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ラクナ脳梗塞とは|症状・原因・治療法など医師が詳しく解説

ラクナ脳梗塞
公開日: 2025.05.30

「最近、物忘れが増えた気がする」

「身体のしびれ、力が入らないことが増えた」

このような悩みや違和感を覚えていませんか。これらは脳の異変、特にラクナ脳梗塞の可能性があります。自覚症状が出にくいため、異変に気づかないまま放置すると後遺症につながることがあります。

症状に気づかないまま重症化しないためにも、本記事ではラクナ脳梗塞について詳しく解説します。

  • ラクナ脳梗塞の症状
  • ラクナ脳梗塞の原因
  • ラクナ脳梗塞の治療法
  • ラクナ脳梗塞の再発予防策

記事の最後には、ラクナ脳梗塞に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

ラクナ脳梗塞とは

項目 ラクナ脳梗塞 他の脳梗塞(アテローム血栓性・心原性脳塞栓症など)
詰まる血管の太さ 細い血管(穿通枝) 太い血管(主幹動脈など)
詰まる場所 脳の深部(視床、内包、脳幹など) 大脳皮質や皮質下、広い範囲
梗塞の大きさ 小さい(直径15mm以下) 比較的大きい
症状の出方 軽度または限定的な症状、無症状もある 急激で広範囲な症状が出やすい
見つかり方 健康診断や画像検査で偶然見つかることもある 明らかな発症症状により医療機関を受診し発見されやすい

文献1

ラクナ脳梗塞は、脳の深い部分にある細い血管が詰まることで生じる、小さなタイプの脳梗塞です。とくに視床や内包、脳幹といった脳の中心部で起こりやすく、詰まる血管は穿通枝と呼ばれる細い血管で、その結果生じる梗塞巣は直径15mm以下の小さなものです。

高血圧や糖尿病などが長く続くと、脳の細い血管がもろくなり、血流が止まってラクナ脳梗塞が起こることがあります。これは脳の深い部分に小さな梗塞ができるタイプで、初期には症状が軽く、気づかれにくいことが多いのが特徴です。

一般的な脳梗塞(アテローム血栓性や心原性脳塞栓症など)は太い血管が詰まり、大脳の広い範囲に強い症状が現れますが、ラクナ脳梗塞では影響が小さく、言葉や動きなど特定の機能にだけ症状が出るケースもあります。

中にはまったく症状がなく、検査で偶然見つかることもあります。ただし、たとえ小さな梗塞でも、何度も繰り返すと認知機能の低下や歩きにくさなど、後遺症につながる可能性があるため、少しでも気になる症状があれば、早めに医師への相談が大切です。

以下の記事では、脳梗塞の前兆やサインについて詳しく解説しております。

【関連記事】

突然の肩こりは脳梗塞の前兆?受診すべき症状や予防法を医師が解説

こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説

ラクナ脳梗塞の症状

症状・状態 起こる場面や原因 考えられる影響
片側の運動麻痺 手足や顔の一部に力が入らなくなる 日常動作の不自由・麻痺の固定
片側の感覚障害 しびれ、触覚の鈍さ、ピリピリ感覚が起こる 感覚の鈍麻・身体の違和感
構音障害 舌や口の動きのぎこちなさによる言葉のもつれ 会話のしづらさ・伝達能力の低下
手足の不器用さ 動きの協調性の低下 細かい作業の困難・転倒リスクの増加
嚥下障害 のどや舌の動きの低下 誤嚥・食事中のむせ・栄養摂取の難しさ
バランス障害 体の安定感の低下 歩行困難・転倒リスクの増大
無症候性脳梗塞 自覚症状なし。検査で偶然見つかる小さな梗塞 再発の前兆・脳機能への慢性ダメージ
再発の蓄積 高血圧・糖尿病など動脈硬化が進んだ状態 小さな梗塞の多発・症状の進行
認知機能障害 多発性ラクナ梗塞の影響 物忘れ・判断力の低下・血管性認知症の進行
意欲や感情の変化 前頭葉付近の血流障害 意欲の低下・感情の不安定化
脳卒中リスク増加 全身の動脈硬化が背景にある状態 広範囲の脳梗塞・脳出血など重篤な脳卒中の可能性

