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【脳出血後の看護と介護】脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイント 「脳出血後のケアはどうしたらいい?」 「脳出血後の看護ケアと介護ケアについて知りたい。」 脳出血後は、患者とその家族の両方にとって突然人生が変わりかねず、どうすれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか? 脳出血後の患者はほとんどの場合、複数の薬や治療が必要になるため、リハビリの道のりは非常に長く、困難になる可能性が高くなります。 何よりも、脳出血後の患者の精神的、社会的な負担も計り知れません。元通りの生活に戻るには、看護師、介護士、友人、家族からのサポートが何よりも必要です。 そこで、今回の記事では、脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイントについて含めて説明します。 脳出血後は後遺症が残る 脳出血とは、高血圧などによる動脈硬化症による血管の破裂により、脳の実質内に血液が流出する状態です。脳出血は死亡率が高く、最も致命的な病気の 1 つになっています。 脳出血後は、多くの合併症に苦しむ可能性があり、主に以下のような後遺症を残します。 ・運動麻痺 右上下肢や左上下肢が動かなくなり、歩行困難になることもある ・感覚障害 触覚や痛覚などの感覚が鈍くなったり、逆に過敏になる ・視覚障害 視野が狭くなったり、物が二重に見えたりする ・失語症 言葉の理解が悪くなったり、単語が出づらくなる ・構音障害 ろれつが回りにくくなる ・半側空間無視 片側の空間認識ができなくなる ・嚥下障害 食べ物が飲み込みにくくなる これらは患者とその家族の両方に著しく影響を与える可能性があります。 脳出血後の看護ケアについて では、実際の看護ケアについて考えていきましょう。観察項目について説明していきます。 観察項目とは、治療の効果、患者への適応を判断するために行います。 看護ケアにおける7つの観察項目 看護ケアではどのような項目について観察するべきなのか解説していきます。 脳出血後の入院中は、特に意識レベル、血圧の管理などを厳密に管理します。 ①意識状態 Glasgow Coma Scale (GCS) やJCSを通じて意識状態を評価し、新たな神経学的徴候の出現を確認します。 ②呼吸 入院中の呼吸管理としては、患者の頭をわずかに上げた位置に保ち、酸素飽和度(SpO2)を監視します。 呼吸抑制がある場合、カニューレを装着したり、マスクを用いて酸素を投与するなどして、呼吸を補助します。 ③血圧と心拍数 血圧と心拍数を頻繁に検出しましょう。特に血圧のコントロールは、血管痙攣による虚血性の合併症を避けるために必要です。収縮期血圧140mmHg未満を目指しましょう。 ④電解質バランスの変化(輸液管理) 輸液などで毎日の電解質のバランスを保ち、時間ごとの利尿を監視し、多尿または乏尿があれば、必要に応じて輸液量を調整します。 ⑤口腔内衛生や姿勢、褥瘡管理 1日に数回、口腔内を丁寧に掃除してください。 褥瘡管理は頻繁に体位変換を行う必要があり、片麻痺側の持続時間は健康な側の持続時間よりも短くする必要があります。床ずれ対策(エアマット、枕)を行いましょう。 また、姿勢管理では麻痺した手足に特に注意を払い、正しい姿勢をとります。 ⑥嘔吐、吐物管理 脳出血後は、予期せぬ嘔吐が出現しやすくなります。 嘔吐の場合は、気道が確保できているか確認し、誤嚥による肺炎の発生を回避する必要があります。 ・側臥位にする ・口の中の異物を吐き出させ、分泌物を吸引する 素早い判断で適切な対処を行うことが、とても重要です。 ⑦発作や薬の管理 発作時には、医師の指示に従って、抗けいれん薬を投与し、定期的に気道の状態を評価します。 また、血管内治療を受けた患者は、再出血を防ぐ薬を継続する必要があり、看護師は薬を飲めているか確認します。 脳出血後の介護で家族が知っておくべきこと では、続いて脳出血後に家族が自宅などで気をつける介護ケアについて解説していきます。 入院中は看護師やその他多くの専門職によってリハビリなどが行われますが、退院後は、家族が中心になってケアを行なっていく必要があります。 ほとんどの患者は、初期治療とリハビリ後に自宅で介護を受けることを選択します。 ①要介護認定は早めに受けるべき 脳出血などは特定疾病ですので、40歳以上であれば要介護認定を受けられます。 在宅介護の場合は、訪問介護や訪問入浴介護、自宅のバリアフリー化、福祉用具レンタル・購入などの在宅介護サービスを受けることができます。 ②在宅介護サービスを活用する 在宅介護サービスは、脳出血後の症状が残っており、比較的状態が安定している患者に推奨されるケアサービスです。 内容としては毎月の医師の診察、継続的なモニタリング、24 時間対応の電話応対などが含まれています。 在宅介護には、以下のようなメリットがあります。 ・長年住み慣れた自宅で生活できる ・経済的負担が少ない ・家族と一緒にいられるので安心感が生まれる ぜひ、このようなケアサービスも活用しましょう。 ③住宅改修で自宅の環境整備を行う 在宅介護を行う際は、補助器具と環境整備も行う必要があります。 患者が障害を抱えながら生活できるように、補助器具の使用や家庭環境の改善に取り組みます。 ④施設介護サービスも検討できる 自宅介護の他にも、施設サービスも検討しましょう。 自宅での介護が難しい場合は、日帰りでリハビリや介護などのケアを受けられるデイサービスやデイケアがあります。 在宅介護に比べて以下のようなメリットがあります。 ・専門性や高い介護ケアが受けられる ・介護をする家族の時間や精神的苦痛が少ない 家族の介護とはいえ、仕事との兼ね合いや子育て中であれば、精神的にも肉体的にも大変なことがあるかと思います。そんな時は、安心してお任せできる、施設の利用を検討するのもひとつかもしれません。 脳出血後の看護、介護に関するよくあるQ&A 最後によくある質問についてもまとめましたので、参考にしてください。 Q,要介護認定の相談は誰にすればいいですか? A,退院後の相談としては、医療ソーシャルワーカーなどに相談できます。 Q,要介護認定の方法は? A,要介護認定の申請方法としては、申請書の他に介護保険被保険者証や身分証明書などを準備して、役所の介護保険の担当課へ行きます。 申請手続きを済ませると、後日担当者が聞き取りによる認定調査に来ます。 まとめ・【脳出血後の看護と介護】脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイント 脳出血後の入院中の看護や退院後の介護ケアは、患者さんがもとの日常生活に早く戻るためにもとても大切です。 退院後の介護ケアでは家族のサポートが不可欠なので、自分だけで抱え込まず、家族間でよく話し合う必要があります。時に、在宅介護と施設介護を上手く取り入れ、併用していくことも検討してみましょう。 今回の記事が看護や介護に向き合われる皆さまのご参考になれば幸いです。
2022.12.05 -
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くも膜下出血後の生活|手術と入院期間、治療後のリハビリを詳しく解説 「くも膜下出血の手術や入院について詳しく知りたい」 「くも膜下出血の後の生活はどのように送ればいい?」 このような悩みを抱えている方はいませんか? くも膜下出血は生活習慣病などが原因となり、突然発症する怖い病気です。大切なご家族が突然くも膜下出血になる可能性もゼロではありません。 具体的にどんな治療方法があり、入院期間はどのくらいなのか、治療後のリハビリの方法など気になる方もいることでしょう。 そこで今回は、くも膜下出血後の生活についてリハビリの方法を詳しく解説していきます。 くも膜下出血とは? くも膜下出血は、動脈瘤の破裂または頭部外傷などによって、くも膜と脳を取り囲む軟膜との間の、くも膜下腔と呼ばれる部位に出血が起こることで発症します。 発症すると重い頭痛を訴えますが、今までにないような頭痛を訴えて救急外来を受診した患者のうち、最終的にくも膜下出血を発症するのはわずか 10 %程度です。 関連する症状には、首の痛み、吐き気や嘔吐、羞明-しゅうめい-(異常に眩しさを感じること)などがあります。 くも膜下出血の手術について くも膜下出血の治療の一つとして手術を選択する場合があり、影響を受けた血管を修復し、動脈瘤が再び破裂するのを防ぐための手術を行います。 主に、「開頭クリッピング術」と「コイル塞栓術」と呼ばれる 2 種類の手術があります。 クリッピングとコイルのどちらを使用するかは、動脈瘤の大きさ、位置、形状などによって異なります。 コイルは、クリッピングよりも発作などの短期的な合併症のリスクが低いため、しばしば好まれる手術ですが、クリッピングよりも長期的な利点があるかは不明です。 ①血管内治療 : コイル塞栓術 血管内治療では、カテーテルと呼ばれる細い管を足や鼠径部の動脈に挿入し、血管を通って脳の動脈瘤に導きます。 次に、小さなプラチナコイルをチューブに通して動脈瘤に挿入し、動脈瘤がコイルで満たされると、再び破裂したりするのを防ぐことが可能になります。 ②開頭手術 : クリッピング クリッピングは開頭術とも呼ばれ、頭部に切り込みを入れ、動脈瘤の位置を特定します。そして、小さな金属製のクリップを動脈瘤の基部に取り付け、動脈瘤を密閉します。 時間が経つにつれて、クリップが配置された場所に沿って血管の内側の層が再生し、動脈瘤が永久に密閉され、再び破裂するのを防ぐことができます。 くも膜下出血の入院期間や費用は? 入院期間や費用に関しては、受ける治療内容や重症度によって左右されます。 治療内容に関しては手術以外にも保存治療もあります。また、コイルによる手術を受けた人は、クリッピング手術を受けた人よりも早く退院し、全体的な回復時間も短くなる可能性があります。 費用に関しては 3 割負担で 50〜70 万円程度と考えていいでしょう。手術内容や保険の内容によって以下のように異なります。 ・血管内コイル塞栓術:19〜55 万円 ・開頭クリッピング術:22〜65 万円 さらに、これらの種類の手術が緊急治療として行われる場合、入院期間は、受ける手術の種類よりも症状の重症度に大きく依存します。 どちらの治療を受けている場合でも、合併症を避けるために、しばらくの間注意深く監視する必要があり、基本的には、2 週間から 2 ヶ月程度は入院する必要があります。 くも膜下出血後の生活について くも膜下出血から元の生活に戻るまでの時間は、その重症度によって異なり、手や足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症があるかどうかにも影響します。 重大な後遺症を残さないためにも早期のリハビリが必要 くも膜下出血後は少なからず後遺症が残るため、早期のリハビリが大切になります。 早期のリハビリ介入によって、くも膜下出血後の脳血管痙攣や再出血の頻度と重症度は軽減され、初期のリハビリテーションがいかに大切なのかわかります。 くも膜下出血のリハビリ方法 それでは具体的なリハビリ方法について以下の 3 つのステップに分けて説明したいと思います。 ①急性期 ②回復期 ③維持期 それぞれ詳しく説明していきます。 ①急性期リハビリ(治療後~14 日程度):廃用症候群の予防など 急性期には、身体の様々な機能がしにくくなり、褥瘡や足の血栓、感染症などさまざまな合併症が起こります。 また、ベッド上で動かず寝たきり状態になることで、筋肉が萎縮し衰え、関節が硬くなり運動機能が低下してしまうことを“廃用症候群”と言います。 この廃用症候群を予防するため、以下のようなリハビリを行います。 膝伸ばし運動 : 座った状態で片足の膝をゆっくり伸ばし、10 秒間保つ。 足の筋力運動 : 椅子に座り、背筋を伸ばして片足をゆっくり上げて下ろす 肩の上げ下げ運動 : 両肩を耳につけるイメージで、あげて下に落とす運動 手足の関節を動かす : 座った状態で手や足の関節を曲げて伸ばす 基本的には、座った状態でできる運動を行います。 ②回復期リハビリ: 日常生活動作の自立 急性期を脱し、病態や血圧が安定してきたら、症状の程度に応じて様々な回復期のリハビリに移りましょう。 日常生活を行う上で必要な基本動作が行えるよう運動機能を改善します。 基本動作の自立 : 寝返りをうつ、自力で座る、立つ 歩行訓練 : バランスを保つ、車いすへの移動、杖や歩行器などを用いた歩行練習 応用動作の訓練 : 手芸や工作、その他の作業 日常動作 : 食事やトイレ、着替え、入浴動作 さらに、食事ができるように嚥下機能を改善することも必要になります。 口の訓練 : 発声や舌・口・のどの筋肉を動かす運動 顔や首周りの訓練 : 首回りや肩の筋肉を動かす運動 間接的な嚥下訓練 : 水を含ませて凍らせた綿棒で喉の奥を刺激するなど 直接的な嚥下訓練 : ゼリーや水などの食物を用いる飲み込みの練習 そして、高次機能の改善としては以下のような特殊な訓練を行います。 ・風船、積木などの物を用いた訓練 ・繰り返し動作の練習 ・行動の順序を確認する練習 日常生活の動作に適応するためのリハビリを行っていきます。 ③維持期のリハビリ : デイサービス 維持期は、回復期で得た運動機能などを損なわないように機能を維持するために行うリハビリです。 ・生活の中の日常動作 ・散歩や軽い運動 維持期は生活期とも言われ、日常生活の中で取り戻した運動機能を低下させないように気をつける必要があります。 例えば、食事や着替え、入浴などはなるべく自分で行い、定期的に散歩やストレッチなどを行いましょう。 日帰りでリハビリなどの施設に通う、デイサービスなどもあります。ぜひ活用しましょう。 まとめ・くも膜下出血後の生活にはリハビリが欠かせない いかがでしたでしょうか。 今回は、くも膜下出血の手術後の生活について詳しく解説しました。くも膜下出血には大きく 2 種類の手術がありますが、重症度や治療内容によって入院期間や費用も異なります。 入院期間を短くして早く元の生活に戻るために欠かせないのが、入院時点で行う早期のリハビリです。完全に元の生活に戻るにはどうしても長期間かかり、なかなか根気強く続けるのが難しいかもしれませんが、続けることが大切です。 今回の記事がご参考になれば幸いです。
2022.11.30 -
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脳梗塞が女性に多い理由!脳梗塞を発症しやすい年代と発症確率とは 近年では、わが国でも生活習慣病などに関連した、脳梗塞に関する情報が注目されております。 また、昨今においては、男女間の性差に関連する医療研究が広く実施されるようになってきました。その中で、脳卒中の約3分の2の発症割合を占める脳梗塞についても、男女の性差での違いを認める疾患であることが分かりつつあります。 中でも、女性が脳梗塞に罹患するリスクが存在すると言われており、その原因として高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子が指摘されています。 今回は、脳梗塞の発症原因や脳梗塞になりやすい年代と発症確率、女性に脳梗塞が多い理由などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 脳梗塞の発症原因は? 脳梗塞の患者では、普段から高血圧を始めとする生活習慣病を発症している方が多く、これらの疾患は血管の動脈硬化性変化を進行させるので、脳梗塞を招くリスクが高くなると言えますし、近年の脂質異常症や糖尿病の増加に伴って、最近ではアテローム血栓性梗塞が増えてきています。 また、高齢化にともない心房細動という不整脈を抱えた患者さんが増加しているため、心原性脳塞栓症も徐々に増えています。 脳梗塞を発症させる原因として挙げられるものは以下で脳梗塞の原因として忘れてはいけない要素です。 脳梗塞発症原因 ・加齢 ・食生活の欧米化に伴うメタボリック症候群 ・過剰な塩分摂取 ・慢性的な運動不足 ・糖尿病 ・脂質異常症 ・喫煙歴 ・大量飲酒 ・日々の過剰なストレス 加齢に伴ってラクナ梗塞の原因である動脈硬化、あるいはアテローム血栓性脳梗塞の原因である生活習慣病は徐々に進行して、脳梗塞を発症しやすい状況に陥ると考えられます。 したがって、動脈硬化や生活習慣病、心房細動などを抱える高齢者は特に注意が必要です。 脳梗塞になりやすい年代とその発症確率は? 脳梗塞は、一般的に高齢者に発症することが多い疾患であり、初発の発症例では 65 歳以上が全体の 9 割を占め、本疾患は中年以降から高齢層にかけて罹患しやすい病気というイメージがありますが、30 〜 40 歳代の若年者に発症する若年性脳梗塞も存在します。 厚生労働省の発表データによれば、1996 年時点で国内に約 170 万人に及んで存在した脳血管疾患を発症した患者数は、2017 年時点でおよそ 110 万人程度まで減少傾向を示しており、脳梗塞で病院や診療所を受診したのはおよそ15万人程度と言われています。 具体的に、年齢別の内訳としては、 0〜14 歳が 100 人 15〜34 歳が 300 人 35 〜 64 歳が 1 万 4000 人 65 歳以上が 13 万 5000 人 75 歳以上が 10 万 6000 人 という状況です。 つまり、脳梗塞を発症する患者数は特に 75 歳以上の方で全体の7割以上を占めています。 女性に脳梗塞が多いのは、なぜなのか? 脳梗塞は男性に多い病気と考えられる傾向があります。 しかし、実は女性の死亡原因の第三位に位置づけられている疾患であり、女性の脳梗塞は増加傾向であり、かつ重症化しやすいことが知られています。 一般的に、脳梗塞は男性に発症数が多い一方で、女性の方が少ないと言われていますが、女性の脳梗塞患者は男性に比べて高齢で発症するケースが多い特徴があり、生命予後も不良になる傾向が認められると指摘されています。 脳梗塞を男女差の面から考えると、一般的に患者数は男性の方が多いです。 女性の持つ危険因子とは ところが、女性には妊娠、経口避妊薬の使用、ホルモン補充療法など特有の脳梗塞を発症する危険因子が背景に存在すると伝えられています。 脳梗塞を代表とする脳心血管疾患における最大の発症要因ともいえる高血圧に関連して、通常約 50 歳前後までは女性よりも男性の方が高血圧の平均数値が高い傾向を認めますが、その後の年代以上では高血圧の有病率に性差はほぼありません。 この理由としては、女性が閉経した後に女性ホルモンであるエストロゲンなどの働きが低下することによって、女性の高齢時における高血圧の発症原因に繋がっていると考えられます。 女性ホルモン「エストロゲン」との関係性 特に、エストロゲンは血管や骨などの状態を維持する機能を有するホルモンであり、おおむね女性が 50 歳前後の更年期に入ると急激にエストロゲンの分泌量が減少して、これまで適正範囲に機能していた保護作用などが効果を示さなくなっていきます。 また、30 歳前後における若年女性の収縮期の血圧は、平均すると同年代の男性層よりも約 10mm Hg 程度低い値であることが知られていますが、女性は男性よりも高血圧の影響が強く出現する傾向がありますので、若い年代の時期から高血圧予防に努めることが重要です。 さらに、動脈硬化の進行を促進する大きな要因である脂質異常症に関しても、若年時には男性の発症率が女性より高いことが判明していますが、年齢を重ねるごとにその発症率において性差が認められなくなります。 その背景には、女性特有のエストロゲンの影響だけでなく、男性だけでなく女性も喫煙習慣、脂肪分のリッチな食事スタイル、糖類を大量に含む飲食物を多く摂取するなど、近年よく見られる生活習慣病が直接的な原因になっていると思われます。 脳梗塞と不整脈 さらに、中年期から高年齢層にかけての女性は男性に比べて不整脈を発症しやすいと言われており、特に不整脈の中でも心房細動は脳梗塞の発症リスクを 5 倍程度に上昇させることが指摘されています。 不整脈のひとつである心房細動は、心原性脳塞栓症における大きな発症危険因子として認識されており、脳梗塞を引き起こす患者さんの約 70 %の割合で合併していると指摘されています。心房細動の頻度は、一般的に男性が女性の約 3 倍高いという報告が見受けられます ところが、心原性脳塞栓症を続発しやすいという観点でみると女性の方が男性よりも発症率が高い傾向にあると言われています。 その他の危険因子 その他にも、偏頭痛、心房細動、うつ病、感情的なストレスは、女性に多い脳梗塞の危険因子となります。 そして、特に女性で妊娠を契機に妊娠高血圧症候群が認められる際には、その後高血圧を発症するリスクが約 4 倍、そして脳梗塞に罹患するリスクが約 2 倍に上昇すると言われています。 また、閉経後の女性に対して女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを投与するホルモン代替治療は、骨密度を上昇させて骨折の危険を減らす利点がある一方で、脳梗塞の発症リスク因子になりますので十分に注意する必要があります。 したがって、女性が脳梗塞を発症した場合には、女性ホルモンの補充療法の有無を確認することが重要であるとともに、すでに投与されている際にはその中止も検討すべきであると言われています。 まとめ・脳梗塞が女性に多い理由と脳梗塞を発症しやすい年代と発症確率について 今回は、脳梗塞の発症原因や脳梗塞になりやすい年代と発症確率、女性に脳梗塞が多い理由などについて詳しく解説してきました。 脳梗塞の年代別発症率では、高齢者を中心に発症しやすいことが分かっており、その発症原因は色々考えられますが、良くない不規則な生活習慣の積み重ねが発症につながるケースは決して少なくありませんし、女性にも脳梗塞を発症するリスク因子が存在します。 特に、女性はエストロゲンの保護や生活習慣病という観点から、加齢に伴って閉経後など脳血管系疾患の影響が強く出て脳梗塞を発症するリスクがあります。 したがって、普段から食生活に気をつけて定期的に運動を実践するなどの予防策を若年期から意識しておきましょう。 脳梗塞の後遺症は取り返しのつかないものですので、元気なうちに対策を講じて、あらかじめ脳梗塞の危険因子を知っておくことが重要なポイントです。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 禁煙や体重管理、運動など生活習慣の改善によって、脳梗塞を引き起こさないようにすることが大切です。 引用文献 1)松山 友美, 佐竹 真理恵:女性ホルモン補充療法中に脳梗塞を発症した3症例.脳卒中. 2013 年 35 巻 4 号 p. 301-305 DOI https://doi.org/10.3995/jstroke.35.301 ▼以下もご覧になりませんか 脳梗塞は遺伝するのか!?食生活にも関係か?【食事療法でリスクを回避する方法】
