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【医師監修】ウェルニッケ失語症(感覚性失語)とは|症状・原因・治療法を解説

ウェルニッケ失語症
公開日: 2025.12.29

「最近、会話が噛み合わないと感じる」

「簡単な話が理解できず、人間関係に支障をきたしている」

言葉が通じず会話が成り立たなくなると、多くの方はまず認知症を疑います。しかし、会話や言葉の意味が理解しにくくなる原因として、ウェルニッケ失語症(感覚性失語)と呼ばれる失語症の一種が存在します。

ウェルニッケ失語症(感覚性失語)は、脳の言語理解に関わる領域が障害されることで、言葉の意味の理解が難しくなる失語症のひとつです。原因となる脳の病気が進行したり再発したりすると、認知機能や運動機能にも影響が及ぶおそれがあります。

本記事では、現役医師がウェルニッケ失語症について詳しく解説します。

  • ウェルニッケ失語症の原因
  • ウェルニッケ失語症の治療法
  • ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント

記事の最後にはよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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ウェルニッケ失語症(感覚性失語)とは

項目 内容
原因 言語理解に関わる脳領域(ウェルニッケ野)の損傷
主な症状 流暢だが意味の伝わりにくい発話、言葉の理解困難、言い間違いの頻発
自覚の有無 発話内容や理解の問題に対する自覚の乏しい傾向
知能・記憶 知能や記憶が保たれ、他の認知機能は比較的保たれる傾向
誤解されやすい点 認知症と誤認されやすいが、主体は言語機能の障害
よく困る場面 家族との会話、電話応対、テレビ視聴での理解困難
対応のポイント 早期診断とリハビリテーション開始、医師への相談

文献1)(文献2

ウェルニッケ失語症は、言葉を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)が損傷されることで起こる失語症です。話す量は多く流暢ですが、言葉の選び方や内容がちぐはぐになり、相手に意味が伝わりにくくなります。

音としての言葉は聞こえているものの、意味と結びつきにくいため、会話がかみ合わず認知症と誤解されることもあります。外見や日常動作からは気づきにくいため、会話の様子を注意深く観察することが重要です。

治療は、原因となる脳の病気への対応と言語理解を高める訓練を組み合わせ、日常生活での工夫や環境調整も行いながら進めていきます。

ウェルニッケ失語症とブローカ失語症の違い

項目 ウェルニッケ失語症 ブローカ失語症
障害される部位 左側頭葉の言語理解の領域 左前頭葉の言語産出の領域
発話の特徴 流暢だが意味の伝わりにくい発話 言葉が出にくく非流暢な発話
言葉の理解 聞いた内容の理解が難しい傾向 聞いて理解する力は比較的保たれる
読み・書き 文章の理解や書字が難しい傾向 読む力は残るものの、書字が難しい傾向
会話の印象 話は多いが、内容が支離滅裂 話したいが言葉が出ず短い発話
本人の自覚 問題を自覚しにくい傾向 話せないもどかしさを自覚しやすい
伝わりにくさ 伝えても理解されにくい 理解できるが、表現が困難
リハビリの方向性 言語理解の再獲得と意味処理の訓練 発話生成の練習と伝達手段の確立

文献3)(文献4

ウェルニッケ失語症の特徴は、言語理解の障害により流暢に話せても意味が伝わりにくくなることです。一方、ブローカ失語症の場合、理解は保たれるものの、言葉が出にくく非流暢な話し方になります。

両者は損傷部位が異なるため、症状や必要な支援も異なります。違いを把握し、適切なリハビリやコミュニケーション方法を医師の指導のもと選択しましょう。

以下の記事では、ブローカ野とウェルニッケ野の違いを詳しく解説しています。

ウェルニッケ失語症の症状

症状 詳細
言葉の意味が理解できない 聞こえた言葉や文章の内容が正しく理解できない状態
話す内容がまとまらない 流暢に話せるが意味が通じず支離滅裂になりやすい状態
症状への自覚が乏しい 発言の誤りや会話の不適切さに気づきにくい傾向

