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アキレス腱炎のテーピング効果とは?プロが実践する方法を解説! 「ランニングするとアキレス腱が痛む」「アキレス腱の痛みを和らげる方法が知りたい」 このような疑問のある方は、アキレス腱炎に対するテーピングの活用を検討しましょう。アキレス腱炎はランニングやジャンプを繰り返すことで、アキレス腱にストレスがかかって生じる怪我です。 今回はアキレス腱炎への対処法の1つである、テーピングの効果や実践方法について解説します。 アキレス腱炎に対するテーピングの効果 アキレス腱炎は、バスケや陸上、バレー、マラソン、バレエなどランニングやジャンプを繰り返すスポーツで起こりやすい怪我です。これらの動作により、アキレス腱に繰り返しストレスがかかり、炎症が発生してしまいます。 症状としては、足首を動かしたり、歩いたりするときに生じるアキレス腱周辺の痛みやランニングなどの運動の制限があります。 ここでは、これらの症状に対するテーピングの効果を紹介します。 痛みを軽減する テーピングによりアキレス腱にかかる負担を軽くして、痛みを軽減できます。 アキレス腱はふくらはぎの筋肉である腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋が合流して、踵にくっつく部分の腱(けん)です。そのため、ふくらはぎの筋肉が働くとアキレス腱に負担がかかります。具体的には、つま先立ちや足首を下に向けるように動かしたときです。 ランニングやジャンプでは、ふくらはぎの筋肉の働きにより、しっかり地面を蹴り出すため、アキレス腱に大きな負担がかかります。 テーピングにより、ふくらはぎの筋肉の働きをサポートしたり、足首の動きを制限したりすることでアキレス腱の負担を軽減でき、痛みを軽くする効果が期待できます。 動きをサポートする アキレス腱炎のために、立ったり、歩いたりしにくい場合でも、テーピングで痛みを軽減させたり、筋肉の働きを補助することで、動きをサポートできます。 前述のようにアキレス腱炎の原因は、アキレス腱に繰り返しかかるストレスです。スポーツやランニングなどは一時的に休止できますが、立つ、歩くといった動作は日常生活には不可欠で、アキレス腱に負担がかかるからといって行わないわけにはいきません。そのため、テーピングで少しでも動きやすくなるようにサポートすることが大切です。 アキレス腱炎の発生・再発の予防も可能 テーピングにより、アキレス腱炎にかかる負担を減らしたり、動きをサポートしたりすることで、アキレス腱炎の再発を予防が期待できます。 アキレス腱炎の発生する要因として、もともと足首の関節の動きが不安定だったり、足の筋肉の機能が不十分だったりする点が挙げられます。そのため、テーピングにより足首の動きを固定したり、ふくらはぎの筋肉をサポートしたりすることで、発生・再発を予防することができるのです。 また、アキレス腱炎後にスポーツを再開する場合にもテーピングは有効です。炎症により固くなったふくらはぎの筋肉やアキレス腱などの組織に急に負担をかけると、再発のリスクが高まります。そこで、テーピングによりサポートをしながら、運動を再開することで、アキレス腱に急な負担をかけないことが可能です。 アキレス腱炎に対してはテーピング以外の治療も必要 テーピング自体でアキレス腱の炎症が治るわけではありません。そのため、根本的な治療のためには、整形外科を受診して、適切な治療を受けましょう。 アキレス腱炎に対しては以下のような治療があります。 ・安静 ・外用薬の塗布 ・踵を高くする装具 ・物理療法(超音波など) 上記のような手術をしない保存療法が治療の中心になります。 また、再発予防には、アキレス腱の柔軟性低下や筋力低下、ランニングフォームの改善、練習量や練習環境の調整など、発生のリスクを評価して対策をします。医師や理学療法士などの専門家による指導を受けながらの実施が必要です。 アキレス腱炎に対するテーピングの方法 アキレス腱炎に対するテーピングの巻き方を具体的に紹介します。 【用意するテープ】 伸びるタイプのテープ4本 (踵から膝下までの長さを3本、足首に巻ける長さを1本) 【巻き方】 1. 踵から膝下までふくらはぎの中央を通るようにテープを貼る 2. 踵の外側から始めて、踵の内側を覆ったあと、アキレス腱の上を通って、ふくらはぎの外側までテープを貼る 3. 踵の内側から始めて、踵の外側を覆ったあと、アキレス腱の上を通って、ふくらはぎの内側までテープを貼る 4. 3本のテープを固定するため、テープが交差したところを覆うように、足首に1周テープを巻きつける 【注意点】 貼り始めは引っ張りながら貼り、最後2cm程度はそのまま貼る 上記の方法でテープの伸縮性を利用してアキレス腱の働きをサポートできます。また、アキレス腱に直接テープを貼ることで、保護する意味もあります。 まとめ・アキレス腱炎にテーピングを実施して症状軽減や再発の予防をしよう! アキレス腱炎はアキレス腱の使い過ぎによって起こるため、できるだけ負担を軽くすることが大切です。 テーピングはアキレス腱の働きを補助するため、症状の軽減や再発予防の効果が期待できます。本記事でのテーピング方法は自分でも可能ですが、もし不安な場合はお近くの整形外科などを受診して、直接指導を受けましょう。 また、テーピングは根本治療ではありません。痛みが生じた場合は、まず整形外科を受診して、適切な治療を受けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.129 監修:医師 坂本貞範
2023.05.08 -
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アキレス腱炎のつらい痛みの治し方!自宅でできるセルフケアのポイントとは? アキレス腱は、踵の骨とふくらはぎの筋肉をつなぐ腱で足関節を動かす際に重要な働きをします。そのため、アキレス腱炎になってしまった場合には日常生活や歩行でも痛みを感じてしまうため、早く治したい症状の 1つです。 アキレス腱炎と病院で診断された場合には、スポーツの中止、安静などのほかに鎮痛薬の処方や、運動療法が指導されます。その他にも整体や整骨院でのマッサージなどの様々な治療法がありますが、ご自宅で行うセルフケアも治療において重要です。 この記事ではアキレス腱炎のつらい痛みを一日でも早く治すために、ご自宅でできるセルフケアのポイントについて解説していきます。 安静・ストレッチ 痛みが生じてすぐの場合、強い炎症が起こっています。そのため、原則としてまずは運動を中止して、安静にするようにしましょう。一般的には2〜6週間程度の安静、スポーツ活動の休止が必要です。2週間程度安静にしてから再度医師の診察を受けて、スポーツの再開時期について指導を受けるようにしましょう。 ストレッチに関しては、足関節を反らして、アキレス腱を伸ばすように行います。 1. 階段などの段差につま先をかけて、踵をゆっくり下ろします 2. アキレス腱が伸びてきたら、我慢できる程度の痛みまで踵を下ろしてアキレス腱を伸ばしていきます 3. この状態を15秒ほどキープします 15秒ほどキープするのを1回とし、3 回 1セットとして1日2セットを目標に行うようにしましょう。 運動療法 ストレッチに加えて、ふくらはぎの筋力訓練が効果的です。 「カーフレイズ」や「つま先立ち体操」という方法であり、ストレッチと動作が似ていますが、踵を上げる動作によって筋力を強くすることができます。 1. 階段や台の縁に立ち、踵を段の端から出します 2. その状態で、踵をゆっくりと上げ下げさせます 3. この上下運動を10回ほど行います 10回1セットを1日2セットとして、少なくとも3ヶ月程度継続するようにしてください。この運動は痛みがあっても行うのを推奨していますが、我慢できないほどの痛みの場合には中止するようにしてください。 サポーター、インソールの使用 アキレス腱炎の発症にはふくらはぎの筋肉の柔軟性の低下や、足の回内や回外などのアライメントの異常が関連していると言われています。 また、足関節を反らしすぎるとアキレス腱が伸びて痛みが悪化するため、サポーターを使用して足関節が反りすぎないように制限したり、インソールを用いて、アキレス腱への負担を減らすことが有効です。 お薬の使用 病院では、ロキソニンなどの消炎鎮痛薬や、湿布が処方されます。いずれも用法用量を守ることが大事です。特に湿布は貼りっぱなしにしていると湿疹を起こしてしまうこともあるので、効き目が少なくなってきたら一度剥がして、次に貼るまでに時間を空けることが必要です。 整体、整骨院などでの治療 安静、運動療法、お薬といった治療法をしっかり行っていただいた上であれば、整体、整骨院、鍼灸院などでのマッサージ、ツボを刺激して痛みを軽減させる電気鍼療法、お灸などは必要に応じて受けていただいて大丈夫です。 病院ではマッサージなどは提供していないため、ご自身でケアが難しい場合には、ご利用いただくことも考えてよいかもしれません。 アキレス腱炎についてよくあるQ&A 1.アキレス腱炎のときにはどのようなサポーター、インソールを使えばいいですか。 回答:サポーターには様々な種類がありますが、アキレス腱専用のサポーターの使用がおすすめです。アキレス腱や踵を安定させることで、アキレス腱への負担の軽減や、足関節の背屈を制限することにより、痛みを抑える効果が期待できます。 インソールは踵の部分が高くなっているものを使うと、アキレス腱の過度な緊張を緩めることができます。 2.マッサージはどのように行えばいいですか。 回答:アキレス腱炎に対しては、まずアキレス腱を十分に伸ばすストレッチを行いましょう。 痛みによって体重をかけてストレッチをすることができない時には、座った状態で痛い方の足を持って、ゆっくりと足関節を曲げたり反らしたりすることでアキレス腱をマッサージすることができます。 3.病院や自分で治療をしていてもよくなりません。 回答:アキレス腱炎は大部分の方が数ヶ月で自然に改善しますが、中には痛みが続く場合もあります。適切な治療を4ヶ月以上行っても効果がない方では、手術治療が行われる場合があります。よくならない場合には注射や手術などの他の治療について病院に問い合わせるようにしましょう。 手術の方法はアキレス腱内部の変性した組織の除去や、腱周囲の癒着剥離、足底筋腱の切離など様々な方法があります。どのような治療を行っているか、事前に病院に確認しておくことがお勧めです。 まとめ・アキレス腱炎を早く治すには日々のセルフケアも重要! アキレス腱炎では、なかなか症状がよくならないこともあり、治療について不安になることも多いと思います。 病院での治療以外にも、ご自身で日々のケアを行うことも重要な病気なので、参考にしていただいて、一日でも早く治すための日々の治療に役立ててください。また治療には病院での正確な診断が必要なので、痛みがでて困っている方は早めに病院で診察・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S128 監修:医師 加藤 秀一
2023.05.04 -
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アキレス腱の痛み、放っておくとどうなる?悪化する前に知っておきたいこと 「最近、なんだかアキレス腱が痛い」「アキレス腱が痛かったのがなかなか治らない」とアキレス腱周囲に痛みを感じ、それを不安に思った経験がある人は多いと思います。それはもしかすると、アキレス腱炎かもしれません。アキレス腱に炎症が起こることをアキレス腱炎といい、多くは自然に軽快します。 この記事ではアキレス腱の周囲の痛みについて「放置しているけど大丈夫かな」「悪化しないように何かできることはないかな」という疑問にお答えします。 アキレス腱炎とは? 不安に思う要因の一つは「分からないこと」ですので、まずはアキレス腱炎とはどのようなものかを知ってもらいたいと思います。 筋肉は腱という硬い組織を跨いで骨にくっつくことで、効率的に運動できる作りになっています。アキレス腱は人体の中でも最も大きい腱の一つです。筋肉の動作としては、足首を下に向ける(底屈)、下腿を後方から支えるという役割を担っており、歩行、走行、ジャンプ、スクワットのような膝を曲げ伸ばしする動作で重要な存在です。 アキレス腱炎とは文字通り、アキレス腱に炎症が起こることによる疾患です。アキレス腱の周囲の膜に炎症が及ぶとアキレス腱周囲炎といい、痛みの部位がわずかに移動することが特徴です。ただし、診断は区別されても治療法はほとんど同じになります。 アキレス腱炎の症状 アキレス腱炎の症状は、ふくらはぎから踵にかけての運動時の痛みです。特にアキレス腱を押さえると痛みが増加し、時にはアキレス腱が腫れて見えることもあります。重症になると歩けないほどの疼痛になることもあります。 アキレス腱炎の原因 アキレス腱炎の原因は、運動やスポーツなどの繰り返す動作の中で、アキレス腱に負荷がかかることで生じます。明らかな外傷はなくとも、微小なダメージが積み重なり発症します。 ・運動習慣のない人が急激に強い運動を行った ・運動習慣がある方でも、強い負荷が日常的に持続した ・強い扁平足がある ・適切でない靴を履いている(サイズが合わない、靴底がすり減っているなど) 上記のようなケースではアキレス腱炎になりやすいと言われています。 アキレス腱炎の診断 まず、アキレス腱に圧痛があるかという身体所見は最も重要です。超音波(エコー)検査やMRIで腱に損傷があるか、炎症があるかを確認することで確定診断になります。どちらも痛みや侵襲を伴う検査ではありませんので、安心して受けてください。 アキレス腱炎の治療 基本的には保存療法で経過をみます。保存療法とは、手術(小さなものも含む)を伴わない治療法で、安静、過度な負荷になる動作を行わない、消炎鎮痛剤の外用や内服などがあります。多くは保存療法で改善しますが、症状が強い場合では手術が行われることもあります。 明らかな受傷のタイミングがある場合は、アキレス腱以外にも損傷を生じている可能性があるので、注意が必要です。 応急処置としてPOLICE処置を行うのが良いでしょう。 POLICE処置 ・Protection(保護) ・Optimal Loading(適切な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) POLICE処置とは、Protection(保護)、Optimal Loading(適切な負荷)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取った処置です。 アキレス腱炎かなと思ったら アキレス腱炎は、多くは保存的に軽快する疾患です。「たまに痛い気がする」くらいであれば概ね問題はないことが多いです。しかし「運動の時に必ず、比較的強い痛みがある」くらいの状態になると、安易な判断は危険になります。 受診したほうが良いかなと迷った場合には、ぜひ専門家への受診をおすすめします。受診するのであれば、整骨院・接骨院よりも、整形外科の方が望ましいです。X線で骨折がないか、MRIやエコーがあればそのままアキレス腱や周囲の組織で炎症や断裂がないかの評価が行えます。痛みに応じて消炎鎮痛剤の処方や松葉杖の貸出もしてくれるでしょう。 アキレス腱炎を放っておくとどうなる? 初期に適切な対応ができていないと、症状が長引いてなかなか治らない、一時的に症状が改善して治ったと思ってもまた再発するといったように、ずるずると長い期間痛みと共にする可能性があります。あまりに長引くようであれば保存的には改善は望めないとして、手術を受ける必要もあります。 炎症が持続すると瘢痕化(結合組織の増殖)が起こり、足首の可動域が減り、力が入りにくいといったことになることもあります。アキレス腱は多くの動作で重要な役割をしているので、力が入りにくくなればそれだけ動作(立ち座りや歩行)への影響も出てきます。 悪化する前に知っておきたいこと 「アキレス腱炎と思ったら/アキレス腱炎と診断されたら、まずは安静と過度な負荷を避ける」これを知っておくだけでも、アキレス腱炎の治り方が違います。 足をくじいてしまった、あの運動をした日から痛い、と思うことがあれば上記にあるPOLICE処置ができれば初期対応としては良いでしょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 Q : アキレス腱炎を自分で診断する方法はありますか? A : アキレス腱部分に痛みを感じる場合は、アキレス腱炎の可能性があります。ただし、正確な診断をするためには医師または専門医の診察が必要です。 Q : アキレス腱炎は完全に治るのでしょうか? A : 大半の場合は治癒しますが、適切な治療を受けない場合や重症化した場合には、痛みが長引いたり、慢性的な痛みが残ることがあります。早期の治療が重要です。 まとめ・アキレス腱炎、放っておくのはNG!長引く痛みは病院の受診を! この記事ではアキレス腱炎について、皆さんに知っておいてほしいこと、放っておくとどうなるかについて解説しました。 アキレス腱炎は適切な対応をすれば多くは自然に軽快する疾患です。何もせずに放置してしまうと痛みが長引いたり、ふくらはぎに力が入りにくくなったりすることもあります。少しの痛みであれば問題ないことが多いですが、特に痛い間は無理することなく、安全に生活できるとよいですね。受診するかを迷うくらいの強い症状、長引く症状があれば整形外科を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.128 監修:医師 坂本貞範
