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- 腰
側弯症の手術で後悔しない為、そのメリットとデメリット 小学生の時に学校検診で前屈の動きをした覚えはありませんか? あの動き、実は側弯症を見極めるテストの一つなんです。なぜ成長期の時期に側弯症の健診があるのでしょうか? 本記事ではそんな疑問にお応えすべく、放っておくと実は怖い側弯症について、様々な治療法をメリット・デメリットとともにご紹介していきます。 側弯症とは 側弯症とは、背骨(脊柱)が前から見た時に曲がっている(捻れている)状態のことを言います。側弯の程度は個人差が大きく、背骨の曲がり方の指標である『コブ角』の測定が重要となります。 側弯症により痛みを伴うことは少ないですが、見た目の問題で心理的ストレスを感じたり、高度の側弯で肺活量の低下などの呼吸機能障害が起こったりすることもあります。 背骨(脊柱)の役割 通常、背骨は前から見ると真っ直ぐになっており、横から見るとS字のカーブを描いています。この形状により、重い頭部を効率よく支えることができ、重力による背骨への負荷を減らすことができるのです。 側弯症の指標であるコブ角とは? 側弯症の説明で必ずと言っていいほど出てくる指標がコブ角です。これは、背骨の横方向への曲がり方を表す角度になります。 角度を測る際に用いられるのが、レントゲン画像です。背骨(椎体)の上下で最も曲がりの強い椎体から線を引き、その2つの線が重なってできた角度がコブ角になります。 出典:脊椎手術.com (https://www.sekitsui.com/specialist/sp014-html/) コブ角が大きければ大きいほど側弯が強い、という判断になります。コブ角の程度により治療方法の選択が変わりますので頭に入れておきましょう。 側弯症の種類と原因 側弯症は、大きく2つの種類に分類されます。 ・機能性側弯症 ・構築性側弯症 以下で詳しく解説していきます。 機能性側弯症とは 機能性側弯症とは、日常の姿勢や、仕事動作の反復、腰痛などによる逃避的な姿勢など、左右非対称に偏った姿勢を高頻度にとる人に多くみられる側弯症です。 機能性側弯症の場合、コブ角も小さいことが多く、根本となる姿勢の問題を改善することで解消できます。 構築性側弯症とは 構築性側弯症は、その中でもいくつか分かれており、側弯の程度も人により様々です。後述する装具療法や手術療法の適応となるのは、ほとんどがこの構築性側弯症になります。 構築性側弯症は以下の側弯症に分けられます。 ①特発性側弯症 ②原因疾患があり、二次的に発症する側弯症 それぞれ解説していきます。 ①特発性側弯症 特発性側弯症は原因不明の側弯症であり、構築性側弯症の大部分を占めます。 発症する時期により、 ・乳児期側弯症・・・3歳以下で発症 ・学童期側弯症・・・4〜9歳で発症 ・思春期側弯症・・・10歳以上で発症 このように分類されます。特に日本では思春期側弯症が多くみられます。 乳児期側弯症は 3 歳以下の男児に、思春期側弯症は 10 歳以上の女子に多いです。 学校検診で発見されることも多く、コブ角が少ない初期の段階では見逃されることも多いのですが、少しでも左右差があれば専門の整形外科への受診を勧められます。 進行のスピードには個人差があるため、1回のみでなく、定期的な受診により変形の程度を確認しましょう。治療の内容については後で述べますが、早ければ早いほど治療効果も高まります。 もし継続的な診察が必要だと言われたら、医師の指示に従い、そのまま放置しないよう注意してください。 ②原因疾患がある側弯症 もともと原因となる疾患がもとになって側弯症が引き起こされるものもあります。 それが以下になります。 ・先天性側弯症・・・背骨の一部である椎骨の先天的な変形によって起こる側弯症 ・症候性側弯症・・・筋ジストロフィーや脳性麻痺、レックリングハウゼン病、マルファン症候群、やけど、脊椎の腫瘍などに続発して起こる側弯症 挙げればキリがないほど、多くの原因疾患があります。 しかし、必ずしも側弯になるわけではありませんし、側弯の程度も個人差があるため、専門の医療機関でしっかりみてもらうことが必須となります。 構築性側弯症の治療方法 側弯症の治療方法はいくつかありますが、今回は構築性側弯症に絞ってご紹介します。 コブ角により推奨される治療方法が変わる 側弯症の程度を測る指標として最も用いられているものに、コブ角があります。 【コブ角の大きさによる治療方法の違い】 コブ角〜25°: 見た目にも分かりにくい状態。多くは経過観察。 コブ角25°〜40°: 見た目にも変形が分かるようになる。進行の防止および変形の矯正のために装具療法が用いられることが多い。 コブ角40°〜: 高度の側弯が見られる状態。場合によっては神経症状や呼吸機能の低下がみられる。手術療法により側弯を矯正する方法が推奨される。 出典:日本側弯症学会(https://www.sokuwan.jp/patient/disease/index.html) このコブ角の大きさにより、推奨される治療方法が変わります。 側弯症の治療方法①装具療法 装具療法では、進行しやすい成長期の段階で装着することが多いです。 側弯が進行しないようにすることが一番の目的であり、装具をしたからといって側弯した背骨が戻るわけではありません。骨の成長が終了するまで装具を装着し、できるだけ側弯の進行を抑える目的で処方されます。 基本的には装着時間が長ければ長いほど効果が高いと言われており、“お風呂以外の時間は装着”や、“家にいる時間は装着”、“24時間できるだけ装着”などと医療機関により多少ばらつきがあります。 しかし、装着時の違和感が強く、許可された時間以外でも外してしまうケースも多いです。 アンダーアーム装具(出典:日本側弯症学会 https://www.sokuwan.jp) 海外の権威ある研究においても16時間以上の装具装着により進行を抑えられたという報告もあることから、装着時間を守ることをオススメします。 側弯症の治療方法②手術療法 高度の側弯症に対しての唯一有効な治療法が手術療法です。 コブ角が50°を超えてしまうと、骨が成熟した後でも変形が進行する可能性があります。 変形が進行する=合併症の危険性が上がる、ということです 【高度な側弯】 ・変形が進行するリスクがある ・変形による他の合併症の恐れがある ・保存的治療(装具療法やリハビリ)では限界がある そこで、変形を矯正するための方法が手術になります。 現在は、手術技術や機器の向上により治療成績が格段に上がっているため、手術を推奨するケースが多いです。 側弯症の術前(左)と術後(右)(出典:日本側弯症学会 https://www.sokuwan.jp/) 上の写真を見れば、手術前と後での違いが一目瞭然ですよね。 側弯症の手術のメリット・デメリット いざ手術となると不安もでてきます。まず考えるのは、手術を受ける際のリスクだと思います。 「手術による後遺症はないのか?」「手術をしてもあんまり変わらないんじゃないの?」「手術で失敗したら怖い・・・」 このように考えてしまうのも無理はありません。そこで、手術をする、しないの選択に後悔しないように、手術によるメリットとデメリットについてお話します。 側弯症手術のメリット 側弯症の一番大きなメリットは、側弯の度合いを軽減させることができる、という点です。それにより、見た目が変わり心理的ストレスが改善されます。 また、側弯による呼吸器をはじめとした他の合併症のリスクを減らすことができます。基本的に現在の治療技術では、手術後でもほとんど前と同じような日常生活が送れます。 【側弯症手術のメリット】 ・側弯の矯正ができる ・側弯の程度の減少により心理的ストレスが改善できる ・側弯の程度の減少により呼吸器疾患などの合併症のリスクを減らすことができる ・手術後でも前と同じような日常生活を送ることができる そのため、以前に比べ手術を推奨する例が多くなっています。 側弯症手術のデメリット 側弯症に限らず、手術をする際には多少のリスクが伴います。また、手術後の過ごし方によって様々な問題を引き起こすこともあるのです。 まず頭に入れておいてほしいことは、手術後すぐには元の生活には戻れない、ということです。 手術後に最も重要なのは、処置した箇所の骨癒合(骨がくっつくこと)になります。骨癒合のためには、ある程度の安静が必要です。 背骨を過度に反らす、曲げる、捻る動きをとってしまうことで、金属挿入部が緩んでしまうことがあります。そうなると、再手術が必要となってしまうことがありますので、注意が必要です。 手術をするにあたり、神経に近いところにメスを入れます。どの手術でも言えることですが、小さい神経などを傷つけてしまうこともあります。 それにより麻痺や感覚異常などの神経障害が出てくる可能性もゼロではありません。 さらに、背骨の周囲には様々な臓器が隣接しています。そのため、呼吸器や循環器、泌尿器などの合併症を引き起こす可能性もあるのです。 また、手術後の創部管理が行き届いていないと、免疫が低下してしまうなどの理由で感染症を起こすことも考えられます。 【側湾症手術のデメリット】 ・手術後早期は術部に負荷のかからないような生活が必要 ・手術後は、ラグビーや柔道、バレーボールなどの激しくぶつかり合ったり、脊柱の大きな動きを伴うようなスポーツができない ・手術の侵襲により神経障害を引き起こすことがある ・手術の侵襲により他臓器の合併症を引き起こす可能性がある ・手術後の感染のリスクがある 手術にはこれらの危険性をはらんでいることを頭に入れて、後悔しないような選択をしましょう。 まとめ・側弯症の治療、手術で後悔しない為のメリットとデメリット 今回は、側弯症の病態からその治療方法、そして手術療法を行う上でのメリット、デメリットについてお話しました。 側弯症は専門性が求められる疾患であり、初期の状態では見過ごされることも多い疾患です。気になる症状があったり、治療方法で悩まれている方がいらっしゃいましたら、ぜひ専門家へ相談することをオススメします。 手術療法についてはデメリットも多く感じるかもしれませんが、昔と比べると格段と治療成績が良くなっています。 治療をより効果的なものにするためには、術後の過ごし方や変形を助長させないような対処が必要になります。 病態の理解、経過観察、治療の選択などが重要なポイントとなりますので、1人で悩まず専門家や家族と相談しながら側弯症と付き合っていきましょう。 ご参考になれば幸いです。 No.100 監修:医師 坂本貞範
2022.12.07 -
- 脳卒中
【脳出血後の看護と介護】脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイント 「脳出血後のケアはどうしたらいい?」 「脳出血後の看護ケアと介護ケアについて知りたい。」 脳出血後は、患者とその家族の両方にとって突然人生が変わりかねず、どうすれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか? 脳出血後の患者はほとんどの場合、複数の薬や治療が必要になるため、リハビリの道のりは非常に長く、困難になる可能性が高くなります。 何よりも、脳出血後の患者の精神的、社会的な負担も計り知れません。元通りの生活に戻るには、看護師、介護士、友人、家族からのサポートが何よりも必要です。 そこで、今回の記事では、脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイントについて含めて説明します。 脳出血後は後遺症が残る 脳出血とは、高血圧などによる動脈硬化症による血管の破裂により、脳の実質内に血液が流出する状態です。脳出血は死亡率が高く、最も致命的な病気の 1 つになっています。 脳出血後は、多くの合併症に苦しむ可能性があり、主に以下のような後遺症を残します。 ・運動麻痺 右上下肢や左上下肢が動かなくなり、歩行困難になることもある ・感覚障害 触覚や痛覚などの感覚が鈍くなったり、逆に過敏になる ・視覚障害 視野が狭くなったり、物が二重に見えたりする ・失語症 言葉の理解が悪くなったり、単語が出づらくなる ・構音障害 ろれつが回りにくくなる ・半側空間無視 片側の空間認識ができなくなる ・嚥下障害 食べ物が飲み込みにくくなる これらは患者とその家族の両方に著しく影響を与える可能性があります。 脳出血後の看護ケアについて では、実際の看護ケアについて考えていきましょう。観察項目について説明していきます。 観察項目とは、治療の効果、患者への適応を判断するために行います。 看護ケアにおける7つの観察項目 看護ケアではどのような項目について観察するべきなのか解説していきます。 脳出血後の入院中は、特に意識レベル、血圧の管理などを厳密に管理します。 ①意識状態 Glasgow Coma Scale (GCS) やJCSを通じて意識状態を評価し、新たな神経学的徴候の出現を確認します。 ②呼吸 入院中の呼吸管理としては、患者の頭をわずかに上げた位置に保ち、酸素飽和度(SpO2)を監視します。 呼吸抑制がある場合、カニューレを装着したり、マスクを用いて酸素を投与するなどして、呼吸を補助します。 ③血圧と心拍数 血圧と心拍数を頻繁に検出しましょう。特に血圧のコントロールは、血管痙攣による虚血性の合併症を避けるために必要です。収縮期血圧140mmHg未満を目指しましょう。 ④電解質バランスの変化(輸液管理) 輸液などで毎日の電解質のバランスを保ち、時間ごとの利尿を監視し、多尿または乏尿があれば、必要に応じて輸液量を調整します。 ⑤口腔内衛生や姿勢、褥瘡管理 1日に数回、口腔内を丁寧に掃除してください。 褥瘡管理は頻繁に体位変換を行う必要があり、片麻痺側の持続時間は健康な側の持続時間よりも短くする必要があります。床ずれ対策(エアマット、枕)を行いましょう。 また、姿勢管理では麻痺した手足に特に注意を払い、正しい姿勢をとります。 ⑥嘔吐、吐物管理 脳出血後は、予期せぬ嘔吐が出現しやすくなります。 嘔吐の場合は、気道が確保できているか確認し、誤嚥による肺炎の発生を回避する必要があります。 ・側臥位にする ・口の中の異物を吐き出させ、分泌物を吸引する 素早い判断で適切な対処を行うことが、とても重要です。 ⑦発作や薬の管理 発作時には、医師の指示に従って、抗けいれん薬を投与し、定期的に気道の状態を評価します。 また、血管内治療を受けた患者は、再出血を防ぐ薬を継続する必要があり、看護師は薬を飲めているか確認します。 脳出血後の介護で家族が知っておくべきこと では、続いて脳出血後に家族が自宅などで気をつける介護ケアについて解説していきます。 入院中は看護師やその他多くの専門職によってリハビリなどが行われますが、退院後は、家族が中心になってケアを行なっていく必要があります。 ほとんどの患者は、初期治療とリハビリ後に自宅で介護を受けることを選択します。 ①要介護認定は早めに受けるべき 脳出血などは特定疾病ですので、40歳以上であれば要介護認定を受けられます。 在宅介護の場合は、訪問介護や訪問入浴介護、自宅のバリアフリー化、福祉用具レンタル・購入などの在宅介護サービスを受けることができます。 ②在宅介護サービスを活用する 在宅介護サービスは、脳出血後の症状が残っており、比較的状態が安定している患者に推奨されるケアサービスです。 内容としては毎月の医師の診察、継続的なモニタリング、24 時間対応の電話応対などが含まれています。 在宅介護には、以下のようなメリットがあります。 ・長年住み慣れた自宅で生活できる ・経済的負担が少ない ・家族と一緒にいられるので安心感が生まれる ぜひ、このようなケアサービスも活用しましょう。 ③住宅改修で自宅の環境整備を行う 在宅介護を行う際は、補助器具と環境整備も行う必要があります。 患者が障害を抱えながら生活できるように、補助器具の使用や家庭環境の改善に取り組みます。 ④施設介護サービスも検討できる 自宅介護の他にも、施設サービスも検討しましょう。 自宅での介護が難しい場合は、日帰りでリハビリや介護などのケアを受けられるデイサービスやデイケアがあります。 在宅介護に比べて以下のようなメリットがあります。 ・専門性や高い介護ケアが受けられる ・介護をする家族の時間や精神的苦痛が少ない 家族の介護とはいえ、仕事との兼ね合いや子育て中であれば、精神的にも肉体的にも大変なことがあるかと思います。そんな時は、安心してお任せできる、施設の利用を検討するのもひとつかもしれません。 脳出血後の看護、介護に関するよくあるQ&A 最後によくある質問についてもまとめましたので、参考にしてください。 Q,要介護認定の相談は誰にすればいいですか? A,退院後の相談としては、医療ソーシャルワーカーなどに相談できます。 Q,要介護認定の方法は? A,要介護認定の申請方法としては、申請書の他に介護保険被保険者証や身分証明書などを準備して、役所の介護保険の担当課へ行きます。 申請手続きを済ませると、後日担当者が聞き取りによる認定調査に来ます。 まとめ・【脳出血後の看護と介護】脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイント 脳出血後の入院中の看護や退院後の介護ケアは、患者さんがもとの日常生活に早く戻るためにもとても大切です。 退院後の介護ケアでは家族のサポートが不可欠なので、自分だけで抱え込まず、家族間でよく話し合う必要があります。時に、在宅介護と施設介護を上手く取り入れ、併用していくことも検討してみましょう。 今回の記事が看護や介護に向き合われる皆さまのご参考になれば幸いです。 No.101 監修:医師 坂本貞範
2022.12.05 -
- 肩
