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- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「スポーツ中に膝が痛むようになってきた」 「階段の昇り降りやしゃがむ動作で膝が痛む」 このような症状がある方の中には、「ジャンパー膝」と診断された方も少なくありません。 「ジャンパー膝とはどんなもの?」 「治るものなの?」 「またスポーツできるようになる?」 このような疑問や不安を感じる方も多いことでしょう。 本記事では、ジャンパー膝の概要や主な症状、治療法、セルフケアのポイントなどをわかりやすく解説していきます。 ジャンパー膝への正しい知識を得ることで、不安解消につながりますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ジャンパー膝について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ジャンパー膝とは ジャンパー膝とは、膝に繰り返し負担がかかったために生じる損傷です。 バレーボールやバスケットボールといったスポーツで膝を使いすぎることが、ジャンパー膝の主な原因とされています。 ジャンパー膝に該当する主な疾患としては、膝蓋腱炎と大腿四頭筋腱付着部炎の2つがあります。 膝蓋腱炎 膝蓋腱炎とは、バレーボールやバスケットボール、ランニングなどで繰り返し膝を使ったりジャンプを続けたりした際に生じる膝の障害です。 特徴的な症状は、主に以下のとおりです。 膝関節が痛む 膝蓋骨下部を押すと痛む ジャンプや階段昇降時に痛む 痛みの原因は、膝蓋骨と脛骨(すねの骨)をつないでいる膝蓋腱に小規模な断裂や炎症が生じることです。 大腿四頭筋腱付着部炎 大腿四頭筋腱付着部炎は、膝蓋腱炎と同様、バレーボールやバスケットボール、ランニングなどで繰り返し膝を使ったりジャンプを続けたりしたことで生じる膝の障害です。 膝に強い負荷が繰り返しかかると、太もも前面にある4つの筋肉である「大腿四頭筋」の先端部の腱に炎症が起こります。 特徴的な症状は、主に以下のとおりです。 膝蓋骨の上部に痛みが生じる 階段昇降時に痛みが増す しゃがむ動作のときに強く痛む 大腿四頭筋腱付着部炎については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝の主な原因は、膝に繰り返し負担がかかること、いわゆるオーバーユースです。 ジャンプや着地のたびに、膝蓋腱が引っ張られ、小さな傷ができてしまいます。 傷を治そうとして増えるのが、新しい血管です。傷が治ると血管は消えますが、ジャンプや着地を何度も繰り返すと、小さな傷がどんどん増えてしまい、それに合わせて血管も増え続けます。 血管が増えると、神経繊維も一緒に増えるため、痛みを感じやすくなるのです。 オーバーユース以外の原因としては、運動時の間違ったフォームや筋力の低下などがあげられます。 サイズが合わない、クッション性が低いといった不適切なシューズも、膝蓋腱に負担をかけてしまうので、ジャンパー膝のリスクを高めます。 ジャンパー膝の重症度分類 ジャンパー膝の重症度分類としてあげられるのが、Blazina(ブラジナ)分類です。(文献1) Blazina分類では、ステージ1から4の4段階で重症度が分類されています。 ステージ 状況 ステージ1 スポーツ活動中に痛みがある ステージ2 スポーツ開始時に痛み、ウォームアップで消えるが、疲労時に再び現れる ステージ3 活動中および活動後にも痛みがあり、スポーツに参加できない ステージ4 腱が完全に断裂している ジャンパー膝で感じる痛みと生活への影響 ジャンパー膝の初期は、運動時を中心に痛みや違和感があり、安静にしていると症状がおさまります。そのため日常生活への影響は少ないといえるでしょう。 しかし、進行すると安静時にも痛みが生じるようになり、日常生活にも支障をきたし始めます。 初期に感じやすい違和感 ジャンパー膝の初期には、ジャンプしたときや運動開始時、もしくは運動終了後に痛みや違和感を生じることが多いとされています。しかし、安静にしていると痛みが消えるため、運動を続ける方も少なくありません。 階段昇降時、とくに昇るときに膝に違和感を覚える場合もあります。 階段を昇るときは膝を大きく曲げることにより、膝蓋骨上部に負担がかかりやすいためです。 進行による日常生活の影響 ジャンパー膝が進行すると、スポーツだけにとどまらず、日常生活にも影響を及ぼします。 階段の昇り降りや椅子からの立ち上がり、しゃがみ姿勢からの立ち上がりで強く痛むことがあります。しゃがむ動作ができなくなるケースも少なくありません。 重症化すると、歩行が困難になったり安静時にも痛みが生じたりして、日常生活に支障をきたすようになります。 「ジャンパー膝は治るのか」について ジャンパー膝は、適切な治療とリハビリにより、十分回復可能です。しかし、症状によって回復までの時間が異なります。 大事なことは、ジャンパー膝を放置せず早期に治療を受けることです。 治すためには早期対応が必要 ジャンパー膝が治る期間は症状によって異なりますが、いずれにしても、早い対応が必要です。膝に痛みが生じた時点で医療機関を受診しましょう。X線やMRI、エコーなどの検査を受けて、膝の状態を確認します。 安静や膝のアイシングで回復する場合もありますが、重症例では運動制限が加わったり、手術が必要になったりするケースも少なくありません。 ジャンパー膝の重症度を判別するためにも、早期に医療機関を受診しましょう。 下記の記事では、ジャンパー膝が治るまでの期間や、やってはいけないことについて解説しています。 あわせてご覧ください。 放置するとさまざまなリスクがある ジャンパー膝を放置して運動を続けていると、痛みが悪化し、運動能力に影響を及ぼす可能性があります。 非常にまれですが、膝蓋腱が断裂する可能性もあります。膝蓋腱が断裂すると、立てなくなったり、あお向けや座った状態で足をまっすぐ伸ばせなくなったりするケースも少なくありません。 膝蓋骨がずれて、本来の位置から上または下に移動するケースもあります。これは、転位と呼ばれる現象です。 ジャンパー膝を放置すると、さまざまなリスクが発生すると知っておきましょう。 ジャンパー膝の治療法 ジャンパー膝の治療法としては、主に以下の4つがあげられます。 保存的治療 理学療法 手術療法 再生医療 保存的治療 保存的治療としてあげられるものは、主に以下のとおりです。 安静 膝のアイシング 物理療法 消炎鎮痛剤の活用 第一に、ジャンプやランニングなど、膝に負担をかけている動作を避けて安静にします。 安静を保つことと並行して、膝のアイシングおよび、電気治療や超音波治療といった物理療法で炎症を抑えます。 内服薬および塗り薬、湿布などの消炎鎮痛剤の役割は、痛みや炎症を抑えることです。 ステロイドの局所注射をするケースもありますが、腱を弱くする可能性があるため、慎重な対応が求められます。(文献2) 理学療法 ジャンパー膝の理学療法としてあげられるものは、主に以下のとおりです。 ハムストリング(太もも裏側の筋肉)のストレッチ 大腿四頭筋のストレッチ 大腿四頭筋の筋力トレーニング スクワット ジャンパー膝は、ハムストリングスや大腿四頭筋の柔軟性とも関係しているため、ストレッチが効果的とされています。 ジャンパー膝が長期化しているときのリハビリテーションでは、スクワットや階段昇降など「遠心性収縮訓練」も有効です。 遠心性収縮とは「筋肉が伸ばされながら力を発揮する動き」を意味します。 ジャンパー膝のストレッチについては、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 手術療法 膝蓋腱が断裂した場合などの重症例では、手術療法が検討されます。 主な手術としては、関節鏡を用いた膝蓋腱切除や膝蓋腱修復などがあります。 膝蓋腱切除とは炎症により変性した部分を切り取る手術であり、膝蓋腱修復とは、断裂部分を修復する手術です。 再生医療 手術に抵抗がある場合の選択肢としてあげられるのが、再生医療です。再生医療とは、ヒトの体内にある幹細胞の修復力を活用した治療方法です。 腹部の脂肪から幹細胞を採取し、既定の量になるまで培養してから体内に戻します。これは、「自己脂肪由来幹細胞治療」と呼ばれる治療法です。 「PRP療法」と呼ばれる治療法もあります。PRPとは、血小板を多量に含む血漿のことです。血小板には成長物質が多く含まれており、組織修復や炎症抑制の働きがあります。 ジャンパー膝も、「自己脂肪由来幹細胞治療」および「PRP療法」の適応となる疾患です。 再生医療について詳しく知りたい方は、リペアセルクリニックへお気軽にお問い合わせください。 メール相談やオンラインカウンセリングにて、詳しくお話を伺います。 以下の記事では、スポーツ外傷に対する再生医療について詳しく解説しています。 ジャンパー膝のセルフケア ジャンパー膝のセルフケアとしては、主に以下のようなものがあげられます。 膝関節の安静 膝関節のアイシング サポーターやテーピングによる膝の保護 湿布の活用 無理のない範囲でのストレッチも、柔軟性向上や膝蓋腱への負担軽減に役立ちます。運動前のウォーミングアップ、運動後のクールダウンとして取り入れてみましょう。 運動時のフォームやシューズの見直しも、セルフケアの一環として重要です。 以下の記事では、ジャンパー膝における湿布の貼り方について解説しています。あわせてご覧ください。 ジャンパー膝を理解して早期対応を心がけよう ジャンパー膝は主に、膝蓋腱炎と大腿四頭筋腱付着部炎に分けられます。 当初は、運動後の違和感だけですが、進行するうちに運動中にも痛みを感じ、重症になると日常生活にも支障をきたします。そのため、ジャンパー膝は早期の対応が重要です。 重症度判別や早期回復のためにも、膝に痛みや違和感を覚えた時点で、医療機関を受診しましょう。 ジャンパー膝の治療法としては、保存療法や理学療法、手術療法などがあります。膝の痛みについては、再生医療も選択肢として考えられます。 ジャンパー膝による痛みでお悩みの方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください。 メール相談やオンラインカウンセリングも行っております。 ジャンパー膝に関するよくある質問 ジャンパー膝の際にやってはいけないことは何ですか? ジャンパー膝の際にやってはいけないことは、主に以下のとおりです。 痛みを我慢し無理してスポーツを続ける 安静の指示を守らない 医師の指示なくストレッチやマッサージを行う 治療を中断する これらの行動は、回復の遅れや重症化につながります。 スポーツだけにとどまらず、日常生活にも大きな支障をきたすリスクがあるため、行わないようにしましょう。 ジャンパー膝とオスグッド病の違いは何ですか? オスグッド病は、脛骨粗面(けいこつそめん)と呼ばれる、膝蓋骨の下の骨に炎症や痛みが生じる疾患です。 両者の違いは、痛みが生じる部分です。 ジャンパー膝は、膝蓋腱や大腿四頭筋腱など「腱」に痛みを生じますが、オスグッド病は脛骨粗面と呼ばれる「骨」に痛みを生じます。 オスグッド病は、脛骨粗面が筋肉や腱で強く引っ張られてしまうことで、骨が出っ張ってしまう特徴があります。 ジャンパー膝とオスグッド病の違いは下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 ジャンパー膝で身長伸びるって本当ですか? ジャンパー膝で身長が伸びることはありません。 ジャンパー膝は、急激に身長が伸びる時期に多く見られます。 身長が急激に伸びる時期は、骨格も成長しており、大腿四頭筋の柔軟性向上が追いつかない状況です。その結果、相対的に筋肉の緊張が高まります。 筋緊張が高まった状態でジャンプを繰り返すと、膝蓋腱に負担がかかり、ジャンパー膝を発症すると考えられます。 ジャンパー膝と身長の関係については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 関連記事:ジャンパー膝は身長伸びる?成長期との関係性と原因について医師が解説 参考文献 (文献1) Patellar tendinopathy: diagnostic approach and functional assessment scales|Revista Española de Artroscopia y Cirugía Articular (文献2) 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)|日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
2025.08.31 -
- 手根管症候群
- 手部
「手根管症候群はどのような症状が現れるのか」などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。 手根管症候群では、主に親指から中指にかけて痛みやしびれが出たり、夜中や明け方にひどくなったりする症状が現れます。症状が悪化すると親指の付け根の筋肉が痩せ、日常生活に支障をきたす可能性があるため早めの受診が大切です。 本記事では、手根管症候群の主な症状を解説します。また、自宅で簡単にできるセルフチェックの方法やよくある質問にも回答しているので、参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 手根管症候群について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 手根管症候群の症状 手根管症候群では、主に親指から中指にかけてのしびれや痛み、細かい作業のしづらさなど、さまざまな症状が現れます。 ここでは、よく見られる症状の特徴を解説します。 原因も含めた包括的な内容に関しては、「手根管症候群とは|症状・原因・治療法からセルフチェックのやり方まで現役医師が解説」の記事をご覧ください。 指にしびれや痛みが出る 手根管症候群の主な症状の一つは、親指や人差し指、中指のしびれや痛みです。手首を通っている「手根管」と呼ばれるトンネルがなんらかの原因で狭くなり、中を通っている正中神経が圧迫されることによって起こります。 しびれや痛みは薬指や小指には出にくく、親指から中指にかけて集中するのが特徴です。スマートフォンの操作やパソコン作業、洗顔など日常的な動作のなかで「ビリビリする」「感覚が鈍い」といった違和感に気づく場合があります。 しびれや痛みの症状に気づいたときは、ほかのサインにも注意することが大切です。 夜中や明け方に症状がひどくなる 夜中や明け方に指の痛みやしびれがひどくなるのも、手根管症候群の症状の一つです。寝ている間は無意識に手首が曲がった状態になりやすく、その状態のまま長時間過ごすと、手根管内の神経が圧迫されやすくなります。 朝起きたときに指先がジンジンしていたり、夜中にしびれで目が覚めたりするケースもあります。手を振ると症状が和らぐと感じる人もいるでしょう。 このように、時間帯によって症状が変化するのも手根管症候群の特徴の一つです。 冷たい刺激に過敏になる 手根管症候群では、冷たいものに触れたときに、痛みやしびれを感じやすくなる場合もあります。手首の神経が圧迫され、手や指の感覚が過敏になってしまうためです。 たとえば、冷たい水で食器を洗っている際にピリピリした痛みを感じたり、冬場に手が冷えるとしびれが強まったりするケースがあります。 手根管症候群では冷たさに対する感覚にも変化が生じる場合があるため、気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してみましょう。 親指の筋肉が痩せて細かい作業が困難になる 手根管症候群が進行すると、親指の付け根にある筋肉(母指球)が痩せ、細かい作業が難しくなる場合があります。筋肉の働きをコントロールする神経が長時間圧迫されると、うまく働かなくなり、信号が伝わりにくくなった部位が徐々に使われなくなるためです。 以下のような細かい動きがしづらくなる場合があります。 人差し指と親指でOKサインがしにくい ボタンを留めるのが難しい 小銭をつまみにくい スマートフォンの操作がしづらい 手根管症候群の症状が悪化する前に対処することが大切です。日常生活に支障が出る前に整形外科などを受診してください。 手根管症候群の症状に当てはまる?セルフチェック方法 ここでは、手根管症候群のセルフチェック方法を紹介します。症状に心当たりがあるかどうか、確認してみてください。 チェックリスト 手根管症候群では、主に以下のような症状が現れます。一つでも当てはまる場合は、放置せず早めに専門医へ相談しましょう。 親指から中指にかけて痛みやしびれがある 薬指の半分と小指には痛みやしびれが出ない 夜中や朝方に痛みやしびれが強く出る 手がこわばって動かしにくい OKサインがつくりにくい 握力が低下していると感じる キャップ付きの容器を開けにくくなった 冷たい水に触れると痛みを感じる 手や指が思うように動かず、細かい作業がしづらい 指先の感覚が鈍い、または過敏になっている 放置すると症状が進行し、回復に時間がかかる場合があります。気になる症状があれば、早めに整形外科などの医療機関へ相談してください。 ファレンテスト ファレンテストは、手根管症候群かどうかを自宅で簡単にチェックできる方法の一つです。 以下の手順で試してみてください。 両手の甲を合わせる そのまま1分間キープする 指のしびれや痛みが出るか確認する 手の甲をぴったりと合わせ手首を90度ほどに曲げます。力を抜いた状態で1分間キープして、痛みやしびれが出るかチェックしましょう。両手の甲を合わせているときに、親指から中指にかけてしびれや痛みが出る場合は、手根管症候群の可能性があります。 ファレンテストはあくまで簡易的な目安です。違和感があれば、自己判断せずに受診しましょう。 チネル徴候 チネル徴候は、手首を軽く叩いたときにしびれや痛みが出るかを確認する簡易テストです。以下の手順で行います。 手のひら側の手首を上に向ける 手首の中央あたりを指で軽くトントンと叩く 親指から中指にかけてしびれや痛みが出るかを確認する 手首の中央には、正中神経が通っている手根管が通っています。この部分を軽く叩いたときに電気が走るようなしびれを感じる場合は、手根管症候群の可能性があります。 チネル徴候は自宅で簡易的に行える方法です。しかし、ほかの神経障害でも似た反応が見られるため、自己判断はしないようにしましょう。手根管症候群は早期発見・早期治療が重要です。 手根管症候群の症状緩和・改善を促す治療方法 手根管症候群の症状を緩和・改善するには、保存療法や手術療法、再生医療などの方法があります。以下でそれぞれ解説するので、参考にしてください。 保存療法 手根管症候群では、まず保存療法から始めるのが一般的です。神経の圧迫によって起こる痛みやしびれを抑えるために薬物治療が行われます。 炎症を和らげる目的で、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)やビタミンB12製剤、湿布が処方される場合があります。また、手首に直接ステロイド注射をし、局所的に炎症を抑える方法は、手根管症候群の症状が強い患者に施される保存療法の一つです。(文献1) 症状が軽いうちに保存療法を始めると、手術を回避できる可能性が高まります。気になる症状があれば、早めの対処を心がけましょう。 手術療法 手根管症候群では、保存療法を行っても痛みやしびれが改善しない場合、手術による治療が検討されます。手術では、正中神経を圧迫している手根管を広げる処置(手根管開放術)を行い、痛みやしびれの原因を取り除きます。 最近では、手首の切開を最小限に抑えた内視鏡手術も選択肢の一つです。体への負担が少なく、回復も比較的早いとされています。 手術はすべての患者に必要ではないものの、保存療法で効果が出ないときや日常生活に支障が出る場合には有効な選択肢といえるでしょう。 再生医療 手根管症候群の症状が保存療法での改善が見られないとき、再生医療も選択肢の一つです。再生医療は、自身の血液や幹細胞などを活用して、神経や組織の修復・再生を促す治療法です。 当院の幹細胞治療では、患者の体から少量の脂肪を摂取するだけで、十分な数の幹細胞の培養ができます。そのため、体への負担が少なく、術後の回復が早いといわれています。 手術に抵抗がある場合や保存療法でも改善が見られない方にとって、再生医療は有効な選択肢です。再生医療による具体的な治療法や症例については以下のページをご覧ください。 なお、リペアセルクリニックではLINEやお電話での相談を行っています。手根管症候群の症状でお悩みの方は、気軽に相談してください。 手根管症候群の症状が現れたら早急に医療機関を受診しよう 手根管症候群では、親指から中指にかけてのしびれや痛みが現れ、夜中や明け方に強まる傾向があります。症状が進行すると、親指の付け根の筋肉(母指球)が痩せ、細かい作業がしづらくなり日常生活に支障をきたす可能性も少なくありません。 手根管症候群の症状が軽いうちであれば、飲み薬や湿布などの保存療法で緩和するケースもあります。少しでも手のしびれや痛みなどの違和感があったら、我慢せず整形外科などの専門医へ相談しましょう。 手根管症候群の症状に関するよくある質問 手根管症候群の初期症状はどのようなものですか? 手根管症候群の発症初期は、症状の範囲や痛みを感じるタイミングが限られているケースが多く見られます。たとえば、人差し指や中指だけがしびれる、明け方にだけ痛む、手を使いすぎたときのみに症状が出るといった傾向があります。 初期症状の段階ではほかの病気との判別が困難なため、少しでも気になる変化があれば、早めに医療機関で診察を受けてください。 手根管症候群の原因は何ですか? 手根管症候群は、特発性のものが多く原因不明とされています。妊娠・出産・更年期の女性に多く見られる傾向がある点が特徴です。 加齢やホルモンバランスの変化、関節リウマチ、糖尿病、甲状腺機能低下などの疾患が背景に存在するケースもあります。また、手を酷使する作業やスポーツなども、発症の一因になるといわれてます。 ただし、これらの要因がすべての人に当てはまるわけではありません。 どのような症状が出たら病院に行くべきですか? 親指・人差し指・中指のどれかにしびれが出た、夜間や早朝に痛む、指を使った細かい作業がしづらくなったなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。細かい作業がしづらくなる状態も症状が進行しているサインの可能性があります。 手根管症候群の症状を放置していると、筋肉が痩せて回復が困難になるケースもあります。「そのうち治るだろう」と自己判断せずに、医師の判断を仰ぐことが大切です。 参考文献 (文献1) 標準的神経治療・手根管症候群|日本神経治療学会
2025.08.31 -
- 手根管症候群
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「手根管症候群と診断され、リハビリをしているが効果はあるの?」 「自宅でもできるリハビリ方法を知りたい」 手根管症候群に対してリハビリを受けていても、効果があるのか不安に思う方もいるでしょう。軽度〜中程度の手根管症候群では、継続的にリハビリを行うと症状の緩和が期待できます。 本記事では、自宅でも取り組めるリハビリ方法や手術後に行うリハビリの流れについて解説します。日常生活で避けるべき習慣についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。 当院リペアセルクリニックでは、公式LINEにてオンライン診断を実施しております。再生医療に関する情報提供もしておりますので、手根管症候群でお悩みの方はぜひご登録ください。 手根管症候群におけるリハビリ方法3選 手根管症候群は、手首にある「手根管(しゅこんかん)」と呼ばれるトンネル状の構造内を通っている正中神経という神経が圧迫されて発症する神経障害です。症状には、親指・人差し指・中指などのしびれや痛み、筋力低下などが現れます。 手根管症候群によって生じるしびれや痛みなどの改善には、薬物療法や装具療法に加え、ご自身で行うリハビリテーションが欠かせません。リハビリは圧迫された正中神経への負担を物理的に軽減し、手根管内部の組織の柔軟性を取り戻して、本来の手の機能を取り戻すのが目的です。 自宅で実践できる3つのリハビリ方法を具体的に紹介するので、参考にしてください。 手根管症候群の症状については、こちらの記事に詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。 手首のストレッチ 手根管症候群の症状軽減には、手首の柔軟性を高めるストレッチが重要です。ストレッチ方法は、以下のとおりです。 腕を肩の高さに上げる 親指を内側に入れて握り、小指側に手首を曲げる 手首と指を曲げてカタカナの「コ」の字にし、反対側の手で手前に引く 手首を反らせて壁に固定し、反対側の手で上から押す 2〜4の動作は10秒ほど保持し、反対側も同様に行います。急に強く引っ張ると逆効果になるため、呼吸を止めずにゆっくりと行うのがポイントです。 ストレッチは1日数回ほど無理のない範囲で行い、痛みを感じた際はすぐに中止しましょう。 腱のグライディングエクササイズ 腱のグライディングエクササイズは手指の動きをスムーズにするのが目的で、複数の指の形を切り替えながら腱の動きを変える方法です。具体的な方法は、以下を参考にしてください。 手首と指をまっすぐに伸ばす 指を反らせる 親指は伸ばしたまま、他の指を曲げて拳をつくる 親指以外の第1・2関節は伸ばし、第3関節を曲げる 親指以外の第3関節を伸ばし、第1・2関節を曲げる 腱のグライディングエクササイズは指を段階的に動かし、それぞれ10秒ほど保持するのを3セットほど行います。 動作の途中で違和感がある場合は無理に続けず、痛みが出ない範囲で行うのが重要です。繰り返し行うと腱の動きが滑らかになり、手のしびれや痛みの軽減につながるケースも多くみられます。 手の筋力トレーニング 手根管症候群の症状が長期化すると、親指の付け根にある母指球筋という筋肉が痩せてしまい、物をつまんだり、瓶の蓋を開けたりする力が弱くなります。手の筋力トレーニングは、弱ってしまった筋肉を鍛え、日常生活に不可欠な手の機能を取り戻すのが目的です。 手の筋力トレーニングとして、以下が挙げられます。 洗濯ばさみを指でつまむ 柔らかいゴム製のボールやスポンジを握る 手根管症候群では、手指の筋力低下が進行すると握力や日常動作に支障が出るため、早期からの筋力維持が欠かせません。無理に力を加えるのではなく、軽い負荷で回数を多くする方が神経への負担が少なくトレーニングできます。 症状が安定してきた段階から取り入れ、少しずつ手の機能を取り戻していきましょう。 手根管症候群の術後に行われるリハビリ 軽度〜中程度の手根管症候群では、装具療法や薬物療法・リハビリなどの保存療法が行われますが、改善しない場合は手術が行われるケースもあります。 神経の圧迫を取り除く手根管症候群の手術後は、症状の改善が期待されますが、すぐに手の機能が完全に回復するわけではありません。術後には適切なリハビリを行い、可動域の確保や筋力の回復、神経の滑走性改善などを目指すのが重要です。 術後の回復には段階があり、術後すぐに始めるべきリハビリと、ある程度回復したあとに取り組むべきリハビリのように時期によって内容は異なります。ここでは「術後早期」と「術後回復期」に分けて、それぞれのリハビリ内容について詳しく解説します。 術後早期 術後早期のリハビリでは、手術による腫れやむくみを最小限に抑え、手首の傷に過度な負担をかけずに指関節が硬くなるのを防ぐのが目的です。具体的なリハビリ内容は、以下のとおりです。 関節可動域訓練(前腕と手指中心) マッサージ 関節可動域訓練とは、関節の動きを維持したり改善したりするのを目的とした訓練を指します。手術を行ってまもない段階では、前腕と手指を中心に関節可動域訓練を行います。 指を「グー」「パー」に動かしたり、手のひらを内側と外側にひねったりする運動を行いますが、痛みや腫れが出ない程度にしてください。マッサージも前腕と手指中心に行うと、血液循環の向上や維持に効果的です。 術後早期の段階では、まだ手首自体を意図的に曲げ伸ばしする運動は行いません。あくまで指を優しく動かして血行を促し、本格的な回復に向けた土台を作るのが重要になります。 術後回復期 術後数週間が経過した回復期は傷口の安定や炎症の軽減が進み、より積極的なリハビリが可能です。具体的には、以下のリハビリを行います。 マッサージ 関節可動域訓練(手指と手首中心) マッサージは、ギプス固定期間に低下した皮膚の柔軟性や手首の動きを良くする目的で、前腕や手指・傷口の周囲を中心に行います。 術後回復期の関節可動域訓練は、手のひらを手前に倒したり反らしたりして、手首を屈曲・伸展させましょう。ほかにも、手首の動きやつまみ動作の訓練をするために、手指と手首の運動を重心的に行うケースが多いです。 また、日常生活での動作を少しずつ再開し、手にかかる負荷を確認しながら使い方を調整するのも重要です。症状の程度や回復速度には個人差があるため、医師や作業療法士と連携しながら適切なペースでリハビリを継続するのが回復への近道となります。 手根管症候群になったらやってはいけない事 手根管症候群の症状を改善へ導くには、リハビリと並行して日常生活の見直しが欠かせません。とくに、神経への圧迫を助長するような動作や生活習慣を続けると、せっかくの治療効果が十分に得られない場合もあります。 手根管症候群を発症した際は、避けるべき行動を把握しておくと、症状の悪化や再発を防ぐのに役立ちます。以下に挙げる3つの行動は、見過ごされがちですが、神経への負担を大きくしやすいため注意が必要です。 ただし、症状が続く方は無理せず早めに整形外科を受診しましょう。当院では、LINEでの相談も可能ですので、お気軽にご相談ください。 手根管症候群になったらやってはいけない事や対処法に関しては、以下の記事に詳しくまとめていますので、ご覧ください。 長時間パソコンやスマートフォンを操作する 長時間にわたるパソコンのキーボード入力やスマートフォンの操作は、手首を曲げた不自然な位置で指を動かし続けるため、手根管症候群の症状を進行させる代表的な原因です。とくに、手首を手のひら側に深く曲げた状態は、手根管の内圧を高めてしまい、神経の圧迫を強めます。 対策としては、以下の方法が挙げられます。 1時間に1度は作業を中断し、手首を優しく伸ばすストレッチをする パソコンの操作時はリストレストを置いて手首の角度を水平に保つ 自然な形で握れるマウスを選ぶ スマートフォンは両手で持ち、手首を曲げすぎないようにする 連続した作業時間を意識的に減らし、道具で手首の負担を軽減すると、症状緩和につながるでしょう。 家事で手を酷使する 洗濯や掃除・料理などの家事全般は、手首に強い負担をかける動作が多いため注意が必要です。とくに、以下の動作は手根管周囲の組織を強く緊張させ、神経の圧迫を助長しやすくなります。 タオルや雑巾を絞る フライパンを振る 重い買い物袋を持つ すべての家事を休むのは難しいですが、意識的に休憩を挟んだり、片手で重いものを持たずに両手で支えたりする工夫が大切です。ほかにも、以下の対処法も検討すると良いでしょう。 便利な調理器具を活用する 1度に行う作業量を減らす 手首の負担を軽減するサポーターやスプリントを使用する 日々の動作の中に潜む負担を見つけて軽減していく姿勢が、症状の改善につながります。手根管症候群の症状がある場合は、作業時間や方法を工夫するのが重要です。 痛みを我慢して使う・放置する 手根管症候群の初期段階では、軽いしびれや違和感を放置してしまう方が少なくありません。しかし、痛みやしびれを我慢して手を使い続けると、正中神経に持続的なダメージが加わり、症状が進行してしまう恐れがあります。 進行すると、感覚麻痺や筋力低下に至り、手術が必要になるケースもあります。症状を感じた際の対処方法は以下のとおりです。 痛みやしびれを感じたらすぐに作業を中止する 適切なリハビリや生活習慣の見直しを行う また、違和感を感じた時点で、早めに医師へ相談するのが重要です。リハビリの一環としてストレッチを指導されるケースもありますが、無理に行うと悪化する可能性があるため、注意しましょう。 手根管症候群と診断されたらリハビリを取り入れて症状の改善を目指そう 手根管症候群は、手のしびれや痛みを引き起こす疾患ですが、適切なリハビリを取り入れると症状の緩和や再発防止が期待できます。 手首のストレッチや腱のグライディングエクササイズ、筋力トレーニングなどは、自宅でも継続しやすい運動です。術後には段階的なリハビリが必要であり、無理のない範囲で進めるのが大切です。 治療だけでなく、日常生活においても手の酷使や誤った使い方は避けた方が良いでしょう。正しいケアと早期対応が重要ですが、自己判断せず症状が改善しない場合はぜひご相談ください。 また、手根管症候群に関して詳しく知りたい方はこちらの記事もチェックしてください。 手根管症候群のリハビリに関するよくある質問 手根管症候群におけるリハビリを行う上で、よくある質問をまとめました。ここでは、リハビリ期間や手術後の開始時期などの質問について、解説します。 回復のペースには個人差があるため、あくまで一般的な目安として参考にしてください。 手根管症候群のリハビリ期間はどれくらいですか 手根管症候群のリハビリ期間は、軽症であれば数週間〜1カ月程度で症状が落ち着く場合がありますが、中等度以上では3カ月以上必要になるケースもみられます。 保存療法でも改善がみられないと、手術による治療を検討する症例も珍しくありません。 手根管症候群の手術後は、神経や筋肉の回復が緩やかに進むため、さらにリハビリ期間が長期にわたる場合もあります。 リハビリ期間は、症状の程度や発症からの経過、生活習慣によって個人差があります。自己判断でリハビリを途中でやめてしまうと再発や悪化のリスクが高まるため、医師やリハビリ担当者と相談しながら根気よく続けるのが大切です。 手根管症候群の術後はいつからリハビリを開始しますか? 手根管症候群の術後にリハビリを始める場合、開始時期は実施した手術方法によって、以下のように異なります。 手術方法 リハビリ開始時期 手根管開放術 術後1週間〜 母指対立再建術 術後1カ月〜 手根管開放術は手のひらを切開し、圧迫されている正中神経を解放するために行われる手術方法です。傷口の範囲が小さく、局所麻酔下で手術するため、術後は帰宅できます。 通常2〜4cmほどの範囲を切開しますが、内視鏡を使用するとさらに傷口は小さくなります。術後はギプスで固定しますが、傷口も小さいため1週間ほど固定し、回復していればリハビリが可能です。 母指対立再建術は手首や指の腱や筋肉を採取し、親指の付け根に移植する手術方法です。手術は全身麻酔下で行われるため1〜2週間ほどの入院が必要となり、術後は1カ月ほどの固定期間を経て、リハビリを開始します。 傷の回復に応じて、手首の動きや握力回復を目的としたリハビリも段階的に取り入れていきます。無理に進めると炎症や痛みを悪化させる可能性があるため、主治医の指示に従いリハビリを進められると、回復が期待できるでしょう。 術後の経過について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
2025.08.31 -
- 手根管症候群
- 手部
指のしびれや痛みが見られ、手根管症候群を疑う方もいるでしょう。手根管症候群は神経障害の1つで、親指や人差し指、中指にしびれや痛みが生じる場合があります。症状が進行すると物が上手くつまめないなど日常生活に支障をきたすため、早めの治療が必要です。 本記事では、手根管症候群とはどのような疾患か、症状や原因などを解説します。治療法やセルフチェック方法も紹介するので、指のしびれや痛みの回復が見込めずお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 手根管症候群について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 手根管症候群とは 手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)とは、指や手のひらにしびれや痛みが生じる疾患です。手指や手首の動きに関わる正中神経が、手根管と呼ばれる手首周辺に位置する狭い管の中で圧迫されることで症状を引き起こします。手根管症候群の好発年齢は50代以上で、女性に多い疾患です。 なお、類似症状として腱鞘炎がありますが、両者には次のような違いが見られます。 疾患名 特徴 手根管症候群 手根管が圧迫されることで起こる神経障害 腱鞘炎 腱鞘が炎症を起こして腱がスムーズに通過できなくなることで起こる炎症 手根管症候群と腱鞘炎には症状にも違いが見られるため、各疾患の特徴を理解しておきましょう。 【関連記事】 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 【医師監修】腱鞘炎とは|症状・原因・治療法から重症度のチェック方法まで解説 手根管症候群の症状 手根管症候群を発症すると、次のような症状が見られます。 親指や人差し指、中指にしびれや痛みが生じる 夜間や明け方に症状が強くなる 冷たい刺激に手の感覚が過敏になる 指がつまみづらいなど細かい作業がしにくくなる 手がむくんでいるような感じがする とくに代表的な症状は、人差し指や中指を中心としたしびれや痛みです。なかには、手のひら全体に痛みを伴うケースもあります。 また、症状が進行するとボタンが上手くかけられなくなったり財布から硬貨を掴みにくくなったりと、日常生活へ影響を及ぼします。症状が見られた場合は、悪化しないためにも早めに受診しましょう。 手根管症候群の原因 手根管症候群は、正中神経と呼ばれる神経の圧迫が原因です。しかし、原因不明で発症するケースも多く見られます。 手根管症候群の発症要因として以下が考えられます。(文献1) 女性ホルモンの乱れによる滑膜の増加 家事や仕事による手の酷使 基礎疾患の影響 女性の場合、妊娠や出産、閉経によって症状が見られるケースも少なくありません。育児や家事などで手を酷使している場合や、パソコン・スマートフォンの使い過ぎは手根管症候群を引き起こす可能性が考えられます。 また、関節リウマチや人工透析、甲状腺機能低下症も手根管症候群との関連性があるといわれています。 【関連記事】 【医師監修】手根管症候群の原因とは?悪化を招く習慣を含めて解説 関節リウマチとは?初期症状・原因・診断・治療・生活上の注意 症状でみる手根管症候群のセルフチェック方法 手根管症候群は、セルフチェックも可能です。ここでは、手根管症候群のセルフチェック方法を4つ紹介します。 手根管圧迫テスト ティネル徴候 ファーレン徴候 つまようじテスト 症状の疑いがある方は参考の上、実践してみてください。 手根管圧迫テスト 手根管圧迫テストは、手根管部分を軽く圧迫する検査方法です。手根管は手首の中央部に位置し、骨と靭帯に囲まれたトンネル状の空間をいいます。 検査方法の順番は、以下の通りです。 手のひら側を上に向けた状態でテーブルに置く 検査者は手根管を指で軽く圧迫する 30秒ほど圧迫する 30秒ほど圧迫している間に、親指から薬指にかけてしびれや鈍痛などの症状が見られた場合は、手根管症候群の可能性が高いと考えられます。 ティネル徴候 ティネル徴候とは、指や診察用のハンマーを使用して手根管を刺激する検査方法です。検査は、次の手順で行います。 リラックスした状態で手のひら側を上に向けたままテーブルに置く 片方の手を使って手首の真ん中あたりを軽く叩く 軽く叩いた際、親指から薬指の指先にかけてしびれを感じたら手根管症候群の可能性が考えられます。ティネル徴候は、手根管症候群だけでなく、肘部管症候群や腓骨神経麻痺などの疑いもあるため、検査で電気が走るようなしびれを感じた際は、専門機関を受診しましょう。 ファーレン徴候 ファーレン徴候とは、手首を曲げて行う検査方法です。検査は、次の手順で行います。 立位もしくは座位で行う 胸の前で手の甲同士を合わせる 手の甲を押しつけながら両手首を曲げ、1分ほどキープする 1分ほど両手首を曲げている間に親指から薬指にかけて、しびれや痛みが出る、もしくは症状が悪化する場合は手根管症候群の可能性が考えられます。ファーレン徴候を実施する際は、手首を直角に曲げるのがポイントです。 つまようじテスト つまようじテストは、親指から薬指を刺すときにしびれや鈍痛があるか診断する方法です。検査は、次の手順で行います。 親指から薬指の先をつまようじで軽く刺す 小指の先をつまようじで軽く刺す 小指の先を刺すの感覚を比較する 親指から薬指の先と、小指の先を刺したときの感覚に違いがあれば、手根管症候群の可能性があります。 手根管症候群におけるやってはいけないこと 手根管症候群の可能性があるときにやってしまうと、症状を悪化させてしまう動作があります。悪化を招くリスクがあるため、手根管症候群の疑いがある場合は以下の動作を避けましょう。 ねじったりパソコンのキーボードを打ったりと手に負担のかかる動作を行う ストレッチやマッサージで手首を無理に伸ばす 自己判断で市販の鎮痛剤や抗炎症薬を使用する 症状を放置する 知識がない状態でストレッチやマッサージを行うと、かえって手首や指に負担がかかり、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。また、自然に治ると思って放置するのは避けてください。 手根管症候群が進行すると、日常生活に支障をきたすため、症状が続く場合は早めに診てもらいましょう。 手根管症候群の治療法 手根管症候群の治療法は、進行状況によって異なります。ここでは、主な治療法を3つ解説します。 薬物療法 サポーターなどの装具治療 手術療法 手根管症候群の治療法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。 薬物療法 手根管症候群の治療法には、内服薬もしくは手首へステロイド剤の注射が行われます。内服薬には、ビタミンB12を使用するケースが一般的です。 ビタミンB12には、末梢神経の保護・再生効果が期待できるため、手根管症候群の治療に効果的です。また、ステロイド注射では炎症を抑え、痛みやしびれの緩和が期待できます。ステロイド注射の持続期間は人によって異なるため、定期的な注射が必要になる場合もあります。 サポーターなどの装具治療 一般的に、手根管症候群は手の使い過ぎが原因と考えられるため、安静にすることが大切です。作業量の調整も治療法の1つですが、仕事や家事で手を使わなければいけない場合は、サポーターなどの装具治療が行われます。 サポーターなどの装具を利用すると手首の負担を軽減できるため、症状の緩和が期待できます。手首を固定すると正中神経への圧迫軽減の効果が期待できるので、夜間や明け方のしびれや痛みを緩和したい場合に効果的です。 手術療法 手根管症候群は、薬物療法やサポーターなどの装具治療で安静にするのが主な治療法です。しかし、症状の回復が見られない場合は、手術を行います。 手根管症候群の術式は、手根管開放術と母指対立再建術の2つが一般的です。各術式には、以下の違いが見られます。 術式 概要 手根管開放術 手のひらを切開し神経圧迫のもとになっている靭帯を切って、圧迫を解放する手術 母指対立再建術 手首や指にある腱や筋肉を採取して、親指の付け根に移植する手術 症状の進行状況によって手術は異なり、回復期間にも違いがあります。 手根管症候群の手術後におけるリハビリ内容 手根管症候群の手術後は、早期と回復期でリハビリ内容が異なります。治療後すぐは、関節可動域訓練を実施します。関節可動域訓練では前腕と手首を動かし、筋肉の伸張性低下を防ぐのが目的です。 回復期には、手の動きや指のつまみ動作を重点的に行います。洗濯や料理、食事などで必要となる動作となるため、早い段階で日常生活に戻れるようリハビリを実施します。症状の早期回復には、術後のタイミングにあわせて適切なリハビリの実施が重要です。 手根管症候群を自分で治すことはできる?放置するリスク 手根管症候群は自分で治すことは難しいですが、適切なセルフケアにより症状緩和が期待できます。有効なセルフケア方法は、以下の通りです。 手関節屈曲筋や手関節伸展筋を伸ばすストレッチをおこなう 手のひらの筋肉や手根管を通る腱の動きを滑らかにするエクササイズをする 横手根靭帯のマッサージをする ストレッチ以外にも、安静に過ごしたりサポーターを使用したりするのもおすすめです。症状が軽減しないまま放置すると、感覚が鈍くなるなどのリスクが生じます。 また、ストレッチのやり方を間違えると症状を悪化させる可能性もあるため、手根管症候群の疑いがある場合は医療機関で適切な治療を行いましょう。 再生医療は手根管症候群の症状回復が見込めない場合の選択肢 手根管症候群の痛みやしびれを放置すると、日常生活に支障を及ぼします。損傷した指の神経治療には、再生医療も選択肢の1つです。 再生医療とは、患者自身の脂肪組織から幹細胞を分離・培養し、静脈内投与により組織修復や機能回復を目指す治療法です。幹細胞を採取する際は、おへその横からごくわずかな脂肪を取るため、身体の負担を最小限に抑えられます。 また、入院が不要な点も再生医療の特徴です。当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けておりますので、手根管症候群の症状回復が見込めずお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。 手根管症候群の症状回復には早期治療が重要 手根管症候群は症状が進行すると、物が上手く掴みにくくなるなど日常生活にも支障をきたす疾患です。症状が悪化し手術を行う場合、入院が必要になる場合もあります。 手根管症候群の症状回復には早期治療が重要なため、セルフチェックを実施し、疑いが見られた場合は専門機関への受診を検討しましょう。 万が一症状の回復が見込めない場合は、改善策として再生医療を検討するのもおすすめです。手根管症候群の症状や原因を理解し、早期対策を図りましょう。 手根管症候群に関するよくある質問 手根管症候群の手術後はすぐ日常生活に戻れますか? 手根管症候群の代表的な手術は、手根管開放術と母指対立再建術の2種類で、手術によって日常生活に戻れるタイミングが異なります。 手根管開放術はギブスが外れ、傷口の治癒や痛みの軽減が確認できれば日常生活に復帰可能です。母指対立再建術は手術後1カ月ほど手術部位を固定するため、日常動作ができるようになるまでには1カ月ほどかかります。 手根管症候群の手術を受ける場合の入院期間はどのくらいですか? 手根管症候群の手術は、症状によって入院期間が異なります。症状が軽い場合は、1泊もしくは日帰りが可能です。物を掴むのが難しいほど症状が悪化している場合は、1〜2週間ほど入院が必要な手術を行う場合があります。 手根管症候群は何科を受診すればいいですか? 手根管症候群は手のしびれや痛みを伴う疾患のため、整形外科を受診しましょう。近くに神経外科がない場合は、脳神経外科や形成外科で受診しても問題ありません。 ただし、整形外科は専門性がわかれているため、手外科専門医がいる整形外科で診てもらうのが適しています。 参考文献 文献1 標準的神経治療:手根管症候群|日本神経学会