2023.05.02 -
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アキレス腱炎やってはいけないこと アキレス腱炎になってしまった場合、過度な運動や無理な負荷をかけることは、症状を悪化させてしまう可能性があります。そのため、アキレス腱炎になった際には、避けるべき行動や注意点を把握し、適切な治療法を行うことが大切です。 この記事では、アキレス腱炎になった際にやってはいけないこと、予防のために重要なことについて詳しく解説します。 アキレス腱炎とは アキレス腱炎とは、ふくらはぎの筋肉と踵の骨を繋ぐ腱であるアキレス腱が炎症を起こし、痛みをだす病気です。 慢性的な負荷や急激な運動量の増加によって引き起こされることが多く、ランニングやジャンプ競技のアスリートに多い病気です。 アキレス腱炎で避けるべき行動や注意点 1.運動について 治療の原則として、まずは運動を中止して適切な期間の安静が必要です。 一般的にアキレス腱炎になってしまった場合には2〜6週間の安静、スポーツ活動の休止が指示されます。その間の運動療法として「つま先立ち体操」という、下腿三頭筋の筋力訓練が改善に有効です。 【つま先立ち体操】 ・階段や台の縁に立ち踵を段の端から出した状態でゆっくりと上下させます。 ・膝を伸ばして行うのと、曲げて行う場合とで、使う筋肉が異なるので両方を試してみましょう。 ・10回1セットを1日2回で、少なくとも3ヶ月継続します。 このトレーニングでは痛みがあっても継続し、無痛となるまで実施することが推奨されています。ただし、動作に影響がでるほどの痛みの場合には中止するようにしましょう。その上で、運動の再開時期については症状に応じて決定されます。 2.不適切な靴選び こんな靴、履いていませんか? ・足に合わない靴 ・つま先が細い靴 ・ヒールの高い靴 ・靴底がすり減った古い靴 上記のような靴は、足への負担が大きいので控えるようにしましょう。アキレス腱炎を引き起こす原因となったり、症状を悪化させてしまう可能性があるため、靴選びはとても重要です。 3.無理な自己治療のリスク アキレス腱部の痛みがあるときには、安易に自己治療を行わず、まずは病院を受診して診断を受けるようにしましょう。どのような病気でも言える事ですが、自己治療は、間違った治療により症状が悪化する可能性もありお勧めできません。 また、病気を放置することで、痛みが長引く可能性もあるので、早めに病院で治療を開始することをお勧めします。 4.適切な治療の重要性 痛みが続いている状態でスポーツを継続すると、改善しないだけではなく、アキレス腱の痛みをかばうことによって別の部位の障害を発症してしまう可能性もあります。 そのためアキレス腱炎の治療は、安静と、適切な運動療法を取り入れることが重要です。 アキレス腱炎の予防について 1.適度な運動の種類・方法 前述したような下腿三頭筋をストレッチしながら挙上させる「つま先立ち体操」は、アキレス腱炎の治療に有効です。 予防のためにも、運動前にはアキレス腱を十分にストレッチさせてからスポーツを行うようにし、つま先立ち体操で下腿三頭筋の筋力強化も行うようにしましょう。 2.予防のための靴選びについて 運動する際には、靴の選び方も重要です。 ・足にフィットするかどうか ⇨サイズ・幅・高さ ・クッション性があるかどうか ⇨足への衝撃を吸収してくれるもの ・アキレス腱に負荷がかからないもの ⇨かかとが高すぎないか、安定しているか ・インソールの着用 靴は、足にフィットし、クッション性があり、アキレス腱に負荷がかからないものを選ぶことが望ましいです。また、運動用の靴は、使用期間を守り、新しい靴に買い替えることが大切です。 また、アキレス腱への負担を減らすための予防に、インソールの着用も効果的です。最近では、足の形に合わせたオーダーメイドのインソールも出ているのでおすすめです。 3.日常生活での注意点とは アキレス腱は、日常生活でも負荷がかかることがあります。 たとえば、長時間の立ち仕事や、ハイヒールの着用は、アキレス腱に負担をかけることがあります。そのため、できるだけ座ったり、ヒールが低い靴を選んだりすることが予防につながります。 またアキレス腱の柔軟性の低下が発症につながるので、起床時や入浴後など十分にアキレス腱をストレッチするようにしましょう。 4.アキレス腱炎になった際にするべきこと まずは適切な診断をつけることが必要です。症状がでて改善しない時や、日常生活、スポーツをすることが困難なときには無理をせずに早めに病院を受診して、診断と今後の治療についてアドバイスを受けるようにしてください。 5.アキレス腱炎は早期発見・早期治療が重要 アキレス腱炎は大部分が保存治療で良くなりますが、痛みが長引き手術を受ける方もいらっしゃいます。 また、悪化を防ぐためにも、痛みが出た場合には、運動を控えることが必要です。自己判断や自己治療を行わず、早めに医師の診断を受け、適切な治療を行うようにしましょう アキレス腱炎についてよくあるQ&A Q. アキレス腱炎の治療にはどのようなものがありますか。 A. 安静や運動療法のほかに、局所注射療法、PRP(自己多血小板血漿)注入療法、手術治療などの方法があります。 PRP(自己多血小板血漿)注入療法は新しい治療法ですが、保険の適応が十分でないことや実施している施設も限られています。しかしながら最近ではアスリートが実施するなど、注目を浴びています。 治療を受けるかどうかは、担当の医師と十分に相談してから治療を選択するようにしましょう。 Q. アキレス腱炎に対する注射はどのような方法ですか。 A. 炎症を抑える目的で腱内部や周囲注射する方法があります。 注射する薬剤は局所麻酔薬、ヒアルロン酸、生理食塩水、ステロイド剤など様々です。ステロイドは炎症を抑える効果が強いのですが、腱の脆弱化や断裂を起こす可能性があるので、何度も注射することは勧められません。 Q. アキレス腱炎に対する手術はどのようなものがありますか。 A. 保存治療を少なくとも4ヶ月以上行っても効果がない方では、手術治療が行われる場合があります。 痛みが長引く方では、手術を実施している施設かどうか受診の前に事前に確認しておくと以降の治療がスムーズとなります。 まとめ・アキレス腱炎やってはいけないこと アキレス腱炎になってしまった場合、無理な運動は症状が悪化してしまう可能性があります。 また安静だけではなく、十分な運動療法も治療に効果的です。そのためには正確な診断と早期の治療開始が必要ですので、痛みがでて困っている方は早めに病院で診察・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S127 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.26 -
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アキレス腱炎の症状とは?セルフチェックの方法を解説! はじめに アキレス腱炎は、急激な運動量の増加や過度なストレスによって引き起こされることが多い、足の痛みが生じる病気の一種です。 今回はアキレス腱炎の症状と対処方法、セルフチェック方法や運動再開のポイントなどについて解説します。 アキレス腱炎とは アキレス腱炎は、踵の骨(踵骨)とふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)をつなぐ腱であるアキレス腱が、炎症を起こす状態です。運動や立ち仕事が原因となることが多く、急激な運動量の増加や、過度な負担が症状を悪化させることがあります。 スポーツでは、ジャンプを繰り返すスポーツや陸上、剣道などを行う選手に発症することが多いです。下腿三頭筋はつま先立ちや、地面を蹴って歩くなど、足関節の底屈運動とよ呼ばれる動きに関与します。地面を蹴る動きが多いこれらのスポーツでは、この動きが多くアキレス腱に負荷がかかり続けます。 ただし、スポーツなどをしていない場合でも、加齢によるアキレス腱の変性や靴の不適合、偏平足、肥満などが原因で、アキレス腱炎になる方もいます。 アキレス腱炎の症状 アキレス腱炎になると、以下のような症状がみられます。 ・アキレス腱周囲が痛い ・つま先立ちをすると痛い ・ふくらはぎのこわばり ・アキレス腱に腫れや熱感がある 特にアキレス腱の痛みやこわばりは、朝( 起床後 )、最初の数歩が痛いことが特徴的です。また、炎症が進行すると腱の周りが腫れたり、熱をもって赤くなったりすることもあります。 アキレス腱炎のセルフチェック なんとなくアキレス腱のあたりが痛むけど、まだ病院に行くほどではない、という場合は、以下の方法でセルフチェックをしてみましょう。 ①立ち姿勢でかかとを浮かせる動作を繰り返す →痛みがある場合は、アキレス腱に軽度の炎症がある可能性があります。スポーツの中止や運動強度の調整を考えましょう。 ②両手でアキレス腱を触って痛みや腫れを確認する →左右で比べてみることも大切です。腫れや熱感がある場合は炎症を起こしている可能性があります。 アキレス腱炎かなと思って放置していたら、「アキレス腱断裂」や「踵骨骨折」だったという場合もありますので、これらのセルフチェックで当てはまる項目がある方は、まず整形外科の診察を受けて、正しく診断してもらうことが大切です。 アキレス腱炎は、運動し始めた時は痛みが強くありますが、我慢して運動を続けていると軽減してくるという特徴があります。アキレス腱炎を我慢したまま運動を続けると、難治性になったり、アキレス腱の断裂につながったりするので、無理して続けないことが重要です。 アキレス腱炎の治療 整形外科では、痛みの場所や性質、腫れなどを確認します。また、他の疾患と鑑別するために、エコー検査やMRI検査で、腱の状態や変性の程度などを見ることもあります。 アキレス腱炎と診断されたら 治療の基本は安静です。運動やアキレス腱に負担のかかる動きをしている場合は、一時的にそれを中止し、アイシングや消炎鎮痛剤などを使用します。テーピングなども併用して、アキレス腱にかかる負担を軽減させることも可能です。 また、踵の部分を高くした中敷きや偏平足用の中敷きを使用することで、アキレス腱の緊張を緩める方法もあります。 どうしても治りづらい場合は注射を行うこともありますが、ステロイドの注射は、アキレス腱を痛めて断裂しやすくするリスクもあるので、安易に使用するべきではありません。 あまりにも改善がみられない場合は、手術療法やカテーテルによる血管内療法などを行うこともありますので、専門機関へ相談することを検討してみてください。 再発予防と運動再開について 治療と同時に、再発予防を考えることも非常に重要です。 単なるオーバーユースだけでなく、練習環境やシューズ、体幹筋力の低下による姿勢不良なども影響してくるため、足りない部分を補う筋力トレーニングやストレッチ、練習環境の見直しも必要です。 運動再開は、痛みや腫れがなくなり通常通り歩けるようになってからです。いつから運動していいかについては、治療している医師や理学療法士と、しっかり相談しましょう。ただし、急激な運動量の増加は避け、徐々に時間や強度を上げていくようにしてください。 また、前述の通り再発予防のトレーニングやストレッチも積極的に取り入れましょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 Q:アキレス腱炎のような症状です。整形外科を受診する前に自分でできる応急処置はありますか? A:アキレス腱の痛みなどの症状が出た場合は、まず運動を中止しましょう。そしてなるべく動かさないように安静にして下さい。また、氷嚢などを使用し、アキレス腱部を冷やすことも有効です。 包帯がある場合は、アキレス腱をふくめて足首を固定することで、痛みを軽減できる可能性があります。 Q:市販薬を使用してもいいですか? A:市販の薬にも、鎮痛・抗炎症効果がある湿布や飲み薬があります。薬局の場合は、薬剤師の方に聞いてみるのもいいと思います。ただし、薬の使用は症状の一時的な緩和ですので、薬を使用して痛みが引いたからといって、すぐに運動を再開するのは避けて下さい。 また、病院を受診している場合は、適切な処方のために市販薬を使用していることを医師に伝えてください。 Q:再発予防のためのストレッチはどのようなものがありますか? A:ふくらはぎをのばすストレッチがよいといわれています。階段や段差などに片足のつま先だけかけて、ゆっくりと踵を下ろしながらアキレス腱を伸ばします。最初は無理のない範囲で行いましょう。 座った状態で、つま先にタオルをかけて引っ張るようにしながら、伸ばしていく方法も効果的です。 運動前や運動後にこれらのストレッチを行うことで、ふくらはぎの筋肉の柔軟性が高まり、アキレス腱の緊張を軽減することができます。 まとめ・アキレス腱に痛みを感じたら早めに医療機関の受診を! 今回はアキレス腱炎について解説しました。アキレス腱炎はスポーツ選手だけに限らず、誰にでも起こりうる症状です。アキレス腱の痛みを感じた時は、自分だけで対処せず、しっかりと医療機関を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.127 監修:医師 坂本貞範
2023.04.24 -