ラクナ脳梗塞の症状は、梗塞が起きた場所や範囲によって異なります。典型的には、手足の麻痺やしびれ、感覚の鈍さ、歩行のふらつき、ろれつが回らないといった症状が現れます。

症状は軽度で一時的な場合も多く、加齢による変化と誤解してしまうことも少なくありません。また、頭痛や吐き気、物忘れの増加、力が入りにくいといった症状として現れることもあります。これまでになかった身体の変化に気がついた場合は、脳梗塞の可能性を疑い、早めに医療機関を受診しましょう。

ラクナ脳梗塞の原因

原因の種類 身体への影響 ラクナ脳梗塞との関係
高血圧 血管に強い圧力がかかり、壁が傷つき硬くなる 細い血管の動脈硬化を引き起こす主要な原因
加齢 血管が自然に硬くなり、弾力を失う 詰まりやすくなり、血流障害を起こしやすくなる
糖尿病 高血糖により血管内壁が傷つきやすくなる 細い血管にも影響し、詰まりやすくなるリスク増加
喫煙 血管が収縮し、血流が悪くなる 動脈硬化を促進し、脳血管に悪影響を及ぼす
脂質異常症 血液中の脂質が増え、血管壁にプラークが沈着 血管が狭くなり、詰まりやすくなる原因となる

文献2)(文献3

ラクナ脳梗塞は、脳の細い血管が徐々に狭くなり、最終的に詰まってしまうことで発症するのが特徴です。

主に原因として、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病によって血管が傷み、発症します。また、喫煙や加齢による血管の変性もラクナ脳梗塞を引き起こすリスクがあります。

高血圧

仕組み・状態 身体への影響 推奨される対策
血管壁への強い圧力 細い血管の内側が傷つき、硬く狭くなる 血圧の安定管理・血管負担の軽減
血管の変性(リポヒアリノーシス、フィブリノイド壊死) 血管の弾力低下・閉塞の進行 食塩制限・適度な運動・医師の指導に基づく治療
自動調節機能の低下 血流の調整ができず、細い血管の詰まりが起こりやすくなる 血圧変動の抑制・日々の血圧チェック
無症候性ラクナ梗塞の蓄積 認知機能の低下・血管性認知症への進行 定期的な脳の検査・生活習慣病の早期対策
高血圧の放置 繰り返す脳梗塞・将来的な重い後遺症 医療機関の受診・薬の服用継続

文献2)(文献3

高血圧は、ラクナ脳梗塞の原因のひとつであり、血圧が常に高い状態が続くと、脳の細い血管に大きな負担がかかり、壁が傷つきやすくなります。この状態が長期化すると、血管が硬くもろくなり、やがて詰まりを起こす可能性があります。

自覚症状のないまま進行するサイレントキラーとも呼ばれる高血圧は、脳の深部の血流障害を引き起こす大きな要因です。日々の血圧管理は、ラクナ脳梗塞の予防に欠かせません。早朝や夜間の変動にも気を配り、医師の指導に従って治療を続けることが大切です。

加齢による血管の変化

原因の種類 説明 対策
血管の硬化・肥厚 加齢により動脈が硬く厚くなる自然な変化。血管の弾力低下や内腔の狭窄を引き起こす 食事の改善、適度な運動、定期的な血管年齢チェック
穿通枝の狭窄・もろさ 脳の深部にある細い血管が加齢で弱くなり、血流低下や閉塞を招く 血圧・血糖・脂質の管理、禁煙、ストレス軽減
高血圧・糖尿病の影響増大 加齢で弱った血管が生活習慣病の影響を受けやすくなる 早期の生活習慣病治療、定期検診
微小血管障害 加齢により修復力が低下し、微細な血管損傷が血栓や梗塞の原因になる 再発予防の薬物治療、日常的な血圧管理
心血管疾患リスクの増加 加齢とともに心筋梗塞や脳卒中のリスクが急増 高カカオチョコ・ナッツ・魚などを摂取(ポリフェノール・オメガ3)
食生活の偏り 高齢者で栄養が偏りやすく、血管の老化が進行 地中海食を導入する