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「腱鞘炎とはどのような疾患か知りたい」「手首や指の痛みで日常生活に支障を感じている」といった疑問や悩みをお持ちの方もいるでしょう。 腱鞘炎は、手や指を動かす腱を包む「腱鞘」に炎症が起こる疾患で、軽症であればセルフケアで改善が見込めるケースもあります。しかし、症状が進行すると医療機関での治療が必要になることもあるため、早めの対処が大切です。 そこで今回は、腱鞘炎とは何か、主な症状や原因から治療法までを解説します。重症度チェックやセルフケアの方法もまとめているので、腱鞘炎でお悩みの方は参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱鞘炎について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱鞘炎とは|主な症状について 腱鞘炎には、「ドケルバン病」と「ばね指」の2種類があります。下表のように、手首に痛みを伴う「ドケルバン病」に対し、指に症状が現れるのが「ばね指」です。 種類 ドケルバン病 ばね指 症状 痛みや熱がある 腫れている 手首に力が入らない 物を掴むときに痛みを感じる 痛みや熱がある 腫れている 指を十分に伸ばせない 朝方に症状が強くなる 腱鞘炎が重症化すると痛みで思うように手や指を動かせなくなり、日常生活に支障をきたします。 箸が持てない フライパンが持てない ペットボトルの蓋を開けられない 硬貨を掴めない タオルが絞れない など かつて、腱鞘炎はスポーツ選手や楽器の演奏者などに多く現れており、一種の職業病とされてきました。しかし、近年はパソコンやスマホの使用などにより、職業を問わず多くの人が腱鞘炎に悩まされています。(文献1) 腱鞘炎の原因 腱鞘炎の主な原因は手首や指の使いすぎです。同じ動作を繰り返すことで腱と腱鞘に摩擦が生じ、炎症を引き起こします。たとえば、長時間のパソコン作業やスマホ操作、ピアノやギターといった楽器演奏は腱に大きな負担がかかる代表例です。 ほかにも、加齢による腱の柔軟性低下や、更年期や産後のホルモンバランスの変化なども腱鞘炎の発症リスクを高める原因とされています。(文献2) 腱鞘炎は、症状を無視して手部を使い続けると悪化するため注意が必要です。症状が現れたら、できるだけ安静にして負担をかけないよう心がけましょう。 腱鞘炎の原因となる使いすぎを防ぐための注意点 腱鞘炎にならないためには、原因となる手首や指の使いすぎを防ぐ必要があります。 パソコンやスマホ、ピアノの使用時における注意点について、以下で詳しく見ていきましょう。 パソコンの使用 腱鞘炎を防ぐためには、長時間のパソコン使用に注意が必要です。キーボードを使ったタイピングやマウス操作を繰り返していると、手首や指に炎症が起こりやすくなります。たとえば、タイピングの際に手首を反らした状態を続けたり、マウスを強く握って操作したりする習慣は大きな負担になります。 パソコン使用時における手首と指の使いすぎを防ぐポイントは、以下のとおりです。 キーボードの高さを調整する リストレストを使用する 30分〜1時間ごとに休憩を取る など 作業環境を整えつつ、意識的に休息を取り入れることで、腱鞘炎の発症リスクを減らせます。 スマホの使用 スマホの使いすぎも腱鞘炎の原因の一つです。片手で長時間スマホを操作し続けると親指の腱に負担が集中し、炎症を引き起こします。とくに、親指での連続スクロールやゲーム操作、寝転びながらの片手持ちはリスクが高い行動だといえます。(文献3) 腱鞘炎の発症リスクを減らすためにも、スマホの使用時は以下のような対策をしましょう。 両手でスマホを持って操作する スマホスタンドを活用する 時間を区切ってスマホ操作する など 親指を中心に過度な負担をかけない習慣を意識することで、スマホ腱鞘炎を未然に防ぐことが可能です。 ピアノの演奏 ピアノの演奏も腱鞘炎の原因になります。手首や指を使って長時間同じ動作を繰り返すことで、腱と腱鞘に摩擦が生じるためです。とくに、過度な練習や力みすぎた演奏は、手首や指に大きなストレスを与えます。 腱鞘炎を防ぐため、ピアノの演奏時には以下の点に注意しましょう。 適度に休憩をはさむ 演奏前後にストレッチする習慣を取り入れる 正しい姿勢で演奏する 力を抜いてリラックスして演奏する 演奏時の姿勢に注意し、痛みを感じたらすぐに休むようにすると、ピアノ腱鞘炎のリスクを減らせます。 腱鞘炎の重症度チェック 腱鞘炎の重症化を防ぐためには、早期発見が欠かせません。腱鞘炎の重症度は、以下の6段階でチェックできます。 筋肉痛のような痛みを感じる 手首や手を動かしているときに痛みを感じる 安静時にも痛みを感じる 日常生活において頻繁に痛みを感じる 日常生活に支障が出る 強い痛みに悩まされる 腱鞘炎になると、手首や手に筋肉痛のような重みを感じるようになります。動かしているときに痛みが現れるようになると、多くの人が「腱鞘炎かもしれない」と自覚し始める段階です。たまに痛みを感じる程度であれば、安静にしているだけで症状が改善する可能性もあります。 しかし、手首や手を動かしていなくても痛みを感じたり、日常生活に支障がでたりするようになったら、腱鞘炎が重症化しているサインです。腱鞘炎は重症化すると外科的治療が必要になるケースもあります。「このくらいの痛みなら大丈夫だろう」と放置せず、早めに医療機関を受診するようにしてください。 腱鞘炎の治療法 腱鞘炎の治療は、症状の程度によって選択肢が変わります。軽度であれば保存療法で改善が見込めますが、炎症や痛みが強い場合にはステロイド注射や手術を検討するケースもあります。腱鞘炎の代表的な治療法を下表にまとめました。 治療法 内容 特徴 保存療法 患部を安静に保つ 湿布を貼る サポーターで固定する 初期症状の改善効果が見込める 日常生活における工夫が必要になる ステロイド注射 患部にステロイドを注入する 強い痛みを短期間で和らげられる 繰り返しの使用により腱の変性・断裂リスクが高まる 手術療法 腱鞘を切開して腱の動きを改善させる 保存療法やステロイド注射で効果が得られない場合に選択される 再発リスクが低い 腱鞘炎は必ずしも手術が必要な疾患ではなく、多くは保存療法で改善が見込めます。ただし、激しい痛みが続く場合や生活に支障がある場合は、早めに医療機関を受診して適切な治療法を選択することが大切です。 再生医療による腱鞘炎の治療について 近年は、従来のステロイド注射や手術療法に加えて、再生医療による腱鞘炎の治療も注目されています。再生医療には、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液から血小板を分離して作製した多血小板血漿(PRP)を利用するPRP療法があります。 再生医療は、従来の治療で効果が得られない場合の選択肢になる一方で、保険適用外の治療も多く専門医との十分な相談が必要です。なお、当院の幹細胞治療では、米粒2〜3粒ほどの脂肪から治療に必要な量の細胞を培養できるため、従来の治療法と比べて身体への負担が少なくて済む点が特徴です。 以下のページでは、再生医療による治療法や症例などを詳しく紹介しています。腱鞘炎の治療における再生医療の可能性について知りたい方は、ぜひご覧ください。 腱鞘炎のセルフケア方法 腱鞘炎は、軽度であれば自宅でのセルフケアによって症状を和らげる効果が期待できます。ストレッチや食事改善、ツボ押しなど、日常生活に取り入れやすい方法を実践することで、痛みの緩和や再発予防にもつながります。 以下で、具体的なセルフケア方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 ストレッチ 腱鞘炎のセルフケアとして、以下のような手首や指のストレッチに取り組むことをおすすめします。 部位 ストレッチ方法 手首(指全体) 右腕を前に伸ばす 手のひらを下に向ける 反対側の手で指をつかむ ゆっくりと手前へ引っ張る 10秒間伸ばしてゆっくりと戻す 反対側の手も同様に行う 腕 椅子に座る 右ひじを伸ばして前に出す 右手のひらをお腹の方向に向ける 左手で指の付け根をつかむ 右手は力を抜いて左手を手前に引っ張る 反対側の手も同様に行う 親指 右手首を手の甲側に軽く曲げる 右親指の付け根をできる限り曲げる 左親指で右親指を伸ばすように抵抗をかける 右親指は抵抗に負けないように力を入れて押し合う 反対側の手も同様に行う ストレッチは、基本的に痛みが和らいでいるときに行いましょう。強い痛みを感じる時期に無理してストレッチすると逆効果になりかねません。腱鞘炎を悪化させないよう、医師に相談しながらストレッチに取り組むことをおすすめします。 【関連記事】 ドケルバン病におけるストレッチ方法3選|注意点と予防方法も解説 ばね指を自分で治すストレッチ方法3選【画像付きで解説】 食事改善 腱鞘炎は、食生活の見直しによっても症状の改善が期待できます。具体的には、以下の食材を中心に摂取するよう心がけましょう。 オメガ3脂肪酸が豊富な食べ物(青魚や亜麻仁油など) ビタミンCおよびビタミンEを多く含む食べ物(野菜や果物など) たんぱく質を多く含む食べ物(大豆食品や肉類など) グルコサミンなどのサプリメント 腱鞘炎の改善には適切な治療が欠かせません。しかし、毎日の食生活も症状の改善をサポートする重要な要素であるといえます。腱鞘炎を早く治すためにも、効果的に栄養素を摂取しましょう。 ツボ押し ツボ押しは、血行を促進して腱鞘炎の痛みを和らげる効果が期待できます。腱鞘炎に効く代表的なツボは、以下の5つです。 親指の付け根と手首の境目にある「陽谿(ようけい)」 親指と人差し指の付け根の間にある「合谷(ごうこく)」 手のひらのちょうど真ん中にある「労宮(ろうきゅう)」 手首を内側に折ったときにしわができる部分の真ん中にある「大陵(だいりょう)」 手の甲と手首をつなぐ部分にある「陽池(ようち)」 刺激しすぎず、気持ち良いと感じる程度の力でツボを数秒間押しましょう。その後、ゆっくりと離す動きを繰り返してみてください。リラックスしながらツボ押しすることで、手首や指の痛みやしびれの軽減につながります。 ツボ押しは手軽に取り入れられるセルフケアの一つです。ただし、ツボ押しをしても症状が軽減しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 腱鞘炎とはどのような疾患か理解して重症化を防ごう 腱鞘炎は、主に手首や指の使いすぎによって発症する疾患です。初期の段階であれば、ストレッチや食事改善などのセルフケアによって症状の改善が期待できます。しかし、放置すると炎症が進んで強い痛みを伴い、日常生活にも支障をきたす可能性があるため注意が必要です。 重症化した腱鞘炎の治療には、ステロイド注射や手術療法のほか、再生医療という選択肢もあります。腱鞘炎の症状が長く続き、徐々に悪化していると感じた場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。 腱鞘炎に関するよくある質問 腱鞘炎発症時に腫れる場所はどこですか? 腱鞘炎を発症すると、主に手首の親指側や指の付け根、場合によっては指全体が腫れるケースもあります。 「ドケルバン病」の場合、手首の親指側が腫れて痛みが生じる場合がほとんどです。一方で、「ばね指」の場合は、指の付け根が腫れ、指を曲げ伸ばしする際に引っかかりや痛みを伴う場合があります。 手首や指以外にも腱鞘炎は起こりますか? 腱鞘炎が起こるのは主に手首や指です。しかし、腱を繰り返し使う関節であればほかの部位でも発症する可能性があります。 たとえば、ランニングやジャンプなどによって負担がかかる足首や、スポーツで酷使されるような肩や肘にも腱鞘炎は起こり得ます。特定の部位に痛みを感じたり、動かしにくさが続いたりする場合は、無理をせず医師に相談しましょう。 参考文献 文献1 De Quervain’s Disease: A Discourse on Etiology, Diagnosis, and Treatment.|Cureus誌 文献2 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)について」2023年 |日本整形外科学会 文献3 スマホの使いすぎによる腱鞘炎(けんしょうえん)|大正製薬
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
手首や足首に、コリコリとしたしこりができていませんか。 それは「ガングリオン」と呼ばれる良性のできものかもしれません。放置しても問題ない場合もありますが、大きくなったり痛みが出たりすると、日常生活に支障が出ることもあります。 本記事では、ガングリオンの症状や原因、治療法までをわかりやすく解説します。安心して適切な対応を取れるよう、基本的な知識を押さえておきましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ガングリオンについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ガングリオンとは「ゼリー状の滑液が溜まる良性腫瘍」 ガングリオンは、関節や腱の近くにできるゼリーのような柔らかい腫瘤(しゅりゅう)です。 多くの場合は小指ほどの大きさで、袋の中には関節の動きをなめらかにする「滑液」と呼ばれる液体が入っています。(文献1)(文献2) 若い女性に多く、手首や指の付け根などによく見られます。(文献3) 放置しても体に害はありませんが、痛みや動かしにくさがある場合は、医療機関での治療が必要です。 ガングリオンの症状 ガングリオンの代表的な症状は、皮膚の下に触れるしこりです。しこりの硬さは、ゼリーのように柔らかい場合、ゴムのように硬い場合など個人差があります。(文献1) ガングリオンができても、強い痛みはなく、不快感や違和感程度で経過するケースが一般的です。ただし、神経の近くにできた場合は、神経の圧迫により痛みやしびれが生じ、指先の動かしにくさや軽い麻痺がみられることもあります。 なぜできる?ガングリオンの原因 ガングリオンの代表的な原因は、関節を包む膜である「関節包」や、腱を包む「腱鞘」という部分の性質が変化することです。(文献3) これらが変性して嚢胞という袋状の構造ができ、その中に「滑液(かつえき)」がたまります。この滑液が粘り気のあるゼリー状となってガングリオンが形成されます。(文献1) ただし、ガングリオンが発生する具体的なメカニズムは解明されていない部分もあります。(文献4) 手や指をよく使うと大きくなるケースはありますが、必ずしも手を多く使う人にできやすいわけではありません。 手の使用頻度に関わらず発生するため、ガングリオンは誰にでもできる可能性があるといえるでしょう。 ガングリオンができやすい場所 ガングリオンは、動きの多い関節や腱の周囲に発生しやすい特徴があります。代表的な部位は、以下のとおりです。(文献1) 手首(とくに甲側) 指(付け根や関節) とくに発生しやすい部位は、手の甲です。他の部位よりは頻度は低いものの、手のひら側の指の付け根にできることもあります。 また、良く動かす部位である足にガングリオンができるケースも少なくありません。足にできるケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。 また、手指の付け根に痛みが出る場合、「ばね指」のケースもあります。ばね指については、以下の記事をご参照ください。 ガングリオンの治療法 ガングリオンの治療は、大きく2つに分けられます。 保存療法:ガングリオンの袋はそのままにして、様子をみるか中身だけを取り除く治療法 手術:ガングリオンの袋自体を取り除く治療法 本章では、それぞれの治療法について詳しく解説します。 保存療法 保存療法は、液体がたまる袋を取り除かない治療方法です。状態によって、そのまま経過を観察する場合と、しこりの液体を針で抜く場合に分けられます。また、関節の安静を保つためにテーピングや装具を使うケースもあります。(文献5) 2種類の保存療法について、順番にみていきましょう。 経過観察|自然治癒に期待 以下のような場合はとくに治療をおこなわず、経過観察をするのも選択肢となります。 症状が軽くて痛みがない 日常生活に支障をきたしていない ただし、途中でガングリオンが大きくなって痛みが出る、不快感から生活に支障が出るなどの場合は、他の治療法を検討します。 穿刺吸引|短期的にしこりを除去 穿刺吸引は、注射器でガングリオンの中身を吸い取る方法です。 医療機関によっては、吸引後にステロイド薬やヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)を注入し、治療効果を高める工夫をする場合もあります。(文献5) どの治療法にも再発リスクはありますが、穿刺による治療は手術よりも再発率が高い傾向にあります。 部位ごとの再発率は以下のとおりです。 手関節背側:60〜87% 手関節掌側:57〜83% 掌側靱帯性:約30% また、背側・掌側を合わせた手関節のガングリオン全体で、穿刺の再発率は59%(47~70%)という報告もあります。 再発を繰り返す場合は、次に解説する手術も検討しましょう。 手術|根治・再発防止が目的 手術は、液体がたまる袋そのものを、根元の部分といっしょに取り除く方法です。(文献1) 再発を繰り返す場合や、痛みが強く日常生活に支障がある場合などに検討されます。 ただし、保存療法よりも頻度は低いものの、手術をしても再発リスクは残ります。また、神経や血管の損傷、傷跡が残るリスクもあります。(文献5) 保存療法と手術のどちらが適しているかは、症状や生活への影響を踏まえ、医師とよく相談して決めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ガングリオンで気になる点がある方は、ぜひお気軽にご登録ください。 なお、ガングリオンの手術については、以下の記事で詳しく紹介しています。 【何科?】ガングリオンを疑う際の受診科目 ガングリオンが疑われる場合、基本的な受診科は整形外科です。 診察では、注射器でしこりの中身を採取し、ゼリー状であればガングリオンと診断されます。外側から触れにくい小さなガングリオンの場合は、超音波検査やMRI検査を行うこともあります。(文献1) ただし、痛みはなく、見た目だけが気になる場合には、皮膚科や形成外科で対応できるケースも少なくありません。 受診先に迷う場合は、医療機関に電話で症状を伝え、診察可能かを確認すると良いでしょう。 ガングリオンが痛いときの対処法 ガングリオンが痛む場合、しこりが神経の近くにできており、神経を圧迫している可能性が考えられます。 症状の程度に応じて、次のように対応しましょう。 症状の程度 対応 痛みやしびれが軽く、腫れがない場合 安静にして様子をみる 初めてできた場合や痛み・腫れが強い場合 早めに医療機関を受診する なお、しこりが大きくなったり痛みが悪化したりする可能性もあるため、ガングリオンがある部分に負担をかけないことも大切です。 ガングリオンが痛いときの対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。 当院「リペアセルクリニック」では、神経損傷に対して再生医療を提供しております。ご興味のある方は、公式LINEへぜひご登録ください。 ガングリオンと悪性腫瘍との見分け方 ガングリオンと悪性腫瘍はどちらも「しこり」ができるという共通点がありますが、特徴には違いがあります。 ガングリオン 悪性腫瘍 硬さ やわらかく弾力があることが多い 硬くてゴツゴツしている 痛み 痛みが無いケースもあるが、神経を圧迫すると痛みが出る 初期は痛みが無いケースもあるが、進行すると痛みが出るケースが多い 大きさの変化 小さくなったり消えたりすることがある 徐々に大きくなる傾向がある ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、見た目や触った感触だけで判断するのは危険です。しこりがある場合は、必ず医療機関を受診して確認しましょう。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方については、以下の記事で詳しく紹介しています。 手足の痛みや違和感はガングリオンを疑い早めの受診を心がけよう 手足の関節や腱の周囲にできたしこりは、ガングリオンかもしれません。基本的には良性のできものであるため過度な心配は必要ありませんが、大きさやできた場所によっては神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすこともあります。 気になる症状がある場合は、早めに受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、再生医療を行う医療機関です。公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。将来的なリスクを減らしたい方や、より詳しい知識を身につけたい方は、公式LINEもぜひご登録ください。 ガングリオンに関するよくある質問 ガングリオンは潰すと治るって本当? 実際、医療機関ではガングリオンをつぶす治療が行われることもあります。(文献1) ただし、炎症が悪化したり、皮膚に傷ができて感染を引き起こしたりする可能性があるため、自己判断で潰すのは避けてください。 ガングリオンは急にできるの? ガングリオンは以下の流れで形成されるため、大きくなるには一定の時間がかかるケースが一般的です。(文献4) 関節にかかるストレスで滑液が漏れ出す 漏れた液が袋状にたまり、少しずつ大きくなる ただし、初期は痛みや違和感がほとんどなく、気づかないケースが少なくありません。そのため、見た目では「急にできた」と感じても、実際は徐々に形成されていた可能性が高いと考えられます。 スマホが原因でガングリオンができることはある? スマホの使用が直接ガングリオンの原因になるかどうかは、現時点では明らかになっていません。 ガングリオンの原因そのものがまだ解明されておらず、スマホとの直接的な関係も確認されていないのが現状です。 ただし、長時間のスマホ操作は手首や指の関節・腱に負担をかけ、痛みや不快感などを引き起こす可能性があります。関節への負担を減らすためにも、スマホの使いすぎは控え、こまめに手を休ませることが大切です。 参考文献 文献1 ガングリオン|日本整形外科学会 文献2 軟部腫瘍|日本整形外科学会 文献3 ガングリオン|日本手外科学会 文献4 Ganglion Cyst|National Library of Medicine 文献5 形成外科診療ガイドライン2021年度版|日本形成外科学会
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「手首の親指側が痛いけど、これって腱鞘炎?」 「ドケルバン病って聞いたけど、どんな病気?」 「病院に行くべきか迷っている……」 このような疑問や不安をお持ちではありませんか。 手首や親指の痛みが続いていても、原因や病名が分からず、どう対処すれば良いか迷ってしまう方も多いかもしれません。 ドケルバン病とは、親指を動かす腱が炎症を起こす腱鞘炎の一種で、産後の女性やデスクワークの方に多くみられます。 本記事では、ドケルバン病の症状や原因、セルフチェック方法、治療・再発予防まで、やさしく解説します。 不安な気持ちを少しでも和らげるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ドケルバン病をはじめ、日々の違和感やお悩みがある方は、お気軽に公式LINEにご相談ください。 ドケルバン病は手首の親指側に生じる腱鞘炎 ドケルバン病は、手首の親指側にある腱鞘というトンネル部分が狭くなり、中を通る腱がこすれて炎症を起こす病気です。腱鞘炎の一種で、親指の使い過ぎやホルモンバランスの影響によって起こります。 ドケルバン病になりやすい人の特徴 ドケルバン病になりやすい人は、以下のとおりです。 産後・授乳中の女性 更年期の女性 育児や家事で手首を酷使している人 デスクワーク中心でパソコンやスマホをよく使う人 とくに20〜30代と50代の女性に発症が多く、女性ホルモンの変化も関係しているといわれています。(文献1) さらに詳しく知りたい方は、こちらでドケルバン病と腱鞘炎の違いや重症度についても解説しているためご覧ください。 ドケルバン病の症状 親指を動かした際に手首の親指側に痛みが出てきたら、ドケルバン病の可能性があります。 典型的な症状の特徴 代表的な症状は、以下のようなものです。(文献1),(文献2) 親指の付け根〜手首の親指側が痛む 親指を動かすと痛みが増す 腫れを伴うことがある 握る・つまむなどの動作で力が入りにくい 心当たりのある方は医療機関の受診を検討しましょう。 悪化すると日常生活に影響も 痛みを我慢して親指や手首を使い続けていると、日常のさまざまな動作がつらくなってきます。 たとえば、赤ちゃんを抱っこするだけで手首にズキッと痛みが走ったり、ボタンを留めるなど細かな作業が思うようにできなくなったりする可能性があるのです。 また、スマートフォンを持つ手がつらく感じることもあれば、パソコン作業のたびにストレスを感じるようになる方もいます。 こうした状態を放置すると、関節の動きが悪化したり、最悪の場合は腱が切れたりする恐れがあります。違和感を覚えた時点での早めの対応が大切です。(文献3) スマホが原因の腱鞘炎についてはこちらで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 ドケルバン病の原因 ドケルバン病では、親指を動かす2本の腱(短母指伸筋腱・長母指外転筋腱)が、腱鞘(けんしょう)と呼ばれるトンネル内でこすれ合い、炎症を引き起こします。 主な原因は、次のとおりです。(文献2) 原因 具体例 親指や手首の使いすぎ 家事 育児(赤ちゃんの抱っこや授乳) 過度なスマホ操作 パソコンの長時間使用 ピアノの練習 スポーツ ホルモンバランスの変化 妊娠・出産後のホルモン変化 更年期によるホルモン変化 かつては仕事によるパソコンの長時間使用やピアノの練習などで発症する例も多く、「職業病」と呼ばれることもありました。 原因によっては、長期間その動作をやめるのは難しい場合もあるでしょう。 その場合は、使い方の工夫や適切なケアを取り入れながら症状の悪化を防ぐことが大切です。 パソコン作業や楽器演奏による腱鞘炎についてはこちらも参考にしてください。 【関連記事】 パソコン腱鞘炎の症状とは?原因や治し方・予防法も徹底解説! ピアノ腱鞘炎の症状チェック|原因から治療法・予防まで詳しく解説 ドケルバン病の検査・診断 ドケルバン病は、整形外科での診察や問診に加え、痛みの出方を確認するいくつかのテストで診断されます。 代表的なのは、親指を内側に折り込んで手首を小指側に倒す「フィンケルシュタインテスト」や、親指を握り込んでから手首を小指側に曲げる「アイヒホッフテスト」です。 さらに、必要に応じて超音波検査やレントゲンなどの画像検査をしてほかの病気が隠れていないか、併発していないかを確認します。 腱鞘炎の種類と症状については、こちらでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 ドケルバン病の治療法 ドケルバン病の治療は、症状の段階によって選択肢が変わってきます。 保存療法|安静・湿布・装具 まずは手首の安静が基本です。 症状に合わせて、以下のような方法が行われます。 湿布や消炎剤で炎症を抑える 温熱やレーザー治療 シーネや装具による固定 症状が軽い段階なら、これだけでも改善するケースがあります。(文献2) 薬物療法・注射|痛み止めやステロイド注射 炎症が強いときや保存療法で効果がみられない場合の治療は、以下のような薬物療法です。 ステロイド注射 局所麻酔薬の注入 注射で痛みが改善する人もいますが、原因を取り除けていなければ再発する可能性があります。 さらに、ステロイド注射は、何度も繰り返すと感染を起こしたり腱の断裂を引き起こしたりすることもあるため、慎重な治療が必要です。(文献1) 手術療法|腱鞘切開術 保存療法や注射をしても症状が改善しない場合には、腱鞘を切開して腱の通り道を広げる手術が検討されます。(文献2) 多くの場合は日帰りでの対応が可能ですが、親指の近くには大切な知覚神経が走っており、腱の構造にも個人差があるため、経験豊富な医師による手術が望まれます。(文献1) 手術後は当日から手を動かすことが可能です。 ただし、ガーゼ交換の必要や傷を濡らさないなどの注意点があるため、医師の指示に従い段階的に日常生活に戻っていく必要があります。 ドケルバン病のセルフチェック方法【自宅でできる】 手首や親指の痛みが「ドケルバン病かもしれない」と感じたときは、簡単なセルフチェックで目安を知ることが可能です。 以下のテストはいずれも痛みの有無を確認する方法で、自宅でも行いやすいのが特徴です。 また、ドケルバン病のセルフケアについては、こちらの記事に詳しく書かれています。セルフチェックで気になった方はぜひ参考にしてください。 フィンケルシュタインテスト フィンケルシュタインテストは、ドケルバン病の代表的な診断方法のひとつです。 痛みのある手の親指を反対の手で軽く握ります。 その状態で、握った親指を小指側へ引っ張る動作を加えたときに、親指側の手首に鋭い痛みが出る場合は、ドケルバン病が疑われます。(文献2) 痛みが強く出る可能性があるため、親指の力を抜き、ゆっくりと無理のない範囲で行うようにしましょう。 アイヒホッフテスト フィンケルシュタインテストと似ていますが、アイヒホッフテストでは、親指を手の中に入れてグーの形をつくったあと、自力でゆっくりと手首を小指側に倒していきます。 この動作で強い痛みが出た場合も、ドケルバン病が疑われます。 また、医師の間では、フィンケルシュタインテストの「変法」として扱われることもあります。(文献2) 岩原・野末のサイン 岩原・野末のサインは、日本整形外科学会がドケルバン病のセルフチェック法として紹介している方法です。 手首を内側に直角に曲げた状態で、親指を外側にまっすぐ伸ばしたとき、親指の付け根や手首の母指側に痛みや違和感が出るかを確認します。(文献2) 圧痛(押したときの痛み)や腫れがあるかどうかも、あわせて観察すると良いでしょう。 ドケルバン病の悪化を防ぐには早期対処と予防が大切 ドケルバン病は、放っておくと慢性化しやすいため、症状を感じた段階での早めの対処と、日常的な予防が大切です。 ドケルバン病対策のストレッチ 予防や再発防止のために効果的なのが、手首や親指のストレッチです。 無理のない範囲でゆっくりと伸ばすことで、症状の改善や悪化の予防が期待できます。 家事や仕事の合間にこまめにストレッチを心がけましょう。 痛みを感じる動きは避け、心地よく伸びる範囲で行うことがポイントです。 おすすめの方法はこちらで詳しく紹介しています。 ドケルバン病を予防する生活習慣 普段の生活の中で、手首や親指を酷使しすぎないことも大切です。 長時間同じ作業を続けないよう、こまめに休憩を挟みましょう。 スマートフォンやパソコンを使う際は、姿勢や手首の角度にも注意し、できるだけ負担が少なくなるよう意識してみてください。 これらの対策を意識しても痛みが続く、あるいは悪化しているように感じる場合は、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。 ドケルバン病と似た症状の病気には、関節リウマチや感染性腱鞘炎など、進行すると関節や腱に大きな障害を残すものも含まれます。 正しい診断と早期の適切な治療が大切なため、「腱鞘炎かも?」と感じた時点で専門医に相談することをおすすめします。 更年期と関節痛の関係が気になる方はこちらもあわせてご覧ください。 ドケルバン病の改善を目指すなら早めに医療機関を受診しよう ドケルバン病は、育児やデスクワークなど、手首や親指を酷使する日常のなかで起こりやすい腱鞘炎のひとつです。 放っておくと症状が悪化し、日常動作に支障をきたすおそれもあります。 親指の付け根や手首に痛みや違和感があるときは、早めに整形外科など専門の医療機関を受診しましょう。 手首の痛みがほかの原因かも、と思った方は、以下の記事も参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ドケルバン病について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ドケルバン病に関するよくある質問 ドケルバン病はサポーターやテーピングで治せますか? サポーターやテーピングで親指や手首を固定すると、動かす回数が減り、痛みの軽減につながることがあります。 とくに症状が軽い場合は、自宅でのケアとして有効な方法です。 ただし、こうした対処はあくまで一時的なものであり、根本的な治療にはなりません。 痛みが続いたり、悪化したりしているときは、医療機関で診察を受けることが大切です。 また、症状が改善したあとも、すぐに育児や家事などで親指を酷使すると、再発しやすくなるので注意しましょう。 とくに出産直後の女性に多いドケルバン病は、授乳期が終わると自然に軽くなることもあります。(文献1) 必要に応じて、授乳スタイルや抱っこの方法を見直すのもひとつの方法です。 ドケルバン病はどれくらいで治るの? 治り方には個人差がありますが、一般的には安静や湿布、痛み止めなどの保存療法を続けることで、数週間〜数カ月ほどで症状が落ち着くことが多いとされています。 こうした保存療法で十分な効果が得られないときには、ステロイド注射が選択肢に入ります。 注射後は1週間ほどで痛みが半減するケースも少なくありません。 ただし、保存療法で改善しない場合や再発を繰り返す場合には、手術を検討する必要があります。 手術後は数週間で日常生活に復帰できるケースが多いものの、回復スピードには個人差があるため、無理のないペースでの復帰が大切です。 参考文献 (文献1) 狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)|一般社団法人日本臨床整形外科学会 (文献2) 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」|公益社団法人日本整形外科学会 (文献3) 健康一口メモ~腱鞘炎の予防・対策について~|公益社団法人三重県健康管理事業センター
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
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「指が引っかかる感じがする」 「朝、手を握ろうとすると動かしにくい」 「ばね指って放っておいても大丈夫?」 そんな不安や疑問をお持ちではありませんか? ばね指とは、指を動かす腱とその通り道(腱鞘)で炎症が起こり、スムーズに指を動かせなくなる状態です。 進行すると、指が曲がったまま動かなくなることもあるため、早めの対処が大切です。 本記事では、ばね指の症状や原因、医療機関での治療方法、自分でできる予防ケアまでわかりやすく解説します。 症状に不安を感じている方が、安心して向き合えるきっかけになれば幸いです。 ばね指が心配だけど、すぐに受診するほどではない……という方も、LINEで気軽に情報を受け取れます。 ばね指について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ばね指とは「腱鞘炎の一種」 ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に使われる腱と、その通り道である腱鞘との間に炎症が起こることで、スムーズな動きができなくなる状態です。 腱は筋肉の力を骨に伝える「ひも」のような組織で、腱鞘はそれを包んで滑らかに動かすためのトンネルの役割を担っています。 この腱鞘に炎症が起こり、腱の通り道が狭くなると、引っかかるような動きや痛みが現れるのです。 指が「カクッ」とばねのように弾かれる動きから「ばね指(弾発指)」と呼ばれています。(文献1) ほかの腱鞘炎のことも詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 ばね指の症状 指がどんなふうに変化するのか、代表的な症状をチェックしておきましょう。 <代表的な症状の特徴> 指の付け根に起こる痛み、腫れ、熱っぽさ 朝方のこわばり(起床時に動かしづらい) 指を動かしたときの引っかかり感 「カクン」とばねのような弾かれ感 指が曲がった位置で動かなくなる どの指にも起こりますが、とくに多く見られるのは親指と中指です。(文献1),(文献2) 朝方の指のこわばりが気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。 ばね指を引き起こす原因 ばね指は、次の原因が関与して起こると考えられています。 指や手の酷使による腱の炎症 女性ホルモンの変化 糖尿病や関節リウマチなどの疾患 順番に解説します。 指や手の酷使による腱の炎症 ばね指の主な原因のひとつが、指や手を繰り返し使うことによる負担です。 パソコン作業やスマホ操作、料理、楽器の演奏など、同じ動きを続けることが多い人は、腱と腱鞘の間で摩擦が起こりやすくなるのです。 この摩擦が炎症を引き起こし、腱の動きがスムーズでなくなることが、ばね指の症状につながります。(文献1) 女性ホルモンの変化 女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」は、関節や腱のまわりの状態を保つ役割があります。更年期や産後の授乳期は、このエストロゲンが短期間で大きく変化する時期です。 血中のエストロゲンが低下すると、腱や腱鞘の状態を健康に保てなくなり、炎症(腱鞘炎)が起こりやすくなります。この腱鞘炎が進行すると「ばね指」が発症することがあるのです。(文献3) 加えて、ビタミンB群やビタミンDは、筋肉や関節、腱の健康維持に関わる栄養素です。不足すると、腱や関節のはたらきに影響し、指や手のトラブルが起こりやすくなる可能性があります。(文献4) 糖尿病や関節リウマチなどの疾患 糖尿病や関節リウマチなどの病気も、以下の理由でばね指の原因のひとつです。 (文献5)(文献6) 糖尿病:高血糖により腱・腱鞘が厚くなる変化が起こり、腱の動きが妨げられる可能性がある 関節リウマチ:腱鞘の滑膜成分が炎症に関与している可能性があり、腱鞘炎が高頻度に見られる この結果、腱鞘内での摩擦や炎症が起こりやすくなり、どちらの病気でもばね指の発症リスクが高まるといわれています。透析中の方も注意が必要です。(文献1) ばね指の診断方法 病院において、医師はまず問診と触診で、痛みや引っかかりのある場所を確認します。 腫れや圧痛(押すと痛い場所)、「カクッ」という動作の有無がポイントです。(文献1) 必要に応じて、レントゲンやCTなどの画像検査が行われることもあります。 ばね指の治療法 症状の程度に応じて、治療の選択肢は大きく3つに分かれます。 保存療法|安静・サポーター・薬物療法 まずは安静を保ち、炎症を抑える治療が基本です。 具体的には以下の方法があります。 シーネ(添え木)で固定する 痛み止めを使う ステロイド注射をする 注射によって3カ月以上症状が改善することもありますが、再発の可能性もあるため経過観察が必要です。(文献1) 腱鞘炎の注射治療について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 手術療法|腱鞘切開術 保存療法でよくならない場合や再発を繰り返す場合は、腱鞘の一部を切開する手術(腱鞘切開術)が行われます。(文献1) 局所麻酔で対応可能な日帰り手術が一般的です。 再生医療|幹細胞治療・PRP療法 また、腱鞘炎の治療で近年注目されているのが、体の組織や細胞に着目した再生医療です。 リペアセルクリニックでも、以下のような治療をおこなっています。 幹細胞治療:自身から採取した幹細胞を外部で増殖させ、身体に戻す治療法 PRP療法:自身の血液から血小板を抽出して活用する治療法 ただし、保険適用外(自由診療)となるため、費用や治療内容について医師とよく相談することが大切です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報を発信しています。ばね指の治療でお悩みの方は、ぜひ登録してみてください。 ばね指を悪化させる「やってはいけないこと」 間違ったケアや行動が、かえってばね指の症状を長引かせることもあります。 次のような行動には注意しましょう。 やってはいけないこと 理由 痛みがあるのに無理に動かす 炎症が悪化し、腱や腱鞘の損傷が進行する可能性がある 指を長時間使い続ける 休まず使うと、腱の回復が追いつかず慢性化しやすくなる 強く揉む・自己流のマッサージ 痛みのある部分を強く押すと、さらに腫れや痛みが悪化することもある 「何が悪化につながるか詳しく知りたい」という方はこちらの記事もあわせてご覧ください。 ばね指の予防に役立つセルフケア方法 ばね指を未然に防ぐための工夫や習慣も大切です。 手を使う作業の前後にストレッチする 作業の前後に手首や指を軽く伸ばすことで、腱の滑りが保たれ炎症予防につながります。 手のひらを上に向けて腕を伸ばし、もう片方の手で指先をそっと上に引く指のストレッチや、親指の腱鞘を伸ばす運動がおすすめです。 痛みのない範囲で行いましょう。 写真付きの詳しいストレッチ方法を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 キーボードやスマホ操作の際は休憩を挟む 料理やパソコン作業など、手を使う作業を長く続けると、腱に負担がかかります。 こまめに休憩を取りながら作業しましょう。 また、スマホを片手で操作しているならば両手で操作する、持ちやすいペンに変えてみる、といった工夫も大切です。 冷えを防ぎ、指先の血流を保つ 冷えは血流を悪くし、腱の柔軟性が失われる原因となり得ます。 気になる場合は、手袋やカイロなどで保温するのもひとつの方法です。 ただし、炎症が強く出ているときは冷やすほうが良い場合もあります。 状況に応じて温冷を使い分けましょう。 ばね指の長引く症状は医療機関を受診して改善させよう ばね指は、手の使いすぎだけでなく、ホルモンバランスの変化や持病など、複数の要因が関係しています。 原因によって最適な治療法も異なるため、正確な診断が大切です。 指の動きに違和感がある、痛みや引っかかりが続くといったときは、迷わず整形外科などの専門医に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」は再生医療専門クリニックです。公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ばね指について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ばね指に関するよくある質問 ばね指は自分で治すことができますか? 症状が軽い場合は、安静によって改善することもあります。 ただし、痛みが長引いたり、症状が強くなってきたりしたら受診が必要です。 悪化すると手術が必要なケースもあるため、早めに医師に相談しましょう。(文献1) ばね指の原因で女性によくあるものは何ですか? 女性におけるばね指の原因のひとつは、更年期や妊娠・出産などの女性ホルモンの変化により、腱の柔軟性が低下することです。 また、女性に多い指に負担のかかる動作として、以下のような要因も考えられます。 赤ちゃんの抱っこ 授乳や哺乳瓶の保持 子どもを抱き上げる動作 料理や洗濯などの家事 また、事務職・看護師・保育士・美容師などの仕事で手先を酷使することも、ばね指の原因のひとつです。 治療には原因となる負担を減らすことが欠かせませんが、仕事や家事・育児を完全に休むのは難しいものです。 そのため、こまめに休憩を入れたり、周囲の人に協力をお願いしたりして、できるだけ手を休ませる工夫をしましょう。 参考文献 (文献1) 「ばね指(弾発指)」|公益社団法人日本整形外科学会 (文献2) ばね指|MSDマニュアル家庭版 (文献3) Hands and Fingers Disorder as a Women’s Disease- Why My Hands and Fingers Hurt or Grow Numb|Clinics in surgery (文献4) Exploring the impact of vitamin D on tendon health: a comprehensive review|J Basic Clin Physiol Pharmacol (文献5) Hands in people with diabetes more often affected by trigger finger|LUND UNIVERSITY (文献6) Tenosynovitis|StatPearls
2025.08.31 -
- ヘバーデン結節
- 手部