ウェルニッケ失語症では、脳の言語理解を担う領域が損傷されるため、聞こえた言葉の意味がつかみにくくなり、会話がかみ合いにくくなります。

発話そのものはスムーズでも、言葉の選び方や内容がまとまりにくく、支離滅裂な印象になりがちです。さらに、自分の発言の誤りや会話のずれに気づきにくいため、ご本人と周囲との間で認識のギャップが生じやすいことも特徴です。

言葉の意味が理解できない

ウェルニッケ失語症は、言語理解を担う左側頭葉(ウェルニッケ野)の損傷によって生じます。

会話がかみ合わない、的外れな返答をする、話は流暢でも意味が通じない、読み書きが困難になるといった症状が現れるのが特徴です。

左側頭葉(ウェルニッケ野)は耳や目から取り込んだ言語情報に意味を付与する役割を担っているため、損傷が起こると音声や文字そのものは認識しても、その内容の理解は難しくなります。

こうした症状は、言語情報を受け取って解釈し、適切に応答するまでの過程で行われる「意味づけ」が途絶えることによって生じると考えられています。

話す内容がまとまらない

ウェルニッケ失語症では、言語の意味を処理する機能が障害されるため、流暢に話せても内容がまとまらず理解しにくくなるのが特徴です。

言い間違いや実在しない言葉が混ざることも多く、話は長くても相手に伝わる情報が少ない「空虚な発話」と呼ばれる状態になることがあります。

ご本人は症状を自覚しにくいため、周囲が戸惑いやすい一方で、適切な言語訓練を継続することで、会話のわかりやすさが改善していく例も報告されています。

症状への自覚が乏しい

項目 詳細
障害される部位 言葉の意味を理解する脳の領域(ウェルニッケ野)の損傷
自覚しにくい理由 自分の言葉の誤りや会話のズレを認識しづらい
症状の背景 音声の認識や発声は保たれるため、「自分は話せている」と認識しやすい
主な問題点 言葉の意味処理が障害され、問題の所在を自分で把握しにくい状態

ウェルニッケ失語症では、言葉の意味を処理する脳の領域が障害されるため、自分の発言の内容や相手の反応を正しく把握しにくくなります。

音声の認識や発話は保たれるため、ご本人は「話せている」と感じやすく、発話内容の誤りに気づきにくい傾向があります。

ウェルニッケ失語症の原因

原因 詳細
脳梗塞による左側頭葉の損傷 言語理解を担う領域への血流障害による神経細胞の損傷
脳出血によるウェルニッケ野の障害 出血による圧迫や破壊で生じる言語中枢の機能低下
その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など) 腫瘍や外傷、炎症による言語領域への影響

言葉の意味を理解する脳の領域が傷つくと、ウェルニッケ失語症が生じます。主な原因は、脳梗塞による血流障害や脳出血による出血・圧迫で、神経細胞の機能低下によって起こります。

そのほか、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも同じ領域が障害されることがあり、原因によって治療方針が大きく異なるため、画像検査などによる評価が欠かせません。

ウェルニッケ失語症は認知症とは性質が異なりますが、適切なリハビリテーションにより言語機能の改善がみられる場合があります。

脳梗塞による左側頭葉の損傷

ウェルニッケ失語症は、脳梗塞により左側頭葉後部が障害されることで生じます。脳梗塞は血管が詰まり血流が途絶える疾患で、とくに中大脳動脈後方枝が閉塞すると、神経細胞が急速に機能不全に陥ります。

左側頭葉後部には言語理解を担うウェルニッケ野があり、右利きでは約95.5%、左利きでは約61.4%の人が言語中枢を左半球に持つため、この領域の損傷が言語障害に直結します。 脳梗塞では、発症から短時間のうちに不可逆的な変化が進行するため、できるだけ早期に血流を再開させる治療が重要です。