鎖骨骨折の痛み!?その外見と症状、治療法や後遺症の可能性について 「事故のあと鎖骨が盛り上がっている気がする」 「転んだあと鎖骨が痛む」 このような場合、もしかすると鎖骨骨折かもしれません。 骨折を放置すると、症状が悪化するばかりか、骨折がずれたままくっついてしまう可能性もあります。 今回は鎖骨骨折について、骨折時の外見や症状、治療法、後遺症について詳しく解説します。 鎖骨骨折の症状は?外見でわかる場合も 鎖骨骨折は全ての骨折のうち約10%を占める比較的頻度の多い骨折です。 交通事故やスポーツなどで腕を後ろにそらしたり、肩を下にしたりして転ぶと、地面についた衝撃が鎖骨に伝わって骨折してしまいます。 また、鎖骨に直接強い衝撃が加わって骨折する場合もあります。体の表面にあり確認しやすい骨なので、外見にもわかりやすい症状がみられる骨折です。 どのような症状があるのか、具体的に紹介します。 皮膚が盛り上がったような外見 鎖骨はS字にカーブした長細い骨で、筋肉など厚みのある組織に覆われていないため、骨折時に外見でわかることも少なくありません。 鎖骨の中央1/3の部分で骨折することが多く、鎖骨の外側は腕の重さなどで下にずれやすく、内側は首の筋肉の力で上にずれやすいという特徴があります。 そのため、骨折により骨がずれてしまうと、鎖骨の内側の部分が飛び出し、皮膚が上に盛り上がったような外見になるのが特徴です。 また鎖骨が浮き上がらないように支えている烏口鎖骨靭帯(うこうさこつじんたい)が損傷した場合も鎖骨をおさえる機能が低下して、鎖骨が浮き上がりやすくなります。 骨がずれて重なってしまうことで、折れた方の肩幅が狭くなったように見える場合もあります。 鎖骨や肩の痛み 鎖骨は胸の中央にある骨(胸骨)や肩甲骨と合わせて関節を作っています。 肩甲骨は腕を上げたりおろしたりといった運動に関わり、肩甲骨と鎖骨でできる関節(肩鎖関節:けんさかんせつ)も、腕の運動に重要な役割を持っています。 そのため、鎖骨の骨折をすると肩を動かす場合に鎖骨に負担がかかり、痛みが生じることがあります。 肩の動きが制限される 前述のように鎖骨は肩の動きと関係するため、鎖骨を骨折すると腕を上げにくかったり、広げにくかったりといった制限がみられます。 腫れやアザができる 骨折による炎症症状で患部が腫れたり熱をもったりします。また、骨折による出血のため、アザがみられることがあります。 血流の障害や痺れ さらに、鎖骨は首の近くにある血管や神経を守る役割も担っています。 事故などで鎖骨に強い衝撃が加わったときに、周辺にある血管や神経も一緒に損傷される場合があります。その場合、血の流れが悪くなる血行障害や神経損傷による手の痺れや痛みといった症状がみられます。 鎖骨骨折の治療法 治療は手術をしない保存療法が基本ですが、骨が大きくずれてしまっている場合は手術を選択することがあります。 それぞれの治療方法について解説します。 手術しない保存療法 第一に選択されるのが、三角巾や鎖骨バンド(クラビクルバンド)と呼ばれる装具をつけて、骨折部が動かないように固定する治療です。 胸を張り、両肩を強く後ろに引いた状態で固定することで、鎖骨の変形を矯正して、骨を正しい位置でくっつけることになります。 入浴時以外はバンドをつけて生活して、入浴の際は骨折している方の手で体を支えない、90°以上の高さに腕を上げないという注意点があります。 固定の期間は4〜6週間が目安ですが、年齢が若いほど骨がくっつくのが早いため、固定期間が短くなりやすいです。 固定により腕を上げる制限がみられた場合は、リハビリで改善を図る場合があります。 骨のずれがひどい場合は手術 骨のずれが大きい場合や骨が砕けてしまうような骨折の場合は、手術が選択されます。 また仕事の都合できるだけ早く社会復帰を希望して、手術を選ぶ場合も少なくありません。手術療法だと、手術した後すぐにリハビリで腕を動かすことができるので、動作が改善しやすいというメットがあります。 手術は針金のようなワイヤーを鎖骨に通したり、プレートで支えたりして体の内側から鎖骨を固定します。 入院期間は手術の方法により異なり、必要に応じてリハビリを行います。 鎖骨骨折の後遺症 骨折した部分のずれがひどいと、元の位置に戻そうとしても十分な位置に戻らず、ずれたまま変形して骨がくっつく(変形治癒)という後遺症の可能性があるため、注意が必要です。 また、鎖骨の外側は平らな形をしており、折れた場合にくっつきにくいという特徴があります。 くっつかずにそのままにしておくと、そこが別々の骨に分離した状態になり、まるで関節ができたようになります(偽関節:ぎかんせつ)。 いずれにしても、このような後遺症があると、痛みが出たり、肩の動きが制限されたりします。そのため、後遺症ができるだけ残らないように、状態に応じた適切な治療の選択が重要になるのです。 まとめ・鎖骨骨折の痛み!?その外見と症状、治療法や後遺症の可能性について 鎖骨骨折は、外見の特徴もあり痛みも強くなりやすいため、症状がわかりやすい骨折です。 そのため、紹介したような症状がみられた場合は、できるだけ早めに整形外科を受診しましょう。治療をせず放置すると、変形治癒や偽関節になったりといった後遺症が生じる危険性があります。 早めの受診で、適切な診断や正しい治療を受けて、後遺症を防ぐようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.099 監修:医師 坂本貞範
2022.12.02 -
- 脳卒中
くも膜下出血後の生活|手術と入院期間、治療後のリハビリを詳しく解説 「くも膜下出血の手術や入院について詳しく知りたい」 「くも膜下出血の後の生活はどのように送ればいい?」 このような悩みを抱えている方はいませんか? くも膜下出血は生活習慣病などが原因となり、突然発症する怖い病気です。大切なご家族が突然くも膜下出血になる可能性もゼロではありません。 具体的にどんな治療方法があり、入院期間はどのくらいなのか、治療後のリハビリの方法など気になる方もいることでしょう。 そこで今回は、くも膜下出血後の生活についてリハビリの方法を詳しく解説していきます。 くも膜下出血とは? くも膜下出血は、動脈瘤の破裂または頭部外傷などによって、くも膜と脳を取り囲む軟膜との間の、くも膜下腔と呼ばれる部位に出血が起こることで発症します。 発症すると重い頭痛を訴えますが、今までにないような頭痛を訴えて救急外来を受診した患者のうち、最終的にくも膜下出血を発症するのはわずか 10 %程度です。 関連する症状には、首の痛み、吐き気や嘔吐、羞明-しゅうめい-(異常に眩しさを感じること)などがあります。 くも膜下出血の手術について くも膜下出血の治療の一つとして手術を選択する場合があり、影響を受けた血管を修復し、動脈瘤が再び破裂するのを防ぐための手術を行います。 主に、「開頭クリッピング術」と「コイル塞栓術」と呼ばれる 2 種類の手術があります。 クリッピングとコイルのどちらを使用するかは、動脈瘤の大きさ、位置、形状などによって異なります。 コイルは、クリッピングよりも発作などの短期的な合併症のリスクが低いため、しばしば好まれる手術ですが、クリッピングよりも長期的な利点があるかは不明です。 ①血管内治療 : コイル塞栓術 血管内治療では、カテーテルと呼ばれる細い管を足や鼠径部の動脈に挿入し、血管を通って脳の動脈瘤に導きます。 次に、小さなプラチナコイルをチューブに通して動脈瘤に挿入し、動脈瘤がコイルで満たされると、再び破裂したりするのを防ぐことが可能になります。 ②開頭手術 : クリッピング クリッピングは開頭術とも呼ばれ、頭部に切り込みを入れ、動脈瘤の位置を特定します。そして、小さな金属製のクリップを動脈瘤の基部に取り付け、動脈瘤を密閉します。 時間が経つにつれて、クリップが配置された場所に沿って血管の内側の層が再生し、動脈瘤が永久に密閉され、再び破裂するのを防ぐことができます。 くも膜下出血の入院期間や費用は? 入院期間や費用に関しては、受ける治療内容や重症度によって左右されます。 治療内容に関しては手術以外にも保存治療もあります。また、コイルによる手術を受けた人は、クリッピング手術を受けた人よりも早く退院し、全体的な回復時間も短くなる可能性があります。 費用に関しては 3 割負担で 50〜70 万円程度と考えていいでしょう。手術内容や保険の内容によって以下のように異なります。 ・血管内コイル塞栓術:19〜55 万円 ・開頭クリッピング術:22〜65 万円 さらに、これらの種類の手術が緊急治療として行われる場合、入院期間は、受ける手術の種類よりも症状の重症度に大きく依存します。 どちらの治療を受けている場合でも、合併症を避けるために、しばらくの間注意深く監視する必要があり、基本的には、2 週間から 2 ヶ月程度は入院する必要があります。 くも膜下出血後の生活について くも膜下出血から元の生活に戻るまでの時間は、その重症度によって異なり、手や足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症があるかどうかにも影響します。 重大な後遺症を残さないためにも早期のリハビリが必要 くも膜下出血後は少なからず後遺症が残るため、早期のリハビリが大切になります。 早期のリハビリ介入によって、くも膜下出血後の脳血管痙攣や再出血の頻度と重症度は軽減され、初期のリハビリテーションがいかに大切なのかわかります。 くも膜下出血のリハビリ方法 それでは具体的なリハビリ方法について以下の 3 つのステップに分けて説明したいと思います。 ①急性期 ②回復期 ③維持期 それぞれ詳しく説明していきます。 ①急性期リハビリ(治療後~14 日程度):廃用症候群の予防など 急性期には、身体の様々な機能がしにくくなり、褥瘡や足の血栓、感染症などさまざまな合併症が起こります。 また、ベッド上で動かず寝たきり状態になることで、筋肉が萎縮し衰え、関節が硬くなり運動機能が低下してしまうことを“廃用症候群”と言います。 この廃用症候群を予防するため、以下のようなリハビリを行います。 膝伸ばし運動 : 座った状態で片足の膝をゆっくり伸ばし、10 秒間保つ。 足の筋力運動 : 椅子に座り、背筋を伸ばして片足をゆっくり上げて下ろす 肩の上げ下げ運動 : 両肩を耳につけるイメージで、あげて下に落とす運動 手足の関節を動かす : 座った状態で手や足の関節を曲げて伸ばす 基本的には、座った状態でできる運動を行います。 ②回復期リハビリ: 日常生活動作の自立 急性期を脱し、病態や血圧が安定してきたら、症状の程度に応じて様々な回復期のリハビリに移りましょう。 日常生活を行う上で必要な基本動作が行えるよう運動機能を改善します。 基本動作の自立 : 寝返りをうつ、自力で座る、立つ 歩行訓練 : バランスを保つ、車いすへの移動、杖や歩行器などを用いた歩行練習 応用動作の訓練 : 手芸や工作、その他の作業 日常動作 : 食事やトイレ、着替え、入浴動作 さらに、食事ができるように嚥下機能を改善することも必要になります。 口の訓練 : 発声や舌・口・のどの筋肉を動かす運動 顔や首周りの訓練 : 首回りや肩の筋肉を動かす運動 間接的な嚥下訓練 : 水を含ませて凍らせた綿棒で喉の奥を刺激するなど 直接的な嚥下訓練 : ゼリーや水などの食物を用いる飲み込みの練習 そして、高次機能の改善としては以下のような特殊な訓練を行います。 ・風船、積木などの物を用いた訓練 ・繰り返し動作の練習 ・行動の順序を確認する練習 日常生活の動作に適応するためのリハビリを行っていきます。 ③維持期のリハビリ : デイサービス 維持期は、回復期で得た運動機能などを損なわないように機能を維持するために行うリハビリです。 ・生活の中の日常動作 ・散歩や軽い運動 維持期は生活期とも言われ、日常生活の中で取り戻した運動機能を低下させないように気をつける必要があります。 例えば、食事や着替え、入浴などはなるべく自分で行い、定期的に散歩やストレッチなどを行いましょう。 日帰りでリハビリなどの施設に通う、デイサービスなどもあります。ぜひ活用しましょう。 まとめ・くも膜下出血後の生活にはリハビリが欠かせない いかがでしたでしょうか。 今回は、くも膜下出血の手術後の生活について詳しく解説しました。くも膜下出血には大きく 2 種類の手術がありますが、重症度や治療内容によって入院期間や費用も異なります。 入院期間を短くして早く元の生活に戻るために欠かせないのが、入院時点で行う早期のリハビリです。完全に元の生活に戻るにはどうしても長期間かかり、なかなか根気強く続けるのが難しいかもしれませんが、続けることが大切です。 今回の記事がご参考になれば幸いです。 No.098 監修:医師 坂本貞範
2022.11.30 -
- 脳梗塞
脳梗塞は女性に多いその理由!脳梗塞を発症しやすい年代と発症確率について 近年では、わが国でも生活習慣病などに関連した、脳梗塞に関する情報が注目されております。 また、昨今においては、男女間の性差に関連する医療研究が広く実施されるようになってきました。その中で、脳卒中の約3分の2の発症割合を占める脳梗塞についても、男女の性差での違いを認める疾患であることが分かりつつあります。 中でも、女性が脳梗塞に罹患するリスクが存在すると言われており、その原因として高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子が指摘されています。 今回は、脳梗塞の発症原因や脳梗塞になりやすい年代と発症確率、女性に脳梗塞が多い理由などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 脳梗塞の発症原因は? 脳梗塞の患者では、普段から高血圧を始めとする生活習慣病を発症している方が多く、これらの疾患は血管の動脈硬化性変化を進行させるので、脳梗塞を招くリスクが高くなると言えますし、近年の脂質異常症や糖尿病の増加に伴って、最近ではアテローム血栓性梗塞が増えてきています。 また、高齢化にともない心房細動という不整脈を抱えた患者さんが増加しているため、心原性脳塞栓症も徐々に増えています。 脳梗塞を発症させる原因として挙げられるものは以下です。 ・加齢 ・食生活の欧米化に伴うメタボリック症候群 ・過剰な塩分摂取 ・慢性的な運動不足 ・糖尿病 ・脂質異常症 ・喫煙歴 ・大量飲酒 ・日々の過剰なストレス などが挙げられ、脳梗塞の原因として忘れてはいけない要素です。 加齢に伴ってラクナ梗塞の原因である動脈硬化、あるいはアテローム血栓性脳梗塞の原因である生活習慣病は徐々に進行して、脳梗塞を発症しやすい状況に陥ると考えられます。 したがって、動脈硬化や生活習慣病、心房細動などを抱える高齢者は特に注意が必要です。 脳梗塞になりやすい年代とその発症確率は? 脳梗塞は、一般的に高齢者に発症することが多い疾患であり、初発の発症例では 65 歳以上が全体の 9 割を占め、本疾患は中年以降から高齢層にかけて罹患しやすい病気というイメージがありますが、30 〜 40 歳代の若年者に発症する若年性脳梗塞も存在します。 厚生労働省の発表データによれば、1996 年時点で国内に約 170 万人に及んで存在した脳血管疾患を発症した患者数は、2017 年時点でおよそ 110 万人程度まで減少傾向を示しており、脳梗塞で病院や診療所を受診したのはおよそ15万人程度と言われています。 具体的に、年齢別の内訳としては、 0〜14 歳が 100 人 15〜34 歳が 300 人 35 〜 64 歳が 1 万 4000 人 65 歳以上が 13 万 5000 人 75 歳以上が 10 万 6000 人 という状況です。 つまり、脳梗塞を発症する患者数は特に 75 歳以上の方で全体の7割以上を占めています。 女性に脳梗塞が多いのはなぜなのか? 脳梗塞は男性に多い病気と考えられる傾向があります。 しかし、実は女性の死亡原因の第三位に位置づけられている疾患であり、女性の脳梗塞は増加傾向であり、かつ重症化しやすいことが知られています。 一般的に、脳梗塞は男性に発症数が多い一方で、女性の方が少ないと言われていますが、女性の脳梗塞患者は男性に比べて高齢で発症するケースが多い特徴があり、生命予後も不良になる傾向が認められると指摘されています。 脳梗塞を男女差の面から考えると、一般的に患者数は男性の方が多いです。 女性の持つ危険因子とは ところが、女性には妊娠、経口避妊薬の使用、ホルモン補充療法など特有の脳梗塞を発症する危険因子が背景に存在すると伝えられています。 脳梗塞を代表とする脳心血管疾患における最大の発症要因ともいえる高血圧に関連して、通常約 50 歳前後までは女性よりも男性の方が高血圧の平均数値が高い傾向を認めますが、その後の年代以上では高血圧の有病率に性差はほぼありません。 この理由としては、女性が閉経した後に女性ホルモンであるエストロゲンなどの働きが低下することによって、女性の高齢時における高血圧の発症原因に繋がっていると考えられます。 女性ホルモン「エストロゲン」との関係性 特に、エストロゲンは血管や骨などの状態を維持する機能を有するホルモンであり、おおむね女性が 50 歳前後の更年期に入ると急激にエストロゲンの分泌量が減少して、これまで適正範囲に機能していた保護作用などが効果を示さなくなっていきます。 また、30 歳前後における若年女性の収縮期の血圧は、平均すると同年代の男性層よりも約 10mm Hg 程度低い値であることが知られていますが、女性は男性よりも高血圧の影響が強く出現する傾向がありますので、若い年代の時期から高血圧予防に努めることが重要です。 さらに、動脈硬化の進行を促進する大きな要因である脂質異常症に関しても、若年時には男性の発症率が女性より高いことが判明していますが、年齢を重ねるごとにその発症率において性差が認められなくなります。 その背景には、女性特有のエストロゲンの影響だけでなく、男性だけでなく女性も喫煙習慣、脂肪分のリッチな食事スタイル、糖類を大量に含む飲食物を多く摂取するなど、近年よく見られる生活習慣病が直接的な原因になっていると思われます。 脳梗塞と不整脈 さらに、中年期から高年齢層にかけての女性は男性に比べて不整脈を発症しやすいと言われており、特に不整脈の中でも心房細動は脳梗塞の発症リスクを 5 倍程度に上昇させることが指摘されています。 不整脈のひとつである心房細動は、心原性脳塞栓症における大きな発症危険因子として認識されており、脳梗塞を引き起こす患者さんの約 70 %の割合で合併していると指摘されています。心房細動の頻度は、一般的に男性が女性の約 3 倍高いという報告が見受けられます ところが、心原性脳塞栓症を続発しやすいという観点でみると女性の方が男性よりも発症率が高い傾向にあると言われています。 その他の危険因子 その他にも、偏頭痛、心房細動、うつ病、感情的なストレスは、女性に多い脳梗塞の危険因子となります。 そして、特に女性で妊娠を契機に妊娠高血圧症候群が認められる際には、その後高血圧を発症するリスクが約 4 倍、そして脳梗塞に罹患するリスクが約 2 倍に上昇すると言われています。 また、閉経後の女性に対して女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを投与するホルモン代替治療は、骨密度を上昇させて骨折の危険を減らす利点がある一方で、脳梗塞の発症リスク因子になりますので十分に注意する必要があります。 したがって、女性が脳梗塞を発症した場合には、女性ホルモンの補充療法の有無を確認することが重要であるとともに、すでに投与されている際にはその中止も検討すべきであると言われています。 脳梗塞は女性に多いその理由!脳梗塞を発症しやすい年代と発症確率について/まとめ 今回は、脳梗塞の発症原因や脳梗塞になりやすい年代と発症確率、女性に脳梗塞が多い理由などについて詳しく解説してきました。 脳梗塞の年代別発症率では、高齢者を中心に発症しやすいことが分かっており、その発症原因は色々考えられますが、良くない不規則な生活習慣の積み重ねが発症につながるケースは決して少なくありませんし、女性にも脳梗塞を発症するリスク因子が存在します。 特に、女性はエストロゲンの保護や生活習慣病という観点から、加齢に伴って閉経後など脳血管系疾患の影響が強く出て脳梗塞を発症するリスクがあります。 したがって、普段から食生活に気をつけて定期的に運動を実践するなどの予防策を若年期から意識しておきましょう。 脳梗塞の後遺症は取り返しのつかないものですので、元気なうちに対策を講じて、あらかじめ脳梗塞の危険因子を知っておくことが重要なポイントです。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 禁煙や体重管理、運動など生活習慣の改善によって、脳梗塞を引き起こさないようにすることが大切です。 No.S100 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.28 -
