脳幹出血の余命はどのくらい?予後が悪い理由や治療法も解説
公開日: 2023.07.03更新日: 2024.11.06
脳幹出血になったら余命はどのくらい?
どんな症状だったら余命に影響するの?
この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血になった人の余命がどのくらいなのか気になっているのではないでしょうか。
「今の症状だと、余命はどのくらいなのだろう」と、不安になっているかもしれません。
結論、脳幹出血の余命は症状の重さによって変わります。
脳幹出血のみの余命を調べたデータはないものの、重症の場合は発症後数時間から数日で亡くなるケースも少なくありません。ただ、発症した年齢が若い場合や出血量が少ない場合は、比較的余命に影響が出にくいこともあります。
本記事では、脳幹出血の余命や予後について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の余命が症状ごとにわかり、現在の状況や今後の見通しの理解を深められるでしょう。
目次
脳幹出血の余命に関する正確なデータはないが予後は悪い
脳幹出血だけの余命を調べた正確なデータはありませんが、予後は全体的に悪いといわれています。
重篤な脳幹出血が起こると急激に容体が悪化し、発症後数時間〜数日で亡くなる方も珍しくありません。
脳幹出血は「脳出血」の一種で、脳内にある「脳幹」という部位から出血する病気です。おもな原因は高血圧によって脳の血管が破れることで、脳出血の約1割ほどが脳幹出血といわれています。
脳出血後の余命は、調査対象の年齢や病状が異なるため、研究ごとにややばらつきがあります。生存率に関するデータは、以下の通りです。(文献1)(文献2)
- 脳出血を起こした人の平均余命は12年
- 脳出血を起こした人の10年生存率は24.1%
- 初めて脳出血を起こした人の1年生存率は38%、5年生存率は24%
- 初めて脳卒中を起こした年齢が50歳以下の人は、70歳以上の人よりも5年生存率が高い
つまり、脳出血を起こした人の4人に3人は、余命が10年未満といえます。脳幹出血は上記に示した脳出血のなかでも予後が悪い病気のため、余命は比較的短いと考えられるでしょう。
脳幹出血の後遺症について解説した記事はこちら
脳幹出血の回復の見込みとその期間について解説した記事はこちら
脳幹出血の余命が短くて助からない人が多い理由
脳幹出血の余命が短い理由は、脳幹の機能が失われると生命の維持が難しいからです。
脳幹は「中脳」「橋」「延髄」の3つの部位から成り立つ器官で、以下のように生命維持に重要なさまざまな役割を果たしています。
- 意識を保つ
- 呼吸や血液の流れを調節する
- 身体が受けた刺激を脳へ伝える
- 手足を動かす信号を脳から出す
脳幹が行っている「呼吸や意識の保持など」が不可能になると、生命の維持は難しくなります。そのため、出血が起こり脳幹の機能が失われると、余命が短いケースが多いのです。
なお、脳幹のなかでも「橋」という部位で起こるケースが多いため、脳幹出血は「橋出血」とほぼ同じ意味となります。
【重症度別】脳幹出血の症状と余命への影響
脳幹出血の重症度は、余命に大きな影響を与えます。具体的には「出血量」は重症度に大きくかかわり、出血量が少なければ軽症、多ければ重症です。
本章で、脳幹出血の症状と余命への影響を理解しておきましょう。
軽症の場合
以下のような症状のみの場合は、軽症で余命への影響は小さい可能性があります。
- 嚥下の障害
- 顔の感覚や運動の障害
- 手足の運動や感覚の障害
- 複視(ものが二重に見える)
- 運動失調(バランスが取れずにふらつく)
これらの症状は、脳幹出血の前兆で気付いたときや脳出血・脳梗塞など他の脳血管疾患でもみられます。
また、血管の奇形による脳幹出血の場合は軽症で済みやすく、一度の出血で命にかかわることはほとんどありません。
しかし、奇形のなかでも「海綿状血管腫」は出血をくり返して大きくなりやすいため、いずれ重い後遺症が出る可能性があります。
早めの受診で悪化を防ぎ、予後を改善できる可能性を高められます。もし紹介したような症状を感じたら、迷わずに当院へメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてご相談ください。
重症の場合
以下のような症状が出ている場合は、出血の多い脳幹出血の重症例と考えられます。生存率は低く、余命は短いケースが多いでしょう。
- 両手両足の麻痺
- 異常な呼吸パターン
- 重篤な意識障害:昏睡など
- 中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高熱
- 除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態
- 瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼の大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など
救急車を呼んだときは意識あり・自発呼吸ありだったにもかかわらず、急激に悪化して短時間で命を落とすケースもあります。
脳幹出血の治療
高血圧による脳幹出血は手術の適応があまりなく、基本的には血圧を下げて体の状態を保つ「保存的治療」が最優先されます。出血でダメージを受けた脳幹に対しては、手術が状況をより悪化させる危険性が高いためです。
ただし、血管奇形が原因の脳幹出血の場合は、時期をみて手術を検討するケースもあります。
脳幹は手術による合併症リスクの高い部位です。手術するべきか、どのタイミングで手術をするべきかなどは、状況をみて慎重に判断します。
なお、命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリも重要です。近年、リハビリはできるだけ早い時期から始めると予後が良いとされるため、ベッド上でできるものから少しずつリハビリを行います。
脳幹出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
まとめ|脳幹出血の余命は短い人が多い
本記事では、脳幹出血の余命や、余命が短いといわれる理由などを詳しく説明しました。
脳幹は生命維持に欠かせない器官のため、脳幹出血によって機能が失われると余命が短いケースが多くみられます。ただし、軽症や前兆段階で気付いた場合、血管の奇形による脳幹出血の場合は、余命への影響が小さい可能性もあります。
手術のリスクが大きいため、積極的な治療ではなく保存的治療が原則となるでしょう。
当院「リペアセルクリニック」では、厚生労働省に届出を行い、再生医療(幹細胞)治療による脳幹出血後の治療を提供しています。
再生医療は脳神経細胞の修復・再生や脳の血管を新しく再生する作用により、後遺症の回復や脳幹出血の再発予防が期待できる治療です。
メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
この記事が脳幹出血の余命を知るのに役立ち、今後の生活を再建するきっかけになれば嬉しく思います。
脳幹出血についてよくあるQ & A
Q.脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか。
A.入院日数に関する脳幹出血単独のデータはありません。
ただし、厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般の平均入院期間は77.4日となっています。入院期間が比較的長いのは、脳卒中により神経にダメージが起こるからです。(文献3)
神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかることも大きいでしょう。
Q.脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。
A.一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。
すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。
脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありませんが、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。
Q.脳幹出血になったら助からないのでしょうか。
A.脳幹は生命維持に不可欠な器官のため、脳幹出血により機能が失われると助からないケースは珍しくありません。
ただし、脳幹出血で助かるか助からないかは重症度によって異なります。出血量が少なく障害の程度が低い軽症であれば、回復例もみられます。
助かるかどうかは、脳幹出血を初めて起こしたのか、再発なのかによっても異なるため、回復の見込みは医師に確認するのが確実です。
参考文献一覧
文献3