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【医師監修】下垂足とは|原因や治らないときの対処法を解説

「最近つま先が妙に引っかかる」
「足がもつれやすくなった」
その足のもつれは下垂足の症状かもしれません。下垂足とは、足首やつま先を持ち上げる筋肉や神経の働きが弱まり、足先が下がる状態です。
症状を重症化させないためにも、以下の内容を解説します。
- 下垂足とは
- 下垂足の原因
- 下垂足は治らないのは本当なのか?
- 下垂足の症状チェックリスト
記事の最後には、下垂足に悩む方から寄せられる、よくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。
下垂足とは
症状 | 詳細 |
---|---|
足首の背屈困難 | 足首を上に曲げられず、足先が垂れ下がる |
歩行障害 | 足先が引っかかり、つまずきやすくなる。引きずる歩き方やすり足、鶏歩が見られる |
鶏歩(けいほ) | 膝を高く上げて歩く。垂れ下がった足先が地面に引っかからないようにするための歩行様式 |
足のしびれや違和感 | 足の甲や外側にしびれや違和感が出る |
筋力低下 | 足首や足の筋肉の力が弱まる |
下垂足とは、足首やつま先を持ち上げる筋力が低下する症状です。腓骨神経の働きが弱まることで、足首が上がらなくなり、足先が垂れ下がる状態です。
具体的には、スリッパが脱げやすくなったり、つま先が地面にひっかかり転ぶことが増えたりする症状が現れます。また、下垂足の症状には、脳卒中や糖尿病性神経障害、腓骨神経麻痺などの神経疾患が隠れている可能性があるので、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。(文献1)
以下の記事では、尖足と下垂足の違いについて詳しく解説しています。
下垂足の原因
原因となる病状・状態 | 詳細 |
---|---|
腓骨神経障害 | 足首を上げる神経(腓骨神経)が損傷して麻痺を引き起こす |
代謝性|慢性疾患 | 糖尿病で神経がダメージを受け、足首を上げる力が弱くなる |
腰椎の急性圧迫 | ヘルニアなどで腰の神経の根元が強く圧迫される |
血管性炎症 | 血管の炎症で神経への血流が悪くなり、神経がうまく働かなくなる |
下垂足の症状はさまざまな原因で起こりえます。突然、足首の筋力が低下し、歩きにくいなどの症状が出た場合は、早急な医師への相談が大切です。
下垂足の原因は、以下4つです。
- 腓骨神経障害
- 代謝性|慢性疾患
- 腰椎の急性圧迫
- 血管性炎症
下垂足の原因について解説します。
腓骨神経障害
腓骨神経が傷つく原因 | 詳細 |
---|---|
神経が圧迫される | 日常生活や特定の状況で、神経が圧迫されて機能が低下する |
長時間の足組みや正座 | 膝の外側で神経が圧迫され、一時的な麻痺を引き起こす |
急激な体重減少 | 神経を保護する脂肪が減り、圧迫を受けやすくなる |
ギプス固定 | 足のケガなどでギプスを巻いた際に、その圧迫で神経が傷つく |
外傷 | 外傷によって神経そのものが損傷を受ける |
膝まわりの骨折・強い打撲 | 骨折や強い衝撃で、近くにある腓骨神経がダメージを受ける |
(文献1)
腓骨神経は足の筋肉を動かす役割があり、圧迫や損傷を受けると、つま先を上げにくくなります。圧迫の原因は、足を組む癖や長時間の正座などの習慣的な動作が挙げられます。それらの動作を習慣にしている人は注意が必要です。
