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「後縦靭帯骨化症は進行すると寝たきりになるってほんと?」 「進行させないためにはどうすれば良い?」 後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)は、骨化自体の急激な進行は少ないです。しかし、脊椎に強いショックを受けると急激に症状が進行して、寝たきりになるリスクがあります。 本記事では、後縦靭帯骨化症の寝たきりになるリスクをはじめとして、以下を解説します。 悪化を示す症状 進行を抑える3つの方法 日常生活における2つの注意点 治療方法と予後について 寝たきりになるリスクを下げるための方法や注意点を理解するために役立ててください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 後縦靭帯骨化症の寝たきりになるリスクについて 後縦靭帯骨化症は、骨化が進行すると立った状態を維持するのが難しくなり、寝たきりになるリスクがあります。 骨化が背骨の管(脊柱管)の60%を超えて狭くなると、ほぼすべての方に脊髄障害が現れます。(文献1)脊髄障害とは、体の脱力や感覚障害など寝たきりにつながる症状が現れる状態のことです。 進行している後縦靭帯骨化症は、放置しても自然に良くなることは期待できません。そのため、適切なタイミングで手術を行うことが重要です。 また、脊椎に強いショックを受けると、四肢麻痺(ししまひ:両手足が自由に動かなくなること)を引き起こして寝たきりになることも。些細な動作でも症状が進行する恐れがあるため、首の動きには十分な注意が必要です。 後縦靭帯骨化症の悪化を示す症状 後縦靭帯骨化症の初期症状は、肩から手先までのしびれや痛み、首の痛みなどです。 進行すると以下のような症状が現れます。 股関節から足先にかけてしびれや痛みが現れる 触られている感覚や痛みを感じにくくなる 筋力が低下する 腱の反射異常が現れる 手足がこわばったり突っ張ったりして思うように動かせなくなる さらに麻痺症状が進行すると、排便や排尿のコントロールが難しくなります。 後縦靭帯骨化症の進行を抑える3つの方法 後縦靭帯骨化症の進行を抑える3つの方法は以下の通りです。 転倒や外傷のリスクを下げる 糖尿病や肥満を改善する リハビリテーションを行う それぞれの詳細を解説します。 1.転倒や外傷のリスクを下げる 転倒や外傷は、症状を急激に悪化させる可能性があるため注意が必要です。とくに高齢者は、転倒による外傷が寝たきりの原因となることが多いです。飲酒は、軽度の運動障害を表出させて転倒リスクを高めます。飲酒による転倒は、首に大きな外力を与える恐れがあるため十分な注意が必要です。(文献2) 以下のような工夫を行い転倒予防に努めることが大切です。 自宅に手すりを設置する スロープなどを取り付けて段差を無くす 杖やシルバーカーを活用する 自転車やバイク、車などの転倒と事故のリスクのある乗り物の利用のほか、相撲、ラグビー、レスリングなど首に強く負担をかけるスポーツは避けたほうが良いでしょう。 2.糖尿病や肥満を改善する 後縦靭帯骨化症の発症のしやすさと生活習慣病には関連性があります。実際に広い範囲で骨化が見られている若年発症の後縦靭帯骨化症の方は、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症を併存している割合が高いです。 とくに重度肥満(BMI40以上)は、後縦靭帯骨化症の進行に強く関連していると報告があります。(文献3)後縦靭帯骨化症を進行させないためにも、適切な治療を受けながら生活習慣を見直し、肥満や糖尿病等の改善に努めることが大切です。運動により肥満改善を目指す場合は、どのような内容が良いか医師やリハビリスタッフに相談してください。 3.リハビリテーションを行う 適切なリハビリテーションを実施すれば、運動能力が回復する可能性があります。実際に歩行ができなかった患者様がサイドケイン(先端が3〜4つに分かれた歩行器のような杖)で、60m歩行できるようになった症例もあります。(文献4) ただし、医師やリハビリスタッフの指示に基づいた適切なリハビリテーションを行う必要があり、効果も人それぞれです。自己判断によるリハビリテーションは、病状を悪化させる恐れがあるため、運動内容は医師やリハビリスタッフに相談してください。 後縦靭帯骨化症の日常生活における2つの注意点 後縦靭帯骨化症における2つの注意点は以下の通りです。 首を大きく後ろに反らさない 自己判断でマッサージを受けない それぞれの詳細を解説します。 1.首を大きく後ろに反らさない 首を過度に反らす動作は、神経症状を悪化させる恐れがあります。例えば、以下のような場合の首の動きには注意が必要です。 肩こりがあっても首をぐりぐり回さない 理髪店の顔剃りや美容室の洗髪、歯医者での治療で首を反らし過ぎない ストレッチ等も医師やリハビリスタッフの指示に従って行ってください。 2.自己判断でマッサージを受けない 整体やカイロプラクティスなどを自己判断で受けるのは避けてください。首に強い刺激を加えるマッサージは、神経症状を悪化させる恐れがあるためです。 神経圧迫による症状を伴わない首や背中の痛みに対しては、あんまや鍼灸、マッサージなどが有効なことがあります。しかし、施術により首を過度に反らす危険性があるため、専門医の指示のもとで行うべきです。 後縦靭帯骨化症の治療方法 後縦靭帯骨化症の主な治療方法には、保存療法と手術療法があります。ここからは、それぞれの治療方法を詳しく解説します。 保存療法 病状が進行していない軽度の場合は、外固定装具や薬物療法による保存療法を行います。外固定装具の着用の目的は、首の安静を保つことによる神経の保護です。 自覚症状に対しては、痛みや筋肉のこわばりを和らげる薬で対応します。病状が進行して、手の動かしにくさや歩行困難、排尿・排便の障害などの症状が現れ始めたら、手術を検討しなければなりません。 手術療法 病状が重度である場合は手術を行います。手術は、骨化の状態や部位に応じたさまざまな方法があります。 主な手術方法である前方法と後方法の詳細は以下の通りです。 手術療法 詳細 前方法 頚椎の神経圧迫を改善するために、骨化部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する方法。 後方法 骨化の部位はそのままにして、神経が通っている脊柱管を広げて圧迫を軽減させる方法。 一般的には後方法が選択されます。骨化が大きい場合や頚椎の並びが良くない場合は、前方法も選択肢になります。(文献5) 再生医療 後縦靭帯骨化症に対しては、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療の幹細胞治療では、患者様自身から幹細胞を採取・培養して、注射にて患部に投与します。患者様の幹細胞を使用するため、副作用のリスクが低いのが特徴です。 後縦靭帯骨化症に対する再生医療については、以下の記事でも紹介しているので、合わせてご覧ください。 後縦靭帯骨化症の予後 後縦靭帯骨化症は骨化が急速に進行することは少なく、神経症状も必ずしも進行性とは限りません。とはいえ、症状が現れていなくても、定期的な画像検査により経過を見ることは重要です。 また、手術により神経症状が改善しても、術後数年から10年あたりに同じ部位または他の部位の骨化が進行して、神経症状が現れることがあります。(文献5)そのため、後縦靭帯骨化症は手術した場合でも、生涯にわたって定期的な画像検査を受けることを推奨します。 まとめ|急激な進行を予防するためにも転倒や外傷に注意しよう 後縦靭帯骨化症は、転倒や外傷により急激に症状が悪化し、寝たきりになるリスクがあります。そのため、日常生活における転倒や外傷のリスクを可能なかぎり下げる必要があります。首を「過度に反らす」「グリグリ回す」ことも避けてください。 また、糖尿病や肥満など、後縦靭帯骨化症を進行させる要因になる生活習慣病を改善することも大切です。症状が進行している場合は、適切なリハビリテーションが有効な場合があります。医師やリハビリスタッフの指示のもとで進めましょう。 近年では、後縦靭帯骨化症による症状の改善のために、再生医療が活用されています。後縦靭帯骨化症の再生医療は、当院「リペアセルクリニック」でも行っているため、症状でお悩みの方はお気軽にお問合せください。 参考文献 (文献1) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)概要診断基準等|難病情報センター (文献2) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)よくある質問|難病情報センター (文献3) 脊柱後縦靭帯骨化症における肥満に関連する因子の検討|厚生労働省科学研究成果データベース (文献4) 後縦靭帯骨化症を呈した患者に対する術前運動療法の効果の検討|日本理学療法士協会 (文献5) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)病気の解説|難病情報センター
2025.07.30 -
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糖尿病性腎症と診断されると、「何を食べたら良いの?」「献立をどう考えれば良いの?」と戸惑う方も多いでしょう。 腎症は腎機能の低下が進むと、やがて透析が必要になるリスクがあります。しかし、早い段階から食事を管理することで進行を抑え、腎臓を守ることが可能です。 本記事では、糖尿病性腎症のリスクを理解した上で「なぜ食事療法が必要なのか」、そして「具体的に何をどう食べれば良いのか」まで、わかりやすく解説します。 日々の献立作りのコツや外食・コンビニを利用する際の工夫も紹介します。今日から実践できる食事管理のポイントをぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病性腎症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 糖尿病性腎症の食事の具体的な献立例 糖尿病性腎症では、たんぱく質や塩分を控えつつ栄養バランスを整えることが大切です。 ここから、朝食、昼食、夕食それぞれの具体的な献立例とレシピをご紹介します。 朝食の献立例 メニュー 材料 ごはん ・低たんぱくごはん1/25 180g(1パック) みそ汁(麩・ねぎ) ・みそ 10g ・だし汁 130cc ・麩 2g ・ねぎ 25g かんぴょうの炒め煮 ・かんぴょう 5g ・にんじん 20g ・ごま油 3g ・砂糖 3g ・しょうゆ 4g ・だし汁 30cc くだもの(オレンジ) ・オレンジ 50g(1/3個) 味付のり・紅茶 ・紅茶 1パック+粉飴40g ・味付のり 2g(1袋) (文献1) このメニューの栄養は、586kcal、たんぱく質18.8g、塩分2.0gでした。(文献1) 昼食の献立例 メニュー 材料 ごはん ・低たんぱくごはん1/10 180g(1パック) チキンカツ ・鶏もも皮なし 70g ・こしょう 少々 ・小麦粉 3g ・生パン粉 10g ・油 9g ・キャベツ 20g ・レモン 10g ・パセリ 2g ・ソース 5cc 海草サラダ ・サラダ用海草 25g ・きゅうり 20g ・ミニトマト 1個 ・ドレッシング 10g さやえんどうの和風ソテー ・さやえんどう 20g ・エリンギ 30g ・生しいたけ 10g ・油 3g ・塩 0.3g ・こしょう 少々 ・しょうゆ 2g (文献1) チキンカツの作り方は以下のとおりです。 鶏肉を観音開きにし、こしょうを振って下味をつける。 小麦粉を水で溶いた衣をくぐらせ、次にパン粉をまぶす。 油でカラリと揚げたら、皿に千切りキャベツを添えて盛り付ける。 仕上げにレモンとパセリを飾る。 このメニューの栄養は、586kcal、たんぱく質18.8g、塩分2.0gでした。(文献1) 夕食の献立例 メニュー 材料 ごはん ・低たんぱくごはん1/10 180g(1パック) さわらの照焼 ・さわら 40g ・しょうゆ 2g ・みりん 3g ・料理酒 1g ・油 1g ・しその葉 1g(1枚) ・甘酢生姜漬 10g かぼちゃの含め煮 ・かぼちゃ 60g ・生しいたけ 20g(1枚) ・砂糖 3g ・みりん 3g ・しょうゆ 3g ・だし汁 20cc マヨネーズ和え(もやし・にんじん) ・もやし 50g ・にんじん 10g ・マヨネーズ 15g ・しょうゆ 3g ・からし 少々 マクトン入り胡麻豆腐 ・マクトンゼロパウダー 20g ・黒すりごま 1.5g ・水 50cc ・粉寒天 0.4g(1/10袋) ・生姜 2g ・しょうゆ 3cc (文献1) マクトン入り胡麻豆腐の作り方は以下のとおりです。 鍋に水と粉寒天を入れて混ぜながら加熱し、寒天をしっかり溶かす。 寒天が完全に溶けたら、さらに2~3分ほど煮詰めて火を止める。 火を止めたら、マクトンパウダーと黒すりごまを加え、よく混ぜながら粗熱を取る。 粗熱が取れたタイミングで型に流し入れ、冷蔵庫で冷やし固める(熱いままだと層が分かれてしまうので注意する)。 型から取り出して器に盛り付け、おろし生姜を添え、しょうゆをかけていただく。 マクトンゼロパウダーは、消化吸収が良く速やかにエネルギーになる粉末油脂です。たんぱく質0gで高エネルギー(100gあたり789kcal)。どんな料理にも手軽に使え、効率的なエネルギー補給に便利です。 このメニューの栄養は、736kcal、たんぱく質12.8g、塩分2.1gでした。(文献1) 糖尿病性腎症は食事管理が重要!献立が必要な理由 糖尿病性腎症の食事療法の最大の目的は、腎不全への進行防止です。 腎臓は血液中の老廃物を排出する重要な役割を担いますが、糖尿病によって徐々にダメージを受け、機能が低下していきます。とくにたんぱく質を多く摂ると腎臓への負担が増えるため、摂取量を適切に制限し、塩分やエネルギー、カリウム、リンなども管理していかなければなりません。 食事管理を怠ると腎症が進行し、最終的には透析治療が必要になる可能性もあります。食事療法は患者様の腎症の進行度や年齢、体格、合併症の有無などによって内容が変わるため、自己判断で行うのは危険です。 医師や管理栄養士と相談しながら個別に献立を立てると、無理なく続けられ、腎機能をできるだけ長く保てます。 糖尿病性腎症の食事療法・献立のポイント 糖尿病性腎症の食事管理は、腎機能を守り進行を遅らせるための大切な治療のひとつです。 以下に、献立を考える上で知っておきたい栄養管理のポイントを解説します。 1日のエネルギー量の目安 糖尿病性腎症の食事療法では、過剰な栄養不足や肥満を防ぐために適正なエネルギー摂取が大切です。 目安は「標準体重1kgあたり約35kcal」ですが、年齢や活動量によって28〜40kcal程度と幅があります。(文献1) エネルギーが不足すると体内のたんぱく質が分解されて腎臓に負担をかける恐れがあるため、十分に確保することが重要です。 糖尿病の血糖管理を両立させるためにも、炭水化物や脂質の質と量を調整しながら、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせる工夫が必要です。 たんぱく質を制限する 腎臓の負担を減らすため、たんぱく質は「標準体重1kgあたり0.6~0.8g」に制限されるのが一般的です。(文献1) 制限量は、尿たんぱくの排泄量や血清クレアチニン値など腎症の進行度、栄養状態によって変わります。過剰なたんぱく質摂取は腎臓を酷使し、腎機能悪化を早めるリスクがあるため、食材の種類や量を慎重に選ぶ必要があります。 ただし過度な制限は栄養不良を招く恐れがあるため、低たんぱくごはんなどの特殊食品を利用したり調理法を工夫したり、美味しく無理なく続けられることが大切です。 医師や管理栄養士と連携して、自分に合った目標量を決めましょう。 塩分を制限する 高血圧や浮腫を予防・改善するために塩分制限は欠かせません。目標は1日6~7g未満ですが、高血圧やむくみが強い場合は5g以下に制限されることもあります。(文献1) 塩分の摂りすぎは血圧を上げ、腎臓の血管を痛め、病気の進行を加速させる原因になります。 以下は塩分制限のポイントです。 減塩調味料の活用 だしや香辛料、酢などを使って風味を工夫する 外食や加工食品は塩分が多いため、成分表示を確認して選ぶ 毎日の食事を楽しみながら、無理なく続けることが大切です。 水分・カリウム・リンの摂り方 腎症が進行すると、水分やカリウム、リンの制限が必要になる場合があります。 水分はむくみや尿量を考慮して調整し、心不全の予防や血圧管理にもつながります。 カリウムは高くなりすぎると不整脈などの危険があるため、野菜や果物の種類や調理法(ゆでこぼしなど)で含有量を減らす工夫が必要です。 リンは骨からカルシウムを奪い骨粗しょう症を招くリスクがあるため、乳製品や加工食品などリンが多い食品の量を調整します。 必ず医師や管理栄養士と相談し、体調に合った食事を心がけましょう。 糖尿病性腎症に適した食材選びと調理の工夫 糖尿病性腎症の食事療法では、たんぱく質や塩分を抑えつつ満足感を得られる工夫が欠かせません。 治療用の低たんぱくごはんや調味料などを上手に取り入れると、制限内でエネルギーをしっかり確保できます。少ないたんぱく質を多く見せるために、薄切りやみじん切りにしてかさを増やしたり、味付けや盛り付けを工夫したりすることも大切です。 3食のうち1食はおかずがなくても食べられるメニューを用意し、たんぱく質量を調整する方法も有効です。 家族と同じ献立でも主菜を減らし副菜を増やすなど、うまく調整して無理なく続けることで腎機能を長く守りましょう。 外食・コンビニ・宅配弁当の選び方 糖尿病性腎症の食事療法では、自炊が理想ですが、忙しい日常では外食やコンビニ、宅配弁当を利用する機会も少なくありません。 ここからは、腎臓への負担を抑えつつ上手に選ぶコツを紹介します。 外食時の注意点 外食では塩分やたんぱく質が多くなりがちなので、自分で調節する意識が大切です。醤油やタレ、ドレッシングは別添えでもらい、使う量を減らすなどの工夫をしましょう。 カリウムやリンが多い食材を避けるため、サラダのドレッシング、乳製品、加工食品などにも注意が必要です。 主菜は肉より魚を選ぶと脂質やリンを抑えられ、腎臓への負担軽減につながります。麺類や丼ものは汁を残す、単品ではなく定食を選び副菜を増やすなど、組み合わせ方の意識も大切です。 栄養成分表示があるお店では、たんぱく質や塩分量を確認しながらメニューを決める習慣をつけ、外食を楽しみながら食事療法を続けましょう。 コンビニ利用のコツ コンビニ食でも栄養バランスの意識が大切です。おにぎりだけ、菓子パンだけなど主食に偏らず、主菜・副菜を組み合わせて選びましょう。 サラダや煮物、焼き魚、ゆで卵などをプラスしてたんぱく質量を調整し、塩分やリンを抑えます。サンドイッチやおにぎり、ハンバーガーなどは中身の具材をチェックし、ハムやチーズなどリンや塩分が多いものは控えめにします。 以下の項目は注意するポイントです。 減塩表示の商品を選ぶ 飲み物は無糖のお茶や水を選ぶ 成分表示を確認してエネルギーやたんぱく質量を把握する 管理栄養士と相談しながら自分に合った選び方を身につけましょう。 宅配弁当や冷凍食の利用 自炊が難しい日や忙しいときには、腎臓病食や糖尿病食に対応した宅配弁当や冷凍食品を上手に活用するのもおすすめです。 塩分、たんぱく質、糖質などがあらかじめ管理されており、栄養バランスを整えやすいのが魅力です。自分で計算する負担を減らしつつ、適切な制限を守れるため、食事療法を無理なく続けられます。 最近はメニューの種類も豊富で、飽きずに続けられる工夫がされています。定期配送や単品購入などサービス形態も多様なので、生活スタイルや体調に合わせて選びましょう。 糖尿病性腎症には再生医療の選択肢 糖尿病性腎症に対しては、自分の脂肪から採取・培養した幹細胞を体内に投与する「再生医療」も新たな治療選択肢の一つです。患者様自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが低いのが特徴です。 しかし、糖尿病性腎症の進行を抑えるには、何よりも血糖管理が欠かせません。食事療法や薬物療法と組み合わせることで、より総合的な治療が可能になります。 将来の腎不全や透析を避けるために、再生医療についても検討してみましょう。詳しい内容は、以下をご覧ください。 糖尿病性腎症の食事の献立はできることから始めよう 糖尿病性腎症の食事療法は、腎臓を守り進行を遅らせるために自分で取り組める治療法です。 しかし「完璧にやらなければ」と思いすぎるとストレスになり、続けるのが難しくなります。減塩や主菜の量を調整するなど、できることから少しずつ始めましょう。 治療用食品を活用したり、家族と同じメニューを工夫するなど、日常生活に取り入れやすい方法の選択も大切です。頑張りすぎず、続けやすい工夫を取り入れながら、医師や管理栄養士と相談し、自分に合ったペースで無理なく進めることが腎機能を長く守るポイントです。 食事管理とともに再生医療による治療をご検討の際は、ぜひ当クリニックにご相談ください。あなたに合ったサポートをご提案します。 糖尿病性腎症の食事の献立におけるよくある質問 果物は食べて良いですか? 果物はビタミンや食物繊維が豊富ですが、糖分を多く含むたみ血糖値が上がりやすいため、食べすぎには注意が必要です。腎症が進行すると、果物に多く含まれるカリウムを制限する必要が出てくる場合もあります。 缶詰の果物を利用する場合はシロップをしっかり切るなどの工夫も大切です。自分に適した量や種類は、医師や管理栄養士と相談しながら確認してください。 たんぱく質を減らすと栄養不足になりませんか? たんぱく質の制限は腎臓への負担を減らす大切な治療法です。しかし過度な制限で栄養不足にならないよう、代わりに十分なエネルギーを確保して筋肉量を維持することが重要です。 低たんぱくごはんや治療用食品を活用し、主食・副菜の組み合わせを工夫するとバランスを整えられます。管理栄養士の指導を受けながら取り組みましょう。 人工甘味料は大丈夫ですか? 一般に認可されている人工甘味料は安全性が確認されており、血糖値を上げにくいため糖尿病患者様でも上手に活用できます。飲み物やデザートに取り入れれば、甘みを楽しみながら血糖管理をしやすくなります。 ただし、商品によって甘味料の種類や量が異なるため、気になる場合は医師や管理栄養士に相談しましょう。 参考文献 文献1 栄養部|茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター
2025.07.30 -
- 糖尿病
