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CM関節症は、50歳以上やゴルフなどの運動をする方、女性によくみられる疾患です。親指の根本にある「CM関節」の使いすぎや加齢による変性が関係しています。 瓶やペットボトルのふたを開けたり、ボタンを閉めたりと、親指に力を入れた動作をすると「親指と人差し指の間あたりが痛い」と感じます。日常生活の質に影響する痛みなので、早めに解消したいと考える方は多いでしょう。 そこで本記事では、CM関節症の原因や症状を解説するとともに、治療法や筋肉のほぐし方などについて詳しくご紹介します。 親指と人差し指の間が痛いときに考えられるCM関節症とは? CM関節症とは、親指の根本にある「CM関節」の使い過ぎや加齢により変性し、痛みや腫れ、さらには亜脱臼などの症状を引き起こす疾患です。 「CM関節」は、母指(親指)の根本の骨である第1中手骨と、手首の小さい骨である大菱形骨の間に存在している関節をいいます。 母指が他の指と対立運動(つまみ動作)ができるのは、このCM関節の役割が大きくかかわっています。「握る」「つまむ」などの動作を行う際に負担がかかる部位を「CM関節」と覚えておきましょう。 ただ「握る」「つまむ」などの動作は、けして特別なものではなく、日常生活においても比較的多く行われる動作のため、CM関節には常に負担が掛かり続けていると言えるのです。そのため、関節をスムーズに動かしたり、衝撃を和らげるクッションの役割を果たす軟骨がすり減ったりすることで関節の腫れや亜脱臼などが生じることとなり、これが「CM関節症」といわれます。 CM関節症で考えられる8つの症状 CM関節症の場合、母指(親指)に力を入れた動作をした際、手首の母指の付け根付近に痛みが生じます。主に痛みが生じる場面は下記8つのとおりです。 瓶やペットボトルのふたを開ける ホッチキス・ハサミ使用時 タオルを絞る ドアのノブを回す 字を書く 草むしり 布団を挙げる ボタンをかける また、症状が進行すると、手首の母指の付け根付近が腫れて膨らんできて母指を開くことが難しくなります。場合によっては、関節が変形して親指の指先の関節が曲がり、付け根の関節が反る「白鳥の首変形(スワンネック変形)」になる可能性もあります。 CM関節症のステージごとの症状 CM関節症の症状は、ステージごとに区分され以下のように細かく分類されています。 stage1 レントゲン上での問題はみられない stage2 関節の隙間が少し狭くなり、骨硬化が少しみられる stage3 関節に隙間がほとんどなくなり、骨硬化や骨棘がみられる stage4 完全に関節の隙間がなくなり、骨棘の形成もみられる。 一般的にstage1・2は保存療法、stage3・4は重症になり手術の検討が必要となります。 ただ、必ずしもレントゲン上の結果と一致しないため、最初はサポーターなどの装具、テーピング、リハビリなどの手術以外の選択肢で治療を行うこともあります。 CM関節症の原因 CM関節症を生じる主な原因は、加齢・ホルモンバランスの変化・関節の変形です。それ以外にも、過去に母指に受けた外傷・怪我も原因になりえます。 CM関節が正常の場合は、軟骨がしっかり骨を覆っており、スムーズな曲げ伸ばしや、クッション性も豊かです。しかしCM関節症の場合、軟骨がすり減ってしまった結果、骨と骨同士がぶつかり合い、関節への負担が生じることとなります。 一般的には下記の因子(原因)が当てはまる人はCM関節症になりやすいと推測されます。 女性 肥満 40歳以上 靭帯のゆるみなどの遺伝 親指周囲の骨折など過去の外傷や怪我 スポーツや労働で親指に強い負担が、かかっている状況 CM関節症の治療方法 CM関節症の治療法は大きく下記の4つに分けられます。 保存療法:テーピング・サポーターなどの装具治療・リハビリ 薬物療法:消炎鎮痛剤・痛み止め・注射によるステロイド製剤 手術療法:関節形成術・骨切り術・靭帯再建術 再生医療:幹細胞の投与 CM関節症は、まず保存治療を実施します。テーピング・サポーターなどの装具治療、リハビリをしっかり行うだけで症状の改善がみられる場合がほとんどです。 装具治療は、手の状態に合わせて取り外し可能な装具を作成し、症状が軽い場合は、寝るときに装具を付けて過ごすだけで数週間後には痛みが軽減する場合もあります。装具治療でも痛みが軽減しない場合は、消炎鎮痛剤の内服・注射治療を実施します。 保存療法や薬物療法を実施しても症状が改善しない場合は、手術による治療法も選択の1つとしなければなりません。手術の内容は「関節形成術」「骨切り術」「靭帯再建術」の3つ方法が主要となり、どの手術後も一定期間の固定が必要なため、母指を正常に使えるようになるまでに長い期間を要することがデメリットとなります。 ただし、手術を必要としない方法として、再生医療による幹細胞の投与が挙げられます。関節の軟骨がすり減っている部分などに、幹細胞を投与することでCM関節症の改善が期待できるのです。実際に痛みが10分の2まで軽減された事例もあり、下記の動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 CM関節症による筋肉への影響とほぐし方 手には多くの筋肉が存在するため、CM関節症になると、さまざまな筋肉に影響が出ます。今回はその中でも主要な筋肉のほぐし方について解説します。 第一背側骨間筋 背側骨間筋は、第1中手骨(親指)と第2中手骨(人差し指)の間にある筋で、親指を内側(手のひら側)に曲げたときに背側へ盛り上がってくる筋です。 