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肝血管腫とは?症状・原因・治療法・予防法まで内科医が解説

肝血管腫
公開日: 2024.05.16 更新日: 2026.01.31

肝血管腫は近年の画像診断により発見例が増加している良性の腫瘍です。(文献1

無症状の場合は治療する必要がありませんが、まれにカテーテル治療や外科手術が必要なケースもあります。

本記事では肝血管腫の症状や原因、治療法、予防法について解説します。

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肝血管腫とは?

肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性の腫瘍です。

良性腫瘍は周囲の臓器への転移や、周囲の組織に入り込んで増殖する(浸潤する)リスクが低く、身体におよぼす影響は比較的少ないとされています。

肝臓に見られる悪性腫瘍としては、肝細胞がんや胆管細胞がん(肝内胆管がん)がよく知られています。

肝臓はもともと血管が多い臓器であるため血管腫ができやすく、肝臓にできる腫瘍の半数以上が肝血管腫とされています。

肝血管腫は「海綿状血管腫」と「血管内皮腫」の2種類に大きく分けられますが、海綿状血管腫と診断されることがほとんどです。そして、臨床上問題を生じるのも海綿状血管腫が多い傾向です。

基本的には無症状のため、昔は剖検(ぼうけん:病死した患者の遺体を解剖して調べること)で見つかることが多かったのですが、近年の画像診断技術の発展に伴い、他の病気を探すための検査や人間ドックなどで偶然発見されることが多くなりました。基本的には消化器内科で診てもらう病態です。

成人の発生頻度は5%程度で、一般的には女性のほうが男性に比べてやや多いといわれています。

その他女性に多い肝臓の病気については、下記の記事も合わせてご覧ください。

肝血管腫の症状

肝血管腫は、多くの場合は無症状で、特徴的な症状はありません。ただし、腫瘍が大きくなってくると徐々に周囲の臓器を圧迫し、以下の症状が出やすくなります。

  • 腹部の不快感
  • 腹痛
  • 右上腹部の膨満感
  • 嘔気・嘔吐など

また、発現頻度は低いですが、重症例では以下の症状が見られるケースもあります。

  • 肝臓の巨大化による合併症
  • 発熱
  • 黄疸(皮膚や白眼の黄染)
  • 呼吸困難
  • 心不全など

肝臓の巨大化による合併症の具体例としては、肝臓の破裂や多臓器の圧迫、出血性ショックなどが挙げられます。

肝臓が巨大化して破裂して出血を起こすと治療が困難になり、最悪のケースでは死に至るため、なんらかの異常が見られる際は速やかに医療機関を受診する必要があります。

巨大肝臓血管腫のカサバッハ・メリット症候群に注意

カサバッハ・メリット(Kasabach-merritt)症候群は、新生児期から乳児期に多く見られる巨大な血管腫です。

発症すると血小板の顕著な減少が見られ、出血や多臓器不全などを起こすと最悪のケースでは死に至ります。

現在のところ確立した治療法がなく、ステロイドやインターフェロン、抗血小板薬の投与など複数の治療を並行するのが一般的です。

死亡率は20~30%とされていますが、治癒した例では予後が良好で、再発の可能性はありません。(文献2

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肝血管腫の原因

肝血管腫が形成される原因は明らかになっていませんが、先天的な要素が大きいと考えられています。乳児期に肝血管腫が生じる場合もありますが、通常は自然に消失していきます。

肝血管腫の男女比について、エビデンス(医学的根拠)を伴うデータはありません。
しかし、臨床上は女性の発症例が多く報告されており、ホルモンバランスの変化が発症リスクを高める要因ではないかと考えられています。

実際に、成人になって肝血管腫が発見された女性患者の調査報告では、女性ホルモン補充療法を施行したことにより肝血管腫の増大が見られ、結果として女性ホルモンとの関連が示唆されました。

女性ホルモンが実際にどのように肝血管腫に影響を及ぼしているかまでは未だはっきりと解明されていませんが、妊娠や女性ホルモン療法は肝血管腫増大のリスクになり得ると考えられています。

