-
- 脳卒中
- 脳出血
- 頭部
脳幹出血になったら回復の見込みはあるの? 回復にはどのような治療やリハビリが必要? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血を起こした人が無事に回復できるのか、不安を抱いているのではないでしょうか。 どのような治療やリハビリが必要になるか疑問に思っているかもしれません。 結論、脳幹出血から回復する見込みがあるかは、出血の度合いをはじめとする重症度によって異なります。重度の脳幹出血は回復の見込みがなく、重い障害が残る、あるいは死に至るといったケースも珍しくありません。 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療について、詳しく説明します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の生存率や治療がわかり、今後の見通しを立てられるでしょう。 脳幹出血の回復の見込みは重症度によって異なる 「脳幹」は、脳の中心部にあり、以下のような役割を果たす組織です。 循環 呼吸 眼球運動 体温調節 消化液分泌 自律神経の中枢 どの役割も、人間の生命維持に欠かせないものです。そのため、出血によって脳幹の機能が失われると、手足の麻痺や意識障害、呼吸停止などの重篤な症状を起こす可能性があるのです。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識の有無などの「重症度」によって大きく異なります。 重度の場合は回復が難しい可能性が高いものの、軽度〜中程度の場合は回復が期待できるケースもあります。 脳幹出血は助からない人が半分以上 脳幹出血は半分以上の人が助からないという、以下のような調査結果があります。(文献1) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 発症時に呼びかけや痛みなどの刺激を与えても反応しない意識レベルの場合、回復の見込みは難しいかもしれません。 一般的には、意識レベルの評価指標である「GCS:グラスゴー・コーマ・スケール」が7点以下の場合は、予後不良とされています。 また、意識レベルの低さに加えて、以下のような症状がある場合も予後は悪いといわれています。 高熱 呼吸障害 瞳孔・眼球の異常 手足の麻痺や過緊張 ただし、脳幹出血後の死亡率は、調査によってばらつきがあります。 別の調査では、死亡率を31%や40〜50%としているものもあるため、具体的な回復の見込みは担当の医師へ確認しましょう。(文献2)(文献3) 脳幹出血の死亡率・生存率は発症時の意識状態が重要 脳幹出血の回復の見込みは、「意識レベル」「全身状態」「重症度」など、複数の要因が関係します。 一般的には、以下の要因があると回復の見込みは低いといわれています。 麻痺が重い 出血の範囲が広い 意識不明など、発症時の意識状態が悪い また、脳幹出血の死亡率は、発症時の意識状態や出血量とも関係があります。海外の調査では以下のような死亡率が示されています。(文献4) 意識障害が低く、出血量が少ない場合:2.7% 意識障害が高く、出血量が多い場合:状態によっては100% 重篤な意識障害がみられ、出血量も多い場合は、助からない可能性が高いといえるでしょう。 後遺症の重さは受診スピードやリハビリの進行度によって変わる 脳幹は生命の維持に関わる重要な部位のため、機能が失われると重篤な後遺症が出る可能性があります。 元々の症状の重さに加え、発症後に受診までの時間がかかった場合や、リハビリテーションが進まない場合も後遺症が重くなりやすいでしょう。 しかし、重い後遺症が残ったとしても、諦めないことが大切です。失われた脳細胞や神経の再生は困難ですが、神経細胞群には新たなネットワークを築いて機能が改善する「可塑性」が期待できるからです。(文献5) 医師や理学療法士らの指導のもと、できる限りのリハビリテーションを行いましょう。 なお、半年後に歩けるようになるかは、発症後1カ月の状況で見通しがつくという報告もあります。(文献6) 脳幹出血の治療 出血直後である急性期のおもな治療法は、以下の2つです。 降圧療法:出血部位を拡大させないための治療 全身管理:呼吸や脈拍などをモニタリングして管理する 脳幹出血は他の脳出血と異なり、血腫を除去する手術はあまり適応されません。脳幹は脳の深い位置にあるため、手術の負担が大きく、メリットが少ないためです。 ただし、出血部位が広く、脳内の「脳室」という部位が拡大する「水頭症」になっている場合は、脳内の圧力を下げる「ドレナージ手術」を行うケースがあります。 また、意識状態が悪くて呼吸がうまくできない場合は、人工呼吸器による呼吸管理が必要です。症状が落ち着いて自力で呼吸ができるようになれば人工呼吸器を外しますが、自力で呼吸ができない場合には人工呼吸器を外せないケースもあります。 なお、症状によっては「気管切開」を行い、人工呼吸器の代わりに肺に空気を送るチューブを気管支につなぐこともあります。 【ステージ別】脳幹出血のリハビリの内容 脳幹出血の治療では、薬物治療に加えて、脳や身体の機能を回復させる「リハビリテーション(以下リハビリ)」も非常に重要です。 脳幹出血のリハビリ内容は、以下3つの時期で大きく異なります。 急性期(~3カ月) 回復期(3~6カ月) 生活期(6カ月以降) 本章の内容をもとに、リハビリの流れや概要を理解しておきましょう。 急性期のリハビリ 急性期のリハビリは「二次的合併症の予防」と「早期の機能回復」に重点をおきます。 最初は関節が固まらないためのリハビリを行い、麻痺が回復してきたら自力で動くための訓練へ移行します。具体的なリハビリの例は、以下の通りです。 座位訓練 嚥下訓練 移乗訓練(車いすに移る訓練) 立位歩行訓練 言語機能の回復訓練 近年、早くからリハビリを始めて寝たきりの時間を減らした方が、予後や後遺症の経過が良いといわれています。 脳幹出血は他の脳血管疾患よりも安静度が高いため、初期に行えるリハビリは限られますが、できる範囲で積極的に行います。(文献7) 回復期のリハビリ 急性期のリハビリで回復しなかった場合、「回復期リハビリテーション病棟」で集中的なリハビリを行います。(文献8) また、回復期には「痙縮 (けいしゅく)」という手足の筋肉が緊張して突っ張る症状があらわれます。そのため、ストレッチや筋弛緩薬による適切な対応も重要です。 リハビリを行っても機能回復が困難な場合は、装具の使用やできる方法での動作練習、環境の調節などを行い、自立した生活ができるよう目指します。 生活期のリハビリ 発症6カ月以降の「生活期」は、症状が安定したあとの維持が目的です。 筋肉の痙縮をやわらげる治療や装具の訓練・調整をしながら、日常生活を送れるように環境を整えます。 また、デイケアや訪問リハビリテーションなどの、介護保険を使用したサービスもよく使われます。 まとめ|脳幹出血は程度によって回復の見込みあり!リハビリをしっかりと行おう 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療、リハビリなどを詳しく解説しました。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識状態などの重症度によって異なります。軽症の場合は回復するケースもありますが、意識不明や呼吸障害などがある重症の場合は助からないケースが半分以上です。 脳幹出血のおもな治療は「降圧治療」と「全身管理」です。命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリテーションをできるだけ早期から開始します。 当院「リペアセルクリニック」では、再生治療(幹細胞)による脳卒中の再生医療を実施しています。再生治療は、脳幹出血の再発防止やしびれ、麻痺の改善が期待できる治療です。 もしあなたが脳幹出血の再発予防や治療の選択肢を広げたいと考えているなら、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 この記事が脳幹出血の回復の見込みを知るのに役立ち、今後の見通しを立てる助けになれば幸いです。 脳幹出血の回復の見込みについてよくある質問 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがありますか。 脳幹出血の代表的な後遺症は、以下の通りです。 麻痺 痙縮 感覚障害 言語障害 嚥下障害 排尿障害 高次機能障害 どのような後遺症が出るかは、脳幹出血によってダメージを受けた部位や程度によって異なります。 脳幹出血にならないようにするにはどうしたら良いですか。 脳幹出血は、高血圧が引き起こす「動脈硬化」が大きなリスクとされています。そのため、脳幹出血を防ぐには、高血圧を招く以下の内容を避けることが大切です。 塩分の摂りすぎ 暴飲暴食 運動不足による肥満 脳幹出血の予防については、以下の記事も参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 原発性脳幹出血患者の予後因子,Clinical Neurology and Neurosurgery,Volume 115, Issue 6, June 2013, Pages 732-735 文献2 急性期脳血管障害の臨床的研究,急性期脳血管障害の臨床的研究, 脳卒中, 1980, 2 巻, 4 号, p. 326-332, 文献3 特発性脳幹出血の外科的治療,Medicine (Baltimore). 2019 Dec; 98(51): e18430. 文献4 原発性脳幹出血:予後因子と外科的治療のレビュー,Front Neurol. 2021; 12: 727962.Published online 2021 Sep 10. doi: 10.3389/fneur.2021.727962 文献5 脳の機能回復と神経可塑性,石田和人,玉越敬悟,高松泰行,理学療法学, 40 (8 ) p535-537,2013 文献6 脳幹出血患者の予後予測,木村紳一郎,光眞邦哲ら,脳卒中の外科 39:262-266,2011 文献7 脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針,日本脳卒中学会「脳卒中急性期リハビリテーションの均てん化および標準化を目指すプロジェクトチーム」 文献8 脳卒中理学療法ガイドライン,日本神経理学療法学会
2023.07.10 -
- 脳卒中
- 脳出血
- 頭部
脳幹出血は、四肢麻痺や意識障害など重篤な後遺症が出る可能性のある病気です。 早めにケアをおこなえば回復が見込めるケースもあるので、後遺症が出たら早期リハビリを検討しましょう。 本記事では脳幹出血の後遺症の種類や治療方法を解説します。脳卒中の後遺症に対する有効な治療法「再生医療」も紹介しているので、治療方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがあるのか? そもそも脳幹出血は、脳幹という脳の中でも呼吸活動を司ったり、血圧を保ったりといった、生命活動にとって根幹となる機能をもつ部位に生じる出血のことです。 脳幹出血が起こると、命が助かったときでも後遺症が出る場合があります。 たとえば、両手足が動かなくなる四肢麻痺や、認識力や判断力が低下する意識障害、食事や水の呑み込みが難しくなる嚥下障害などがあげられます。(参考1) また、脳幹の一部である橋(きょう)の場所で出血が起こると、意識障害や全身の麻痺が起こり、出血が広がると呼吸困難となり、重篤な状態になる可能性もあります。ときに、出血量が多い場合には命が助からないケースもあり得るのです。 以下の記事では脳幹出血の後遺症の1つである「運動失調」について詳しく解説しています。具体的な症状や治療法も紹介しているので、運動失調の理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に効果的なリハビリや治療法 ここでは脳幹出血における後遺症の治療に有効なリハビリと再生医療について解説します。それぞれの目的や効果について紹介していくので、後遺症の治療方針を決める際の参考にしてみてください。 リハビリ 脳幹出血による後遺症のリハビリは、発症から以下3つの時期にわけてプログラムを組んでいきます。 急性期:発症から約2週間 回復期:急性期後、体の状態が安定した時期 維持時:回復期後、自宅に戻って生活をはじめる時期 急性期は、早期リハビリが推奨されています。安静状態でベッドに長期間とどまっていると「廃用症候群」(寝たきりによって筋肉の衰えや関節の硬化が起こる症状)を引き起こす可能性があるためです。そのため、急性期は廃用症候群の予防として、ベットの上で手足のストレッチや体位の交換といった軽い運動をおこなうケースが多い傾向にあります。 回復期は、後遺症により失われた機能を回復させるために本格的なリハビリを開始します。症状や重症度は個々によって異なるため、一人ひとりに合わせたプログラムの作成が必要です。