この筋肉が緊張すると、痛みが出る・指がこわばる・力が入りにくくなります。また、中手骨の間にも走行するため、場合によって、神経が圧迫されて、しびれの原因にもなります。 背側骨間筋のほぐし方は下記のとおりです。 ほぐす側の手の平を台に置いて安定させる 手の甲を上に向ける 逆側の手で第1中手骨と第2中手骨の間に指を入れる 親指と人差し指の間の筋をつかむ 押さえるように、ほぐしましょう。 母指対立筋 母指(親指)を動かす筋は全部で4つあり、そのうち、短母指屈筋・短母指外転筋・母子対立筋の3つの筋で親指の付け根の膨らみである母指球を形成しています。 母指対立筋は短母指屈筋と短母指外転筋に覆われており、親指を手の平に近づける作用である対立運動に関与します。母指対立筋のほぐし方は下記のとおりです。 ほぐす側の手の平を上に向けて指を広げる 反対側の手で母指を握る 母指CM(親指の根本)を手のひらとは反対側、手の甲側へ伸ばす まとめ|親指と人差し指の間が痛いと感じたら医師に相談を! 本記事では、親指と人差し指の間が痛いときに考えられる「CM関節症」の症状や治療法について詳しく解説しました。 CM関節症は、50歳以上の人に多く見られる疾患で、親指の根元に位置するCM関節の軟骨がすり減ることにより発症します。主な原因は加齢・ホルモンバランスの変化・関節の変形・過去に親指に受けた外傷や怪我の影響とお伝えしました。 「握る」や「つまむ」などの日常的な動作で親指に負担がかかり、痛みや腫れを引き起こす疾患です。日常生活の質を大きく左右するため、早期発見と適切な治療が欠かせません。親指と人差し指の間に痛みが少しでもあれば、我慢せず自己判断を避け、専門医の診断とアドバイスを受けることが重要です。 当院「リペアセルクリニック」は、手術を必要としない再生医療を得意としており、CM関節症の治療もしていますので、まずはお気軽にご相談ください。 >>リペアセルクリニックにメール相談してみる
2022.01.10 -
- 手部
- ヘバーデン結節
「最近の指の腫れの原因は、ヘバーデン結節かも」 「ヘバーデン結節は治療できるのかな…」 このようなお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか? ヘバーデン結節は、更年期以降の女性を中心に多く見られる症状で、指の第一関節に痛みや変形が生じる疾患です。 治療法としては、痛みを和らげる保存療法や生活習慣の見直し、場合によっては手術など、症状の進行度に応じた対策があります。また、治療による体の負担が少ないため、入院が必要のない治療法、再生医療もご紹介します。 本記事では、ヘバーデン結節の治療法について詳しく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 ヘバーデン結節の治療法5選 ヘバーデン結節の治療は、症状の段階や生活の状況によって異なります。主な治療法は以下の5つです。 局所安静 薬物療法 マッサージ 手術 再生医療 1つずつ詳しく見ていきましょう。 局所安静|テーピングや金属製リングの使用 へバーデン結節の症状を落ち着かせるには、日常的に指先への過度な負担を避けることが大切です。 とくに炎症が強いときは患部を冷却して、テーピングや金属製リングなどの装具で関節を固定すると良いでしょう。 指を安静に保てば痛みが和らぎやすくなります。 腫れや熱感が続いているときは無理をしてはいけません。 指先を酷使する仕事や趣味を控え、痛みが落ち着いたら医療機関での診察を検討するのも1つの選択肢です。 薬物療法|漢方や消炎鎮痛剤の服用 指の痛みが顕著なときには、漢方や消炎鎮痛剤などを使う薬物療法が検討されます。 以下に薬物療法で使用される代表的な薬物をまとめました。 医薬品 目的 効果 内服薬(漢方や消炎鎮痛剤など) 炎症を抑え、痛みを和らげる 指の腫れや痛みの軽減 外用薬(湿布や塗り薬など) 患部に直接アプローチし、局所的に炎症や痛みを抑える 患部の消炎鎮痛作用 使用部位の血行促進や腫れの軽減 ステロイド注射 強い炎症や痛みを即時的かつ集中的に抑える 強力な抗炎症作用による痛みの軽減 薬物には副作用が見られるものもあります。たとえば、ステロイド注射による副作用は、注射部位の痛み・腫れや血糖値の上昇などです。 薬を使う際は、自己判断で続けるのではなく、定期的に医療機関を受診し、処方内容の再検討や症状の変化を診察してもらいましょう。 こうした薬物療法は他のアプローチと合わせて活用し、日常生活の負担の軽減に役立ちます。 軽いマッサージ|炎症や痛みがないときに実施 へバーデン結節の痛みや腫れが和らいだタイミングであれば、軽いマッサージを試すことも1つの方法です。 手先をほぐすようにさする程度であれば、血行を促して関節の動きを保ちやすくなります。 ただし、炎症が続いている段階で実施したり、指圧を強めすぎたりすれば逆効果となるため、痛みがないときに実施 自己流で無理しないようにしてください。あくまで補助的なケアとして取り入れ、違和感があるときは医療機関に相談すると安心です。 手術|コブの切除や関節固定 保存的な治療で改善が見られず、変形が著しく日常動作に支障が出る場合は、手術を検討することがあります。 以下はへバーデン結節の代表的な2つの手術です。 手術 手術内容 コブの切除 指の第一関節にできた骨性のこぶを切除する手術 関節固定 指の第一関節を固定する手術 こぶの切除は痛みや変形の進行の軽減、外見上の改善は期待できますが、手術によっては可動域が制限されます。 一方で、関節固定は可動域は制限されますが、痛みの軽減と変形の進行を抑える効果が期待できます。 