- ひざ
- 健康
必見!膝の裏側でリンパが詰まっていませんか?その原因と対策とは 「膝から下がむくんでいて気になる」 「膝の裏がふくらんでいるけど何が原因なの?」 このような症状に不安になっている方はいませんか?膝の裏側の腫れや痛み、膝から下のむくみは「リンパのつまり」が原因かもしれません。 今回は、膝裏のリンパの詰まりに関して、原因や具体的な対処法を解説します。 膝裏のリンパが詰まる原因 膝裏にはリンパの流れる管(リンパ管)の太くなっている部分があります。 このような部分を「リンパ節」と呼び、膝裏のリンパ節は「膝窩リンパ節(しっかリンパせつ)」と言います。 リンパ管を流れるリンパは体内の老廃物や細菌を運ぶ下水道のような役割を果たしています。そしてリンパ節はリンパ管を通ってきた異物を取り除くための部分です。 リンパそのものの流れが悪くなると、リンパ節でリンパ液がうまく循環しなくなってしまい、リンパ節が詰まってしまうような状態を引き起こします。 リンパの流れが悪くなる原因としては以下のようなものが挙げられます。 ・運動不足 ・肥満 ・偏った食生活 ・長時間同じ姿勢を続ける など 運動不足や肥満、長い時間同じ姿勢を続けることに共通して言えることは、「筋肉の働きが低下する」ことです。 リンパ管は筋肉に挟まれながら、体を巡っています。そのため、身体の曲げ伸ばし、しゃがんだり、伸ばしたり、押してみたり筋肉をほぐすことでリンパ管を刺激してリンパの流れを促します。 筋肉の働きが低下すると、リンパ管への刺激が少なくなり、リンパの流れを悪くしてしまうのです。 また、肥満は脂肪が邪魔して筋肉が働きにくくなるのに加えて、リンパ菅を狭くしてしまいリンパの流れを妨げます。 偏った食生活は、肥満に繋がるのはもちろんのこと、老廃物を増やしリンパ節の働きを妨げてしまうためリンパ節が詰まる原因となるのです。 膝裏のリンパが詰まっている時の3つの対策 膝裏のリンパが詰まっている場合は、先ほど説明したリンパの流れが悪くなる原因を考慮した対応が必要です。 そこで、具体的な方法を3つ紹介します。 1,適度な運動 筋肉を動かし血液やリンパの流れを促すことを「筋ポンプ作用」と呼びます。筋ポンプ作用を働かせるためには、筋肉を適度に動かす運動が必要です。 おすすめは膝や足首の屈伸運動です。特につま先を上げ下げする足首の運動は、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉を刺激して、血液やリンパ液の循環を促すのでおすすめです。 「テレビを見ながら」「トイレで座りながら」など、「ながら運動」でこまめに行うようにしましょう。 筋肉痛になるほど、きつい運動をすると疲労が蓄積してしまうため、無理な運動は控えるようにしましょう。 2,マッサージ リンパの流れを良くするためのマッサージを行いましょう。 膝裏やふくらはぎを軽くさする、推すなどの程度から始めて、徐々にほぐすようにしていきましょう。 押すなどして圧迫した場合に、痛みや違和感を感じる場合はリンパの流れが悪いだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性があるので無理に行わないで中止しましょう。 専門家によるマッサージではなく、自分で行う場合は、あくまで気持ちいい程度の加減で行うことが大切です。 3,生活の工夫 リンパの流れを妨げる肥満を予防・改善するために、バランスの良い食事や運動の継続といった規則正しい生活習慣をすることは重要です。 また、生活の中で膝を圧迫したり、足を下ろし続けたりといった長時間椅子に座ることは膝窩リンパ節への負担の原因になります。 適度に休憩して歩いたり、しゃがんでみたり、伸ばしてみたり、運動やマッサージをしたりしましょう。 自宅などでリラックスできるときは、足の下に布団を引くなどして足全体を少し高く上げるようにしましょう。 そうすることで、足が心臓より高く位置することになり、リンパの流れを体の方に戻す効果があります。 膝裏が腫れている場合に注意したいポイント 膝の裏が腫れている場合に、リンパ節のむくみだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性もあります。 以下のポイントを参照にして、気になる場合は自己判断で治療したり、放置したりせずに整形外科や循環器内科などを受診しましょう。 全身にむくみがある 全身にむくみがある場合は、心臓や腎臓など内科系の疾患によるむくみの可能性があります。 膝裏のむくみに気づいた場合には、他の部位にもむくみがないかどうかをチェックしましょう。 膝周辺に痛みや熱がある 膝裏のむくみだけでなく、痛みや熱がある場合は、膝関節の炎症や怪我などの可能性があります。また、リンパ節に細菌が入って感染症を起こしてしまうこともあります。 このような症状の場合は、早めの医療機関で適切な治療を受けることが大切ですので注意しましょう。 だんだん浮腫がひどくなる このような場合も病気が潜んでいる可能性があるので気をつけましょう。 膝裏にリンパ以外のものが詰まっている可能性として、「ベイカー嚢腫(のうしゅ)」という病気の場合があります。 ベイカー嚢腫は膝裏にある袋状の部分が肥大してしまう病気で、50歳以降の女性に多く見られます。 また、膝の変形が進んでいくことで、膝の関節に炎症が生じて関節に水が溜まってしまうことがあります。 いずれにせよ、専門家による適切な治療が必要です。 膝裏のリンパの詰まりは規則正しい生活で改善しよう 膝裏のリンパの詰まりは運動やマッサージの継続、正しい食事による肥満の予防などの対策があります。 何よりも継続が大切です。できることから始めて無理ないペースで続けましょう。 また、膝裏のむくみがリンパ以外の可能性もありますので、気になる場合は早めの受診がおすすめです。特に痛みや熱など他の症状がみられる場合は、放置しないように注意しましょう。 以上、膝の裏側でリンパが詰まっていないか?その原因と対策を解説させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S095 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.25 -
- 脳卒中
くも膜下出血は女性に多い!原因はストレス!?今日からできる本気の予防策! 「女性の方がくも膜下出血になりやすいってほんと?」 「女性がくも膜下出血にならないための予防策について知りたい」 女性は、動脈瘤性くも膜下出血の発生の危険因子として認識されています。 そこで今回は、女性にくも膜下出血が多い理由や予防策について説明しますので、ぜひ参考にされてください。 くも膜下出血は女性に多い!その理由とは? 女性は、くも膜下出血の発生の危険因子として認識されています。 日本におけるくも膜下出血は、【男性:女性= 1 : 2 】で、女性に多くみられ、男性では 50 歳代がピークですが、女性の場合は 50 〜 70 代に多く、ピークは 70 歳後半となります。 では、なぜ女性に多いのでしょうか。いくつか要因を見ていきましょう。 出産や女性ホルモンの変化は、くも膜下出血の発症リスクを高める 動脈瘤性くも膜下出血 の発生率は、男性よりも女性の方が 50 % 高くなっています。 このような性別の差が考えられる理由には、女性特有の出産の繰り返し、ホルモン要因などが考えられます。 出産を繰り返すと、くも膜下出血のリスクが増加します。これは、おそらく妊娠による高血圧と分娩中の血管の緊張によるもので、血管が弱くなり、動脈瘤の形成につながる可能性があるためです。 また、女性ホルモンの血中レベルはくも膜下出血のリスクに影響を与える可能性があります。 女性ホルモンであるエストロゲンには、くも膜下出血の原因となる動脈硬化を抑える作用があると言われていますが、特に 50 歳以上の女性においてエストロゲンが減少します。 したがって、女性ホルモンが減少する閉経後の高齢女性のリスクが高くなります。 女性はストレスを感じやすい また、女性の方がストレスを感じやすく、特に高齢になると女性ホルモンの分泌量の変化によって、気持ちが不安定になりがちです。 ストレスを溜め込んでしまうと、くも膜下出血のリスクとなります。 くも膜下出血、その他の危険因子は? くも膜下出血 (SAH) は誰にでも発生する可能性がありますが、最も一般的に 40 歳から 60 歳の間の人々に影響を及ぼします。 ただし、女性では 70 歳台でリスクが高まります。 くも膜下出血の可能性を高めるリスク要因には、次のようなものがあります。 ・脳または体の他の場所にある未破裂の動脈瘤 ・以前に破裂した脳動脈瘤の病歴 ・喫煙 ・高血圧 ・線維筋性異形成(FMD)などの結合組織状態 ・多発性嚢胞腎の病歴 ・過度のアルコール飲酒歴 ・ワーファリンなどの血液希釈剤の使用 ・動脈瘤の家族歴 最も気をつけなければならないのが高血圧です。高血圧を誘発するものも原因となり得ます。 男性も必見!今日からできる、くも膜下出血の予防! では、そんな危険因子に立ち向かう予防策について、考えていきましょう。 主に生活習慣の改善を行うことで、そのリスクを抑えることができます。それぞれ詳しく説明していきましょう。 禁煙する 喫煙は高血圧の直接的な原因ではありませんが、くも膜下出血のリスクを大幅に高めます。 特に、女性は喫煙に対して男性よりも深刻な影響を受けやすくなっています。 喫煙は高血圧と同様に、動脈を狭くし、喫煙者で血圧が高いと動脈が急速に狭くなり、将来くも膜下出血になるリスクが劇的に高まります。 血圧コントロール 男女問わずに高血圧の方は、血圧コントロールを行いましょう。 高血圧の方は正常な方に比べ、くも膜下出血の発症リスクが 2~3 倍も高くなります。 ストレスケア 意外と知られていないのがストレスです。ストレスは血管を傷つけてしまい、くも膜下出血の原因となり得ます。 リフレッシュしてストレス発散するなどし、日頃からストレスを溜めないように工夫しましょう。 定期的に運動する 定期的な運動をすることで、心臓と血管を良好な状態に保ち、血圧を下げます。定期的な運動は体重を減らすのに役立ち、血圧を下げるのにも役立ちます。 成人は、毎週少なくとも 1 ~ 2 時間程度の有酸素運動 (サイクリングや早歩きなど) を行う必要があります。 身体活動には、スポーツからウォーキング、ガーデニングまで、あらゆるものが含まれます。運動にはリフレッシュ効果があるので、ストレスケアにも効果的です。 カフェインを減らす コーヒーを 1 日 4 杯以上飲むと、血圧が上昇する可能性があります。 コーヒー、紅茶、またはコーラや一部のエナジードリンクなど、カフェインが豊富な飲み物が好きな場合は、量を減らすことを検討してください。 バランスの取れた食事の一部としてお茶やコーヒーを飲むことは問題ありませんが、適度に飲むことが重要です。 まとめ・女性のくも膜下出血|原因はストレス!?今日からできる本気の予防策! いかがでしたでしょうか? くも膜下出血は、男性よりも女性の方がおこりやすく、これには女性ホルモンが関与していると考えられています。 また、女性はストレスを抱えやすく、喫煙に対しても影響を受けやすいため、日頃から対策することが大切です。 今回の記事を参考にして、改めて症状や予防策に関して学んでおきましょう。ご参考になれば幸いです。 No.S097 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.23 -
- 脳卒中
くも膜下出血の前兆?首の後ろの痛みを伴う激しい頭痛は危険! 「首の後ろの痛みを伴う頭痛がある場合は、くも膜下出血の可能性がある!?」 くも膜下出血は脳を覆う薄い組織との間の領域で起こる出血です。この領域はくも膜下腔と呼ばれます。くも膜下出血は緊急を要する病気であり、発症後の迅速な診察と治療が必要です。 突然の激しい頭痛で気づくことが多いですが、首の痛みを伴う頭痛など、くも膜下出血の危険なサインもあります。 そこで今回は、くも膜下出血の前兆や、頭痛が起こる場所のなかでも首の痛みを伴う場合の対処について説明しますので、ぜひご参考にされてください。 くも膜下出血の前兆は? くも膜下出血は、くも膜下腔(くも膜と脳を取り囲む軟膜との間の領域) への出血です。症状としては、急速に発症する重度の頭痛、嘔吐、意識レベルの低下、また発熱のあるときに発作が含まれる場合があります。 前兆から発症までどのような症状を伴うのか、詳しくみていきましょう。 前兆から発症まで くも膜下出血の典型的な症状は、頭を蹴られたような、今までに経験したことのないような激しい頭痛で、数秒から数分かけて発症します。この頭痛は、しばしば後頭部に向かって起こり、吐き気や嘔吐が伴う場合もあります。 首の凝りや首の痛みを伴う頭痛も比較的一般的であり、首の痛みやこりはくも膜下出血の前兆として現れます。 首の痛みを伴う頭痛がある時は、くも膜下出血を疑う 首のこりや首の痛みを伴う頭痛はくも膜下出血に比較的一般的な症状ではありますが、鑑別すべき病気もあります。 例えば、くも膜下出血で起こる頭痛や肩こりは髄膜炎の症状に似ており、区別する必要があります。また、約 3 分の 1 の人は特徴的な頭痛以外の症状がない場合もあります。 通常、髄膜炎にはある発熱や発疹はくも膜下出血には見られません。錯乱、意識レベル低下または昏睡などの重篤な症状も首のこわばりやその他の髄膜炎の兆候と同様に、存在する可能性があります。 髄膜炎との区別にはMRI検査が重要 症状だけでは区別が難しい場合もあり、その場合は、病院で詳しく調べる必要があります。 MRI検査では、脳内の出血を検出でき、血管に染料を注入して、動脈と静脈をより詳細に表示し (造影MRI検査)、血流を強調して調べることもできます。 CT検査でもわからない時にくも膜下出血の徴候を見つけることができます。 首の痛みを伴う頭痛がある時の対処法は? 首の痛みを伴う頭痛がある場合は、くも膜下出血の前兆である可能性が高いため、急に頭を動かしたり、以下のような行動は避けましょう。 ・くしゃみ ・強い咳 ・過度な運動 これらの行動はくも膜下出血を誘発する恐れがあります。 病院へ行くべき危険な兆候は? くも膜下出血の症状は状況によって緊急度は異なる場合もあります。 雷鳴のような頭痛がある他に、特に以下のような症状がある場合は大変危険です。すぐに最寄りの病院に行きましょう。 ・意識と注意力の低下 ・吐き気と嘔吐 ・混乱や過敏性 ・めまい ・明るい光で目が過敏になる ・首と肩の筋肉痛 ・体の一部のしびれ ・発作 ・複視、盲点、片目の一時的な視力低下など、視力の変化 頸部硬直は、くも膜下出血の最初の発症から 6 時間後に現れます。瞳孔の散大と対光反射の消失は、頭蓋内圧の上昇による脳ヘルニアを反映している可能性があります。 眼が下方および外側を向いており、同じ側のまぶたを持ち上げることができない場合は、動眼神経の異常があり、後交通動脈からの出血を示している可能性があります。発作がある場合、脳動静脈奇形などの病気が隠れている可能性もあります。 入院して安静にすることも大切 時には、入院して安静にして、リスクとなる血圧などの管理を徹底しましょう。自然に首の痛みを伴う頭痛は良くなるケースもありますが、血圧が高いとくも膜下出血のリスクとなり得るため、血圧管理を徹底します。 くも膜下出血のよくあるQ&A 最後に、首の痛みを伴う場合のくも膜下出血に関するよくある質問についてQ&Aでまとめました。 Q,くも膜下出血で首が痛くなるのはなぜ? A,頭の中に出血があることで、頭の中の圧力が上がり、これによって脳が圧迫されて痛みが出ます。 Q,首の痛みがある場合、どのように他の病気と区別しますか? A,他に原因がないのに、首の凝りと激しい頭痛を経験した場合、くも膜下出血の兆候である可能性があります。 CT検査は、脳の周りの血液とそれに続く可能性のある問題を検出できます。さらに、出血の原因を明らかにするために造影剤を用いてより詳しく検査できます。 さらに、MRI検査は、頭の内部の詳細な画像をとることができ、出血やその他の血管の問題を特定するのに役立ちます。 まとめ・激しい頭痛!くも膜下出血の前兆?首の後ろの痛みを伴う頭痛は危険! くも膜下出血は非常に危険であり、長期的な回復は発生する可能性のある合併症に依存します。 特に、突然の首の痛みを伴う頭痛はくも膜下出血を発症する前兆とも捉えられます。 単なる肩こりや首の痛みなら自然に治るケースもありますが、治らない場合はくも膜下出血の可能性もあります。 また、他の病気と間違えないように適切な検査が必要です。 今回の記事を参考にして、改めて前兆や対策に関して学んでおきましょう。ご参考になれば幸いです。 No.097 監修:医師 坂本貞範