「最近、指の第一関節が腫れて痛む」 「関節がこぶのように盛り上がってきた」 このような違和感を覚えている方は、へバーデン結節と呼ばれる病気かもしれません。 へバーデン結節は、指の第一関節に起こる変形性関節症の一種で、加齢にともない有病率が高くなると言われています。 放置すると関節が変形し、痛みが出たり握力が低下したりと、日常動作への支障が出ることも少なくありません。 本記事では、へバーデン結節の原因や症状、受診すべき診療科、治療方法などを医師の知見を交えながら解説します。 「まだ病院に行くほどではないけれど、指の違和感が気になる」「手術は避けたい」などの方は、ぜひ最後までお読みください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 へバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 へバーデン結節とは へバーデン結節は、指の第一関節に生じる変形性関節症です。(文献1) 関節の変形や痛みを引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。 親指にみられるケースもありますが、一般的には人差し指から小指にかけて発症する病気です。(文献1) 40歳代以降の女性に多く発生するとされており、70歳以降では50%以上に所見があるとした報告もあります。(文献1)(文献2) 一度発症すると、完全に元の状態に戻すことは難しい疾患ですが、適切な治療やセルフケアによる痛みの軽減や進行の抑制は可能です。指の違和感に気づいたら、早めに整形外科を受診して専門医に相談するのが重症化予防につながります。 へバーデン結節の主な症状 へバーデン結節では、以下のような症状があらわれます。(文献1) 第一関節の腫れ、赤み、痛み 関節の動きの制限 握力の低下 関節の背側の粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ:ミューカシスト) 痛みや変形が強くなると、洗濯バサミをつまむ、ボタンを留める、ペンを持つ、スマートフォンを操作するなど、日常の些細な動作に支障をきたすようになります。 ただし、関節の変形は個人差が大きく、強い変形が起こらないケースもあります。 なお、40代~50代の女性に起こる「更年期関節痛」の症状については、以下の記事も合わせてご覧ください。 へバーデン結節の原因 へバーデン結節の具体的な原因は、明らかになっていません。(文献1) 可能性がある因子として、以下が考えられています。(文献1)(文献3)(文献4) 加齢による関節軟骨の変性 ホルモンバランスの変化 手の使いすぎ 遺伝的要因(とくに母や祖母) 指の関節に違和感を覚えていて、実母や祖母にへバーデン結節の既往がある場合は、体質が似ている可能性があります。指の酷使は避けたほうが良いでしょう。 ホルモンバランスによる指の痛みについては、以下の記事で詳しく解説しています。 へバーデン結節は何科を受診する?|迷ったら整形外科へ へバーデン結節が疑われる場合の診療科は、基本的に整形外科です。 整形外科では、レントゲン検査で指の第一関節に以下の要素があるかを確認し、へバーデン結節かどうかを診断します。(文献1) 関節の隙間が狭くなっている 関節が壊れている 骨棘(こつきょく:骨の一部がトゲのように変形する状態)がある 関節リウマチといった他の疾患と見分けるために、血液検査や画像診断を併用した鑑別診断をおこなうケースもあります。症状が似ていても治療方針が異なることがあるため、自己判断せずに医師の診断を受けましょう。 また、痛みや炎症が慢性化している方は、ペインクリニックやリウマチ科と連携して治療を進める場合もあります。 手の外科医(手外科専門医)が在籍する整形外科では、より専門的で精度の高い診療が受けられるかもしれません。 へバーデン結節の治療法 へバーデン結節の治療は、一般的に保存療法が第一選択です。 具体的には、以下のような方法が中心です。(文献1) 安静・関節の保護:テーピングやサポーターで指関節の使いすぎを防ぐ 消炎鎮痛剤(痛み止め)・ステロイド注射:薬の力で痛みを抑える 場合によって、温熱療法や理学療法などの「物理療法」を、医師の指示の下におこなうことがあります。 安静や痛み止めの使用でも改善が見られないときは、関節の固定や結節を切除する手術療法が検討されます。 また、近年注目を集めているのは、「再生医療」です。 たとえば、再生医療のうち幹細胞治療は、自身の脂肪や骨髄などから抽出された幹細胞を注入する治療法です。 指の違和感や動かしにくさが気になる方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご活用ください。 再生医療に関する最新情報や、へバーデン結節の簡易オンライン診断をご利用いただけます。 ヘバーデン結節の治療法については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 へバーデン結節が疑われるときの注意点【やってはいけないことは?】 へバーデン結節が疑われる場合、症状の悪化を防ぐために避けるべき行動があります。 無意識にくり返していると、症状の進行を早める要因となり得るため、次のような動作に心当たりがある方は、早く見直してみましょう。 指先への過度な負荷 患部を温める行為 強いマッサージ 重いものの運搬 スマートフォン使用による指の動かしすぎ また、状態によっては医療機関で関節を温める治療を実施するケースはあるものの、痛みがあるときに自己判断でおこなうのは避けましょう。 違和感を覚えた段階で日常動作を見直し、指関節をいたわる習慣を身につけることが、重症化の予防につながります。 ヘバーデン結節でやってはいけないことについては、以下の記事もぜひお読みください。 へバーデン結節かもと感じたら早めに受診しよう へバーデン結節は、指の第一関節に痛みや変形が生じる進行性の疾患です。初期には軽い腫れや違和感から始まり、症状が進行すると日常の細かい動作や握力にまで影響を及ぼします。 一度発症すると、関節の変形を完全に元に戻すことは難しいため、早期の発見と適切な対処が重要です。 指の先の腫れや関節の小さなこぶなどの症状に心当たりがある方は、自己判断せずに整形外科を受診し、正確な診断を受けることをおすすめします。 また、症状の進行具合や生活への影響に応じては、保存療法だけでなく、幹細胞治療をはじめとする再生医療の選択肢もあります。 リペアセルクリニックでは公式LINEで再生医療の情報提供と、簡易オンライン診断を実施しております。 「再生医療に興味がある」「再生医療について詳しく知りたい」などの方は、公式LINEをご活用ください。 へバーデン結節に関するよくある質問 へバーデン結節とコーヒーは関係しますか? コーヒーの摂取が直接的にへバーデン結節の原因になるとした医学的根拠は確認されていません。 ただし、カフェインの過剰摂取は血流やホルモンバランスに影響を与えて症状を強くする可能性があるため、飲み過ぎには注意が必要です。 詳しくは、以下の記事も参考にしてください。 へバーデン結節とブシャール結節の違いは何ですか? 両者とも指の関節に起こる変形性関節症ですが、発症する部位が異なります。 へバーデン結節:第一関節に発症 ブシャール結節:第二関節に発症 症状や原因には共通点があるものの、関節の動きに与える影響や治療アプローチが異なるため、正確な診断と適切な対処が必要です。 詳細は以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。 ヘバーデン結節をほっとくとどうなるのでしょうか? へバーデン結節を放置してしまうと、関節の変形が進行し、痛みや可動域制限が強くなる可能性があります。 進行した場合は、手術を含む治療が必要になるケースもあるため、違和感を覚えた段階で整形外科の受診をおすすめします。 へバーデン結節に効果的なマッサージ方法はありますか? へバーデン結節に対して効果が科学的に証明されたマッサージ法は存在していません。 炎症がある時期に無理に指を動かしたり、強く揉んだりするのは症状の悪化につながる可能性があります。 手術後や炎症が落ち着いた時期には、医療機関で状況に応じてマッサージや可動域訓練を実施する場合がありますが、自己判断でおこなうのは危険です。 痛みが強いときは、関節を安静に保ち、保存療法を優先しましょう。 参考文献 文献1 へバーデン結節|日本整形外科学会 文献2 内科医が知っておきたい高齢者の整形外科疾患|中村洋 文献3 肩・肘・手の主な病気:へバーデン結節|東邦大学医療センター大橋病院 整形外科 文献4 Erosive osteoarthritis: a current review of a clinical challenge|PubMed
2025.08.31 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「視界にギザギザが突然現れて不安で仕方ない」 「視界のギザギザした見え方は治るのか知りたい」 閃輝暗点は片頭痛や眼精疲労の一種と誤解されがちですが、脳や眼の重大な疾患の前触れの場合もあります。したがって、原因を特定し、早期に適切な治療を受けることが重要です。 本記事では、閃輝暗点の治し方を現役医師が解説します。記事の最後には、閃輝暗点の治し方についてよくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 閃輝暗点の治し方について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 閃輝暗点の治し方 治し方 詳細 眼に対しての過度な刺激を避ける 明るい画面や強い光を避け静かな暗所で安静に休憩 原因・根本疾患の治療を行う 脳神経外科や眼科での検査・診断による根本疾患の特定と治療 生活習慣の見直しとバランスの良い食事 十分な睡眠・規則的な生活・ストレス軽減・ビタミンやミネラルを含む食事 閃輝暗点に対する薬や手術による根本的な治療法は、現代医学では確立されていません。多くは数分から30分ほどで自然に治まりますが、脳梗塞や脳血管系疾患、片頭痛などの重大な病気が原因となる場合があります。 症状を繰り返す、または長引く場合は、早期に脳神経外科や眼科で検査を受け、根本疾患を特定し治療することが重要です。 予防のためには、強い光や長時間の画面注視を避け、十分な睡眠、規則正しい生活、ストレスの軽減を心がけます。加えて、ビタミンやミネラルを含む栄養バランスの良い食事を取り、不摂生を避けることが有効です。生活習慣の改善は、閃輝暗点の軽減だけでなく、背景疾患の予防にもつながります。 閃輝暗点の見え方や初期症状・治療法についての詳細は、以下の記事をご覧ください。 【関連記事】 【医師監修】閃輝暗点の見え方について解説|片目だけ・初めての症状は危険? 【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説 眼に対しての過度な刺激を避ける 項目 詳細 発症直後の対応 明るい光や画面の刺激を避け、暗く静かな場所で安静 作業・運転中の対応 静かで刺激の少ない場所に移動し、視界が回復するまで再開を控える行動 水分補給 脱水防止のための十分な水分摂取 予防策 長時間の画面作業や強い光の回避、規則正しい生活、栄養バランスの整った食事 閃輝暗点が現れたら、強い光やスマートフォン・パソコンの画面から目を離し、暗く静かな場所で安静にしましょう。回復するまで作業や運転を控えることが重要です。 また、脱水は血流の悪化を招き、視覚異常を引き起こすことがあるため、こまめな水分補給が重要です。予防のためには、長時間の画面作業や強い光への曝露を控えるとともに、十分な睡眠、規則正しい生活、ビタミン・ミネラルを含むバランスの良い食事を心がけましょう。 原因・根本疾患の治療を行う 閃輝暗点を根本的に治す医学的治療法は確立されていません。再発予防の基本は、ストレスや睡眠不足、喫煙、アルコール、過剰なカフェイン摂取などの誘因を避けることです。多くは自然に消失しますが、適切な管理と予防が欠かせません。 片頭痛の前兆として多く見られますが、脳梗塞やTIA、脳腫瘍などの重大疾患が原因のこともあります。とくに頭痛を伴わない初発例、頻発・長時間持続、片眼のみの発症では、早期に脳神経内科または外科で精密検査を受ける必要があります。 原因が片頭痛の場合、β遮断薬やCGRP阻害薬などの予防薬で再発を減らせることがあります。 以下の記事では、閃輝暗点の根本疾患の治療にアプローチできる可能性のある再生医療について詳しく解説しています。 生活習慣の見直しとバランスの良い食事 項目 内容 睡眠リズムの整備 毎日同じ時間に起床・就寝し、6〜8時間の安定した睡眠時間の確保 ストレス軽減 入浴、軽い運動、深呼吸、ストレッチによる自律神経バランスの調整 水分補給 脱水予防のため、こまめな水分摂取 推奨栄養素(マグネシウム) 海藻類、大豆製品、玄米、ナッツ類の摂取 推奨栄養素(ビタミンB₂) レバー、青魚、卵、緑黄色野菜、乳製品の摂取 推奨献立例 玄米ご飯、納豆、みそ汁(海藻入り)、サバのみそ煮による栄養バランス実現 補助的栄養素 オーツ麦、濃色葉野菜、脂肪魚、ベリーの積極摂取 避けたい食品・食習慣 チョコレート、ピーナッツ、赤ワイン、カフェインの摂り過ぎ回避 空腹状態の回避 ナッツやヨーグルトで血糖値低下を防ぐ 規則正しい生活習慣と食事管理は、閃輝暗点の再発予防に重要です。毎日決まった時間に睡眠をとり、ストレスを溜め込まない工夫やこまめな水分摂取を日常に取り入れましょう。食事ではマグネシウムやビタミンB₂を意識し、和食中心の献立を心がけます。 オーツ麦や脂肪魚、ベリーなどもおすすめです。一方で、チョコレートやアルコール、カフェインの過剰摂取は誘因となることがあり、空腹の放置も避けましょう。症状が続く場合や頻発する際は、医療機関での相談が大切です。 以下の記事では、生活習慣の見直しについて詳しく解説しています。 閃輝暗点における即効性のある治し方は存在しない 現在の医学では、閃輝暗点そのものを即効で治す薬や特定の治療法は確立されていません。多くの場合、閃輝暗点は脳血管の一時的な変化により発生し、片頭痛の前兆として現れる視覚症状です。 症状は通常数分で自然に消失しますが、発症時は無理をせず、暗く静かな環境で安静にし、強い光やスマートフォンなどの画面から目を休ませることが大切です。 初めて起こった場合や頻繁に繰り返す場合は、重大な疾患が隠れている可能性もあるため、早期に医療機関を受診し、原因を明らかにすることが重要です。 閃輝暗点が治るツボはない 現在の医学では、閃輝暗点を即効で治す方法も、治るツボも存在しません。片頭痛の前兆として起こる視覚症状で、根本的な治療法も未確立です。 百会や風池、合谷などのツボ刺激による閃輝暗点への効果は、現在のところ医学的根拠はなく、症状が繰り返す場合や初発時は早期受診が重要です。 閃輝暗点が根本的に治る食べ物はないが予防にはなる 現時点では、閃輝暗点を即効で治す食べ物は確認されていません。マグネシウムやビタミンB₂を含む玄米、大豆製品、海藻、アーモンド、緑黄色野菜、乳製品などを日常的に摂取することで予防につながる可能性があります。 これらは発症時に症状を即座に改善するものではなく、バランスの良い食事と規則正しい生活習慣を組み合わせることが再発予防の基本です。 閃輝暗点が現れる重大な疾患 重大な疾患 詳細 脳血管疾患(脳梗塞・TIA・脳出血) 脳の血流障害による症状で、麻痺やしびれ、言語障害を伴うこともある。CTやMRIによる精密検査が必要。早期受診と治療が重大な後遺症防止につながる 眼由来の血管障害(網膜動脈閉塞・網膜症) 網膜の血管が閉塞・障害されることで、片眼の視野欠損や視力低下が起こる。眼科での検査と治療が必須。糖尿病など基礎疾患管理も重要 神経炎・視神経疾患(視神経炎・MS・腫瘍圧迫など) 視神経の炎症や脳の腫瘍圧迫が視野異常を引き起こす。神経内科や脳神経外科での診断と治療、場合によってはMRI検査が必要。症状によっては緊急対応が求められる 脳血管疾患(脳梗塞・TIA・脳出血)は脳の血流障害が原因で、麻痺やしびれ、言語障害を伴うことがあり、CTやMRIによる精密検査が不可欠です。早期の診断と治療が後遺症防止に直結します。 網膜動脈閉塞や網膜症などの眼由来の血管障害は、片眼の視野欠損や視力低下を招き、眼科での迅速な検査と治療、基礎疾患の管理が重要です。また、視神経炎や多発性硬化症、腫瘍圧迫などの神経疾患は視野異常を引き起こし、神経内科や脳神経外科での診断と必要に応じたMRI検査、緊急対応が求められます。 脳血管疾患(脳梗塞・TIA・脳出血) 閃輝暗点は、脳の血管が一時的に収縮・拡張して血流が低下することが原因です。とくに後頭部の視覚野の血流障害で、視界にギザギザやチカチカとした模様が現れます。これらの血管変化は、ストレスや疲労、睡眠不足、飲酒、喫煙、特定の食品などの生活習慣が影響します。 また、脳梗塞やTIA、脳出血などが原因で手足のしびれや麻痺、言語・意識障害を伴う場合があり、初発・頻発・長時間持続や他の神経症状を伴う際は早急な精密検査が必要です。 過去に脳梗塞を経験された方や、再発リスクが気になる方には、再発予防を目的とした治療法として再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 また、以下の記事では、脳疾患について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 閃輝暗点が脳梗塞の前兆になる確率は?症状や治療を解説 眼由来の血管障害(網膜動脈閉塞・網膜症) 網膜は眼の奥にあり、光を感知する精密な組織です。血流が障害されると視覚情報が正しく伝わらず、視野の欠損や光のちらつきなどが生じます。 網膜中心動脈閉塞では、血栓や塞栓により酸素供給が途絶え、突然の重い視力低下や視野暗黒化が起こります。一過性網膜虚血(アマウロシス・フガックス)では、数分間の血流途絶で一時的な視野欠損や光視症状が出現し、その後自然に回復します。糖尿病性網膜症や炎症性網膜血管障害でも、虚血や出血により視野異常が生じ、閃輝暗点に似た症状として現れることがあります。 これらの障害は片眼のみに症状が出やすく、脳由来の閃輝暗点とは区別が必要です。症状が疑われる場合は、眼底検査や視野検査を含む眼科的評価を早急に受けましょう。 以下の記事では、糖尿病網膜症について詳しく解説しています。 神経炎・視神経疾患(視神経炎・MS・腫瘍圧迫など) 視神経は網膜で受け取った光刺激を脳へ伝える重要な経路です。炎症・圧迫・脱髄などで障害されると、光のちらつきや視野異常など閃輝暗点に似た症状が生じます。視神経炎は代表的な原因です。 脳腫瘍や動脈瘤が視神経を圧迫すると同様の症状が生じ、前交通動脈瘤による圧迫が解除された後に症状が改善した報告もあります。これらは片頭痛による閃輝暗点とは異なり、器質的障害が原因となるため、眼科・神経内科での精密検査が必要です。 閃輝暗点を治すには原因の特定と受診が必須 閃輝暗点は症状だけで軽視すると、命に関わる病気を見逃す危険があります。発症が初めての場合、頻繁に起こる場合、または症状が長引く場合は、速やかに医療機関を受診し、必要に応じて脳MRIや眼底検査を受けましょう。早期診断が、根本的な治療と再発防止につながります。 閃輝暗点の治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、閃輝暗点が重篤な脳疾患の兆候である場合も考えられるため、症状や進行度によっては低侵襲な再生医療を提案いたします。初発・頻発・長期化する場合は早急な受診が必要です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 閃輝暗点の治し方に関するよくある質問 閃輝暗点が頻繁に起こる場合はどうすれば良いですか? 初回発症、頻発、症状の持続時間が長い、頭痛を伴わないなど、通常と異なるパターンの場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの重大な疾患を除外するために、MRIやCT検査が可能な医療機関を受診することが推奨されます。 原因となる疾患が進行している可能性もあるため、放置せず、早期に受診して精密検査を受けることが重要です。 以下の記事では、閃輝暗点について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説 閃輝暗点を繰り返すのは病気の前兆?頻発する原因と放置するリスクを紹介 閃輝暗点のセルフチェック方法はありますか? 閃輝暗点とは、視野に光のジグザグ模様や欠損が出現し、通常は数分で自然に消失する一過性の症状です。 症状の経過を記録することがセルフチェックの基本ですが、視野が大きく欠ける、長時間続くなど通常と異なる場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの重篤な疾患が隠れている可能性があります。確定診断は医師の検査が必要なため、不安があれば早めに受診しましょう。 閃輝暗点が片目だけに現れた場合の対処法はありますか? 片眼にのみ閃輝暗点が現れる場合は、網膜血管障害(網膜裂孔・虚血など)や脳血管障害が原因となる可能性があり、緊急性を伴います。放置せず、直ちに眼科または脳神経科を受診し、眼底検査などの精密検査を受けることが重要です。 閃輝暗点は何科を受診すれば良いですか? 閃輝暗点は脳の血流変化に関連することが多く、精密検査のため脳神経内科・脳神経外科(頭痛外来を含む)の受診が推奨されます。 初発、頭痛を伴わない、頻発、しびれや言語障害を伴う場合は脳疾患の除外が重要です。片眼のみの症状は眼疾患の可能性があるため眼科での眼底検査が適しています。受診先に迷う場合は総合診療科でも構いません。
2025.08.31 -
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「視界にギザギザやチカチカしたものが見える」 「網膜や脳の疾患ではないかと心配」 視界に異常が現れる閃輝暗点は、片頭痛の前兆として生じることが多い一方で、眼科的疾患や脳の疾患に伴って現れる場合もあります。放置すると重大な疾患の発見が遅れ、深刻な症状を招く恐れがあるため、速やかな受診が必要です。 本記事では、閃輝暗点の見え方や片目だけに現れる症状について現役医師が詳しく解説します。 閃輝暗点の原因が脳疾患で、その症状によっては、再生医療も治療の選択肢のひとつです。 閃輝暗点の症状に関するお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 閃輝暗点の見え方 見え方 詳細 ギザギザ・光の波動(点やジグザグ模様) 稲妻状やジグザグ模様がキラキラ輝きながら広がる視覚変化 モヤ・暗点(スコトーマ) 視野の一部がかすみ、文字や物の一部が欠けて見える状態 動き・揺れ・揺らぎ 光や模様が波打つように動き、視界全体に広がる現象 形やサイズの異常(歪み) 物の輪郭や文字が波打ち形や大きさが不自然に変わる視界異常 閃輝暗点では、視界にギザギザや光の波動、モヤや暗点、像の揺れ、形の歪みなどが現れることがあります。これらは片頭痛の前兆としてよくみられますが、眼や脳の疾患に伴う場合もあります。 片頭痛の前兆としての閃輝暗点は、多くの場合5分から60分ほど続き、その後に頭痛が始まります。(文献1) 時間の経過とともに閃輝暗点の症状が消えた場合も、繰り返す場合や初めて起こった場合は、早めに眼科や神経内科を受診することが大切です。 閃輝暗点の初期症状や治療法など、包括的な内容に関しては「【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説」をご覧ください。 ギザギザ・光の波動(点やジグザグ模様) 閃輝暗点でよくみられる典型的な症状は、視界の片隅に現れるギザギザした光の線や、チカチカと輝くジグザグ模様です。 白や銀色、虹色に見えることもあり、万華鏡のような複雑な模様を描きながら数分かけてゆっくりと広がり、やがて自然に消失します。脳の視覚野の神経細胞が一時的に過剰興奮することが原因と考えられています。 モヤ・暗点(スコトーマ) モヤ・暗点(スコトーマ)は、脳の視覚中枢である後頭葉(視覚野)の一部に一時的な血流低下が起こり、その領域の神経活動が低下することで生じます。これにより視野の一部がぼやける、または暗く欠けて見える状態になります。 原因は眼の異常ではなく脳の血流変化です。多くは数分かけて光の模様から暗点へ移行し、その後自然に回復します。ただし、症状が1時間以上続く場合、片目のみに生じる場合、強い頭痛、手足のしびれ、言語の障害、意識の低下を伴う場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作、網膜疾患などの可能性があり、速やかな受診が必要です。 動き・揺れ・揺らぎ 閃輝暗点でみられる動き・揺れ・揺らぎは、脳の後頭葉(視覚野)における神経活動が、血流の変動に伴って波のように広がる皮質拡散抑制により生じます。神経の興奮と抑制がゆっくりと伝わることで、視界の光や模様が揺れたり、動いたりして見えます。 血管の収縮と拡張により視覚情報が乱れ、波打つ感覚が生じます。初発時は軽症であっても、脳や眼科的疾患を除外するための受診が必要です。発症時の時間、片目のみか両目か、頭痛やしびれの有無などを記録しておくと診断に役立ちます。 形やサイズの異常(歪み) 閃輝暗点による形やサイズの異常(歪み)は、後頭葉の視覚野での一時的な血流低下が形や大きさの認識を乱すことで生じます。まっすぐな線が波打って見える、人の顔が変形して見えるといった現象も報告されています。 多くは10〜30分で自然に回復しますが、初発や強い症状、長引く場合、頭痛や手足のしびれを伴う場合は眼科または神経内科を受診し、他の脳や眼疾患の可能性にも注意が必要です。 片目だけに現れる閃輝暗点は危険? 状況 詳細 片目だけに症状が出る場合 網膜剥離、眼底出血、硝子体剥離、眼圧異常など眼科疾患の可能性 放置した場合のリスク 視力低下や失明に至る危険 通常の閃輝暗点の作用部位 脳の視覚野の血流変動による両目同時の視覚異常 受診の目安 片目だけの症状は速やかな眼科受診 神経症状を伴う場合 脳梗塞や一過性脳虚血発作など脳血管障害の可能性 緊急時対応 直ちに救急車を要請し、救急医療機関を受診 閃輝暗点は通常、脳の視覚野の血流変動により両目に同じ像が見えますが、片目だけの場合は網膜剥離や眼底出血などの眼科疾患が疑われます。 放置すると視力低下や失明の危険があるため、速やかな眼科受診が必要です。視力低下や視野欠損、激しい頭痛、しびれ、言語障害を伴う場合は脳血管障害の可能性があり、直ちに救急要請が必要です。 閃輝暗点が現れる原因 原因 詳細 血管変動・圧の刺激(脳・眼) 脳や眼の血管の一時的な収縮・拡張による血流の変化 神経伝達物質・自律系の反応 セロトニンなど神経伝達物質の急激な増減と自律神経の影響 生活習慣・嗜好品の影響 ストレス、睡眠不足、カフェインやアルコールの摂取、喫煙などの誘因 脳の構造異常・基礎疾患 脳腫瘍、脳梗塞、一過性脳虚血発作などの重大な脳疾患の可能性 閃輝暗点は片頭痛の前兆として知られていますが、原因は複数あります。代表的なのは、脳や眼の血管が一時的に収縮・拡張して血流が変化し、視覚情報を処理する神経の働きに影響を及ぼす場合です。 セロトニンなどの神経伝達物質の急激な増減や自律神経の反応も関与します。さらに、ストレス、睡眠不足、カフェインやアルコールの摂取、喫煙などの生活習慣や嗜好品が誘因となることもあります。まれに脳腫瘍や脳梗塞など重大な疾患が原因となる場合もあり、注意が必要です。 以下の記事では、閃輝暗点の原因を詳しく解説しています。 【関連記事】 更年期と閃輝暗点の関係性|原因・症状・予防法を解説 閃輝暗点を繰り返すのは病気の前兆?頻発する原因と放置するリスクを紹介 血管変動・圧の刺激(脳・眼) 閃輝暗点は、脳の血管が一時的に収縮と拡張を繰り返し、その結果、血流が変化することで起こると考えられています。 とくに視覚情報を処理する後頭葉の血管が影響を受けやすく、収縮により血流が減少すると神経細胞の働きが低下し、続く拡張で血流が急増すると過剰な興奮が生じます。この神経活動の変化が視覚異常として現れます。気圧の変化や疲労、ストレスなどが発症の引き金になる場合もあります。 以下の記事では、閃輝暗点と関係する脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 閃輝暗点が脳梗塞の前兆になる確率は?症状や治療を解説 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 神経伝達物質・自律系の反応 原因 詳細 神経伝達物質の変動 セロトニンの急激な増減による脳血管の収縮・拡張 自律神経のバランス乱れ ストレスや疲労、睡眠不足が引き起こす自律神経の機能不全と血管反応の過敏化 脳視覚野への影響 血流変化と神経活動変動による視界のキラキラ・揺らぎ、閃輝暗点の出現 生活習慣の影響 体調管理不良が神経伝達物質や自律神経の乱れを悪化させる要因 注意点 健康な人にも起こる生理的反応であり、症状の強さや片目だけの場合に注意が必要 閃輝暗点は、脳内の神経伝達物質の変動が原因のひとつです。とくにセロトニンが急激に増減すると脳血管が一時的に収縮・拡張し、血流変化が視覚野の神経活動に影響して光や模様が見えます。 自律神経もストレスや疲労、睡眠不足でバランスを崩すと血管反応が過敏になり、症状を悪化させます。健康な人にも起こりますが、初発時や片目だけの症状、強い症状時は受診が必要です。また、生活習慣の改善が再発予防に有効とされています。 生活習慣・嗜好品の影響 原因 詳細 睡眠不足・不規則な生活 自律神経の乱れによる脳血管の過剰な収縮・拡張 過度なストレス・疲労 神経や血管反応の不安定化 嗜好品(カフェイン・アルコール) 血管刺激による収縮・拡張の誘発 食品成分(チラミン) 脳血管収縮を促すアミノ酸由来成分の作用 過度なデジタル機器使用 眼精疲労と自律神経負荷による血流変化 予防のための生活習慣 規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事、水分摂取 閃輝暗点は、睡眠不足や生活リズムの乱れ、ストレスや疲労により自律神経が乱れ、脳や眼の血管反応と視覚野の血流が不安定になることで生じます。 チョコレートやチーズ、赤ワイン、コーヒーなどの成分や長時間のデジタル機器使用は血管や自律神経に影響し、発症を促す可能性があります。そのため、規則正しい生活習慣の維持が重要です。 以下の記事では、閃輝暗点とカフェインの関係性について詳しく解説しています。 脳の構造異常・基礎疾患 原因・疾患名 詳細 脳腫瘍(例:星細胞腫) 後頭葉への腫瘍による神経圧迫や刺激による視覚前兆の発生 脳血管奇形(例:AVM) 異常血管構造による血流異常と神経刺激による繰り返す視覚前兆やけいれん 脳梗塞・一過性脳虚血発作 脳血管の閉塞や血流障害による視覚野の虚血状態と神経機能障害 視覚野の血流障害(圧迫・浮腫) 腫瘍や血管異常による血流障害(虚血)による視覚情報の伝達異常 てんかん発作 後頭部の神経異常興奮による視覚発作と閃輝暗点類似の症状 閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として一時的な血流変化で起こりますが、脳の構造異常や基礎疾患が原因となることもあります。後頭葉の腫瘍は異常な血流により、視覚前兆やけいれんを引き起こします。 腫瘍による圧迫や浮腫は一時的な虚血状態を引き起こし、後頭部のてんかん発作も類似の視覚症状を示します。これらは重大な脳疾患の兆候であり、症状が持続・悪化する場合や頭痛・麻痺を伴う場合は、早急な検査が必要です。 脳膿瘍の手術で起こりうる後遺症について、詳しく解説している以下の記事もあわせてお読みください。 閃輝暗点の症状が初めて現れた際の対処法 対処法 詳細 静かな暗所で安静にする 明かりや音を避け、刺激の少ない場所で横になる状態 症状の持続時間と変化を観察する 発症時刻、症状の変化、関連する随伴症状の記録 重症兆候があればすぐに医療機関へ 視力低下、視野欠損、強い頭痛、めまいなどの出現 運動・言語障害が出たら緊急対応 手足のしびれや麻痺、言葉が出にくい、ろれつの回らない状態 閃輝暗点が初めて現れた場合、その多くは片頭痛の前兆として一過性に生じますが、まれに脳や眼の重大な疾患が原因となることがあります。そのため、症状が出た際には落ち着いて行動することが重要です。 まずは静かな暗所で安静にし、光や音などの刺激を避けます。同時に、発症時刻や症状の変化、頭痛やしびれなどの随伴症状を記録しておくことが、診断の大きな手がかりになります。 視力低下や強い頭痛、視野欠損、めまいがあれば速やかに受診し、手足の麻痺や言語障害を伴う場合は脳血管障害の可能性があるため、直ちに救急要請が必要です。 以下の記事では、閃輝暗点の内容について詳しく解説しています。 静かな暗所で安静にする 閃輝暗点は脳の視覚野や眼の血流変化で起こり、発症直後は暗く静かな場所で安静にすることが有効です。刺激を避けて休むことで症状が落ち着きやすく、この方法は初期対応として推奨されています。 初めての発症や片目のみ、視野欠損やしびれを伴う場合は速やかに受診し、改善後も眼科または神経内科で原因の確認が必要です。 症状の持続時間と変化を観察する 閃輝暗点は通常、数分で自然に消失します。持続時間や症状の変化を観察することは診断に重要です。症状が長引く場合や暗点が明瞭で、かつ視野欠損が強い場合は、脳梗塞など重大な疾患の可能性があるため速やかに受診します。 発症頻度の増加や症状の性質の変化も精密検査の対象となります。持続時間や変化を正確に記録し医師に伝えることで、原因特定と適切な治療につながります。 重症兆候があればすぐに医療機関へ 内容 詳細 視界異常が長時間続く 視野欠損や暗点が1時間以上持続する状態 片目だけに症状が出る場合 網膜剥離・眼底出血など眼科疾患の可能性 神経症状の出現 手足のしびれや麻痺、言語障害、意識低下 激しい頭痛や吐き気を伴う 脳出血・脳梗塞・くも膜下出血の可能性 初めての強い症状 既往のない重度発作や症状の急激な進行 閃輝暗点は多くは片頭痛の前兆として一過性に現れますが、脳梗塞、脳腫瘍、一過性脳虚血発作(TIA)、網膜剥離など命に関わる疾患の前触れとなることもあります。 視野欠損が続く場合や片目だけの症状、激しい頭痛や吐き気、麻痺、言語・意識障害を伴う場合は危険性が高く、速やかな受診が必要です。 運動・言語障害が出たら緊急対応 閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として現れる視覚症状ですが、同時に手足のしびれや麻痺などの運動障害や、ろれつの回らない、言葉が出にくいといった言語障害を伴う場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの命に関わる疾患が疑われます。 これらは脳の血流が著しく低下しているサインであり、一刻を争う事態です。放置すると脳の損傷が進行し、後遺症が出る危険が高まります。症状が出た際は自己判断せず、直ちに救急車を呼び医療機関を受診する必要があります。 閃輝暗点の見え方が現れた場合はただちに医療機関を受診しよう 閃輝暗点が初めて現れた場合や片目のみ、通常と異なる症状を伴う場合は重大な病気の可能性があり、自己判断せず直ちに受診してください。早期診断により原因を特定し、必要に応じて適切な治療を開始できます。 過去に脳梗塞を経験された方や、再発リスクが気になる方には、再発予防を目的とした治療法として再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 ご質問やご相談は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお申し付けください。 閃輝暗点の見え方に関するよくある質問 閃輝暗点が現れたものの頭痛がないのですが大丈夫? 頭痛を伴わない閃輝暗点は、必ずしも片頭痛の前兆とは限らず、まれに脳梗塞、脳腫瘍、一過性脳虚血発作など他の脳疾患が原因となることがあります。 頭痛がない場合でも、脳の異常サインの疑いがあります。そのため、早期の受診が重要です。 閃輝暗点に効く即効薬はありますか? 閃輝暗点に即効で効果を示す薬剤は現時点ではありません。多くの場合、症状は数分程度で自然に消失するため、特別な薬剤で速やかに治すことはできません。 片頭痛を伴う場合には、頭痛発作に対してトリプタンなどの治療薬が使用されることがありますが、閃輝暗点そのものを即座に消失させる薬剤はありません。 閃輝暗点は何科を受診すれば良いですか? 閃輝暗点が初めて出た場合は、脳の血流変化による視覚症状の可能性が高いため、脳神経外科または脳神経内科の受診が適切です。これらの診療科では脳の状態を詳しく評価できます。 視覚異常が片目のみに出る場合は眼科的疾患の可能性があるため眼科の受診も検討します。両目に同時に症状が出る場合は脳の異常が疑われるため、脳神経外科や脳神経内科を受診することが推奨されます。 参考文献 (文献1) 片頭痛/片頭痛の治療|一般社団法人 日本頭痛学会
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「腱板損傷は安静にすれば自然に治るのでは?」 「手術や注射を避けたい」 本記事では、腱板損傷が自然に治癒する可能性や治療期間、放置による悪化のリスクについて、医学的根拠に基づき現役医師が解説します。 記事の最後にはよくある質問をまとめています。まずは自分の症状と損傷の程度を正しく把握し、適切な治療と生活管理を始めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板損傷の治療について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板損傷は自然治癒する? リスク項目 内容 断裂拡大 放置により断裂が広がる可能性 機能低下 肩の筋力や動きの制限による日常生活への支障 手術困難 長期放置で脂肪浸潤・変性が進み再縫合が困難になる可能性 関節症進行 腱板断裂性肩関節症への移行リスク 手術成績への影響 断裂が進行した状態での手術は術後の回復遅延や満足度低下のリスクが高い 腱板は肩の重要な働きを担う組織で、血流が乏しく自然治癒が極めて困難な部位です。1996年と2002年に行われたMRIによる経過観察では、完全断裂の約66%が拡大し、縮小例はゼロでした。中等度の部分断裂でも縮小は27%にとどまり、自然治癒はまれと報告されています。(文献1) 放置すると断裂拡大や筋力低下が進行し、洗濯干しや着替えなどの日常動作に支障をきたす恐れがあります。さらに、長期放置は手術の難易度を上げ、術後の回復や満足度に影響します。保存療法で痛みを抑えることは可能ですが、断裂そのものの修復はできません。早期に医療機関で画像検査を受け、適切な治療方針を立てることが重要です。 腱板損傷の原因や治療法など、包括的な内容に関しては「【医師監修】腱板損傷とは|症状・原因・治療法を詳しく解説」をご覧ください。 腱板損傷を放置するリスク 放置するリスク 詳細 断裂が進行し機能が低下する 断裂部の拡大による肩の可動域と筋力の低下。日常生活の基本動作が困難になる状態 手術が必要になる可能性 断裂の悪化で手術適応となるリスク増大。放置による筋肉の脂肪浸潤や変性による縫合困難 腱板断裂性肩関節症に進行するリスク 肩関節のバランス崩壊による軟骨・滑液包障害。人工肩関節置換を検討せざるを得ない段階 肩以外にも負担が広がる 周囲の筋肉や関節への過負荷。肩こり、腰痛、姿勢不良など他部位の不調の原因となる状態 腱板損傷を放置すると損傷が拡大し、肩の可動域が狭まり日常生活や仕事に支障が出ます。初期は保存療法で改善するケースもありますが、進行すれば手術が必要になる場合が多く、肩を酷使する人ほど悪化は早まります。 長期放置で肩関節が変形し腱板断裂性肩関節症に進行すると治療は複雑化します。また、肩をかばうことで首や背中、反対側の肩などにも負担がかかり、二次的な不調や全身バランスの崩れを招きます。早期診断と適切な治療が不可欠です。 以下の記事では、腱板断裂を放置するリスクを詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板断裂を放置するとどうなる?日常生活や仕事への影響を現役医師が解説! 腱板損傷と断裂の違いは?症状の進行や治療法について現役医師が解説 断裂が進行し機能が低下する 放置による影響 詳細 腱の裂け目拡大と張力の喪失 断裂部分の拡大による腱板の安定性低下。本来の張力喪失による腕の挙上・支え動作の困難 筋肉の萎縮・脂肪化 使われない腱板筋の萎縮と脂肪浸潤。不可逆的変化による筋力回復困難 肩の連携動作の乱れ 腱・筋連動の喪失による肩甲骨運動障害。負荷の偏りによる他の腱板や筋肉への損傷拡大 生活動作の制限 腕の動き制限による洗濯・着替え・整髪動作の困難。生活の質低下と介助依存のリスク増大 腱板損傷は、日常的な肩の使用により徐々に進行する可能性があります。とくに、断裂部に持続的な負荷が加わると、裂傷が拡大し、部分断裂から完全断裂へ移行することがあります。 断裂範囲が拡大すると、腕の挙上や物の把持といった基本的な動作が困難となり、肩の機能は顕著に低下します。 手術が必要になる可能性 断裂が進行すると修復は難しくなり、手術が複雑化して回復も遅れます。活動的な方や症状が長く続く場合は、断裂部を骨に縫合する手術で機能改善が期待できますが、リスクもあるため必ず医師と相談してください。 放置は将来的に手術が必要になるリスクを高めるため、早期の診断と適切な治療・リハビリの検討が重要です。 以下の記事では、肩腱板断裂の手術と入院期間について詳しく解説しています。 腱板断裂性肩関節症に進行するリスク 進行する理由 詳細 腱板断裂による肩の安定感喪失 腱板の支え消失による上腕骨の位置異常と関節動作の不安定 骨同士の衝突と軟骨摩耗 上腕骨の上方移動による肩峰との接触と関節軟骨の持続的摩耗 関節変形と機能低下 軟骨消失による関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨変形による摩擦増加 筋肉バランスの崩れと関節不安定化 腱板機能の喪失による筋肉の不均衡と骨・軟骨への負荷増大 腱板損傷を長期間放置すると、肩関節の安定性が失われ、腱板断裂性肩関節症へ進行する可能性があります。これは肩関節内の軟骨が摩耗し、関節自体が変形する病態です。 一度変形した関節は元に戻らず、強い痛みが慢性化して日常生活に大きな障害をもたらします。 肩以外にも負担が広がる 腱板損傷で肩の機能が低下すると、首や肩甲骨周囲の筋肉、腰、肘、手首、反対側の肩などに過度な負担がかかり、こりや痛みが広がります。 これは肩の回復ではなく代償動作によるもので、全身のバランスを崩す原因となります。早期診察と適切な治療で負担拡大と症状悪化を防ぐことが重要です。 腱板損傷の治療期間 進行度 詳細 注意点 軽度の腱板損傷(保存療法で3〜6カ月) 安静、薬、リハビリにより約3カ月で日常動作が可能に。スポーツや重作業復帰は最大6カ月。断裂は修復されず症状コントロールが目的 年齢・筋力・仕事内容で回復に差。無理な運動は再断裂リスク。必ず医師・理学療法士の指導下で実施 中等度の腱板損傷(6〜12カ月) 2〜3カ月で日常生活復帰。可動域・筋力回復には6〜12カ月。軽作業は約3カ月で可能だが、高負荷作業・スポーツは6カ月が目安 3カ月以上改善が乏しい、断裂範囲が広い場合は手術検討。年齢・生活スタイルを踏まえ治療方針を決定 重度・広範囲断裂(手術必要例|6カ月〜1年以上) 手術後の回復は6カ月〜1年以上。年齢・断裂の大きさ・筋肉状態で差あり。MRIや超音波で定期評価しながらリハビリ継続 回復は長期計画が必要。自己判断で負荷増加しない。医師・リハビリ専門職と連携 腱板損傷の回復期間は損傷の程度によって異なります。軽度では、安静や薬、リハビリなどの保存療法で3〜6カ月が目安です。受傷から約3カ月で日常動作がほぼ可能になりますが、断裂が完治するわけではありません。 中等度では、日常生活復帰に2〜3カ月、肩の動きや筋力の回復に6〜12カ月かかります。軽作業は約3カ月で可能な場合もありますが、重い作業や高負荷スポーツは6カ月程度が目安です。3カ月以上治療しても改善がない場合や断裂が大きい場合は手術を検討します。 重度・広範囲では手術が必要で、回復には半年〜1年以上かかります。年齢や筋力、生活環境により差があるため、無理をせず医師や理学療法士の指導のもとで治療とリハビリを行うことが重要です。 腱板損傷の治療法 治療法 詳細 薬物療法 症状緩和目的の消炎鎮痛剤や湿布、関節内注射による炎症抑制 温冷療法 血流促進と筋肉の緊張緩和を狙う温熱・冷却処置。リハビリ補助療法 リハビリテーション 肩周囲筋の筋力維持・可動域拡大。残存機能の強化と動作指導 手術療法 断裂部の縫合修復。関節鏡による小切開手術が主流。重症例で適応 再生医療 幹細胞等を用いて損傷組織の再生促進。新規治療法として注目 腱板損傷の治療は、患者の年齢や活動レベル、損傷の範囲・重症度を総合的に考慮して決定されます。保存療法では、消炎鎮痛剤や湿布、関節内注射による炎症抑制、温熱や冷却による血流改善と筋緊張緩和、肩周囲筋の筋力維持や可動域拡大を目的としたリハビリテーションを行います。 重度の断裂や保存療法で改善が得られない場合は、関節鏡による小切開での縫合修復術などの手術が適応です。幹細胞を用いた組織再生を促す再生医療も、新たな選択肢として注目されています。 薬物療法 有効な理由 詳細 炎症や腫れの抑制 NSAIDsやステロイド注射による炎症抑制と腫れ軽減。夜間の不快感や動作時の負担軽減 リハビリ継続のための環境づくり 痛み軽減による可動域訓練や筋力トレーニング開始の容易化 日常動作のストレス軽減 家事や運転などの日常動作時の違和感や不安の軽減 保存療法の柱としての役割 保存療法構成要素の一つとして症状軽快の確率向上。手術回避の補助 腱板損傷に対する薬物療法は、炎症や腫れを抑えて痛みを軽減し、治療を円滑に進めるための重要な方法です。NSAIDs(消炎鎮痛薬)やステロイド注射は、痛みや可動制限を緩和し、夜間の不快感や日常生活での負担を減少させます。 ステロイド注射は腱の損傷を悪化させずに症状を改善し、その効果が半年以上続くため、リハビリ継続と肩機能の改善に寄与します。 薬物療法は腱を修復する治療ではありません。しかし、残存する腱や筋肉の機能を活かし、肩の使い方を改善するための支援となります。リハビリや他の治療と組み合わせることで、機能回復を効果的に支えます。 温冷療法 状況・時期 詳細 急性期(受傷〜48時間以内) アイスパックや冷湿布による炎症・腫れの抑制。痛みの緩和と患部保護 慢性期(炎症が落ち着いた後) 温湿布や温浴による血行促進。筋肉のこり緩和と関節可動性の向上 温→冷の交替使用 血流改善とこわばり軽減。疲労回復の補助 日常生活での取り入れやすさ 自宅でも実施可能な負担軽減法。リハビリ前後の補助にも有用 注意点 1回15分以内・1時間に1回目安。冷やす際は肌を保護。温め過ぎはやけどリスク。循環障害・皮膚脆弱部位は医師指示必須 温冷療法は、腱板損傷の症状や回復段階に応じて冷却と温熱を使い分ける方法です。受傷直後や炎症が強い急性期は、冷却により炎症と腫れを抑え、痛みを軽減します。炎症が落ち着いた慢性期には温めることで血流を促し、筋肉のこりを和らげ、肩関節の動きを改善しやすくします。 また、温めた後に冷やす交替浴により循環が促進され、こわばりの軽減にもつながります。自宅でも実践可能で、リハビリ前後の痛みコントロールや準備運動の補助として有効です。ただし、冷やしすぎや温めすぎは逆効果となる場合があり、皮膚の保護や時間管理が重要です。 また、循環障害や皮膚が弱い方は使用前に医師へ相談しましょう。温冷療法は腱断裂を直接治すものではなく、あくまで保存療法の一部として症状緩和と機能改善を支える補助的役割を果たします。 リハビリテーション 有効な理由 詳細 周囲の筋肉で肩を支える 残存する筋肉や肩甲骨周辺の動きを整え、三角筋などで断裂部を補う安定性の向上 可動域維持と拘縮予防 動かせる範囲を保ち、肩のこわばりや凍結肩の発症を防ぐ可動域練習 筋力回復による日常動作改善 手を挙げる・物を持つ動作を支える筋力強化による機能回復 正しい姿勢と使い方の習得 肩甲骨の動かし方や姿勢の修正による再断裂予防と負担軽減 手術回避や術後回復の促進 中等度以下では保存療法で症状改善、術後の機能回復促進 腱板損傷は断裂した腱の自然修復は極めて困難ですが、リハビリテーションにより残存する筋群や肩甲骨周囲の機能を整え、肩関節の安定性と可動性を向上させることが可能です。とくに三角筋などの働きが断裂部を補完し、日常生活動作の円滑化に寄与します。 長期間の不動は拘縮や凍結肩を招きやすいため、疼痛のない範囲で関節可動域を維持することが重要です。さらに、段階的な筋力強化により物の把持や挙上動作が改善し、生活復帰が促進されます。理学療法士による姿勢や肩の使用方法の適正化は、再発予防にも効果的です。 軽度〜中等度の損傷では手術回避が可能な場合があり、手術を行う場合でも術後の機能回復を支援します。定期的な評価と継続的介入が良好な治療成績と将来的な肩障害予防につながります。 以下の記事では、痛みを和らげる方法やストレッチの方法をわかりやすく解説しています。 手術療法 有効な理由 詳細 腱板断裂を元の位置につなげる唯一の方法 関節鏡や直視下手術による断裂部の再固定と修復 進行防止と肩機能維持 偽性麻痺や変形関節症への進行予防 関節鏡手術による低侵襲治療 約1.5cmの小切開から器具を挿入し、出血・感染・身体負担を軽減 手術は早期ほど有利 早期対応で医療費増加や再治療リスクを抑制 術後リハビリの重要性 可動性と筋力を段階的に回復させ結果を向上 腱板損傷の手術は、切れた腱を骨へ再固定できる唯一の方法です。自然治癒ではほとんど再接着しないため、進行すれば肩を上げられなくなる偽性麻痺(肩を上げられなくなる状態)や、関節の変形を伴う変形性関節症に至る危険があります。 現在は関節鏡を使った低侵襲手術が主流です。1.5cm程度の小切開から器具を挿入するため出血や感染のリスクが少なく、身体への負担も軽減されます。 腱板損傷は手術開始の遅れが再治療リスクを高める可能性があり、術後は理学療法士の指導による早期リハビリで可動域と筋力を回復させることが、長期的な肩機能の維持と生活の質向上に直結します。 再生医療 再生医療は、自身の身体から採取した幹細胞を培養・増殖させ、損傷部へ注射することで腱板の修復・再生を促す先進的治療法です。従来の薬物療法やリハビリでは改善が難しい場合でも、損傷した腱板の治癒力を高め、根本的な回復を目指せます。 手術のような大きな切開や入院を伴わず、注射で行うため身体への負担が少なく、感染症リスクも極めて低いことが特徴です。さらに、日常生活への制限がほぼなく、リハビリと併用することで機能回復をより効果的に進められる可能性があります。 ただし、実施している医療機関は限られているため、受診前に対応可否を確認することが必要です。痛みの軽減と腱板の再生を同時に実現し、手術を回避できる選択肢として有効性が期待されています。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。 また、以下の記事では、再生医療について詳しく解説しているのでご覧ください。 【関連記事】 PRP療法のメリット・デメリットは?効果や費用も紹介 肩の腱板損傷にはテーピングが有効!巻き方やリハビリについて専門医が解説 腱板損傷は自然治癒に頼らず医療機関を受診しよう 腱板損傷は放置すると進行し、手術が必要となる可能性があります。軽度の場合でも、画像診断で損傷範囲を正確に把握し、適切な治療計画を立てることが重要です。早期に受診すれば保存療法による改善が期待でき、生活や仕事への影響を最小限に抑えることが可能です。 腱板損傷でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院は、腱板損傷の治癒に有効である再生医療を選択肢のひとつとしてご提案しています。再生医療は、手術に伴う感染症や薬物による副作用のリスクが低いメリットがあります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腱板損傷の自然治癒に関するよくある質問 サプリメントや市販品で腱板損傷は良くなりますか? 腱板損傷は、サプリメントだけで断裂が治る科学的根拠はありません。成分によって痛みの軽減など短期的な効果が期待できる場合はありますが、腱を物理的に修復する証拠はなく、機能改善の裏づけも不十分です。 サプリに頼りすぎることで治療のタイミングを逃し、症状が悪化する恐れがあります。まずは医師による診察と画像検査で損傷の程度を確認し、適切な治療計画を立てることが大切です。 腱板損傷を再発させない方法はありますか? 腱板手術後は、専門家の指導のもとで可動域回復から筋力強化まで、段階的にリハビリを行うことが推奨されます。 日常生活では、重い荷物の運搬や腕を大きく振る動作を避け、肩甲骨周囲の筋力と柔軟性を維持します。姿勢の改善、過負荷の回避、適切な栄養管理も再断裂予防に重要です。 参考文献 (文献1) 腱板断裂の自然経過|J-STAGE
