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化膿性関節炎による痛みや腫れがつらくて、早く症状を改善したいと思っている方はいるでしょう。また、関節の痛みにより日常生活や仕事がまともにできなくて、将来的な影響を気にしている方もいると思います。 この記事では、化膿性関節炎の治療方法や治るまでの期間、予後について解説しています。また、再発予防のために日常でできる方法を紹介しているため、ぜひご覧ください。 化膿性関節炎とは? 化膿性関節炎とは、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。原因菌は、黄色ブドウ球菌が多く、連鎖球菌・肺炎球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などがあります。細菌の侵入経路は以下の3つです。 ・肺炎や尿路感染で病原菌が血液により関節内へ到達 ・軟部組織損傷の感染が関節内にまで広がる ・手術や関節内注射などで関節内に細菌が直接侵入 侵入すると関節内に到達し、関節軟骨を破壊します。また、進行すると骨まで破壊されてしまうため早期発見・早期治療が重要です。全身の関節で発症する可能性がありますが、特に膝関節での発症が多いです。 膝に出る特徴的な症状 初期症状は、膝関節の違和感や急激な疼痛・腫脹・熱感などです。 疼痛が強く腫脹により可動域が制限されると歩行が不可能になる場合もあります。また、重症化すると悪寒や発熱の症状が現れ、敗血症性ショックを引き起こす危険な疾患です。敗血症性ショックは、極度の血圧低下により多臓器不全に陥り、死亡リスクが高く、他の感染性疾患でも起こり得ます。 化膿性関節炎の診断 化膿性関節炎の診断では、関節液検査・血液検査・画像診断の3つが実施されます。これらを総合的にみて診断を下します。具体的な検査内容は、以下で解説します。 ①関節液検査 関節液検査では、注射針を関節に刺し関節液を採取し、成分を調べることで原因菌を特定します。関節液は、血液が濾過された血漿成分で構成され、関節の滑膜から分泌される成分が加わった粘性が強い液体です。化膿性関節炎になると、白血球数の増加により関節液の混濁、白血球や細菌の活動による糖の消費が原因で糖値の低下が見られます。通常では、血液と関節液の糖値は類似しており、日内変動がある点も同様です。 ②血液検査 血液検査では、白血球の増加・赤血球沈降速度亢進・CRP上昇がみられます。これらは、感染症で見られる所見と似ており、炎症が起きていることを示しています。基準値は以下の表に記載しています。 正常値 単位 数値の解釈 白血球 3.3~8.6 10³/μL 白血球は細菌やウイルスから感染を防ぐ役割があり、感染症やストレスで増加します。 赤沈 (赤血球沈降速度) 男性:2~10 女性:3~15 mm/1h 血液内で赤血球が沈む早さを調べます。 炎症によりフィブリノゲンやグロブリンが増加すると赤血球沈降速度が早くなります。 CRP (C反応性蛋白) 0.14以下 mg/dL 炎症や感染、組織損傷により血液中に増えるタンパク質量のことです。 ③画像診断 画像診断では、単純X線やMRI検査を用いて実施します。どのような所見が見られるか表で解説します。 所見 単純X線検査 初期では変化ありません。進行すると、関節周囲の骨萎縮・関節面不整の所見が見られます。また、重症化により骨溶解像や欠損像が認められます。 MRI検査 膝関節液の貯留・滑膜増殖・軟骨面の不整や変性などの所見が見られます。 上記の所見が見られますが、化膿性関節炎のみに特徴的な所見ではないため、他の疾患との鑑別が必要です。例えば、関節リウマチ・膠原病・痛風・偽痛風など急性の関節炎が症状として現れる疾患があります。そのためにも関節液検査により原因菌を特定するのは大切です。 化膿性関節炎の治療 化膿性関節炎は、治療が遅れると重篤な機能障害を引き起こすため、早期の治療介入が必要です。 原因は細菌であるため、抗生物質の投与・手術による関節内洗浄が中心となります。その後、日常生活に戻れるようにリハビリテーションを実施します。 ・抗生物質の投与 ・手術による関節内洗浄 ・リハビリテーション 各治療方法については、それぞれ以下で詳しく解説します。 抗生物質の投与 関節液の培養検査から病原菌を推定し、病原菌にあった抗生物質を投与します。患部は安静に保ち、関節に膿が溜まっている場合は注射器で吸引します。また、関節や骨が破壊されていると痛みが強いため、消炎鎮痛剤の投与が必要です。抗生物質を投与しても効果が見られず、炎症が続く場合には手術を実施します。 手術による関節内洗浄 関節内洗浄は、関節を切開しなかにある膿を洗い流し、炎症で傷ついている部分は切除します。この手術は、関節鏡を使用して比較的小さな切開で実施可能です。手術後は、関節内に管を入れたままにしておき、膿が出るようにします。また、関節内を持続的に洗浄できる管を留置する場合もあります。関節破壊が進行していて関節が不安定になった場合は、関節固定術が適応です。 リハビリテーション 炎症症状が落ち着いたら、リハビリテーションを開始します。術後すぐのリハビリテーションは、関節への負担を減らすために、柔軟性向上のためのリラクゼーションや座位で膝を伸ばした状態を保持するような関節を動かさない筋力増強訓練がメインです。炎症があるときは温めず、アイスパックで関節を冷やすようにします。 もし、症状が進行して骨溶解がある場合には、感染が落ち着いたら関節固定術を行う場合もあります。関節固定術を行うことで関節が安定し、痛みの軽減が期待できるでしょう。 化膿性関節炎が治るまでの期間 化膿性関節炎が治るまでの期間は、発見時の症状により異なりますが約6週間程度とされています。炎症が広がり関節破壊にまで至ると、手術や関節内洗浄の必要があるため、期間は延びるでしょう。 さらに、炎症が収まってからリハビリテーションを実施し、元の生活に戻るのを考えると3カ月程度はかかると考えられます。 化膿性関節炎の予後 早期治療により細菌を殺菌できれば、早い回復が見込めます。ただ、細菌により軟骨や骨の破壊が見られると後遺症が残ることもあり、さらに死亡率は11%と高いです。 化膿性関節炎に限らず、感染症は敗血症を引き起こすことがあります。敗血症はさまざまな臓器に機能障害を引き起こし、さらに重度になると敗血症性ショックにより危険な血圧低下で多臓器不全となります。敗血性ショックになると、約30〜40%が死に至る重篤な症状です。 日常生活でできるの再発予防!4つの方法 日常生活の中でできる再発予防の方法を紹介します。重要なのは、関節への負担を減らすことです。以下に具体的な予防方法を4つ解説します。 ①免疫を高める 化膿性関節炎は感染症であり、免疫を高めることが大切です。特に、糖尿病の方・血液透析療法を受けている方・免疫抑制薬を長期間使用している方は感染に弱いため、再発しやすくなります。そのため、第一に基礎疾患の治療が大切です。また、関節内注射では皮膚を清潔に保ちましょう。 ②重量物を持ち上げる時の工夫 関節に負担をかけないために重い物を持ち上げる時はゆっくり持ち上げます。重量物をできるだけ身体の近くに寄せた状態で持ち上げると、腰や膝への負担を軽減可能です。 また、長時間同じ姿勢を保つのは関節に負担がかかるため避けましょう。 ③サポーターの着用 サポーターを着用することで、膝関節の安定化・痛みの軽減などの効果が得られ、結果的に関節への負担を減らすことが可能です。そのため、膝が痛い方は、膝のサポーターを着用するといつもより動きやすくなるかもしれません。ただ、サポーターはあくまで補助的なものであるため、日頃のストレッチや筋力トレーニングは大切です。 ④ストレッチを日常的に実施 痛みを感じると筋肉の緊張が高まりやすく、それが続くとさらに別の痛みを誘発する可能性があります。そのため、日常的に下肢のストレッチを行い、関節がスムーズに動く状態を保ちましょう。また、柔軟性は衝撃吸収の役割があるため、関節への負担軽減につながります。 まとめ・痛みを取り除いて再発予防対策をしましょう 化膿性関節炎では、主に膝を中心とした下肢の関節に痛みや腫脹を生じます。進行すると関節や骨を破壊する可能性があるため、早期発見・早期治療が大切です。原因が細菌であるため、治療は抗生物質の投与や関節内洗浄が行われます。治るまでの期間はさまざまですが、関節破壊まで進んでいると手術をするため、期間が延びるでしょう。化膿性関節炎の再発を予防するには、免疫を高める・サポーターを着用する・ストレッチを行うの3点が大切です。痛みを改善し、再発予防方法を実践していきましょう。 参考文献一覧 国立がん研究センター中央病院,臨床検査基準値一覧 MSDマニュアルプロフェッショナル版,敗血症および敗血症性ショック 社会福祉法人恩賜財団 済生会,化膿性関節炎 急性炎症性関節炎の初期診断と治療方針
公開日:2024.10.07 -
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肺がんは日本でも多くの人々が診断される病気の一つで、部位別のがんの罹患数では大腸がんに次ぐ2位、部位別がん死亡数では男女合わせて1位となっています。 この記事では、肺がんの概要から治療法について解説していきます。また、後半では肺がんの手術方法、手術後の合併症・後遺症について挙げ、その治療法や対処法にも触れています。後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介していますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。 この記事を読んで分かること ・肺がんの概要 ・肺がんの治療法 ・肺がんの手術方法 ・手術後の合併症、後遺症とその治療法や対処法 ・後遺症に対する再生医療の可能性 肺がんとは 肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍です。何らかの原因で遺伝子に傷がつき、細胞が異常に増殖してあちこちに移動してしまうものを「がん細胞」といいます。そのがん細胞が肺から始まり、増殖したものを指します。 出典:Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment 肺がんの原因 肺がんの原因の約7割は喫煙とされています。タバコを吸ったことがない人に比べ、吸っている人の肺がんリスクは4倍以上になると言われています。また、直接吸っていなくても、副流煙を吸うことにより肺がんのリスクが高まることも知られています。 それ以外の原因として、遺伝、大気汚染、アスベストなどの有害化学物質などが知られています。 肺がんの症状 肺がんの初期では多くの場合無症状であり、早期に発見することはなかなか難しい がん です。進行に応じて咳や痰、息切れなどがみられることがあります。 肺がんに特徴的とまではいえない症状がほとんどですが、痰に血が混じる(血痰)場合には肺がんが疑わしい可能性が高まりますので、早めに医療機関を受診していただくことをおすすめします。 それ以外にも極端な体重低下や肩の痛み、しゃっくりなど、がんの進行によって様々な症状を引き起こします。また、肺がんが転移した場所の症状が出ることがあり、脳転移による頭痛、手足の麻痺、めまい、吐き気、骨転移による痛みなどがあります。 肺がんの検査 肺がんの検査といっても、肺がんを見つけるための検査、肺がんであることを確定させたり、肺がんの種類を調べる検査、治療方針を決めるために必要な検査など様々なものがあります。 肺がんを見つけるための検査 肺がんを見つけるための検査としては、画像検査が一般的です。胸部レントゲン検査や胸部CT検査が挙げられます。 レントゲン検査は、健診や人間ドックなどでも幅広く使用されている基本的な検査です。 CTではレントゲンよりも画像で得られる情報量が豊富で、より小さな病変も見つけることが可能となります。一方レントゲンよりも放射線被ばく量が多くなることがデメリットとなります。 その他、肺がんの転移を調べるのに有用なMRI検査、シンチグラフィー、PET検査などがあります。 また、血液検査の中で腫瘍マーカーと呼ばれるものがあり、この腫瘍マーカーを調べて数値が異常値を示す場合には肺がんを疑います。ただし、このマーカーは他のがんや病気でも上昇することがあるため、この検査のみで肺がんを診断することはできず、あくまで他の検査と合わせて総合的に判断するための材料となります。 肺がんの確定診断、治療法の検討に有用な検査 肺がんであることを確定させるには、がん細胞がいることを確認する必要があります。そのためには、痰に混じったがん細胞を見つける方法(喀痰細胞診検査)や、病変を内視鏡やCTなどで確認して組織に直接針を指して細胞を採取して確認する方法(組織診検査)があります。この組織を詳しく調べることで、がん細胞の存在の有無だけでなく、どういった種類の肺がんかを見分けることが可能です。 また、そのがんの種類によっては遺伝子検査を追加で行い、さらにそのがんの遺伝子変異について詳しく調べることがあります。これは、ある特定の遺伝子変異が見つかった場合、その変異に特異的に効く分子標的薬と呼ばれる治療薬を使うことで、治療効果が期待できるためです。 肺がんの治療法 肺がんの治療方法の主なものとして、手術、いわゆる抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法があり、これらを組み合わせて行います。 ・手術 ・抗がん剤を用いた化学療法 ・放射線療法 この治療を決める上で重要なのが、肺がんの組織型と病期です。 まず肺がんの組織型ですが、小細胞肺がん(SCLC)と非小細胞肺がん(NSCLC)の二つに大別されます。 小細胞肺がん(SCLC) 小細胞肺がんは進行が非常に早く、発見された際にはすでに転移してしまっているケースが多く、化学療法や放射線療法を組み合わせて治療を行います。 非小細胞肺がん(NSCLC) 非小細胞肺がんでは、小細胞肺がんに比べると進行速度は遅いため、早期で発見されるケースもあります。 肺がんの病期と治療法について 病期(ステージ)は 、 Ⅰ期(ⅠA、ⅠB):肺内に腫瘍が限局していて、リンパ節転移がないもの Ⅱ期(ⅡA、ⅡB):肺内に限局しているが大きいもの。もしくは同じ側の肺門部リンパ節に転移がみられるもの Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC):病変と同じ側の縦隔リンパ節にも転移がみられるもの。または肺外のリンパ節にも転移が生じているもの Ⅳ期(ⅣA、ⅣB):肺から離れた臓器に転移がみられるもの に分類されます。非小細胞肺がんの場合、病期によって治療法が異なります。 ⅠA期では、手術のみを行います。 ⅠBからⅢB期までは手術を行い術後に化学療法を行うのが一般的です。 ⅢA、ⅢB期で手術が不可能な場合には、放射線治療と化学療法を併用した治療法を検討します。 Ⅳ期の場合では、まず遺伝子検査によって特定の遺伝子変異の有無を確認し、有効な分子標的薬があればそれによる薬物療法を検討します。有効な遺伝子変異がない場合には、抗がん剤を用いた化学療法を選択します。ただし、これはあくまでも基本的な方針のため、一律にこのように決まるとは限りません。実際には患者さんごとの状態や事情なども考慮して治療を決定していきます。 肺がんの3つの手術方法 ここでは、肺がんの手術方法について具体的に解説していきます。肺がんの手術方法は、切除範囲とがんの進行度や位置、患者さん自身の状態などによって異なってきます。 1)肺葉切除術 肺がんの手術で最も標準とされる手術方法で、肺の一葉を切除する手術です。肺は右側に三つ、左側に二つの葉に分かれており、がんが存在する肺葉を切除します。多くの場合には近くにあるリンパ節も一緒に切除します。肋骨の間から胸部に切開を入れ、がんを含む肺の葉を取り除きます。 2)区域切除術・楔状切除術 区域切除術は、小型の肺がんに対して、肺葉よりも一部の区域だけを切除する方法です。近年検診などで肺がんが早期で見つかるケースが増えており、それに伴い適応が増えてきている手術方法となります。胸腔鏡を使用して小さな皮膚切開で手術が行えるようになり、患者さん自身の身体の負担軽減を図ることができます。また、区域切除よりもさらに小さな部分を切除する楔状切除術という方法もあります。 3)肺全摘術 片肺を摘出する方法で、病変が一側の肺に広がっており、かつ中心まで及んでいる場合に選択されます。片肺を摘出すると肺や心臓の機能低下につながる可能性があるため、体力が低下している方、もともと呼吸機能が低下している方には選択が難しい方法です。 肺がんの手術後の合併症とその対処法 肺がん手術後の合併症は、手術の方法や、患者さん自身の体質などによっても異なりますが、一般的に想定される主な術後合併症とその対処法について挙げていきます。 肺胞瘻(はいほうろう) 肺を切除した箇所から空気が漏れる合併症です。肺がんの手術の中では約5%程度と比較的頻度が高い合併症です。通常であれば手術により肺の一部が取り除かれるため、呼吸機能が低下することがあります。 <対処法> 多くの場合自然に改善しますが、まれに治らないケースがあります。その場合には薬剤を用いて空気の漏れを止める胸膜癒着術や、再手術が必要になることがあります。 気管支断端瘻(きかんしだんたんろう) 一般的な肺がんの手術では、肺と気管支の一部も切除します。その切断した気管支を切ったところから空気が漏れてしまう合併症です。 <対処法> 起こりうる可能性は極めてまれですが、起こってしまった場合には重篤になるため、緊急手術によって閉鎖したりする必要があります。 術後肺炎 手術後に肺炎が生じ、咳、発熱、呼吸困難などがみられることがあります。 <対処法> 抗生剤を投与して治療を行います。 膿胸(のうきょう) 手術した側の肺の胸腔内に膿がたまる合併症です。膿による発熱や、感染が全身にまわると敗血症をきたすおそれもあります。 <対処法> 膿が少量であれば、胸に小さな穴を開けてそこから洗浄して膿を排除します。小さな穴からの洗浄で不十分な場合には、手術によって洗浄が必要となることもあります。いずれの場合でも抗生剤を併用して治療する必要があります。 乳び胸(にゅうびきょう) 手術の際に、胸管とよばれる太いリンパ管が傷つき、胸腔内にリンパ液が漏れてしまう合併症です。 <対処法> 症状が軽度であれば食事を制限してリンパ液の成分である脂肪分の吸収を抑制することで改善する可能性がありますが、場合によっては再手術で漏れを塞ぐこともあります。 肺動脈血栓塞栓症 手術中や手術後など、ベッドに長期間横になって下肢を動かさない状態になると、足の静脈がうっ滞して血栓が作られます。その血栓が、立ったり歩き始めた際に肺の血管に移動して詰まることで起こる合併症で、いわゆるエコノミークラス症候群として知られています。発生頻度は高くないものの、生じた場合には重篤で死亡する危険性もある合併症です。 <対処法> 血栓が作られるのを予防することが大切で、手術中や術後歩けるようになるまでストッキングを装着したり、下肢のマッサージを行うフットポンプを着用します。また血栓が生じてしまい、肺に詰まってしまうリスクが高い場合には、血液をサラサラにする抗凝固薬を投与して治療します。 反回神経麻痺 反回神経と呼ばれる神経が肺の近くを走行しているため、手術中に反回神経を傷めてしまったりすると、反回神経麻痺を起こす可能性があります。この神経の障害によって、声のかすれ(嗄声)や飲み込みにくさが出る場合があります。 <対処法> 反回神経麻痺は一時的な症状であることが多く、通常数ヶ月程度で改善しますが、まれに回復しないケースもあります。 術後の後遺症に対する治療法や対処法 ここでは、肺がんの手術後に後遺症として残ってしまう可能性のある症状や状態について、その対処法も含めて挙げていきます。 呼吸のしにくさ、息苦しさ 肺がん手術後は、肺を切除したことにより肺活量が低下し、うまく呼吸できなくなったり、労作時の息切れ、息苦しさが残る可能性があります。 <対処法> 呼吸リハビリテーションを行って改善を促すなどの方法があります。理学療法士の指導のもと、呼吸筋を鍛えるリハビリを行います。 声のかすれ、飲み込みにくさ 合併症の項目でも解説した、反回神経麻痺によって生じる可能性のある症状です。反回神経麻痺の影響で、声帯が動かしにくくなってしまうことで生じます。数ヶ月以上経っても、症状が改善しない場合がまれにあります。 <対処法> 声のかすれが重度の場合や飲み込みにくさが強い場合には、麻痺した声帯を移動させる等、手術による治療法があります。 治療後で後遺症が残ってしまったら:再生医療について 肺がんの手術後に後遺症に対する治療法として、再生医療の可能性についてお話します。 再生医療とは、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用して行う治療です。幹細胞を培養して増やし、それを点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことを狙いとする治療法で、現在その効果が期待されています。中でも、術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、肺がんの手術後の合併症・後遺症である反回神経麻痺への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 術後の後遺症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 肺がんについてよくあるQ&A Q:新型タバコ(電子・加熱式)は肺がんの原因になりますか? A:新型タバコは紙巻タバコに比べて害が少ないと思われがちです。しかし実際には、含まれるニコチンの量は紙巻タバコと同等もしくはそれ以上であることもあり、タールも7割程度と言われています。従って、それ以外にも約70種類の発がん物質が含まれていると言われており、新型タバコも同様に肺がんのリスクとなります。 Q:肺がんを予防する方法はありますか? A:肺がんを完全に予防できる方法は現時点でありませんが、肺がんになるリスクを減らすことはできます。まず、肺がんの最も多い原因である喫煙をしている場合には禁煙をしてください。また、受動喫煙によっても肺がんのリスクがあがりますので、タバコの煙を避けるなども大切です。最も重要なのは肺がんの早期発見です。予防でできることは限られますが、定期的に健康診断などで胸部のレントゲン検査など、画像検査を受けるようにしてください。肺がんが見つかったとしても大きくなる前に早期に発見できれば、その分根治の可能性が見込めます。。 まとめ:肺がんの治療法やその合併症・後遺症に再生医療の可能性 今回は肺がんについて、その原因から治療まで幅広く取り上げ、治療の柱である手術についてや、その合併症も含めて詳しく解説していきました。 また、術後の後遺症やその後遺症に対する再生医療の可能性も含めて取り扱っています。実際に肺がんになってしまいこれから治療を受けられる方、肺がんの治療後の後遺症に悩まれている方、肺がんについての詳しい情報を知りたい方々にとって、有益な情報源となれば幸いです。 参考文献 ・Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment ・呼吸器外科 | 国立がん研究センター 中央病院 ・肺がん:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] ・Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment
公開日:2024.10.17 -
- その他、整形外科疾患
「骨粗しょう症ってどうやったら防げるの?」「薬を処方されたけど飲まないでも良くなる方法があれば知りたい」 そんなお悩みはありませんか? 骨粗しょう症の治療の基本は投薬です。 しかし、骨粗しょう症の患者さんの多くは自覚症状がありません。効果がわからないのに長期に薬を使用しなければいけないことに不安があったり、いつまで続けなければいけないのか心配になったりする方も多いでしょう。 結論をお伝えすると、骨粗しょう症の予防策として薬以外でできることは、 ・カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを重点的に全体でバランスよく栄養をとる ・アルコールとコーヒーは飲みすぎない ・無理のない範囲でしっかり体を動かす ・適度に日光を浴びる ・禁煙をする です。 骨粗しょう症の基本的な情報と治療法を解説し、さらに薬以外でできる対策についても本記事で詳しく紹介していきます。 骨粗しょう症の予防と治療:健康的な生活習慣で内服薬や注射はやめられる? 「骨粗しょう症」は骨が脆く折れやすくなる疾患です。 治療の基本は薬物治療で、骨の吸収を抑制したり形成を促進したりする薬が用いられます。 薬以外では、バランスの良い食事・適切な運動・禁煙・日光浴などが骨粗しょう症の対策として重要です。 どうしても薬を飲みたくないという場合は、まずは生活習慣の見直しを行いましょう。そして現在治療中・通院中の方は主治医としっかり話し合いましょう。現在治療を受けていない方は、定期的に骨密度を測定することをお勧めします。 さらに詳しく解説していきます。 骨粗しょう症といわれたら?どんな病気か知っておこう 骨粗しょう症とは、骨の強さ(骨強度)が低下して骨折のリスクが高まる病気です。高齢者に多い疾患ですが、若い人でも過度のダイエットや妊娠出産などを契機に骨粗しょう症になることがあります。 骨強度は骨の量と質の2つの要素が重要です。概ね70%が骨の量、30%が骨の質(文献1)で決まると言われています。 骨粗しょう症の診断 骨の質を測定する検査はまだ一般的には普及していません。一方、骨の量は「骨密度」で測定することができます。 骨は硬い組織ですが、常に古い骨を壊す作業と新しい骨を作る作業を繰り返しています。これを「骨リモデリング」と呼びます。 骨リモデリングのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回るのが骨粗しょう症なのです。 加齢、女性ホルモンの減少、カルシウム不足などが原因で骨リモデリングのバランスが崩れると、骨量が減少します。また、特定の疾患や薬剤の使用が原因で骨粗しょう症になることもあるのです。 骨粗しょう症の人はどのような骨折を起こしやすい? 骨粗しょう症になると、荷物を持ち上げる・手をつくといった日常の動作や、転倒する・尻もちをつくなどのちょっとしたトラブルでも簡単に骨折してしまいます。 骨粗しょう症による骨折は、骨折すればするほど次の骨折が起こりやすくなります。特に起こりやすい骨折は以下です。 ・椎体(背骨) 自分の体重に背骨が耐えきれなくなり、気づかないうちに背骨がつぶれてしまうこと(圧迫骨折)があります。背中が丸くなってしまう原因になり、逆流性食道炎や呼吸機能・心機能の低下にもつながる可能性があります。 ・大腿骨近位部(足の付け根) 転倒した際に骨折することが多いです。 大腿骨近位部骨折は、寝たきりの原因となりやすく、死亡リスクも高くなります。 ・橈骨遠位端(手首) 手をついた時に手首の辺りで骨が折れることです。放置してずれてくっついてしまうと、手指のすじが切れたり、手指へ伸びる神経の障害が起こったりすることがあります。 ・上腕骨近位部(腕の付け根) 肩の付け根のあたりで骨が折れることです。放置してしまうと肩の慢性的な痛みが起こったり、機能障害をきたしたりすることがあります。 骨粗しょう症は、原因によって原発性と続発性に分類されます。 原発性骨粗しょう症は、加齢や閉経に伴うホルモン変化などが原因で起こるものです。 一方、続発性骨粗しょう症は、特定の疾患や薬剤の使用などが原因で起こります。 骨粗しょう症治療薬の種類について 次に、骨粗しょう症の主な治療薬について解説しましょう。骨粗しょう症の治療の中心は投薬ですが、治療薬には様々な種類があります。 大きく分けて、 ①骨を作る骨芽細胞を活性化する薬(骨形成促進薬) ②骨を壊す破骨細胞の働きを抑える薬(骨吸収抑制薬) ③その他 の3つに分類されます。 それぞれ詳しく解説しています。 ①骨形成促進薬 副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド) ヒトの副甲状腺ホルモンの一部を遺伝子組み換え技術を用いて化学的に合成した製剤です。製剤により毎日・週2回あるいは週1回の皮下注射を行います。生涯で2年間しか使用できないという制約があります。 副甲状腺ホルモン関連タンパク薬(アバロパラチド) ヒト副甲状腺ホルモン関連タンパク質を改変して作られた製剤で、骨芽細胞に結合して分化・増殖を促すことでその働きを高めます。1日1回皮下注射します。生涯で18ヶ月しか使用できないという制約があります。 ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体(ロモソズマブ) 骨形成を抑制するスクレロスチンというタンパク質を中和することで骨形成を促します。1ヶ月に1回2本の注射を12ヶ月間皮下注射します。骨吸収を抑制する効果もあります。 ②骨吸収抑制薬 ビスホスホネート薬(アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸など) 骨に蓄積して、破骨細胞の活性化や生存を抑制する薬です。錠剤・ゼリー・点滴・注射など複数の剤型があり、投与間隔も様々です。内服の場合は起床直後に飲み、食道に留まらないように服用後しばらくは横にならないなどいくつか注意点があります。 抗RANKL抗体薬(デノスマブ) 破骨細胞が活性化するのに必要なRANKL(ランクル)という物質の働きを抑えます。破骨細胞の働きを阻害し、骨が吸収されるのを防ぎます。半年に1回皮下注射をするのみで良い薬です。ただし、高度の低カルシウム血症を引き起こすことがあるためカルシウム製剤やビタミンD製剤を併用する必要があります。 選択的エストロゲン受容体作動薬(ラロキシフェン、バセドキシフェンなど) 女性ホルモンであるエストロゲンの受容体に作用し、骨吸収を抑えます。閉経によりエストロゲンが欠乏して起こった骨粗しょう症に対して使用されます。1日1回内服の薬です。 ③その他 活性型ビタミンD3薬(エルデカルシトール、アルファカルシドール、カルシトリオールなど) カルシウムの吸収を助けるビタミンDの薬です。エルデカルシトール、アルファカルシドール、カルシトリオールなどがあります。単独で使用されることもありますが、作用はあまり強くはなく、骨粗しょう症治療薬と組み合わせて使用されることも多いです。1日に1回内服します。 カルシウム製剤 不足するカルシウムを補充するための薬です。 ビタミンK製剤 骨の代謝に必要なビタミンKを補充するための薬です。 薬以外でできる?