また、打撲や骨折、手術の後遺症として神経が傷つき、腓骨神経障害を発症するケースもあります。腓骨神経障害が原因で引き起こる下垂足を防止するには、普段から神経に負荷をかけないことが大切です。
以下の記事では、坐骨神経痛に効くツボについて詳しく解説しています。
代謝性|慢性疾患
項目 | 糖尿病性ニューロパチー | 腰部脊柱管狭窄症(L5神経根障害) |
---|---|---|
発症メカニズム | 高血糖による末梢神経と血管の損傷により、足の神経が機能低下 | 脊柱管の狭まりによりL5神経根が圧迫され、筋肉の動きが弱まる |
主な症状 | 足のしびれ、感覚の低下、下垂足 | 腰痛、足のしびれ、歩行時の悪化、下垂足 |
症状の進行 | 高血糖が続くと徐々に進行する | 加齢やヘルニアにより徐々に進行 |
治療法 | 血糖コントロール、神経痛緩和薬、装具 | 薬物療法、リハビリ、装具、手術(必要に応じて) |
下垂足は、糖尿病性ニューロパチーや腰部脊柱管狭窄症(L5神経根障害)などの慢性的な神経障害によって発症します。高血糖による神経損傷や、神経の圧迫が足の筋力低下を引き起こします。
いずれの症状も神経の圧迫や障害が原因であるため、早い段階での医療機関への受診が必要です。
以下の記事では、糖尿病の初期症状について詳しく解説しています。
腰椎の急性圧迫
項目 | 脳卒中(上位運動ニューロン障害) | 脊髄腫瘍・円錐部病変 | 多発性硬化症(MS) |
---|---|---|---|
原因 | 脳内の血流障害で運動野が損傷し、下肢の麻痺を引き起こす | 脊髄下部の腫瘍や病変で神経が圧迫・損傷される | 中枢神経の脱髄により神経伝達が阻害される |
主な症状 | 対側の下肢麻痺、足首や足指が上がらない | 筋力低下、感覚障害、膀胱直腸障害を伴うこともある | 下肢の運動障害、視力低下、感覚障害など |
診断方法 | MRI、CTなどで脳血流や病変を確認 | MRIで腫瘍や圧迫部位を確認する | MRIで脱髄の有無を確認する |
治療法 | 血栓溶解・抗血小板療法、リハビリ | 外科的切除や放射線治療 | ステロイド・免疫調整療法 |
(文献4)
下垂足は、脳や脊髄の障害で発症します。とくに脳卒中(上位運動ニューロン障害)や脊髄腫瘍・円錐部病変は、重症化する前に早期発見が大切です。
筋力低下や感覚障害、排泄障害などの症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
以下の記事では、脳卒中の前兆について詳しく解説しています。
血管性炎症
血管性炎症と下垂足の関係性 | |
---|---|
主な症状 | 血管の炎症が末梢神経への血流を妨げ、神経虚血を引き起こす |
代表疾患 | 巨細胞性動脈炎(中型・大型血管が障害される) |
神経虚血の仕組み | 血管が炎症で狭くなり、酸素や栄養が届かず神経が傷つく |
治療法 | 免疫抑制治療(ステロイド・免疫抑制薬)で炎症を抑える |
治療の重要性 | 神経損傷は不可逆的なことが多く、早期治療が大切 |
血管性炎症は、末梢神経に栄養を送る血管に炎症が起こり、神経がダメージを受ける症状です。中でも巨細胞性動脈炎は、下肢の神経に酸素や栄養が届きにくくなり、下垂足を発症します。
血管性炎症の疾患の中には、後遺症が出ることもあるため、少しでも異変を感じた際は早急に医療機関を受診しましょう。
下垂足の症状は治らないって本当?