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
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「腱板損傷の症状が一向に良くなる兆しが見えない」 「腱板損傷はどれくらいで治るのか知りたい」 違和感や力の入りにくさを感じると、仕事や私生活に大きな支障が生じます。腱板損傷と診断されても、どのような治療法があり、どれくらいで回復できるのかがわからず、不安を抱く方は少なくありません。 とくに日常的に肩を酷使する人やスポーツ愛好者にとって、放置による悪化は避けたいものです。本記事では、腱板損傷の治療法について現役医師が詳しく解説します。記事の最後には、腱板損傷の治療についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板損傷の治療法について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板損傷はどれくらいで治る? 進行度 詳細 軽度 保存療法による日常生活の改善期、症状の安定期(慢性化抑制)、3〜6カ月で日常生活動作の支障軽減、最大6カ月でスポーツ・肉体労働復帰の目安 中等度 保存療法とリハビリ継続、6カ月〜12カ月程度の治癒期間、症状の程度や個人差による回復期間の変動、日常生活や軽いスポーツ復帰の可能性 重度 手術が必要な場合が多い術後2〜3カ月で日常生活の支障が軽減し、3カ月頃から軽作業が可能、6カ月程度で重作業やスポーツ復帰目安、場合により1年以上の回復期間 腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法、肩の使い方によって異なります。 軽度は保存療法で数週間〜3カ月で症状が安定し、3〜6カ月で日常生活に支障がほぼなくなります。中等度は6〜12カ月、重度は6カ月〜1年以上かかることもあります。(文献1) 広範囲の断裂では手術が必要となり、術後2~3週間の固定と2~3カ月のリハビリが必要です。(文献2) 年齢や基礎疾患、肩を酷使する習慣も影響するため、早期からの適切な治療とセルフケアが重要です。 腱板損傷の原因や治療法など、包括的な内容に関しては「【医師監修】腱板損傷とは|症状・原因・治療法を詳しく解説」をご覧ください。 腱板損傷|軽度 項目 内容 状態 腱板の一部に炎症や小さな損傷がある状態 主な治療法 安静、日常動作の見直し、物理療法(温熱・冷却)、消炎鎮痛薬、軽いリハビリ 回復までの目安 日常生活の改善は3〜6カ月、スポーツ・重作業復帰は最大6カ月ほど 注意点 肩に負担をかける動作の回避、症状が軽くても無理をしない 予後・見通し 早期治療により損傷拡大を防ぎ、数週間〜3カ月で症状を安定させる 軽度の腱板損傷は、腱の一部に炎症や小さな損傷がある状態です。原因は繰り返しの肩の使用や急な動作による負荷で、放置すると悪化し中等度・重度になる可能性が高い状態です。治療は安静、生活動作の見直し、物理療法、消炎鎮痛薬、リハビリを組み合わせて実施されます。 早期治療で損傷の拡大を防ぎ、症状は数週間〜3カ月で安定します。日常生活には早期復帰できますが、スポーツや重作業は3〜6カ月かかる場合があり、痛みが軽くても肩の酷使を避け、休養と段階的リハビリが必要です。 腱板損傷|中等度 項目 内容 状態 腱板の一部に部分断裂や炎症の拡大 主な治療法 安静、日常動作の見直し、物理療法(温熱・冷却)、消炎鎮痛薬、計画的なリハビリテーション 回復までの目安 日常生活復帰は約2〜3カ月。スポーツ・重作業復帰は一般的に6〜12カ月 注意点 痛みが軽減しても無理な復帰は再発リスク。リハビリ・保存療法で十分な改善が得られない場合は手術を検討 予後・見通し 計画的な治療・リハビリ継続で比較的円滑な社会・スポーツ復帰が可能(ただし症状や治療法により期間は前後) 中等度の腱板損傷は、腱の部分断裂や炎症が広がり、肩の可動域制限や筋力低下がみられる状態です。治療は安静、生活動作の見直し、物理療法、薬物療法、リハビリを組み合わせた保存療法が中心で、改善が乏しい場合や断裂範囲が広い場合は関節鏡手術を検討します。 保存療法では、日常生活復帰まで約2〜3カ月、スポーツ・重作業復帰まで約6カ月、治癒まで6〜12カ月かかる場合が多いです。手術を行った場合は術後リハビリを含め半年以上かかります。自然治癒は難しいため、無理な動作を避け、医師や理学療法士の指導に沿って段階的に回復を進めることが重要です。 腱板損傷|重度 項目 内容 状態 腱の完全断裂により日常動作や腕の挙上が著しく制限される状態 主な治療法 手術による腱の修復、術後3〜6週間の固定・安静後にリハビリ開始 回復までの目安 術後2〜3カ月で日常生活の支障が軽減し、3カ月頃から軽作業が可能、6カ月でスポーツ・重作業復帰が一般的だが個人差大 影響要因 放置による関節変形や機能回復の限界、再断裂リスク、リハビリの継続と医師指導の厳守が重要 注意点 年齢、損傷範囲、治療法、リハビリ状況などによる回復期間の差異 重度の腱板損傷は、腱が完全に断裂し、日常生活の動作や腕の挙上が著しく困難となる状態です。保存療法のみでの回復は難しく、多くの場合は手術による修復が必要です。手術後は約3〜6週間の安静期間を経てリハビリを開始し、縫合部の修復にはおよそ3カ月を要します。 日常生活への復帰は術後2〜3カ月、軽作業は術後3カ月頃から可能となる場合が多く、スポーツや重作業への復帰は術後6カ月以降が目安です。全体の回復期間は半年〜1年程度ですが、損傷範囲や年齢、肩の使用状況によっては1年以上を要することもあります。 保存療法を選択した場合でも、重度損傷では回復に半年以上かかることが多いため、放置による関節変形や機能低下を防ぐために、早期の医療介入と計画的なリハビリの実施が重要です。 以下の記事では、重度の腱板損傷について詳しく解説しています。 腱板損傷の治療法 治療法 詳細 セルフケアと生活上の工夫を実践する 肩への負担の軽減、姿勢・動作の見直し、日常生活での適切な休養と工夫 温冷療法 急性期の冷却による炎症抑制、慢性期の温熱による血流促進と筋肉のこわばり緩和 薬物療法 消炎鎮痛薬の内服、局所ステロイド注射による炎症抑制と症状の緩和 リハビリテーション 可動域改善、筋力強化、専門家指導のもと段階的に負荷を増やす運動療法 手術療法 重度断裂に対する腱の修復手術、術後の安静期間と段階的リハビリ 再生医療 幹細胞・PRP療法による腱修復促進、保存療法や手術の補完的治療 腱板損傷の治療は、症状や損傷の程度に応じて適切な方法を選択します。セルフケアでは、肩への負担を減らし、姿勢や動作を見直し、十分な休養を取ることが重要です。温冷療法は、急性期に冷却で炎症を抑え、慢性期に温熱で血流を促進します。 薬物療法では、消炎鎮痛薬の内服や局所ステロイド注射により炎症と痛みを軽減します。リハビリテーションは、可動域改善や筋力強化を目的に、専門家の指導のもと段階的に運動を行います。重度断裂では、腱修復手術が必要となり、術後には安静期間と継続的なリハビリが欠かせません。 再生医療は、幹細胞やPRP療法で腱修復を促す方法ですが、実施医療機関が限られており、事前に対応可否と適応の有無について医師の診察を受ける必要があります。 以下の記事では、肩腱板断裂(腱板損傷)の痛みについて詳しく解説しています。 セルフケアと生活上の工夫を実践する 内容 詳細 肩への負担を減らす生活習慣の見直し 重い物を持つ・腕を急に上げる動作の回避、姿勢改善による肩への負担の軽減 温冷療法の活用 怪我初期は冷却で炎症抑制、その後は温熱で血流促進と筋緊張緩和 適切なリハビリやストレッチの実践 医師の指導で痛みのない範囲の運動・可動域拡大、筋力強化 適切な安静と休息 無理な動作を避け、日常生活で安静時間を確保 医療機関でのフォローに併せた自宅ケア 注射・物理療法の補完として計画的なセルフケア継続 腱板損傷は自然治癒が難しく、肩への負担軽減と肩周囲筋の強化が症状の軽減と機能維持に重要です。セルフケアでは、無理な腕の挙上や高所への手の動きを避け、就寝時は肩を圧迫しない姿勢を保ち、必要に応じてタオルやクッションで支えます。 荷物は片手に偏らず両手や身体全体で分散し、デスクワークではモニター位置を調整して長時間同姿勢を避けることで、炎症悪化防止や可動域維持、再発予防につながります。医療機関での治療と併用することで、より効果的な症状管理が可能です。 以下の記事では、肩の腱板損傷のセルフケアに役立つテーピングについて詳しく解説しています。 温冷療法 方法 適用時期・目的 実施方法 注意点 冷却療法(アイシング) 急性期(受傷〜48時間以内)、炎症・腫れの抑制、二次損傷予防 氷嚢やアイスパックをタオルで包み、患部に15分程度あてる。15〜20分ごとに繰り返す 直接長時間あてない、皮膚の凍傷防止、間隔を空ける 温熱療法 慢性期・回復期、血行促進、筋肉や腱の柔軟性改善、可動域拡大 ホットパック、温タオル、入浴などで温める 急性期は避ける、皮膚低温やけど防止、持病がある場合は医師へ相談 温冷療法は、腱板損傷による痛みや炎症の管理に有効な方法です。冷却療法は、受傷直後や急性期に氷嚢やアイスパックをタオルで包み、15分程度患部にあてることで血管を収縮させ、炎症や腫れを抑えます。これにより二次的な組織損傷の予防にもつながります。 温熱療法は、炎症が落ち着いた慢性期や回復期に行います。ホットパックや入浴で肩を温めることで血流を促進し、筋肉や腱の柔軟性を高め、可動域の改善や痛みの緩和を図ります。症状や時期に応じた適切な使い分けが重要です。 冷やすべき時期に温めると悪化する恐れがあります。また、長時間の直接冷却や高温での長時間温熱は避け、持病がある場合は必ず医師に相談の上で実施する必要があります。 薬物療法 薬物療法の種類 詳細 消炎鎮痛剤(NSAIDs) 飲み薬や貼り薬による炎症物質生成の抑制と症状軽減、軽度〜中等度症状への初期対応、日常動作負担の軽減 局所ステロイド注射 関節内や周囲への直接注入による強力な炎症抑制、即効性のある一時的効果、4回以上の連続使用非推奨、医療機関での実施とリハビリ併用 その他の補助的薬物療法 筋弛緩薬や鎮痛補助薬による補助的対応、消炎鎮痛剤の補完的使用 薬物療法は、炎症を軽減し機能回復を支援する目的で行われます。一般的に使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は炎症や疼痛の軽減に使用される薬剤です。 急性期や症状が強い場合は関節内ステロイド注射で炎症を抑え、リハビリや生活を行いやすくします。長期使用は副作用の恐れがあるため医師の指示に従い、生活改善やリハビリと併用して効果を高めます。 リハビリテーション 段階 詳細 急性期 安静、アイシング、無理のない範囲での肩関節可動域運動 回復期 ストレッチ開始、肩の柔軟性回復、肩甲骨・肩関節周囲筋の軽い筋力強化 強化期 抵抗トレーニング導入、肩周囲筋力と持久力向上 維持期 適切な負荷管理下での定期的運動継続、肩機能維持と再発防止 患者指導 痛みを悪化させる動作回避法、日常生活での肩負担軽減法 医療機関との連携 段階的運動負荷調整、安定したリハビリ進行のための医師・理学療法士の指導 腱板損傷の回復と疼痛軽減には、段階的かつ計画的なリハビリテーションが重要です。リハビリは可動域改善と筋力強化によって肩関節の安定性を高め、肩甲帯の適切な働きで関節への負担を減らします。 急性期は安静とアイシング、軽い可動域運動で炎症を抑え、回復期にはストレッチや軽い筋力トレーニングで柔軟性と支持力を回復します。 強化期には抵抗運動で筋力・持久力を高め、維持期では定期的な運動と負荷管理で再発を防ぎます。全過程を通じて、医師や理学療法士の指導のもと日常生活での負担軽減と安定した運動進行を実施することが大切です。 以下の記事では、腱板損傷に効果的なリハビリ方法について解説しています。 手術療法 項目 詳細 手術の目的 保存療法で改善しなかった場合、重度機能障害を伴う場合に有効 主な適応 大きな断裂、進行例、保存療法で改善が乏しい症例 手術方法 関節鏡視下手術による断裂腱の縫合固定、腱と骨の再連結 手術の流れ 肩に小切開を数か所、関節鏡と専用器具で断裂部確認・修復 手術後経過 数週間の固定後、専門的リハビリ開始、軽作業は数カ月、運動復帰は半年程度 期待される効果 肩機能改善、可動域制限や再断裂リスク低減、長期的予後の向上 保存療法(リハビリや薬物療法)では修復が困難な大きな断裂や進行例に有効です。対して手術療法は、重度の機能障害や保存療法で改善しない場合に推奨されています。 主流は関節鏡視下手術で、小切開からカメラと器具を挿入し断裂部を修復、腱を骨に縫合固定します。腱と骨の癒合により肩の安定性と可動域が改善します。術後は数週間固定し、その後リハビリを行い、軽作業は数カ月後、スポーツや重作業は半年程度で復帰可能です。 再生医療 腱板損傷に対する再生医療は、患者自身の幹細胞や血小板を培養し、損傷部へ注射して組織の修復・再生を促す治療法です。 自然治癒が難しい損傷に対し、痛みの緩和と正常に近い組織回復を目指します。手術や入院の負担がなく侵襲も少ないため、保存療法と併用して回復を促すこともあります。ただし、適応条件や症例は限られ、実施施設も限られているため、医師の慎重な判断が必要です。従来治療で効果が不十分な場合や手術を避けたい場合に選択されます。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。ぜひご確認いただき、再生医療も治療法の一つとしてご検討ください。 腱板損傷を放置するリスクと注意点 放置するリスク 詳細 症状の進行と機能低下 断裂部位の拡大、肩関節の筋力低下、可動域制限、日常生活動作の困難 炎症の慢性化と関節変形 慢性的な炎症の持続、滑膜炎、関節内の癒着、関節の変形や骨の摩耗 生活・仕事への影響 肩の動かしにくさ、作業や趣味の制限、睡眠障害や日常動作への支障 手術が必要になることもある 保存療法での改善困難、断裂の悪化、機能回復不全、最終的に手術や人工関節置換術の必要性 腱板損傷を放置すると損傷拡大や炎症慢性化により、筋力低下や関節変形、日常生活への支障が進行します。断裂が進めば手術が必要となり、回復期間が長期化する恐れがあります。 症状の進行防止と機能低下の抑制のため、早期に医療機関で診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。 以下の記事では、腱板損傷を放置するリスクについて詳しく解説しています。 症状の進行と機能低下 理由 詳細 断裂部位の拡大 損傷部が自然修復されず裂け目が広がることで、肩の安定性低下 筋肉の萎縮 使わなくなった腱板筋のやせ細りによる筋力低下 可動域の制限 筋力低下や断裂の進行による関節の動きの狭まり 慢性炎症と拘縮 持続する炎症による組織の硬化と肩のこわばり 関節変形の進行 軟骨摩耗による骨同士の接触と変形性関節症の発症 腱板は肩関節の安定を保つ重要な組織ですが、血流が乏しく自然修復が難しいため、損傷を放置すると悪化しやすくなります。 時間の経過とともに断裂が拡大し筋力が低下、可動域制限や拘縮が進行して肩の動きが困難になります。長期間放置すると軟骨摩耗や骨の接触による変形が進み、痛みや機能低下で日常生活に影響を及ぼすため早期治療が必要です。 炎症の慢性化と関節変形 理由 詳細 炎症の慢性化 損傷部位の持続的刺激による炎症継続、組織の硬化と拘縮発生、肩可動域の制限、痛みや使いにくさの長期化 関節変形 腱板機能低下による軟骨摩耗、骨同士の直接接触、骨形態の変化(変形性肩関節症)、肩動作の制限と痛みの悪化 腱板損傷を放置すると肩関節内の炎症が慢性化し、周囲組織が硬くなる拘縮が生じることで、可動域が制限され、腕の動かせる範囲が狭くなります。 腱板機能の低下が長期化すると肩関節への負担が増え、軟骨摩耗や骨の変形を伴う変形性肩関節症へ進行する危険が高まります。変形が進行すると不可逆的な変化となり、手術を含む大規模な治療が必要になる場合があるため、早期診断と適切な治療で重度の関節障害を防ぐことが重要です。 生活・仕事への影響 リスク・注意点 詳細 炎症の慢性化 長期間の損傷による炎症持続、肩周囲組織の硬化(拘縮)、痛みや不快感の長期化 関節変形 腱板機能低下による軟骨摩耗、骨同士の接触、変形性肩関節症への進行と症状悪化 生活・仕事への影響 腱板筋力低下による動作不全、日常生活動作の困難化、睡眠や仕事への悪影響 腱板損傷を放置すると炎症が慢性化して拘縮が起こり、可動域が制限されます。さらに機能低下が進み、軟骨摩耗や骨の接触から変形性肩関節症へ進行し、痛みや動作制限が悪化します。 筋力低下による動作不全は日常生活や仕事、趣味に支障をきたし、生活の質低下や精神的負担を招くため、早期診断と適切な治療が重要です。 手術が必要になることもある 理由 詳細 断裂の拡大による修復困難 切れた腱板が自然修復されず裂け目が広がり、手術での修復難易度が上昇 症状悪化による生活支障 強い痛みや可動域制限による日常生活・仕事・趣味の制限 筋力低下・腱の退縮 長期放置による筋萎縮や腱の硬化による回復不良と再断裂リスク増加 重症化による手術の必要性 進行例で腱板修復が困難となり、筋膜移植や人工関節置換術が必要となる可能性 腱板損傷は肩関節の安定と動きを担う腱が切れる病態で、軽症なら保存療法で改善することもありますが、放置すると損傷が進行し、断裂拡大により手術が難しくなり、痛みや可動域制限で生活に支障をきたします。 長期放置は筋萎縮や腱退縮を招き、再断裂や機能回復不良のリスクを高め、重症化すれば大規模手術が必要になります。症状が悪化したり生活への影響が大きい場合は、早期に専門医を受診し、手術時期を含めた治療方針を検討することが重要です。 腱板損傷の再発を防止する方法 再発を防止する方法 詳細 適切なリハビリで肩周囲筋と肩甲帯を強化する 棘上筋・棘下筋・肩甲骨安定化筋の筋力向上、肩関節と肩甲帯の安定性確保 定期的なストレッチと可動域訓練で柔軟性を維持する 肩関節と肩甲骨周囲の筋群の柔軟性保持、関節可動域の正常化 姿勢や腕の動きを見直し肩への過負荷を抑える 猫背や巻き肩の矯正、腕の急激な挙上や過度な外旋の回避 回復期には運動強度を段階的に調整して進行させる 急激な負荷増加の回避、運動内容と強度の計画的漸増 腱板損傷の再発を防ぐには、回復後も肩周囲筋と肩甲帯の安定性を維持することが重要です。棘上筋・棘下筋・肩甲骨安定化筋を中心とした筋力強化と、定期的なストレッチや可動域訓練による柔軟性保持が欠かせません。 日常生活では猫背や巻き肩を避け、急激な腕の挙上や過度な外旋など肩に負担をかける動作を控えます。さらに、作業環境やスポーツ動作を見直し、運動強度は段階的に調整することが大切です。こうした継続的な取り組みにより、再発リスクを低減し、肩機能の長期的な維持が可能となります。 適切なリハビリで肩周囲筋と肩甲帯を強化する 項目 詳細 肩関節周囲のストレッチと可動域訓練 肩甲骨周囲の柔軟性向上、関節可動域の拡大 チューブや軽い抵抗を使った筋力トレーニング 回旋筋群(外旋・内旋)と肩甲帯の段階的強化、肩状態に応じた負荷調整 姿勢改善や動作指導 肩への過度な負担軽減、日常生活や仕事での適切な肩の使い方指導 医師の指導のもとでの段階的リハビリ 理学療法士などによる継続的な運動指導、再発予防 腱板損傷は、保存療法で改善が見込める段階を過ぎると腱の再接合が難しくなり、手術が必要になる場合があります。手術は有効な治療法ですが、身体的・精神的負担が大きく、術後には長期間のリハビリが必要です。 軽度〜中等度の損傷は、保存療法で回復することが一般的ですが、放置すると断裂の進行や慢性痛により手術が必要になるリスクが高まります。早期治療は手術回避や将来の機能低下防止に有効です。 定期的なストレッチと可動域訓練で柔軟性を維持する 運動名 詳細 振り子運動 前かがみ姿勢で反対腕を支え、痛む腕を下に垂らして左右・前後に小さく揺らす可動域拡大運動 クロスボディストレッチ 腕を肩の高さまで上げ、反対の手で肘を体側へ引き寄せ肩後方を伸ばす柔軟性向上運動 手のひら回し 両腕を肩の高さに上げ、手のひらを回して肩甲骨周囲を動かす可動性向上運動 腕の上げ下げ運動 椅子に座って背筋を伸ばし、痛みのない範囲で腕をゆっくり上げ下げする可動域維持運動 腱板損傷のリハビリでは、肩関節の柔軟性を保ち可動域を広げることが重要です。振り子運動やクロスボディストレッチ、手のひら回し、腕の上げ下げ運動などを痛みのない範囲で行いましょう。 筋肉が硬くなると可動域が狭まり、肩に過度な負担がかかりやすくなります。これを防ぐためには、定期的なストレッチや可動域訓練を習慣化することが大切です。肩回しや肩甲骨を意識したストレッチを日常に取り入れ、とくに起床時や運動前後に実施することで筋肉の柔軟性を維持し、再発リスクを減らせます。 姿勢や腕の動きを見直し肩への過負荷を抑える 項目 詳細 姿勢改善 猫背矯正と背筋伸展による肩甲骨位置の正常化、デスクワーク時のモニター高さ・椅子高さ調整 腕の動きの工夫 過度な挙上や急なねじり動作の回避、肩負担軽減を意識した動線確保 肩甲骨の動きを意識 肩甲骨安定化筋の活用による滑らかな肩・腕の動作、肩甲骨周囲ストレッチやエクササイズの実践 仕事・日常動作の見直し 両手での物の持ち運び、左右の腕の使用バランス確保による肩負担分散 腱板は肩関節の動きと安定性を支える重要な組織です。不適切な姿勢や腕の使い方は過剰な負担となり損傷や再発の原因になります。猫背や巻き肩は肩甲骨の動きを制限し、肩関節に不要なストレスを与えます。 腕の無理な高挙や急なひねり、誤ったスポーツフォームはリスクを高める原因です。日常生活や仕事では背筋を伸ばし、モニターや椅子の高さを調整して姿勢を整え、物は両手で持ち左右均等に使います。肩甲骨安定化筋を鍛える運動やストレッチも有効です。必要に応じて専門家の動作指導を受けることが望まれます。 回復期には運動強度を段階的に調整して進行させる 腱板損傷のリハビリでは、回復期に運動強度を段階的に調整することが重要です。損傷部が完治する前に強い負荷をかけると、腱や筋肉に過剰なストレスがかかり、再断裂や炎症悪化の恐れがあります。 初期は軽い可動域訓練から始め、回復状況に応じてチューブや軽負荷を使った筋力強化へ移行し、最終的には日常生活やスポーツ動作に進めます。 段階的な負荷増加は腱や筋肉の適応を促し、肩関節の安定性を高める上で効果的な方法です。医師や理学療法士の指導のもと、状態に合わせた調整を行うことで無理なく長期的な機能回復に寄与します。 腱板損傷の治療にお悩みの方は当院へご相談ください 腱板損傷は放置すると断裂の進行や慢性化を招き、痛みや可動域制限が悪化して日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。早期に正しい治療を開始し、継続的に取り組むことが回復への近道です。 腱板損傷が改善せずお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、損傷部位の修復を目的とした再生医療を選択肢のひとつとしてご案内し、症状や状態に応じた治療方針を検討いただけます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腱板損傷の治療に関するよくある質問 腱板断裂でやってはいけないことはありますか? 腱板断裂では、肩に大きな負担をかける動作は避けましょう。重い物を持ち上げる、遠くへ手を伸ばす、腕を強くひねる、急な動作や過度な力をかける、肩を後ろに回すなどは悪化や再断裂の原因になります。 とくに手術後3カ月ほどは無理な運動を控え、医師の指示に従って段階的に動かすことが大切です。 腱板損傷の筋力や痛みを確認する方法はありますか? 腱板損傷の状態を確認するには、自宅でできるセルフチェックと医療機関での検査があります。腕の挙上時に肩の中央付近で痛む(ペインフルアークサイン)、腕の内外旋で痛みや力の入りにくさがある、肩の外転時に筋力低下や痛みが出る場合は注意が必要です。 医療機関では徒手筋力テスト、視診・触診、超音波やMRIで損傷の程度を評価します。痛みや筋力低下が続く場合は早期受診が重要です。 腱板損傷で社会保険(労災・障害年金など)は受けられますか? 腱板損傷で社会保険を受けるには以下の条件を満たす必要があります。 種類 条件 労災保険 仕事中や業務関連の事故・負傷で「業務遂行性」と「業務起因性」が認められること 勤務中の作業や出張中の事故、業務に密接した活動中の負傷が対象 重作業の蓄積で発症した場合も対象となることがある MRIや診断書など医学的証拠が必要、原因の業務起因性の明確化が必須 障害年金 腱板損傷により肩の機能障害や可動域制限が残り、日常生活や労働に著しい支障がある場合 MRI画像や可動域制限の度合いにより12級や14級などの障害等級が認定されることがある 医師の診断書提出が申請に必須で、障害状況が詳細に評価される この表は、労災保険は業務に関連した明確な原因が認められ、医学的証拠が必要である点、障害年金は日常生活や労働に著しい支障をきたす機能障害が条件となることを示しています。 それぞれの制度で求められる証明や認定基準に基づいて申請されます。これにより患者様は、労災保険と障害年金の適用条件を理解し、適切な手続きを行うためのポイントが把握できます。 参考文献 (文献1) 肩腱板損傷はどのくらいで治る?日常生活への影響と回復のタイムライン|むとう整形外科・MRIクリニック (文献2) 「肩腱板断裂」|公益社団法人 日本整形外科学会
2025.08.31 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「突然、視界にキラキラやギザギザした光が見えるようになった」 「視界がおかしい?重い病気の前兆?」 閃輝暗点と呼ばれるこの症状は、片頭痛を伴わないこともあり、不安を抱える方が少なくありません。突然視界に不自然なジグザグ模様やぼやけが現れるのが閃輝暗点の特徴です。 閃輝暗点は重大な疾患の前兆の可能性があります。そのため、原因の早期発見が不可欠です。本記事では現役医師が閃輝暗点について詳しく解説します。 頭痛のない閃輝暗点は危険である理由 閃輝暗点の初期症状 閃輝暗点の原因 閃輝暗点を放置するリスク 閃輝暗点の治療法 記事の最後には、閃輝暗点についてよくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧いただき、症状についての理解を深めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 閃輝暗点について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 閃輝暗点とは 項目 説明 原因 後頭葉の一時的な血流変化とセロトニンの影響 症状の特徴 視界に光の輪やジグザグ模様が現れて消える 発症のきっかけ ストレス・睡眠不足・特定食品や気圧変化 片頭痛との関係 多くは片頭痛の前兆だが頭痛がない場合もある 注意が必要な場合 発症頻度が多い・症状が長引く場合 閃輝暗点は、視界に突然ギザギザした光の波やチカチカした輝きが現れる症状です。片頭痛の前兆として現れることが多く、5分から60分ほど続いた後に頭痛が始まります。(文献1) 原因は、脳の視覚野(後頭葉)における一時的な血流低下と回復で、神経伝達物質セロトニンの変動も関与します。光の模様は万華鏡や稲妻のように見え、視野の一部が欠けることもあります。 誘因として、ストレス、睡眠不足、疲労、特定食品、カフェイン、アルコール、女性ホルモン変動、気圧変化などが知られています。頻発や長引く症状は脳梗塞など重篤疾患の可能性があり、早期の受診が必要です。 閃輝暗点の見え方については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。 頭痛のない閃輝暗点は危険 項目 説明 特徴 視界にキラキラ・ギザギザの光が出るが頭痛はない 多くのケース 脳に異常がなく経過観察で済む場合が多い 注意すべき場合 初めて起きた・40歳以上・頻繁に出る場合 考えられる原因 脳梗塞・一過性脳虚血発作・脳腫瘍・てんかんなど 危険性 脳血管や脳の異常が隠れている可能性 検査の必要性 MRIや脳波検査などで原因を特定 とくに注意するべき人 高血圧・糖尿病など生活習慣病がある方 受診のタイミング 初発・繰り返す・症状が長引く場合は早急に受診 閃輝暗点は片頭痛の前兆としてよく見られる症状ですが、頭痛を伴わない「孤発性閃輝暗点」が現れることもあり、注意が必要です。とくに片頭痛の既往がない方で初めて発症した場合や、症状が長く続く、あるいは頻繁に繰り返す場合には、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳腫瘍、てんかんなどの脳疾患が原因となっている可能性があります。 中高年や高血圧・糖尿病といった生活習慣病をお持ちの方ではリスクがさらに高まるため、放置や自己判断は避け、できるだけ早く神経内科や脳神経外科を受診し、原因の特定が重要です。 閃輝暗点の初期症状 初期症状 詳細 光・模様・ゆらぎ キラキラやギザギザの光の輪や波模様の出現・徐々に広がる・ゆらめき・数分から20分程度の持続 視野欠損・ぼやけ・狭窄 視界の一部が見えにくくなる・暗くなる・ぼやけや狭まる感じ・視野の部分欠損や狭窄の発生 閃輝暗点は、突然視界中央付近に小さな光やチカチカとした輝きが出現することで発症します。光は徐々に拡大し、ギザギザした幾何学模様や波紋状の揺らぎとして知覚され、白色や銀色、時に多彩な色調を呈することもあります。 これらは視界内をゆっくりと移動しながら徐々に広がっていくのが特徴です。進行に伴い、光や模様が現れる部分が見えにくくなる視野欠損や、物の歪みやかすみといった視覚異常が出る場合があります。また、視野が狭くなる視野狭窄を伴うこともあり、重症の場合には一時的な視野欠損が生じます。多くは数分から30分以内に自然軽快しますが、初発や再発時は精密検査が望まれます。 光・模様・ゆらぎ 閃輝暗点の初期症状である、光・模様・ゆらぎは、脳の視覚野(後頭葉)での神経活動と血流変化によって起こります。神経細胞の急激な興奮と抑制の波(皮質拡延性抑制)が視覚野を通過すると、ギラギラやジグザグの光、波打つ模様が出現します。 脳血管の一時的な収縮と拡張による血流変化も関与します。これらは眼ではなく脳に由来し、多くは一過性ですが、初発、高頻度、長時間持続、頭痛を伴わない場合は脳梗塞などとの鑑別が必要です。自然に消えても受診による原因の確認が重要です。 以下の記事では、閃輝暗点を繰り返す原因について詳しく紹介しています。 視野欠損・ぼやけ・狭窄 閃輝暗点による視野欠損・ぼやけ・狭窄は、後頭葉の血流変化と神経活動異常で生じます。脳血管が一時的に収縮して視覚野の血流が低下し、その後の拡張で回復する過程で視野の欠けやかすみ、狭まりが発生します。 神経細胞の興奮と抑制の波(皮質拡延性抑制)が広がり、視覚情報処理が一時的に阻害されます。脳由来のため両眼に同じ異常が現れ、通常は数分から30分で回復しますが、初発や頻発時は精密検査が必要です。 閃輝暗点の原因 原因 詳細 脳血管・神経物質の急変 脳血管の一時的な収縮と拡張・セロトニン等の神経伝達物質変動 生活ホルモンなど内的リズム乱れ 睡眠不足やストレス・ホルモンバランスの乱れ 食品・気圧など外的トリガー カフェイン・アルコール・チョコレート・気圧変動 片頭痛前兆・稀な重大疾患 片頭痛の前兆・脳梗塞や脳腫瘍などの重大疾患の可能性 閃輝暗点は、脳血管の収縮・拡張や神経伝達物質の変動、睡眠不足やストレス、ホルモン変動など複数の要因で発症します。また、カフェイン・アルコール・チョコレートといった特定食品や気圧変動などの外的刺激も発症の原因です。 多くは片頭痛の前兆として現れますが、稀に脳梗塞や脳腫瘍など重大な疾患の初期症状として現れることがあります。そのため、重大な疾患の前兆と思われる症状や、これまでと異なる症状を感じた際には、自己判断せず速やかに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。 脳血管・神経物質の急変 要因 詳細 脳血管の収縮・拡張 後頭葉の血管が一時的に狭くなったり広がったりする血流変化 血流低下による神経影響 視覚野の神経細胞の活動低下や異常興奮 神経伝達物質の急変 セロトニンなどの急な増減による血管収縮・拡張の誘発 生活習慣の影響 ストレスや睡眠不足、疲労によって血管の反応性が変化 外的・内的トリガー 特定食品、女性ホルモン変動、気圧変化などによる血流・神経活動変化 閃輝暗点は、脳の視覚野(後頭葉)で起こる一時的な血流変化と神経活動異常によって発症します。後頭葉の血管が収縮して血流が減少し、その結果、視覚情報を処理する神経細胞の働きが低下または異常興奮します。 この血管変化にはセロトニンの急激な増減が関与し、結果として視界にキラキラやギザギザの光や模様が現れます。ストレス、睡眠不足、疲労、特定食品、女性ホルモン変動、気圧変化などが誘因となります。目ではなく脳由来の症状であり、生活習慣の改善やストレス管理が予防に有効です。 以下の記事では、重大な疾患のひとつである脳卒中・脳出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 脳卒中の前兆とは?見逃してはいけない5つのサインとチェックリストを紹介 生活ホルモンなど内的リズム乱れ 原因 詳細 女性ホルモンの変動 月経周期や更年期、妊娠・出産によるエストロゲン分泌の乱れ 脳血管の反応性の変化 ホルモン変動による血管の収縮・拡張しやすさ セロトニンの減少 ホルモンバランスの乱れで神経伝達物質セロトニンの低下 ストレスや睡眠リズムの乱れ 心理的・身体的ストレスや睡眠不足によるホルモンバランスの崩れ 生活習慣の影響 不規則な生活や疲労が内的リズムを乱し閃輝暗点の発症リスクを高める 閃輝暗点は、脳の血管の一時的な変動によって起こる視覚異常です。生活ホルモンの乱れ、とくに女性ホルモン(エストロゲン)の分泌バランスの変化が大きな要因です。月経周期や妊娠、更年期などでホルモンの変動が起こると、脳血管の柔軟性が低下し血管が収縮・拡張しやすい状態となります。 また、ホルモンの乱れは神経伝達物質セロトニンの減少を招き、血管の調整機能に影響を与える要因です。加えて、ストレスや睡眠不足、生活習慣の乱れがホルモンバランスに影響し、閃輝暗点の発生リスクをさらに高めます。これらのため、生活リズムの安定やストレス管理、十分な睡眠が予防に重要です。 以下の記事では、更年期と閃輝暗点の関係性について詳しく解説しています。 食品・気圧など外的トリガー 食品 詳細 チョコレート チラミン含有・脳血管の不安定な拡張誘発 チーズ 発酵食品でチラミン含有・血管拡張作用 ナッツ類 血管反応を促す成分含有 赤ワイン アルコール含有・血管拡張と神経刺激の誘因 カフェインを含む飲料(コーヒー、紅茶等) 血管収縮作用・過剰摂取は血管の不安定化を招く アルコール飲料 血管の収縮と拡張を繰り返し血管機能を乱す 閃輝暗点は、脳の視覚野(後頭葉)の血管が不安定に収縮・拡張することで発症します。特定の食品に含まれる成分はこの血管反応を変化させ、症状を誘発しやすくします。チョコレートやチーズなどの発酵食品に含まれるチラミンは血管拡張を促し、赤ワインやアルコール類は異常な収縮と拡張を繰り返す原因となります。 カフェインを多く含む飲料は血管収縮作用を持ち、過剰摂取で血管機能を不安定にする原因です。これらの食品は直接的に目の異常を起こすわけではありませんが、脳血管や神経活動に影響を与え、発症リスクを高めます。症状が出やすい方は摂取の制限や量の調整が予防につながり、生活習慣の見直しと併せた食事管理が重要です。 以下の記事では、閃輝暗点の原因のひとつであるコーヒーに含まれるカフェインの影響について詳しく解説しています。 片頭痛前兆・稀な重大疾患 分類 内容 片頭痛の前兆 脳血管の一時的な収縮と拡張による血流変動・視覚野の神経活動異常 片頭痛の特徴 視界のギラギラやギザギザの光、のちに脈打つ頭痛や吐き気などの症状 重大疾患の可能性 脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)、脳腫瘍などが隠れている可能性 注意が必要なケース 初めての発症、繰り返す症状、頭痛を伴わない場合、生活習慣病や高齢者 推奨される対応 速やかな医療機関受診と精密検査(MRIや脳波検査など) 閃輝暗点は、多くの場合片頭痛の前兆として現れる視覚症状です。脳血管の一時的な収縮と拡張により視覚野の神経活動が乱れ、視界にギラギラやギザギザした光の模様が出現します。その後、拍動性頭痛や吐き気、光や音への過敏といった片頭痛特有の症状が続きます。 頭痛を伴わない場合、初発時、または症状が繰り返される場合は、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳腫瘍など重大な脳疾患の可能性があるため、注意が必要です。とくに高齢者や高血圧・糖尿病など生活習慣病のある方はリスクが高く、自己判断せず速やかに神経内科や脳神経外科で精密検査を受ける必要があります。 以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 閃輝暗点を放置するとどうなる? 放置するリスク 詳細 慢性片頭痛への移行リスク 片頭痛の頻度増加・症状悪化・慢性化の可能性 脳梗塞・一過性脳虚血発作の前兆としての可能性 脳血管障害の早期兆候・重大疾患のリスク 眼科的合併症や重大疾患の見逃しリスク 網膜剥離など眼疾患や他疾患の診断遅れ 日常生活への影響が出始める 視野障害による運転や仕事、日常動作の支障 閃輝暗点を放置すると、片頭痛の発作が増えて症状が悪化し、慢性化する恐れがあります。脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの前触れの場合は、治療が遅れ重症化する危険もあります。 さらに、網膜剥離などの眼科的疾患や脳腫瘍などの重い病気が原因でも、診断が遅れる可能性があります。視野障害によって運転や仕事、日常生活に支障をきたし、事故や生活の質の低下を招くこともあります。初めて症状が出た時や繰り返す場合は、早急に医療機関を受診することが大切です。 慢性片頭痛への移行リスク 放置することで生じるリスク 詳細 片頭痛発作の頻度増加 頭痛の回数や頻度が徐々に増加 慢性片頭痛への移行 頭痛が継続する慢性化 症状の重症化 頭痛の強さが増し、市販薬の効果減弱 薬物乱用頭痛の発症リスク 不適切な薬の多用による頭痛の悪化 生活・精神面への悪影響 QOLの低下・抑うつや不安の増加 閃輝暗点は片頭痛の前兆となる視覚症状で、放置すると片頭痛発作が繰り返され、慢性片頭痛へ進行するリスクが高まります。慢性片頭痛は3か月を超えて月15日以上頭痛が続く状態で、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。(文献2) 発作が増えると市販薬が効きにくくなり、薬の多用による薬物乱用頭痛を起こすケースもあります。慢性化は脳や神経の痛み感受性を変化させ、痛みのコントロールを難しくし、睡眠障害や抑うつ、不安など二次的被害も招きます。閃輝暗点を自覚したら早期に専門医へ相談し、適切な治療と予防を行うことが重要です。 脳梗塞・一過性脳虚血発作の前兆としての可能性 理由・状況 詳細 脳の血流が一時的に悪くなる症状 後頭葉の視覚野への血流低下と回復による視覚異常 頭痛を伴わない場合の危険性 脳梗塞・TIA・脳腫瘍など重大疾患の可能性の上昇 前兆症状としての視覚障害 脳梗塞やTIAで視覚野が障害される際に現れる初期症状 放置によるリスク 後遺症を伴う脳梗塞の発症・日常生活への重大な支障 早期受診の重要性 MRIなどによる精密検査と血管リスク評価・予防的治療の開始 閃輝暗点は多くが片頭痛の前兆ですが、頭痛を伴わない場合は脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の初期サインの可能性があります。