腱板損傷と腱板断裂!その違いと共通点を医師が分かりやすく解説!
公開日: 2022.10.17更新日: 2024.10.07
目次
腱板損傷と腱板断裂!何がどう違う?その違いと共通点を分かりやすく解説!
ここでは、肩のケガの一つである「腱板損傷」と「腱板断裂」について、その共通点と、違いについてお話します。いずれも放っておいては危ないので、こちらで確認してください。
- 腱板損傷ってどんなもの?
- 腱板断裂と何がどう違うの?
そのような疑問があってこの記事にたどり着かれたのではないでしょうか。ここでは、双方の症状や原因、そして治療に至るまで平易に説明させて頂きました。疑問が解決すれば嬉しく思います。
腱板とは?
腱板とは、肩の4つのインナーマッスルが集まったもの(厳密に言うとその4つの筋群の腱部分)で、正式名称は肩回旋筋腱板(ローテーターカフ)です。
インナーマッスルとは、その名の通り内側にある筋肉であり、より骨・関節に近い場所にある筋肉のことを指します。
そんな腱板の大きな役割は、肩関節を安定化させることです。関節が安定すると、アウターマッスル(三角筋など)が働いた時に、より効率よくスムーズに腕を動かすことができます。
腱板損傷の症状と原因
腱や靭帯の損傷とは?
筋肉や腱、靭帯はいずれも繊維状の組織が集まってできており、その一部分が傷んでいる状態のことを損傷や炎症と言います。
肩の腱板はその構造や周囲の血流の状態から、一度損傷を起こしてしまうと自然修復が難しく、ひどいものでは手術が必要となるケースもあります。
腱板損傷の症状
腱板の損傷で特徴的なのは就寝時に痛みが出る夜間痛です。また、腕を挙げる途中で痛み、上まで挙げてしまえば痛みが引くといった症状もみられます。
これは、インナーマッスルである腱板が働かなくなってしまい、関節を安定化させられないため、効率よく力を伝えられないために起こるものです。
他にも特徴的な症状がありますので下記をご参照ください。
【腱板損傷の症状】
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腱板損傷の原因
腱板損傷は50代の男性に多くみられる疾患です。中年以降の腱板は、組織に変性(老化のようなもの)がみられることが多く、損傷や断裂が起こりやすい状態になっています。
肩の変性に加えて、仕事や日常生活などで重いものを無理に持ったり、肩を捻るような動きをしたり、転んで肩をぶつけたりなどの負荷がかかることで損傷を起こします。
多くはないですが、若い世代でも、肩に負担がかかるスポーツや強い衝撃が加わる事故などにより損傷を起こすこともあります。
腱板損傷と腱板断裂の違いと共通点
明確な違いはない??
実は、損傷と断裂に明確な違いはありません。損傷とは、組織の一部が傷んでいる状態と述べましたが、
「傷んでいる状態=一部切れている状態」と言い換えることもできます。
つまり、腱板損傷と呼ばれるものは腱板部分断裂と同義と捉えていいでしょう。医師によっては、分かりやすく患者さんに伝えるために、腱板損傷と腱板断裂を使い分けているケースも多くあります。
腱板断裂は、部分断裂と完全断裂に分けられる
腱板断裂は大きく2つに分けられます。
その2つとは、腱板部分断裂(不全断裂)と腱板完全断裂です。
【腱板部分断裂】
- ・関節面に近いところで起こる関節面断裂
- ・腱板の表層を覆う滑液包に近いところで起こる滑液包面断裂
- ・腱板の腱内部で起こる腱内断裂
【腱板完全断裂】
- ・腱が深く切れており、腱板を上から見た際に中の関節が見えてしまっている状態
出典『肩関節インピンジメント症候群』臨床スポーツ医学.30(5).2013より引用
腱板断裂には、上記のような違いがあります。
さらに、断裂の幅が狭い、広いなどの範囲の違いも分類されることがありますが、ここでは割愛させていただきます。
腱板損傷から腱板断裂へと進行する?
ここでは腱板部分断裂から完全断裂へと移行するのかどうかで話を進めていきます。結論から言いますと、腱板断裂は進行します。
例えば、下の写真のようなペーパー状の1枚のゴムがあります。
これを腱板と見立てましょう。
ゴムは劣化するとすぐ切れてしまいますよね?最初は小さな穴だったものが、引っ張る力が繰り返しかかるとどんどん広がっていきます。このゴムのように簡単には広がりませんが、イメージはそのような感じです。
つまり、小さな穴(=腱板損傷、腱板部分断裂)が無理に動かし続けることで大きな穴(=腱板完全断裂、広範囲断裂)へと広がってしまいます。
腱板完全断裂でしかも広範囲となると、リハビリだけではなかなか症状の改善が難しいのが正直なところです。いかに進行を抑えるかが、腱板断裂の重症化予防のカギとなります。
腱板損傷と腱板断裂の治療方法
腱板損傷・断裂の治療法は、大きく保存療法と手術療法の2つに分けられます。
保存療法では以下のような治療法があります。
保存療法
リハビリテーション
- ・関節の動く範囲を広げる可動域訓練
- ・損傷している筋・腱をカバーするための筋力訓練
- ・肩の正常な動きを促す機能訓練
- ・痛みを和らげるための物理療法(電気治療や温熱治療)
- ・テーピング処置(スポーツを行う人など)
- ・日常生活の動作指導
寝方指導
- ・腱板損傷では夜間の就寝時に痛みが増強することが多いため、肩にかかる負担を極力減らした寝方を指導
薬物療法
- ・痛みが強い時期には炎症を抑えるための消炎鎮痛薬を処方
- ・関節内や関節外の軟部組織に対しての注射
いずれも軽度〜中等度の腱板損傷に有効です。
手術療法では以下のようなものがあります。
手術療法
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術は、現在の肩腱板損傷の手術の多くを占めている手術方法です。傷口が小さくすみ、手術後の経過が早いのが特徴です。
方法は、肩に穴を空け、一方にカメラを、他方に操作する器具を入れて行います。そして、切れた腱をもともとついている上腕骨に打ち込んで止めます。
手術後は、安静期間を経た後に、徐々に関節を動かしていきます。術後、3ヶ月程度で日常生活はほぼ問題なく行えます。
仕事で重労働が必要な方は、おおよそ6ヶ月必要となりますのでご注意ください。
人工肩関節置換術
広範囲な腱板断裂や関節に変形がみられるケースでは、人工関節を入れる場合があります。人工関節といえば、股関節や膝関節がメジャーですが、肩にもあるのです。
関節の状態や、どのくらい動かせるかなどによって種類も様々ですが、ある程度は痛みなく動かせるようになります。重いものを持つ、スポーツで激しい運動をする場合は、医師と話し合って勝手にやらないことをおすすめします。
まとめ・腱板損傷と腱板断裂!その違いと共通点を医師が分かりやすく解説!
今回は、腱板損傷と腱板断裂の違いと共通点についてお話しました。
結局のところ明確な違いはないとお伝えしましたが、医師によって使い分けていることがありますので、どのくらい切れているのか、どのような治療が望ましいのか確認した方がいいでしょう。
五十肩だと思って放っておくと、広範囲の腱板断裂を引き起こしかねませんので、痛みや動きづらさでお悩みの際は、専門の医師にご相談ください。
ご参考になれば幸いです。
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