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アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは? アキレス腱はふくらはぎの筋肉から踵の骨につながる腱であり、歩行やランニングにおいて重要な役割を果たしています。 アキレス腱周囲の痛みを起こす病気としてアキレス腱自体に痛みの原因がある「アキレス腱炎」と、腱が踵の骨に付着する部分に痛みの原因がある「アキレス腱付着部症」があります。どちらも慢性的な負荷や急激な運動量の増加によって引き起こされることが多く、ランニングやジャンプ競技を行うスポーツ愛好家に特に多く見られますが、どこにどんな痛みがでるのでしょうか。 この記事では、アキレス腱炎の原因や症状、治療方法と対策について詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。 アキレス腱周囲の痛みを起こす病気 ・アキレス腱炎 ・アキレス腱付着部症 アキレス腱炎の症状と原因について アキレス腱部を押すと痛いというのが主な症状です。安静時の痛みはないことが多く、運動時の痛み、腫れがみられることが多い疾患です。 痛みの部位はアキレス腱が踵の骨に付着している部分から中枢側2~6cmがほとんどで、足関節を反らした際に腱が伸びることで痛みが増強します。 主な原因はスポーツ、自転車などでのオーバーユースや不適切なランニングフォームでのランニングなど、誤ったトレーニングによる負担の増加などです。しかし、原因不明の場合や別の病気の可能性もあるので診断のために早めに病院を受診することが大切です。 アキレス腱炎の診断について 診断のためには整形外科で診察を受けることが必要です。痛みの部位、症状から診断は可能ですが、補助的に画像検査を行うことがあります。 レントゲン・エコー・MRIによる診断 レントゲン写真ではアキレス腱の内部に石灰化を認めることがあり、エコーではアキレス腱の肥厚と、腱周囲の血流の増加を確認できることがあります。またMRIが診断に有用であり、アキレス腱の肥厚や、腱の炎症を反映して腱の内部や周囲の異常信号を呈する場合があります。 アキレス腱炎の治療と期間について 初期の治療は基本的に保存治療が行われます。悪化しないための対策をご紹介していきます。 保存療法 軽症の場合は全治3ヶ月程度ですが、回復までの治療期間は症状が続いた期間や病気の重症度によって変わってきます。治療は整形外科で行うことが多く、局所安静やアイシングで患部を冷やすこと、鎮痛薬の服用や局所への注射、理学療法士によるリハビリ・ストレッチングの指導・マッサージなどの方法があります。 局所の安静についてですが、痛みが強い場合には炎症が強いことが多いので松葉杖を使用するなどして痛い方の足を無理に使わないことが大切です。 局所への注射は、アキレス腱と周囲の組織の癒着を剥離する筋膜リリースや炎症を抑えるステロイドの投与などが行われます。 また整骨院の通院についても行なっていただいて構いません。整骨院では電気治療や超音波治療、低周波治療器での治療、温める温熱療法などを行う場合があり、医師の指導のもと治療を受けるようにしてください。 手術療法 これらの治療を行なっても6ヶ月以上痛みが続き効果がないなど、保存療法での完治が難しい場合には手術治療の方法もあります。 手術では皮膚を切開して、炎症を起こしている腱の周囲の組織を部分的に切除します。さらに腱自体に異常がある場合には腱の部分切除を行い、腱の切除部分が多くなった場合には他の部位から腱を移植して補強を行います。 治療内容が病気の重症度によって異なるため治療費も様々です。詳しい治療費の見込みについては担当医師に確認するようにしましょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 Q:アキレス腱炎で痛くなる場所はどこですか。 A:アキレス腱が踵の骨に付着している部分から中枢側で腱自体に痛みがある病気を、「アキレス腱炎(別名:アキレス腱周囲炎)」と言います。アキレス腱と踵の骨の境界部分の痛みは「アキレス腱付着部症」といい、治療方法が多少変わってきます。 Q:アキレス腱炎に対する注射は効果がありますか。 A:炎症を抑える目的で腱内部や周囲にステロイドを注射する方法があります。しかし、腱の脆弱化や断裂を起こす可能性があるので、何度も注射することは勧められません。また、腱の周囲を剥離する目的でヒアルロン酸や生理食塩水などの注射を行う場合もありますが、病気の状態によってはご本人に適していない場合もあることや、行なっていない施設もあるので事前に確認することが望ましいです。 Q:アキレス腱炎に効果的なストレッチはどのような方法ですか。 A: 下腿三頭筋や、太ももの裏にあるハムストリングのストレッチは、治療、再発の予防に効果的です。下腿三頭筋のストレッチは階段や足台などの段差があるところに痛い方の足の先をかけ、踵をゆっくりと降ろしていきます。我慢できる程度の痛みの範囲で10〜15秒ほど伸ばすのを3回行い、これを朝・夕の1日2回行います。夜は入浴後など身体が温まっている状態で行うのが効果的です。 まとめ・アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは? アキレス腱部の痛みはアキレス腱炎のほかに、アキレス腱付着部症という病気があります。どちらもオーバーユースや急な運動によって起こります。症状、治療方法が多少異なりますので、正確な診断のために整形外科を受診するようにしましょう。 治療は基本的には保存治療ですが、飲み薬や注射だけではなく、安静やアイシング、ストレッチなどご自身のセルフケアも重要な病気です。アキレス腱炎に悩む方や、スポーツをされる方はぜひ参考にしていただき、健康な身体作りに役立ててください。この記事がご参考になれば幸いです。 No.S126 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.21 -
- 脳梗塞
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脳梗塞とはどんな病気?3つの種類と気をつけたい合併症とは 脳梗塞は誰にでも起こる可能性がある重篤な病気であり、時に生命に関わることもあります。そのため、症状や原因について正しい知識を持つことが重要です。原因、 なぜ、合併症 看護、 消化管出血 なぜ この記事では脳梗塞の3つの種類、原因について解説します。また、治療の上で気をつけるべき合併症やその原因、脳梗塞についてよくある質問についても紹介します。 脳梗塞の3つの種類について まず脳卒中は、脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と、血管が破れて出血する「脳出血」に大きく分けられます。 脳梗塞では神経細胞に血液を運ぶ血管の一部が詰まってしまい、神経が障害されることにより麻痺や痺れ、意識障害などのさまざまな症状を起こします。 さらに脳梗塞は、血管が詰まる原因によって3つに分類されます。 ラクナ梗塞 1つ目が、動脈硬化によって細くなった血管が詰まる「ラクナ梗塞」です。細い血管が詰まることが多く、他の種類の脳梗塞と比べて症状が軽いことが多い点が特徴です。 アテローム血栓性脳梗塞 2つ目が、血管にコレステロールが溜まった結果、そこに血の固まりができて詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」です。最初は軽症でも、徐々に血管が詰まっていき症状が悪化するなど、段階的に増悪することがあるという特徴があります。 心原性脳塞栓症 3つ目が、心臓など他の部位で作られた血の固まりが血流によって脳の血管に運ばれて詰まる「心原性脳塞栓症」です。大きな血の塊が太い血管に詰まることによって突然発症し、障害される脳の範囲が広いため重症な場合が多い点が特徴です。 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧、糖尿症、脂質異常症や喫煙などの生活習慣が危険因子のため、これらを適切に治療することが予防のために必要です。 一方で、心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈が原因であることが多く、その他にも心臓弁膜症でも起こりえます。心房細動では脈が乱れ打ちになってしまい、心臓の中で血液がよどんで血栓ができてしまう場合があります。この血栓が脳の血管に運ばれて詰まってしまうと脳梗塞を発症します。 そのため、脳梗塞のリスクが高い方は抗凝固薬という血液をサラサラにするお薬を服用して予防をする場合があります。お薬には副作用もあるため、薬のリスクや服用のメリット、デメリットを考えて治療が検討されます。 脳梗塞の合併症について 脳梗塞では、伴う合併症に発熱、肺炎、脳・消化管出血、脳梗塞の再発など、さまざまなものがあります。 ではなぜ起こるのでしょうか。主な合併症の種類と原因を解説していきます。 発熱 ・人の体温は脳の中枢で管理されていて脳梗塞で脳が障害を受けると体温調節中枢も障害され発熱することがあります ・通常は解熱鎮痛薬で対症的に治療します。 誤嚥性肺炎 ・意識障害や、飲み込みの機能の低下によって唾液や痰が肺に入って肺炎を起こしてしまうことがあります ・誤嚥性肺炎と呼ばれており、抗菌薬の投与や酸素投与などを必要とする場合もあります 脳・消化管出血 ・動脈硬化は血管の色々な部位に起こるので、一度脳梗塞を起こした方は再発する危険性が高くなっています ・再発を予防するために血液をサラサラにする薬を服用することが推奨されます しかし、血液をサラサラにする薬の副作用として、脳、胃や腸などの消化管で出血を起こしてしまう場合があります。脳出血では麻痺の悪化、消化管の出血では貧血によって全身状態が悪化してしまうリスクがありますが、完全に予防することは困難で早期発見、対処が重要になってきます。 脳梗塞についてよくあるQ&A Q : 脳梗塞になりやすい人の特徴は? A:脳梗塞の危険因子として生活習慣病があります。 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられ、健診で異常を指摘されている方は早めに治療を開始することが勧められます。 Q : 脳梗塞の前兆の症状はありますか? A:脳梗塞は突然発症するものから、前兆を伴う場合もあります。脳梗塞の前兆とは急に手足や顔の麻痺やしびれが出現して、時間が経って改善することです。 この症状は一過性脳虚血発作と言われており、動脈硬化などによって一時的に脳の血流が悪くなることが原因とされています。 一過性脳虚血発作がみられた場合には脳梗塞になってしまう危険性があり、早期に病院で治療することが必要です。 Q : 合併症を予防する方法はありますか? A:現代の医学でも合併症を完全に予防することは困難です。危険性を下げるために、発症してからすぐの間は医師、看護師の治療や指導を守ることが必要です。 また消化管出血については、胃潰瘍の既往がある方などでは胃酸の分泌を抑えるお薬を服用してリスクを下げる方法が取られる場合があります。 まとめ ・脳梗塞を起こさないように早期発見・治療することが最も重要 脳梗塞にはラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つがあり、それぞれ発症の原因や重症度が異なるのが一般的です。 また、治療の過程で発熱や肺炎を起こす場合があり、再発予防のための血液をサラサラにする薬の使用で出血を起こしてしまうことがあります。そのため、脳梗塞を起こさないようにすることが最も重要ですので、脳梗塞に関する正しい知識を持ち、予防に努めた上で症状がある時には早期発見・治療することが大切です。 健康で充実した生活を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。 No.126 監修:医師 坂本貞範
2023.04.19 -
- 脳卒中
- 頭部
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頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは? シャンプーのときや髪をかきあげた時など、ふとしたときに頭にこぶのようなものに触れた経験はありませんか?放置して何事もなかった場合にはよいですが、押したり触れたりすると痛みがある場合は不安ですよね。 今回は、頭にできるこぶの原因と受診の目安について解説します。 頭のこぶはどのようなものがあるか 頭のこぶは大きく、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍に分けられます。 皮下血腫 皮下血腫はいわゆる「たんこぶ」のことです。頭をぶつけた際に、皮膚の近くの血管が切れてしまい、血溜まりを作ってしまった状態です。 皮下血腫自体は特に治療をせずに治ることが多いですが、頭を打撲して嘔吐したり、意識が悪くなったり、打撲した前後のことを覚えていなかったりする場合にはすぐに受診をするようにしましょう。 感染 ニキビは皮脂が毛穴を閉塞することで、アクネ菌が増殖することで炎症を起こします。ニキビといえば顔のイメージがありますが、頭皮にも起こることはあります。 また、毛包炎・毛嚢炎は毛穴に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が感染することで炎症を起こす疾患です。どちらも菌により炎症が起こるので、押すと痛い、赤く腫れることがあるのが特徴です。 皮膚炎 頭皮がシャンプーや整髪料、髪染めなどに反応してしまい、炎症を起こす接触性皮膚炎もこぶ・できものの原因になります。ただれ、水ぶくれが多く、大きなしこりはあまり起こりません。原因となるものを使用しないことが重要です。 腫瘍 腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。 良性の腫瘍 良性の腫瘍には「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤は、毛穴の一部に皮脂などが溜まって、袋状となった良性の腫瘍です。柔らかいしこりとして触れ、痛みはあまりありません。内部で細菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、痛くなったり膿が出たりすることがあります。 脂肪腫も良性の腫瘍です。同じく、柔らかいしこりとして触れます。 悪性の腫瘍 頭皮にできる悪性腫瘍には、「有棘細胞癌」や「悪性黒色腫」があります。触るとごつごつしたり、硬いという特徴があります。また、潰瘍となって液体が出てきたり、血がでたりすることもあります。 一般に良性のものでは大きさは変わらずに経過することが多いです。しかし、小さなイボとして感じていたものがどんどん大きくなっている、血が出ているなどは悪性を疑う情報となります。 脳卒中との関係は? 頭は外面から、皮膚、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳とたくさんの層構造になっています。 頭蓋骨という非常に硬いもので分け隔てられているので、皮膚のできものと脳卒中に直接的な関係はありません。イボやこぶとして触れる病気は、主に頭の皮膚に起こることが多いです。 逆に脳卒中になっても、頭皮にこぶができることもありません。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤も、皮膚の上から触れるものはありません。脳卒中が考えられる症状は、突然起こることが特徴です。 脳の発症部位によりその症状は様々ですが、代表的な脳卒中の症状には、 ・言葉が出づらい ・左右どちらかの手足が動かしにくい ・意識の状態が悪い などがあります。 頭のこぶで受診したほうがよい場合 こぶやしこりが赤く腫れて痛い場合、膿が出てくる場合は感染症の可能性があります。切開や抗菌薬を投与したほうが速やかに治る可能性があるため、数日待っても良くならない場合は受診をおすすめします。 こぶやしこりが、大きくなっていたり、数が増えたりする場合は悪性腫瘍を考えなければなりません。早めの受診をしましょう。 また、頭をぶつけた際にできたこぶが、どんどん大きくなっている、意識の状態が悪くなっている、話しづらさや手足の動きづらさが出てきたりするなどの場合は、早急に受診をするようにしましょう。 頭のこぶについてよくある質問 Q: 小さな時からある頭のこぶはどうしたらよいですか? A:幼少期から長期間ある場合は、重篤な病気である可能性はそこまで高くはないでしょう。見た目として気になる場合、赤みや痛みなど新しい症状がでた場合、大きくなる場合は受診するようにしましょう。 Q:頭のこぶは何科を受診したらよいですか? A:皮膚科や形成外科を受診するのが良いでしょう。 頭のこぶやしこりが気になるのなら、皮膚科もしくは形成外科を受診しましょう。頭をひどくぶつけて、皮下血腫(たんこぶ)ができた際には、脳外科を受診するのが良いでしょう。 受診する際は、いつ頃からできているか、できものに心当たりはあるか、痛みはどうか、他に症状がないかを言えるようにすると、正確な診断に繋がりやすいです。 Q:頭のこぶに痒みがある場合どうしたらよいですか? A:まずは頭を清潔にしましょう。シャンプーや整髪料を変えたなどがあれば、一時的に使わずに様子を見ましょう。かゆみがひどくて掻きむしってしまう場合は、皮膚科などを受診するとよいでしょう。 まとめ・頭のこぶに少しでも異常を感じたら早急に受診をしよう! 頭のこぶは自分では見えない部分なのでより不安にも感じやすいと思います。痛みや膿がある場合、大きくなっている場合、数が増えている場合は、感染症や悪性腫瘍の可能性があるので、お近くの皮膚科や形成外科、脳外科など、早急に受診をしたほうが良いでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S125 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.17 -
