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【血管腫疑い】肝血管腫とは?原因や治療法から女性ホルモンとの関連まで内科医が解説

肝臓に血管腫疑い!?その時どうすべき?内科医が解説!
公開日: 2024.05.16 更新日: 2025.01.15

人間ドックなどの検査で「肝血管腫疑い」と言われたら、不安になりますよね。

肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性腫瘍で、無症状かつ小さな病変であれば治療は基本的に不要です。

ただし、定期的な検査が推奨されており、万が一腹痛や吐き気、呼吸困難などの症状になった場合には積極的な治療を検討する必要があります。

この記事では、肝血管腫の症状や原因、診断後の気をつけることについて、正しい知識を得られるよう解説していきます。

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肝血管腫とは?

肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性の腫瘍です。肝臓は元々血管が多い臓器であるため、血管腫ができやすいとされています。

肝血管腫は「海綿状血管腫」と「血管内皮種」の2種類に大きく分けられますが、海綿状血管腫と診断されることがほとんどです。そして、臨床上問題を生じるのも海綿状血管腫が多い傾向です。

基本的には無症状のため、昔は剖検(ぼうけん:病死した患者の遺体を解剖して調べること)で見つかることが多かったのですが、近年の画像診断技術の発展に伴い、他の病気を探すための検査や人間ドックなどで偶然発見されることが多くなりました。基本的には消化器内科で診てもらう病態です。

成人の発生頻度は5%程度で、一般的には女性のほうが男性に比べてやや多いといわれています。

その他女性に多い肝臓の病気については、下記の記事も合わせてご覧ください。

肝血管腫の原因

肝血管腫が形成される原因は明らかになっていませんが、先天的な要素が大きいと考えられています。乳児期に肝血管腫が生じる場合もありますが、通常は自然に消失していきます。

成人になって肝血管腫が発見された女性患者の調査報告では、女性ホルモン補充療法を施行したことにより肝血管腫の増大が見られ、結果として女性ホルモンとの関連が示唆されました。

女性ホルモンが実際にどのように肝血管腫に影響を及ぼしているかまでは未だはっきりと解明されていませんが、妊娠や女性ホルモン療法は肝血管腫増大のリスクになり得ると考えられています。

なお、ピルの服用が肝血管腫を増大させるかに関する研究もなされましたが、そちらでは有意に増大させないとの結果でした。ただし、ピルの長期服用は肝機能障害や肝腫瘍のリスクを上昇させる上、ピルと肝血管腫増大の関連を考える報告があるのも事実です。

肝血管腫の症状

肝血管腫は、多くの場合は無症状で、特徴的な症状はありません。ただし、腫瘍が大きくなってくると徐々に周囲の臓器を圧迫し、結果として不快感や腹痛、右上腹部の膨満感、嘔気・嘔吐などが引き起こされます

他の関連症状としては、頻度は少ないものの、発熱や黄疸(皮膚や白眼の黄染)、呼吸困難、心不全なども確認されています。

  • ・不快感や腹痛
  • ・右上腹部の膨満感
  • ・嘔き気、嘔吐
  • ・発熱
  • ・黄疸(皮膚や白眼の黄染)
  • ・呼吸困難
  • ・心不全

また、稀に巨大血管腫を生じる「カサバッハ・メリット症候群」という病態があり、出血や多臓器不全で命に関わることがあります。カサバッハ・メリット症候群は基本的に出生児あるいは幼少時期に生じるものですが、成人になって発症する例もあります。

上記のような症状を認めた際にはすぐに医師の診察を受けましょう。

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肝血管腫の検査・診断の方法

肝血管腫は、無症状のうちは血液検査での異常も見られません。そのため、肝血管腫が疑われる場合は画像的診断が行われます。主な検査方法として、以下が挙げられます。

  • ・超音波(エコー)検査
  • ・CT(造影コンピュータ断層撮影)検査
  • ・MRI(磁気共鳴画像)検査
  • ・超音波(エコー)検査

超音波検査とは、体に超音波の出る機械を当て、それぞれの臓器から跳ね返ってきた超音波を画像化する検査です。

腹部超音波検査ではお腹をグッと押される感覚はありますが、被曝の恐れや痛みはありません。

低侵襲な検査で肝血管腫を発見するという点では優れますが、肝細胞癌や肝臓への転移癌と鑑別しにくいといった欠点があります。

造影超音波検査を用いることも可能ですが、患者さんの体格や術者の技量によって左右されてしまうため、通常はCT検査やMRI検査の画像と合わせて総合的に判断されています。

CT(造影コンピュータ断層撮影)検査

CT検査とは、ベッドの上に仰向けに寝た状態でトンネル状の装置に入り、X線の吸収率の違いを利用して体の断面を画像化する検査法です。
造影剤を使用しない単純CTでは肝血管腫の検出率は低いですが、造影剤を使用した造影CTであれば格段に検出率が上がります。肝血管腫は他の肝臓癌と比べて血流の流れが遅いため、造影剤を使用すると全体がゆっくり染まるのです。

ただし、過去に造影剤によるアレルギーが出た人や糖尿病薬を服用している人、腎機能障害のある人、授乳中の人などは造影剤を使用する際に注意が必要となります。
該当される方は医師にご確認ください。