2022.11.28 -
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女性のくも膜下出血は男性の2倍のリスク!今日から始める本気の予防策について 「女性の方がくも膜下出血になりやすいってほんと?」 「女性がくも膜下出血にならないための予防策について知りたい」 女性は、動脈瘤性くも膜下出血の発生の危険因子として認識されています。 そこで今回は、女性に「くも膜下出血」が多い理由や予防策について説明しますので、ぜひ参考にされてください。 くも膜下出血|女性は男性の2倍もの危険性! 女性は、くも膜下出血の発生の危険因子として認識されています。 日本におけるくも膜下出血は、【男性:女性= 1 : 2 】で、女性に多くみられ、男性では 50 歳代がピークですが、女性の場合は 50 〜 70 代に多く、ピークは 70 歳後半となります。 では、なぜ女性に多いのでしょうか。いくつか要因を見ていきましょう。 出産や女性ホルモンの変化は、くも膜下出血の発症リスクを高める 動脈瘤性くも膜下出血 の発生率は、男性よりも女性の方が 50 % 高くなっています。 このような性別の差が考えられる理由には、女性特有の出産の繰り返し、ホルモン要因などが考えられます。 出産を繰り返すと、くも膜下出血のリスクが増加します。これは、おそらく妊娠による高血圧と分娩中の血管の緊張によるもので、血管が弱くなり、動脈瘤の形成につながる可能性があるためです。 また、女性ホルモンの血中レベルはくも膜下出血のリスクに影響を与える可能性があります。 女性ホルモンであるエストロゲンには、くも膜下出血の原因となる動脈硬化を抑える作用があると言われていますが、特に 50 歳以上の女性においてエストロゲンが減少します。 したがって、女性ホルモンが減少する閉経後の高齢女性のリスクが高くなります。 女性はストレスを感じやすい また、女性の方がストレスを感じやすく、特に高齢になると女性ホルモンの分泌量の変化によって、気持ちが不安定になりがちです。 ストレスを溜め込んでしまうと、くも膜下出血のリスクとなります。 くも膜下出血、その他の危険因子は? くも膜下出血 (SAH) は誰にでも発生する可能性がありますが、最も一般的に 40 歳から 60 歳の間の人々に影響を及ぼします。 ただし、女性では 70 歳台でリスクが高まります。 くも膜下出血の可能性を高めるリスク要因には、次のようなものがあります。 くも膜下出血発症リスクを高める危険性 ・脳または体の他の場所にある未破裂の動脈瘤 ・以前に破裂した脳動脈瘤の病歴 ・喫煙 ・高血圧 ・線維筋性異形成(FMD)などの結合組織状態 ・多発性嚢胞腎の病歴 ・過度のアルコール飲酒歴 ・ワーファリンなどの血液希釈剤の使用 ・動脈瘤の家族歴 最も気をつけなければならないのが高血圧です。高血圧を誘発するものも原因となり得ます。 男性も必見!今日からできる、くも膜下出血の予防! では、そんな危険因子に立ち向かう予防策について、考えていきましょう。 主に生活習慣の改善を行うことで、そのリスクを抑えることができます。それぞれ詳しく説明していきましょう。 禁煙する 喫煙は高血圧の直接的な原因ではありませんが、くも膜下出血のリスクを大幅に高めます。 特に、女性は喫煙に対して男性よりも深刻な影響を受けやすくなっています。 喫煙は高血圧と同様に、動脈を狭くし、喫煙者で血圧が高いと動脈が急速に狭くなり、将来くも膜下出血になるリスクが劇的に高まります。 血圧コントロール 男女問わずに高血圧の方は、血圧コントロールを行いましょう。 高血圧の方は正常な方に比べ、くも膜下出血の発症リスクが 2~3 倍も高くなります。 ストレスケア 意外と知られていないのがストレスです。ストレスは血管を傷つけてしまい、くも膜下出血の原因となり得ます。 リフレッシュしてストレス発散するなどし、日頃からストレスを溜めないように工夫しましょう。 定期的に運動する 定期的な運動をすることで、心臓と血管を良好な状態に保ち、血圧を下げます。定期的な運動は体重を減らすのに役立ち、血圧を下げるのにも役立ちます。 成人は、毎週少なくとも 1 ~ 2 時間程度の有酸素運動 (サイクリングや早歩きなど) を行う必要があります。 身体活動には、スポーツからウォーキング、ガーデニングまで、あらゆるものが含まれます。運動にはリフレッシュ効果があるので、ストレスケアにも効果的です。 カフェインを減らす コーヒーを 1 日 4 杯以上飲むと、血圧が上昇する可能性があります。 コーヒー、紅茶、またはコーラや一部のエナジードリンクなど、カフェインが豊富な飲み物が好きな場合は、量を減らすことを検討してください。 バランスの取れた食事の一部としてお茶やコーヒーを飲むことは問題ありませんが、適度に飲むことが重要です。 まとめ・くも膜下出血|女性は男性の2倍のリスク!今日からしたい本気の予防策! いかがでしたでしょうか? くも膜下出血は、男性よりも女性の方がおこりやすく、これには女性ホルモンが関与していると考えられています。また、女性は出産やストレスを抱えやすく、喫煙に対しても影響を受けやすいため、日頃から対策することが大切です。 その他、動脈瘤や高血圧などの他の健康状態や生活習慣も関与しているため女性はもちろんの事、男性も注意していただきたい思います。 くも膜下出血予防するためには、生活習慣の改善が重要です。禁煙や血圧コントロールはもちろん、ストレスケア、定期的な運動、コーヒーをはじめとしたカフェインの摂取量に注意しすることが大切です。 そのためにも日ごろから生活習慣の見直しや改善、定期的な健康診断を受けて、ご自身の健康管理に努めてください。 今回の記事を参考にしていただき、症状や予防策に関して知っていただければ幸いです。 ▼こちらも参考にされませんか くも膜下出血の原因と症状!予後とその生存率 について
2022.11.23 -
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くも膜下出血は、脳を覆う薄い組織との間の領域で起こる出血です。突然起こる激しい頭痛で気づくことの多い病気ですが、首の痛みを伴う頭痛としても知られています。 「最近首の後ろが痛いけど原因がわからない」「痛みが引かなくて不安だ」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。 そこで本記事は、くも膜下出血の前兆として引き起こす首の痛みについて紹介します。 【くも膜下出血の前兆】首の痛みを伴う頭痛は要注意! 頭痛を伴う首の痛みは、くも膜下出血の代表的な前兆症状のひとつです。 ただし、首の痛みが必ずしも膜下出血につながるわけではなく、髄膜炎と呼ばれる病気を発症した際も似たような症状が現れます。 くも膜下出血の主な前兆 髄膜炎の主な前兆 首裏付近の痛み及び頭痛 血圧の乱れ 視覚の異常 めまい・吐き気 首裏付近の痛み及び頭痛 発熱・発疹 肩こり 活気の低下 上記の特徴をもとに区別する必要がありますが、いずれにせよ頭痛を伴う首の痛みは要注意であることは確かです。少しでも不安な方は最寄りの医療機関にご相談ください。 髄膜炎との区別にはMRI検査が重要 前兆(症状)だけでは自己判断が難しいため、精密な検査を実施し病院で詳しく調べてもらう必要があります。 精密検査の代表格であるMRI検査では、脳内の出血を検出できます。また、血管に造影剤を注入して動脈と静脈の流れを詳細に表示 (造影MRI検査)し、血流に注力した検査も可能です。 CT検査では見抜きにくい「くも膜下出血の徴候」をいち早く見つけることができます。 くも膜下出血とは? そもそもくも膜下出血とは、くも膜下腔(くも膜と脳を取り囲む軟膜間の領域) への出血です。 主な前兆としては、急速に発症する重度の頭痛・嘔吐・意識レベルの低下・発熱時の発作が挙げられます。 くも膜下出血の症状 くも膜下出血の典型的な症状は、頭を蹴られたような激しい頭痛で、数秒から数分かけて発症します。後頭部付近に発症する特徴をもち、吐き気や嘔吐を伴う場合もあります。 首の凝りや首の痛みを伴う頭痛も代表的な前兆症状であることから、早めの行動が重要です。 首の痛みを伴う頭痛があるときの行動と対処法 首の痛みとくも膜下出血の関係性について解説したところで、この項目では発症後の行動と対策について紹介します。 くも膜下出血の悪化や早期発見につながるため、発症後は以下の事項を厳守しましょう。 誘発の恐れのある行動は避ける 首の痛みを伴う頭痛がある場合はくも膜下出血を常に疑い、出血を誘発するような行動は避けましょう。 以下の行動は、くも膜下出血を誘発する恐れがあります。 速やかに病院を受診する くも膜下出血の症状は状況によって緊急度は異なる場合もあります。 雷鳴のような頭痛があるなど、以下のような症状が発症した場合は大変危険です。すぐに最寄りの病院に行きましょう。 その他、くも膜下出血の発症から 6 時間後に現れる頸部硬直や、瞳孔の散大などの症状発症は緊急を要します。 身近にいる方は速やかに119番通報を心がけましょう。 まとめ|くも膜下出血の前兆をいち早く察知しよう くも膜下出血は非常に危険であり、突然発生した首の痛みを伴う頭痛は前兆とされているため注意が必要です。。 また、緊急を要する病気であるため、発症後の迅速な診察と治療が必要となります。前兆を含む典型的な症状、くわえて対処法を知っておくことが重要です。 首の痛みを伴う慢性的な頭痛にあっては、当クリニックにご相談いただくことも可能です。お気軽にお問い合わせください。 膜下出血と首の痛みに関するQ&A 最後に、首の痛みを伴う場合のくも膜下出血に関するよくある質問についてQ&Aでまとめました。首の痛みにお悩みの方や不安を抱く方は、ぜひ参考にしてみてください。 くも膜下出血で首が痛くなるのはなぜ? 頭の中に出血が発生することで、頭の中の圧力が上がり、これによって脳が圧迫されて痛みが出ます。 首の痛みがある場合はどのように他の病気と区別する? 他の原因に心当たりがなく、首の凝りと激しい頭痛を経験した場合、くも膜下出血の兆候である可能性があります。 また、病院受診時のCT検査やMRI検査により他の病気と区別します。 CT検査は、脳をめぐる周りの血管の検出と、付随する脳の異常を特定します。さらに、出血の原因を明らかにするために造影剤を用いることにより、詳しく検査が可能です。 さらにMRI検査は頭の内部の詳細な画像として出力し、出血やその他の血管の異常問題を特定します。 くも膜下出血の前兆を感じたときは何科を受診すべき? くも膜下出血を疑う際は、脳神経外科や脳神経内科を受診しましょう。 緊急度の高い病気であるため前兆の段階であっても、予約なしでもすぐに受診ができる救急外来に対応した病院を探すべきです。 また、受診先がすぐに見つからない場合は救急車を呼ぶのも手段のひとつです。
2022.11.21 -