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糖尿病性神経障害は、足のしびれや痛み、感覚低下などを引き起こし、進行すると潰瘍や切断といった重大な合併症を招く恐れがあります。 しかし、早期発見と適切な治療によって進行を抑え、生活の質を守ることが可能です。 本記事では、糖尿病性神経障害の原因や症状、治療法までをわかりやすく解説します。気になる症状がある方はぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病性神経障害について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 糖尿病性神経障害とは?早期治療が必要な疾患 糖尿病性神経障害とは、高血糖状態が長期間続くことで神経が障害を受ける、糖尿病の代表的な合併症の一つです。以下のような障害があります。 感覚障害 しびれ、痛み、感覚鈍麻 運動障害 筋力低下、歩行障害 自律神経障害 立ちくらみ、発汗異常、胃腸運動の乱れ 糖尿病性神経障害には3つの障害があり、左右対称性に足先から進行するのが特徴です。 原因としては、高血糖によりソルビトールといった物質が神経内に蓄積し、神経のむくみや血流障害を引き起こすことが挙げられます。 進行性の疾患であり、放置すると重度の感覚障害や潰瘍、壊疽(えそ:組織の死滅)のリスクが高まるため、早期の診断と治療が重要です。 糖尿病性神経障害の早期治療が必要な理由 糖尿病性神経障害は進行性で、放置すると深刻な合併症を引き起こす危険があります。 早期に診断し治療を始めることで、合併症を予防し、生活の質を守ることが大切です。 合併症のリスクがある 糖尿病性神経障害が進行すると、感覚が鈍くなり小さな傷にも気づきにくく、足潰瘍や感染、壊疽を引き起こすことがあります。 進行後は治りにくく、最終的に切断を余儀なくされる深刻なケースも少なくありません。 自律神経障害による起立性低血圧は、ふらつきやめまいを生じ、転倒による骨折や頭部外傷など高齢者ではとくに危険です。心拍数や血圧を調節する自律神経が障害されると、不整脈や血圧変動が起こり、心臓突然死のリスクも増加します。 合併症のリスクを防ぐためには、神経障害を早期に発見し、適切な治療と管理を行うことが重要です。 患者様自身も日常的な足の観察やセルフケアを心がけることが大切です。 症状の進行を抑えられる 糖尿病性神経障害の進行を抑える最大のポイントは、血糖値の適切な管理です。 高血糖状態が長期間続くと神経へのダメージが進行し、症状が悪化してしまいます。しかし、食事療法、運動療法、薬物療法などで血糖をコントロールし続けることで、神経障害の進行を遅らせたり軽減したりできる可能性があります。 痛みやしびれなどの症状に対する治療薬の使用、生活習慣の改善、足のケア指導などを組み合わせると、患者様のQOL(生活の質)を守れます。 早期に医療機関を受診し、医師や看護師、栄養士などの専門チームと連携した治療が必要です。 糖尿病性神経障害の治療法 糖尿病性神経障害の治療は、血糖管理を基本に痛みの軽減や機能維持を目指す多角的なアプローチが必要です。治療法には、以下の5つがあります。 薬物療法 脊髄(脳)刺激療法 フットケア リハビリテーション 再生医療 患者様一人ひとりに合わせた治療計画を立てることが大切です。 薬物療法 糖尿病性神経障害に伴う痛みの軽減や生活の質の改善を目的に、薬物療法が広く行われます。痛みの程度や体の状態に合わせて薬剤を使い分け、症状を緩和します。 以下のような薬剤が用いられる場合が多いです。 薬の種類 薬剤の例 オピオイド トラマドール、オキシコドンなど Ca²⁺チャネルα2δリガンド リリカ(プレガバリン)、タリージェ(ミロガバリン)など 抗けいれん薬 ガバペンチンなど 抗うつ薬 デュロキセチン、アミトリプチリンなど 痛みの軽減が目標ですが、対症療法として神経ブロックやリハビリテーションの組み合わせも有効です。患者様の症状や副作用のリスクを考慮しながら、医師が最適な治療法を提案します。 脊髄(脳)刺激療法 脊髄(脳)刺激療法は、電気刺激によって痛みの神経伝達を調整する先進的な治療法です。手術で脊髄近くに電極を留置し、刺激装置で電流を流すことで痛みを抑えます。慢性的な神経障害性疼痛が薬や神経ブロックで十分改善しない場合に検討される選択肢です。 脊髄(脳)刺激療法は、神経障害性疼痛の重症例に対し有効性が認められており、生活の質を大きく向上させる可能性があります。試験刺激を行い効果を確認した上で、本格的に装置を植え込むか判断します。 費用や適応条件も含め、医師と慎重に相談しながら治療計画を立てましょう。 フットケア 糖尿病性神経障害では、感覚低下により足の小さな傷や感染に気づきにくくなります。毎日欠かさず足を観察し、赤みや水疱、水虫、爪の変形がないか確認します。靴はサイズが合った通気性の良いものを選び、インソールで足の負担を軽減するのが効果的です。 皮膚を清潔に保つ、乾燥を防ぐ保湿をするなど、セルフケアを続けると重症化を防げます。もし異常を見つけた場合は、早めに受診し適切な処置を受けてください。定期的に専門的なフットケアを受けることも有効です。 神経障害が進むと治りにくい潰瘍や感染につながるため、早期対応と予防の徹底が何より重要です。 リハビリテーション リハビリテーションは、糖尿病性神経障害による筋力低下や転倒リスクを軽減し、日常生活を安全に送るために欠かせません。 有酸素運動や筋力トレーニングを行うと、血流や代謝を改善し、神経機能が維持されます。また、バランス訓練やストレッチは柔軟性を保ち、ふらつきを防ぐ効果があります。 普段から「こまめに動く」ことを意識し、座りっぱなしを避ける意識を持ちましょう。理学療法士による個別指導で、自分に合った安全で無理のない運動プログラムを組めます。 運動療法を続ければ、体力や活動量を維持しながら、痛みやしびれの軽減にもつながります。定期的に評価を受け、運動メニューを見直しながら継続しましょう。 再生医療 再生医療は、患者様自身の脂肪から取り出した幹細胞を培養・増殖させて体に戻す治療法です。 幹細胞には、分化能という他の細胞に変化する能力があります。この能力を生かして、糖尿病に対する治療では点滴で幹細胞を投与し、血管やインシュリンを分泌する膵臓(すいぞう)に幹細胞を届けます。 ただし、幹細胞治療を行っても血糖管理が不十分では十分な効果は得られません。治療の中心はあくまで血糖コントロールであり、その上で再生医療を選択肢の一つとして検討します。 糖尿病に対する再生医療について詳細は以下もご覧ください。 糖尿病性神経障害の受診のタイミング 糖尿病性神経障害は進行性で、早期発見と治療が重要です。症状が軽いうちから受診することで、重症化や合併症を防げます。 以下のような症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 足先や手先のしびれ、チクチクする痛み 感覚が鈍くなる、熱さや痛みを感じにくい 夜間や安静時に痛みが増す 足の皮膚の変化(赤黒い色、乾燥、ひび割れ、潰瘍) 立ちくらみ、めまい(起立性低血圧) 胃もたれ、下痢や便秘、排尿障害など自律神経の症状 傷や潰瘍が治りにくい、感染を繰り返す このような症状は神経障害の進行を示すサインです。痛みがなくても神経はダメージを受けていることがあります。 小さな変化を見逃さず、早めに専門医に相談し、適切な治療を始めてください。 糖尿病性神経障害だと思ったら早期に受診しよう しびれや痛みは神経障害の初期サインであり、早期発見が病状の進行を抑えるポイントです。 糖尿病の方は自覚症状がなくても神経にダメージが進行している場合があるため注意が必要です。 「こんな症状で受診して良いのかな」と迷わずに、気になる変化があれば早めに医療機関へ相談しましょう。 専門医による診断と適切な治療を受けると、進行を抑え、将来的な足潰瘍や感染、壊疽、切断など深刻な合併症を予防できます。 日常生活での足のセルフチェックや血糖管理も大切で、患者様自身の意識と取り組みが予防につながります。 糖尿病性神経障害は放置せず、医師と一緒に取り組むことが重要です。なかなか良くならずにお悩みの方も、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病性神経障害の治療に関してよくある質問 しびれだけで痛みがない場合も治療すべきですか? しびれだけでも進行を抑えるために早期に医療機関を受診し、血糖コントロールや生活習慣の見直し、医師の指導を受けることが大切です。 しびれは神経障害の初期サインで、痛みがなくても進行している可能性があります。 感覚が鈍くなることで小さな傷ややけど、靴擦れなどに気づかず、感染や潰瘍、最悪の場合は壊疽や切断につながるリスクも高まり危険です。痛みがないからといって放置してしまうと、症状は徐々に進行し、取り返しがつかない状態になることもあります。 自覚症状が軽いうちからの治療が、将来的な重症化や合併症を防ぐポイントです。 神経は再生しますか? 糖尿病性神経障害によって傷ついた神経を完全に元通りに再生させることは、現在の医療では非常に難しいです。ただし、血糖コントロールを適切に行うことで新たな神経ダメージを防ぎ、進行を抑えられます。 しびれや痛みなどの症状を緩和する薬物療法、生活指導、リハビリなどを組み合わせた包括的な治療によって、日常生活への支障を減らし、生活の質を保てます。 早期発見と治療継続が、神経障害の進行を防ぎ、患者様が安心して暮らすためには必要です。 何科を受診すれば良いですか? 糖尿病性神経障害が疑われる場合、「こんなことで受診して良いのかな」と遠慮せずに、まずはかかりつけ医に相談が大切です。 専門的な診療を受けたい場合は、内科、糖尿病内科、内分泌代謝科などが基本で、血糖コントロールや神経障害の程度、合併症リスクを総合的に評価してくれます。 早期に専門医を受診すれば、適切な治療計画を立て、進行を抑えられます。当院でも糖尿病性神経障害に関するご相談を受け付けていますので、しびれや痛みなど少しでも気になる症状があれば、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病の神経障害は治らない? 糖尿病性神経障害は進行性の病気で、完全に治すことは難しいとされていますが、初期の段階であれば血糖値を厳格にコントロールすると症状の改善や進行抑制が可能です。 血糖管理を中心に、しびれや痛みを和らげる薬物療法、生活習慣の見直し、リハビリテーションなどを組み合わせた包括的な治療を続けると、合併症リスクを減らし、日常生活の質を維持できます。 放置せずに早期に治療を開始し、医師と一緒に継続的に管理していきましょう。
2025.07.30 -
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「健康診断で脂質異常症を指摘されたけれど、とくに症状もないし……」 「最近、手足がしびれることがある。もしかして何かの病気と関係があるのかな?」 このように、健康診断の結果や気になっている手足のしびれに関して、不安に思われている方もいらっしゃることでしょう。 実は、脂質異常症そのものが直接「しびれ」を引き起こすことは、あまりありません。 しかし、だからといって安心はできません。 脂質異常症を放置していると、動脈硬化や糖尿病といった深刻な病気につながり、それが原因でしびれが現れることがあるのです。 本記事では、脂質異常症がどのようにして手足のしびれに関わるのか、そのメカニズムを専門医が詳しく解説します。 あわせて、ご自身でできる生活習慣の改善方法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 脂質異常症が関連する「しびれ」のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 脂質異常症でしびれる?基礎知識から症状まで専門医が解説 脂質異常症と診断されても、多くの場合、自覚症状がないため軽く考えてしまうかもしれません。 しかし、この病気は静かに進行し、重大な合併症を引き起こす可能性があります。 まずは脂質異常症とはどのような病気なのか、そしてなぜ「しびれ」と結びつけて考えられがちなのか、基本的な知識から確認していきましょう。 脂質異常症の定義と種類 脂質異常症とは、血液の中に含まれる脂質、具体的には「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が基準値より多い状態や、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールが基準値より少ない状態を指します。 血液中の脂質は、細胞膜やホルモンの材料になるなど、体にとって不可欠なものですが、そのバランスが崩れることが問題なのです。 主な種類は以下の3つのタイプに分けられます。(文献1) 脂質異常症のタイプ 説明 高LDLコレステロール血症 「悪玉」コレステロールが多い状態。増えすぎると血管の壁にたまり、動脈硬化の原因になります。 低HDLコレステロール血症 「善玉」コレステロールが少ない状態。善玉コレステロールは余分なコレステロールを回収する働きがあるため、少ないと動脈硬化が進みやすくなります。 高トリグリセライド血症 中性脂肪が多い状態。これも動脈硬化の要因となるほか、急性膵炎のリスクを高めることがあります。 これらの診断基準となる具体的な数値は、健康診断の結果などで確認できます。 ご自身の数値を把握し、どのタイプに当てはまるかを知ることが大切です。 なぜ「しびれ」が直接的な症状ではないのか? 「脂質異常症が原因で手足がしびれる」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、結論からいうと、脂質異常症そのものが神経に直接作用して「しびれ」を引き起こすことは、ほとんどありません。 では、なぜ「しびれ」と脂質異常症が結びつけて考えられるのでしょうか。 その背景には、脂質異常症が引き起こす動脈硬化が大きく関係しています。 動脈硬化によって血管が硬く、狭くなると、手足の末端まで十分な血液が届きにくくなります。 この血流の悪化が、結果として神経に栄養や酸素を十分に供給できなくなり、しびれが感じられることがあるのです。 つまり、「脂質異常症→動脈硬化→血流障害→しびれ」という流れで症状が現れることはありますが、「脂質異常症 → しびれ」という直接的な関係ではないことを理解することが重要です。 そのため、「しびれ」を感じる場合、その裏には単なる血行不良だけでなく、脂質異常症がもたらす血管の深刻な変化が隠れている可能性を考える必要があります。 脂質異常症の一般的な自覚症状 脂質異常症が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれる最大の理由は、病気がかなり進行するまで、ほとんど自覚できる症状が現れない点にあります。 痛みやかゆみ、倦怠感のようなわかりやすいサインがないため、健康診断で数値を指摘されても、つい放置してしまいがちです。 しかし、症状がないからといって、体の中で問題が起きていないわけではありません。 水面下で動脈硬化が静かに進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすリスクをはらんでいます。 まれに、脂質異常症が重症化した場合や、遺伝的な要因が強い家族性高コレステロール血症などでは、特徴的な身体的サインが現れることがあります。 黄色腫(おうしょくしゅ): コレステロールが皮膚の下にたまってできる、黄色いできものや膨らみです。目のまぶたや、肘、膝、お尻などに見られることがあります。 アキレス腱黄色腫(けんおうしょくしゅ): アキレス腱が太く、硬くなります。これもコレステロールが沈着することによって起こります。 これらの症状は、脂質異常症がかなり進行しているサインかもしれません。 しかし、このような症状が現れる前に、定期的な健康診断で血液の数値をチェックし、異常があれば早期に対策を始めることがなによりも重要です。 脂質異常症がしびれの症状を引き起こすメカニズム 脂質異常症自体がしびれの原因になることは稀ですが、放置すると引き起こされるさまざまな合併症が、間接的に「しびれ」の症状をもたらすことがあります。 ここでは、その代表的なメカニズムを3つの観点から詳しく解説します。 動脈硬化による血流障害としびれの関係 糖尿病性神経障害としびれの関係 その他の合併症としびれの関係 ご自身の「しびれ」が、どのような体の変化によって起きているのかを理解する手がかりにしてください。 動脈硬化による血流障害としびれの関係 脂質異常症の最も深刻な影響の一つが、動脈硬化を促進してしまうことです。 動脈硬化とは、血管が弾力性を失い、硬く、もろくなってしまう状態を指します。 血液中に増えすぎた悪玉コレステロール(LDL)は、血管の内壁に入り込んで酸化され、プラークと呼ばれるお粥のような塊を形成します。 このプラークが血管の内側を狭くし、血液の流れを妨げるのです。 とくに、手や足の先にあるような細い血管(末梢血管)では、この影響が顕著に現れます。 動脈硬化によって血流が悪くなると、末梢の神経細胞に必要な酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。 その結果、神経が正常に機能できなくなり、「ジンジンする」「ピリピリする」といった「しびれ」や、足先が冷たく感じるといった症状が現れます。 さらに動脈硬化が進行すると、閉塞性動脈硬化症(ASO)という病気に至ることもあります。 この病気では、歩くと足が痛くなり、休むと楽になる特徴的な症状(間歇性跛行)が現れ、重症化すると足の組織が壊死してしまう危険性もあります。 糖尿病性神経障害としびれの関係 脂質異常症と糖尿病は、生活習慣の乱れという共通の土台を持つため、非常に密接な関係にあり、併発しやすいことが知られています。(文献2) 脂質異常症を放置していると、インスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性という状態を引き起こし、糖尿病の発症リスクを高める可能性があります。 そして、糖尿病の三大合併症の一つとして知られるのが糖尿病性神経障害です。 これは、糖尿病による高血糖の状態が長く続くことで、全身の神経、とくに手足の末梢神経がダメージを受ける病気です。 高血糖は、以下の2つのメカニズムで神経障害を引き起こし、しびれの原因となります。 神経細胞への直接的なダメージ:血液中の過剰な糖が、神経細胞内で代謝される過程でソルビトールという物質に変わり、これが神経細胞内に蓄積して神経の働きを妨げます。 神経への血流障害:高血糖は、神経に栄養を送る細い血管の動脈硬化も促進します。これにより血流が悪化し、神経細胞が酸欠・栄養不足に陥り、機能が低下します。 この糖尿病性神経障害によるしびれは、多くの場合、足の裏や指先から始まり、徐々に体の中心に向かって広がっていく特徴があります。 その他の合併症としびれの関係 動脈硬化や糖尿病のほかにも、脂質異常症が関与すると、しびれを引き起こす可能性のある病気が存在します。 例えば、甲状腺機能低下症もその一つです。 甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールする重要なホルモンですが、このホルモンの分泌が低下すると、脂質代謝にも異常が生じ、脂質異常症を悪化させることがあります。 同時に、甲状腺機能低下症では、体のむくみ(粘液水腫)が神経を圧迫したり、神経そのものの働きが鈍くなることで、しびれや感覚の低下といった症状が現れることがあります。 また、肝臓は脂質代謝の中心的な役割を担う臓器です。 そのため、脂肪肝や肝硬変など、肝機能に障害が生じると脂質異常症を招きやすくなります。 肝機能の低下が進行すると、体内の毒素が十分に処理されなくなり、神経に悪影響を及ぼしてしびれを感じることもあります。 このように、脂質異常症は単独の問題ではなく、体のさまざまな機能と関連しあっています。 そのためしびれの症状がある場合は、こうした他の病気が隠れていないか多角的に原因を探ることが大切です。 脂質異常症改善のための生活習慣の見直しと実践方法 脂質異常症の治療の基本は生活習慣の改善です。 日々の少しの心がけが、血液中の脂質のバランスを整え、将来の大きな病気を防ぐことにつながります。 ここでは、すぐに始められる実践的な方法を3つの柱に分けてご紹介します。 食生活の改善ポイント 効果的な運動習慣の取り入れ方 禁煙・節酒の重要性 忙しい毎日の中でも無理なく続けられるヒントを見つけて、健康な体を取り戻しましょう。 食生活の改善ポイント 脂質異常症を改善するための第一歩は、毎日の食事を見直すことです。 とくに意識したいのは、摂取する「油の種類」と「食物繊維」です。 まず、「控えるべき油」と「積極的に摂りたい油」を知りましょう。(文献3) 油の種類 解説 控えるべき油 飽和脂肪酸:肉の脂身、バター、ラード、生クリームなどに多く含まれます。悪玉コレステロール(LDL)を増やす原因。 トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニングなどを使用するお菓子やパン、揚げ物などに含まれます。悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロール(HDL)を減らす原因。 積極的に摂りたい油 不飽和脂肪酸:青魚(サバ、イワシ、アジなど)に含まれるEPAやDHA、オリーブオイルやナッツ類に含まれるオレイン酸などが代表的です。これらは中性脂肪を減らしたり、悪玉コレステロールを減らしたりする働きが期待できます。 次に、コレステロールの吸収を穏やかにする「食物繊維」を十分に摂ることが大切です。 食物繊維 解説 水溶性食物繊維 海藻、きのこ、こんにゃく、大麦などに豊富です。腸内でコレステロールの吸収を妨げる働きがあります。 不溶性食物繊維 野菜、豆類、きのこ類に多く含まれます。便通を促し、腸内環境を整えます。 まずは、食事の最初に野菜や海藻のサラダ、きのこのスープなどを一品加えることから始めてみてはいかがでしょうか。 効果的な運動習慣の取り入れ方 食事改善と並行した定期的な運動は、脂質異常症の改善に効果的です。中性脂肪を減らし、善玉コレステロール(HDL)を増やす直接的な効果が期待できます。 特に推奨されるのは、ウォーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動です。 体脂肪をエネルギーとして燃焼し、脂質代謝を改善します。少し汗ばむ強度で1回30分以上が目標です。 まずは階段の利用や一駅分のウォーキングなど、日常で体を動かす機会を増やしましょう。 有酸素運動に筋力トレーニングを組み合わせると、さらに効果が高まります。筋肉量増加により基礎代謝が上がり、エネルギー消費しやすい体質になります。 無理のない範囲で週3回以上が理想です。(文献4) 禁煙・節酒の重要性 食事や運動と同じくらい、あるいはそれ以上に脂質異常症の改善と合併症予防に重要なのが、禁煙と節酒です。(文献5) 禁煙について タバコの有害物質は血管内壁を傷つけ、動脈硬化を促進します。また善玉コレステロール(HDL)を減らし、悪玉コレステロール(LDL)を酸化させて血管壁への蓄積を促します。 脂質異常症患者の喫煙は動脈硬化リスクを著しく高めるため、自力での禁煙が困難な場合は禁煙外来の利用を検討しましょう。 節酒について 過度の飲酒は肝臓での中性脂肪合成を促進し、高トリグリセライド血症の直接の原因となります。 高カロリーなおつまみも脂質異常症を悪化させるため、食べすぎには注意が必要です。 厚生労働省が示す適度な飲酒量は1日あたり純アルコール約20gです。これはビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス1杯弱に相当します。 飲まない日を設けて、肝臓を休ませるのも大切です。 脂質異常症の症状|しびれへの再生医療のアプローチ 脂質異常症が進行し、動脈硬化によって手足の血流が悪化して「しびれ」などの症状が現れた場合、生活習慣の改善や薬物療法と並行して、新たな治療の選択肢が検討されることがあります。 その一つが「再生医療」という治療法です。 再生医療は、患者様自身の幹細胞や血液を使う治療法で、入院や手術を伴わないのが特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞を用いた再生医療を提供しております。 公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご登録ください。 脂質異常症の症状でしびれを感じたら医療機関へ 今回は、手足のしびれと脂質異常症の関係について解説しました。 脂質異常症そのものが直接「しびれ」を引き起こすことはまれである一方、放置すると動脈硬化や糖尿病といった合併症につながり、結果として「しびれ」が現れる可能性があります。 このように自覚症状がないまま進行することが多いため、健康診断での数値チェックと、症状が出る前からの生活習慣の改善が非常に重要です。 もし、あなたが健康診断で脂質異常症を指摘されており、かつ手足のしびれにお悩みであれば、それは体からの危険信号かもしれません。 自己判断で放置せず、なるべく早く専門の医療機関を受診して原因を調べてもらいましょう。しびれの症状は、時として重篤な病気のサインである可能性もあります。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。お悩みの症状がある方は、ぜひ一度ご登録ください。 参考文献 (文献1) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版|日本動脈硬化学会 (文献2) 糖尿病診療ガイドライン2024|日本糖尿病学会 (文献3) 日本人の食事摂取基準2020年版|厚生労働省 (文献4) 健康づくりのための身体活動基準2023|厚生労働省 (文献5) 喫煙・飲酒とHDLコレステロールの関連解析|J-MICC研究