なお、ピルの服用が肝血管腫を増大させるかに関する研究もなされましたが、そちらでは有意に増大させないとの結果でした。

ただし、ピルの長期服用は肝機能障害や肝腫瘍のリスクを上昇させる上、ピルと肝血管腫増大の関連を考える報告があるのも事実です。

発症年齢に関しては30〜50代に多く見られるとされていますが、全年齢層で検査を行った結果ではないため好発年齢は不明です。

肝血管腫の検査・診断の方法

肝血管腫の検査法として以下の方法が挙げられます。

  • 超音波(エコー)検査
  • CT(造影コンピュータ断層撮影)検査
  • MRI(磁気共鳴画像)検査

画像検査以外に腫瘍マーカーを用いてがんの可能性を調べたり、血液検査によりカサバッハ・メリット症候群のリスクを確認したりするケースもあります。

次項で肝血管腫の検査の際に行われる画像診断ついて解説します。

超音波(エコー)検査

超音波検査は身体に超音波の出るプローブと呼ばれる機械を当て、それぞれの臓器から跳ね返ってきた超音波を画像化するのが特徴です。

腹部超音波検査ではお腹をグッと押される感覚はありますが、被曝の恐れや痛みがなく、副作用を心配しなくて良い点がメリットです。

身体への負担が少ない検査で肝血管腫を発見できる点では優れますが、肝細胞がんや肝臓への転移がんと見分けにくい欠点があります。

造影超音波検査を用いることも可能ですが、患者さんの体格や術者の技量によって左右されるため、通常はCT検査やMRI検査の画像と合わせて総合的に判断されています。

造影超音波検査に用いられる造影剤は、卵アレルギーの方には使用できません。造影超音波検査に伴い過去にアレルギーを起こした経験がある方は、事前に医師に相談する必要があります。

CT(造影コンピュータ断層撮影)検査

CT検査はベッドの上に仰向けに寝た状態でトンネル状の装置に入り、X線の吸収率の違いを利用して体の断面を画像化するのが特徴です。

レントゲンでは確認が難しいミリ単位の微細な病変を発見しやすく、体内の状態を立体的に把握できる点がメリットです。

造影剤を使用しない単純CTでは肝血管腫の検出率は低いですが、造影剤を使用した造影CTであれば格段に検出率が上がります。

肝血管腫は他の肝臓がんと比べて血流の流れが遅いため、造影剤を使用すると全体がゆっくり染まるのです。

CT検査のデメリットとしては放射線を被ばくする点や、造影剤による副作用などが挙げられます。

過去に造影剤によるアレルギーが出た人や糖尿病薬を服用している人、腎機能障害のある人、授乳中の人などは造影剤を使用する際に注意が必要となります。該当される方は医師にご確認ください。

MRI(磁気共鳴画像)検査

MRI検査は強力な磁場が発生したトンネル状の機械に入り、ラジオ波を体に当てることでさまざまな角度から断面像を作り出すのが特徴です。

放射線被曝のリスクがなく、骨の影響を受けずに正常な組織と病変部位との判別ができる点がメリットです。

超音波検査やCT検査同様、必要時には造影剤も使用できます。造影を含めたMRI検査が肝血管腫の確定診断において最も有用であるといわれています。

MRI検査はさまざまな病気の早期発見に役立つ検査法ですが、狭いトンネルの中に入る必要があるので狭所恐怖症の人には不向きな点や、超音波検査やCT検査と比べてコストが高くなる点が懸念です。

検査に要する時間が長く、病院によっては他の検査と比較して予約が取りにくい場合もあるでしょう。

肝血管腫の主な治療法

肝血管腫は腫瘍が小さく、症状が出ていない場合は治療の必要はありません。

肝血管腫の主な治療法としては、以下の例が挙げられます。

  • 経過観察
  • 外科的治療
  • 放射線治療
  • 肝移植

それぞれについて解説します。

経過観察が基本

肝血管腫の発症が確認されたとしても、経過を観察するのが基本です。

病変が小さくかつ無症状であれば、基本的に経過観察のみと考えて良いでしょう。大きくても増大傾向がなく、かつ無症状であれば経過観察可能と判断されやすいです。

ただし、経過を観察する場合であっても定期的に超音波検査やCT検査、MRI検査を受け、症状変化の有無を確認してください。

妊娠に関しては判断が難しいところで、大きな血管腫が発見された場合には妊娠を勧めるべきでないと主張する報告もある一方で、巨大血管腫がありながらも合併症を生じることなく妊娠継続ができたとの報告もあります。

自覚症状があり、かつ大きい肝血管腫を指摘されている場合は、それ以上大きくならないよう、女性ホルモン補充療法やピルの中断が推奨されています。

巨大血管腫があるために産婦人科領域の治療について相談したい方や妊娠をご希望の場合には、産婦人科の医師に加え、消化器内科や消化器外科の医師ともよく話し合いましょう。

