の肉、魚介類なども意識して摂りましょう。 運動療法:効果的な運動の種類と強度 適度な運動は、血圧を下げる効果があり、心血管疾患のリスクを低減します。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、1回30分程度、週に3~5回行うのが理想的です。 運動強度は、「少し息が弾む程度」を目安にしましょう。無理なく続けられることが大切です。激しい運動は逆効果になることもあるため、自分の体力に合った運動を選び、継続することが重要です。 ストレスマネジメント:具体的な方法 ストレスは、交感神経を刺激し血管を収縮させることで、血圧を上昇させる要因の一つです。日常生活でストレスをため込まない工夫をしましょう。 趣味の時間を作る: 好きなことに没頭することで、ストレスを発散できます。絵を描く、音楽を聴く、スポーツをするなど、自分が楽しめる活動を見つけましょう。 休息時間を確保する: 十分な睡眠時間を取り、心身を休ませましょう。睡眠不足はストレスを悪化させる要因となります。 リラックスできる時間を持つ: アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたり、読書をしたり、ゆったりとした時間を取り入れるのも効果的です。 呼吸法を取り入れる: 深い呼吸は、副交感神経を優位にしてリラックス効果を高めます。腹式呼吸を意識的に行う練習も有効です。 瞑想やヨガ: これらは心身の緊張を解き放ち、ストレス軽減に効果的です。初心者向けのクラスやオンライン動画なども活用できます。 睡眠の質の改善:睡眠時間と睡眠環境 睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、血圧上昇のリスクを高めます。質の良い睡眠を確保するために、以下の点に気をつけましょう。 規則正しい睡眠習慣: 毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整えましょう。 適切な睡眠時間: 7~8時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。個人差はありますが、睡眠時間が短すぎると、血圧にも悪影響を及ぼします。 快適な睡眠環境: 寝室の温度や湿度、照明などを調整し、リラックスできる空間を作りましょう。室温は18~20度程度、湿度は50~60%が快適です。 家庭でできる血圧管理の方法:血圧手帳/アプリの使い方 家庭で血圧を測定し、記録することは、血圧管理に非常に役立ちます。血圧手帳やアプリを使って、毎日の血圧の変化を把握しましょう。血圧は常に変動するため、家庭での継続的な測定が重要です。診察室血圧は一時的な値でしかないため、家庭血圧を記録することで、より正確な状態を把握できます。 記録することで、生活習慣の改善効果を確認したり、医師に適切な治療方針を立ててもらったりする際に役立ちます。スマートウォッチなど最新の血圧管理デバイスと連携させれば、データ管理も容易になります。 最新の血圧管理デバイスの情報 最近では、家庭用の血圧計だけでなく、スマートウォッチやスマートフォンと連携して血圧を測定・管理できるデバイスも登場しています。これらのデバイスは、自動的にデータを記録し、グラフ化してくれるなど、血圧管理をより簡単にしてくれる便利なツールです。自分に合ったデバイスを選び、活用することで、日々の血圧管理をスムーズに行うことができます。 まとめ この記事では、血圧の正常値について、家庭血圧と診察室血圧の違い、年齢による変化、測り方、そして高血圧・低血圧それぞれの症状と合併症、緊急時の対応、血圧に影響する要因、他の病気との関係、血圧を正常に保つための生活習慣、最新の血圧管理デバイスの情報まで幅広く解説しました。 血圧は全身状態を反映する重要な指標です。自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こす可能性があるため、日頃から血圧を意識し、家庭での血圧測定を習慣化することが大切です。 高血圧の方は、塩分を控えたバランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理、十分な睡眠を心がけ、低血圧の方は、バランスの取れた食事と適度な塩分摂取、そして貧血対策を意識しましょう。 血圧管理は、年齢に関係なく、健康な毎日を送る上で欠かせません。この記事を参考に、ご自身の血圧の状態を理解し、健康管理に役立てていただければ幸いです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Lüscher TF. "What is the optimal blood pressure? Differences between current guidelines and novel insights into kidney injury." European heart journal 40, no. 42 (2019): 3443-3446. Chernova I, Krishnan N. "Resistant Hypertension Updated Guidelines." Current cardiology reports 21, no. 10 (2019): 117. Gorostidi M, Gijón-Conde T, de la Sierra A, et al. "[2022 Practice guidelines for the management of arterial hypertension of the Spanish Society of Hypertension]." Hipertension y riesgo vascular 39, no. 4 (2022): 174-194. Flynn JT, Kaelber DC, Baker-Smith CM, et al. "Clinical Practice Guideline for Screening and Management of High Blood Pressure in Children and Adolescents." Pediatrics 140, no. 3 (2017): . "Neonatal Blood Pressure Standards: What Is 'Normal'?" Clinics in perinatology 47, no. 3 (2020): 469-485.
2025.02.10 -
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脳卒中の中でも、血管が詰まることで発症する脳梗塞。 一命を取り留めても、麻痺やしびれ、言語障害といった後遺症が残る可能性があり、人生を大きく変えてしまうほどの影響を及ぼすケースも少なくありません。 脳梗塞の後遺症は、発症場所や範囲、治療開始までの時間によって症状の重篤度が大きく異なり、早期の治療開始が後遺症を最小限に抑える鍵となります。 この記事では、脳梗塞の後遺症の種類や症状、そして後遺症と共に生きるための治療法やリハビリテーション、日常生活の工夫、社会支援まで、幅広く解説します。 ご自身やご家族が脳梗塞に直面した際に、少しでもお役に立てれば幸いです。 脳梗塞後遺症の種類と症状 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳の機能が損なわれる病気です。 一命を取り留めたとしても、後遺症が残ってしまう可能性があります。後遺症の症状や程度は、脳梗塞が起こった場所や範囲、そして治療開始までの時間などによって大きく異なります。 一刻も早い治療開始が、後遺症を最小限に抑える鍵となります。 後遺症の種類や症状を正しく理解することは、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても、その後のリハビリテーションや日常生活の工夫、社会資源の活用を考える上で非常に重要です。 運動麻痺(片麻痺、対麻痺) 運動麻痺は、脳梗塞で最も多く見られる後遺症の一つです。 脳梗塞によって運動機能を司る脳の領域が損傷すると、筋肉を動かす指令がうまく伝わらなくなり、手足の麻痺が生じます。 麻痺には、体の片側だけに症状が現れる「片麻痺」と、両側に現れる「対麻痺」があります。 多くの場合、右脳に梗塞が起こると左半身に、左脳に梗塞が起こると右半身に麻痺が現れます。これは、脳の神経線維が交差しているためです。 麻痺の程度は、軽度であれば少し動きにくい、力が入りにくいといった症状ですが、重度になると全く動かせなくなってしまいます。 また、麻痺が続くと、関節が硬くなって動かなくなる「関節拘縮」も起こりえます。 例えば、箸がうまく使えない、ボタンが留められない、歩行が困難になるといった日常生活の動作に支障をきたすだけでなく、寝返りが難しくなることで床ずれのリスクが高まったり、手足のむくみが生じやすくなるなど、二次的な合併症を引き起こす可能性も懸念されます。 ▼脳梗塞の合併症について、併せてお読みください。 脳梗塞後の痙縮に関する研究では、麻痺の重症度が高いほど、後遺症として痙縮(けいしゅく:筋肉が異常に緊張した状態)が生じやすいことが報告されています。 痙縮は、関節の痛みや運動制限を引き起こし、日常生活の質を低下させる一因となります。 麻痺の種類 症状 片麻痺 体の片側の麻痺(右半身もしくは左半身) 対麻痺 体の両側の麻痺 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中の再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 感覚障害(しびれ、痛み) 感覚障害も脳梗塞の代表的な後遺症です。皮膚の感覚を司る脳の領域が損傷を受けると、触覚、温度覚、痛覚などを感じにくくなったり、逆に過敏になったりします。 「しびれ」は、感覚が鈍くなる症状で、手足の先端などによく起こります。まるで手袋や靴下を履いているように感じたり、何も触っていないのに何かが触れているような感覚が生じることがあります。 また、損傷を受けた神経が過剰に反応することで、「痛み」を生じることもあります。痛みの程度や種類は人それぞれで、ピリピリとした痛み、ズキズキとした痛み、焼けるような痛みなど様々です。 これらの感覚障害は、日常生活においても様々な困難をもたらします。 例えば、温度感覚が鈍くなると、やけどに気づきにくくなります。 また、触覚が鈍いと、物を持つときに適切な力加減ができず、物を落としてしまったり、逆に握りすぎて物を壊してしまうこともあります。 言語障害(失語症) 脳梗塞によって言語中枢が損傷すると、言葉の理解や発話が難しくなる失語症が起こることがあります。 失語症は、単に言葉が出ないだけでなく、言葉の理解にも影響を及ぼすことがあります。 失語症には、大きく分けて3つの種類があります。 表出性失語: 言葉を発することが難しくなる症状です。 話したい言葉がなかなか出てこなかったり、間違った言葉を使ってしまったり、言葉がつっかえたりします。 