2025.07.30 -
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「健康診断で脂質の数値を指摘されたけれど、脂質異常症と高脂血症って何が違うの?」「放っておくとどうなるのか不安」 健康診断の結果を見て、不安を感じた方もいらっしゃることでしょう。 脂質異常症と高脂血症は、よく混同されがちな言葉ですが、近年、医療の現場では「脂質異常症」が正式な病名として使われています。 以前の「高脂血症」よりも対象となる病態が広がったため、名称が変更されました。 脂質異常症は自覚症状がないまま動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気を引き起こす可能性があります。 だからこそ、症状がなくても早めに正しい知識を得て対策を始めることが大切です。 本記事では、脂質異常症と高脂血症の違い、原因や基準値、ご自身でできる予防・治療法、そして再生医療までを解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脂質異常症に関連する「しびれ」などの症状についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脂質異常症と高脂血症の違いとは? 「脂質異常症」と「高脂血症」、どちらも血液中の脂質に関する言葉ですが、この二つの違いをご存知でしょうか。 結論、現在では「脂質異常症」が正式な診断名で、「高脂血症」は古い呼び方です。 以前は、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質が、基準値よりも「高い」状態をまとめて「高脂血症」と呼んでいました。 しかし、研究が進むにつれて、脂質の中でも「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」のように、基準値より「低い」ことが体に悪影響を及ぼす脂質があることがわかってきました。(文献1) そこで2007年に日本動脈硬化学会が診断名を変更し、脂質の量が基準値から外れた状態をすべて含める形で「脂質異常症」という名称が使われるようになったのです。 以下の表で、脂質異常症と高脂血症の違いを整理してみましょう。 脂質の種類 脂質異常症 (現在の診断名) 高脂血症(以前の考え方) HDLコレステロール (善玉) 低いことが問題 (基準に含まず) LDLコレステロール (悪玉) 高いことが問題 高いことが問題 トリグリセライド (中性脂肪) 高いことが問題 高いことが問題 このように、高脂血症の悪玉コレステロールや中性脂肪が高い状態に善玉コレステロールが低い状態も含むものを脂質異常症と呼びます。 より広い範囲の異常を捉えるための、より的確な診断名なのです。 脂質異常症(高脂血症)の種類とそれぞれの基準値 脂質異常症は、血液検査によって「どの脂質の数値が基準から外れているか」が確認され、主に3つのタイプに分けられます。 ご自身の健康診断の結果と見比べながら、どのタイプに当てはまる可能性があるのかを確認してみましょう。 ここでは、以下の3つのタイプについて、それぞれの特徴と日本動脈硬化学会が定めている診断基準値を解説していきます。(文献2) 高LDLコレステロール血症 低HDLコレステロール血症 高トリグリセライド(中性脂肪)血症 これらの基準値は、あくまで診断のための目安です。 他の病気(糖尿病や高血圧など)の有無やご家族の病歴などによって、治療を開始すべき目標値は一人ひとり異なりますので、正確な診断については必ず専門医にご相談ください。 高LDLコレステロール血症 高LDLコレステロール血症は、血液中の悪玉コレステロールが基準値よりも多い状態です。 増えすぎたLDLコレステロールは血管の壁に入り込み、動脈硬化を進行させる「プラーク」というコブを形成します。これが心筋梗塞や脳梗塞の直接的な引き金となるため、注意が必要です。 診断基準は、空腹時の採血でLDLコレステロール値が140mg/dL以上とされています。 主な原因としては、肉の脂身やバターといった動物性の脂肪(飽和脂肪酸)の多い食事、運動不足、遺伝的な体質などが挙げられます。 低HDLコレステロール血症 低HDLコレステロール血症は、血管の余分なコレステロールを回収して肝臓に運び戻す善玉コレステロールが基準値よりも少ない状態です。 これが少ないと血管の掃除が行き届かなくなり、動脈硬化が進行しやすくなります。 診断基準となる数値は、空腹時の採血でHDLコレステロール値が40mg/dL未満の場合です。 主な原因には喫煙、運動不足、内臓脂肪型の肥満などが挙げられ、生活習慣の見直しが重要となります。 高トリグリセライド血症(中性脂肪) 高トリグリセライド血症とは、血液中の中性脂肪(トリグリセライド)が基準値よりも多い状態を指します。 中性脂肪はエネルギー源ですが、過剰になると内臓脂肪として蓄積され、動脈硬化を強力に促進します。 診断基準は、空腹時の採血でトリグリセライド値が150mg/dL以上です。 主な原因は、ご飯やパンなどの糖質の多い食事、アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足といった生活習慣にあります。 脂質異常症を放置するリスクとは?動脈硬化と関連疾患 「とくに症状もないし、数値が少し高いだけ」と、脂質異常症を軽視するのは非常に危険です。 この病気は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま、血管の老化である動脈硬化を静かに進行させます。 動脈硬化とは、血管の壁にコレステロールなどが溜まってプラークを作り、血管を硬く、狭くしてしまう状態です。 このプラークが破れると、そこに血の塊(血栓)ができて血管を完全に塞いでしまい、命に関わる深刻な病気を引き起こすのです。 動脈硬化が原因で起こる代表的な病気には、以下のようなものがあります。 影響を受ける場所 主な病名 心臓 狭心症、心筋梗塞 脳 脳梗塞、脳出血 足の血管 閉塞性動脈硬化症(痛み、しびれ) 腎臓の血管 腎機能の低下 これらの病気は、発症すると生活の質を著しく低下させてしまいます。 健康診断で脂質異常症を指摘されたら、それは体からの重要なサインだと受け止め、早期に対策を始めることが何よりも大切です。 脂質異常症(高脂血症)の治療法 脂質異常症の治療の最終目標は、単に数値を下げることではなく、動脈硬化の進行を食い止め、将来の心筋梗塞や脳卒中といった深刻な病気を予防することにあります。 治療の基本となるのは、病気の根本原因である生活習慣の見直しです。具体的には、以下の3つが治療の柱となります。(文献3) 食事療法 運動療法 薬物療法 まずは食事や運動の改善から始め、それでも数値が十分に改善しない場合や、リスクが非常に高い場合には薬物療法を並行して行います。 どの治療法を選択するかは、患者様一人ひとりの状態に合わせて医師が総合的に判断します。 食事療法|コレステロールを下げる食生活のポイント 脂質異常症の改善において、毎日の食事を見直すことは治療の基本であり、健康な血管を取り戻すための第一歩です。以下のポイントを意識して、できることから始めてみましょう。 【控えるべき食品】 肉の脂身やバターに多い飽和脂肪酸 マーガリンや加工食品に含まれるトランス脂肪酸 ご飯やパン、お菓子などの糖質 アルコール 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、糖質やアルコールのとりすぎは中性脂肪の増加につながります。 【積極的に摂りたい食品】 野菜、海藻、きのこ類に含まれる食物繊維 青魚、オリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸 食物繊維はコレステロールの吸収を抑え、不飽和脂肪酸は血中の脂質バランスを整えてくれます。 これらのポイントを参考に、まずは1日1食からでも、食生活を見直してみましょう。 運動療法|脂質異常症改善に効果的な運動の種類と方法 食事療法とあわせて行いたいのが、脂質異常症の改善に大きな効果をもたらす運動療法です。運動には、善玉(HDL)コレステロールを増やし、中性脂肪を減らす直接的なメリットがあります。 効果的なのは、ウォーキングや軽いジョギング、水泳といった有酸素運動です。これらの運動を、ややきついと感じるくらいの強度で、1回30分以上、週に3日以上続けることが目標です。 一度に30分が難しければ、10分を3回に分けても構いません。大切なのは無理なく続けることです。一駅手前で歩くなど、生活の中に少しずつ運動を取り入れることから始めてみましょう。(文献5) ただし、心臓や膝に持病のある方は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。 薬物療法|脂質を下げる薬の種類と作用 食事療法や運動療法を続けても脂質の数値が目標まで改善しない場合や、心筋梗塞などのリスクが元々高いと判断された場合には、生活習慣の改善とあわせて薬物療法を検討します。(文献4) 薬はあくまで治療の補助であり、自己判断での中断はせず、必ず医師の指示に従いましょう。 脂質異常症の治療に主に使われる薬には、以下の種類があります。 薬の種類 作用の概要 スタチン系薬剤 肝臓でのコレステロール合成を抑える、最も基本的な薬です。 フィブラート系薬剤 肝臓での中性脂肪の合成を抑え、分解を促します。 EPA・DHA製剤 青魚の油の成分で、中性脂肪の合成を穏やかに抑えます。 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ) 小腸でのコレステロールの吸収を妨げます。 どの薬にも副作用の可能性があります。筋肉の痛みや脱力感、肝機能障害などがみられることもありますので、服用中に気になる症状があれば、速やかに主治医に相談してください。 また、脂質異常症の薬については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、気になる方はご確認ください。 脂質異常症(高脂血症)の予防法|今日からできる生活習慣の改善 脂質異常症は、生活習慣の見直しで予防・改善が可能です。将来の深刻な病気を防ぐため、以下の点を心がけましょう。 予防のポイント 具体的な方法 食生活の改善 食物繊維(野菜・海藻)や青魚を積極的に摂り、肉の脂身や糖分、アルコールは控えることが大切です。 運動習慣と禁煙 ウォーキングなどの有酸素運動を週3日以上続けましょう。また、動脈硬化の大きな原因となる喫煙はやめることが重要です。 定期的な健康診断 自覚症状がない病気のため、年に一度は健康診断で血液の状態を確認し、早期発見に努めましょう。 一つひとつの小さな積み重ねが、10年後、20年後のあなたの健康を守る大きな力となります。今日からできることから、ぜひ始めてみてください。 脂質異常症(高脂血症)は早期発見と継続的な対策が重要 本記事では、脂質異常症と高脂血症の違いから、リスク、治療法、予防法について解説しました。 脂質異常症は、悪玉コレステロールが高い状態だけでなく、善玉コレステロールが低い状態も含む広範囲な異常を指します。 この状態を放置すると、自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中の引き金となりかねません。 脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれ、症状が出た時には病状が進行している場合が多いため、食事や運動などの生活習慣改善が重要です。 症状がないからと油断せず、年1回は健康診断を受けて数値を把握しましょう。 脂質の異常を指摘されたら、それは体からの重要なサインです。異常を放置せず、早めに専門医を受診し、継続的な対策を始めることが大切です。 参考文献 (文献1) 脂質異常症(高脂血症)|日本医師会 健康の森 (文献2) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版|日本動脈硬化学会 (文献3) 脂質異常症|厚生労働省 e-ヘルスネット (文献4) 脂質異常症治療のエッセンス|日本医師会編 (文献5) 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023|厚生労働省
2025.07.30 -
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脂質異常症は、自覚症状がないため、知らず知らずのうちに進行してしまう疾患です。 しかし、そのまま放っておくと動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などといった重篤な病気につながる可能性があります。 その一方で「どの薬を選べば良いのか」「副作用が心配」といった声も多く聞かれるのが現状です。 本記事では、脂質異常症の薬物治療について詳しく解説いたします。 薬の種類や効果、副作用のリスク、服用期間、そして薬に頼らない選択肢まで、専門医の視点からお伝えします。 ぜひ記事を最後まで読んで、脂質異常症薬への理解を深めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脂質異常症に関連する「しびれ」などの症状についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脂質異常症とは?その診断基準と薬の必要性 まず脂質異常症がどのような状態を指すのか、その診断基準について解説します。 そして、なぜ早期の診断と適切な治療が重要なのか、放置した場合のリスクについても詳しくお伝えします。 ご自身の健康状態を正しく理解し、適切な治療につなげるための参考にしてください。 脂質異常症の診断基準について 脂質異常症とは、一定の基準値よりもLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い、または、HDL(善玉)コレステロールが低い状態です。 脂質異常症の診断では、まず採血による血液検査でLDLコレステロール値とHDLコレステロール値、中性脂肪値の測定から行います。 採血前日は、高脂肪食や高カロリー食を控え、禁酒し、12時間以上の絶食を行った状態の採血が必要です。 これらの値が下記いずれかに該当すると「脂質異常症」と診断されます。(文献1) LDL(悪玉)コレステロール値が140 mg/dL以上の場合 なお、LDLコレステロールが120〜139mg/dLは境界域といわれ、糖尿病や高血圧の合併がある場合は治療が必要となることがあります。 HDL(善玉)コレステロール値が 40 mg/dL未満の場合 中性脂肪が150 mg/dL以上の場合 ただし、単に数値が基準を超えればすぐに投薬するわけではありません。 診断の際には、年齢・性別・既往歴(心筋梗塞や脳卒中の経験)、家族歴(家族性高コレステロール血症の疑い)、喫煙歴、高血圧や糖尿病などの合併症も総合的に評価します。 この基準値に応じて、薬物治療のタイミングや方法が決まるので、ご自身の目標値については、医師にご相談ください。 脂質異常症治療薬の必要性と放置するリスク 脂質異常症は、自覚症状がないため、健康診断などで発見されることが多いです。 治療せずに放置すると、HDLコレステロールの減少やLDLコレステロールの増加により、動脈の壁に脂肪の塊(プラーク)を作ってこびりつき、その結果、動脈硬化になります。 動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症、脳卒中や脳梗塞などの重篤な病気になるリスクが高まります。 脂質異常症の薬について|主要な薬剤の種類 脂質異常症の治療には、主に以下の薬が使われます。 薬剤の種類 主な効果・特徴 スタチン系製剤 血液中のLDLコレステロール値を低下させる 1日1回の経口投与 PCSK9阻害薬 (エボロクマブ) 血液中のLDLコレステロール値を低下させる スタチン系製剤でLDLコレステロール値が十分に低下しない場合や、家族性高コレステロール血症、スタチン不耐の患者に使われる 皮下注射で、通常2週間に1回または1カ月に1回投与 自宅での自己注射が可能 siRNA薬 (インクリシラン) 血液中のLDLコレステロール値を低下させる スタチン系製剤でLDLコレステロール値が十分に低下しない場合や、家族性高コレステロール血症、スタチン不耐の患者に使われる 皮下注射で、通常6カ月に1回投与 医療機関でのみ投与 ベムペド酸 血液中のLDLコレステロール値を低下させる スタチン系製剤で副作用が出たり、LDLコレステロール値の低下が不十分な場合に使われる 1日1回の経口薬 その他の脂質改善薬 エゼチミブ(小腸でのコレステロール吸収を阻害する薬) フィブラート系製剤 EPA製剤 陰イオン交換樹脂 スタチン系製剤 スタチン系製剤は、肝臓でコレステロールが作られる際に働く「HMG-CoA還元酵素」という酵素の働きを阻害し、体内のコレステロール合成を抑えます。 その結果、血液中のLDL(悪玉)コレステロールが減少し、動脈硬化の進行を抑える効果が期待できます。 スタチン系製剤の特徴は、その種類や服用量によってコレステロールを下げる効果の強さが異なることです。 大きく分けて「スタンダードスタチン」と、スタンダードスタチンより作用が強い「ストロングスタチン」の2種類があります。 どの種類や量を使うかは、患者様の検査結果や病気のリスク、副作用の出方などによって、医師が総合的に判断します。 これらのスタチン系製剤の多くは、1日1回の服用が可能な経口薬です。 主な副作用には、以下の症状が挙げられます。 筋肉痛や筋力低下 消化器症状(胃の不快感、吐き気、便秘) 発疹 肝機能障害 少しでも体の異変を感じたら、自己判断で薬の服用を中止せず、速やかに医師に相談してください。 PCSK9阻害薬 PCSK9阻害薬は、スタチン系製剤の服用が難しい場合、スタチン系製剤と併用で検討される薬剤です。 肝臓で作られるPCSK9タンパク質の働きを阻害することで、血管からLDLを肝臓に取り込む受け皿であるLDL受容体を増加させます。この作用によって、血中のLDL(悪玉)コレステロールを下げられます。(文献2) PCSK9阻害薬は、スタチン系製剤では⼗分に LDLコレステロール値が低下しない方や家族性⾼コレステロール⾎症の方、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患を経験し、再発予防が必要な方に有効な治療薬です。 日本で現在使用されているPCSK9阻害薬には、エボロクマブ(レパーサ)やアリロクマブ(プラルエント)などがあります。 投与は皮下注射で投与され、通常は2週間に1回、または月に1回の頻度で投与されます。 自宅での自己注射が可能なため、通院の負担を軽減できます。 副作用には、疼痛、紅斑、発疹などの反応を引き起こす可能性があります。副作用が出たら速やかに医師に相談してください。 siRNA薬(インクリシラン) siRNA薬は、肝臓で産生される特定のタンパク質、PCSK9の生成を抑えることでコレステロールを低下させる薬剤です。 siRNA薬はこのPCSK9の数を減らすことで、血液中のLDLコレステロール値を下げる効果を発揮します。 以下のような患者様にsiRNA薬は有効な治療薬とされています。 スタチン系製剤だけではLDLコレステロール値が十分に低下しない方 家族性高コレステロール血症の方 すでに心臓や脳の動脈硬化疾患をお持ちでコレステロール管理が不十分な方 siRNA薬は、皮下注射で投与され、成人には初回に300mgを投与し、その後3カ月に2回目の投与を行います。 それ以降は6カ月ごとに定期的に投与されます。この薬はPCSK9阻害薬と違い、医療機関でのみ投与可能なため、自己管理による投与忘れの心配はありません。 siRNA薬の副作用には、注射した部位に疼痛、紅斑、発疹などの反応を引き起こす可能性があります。 副作用が出た場合は、速やかに医師に相談してください。 ベムペド酸 ベムペド酸は、スタチン系製剤で副作用が出たり、LDLコレステロール値の低下が不十分な場合に処方されることがある薬剤です。 作用としては、肝臓に存在するATPクエン酸リアーゼという酵素を阻害し、コレステロールの合成を抑制します。 この酵素は肝臓に多く存在する酵素で、肝臓のコレステロール合成が減ることで、血中のLDLコレステロールが下がる効果が期待できます。 1日1回の経口薬で、日本では2024年11月26日に大塚製薬が製造販売承認申請を行っており、承認されれば処方される可能性があります。(文献3) ベムペド酸の副作用には、痛風・胆石症の発症率の上昇、血清クレアチニン・尿酸・肝酵素レベルが上昇する可能性があります。 その他の脂質改善薬(エゼチミブ、フィブラート製剤、EPA製剤、陰イオン交換樹脂) 脂質異常症の治療には、これまでにご紹介したスタチン系製剤やPCSK9阻害薬、siRNA薬以外にも、患者様の状態や脂質のタイプに合わせて、様々な薬剤が用いられます。 ここでは、その他の脂質改善薬について、その作用と特徴を解説します。 エゼチミブ(小腸コレステロールトランスポーター阻害剤) エゼチミブは、小腸におけるコレステロールの吸収を阻害します。 その結果、血液中のLDLコレステロールや総コレステロールの濃度が低下する薬で、1日1回の経口服用薬です。 スタチン系製剤を服用できない人の治療にも使用されますが、スタチン併用でLDLコレステロール値を下げることが報告されています。 エゼチミブの主な副作用には、発疹や消化器症状(便秘、下痢、腹痛、腹部膨満、吐き気、嘔吐)などがあります。 このような症状が現れた場合は、医師に相談してください。 フィブラート系製剤 フィブラート系製剤は、中性脂肪を下げる働きがあり、LDLコレステロールを減少させるとともに、HDL(善玉)コレステロールを増やす効果も期待できる薬で、1日1回の経口服用薬です。 スタチン系製剤と併用すると副作用として、筋肉の細胞が破壊される横紋筋融解症などの症状が起こるリスクが高まります。そのため、治療上併用する場合は医師の指導のもとでの服用が重要です。 EPA製剤(イコサペント酸エチル) EPA製剤は、血液中の中性脂肪を低下させ、血行を改善する効果があります。 