リハビリ専門のスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の指導のもと、退院後の自宅での生活や会社復帰に向けた訓練をおこないます。 維持期は退院後、回復した機能の維持や向上を目指すリハビリを継続します。外来リハビリへの通院や自宅でのトレーニングを通して、機能の維持・改善を図っていく流れが一般的です。 以下の記事では脳幹出血のリハビリプログラム について詳しく解説しています。症状別のリハビリ 例も紹介しているので、気になる方は是非参考にしてみてください。 再生医療 脳幹出血の後遺症への治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 脳幹出血の後遺症に対する再生医療では、主に以下3つの効果が確認されてます。 脳神経細胞の再生による身体機能の回復 脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 脳血管の修復による再発予防 順番に解説していくので、詳しく見ていきましょう。 効果1. 脳神経細胞の再生により身体機能が回復する 傷ついた脳細胞を再生医療で修復すれば、麻痺や呂律困難などの後遺症の回復が期待できます。 再生医療に使われる幹細胞は、神経、血管、骨、軟骨などに変化する能力があり、炎症をおさえ症状の痛みや後遺症の痺れを緩和させる効果もあります。 自己の細胞を使用するため、身体への負担が少なく安全な治療が可能です。 効果2.脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 再生医療とリハビリと組み合わせれば、より高い回復効果が期待できます。発症から数年が経過した患者さんでも、幹細胞治療とリハビリの併用で症状改善の可能性が広がります。 再生医療をはじめたからといって劇的に後遺症がなくなるわけではありません。しかし「車椅子の方が杖で歩けるようになった」「呂律困難があったがスムーズな会話が可能となった」といった段階的な改善効果の希望がもてる治療法といえます。 効果3.脳血管の修復による再発予防 脳卒中の怖いところは再発率が高いことです。はじめは軽い症状でも、再発を繰り返せば後遺症が重症化していくリスクが高まります。 再生医療は傷ついた脳細胞を再生させるだけでなく、今後、脳出血や脳梗塞になるかもしれない傷ついた血管を予防的に修復させて、再発をおさえてくれます。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血の後遺症に対する理解を深めて適切な訓練や治療を受けよう 脳幹出血による後遺症の代表的な治療は、リハビリです。回復過程と個人の状態に合わせた適切なプログラムを実施すれば、段階的な症状の改善が期待できます。 近年では、脳幹出血における後遺症の治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、脳細胞の機能回復を促進します。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳幹出血の後遺症に関するよくある質問 最後に脳幹出血の後遺症に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血で後遺症なしの確率はどれくらい? 厚生労働省の調査では、18歳から65歳の脳卒中患者1,584名のうち、後遺症がまったくないと回答した人は344名でした。 つまり、約2割の脳卒中患者は後遺症が出ず、約8割の患者には脳卒中によるなんらかの影響が出ている結果となっています。 以下の記事では、脳出血で後遺症が残らない確率について詳しく解説しています。脳卒中に関する調査結果を複数紹介しているので、理解を深めたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら回復の見込みはあるの? 回復の見込みは、患者さん一人ひとりの状態によって変わってきます。回復見込みを把握したい方は、担当医に聞いてみると良いでしょう。 以下の記事では脳幹出血の回復見込みに関する情報をまとめています。軽度または重度における障害の程度も解説しているので、理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 再生医療のメリット・デメリットが知りたい 再生医療のメリットは、患者さん自身の体から採取した組織を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低く、安全性の高い治療であることです。 また、従来の治療法(薬物療法や手術)が症状の安定化を主な目的としているのに対し、再生医療では損傷した血管の修復や新しい血管の形成を促すのが目的です。そのため、後遺症の根本的な症状改善が期待できます。 一方で再生医療のデメリットは、再生医療は2024年11月現在、保険適用外の自費診療となっているため、治療費が高額になる可能性があります。また、治療効果には個人差があるため、医師との十分な相談のもと慎重な判断が必要です。 【参考文献】 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/49/5/49_5_755/_pdf
2023.07.06 -
- 脳卒中
- 脳出血
- 頭部
脳幹出血になったら余命はどのくらい? どんな症状だったら余命に影響するの? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血になった人の余命がどのくらいなのか気になっているのではないでしょうか。 「今の症状だと、余命はどのくらいなのだろう」と、不安になっているかもしれません。 結論、脳幹出血の余命は症状の重さによって変わります。 脳幹出血のみの余命を調べたデータはないものの、重症の場合は発症後数時間から数日で亡くなるケースも少なくありません。ただ、発症した年齢が若い場合や出血量が少ない場合は、比較的余命に影響が出にくいこともあります。 本記事では、脳幹出血の余命や予後について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の余命が症状ごとにわかり、現在の状況や今後の見通しの理解を深められるでしょう。 脳幹出血の余命に関する正確なデータはないが予後は悪い 脳幹出血だけの余命を調べた正確なデータはありませんが、予後は全体的に悪いといわれています。 重篤な脳幹出血が起こると急激に容体が悪化し、発症後数時間〜数日で亡くなる方も珍しくありません。 脳幹出血は「脳出血」の一種で、脳内にある「脳幹」という部位から出血する病気です。おもな原因は高血圧によって脳の血管が破れることで、脳出血の約1割ほどが脳幹出血といわれています。 脳出血後の余命は、調査対象の年齢や病状が異なるため、研究ごとにややばらつきがあります。生存率に関するデータは、以下の通りです。(文献1)(文献2) 脳出血を起こした人の平均余命は12年 脳出血を起こした人の10年生存率は24.1% 初めて脳出血を起こした人の1年生存率は38%、5年生存率は24% 初めて脳卒中を起こした年齢が50歳以下の人は、70歳以上の人よりも5年生存率が高い つまり、脳出血を起こした人の4人に3人は、余命が10年未満といえます。脳幹出血は上記に示した脳出血のなかでも予後が悪い病気のため、余命は比較的短いと考えられるでしょう。 脳幹出血の後遺症について解説した記事はこちら 脳幹出血の回復の見込みとその期間について解説した記事はこちら 脳幹出血の余命が短くて助からない人が多い理由 脳幹出血の余命が短い理由は、脳幹の機能が失われると生命の維持が難しいからです。 脳幹は「中脳」「橋」「延髄」の3つの部位から成り立つ器官で、以下のように生命維持に重要なさまざまな役割を果たしています。 意識を保つ 呼吸や血液の流れを調節する 身体が受けた刺激を脳へ伝える 手足を動かす信号を脳から出す 脳幹が行っている「呼吸や意識の保持など」が不可能になると、生命の維持は難しくなります。そのため、出血が起こり脳幹の機能が失われると、余命が短いケースが多いのです。 なお、脳幹のなかでも「橋」という部位で起こるケースが多いため、脳幹出血は「橋出血」とほぼ同じ意味となります。 【重症度別】脳幹出血の症状と余命への影響 脳幹出血の重症度は、余命に大きな影響を与えます。具体的には「出血量」は重症度に大きくかかわり、出血量が少なければ軽症、多ければ重症です。 本章で、脳幹出血の症状と余命への影響を理解しておきましょう。 軽症の場合 以下のような症状のみの場合は、軽症で余命への影響は小さい可能性があります。 嚥下の障害 顔の感覚や運動の障害 手足の運動や感覚の障害 複視(ものが二重に見える) 運動失調(バランスが取れずにふらつく) これらの症状は、脳幹出血の前兆で気付いたときや脳出血・脳梗塞など他の脳血管疾患でもみられます。 また、血管の奇形による脳幹出血の場合は軽症で済みやすく、一度の出血で命にかかわることはほとんどありません。 しかし、奇形のなかでも「海綿状血管腫」は出血をくり返して大きくなりやすいため、いずれ重い後遺症が出る可能性があります。 早めの受診で悪化を防ぎ、予後を改善できる可能性を高められます。もし紹介したような症状を感じたら、迷わずに当院へメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてご相談ください。 重症の場合 以下のような症状が出ている場合は、出血の多い脳幹出血の重症例と考えられます。生存率は低く、余命は短いケースが多いでしょう。 両手両足の麻痺 異常な呼吸パターン 重篤な意識障害:昏睡など 中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高熱 除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態 瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼の大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など 救急車を呼んだときは意識あり・自発呼吸ありだったにもかかわらず、急激に悪化して短時間で命を落とすケースもあります。 脳幹出血の治療 高血圧による脳幹出血は手術の適応があまりなく、基本的には血圧を下げて体の状態を保つ「保存的治療」が最優先されます。出血でダメージを受けた脳幹に対しては、手術が状況をより悪化させる危険性が高いためです。 ただし、血管奇形が原因の脳幹出血の場合は、時期をみて手術を検討するケースもあります。 脳幹は手術による合併症リスクの高い部位です。手術するべきか、どのタイミングで手術をするべきかなどは、状況をみて慎重に判断します。 なお、命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリも重要です。近年、リハビリはできるだけ早い時期から始めると予後が良いとされるため、ベッド上でできるものから少しずつリハビリを行います。 脳幹出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 まとめ|脳幹出血の余命は短い人が多い 本記事では、脳幹出血の余命や、余命が短いといわれる理由などを詳しく説明しました。 脳幹は生命維持に欠かせない器官のため、脳幹出血によって機能が失われると余命が短いケースが多くみられます。ただし、軽症や前兆段階で気付いた場合、血管の奇形による脳幹出血の場合は、余命への影響が小さい可能性もあります。 手術のリスクが大きいため、積極的な治療ではなく保存的治療が原則となるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、厚生労働省に届出を行い、再生医療(幹細胞)治療による脳幹出血後の治療を提供しています。 再生医療は脳神経細胞の修復・再生や脳の血管を新しく再生する作用により、後遺症の回復や脳幹出血の再発予防が期待できる治療です。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事が脳幹出血の余命を知るのに役立ち、今後の生活を再建するきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくあるQ & A Q.脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか。 A.入院日数に関する脳幹出血単独のデータはありません。 ただし、厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般の平均入院期間は77.4日となっています。入院期間が比較的長いのは、脳卒中により神経にダメージが起こるからです。(文献3) 神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかることも大きいでしょう。 Q.脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。 