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くも膜下出血は予後が悪い病気というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。 一度発症すると、その後の生活や生存率についての不安が絶えず、「10年持つのだろうか」と考えることもあるかもしれません。 結論からいえば、くも膜下出血における10年後の生存率について明確なデータはありませんが、5年生存率は55%前後といわれています。 生存率は年齢や出血量などの要因で変わりますが、早期かつ適切な治療で改善が期待できるでしょう。 本記事では、くも膜下出血の生存率についてや予後を左右する要因などについて詳しく解説しています。 くも膜下出血の治療を検討する際の参考になれれば幸いです。 くも膜下出血の10年後の生存率は「重症度・治療の早さ」によって変わる くも膜下出血の主な原因は、脳動脈瘤(脳血管が膨らんだ状態)です。(文献1) その生存率は重症度と診断および治療の早さによって変わる傾向があり、統計では、以下のデータが報告されています。(文献2)(文献3) 初回のくも膜下出血出血で約35%が死亡 その後数週間以内に15%が再破裂で死亡 6カ月以降は年間約3%の割合で再破裂のリスクあり くも膜下出血の10年生存率は不明ですが、5年生存率は55%前後といわれており、生存率は年々改善傾向です。(文献4) くも膜下出血の予後を左右する4つの要因【10年後以降にもかかわる】 くも膜下出血の予後は、以下4つの要因により左右されます。 発症時の年齢 出血の場所と量 発症から治療までの時間 合併症の有無 本章を参考に、くも膜下出血の予後の改善に役立ててください。 発症時の年齢 くも膜下出血になる年齢が高いほど、予後が悪化しやすくなります。年齢を重ねるにつれ、高血圧や糖尿病などの病気によって動脈硬化が進行するためです。 その結果、出血時に止血しても回復しにくくなり、再出血の可能性が高まります。 首の後ろの痛みを伴う激しい頭痛は、くも膜下出血の前兆の可能性があるため注意が必要です。気になる方は下記の記事も参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では高齢の患者様にも可能なくも膜下出血の治療方法を提案しています。 もしすでに違和感があるなら、悩まず当院の「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 出血の場所と量 出血量が多いほど脳が圧迫されるため、重症になり予後が悪くなります。 くも膜下出血が起こりやすい脳の部位は、脳血管が枝わかれする場所です。(文献5)脳血管が枝わかれする場所は、血管の壁が弱いため脳動脈瘤になりやすい傾向があります。 出血量が多く意識障害がある場合は、予後も不良になる可能性が高くなります。そのため、発症から早めの治療が重要です。 発症から治療までの時間 くも膜下出血の治療は、いかに早期発見をしてすぐに処置できるかが大切です。出血してから72時間以内に外科的治療を行うと、それ以降に治療を行ったときよりもその後の入院期間の短縮や予後が良好になるというデータがあります。(文献6) くも膜下出血でよくある初期症状は以下の3つです。(文献7) 顔が下がって動かない 腕の力が入らない ろれつが回らない これらの症状がみられたら、すぐに救急車を呼びましょう。 合併症の有無 以下のような合併症の有無も、くも膜下出血の予後に深くかかわります。(文献3) 再出血:脳出血が再発し、死亡率が高まる 脳血管れん縮:脳血管の収縮により血流が悪くなり、脳梗塞のリスクが高まる 水頭症:脳脊髄液の流れが悪くなり、歩行困難や認知症のリスクが高まる くも膜下出血の発症後は、上記のような合併症を防ぐ治療が大切です。 くも膜下出血の予後を改善するには「再出血の予防」と「適切な治療・リハビリ」が重要 くも膜下出血は、再出血を起こすと高確率で予後が悪化するため、血圧の管理や定期的な検査など、予防に努めることが重要です。 また、くも膜下出血発症後は、外科的治療とリハビリを組み合わせることで予後の改善が期待できます。主治医と相談の上、適切な治療・リハビリを続けましょう。 くも膜下出血の再発についての記事はこちら: くも膜下出血のリハビリについての記事はこちら: まとめ|適切な治療によりくも膜下出血の予後の改善を目指そう くも膜下出血は、依然として予後の悪い病気であり、早期の診断と治療次第では、重度の後遺症を残してしまいます。 早期の適切な治療を受けて、リハビリを行えば予後の改善が期待できます。今回の記事を参考にして、改めて予後や改善策に関して学んでおきましょう。 当院「リペアクリニック」では、人体にもともとある「幹細胞」を利用した再生医療により、くも膜下出血後の治療が可能です。「メール」や「オンラインでの無料カウンセリング」も実施しているので、気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 くも膜下出血の予後や生存率についてよくある質問 くも膜下出血で意識不明で運ばれた場合の生存率はどのくらいですか? 意識不明で搬送された場合の生存率は低い傾向です。 生存しても日常生活に支障をきたすような重い後遺症が出る可能性もあるでしょう。そのため、早期の段階で前兆に気がつき適切な治療を受けることが重要です。 くも膜下出血で最も多い後遺症は? くも膜下出血では、以下のような後遺症がよくみられます。 手足が動かしにくい しびれや脱力感 上手く話せず、会話が困難 記憶障害 くも膜下出血の後遺症の詳細は、以下の記事を参考にしてください。 参考文献 文献1 上畑鉄之丞.脳動脈瘤の成因 とくも膜下出血発症の諸要因.日本循環器管理研究協議会雑誌.1998;33(1):25-29. 文献2 デニス・J・ ニューカンプ医学a d.nieuwkamp@umcutrecht.nl ∙ ラリッサ・E a ∙ アレ・ アルグラ、MD a,b ∙ フランシスカ HH リン、医学博士a,c ∙ ニコリエン・K・ デ・ロイ、a ∙ ガブリエル・J・E .Changes in case fatality of aneurysmal subarachnoid haemorrhage over time, according to age, sex, and region: a meta-analysis. Fast track.2009. Volume 8. Issue 7.p635-642 文献3 Andrei V. Alexandrov, MD, The University of Tennessee Health Science Center;Balaji Krishnaiah, MD, The University of Tennessee Health Science Center.くも膜下出血 (SAH).MSDマニュアルプロフェッショナル版.2023年 7月改訂, 2024年10月21日. 文献4 今井明,鈴木ひろみ,渡辺晃紀,梅山典子,塚田三夫,中村勤,松崎圭一,加藤開一郎,冨保和宏.脳卒中患者の生命予後と死因の5年間にわたる観察研究: 栃木県の調査結果とアメリカの報告との比較. 第35回日本脳卒中学会 シンポジウム2. 2010年, 32巻,6号, P572-578. 文献5 上畑鉄之丞.脳動脈瘤の成因とくも膜下出血発症の諸要因.日循協誌. 1998年.第33巻.第1号.P25-29. 文献6 脳卒中合同ガイドライン委員会. 第4章くも膜下出血. 脳卒中治療ガイドライン2009.2009.P182-213.pdf 文献7 日本脳卒中協会.読んで学ぶ脳卒中. 脳卒中の予防と患者・家族の支援を目指して 公益社団法人日本脳卒中協会. 2018年3月19日更新.2024年10月21日.
2022.11.18 -
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脳梗塞患者の家族は、どうやって看護したら良いのだろう。 脳梗塞の看護のポイントについて知りたい。 この記事を読んでいるあなたは、家族や親戚が脳梗塞になり、どのように看護すれば良いか不安を抱いているのではないでしょうか。 「どのような経過になるのかを知りたい」と思っているかもしれません。 脳梗塞は早期に治療を受けても後遺症が出る場合があり、入院中から退院後まで継続的な看護が必要です。 本記事では、脳梗塞患者を看護する際のポイントについて、詳しく説明します。記事を最後まで読めば、脳梗塞の経過と必要な看護がわかり、今後の生活に向けた準備を始められるでしょう。 脳梗塞患者の家族が看護で注意すべきポイント【看護計画】 脳梗塞の看護は、急性期、回復期、慢性期の各段階で注意すべきポイントが異なります。 多くの脳梗塞患者は入院が必要で、とくに発症直後は集中治療室(ICU)での治療やケアが必要になるケースは珍しくありません。 脳梗塞の症状は急速に変化する可能性があり、迅速な処置が必要なためです。 さらに、脳梗塞の治療は長期化するケースも多く、看護師は身体的、心理社会的の両面について患者ケアを行います。 脳梗塞の種類や合併症については、以下の記事も参考にしてください。 発症直後 脳梗塞の発症直後は全身状態が悪く、脳梗塞の拡大や再出血などの急変リスクも高い時期です。 まずは医師・看護師などがチームとなって脳に詰まった血栓を溶かす治療(t-PA療法)や血栓を取り除くカテーテル治療(血栓回収療法)などを行います。 t-PA療法は、脳浮腫や血管の圧力増加による意識障害などの合併症が起こりやすいため、意識レベル、呼吸、循環動態のチェックが欠かせません。 さらに誤嚥予防の処置や体位の調整、けいれんが起きていないかの観察など、看護計画に基づいた慎重な看護を行います。 脳梗塞の治療については、以下の記事も参考にしてください。 急性期 発症直後を含めた「急性期」の看護でチェックする主なポイントは、以下のとおりです。 意識レベル(応答性、話す能力、見当識の変化など) 呼吸と循環の管理 血圧管理 体温管理 排尿管理 皮膚の状態 出血管理 意識レベルの確認には、「目を開けるか」「意識ははっきりしているか」「痛みに反応するか」「身体を動かせるか」などをチェックする以下の指標がよく使われます。 JCS(ジャパン・コーマ・スケール):日本で使用されている意識障害の評価方法 GCS(グラスゴー・コーマ・スケール):世界で広く使用されている意識障害の評価方法 寝たきりの時期が長くなると、筋肉の退化や誤嚥性肺炎、床ずれなどのリスクが上昇します。 そのため、十分なリスク管理のもとに、寝返り、座位、セルフケア訓練など、自分で身体を動かすためのリハビリをできるだけ早くから開始します。(文献1) また、脳梗塞は麻痺や失語などの後遺症が出やすいため、症状や今後の生活に関するメンタルケアも重要です。 脳卒中の治療やリハビリについての見通しは、以下の記事も参考にしてください。 回復期 「回復期」とは、全身状態や血圧などが安定する時期です。 引き続き全身管理を行いながら、日常生活動作を取り戻すためのリハビリや看護を行います。 回復期の看護のポイントは、以下のとおりです。 感覚と知覚(痛みと温度の認識が低下しているため) 栄養機能 : 嚥下、栄養と水分補給の状態 皮膚の状態、褥瘡対策 排尿機能 運動機能(上肢および下肢の動き) 精神状態 (記憶、注意力、知覚、感情、発話/言語など) 脳梗塞で失われた脳細胞は、基本的には元に戻らないといわれています。しかし、治療やリハビリをすると脳のほかの部分が失った機能の代わりを果たすようになるため、身体が動くようになるのです。(文献2) 本章の内容をもとに、回復期の看護を理解しておきましょう。 脳梗塞後のリハビリについては、以下の記事で説明しています。 1.栄養機能管理 栄養機能管理の看護では、以下のポイントをよく観察します。 咳の状態 口の片側に食物が溜まっていないか 液体を飲み込むときの逆流がないか また、言語聴覚士による飲み込み機能の評価を受けた上で、少量の小さな食物や水分を摂取するよう促します。 口からの摂取が不十分な場合は、チューブを介した経腸栄養の準備をします。 