どちらの術式も手術後は固定具の装着やリハビリが必要となるため、手術前に医師と十分に話し合って理解を深めましょう。 再生医療|自分の細胞を活用する新しい治療法 へバーデン結節に対しては、再生医療による治療も選択肢の一つです。 再生医療には、幹細胞治療と呼ばれる治療があります。 幹細胞とは、さまざまな細胞へ変化する可能性を持つ細胞です。自己脂肪や骨髄などから幹細胞を採取し、培養して数を増やしてから再び注射で体内に戻します。 自分自身の細胞を利用するため、拒絶反応が起こりにくい点が特徴です。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」へお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ ヘバーデン結節を治療せず放置するとどうなるのか? ヘバーデン結節を長期間放置すると、以下のような可能性があります。 骨の変形が進み元に戻りにくくなる 変形した状態で固定かし外見が気になる 指の動きが制限され日常生活に支障が出る こうした事態を避けるためにも、違和感を抱いた段階で医療機関を受診し、適切な治療のタイミングを逃さないように心がけましょう。 まとめ|ヘバーデン結節の治療法を知って自分にあった方法を選択しよう へバーデン結節は、親指や人差し指から小指にかけて、第1関節が赤く腫れあがり、変形して曲がってしまう疾患です。 いまだ原因不明の疾患であり、放置すると指先が曲がったまま固まる恐れもあります。 治療法としては、安静や薬物療法、手術、再生医療などがあります。 痛みや指の動きの制限が気になる方は、一度医療機関を受診し、自分に合った治療を試してみると良いでしょう。 再生医療について詳しくは、当院リペアセルクリニックにお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ ヘバーデン結節の治療に関するよくある質問 ヘバーデン結節は治りますか? へバーデン結節は、すり減った骨そのものを完全に元の状態へ取り戻すことが難しいといわれています。 現在、医療の分野ではさまざまな治療アプローチが研究されています。その選択肢の一つが再生医療です。 当院「リペアセルクリニック」では、主に脂肪由来の幹細胞治療とPRP療法の二つの治療法を提供しています。 ヘバーデン結節の治療について詳しく知りたい方は、無料のメール相談を承っているので、ぜひご活用ください。 ヘバーデン結節の人がやってはいけないことを教えてください 以下にヘバーデン結節の人がやってはいけないことと、その理由をまとめました。 やってはいけないこと 理由 指先に負荷をかける作業 (例:固いものをハサミや包丁で切る、ペットボトルなどの容器を強く握っての開け閉めなど) 炎症や腫れがある箇所を無理に温めると、血行が過剰に促進されて腫れが増幅する恐れがある 強い圧力をかけるマッサージ 患部への刺激が大きく、かえって痛みを悪化させる可能性がある 重い物を持つ習慣 患部へ大きな負担がかかり、炎症や痛みを悪化させたり、関節の変形を進行させたりする可能性がある 指を酷使する活動 (例:スマートフォンの長時間使用) 同じ動作が反復されて、痛みや炎症が慢性化しやすくなる これらはすべて関節に負担のかかる動作です。いずれの動作も痛みの増強や関節の変形を助長するため、患部に強い負荷をかける行動や習慣は控えましょう。 コーヒーを良く飲む人はヘバーデン結節になりやすいですか? コーヒーの摂取とヘバーデン結節の発症リスクとの関係については、はっきりした医学的根拠がないとされています。 ただし、コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させる作用があり、血液のめぐりが悪くなると炎症のある部位の痛みが強まる恐れは否定できません。 とはいえ、適度な量のコーヒーが直接ヘバーデン結節を引き起こすという可能性は低く、飲みすぎに注意する程度で十分です。 もしコーヒーを飲むたび指の違和感が強まるようであれば、一度控えてみて症状の変化を確認することも選択肢の1つです。最終的には個人差があるため、不安がある方は食習慣を含めて医療機関で相談してみましょう。
2022.01.10 -
- 肘関節
- 関節リウマチ
- ひざ関節
- 股関節
- 肩関節
- 手部
- 足部
人工関節の手術を受ける場合に知っておくべき安全性と危険性を解説 股関節、膝関節、肘関節、指関節、足関節における関節疾患の多くは比較的ゆっくりと症状が進行するため、本人は症状に苦しんでいるにもかかわらず、ただ単に年齢によるものというだけで見過ごされてしまうことが往々にしてあります。 ところが、知らず知らずのうちに病気の進行が悪化してしまうと、関節患部に強い痛みや熱感を自覚して、日常生活において歩く、座る、投げる、持つ、立つなどの基本的な動作能力が低下して必要な動きが制限されてくる恐れがあることをご存知でしょうか。 このような関節の症状が出たのちに、保存療法等、種々の治療を繰り返しても元には戻りにくく、徐々に症状は進行します。そして、最終的に提案されるのが手術療法になります。 人工関節置換術 この手術が「人工関節置換術」として知られているものです。この手術は、読んで字のごとく、疾患によって悪くなって異常がある関節部分を取り除いたのちに、人工の関節に置き換える手術です。 例えば変形性膝関節症や、関節リウマチなど膝関節疾患を治療する際には、その代表的な手術療法のひとつとして人工膝関節置換術が挙げられるという具合です。 