治療の際には、消化器内科の医師より消化器外科や放射線科の医師へ紹介され、適切な治療を検討していきます。

外科的治療(肝切除・カテーテル)は腫瘍の大きさ・症状による

肝血管腫の大きさや自覚症状、合併症、悪性腫瘍の可能性を完全に否定できない場合は、外科的治療が必要です。

主な治療法は以下のとおりです。

治療法 目的
カテーテル治療 肝動脈を塞いで肝血管腫への血液流入を阻害する
手術 肝血管腫を切除する

次のような条件下では、カテーテル治療や手術療法といった積極的治療が必要とされます。

  • カサバッハ・メリット症候群
  • 血管腫の急速な増大
  • 血管腫の増大とともに症状の増悪
  • 血管腫が原因となった合併症が中等度以上
  • 血管腫の破裂

カテーテル治療は肝動脈塞栓術とも呼ばれており、血管内より血管腫に栄養を送る動脈へアクセスし、挿入した細い管を使って動脈を塞ぐ治療法です。

手術療法と異なり合併症のリスクが低いメリットがあり、肝血管腫が破裂して出血している症例や、カサバッハ・メリットに対して効果的と報告されています。

一方、カテーテル治療では肝血管腫の完治には至らず、多くの場合腫瘍の縮小はみられません。前段階として一旦肝動脈塞栓術を施行し、全身状態が改善されてから手術に臨む症例もあります。

カテーテル治療では十分な効果が得られない場合、手術療法(腫瘍摘出術)が検討されます。報告されている肝血管腫の手術成績は、破裂による緊急手術を除いて良好です。

手術の手法としては腹腔鏡手術と開腹手術の2つが挙げられます。腹腔鏡手術は傷口が小さくて済むメリットがありますが、肝血管腫の場所によっては開腹手術の方がリスクが低いケースも少なくありません。

放射線治療は症状緩和を目的として実施

肝血管腫を治療する際に、定位放射線治療(SRT:Stereotactic Radio Therapy・SBRT:Stereotactic Body Radio Therapy)を行うケースがあります。

定位放射線治療は、対象となる病変へ集中的に放射線を照射する治療法です。周囲の組織に与えるダメージを最低限に抑えられます。

肝血管腫に対して定位放射線治療を実施した例では、症状の改善に加えて腫瘍のサイズの縮小もしくは消失が報告されています。(文献3

肝移植は最終手段

外科的治療や放射線治療で肝血管腫に伴う症状の改善が見られない場合は、肝移植が検討されます

肝血管腫自体の改善よりは、肝機能不全による生命の危機を回避するのが目的です。
とくに肝臓全体に広がるびまん性の肝血管腫で、その他の治療法では血液凝固異常が改善しない場合、肝移植が選択肢の一つになります。

国内では乳幼児期以降に肝血管腫に伴う慢性肝機能不全を発症したケースで、肝移植の治療が実施されました。(文献4

海外では血液凝固障害や心不全を伴う急性期症状に対し、肝移植を実施した例が報告されています。(文献5

2024年現在は血管腫を薬で治す研究も進められており、今後の新しい治療法が期待されています。

肝血管腫の診断が出たら気をつけるべきこと

肝血管腫の診断が出たら以下の点に気を付けてください。

  • 定期健診を受ける
  • 肝機能に配慮した生活を送る
  • 接触の激しいスポーツは避ける
  • 妊娠中や妊娠計画中は医師の指示を守る

それぞれについて解説します。

定期健診を受ける

肝血管腫の診断が出たら、定期健診を受けることが大切です。

肝血管腫は良性の腫瘍のため、無症状で経過するケースが大半で、肝臓がんと異なり腫瘍が急速に大きくなることもほとんどありません。

ただし、肝臓の病気は自覚症状を伴うケースが少ないため、定期健診で病変に異常が生じていないか確認する必要があります。

肝血管腫と診断されたら半年から1年後に再検査を行い、腫瘍の大きさに変化が見られない場合は、1年~2年ごとの検査が推奨されています。

再検査で腫瘍が大きくなっていた場合は、CTやMRIを用いた精密検査が必要です。

肝機能に配慮した生活を送る

肝血管腫の診断が出たら、肝機能に配慮した生活を送りましょう。

玄米や雑穀米を取り入れ、緑黄色野菜やキノコ類、海藻類、果物などを積極的に取り入れるのがおすすめです。

ベーコンやソーセージなどの加工品や揚げ物、バター、生クリームなど飽和脂肪酸を多く含む食品は肝臓への負担が大きいため、必要以上に摂取しないよう意識してください。

タンパク質は牛肉の赤みや鶏のササミ、青魚などから摂取すると肝臓にかかる負担が軽減します。

また、肝臓に大きな負担をかけるアルコールの過剰な摂取は控え、1週間に2日以上は休肝日を設けるのがおすすめです。

肝臓の数値が気になる方は、下記の記事も参考にしてください。

接触の激しいスポーツは避ける

肝血管腫の多くは無症状のため、スポーツ活動に制限はありません

ただし、発熱や呼吸困難などの症状が出ている方や、肝血管腫の増大・巨大化の傾向が見られる方は、激しい運動を避けるのが好ましいと考えられます。

アメリカンフットボールやラグビー、格闘技など接触の多いコンタクト系のスポーツで身体に衝撃が加わると、肥大した肝血管腫の破裂や血管からの出血リスクが増加するためです。