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捻挫を早く治すために!正しい応急処置方法を紹介 捻挫はスポーツや日常生活の中でよく生じる外傷の一つです。しかし、捻挫がどのようなものか、さらに応急処置の方法についてご存じでしょうか。 この記事では、捻挫とその応急処置方法を詳しくご紹介します。さらに、捻挫についてのよくある質問にもお答えしています。ぜひご参考にされてください。 捻挫とは? 関節は、骨と骨の間に構成されるものです。基本的な構造には、関節軟骨(クッションの働き)、関節包(関節の周りを包み込む外側の膜)、靱帯(関節の安定性を補強する役割で、関節内のものも、関節外のものもある。)などがあります。 捻挫とは関節に何らかの外力がかかって起こる、骨折や脱臼以外の怪我のことを指します。つまり、軟骨や靱帯、腱(筋肉と骨をつなぐもの)の怪我です。 骨折や脱臼はX線写真で判断ができますが、捻挫はX線では判断出来ません。どのような衝撃が加わって怪我をしたのか、今の関節の状態はどうなのかが重要であり、必要があればMRIを利用しながら診断を行います 捻挫の中でも靱帯の重症度は、靱帯の損傷の程度によって決められます。 ・1度:靱帯が伸びてはいるが切れてはない状態 ・2度:靱帯の一部が切れている状態 ・3度:靱帯が完全に切れている状態 捻挫の応急処置 捻挫を早く治すには、まずは応急処置と適切な診断が必要です。捻挫だと思っていたのに実は骨折だった、大したことないと思っていたら全然症状がよくならない・・・などがないように受診をしましょう。 捻挫が起きた際には「POLICE処置」がよいとされています。 「POLICE処置」 ・Protection(保護) ・Optimal Loading(適切な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) 以前は「RICE(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)処置」が進められていましたが、近年ではPOLICE処置に置き換わりつつあります。 POLICE処置の具体的な方法 それぞれの項目は以下の通りです。 Protection(保護) ・装具やシーネ、三角巾、サポーターなどで受傷部位を保護します ・更なる外力で損傷を悪化させるのを防ぐ目的です Optimal Loading(適切な負荷) ・以前は受傷部位の安静(Rest)がよいとされていましたが ・最近では適切な負荷が組織の修復によいのではと言われています ・適切な負荷については、医師などの専門家による指示を聞くのが良いでしょう Ice(冷却) ・氷嚢や氷を入れた袋などで冷やします ・感覚がない中、無理してまで行う必要はありません ・風邪の際に用いるような冷却シートは、表面をひんやりと冷やす程度で関節の内部まで冷やす効果はありません。 ・用いるのなら消炎鎮痛剤の入った湿布を用いましょう ・最近、神戸大学より、重症の筋挫傷に対するアイシングは筋の修復を遅らせるということが報告されました。 ・軽度の筋挫傷についてはまだ効果がわかっていないため、今は迷ったらアイシングをする方がよいでしょう Compression(圧迫) ・受傷部位の腫れや内出血の増悪を予防するために、テーピングや包帯などで圧迫をします Elevation(挙上) ・腫れを防ぐ、軽減するために、心臓よりも上に受傷部位を置きましょう ・足を怪我した際は、仰向けになって足を椅子などに置くとよいでしょう ・あくまでも応急処置としてなので、移動の必要などやむを得ない場合は足を下ろしても構いません 応急処置の後は、適切に受診を行いましょう。軽度であれば保存的に加療が行われ、関節の不安定性が高い重度の場合は手術療法も検討されます。サポーターなどを使い関節に過度な負荷がかからない程度の運動から始めましょう。 捻挫に関してよくある質問 Q:捻挫とはどのような状態ですか? A:関節に外力が加わって生じた怪我のうち、骨折と脱臼以外のものを指します。X線で骨折、脱臼がないことを確認し、必要があればMRIを撮像します。どうやって怪我をしたかも診断には重要です。 Q:捻挫を早く治すには? A:まずは適切な診断が必要です。応急処置としてはPOLICE処置がよいでしょう。炎症が起きている間は消炎鎮痛薬なども併用し、過度な負担がかからないように注意しましょう。 Q:受診するなら整形外科?整骨院? A:正しく診断をつけるという意味でも、X線やMRIでの検査を行える整形外科をおすすめします。近くに整形外科がない、診察時間外の場合には整骨院でも良いでしょう。自分で判断して自己流で治療をするのはよくありません。 まとめ・捻挫を早く治すためには正しい応急処置と整形外科の受診を! この記事では捻挫について解説しました。 スポーツだけでなく日常生活でも怪我をする可能性はあるので、もし捻挫による怪我をしてしまった際は、「POLICE」による応急処置と適切な受診を忘れないようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.125 監修:医師 坂本貞範
2023.04.14 -
- 健康・美容
肋骨骨折、このまま放置して大丈夫?症状チェックとその治療法を解説! 肋骨骨折は、胸部の外傷で最も多くみられる疾患です。 ラグビーや柔道などの激しいスポーツ外傷や転倒、転落などのケガ、ゴルフのスイング、慢性的な咳などの繰り返しの負担で骨折する場合もあります。また、ケガをしてレントゲン写真を撮っても、骨折がわからない場合もあります。 「肋骨を骨折したかも・・・痛むけど放置してても大丈夫かな」など、痛みが続く場合、いつまで続くのか、自然に治るのか不安に感じてしまうことと思います。 この記事では、肋骨を痛めた時に病院を受診するべき目安の症状チェックと、肋骨骨折の治療法について解説していきます。 肋骨骨折の症状 肋骨は左右12対の骨で背中の胸椎から胸の前にある胸骨までかごのようになっており、その中にある心臓や肺などの臓器を保護しています。 肋骨骨折は胸部外傷の中で最も多くみられ、激しいスポーツ、転倒や打撲などの軽いケガ、交通事故などの大きいケガによって損傷してしまうことがあります。 症状は、骨折した部位の痛み、皮下出血、腫れです。骨折部を軽く圧迫すると骨がきしむ音がすることがあります。また、体をそらしたり、肩を動かしたりした時や、咳、深呼吸で痛みが強くなることが特徴です。 肋骨骨折の診断 診断は、問診と胸部の触診、レントゲンが一般的ですが、病院によってはエコーで診断を行うことがあります。 肋骨は肺や肋骨同士の重なりがあるためレントゲンでの判断が難しく、特に小さい骨折はレントゲンでは見つからない場合も多いことがあります。レントゲン写真のメリットとして、肋骨骨折に合併する気胸(肺を損傷して空気が漏れてしまうこと)を診断できることがあります。 エコーでは、レントゲンで明らかにならない小さいひびを見つけることも可能ですが、実施していない医療機関もあるので注意が必要です。 病院受診の目安 病院を受診する目安ですが、胸をぶつけた後に押して痛みがある、呼吸やくしゃみで痛みが悪化する、内出血がある場合には、骨折をしている可能性があるので受診をすることが勧められます。 また、息苦しさがある場合には気胸を起こしていることがあるので、できるだけ早めに受診するようにしましょう。 肋骨骨折の治療法 明らかな骨折、不全骨折(いわゆる“ひび”)、X線で骨折がはっきりしない打撲の場合でも、治療はほぼ同じです。 痛みが軽い場合には、消炎鎮痛薬の内服と湿布などで痛みを和らげます。 痛みが強い場合には、バストバンドやトラコバンドとよばれる固定帯で、骨折した部分を圧迫固定します。呼吸で胸が広がることによって、骨折した肋骨に負担がかかり痛みが出てしまいますが、息を吐いた状態でバンドを巻くことで、骨折部の動きが少なくなり痛みが緩和されます。 これらの治療で、多くは数週間で痛みが軽快します。骨折部のずれが大きいときや、複数の肋骨が折れている時には手術が行われることもありますが、かなり稀です。 また、大きいケガで血気胸(胸の中に血液や空気がたまること)がある場合には、呼吸の管理や胸にチューブを挿入する治療が行われる場合もあります。 肋骨骨折についてよくある質問 Q:肋骨が痛いのですが、どのような病気が考えられますか。 A:ケガなど明らかな原因がある場合には打撲、肋骨骨折が最も考えられます。また、ゴルフなどのスポーツ、慢性的な咳などがある時にも肋骨の疲労骨折の可能性があります。 これらの原因がない場合には、肋間神経痛という神経の痛みや、帯状疱疹、稀ですが骨の“がん”などを考える必要があります。帯状疱疹では皮膚のぶつぶつができますが、皮膚の症状より先に痛みがでることが多いので、肋骨周辺の痛みがあるときには皮膚の見た目にも注意するようにしてください。 Q:肋骨骨折はどのくらいで治りますか? A:骨折の痛みが軽減するまでは数週間、骨癒合するまでは2-3ヶ月を要するのが一般的です。 肋骨骨折は自然に骨が癒合する確率が高いので、固定のバンドは痛みが和らぐまでの数週間の装着で問題ありません。骨折を起こした後、骨折した部分には3週間程度で仮骨(骨のもと)が作られ、これによって骨折部が安定化することで痛みが和らぎます。その後徐々に骨形成が進むことで骨癒合していき、症状がなくなります。 Q:肋骨骨折をした後にしてはいけないことはありますか? A:大きなケガで血気胸がなければ、痛みの範囲で日常生活に制限はありません。ただし、重いものを持つなどの重労働、激しいスポーツなどの衝撃は痛みが悪化することにつながるので、控えるようにしてください。 まとめ・肋骨骨折の放置は禁物!症状が出た場合は早めに病院を! 胸部の外傷で最も多い肋骨骨折について解説しました。 動いた時や呼吸で痛みが悪化するので、症状がよくなるか心配になりますし、レントゲンでも明らかにならないことが多いケガの1つです。 通常は数週間で痛みがよくなり、特別な治療も必要がない骨折ですが、肺などの臓器の損傷や別の病気が隠れている可能性もあります。そのため、上記のような症状が出た後は早めに病院で診断してもらい治療を受けることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S124 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.12 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
頭痛で吐き気を伴うときは危険!考えられる病気やその対処法とは? 頭痛はありふれた疾患であり、日本人の約4割は、慢性的な頭痛持ちとも言われています。慢性的ではなくても、頭が痛いと感じたことがない人は、ほとんどいないのではないでしょうか。 「頭痛」といっても様々なタイプがあり、国際頭痛分類では、数百種類の頭痛が示されています。 今回は、そんな頭痛のなかでも危険な「吐き気を伴う頭痛」について、具体的にどのような病気が考えられるか、どのように対処したらよいのかなどを中心に解説します。 頭痛の種類について まず、頭痛の種類について詳しくみていきます。 頭痛にはたくさんの種類がありますが、大きく分類すると一次性頭痛と二次性頭痛にわけられます。 一次性頭頭痛とは、頭痛の原因となる疾患が特定できないものをいい、二次性頭痛は原因の疾患が特定できる頭痛です。 具体例としては以下の通りです。 一次性頭痛 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛 二次性頭痛 脳卒中、脳腫瘍、髄膜炎、慢性硬膜下血種、緑内障、副鼻腔炎 一次性頭痛は、直接命にはかかわらない頭痛です。命に関わることもあり特に注意しなければならないのが、二次性頭痛です。 怖い頭痛の種類の特徴とは ではどうやって、一次性頭痛と二次性頭痛をみわければよいのでしょうか。頭痛診療ガイドラインでは、以下のような症状の場合は、注意が必要といわれています。 ・発熱や意識の低下を伴う場合 ・がんや免疫不全疾患などを患っている ・急激に発症する今まで経験したことのない痛み ・50歳以上で初めて経験する症状 ・最近発症した新しい頭痛 ・ろれつが回らない、目が見えにくいなどの症状を合併している 頭痛にこれらのような症状を伴う場合は、原因となる疾患が隠れている可能性があります。我慢せずに、病院を受診し、検査を受けることをおすすめします。 吐き気を伴う頭痛の種類と対処法 頭痛が強いと、吐き気も伴うという方も多いかもしれません。ここからは、吐き気を伴う頭痛について、詳しく見ていきます。吐き気を伴う頭痛は、主に3つあります。脳卒中、髄膜炎、片頭痛です。 脳卒中 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで起こる疾患の総称です。具体的には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つを指すことが多いです。脳卒中による頭痛は吐き気を伴うことが多く、注意が必要です。 くも膜下出血の場合は、「突然発症し、今までに経験したことがない強い頭痛」が特徴といわれています。 脳出血や脳梗塞の場合は、頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えないなどの脳神経が障害されている症状を合併します。また、頭がふらふらする感じやめまいを伴うこともあります。 このような症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 髄膜炎 髄膜炎は脳や神経を包む「髄膜」という膜に炎症が起きたものです。細菌やウイルスが原因のこともありますが、がんや薬剤が原因で起こることもあります。 頭痛や嘔吐を伴うものが多く、髄膜刺激症状と呼ばれる首を前に曲げると痛みがあるといった特徴的な症状を起こすことが多いです。発熱や下痢を伴うことも多く、風邪と間違われることもあります。 子供でも起こることがあり、子供が頭痛を訴えて嘔吐している場合はすぐに病院を受診して検査を受けるようにして下さい。 片頭痛 吐き気を伴う一次性頭痛として割合が多いのが、片頭痛です。 片頭痛は20〜40代の女性に多く発症し、こめかみから側頭部にかけてズキンズキンと脈打つような頭痛が生じます。また、頭痛が起きる前には、閃輝暗点(せんきあんてん)といって、視野にギザギザした光がちらつく前兆がある場合もあります。 片頭痛を発症した際には、光や音、においなどに過敏になることもあるので、暗く静かな場所で安静にするのが良いといわれています。 また、血管が開いて血行がよくなると症状が増悪するため、リラックスするために長風呂をしたり、マッサージを受けたり、お酒を飲んだりすることは逆効果なので避けましょう。 あまりにもひどい片頭痛の場合は、薬で症状を軽くすることもできるため、悩んでいる方は病院を受診するようにしてください。 頭痛でよくある質問 Q:片頭痛持ちですが、食事で気を付けることはありますか。 A:赤ワイン、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、豚肉などは片頭痛を誘発する可能性があるアミン類を含んでおり、控えるべきといわれています。 また、緑茶やコーヒーなどに含まれているカフェインは、摂取しすぎると悪化の原因となるため控えましょう。 Q:デスクワークだと頭痛が起こりやすいですか? A:ストレスや長時間のデスクワークが原因となって発症する、「緊張型頭痛」と呼ばれるものがあります。頭や首の筋肉の緊張によって引き起こされるといわれており、頭を締め付けられるような痛みがおこります。同じ姿勢を長時間続けることで悪化するため、30分に1回程度は休憩をとるようにしましょう。 また、筋肉の緊張をほぐすために、肩や首などをこまめに動かすストレッチを行いましょう。 まとめ ・吐き気を伴う頭痛は脳卒中や髄膜炎の可能性も!早めに病院の受診を! 今回は頭痛について解説しました。吐き気を伴う頭痛には脳卒中や髄膜炎などの二次性頭痛が隠れている場合があります。 頭痛はよくある症状ですが、たかが頭痛と甘く見ず、いつもと違うと思ったら早めに病院を受診するようにしてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.124 監修:医師 坂本貞範