脳の視覚野を栄養する血管が一時的に詰まるか血流が低下すると、脳梗塞と同じ仕組みで視覚異常が起こります。 TIAや脳梗塞は視覚障害や手足のしびれ、言語障害などを伴い、放置で後遺症の危険が高まるため、初発や頻発時は早期受診と検査・予防が不可欠です。 以下の記事では、閃輝暗点が脳梗塞の前兆になる確率について詳しく解説しています。 眼科的合併症や重大疾患の見逃しリスク 危険の種類 詳細 片目のみに出る症状の危険性 網膜剥離・眼底出血・緑内障・ぶどう膜炎・眼内出血・眼感染症など視力障害や失明の恐れ 重大脳疾患の可能性 脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)など命に関わる疾患の初期症状 頻発・症状変化の見逃し 発症パターンの変化や増加に伴う重篤疾患発見の遅れ 放置による結果 視力の恒久的低下・失明・脳の後遺症・生命の危険 必要な対応 眼科・神経内科・脳神経外科での精密検査 閃輝暗点は多くが脳由来ですが、片目のみの場合は網膜剥離、眼底出血、緑内障、ぶどう膜炎などの眼科疾患が疑われます。これらは治療の遅れが視力障害や失明につながる危険があります。 また、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の初期症状として現れることもあり、頭痛を伴わない場合や新たな症状を伴う場合は要注意です。症状の頻発や変化は病状進行や合併症の兆候であり、放置すると視力や生命に関わる重篤な結果を招く恐れがあります。初発、頻発、片目のみの異常時は眼科と脳神経領域での早期精密検査が不可欠です。 日常生活への影響が出始める 理由・状況 詳細 視覚異常による見えにくさ ギザギザ・キラキラした光の模様・視野の欠損やぼやけによる文字や物の識別困難 仕事や運転など日常動作の支障 視覚情報の乱れによる集中力低下・判断ミス・疲労感の増加 精神的負担とストレスの増大 不安やストレスの蓄積・生活リズムの乱れ・精神的負担の増大 頭痛発作との重複による体調不良 片頭痛の前兆として閃輝暗点が現れ、頭痛と吐き気などの体調不良が日常を妨げる 事故リスクの増加 視覚障害による運転や機械操作時の事故リスク上昇 症状の悪化や慢性化の危険性 症状が頻発・長時間続く場合は慢性片頭痛や脳血管疾患の可能性 閃輝暗点は視界にギザギザやキラキラした光、視野欠損が現れ、仕事や運転、家事などに支障をきたします。集中力低下や疲労感、不安やストレスの蓄積で生活の質が低下し、片頭痛発作が続けば影響はさらに大きくなります。 放置すれば慢性片頭痛や脳血管疾患、事故のリスクが高まるため、初発・頻発・症状変化時は早期受診と適切な対策が必要です。 閃輝暗点の治療法 治療法 詳細 過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙などを控える 精神的・身体的負担の軽減・自律神経の安定 バランスの取れた食事をする 栄養の補給・血管や神経機能の維持・誘因の回避 根本の疾患治療を行う 片頭痛や脳血管疾患に対する専門的な治療と管理 閃輝暗点に直接作用する特効薬はなく、現在の医学では確立した治療法はありません。これは閃輝暗点が症状であり、その背景にある原因疾患や誘因への対応が重要だからです。まず、脳梗塞や神経系疾患、片頭痛などの根本的な病気に対して医師による診断と治療が必要です。 同時に、発症の引き金となる過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙などを避け、自律神経や血管機能を安定させることが大切です。また、バランスの取れた食事による栄養管理は血管や神経の健康維持に有効です。生活習慣の改善と医療的フォローを組み合わせることで、症状の軽減や発症頻度の低下が期待されます。 過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙などを控える 閃輝暗点は、脳の視覚野を含む後頭葉の血管が一時的に収縮や拡張を起こし、血流が不安定になることで発症します。過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙は血管の調節機能を乱し、発症や悪化を招きます。 これらは自律神経や神経伝達物質のバランスを乱し、脳血流を不安定にして発作を繰り返しやすくするため、予防にはストレス管理や十分な睡眠、飲酒・喫煙の制限が重要です。 バランスの取れた食事をする 目的・効果 詳細 脳・血管の健康維持 マグネシウム(海藻・大豆・魚介類・玄米)やビタミンB2(卵・納豆・緑黄色野菜・乳製品)による血流改善・炎症予防 発症リスク低減 血管を不安定にする誘発食品(チョコレート・チーズ・ナッツ・カフェイン・アルコール)の過剰摂取回避 自律神経の安定 栄養バランス改善による睡眠質向上・ストレス耐性向上 栄養不足補完 マグネシウムやビタミンB2のサプリメント活用(過剰摂取は医師・薬剤師に相談) 閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として起こり、脳血管の収縮・拡張や神経機能の異常が関係します。バランスの取れた食事は脳や血管の健康維持に役立ち、症状の予防や軽減に有効です。 とくにマグネシウム(海藻、大豆、魚介類、玄米など)やビタミンB2(卵、納豆、緑黄色野菜、乳製品など)は血管の安定化や炎症抑制に寄与します。一方、チョコレート、チーズ、ナッツ、カフェイン、アルコールは血管の動きを不安定にし症状を誘発する可能性があるため、控えることが望まれます。 栄養バランスの良い食事は睡眠やストレス耐性を高め、自律神経を整えて発症リスクを低下させます。栄養が不足する場合は、医師の指導のもとサプリメントで補うことも可能です。 以下の記事では、バランスの取れた食事について詳しく解説しています。 根本の疾患治療を行う 閃輝暗点は、脳の視覚野で血管の一時的な収縮・拡張や神経活動の異常が起きて生じ、多くは片頭痛の前兆として現れます。症状を直接的に治療する薬剤はないため、原因となる片頭痛や他の疾患を特定し適切に治療・管理することが重要です。 片頭痛が原因なら予防薬やトリプタン製剤で発作を抑えられますが、脳梗塞や一過性脳虚血発作、網膜疾患が原因の場合、精密検査と早期治療が不可欠です。根本疾患を放置すれば再発や重い後遺症の危険が高まるため、医師の診断と治療が必要です。 以下の記事では、原因となる疾患によっては有効なアプローチになり得る再生医療について詳しく解説しています。 閃輝暗点が出たら放置せず早急に医療機関の受診しよう 閃輝暗点は、脳梗塞などの重大な疾患の前兆の可能性があります。放置すると日常生活に支障をきたすだけでなく、後遺症を残す危険性があります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、原因を明らかにすることが重要です。 過去に脳梗塞を経験された方や、再発リスクが気になる方には、再発予防を目的とした治療法として再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 閃輝暗点の症状にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、閃輝暗点が脳梗塞や脳腫瘍などによる組織障害の前兆の可能性を踏まえ、損傷組織の回復を促進する再生医療を治療選択肢のひとつとしてご提案しています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 閃輝暗点に関するよくある質問 他の眼の病気とどう見分ければ良いですか? 閃輝暗点は脳の視覚野の異常による一過性の視覚症状で、両眼に同時に光のギザギザや波状模様が現れ、数分から30分程度で自然に消失します。 片眼のみの持続する視野欠損や、一瞬の閃光(光視症)は網膜剥離や緑内障などの眼疾患の可能性があり自然には回復しません。また、飛蚊症は黒点や糸くずが常に見え、緑内障発作では痛みや充血、視界のかすみを伴います。症状が閃輝暗点の特徴と異なる場合は、早急な眼科受診が必要です。 以下の記事では、糖尿病と目の関係性について詳しく解説しています。 【関連記事】 糖尿病で失明する原因とは|治療法とあわせて現役医師が解説 糖尿病網膜症は治るのか|治療方法とあわせて現役医師が解説 初めて閃輝暗点の症状が出た場合どの科を受診すれば良いでしょうか? 閃輝暗点が初めて出現した場合は、脳の血流変化や神経活動の異常など中枢性の原因を評価できる脳神経外科または脳神経内科を受診しましょう。 両眼で同時に症状が現れる場合は脳由来の可能性が高く、これらの診療科が適しています。片眼のみの症状では網膜剥離など眼疾患の可能性があるため、眼科の受診も必要です。 以下の記事では、閃輝暗点の見え方について詳しく解説しています。 閃輝暗点がある場合の禁忌はありますか? 閃輝暗点を伴う片頭痛がある場合は、低用量ピル(経口避妊薬)の使用は禁忌です。これは、ピルに含まれるエストロゲンが血液を固まりやすくし、脳卒中や心筋梗塞などの血管障害リスクを高めるためです。 また、喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、ストレスは症状を悪化させる可能性があるため避けることが望ましく、基礎疾患の適切な治療と医師への相談が重要です。 参考文献 (文献1) 片頭痛/片頭痛の治療|一般社団法人 日本頭痛学会 (文献2) 緊張型頭痛|一般社団法人 日本頭痛学会
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩に違和感がある」 「夜中に目が覚めるほどつらい」 それは腱板断裂のサインかもしれません。腱板断裂とは、肩の腱板が損傷または断裂し、腕が上がらない、筋力低下、夜間の痛みなどを引き起こす疾患です。とくに肩を長年酷使してきた人や中高年では発症リスクが高まります。 本記事では、腱板断裂について現役医師が詳しく解説します。 腱板断裂の原因 自分でできる腱板断裂のセルフチェック 腱板断裂の治療法 腱板断裂の予防法 腱板断裂と似ている症状 腱板断裂は、適切な診断と治療により症状の改善が期待できます。本記事を通じて症状を正しく理解し、治療法の選択に役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板断裂について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板断裂とは 項目 内容 定義 肩の深部にある腱板の腱が、上腕骨の付着部から部分または完全に剥がれた状態 役割 肩関節の安定維持と腕の上下・回転動作の補助 構成筋 棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋 主な原因 加齢による腱の弱化、肩の酷使(スポーツ・肉体労働)、外傷(転倒や事故) 症状 腕の挙上や物を持つ力の低下、挙上制限、肩の不安定感、動作時や夜間の違和感 診断方法 MRI検査、超音波検査、医師による徒手テスト 要点 発症は中高年に多く、原因や症状は多様。早期診断と適切な治療が肩機能維持の鍵 腱板断裂は、肩の運動と安定性に重要な腱板が損傷または断裂した状態です。腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋肉の腱で構成され、上腕骨頭と肩甲骨をつなぎ、腕の挙上や回旋を担います。 損傷が生じると、肩の違和感や筋力低下、可動域の制限などが現れ、日常生活に支障を及ぼします。断裂にはすべての腱が切れる完全断裂と、一部のみが損傷する部分断裂があります。放置すると悪化し、回復が難しくなる場合があるため、症状が見られた場合は早期に医療機関で診断と適切な治療を受けることが重要です。 以下の記事では、肩腱板断裂(損傷)について詳しく解説しています。 腱板断裂の原因 原因 詳細 加齢による腱の変性と断裂のリスク 腱の老化・血流低下による組織の弱化および弾力低下 スポーツや肉体労働による肩の酷使 繰り返しの肩使用や過度の負荷による腱の摩耗・損傷 転倒や事故など外傷による断裂 強い衝撃や捻挫による急激な腱の断裂・損傷 腱板断裂は、加齢に伴う腱の老化や血流低下による組織の弱化・弾力低下、スポーツや肉体労働などでの繰り返しの肩使用による摩耗、さらに転倒や事故による強い衝撃や捻挫など、さまざまな要因で発症します。原因を理解することは、予防や早期発見のためにも重要です。 加齢による腱の変性と断裂のリスク 加齢により肩の腱は弾力や柔軟性を失い、損傷しやすくなります。原因はコラーゲン繊維の劣化、水分量の減少、血流低下による修復力の低下です。 日常生活や仕事、スポーツでの長年の使用による摩耗も影響し、わずかな負荷や軽い外傷でも断裂が起こります。40歳以降でリスクが高まり、60歳を超えると発症が増えます。(文献1)肩の違和感や動きの変化があれば、早期の医療機関への受診が重要です。 スポーツや肉体労働による肩の酷使 肩を繰り返し使うスポーツや肉体労働は腱板に負担をかけ、損傷や断裂の原因となります。野球やテニス、水泳、重量物の持ち運びなどの頭上動作は肩関節への負荷が大きく、腱板が骨にこすれて摩耗しやすくなります。 この摩耗が蓄積すると強度が低下し断裂に至ります。利き腕に多く、慢性的な酷使が主因ですが、転倒など一度の衝撃でも発症します。肩の痛みや違和感があれば早期の受診が必要です。 以下の記事では、腱板が再断裂する原因を詳しく解説しています。 転倒や事故など外傷による断裂 腱板は腕の動きと肩関節の安定に重要で、強い外力で急に損傷することがあります。高所からの転倒や交通事故、スポーツ中の衝突などで肩や腕に瞬間的な過負荷がかかると、とくに腕を伸ばして手をついた場合や肩から転倒した場合に断裂しやすくなります。 加齢や酷使で変性した腱板はわずかな外力でも断裂することがあるため、受傷後に肩の動きや筋力に異常を感じたときは早期に診察と画像検査を受けることが重要です。 自分でできる腱板断裂のセルフチェック セルフチェック 詳細 ドロップアームテスト 腱板の主に棘上筋の断裂や筋力低下の有無 リフトオフテスト 腱板の主に肩甲下筋の損傷や機能低下の有無 ホーンブローワーテスト 腱板の主に棘下筋や小円筋の損傷や外旋筋力低下の有無 腱板断裂が疑われる場合、自宅で行える簡易的な確認方法として、ドロップアームテスト・リフトオフテスト・ホーンブローワーテストがあります。ドロップアームテストは、腕を横に上げたまま保持できず途中で落ちる場合に棘上筋の損傷や筋力低下を調べる検査です。 リフトオフテストは、腰の後ろに回した手を背中から離せない場合、肩甲下筋の機能低下が疑われます。ホーンブローワーテストは、腕を外に開く動作で力が入らないず場合に棘下筋や小円筋など外旋筋の状態を確認する検査です。これらはいずれも目安であり、異常があれば医療機関での診断が必要です。 ドロップアームテスト 項目 詳細 目的 腱板のうち主に棘上筋の断裂や筋力低下の有無の確認 方法 腕を真横に90度(肩の高さ)まで上げ、そのまま支えずにゆっくり下ろす動作の観察 陽性所見 腕が途中で急に落ちる、または動作をコントロールできない状態 判定の意味 陽性の場合は棘上筋を中心とした腱板損傷の可能性 留意点 自分一人でも行える簡易的な確認方法だが、陽性時は医療機関での診察・画像検査が必須 ドロップアームテストは、棘上筋損傷を確認するための簡易検査です。腕を横に伸ばして肩の高さまで上げ、そのまま支えずにゆっくり下ろします。健康な腱板であれば滑らかに下ろせますが、損傷があると保持できず途中で落ち、動きが不安定になります。 棘上筋は腕を横に上げる筋肉で、損傷すると筋力低下や動作制限が起こるため、異常があれば早期の受診とMRIや超音波検査による診断が必要です。 リフトオフテスト 項目 詳細 目的 肩甲下筋の損傷や機能低下の確認 方法 片手を背中の腰あたりに回し、手の甲を背中につけた状態から背中から離す動作の実施 陽性所見 手を背中から離せない、動かしづらい状態 特徴 肩甲下筋の機能確認に有効な簡易的セルフチェック方法 注意点 異常を感じた場合は放置せず、医療機関での検査を推奨 リフトオフテストは、肩のインナーマッスルである肩甲下筋の損傷や機能低下を調べる簡易検査です。肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内側にひねる動き)を担い、腱板を構成する4つの筋肉のひとつです。 テスト方法は、背中の腰あたりに手を回し手の甲を背中につけ、その状態から手を背中から離そうとします。正常であれば手を浮かせられますが、損傷があると自力で離せなかったり、痛みで動かせなかったりします。この検査で異常がある場合は肩甲下筋の腱板断裂が疑われ、早期に整形外科で診察と画像検査を受けることが重要です。 ホーンブローワーテスト 項目 詳細 目的 棘下筋や小円筋の損傷や機能不全の確認 方法 腕を肩の高さ(外転90度)に上げ、肘を90度に曲げた状態で腕を外に押し出す動作の実施 陽性所見 腕がスムーズに動かない、力が入らない、または動作時の違和感 特徴 外旋筋群の機能を評価できる簡易的セルフチェック方法 注意点 陽性の場合は医師による診察と画像検査の受診推奨 ホーンブローワーテストは、肩の腱板の中でも主に棘下筋と小円筋の機能を評価するための検査です。方法は、腕を肩の高さ(外転90度)に上げ、肘を90度に曲げた状態で、腕を外に回す動作(外旋)を行い、その際に抵抗を加えます。 筋肉や腱の損傷があると動きが不自然になり、力が入らず違和感が生じ、これは腱板断裂の可能性を示します。自宅でも鏡を見ながら実施できますが、結果が陽性の場合や症状が続く場合は、早期に整形外科を受診し、MRIなどで状態を確認することが重要です。 腱板断裂の治療法 治療法 詳細 保存療法(薬物療法・注射・リハビリテーション) 薬剤や注射で痛みを抑え、リハビリで肩の動きを改善する方法 手術療法(関節鏡手術・縫合術など) 関節鏡などを使って断裂した腱板を修復する方法 再生医療 幹細胞やPRPで腱の修復を促す先進的な治療方法 腱板断裂の治療は、損傷の程度や症状、日常生活への影響に応じて方法を選びます。軽度の場合は、鎮痛薬や注射で痛みを抑え、リハビリで肩の動きや筋力を取り戻す、保存療法が行われます。これは手術をせずに回復を目指す方法です。 一方、大きな断裂や保存療法で改善が見られない場合は、関節鏡を用いて断裂した腱を縫い合わせる「手術療法」が選ばれます。適切な治療選択のためには、早めの診察と正確な診断が重要です。 近年では、幹細胞療法やPRP療法などの再生医療も腱の修復促進を目的に導入されていますが、実施する医療機関は限られているため、事前に対応の可否や症状が適応するかを確認することが重要です。 以下の記事では、肩関節の治療法について詳しく解説しています。 保存療法(薬物療法・注射・リハビリテーション) 項目 詳細 目的 症状の軽減と生活の質の向上 方法 消炎鎮痛薬や湿布、ステロイド注射による痛み・炎症の緩和 リハビリの役割 肩甲骨周囲筋の柔軟性と筋力の維持・強化、肩関節のバランス改善 適応 部分断裂、高齢者、持病による手術リスクが高い方 特徴 手術に比べ身体への負担が少なく開始しやすい方法 注意点 腱板断裂そのものは自然治癒せず、定期的な経過観察が必要 保存療法は、手術を行わずに症状を和らげ、日常生活を維持する方法です。薬物療法で炎症や痛みを抑え、リハビリで肩の筋力・柔軟性を回復させて関節の安定性を高めます。 保存療法は、手術のリスクが高い高齢者や部分断裂の方、持病のある患者に適しており、身体への負担が少ないことが特徴です。ただし、腱板断裂は自然に修復されないため、症状が落ち着いた後も定期的な診察と経過観察が必要です。 以下の記事では、肩腱板断裂の痛みを和らげる方法を詳しく解説しています。 手術療法(関節鏡手術・縫合術など) 項目 詳細 確実な再固定 関節鏡を用いて断裂した腱板を元の骨に縫い付けることで自然な形に修復可能 低侵襲 小さな切開で行うため体への負担や術後の痛みが少ない方法 症状進行の抑制 断裂拡大や筋萎縮・脂肪変性の進行を防ぐ効果 機能回復の促進 回復期間が比較的短く早期リハビリ開始が可能な利点 適応の柔軟性 年齢・断裂の程度・生活環境に応じた治療方針の選択 保存療法で症状が改善しない場合や、断裂が大きく日常生活に支障がある場合、さらに活動性が高く早期の機能回復を希望する方には手術が検討されます。 現在主流の関節鏡手術は、小さな切開から関節鏡を挿入し、モニターで内部を確認しながら損傷した腱板を修復する方法です。身体への負担が比較的少なく、回復が早い点が特徴です。 腱板縫合術では、断裂した腱板を骨に縫い付けて固定し、断裂の程度に応じて方法を選択します。術後は腱板が骨に癒着するまで安静が必要で、その後のリハビリテーションが機能回復に重要な役割を果たします。 以下の記事では、肩腱板断裂の手術と入院期間について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は損傷した腱板の修復や再生を促進します。幹細胞治療は、患者自身の脂肪などから幹細胞を採取・培養し、断裂部位へ注射で投与する方法です。 幹細胞は損傷部位で修復を促し、注射で行えるため負担が少なく、手術困難例や保存療法無効例に適します。幹細胞やPRP療法は炎症を抑えつつ腱組織を修復し、痛み軽減や可動域改善、断裂進行防止に寄与します。 ただし、再生医療は実施している医療機関が限られており、適応には事前の相談や診察が必要です。投与後は適切なリハビリを併用することで、肩の機能回復がより効果的に進みます。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板断裂に対する再生医療の症例を紹介しています。ぜひご確認いただき、再生医療も治療法の一つとしてご検討ください。 腱板断裂の予防法 予防法 詳細 肩の柔軟性&筋力維持 肩甲骨や肩周囲筋の柔軟性と筋力の維持・強化による肩関節の安定化 姿勢・使い方の見直し 胸を張り肩甲骨を適切な位置に保つ、正しい姿勢と肩への負担を減らす動作の習慣化 オーバーユース回避 肩の過剰使用を避けることによる筋肉や腱への負担軽減 生活管理と違和感への早期対応 肩の違和感や痛みの早期発見・専門医受診と適切なケアによる悪化防止 腱板断裂を予防するためには、肩甲骨や肩周囲の筋肉の柔軟性と筋力を維持・強化して肩関節の安定性を高めることが重要です。 胸を張り、肩甲骨を正しい位置に保つ、肩を過剰に使わず休養を取り、違和感があれば早期に受診して悪化を防ぎます。 以下の記事では、腱板断裂を放置するリスクを詳しく解説しています。 肩の柔軟性&筋力維持 項目 詳細 肩や肩甲骨の連動性維持 肩関節と肩甲骨の動きのバランスを保ち腱板への負担を軽減 可動域の維持 動きの制限による摩擦や腱の摩耗の防止 インナーマッスル強化 腱板筋群を中心に肩関節の安定性を高め負荷を分散 全体バランスの改善 偏った動きや代償動作の防止による怪我リスク低減 日常・スポーツ時の負担軽減 正しい肩の動きによる過度な使用からの保護 腱板断裂を予防するには、肩の柔軟性と筋力の維持が欠かせません。肩関節は肩甲骨と連動して動くため、柔軟性が落ちると動きのバランスが崩れ、腱板に負担が集中します。その結果、可動域が狭まり摩擦が増えて損傷を招く恐れがあります。 日常的なストレッチで柔軟性を保つことは、こうした負担の軽減に有効です。さらに、腱板を構成するインナーマッスルや周囲の筋力を維持・強化すると、肩関節の安定性が高まり、運動時や荷物を持つ際にも腱板への負荷を分散できます。柔軟性と筋力をバランスよく整えることで、スポーツや日常生活での無理な動きが減り、怪我や断裂のリスクが低下します。とくに肩を酷使する方は、予防のために日常的なストレッチと筋力トレーニングを継続することが重要です。 以下の記事では、右肩や左肩がズキズキと痛い症状について詳しく解説しています。 姿勢・使い方の見直し 肩甲骨や胸椎の位置と可動性を適切に保つことは、肩関節の動きを整え、腱板への負担を減らします。猫背や巻き肩では肩甲骨が前傾し、可動域が狭くなって筋肉や腱板が骨にこすれやすくなり、摩耗や断裂のリスクが高まります。 正しい姿勢を保ち肩甲骨を適正位置に維持すれば、摩擦と負荷の軽減が可能です。また、日常生活やスポーツでは腕の使い方も見直し、腕を高く上げすぎたり同じ姿勢を長時間続けることを避けます。重い物を持つ際は腕だけでなく体全体を使い、肩関節の安定性を保つことが腱板損傷の予防につながります。 オーバーユース回避 予防ポイント 理由 肩の使いすぎの回避 繰り返し動作による腱板への微細損傷の蓄積 適切な休息の確保 腱板の自然修復を促すための負荷軽減 正しいフォーム・作業姿勢の習得 肩関節への不要なストレスの軽減 負担の分散 肩のみで行わず、体幹や下半身も活用 痛みや違和感時の使用中止 傷の進行防止 腱板断裂は、肩の筋肉と骨をつなぐ腱板が損傷する疾患です。野球やテニスなどのスポーツや重い物を扱う仕事で肩を繰り返し酷使すると、腱板に小さな損傷が蓄積します。腱板は血流が乏しく修復力が弱いため、休息を取らずに使い続けると回復が追いつかず、摩耗や断裂が進行します。 予防には、肩の使用を適度に制限して休養を確保し、動作や姿勢を見直して負担を軽減することが重要です。また、体の他の部位を活用して負担を分散し、痛みや違和感があれば早めに使用を中止することが推奨されます。これらの対策によって、腱板断裂の発症や悪化を防ぐことができます。 以下の記事では、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことを詳しく解説しています。 生活管理と違和感への早期対応 項目 詳細 肩への過度な負担回避 重労働やスポーツでの繰り返し負荷を避け、肩の筋力・柔軟性を維持 早期受診の重要性 違和感や動作制限を感じた段階で専門医を受診し画像検査で診断 進行予防による負担軽減 症状の進行抑制による手術回避や機能障害予防 全身状態の改善 血糖値管理や禁煙による腱の健康維持 無理な使用の回避 違和感がある場合の安静による損傷拡大防止 腱板断裂を予防するには、日常生活で肩への負担を減らし、症状への早期対応を徹底することが重要です。重労働やスポーツでの反復動作、無理な姿勢や動作は腱板損傷のリスクを高めます。 普段から肩周囲の筋力と柔軟性を保ち、過度な使用を避けることが予防の基本です。肩に違和感や動きの制限を感じた場合は、症状が軽くても早めに医療機関を受診し、MRIや超音波検査によって診断を受けます。 早期に保存療法やリハビリを開始すれば断裂の進行を防ぎ、手術を回避できる可能性が高まります。また、糖尿病や喫煙(文献2)は腱の健康を損なうため、生活習慣の改善も重要です。違和感がある時は無理な動作を控え、安静を保つことが損傷拡大の防止につながります。 以下の記事では、腱板断裂(損傷)における超音波(エコー)検査について詳しく解説しています。 腱板断裂と似ている症状 似ている症状 詳細 肩関節の炎症・拘縮(五十肩・肩関節周囲炎・石灰沈着性腱板炎) 肩関節周囲の炎症や拘縮による痛みと可動域制限。腕が上がりづらく動作時の痛みやこわばりが特徴 関節や骨の変性(変形性肩関節症・インピンジメント症候群) 肩関節の軟骨や骨の変性による運動時の痛み、インピンジメントは腱板が骨に挟まることで生じる痛み 腱や周囲組織の障害(上腕二頭筋長頭腱炎) 上腕二頭筋の腱の炎症で、肩の前方の疼痛や動作時痛、押すと痛みが出ることが多い 首からくる症状(頚椎症性神経根症など) 首の神経圧迫に伴う放散痛やしびれ、腕の筋力低下、肩の動かしにくさ。首の動作で症状が誘発されることも 腱板断裂と症状が似ている疾患はいくつか存在します。肩関節の炎症や拘縮を伴う五十肩(肩関節周囲炎)や石灰沈着性腱板炎では、肩の強い痛みや可動域の制限、腕の上げにくさ、こわばりが見られます。変形性肩関節症やインピンジメント症候群では、軟骨や骨の変性や腱板の挟み込みによって動作時の痛みが生じます。 上腕二頭筋長頭腱炎は、肩の前方に限局した痛みや押したときの圧痛、動作時痛が特徴です。さらに、頚椎症性神経根症など首からくる症状では、肩から腕にかけての放散痛やしびれ、筋力低下があり、首の動きで症状が誘発されることもあります。これらは腱板断裂と症状が似ているため、正確な診断には医師による診察と画像検査が欠かせません。 肩関節の炎症・拘縮(五十肩(肩関節周囲炎)・石灰沈着性腱板炎) 項目 腱板断裂 五十肩(肩関節周囲炎) 石灰沈着性腱板炎 主な症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 慢性的な痛み・力が入りにくい 肩全体の広い痛みと動きの硬さと急な激痛や腫れ 原因 腱板腱の断裂 肩関節周囲の炎症と拘縮 腱板へのカルシウム沈着 痛みの特徴 特定動作や夜間で強く出やすい 夜間痛が強く、徐々に拘縮へ進行 発作的な強い痛みと寛解期 可動域制限 外転・外旋がとくに制限 全方向で強く制限 発作時は動かしにくい 経過 自然治癒は稀で、放置すると悪化しやすい 数年で自然回復傾向 数日〜数週間の発作後軽快しやすい 主な治療 保存療法または手術 保存療法主体 薬物・注射・石灰除去(手術は稀) 主な共通症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 腱板断裂、五十肩(肩関節周囲炎)、石灰沈着性腱板炎はいずれも肩の痛みと可動域制限を伴いますが、原因や経過が異なります。五十肩は関節全体の炎症と拘縮により全方向の動きが制限され、数年かけて自然回復することが多い疾患です。 腱板断裂は肩の腱が部分的または完全に切れ、特定動作で力が入らず自然治癒はほぼありません。石灰沈着性腱板炎は腱板にカルシウムが沈着し、急激な激痛発作を起こしますが多くは自然軽快します。症状が似ていても治療法は異なるため、正確な診断には医師による診察とMRIや超音波検査が重要です。 以下の記事では、五十肩(肩関節周囲炎)と石灰沈着性腱板炎の症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違い|主な症状や治療法を解説 石灰沈着性腱板炎の原因とは?症状や痛みが続く際の治療法を紹介 関節や骨の変性(変形性肩関節症・インピンジメント症候群) 項目 腱板断裂 変形性肩関節症 インピンジメント症候群 主な症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 (途中で力が入らないことも) 肩の痛み、可動域制限、関節変形、慢性痛 肩の痛み、特定動作や挙上で強まる痛み、可動域制限 原因 腱板腱の断裂 長年の摩耗や軟部組織損傷で関節軟骨のすり減り・骨変形 腱板の摩擦や圧迫 症状の特徴 肩から腕にかけて広がる・断裂部周辺 関節内部が中心、動作時や負荷時に増す痛み 肩前面、動作中に鋭い痛み 可動域制限 外転・外旋などに強く制限 全方向で強く制限 特定動作(挙上など)で制限 経過 保存療法で経過観察も多い 進行性で慢性化しやすい 保存療法で多くが改善傾向がある 主な治療 保存療法または手術 保存療法中心だが症状で手術選択 保存療法、重症時は手術 主な共通症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 腱板断裂と関節や骨の変性によって起こる疾患(変形性肩関節症やインピンジメント症候群)は、どちらも肩の痛みや動かしにくさを伴い、症状が似ているため混同されやすい疾患です。 腱板断裂は肩の腱が部分的または完全に切れて特定動作で力が入らず、夜間痛が出やすいのが特徴です。変形性肩関節症は軟骨の摩耗や骨変形で肩全体の動きが制限され、進行すると関節音を伴います。 インピンジメント症候群は腕を上げる際に腱板が骨に挟まれ炎症を起こし、特定の角度で痛みや引っかかり感が生じます。原因と治療は異なり、腱板断裂は保存療法や手術、変形性肩関節症は保存療法を基本に進行例で人工関節手術、インピンジメント症候群は保存療法が中心です。診断にはMRIやレントゲンなどの画像検査と専門医の診察が必要です。 以下の記事では、インピンジメント症候群について詳しく解説しています。 腱や周囲組織の障害(上腕二頭筋長頭腱炎) 項目 腱板断裂 上腕二頭筋長頭腱炎 主な症状 肩の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 肩前面の痛み、可動域制限、日常動作の困難、夜間痛 原因 腱板腱(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)の断裂 上腕二頭筋長頭腱の摩擦や炎症 症状の特徴 特定動作で力が入らない、肩の上・外側の痛み 肩前面、結節間溝付近の痛みや圧痛 可動域制限 外転・外旋の制限 肘の曲げや前腕の回内外で痛み増強 経過 自然治癒しにくく進行することあり 安静や保存療法で多くは改善 主な治療 保存療法または手術療法 保存療法(安静、薬物、リハビリ) 合併の可能性 発症により上腕二頭筋長頭腱炎を伴うことあり 腱板断裂を伴うことあり 主な共通症状 40歳以上の中高年に多い傾向、動作時や夜間に強まる肩前面や周囲の痛み、動かしにくさや筋力低下、スポーツや肉体労働による肩の反復使用による負担 腱板断裂と上腕二頭筋長頭腱炎は肩の痛みや動きの制限を引き起こしますが、原因や特徴に違いがあります。共通点として、肩の痛みや筋力低下、とくに40歳以上に多く、スポーツや肉体労働がリスク要因です。 腱板断裂はインナーマッスルの腱が断裂し、外転や外旋で痛みが生じます。一方、上腕二頭筋長頭腱炎は炎症により腕を曲げる動作で痛みが生じます。診断にはMRIや超音波検査が使用され、症状がひどい場合は手術が必要です。治療法としては、保存療法と手術が選択肢となります。 以下の記事では、腱や周囲組織の障害について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板損傷と断裂の違いは?症状の進行や治療法について現役医師が解説 上腕二頭筋長頭腱炎とは?医師が徹底解説 首からくる症状(頚椎症性神経根症など) 項目 腱板断裂 頚椎症性神経根症 主な症状 肩や腕の痛みやしびれ、動かしにくさや筋力低下、夜間痛 肩の痛み、とくに動作時の痛みと可動域制限、夜間痛 首から肩・腕・手にかけての痛みやしびれ、感覚鈍麻、筋力低下 原因 肩の腱板(棘上筋など)の部分または完全断裂 頚椎や椎間板の変性による神経根の圧迫 症状の特徴 腕を特定角度まで上げると痛みや力が入らなくなる(ドロップアーム) 首の動きや姿勢で悪化する放散痛・しびれ、片側の筋力低下 痛みの範囲 肩関節周囲の局所痛、動作に伴う痛み 首から肩・腕・手・指先までの放散痛やしびれ 可動域制限 特定の肩の動きで強く制限 首の動きで痛み増悪、上肢の動作制限 診断方法 肩のMRIや超音波検査で腱板の損傷確認 頚椎X線・MRIで変性や神経圧迫を確認 主な治療 保存療法(安静・薬物・リハビリ)、必要に応じ手術療法 薬物療法、神経根ブロック、まれに手術 主な共通症状 肩や腕の痛みやしびれ、動かしにくさや筋力低下、夜間痛 腱板断裂と頚椎症性神経根症は、肩や腕の痛みやしびれを引き起こしますが、原因や症状に違いがあります。共通点として、肩や腕の痛み、筋力低下、とくに夜間痛が見られ、腱板断裂は肩のインナーマッスルの腱が切れ、特定の動作で痛みが強くなります。 頚椎症性神経根症は首の骨の変形による神経圧迫で痛みやしびれが広がり、頚椎のX線・MRIで確認し、早期に医師の診察を受けることが重要です。 以下の記事では、頚椎症性神経根症について詳しく解説しています。 腱板断裂でお悩みなら当院へご相談ください 腱板断裂は、加齢やスポーツ、肉体労働により腱板が損傷または断裂し、肩の痛みや腕が上がらない原因となります。適切な治療を継続することで改善が期待できますが、症状が改善しない場合は手術が必要となることもあります。 腱板断裂の症状にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、腱板断裂で損傷した組織の回復を促す治療法である再生医療を提案しています。再生医療は、手術に比べてリスクが少なく、断裂部分に直接アプローチできる治療法として近年注目されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 参考文献 文献1 一般人口における症候性および無症候性の回旋腱板断裂の有病率:ある村での集団スクリーニングから|PMC 文献2 腱板断裂:エビデンスに基づくアプローチ|PMC
2025.08.31 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「最近、物覚えが悪くなった」 「言葉が上手く話せないと感じる」 高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故などで脳が損傷し、記憶・言語・注意・思考・感情の調整など高度な脳機能に障害が生じる状態です。 本記事では、高次脳機能障害について現役医師が詳しく解説します。 高次脳機能障害の症状 高次脳機能障害の原因 高次脳機能障害の治療法 高次脳機能障害と似た症状 記事の最後には、高次脳機能障害についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 高次脳機能障害について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 高次脳機能障害とは 項目 内容 高次脳機能障害とは 脳の病気や外傷で記憶・注意・判断・言葉の働きが低下する状態 主な症状の例 記憶低下、言葉が出にくい、計画困難、感情制御の難しさ 特徴 身体ではなく認知機能や感情の働きに障害が出て外見からはわかりにくく 主な原因 脳梗塞や脳出血、交通事故による頭部外傷 経過と改善 個人差があり、リハビリや支援で改善の可能性がある 高次脳機能障害は、脳梗塞や脳出血、外傷などにより脳の一部が損傷し、記憶力・注意力・判断力・言語機能・感情の調整など、高度な脳の働きに障害が生じる状態です。 主な症状には、新しいことを覚えにくい、会話中に言葉が出にくい、計画的に行動することが難しい、感情のコントロールがしにくいなどが挙げられます。これらは手足の麻痺や感覚異常といった身体症状とは異なり、認知機能や感情の働きに影響が出る点が特徴です。 そのため、外見上は健康に見えても、本人や家族は日常生活で大きな困難を抱えることがあります。症状の現れ方や程度は個人差があり、リハビリテーションで徐々に改善する可能性があります。障害の特性を理解し、適切な対応を行うことが、生活の質の向上につながります。 高次脳機能障害の症状 症状 詳細 記憶障害(覚えられない・思い出せない) 新しい出来事を覚えられない状態や過去の記憶が抜け落ちる状態 言語障害(言葉が上手く話せない) 自分の思いや言葉を適切に表現できない状態 注意障害(集中できない・気が散りやすい) 作業や会話に集中し続けられない状態 遂行機能障害(計画を立てて行動できない) 物事の手順を考えて実行できない状態 社会的行動障害(感情コントロール・対人関係の変化) 感情の起伏や対人関係の維持が難しい状態 高次脳機能障害では、脳の損傷により記憶力・注意力・判断力・言語機能・感情の調整など、日常生活に欠かせない高度な脳機能にさまざまな影響が生じます。 新しい情報を覚えられない、言葉が思うように出てこない、作業に集中し続けられない、計画を立てて実行できない、感情や対人関係のコントロールが難しくなるなど、症状は多岐にわたります。 これらは外見からはわかりにくい場合も多く、本人や家族の生活に大きな負担となります。適切な理解と支援が、症状の改善や生活の質の向上に重要です。 以下の記事では、高次脳機能障害の症状と診断方法や対応の仕方について詳しく解説しています。 記憶障害(覚えられない・思い出せない) 新しい出来事を記憶するためには、情報を注意深く受け取り、脳内で整理し、必要時に呼び出すという一連の過程が必要です。この過程には、主に内側側頭葉の海馬と前頭葉が関与します。 海馬は、情報を覚える・整理する役割を担い、この部位が脳卒中や頭部外傷で損傷すると、新しい情報が正しく整理されず、記憶として定着しにくくなります。 前頭葉は覚える対象を意識し、整理された情報を呼び出す指令を出す働きを持ち、損傷すると注意力の低下や記憶の呼び出し困難を招きます。さらに、びまん性軸索損傷(DAI)などで脳内の神経回路が損なわれると、海馬や前頭葉が保たれていても情報伝達が障害され、記憶形成のネットワークが機能しなくなります。 これらの障害は単独または複合して生じ、覚えようとしても記憶に残らない、思い出そうとしても想起できないといった記憶障害を引き起こします。 言語障害(言葉が上手く話せない) 困りごと 詳細 言いたい単語が頭に浮かぶのに思い出せない(喚語困難) 言葉が口まで出かかっているのに言えない状態 発話がゆっくり・断続的で流暢さに欠ける(非流暢型) 話のテンポが遅く途切れがちな状態 何か言おうとするが違う単語が出てしまう(音韻性錯語) 意図とは異なる単語や音が出てしまう状態 相手の言葉を聞いても意味がつかみにくい(理解障害) 会話内容の理解が難しい状態 失語症に分類される症状 聞く・話す・読む・書くのすべてで障害がある状態 高次脳機能障害による言語障害は、ブローカ野やウェルニッケ野、またそれらをつなぐ神経回路の損傷で起こります。ブローカ野の損傷では言葉が出にくい非流暢型失語、ウェルニッケ野の損傷では意味が理解できない受容性失語、弓状束の損傷では言い間違いが続く伝導性失語が生じます。 これらは構音障害や声帯障害とは異なり、脳の情報処理機能の障害によるもので、多くは記憶や注意、思考の障害を伴うため、適切なリハビリと支援が改善に必要です。 注意障害(集中できない・気が散りやすい) 種類 特徴 容量性注意障害 一度に意識できる情報量が少なくなる状態 選択性注意障害 必要な情報に集中できず周囲の刺激に気を取られる状態 転換性注意障害 ひとつのことに固執して注意を切り替えられない状態 持続性注意障害 集中を長時間保てずすぐに途切れる状態 配分性注意障害 複数作業に注意を分けられずミスや抜けが出る状態 注意障害は高次脳機能障害のひとつで、集中力の維持や必要な情報への注意が難しくなる状態です。前頭葉やその神経回路の損傷が原因となり、情報の選択・切り替え・持続といった機能が低下します。 脳梗塞や頭部外傷でこの部位が損傷すると、集中力が低下し注意が逸れやすくなり、容量性・選択性・転換性・持続性・配分性の各注意障害が単独または複合して現れます。 仕事や学習、日常生活に大きく影響を及ぼしますが、適切なリハビリや生活環境の調整により改善が期待できます。 遂行機能障害(計画を立てて行動できない) 遂行機能障害は、高次脳機能障害のひとつで、目標の設定や計画の立案、行動の順序立てが困難になる状態です。主に前頭葉が関与し、この部位は思考、判断、計画などの機能を担います。 脳卒中や交通事故で前頭葉が損傷すると、段取りが立てられない、作業を途中でやめてしまう、優先順位を決められないといった症状が現れます。 注意力や記憶力の低下、神経伝達物質のバランス異常も影響します。日常生活では、仕事や家事の進行が滞る、約束や期限を守れない、やるべきことを忘れるといった例が見られます。 遂行機能障害は外見からわかりにくいため、適切な理解と周囲の支援、専門的なリハビリテーションが生活の質を保つ上で重要です。 社会的行動障害(感情コントロール・対人関係の変化) 社会的行動障害は、脳損傷によって感情や行動の調整が難しくなり、普段とは異なる言動が現れる状態です。 前頭葉の損傷や、記憶障害・注意障害・遂行機能障害などの影響により、衝動的な行動、場にそぐわない発言、相手の気持ちを理解しにくいなどの症状が生じ、対人関係に誤解やトラブルを招きます。 外見からはわかりにくく、周囲の理解が得られにくい点が特徴です。これは性格や意志の問題ではなく脳の損傷によるもので、周囲の理解と支援、専門的なリハビリが改善に重要です。 高次脳機能障害の原因 原因 詳細 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害 脳の血管が詰まったり破れたりして脳組織が損傷を受ける状態 交通事故などによる外傷性脳損傷 頭部への強い衝撃による脳の損傷で、見た目ではわかりにくい損傷も含む 低酸素脳症や感染症などその他の要因 脳への酸素不足や脳炎などの感染症による損傷や影響 高次脳機能障害は、脳の損傷によって記憶・言語・注意・行動などの高度な脳機能に障害が生じる状態で、原因は多岐にわたります。 主な原因には、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、交通事故による外傷性脳損傷、低酸素脳症や脳炎などの感染症があります。これらは脳の組織や神経回路に影響を与える可能性があります。 発症時には早期に医療機関を受診し、適切な診断・治療・リハビリテーションを受けることが、症状の軽減や回復に重要です。 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害 項目 詳細 高次脳機能の働き 記憶、言語、注意力、計画、判断をつかさどる脳の働き 高次脳機能障害が起こる仕組み 脳血管障害で脳の特定部位が損傷し、その働きが低下または消失する状態 脳血管障害の主な症状 記憶障害、言語障害、注意障害、遂行機能障害、感情コントロールの低下 脳梗塞の特徴 脳の血管が詰まり、詰まった先の組織が血液不足となり細胞が死ぬ状態 脳出血の特徴 脳の血管が破れて脳内に血が広がり、損傷部位や範囲によって症状が異なる状態 原因と結果 損傷部位が酸素と栄養を受けられず、高次脳機能に障害が生じる状態 脳は、記憶や言語、注意力、計画、判断、感情の制御など、日常生活に欠かせない高次脳機能を担っています。脳血管障害で脳の一部が損傷すると、その部位の機能が低下または失われ、高次脳機能障害が生じます。 脳血管障害による症状は多岐にわたり、損傷部位や範囲によって重症度が異なります。脳梗塞は血管の詰まり、脳出血は血管破裂で発生し、いずれも早期診断・治療と適切なリハビリが回復に重要です。 以下の記事では、脳梗塞と脳出血の症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 交通事故などによる外傷性脳損傷 外傷性脳損傷は、交通事故や転倒、スポーツ中の衝撃などで頭部に強い外力が加わり、脳に損傷が生じる状態です。