受容性失語: 相手の言葉が理解できない症状です。相手が何を言っているのか理解できず、会話が成立しなくなります。 混合性失語: 表出性失語と受容性失語の両方の症状が現れるものです。 失語症はコミュニケーションを大きく阻害するため、社会生活や日常生活に大きな影響を与えます。 高次脳機能障害(記憶障害、注意障害) 高次脳機能障害は、記憶、注意、思考、判断など、高度な精神活動を司る脳の機能に障害が起こることを指します。 記憶障害: 新しいことを覚えられなくなったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。 注意障害: 集中力が続かなかったり、気が散りやすくなったり、複数のことに同時に注意を払えなくなったりします。 その他にも、計画を立てたり、物事を順序立てて行うことが難しくなる「実行機能障害」、体の片側を認識できなくなる「半側空間無視」、意図した動作ができなくなる「失行」、対象が認識できなくなる「失認」など、様々な症状があります。 嚥下障害 嚥下障害は、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めなくなる症状です。 脳梗塞によって、飲み込むための筋肉や神経がうまく働かなくなると、食べ物が気管に入ってむせてしまったり、うまく飲み込めずに口の中に残ってしまったりします。 嚥下障害があると、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を起こしやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。 誤嚥性肺炎は、命に関わる危険性もあるため、食事の際には細心の注意が必要です。 排尿障害・排便障害 脳梗塞によって、排尿や排便をコントロールする神経が損傷すると、排尿障害や排便障害が起こります。 尿意や便意を感じにくくなったり、逆に頻繁に感じたり、我慢できずに失禁してしまうこともあります。また、尿や便が出にくくなることもあります。 これらの症状は、生活の質を大きく低下させる可能性があります。 後遺症は、単独で現れることもあれば、複数組み合わさって現れることもあります。 脳梗塞は、後遺症の種類も多岐にわたり、その症状の程度も人それぞれです。 ▼脳梗塞の症状や原因、早めの発見方法について併せてお読みください。 脳梗塞後遺症の治療とリハビリテーション 脳梗塞の後遺症は、患者さん一人ひとりの生活に大きな影を落とす可能性があります。 後遺症の種類や重症度は、脳梗塞が発生した場所や範囲、そして迅速な治療開始の可否によって大きく異なります。 後遺症による様々な困難を少しでも軽減し、より良い生活を送るためには、適切な治療と地道なリハビリテーションが欠かせません。 薬物療法 薬物療法は、脳梗塞の再発予防と後遺症の症状改善を目的として行います。脳梗塞は再発率の高い病気であるため、再発予防は特に重要です。 用いられる薬剤の種類や服用方法は、患者さんの状態や病歴、他の病気の有無などを考慮して決定します。主 な薬剤として、血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)、血小板がくっつくのを防ぐ薬(抗血小板剤)、血液が固まるのを防ぐ薬(抗凝固剤)などがあります。 血栓溶解剤は、発症早期に投与することで閉塞した血管を再開通させる効果が期待できます。 しかし、投与可能な時間は限られており、全ての患者さんに適用できるわけではありません。 抗血小板剤と抗凝固剤は、血栓の形成を防ぎ、脳梗塞の再発リスクを低下させる薬です。これらの薬剤は、医師の指示に従って継続的に服用することが重要です。 自己判断で服薬を中断すると、再発のリスクが高まる可能性があります。服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。 リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法) リハビリテーションは、脳梗塞後遺症による運動麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などの改善を目的として行います。 患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのプログラムを作成し、日常生活の自立を目指します。 理学療法:理学療法では、体の動きや機能の回復を目指します。 筋力トレーニングや関節可動域訓練、歩行訓練などを通して、日常生活に必要な動作の改善を図ります。 作業療法:作業療法は、日常生活動作(食事、着替え、トイレ、入浴など)の改善を目的としています。 患者さんの生活環境や生活スタイルを考慮し、自宅での生活をスムーズに行えるように訓練を行います。 言語療法:言語療法は、脳梗塞によって損なわれた言語機能の回復を目指します。 発声練習や言葉の理解・表現の訓練などを通して、コミュニケーション能力の向上を図ります。 リハビリテーションの効果を高めるには、早期開始と継続が重要です。根気強く取り組むことで、症状の改善や日常生活の自立に繋がる可能性が高まります。 再発予防(生活習慣改善、服薬管理) 脳梗塞の再発を防ぐためには、生活習慣の改善と服薬管理が重要です。 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は脳梗塞の危険因子となるため、適切な管理が必要です。 バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を心がけましょう。 食生活においては、塩分や糖分、脂肪分の過剰摂取を避け、野菜や果物を積極的に摂ることが大切です。 適度な運動は、血圧や血糖値の調整に役立ちます。また、禁煙は血管の健康維持に不可欠です。 医師から処方された薬は、指示通りに正しく服用しましょう。自己判断で服薬を中断することは危険です。 最新の治療法 近年、脳梗塞後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が注目されています。 本来、人には、損傷したところを修復させる力があります。それを担っているのが、幹細胞です。この幹細胞を利用して、脳梗塞の後遺症の改善が期待できるのです。 リペアセルクリニックでは、脳梗塞の後遺症に特化した再生医療を行なっています。 詳しくはこちらをご覧ください↓ 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中の再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Gurková E, Štureková L, Mandysová P and Šaňák D. "Factors affecting the quality of life after ischemic stroke in young adults: a scoping review." Health and quality of life outcomes 21, no. 1 (2023): 4. Wissel J, Verrier M, Simpson DM, Charles D, Guinto P, Papapetropoulos S and Sunnerhagen KS. "Post-stroke spasticity: predictors of early development and considerations for therapeutic intervention." PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 7, no. 1 (2015): 60-7. Andalib S, Divani AA, Ayata C, Baig S, Arsava EM, Topcuoglu MA, Cáceres EL, Parikh V, Desai MJ, Majid A, Girolami S and Di Napoli M. "Vagus Nerve Stimulation in Ischemic Stroke." Current neurology and neuroscience reports 23, no. 12 (2023): 947-962. Wang L, Ma L, Ren C, Zhao W, Ji X, Liu Z and Li S. "Stroke-heart syndrome: current progress and future outlook." Journal of neurology 271, no. 8 (2024): 4813-4825. Zhao Y, Zhang X, Chen X and Wei Y. "Neuronal injuries in cerebral infarction and ischemic stroke: From mechanisms to treatment (Review)." International journal of molecular medicine 49, no. 2 (2022): .
2025.02.10 -
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お尻や足に、電気が走るような痛みやしびれを感じたことはありませんか?もしかしたら、それは「梨状筋症候群」のサインかもしれません。 現代社会のデスクワーク中心の生活は、知らず知らずのうちに梨状筋への負担を増大させて、痛みやしびれを引き起こす疾患です。 放置すると慢性化し、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。 この記事では、セルフチェックの方法、そして具体的な治療法まで、医師が分かりやすく解説します。 つらい痛みやしびれから解放されるための第一歩を、この記事で踏み出してみませんか? 梨状筋症候群の症状と原因5選 お尻や足に痛みやしびれがある場合、梨状筋症候群の可能性があります。 梨状筋症候群は、お尻の奥深くにある梨状筋という筋肉が、坐骨神経を圧迫することで起こる症状です。 痛みやしびれの症状 梨状筋症候群の痛みやしびれは、お尻から太もも、ふくらはぎ、そして時には足先まで広がり、まるで電気が走るようなピリピリとした感覚や、ジーンと響くような感覚、焼けるような痛みなど、症状は人それぞれです。 これらの症状は、長時間座っていたり、股関節を動かしたりすることで悪化し、同じ姿勢を続けていると、さらに症状が強まる場合があります。 このような症状が現れた場合、日常生活にも支障をきたす可能性があります。 症状の種類 感じ方 範囲 具体的な日常生活への影響例 ピリピリする 電気が走るような感覚 お尻から足先まで 靴下の素材がチクチクと感じたり、足先が常に痺れて違和感がある ジーンとする 重いものが乗っているような感覚 お尻からふくらはぎまで ふくらはぎが重だるく、長時間の歩行が困難になる 焼けるような痛み 熱いものが当たっているような感覚 お尻から太ももまで 座っているとお尻から太ももにかけて熱く感じ、落ち着いて座っていられない このような症状は、当初は軽い違和感程度から始まり、徐々に増悪するケースが多いです。 