【医師監修】脳梗塞は治るのか?治療方法や入院期間・費用を解説
公開日: 2022.10.28更新日: 2024.10.24
脳梗塞は治る病気なのかな。
脳梗塞になったら、どのくらい入院するのか知りたい。
この記事を読んでいるあなたは、脳梗塞は治る見込みがあるのか、疑問に思っているのではないでしょうか。
「退院できても、重い後遺症で生活に影響が出てしまうのではないか」と不安になることもあるかもしれません。
結論、脳梗塞は、発症してから早期に治療をおこなえば、治る見込みがある病気です。しかし治療が遅れると重篤な後遺症につながり、仕事への復帰や日常生活に影響が及ぶ可能性もあります。
本記事では、脳梗塞の具体的な治療法や後遺症について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳梗塞を治すために必要な治療がわかり、適切に準備を進められるでしょう。
目次
脳梗塞は早期治療によって治る見込みがあります
脳梗塞は早期治療ができれば治る見込みがあります。
ただし発症してから早い段階で適切な検査・治療をおこなわないと、後遺症のリスクが高くなるのも事実です。
本章では脳梗塞における早期治療の必要性や後遺症について解説します。
治療が遅れると後遺症が出る危険性がある
脳梗塞で重い後遺症を出さないためには、発症してから早い段階での治療が必要です。
脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで脳細胞が壊死し、脳機能が低下してしまう病気です。
脳梗塞によって損傷した脳組織を元に戻すことは、一般的な治療では不可能といわれています。そのため、継続的なリハビリによって損傷した部分を補う必要があります。
治療が遅れると後遺症が出るリスクが高まるため、専門機関で早期に治療・リハビリを受けましょう。
脳梗塞の種類と原因
脳梗塞の種類は以下の3つです。
- アテローム血栓性脳梗塞 : 首や脳などのより太い血管が詰まることで起こる
- ラクナ梗塞 : 比較的小さな血管が詰まり、緩やかに症状が現れる
- 心原性脳梗塞 : 心臓の血栓の一部が血流により脳に運ばれ、血栓を作る
いずれも高血圧や脂質異常症、高血糖などの生活習慣病による動脈硬化が原因で発症するケースが多くあります。
発症後は、脳内の正常な血流を回復する急性期治療を実施し、リハビリによって後遺症など二次的影響への治療をおこなうのが一般的です。
脳梗塞の原因や種類については、以下の記事も参考にしていただければ幸いです。
脳梗塞の早期治療に必要な検査とは
脳梗塞に対して早期に治療介入する上で重要になるのが検査です。
脳梗塞の主な検査は以下のとおりです。
- 身体検査:心臓の音や血圧を測ったり、神経学的診察を行います。
- 血液検査:血液が凝固する速さ、血糖値、感染症の有無を調べます。
- CT検査:脳内出血、虚血性脳梗塞、腫瘍などを調べます。
- MRI検査:虚血性脳梗塞や脳出血によって損傷した脳組織を検出します。
- 頸動脈超音波検査:頸動脈の脂肪沈着物 (プラーク) の蓄積と血流が示されます。
- 脳血管造影検査:脳と首の動脈を詳細に調べます。
- 心エコー検査:心臓から脳に移動して脳梗塞を引き起こした可能性のある心臓内の血栓の原因を見つけます。
脳梗塞を診断するためだけでなく、他の考えられる原因を除外する必要があるため非常に大切です。
これらの検査をおこなうことで正しく脳梗塞を診断でき、適切な治療へと導くための大切な治療プロセスになります。
脳梗塞の後遺症と生活への影響
脳梗塞の発症後は、身体の麻痺や言語障害などの後遺症が出るケースもあります。
本章で脳梗塞によって生活にどのような影響が出るのかを理解し、受けるべき治療や退院後の生活について検討しておきましょう。
後遺症の種類
脳梗塞の後遺症に多い症状は以下のとおりです。
後遺症の種類 |
症状 |
---|---|
運動麻痺 |
|
感覚麻痺 |
|
高次脳機能障害 |
|
脳梗塞が生じた部位や重症度によって、後遺症の種類・程度も変わる場合があります。
生活への影響
脳梗塞の後遺症により、日常生活にさまざまな影響が出ることがあります。
たとえば、運動麻痺の後遺症がある場合、歩行などの日常動作が難しくなり、食事や入浴、排泄などに介助が必要になるでしょう。
また、高次脳機能障害により、失語症や認知機能の低下がみられる場合は、周囲とのコミュニケーションが難しくなることもあります。
後遺症の種類や程度に応じて、日常動作訓練や言語訓練などのリハビリをおこない、社会・職場への復帰を目指します。
脳梗塞における3つの治療(急性期)
脳梗塞は脳梗塞の急性期における治療法は、主に以下の3つです。
- 血栓溶解療法(t-PA治療)
- 血管内治療(血栓回収療法)
- 抗血栓療法(内服治療)
本章を参考に、脳梗塞の治療に関する理解を深めておきましょう。
血栓溶解療法(t-PA治療)
虚血性の脳梗塞の場合は、血栓を溶かして脳への血流を回復させるアルテプラーゼと呼ばれる薬を注射することで治療できます。
このアルテプラーゼは、脳卒中の発生後できるだけ早く、確実に4.5時間以内に開始すると最も効果的です。4.5 時間以上経過した場合は、薬が出血性脳梗塞による出血を悪化させる可能性があるため、利用できません。
血管内治療(血栓回収療法)
重度の虚血性脳梗塞の場合は、血栓回収療法と呼ばれる血管内のカテーテル治療によって治療できます。
局所麻酔下または全身麻酔下でカテーテルを動脈に挿入し、小さなデバイスを、カテーテルを通して脳の動脈に挿入します。このデバイスを使用して血栓を除去することで、脳への血流が回復します。