以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。

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脳出血によるウェルニッケ野の障害

脳出血は、長期の高血圧により脳血管が破裂し、周囲の脳組織に出血が広がる疾患です。左側頭葉後部のウェルニッケ野周辺で出血が起こると、血腫による直接的な圧迫と周囲の浮腫により神経細胞が損傷されます。

高血圧性脳出血の好発部位である被殻や視床からの出血が拡大した場合や、ウェルニッケ野を栄養する後大脳動脈分枝の細動脈が破綻した場合に、この領域が障害されます。 出血した血液成分が神経毒として働き数時間で細胞死が進行し、とくに急性期の血腫拡大が症状をさらに悪化させるため、血圧管理と早期の止血処置が不可欠です。

以下の記事では、脳出血について詳しく解説しています。

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その他の原因(脳腫瘍・頭部外傷・脳炎など)

原因 障害の起こり方 主な特徴 発症の経過
脳腫瘍 腫瘍の増大によるウェルニッケ野の圧迫・血流障害 浮腫や出血を伴い、ゆるやかに言葉の理解が低下 徐々に進行することが多い
頭部外傷 衝撃による脳の揺れや打撲でウェルニッケ野を損傷 出血や脳のむくみにより神経細胞が圧迫 怪我の後、数日以内に症状出現
脳炎 ウイルス感染による炎症や腫れでウェルニッケ野が障害 発熱や頭痛に続き急な言葉の障害が出現 数時間〜数日の急速な発症

文献5

脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも言語理解を担う部位が損傷し、ウェルニッケ失語症が生じることがあります。これらは脳卒中と異なり、急激に発症する場合、もしくは徐々に進行する場合もあるため、日常の変化に注意が必要です。

言葉の理解や会話の様子に違和感を覚えた場合は、画像検査と言語評価が必要です。また、治療の基本方針は、原因疾患への対応と言語症状へのリハビリテーションを並行して行います。

以下の記事では、脳腫瘍及び、脳炎の後遺症について詳しく解説しています。

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ウェルニッケ失語症の治療法

治療法 詳細
基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など) 原因となる疾患を治療し、脳機能の悪化を防ぐ
リハビリテーション(言語理解の再学習など) 言語理解や表現を回復する訓練による機能改善の促進
コミュニケーション支援 身振りや文字、環境調整による意思疎通の補助
脳損傷に対する再生医療 幹細胞治療などによる損傷部位の機能回復を目指す

ウェルニッケ失語症の治療では、まず脳梗塞や脳出血、脳炎などの基礎疾患を適切に治療し、脳機能の悪化を防ぐことが重要です。

その上で、言語理解や表現力を回復するためのリハビリテーションを継続し、身振りや文字などを活用したコミュニケーション支援を組み合わせることで、日常生活での意思疎通を補います。

近年、幹細胞を用いた再生医療に関する研究も進められていますが、現在のところ適応となる病態や条件が限られており、実施している医療機関も多くはありません。

利用を検討する際は、医師に相談し、適応条件や得られる可能性のある効果や考えられるリスクなどについて十分な説明を受けた上で判断することが大切です。

以下の記事では、ウェルニッケ失語症の原因となる脳梗塞の治療について詳しく解説しています。

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基礎疾患の治療(脳梗塞・脳出血・脳炎など)

基礎疾患 詳細
脳梗塞 血栓溶解療法により血流を回復し神経細胞の壊死を抑える対応
脳出血 血腫除去により脳への圧迫を軽減し二次損傷を防ぐ対応
脳炎 抗ウイルス薬やステロイドで炎症や浮腫を抑え神経細胞を保護する対応
脳腫瘍 手術や放射線などで腫瘍を縮小し言語中枢への圧迫を解除する対応

ウェルニッケ失語症は、言語理解に関わる脳領域が損傷されることで起こるため、まずは原因となる基礎疾患を適切に治療することが重要です。

脳梗塞では、血流をできるだけ早く回復させて神経細胞の障害を最小限に抑えることが治療の中心となります。脳出血では、必要に応じて血腫を除去し、周囲の脳への圧迫を軽減することが目標となります。