初期の段階では、「少し疲れているだけだろう」と安易に考えてしまいがちですが、放置すると慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性がありますので、早めの対応が重要です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 臀部から太もも、ふくらはぎにかけての痛み 梨状筋症候群では、お尻の奥にある梨状筋が坐骨神経を圧迫することで、臀部から太もも、そしてふくらはぎにかけて痛みを感じることがあります。 梨状筋は、股関節を外側に回す働きをする筋肉です。この筋肉が硬くなったり、腫れたりすることで、近くを通る坐骨神経を圧迫し、症状が出ます。坐骨神経は、人体で最も太い神経であり、腰から足先まで繋がっています。 梨状筋症候群は、比較的まれな疾患であるものの、坐骨神経痛の原因の一つとして無視できない存在です。診断が難しい場合が多く、他の疾患との鑑別が重要になります。 例えば、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症なども坐骨神経痛を引き起こす可能性があるため、これらの疾患との鑑別が必要となります。 かかりつけ医から、『坐骨神経痛の原因は、腰のヘルニアが原因と言われた』とよく外来に来られる患者様がいました。 よく調べてみると、この梨状筋症候群だったということは多々ありました。整形外科医でも、中々判断するのは難しい疾患となります。 ▼椎間板ヘルニアについて、こちらでも分かりやすく解説しています。 長時間座っていると悪化する痛み 梨状筋症候群の痛みは、長時間座っていることで悪化することがあります。 デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢を続けていると、梨状筋が圧迫され、坐骨神経への刺激が強まります。 特に、足を組んだり、片方に体重をかけたりする姿勢は、梨状筋への負担が大きくなるため、注意が必要です。 こまめに立ち上がったり、ストレッチをしたりすることで、筋の緊張を和らげ、症状をやわらげることができます。 現代社会では、デスクワークやスマートフォンの使用など、長時間座っている機会が増えています。そのため、梨状筋症候群のリスクも高まっていると考えられます。 長時間座っている際には、1時間に1回程度は立ち上がって歩いたり、身体を動かしたりしましょう。 股関節の動きに伴う痛み 梨状筋症候群では、股関節を動かすと痛みが増強することがあります。この梨状筋は、股関節を内側や外側に回したり、曲げ伸ばししたりする際に活躍する筋肉です。 この時に、梨状筋が伸縮し、坐骨神経を刺激します。特に、股関節を外側に回す動きは、梨状筋を強く収縮させるため、痛みを感じやすいです。 階段の上り下りや、足を組む動作など、日常生活での動作でも痛みが出現する可能性があります。 梨状筋症候群のセルフチェックと診断 お尻や足に痛みやしびれがあると、日常生活にも支障が出てつらいですよね。もしかしたら、それは「梨状筋症候群」かもしれません。 梨状筋症候群は、お尻の奥深くにある筋肉「梨状筋」が、近くを通る坐骨神経を圧迫することで起こる病気です。 今回は、梨状筋症候群のセルフチェック方法や医療機関における診断方法について詳しく解説します。 梨状筋症候群のセルフチェック方法 ご自身で梨状筋症候群の可能性をチェックする方法をいくつかご紹介します。これらのセルフチェックは、あくまで梨状筋症候群の疑いがあるかを調べるためのものです。 セルフチェックで陽性反応が出ても、必ずしも梨状筋症候群であるとは限りません。確定診断のためには、医療機関を受診し医師の診察を受けることが重要です。 FAIRテスト(股関節屈曲、外転、内旋テスト)とPace徴候は、梨状筋症候群のセルフチェックとして広く知られています。 FAIRテスト:FAIRテストでは、仰向けに寝て片方の足をもう片方の足の上に組み、上の足の膝を外側に倒していきます。 この時、お尻や太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが出たら、梨状筋症候群の可能性があります。 このテストは、梨状筋が緊張・短縮することで坐骨神経が刺激され、神経のインパルスが妨げられることで症状が出現するというメカニズムに基づいています。 Pace徴候:Pace徴候では、痛みのある側の足を組んで座り、そのまま上半身を前に倒します。 お尻や太ももに痛みやしびれが増強する場合、梨状筋症候群の可能性があります。 これらのセルフチェックは、梨状筋の緊張や炎症によって坐骨神経が圧迫されることで生じる痛みやしびれを誘発することで、梨状筋症候群の可能性を探るものです。 しかし、これらの症状は他の疾患でも起こり得るため、鑑別診断が重要です。 例えば、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症も同様の症状を引き起こす可能性があります。 鑑別診断:坐骨神経痛との違い 梨状筋症候群は、坐骨神経痛の一つの原因です。 坐骨神経痛とは、腰からお尻、太ももの裏、ふくらはぎ、足にかけて伸びている坐骨神経が何らかの原因で刺激され、痛みやしびれなどの症状が現れる状態を指します。 梨状筋症候群以外にも、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腫瘍など、様々な病気が坐骨神経痛を引き起こす可能性があります。 ▼坐骨神経痛を和らげるストレッチについて、併せてお読みください。 梨状筋症候群の治療法と治る期間 ここでは、梨状筋症候群の具体的な治療法と、どれくらいの期間で治るのかについて、詳しく解説します。 どの治療法が自分に合っているのか、不安に思っている方も、ぜひ参考にしてみてください。 梨状筋症候群の治療期間 梨状筋症候群の治療期間は、症状の重さや治療法、そして個人差によって大きく異なります。 多くの場合、保存療法と呼ばれる手術をしない治療で、2ヶ月ぐらい経てば、かなり軽快するという報告があります。 具体的には、初期段階で症状が軽い場合は数週間から数ヶ月で、ほとんどが軽快します。 しかし、症状が重い場合や慢性化している場合は、数ヶ月から半年以上かかる場合もあります。 さらに、日常生活での姿勢や体の使い方が悪ければ、さらに治癒期間は長くなります。 梨状筋症候群は、他の疾患、例えば腰椎椎間板ヘルニアなどと症状が似ている場合があり、誤診される可能性も否定できません。 そのため、医療機関を受診し、医師の診察を受けることが重要です。 保存療法:ストレッチや薬物療法 梨状筋症候群の治療は、多くの場合、保存療法から始めます。 梨状筋症候群は、梨状筋の緊張や炎症が原因で起こることが多いため、保存療法では、主に梨状筋の緊張を和らげ、炎症を抑えることを目的とします。 具体的には、ストレッチ、薬物療法、温熱療法、注射などがあります。 ストレッチ:ストレッチは、梨状筋を伸ばすことで、神経への圧迫を軽減し、症状の改善を図ります。 理学療法士による坐骨神経モビライゼーションや梨状筋リリースといった専門的な手技も有効です。 股関節の屈曲角度が90度以上と90度未満のストレッチ方法があり、症状や身体の状態に合わせて適切な方法を選択することが重要です。 薬物療法:薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めや消炎鎮痛剤など、症状に合わせて医師が適切な薬を処方します。 温熱療法:温熱療法は、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。ホットパックや温湿布などを使用します。 注射療法:注射療法では、梨状筋や坐骨神経周囲に局所麻酔薬やステロイド薬を注射します。 痛みを軽減し、炎症を抑える効果が期待できます。近年では、ボツリヌス毒素注射も効果的であると報告されています。 ボツリヌス毒素は、筋肉の過剰な収縮を抑制する効果があり、梨状筋の緊張を和らげ、坐骨神経への圧迫を軽減します。 手術療法の適応 梨状筋症候群の手術療法は、保存療法を数ヶ月間継続しても症状が改善しない場合や、他の疾患が疑われる場合に検討されます。 しかし、梨状筋症候群で手術が必要となるケースは非常に稀です。 家庭でできるストレッチと注意点 梨状筋症候群の代表的なストレッチとして、仰向けに寝て、片方の足首を反対側の膝の上に乗せ、両手で太ももを抱えてゆっくりと胸に引き寄せる方法があります。この姿勢を30秒ほど維持し、反対側も同様に行います。 ストレッチは無理のない範囲で行いましょう。ストレッチは、朝起きた時やお風呂上がりなどが効果的です。 また、ストレッチだけでなく、日常生活での姿勢や体の使い方にも気を配ることが重要です。 長時間の同じ姿勢を避け、適度な運動を心がけることで、梨状筋症候群の予防や再発防止にも繋がります。 椅子に座っている時に足を組む癖がある方は、梨状筋への負担が大きくなるため、意識的に足を組まないようにしましょう。 また、立ち仕事が多い方は、適度に休憩を取り、股関節周りのストレッチを行うことをおすすめします。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Kirschner JS, Foye PM, Cole JL. "Piriformis syndrome, diagnosis and treatment." Muscle & nerve 40, no. 1 (2009): 10-8. Probst D, Stout A, Hunt D. "Piriformis Syndrome: A Narrative Review of the Anatomy, Diagnosis, and Treatment." PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 11 Suppl 1, no. (2019): S54-S63. Kim B, Yim J. "Core Stability and Hip Exercises Improve Physical Function and Activity in Patients with Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial." The Tohoku journal of experimental medicine 251, no. 3 (2020): 193-206. Ahmad Siraj S, Dadgal R. "Physiotherapy for Piriformis Syndrome Using Sciatic Nerve Mobilization and Piriformis Release." Cureus 14, no. 12 (2022): e32952.