CT検査は断面像が見られるため腫瘍の詳細がわかる点では優れていますが、被曝の問題や造影剤を使用しなければならない点は欠点となります。

MRI(磁気共鳴画像)検査

MRI検査とは、強力な磁場が発生したトンネル状の機械に入り、ラジオ波を体に当てることでさまざまな角度から断面像を作り出す検査です。超音波検査やCT検査同様、必要時には造影剤も使用できます。

造影を含めたMRI検査が肝血管腫の確定診断において最も有用であると言われています。

MRI検査は被曝の心配なく腫瘍の詳細を知るには適していますが、狭いトンネルの中に入る必要があるので狭所恐怖症の人には不向きなである点や、超音波検査やCT検査と比べてコストが高くなる点が難点です。

また、病院によっては他の検査と比較して予約が取りにくい場合もあるでしょう。

肝血管腫の治療法

肝血管腫は、自覚症状や血管腫の増大傾向、血管腫が原因の合併症などに応じて、以下の治療法が選択されます。

  • ・経過観察のケース
  • ・カテーテル治療が必要なケース
  • ・手術療法が必要なケース

経過観察のケース

小さな病変かつ無症状であれば、基本的に経過観察のみと考えて良いでしょう。大きくても増大傾向がなく、かつ無症状であれば経過観察可能と判断される可能性が高いと思われます。

ただし、自覚症状があり、かつ大きい肝血管腫を指摘されている場合は、それ以上大きくならないよう、女性ホルモン補充療法やピルの中断が推奨されています。

妊娠に関しては判断が難しいところで、大きな血管腫が発見された場合には妊娠を勧めるべきでないと主張する報告もある一方で、巨大血管腫がありながらも合併症を生じることなく妊娠継続ができたとの報告もあります。

巨大血管腫があるために産婦人科領域の治療について相談したい方や妊娠をご希望の場合には、産婦人科の医師に加え、消化器内科や消化器外科の医師ともよく話し合いましょう。治療の際には、消化器内科の医師より消化器外科や放射線科の医師へ紹介され、適切な治療を検討していきます。

カテーテル治療が必要なケース

次のような条件下では、カテーテル治療や手術療法といった積極的治療が必要とされます。

  • ・カサバッハ・メリット症候群
  • ・血管腫の急速な増大
  • ・血管腫の増大とともに症状の増悪
  • ・血管腫が原因となった合併症が中等度以上
  • ・血管腫の破裂

カテーテル治療とは、血管内より血管腫に栄養を送る動脈へアクセスし、挿入した細い管を使って動脈を塞ぐ“肝動脈塞栓術”のことです。

肝動脈塞栓術は手術療法と異なり、根本的治療には至らず、多くの場合腫瘍の縮小はみられませんが、症状改善には有効とされています。

また、前段階として一旦肝動脈塞栓術を施行し、全身状態が改善されてから手術に臨む症例もあります。

手術療法が必要なケース

肝臓から腫瘍を引き剥がせると判断された場合は“腫瘍摘出術”が選択され、腫瘍摘出術が難しい場合には腫瘍を肝臓の一部とともに取り除く“肝切除術”が選択されます。

報告されている肝血管腫の手術成績は、破裂による緊急手術を除いて良好です。

なんらかの理由で手術療法が行えないと判断された場合には、放射線治療やステロイド治療も考慮されます。どちらも副作用があるため、患者に合わせて放射線量やステロイド量の適切な調整が必要です。

2024年現在は血管腫を薬で治す研究も進められており、今後の新しい治療法が期待されています。

肝血管腫の診断が出たら気をつけるべきこと

肝血管腫と診断された場合は、お近くのクリニックや内科での定期検査を必ず受けてください。そしてもし気になるような症状や異変を感じた場合には、すぐ診療してもらいましょう。
定期検診では、血管腫のサイズの変化に注目することが大切です。

ある研究において平均12カ月の経過観察を行った結果、ほとんどの症例でサイズの変化がなかったものの、少数ながら増大する症例もありました。肝血管腫は10cmを超えると破裂のリスクが高まり、そして破裂した場合には命に関わります。

日常生活においては、無症状であれば、基本的に普段通りで構いません。しかし、スポーツの最中にボールが腹部に当たって肝血管腫が破裂した例や、歩行中に足を滑らせて転落した際に肝血管腫が破裂した例などの症例報告が稀にあります。

外傷性破裂を防ぐため、高いところからの転落や腹部に強い衝撃が当たるようなリスクは避けましょう。

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まとめ|肝血管腫は定期的に検査をしましょう

肝血管腫は良性腫瘍であり、基本的には怖い病気ではありません。小さく、無症状なうちは治療も不要です。

しかし、大きくなってくるといろいろな症状を招くほか、破裂の危険が出てきます。自分の身を守るためにも、定期的な検査を心掛けましょう。

この記事がご参考になれば幸いです。

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肝血管腫に関するよくある質問

肝血管腫は癌の可能性はありますか?

肝血管腫は良性の腫瘍であるため、癌になる可能性はほとんどありません。ただし、見つかった肝血管腫が20mmを超える腫瘍である場合や、腫瘍が短期間で大きくなった場合は、肝血管腫ではなく肝臓癌であった可能性があります。

肝血管腫が見つかった場合は、半年に一度は定期検査を受けることがおすすめです。

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