衝撃によって脳組織が傷ついたり、脳内で出血が起きたりし、その結果、脳の機能に障害が生じます。 脳の損傷部位や範囲によって多様な高次脳機能障害が現れ、とくに交通事故では前頭葉を含む広範囲が損傷しやすく重い障害を招くことがあります。 脳挫傷・脳内出血・びまん性軸索損傷はいずれも高次脳機能を低下させるため、早期診断と適切な治療・リハビリが重要です。 以下の記事では、外傷性脳出血の症状について詳しく解説しています。 低酸素脳症や感染症などその他の要因 状態・要因 詳細 低酸素脳症 脳への酸素供給が不十分となり、脳細胞がダメージを受ける状態(溺水、窒息、心停止、一酸化炭素中毒などが原因) 低酸素脳症で高次脳機能障害が起こる理由 酸素不足により、記憶・注意・判断を担う脳細胞が損傷される状態 症状の特徴 記憶障害、注意障害、感情コントロールの障害などが現れやすい傾向 脳炎や感染症が高次脳機能障害を引き起こす理由 感染による脳の炎症で正常な脳機能が妨げられる状態(ヘルペス脳炎などでは認知や情緒面の障害が特徴) その他の要因 髄膜炎、脳腫瘍、てんかんなどによる脳細胞の損傷と高次脳機能障害発症の可能性 低酸素脳症は、溺水、窒息、心停止、一酸化炭素中毒などにより脳への酸素供給が不足し、脳細胞が損傷する病態です。 高次脳機能を担う部位が障害されると、記憶障害、注意障害、判断力低下、感情コントロールの困難など多様な症状が現れます。とくに記憶障害や注意障害が出やすい傾向があります。 脳炎や髄膜炎などの脳感染症も、脳組織に炎症や損傷を与え、認知機能や情緒面に影響を及ぼします。さらに、脳腫瘍やてんかん発作なども高次脳機能障害の原因となります。これらの障害は損傷部位や範囲によって症状が異なるため、適切なリハビリテーションが回復に不可欠です。 高次脳機能障害の治療法 治療法 詳細 リハビリテーション 記憶や言語、注意力、計画力など低下した機能の改善を目指す訓練や作業療法 薬物療法 集中力や意欲、感情の安定など症状に応じた薬剤を用いた治療 再生医療 幹細胞などを利用し損傷した脳組織の修復や機能回復を促す治療 高次脳機能障害の治療は、症状や原因、重症度に応じて複数の方法を組み合わせて行います。中心は記憶や言語、注意力などの回復を目指すリハビリテーションで、作業療法士や言語聴覚士が訓練を行います。 薬物療法は注意力や意欲低下、感情の不安定さに対して補助的に使用されます。再生医療は幹細胞や成長因子を用いて損傷した脳組織の修復や機能回復を促す新しい治療法です。 しかし、取り扱う医療機関が限られているため、実施には事前の問い合わせと医師による診察が不可欠です。再生医療は単独でなくリハビリなどと組み合わせて行われ、早期かつ継続的な介入により生活の質向上が重要視されます。 リハビリテーション リハビリ内容 有用性 言語療法(ST) 言葉の理解・表現力の改善、会話能力の向上、コミュニケーションの円滑化 作業療法(OT) 日常生活動作(食事、着替え、家事)の能力向上、手先の動作や計画力の改善 認知機能訓練 記憶力、注意力、判断力、遂行機能の強化による生活自立度の向上 理学療法(PT) 基本的な身体の動きやバランスの安定化による活動範囲の拡大 心理的支援・カウンセリング 自信回復、抑うつ・不安の軽減、社会参加意欲の向上 リハビリテーションは、高次脳機能障害の中心的な治療法です。記憶力、注意力、遂行機能、言語能力などを回復させ、日常生活の自立を支援します。 脳には損傷後に新しい神経回路を形成する可塑性があり、リハビリはこの能力を最大限に活用する治療法です。医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士、ソーシャルワーカーなど多職種が連携し、症状や生活状況に応じたプログラムを提供します。 効果を高めるには発症早期から開始し、6カ月から1年程度継続することが推奨され、継続的な評価と調整によって機能改善、自信回復、抑うつや不安の軽減、社会復帰の促進が期待できます。 以下の記事では、高次脳機能障害のリハビリ効果について詳しく解説しています。 【関連記事】 高次脳機能障害のリハビリ効果とは?方法や内容をあわせて紹介 高次脳機能障害は回復する?事例やリハビリの重要性を現役医師が解説 薬物療法 理由・特徴 詳細 症状の軽減と生活の質向上 記憶障害・注意障害・感情や行動の問題を和らげる補助療法 神経伝達物質のバランス調整 セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどを整え脳機能をサポートする治療 行動・感情コントロールの支援 衝動性や攻撃性、うつ症状、不安を鎮め落ち着いた状態を保つ治療 リハビリの効果向上 薬物の作用で集中力や安定性を高め、リハビリ訓練への取り組みを後押しする効果 継続的な治療の重要性 症状や状態に合わせ、医師が薬剤を調整しながら数カ月以上継続する治療 薬物療法は、高次脳機能障害に対し脳損傷そのものを治すのではなく、症状を軽減し日常生活の質を高める補助的治療法です。記憶障害、注意障害、衝動性や攻撃性などの感情・行動の問題を緩和し、リハビリテーション効果を向上させます。 治療ではセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスを調整し、注意力や意欲の改善、感情の安定を図ります。たとえば、注意障害にはメチルフェニデートが用いられ、集中力や覚醒度を高めます。抗うつ薬や抗精神病薬は衝動性、不安、うつ症状の緩和に有効です。 薬物療法は認知リハビリや作業療法と併用することで効果が高まり、数カ月以上の継続が推奨されます。薬物療法では、必ず医師の指導のもと実施することが重要です。 以下の記事では、高次脳機能障害の薬物療法とリハビリでの治療法について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は、患者自身の幹細胞を用いて損傷した脳組織の修復や再生を促し、失われた機能の回復を目指す治療法です。 幹細胞は損傷部位で新しい神経細胞を作り、修復を支援します。これにより脳の自己治癒力が高まり、リハビリ効果も向上します。従来より短期間で症状改善が報告される例があり、幹細胞が分泌する物質は血管修復や保護にも働き、脳卒中再発予防の可能性があります。 ただし、再生医療は実施できる医療機関が限られているため、事前に対応可能かを確認し、適応の有無を診察で判断することが必要です。 脳卒中の後遺症である高次脳機能障害や再発予防に関してお悩みの方は、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中に対する再生医療の症例を紹介しています。治療内容の参考にご覧ください。 高次脳機能障害と似た症状 似た症状 詳細 認知症(アルツハイマー型・血管性など) 進行性の認知機能低下と記憶障害が中心の状態 うつ病や統合失調症などの精神疾患 気分の落ち込みや思考・行動の障害を伴う精神状態 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど) 社会的コミュニケーションや注意集中の困難が持続する状態 脳腫瘍・正常圧水頭症などの脳疾患 脳の腫瘍や脳室の異常による認知や運動機能の障害 てんかん(とくに側頭葉てんかん) 発作やそれに伴う意識障害、記憶・行動の異常 高次脳機能障害と似た症状は、認知症、精神疾患、発達障害、脳疾患、てんかんなど多岐にわたります。認知症では記憶障害や判断力低下が進行し、うつ病や統合失調症などの精神疾患では意欲低下や感情の不安定さがみられます。 自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害では、社会的コミュニケーションや注意・行動の調整が困難です。脳腫瘍や正常圧水頭症では脳の構造変化や圧迫により記憶・歩行・判断力が障害されます。 側頭葉てんかんなどのてんかんでは、発作に伴い記憶や感情の変化、一時的な意識障害が生じます。これらは症状が似ていても原因や治療法が異なるため、正確な診断が不可欠です。 認知症(アルツハイマー型・血管性など) 項目 高次脳機能障害 認知症 主な原因 交通事故・脳卒中・外傷などによる急性の脳損傷 アルツハイマー病・血管性認知症などによる脳の変性や萎縮 発症の仕方 急に症状が現れる発症 徐々に症状が進行する発症 症状の進行 基本的に進行しにくい状態 時間とともに進行し悪化する状態 主な経過 リハビリによって改善が期待できる経過 根本的な治療は難しく進行を遅らせる支援が中心の経過 主な共通症状 記憶障害、遂行機能障害、注意障害、人格変化などの症状 高次脳機能障害と認知症は、どちらも記憶障害や注意障害、計画力の低下、人格変化など似た症状を伴いますが、原因と経過が異なります。高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などによる急な脳損傷が原因で、症状は突然現れます。基本的に進行せず、リハビリによって改善が見込めます。 一方、認知症はアルツハイマー病や血管性認知症などが原因で脳が徐々に変性・萎縮し、症状が進行していきます。根本的な治療は難しく、薬剤や生活支援で進行を遅らせることが治療の中心となります。 以下の記事では、高次脳機能障害と認知症の違いを詳しく解説しています。 うつ病や統合失調症などの精神疾患 項目 高次脳機能障害 うつ病や統合失調症などの精神疾患 主な原因 交通事故・脳卒中などによる器質的な脳損傷 心理的・社会的ストレス、神経伝達物質バランスの乱れ遺伝的素因など 発症の仕方 脳損傷後に突然症状が現れる発症 徐々に進行する場合や急性に悪化する場合がある発症 背景メカニズム 損傷部位の神経ネットワーク障害による症状発現 器質的損傷を伴わない脳機能異常や心理社会的要因による症状発現 治療の方向性 原因疾患の治療とリハビリによる機能回復支援 薬物療法や心理社会的支援による症状の安定化と再発予防 主な共通症状 注意障害、意欲低下、感情コントロールの不全、社会的行動の変化 高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などによる明確な脳損傷を原因として、認知機能や感情の制御が低下する病態です。これに対し、うつ病や統合失調症などの精神疾患は脳の構造的損傷を伴わず、心理社会的ストレス、神経伝達物質の異常、遺伝的要因などが主な背景と考えられます。 いずれも注意力や意欲の低下、感情の不安定さ、対人関係の変化といった共通症状を示し、日常生活や社会生活に大きな支障をきたしますが、その発症機序は異なります。高次脳機能障害は脳の器質的障害による直接的な機能低下であり、精神疾患は脳機能の異常や心理社会的要因による変化が中心です。 症状が類似するため誤診の恐れもあり、正確な診断には医師による詳細な問診、神経心理検査、画像検査が不可欠です。 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど) 項目 高次脳機能障害 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど) 主な原因 脳梗塞・交通事故・外傷などによる後天的な脳損傷 生まれつきの脳機能の特徴や発達の仕方の違い 発症の時期 成人期・小児期を問わず、脳損傷後に突然発症 幼少期から症状がみられる発達期発症 背景メカニズム 損傷部位の神経ネットワーク障害による情報処理の低下 先天的な脳情報処理の特性による行動や認知の違い 治療・支援 リハビリテーションや薬物療法で機能回復支援 療育・環境調整・必要に応じた薬物療法による適応支援 共通する症状 注意の持続困難、遂行機能障害、社会的行動の変化 高次脳機能障害と発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)は、注意が続かない、計画や段取りが苦手、感情や対人関係の調整が難しいといった共通の症状があります。これらは脳の情報処理や行動調整機能の障害で起こります。 発達障害は先天的で幼少期から症状があり、高次脳機能障害は脳梗塞や事故など後天的損傷が原因です。症状の時期や経過が診断の鍵であり、正確な鑑別には医師の評価が必要になります。 以下の記事では、ブレインフォッグとADHDについて詳しく解説しています。 脳腫瘍・正常圧水頭症などの脳疾患 項目 高次脳機能障害 脳腫瘍・正常圧水頭症 主な原因 交通事故・脳卒中・外傷などによる脳の損傷 脳内の腫瘍形成や脳脊髄液循環障害による脳圧迫 発症の仕方 脳損傷後に突然症状が現れる発症 腫瘍や液体貯留が進行して症状が徐々に出現する発症 症状発現の仕組み 損傷部位の神経細胞や神経回路の破壊による直接的障害 脳の圧迫や循環障害による二次的な機能障害 主な治療 リハビリテーションを中心とした機能回復支援 外科的治療(腫瘍摘出・シャント手術)による圧迫解除と症状改善 共通する症状 記憶障害、注意障害、感情のコントロール不全 脳腫瘍は脳内に発生する異常な腫瘤であり、正常圧水頭症は脳脊髄液の流れが障害されて脳室に液が過剰にたまる疾患です。いずれも脳を物理的に圧迫し、血液や脳脊髄液の循環を妨げることで、記憶障害、注意力低下、感情の不安定化など、高次脳機能障害に似た症状を引き起こします。 原因は脳細胞の直接的な損傷ではなく、圧迫や循環障害による二次的な機能低下です。治療は腫瘍摘出術やシャント手術などの外科的手段が中心で、圧迫を解除することで症状が改善する可能性があります。高次脳機能障害とは症状や原因が異なるため、医師の診断が不可欠です。 【関連記事】 【くも膜下出血の後遺症】水頭症は寿命がある?症状から治療法まで医師が解説 水頭症による高齢者の認知症は手術で治る?手術しないリスクとは【医師監修】 てんかん(とくに側頭葉てんかん) 項目 高次脳機能障害 てんかん(とくに側頭葉てんかん) 主な原因 脳梗塞・交通事故・外傷などによる器質的な脳損傷 脳内の異常な電気活動(発作)や潜在的なてんかん性放電 発症の仕方 脳損傷後に突然症状が現れる発症 発作の繰り返しに伴い徐々に症状が現れる場合もある発症 症状発現の仕組み 損傷部位の神経細胞や神経ネットワークの破壊による直接的障害 異常な電気活動やネットワークの乱れによる機能障害 主な治療 リハビリテーション中心の機能回復支援 抗てんかん薬や外科手術による発作コントロール 共通する症状 記憶障害、注意障害、感情のコントロール不全 てんかん、とくに側頭葉てんかんは、高次脳機能障害と同様に記憶障害・注意障害・感情変化を示します。記憶障害は発作時だけでなく非発作時にも現れ、新しい情報を覚えにくい、過去の出来事を忘れやすいなどの症状があります。 注意障害は集中力低下や気の散りやすさ、感情変化は怒りやすさや感情コントロール困難として表れます。これらは異常な電気活動や潜在的なてんかん性放電による脳ネットワークの乱れが原因です。 一方、脳腫瘍や正常圧水頭症では脳の圧迫や循環障害による二次的症状であり、外科手術で改善を図ります。てんかんは抗てんかん薬や手術で発作を抑えるなど治療法が異なるため、正確な鑑別診断が重要です。 以下の記事では、側頭葉てんかんの手術後に起こりうる後遺症について詳しく解説しています。 改善しない高次脳機能障害は当院へご相談ください 高次脳機能障害は、記憶力の低下や注意力の欠如などが現れ、日常生活に支障をきたします。早期発見と治療の継続で改善が見込めます。しかし、症状が進行している状態の場合、改善が困難になることがあります。 改善が見られない高次脳機能障害でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院は、損傷部位の修復にアプローチする再生医療を積極的に提案し、患者様の症状に合う治療方針を策定します。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 高次脳機能障害に関するよくある質問 高次脳機能障害の家族の向き合い方を教えてください 高次脳機能障害の患者さんは、日常生活や介護の多くを家族が担いますが、症状は外見からわかりにくく、性格や行動の変化も伴うため、家族の心理的負担は大きくなります。介護を続けるためには、病気の正しい理解が重要です。 症状や経過を知ることで患者さんの行動を病気の一部として受け入れやすくなり、家族会やセミナーの参加も有効です。また、家族自身の心身の健康維持も必要で、心理カウンセリングや相談窓口の活用、同じ立場の家族との交流がストレス軽減に役立ちます。 また、行政や福祉サービス、レスパイトケアを利用して介護負担を分散させることが、患者さんの生活の質向上にもつながります。 以下の記事では、高次脳機能障害の家族の向き合い方について詳しく解説しています。 【関連記事】 高次脳機能障害で怒りやすくなる?家族への適切な対応を紹介 高次脳機能障害への対応の仕方は?介護疲れを軽減するコツを解説 高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスは?対処法や支援制度を現役医師が解説 高次脳機能障害の平均余命はどのくらいですか? 高次脳機能障害の平均余命は、発症年齢や性別によって異なりますが、健常者より短くなる傾向があります。男性では、20歳発症の場合は平均余命が42.61年で、健常男性の61.45年より約18.8年短くなります。 年齢が上がるにつれて差は縮まり、50歳発症では約12.4年、80歳発症では約6.5年の差です。女性も同様で、20歳発症では約17.3年、50歳発症では約11.9年、80歳発症では約8.5年短くなります。 この余命短縮は、脳損傷による高次脳機能障害と、それに伴う身体機能低下や合併症リスクの増加が影響していると考えられます。ただし、適切な医療管理やリハビリテーション、生活習慣の改善によって健康状態を保ち、余命や生活の質(QOL)を高めることは可能です。 平均余命は統計上の目安であり、個々の生活環境や支援体制によって変わるため、医療機関と連携し、長期的な健康管理と社会参加を継続することが重要です。 以下の記事では、高次脳機能障害の平均余命について詳しく解説しています。
2025.08.31 -
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「ある日突然、激しい頭痛や吐き気に襲われた」 「片側が麻痺するような感覚や、言葉がうまく話せない」 これらは脳出血のサインの可能性が高く、脳の血管が破れて出血し、脳細胞を損傷・死滅させる疾患です。短時間で命や生活に重大な影響を及ぼします。 飲酒や喫煙、高血圧、糖尿病といった生活習慣や持病があれば、若年でも脳出血を発症する危険があります。脳出血は年齢を問わず起こるため、予防が欠かせません。 本記事では、脳出血について現役医師が詳しく解説します。 脳出血の症状 脳出血の種類 脳出血の原因 脳出血の治療法 脳出血の予防法 記事の最後には、脳出血についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳出血について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脳出血とは 項目 内容 主な原因 長期間続く高血圧による血管の脆弱化。加齢による脳アミロイド血管症。脳動静脈奇形などの血管異常 他の脳卒中との違い 脳出血は脳卒中の一種で、脳実質内の出血を指し、くも膜下出血(脳表面の隙間の出血)や脳梗塞(血管の詰まり)とは異なる 出血で起きること 血腫形成による脳細胞の圧迫。麻痺・言語障害・意識障害の発症。部位と出血量による症状の違い。血腫吸収後も残る神経障害の可能性 早期治療の理由 発症後48時間以内に進行する脳浮腫。再出血や脳圧上昇による生命危機。血圧管理・外科的処置・全身管理の必要性 主な症状 片側の麻痺・しびれ。言語障害。意識障害。吐き気・嘔吐。激しい頭痛 対応の重要性 急性期の対応が予後を左右。再出血や浮腫悪化時は緊急処置の必要性 予防と再発防止 高血圧管理。生活習慣改善。血管異常の検査。医師による定期的なフォロー (文献1) 脳出血は、脳内の細い血管が破れて出血し、血液が脳組織を直接傷つけたり、血腫(けっしゅ)となって周囲を圧迫し、脳組織を損傷する疾患です。意識障害、手足の麻痺、言語障害などの重い症状が突然現れることがあります。 脳の血管は非常に細く、高血圧などで慢性的な負担がかかると血管壁が脆くなり、破れやすくなります。出血は脳全体の圧力を高めて血流を妨げ、生命に関わる危険な状態を引き起こし得ます。急な頭痛、意識の変化、麻痺などが現れた場合は、一刻を争うため直ちに救急要請が必要です。 以下の記事では、脳梗塞と脳出血の合併症について詳しく解説しています。 脳出血の症状 症状 詳細 片麻痺・顔面のゆがみ 手足の力が入らなくなる現象。顔半分の筋肉のゆがみ。片側だけ口角が下がる状態 言語障害(話す・理解) 思ったことを言葉にできない状態。会話や文字の理解困難。意思疎通の困難 視覚・平衡感覚の異常 視野が欠ける現象。一部が見えなくなる状態。物が二重に見える現象。ふらつきや歩行困難 頭痛・吐き気・意識障害 突然の激しい頭痛。吐き気や嘔吐の発現。意識がもうろうとする状態。反応が鈍くなる現象 脳出血では、出血の部位や程度により多様な症状が突然現れます。代表的なのは片麻痺や顔面のゆがみで、口角が片方だけ下がることもあります。 言葉が出にくい、相手の話や文字が理解しづらいといった言語障害に加え、視野の一部が欠ける、物が二重に見えるなどの視覚異常や、平衡感覚の異常によるふらつき・歩行困難も特徴です。 さらに、突然の激しい頭痛、吐き気や嘔吐、意識の混濁、反応の鈍化などが起こることもあり、これらの症状が現れた場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。 以下の記事では、脳出血の前兆を詳しく解説しています。 片麻痺・顔面のゆがみ 症状 詳細 片麻痺(かたまひ) 脳の片側が出血で障害されると、反対側の手足の動きが悪くなる現象。力が入らない、動かせない、物を落としやすくなる状態 顔面のゆがみ 顔の筋肉を動かす神経が障害され、片側の筋肉がうまく動かなくなる状態。笑ったときに口角が片側だけ下がる、まぶたが閉じにくい左右差 重要性 いずれも脳出血の可能性が高い危険なサインで、突然出た場合は直ちに救急車を呼び医療機関を受診する必要性 脳出血が運動をつかさどる脳の部分に起こると、身体の片側が急に動かしにくくなり、腕や足に力が入らず物を落とすこともあります。 顔面神経にも障害が及ぶと、笑ったときに口角が一方だけ下がる、まぶたが閉じにくいなどの左右差が出ます。発症した場合は直ちに救急車を呼ぶことが重要です。 以下の記事では、脳出血の前兆として現れる手足のしびれについて詳しく解説しています。 【関連記事】 手がしびれる病気は?前兆とチェックを医師が解説 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 言語障害(話す・理解) 項目 詳細 言葉が話せなくなる理由 脳の左側にある言語中枢の出血による機能障害 主な症状 思ったことを言葉にできない発語障害。相手の言葉の意味がわからない理解障害 危険なサインの理由 脳の重要領域の障害を示す重大な兆候で、早急な治療が必要 対応の必要性 突然の発語困難や理解困難が出た場合は、脳出血や脳梗塞の可能性があり直ちに受診が必要 脳の言語中枢が出血で損なわれると、言葉を話す・理解する機能に障害が生じ、言葉が出ない、入れ替わる、理解しづらいなどの症状が現れます。口や舌の動きが悪くなり発音が不明瞭になることもあり、失語症や構音障害と呼ばれます。 これらは本人が気づきにくく、周囲の早期発見が重要です。突然の発症は脳出血の可能性が高く、速やかに医療機関を受診する必要があります。 視覚・平衡感覚の異常 項目 詳細 視覚の異常 脳の後頭葉や視覚信号の経路への障害による視野狭窄や見えにくさ。目そのものの異常ではなく、脳の視覚処理の問題 平衡感覚の異常 小脳や脳幹の損傷による急なめまい、ふらつき、歩行時のバランス障害、方向感覚の喪失 重要性 突然の視覚や平衡感覚の異常は脳への深刻な障害のサインであり、緊急受診が必要 脳の視覚中枢や平衡感覚をつかさどる部位に出血が起こると、視界が欠ける、二重に見える、ふらつくなどの症状が現れます。歩行が不安定になり、立ち上がった際に倒れそうになることもあります。 視覚障害やめまいは一時的に治まる場合もありますが、脳出血は進行する恐れがあるため、軽視は禁物です。とくに、これまでにない視覚の異常やバランスの崩れは、早急な診断が必要な危険信号です。 頭痛・吐き気・意識障害 症状 詳細 激しい頭痛 脳の血管破裂による脳を覆う膜や血管への強い刺激。普段と異なる突然の強烈な痛み 吐き気・嘔吐 脳圧の上昇による脳幹の嘔吐中枢刺激。身体からの危険信号としての反応 意識障害 血液や腫れによる脳の重要部位圧迫、意識がぼんやりする状態、重症の場合は意識消失の可能性 脳出血によって脳内の出血が増えると、頭蓋内の圧力が急激に上昇し、強い頭痛・吐き気・嘔吐などが起こります。これは、硬い頭蓋骨の中で血液が増えて脳が圧迫されるためです。 出血範囲が広くなると脳幹や全体へのむくみ(脳浮腫)により、意識がもうろうとしたり呼びかけに反応できなくなることもあり、命に関わる緊急事態となります。このような症状が急に現れた場合には、一刻も早く救急車を呼び、迅速な治療を受けることが非常に重要です。 以下の記事では、吐き気を伴う頭痛について詳しく解説しています。 脳出血の種類 種類 詳細 被殻出血 大脳基底核の一部である被殻での出血。主に高血圧が原因。反対側の手足の麻痺や感覚障害、言語障害が起こることが多い 視床出血 感覚情報の中継を行う視床での出血。反対側の感覚障害や麻痺、意識障害を伴うことが多い 皮質下出血 脳の表面近く、皮質直下の白質での出血。一部運動障害や感覚障害、視覚や言語の障害が現れる場合がある 小脳出血 運動のバランスを司る小脳での出血。めまいや歩行困難、吐き気などが強く現れることが多い 橋出血 生命維持に重要な脳幹の一部である橋での出血。四肢麻痺や重度の意識障害、呼吸不全など重篤な症状が出やすい 脳出血は、出血する部位によって症状や重症度が異なります。被殻出血は、大脳深部の被殻に起こる脳出血で、高血圧が原因となることが多い病態です。視床出血は感覚の中継を行う視床で発生し、片側の感覚障害や麻痺、意識障害を伴うことが多くあります。 皮質下出血は脳の皮質下白質で起こり、運動・感覚・視覚・言語など多様な障害を引き起こす可能性があります。小脳出血はバランス機能を担う小脳で発生し、めまいや歩行困難、吐き気が顕著に現れることがあります。橋出血は脳幹の一部である橋で発症し、四肢麻痺や重度の意識障害、呼吸不全など重篤な症状を引き起こしやすく、とくに注意が必要です。 被殻出血 被殻出血は、脳の深部にある被殻で起こる脳出血で、手足の動きや感覚に関わる重要な部位が障害されます。脳出血のうち、約40~50%は被殻出血であり、脳出血全体の中で最も多くを占めています。被殻は脳の深部に位置し、手足の運動や感覚をつかさどる重要な部位です。 このため、被殻で出血が起こると、反対側の手足の麻痺やしびれが現れます。多くは高血圧が背景にあり、発症は急激です。言葉のもつれや視野の欠けを伴うこともあります。 さらに重症化すると意識障害に進行することがあるため、早期の診断と適切な血圧管理が不可欠です。日本国内の統計でも、視床出血(約30%)、小脳・脳幹・皮質下出血(いずれも約10%前後)と比べて圧倒的に頻度が高いことが示されています 視床出血 視床出血は、脳の深部にある視床で起こる出血です。視床は、手足や顔の感覚情報を脳の各部に中継し、意識の維持にも関わる重要な部位です。主な原因は長期の高血圧による細い血管(穿通枝)の破裂で、突然の頭痛、嘔吐、意識の低下、片側の手足のしびれや麻痺といった症状が急に現れます。 視床出血は感覚・運動・意識・眼球運動など多彩な症状を伴い、視覚異常や瞳孔反応の変化、言語障害、高次脳機能障害、慢性的な強い痛み(視床痛)が現れ、出血が大きい場合は運動障害が悪化します。 治療は血圧や脳の腫れを抑える保存療法が中心で、早期診断とリハビリが回復が重要です。 以下の記事では、視床出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 【保存版】視床出血の主な症状はなに?原因や治療法・予後について現役医師が解説 皮質下出血 皮質下出血は、脳の表面に近い大脳皮質の直下で起こる脳出血です。高血圧が原因となることは少なく、若年者では脳動静脈奇形や海綿状血管腫、高齢者ではアミロイドアンギオパチーなどの血管異常が多くみられます。 症状は突然の激しい頭痛や吐き気、嘔吐に始まり、意識障害、片側の手足の麻痺、言語障害、てんかん発作などが出ます。数時間以内に症状が進行することもあり、予後は出血の大きさや原因に左右されます。 診断はCTなどで行い、大きな出血や重症例では手術が検討されますが、多くは薬物療法や経過観察が中心です。早期受診と原因に応じた治療が不可欠です。 小脳出血 小脳出血は、頭の後ろにある小脳で起こる脳出血です。小脳は体のバランスや運動の調整を担い、出血すると後頭部の激しい痛み、強いめまいやふらつき、吐き気、歩行障害、構音障害などが現れ、急速に悪化することがあります。 原因は高血圧が最も多く、血管奇形や頭部外傷も関与します。出血が大きいと脳幹を圧迫し命に関わるため、治療は血圧管理や脳浮腫の抑制が中心であり、必要に応じて手術が必要です。早期受診と適切な治療が予後を左右します。 橋出血 橋出血は、脳幹の一部である「橋」に発生する脳出血です。橋は呼吸や心拍の調整、感覚や運動の伝達など、生命維持に欠かせない機能を担っています。主な原因は長期の高血圧で、血管壁が弱くなり破れることで発症します。血管奇形や外傷、血液疾患が原因となるケースもあります。 症状は急速に進行し、激しい頭痛や嘔吐、意識障害、四肢麻痺、顔面のしびれや運動障害、呼吸困難、言語障害、めまい、眼球運動異常などが現れ、橋は重要な神経が集中する部位のため重症化しやすく、手術が困難な場合も多くあります。 治療は血圧や呼吸の管理が中心で、早期発見と迅速な対応が予後を左右するため、発症時は直ちに医療機関での治療が必要です。 以下の記事では、橋出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 橋出血とは?症状・原因・治療法を現役医師がわかりやすく解説! 橋出血の初期症状は意外と身近な痛み?!死亡率や予防法も現役医師が解説 脳幹出血は回復の見込みある?治療や時期別のリハビリ内容も解説 脳幹出血の原因は?今からできる予防策も解説【医師監修】 脳出血の原因 原因 詳細 高血圧性出血 持続する高血圧による脳内小動脈の血管壁破綻。血圧の過度な上昇による血管の破裂 血管異常(奇形・アミロイド) 先天的な脳動静脈奇形や海綿状血管腫などの血管奇形。高齢者に多いアミロイド血管症による血管の脆弱化 薬剤・出血傾向を伴う血液の病気 抗凝固薬や抗血小板薬の服用による出血傾向。血液疾患による止血障害や血液成分異常 脳梗塞からの出血性転化 脳梗塞後に血管の浸食や血流再開で出血を伴うこと。脳組織の壊死に血管破綻が加わる状態 頭部の外傷 交通事故や転倒などの頭部への直接的な強い衝撃による脳内出血。とくに高齢者で転倒リスクが高い 脳出血の原因は多岐にわたります。中でも代表的なのは、持続する高血圧による脳内小動脈の破綻です。ほかにも、先天的な脳動静脈奇形や海綿状血管腫、高齢者に多いアミロイド血管症などの血管異常、抗凝固薬・抗血小板薬の服用や血液疾患による出血傾向、脳梗塞後の血管破綻による出血性転化、交通事故や転倒といった頭部外傷などがあります。 これらの要因は脳の重要な部位に急激な出血を引き起こし、命に関わる重篤な症状へとつながる可能性があります。突然の頭痛、麻痺、言語障害、意識の変化などの症状が出た場合は、脳出血の可能性があるため直ちに医療機関を受診することが重要です。 高血圧性出血 項目 詳細 血圧の慢性的上昇 小さな脳血管の壁への持続的な負担。血管壁の弾力低下と脆弱化 微小動脈瘤の形成 弱った血管にできる小さなコブ。血管の一部が膨らみ、破裂リスクの増加 急激な血圧上昇 強いストレスや激しい運動、寒冷刺激による急な負担。もろい血管の破裂誘発 高血圧症の頻度 多くの人が持つ慢性疾患。目立たないうちに脳血管障害の進行 脳出血の発症機序 血管壁の脆弱化と微小動脈瘤の破裂による脳出血 予防のポイント 血圧の治療・生活習慣改善による脳血管の保護。血圧管理の重要性 脳出血は、脳内の細い血管が破れて血液がたまり、脳を圧迫する病気です。そのうち約6割から9割は高血圧が原因とされています。 慢性的に高血圧が続くと脳の細い動脈が硬く脆くなり、血圧が急に上がったときに破れやすくなります。とくに寒暖差、過度の飲酒、強いストレスは発症のきっかけになります。高血圧性出血は脳出血全体の多くを占めるため、日頃から血圧を適切に管理することが最も重要な予防策です。 血管異常(奇形・アミロイド) 項目 詳細 血管奇形の種類 脳動静脈奇形や海綿状血管腫などの先天性または後天性の血管構造異常 アミロイド血管症 高齢者の脳血管壁にアミロイド蛋白が沈着し脆弱化する状態 出血のきっかけ 弱くなった血管の血圧変動や外的刺激による破裂 若年者での特徴 高血圧がなくても血管奇形が原因で発症する脳出血 高齢者での特徴 アミロイド血管症が原因となる脳出血 重要性 高血圧以外の独立した脳出血原因としての臨床的意義 血管異常には、若年層にも見られる脳動静脈奇形や海綿状血管腫などの血管奇形と、高齢者に多いアミロイド血管症があります。血管奇形は生まれつき構造が弱く、血圧の急変や軽い刺激でも破れやすく、若年層の脳出血の原因です。 アミロイド血管症は血管壁に異常なたんぱく質が沈着し、もろくなった血管から出血を招きます。これらは高血圧の有無に関係なく発症しやすく、とくに若年層と高齢者の脳出血で重要な原因です。 予防には、定期的な健康診断や脳ドックで早期発見し、生活習慣を改善することが重要です。海綿状血管腫は無症状のことも多いため、症状が現れたら速やかに受診することが、命を守り再出血や重症化を防ぎます。 異常血管と診断された場合は、専門医による経過観察や必要に応じた治療が推奨されます。脳出血は突然発症し、対応の遅れが命や後遺症に直結するため、少しでも異変を感じたら直ちに受診することが大切です。 薬剤・出血傾向を伴う血液の病気 項目 詳細 出血傾向の仕組み 血液凝固機能の低下による止血力の低下 薬剤による影響 抗凝固薬(ワルファリン・DOACなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)による血液凝固抑制 薬剤の目的 血栓予防のための血のかたまり形成抑制 薬剤の副作用 脳内の細い血管からの出血リスク上昇 血液の病気による影響 血小板減少や凝固異常による全身的な出血しやすさ 高血圧性出血との違い 血管壁の脆弱化ではなく、血液そのものの止血不全 注意点 定期的な検査と医師の指示遵守による出血リスク管理 抗凝固薬(ワルファリン・DOACなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)は、血液の凝固を抑えることで血栓予防に有効です。しかし、これらの薬剤は脳内の細い血管からの出血リスクを高める可能性があります。 また、血友病や白血病などの血液疾患では、血小板減少や凝固機能の異常により全身で出血しやすくなります。これらのケースにおける脳出血は、血管壁の脆弱化ではなく、止血機能の低下によって発症する点が特徴です。服薬中または血液疾患の既往がある方は、定期的な血液検査や診察を受け、医師の指示を厳守することが重要です。 脳梗塞からの出血性転化 項目 詳細 出血性転化とは 脳梗塞で詰まった血管が再び開通した際、損傷した血管や脳組織から血液が漏れ出す状態 原因となる仕組み 血流遮断による血管壁・脳組織の脆弱化と、再開通による血流再流入 リスクを高める要因 広範囲の脳梗塞、高血糖、抗血栓薬の使用 起こりやすい時期 脳梗塞発症後の治療中や経過観察期間 主な影響 脳圧上昇や脳損傷の拡大による症状の急激な悪化 予防・対策の重要性 出血性転化リスクの管理、早期発見と適切な治療 出血性転化とは、脳梗塞で詰まった血管が再び開いた際に、損傷した血管や脳組織から血液が漏れ、脳出血を起こす状態です。脳梗塞では、血流が途絶えた部分の脳細胞が酸素や栄養を失い壊死します。 長時間の血流不足により血管壁や脳組織は脆くなり、治療や自然回復で血流が戻ると出血が発生しやすくなります。梗塞範囲が広い場合や高血糖、抗血栓薬の使用はリスクを高めます。出血が起こると脳の圧迫や損傷が加わり、症状が急激に悪化するため、治療中や経過観察中は早期発見と慎重な管理が欠かせません。 以下の記事では、脳梗塞の症状について詳しく解説しています。 頭部の外傷 項目 詳細 原因 交通事故、転倒、スポーツ中の衝突などによる頭部への強い衝撃 発症の仕組み 脳の内部や周囲の血管損傷による出血 主な種類 脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫 症状 意識障害、手足の麻痺、言語障害、激しい頭痛、嘔吐 症状発現の特徴 外傷直後または数時間〜数日後の症状悪化 検査方法 CTやMRIによる画像検査 治療方法 薬物療法、外科的血腫除去術 受診の重要性 頭部を強打した際の早期受診による重症化予防 頭部に強い衝撃が加わると、脳の血管が損傷し、脳内やその周囲で出血(外傷性脳出血)が起こることがあります。主な原因は交通事故、転倒、スポーツ中の衝突などです。出血部位によっては、脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫などに分類されます。 血液が脳を圧迫すると、意識障害、手足の麻痺、言語障害、激しい頭痛や嘔吐などの症状が現れます。発症は受傷直後とは限らず、数時間から数日後に出ることもあります。 とくに高齢者や抗凝固薬を服用している方は、軽い衝撃でも出血の危険があるため、頭を打った場合は症状がなくても早急に医療機関で検査を受けることが重要です。治療は血腫の大きさや症状に応じて薬物療法または手術が行われ、早期診断と治療が予後を左右します。 以下の記事では、頭部の外傷で発症する外傷性脳出血について詳しく解説します。 脳出血の治療法 治療法 詳細 保存療法 出血の広がり抑制と状態の安定化。血圧管理や脳圧コントロール 薬物療法 降圧剤による血圧低下。脳浮腫を軽減する薬剤の使用 リハビリテーション 運動機能や言語機能の回復訓練。日常生活動作(ADL)の自立支援 手術療法 血腫除去や圧迫軽減のための開頭手術、内視鏡下血腫除去術 再生医療 脳組織の再生促進を目指す先進治療。臨床応用段階の研究・実施 脳出血の治療は、出血の規模や症状、患者様の全身状態に応じて選択されます。軽症時は安静と血圧管理を行い、必要に応じて薬物で脳浮腫や血圧を調整します。麻痺や言語障害があれば早期にリハビリを開始します。 血腫が大きい場合や脳を強く圧迫している場合は、手術での除去が必要です。また、再生医療は損傷した脳組織の機能回復を目指す新しい選択肢です。ただし、治療法によっては合併症や再出血のリスクもあるため、必ず医師の判断のもと適切な方法を選ぶことが大切です。 保存療法 項目 詳細 血圧管理(降圧療法) 降圧薬による血圧コントロール。収縮期140mmHg未満または平均血圧130mmHg未満の維持 脳浮腫の抑制 浸透圧利尿薬(高張グリセロール・マンニトール)による脳圧の低下維持 全身管理と合併症予防 酸素投与や循環管理による低酸素・低血圧予防。感染対策や深部静脈血栓症予防 栄養・水分補給と休養確保 点滴や経管栄養による栄養・水分補給と十分な安静の確保 (文献2) 保存療法は、脳出血のうち出血量が少なく、脳や神経への圧迫が軽度な場合に選択される治療法です。全身状態が手術に耐えられない患者や高齢者、出血部位が深く手術が困難な症例にも適用されます。治療は安静を保ち、血圧を適切に管理することが基本です。 具体的には収縮期140mmHg未満、または平均血圧130mmHg未満を目標とします。(文献2) 降圧薬により再出血や細小血管への負担を軽減し、脳浮腫がみられる場合は高張グリセロールやマンニトールなどの浸透圧利尿薬を用いて脳圧を低下させます。点滴や経管栄養で水分・栄養を補給し、感染症や深部静脈血栓症の予防も並行して行います。 定期的な画像検査で経過を確認し、出血の自然吸収を促す、侵襲性が低くリスクの少ない治療法として、多くの患者にとって有力な選択肢です。 薬物療法 項目 詳細 血圧の管理 降圧剤(カルシウム拮抗薬・硝酸薬など)による血圧コントロール 止血剤の投与 トラネキサム酸等の止血剤による出血拡大の防止 脳浮腫の抑制 マンニトールや高張グリセロールによる脳内のむくみ軽減 抗凝固薬中和の対応 ワルファリンやDOACの効果を中和する薬剤の投与 合併症の予防 発作や感染症などの予防薬の使用 薬物療法は、脳出血治療において重要な役割を果たします。主な目的は、血圧の適切なコントロールと脳浮腫(脳の腫れ)の軽減です。降圧薬を用いて血圧を安定させることで再出血のリスクを低減し、さらにグリセロール(高張グリセロール液)などの脳圧降下薬で脳圧の上昇を抑えます。 また、けいれん発作の恐れがある場合には、抗てんかん薬を予防的に使用します。薬物療法は、手術が困難な症例や軽症例で有効です。症状の悪化防止と全身状態の安定化に寄与します。加えて、継続的な血圧管理や合併症予防の観点からも欠かせない治療手段です。 リハビリテーション 項目 詳細 理学療法 筋力回復、バランス改善、歩行訓練による身体機能の向上 作業療法 食事、着替え、排泄など日常生活動作の練習による生活自立支援 言語療法 発話・理解能力や嚥下機能の改善訓練によるコミュニケーション能力向上 認知療法 記憶力、注意力など脳の働きの改善訓練 脳出血の回復には、発症後できるだけ早い時期(通常24〜48時間以内)からのリハビリ開始が重要です。早期にリハビリを行うことで、運動機能や日常生活能力(ADL)の回復が促されます。 これは脳の神経可塑性を刺激し、新たな神経回路の再構築を助けるためです。リハビリは寝返りや起き上がり、座位保持などの基礎動作から始まり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携して段階的に進めます。継続訓練により、運動機能、言語機能、嚥下機能を改善し、日常生活の自立と社会復帰を支援します。 手術療法 項目 詳細 手術の目的 血腫除去による脳圧の軽減と脳損傷の予防 有効な理由 脳の圧迫解消による症状の悪化防止 適応となる状況 大量出血、急激な脳圧上昇、小脳出血による脳幹圧迫、一定以上の血腫での意識障害 期待される効果 意識障害や麻痺の進行防止と生命予後の改善 重要性 早期血腫除去による生命救助と回復促進 脳出血の手術療法は、血腫が大きく脳を強く圧迫している場合や、意識障害を伴い生命に危険が及ぶ場合に行われます。目的は、血腫を除去して脳の圧迫を軽減し、脳損傷の進行を防ぐことです。 主な方法には、頭蓋骨を約10cm開けて直接血腫を取り除く開頭血腫除去術、頭蓋骨に約1.5cmの小孔を開けて内視鏡で吸引・除去する内視鏡的血腫除去術、髄液の流れが障害され水頭症を起こした場合に管で体外へ排出する脳室ドレナージがあります。 手術方法の選択は、出血部位や量、全身状態を基に脳神経外科医が慎重に判断します。血腫除去後も、再出血予防のための血圧管理、脳浮腫対策、リハビリテーションなどの継続的治療が不可欠です。 再生医療 再生医療は、脳出血で損傷した脳細胞や血管を幹細胞で修復し、後遺症の改善や再発予防を目指す治療法です。 患者自身の骨髄・脂肪・歯髄から採取した幹細胞を体外で増殖させ、注射などで損傷部位に戻すことで、神経や血管の再生や炎症の抑制が期待されます。これにより、麻痺・言語障害・しびれなどの症状軽減が見込まれます。 リハビリテーションと併用することで効果が高まる可能性があり、早期の開始が望ましいとされています。 当院「リペアセルクリニック」では脳出血に対する再生医療の症例を紹介しているので、ぜひご確認ください。 脳出血の予防法 予防法 詳細 血圧・生活・嗜好の改善 塩分控えめの食事、適度な運動、禁煙、節度ある飲酒、ストレス管理 慢性疾患・薬剤使用の見直し 高血圧や糖尿病、脂質異常症の適切な管理。医師による薬剤調整や定期検査 若年・再発時の血管精密検査 血管奇形やアミロイド血管症などの精密検査。再発リスクの評価と対策 脳出血の予防には、まず血圧管理を含めた生活習慣の改善が重要です。塩分を控えた食事、適度な運動、禁煙、節度ある飲酒、ストレスの軽減は血管への負担を減らします。高血圧、糖尿病、脂質異常症といった慢性疾患は、医師の指導のもと適切に管理し、薬剤の調整や定期検査を行います。 若年発症や再発例では、血管奇形やアミロイド血管症などを早期に発見するための精密検査を実施し、再発リスクを評価・対策します。こうした予防法を行っても改善が見られない場合や、体調に不安がある場合は、早めに医療機関を受診し、医師の診断と治療を受けることが大切です。 以下の記事では、脳出血の再発率と再発防止につながる行動を詳しく解説しています。 血圧・生活・嗜好の改善 項目 詳細 高血圧管理 定期的な血圧測定と医師の指示に従った治療。薬物療法と生活習慣管理の継続 減塩と食事の見直し 塩分摂取量の制限。バランスの良い食事内容への改善 適度な運動 毎日のウォーキングや週150分以上の有酸素運動の継続 禁煙・節酒 タバコ・過度な飲酒の制限。血管への負担軽 ストレス管理 十分な休養や趣味時間の確保。心身のリフレッシュ 体重管理・糖尿病コントロール 適正体重の維持と糖尿病・生活習慣病の管理 脳出血の最大の原因は高血圧であり、日頃からの血圧管理が不可欠です。塩分を控えたバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、喫煙や過度な飲酒は避けましょう。これらの習慣は血管への負担を減らし、脳出血のリスク低下につながります。 規則正しい生活やストレスの軽減も血圧安定に有効です。とくに脳出血の既往がある方は、より厳格な血圧管理(130/80mmHg未満を目安)が推奨されます。継続した血圧管理と生活改善により、再発や新たな発症を防ぎやすくなります。 以下の記事では、高血圧の予防について詳しく解説しています。 慢性疾患・薬剤使用の見直し 脳出血のリスクは、高血圧に加え、糖尿病、脂質異常症、心疾患、腎疾患、血液疾患などの慢性疾患によっても高まります。これらは血管を脆弱にし、発症を招きやすくするため、継続的な管理が不可欠です。 抗凝固薬や抗血小板薬などの一部の治療薬は、管理が不十分だと出血リスクを増やす可能性があるため、定期的な診察や血液検査で病状と薬剤の効果・副作用を確認し、必要に応じて治療を見直すことが重要です。 薬剤の中止や変更は必ず医師・薬剤師と相談し、自己判断は避けましょう。生活習慣の改善と薬剤管理を含む慢性疾患の適切なコントロールが、脳血管の健康維持と脳出血予防につながります。 若年・再発時の血管精密検査 検査名 詳細 MRI/MRA(磁気共鳴画像検査・血管造影検査) 脳の組織や血管の状態確認。血管の狭窄、動脈瘤、血管奇形の有無を評価 頸動脈超音波検査(エコー) 首の動脈の血流測定と動脈硬化の評価。脳への血流状態の確認 血管造影検査(必要に応じて) カテーテルと造影剤による詳細な血管形状の評価。治療計画立案の補助 脳出血は高齢者に多く発症しますが、若年での発症や再発が疑われる場合には、脳動静脈奇形(AVM)や未破裂脳動脈瘤などの血管構造異常が隠れていることがあります。これらを放置すると再出血の危険性が高まるため、早期発見と症状の管理、必要に応じた外科的治療が重要です。 再発時には初回と異なる原因や血管の変化が生じている可能性があり、再評価としての精密検査が有効です。血管の詳細な状態を把握することで、発症リスクを正確に評価し、適切な治療や予防策を講じることができます。若年発症や再発例では、再発予防のため脳血管の精密検査が推奨されます。 脳出血が疑われる方は早急に医療機関を受診しよう 脳出血は時間の経過とともに脳への損傷が広がり、命や生活に深刻な影響を及ぼす危険性が高まります。 片側の手足が急に動かしにくい、言葉が出にくい、視界の一部が欠ける、強い頭の違和感や吐き気がある場合は、症状が軽くても急速に進行する可能性があるため、自己判断せずに迷わず救急要請してください。早期の診断と治療開始が後遺症を減らすために重要です。 脳出血の症状が改善しない、後遺症にお悩みの方は当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、脳出血による後遺症に直接アプローチできる再生医療を、治療の選択肢のひとつとしてご提案しています。 また当院では、現在も後遺症や症状でお困りの方の思いや生活上の不安に耳を傾けながら、状況に合わせた治療計画を一緒に考えてまいります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脳出血に関するよくある質問 脳出血の後遺症にはどのような症状があるのでしょうか? 脳出血後には、半身の麻痺や手足のしびれといった運動・感覚障害、言葉が出にくくなる失語や構音障害、記憶力や注意力の低下などの認知機能障害、嚥下障害、視野欠損や視力低下などの視覚障害がみられることがあります。 これらの症状は出血部位や範囲によって異なりますが、多くの場合、急性期から1年後もなんらかの後遺症が出るケースもあります。ただし、適切なリハビリテーションや継続的な医療支援によって、症状が改善する可能性も十分にあります。 以下の記事では、脳出血の後遺症について詳しく解説しています。 脳出血は若い人も発症する病気ですか? 若年層(18〜49歳)でも脳出血は発症する可能性があり、実際にこの年代が脳出血全体の約30%を占めるとの報告があります。(文献3) 日本における45歳未満の年間発症率は、平均で人口10万人あたり52.4人(95%信頼区間:35.7~69.2)とされ、高齢者に比べると頻度は低いものの、若年層でも発症が報告されています。(文献4) 発症の背景には、高血圧や血管異常、外傷、薬剤使用などがあり、とくに血管奇形や遺伝的要因は若年層における重要な原因とされています。 脳出血の入院期間はどのくらいですか? 一般的な入院期間の目安は以下のとおりですが、これはあくまで統計上の平均であり、実際の期間は年齢、症状の程度、合併症の有無、離床の進み具合などによって大きく異なります。厚生労働省の統計では、平均入院期間は77.4日と報告されています。(文献5) 以下の記事では、脳出血の入院期間について詳しく解説しています。 脳出血の退院後の生活は? 脳出血の再発予防には、毎日の血圧測定と降圧薬の適切な服用、減塩・栄養バランスの取れた食事、禁煙、節酒、適度な運動、規則正しい生活によるストレス軽減が重要です。 さらに、定期通院やリハビリを継続し、自宅でも訓練を行いながら症状の変化を医師に報告し、転倒防止のための住環境整備や介助者との連携を行うことで、再発リスクを減らし生活の質を保てます。 以下の記事では、脳出血の退院後の生活について詳しく解説しています。 脳出血の既往歴がありますが頭皮マッサージを受けても大丈夫でしょうか? 脳出血の既往がある方が頭皮マッサージを受ける際は、発症直後の急性期(24〜48時間以内)は再出血の危険が高いため、強い圧迫や刺激を避ける必要があります。 血圧が安定していても過度な力は脳や血管に負担をかけるため、優しい力加減で行うことが重要です。発熱、頭痛、めまいなど体調不良がある場合は施術を控え、施術前には医師に相談してください。 施術中に違和感や不調を感じたら直ちに中止し、医師の許可と適切な力加減のもとで強い刺激は避けましょう。 以下の記事では、頭皮マッサージと脳出血の関係性について詳しく解説しています。 家族が脳出血になってしまったときにできることはありますか? 脳出血からの回復には、ご家族の適切な支援が欠かせません。病気や治療内容、予想される後遺症を正しく理解し、リハビリ、日常生活の介助を行いましょう。精神的な寄り添いや励ましは、患者さんの意欲を高める重要な要素です。 介護保険や各種福祉サービスを活用して負担を軽減し、ご家族自身の健康管理にも配慮が必要です。医療スタッフと情報を共有しながら、患者さんとともに回復への道を歩んでいくことが大切です。 以下の記事では、脳出血後の介護ケアについて詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) 脳卒中患者に対する発症後48 時間以内の起立と定義した早期離床導入の効果|J-STAGE (文献2) 脳卒中治療ガイドライン2009|Ⅲ.脳出血 (文献3) Spontaneous Intracerebral Hemorrhage in the Young: An Institutional Registry Analysis|PMC PubMed Central® (文献4) Epidemiology of intracerebral hemorrhage: A systematic review and meta-analysis|frontiers (文献5) 退院患者の平均在院日数等