EPA製剤には、サプリメントとして市販されているものと、高脂血症治療薬として処方される医療用医薬品の2種類ありますが、高脂血症治療薬として処方されるものは医師の診断と処方箋が必要です。 EPA製剤の主な副作用には、発疹や消化器症状(下痢、腹部の不快感、吐き気、嘔吐)などが報告されています。 陰イオン交換樹脂 陰イオン交換樹脂は、腸内で胆汁酸と結合して体外に排出させることで、血中コレステロール値を低下させる効果を持つ薬剤です。 スタチン系製剤が使用できない症例や併用薬として処方されてます。 陰イオン交換樹脂の主な副作用には、発疹や消化器症状(便秘、下痢、食欲不振、吐き気)があります。 飲み合わせや服用時の注意点 脂質異常症薬と他の薬や食品との飲み合わせや、日常生活で気を付けるべき点について解説します。 スタチン系製剤(アトルバスタチンとリピトール)+グレープフルーツジュース グレープフルーツに含まれる成分が薬の分解を妨げ、血中濃度が高くなり、薬の効果が強くなりすぎてしまう可能性があります。(文献4) グレープフルーツジュースの影響は、数日間におよぶこともあるといわれているため、薬を服用している間はグレープフルーツジュースを飲まないように注意しましょう。 同じ柑橘系の果物でも、みかんやオレンジは一緒に食べても影響を与えないと言われています。 スタチン系製剤+フィブラート系製剤 中性脂肪を下げる目的で併用されることがありますが、筋肉障害のリスクがやや高まります。(文献6) クレアチンキナーゼ(CK:筋肉の損傷を示す検査値)測定を定期的に行い、異常があれば片方を減量・中止することもあります。 EPA製剤+抗凝固薬 EPA製剤には血液をサラサラにする作用があり、抗凝固薬(ワルファリンなど)を服用中の方は出血傾向があるので注意が必要です。出血を伴う医療行為(抜歯、外科手術など)を行う場合には医師に相談しましょう。 胆汁酸吸着樹脂と他の経口薬 胆汁酸吸着樹脂は、他の薬剤の吸収を遅延・阻害する可能性があるため、服用時間を2時間以上空ける必要があります。 服用する薬剤の種類や量によっては、さらに時間を長く空ける場合もあるため、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。 脂質異常症の薬は一生飲み続ける?服用期間と中断の可能性 脂質異常症の薬は、多くの場合、長期的に服用を続けることが推奨されます。 しかし、必ずしも一生飲み続けなければならないわけではありません。 服用期間の目安は、患者様お一人おひとりの病状やリスク、生活習慣の改善状況によって異なります。 また、脂質異常症の原因は、家族性高コレステロール血症など遺伝的な要因を除き、食生活の偏りや運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取、他の疾患(糖尿病や肥満など)だといわれています。 治療の基本は生活習慣の見直しであり、薬を服用している間も食事・運動・減量・禁煙といった取り組みが欠かせません。こうした改善が進めば、薬の減量や将来的な服薬中止につながる可能性もあります。 重要なポイントとして、血液検査の結果、コレステロール値が改善しても自己判断で服用を中止しないでください。 事例をあげると、フランスの研究では、75歳以上の高齢者が予防のために服用していたスタチンを中止した場合と、継続した場合で比べると、中止した時の方が心血管イベントによる入院リスクが増加したことがわかっています。(文献5) 脂質異常症の薬に関するお悩み事はためらわずに医師へご相談ください ここまで脂質異常症と薬の治療について紹介しました。 コレステロールの数値や薬について、疑問や不安が生まれるのは当然のことです。 脂質異常症は、放置すると心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気につながる可能性があるため、生活習慣の改善が非常に重要です。 一方で、薬による治療も大切です。LDL(悪玉)コレステロールを下げる薬、中性脂肪を下げる薬など、薬によって効果や特徴は異なりますが、医師は患者様を診断し処方する薬を選定します。 飲み合わせによってはさらに悪化する可能性もあるため、事前に医師にどのような薬を服用しているか伝え、副作用が起きるような場合も医師に早く相談しましょう。 脂質異常症の治療は、一人で抱え込むものではありません。 不安を抱えたまま治療を続けるのは精神的な負担にもなりますので、小さなことでもためらわず、医師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版|一般社団法人日本動脈硬化学会 (文献2) レパーサ皮下注140 mgペン 添付文書|PMDA (文献3) 高コレステロール血症治療薬「ベムペド酸」製造販売承認申請について|大塚製薬 (文献4) 薬物間相互作用―グレープフルーツジュースとスタチン|日本臨床薬理学会誌 (文献5) Statin discontinuation and cardiovascular events in 75-year-olds|European Heart Journal (文献6) Incidence of hospitalized rhabdomyolysis with statin-fibrate therapy|PubMed
2025.07.30 -
- 肝疾患
- 内科疾患
最近お腹が出てきた、ズボンがきつくなったという悩みの裏に脂肪肝が隠れているかもしれません。 肝臓に脂肪がたまる脂肪肝は、健康診断で初めて異常に気づく人も多く、日本では成人の3人に1人が該当する「国民病」となっています。 近年では食生活の欧米化や、在宅ワークの増加による運動不足によって、さらに発症リスクが高まっています。 この記事では、脂肪肝によってお腹が出るメカニズムをわかりやすく解説し、今日からできる対策や治療法まで、実践的な情報をお届けします。 放置すると肝硬変や肝がんへの進行リスクもある脂肪肝を、正しい知識で予防・改善していきましょう。 脂肪肝でお腹が出る?肥満との関係について 脂肪肝とお腹の出方には密接な関係がありますが、すべての脂肪肝患者にお腹の膨満が見られるわけではありません。 非アルコール性脂肪肝の場合、食べ過ぎや運動不足による肥満が主な原因です。(文献1) 体内の余ったエネルギーが脂肪として肝臓と内臓に蓄積され、結果的にお腹周りが膨らんでいきます。 実際に、全体の肥満者のうち約80%に脂肪肝が合併しているといわれており、非アルコール性脂肪肝と肥満には相関がみられます。 一方、アルコール性脂肪肝では痩せ型の方にも多く見られるため、お腹が出ていないから脂肪肝ではないと思われることも多いですが、脂肪肝が隠れていることがあるため注意が必要です。 見た目が標準体型でも「隠れ脂肪肝」として、肝臓に脂肪が蓄積している可能性があります。 内臓脂肪と肝脂肪の悪循環 余ったカロリーはまず内臓脂肪や肝臓の脂肪として蓄えられやすく、皮下脂肪にも広がります。 肝臓に脂肪が増えると血糖や中性脂肪が上がりやすくなります。これにより、肝臓に脂肪がたまりやすくなる悪循環が始まります。(文献2) 順天堂大学の研究では、非肥満でも脂肪肝があると筋肉の代謝が低下しやすいことを示しました。(文献3) つまり脂肪肝は内臓脂肪とは別に全身の代謝バランスを崩す要因にもなり得ます。 この流れが続くと、基礎代謝(安静時でも消費するエネルギー)が下がり、同じ食事量でも体重が増えやすい体になります。早めの生活習慣改善で悪循環を断ち切ることが重要です。 アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝について 脂肪肝はアルコール性脂肪肝(AFLD)と非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD/MASLD)の2つのタイプに分けられます。 アルコール性脂肪肝(AFLD)は、過度な飲酒が原因で発症します。 長期にわたり男性で1日平均60g、女性で40g以上の純アルコールを摂取すると発症リスクが高まります。 60gはアルコール度数5%のビール500ml缶なら3本分の量です。 お酒を飲むと、肝臓でアルコールを分解する過程で中性脂肪を合成してしまいます。 中性脂肪は体質によっては、血液中に溜まるため体型に出ない方もいます。そのため、比較的痩せ型の方でも発症する特徴があります。 日本人の主要な脂肪肝タイプである非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD/MASLD)になる原因は、「飲み過ぎ」ではなく「食べ過ぎ」です。 国内報告では有病率が男性41%、女性17.7%とされており、近年の食生活の変化やデスクワークの増加により患者数が急増しています。 BMI25以上の肥満の方では、腹囲が増えている場合は非アルコール性脂肪肝の可能性があります。 この病型では内臓脂肪の蓄積と密接に関連しており、腹囲の増大が顕著に現れます。 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の約80~90%は単純性脂肪肝で、肝硬変や肝がんのような重篤な病気に進行するリスクは低いとされています。 しかし、約10~20%は炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行し、将来的に肝硬変や肝がんのリスクが高まる可能性があります。早めに対策を行いましょう。 脂肪肝でお腹が出たら?食事と運動療法で改善 脂肪肝によるお腹の膨満は、適切な食事療法と運動療法により改善が期待できます。 治療の基本原則は、体重の7〜10%減量を推奨しています。(文献4) 半年で体重の5%程度のペースで進めると肝機能の数値であるAST・ALTが改善しやすいとの報告もありますので、急激な減量は避け、無理のない範囲で行いましょう。(文献5) 脂肪肝でお腹が出る主要因は総カロリー過多ですが、とくに果糖のとり過ぎは肝脂肪を増やしやすいと指摘されています。(文献2) 運動療法では、毎日30分程度の歩行など有酸素運動を中心に行いましょう。 運動時間の目安ですが、週に150 分以上でも効果があるものの、週に250 分運動することで肝脂肪や炎症の一層の改善が報告されています。(文献4) 通勤時の一駅歩く習慣や階段利用などの工夫により、忙しい会社員でも継続可能な運動習慣を身につけられます。 食事での改善ポイント 近年、低糖質食による肝脂肪の改善例も報告されていますが、あくまで基本となるのは食事全体のカロリーと栄養のバランスを整えることです。(文献2) まず主食(白ごはん、パン、麺類)を1割減らすことから始めましょう。代わりに玄米や雑穀米に変更し、野菜や海藻類を増やして食物繊維を確保します。 とくに果糖は肝臓で中性脂肪に変わりやすいため、果物は1日1/2個程度に制限し、清涼飲料水は避けることが大切です。 推奨する食事パターンは以下の通りです。 朝食:必ず摂取し、血糖値の急上昇を防ぐ 昼食:定食スタイルで栄養バランスを重視 夕食:就寝3時間前までに済ませ、軽めに抑える アルコールについては、男性で純アルコール60g/日未満、女性で40g/日未満に制限し、週2日以上の休肝日を設けることが推奨されます。 アルコール性脂肪肝の場合、2-4週間の禁酒で改善効果が現れると報告されています。まずは2週間の禁酒をやってみることをおすすめします。(文献6) 筋トレと有酸素運動の黄金比 有酸素運動と筋トレの併用が肝脂肪減少には効果的と報告されています(文献5)。 有酸素運動では、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどを週5日、まずは1日30分以上実施しましょう。1日30分であれば、通勤時の一駅歩く習慣や、昼休みの散歩を取り入れることで、忙しい会社員でも実践可能です。 筋力トレーニングは週2〜3日実施を推奨しています。(文献4) 筋肉量の増加は基礎代謝の改善につながり、脂肪肝改善に役立つためです。自宅でできるスクワットや腕立て伏せ、片足立ちなどから始め、徐々に負荷を増やしていきましょう。 重要な点は、仮に体重減少がなくても運動を継続すれば脂肪肝改善効果があることです。(文献4) 体重が変わらなくても落ち込まず、まずは3カ月の運動継続で肝機能数値の改善を目指しましょう。 脂肪肝の検査と再生医療について 脂肪肝は「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気のため、自覚症状がほとんどありません。 しかし、血液検査や画像検査を組み合わせると、症状が出る前に脂肪肝を見つけられる場合があります。 健康診断で肝機能の異常を指摘された場合は、必ず精密検査を受け、専門医による適切な診断と治療方針の決定を受けましょう。 脂肪肝の治療には、再生医療という選択肢もあります。進行した脂肪肝に対する治療の可能性が広がっています。 血液検査と再生医療について、それぞれ詳しく解説します。 血液検査 脂肪肝かどうかを調べる最初の手がかりは、採血で測るALTとASTという酵素です。 ALTは肝臓の細胞に多く、多くの施設で30〜40IU/L未満が目安とされますが、日本人を対象とした大規模研究では、正常上限値は男性29IU/L以下、女性23IU/L以下とされています」(文献7) ALTの軽い上昇でも脂肪がたまり始めている場合があるため、健康診断で要再検査と出たら放置しないことが大切です。 ASTは心臓や筋肉にも含まれる酵素ですが、ALTよりも高い場合はアルコールの影響が疑われます。ただし、確定には他の検査結果も総合的に判断する必要があります。(文献8) 再生医療 生活習慣の見直しでは追いつかないほど肝臓が硬くなる線維化が進むと、肝硬変に至ることがあります。 このような進行例に対しても再生医療が治療の選択肢となります。 再生医療の幹細胞治療は、患者様自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、点滴により全身に投与する治療法です。 再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 自宅で続ける脂肪肝チェックと再発予防 脂肪肝の改善後も、継続的なセルフモニタリングと予防策の実践により、再発を防げます。 日々の体重管理では、毎朝同じ時間・同じ条件で測定し、スマートフォンアプリで記録することで変化を視覚的に把握できます。 腹囲測定も重要です。男性85cm以上、女性90cm以上でメタボリックシンドロームの疑いがあるため、おへその高さで月1回測定しましょう。 生活習慣では、主食の1割減量、週2日以上の休肝日、1日30分以上の歩行を基本とし、無理のない範囲での継続が重要です。 また、年1回の健康診断での血液検査を行い、専門医に肝機能の数値を客観的に診断してもらいましょう。 まとめ|お腹が出たら注意!脂肪肝は日々の習慣の見直しが重要 脂肪肝によるお腹の膨満は、単純な肥満ではなく、複雑な代謝異常が引き起こす医学的な病態です。 近年では、在宅勤務の増加や食事の欧米化により発症リスクが高まっていますが、適切な食事療法と運動療法により確実に改善できる疾患でもあります。 食事習慣の改善と、運動習慣の定着を目標に、継続的な取り組みを行っていきましょう。早期発見のためには、健康診断を受け、血液検査の数字を確認することが重要です。 進行例に対しては、再生医療という新しい治療法もあります。 放置すれば肝硬変や肝がんへの進行リスクもある脂肪肝ですが、今の自分の状態を正しく知り、適切な対策を講じることで健康な肝臓を取り戻せます。 当院「リペアセルクリニック」では、専門医による診察から再生医療まで、一人ひとりの状態に応じた治療を提供しています。 まずは公式LINEのオンライン診断からお試しください。一度自分の体と向き合ってみましょう。 脂肪肝に関してよくある質問 脂肪肝が進むとどうなる?放置のリスク 脂肪肝を放置すると、段階的に深刻な病態へ進行する可能性があります。 初期の脂肪肝から脂肪肝炎(NASH)へ進行すると、肝臓に慢性的な炎症が起こり、徐々に肝臓がかたくなる「線維化」が始まります。 さらに進行すると「肝硬変」となり、肝がんを発症するリスクが生じてしまいます。 脂肪肝は自覚症状がほとんどないため、気づいたときには既に進行しているケースも多く見られます。 健康診断でALT・ASTの上昇を指摘された段階での早期対応が、将来の重篤な合併症を予防する鍵となります。 初期段階で発見し、生活習慣の改善に取り組みましょう。 脂肪肝は女性に多い? 脂肪肝は一般に男性で多く見つかりますが、女性でも決してまれではありません。 女性ホルモンは脂肪を皮下に優先してため込むため、閉経前は脂肪肝が起こりにくい傾向ですが、閉経後にはホルモンが急減し脂肪のつき方が男性型へ変わり、発症リスクが一気に上昇します。 また、細身でも内臓脂肪が多い「隠れ肥満」の女性は年齢を問わず注意が必要です。 顔のむくみやおならは脂肪肝のサイン? 脂肪肝は「沈黙の臓器」といわれる肝臓の病気のため、初期にははっきりした症状がほとんど出ません。 ただ肝機能が落ち始めると、だるさや軽い不調など体の各所に細かな変化が現れることがあります。 顔や手足がむくみやすくなるのは、肝臓で作られるアルブミンというたんぱく質が不足し、水分が血管の外に漏れやすくなるためと考えられています。 一方、腸内環境が乱れるとガスがたまりやすくなり、おならのにおいが強くなるため、食事習慣の乱れが腸内環境の乱れと脂肪肝につながっている可能性はあります。 他のサインとしては、慢性的な疲労感、集中力低下、肩こり、ぼんやり感、軽い腹部の張りなどが挙げられますが、これらの症状は他の疾患でも見られるため、身体に異常があった場合は早めに専門医への相談を検討してください。 参考文献 (文献1) 日本肝臓学会「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の診療ガイドライン2020年版」2020年 https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/nafldnash2020_add.pdf(最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) 太田嗣人.「肥満・インスリン抵抗性がもたらす肝の炎症」『日本内科学会雑誌』109(1), pp.19-26, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/1/109_19/_pdf(最終アクセス:2025年6月27日) (文献3) 門脇聡ほか「非肥満者では内臓脂肪の蓄積よりも脂肪肝が筋肉の代謝障害と強く関連する」順天堂大学研究報告, 2019年 https://www.juntendo.ac.jp/assets/NewsRelease20190614.pdf(最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) 日本肝臓学会「脂肪性肝疾患患者に対する肝臓リハビリテーション指針」日本肝臓学会ホームページ https://www.jsh.or.jp/medical/committeeactivity/shakaihoken/fatty.html(最終アクセス:2025年6月24日) (文献5) Koutoukidis D A, et al. (2021). The effect of the magnitude of weight loss on non-alcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis. Metabolism, 115, 154455.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33259835/ (最終アクセス:2025年6月28日) (文献6) Clevelandclinic「How Long Does It Take Your Liver to Detox From Alcohol?」Health Essentials, 2023年2月28日 https://health.clevelandclinic.org/detox-liver-from-alcohol(最終アクセス:2025年6月28日) (文献7) Tanaka K, Hyogo H, Ono M ほか.「Upper limit of normal serum alanine aminotransferase levels in Japanese subjects」Hepatology Research 44(12), pp.1196-1207, 2014年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24372862/(最終アクセス:2025年6月28日) (文献8) Giannini E, & Testa R. (2013). The De Ritis ratio: the test of time. Digestive and Liver Disease, 45(3), e1–e2. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3866949/ (最終アクセス:2025年6月28日)
2025.06.30 -