文献1)(文献4

加齢により血管は徐々に弾力を失い、硬く狭くなっていきます。とくに細い血管は影響を受けやすく、ラクナ脳梗塞は小さな血管が詰まることで発症します。

加齢は避けられませんが、運動・食事・禁煙など、生活習慣の見直しによって血管の劣化を遅らせることができます。年齢に応じた健康管理が、脳の血流を守るために大切です。

糖尿病

項目 内容 対策
高血糖による血管内皮の損傷 血糖値の上昇で血管の内皮細胞が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行 血糖管理の徹底
糖化反応による血管の劣化 血中の余分な糖がタンパク質と結合し、血管が硬く厚くなる 糖質制限と食事改善
細小血管への特異的な障害(糖尿病性血管症) とくに脳の穿通枝のような細い血管で顕著な構造異常が起こる 血管内皮の保護
血流の悪化・血栓形成 内皮の損傷により血小板が集まりやすくなり、血管内が狭くなる 抗血栓対策と禁煙
ラクナ梗塞の発症 血管が閉塞し、脳深部の小さな領域に血液が届かなくなる 生活習慣病の包括的管理

文献5

糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気で、血管を徐々に傷つけます。とくに脳の細い血管はダメージを受けやすく、ラクナ脳梗塞のリスクを高める原因になります。

糖尿病とラクナ脳梗塞の合併症を引き起こさないためにも血糖だけでなく、血圧やコレステロールの管理も大切です。食事や運動、薬による血糖コントロールを続けることが、脳血管を守るためにも欠かせません。

以下の記事では、脳梗塞によって引き起こされる合併症について詳しく解説しています。

喫煙

喫煙による影響 血管への作用 ラクナ脳梗塞への関与 対策・予防策
血管内皮細胞の損傷 血管の炎症・硬化 動脈硬化を進行させ、穿通枝の狭窄を引き起こす 禁煙の実施、受動喫煙も回避
動脈硬化の促進 LDLコレステロールが血管に蓄積 脳の細い血管(穿通枝)の詰まりを助長 食生活改善(野菜・果物・魚を積極的に)
血栓形成の促進 血小板が活性化し血が固まりやすくなる 血管内で血栓が形成されやすくなる 禁煙+水分摂取・適度な運動
血管収縮作用 血圧上昇・血流悪化 一過性の血流低下がラクナ梗塞を誘発 ストレス管理・禁煙補助薬の活用
受動喫煙の影響 同様の血管損傷を引き起こす 非喫煙者にもリスクが波及 家庭・職場での禁煙環境整備

喫煙は、血管の健康に悪影響を与える生活習慣のひとつです。タバコに含まれる有害物質は、血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を進行させます。

喫煙は動脈硬化や一時的な血圧上昇を引き起こし、脳の細い血管が詰まりやすくなることでラクナ脳梗塞のリスクを高めます。発症予防や再発防止のためにも、禁煙の徹底が大切です。

脂質異常症(高脂血症)

項目 内容 解説 対策
血管内への脂質蓄積 LDLが内皮細胞に侵入 傷ついた血管ほど脂質がたまりやすい 動脈硬化の原因となるため、LDLを下げる生活習慣が大切
アテローム硬化の進行 血管内で脂質が粥状に蓄積し、血管が狭く硬くなる 内腔が狭まり、血流が悪化 HDLを増やす・抗炎症的な食生活
脳の細い血管(穿通枝)への影響 穿通枝の内腔狭小化、微小プラークの形成 動脈硬化が脳の深部血管でも起きやすくなり、血流がさらに悪化 血圧・血糖・脂質の総合的管理
血流の悪化と閉塞 プラーク破綻→血栓形成→血管閉塞 ラクナ脳梗塞の直接的原因 脂質異常の是正・抗血栓療法(医師指導のもと)
他リスク因子との相乗作用 高血圧・糖尿病・喫煙と重なるとリスクが跳ね上がる 血管へのダメージが加速 すべての生活習慣病リスクに目を向けた多角的対策
予防・対策 脂質管理の徹底が動脈硬化の進行を防ぐ ラクナ脳梗塞の予防・再発予防への取り組みが大切 食事(魚・ナッツ・野菜中心)、運動、医師の指導による薬物療法