A.一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。 すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。 脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありませんが、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。 Q.脳幹出血になったら助からないのでしょうか。 A.脳幹は生命維持に不可欠な器官のため、脳幹出血により機能が失われると助からないケースは珍しくありません。 ただし、脳幹出血で助かるか助からないかは重症度によって異なります。出血量が少なく障害の程度が低い軽症であれば、回復例もみられます。 助かるかどうかは、脳幹出血を初めて起こしたのか、再発なのかによっても異なるため、回復の見込みは医師に確認するのが確実です。 参考文献一覧 文献1 人口ベースのレジストリにおける脳内出血の発生率と10年生存率 Simona Sacco, MD, Carmine Marini, MD, Danilo Toni, MD, Luigi Olivieri, MD, and Antonio Carolei, MD, FAHAAuthor Info & Affiliations Stroke Volume 40, Number 2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19038914/ 文献2 初めての脳卒中から5年生存,Dzevdet Smajlović 1, Biljana Kojić, Osman Sinanović,Bosn J Basic Med Sci. 2006 Aug;6(3):17-22. doi: 10.17305/bjbms.2006.3138. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16995842/ 文献3 厚生労働省. 令和2年(2020)患者調査の概況. 3退院患者の平均在院日数等 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/heikin.pdf
2023.07.03 -
- 脳卒中
- 脳出血
- 頭部
脳幹出血の原因は何? 脳幹出血にならないための予防策はある? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血という病気に対して不安を抱いてるのではないでしょうか。 「今からできる予防法を知りたい」と思っている人もいるかもしれません。 結論、脳幹出血は動脈硬化が原因で起こるケースが多く、再発もしやすい病気です。しかし原因を知れば、適切な予防法を取れます。 本記事では、脳幹出血の原因や予防法について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血にならない方法がわかり、病気のリスクを軽減できるでしょう。 脳幹出血とは「脳幹(小脳・橋・延髄)で起こる出血」のこと 「脳幹」は、小脳・橋(きょう)・延髄という脳の部分を合わせた部位です。「呼吸」「体温調節」「ホルモン分泌」など、人間が生きるために重要な働きをしています。 脳幹出血によってそれらの機能が損なわれると命に関わることもあるため、あらかじめ原因や予防法に関する知識をつけておくことが大切です。 本章では、脳幹の働きや脳幹出血について説明します。脳幹出血の治療や生存率については、以下の記事も参考にしてください。 脳幹は生命の維持に不可欠な働きをしている 「脳幹出血」とは、脳出血の一種です。具体的には、脳のうち「脳幹」という部位の血管が破れて出血することを指します。 脳幹は、「小脳」「橋(きょう)」「延髄」からできており、心臓や呼吸などの生命維持に大きく関わります。各部位の働きは以下のとおりです。 部位 働き 小脳 ・筋肉の緊張や姿勢をコントロールする ・注意・言語・感情などの精神機能をコントロールする 橋(きょう) ・中脳や大脳、延髄などをつないでいる ・呼吸調節に関係する 延髄 ・呼吸や心臓の動きをコントロールする ・咳、くしゃみ、発生、発汗などにも関係する 脳内で出血すると血管からの酸素や栄養が供給されなくなり、脳はダメージを受けます。 また、脳内に血液があふれることで周りの脳細胞が圧迫される、出血により脳内の圧力が高まるなども、脳がダメージを受ける原因です。 出血により脳幹がダメージを受けると、意識不明の重体や寝たきり、ひどい場合は死に至るケースも珍しくありません。 脳幹出血は再発しやすい 脳幹出血を含む「脳出血」は、再発しやすい病気です。 具体的には、脳出血を10年以内に繰り返す確率(10年再発率)は55.6%というデータがあります。つまり、2人に1人の割合で、10年以内に脳出血の再発が起きています。(文献1) 出血によってダメージを受けた脳は、通常の医療技術による回復・修復は困難です。 また、脳出血を再発すると、初回はダメージを受けなかった部分もダメージを受けます。よって再出血時はさらに広い範囲の脳がダメージを受け、重い後遺症が出るケースもあります。 脳幹出血の主な原因は「高血圧による動脈硬化」 脳幹出血の主な原因は、「高血圧による動脈硬化」です。ただし、血圧に問題の無い人の場合、血管の奇形が原因のケースもあります。 本章の内容をもとに、脳幹出血の正しい基礎知識を身につけておきましょう。 脳幹出血後の回復については、以下の記事を参考にしてください。 動脈硬化は高血圧が原因で起こることが多い 脳幹出血を起こす「動脈硬化」は、主に高血圧によって起こると考えられています。 高血圧が動脈硬化を起こして脳幹出血に至る流れは以下のとおりです。 高血圧によって脳の血管に圧力がかかり続ける 動脈硬化が進み、血管がもろくなる 脳の血管が破れて出血が起こる 高血圧は「塩分の取りすぎ」「食生活の乱れ」「ストレス」「喫煙習慣」など、複数の要因が重なって起きるといわれています。(文献2) 「血圧が高くても体調は問題ない」と放置すると、脳出血につながる恐れもあるため、高血圧と診断された場合は医師の指導のもと早めに治療しましょう。 血管奇形が原因のケースもある 脳出血は、「脳動静脈奇形」という脳の血管奇形によって起こるケースもあります。脳動静脈奇形とは、脳の動脈と静脈をつなげる部分が「ナイダス」と呼ばれるとぐろを巻いたような固まり(奇形)になっている病気です。 奇形の部分は正常な血管よりも壁が薄いため破れやすく、20〜40代の若い人が脳出血になる原因の一つといわれています。 なお、奇形自体が痛みなどの症状を起こすことは、ほとんどありません。「脳出血」「頭痛」「てんかん発作」などの病気が出て見つかる、偶然受けた脳の検査で見つかるなどのケースが一般的です。 【今すぐできる】脳幹出血を予防する4つの方法 今すぐできる脳幹出血の予防方法は、以下の4つです。 減塩する 大量飲酒・喫煙を控える 肥満を解消する ストレスを溜めない 本章の内容をもとに脳幹出血の原因となる「高血圧」「動脈硬化」などのリスクを減らし、脳幹出血を予防しましょう。 減塩する 脳幹出血の大きな原因である「高血圧」の予防には「減塩」が有効です。 食塩摂取量の目標は、「健康日本21(第三次)」の目標値では7.0g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。(文献3)(文献4) 日本人は、食生活のなかで食塩の量が多くなりがちです。 以下に、厚生労働省が発信している減塩のコツを紹介します。ぜひ参考にして、毎日の食生活を見直してみてください。 1.漬物は控える 自家製浅漬けにして少量に 2.麺類の汁は残す 全部残せば2~3gの減塩になる 3.新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理 4.具だくさんの味噌汁にする 同じ味付けで薄味の調理 5.むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う 6.低ナトリウムの調味料を使う 酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングを上手に使う 7.香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう、七味、ショウガ、柑橘類の酸味を組み合わせる 8.外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する 引用: e-ヘルスネット(厚生労働省) 大量飲酒・喫煙を控える 大量の飲酒は、脳出血はもちろんのこと、脳梗塞やくも膜下出血のリスクも上昇させます。お酒の飲みすぎは避けましょう。 1日あたりの飲酒量の目安を、以下に紹介します。 ビール:中瓶1本500ml 清酒:1合180ml ウイスキー・ブランデー:ダブル60ml また、たばこの煙に含まれる有害物質は動脈硬化を起こし、脳出血をはじめとする脳の病気のリスクを高めます。(文献5) たとえば、たばこを吸う人は吸わない人に比べ、男性で1.3倍、女性で2.0倍脳卒中(脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞)になりやすいというデータもあります。 お酒の飲みすぎとたばこは、どちらも控えるようにしましょう。 肥満を解消する 肥満の解消も、高血圧に伴なう動脈硬化や脳出血のリスク軽減に役立ちます。 具体的には以下の内容を試してみてください。 週に2~3回、20~30分程度の運動を行う(ウォーキング・息が上がらない程度のジョギング・サイクリング・水泳など) バランスの良い食生活を心がけ、高脂肪、高炭水化物の食事は避ける ストレスを溜めない 過剰なストレスは血管の収縮を引き起こし、血圧を上昇させるため、脳出血の原因となります。 また、ストレスを溜めると、高血圧の原因になる暴飲暴食や過剰な飲酒、喫煙などにつながり、脳出血の間接的な原因になりかねません。(文献6) ストレスを溜めないよう「生活習慣を整える」「困ったことがあれば誰かに相談する」などを、心がけてみてください。 脳出血とストレスの関係については、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|生活習慣を見直して脳幹出血を未然に防ごう 本記事では、脳幹出血の概要や主な原因、予防策などを詳しく解説しました。 「脳幹出血」は脳出血の一種で、呼吸や言語機能に関連する「脳幹」から出血する病気です。最大のリスクは高血圧による動脈硬化ですが、血管の奇形によって起こる人もいます。 脳幹出血を防ぐには、高血圧にならないことが重要です。日頃から食生活や運動などに気を配ると良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療(幹細胞治療)による脳卒中の再生医療を実施しています。通常の保険診療では難しい壊れた脳細胞の再生も、再生医療なら可能です。 当院ではメール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、お気軽にお問い合わせください。 この記事が脳幹出血の基本的な知識を知るのに役立ち、効果的に予防できるきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくある質問 脳幹出血を起こしても助かりますか。 少しでも早く治療を受けることが大切です。脳幹出血は、その部位の役割や特徴から、生命に直結する危険性もある病気です。ただ、早く治療を開始できれば、命が助かる可能性ももちろんあります。 日頃から、高血圧予防などの生活習慣改善に努め、健康診断などを受けて体調管理をしておくことがおすすめです。 脳幹出血は再発するとどうなりますか。 脳幹出血が再発すると、さらに重い後遺症が出ると考えられます。今までダメージが最小限に抑えられていた部分もダメージを受けると、より言語や呼吸の機能が低下するからです。場合によっては、命に関わるケースもあります。 再発を防ぐために、脳幹出血になったことのある人は、医師の指示にしたがってしっかりと血圧のコントロールを行いましょう。 参考文献一覧 文献1 Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Mar;76(3):368-72. doi: 10.1136/jnnp.2004.038166. 文献2 e-ヘルスネット(厚生労働省) 文献3 健康日本 21(第三次)推進のための説明資料 厚生労働省 文献4 日本人の食事摂取基準(2020 年版)厚生労働省 文献5 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について 国立がん研究センター 文献6 舛形尚 ほか.高血圧外来患者の精神的ストレスと血圧コントロールの関係.日本病院総合診療医学会雑誌 2017:12(2)p13-17