人工関節の置換術が可能な部位は膝関節や股関節、肩関節、手関節、手指関節、足関節、肘関節となっていて、置換える人工関節そのものも年々進歩しています。 材料的には主としてチタン合金、コバルトクロム合金、セラミック、ポリエチレンなどで構成されています。 人工関節置換術は、関節の疾患がもとになって起こっている疼痛の原因となっている部分を取り除くことを主眼としているため、他の治療法と違って、患者さんの慢性的症状である痛みを和らげる効果を期待するものです。 そこで今回は、そのような人工関節の手術に関して知っておきたい安全性と危険性について解説したいと思います。 人工関節置換術 治療可能部位 材料 膝関節や股関節、肩関節、手関節、手指関節、足関節、肘関節 チタン合金、コバルトクロム合金、セラミック、ポリエチレン 人工関節の手術|安全性について 人工関節置換術という手術療法は、各種の関節症、例えば変形性関節症や関節リウマチを患われている患者様に対して関節の痛みを緩和して日常生活をより快適に送れる事を目的とする治療手段として普及しています。 今や各種の関節症に対する人口関節置換手術でのアプローチは年間に約20万例前後という件数が報告されるまでになりました。このように比較的メジャーになってきた人工関節の手術は、術式としては確立されていて、置換える人工物の素材も進歩を遂げています。 ただし、手術を安全に確実に実践するためには、当たり前のことながら整形外科の専門医を始めとして、医療従事者の専門性が問われ、人工関節の特性や、軟骨などの組織が破綻するメカニズムに対する知識が不可欠です。 これら関節の再建方法などについて熟知している専門性が大切であり、これまでの経験、知見、熟練の度合いが手術に影響するとされています。 また、人工関節置換術においては、言うまでもありませんが手術そのものの安全性を高く施行するだけでなく、術前や術後における全身管理や、術後の安定した段階で早期に、個人に沿ったリハビリテーションを計画し、適切に行えることが非常に重要です。 これらの人工関節手術を安心して受けるためには、術後の体制、いわゆる人工関節の緩み、異物感染、関節脱臼やインプラント周囲組織の骨折を含めた様々な合併症が起こった際に迅速かつ、確実に対応できる医療体制の存在、あり方が必要不可欠です。 また術後のリハビリテーションに関しては、術前に担当の看護師や理学療法士などのリハビリの専門部門が積極的に患者さんに接触し、術後の早期に状態を見極めながら関節機能を中心とした全身状態の改善を目指さなければなりません。 万が一にもリハビリテーションが予定とは異なり順調に進まない時には、自宅への退院とは別途、リハビリ専門施設へ転院するような連携調整、あるいは自宅退院後の各種生活支援についてメディカルソーシャルワーカーに相談する必要があるでしょう。 このように「人工関節の安全性」は、専門性、術前、術後、リハビリなどをすべて含めて判断すべきだと考えます。 安全性は、総合的に判断 専門医(経験、知見、習熟度) 術前の全身管理 術後の対応、フォロー リハビリ計画 人工関節の手術|危険性について 人工関節置換術は、疼痛症状を緩和して関節の機能の回復を望める手術である一方、関節以外の他手術と同様に一般的なリスクとして、全身麻酔に伴う合併症や、深部静脈血栓症および肺塞栓症の発症、あるいは輸血に関する問題点などがあります。 また、人工物や手術部分の感染、患部周辺の血管や骨組織、神経などの二次的な損傷、あるいは手術中における予測不能なことがが引き起こされる懸念も考えられます。 そして、人工関節手術の術直後においては傷口の疼痛が非常に強いことが懸念されており、関節部の機能回復を阻害するのみならず、手術を受けた患者さんの満足度とも直接的に関連すると言われています。 他にも心配なのは、人工関節の耐久性です。人工物ですので永久に使えるものではないからです。いつまで使えるかということに関しては、患者さん自身の生活背景などの使い方にもよりますが概ね15年前後であると考えられています。 人生100歳時代の現代、耐久性という面から、将来に人工関節を入れかえるため、再手術の可能性があることを知っておくべきです。その際は、年齢的にも術式的にも、あらゆる面で最初より、難しさがが増す可能性があります。 従来、人工関節置換術は、およそ60歳以上の高齢者を中心に適応がある手術とされてきましたが、近年では個々の価値観やクオリティ・オブ・ライフ/QOL(*)が尊重される時代となり、2回目の手術を勘案して50歳前後でもより快適な人生を過ごすために本手術を選択される方もいらっしゃいます。 (*)QOL/生活の質や人生の質などのこと 治療を受ける患者さんの肉体的なことはもちろん、精神的なことや社会的、そして経済的など、すべてを含んだ生活の質を指す言葉です。 今回の場合では手術そのものや、その後の副作用などでリハビリを行っても手術前と同じようには生活できなくなる危険性あります。 そのことを理解した上で手術の利点と危険性に関して医師とよく相談し、リハビリも含めた治療内容全般にわたって理解するようにしましょう。そして、家族や周りの理解や、協力を得られるよう相談し、慎重に決定されることをお勧めします。 最後に手術を選択した場合の入院期間について、概ね1か月は最低必要で、年齢的なものや、術後の状態により2か月~必要な場合もあるため、日程的な融通が必要な手術です。 今回は、人工関節への置換手術について不安を感じておられる方への術前のアドバイスとして記してまいりましたが、治療法としては、「再生医療」という先端医療分野があることも知っておきましょう。 