分類 | 要因 | 詳細 |
---|---|---|
改善が見込めるケース | 原因疾患の治療 | 椎間板ヘルニアや脳卒中などの治療で改善できる可能性がある |
血糖コントロール | 糖尿病性神経障害では血糖管理で進行を抑え、改善する可能性がある | |
神経の回復 | 腓骨神経麻痺などで神経が自然に回復するケースもある | |
リハビリ | 足首の運動や歩行訓練で歩行が安定する可能性がある | |
改善が難しいケース | 重度の神経損傷 | 神経が断裂・広範囲に損傷していると回復が難しい |
進行性の神経疾患 | 慢性圧迫や進行性疾患では改善が見込めない可能性が高い | |
リハビリ効果が限定的 | 筋力や関節の回復が不十分で補助具が必要になることもある |
(文献7)
下垂足が治るかどうかは、症状によって異なります。足を組む癖などで一時的に腓骨神経が圧迫されて起こった軽度の下垂足であれば、生活習慣を変えることで、改善する可能性があります。また、脳卒中などの重度の疾患でも早期発見し、治療を早い段階で開始すれば、症状の改善が期待できるでしょう。
一方治らないケースとして挙げられるのが、糖尿病性神経障害のように基礎疾患が進んでいる状態や、脳卒中などで後遺症の改善が難しいケースです。
原因や進行状況によって治る可能性は異なりますが「治らない」と諦めず、治療やリハビリを続けることが重要です。
下垂足の症状チェックリスト
足首が上がりにくい、つま先が引っかかる症状に加え、突然の発症または急速な悪化症状が現れたら、脳卒中や脳梗塞の可能性があるため、直ちに救急車(119番)を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。症状が進行し重症化すると命に関わる危険性があります。
- 突然の発症または急速な悪化
- 下垂足と同じ側の顔が歪む・口角が下がる
- 激しい頭痛・吐き気・嘔吐
- 尿と便が出にくい・失禁してしまう
- おしりの周りやサドル領域(仙骨部)がしびれる・感覚が鈍い
- 外傷後の激しい違和感と腫れ
以下の記事では、下垂足の症状に対して効果が期待できるリハビリ方法をわかりやすく紹介しています。
突然の発症または急速な悪化
下垂足の症状がある日突然現れたり、数時間から数日の間に悪化したりする場合は注意が必要です。突然の発症は、単なる神経障害ではなく、脳卒中や脳梗塞、脳出血の前兆である可能性も考えられます。
脳が損傷を受けると、足の動きや顔の表情、言葉の機能が急に低下し、後遺症になる場合があります。症状が突然現れ、発声や言葉がうまく聞き取れない場合は、早急に対処が必要です。
下垂足と同じ側の顔が歪む・口角が下がる
顔に歪みや麻痺の症状が現れた場合、脳に障害が起きている可能性が高いです。脳梗塞などで脳の神経が損傷されると、顔と手足を動かす神経経路が同時に障害され、結果として顔面神経麻痺が起こります。
脳梗塞や脳出血は、発症から24時間以内の治療が回復の可能性を大きく左右します。脳梗塞や脳出血で一度脳の神経細胞が壊死すると、元に戻すことはできません。
鏡を見て明らかにいつもと表情が違う、表情が動かせない場合は、早急に救急車(119番)もしくは医療機関を受診しましょう。
激しい頭痛・吐き気・嘔吐
激しい頭痛や吐き気、嘔吐が現れた場合、脳出血や脳腫瘍の可能性があります。とくにこれまで体験したことのない激しい症状であれば、すぐに救急車(119番)を呼ぶ必要があります。
突然後頭部を殴られたような激しい頭痛は、くも膜下出血の典型的な症状です。発見が遅れると命に関わる危険性があります。ただの頭痛や吐き気だと判断せずに医療機関を受診することが大切です。(文献8)
以下の記事では、吐き気を伴う頭痛について解説しています。
尿と便が出にくい・失禁してしまう
下垂足と同時に尿と便が出にくい、または失禁してしまうなどの排尿・排便に関する異常が現れた場合、腰部脊柱管狭窄症や重度の椎間板ヘルニア、脳卒中を引き起こしている可能性があります。また、症状によっては緊急手術が必要です。
放置すると排泄障害や下肢の麻痺が残る可能性があるため、早急に受診してください。
以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。
おしりの周りやサドル領域(仙骨部)がしびれる・感覚が鈍い
お尻や太ももの内側、股間まわり(自転車のサドルが当たる部分)にしびれや感覚の鈍さ、温度がわかりにくいといった症状がある場合は、馬尾症候群の可能性があります。
神経が強く圧迫されて起こる重い病気の一つで、放置すると排尿や排便の障害につながることもあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。
外傷後の激しい違和感と腫れ
外傷後に激しい違和感と腫れが現れた場合は、腰椎椎間板ヘルニアなどの可能性が高いです。
考えられる症状の中でも、馬尾症候群は膀胱や直腸に異常が出るケースもあり、発症から48時間以上が経過すると後遺症になる確率が上昇します。(文献9)
放置すると神経機能の回復が困難になる可能性があるため、自己判断はせず、救急車(119番)を呼ぶ、もしくは医療機関を受診する必要があります。
下垂足が悪化する前に早めの医療機関の受診を
下垂足が引き起こされる原因によっては、緊急性の高い症状が隠されている可能性があり、少しの異変でも医療機関を受診する必要があります。
少しの異変でも早期発見が症状の重症化を防ぐことにつながります。
「リペアセルクリニック」では、下垂足に対して、幹細胞を活用した再生医療を提供しています。少しでも気になる症状があれば、ご相談ください。当院はどんな小さな不安にも丁寧に耳を傾け、早期発見につなげるお手伝いをしています。
下垂足の症状にお悩みの方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。
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下垂足に悩む方からよくある質問
下垂足は自然に治りますか?