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「健康診断で肝臓の数値が少し高いですね」と医師に言われて、不安になっていませんか。 「でも薬はまだ出されなかったし大丈夫かな」と思っていても、実は脂肪肝が進んでいるかもしれません。 忙しい毎日の中で病院に通う時間がなかなか取れないときでも、適切なサプリメントを活用することで肝臓の健康をサポートできる可能性があります。 本記事では、脂肪肝の栄養管理に役立つサプリメントについて、専門医の視点から詳しく解説します。 サプリメントの選び方から使い方、さらには生活習慣の改善方法まで、あなたが知りたい情報を網羅的にお伝えします。 ただし、サプリメントはあくまで補助的な役割であり、根本的な改善には生活習慣の見直しが欠かせません。 万が一、数値の改善が見られない場合には、専門的な治療法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 脂肪肝とサプリの基礎知識 脂肪肝は、食べすぎや運動不足などが原因で肝臓に脂肪がたまった状態のことです。 サプリメントは、あくまで補助的な役割として肝臓の働きを助けたり、脂肪がたまりにくくなるようにサポートしたりする効果が期待されています。 まずは脂肪肝がどうして起こるのか。基本的な仕組みを理解しましょう。 肝細胞に脂がたまる仕組み 肝臓に脂肪がたまる主な原因は、エネルギーのバランスが崩れることにあります。 食べすぎや運動不足により、体内で使われなかったエネルギーが中性脂肪に変わって肝臓に蓄積されていきます。(文献1) 正常な肝臓では、全肝細胞の30%未満が脂肪ですが、全肝細胞の30%以上に脂肪が蓄積すると脂肪肝と診断されます。 この状態になると、肝臓本来の機能である解毒作用や代謝機能が低下し始め、放置すると肝炎や肝硬変といった深刻な状態に進行する可能性があります。 また、アルコールの摂取も肝臓での脂肪合成を促進する要因の一つです。 アルコールが分解される過程で生成される物質が、脂肪の分解を抑制させてしまうのです。 脂肪肝の初期段階では自覚症状がほとんどないため、多くの方が気づかないうちに進行してしまいます。 健康診断で肝機能の数値が基準値を上回った場合は、脂肪肝の可能性を疑いましょう。 サプリで期待できる三つの作用 脂肪肝に対してサプリメントに期待できる作用は、大きく分けて三つあります。 余分な脂を分解して外に出す 肝細胞をサビから守る 炎症をしずめる 余分な脂を分解して外に出す 余分な脂を分解して外に出す作用がある成分として、オメガ3脂肪酸とスルフォラファンがあります。 オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)には肝臓で脂肪をエネルギーに変える「β酸化」を高め、肝内脂肪を減らすことが臨床試験で確認されています。(文献8) また、スルフォラファンは脂肪を作る酵素を抑え、溜まりにくくする性質があります。これら2つの成分を効果的に組み合わせると、肝臓に溜まった余分な脂肪を効率的に減らせる可能性があります。(文献10) 肝細胞をサビから守る 肝細胞をサビから守るアスタキサンチンは、ビタミンEより強い抗酸化力で「身体のサビ」となる活性酸素を減らし、肝臓の炎症や繊維化を抑えます。(文献2)(文献9) また、シリマリンは肝臓の機能を測る数値であるALT・ASTを下げた臨床報告があります。 (文献3) アスタキサンチンとシリマリンをうまく取り入れ、サビにくい肝細胞を手に入れましょう。 炎症をしずめる サプリメントには、肝臓の炎症をしずめる効果もあります。 炎症をしずめる代表例として、オメガ3は炎症性の物質であるサイトカインを減らす作用が報告されています。(文献8) また、アスタキサンチンにも肝臓での炎症反応を弱める働きが確認されています。 (文献2)(文献9) ただし、これらの作用はあくまで食事や運動などの基本的な生活習慣の改善と組み合わせることで、より効果的に発揮されます。 サプリメントだけに頼るのではなく、総合的なアプローチが重要であることを理解しておきましょう。 脂肪肝の栄養管理に使用されるサプリ・成分5選 脂肪肝の栄養管理において注目されている5つの成分をご紹介します。 それぞれの成分には独自の特徴と効果があり、あなたの生活スタイルや体質に合わせて選択することが大切です。 以下の成分について、その特徴と期待できる効果、どのような方に適しているかを詳しく解説します。 スルフォラファン オメガ3脂肪酸 シリマリン アスタキサンチン オルニチン スルフォラファン スルフォラファンは、ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に豊富に含まれる天然の化合物です。 この成分の最大の特徴は、強力な抗酸化作用と解毒酵素の活性化にあります。 肝臓は体内の解毒を担っているため、この機能をサポートするスルフォラファンは脂肪肝の改善に役立つとされています。 また、肝細胞を酸化ストレスから守る働きも確認されており、脂肪肝の悪化を遅らせると報告されています。(文献10) とくに、偏った食事で野菜不足が気になる人にとっては、不足分を補う選択肢になります。 外食が多く野菜不足が気になる方にとって、手軽に摂取できるサプリメントです。 オメガ3脂肪酸 オメガ3脂肪酸は、青魚に多く含まれる必須脂肪酸で、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が代表的です。 オメガ3脂肪酸は、EPA・DHAは体内にあるPPAR-αというスイッチを入れ、脂肪を作る酵素を抑えつつ、脂肪を分解する作用があると研究で示されています。(文献8) これにより、肝臓に溜まった余分な脂肪を効率的に減らせると考えられています。 さらに、EPA・DHAは中性脂肪を約10〜30%下げるという研究結果があります。(文献8) そのため、有効に摂取すれば脂肪肝の根本的な改善につながる可能性があります。 これらの効果から、脂っこい食事を好む方や、魚を食べる機会が少ない方に適した成分といえるでしょう。 現代の食生活では肉類の摂取が多くなりがちで、相対的にオメガ3脂肪酸が不足しやすい傾向にあります。 不足する栄養素はサプリメントで補って、脂肪酸のバランスを整えましょう。 シリマリン シリマリンは、マリアアザミ(ミルクシスル)という植物の種子から抽出される天然成分です。 この成分は、肝機能サポートのサプリメントとして広く利用されています。(文献3) シリマリンの主な作用は、肝細胞の再生を助け、肝臓を有害物質から保護することです。(文献12) また、抗炎症作用により肝臓内の炎症を抑制し、脂肪肝の進行を遅らせる効果も期待されています。(文献12) 長期的な肝臓の健康維持を考えている方や、お酒を飲む機会が多い方におすすめの成分です。 シリマリンは副作用として、まれに胃腸の不調を引き起こすことがあります。 一般的な摂取目安は製品表示に従い、医師の指示を優先して服用しましょう。 アスタキサンチン アスタキサンチンは、鮭やエビ、カニなどに含まれる赤い色素成分で、強力な抗酸化作用を持っています。 脂肪肝の状態では、肝細胞内で活性酸素が増加し、細胞にダメージを与えてしまいます。 アスタキサンチンは、これらの有害な活性酸素を効率的に除去し、肝細胞を酸化ストレスから保護します。 また、炎症を抑制する作用もあり、脂肪肝に伴う肝臓の炎症を軽減する効果が期待されています。(文献9) 金沢大学の研究では、マウス実験で高コレステロールの餌を与えた群と、高コレステロールの餌にアスタキサンチンを混ぜて与えた群を比較したところ、アスタキサンチンを混ぜた群がAST・ALTの上昇を抑えた報告もありました。(文献2) オルニチン オルニチンは、しじみに豊富に含まれるアミノ酸の一種で、アンモニアを尿素に変えるサイクルのカギとなるアミノ酸で、解毒を支えます。(文献4) アンモニアは体内で発生する有毒な物質で、適切に処理されないと疲労感や集中力の低下を引き起こします。 脂肪肝の状態では、アンモニアの処理能力にも影響が出ることがありますが、オルニチンを補給することで解毒機能をサポートできます。 また、成長ホルモンの分泌を促進する作用もあり、肝機能の修復を助ける可能性があります。 肝臓の負担を軽減することで、脂肪肝の改善にも間接的に寄与すると考えられています。 脂肪肝でサプリを使用するリスクと使い方 サプリメントは健康食品として手軽に利用できる一方で、正しい方法で使わないと体に悪影響を与える可能性があります。 とくに肝臓に関するサプリメントは、使い方を間違えると肝臓に負担をかけてしまうことがあるため、注意深く使用する必要があります。 本章では、サプリメントを活用するために知っておきたい重要なポイントについて解説します。 肝障害報告の多い成分 サプリメントの中には、成分によっては過剰摂取や体質に合わない場合に肝障害を引き起こす可能性があります。 とくに注意が必要なのは、ウコン(クルクミン)を含む製品です。 ウコンは肝臓に良いとされる一方で、大量摂取により肝障害を起こした事例が報告されています。(文献5) これには複数の要因があり、ウコンの効能が肝臓の負担となり引き起こされる事例もあれば、ウコンに含まれる鉄分が肝臓に蓄積しやすく、酸化ストレスを増加させる事例もあります。 また、茶葉から抽出される成分も、まれに肝障害を引き起こすことがあります。 通常の飲み物として摂取する分には問題ありませんが、濃縮された形でのサプリメント摂取には注意が必要です。 これらの成分を含むサプリメントを使用する際は、まず少量から始めて体調の変化を注意深く観察することが大切です。 肝機能に不安がある方は、使用前に医師に相談することをおすすめします。 薬とサプリの併用は医師に相談する 現在、薬を服用している方は、サプリメントとの併用について必ず医師に相談してください。 薬やサプリメントの成分が肝臓に損傷を起こし、肝機能に影響を及ぼす可能性があるからです。(文献6) サプリメントと薬を同時に飲むと、出血・低血糖・低血圧・薬効増減などの思わぬ副作用が起こることがあります。 とくにワルファリンなどの抗凝固薬、糖尿病薬、高血圧薬、そして肝臓で代謝される薬を使っている人は要注意です。 必ず医師や薬剤師に飲んでいる薬やサプリメントを全部伝え、併用の可否とモニタリング方法を相談しましょう。 副作用が出たらすぐに使用を中止する サプリメントを使用していて体調不良を感じた場合は、すぐに使用を中止してください。 副作用の症状としては、腹痛、下痢、吐き気、頭痛、発疹、かゆみなどがあります。 肝臓に関連する症状である、疲労感の増強、食欲不振、黄疸(皮膚が黄色くなる)、尿の色が濃くなるなどが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 これらの症状は肝機能の低下を示している可能性があります。 また、アレルギー反応として呼吸困難や全身の発疹が現れた場合は、緊急性が高いため直ちに医療機関を受診する必要があります。 副作用が疑われる場合は、使用していたサプリメントの製品名や成分、使用期間、摂取量などの情報を医師に正確に伝えることが大切です。 これらの情報は、原因の特定と適切な治療につながります。 サプリメントは「天然」や「自然由来」と表示されていても、すべての人に安全とは限りません。 体質や体調により、予期しない反応が起こる可能性があることを理解しておきましょう。 サプリだけでは不十分|生活習慣の改善が脂肪肝治療の基本 サプリメントは脂肪肝の改善をサポートする有用なツールですが、それだけに頼っていては根本的な解決には至りません。 脂肪肝治療の基本は、食事療法と運動療法による生活習慣の改善です。 食事面では、カロリーの過剰摂取を避け、バランスの取れた栄養摂取を心がけることが重要です。 とくに糖質や脂質の摂取量をコントロールし、野菜や魚を中心とした食事に切り替えることで、肝臓への脂肪蓄積を減らせます。 また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸は脂肪酸の酸化を促し、カフェインはエネルギー消費を高める作用が示唆されています。 ある観察研究では1日2〜3杯のコーヒー習慣が脂肪肝や線維化リスクを下げると報告されています。(文献7) 運動については、30分〜60分程度の有酸素運動を週3〜4回行うことが推奨されています。 ウォーキングや水泳などの軽い運動でも十分効果があり、無理なく続けられる運動を選択することが大切です。 これらの生活習慣の改善と併せてサプリメントを活用することで、より効果的な脂肪肝の改善が期待できます。 サプリメントは補助的な役割として位置づけ、基本的な生活習慣の見直しを最優先に取り組むことをおすすめします。 また、定期的な健康診断でASTやALTのような血液検査の数値をモニタリングし、改善の程度を客観的に評価することも重要です。 脂肪肝の再生医療 生活習慣の見直しやサプリメントによる栄養管理の他に、再生医療(幹細胞治療)の選択肢があります。 再生医療は、からだが本来もつ修復力を利用して、傷んだ臓器の働きを取り戻すことを目指す先進的な方法です。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪肝に対する再生医療として幹細胞治療を行っています。 自己細胞を使うため拒絶反応が起こりにくく、通院で受けられるのが特徴です。 脂肪肝に対する再生医療について、詳しくは以下をご覧ください。 まとめ|自分で気づきにくい脂肪肝はすぐに相談を! 脂肪肝は初期段階では自覚症状がほとんどなく、多くの方が気づかないうちに進行してしまう疾患です。 しかし、放置すると肝炎や肝硬変といった深刻な状態に進行する可能性があるため、早期の対策が重要です。 本記事でご紹介したサプリメントは、脂肪肝の栄養管理において有用な選択肢の一つですが、あくまで補助的な役割であることを理解しておきましょう。 根本的な改善には、食事療法と運動療法による生活習慣の見直しが不可欠です。 サプリメントを選ぶ際は、ご自身の生活スタイルや体質に合った成分を選択し、安全性を最優先に考慮してください。 また、現在服用している薬がある方は、必ず医師に相談してから使用を開始しましょう。 もし生活習慣の改善やサプリメントによる対策を継続しても数値の改善が見られない場合は、専門医による詳しい検査や治療を受けることをおすすめします。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪肝に関する無料相談を承っているので、お気軽にご相談ください。患者様一人ひとりの状態に応じた治療法をご提案します。 あなたの肝臓の健康を守るために、今すぐできることから始めてみませんか。 参考文献 (文献1) 沢井製薬株式会社「本当はコワイ脂肪肝」サワイ健康推進課, 2014年12月 https://kenko.sawai.co.jp/healthcare/201412.html(最終アクセス:2025年06月24日 (文献2) 金沢大学「サケやカニ由来の赤い色素『アスタキサンチン』にNASHの予防・抑制作用があることを発見!」2015年頃 https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/32091/(最終アクセス:2025年06月24日) (文献3) 科学技術振興機構「J-GLOBAL学術論文データベース」2010年頃 https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201002214886689414(最終アクセス:2025年06月24日) (文献4) 協和発酵バイオ株式会社「オルニチンのはたらきと効果-02」 https://www.kyowahakko-bio-healthcare.jp/healthcare/ornithine/effect02.html(最終アクセス:2025年06月24日) (文献5) 東邦大学医療センター大森病院検査部「ウコンと肝障害について」 https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column/column_079.html(最終アクセス:2025年06月24日) (文献6) Merck & Co., Inc.「薬による肝臓の損傷」MSDマニュアル(家庭版), 2020年1月 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(2021). Sulforaphane Attenuates Nonalcoholic Fatty Liver Disease by Inhibiting Hepatic Steatosis and Apoptosis. Nutrients, 14(1), pp.76. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35010950/(最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「健診で脂肪肝と言われたけれど、薬で治療できるのだろうか?」 このような疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。 脂肪肝は痛みや自覚症状がほとんどないため、つい放置してしまいがちな病気です。 しかし、そのまま放っておくと肝臓がかたくなり、肝炎や肝硬変といった重篤な病気につながる可能性があります。(文献1) 最近では、飲み薬や注射などさまざまな治療選択肢が広がっており、早期に適切な治療を始めることで肝臓の状態をしっかりと改善が期待できます。 本記事では、脂肪肝の薬物治療について詳しく解説いたします。 薬の種類や効果、副作用のリスク、市販薬との違い、そして治療を受ける際の注意点まで、専門医の視点からお伝えします。 ぜひ記事を最後までご覧いただき、脂肪肝治療への理解を深めてください。 脂肪肝の薬の種類 脂肪肝の治療では、主に以下の薬が使用されます。 抗酸化剤(ビタミンE) 糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬など) 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸) 脂質異常症治療薬(スタチン系) その他の補助的治療薬 これらの薬は主に、肝臓を保護したり炎症を抑えたりするためのものです。 それぞれ異なる機能で肝臓の改善に働きかけますが、どの薬が適しているかは患者様の症状や併存疾患によって決まります。 次に、それぞれの薬について詳しく見ていきましょう。 抗酸化剤(ビタミンE) ビタミンEは、肝臓の炎症や酸化ストレスを軽減する強力な抗酸化剤として脂肪肝治療の補助として使用されることがあります。 主な働きは、肝細胞を傷つける活性酸素を除去し、炎症を引き起こすサイトカインという物質を抑制することです。(文献2) 肝酵素(ALT、AST)の低下、肝臓の炎症軽減、インスリン感受性の改善といった効果が見られた例があります。 ただし、副作用のリスクも理解しておく必要があります。 高用量での長期使用では、死亡率の増加や出血性脳卒中のリスクが報告されています。(文献3) そのため、糖尿病を合併していない患者様で、肝生検でNASH(非アルコール性脂肪肝炎)が確認された場合に限定して、抗酸化剤(ビタミンE)の使用が推奨されています。 使用する際は必ず医師の指導のもとで適切な用量を守ることが重要です。 GLP-1受容体作動薬 GLP-1受容体作動薬は、もともと糖尿病治療薬として開発された薬ですが、脂肪肝の改善効果も報告されています。 この薬の作用メカニズムは、血糖値に応じてインスリンの分泌を促進し、食欲を抑制して体重減少を促すことです。(文献4) 代表的な薬剤には、リラグルチド(ビクトーザ)やセマグルチド(オゼンピック)があります。 この薬の特徴は、主に体重減少を介した改善が示唆されており、肝脂肪への直接作用は検証中です。 副作用としては、下痢や便秘、吐き気や嘔吐もあるため、定期的な診察が必要です。 SGLT2阻害薬 SGLT2阻害薬は、腎臓でのブドウ糖再吸収を阻害することで血糖値を下げる糖尿病治療薬です。脂肪肝の改善効果も注目されています。 代表的な薬剤には、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、ダパグリフロジン(フォシーガ)、カナグリフロジン(カナグル)などがあります。 台湾で行われた大規模な研究では、糖尿病患者における脂肪肝の発症率が有意に低下することが報告されています。(文献5) 副作用としては、多尿・口渇などが挙げられます。 とくに高齢者では脱水のリスクが高まるため、十分な水分摂取と定期的な検査が必要です。 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸) ウルソデオキシコール酸は、もともと胆石症の治療に使用されてきた薬です。肝細胞を保護する効果があることから脂肪肝治療にも応用されています。 この薬は親水性胆汁酸と呼ばれる物質で、肝細胞の膜を安定化し、炎症やアポトーシス(細胞死)を抑制する働きがあります。(文献6) ただし、単独での治療効果は限定的であることがわかっており、生活習慣の改善や他の薬剤との併用でより効果的とされています。 副作用は軽度の下痢や胃部の不快感がありますが、間質性肺炎の重大な副作用がまれにあるため、異常が認められた場合は専門医に相談しましょう。 推奨用量は通常、成人1回あたり50mgを1日3回経口投与します。 スタチン系薬剤 スタチン系薬剤は、コレステロールを下げる薬として広く使用されていますが、脂肪肝の改善にも多面的な効果を発揮することがわかってきました。 代表的な薬剤には、アトルバスタチン(リピトール)、ロスバスタチン(クレストール)、シンバスタチン(リポバス)などがあります。 この薬の作用は、HMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロール合成を抑制するだけでなく、抗炎症作用、抗線維化作用、抗酸化作用も併せ持つことです。(文献7) 大規模な研究では、脂肪肝患者における心臓や血管で起こる重大なトラブルを68%減少させた報告もあります。 副作用としては、筋肉痛、肝酵素上昇、まれに横紋筋融解症などが挙げられます。 脂肪肝は市販薬やサプリで改善できる?処方薬との違い 「病院に行く前に、まずは市販薬やサプリメントで様子を見たい」と考える方も多いでしょう。 確かに、ドラッグストアやインターネットで手軽に購入できる肝機能改善をうたった商品は数多く存在します。 しかし、処方薬と市販品には大きな違いがあることを理解しておく必要があります。 最も重要な違いは、医学的根拠(臨床試験データ)の量と質です。 処方薬は大規模試験を経て承認されることが多く、標準化された用量設定と品質管理が保証されています。 一方、市販のサプリメントは高品質な臨床試験による裏付けが限定的で、製品間の品質や体への吸収されやすさ等にばらつきがあります。 自己判断での使用には重大なリスクも伴います。 適切な診断なしでの自己治療は、以下の危険性があります。 本当の病気を見逃す(診断遅れ) 他の薬剤との相互作用 不適切な用量により効果がなかったり、副作用が出る これらの危険性があるため、まずは専門医の診断を受けることが大切です。 脂肪肝で薬を服用する際の注意点 脂肪肝の薬物治療を成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。 まず理解していただきたいのは、薬だけでは根本的な改善は難しいという点です。 脂肪肝治療の基本は生活習慣の改善であり、薬物療法はあくまでサポート役として位置づけられています。 薬を服用する際は、必ず医師の指示に従い、定期的な検査を受けながら治療を続けましょう。 脂肪肝は生活習慣の改善が治療の基本 以下の食事、運動、そして薬との相乗効果を確認し、脂肪肝の改善をしましょう。 食事 肝脂肪を有意に減らす選択肢として、日本肝臓学会ガイドラインでは、オリーブオイル・魚・ナッツ・全粒穀物を中心とした、地中海食パターンと適度なカロリー制限が挙げられています。 赤身肉や加工肉を控え、タンパク質は魚類や豆類から摂取しましょう。 運動 運動療法は複数の研究で脂肪肝への効果が認められています。 具体的には「中~高強度有酸素運動(30–60分×週3–4)」を推奨し、体重が減らなくても肝脂肪と炎症が改善すると報告されています。 そのため、体重も一つの大切な指標ではありますが、体重が減らないからと運動を辞めずに、継続することが大切です。 副作用に注意!症状が出たら必ず医師に相談 治療薬を継続して使用するためには、副作用への適切な対応が欠かせません。 どの薬にも副作用のリスクがあるため、症状が現れた場合は自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。 薬剤 代表的副作用と頻度 早期対応のポイント ビタミンE 出血性脳卒中 高用量を避け、出血傾向のある人は使用しない GLP-1受容体作動薬 吐き気・下痢 初期は少量から開始し、症状が続けば用量調整 SGLT2阻害薬 尿路/性器感染症、脱水 水分摂取を促し、高齢者・腎機能低下例は慎重投与 スタチン 筋痛、クレアチンキナーゼ上昇、横紋筋融解症 筋肉痛+褐色尿が出たら直ちに受診 副作用が現れた場合の対応方法も覚えておきましょう。 軽微な症状であっても、まずは医師への報告が大切です。 症状の程度に応じて、用量調整、投与方法の変更、代替薬への切り替えなどの対応が検討されます。 定期的な検査も継続管理の重要な要素です。健康診断や病院で定期検査を受け、診断結果を元に医師に相談しましょう。 薬物相互作用にも注意が必要で、他の薬やサプリメントを併用する場合は必ず医師に伝えてください。 脂肪肝の薬と再生医療という治療選択肢 脂肪肝治療の柱はあくまで食事・運動と既存薬ですが、治療には再生医療という選択肢もあります。 再生医療には、幹細胞治療とPRP療法の二つがあります。 