血栓溶解療法同様に、脳梗塞後できるだけ早く開始すると最も効果的です。
抗血栓療法(内服治療)
血管の閉塞を治す急性期治療に加え、再発予防として、内服による治療も同時に行います。
1.抗血小板薬(アスピリン/クロピドグレル) アスピリンは抗血小板薬であり、新しく血栓が形成される可能性を減らすことができます。また、クロピドグレルなど、他の抗血小板薬も同時に併用する場合があります。 2.抗凝固剤(ワーファリンなど) 将来、新たな血栓ができるリスクを軽減するために、抗凝固薬を投与されることがあります。ワルファリン、ダビガトランなど、長期間使用できる抗凝固薬があります。 |
脳梗塞のリハビリについて
急性期治療の後は、できる限り多くの機能を回復するようリハビリに努めることが大切です。それが自立した生活を取り戻すことに繋がるからです。
リハビリには主に急性期、回復期、生活期の 3 つの段階があり、年齢、全体的な健康状態、および脳梗塞による障害の程度に基づいて、リハビリ内容を医師が決定します。
退院後は、同じ病院はもちろんですが、利便性を考慮して自宅の近くなど、別のリハビリ施設で、リハビリを続けることもできます。
リハビリは患者の状態に応じて以下のようなチームで行われます。
|
発症後48時間以内の早期にリハビリを開始することで、脳梗塞による後遺症を軽減することがわかっています。
脳梗塞の治療期間・費用
脳梗塞の発症後は、一般的に2〜3カ月間の入院が必要です。入院・治療の期間によってかかる費用も変動します。
本章を参考に、脳梗塞の治療にかかる期間や費用を具体的に把握し、事前に準備を進めておきましょう。
入院・治療期間
厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査」によると、脳梗塞を含む脳血管疾患の平均入院期間は77.4日です。障害のある脳の部位や範囲など、脳梗塞の重症度によって、入院期間は変動します。
軽度の場合は2週間程度で退院できることもありますが、一般的には2〜3カ月の入院が必要になるでしょう。
悪性新生物(がん)による平均入院日数は19.6日であることから、脳梗塞の入院期間は一般的な病気に比べ長いといえます。
また、脳梗塞による入院期間は、年齢によっても差があります。年齢別の平均入院期間は以下のとおりです。
年齢 |
平均入院期間(平均在院日数) |
---|---|
0~14歳 |
31.3日 |
15~34歳 |
61.7日 |
35~64歳 |
51.8日 |
65歳以上 |
83.6日 |
70歳以上 |
86.9日 |
75歳以上 |
93.2日 |
※厚生労働省|令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(P13)をもとに作成
高齢で脳梗塞を発症した場合、リハビリが長期化しやすい傾向があります。
脳梗塞になった本人やご家族が高齢の場合、入院が長期化する可能性があることを理解しておきましょう。
費用
厚生労働省の「令和2年度 医療給付実態調査報告」によると、脳梗塞を含む脳血管疾患の平均入院費用は約90万円となっています(健康保険3割負担の場合)。
脳梗塞の入院・治療費は、高額療養費制度を活用することである程度負担を抑えられる可能性があります。
高額療養費制度とは、医療機関などでかかった医療費が1カ月で上限額を超えた場合、超えた分の金額があとから払い戻される制度のことです。
参照:厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ
ただし、脳梗塞の医療費は入院期間や重症度などによって変動するため、具体的な金額は医療機関へ確認しておきましょう。
まとめ|脳梗塞を治すなら早めに適切な治療を受けましょう
本記事では、脳梗塞の治る見込みや後遺症、治療期間・費用などを詳しく解説しました。
脳梗塞は早期の治療開始が大切で、適切なリハビリをおこなうことで克服できる病気です。ただし、治療が遅れれば後遺症が重くなる可能性が高まり、日常生活にも大きな影響を及ぼしかねません。
早期の治療開始と適切なリハビリにより、発症前と同じような生活や仕事復帰も可能になるでしょう。
当院「リペアセルクリニック」では、国内でも数少ない、自己の幹細胞を用いた再生医療(幹細胞治療)を提供しています。
再生医療で一度壊れた脳細胞を復活させることで、リハビリ効果を高めたり、脳梗塞の再発を予防したりする効果が期待できます。
この記事が脳梗塞における早期治療の重要性を知るのに役立ち、効果的な治療・リハビリを受けるきっかけになれば嬉しく思います。
脳梗塞の治療や入院に関するよくある質問
Q.脳梗塞の治療後、仕事復帰はどのくらいでできる?
A.仕事復帰までの期間は、患者それぞれによって異なりますが、基本的には3ヶ月後に退院できるケースが多いようですが、退院してすぐに復帰できるわけではありません。
多くの場合、発症から半年または1年後を目途に復帰できるケースが多いようです。
Q.脳梗塞を早く治すにはどうしたらいいですか?
A.脳梗塞を早く治すには、何といっても早期治療が大切です。ただし、早期治療後にすぐに治るというわけではなく、リハビリなど日常生活に戻るには個人差があるのが実情です。
発症後 3ヶ月過ぎると、治りづらくなるため、できるだけ早くリハビリに取り組むことが、早く治すことにつながります。
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