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脳梗塞の患者様の家族が、看護で注意したいポイントを現役医師が解説

投稿日: 2022.11.16
更新日: 2024.11.11

脳梗塞患者の家族は、どうやって看護したら良いのだろう。
脳梗塞の看護のポイントについて知りたい。

この記事を読んでいるあなたは、家族や親戚が脳梗塞になり、どのように看護すれば良いか不安を抱いているのではないでしょうか。

「どのような経過になるのかを知りたい」と思っているかもしれません。

脳梗塞は早期に治療を受けても後遺症が出る場合があり、入院中から退院後まで継続的な看護が必要です。

本記事では、脳梗塞患者を看護する際のポイントについて、詳しく説明します。記事を最後まで読めば、脳梗塞の経過と必要な看護がわかり、今後の生活に向けた準備を始められるでしょう。

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脳梗塞患者の家族が看護で注意すべきポイント【看護計画】

脳梗塞の看護は、急性期、回復期、慢性期の各段階で注意すべきポイントが異なります。

多くの脳梗塞患者は入院が必要で、とくに発症直後は集中治療室(ICU)での治療やケアが必要になるケースは珍しくありません。

脳梗塞の症状は急速に変化する可能性があり、迅速な処置が必要なためです。

さらに、脳梗塞の治療は長期化するケースも多く、看護師は身体的、心理社会的の両面について患者ケアを行います。

脳梗塞の種類や合併症については、以下の記事も参考にしてください。

発症直後

脳梗塞の発症直後は全身状態が悪く、脳梗塞の拡大や再出血などの急変リスクも高い時期です。

まずは医師・看護師などがチームとなって脳に詰まった血栓を溶かす治療(t-PA療法)や血栓を取り除くカテーテル治療(血栓回収療法)などを行います。

t-PA療法は、脳浮腫や血管の圧力増加による意識障害などの合併症が起こりやすいため、意識レベル、呼吸、循環動態のチェックが欠かせません。

さらに誤嚥予防の処置や体位の調整、けいれんが起きていないかの観察など、看護計画に基づいた慎重な看護を行います。

脳梗塞の治療については、以下の記事も参考にしてください。

急性期

発症直後を含めた「急性期」の看護でチェックする主なポイントは、以下のとおりです。

  • 意識レベル(応答性、話す能力、見当識の変化など)
  • 呼吸と循環の管理
  • 血圧管理
  • 体温管理
  • 排尿管理
  • 皮膚の状態
  • 出血管理

意識レベルの確認には、「目を開けるか」「意識ははっきりしているか」「痛みに反応するか」「身体を動かせるか」などをチェックする以下の指標がよく使われます。

  • JCS(ジャパン・コーマ・スケール):日本で使用されている意識障害の評価方法
  • GCS(グラスゴー・コーマ・スケール):世界で広く使用されている意識障害の評価方法

寝たきりの時期が長くなると、筋肉の退化や誤嚥性肺炎、床ずれなどのリスクが上昇します。

そのため、十分なリスク管理のもとに、寝返り、座位、セルフケア訓練など、自分で身体を動かすためのリハビリをできるだけ早くから開始します。(文献1

また、脳梗塞は麻痺や失語などの後遺症が出やすいため、症状や今後の生活に関するメンタルケアも重要です。

脳卒中の治療やリハビリについての見通しは、以下の記事も参考にしてください。

回復期

 

「回復期」とは、全身状態や血圧などが安定する時期です。

引き続き全身管理を行いながら、日常生活動作を取り戻すためのリハビリや看護を行います。

回復期の看護のポイントは、以下のとおりです。

  • 感覚と知覚(痛みと温度の認識が低下しているため)
  • 栄養機能 : 嚥下、栄養と水分補給の状態
  • 皮膚の状態、褥瘡対策
  • 排尿機能
  • 運動機能(上肢および下肢の動き)
  • 精神状態 (記憶、注意力、知覚、感情、発話/言語など)

脳梗塞で失われた脳細胞は、基本的には元に戻らないといわれています。しかし、治療やリハビリをすると脳のほかの部分が失った機能の代わりを果たすようになるため、身体が動くようになるのです。(文献2