2025.08.31 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩や腕に違和感がある」 「肩に力が入りにくい」 腱板損傷が疑われたとき、対処に迷う方は少なくありません。五十肩との違いがわからず、不安が強まるケースもあります。肩や腕の不調を放置すると症状が悪化する可能性があるため、早期の判断が重要です。腱板損傷の症状や原因を理解すれば、適切な対処方法が見えてきます。 腱板損傷の症状 腱板損傷の原因 腱板損傷の治療法 腱板損傷の予防と再発防止策 記事の最後には、よくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腱板損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板損傷とは 項目 内容 腱板損傷の症状 肩や腕の動かしにくさや特定角度での違和感、夜間の不快感、力が入りにくいことや筋力低下などが挙げられる 似た症状の病気との違い 五十肩(肩関節周囲炎):関節包の炎症が主な原因で、動かし始めの違和感が強く、時間の経過とともに可動域が制限されます。一方、腱板損傷は腱の損傷により筋力低下が生じる点が特徴です。 変形性肩関節症:軟骨のすり減りによる関節の変形と違和感が原因。画像診断で確認 神経由来の痛み:首の神経圧迫による肩・腕のしびれや痛み。腱板損傷は局所の腱損傷が原因 原因 加齢、肩の使いすぎ、外傷など 診断 肩の動かしにくさや特定の角度での違和感が続く場合は、整形外科への受診が必要 腱板損傷は、肩の筋肉と腱で構成される腱板が傷ついた状態です。腱板は肩関節を安定させ、腕を動かす役割があります。負担や加齢によって腱に傷ができると、肩の動きが制限され、違和感が生じます。 日常生活に支障をきたすこともあるため、適切な診断と治療が必要です。軽度の場合は保存療法が中心で、症状や生活環境によっては手術が検討されます。 以下の記事では、腱板損傷と断裂の違いについて詳しく解説しています。 腱板損傷の症状 症状 詳細 肩や腕を動かしにくい 肩や腕の動作制限、腕を上げる動作が困難になる 特定の動作で違和感が出る 腕を一定の角度に動かした際の引っかかり感や不快感 夜間や安静時に症状が強まる 夜間や休息時の肩の不快感、睡眠障害の可能性 肩の力が入りにくい 筋力低下による物を持つ・支える動作が困難になる 腱板損傷では、肩や腕の動かしにくさ、特定の動作での痛み、夜間痛、筋力低下などの症状がみられます。 これらの症状は、物を持つ、腕の挙上、寝返りを打つといった日常の動作を妨げ、生活の質を低下させます。症状が強く時間が経っても改善しない場合は損傷が進行する恐れがあるため、早期に整形外科を受診することが重要です。 以下の記事では、腱板損傷の筋力や痛み確認方法について詳しく解説しています。 肩や腕を動かしにくい 内容 詳細 力が入らない 腕を横や上に持ち上げようとしても途中で力が抜ける状態 特定の角度で止まる 肩を一定の角度までは上げられるが、それ以上は力が入らず動かない 日常生活での不便 洗濯物を干す、棚の上の物を取る、髪をとかす・結ぶなどの動作が難しい 他人が動かそうとしても動かない 違和感が強く出る場合、自分以外が肩を動かしても固まって動かせないことがある 似た症状との違い 五十肩と違い、急に力が入らなくなることや特定方向だけ動きにくい特徴がある 腱板損傷では、腕を上げる・横に広げる・後ろに回すなどの動作で肩の痛みが生じ、動きが制限されます。 高い所の物を取る、服を着替えるといった日常動作にも支障が出ます。これは損傷した腱が正常に機能せず、肩関節の動きが妨げられるためです。 特定の動作で違和感が出る 腱板は肩関節を安定させ、腕を動かす役割を持つ組織で、動きの方向によって特定の部分が強く働きます。損傷があると、腕を横から90度まで上げる、後ろポケットに手を回す、頭上に物を持ち上げるなどの動作で負担が集中し、引っかかり感、脱力感、疼痛が生じやすくなります。 原因は腱が骨にこすれ、正常に収縮できず関節が不安定になるためです。腱板損傷では、できる動作とできない動作の差が特徴で、五十肩は方向に関係なく全体的に固くなります。また、動作中に「コキッ」という音や引っかかり感、腕を下ろす途中で力が抜けるドロップアームサインがある場合は、腱板の完全断裂が疑われます。 夜間や安静時に症状が強まる 原因 詳細 寝る姿勢と肩の負担 横向きで痛む側を下にすると体重で肩が圧迫され、仰向けでも腕の重みで肩に負担がかかる 筋肉の緊張と血流の悪化 筋肉が緊張して血流が悪くなり、酸素や栄養が届きにくくなるため、違和感が出やすくなる 関節の安定性低下による刺激 腱板損傷で筋肉と腱の連結が弱くなり、安静時でも肩関節内で組織が擦れ刺激を受けやすい 炎症の影響 損傷部位の炎症が夜間に強まり、血流悪化と体の休息中に違和感が増し、目が覚めることがある 肩の痛みは、腱板損傷により夜間や安静時に強まることがあります。寝る姿勢や腕の重みで肩に負担がかかり、筋肉の緊張や血流悪化で炎症が悪化するためです。 安静時でも肩内部で組織が擦れて刺激を受けやすく、痛みで目が覚めることもあります。姿勢の工夫と適切な治療が不可欠です。 肩の力が入りにくい 項目 詳細 腱板の役割と損傷の影響 肩関節の安定と腕を動かす筋腱複合体の損傷による力の伝わりにくさ 筋力低下のメカニズム 腱断裂による筋肉の付着不全と炎症による筋力低下 筋肉の萎縮や硬直 肩の使用減少による筋肉の細化と硬直 安定性低下に伴う不安定感 肩関節の緩みやずれ感による力の入りにくさと違和感・不安感 腱板は、肩関節を安定させながら腕を動かす重要な筋肉群の腱の集合体です。腕を上げる動きにも欠かせず、損傷すると肩に力が入りにくくなります。 とくに重い物を持つ時や腕を伸ばして物を取る時に力が出ず、腕が上がらないことがあります。これは、腱断裂により筋肉が骨にしっかり付着できなくなり、炎症や痛みによって筋力が低下するためです。 また、肩を使わない状態が続くと筋肉が痩せたり硬くなったりし、力が入りにくくなります。関節の安定性も損なわれ、動かす際にぶれやずれを感じることがあります。 腱板損傷の原因 原因 詳細 加齢による腱の変化 加齢に伴う腱の弾力性低下や摩耗による損傷の起こりやすさ 肩の使いすぎや外傷による負担 繰り返しの動作や急な衝撃による腱への過度な負担 生活習慣や体質の影響 姿勢不良や血流不足、体質的な腱の弱さによる損傷の起こりやすさ 腱板損傷は、加齢、肩の使いすぎ、外傷、姿勢不良、血流障害などによって腱が損傷し、肩関節の動きや腕の挙上が制限される状態を指します。 予防には肩への負担を減らしつつ、適度な運動で柔軟性を保つことが大切です。異常を感じたら早めに医療機関を受診してください。 加齢による腱の変化 項目 詳細 腱の柔軟性や強さの低下 腱の弾力や強度の低下、腱の硬化による負担耐性の減少 血流の悪化と修復力低下 血管の細さや閉塞による栄養不足、腱の修復能力の低下 繰り返しの負荷による摩耗 長期間の肩使用による腱の摩耗と変性、断裂リスクの増加 気づかない損傷の進行 進行がゆっくりで自覚症状が遅れることによる突然の症状出現 腱板は肩の動きを支える重要な腱ですが、加齢や長年の使用で弾力や強さが低下し、変性しやすくなります。細胞やコラーゲンの劣化、血流悪化で修復力も落ち、小さな負荷で損傷が進みやすくなります。 この変化は自覚しにくく、突然の痛みや動かしにくさとして現れることが多いため、違和感が出た場合は、早めの受診が大切です。 肩の使いすぎや外傷による負担 肩を繰り返し使いすぎると腱板に小さな損傷が蓄積し、炎症や違和感が生じやすくなります。野球やテニス、バレーボールなどのスポーツや重量物を扱う重労働は、肩の骨と腱が擦れたり衝突したりして損傷する原因のひとつです。 転倒や打撲、重い物を持ち上げた際の急な力でも損傷が起こり、突然の痛みや動かしにくさが現れます。とくに棘上筋は骨の突起の下を通るため摩擦や衝突を受けやすく、損傷しやすい部位です。そのため、肩を日常的に酷使する人は損傷が進行しやすくなります。 生活習慣や体質の影響 原因 詳細 年齢による変性(体質的影響) 加齢に伴う腱の老化と血流低下による修復力の低下、高齢者や大きな断裂のリスク増加 喫煙 ニコチンなどによる腱の細血管損傷と代謝・回復能力の低下 肥満・高BMI 体重増加による肩関節と腱への負担増加、慢性的炎症による腱の劣化促進 姿勢の悪さ 猫背や前かがみによる肩の動きの不均衡と腱への異常圧力・摩擦 運動不足 筋肉や腱の弱化による支持力低下と損傷のリスク増加 家族歴(遺伝的体質) 家族に腱板損傷の経験があることで、同様の体質的弱点の存在 生活習慣性疾患 高血圧や糖尿病による微小血流障害と腱の修復力低下、とくに糖尿病患者の組織老化促進 腱板損傷や腱板不全症候群は、加齢や生活習慣、体質が関与し、とくに65歳以上や広範囲の断裂がある方、喫煙者、糖尿病患者、筋萎縮や脂肪浸潤がある方、術後ケアを守らない方で発症リスクが高くなります。 2008年の研究では断裂の発生率が50~59歳で13%、60~69歳で20%、70~79歳で31%、80歳以上では51%に増加しています。(文献1) 喫煙は腱への血流を悪化させ修復力を低下させ、糖尿病などの生活習慣病も組織の修復を妨げます。遺伝的な体質が腱板の脆弱性に関与する可能性もあります。予防には、禁煙や適正体重の維持、良い姿勢と肩周りの軽い運動、慢性疾患の適切な管理が重要です。 腱板損傷の治療法 治療法 詳細 保存療法(薬物療法・注射・理学療法) 痛み軽減のための薬物使用、炎症抑制のステロイド注射、関節可動域維持の理学療法 リハビリテーション 肩周辺筋肉のストレッチと強化訓練、肩関節の動きの改善、関連部位の調整 手術療法 関節鏡視下手術による腱板断裂の修復、必要に応じた上方関節包再建術や人工肩関節置換 再生医療 神経や筋肉の機能改善を目指す細胞治療や組織修復技術 腱板損傷の治療は、症状や損傷の程度に応じて保存療法、リハビリテーション、手術療法、再生医療が選択されます。保存療法では薬剤や注射で炎症や痛みを抑え、理学療法で肩の可動域を維持します。 リハビリテーションでは筋力や柔軟性を向上させて日常生活での負担を軽減し、損傷が大きい場合や改善が得られない場合には手術を行います。 腱板損傷の治療法として、幹細胞を活用した再生医療も選択肢のひとつです。しかし、取り扱う医療機関が限られているため、事前に問い合わせや診察を受ける必要があります。 以下の記事では、腱板損傷の治療および自然治癒する可能性について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板損傷の治療法|どのくらいで治るのか・放置によるリスクを現役医師が解説 腱板損傷は自然に治癒する?放置のリスクと治療期間を現役医師が解説 保存療法(薬物療法・注射・理学療法) 治療法 詳細 薬物療法 違和感や炎症を和らげる消炎鎮痛剤の使用(飲み薬、湿布)による一時的な違和感の軽減と日常生活の改善 注射療法 超音波エコーで炎症部位を確認しながら行うステロイド注射やハイドロリリースによる炎症抑制と腱の拘縮を軽減 理学療法 理学療法士の指導による筋力強化運動、可動域拡大のストレッチ、温熱療法や電気治療を用いた負担を抑えた治療 注意点 腱の完全再生は困難で小康状態の維持を目指すこと、症状悪化時の医師受診の重要性、日常生活での肩負担軽減の工夫を含む 腱板損傷の保存療法は、手術を行わずに炎症や痛みを抑え、肩の機能維持を目指す治療法です。違和感や炎症を和らげる薬物療法(内服薬や外用薬)、直接炎症部位に注射をする注射療法(ステロイド注射やヒアルロン酸注射など)、そして温熱療法や電気療法を含む理学療法による血行促進や関節可動域の改善が行われます。 腱板が完全に治癒することは難しい場合もありますが、これらの方法で痛みの軽減や肩の動きの改善を目指します。 とくに加齢や軽度・部分断裂、高齢で活動量の少ない方では、保存療法で約75%の方に症状改善が見込まれます。(文献2) 以下の記事では、腱板損傷に対する保存療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 肩の腱板損傷にはテーピングが有効!巻き方やリハビリについて専門医が解説 【痛み止め】関節症に使うステロイド注射の効果は?気になる副作用も解説 膝のヒアルロン酸注射が効かないのは失敗が原因?効果を感じないのはなぜ? リハビリテーション リハビリ内容 詳細 段階的な運動療法 初期の軽い可動域訓練・ストレッチによる関節可動域回復、腱板筋群強化、肩甲骨運動によるバランス改善 物理療法の併用 アイシング・温熱療法・超音波治療・電気刺激による痛みと炎症の軽減、血流改善 姿勢や動作の指導 日常生活での正しい肩の使い方や姿勢指導、負担軽減動作の習得 医師による継続的サポート 理学療法士や医師による個別プログラム作成と症状・状態に応じた進行管理 注意点 段階的な負荷設定の重要性、自己判断での継続回避、強い違和感が出た場合の中止と医師への相談 リハビリテーションは、腱板損傷の症状を改善し、肩の動きをスムーズにしながら筋力を強化して関節の安定性を高め、日常生活への支障を減らす重要な治療です。 痛みを軽減し、硬くなった関節の可動域を広げ、肩を支える筋肉を鍛えることで再発や悪化を防ぎます。理学療法士の指導によるストレッチや筋力強化運動で正常な肩の機能を取り戻し、生活の質向上と予防につながります。 以下の記事では、腱板損傷のリハビリや痛みを和らげる方法について詳しく解説しています。 【関連記事】 腱板損傷に効果的なリハビリとは?NG行為や治るまでの期間も解説 肩腱板断裂の痛みを和らげる方法5選!ストレッチや治療方法を現役医師が解説 手術療法 項目 詳細 手術が有効な理由 自然治癒困難な腱を物理的に修復して機能回復を図る効果、科学的根拠に基づく症状改善、早期修復による悪化防止 手術方法 関節鏡視下腱板修復術(ARCR)による小切開での腱板縫合と身体の負担軽減 手術の流れと適応 急性完全断裂や大きな損傷、保存療法無効例、生活や仕事への支障例での早期手術検討 効果 術後2〜10年間での肩の動きと機能回復の持続、従来法より優れた長期成績 注意点 感染症・神経障害・再断裂リスク、術前術後管理の重要性 (文献3) 損傷した腱は自然治癒が難しいため、手術で物理的に修復することで肩の違和感や動きの改善が期待できます。また、放置すれば損傷が拡大し、関節機能の低下や将来的な関節炎につながります。したがって、早期修復は進行防止に有効です。 現在主流の関節鏡視下腱板修復術は、小切開で腱を骨に縫合する低侵襲手術であり、術後の回復や合併症リスクの軽減が見込まれます。ただし、手術には感染、神経損傷、再断裂などのリスクがあります。とくに高齢者や大きな断裂、脂肪浸潤がある場合は再断裂のリスクが高く、術後リハビリの質が治療結果を左右するため適切な管理が必要です。 以下の記事では、肩腱板断裂の手術と入院期間について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は、患者様自身の脂肪組織や血液から採取した幹細胞や血液成分を用い、損傷した腱板の修復や再生を目指す治療法です。手術を伴わないため身体への負担が少ないのが特徴です。 幹細胞の働きによって、従来の薬物療法やリハビリでは改善が難しい損傷にも根本的な回復が期待できます。細胞は培養後に損傷部位へ注射で投与され、治療後も通常の生活を送りやすいのが利点です。 当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。ぜひご確認いただき、再生医療も治療法の一つとしてご検討ください。 腱板損傷の予防と再発防止策 予防と再発防止策 詳細 生活習慣の見直しで肩への負担を減らす 重い物の持ち上げを控える、無理な動作の回避、禁煙による血流改善、健康的な体重維持 運動とストレッチで肩の柔軟性を維持する 肩周りの筋力強化運動、肩甲骨の動きを良くするストレッチ、適切なウォームアップとクールダウン 定期的な検診で早期発見につなげる 医師による状態評価、リハビリ進行の確認、違和感や痛みの早期相談による再発予防 腱板損傷を防ぐには、日常生活や運動習慣の見直しが重要です。重い物を避け、無理な動作を控え、禁煙と適正体重の維持によって肩の負担を軽減し、血流を改善します。 肩周囲の筋力強化や肩甲骨のストレッチ、適切なウォームアップとクールダウンで柔軟性を保つことも大切です。また、定期的な診察で状態を確認し、違和感があれば早めに医師に相談することで再発を防げます。 生活習慣の見直しで肩への負担を減らす 理由 詳細 肩への過度な負担の軽減 繰り返しの動作や重い荷物、長時間同じ姿勢による腱への負担減少、腱の疲労や損傷予防 筋肉や腱の老化・劣化の遅延 適度な運動やストレッチによる筋肉の柔軟性維持、血流改善による腱の健康促進と損傷リスクの軽減 肩の安定性と動きのサポート 無理な動作の回避や正しい荷物の持ち方による関節負担の軽減とケガ予防 炎症や疲労の蓄積防止 休息・睡眠の確保、ストレス管理による炎症悪化防止と肩の健康維持 具体的な生活習慣の見直し例 休憩の確保、体全体を使った荷物の持ち方、姿勢改善、適度な運動とストレッチによる肩周辺筋力と柔軟性の維持 生活習慣の見直しは腱板損傷の予防と再発防止に効果的です。繰り返し動作や重い荷物の持ち運び、長時間同じ姿勢など肩に負担をかける行動を減らすことで、腱の疲労や損傷を防げます。 適度な運動やストレッチ、正しい姿勢は筋肉の柔軟性と血流を保ち、腱の老化や劣化を遅らせます。肩の使い方を工夫し、重い物は両手で持つ、長時間同じ姿勢を避ける、作業中は休憩を取る、睡眠時の枕や姿勢に配慮することが大切です。 運動とストレッチで肩の柔軟性を維持する 予防ポイント 詳細 肩の柔軟性維持 肩の筋肉や腱の硬さや動きの悪さを防ぎ、不自然な負担を軽減し腱の損傷リスクを抑制 筋力強化による関節安定性向上 肩周囲の筋肉を適度に鍛え、肩関節を安定させ腱板への負担を分散、損傷予防に寄与 血流改善による組織回復促進 運動やストレッチで肩周辺の血行促進、栄養と酸素供給を増やし腱や筋肉の修復と疲労回復を支援 こわばり予防と動作負担軽減 肩のこわばりや硬さを防ぎ、動かしやすくすることで動作時の負担を減らし腱板の保護を図る 運動時の注意点 無理のない範囲での定期的なストレッチ、痛みがある場合は中止し専門家相談、軽い筋力トレーニング推奨 肩の柔軟性維持は腱板損傷の予防に有効で、筋力強化は関節を安定させ負担を分散します。運動やストレッチは血流を促し修復を助け、こわばり予防で腱板を守ります。 違和感がある場合は無理をせず医師の指導を受けることが大切です。 定期的な検診で早期発見につなげる ポイント 詳細 軽い損傷や初期変化の発見 問診・動作チェック・エコー・MRIによる自覚症状が軽い段階での異常発見 早期発見による治療効果 保存療法や生活習慣の見直しで状態安定、悪化防止と手術回避の可能性向上 再発・悪化リスクの管理 継続的な肩の状態確認と再発防止のための指導 状態把握によるセルフケア 日常生活での肩の使い方指導により無理な動作を避けやすく、良好な状態維持支援 肩に違和感が出た場合、放置せず早めに整形外科を受診しましょう。早期診断と適切な治療・ケアで症状の悪化や重症化を防げます。 とくにスポーツや肉体労働で肩を酷使する方は、症状がなくても定期検診で小さな異変を早期発見し、予防対策を講じることが大切です。 以下の記事では、MRI検査について詳しく解説しています。 腱板損傷でお悩みなら当院へご相談ください 腱板損傷は、日常生活に支障をきたします。腱板損傷を改善するには原因の特定と正しい治療の継続が不可欠です。 腱板損傷の症状が改善しない、強い違和感にお悩みの方は当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、腱板損傷の症状に直接アプローチする再生医療を、治療の選択肢のひとつとして提案しています。 再生医療は、薬物や手術を用いず、幹細胞を投与することで損傷した腱板を再生させる可能性がある治療法として、近年注目されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腱板損傷に関するよくある質問 腱板損傷でやってはいけないことはありますか? 腱板断裂の悪化や再断裂を防ぐためには、肩への負担を避けて安静を保つことが重要です。 具体的には、重い物を持ち上げる動作(とくに頭上や水平位置)、無理に遠くや高所へ手を伸ばす動作、腕を強くひねる動作、急な動きや肩を大きく後ろに回す動作を控えましょう。症状や治療経過に応じて、医師の指示に従いましょう。 以下の記事では、腱板断裂の際にやってはいけないことを詳しく解説しています。 腱板損傷(断裂)は自然治癒で治りますか? 腱板断裂は程度によりますが、自然治癒は一般的に期待できません。完全断裂や広範囲断裂では自然には治らず、放置すると症状が悪化することがあります。 そのため、多くの場合は手術などによる治療が必要です。症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、腱板断裂の自然治癒について詳しく解説しています。 片桐作成KW(腱板損傷 自然治癒) 腱板損傷(断裂)を放置するとどうなりますか? 腱板断裂は自然に治癒せず、放置すると断裂が広がります。筋肉は萎縮して脂肪に置き換わり、修復が困難になります。 腱板の機能が失われると肩関節が変形し、違和感や動作制限、筋力低下で腕が挙がらなくなり、進行すると睡眠や服の着脱など日常生活にも支障が出るため、早期診断と適切な治療が重要です。 以下の記事では、腱板損傷を放置するリスクを詳しく解説しています。 腱板損傷を発症したスポーツ選手や有名人はいますか? 腱板損傷や断裂を経験したのは以下の日本人スポーツ選手です。 山本由伸(プロ野球・ドジャース) 由規(元ヤクルト) 浅尾拓也(元中日) 斉藤和巳(元ソフトバンク) 福田秀平(元ソフトバンク/ロッテ) 腱板損傷はプロスポーツ選手にも発症し、競技パフォーマンスや選手生命に大きな影響を与えることがあります。 以下の記事では、山本由伸選手が発症した腱板損傷について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) 修正中 (文献2) What happens to patients when we do not repair their cuff tears? Five-year rotator cuff quality-of-life index outcomes following nonoperative treatment of patients with full-thickness rotator cuff tears|PubMed (文献3) At a 10-Year Follow-up, Tendon Repair Is Superior to Physiotherapy in the Treatment of Small and Medium-Sized Rotator Cuff Tears|PubMed
2025.08.31 -
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- 脳卒中
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「突然、手足がしびれる、言葉が出にくい」 「最近、意識がもうろうとすることがある」 「もしかして脳梗塞かも」と不安を感じたことはありませんか。高血圧や糖尿病を抱え、脳梗塞のリスクを心配している方も多いでしょう。脳梗塞は年齢や性別に関係なく、誰にでも起こり得ます。 本記事では、現役医師が脳梗塞について詳しく解説します。 脳梗塞の種類 脳梗塞の一般的な症状 脳梗塞の初期症状 脳梗塞の原因 脳梗塞の治療法 脳梗塞の予防法 脳梗塞は、正しい知識を持ち早期発見に努めることが重要です。記事の最後には、脳梗塞に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳梗塞について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脳梗塞とは 項目 内容 血管の詰まり 脳の血管内に血栓ができ、血流が止まる状態 酸素・栄養の不足 血液が届かず、脳細胞が酸素と栄養不足に陥る 脳細胞の壊死 酸素不足により神経細胞が死滅し、機能障害が生じる 後遺症の可能性 麻痺・言語障害・意識障害など、回復が難しい症状の発生 脳梗塞とは、脳の血管に血栓ができて血流が止まり、酸素や栄養が届かなくなる病気です。脳細胞が壊死し、手足の麻痺や言葉の障害、意識低下などの神経障害が引き起こされます。 症状は突然現れ、進行も速いため、早期の発見と治療が非常に重要です。 種類や原因によって症状や治療は異なります。脳梗塞の早期発見・治療には、正しい理解が不可欠です。異変を感じたら早めに医療機関を受診することで、後遺症の軽減および生活の質の維持に寄与します。 以下の記事では、脳梗塞のサインや後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 脳梗塞になりやすい人の特徴は?前兆や後遺症も解説 脳梗塞の種類 種類 原因 特徴 BAD(脳梗塞) 太い血管にできたプラークが、小血管の入口をふさぐことで生じるタイプ 数時間以内の症状進行。TIA(一過性脳虚血発作)の前兆の反復。進行性麻痺の出現 ラクナ脳梗塞 細い脳血管が高血圧で詰まる。小さな梗塞が深部にできる 軽症のしびれや手足が動かしにくくなる。ときに無症状(無症候性脳梗塞)で進行することもある アテローム血栓性脳梗塞 太い血管の動脈硬化で狭くなり血栓ができる。高血圧・糖尿病など関係 徐々に症状が進行。前触れ症状が出ることもある 心原性脳梗塞 心房細動などで心臓内血栓が脳へ流れて詰まる 突然の激しい症状。意識障害や半身麻痺が多い 小脳梗塞 小脳の血流が遮断される めまい、吐き気、バランス障害など 脳梗塞は、血管の詰まり方や原因によっていくつかのタイプに分類されます。 種類は「BAD」「ラクナ脳梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳梗塞」「小脳梗塞」があり、それぞれのタイプによって症状や治療法、再発のリスクも異なるため、正確な診断と対処が求められます。 BAD(脳梗塞) 項目 内容 原因 太い動脈(中大脳動脈や脳底動脈)近くの小さな枝(穿通枝)の起始部にアテローム性プラークができる。高血圧・糖尿病・脂質異常症が関係。細い動脈自体ではなくそのすぐ近くに病変がある 症状の特徴 症状が徐々に悪化する傾向。発症後数時間以内に手足の麻痺や構音障害が進むことが多い 特徴的な現象 微細なTIA(一過性脳虚血発作)が繰り返される症状が起こることがある 梗塞巣の大きさ ラクナ脳梗塞より大きく(15mm以上)広がりやすい傾向がある BAD(Branch Atheromatous Disease)は、主に中大脳動脈や脳底動脈の分岐部にできたアテローム性プラークが、穿通枝の起始部を閉塞することで発症する脳梗塞です。 このため、細小動脈そのものの病変によるラクナ脳梗塞とは病態が異なります。梗塞病巣は直径15mmを超えることが多く、画像上では通常の穿通枝梗塞よりも広範囲に広がりやすい傾向があります。 症状の特徴は、発症後数時間以内に局所麻痺や構音障害が徐々に悪化する進行性経過をたどることです。脳梗塞に進行することがあります。BADの発症には、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が関与しています。 以下の記事では、BADについて詳しく解説しています。 ラクナ脳梗塞 項目 内容 原因 脳の奥にある細い血管(穿通枝)が高血圧などで閉塞 梗塞の大きさ 小さく、直径1.5cm以下の深部にできる梗塞 症状 軽い手足のしびれや麻痺。無症状(無症候性脳梗塞)もある 予防 血圧管理が重要で、再発リスクが高い 注意点 軽度のため発見されにくいが、放置すると重篤な脳梗塞につながる ラクナ脳梗塞とは、脳の奥にある細い血管が詰まって起こる小さな脳梗塞です。主な原因は高血圧で、脳の深部に直径1.5cm以下の梗塞ができることが特徴です。 症状は軽く、手足のしびれや軽い麻痺などが中心で、無症状のまま気づかれないこともあります。そのため無症候性脳梗塞とも呼ばれており、再発率が高いのが特徴です。 放置すると重い脳梗塞につながります。重篤化する前に早期発見と血圧管理、生活習慣の見直しが重要です。 以下の記事では、ラクナ脳梗塞について詳しく解説しています。 アテローム血栓性脳梗塞 項目 内容 原因 脳の太い血管(中大脳動脈など)が動脈硬化で狭窄。狭くなった部分に血栓(かたまり)が形成。高血圧・糖尿病・脂質異常症が関係 症状の特徴 症状が徐々に進行するケースが多い。手足の動きづらさや言語障害が代表的。発症前に軽い違和感や前兆が現れることも 進行の速度 比較的ゆっくり進行し、数日かけて症状が悪化しやすい 予防と管理 生活習慣の見直しによる動脈硬化の予防、定期的な血圧や血糖値の管理が重要 アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い動脈が動脈硬化で狭くなり、その部分に血栓ができて血管が詰まることで発生します。主な原因は高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病であり、これらの管理が予防の基本となります。 症状は突然ではなく、数日かけて徐々に手足の動かしにくさや言葉が出にくくなるなどの言語障害が進行することが多いのが特徴です。 発症前に軽い違和感や前兆が現れることもあるため、異変を感じた際には早急に医療機関への受診が重要です。適切な治療と生活習慣の改善によって動脈硬化の進行を抑え、再発を予防することが不可欠です。 以下の記事では、アテローム血栓性脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 心原性脳梗塞 項目 内容 原因 心房細動などの心臓の不整脈による心臓内の血栓が脳まで流れ詰まる 詰まる血管 脳の太い血管が突然詰まる 症状の特徴 激しい頭痛、意識障害、半身麻痺、言語障害などが急激に現れる 重症度 重症化しやすく、迅速な救急対応が必要 注意点 心疾患を持つ方は脳梗塞リスクが高く、日頃から注意が必要 心原性脳梗塞は、心房細動などの不整脈で心臓内にできた血栓が血流に乗り、脳の太い血管を塞ぐことで発症します。突然、激しい頭痛や意識障害、片側の麻痺、言語障害などの重症症状が現れ、急速に進行するのが特徴です。 症状に気づいた場合は、迷わず救急車を呼び、一刻も早く治療を受ける必要があります。心臓に病気を抱えている方は、血栓ができないように抗凝固薬を服用し、定期的に心臓の状態を管理するのが重要です。日常生活での自己管理と医療機関との連携が、脳梗塞の予防と命を守るために不可欠です。 以下の記事では、心原性脳梗塞の症状について詳しく解説しています。 小脳梗塞 項目 内容 原因 小脳の血流が途絶えること 主な症状 ふらつき、めまい、バランス障害 その他の症状 手足の震え、歩行の不安定さ、吐き気 注意点 症状が脳梗塞と気づきにくいことが多い。脳幹に近く、放置すると命に関わる場合がある 受診のタイミング 急なふらつきや歩行障害が現れたら速やかな受診が必要 小脳梗塞は、バランスや運動の調整を担う小脳への血流が止まることで起こる脳梗塞の一種です。主な症状には、突然のふらつき、めまい、手足の震え、歩行の不安定さなどがあります。これらの症状は、脳梗塞と気づかれにくいことがあるため注意が必要です。 とくに、小脳は脳幹に近いため、放置すると命にかかわる危険性があります。症状が軽く見えても、急に悪化するおそれがあるため、急なバランスの乱れや歩行障害が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。早期に診断と治療を行うことで、重い合併症を防ぐことが期待できます。 以下の記事では、小脳梗塞で起こりうる後遺症について詳しく解説しています。 脳梗塞の一般的な症状 脳梗塞の一般的な症状 詳細 片側の麻痺・しびれ(顔・手足) 脳の片側血流障害による反対側の顔や手足の動きにくさ、感覚障害、部分的または全身的な麻痺 言語障害(ろれつが回らない・言葉が出にくい) 発語困難、発音の不明瞭さ、言葉を選ぶのが困難な状態、口や舌の動きの制限 視覚・平衡感覚の異常(視野・視力・めまい・バランス障害) 視野欠損、視力低下、めまい、ふらつき、平衡感覚の乱れによる歩行不安定や転倒の危険性 意識障害・混乱・突然の激しい頭痛 意識の鈍麻や消失、思考混乱、急激な強い頭痛、脳機能の急激な低下、緊急対応を要する状態 脳梗塞は脳の血流が突然止まることで起こり、その影響で手足の片側に麻痺やしびれ、言葉が出にくくなる言語障害、視野や視力の異常、めまいやバランスの乱れなどの症状が現れます。これらの症状は脳のどの部分に障害が起きたかによって異なります。とくに早朝や起床直後に起こることが多いのが特徴です。 症状に気づくのが遅れると後遺症のリスクが高まるため、少しでもおかしいと感じた場合は迷わず速やかに医療機関を受診しましょう。早期の対応が命を守り、後遺症を減らすことにつながります。 片側の麻痺・しびれ(顔・手足) 脳梗塞の初期症状としてよく見られるのが、顔や腕など身体の片側に起こる麻痺です。麻痺は脳の血流が悪くなり、運動機能をつかさどる神経の働きが妨げられるために起こります。 顔の場合、大脳から顔の筋肉を動かす神経への伝達がうまくいかなくなり、口角が下がる、目が閉じにくいといった左右差が表れます。 腕の麻痺は、脳の運動野の損傷によって起こり、脳の片側が障害されると反対側の手足に症状が現れるのが特徴です。これらは脳梗塞のサインとして非常に重要で、少しの変化でも見逃さないことが大切です。 以下の記事では、手足のしびれとして現れるアッヘンバッハ症候群と脳梗塞の関係性について詳しく解説しています。 言語障害(ろれつが回らない・言葉が出にくい) 項目 内容 脳の言語中枢の障害 脳の左側大脳半球にある「ブローカ野」(言葉を作る)と「ウェルニッケ野」(言葉を理解・選ぶ)への血流不足や細胞損傷 ブローカ失語 話の理解は可能だが、言葉が出にくく短くぎこちない話し方になる ウェルニッケ失語 流暢に話すが言葉のつながりが悪く意味不明、時に自分の異変に気づかない 構音障害 脳幹や神経線維路の障害により舌や口の筋肉の動きが鈍り、「ぱ・た・か」が言いにくい、かすれ声や鼻声などになる アノミア 言葉を思い出せず探す時間がかかる状態で、軽度から重度まで幅広い言語困難 言語障害は、脳梗塞によって脳の言語機能を司る部分が障害されることで起こります。とくに左脳のブローカ野やウェルニッケ野が損傷を受けると、言葉を作ったり理解したりする力に支障ができるのが特徴です。 ブローカ失語では言葉が出にくくぎこちない話し方になり、ウェルニッケ失語では流暢に話せても内容が伝わりにくくなります。構音障害は、話すための筋肉の動きがうまくいかなくなり「ぱ・た・か」が言いづらくなったり、かすれ声や鼻声が出る状態です。 言いたい言葉が思い出せず、言葉を探すのに時間がかかるアノミアも見られます。これらの症状は突然現れることが多く、早期の治療とリハビリが重要です。 視覚・平衡感覚の異常(視野・視力・めまい・バランス障害) 日常で気づきやすいサイン 内容 片方の視野が見えにくくなる・ぼやける・二重に見える 突然の視野の欠損や視覚障害。脳の視覚中枢の異常の可能性 ぐるぐる回るめまい・ふわふわ感覚・バランス崩し 回転性めまいやふらつき。脳の平衡感覚を司る部分の障害のサイン 立っているだけでのふらつきや倒れそうな感覚 バランス調整障害による重度の不安定さ。転倒や事故のリスク上昇 早期受診の重要性 これらの症状があれば、迅速に医療機関に相談・受診が不可欠 脳梗塞は、脳の一部に血液が届かなくなることで発症します。視覚をつかさどる後頭葉や視覚野、視神経が障害されると、片側の視野が欠けたり、視界がぼやける、ものが二重に見えたりする症状が現れます。 小脳や脳幹が障害されると、めまいやふらつき、立てなくなることがあり、転倒のリスクが高い状態です。小脳は姿勢や歩行、脳幹は眼球や頭の位置の調整に関わっています。視覚と平衡感覚は連携して働いており、脳梗塞によって情報の統合がうまくいかなくなると、バランスが崩れやすくなります。 「突然片方の視野が見えにくくなる」「視界がぼやける・二重に見える」「めまいやふわふわした感覚」「立っているだけでもふらつく」などの症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。 視野の一部がかすむ症状が気になる方は、視覚に異常が起きる閃輝暗点の見え方について解説している以下の記事もあわせてご覧ください。 意識障害・混乱・突然の激しい頭痛 項目 内容 意識障害・混乱の原因 脳の特定部分への血流不足による酸素・栄養不足。意識や思考を司る部分の機能低下による反応の鈍化や混乱状態 意識障害の重篤さ 10秒以上の血流停止で意識消失の可能性。脳全体の機能低下による重篤な状態 突然の激しい頭痛の原因 血管破裂や血液漏出による頭蓋内圧の急上昇。雷鳴頭痛(サンダークラップ頭痛)と呼ばれる瞬間的な強烈な違和感 症状が突然起こる理由 血管の閉塞や破裂という急激な出来事が一瞬で発生するため。予兆なしに症状が始まる特徴 緊急対応の重要性 脳細胞は酸素をすぐに必要とし、放置で脳細胞の死滅と後遺症リスクが増加。即時の救急医療搬送が必要 意識障害や混乱は、脳の特定部位に血液が届かなくなり、酸素や栄養が不足することで起こります。とくに意識や思考を司る領域が影響を受けると、反応が鈍くなったり、ぼんやりしたりする混乱状態になることがあります。 血流が一時的に止まり10秒以上続くと意識を失うこともあり、これは脳全体の機能が急激に低下するためです。(文献1) 突然の激しい頭痛は、脳の血管が破れて血液が漏れ出し、頭蓋内の圧力が急上昇することで生じ、雷鳴頭痛と呼ばれる非常に強い違和感として現れます。 これらの症状が突然起こるのは、血管の詰まりや破裂が急に発生するためであり、予兆なく始まるのが特徴です。脳は常に酸素を必要とするため、症状が現れたら直ちに医療機関を受診しましょう。 脳梗塞の初期症状(早期のサインに注意) 脳梗塞の初期症状 詳細 表情・上肢の麻痺 顔の片側の動きにくさや歪み、片方の腕や手の力が入らない状態 言語サイン ろれつが回らない、言葉がスムーズに出ない、話しにくさや発音の異常 覚醒・自律系の前兆サイン(目・平衡・あくび・耳鳴り・いびき) 目のかすみや視野異常、めまいやバランスの乱れ、頻繁なあくび、耳鳴り、いびきの変化などの自律神経や覚醒状態の乱れ 脳梗塞は一刻を争う疾患であり、発症から治療までの時間が短いほど、後遺症を軽減できる可能性が高くなります。初期症状を見逃さず、迅速に対応することが重要です。 顔のゆがみ、腕の脱力、言葉のもつれは脳梗塞を疑う代表的なサインです。さらに、脳の深部や後方が障害されると、視覚や平衡感覚、自律神経にも異常が現れることがあります。視野のかすみ、めまい、ふらつき、頻繁なあくび、耳鳴り、大きないびきの変化なども注意が必要な前兆です。 以下の記事では、脳梗塞の危険なサインを詳しく解説しています。 表情・上肢の麻痺 脳梗塞の初期症状として、表情や上肢の麻痺が現れるのは、脳の血流不足により運動機能をつかさどる神経が障害されるためです。顔の表情筋は大脳皮質から顔面神経核を経て動かされますが、この経路が遮断されると、顔の片側に麻痺が生じ、笑顔が左右非対称になったり口角が上がらないなどの変化が見られます。 