原因によって異なりますが、多くの場合は自然に回復することは難しく、適切な治療やリハビリが必要です。また、脳卒中や糖尿病性神経障害、腰椎疾患など重大な症状が隠れている場合もあるため、自己判断は禁物です。
下垂足を重症化させないためにも、早めの受診が大切です。
下垂足は再発しますか?
下垂足が再発するかどうかは、原因や再発リスクによって異なります。原因となった基礎疾患(糖尿病や腰椎疾患など)の管理が不十分だと、症状改善後に再発する可能性があります。
再発予防には、生活習慣の改善や、基礎疾患の継続的な治療などが不可欠です。
下垂足の予防法はありますか?
下垂足を確実に予防する方法はありません。しかし、下垂足を引き起こすかもしれない病気(糖尿病など)にならないように生活習慣を見直したり、原因となりやすい状況(たとえば足を長時間組むことなど)を避けたりすることが、結果的に下垂足の予防に役立つ場合があります。
下垂足はどの診療科を受診すれば良いですか?
下垂足の原因によって受診すべき診療科が異なります。以下の表を参考に、適切な診療科を受診してください。
診療科 | 受診の目安 |
---|---|
整形外科 | 腰椎ヘルニア、脊柱管狭窄症、腓骨神経麻痺、骨折・外傷が原因の場合 |
神経内科 | 脳卒中、糖尿病性神経障害、筋ジストロフィーなど神経の病気が原因の場合もしくは、しびれ・麻痺などの神経症状がある場合 |
脳神経外科 | 脳卒中や脳腫瘍が疑われる場合 |
ご自身の症状に対してどの診療科を受診すれば良いのかわからない方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。
参考文献
公益財団法人 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる「腓骨神経麻痺」」公益財団法人 日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html(最終アクセス:2025年4月12日)
「10章 糖尿病性神経障害」『糖尿病診療ガイドライン 2024』,pp.1-13,発行年
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/10.pdf(最終アクセス:2025年4月12日)
「腰部脊柱管狭窄症」『整形外科シリーズ』,pp.1-2,2023年
https://www.joa.or.jp/public/sick/pdf/MO0013CKA.pdf(最終アクセス:2025年4月12日)
(文献4)
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター「多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)」難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3806(最終アクセス:2025年4月12日)
(文献5)
Merck & Co.Inc. Rahway,NJ,USA「血管炎疾患の分類」MSD マニュアルプロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/multimedia/table/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%82%8E%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E5%88%86%E9%A1%9E(最終アクセス:2025年4月12日)
「指定難病の診断基準等のアップデート案について情報提供のあった疾病(個票(見え消し))(第 58 回指定難病検討委員会において検討する疾病)」『第58回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会』,pp.1-204,
https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001256854.pdf(最終アクセス:2025年4月12日)
(文献7)
Zacharia Isaac(2023),Rehabilitation for Other Disorders.MSD ManualConsumer Version
https://www.msdmanuals.com/home/fundamentals/rehabilitation/rehabilitation-for-other-disorders(最終アクセス:2025年4月12日)
(文献8)
公益財団法人 日本心臓財団「循環器病のトピックス」公益財団法人 日本心臓財団,2018年05月28日
https://www.jhf.or.jp/topics/2018/000943/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年4月12日)
宮本 雅史,中嶋 隆夫 .「診療ガイドライン」『腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン 改訂第2版』巻(号),pp.1-5,2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/11/105_2210/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月12日)