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【後悔しない】高位脛骨骨切り術の症例やメリット・デメリットを現役医師が解説!

手術のメリットとデメリット
公開日: 2021.10.09 更新日: 2025.01.28

変形性膝関節症を罹患している患者様は、大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2つが選択肢になります。

保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などを組み合わせて行います。

手術療法は保存療法では効果が得られない場合に検討する選択肢です。

中でも「高位脛骨骨切り術」が手術療法の選択肢に挙げられます。

しかし高位脛骨骨切り術を受ける患者様の中には「術後の後悔は避けたい」と考える方もいるでしょう。

そこで今回は、現役医師の立場から高位脛骨骨切り術が適応になる症例やリハビリ内容などを詳しく解説していきます。

術後の後悔を減らすためにも、手術自体のメリット・デメリット、入院期間などもまとめました。

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高位脛骨骨切り術とは

O脚

高位脛骨骨切り術とは、O脚変形のために内側部(内側大腿から脛骨関節)に偏った過重なストレスを、自分の骨を切って少し角度を変える処置が施される手術です。

「HTO手術」とも呼ばれており、内反変形されたO脚からX脚にするのを目的にしています。

膝の内側部に過度の負担となっていた外力のベクトルを比較的きれいな軟骨の存在する外側部(外側大腿から脛骨関節)に移動できる手術です。

高位脛骨骨切り術により、患者様の膝関節が温存できるため、スポーツや、農業などの仕事へ復帰できる方が多くいます。

仕事復帰できるメリットがある一方で、ある程度の入院期間や継続的な痛みを感じ「後悔した」と感じる患者様がいるのも実情です。

高位脛骨骨切り術の対象になる「変形性膝関節症」は、早期の発見と治療が大切です。

以下の記事では、初期症状を見逃さないためのポイントをまとめています。

高位脛骨骨切り術が適応になる症例や手術方法

高位脛骨骨切り術が適応になるのは、主に「変形性膝関節症」を罹患している患者様です。

過度なスポーツ活動により関節に対して大きな負担がかかる「膝内反モーメント(ひねり)」が増大した結果発症します。

「運動の前後には入念なストレッチを」と言われる要因でもあり、股関節から足の甲までを一直線に結んだ「荷重線」が影響しています。

荷重線が膝の内側を通っているので、膝の内側に荷重がかかり過ぎて膝に障害が起こり、変形性膝関節症が発症するのです。

ここからは変形性膝関節症の患者様を含め、具体的に高位脛骨骨切り術が適応な患者様と適応外のケースを紹介します。

手術を受ける対象者

高位脛骨骨切り術が対象になる方は、主に以下のケースです。

  • 50歳〜75歳の方
  • 変形性膝関節症を認める症例の中でも中程度の変形を呈する方まで

若年者でも症状が強ければ高位脛骨骨切り術を行って、下肢機能軸や脛骨近位の内反角を正常化する手術になる可能性もあります。

また、人工膝関節置換術を行う患者様もいます。

骨と人工の異物を接合する都合上、ゆるみなど再手術が必要になる場合があり、初回の手術よりも再手術は、手技的に難しくなります。

再手術のリスクを避けるためにも、65歳よりも若い方には高位脛骨骨切り術が推奨されているのです。

変形性膝関節症の症状が中程度までで、運動や肉体を使う仕事を続ける方は、本手術治療を受けるのがおすすめです。

以下の記事では変形性膝関節症で行う手術内容や費用をまとめました。

高位脛骨骨切り術以外の手術法や費用が気になる方は、あわせてご覧ください。

手術が適応外の方

高位脛骨骨切り術が適応外になる方は、以下のケースが挙げられます。

適応外の方

理由

変形性膝関節症の程度が末期の方

高位脛骨骨切り術の効果が出にくいため

関節の外側に痛みがあるX脚の方

「遠位大腿骨骨切り術」が適応になるため

靭帯を損傷している方

膝が不安定な状態で症状が改善されにくくなるため

骨粗しょう症の方

高位脛骨骨切り術を行っても、骨の「癒合」しない、または遅れる可能性があるため

75歳以上の方

変形性膝関節症の進行が早いため
※早期発見の場合適応する可能性あり

当院では症状にあわせた適切な治療ができるよう、メール相談やオンラインカウンセリングも実施しています。

高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット

ここからは高位脛骨骨切り術を受ける上で後悔したくない方に向け、手術自体のメリット・デメリットを解説していきます。

入院期間や術後の注意点も触れているので、ぜひ参考にしてください。

高位脛骨骨切り術のメリット

高位脛骨骨切り術のメリットは、最終手段の人工関節を使わずに「自分の関節を残したまま」で症状の改善が期待できる点です。

高位脛骨骨切り術は、O脚に変形した脚を、X脚ぎみに矯正して変形性膝関節症の進行を遅らせる唯一の術式と考えられています。

体への負担が少ない手術でもあり、手術後の日常生活に対する制限も少ないのも特徴です。

新しい手術法が開発された結果、術後早期からの歩行も可能になっています。

入院期間も従来の人工膝関節置換術と変わらず、約4~6週間が入院期間の平均です。

高位脛骨骨切り術のデメリット