2025.02.09 -
- 脊椎、その他疾患
肩こり、経験したことがないという方は少ないのではないでしょうか? 実はその原因は、デスクワークや姿勢、運動不足、冷え性、そしてストレスなど、実に多様で、原因によって適切な対処法も異なります。 肩こりは放置すると、頭痛や吐き気などの思わぬ症状を引き起こす可能性も。 本記事では、肩こりの原因とメカニズムを5つに分類し、具体的な症状や、日常生活で簡単に取り入れられる効果的な治療法・予防法まで、医師が詳しく解説します。 肩こりに悩まされている方はもちろん、これから肩こりを予防したいという方も、ぜひご一読ください。 肩こりの原因とメカニズム5選 肩こりは、誰でも身近に経験する可能性が高い症状です。しかし、「肩こり」と一言で言っても、その原因は人それぞれであり、原因によって適切な対処法も異なってきます。 今回は、肩こりの原因とメカニズムを5つご紹介し、具体的な解説を加えながら、読者の皆様がご自身の肩こりの原因を理解し、適切な対策を講じるためのお手伝いをさせていただきます。 デスクワークなど長時間同じ姿勢での作業 現代社会において、デスクワークは多くの人にとって避けられない仕事スタイルとなっています。しかし、長時間同じ姿勢での作業は、肩こりの大きな原因となります。 特にパソコン作業やスマートフォンの操作は、首を前に傾けた姿勢になりがちで、肩や首の筋肉に大きな負担がかかります。 長時間同じ姿勢を続けると、特定の筋肉が緊張し続け、血行不良に陥ります。 肩甲骨は、腕の動きに合わせて上下左右に自由に動く骨です。デスクワークでは、肩甲骨周辺の筋肉や首の後ろの筋肉がどうしても凝ってきます。 例えば、パソコン作業中に画面に集中しすぎると、知らず知らずのうちに肩をすくめた状態になり、僧帽筋と呼ばれる肩の筋肉が過剰に緊張します。 また、キーボード操作に集中すると、腕や手首の筋肉も緊張し、その緊張が肩まで伝わって肩こりを悪化させることもあります。 慢性的な頸部痛の患者を対象とした研究では、肩甲骨を中心とした抵抗運動が、マッサージよりも痛みの軽減、頸部の可動域の改善、僧帽筋の緊張緩和に効果的だったという結果が報告されています。 この研究結果は、同じ姿勢での作業で凝り固まった筋肉を積極的に動かすことの重要性を示唆しています。 つまり、肩甲骨を意識的に動かす体操やストレッチを日常生活に取り入れることで、肩こりの予防や改善に繋がることが期待できます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 猫背などの姿勢不良 猫背などの姿勢不良も、原因です。正しい姿勢では、頭の重さは背骨全体で支えられています。 しかし、猫背になると頭が体の前方に出てしまい、首や肩の筋肉で頭を支えなければならなくなります。 5kg程度の重さのある頭を、首や肩の筋肉だけで支え続けると想像してみてください。筋肉への負担は相当なものになります。 ストレートネックも姿勢不良の一種です。本来、頸椎(首の骨)は緩やかなカーブを描いていますが、ストレートネックではこのカーブが失われ、まっすぐな状態になっています。 ストレートネックになると、頭が前方に傾きやすく、首や肩の筋肉への負担がさらに増大します。 運動不足 運動不足は、筋肉量の減少や筋力の低下を引き起こします。すると、正しい姿勢を維持することが難しくなり、猫背やストレートネックになりやすくなります。 また、運動不足は血行不良になり、筋肉への酸素供給が不足し、老廃物が蓄積しやすくなります。やはり、肩こりの悪影響となります。 冷え性 冷え性は、末梢血管の収縮を引き起こし、血行不良を招きます。血行不良は、筋肉への酸素供給を阻害し、老廃物の排出を妨げ、肩こりが発生しやすくなります。 特に、女性は男性に比べて筋肉量が少なく、冷えやすい傾向があるため、肩こりに悩まされることが多いです。 ストレス ストレスは、自律神経のバランスを崩し、交感神経を優位にさせます。交感神経が優位になると、筋肉が緊張しやすくなり、肩こりを引き起こします。 また、ストレスは呼吸を浅くし、体内の酸素供給を低下させるため、これも原因となります。 ストレスと肩こりの関係は複雑ですが、精神的な緊張が身体をこわばらせるのは明らかです。 ストレスを軽減するためのリラクセーション法やストレスマネジメント法を身につけることは、肩こりの改善にも繋がります。 例えば、ヨガや瞑想は、心身をリラックスさせ、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。また、ウォーキングなどの軽い運動も、ストレス軽減に効果的です。 日常生活の中で、ご自身に合ったストレス解消法を見つけて実践していくことが大切です。 肩こりの症状と治療法・予防法 肩こりは、あまりにもありふれた症状であるがゆえに、放置されがちです。 しかし、肩こりは放置すると日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、頭痛や吐き気などの他の症状を引き起こす原因にもなり得ます。 初期症状では、肩上部の僧帽筋という筋肉が緊張することで、肩まわりが凝ってきます。 まるで肩に重いリュックサックを背負っているかのような感覚、あるいは首の後ろに鉄板が張り付いているかのような感覚を覚える方もいるかもしれません。 症状が進行すると、首や肩だけでなく、背中全体に硬さや痛み、不快感が広がり、日常生活にも支障をきたすようになります。 例えば、朝起きた時に首が回らない、洗濯物を干すのが辛い、長時間座っているのが苦痛といった具体的な問題が生じます。 さらに、肩こりは肩や首の局所的な症状だけでなく、頭痛、吐き気、めまい、眼精疲労、歯痛などの他の症状を併発したり、誘発したりすることもあります。 腕や指先に痛みやしびれが出る場合もあります。これらの症状は、肩や首の筋肉の緊張が神経や血管を圧迫することで引き起こされると考えられています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 肩こりの症状(肩の痛み、こり感、重さ、だるさ、頭痛、吐き気など) 肩こりの症状は実に多様で、肩や首の痛み、こり感、重さ、だるさなど、人によって感じ方が異なります。 症状 説明 痛み 肩や首、背中、腕、指先に感じる痛み。鋭い痛み、鈍い痛み、ズキズキする痛みなど、痛みの種類も様々です。 こり感 筋肉が硬く張っている感じ。肩や首を動かそうとすると、まるでゴムが引っ張られるような感覚があるかもしれません。 重さ 肩や首が重く感じる。まるで何キロもの重りが乗っているかのような感覚に襲われる方もいます。 だるさ 肩や首、腕のだるさ。まるで鉛のように重く、動かす気力さえ失せてしまうような感覚です。 頭痛 肩こりに伴う頭痛。緊張型頭痛が多いです。後頭部から首筋にかけて締め付けられるような痛み、あるいは頭全体が重く感じるような痛みなど、様々なタイプの頭痛があります。 吐き気 肩こりのひどい場合に起こる吐き気。ひどい肩こりは自律神経のバランスを崩し、吐き気を引き起こすことがあります。 めまい 肩こりによって引き起こされるめまい。回転性のめまいや、ふわふわとした浮遊感など、様々なタイプのめまいがあります。 眼精疲労 肩こりによって悪化する眼精疲労。目の奥が痛む、目がかすむ、目が乾くなどの症状が現れます。 しびれ 腕や指先に感じるしびれ。まるで針で刺されたようなチクチクとした感覚や、ジンジンとした痺れるような感覚があります。 緊張型頭痛において、頸部の筋骨格系の機能障害が重要な役割を果たしていることが近年の研究で明らかになっています。 つまり、肩こりは単なる肩の症状ではなく、頭痛などの他の症状とも密接に関連しているということです。 ▼めまいの対処法について、併せてお読みください。 ▼頭痛と吐き気が起きたとき、どうしたらいい?併せてお読みください。 肩こりの治療法(薬物療法、物理療法、運動療法、鍼灸治療、マッサージなど) 肩こりの治療法は、大きく分けて薬物療法、物理療法、運動療法、鍼灸治療、マッサージなどがあります。 薬物療法: 筋肉の緊張を和らげる薬や、痛みを軽減する薬、血行を良くするビタミン剤などが処方されます。 薬物療法は、即効性があり、つらい症状を 軽減できるというメリットがあります。 物理療法: 温熱療法、電気療法、牽引療法などがあります。 物理療法は、薬を使わずに身体に直接働きかける治療法で、副作用が少ないというメリットがあります。 運動療法: ストレッチや筋力トレーニングなど、肩甲骨や肩関節の動きを改善する運動を行います。 運動療法は、肩こりの根本的な原因である筋肉の柔軟性や筋力の低下を改善する効果があります。 鍼灸治療: 鍼やお灸でツボを刺激することで筋肉が柔らかくなり、血流も良くなります。 鍼灸治療は、東洋医学に基づいた治療法で、身体の自然治癒力を高める効果があるとされています。 マッサージ: 筋肉を直接もみほぐし、血行を良くします。 マッサージは、筋肉の緊張を和らげ、リラックス効果も期待できます。 肩こりの予防法(ストレッチ、姿勢改善、適度な運動、保温、ストレス管理など) 肩こりの予防には、日常生活における習慣の見直しが重要です。 ストレッチ: 肩や首の筋肉を 、ストレッチすることで、筋肉の柔軟性を保ち、肩をほぐします。 朝起きた時、仕事中、寝る前など、こまめに行うのが効果的です。 姿勢改善: デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、姿勢を変えるようにしましょう。正しい姿勢を保つことも重要です。 猫背にならないように意識し、顎を引いて背筋を伸ばすようにしましょう。 適度な運動: 適度な運動は、血行を促進し、肩こりを和らげる効果があります。 ウォーキングや水泳など、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。 保温: 体を冷やすと、肩こりが強くなります。特に冬場は、肩や首を冷やさないように注意しましょう。 温かいお風呂に浸かるのも効果的です。 ストレス管理: ストレスは肩こりの大きな原因の一つです。ストレスを溜め込まないように、リラックスする時間を作る、趣味を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Corum M, Aydin T, Medin Ceylan C, Kesiktas FN. "The comparative effects of spinal manipulation, myofascial release and exercise in tension-type headache patients with neck pain: A randomized controlled trial." Complementary therapies in clinical practice 43, no. (2021): 101319. Fernández-de-Las-Peñas C, Cook C, Cleland JA, Florencio LL. "The cervical spine in tension type headache." Musculoskeletal science & practice 66, no. (2023): 102780. Park SH, Lee MM. "Effects of Lower Trapezius Strengthening Exercises on Pain, Dysfunction, Posture Alignment, Muscle Thickness and Contraction Rate in Patients with Neck Pain; Randomized Controlled Trial." Medical science monitor : international medical journal of experimental and clinical research 26, no. (2020): e920208. Al-Khazali HM, Krøll LS, Ashina H, Melo-Carrillo A, Burstein R, Amin FM, Ashina S. "Neck pain and headache: Pathophysiology, treatments and future directions." Musculoskeletal science & practice 66, no. (2023): 102804. Kang T, Kim B. "Cervical and scapula-focused resistance exercise program versus trapezius massage in patients with chronic neck pain: A randomized controlled trial." Medicine 101, no. 39 (2022): e30887.