2023.06.29 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病がまねく脳梗塞のリスク要因と予防策について解説します もやもや病は脳血管の異常により起こる、原因不明の難病です。 もやもや病は脳梗塞をまねく可能性があり、その先の社会生活に大きな影響を及ぼすことがあります。しかし、上手にリスクに対応できれば、脳梗塞を起こす可能性を少なくすることができます。 この記事では、もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と、予防策を中心に解説をしていきます。 もやもや病ってどんな病気? もやもや病は、一時的に脳内に充分な血液がめぐらなくなる「脳虚血発作」をきたします。 発作時には、麻痺や手足のしびれを起こしたり、うまく言葉がしゃべられなくなったりします。病気が進行すると、てんかんを起こしたり、脳梗塞や脳出血・くも膜下出血を発症したりすることもあるのです。 脳虚血発作は、脳梗塞の前触れともいえる状態です。 この発作は、生活上の注意で避けられることも多くあります。ひとたび脳梗塞が起こると、梗塞部の脳細胞は死んでしまいます。結果、麻痺・言葉の障害や、記憶・注意・感情などに関連する高次脳機能障害といった後遺症をもたらします。 子供と大人での発症の違い もやもや病の発症年齢には、10歳くらいまでと、30〜40歳代の2つの山があります。 子供の場合は、脳虚血の症状で発症することが多いです。 一方、大人では脳虚血の他に、細い血管が破れる出血で発症することもあります。 最近では、自覚症状がないまま、人間ドックなどで、もやもや病が見つかる人も増えています。長年の頭痛の原因が、もやもや病であった、ということもあるようです。 なお、この病気は法律の定める指定難病の一つです。画像検査で診断が確定したうえで、一定以上の重症度と考えられる方には、申請により医療費の補助がおります。 もやもや病による脳梗塞を防ぐには? もやもや病による脳梗塞を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは、前ぶれである脳虚血発作を繰り返さないようにすることです。 〜子供の場合〜 子供の場合、脳虚血発作の多くは過呼吸、つまり激しく息を吸ったり吐いたりすることで起こります。過呼吸により二酸化炭素が体から出ていくと、脳内の血管が縮みます。そうなると、脳の血のめぐりが悪くなり、発作を起こすのです。 脳虚血発作を繰り返している方は、日常生活では、この過呼吸状態を避ける必要があります。 具体的には、次のようなことが挙げられます。 過呼吸につながる行動 激しく泣く 大声で笑う 息が切れるような運動をする 笛やハーモニカ、鍵盤ハーモニカなどを演奏する 大きな声で応援をする 熱いものを「ふーふー」と冷ます こういったことを制限すると、保育園・幼稚園や学校での生活に大きく影響してしまうことになります。保護者や学校の先生など、周囲の大人の理解と協力が必要になります。 また、脱水も脳の血のめぐりが悪くなってしまう原因になります。嘔吐や下痢・高い熱の時は、こまめに水分をとることを心がけてください。暑くなる季節には、熱中症を予防することも重要です。 〜大人の場合〜 大人の患者さんでも、発作を引き起こす行動があれば回避する必要があります。 加えて、脳梗塞の一般的なリスク管理が必要です。高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病をお持ちの方は、しっかり治療を受けてください。肥満であれば体重を減らす必要があります。タバコを吸っている方は禁煙をしてください。アルコールの飲み過ぎは、脱水につながるので気をつけましょう。 脳梗塞のリスク管理 生活習慣の見直し 体重の管理 禁煙する アルコールを飲みすぎない 患者さんの状況によっては、血液をさらさらにするお薬を処方されることがあります。発作を繰り返す場合には、脳の血液の流れを改善するための手術を考えます。ひとりひとり、必要な治療は異なります。どのような治療をどのようなタイミングで行うのか、担当の医師ともよく話し合いましょう。 もやもや病と脳梗塞の関係についてよくあるQ & A Q, 発作が起こったときはどすればよいですか? A, まずは、状況を把握することが重要です。麻痺やしびれなどの症状を確かめましょう。そして、ゆっくり息ができるように休みましょう。 落ち着いたら、どのような状況でどのような発作が起こったのか確認しておくことも大切です。いつもより麻痺・しびれなどが長く続く、意識の状態が悪いなど、「なにかおかしい」と感じた場合は、医療機関を受診しましょう。 Q, この病気の治療や経過の見通しは? A, 脳梗塞・脳出血などを起こしてしまうと、たとえ命にかかわらなかったとしても、運動や言葉の障害や、記憶障害などの高次脳機能障害を残してしまうことがあります。そうなると、社会生活に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。 一方で、適切な管理・治療を受けた方の多くは、最終的には日常生活の制限なく安定して過ごすことができます。そのためにも、定期的に通院し、必要な治療のタイミングを逃さないことが大切です。 まとめ・もやもや病がまねく脳梗塞は、リスクの要因(因子)と予防方法を知って治療のタイミングを逃さないことが大切! 「脳の病気」「難病」といわれると、とても心配になると思います。しかし、適切なタイミングで適切な治療を受けることで、最終的には病気のない人とほぼ変わらない生活を送ることができるようになった患者さんが多くいらっしゃいます。生活上の注意点を守りながらきちんと通院し、担当医と治療方針を相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 冨永ら.もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版).脳卒中の外科 46 (1), 1-24, 2018 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/47 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/209 ▼モヤモヤ病の情報:以下もご覧になりませんか もやもや病の初期症状かもしれません|特徴やサインを知って早期発見を!
2023.06.26 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病を大きくわけると「虚血型」と「出血型」の2種類があります。発症した種類によって初期症状は異なります。 本記事では「虚血型」と「出血型」の違いを明確にした上で、それぞれの初期症状を詳しく解説します。 もやもや病は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を発症する可能性がある怖い病気です。この記事を参考にして初期症状のサインを知り、もやもや病の早期治療につなげていきましょう。 もやもや病の初期症状サイン【チェックリストあり】 もやもや病の初期症状を見る前に、もやもや病の特徴を理解しましょう。 もやもや病とは、脳に血液を送るための血管である「内頚動脈」が、徐々に細くなったり、詰まったりして、脳の血液不足を引き起こす原因不明の病気です。 不足した血液を補うために、細い血管が脳内に異常に発達していきます。血管を造影すると、細い血管が「もやもやした煙」に見えることから「もやもや病」と名付けられました。 もやもや病には、血管が狭くなるのが原因で血液不足を起こす「虚血型」と、増殖した血管が破裂して出血する「出血型」の2種類があります。 それぞれの初期症状のサインを見ていきましょう。 虚血型の場合 虚血型は、脳内の血管が細くなったり、詰まったりして血液不足を起こしている状態です。虚血型の場合、以下のような初期症状が現れます。 頭痛 けいれん 意識障害 言語障害 手足の麻痺 手足のしびれ 虚血型は、血管の狭窄が進行すると脳の組織への血流が完全に途絶え、脳梗塞を発症するリスクがあります。重症化を防ぐためには、早期発見が重要です。疑われる初期症状が見られたら、早めに病院を受診しましょう。 また、血流不足は脳の前頭葉にダメージを与え、高次脳機能障害を引き起こす可能性もあります。前頭葉には感情をコントロールする働きがあるため、高次脳機能障害を発症すれば、性格変化の症状が現れるケースもあります。 もやもや病から発症する高機能障害については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 出血型の場合 出血型は、細かい血管の増加が影響して出血を起こす状態です。出血すると、脳出血、くも膜下出血などを引き起こします。初期症状は、出血の種類によって異なります。 たとえば、くも膜下出血の場合の初期症状は以下のとおりです。 頭痛 めまい 吐き気 視力低下 意識障害 脳出血やくも膜下出血は、運動や感覚の麻痺といった後遺症を残す可能性がある病気です。症状が深刻化する前に初期症状が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。 くも膜下出血や脳出血を含む脳卒中の治療法の1つに「再生医療」があります。身体のしびれや麻痺、言語障害といった後遺症も治療対象です。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ もやもや病の初期症状が現れたら早期に病院を受診する 血管が詰まって脳梗塞を起こした場合や、増加した血管から出血を起こした場合は、手足の麻痺や、言語の障害、脳機能障害などの後遺症が出ることもあります。そのため、早期に診断して専門の病院で治療を受けることが大切です。 以下の記事では、もやもや病が引き起こす脳梗塞のリスクについて解説しています。予防策も紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 適切な治療や管理を受けている場合には、約7割程度の方は症状的に安定して生活を送っていると推計されています。 脳の血管の狭窄は、最初の診断時と同じ状態が何年も変わらない方もいれば、徐々に進行していく方もいるといわれています。従って、定期的にMRIなどによる画像検査が必要です。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療には「内科的治療」と「外科的治療」があります。 「内科的治療」では、詰まりかけている血管の血液の流れを改善する際に、抗血小板剤(血液をサラサラにする薬)、出血の予防を図るときは、血圧・脳圧をコントロールする薬を投与します。ただし、病院によって使用する薬が異なる可能性があるので、内科的治療を進める際は、事前に担当医に確認しましょう。 内科的治療を実施しても効果が不十分な場合や、根本的治療を目指す場合は、外科的治療を検討します。 もやもや病における「外科的治療」は、血行再建術(バイパス手術)です。バイパス手術は主に、頭皮の血管と脳表面の血管を直接つなぐ「直接再建術」と、血流が多い側頭筋や骨膜を脳の表面に置いて接着する「間接血行再建術」の2種類があります。 以下の記事では、もやもや病の手術についてさらに詳しく解説しています。入院期間や手術の成功率なども紹介しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 まとめ|もやもや病の初期症状を感じたら早急に専門家の受診しよう もやもや病の初期症状は、明らかに違和感を感じるような症状もあれば、風邪の症状と混同してしまうような症状もあります。 もやもや病は、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血といった脳卒中を引き起こす可能性のある病気です。なるべく初期症状の段階で病院を受診し、早期治療するのが望ましいといえます。 「なんかいつもの体調不良と違う…」「こんな症状初めて!」などの違和感を覚えたら、もやもや病の可能性も視野に入れて病院の受診を検討しましょう。 もやもや病から発症する脳卒中の治療には「再生医療」が効果的です。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、損傷した脳細胞の機能回復を促進します。 脳卒中の後遺症も治療対象なので、具体的な治療法や効果が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ もやもや病に関するよくある質問 最後にもやもや病に関するよくある質問と回答をまとめます。 もやもや病で手術を受けた方がいい場合は? 内科的治療を試しても効果が見られない場合や、現時点で脳梗塞や脳出血の発症リスクが高いと診断された場合は手術を受けたほうが良いといえます。手術は脳梗塞や脳出血の予防にもつながります。 子どもが発症した場合、年齢が低いほど、脳梗塞や脳出血などの重篤な症状を出しやすいとされているため、診断がついた時点で手術を検討するのが良いでしょう。 もやもや病が遺伝する可能性はありますか? 現在でも詳細な原因は不明であり、必ずしも遺伝する病気というわけではありません。 最近の研究では、もやもや病に関係した遺伝子(RNF213遺伝子)が発見されていますが、病気になる感受性が高くなる「感受性遺伝子」であって、病気の「原因遺伝子」ではないとされています。この遺伝子は、もやもや病がない一般の方にもみられる遺伝子ですので明らかな原因とは言えません。 家族内でもやもや病がみられる家族性のもやもや病は10〜20%であり、遺伝子以外に他のなんらかの要因が加わることで発症するのではないかと推測されています。(文献1) 以下の記事では、もやもや病と遺伝の関係性について詳しく解説しています。具体的な情報が知りたい方は、参考にしてみてください。 もやもや病の初期症状は子どもと大人で違いますか? 子どもと大人は同じ初期症状もありますが、発症しやすいもやもや病の種類が異なるため、症状に違いが見られる場合があります。 たとえば、子どもは虚血型のもやもや病を発症しやすいと言われており、虚血型の初期症状は手足のしびれや麻痺、言語障害などです。 大人は、出血型のもやもや病を発症しやすく、初期症状では頭痛やめまい、意識障害などを生じます。 ただし、子ども・大人どちらとも「虚血型」と「出血型」を発症する可能性はあるので、年齢に関わらず初期症状の知識を広く理解しておきましょう。 以下の記事では、もやもや病における大人と子どもの違いをまとめています。違いを見分ける上での注意点も解説しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 【参考文献】 文献1:https://www.nanbyou.or.jp/entry/209