2022.11.21 -
- 脳卒中
くも膜下出血の予後、気になる生存率 について くも膜下出血 は、脳の周囲の空間への出血によって引き起こされる生命を脅かす病気です。 そこで、今回はくも膜下出血の予後や生存率について詳しく解説していきます。 くも膜下出血は予後の悪い病気?症状について くも膜下出血は、破裂した動脈瘤、AVM(脳動静脈奇形)、または頭部外傷によって引き起こされる怖い病気です。 ここ数十年間にわたって、くも膜下出血の予後は改善傾向にありますが、依然として高い死亡率のある病気とされています。 くも膜下出血の原因や症状は? くも膜下腔は、脳と頭蓋骨の間の領域であり、脳脊髄液で満たされ、脳を保護する浮遊クッションとして機能しています。 脳動脈瘤の破裂などにより、動脈壁が破裂し、脳のくも膜下腔に血液が放出されると、脳の内層を刺激し、脳への圧力を高め、脳細胞を損傷させてしまいます。 ・激しい頭痛の突然の発症 ・吐き気と嘔吐 ・斜頸 ・光に対する過敏症(羞明) ・かすみ目または複視 ・意識の喪失 ・発作 交通事故などによって、脳が頭蓋骨内で前後に衝突し、血管が引き裂かれることでも、くも膜下出血は起こります。 くも膜下出血の生存率や平均余命について くも膜下出血の5年生存率は55%前後とされており、生存率は年々改善しています。 くも膜下出血発症後の生存率は、その重症度と診断および治療の速さによって異なります。 一般に、未治療のくも膜下出血の 1 年死亡率は最大 65%もあり、これは、治療を受けていない くも膜下出血患者の最大 65%が発症から 1 年以内に死亡したことを意味します。 ただし、適切な診断と治療を受ければ、1 年死亡率は約 18%まで下がります。 くも膜下出血の予後や見通しについて くも膜下出血の予後は非常に変わりやすく、初期のくも膜下出血の症状の重症度やおよびその他の合併症や損傷の有無に大きく依存します。 具体的な予後に関してですが、病院にたどり着いた人の中で以下のようなデータもあります。 ・3の1は病院で死亡する ・3 分の1は障害を待って生活する ・3 分の1が通常の機能に戻る このように、元の日常生活に戻るのはわずか30%程度となっています。 くも膜下出血の予後を左右する要因はある? くも膜下出血の予後は、次のようなさまざまな要因に左右されます。 ・年齢 ・出血の場所と量 ・発症から治療までの時間 ・合併症 高齢で症状が重くなると、予後が悪化する可能性があります。 また、くも膜下出血が起こった部位や障害の程度によって、ある程度予後に影響を受けると考えられています。重度の外傷性くも膜下出血の人は、2倍の死亡リスクがあります。 くも膜下出血の予後を左右する可能性のある合併症は以下のとおりです。 ・発作 ・血管痙攣(脳の血管が狭くなり、血流が遮断される場合) ・最初の治療後に再び出血する ・水頭症(脳内の液体の蓄積) ・頭蓋内圧の上昇 ・脳ヘルニア ・脳梗塞(虚血性脳梗塞) 引き起こされる合併症により、予後を左右することもあります。 くも膜下出血の予後を改善するには? 患者が退院した後、重度のくも膜下出血発症後の個別化されたリハビリテーション療法を提供する施設で治療が継続される場合があります。 リハビリテーションを専門とする医師が、理学療法、作業療法、言語療法を含むリハビリ計画を立てます。 くも膜下出血後の患者が直面する一般的な問題には、身体的制限、思考や記憶の困難などがあります。 これは治療により時間の経過とともに消える可能性があり、 回復プロセスは長く、障害のレベルを理解し患者が機能を回復するには、数週間~数か月、または数年かかる場合があります。 くも膜下出血の再出血を予防する方法はある? くも膜下出血の大部分は、頭部外傷、または破裂した脳動脈瘤によるものです。 したがって、くも膜下出血の発生や再発を予防する最善の方法は、これら 2 つの状況のリスク要因を管理することです。 まず、頭部外傷を防ぐために、自転車やバイクに乗るとき、またはリスクの高いスポーツをするときは、常に安全を心がけてください。 転倒しやすい場合は、理学療法士または作業療法士と協力して、転倒を防ぐために自宅環境も整えましょう。 また、脳動脈瘤を発症するリスクを下げたり、既存の動脈瘤が破裂するのを防いだりするために、以下のような予防策があります。 ・高血圧を管理する ・喫煙をやめる ・過度に重いものを持ち上げない(激しい運動やいきみは、動脈瘤の破裂を引き起こす可能性があります。) ・定期的に適度に運動する ・バランスの取れた食事を食べる 日頃から脳動脈瘤の発症リスクを下げたり予防をするなどして、リスク要因を管理することがとても大切です。 まとめ・くも膜下出血の予後、気になる生存率 について いかがでしたでしょうか? くも膜下出血は、依然として予後の悪い病気であり、早期の診断と治療次第では、重度の後遺症を残してしまいます。 早期の適切な治療を受けて、リハビリを行えば予後を改善できることがわかっているため、今回の記事を参考にして、改めて予後や改善策に関して学んでおきましょう。ご参考になれば幸いです。 No.S096 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.18 -
- 脳梗塞
脳梗塞患者への、大切な看護のポイントとは? 「脳梗塞患者の家族はどうやって看護したらいいのかな?」 「脳梗塞の看護のポイントについて知りたい」 家族や親戚が脳梗塞になってしまった場合は、どのように看護すればいいのか不安な方は多くいるのではないでしょうか。脳梗塞は早期に治療を受けても、後遺症が残る場合があり、治療だけでなく入院中からの看護計画や介入が大切です。 そこで、今回は脳梗塞の症状や看護のポイントについて説明しますので、ぜひ参考にされてください。 脳梗塞とは?症状や治療について 脳梗塞は、脳に栄養を供給する1 つ、または複数の血管における脳循環が障害されることで、脳の機能にさまざまな異常をもたらします。 脳には機能別にいくつかの部位が分けられていますが、傷害される部位によって、以下のような症状が現れます。 前頭葉障害 人格や性格変化 頭頂葉障害 体が動かなくなる 後頭葉障害 視野の半分が目が見えなくなる(同名半盲) 側頭葉障害 学習、記憶障害 そのほかにも以下のような症状が現れます。 そのほかの症状 ・めまいまたは突然の激しい頭痛 ・視覚障害(バランスの喪失、片麻痺) ・構音障害(話すのが難しい) ・感覚の障害 ・うつ病、その他の心理的問題 脳梗塞後、血液の循環が正常に戻るのが早ければ早いほど、完全に回復する可能性が高くなります。 しかし、脳梗塞を生き延びた人の約半数は、永久に障害が残り、数週間、数か月、または数年以内に再発します。 したがって脳梗塞は治療する上で看護やリハビリもまた重要なのです。 脳梗塞の看護のポイントについて それでは、脳梗塞患者の看護のポイントについて説明したいと思います。 脳梗塞患者は、多くの場合入院による治療が必要であり、ICUなどの集中治療室で看護師によるケアが必要になります。これは、脳梗塞の症状が急速に変化する可能性があり、悪化を防ぐために迅速な介入が必要になるためです。 さらに、脳梗塞の治療は長期化するケースも多いため、看護師は、身体的および心理社会的にも患者のケアを行います。 それでは具体的に看護のポイントを3つの段階に分けて説明していきます。 ①急性期の看護のポイント 脳梗塞を発症した急性期は全身状態が特に悪く、急変するリスクが高いため、それに応じた看護計画が大切です。 急性期には、脳梗塞が拡大したり、再出血が起こったりと悪化する可能性が高いです。 発症後数時間以内は、脳の機能が4.5時間以内に血栓溶解療法と呼ばれる治療が可能ですが、これらの急性期の治療による脳浮腫などの合併症を予防することも大切になります。 主に急性期にチェックするポイントは以下です。 ・意識レベル(応答性、話す能力、見当識の変化など) ・呼吸と循環の管理 ・血圧管理 ・体温管理 ・排尿管理 ・皮膚の状態 ・出血管理 特にt-PAによる血栓療法による脳浮腫や脳の血管の圧力の増加によって、意識障害をきたしやすいため、意識レベルおよび呼吸、循環動態のチェックが大切です。 意識レベルはJCS、GCSを用い、開眼の有無、言語機能、運動機能などを確認し、そのほかにも血圧の管理や脱水状態の有無を確認します。 ②回復期のポイント 急性期の後の回復期には、主に引き続き全身管理を行いながら、日常生活動作を取り戻すための看護を行っていきます。 患者の日常活動における機能障害に関する看護評価を行います。 ・感覚と知覚(痛みと温度の認識が低下しているため) ・栄養機能 : 嚥下、栄養と水分補給の状態 ・皮膚の状態、褥瘡対策 ・排尿機能 ・運動機能(上肢および下肢の動き) ・精神状態 (記憶、注意力、知覚、感情、発話/言語など) 1.栄養機能管理 栄養補助に関しては、咳や、口の片側に食物が溜まってないか、または液体を飲み込むときの逆流がないか観察します。 また、言語聴覚士に相談して、飲み込む機能の評価をしてもらった上で、患者に少量の小さな食物や水分を摂取するように促しましょう。必要に応じて、チューブを介した腸栄養の準備をします。 2.排尿管理 腸の筋肉の制御が失われている間は、排尿管理自分で行えないため、無菌のカテーテル挿入を行います。 また、十分な水分摂取量(1日2〜3L)を与えて、規則正しい時間(朝食後)にトイレをするようにしましょう。 3.皮膚の状態と褥瘡管理 皮膚悪い兆候を頻繁に評価します。 皮膚を清潔で乾燥した状態に保ち、健康で乾燥した皮膚をやさしくマッサージし、十分な栄養を維持します。 また、褥瘡を防ぐために、1日に数回2時間ごとに位置を変更します。 4.運動機能の改善 意識が回復したら積極的なリハビリテーションプログラムを開始することになります。 リハビリでは、関節の可動性を維持し、運動機能を回復し、麻痺した四肢の拘縮を予防し、神経筋系のさらなる悪化を防ぎます。 看護の面では、リハビリ中の患者のサポートを行いましょう。長時間のリハビリではなく、複数回の短時間のリハビリを計画します。 また、運動中の肺塞栓や過剰な心臓負荷の徴候 (息切れ、胸の痛み、チアノーゼ、脈拍数の増加など) を観察します。 ③慢性期の看護のポイント 慢性期はいよいよ退院に向けての準備を行います。全身管理に加え、主に以下の点を重視して取り組みましょう。 ・退院後の日常生活の支援 ・心理的なケア 慢性期では、患者の健康の維持だけでなく、患者家族が対処するための問題や課題を主に支えます。患者、および家族を巻き込んで、自宅で患者が達成可能な目標を計画します。 心理的な問題は通常、時間の経過とともに改善することを家族に説明し、不安を和らげるために感情的なサポートと理解を提供しましょう。 脳梗塞の看護のよくある質問 脳梗塞の看護に関するよくある質問についてQ&Aでまとめました。 脳梗塞の看護を行う上での疑問をまとめましたので参考にされてください。 Q.脳梗塞のあとなぜ血圧が上がるのですか? A,脳梗塞では、脳の血流が低下し、脳が浮腫んでしまいます。このむくんだ状態によって、脳の血管が圧迫されると結果的に血圧が高くなってしまいます。 Q.脳梗塞の時はベッド上での安静が必要? A,脳梗塞直後は、ベッド上での安静が基本です。これは頭を上げたり、立ち上がると血圧が下がり全身状態が悪くなるため、基本的には安静にします。 Q. どのくらいで退院できますか? A,患者によって異なりますが、平均的にみて、2-3ヶ月以内に退院するケースが多くなっています。 脳梗塞患者の大切な看護のポイントとは?/まとめ 脳梗塞は適切な治療とリハビリを行えば、治る病気ですが、後遺症が残ることがあり、退院後の日常生活でも継続的なケアが必要になることがあります。 そこで、重要なのが入院中からの適切な看護ケアです。脳梗塞の看護のポイントは、急性期〜慢性期にかけて異なるため、段階に応じた患者対応が必要になります。 脳梗塞から早く仕事復帰するためには、入院期間中の早い段階からのリハビリと共に看護ケアを適切に行うことが不可欠です。 以上、ご参考になれば幸いです。 ▼脳梗塞の治療に関しては、こちらをご参照ください。 https://fuelcells.org/topics/19933/ No.S098 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.16 -
- 腰部脊柱管狭窄症
- ひざ
『膝から下が痛い・重い・だるい』こんな症状から考えられる病気とその治療法 身体で言葉には言い表せないような痛みや、違和感を覚えると、とても不安な気持ちになりますよね。 今回は、そんな痛みの中でも「膝から下が痛い」や「膝から下がだるい」という症状から、考えられる原因を述べていきます。 「膝から下が痛い」という症状に不安 「タンスに足の小指をぶつけた」 「頑張って運動やりすぎた」 「少し足を挫いてしまった」 このように痛みが出る原因がハッキリしている場合は、なんとなくこれかな?というのが浮かぶので、割と落ち着いて対処できるのではないでしょうか? しかし、ある日突然、 「何もしていないのに足が痛い!」 「膝から下が重だるい」 「ふくらはぎがジンジンする」 などと、前触れもなく、これまで感じたことのないような痛みや違和感が襲ってくると、怖くなりますよね。 自分が経験したことのない感覚が襲ってくると人間誰しも不安に駆られます。 そこで今回は、急にくる「膝から下が痛い・重い・だるい」を医学的に紐解いていくようなお話をします。 これを読めばあなたの不安も少しは軽くなり、落ち着いて行動できるでしょう。 「膝から下が痛い」原因として考えられる疾患 以下に「膝から下が痛い」と感じた時に、考えられる疾患を挙げます。 ①下肢静脈瘤 ②閉塞性動脈硬化症 ③深部静脈血栓症 ④脊柱管狭窄症 なかなか難しい字が並んでいますよね。仰々しく、かえって不安になる方もいらっしゃるかもしれません。 そこで、これらの疾患について、できるだけ簡単に説明していきます。 ①下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう) 下肢静脈瘤とは、足の血管(静脈)に異常が起こる病気です。 血管がコブ(瘤)のように膨れ上がり、体表からはぼこぼこしたように見えます。 静脈の中には、血液の逆流を防ぐための弁がついており、ふくらはぎの筋肉などの力で下から上に血液を戻してくれます。 しかし、その弁が壊れて正常に働かない場合は、血液が滞ってしまい、下の方に溜まってしまうのです。その血液が溜まった状態を下肢静脈瘤と言います。 出典:日本血管外科学会 https://www.jsvs.org/common/kasi/index.html 下肢静脈瘤の症状 ・ふくらはぎのだるさ、重さ ・湿疹や皮膚の変症、皮膚炎 ・足がむくむ ・足がつる(こむら返り) ・血管が目立つ(ボコボコなる) 下肢静脈瘤の原因 ・加齢による筋肉や血管機能の低下 ・立ち仕事 ・妊娠や出産 ・遺伝的な要素 ・激しいスポーツ 以上のように下肢静脈瘤の症状や原因はさまざまあります。 見た目的にも分かりやすいため、自分で気づきやすい病気です。 また、加齢による血管のしなやかさがなくなったり、立ちっぱなしの仕事を続けたりなど、誰にでも起こりうる病気ですので、まずは医療機関に相談しましょう。 ②閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう) 閉塞性動脈硬化症とは、足の血管の動脈硬化が進んでしまい、血液が流れづらくなったり、つまったりする病気です。 足の血流が悪くなるので、歩くときに足の痛みや痺れ、冷たさを感じることがあります。 進行すると、安静にしていても同様の症状が出てきますので、注意が必要です。 動脈硬化が進んだ血管(上)と正常な血管(下) 閉塞性動脈硬化症の症状 ・足の痺れや冷感(しびれ・冷える) ・歩行の時の足の痛み ・間欠性跛行(しばらく歩行していると、足の痛みが強くなり歩行困難となる症状) ・安静時の足の痛み ・足の潰瘍・壊死 閉塞性動脈硬化症の原因 ・肥満 ・高血圧 ・喫煙 ・糖尿病 以上のように、主な原因は生活習慣の乱れによるものが大きいようです。 動脈硬化は全身に起こりやすいものなので、足だけでなく手にも同様の症状が出てくる可能性もあります。 安静時の足の痛みや足の潰瘍、壊死はだいぶ進行している状態です。治療には早めの対処が必要となりますので、足の痺れや痛み、冷たい感覚などが出てきたら早めに相談しましょう。 ③深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう) 深部静脈血栓症とは、足の奥深くに通る静脈血管のなかに、血の塊(血栓)ができてしまう病気です。 この血栓が心臓や肺に流され詰まってしまうと、心筋梗塞や肺塞栓症などの命に関わる重大な疾患を引き起こす危険性があります。 特に足の整形外科の手術後や長時間のフライトなどで多くみられ、別名「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。 出典:日本血管外科学会 https://www.jsvs.org/common/sinbu/index.html 深部静脈血栓症の症状 ・片足が大きく腫れ上がる ・赤黒く変色する ・ジンジンとした痛みが伴う ・肺塞栓症へ移行した場合、呼吸が荒くなり、胸が痛くなる 深部静脈血栓症の原因 ・手術や怪我による静脈血管の損傷 ・長期の臥床(寝たきり)など、足を動かしていない期間が長い ・喫煙 ・脱水 ・その他血流の低下が起こりうる場合 以上のように、手術やケガによる不動の期間が長くなってしまった場合によく起こります。 放置しておくと、重篤な肺塞栓症へと進行してしまう可能性もあるため、おかしいと思ったらただちに専門の医療機関へ行きましょう。 ④脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう) 脊柱管狭窄症とは、脊髄や抹消神経が通るトンネル(脊柱管)が何らかの影響を受けて狭くなってしまい、発症する疾患です。 