2025.02.09 -
- 再生治療
- 幹細胞治療
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 腰椎椎間板ヘルニア
腰や首の痛み、痺れ、悩んでいませんか? それは、背骨のクッションである椎間板が潰れ、神経を圧迫する椎間板ヘルニアかもしれません。 ぎっくり腰のような激しい痛みから、長時間デスクワークによる慢性的な痛みまで、その症状は様々です。 実は、トップアスリートでも椎間板ヘルニアの有病率が高いという報告もあるほど、身近な疾患なのです。 この記事では、椎間板ヘルニアの代表的な症状5選と原因や保存療法・手術療法といった治療法まで、詳しく解説します。 もしかしたら、あなたの痛みや痺れの原因がわかるかもしれません。 https://youtu.be/4AOGsB-m63Y?si=OXYtRw-021UiEI73 椎間板ヘルニアの症状と原因5選 椎間板ヘルニアは、背骨同士のクッションとなる椎間板が、まるで潰れて神経を圧迫するような状態です。腰や首に発症し、多くの人が悩まされています。 この椎間板ヘルニアによって引き起こされる代表的な症状5つと、その原因について、詳しく説明していきます。 ①腰痛:急性期の特徴と慢性期の特徴 腰痛は、椎間板ヘルニアの最も代表的な症状です。 「ぎっくり腰」のように、突然激しい痛みが生じる場合(急性期)と、徐々に痛みが強くなっていく場合(慢性期)があります。 急性期:急性期は、重量物を持った時や、急に体をひねったときなどに起こりやすく、その場で動けなくなるほどの激痛を伴うこともあります。 私の患者さんでも、くしゃみをした瞬間、激痛で動けなくなり救急車で運ばれてきた方がいました。 慢性期:慢性期は、加齢に伴って椎間板がすり減ったり、長時間のデスクワークや悪い姿勢などによって、じわじわと症状が現れることが多いです。 まるで、長年使い続けたクッションが、少しずつへたっていくように、椎間板も徐々に変性していきます。 初期は軽い違和感程度ですが、放っておくと重症化し、日常生活に支障をきたすようになることもあります。 特徴 急性期 慢性期 痛みの始まり方 突然 徐々に 痛みの程度 激しい 軽い~中等度 期間 数日~数週間 数ヶ月~数年 原因 急な動作、重量物を持つ 加齢、長時間のデスクワーク、悪い姿勢など ②下肢の痛みやしびれ:坐骨神経痛との関係性 椎間板ヘルニアは、腰だけでなく、臀部や太ももの後ろから、ふくらはぎ、足先など、下肢にも痛みやしびれを引き起こすことがあります。 これは、飛び出した椎間板が、腰から足にかけて伸びている「坐骨神経」という神経を圧迫するためです。 坐骨神経痛の症状は、おしりから太ももにかけての痛み、ふくらはぎの外側や足の裏のしびれ、足首や足指の動きが悪くなるなどがあります。 これらの症状は、片側の足に現れることが多く、咳やくしゃみをすると痛みが強くなることがあります。 特に、トップアスリートでは、一般人口よりも椎間板ヘルニアの有病率が高いという報告もあります。 これは、脊柱への継続的な圧力と、微小外傷の蓄積が原因と考えられています。アスリートに限らず、普段から、腰の負担を軽減するため、姿勢や運動を心がけることが大切です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ③排尿・排便障害:重症例での症状 椎間板ヘルニアが重症化すると、まれに排尿や排便のコントロールが難しくなることがあります。 これは、「馬尾神経」と呼ばれる、膀胱や直腸の働きをコントロールする神経が圧迫されることで起こります。 尿が出にくい、残尿感がある、便が出にくい、便秘になるなどの症状が現れたら、すぐに医療機関を受診してください。 馬尾症候群は、緊急手術が必要な重篤な状態です。 早期発見、早期治療が予後を大きく左右するため、少しでも異変を感じたら、ためらわずに専門医に相談することが重要です。 ④遺伝的要因:家族歴との関連 椎間板ヘルニアは、遺伝的要因が直接的に関係しているという明確なエビデンスは、現在のところありません。 しかし、家族に椎間板ヘルニアになった人がいる場合、椎間板の構造や強度などが似ている可能性があり、将来的に発症するリスクが少し高くなる可能性も考えられます。 ⑤加齢や生活習慣:肥満や喫煙の影響 加齢:加齢は、椎間板ヘルニアの大きなリスク要因の一つです。年齢を重ねると、椎間板の水分が減少すると、もろくなってしまい、ヘルニアになりやすくなります。 これは、乾燥したスポンジがもろくなりやすいのと同じようなイメージです。 肥満:肥満もリスクを高める要因です。過剰な体重は、椎間板に大きな負担をかけるためです。 喫煙:喫煙は、椎間板への血流を悪くし、椎間板の変性を促進するため、間接的にヘルニアのリスクを高める可能性が指摘されています。 日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などを心がけることで、椎間板ヘルニアのリスクを軽減することができます。 特に、肥満の方は、適切な減量指導を受けることで、椎間板への負担を軽減し、症状の改善を期待できます。 椎間板ヘルニアの検査と治療法4選 椎間板ヘルニアの検査方法と治療法について、不安を少しでも和らげ、治療に前向きに取り組めるよう、わかりやすく解説します。 検査で何がわかるのか、どんな治療の選択肢があるのか、一緒に見ていきましょう。 画像診断:MRI、CT、レントゲンの役割と使い分け 椎間板ヘルニアの検査には、主にMRI、CT、レントゲンといった画像診断を用います。 それぞれの検査の特徴を、身近なもので例えて説明します。 MRI検査: MRI検査は、強力な磁石と電波を使って体の内部を、まるでゼリーの中身を見るように鮮明に画像化します。 飛び出した椎間板の状態や、神経がどれくらい圧迫されているかを正確に把握できます。特に、神経根症状を伴う腰椎椎間板ヘルニアの診断においては、MRIが不可欠です。 CT検査: CT検査は、X線を使って体の断面を撮影し、輪切りにした野菜のように内部構造を写し出します。 MRI検査ほど鮮明ではありませんが、骨の輪郭をとらえるのが特徴で、椎間板ヘルニアに伴う骨の異常や、ヘルニアの石灰化の有無などを確認するのに役立ちます。 レントゲン検査: レントゲン検査は、X線を使って骨を撮影する、健康診断などでもよく用いられる検査です。 椎間板ヘルニア自体はレントゲンに写りませんが、骨の変形や異常がないかを確認し、他の骨の病気を除外するために用います。 これらの検査を組み合わせて行うことで、より正確な診断が可能になります。 保存療法:薬物療法、理学療法、安静の重要性 椎間板ヘルニアの治療は、まず保存療法から始めます。保存療法は、手術をせずに痛みやしびれなどの症状を和らげることを目的とした治療法です。 薬物療法: 痛みや炎症を抑える薬、神経の働きを助ける薬、筋肉の緊張を緩和する薬などを、患者さんの症状に合わせて処方します。 鎮痛剤は、痛みを感じにくくする効果があり、炎症を抑える薬は、腫れや熱感を抑えることで痛みを軽減します。 神経の働きを助ける薬は、神経の修復を促進し、しびれなどの症状を改善する効果が期待できます。 理学療法: 専門の理学療法士による指導のもと、ストレッチや運動、マッサージなどを行います。 硬くなった筋肉を柔らかくすることで血行を促進し、痛みを軽減する効果があります。 安静: 痛みが強い時期には、安静にすることが重要です。安静にすることで、炎症が治まり、痛みが軽減されます。 しかし、長期間の安静は、筋力低下や体力低下につながるため、医師の指示に従って適切な安静期間と活動量を調整することが大切です。 北米脊椎協会(NASS)のガイドラインでも、適切な安静の重要性が強調されています。 これらの保存療法を6週間から3ヶ月ほど続け、それでも症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合には、手術療法を検討します。 手術療法:適応と種類、術後のリハビリテーション 保存療法で効果が得られない場合や、重度の神経麻痺がある場合などには、手術療法を検討します。 手術の主な目的は、飛び出した椎間板を取り除き、神経の圧迫を解消することです。 手術の適応: 排尿・排便に障害が出たり、日常生活に支障が出るほどの神経麻痺がある場合は、緊急手術が必要になることもあります。 特に、馬尾症候群の場合は、24~48時間以内の緊急手術が必須です。それ以外の場合でも、保存療法を数ヶ月試しても症状が改善しない場合は、手術の適応となることがあります。 具体的な適応は、医師が患者さんの症状や検査結果などを総合的に判断します。 手術の種類: 椎間板ヘルニアの手術には、顕微鏡手術、内視鏡手術など、いくつかの種類があります。 顕微鏡手術は、顕微鏡を使って患部を拡大して行うため、より精密な手術が可能です。 内視鏡手術は、小さな傷で行えるため、体への負担が比較的少ないというメリットがあります。 どの手術法が適しているかは、ヘルニアの状態や患者さんの状態によって異なります。 胸椎椎間板ヘルニアのように、稀なケースでは、ヘルニアの位置や石灰化の有無によって、胸腔内切開術や後外側切開術などのアプローチを選択する必要もあります。 術後のリハビリテーション: 手術後は、早期からリハビリテーションを開始することが重要です。 リハビリテーションでは、筋力トレーニングやストレッチ、歩行訓練などを行い、日常生活への復帰を目指します。 手術は体に負担がかかるため、手術のメリットとデメリットをよく理解し、医師と十分に相談した上で、手術を受けるかどうかを判断することが大切です。 しかし、手術をしても、しびれや痛みが残ったり、『手術前よりも後遺症がひどくなった』という方も一定数おられます。 術後の後遺症の場合は、神経は一度損傷すると、戻らないことがあると、医師はよく言います。 そんな方に、リペアセルクリニックでの国内ではほとんど行われていない、脊髄腔内にダイレクトに幹細胞を投与する再生医療を行なっています。