その特徴は、手術も入院も不要という治療方法で自分の自己治癒力を引き出す最先端医療です。興味がある方は、お問い合わせください。いずれにしましても先生と話し合って、聞きたいことを聞き、納得して進んでください。 まとめ・人工関節の手術で知っておくべき安全性と危険性 股関節や膝関節は、下半身の体重を支えながら日常生活で立つ、歩くなどの基本的動作を実践するうえで極めて重要な関節です。肩関節や肘関節が障害を受けると荷物が持てないなど非常に支障をきたして日常生活が大変不便になります。 その意味でも日々の健康を保ち快適な暮らしを送り続けるためにも、関節に負担の少ない優しい生活を過ごすように意識しましょう。 仮に関節症の疾患で、人工関節置換術を勧められた場合は、選択肢としてこちらの記事で記したような将来の再手術の可能性、手術そのものの危険性や、入院期間が長くなるといった手術であること知ったうえで臨んでください。 リスクは、どのような手術であっても伴うものです。ただ、上手くいけば関節の痛みが緩和されて、関節の機能が元通りに再生されるのみならず、普段の歩き方や、身体のバランスを整備することが可能な治療法です。 これからの時代、健康寿命を延伸して自分らしい快適な生活を営むためにも、関節疾患は、放置することなく、治療方法について整形外科の専門医もしくは専門院を受診して相談されるこをお勧めします。 安全性 術式としては確立 多様な部位に対応 素材の進歩 危険性/リスクを理解 クオリティ オブ ライフ 専門医の相談、納得感 家族の理解、支え 人工関節の耐久性 → 年齢から再手術の可能性を念頭に 長期入院 → 1か月~2か月 リハビリ → 長期計画 手術としての危険性(合併症、その他) 手術部位の疼痛 以上、人工関節手術に関する安全性と危険性について記しました。今回の記事、情報が少しでも参考になれば幸いです。
2021.12.20 -
- ひざ関節
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- PRP治療
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PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 「再生医療」という先端医療をご存知でしょうか?近代になって研究室での実験から、医療の現場で実施されるまでに至ってきた医療分野です。 いわゆる再生医療とは、怪我や病気によって低下あるいは喪失した生体機能を従来の医療方法では違うアプローチで治療する方法です。人為的に加工や培養して作製した細胞や組織などを用いて人体に元来備わっている修復能力を増大させて症状を改善させることが出来る可能性を秘めた未来的な治療方法です。 一昔前ならSFの世界、まともに語っていたなら「夢でも見てるの」かと夢物語にされかねない非現実的な医療でした。このような非現実的な治療方法であるだけに、実際にその治療を受けることが可能だとは、ほとんどの方がご存知ないのではないでしょうか。 それもそのはず現場の医師でさえ詳細を知る方は、まだまだ少ないのが現実なんです。そこで再生医療とは、どんな治療方法なのでしょうか? 今回は、PRP療法とAPS療法の比違いについて、比較を交えてお話しさえて頂きます。 そもそも私たちの血液中には、赤血球や白血球、あるいは血小板と呼ばれる成分が含まれていることはご存知ですね。これらの成分には、それぞれに特化した役割が存在しています。 その中でも血小板は外傷によって皮膚表面が傷ついた場合や、関節捻挫、あるいは筋肉打撲などで負傷をした際に損傷部位を治癒させる働きを有しています。つまり、自己治癒力です!傷ついたり、痛んだりした組織を自動で修復してしまう!すごい機能です。 このような働きができるのは血小板の中に含まれて、傷んだ組織部位を治す「成長因子」と呼ばれる成分のお陰お陰です。それが今回、ご紹介するAPS療法の基礎となるものです。 PRP療法とAPS療法 血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」は、昨今の再生医療の分野で大変着目されており、英語表記でPlatelet Rich Plasma(略して以下、PRP)と呼称されているものです。 さらに、Autologous Protein Solution(略して以下、APS)を用いた療法は、自己タンパク溶液として、前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したものです。このAPS治療は、目下のところ慢性的な膝関節等の疼痛に対する再生医療という新たな最先端治療として注目されているものなのです。 今回は、再生医療の新人!APS療法について解説していきましょう。 [再生医療] PRPとAPSの比較 自己多血小板血漿、注入療法とも呼ばれるPRP療法については聞き覚えのない馴染みが薄い治療法に感じられるかもしれませんね。しかし、実のところ海外においては10年以上の使用実績がある方法なのです。 ケガなど、傷ついた部位の修復に作用する血小板に含まれる成長因子を取り出すPRP療法は、私たちがもっている治癒能力や組織の修復能力、再生能力を引き出すという目的があります。 それに対してAPS治療は、患者様自身の血液成分から特殊な専用医療機器を用いてAPS成分のみを抽出します。 このAPSの抽出方法は、基本的にPRPそのものを更に遠心分離器を活用して特殊加工することによって、炎症を抑制する役割を有したタンパク質と軟骨を保護して損傷を改善させる「成長因子」を高濃度に抽出したものになります。 