2023.06.22 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病の手術後にどのくらいで仕事復帰ができるのか、そもそも仕事ができるのか気になっていませんか。 もやもや病のような脳の手術は、長く休まなければいけないのか、以前と同じように仕事ができるのかなど不安は尽きないかもしれません。 結論、もやもや病の手術後は、個人差はあるものの「2週間以上」は静養が必要です。麻痺や感覚障害などの後遺症がある場合は、リハビリを実施し、日常生活・仕事への復帰を目指します。 本記事では、もやもや病の手術後の仕事復帰について詳しく解説します。この記事を参考に、仕事復帰までの期間を把握して今後に備えましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療によるもやもや病をはじめとする脳卒中の後遺症改善・再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 もやもや病の手術後の仕事復帰までは2週間以上かかる可能性がある もやもや病の手術後は個人差があるものの、静養が必要なため、仕事復帰まで2週間以上かかる可能性があります。 もやもや病は、脳の主要な血管(内頸動脈終末部)が徐々に狭くなり、その部分を補うように煙のようなもやもやした細い血管が発達する病気です。 新しく形成された血管は弱いため、血管の壁が破れて脳出血や脳虚血に陥るリスクがあります。脳卒中に発展するリスクがあるため、十分な静養や入院期間が必要である旨を職場に伝えておくと安心でしょう。 しかし、重篤な症状を発症する前に、バイパス手術などの治療を行うことができれば、後遺症なく社会復帰できる可能性が高い疾患です。 ただし、退院後も定期的な診察と検査は欠かせないため、医師の指示に従い受診しましょう。 もやもや病の手術については、以下のコラムで詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 仕事復帰に影響するもやもや病の後遺症5つ もやもや病の術後には、以下の後遺症があらわれる可能性があります。 麻痺 感覚障害 構音(こうおん)障害 嚥下(えんげ)障害 高次脳機能障害 これらの症状は、仕事復帰に影響する可能性があります。本章で後遺症を把握して今後に備えましょう。 麻痺 もやもや病で多いのが、片側の手足が麻痺して動かなくなる症状です。 麻痺の度合いは出血の大きさによって異なります。全く動かない場合もあれば、少しなら動かせる場合もあります。 リハビリで改善は認められるものの、何らかの障害が残り、肉体労働が困難になるリスクも考えられるでしょう。 感覚障害(触感が鈍くなる) 触った感覚が鈍くなる「感覚障害」も後遺症のひとつです。 物に触れたときに分かる温度や硬さ、痛みなどが感じにくくなる症状です。重度の場合は火傷やケガを負っても気づかないことがあるため、業務内容に制限がかかる場合があります。 また、鈍くなるだけではなく、反対に過敏になりすぎるケースもあります。 構音障害(話すのが困難) 口の中または周辺が麻痺して呂律(ろれつ)が回りにくくなる「構音(こうおん)障害」も後遺症としてあげられます。 構音障害になると、文字の読み書きは問題なく行えるものの言葉が不明瞭で鼻にかかったような話し方になる場合が多いです。話すのが困難になるため、対人業務が難しくなるケースがあります。 嚥下障害(飲み込みにくくなる) もやもや病の急性期では、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなる「嚥下(えんげ)障害」が多く見られます。 出血の部位によっては完全な回復が難しいケースがあり、口から食事を摂取できなくなる場合も考えられるでしょう。 また、飲食物が気道に入ってしまい咳が出る「誤嚥性肺炎」が併発する懸念もあります。 そのため、安全に飲み込めるよう食べ物を人肌の温度まで冷ましたり、ペースト状にしたりするなどの工夫が必要です。 思考力低下・注意力散漫 「高次脳機能障害」は、脳で複雑な情報を処理する部位が損傷して記憶力や注意力に問題が起こる後遺症です。 感情のコントロールが難しくなったり、言葉が出にくくなったりすることで社会生活に支障をきたす場合もあります。 高次機能障害によりできないことをリハビリでカバーしたり、業務内容を調整する必要が出てくるでしょう。 もやもや病による高次機能障害について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 もやもや病手術後に仕事復帰するときのポイント もやもや病の手術後に仕事復帰するときのポイントは、以下の2つです。 後遺症がつらい業務は避ける 症状について職場に理解をもらう 退院後に仕事をする際は、後遺症とうまく付き合う必要があります。本章を参考に術後も安心して仕事ができるような工夫をしましょう。 後遺症がつらい業務内容は避ける 後遺症によっては業務内容が限られます。後遺症で業務に支障が出る仕事は極力控えるようにしましょう。 つらい思いをして無理に業務を行った場合、体調を崩したり職場の人間関係が悪化したりするリスクが考えられます。 以下を例に、後遺症の種類に応じて業務内容を検討しましょう。 後遺症 避けるべき業務の例 運動麻痺 肉体労働 言語障害 電話応対 構音障害 接客業 自分の症状に合わせて職場と相談し、無理なくても働ける環境を整えましょう。 もやもや病の症状を職場に理解をもらう もやもや病の手術後、仕事の支障をきたす後遺症がある場合は、業務内容が制限されていることを職場へ相談することが大切です。 つらい症状を共有すると、業務内容や負担の調整をしてもらえる可能性があります。 ただし、職場の理解が得られなかったり、業務の継続が難しかったりする場合は、休職や転職も視野に入れましょう。 もやもや病手術後に気を付けるべき日常生活のポイント もやもや病の術後は以下の点に気を付けるべき日常生活のポイントは、以下の3つです。 1.リハビリは正しく行う 2.処方薬は適切に服用する 3.定期的に診察や検査を受ける 本章を参考に、日常生活の注意点を把握して再発防止や症状の改善を意識しましょう。 リハビリは正しく行う 医師から指示があった場合は、きちんとリハビリを行いましょう。 もやもや病の術後に後遺症が残っている場合は、医師の判断でリハビリを重点的に置いて治療が進められます。 後遺症の種類に応じて、運動療法や言語療法、作業療法などが選ばれます。 個人差はあるものの正しいリハビリを行うことで、後遺症の改善も期待できるでしょう。 処方薬は適切に服用する 脳の血流が不足している場合は、血をサラサラにする抗血小板薬を服用して血行が遮断されないようにします。 根本的な治療にはならないものの、脳卒中の防止になるため薬が処方された際はきちんと服用しましょう。 また、けいれんが見られる場合は抗けいれん薬が処方されることもあります。 定期的に診察や検査を受ける もやもや病の治療では手術の効果を見るために、脳血管の撮影が行われます。 検査の頻度には個人差がありますが、指示があれば必ず受けましょう。 もやもや病の検査ではMRIやCTで脳の画像を撮影されることが多く、自覚症状がなくても異変を確認できます。 術後に無症状で安定している状態でも、半年〜1年の頻度で検査することが大切です。 まとめ|もやもや病の手術後はしっかり休んで仕事復帰に備えましょう もやもや病は、症状や後遺症が個々に異なる希少な疾患です。 手術で後遺症なく社会復帰できる場合もあれば、何かしらの症状が残り介助が必要な場合もあります。回復を焦らずしっかり休むことが、社会復帰につながるでしょう。 本記事がご参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療によるもやもや病をはじめとする脳卒中の後遺症改善・再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ もやもや病についてよくある質問 もやもや病の手術の術後、運動はできますか? 術後の状態が安定していれば、その後の運動制限は少ないでしょう。 ただし、退院後すぐの激しい運動は控えることをおすすめします。筋トレのような本格的に運動を行う際は、必ず事前に医師の許可を得てください。 もやもや病の入院期間はどのくらいですか? もやもや病の入院期間は、2〜3週間程度が目安です。 医師の判断により変動するため、術前に確認しておくと術後の生活が計画しやすいため安心でしょう。 また、退院後も定期的な受診や検査が必要な場合がほとんどです。医師の指示に従い忘れずに定期的な通院をしましょう。
2023.06.19 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「もやもや病の手術は難易度が高いって本当?」「成功率はどのくらい?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 もやもや病は頭の中で血管が詰まる病気で、手術が必要な場合もあります。 しかし脳の手術は難易度やリスクが高いと感じ、不安になるかもしれません。 結論からいえば、もやもや病の手術の難易度は高いといえます。血管をつなぐ繊細な作業が求められ、4~6時間に及ぶ手術になることもあるためです。 この記事では、もやもや病の手術方法の種類や難易度、成功率などを解説しています。もやもや病の手術について理解を深め、治療に前向きに臨むための参考資料になれば幸いです。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳梗塞や脳出血の治療も行っております。 もやもや病に関して気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 もやもや病の手術の難易度は高め もやもや病の手術は、脳の血流を改善するために行われるもので、難易度は高めといえます。 繊細な血管を扱う技術が求められ、一般的な手術と比べて以下のとおり難易度が高いのが特徴です。 本章では、手術の難易度が高いとされる理由や背景を詳しく解説いたします。 血管外科医の高度な技術が必要 もやもや病の手術には、血管外科医の高度な技術が欠かせません。 脳の血管は非常に細く、複雑に入り組んでいます。 もやもや病の手術では、顕微鏡を使用しながらミリ単位の血管を縫い合わせる繊細な作業が必要です。そのため、高度な技術と豊富な経験を持つ医師の執刀が求められます。 したがって、もやもや病の手術は難易度が高いといえるでしょう。 手術時間は数時間に及ぶ もやもや病の手術は、脳の血管を慎重につなぐ作業が続くため、通常4〜6時間ほどかかり、高い集中力が求められます。 とくに、血流を確保する繊細な工程では、一瞬の判断ミスが大きな影響を与えかねません。 そのため、熟練した技術と高い集中力が不可欠です。 難易度の高い手術ですが、具体的な時間など事前に理解を深めておくと不安を軽減できるでしょう。(文献1) もやもや病の手術方法は主に2種類ある もやもや病の手術には「直接バイパス手術」と「間接バイパス手術」の2種類があります。 どちらも脳の血流を改善する目的ですが、アプローチや効果に違いがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。 