幹細胞治療では、患者様から採取した幹細胞を培養し、患部に投与します。 PRP療法は、血液に含まれる血小板を濃縮した液体を作製し、注射する治療法です。 肝臓疾患に対する再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 まとめ|脂肪肝治療は薬と生活習慣の改善で回復を目指そう 脂肪肝は、早期に気づいて適切な治療をすれば改善が期待できる病気です。 現在はビタミンE、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、ウルソデオキシコール酸、スタチン系薬など複数の薬が検討されており、炎症や脂肪蓄積を抑える報告結果もあります。 ただし、薬だけに依存せず、食事と運動を基盤に改善を目指すことが治療成功のカギです。 地中海食を参考にカロリーと糖質を抑え、中~高強度の有酸素運動を30から60分、週3〜4日のペースで行い、肝脂肪と炎症を改善していきましょう。 治療には、再生医療の選択肢もあります。 再生医療の詳細については、当院「リペアセルクリニック」へお問い合わせください。 脂肪肝の薬に関してよくある質問 薬の副作用が心配だけど大丈夫? 脂肪肝の治療のみを対象とした薬はまだないため、脂肪肝と関連する薬を使用した際の回答となりますが、副作用が起きることもあります。 薬ごとの副作用の重さの違いは、ビタミンEだと高用量を長期に服用した場合に全死亡率や出血性脳卒中のリスクがわずかに上昇するとの報告があります。 一方、GLP-1受容体作動薬の嘔気・下痢、SGLT2阻害薬の尿路/性器感染症は多くが軽度で、用量調整や水分補給で対処可能です。 また、副作用の重さは薬の違いだけでなく、体質によっても個人差がある点にも注意してください。 軽い症状でも自己判断は避け、すぐに医師へ報告し、検査値を定期的にチェックして副作用を早期発見・対応しましょう。 薬代はいくらぐらいかかる? 脂肪肝の治療だけを対象とした保険適用薬は現在ありません。そのため、薬が高額になる可能性がある点は注意が必要です。 ただし、本記事で紹介した薬で、糖尿病などの合併症が見られた場合は保険適用となる可能性もありますので、必ず確認しましょう。 費用は薬剤・投与量で変わるため、診断時に医師と具体的に相談してください。 どのタイミングで病院に行けばいい? 健診で脂肪肝を指摘されたら症状がなくても一度専門医を受診するのが重要です。 とくに40歳以上で体重増加が続く方や、家族歴に肝疾患がある方は早期受診が推奨されます。 脂肪肝は自覚症状が出にくく、放置すると肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあります。 早期診断・治療で重篤化を防げる可能性が高まるため、不安を感じたら遠慮なく医療機関に相談してください。 参考文献 (文献1) 日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」2020年 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/nafld.html (最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) Nagashimada, M., & Ota, T. (2019). Role of vitamin E in nonalcoholic fatty liver disease. IUBMB Life, 71(4), pp.516-522. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30592129/最終アクセス:2025年6月24日) (文献3) Miller, E. R., et al. (2016). Vitamin E and Non-alcoholic Fatty Liver Disease. PMC, 4984672. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4984672/ (最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) Newsome, P. N., et al. (2021). A Placebo-Controlled Trial of Subcutaneous Semaglutide in Nonalcoholic Steatohepatitis. New England Journal of Medicine, 384(12), pp.1113-1124. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33185364/(最終アクセス:2025年6月24日) (文献5) Wei, Q., et al. (2024). Non-alcoholic fatty liver disease risk with GLP-1 receptor agonists and SGLT-2 inhibitors in type 2 diabetes: a nationwide nested case–control study. Cardiovascular Diabetology, 23(1), pp.1-12. https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-024-02461-2 (最終アクセス:2025年6月24日) (文献6) Zhang, J., Wang, X., Shen, Y., et al. (2020). Ursodeoxycholic Acid in Non-Alcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. Clinical and Experimental Gastroenterology, 13, 251-264. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32595039/(最終アクセス:2025年6月24日) (文献7) Boutari, C., et al. (2024). A Systematic Review of Statins for the Treatment of Nonalcoholic Steatohepatitis: Safety, Efficacy, and Mechanism of Action. Molecules, 29(8), pp.1859. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38675679/ (最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
- 腰椎椎間板ヘルニア
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バスケットボールの練習中や試合前に突然激しい腰痛に襲われ、「もうバスケができないのでは」という不安を抱えていませんか。 腰椎椎間板ヘルニアと診断されても、適切な治療とリハビリテーションにより、多くの選手が競技復帰を果たしています。 この記事では、バスケットボールという競技特有のヘルニア発症メカニズム、症状の詳細、治療法、そして段階的な復帰プロセスまで詳しく解説します。 あなたの不安を解消し、コート復帰への具体的な道筋を示します。 なぜバスケはヘルニアを招きやすいのか?原因となる動作 バスケットボールは椎間板ヘルニアの発症リスクが高いスポーツとして知られています。 日本整形外科学会のデータによると、スポーツ関連の腰椎損傷において、バスケットボールは上位にランクされており、NCAA大学バスケットボールの2009年から2014年までの統計では、男子で79件、女子で45件の腰椎脊椎損傷が報告されています(文献1)。 この高い発症率の背景には、バスケット特有の動作パターンが深く関係しています。 ジャンプ動作と着地衝撃 ジャンプをすると、背骨のクッション役である椎間板に大きな力が加わります。 とくにリバウンドやシュート後にひざが十分曲がらずに着地をすると、衝撃がまっすぐ腰へ伝わり、椎間板を傷めやすくなります。 さらに、着地と同時に体が前へ傾いたりねじれたりすると、「押しつぶす力」に「ひねり」が加わり、椎間板への負担が一段と増します。(文献2) 前かがみディフェンスと回旋負荷 ディフェンスで腰を低く構え、前かがみの姿勢をとりますが、この際に背中が丸まった姿勢だと腰に慢性的に負担がかかります。 さらに、カッティングやピボットのように急に方向を変える動きでは、片足を軸に体がねじれるため、椎間板に「ひねり」のストレスが加わります。 シュート動作では体を伸ばしながらひねるので、「押しつぶす力」と「ひねり」が同時にかかり、腰への負担が大きくなります。 また、シュートフェイントの動きもしますが、フェイントのように急停止する動作も腰への負担が大きいです。 成長期のプレイヤーは骨や椎間板がまだ完全に強くなりきっていないうえ、急に身長が伸びると体の適応が追いつかず、こうした負担に弱い点にも注意が必要です。 バスケによって起こるヘルニアの症状 バスケットボールではジャンプ・着地や急な切り返しで腰に大きな力がかかるため、突然「ズキッ」と強い腰痛が出るケースが目立ちます。ここではヘルニアの進行度別の症状と、ヘルニア発症後の休養期間の目安について説明します。(文献3) これらに加え、前かがみになったり咳・くしゃみをすると痛みが強くなるのもヘルニア症状の特徴です。 軽度の症状 発症直後は腰からお尻、太もも裏、ふくらはぎ、足先まで電気が走るような痛みやしびれが広がります。 咳やくしゃみ、前かがみ動作で一時的に痛みが強くなるものの、歩行も可能です。 この段階では、まず安静を保つことが大切です。同時に、睡眠環境の改善や日常生活の見直しを行い、腰への負担を軽減して症状の悪化を防ぎましょう。 中等度の症状 発症から数週間ほどで、神経圧迫が続くと筋力低下が現れます。 足首を上げにくいとつまずきやすくなり、つま先立ちもできなくなるため、ジャンプ力が大幅に落ちます。 歩行では患部をかばうための歩き方が目立ち、ジャンプや急ターンは痛みでできなくなってしまいます。(文献3) 重度の症状 重度のヘルニアになると、単なる腰痛や足のしびれを超えて、より深刻な症状が現れます。 尿が出にくい・残尿感・便漏れといった排泄障害、股の感覚消失、両脚の強い麻痺などが起こります。これらは「馬尾症候群」と呼ばれ、飛び出した椎間板が腰の奥の太い神経束を圧迫する緊急事態です。 可能な限り早急な手術が必要で、一般的に24~48時間以内の手術が推奨されています。手術が遅れると後遺症のリスクが高まります。 こうした重症例では3~6カ月以上の長いリハビリが必要になり、再びコートに立てるかどうかは個々の回復状況を見ながら慎重に判断されます。 ヘルニアの症状が出たらバスケは何日休む? 休養期間は症状の程度によって幅があります。一般的な目安は次のとおりです。 症状 休養期間 軽度の症状(日常生活は可能) 約1~2週間の安静 中等度の症状(練習に支障をきたすレベル) 約1~3カ月の安静 重度の症状(歩行が困難・安静にしていても痛みがある) 約3~6カ月の長期休養 復帰の判断は自身で行わず、必ず医師の判断を仰いで競技復帰しましょう。 痛みが残る状態で無理に復帰すると再発のリスクが高まるため、焦らず治療とリハビリに専念しましょう。 バスケで発症したヘルニアの治療法について 椎間板ヘルニアの治療は、症状の重さに応じて段階的に進めるのが基本です。軽度から中等度の症状ではまず手術をしない保存療法から開始します。 そして、保存療法で効果がない場合や、重度の神経症状がある場合に手術を検討します。 近年では再生医療といった治療法も選択肢に加わり、とくにスポーツ選手の早期復帰を目指す治療として活用されています。 治療法の決定には、症状の重さ・年齢・競技レベル・復帰の緊急度などを総合的に判断することが重要です。 ヘルニア初期の保存療法 保存療法では以下のような方法を組み合わせて症状の改善を図ります。 治療法 解説 薬物療法 消炎鎮痛薬(NSAIDs)で神経の腫れを抑え、足の痛みやしびれには神経痛専用の薬(プレガバリンなど)を使用します。筋肉の緊張には筋弛緩薬を短期間併用することもあります。 ブロック注射 痛みが強い場合、硬膜外腔へのステロイド注射(神経ブロック)で一時的に痛みを緩和させます。ただし効果は一過性で、長期的な改善効果は限定的です。 理学療法(リハビリ) 症状に合わせて段階的に進めます。急性期は安静にしてコルセットで腰を保護。痛みが軽減したらストレッチや筋力トレーニングを開始します。慢性期は体幹筋強化や正しい動作の指導を行います。 コルセットの活用 腰部コルセットで腰椎を安定化させると痛みの軽減に役立ちます。ただし長期間の装着は筋力低下を招くため、痛みが強い初期に限定して使用し、症状が和らいだら外します。 外科手術での治療 手術が必要となる場合は大きく2つのケースに分けられます。 手術が必要なケース 説明 手術が必要な場合(緊急手術) 膀胱や直腸の障害、高度な運動麻痺、馬尾症候群など重篤な神経症状が現れた場合です。これらは時間との勝負であり、速やかに手術による神経圧迫の除去が必要です。(文献4) 手術を検討する場合 発症から3カ月間の保存療法でも効果がない、競技者など早期社会復帰が強く求められる、あるいは患者本人が手術を希望する場合などです。 再生医療の可能性 再生医療は、主に幹細胞治療とPRP療法(多血小板血しょう療法)があります。 まず、幹細胞治療とは、患者様自身の脂肪組織から幹細胞を採取して培養し、増やした幹細胞を脊髄腔に注射する治療法です。 そして、PRP療法は患者さま自身の血液から血小板を高濃度に抽出し、成長因子を含む血しょうを患部に注射する治療法です。 臨床研究が進んでおり、腰痛軽減や機能改善が報告されつつありますが、効果には個人差があり、すべての患者様に同様の結果が得られるわけではありません。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」へお問い合わせください。患者様の症状や状況にあわせたご提案をいたします。 ヘルニアからのバスケ復帰ロードマップ 安全かつ確実にコートに戻るためには、段階的に復帰プログラムを進めることが重要です。 復帰プロセスの期間や内容は人によって大きく異なり、年齢・症状の重さ・治療法・競技レベルによって調整が必要なので、専門医やコーチとの密な連携は欠かせません。 焦って復帰すると再発リスクが高まるため、専門医と相談しながら慎重に判断しましょう。 フェーズ別セルフケアのポイント セルフケアのポイントを、急性期(発症~2週間)・回復期(2週間~3カ月)・復帰期(3カ月~6カ月)のフェーズ別にそれぞれ解説します。 急性期(発症~2週間)のセルフケア まず炎症を抑えることが最優先です。この時期は安静を基本とし、発症後はしっかり休養してください。 回復期(2週間~3カ月) 痛みが落ち着いてきたら、徐々に身体機能の回復トレーニングを開始します。 以下の基本エクササイズと日常動作の工夫で、腰への負担を減らしながら筋力と柔軟性を取り戻していきます。 【基本エクササイズ】 エクササイズ 手順 ドローイン 仰向けで膝を立てて腹式呼吸をし行います。息を吐きながらお腹をへこませ、その状態で10秒キープ(呼吸は止めない)。 これを5回1セットで1日3セット実施し、腹横筋(インナーマッスル)を鍛えます。 キャット&ドッグ 四つん這いになり、息を吐きながら背中を丸め(猫のポーズ)、吸いながら背中を反らせる(牛のポーズ)。 ゆっくり10回繰り返し×2セット行います。背骨と周囲筋の柔軟性を高め、血流を促進します。 【日常動作の工夫】 動作 工夫する点 座る姿勢 椅子に座る際は深く腰掛け、背もたれに背中を預けます。 足裏を床にしっかりつけ、膝と股関節がそれぞれ直角になる高さの椅子を使いましょう。 立ち上がり動作 椅子から立つときは一旦軽く前かがみになり、上半身の重心を足の真上に移してから立ち上がります。 腰だけでなく太ももの力を使うことで腰への負担を軽減できます。 物の持ち上げ 床にあるボールや重い荷物を取るときは、背中を丸めず膝を曲げて腰を落とす(スクワット動作)ようにします。 背筋を伸ばした状態で太ももの筋力を使い、ゆっくり持ち上げましょう。 復帰期(3カ月~6カ月) 3カ月目以降は、競技復帰に向けた本格的なトレーニングに入ります。段階的に負荷と運動強度を高めましょう。あくまで目安となりますが、復帰に向けた準備を以下のステージ別に行います。 ステージ 説明 ステージ1(基礎体力回復) 長時間の運動に耐えられる体力を戻す段階です。痛みが出ない範囲でウォーキングを行います。 水中ウォーキングやエアロバイクも有効です。腰への衝撃が少ないメニューで持久力を養います。 ステージ2(基本動作回復) ジョギングなど直線方向の軽いランニングを開始します。徐々に距離とスピードを上げ、ボールハンドリングやパス・シュートなどの基本ドリルも再開します。 急激な方向転換や激しいジャンプは避け、軽い切り返し動作までに留めます。 ステージ3(専門動作練習) バスケット特有の動きを集中的に練習します。軽めのジャンプから始め、着地フォームを確認・矯正しながら練習を行います。 ディフェンス時の低姿勢や方向転換のステップワークも練習し、痛みなく実施できるか確認します。徐々に通常強度に近いアジリティドリルも加えます。 ステージ4(実戦復帰) チーム練習への部分参加から始め、非接触メニュー(セットプレーの確認やシューティング練習など)をこなします。 問題なければ対人練習(1対1や5対5)に進み、最終的に試合形式のプレーに復帰します。コンタクトプレーで痛みや不安がなければ、公式戦出場が許可されます。 各ステージの移行は、痛みが出ないこと・動作がスムーズに行えること・専門医や理学療法士と問題がないか確認しながら慎重に行います。段階を飛ばさず着実にこなすことで、復帰後のパフォーマンス低下や再発を防げます。 再発率を抑える体幹メニュー ヘルニア再発予防には体幹(コア)強化が最も重要な要素です。 段階的な体幹トレーニングプログラムを継続して、再発を防ぎましょう。 主に推奨されるトレーニングメニューとして、ドローインやプランク、バードドッグが腰に負担をかけずにできる筋トレメニューです。 以下の記事でヘルニアの際におすすめの筋トレメニューを紹介してますので、気になる方はぜひ参考にしてください。 まとめ|バスケでヘルニアになっても復帰は可能 バスケ選手の腰椎椎間板ヘルニアでも、適切な治療とリハビリをすれば高い確率でコートに戻れます。 大切なのは早期に正確な診断を受け、症状に合った最善の治療法を選択することです。 近年は再生医療という新たな選択肢もあります。 復帰を成功させるポイントは、段階的な復帰プロセスを守ること、継続的な体幹強化トレーニングを怠らないこと、そして再発予防の取り組みを続けることです。 これらによって長期的に競技を続けることが可能となります。ヘルニアと診断されても決してあきらめる必要はありません。 専門医と連携した計画的な治療とリハビリで、確実にコートに復帰しましょう。 ヘルニアに対する再生医療について詳細は、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) Staysniak M, et al."Epidemiology of Lumbar Spine Injuries in Men's and Women's National Collegiate Athletic Association Basketball Athletes"American Journal of Sports Medicine, 47(2),pp.428-434, 2019年 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6823986/ (最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) Bisseling RW, et al."Biomechanical factors associated with injury during landing in netball players"Clinical Journal of Sport Medicine, 18(2), pp.115-121, 2008年. https://journals.lww.com/cjsportsmed/Abstract/2008/03000/Biomechanical_Factors_Associated_With_Injury.3.aspx (最終アクセス:2025年6月24日) (文献3) Nachemson AL."Disc pressure measurements"Spine, 6(1), pp.93-97, 1981年. https://journals.lww.com/spinejournal/Abstract/1981/01000/Disc_Pressure_Measurements.17.aspx (最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021」2021年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b (最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