中高年で腰痛を伴う代表的なもので、長時間歩くことができなくなる間欠性跛行がみられます。 出典:日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の症状 ・お尻から足にかけて痛みや痺れがある ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い ・足に力が入りにくい ・体を反らす動きがしづらい ・体を前屈みにすることで症状が楽になる ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある 脊柱管狭窄症の原因 ・加齢による背骨の変形や、周辺の軟部組織の変性 ・先天的なもの ・猫背などの偏った姿勢 ・反り腰 ・仕事などで腰に負担のかかる動作の繰り返し 脊柱管狭窄症で悩む中高年の患者さんは数多くいます。それゆえ、見過ごされやすいのも事実です。 しかし、ひどいものでは足に力が入らない、排尿障害がでるなど、日常生活に大きく影響してくる場合もあります。 気になる症状が出たら、できるだけ早く専門医に受診しましょう。 「膝から下が痛い」と感じた人は何科を受診すべきか 「膝から下が痛い」と感じた時に、考えうる疾患について説明しました。 一見、全く違う病気のようにみえますが、似ている症状も数多くあります。そのため、疾患の見分け方は専門医でなければ難しいことが多々あります。 「じゃあ、何科を受診すればいいの?」と不安になる方もいらっしゃると思います。 そこで、下記に疾患ごとのおすすめ受診科目を挙げています。 早めの対処が必要な疾患もありますので、気になる症状がみられましたら、下記を参考に専門医へご相談ください。 ①下肢静脈瘤・・・ 血管外科、心臓血管外科、皮膚科、形成外科、循環器内科 ②閉塞性動脈硬化症・・・ 血管外科、循環器内科 ③深部静脈血栓症・・・ 血管外科、循環器内科、整形外科 ④脊柱管狭窄症・・・ 整形外科 上記で多く紹介した「血管外科」は、実のところ現時点において日本にあまり多く展開しておりません。 そのため、近くに無い場合は、「循環器内科」や「皮膚科」、「整形外科」などの他の診療科も視野に入れて、何より早めに相談されることをおすすめします。 まとめ・『膝から下が痛い・重い・だるい』こんな症状から考えられる病気と治療法 今回は「膝から下が痛い・重い・だるい」という症状で、考えられる疾患についてお話しました。 本記事で挙げた疾患の中には命に関わる重大な疾患も含まれている為、気になる症状がありましたらできるだけ早めに専門医へ相談してください。 難しい言葉が並び、読むのも嫌になるかもしれませんが、これらの疾患は誰にでも起こりうるものです。深部静脈血栓症から肺塞栓症へ移行してしまうと、一刻も争う状態になります。 「あの時、もっと早く相談しておけば良かった・・・」 そんな声が1人でも少なくなるよう、本記事を読んでいただけると幸いです。 No.S094 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.14 -
- 変形性膝関節症
- ひざ
膝の上、ふとももの筋肉が痛む場合の対策と考えられる病気 「膝の筋肉が痛む・・・いったい何が原因なの?」 「膝上が痛くてつらい・・・なぜ?」 このように「膝の上の部分が筋肉痛のように痛む」こんな症状で悩まれている方はいませんか。今回は、膝の上に痛みが出る場合の原因や対処法について解説します。 膝の上、ふとももの筋肉、その周辺が痛む場合、考えられる原因は? 膝の上の筋肉に痛みがある場合は、「筋肉そのものに問題」がある場合と、膝の上の「別の組織に原因がある」場合が考えられます。それぞれの原因を詳しく紹介してまいりましょう。 膝の上の筋肉に問題がある場合 膝の上にあたる太ももには、さまざまな筋肉が存在します。 主なものとしては、太ももの前にある大腿四頭筋(だいだいしとうきん)や、太ももの裏にあるハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様、半膜様筋といった3つの筋肉の総称)といった筋肉が膝の曲げ伸ばしで働きます。 これらの筋肉が使いすぎで筋肉痛が発生したり、さらに筋肉が損傷して肉離れになったりすると筋肉が痛みを生じます。また、筋力低下により筋肉が疲労しやすかったり、力が入りすぎてしまったりして筋肉に痛み出てしまうこともあります。 筋肉の痛む原因 ・筋肉の使いすぎ ・筋肉の損傷 ・筋力の低下 ・筋肉の疲労 膝の上にある「ふとももの筋肉」痛む場合に考えられる病気 膝上周辺には膝のお皿である膝蓋骨(しつがいこつ)があり、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)と、すねの骨である脛骨(けいこつ)で関節を作っています。 さらにその周りには、骨や周りの組織の衝突を避けて膝の曲げ伸ばしをスムーズにする、膝蓋前滑液包や膝蓋上のうなどの組織があります。 そのため、膝の上の方に痛みが見られる場合は、これらの関節や組織に何らかの問題が発生している可能性が考えられます。 具体的には次のような病気が潜んでいる可能性があります。 ・膝蓋上のう炎 ・膝蓋前滑液包炎 ・膝蓋大腿関節症 ・変形性膝関節症 以上のように膝の上が痛む場合、筋肉以外にもさまざまな組織の炎症や変形が痛みの原因となっている可能性があるのです。そのため、痛みがある場合は無理せず早めに病院を受診して各種検査をすることが重要になります。 膝の上、ふとももの筋肉、その周辺が痛む場合の対策は? 痛みの原因に応じて対策をすることが大切です。 筋肉の痛みだと自己判断して、むやみにほぐすようなことをしては逆効果になって痛みを悪化させる可能性もあります。以下に原因別に考えられる対策を紹介します。 ・筋肉が原因の場合の対策 筋肉痛や筋肉の損傷が起こっている場合は、無理にほぐしたりストレッチをしたりするとかえって痛みを悪化させる可能性があります。そのため痛みがある場合は病院で正しい診断を受けましょう。 痛みが治まったり、病院での治療が終了したら、損傷したり、動かさなかったりした影響で筋肉が硬くなります。そのまま放置すると怪我の再発の原因となるので、筋肉をしっかりほぐすことが必要になります。 また、筋力低下が痛みの原因となる場合もあるので、膝周辺の筋力を日頃から鍛えておくことが大切です。ストレッチやトレーニングの具体的な方法は後ほど解説します。 ・筋肉以外が原因の場合の対策 組織の炎症による痛みが起こっている場合は、無理な運動は避けて炎症がおさまるまで安静にする必要があります。また、内服薬や注射により炎症の軽減をはかることで痛みを改善させます。 滑液包には炎症により組織から漏れでた水がたまりやすく、注射を使用して水を抜くことで痛みや動きの改善を図ります。関節の変形がある場合は、膝の負担を軽減するために日常生活で次のような工夫が必要です。 ・正座をしない ・階段を避ける ・体重を増やさない、減量する 痛みが軽減すればストレッチや筋力トレーニングなどで再発を防いだり、膝にかかる負担を軽くしたりします。 膝周辺の筋肉、ストレッチとトレーニング方法 太ももにある筋肉である大腿四頭筋とハムストリングスのストレッチを紹介します。 また、膝の変形に重要な大腿四頭筋のトレーニング方法も解説します。 大腿四頭筋のストレッチ 1,バランスを崩さないように壁など支えにして立ちます。 2,片方の足の膝を曲げて足首を持って後ろに引きます。 3,太ももの前が伸びるのを感じながら15秒〜30秒キープします。 ハムストリングのストレッチ 1,両膝を伸ばして座ります。 2,つま先を触るように体を倒します。 3,太ももの裏が伸びるのを感じながら15秒〜30秒キープします。 大腿四頭筋のトレーニング 1,仰向けになって両膝を曲げます。 2,片足の膝をまっすぐ伸ばした状態で床から10cmほど離すように足を上げます。 3,そのまま10秒キープした後ゆっくり下ろします。 4,10回繰り返します。(余裕があれば回数を少しずつ増やしましょう) 以上のような運動は、数日ではなかなか効果が現れません。痛みがない状態で毎日習慣にすることで、筋肉の柔軟性や筋力が改善します。焦らず少しづつでいいので、毎日続けるようにしましょう。 膝の上、ふとももに痛みがある場合は筋肉痛と決めつけず医療機関を受診しよう 膝上の痛みがある場合は筋肉とは別の原因が潜んでいることもあります。そのため、自己判断でほぐすことは症状悪化のリスクがあります。 早めに医療機関、病院やクリニックを受診することで、正しい診断を受ければ、症状にあった治療を受けることができますので、我慢しないようにしましょう。 また、日頃から膝周辺の筋肉をほぐしたり、鍛えたりすることは怪我の予防につながります。 痛みがない場合は、紹介した方法を参考にして、運動を習慣にしましょう。以上、ご参考になれば幸いです。 No.S093 監修:医師 加藤 秀一
2022.11.12 -
- 脳卒中
くも膜下出血とは?その症状と後遺症を医師が徹底解説! くも膜下出血は、突然の激しい頭痛が特徴的であり、今まで感じた中で最悪の頭痛だと言う人もいます。 そして、後遺症がどのくらいで治るのか気になる方もいるかと思います。 そこで今回は、くも膜下出血の症状、後遺症について説明しますので、ぜひ参考にされてください。 くも膜下出血とは? くも膜下出血とは、脳の血管 (脳動脈瘤) の破裂によって引き起こされる非常に深刻な状態であり、脳と周囲の膜との間の空間(くも膜下腔)に出血があり、致命的になる可能性があります。 脳動脈瘤が破裂すると、脳への血液供給が低下することで、脳の正常な機能が損なわれてしまいます。 脳動脈瘤が発生する理由は正確にはわかっていませんが、次のような特定の危険因子が関与していることがわかっています。 ・喫煙 ・高血圧 ・過度のアルコール摂取 ・頭部外傷 喫煙や高血圧は動脈硬化のリスクを高め、脳の動脈瘤や破裂を引き起こします。 また、重度の頭部外傷はくも膜下出血を引き起こす可能性がありますが、これは外傷性くも膜下出血として知られる病気です。 くも膜下出血は前兆なく突然起こる病気ですが、血圧の急激な変動や頭痛や吐き気、意識レベルの低下など特徴的な前兆があることがわかっています。 また、咳や、重いものを持ち上げる、性行為などの肉体的な激しい行動や緊張をきっかけにくも膜下出血が発生することがあります。 くも膜下出血の症状 くも膜下出血の主な症状は次のとおりです。 ・今まで経験したことのない突然の激しい頭痛 ・極度の疲労感や気分不良 ・睡眠の問題 ・感覚や運動障害 ・光に対する過敏症(羞明) ・かすみ目、または複視 ・脳梗塞のような症状(ろれつが回らない、体の片側の麻痺など) ・意識消失、または痙攣 くも膜下出血の後に頭痛が起こることがよくありますが、時間の経過とともに緩和する傾向があります。 また、最初の数か月間は、極度の疲労を感じるのが普通であり、買い物に行くなどの簡単な作業でも、疲れを感じることがあります。また、不眠症や睡眠不足を訴える場合もあります。 さらに、手足の動きが悪くなったり、感覚がなくなったり、視覚や嗅覚、味覚に変化が現れる方もいます。 しかし、これらの変化は通常一時的なものであり、脳の腫れが引くにつれて通常、数か月かけて徐々に改善するため、治ったと勘違いしてしまう危険性があります。 くも膜下出血の治療や合併症は? くも膜下出血が疑われる人は、病院でCT検査を行い、脳の周囲に出血の兆候がないか確認して治療を行います。 通常、短期的な合併症を防ぐために薬が投与され、出血源を修復する治療が行われることがあります。 また、くも膜下出血は、治療を行う際に以下のような短期的および長期的な合併症を引き起こす可能性があります。 ・水頭症 ・出血 深刻な併症には、動脈瘤の再出血や、脳への血液供給の減少によって引き起こされる脳の損傷によるさまざまな機能低下があるため、合併症を起こさない治療が大切です。 くも膜下出血の後遺症にはどんなものがある? くも膜下出血は、適切な治療を早期に受けても後遺症が残る場合があります。 一般的に多くみられる後遺症 くも膜下出血は治療後の回復も、時間がかかるものであり、次のような後遺症が発生するのが一般的です。 1.運動麻痺 右か左の手足が動かしづらくなる 2.感覚障害 痺れや脱力感 3.嚥下障害 物が飲み込みづらい 4.視野障害 半分の空間がうまく認識できない 5.高次脳機能障害 言葉がうまく話せない、理解がうまくできないなどの失語症、注意・集中ができない、 6.認知や行動の障害 物事をうまく実行できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう などが挙げられます。 その他にみられる後遺症 そのほかにも次のような後遺症が現れることもあります。 ・歩行不安定、尿便失禁 ・てんかん繰り返す発作 ・記憶などの認知機能障害 ・うつ病などの気分の変化 特に、認知機能障害はくも膜下出血の一般的な後遺症であり、ほとんどの人がある程度影響を受けます。 記憶の問題に関しては、発症前の記憶は通常影響を受けませんが、新しい情報や事実を思い出すのが難しくなります。 気分や思考にみられる後遺症 また、以下のような気分や思考の問題も現れます。 1.うつ病 気分が落ち込み、希望がなく、人生を楽しむことができない 2.不安障害 何か恐ろしいことが起こるのではないかという絶え間ない不安と恐怖感 3,心的外傷後ストレス障害 (PTSD) 人は悪夢やフラッシュバックを通じて以前の外傷的出来事を追体験することが多く、孤立感、過敏性、罪悪感を経験することがある。 このような後遺症は、長期化するケースも稀ではなく、治療後のリハビリなどが重要になります。 くも膜下出血の後遺症を残さないための予防やリハビリについて くも膜下出血から回復するのにかかる時間は、その重症度によって異なります。 特に出血の部位は、手足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症にも関連します。 治療後のリハビリ計画 そこで、治療後は急性期〜回復期にかけて理学療法士の下で実施されるリハビリ計画は、影響を受けた手足の感覚と動きを回復するのに役立ちます。 ・リハビリ専門医 脳損傷による機能回復を専門とする医師 ・理学療法士 エクササイズやマッサージなどの特定の技術の専門家 ・言語療法士 コミュニケーションの問題を認識し、治療を支援する専門家 ・作業療法士 着替えなどの日常生活で発生する可能性のある問題を特定する専門家 上記のようなさまざまな職種が関わっています。 くも膜下出血再発リスクを減らす予防法 また、治療後にくも膜下出血の再発リスクを減らすためにできることがいくつかあります。 ・禁煙や飲酒制限 ・定期的な運動 ・健康的な食事(減量など) まずは、喫煙や過度の飲酒などの生活習慣を改めましょう。 毎日同じ時間に起きて寝るという日課を設定して、定期的な運動も行いましょう。また、リラクゼーションの時間も取っておく必要があります。 くも膜下出血によくあるQ&A 最後にくも膜下出血に関するよくある質問についてまとめました。 後遺症がどのくらいで治るのか、仕事復帰の目安などについて解説します。 Q.くも膜下出血に特徴的な前兆はありますか? A.くも膜下出血に特徴的な前兆としては、血圧の乱高下があります。激しく上昇、下降する場合は可能性が高いです。 また脳梗塞などと同じように頭痛や吐き気などの前兆が現れることもあります。 Q.後遺症を残さずに仕事復帰はできますか? A.くも膜下出血で後遺症なく仕事復帰できるのは、3~4割程度といわれています。完全に後遺症を残さないためにはリハビリが大切になります。 まとめ・くも膜下出血とは?その症状と後遺症について!医師が徹底解説! いかがでしたでしょうか? くも膜下出血は、突然起こると思われがちですが、血圧の変動や頭痛など特徴的な前兆があるため、少しでも不調があれば病院を受診することが大切です。 後遺症を残さないためには、早期治療、リハビリが大切になります。今回の記事を参考にして、改めて症状や後遺症に関して学んでおきましょう。 No.094 監修:医師 坂本貞範
2022.11.10 -
- 脳梗塞