このような抽出背景から「APS」は、まさに「次世代型のPRP」とも表現されることがあります。 抽出したAPSを関節内などの疼痛部位に向けて成分を注射することによって関節部の疼痛や炎症の軽減のみならず、軟骨の変性進行や組織破壊を抑制することが期待されるものです。 APS治療は、現在のところ、まだ「変形性膝関節症」に痛みなどを対象疾患を限定して使用されている段階ですが、これまでのPRP治療でも難渋していた患部改善にも一定の効果を示すことが徐々に判明してきています。 尚、APS療法では患者さんご自身の血液を基準にして作るために異物免疫反応が引き起こされる可能性は極めて低確率であると考えられています。 また、本治療はPRPと同じく、手技的に採血操作と注射投与だけですので、手術などのように患者さんの身体的な負担も大幅に少なくて済むという特徴があります。 PRP療法とAPS療法の比較 ・PRP療法 「PRP療法」は血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」Platelet Rich Plasmaを略したもので、自己血液から血小板を取り出し、それを患部に注入する治療法です。 血小板には成長因子が豊富に含まれており、これらの成長因子が治癒を促進する働きがあります。具体的には、炎症を抑え、組織再生を刺激し、細胞の増殖と修復を促進します。主に関節炎や腱や靭帯の損傷、筋肉の損傷などに使用されます。 ・APS療法 「APS療法」は、Autologous Protein Solutionを略したものです。前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したもので抗炎症性のサイトカインとよばれるタンパク質と関節を健康に保つ成長因子を高濃度で取り出した⾃⼰タンパク質溶液を患部に注入する治療方法です。 再生させるという観点ではなく、現在のところ、関節内で痛みを引き起こすたんぱく質の活動を低下させることから症状緩和に焦点を当てた特化的治療といえるものです。 APS療法で期待できる効果や、実際の治療法 さて、ここからは変形性膝関節症に対してAPS療法で期待できる効果や実際の治療法などについて紹介しましょう。 ご注意頂きたいのは、APS療法は、再生医療ではありますが自己の血液から抗炎症成分のみを濃縮して抽出したあと、関節内に注射することで関節の軟骨を修復し、再生させるという観点ではなく、膝痛の症状緩和に焦点を当てた特化的治療であることです。 膝の変形性関節症では、疾患が進行することによって「半月板の損傷」や、「靭帯のゆるみ」など膝関節のバランスが崩れることで軟骨がすり減り、膝関節が変形して発症します。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水が溜まることがあります。 従来、治療としては繰り返し鎮痛剤を内服することや、ヒアルロン酸を関節内に注入するなどが代表的な治療法でした。しかし、鎮痛剤を飲み続ける是非や、ヒアルロン酸の効果が期待できなくなった変形性膝関節症の患者様の中には、このAPS治療によって症状が幾ばくかの改善を示すケースがあることが分かってきたのです。 一般的にAPS治療では、投与してからおよそ1週間から1か月程度で患部組織の修復が起こり始めて、だいたい治療してから約2週間から3ヶ月前後までには一定の効果が期待できると言われています。 海外のAPS治療に関する報告例では、APSを一回注射するだけで、最大約24ヶ月間にもわたって痛みに対する改善効果が継続するとの実例も紹介されていました。ただし、これは一例で実際の治療効果や症状が改善する持続期間に関しては、患者さんの疾患の程度、条件によって様々、個人差があり変化することをご理解ください。 また、このAPS治療は、PRPと同じく、患者さん自身の血液を活用して生成するために、通常ではアレルギー反応や免疫学的な拒絶反応は出現しないと考えられている点も良いい面でのポイントです。 APS治療の手順 1)まず約50~60mlの血液を採取 2)厚生労働省が認めている特殊な技術で処理し、血小板成分を濃縮したPRPを抽出 2)精製されたPRP物質をさらに濃縮してAPSを抽出 こうして抽出した後、痛みを自覚されている関節部位に超音波エコー画像を見ながらAPS成分を注射して投与する まとめ・PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療です。 そして、昨今特に注目されているAPS治療では、先のPRPを更に濃縮。このAPS成分を患部に注射投与してから平均しておよそ1週間から1か月程度で組織修復が促進されて更には疼痛緩和に繋がる可能性があります。 なおAPS治療を現実的に受けた当日は、入浴や飲酒、あるいは喫煙、また激しい運動やマッサージなどは出来る限り回避するように意識しましょう。 APS注射直後には、個人差はあるものの一時的に痛みや腫脹、発赤などの症状が出ることがありますが、疼痛があるために関節部位を全く動かさないと逆効果になってしまうこともあります。 ここのあたり治療後の行動については、くれぐれも十分に主治医と相談するようにしましょう。また現段階では、このAPS治療は保険適応外であり自費負担になります。 費用は、それぞれの対象医療施設や治療適応となる患部箇所などによって異なりますので、この治療法をもっと知りたい方は私どもほか、専門の外来へお問い合わせされることをお勧めします。 このAPS療法のほかにも再生医療として、私どもが推進する「幹細胞治療」という関節部分の軟骨を自己治癒力を用いて再生させるという正に未来的な治療法も存在し、この分野から目が離せません。 いずれにせよ関節に問題があって、「後は手術しかないと」言われた方は再生医療をご検討されてはいかがでしょうか。私たちは再生医療の幹細胞治療で1,600例を超える豊富な症例を有しています。いつでもご相談ください。 以上、PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法について記させていただきました。 ▼ PRP療法をさらい詳しく PRPを使った再生医療は、人間が持つ自然治癒力を活かして治療する先端医療です