従来の高位脛骨骨切り術は、骨癒合までの数カ月間、手術した足に十分な体重をかけられず、入院が長期にわたるのがデメリットでした。

仕事をしている方にとって、復帰に時間が必要な点は大きな欠点になるでしょう。

高位脛骨骨切り術の処置に伴って腓骨短縮などの合併症や有痛性偽関節(骨がくっつかず、痛みも出る)が引き起こされる点も問題視されていました。

骨が癒合するまで多少なりとも膝部の痛みが続くと言われています。

実際に術後の痛みが軽快して骨癒合が完了するまでに個人差はあるものの、約半年以上は時間がかかります。

膝機能がある程度満足が得られるレベルまで回復するためには、気苦労の多いリハビリをコツコツ、しっかり行う必要があるでしょう。

高位脛骨骨切り手術後におすすめのリハビリ法

高位脛骨骨切り術の対象な方に向け、術後のリハビリや入院期間について深掘りしていきます。

「こんなつもりじゃなかった……」と後悔したくない方は、ぜひ参考にしてください。

リハビリ内容

高位脛骨骨切り術を受けたあとのリハビリ内容は、関節の曲げ伸ばしや適度な運動など、自宅でもできる内容です。

高位脛骨骨切り術の術後1週間位から徐々に膝へ体重をかけ始めて、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を施行します。

術後は膝に負担をかけられないため、最初は関節の曲げ伸ばしや立ち座りから始めます。

徐々に膝の可動域や立った際のバランスを整えるため、理学療法士によるサポートを受けるのがおすすめです。

4~5週間程度で安定した歩行、階段の昇降、日常生活動作などをクリアすれば軽快退院の運びとなります。(文献1

手術後の入院期間

高位脛骨骨切り術の入院期間は、5〜6週間程度です。

手術自体は1時間30分程度で終了し、手術当日は血栓塞栓症を予防するために「フットポンプ」を用います。

フットポンプとは、寝たままの患者様を対象に下肢静脈の血流を手助けするために用いる医療器具です。

多くの場合術後2日目でフットポンプを外し、車椅子での移動になり、徐々に松葉杖を使った歩行へ切り替えます。

術後3週目から松葉杖をつきながらの歩行が始まり、5週目を目安に松葉杖なしでの歩行練習になる流れです。

以下の記事では、高位脛骨骨切り術の入院期間やリハビリについて、より詳しく解説しています。

高位脛骨骨切り術で後悔しないためにも、手術の全体像を把握しておきましょう。

まとめ・高位脛骨骨切り術で後悔したくないなら術後のリハビリを!

変形性膝関節症は慢性疾患であり、骨肉腫などのように、命に関わる疾患ではありません。

つまり、どのような治療法を選択するかは、患者様一人ひとりが望むゴールによって変わってくるのです。

術後に多少疼痛は伴うデメリットが挙げられるため「手術をしたけれど後悔した」と感じる患者様がいるのも実情です。

一方で、自分の関節を温存して機能を維持できるため、術後の日常生活でほとんど制限がない点がメリットと言えます。

高位脛骨骨切り術で後悔しないためにも、術後のリハビリは気を抜かず適切な方法で受けるのが大切です。

高位脛骨骨切り術で後悔したくない方からのよくある質問

高位脛骨骨切り術で後悔したくないと考える患者様からよくいただく質問を3つ紹介します。

  • 術後の痛みはいつまで続くの?
  • 仕事復帰や運転はいつからできる?
  • リハビリ以外で後悔しない方法はないの?

気になる点がある方は、以下でそれぞれ回答しているので、ぜひ参考にしてください。

術後の痛みはいつまで続くの?

高位脛骨骨切り術を受けたあとの痛みは、段階によって異なりますが、約3カ月ずつかかる傾向にあります。

術後最初の3カ月で高位脛骨骨切り術を施した患部が痛み、4〜6カ月はリハビリで使った筋肉が痛む可能性があります。

患者様によっては7カ月目以降で太ももやお尻などの周辺が筋肉痛を感じるでしょう。

手術で切った患部の痛みが落ち着くまでの期間は、3〜4週間程度ですが痛みの経過を見ながらリハビリを実施するのがおすすめです。

理学療法士から適切なリハビリを受け、術後の後悔を減らしていきましょう。

仕事復帰や運転はいつからできる?

高位脛骨骨切り術を受けて、仕事復帰や運転ができる目安は以下の通りです。

  • デスクワーク:退院後すぐ
  • 立ち仕事:2〜3カ月
  • 運転:松葉杖を外してから(術後2カ月程度)

患者様の体重やリハビリの進行度にもよるため、上記はあくまで目安になります。

また、高位脛骨骨切り術は術後3年目を目安にプレートを外すための手術が必要です。

「歩けるようになったから大丈夫」と捉え、負担をかけてしまう膝の回復が遅れ、後悔してしまうでしょう。

高位脛骨骨切り術で後悔しないためにも、術後の経過観察が大切です。

リハビリ以外で後悔しない方法はないの?

高位脛骨骨切り術で後悔したくない方は「再生医療」との併用をおすすめします。

そもそも高位脛骨骨切り術は、人工関節による治療を必要とするまでの期間を遅らせるのが目的です。

高位脛骨骨切り術を受けた患者様の半数以上が、15年以上も人工関節による治療をせずに済んだ結果が出ています。(文献2

しかし高位脛骨骨切り術だけでは、膝関節の環境は変えられないのが欠点でした。

再生医療を併用すれば、膝関節の環境を整えられる効果が期待できます。(文献3

治療の選択肢が増えている昨今「高位脛骨骨切り術とリハビリで改善するしかないのか……」と考える前に、整形外科でカウンセリングを受けましょう。

少しでも後悔しそうな要因を減らしたい方は、ぜひ当院へご相談ください。

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