2023.04.10 -
- 手部
ばね指は治せる?自力での治し方!【ストレッチでセルフケア】 「ばね指の症状を和らげる方法が知りたい」「自力でばね指を治す方法はないの?」 このような悩みのある方はいませんか? ばね指の症状を和らげるためには、適切な時期に正しいストレッチをするのがオススメです。 この記事では、ばね指を自力で治すためのセルフケアとして、ストレッチや生活で工夫するポイントなどを解説します。指の付け根の痛みやこわばりに悩む方は、ぜひ参考にしてください。 ばね指に対する簡単ストレッチの方法3つ 簡単に誰でもできるストレッチの方法を3つ紹介します。 ばね指に対するストレッチは、痛みが和らいでから行うのが原則です。なぜなら、痛みが強い時期は炎症が生じているため、無理なストレッチは逆効果になりかねません。 痛みが強い時期の対処法は後ほど解説するので、まずは正しいストレッチを学びましょう。 1. 腱鞘(けんしょう)ストレッチ ばね指は指の腱が通るトンネルのような腱鞘と呼ばれる部分や腱そのものが、炎症により動きにくさが生じる病気です。 そこで、腱鞘と腱の動きをなめらかにするストレッチが腱鞘ストレッチです。 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 親指の付け根と指の腹でブロック状のもの(リモコンや小箱など)を挟む 3. 指の付け根とその隣の関節は直角になるようにする 4. 指の付け根がしっかり縮むようにブロック状のものを押し合う 腱の緊張や腱鞘で生じる摩擦を和らげる効果が期待できます。 2. 親指の腱鞘ストレッチ ばね指になりやすい親指の腱鞘ストレッチです。 (右手が痛む場合) 1. 右手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 右親指の付け根をできる限り曲げる 3. 左親指で右親指を伸ばすように抵抗をかける 4. 右親指は抵抗に対して負けないように力を入れて押し合う 腱鞘ストレッチは、関節を曲げたり伸ばしたりといった反復した動きをともなわないのがポイントです。 3. 指のストレッチ 指全体を伸ばすストレッチです。できるだけリラックスした状態で行いましょう。 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 指をできるだけ伸ばす 3. 反対側の手でさらに指を伸ばす 指の腱は手首を通過していますので、手首のストレッチも柔軟性の改善につながります。 指を動かすと痛みが出る場合でも、手首なら痛みなく動かせるようであれば、手首を手の甲側に曲げたり、手のひら側に曲げたりといったストレッチも行うと良いでしょう。 ばね指に対してストレッチを行う場合の注意点 ばね指は日常的に指をよく使う場合に生じやすいため、ストレッチにも注意が必要です。むやみにストレッチをして、症状を悪化させないために、以下の点に注意しましょう。 ・痛みのない範囲で行う ・長時間行わない ・お風呂上がりに行う それぞれの注意点について詳しく解説します。 痛みのない範囲で行う ストレッチは必ず痛みのない範囲で行いましょう。痛みを我慢して無理にストレッチを続けると、腱や腱鞘に過剰な負担がかかり、炎症を悪化させる危険性があります。 また、勢いよくストレッチをすると無理なストレスが生じやすく、痛みの原因になります。ストレッチはゆっくり慎重に行いましょう。 長時間行わない ストレッチの時間は長くても10分程度にとどめておきましょう。 前述の通り、ばね指の原因は、指を使い過ぎて腱鞘や指の腱に繰り返しかかる負担です。そのため、ストレッチを過剰に繰り返したり、長時間行ったりすると、使い過ぎになってしまいます。 ストレッチは、あくまでも固くなった部分をほぐすのが目的です。長時間、何度も繰り返さないように注意しましょう。 お風呂上がりに行う 入浴後に血液の循環が改善すると、組織の柔軟性が高まります。その状態でストレッチをすれば、通常より高い効果が期待できます。 そのため、入浴後または入浴中にストレッチをしましょう。 ばね指で気をつけたいこと2つ ばね指では日常生活で気をつけたいポイントが2つあります。 指を冷やさない 1つ目は、炎症が改善したあとは、できるだけ冷やさないことです。血流の悪化は組織の固さにつながります。 腱鞘や腱の固さが強まると、腱鞘炎のリスクが高まるため、なるべく指を温めましょう。 指を使い過ぎない 2つ目は、パソコンやスマホ、手芸などで指を使い過ぎないことです。 パソコンは指の負担を減らすため、肘から先を机に乗せて、手首を安定させましょう。スマホは片方の手でばかり打つのではなく、両手をバランスよく使えば負担を分散できます。 あまり長時間作業をするのを控え、休憩とストレッチを挟んで作業をするのも良いでしょう。 ばね指の痛みが強い場合は安静や固定によるセルフケアが大切 ばね指の痛みが強いときは腱鞘に炎症が生じているため、ストレッチにより症状を悪化させる可能性があります。痛みがある場合は、無理せず安静にして、テーピングやサポーターで固定するのもオススメです。 また、炎症が起きてすぐは、温めるよりも冷やす方が良いです。アイシングをして、炎症の悪化を防ぎましょう。 ばね指は手指の使い過ぎが刺激となって生じるため、固定をすれば使いすぎを防ぎ、負担を軽減させることができます。 炎症が生じている時期には、早めに整形外科を受診して、炎症を抑える内服薬や外用薬を処方してもらうのも良いでしょう。 まとめ・ばね指はストレッチで症状を改善!痛みがあるときは無理せず安静にしよう ばね指にはストレッチを行い、腱の動きをスムーズにすることで症状の改善が期待できます。本記事で紹介した方法を参考にして、痛みのない範囲で、無理せず継続しましょう。 ただし、痛みが強い時期は炎症を悪化させる恐れがあるため、ストレッチを控えて、安静にするよう心がけましょう。日常生活で指に負担をかけないよう注意して、サポーターなどを活用したセルフケアも大切です。 ばね指の痛みや引っかかりに悩まされないためにも、ストレッチとセルフケアに取り組みましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S123 監修:医師 加藤 秀一
2023.04.07 -
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脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程とは 脳出血は日本における三大死亡原因のひとつである重症な病気です。社会復帰できる方もいますが、中には意識不明の重症となってしまい、意識が戻らず亡くなってしまう場合もあります。 脳出血を起こしてしまった方にとって、余命はどのくらいなのか、生存率・死亡率はどの程度で、退院後の生活はできるのか、長生きをすることができるのかなど、とても心配になってしまうと思います。 この記事では、脳出血を起こした後の予後予測、生存率や回復過程について解説していきます。 脳出血後の予後予測と死亡率 脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血に分けられますが、2022年の脳卒中データバンクでは、「脳出血」の頻度は18.0%と多くを占めていることが報告されています。また、脳出血の死亡率は高く、発症した方の13.8%が入院中に亡くなってしまっています。 脳出血の発症で死亡してしまう方が多いタイプとは 死亡してしまう方が多いタイプとして、血腫の量が多い、混合型の出血、脳幹の出血、急性閉塞性水頭症を合併している場合などがあります。血腫量が多い場合は血腫の除去、水頭症に対しては脳脊髄液を排出して圧力を下げるドレナージ手術の方法があり、同じく2022年のデータでは手術率は12.6%と報告されています。 このように、脳出血の大部分は保存的に治療されますが、約1割程度は手術を必要とする重症であると考えられます。 脳出血の予後は発症時の意識レベルが重要 脳出血の重症度、死亡率に影響するものとして、発症時の意識レベルがあります。一般的に発症時に意識状態が悪いほど、後遺症も重くなり、死亡率が高くなってしまいます。 また、時間経過とともに、症状が進行することも予後が悪い原因となります。実際に2022年のデータでは、脳出血において19.6%の方は発症時に昏睡状態(Japan Coma Scale 100以上)を呈しています。 脳出血後の5年生存率は報告によってばらつきがありますが、27〜57%程度と報告されており、発症した時の年齢が高齢で意識状態が悪い方ほど死亡率が高くなってしまいます。 参照:「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)報告書 2022年」 参照:「PubMed®初めての脳卒中後の5年生存率」 脳出血の回復過程について 脳出血を起こした後の回復過程は、急性期、回復期、生活期の3段階に分かれていて、それぞれの段階に応じた治療、リハビリが必要です。 回復過程は3段階 急性期(発症~3か月) 急性期は発症直後から2週間程度の期間です。 出血が広がらないように血圧を下げる治療や呼吸・循環を補助する治療が行われ、場合によって手術治療が行われます。急性期のリハビリは筋肉が衰えたり、関節が固くならないように無理のない範囲で行います。 回復期(3~6か月) 回復期は、急性期の終了後の3か月から6ヶ月までの期間です。 麻痺や動作の障害に対しては理学療法や作業療法を行い、しゃべり辛さ、飲み込みの障害に対しては言語聴覚療法を行います。 生活期(6か月以降) その後の生活期のリハビリでは軽めの運動を取り入れながら、生活の範囲を広げ、動作に慣れるリハビリを行っていきます。 実際に、2022年の脳卒中データバンクでは脳出血後のリハビリは、理学療法を86.4%、作業療法を84.4%、言語聴覚療法を74.3%の方が受けており、55.4%の方がリハビリ目的に転院できています。 しかし、同じく2022年のデータでは、自宅に退院できた方は約26%で、リハビリ目的以外の病院への転院が12.4%、その他の施設(介護老人保険施設、老人ホーム等)への退院が5.4%となっており、急性期を過ぎた後に自宅へ退院できる方は少なく、約2割程度の方は生活機能が低下してしまっていて、療養型病院への転院や施設へ入所していることがわかります。 脳出血についてよくある質問 Q: 脳出血の予防方法はありますか。 A:脳出血の原因は、高血圧性脳出血が約8割と最多です。 高血圧は基本的には無症状ですが、動脈硬化による脳梗塞や脳出血の原因になってしまうため、異常値を指摘されている方は早めに医療機関を受診して治療することをお勧めします。 Q:意識障害はよくなりますか。 A:脳出血の症状と治療は、出血した場所、出血の量によって異なります。 意識障害を起こしている場合は、脳幹という神経が集まっている部位の出血や、出血の量が多く脳が浮腫を起こしている可能性があります。 高血圧に対する降圧、脳の浮腫を和らげる点滴、呼吸状態が悪い場合には、呼吸の補助をするための人工呼吸を行い、場合によっては血腫を取り除くために開頭手術などが必要となることもあります。これらの治療によって意識状態が回復する場合もありますが、損傷した神経自体を回復させる治療はまだないため、重度の意識障害では症状が残ってしまう可能性が高くなると言われています。 そのため、脳出血を発症しないように、血圧管理を含めて日常的な生活習慣に気をつけることが重要です。 Q:脳出血はどこまで回復しますか。 A:脳出血による後遺症、回復の程度は、発症時の症状とその後リハビリにより大きく異なります。 発症した時に意識障害がある場合や高度の麻痺がある場合には、一般的に後遺症が残ってしまいます。また、発症後6ヶ月までは回復する見込みがあり、その期間に集中してリハビリを行うことが勧められます。 ご自身の想定される回復の程度、リハビリが必要な期間について担当の医師とよく相談するようにしましょう。 まとめ・脳出血は発症の予防、早期治療が最も大切! 脳出血は、生命はもちらん、一命を取り留めてもその後の生活に関わる重症な病気であり、発症の予防、早期治療が最も大切です。 現代の医療でも損傷された神経を完全に回復させることはできませんが、適切に治療をすることによって残された機能を回復させることができます。少しでも発症前の生活に戻れるようにリハビリを頑張っていただくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.123 監修:医師 坂本貞範
2023.04.05 -
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捻挫の腫れ、これって病院に行くべき?5つの症状チェックで判断を! 足を捻ってから痛みがあり、「軽い捻挫かな」と思っていませんか。 症状がひどい場合は病院に行くべきか、何科を受診するか迷っている方も多いと思います。軽症であれば湿布や安静による経過観察でいいかもしれませんが、しばらく経っても痛みが治らない場合は、ただの捻挫ではないかもしれません。内出血や腫れがひどい場合は、靭帯断裂や骨折の可能性もあります。 この記事では、捻挫で病院を受診するべき判断材料になる重症度を、5つのチェック項目に基づいて解説していきます。 捻挫とは 捻挫の多くは外傷が原因で、スポーツ中や歩行中などに段差を踏み外して、足関節を捻った場合などに生じます。 大部分は、距骨と足関節の外側にある腓骨(:ひこつ)を結び付けている外側の靱帯(前距腓靭帯)の損傷で、この部分の損傷が捻挫の90%を占めるという報告もあります。小児では靱帯よりも骨のほうが弱いので、靱帯が付いている骨の部分が剥離する「裂離骨折」も多くなってきます。 症状は、足関節外側の腫れ、痛みであり、体重をかけた場合に痛みが悪化することが多く、歩行が困難な場合もあります。 軽度の靭帯損傷が最も多く、その場合にはギプスやシーネ、サポーターで保存的に治療することが可能です。しかし、骨折の場合や靭帯の完全断裂、昔の捻挫によって足関節の不安定性がある場合には手術を要することもあります。そのため、初期の重症度の診断、治療が大切になります。 捻挫の重症度チェックリスト 足首を捻挫した時などに使われる重症度のチェックリストにOttawa Ankle Rule(以下、オタワ アンクル ルール)というものがあります。 このチェックリストは5項目からなり、該当する項目が1つでもあれば骨折が否定できないため、レントゲン写真を撮影した方がよいという指標です。逆にどれにも該当しなければ、骨折の可能性は低く、レントゲン写真は不要と考えてよいです。 オタワ アンクル ルールの5項目 1, 腓骨遠位端(外くるぶし)より6cmまでの中心線に圧痛がある 2, 脛骨遠位端(内くるぶし)より6cmまでの中心線に圧痛がある 3, 第5中足骨基部(かかとの小指側の骨の出っ張り付近)の痛み(圧痛) 4, 舟状骨(足背から内側にかけての部分)の痛み(圧痛) 5, 怪我をした側で 4歩以上その足に体重をかけることができない/歩けない 上の項目に1つでも当てはまる方は病院への受診をお勧めします。 一方で、靭帯の完全断裂については明確なチェックリストはないのですが、一般的に重症な靭帯損傷では痛みが強いため、オタワアンクルルールに該当することとなり、いずれにしても病院への受診を考えた方がいいという結果となります。 捻挫についてよくある質問 Q: 捻挫をした場合どうしたらいいですか? A:まずは痛みの部位を確認して、体重をかけることができるか確認しましょう。