骨粗しょう症の対策と予防法 骨粗しょう症の治療の基本は投薬とお伝えしましたが、様々な生活上の工夫でも骨密度を保ったり向上させたりすることができます。いずれも健康的な生活を心がけている方にとってはそんなに難しくはないことです。食事でできる対策、運動でできる対策、その他の対策の3点について解説していきます。 食事でできる対策 ポイントはカルシウム・ビタミンD・ビタミンKの3つの栄養素を中心としてバランスよく栄養をとることです。また、過剰な飲酒とコーヒーの飲み過ぎは避けてください。 カルシウムは骨の重要な構成栄養素であり、骨粗しょう症の予防・治療に不可欠です。 骨粗しょう症の治療には、1日700~800mgのカルシウム摂取が推奨されます。 摂取すればするほど骨が強くなるわけではなく、摂取量がある一定以上になると増加しなくなります。 カルシウムの吸収を助ける栄養素がビタミンDです。日本人の場合、ビタミンDの主な供給源は魚類です。 ビタミンKも骨の健康に重要な栄養素です。 ビタミンKが足りなくなると骨が作られにくくなります。 ビタミンKは納豆、ほうれん草、小松菜などの緑黄色野菜に多く含まれています。 骨粗しょう症といわれると、「カルシウムをしっかりとる」と考えがちですが、他の栄養素もバランスよくとらなければいけないことに気をつけてください。 適度な飲酒は食欲を増進し、骨密度の低下には抑制的に働きます。ただし、大量に飲酒してしまうと肝機能障害から栄養状態の悪化をきたして骨密度の低下につながります。さらに大量の飲酒により転倒のリスクも高まるため注意が必要です。 コーヒーも過剰にとってはいけません。カフェインは尿中のカルシウム排泄を促します。1日に3杯以上コーヒーを飲む人ではそうでない方よりも骨密度が低くなるという報告もあります。2杯程度までは問題ないと言われているので、コーヒーも適量を心がけましょう。 ▶骨密度がアップする食べ物とは?こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご参考にされて下さい。 https://www.youtube.com/watch?v=9rEoucXaFeE 運動でできる対策 身体運動を活発にされている方は骨粗しょう症による骨折が少ないと言われています。運動は骨に刺激を与え、骨形成を促進します。 ウォーキングやジョギングなど体力に合わせて骨に負荷をかける運動を行いましょう。転倒予防のため、筋肉トレーニングやバランストレーニングも上手に取り入れてください。 運動を行う際には、自身の体力レベルに合わせた無理のない運動を選択することが重要です。 そのほか気をつけるべき生活習慣 日光浴や禁煙も骨粗しょう症予防に効果的です。 ビタミンDは食事からの摂取に加えて、紫外線を浴びることで皮膚でも合成されます。 1日15分程度の適度な日光浴は骨にとっては重要です。日焼けしすぎない程度に、太陽の光を浴びましょう。 喫煙は骨粗しょう症のリスクを高める要因の一つとして挙げられます。タバコを吸うことで、骨質の悪化・カルシウム吸収の低下・性ホルモンの抑制・体重の減少などをきたし、骨粗しょう症につながります。タバコを吸っている人は男女どちらも同じ年齢の非喫煙者よりも骨折のリスクが高くなることがわかっているのです。骨を守るためにも、禁煙をしましょう。 骨粗しょう症の治療をしたくないと思っている人へ 「骨粗しょう症治療をしたくない」「今すぐ薬をやめたい」と思っている方こそ、上手に医療機関を味方につけてください。 現在通院中・治療中の方へ 「基本的な生活習慣の対策ができているから」と言って、自分で勝手に治療・通院をやめないようにしてください。 やめたいという意思があるのであれば、そのことを主治医としっかり相談してどうするか決めましょう。残念ながら、多くの骨粗しょう症治療薬は「やめたい」と思ってもすぐにやめられるものではありません。治療をされているということは、多かれ少なかれ骨粗しょう症による骨折のリスクがあると判断されているからです。それでも、やめたいという意思を主治医に共有しておくことで、適切なアドバイスをもらえたり、治療薬をもういちど考え直してもらえたりする可能性は十分にあります。 ご本人の意思に反して「やめられません」と言われてしまう可能性もあります。 たとえば、なんらかの病気や治療に伴う骨粗しょう症は、いくら生活習慣を是正しても根本的な原因の解決にはなっていません。このような場合は基本的には治療の継続が望ましいでしょう また、骨粗しょう症の治療薬によっては、やめてしまうことで急激に骨密度が低下し、骨折を繰り返してしまう薬もあります。たとえ骨密度が十分にあっても、このような状況でいきなり治療をやめてしまうことは大変危険です。 決してご自身だけの判断で治療をやめることはせず、主治医とコミュニケーションをとりながら治療目標を確認してください。その上で、「いつになったらやめられるのか?」「やめられないにしても副作用の少ない薬に変えられないか?」など話し合ってみてください。 そして、治療が終了しても、定期的な骨密度のチェックは欠かさないようにしましょう。 現在通院をしていない方へ 通院をしていない方であっても定期的に骨密度の検査を受けてください。 現在は様々な機会で骨密度を測定することができます。たとえば、女性は40歳から5歳ごとに70歳まで自治体の検診があります。お住まいの地域や加入している健康保険によっては、それ以外の方でも受けられることがあります。人間ドッグのオプションで骨密度を選択できることもあります。 早いうちに骨密度が下がってきていることに気づけば、生活習慣の改善だけで骨折を予防できる可能性が高まります。検診などでは実際の検査結果をもとに医師や保健師などの医療スタッフから適切なアドバイスを受けることもできます。 まとめ・骨粗しょう症を薬以外で予防しましょう! 骨粗しょう症の概要・治療と、薬以外での予防法について解説しました。 骨粗しょう症の予防策として、薬以外でできるのは、 ・カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを重点的に全体でバランスよく栄養をとる ・アルコールとコーヒーは飲みすぎない ・無理のない範囲でしっかり体を動かす ・適度に日光を浴びる ・禁煙をする です。 骨粗しょう症の治療を受けたくない、やめたいと思っている方も多いでしょう。骨粗しょう症と診断されても骨折が起こらなければ症状がないため、仕方がないことかもしれません。しかし、「治療を受けたくない」と思っている方であればなおのこと、生活習慣をしっかり見直していくことが大切です。 例えば、椎体骨圧迫骨折を起こしてしまうと、背中が丸まってしまったり、長引く痛みに苦しんだり、ひどい場合は脊髄損傷を起こしてしまうこともあります。大腿骨頸部骨折を起こしてしまうと、手術が必要になりますし、リハビリが進まないと寝たきりになってしまいます。一度骨折を起こしてしまうと、立て続けに骨折を起こしてしまうこと少なくありません。 その時に後悔しないように、基本的な食事・運動などの生活習慣の見直しをしっかり行ってください。そして、定期的な骨密度チェックを欠かさないようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献 ^ 骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015 年版(文献1) 星野祐太. MB Medical Rehabilitation (293): 113-118, 2023. 萩野浩. 臨牀と研究 100(12): 1518-1521, 2023. 宮本健史. 整形外科看護 28(6): 528-537, 2023. 田中郁子. 日本臨牀 81(増刊号1): 261-266, 2023. 公益財団法人骨粗鬆症財団. 骨粗鬆症とは どんな病気. 公益財団法人骨粗鬆症財団. 骨粗鬆症とは 骨粗鬆症検診.
公開日:2024.10.07 -
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「ダッシュボード損傷ってどのような症状があるの?」「事故後の治療やリハビリはどうなるの?」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 ダッシュボード損傷は、交通事故の衝撃によって膝や大腿部を打ち付けることで起こる外傷です。激しい痛みや腫れ、歩行困難など、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 今回は、ダッシュボード損傷の典型的な症状や治療法、リハビリテーションのプロセスなどを詳しく紹介します。この記事が、事故後の不安や痛みに悩むあなたの助けとなり、回復への道筋を示すものになれば幸いです。 ダッシュボード損傷の症状と治療の必要性 ダッシュボード損傷は、交通事故の際、車両の急停止や衝突によって乗員が車内のダッシュボードに膝や大腿部を強打することで生じる外傷を指します。シートベルトを着用していない場合や、エアバッグが正常に作動しなかった場合に発生しやすいとされています。 ダッシュボード損傷の症状は、軽度の打撲から骨折、靭帯損傷まで幅広く、早期の診断と適切な治療が重要です。放置すると、後遺症として長期的な痛みや機能障害を引き起こす可能性もあるでしょう。 適切な治療とリハビリテーションを受けることで、多くの方が回復へと向かうことができるでしょう。そのため、事故直後から適切な医療機関を受診し、専門家の指導のもと、回復に向けた取り組みをはじめることが大切です。 ここでは、ダッシュボード損傷の代表的な症状と、早期治療の重要性について詳しく説明します。 ダッシュボード損傷の典型的な症状とその原因 ダッシュボード損傷の症状は、損傷部位や程度によって異なりますが、以下の例が挙げられます。 ・膝や大腿部の激しい痛み ・損傷部位の腫れや内出血 ・脚の可動域制限や歩行困難 ・膝の不安定感やカクカク音 ・大腿部のしびれや感覚鈍麻 これらの症状は、軟部組織の損傷や骨折、靭帯損傷などが原因で起こります。痛みや腫れが強い場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 早期治療の重要性と放置した場合のリスク ダッシュボード損傷を放置すると、以下のようなリスクがあります。 ・痛みや機能障害が長期化する ・関節の不安定性が残り再受傷しやすくなる ・軟骨や靭帯の変性が進行し変形性関節症になる ・日常生活動作(ADL)の低下により生活の質(QOL)が下がる このような状態を避けるためにも、早期の診断と治療開始が不可欠です。専門医による適切な評価と、個々の症状に合わせた治療計画の立案が求められます。 また、ダッシュボード損傷の特徴的な点として、膝への直接的な衝撃だけでなく、その力が大腿骨を通じて股関節にまで伝わることがあります。これにより、一見してわかりにくい股関節周辺の損傷が生じる可能性があります。 そのため、膝に明らかな症状がある場合でも、股関節や大腿部全体の痛み、違和感、動きにくさなどにも注意が必要です。このような症状がある場合は、医療機関で股関節を含めた総合的な検査を受けることが重要です。 治療方法の選択と実際 ダッシュボード損傷の治療は、損傷の種類や重症度によって異なります。ここでは、事故直後の応急手当から、病院での治療、リハビリテーションまでを順を追って説明します。 事故直後の応急手当と注意点 事故現場での応急手当では、以下のような処置が行われます。 やるべきこと 具体的な方法例 注意点 動かさない 怪我した部分をそのままの状態で保つ 無理に動かすと症状が悪化する可能性がある 冷やす 氷や冷却シートを使って患部を冷やす 直接皮膚につけず、タオルなどを間に挟む 固定する 骨折の可能性がある場合、板や厚紙で固定 きつく縛りすぎないよう以下のポイントに注意する ・指先の色が変わらないか確認する ・激しい痛みや痺れがないか確認 ・指先が少し動かせるか確認 ・腫れに備えて少し余裕を持たせる これらの処置は痛みや腫れを抑える効果がありますが、あくまで応急処置です。必ず病院で診てもらいましょう。 病院での診断と治療方針の決定 病院では、詳細な問診や身体所見、X線やMRIなどの画像検査を行い、損傷の種類や程度を評価します。これをもとに、以下のような治療方針が立てられます。 診断・治療の段階 内容例 1. 診察 • 症状の詳しい聞き取り • 痛みの場所や程度、動かせる範囲の確認 2. 検査 • レントゲン撮影:骨の状態確認 • MRI検査:筋肉や靭帯の状態確認(必要に応じて) 3. 治療方針の決定 • 軽症:安静、痛み止め、湿布 • 中等度:サポーター使用、リハビリ • 重症:手術の検討 治療方針は、患者さんの状態や生活環境などを考慮して、医師と相談の上で決定します。 痛み止めの種類と使用上の注意 ダッシュボード損傷では、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)が第一選択となります。これらの薬剤は、炎症を抑えると同時に、痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。具体的には、ロキソプロフェンやジクロフェナク、セレコキシブなどがよく使用されます。 また、鎮痛補助薬として、アセトアミノフェン(カロナールなど)やトラマドール(トラマールなど)が用いられることもあります。アセトアミノフェンは純粋な鎮痛効果があり、トラマドールは中程度の痛みに効果があります。 痛み止めの使用に際しては、医師の指示に従い、適切な用量と期間を守ることが大切です。NSAIDsは胃腸障害、アセトアミノフェンは肝機能障害、トラマドールは嘔気やめまいなどの副作用に注意が必要です。自己判断での使用は避け、必ず医師の指導のもとで服用しましょう。 リハビリテーションの目的とアプローチ方法 手術療法の有無にかかわらず、ダッシュボード損傷の回復には、リハビリテーションが欠かせません。理学療法士や作業療法士による専門的なアプローチにより、以下のような効果が期待できるでしょう。 ・関節可動域の改善と拘縮予防 ・筋力とバランス能力の向上 ・歩行や日常生活動作の再獲得 ・仕事や趣味などの社会活動への復帰支援 リハビリテーションは、患者さんの状態に合わせて段階的に進められます。時間と労力を要しますが、粘り強く取り組むことが回復への近道となるはずです。 回復過程の段階と各時期のポイント ダッシュボード損傷からの回復は、一朝一夕にはいきません。ここでは、回復過程を段階別に説明し、それぞれの時期に求められるケアのポイントを紹介します。 回復の一般的な目安と個人差 ダッシュボード損傷の回復期間は、損傷の重症度や治療法によって異なりますが、おおよそ以下のような目安が示されています。 ・軽度の打撲や捻挫:2~4週間 ・中等度の靭帯損傷:6~8週間 ・重度の骨折や手術療法後:3~6か月 ただし、これはあくまで一般的な目安であり、個人差が大きいことに留意が必要です。無理のない範囲で、医師の指示にしたがってリハビリテーションに取り組みましょう。 急性期の安静と炎症コントロール 受傷直後から数日間は、急性期と呼ばれます。この時期は、以下のようなケアが中心となります。 急性期のケア 具体的な内容 安静と患部の保護 • 患部に負荷をかけない姿勢の保持 • 必要に応じて固定や装具の使用 冷却療法 • アイシングによる炎症と痛みの軽減 • 15-20分ごとに冷却と休憩を繰り返す 薬物療法 • 医師の指示に基づく鎮痛剤の使用 • 炎症を抑えるための薬剤投与 急性期は、損傷の拡大を防ぎ、炎症を抑えることが何よりも大切です。医師の指示に従い、安静を保ちましょう。 回復期の可動域訓練と筋力増強 急性期の症状が落ち着いてくると、回復期に入ります。この時期は、以下のようなアプローチを行います。 回復期のアプローチ 具体的な内容例 可動域訓練 • 段階的に関節の動きを改善 • 痛みの範囲内で少しずつ可動域を広げる 筋力増強訓練 • 軽度の負荷から開始 • 徐々に負荷を増やしていく 日常生活動作の練習 • 歩行、階段昇降、座る、立つなどの基本動作 • 日常生活に必要な動作の再獲得 回復期は、徐々に運動量を増やしていく時期です。痛みに耐えながらも、リハビリテーションに積極的に取り組むことが回復への鍵となるでしょう。 社会復帰期の機能回復と日常生活動作の獲得 ダッシュボード損傷から回復し、通常の生活に戻る時期に行うケアは以下のとおりです。 目標 具体的な取り組み例 1. 体の機能を元に戻す • 歩行や階段の昇降をスムーズに行えるようになる • 長時間の座位や立位に耐えられるようになる 2. 仕事や趣味に戻る • 仕事に必要な動作ができるようになる • スポーツなどの趣味活動を再開する 3. 再発を防ぐ • 適切なストレッチや運動を日課にする • 正しい姿勢や動作を意識する ダッシュボード損傷から回復し、通常の生活に戻る時期には、上記の目標に取り組みます。この時期は、体の回復だけでなく、心のケアも大切です。医療専門家のアドバイスを受けながら、焦らず少しずつ回復を進めていくことが重要です。 心理面のケアの重要性と方法 ダッシュボード損傷は、身体的な苦痛だけでなく、精神的な負担も大きいものです。事故後のストレスに加え、長期的な療養生活は、患者さんの心身を大きく疲弊させます。 ここでは、心理面のケアの重要性と、その方法について説明します。 カウンセリングの役割と効果 カウンセリングとは、「医療従事者が患者さんの心理的な問題や悩みに耳を傾け、解決に向けて支援すること」を指します。 ダッシュボード損傷の患者さんに対するカウンセリングでは、以下のような点に焦点が当てられます。 ・事ゆえによる心的外傷への対処 ・療養生活にともなうストレスの軽減 ・リハビリテーションへのモチベーション維持 ・家族や職場との関係調整 カウンセリングは、患者さんの心の安定と回復への意欲を高める上で、重要な役割を果たします。 効果的なカウンセリングのためのコツ 効果的なカウンセリングを行うためには、以下のようなポイントに留意が必要です。 ・患者さんの訴えに傾聴し共感的な態度で接する ・患者さんの感情表出を促し受け止める ・回復への見通しを示し希望を与える ・患者さんの自主性を尊重し意思決定を支援する ・家族や医療チームと連携し社会的サポートを強化する これらのアプローチにより、患者さんは安心感を得て、前向きな気持ちでリハビリテーションに臨むことができるでしょう。 社会復帰に向けた準備と支援 ダッシュボード損傷は、一時的に仕事や社会生活から患者さんを遠ざけてしまいます。しかし、適切な支援があれば、多くの方が元の生活を取り戻すことができます。ここでは、社会復帰に向けた取り組みについて説明します。 利用可能な福祉サービスと申請方法 社会復帰の過程では、以下のような福祉サービスが利用できます。 ・障害者手帳の取得と各種助成制度の活用 ・職業評価と職業訓練の実施 ・ハローワークを通じた就労支援 ・障害者雇用の支援制度の利用 これらのサービスを上手に活用することで、社会復帰への道筋がより明確になるでしょう。医療ソーシャルワーカーや就労支援員と相談しながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。 職場復帰の手順と上手な職場との調整方法 ダッシュボード損傷からの職場復帰には、以下のような課題がともなう可能性があるでしょう。 ・後遺症による身体的な制限への対応 ・長期休職にともなう業務スキルの低下 ・職場の理解と協力体制の構築 ・復職後のストレスマネジメント これらの課題に対しては、以下のような対策が求められます。 ・主治医や産業医との連携による復職計画の立案 ・段階的な職場復帰プログラムの実施 ・必要に応じた職務内容の調整や配置転換 ・上司や同僚への情報共有と理解の促進 ・ストレス対処法の習得と積極的な休養の確保 職場復帰は、患者さんと企業、医療機関が三位一体となって取り組むべき課題です。お互いの立場を尊重しながら、無理のない範囲で歩みを進めていきましょう。 セルフケアの進め方と工夫 ダッシュボード損傷からの回復には、医療機関でのケアだけでなく、患者さん自身の努力も欠かせません。ここでは、セルフケアの重要性と、その具体的な方法について説明します。 回復を促す食事の摂り方 回復期には、以下のような食事の工夫が大切です。 栄養素 役割 具体的な食材 タンパク質 組織の修復促進 鶏肉、魚、豆腐、卵 ビタミンC 免疫力向上、骨・軟骨の形成 みかん、ブロッコリー、パプリカ カルシウム 骨の修復と強化 牛乳、ヨーグルト、小松菜 鉄分 貧血予防、組織の酸素供給 ほうれん草、レバー、赤身肉 食物繊維 便通改善 玄米、野菜、果物 オメガ3脂肪酸 炎症抑制 サバ、アマニ油、クルミ 食事は、体の回復を助ける上で重要な役割を果たします。管理栄養士や医師と相談しながら、自分に合った食事プランを立てましょう。 自宅でできる運動と注意点 医師の許可が出た後は、以下のような運動を心がけましょう。 ・ストレッチや関節可動域訓練による柔軟性の維持 ・軽度の有酸素運動による全身持久力の向上 ・筋力トレーニングによる損傷部位の機能回復 ・バランス練習による転倒予防 運動は、身体機能の改善だけでなく、ストレス発散にも効果的です。無理のない範囲で、毎日の生活に運動を取り入れていきましょう。 ストレス対策の方法と生活への取り入れ方 ダッシュボード損傷の回復過程では、以下のようなストレス対策が推奨されます。 ・十分な睡眠時間の確保 ・趣味や娯楽活動による気分転換 ・友人や家族との交流による社会的サポートの強化 ・リラクセーション技法(深呼吸、瞑想など)の習得 ・必要に応じた医療従事者への相談 ストレスは、回復の妨げになるだけでなく、痛みを増強させる原因にもなります。自分なりのストレス対処法を見つけ、上手に実践していきましょう。 典型的な症例から学ぶ回復のプロセス ここでは、ダッシュボード損傷の典型的な症例を紹介し、回復のプロセスを具体的に説明します。 ダッシュボード外傷による股関節付近の骨(大腿骨頭)骨折からの回復について、医学研究が行われています。 [1] 井手尾医師らの研究(2016年)では、以下のような結果が得られました。 ・30代の男性4人を約11か月間観察 ・骨折の状態に応じて手術方法を選択 ・全員が自分で歩けるまでに回復 ・深刻な合併症は見られず これらの結果は回復の可能性を示していますが、研究者たちは次の点を指摘しています。 ・より長期的な観察が必要 ・さらに多くの患者での研究も必要 この研究から、適切な治療を受ければダッシュボード外傷からの回復が期待できることがわかりました。ただし、個々の状態に合わせた治療と長期的な経過観察が重要です。[1] 交通事故で膝や股関節を強く打つことで起こるダッシュボード外傷について、医師たちが研究を行っています。 また、[2] 櫛田医師らのグループ(1994年)が行った研究では、このような怪我をした患者さんの回復過程を調査しています。その結果、以下のようなことがわかりました。 ・怪我の種類によって回復の仕方はさまざまですが、多くの場合で回復が見られました ・適切な治療とリハビリを受けることで、回復の可能性が高まります ・専門医による継続的な観察と支援が、回復に役立ちます この研究から、ダッシュボード外傷からの回復は十分に可能であることが示されています。ただし、一人ひとりの状態に合わせた治療と、時間をかけた経過観察が大切です。 医療技術の進歩により、今後さらに回復の可能性が高まることが期待されます。怪我をしてしまった場合でも、希望を持って治療に取り組むことが大切です。[2] これらの事例は、ダッシュボード損傷からの回復が可能であることを示しています。適切な医療ケアとリハビリテーション、そして患者さん自身の努力により、多くの方が事故前の生活を取り戻すことができるのです。 まとめ ダッシュボード損傷は、交通事故で膝や股関節を強く打つことで起こる怪我です。 本記事では以下の点について説明しました。 ・症状 ・原因 ・治療方法 ・回復過程 ・心理的ケア ・社会復帰 事故直後は不安や痛みで圧倒されそうになることもありますが、医療従事者や周囲の支えを受けながら、一つひとつの課題に向き合うことで回復への道が開けていくでしょう。 この記事が、ダッシュボード損傷で悩む方への道しるべとなり、回復への一歩となれば幸いです。 参考文献一覧 ^ [1]井手尾勝、政等裕、安楽喜久、堤康次郎、安藤卓、立石慶和、田原隼、松下紘三,大腿骨頭骨折の治療経験,整形外科と災害外科, 65(3):518-522, 2016. ^ [2]櫛田 学, 吉良 秀秋, 藤樹 宏, 大里 祐治.ダッシュボードインジャリーにおける骨折の特徴と治療.,西日本整形・災害外科学会雑誌, 43(3):1089-1093, 1994. http://up2医学書院.医学大辞典第2版.ダッシュボード損傷.2009-02 今日の整形外科治療指針第8版.後十字靭帯損傷.2021-10 今日の整形外科治療指針第8版.股関節脱臼骨折.2021-10 日本脂質栄養学会.オメガ3脂肪酸と骨力 コツコツ骨ラボ,骨折予防のための栄養摂取とは 厚生労働省."日本人の食事摂取基準(2020年版) 農林水産省,食事バランスガイド 日本整形外科学会,骨折 日本整形外科学会パンフレット 日本リハビリテーション医学会,運動器のリハビリテーション治療
公開日:2024.10.07 -
- 足部、その他疾患
- 足部
ガングリオンとは、関節にしこりができる病気です。突然、関節にしこりがあらわれると「なにこれ!」とびっくりし、心配になります。しかし、しこりがガングリオンの場合は放っておいても問題ありません。しかし、足にしこりがある状態は、歩きにくく違和感があるでしょう。大きくなると、痛みが生じてくるため、早めの治療が大切です。 今回の記事では、ガングリオンでしこりができる原因や足にできたときの症状、治療法を詳しく解説します。足にしこりができてお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。 ガングリオンとは? ガングリオンとは、関節周囲に発生する「コブのようにふくらんだ良性腫瘍」です。良性腫瘍のため症状がなく、しこりが気にならない程度なら積極的に治療をしなくても問題ありません。 しかし、ガングリオンの特性として大きくなってくる可能性があるため早めの診断や治療が必要です。また、しこりができた場所によっては、目立つため見た目が気になる場合もあるでしょう。ここでは、ガングリオンの定義や特徴の解説と、具体例を紹介します。 ガングリオンの定義と特徴 ガングリオンの定義は、「ゼリー状の液体がつまったしこり」です。 ・関節包(かんせつほう)と呼ばれる「関節を包む袋状の膜」 ・腱鞘(けんしょう)と呼ばれる「腱を包む鞘状の組織」 これらの組織から、茎をとおってガングリオンの袋の中に関節液が漏れ出し、ゼリー状に固まってしこりができます。 発症の特徴は、20代~50代の女性に発症しやすいですが、足や関節をよく動かす方が発症と関係しているわけではありません。そのため、職業や趣味、生活スタイルは直接的にガングリオンができる原因と関係はないとされています。また、治療を繰り返しても再発しやすいというのもガングリオンの特徴です。 治療方法については、記事の後半で詳しく解説します。 足にできるガングリオンの具体例 足に発生するガングリオンは、内くるぶしや外くるぶし、足の甲、裏、ゆびの関節が好発部位です。具体例として以下のようなエピソードがあります。 <具体例①> 足の甲にしこりがあったが、痛みが無いのでそのまま放置していた。ただ、歩きすぎると痛みが出るため、歩きすぎた日は足を休めるように心がけていた。 ある日、足を休めても痛みが引かないため整形外科を受診。ガングリオンと診断され、注射器で中身を抜いてもらった。中身が抜けると徐々に痛みが引いていき、不思議な感覚だった。負担をかけないように言われ、再び痛みが出たらまた中身の液体を抜きに来てくださいと言われた。 <具体例②> 新しい登山靴で登山をした2日後に、足の親指の付け根のふくらみに気づいた。 徐々に大きくなり、普段の靴をはくのも難しくなったため、整形外科を受診。ガングリオンと診断され、合わない靴が負担を与えた可能性があると言われた。 注射器で液を抜いてもらったが、完全にはしこりが無くならず、しばらく負担をかけないようにと指導を受けた。合わない靴や激しい運動は避けるように意識し、再度しこりが膨らんできたら受診するように言われた。 <具体例③> 仕事やプライベートで忙しい日々が続いており気づかなかったが、忙しさが落ち着くとふと膝が膨らんでいるのに気づいた。数日後、膝が2倍ほどの大きさにまで膨らんでいた。しかし、痛みはなく膝が曲げにくいこと以外、問題はなかった。 しかし、しこりが気になるため、内科を受診したところ、整形外科に行くように言われ、整形外科を受診。ガングリオンと診断された。注射器で中の液体を抜いてもらい、解消した。再発の可能性を医師から説明されたが、今のところ再発はしていない。 ガングリオンの原因 上記の具体例をみてもわかるように、ガングリオンは関節に負担がかかった場合に、しこりが現れています。しこりを放っておくと大きくなり、徐々に症状を自覚し始めます。ガングリオンは、関節に負担がかかれば誰でも発症する可能性がある病気です。 ここでは、しこりができる原因や関節へ負担がかかる状況について解説します。 主な原因 ガングリオンが形成される原因について、残念ながら詳しくは解明されていません。 関節包(かんせつほう)や靭帯(じんたい)、腱鞘(けんしょう)などを損傷したのをきっかけにできるのではないかと考えられています。転倒やケガなどで足の関節を痛めた場合、関節に強い負担がかかります。また、姿勢などの問題で関節に継続的な負担がかかっている場合も、足にしこりができやすい状態といえます。 繰り返し負荷がかかる状況 繰り返し足に負荷がかかるのは、以下のような状況です。 ・ケガ ・一部分に負荷がかかる歩き方や姿勢 ・激しいスポーツ ・合わない靴をはき続ける ・立ちっぱなしや歩きすぎ これらの状況は、繰り返し足に負荷がかかっているといえますが、だからといって必ずしもしこりができるわけではありません。「しこりができるきっかけになるかもしれない」程度の要因ととらえておきましょう。 ガングリオンの症状 ガングリオンが原因でできたしこりは、基本的に症状はありません。しかし、大きくなることで、違和感や痛み、しびれなどを訴える方が多いです。 ここでは、しこりができたときの痛みや不快感、ほかの症状との違いについて解説します。 痛みや不快感の詳細 できたしこりを放っておくと痛みや不快感、違和感の原因になります。理由として、しこりが大きくなると関節周囲の神経や血管を圧迫するため、症状があらわれるのです。主に、以下のような症状があらわれます。 ・痛み ・しびれ ・圧迫感 ・運動障害 また、関節を圧迫するために、違和感や不快感、関節の動かしにくさを感じるでしょう。たとえば、靴が入らなくなる、歩きにくい、しゃがみにくいなど、悪化すると日常生活にも影響を及ぼします。 