「リリカを飲み始めてから太ってしまった...」「薬を減らしたいけれど、痛みが戻るのも怖い」 このようなお悩みを抱えている方は多くいらっしゃいます。 ヘルニアの痛みから解放されたいと始めた薬物療法で、体重増加という新たな悩みが生まれてしまうのはとても辛いものです。 とくにデスクワークが中心の生活をされている方にとって、体重増加は腰椎への負担をさらに増やし、痛みの悪化につながる可能性もあります。 しかし、適切な知識と対策を身に付けることで、薬の効果を維持しながら体重をコントロールしていくことは十分可能です。 本記事では、ヘルニア治療薬で体重が増える仕組みから、副作用を抑える服薬のコツ、日常でできるセルフケア方法までを解説します。 また、薬に頼りすぎない治療選択肢として、 再生医療も紹介します。 ぜひ最後までご覧いただき、痛みのない生活と理想的な体重管理を両立させるためのヒントを見つけてください。 ヘルニア治療薬で太る理由 ヘルニア治療に使われるプレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)などの薬物は、神経の過剰な興奮を抑制して痛みを和らげます。 しかし、これらの薬には体重増加の副作用があることが知られています。 また、痛みによる活動量の減少も体重増加に大きく関与しており、これらの要因が複合的に作用し、治療開始後に体重が増えやすい状態が生まれてしまいます。 薬の副作用でむくみが増加する プレガバリンやミロガバリンなどのガバペンチノイド系薬剤は、むくみと体重増加が副作用として報告されています(文献1・文献2)。 具体的なメカニズムはまだ解明途中ですが、体内の水分バランスが変化して水分をため込みやすくなることが一因と考えられ、手足や顔がむくんだ結果、体重計の数値が上がるケースがあります。 加えて、軽い眠気や倦怠感といった副作用が日中の活動量を減らし、消費カロリーの不足が体重増加を加速させます(文献3)。 デスクワーク中心の生活ではもともと消費カロリーが少ないため、このような複合要因により、治療開始後数週間〜数カ月で体重が増えることがあります。 塩分を控えた食事と軽い有酸素運動を早期に取り入れると、これらの副作用を緩和しやすくなります。 痛みによる運動量減少と代謝の低下 ヘルニアによる痛みがあると、無意識のうちに体を動かすことを避けるようになります。階段の昇降を控えたり、散歩の頻度を減らしたりすると、日常的な消費カロリーが大幅に減少します。 さらに、運動不足が継続すると筋肉量が落ちて、基礎代謝率が低下してしまうことにも注意が必要です。 基礎代謝とは、じっとしていても心臓を動かしたり体温を保ったりするために使われるエネルギーのことで、1日に消費するカロリーの約6割を占めています。 筋肉量が減少すると、この基礎代謝が低下し、同じ食事量でも太りやすい体質へと変化してしまいます。 とくに、痛みを避けて長期間にわたって安静にしていると、筋肉の萎縮が進行し、代謝効率が著しく悪化します。 この状態では、薬物の副作用と相まって、より急速な体重増加が起こる可能性があります。 また、運動不足は血液の流れを悪くし、むくみの症状をさらに悪化させることがあります。 痛みの程度に応じて、水中歩行やストレッチなどの体の負担が少ない運動を取り入れることで、代謝の低下を最小限に抑えられます。 ヘルニア薬で太る悩みを解決|副作用を抑える服薬のコツ ヘルニア治療薬による体重増加は、適切な服薬管理により大幅に軽減できます。薬物の特性を理解し、個人の体質に合わせた服用方法を見つけることが重要です。 ここでは、体重増加リスクの現れ方と、副作用を和らげる具体的な服薬マネジメント方法について詳しく解説します。 体重増加リスクの現れ方 リリカ(プレガバリン)とタリージェ(ミロガバリン)は、どちらも神経の過剰な興奮を鎮めるガバペンチノイド系の薬物ですが、体重増加の現れ方には個人差があります。 一般的に、服用量が増えるほどむくみや食欲亢進などの副作用が現れやすくなることは両薬剤に共通しています。 また、同じ用量を服用していても、体重変化の幅には大きな個人差が見られます。 これは、もともとの代謝率、水分保持能力、食欲調節機能の違いが影響しているためです。 そして、生活習慣や併用している他の薬物も体重変化に大きく関与します。 体重増加以外にも、手足のむくみ、眠気、めまい、集中力の低下などの症状が同時に現れることがあります。これらの症状が強く現れる場合は、薬物が体質に合っていない可能性があります。 とくに、服用開始後に急激な体重増加やひどいむくみが現れた場合は、早めに医師に相談が重要です。 逆に、軽度のむくみや1kg程度の体重増加であれば、生活習慣の調整により改善できる場合が多くあります。 副作用を和らげる服薬マネジメント 薬物による副作用を最小限に抑えるためには、段階的な用量調整が最も効果的です。 初回投与時は最小有効量から開始し、痛みの改善状況を見ながら緩やかに増量していくことで、体が薬物に慣れる時間を確保できます。 リリカの場合、1日75mgから開始し、週単位で75mgずつ増量していく方法が推奨されています。(文献4) 急激な増量は副作用のリスクを高めるため、痛みが強くても焦らずに段階的な調整が大切です。 眠気やめまいが気になる場合は、夕食後や就寝前に服用することで、日中の活動への影響を最小限に抑えられます。 また、1日の服用回数を分割すると、血中濃度の急激な変化を避け、副作用の軽減につながります。 食欲増進に対しては、食事の回数を増やして1回あたりの量を減らす方法が効果的です。血糖値の急上昇を避けることで、過度な食欲を抑制できます。 体重増加が気になる場合でも、自己判断で薬を急に中止するのは避けてください。突然の中止により離脱症状や痛みの再燃が起こる可能性があります。 医師と相談しながら、生活習慣の改善と並行して薬物調整を行うことが、効果的な治療継続につながります。 ヘルニア薬で太るのを防ぐセルフケア方法 薬物治療を継続しながら体重増加を防ぐためには、日常生活でのセルフケアが欠かせません。 痛みがある状態でも実践できる具体的な対策を身に付けることで、薬の効果を維持しながら理想的な体重管理を実現できます。 減塩+低GIの食事 ヘルニア治療薬による体重増加を防ぐためには、塩分制限と血糖値コントロールを組み合わせた食事管理が効果的です。 塩分の過剰摂取は体内の水分保持を促進し、薬物によるむくみを悪化させる主要因となります。 この対策として、1日の塩分摂取量を6g以下に制限すると、余分な水分の蓄積を大幅に減らせます。(文献5) 加工食品やインスタント食品には隠れた塩分が多く含まれているため、なるべく避けるようにしましょう。 一方、低GI(グリセミック・インデックス)食品の選択は、血糖値の急上昇を防ぎ、インスリン分泌を安定させることで脂肪の蓄積を抑制します。 白米の代わりに玄米や雑穀米を選ぶ、白いパンよりも全粒粉パンを選ぶなど、精製度の低い炭水化物を意識的に取り入れてください。 野菜類は基本的に低GI食品であり、食物繊維が豊富なため満腹感も得やすく、総摂取カロリーの削減にも寄与します。 タンパク質源としては、鶏胸肉や白身魚、豆腐などの低脂肪・高タンパク食品を選ぶことで、筋肉量の維持と代謝向上を図れます。 食事のタイミングも重要で、1日3食を規則正しく摂取し、間食は低GIのナッツ類や無糖ヨーグルトをおすすめします。 夜遅い時間帯の食事は代謝効率が悪く、体重増加につながりやすいため、夕食は就寝3時間前までに済ませるようにしましょう。 痛みを避けた有酸素運動 ヘルニアによる痛みがある状態でも実施できる有酸素運動として、水中歩行やウォーキングが効果的です。 水中歩行は、水の浮力により腰椎への負荷を大幅に軽減しながら、全身の筋肉を使った有酸素運動を行えます。浮力で関節へのストレスが軽くなるため、痛みを悪化させずに全身運動ができます。 プールが使えない場合はウォーキングに置き換えましょう。 ウォーキングは血流を促して炎症を鎮めたり、体幹を自然に使うことで腰椎を安定させたりと、多くのメリットがあります。 背筋を伸ばし、かかとから着地してつま先で蹴り出すフォームを意識し、呼吸が少し弾む程度のペースで20〜30分を目標にウォーキングしてみましょう。 腰を守りながら有酸素運動の効果を得られます。 ヘルニア薬に頼らない治療法「再生医療」について ヘルニア治療の選択肢の一つとしては、再生医療の選択肢もあります。再生医療は、とくにヘルニアの後遺症にお悩みの方に知っていただきたい治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では、損傷した脊髄付近に直接注射で幹細胞を届ける治療を行っております。ヘルニア薬に頼らない治療法をお探しの方にとっても、選択肢の一つとなります。 当院では、検査結果や生活状況を踏まえ、再生医療を含む複数の選択肢を説明した上で治療計画をご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。 まとめ|薬の副作用と体重増加を同時に克服し、痛みのない生活へ ヘルニア治療薬による体重増加は、薬物の作用機序を理解し、適切な対策を講じることで十分にコントロール可能です。 まず重要なのは、副作用リスクを正しく認識し、医師と連携しながら服薬を行うことです。 段階的な用量調整と服用時間の工夫により、治療効果を維持しながら副作用を最小限に抑えられます。 次に、日常生活でのセルフケアとして、減塩・低GI食事と痛みを避けた有酸素運動を継続的に実践することが、体重管理の鍵となります。 これらの対策は治療開始と同時に始めることで、より高い効果を期待できます。 薬の副作用が気になる場合や十分な痛み緩和が得られない場合は、再生医療も選択肢として検討できます。 当院の公式ラインでは、無料オンライン診断を行っておりますので、お気軽にお試しください。 ヘルニアの薬で太ることに関してよくある質問 プレガバリン(リリカ)を減量したら体重は戻る? プレガバリンの減量により体重が元に戻るかどうかは、体重増加の原因によって異なります。 薬物によるむくみが主な原因の場合、適切な減量により比較的短期間で改善が期待できます。 段階的に薬物を減らしながら、同時に塩分制限や軽い運動を並行して行うことで、余分な水分が徐々に排出され、1〜2カ月程度で元の体重に近づくことが多く見られます。 一方、食欲増進により実際に脂肪が蓄積した場合は、より長期的な取り組みが必要になります。 この場合でも、薬物減量と並行して食事療法と運動療法を継続することで、緩やかながら確実に体重減少を図れます。 重要なのは、急な薬の服用中止は避け、医師の指導のもとで計画的に減量を進めることです。 また、体重が戻る過程で一時的に痛みが再燃する可能性もあるため、生活習慣の改善や他の治療法との併用を検討してみましょう。 体重が増えたら受診すべき? 薬物治療開始後の体重増加については、その程度と期間により受診の必要性が異なります。 治療開始から急激な体重増加がある場合や、手足のひどいむくみが続く場合は、速やかに受診をおすすめします。 これらの症状は薬物の用量調整や種類変更により改善できる可能性があります。 また、体重増加により腰痛が悪化している場合も、治療方針の見直しが必要になる可能性があります。 定期的な体重測定を行い、変化を記録しておくことで、医師との相談がより具体的で効果的になります。 早めの相談により、薬物治療の中断を防ぎ、症状管理もしやすくなることが期待できます。 薬を飲み続けると体重は増え続けますか? 体重は投与開始の数週〜数カ月で増え、その後は増加ペースが落ち着く方もいれば、長期投与でさらに増える方もいるため個人差があります。 また、運動不足や高カロリー食が続けば、薬の影響とは別に脂肪が増える可能性がある点にも注意が必要です。 治療を続ける間は、定期的な体重測定と食事・運動の管理を併行し、増え方が気になるときは医師と相談して薬量や生活習慣を見直しましょう。 再生医療で薬をやめられる可能性は? 再生医療による治療は、薬物療法からの脱却を目指す有効な選択肢の一つです。 PRP療法や幹細胞治療により椎間板や周辺組織の炎症が改善されると、痛みの根本原因が軽減され、鎮痛薬の必要量を大幅に減らせる可能性があります。 ただし、効果には個人差があり、ヘルニアの程度や患者様の年齢、症状の持続期間などにより結果は異なります。 薬物に頼らない治療を希望される場合は、専門医との十分な相談をお勧めします。 参考文献 (文献1) 山口政弘ほか.「帯状疱疹後神経痛患者に対するプレガバリン投与の有効性および安全性」『日本ペインクリニック学会誌』17(2), pp.141-148, 2010年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/17/2/17_2_141/_article/-char/ja/ (最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) 日本医薬情報センター「タリージェ錠 添付文書」PINS 新医薬品情報シート, 2024年改訂 https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068931.pdf (最終アクセス:2025年6月24日) (文献3) 医薬品医療機器総合機構「タリージェ適正使用ガイド(安全性編)」2024年 https://www.pmda.go.jp/RMP/www/430574/e561f5e0-9533-4e8b-97a9-699b95f21881/430574_1190026F1028_10_006RMPm.pdf (最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) 日本医薬情報センター「リリカカプセル 添付文書」PINS 新医薬品情報シート, 2024年改訂. https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00066754.pdf (最終アクセス:2025年6月24日) (文献5) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」2020年. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
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「最近目がかすむようになった」 「視界がぼやける感じがする」 糖尿病と診断されている中で、このような症状が出てきて「糖尿病で失明する」と聞き、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。 実際に、糖尿病の合併症として視力障害が存在します。 しかし、血糖値のコントロールや定期的な眼科受診による経過観察で視力を回復させることや悪化を防止させることは可能です。 本記事では糖尿病と失明の関係や、視力低下への対処法などを紹介します。 視力に対する不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病で失明する原因 糖尿病は全身の血管に影響を及ぼす慢性疾患であり、目の組織にも深刻な障害を引き起こします。 失明に至るのも決してまれではなく、進行するまで自覚症状が乏しいため、発見が遅れるケースも少なくありません。 失明を防ぐには、糖尿病が視覚にどのような影響を及ぼすのかを正しく理解することが重要です。 ここでは、糖尿病によって引き起こされる主な失明の原因と、その他の関連疾患について解説します。 糖尿病網膜症 糖尿病網膜症は、高血糖による網膜の血管障害(糖尿病性細小血管症)によって発症する、糖尿病で失明に至る主な原因の一つです。 進行の程度に応じて、以下の3段階に分類されています。 単純糖尿病網膜症:網膜の毛細血管がこぶ状になり、血液や脂質が漏れ出して網膜に付着する 増殖前糖尿病網膜症:毛細血管が閉塞し、網膜や神経への血流が不足する 増殖糖尿病網膜症:もろい新生血管が破れて出血を起こしたり、網膜剥離が生じたりして、視力が大きく低下する 糖尿病網膜症は失明に至る危険性がある怖い病気であり、少しでも異常を感じたら眼科を受診しましょう。 糖尿病網膜症については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。 視覚障害につながるその他の疾患 糖尿病が原因で視覚障害につながる、その他の疾患については以下の表にまとめました。 疾患名 特徴・症状 予後 糖尿病視神経症 網膜症の有無に関係なく発症する視神経の循環障害。突然の高度な視力障害が現れる。片眼性が多い。 不良 糖尿病眼球運動障害 眼球を動かす筋肉が障害され、物が二重に見える(複視)。 良好 糖尿病ぶどう膜炎 ぶどう膜の前部に炎症が起こる。点眼治療で軽快するが、長期化することもある。 経過により異なる 糖尿病角膜症 角膜表面が障害され、知覚低下により傷や感染に気づきにくい。涙の分泌も減少傾向。 感染などの管理が重要 糖尿病黄斑浮腫 網膜の中心「黄斑」にむくみが発生し、視力が低下する。 治療により改善可能 その他の合併症 屈折異常や白内障など、糖尿病により発症または悪化する眼疾患。 種類により異なる 糖尿病による失明の前兆 糖尿病網膜症の特徴として、失明の危険がある重大な疾患にもかかわらず、症状が現れにくい点が挙げられます。 高血糖が持続している場合、眼底検査で異常が見られなくても、網膜の毛細血管はすでに損傷を受け始めている場合があるのです。 とくに単純糖尿病網膜症や増殖前糖尿病網膜症では、出血や毛細血管の閉塞が進んでいても、自覚症状が出ないケースがあります。 自覚症状がないまま病状が進行して増殖糖尿病網膜症になると、新生血管や硝子体出血が起こって以下のような症状が現れます。 物が見えづらい ぼんやりと見える 視野に黒い影が見える(飛蚊症) 明暗の見え方が鈍くなる 視界に光がチカチカする 硝子体出血や網膜剥離が「黄斑」に及ぶと、視力を回復できなくなって失明に至る恐れがあります。 これらの症状が見られた場合は、速やかに眼科を受診しましょう。 また、前兆が現れる前に進行している場合もあるため、自覚症状がなくても年1回の眼科検診が推奨されます。 糖尿病による視力低下への対処法 糖尿病による視力低下を防ぐには、症状が現れる前の段階からの的確な対処が重要です。 視力障害は糖尿病の進行とともに現れる可能性があり、対処が遅れて適切な治療が行われないと、視力が大きく低下するケースがあります。 しかしながら、早期発見と治療を実施すれば重症化を防ぎ、視力の維持または改善を目指すことは可能です。 糖尿病網膜症に対する治療法は進歩しており、状態に応じた適切な対応が視力を守る鍵となります。 ここでは、視力低下への具体的な対処法を2つの側面から詳しく解説します。 早期発見と早期治療 糖尿病網膜症による視力障害を防ぐには、早期発見と早期治療が欠かせません。 米国眼科学会の報告によれば、糖尿病網膜症の患者の約90%が早期に治療を受けることで、重度の視力低下を防げるとしています。(文献1) ただし、治療の効果を期待できるのは、定期的に眼科検診を受けている場合に限られる点に留意しておきましょう。 アメリカ国立眼科研究所も、血糖コントロールと眼科での適切な治療が失明予防の鍵であると示しています。(文献2) 網膜は一度損傷を受けると元に戻すのが難しいため、治療は回復ではなく進行を抑えるのが目的になります。 したがって、異常が出る前からの検査と治療が極めて重要です。 視力回復につながる主な治療法 糖尿病網膜症による視力障害の進行を抑え、視力の維持・回復を目指す治療法には、以下のような選択肢があります。 レーザー治療 抗VEGF薬注射 硝子体手術 レーザー治療は新生血管の発生を防いだり、すでにできた血管を退縮させたりするのが目的です。 「汎網膜光凝固(はんもうまくひかりぎょうこ)」という方法では、酸素が足りない部分の細胞をレーザーで処理し、悪い血管の増えすぎを防ぎます。 視力低下前の予防的治療としても有効で、失明率を低下させる効果が期待できると考えられています。 抗VEGF薬注射は、ものを見るうえで大事な「黄斑」部分が腫れてしまう「黄斑浮腫」という症状に対する治療法です。 目の中に直接注射してむくみを沈める治療法で、見え方の改善が期待されます。 硝子体手術は、目の奥の「硝子体」からの出血やにごりを取り除き、網膜の機能改善を目的とする手術です。 糖尿病による失明を防ぐために必要なこと 糖尿病による失明を防ぐには、眼科での定期的な検査と全身の健康管理が不可欠です。 とくに、眼の自覚症状がない段階から最低でも年1回の眼底検査を受け、主治医の指示に従って治療を進めていきましょう。 定期検査によって網膜の状態を客観的に把握でき、早期の適切な治療で失明のリスクを大きく減らすことが可能です。 さらに、日頃から生活習慣病に注意し、血糖値・血圧・脂質の適切なコントロールも欠かせません。 血糖値・血圧・脂質の数値は糖尿病網膜症の発症・進行に深く関与しており、バランスのとれた健康管理が視力を守る基本となります。 糖尿病の合併症を防ぐ生活習慣病については、以下の記事も参考にしてください。 糖尿病による失明を防ぐためにも自己管理を徹底しよう 糖尿病による失明は、適切な対策により予防可能です。 糖尿病の影響から視力を守るためには、まず血糖・血圧・脂質のコントロールを徹底することが基本となります。 また、眼の自覚症状がなくても、定期的な眼科での検査も大切です。 異常を感じた際には放置せず、すぐに受診することが早期発見・早期治療につながります。 今回の記事を参考に、日常的な自己管理と定期的な検査で大切な視力を守りましょう。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。 公式LINEでは、無料オンライン診断を実施しているので、糖尿病治療中で視力低下や失明に関する不安を抱えている方はご相談ください。 糖尿病と失明に関するよくある質問 糖尿病網膜症の検査にはどのようなものがありますか? 糖尿病網膜症では、以下のような検査が行われます。 屈折検査 眼底検査 眼圧測定 細隙灯顕微鏡検査 糖尿病患者は網膜症と診断されていなくても、年1回の眼科受診が推奨されています。 視力低下や失明を未然に防ぐためにも、定期的に検査を受けましょう。(文献3) 糖尿病による失明は突然起こりますか? 糖尿病による視力低下や失明は通常ゆっくりと進行し、初期には自覚症状がないケースも少なくありません。 進行した網膜症が原因で硝子体出血や網膜剥離が起きると、急激な視力低下に至る場合もあるため注意が必要です。(文献4) 視力が低下すると、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼす上、患者本人のみならず家族への負担も大きくなります。 症状の有無に関わらず、定期的な眼科での検診が大切です。 参考文献 (文献1) Rodríguez A, et al. (2024). The Role of Early Detection in Preventing Vision Loss from Diabetic Retinopathy. Journal of Diabetic Complications & Medicine, 9(5), pp.1―2. (文献2) National Eye Institute「Diabetic Retinopathy」 (文献3) 国立国際医療研究センター「網膜症」 (文献4) 公益社団法人 日本眼科医会「糖尿病網膜症による視力低下―予防と治療― ~運転免許証や仕事を失わないために~」
2025.06.30 -
- 糖尿病
- 内科疾患
