視床出血による運動失調が起こる理由は?種類と特徴を医師が解説
公開日: 2023.07.27更新日: 2024.11.06
「視床出血の症状や後遺症は何があるの?」
「視床出血のリハビリ方法は?」
視床出血は、脳の中でも脳内ネットワークの中心となる視床で起こる出血です。
脳の中心である視床に出血が起きると、片麻痺や感覚障害、また運動失調の原因にもなります。
この記事では、視床出血で運動失調が起こる理由を始め、特徴や治療方法、リハビリなどを解説します。
再生医療の可能性も解説するので、視床出血後の症状に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
視床出血とは【脳の視床で起こる出血】
視床出血は、脳卒中と総称される脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の中でも、脳の中の視床で起こる出血です。
主な原因は高血圧で、脳出血の中では、被殻(ひかく)出血の次に視床出血の頻度が高いとされています。(文献1)(文献2)
視床と被殻は隣にあり、視床出血は脳室とも隣接しています。視床出血と被殻出血は、脳室にまで出血が広がるかどうかが違いのひとつです。
また、視床出血は、重症度によってI〜IIIに分類されます。
その中でも、脳室穿破(せんぱ:脳室と呼ばれる脳脊髄液がある部分まで出血が及んでいるか)の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類できるのがポイントです。
視床に限局しているものをⅠ、内包に進展したものをⅡ、視床下部または中脳に進展したものをⅢとしています。
簡単に述べると、出血が大きくなるほど、数字も大きくなるようなイメージで良いでしょう。
視床出血による症状
視床は、脳内ネットワークの中心になる場所で、感覚神経をはじめ、さまざまな神経線維がここを経由しています。
視床出血によって、以下のようにさまざまな症状が起こるのが特徴です(文献3)
・片麻痺 ・瞳孔径の縮小 ・顔面神経麻痺(病変と反対側に起こる) ・知覚障害 ・病変側への共同偏視 ・外転神経麻痺 ・半盲 ・嘔吐 ・運動失調 など |
他にも、視床出血では失語症や半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害が起こる場合もあります。(文献4)
また、他の脳卒中と同じように症状が出たばかりの急性期には、視床出血が原因となり、嚥下障害(食べ物の飲み込み運動に支障が出る)が起こる可能性もあるでしょう。(文献5)
嚥下運動は、大脳から脳幹に至るまでの複雑なネットワークによって成り立っているからです。
視床出血による運動失調が起こる理由
運動失調とは、動作や姿勢保持などの協調運動に起こる障害です。
運動麻痺がないときもあれば、軽症の運動麻痺があるケースも含まれます。
視床出血で失調症状がでるのは、小脳の運動機能調節に重要な経路に小脳や視床、大脳皮質、橋があるためです。
上記のいずれかが障害されても、小脳性運動失調を生じるのです。
また、視床出血によって、深部感覚が障害されるのも原因のひとつと考えられています。
【失調と麻痺の違いとは?】 失調と麻痺の違いは、筋力の低下があるかどうかです。 視床出血による運動失調だと、意識障害や片麻痺を伴う場合が多い傾向にあります。協調運動障害や不随意運動、感覚障害が認められる場合は少ないとされています。 つまり、運動失調の症状があっても、四肢の麻痺によるものなのか判別がつきにくいと考えられるのです。(文献6) |
視床出血の種類と特徴
運動失調の種類には、以下のようなものがあります。
視床出血の失調症状では、四肢の失調症状や歩行の異常が認められます。
視床出血の治療方法
視床出血が起こったときの治療は、血圧を下げるのが中心となります。視床は脳の深部にあるため、手術適応にはなりにくいのです。
また、視床出血によって、水頭症と呼ばれる脳室に脳脊髄液がたまる症状になってしまう場合があります。
水頭症を放置しておくと、脳ヘルニア(脳の一部が頭蓋骨の外側に飛び出してしまう状態)になる危険性があるのです。
呼吸障害などが起こり生命に関わるため、シャント術の手術を行い、余分な髄液を脳室から腹腔にまで流します。
視床出血後のリハビリについて【後遺症が出る場合】
視床出血では、発症後から感覚障害があった場合、感覚障害の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。
運動失調が残る場合を始め、出血が大きいときは、片麻痺の後遺症が出る可能性もあるでしょう。
視床出血後、ある程度落ち着いた段階で、作業療法や理学療法などのリハビリを行います。
・作業療法 ・理学療法 |
作業療法
作業療法では、麻痺している上肢(肩口から先の手)を積極的に使い、日常生活への復帰を目標とします。
たとえば、麻痺側の手を中心に動かして、食事に必要なお箸の使い方などを訓練する流れです。
リハビリは毎日続けて行うと、身体機能をサポートする働きかけにつながります。
理学療法
理学療法では、以下のように、日常生活を送る上で必要な動作の練習をします。
・重り負荷 ・弾性包帯による圧迫 ・フレンケル体操 ・立ち上がりや立位時の荷重負荷練習 ・視覚誘導 |
視床出血後には片麻痺が出て、運動障害と運動失調症状が同時に起こる場合もあるでしょう。
そのため、視床出血後のリハビリの一つとして、免荷式(めんかしき)トレッドミルの機械を使い、歩行のリハビリを行います。
上記の方法は、体を上から吊るしてハーネスで体を支えると、足にかかる体重を調整できて、バランス感覚を鍛える働きかけにつながります。(文献8)
視床出血に関するリハビリについては、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
まとめ|視床出血による運動失調はリハビリと再生医療の治療法もある
視床は脳内ネットワークの中心で、視床出血が起こると運動失調などの症状が出る場合もあります。
視床出血は後遺症が残ってしまう可能性が高い疾患です。
ただ、当院ではリハビリに再生医療を組み合わせて、脳神経細胞の修復や身体機能の改善への取り組みを行っています。
また、関連する内容として、当院の患者様で視床出血後に左半身の麻痺があり、膝の強直における幹細胞治療の実績もあります。
脳卒中後の後遺症に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
参考文献 文献1 文献2 文献3 文献4 文献7 文献8 |