2021.10.20 -
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「グルコサミンとコンドロイチンの違いは?」 「グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントに副作用はある?」 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 ただ、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントによる摂取は、研究結果によると、残念ながら痛みが軽減したエビデンスは少ないのが実情です。 今回はグルコサミンとコンドロイチンの違いを始め、サプリメントの摂取による副作用などを解説します。 思い込みによって効果を感じるプラセボ効果についても解説するので、これからサプリメントの摂取を検討されている方は参考にしてみてください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いとは? グルコサミンは、アミノ糖の一種で軟骨を始め、爪や皮膚などに分布しています。 一方、コンドロイチンは、ムコ多糖と呼ばれており、グルコサミンなどのアミノ糖が連なってできた多糖体です。 どちらも体内で自然に生成される成分、関節を構成する成分として有名です。 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 関節内では、コンドロイチンはプロテオグリカンと呼ばれ、軟骨の構成成分としてクッションのような役割を果たし、骨と骨が接触しないよう保護してくれています。 膝・腰・肩などの関節が痛む原因 膝や腰、肩の痛みは多くの場合、加齢によるものが原因です。残念なことに体の機能は、年齢を重ねるにつれて徐々に衰えます。 グルコサミンやコンドロイチンといった体内で生成される成分も、加齢で生産率は減少していき、関節内の柔軟性や弾力性がしだいに失われます。 関節を構成する成分が減ってしまうと脆くなり、軟骨がすり減って骨がぶつかり合い、周辺の神経に伝わって痛みが出てくるのです。 たとえば、重労働や激しい運動など、膝や腰、肩を使いすぎる行動を継続すると痛みの原因になります。 すでに症状があり、膝などの関節痛が治らない方は、根本的な治療を行うほうが良いケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みに関する再生医療の治療実績もございますので、まずはお気軽にメールや電話にてお問い合わせください。 グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは関節痛に効果がない 軟骨に豊富に含まれているグルコサミンやコンドロイチンは、サプリメントから補給する方法もありますが、実は関節痛には効果がないのがわかっています。 関節の痛みに効果がない理由として、口からの摂取による影響が考えられるでしょう。 消化器官を通過すると、グルコサミンやコンドロイチンの構成成分であるアミノ酸や糖質は、胃液などにより消化および分解されてしまいます。 そのまま体に吸収されるため、軟骨まで到達するとは考えにくいのです。また、軟骨には血管がほとんどなく、栄養として成分が直接届きにくいとされています。 一般的にイメージされるサプリメントの効果は、軟骨減少の改善を始め、膝や腰、肩の痛みにおける症状改善などがあげられます。 ただ、研究結果をみると、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントがもたらす効能は、科学的な根拠に乏しいのが実情です。 サプリメントの効果に関する研究論文【痛みが軽減したエビデンスは少ない】 米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が出資した主要な研究など、一部の研究によると、グルコサミンのサプリメントが痛みを軽減させたエビデンスは、ほとんどあるいはまったくありませんでした。 一部の研究発表では、コンドロイチンやグルコサミンなどの成分をサプリメントとして服用すると、膝や腰、肩の痛みを軽減する可能性があると示唆しています。 ただし、実際のところは「可能性レベル」であって、ほとんどの研究において「劇的な改善をもたらしたといえるほどの効果はない」と報告されています。 実際に大規模な研究結果でも、グルコサミンやコンドロイチンといった成分が関節の痛みに効果があるというエビデンスを示していません。 つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントが、痛みを軽減するのかは十分な証拠がない状況といえます。 関節痛にサプリメントが効くのは思い込み?