また、脳の運動野の損傷により、反対側の腕や手に力が入らなくなる上肢麻痺も起こります。これらの症状は脳梗塞の代表的なサインであり、顔と腕の麻痺が同時に見られた場合はとくに注意が必要です。本人が異変に気づかないこともあるため、周囲が早期に異変を察知し、受診を促すことが重要です。 言語サイン 項目 内容 言語機能を担う部位 脳のブローカ野(言葉を作る場所)とウェルニッケ野(言葉を理解する場所) 失語症 言葉の理解や表現が難しくなる状態 構音障害 発声器官の動きが悪くなり、言葉がはっきり話せなくなる状態 発症の特徴 血流不足で言語を司る部分が急に働かなくなり、言葉が出にくくなったりろれつが回らなくなる 重要性 急に起こるため初期サインとして早期発見・治療が脳の回復に重要。本人や周囲が気づきやすく、脳梗塞の疑いを持つ大切なサイン 「話しかけても返事が変」「言葉がはっきりしない」「言っていることが理解できない」といった言語の異常は、脳梗塞の典型的なサインです。とくに左脳に障害が起きた場合、言葉を話す・理解する力に影響が出ます。 「名前が出てこない」「簡単な文章が言えない」など、わずかな違和感でも見逃さないことが大切です。ろれつが回らないときは、無理をせずに医療機関を受診しましょう。 覚醒・自律系の前兆サイン(目・平衡・あくび・耳鳴り・いびき) 覚醒・自律系の前兆サイン 内容 目・視野の異常 後頭葉・視覚路の血流不足による視野の一部欠損(半盲)や物が二重に見える(複視)状態 平衡感覚の異常 小脳や脳幹の循環障害による立ち上がり時のめまい・ふらつき、歩行困難や転倒の危険性 耳鳴り・聴覚異常 延髄や聴橋の血流不足で起こる突発性のザー音の耳鳴りや耳詰まり、時に片側の難聴。めまいやふらつきと併発しやすい 頻回・異常なあくび 脳の血流不足による自律神経の乱れで突然起こる異常なあくび 急に始まったいびき・睡眠呼吸の変化 延髄や橋の虚血で気道を開く筋肉が一時的に働かず呼吸が不安定に。初めてのいびきや呼吸音の変化は脳卒中の前兆の可能性 脳梗塞の前兆として、覚醒や自律神経に関わるさまざまな症状が現れることがあります。視野の一部が見えにくい(半盲)や物が二重に見える(複視)は、後頭葉の血流不足によるものです。ふらつきや歩行困難は小脳や脳幹の障害によって起こり、突然の耳鳴りや耳の詰まり感にも注意が必要です。 また、頻繁なあくびや急に始まったいびきも脳の異常を示す場合があります。これらの症状は脳梗塞の可能性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。 以下の記事では、脳梗塞の前兆を詳しく解説しています。 【関連記事】 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 耳鳴りは脳梗塞の前兆?耳鳴りを伴う脳や耳の病気も解説 生あくびは脳梗塞の前兆?病的な生あくびであるかの見分け方も解説 脳梗塞といびきは関係がある!危険ないびきの見分け方 脳梗塞の原因 原因 詳細 生活習慣病・動脈硬化(高血圧・糖尿病・脂質異常症) 高血圧による血管への強い圧力、糖尿病による血管の傷害、脂質異常症による動脈硬化の進行。これらが血管を狭くし脳梗塞のリスク増加 心房細動などの心疾患(心臓由来の血栓) 心房細動などの不整脈で心臓内に血栓ができ、それが脳に飛んで大きな血管を詰まらせる。突然の重症発症の原因 血液・血管の固有要因(加齢・もやもや病・脱水など) 加齢による血管の劣化やもやもや病による血流障害、脱水による血液の粘度上昇などが血管詰まりの要因となる 生活習慣・環境因子(喫煙・過度飲酒・ストレス・脱水) 喫煙による血管収縮や動脈硬化促進、過度の飲酒による血圧上昇、ストレスによる血管への悪影響、脱水による血液粘度増加が脳梗塞リスクを高める 脳梗塞は、動脈硬化や心臓病などで血管が詰まって起こります。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が血管を狭くし血栓ができやすくなるのが特徴です。 心房細動など心臓の不整脈も血のかたまりを作りやすく、脳の血管を塞ぐことがあります。また、加齢や脱水で血液が濃くなったり血管が弱ったりすることも要因です。喫煙や飲酒、ストレスなどの生活習慣もリスクを高めるため、生活の見直しが予防につながります。 生活習慣病・動脈硬化(高血圧・糖尿病・脂質異常症) 項目 内容 生活習慣病とは 食事・運動・喫煙・飲酒などの習慣が原因で起こる病気。高血圧・糖尿病・脂質異常症などを含む 動脈硬化との関係 生活習慣病の進行で血管壁に脂肪やコレステロールがたまり血管が硬く狭くなる状態 脳梗塞とのつながり 動脈硬化による血管の狭窄や血栓形成が脳血流を妨げ、脳梗塞の主な原因となる 高血圧の危険因子 血管に強い負担がかかり動脈硬化を進める要因 糖尿病の危険因子 血管内皮の傷害促進による血栓形成のしやすさ 脂質異常症の危険因子 悪玉コレステロール(LDL)の増加による血管壁への脂肪沈着と動脈硬化の促進 対策の重要性 塩分控えめの食事、適度な運動、禁煙など生活習慣の改善による動脈硬化進行抑制と脳梗塞リスク軽減 高血圧、糖尿病、脂質異常症は、血管に負担をかけて動脈硬化を進める病気です。血管が狭くなると血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。これが脳の血管で起こると脳梗塞につながります。 脳梗塞を防ぐには、血圧・血糖・コレステロールをしっかり管理し、薬や食事療法を継続することが大切です。 以下の記事では、生活習慣病について詳しく解説しています。 【関連記事】 糖尿病の初期症状とは?合併症の特徴やセルフチェックリストを紹介 【なぜ治らない?】糖尿病が完治しない理由やなってしまったらどうするべきか医師が解説 心房細動などの心疾患(心臓由来の血栓) 心房細動とは、心臓の上部にある心房が電気信号の乱れで細かく震え、不規則かつ速く動く不整脈です。そのため心房が十分に収縮できず、血液の流れが悪くなります。とくに心房の左心耳部分に血液がたまりやすくなり、よどみができて血液が固まり血栓が形成されやすくなります。 できた血栓は心臓から血流に乗って脳へ運ばれ、脳の太い血管を詰まらせることで酸素や栄養の供給が遮断され、脳梗塞を引き起こします。この現象を心原性脳梗塞と呼び、範囲が広く重症化しやすい特徴があります。 心房細動による血栓は比較的大きく、脳の重要な血管を塞ぎやすいため、命に関わる重篤な状態になりやすく、後遺症のリスクも高い状態です。自覚症状がない無症候性の場合でも脳梗塞の危険があり、症状の有無に関わらず予防治療が非常に重要となります。抗凝固薬の服用や定期的な心電図検査による管理が推奨されます。 以下の記事では、心房細動になりやすい人の特徴を詳しく解説しています。 血液・血管の固有要因(加齢・もやもや病・脱水など) 原因 内容 とくに注意が必要な点 加齢 細い血管がもろくなり、詰まりやすくなる 高齢者では血管の弾力低下により、リスク増加 遺伝的要因(もやもや病など) 脳の血管が狭くなり、異常な細い血管ができる 若年層でも発症しやすく、出血や血流不足を起こしやすい 脱水・血液の濃さ 脱水や赤血球の増加で血液がドロドロになる 暑さや下痢・嘔吐時にリスク上昇、小さな血管が詰まりやすくなる 加齢に伴い、血管は徐々に弾力を失い、狭くなり詰まりやすくなります。こうした変化は、脳梗塞のリスクを高める大きな要因のひとつです。 また、先天的な血管異常であるもやもや病にも注意が必要です。脳の血流が不安定になり、わずかな刺激で脳梗塞を起こすことがあります。若年層にも発症し、進行すると重い症状を引き起こすことがあります。 加えて、脱水も見過ごせないリスクです。とくに夏場の水分不足や、下痢・嘔吐が続くと、血液が濃くなり、血流が滞りやすくなります。これが小さな血管の閉塞を招き、脳梗塞につながることがあります。 血管や血液の状態は脳梗塞の発症に深く関係しています。日常的な体調管理に加え、こまめな水分補給や定期的な健康チェックが予防には欠かせません。 以下の記事では、もやもや病について詳しく解説しています。 【関連記事】 もやもや病とは指定難病の一つ|症状や治療法を解説【医師監修】 もやもや病がまねく脳梗塞のリスク要因と予防策について 生活習慣・環境因子(喫煙・過度飲酒・ストレス・脱水) 項目 内容 喫煙 血管内皮の損傷による動脈硬化の促進。血液の凝固能力向上による血栓形成の増加。悪玉コレステロール増加、善玉減少。血圧上昇と心拍数増加による血管ストレス 過度な飲酒 高血圧誘発による動脈硬化リスク増加。心房細動など不整脈の誘発と血栓形成。脂質異常症の悪化。利尿作用による脱水状態の促進 ストレス 自律神経の乱れによる血圧上昇。ストレスホルモンによる血糖・コレステロールの一時的上昇。生活習慣の乱れ(喫煙増加や過食、過飲酒)によるリスク複合化 脱水 体内水分減少による血液粘度上昇と血栓形成の促進。重度脱水による血圧低下と脳血流の滞り。夏場の熱中症時に悪化しやすく、高齢者はとくに水分補給の注意が必要 喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を進める大きなリスクです。過度な飲酒も心臓に負担をかけ、不整脈の原因になります。加えて、強いストレスや不規則な生活は自律神経を乱し、血圧の急激な変動を引き起こす要因です。 環境要因が重なることで、脳梗塞の発症リスクは高くなります。生活習慣の改善は、今からでも始められる大切な予防策です。 以下の記事では、生活習慣について詳しく解説しています。 【関連記事】 尿酸値と痛風の関係性|8.0mg/dLはやばい?高い原因と治療法を解説 女性の尿酸値が高い原因は?生活習慣やホルモン・食べ物についても解説 脳梗塞の治療法 治療法 詳細 再開通療法 血栓を溶かす薬剤(アルテプラーゼなど)の静脈注射。発症後できるだけ早く、4.5時間以内の使用が効果的。 薬剤が使えない場合は、血管内カテーテル治療で血栓を直接除去 薬物療法 抗血小板薬や抗凝固薬の使用。血小板の働きを抑え血栓形成を防ぐ薬や、血液の凝固を抑制する薬剤を用いて脳梗塞の再発や進行を抑制。副作用や投与量管理が必要 リハビリテーション 麻痺や言語障害などの機能回復を目的とした理学療法・作業療法・言語療法の開始。できるだけ早く取り組むことが望ましい 再生医療 脳細胞の損傷修復を目指し、幹細胞などを用いた先進的な治療法。まだ研究段階であるが将来の治療法として期待されている 脳梗塞の治療では、詰まった血管をできるだけ早く再び開通させることが最も重要です。発症後すぐに対応することで、後遺症や死亡リスクが大きく左右されます。 治療方法には、血栓を溶かす薬剤(アルテプラーゼなど)の静脈注射があり、薬剤が使用できない場合は血管内カテーテルによる血栓の除去を行います。再発を防ぐためには抗血小板薬や抗凝固薬を用います。 発症後は麻痺や言語障害の回復を目指して、リハビリテーションを早期に開始することが重要です。さらに、幹細胞を用いた再生医療も将来の治療法として期待されています。患者様の状態に応じて、これらの治療法が適切に選択されます。 以下の記事では、脳梗塞の治療方法や入院期間について詳しく解説しています。 再開通療法 項目 内容 脳細胞の壊死防止 血管の詰まりを早期に解消し、壊死の進行を止めることで脳機能のダメージを最小限に抑制。回復しやすいペナンブラ領域の血流再開 治療開始までの時間の重要性 発症後時間が短いほど救える脳細胞が多く、回復の可能性が高まる 後遺症の重篤化防止 血流回復で麻痺・言語障害・意識障害など重篤な後遺症を防ぐか軽減し、日常生活への影響を小さくする可能性 t-PA静脈内投与療法(点滴) 血栓を溶かす薬剤を点滴投与。発症から4.5時間以内の治療が効果的 血栓回収療法(カテーテル治療) カテーテルで直接血栓を取り除く治療。t-PAが使えない場合や大きな血管閉塞に対応。発症から6時間以内(一部24時間まで)に実施が有効 (文献2)(文献3) 再開通療法は、脳の詰まった血管の血流を回復させるための重要な治療です。 発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬剤「t-PA」を点滴で投与するt-PA静脈内投与療法が有効です。4.5時間を過ぎた場合や血管が太い血管が詰まった場合は、足の付け根などからカテーテルを入れて直接血栓を取り除く血栓回収療法が行われます。(文献4) こちらは発症から6時間以内、場合によっては24時間以内まで有効です。(文献5) いずれの治療も早期発見・早期対応が命と後遺症の軽減に直結し、症状に気づいたら迷わず救急要請を行うことが大切です。 薬物療法 分類 内容 急性期の治療 血栓を溶かす薬(t-PA)による再開通の促進。脳浮腫や脳圧上昇を抑える薬剤の使用 再発予防の治療 抗血小板薬・抗凝固薬による血栓形成の抑制。降圧薬・血糖降下薬・脂質異常症治療薬による基礎疾患の管理 補助的な薬物療法 メコバラミンによる神経回復の補助と後遺症軽減のサポート 薬物療法は、脳梗塞の治療において重要な役割を果たします。発症直後は、血栓を溶かす薬(t-PA)で血流を再開させ、脳の腫れを抑える薬でダメージを最小限に抑えます。 また、脳細胞を保護する薬剤も使用されます。回復期には再発防止のため抗血小板薬や抗凝固薬を使用し、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患の管理も重要です。さらに、神経の修復を補助する目的でメコバラミンが使われることもあり、薬物療法は段階ごとに多面的な役割を担います。 以下の記事では、脳梗塞に対する薬物療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞に使われるメコバラミン(メチコバール)とは?副作用と有用性を解説 【医師監修】メチコバールの効果が出るまでの期間は?効かないと感じたときの対処法も解説 脳梗塞の痙縮・麻痺に対するボトックスの効果や影響について現役医師が解説 リハビリテーション リハビリの種類 目的・内容 理学療法 歩行・筋力・バランス機能の回復、拘縮予防、廃用症候群の防止 作業療法 着替え・食事・入浴など日常生活動作(ADL)の練習、自立支援 言語療法 言語の理解・発話機能や、飲み込み(嚥下)機能の回復 認知リハビリ 注意力・記憶・判断力などの回復、身体と認知を組み合わせた訓練の実施 脳梗塞の発症後は、麻痺や言語障害などの後遺症が出ることがあります。機能障害がある場合、できるだけ早期にリハビリを開始することが重要です。 とくに脳の可塑性(回復力)が高まるのは発症後数カ月以内、なかでも最初の3カ月が最も効果的とされています。この時期に集中的にリハビリを行うことで、機能回復が大きく促進されることがわかっています。(文献6) リハビリでは、歩行訓練や作業療法、言語療法などを、患者様の状態に合わせて段階的に進めていきます。退院後もリハビリを継続することで、再発予防や生活の質(QOL)の維持にもつながります。 再生医療 項目 内容 損傷した脳組織の修復・再生 患者様自身や他者の幹細胞を使い、神経細胞の新生・神経回路の再構築・脳内の血管新生を促進。脳機能の回復が期待される 脳の保護作用と炎症抑制 幹細胞が神経を保護し、過剰な炎症を抑制することで、さらなる脳細胞の損傷防止と脳の環境改善を促す効果 リハビリテーション効果の増強 再生医療による脳機能改善がリハビリの効果を高め、神経ネットワークの回復で機能改善や学習効果の向上につながる可能性 再生医療は、損傷した脳細胞や神経の機能回復を目指す先進的な治療法です。幹細胞などを用いて神経の再生を促す方法で、脳梗塞の後遺症への新たなアプローチとして注目されています。 再生医療は、症状の程度や発症からの時期によって適応が異なるため、希望する場合は対応している医療機関で診察を受け、医師と相談することが必要です。 脳梗塞の後遺症に対する再生医療の症例を以下の記事で紹介しています。再生医療について知りたい方は、ぜひ一度ご覧ください。 脳梗塞の予防法 予防法 詳細 血圧・血糖・コレステロールの管理 高血圧や糖尿病、脂質異常症の適切なコントロール。薬物療法や生活習慣の改善による動脈硬化予防と血管負担の軽減 規則正しい生活習慣と食事の工夫 バランスの良い食事(野菜中心、塩分・脂肪の制限)。適度な運動、禁煙、適量の飲酒、ストレス管理による生活習慣の改善 定期的な検診と医師の指導に基づいた継続的なケア 定期的な検査と医師の指導に基づく継続的な健康管理の実践 脳梗塞の予防には日々の生活習慣の見直しが欠かせません。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患がある方は、症状が安定していても油断せず、日々の血圧や血糖値などの数値を管理し、定期的に通院しましょう。 食事は野菜を中心に、塩分や脂肪を控え、適度な運動、禁煙、適量の飲酒、ストレス管理を心がけることが大切です。定期的な検診を受け、医師の指導に基づいた健康管理を継続することで、脳梗塞の発症や再発のリスクを大きく減らせます。日々の生活習慣を見直し、脳の健康を守ることが重要です。 血圧・血糖・コレステロールの管理 項目 内容 血圧の管理 高血圧による血管壁への負担軽減。動脈硬化の進行抑制。脳梗塞や脳出血の発症・再発リスクの大幅な減少。目標血圧140/90mmHg未満、リスク高い人は130/80mmHg未満。生活習慣改善と薬物療法の併用 血糖値の管理 高血糖による血管壁の傷害防止。動脈硬化の進行抑制。血管狭窄や血流障害を防ぎ、脳梗塞リスクを下げる コレステロールの管理 悪玉コレステロール(LDL)の抑制によるプラーク形成防止。動脈硬化や血栓形成の予防。血管の健康維持による脳血管障害リスクの減少 高血圧・高血糖・脂質異常は、脳梗塞の三大リスク要因です。これらを放置すると、血管の壁に負担がかかり、動脈硬化や血栓ができやすい状態になります。 毎日の食事や運動、薬の服用に加えて、家庭用の血圧計や血糖値測定器を活用することで、日常的な数値管理がしやすくなります。異常な数値が続く場合は、早めに医師に相談することが大切です。 以下の記事では、生活習慣病改善について詳しく解説しています。 【関連記事】 脂質異常症改善のための正しい運動とお茶の選び方|生活習慣の見直しポイントを医師が解説 血圧の正常値とは?内科医師が詳しく解説! 規則正しい生活習慣と食事の工夫 項目 内容 塩分・脂肪の摂取制限 塩分過剰は高血圧の原因。飽和脂肪酸や悪玉コレステロール(LDL)が動脈硬化を促進し血管詰まりを引き起こす バランスの良い食事 野菜、果物、青魚(EPA・DHA)、大豆製品、食物繊維の摂取による血圧低下と血管の健康維持。動脈硬化の進行抑制 規則正しい食事のリズムと食べ方 早食いやながら食いを避け、よく噛んでゆっくり食べることによる過食防止と血糖値の急上昇抑制。肥満や糖尿病の予防 適度な運動の習慣化 週150分程度のウォーキング、水泳、ヨガなど有酸素運動による血流改善。高血圧、糖尿病、肥満の改善。血管の健康維持とリスク低減 十分な水分摂取 脱水による血液の粘度上昇と血栓形成リスクの軽減。とくに起床時や就寝前にコップ1杯の水の摂取推奨 ストレス管理と睡眠促進 慢性ストレスによる血圧上昇と自律神経バランス崩れの予防。ストレス発散法の実践と良質な睡眠の確保 睡眠不足や不規則な生活は、血圧や自律神経に悪影響を及ぼします。できるだけ毎日同じ時間に起き、バランスの取れた食事を意識しましょう。 とくに減塩・低脂質・高カリウムの食事は、脳梗塞予防に効果的です。また、喫煙や過度な飲酒は血管へのダメージを加速させるため、禁煙・節酒にも取り組みましょう。健康維持は日々の積み重ねが大切です。 以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものを解説しています。 定期的な検診と医師の指導に基づいた継続的なケア 項目 内容 生活習慣病の早期発見と管理 血圧・血糖・コレステロールなどの数値の継続的モニタリング。異常発見時の早期治療や生活習慣改善の開始。動脈硬化・血栓形成の進行防止 無症候性の脳梗塞や血管異常の早期発見 MRIや頸動脈エコーによる画像検査で自覚症状のない脳梗塞や血管狭窄、動脈瘤などの異常を把握。適切な治療・生活指導による重症化予防 医師の指導に基づく継続的なケアと生活習慣改善 検査結果に基づく専門医の生活指導と薬物療法。自己管理意識の向上と持続的な血圧測定・食事・運動の改善。再発防止のためのリハビリやフォローアップの実施 再発リスクの定期評価と予防対策の更新 定期的評価による治療方針の見直し。個別的かつ効果的な予防策の継続的実施 不安の軽減と健康意識の向上 健康状態の把握。医師のサポートで予防意識・生活管理意識の向上。モチベーション維持の促進 自覚症状がなくても、脳梗塞のリスクが徐々に進行していることがあります。年に1〜2回は定期健診を受け、血圧・血糖・脂質の数値を確認しましょう。 医師から生活指導を受けている場合は、自己判断で中断せず、継続的な管理が重要です。検診結果をもとに、将来のリスクを見据えた予防計画を立てることが、脳梗塞予防の第一歩となります。 以下の記事では、脳梗塞の患者様の家族が看護する際に注意すべきポイントを詳しく解説しています。 脳梗塞でお悩みの方は当院へご相談ください 脳梗塞は、脳の血管が詰まり血流が途絶えることで、脳細胞が壊死してしまう病気であり、発症後の早期対応が重要です。治療だけでなく、再発予防やリハビリも継続的に行うことが不可欠です。 脳梗塞でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、脳梗塞の治療において、有効な選択肢のひとつとして再生医療を提案しています。 再生医療は、幹細胞の投与によって脳細胞の再生を促し、後遺症の改善や身体機能の回復を目指す治療法であり、リハビリとの併用による相乗効果が期待されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脳梗塞に関するよくある質問 脳梗塞が進行して手遅れになるとどうなりますか? 脳梗塞は発症後すぐの治療が重要です。治療が遅れると脳の損傷が進み、半身麻痺、言語や発音の障害、嚥下障害、記憶・判断力の低下などの重い後遺症が出ることがあります。 重症では寝たきりや意識障害、命の危険も伴います。こうなると回復は限られ、長期介護が必要になることも多くなります。早期受診と治療が何より大切です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症と手遅れにならないための治療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞後遺症で性格が変わる?主な変化と原因を解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 脳梗塞は20代でも発症する可能性はありますか? 脳梗塞は高齢者に多い病気とイメージされていますが、若い世代でも珍しくありません。 若年成人(18〜50歳)の脳梗塞は全体の約10〜15%を占め、20〜30代でも1%程度の発症が確認されています。若年性脳梗塞は加齢以外の原因によることが多く、脳動脈解離、もやもや病、オーラを伴う片頭痛や卵円孔開存などが原因です。 近年、米国では20〜44歳の脳卒中発症率が1993年の10万人あたり17件から2015年には28件へ増加しています。(文献5) CDCの報告では、2020〜22年に18〜44歳の脳卒中が14.6%増加しており、生活習慣の乱れ、ストレス、肥満などの影響が指摘されています。(文献6) 年齢に関係なく、異変を感じたら早急に受診することが重要です。 以下の記事では脳梗塞と年齢との関係性について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳梗塞になりやすい年齢は?女性と男性の発症確率も紹介 20代でも脳梗塞になる!確率と原因を詳しく解説【医師監修】 脳梗塞の後遺症で補助金などは受けられますか? 脳梗塞により後遺症が残った場合、公的な支援を受けられる場合があります。身体障害者手帳の交付や、障害年金、介護保険サービスの利用などが該当します。 以下に、利用可能な支援制度の一覧を記載しています。 支援制度の種類 詳細 障害年金 麻痺や言語障害などの後遺症がある場合に受給対象。障害基礎年金・障害厚生年金の支給 障害手当金 障害年金に該当しない軽度の障害にも一時金(約100万円前後)の受給可能性 高額療養費制度 医療費自己負担が一定額超過時の払い戻しによる経済的負担の軽減 傷病手当金 働けなくなった会社員等への健康保険からの収入補填。給与約2/3相当の給付 介護保険・自治体手当 要介護認定で訪問介護やリハビリサービスの利用可。自治体による追加支援金の活用 身体障害者手帳 麻痺や言語障害など後遺症がある場合の取得可。医療費助成・税金軽減・公共交通割引などの支援適用 申請には医師による診断書などの必要書類が求められるため、まずは主治医や自治体の窓口にご相談ください。 参考文献 (文献1) ヒト被験者における脳血流の実験的停止|PMC (文献2) 『発症 3 時間超 4.5 時間以内の虚血性脳血管障害患者に対する rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の適正な施行に関する緊急声明』 (文献3) 慈恵ICU勉強会2015年3月31日石垣 昌志|脳梗塞䛾血管内治療 (文献4) A critical time window for recovery extends beyond one-year post-stroke|JNP (文献5) Stroke in young adults: Current trends, opportunities for prevention and pathways forward|ScienceDirect (文献6) Why so many people are having strokes in their 20s, 30s and 40s: ‘We’ve never had patients so young’|NEWYORKPOST
2025.08.31 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「歩くと足の親指の付け根が痛む」 「足の親指が痛くて反らせない」 こうした症状は、種子骨炎のサインかもしれません。 種子骨炎は、地面を踏み込む際などに負荷がかかりやすい足の親指の付け根「種子骨」が炎症を起こしてしまう病気です。 この記事では、種子骨炎が治るまでの期間について治療法や再発予防対策とあわせて解説します。 症状に不安がある方や治療をいつまで続ければ良いのか不安を抱えている方は、ぜひ記事を最後までご覧ください。 また症状を放置すると、炎症の慢性化や骨の変形、関節機能の低下を招くおそれもあります。 重症化すると手術も検討されますが、手術に頼らず、痛みの根本改善を目指すなら再生医療も検討しましょう。 近年注目されている再生医療は、患者さまご自身の細胞や血液を利用して体の自然治癒力を高める治療法で、炎症や損傷を受けた組織の修復を促し、痛みの軽減や機能回復が期待できます。 種子骨炎の気になる症状や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ当院(リペアセルクリニック)へご相談ください。 種子骨炎はどのくらいで治る?4週間から6週間ほどが目安 種子骨炎は症状の重さにもよりますが、ほとんどの場合約4週間〜6週間ほどで治ります。 種子骨炎は軽度〜中程度であれば、歩くと痛みが出る、赤く腫れる程度です。 手術などは行わず、テーピングやサポーター、痛み止めなどの保存療法で改善する場合がほとんどです。 しかし、重度になると変形や骨壊死といった症状も現れ、手術を伴うケースも多いため、完治まで数カ月かかる場合もあります。 種子骨炎とは? 種子骨炎とは、足の親指の付け根部分にある「種子骨」に炎症が起きる病気です。 ダンスやランニング、長時間の歩行など踏み込む動作を繰り返すことで、足の裏に継続的な負荷がかかることで炎症が生じます。 足のアーチが高い人やハイヒールをよく履く人も種子骨周辺に負荷がかかりやすいため、種子骨炎を起こしやすいです。 放置して負荷をかけ続けているうちは自然に治る可能性は低く、根本的な原因を解決する必要があります。 以下では症状やなりやすい人の特徴を解説していますので、ぜひ参考にしてください。 種子骨炎の主な症状 種子骨炎になりやすい人の特徴 種子骨炎の主な症状 種子骨炎の主な症状は足の親指付け根部分の強い痛みです。 運動中(とくにジャンプの着地時)、歩行中、そのほか靴底の薄い靴やヒールの高い靴を履いた際などにも患部に強く痛みを感じます。患部を押したり、手で親指部分を反らすと強く痛む場合も種子骨炎の可能性が高いです。 まれに患部が熱を持ち、種子骨周辺や親指が赤く腫れてしまうこともあります。 痛みを放置していると疲労骨折や骨壊死に至る可能性もあります。痛みを感じた際は早めに医療機関を受診してください。 種子骨炎になりやすい人の特徴 種子骨炎にかかりやすい人の特徴は以下の通りです。 スポーツ、ダンスなどで長時間足に負担をかけている。 外反母趾や凹足(足のアーチが異常に高い状態)など足の形に問題がある。 ハイヒール、靴底が柔らかくて薄い靴をよく履く。 また、年齢としては小学生〜中学生に多く見られます。大学生以上になると減少する傾向がありますが、大人になっても日常生活の中で発症してしまうことはあるため注意が必要です。 種子骨炎の治療法 種子骨炎の主な治療法は患部を安静にし治療を進める「保存療法」です。必要に応じてアイシングや痛み止め薬を服用します。 ほとんどの人が保存療法によって症状が改善されますが、数カ月症状の改善が見られない場合は手術療法も検討されます。 それぞれの治療法について以下で紹介します。 保存療法 手術療法 保存療法 種子骨炎を治すには、安静が重要です。 運動や長時間の歩行は避ける。 重い荷物は持たない。 上記は治療中に必ず守るべき点です。 そのほか、痛み止め薬の服用、アイシングなどによって炎症を抑えます。 また、テーピングも大切です。母趾の反りを抑えることを目的としたテーピングを施します。 テーピングは誤った方法で行うと逆効果になる可能性もあるため、医師の指導のもと行いましょう。 テーピングのほかにもインソールや、足裏用のサポーターの使用も有効です。痛みがひどい場合、ステロイド注射を打つ場合もあります。 手術療法 保存療法を継続しても症状が改善されない場合、手術療法も検討されます。 手術では、種子骨の全摘出、もしくは部分摘出をします。 しかし、種子骨を取り除くと足のバランスが崩れ、足の変形や可動性の低下が見られる可能性があります。医師と十分な相談をした上で判断しましょう。 種子骨炎の再発予防策 種子骨炎は再発しやすい病気のため、予防のためには足に負担をかけている根本的な原因を取り除くことが重要です。日常生活での工夫により、種子骨炎の再発リスクを下げられます。 具体的な予防方法について以下で解説します。 靴を見直す 種子骨は、スポーツや歩く際にとくに負荷を受けます。 体重がかかるだけでなく、踏み込む動作で地面に力を伝える際にも大きな負担がかかっています。 ハイヒールや靴底が薄い靴を履くことが多い人は、靴を見直す必要があります。 以下を参考に、ご自身に合った靴を選びましょう。 【避けるべき靴】 ハイヒール:仕事で必要な場合は低く太めのヒールを選び、着用時間を短くする 靴底が薄い靴:クッション性が高い靴底の靴に変更する サイズが合わない靴:足先の締め付けがきつい靴や靴の中で足が動く靴 【おすすめの対策】 足のサイズにぴったり合った靴を選ぶ 自分の足に合わせたインソール(中敷き)を作成する 保護パッド付きインソールを使用する 種子骨炎専用のインソールを検討する ハイヒールや靴底が薄い靴を頻繁に履く人は、定期的に靴を見直しましょう。種子骨炎の人向けのインソールなどもあるため、気になる方はぜひ調べてみてください。 足のストレッチ 種子骨炎を防ぐためには、足先の負担を軽減することが重要です。 そのため、ふくらはぎのストレッチを行いましょう。 ふくらはぎが柔らかくなると、足首の可動域が上がり、足先への負担を減らせます。 【立って行うストレッチ】 壁に手をついて片足を大きく後ろに引く 後ろ足のかかとを床につけたまま膝を伸ばす 前足は軽く膝を曲げ、体重を前にかけて後ろ足のふくらはぎを伸ばす 足を入れ替えて反対の足のふくらはぎも伸ばす 【寝転がって行うストレッチ】 床に仰向けに寝転がる 両足を上げて足首をバタバタと上下に動かす 【座って行う場合】 足を組み、ふくらはぎを揉む とくに固くなりやすい下部分、ふくらはぎの膨らみ終わりからかかとにかけてを重点的に揉む まとめ|種子骨炎は4〜6週間の治療期間が必要! 種子骨炎は約4〜6週間で症状が改善されます。 テーピングや痛み止め薬を活用しながら安静にしていれば、ほとんどの人は良くなりますが、もし効果がない場合は注意が必要です。 炎症を放置していると、骨が壊死、あるいは変形を起こしてしまうことがあります。 その場合手術によって骨を摘出しなければならず、症状の改善に数カ月かかることもあります。 また、種子骨炎は再発も多いため、普段の生活の中で予防策を立てることが重要です。 靴底が薄い靴は種子骨への負担を高めるため、クッション性の高い靴やインソールを活用しましょう。足のストレッチも効果的です。足関節の可動域を広げることがケガ予防につながります。 適切な治療と予防対策を継続することで、種子骨炎の再発を防ぎ、快適な日常生活を送りましょう。 種子骨炎に関してよくある質問 種子骨炎に関してよくある質問と回答は、以下のとおりです。 種子骨炎とはどんな病気ですか? 種子骨炎はどれくらいで治りますか? 種子骨炎になってしまった場合気を付けるべきことはありますか? 種子骨炎とはどんな病気ですか? 種子骨炎とは、足の親指の付け根にある「種子骨」が炎症を起こしてしまう病気です。 歩行時やスポーツをした際、足の親指の付け根に強い痛みが起こります。 走ることの多いスポーツ、ダンスをしている人や、足のアーチが高く足の付け根部分に継続的に負荷がかかりやすい人がよくなってしまいます。 種子骨炎はどれくらいで治りますか? 種子骨炎は適切な治療を進めていれば、ほとんどの人が4週間〜6週間で症状が改善します。 種子骨の変形や骨壊死などによって手術が必要な場合、治療期間が数カ月に及ぶ可能性もあります。 種子骨炎になってしまった場合気を付けるべきことはありますか? 種子骨炎になった場合、まずは安静が重要です。運動や長時間歩くことは避け、重い荷物もなるべく持たないようにしましょう。 テーピングや装具のサポートも有効です。テーピングは母趾が反らないよう制限する目的で行います。 親指の根元、土踏まずをつなぐような形でテーピングしますが、自己流で行うとやり方を誤ってしまい足に余計に負担をかけてしまう可能性があります。 テーピングをする場合、医師の指導のもと実施してください。 種子骨炎は再発しやすいため予防が大事です。靴が原因の場合は自分の足に合った靴に見直すことで再発予防になります。また、足周りのストレッチをすることで可動域が上がり、ケガをしづらくなります。
2025.07.31 -
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「化膿性脊椎炎はどれくらいで完治する?」 化膿性脊椎炎と診断された方の中には、上記のような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 結論、化膿性脊椎炎の完治期間は早いケースで6週間が目安です。 しかし、細菌感染によって炎症を起こす化膿性脊椎炎では、背骨に感染が広がる可能性があるため、早期に適切な治療を受けることが重要です。 治療が遅れると神経損傷などの後遺症リスクが高まるため、早期回復を目指しましょう。 化膿性脊椎炎を早く治したい方は、再生医療による治療も選択肢の一つです。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、化膿性脊椎炎による炎症を抑制し、早期改善が期待できます。 化膿性脊椎炎の痛みやしびれを早く治したい 手術せずに化膿性脊椎炎を治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 再生医療は、手術や入院不要で治療を受けられるため、体への負担が少ない治療法として多くの方に選ばれている治療法です。 具体的な治療法については、当院リペアセルクリニックで無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは化膿性脊椎炎の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 化膿性脊椎炎の完治期間は最低6週間が目安 アメリカのガイドラインによると、化膿性脊椎炎の治療期間は6週間としています。(文献1)そのため、完治期間も最低6週間は必要です。 しかし実際には、化膿性脊椎炎の完治期間は病状により異なります。 2008年から2012年までに化膿性脊椎炎と診断され、抗菌薬投与した患者41例を参考にすると以下の通りです。なお、1週目までの感染症の程度を示すCRP値の改善率が中央値以上の方を「良好群」、中央値以下の方を「不良群」と定義しています。 病状 症例数 治療期間の平均 良好群 20例 約38日 不良群 21例 約70日 (文献2) 以上のように不良群は、明らかに治療期間が延長しています。 【関連記事】 【医師監修】化膿性脊椎炎とは|症状・原因・治療法から完治期間の目安までわかりやすく解説 化膿性脊椎炎の入院期間の目安 化膿性脊椎炎の入院期間について、2001年から2009年までの9年間における化膿性脊椎炎患者100例の調査内容を参考に、以下の表にまとめました。 症例数 入院期間の目安 27例 1カ月以内 33例 1〜2カ月 22例 2〜3カ月以内 9例 3カ月以上 (文献3) 発症から受診までの期間が短いほど入院期間は短い傾向であるため、完治するまでの時間も短くなると考えられます。 しかし、近年の治療では患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させる再生医療によって、化膿性脊椎炎の早期改善が期待できます。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 化膿性脊椎炎の痛みやしびれを早く治したい 手術や入院をせずに化膿性脊椎炎を治したい 再生医療は日帰りで治療を行えるため、手術や長期間の入院をせずに化膿性脊椎炎の改善を目指せます。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼化膿性脊椎炎を早く治したい方は再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 化膿性脊椎炎の発症部位別の治療期間 化膿性脊椎炎の発症部位別の治療期間について、2007年から2018年の11年間における入院加療をした化膿性脊椎炎患者117例の調査内容を参考に、以下の表にまとめました。 発症部位 症例数 治療期間の目安 頚椎 17例 約53日 胸椎 28例 約66日 腰椎 76例 約63日 (文献4) 発症部位別の治療期間に明らかな差はありません。 化膿性脊椎炎の原因菌別の治療期間 化膿性脊椎炎の原因菌別の治療期間について、2007年から2018年の11年間における入院加療をした化膿性脊椎炎患者117例の調査内容を参考に、以下の表にまとめました。 原因菌の種類 治療期間の目安 MRSA 約151日 MSSA 約48日 連鎖球菌 約48日 大腸菌 約64日 不明群 約44日 (文献4) 原因菌別で見ると、MRSAが他の菌と比較して明らかに治療期間が延長しています。 化膿性脊椎炎の病型別の治療期間 化膿性脊椎炎の多くは抗菌薬の投与により70〜90%で症状の改善が期待できますが、それぞれ治療期間の目安は異なります。(文献5) ここからは、病型別の治療期間の目安を解説します。 急性発症型 急性型の治療期間の目安は約72日です。(文献4)急性型は、高熱や激しい頚部痛、背部痛、腰痛などで発症するタイプです。 急性型の化膿性脊椎炎は、以下のような痛みが突然現れます。 夜も眠れないほどの痛み 座れないほどの痛み 歩けないほどの痛み 以上のような症状が現れたら急性型を疑い整形外科を受診してください。急性型は、亜急性型と慢性型と比較すると発症する割合は少ない傾向にあります。 亜急性発症型 亜急性型の治療期間の目安は約42日です。(文献4)亜急性型は37度台の微熱や頚部痛、背部痛、腰痛などで発症するタイプです。痛みや発熱が軽度であるからといって、放置すると重症化する恐れがあります。 以下のような症状がある場合は医療機関を受診してください。 体勢を変えても腰痛などが治まらない 背中をたたくと背部痛などが増す 長期間にわたり腰痛がある また、亜急性発症型は脊椎カリエスと間違えやすい傾向です。脊椎カリエスとは結核菌が原因で、発症する部位や症状が異なります。脊椎カリエスの場合は、微熱や食欲不振、倦怠感などの症状が現れますが、腰痛などが起きることは少ないです。 慢性発症型 慢性発症型の治療期間の目安は約55日です。(文献4) 慢性型は、発熱は見られず軽微な腰背部痛のみで発症するなど、気づきにくい特徴があります。 とくに糖尿病などの免疫機能が下がる病気を持っている方で、長期間の腰や背中の痛みに悩まされている方は、慢性型を疑い一度医師に相談しましょう。 なお、慢性型は亜急性型と同様に脊椎カリエスと間違えやすい傾向にあります。 化膿性脊椎炎は、糖尿病や慢性腎疾患を持っている方、高齢者などの免疫機能が低下している方は、悪化のリスクが高いです。疑われる症状が現れたら速やかに医療機関を受診してください。 化膿性脊椎炎の治療方法 化膿性脊椎炎の治療方法には保存療法と手術療法があります。それぞれの詳細を解説します。 保存療法 化膿性脊椎炎の治療は、保存療法が原則です。保存療法において重要な点は以下の通りです。 保存療法 詳細 適切な期間の抗菌薬の投与 適切な診断と適切な期間の抗菌薬の投与が重要。抗菌薬の投与が4週間未満であると再発率が25%に上るとの報告があるため。(文献1) 安静の保持 安静の保持は骨破壊防止と感染の鎮静化につながる。骨破壊とは細菌感染により脊椎が破壊されること。骨破壊が進むと後遺症を残す恐れもある。 手術療法 手術療法には以下のようなものがあります。 手術療法 詳細 脊椎固定術 感染部位をスクリューとロッドで固定して、骨の安定性を高めて骨破壊を防ぐ。感染を抑える働きもある。 経皮的病巣掻爬洗浄術 (けいひてきびょうそうそうはせんじょうじゅつ) 感染部位に溜まっている膿や炎症している組織を掻き出して洗浄する治療。 以下の状態となっている場合は、手術療法が検討されます。 2〜3週間実施した保存療法に効果が見られない 麻痺症状が現れている 骨破壊が進んでいる 麻痺症状や骨破壊の進行であれば手術の適応判断が容易です。しかし、保存療法の効果が見られない場合の手術の適応判断は難しいと言われています。 化膿性脊椎炎を早く完治させたい方は再生医療も選択肢の一つ 化膿性脊椎炎をいち早く治したい方は、先端医療である再生医療による治療を検討してみましょう。 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、化膿性脊椎炎の早期改善が期待できます。 また、患者さまの細胞や血液のみを使うことで拒絶反応やアレルギーリスクが少ない治療法です。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 化膿性脊椎炎の痛みやしびれを早く治したい 手術せずに化膿性脊椎炎を治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 再生医療は「化膿性脊椎炎を手術せずに治したい」「現在の治療で期待した効果が得られていない」という方の新たな選択肢となる可能性があります。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼化膿性脊椎炎を早く治したい方は再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる まとめ|化膿性脊椎炎の完治期間は病状により変動する 化膿性脊椎炎の完治期間は、病状により治療期間は大きく変動し、早いケースで6週間が目安となります。 細菌感染によって炎症を起こす化膿性脊椎炎では、背骨に感染が広がる可能性があるため、適切な治療を継続することが重要です。 また、近年の治療では、化膿性脊椎炎を早く治せる可能性があるとして、再生医療が注目されています。 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、化膿性脊椎炎の早期改善を目指せます。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 化膿性脊椎炎の痛みやしびれを早く治したい 手術せずに化膿性脊椎炎を治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 「化膿性脊椎炎を手術せずに治したい」「現在の治療で期待した効果が得られていない」という方の、新たな選択肢として再生医療を検討してみましょう。 具体的な治療法については、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。 ▼化膿性脊椎炎を早く治したい方は再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 参考文献 (文献1) 化膿性脊椎炎の診断におけるMRIの有用性:3例報告|日臨救急医会誌 (文献2) 化膿性脊椎炎における治療開始初期のCRP値改善率と保存的治療期間との関係について|日本脊椎脊髄病学会 (文献3) 当院における化膿性脊椎炎100例の検討|昭和医会誌 (文献4) 当院における化膿性脊椎炎の集学的治療 ―11年間11 例の検討―|日本脊椎脊髄病学会 (文献5) 保存治療に抵抗する急性型化膿性脊椎炎の予後予測|日本脊椎脊髄病学会
2025.07.31