脳梗塞になりやすい人とは?発症や再発予防で注意しておくべきこと 脳梗塞とは、脳の血管が血栓などで詰まり血流が悪くなることで、脳血管が細くなって脳細胞に障害が起こって様々な症状を呈する病気です。 高齢者が寝たきりになる原因の多くを占める脳梗塞は、初期段階での早期治療を行うと共に発症予防することが非常に重要なポイントであると言われています。 今回は、脳梗塞になりやすい人はどんな人なのか、脳梗塞を発症予防、あるいは再発予防するための方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 脳梗塞になりやすい人とは 脳梗塞は、いわゆる危険因子を持った方に起こりやすく発症しやすい方は存在します。その危険因子にはいくつかの要素があり、脳梗塞の主な危険因子は3つあり、「高血圧」「糖尿病」「心房細動」があげられます。 1,高血圧 脳梗塞は脳の血管が詰まることが原因で起こり、その原因疾患でもっとも多いのは高血圧であると考えられています。 一般的には、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば、「高血圧症」と診断されることからも、最高収縮期血圧が140mmHg以上を上回ったら脳梗塞の発症リスクが高くなります。 2,糖尿病 また近年では、糖尿病の増加に伴って、「アテローム血栓性脳梗塞」の発症数が増えてきており、血糖値が高い状態が続くと血液中に多量に存在するブドウ糖が血管の壁を傷つけることで、動脈硬化が悪化することとなり、脳梗塞などの病気の発症リスクが高くなります。 3,心房細動 さらに、心臓の中にできた血液の塊が時に遊離して、不幸にも脳の動脈の方に流れていってしまうことで脳の血管が詰まってしまう状態、つまり閉塞してしまうことが原因で起こる脳梗塞のことを、「心原性脳塞栓症」と呼んでいます。 心房細動と呼ばれる不整脈を有する場合には、心房内に血栓を形成し、その心房内の血栓は血流に乗って全身へ飛ばされる恐れがあるため、脳梗塞の発症リスクも上昇します。 脳梗塞の発症予防方法は? 脳梗塞を発症させる危険因子の有無をチェックして、ひとつでも危険因子が見つかった人は、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」などで脳梗塞の発症予防に努める必要があります。 高血圧の制御で、脳血管障害の発症を予防 高血圧症は日本において約4000万人以上にも及ぶ国民が罹患しているといわれており、高血圧を制御することによって脳血管障害の発症を抑制することが大いに期待されています。 普段から高血圧を指摘されている方では「塩分を控える」「適正体重となるように日々の食生活で腹八分目にする」「なるべく歩くようにする」などの工夫が必要であるとともに、血圧降下作用のあるカリウムやカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取することが重要となります。 ・塩分を控える ・適正体重となるように日々の食生活で腹八分目にする ・なるべく歩くようにする ・カリウムやカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取する また、普段から規則正しい食生活、運動をするようにして、ストレスや喫煙習慣など生活スタイルに注意して、糖尿病にならないように心掛けましょう。 脳梗塞を引き起こしやすいと考えられている危険な不整脈として認識される心房細動があると、毎年約5%の方に脳梗塞が発症すると指摘されているので、日常生活で動悸を自覚するなどの症状が出現した際には、心臓専門の医療機関で詳しく調べてもらいましょう。 脳梗塞の再発予防とは? 最近、脳ドックを受診する方が増えて「無症候性脳梗塞」が見つかる頻度が増えてきており、この隠れ脳梗塞が発見されたのち数年以内に3割の人が再び脳梗塞の発作を起こすと言われていますので、脳梗塞に一度かかったら再発する危険性があると考えておくべきでしょう。 脳梗塞を発症した方においては、再発を予防するための薬剤を飲む必要があって、通常では「ラクナ梗塞」や、「アテローム血栓症」に対しては動脈のように血流がとても速い血管のなかで血栓がつくられるのを防ぐため、「抗血小板薬」が有用となります。 ご注意頂きたいのは、症状が悪化していない、調子が良いからと勝手に自己判断で薬剤服用をやめてしまう方がおられますが、基本的には脳梗塞を再発するための予防薬は継続する必要があります。 また、心臓が原因で起こる脳塞栓の場合には、心臓の中に出来る血液の塊そのものが血管の中に出来る血栓とは性質が異なっているために、その再発予防には通常では「ワーファリン」という薬を使用します。 この薬を飲んでいる方は、定期的に血液検査でプロトロンビン時間(PT-INR)を測定して、薬効を評価しておく必要がありますし、ワーファリンを服用している際には、薬の効果に影響を与えますので、納豆や青汁などを食べてはいけません。 ・脳ドックで「無症候性脳梗塞」が見つかると3年以内に脳梗塞を発症しやすい ・脳梗塞の再発予防に「抗血小板薬」が有用となる ・脳梗塞の予防薬を自己判断で中断してはならない ・脳梗塞の予防として心臓内でできる血液の塊を防ぐ「ワーファリン」の服用時には納豆や青汁を摂取しないこと まとめ・脳梗塞になりやすい人とは?発症や再発予防で注意しておくべきこと 今回は脳梗塞になりやすい人はどんな人なのか、脳梗塞を発症予防、あるいは再発を予防するための方法などについて詳しく解説してきました。 脳梗塞は突然に起こる病気であり、かかってからしまったと後悔しても手遅れですので、健常人でも普段から脳梗塞を予防しておく方法を知って身に付けておくことが重要です。 脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病は動脈硬化を進展させますので、脳梗塞の発症や再発を予防するために、高血圧や糖尿病を罹患している場合には疾病の治療を行うとともに、常日頃の生活習慣を見直すことも重要な観点となります。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.093 監修:医師 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください。 https://fuelcells.org/topics/18480/
2022.11.07 -
- ひざ
腸脛靭帯炎で悩むランナー必見!テーピングやストレッチ、靴選びを解説! 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)って聞きなれない言葉ですよね。そもそも読み方が分からない人もいるのではないでしょうか。 しかし、意外と腸脛靭帯炎で悩む人は多いのが実情です。特に有酸素運動の代表格であるランニングや、ジョギングなどをやり始めた人に多くみられます。 動けないほど酷くはないけど…なってしまうと悩まされる…そんな腸脛靭帯炎についてお話します。 腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)とは? この病気がどのようなものか説明する前に、まずは腸脛靭帯について簡単にお伝えしますしょう。 腸脛靭帯とは、骨盤の外側に出っ張っている腸骨(ちょうこつ)から、膝下にある脛骨(けいこつ)に繋がっていて太ももの外側部分に長く伸びるように位置しています。。 また、腸脛靭帯は大臀筋と大腿筋膜腸筋(だいたいきんまくちょうきん)という、これまた長くて難しい名前の筋肉とつながって身体をぐらつかせず安定して保つという大切な役目を担っています。 膝上の太もも部分の外側を押すと、硬いスジ状のものに触れることができますが、これが腸脛靭帯になります。 特に大きな動きに対して大臀筋と呼ばれる大きな筋肉と大腿筋膜張筋とにつながることで、それらの力を脚に伝える役割があります。腸脛靭帯の働きのおかげで骨盤や膝が安定し、歩くことは勿論、スムーズなランニングを助けてくれるという訳です。 そんな腸脛靭帯が炎症を起こした状態が『腸脛靭帯炎』というものになります。 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん:ランナー膝)ってどんなケガ? 腸脛靭帯炎は別名ランナー膝と呼ばれるくらい、「ランニング愛好家に多いケガ」の一つです。ここでは腸脛靭帯炎の症状、原因、診断について簡単に説明します。ご自身に当てはまる点はないか、チェックしてみましょう。 腸脛靭帯炎の症状 腸脛靭帯炎の初期症状は、運動後に膝の外側に痛みが出ることです。痛みが出る場所は、外側上顆(がいそくじょうか)と言われる膝外側の出っ張り部分で、安静にしていれば治まってまいります。 しかし、炎症がひどい場合や、痛みを我慢して無理を続けると、歩く時や膝の曲げ伸ばしをしただけでも痛みが出ることがあります。久しぶりにランニングやジョギング、ウォーキングを頑張った人によくみられる症状です。 「さぁ、健康のために頑張って走ろう!!」という矢先につまずいてしまうと、やる気も削がれますよね… 腸脛靭帯炎になってしまう原因 なぜ腸脛靭帯炎はランナーに多いのでしょうか?それは、腸脛靭帯炎になってしまうメカニズムを知れば分かります。 腸脛靭帯炎の発生メカニズム 腸脛靭帯炎は、繰り返される『摩擦』によって生じます。摩擦が起こる場所は、大腿骨の外側上顆という場所です。 そこは骨が隆起しており、膝を曲げ伸ばしすることで腸脛靭帯が外側上顆を乗り越えてしまいます。 特に膝を軽く曲げた状態(屈曲30°くらい)でちょうど乗り越えるため、0〜30°くらいの曲げ伸ばしを繰り返すランニングでは、より摩擦がかかりやすくなってしまうのです。 骨盤や下肢のアライメント(骨の位置関係)によってより負荷がかかる ただ、ランナー全員が腸脛靭帯炎になるわけではありません。なってしまう理由は他にもあります。 ・股関節の筋力低下 ・膝のO脚 ・足の扁平足 上記のような股関節の機能や骨の位置関係を乱すアライメント異常が腸脛靭帯炎を誘発してしまうとも言われています。 腸脛靭帯炎の診断 腸脛靭帯炎は問診や触診である程度は鑑別することができます。ただ、炎症の状態や他の疾患と見分けるためにレントゲンやMRI、エコー検査をしていくことがあります。 また、腸脛靭帯炎特有のテストがあります。それがGrasping Test(グラスピングテスト)というものです。 【Grasping Testの方法】 ①患者さんの膝を90°ほど曲げる。 ②痛みが出ている場所の少し上を親指で強く押さえる。 ③その状態で膝をゆっくり伸ばしていく。 ④その時に痛みが出るのであれば、腸脛靭帯炎が疑われる。 やり方はそこまで難しくありませんので、もしかしたら…と思われた方はぜひ試してみてください。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療3つのポイント ①腸脛靭帯炎の初期対応 腸脛靭帯は足首や他の膝の靭帯と違い、断裂など重症化するケースはほとんどありません。そのため、基本的には普段と同じような生活を送っていただいて結構です。 しかし、原因がランニングなどスポーツによるものであれば、その症状が落ち着くまでお休みされるようオススメします。 腸脛靭帯そのものや、その周囲の滑液包(摩擦を減らす袋のようなもの)に炎症が起こるため、炎症をおさえるお薬や、局所に注射をする場合もあります。 場合によっては、患部にアイシングや湿布を貼付することで症状の緩和が得られます。 以上のように、特に急性期では患部の安静と炎症をおさえることを最優先させます。 ②腸脛靭帯炎に有効なストレッチ 腸脛靭帯炎による痛みが落ち着いたら、徐々にストレッチを開始します。 腸脛靭帯炎を発症する人の特徴として、カラダのケア不足により筋肉の伸び縮みの動きが悪くなっていることがあります。ここでは、腸脛靭帯と連結している大腿筋膜張筋と股関節および大腿部前面の筋肉の3つのストレッチ方法をお伝えします。 1.大腿筋膜張筋のストレッチ 2.股関節前面の筋肉のストレッチ 3.大腿部前面の筋肉のストレッチ ※ ストレッチは、無理をせず、痛くなりすぎない範囲で行ってください。 ③腸脛靭帯炎にならないためのトレーニング 下肢のアライメント(ゆがみ)の異常により腸脛靭帯炎になりやすいことは前述しました。 股関節の筋力の低下や足元のぐらつきにより、ランニング時に膝が内外にぐらつくと腸脛靭帯への摩擦が増加してしまいます。安静期間により症状が落ち着いても、同じような状態だとまた腸脛靭帯炎を繰り返してしまうでしょう。 そのため、ランニングなどのスポーツに復帰するにあたり、腸脛靭帯への負荷を減らすためのトレーニングを推奨しています。ここでは以下の3つの方法を紹介します。 1,股関節の外側の筋肉:大臀筋、中臀筋 上になっているほうの足を持ち上げる→下ろす を繰り返す 2,股関節の内側の筋肉:内転筋 下になっている方の足を持ち上げる→下ろす を繰り返す 3,ふくらはぎの筋肉:下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋) つま先立ち→かかとを降ろす を繰り返す やみくもに動かすのではなく、いずれも体を安定させ、姿勢を意識して行うことがポイントです。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)とスポーツ 腸脛靭帯炎のテーピング 腸脛靭帯炎のテーピングで大事なことは、腸脛靭帯の負担を減らしてあげることです。 そのため、腸脛靭帯自体をサポートするテーピングと、膝の動きをサポートするテーピングの2種類を用いて行います。 腸脛靭帯炎のテーピング例 あくまでテーピングは補助的な役割に過ぎません。また、その人によってテーピングの効果が十分に発揮できない場合もあります。 可能な限り、専門の医療機関にご相談のうえ、テーピングを施行するようにしましょう。このようなテーピング以外もサポーター等の装具を用いて腸脛靭帯を支え、安定を図る方法もあります。 腸脛靭帯炎と靴(シューズ)選び 腸脛靱帯炎の対策の中では靴選びも大切です。 足が左右にぐらつくと腸脛靱帯につながる大腿筋膜張筋が頑張ってぐらつきを止めようとします。 そうすると、筋肉が過剰に働き、ピンと張った状態になります。その状態で走り続けると、腸脛靭帯への摩擦が助長されて腸脛靭帯炎を引き起こしかねません。 シューズ選びの際は以下の3つのポイントを意識してみましょう。 1.シューズの後ろ、カップの部分がしっかりしているか 2.指の付け根で曲がるのか 3.シューズが過度に捻じれやすくなっていないか 靴は使用に伴い消耗します。定期的、或いは、いま一度ご自身の靴をチェックして自分に合った最適な靴を選びましょう。 まとめ・腸脛靭帯炎で悩むランナー必見!テーピングやストレッチ、靴選びを解説! 今回は、腸脛靭帯炎について、病態とその対策を中心にお話しました。 腸脛靭帯炎は誰にでも起こりうるケガです。これから運動を始める人も、ランニング愛好家の皆さんも運動前の準備運動、そして運動後のカラダのケアをしっかり行いながら、自分に合ったペースで頑張りましょう。 No.094 監修:医師 坂本貞範 ▼ 腸脛靭帯炎はじめ、スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.11.04 -
- 前十字靭帯
- ひざ
前十字靭帯断裂、復帰までの期間は?症状と治療法も併せて解説! 前十字靭帯断裂は膝のケガでよくみられ、運動する人が多く受傷するスポーツ外傷の1つでもあります。前十字靭帯はACL(anterior cruciate ligament)と省略されることもあります。 今回は、前十字靭帯が断裂したとき、気になる復帰までの期間、症状と治療法も併せて解説していきます。 前十字靭帯とは 靭帯とは、コラーゲンや弾性線維でできている多少伸び縮み可能なひも状のようなもので、関節で骨同士をつないで、過剰に骨が離れるのを防いで関節の安定性を保っています。 膝の関節は太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの内側にある脛骨(けいこつ)、そして膝のお皿とよく呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)の3つの骨でできています。 そのうち大腿骨と、脛骨をつないでいる靱帯は、以下の4つです。 ・内側側副靱帯 ・外側側副靱帯 ・前十字靭帯 ・後十字靭帯 内側/外側側副靱帯は、膝関節の左右にあり、膝が左右にずれすぎないような役目をしています。 前/後十字靭帯は、大腿骨と脛骨の間で交叉していて、前十字靭帯は脛骨が前に出すぎないように、後十字靭帯は脛骨が後ろにずれないような役目を担っています。 前十字靭帯の断裂とは?/損傷の分類 前十字靭帯の傷害を「前十字靭帯 損傷」と言います。 前十字靭帯損傷は程度によって1度から3度までに分類され、数字が大きいほど損傷が強いことを表しています。 1度損傷 前十字靭帯は切れておらず、軽い痛みと腫れのみ。膝の不安定さはない。 2度損傷 前十字靭帯は部分的に断裂し、膝には不安定さが現れる。 3度損傷 前十字靭帯が完全に断裂している。内出血も起きる。膝には不安定さがある。 このうち、「前十字靭帯 断裂」は2度と3度が該当します。 前十字靭帯断裂の原因 前十字靭帯は、大腿骨と脛骨をつなぐ靱帯です。 役割としては脛骨が前に移動しすぎないように制御すること、そして、膝をひねったときにひねりすぎないように制御する役割があります。 ただし、強い力で脛骨だけが前に押し出されたり、膝を過剰にひねると、前十字靭帯の限界を超えるため靱帯断裂が起こります。 前十字靭帯に負担がかかる動き ・ジャンプした後の着地 ・走っている間に急に向きを変える ・全力で走って急に止まる ・他人とぶつかる(接触プレー) とくに前十字靭帯の断裂は、バスケットボールやサッカー、バレーボールや野球などのスポーツ中に起きることが多く、上記のような激しい動きの時に発症しやすいと考えられています。 前十字靭帯断裂の症状 前十字靭帯が断裂した瞬間は膝の中で紐がちぎれたような感覚を感じることがあります。 その後、膝がガクガクしたり、膝の痛み、膝の腫れなどが見られます。多くの場合では膝の関節の中で出血もしています。 しばらく放置すると痛みと腫れは引いてきますが、靱帯は勝手に治ることは少なく、膝の不安定さが残ります。 そのまま生活していると、膝がガクッと崩れたり、長期的には膝関節の中にある半月板や軟骨も傷んできます。すると変形性膝関節症という状態になります。 そうなるのを防ぐために、検査や治療を行うのが一般的です。 前十字靭帯断裂の検査 膝の不安定さや、どのような力が加わると痛みが出るかを触って確認するなどの検査を行います。 ・ラックマンテスト ・前方引き出しテスト その他にレントゲンやMRI検査を行うこともあります。 前十字靭帯の治療方法と、気になる復帰までの期間は? 前十字靭帯が断裂すると、自然に修復されることはありません。 将来スポーツを行う可能性がある場合には、靱帯を再建する手術療法、将来的にスポーツなどをしない人であれば運動療法を行うことが一般的です。 1.自家腱移植 自分の組織を用いて再建する方法です。 腱移植は膝の内側の腱(ハムストリング腱)や、前面の腱(膝蓋骨を割った骨付きの膝蓋腱)を使う方法があります。 手術は関節鏡という鉛筆くらいの細いカメラを用いて、小さな切開で行なうことが主流です。この関節鏡で大腿骨と脛骨をつなぐトンネルをつくり、そこに加工した腱を通して、上下を金具で固定します。 最低限の切開で、早くリハビリを始められることからスポーツ選手でよく行われています。 この手術の一般的な術後経過は、1週間程度(最短4日)の入院でその間は車いす生活、退院後は松葉杖となり、きちんとリハビリを継続していれば1ヶ月で日常生活が可能となり、約半年から1年でスポーツ復帰となります。 再建術を行った後、スポーツへの復帰ができる割合は手術後1年で約6割程度と報告されています。 2.保護的早期運動療法 将来的にスポーツなどをしない人であれば、前十字靭帯専用の装具を装着して、リハビリをするという治療を選択する場合もあります。 保存的治療ではいずれは日常生活やレクレーションレベルの動作は可能ですが、競技スポーツへの復帰は困難とされています。 また前十字靭帯損傷後に手術を行わなかった場合、約6割の患者さんが変形性膝関節症となることが報告されているため、治療を選択する際にはきちんと損傷の程度を理解し、その後の生活やスポーツへの影響を考えて決めましょう。 まとめ/前十字靭帯断裂、復帰までの期間は?症状と治療法について解説! いかがでしたでしょうか。 前十字靭帯断裂は、膝の中の靭帯が切れた状態です。特にスポーツをしているときに多く発生する外傷です。 受傷直後は傷みや膝の腫れがありますが、時間が経てばその症状は軽くなります。ただし、何も治療をしないと膝が不安定なままになったり、将来「変形性膝関節症」を発症することもあります。 前十字靭帯断裂の可能性がある場合は、早期に整形外科を受診することが重要です。 前十字靭帯断裂、復帰復帰までの期間は?症状と治療法について解説しました。ご参考になれば幸いです。 No.092 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(靭帯損傷、腱)の治療に有効な再生医療とは 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.11.02 -