手術方法 特徴 主なメリット 直接バイパス手術 血管を直接接続する方法 即効性が高い 間接バイパス手術 血管の自然成長を促す方法 身体への負担が少ない それぞれの手術について詳しく解説します。 直接バイパス手術 直接バイパス手術は、頭皮や首の血管を脳の血管に接続する方法です。 この手術は即効性が高く、術後すぐに血流改善が期待できます。 一方で、手術には高度な技術が求められ、執刀医の経験が成功率に大きく影響します。 また、術後の合併症リスクを軽減するため、精密検査や丁寧な経過観察が欠かせません。 間接バイパス手術 間接バイパス手術は、頭皮や筋肉を脳表面に移植して血流改善を促す方法です。 新しい血管の成長を利用するため、身体への負担が少ないのが特徴です。 ただし、直接バイパス手術ほど即効性はなく、効果が現れるまでに時間を要する場合があります。 とくに子どもや血管が細い患者に適しており、長期的な観察と適切なリハビリが重要です。(文献2) また、もやもや病の詳しい症状や治療法については以下の記事でも詳細に解説しているので、参考にしていただけると幸いです。 もやもや病手術の成功率とリスク もやもや病の手術は成功率が高い一方で、いくつかのリスクも伴います。 適切な手術を受けることで8割以上の成功が見込めますが、合併症や少数の脳出血のリスクも考慮する必要があります。 ここでは、成功率と注意すべきリスクについて詳しく解説します。 適切な手術によって成功率は8割程度 もやもや病の手術は、適切に行われれば成功率は8割程度とされています。手術を行うことで、血流が改善し、症状の進行を抑えられる点が大きなメリットです。 しかし、成功率は手術を担当する医師の技術や施設の設備によって異なります。 経験豊富な医師の執刀によって、さらに高い成果が期待できるでしょう。 手術前には十分な説明を受け、不安を解消した上で治療に臨むことが重要です。 合併症のリスクがある もやもや病の手術には、術後の感染症や血管の閉塞など、合併症のリスクが伴います。 これらのリスクを減らすためには、術前の精密検査や術後の経過観察が欠かせません。また、体調を整えて手術に臨むことも大切です。 医師と密に連携し、不安や疑問をしっかり解消しておきましょう。 脳出血を起こす少数事例もあり もやもや病の手術では、少数ですが脳出血の事例も報告されています。血流の変化により脳の負担が一時的に増える可能性があるためです。 ただし、こうしたリスクは経験豊富な医師による適切な対応で抑えられます。また、術後は医師の指導に従い、慎重にリハビリを進めていきましょう。 もやもや病が招くリスクについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 もやもや病の入院期間や予後・寿命について もやもや病の手術後の入院期間は2〜3週間で、リハビリを含めて社会復帰までには1〜2カ月ほどかかるのが一般的です。 ただし、入院期間や回復までの時間には個人差があります。 本章では、入院期間から社会復帰、寿命への影響について詳しく解説します。 入院期間は2〜3週間が一般的 もやもや病の手術後、入院期間は2〜3週間程度が目安です。 術後は脳の血流状態を慎重に観察し、退院後も合併症の兆候がないか定期的な検査を行うことで、寿命へのリスクを最小限に抑えられます。 術前に入院期間を確認し、術後の生活を計画しておきましょう。 社会復帰には1〜2カ月が目安 術後の経過や重症度によって差はありますが、もやもや病の手術後、社会復帰するまでには、通常1〜2カ月程度かかるとされています。 手術後はリハビリを経て、日常生活に戻ることを目指します。 デスクワークや軽作業は比較的早く再開できますが、体力が必要な作業はできるだけ避けたほうが良いでしょう。 医師やリハビリスタッフのアドバイスを受けながら、無理のない範囲で復帰を進めることが大切です。 術後の回復状況に応じて、焦らず段階的に日常生活を取り戻していきましょう。 完全回復には半年以上かかる場合も もやもや病からの完全回復には半年以上かかる場合があるため、その間のケアが重要です。(文献3) 手術で血流が改善されることで、もやもや病による寿命へのリスクは大幅に軽減されます。 ただし、重症の場合や術後の合併症がある場合は、引き続き注意が必要です。 健康寿命を延ばすためには、適切なリハビリと生活習慣の改善が欠かせません。 まとめ|もやもや病の手術は難易度とリスクも理解しておこう この記事では、もやもや病の手術に関する難易度や成功率、入院期間について解説しました。 もやもや病の手術は、脳の血管を扱う繊細な治療であり、難易度は高めといえます。手術を受けるかどうかは、担当医と十分に相談し、納得できる選択を心がけましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳卒中の再生医療も行っております。症状に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ もやもや病の手術難易度に関するよくある質問 もやもや病は寿命に影響する? 適切な治療を受ければ、寿命への影響を最小限に抑えられます。ただし、放置すると脳卒中や血流障害が進行し、命の危険が高まる可能性があります。 手術によって血流が改善されれば、日常生活への支障が減り、健康寿命が延びるケースも多いでしょう。 また、術後も医師の指導に従い、定期的な検診を受ける必要があります。 以下の記事では、もやもや病の初期症状やリスクチェックについて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 もやもや病の手術は何回くらい必要ですか? もやもや病の手術は、基本的に1回で終えるケースが多いです。ただし、血流改善が不十分な場合や再発リスクが高い場合は、追加の手術が検討されることもあります。 1回目の手術で血流が安定すれば、再手術の必要性は低いといえるでしょう。 もやもや病の手術後に運動はできますか? 術後のリハビリを経て、軽い運動が可能になります。ウォーキングやストレッチなどの負担が少ない運動が推奨されます。 ただし、激しい運動は脳への負担が大きいため、術後しばらくは控えるべきといえる医師やリハビリスタッフの指導に従い、段階的に運動量を増やしていきましょう。 手術に失敗して後遺症が出るリスクはありますか? 手術が成功しても、少数ですが後遺症が出るリスクはあります。代表的な例として、軽度のしびれや血管の再閉塞などが挙げられます。 これらのリスクを最小限に抑えるため、経験豊富な医師の執刀と術後の経過観察が重要です。 不安な点は手術前に医師と相談し、納得した上で治療に臨むことが大切です。 もやもや病の後遺症については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、脳疾患の後遺症治療として、再生医療を行っております。後遺症リスクが不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献一覧 文献1 J-Stage_もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版) 文献2 J-Stage_もやもや病に対する間接血行再建術後における皮質および脳溝内の FLAIR 高信号と術後一過性神経脱落症状との関連 文献3 難病情報センター_もやもや病(指定難病22)
2023.06.15 -
- 頭部、その他疾患
- 頭部
もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説 もやもや病とは、脳の太い血管が細くなり、その代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。最近は、無症状でも脳ドックなどで診断される人もいます。 今回は、もやもや病の原因や治療法、そしてもやもや病だと言われた時に注意するポイントについて解説していきます。 もやもや病とは何か? もやもや病は、1950年代に日本で発見されました。昔の検査では、網の目のようになった異常な血管が「もやもや」とみえたことから、「もやもや病」と名付けられたといわれています。 現在、「もやもや病」という名前は世界中で通用する正式名称で、英語でも「Moyamoya disease(モヤモヤ・ディジーズ)」と言います。 もやもや病の原因 もやもや病とは、脳に血液を送る血管の一つである内頸動脈(ないけいどうみゃく)が徐々に狭くなり、詰まっていく病気のことです。*1 脳の太い血管が詰まってしまうので、その代わりに脳に血液を届けるために、異常な血管(側副血行路:そくふくけっこうろ)が網の目のように発達します。 なぜ血管が詰まってしまうのかについてはまだ分かっていませんが、ある特定の遺伝子と関係があるのではないかともいわれています。 また、日本に多くみられるという特徴があります。もやもや病は日本では国の指定難病になっており、申請を行うと医療費助成の対象となる場合があります。*5 *5 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460#taisho 引用)*1 もやもや病…ここまできた診断・治療 p2 http://jcvrf.jp/general/pdf_arekore/arekore_117.pdf もやもや病の症状 もやもや病は、大きく分けると、脳血流不足で発症と、脳出血で発症の2つの場合があります。 最近では、ほぼ無症状で発見されるタイプも増えていますが、たとえ無症状であっても、脳梗塞や脳出血のリスクは年2〜3%あると考えられています。 発症原因 (1)脳血流不足で発症 (2)脳出血で発症 (1)脳血流不足で発症する場合 大きな脳の血管が詰まることで、血流不足が起こります。 すると、急に「手足が動かしにくい」、「顔面や手足がしびれる」といった症状が生じます。 (2)脳出血で発症する場合 不足した脳の血流を補うために発達したもやもや血管は、長年負担がかかることで破れてしまうことがあります。 激しい頭痛とともに、意識障害、手足の麻痺、言語障害などが起こることがあります。出血が多い場合には生命に関わることもあります。 その他の症状 その他、小児の場合には、朝方に吐き気を伴う強い頭痛が続くという場合もあります。 また、頻度は高くありませんが、けいれん(ひきつけ)の症状が出ることもあります。この場合は、脳波の検査では特徴的な波形が出ることが知られています。 もやもや病といわれたらどうすればいい? では、ここからはもやもや病の治療方法や、もやもや病についてのよくある質問について説明します。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療は、もやもや病による脳梗塞や脳出血を予防する方法となります。 もしも脳梗塞や脳出血を発症してしまった場合には、その治療を行っていきます。 脳血流量を増やすためのバイパス手術 脳の血流量を増やすために、新しい血液の流れを作るためのバイパス経路を作る手術療法があります。 血流が不足するタイプのもやもや病の患者さんが脳梗塞を起こすのを防ぐ効果が認められています。 抗血小板薬の内服 脳血流不足で発症した場合には、血液の中の血小板(けっしょうばん)という成分の機能を抑え、血液を固まりづらくする抗血小板薬が使用されることもあります。 一定の効果があると考えられていますが、こうした治療薬のみでの治療には限界があるようです。 もやもや病についてよくある質問 それでは、もやもや病といわれた場合に、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 もやもや病に関してよくある質問に答える形で、解説していきます。 Q1 脳の血管の詰まりなどは進行しますか? A 脳の血管の詰まりについては、最初に診断されたときと同じ状態が何年間も変わらない人もいれば、だんだんと進行していく人もいるといわれています。 そのため、定期的なMRIなどによる検査が必要と考えられます。 Q2 もやもや病でも普通の生活はできるの?注意点はありますか? A 手術によって脳血流がよくなった場合には、生活上の大きな制限はないと考えられます。 一方、打撃系の格闘技(ボクシングなど)やラグビーは、脳への強い振動などが懸念されるのでおすすめできません。サッカーのヘディングについても、大丈夫かはまだわかっていません。 また、成人の場合には、タバコは好ましくありません。タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる働きがあるので、もやもや病を抱えている場合にはタバコは禁物です。 また、お酒については、飲みすぎるとおしっこの回数が増え、脱水症状につながるおそれがあるので、たくさん飲むことは避けましょう。 Q3 もやもや病と診断されたら、必ず手術が必要ですか? A 基本的には、症状が頻繁にはないときには手術の必要はありません。 しかし、成人の場合で、症状がある、脳血流検査で脳の血流が著しく低下している、あるいは過去に脳出血を起こしたことがある場合には、一般的には手術が勧められます。 小児の場合には、将来症状がでることを予防するために、手術となることが多いです。 最終的には、検査結果や患者さんの年齢や状況を総合的にみて、手術適応が決まります。 まとめ・もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説 もやもや病は、脳の太い血管が詰まってしまうことで起こる病気です。根本的な治療法は、手術で脳の血流を改善することですが、それぞれの症状や年齢によって対応方法は決まっていきます。 今回の記事が参考になれば幸いです。