痛みの部位はチェックリストを参考にして、くるぶしの内・外側、かかとの外側、足背から内側にかけて押して確認します。押して痛みがある場合や体重をかけることができない場合には、病院受診をお勧めします。 また、初期対応として「POLICE」を行ってください。 POLICEとは ・Protection(保護) ・Optimal Loading(最適な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) 急性期には負荷をかけられないので、怪我をした直後は包帯で圧迫してアイシングを行い、足を挙上しておくようにしましょう。冷感湿布による冷却も、炎症の鎮静に効果的です。 Q:どのくらいで治りますか? A:軽度の靭帯損傷で、手術が必要ない場合には足関節をシーネやギプスで最低3週間固定することが推奨されており、長い場合には6週間程度固定を行うこともあります。また、スポーツの復帰時期については症状経過によります。 一般的には痛みがなくなった後からサポーターをして、ウオーキング、ジョギングなどの軽いスポーツから復帰し、徐々に元の競技へ復帰とします。その間にチューブやタオルを使って足関節周囲筋を鍛えておき、必要であれば予防のためのリハビリも行う場合があります。 Q:捻挫をしてから時間が経過したが、痛みが残っている時はどうしたらいいですか? A:捻挫による靭帯損傷は重症度により3段階に分類されます。このうち最も重症な「靭帯の完全断裂」では手術も検討されますし、治療が適切に行われなかった場合には足関節の不安定性を生じてしまいます。また、捻挫と思っていても、距骨という骨の軟骨が損傷してしまっていることもあります。 このように、痛みが残っている場合には、足関節の不安定性や軟骨損傷の有無など、原因を詳しく調べる必要があるため早めの病院受診が大切です。 まとめ・捻挫は病院での初期の診断と治療が大切! 捻挫はありふれた症状であり、軽く考えている方も多いかもしれませんが、症状が強い場合には、骨折や靭帯の完全断裂の可能性もあります。 また、多くの捻挫は怪我をしてから数ヶ月すると強い痛みは取れ、日常生活に支障はなくなります。しかし、症状が軽いからといって無理をすると関節内に二次的な損傷が進行することがあります。 このような関節内の損傷は、“変形性関節症”へと進行する原因にもなるため、早めに病院で診断・治療を受けることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.121 監修:医師 坂本貞範
2023.04.03 -
- 脳卒中
- 頭部
- 頭部、その他疾患
頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説! 日常生活のなかで、頭を打つことは少なくありません。立ち上がろうとして頭を打った、転倒した、階段から落ちた、交通事故で頭をぶつけた、殴られた・・・など、さまざまなエピソードがあります。 頭を打つとより危ない場所・安全な場所というのはありませんが、ぶつけた部位と強さにより様々な危険な症状が出ることがあります。では、どのような場合が危険なのでしょうか。 今回の記事では、頭を打った場合に見られる危険な症状や、考えられる疾患について詳しく解説していきます。 危険な頭の打ち方 頭を打った際、「強い力がかかって頭をぶつけた場合」には注意が必要です。 例えば、 ・1m以上の高さから転落した ・階段で5段以上の高さから落ちた ・受け身をとらずに転倒した ・交通事故で頭を打った ・車の外に放り出された などが考えられます。 ただし、高齢な方や薬(特に血液を固まりにくくする薬剤)の影響もあるため、同じ打ち方だから大丈夫ということはなく、その人ごとに判断する必要があります。 また、どのような原因で頭をぶつけたかも重要です。 例えば、「気を失って転倒して頭をぶつけた場合」には、心疾患や不整脈などの別の失神の原因も探さなければなりません。「急に手足の力が抜けて転倒した場合」には、脳卒中などの可能性もあります。 受診をした際には「どのようにぶつけたか」を伝えられるとよく、さらに目撃者がいれば伝わりやすいでしょう。 頭を打った際に危険な症状 誰が見ても重症な場合(明らかに意識の状態が悪い、手足の一部が動かない、血が止まらないなど)は救急で受診をしましょう。 一見重症に見えなくとも、以下の症状がある場合にはできるだけ早く医師の診察を受けるようにしましょう。 ・何回も嘔吐する ・頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、自分で症状を言うことができる人もいますが、小さな子供や高齢者では症状を言えないことがあります。何かがおかしいと思った際には、周りに助けを求め、子供でも大人でも悩まず受診するほうがよいでしょう。 頭を打ったことで起こること 大きく急性期(頭をぶつけてすぐ)と慢性期(頭をぶつけてしばらくたってから目立つようになる)に分けられます。代表的なものを以下に記載します。 急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫 脳と骨の間には膜が3層(外側から硬膜、くも膜、軟膜)あります。 頭をぶつけた数時間以内に、硬膜と脳の間で出血するものを「急性硬膜下血腫」、骨と硬膜の間で出血するものを「急性硬膜外血腫」といいます。急性硬膜下血腫は受傷すぐから意識が悪くなることが多いのに対し、急性硬膜外血腫は受傷しても数時間ほど症状が出ない「意識清明期」があるのが特徴です。 他の症状には、手足の麻痺、悪心・嘔吐、けいれん、瞳孔の左右差などがあります。 いずれもCTで診断でき、重症な場合には緊急で手術を行います。 外傷性くも膜下出血 頭をぶつけたことにより、くも膜と脳の間で出血が広がった状態です。 くも膜下出血はほとんどが脳動脈瘤(血管の一部が「こぶ」のようにふくらみ、破れやすくなった状態)によるものであり、頭をぶつけた場合は区別して外傷性くも膜下出血と呼ばれます。 基本は入院での経過観察で、脳圧が高くなる場合は投薬や手術などを行います。 脳挫傷 頭部打撲により、脳そのものが損傷してしまうことです。 頭をぶつけた場合は、ぶつけた部分とその反対の部分を損傷する場合があります。損傷された部位により、片麻痺(左右どちらかの手足が動かしにくい)や失語症(言葉が理解できない、言葉を表に出しにくい)、高次脳機能障害(後述)などがあります。重症な場合は、意識が悪くなったり呼吸がうまくできなくなったりします。 呼吸・循環(血圧や脳血流量)・脳圧・体温をコントロールを第一に行い、それでも進行する場合は手術も検討されます。 高次脳機能障害 頭部外傷では後遺症として、高次脳機能障害を起こすことがあります。 高次脳機能障害には以下のようなものがあります。 記憶障害 新しくものを覚えられない、思い出せない 注意障害 作業や生活の中で集中できなくなったり、気が散りやすくなったりする 社会的行動障害 自分から何もしようとしない「無関心」や社会常識から外れた行為(怒りやすい、性的に逸脱する行為、ギャンブルに熱中しすぎる)が目立つ 遂行機能障害 考えて、判断して、課題を解決するという一連の流れができない 頭を打った際のよくある質問 Q.頭を強くぶつけたが、どのようなときに受診したらよいですか? A.意識が不明瞭、手足の麻痺、嘔吐、転倒の記憶がない、けいれんなどがある場合には受診しましょう。 また、高齢者や基礎疾患のある方(特に血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合)も受診したほうがよいです。 Q.何科を受診すればよいですか?その際に注意することは? A.受診するのは脳神経外科や脳神経内科を検討しましょう。 また、顔面のぶつけ方により、眼科や耳鼻咽喉科、歯科などの受診をするのが良いです。受診する際は、どのようにして頭をぶつけたかを伝え、目撃者がいる場合は様子を聞くのが良いです。 普段飲んでいる薬があれば、忘れずに伝えてください。 まとめ・頭を打った際の危険な症状を見逃さないように!迷わず受診しよう 今回の記事では強く頭をぶつけた場合に、どのような症状が出ると危険かを解説しました。 頭をぶつけないことが第一ですが、もしぶつけてしまった際に、前述したような症状が出たり「何かがおかしい」と感じた際には、病院の受診を躊躇わないようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S122 監修:医師 加藤 秀一
2023.03.31 -
- 手部
ばね指とは?放置すると重症化のリスクが大!原因と治療法を医師が解説 ばね指とは、指の腱や腱鞘に炎症が起こることで手指に痛みや動作時の引っかかりが起こる病気です。 「朝に症状が強くなる」ことや、「指の曲げ伸ばしでカクカクとした感じがする」ことが特徴です。放置して症状が悪化すると指が伸びなくなってしまうこともあるので、早めの対策が必要です。 ばね指の治療では、注射や手術などもあり、病気の不安に加えて費用面の不安もあると思います。 この記事では、ばね指の症状や原因、検査や治療方法について解説していきます。さらに、ばね指についてよくある質問にもQ&Aでお答えしていますので、ぜひご参考にされてください。 ばね指の症状と原因 指を動かすのに必要な筋肉は前腕にあり、その力を腱が指に伝えることで曲げ伸ばしをすることができます。その通り道で、指を曲げる腱が浮き上がらないように押さえているのが腱鞘(けんしょう)と呼ばれるものです。その構造はベルトとベルト通しの関係に似ています。この腱鞘や腱に炎症を起こし、痛みが生じてしまうのが「腱鞘炎」です。 軽い腱鞘炎の状態で指を使いすぎてしまうと、摩擦のために炎症が進み、腱鞘が厚くなったり、腱が太くなってしまうことで通過しづらくなり、ばね指へと悪化してしまいます。悪化してしまうと、簡単に指を伸ばせなくなり、曲がったままとなってしまいます。 症状 症状は、指の付け根の手のひら側の痛み、腫れや引っかかり感です。朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも多いです。 ばね指に進行してしまうと、指の可動域が悪くなってしまう場合もあります。 原因 家事や仕事、スポーツなどによる「手や指の使い過ぎ」が主な原因となっており、ホルモンバランスの乱れる更年期、妊娠出産期の女性にも多く生じます。 また、糖尿病、関節リウマチ、透析患者さんにもよくみられる症状で、母指・中指に多くみられます。 ばね指の重症度チェック ばね指の症状の重症度は、3段階に分けられます。 1, 軽症 バネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がない 2, 中等症 バネ現象があるものの、指の可動域がいい 3, 重症 指が曲がったままの状態となっており、伸ばせない 軽症はバネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がないもの、中等症はバネ現象があるものの、指の可動域がいいもの、重症は指が曲がった状態となっており、伸ばせない状態を指します。 引っかかりが起きている状態を“ばね指”と言い、腱鞘炎が進行すると、ばね指に悪化してしまいます。 ばね指の検査 一般的に症状と診察から診断は可能であり、レントゲン検査は不要です。 しかし、関節リウマチや変形性関節症などの骨、関節に生じる病気を見つけるために行われる場合もあります。 ばね指の治療 保存治療、腱鞘内ステロイド注射、手術治療について解説します。 保存治療 保存治療は痛みのみで、引っかかり感のない軽症例や注射、手術希望がない方が対象です。 ①安静(手指の使用制限、シーネ・装具など) 軽症例の自然経過は良好ですので、数日間の安静で、自然に改善する可能性があります。 また、シーネ・装具で指を良肢位で固定することが効果的です。 ②薬物療法(外用薬、消炎鎮痛薬投与など) 内服薬、外用薬はいろいろな状況下で使用されますが、非ステロイド性消炎鎮痛薬の投与は、初期治療に他の保存的療法と組み合わせて使用されます。 また、腱鞘炎の治療にエストロゲン(女性ホルモン)と類似作用のあるエクオール(大豆イソフラボンの代謝物)が有効であるという報告が散見されています。 ③理学療法 消炎鎮痛と関節拘縮予防や可動域改善目的で行われる場合があります。 腱鞘内ステロイド注射 腱鞘内ステロイド注射は軽症、重症を問わず有効な治療方法です。 局所麻酔薬とステロイドを手の平側から腱鞘に注射する方法で、症状改善が期待できます。再発する場合は再度注射が可能ですが、腱が断裂する危険性もあり3カ月以上あけることが望ましいです。 手術治療 手術の適応は、 ・保存治療が無効だった場合 ・保存治療が有効でも再発しやすく疼痛の強い場合 ・指を伸ばすのに制限があり改善しない場合 ・職業などの事情で早期に確実な回復を望む場合 などがあります。 指の付け根の手のひら側を1―1.5 cmほど切開して、腱の周囲にある腱鞘を切離します。日帰りで可能な手術であり、術後のリハビリは特に必要ありません。 ばね指についてよくある質問 ばね指についてよくある質問に、Q&A形式でお答えしています。 Q:ばね指は朝だけなぜ痛くなるのですか? A:正確な原因は明らかになっていませんが、夜間寝ている間は指を動かさないので、腱が炎症でむくむためだと推測されています。 指を動かしていると腱のむくみが減少するので、日中には症状が少なくなると考えられています。 Q:ばね指の手術費用はどの程度ですか? A:ばね指の手術は健康保険が適用されます。保険点数は2,050点のため、3割負担では6,000円前後で費用を提示している病院が多くなっています。 実際の手術では薬剤費なども含め、もう少し金額が高くなるため、事前に病院に確認するようにしましょう。 Q:注射の副作用はありませんか? A:ステロイド注射の合併症として、腱断裂、感染症があります。実際に、腱自体へのステロイド注入では腱の軟化を生じる場合がありますが、断裂自体の報告は少数です。医師もその危険性は知っており、連続で使用する場合は3ヶ月以上あけるか、手術治療をおすすめすることが多いです。 同様に感染症についても報告は少数であり、コントロール不良な糖尿病では注意を要しますが、過度な心配は不要と考えられています。 まとめ・ばね指とは?放置すると重症化のリスク!早めに病院を受診しましょう ばね指は中高年の方に多い病気であり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。症状が軽いうちに無理をしてしまったり、指が伸びない状態で放置してしまうと、関節の拘縮など悪化してしまうこともある病気です。 適切な治療を受けられるように、早めに病院で診断・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.122 監修:医師 坂本貞範
2023.03.29 -
- 脳卒中
- 脳出血