- 脳梗塞
それ、軽い脳梗塞かもしれません!初期症状チェックリストはこちらです! 脳梗塞は脳の血管が細くなり、血液が固まった血栓と言われるもので脳の血管が詰まり、血液の流れが止まってしまうことで起きる怖い病気です。 大きな脳梗塞だと呂律が回らなくなったり、体の片側に力が入らなくなったりする運動障害や、言葉が分からなくなる失語症などの症状が出てしまうことがあります。 そういった重篤な症状になると、ほとんどの場合で早急に医療機関を受診することとなりますが、中には症状が軽かったりして、その症状も自然に治ったりすることがあるため、脳梗塞はもちろん、その前兆だとも気が付かないケースがあります。 そこで本記事では、以下に脳梗塞を判定するためのチェックリストを設けました。 一つでもチェック☑が当てはまるようであれば、今すぐにでも医療機関を受診し、ご相談されることをお勧めします。 今回は、脳梗塞の起き方から、それぞれの症状、軽い脳梗塞とも言われる一過性脳虚血発作、脳梗塞の治療について詳しく解説していきます。ぜひ参考にされてください。 脳梗塞のメカニズムは? まずは脳梗塞の起き方についてです。脳梗塞は大きく分けて次の3つに分類されます。 ①動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞 アテローム血栓性脳梗塞は高血圧、高脂血症、糖尿病という所謂生活習慣病に伴い、血管壁にコレステロールが溜まる「動脈硬化」という病態が主な原因です。 予防のためには、食事や運動に気を付けることや薬物治療を通して「動脈硬化の進行」を抑えることが最も重要です。 ②心臓から流れてきた大きな血栓による心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症は心房細動といった不整脈などの心疾患が原因で心臓内に血栓が生成され、それが血流に乗って脳血管に運ばれることで引き起こされます。 予防には心疾患の早期発見・治療が重要となります。 ③高血圧により穿通枝という比較的細い血管が詰まるラクナ梗塞 ラクナ梗塞は「高血圧」が主因とされ、予防のためには血圧の管理が重要となってきます。 このように脳梗塞は生活習慣を主として様々な原因で引き起こされるため、リスク因子の発見や対処といった予防が重要となってきます。 脳梗塞で現れる症状を知って万一に備える 脳梗塞の主な症状としては下記のようなものが突然現れることが特徴的です。複数の症状が現れたり、1つだけであったりもします。 以下が「万一に備える脳梗塞の症状のチェックリスト」です。たとえ一つでも当てはまるものがあれば要注意です。 脳梗塞の症状のチェックリスト 運動障害 ☐ 片半身が動かしにくくなる ☐ 片側の顔に力が入らない ☐ 箸や鉛筆が持てない ☐ 片足を引きずってしまう ☐ 呂律が回らない 言語障害 ☐ 言葉が出てこない ☐ 言葉の意味がわからない ☐ 相手に話が伝わらない 感覚障害 ☐ 片半身が痺れる ☐ 触られてもわからない 視覚障害 ☐ものが二重に見える ☐ 視野が狭くなる ☐ 目の前が真っ暗になる 平衡感覚障害 ☐ 体が傾く ☐ まっすぐ歩けない ※一つでも当てはるようなら、すぐに病院にご相談ください 上記のような症状が急に現れると驚かれ、多くの方は医療機関を受診されると思います。しかし、すぐに良くなってしまうことがあるのです。 その場合は、「気のせいか」「まあいいか」と自己判断で治った、大事ないと意図的に良い方に考えて医療機関を受診されようとしない方が一定数いらっしゃいます。 自験例では2週間も症状が続いたにも関わらず、その後ようやく医療機関を受診した方もおられました。 実際、厚生労働省の研究班の調査では症状が続いていれば8割の方が医療機関を受診すると答えたのに対して、症状が自然に改善した場合は5割程度しか受診しないと答えています。 この考え方は極めて危険です! 症状が一時的であって、その後治まった場合でも、再度同様の症状を起こし、今度は一生涯の症状となることがあるからです。 一過性の脳梗塞症状のことを一過性脳虚血発作と言い、脳梗塞の前兆と考えられております。 上記でしましたチェックリストに、一つでもチェック☑があるようなら、早急に医療機関で相談してください。 軽い脳梗塞?一過性脳虚血発作とは 一過性脳虚血発作は文字通り、一時的に脳梗塞のような症状が出現し、時間経過とともに(多くは30分程度)自然に改善するような病態です。分かりやすく地震に例えると余震であり、本震の前兆、前触れとして真剣に向き合うべき事柄なのです。 つまり、数日以内に「本格的な脳梗塞を起こす可能性」があるため、脳梗塞の前兆とも言われております。症状が良くなったからもう良い、疲れが出たからだろうと考えていると、足元を掬われる可能性があります。 実際、一過性脳虚血発作患者の約15%が90日以内に脳梗塞をきたすとされ、一過性脳虚血発作患者には脳梗塞の予防が重要です。 特に脳梗塞に至ってしまうリスクが高いとされる項目は以下です。当てはまるなら、更なる注意が必要です。 ・年齢(60歳以上) ・血圧(140/90mmHg以上) ・臨床症状(片麻痺、言語障害) ・症状の持続時間(10分以上) ・糖尿病 リスクが高い方は入院したり、お薬を開始したりすることがあります。その時に用いるのがアスピリンやクロピドグレルといった血液を固まりにくくするお薬です。 そういったお薬を用いたり、高血圧・高脂血症・糖尿病といった疾患へ生活習慣の介入や薬物治療を行ったりすることで再度の一過性脳虚血発作や脳梗塞を予防していくこととなります。 症状を感じたら、どこに相談したら良いのか? 上記のような症状に心当たりがある場合、脳神経内科・脳血管内科・脳外科など、脳を専門としている病院にご相談ください。診療科名は病院によって異なることもあるため、詳しくは病院のホームページ確認や問い合わせをすると良いでしょう。 特に発症したばかりの脳梗塞を疑う場合の治療は一刻を争うことが多く、ためらわず救急車を呼ぶ必要があります。 ・脳神経外科、脳神経内科 ・脳血管内科 ・脳外科 まとめ・それって軽い脳梗塞かもしれません!初期症状チェックリストはこちらです! いかがでしたでしょうか。 脳梗塞の起き方からそれぞれの症状、軽い脳梗塞とも言われる一過性脳虚血発作、脳梗塞の治療についてご紹介させていただきました。 高血圧・高脂血症・糖尿病といったリスクのある方は特に、チェックリストに当てはまるような症状があれば医療機関に至急相談をすることをおすすめします。 ご参考になれば幸いです。 No.S092 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.31 -
- 脳梗塞
脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を徹底解説! 「脳梗塞って治る見込みはあるのかな・・・」 「脳梗塞になったら、どのくらい入院するのか知りたい。」 脳梗塞は日本の死因第 4 位に入るとても怖い病気です。 脳梗塞になってしまった場合、治る見込みがあるのか?!と、不安なお気持ちになられる方は多くおられることでしょう。脳梗塞を発症した時に最も大切なことは、いかに「早い段階で治療を受けるか」ということになります。尚、年齢や障害の部位、程度によって受ける治療や入院期間が異なります。 そこで、今回は脳梗塞の治る見込みや、具体的な治療方法、そして気になる入院期間や費用についても記した保存版的内容になりました。参考にしていただければ幸いです。 脳梗塞は治すことはできても後遺症が残る危険性が高い病気です 結論から言うと表題で記した通り、脳梗塞は治すことができても発症後、早期に治療を受けないと、重篤な後遺症が残ってしまう場合があります。 脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで脳細胞が壊死し、脳機能が低下してしまう病気であり、主に以下の3つの種類に分けられます。 ・アテローム血栓性脳梗塞 : 首や脳などのより太い血管が詰まることで起こる ・ラクナ梗塞 : 比較的小さな血管が詰まり、緩やかに症状が現れる ・心原性脳梗塞 : 心臓の血栓の一部が血流により脳に運ばれ、血栓を作る いずれも高血圧や脂質異常症、高血糖などの生活習慣病による動脈硬化が主な原因となり、後遺症としては、片麻痺やしびれなどの感覚障害のほか、記憶や注意力の低下などとして現れます。 脳梗塞を治すにはまず、脳内の正常な血流を回復するために急性期の治療を行い、その後、リハビリ治療によって、後遺症などの二次的影響を治すことになります。 損傷した脳組織を治療によって元に戻すことは不可能ですが、リハビリテーションによって、損傷した部分を補うことを目指すことになります。 脳梗塞の検査は? 脳梗塞に対して早期に治療介入する上で重要になるのが検査です。 脳梗塞を診断するためだけでなく、他の考えられる原因を除外する必要があるため非常に大切です。 ・身体検査 : 心臓の音や血圧を測ったり、神経学的診察を行います。 ・血液検査 : 血液が凝固する速さ、血糖値、感染症の有無を調べます。 ・CT検査 : 脳内出血、虚血性脳梗塞、腫瘍などを調ます。 ・MRI検査 : 虚血性脳梗塞や脳出血によって損傷した脳組織を検出します。 ・頸動脈超音波検査 : 頸動脈の脂肪沈着物 (プラーク) の蓄積と血流が示されます。 ・脳血管造影検査 : 脳と首の動脈を詳細に調べます。 ・心エコー検査 : 心臓から脳に移動して脳梗塞を引き起こした可能性のある心臓内の血栓の原因を見つけます。 これらの検査を行うことで診断を確定することが可能となり、適切な治療へと導くことができる大切な治療プロセスになります。。 脳梗塞の急性期(病状が表れた時期)の治療について それでは、実際にどのような治療を行うのか詳しく見ていきましょう。主に3つの治療に加え、薬物療法もおこなっていくことが基本となります。 ①血栓溶解療法(t-PA治療) 虚血性の脳梗塞の場合は、血栓を溶かして脳への血流を回復させるアルテプラーゼと呼ばれる薬を注射することで治療できます。 このアルテプラーゼは、脳卒中の発生後できるだけ早く、確実に 4 . 5 時間以内に開始すると最も効果的です。 4 . 5 時間以上経過した場合は、薬が出血性脳梗塞による出血を悪化させる可能性があるため、利用できません。 ②血管内治療(血栓回収療法) 重度の虚血性脳梗塞の場合は、血栓回収療法と呼ばれる血管内のカテーテル治療によって治療できます。 局所麻酔下または全身麻酔下でカテーテルを動脈に挿入し、小さなデバイスを、カテーテルを通して脳の動脈に挿入します。 このデバイスを使用して血栓を除去することで、脳への血流が回復します。 血栓溶解療法同様に、脳梗塞後できるだけ早く開始すると最も効果的です。 ③抗血栓療法(内服治療) 血管の閉塞を治す急性期治療に加え、再発予防として、内服による治療も同時に行います。 1.抗血小板薬(アスピリン/クロピドグレル) アスピリンは抗血小板薬であり、新しく血栓が形成される可能性を減らすことができます。 また、クロピドグレルなど、他の抗血小板薬も同時に併用する場合があります。 2.抗凝固剤(ワーファリンなど) 将来、新たな血栓ができるリスクを軽減するために、抗凝固薬を投与されることがあります。 ワルファリン、ダビガトランなど、長期間使用できる抗凝固薬があります。 脳梗塞のリハビリについて 急性期治療の後は、できる限り多くの機能を回復するようリハビリに努めることが大切です。それが自立した生活を取り戻すことに繋がるからです。 リハビリには主に急性期、回復期、生活期の 3 つの段階があり、年齢、全体的な健康状態、および脳梗塞による障害の程度に基づいて、リハビリ内容を医師が決定します。 退院後は、同じ病院はもちろんですが、利便性を考慮して自宅の近くなど、別のリハビリ施設で、リハビリを続けることもできます。 リハビリは患者の状態に応じて以下のようなチームで行われるます。 ・医師(脳外科、脳神経内科、精神科など) ・理学療法士 ・看護師 ・栄養士 ・理学療法士 ・作業療法士 ・言語聴覚士 ・ソーシャルワーカー 発症後48時間以内の早期にリハビリを開始することで、脳梗塞による治療後の後遺症を軽減することがわかっています。 脳梗塞の入院期間と費用はどのくらい? 脳梗塞の一般的な入院期間は 78 日前後であり、数ヶ月入院する必要があります。 がん患者では、平均在日日数は 30 日前後なので、入院期間は一般的な病気に比べ長いことが分かります。 費用に関してですが、脳梗塞の入院でかかる費用は平均 50 万円前後と言われています。 ただし、受ける治療内容によってもちろん異なりますし、入院期間が伸びてしまうと追加の費用がかかります。 平均的な入院期間:78 日 費用:50 万円前後(健康保険-3割負担の場合)※高額療養費制度の活用で更に安価になります) ※上記は、治療内容、症状、入金機期間によって変動します 入院期間が伸びてしまう要因としては主に障害部位や重症度があり、詳しく見ていきましょう。 1.障害部位や重症度 脳梗塞の入院期間は、まず障害されている脳の部位や範囲によって異なります。 軽症の場合は、2 週間程度で退院できる場合もありますが、重症度が高くなると、リハビリ期間も長くなるため、入院期間が長くなり、費用も高くなってしまいます。 2.高齢者 年齢が高くなると、急性期治療後のリハビリが長期化するケースも稀ではありません。 令和元年の厚生労働省による平均入院日数調査によると 27. 6 日となっていますが、75歳以上の後期高齢者になると、40 日を超える場合もあります。 脳梗塞の治療や入院に関するよくある質問 最後に、脳梗塞に関するよくある質問についてです。治療期間やリハビリ、仕事復帰の目安などについてまとめていますので、ぜひ参考にされてください。 Q.脳梗塞の治療後、仕事復帰はどのくらいでできる? A.仕事復帰までの期間は、患者それぞれによって異なりますが、基本的には3ヶ月後に退院できるケースが多いようですが、退院してすぐに復帰できるわけではありません。 多くの場合、発症から半年または1年後を目途に復帰できるケースが多いようです。 Q.脳梗塞を早く治すにはどうしたらいいですか? A.脳梗塞を早く治すには、何といっても早期治療が大切です。ただし、早期治療後にすぐに治るというわけではなく、リハビリなど日常生活に戻るには個人差があるのが実情です。 発症後 3ヶ月過ぎると、治りづらくなるため、できるだけ早くリハビリに取り組むことが、早く治すことにつながります。 まとめ・脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を徹底解説! いかがでしたでしょうか。 脳梗塞は早期の治療開始が大切で、適切なリハビリを行うことで克服できる病気です。 ただし、一刻も早い治療と適切な対処が必要です。遅れれば後遺症が重くなる可能性があり、日常生活にも大きな影響を及ぼしかねません。 脳梗塞は、入院期間の長い病気ではありますが、早い段階からの適切治療と、リハビリを行うことで社会、仕事復帰することも十分に可能です。 費用的にも健康保険や高額療養費制度を用いれば最小の負担で治療に取り組むことが可能です。 この記事では、脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を解説として、詳しくまとめましたので参考にしていただければ幸いです。 No.091 監修:医師 坂本貞範 脳卒中・脳梗塞 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.28 -
- 脳梗塞