脂質異常症とは、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、または善玉(HDL)コレステロールが少ない状態です。

この状態が続くと血管内にプラークが蓄積し、動脈が狭くなって血流が悪化します。ラクナ脳梗塞は脳の深部で細い血管が詰まることで起こるため、脂質異常症はその大きな原因のひとつとされています。

脂質値の管理は、食事の改善や適度な運動、必要に応じた薬物療法を継続しつつ、定期的な血液検査で異常を把握し、血管を守る意識が大切です。

ラクナ脳梗塞の治療法

治療法 内容・目的 補足・特徴
急性期治療 血栓溶解薬(t-PA)や脳浮腫抑制薬を使用 発症から数時間以内の対応が大切。早期治療で後遺症を軽減できる可能性あり
栄養療法 食事指導により高血圧・糖尿病・脂質異常症などを管理 管理栄養士の助言を受け、減塩・低脂質・低糖質の食事が基本
リハビリテーション 理学療法・作業療法・言語療法により機能回復と生活自立を支援 後遺症の程度に応じて段階的に実施。長期継続で改善が期待される
心理的サポート カウンセリング・精神的ケアで患者や家族の不安・抑うつを軽減 発症後の喪失感や意欲低下への対処。医療ソーシャルワーカーの支援も活用可
再生医療 幹細胞などを用いた脳組織の修復を目指す 保険適用外であり、対応できる医療機関が限られている

ラクナ脳梗塞の治療は、発症直後の急性期と、その後の回復・再発予防に分けて行われます。

いずれの治療法においても大切なのは、自己判断を避け、医師の指導のもとで早期に適切な対応を行うことです。早期の対応が、後遺症の軽減や再発予防につながります。

急性期治療(発症直後)

治療法 目的 内容・特徴
血栓溶解療法(t-PA療法) 詰まった血管の再開通 発症から4.5時間以内にt-PAを点滴投与し、血栓を溶かす。出血リスクあり
抗血栓療法 血栓の拡大や新たな血栓の予防 抗血小板薬(例:アスピリン)を使用する。ラクナ脳梗塞では主にこの治療が中心
抗凝固療法 血液が固まるのを防ぎ、新たな血栓を抑制 ヘパリンやアルガトロバンを点滴で使用する。出血のリスクを考慮して選択
脳保護療法 脳神経細胞の損傷の進行を防ぐ エダラボンの点滴で酸化ストレスを抑制し、脳のダメージを軽減
脳浮腫軽減療法 脳の腫れ(浮腫)を軽減し、圧迫を防ぐ グリセオールやマニトールを点滴で投与し、余分な水分を排出して脳圧を下げる

発症直後の急性期には、脳へのダメージを最小限に抑えるため、できるだけ早く治療を始めることが大切です。

ラクナ脳梗塞は小さな血管の詰まりによって起こり、放置すると症状が進行する恐れがあります。治療で使用される主な薬剤は、血栓を溶かして血流を回復させる薬(t-PA療法)や、血栓の拡大や新たな血栓を防ぐ薬(抗血小板薬・抗凝固薬)などです。

また、脳の腫れや細胞の損傷を防ぐための点滴治療(脳保護療法・脳浮腫軽減療法)も行われるケースもあります。

早期発見と治療は後遺症を軽くする鍵です。異変を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

以下の記事では、脳梗塞の治療方法について詳しく解説しています。

栄養療法

項目 内容 目的・効果
高血圧対策 減塩(1日6g未満を目安) 血圧の安定化・血管への負担軽減
糖尿病対策 糖質の摂取量と時間を調整 血糖値の安定化・血管障害の抑制
脂質異常症対策 飽和脂肪酸を控え、魚やナッツでオメガ3を摂取 LDLコレステロールの低下・動脈硬化予防
動脈硬化予防 抗酸化食品(野菜・果物・魚)を積極的に摂取 血管の酸化防止・血流維持
体重管理 カロリー制限とバランス食の実践 肥満・高血圧・糖尿病のリスク低下
総合的な栄養管理 医師・栄養士の指導で継続的に実施 再発予防と生活の質(QOL)の向上