2.排尿管理 筋肉の制御が失われている間は自分の意思で排尿を管理できないため、医師・看護師が尿道にカテーテルを挿入し、人工的に排尿させます。 また、十分な水分(1日2〜3L)を与えて、規則正しい時間(朝食後)にトイレをするよう促します。 3.皮膚の状態と褥瘡管理 皮膚の状態が悪くなっていないかは、頻繁に評価します。 清潔で乾燥した状態に保った皮膚をやさしくマッサージし、皮膚の健康を維持します。 また、自分で身体を動かせないと、褥瘡(じょくそう:体重で圧迫されている部分の血流が悪くなり、皮膚がただれたり傷ができたりすること)のリスクが高い状態です。 ひどくなると傷から細菌が入って化膿して腫れる可能性があるため、1日数回(2時間ごと)身体の位置を変更して褥瘡を予防します。 4.運動機能の改善 意識が回復したら、積極的なリハビリテーションプログラム(以下リハビリ)を開始します。脳梗塞後のリハビリは、長時間のものを1回行うのではなく、短時間のものを複数回行います。 リハビリの目的は、以下のとおりです。 関節の可動性を維持する 運動機能を回復する 麻痺した四肢の拘縮を予防する 神経筋系のさらなる悪化を予防する リハビリ中の患者サポートも、重要な看護です。 看護では、肺塞栓や過剰な心臓負荷の徴候 (息切れ、胸の痛み、チアノーゼ、脈拍数の増加など)が起きていないかも観察します。 慢性期 「慢性期」は、退院に向けての準備が本格化します。そのため、患者の全身管理や健康維持に加えて以下の点を重視した看護を行います。 退院後の日常生活の支援(家族への説明) 心理的なケア 退院後、ご家族の協力のもとに患者が自宅で達成可能な目標を計画します。 医師や看護師は、不安を和らげるためにていねいな説明や感情的なサポートを行います。不安や気になる点があれば、遠慮なく聞いてみてください。 脳梗塞の看護でご家族が果たすこと 退院後は、ご家族による食事や運動などの生活支援・リハビリのサポート・服薬管理などの看護が必要です。 脳梗塞は、脳のダメージを受けた部位によって起こる症状や後遺症が異なり、約半数の人に後遺症が出るといわれています。再発もしやすく、10年再発率は49.7%というデータもあります。(文献3) ダメージを受けた部分と、起こる後遺症の例は以下のとおりです。 前頭葉:人格や性格が変化する 頭頂葉:体が動かなくなる(麻痺) 後頭葉:視野の半分が欠ける(半盲ともいう) 側頭葉:学習、記憶障害が起こる また、脳梗塞をはじめとする脳卒中のあとは、認知症になる人も珍しくありません。医療機関や介護サービスの手を借りながら、再発や後遺症を予防・軽減していきましょう。 脳梗塞の再発をコントロールする方法は、以下の記事で説明しています。 まとめ|脳梗塞の後は適切な看護が大切 本記事では、脳梗塞後に必要な看護について詳しく解説しました。 脳梗塞では、経過ごとに必要な看護が異なります。ご家族が中心となって看護するのは退院後で、日常生活の支援やリハビリなどが主な役割です。 心理的な問題は時間の経過によって解決するケースが多いのですが、不安な点は医師や看護師に質問し、解決しておきましょう。 脳梗塞の看護のよくある質問 脳梗塞のあとなぜ血圧が上がるのですか。 脳梗塞では、血流の低下によって脳がむくみます。 生じたむくみによって脳の血管が圧迫されると、結果的に血圧が高くなるのです。 脳梗塞のときはベッド上での安静が必要ですか。 脳梗塞の発症直後は、ベッド上での安静が基本です。 頭を上げたり、立ち上がったりすると血圧が下がり全身状態が悪くなるため、基本的には安静にします。 しかし近年は、状態が落ち着き次第、早めからリハビリを開始するのが一般的です。 脳梗塞はどのくらいで退院できますか。 症状や年齢によって異なりますが、平均的には2~3カ月ほどで退院するケースが多くみられます。 どのような症状が出たら脳梗塞の再発を疑えば良いですか。 以下の症状が出た際は脳梗塞の再発を疑い、救急車を呼びましょう。 手足の麻痺やしびれ ろれつが回らない 言葉が出てこない 視野が欠ける めまいがひどい 意識を失う 脳梗塞は再発しやすいため、患者の様子をよく観察し、気になる症状が出たらすぐに受診しましょう。 脳梗塞の前兆については、以下の記事を参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 脳卒中治療ガイドライン2021における リハビリテーション領域の動向 理学療法科学 37(1):129–141, 2022 文献2 脳の可塑性(基礎の立場から) ―サルを使った大脳運動野の破壊後の回復に関する研究,認知神経科学Vol.7No.3 2005 文献3 Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Mar;76(3):368-72. doi: 10.1136/jnnp.2004.038166.
2022.11.16 -
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くも膜下出血は脳疾患のなかでも症状が重いことで知られています。 発症時の一年死亡率は65%以上とも言われています。 後遺症や再発のリスクもあり、十分な警戒が必要な疾患と言えるでしょう。 本記事ではくも膜下出血の症状や合併症、治療法や再発予防法などを解説します。 関連記事:くも膜下出血|女性は男性の2倍ものリスク!今日からしたい本気の予防策! くも膜下出血の概要・症状・治療法 くも膜下出血とは、脳と周囲の膜との間の空間(くも膜下腔)で出血が起こる疾患です。 くも膜下で出血があると、脳に対して十分な血液が供給されません。虚血状態になり、心身にさまざまな症状が現れます。 ほとんどの出血は、生活習慣の乱れによって形成される「脳動脈瘤」の破裂に原因があると言われます。 直接の原因である脳動脈瘤が発生する理由は正確にはわかっていません。 ただ、次の特定の危険因子が関与していると見られます。 発症の危険 ・喫煙 ・過度のアルコール摂取 ・頭部外傷 喫煙やアルコール摂取は動脈硬化のリスクを高め、脳動脈瘤の発生や破裂を引き起こします。 また事故などによる外傷によっても、くも膜下出血は起こりえます。 くも膜下出血を発症した場合の予後は良くありません。一度発症した場合の一年死亡率は約65%と高く、生存した場合でも後遺症や再発リスクが生じます。 くも膜下出血の前兆には突如の強い頭痛や吐き気などがあり、これで発症に気づくケースが大半です。 発症は、激しい咳や運動、性行為など身体的負担が大きい生理反応や活動があった際に起こるケースが多いです。 くも膜下出血の初期症状 くも膜下出血では、以下の初期症状が突発的に起こります。 くも膜下出血の症状例 ・これまで経験したことない強さの、突発的な頭痛 ・極度の疲労感や気分不良 ・吐き気、嘔吐 ・光に対する過敏(羞明) ・かすみ目、複視、眼瞼下垂 ・脳梗塞のような症状(ろれつが回らない、体の片側の麻痺など) ・意識消失 ・全身の痙攣 最初に強い頭痛を感じるケースが多いでしょう。 痛みの程度は「雷に打たれたかのよう」と表現されるほど激しいものです。 しかし頭痛は時間経過により緩和する傾向にあり、「治ったので問題がない」と判断して、前兆を見逃すケースが少なくありません。 また、くも膜下出血があったあとの数か月間は、極度の疲労を感じるケースがあります。 たとえば、普段の通勤通学や買い物に対して従来よりも明らかに強い疲労感が生じます。 不眠症や睡眠不足、手足の痺れや感覚の喪失を訴えるケースも少なくありません。 しかし、これらの初期症状は数か月かけて徐々に改善するため、頭痛が発生した際と同様、「治ったので問題がない」と誤解されることがあります。 基本的な治療法 くも膜下出血が疑われる場合、病院でCT検査をおこない、脳の周囲に出血の兆候がないか確認します。 発症が認められた際には「動脈瘤クリッピング術」と「脳動脈瘤コイル塞栓」などの治療法が用いられます。 動脈瘤クリッピング術は、頭部を切開し、頭蓋骨に穴を開けて、脳動脈瘤を取り除くもの。 脳動脈瘤コイル塞栓は、すでにある脳動脈瘤の破裂を塞ぐ目的でおこなわれます。 脳動脈瘤コイル塞栓では頭部を切開しません。鼠蹊部(足の付け根)から特殊なカテーテルを挿入し、脳動脈瘤内にコイル(プラチナ製の小さな機器)を送り込みます。 コイルにより、脳動脈瘤への血液の流入を遮断し、破裂が予防されるしくみ。 その他対症療法として、降圧薬や鎮痛薬などの投与もなされます。 また近年では、再生医療による治療法も注目されています。再生医療とは、自己脂肪由来幹細胞やPRP療法などを用いた新しい医術。 くも膜下出血に対しては、失われた脳機能の回復や、脳内血管の再生などによる再発予防などの効果が期待されます。 詳しくは以下の関連ページをご覧ください。 関連記事:再生医療とは|リペアセルクリニック メール相談 オンラインカウンセリング くも膜下出血の合併症 くも膜下出血は、治療を行う際に以下のような短期的および長期的な合併症を引き起こす可能性があります。 くも膜下出血の合併症 ・水頭症 ・出血 深刻な合併症には、動脈瘤の再出血や、脳への血液供給の減少によって引き起こされる脳の損傷によるさまざまな機能低下があるため、合併症を起こさない治療が大切です。 治療後のリハビリ計画 くも膜下出血から回復するのにかかる時間は、その重症度によって異なります。 とくに出血の部位は、手足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症にも関連します。 そこで、治療後は急性期〜回復期にかけて理学療法士の下で実施されるリハビリ計画は、影響を受けた手足の感覚と動きを回復するのに役立ちます。 ・リハビリ専門医 脳損傷による機能回復を専門とする医師 ・理学療法士 エクササイズやマッサージなどの特定の技術の専門家 ・言語療法士 コミュニケーションの問題を認識し、治療を支援する専門家 ・作業療法士 着替えなどの日常生活で発生する可能性のある問題を特定する専門家 上記のようなさまざまな職種が関わっています。 くも膜下出血の後遺症にはどのようなものがある? くも膜下出血は、適切な治療を早期に受けても後遺症が出る場合があります。 一般的に多くみられる後遺症 くも膜下出血は治療後の回復も、時間がかかるものであり、次のような後遺症が発生するのが一般的です。 くも膜下出血の後遺症 1.運動麻痺 右か左の手足が動かしづらくなる 2.感覚障害 痺れや脱力感 3.嚥下障害 物が飲み込みづらい 4.視野障害 半分の空間がうまく認識できない 5.高次脳機能障害 言葉がうまく話せない、理解がうまくできないなどの失語症、注意・集中ができない 6.認知や行動の障害 物事をうまく実行できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう その他にみられる後遺症 そのほかにも次のような後遺症が現れることもあります。 くも膜下出血、後遺症 ・歩行不安定、尿便失禁 ・てんかん繰り返す発作 ・記憶などの認知機能障害 ・うつ病などの気分の変化 特に、認知機能障害はくも膜下出血の一般的な後遺症であり、ほとんどの人がある程度影響を受けます。 記憶の問題に関しては、発症前の記憶は通常影響を受けませんが、新しい情報や事実を思い出すのが難しくなります。 気分や思考にみられる後遺症 また、以下のような気分や思考の問題も現れます。 1.うつ病 気分が落ち込み、希望がなく、人生を楽しむことができない 2.