他の症状との違い しこりがあらわれる病気は他にもありますが、ガングリオンとほかの病気には症状の違いがあります。なかでも、紛瘤や脂肪腫は、しこりのように皮膚が膨らみ異物感があります。見た目はガングリオンと似ていますが、しこりの内容物やできる部位に違いがあります。 <紛瘤> ・しこりの内容物は垢や皮脂などの老廃物 ・良性の腫瘍だが放置すると悪化する ・炎症を起こし痛みや悪臭がする <脂肪腫> ・背中や肩、首への発生が多い ・痛みはなくゆっくりと大きくなる ・内容物は脂肪 ・まれに悪性のものがある 紛瘤も脂肪腫も、治療が必要な場合、一般的には手術で取り除きます。 しこりの存在に気づいていても症状がない場合、「痛くないし平気だろう」と、様子をみて受診を後回しにしてしまうことがあります。しかし、別の病気との鑑別も必要なため、しこりの存在に気づいたら、一度医療機関を受診しておくと安心でしょう。 ガングリオンの治療法 ガングリオンの治療は、主に以下の2つの方法でおこなわれます。 ⓵非侵襲的治療(保存的療法) ②侵襲的治療(手術療法) ここでは、各治療法や、自然治癒の可能性、治療効果や費用について紹介していきます。 ⓵非侵襲的治療(保存的療法) まず、保存的療法における自然治癒の可能性や、治療方法、その効果について解説します。 自然治癒の可能性 ガングリオンは、30%~40%は自然に消失するといわれており、治療をしなくても自然治癒の可能性があります。しこりは、大きくなったり小さくなったりを繰り返しますが、その経過の中で自然に治癒するケースがあります。 ガングリオンならば、良性腫瘍のため目立った症状がなければ経過観察でもよいでしょう。 注射治療の方法と効果 ガングリオンの治療は、まず、注射器で内容物の吸引治療がおこなわれます。 注射器でおこなう吸引治療の特徴 ・注射器で穿刺してガングリオンの内容物を吸引し排出する ・内容物の排出後は圧迫固定が必要 ・外来でできる処置のため侵襲が少ない ・ガングリオンの袋は残るため再発の可能性がある 注射の針程度の傷しかつかないため、比較的痛みも少ない処置といえます。傷跡も残らず痛みも少ないため、外来で処置が可能です。 内容物の吸引をしたあとにステロイドの注入をおこなう場合があります。これは、患部の炎症を抑え、痛みを和らげる効果を期待しておこなう処置です。ステロイドの注入は必ずおこなうわけではなく、医師の診察と判断により実施が検討されます。 一般的に、まずは注射器での内容物の吸引治療をおこない、再発を繰り返す場合には手術療法が検討されます。 ②侵襲的治療(手術療法) ここでは、手術の詳細や費用について解説します。 手術の詳細と費用 手術療法では、以下の2つの手術方法があります。 ・腫瘤だけでなく、関節包や腱鞘の一部も一緒に切除する方法 ・皮膚を小さく切り開き、関節専用の内視鏡で腫瘤につながっている関節包を切除する方法 手術自体は、日帰りでできる場合も多く、手術時間は20分~30分程度で終わります。ガングリオンができた位置や数が多い場合、神経の奥に入り込んでいるものなど、まれに治療が難しいケースがあります。そのような場合には、日帰り手術ではなく入院治療が必要です。術後2週間後に抜糸をおこない、術後3週間程度は激しい動きは控え安静にしましょう。 手術には以下のようなリスクがあります。 ・感染を起こす ・神経を傷つける ・傷跡がのこる 手術といわれると、治療に対して不安が大きくなりますよね。医師からの説明をよく聞き、わからないことは手術の前に確認しておくと安心です。不安な気持があることも伝えておきましょう。 一般的な手術の費用は以下の通りです。 負担割合 負担金額 1割負担 約3000円前後 3割負担 約9000円前後 そのほか、診察代や検査代、処方箋代などがかかります。手術部位によっても費用が異なるため、詳しくは手術を受ける病院に確認してください。 ガングリオンの予防策 ガングリオンの原因ははっきりと解明されていないため、確実な予防策はありません。しかし、少し対策をすれば、発症のリスクを下げることができます。 ここでは、ガングリオンの発症予防や悪化予防のためにできる日常生活での注意点や、スポーツをするときの注意点について解説します。 日常生活での注意点 足のガングリオンは、合わない靴をはき続けたり、歩き方や姿勢が悪かったりすると、一部の関節に負担がかかります。そのような状態はガングリオンを発症するきっかけになったり、すでにあるガングリオンを悪化させる可能性があります。靴はサイズの合ったはきやすい靴を選び、歩き方や姿勢にも気をつけましょう。 ガングリオンを強い力でマッサージするのも良くありません。軽くさする程度なら問題ありませんが、力を加えマッサージをおこなうと、痛みが悪化したりしこりが大きくなったりする可能性があります。 また、痛みが出てきた場合には、無理に動かさず安静にしましょう。患部に熱感がある場合には炎症が起きている可能性が考えられます。保冷剤や濡らしたタオルで冷やし、早めに医療機関を受診しましょう。 スポーツ時の対策 スポーツをするときには、関節に負担をかけないようにし、ケガに気をつけましょう。 ガングリオンは、関節包(かんせつほう)や靭帯(じんたい)、腱鞘(けんしょう)などを損傷した場合にできると考えられています。ケガがきっかけでガングリオンができる可能性があるため、スポーツをする前にはしっかり準備運動やストレッチをしてから始めましょう。 また、ケガをしにくい体作りも大切です。関節の柔軟性を高めるストレッチや筋トレを取り入れ、ケガをしにくい強い関節をつくりましょう。 適切な治療と管理が大切 ガングリオンは珍しい病気ではないため、経験した方もいるでしょう。ここでは、ガングリオンの早期発見・早期治療の重要性と、適切な治療を受けた場合について解説します。 早期発見と治療の重要性 ガングリオンは良性の腫瘍ですが、早期発見するに越したことはありません。しこりが大きくなる前に治療ができれば、痛みやしびれなどの症状を起こさずに済みます。また、まれにガングリオンではなく悪性腫瘍だったケースもあります。 しこりがあると感じたら、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けましょう。 適切な治療を受けた結果 ガングリオンは、適切な治療と管理をおこなえば再発のリスクを下げられます。ただし、ガングリオンができた位置や数が多い場合、神経の奥に入り込んでいるものなど、治療が難しいケースがあります。いくつものガングリオンが、ブドウの房のようにできた症例もあり、必ずしもできたガングリオンがひとつとは限りません。 受診する医療機関は、整形外科が一般的です。そのほか、形成外科、皮膚科、外科でも治療が受けられます。適切な治療を受けるためには、医療機関を受診し、担当の医師と治療方針について十分話をしておく必要があるでしょう。 まとめ ガングリオンは、女性に多くみられる疾患です。関節に負担がかかることで、関節液が漏れ出しゼリー状に固まりしこりができます。合わない靴や歩き方、姿勢の悪さは、足の関節に負担がかかり、ガングリオンができるきっかけになります。足の関節に負担がかからないよう気を付けるとともに、関節の柔軟性を高め、負担がかかっても耐えられる関節をつくることが大切です。 良性腫瘍のため治療はしなくても問題はないですが、痛みやしびれなどの症状が問題になる場合には、早めに整形外科を受診しましょう。 参考文献一覧 「症状・病気をしらべる ガングリオン」日本整形外科学会 「手外科シリーズ ガングリオン」日本手外科学会 「関節周囲の嚢胞性病変―ガングリオンと滑液包炎―」日本医放会誌 第59巻第7号 「ガングリオン」メディカルノート 「足のガングリオン」徳島県医師会
公開日:2024.10.07 -
- 手部、その他疾患
- 手部
関節が腫れてしこりができると、痛みや不便さを感じるだけでなく「ガン(悪性腫瘍)なのでは?」と心配になりますよね。 関節にしこりができたら、ガングリオンや粉瘤(ふんりゅう)、脂肪腫(しぼうしゅ)といった良性腫瘍のほかに、がんを含む悪性腫瘍の可能性が考えられます。。ガングリオンも悪性腫瘍も見た目はよく似ているので、見分けるポイントを知っておくと安心です。 今回の記事では、ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方を詳しく解説します。それぞれの治療法も紹介しているので、関節にしこりができて不安な方は、ぜひ参考にしてみてください。 ガングリオン・悪性腫瘍とは ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方をチェックする前に、それぞれの病気の特徴を理解しましょう。 ガングリオンとは ガングリオンとは、一般的に関節の周囲に発生する「こぶ状に膨らんだしこり」です。全身の関節にできますが、発生頻度として多いのは、手首の甲や手のひら側の指の付け根です。 2つの骨がつなぐ関節を保護する「関節包」のなかの滑液(関節を保護する潤滑油)が、ガングリオンの袋に流れ込んで濃縮することによりしこりができます。しかし、ガングリオンができる原因は、まだ明確にはわかっていません。 ガングリオンは無症状のケースもありますが、しこりが大きくなると血管や神経を圧迫し、痛みやしびれがあらわれる場合があります。関節にできるしこりは悪性腫瘍のケースもあるので、ガングリオンと疑われるしこりができたら一度専門医に診てもらうと良いでしょう。 以下の記事では、手首にガングリオンができた場合の治療法や再発防止の対策を解説しています。手首にガングリオンができている方は、参考にしてみてください。 なお、関節にしこりができて腫れている場合、脂肪腫(しぼうしゅ)や粉瘤(ふんりゅう)などガングリオン以外の病気の可能性もありますが、どちらも良性腫瘍です。 悪性腫瘍とは 悪性腫瘍は、異常な細胞が周りに広がったり、臓器や生命に悪影響を与えたりする腫瘍のことです。たとえば「がん」は悪性腫瘍の代表的な病気です。 がんの種類や発症部位によっては、ガングリオンと同様に身体の関節部分にしこりを作ることがあります。 放っておくと、進行して生命に危険をもたらす可能性もあります。気になるしこりができた場合は、専門医に診てもらいましょう。 人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術である「再生医療」をご存じでしょうか。再生医療は筋肉や腱、靭帯損傷の治療に効果的です。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。ガングリオン以外で身体に痛みや違和感がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方のポイント ガングリオンと悪性の腫瘍には、以下のような特徴があります。具体的には、触った感じやしこりの特徴の違いが見分けるポイントです。 ガングリオン 悪性の腫瘍 触った感じ • やわらかく弾力がある • 触っても痛くない場合がある • 硬くゴツゴツしている • 触ると痛みがある しこりの特徴 • 大きくなったり小さくなったりを繰り返す • しこりはゆっくり大きくなる • 自然に消失する場合がある • 急速に大きくなる • 自然に小さくはならない • しこりが周りと遊離して動く これらの特徴は、見分けるポイントにはなりますが、自己判断は危険です。自分では良性腫瘍のガングリオンだと思っていても、実は悪性腫瘍の可能性があるためです。 関節のしこりに気づいたら、早めに医療機関を受診して専門医に診てもらいましょう。 ガングリオンと悪性腫瘍の治療方法の違い ここでは、ガングリオンと悪性腫瘍の治療法の違いを解説します。 ガングリオンの場合 ガングリオンの治療は、主に「保存的療法」と「外科的療法」の2つです。 【保存的治療法のポイント】 ・注射器で内容物を吸引し排出する ・外来でできる処置のため身体にできる傷が少ない ・ガングリオンの袋は残るため再発の可能性がある 【外科的治療法のポイント】 ・手術でガングリオンを袋ごと取り除く ・術後は創部を保護し部位によっては固定が必要 ・術後リハビリが必要なケースもある ・麻酔をして切開をするため保存的療法より負担が大きい ・ガングリオンの袋ごと摘出するため再発の可能性は低い どちらの方法でも再発の可能性はゼロではありません。一般的に、まずは保存的治療をおこない、再発を繰り返す場合には外科的治療が検討されます。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。 ガングリオン以外で手や腕に痛みやしびれなどの症状がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 悪性腫瘍の場合 ガングリオンではなく「がん」だった場合には、以下のような方法で治療をおこないます。 手術療法 化学療法(抗がん剤治療) 放射線療法 がんの種類や進行具合にもよりますが、これらの治療方法を組み合わせて治療を進めていきます。 まとめ|ガングリオンと悪性腫瘍を画像や症状を参考に見分けよう ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方のポイントは、触った感触やしこりの特徴です。気になるしこりができた場合は、以下の表を参考に、自分のしこりの特徴と照らし合わせてみてください。 ガングリオン 悪性の腫瘍 触った感じ • やわらかく弾力がある • 触っても痛くない場合がある • 硬くゴツゴツしている • 触ると痛みがある しこりの特徴 • 大きくなったり小さくなったりを繰り返す • しこりはゆっくり大きくなる • 自然に消失する場合がある • 急速に大きくなる • 自然に小さくはならない • しこりが周りと遊離して動く ただし、専門家でなければ正確に見分けるのが難しいです。ガングリオンだと思って様子を見ていたものが、悪性腫瘍である可能性もゼロではありません。 早期発見・早期治療のためにも、しこりや痛みが気になった時点で病院を受診するのが良いでしょう。 手や足の筋肉や腱、靭帯を損傷したときは「再生医療」が効果的です。再生医療は身体にメスを入れない治療法なので、患者の負担が少ないです。「実はガングリオン以外の症状も気になる…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンや悪性腫瘍に関するよくある質問 最後にガングリオンや悪性腫瘍に関するよくある質問と回答をまとめます。 ガングリオンは再発しますか? ガングリオンは、治療をしても再発を繰り返すケースのある病気です。 手術でガングリオンの袋ごと取り除く治療をすれば、再発の可能性は低くなります。しかし、注射吸入でガングリオンの中の液体を抜くだけの治療の場合、再発率は60%前後といわれています。(文献1) 再発を繰り返す場合は、手術の検討が視野に入ってくるでしょう。 ガングリオンの再発を防ぐ対策はありますか? ガングリオンの再発を防ぐには、治療後の過ごし方が肝心です。 治療をおこなった後は、まずは患部を安静にして過ごしましょう。患部に負荷がかかれば、関節液が再び漏れだす可能性があり、再発のリスクが高まります。 痛みやしびれ、関節の動きにくさなどがなくなると、つい普段通りの生活をしてしまいます。しかし、再発のリスクを下げるために、医師から告げられた安静期間は、必ず守るようにしましょう。 ガングリオンが痛いときの対処法が知りたいです 気になるほどの痛みであれば、病院を受診しましょう。症状の程度によっては、注射器でガングリオンの内容物を吸引したり、ガングリオンの袋を取り除く手術をしたりする必要があります。 痛みが気にならなければ、安静にして様子を見る選択肢もあります。ガングリオンは自然に消えるものもあるためです。 ただし、しこりはガングリオンではなく悪性腫瘍である可能性もゼロではありません。早期発見・早期治療のためにも、痛みを感じた時点で専門医に診てもらうのが良いでしょう。 以下の記事では、ガングリオンが痛いときの対処法を解説します。痛みがあるときにやってはいけない行動も紹介しているので、すでにガングリオンの症状が出ている方は参考にしてみてください。 ガングリオンに似ている脂肪腫は悪性ですか? 脂肪腫は、良性の腫瘍です。脂肪腫は脂肪組織で構成されており、しこりが柔らかいのが特徴です。 以下の記事では、頭にできるコブについて解説しています。コブの種類や受診が必要なケースも紹介しているので、気になるコブが頭にある方は参考にしてみてください。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/4/67_371/_pdf/-char/ja
公開日:2024.11.06 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「痛風と診断されたけど、どのような食事をすればいいの?」「家族の食事にも配慮しないと…」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 痛風の予防やコントロールには、適切な食事を摂ることが重要です。しかし、具体的にどのような食材を選び、どうバランスを取ればよいのかわからない方も少なくありません。 今回は、痛風対策に効果的な食事法について詳しく解説します。尿酸値を下げる食材の選び方、避けるべき食品、一日の食事プランなどについても紹介しています。 痛風の悪化を防ぎつつ、ご家族の健康も考えた食生活を送る参考になれば幸いです。 痛風と食事の関係 痛風の発症や悪化には、日頃の食生活も大きく影響しています。とくに、プリン体を多く含む食品の過剰摂取は要注意です。ここでは、痛風と食事の関係について解説いたします。 痛風発症と食生活の因果関係 痛風は、体内で作られた尿酸という物質が、腎臓から十分に排出されないために血液中に蓄積し、発症します。尿酸は、プリン体という物質が体内で分解されることで生成されます。 食事から多く摂取すると尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。つまり、プリン体を多く含む食品を取りすぎると、尿酸の生成が増え、痛風発作のリスクが高くなるのです。 健康な成人男性の尿酸の1日生成量は約1,000mgといわれています。プリン体の摂取量が多いと、この尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。そして、血液中の尿酸値が1dLあたり7.0mg以上になると、痛風発作のリスクが上昇しやすいのです。 つまり、普段の食生活が痛風の発症と深く関係しているといえます。 痛風悪化のリスクを高める食品 痛風のリスクを高める代表的な食品は、以下の通りです。 肉類(とくにレバー、内臓肉など) 魚介類(とくにイワシ、サンマ、カツオなど) ビールなどのアルコール飲料 果糖の多い清涼飲料水 前述の食品に多く含まれるプリン体が体内で分解されると、尿酸が生成されます。たとえば、レバー100gあたりのプリン体含有量は約400mgで、他の食品と比較すると高い値です。また、アルコールは尿酸の排泄を妨げる作用があるため、痛風のリスクを高めます。ビール1缶(350ml)を飲むと、血中尿酸値が約0.5mg/dL上昇すると言われています。 さらに、果糖は他の糖類と比べて尿酸値を上昇させる作用が強いとされています。したがって、痛風の方は、これらの食品の摂取を控えることが重要です。 痛風の予防のためには、バランスの取れた食事を心がけ、プリン体の過剰摂取を避けることが大切です。プリン体を多く含む食品を控えめにし、十分な水分を摂取して尿酸を排出しやすくすることが有効です。また、適度な運動を行うと、体重管理や代謝の改善につながり、痛風のリスクを下げることができるでしょう。 痛風に良い食材とは? 痛風の食事療法では、プリン体の摂取を控えることが大切ですが、すべての食品を制限する必要はありません。痛風患者さんでも比較的食べてもよいとされる食材があります。これらの食材は、プリン体が少なく、痛風の改善に役立つ栄養素が豊富に含まれています。ここでは、そのような食材について紹介します。 尿酸値を下げる食材の選び方 痛風対策の食事では、プリン体の少ない食材を中心に選ぶことが大切です。具体的には、野菜類、果物類、低脂肪乳製品、全粒穀物などが推奨されます。これらの食材を中心とした食事は、尿酸値を下げ、痛風発作のリスクを減らすのに役立ちます。 推奨される食品とその理由 以下の表は、痛風の方に推奨される食品とその理由です。 食品 理由 含有量の例 ・キウイフルーツ ・オレンジ ・さくらんぼ ビタミンCが豊富で、尿酸の排泄を促進 100g当たりのビタミンC含有量 ・キウイフルーツ約90mg ・オレンジ約50mg ・さくらんぼ約10mg 低脂肪乳製品 ・プリン体が少なく、カルシウムが豊富 ・カルシウムは尿酸の排泄を促進 100g当たりのカルシウム含有量 ・低脂肪牛乳約120mg ・ヨーグルト約110mg 全粒穀物 ・ビタミンB群が豊富で、プリン体代謝を助ける ・食物繊維が豊富で、便通を改善 玄米100g当たりのビタミンB1含有量:約0.4mg 大豆製品 ・プリン体含有量が低く、尿酸値を上げにくい ・良質なタンパク源で、動物性タンパク質の代替に適している ・イソフラボンが豊富で、抗酸化作用がある ・木綿豆腐100g当たりのプリン体含有量:約6mg ・納豆50g当たりのプリン体含有量:約約18〜22.5mg 注意:納豆は栄養価が高いですが、プリン体含有量も無視できません。適量を守りましょう これらの食品を上手に取り入れることで、痛風患者さんでも栄養バランスの取れた食生活を送ることができます。ただし、どのような食品でも食べ過ぎは避けるべきです。個人差があるため、医師や管理栄養士との相談の上、自分に合った食事療法の実践が大切です。 痛風に悪い食品を避ける方法 痛風の予防と管理には、プリン体の多い食品を避けることが欠かせません。プリン体含有量が100gあたり200mg以上の食品は、とくに痛風のリスクを高める可能性があります。ここでは、制限が必要な食品と、その代替案について見ていきます。 プリン体が多い食品の一覧と代替案 以下の表は、プリン体を多く含む食品と、その代替案をまとめたものです。痛風患者は、これらの高プリン体食品を控え、代わりに低プリン体の食材の選択を意識するのが大切です。 高プリン体食品 プリン体含有量 (mg/100g) 低プリン体の代替案 レバー 300-600 大豆製品(豆腐、納豆など) イカ、タコ 200-300 白身魚(タラ、カレイなど) カツオ、マグロ 200-400 青背魚(サバ、アジなど) 鶏肉の皮 200-300 鶏むね肉(皮なし) ビール 10-20 (100ml当たり) ノンアルコールビール 前述した食品を控える代わりに、大豆製品、白身魚、野菜中心の食事に切り替えるのがよいでしょう。 大豆製品は良質なタンパク質源で、プリン体が少なく、豆腐100gあたりのプリン体含有量は約50mgです。また、野菜は尿酸値を下げる働きがあるビタミンCが豊富に含まれています。 アルコールと痛風の関係 アルコールは尿酸の排泄を阻害し、体内の尿酸を増加させます。とくにビールは、アルコールに加えてプリン体も含むため、尿酸値を上昇させる作用が強いのです。ビール大瓶1本(633ml)には約100-200mgのプリン体が含まれており、これは高プリン体食品とされる量です。 痛風患者は可能な限りアルコールを控え、どうしても飲む場合は、ビールではなく、ワインや焼酎などのプリン体を含まない酒を選び、適量(1日平均純アルコール20g程度)を心がけましょう。 実践!痛風対策のための一日の食事プラン ここでは、痛風患者におすすめの一日の食事プランを紹介します。家族の健康も考慮しながら、バランスの取れた食事を心がけましょう。 朝食:痛風に優しいメニューの提案 忙しい朝でも、簡単に作れて栄養バランスの取れたメニューを選ぶと続けやすいでしょう。 メニュー 材料 全粒粉トースト+野菜スープ 全粒粉パン、野菜(お好みで)、コンソメなど オートミール+低脂肪ヨーグルト+フルーツ オートミール、低脂肪ヨーグルト、お好みのフルーツ 豆乳スムージー+ビタミンCの多い果物 豆乳、バナナ、ビタミンCの多い果物(キウイ、オレンジ、イチゴなど) 朝の忙しい時間帯でも、これらのメニューなら短時間で準備できるでしょう。全粒粉トーストと野菜スープ、オートミールとヨーグルト、豆乳スムージーなど、痛風の方に適したメニューといえます。 昼食と夕食:家族も喜ぶ健康的な選択 家族みんなで楽しめるような、バランスのよい食事の例を紹介します。 メニュー 材料 茶わん蒸し+野菜サラダ+玄米ご飯 卵、だし汁(干ししいたけや玉ねぎなど)、野菜(レタス、きゅうり、トマト、にんじん、ブロッコリーなど)、玄米など 豆腐ハンバーグ+蒸し野菜+キノコスープ 豆腐、ひき肉、野菜、キノコ、だし汁など さわらの塩焼き+野菜炒め+もずく酢 さわら、野菜、もずく、酢など 低プリン体の食材を使った、栄養バランスの取れたメニューを揃えました。茶わん蒸しや豆腐ハンバーグなど、家族みんなが喜ぶ献立でしょう。 痛風の方も、おいしく食事を楽しみながら、健康管理がしやすいです。 家族の好みに合わせつつ、プリン体の少ない食材を使ったメニューを心がけましょう。 表に挙げたメニューは、プリン体が比較的少なく、痛風患者に適していると考えられます。しかし、個人差があるため、自分の尿酸値や体調に合わせて、医師や管理栄養士に相談しながら、食事プランを調整することが大切です。 痛風の食事療法は、バランスの取れた食生活が基本です。毎日の食事で、プリン体の少ない食材を選び、野菜や果物、低脂肪乳製品などを積極的に取り入れることで、尿酸値をコントロールしつつ、家族みんなで健康的な食卓を囲むことができるでしょう。 食生活の習慣改善とその効果 痛風の予防と管理には、継続的な食生活の改善が欠かせません。ここでは、食事の管理がもたらす長期的な効果と、合わせて実践したい生活習慣の改善策を紹介します。 食事の管理がもたらす長期的な健康効果 適切な食事療法を継続することで、以下のような長期的な健康効果が期待できます。 健康効果 詳細 尿酸値の低下 プリン体の摂取量を1日400mg以下に抑えると、尿酸値が低下する可能性があり、痛風発作のリスクを減少させる可能性がある 尿酸排泄の促進 十分な水分摂取により、尿酸の排泄を促すことができる。また、ビタミンCには尿酸排泄を促進する可能性がある 腎機能の保護 高尿酸血症が長期間続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性がある。適切な食事療法により尿酸値をコントロールすることで、腎機能の保護につながる可能性がある 尿路結石の予防 高尿酸血症は尿路結石の危険因子の一つである。十分な水分摂取と適切な食事療法により、尿路結石のリスクを下げやすい 腎臓病と尿路結石は、痛風患者にとって重要な合併症であり、食事療法はこれらの予防にも役立ちます。 ただし、腎臓病や尿路結石がある場合の具体的な食事指導は、病状に応じて個別に行う必要があります。医師や管理栄養士と相談しながら、適切な食事療法を実践することが大切です。 痛風予防のための追加の生活改善策 食事療法と合わせて、以下のような生活習慣の改善策を実践することが重要です。 生活習慣 改善策 運動不足 1回30分以上の中等度の運動(早歩きなど)を週5回、または1回20分以上の高強度の運動を週3回行うことを目標とする。適度な運動は尿酸値を下げ、血行を促進する効果が期待できる 喫煙 禁煙する。喫煙は尿酸値を上昇させる要因の一つであり、禁煙により尿酸値が0.5~1.0mg/dL程度の低下が期待できる 肥満 BMIを25未満に維持することを目標に、適正体重の維持に努める。肥満は尿酸値を上昇させる要因の一つである まとめ・生活全般を見直して痛風対策を! 生活全般を見直し、健康的な習慣を身につけていきましょう。 痛風の予防と管理に食事が果たす役割は非常に大きいといえます。プリン体の多い食品を控え、尿酸値を下げる食材を積極的に取り入れましょう。 そして家族の健康も考慮しながら、バランスの取れた食生活を実践することです。これらを継続的に行うことで、痛風の悪化を防ぎ、健やかな毎日を送ることができるはずです。 50歳をすぎると、痛風のリスクが高まります。仕事や家庭の責任を果たしながら、自分の健康管理を怠りがちになることもあるでしょう。しかし、食生活の改善は、あなたの健康を守る確かな一歩となります。専門家のアドバイスを参考に、家族の理解と協力を得ながら、無理のない範囲で食事の改善に取り組んでいきましょう。 痛風と向き合う日々は決して楽ではないかもしれません。しかし、正しい食の選択を心がけることが、あなたの健康を守る確かな一歩となるでしょう。ご家族の健康も考えながら、バランスの取れた食生活を実践していきましょう。 参考文献一覧 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
公開日:2024.10.07 -