詳しくはこちらで説明しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 <実際に行った、患者様の声> https://youtu.be/zRaQYBJNrS8?si=dz3vaREdJJnD65HL https://youtu.be/3yN5q8_ATpc?si=YNTbuXIalfV4Z0Me 他の疾患との鑑別:坐骨神経痛、脊柱管狭窄症との違い 椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛や脊柱管狭窄症といった他の疾患と症状が似ていることがあります。 坐骨神経痛: 坐骨神経痛は、腰からおしり、太ももの裏側、ふくらはぎにかけて伸びる坐骨神経が圧迫されることで起こる症状です。 椎間板ヘルニアが坐骨神経痛の原因となることもありますが、梨状筋症候群など、他の原因で坐骨神経痛が起こることもあります。 脊柱管狭窄症: 脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る脊髄神経の通り道である脊柱管が狭くなることで、神経が圧迫されて起こる病気です。 加齢に伴う骨や靭帯の変化によって脊柱管が狭くなることが主な原因です。 椎間板ヘルニアと同様に、腰痛や足のしびれ、痛みなどの症状が現れますが、間歇性跛行(しばらく歩くと足が痛くなり、休むと痛みが治まる)といった特徴的な症状がみられることもあります。 これらの疾患は症状が似ているため、必ず、専門医による適切な診断を受けることが大切です。 ▼脊柱管狭窄症について、併せてお読みください。 参考文献 Yamaguchi JT and Hsu WK. "Intervertebral disc herniation in elite athletes." International orthopaedics 43, no. 4 (2019): 833-840. Danazumi MS, Nuhu JM, Ibrahim SU, et al. "Effects of spinal manipulation or mobilization as an adjunct to neurodynamic mobilization for lumbar disc herniation with radiculopathy: a randomized clinical trial." The Journal of manual & manipulative therapy 31, no. 6 (2023): 408-420. Kögl N, Petr O, Löscher W, et al. "Lumbar Disc Herniation—the Significance of Symptom Duration for the Indication for Surgery." Deutsches Arzteblatt international 121, no. 13 (2024): 440-448. Court C, Mansour E and Bouthors C. "Thoracic disc herniation: Surgical treatment." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S31-S40. "[Guideline for diagnosis, treatment and rehabilitation of lumbar disc herniation]." Zhonghua wai ke za zhi [Chinese journal of surgery] 60, no. 5 (2022): 401-408. van der Windt DA, Simons E, Riphagen II, et al. "Physical examination for lumbar radiculopathy due to disc herniation in patients with low-back pain." The Cochrane database of systematic reviews , no. 2 (2010): CD007431. Kreiner DS, Hwang SW, Easa JE, et al. "An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy." The spine journal : official journal of the North American Spine Society 14, no. 1 (2014): 180-91. Zhang AS, Xu A, Ansari K, et al. "Lumbar Disc Herniation: Diagnosis and Management." The American journal of medicine 136, no. 7 (2023): 645-651.
2025.02.09 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
あなたは今、肩の痛みや動かしにくさに悩んでいませんか? 40代、50代で多く発症する四十肩・五十肩は、実は30代や60代でも発症する可能性があり、夜間の痛みが特徴的な、決して他人事ではない身近な症状です。 「まさか自分が…」と驚く人も多いこの肩の痛みは、シャツを着替えたり、髪を洗ったりする動作が辛くなります。 2023年の国民生活基礎調査によると、肩こりや肩の痛みを訴える人は増加傾向にあり、その背景には長時間のデスクワークや運動不足などが考えられます。 この記事では、四十肩・五十肩の特徴的な症状や、その原因となるメカニズムを、医師の解説を通して詳しく解説します。 夜間の激痛に悩まされ、熟睡できない日々を送っているあなたも、この記事で紹介する治療法によって、快適な睡眠を取り戻し、再び日常生活を楽しめるようになるかもしれません。 今すぐ、あなたの肩の悩みを解消する第一歩を踏み出しましょう。 四十肩・五十肩の特徴と症状 四十肩・五十肩は、肩の痛みと動かしにくさを特徴とします。 この症例は、私たち整形外科医には非常によくある相談です。 医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、中年以降に多く発症することから、40代で発症すると四十肩、50代で発症すると五十肩という風に、おおよその年齢で呼び分けられています。 ただ、この年齢はあくまで目安です。30代前半でも、60代後半でも発症する可能性は十分にあります。 私自身も、30代で四十肩のような症状を経験したことがあります。 主な症状と痛みの部位 四十肩・五十肩の主な症状は、肩の痛みと可動域制限、そして炎症です。 痛み: 痛み方にはいくつかのパターンがあります。 初期には、肩を動かしたときにズキンとするような鋭い痛みを感じることが多く、安静時でも鈍い痛みが続く場合もあります。 痛みの部位は肩関節の周囲だけにとどまらず、腕や首、時には背中まで広がることがあります。特に特徴的なのは、夜間に痛みが増強する「夜間痛」です。 安静にしているはずの睡眠中に痛みが激しくなり、起きてしまうこともあります。 可動域制限: 肩関節の動きが悪くなることを「可動域制限」と言います。 具体的には、腕を真上に上げること(挙上)、後ろに回すこと(外旋・内旋)、体の前で腕を交差させること(水平内転)などが難しくなります。 腕の動きが制限されることで、日常生活での動作が苦痛になります。 炎症: 肩関節周囲の組織で炎症が起きているため、炎症に伴う腫れや熱感を伴う場合もあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 可動域制限のメカニズム 四十肩・五十肩で可動域制限が起こるメカニズムは、肩関節周囲の組織の炎症と癒着が主な原因です。 私たちの肩関節は、肩甲骨の関節窩という受け皿のような部分に、上腕骨頭というボールのような部分がはまり込む構造をしています。 この関節は関節包という袋状の組織で包まれており、滑液という潤滑油の役割を果たす液体で満たされています。 四十肩・五十肩では、この関節包に炎症が起き、厚く縮んでしまいます。風船がしぼんで硬くなるイメージです。 関節包が硬く縮むことで、肩関節の動きが制限されてしまうのです。 炎症がさらに進むと、関節包や周囲の組織が癒着してしまいます。 例えるなら、くっつきにくいはずの食品ラップ同士がくっついてしまうような状態です。こうなると、さらに可動域制限が強くなります。 肩関節の動きが悪くなると、日常生活での様々な動作に支障をきたすだけでなく、動かすこと自体が怖くなり、さらに動かさなくなってしまう、という悪循環に陥る可能性があります。 結果として、肩関節の拘縮がさらに進行してしまうのです。 糖尿病との関連性 糖尿病は、四十肩・五十肩のリスクを高めると言われています。高血糖の状態が続くと、血管が傷つきやすく、血流が悪くなります。 肩関節周囲の組織も血流が悪くなることで、炎症が起こりやすくなり、四十肩・五十肩を発症しやすくなると考えられています。 また、糖尿病の方は痛みを感じにくい場合があり、四十肩・五十肩の症状に気づきにくく、重症化しやすいという側面も持っています。 糖尿病の方は、日頃から肩のストレッチなど、肩のケアを心がけ、異変を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。 四十肩・五十肩は自然治癒することもありますが、適切な治療を行うことで、痛みの軽減や可動域の改善、そして日常生活の質の向上に繋がります。 四十肩・五十肩の原因と診断 四十肩・五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節の周囲に炎症が起こり、痛みや動きの制限が生じる状態です。 肩関節周囲炎は、肩関節を包む関節包という組織が炎症を起こし、厚く縮んでしまうことが原因で起こります。 まるで風船がしぼんで硬くなるように、関節包が硬く縮むことで肩関節の動きが制限されてしまうのです。 炎症がさらに進むと、関節包や周囲の組織が癒着を起こし、食品ラップ同士がくっついてしまうような状態になります。 