不安障害 何か恐ろしいことが起こるのではないかという絶え間ない不安と恐怖感 3. 心的外傷後ストレス障害 (PTSD) 人は悪夢やフラッシュバックを通じて以前の外傷的出来事を追体験することが多く、孤立感、過敏性、罪悪感を経験することがある。 このような後遺症は、長期化するケースも稀ではなく、治療後のリハビリなどが重要になります。 くも膜下出血の再発リスクを減らす予防法 くも膜下出血を発症したあとも、再発の可能性が残ります。 再発した場合にも高い死亡リスクが残るため、予防は重要です。 予防法として以下が考えられるでしょう。 ・喫煙や飲酒を控える ・定期的な運動に取り組む ・健康的な食事を心がける 喫煙や飲酒を制限する まず、喫煙や飲酒を制限するのが重要です。 喫煙はくも膜下出血の主な原因になる脳動脈瘤を発生させる要因です。 したがって再発を防止する上では禁煙するのが基本となるでしょう。 飲酒は高血圧の原因になります。血圧が上昇すると膜下出血の主な要因である脳動脈瘤の破裂が起こりやすくなるため、飲酒は大きなリスクとなるでしょう。 上記の理由から喫煙や飲酒は控える、可能なら禁煙禁酒するのが望ましいです。 定期的な運動に取り組む 定期的な運動は、以下の効果をもたらすことから必要です。 ・血行不良の促進 ・高血圧の予防 ・ストレスの原因 血行不良や高血圧、ストレスは、すべてくも膜下出血の再発の原因です。 一方で定期的な運動の実施により、これらの影響をある程度解消できるでしょう。 とくにランニングやウォーキングなどの有酸素運動などが効果的です。 再発防止には、これらの運動を日常に取り入れるのが重要です。 健康的な食事を心がける 以下の健康的な食事は、くも膜下出血の再発防止に有効です。 ・緑黄色野菜や果物 ・青魚(イワシ、サバなど) ・ナッツ類 ・大豆製品 ・オリーブオイル、菜種油(トランス脂肪酸が含まれていないため) ・塩分が少ない食事 栄養バランスが偏ると、くも膜下出血の原因になる高血圧や血行不良につながります。 一方で上記の食物や食事には、血圧を下げ、血行を促進する効果があると言われています。 再発防止には、不健康なものを遠ざけ、健康的な食事を摂るのが重要になるでしょう。 メール相談 オンラインカウンセリング くも膜下出血によくあるQ&A 最後にくも膜下出血に関するよくある質問をまとめました。 後遺症がどのくらいで治るのか、仕事復帰の目安などを解説します。 Q.くも膜下出血に特徴的な前兆はありますか? A.くも膜下出血に特徴的な前兆としては、血圧の乱高下があります。 激しく上昇、下降する場合は可能性が高いです。 また脳梗塞などと同じように頭痛や吐き気などの前兆が現れることもあります。 Q.後遺症を残さずに仕事復帰はできますか? A.くも膜下出血で後遺症なく仕事復帰できるのは、3~4割程度といわれています。 完全に後遺症を残さないためにはリハビリが大切になります。 Q.くも膜下出血の後遺症で性格が変わりますか? A.くも膜下出血が原因で高次脳機能障害を患った場合、性格が変わるかもしれません。 高次脳機能障害は、脳に対するダメージが原因で、脳機能に影響が出る障害です。 とくに「意欲や情動のコントロールが困難になる」症状があり、これが現れると行動や言動に変化が生じます。 結果として「性格が変わった」と表される状態になるかもしれません。 まとめ:くも膜下出血を予防するには早期受診が重要! いかがでしたでしょうか? くも膜下出血は、突然起こると思われがちですが、血圧の変動や頭痛など特徴的な前兆があるため、少しでも不調があれば病院を受診するのが大切です。 くも膜下出血は、突然におこる激しい頭痛が特徴的です。後遺症が出ることもあります。 そのため、適切な治療や、リハビリのプランが重要です。 喫煙や、高血圧といった危険因子を管理し、健康的な生活習慣を心がけることが再発を予防するポイントです。 また、後遺症の程度によっては、仕事復帰に時間がかかる場合もありますが、治療後のリハビリは再発リスクを低減させて、回復を早めるためにも大切ですので医療機関の指導の下、前向きお取組みされることをお勧めします。 いずれにしましても、くも膜下出血で後遺症を残さないためには早期治療、そしてリハビリが大切です。 今回の記事を参考にして症状や、後遺症などに関して少しでも参考になれば幸いです。 関連記事:くも膜下出血の前兆?首の後ろの痛みを伴う激しい頭痛は危険! なお私たちリペアセルクリニックでは、再生医療を用いたくも膜下出血の治療を進めています。 関心がある方はぜひお問い合わせください。 メール相談 オンラインカウンセリング
2022.11.10 -
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脳梗塞になりやすい人とは?再発予防で注意しておくべきことについて 脳梗塞とは、脳の血管が血栓などで詰まり血流が悪くなることで、脳血管が細くなって脳細胞に障害が起こって様々な症状を呈する病気です。 高齢者が寝たきりになる原因の多くを占める脳梗塞は、初期段階での早期治療を行うと共に発症予防することが非常に重要なポイントであると言われています。 今回は、脳梗塞になりやすい人はどんな人なのか、脳梗塞の発症予防、あるいは再発を予防するための方法などの情報を詳しく解説していきます。 脳梗塞になりやすい人とは 脳梗塞は、いわゆる危険因子を持った方に起こりやすく発症しやすい方は存在します。その危険因子にはいくつかの要素があり、脳梗塞の主な危険因子は3つあり、「高血圧」「糖尿病」「心房細動」があげられます。 1,高血圧 脳梗塞は脳の血管が詰まることが原因で起こり、その原因疾患でもっとも多いのは高血圧であると考えられています。 一般的には、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば、「高血圧症」と診断されることからも、最高収縮期血圧が140mmHg以上を上回ったら脳梗塞の発症リスクが高くなります。 2,糖尿病 また近年では、糖尿病の増加に伴って、「アテローム血栓性脳梗塞」の発症数が増えてきており、血糖値が高い状態が続くと血液中に多量に存在するブドウ糖が血管の壁を傷つけることで、動脈硬化が悪化することとなり、脳梗塞などの病気の発症リスクが高くなります。 3,心房細動 さらに、心臓の中にできた血液の塊が時に遊離して、不幸にも脳の動脈の方に流れていってしまうことで脳の血管が詰まってしまう状態、つまり閉塞してしまうことが原因で起こる脳梗塞のことを、「心原性脳塞栓症」と呼んでいます。 心房細動と呼ばれる不整脈を有する場合には、心房内に血栓を形成し、その心房内の血栓は血流に乗って全身へ飛ばされる恐れがあるため、脳梗塞の発症リスクも上昇します。 脳梗塞の発症予防方法は? 脳梗塞を発症させる危険因子の有無をチェックして、ひとつでも危険因子が見つかった人は、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」などで脳梗塞の発症予防に努める必要があります。 脳梗塞の発症予防 ・食事療法 ・運動療法 ・薬物療法 高血圧を制御して脳血管障害の発症を予防する 高血圧症は日本において約4000万人以上にも及ぶ国民が罹患しているといわれており、「高血圧を制御することによって脳血管障害の発症を抑制する」ことが大いに期待されています。 普段から高血圧を指摘されている方では「塩分を控える」「適正体重となるように日々の食生活で腹八分目にする」「なるべく歩くようにする」などの工夫が必要であるとともに、血圧降下作用のあるカリウムやカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取することが重要となります。 高血圧を予防するためにできること ・塩分を控える ・規則正しい食生活 ・適正体重となるように日々の食生活で腹八分目にする ・なるべく歩くようにする ・日ごろから運動を心がける ・カリウムやカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取する ・禁煙 ・ストレスの排除 また、普段から規則正しい食生活、運動をするようにして、ストレスや喫煙習慣など生活スタイルに注意して、糖尿病にならないように心掛けましょう。 脳梗塞を引き起こしやすいと考えられている危険な不整脈として認識される心房細動があると、毎年約5%の方に脳梗塞が発症すると指摘されているので、日常生活で動悸を自覚するなどの症状が出現した際には、心臓専門の医療機関で詳しく調べてもらいましょう。 脳梗塞を引き起こしやすい兆候に注意 ・心房細動:生命を脅かす危険性 ・心房細動:動悸、脱力感、息苦しさ、胸の不快感 ※自覚したら心臓専門の医療機関を速やかに受診する 脳梗塞は約3割が再発する可能性!再発予防について 最近、脳ドックを受診する方が増えて「無症候性脳梗塞」が見つかる頻度が増えてきており、この隠れ脳梗塞が発見されたのち数年以内に3割の人が再び脳梗塞の発作を起こすと言われていますので、脳梗塞に一度かかったら再発する危険性があると考えておくべきでしょう。 脳梗塞を発症した方においては、再発を予防するための薬剤を飲む必要があって、通常では「ラクナ梗塞」や、「アテローム血栓症」に対しては動脈のように血流がとても速い血管のなかで血栓がつくられるのを防ぐため、「抗血小板薬」が有用となります。 ご注意頂きたいのは、症状が悪化していない、調子が良いからと勝手に自己判断で薬剤服用をやめてしまう方がおられますが、基本的には脳梗塞を再発するための予防薬は継続する必要があります。 また、心臓が原因で起こる脳塞栓の場合には、心臓の中に出来る血液の塊そのものが血管の中に出来る血栓とは性質が異なっているために、その再発予防には通常では「ワーファリン」という薬を使用します。 この薬を飲んでいる方は、定期的に血液検査でプロトロンビン時間(PT-INR)を測定して、薬効を評価しておく必要がありますし、ワーファリンを服用している際には、薬の効果に影響を与えますので、納豆や青汁などを食べてはいけません。 脳梗塞の再発予防にために ・脳ドックで「無症候性脳梗塞」が見つかると3年以内に脳梗塞を発症しやすい ・脳梗塞の再発予防に「抗血小板薬」が有用となる ・脳梗塞の予防薬を自己判断で中断してはならない ・脳梗塞の予防として心臓内でできる血液の塊を防ぐ「ワーファリン」の服用時には納豆や青汁を摂取しないこと まとめ・脳梗塞になりやすい人とは?発症や再発予防で注意しておくべきこと 今回は脳梗塞になりやすい人はどんな人なのか、脳梗塞を発症予防、あるいは再発を予防するための方法などについて詳しく解説してきました。 脳梗塞は突然に起こる病気であり、かかってからしまったと後悔しても手遅れですので、健常人でも普段から脳梗塞を予防しておく方法を知って身に付けておくことが重要です。 脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病は動脈硬化を進展させますので、脳梗塞の発症や再発を予防するために、高血圧や糖尿病を罹患している場合には疾病の治療を行うとともに、常日頃の生活習慣を見直すことも重要な観点となります。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 引用文献 脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット(厚生労働省) ▼こちらも併せてご参照ください。 脳梗塞は治るのか!?治療方法や入院期間、費用を徹底解説!