プラセボ(プラシーボ)効果とは プラセボ(プラシーボ)効果とは、本来は薬としての効能がまったくない物質を摂取しているのにもかかわらず、効能が得られたと感じることです。 膝や関節に関わるグルコサミンやコンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などのサプリメントも、同様に思い込みで効果を実感している可能性もあります。 実際に摂取された方のなかには「痛みが軽くなった」「痛みが半減した」などの意見が上がっている製品もあるようです。 実際に利用者が、どの製品のサプリメントに効果があると感じたのかは正確にはわかりません。 ただ、サプリメントの摂取で、膝や関節への効果を感じている理由としては、プラセボ効果が関わっているのではないかと考えられています。 グルコサミンとコンドロイチンの服用における実験結果 アメリカの臨床研究では、関節痛などの問題を抱えている大勢の方に集まってもらい、2つのグループに分けてモニタリングを行いました。 片方のグループには、グルコサミンやコンドロイチンの「本物のサプリメント」を与えて、もう片方のグループには、まったく何の効果もない「偽のサプリメント」を与えました。 実際にそれぞれのグループに一定の期間服用させたところ、グルコサミンとコンドロイチンの成分が入っているかどうかにかかわらず、以下のような改善が見られたのです。 本物のサプリメントを与えたグループ ・症状の改善が見られた層がいた 偽のサプリメントを与えたグループ ・「痛みが緩和した」「痛みが改善した」 など症状の改善が見られた層がいた 上記はプラセボ効果によるもので、一種の「思い込みによる心理的な働き」と考えられています。 「グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは、摂取すると膝の痛みがとれる」といった情報から、思い込みやイメージなどにより、効いたように感じてしまうのです。 しかし、思い込みだとしても、実際に症状が良くなったと感じるなら、本人にとっては「痛みを改善する目的が達成できた」といった見方もできるかもしれません。 ただ、残念ながら結果が得られなければ、この記事を思い起こしていただければと思います。 グルコサミンとコンドロイチンの副作用 厚生労働省eJIMによると、グルコサミンとコンドロイチンのどちらも、3年間継続して摂取した場合、重篤な副作用は見られない結果でした。(文献1) ただ、本人の体における状態などを始め、服用している薬との飲み合わせによっては、何かしらの副作用が出る可能性もゼロではありません。 サプリメントの摂取を行うときは、必ず医療機関で医師や薬剤師などに問題がないかを確認してみてください。 まとめ|グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントが関節痛に効く可能性は低い グルコサミンやコンドロイチンは、体の軟骨成分に豊富に含まれている物質です。 医学的にはサプリメントで成分を補ったとしても、膝や肩などの関節に届く可能性は低く、痛みに効くとは言い切れないのが現状です。 ただ、今後の臨床研究により、なんらかの効能が見つかる可能性もあるかもしれません。 現在膝や肩などの関節痛に悩まされているなら、サプリメントに頼りすぎず、ぜひ整形外科を始めとした医療機関の受診をおすすめします。 痛みには思わぬ病気が隠れている場合もあるため、早期発見と早期治療が何よりの対処法です。 体の痛みや違和感といった症状を放置せず、しっかりとした診断に基づく治療を受けてみてください。 また、膝まわりの痛みに関しては、幹細胞を使った再生医療による治療方法もございます。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節症などの治療実績もございますので、関節に関わる症状がある方は、ぜひメールや電話からお悩みをご相談ください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いに関するQ&A グルコサミンとコンドロイチンの違いに関する質問と答えをまとめています。 Q.軟骨成分のプロテオグリカンは関節痛に効果があるの? A.食事やサプリメントによる効果は期待できないと考えられています。 ただ、運動によって血流が良くなると、細胞に栄養などが届きやすくなり、プロテオグリカンの増加が促進されるのがわかっています。 プロテオグリカンと関節痛に関する詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。 Q.コラーゲンのサプリメント・ドリンクは関節の違和感などに効果があるの? A.「低分子コラーゲン」「コラーゲンペプチド」と表記があるサプリメントやドリンクは、効果が期待できるかもしれません。 低分子化したものはコラーゲンペプチドとも呼ばれており、粒子が細かく腸壁で吸収されてから血液を通り、皮膚や骨、関節などの全身に届きます。 コラーゲンのサプリメントと関節痛との関わりについては、以下の記事も参考になります。 Q.グルコサミンやコンドロイチンを含む食べ物は? A.以下の食べ物に含まれています。 ・グルコサミン:カニやエビなど(甲殻類の殻) ・コンドロイチン:牛や豚などの軟骨、干しえび、きのこ類、山芋 など 栄養素は相互作用で働くので、偏らずにさまざまな食べ物をバランス良く摂取してみてください。 参考文献 文献1 厚生労働省eJIM|海外の情報 グルコサミンとコンドロイチン
2021.10.06