脳炎や脳腫瘍では炎症や圧迫を取り除き、神経細胞の機能を守ることが目的です。これらの治療により、言語機能の改善に向けた土台が整い、リハビリの効果が高まりやすくなります。

以下の記事では、脳梗塞のリハビリについて詳しく解説しています。

リハビリテーション(言語理解の再学習など)

リハビリ内容 目的・特徴
絵カードや写真を使う練習 物の名前をいう力や言葉を思い出す力の向上
短い文章の聞き取りと応答 聞いた内容を理解し、簡単に返事する力の練習
絵や映像を言葉で説明 内容を整理して言葉で伝える力の強化
書く練習(段階的) 単語や文を書く力を少しずつ回復
ジェスチャーやノートの活用 言葉以外の手段で意思を伝える補助
家族・介護者への指導 わかりやすい話し方や環境づくりの支援

ウェルニッケ失語症では、脳の神経可塑性(しんけいかそせい)により損傷後も新しい回路を形成できるため、言語リハビリテーションが有効です。

言語聴覚士は検査結果に基づいて訓練内容を計画し、音声の識別や語彙の再学習などを行い、言語理解の回復を目指します。

急性期は意思疎通手段の確保、回復期は意味理解や文の処理を高める訓練が中心となります。

また、家庭での短時間の練習も大切です。音読やメモ書き、家族とのゆっくりとした会話を続けることで脳が刺激され、リハビリの効果を高めることが期待できます。

とくに発症後12カ月以内は言語機能が回復しやすい時期とされており、この期間に集中的なリハビリテーションを行うことが有効と報告されています。

コミュニケーション支援

方法・視点 詳細
間違い指摘を避ける 自尊心を保ち、会話意欲を維持する支援
「はい・いいえ」質問とジェスチャー 理解負荷を減らし、意思確認を容易にする支援
非言語手段の併用 絵や描画などを組み合わせ、伝達成功率を高める支援
意思汲み取りと成功体験の重視 伝えられた喜びを感じさせ、発話意欲を高める支援

言葉が通じにくい経験が続くと会話への意欲が低下しやすくなるため、相手の表現を否定せず意思疎通しやすい環境を整えることが大切です。

単純な質問やジェスチャーを組み合わせると、理解の負担を軽減できます。成功体験が増えることでコミュニケーションが円滑になります。

また、絵や文字などの非言語的手段を活用すると、伝える手段が広がり生活の質が向上します。

周囲の工夫により会話参加の意欲やリハビリの効果が高まることが期待されるため、できないことに対しても根気よく長期的な視点で取り組むことが大切です。

脳損傷に対する再生医療

ウェルニッケ失語症に対する治療の選択肢として、再生医療を用いる取り組みが検討される場合があります。

脂肪由来の幹細胞は、体内で他の細胞に変化する分化能や、生体内環境に作用する働きが報告されており、脳の損傷部位に関連した研究が進められています。

再生医療は、損傷した脳組織の修復や機能回復を目的として検討されている治療法です。しかし、疾患の状態によっては適用できない場合も多く、実施する医療機関も限られるため、希望する場合は医師に相談し、内容を十分に確認しましょう。

以下の記事では再生医療について詳しく解説しています。

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ウェルニッケ失語症の悪化を防ぐためのポイント

悪化を防ぐためのポイント 詳細
基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する 血圧管理や生活習慣改善による脳血管障害の再発予防
リハビリテーションを早期に開始し継続する 言語機能の維持と回復のための継続的な訓練
家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける 理解しやすい環境づくりによる意思疎通の促進

ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血といった基礎疾患が再発すると症状が悪化する可能性があります。そのため、血圧管理や生活習慣の見直しが重要です。

言語リハビリテーションは早期に開始して継続することで機能維持につながります。また、家族や周囲が適切なコミュニケーション方法を理解し環境を整えることで、日常の意思疎通が円滑になり患者の不安や負担が軽減されます。