2022.11.07 -
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脳梗塞は多くの方が発症を恐れる疾病のひとつです。脳梗塞の前兆をいかに見逃さずに医療機関に早期受診するかが、重症化しないためのカギといえます。 そこで本記事では、脳梗塞の前兆を見逃さないためのチェックリストを提供します。ひとつでもチェックが当てはまるようであれば注意が必要なので、ぜひ最後までご覧ください。 脳梗塞の前兆を今すぐチェック【チェックリスト付き】 脳梗塞の前兆は突然現れます。 以下は、万が一に備えていただくために「脳梗塞の前兆を症状で判別いただくためのチェックリスト」です。ひとつであっても当てはまるものがあれば要注意です。 脳梗塞の前兆を確認したら早期受診を! 上記のような症状が急に現れると驚かれ多くの方は医療機関を受診されますが、中にはすぐに良くなってしまうこともあります。 その場合「気のせいか」「まあ良いか」と意図的に良い方に考えて医療機関を受診されない方が一定数いらっしゃいます。実際に2週間も症状が続いたにも関わらず、その後ようやく医療機関を受診した方もおられました。 症状が一時的であっても再度同様の症状を起こし、今度は生涯を棒にふる危険性もあります。上記のチェックリストに一つでも該当する場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 また、当クリニックにご相談いただくことも可能です。「チェックリストの項目に当てはまって心配なんだけど…」とお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 そもそも脳梗塞とは? 脳梗塞は脳血管障害の一種で、脳の血管が細くなると同時に固まった血液が脳の血管に詰まり、血液の流れが止まってしまう怖い病気です。 重度の脳梗塞だと呂律が回らなくなる言語障害や、言葉が出づらくなってしまう失語障害、体の片側に力が入らなくなる運動障害を前兆として引き起こします。 対して症状が軽い場合は、自然に治ったりと前兆に気が付けないケースあります。 【脳梗塞の前兆】一過性脳虚血発作とは 一過性脳虚血発作は、名前の通り一時的に脳梗塞のような症状が出現し、時間経過とともに(多くは30分程度)自然に改善する病態です。 地震にたとたとえると余震であり、本震の前兆・前触れとして認識するとわかりやすいかと存じます。 つまり、数日以内に「本格的な脳梗塞を起こす可能性」があるため、見逃すことのできない重要な疾病です。実際に、一過性脳虚血発作患者の約15%が90日以内に脳梗塞をきたすとされています。 脳梗塞が起きる原因 前述のとおり、脳梗塞は細くなった血管に血液が固まり、詰まりを引き起こす病気です。脳梗塞の要因はさまざまで、加齢や常習的な喫煙・飲酒等が主に挙げられます。 また、脳梗塞は大きく分けて次の3つに分類されます。 動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞 アテローム血栓性脳梗塞は高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病に伴い、血管壁にコレステロールが溜まる「動脈硬化」が主な原因です。 食事や運動に気を付けることや薬物治療を通して「動脈硬化の進行」を抑えることが予防につながります。 血栓による心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症は、不整脈の心疾患が原因で心臓内に血栓が生成され、血流に乗って脳血管に運ばれることで引き起こされます。 心疾患の早期発見・治療が最善の予防策です。 比較的細い血管が詰まるラクナ梗塞 ラクナ梗塞は「高血圧」が主因とされ、日々の血圧管理が予防につながります。 まとめ|脳梗塞の前兆を確認したら脳専門病院を受診しよう 本記事で紹介した前兆が現れたり、症状に心当たりがあった場合、脳神経内科・脳血管内科・脳外科など脳を専門としている病院を受診しましょう。診療科名は病院によって異なるため、ホームページの確認や、電話で問い合わせをすると良いでしょう。 脳梗塞の前兆発生時は一刻を争うため、ためらわず救急車を呼ぶ必要があります。
2022.10.31 -
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脳梗塞は治る病気なのかな。 脳梗塞になったら、どのくらい入院するのか知りたい。 この記事を読んでいるあなたは、脳梗塞は治る見込みがあるのか、疑問に思っているのではないでしょうか。 「退院できても、重い後遺症で生活に影響が出てしまうのではないか」と不安になることもあるかもしれません。 結論、脳梗塞は、発症してから早期に治療をおこなえば、治る見込みがある病気です。しかし治療が遅れると重篤な後遺症につながり、仕事への復帰や日常生活に影響が及ぶ可能性もあります。 本記事では、脳梗塞の具体的な治療法や後遺症について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳梗塞を治すために必要な治療がわかり、適切に準備を進められるでしょう。 脳梗塞は早期治療によって治る見込みがあります 脳梗塞は早期治療ができれば治る見込みがあります。 ただし発症してから早い段階で適切な検査・治療をおこなわないと、後遺症のリスクが高くなるのも事実です。 本章では脳梗塞における早期治療の必要性や後遺症について解説します。 治療が遅れると後遺症が出る危険性がある 脳梗塞で重い後遺症を出さないためには、発症してから早い段階での治療が必要です。 脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで脳細胞が壊死し、脳機能が低下してしまう病気です。 脳梗塞によって損傷した脳組織を元に戻すことは、一般的な治療では不可能といわれています。そのため、継続的なリハビリによって損傷した部分を補う必要があります。 治療が遅れると後遺症が出るリスクが高まるため、専門機関で早期に治療・リハビリを受けましょう。 脳梗塞の種類と原因 脳梗塞の種類は以下の3つです。 アテローム血栓性脳梗塞 : 首や脳などのより太い血管が詰まることで起こる ラクナ梗塞 : 比較的小さな血管が詰まり、緩やかに症状が現れる 心原性脳梗塞 : 心臓の血栓の一部が血流により脳に運ばれ、血栓を作る いずれも高血圧や脂質異常症、高血糖などの生活習慣病による動脈硬化が原因で発症するケースが多くあります。 発症後は、脳内の正常な血流を回復する急性期治療を実施し、リハビリによって後遺症など二次的影響への治療をおこなうのが一般的です。 脳梗塞の原因や種類については、以下の記事も参考にしていただければ幸いです。 脳梗塞の早期治療に必要な検査とは 脳梗塞に対して早期に治療介入する上で重要になるのが検査です。 脳梗塞の主な検査は以下のとおりです。 身体検査:心臓の音や血圧を測ったり、神経学的診察を行います。 血液検査:血液が凝固する速さ、血糖値、感染症の有無を調べます。 CT検査:脳内出血、虚血性脳梗塞、腫瘍などを調べます。 MRI検査:虚血性脳梗塞や脳出血によって損傷した脳組織を検出します。 頸動脈超音波検査:頸動脈の脂肪沈着物 (プラーク) の蓄積と血流が示されます。 脳血管造影検査:脳と首の動脈を詳細に調べます。 心エコー検査:心臓から脳に移動して脳梗塞を引き起こした可能性のある心臓内の血栓の原因を見つけます。 脳梗塞を診断するためだけでなく、他の考えられる原因を除外する必要があるため非常に大切です。 これらの検査をおこなうことで正しく脳梗塞を診断でき、適切な治療へと導くための大切な治療プロセスになります。 脳梗塞の後遺症と生活への影響 脳梗塞の発症後は、身体の麻痺や言語障害などの後遺症が出るケースもあります。 本章で脳梗塞によって生活にどのような影響が出るのかを理解し、受けるべき治療や退院後の生活について検討しておきましょう。 後遺症の種類 脳梗塞の後遺症に多い症状は以下のとおりです。 後遺症の種類 症状 運動麻痺 歩行が困難になる 日常生活動作が難しい 飲み込みがしにくい(嚥下障害) など 感覚麻痺 温度や触感がわかりにくい 痺れを感じる など 高次脳機能障害 物忘れがひどい(記憶障害) 注意力散漫になり混乱しやすい(注意障害) 言葉が話しにくい、言葉を理解できない(失語症) など 脳梗塞が生じた部位や重症度によって、後遺症の種類・程度も変わる場合があります。 生活への影響 脳梗塞の後遺症により、日常生活にさまざまな影響が出ることがあります。 たとえば、運動麻痺の後遺症がある場合、歩行などの日常動作が難しくなり、食事や入浴、排泄などに介助が必要になるでしょう。 また、高次脳機能障害により、失語症や認知機能の低下がみられる場合は、周囲とのコミュニケーションが難しくなることもあります。 後遺症の種類や程度に応じて、日常動作訓練や言語訓練などのリハビリをおこない、社会・職場への復帰を目指します。 脳梗塞における3つの治療(急性期) 脳梗塞は脳梗塞の急性期における治療法は、主に以下の3つです。 血栓溶解療法(t-PA治療) 血管内治療(血栓回収療法) 抗血栓療法(内服治療) 本章を参考に、脳梗塞の治療に関する理解を深めておきましょう。 血栓溶解療法(t-PA治療) 虚血性の脳梗塞の場合は、血栓を溶かして脳への血流を回復させるアルテプラーゼと呼ばれる薬を注射することで治療できます。 このアルテプラーゼは、脳卒中の発生後できるだけ早く、確実に4.5時間以内に開始すると最も効果的です。4.5 時間以上経過した場合は、薬が出血性脳梗塞による出血を悪化させる可能性があるため、利用できません。 血管内治療(血栓回収療法) 重度の虚血性脳梗塞の場合は、血栓回収療法と呼ばれる血管内のカテーテル治療によって治療できます。 局所麻酔下または全身麻酔下でカテーテルを動脈に挿入し、小さなデバイスを、カテーテルを通して脳の動脈に挿入します。このデバイスを使用して血栓を除去することで、脳への血流が回復します。 血栓溶解療法同様に、脳梗塞後できるだけ早く開始すると最も効果的です。 抗血栓療法(内服治療) 血管の閉塞を治す急性期治療に加え、再発予防として、内服による治療も同時に行います。 1.抗血小板薬(アスピリン/クロピドグレル) アスピリンは抗血小板薬であり、新しく血栓が形成される可能性を減らすことができます。また、クロピドグレルなど、他の抗血小板薬も同時に併用する場合があります。 2.抗凝固剤(ワーファリンなど) 将来、新たな血栓ができるリスクを軽減するために、抗凝固薬を投与されることがあります。ワルファリン、ダビガトランなど、長期間使用できる抗凝固薬があります。 脳梗塞のリハビリについて 急性期治療の後は、できる限り多くの機能を回復するようリハビリに努めることが大切です。それが自立した生活を取り戻すことに繋がるからです。 リハビリには主に急性期、回復期、生活期の 3 つの段階があり、年齢、全体的な健康状態、および脳梗塞による障害の程度に基づいて、リハビリ内容を医師が決定します。 退院後は、同じ病院はもちろんですが、利便性を考慮して自宅の近くなど、別のリハビリ施設で、リハビリを続けることもできます。 リハビリは患者の状態に応じて以下のようなチームで行われます。 医師(脳外科、脳神経内科、精神科など) 看護師 栄養士 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 ソーシャルワーカー 発症後48時間以内の早期にリハビリを開始することで、脳梗塞による後遺症を軽減することがわかっています。 脳梗塞の治療期間・費用 脳梗塞の発症後は、一般的に2〜3カ月間の入院が必要です。入院・治療の期間によってかかる費用も変動します。 本章を参考に、脳梗塞の治療にかかる期間や費用を具体的に把握し、事前に準備を進めておきましょう。 