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「脛に痛みを感じるようになり、ランニングが辛くなってきた」「疲労骨折かもしれないと思うけど、どのくらい休めば治るの?」 このような悩みを抱えるランナーは少なくありません。疲労骨折は、ランニングを楽しむ上で大きな障害となります。適切な治療と予防策を理解することが、健康的なランニングライフを送るために不可欠です。 この記事では、疲労骨折の原因や症状、自然治癒のプロセス、そして予防策について詳しく解説します。正しい知識とケアを通して、疲労骨折を乗り越え、ランニングを楽しみ続けるための参考になれば幸いです。 疲労骨折の理解 疲労骨折は、繰り返しのストレスによって骨に微小な亀裂が生じる状態を指します。 まずは、疲労骨折の原因と症状を解説します。 疲労骨折の原因と典型的な症状 疲労骨折は、以下のような要因が重なると発生しやすくなります。 ・急激なトレーニング量の増加 ・不適切なランニングフォーム ・硬いランニングサーフェス ・足に合わない靴の使用 ・骨密度の低下 疲労骨折の症状は、以下のようなものがあります。 症状 説明 運動時の痛み 特に、特定の部位の痛み 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが続く 腫れや圧痛 患部が腫れたり、押すと痛みを感じる 皮膚の発赤や熱感 患部の皮膚が赤くなったり、熱を持つ これらの症状が継続する場合は、疲労骨折の可能性が高いと考えられます。 疲労骨折の診断プロセス 疲労骨折の診断は、以下のようなプロセスで行われます。 診断手順 内容 問診 症状や発症時期、トレーニング状況などを詳しく聴取 身体診察 圧痛や可動域制限、腫れなどを確認 画像検査 X線検査、MRI検査、骨シンチグラフィなど 早期の疲労骨折では、X線検査で異常が見つからない場合があります。 一方で、MRI検査や骨シンチグラフィは、より早期の段階で診断が可能といわれています。 自然治癒のプロセス 多くの疲労骨折は、適切な休息とケアにより自然治癒が期待できます。ただし、骨折の部位や重症度によって、治癒に必要な期間は異なります。 自然治癒に必要な条件と推奨される休息期間 多くの疲労骨折は、適切な休息とケアにより自然治癒が期待できます。ただし、骨折の部位や重症度によって、治癒に必要な期間は異なります。 自然治癒に必要な条件と推奨される休息期間 疲労骨折の自然治癒には、以下の条件が必要です。 ・十分な安静と休息 ・患部への負荷の回避 ・適切な栄養摂取 一般的に、疲労骨折の自然治癒には6~8週間程度の休息期間が推奨されます。ただし、骨折の部位や重症度によって、必要な期間は異なります。医師の指示に従って、適切な休息期間を設けることが大切です。 サポートとしての栄養と補助的治療 自然治癒を促進するためには、適切な栄養摂取が重要です。以下のような栄養素が骨の健康維持に役立ちます。 栄養素 食べ物 カルシウム ・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) ・小魚(しらす、小あじなど) ・大豆製品(豆腐、納豆など) ・緑黄色野菜(小松菜、ブロッコリーなど) ビタミンD ・魚(鮭、さんま、いわしなど) ・きのこ類(しいたけ、まいたけなど) ・卵黄 タンパク質 ・肉類(鶏肉、豚肉、牛肉など) ・魚介類(鮭、まぐろ、えびなど) ・大豆製品(豆腐、納豆、油揚げなど) ・卵 ・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) これらの食べ物を適切に組み合わせて摂取することで、骨の健康維持に必要な栄養素を効果的に補えられるでしょう。 また、補助的治療として、以下のようなものがあります。 治療法 種類 効果 アイシング - 痛みと腫れの緩和に効果的 物理療法 電気刺激療法 痛みの軽減と筋肉の緊張緩和 超音波療法 骨の治癒を促進する可能性あり マッサージ療法 血行促進と筋肉の緊張緩和 ストレッチング 関節可動域の維持と筋力低下の予防 運動療法 筋力強化と関節機能の回復 これらの補助的治療は、医師や理学療法士と相談しながら取り入れるのが良いでしょう。 治療期間の詳細 疲労骨折の治療期間は、骨折のタイプや部位によって異なります。ここでは、様々な疲労骨折のタイプと、それぞれの治療期間の目安を紹介します。 様々な疲労骨折タイプと治療期間の比較 以下は、代表的な疲労骨折のタイプと治療期間の目安です。 骨折のタイプ 治療期間の目安 脛骨(シンスプリント) 4~8週間 中足骨 6~8週間 大腿骨頸部 8~12週間 腰椎 6~12週間 ただし、これらは一般的な目安であり、個人差があります。治療期間は、症状の改善具合や画像検査の結果を見ながら、医師が判断します。 早期回復を支援するためのリハビリテーション技術 疲労骨折の回復を早めるためには、適切なリハビリテーションが重要です。リハビリテーションは、必ず医師の許可を得てから開始し、理学療法士の指導のもとで段階的に進めていきます。骨折部位のリハビリには特に注意が必要です。 種類 目的 具体的な方法(例) 注意点 段階的な運動負荷 徐々に運動量を増やしていく ・低強度から開始し、耐久性をつける ・痛みに注意しながら、負荷を徐々に上げる 骨折部位に過度な負荷をかけないよう、医師の指示に従う 全身的な筋力トレーニング 骨折部位周辺および全身の筋力維持・強化 ・体重負荷や抵抗運動を取り入れる ・患部周辺の筋肉だけでなく、全身の主要な筋群をトレーニング ・コアスタビリティトレーニング(体の中心部の筋肉を鍛える運動)の導入 骨折部位の筋力トレーニングは、完全に治癒するまで控える 関節可動域訓練 関節の柔軟性維持 ・ストレッチや筋緊張の緩和を促す ・患部の関節および全身の主要な関節を動かす運動 骨折部位の関節は、医師の許可があるまで動かさない バランス訓練 再発予防とパフォーマンス向上に有用 • 片脚立ちや不安定な面(例:バランスボール)での立位保持 ・動的なバランス運動 ・プロプリオセプション(体の位置感覚)トレーニング 骨折部位に体重をかけない方法から始める 代償動作の修正 不適切な動作パターンの改善 ・歩行分析と修正 ・日常生活動作の評価と指導 骨折部位を保護しながら行う このアプローチにより、骨折部位を適切に保護しつつ、全身のコンディショニングと再発予防に焦点を当てたリハビリテーションが可能となります。常に無理のない範囲で、徐々に活動レベルを上げていくことが大切です。痛みがある場合は必ず中止し、医師に相談してください。 日常生活での予防と管理 疲労骨折を予防し、再発を防ぐためには、日常生活での適切な管理が欠かせません。トレーニング方法の見直しとライフスタイルの調整が重要です。 予防策:適切なトレーニング方法と負荷管理 疲労骨折を予防するためには、以下のようなトレーニング上の工夫が有効です。 ・徐々にトレーニング量を増やす(週10%以下の増加が目安) ・十分なウォームアップとクールダウンを行う ・適切な休養日を設ける ・クロストレーニングを取り入れる 適切なトレーニング方法を取り入れることが、疲労骨折の予防に役立ちます。例えば、インターバル走では高強度と低強度の運動を交互に行うことで、過度な負荷を避けつつ心肺機能を強化できます。ヒルトレーニングでは緩やかな上り坂を取り入れることで、筋力強化と負荷の分散を図れます。 また、水泳や自転車などのランニング以外の運動を取り入れるクロストレーニングは、特定の部位への負担を軽減する効果が期待できます。 さらに、ランニングフォームもチェックしましょう。足はかかとから着地し、重心を前に移動させるようにします。腕は脇に近づけ、リズミカルに振ります。上体は背筋を伸ばし、顔を上げて前を見ます。 シューズ選びも重要です。つま先に1cm程度の余裕があるサイズを選び、自分の体重や走行距離に合ったクッション性を確認します。また、アーチのタイプに合ったサポート機能も必要です。 専門家のアドバイスを元に自分に合ったものを選びましょう。 疲労骨折の再発を防ぐためのライフスタイルの調整 疲労骨折の再発を防ぐには、以下のようなライフスタイルの調整が役立ちます。 ライフスタイルの調整 具体的な方法 バランスの取れた食事 ・カルシウム豊富な食品(乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など)を摂取する ・ビタミンD含有食品(鮭、さんま、きのこ類、卵黄など)を取り入れる 適度な日光浴 ・1日15~30分程度、日中の太陽光を浴びる 禁煙 ・ニコチン代替療法(ニコチンパッチ、ガムなど)を活用する ・禁煙外来や禁煙プログラムに参加する ・禁煙に理解のある友人や家族に協力を求める 過度なアルコール摂取の制限 ・1日の飲酒量を、男性は20g、女性は10g未満に抑える ・アルコールを含まない飲み物を積極的に摂取する ・アルコールの代わりにストレス解消法を見つける 疲労骨折の再発を防ぐには、適切な栄養摂取が欠かせません。 カルシウムは1日800mg程度、ビタミンDは400~800IU程度の摂取が推奨されています。 カルシウムは乳製品、小魚、大豆製品などから、ビタミンDは魚類、きのこ類、卵黄などから効率的に摂取することが可能です。 また、適度な日光浴も重要です。1日15~30分程度、週に2~3回行うのが適切とされています。朝10時から午後2時までの間が理想的ですが、紫外線の強い夏場は早朝や夕方の時間帯を選ぶようにしましょう。 さらに喫煙は骨密度を低下させる要因の一つです。禁煙のためには、ニコチン代替療法や禁煙外来の利用、禁煙アプリの活用などの方法があります。 また、定期的な骨密度検査を受け、骨の健康状態をチェックすることも大切です。 まとめ:疲労骨折の治療と予防のための完全ガイド 疲労骨折は、ランナーにとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策によって治りやすくなるでしょう。自然治癒を目指すためには、十分な休息とケアが不可欠です。 総合的な回復と健康維持のアプローチ 疲労骨折の回復と予防には、以下のような総合的なアプローチが有効です。 ・早期発見と適切な治療 ・十分な休息と栄養摂取 ・段階的なリハビリテーション ・トレーニング方法の見直しとライフスタイルの調整 これらを組み合わせることで、効果的な回復と再発予防が可能となります。 定期的な医療チェックの重要性 疲労骨折の早期発見と予防には、定期的な医療チェックが欠かせません。特に、リスクの高い人は、より注意深く医療チェックを行う必要があります。 リスクの高い人とその具体的な対策 リスクの高い人 具体的な対策 女性アスリート(特に月経不順や低体重の方) ・3~6ヶ月ごとの骨密度検査 ・婦人科での定期検診 ・ホルモンバランスのチェック 急激にトレーニング量を増やした人 ・トレーニング計画の細やかな調整 ・専門のコーチや理学療法士との連携 過去に疲労骨折の経験がある人 ・より頻繁な受診や検診 ・代替トレーニングの導入 骨密度が低い人 ・6ヶ月ごとの骨密度検査 ・カルシウムやビタミンDの摂取量チェック 偏った食生活や栄養不足の人 ・専門家による食事指導 ・栄養状態の定期的なチェック これらのリスクの高い人に限らず、以下のような場面では医療機関を受診しましょう。 ・疲労骨折の症状が疑われる場合 ・トレーニング計画の見直しが必要な場合 ・定期的な骨密度検査(リスクの高い人は6ヶ月ごと、それ以外の人は1年ごと) 疲労骨折の早期発見のために、運動時の痛み、安静時の痛みの持続、腫れや圧痛などの症状に注意が必要です。これらの症状が見られた場合は、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。 医療専門家と連携しながら、自分に合った予防策を見つけていくことが大切です。疲労骨折は、ランナーにとって起こる可能性のある問題ですが、適切な知識とケアによって、その影響を最小限に抑えられる可能性があります。 骨の回復を促進し、再発を防ぐためには、総合的なアプローチが重要です。これには、適切な休養、段階的なトレーニング再開、栄養管理、そして医療専門家による適切な治療が含まれます。 ランニングを長く楽しみ続けるために、自分の体に注意を払い、リスク管理を行うことが重要です。定期的な健康チェックと、体の変化に敏感になることで、潜在的な問題を早期に発見し、対処することができるでしょう。 参考文献一覧 MSDマニュアル家庭版,骨折の概要 日本スポーツ整形外科学会,スポーツ損傷シリーズ,疲労骨折 日本臨床整形外科学会,疲労骨折・腰痛" 日本生活習慣病予防協会,骨粗鬆症 ドクターズファイル,疲労骨折 日本骨折治療学会,骨折の解説,疲労骨折 厚生労働省,アルコール MSDマニュアル,足の疲労骨折 e-ヘルスネット,喫煙によるその他の健康影響 e-ヘルスネット,カルシウム 日本人の食事摂取基準(2020年版),②ビタミン D,p178-187 農林水産省,みんなの食育,大切な栄養素カルシウム 国立環境研究所,体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定-札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-
公開日:2024.10.07 -
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甲状腺にできる悪性のしこりが「甲状腺がん」です。甲状腺がんは組織型による違いがあるものの、いずれの場合も治療の基本となるのは手術による甲状腺切除やリンパ節郭清であり、そこに放射線や化学療法、ホルモン療法を組み合わせていくこともあります。 この記事では、こうした甲状腺がんの治療に伴う合併症や後遺症をとりあげて詳しく説明をしていきます。また、後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介していますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。 この記事を読んで分かること ・甲状腺がんについて ・甲状腺がんの治療に伴う合併症や後遺症の種類 ・甲状腺がんの後遺症に対する再生医療 甲状腺がんとは 甲状腺は、頸部にあるホルモンを分泌する臓器です。ちょうど喉仏(のどぼとけ)の下あたりに位置する部位に存在しており、主に甲状腺ホルモン(TSH)という物質を血液中に分泌して体の代謝バランスを調節する役割を担っています。その甲状腺にできる悪性のしこりを、「甲状腺がん」と呼びます。 出典:甲状腺がんについて:[国立がん研究センター がん情報サービス] 甲状腺がんは組織型別に分類され、主なものに、 1)乳頭がん 2)濾胞がん 3)髄様がん 4)未分化がん があります。それぞれ解説していきます。 1)乳頭がん 乳頭がんは、甲状腺がんの中で最も頻度が多い組織型で、約9割近くを占めます。 基本的には進行がゆっくりで、多くの場合予後が良好とされていますが、一部に多臓器への転移をするなど悪性度が高いものもあります。 治療は基本的に手術で甲状腺を切除し、周囲のリンパ節を郭清する方法をとることが多いです。 がんの大きさによって甲状腺の切除範囲は変わります。予後の良い乳頭がんの場合には手術のみで、放射線や化学療法は不要となることが多いです。 2)濾胞(ろほう)がん 濾胞がんは甲状腺がんの中で約5%を占め、乳頭がんに次いで多い腫瘍です。 乳頭がんと比較して、リンパ節転移が少ない一方で、血行性に遠隔臓器の肺や骨に転移することがあります。 治療はやはり手術による甲状腺の摘出を基本とし、遠隔転移がある場合には放射性ヨウ素内服療法を追加で行います。 3)髄様(ずいよう)がん 髄様がんは、甲状腺がんの中では遺伝性の可能性を考慮する組織型です。 この癌の中には、RET遺伝子と呼ばれるがん遺伝子の突然変異によって生じることが知られており、そのうち約8割で副腎に発生する褐色細胞腫を合併します。 この褐色細胞腫を合併している髄様がんの場合には、まず褐色細胞腫の治療を優先します。それ以外の場合には、甲状腺切除およびリンパ節郭清を行います。 4)未分化がん 甲状腺がんの中で最も悪性度が高く、急速に進行し多臓器に浸潤、転移する組織型です。 積極的な治療法としては手術や放射線治療・化学療法を組み合わせて行いますが、予後は極めて不良であるため、緩和的な治療も重要な選択肢となりえます。 甲状腺がん治療に伴う合併症や後遺症の種類は?その治療法についても解説 甲状腺がんの治療は手術による甲状腺の一部切除、または全摘出が基本となります。 ここでは主に、甲状腺がんの手術に関連する合併症、それに対する治療を解説していきます。 また、後遺症については、生じた合併症が治癒しない状態、永続的に治療を要する状態のことを指しています。各合併症の項目の中で後遺症として残るケースについても説明を加えています。 反回神経麻痺 反回神経は甲状腺の裏を走行している神経で、声帯を動かす筋肉を支配しています。すなわち、声を出すために非常に重要な神経です。 反回神経は左右に1本ずつあり、どちらか一方が障害を受けると声帯がうまく動かなくなり、声がかすれます。これを反回神経麻痺といいます。 反回神経は非常に細く繊細な神経であるため、手術の際に直接少し触れただけでも麻痺が起こってしまう可能性がありますが、ほとんどの場合には一時的で半年以内には改善してきます。しかし一部まれに、永続的な反回神経麻痺となってしまうことがありかすれ声が治らず後遺症として残ることがあります。 また左右両方の反回神経が障害を受けてしまうと、声が出ないばかりか呼吸ができなくなってしまい、命に関わる事態となります。 <反回神経麻痺の治療法> 反回神経麻痺によりかすれ声が改善しない場合には、声帯自体を手術することでかすれ声を改善させる方法があります。また、両側の反回神経麻痺により呼吸がうまくできない場合には、気管切開といって喉仏の下辺りに空気の通り道を作る必要があります。 甲状腺機能低下症 甲状腺がんの手術では甲状腺自体を摘出する必要があります。そのため、特に甲状腺を半分以上摘出した場合には、甲状腺で作られる甲状腺ホルモンが低下してしまう可能性があります。甲状腺ホルモンが低い状態では、代謝バランスが低下して体調を崩しやすくなったりします。この状態を、甲状腺機能低下症といいます。 <甲状腺機能低下症の治療法> 治療法として、甲状腺ホルモン剤を内服して補充することが必要になります。基本的には一生涯飲み続ける必要があるものになります。 副甲状腺機能低下症 副甲状腺は甲状腺の裏にくっついており、左右2個ずつ存在する臓器です。非常に小さな臓器ですが、副甲状腺ホルモンという物質を分泌して血液中のカルシウムやリン濃度を調節する働きがあります。甲状腺がんの手術で甲状腺を摘出する際に副甲状腺も一緒に摘出されたり、副甲状腺を栄養する血流の低下などにより、術後に副甲状腺機能低下症を起こす可能性があります。 副甲状腺機能低下によって副甲状腺ホルモンが不足すると、血液中のカルシウム濃度が低下し、手や口のしびれやけいれんを引き起こすテタニーと呼ばれる症状が生じる可能性があります。 <副甲状腺機能低下症の治療法> 治療法として、カルシウム製剤の内服と、カルシウムの吸収を促すビタミンD を補充します。副甲状腺をすべて摘出した場合には一生飲み続ける必要がありますが、副甲状腺を少しでも温存できている場合には、次第に正常化して補充が不要になることも多いです。 乳糜漏(にゅうびろう) 甲状腺がんの手術で側頸部のリンパ節郭清を行う場合に生じる可能性のある合併症です。リンパ管からリンパ液が漏れてきて止まりにくくなってしまっている状態です。 <乳糜漏の治療法> ほとんどの場合、一時的な安静、圧迫で自然に止まりますが、中には再手術で漏れている場所を閉じる必要があるケースも認められます。 術後後遺症に対する再生医療について 最後に、甲状腺がん術後の後遺症に対する再生医療の可能性についてお話します。 再生医療では、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用します。この幹細胞を培養して増やし、その幹細胞を点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことが狙いです。中でも術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、甲状腺がんの手術後の合併症・後遺症である反回神経麻痺への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 甲状腺がん治療の後遺症にお困りの方で「治療を考えたい」「話を聞きたい」という方は、ぜひお問合せください。 甲状腺がんについてよくあるご質問 Q:喫煙や飲酒は甲状腺がんにかかりやすい原因になりますか? A:これまでの研究からは、喫煙や飲酒によって甲状腺がんのリスクが増えるという結果はありません。一方、体重増加や肥満は甲状腺がんのリスクとなる報告はいくつかみられています。 Q:甲状腺がん自体で痛みが出ることはありますか? A:甲状腺がんの大部分では痛みがでることはなく、首のしこりや違和感として気づかれ、それを契機にがんが発見されるケースが多くあります。 まとめ:甲状腺がん術後の合併症・後遺症、その治療法について解説 今回は甲状腺がんの大きな治療の柱である手術に伴う合併症・後遺症について詳しく解説をし、再生医療の可能性も含めた治療法についてお伝えさせていただきました。 大変な思いをされて甲状腺がんの治療を終えた後もなお、後遺症に悩まされ続けている方々、甲状腺がんについて詳しい情報を知りたい方々にとって、有益な情報源となれれば幸いです。 参考文献 ・甲状腺がんについて:[国立がん研究センター がん情報サービス] ・甲状腺がん|がんに関する情報|がん研有明病院
公開日:2024.10.07 -
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乳がんと言われたけど、手術の傷って痛いの?」 「乳がん治療後に痛みがあって困っている」 こんなお悩みはありませんか? 乳がんの治療には手術・薬物療法・放射線療法などがあります。主にその広がりや転移により治療法が選択されます。 治療の後遺症で痛みに悩む患者さんは少なくありません。たとえば、術後長期間にわたって慢性的に続く痛みは「乳房切除後疼痛症候群」と呼ばれます。薬物療法による副作用でも痛みが残ることがあります。適切な対応を行わないと日常生活に支障をきたしてしまいます。 「せっかくがんの治療をしたのに、痛くて毎日の生活を楽しめない。」 そんな事態を避けるために、乳がんの治療とその後遺症、特に痛みについて詳しく理解することが大切です。今まさに悩んでいる方、これから治療を受ける上で心配な方は、本記事をご参考にされてください。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。以下で詳しく解説していきます。 この記事を読んで分かること ・乳がんのステージ分類と治療方法 ・乳がん手術後の後遺症の種類 ・術後後遺症についてよくあるQ&A ・後遺症に対する再生医療の可能性 乳がんのステージと治療法 まずはじめに、乳がんのステージ分類と、ステージに合わせた外科手術や化学療法などの治療法について解説していきます。 乳がんのステージ分類について 乳がんはその進行の度合いにより、0期からⅣ期までのステージに分類されます。 ステージを決定するのは、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無といった要素です。なお、遠隔転移とは他の臓器への転移のことで、乳がんが転移しやすいのは骨・肝臓・肺・脳などです。 以下に各ステージについて解説します。 <乳がんのステージ分類> 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合 → 0〜Ⅲ期のいずれか 0期 ・非浸潤がん(乳がんが、発生した場所にとどまっており、広がったり転移を起こしていたりしない状態) Ⅰ期 ・がんの大きさが2cm以下+リンパ節転移をしていない ⅡA期 ・がんの大きさが2cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) ・がんの大きさが2cm以上5cm以下+リンパ節転移がない ⅡB ・がんの大きさが2cm以上5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) ・がんの大きさが5cm以上+リンパ節転移がない ⅢA期 ・がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されているか、リンパ節同士が癒着している) ・がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がない+内胸リンパ節に転移がある ・がんの大きさが5cm以上+腋窩リンパ節あるいは内胸リンパ節のどちらか一方に転移がある ⅢB期 ・がんが胸壁に固定されている ・がんが皮膚に食い込んでいたり、皮膚から出ていたりする ・炎症性乳がん(乳房が腫れたり赤くなったりといった炎症を伴う乳がん) ⅢC期 ・腋窩リンパ節と内胸リンパ節のどちらにも転移がある ・鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している 遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合 →Ⅳ期 乳がんの治療について 乳がんの治療は外科的手術・放射線治療・化学療法(薬物治療)の3つを組み合わせて行います。 これから紹介するのはあくまでも標準療法です。実際には患者さんの状態や希望にあわせて臨機応変に治療が行われます。治療を受ける際には、担当の医師としっかり話をした上で治療を選びましょう。 <0期からⅢA期の治療について> 0期からⅢA期の乳がんでは、治療の中心は手術です。 がんのサイズや広がり方で、乳房の切除範囲が異なります。 がんが小さければ乳房部分切除術が可能です。最近では、早期のがんはラジオ波で焼いたり、内視鏡の手術で切除したりという方法も徐々に広まってきています。 一方、大きい場合や広がりが大きい場合は、乳房全切除術を行わなければなりません。リンパ節への転移が疑われれば、その部位のリンパ節も切除します。また、状況に応じて放射線療法を行なったり、手術の前や後に薬物療法を行ったりすることもあります。患者さんのご希望に応じて、乳房再建術を検討します。 <ⅢB期からⅣ期の治療について> ⅢB期からⅣ期の場合の中心は薬物療法です。患者さんの体の状態や希望・がんの性質など様々な要因を加味して治療薬を選びます。 乳がんの薬物療法で使う薬には一般的な抗がん剤のほか、ホルモン療法薬や分子標的薬と呼ばれる薬もあります。分子標的薬とは、がん細胞に特有の遺伝子・タンパクなどをターゲットにした治療薬のことです。 治療の効果・症状の経過次第で手術や放射線療法が追加されることもあります。 <再発した場合の治療について> 再発した乳がんの場合には、その再発部位により治療法が異なります。 手術を受けた側の乳房やその周囲の皮膚、リンパ節に発生する局所領域の再発では、治癒を目指して手術でがんを切除します。必要に応じて放射線療法や薬物療法を併用します。 手術で切除するのが難しいような局所再発や、他の臓器への遠隔再発では、薬物療法を中心に行います。 <緩和ケアについて> がんの患者さんは緩和ケアを受けることができます。緩和ケアは、がんで苦しんでいる人たちが、できるだけ穏やかに生活できるように助けるためのケアです。 緩和ケア=終末期というイメージがあるかもしれません。しかし、実はがんと診断されてからいつでも緩和ケアを受けることができます。 がんに伴うつらい症状を和らげるだけでなく、気持ちの落ち込みや不安を軽くしたり、生活での困りごとに対処したり、人生の意味についての悩みにも対応します。 患者さんとその家族が抱えるいろいろな苦しみに対して、身体的、精神的、社会的な面から全体的に支援するのが緩和ケアなのです。 乳がん治療後の慢性的な痛み...これって後遺症? どんな治療にも合併症が起こり得ます。ときに、治療後長期間に渡って後遺症に煩わされることもあります。ここからは乳がん治療の合併症とその対処方法について詳しく見ていきましょう。 術後に痛む「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は、乳がんの手術後に乳房、胸部、腋窩、上腕にかけて起こる慢性的な痛みです。 PMPS は、手術で肋間上腕神経などの神経が損傷されることで起こる神経障害性疼痛に分類されます。 PMPS の主な症状は、火傷をした後のようなひりつく痛みやびりびりした痛みです。 痛みとともに、何かが挟まっているような違和感を覚える方も多くいます。下着がすこし擦れただけでも強い痛みを感じるという方もいるのです。 これらの症状は仕事や日常生活に支障をきたしたり、うつ病・適応障害などの精神障害と関与したりする可能性があります。 治療の中心は薬物療法です。一般的な痛み止めはあまり効果がありません。神経の痛みを抑える薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などが処方されます。また、痛みで関節や筋肉が動かせなくなり、日常生活に影響が出ている方はリハビリも必要です。心理的な因子や症状の精神面での影響を評価してサポートすることも考慮されます。 乳がんの転移による「骨の痛み」 乳がん治療後の痛みは、ほかにもあります。 乳がんの転移が多い場所の一つは骨です。転移が起こった骨は、骨折をしやすくなります。治療後も、骨折の痛みが残ってしまう可能性があります。 また、抗がん剤治療による副作用も少なくありません。一部の抗がん剤では末梢神経障害を起こします。手や足のびりびりした痛み・しびれが起こると、長期間持続することもあります。 術後の合併症「リンパ浮腫」 術後の合併症で多いリンパ浮腫は通常痛みを伴いません。しかし、急激に腫れたり感染を合併したりすると痛みが起こります。 このように、がんの治療後の痛みは様々です。痛みの原因を探り、対応していく必要があります。 乳がん治療の後遺症についてのQ &A Q:乳がん手術後、ずっと痛みが続きます。いつよくなるのでしょうか? A:乳房切除後疼痛症候群において、症状が改善するまでは長い時間がかかる可能性があります。例えば、国内の報告では、術後9年経過後も21%、およそ5人に1人が痛みを抱えていると言われています。自然に良くなると思わず、早めに受診をすることをご検討ください。 Q:乳がん手術後の痛みを何科に相談したら良いかわかりません。どこに行ったらいいのでしょうか? A:麻酔科やペインクリニックなどで相談すると良いでしょう。お近くにそういった医療機関がない、どこに行ったら良いかわからない場合は、主治医やかかりつけ医に相談することをお勧めします。必要に応じて専門の病院・クリニックなどを紹介してもらうことができます。 まとめ・乳がんの治療と手術後の痛みや後遺症について 乳がんはその進行の度合いにより、治療は手術や薬物療法など多岐にわたります。そのため、後遺症の痛みの原因も様々です。 これから治療を受ける方は、ご自身の治療内容についての説明をよく聞いてどのようなことに気をつけるべきかしっかり理解しましょう。後遺症に悩まされている方は、一人で抱え込まずに主治医に相談してみてください。 後遺症の症状は、適切な治療で痛みが和らぐこともあります。ただし、神経障害性の痛みなど、治りにくいものも少なくありません。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。一般的に神経の障害は治らないとされています。しかし、幹細胞治療とよばれる再生医療では、神経の修復ができるかもしれません。 当院では、幹細胞治療を提供しています。実際に乳がん治療の後遺症の痛みにお困りの方の治療実績もあります。「治療を考えたい」「話を聞きたい」という方は、ぜひお問合せください。 参考文献 小島圭子. Practice of Pain Management 5(3): 164-168, 2014. 国立がん研究センター プレスリリース. 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究の成果を活用. 国立がん研究センター. がん情報サービス. 乳がん 治療. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 2022年版. 日本乳癌学会. 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版.