原因となるリスクファクター 四十肩・五十肩の原因ははっきりと解明されていませんが、加齢、肩関節の使いすぎ、糖尿病などの病気が関係していると考えられています。 加齢:加齢に伴い、肩関節周囲の組織は老化し、炎症や癒着が起こりやすくなります。 肩関節の負担:野球やバレーボールなどのスポーツ、重い荷物を持つ作業など、肩関節に負担をかけることも要因となります。 糖尿病:糖尿病の方は、そうでない方に比べて四十肩・五十肩を発症するリスクが高いことが知られており、高血糖の状態が続くと血管が傷つきやすく、血流が悪くなることが原因の一つと考えられています。 肩関節周囲の組織も血流が悪くなることで、炎症が起こりやすくなると考えられています。 甲状腺機能障害:さらに、甲状腺機能障害も四十肩・五十肩のリスクを高める要因として知られています。 甲状腺ホルモンは、体の代謝を調節する重要なホルモンですが、このホルモンのバランスが崩れると、様々な体の機能に影響を及ぼします。 肩関節周囲の組織も例外ではなく、甲状腺機能障害によって炎症が起こりやすくなり、四十肩・五十肩を発症しやすくなると考えられています。 診断に用いる検査方法 四十肩・五十肩の診断は、主に問診と診察によって行われます。医師は、肩の痛みの程度や、腕をどのくらい動かせるかなどを確認します。 具体的には、腕を前や横に上げたり、後ろに回したりする動作で、どの程度まで動かせるかを調べます。 レントゲン検査:レントゲン検査を行う場合もありますが、これは他の病気を除外するために行うもので、四十肩・五十肩自体をレントゲンで診断することはできません。 四十肩・五十肩は、肩関節の炎症や癒着が原因で起こりますが、これらの変化はレントゲンには写らないからです。 MRI検査:MRI検査では、肩関節周囲の組織の状態を詳しく調べることができ、炎症や癒着の程度を評価することができます。 超音波検査:同様の変化は超音波検査でも観察でき、超音波検査は画像ガイド下注射療法に特に有用です。 しかし、MRI検査や超音波検査は必ずしも必要ではなく、多くの場合は問診と診察だけで診断が可能です。 他の肩の疾患との違い(腱板断裂、頚椎症など) 四十肩・五十肩は、腱板断裂や頚椎症などの他の肩の疾患と症状が似ていることがあり、鑑別が重要です。 腱板断裂:腱板断裂は、肩の上腕骨を支えている筋肉が、切れてしまう病気です。腱板断裂では、腕を特定の方向に動かしたときに強い痛みを感じることがあります。 また、夜間に痛みが強くなることもあります。 四十肩・五十肩のように肩の動きが制限されることもありますが、腱板断裂の場合は、力を入れても腕を上げられない、腕がだらんと下がってしまうといった筋力低下の症状が見られることもあります。 頚椎症:頚椎症は、首の骨や椎間板が変形することで、肩や腕に痛みやしびれが出る病気です。 頚椎症の場合、首を動かすと神経が圧迫されることで、手のしびれや動かしにくさなどの症状が現れたり、強くなることもあります。これらの症状の違いを把握することで、どの病気が疑われるかを判断することができます。 ▼肩がズキズキと痛いときに考えられる原因について、併せてお読みください。 四十肩・五十肩の治療選択肢 四十肩・五十肩の治療は、大きく分けて保存療法と手術療法の2種類があります。 それぞれの治療法の特徴を理解できるよう、わかりやすく説明しましょう。 保存療法の種類と効果 保存療法とは、手術をせずに痛みや炎症を抑え、腕を動かせるようにする治療法です。 具体的には、薬物療法、注射療法、理学療法、装具療法などがあります。これらの治療を複合的に行うことが多いです。 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるための薬を内服したり、外用薬として患部に塗ったりします。 消炎鎮痛剤は、痛みや炎症の原因物質であるプロスタグランジンの生成を抑えることで、痛みや炎症を和らげます。 注射療法: 肩関節に直接、薬剤を注射する方法です。ステロイド注射は、強力な抗炎症作用で炎症を抑え、痛みを素早く軽減します。 ただし、ステロイド注射は、何度も繰り返すと腱を弱める可能性があるため、使用回数には注意が必要です。 ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たし、関節の動きを改善します。 理学療法: 理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋トレ、温熱療法などを行い、肩の可動域を広げ、日常生活動作の改善を目指します。 理学療法は、四十肩・五十肩の治療において最も重要な要素の一つです。特に、肩甲骨の動きを改善する運動は効果的です。 私の経験では、肩関節は複雑なので、やはりリハビリ治療を行うことで、治療期間はずいぶん短縮できる例が多かったです。 装具療法: 安静時や夜間就寝時に、肩関節を固定する装具を装着することで、痛みを和らげ、関節を保護します。 保存療法の効果は、症状の程度や個人差があります。保存療法を3~6ヶ月行った後も症状の改善が見られず、日常生活に支障が出る場合は、手術療法が検討されます。 医学文献では、保存的治療で多くの患者が改善すると報告されています。 手術療法の適応とリスク 保存療法で十分な効果が得られない場合や、関節が著しく硬くなってしまった場合、手術も考えないといけません。 手術療法には、麻酔下での関節モビライゼーションや関節鏡下関節包遊離術などがあります。 麻酔下での関節モビライゼーション: 全身麻酔下で肩関節を動かし、硬くなった関節包を強制的に剥がす方法です。 別名、マニプレーションとも言います。 関節鏡下関節包遊離術: 小さな切開部からカメラと特殊な器具を挿入し、癒着した関節包を切開する方法です。 傷が小さく、術後の回復も早いというメリットがあります。 手術療法は、保存療法よりも短期間で効果が高いとされていますが、合併症のリスクも存在します。合併症には、骨折、神経麻痺、感染症などがあります。 手術をしない新しい治療(再生医療) ご自身の身体にある幹細胞を使って、日帰り、簡単な注射だけで、手術以上の効果の見込める再生医療という治療があります。 肩の手術後は肩関節が固まる現象がよくみられます。そういうこともあって、私たち整形外科医は、よほど辛かったり、動きが悪いという以外は、肩の手術はあまり積極的に患者様には勧めていません。 しかし、リペアセルクリニックでは、肩に特化した再生医療を行うことで、多くの患者様を笑顔にしてきました。再生医療についてこちらで詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 https://youtu.be/WQGHzkzEFnY?si=5xtDnXSQg1poljkp https://youtu.be/yj1LZ3318_E?si=G0Kpui969PdFwggA 痛みの軽減とリハビリテーションの重要性 四十肩・五十肩の治療において、痛みの軽減とリハビリテーションは非常に重要です。 痛みは、日常生活の動作や睡眠を妨げ、生活の質を低下させます。 痛みが強い場合は、我慢せずに医師に相談し、適切な薬物療法や注射療法を受けるようにしましょう。 リハビリテーションは、肩関節の可動域を回復し、筋力を強化するために不可欠です。 理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋トレなどの運動療法を行い、肩の機能回復を目指します。無理のない範囲で、日常生活でも積極的に肩を動かすように心がけましょう。 早期に適切な治療を開始することで、痛みの軽減や機能回復を促進し、日常生活への復帰を早めることができます。 焦らず、医師や理学療法士と相談しながら、治療を進めていきましょう。 参考文献 Fields BKK, Skalski MR, Patel DB, White EA, Tomasian A, Gross JS and Matcuk GR Jr. "Adhesive capsulitis: review of imaging findings, pathophysiology, clinical presentation, and treatment options." Skeletal radiology 48, no. 8 (2019): 1171-1184. Dang A and Davies M. "Rotator Cuff Disease: Treatment Options and Considerations." Sports medicine and arthroscopy review 26, no. 3 (2018): 129-133. Redler LH and Dennis ER. "Treatment of Adhesive Capsulitis of the Shoulder." The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 27, no. 12 (2019): e544-e554. Fernández Martínez AM, Alonso DR, Baldi S, Arregui OB and Marcos MTC. "Frozen Shoulder." Techniques in vascular and interventional radiology 26, no. 1 (2023): 100882. Cho CH, Bae KC and Kim DH. "Treatment Strategy for Frozen Shoulder." Clinics in orthopedic surgery 11, no. 3 (2019): 249-257. "凍結肩(癒着性関節包炎):臨床医のためのレビュー"
2025.02.09 -
- 足底腱膜炎
- 足部