入院・治療期間 厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査」によると、脳梗塞を含む脳血管疾患の平均入院期間は77.4日です。障害のある脳の部位や範囲など、脳梗塞の重症度によって、入院期間は変動します。 軽度の場合は2週間程度で退院できることもありますが、一般的には2〜3カ月の入院が必要になるでしょう。 悪性新生物(がん)による平均入院日数は19.6日であることから、脳梗塞の入院期間は一般的な病気に比べ長いといえます。 また、脳梗塞による入院期間は、年齢によっても差があります。年齢別の平均入院期間は以下のとおりです。 年齢 平均入院期間(平均在院日数) 0~14歳 31.3日 15~34歳 61.7日 35~64歳 51.8日 65歳以上 83.6日 70歳以上 86.9日 75歳以上 93.2日 ※厚生労働省|令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(P13)をもとに作成 高齢で脳梗塞を発症した場合、リハビリが長期化しやすい傾向があります。 脳梗塞になった本人やご家族が高齢の場合、入院が長期化する可能性があることを理解しておきましょう。 費用 厚生労働省の「令和2年度 医療給付実態調査報告」によると、脳梗塞を含む脳血管疾患の平均入院費用は約90万円となっています(健康保険3割負担の場合)。 脳梗塞の入院・治療費は、高額療養費制度を活用することである程度負担を抑えられる可能性があります。 高額療養費制度とは、医療機関などでかかった医療費が1カ月で上限額を超えた場合、超えた分の金額があとから払い戻される制度のことです。 参照:厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ ただし、脳梗塞の医療費は入院期間や重症度などによって変動するため、具体的な金額は医療機関へ確認しておきましょう。 まとめ|脳梗塞を治すなら早めに適切な治療を受けましょう 本記事では、脳梗塞の治る見込みや後遺症、治療期間・費用などを詳しく解説しました。 脳梗塞は早期の治療開始が大切で、適切なリハビリをおこなうことで克服できる病気です。ただし、治療が遅れれば後遺症が重くなる可能性が高まり、日常生活にも大きな影響を及ぼしかねません。 早期の治療開始と適切なリハビリにより、発症前と同じような生活や仕事復帰も可能になるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、国内でも数少ない、自己の幹細胞を用いた再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療で一度壊れた脳細胞を復活させることで、リハビリ効果を高めたり、脳梗塞の再発を予防したりする効果が期待できます。 この記事が脳梗塞における早期治療の重要性を知るのに役立ち、効果的な治療・リハビリを受けるきっかけになれば嬉しく思います。 脳梗塞の治療や入院に関するよくある質問 Q.脳梗塞の治療後、仕事復帰はどのくらいでできる? A.仕事復帰までの期間は、患者それぞれによって異なりますが、基本的には3ヶ月後に退院できるケースが多いようですが、退院してすぐに復帰できるわけではありません。 多くの場合、発症から半年または1年後を目途に復帰できるケースが多いようです。 Q.脳梗塞を早く治すにはどうしたらいいですか? A.脳梗塞を早く治すには、何といっても早期治療が大切です。ただし、早期治療後にすぐに治るというわけではなく、リハビリなど日常生活に戻るには個人差があるのが実情です。 発症後 3ヶ月過ぎると、治りづらくなるため、できるだけ早くリハビリに取り組むことが、早く治すことにつながります。 脳卒中・脳梗塞 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています ▼こちらの参考されませんか
2022.10.28 -
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若年性脳梗塞の実際|要注意「まだ若いから」との油断は禁物です 脳梗塞という病気を聞いたり、知ってはいても高齢者の病気だと思っている方も多いのではないでしょうか?確かに年を取るにつれて脳梗塞の発症率は上昇します。 しかし、若年層、若い人であっても脳梗塞を発症する場合があることをご存知でしょうか。この記事では、20~30代といった若い世代でも起こりうる「脳梗塞」について解説いたします。 脳梗塞とは? そもそも脳梗塞とは、どのような病気なのでしょうか。脳梗塞とは「脳卒中」と言われる病気のひとつで、脳の血管が障害を受けることによって起こる病気の一つです。 脳卒中には脳梗塞以外にも、脳出血、くも膜下出血があります。その中でも脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうことで脳への血流が途絶し、脳の機能に傷害が起こる病気です。 脳梗塞の症状とは? 脳は、場所によって、さまざまな機能を分担していています。脳梗塞になって血流が途絶してしまうと、その部分の機能に障害が起こるということになります。 脳梗塞は、脳の障害を起こす部位によって症状が様々に異なります。 例えば、 ・右手を動かす脳の部位が脳梗塞になれば、右手が動かなくなります ・片方の目から入ってきた情報を処理する部分が脳梗塞になれば、片方の目が見えなくなってしまいます 他にも、脳は感覚や感情、さらには生命維持のために不可欠な様々な機能を担っています。脳梗塞は様々な症状が起こる上に、場合によっては命に関わってくることもあります。 脳梗塞が起こる原因とは? 脳梗塞は、主に3種類に分類されています。 1.アテローム血栓型脳梗塞 1つ目のアテローム血栓型脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が動脈硬化などによってだんだんと狭くなり、ついに血流が途絶したときに起こります。 そもそも動脈硬化が起こると血管は硬くなるだけではなく、血管の壁の中に粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるコレステロールの塊が蓄積してきます。 血管と粥腫の間は内膜と呼ばれる薄い膜で隔たれていますが、何らかの原因で内膜が破綻すると粥腫が血液に触れます。すると血管を修復しようとして血液が凝固します。 もともと狭い血管内で血液が固まりますので血液の流れが完全に途絶してしまい脳梗塞になってしまうのです。大きな血管が詰まると、非常に広い範囲の脳が脳梗塞となってしまい命に関わるような重篤な症状となる事もあります。 2.ラクナ梗塞 2つ目のラクナ梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈の血管の中でも末端の非常に細い動脈に起こる血流の途絶によって起こります。 小さい範囲の脳梗塞のため、症状がない場合もありますが、非常に重要な部分に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうと、重篤な状態となってしまうこともあります。 3.心原性脳塞栓症 3つ目の脳梗塞の原因である心原性脳塞栓症は、脳以外の血管に原因がある脳梗塞です。種々の病気によって、足や心臓の中で血栓という血の塊ができてしまうことがあります。 この血栓が、ある時その場所から剥がれ落ちて血流に乗って脳に届き、血管に詰まってしまいます。血栓のサイズによって症状は様々となります。多くの場合、心房細動という不整脈に伴って心臓内に血栓ができます。 また、普通心臓内では静脈で全身から帰ってきた血液(静脈血)と、肺から帰ってきて全身に送る血液(動脈血)は混ざらないように分かれています。 しかし、先天性の病気で心臓に穴が空くなどして、静脈血が動脈血に混じってしまう人がいます。このような人の場合、足の静脈でできた血の塊が動脈に入り込み、脳へ飛んでしまう事があります。これを奇異性塞栓と言います。 脳梗塞の治療方法とは? 脳梗塞の治療は、発症後なるべく早い時間に血流を再開させることが重要となります。 血液が届かなくなった脳の細胞は時間が経つにつれ、どんどんと壊死してしまいます。血流が途絶した時間が長くなれば、壊死している範囲が広がってしまいます。 血流を早期に回復させることができたら、最小限の壊死でとどめることができますので、後遺症を減らす事ができます。 特に有効とされているのが、血栓を溶かす治療です。しかし出血などの合併症があるため、発症4時間30分以内にしか使用できず、なるべく早く病院を受診する必要があります。 他には、血管内治療と言って、カテーテルという細い管を血管の中に通し、脳の中にまで届かせて血栓を吸い取って血流を再開させる治療も行います。 若年性脳梗塞とは? 脳梗塞の中でも、若年に起こる脳梗塞を特別に若年性脳梗塞と言います。 どのような特徴があるのでしょうか。 若年性脳梗塞とはどのようなものなの? 若年性脳梗塞は、特に国際的に決まった定義はありませんが、日本では国立循環器病センターが50歳以下における脳梗塞と区分しており、その辺りの年齢より若い人に起こるものを若年性脳梗塞と言います。 若年性脳梗塞はどのような原因で起こるの? 若年とはいえ、原因は高齢者に起こる脳梗塞と同様に、動脈硬化によるものが多いです。動脈硬化の原因としては、以下のようなものが挙げられます。 動脈硬化の原因:いずれも生活習慣の乱れから起こるものと言えます。 ・喫煙 ・過度の飲酒 ・糖尿 ・高血圧 ・高コレステロール血症 また、前述の奇異性脳塞栓はどの年代でも起こりえますが、動脈硬化の割合が高齢者より少ない分、若年性脳梗塞においては奇異性脳梗塞の割合が高くなる傾向があります。 つまり、危険因子を持ち合わせると、20代であっても脳梗塞が起こる可能性は十分にあり得るのです。 若年性脳梗塞を予防するためにできること では、若年性脳梗塞を予防するためにはどのような事に気をつければ良いのでしょうか。 生活習慣の見直し 若年性脳梗塞を予防するためには動脈硬化を予防する事が最も重要です。 その為には生活習慣を整えることが必要とされています。 予防方法の例 ・バランスの取れた食事を意識する ・適度な運動をする ・十分な睡眠をとる ・喫煙、飲酒量の見直し ・ストレスを溜めない 塩分の高い食事や栄養が偏った食事、不規則な生活リズム、運動不足は動脈硬化を悪化させます。 さらに、喫煙や飲酒も問題となりますので、禁煙や飲酒量の調整も必要です。 また、ストレスも動脈硬化の原因となります。ストレスを感じていることが多い場合には、ストレス解消を意識することも重要となります。 検診の受診 高血圧や糖尿病、高コレステロール血症は自覚症状がほとんどないため、検診を受けて診断を受け、適切に治療を受ける必要があります。 また、奇異性脳塞栓の原因となる心臓の異常は、検診の心電図で発見されることもあります。 早期に脳梗塞の原因となる芽を見つけ、脳梗塞を発症する前に治療を開始することで脳梗塞を起こさないように対策をしましょう。 まとめ・若年性脳梗塞の実際|要注意「まだ若いから」との油断は禁物です この記事では、若年層、20代でも起こりうる若年性脳梗塞について解説しました。 若年性脳梗塞は、高齢者の脳梗塞に比べて「奇異性脳塞栓」といった特殊な脳梗塞が多いという特徴がありますが、やはり生活習慣病の結果として起こる場合が多くを占めます。 脳梗塞を起こすと、様々な症状が起こります。そして、後遺症を残してしまうことも少なくありません。 普段の生活習慣を改めた上で、医療機関での検診を活用し、若い頃から脳梗塞にならないように気をつけていきましょう。 ご参考になれば幸いです。 ▼合わせて読みたい「脳梗塞」の記事 脳梗塞の原因と種類!知っておきたい合併症と治療について ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.26