公開日:2024.10.07 -
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我が国で3番目に多いがんに当たる「胃がん」ですが、術後はダンピング症候群や下痢、栄養障害、胆石症、骨粗鬆症など様々な後遺症がついてきます。 症状に応じて食事療法や栄養補助食品の使用、手術などで対応しますが、長く続く痛みや長期的ながん予防には再生医療が有効です。 この記事では、胃がんの症状や原因、診断や治療法の他、術後の後遺症の種類や後遺症に対する対処法、また、再生医療の可能性について詳しく解説していきます。 ・胃がんの症状、原因、診断、治療法 ・術後の後遺症の種類 ・術後の後遺症に対する対処法 ・長く続く術後の痛みに「再生医療」の可能性 胃がんの手術をこれから受ける予定で術後について不安がある方、また術後後遺症でお悩みの方はぜひご参考にされてください。 胃がんについて 胃の内壁に当たる粘膜の細胞ががん化することによって胃がんが発生します。 胃がんの症状 初期は無症状であることが多く、進行すると吐き気や嘔吐、貧血によるふらつき、吐血、腹痛などの症状が現れます。 初期 ・無症状 進行すると ・吐き気や嘔吐 ・貧血によるふらつき ・吐血 ・腹痛 など このような症状を自覚する場合は、すぐに病院にかかりましょう。 胃がんの原因 胃がんの発生原因として、以下のものが挙げられます。 ・ヘリコバクター・ピロリ菌感染 ・高塩分食 ・喫煙 ・ストレス ・アルコール ・刺激物 【胃がんの原因に関するQ&A】 Q . 胃がんの罹患者数や死亡率は他のがんと比べてどれくらい多いの? A . 2019年の部位別がん罹患数をみてみると、男性における胃がんは前立腺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、女性の胃がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多くなっています。 2022年の部位別がん死亡数をみると、胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、男女別に見てみると男性では3番目、女性では5番目に多いという結果でした。 Q . 若年者に多くて進行も早い胃がんの種類があるって本当? A . 胃がんは内視鏡やX線の所見によって、以下のような肉眼的分類に分けられます。 ・表在型(0型) ・腫瘤型(1型) ・潰瘍限局型(2型) ・潰瘍浸潤型(3型) ・びまん浸潤型(4型) このうち、びまん浸潤型(4型)にあたるスキルス性胃がんは、胃の壁が硬く、厚くなるタイプの進行胃がんであり、若年者や女性に多い上に腹膜への転移が多くみられます。 胃がんの診断 胃がんの診断には、胃内視鏡検査(胃カメラ)やその際に採取した組織の病理診断、血液検査、CT検査、胃X線検査などを用いて、総合的に判断します。 胃がんの治療法 胃がんの治療法には、内視鏡治療や外科的手術、化学療法、放射線療法があり、がんの進行度(ステージ)に応じて適切なものが選択されます。 これらの治療法のうち、外科的手術によって胃を一部、ないし全て切除することによって「胃切除後症候群」と呼ばれる後遺症が発生します。 後遺症については次の事項で詳しく解説していきます。 胃がんの術後後遺症の種類とその対処法 胃切除後症候群には様々なものがあるため、主なものをそれぞれ説明していきます。また、後遺症ごとに治療法や対処法を紹介していきます。 ①ダンピング症候群 胃を切除すると、当然食べ物を貯留できる容積が減り、それとともに胃酸の分泌が減ります。結果的に通常よりも濃度の濃い食べ物が急速に腸内へ流れ込み、これがダンピング症候群を発生させます。 食後すぐに現れる動悸や立ちくらみ、めまい、悪心、発汗を早期ダンピング症候群と呼び、食後2~3時間後に現れる疲労感や発汗、動悸、立ちくらみ、めまい、失神、手指の震えなどを後期ダンピング症候群と呼びます。 ダンビング症候群に有効な対処法は? 多くの食べ物が一気に腸管へ流れるのを阻止するために、食事の摂り方を以下のように工夫することが必要です。 ・1時間以上かけて少しずつゆっくり食事を取る ・1回の食事量を少なくする代わりに食事回数を1日5~6回に増やす ・よく噛んでから飲み込む ・食事中の水分摂取を減らす ②貧血 胃酸の分泌が減ることで胃からの鉄の吸収が阻害され、胃の切除から数ヶ月で鉄欠乏性貧血に陥ります。さらに数年経つと、ビタミンB12の吸収に必要な胃壁細胞からの内因子が減り、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血が起こります。 貧血に有効な対処法は? 鉄剤の経口投与やビタミンB12の注射などによって不足している栄養分を補います。 ③消化・吸収不良(体重減少) 胃酸の減少やそれによる消化酵素活性の低下、そして手術の際の迷走神経切除による消化管運動の低下は、消化・吸収不良を引き起こし、体重減少にもつながります。 消化・吸収不良(体重減少)に有効な対処法は? 栄養分を補おうとたくさん食べようとするとダンピング症候群を悪化させてしまうため、栄養士や医師へ相談しながら時間をかけて徐々に食事量を安定させていきましょう。少ない量で栄養を多く摂り入れたい場合、栄養補助食品を利用するのもよいでしょう。 ④骨粗鬆症(骨粗しょう症) 胃の切除によって胃酸の減少や腸内細菌叢の変化が起こり、結果としてカルシウムの吸収が悪くなり、骨が脆弱化します。 骨粗鬆症に有効な対処法は? 骨密度を上げる薬剤やカルシウム剤、ビタミンD製剤の薬物療法が有効です。 ⑤胆石症・胆嚢炎 胃切除後は胆嚢の動きが悪くなるため、胆石を生じやすくなります。胃切除後の患者さんのうち、2~3割程度と結構な頻度でみられます。 胆石症・胆嚢炎に有効な対処法は? 胆石があっても無症状であれば経過観察でよいですが、胆嚢炎や胆石発作を起こした場合には治療が必要です。根本的治療は外科的な胆嚢摘出術となり、医療施設によっては胃切除術の際に予防的に胆嚢摘出術も一緒に行うこともあります。 長く続く術後の痛みに再生医療が効果的?! 胃がんのみならず、体に切開を入れる外科的手術において、術後時間が経っても傷跡が痛む、またその周囲のしびれを自覚することがあります。3ヶ月以上継続する場合、遷延性術後痛である可能性があり、注意が必要です。 原因は複雑で、手術による神経障害に精神的・心理的因子や遺伝的素因、環境・社会的因子も絡み合い、検査をしてもわからないので原因不明とされてしまうこともあります。従来の治療では末梢神経の回復は難しいとされていましたが、再生医療ならば回復の可能性があります。 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”というもので、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。 ちなみに幹細胞とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 長期の痛みは身体的にも精神的にも患者さんを蝕み、鬱(うつ)に近い状態になる方もいます。痛みやしびれが改善するとできることが増え、活発になることで精神的・社会的にも患者さんの満足度が上がります。 ▼実際に当院では、乳がん術後の化学療法で末梢神経が障害され、長い間足のしびれと原因不明の胃腸症状・倦怠感に悩まされていた患者さんが、幹細胞治療によって改善した症例を経験しています。 手術や化学療法による末梢神経障害に悩まれている方は、ぜひ当院の再生医療に関するホームページをご覧ください。 追記:がんを予防できる免疫細胞療法ってなに? 再生医療には様々な種類がありますが、その中のNK(ナチュラルキラー)細胞免疫療法はがんの予防に有効とされています。自己の血液中にある免疫細胞の一種、NK細胞と呼ばれるものを血液から採取し、培養後に点滴でまた体内に戻す治療です。手術や化学療法、放射線療法と併用することでがんの予防をより強固にできるでしょう。 気になる方は当院の免疫療法に関するホームページをご覧ください。 まとめ・胃がんの術後後遺症の種類と対処法を徹底解説 胃がんの初期は無症状のため、腹痛や嘔吐などの症状が出た時には手術が必要な状態になっていることも少なくありません。しかし、胃を切除すると、胃切除後症候群と呼ばれる後遺症を生じます。 ダンピング症候群や消化・吸収不良、貧血など様々な症状を呈し、不足する栄養素の投与や食事の摂り方を工夫することで改善を目指します。 これらの後遺症とは別に傷口が長く痛む遷延性術後痛を生じることもあり、手術による末梢神経障害や精神的因子などが複雑に絡み合う病態です。 再生医療は、末梢神経障害を根本的に治療できる手立てとして注目されており、今後ますます普及していくことが予想されます。 気になる方はぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献一覧 公益財団法人 日本対がん協会 ホームページ 伊東久勝, ほか. 「遷延性術後痛の対策」日本ペインクリニック学会誌Vol.25, No.4, 2018.
公開日:2024.10.07 -
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大腸がんは日本で頻度の多いがんの1つです。部位別のがんの罹患数では、男性で肺がんに次ぐ2位、女性で乳がんに次ぐ2位となっています。 また死亡者数も男性で3番目、女性で最も多いがんとなっています。 この記事では、大腸がんの概要や治療法について解説していきます。また、大腸がんの術後の合併症・後遺症についても特に詳しく解説しながら、その治療法や対処法にも触れています。後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介しています。 ・大腸がんの概要や治療法 ・大腸がんの術後の合併症と後遺症 ・大腸がんの治療法や対処法 ・後遺症に対する再生医療の可能性 ぜひ最後までお読みいただければと思います。 大腸がんとは 大腸がんは、大腸(結腸および直腸)に発生する悪性腫瘍です。大腸がんは生活習慣との関わりが深く、特に食生活の欧米化が関与していると言われており、日本でもその発症率が増加しています。 大腸がんの発症は多くの場合、腺腫と呼ばれる良性のポリープから始まり、これが数年かけて悪性化することでがんが発生します。早期発見・早期治療が極めて重要であり、定期的な検査が推奨されます。 大腸がんの病期(ステージ) 大腸がんの病期(ステージ)は、がんの進行度を示すもので、治療方針を決定する上で非常に大切です。大腸がんの病期は、大きく分けて以下のように分類されます。 0期:がんが大腸の粘膜層に留まっている状態で、最も早期の段階 Ⅰ期:がんが大腸の固有筋層に留まっているもの Ⅱ期:がんが固有層を超えて浸潤しているもの Ⅲ期:がんのリンパ節転移を認めるもの Ⅳ期:がんの他 臓器への転移を認めるもの 実際にはがんの深達度をさらに細かく分類し、それによりⅡ期以降はⅡa、Ⅱb、Ⅱc、Ⅲa、Ⅲb、Ⅲc、Ⅳa、Ⅳb、Ⅳcに分けられています。 大腸がんの病期に応じた治療法の選択 大腸がんには様々な治療法がありますが、主には病期によってその選択が異なります。 0期からⅠ期 0期からⅠ期の浸潤が軽度のものであれば、内視鏡治療が選択されます。これは内視鏡を用いて、大腸がんを腸管の内側から切除する方法であり、早期の大腸がんにのみ適応可能な治療法です。 Ⅰ期〜Ⅲ期 Ⅰ期〜Ⅲ期、すなわちがんの深達度が深くて内視鏡では取り切れないようなもの、リンパ節転移のあるものについては、開腹手術もしくは腹腔鏡手術による切除が検討されます。また、Ⅲ期や再発リスクの高いⅡ期の場合には、術後に抗がん剤による補助化学療法を考慮します。 Ⅳ期 Ⅳ期の場合には、原発巣のがんが切除可能な場合には手術を検討します。一方切除ができない場合には、抗がん剤治療や放射線治療などを組み合わせた治療を検討することになります。 これらはあくまでも標準的な考え方であり、実際には患者さんごとの状態に合わせて具体的な治療法が検討、選択されていきます。 大腸がんの手術治療について ここでは大腸がんの実際の手術治療について、詳しく解説をしていきます。 内視鏡治療 大腸内視鏡を用いて大腸の内側からがんを切除する方法になります。基本的にがんの深達度が浅いものかつリンパ節転移が認めないものに対して選択される方法です。具体的な切除の方法には以下のようなものがあります。 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー) 大腸がんの中でも、腸管から盛り上がっており、キノコのように茎があるような病変に対して行われる方法です。内視鏡の先端から細い輪っかを形成したワイヤー(スネア)を出し、病変に引っ掛けるようにして茎を切り取ります。 内視鏡的粘膜切除術(EMR) 病変があまり盛り上がっていないかつ、2cm未満の病変に対して行われる方法です。病変の下の粘膜下にまず生理食塩水を注入して、病変自体を盛り上がらせた状態にします。そこにスネアをかけて、周囲の正常な粘膜を含めた状態で切り取ります。 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) EMRで切除が難しい大きな病変に対して行われる方法です。病変の粘膜下に生理食塩水を注入し、浮き上がらせた病変の周りを高周波ナイフで切り取っていきます。 開腹手術 内視鏡での切除が困難な深達度の深いがんや、リンパ節転移を認める場合などに選択されます。大腸がんといっても、肛門に近い直腸のがんなのか、それより遠い結腸のがんなのかで手術方法が異なってきます。 結腸がんの場合 がんの周囲の腸管やリンパ節も含めて切除する必要があります。結腸の場所によってS状結腸切除、横行結腸切除、回盲部切除など様々な術式があります。がんを含む腸管を切除したあとは、きりとった断端の腸管同士をつなぎ合わせたり、つなぎ合わせるのが困難な場合には人工肛門(ストーマ)を作る手術を行う必要があります。 直腸がんの場合 直腸は肛門につながる部分であり、周囲には膀胱、男性の場合には前立腺、女性の場合には子宮・卵巣などの臓器が近くにあり、それらの調節を担う自律神経も存在します。したがってがんの切除に加え、自律神経機能の温存も考えながら手術を行います。 比較的早期の直腸がんであれば、がんとその周囲の組織を切り取る局所切除術を選択します。腸管として切除する必要がある場合には、腸管の切り口を直腸と縫い合わせて再建する必要があり、前方切除術という術式になります。肛門に近い直腸がんの場合には、肛門を一緒に切除する必要があるため、人工肛門(ストーマ)を作ることになります。肛門括約筋を温存できる場合には、括約筋間直腸切除術(ISR)という方法で、人工肛門を避けることができる場合がありますが、再発率が高くなったり、排便しにくくなるといったことも報告されています。 腹腔鏡手術・ロボット支援手術 腹腔鏡手術は、数カ所の小さな傷からお腹の中に腹腔鏡というカメラを挿入し、モニターを見ながら手術する方法です。開腹手術に比べて傷が少なく、患者さん自身への体への負担が少ないことがメリットです。また、同じような形で、ロボットアームを用いて手術するロボット支援手術という方法もあります。いずれの場合でも技術的に熟練を要するため行える施設は限られていますが、近年増えてきている手術法です。 大腸がんの手術の合併症とその対処法 大腸がんの手術には、いくつかの合併症が発生する可能性があります。以下に主な合併症とその対処法を紹介します。 ・感染症 手術部位の感染症は、どの手術でも起こり得るリスクです。大腸がんの手術の場合には腹部の傷からの感染や、腹腔内の感染などが考えられます。対処法として、感染を防ぐために必ず手術前後に抗生物質の投与を行います。しかしそれでも感染が起こってしまうことがあり、その場合には抗生物質の投与を継続したり、感染に対して外科的治療(洗浄、ドレナージなど)が考慮されることもあります。 ・排便障害 手術の影響で腸の動きが不規則になり、下痢や便秘になったりすることがあります。また、肛門括約筋が影響する部分に関わるような直腸がんの手術ですと、便意を感じにくくなったり、便を出しにくくなったりすることがあります。整腸剤や便を柔らかくする下剤などを組み合わせて、排便のコントロールを促していきます。 ・腸閉塞(イレウス) 術後の影響で腸管がくっついてねじれて しまったり、腸の動きがわるくなってしまうことで排泄物の通りが悪くなってしまった状態です。これを防ぐためには、術後早期に歩行を始めることや、腸の動きを促す薬の使用が有効です。手術から年単位で時間が経過してからも起こる可能性があります。ねじれによる腸閉塞が発生して腸管の血流が悪くなってしまった場合には絞扼性イレウスという重篤な病態となり、緊急手術が必要となることもあります。 ・縫合不全 腸を縫合した部分がうまくつながらず、腹腔内に腸液や排泄物が漏れてしまうことがあります。これが縫合不全という状態です。放置すると腹膜炎をきたして重篤になってしまう可能性もあるため、再手術が必要となります。 ・排尿障害 大腸がんの手術の中でも、特に直腸がんの手術では、排尿を調節する自律神経に影響を及ぼしてしまうことがあり、術後に尿意が感じにくくなったり、残尿感が残ったりなどの症状が残る場合があります。多くの場合、内服薬で改善が得られますが、場合によっては尿が自力では全く出せなくなってしまう状態(尿閉)になってしまい、尿道に細い管を通して排尿させる処置(導尿)が必要となる場合もあります。 ・性機能障害 特に直腸がんの手術では、直腸周囲の自律神経へ影響を及ぼす可能性があります。この自律神経は性機能に関係するものもあり、男性では術後に勃起不全(ED)や射精障害をきたしたり、女性では性交渉の際に痛みを感じたりなどの影響をきたすことがあります。服薬による治療の選択肢がありますが、自律神経自体にダメージある場合には効果が限定的ともいわれています。 大腸がんの治療後の後遺症について 術後の合併症の中でも、特に自律神経にかかわる合併症である排尿障害や性機能障害は、なかなか改善が得られず後遺症として残ってしまうこともあります。特に性機能障害は、デリケートな問題であるためなかなか相談ができず、お一人で悩まれたままにしてしまっているケースも多いと考えられます。非常に重要な問題ですので、現在そういった後遺症に悩まれている方は、まずは担当医や泌尿器科などにぜひ相談をしてみてください。 大腸がん治療後の後遺症に対する再生医療の可能性について 大腸がんの手術後の後遺症に対する治療法として、再生医療の可能性についてお話します。 再生医療とは、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用して行う治療です。幹細胞を培養して増やし、それを点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことを狙いとする治療法で、現在その効果が期待されています。中でも、術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、大腸がんの手術後の合併症・後遺症である自律神経障害による排尿障害、性機能障害への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 大腸がんについてよくある質問と回答 Q:人工肛門(ストーマ)を造設することになりました。管理していくのが不安です。臭わないかなども気になります。詳しく教えて下さい。 A:人工肛門(ストーマ)は腸管をお腹から出して、そこから排泄させるようにつくるものです。手術によって、一時的にストーマを作って後ほど閉鎖することもあれば、生涯ストーマとなることもあります。ストーマは肛門のように括約筋がないため、排泄物をためたりすることができず、ストーマの周囲をパウチで覆ってそこに便を溜め、溜まったら処理して新しいパウチに交換します。最初は大変と感じるかもしれませんが、徐々に管理に慣れていくと思います。臭いについてもパウチでしっかりと覆われていれば大丈夫です。ストーマにあったサイズのパウチを選択することが重要です。 出典:Colon cancer - Diagnosis and treatment - Mayo Clinic Q:大腸がんの手術後に気をつけることはありますか? A:まずは排便習慣の変化に注意が必要です。便秘や下痢などが起こりやすくなっている可能性がありますので、まずは自身の排便習慣をチェックして、主治医に相談してみるのが良いかと思います。 排便に関わることとして、食事は術後はなるべく消化の良いものを摂ることが重要です。食物繊維が多い食べ物などは腸の動きを滞らせる原因になりうるため、避けたほうがよいです。また、ガスが出やすい炭酸飲料や、刺激の強い辛い食べ物なども控えたほうが良いでしょう。手術1−2ヶ月程度で腸管の動きが戻ってきますので、経過をみて食事内容についても医師と相談されてみるとよいかと思います。 まとめ・大腸がんの治療法やその合併症、後遺症について 今回は大腸がんについて、その概要と治療の柱である手術について、またその合併症や後遺症についても詳しく解説していきました。 また、直腸がんの術後に起こり得る後遺症である排尿障害や性機能障害について、それらに対する再生医療の可能性も含めて紹介をさせていただいています。これから大腸がんの治療を受けられる方や、実際に治療を受けて後遺症に悩まれている方も多くいらっしゃるかと思います。そういった方々にとって、今回の記事が有益な情報源となれれば幸いです。 参考文献 ・大腸:[国立がん研究センター がん統計] ・大腸がん(結腸がん・直腸がん):[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] ・Colon Cancer Treatment – NCI ・Colon cancer - Diagnosis and treatment - Mayo Clinic
公開日:2024.10.07 -
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手首にできるしこりのひとつに、ガングリオンと呼ばれる病気があります。名前だけを聞くと、「怖い病気なのでは?」と感じますよね。 ガングリオン自体に症状はなく、放っておいても問題ない病気です。しかし、手首にしこりができると、手首の動きを制限されるため、不便さを感じる方もいるでしょう。場合によっては痛みやしびれが生じます。しこりが大きくなり目立つ場合は、見た目も気になりますよね。 今回の記事では、 ・ガングリオンの基本情報や発生のメカニズム ・治療法 ・手首にできたときの管理方法 ・再発防止策 について詳しく解説します。 ガングリオンが手首にできてお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。 ガングリオンとは?その基本を知る ガングリオンとは、関節周囲にできる「こぶ状に膨らんだ良性腫瘍」です。手首の甲に最もできやすく、次に手のひら側の指の付け根が好発部位です。手や指だけでなく、足首や肘、肩など、全身の関節にできる病気です。 ここでは、ガングリオンの発生メカニズムや一般的な症状について解説します。 ガングリオン発生のメカニズム ガングリオンは、以下の2つの組織から発生します。 ・関節包(かんせつほう)と呼ばれる「関節を包んでいる袋状の膜」 ・腱鞘(けんしょう)と呼ばれる「腱を包んでいる鞘状の組織」 これらの組織から、茎を通ってガングリオンの袋の中に、徐々に関節液が漏れ出し溜まっていきます。溜まった関節液は袋の中で濃縮され、ゼリー状に固まってしこりができます。発症の特徴として、20代~50代の女性に発症しやすいですが、必ずしも手をよく動かす生活をしている方が発症と関連しているわけではありません。女性にできやすい病気のため、見た目を気にする方が多い印象です。 ガングリオンが形成される原因について、関節包(かんせつほう)や靭帯(じんたい)、腱鞘(けんしょう)などを損傷した場合にできると考えられていますが、詳しくは解明されていないのが現状です。 ガングリオンの一般的な症状 ガングリオンができても、それ自体に症状はありません。こぶ状のしこりのため、手首が腫れているように見えます。そのため、「痛そう」と心配されがちですが、基本的には痛みもかゆみもありません。 ただし、しこりの大きさや位置によって神経や血管を圧迫する場合があり、痛みやしびれなどの症状があらわれます。大きくなってくると、しこりが目立つケースも多く、見た目が気になる方もいるでしょう。 また、しこりが大きくなり関節を圧迫すると、関節が動かしにくくなります。荷物が持ちにくかったり、車や自転車のハンドルの操作がしにくくなったり、日常生活に影響が出るケースがあり、痛みがなくても不便さを感じるでしょう。 ガングリオンは良性の腫瘍なので、積極的な治療は必要ありません。しかし、痛みやしびれ、関節の動かしにくさを感じる場合には、治療をしたほうがいいでしょう。また、見た目が気になるケースも、治療の対象です。 手首ガングリオンの現代的な治療法 手首にできたガングリオンの治療には、主に2つの方法でおこなわれます。 ・非侵襲的治療(保存的療法) ・侵襲的治療(手術療法) それぞれの特徴を解説します。 非侵襲的治療(保存的療法) ガングリオンの治療としては、まず非侵襲的治療法(保存的療法)で治療をします。非侵襲的治療法とは、痛みがない、または非常に少なくてできる治療法です。そのため、まずはサポーターで保護したり、安静にしたりしましょう。しかし、この方法は一時的な対処法のため、一度しこりが小さくなっても、再び大きくなるケースがほとんどです。 ガングリオンの特性として、関節を動かし過ぎると負担がかかり、しこりは徐々に大きくなる傾向です。安静にしても頻繁に症状が繰り返される場合には、まずは注射器を使った侵襲の少ない治療がおこなわれます。そのため、外来で短時間で処置できるのがメリットです。 <注射器での吸引治療の特徴> ・注射器で穿刺してガングリオンの内容物を吸引し排出する ・内容物の排出後は圧迫固定が必要 ・外来でできる処置のため侵襲が少ない ・ガングリオンの袋は残るため再発の可能性がある 内容物の吸引をしたあとにステロイドの注入をおこなう場合があります。患部の炎症を抑え、痛みを和らげる効果を期待しておこなう処置です。ステロイドの注入は必ずおこなうわけではなく、医師の診察と判断により実施が検討されます。 一般的に、まずは保存的治療をおこない、再発を繰り返す場合に手術療法が検討されます。 侵襲的治療(手術療法) 手術療法は、関節包や腱鞘につながっている茎を含めたガングリオンの袋ごと摘出します。局所麻酔でおこなわれる場合が多く、基本的には日帰り手術で治療が可能です。しかし、ガングリオンの位置によっては関節の内部にまで入り込んでいるケースもあり、そのような場合は入院が必要です。 入院期間は、1泊2日程度の短い入院期間で治療ができますが、家庭の状況や仕事の事情で入院治療ができない方もいるでしょう。主治医とは治療方針だけでなく、自分の状況についても医師としっかり相談しておきましょう。 <手術療法> ・術後は創部を保護し安静のため固定が必要 ・術後リハビリが必要なケースもある ・麻酔をして切開をするため保存的療法より侵襲が大きい ・術後2週間程度で抜糸が必要 ・創部の感染に注意 手術療法では、ガングリオンの袋ごと摘出するため、保存療法より再発の可能性は低いです。しかし、再発の可能性がゼロではありません。 再発予防については、記事の後半で詳しく解説します。 家庭でできるガングリオン管理法 ガングリオンが手首にある状態は、異物感や見た目など、非常に気になる存在ですよね。適切なガングリオンの管理は、悪化や再発の予防につながります。 ここでは、ガングリオンによる痛みの管理やガングリオンがあってもできる運動を紹介します。 日常生活での痛みの管理 ガングリオンができている関節に痛みがない場合には、マッサージをおこなうケースがあります。しかし、関節に痛みがある場合には、無理に動かしたりマッサージをしたりするのはやめましょう。手首のしこりは、視界にも入りやすく非常に気になる存在ですよね。しかし、ガングリオンは動かすと大きくなる性質があります。痛みがある場合は、無理に動かさず安静にしましょう。 また、関節に熱感がある場合、炎症が起きている可能性があります。保冷剤や冷やしたタオルなどで患部を冷やすと、痛みが軽減します。 20代~50代の女性にできやすい病気ですが、この年代の女性は仕事に家事に育児に、忙しい毎日を過ごしています。「どうしても安静にできない」「つい手を使いすぎてしまう」などあるでしょう。そのような場合、サポーターを活用してみるのもいいでしょう。 