腫瘍の大きさが5センチメートル以下であれば、定期健診で経過を見守りながらスポーツを楽しめるでしょう。

腫瘍が10センチメートルを超える場合は、運動強度について医師の指導を受ける必要があります。

妊娠中や妊娠計画中は医師の指示を守る

妊娠中もしくは妊娠計画中の女性は、定期的に検診を受けて医師の指導を受けてください。

妊娠中は女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が増加するため、肝血管腫が増大する可能性があります

また、直接的な因果関係は明らかにされていないものの、経口避妊薬を服用すると女性ホルモンのバランスが変化し、肝血管腫の増大を招く恐れがあります。

妊娠中や妊娠計画中はホルモンバランスが変化しやすいため、超音波検査などで経過を見守ることが重要です。

ほとんどの肝血管腫は治療の必要がない良性腫瘍ですが、巨大化や破裂のリスクが高い場合はカテーテル治療や手術が検討されます。

肝血管腫の予防法

現在のところ肝血管腫の原因は明らかにされていません。

胎児期に血管を形成する際に異常が生じたり、遺伝的要因が関わっていたりする可能性が示唆されていますが、具体的な予防法はありません

しかし、肝血管腫を発症した後に肥大化を防ぐのであれば、対処の方法はあると考えられます。

たとえば、脂質の多い食事やアルコールの過剰摂取は肝臓への負担を増やし、肝臓を肥大化させる一因です。肝血管腫への負担も増大するため、栄養バランスのとれた食事を意識し、過剰なアルコールの摂取は控えましょう。

腫瘍が10センチメートルを超える場合は別ですが、内臓にかかる負担を減らすため適度な運動に取り組むのも効果的です。

肝血管腫の予防・早期発見のために定期健診を受けましょう

肝血管腫は良性腫瘍であり、基本的には怖い病気ではありません。腫瘍が小さくて無症状であれば、治療の必要はありません。

しかし、腫瘍が大きくなってくるといろいろな症状を招くほか、出血や破裂など重大な健康被害のリスクが生じます

どちらかといえば女性に多く見られるとの報告があるため、妊娠中もしくは妊娠計画中の女性はとくに気を付けてください。

肝血管腫と診断された場合は、自分の身を守るためにも定期的な検査を心掛け、肝臓に負担がかかる食習慣の見直しに取り組むのがおすすめです。

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肝血管腫に関するよくある質問

肝血管腫はがんの可能性がありますか?

肝血管腫は良性の腫瘍であるため、がんになる可能性はほとんどありません

画像検査では肝臓がんとの見分けがつきにくいケースがあるため、初回の診察時にはCTやMRIなどを用いて判別する必要があります。

肝血管腫と肝臓がんの大きな違いは、腫瘍が大きくなるスピードです。肝血管腫は基本的に急激に巨大化しませんが、肝臓がんの場合は腫瘍が短期間で大きくなる傾向にあります。

万が一のリスクを避けるため、肝血管腫と診断された場合であっても、半年から1年後に再検査を行い、その後も定期健診を受けてください。

破裂する可能性はありますか?

肝血管腫が破裂する可能性は極めて低いとされます

しかし、腫瘍が10センチメートル以上に巨大化した場合や、カサバッハ・メリット症候群を発症しているケースでは、肝血管腫が破裂するリスクが増加します。

肝血管腫の破裂に伴う特徴的な症状が、突然の激しい腹痛やめまいなどです。出血性ショックを起こした場合、急激な血圧低下に伴う意識障害を招く恐れもあるため、すぐに医療機関を受診してください。

肝血管腫の破裂を予防するためには、激しい運動を控えるなど外部からの衝撃を避けることが大切です。

参考文献

(文献1)
肝海綿状血管腫の画像診断ガイドライン|公益社団法人日本医学放射線学会
(文献2)
カサバッハ・メリット(Kasabach-Merritt)現象(症候群)|小児慢性特定疾病情報センター
(文献3)
肝海綿状血管腫の画像診断ガイドライン|公益社団法人日本医学放射線学会
(文献4)
乳幼児肝巨大血管腫|難病情報センター
(文献5)
肝巨大血管腫(乳幼児難治性肝血管腫)|小児慢性特定疾病情報センター