基礎疾患(脳梗塞・脳出血など)の再発予防を徹底する

観点 詳細
再発でウェルニッケ野の二次損傷が起きる 追加の血流障害や圧迫で言語理解機能が低下する可能性
再発率が高い 危険因子の放置による脳梗塞・脳出血の再燃リスク
服薬・生活習慣管理で再発抑制が望める 血管保護により再発リスクを低下させ残存機能を守る取り組み
定期通院で早期発見・基礎疾患を防ぐ 画像検査で血管の状態を把握し発作を未然に防ぐ取り組み

文献6

ウェルニッケ失語症では、脳梗塞や脳出血が再発すると新たな脳損傷が生じ、言語理解機能がさらに低下する可能性があります。高血圧や糖尿病などの危険因子を管理し、服薬や生活習慣の改善を継続することが重要です。

また、定期的な通院によりMRIや血管検査を受けることで、再発の兆候を早期に捉えられます。再発予防は、残存する言語機能を守り、リハビリテーションの効果を維持するための重要な取り組みです。

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リハビリテーションを早期に開始し継続する

リハビリテーションの早期開始と継続は、ウェルニッケ失語症の回復に極めて重要です。

脳には損傷後も神経回路を再編成する可塑性(かそせい)があり、早期から言語刺激(聞く・話す・読む・書く)を積極的に行うことで脳の再編成を促し、言語機能の回復が得られやすくなります。

実際、早期リハビリの有益性を示す報告があります。(文献7

研究では、発症後約10日〜3カ月までに言語機能の改善が著しく、発症から6カ月頃まで改善が続くとされています。この時期に集中的な訓練を行うことは効果的です。

慢性期であっても、高頻度・高強度のリハビリにより日常会話能力が改善した報告があり、これらの介入は効果的です。(文献8

さらに、早期リハビリは廃用症候群(筋力低下、関節拘縮など)の予防にもつながります。(文献9

継続的なリハビリにより、完全回復に至らなくても補助的コミュニケーション手段と組み合わせて日常生活で使える言葉を取り戻せる可能性があり、言語聴覚療法(SLT)が失語症後の機能改善に有効です。(文献10

家族・周囲が適切なコミュニケーション支援を受ける

観点 詳細
会話意欲低下を防ぎ言語機能を維持する 指摘を避けジェスチャーを併用し成功体験を増やす支援
二次的合併症(うつ・孤立)を防ぐ 過ごしやすい環境づくりによる心理的安定の確保
家族負担を軽減し長期継続を可能にする 医師の助言による適切な関わり方の習得

文献11

ウェルニッケ失語症では、言葉が伝わらない経験が続くと会話を避けるようになり、言語機能の低下につながることがあります。

家族が誤りの指摘を控え、ジェスチャーや簡潔な表現を取り入れることで日常生活での成功体験が増え、発話意欲を保ちやすくなります。

また、安心してやり取りできる環境は、うつや孤立といった心理的な悪化を防ぐ上で大切な取り組みです。さらに、言語聴覚士による家族教育を受けることで適切な関わり方を学べるため、支援の負担が軽減され長期的に続けやすくなります。

ウェルニッケ失語症の症状が出た際は早期に受診しよう

ご家族が急に言葉を理解できなくなったり、会話が噛み合わないと感じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

ウェルニッケ失語症は、脳梗塞や脳出血などの重大な脳疾患を原因として発症することが多く、早期の診断と治療が求められます。

とくに脳梗塞や脳出血では発症から治療開始までの時間が治療効果に影響するため、医療機関の受診が重要です。

ウェルニッケ失語症の症状でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、ウェルニッケ失語症の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。

再生医療は幹細胞を用いた治療のひとつで、脳機能回復を目指した研究が進められています。リハビリとの併用による相乗効果が期待されています。

ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。

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ウェルニッケ失語症に関するよくある質問

ウェルニッケ失語症は完治しますか?