ラクナ脳梗塞の回復や再発予防には、毎日の食事の見直しが大切です。減塩は高血圧予防に効果的であり、糖質や脂質の管理も血糖やコレステロールの安定に役立ちます。

加工食品や外食を控え、栄養バランスの取れた食事を心がけることが、脳を守る基本的な対策となります。

リハビリテーション

項目 内容 効果 注意点
機能回復の促進 麻痺や言語障害などの改善を目指す訓練(運動・発声・作業など) 神経の可塑性を引き出し、機能の再獲得を促進 焦らず継続することが重要。効果が見えるまでに時間がかかる場合あり
日常生活動作(ADL)の向上 食事・着替え・歩行などを自立して行えるように支援 生活の自立度が上がり、介護負担の軽減にもつながる 過剰な無理は禁物。身体機能に合わせて段階的に進める必要がある
合併症の予防 廃用症候群、誤嚥性肺炎、血栓などの予防 体を動かすことで二次的な健康リスクを回避 早期開始が理想だが、体調の安定を見ながら進める必要がある
生活の質(QOL)の向上 社会参加・趣味活動の再開を目指す 心の回復と意欲向上に効果。再発予防にも寄与 患者本人の希望を尊重し、無理のない範囲での目標設定が大切

ラクナ脳梗塞によって運動機能や認知機能に障害が出た場合、医師の指導のもと行うリハビリが症状の回復において大切です。作業療法や理学療法を通じて、日常生活に必要な動作を取り戻すことを目指していきます。

とくに歩行や手の動作に影響がある場合は、早期からの訓練が不可欠です。また、リハビリは、患者の状態や生活習慣に合わせて個別に計画し、医師の指示のもと無理のないペースで進めることが大切です。

関連記事:ラクナ梗塞の後遺症とは?リハビリ方法や再発リスク・再生医療について

心理的サポート

目的 内容 有効な理由
病気への不安や衝撃の緩和 発症のショックや再発への恐怖を軽減 医師との対話で感情を整理し、冷静に治療に向き合えるようになる
後遺症や身体の変化への適応 目に見えにくい症状への戸惑いや落ち込みに対処 残された機能を活かす工夫や前向きな姿勢を引き出す支援ができる
精神症状への対応(うつ・不安) 血管性うつ病など、精神的合併症に対応 精神面の安定によりリハビリ意欲や生活の質が向上する
再発への不安の管理 高い再発率に対する過度な不安を軽減 予防行動への前向きな継続を支える心理的土台をつくる

文献6

ラクナ脳梗塞は身体だけでなく心にも影響を及ぼし、再発への不安や思うように動けないことから、うつや意欲低下が生じやすくなります。

そのため、治療と並行して心理的サポートが不可欠です。心理士のカウンセリングや家族との対話、同じ経験を持つ人との交流は、前向きなリハビリ継続に役立ちます。心のケアは回復を支える大切な要素です。

以下の記事では、脳梗塞の後遺症において患者様の家族が注意したいポイントを詳しく解説しています。

再生医療

項目 内容 期待される効果
神経細胞の修復 患者自身の幹細胞を使い、損傷した神経細胞の再生を促す 運動機能・感覚機能の改善
神経保護・抗炎症作用 幹細胞が神経栄養因子を分泌し、神経の保護や炎症の抑制に働く 脳内環境の安定、再発リスクの低下
血管新生と血流改善 損傷した脳内の微細血管の再生を促進 脳への酸素・栄養供給の改善

再生医療は、ラクナ脳梗塞に対する新たな治療選択肢のひとつです。自己由来の幹細胞を用いて、損傷した神経組織の再生を促し、他の治療法と併用することで後遺症の改善が期待されます。

ただし、再生医療を実施している医療機関は限られており、保険の適用外である点に注意が必要です。治療を検討する際は、事前に医療機関の情報を確認し、医師への相談が大切です。