若年性脳梗塞をご存知ですか?!脳梗塞は「まだ若いから」との油断は禁物! 脳梗塞という病気を知ってはいても、高齢者の病気だと思っている方も多いのではないでしょうか。 確かに年を取るにつれて脳梗塞の発症率は上昇しますが、若い人でも脳梗塞を発症する人がいることをご存知でしょうか。 この記事では、20代でも起こりうる脳梗塞について解説します。 脳梗塞とは? そもそも脳梗塞とは、どのような病気なのでしょうか。 脳梗塞とは脳卒中と言われる病気のひとつで、脳の血管が障害を受けることによって起こる病気の一つです。 脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血がありますが、その中でも脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうことで脳への血流が途絶し、脳の機能に傷害が起こる病気です。 脳梗塞ではどのような症状が起こるの? 脳は、場所によってそれぞれさまざまな機能を分担していて、脳梗塞になって血流が途絶してしまうと、その部分の機能が障害されてしまいます。 脳梗塞は、脳の障害を起こす部位によって症状が様々に異なります。 例えば、 ・右手を動かす脳の部位が脳梗塞になれば、右手が動かなくなります ・片方の目から入ってきた情報を処理する部分が脳梗塞になれば、片方の目が見えなくなってしまいます 他にも、脳は感覚や感情、さらには生命維持のために不可欠な様々な機能を担っています。 脳梗塞は様々な症状が起こる上に、場合によっては命に関わってくることもあります。 脳梗塞はどのような原因で起こるの? 脳梗塞は、主に3種類に分類されています。 1,アテローム血栓型脳梗塞 1つ目のアテローム血栓型脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が動脈硬化などによってだんだんと狭くなり、ついに血流が途絶したときに起こります。 そもそも動脈硬化が起こると血管は硬くなるだけではなく、血管の壁の中に粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるコレステロールの塊が蓄積してきます。 血管と粥腫の間は内膜と呼ばれる薄い膜で隔たれていますが、何らかの原因で内膜が破綻すると、粥腫が血液に触れます。 すると血管を修復しようとして血液が凝固します。もともと狭い血管内で血液が固まりますので、血液の流れが完全に途絶してしまい、脳梗塞になってしまうのです。 大きな血管が詰まると、非常に広い範囲の脳が脳梗塞となってしまい、命に関わるような重篤な症状となる事もあります。 2,ラクナ梗塞 2つ目のラクナ梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈の血管の中でも末端の非常に細い動脈に起こる血流の途絶によって起こります。 小さい範囲の脳梗塞のため、症状がない場合もありますが、非常に重要な部分に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうと、重篤な状態となってしまうこともあります。 3,心原性脳塞栓症 3つ目の脳梗塞の原因である心原性脳塞栓症は、脳以外の血管に原因がある脳梗塞です。 種々の病気によって、足や心臓の中で血栓という血の塊ができてしまうことがあります。 この血栓が、ある時その場所から剥がれ落ちて血流に乗って脳に届き、血管に詰まってしまいます。血栓のサイズによって症状は様々となります。 多くの場合、心房細動という不整脈に伴って心臓内に血栓ができます。 また、普通心臓内では静脈で全身から帰ってきた血液(静脈血)と、肺から帰ってきて全身に送る血液(動脈血)は混ざらないように分かれています。 しかし、先天性の病気で心臓に穴が空くなどして、静脈血が動脈血に混じってしまう人がいます。 このような人の場合、足の静脈でできた血の塊が動脈に入り込み、脳へ飛んでしまう事があります。これを奇異性塞栓と言います。 脳梗塞はどのように治療するのか? 脳梗塞の治療は、発症後なるべく早い時間に血流を再開させることが重要となります。 血液が届かなくなった脳の細胞は時間が経つにつれ、どんどんと壊死してしまいます。血流が途絶した時間が長くなれば、壊死している範囲が広がってしまいます。 血流を早期に回復させることができたら、最小限の壊死でとどめることができますので、後遺症を減らす事ができます。 特に有効とされているのが、血栓を溶かす治療です。 しかし出血などの合併症があるため、発症4時間30分以内にしか使用できず、なるべく早く病院を受診する必要があります。 他には、血管内治療と言って、カテーテルという細い管を血管の中に通し、脳の中にまで届かせて血栓を吸い取って血流を再開させる治療も行います。 若年性脳梗塞とは? 脳梗塞の中でも、若年に起こる脳梗塞を特別に若年性脳梗塞と言います。 どのような特徴があるのでしょうか。 若年性脳梗塞とはどのようなものなの? 若年性脳梗塞は、特に国際的に決まった定義はありませんが、日本では国立循環器病センターが50歳以下における脳梗塞と区分しており、その辺りの年齢より若い人に起こるものを若年性脳梗塞と言います。 若年性脳梗塞はどのような原因で起こるの? 若年とはいえ、原因は高齢者に起こる脳梗塞と同様に、動脈硬化によるものが多いです。 動脈硬化の原因としては、以下のようなものが挙げられます。 ・喫煙 ・過度の飲酒 ・糖尿 ・高血圧 ・高コレステロール血症 いずれも生活習慣の乱れから起こるものと言えます。 また、前述の奇異性脳塞栓はどの年代でも起こりえますが、動脈硬化の割合が高齢者より少ない分、若年性脳梗塞においては奇異性脳梗塞の割合が高くなる傾向があります。 つまり、危険因子を持ち合わせると、20代であっても脳梗塞が起こる可能性は十分にあり得るのです。 若年性脳梗塞を予防するためにできること では、若年性脳梗塞を予防するためにはどのような事に気をつければ良いのでしょうか。 生活習慣の見直し 若年性脳梗塞を予防するためには動脈硬化を予防する事が最も重要です。 その為には生活習慣を整えることが必要とされています。 ・バランスの取れた食事を意識する ・適度な運動をする ・十分な睡眠をとる ・喫煙、飲酒量の見直し ・ストレスを溜めない 塩分の高い食事や栄養が偏った食事、不規則な生活リズム、運動不足は動脈硬化を悪化させます。 さらに、喫煙や飲酒も問題となりますので、禁煙や飲酒量の調整も必要です。 また、ストレスも動脈硬化の原因となります。ストレスを感じていることが多い場合には、ストレス解消を意識することも重要となります。 検診の受診 高血圧や糖尿病、高コレステロール血症は自覚症状がほとんどないため、検診を受けて診断を受け、適切に治療を受ける必要があります。 また、奇異性脳塞栓の原因となる心臓の異常は、検診の心電図で発見されることもあります。 早期に脳梗塞の原因となる芽を見つけ、脳梗塞を発症する前に治療を開始することで脳梗塞を起こさないように対策をしましょう。 まとめ・20代,30代の脳梗塞「まだ若いから」との油断は禁物! この記事では、若年層、20代でも起こりうる若年性脳梗塞について解説しました。 若年性脳梗塞は、高齢者の脳梗塞に比べて「奇異性脳塞栓」といった特殊な脳梗塞が多いという特徴がありますが、やはり生活習慣病の結果として起こる場合が多くを占めます。 脳梗塞を起こすと、様々な症状が起こります。そして、後遺症を残してしまうことも少なくありません。 普段の生活習慣を改めた上で、医療機関での検診を活用し、若い頃から脳梗塞にならないように気をつけていきましょう。 ご参考になれば幸いです。 No.S091 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.26 -
- 前十字靭帯
- ひざ
前十字靭帯断裂はいつ治る?全治まではどのくらい?入院期間とリハビリについて スポーツ選手の大きな怪我としてよく耳にする「前十字靭帯断裂」。受傷された場合、全治がいつになるのか気になる方も多いのではないでしょうか。特にスポーツなどで復帰までの時間が心配な方もおられることでしょう。 そこで今回は、前十字靱帯断裂の入院期間やリハビリ、手術の費用について解説しながら、全治をしてスポーツ復帰ができるまでの期間を紹介いたします。 前十字靱帯断裂が全治後、スポーツ復帰まで 8 〜 10 カ月 前十字靱帯の断裂または損傷の全治は 8 カ月〜10 カ月とされています。 これは、前十字靱帯断裂後に手術をしてからリハビリを終えてスポーツ復帰をするまでの目安です。ただ、日常生活が問題なく送れるようになるだけなら術後約 1 カ月程度です。 前十字靭帯を損傷してしまうと自然に修復することは、ほとんど期待できないため、手術をしない場合は全治することがありません。そのため、手術をしない場合は損傷した状態のまま生活を送ることになります。 前十字靱帯損傷で損傷部分が少なく、症状があまり見られなければ、手術をしなくても通常の日常生活を送ることが可能な場合もあります。 しかし、本来、前十字靱帯が担っている膝を安定させる機能が低下してしまうため、膝にかかる負担が大きくなってしまいます。その結果、膝にある半月板などの別の組織を傷めたり、老後に関節の変形を生じたりする可能性が高くなります。 前十字靱帯断裂後の入院期間と手術の費用 前十字靭帯断裂後は断裂した靱帯を体の腱(けん)と呼ばれる部分を移植する手術を行います。 このような手術を前十字靱帯再建術と呼び、関節鏡(かんせつきょう)を使用して行います。関節鏡を使用した手術では、数ミリほどの穴からカメラを侵入させて手術を行うため傷口が小さくて、入院期間が短くなります。 詳しい入院期間と手術にかかる費用は以下の通りです。 手術後の入院期間 入院期間は短い場合で手術後 4 〜 7 日間を目安に退院することができます。 これは小さな傷ですむ内視鏡を使った手術だからですが、まだ普通に全体重をかけて歩けないので、松葉杖が使った状態で退院することになります。 しっかり歩けるようになり、日常生活が普通に送れるようになるまで、約1ヶ月を程度入院する場合もあります。しかし、前十字靱帯断裂は学生など若い年代に多いため、学校や仕事を1ヶ月も休むことは生活に大きな支障を及ぼします。 そのため、短い期間で退院をして、通院しながらリハビリや競技復帰を目指す場合が多いです。 手術に必要な費用 手術や入院にかかる費用は、手術の方法や入院期間、入院中の治療内容などによって異なります。目安として手術・入院費などを含めて 25 万円〜 50 万円ほど必要になることが多いです。 病院によって幅があるので、入院前におおよその目安を確認しておきましょう。早めに退院する場合でも、リハビリの継続は必要です。 特に全治してスポーツ競技に復帰できるまでは、8 カ月程度が目安になるため、それまではリハビリなどの費用が必要になります。 前十字靱帯断裂後のリハビリ 前十字靱帯再建術後のリハビリについて解説するとともに、手術をしない場合に必要なリハビリについても紹介します。 手術後のリハビリ・スケジュール 手術直後からスポーツ復帰までの流れを時系列で紹介します。 手術からの時期 リハビリ内容 手術直後 ・膝周辺の組織の柔軟性を確保する ・膝は完全に伸ばさないように装具を着用 ・膝関節の動きを伴わない筋力トレーニング ・膝以外の部分の筋力トレーニング 1 週間 ・体重1/3の荷重練習 ・関節の動きを改善する運動を開始 2 〜 3 週間 ・全体重をかける練習 ・軽く曲げる程度のスクワットなど体重をかけながらのトレーニング 4 〜 6 週間 ・自転車などマシーンでの運動 ・より積極的に体重をかけたトレーニングを進める 3 カ月 ジョギング開始 4 カ月 両足ジャンプ、ターン開始 6 カ月 スポーツ練習開始 8 カ月 競技復帰 術後は移植した腱を保護しながらのリハビリが必要になります。腱が負担に耐えられるようになるまでは 3 カ月ほどかかるため、それまではあまり無理な運動は避けます。 3 カ月以降ジョギングやジャンプなどのスポーツ動作を開始して、8 カ月以降のスポーツ競技復帰を目指します。 また、前十字靭帯断裂はスポーツでのジャンプや切り返しといった動作で発生しやすいため、それらの動作時に膝が内側に入らないようにするなど、再発を予防するための動作を習得することも重要です。 手術をしない場合もリハビリが大切 前十字靱帯損傷が一部分でも、手術をしなければ全治は難しいですが、老後のことを考えると膝にかかる負担をできるだけ減らすことが大切です。 前十字靱帯損傷の影響で、膝の力が抜けたように急に曲がる「膝くずれ」や膝の不安定さが生じるため、対策として太ももの前の筋力を強化します。 椅子に座って膝をゆっくり曲げ伸ばしたり、膝を伸ばした状態で膝の下にタオルを引いて押しつぶす運動をしたりして筋力トレーニングをしましょう。 前十字靱帯断裂は、正しい治療で全治させて復帰を目指そう 前十字靭帯断裂を全治させるには手術をする必要があります。 そして手術後に正しい順序でリハビリをすることで、再発のリスクを減らして、スポーツなどに復帰をすることが可能になります。しっかり医師や理学療法士などの専門スタッフから指導を受けながら、正しい治療で全治を目指しましょう。 以上、前十字靭帯断裂による全治までの期間についてと、その後の入院期間、リハビリについて記させて頂きました。参考になれば幸いです。 No.S090 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 靭帯損傷、スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、靭帯損傷をはじめスポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.10.24 -
- 前十字靭帯
- ひざ
前十字靭帯損傷とは?軽度から重度までの症状と治療法 スポーツ選手にとって代表的な怪我の1つである前十字靱帯損傷。 よく耳にする怪我ですが、「軽度でも手術が必要なの?」と治療について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、前十字靱帯損傷について、軽度から重度までの症状や治療法を解説します。 前十字靱帯の役割や損傷の原因 まずは前十字靱帯について解説し、前十字靱帯損傷の病態や原因を紹介します。 前十字靭帯は膝の関節を安定させる重要な靱帯 膝の関節はスネの骨(脛骨:けいこつ)と太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)からなり、肩関節や足の付け根にある股関節に比べ、骨同士の固定が弱い構造をしています。 そこで骨と骨をつなぎ合わせて関節を安定させる、4本の靱帯(じんたい)が重要な役割を果たしています。その中の1つが前十字靱帯で、脛骨が大腿骨に対して前の方にずれないように制御する役割を持っています。 前十字靭帯損傷の原因の多くはスポーツ 前十字靭帯損傷はバスケットボールやサッカー、スキー、ラグビーなどのスポーツ中に多くみられます。 その原因は接触型(コンタクト)と非接触型(ノンコンタクト)に分けられます。 2つのうち多いのが非接触型で、バスケットやサッカー、スキーなどジャンプや切り返しの多いスポーツで以下のような動作が損傷の引き金になります。 ・ジャンプからの着地 ・方向転換 ・急なストップ また、接触型はラグビーや柔道などのコンタクトスポーツで膝に直接的な衝撃が加わり損傷するケースを言います。 スポーツ以外でも交通事故が原因として損傷する場合もあります。 前十字靱帯の損傷は安静では元に戻りにくい 前十字靱帯損傷の一番の特徴は、「正常に戻りにくい」という点です。 そのため、靱帯の損傷が軽いからといって、筋肉の怪我や骨折のように安静にしていれば治るという可能性が少ないとされています。 前十字靱帯損傷の症状 前十字靱帯損傷の症状は受傷から経過した時間や重症度によって異なります。 受傷直後 受傷の直後にみられる症状は「膝の痛み」と「プツッという靱帯が切れるような音」です。この音は受傷する本人にはっきりと自覚されることが多く「ポップ音」と呼ばれます。 また、膝の力が抜けたように、急激に膝が曲がってしまう膝くずれが起こります。 受傷から数時間後 受傷から時間が経過していくと靱帯損傷による出血・炎症で腫れたり、熱をもったりします。 前十字靱帯は関節の内にある靱帯です。そのため、出血した血液が関節の中にたまる関節血症が起こり、注射で血液を吸引することができます。 また、膝を完全に曲げ伸ばしをしたりすることが難しくなります。膝の腫れは筋肉の働きを妨げるため、徐々に膝の周りにある筋力の低下を引き起こします。 受傷から数日後以降 前十字靭帯だけの損傷の場合、受傷時にみられたような痛みや腫れは徐々に軽減していき、1ヶ月ほどで日常生活に支障が出ないほどになることも多いです。 しかし、症状の改善は時間の経過とともに損傷時に生じた出血や炎症が治まっただけで、損傷自体は回復していません。 そのため、膝がグラグラするような不安定さが残ったり、膝くずれがおこったりします。損傷が重度であるほど、このような症状が強くみられます。 また、前十字靱帯損傷が重症な場合、膝関節の衝撃を吸収する役割を持つ半月板(はんげつばん)の損傷や骨折を合併することがあります。そのような場合は、受傷から時間が経過しても、痛みや膝の動きの制限が残ることがあります。 前十字靱帯損傷の治療法 前十字靱帯損傷における治療は「手術による治療」と手術を行わない「保存療法」に分けられます。 前十字靱帯損傷は手術を選択する場合が多い 前十字靱帯損傷が軽度であっても、靱帯は修復されないため膝の不安定さが残り続けます。放置すると膝への負担が強まり、半月板の損傷や関節の変形などにつながります。 そのため、スポーツに復帰をしたり、膝に負担のかかる仕事をしたりする場合は手術が行われます。また、損傷が重度だったり、他の部分の損傷を合併したりして、日常生活でも膝くずれを繰り返すような場合も手術が適応されます。 手術は前十字靱帯の代わりに使用する人工的に靱帯を使用する再建術(さいけんじゅつ)が行われます。靱帯の再建には筋肉が骨につく部分である腱(けん)を使用します。 手術後は8〜10ヶ月後にスポーツに復帰できることが多いと言われています。 年齢や活動量を踏まえて保存療法をする場合もある 長期的な視点では、靱帯が損傷したままだと将来の怪我につながったり、活動的な動きが制限されたりするため、年齢が若い場合は靱帯の再建手術をするケースが多いです。しかし、活動量が低く、損傷が軽度であれば日常生活に支障がなく過ごせることも少なくありません。 そのため、中高齢者で日常生活に支障がなかったり、スポーツや仕事で膝に負担をかけなかったりする場合は手術をしないこともあります。 保存療法としては、膝の関節を支える装具やサポーターを使用したりして膝を安定させて、膝にかかる負担を少なくします。また、自家製のサポーターとして、膝周辺の筋力を鍛えることがあります。 特に太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力強化が重要です。この筋肉は膝を伸ばす筋肉ですので、前十字靱帯損傷後にみられる膝くずれへの対策になります。 まとめ・前十字靱帯損傷は放置せずに適切な治療を選択しましょう 前十字靱帯損傷は受傷直後に、はっきりとした症状がみられるものの、軽度の損傷の場合は症状が改善していくことも少なくありません。しかし、靱帯の損傷は治りにくく、放置すると膝に負担がかかり続け、別の怪我につながる可能性があります。 そのため、自己判断で放置せずに、整形外科を受診して正しい診断と治療をしてもらいましょう。 No.089 監修:医師 坂本貞範 ▼ 靭帯損傷に対する再生医療 当院の再生医療は、靭帯損傷にも対応する最先端治療です
2022.10.21