脳出血とストレスの関係性について!その種類と部位を分かりやすく解説! 脳出血とは脳卒中の一種で、脳内の血管が破裂することで出血する病態のことです。脳出血が起きると、出血によってあふれた血液が血腫(血の塊)を形成し、脳神経を圧迫することで多様な症状を生じます。 本記事では脳出血の原因、症状、そしてよく耳にする“脳出血とストレスの関係性”について詳しく解説していきます。 脳出血とストレスの関係性とは ストレスは万病の元とされており、脳出血の一因となります。 人間はストレスを受けると、副腎からコルチゾールという「ストレスホルモン」が多量に分泌されるようになります。 コルチゾールは適度であれば、生活リズムの調整や代謝促進などを行ってくれますが、過剰に分泌されることで、血管が収縮し血圧が高くなり、脳出血の発症リスクが高めてしまいます。高血圧や血圧の乱高下は、血管への圧力となってしまうためです。 ストレスによって生じる脳出血リスク また、ストレスによって脳出血が生じやすい、下記のような状況にも注意が必要です。 睡眠不足による動脈硬化リスク 過剰なストレスによって脳や体は緊張状態となり、睡眠障害となることがあります。不眠症によって動脈硬化が進むこともあり、脳出血の要因となります。 暴飲暴食による高血圧リスク ストレス解消をお酒や食事に求める方も多いと思われます。適度な酒量であれば、問題となることは少ないですが、過度の飲酒が続くと血圧が上昇し、脳出血のリスクを高めてしまいます。 食事も食べ過ぎると胃や腸に負担をかけ、生活習慣病の原因になり、脳出血を生じやすくなります。 喫煙による動脈硬化リスク ストレスにより喫煙の本数が多くなることもあるかと思いますが、喫煙も当然のように動脈硬化のリスクの一つです。 お酒に関しては適量であれば血流が改善する面もありますが、喫煙に関しては悪影響しかありません。 脳出血の種類 脳出血の原因としては、高血圧などの生活習慣が関与しているイメージがありますが、その他にも多様な原因疾患があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 高血圧性脳出血 脳出血の中で最も頻度が高いのが、「高血圧性脳出血」で、その名の通り高血圧が主な原因です。 高血圧は動脈に強い負担をかけるため、長期間高血圧に晒されることにより、血管が脆くなり出血してしまいます。ストレスによる影響が最も強いのはこのタイプとなります。 血管腫 血管腫とは、血管にできるコブのような塊のことです。血管が拡張したり増殖することによって生成され、多くは良性ですが血管腫ができると、脳出血を招いてしまうことがあります。 血管腫の中でも海綿状血管腫は出血するリスクが高く、稀に多発することがあります。出血自体も繰り返すことが多いのが特徴で、出血を繰り返すごとに血腫が成長し、脳神経などを圧迫することでてんかん発作を引き起こすことがあります。 動静脈奇形 動静脈奇形とは、胎生期に起こる先天性異常で、血管に奇形が生じる状態のことです。 脳内の動脈と静脈は毛細血管を経由してつながっていますが、動静脈奇形が起きると、動脈と静脈が直接つながるようになります。結合した動脈と静脈の間には、「ナイダス」という異常な血管の塊が生じ、これは通常の血管と比べて非常に脆くなっています。そこに動脈の血流が直接静脈に流れ込むため、血管に負担がかかり、破れることで出血が生じます。 硬膜動静脈瘻(:こうまくどうじょうみゃくろう) 硬膜動静脈瘻は、脳にある硬膜のなかで、動脈と静脈が直接つながってしまう状態のことです。上述した動静脈奇形が先天異常であるのに対し、硬膜動静脈癭は後天的に発生しますが、その原因についてまだ詳しいことはわかっていません。 動脈の血流が静脈に直接流れ込むことで、静脈の血管が耐えきれずに破れてしまい出血が生じます。 脳腫瘍(悪性) 脳腫瘍(悪性)は脳に発生する癌のことで、腫瘍自体が破裂することにより出血することがあります。 脳アミロイド血管症 脳アミロイド血管症は、高齢者に多い脳出血で、脳血管にアミロイドという異常な物質が溜まることで生じます。アミロイドが沈着することで血管が脆くなり、最終的に出血に至ります。 脳アミロイド血管症による脳出血は、再発を繰り返すことが特徴で、脳出血と同時に認知症を発症することも少なくありません。 脳出血は上記のように多様な原因がありますが、高血圧などの生活習慣病を患っていると動脈硬化が進行し、より出血のリスクが高まります。 この他にも、運動や睡眠不足、過剰なストレスを抱え込むことでも血圧が上昇しやすくなり、脳出血のリスクは高まるので、規則正しい生活を送ることが重要です。 脳出血の生じやすい部位と症状 脳出血の症状では強い頭痛や嘔気などが出ることは共通していますが、出血の起こる部位によって他にも様々な症状が出現します。 被殻出血 脳出血の中で最も多い出血部位(約40%)が被殻出血です。頭痛や体の半身が麻痺を起こす片麻痺や表情が歪んでしまう顔面神経麻痺などが生じます。 視床出血 被殻出血の次に多いのが視床出血で脳出血の約30%程度にみられます。視床は視覚や聴覚などで得た情報を集め、感覚中枢に送り届ける役割を担っており、この部分で出血が起こると、頭痛や片麻痺といった上記の症状に加えて、意識障害なども見られることがあります。 小脳出血 小脳は大脳の下に位置しており、運動機能を司っています。この部分で出血が起きると体を動かしづらくなり、ふらつきなどといった運動失調が生じます。徐々に意識障害が起こることもあります。 橋(脳幹)出血 脳幹は大脳と脊髄をつなぐ部位のことで、大脳が処理した情報を身体の運動機能につなげる役割を果たしています。そのため脳幹出血が起きると、四肢の麻痺や眼球運動障害があらわれやすくなり、意識障害なども生じることがあります。発症から数分で昏睡状態になり、数時間で死亡する場合もある重篤な疾患です。 皮質下出血 皮質下出血とは、大脳皮質という大脳を覆う膜の下で出血が起きることです。上記の4つの出血は高血圧が原因となることが多いですが、皮質下出血は動静脈奇形や硬膜動静脈瘻が原因であることが多いです。症状としてはけいれんや、軽めの意識障害などがみられることが多いです。他の部位の脳出血よりも比較的症状が軽い場合が多く、予後が良好なことが多いとされています。 まとめ・脳出血はストレスを和らげ規則正しい生活で予防しよう! 脳出血はストレスなどに起因した高血圧などや生活習慣の乱れなどによって発症することが多いですが、その他にも血管自体の異常によって発症することがあります。 脳出血の予防には、規則正しい生活やストレスを抱え込み過ぎないことが重要となります。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S121 監修:医師 加藤 秀一
2023.03.27 -
- 野球肘
- インピンジメント症候群
- 肩関節
- 肩関節、その他疾患
野球肩の一種!インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法とは! 野球やバトミントンなどオーバーヘッドスポーツで生じやすいインピンジメント症候群。投球動作で肩に痛みが生じる、いわゆる「野球肩」の一種として知られています。 インピンジメントとは「衝突」という意味で、インピンジメント症候群は、肩の関節を構成する骨同士が衝突したり、骨の間に筋肉が挟まれたりして痛みが生じる状態です。 インピンジメントを引き起こす原因はさまざまで、原因に合わせたリハビリの実施が必要です。 今回は、インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について解説します。 インピンジメント症候群に対するリハビリの目的 肩の関節は、背中にある肩甲骨と腕の骨である上腕骨、鎖骨によってできています。 上腕骨の先端にある球状の上腕骨頭(じょうわんこっとう)が肩甲骨のくぼみにはまるように作られる肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)が、一般的に肩関節と呼ばれる関節です。 インピンジメント症候群は、以下のような要因で、肩関節の正常な動きが妨げられるため生じます。 ・関節周辺の組織が固くなり上腕骨頭の位置がずれる ・猫背になり肩甲骨の動きが悪くなる ・筋力が低下して上腕骨頭が正常とは異なる動きをする これらの要因を改善して、インピンジメントを生じさせない動きを取り戻すのがリハビリの目的です。また、リハビリでは、インピンジメント症候群により生じた炎症の回復を補助する目的も含まれます。 次からは具体的なリハビリの内容を紹介します。 インピンジメント症候群のリハビリ|炎症への対応 肩を動かさなくても痛みがでる場合や、夜間に痛みがでる場合は、インピンジメントにより肩周辺の組織に炎症が生じている可能性があります。そのような状態では、積極的な運動よりも、炎症や痛みを和らげる対応が優先されます。 そのため、肩のアイシングや安静時のポジショニング(肩の位置の調整)を行い、肩にかかるストレスを軽減させるのが大切です。ポジショニングは、肩や肘の下にタオルなどを入れて痛みがないポジションを作ります。 振り子運動 また、運動では振り子運動により、自重を使った関節の運動を実施して、肩への負担をかけないようにします。 インピンジメント症候群のリハビリ|猫背を改善するリハビリ 猫背になると、肩甲骨の動きが妨げられるため、正常な肩関節の動きが生じずに、インピンジメントを引き起こしやすくなります。 肩の痛みがあり肩関節を動かしにくいときでも、猫背を改善するリハビリは、肩関節を動かさずに実施できるため、積極的に取り組みましょう。 具体的な方法は以下の通りです。 ストレッチポールでのストレッチ ストレッチポールの上に仰向けで寝て、胸を開いて背中をストレッチします。 cat & dogストレッチ 四つ這いで背中を丸めたり、反らしたりする「cat & dog」の運動もおすすめです。 インピンジメント症候群のリハビリ|肩関節の動きを改善するリハビリ インピンジメントを起こす原因の1つが、肩の関節周辺にある組織の柔軟性低下です。特に肩の後ろの組織が固くなると、上腕骨頭が前方にずれてしまい、正常な肩関節の運動ができません。その結果、インピンジメントが生じやすくなります。 そこで、肩の後ろで関節を覆っており、動きの制限になりやすい後方関節包(こうほうかんせつほう)のストレッチを紹介します。 クロスボディストレッチ 1つ目の方法は座った状態または立った状態で行います。 具体的な方法は以下の通りです。 1, 痛みのある方の腕を肩の高さまで上げる 2, 反対の手で肘を掴んで体の内側に引きよせる 3, 肩の後ろが伸ばされるのを確認しながら30秒キープする 痛みがある場合は無理をしないようにしましょう。 スリーパーストレッチ 2つ目の方法は横向きに寝て行うストレッチです。 具体的な方法を解説します。 1, ストレッチする方の肩が下になるように横向きに寝る 2, 腕を肩の高さに合わせるように脇を開く 3, 肘を直角に曲げて前腕を立たせる 4, 反対の手で立てた前腕をゆっくり内側に倒す 5, 限界まで倒した状態で30秒キープする 強く抑えるように倒すと痛みが出やすいので、ゆっくり力を入れずに倒しましょう。 インピンジメント症候群のリハビリ|腱板機能を改善するリハビリ 腱板(ローテーターカフ)は、肩甲骨と上腕骨をつなぐ以下の4つの筋肉をまとめた呼び方です。 ・棘上筋(きょくじょうきん) ・棘下筋(きょくかきん) ・肩甲下筋(けんこうかきん) ・小円筋(しょうえんきん) 肩関節をおおうように位置しており、肩関節を安定させて、スムーズに動かせるようにする役割を持っています。そのため、腱板をうまく使えないと、肩関節が不安定になり、正常な関節の運動ができず、インピンジメントを引き起こします。 そこで、腱板の機能を改善するリハビリを紹介します。 棘上筋トレーニング 腱板の1つである棘上筋のトレーニングを紹介します。 1, 腕を体の横につけて、親指が上になるようにする 2, 肘を伸ばしたままで、体から腕が離れるように上げる 3, バレーボール1個分程度まで上げた後で元に戻す 負荷をかける場合は、500mlのペットボトルやチューブを使用しましょう。 腱板は関節を安定させるインナーマッスルですので、負荷は軽めにして20〜30回を目安に3〜4セット行いましょう。 棘下筋・肩甲下筋トレーニング 棘下筋と肩甲下筋は、お互い対照的な働きをする筋肉です。 そのため、棘下筋のトレーニングと反対の動きをすると肩甲下筋のトレーニングになります。 1, 腕を体の横につけて、肘を直角に曲げる 2, 脇を開かないように注意して、手を外側に動かしたり、戻したりする(棘下筋トレーニング) 3, 肩甲下筋をトレーニングする場合は、反対に手を内側に動かしたり、戻したりする 脇を開くと、ほかの筋肉が働いてしまうため、棘下筋、肩甲下筋のどちらのトレーニングでも、脇を開かないように注意しましょう。 棘上筋トレーニングと同様、チューブなどを使い、軽めの負荷で、頻度を多く行いましょう。 まとめ・インピンジメント症候群のリハビリは肩の柔軟性や筋力の低下など原因ごとの対応が重要 インピンジメント症候群は肩の柔軟性低下や腱板機能の低下、悪い姿勢によって、正常な関節の運動ができないことで生じます。そのため、リハビリにより、原因となっている部分を改善して、肩関節の正常な運動を可能にする必要があります。 本記事では、原因ごとに基本的なリハビリ方法を紹介しました。より効果を高めるためには、整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家による指導を受けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S120 監修:医師 加藤 秀一
2023.03.24 -
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くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 水頭症とは、文字通り、頭に水がたまってしまう病気のことを言います。小児でも発症することがありますが、大人ではくも膜下出血の後遺症として起こることが多い病気です。代表的な症状に「歩行障害」「認知症」「尿失禁」などがあります。 しかし、頭に水がたまるというのが具体的にはどのような状態なのかよくわからない、という方も多いかと思います。 今回は、くも膜下出血の後遺症に多い「水頭症」とはどんなものなのか、どのような症状があるのか、後遺症や予後についてもわかりやすく解説します。 水頭症とは 人間の脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という水に浮いています。脳の内部にも、脳室という空間があり、こちらにも脳脊髄液が流れています。この脳脊髄液には、脳を外部から守ったり、栄養やホルモンを運搬したり、脳の老廃物を除去したりと様々な役割を担っています。脳脊髄液は常に入れ替わっており、毎日500 ml分が新しく作られ、同じ分だけ吸収されています。 正常な状態では、脳脊髄液は、脳の周りや脳室を循環しており、その循環量は150 mlと言われています。何らかの原因でこの流れが悪くなり、脳脊髄液が多量にたまってしまうことによって、脳を圧迫する状態を「水頭症」といいます。 水頭症の種類について 水頭症のタイプとして「非交通性」と「交通性」があります。 非交通性水頭症は子供に起こりやすく、脳脊髄液の流れの中で、どこかが通行止めになっているイメージです。一部でせき止められてしまうことによって、たまった脳脊髄液が脳を圧迫します。数は少ないですが、成人でも脳腫瘍などで起こる場合もあります。 成人、特に高齢者に多いのは、交通性水頭症です。これは、流れ経路には問題がないのにもかかわらず、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳脊髄液の循環量が多くなってしまう状態です。 何らかの原因で、脳脊髄液の吸収機構がダメージを受けることによって起こる続発性が多いですが、突然発症する特発性もあります。 交通性水頭症の場合、徐々に進行するため、脳圧とよばれる頭蓋骨の中の圧は正常に保たれていることが多く、別名「正常圧水頭症」ともいいます。 続発性と特発性の違いは以下の通りです。 正常圧水頭症 原因 発症時期 続発性 くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など 左記疾患の数週〜数カ月後 特発性 不明 60~70代の高齢者 特にくも膜下出血では、発症の1~2カ月後に、30%程度の割合で正常圧水頭症を発症するといわれています。看護する人たちは、急性期が落ち着いたあとも、患者さんの様子を注意してみていく必要があります。 水頭症(正常圧)の症状とは ここからは高齢者に多い、「正常圧水頭症」について詳しく見ていきます。 正常圧水頭症の代表的な3つの症状は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つです。 これらは、数カ月から数年単位でゆっくりと進行します。そのため老化の症状と間違えられやすく、長期間放置されている場合もあります。 ご自身やご家族で、以下のような症状はありませんか? ・歩幅が小さくなる ・すり足歩行になる ・両足を開いて歩く ・歩行が不安定になる ・物忘れが多く自発性が低下している ・無気力・無関心な状態になっている 初期には歩行障害が出現し、「歩幅が小さくなる」「すり足歩行になる」「両足を開いて歩く」「歩行が不安定になる」などの特徴がみられます。