以下の記事では、リペアセルクリニックで実施している再生医療についてわかりやすく解説しております。

ラクナ脳梗塞の再発予防策

予防策 内容 補足・ポイント
生活習慣病の管理 高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療を継続 医師の指示に基づく食事・運動・薬物療法が基本
糖尿病・脂質異常症の管理 血糖・コレステロール・中性脂肪の数値をコントロール 血管保護に直結し、再発リスクを軽減
適度な運動習慣 ウォーキングなど、有酸素運動を継続 無理のない範囲で実施
抗血小板薬などの内服薬の継続 抗血小板薬や抗凝固薬の服用を継続 自己判断で中止せず、処方通りに継続
ストレス管理 リラックス法や趣味の時間を意識的に取り入れる ストレスによる血圧上昇を防ぎ、心身の安定を図る
禁煙の徹底 タバコは血管を傷つけ、動脈硬化を悪化させる 禁煙は最も効果的な再発予防策のひとつ

ラクナ脳梗塞は、一度発症すると再発のリスクが高くなる傾向があります。再発を防ぐには、原因となる生活習慣病の管理や、毎日の過ごし方の見直しが不可欠です。

再発は日常生活に支障をきたすだけでなく、発見が遅れると重症化するリスクもあります。

生活習慣病の徹底的な管理

管理項目 具体的な対策内容 期待される効果
血圧管理 家庭で血圧を定期測定し、医師の指示に従って降圧薬を服用する 血管への負担を減らし、動脈硬化や血管破綻のリスクを軽減
血糖管理 血糖値を定期的に測定し、食事・運動療法や必要な薬で安定した血糖コントロールを行う 血管内皮の損傷を防ぎ、細い血管の血流維持に役立つ
脂質管理 定期的な血液検査と食事管理、必要に応じて薬を使用して脂質バランスを整える 動脈硬化の進行を抑え、血管閉塞や血栓形成のリスクを軽減
禁煙 受動喫煙も含めてタバコを完全にやめる 血管の炎症や収縮を防ぎ、血液の流れを保つことで再発を予防
適正体重の維持 バランスの取れた食事と継続的な運動で肥満を防ぎ、標準体重を維持する 高血圧・糖尿病・脂質異常のリスクを下げ、血管の健康を守る

高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病は、ラクナ脳梗塞の主な原因となるため、再発を防ぐにはこれらの改善が欠かせません。

とくに血圧は家庭で簡単に測定できるため、日々の変化を記録しながら管理するのが大切です。あわせて、定期的な通院と検査を続けることで、早期発見・早期対応につながります。

以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものについて詳しく解説しております。

糖尿病・脂質異常症の管理

管理法 糖尿病に対する対策 脂質異常症に対する対策
食事療法 炭水化物の摂取量を調整し、野菜や海藻、きのこなど食物繊維を積極的に摂取する 飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控え、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く取り入れる
運動療法 有酸素運動を週3~5回・30分程度行い、血糖値のコントロールを図る 同様の運動で中性脂肪の減少やHDLコレステロールの増加を目指す
薬物療法 血糖降下薬(例:メトホルミンなど)を医師の指示に従って使用する スタチン系やフィブラート系薬剤でLDLコレステロールや中性脂肪を管理する

糖尿病・脂質異常症は血管にダメージを与える病気であり、放置すれば再発の恐れがあります。血糖やコレステロールの数値は、食事や運動、薬の服用によってある程度コントロールできます。

とくに糖尿病では、インスリン抵抗性の改善や血糖値の安定化が不可欠です。脂質異常症に対しては、動物性脂肪の摂取を控え、青魚や野菜を中心とした食事が効果的です。

糖尿病・脂質異常症の管理は自己流ではなく、医師の指導のもと行い、生活習慣を整えることで、再発防止につながります。

適度な運動習慣の継続

効果の分類 具体的な内容
生活習慣病の改善 血圧を安定させ高血圧を予防、血糖値を改善し糖尿病リスクを低下、脂質バランスを整え動脈硬化を抑制
肥満の予防・改善 消費エネルギーを増やし、適正体重を維持する
血管機能の維持・改善 血管の柔軟性を保ち、血液循環を良好に保つ
血栓の予防 血液を固まりにくくし、血管の詰まりを予防

