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ばね指の発症原因に糖尿病が関係する?治療のポイントも含めて現役医師が解説

ばね指 原因 糖尿病
公開日: 2025.12.13

「最近手の指がしびれたりこわばったりする」

「カクカクと動きにくい」

「これは持病の糖尿病と関係があるの?」

糖尿病治療中の方で、このような症状にお困りの方もいらっしゃることでしょう。これらの症状は「ばね指」と呼ばれるものです。

ばね指の原因の1つとしてあげられるのが糖尿病です。一見無関係と思われがちなばね指と糖尿病ですが、実は深い関係があります。

本記事では、ばね指の原因と糖尿病の関係や、ばね指以外の糖尿病による手指症状などについて紹介します。

糖尿病の方がばね指治療を受けるときに覚えておくと良いポイントも解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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ばね指の原因と糖尿病の関係性

一般人口におけるばね指の発生率は2~3%程度とされますが、糖尿病患者におけるばね指発生率は、10%程度です。(文献1)文献によっては20%と示されているものもあります。(文献2)(文献4) 高齢者や長年糖尿病を患っている方は、ばね指を発症する可能性が高い状況です。

現時点では、糖尿病の方がばね指を発症する明確な原因は解明されていませんが、高血糖状態が続いた結果つくられる「終末糖化産物(AGEs)」の影響が考えられます。(文献3)

AGEsはタンパク質と糖が結合した物質で、皮膚や血管、骨、腱などに蓄積します。腱にAGEsが蓄積すると、腱が厚さを増して硬く・もろくなります。

高血糖は、腱の構造変化をもたらすだけではありません。身体の中で炎症を起こしやすくする側面もあります。高血糖状態が続く糖尿病患者は、体の中で炎症が起きやすいため、ばね指リスクも高いといえます。

ばね指の概要や糖尿病との関係については、以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。

【ばね指と糖尿病】他の手指症状との違い

この章では、ばね指の症状と経過に加えて、ばね指以外の手指症状について解説します。

ばね指の症状と経過

ばね指は、指を曲げるための腱(屈筋腱)の通り道である腱鞘が炎症を起こした状況です。腱鞘炎がおこると、腱鞘が狭くなります。その結果、屈筋腱が動きにくくなり、指の曲げ伸ばし動作がスムーズにいかなくなります。

指がばねのように引っかかる、いわゆる「弾発現象」の発生が、ばね指と呼ばれるゆえんです。ばね指は、手の親指や中指、薬指に多く発症します。ばね指の初期では、手の使用を控えると症状が落ち着きます。しかし、進行すると反対側の手で介助しないと指の曲げ伸ばしが難しくなり、日常生活にも支障をきたします。

糖尿病による神経障害や手根管症候群との違い

糖尿病合併症の1つが、神経障害です。糖尿病性神経障害の場合、ばね指とは異なり、両手もしくは両足に症状が出ます。(文献5)

高血糖状態が長く続くと、神経周囲の血管が傷んだり、神経自体の性質が変わったりします。糖尿病性神経障害は、血管の損傷や神経の変性が原因です。症状としては、手足のしびれや冷え、感覚の低下などがあります。(文献6)(文献7)

糖尿病性神経障害は、多くの場合足に症状が現れますが、手指に症状が出ることもあります。

糖尿病性神経障害の中には「手根管症候群」も含まれます。手根管症候群は、手のひらの付け根にある手根管と呼ばれるトンネル内で正中神経が圧迫、障害されるものです。(文献5)(文献8)

手根管症候群では、親指から薬指側半分のしびれや痛みといった症状があります。進行すると親指付近の筋力低下が見られますが、ばね指のような、指が引っかかるといった症状は見られません。

糖尿病性神経障害や手根管症候群については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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【関連記事】

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【糖尿病患者向け】ばね指を治療するときのポイント

糖尿病患者は組織の回復が遅く、ばね指が慢性化・再発しやすい状況です。そのため、初期段階での対応が重要です。

ばね指の治療としては、以下のようなものがあげられます。

  • 手指の安静(装具や絆創膏などによる固定)
  • 消炎鎮痛剤の内服
  • 湿布や軟膏の処方
  • ステロイド剤の注射
  • 手術

この章では、糖尿病患者がばね指治療を受ける際のポイントを解説します。

ばね指の治療に関しては、下記の記事をご覧ください。

糖尿病の治療に関しては、当院の再生医療による症例が参考になります。

ステロイド注射による薬剤性高血糖の可能性がある

ステロイド剤は炎症を抑える作用が強いため、腱鞘炎の1つであるばね指にも有効な治療法とされています。

しかし、ステロイド剤は副作用も多い薬剤です。副作用の1つが、薬剤性高血糖です。

ステロイドは、肝臓で糖が作られるのを増やしたり、筋肉や脂肪が糖を取り込むのを減らしたりします。また、血糖を下げる効果があるインスリンの働きを悪くしたり、インスリンの分泌そのものを低下させたりします。(文献9)

これが、ステロイドによる高血糖が生じるしくみです。

手術時に感染症を起こすリスクがある

糖尿病患者は感染症にかかりやすいといわれています。

理由として考えられるものは、主に以下のとおりです。(文献10)

  • 高血糖に伴う免疫反応の低下
  • 自律神経の障害
  • 皮膚粘膜への細菌定着

アメリカで実施された研究では、手術後に血糖値が高かった患者は、術後感染症のリスクも高いとの結果が示されました。手術後に感染症を起こすと、傷の回復が遅れるリスクもあります。血糖コントロールが良くない患者は、手術後の傷の治りが遅いとの研究結果も示されています。(文献11)(文献12)

