腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないこと4つ!注意したい動作とは?【専門医が解説】
公開日: 2022.06.09更新日: 2024.11.06
腱板断裂(腱板損傷)とは、肩の関節を安定させるための筋肉(腱板)が傷ついたり、腱組織が断裂して切れていたりする病気です。
腱板は、肩のなかで最も損傷を受ける部位であり、腱板が損傷すると腕の力が入らなくなり、とくに腕を上げようとしたときに痛みを引き起こします。また、夜に激しく痛み、眠れなくなる経験をした方もいるのではないでしょうか。
本記事では、肩に激しい痛みを起こす腱板断裂(腱板損傷)において、やってはいけないことや先端医療による治療について詳しく解説します。
日常生活の動作が原因となることもあるため、どのような動作を避けて安静を保つと良いのか、この記事を参考に取り入れてみてください。
目次
腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないこと4つ
腱板損傷直後は基本的に、肩周囲の安静を保つべきです。通常は三角巾を用いて、腕の動きを最小限にするように配慮します。
安静は急性期における対処法ですが、急性期が過ぎた後も、できる限り避けた方が良い動作があります。腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことは、以下の4つです。
- ・頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作
- ・首の後ろで腕を動かす動作
- ・上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作
肩を後方に回した位置で行う運動腱板損傷後に避けるべき動作を紹介しますので、一つずつチェックしながら症状を悪化させないようにしていきましょう。
頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作
腱板損傷を発症した後、とくに発症初期は以下のような動作や運動は控えたほうが良いでしょう。
- ・頭上に手を持っていく動作
- ・頭上へ重いモノを持ち上げる動作(重い荷物を上げたり、高所から下すような動作)
また、ボールを投げるような動きや、ジムでバーベルを頭の上に持ち上げるなどのウェイトトレーニングは、しばらく行わないようにします。これらの動きは、肩に過度のストレスを与えるだけでなく、損傷した部位にさらなる傷害と痛みを引き起こす可能性があるのです。
したがって、腱板損傷後は「オーバーヘッドでボールを投げること」「重いボールを上半身の力に頼って投げること」「水泳のクロールや背泳のように、頭上に右手を持ってきて力を入れて引き下げる」ようなストロークを避ける必要があります。
首の後ろで腕を動かす動作
バーベルやバーなどを、頭や首の後ろで上下させる運動も避けるべき動作のひとつです。
この運動は、腱板に過度の負担をかけ、さらなる肩の問題や慢性的な痛みを引き起こす危険性があります。この動作の問題は、肩の「外旋(骨を外側にねじるような運動)」にあります。
頭や首の後ろで上下させる運動では、肩をしっかりと外旋させる必要がありますが、これは肩にとって非常に負担のかかるポジションです。
この動きをすると、関節を構成する組織をさらに損傷してしまい、治癒までの時間が非常に長くなりかねません。
上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作
別名アップライトローと呼ばれる動作のことです。
アップライトローはジムでよく見かけるエクササイズのひとつですが、このエクササイズのメカニズムを見れば、なぜこの動作が腱板損傷後に避けるべき動作であるか、理解できるでしょう。
アップライトローは、上半身を起こした状態で肩を開き、両手に持ったバーベルなどの重りを首元まで引き上げ、持ち上げる動作です。
このエクササイズの問題は、腕を置かなければならない位置にあります。この位置は「内旋」と呼ばれ、アップライトローをするために腕を挙上させると、腱板が肩の骨に挟まれます。これは腱板損傷を引き起こす原因となる動作そのものでもあります。
肩を後方に回した位置で行う上運動
ベンチディップスとも呼ばれるエクササイズが該当します。
具体的には、椅子などに両手をついた状態で腰を座面よりも低い位置まで落とし、肩を後方に回した状態で、主に二の腕に相当する上腕三頭筋に負荷をかける運動です。
ベンチディップスは、腰を落としすぎて上腕が肩と平行な位置以上になってしまうと、肩関節に過度な負荷がかかります。
肘を開きすぎても閉じすぎても、上腕三頭筋に負荷がかかるため、腱板損傷後には避けるべき動作のひとつです。
腱板断裂(腱板損傷)が改善しない場合は再生医療による治療の可能性
腱板損傷は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着きますが、放置すると悪化する恐れがあり、最悪の場合、完全断裂のリスクがあります。症状が改善されなければ、手術が必要になることも考えなければなりません。
しかし、近年では身体への負担が大きい手術を回避でき、入院や長期間のリハビリが不要の「再生医療」といわれる先端医療で、損傷した腱板の再生を期待できます。
もしも、あなたが腱板損傷の症状が改善されていない、手術が必要な状況でしたら、再生医療を検討されても良いかもしれません。
このように再生医療による治療の可能性はありますが、まずは放置せず、手遅れになる前に整形外科医を受診して、適切な治療を進めていきましょう。
まとめ|腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことに注意して負担を減らそう!
本記事では、腱板損傷後に避けるべき動作、やってはいけないこと4つをご説明しました。
腱板損傷後は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着いていきます。外傷後や症状がなかなか改善しない場合は、どうしても手術を検討しなければなりません。しっかりと安静を保ち、保存的治療に反応すれば、完治も期待できます。
術後も含め、治療の一貫でリハビリを行うこともありますので、もし避けるべき動作についてさらに詳しく知りたい場合は、リハビリの機会などを活用して相談してみることをおすすめいたします。
なお、当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷をはじめとする肩に関する病気にお悩みの方を対象に、無料相談を実施していますので、お気軽にご相談ください。
腱板断裂(腱板損傷)やってはいけないことのよくある質問
腱板断裂(腱板損傷)を放置するとどうなる?
放置した場合、肩の機能が低下し、別の病気に移行する可能性があります。腱板断裂を放置しても自然に治ることは期待できず、治療やリハビリが欠かせません。
放置をして、症状が進行すると手術による修復が難しいだけでなく、人工関節手術を検討する可能性もあります。
以下の記事で、腱板断裂を放置するリスクなどについて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
腱板断裂(腱板損傷)はどれくらいで治る?
損傷の程度によって異なりますが、日常生活できるまでは2〜3カ月が目安です。
肩周囲に多くの負担をかけるスポーツや重労働の場合は、6カ月を目安としてください。
治療方法によっても回復期間は変わるため、専門医と相談しながら適切な対応が重要です。