自宅でできるストレッチと強化運動 ガングリオンができる要因として、関節包や靭帯、腱鞘の損傷が考えられています。そのため、手首の柔軟性を高め、ケガをしにくい関節にすることも、ガングリオンの悪化防止や再発防止に有効です。運動不足や姿勢の悪さが原因で手首に負担がかかっている場合があります。そのような場合は、適度な運動や姿勢改善を行ってみましょう。 自宅でできる簡単なストレッチの例を紹介します。 <指のストレッチ> 両手を前で組んでゆっくり前に肘を伸ばす 手をひっくり返して外側に手のひらを向け指を反らす 10秒を3セットおこなう <手首のストレッチ> 片手を前に伸ばし指先が下になるように手のひらを外側に向ける 反対の手で指先をつかみ手前に引く 指をつかんでいた手を離し手の甲を外側に向ける 反対の手を手の甲に当て手前に引く 反対の手も同様におこなう 左右とも10秒を3セットずつおこなう 「忙しくて運動なんかできない」という状況の方もいるでしょう。そのような方は、すきま時間を活用してみてください。また、関節の動きを柔軟にするストレッチや筋力トレーニングを行うことも有効です。 ただし、ひとつ注意があります。ガングリオンができている関節を動かし過ぎるのは禁物です。ガングリオンを大きくする要因となるため、痛くない程度の力加減でおこないましょう。また、痛みがあるときには手首を安静にし、無理をしないようにしましょう。 ガングリオン再発防止のための戦略 残念ながら、ガングリオンの再発を確実に予防する方法はありません。しかし、再発のリスクを少なくする対策はできます。 適切な環境調整やツールを使い、再発リスクを少なくしましょう。 再発を避けるための予防策 ガングリオンは、処置をしても再発を繰り返すのが特徴です。ガングリオンができた関節には、負担をかけないようにしましょう。手首への負担を減らすために、以下のようなことができます。 ・体重をかけたり重い物を持ったりしない ・手首に疲れをためないようにする ・不適切な姿勢をしない ・サポーターや装具を使う ・無理のない運動やストレッチ たとえば、後ろに手をついて手で体重を支えるような長座位や涅槃像(ねはんぞう)のように片手で頭を支え横になる姿勢は、手首に負担がかかります。このような姿勢はやめましょう。 処置後に違和感や痛みがなくなると、ついいつも通りに生活してしまいますよね。しかし、今まで通りの生活では、またガングリオンが再発するリスクがあります。上記のことに注意しながら、少しでも違和感があるなら、早めに医療機関を受診しましょう。 長期的な健康維持のアプローチ ガングリオンができないために、また、再発を予防するためには、長期的な健康管理も重要です。 運動不足や姿勢の悪さは、身体の一部に負担がかかります。たとえば、イスに座っているときに足を組むクセがある人も多いでしょう。足を組むと、身体がゆがみやすくなるとされています。手首も同様で、荷物を持つ手や子どもを抱っこする腕がいつも同じというクセがついている場合、片方の手に負担がかかります。 筋力が弱っていたり無理な持ち方をすると、手首を傷める可能性があります。規則正しい生活や運動習慣を心がけ、健康的な関節を維持することも大切です。 ガングリオンと向き合う:患者の声と専門家のアドバイス ガングリオンは珍しい病気ではありません。しかし、身近に罹患した方がいなければ、ガングリオンに対する不安も大きいでしょう。 ここでは、ガングリオンに罹患した方の経験談を紹介します。 治療事例の紹介 病院でガングリオンの治療を受けた方の体験談を2つ紹介します。 <30代女性 Aさんの事例> 手首に1㎝程のしこりがあることに気づいたが、痛みもなくそのままにしていた。3カ月ほどで5㎝ほどの大きさになっていた。 別件で受診した整形外科で手首のしこりについて、ガングリオンだと言われた。注射器で中身を吸い出すだけですぐに処置できると聞き、処置してもらった。再度大きくなる可能性もあるため、大きくなってきたら再度受診するように言われた。 言われた通り、半年後に手首にしこりを見つけ、整形外科を受診。もう一度、注射器で中身を出してもらい、再度しこりが膨らんでくるようなら手術を検討しましょうと言われた。しかし、それから1年以上再発なく過ごしている。 <60代女性 Bさんの事例> 足首に突然しこりができた。「なんだろう」と思ったが、仕事が忙しく受診できなかった。しかし、時間の経過とともに、しこりも痛みも消えたため、そのまま受診をせずいつも通り過ごしていた。 しばらくして、同じ場所にしこりが膨らんできており、また消えるだろうと思い様子をみていた。しかし、徐々に痛みが強くなってきて、歩くのに支障が出るようになったため整形外科を受診。ガングリオンだと言われ、注射器で中身を吸い出してもらう処置を受けた。またしこりができるようなら受診するように言われたが、今のところ再発はなく過ごしている。 専門家からのアドバイス ガングリオンができたら、まずは手首を安静にしましょう。気にせず手首を酷使していると、ガングリオン自体が大きくなり生活に支障が出ます。 治療後は安静にし、痛みがなくなったら負担のない程度に手首を動かしましょう。負担に耐えられる強い手首は、ガングリオンの再発リスクを下げます。適度な運動やストレッチを取り入れ、健康的な関節を維持しましょう。 まとめ・手首のガングリオンを解消!最新治療法と再発防止の秘訣 ガングリオン自体は、良性の腫瘍です。女性に多く発症しますが、必ずしも手や足、指を使いすぎたためにできるわけではありません。しこりは、膨らんだりしぼんだりを繰り返しますが、痛みやしびれ、関節の不自由さを感じるなら治療が必要です。しこりに気づいたら、整形外科を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。
公開日:2024.10.07 -
- 幹細胞治療
- PRP治療
- 免疫細胞療法
- 再生治療
エクソソームとは、体の中にある多くの細胞から分泌される顆粒状の物質です。 近年、アンチエイジングなどの美容や健康ために点滴などの方法で治療にも用いられるようになってきましたが、その安全性についてはまだ研究段階でもあります。 今回の記事では、エクソソームによって期待できる効果や課題について再生医療の専門医師が解説します。 エクソソームとは何か エクソソームとは、細胞から分泌される大きさ30~200mmほどの顆粒状の小胞です。 幹細胞を培養し、培養液から幹細胞を取り出し処理を行ったあとの上澄みのことを、ヒト幹細胞培養上清液(じょうせいえき)といいます。エクソソームは、この上清液の中に含まれます。*1 エクソソームは1980年代に見つかったのですが、当初は細胞内の不要な物質を捨てるための「ゴミ袋」のようなものだと考えられてきました。 しかし、研究が進むにつれて、エクソソームは細胞同士の相互作用に関して情報伝達の役割を果たすことが分かってきました。*2 つまり、エクソソームは細胞間の情報伝達物質の「運び手」とも言えます。 また、エクソソームはその分泌された細胞由来の細胞膜の成分や核酸、タンパク質などを含んでおり、その細胞の特徴や生理的な機能を持っているとも考えられており、いろいろな疾患に対する新しい治療方法の候補としても注目されています。*3 エクソソームは点滴や局所注射、塗布などの投与方法があります。エクソソームによる治療は自由診療のため、費用は各医療機関で幅があります。一般的な相場は、5万円から20万円程度のようです。 エクソソームの可能性 さて、再生医療の分野でよく用いられるものに、間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう:Mesenchymal stem cell:MSC)があります。 これは、結合組織の中に存在する、多分化能を持つ幹細胞です。MSCは組織が損傷を受けた際に修復を手助けすることが知られています。 最近の研究ではMSCそのもののみならず、MSC由来のエクソソーム、つまりMSCから分泌されるエクソソームにMSC自身と同じような治療効果を示すことも明らかになりつつあります。*4 これまでに報告されている、MSC由来のエクソソームが治療効果を示す疾患には以下のようなものがあります。*5 ・腎臓疾患 ・心筋障害 ・脳疾患(脳卒中やアルツハイマー病) ・肺疾患 このような病気に対して、MSC由来のエクソソーム治療は効果があることが分かってきており、今後の研究が期待されるところです。 また、MSC由来のエクソソーム治療は、MSC細胞よりサイズが小さいために、塞栓などの可能性が理論上は低いことや、組織へうまく移行してくれること、また複数回の投与ができることなどのメリットがあります。 また、厚生労働省のワーキンググループでの報告によると、日本の自由診療を行っている121医療機関で、美肌、毛髪再生、勃起不全などが期待される効果や対象疾患に含まれていたとのことです。*6 エクソソームの課題 一方で、エクソソーム治療については課題もあります。 MSC由来のエクソソーム治療では、MSC細胞による治療よりも多くの細胞数が必要なことや、安全性や有効性を確保するためのリスクがまだ研究段階であること、さらに品質の管理や製造管理とともに法律の整備がまだ未成熟なことなどがあります。*7 その他の課題としては、まだエクソソームに関しての基本的な理解が十分ではない可能性があることです。例えば、免疫系の細胞が貪食(どんしょく)作用によってエクソソームを取り込むことが知られているのですが、免疫系の細胞以外の細胞による取り込みの様子は世界でもまだほんのわずかしか報告がない、という状況です。このように、基礎的なメカニズムについて見解がまだ定まっていないという現状があります。 また、エクソソームを回収する方法が統一されていないということも問題となっています。 エクソソームの回収方法は、さまざまな企業が抽出試薬などを販売しつつあるのですが、果たして異なる方法で回収したエクソソームが「同じ」ものとして治療に用いてよいのかどうかという疑問が残ります。*8 さらに、副作用の危険性もあります。 実際に、正常なMSCが分泌するエクソソームには抗がん作用があるのに対して、異常なMSCが分泌するMSCが分泌するエクソソームは、がんの悪性化を促してしまうという報告もあるようです。*9 MSCでもMSC由来のエクソソームであっても、正常な自分の細胞から培養されたものであれば、拒絶反応などのリスクは高くないかもしれませんが、さらなる研究によって安全性が確保されることが期待されるでしょう。 まとめ リペアセルクリニックでは、エクソソームを産生する細胞の元の一つである、自己脂肪由来幹細胞による再生医療を行なっています。 当院での細胞加工の強みとしては、幹細胞を冷凍保存しない都度培養のため細胞の生存率や質が高いこと、2億個の細胞を投与できるので治療成績が良好であること、採取する脂肪の量は米粒3つ分くらいと少量であり負担が少ないこと、さらに患者さん自身の血液を用いるため安全性が高いことが挙げられます。 脳や神経の病気をはじめ、さまざまな疾患に効果があると示されている再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。 再生医療専門クリニック リペアセルクリニック ✉ メール相談はこちら 💻無料オンラインカウンセリングはこちら ✉ webでの来院予約はこちら ☎ 無料電話相談はこちら 0120-706-313(09:00~18:00) 診療時間:10:00~19:00(完全予約制) 休診日:不定休 各院へのアクセス:札幌院/東京院/大阪院 ▼その他のコラムはこちらからもお読み頂けます。 参考文献 *1 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p11 *2 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p140 *3 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p10 *4 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p141 *5 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p143-147 *6 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p16 *7 エクソソーム等の調製・治療に対する考え⽅ 一般社団法人日本再生医療学会 p4,5 *8 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p147,148 *9 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p149 日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言
公開日:2024.10.07 -
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エクソソーム、幹細胞上清液での治療で知っておくべき安全性や副作用、医師が解説! 幹細胞をはじめとした種々の細胞から分泌されるエクソソーム。細胞同士の情報伝達に欠かせない存在であり、抗炎症効果などを示すこともわかっています。現在、がんの診断・多くの疾患の治療・化粧品や食品の研究開発など幅広い分野で注目を浴びています。再生医療においても、エクソソーム治療への期待が高まっています。 細胞を用いた治療の弱点である塞栓(細胞が血管に詰まること)や形質転換(望ましくない性質を持つこと)などを克服できるのではないかと期待されているためです。 再生医療や美容医療を検討されている方の中には、エクソソーム治療を受けたいと考えたことがある方も多いでしょう。 では、エクソソーム治療が安全性の面から全く問題がないのでしょうか。実は一概にそうとも言い切れません。 本記事では、エクソソーム治療の安全性・起こりうる副作用について解説をしていきます。 エクソソーム治療とは 再生医療の代表である幹細胞治療では、万能細胞である幹細胞を培養し全身あるいは傷ついた組織に投与します。投与された幹細胞が損傷組織の構成細胞に変化するだけでなく、幹細胞由来の生理活性物質が組織の修復を促すことがわかっています。 生理活性物質は小さな袋に入った状態で分泌されます。小さな袋がすなわち「エクソソーム」です。エクソソームだけを精製して投与することで、幹細胞治療と同じような効果が見込めるのではないかと期待をされています。デリケートな幹細胞と異なり、管理が容易です。 エクソソームの安全性は不確実 しかし、エクソソームの医学への応用はまだごく初期の段階です。医薬品として承認されるために必要な臨床試験などをほとんど経ていません。 流通している「エクソソーム」製剤は医薬品医療機器等法の承認を得ていない試薬などという扱いです。試薬であっても、自由診療の場では医師の責任において投与することが可能です。幹細胞治療と同等の効果を発揮するためには、非常に高濃度のエクソソームを投与する必要があると考えられています。 しかし、実際に高濃度のエクソソームを投与したときにどのようなことが起こるのかはまだはっきりわかっていません。これまでのところ目立って「悪いこと」が起こったケースがほとんどないため、「安全だろう」ということで使われているのです。 エクソソームの材料とはなにか エクソソームの安全性について論じる時に問題になるのはエクソソームそのものの安全性だけではありません。 多くの「エクソソーム」製品は細胞を培養してその培養液の上澄みを精製することで作られています。そのため、エクソソームをつくる「材料」の安全性もしっかりと考えていく必要があります。材料とは「エクソソームを分泌する細胞」と「細胞培養のための培地」のことです。 一般的に「エクソソーム治療」で使われるものは、様々な細胞に変化できる「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞を培養する際に分泌されるものです。では、この幹細胞はどこから来たものでしょうか。ご自身の細胞を手術などで採取していない限りは、誰か「他人」の間葉系幹細胞を使って作られたものです。幹細胞は骨髄・歯髄・脂肪・臍帯血などから得たものが中心になっています。 また、幹細胞を培養するためには最適な環境を整える必要があります。植物を育てる際には、植える時期を選んだり日当たりを気にしたりするでしょう。同様に、細胞を育てるにも細胞に合った「培地」が用いられます。そしてホルモンの供給や有害物質からの保護作用などの役割のため、培地には「血清」が添加されることがほとんどです。培地によく用いられる血清は牛の血清です。 エクソソームの材料による副作用 エクソソームを作る過程で「他人の細胞」「他の動物」由来の成分が含まれていると、心配しなければいけない副作用が2つあります。 ひとつはアレルギー反応、もうひとつは感染症です。 アレルギーは外界から何かを体に投与するときには切っても切り離せない問題です。特に、自分以外のもの由来の成分へのアレルギーは誰にでも起こり得ます。当然、「他人」「他の動物」由来の成分が含まれるエクソソーム療法も例外ではないのです。 そして、残念ながら誰にどんな反応が起こるかを予測する手立てはありません。 製剤として販売されるのですから、細胞も血清も基本的には危険な感染症のスクリーニングを受けたものが使用されているはずと思うかもしれません。しかし、感染が起こった直後のごく微量の微生物や、現時点でまだ知られていないウイルスなどがいる可能性はどうしても否定できないのです。 「エクソソーム」と謳われている製品でも、純粋なエクソソームだけを抽出したものではないのです。エクソソームの回収技術はまだ完全に確立されたものではありません。不純物が完全に除去されている保証はどこにもないのです。 そして一番怖いのは他人の遺伝子が含まれているということです。他人の遺伝子があるということで将来的にどのような疾患が出てくるのか予期できなくなるのです。 幹細胞による再生医療は、再生医療等安全確保法という法律があるのですが、上清液やエクソソームには法律がなく無法地帯なのが現状です。いつどこで、誰から作られたかもわからないでのす。 リペアセルクリニックの幹細胞治療は、「ご自身の細胞と血液を使用」して、国内では珍しい「冷凍せず培養」する方法にこだわっています。これにより、「高い生存率と高い活動率」を持った生き生きとした幹細胞を投与でき、良好な治療成績を実現しております。 エクソソームについて気になるQ & A Q:エクソソーム含有の健康食品やサプリメントに病気の治療や予防効果はある? サプリメントや健康食品は医薬品ではありません。基本的には病気を予防したり治療したりするものでないのです。したがって、エクソソーム含有されていることで、病気にならない・病気を良くするという効果については期待できません。 Q:エクソソーム治療は高額と聞きましたが保険はききませんか? 残念ながら、いかなるエクソソーム治療も現時点(2024/7)で公的な保険の適応外です。 なお、混合診療(自由診療と保険診療を同時に行うこと)は禁じられています。エクソソーム治療と同時に何らかの検査や処方をうけると、それらも自費扱いになることに注意が必要です。 まとめ・エクソソーム・幹細胞上清液での治療について、知っておくべき安全性や副作用、医師が解説!! エクソソーム治療は美容や関節の痛み、神経の損傷の後遺症など幅広い分野で期待されています。しかし、安全性の面からはまだまだ検証の余地が多く残っています。 安全性について心配であれば、幹細胞治療も選択肢になるでしょう。当院では患者様ご本人の細胞・血液を使い、独自の技術で培養することで生き生きとした幹細胞を投与できる体制を整えています。ぜひ一度お問合せください。 ■参考文献落合孝広. 生物資料分析 42(5): 217-221,2019. 花井洋人, 下村和範, 中村憲正. 臨床スポーツ医学. 37(5):599-603, 2020. 一般社団法人再生医療抗加齢学会幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について 岩崎剣吾, 森田育男. 最新医学 73(9): 1243-1253, 2018. 厚生労働省|再生医療などのリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 第二回ワーキンググループ(R3.1.18)における議論 株式会社ケー・エー・シー 細胞.jp|細胞基礎講座 細胞培養基礎講座 第7回「血清はなぜ必要?」 厚生労働省|再生医療等安全性確保法における再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに資する研究報告書 日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言 ▼その他、「エクソソームや幹細胞上清液」で参考にしていただける記事
公開日:2024.10.07 -
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むちうち症は交通事故の衝撃やスポーツ中の激しい体の動きなどにより起こる疾患です。適切な治療やセルフケアによって症状の軽減が見込めるため、患者さんは正しい知識をもつことが大切です。 そこで本記事では、むちうち症の概要や治療方法、セルフケアや精神的なケアについて解説しています。 むちうち症と診断された方はぜひご参考ください。 むちうち症は交通事故の衝撃により起こる疾患です。適切な治療やセルフケアによって症状の軽減が見込めるため、患者さんは正しい知識をもつことが大切です。 むちうち症の概要 はじめに、むちうち症の概要について解説します。 むちうち症とは何か? むちうち症とは、自動車事故やスポーツ中の激しい体の動きなどによって生じるけがの一種です。交通事故の場合、事故の衝撃により頚部が鞭(むち)を打ったようにしなった結果、首の筋肉、脊髄や神経根などの神経、じん帯、頚部の椎間板などが損傷され、事故後に首や背中に痛みが出てしまいます。医学的には「外傷性頚部症候群」「頚椎捻挫」「頚部挫傷」などと呼ばれます。 むちうち症の症状は受傷部位や加わった衝撃の程度によりさまざまですが、頚部や肩、頭などに表れやすいです。よくみられる症状は下記のとおりです。 首や背中、腰の痛み 頭痛 耳鳴り 吐き気 しびれ 肩こり 腕や手のしびれ 腕や手の動かしにくさ 目が見えづらい 倦怠感 不眠 うつ状態 基本的に、これらの症状は受傷後数時間~数日後に自覚されることが多いです。受傷から発症までにタイムラグがある原因として、事故時に多く分泌されるアドレナリンの作用により症状を自覚しにくい、あるいは受傷部位の炎症の増強にともなって痛みが徐々に悪化していくなどの理由が考えられます。 また、むちうち症にはいくつかのタイプがあり、それによっても症状の種類が異なります。 むちうち症の種類 特徴 出現しやすい症状の例 頚椎捻挫型 椎間板やじん帯が損傷している可能性がある 首や肩の痛み、肩の動かしにくさ、肩や腕の重さ 神経根損傷型 腕の感覚を司る神経が椎間板に圧迫される 腕の痛み、知覚異常、しびれ、筋力低下 脊髄損傷型 脊髄が傷つく 手足のしびれ、麻痺、歩行障害、排泄障害 自律神経障害型 (バレー・リュー型) 首の自律神経が障害される 頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、後頭部の痛みなど 症状の発生原因 むちうち症が起こるのは、事故によって「首がしなった後、急激に戻る」のが原因です。後方からの追突事故の場合、ぶつかられた衝撃によって胴体が前方へ出た後、頚部が後ろに反るようにしてしなります。また、正面衝突の場合は胴体が後ろへ突き出し、頚部は前方へしなります。側面からの衝突事故においては、衝突された方向によって首が左右のどちらかにしなります。このように首に不自然な力が加わることで、頚椎を支えているじん帯や神経、結合組織などが損傷してしまうのがむちうち症発症のメカニズムです。 むちうち症の多くは交通事故によるものですが、スキーやローラースケート時の転倒などによっても首のしなりと急激な戻りが発生し、むちうち症を発症することもあります。 むちうち症の治療方法 むちうち症の治療は、正しい診断をもって始まります。事故に遭ったら必ず整形外科を受診し、画像検査、問診など必要な検査を受けましょう。むちうち症と診断されたら、投薬などの治療が始まります。むちうち症の治療では医学的アプローチはもちろんのこと、セルフケアも重要です。ここでは、医学的な治療とセルフケアについてそれぞれ解説します。 医学的アプローチ むちうち症の治療は、受傷部位や組織損傷の程度などによって異なります。痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤を使用し安静にするのが基本です。冷湿布やアイシングによる患部の冷却も炎症を和らげるのに効果的です。 また、必要に応じて頚椎カラーの装着が必要となる方もいます。頚椎カラーの装着方法や装着期間は医師の指示に従いましょう。痛みが回復した後にも頚椎カラーによる固定を続けていると、首の筋肉の拘縮や萎縮の原因となりかえって症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。 痛みが緩和されてきたら、徐々に首を動かすリハビリやストレッチを始めます。医師や理学療法士から指示されたストレッチがあれば、無理のない範囲で取り入れていきましょう。場合によっては、病院に通院してリハビリや牽引を行うケースもあります。 家庭でできる対処法 むちうち症は、セルフケアによって症状の悪化予防と改善が期待できる疾患です。 発症後3日~1週間程度の急性期は、首の安静を第一に心がけましょう。この時期に首に無理な力が加わると症状が余計に悪化するため、痛い部分を揉むことやマッサージすること、そして首を無理に動かすのは避けましょう。湿布を貼る場合は、急性期には冷湿布が適しています。 痛みが和らいできたら、入浴や温湿布、首のリハビリにより患部の血流を良くし筋肉をほぐすことがポイントです。リハビリは無理をせず、痛みのない範囲で毎日少しずつ行いましょう。ここでは自宅でできる簡単なリハビリ・ストレッチを3つ紹介します。 ①仰向けに寝てバスタオルを丸めて首の下に置き、リラックスする ②フェイスタオルを首に巻き、両手でタオルを前に引っ張りながら首をゆっくりと後ろに反らす ③正面を向き、首をゆっくりと上下左右に動かす ただし、動きによって痛みが増強した場合は決して無理をせず、安静にしましょう。 むちうち症の後遺症について むちうち症の患者さんのなかには、適切な治療をしても首や背中の痛み、上肢のしびれなどの後遺障害が生じることがあります。後遺障害の症状は人によって異なります。 長期的な影響 むちうち症は、発症時は軽症であっても歳を重ねて数十年後に急に症状が悪化するケースがあります。症状の悪化を迎える頃には、事故の影響以外に加齢による五十肩などの他のトラブルも重なることが予想されるため、むちうち症を発症した際にきちんと根本的な治療をしておきたいところです。万が一受傷からしばらく経過した後に痛みが出てきたら、その時点でもう一度医療機関を受診しましょう。 管理と予防策 むちうち症の後遺症による首の痛みは、首周りの筋肉の過緊張が原因です。こわばった緊張をほぐして動きを良くするために、日頃から首のストレッチや入浴を心がけましょう。 日常生活での調整 むちうち症の症状は、風邪のように数日間で完治することは少ないでしょう。治療期間が数週間から数ヵ月にわたる方もいるため、日常生活における痛みのコントロールや活動量の調整が必要です。 生活スタイルの変更 痛みがある場合は、鎮痛薬の内服や湿布などにより痛みのコントロールを図りましょう。鎮痛薬は、一般的に内服と次の内服の間に一定の時間を空ける必要があり、内服の適切なタイミングを考える必要があります。学校や仕事、家事など日中に活動する場合は、朝に内服しておくと日中の鎮痛効果が期待できます。また、痛みが睡眠に支障を来す場合には、就寝前にも内服しましょう。 湿布薬は種類が多数あるため、刺激感や皮膚の状態を踏まえ自分に合ったものを見つけましょう。湿布を同じ場所に貼り続けると皮膚がかぶれるリスクが高まるため、貼り替えの際は少しずつ場所をずらす、新しい湿布を貼るのは翌日にするなど、工夫が必要です。湿布薬のなかには肌の色に近い色のものもあるため、人目が気になる場合は使用してください。 また、むちうち症の症状のなかでも、頭痛やめまいなどの症状は社会生活に直接的な影響を及ぼすケースがあります。症状が強い時には無理をせず、家族や学校、会社などに事情を説明し、理解を得ることが大切です。在宅ワークであれば症状の程度によって仕事時間を調整できるため、無理なく働ける可能性があります。その際、会社や学校などに医師の診断書を求められることがあります。診断書は保険会社からも提示を求められるため、あらかじめ医師へ記載を依頼しておくとよいでしょう。 支援と専門家の助言 むちうち症は、適切な診断と治療を受け専門家の助言のもとでリハビリをすすめる必要があります。自己流の投薬やリハビリは、効果が得られないばかりかやり方を間違えると症状をさらに悪化させてしまうかもしれません。必ず受診し、医師や理学療法士など専門家に相談しアドバイスを受けながら治療をすすめていきましょう。症状が重いなどの理由で受診が難しい場合は、電話でも相談に応じてもらえる場合があります。 総合的なアドバイスとサポート 最後に、むちうち症の症状の緩和へのヒントと、精神的な健康の維持について解説します。 症状を和らげるためのヒント むちうち症の症状を和らげられる可能性があるものとして、鍼治療や電気治療なども選択肢の一つです。鍼治療には硬くなった筋肉をほぐす作用がありますが、人によっては「合わない」と感じる方や、鍼を刺す刺激が苦手な方もいるため注意が必要です。また、体質や体調などによって治療効果も異なります。 また電気治療も鍼治療と同様に筋肉の過緊張を一時的に緩められます。 いずれにせよこれらの施術には「合う」「合わない」があるため、医師や整骨院などの専門家に相談したうえで利用を検討するようにしましょう。 精神的な健康の維持 むちうち症は風邪のように数日で完治するのは難しく、苦痛な症状やいつ治るかわからない不安などから精神的にも落ち込んでしまう方も少なくありません。 気持ちがふさぎ込んでしまうと苦痛がより強くなってしまうため、痛みの許す範囲で趣味や仕事をしたり、外出したりと気分転換を図るとよいでしょう。痛みが少しでも紛れるような時間を作れるのが理想的です。 参考文献一覧 交通事故による いわゆる“むち打ち損傷”の治療期間は長いのか Whiplash associated disorders: a review of the literature to guide patient information and advice Australian Clinical Guidelines for Health Professionals Managing People with Whiplash-Associated Disorders Guidelines for the management of acute whiplash associated disorders The Treatment of Neck Pain-Associated Disorders and Whiplash-Associated Disorders: A Clinical Practice Guideline