2023.06.05 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
脳梗塞にはどんな合併症があるのだろう? 合併症が起きたらどうなるのかな。 この記事を読んでいるあなたは、脳梗塞にはどのような合併症が起こるのか、不安に思っているのではないでしょうか。「どのように治療されるか知りたい」と思っているかもしれません。 結論、脳梗塞には代表的な5つの合併症があります。各合併症は原因や症状が異なり、完全に防ぐのは困難です。 本記事では、脳梗塞の合併症について、種類や治療法、予防法を解説します。記事を最後まで読めば、脳梗塞の合併症についての基本的な内容がわかり、看護・介護にも役立つでしょう。 脳梗塞の代表的な5つの合併症 脳梗塞には、以下5つの合併症があります。 【発熱して熱が続く】体温調節障害 誤嚥性肺炎 脳や消化管からの出血 血管性認知症 サルコペニア 本章の内容をもとに、合併症の症状・概要を理解しておきましょう。 【発熱して熱が続く】体温調節障害 脳梗塞の合併症として、発熱が続く体温調節障害が起こることがあります。 体温は脳の中枢で管理されており、脳が障害を受けると体温調節中枢も障害され、発熱することがあるのです。 なお、重度の脳卒中の場合、発症から数時間後に大幅に体温が上昇するケースもあります。(文献1) 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎とは、自分のつばや痰、食べ物などが、食べ物の通り道「食道」に入らずに、呼吸をつかさどる「気管」に入るために起こります。食べ物が気管に入ったときに細菌をいっしょに吸い込むことで、肺炎となるのです。(文献2) 誤嚥性肺炎は、脳梗塞の影響で飲み込み機能が落ちている方や、意識障害が起きている方によくみられます。 代表的な症状は、以下のとおりです。 発熱 咳 膿のような痰 しかし、「なんとなく元気がない」「食欲がない」など、呼吸に関係のないあいまいな症状のみが出るケースも珍しくありません。 脳や消化管からの出血 脳梗塞を起こした人は、再発を防ぐために「血液をサラサラにして詰まりにくくする薬」を服用するケースが多くあります。 しかし、血液をサラサラにする薬には、血管が詰まりにくくなる効果がある一方、脳や消化管(胃や腸)の出血が起こりやすくなる副作用もあります。 脳や消化管からの出血による健康上の不安点は、以下のとおりです。(文献3) 脳出血:麻痺の悪化や死亡のリスクがある 消化管出血:貧血によって全身状態が悪化するリスクがある 副作用はあるものの、血液をサラサラにする薬は脳梗塞の再発予防に欠かせない薬です。 医師・看護師・薬剤師による薬の説明をよく聞き、注意点を守ることが大切です。 血管性認知症 脳梗塞によって、「血管性認知症」という記憶の乱れや運動麻痺などの認知症があらわれるケースがあります。血管性認知症は、認知症の中でアルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い病気で、おもな症状は以下のとおりです。(文献4) 認知症:実行機能障害や注意障害 非均一な高次機能障害:俗にいう「まだら認知症」 局所脳機能障害:運動麻痺、構音・嚥下障害、脳血管性パーキソニズム どのような症状が出るかは、脳梗塞によって機能が低下した脳の部位や、機能障害の程度によって異なります。 サルコペニア サルコペニアとは、全身の筋肉量が減り、筋力が低下する状態です。筋肉が落ちると寝たきりになりやすく、死亡リスクも高くなることがわかっています。(文献5) 脳卒中を発症して2週間たった状態では、45.5%の人がサルコペニアになっていたという報告もあるのです。 当院「リペアセルクリニック」では、脳梗塞を含む脳卒中に対する再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。また、治療と並行して理学療法士、柔道整復師、鍼灸師などを含むチーム体制によるリハビリテーションも可能です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けています。どうぞ気軽にお問い合わせください。 脳梗塞の合併症が起こる原因は症状によって異なる 脳梗塞の合併症が起こる原因は、以下のとおりです。(文献6) 合併症の種類 原因 体温調節障害 視床下部の損傷 脳血流の病理学的変化 代謝異常 神経性炎症反応 誤嚥性肺炎 細菌感染(肺炎球菌・口の中の常在菌) 脳や消化管からの出血 血液をサラサラにする薬の効きすぎ 血管性認知症 脳梗塞による脳細胞のダメージ サルコペニア 寝たきりによる筋肉量の低下 それぞれの合併症は起こる原因が異なり、完全な予防は難しいのが現実です。 脳梗塞の合併症が起こったときの対処法 脳梗塞の合併症が起こったときのおもな対処法は、以下のとおりです。(文献2)(文献4)(文献7) 合併症の種類 対処法 体温調節障害 通常は解熱鎮痛薬で対処的に治療 誤嚥性肺炎 基本的には抗菌薬の投与をおこなう 場合によっては酸素を投与する 口腔ケアの徹底や飲み込む力を高めるリハビリにより、予防に努める 脳や消化管からの出血 血液をサラサラにする薬を一時的に中止する 血液製剤や血小板輸血等の投与を考慮する 脳内出血の場合は血圧を下げる出血を止める薬を投与する 血管性認知症 血圧コントロールや生活習慣の適正化による脳梗塞の再発予防が重要とされる 脳の循環をよくする薬を投与するケースもある 身体機能の低下を防ぐリハビリをおこなう サルコペニア リハビリをはじめとする運動療法をおこなう アミノ酸の摂取を増やす栄養療法をおこなう サルコペニアを防ぐために、早めからのリハビリをおこなう 脳梗塞の発症後は、合併症ができるだけ起こらないよう、薬の量や体調変化を慎重に観察しながら治療をおこないます。どの合併症も早めの対応が重要なため、気になる症状がある場合はすみやかに受診しましょう。 脳梗塞後のリハビリについては、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|脳梗塞の合併症がみられたらすぐに受診しよう 脳梗塞は、「体温調節障害」「誤嚥性肺炎」「脳や消化管からの出血」「血管性認知症」「サルコペニア」などの合併症リスクがあります。 合併症を完全に防ぐのは困難なため、気になる症状がみられたらすぐに受診するようにしましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、脳梗塞をはじめとする脳卒中に対して再生医療(幹細胞)をおこなっています。再生医療は、脳梗塞後の後遺症が改善する、リハビリ効果を高める、再発予防になるなどの効果が期待される治療法です。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳梗塞の合併症についてよくある質問 脳梗塞になりやすい人の特徴は何? 脳梗塞の危険因子として「生活習慣病」が挙げられます。 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などがリスクとなるため、健診で異常を指摘されている方は早めに治療を受けるようにしましょう。 脳梗塞になりやすい人については、以下の記事で詳しく説明しています。 脳梗塞の前兆にあたる症状は? 脳梗塞の前兆とは「急に手足や顔の麻痺やしびれが出る」「言葉が出てこない」などです。 これらの症状は時間が経つと改善するケースもありますが、「一過性脳虚血発作」といわれる脳梗塞の前兆の可能性があります。原因は、動脈硬化や心臓の病気などにより一時的に脳の血流が悪くなることです。 脳梗塞になる危険性があるため、一過性脳虚血発作がみられたらすぐに受診しましょう。 脳梗塞の前兆については、以下の記事も参考にしてください。 脳梗塞の合併症を予防する方法は? 現代の医学でも、合併症の完全な予防は困難です。合併症のリスクを下げるために、医師、看護師の指示を守り、適切な治療を受けましょう。 また、胃潰瘍の既往がある方は、胃酸の分泌を抑えるお薬を服用して消化管出血のリスクを下げる場合もあります。 参考文献一覧 文献1 Boysen G, Christensen H. Stroke severity determines body temperature in acute stroke. Stroke. 2001 Feb;32(2):413-7. doi: 10.1161/01.str.32.2.413. PMID: 11157175. 文献2 誤嚥性肺炎|日本呼吸器学会 文献3 重篤副作用疾患別対応マニュアル|出血傾向 文献4 猪原 匡史,血管性認知症,日本内科学会雑誌109:1519~1525,2020 文献5 田中 勝人,田中 健太,巨瀬 拓也,高橋 雅幸,釜﨑大志郎,大田尾 浩,急性期脳卒中患者のサルコペニアの有病率と特性,理学療法さが・第7巻第1号・21~27,2021年2 月 文献6 Gowda R, Jaffa M, Badjatia N. Thermoregulation in brain injury. Handb Clin Neurol. 2018;157:789-797. doi: 10.1016/B978-0-444-64074-1.00049-5. PMID: 30459041. 文献7 サルコペニア診療ガイドライン2017年度版|日本サルコペニア・フレイル学会
2023.04.19 -
- 脳卒中
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「シャンプーの時、頭に何か当たって痛い」 「頭のコブ、押すと痛いけど病院に行った方がいいのかな…」 頭にできたできもの(こぶ)に、上記のような不安を感じていませんか? 押すと痛い頭のできものは、ニキビのようなものから注意が必要な病気まで様々な原因が考えられ、もしかしたらそれは重大な病気のサインかもしれません。 本記事では「押すと痛い頭のできもの」について解説し、痛みが生じる頭のできもの(こぶ)で考えられる疾患から、受診の目安や受診先の提案まで詳細に紹介します。 そして、もし現時点で不安を感じる方は、どんなお悩みでも当院までお気軽にお電話ください。 >>今すぐ電話してみる 「たかがコブ」と油断せず、重要なサインを見逃さず、対策のアプローチをしていきましょう。 また、現在当クリニックの公式LINEでは症状に関する無料診断で、再生医療に関する限定特典をプレゼントしておりますので、ぜひご活用ください。 押すと痛い頭のできもの(こぶ)は何?考えられる疾患を紹介 シャンプーで頭皮に触れたときや髪をかきあげたときなど、ふとしたタイミングで頭に「こぶ」ができていることに気づいた経験はありますか? 放置により自然治癒した場合は問題ありませんが、押したり触れたりすることで痛みが生じる場合は不安ですよね。 そこでこの項目では、押すと痛い頭のできものの原因やこぶの種類について紹介します。 頭にできる「こぶ」の種類 まずは頭にできるこぶの種類を把握しておきましょう。 頭のこぶは大きく、皮下血腫・感染症・皮膚炎・腫瘍に分類されます。各こぶの症状や特徴を順番に見ていきましょう。 皮下血腫(たんこぶ) 皮下血腫はいわゆる「たんこぶ」のことです。頭をぶつけた際に、皮膚の近くの血管が切れてしまい、血溜まりを作ってしまった状態です。 皮下血腫自体は特に治療をせずに治ることが多いですが、頭を打撲して嘔吐したり、意識が低下したり、打撲した前後のことを覚えていなかったりする場合にはすぐに受診をするようにしましょう。 感染(ニキビ) ニキビは皮脂が毛穴を閉塞し、アクネ菌が増殖することで炎症を起こします。ニキビといえば顔のイメージがありますが、頭皮にも起こることはあります。 肌荒れを含むニキビの発生要因は免疫力が関わっているケースがあることから、何度も繰り返し継続的にニキビができてしまう状態はあまりよろしくありません。 また、毛包炎・毛嚢炎は毛穴に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が感染することで炎症を起こす疾患です。どちらも菌により炎症が起こるので、押すと痛い、赤く腫れることがあるのが特徴です。 ▼免疫については下記をご確認ください 皮膚炎 頭皮がシャンプーや整髪料、髪染めなどに反応してしまい、炎症を起こす接触性皮膚炎もこぶ・できものの原因になります。ただれ、水ぶくれが多く、大きなしこりはあまり起こりません。原因となるものを使用しないことが重要です。 腫瘍 腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。