ウェルニッケ失語症では、障害された部位や範囲によっては、元の状態までの回復が難しい場合もありますが、早期から言語リハビリテーションを行うことで、会話能力の改善が期待できます。

とくに発症後2週間で自然回復が最大となり、12カ月で約40%の改善が見込まれると報告されています。

言語聴覚士による訓練を継続することで日常会話が可能になる例もみられますが、症状や損傷範囲には個人差があります。そのため、再発予防や家族のコミュニケーション支援を含めた長期的な取り組みが大切です。

ウェルニッケ失語症の平均寿命は?

ウェルニッケ失語症そのものに特有の平均寿命は示されていません。

ただし、脳卒中により失語症を発症した患者は、失語のない患者と比較して死亡率が高く、機能回復率が低いとする報告があります。文献12

一方で、適切なリハビリテーションや支援、合併症の管理を継続することで、長期にわたり生活機能を維持できる可能性があります。

これらは寿命そのものを示すものではなく、予後や生活の質に関する指標として理解することが大切です。

ウェルニッケ失語症の家族との向き合い方を教えてください

ウェルニッケ失語症の方を支える際は、失語が言語の障害であり、人格や知性が変わるわけではないことを理解し、尊重した関わりが重要です。

伝える際は短くゆっくり話し、簡単な言葉やジェスチャー、絵カードを併用すると意思疎通がしやすくなります。

質問は「はい・いいえ」や選択式が有効です。返答に時間がかかるため急かさず、静かな環境で落ち着いてやり取りをしましょう。

絵や筆談などの補助手段を活用し、判断や意思決定は可能な範囲でご本人に任せることで自立性を支えられます。また、ご家族自身も専門家や支援団体を利用し、負担を軽減することが大切です。

ウェルニッケ失語症と診断された際に受けられる助成制度はありますか?

ウェルニッケ失語症は、条件を満たす場合に身体障害者手帳(音声・言語機能障害)の対象となります。また、障害者総合支援法や介護保険制度に基づき、補装具・福祉用具の助成や意思疎通支援などを利用できる場合があります。

ウェルニッケ失語症で利用できる主な助成制度は以下です。

制度名 内容 申請先・対象
身体障害者手帳 3・4級で医療費助成、税制上の優遇措置、コミュニケーション機器の給付 市区町村窓口
障害者総合支援法 補装具(意思伝達装置)・日常生活用具(AAC機器)の支給・貸与 市区町村窓口
介護保険 福祉用具貸与、訪問リハビリ、言語支援機器の利用 要介護認定者
意思疎通支援事業 支援者派遣、道具や絵を用いたコミュニケーション支援(無料) 市区町村(地域生活支援事業)
障害年金・就労支援 障害基礎年金、就労移行支援、復職時の配慮 年金事務所・支援機関

文献13)(文献14

制度は自治体によって異なります。具体的な利用条件や手続きについてはお住まいの自治体に相談しましょう。

参考文献

(文献1)

Wernicke’s Aphasia (Receptive Aphasia)|Cleveland Clinic logo

(文献2)

Wernicke’s Aphasia|the Aphasia library

(文献3)

失語の種類|MSDマニュアルプロフェッショナル版

(文献4)

失語症|社会福祉法人恩賜財団済生会

(文献5)

失語|MSDマニュアルプロフェッショナル版

(文献6)

脳卒中の再発予防|脳卒中療養支援シリーズ

(文献7)

Early Aphasia Rehabilitation Is Associated With Functional Reactivation of the Left Inferior Frontal Gyrus: A Pilot Study|Go to homepage

(文献8)

Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed®

(文献9)

Ⅶ.リハビリテーション

(文献10)

Speech and language therapy for aphasia following stroke|pubMed®

(文献11)

失語症者の家族から見た失語症状の認識に関する検討|川崎医療福祉学会誌

(文献12)

Epidemiology of Aphasia Attributable to First Ischemic Stroke: Incidence, Severity, Fluency, Etiology, and Thrombolysis|American HeartAssociation.

(文献13)

障害者支援機器の活用ガイドブック|障害者自立支援機器の活用のための支援体制構築の活性化に向けた調査研究

(文献14)

厚生労働省|意思疎通支援