文献7)(文献8

ラクナ脳梗塞の再発予防には、継続的な運動が効果的です。軽いウォーキングや体操など、無理のない範囲で体を動かすことで、血圧や血糖値の改善、脳血流の促進、さらにはストレスの軽減にもつながります。

運動は気分の安定にも寄与し、心身の健康を支える習慣です。公益財団法人長寿科学振興財団の指針では、歩行と同等以上の身体活動を1日60分以上(週あたり23メッツ・時以上)行うことが推奨されています。文献7

対象 目安となる活動量 運動の強度・内容
全年齢共通 歩行と同等以上の身体活動を毎日60分以上(週に23メッツ・時以上) 日常的な歩行、家事、軽作業などを含む
65歳以上 内容を問わず身体活動を毎日40分以上(週に10メッツ・時以上) 散歩、体操、趣味の活動なども可
年齢問わず 息が弾み、汗ばむ程度の運動を週60分以上(4メッツ・時以上) 速歩、軽いジョギング、エクササイズなど

※メッツ(METs):身体活動の強さを表す単位(安静時を1とした相対値)(文献7

65歳以上では、活動の種類にかかわらず1日40分以上(週あたり10メッツ・時以上)が目安です。また、息が弾み汗ばむ程度の運動(速歩、軽いジョギングなど)は週に60分以上(4メッツ・時以上)を目指しましょう。運動は無理のない範囲で始め、医師の指導のもと進めていくことが大切です。

抗血小板薬などの内服継続

項目 内容 補足情報・代表的な薬剤
再発予防効果の実証 抗血小板薬は、ラクナ脳梗塞の再発を有意に抑制することが研究で示されている アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなど
併用療法の効果 アスピリン+クロピドグレルなどの併用療法(DAPT)は、単剤より高い再発予防効果が期待される 適応は医師が判断(出血リスクとのバランスを考慮)
生活習慣病管理との相乗効果 高血圧・糖尿病・脂質異常症といったリスク因子の管理と併用で、再発予防効果がさらに向上 抗血小板薬+生活習慣改善の組み合わせが推奨される

文献9)(文献10)(文献11)(文献12

ラクナ脳梗塞の再発防止策として、抗血小板薬の継続服用は有力です。アスピリンやクロピドグレル、シロスタゾールなどは血栓の再形成を防ぎ、再発リスクを下げる効果が証明されています。(文献11

場合によっては、医師の判断で2剤併用(DAPT)が行われるケースもありますが、副作用や出血のリスクもあるため、自己判断で中断せず、医師の指示に従うことが大切です。

高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理をあわせて行うことで、薬の効果はさらに高まります。飲み忘れ防止にはカレンダーやアプリの活用が効果的です。薬の継続は治療の一環であり、副作用が気になる場合は早めに医師や薬剤師に相談しましょう。服薬が、再発予防と健康維持につながります。

ストレス管理

ストレスを和らげる方法 内容
適度な運動 ウォーキングやストレッチなど、軽い運動で心身の緊張をほぐす効果
十分な睡眠 規則正しい生活リズムを維持し、質の高い睡眠を確保
リラクゼーション法 深呼吸・瞑想・マインドフルネスなどを活用し、リラックス状態を促す
趣味や交流 趣味に没頭する時間や、家族・友人との交流を楽しみ、気持ちを安定させる

ストレスは血圧や血糖の変動を引き起こし、間接的に脳梗塞の再発リスクを高める要因です。自覚がないままストレスが蓄積していることもあります。そのため、日常生活のなかで心身をリラックスさせる時間を持つことが大切です。

深呼吸や軽いストレッチ、趣味の時間などを意識的に取り入れるとストレスが緩和されます。また、家族や医師と定期的なコミュニケーションで悩みを共有することも精神状態の安定に役立ちます。