公開日:2024.10.07 -
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
正しい理解と適切なケアで、健康な腰を取り戻そう 「重い物を持ち上げたら、急に腰に激痛が走った」「医師から腰椎の疲労骨折の疑いがあると言われたけど、どうすればいいの?」 このような悩みを抱える方は少なくありません。 特に、重労働に従事する人にとって、腰椎の疲労骨折は、日常生活や仕事に大きな影響を与え、不安や苦痛を伴う深刻な問題となるでしょう。適切な治療と予防策を理解することが、健康な腰を維持するために不可欠です。 この記事では、腰椎疲労骨折の原因や症状、治療法、そして再発防止策について詳しく解説します。正しい知識と適切なケアを通して、再発のリスクを減らし、健康的な生活を送ることができるでしょう。 腰椎疲労骨折の概要 腰椎疲労骨折は、腰の骨(腰椎)に生じる骨折の一種で、重労働や繰り返しの負荷が主な原因となります。 腰椎疲労骨折とは何か? 腰椎疲労骨折は、腰椎の「椎体」と呼ばれる部分に微小な亀裂が生じる状態を指します。椎体は、腰椎を構成する主要な骨の部分で、体重を支える重要な役割を担っています。一度の強い衝撃ではなく、長期的な負荷の蓄積によって引き起こされます。重い物を繰り返し持ち上げるような作業は、腰椎疲労骨折のリスクを高めます。 発症する主な原因と症状 腰椎疲労骨折の主な原因は、以下のとおりです。 重労働や繰り返しの負荷 不適切な姿勢や体の使い方 加齢に伴う骨密度の低下 骨粗鬆症などの基礎疾患 腰椎疲労骨折の症状は、単なる腰痛とは異なり、特有の特徴があります。 安静時にも持続する鈍い痛み 特定の姿勢や動作で増悪する痛み 腰の特定の場所を押すと痛みを感じる(圧痛) 腰の特定の場所をトントンとたたくと痛みを感じる(叩打痛) これらの症状は、時間の経過とともに徐々に悪化する場合が多いです。最初は軽度の痛みで済んでいても、放置すれば日常生活や仕事に大きな支障をきたすようになります。 特に、建設作業員のような重労働に従事する方は、症状が悪化しやすい傾向にあります。重い物を持ち上げる動作を繰り返すことで、腰椎への負担が蓄積し、椎体の微小な亀裂が進行してしまうのです。 そのため、疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。症状が軽度のうちから、医師の指導の下で安静や薬物療法、リハビリテーションなどを開始することが大切です。適切な治療を行うことで、痛みの軽減と日常生活の質の向上が期待できます。 症状の特定と初期対応 腰椎疲労骨折の症状に気づいたら、早めの対処が大切です。症状を見逃さないよう注意し、速やかに行動しましょう。 腰椎疲労骨折の典型的な症状 腰椎疲労骨折の症状は、以下のとおりです。 症状 説明 腰の痛み 特に、特定の部位に限局した痛みが特徴的 お尻の痛み 片側または両側のお尻の痛み、座った際の痛みなど 太ももの痛みやしびれ 太ももの前面や外側の痛みやしびれ、感覚の変化など 運動時や体重負荷時の痛みの増悪 動作によって痛みが悪化する 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが持続する 腰の可動域制限 腰の動きが制限され、硬くなる 圧痛や叩打痛 腰の特定の場所を押したりたたいたりすると痛む 腰椎疲労骨折の症状は、腰の痛みだけでなく、お尻や太ももにも現れるケースがあります。これは、腰椎の骨折により、神経が圧迫されることで起こります。 お尻や太ももの痛み、しびれ、筋力低下などの症状は、腰椎疲労骨折のサインかもしれません。これらの症状が継続する場合は、医師の診察を受ける必要があります。 早期発見と適切な治療が、スムーズな回復につながるでしょう。 医師は、症状や検査結果を総合的に判断し、症状の重症度や原因に応じて、最適な治療方針を提案します。 疲労骨折を疑ったらすぐに行うべきこと 腰椎疲労骨折が疑われる場合、まずは以下の初期対応を行いましょう。 対処法 説明 安静 無理な活動を控え、医師の指示に従って適切な期間の安静を取る 痛みの緩和 アイシング(冷却)や医師の指示に従った鎮痛剤の使用で痛みを和らげる 医師の診察 早めに受診し、詳しい症状の聞き取りと必要な検査で正確な診断を得る 医師の診察では、症状や経過を詳しく聞き取り、必要な検査を行って正確な診断を下します。適切な診断に基づいて、適切な治療方針を決定します。 腰椎疲労骨折は、初期対応が適切であれば、痛みの軽減と日常生活動作の回復が期待できます。しかし、症状を放置すると、骨折がさらに進行し、回復が遅れかねません。疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。 治療オプションと回復プロセス 腰椎疲労骨折の治療は、重症度によって異なります。保存的治療から外科的治療まで、医師と相談しながら最適な方法を選択しましょう。 保存的治療法:安静と物理療法 多くの場合、腰椎疲労骨折は保存的治療で改善します。安静と物理療法が治療の中心です。 保存的治療の内容(例) 説明 安静 4~8週間の安静期間が一般的。この間は腰への負担を避ける コルセットの使用 疲労骨折の状態によってはコルセットを装着する。腰椎を固定し、安静を補助するための装具であり骨折部位の安定化と痛みの軽減に役立つ 物理療法 腰椎の可動域維持や筋力強化を図る。姿勢の改善やボディメカニクス(体の動かし方)の指導も行う 腰椎疲労骨折の急性期には、無理な活動を控え、安静を保つことが大切です。安静期間中は骨折の状況に応じてコルセットを使用し、腰椎への負担を最小限に抑える場合もあります。 デスクワークの場合は、長時間の座位は避け、こまめに休憩を取りましょう。また、重量物を扱う作業は控えるべきです。 安静期間後、医師の許可が出たら、徐々に活動量を増やしていきます。急激な活動の再開は避け、腰への負担を徐々に増やしていくことが大切です。 物理療法は、医師の指示に従って、適切な時期に開始します。初期は、ストレッチや軽度の筋力トレーニングから始め、徐々に強度を上げていき、必要に応じて日常生活動作の指導をします。 腰部の疲労骨折からの回復期には、腰への負担を最小限に抑えることが重要です。 以下は、日常生活での動作例です。 ベッドから起き上がる際は、腰を反らさないよう注意し、横向きになってから腕の力を用いて上体を起こします。腰に力を入れず、体幹全体を一つの単位として動かすようにします 椅子から立ち上がる際は、両手で椅子の座面を押し、腰を前後に動かさずに膝を伸ばして立ち上がります。腰に負担をかけないよう、脚の力を使って立ち上がることが大切です 重い物を持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて腰を落とし、背筋をまっすぐに保ったまま持ち上げます。腰を捻らないよう、体全体で向きを変えるようにします このように、日常生活のさまざまな場面で、腰への負担を減らし、腰部の可動を制限するための動作の仕方を身につけることが大切です。特に「腰を反らない」「腰に力を入れない」「腰を捻らない」ことを意識しましょう。 理学療法士が、患者一人一人の状態や疲労骨折の部位、程度に合わせて、適切な指導を行います。回復の各段階に応じて、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 また、痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬、鎮痛薬などが処方されます。これらの薬は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待されます。 外科的治療法の検討とその時期 保存的治療で十分な改善が見られない場合や、重度の骨折、神経症状を伴う場合などは、外科的治療が検討されます。手術の方法は、骨折部位の固定や骨移植などです。 手術は、痛みの軽減、脊柱の安定化、神経症状の改善などを目的として行われます。 手術後は、リハビリテーションが重要です。理学療法士の指導の下、徐々に活動レベルを上げていきます。 手術が必要かどうかは、症状や画像所見、全身状態などを総合的に判断して決定されます。一般的な判断基準は、以下のとおりです。 保存的治療を3〜6ヶ月間行っても、十分な改善が得られない場合 骨折部位の不安定性が高く、脊柱の変形や神経症状の悪化が懸念される場合 骨折によって神経が圧迫され、重篤な神経症状が現れている場合 ただし、手術の適応は個々のケースによって異なります。医師が患者の状態を詳しく評価し、手術のメリットとリスクを十分に説明した上で、患者と相談しながら治療方針を決定します。 日常生活での予防策と再発防止 腰椎疲労骨折を経験した人にとって、再発防止は重要でしょう。日常生活での姿勢の改善や、仕事中の安全対策が欠かせません。 日常生活での姿勢の改善と運動療法 腰椎疲労骨折の予防には、以下のようなポイントがあります。 適切な姿勢の保持 重量物の正しい持ち上げ方の習得 定期的な運動による腰部や体幹の筋力維持 骨密度の維持(バランスの取れた食事、適度な日光浴など) 日常生活の中で、腰への負担を減らす工夫を心がけるのが大切です。 腰椎疲労骨折は、早期発見と適切な治療が重要です。症状を見逃さないようにすることが大切です。医師や理学療法士と相談しながら、しっかりと治療に取り組み、痛みを和らげ、仕事や趣味活動への復帰を目指しましょう。 また、継続的な予防策を実践することで、将来的な疲労骨折のリスクを抑えられやすくなります。 仕事中のリスク管理と安全な作業手順 仕事中のリスク管理と安全な作業手順は、腰椎疲労骨折の予防に欠かせません。 特に重労働に従事する人は、以下の点に注意をする必要があります。 項目 ポイント 詳細 1. 適切な重量制限の順守 ・持ち上げる物の重量が自分の体力に合っているか確認する ・可能な限り、重量物を分割して運ぶ ・重量制限を超える物は、同僚と協力して持ち上げる 自分の体力を過信せず、無理をしないことが重要です。重量物を扱う際は、常に安全を優先しましょう。 2. 重量物を持ち上げる際の正しい体の使い方 ・身体の重心を低くし、物を体に近づけて持ち上げる ・膝を曲げ、腰ではなく脚の力で持ち上げる ・急な動作は避け、ゆっくりと持ち上げる 正しい姿勢と技術を用いることで、腰への負担を大幅に軽減できます。定期的に正しい持ち上げ方の訓練を受けることをお勧めします。 3. 休憩の確保と作業の分散 ・長時間の連続作業は避け、こまめに休憩を取る ・同じ姿勢を長時間続けない ・作業内容を変化させ、特定の部位への負担を避ける 適切な休憩と作業の分散は、疲労の蓄積を防ぎ、怪我のリスクを低減します。作業スケジュールを適切に管理することが重要です。 4. 必要に応じた補助具の使用 ・重量物の運搬には、台車や手押し車を使用する ・高所での作業には、脚立や昇降台を使用する ・重い物を持ち上げたり、力を入れて押したりする作業では、腰ベルトの着用を検討する 適切な補助具の使用は、作業効率を上げるだけでなく、身体への負担を軽減します。腰ベルトは、重量物を扱う際に腰部を安定させ、怪我のリスクを減らすのに役立ちます。ただし、正しい使用方法を守ることが重要です。 さらに、定期的な健康チェックを受け、腰の状態を確認することも重要です。 仕事と腰の健康は、切り離せない関係にあります。自分の体を守るためにも、リスク管理と予防策の実践を心がけましょう。疑問や不安があれば、主治医や職場の安全管理者に相談しましょう。 長期管理と健康の維持 腰椎疲労骨折を予防し、健康な腰を維持するには、長期的な視点が必要です。定期的な検診と継続的な運動が鍵となります。 定期的な医療チェックアップの重要性 腰椎疲労骨折のリスクがある人は、定期的な医療チェックアップを受けることが強く推奨されます。これにより、腰椎の状態を詳しく評価し、疲労骨折の兆候を早期に発見することができます。チェックアップでは、以下のような検査が行われます。 検査項目 目的 腰椎X線検査 腰椎の構造や骨折の有無を確認する 骨密度測定 骨密度を評価し、骨粗鬆症の有無を調べる 血液検査(骨代謝マーカーなど) 骨の新陳代謝の状態を評価する これらの検査結果を総合的に評価することで、腰椎疲労骨折のリスクを判断し、必要に応じて予防策や治療方針を決定します。 定期的なチェックアップの間隔は、個人のリスク因子によって異なります。一般的には、以下のような場合に、より頻繁なチェックアップが推奨されます。 過去に腰椎疲労骨折の既往がある 骨粗鬆症と診断されている ステロイド薬を長期間使用している 喫煙や過度のアルコール摂取などの生活習慣がある 定期的な検診を継続することで、腰椎疲労骨折の早期発見と予防に役立つでしょう。 腰の健康は、私たちの日常生活の質に直結する重要な問題です。定期的な医療チェックアップを活用し、自分の腰の状態を把握することから始めましょう。 継続的な体力強化と予防のための運動 長期的な腰椎疲労骨折の予防には、継続的な体力強化が欠かせません。以下のような運動を日課に取り入れることをおすすめします。 ウォーキングやスイミングなどの有酸素運動 腰椎周囲の筋力トレーニング 柔軟性を高めるストレッチ バランス運動 運動の種類 効果 具体例 有酸素運動 全身の血行を促進し、体重管理に役立つ ウォーキング、水中歩行、エアロバイク 体幹筋力トレーニング 腰椎を支える筋肉を強化し、安定性を高める プランク、サイドブリッジ、腹筋運動 下肢筋力トレーニング 腰部での動作を下肢で補い、全体的な安定性を向上させる スクワット、ランジ、レッグプレス ストレッチ 筋肉の柔軟性を維持し、腰椎への負担を軽減する ハムストリングストレッチ、腰回りのストレッチ バランス運動 転倒防止と姿勢の改善に役立つ 片足立ち、バランスボールでの運動 運動の種類や強度は、自分の体力レベルや健康状態に合わせて医師と相談しながら、調整しましょう。無理のない範囲で、継続的に運動を続けることが長期的な健康維持につながります。腰椎疲労骨折は、重労働に従事する人にとって深刻な問題ですが、適切な治療と予防策を実践することで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。 正しい知識を身につけ、自分に合ったケア方法を見つけることが重要です。健康的な生活習慣を身につけ、仕事もプライベートも充実した毎日を送りましょう。 参考文献一覧 MSDマニュアル家庭版."骨折の概要" 日本スポーツ整形外科学会."スポーツ損傷シリーズ-疲労骨折" 日本臨床整形外科学会."疲労骨折・腰痛" 日本脊椎脊髄病学会."脊椎脊髄疾患について・主な症状" 日本生活習慣病予防協会."骨粗鬆症” 村山医療センター."腰椎分離症" 教えて!先生!腰痛の専門医による安心アドバイス."腰の疲労骨折・脊椎分離症(腰椎分離症) 日本脊髄外科学会."腰椎分離症・分離すべり症" 徳島県医師会." 腰椎分離症 -病期・病態に応じて治療-" 日本整形外科学会."「腰椎分離症・分離すべり症」" 厚生労働省."腰痛予防対策” 厚生労働省."職場における腰痛予防対策指針及び解説" ドクターズファイル."疲労骨折" 医療法人大場整形外科."腰椎疲労骨折" 日本骨折治療学会."骨折の解説-疲労骨折"
公開日:2024.10.07 -
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脊髄そのものやその周りで出血を「脊髄出血」と呼び、麻痺やしびれなどを引き起こします。 急性期には外科的手術や血管内治療を行うことが多いですが、場合によっては保存的治療が選択されます。 今までは後遺症に対してリハビリテーションなどの対応療法のみでしたが、現在では再生医療も選択可能となり、根治的治療として注目を浴びています。 今回は脊髄出血を引き起こした際にみられる後遺症やその治療法、予後はどうなのか、また術後後遺症が残った場合の治療法「再生医療」についても解説していきます。 脊髄出血の原因や症状については以下の記事で解説しています。 脊髄出血でみられる後遺症 脳から腰に向かって背骨の中を走る太い神経を脊髄と呼びます。脊髄そのものやその周辺に出血をきたすのが、脊髄出血です。 脊髄の圧迫やダメージによって、多くの場合、背部の痛みや麻痺、しびれなどをきたします。 障害部位(頸髄や胸髄、腰髄、仙髄、馬尾)や出血部位(脊髄内やくも膜下、硬膜下、硬膜外)、脊髄へのダメージ具合(部分的か全体的なダメージか)によって症状が異なってきます。 脊髄へのダメージが少ないうちに治療を行うことができれば後遺症を回避、もしくは軽度で済むでしょう。 しかし、治療が遅れてしまった場合や神経へのダメージが大きくなった場合、後遺症を免れることは難しいです。 実際には脳梗塞や脳卒中と似たような症状を呈することもあり、それらに対する治療の後に脊髄出血が判明したという症例も見受けられます。 代表的な後遺症を以下に一覧として示します。 ・運動障害(麻痺) ・感覚障害(温痛覚や振動感覚、位置感覚の障害など) ・膀胱直腸障害(尿失禁、頻尿、便秘、頻便など) ・呼吸障害 ・体温調節障害 ・起立性低血圧 など 脊髄出血の治療法について 脊髄出血の治療ですが、出血部位や症状出現からの時間経過、脊髄損傷の程度、出血原因などによって変わってきます。 積極的治療を行う場合、外科的手術や血管内治療が選択されます。 外科的手術では、椎弓切除や血腫除去による除圧術、出血点がわかる場合には止血術を行うこととなります。 以下では、脊髄出血の治療に関して気になる質問に回答しています。 Q1. 脊椎の構造はどうなっているの? A1. 下記のような構造になっています。 Q2. 椎弓切除術ってなに? A2. 椎弓の一部と黄色靭帯を切除し、脊髄への圧迫を除去する手術になります。ちなみに黄色靭帯は脊髄の背側に位置しています。 Q3. 血管内治療はどんな治療法ですか? A3. 血管内治療とは、いわゆるカテーテル治療のことです。 血管内治療では、血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、出血している血管に塞栓物質を流し込んで止血、あるいは予防的に出血原因となりうる異常血管に塞栓物質を流し込むことで血流量を減少させます。 ただし、異常血管の血流を完全に遮断すると脊髄梗塞を生じる可能性があるため、病変を完全に消失させるのは難しいです。 Q4. 外科的手術のリスクはありますか? Q4. 脊髄内に病変がある場合、外科的なアプローチは脊髄そのものを傷つけるリスクがあります。また、硬膜外に位置する異常血管病変では、外科的切開が大量出血を引き起こす可能性があります。 このように外科的手術が困難と予想される症例では、血管内治療が良い適応となります。 現代の医療技術の発展によってMRI検査などの画像処理能力が上がり、積極的治療を行わずに保存療法のみで脊髄出血が改善した症例も見受けられています。薬物治療には効果はなく、放射線治療も治療成績が良くないので、残念ながらこれらは有用な治療法となりません。 初期治療を行なっても残存した症状に対しては、リハビリテーションを行いながら症状改善を目指します。 以前までは根本的治療がないと言われていましたが、近年は再生医療がより身近になり、注目を集めています。リハビリテーションと再生医療については、以下で詳しく説明していきます。 脊髄出血に対するリハビリテーション リハビリテーションとは、病気や怪我の後に社会復帰を目指して行う訓練の総称です。 病気や怪我以前の生活水準を目指し、日常生活を見据えた身体的訓練のほか、不安や無力感といった精神的な障害には心理的訓練、さらに必要に応じて職業訓練も行われます。 リハビリテーションに携わるスタッフは、医師や看護師に加えて、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士などのスペシャリストとなります。 病院で行われることもあれば、リハビリ専門施設で行うこともあります。 脊椎出血の急性期リハビリ 怪我や病気を患った直後の急性期は、まず全身状態を落ち着かせ、損傷や障害を最低限に抑えるためのリハビリテーションが必要となります。 具体的には、 ・頸髄や上位胸髄の損傷による呼吸機能低下に対しては呼吸訓練 ・手術後にうまく寝返りができない場合には、床ずれ予防のために体位変換訓練 ・ベッド上で動けない間に関節が固まってしまわぬように関節可動域訓練 などを実施します。 全身状態が安定後のリハビリ 全身状態が落ち着いた後は、個々の症状に合わせて積極的にリハビリテーションを進めていくことが重要です。 脊髄出血によって脊髄が大きなダメージを受けてしまった場合は、神経障害などを完全に取り除くことは難しく、後遺症が残ることが多いでしょう。 そこで早期からのリハビリテーションを通じて、残存能力の強化を行い、それに必要な筋力や柔軟性を身につけていくこととなります。 具体的な例として、 ・両下肢の麻痺(対麻痺)の場合には上肢の筋力を高め、プッシュアップ動作を練習し、車椅子の訓練 ・排尿障害を患っている場合は、腹壁徒手圧迫法や反射誘発、自己導尿法などの指導 などが行われ、合併症を引き起こすことなく自分で尿路管理を行えるよう目指します。 脊髄出血の予後 脊髄出血は稀な疾患であるため情報が少なく、死亡率や予後についての言及は難しいのですが、一般的には症状の発現から除圧までの時間が短ければ短いほど神経回復は良好です。 しかし、どこから出血したかや出血の原因、年齢によっても予後は変わってくるとされています。 脊髄硬膜下血腫に対して手術を実施した59症例を検討したある報告では、術前の状態が重篤なものほど回復が不良で、くも膜下出血(軟膜とくも膜の間の出血)を伴うものは術前状態が悪くて除圧後の臨床成績も悪かったとされています。 脊髄硬膜外血腫を1000例以上の報告を検討した論文では、69症例に対する死亡率の検討がなされました。 その結果、40歳以上と40歳未満の患者群それぞれの死亡率は9%と4%とされ、治療法に関係なく40歳以上では死亡率が有意に高くなると報告されました。 同じ報告で患者さんの長期フォローアップの結果をまとめたところ、初めの症状が軽度であった患者群では8.5%が軽度の障害を示すのみであったのに対し、初めの症状が重篤だった患者群では症状の改善を認めたのは78.4%に止まり、また軽度の障害を示したのは28.3%でした。 脊髄出血の術後後遺症に対する再生医療とは 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。脊髄損傷の手術後に残ってしまったしびれ、麻痺といった後遺症に対する治療として、「幹細胞治療」が適応になる可能性があります。 当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”は、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 ちなみに「幹細胞」とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。 日本での一般的な幹細胞治療は、点滴によって血液中に幹細胞を注入するものです。しかし、それでは目的の神経に辿り着く幹細胞数が減ってしまいます。 そこで当院では、損傷した神経部位に直接幹細胞を注入する“脊髄腔内ダイレクト注入療法”を採用しています。注射によって脊髄のすぐ外側にある脊髄くも膜下腔に幹細胞を投与するため、数多くの幹細胞を目的の神経部位まで直接届かせることが可能です。 この治療は数分のみで簡単な処置で、入院も不要です。点滴治療と組み合わせることによって、より大きな効果を期待できます。 実際に当院では術後や外傷、脊髄梗塞、頚椎症による神経損傷に由来する麻痺やしびれ、疼痛などの後遺症に対して再生療法を施し、症状が大きく改善した例を経験しています。 ▼詳しくは当院の“脊髄損傷の再生医療”に関する動画もご覧ください。 https://youtu.be/9S4zTtodY-k まとめ・脊髄出血の後遺症やその治療法、予後について 脊髄出血を生じた場合、急性期治療としてまず外科的手術や血管内治療を行い、止血や血腫による脊髄圧迫を除圧する必要があります。 どのレベルの脊髄が障害されているか、どの層での出血なのか、そして出血原因が何かによって治療方法が選択され、場合によっては保存療法が選択されることもあります。 後遺症には運動障害や感覚障害、排尿・排便障害などがあり、早期のリハビリテーションによる残存能力の強化や合併症予防のための訓練が大切となります。 多大なダメージを受けてしまった神経を元に戻す治療がなかった中で、近年になって再生医療が多くの人に提供可能となり、根本的治療として注目されています。 実際に当院でも脊髄損傷患者が再生治療を受け、症状が改善した症例が確認できています。 当院では入院不要で外来のみで再生医療を受けることができますので、気になる方はぜひ当院へ一度ご相談ください。 参考文献一覧 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 ホームページ 田島文博ほか. 脊髄損傷者に対するリハビリテーション. 脊髄外科.2016;30:58-67. M Domenicucci, et.al. Nontraumatic acute spinal subdural hematoma: report of five cases and review of the literature. J Neurosurgeon. 1999; 91: 65-73. M Domenicucci, et al. Spinal epidural hematomas: personal experience and literature review of more than 1000 cases. J Neurosurg Spine. 2017: 27;198–208.