本章の内容をもとに、回復期の看護を理解しておきましょう。

脳梗塞後のリハビリについては、以下の記事で説明しています。

1.栄養機能管理

栄養機能管理の看護では、以下のポイントをよく観察します。

  • 咳の状態
  • 口の片側に食物が溜まっていないか
  • 液体を飲み込むときの逆流がないか

また、言語聴覚士による飲み込み機能の評価を受けた上で、少量の小さな食物や水分を摂取するよう促します。

口からの摂取が不十分な場合は、チューブを介した経腸栄養の準備をします。

2.排尿管理

筋肉の制御が失われている間は自分の意思で排尿を管理できないため、医師・看護師が尿道にカテーテルを挿入し、人工的に排尿させます。

また、十分な水分(1日2〜3L)を与えて、規則正しい時間(朝食後)にトイレをするよう促します。

3.皮膚の状態と褥瘡管理

皮膚の状態が悪くなっていないかは、頻繁に評価します。

清潔で乾燥した状態に保った皮膚をやさしくマッサージし、皮膚の健康を維持します。

また、自分で身体を動かせないと、褥瘡(じょくそう:体重で圧迫されている部分の血流が悪くなり、皮膚がただれたり傷ができたりすること)のリスクが高い状態です。

ひどくなると傷から細菌が入って化膿して腫れる可能性があるため、1日数回(2時間ごと)身体の位置を変更して褥瘡を予防します。

4.運動機能の改善

意識が回復したら、積極的なリハビリテーションプログラム(以下リハビリ)を開始します。脳梗塞後のリハビリは、長時間のものを1回行うのではなく、短時間のものを複数回行います。
リハビリの目的は、以下のとおりです。

  • 関節の可動性を維持する
  • 運動機能を回復する
  • 麻痺した四肢の拘縮を予防する
  • 神経筋系のさらなる悪化を予防する

リハビリ中の患者サポートも、重要な看護です。

看護では、肺塞栓や過剰な心臓負荷の徴候 (息切れ、胸の痛み、チアノーゼ、脈拍数の増加など)が起きていないかも観察します。

慢性期

「慢性期」は、退院に向けての準備が本格化します。そのため、患者の全身管理や健康維持に加えて以下の点を重視した看護を行います。

  • 退院後の日常生活の支援(家族への説明)
  • 心理的なケア

退院後、ご家族の協力のもとに患者が自宅で達成可能な目標を計画します。

医師や看護師は、不安を和らげるためにていねいな説明や感情的なサポートを行います。不安や気になる点があれば、遠慮なく聞いてみてください。

脳梗塞の看護でご家族が果たすこと

退院後は、ご家族による食事や運動などの生活支援・リハビリのサポート・服薬管理などの看護が必要です。

脳梗塞は、脳のダメージを受けた部位によって起こる症状や後遺症が異なり、約半数の人に後遺症が出るといわれています。再発もしやすく、10年再発率は49.7%というデータもあります。(文献3

ダメージを受けた部分と、起こる後遺症の例は以下のとおりです。

  • 前頭葉:人格や性格が変化する
  • 頭頂葉:体が動かなくなる(麻痺)
  • 後頭葉:視野の半分が欠ける(半盲ともいう)
  • 側頭葉:学習、記憶障害が起こる

また、脳梗塞をはじめとする脳卒中のあとは、認知症になる人も珍しくありません。医療機関や介護サービスの手を借りながら、再発や後遺症を予防・軽減していきましょう。

脳梗塞の再発をコントロールする方法は、以下の記事で説明しています。

まとめ|脳梗塞の後は適切な看護が大切

本記事では、脳梗塞後に必要な看護について詳しく解説しました。

脳梗塞では、経過ごとに必要な看護が異なります。ご家族が中心となって看護するのは退院後で、日常生活の支援やリハビリなどが主な役割です。

心理的な問題は時間の経過によって解決するケースが多いのですが、不安な点は医師や看護師に質問し、解決しておきましょう。

脳梗塞の看護のよくある質問

脳梗塞のあとなぜ血圧が上がるのですか。

脳梗塞では、血流の低下によって脳がむくみます。

生じたむくみによって脳の血管が圧迫されると、結果的に血圧が高くなるのです。

脳梗塞のときはベッド上での安静が必要ですか。

脳梗塞の発症直後は、ベッド上での安静が基本です。

頭を上げたり、立ち上がったりすると血圧が下がり全身状態が悪くなるため、基本的には安静にします。

しかし近年は、状態が落ち着き次第、早めからリハビリを開始するのが一般的です。

脳梗塞はどのくらいで退院できますか。

症状や年齢によって異なりますが、平均的には2~3カ月ほどで退院するケースが多くみられます。

どのような症状が出たら脳梗塞の再発を疑えば良いですか。

以下の症状が出た際は脳梗塞の再発を疑い、救急車を呼びましょう。

  • 手足の麻痺やしびれ
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出てこない
  • 視野が欠ける
  • めまいがひどい
  • 意識を失う

脳梗塞は再発しやすいため、患者の様子をよく観察し、気になる症状が出たらすぐに受診しましょう。

脳梗塞の前兆については、以下の記事を参考にしてください。

参考文献一覧

文献1
脳卒中治療ガイドライン2021における リハビリテーション領域の動向 理学療法科学 37(1):129–141, 2022

文献2
脳の可塑性(基礎の立場から) ―サルを使った大脳運動野の破壊後の回復に関する研究,認知神経科学Vol.7No.3 2005

文献3
Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Mar;76(3):368-72. doi: 10.1136/jnnp.2004.038166.

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