アキレス腱断裂後のリハビリメニューを解説|装具の種類と特徴とは?
アキレス腱断裂後のリハビリメニューを解説|装具の種類と特徴とは?
アキレス腱断裂後に「どのようなリハビリをするんだろう?」と気になる方はいませんか?
アキレス腱断裂後の治療は手術をしない保存療法とアキレス腱を縫合する手術療法があり、どちらの場合も、装具を使いながらリハビリを行います。
本記事では、アキレス腱断裂後のリハビリメニューや使用する装具の種類、特徴を解説します。怪我をした後にどのような経過でリハビリを進めるのか詳しく説明するので、アキレス腱断裂後のリハビリを知りたい方は、ぜひ参考にしましょう。
アキレス腱断裂後のリハビリメニュー
アキレス腱断裂後は、保存療法にしても手術療法にしても、アキレス腱の回復状況や痛みなどに合わせてリハビリ内容を変更します。
まずは、具体的なリハビリメニューについて解説します。
患部外トレーニング
怪我や手術をした直後は、アキレス腱を保護するため、足首を動かしたり、体重をかけたりできません。
その場合、足首以外の部分が弱らないようにするため、患部外のトレーニングを実施します。
具体的には以下のようなトレーニングがあります。
タオルギャザー
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パテラセッティング
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膝伸展運動
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股関節外転運動
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アキレス腱の修復が進んだ後、スムーズに次のリハビリに移るためにも、しっかり患部外トレーニングを行う必要があります。
関節可動域運動
足首の関節が固まらないように、関節可動域運動(かんせつかどういきうんどう:ROM運動)を行います。
つま先を上に持ち上げるような動き(背屈運動:はいくつうんどう)はアキレス腱が伸ばされるため、慎重に始めて再断裂を予防するのが大切です。
step1
step2
step3
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アキレス腱の強度が高まれば、立ってアキレス腱を伸ばすようにストレッチをして関節の動きを改善します。
筋力トレーニング
アキレス腱が十分修復されてくれば、日常の動作やスポーツに必要な筋力を戻すためのトレーニングを実施します。
まずはゴムバンドなどを使用して体重をかけない状態で負荷をかけていきます。筋力や痛みの有無に合わせて、体重をかけた状態でのトレーニングに移行します。
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と徐々に負荷を高めていきます。
荷重練習
アキレス腱の修復状況に合わせて、体重をかける時期や量を調整します。
保存療法に比べ、手術療法の方が早くから体重をかけることができます。
荷重は装具を使用しながら調整します。装具については、後ほど詳しく解説します。
動作練習
アキレス腱の強度や筋力が十分になれば、装具を外してのウォーキングやジョギング、ランニング、ジャンプといった動作を実施していきます。
スポーツ動作は複雑な動きや強い瞬発力を必要とするため、短くても6ヶ月程度の期間が必要です。
アキレス腱断裂後のリハビリ経過
アキレス腱断裂後に選択する治療法によってリハビリメニューや装具の装着期間、調整のタイミングが異なります。
ここでは、保存療法と手術療法に分けて、リハビリの経過について紹介します。
保存療法でのリハビリの経過
まずは、保存療法におけるリハビリの経過の例は以下の通りです。
受傷日からの日数 |
リハビリメニューの例 |
受傷〜2週間 |
体重は全くかけてはいけない。患部以外のトレーニングの実施。 |
2週間〜6週間 |
足首を下に向けた状態で固定。床に触れる程度から体重をかけ始める。 4周目以降に全体重をかけ始める。また、足首をゆっくり自分で動かす。 |
6週間〜8週間 |
足首をストレッチする。 |
8週間〜12週間 |
徐々に筋力トレーニングを開始。 まずはゴムバンドなどを使ったトレーニングを開始。 筋力が向上すれば座位カーフレイズ開始。 その後、両脚カーフレイズ、片脚カーフレイズを段階的に実施。 |
3ヶ月〜4ヶ月 |
装具を外してウォーキングやジョギングを開始。 |
4ヶ月〜6ヶ月 |
ランニングやジャンプ開始 |
6ヶ月〜 |
スポーツ復帰 |
以上のように受傷からアキレス腱の修復状況に合わせて、段階的にリハビリメニューを変更していきます。
アキレス腱の修復状況や痛みの程度、合併症の有無などによって、上記のメニューのようにいかない場合もあります。
受傷直後はギプス固定をして、足首が完全に動かないようにしばらく固定をする場合もあります。あくまでもアキレス腱の修復や再断裂の予防が最優先ですので、医師や理学療法士としっかり連携をとり、リハビリを進めていくのが大切です。
手術療法でのリハビリの経過
次に、手術療法後のリハビリの経過について紹介します。
受傷日からの日数 |
リハビリメニューの例 |
受傷〜4週間 |
体重は全くかけてはいけない。患部以外のトレーニングの実施。 痛みに合わせて徐々に足首の運動を実施。 徐々に体重をかける量を増やしながら、荷重していく。 |
4週間〜6週間 |
つま先を下に向けた状態から徐々に戻していき、全体重をかけていく。 |
6週間〜8週間 |
立った状態でのストレッチや足首の筋力トレーニングを始める。 筋力がついてくれば両足カーフレイズを実施(両手支持から始める)。 |
8週間〜3ヶ月 |
装具を外してのウォーキング開始。 片脚カーフレイズで筋力を向上させる。 |
3ヶ月〜5ヶ月 |
ジョギングやランニング、ジャンプなどを段階的に実施。 |
5ヶ月〜 |
スポーツ復帰を目指す。 |
保存療法でのリハビリに比べて、アキレス腱を動かしたり、荷重をかけたりする時期が早まります。そのため、早期の動作獲得やスポーツ復帰を目指せます。
アキレス腱断裂で使う装具の種類や特徴
アキレス腱断裂では、つま先が下を向いた状態で固定できる装具を使用します。
踵に厚みをつけるためのパッド(ヒールパッド)を貼り付けて、つま先が下を向いた状態で体重がかけられるように工夫されます。パッドは厚みを調整できるよう、複数枚を重ねてできているため、アキレス腱の修復状態に合わせて、足首の角度の調整が可能です。
ギプス固定から装具に移行した段階で、就寝や入浴時に外すことは可能ですが、それ以外の時間は装着が必要です。
まとめ・アキレス腱断裂後のリハビリ経過や装具装着は治療方法によって異なる
アキレス腱断裂後のリハビリ経過や装具装着の方法は、保存療法か手術療法によって異なります。治療方法の選択は医師としっかり相談して、個人個人のライフスタイルに合わせた選択をします。
いずれにしても、アキレス腱の修復を待ちながら、段階的にリハビリを進めて、日常生活やスポーツに復帰することが大切です。
本記事を参考にアキレス腱断裂後のリハビリや装具についての理解を深めて、医師や理学療法士と連携しながら回復を目指しましょう。
No.S134
監修:医師 加藤 秀一
引用”第2版整形外科術後理学療法プログラム.MEDICAL VIEW,東京,2014,pp216-221.”
引用”日本整形外科学会「アキレス腱断裂」”
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/achilles_tendon_rupture.html