公開日:2024.10.07 -
- 手部、その他疾患
- 手部
ガングリオンに痛みをともなったら、病院の受診を推奨します。自分では症状が軽度なのか、重度なのかを判断するのが難しいほか、コブの発症や痛みがほかの病気の可能性もあるためです。 本記事では、ガングリオンが痛いときの対処法を解説します。痛みがあるときにやってはいけないことも紹介しているので、記事を参考に適切な行動をとりましょう。 >>痛いときの対処法をすぐに知りたい方はこちら<< ガングリオンとは? ガングリオンは、関節内にある液体がガングリオンの袋に流れてコブになった良性腫瘍です。 2つの骨がつながる関節は、袋のような関節包で守られており、関節包の中は滑液(関節を保護する潤滑油)で満たされています。この滑液が、なんらかの理由でできたガングリオンの袋に流れるとコブ状の腫瘤(しゅりゅう)が形成されます。 なぜガングリオンの袋ができるのか原因は分かっていません。手首や足、足首などの関節周囲のほか、骨と筋肉をつなぐ部分の腱や、腱を支えるさやの役割である腱鞘(けんしょう)にもガングリオンができます。 以下の記事では、手首にできるガングリオンについて詳しく解説しています。手首にガングリオンらしいコブがある方はとくに参考にしてみてください。 人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術である「再生医療」をご存じでしょうか。再生医療は筋肉や腱、靭帯損傷の治療に効果的です。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。ガングリオン以外で身体に痛みや違和感がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンはなぜ痛むのか ガングリオンは無症状の場合もありますが、以下のような症状を伴う方もいます。 ・コブのあるところが痛む ・手足が痺れる・感覚が鈍くなる ガングリオンが神経にちかい場所にできると、神経を圧迫して痛みや手足の痺れ、感覚鈍麻といった症状がでます。 はじめは無症状でも、ガングリオンが大きくなると神経を圧迫しやすいため、大きくなるガングリオンは注意しましょう。 ガングリオンが痛いときの対処法2選 ガングリオンと疑われるコブが痛いと感じたときの対処法を解説します。 安静にして様子を見る 病院を受診する 症状に合わせて適切な対処法を選びましょう。 安静にして様子を見る ガングリオンは自然に治るものもあります。以下のように症状が軽度であれば、安静にして様子を見る選択もできます。 ・赤く腫れない ・痛みや痺れが少ない ・コブが大きくならない ただし「この程度の症状であれば放置しても大丈夫だろう」と自己判断するのは危険です。症状が悪化して、痛みが強く出たり、関節の動きに支障が出たりする可能性があるためです。 ガングリオンの疑いがある場合は、なるべく医師に診てもらい、様子見で良いかを判断してもらいましょう。 病院を受診する ガングリオンの肥大化により関節が動かしにくくなったり、痛みやしびれが気になったりと生活に支障が出ている場合は、病院を受診して治療しましょう。 ガングリオンは小さくても、神経を圧迫していると痛みやしびれをともないます。大きさにかかわらず、気になる症状があれば専門医に診てもらうのがおすすめです。 ガングリオンの治療では、注射で内容物を吸引する方法が一般的です。ただし、この治療だとガングリオンの袋自体は体内に残ったままなので、再発する可能性があります。 再発を繰り返す場合は、手術でガングリオンの袋自体をとる手術も視野に入ってきます。 ガングリオンが痛いときにやってはいけない3つの対処法 ガングリオンが痛いときにやってはいけない対処法を3つ紹介します。 強い痛みや長期の痛みを放置する 自分でガングリオンを潰す ガングリオンがある場所に負荷をかける 1つずつ見ていきましょう。 強い痛みや長期の痛みを放置する ガングリオンが強い痛みや長期の痛みを伴う場合、放置しておくのは危険です。以下のように、ガングリオンと似ているほかの病気の可能性があるためです。 病名 主な症状 粉瘤(ふんりゅう) 炎症が起き腫れる・悪臭が発生する 脂肪腫 悪性の場合がある 滑液包炎 炎症が強くなる・痛みが増す ガングリオンによく似ている粉瘤の中身は垢や老廃物で、放っておくと赤く腫れたり、悪臭が発生します。 ほかにガングリオンによく似ている腫瘍の1つに脂肪腫があります。脂肪腫は脂肪がつまったコブですが、まれに悪性腫瘍である脂肪肉腫の場合があります。悪性腫瘍はコブの成長が早い・コブの形がいびつなどの特徴があるため、当てはまる条件があれば病院を受診しましょう。 滑液包炎もガングリオンによく似ており、ケガや関節の使いすぎで炎症を起こしコブができます。中身は血混じりの滑液で、放置すると炎症が強くなって痛みが増したり、関節が動かしにくかったりする症状がでます。 見た目だけでガングリオン・粉瘤・脂肪腫・滑液包炎を見分けるのは難しいため、症状がなく放置したい場合でも病院へいき、医師に診てもらうと安心です。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。 ガングリオン以外で手や腕に痛みやしびれなどの症状がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 自分でガングリオンを潰す ガングリオンの痛みが気になって自分で押し潰そうとする方もいますが、自分で処置するのは危険です。神経を圧迫して、新たなしびれや痛みを引き起こす可能性があるためです。 痛みが気になる場合は自分で対処しようとせず、病院を受診して適切な治療を受けましょう。 ガングリオンがある場所に負荷をかける 痛みの有無にかかわらずですが、ガングリオンがある場所に負担をかけてはいけません。関節に負荷がかかると、関節包にある滑液がガングリオンの袋に流れやすくなり、コブが肥大化してしまう可能性があるためです。 たとえば、手首にガングリオンができた場合、手をついて立ち上がったり、手首を大きくひねったりする動作を極力控えるようにしましょう。 まとめ|ガングリオンが痛いときの対処法を知って適切にケアしよう 強く痛みを伴うガングリオンの場合は、病院を受診て専門医に診てもらいましょう。適切な治療を受けられれば、気になる症状を早期に改善できるはずです。 また、コブの出現や痛みの原因が、ガングリオンと似ているほかの病気の可能性もあります。それが悪性腫瘍のケースもあります。 自己判断で痛みを放置するのはリスクを伴うので、早めに専門医の診断を受けましょう。 手や足の筋肉や腱、靭帯を損傷したときは「再生医療」が効果的です。再生医療は身体にメスを入れない治療法なので、患者の負担が少ないです。「実はガングリオン以外の症状も気になる…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンでよくある質問ガングリオンに関するよくある質問 最後にガングリオンに関するよくある質問と回答をまとめます。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方は? ガングリオンは良性の腫瘍です。しかし、ガングリオンだと思っていたコブが悪性の脂肪肉腫だったケースや、炎症を繰り返していた粉瘤が悪性化するケースが極めてまれに起こります。 悪性の場合は、コブに以下のような特徴があります。 ・色むらがある ・急に大きくなった ・形がボコボコしている ・コブとまわりの境界線がはっきりしない 悪性の腫瘍は、まわりの組織ににじむように大きくなるため、コブとまわりの組織の境界がはっきりしません。また、違和感のある色や形のコブが出現したり、急速にコブが大きくなったりするなどの特徴があります。 自己判断するのは難しいため、該当する特徴があれば病院を受診して検査してもらいましょう。 以下の記事では、ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方を解説しています。見分け方の知識を深めたい方は、参考にしてみてください。 ガングリオンは何科で受診すればいい? ガングリオンは関節が関係しているため、基本的には整形外科で治療します。ガングリオンに似ている脂肪腫や粉瘤などは皮膚科や形成外科で診察するのが一般的です。 ガングリオンが自然に消えた原因を知りたい 自然に消えるのはガングリオンの袋がやぶけるためです。 ガングリオンの袋は大きくなると、局所的に薄い部分ができます。薄い部分は、関節を動かしたり、ぶつけたりする衝撃でやぶれやすくなります。 ガングリオンの袋がやぶけると中身の液体が流れ出し、ガングリオンが小さくなったり、消失したりします。 ガングリオンができやすい人の特徴は? 臨床報告の資料には、ガングリオンは中年の女性に多いと記載されています。20〜30代の男女比の割合は1:3であると同資料に示されています。(文献1) ガングリオンが発症するメカニズムは、まだ明確にわかっていません。つまり、ガングリオンができる部位を動かしすぎているからといって発症するとは言い切れないのです。 ガングリオンが足にできたときの対処法は? ガングリオンが足にできた場合でも、本記事で紹介した対処法が適用できます。 ガングリオンは自然に消えるケースがあるので、コブが小さかったり、痛みがなかったりする場合は、安静にして様子を見る選択もできます。 コブが大きくなってきたり、痛みが出たりする場合は、病院を受診して今後の治療方針を専門医と考えていくのが良いでしょう。 以下の記事では、ガングリオンが足にできたときの原因や症状を解説しています。治療法についても解説しているので、足にガングリオンができて悩んでいる方は参考にしてみてください。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/4/67_371/_pdf/-char/ja 日本整形外科学会「ガングリオン」 Treatment of ganglion cysts Ganglions of the hand and wrist
公開日:2024.11.06 -
- 関節リウマチ
- 内科疾患
「関節リウマチってどのような病気?」「関節の痛みや腫れが続いているけど、どうすればいいの?」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 関節リウマチは、関節の炎症と痛みを主な特徴とする慢性的な自己免疫疾患です。適切な治療を受けなければ、関節の変形や機能障害が進行し、日常生活に支障をきたす恐れがあるでしょう。 今回は、関節リウマチの症状や診断基準、最新の治療法に加えて、日常生活での管理方法について詳しく解説します。この記事が、関節リウマチと診断され症状に悩んだり、適切な治療法を探したりするあなたの助けになれば幸いです。 関節リウマチとは? 関節リウマチは、免疫システムの異常により、自分自身の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。 関節の炎症が慢性的に続き、痛みやこわばり、腫れなどの症状が現れます。病状が進行すると、関節の変形や機能低下を引き起こし、日常生活の質(QOL:quality of life)に大きく関わってきます。 QOLとは、個人が日常生活において感じる身体的、心理的、社会的な幸福感や満足感を表わす概念です。関節リウマチによる関節の痛みや変形は、日常的な動作に支障をきたし、社会活動への参加を制限するなど、QOLを低下させる可能性があります。 疾患の概要と一般的な症状 関節リウマチは、関節滑膜の炎症を主体とする全身性の自己免疫疾患です。この疾患の特徴は以下のとおりです。 ・炎症が慢性的に持続することで、軟骨や骨の破壊が進行する ・関節の変形や機能障害を引き起こす 関節リウマチの一般的な症状は、関節の症状と全身症状に分けられます。関節の症状には以下のようなものがあります。 ・痛み ・腫れ ・熱感 ・こわばり これらの症状は、とくに手足の小さな関節から始まるケースがほとんどです。 また、全身症状として以下のような症状をともなう場合もあります。 ・倦怠感 ・微熱 ・体重減少 前述のように、関節リウマチは関節の症状だけでなく、全身に影響を及ぼす可能性もある疾患です。 リウマチが体に及ぼす影響 関節リウマチは、関節の炎症と破壊を引き起こすだけでなく、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす可能性があります。 影響 理由 慢性的な炎症反応 関節リウマチでは、免疫システムの異常により、関節だけでなく全身で炎症反応が起こっています。 この炎症反応が長期間続くことで、関節以外の臓器や組織にも影響が及ぶ場合があります。 炎症性物質の全身への拡散 関節の炎症によって生じた炎症性物質(サイトカインなど)が血液を介して全身に拡散します。 これらの炎症性物質が他の臓器や組織に作用し、炎症や損傷を引き起こす可能性があります。 免疫システムの異常による臓器障害 関節リウマチでは、自己免疫反応によって関節が攻撃されますが、この異常な免疫反応が他の臓器にも影響を及ぼすことがあります。 例えば、血管や肺、心臓などの組織に対する自己抗体が生じ、これらの臓器に炎症や損傷が起こる可能性があります。 全身性の炎症による動脈硬化の促進 慢性的な炎症状態は、動脈硬化の進行を促進します。 動脈硬化が進むと、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まります。 症状の詳細 関節リウマチの症状は多様で、その現れ方や重症度には個人差があります。また、同じ人でも症状は時期によって変動することがあります。 典型的な症状とその変動性 関節リウマチの代表的な症状は、以下のようなものがあります。 症状 特徴 関節の痛み、腫れ、熱感、こわばり 特に、手や手首、足、膝などの関節に多く見られます。 症状は左右対称に現れることが多いです。 朝のこわばり 朝起きた時に関節のこわばりを感じ、動かしにくいことがあります。 このこわばりが1時間以上続くことが特徴です。 これらの症状は、日内変動を示すことがあります。つまり、一日の中で症状が変化したり、日によって症状の強さが異なったりする場合がほとんどです。 また、症状は悪化と改善を繰り返すことがあり、症状が一時的に良くなったからといって、油断せずに継続的な観察と治療が必要です。 症状の初期識別とその重要性 関節リウマチの早期発見と治療開始は、関節の損傷の進行を抑え、長期的な予後を改善するために非常に重要です。 初期症状は軽度で一時的なものから始まるケースがほとんどです。 しかし、以下のような症状が数週間以上続く場合は、慢性関節リウマチの可能性を考えて、早めに医師に相談しましょう。 ・手足の小さな関節の腫れや痛み ・朝のこわばりが1時間以上続く これらの症状を見逃さず、早期に診断し治療を開始することで、症状の進行を抑え、日常生活動作の維持や生活の質の向上が期待できるでしょう。 診断基準の解説 関節リウマチの診断は、症状や身体所見、血液検査、画像検査などを総合的に評価して行われます。早期診断と適切な治療開始のために、分類基準が作成されています。 リウマチ診断のための基準とプロセス 米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で策定した分類基準では、以下の項目を評価します。 ・影響を受けた関節の数(大きな関節と小さな関節の数) ・血液検査の結果(リウマトイド因子や抗環状シトルリン化ペプチド抗体の有無) ・炎症の指標(CRP値や赤血球沈降速度) ・症状の持続期間(6週間以上) これらの項目に基づいてスコアを計算し、一定以上のスコアになると関節リウマチと診断されます。診断の過程では、問診、身体診察、血液検査、画像検査(X線やMRIなど)を組み合わせて総合的に評価します。 診断における挑戦と注意点 早期の関節リウマチでは、典型的な症状や血液検査の異常が見られないことがあり、診断が難しい場合もあります。 また、他の関節疾患との区別も重要です。専門医は、豊富な経験をもとに総合的に判断します。 診断後も、定期的に患者の状態をモニタリングし、治療方針を適宜見直すことが必要です。 また症状や検査結果の変化を見逃さず、適切な治療を続けることが重要です。 現代の治療法 関節リウマチの治療は、炎症を抑えて症状を和らげたり、病気の進行を防いだりするのを目的とします。早期に診断し、治療をはじめることが大切です。 治療には以下の方法があります。 ・薬物療法 ・非薬物療法 それぞれについて解説します。 薬物療法:DMARDs、生物学的製剤、ステロイド 関節リウマチの治療では、いくつかの種類の薬が使用されます。それぞれの薬には特徴があり、患者さんの状態に合わせて選択されます。 以下の表は、関節リウマチの治療で使われる主な薬の種類と、その特徴をまとめたものです。 薬剤の種類 具体的な薬 特徴と効果 抗リウマチ薬(DMARDs) メトトレキサート(MTX) レフルノミド、サラゾスルファピリジンなど ・第一選択薬 ・炎症と関節損傷を抑える効果が期待される ・MTXが不十分な場合に追加される場合がある 生物学的製剤 TNF阻害薬、IL-6阻害薬など ・炎症を引き起こす物質をブロックし、抗炎症効果を発揮 ステロイド薬 プレドニゾロンなど ・急な炎症時に短期間使用される ・炎症を速やかに抑える効果が期待される これらの薬剤を適切に組み合わせることで、関節リウマチの症状管理と関節の損傷抑制が期待できます。 非薬物療法:物理療法、運動療法、生活習慣の調整 関節リウマチの治療では、薬物療法と並行して、薬を使わない治療法も大切な役割を果たします。非薬物療法は、関節の健康を維持し、日常生活の質を向上させるために重要です。以下の表に各治療法の内容、目的、説明をまとめました。 非薬物療法の種類 内容(例) 目的 説明 運動療法 ・水中での運動 ・ストレッチ ・軽い負荷を使った筋力トレーニング ・関節の動きの維持 ・筋力の維持 ・過度な負担を避ける 水中運動は関節に負担をかけずに運動ができるため用いられます。ストレッチや軽い筋力トレーニングも、関節の柔軟性と筋力を維持するために重要です。 物理療法 ・温熱療法 ・寒冷療法 ・光線療法 ・水治療 ・その他 ・関節の痛みの軽減 ・関節の腫れの軽減 関節の痛みや腫れを軽減し、症状の緩和が期待できます。 作業療法 ・日常動作の練習 ・職場復帰のための訓練 ・日常生活の改善 ・社会復帰の促進 ・手指の過度な負担を避ける 日常生活の動作を練習することで、自立した生活を送るためのサポートを行います。状況によっては職場復帰のための訓練も含まれます。 装具療法 ・頸椎カラー ・手関節装具 ・足関節サポーター ・傷んだ関節の保護 ・変形の予防 ・痛みの軽減 頸椎カラーや手関節装具、足関節サポーターなどを使用することで、関節を保護し、変形や痛みを軽減しやすくします。 生活習慣の工夫 ・疲労のコントロール ・関節に負担をかけない生活 ・適度な体重の維持 ・バランスの取れた食事 ・禁煙 ・症状の改善 ・全身状態の改善 疲労管理や適切な体重の維持、バランスの取れた食事、禁煙などの生活習慣の改善は、症状の改善と全身状態の向上に期待できます。 これらの非薬物療法を適切に組み合わせることで、関節リウマチの症状を上手にコントロールし、日常生活の質を高めることが期待できます。人によって状況は異なるため、専門家の指導を受けながら、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。 日常生活での管理とサポート 関節リウマチは、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。症状のコントロールと合併症の予防のために、日常生活での適切な管理とサポートが重要です。 日常生活での調整と自己管理のヒント 関節リウマチとうまく付き合っていくには、日常生活での工夫が重要です。関節への負担を減らすために、以下のようなことを心がけてみましょう。 ・関節に負担をかけない動作を心がける ・自助具を活用する ・疲れをためすぎないよう、休息と活動のバランスを取る ・適度な運動を行い、関節の機能を維持する(ただし、やりすぎは禁物) ・バランスの取れた食事を心がける ・禁煙する ・ストレス対処法を身につける 患者サポートと地域リソースの活用 疾患と向き合っていくには、周りの人のサポートがとても大切です。 ・家族や友人に病気のことを理解してもらい、協力を求める ・同じ病気の人と交流し、情報交換や精神的な支え合いをする ・患者会や支援団体に参加し、さまざまな情報やサポートを得る ・医療ソーシャルワーカーや看護師から、利用できる社会資源の情報を得る ・訪問看護やリハビリ、介護サービスなどを上手に活用する まとめと次のステップ 関節リウマチは、適切なケアと上手な病気との付き合い方で、充実した生活を送ることができます。早期発見と早期治療が大切であり、患者さん自身が積極的に病気の管理にかかわることも重要です。 持続可能な管理戦略と医療チームとの連携 関節リウマチの管理は長期戦です。医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、さまざまな専門家からなる医療チームと連携しながら、自分に合った管理方法を見つけていきましょう。 ステップ 内容 1 定期的な通院と検査を続ける 2 治療方針を医療チームと相談しながら調整する 3 体調の変化や副作用、生活上の問題を医療者に伝える 4 セルフマネジメントのスキルを身につけ、主体的に病気と向き合う 情報更新と自己啓発の重要性 医学は日々進歩しており、関節リウマチの治療法も新しい選択肢が増えています。信頼できる情報源から最新の情報を得ることで、自分に合った治療法を見つけやすくなります。 ・主治医や看護師から、新しい治療法や臨床試験について情報を得る ・患者会や講演会に参加し、他の患者さんの経験や専門家の意見を聞く ・関節リウマチの専門団体が発行するパンフレットやWebサイトで、最新の治療ガイドラインをチェックする 関節リウマチと診断されたからといって、諦める必要はありません。適切な治療と生活管理によって、症状をコントロールしやすいでしょう。 ・定期的に通院し、病気の活動性をモニタリングする ・処方された薬は指示通りに服用し、副作用があれば医師に報告する ・疲労を管理し、関節に負担をかけない生活を心がける ・適度な運動とバランスの取れた食事で、全身の健康を維持する また、日常生活での工夫も大切です。 ・困難な作業は家族や友人に助けを求める ・関節に負担のかかる動作を避け、自助具を活用する ・患者会に参加し、同じ病気を持つ人と情報交換やサポートし合う 症状和らげたり、病気の進行を遅らせたりするには、医療チームとの連携と自己管理が重要です。あなたに合った方法を見つけ、必要な調整を行いながら、できる限り自分らしい生活を送ることを目指しましょう。 参考文献一覧 一般社団法人日本リウマチ学会.“関節リウマチ(RA)”.日本リウマチ学会ホームページ 厚生労働省.“第6章関節リウマチ” 厚生労働省.“内科的治療法“ 公益財団法人日本リウマチ財団.“関節リウマチの治療 – リハビリテーション”.リウマチ情報センター.2022-09 公益財団法人日本リウマチ財団.“初めから起こる症状”.リウマチ情報センター.2022-10 公益財団法人日本リウマチ財団.“中期以降の症状”.リウマチ情報センター.2022-10 公益財団法人日本リウマチ財団.“関節リウマチの診断”.リウマチ情報センター.2022-10
公開日:2024.10.17 -
- 股関節、その他疾患
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大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。 また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。 大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか? 痛みの改善方法が分からない 症状を悪化させる原因を知りたい ストレッチや運動などの予防策を知りたい この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。 将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。 大転子滑液包炎とは? 大転子滑液包炎とは、 股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状 です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。 大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。 また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は下記4つです。 転倒やスポーツなどによる外傷 大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎 滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症 関節リウマチや痛風などの疾患 外傷や内部の炎症性疾患が大転子滑液包炎を引き起こす要因です。 現在、股関節の疾患に対する治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」 が注目されています。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の症状 発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。 また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。 下記の記事では、股関節の疾患についてまとめています。ほかの病気もチェックしたい方は、あわせてご覧ください。 大転子滑液包炎が発症する原因3つ 大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の2つがあります。 大転子を動かす激しい運動 長時間の立ち仕事 肥満体型 それぞれ以下で詳しく解説します。 大転子を動かす激しい運動 ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。 階段の上り下りや、登山といった関節の動きが活発な動作も、大転子滑液包に負担をかけるため、大転子滑液包炎になる要因のひとつです。 長時間の立ち仕事 一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。 また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる因となります。 このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。 肥満体型 生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。 肥満傾向の方は、体重を少し落とすだけでも痛みや症状の進行を抑えられるでしょう。 また、大転子滑液包炎は「PRP療法(再生医療) 」でも治療できます。PRP療法(再生医療)とは、血液に含まれる血小板の力を利用して傷ついた組織を修復する医療技術です。身体に負担の少ない治療法として、今注目されています。 「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎はどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療専門の『 リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。実際の治療例をお見せしながら、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 大転子滑液包炎の診断方法 大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。 問診 身体所見の確認 MRI 問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。 大転子滑液包炎の効果的な治療方法 大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の3つです。 保存的治療 手術療法 PRP療法(再生医療) それぞれ以下で詳しく解説します。 保存的治療 大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。 また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。 手術療法 大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。 そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。 運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。 PRP療法(再生医療) 「PRP療法(再生医療)」とは、患者さまの血液に含まれる血小板の治癒力を利用して、傷ついた組織を修復する医療技術です。 注射を打つだけなので、日常生活や仕事への影響はありません。普段どおりの生活を送りながら、早期回復を期待できます。 弊社『リペアセルクリニック』は、再生医療専門のクリニックです。国内での症例数は8,000例以上に及び、多くの患者さんの治療に携わってきました。 大転子滑液包炎は再生医療の治療対象です。弊社では無料相談を受け付けていますので、詳しい治療法や効果を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の予防法 大転子滑液包炎の予防法を解説します。主な予防法は以下の3つです。 ストレッチ 適度な運動 規則正しい生活習慣 順番に見ていきましょう。 ストレッチ 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、 特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めること が重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。 まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。 次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。 どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。 無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。 適度な運動 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。 ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。 スクワット 足を横に開く運動 スクワットの方法は以下のとおりです。 足を肩幅にひらく 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる 膝を伸ばし1の状態に戻る 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。 また、足を横に開く運動は以下のとおりです。 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。 規則正しい生活習慣 大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。 定期的な運動習慣 バランスの良い食事 定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。 これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。 大転子に関するよくある質問 最後に大転子に関するよくある質問と回答をまとめます。 大転子が痛いと感じたら何科を受診すればいい? 整形外科を受診しましょう。痛みを放置すると症状が慢性化するリスクがあるので、股関節周りに痛みや違和感を感じたら、なるべく早く病院を受診するのがおすすめです。 股関節が突然痛くなり歩けなくなりました。考えられる原因はなんでしょうか? 歩けないほど股関節に痛みが出る原因として考えられるのは、下記の外傷や疾患です。 骨折 大転子滑液包炎 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、骨の変形によって痛みがともなう疾患です。変形性股関節症も「再生医療 」の治療対象です。 まとめ|大転子が痛いと感じたら大転子滑液包炎の可能性あり 大転子滑液包炎は、ランニングやサイクリング、階段の上り下りなど、趣味のスポーツや日常の動作を繰り返す過程で発症します。 症状が悪化すると、歩いたり、横を向いて寝たりする際に強い痛みを感じます。症状の悪化を防ぐためにも、大転子に痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。 現在、大転子滑液包炎の治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 参考文献一覧 ・Effect of corticosteroid injection for trochanter pain syndrome: design of a randomised clinical trial in general practice. Brinks A, van Rijn RM, Bohnen AM, Slee GL, Verhaar JA, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM BMC Musculoskelet Disord. 2007 Sep 19; 8():95. ・Lustenberger DP, Ng VY, Best TM, Ellis TJ: Efficacy of treatment of trochanteric bursitis: A systematic review. Clin J Sport Med 2011;21(5):447-453. ・Fox JL: The role of arthroscopic bursectomy in the treatment of trochanteric bursitis. Arthroscopy 2002;18(7):E34. ・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.
公開日:2024.10.07