禁煙の徹底

禁煙は、ラクナ脳梗塞の再発予防において非常に大切です。喫煙は血管を収縮させ、血圧を上げるだけでなく、血管内皮を傷つけて動脈硬化を促進させる要因です。

JPHC研究によると、喫煙者は非喫煙者よりラクナ梗塞の発症リスクが約1.5倍高く、1日40本以上の喫煙では2倍以上に上がることが判明しております。また、禁煙によって男性では約17%、女性では5%の脳卒中が予防できるとの推計もあります。これは年間で約16万人の患者を救える可能性を意味し、禁煙が予防においてどれほど重要かを示したものです。(文献13

JPHC研究データからもわかるとおり、禁煙は比較的早期に血管の状態に現れるとされ、再発予防にも直結します。

ラクナ脳梗塞でお悩みの方は当院へご相談ください

ラクナ脳梗塞は、症状が軽くても将来的に認知機能や運動機能に影響を及ぼすおそれがあります。違和感があれば、早めに検査を受けることをおすすめします。

当院リペアセルクリニックでは、ラクナ脳梗塞による後遺症に対して、患者様の状態に合わせた治療を提案しています。

リハビリや薬物療法に加え、必要に応じて再生医療も選択肢のひとつとしてご利用になれます。ラクナ脳梗塞の後遺症が改善せず、お悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。

\無料相談受付中/

通話料無料/受付時間 09:00~18:00

ラクナ脳梗塞に関するよくある質問

ラクナ脳梗塞を放置するとどうなりますか?

ラクナ脳梗塞は症状が軽く見過ごされがちですが、放置すれば、再発や認知症、言語・嚥下障害といった後遺症を招くリスクがあります。早期受診と治療、生活習慣の見直しが再発予防も大切です。

以下の記事では、「症状が軽い脳梗塞」における治療の重要性を詳しく解説しております。

ラクナ脳梗塞が重症化するとどうなりますか?

ラクナ脳梗塞が重症化すると、手足の麻痺やしびれ、言葉の出にくさ、物忘れなどの症状が進行し、日常生活に支障をきたすことがあります。生活の質が大きく低下する恐れがあるため、早期の対処が重要です。

ラクナ脳梗塞の後遺症がある場合に利用できる公的支援制度はありますか?

ラクナ脳梗塞の後遺症がある方は、公的支援制度を利用することで医療費や介護の負担を軽くできる可能性があります。医療費には高額療養費制度や自立支援医療、介護には介護保険制度や障害者総合支援法があります。

身体障害者手帳や障害年金による支援も受けられます。詳しくは市区町村や医療機関で相談できます。

ラクナ脳梗塞の後遺症改善については、以下の記事で詳しく解説しています。公的支援制度を活用しながら、前向きに回復を目指しましょう。

参考記事

(文献1)

社会福祉法人 恩賜財団済生会「ラクナ梗塞」社会福祉法人 恩賜財団済生会, 2015年12月25日

https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/lacunar_infarction/(最終アクセス:2025年5月17日)

(文献2)

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(文献3)

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(文献4)

冨山 博史.「加齢と血管:血管の老化に向き合う」『東京医科大学病院』, pp.1-2, 2019年

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(文献5)

JIHS「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター, 2015年10月27日

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(文献6)

「地域のかかりつけ医のための心不全診療ガイドブック」『沖縄県・沖縄県医師会』, pp.1-42

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(文献7)

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(文献8)

松元 秀次.「脳梗塞のリハビリテーション治療」, pp.1-9, 2019年

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(文献9)

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(文献10)

内山真一郎.「脳血管障害と抗血栓療法」『21シリーズ特集Dr.内山.indd 3』, pp.1-5, 2008年

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(文献11)

国立循環器病研究センター「脳梗塞再発予防抗血小板薬併用療法の適切な切替時期を提案:国内多施設共同 CSPS.com試験サブ解析」国立循環器病研究センター, 2022年01月27日

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(文献12)

岩戸 英仁.「脳梗塞再発予防のための治療」, pp.1-24

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(文献13)

予防研究グループ(予防研究部・疫学研究部・コホート研究部)「多目的コホート研究(JPHC Study) 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について」国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト

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