【糖尿病患者向け】ばね指の悪化を防ぐためのセルフケア

この章では、糖尿病患者向けに、ばね指悪化防止のセルフケアを3点紹介します。

指に負担をかけないように工夫する

指に負担をかけない方法としてあげられるのは、装具や絆創膏での固定、テーピングなどです。しかし、高血糖状態が続いているときは、身体にある細い血管が障害されて血流が悪くなっています。

長時間同じ場所を固定すると血流が悪化する可能性があるため、必ず医師の指示を仰ぎましょう。スマートフォンやパソコンを操作するときや、編み物、手芸などで手指をこまめに使うときは、指に負担をかけないように適度に休憩を入れてください。休憩中に軽く指を動かすと良いでしょう。

ばね指のセルフケアについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

適切な生活習慣を意識して行動する

ばね指を含む腱鞘炎の発症・悪化に関係するAGEsを増やさないような食事や生活習慣が大切です。

食事は満腹ではなく腹八分目を心がけましょう。野菜やきのこ、海藻類などを先に食べて、糖質の吸収を抑えることが必要です。早食いは血糖値を急激にあげるため、ゆっくり食べることをオススメします。食後の軽い運動により血糖値の急上昇を抑えられるため、無理のない範囲で取り入れてみましょう。

ストレスが多い生活では、ホルモンバランスが乱れやすくなります。血糖値を上げるホルモンが分泌されて、結果として、AGEsの増加につながります。ぜひ、自分なりのストレス解消法を持ってみましょう。

ただし、食べることでのストレス解消は逆効果です。

血糖をコントロールしつつ指の異変に気を配る

ばね指のセルフケアにおいても、血糖コントロールは大事なポイントです。血糖値が高いと、ばね指が回復しにくく、悪化・再発しやすいためです。

食事や運動などに気をつけつつ、指に負担をかけないような生活を送りましょう。内科での糖尿病治療も忘れずに続けることが必要です。

糖尿病性神経障害の影響で、手指の痛みや熱感といったばね指症状に気づきにくい可能性もあります。手指の症状、もしくは違和感があった場合は放置せず、早めに整形外科医を受診しましょう。

セルフケアとはいえ、無理に指を動かすのは逆効果です。痛みがあるときは安静を優先し、無理のない範囲でのケアを心がけましょう。

ばね指の原因と糖尿病との関係を理解して正しく対処しよう

ばね指は糖尿病の方がかかりやすい手指変形であり、腱鞘炎の一種です。

高血糖状態が続くと炎症が起きやすく、ばね指を発症しやすいとされています。

糖尿病患者がばね指を発症すると、神経障害の影響で、症状に気づきにくく悪化しやすいリスクもあります。治療においては、医師と十分に相談しましょう。ステロイド治療による薬剤性高血糖や、手術後の感染症リスクなどがあるためです。

適切なばね指治療と、血糖コントロールをはじめとするセルフケアで、ばね指の悪化や再発を防止しましょう。

当院リペアセルクリニックでは、メール相談オンラインカウンセリングを実施しています。

糖尿病治療中であり、ばね指の症状も気になる方は、お気軽にご相談ください。

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ばね指の原因と糖尿病に関するよくある質問

糖尿病で手の指が腫れるのはなぜですか?

本記事で紹介しているばね指や、手根管症候群などで手の指が腫れる場合があります。また、糖尿病症状の1つであるむくみが関係しているケースもあります。

糖尿病合併症の1つが、高血糖の影響で腎機能が低下する「糖尿病性腎症」です。糖尿病性腎症では、足や顔にむくみが出ることが多いとされます。しかし、手がむくむケースもゼロではありません。糖尿病治療中で手の指が腫れてきた場合は、主治医に相談しましょう。

糖尿病性腎症の場合、食事療法が大切になってきます。詳しくは、下記の記事をご覧ください。

ばね指は食べ物で治りますか?

糖尿病の方の場合、血糖コントロールのためにも、ばね指の悪化防止のためにも食事は重要です。

ポイントとしては、以下のようなことがあげられます。

  • 決められたカロリーを守って食べる
  • 間食を控える
  • 野菜や海藻、きのこ類などを先に食べて糖質の吸収を抑える

青魚や野菜、果物なども、ばね指改善効果が期待できます。

ばね指と食べ物の関係としてもう1つ考えられるのが、ビタミン不足です。中でもビタミンB12が不足すると、神経の正常な働きがうまくいかず、手指のしびれや感覚低下などを引き起こしやすくなります。

ビタミンB12を多く含む食べ物は、魚介類や乳製品、卵などです。

腱鞘炎およびばね指と食べ物の関係性に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

参考文献

(文献1)

Diabetes and Trigger Finger|Merivale Hand Clinic

(文献2)

Misconceptions about trigger finger: a scoping review. Definition, pathophysiology, site of lesion, etiology. Trigger finger solving a maze|Advances in Rheumatology

(文献3)

The impact of diabetes mellitus on tendon pathology: a review|Frontiers

(文献4)

Diabetes Mellitus as a Risk Factor for Trigger Finger –a Longitudinal Cohort Study Over More Than 20 Years|Frontiers

(文献5)

糖尿病性末梢神経障害|日本内科学会雑誌

(文献6)

糖尿病性神経障害|糖尿病サイト

(文献7)

糖尿病性神経障害|健康長寿ネット

(文献8)

手根管症候群について|独立行政法人労働者健康安全機構横浜労災病院

(文献9)

薬剤性高血糖|昭和学士会誌

(文献10)

糖尿病と感染症|日本内科学会雑誌

(文献11)

Postoperative Hyperglycemia and Surgical Site Infection in General Surgery Patients|JAMA Surgery

(文献12)

糖尿病患者の血糖変動幅は術後創部治癒遅延と関連|日本糖尿病学会誌