その後、物忘れや自発性の低下が出現し、徐々に活動性が下がって無気力・無関心な状態になります。 症状が進むと寝たきりになってしまう場合もあるため、早期に変化に気付いて検査を行うことが大切です。 水頭症と診断されたら 水頭症は薬で治せるものではありません。基本的には手術療法が必要となります。 具体的には、頭にたまった余分な脳脊髄液をおなかへ流すチューブをいれる「シャント術」が行われます。 一般的には、頭と腹腔をつなぐチューブを体の中に挿入します(V-Pシャント)。また、脳脊髄液は、背骨の神経の周りにも流れており、そこから腹腔へチューブをつなぐ方法もあります(L-Pシャント)。これらの手術は、脳脊髄液の出口を作ることで、症状を改善させることを期待して行います。 水頭症の後遺症や予後は 正常圧水頭症は、手術を行ってもすぐに完治するものではありません。手術後も、シャントから排出される脳脊髄液の量が適切になるように、調整する必要があります。また、退院後に症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまうこともあります。その場合は、シャントの閉塞がないかどうか、チェックする必要があります。 また、3大症状の中では、歩行障害の改善率が最も良好とされています。反対に認知症や尿失禁の改善率は、歩行障害に比べるとやや劣るとも言われています。そのため、治療開始が遅くなった場合は、認知機能の低下や尿失禁などの症状が後遺症として残ってしまう可能性もあります。 予後は、多くの要因に左右されます。たとえばくも膜下出血などでは、そもそも社会復帰できるのは、罹患した患者さんの3分の1とも言われていますので、もともとの病気や脳機能も大きく予後に影響します。 ただし、シャントがうまく機能していれば、脳機能が回復し、症状も改善する症例が多いのも事実です。そのため「治る認知症」とも言われることがあります。 早期に適切な処置を行うことによって、健康寿命を延ばすことができるため、早期発見がポイントになります。 水頭症についてよくある質問 Q:水頭症を疑った場合どんな検査をしますか。 A:まずは、CTなどの画像検査を行い、脳脊髄液が溜まったことによって脳室が拡大しているかどうかを確認します。そのうえで、水頭症が疑わしい場合にはタップテストを行います。 タップテストとは、実際に頭にたまった脳脊髄液を、一時的に抜くことで症状が改善するかを確認するテストです。このテストは、短期間の入院で行います。麻酔の注射をし、背中に針を刺して脳脊髄液を抜き取ります。 タップテストで症状が改善した場合は、シャント手術に進むことになります。 Q:手術は急いで受けた方が良いでしょうか。 A: 正常圧水頭症はゆっくりと進行するため、手術を受けるかどうか、しっかりと検討する時間はあります。また、診断後すぐに手術を受けた患者と3ヶ月後に手術を受けた患者では、1年後の症状改善に大きな差がなかったという研究もあります。 ただし、歩行障害による筋力低下が進むと、手術後の回復が思わしくない場合もありますので、その点は注意が必要です。 Q:シャント手術をした後は、CTやMRIなどを撮っても大丈夫でしょうか。 A:基本的には問題ありません。経過が問題なくても、手術後の脳脊髄液の状態を見るために、定期的に外来で画像を確認する必要もあります。 まとめ・くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 今回は水頭症の原因と症状、くも膜下出血の後遺症の関係について解説しました。 水頭症のなかでも、とくに正常圧水頭症は早期に発見・治療ができれば、症状の改善を期待できる病気です。少しでもおかしいと思った際には、早めに病院を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.119 監修:医師 坂本貞範
2023.03.22 -
- 幹細胞治療
- PRP治療
- 肘関節
- 再生治療
肘の痛みを根本から治療する!再生医療の幹細胞治療とPRP療法を医師が解説 「肘の痛みで通院しているが、イマイチ良くならない」 「もっと積極的に肘が痛い症状の治療を受けたい」 このように、日頃からよく使う肘の痛みに悩む人は少なくありません。 一般的に肘の痛みに対する治療は、肘を安静にして薬や注射による保存療法が第一選択です。治癒が難しい場合には手術療法が行われることもあります。 最近、「再生医療」といって、保存療法と手術療法の中間のような新しいアプローチが注目されているのをご存知でしょうか。肘の痛みなど整形外科の症状にも再生医療は広がりを見せており、根本的な治療になり得るアプローチだと期待されています。 そこでこの記事では、肘部管症候群をはじめとした、さまざまな肘の痛みに対する再生医療の特徴や治療内容について紹介します。 肘の痛みと代表的な病気 一口に肘の痛みといっても、複数の病気の種類があります。原因や症状もさまざまで、肘部管症候群のようにあまり聞きなじみのない病気もあるでしょう。 以下は、肘の痛みでよくある症状です。 ・何もしていなくても肘に痛みがある ・タオルを絞ったり、ペットボトルのフタを開ける時に肘が痛い ・肘から小指や薬指にかけて痛みやしびれがある ・肘の内側を押すと痛い ・テニスのラケットや料理でフライパンを持つと肘の外側が痛い 今挙げた症状の多くは、次の3つの病気に当てはまります。 1, テニス肘(上腕骨外側上顆炎) 2, ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) 3, 肘部管症候群 - ちゅうぶかんしょうこうぐん - とくに3番目の「肘部管症候群」は小指や薬指の小指側から肘にかけてしびれが強くなって日常生活に支障が出るほか、手術療法の適応になるケースが多い厄介な疾患です。 ひとつずつ見ていきましょう。 1, テニス肘(上腕骨外側上顆炎) テニスのバックハンドをすると痛みが出るため「テニス肘」という別名がよく知られています。 ただし、実際は雑巾やタオルを絞ったり、ペットボトルのフタを開けたり、キーボード入力をしたりなど、日常生活のさまざまな動作で肘の外側に鋭い痛みが走る病気です。 2, ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) ゴルフのスイングをするときに痛みが出るため、「ゴルフ肘」として知られています。 物を持ち上げたりロープを引っ張ったりする動作をすると、肘の内側に鋭い痛みを感じます。 3, 肘部管症候群- ちゅうぶかんしょうこうぐん - 肘の内側から小指・薬指の小指側にしびれが出るのが初期症状です。やがて症状が進行すると、肘の内側を軽く押す程度でもしびれが走ります。 小指側の尺骨(しゃこつ)神経は、肘の内側の肘部管を通っており、肘の関節の変形などによって神経が圧迫されるため症状が現れます。最初はしびれや軽い痛み程度でも、症状が進行すると麻痺が出たり、腕や手の筋肉が衰えて変形することも珍しくありません。 尺骨神経の障害は回復しづらい神経のため、薬による保存療法で症状の緩和が期待できない場合は、手術療法がよく行われています。 肘の痛みにおすすめ!幹細胞治療とPRP療法とは 従来の保存療法や手術療法に加えて、最近脚光を浴びているのが「再生医療」です。 とりわけ、幹細胞治療とPRP療法は、肘の痛みの症状がある部位に幹細胞やPRPを注射する、再生医療を代表する治療法です。炎症を取り除く、ダメージを受けた細胞や組織を修復・再生する、といった効果が期待できます。 幹細胞もPRPも患者さん自身の血液や細胞をもとに生成されるため、副作用の心配がほとんどありません。また、入院や手術の必要がなく、注射や点滴だけで治療が受けられる点もメリットです。 なお、症状が軽い場合は、自然治癒力を高めて痛みの軽減を目指す“PRP療法”がおすすめです。血小板を多く含むPRPの注射によって、ダメージを受けた組織の修復や炎症の改善が期待できます。 一方で、症状が重い、後遺症が気になる、など神経障害による痛みが強い場合は“幹細胞治療”をおすすめします。 幹細胞は、自分とまったく同じ細胞(自己複製能)と、まったく異なる細胞(文化能)を生み出す、2つの能力を併せ持っているのが特徴です。患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し肘に注入すると、炎症を起こしている部位や、組織が損傷している部位に届きます。すると、その場所で新しい細胞を作り直すため、ケガの早期回復を実現し、後遺症の心配を最大限抑制できるのです。 思うように肘の痛みがよくならない方は、再生医療による新たなアプローチを検討してみましょう。 まとめ・肘の痛みを根本から治療する!再生医療の幹細胞治療とPRP療法を医師が解説 このように、肘の痛みに対する再生医療は、痛みの原因となっている部位を積極的に修復しながら治癒を目指すという、画期的な治療法です。軽い肘の痛みなら、PRP治療法から試すと良いでしょう。より確実で高い効果を目指すなら、幹細胞治療の検討がおすすめです。 当クリニックは再生医療のエキスパートとして、肘の痛みに対する幹細胞治療やPRP治療法による治療を数多く手がけてきました。国内トップクラスの細胞加工室の高い技術で、安全かつ治療成績の良い再生医療を提供しています。 「肘の痛みをもっと和らげたい」 「これまでと違った新しい治療を受けてみたい」 肘の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度再生医療専門の当クリニックまでお問い合わせください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.120 監修:医師 坂本貞範
2023.03.20 -
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水頭症による高齢者の認知症症状は“手術で治る”って本当? 認知症の発症率は、高齢化が進むにつれて増えてきています。認知症には複数の原因となる疾患がありますが、その中でも治療可能とされているのが水頭症が原因による「特発性正常圧水頭症」です。 特発性正常圧水頭症による認知症は、認知症全体の5%~10%を占めるといわれており、他にはアルツハイマー型・レビー小体型認知症・血管性認知症などがあります。 【認知症の主な原因疾患】 ・特発性正常圧水頭症 ・アルツハイマー型 ・レビー小体型認知症 ・血管性認知症 本記事では、“水頭症による高齢者の認知症症状が手術で治る”とはどういうことなのか、さらに特発性正常圧水頭症の症状や検査、治療について詳しく解説していきます。 特発性正常圧水頭症とは 認知症の中でも「特発性正常圧水頭症」とは、頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳が圧迫されて様々な症状が出る水頭症の一種です。 脳脊髄液は、脳室で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周囲を循環し、静脈などに吸収されていきます。何らかの原因で、この循環に異常が生じると水頭症が発生します。 正常圧水頭症には3つのタイプがあり、最も多いのが特発性正常圧水頭症です。原因は不明ではありますが、主に高齢者に多く発症するとされています。 その他にも、くも膜下出血や髄膜炎などを発症した後に生じる二次性正常圧水頭症や、遺伝的要因により発症しやすいと考えられる家族性正常圧水頭症がありますが、極めて稀な疾患です。 ◇水頭症の症状 特発性正常圧水頭症では、脳の前頭葉の広範囲が障害されることにより、歩行障害、排尿障害、そして認知障害が現れます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 歩行障害 特発性正常圧水頭症による歩行障害には、下記のような特徴があります。 ・開脚歩行(足が開き気味で歩く) ・小刻み歩行(小股でよちよち歩く) ・すり足歩行(膝を上げずに歩く) ・不安定な歩行(方向転換の時にふらつきやすい) ・歩き出しづらい ・突進現象(歩き出すとうまく止まることができない) 排尿障害 頻尿になったり、尿意を感じにくくなったりします。症状が進行すると、尿意を感じてから我慢できる時間が短くなり、失禁しやすくなります。 認知障害 物忘れや理解力の低下が生じ、ぼーっとするような時間が多くなります。 特発性正常圧水頭症は、歩行障害が初期症状として現れることが多いとされています。 上記の症状のセルフチェックを行い、歩行障害に加えて、排尿障害や認知障害が生じた場合は特発性正常圧水頭症を疑い、病院を受診するようにしましょう。 ◇水頭症の検査 特発性正常圧水頭症では、上記症状をチェックする身体診察が行われ、その程度が確認されます。そのあと、MRIやCTによる脳の画像検査が行われ、特発性正常圧水頭症の疑いが濃厚になった時点で、「タップテスト※」が行われます。 ※タップテストとは、腰椎から脊髄液を30ml程度排除することにより、症状改善がみられるかどうかを確認するテストです。 脊髄液の排出後、歩行などの動きが良くなった場合は「水頭症」と診断され、手術(シャント術)が勧められます。 ◇水頭症の治療 特発性正常圧水頭症の治療では、脳脊髄液の流れを良くする「髄液シャント術」と呼ばれる手術を行います。これは、カテーテル(管)を体内に埋め込むことで、過剰に溜まってしまった脳脊髄液を排出することで脳への圧迫を解放し、髄液循環や脳神経機能を改善させる治療法です。 髄液シャント術の方法には、「VPシャント(脳室-腹腔シャント)」、「VAシャント(脳室-心房シャント)」、「LPシャント(腰椎-腹腔シャント)」があります。 最近では、LPシャントが主流になりつつありますが、腰椎の変形などが強い場合には他のシャントを行います。いずれの手術も脳神経外科の手術としては比較的短時間で行われる手術です。手術時間の目安はおよそ1時間程度です。 ◇水頭症の手術費用 一般的な手術費用は、診療報酬点数が24,310点となっているので、1点=10円とすると約7万円(3割負担)となります。 高額療養費制度を利用すると、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるので、最終的には更に軽減される可能性があります。 ◇水頭症の術後 手術により植え込まれたカテーテルは、定期的に詰まったり壊れたりしていないかチェックし、髄液を抜く量が適切に設定できているか確かめる必要があります。 シャント圧調整方法としては、管の途中に脳脊髄液圧を調節するバルブがついているため、体外から設定圧を調節できるようになっています。シャント圧を下げ過ぎてしまうと、頭蓋内圧が低下し低髄圧症候群を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。 カテーテルにより抜ける髄液量は、生活の仕方や体格の変化によって変動するため、定期的にCTやMRIを撮影して頭の中に異常がないかを確認し、適切な髄液量を決めていく必要がありますので定期的に通院するようにしましょう。 まとめ・水頭症は手術で治る可能性のある認知症! 現在のところ、薬物療法はなく手術が唯一の治療法になります。手術しなければ症状が進行し、寝たきりになってしまうなど、手遅れになるリスクもありますが、生命に関わる病気というわけではありません。手術は症状の改善を主な目的としているため、生活の質を上げたい方にはおすすめです。 現在では、歩行障害は8~9割、排尿障害や認知障害は5~7割に有効とされています。このようなことから、“水頭症による高齢者の認知症症状は手術で治る”と言われています。 しかし、特発性正常圧水頭症は治る可能性のある認知症ですが、正確に診断され治療に至るケースはまだまだ少ないのが現状です。早期発見、治療により生活の質が格段に改善する可能性があるので、疑わしい症状がある場合は早期受診をおすすめします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S119 監修:医師 加藤 秀一
2023.03.17