「起床後の1歩目でかかとが痛む」「長時間同じ体勢でいると足裏が痛い」 上記のような症状は、足底腱膜炎や足底筋膜炎の可能性が考えられます。似たような名前の病気ですが、炎症を起こす部位や原因に違いがあるのです。 本記事では、足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いを詳しく解説しています。足底腱膜炎や足底筋膜炎の予防・治療方法も紹介しています。 足裏の痛みに悩んでいる方や、足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。 足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いは炎症や痛みが起こる部位 足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いは、炎症や痛みが起こる部位にあります。 足の裏に痛みが生じるため、似たような印象を持っている方も多いですが、原因に違いがある点に注意が必要です。 ここからは、足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いを詳しく解説していきます。 炎症が起こる部位 足底腱膜炎は、足裏の指のつけ根からかかとまで伸びる「足底腱膜」が炎症を起こす疾患です。足底腱膜は、歩いたり走ったりする際の衝撃を受け止める役割を持っています。 一方で足底筋膜炎は、足の裏にある筋肉の「膜」が炎症を起こしている状態です。腱膜ではなく筋肉の膜が炎症を起こしている点が足底腱膜炎との違いです。 しかし、両疾患とも足底腱膜に関連した部位に炎症が起こるケースが多いため、同じ疾患として扱う医療機関が多い傾向にあります。 痛む部位 足底腱膜炎と足底筋膜炎は、痛む部位も異なります。両疾患の痛みが生じる部位は以下のとおりです。 足底腱膜炎 足底筋膜炎 痛みが生じる部位 かかと・土踏まず かかと・土踏まず 痛みが生じるタイミング 長時間同じ体勢でいたり、歩いていたりなど慢性的に生じる 起床時や歩き始めなど突発的に生じる 両方とも、かかとや土踏まずなど痛みが生じる部位は共通しています。 しかし、足底腱膜炎は、長時間同じ体勢でいたり、歩いていたりすると、慢性的に痛みが強くなるのが特徴です。 足底筋膜炎は、起床時や歩き始めなど突発的に痛みが生じる点が、足底腱膜炎との違いです。 発生原因 足底腱膜炎は、足底筋膜の微細な断裂や損傷が繰り返されるのが主な発症原因です。 足底腱膜炎は厳密にいうと、腱が炎症を起こしているのではなく「変性」を起こしている状態です。変性とは、組織の構造や機能が変化を起こしている状態を指します。 足底腱膜が炎症を起こす原因は、肥満、過度の回内足、過度なランニングなどがあげられます。 一方で足底筋膜炎は、走ったり歩いたりなどで足底筋膜に負荷がかかると「炎症」を起こし、発症するのが特徴です。 とくにマラソン選手や陸上をしている方は、足底筋膜に負担がかかりやすく、足底筋膜炎を発症しやすい傾向にあります。 足底腱膜炎(足底筋膜炎)の診断 足底腱膜炎を診断するには、まず問診と触診で痛みが生じる部位を確認します。 触診後、以下のような検査を行います。 レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 レントゲン検査では、足底筋膜炎で生じる可能性がある、踵の骨棘(こっきょく)の有無を確認します。 骨棘とは、軟骨が肥大化し、次第に硬くなって骨化して棘のようになる状態を指します。 また、必要に応じて血液検査が行われるケースもあり、触診や医療機関の方針などによって診断方法はさまざまです。 足底腱膜炎(足底筋膜炎)の予防方法 足底腱膜炎を予防するには、ストレッチで足裏の柔軟性を高めたり、足に合った靴を履いたりすると予防効果が期待できます。 足底腱膜炎を疑っている方は、日頃からケアを行い、症状を予防しましょう。 ここからは、足底腱膜炎の予防方法を3つ紹介します。 運動は控える 足底腱膜炎の発症を予防するには、痛みが生じた時点で運動は控えるのがおすすめです。 足底腱膜炎は、ランニングや運動などで足裏に負荷がかかることで発症します。 痛みや違和感がある状態で、ランニングや運動を続けていると、炎症が悪化する恐れがあるため、安静に過ごしましょう。 また、痛みが収まり運動を開始する際は、ウォーキングや軽い運動から始めるのがおすすめです。 いきなり激しい運動をしてしまうと、足裏に負荷がかかり、再発する可能性があるためです。徐々に強度をあげていくよう意識しましょう。 ストレッチで柔軟性を高める ストレッチで足裏や足首の柔軟性を高めるのも、足底腱膜炎の予防効果を期待できます。 足裏に痛みがある際は、ランニングやジャンプなどの激しい運動は控えるべきですが、ストレッチや柔軟は続けるのがおすすめです。 体を動かさなくなると、足底筋膜をはじめ、足回りの筋肉や関節が凝り固まってしまいます。 足回りが固くなると、血流が悪くなり、痛みや炎症が悪化したり、治りにくくなったりする恐れがあります。 柔軟性が失われるのを避けるため、ふくらはぎを伸ばすストレッチをしたり、足の指を引っ張ったりして、足裏の柔軟性を維持しましょう。 足に合った靴を履く 足底腱膜炎を予防するには、自分の足に合った靴を履くのも大切です。 自分の足の形に合っていなかったり、底が薄かったりする靴は、足に負担がかかりやすいためおすすめできません。 運動時以外に、かかとが高いヒールや厚底のブーツを履くのも負担が増大するため、できるだけ控えましょう。 足底腱膜炎を予防するには、かかとをサポートしてくれる、クッション性の高い靴を選ぶのがおすすめです。試し履きをしたり、プロに相談したりして、自分に合った靴を選びましょう。 また、靴以外にも、サポーターやテーピングも足底筋膜炎予防が期待できます。 サポーターを日常生活で使用すると、足底腱膜炎予防はもちろん、痛み軽減を期待できるため、積極的に使用してみましょう。 足底腱膜炎(足底筋膜炎)の治療法 足底腱膜炎の治療方法は、保存療法や薬物療法などが代表的です。手術療法を行うケースもありますが、大半が保存療法や薬物療法などで対処できます。 かかとや土踏まずに痛みが生じているにもかかわらず、放置したり、市販の湿布や塗り薬などで自己治療したりするのは控えましょう。 かえって悪化する恐れがあるため、必ず医療機関を受診してください。 ここからは、足底腱膜炎の治療方法を4つ紹介します。 保存療法 足底腱膜炎の治療は、リハビリテーションや装具療法などの保存療法が行われます。 リハビリテーションは、ストレッチや筋力トレーニングを行うのが一般的です。 ふくらはぎや太ももの裏側(ハムストリング)などの柔軟性を高めたり、足の指の使い方を改善したりすると、痛み緩和を期待できます。 一方で装具療法とは、インソールやサポーターなどの装具を用いて、足底腱膜炎を改善する治療方法です。とくに、足の裏のアーチにアプローチできるのが特徴です。 リハビリテーションや装具療法などを、1人ひとりの症状に合わせて行うことで、足底腱膜炎の改善を期待できます。 薬物療法 足底腱膜炎の薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。 非ステロイド性抗炎症薬とは、痛みや熱などの炎症を抑える薬であり、ロキソニンやバファリンなど市販薬にも含まれています。 注意点として、薬物療法は一時的な痛みは軽減できるものの、根本的な改善にはつながりません。足底腱膜炎を悪化させないためにも、薬物療法だけでなく保存療法を併用し、完治を目指しましょう。 体外衝撃波治療 体外衝撃波治療とは、患部に音波の一種である衝撃波を照射し、痛み緩和や組織修復を促す治療方法です。 衝撃波で痛みが生じている腱の細胞を刺激し、痛みを緩和させます。一般的に3〜5回を1クールとし、数回繰り返し、治療を行います。 また、体外衝撃波は、6カ月以上保存療法を行っても効果が見られない「難治性足底腱膜炎」の治療のみ、健康保険が適用されているのが特徴です。 足底腱膜炎を発症後、体外衝撃波を受けられるわけではない点に留意しておきましょう。 手術療法 足底腱膜炎の治療は、手術療法が行われる可能性があります。手術療法では、足底腱膜や骨棘(こっきょく)を切除します。 しかし、足底腱膜炎で手術療法を行うケースは非常に稀であり、保存療法や薬物療法で改善を期待できる症例が大半です。 再生医療 足底腱膜炎や足底筋膜炎の治療の選択肢として、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療もあげられます。 再生医療における「幹細胞治療」は、自身の幹細胞を使い、損傷した組織や細胞の修復を手助けする方法です。 「PRP療法」も再生医療の1つで、血液に含まれる血小板を用いて治療を行います。 どちらも患者様自身の幹細胞や血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。また、再生医療では手術や入院を必要としません。 「足底腱膜炎が治らない」とお悩みの方は、再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、足底腱膜炎や足底筋膜炎に関する再生医療を行っています。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度当院へ症状をご相談ください。 まとめ|足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いは炎症や原因にある 足底腱膜炎と足底筋膜炎は、炎症や痛みが発生する部位や、原因に違いがあります。 足底腱膜炎は、慢性的な痛みが生じますが、足底筋膜炎は動き始めなど突発的に痛みが生じるのも大きな違いといえます。 しかし、両疾患とも足底腱膜の周辺に痛みが生じるため、同じ疾患として扱う医療機関も少なくありません。 かかとや土踏まずに痛みを感じる方は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。 放置したり、自己流で治療をしたりすると、症状が悪化したり、慢性化したりする恐れがあるため、医療機関を受診するのが大切です。 また、リペアセルクリニックでは、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療を行っています。「足底腱膜炎がなかなか治らない」と悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
2025.02.08