医療機関でのご相談をお勧めします。 良性の腫瘍(粉瘤・脂肪腫) 良性の腫瘍には「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤は、毛穴の一部に皮脂などが溜まって、袋状となった良性の腫瘍です。柔らかいしこりとして触れ、痛みはあまりありません。 内部で細菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、痛くなったり膿が出たりすることがあります。脂肪腫も良性の腫瘍です。同じく、柔らかいしこりとして触れます。 悪性の腫瘍 頭皮にできる悪性腫瘍には、「有棘細胞癌」や「悪性黒色腫」があります。触るとごつごつしたり、硬いという特徴があります。また、潰瘍となって液体が出てきたり、血がでたりすることもあります。 一般に良性のものでは大きさは変わらずに経過することが多いです。しかし、小さな「イボ」として感じていたものがどんどん大きくなっている、血が出ているなどは悪性を疑う情報となります。 「こぶ」と脳卒中の関係は? 頭は外面から、皮膚・骨膜・頭蓋骨・硬膜・くも膜・軟膜・脳とたくさんの層構造になっています。 頭蓋骨という非常に硬いもので分け隔てられているので、皮膚のできものと脳卒中に直接的な関係はありません。イボやこぶとして触れる病気は、主に頭の皮膚に起こることが多いです。 逆に脳卒中になっても、頭皮にこぶができることもありません。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤も、皮膚の上から触れるものはありません。脳卒中が考えられる症状は、突然起こることが特徴です。 脳の発症部位によりその症状は様々ですが、代表的な脳卒中の症状は、以下のようなものです。 脳卒中の後遺症に対しては、再生医療による機能回復を目指す治療法も研究されています。 上記に当てはまる方や脳卒中について不安な方は、LINEで限定配信中の脳卒中に対する症例についてご確認ください。 ▼再生医療の情報を無料で配信中! >>公式LINEはこちら 【注意!】頭の「こぶ」で受診したほうが良いケース こぶや、しこりが赤く腫れて痛い場合、膿が出てくる場合は感染症の可能性があります。切開や抗菌薬を投与したほうが速やかに治る可能性があるため、数日待っても良くならない場合は受診をおすすめします。 こぶやしこりが大きくなっていたり、数が増えたりする場合は悪性腫瘍を考えなければなりません。早めの受診をしましょう。 また、頭をぶつけた際にできたこぶが、どんどん大きくなっている、意識の状態が悪くなっている、話しづらさや手足の動きづらさが出てきたりするなどの場合は、早急に受診をするようにしましょう。 頭の「こぶ」についてよくある質問 頭にできるコブについて患者様から、よく頂く質問から抜粋して記載します。 小さな時からある頭の「こぶ」は、どうしたらよいですか? 幼少期から長期間ある場合は、重篤な病気である可能性はそこまで高くはないでしょう。見た目として気になる場合、赤みや痛みなど新しい症状がでた場合、大きくなる場合は受診するようにしましょう。 頭の「こぶ」は何科を受診したら良いですか? 皮膚科は形成外科を受診するのが良いでしょう。 頭のこぶやしこりが気になるのなら、皮膚科もしくは形成外科を受診しましょう。頭をひどくぶつけて、皮下血腫(たんこぶ)ができた際には、脳外科を受診するのが良いでしょう。 受診する際は、いつ頃からできているか、できものに心当たりはあるか、痛みはどうか、他に症状がないかを言えるようにすると、正確な診断に繋がりやすいです。 頭の「こぶ」に痒みがある場合どうしたら良いですか? まずは頭を清潔にしましょう。シャンプーや整髪料を変えたなどがあれば、一時的に使わずに様子を見るのがおすすめです。 かゆみがひどくて掻きむしってしまう場合は、皮膚科などを受診するとよいでしょう。 まとめ|頭のできもの(こぶ)に少しでも異常を感じたら早急に受診をしよう! 頭の「こぶ」は自分では見えない部分なのでより不安にも感じやすいと思います。 「こぶ」の原因は、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍などさまざまな原因が考えられます。一般的には良性のものが多いのですが、痛みや腫れがひどい場合や、悪性腫瘍が疑われる場合は、早めの受診をお考え下さい。 尚、頭皮の「こぶ」と脳卒中との関係はありませんし、頭のこぶが脳卒中の前兆というわけでもありません。脳卒中の症状は突然起こることが特徴的であり、言葉が出づらい、手足の動きが鈍くなるなどの症状があります。 頭に「こぶ」ができた際は、症状や変化に注意し、必要に応じて早めに医師の診断を受けることが重要です。 特に痛みや膿がある場合、大きくなっている場合、数が増えている場合は、感染症や悪性腫瘍の可能性があるので、お近くの皮膚科や形成外科、脳外科など、早急に受診をしたほうが良いでしょう。 また、もしも緊急性が高いと判断される状態で近くにすぐ相談できる先がない場合は、当クリニックでもご相談を承っています。 ▼メール相談も受け付けております >>公式LINEで確認する
2023.04.17 -
- 脳卒中
- 頭部
- 頭部、その他疾患
頭痛はありふれた症状であるものの、同時に吐き気を伴って悩んでいる方もいるのではないでしょうか。 頭痛といってもさまざまなタイプがあり、とくに同時に吐き気の症状が現れるケースには注意が必要です。 この記事では、吐き気を伴う頭痛にはどのような疾患があるのか、どのように対処すべきかをご紹介します。危険な頭痛とそうでない頭痛を知ることで、今の状態にあわせた対策がとれるようになるでしょう。 頭痛と吐き気があるときに注意すべき症状【該当する場合はすぐに受診を】 頭痛にはいくつかの種類があり、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」の2つに分類できます。一次性頭頭痛は、原因となる疾患が特定できない種類の頭痛です。 一方で、二次性頭痛は原因の疾患が特定できる頭痛のことです。 頭痛に加えて吐き気がある場合、二次性頭痛の可能性があり、そのほかにも以下のような特徴があります。 このような症状や状態に心当たりがある場合、脳卒中の発症リスクもあるため、医療機関への受診をおすすめします。 頭痛には「吐き気を伴う怖い頭痛」と「怖くない頭痛」がある 頭痛には、吐き気を伴う怖いものと怖くないものがあります。一次性と二次性に当てはまる頭痛の詳細について、以下の表にまとめました。 このように、一次性頭痛は厄介な種類が多いものの、二次性頭痛と比べると命に関わることは少ないといえます。とくに多くの方が経験する頭痛は一次性の緊張型頭痛であり、この場合はそこまで心配する必要はありません。 吐き気を伴う怖い頭痛の種類 吐き気を伴う怖い頭痛としては、おもに以下の3つがあげられます。 脳卒中 髄膜炎 片頭痛 ここでは、それぞれの詳細について解説します。 脳卒中 脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることで起こる疾患の総称です。具体的には、以下の3つに分類されています。 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 脳卒中による頭痛は吐き気を伴うことが多く、脳出血や脳梗塞の場合は、そのほかにも以下のような症状を合併するケースもあります。 意識障害 ろれつの悪さ 視野の狭窄 ふらつき めまい くも膜下出血の場合は突然発症し、今までに経験したことがない強い頭痛が現れるのが特徴です。このような症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 脳卒中の前兆について知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方はぜひこちらもご覧ください。 髄膜炎 髄膜炎は、脳や神経を包む「髄膜」という膜に炎症が起きたものです。おもな原因は細菌やウイルスなどですが、がんや薬剤によって発症するケースもあります。 以下のような症状のほか、「髄膜刺激症状」という首を前に曲げると現れる痛みが特徴的です。 頭痛 嘔吐 発熱 下痢 このような症状から、風邪と間違われることも珍しくありません。髄膜炎は子どもでも起こることがあり、頭痛や嘔吐がみられる場合はすぐに医療機関を受診して検査を受けてください。 片頭痛 吐き気を伴う一次性頭痛として割合が多いのが、片頭痛です。片頭痛は20〜40代の女性に多く発症し、こめかみから側頭部にかけてズキズキと脈打つような頭痛が生じます。 また、頭痛が起きる前には閃輝暗点(せんきあんてん)という、視野にギザギザした光がちらつく前兆が現れる場合もあります。 片頭痛を発症した際は光や音、においなどが過敏になる場合があるため、暗く静かな場所で安静にすると良いでしょう。血管が広がって血行がよくなると症状が悪化する恐れがあるので、以下のような行動はなるべく避けてください。 長風呂をする マッサージを受ける お酒を飲む 片頭痛がひどい場合は、医療機関を受診して症状をやわらげるための薬を処方してもらいましょう。 怖くはないが厄介な頭痛の種類 命に関わるような症状は現れないものの、厄介な頭痛はいくつかあります。ここでは、そのような頭痛についてご紹介します。 緊張型頭痛 緊張型頭痛とは、身体・精神的なストレスによって起こる頭痛のことです。多くの方が経験する頭痛は、基本的にこの種類とされています。 筋肉の凝りや精神的な問題が関係しているとされていますが、明確な原因はわかっていません。頭が締め付けられるような痛みを伴うものの、問題なく仕事や家事を行えるケースが多い傾向にあります。 しかし、症状が慢性化すると日常生活に悪影響が現れる場合があります。 群発頭痛 群発頭痛とは、目の奥や頭の側方に強い頭痛が起こる種類のものです。頭痛が続く時間は約15〜180分とムラがあり、頻度も2日に1回、多い場合は1日に何度も発症することがあります。 一度発症すると、毎日頭痛による発作が繰り返し起こるのも特徴です。激しい痛みのほかにも、充血や眼瞼下垂(まぶたが下がること)などの症状が現れることがあります。 頭痛の予防法・対処法 ここでは、頭痛の予防法や起きた際の対処法について解説します。頭痛による症状の原因や治し方などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。興味がある方は、ぜひこちらもご覧ください。 医療機関を受診する 頭痛に悩んでいる場合は、まずは医療機関への受診がおすすめです。無視できないような頭痛を放置すると、命に関わる恐れもあります。 なかには頭痛ではなく、別の病気の可能性も考えられます。頭痛は脳卒中や髄膜炎など、脳に関係する病気の症状として現れるケースもあるので、心配な方は脳ドックを受けるのも良いでしょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 頭痛のパターンを記録する 頭痛のパターンを記録しておくことで、発症のタイミングを把握して対処しやすくなります。頭痛は種類によっては、一定のパターンで起こるものもあります。 たとえば、片頭痛や緊張型頭痛にはパターンがあり、どのタイミングで起こるのかある程度の予測が可能です。頭痛が起きたタイミングを記録しておくことで、いつ薬を服用すべきかがわかるでしょう。 まとめ|吐き気を伴う頭痛は早めの受診を! 頭痛は誰もが経験したことがある一般的な症状で、おもに一次性と二次性の2種類に分かれています。 一次性頭痛は命に関わることは少ないですが、二次性頭痛は種類によっては深刻な状況に陥る可能性があります。とくに吐き気を伴う頭痛は、脳卒中や髄膜炎などの深刻な病気のサインのケースもあるでしょう。 頭痛時に吐き気の症状がある場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。いつもと違う頭痛の症状だと思ったら、医療機関を受診してください。 吐き気を伴う頭痛に関するよくある質問 ここでは、吐き気を伴う頭痛に関するよくある質問についてお答えします。頭痛に関して気になることがあれば、ぜひこちらも参考にしてみてください。 Q. 片頭痛持ちですが、食事で気を付けることはありますか? A. 以下のような食べ物は、片頭痛を誘発する可能性がある「アミン類」を含んでいるため、できるだけ控えたほうが良いとされています。 赤ワイン チョコレート チーズ ピーナッツ 豚肉 また緑茶やコーヒーなどに含まれているカフェインも、摂取しすぎると頭痛を悪化させる原因となるのでこちらも控えましょう。 Q. デスクワークだと頭痛が起こりやすいですか? A. ストレスや長時間のデスクワークは、「緊張型頭痛」を発症する原因とされています。同じ姿勢が長時間続くと、頭や首の筋肉の緊張が高まりやすくなり、頭が締め付けられるような痛みにつながります。 同じ姿勢を避けるために、30分に1回程度は休憩をとるようにしましょう。また、肩や首などをストレッチして、凝り固まった筋肉をほぐすのもおすすめです。
2023.04.10