「糖尿病の治療を続けて数年たつが、最近目がかすむようになった」 「糖尿病網膜症があるのではないか」 「糖尿病網膜症は治るのだろうか」 糖尿病治療中の方で、このような状況になっている方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症は合併症の1つで、進行すると視力低下や失明のリスクがあります。 完全に治すことは難しい状況ですが、早期発見早期治療により、進行を抑えることは可能です。 本記事では、糖尿病網膜症の治療について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病網膜症の完治は難しいが進行の抑制は可能 糖尿病網膜症は、糖尿病による高血糖が長期間続くことで、目の網膜にある細い血管が損傷を受ける合併症の一つです。 出血やむくみ、さらには異常な新生血管の増殖を引き起こし、視力低下や最悪の場合は失明に至るケースもあります。 また、進行しても自覚症状の乏しいケースが少なくありません。 一度低下した視力を完全に回復させるのは難しいものの、定期的な眼科検診と早期の治療によって進行を食い止め、視力を保つことは可能です。 糖尿病にかかっているのであれば、糖尿病網膜症のリスクを常に意識し、適切に管理するよう心がけていきましょう。 糖尿病が原因の失明に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。 糖尿病網膜症の治療方法 糖尿病網膜症の治療は、進行の度合いや症状に応じてさまざまな選択肢があります。とくに初期段階では、適切な治療によって視力低下の抑制や合併症の予防が可能です。 ここでは、糖尿病網膜症の主な治療方法について解説します。 レーザー光凝固術 レーザー光凝固術(ひかりぎょうこじゅつ)とは、糖尿病網膜症の進行を抑えるために行われる治療法です。 新生血管の発生予防や退縮、黄斑のむくみ抑制を目指す治療で、主に以下の3種類があります。 直接光凝固 格子状網膜光凝固 汎網膜凝固 直接光凝固は、新生血管や毛細血管瘤の病変そのものにレーザーを当て焼き固める方法です。出血や浮腫の進行を止めたり、新たな出血を予防したりするために利用されます。 格子状網膜光凝固は、網膜のむくみに対して格子状にレーザーを照射する方法です。むくんだ部分の水分を吸収させて黄斑の腫れを軽減したり、視力低下の進行を抑えたりなどに効果が期待できます。 汎網膜凝固は、網膜全体にレーザーを施すことで新生血管の発生を抑制するのが特徴です。酸素不足によってできる新生血管の減少・抑制を目的としています。 抗VEGF治療 抗VEGF治療は、黄斑のむくみや新生血管の発生に関与するVEGF(血管内皮増殖因子)の作用を抑制する治療法です。抗VEGF薬を眼球内に注射し、視力低下やモノのゆがみといった症状の抑制を目指します。 注射は外来で短時間で終了し、初回の注射後は経過を観察しながら追加治療が行われるのが一般的です。 ただし、硝子体注射の傷口から細菌が入り込むと「眼内炎」という感染症を起こすリスクがあります。 頻度はまれではあるものの、重篤な視力障害を引き起こす可能性があるため、硝子体注射前後の抗生剤点眼や消毒などを行う必要があります。 硝子体手術 硝子体手術は糖尿病網膜症が進行し、網膜剥離や硝子体出血が生じた際に行われる外科的治療法です。 硝子体とは水晶体と網膜の間にある透明な組織で、コラーゲン繊維と水から構成されています。 手術によって出血や混濁を起こした硝子体を取り除き、視力の回復や網膜の機能維持を目指します。 レーザー治療が無効だったケースや、重度の合併症がある場合に適応されるのが一般的です。 広く利用されている手術方法ですが、顕微鏡下での細かい操作が必要など高度なレベルの手術となるほか、合併症が起こるケースがあります。 糖尿病網膜症の分類 糖尿病網膜症は進行度に応じていくつかの段階に分類されており、治療方針や予後の見通しも段階ごとに異なります。 初期にはほとんど自覚症状がない場合が多いものの、進行すると視力の低下や失明の危険性も高まるため、各段階の特徴を正しく理解しておきましょう。 ここでは、糖尿病網膜症の代表的な3つの分類について解説します。 単純糖尿病網膜症 単純糖尿病網膜症は、網膜の毛細血管が高血糖の影響でもろくなり、小さな出血や毛細血管瘤が生じる初期段階の病態です。 血管からタンパク質や脂肪が漏れ出し、硬性白斑(白い斑点)として網膜に沈着するケースもあります。 また、自覚症状はほとんどなく、気づかないうちに進行するケースも少なくありません。 ただし、血糖コントロールを適切に行えば、症状の進行を防ぐことが可能な段階です。 詳しい網膜の状態を調べるべく眼底の血管造影検査を行う場合もありますが、進行を防ぐためには早期発見と生活習慣の見直しが重要となります。 増殖前糖尿病網膜症 増殖前糖尿病網膜症は毛細血管の障害が進行し、広範囲にわたって血流が途絶える状態です。 網膜に酸素や栄養が届かなくなると体が新たな血管を作ろうと反応しますが、この過程で神経のむくみや静脈の拡張が生じます。 視界のかすみやぼやけといった自覚症状が現れる場合もありますが、無症状のケースも少なくありません。 治療方法は、網膜光凝固術を採用するのが一般的です。 増殖糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症が進行したもっとも重症な段階です。 新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてきますが、新生血管は非常にもろく、破れると硝子体出血を引き起こす恐れがあります。 結果、飛蚊症や急激な視力低下が生じるケースがあるほか、網膜表面に「増殖膜」と呼ばれる膜ができて網膜剥離を引き起こす場合もあります。 また、年齢が若いほど進行が早いとされており、注意しなければなりません。 糖尿病網膜症が進行した段階では手術が必要となりますが、手術が成功しても視力が日常生活に支障がないレベルまで回復しないことがあります。 視力を保つために必要な自己管理 糖尿病網膜症による視力低下を防ぐためには医療機関での治療だけでなく、日常生活における自己管理が重要な役割を果たします。 血糖・血圧・脂質のコントロールに加えて定期的に眼科を受診し、重症化の予防と早期発見につなげていくことが大切です。 では、視力を維持するために実践すべき自己管理のポイントを詳しく見ていきましょう。 血糖・血圧・脂質の管理を徹底する 糖尿病網膜症の発症や進行を抑えるには、血糖・血圧・脂質の3つの項目をバランスよく管理することが重要です。 とくに、血糖コントロールの目安であるヘモグロビンA1cを7%未満に保つように推奨されています。 また、高血圧はとくに収縮期血圧との関連が深く、進行リスクを高める因子です。 さらに、脂質異常症の適切な治療も網膜症の進行抑制に良好な影響を与えるとされています。 血糖値だけでなく、血圧や脂質の管理にも注力しながら視力を保つように自己管理を徹底しましょう。(文献1) 定期的に眼科を受診する 糖尿病網膜症の早期発見と進行防止には、定期的な眼科受診が欠かせません。 2型糖尿病患者の約30%は、診断時すでに網膜症を発症しているという報告があり、耐糖能異常の段階でも網膜症が認められる場合があります。 したがって、2型糖尿病と診断されたら直ちに眼科を受診することが重要ですが、受診頻度としては以下が目安です。 網膜症がない場合:年1回 単純網膜症:6カ月ごと 増殖前糖尿病網膜症:2カ月ごと 増殖期糖尿病網膜症:月1回の検査 (文献2) ただし、上記はあくまで目安です。 患者によって病態や症状は異なるため、実際の受診頻度は眼科医の判断に従いましょう。 まとめ|糖尿病網膜症のポイントは早期発見と継続治療 糖尿病網膜症は、重症化すると視力の著しい低下や失明を招く恐れのある重大な合併症です。しかしながら、早期に発見し適切な治療を行えば、進行を抑えながら視力を保つ効果が期待できます。 糖尿病と診断された段階から定期的に眼科を受診し、状態を継続的に管理していくことが重要です。 また、血糖値に加えて血圧や脂質のコントロールも、進行予防において欠かせません。日々の生活習慣を見直しながら、継続的な治療と管理を徹底していきましょう。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。 公式LINEでは、無料オンライン診断を実施しているので、糖尿病でお悩みの方は一度ご相談ください。 糖尿病網膜症に関するよくある質問 糖尿病患者の失明率はどのくらいですか? 公益社団法人日本眼科医会によれば、糖尿病網膜症が重症化して失明に至る、あるいは失明の危機にある糖尿病患者は全体の約20%と報告されています。(文献3) 糖尿病における眼の合併症がいかに深刻であるかを示しており、失明を防ぐためには血糖・血圧・脂質の適切な管理と、定期的な眼科受診による早期発見と治療が重要です。 糖尿病網膜症は失明原因の何位ですか? 2019年に岡山大学学術研究院が行った全国調査によると、糖尿病網膜症は視覚障害の原因として第3位に位置づけられています。(文献4) なお、第1位は緑内障、第2位は網膜色素変性症です。 視覚障害と失明は完全に同義ではありませんが、糖尿病網膜症は視力障害や失明と密接に関連します。 進行を防ぐためには早期発見と継続的な治療が重要であり、定期的な眼科受診が欠かせません。 参考文献 (文献1) 一般社団法人日本糖尿病学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」 https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=66 (最終アクセス:2025年6月23日) (文献2) 日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1 版)」 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf (最終アクセス:2025年6月23日) (文献3) 公益社団法人日本眼科医会「糖尿病で失明しないために」 https://www.gankaikai.or.jp/health/35/index.html (最終アクセス:2025年6月23日) (文献4) 岡山大学「視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超〜2018年の視覚障害認定基準改正の影響が判明〜」 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1082.html?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年6月23日)
2025.06.30 -
- 頭部・体幹の障害
- スポーツ外傷
突然、思い通りに身体が動かなくなる「イップス」は、スポーツや仕事の現場で深刻な問題となります。 とくに、真面目で完璧を求める人ほど発症しやすいとされ、技術面だけでなく心理的要因や脳の働きが関係する複雑な現象です。 本記事ではイップスの治し方について、薬物療法・心理療法・TMS治療といった医学的アプローチに加え、競技別の具体的な対処法も解説します。 イップスに悩んでいる方はもちろん、今後の防止対策として理解を深めたい方は参考にしてください。 イップスの治し方|3つの主な治療法 イップスとは、スポーツや音楽、仕事の現場などで突然パフォーマンスが発揮できなくなる現象です。 多くは心理面が要因とされていますが、克服するには原因に応じた治療法を選択する必要があります。 ここでは、「薬物療法」「心理療法」「TMS治療」に注目し、それぞれの治療法の特徴と効果について解説します。 薬物療法 イップスでは、抗不安薬や抗うつ薬が使用されるケースが多く、不安や緊張、抑うつといった精神的要因を緩和する効果があるとされています。 イップスの根底にある精神的ストレスを軽減させて、身体の動きの改善を目指す治療法です。 代表的な薬物療法には、ボツリヌス菌が生成する「ボツリヌストキシン」を筋肉に注射する「ボツリヌス治療」があります。 筋肉が過度に緊張するなどして、無意識的に身体が動いてしまうケースで筋肉の緊張を緩め、動きやすくするのが特徴です。 ただし、費用が比較的高額であり、定期的に注射する必要があります。 内服薬には、不安や緊張を緩和する抗不安薬や、抗うつ剤の「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」などを使います。 ただし、薬物療法は即効性が期待できる一方、根本的な解決には至らない場合も少なくありません。 他の治療法と併用しながら改善を目指していくことが大切です。 心理療法 イップスの根本的な要因には、過度なプレッシャーや自己否定感など心理的な問題が関与していることがあります。 心理療法は、こうした心の問題にアプローチする手段の一つです。 代表的な方法には「自律訓練法」があり、呼吸や筋弛緩を通じて心身の緊張を緩和し、自己コントロール感を高める効果があるとされています。 また、思考のクセを修正し、パフォーマンス時の不安や恐怖を軽減する目的で「認知行動療法」も取り入れます。 再発を防ぐための長期的な支えとなる心理療法は、継続的な実施が必要です。 TMS治療 TMS(経頭蓋磁気刺激)治療は、イップスに対する先進的なアプローチとして注目されています。 磁気を使って脳のある部分にやさしい刺激を与えることで、脳の働きのバランスを整える治療方法です。 とくに、動きや気持ちをコントロールする「前頭前野」という場所の働きを整えることで、緊張しすぎたり、不安を感じすぎたりする状態をやわらげる効果が期待されています。 また、一定期間の継続により、長期的な効果が得られやすいのも特徴です。 TMS治療は薬物を使用しないため、副作用のリスクが低く、薬剤の効果が限定的な方や薬物に抵抗がある方におすすめです。ただし、医療機関での的確な実施が不可欠です。 なお、アメリカなど欧米では普及が進んでいるものの、日本では受けられる医療機関が限られます。 イップスのシーン別治し方|克服・対処法 イップスは誰にでも起こり得る現象ですが、発症の場面や影響は人によって異なります。 発症する状況に応じた原因や克服法を理解することが、回復への近道です。 ここでは、野球、ゴルフ、仕事のイップスで求められる具体的な対処法や、実際に効果が認められているアプローチを紹介します。 野球イップスの治し方 野球におけるイップスは、送球や投球動作に突然支障が出る現象です。 競技継続に深刻な影響を及ぼすため、技術面と心理面の両方からアプローチしなければなりません。 具体的には、以下のような方法に効果があるとされています。 脳をリセットする期間を設ける イップスは、間違った動作を繰り返す中で脳がその動作を学習してしまった状態です。 そのため、まずは2週間ほどボールを投げない期間を設け、脳に定着した誤ったフォームの記憶を薄めていきましょう。 無理に続けるよりも、一度「手を止める」ことが回復の第一歩になります。 正しいフォームを再習得する イップス克服に向けて再スタートを切る際には、単に投げ方を変えるのではなく、理にかなった動作を仕組みから理解し直すことが大切です。 例えば、どこに重心を置くべきか、体のどの部位をどう使うかといった基本動作を見直します。 正しい投球フォームを脳と体に再インプットし、誤って学習してしまった内容に上書きする意識を持ちましょう。 上半身と下半身のスムーズなつながりを意識する イップスの状態では腕と脚が連動せず、ぎこちない動作になって体全体の動きがバラバラになっているケースが多く見られます。 改善するには、下半身の踏み込みと上半身の振りがスムーズにつながる感覚を取り戻すトレーニングが効果的です。 フォームを整えるだけでなく、体全体の調和を意識することを心がけましょう。 反復練習で再現性を高める フォームの修正と動作の連動ができてきたら、いよいよ投球練習に戻るタイミングです。 遠投や投げ込みを通じて、修正後のフォームを無意識でも自然にできるよう、再現性を高めていきます。 ここで大切なのは、正しい動作を反復して本来の投球感覚を取り戻すことです。 ゴルフイップスの治し方 ゴルフにおけるイップスとは、パッティングやアプローチなどで手が動かなくなる、もしくは意図しない動きが出る状態を指します。 克服するには、以下のように身体の感覚と精神的安定の両面から対処することが不可欠です。 スイング動作の再構築:反射的に動作が出るフォームに修正する ルーティンの確立と徹底:毎回同じリズム・手順で打ち、心身の安定を図る 「打たなければならない」という思考の解消:結果よりもプロセスに集中する また、イップスを「悪いこと」と捉えず、単なる一時的な現象と受け入れる心の持ち方も重要です。 状況によっては、スポーツ心理学的アプローチやTMS治療の導入も選択肢になります。 ゴルフイップスを治すには、日常の練習内容や意識の持ち方を根本から見直していきましょう。 仕事イップスの治し方 仕事におけるイップスとは、プレゼンや電話対応、会議発言など特定の業務で極度の緊張や動揺が生じ、うまくパフォーマンスできなくなる状態を指します。 仕事イップスを治すには、以下のように心理的な負荷の軽減と自己肯定感の回復が重要です。 失敗体験の適切な整理:過去のミスやトラウマを放置せず、専門家の支援を受けながら認知を修正する 段階的な自己露出法:まずは少人数での発表やロールプレイなどから始め、徐々に自信を取り戻していく 自律訓練法や呼吸法の活用:不安や緊張を和らげるリラクゼーション技法を取り入れる さらに、職場環境の見直しや上司との信頼関係の構築も効果が期待できます。 また、必要に応じてTMS治療や薬物療法を組み合わせれば、より本質的な改善を目指せるでしょう。 仕事イップスの克服には、自分自身の心の動きを理解し、適切にケアしていく姿勢が大切です。 イップスの症状・原因 イップスは、突然重い症状が出るわけではなく、最初は小さな変化として現れます。また、原因はひとつではありません。 プレッシャーや不安といった心理的なものから、神経系の機能異常による身体的な要因まで、さまざまな背景が複雑に絡み合っているのです。 ここでは、イップスの見逃されがちな初期症状と、主な原因となる「ジストニア」「競技不安」について解説します。 初期症状 イップスは、突然深刻な症状が現れるわけではなく、初期段階では小さな違和感として始まります。 たとえば、今まで問題なくできていた動作が引っかかる、力加減を誤る、緊張で体が固まるなどの微細な変化です。 こうしたパフォーマンスの低下に本人が戸惑い、自信を失うことで悪循環に陥ってしまいます。 「何かがおかしい」と感じた時点での早めの対応が、イップスの重症化を防ぐカギです。 ジストニア症状 イップスの症状のひとつに「ジストニア」と呼ばれる神経疾患に似た運動障害があります。 意図しない筋肉の緊張や、動作の乱れを引き起こすのが特徴です。 たとえば、投球時に腕が勝手にねじれたり、文字を書く際にペンがうまく動かなくなったりといった現象が起こります。 ジストニアは、脳の運動制御に関わる領域の異常な神経活動が原因とされており、心理的要因だけでなく神経生理学的な背景が存在するとされています。 TMS治療や薬物療法の組み合わせで症状の改善を目指していきますが、単なる精神的な問題と誤診されやすいため専門的な評価と治療が必要です。 競技不安 イップスの原因として、一般的なのが過度な「競技不安」です。 試合や練習などで「失敗してはならない」「期待に応えなければ」という強いプレッシャーを感じ、身体が思うように動かなくなる状態を指します。 特に真面目で責任感の強い性格の人ほど、過去の失敗経験が記憶に残って体が萎縮し、普段通りの動きができなくなってプレーに影響を及ぼすとされています。 競技不安は、認知行動療法や自律訓練法で適切に対処すれば、イップスの発症や悪化を予防につなげられます。 心理的なケアを軽視せず、早期の支援を受けることが回復への近道です。 まとめ|イップスの治し方を理解して早期治療に取り組もう イップスは一時的な現象であり、専門的な支援や治療を受けることで克服できる症状です。 その背景には、心理的ストレスや脳の神経活動、繰り返し動作への過剰な意識など、さまざまな要因が複雑に絡んでいます。 イップスに悩んでいるなら一人で抱え込まず、早期に専門機関での相談を検討しましょう。 イップスの治し方に関するよくある質問 イップスになりやすいのはどんな人? イップスを発症しやすいのは、真面目で責任感が強く、完璧を求める傾向がある人がなりやすいとされています。 ミスを過度に恐れる、また自分に対して過剰なプレッシャーをかけやすい方は注意しましょう。 また、指導者や周囲からの期待が強い環境や、過去の失敗経験がトラウマとなって特定の場面で極度の不安を感じるようになると、イップスの発症リスクが高まります。 イップスになった有名人は? 著名選手の実例は、イップスに悩む多くの人にとって希望と励みになります。 世界的に有名な元野球選手イチロー氏も、かつてイップスを経験したとされる一人です。 プロ入り直後の時期、外野からの送球が思うようにできず、試合では中継役に任せる場面があったとされています。 トップアスリートであっても、心理的要因によって身体の動きに影響が出る可能性があるという一例です。 イップスの原因が脳活動にあるのは本当? イップスの原因が脳の働きと関係していると、広島大学の研究で報告されています。(文献1) イップスの悩みを抱えるアスリートの脳波を分析した結果、動作開始時に前頭前野を中心とした脳活動に特徴的な異常が見られました。 イップスが単なる心理的な問題ではなく、神経生理学的な要因を伴う現象である可能性を示唆しており、科学的根拠に基づいた治療の重要性を強調しています。 イップスになりやすいスポーツは? イップスはすべての競技に起こり得ますが、特に「精密な動作」や「繰り返しの動作」が求められるスポーツに多いのが特徴です。 たとえば、スポーツ心理学の研究では、野球、ゴルフ、アーチェリーなどでイップスの発症例が多いことが報告されています。(文献2) これらの競技は結果へのプレッシャーが集中しやすく、動作の微細なズレが直接ミスにつながるため、心理的影響がパフォーマンスに強く現れやすいと考えられます。 イップスの予防には技術面だけでなく、メンタルトレーニングや心理的サポートの併用が重要だといえるでしょう。 参考文献 (文献1) 【研究成果】イップスを発症しているアスリートでは運動時に特徴的な脳活動が見られることを解明〜イップス克服方法の確立に期待〜|広島大学 (文献2) スポーツにおけるイップスのアセスメント・症状・対処|スポーツ心理学研究
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
仕事やゲームなどでパソコンを使っていて、指や手首に耐えられない痛みを感じる方もいるのではないでしょうか。実はパソコン作業による指や手首の痛みは、腱鞘炎の疑いがあります。 日頃のパソコン操作で、指や手首負担がかかって起きる腱鞘炎は「パソコン腱鞘炎」と呼ばれることもある疾患です。パソコンを使うことが多い現代人ならではの病気ともいえるため、特徴や治し方を知っていると重宝します。 本記事では、パソコン腱鞘炎の症状や原因、治し方を解説します。 パソコン腱鞘炎の症状とは? パソコン腱鞘炎になると、指や手首、腕に痛みや引っかかりの症状が現れます。これらの症状は、日常のパソコン作業に大きな支障をきたすため、早期発見・早期対処が重要です。 症状の現れ方は炎症が起きる部位によって異なり、代表的なものに「ばね指」と「ドケルバン病」があります。 それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。 利き腕の指の引っ掛かり・痛み|ばね指 パソコン腱鞘炎でよく見られる症状として、まず「ばね指」が挙げられます。ばね指は、指の付け根部分に発症する腱鞘炎です。 具体的には、「屈筋腱」と呼ばれる指の曲げ伸ばしに欠かせない腱や、それを覆う腱鞘に過度な負担がかかって発症します。とくにパソコン作業では、長時間にわたるキーボードのタイピングやマウスのクリック操作が主な要因です。 指先を使いすぎると屈筋腱と腱鞘が摩擦し、それによって炎症が生じます。炎症が生じると指を曲げ伸ばす際に痛みを感じるだけでなく、引っ掛かりまで起こるのが特徴です。 親指の痛み|ドケルバン病 腱鞘炎でばね指とともに「ドケルバン病」も、パソコン作業が原因で発症します。ドケルバン病は腱鞘炎のなかでも、手首の親指側に生じるのが特徴です。具体的には、手首から親指にかけて伸びる2本の腱と腱鞘に過度な負担がかかって、痛みや熱感が起こります。 パソコン作業中は手首が反った状態が長時間続きやすく、腱や腱鞘に負担がかかることでドケルバン病を発症するリスクがあります。 腕や肩の痛み パソコン腱鞘炎では、腕や肩が痛む場合があります。これはとくに、マウスを使って長時間作業する方に多く見られる症状です。 マウスを使う際、手首を動かす一方、マウスを持つ方の利き腕は常に固定されます。しかも、肘が浮いている状態で固定されるため、首や肩に大きな負担を与える場合も多いです。もし、マウスを使う作業が長時間に及べば、肩や腕に痛みやしびれが生じることがあります。 なお、マウスを使わない場合でも同じ姿勢で長時間のパソコン作業により、上腕二頭筋周辺の腱に炎症が起こって腱鞘炎に発展するケースも少なくありません。 パソコン腱鞘炎のチェック方法 パソコン腱鞘炎やマウス腱鞘炎になっているか、または発症しかけているかを確認するには、セルフチェックが有効です。以下の項目で当てはまるものがないか確認してみましょう。 長時間パソコン作業に従事している パソコンのモニターが真正面にない キーボードまで距離がある・キーボードの手前に書類などが置いてある パソコン作業中に足を組んでいる 受話器を耳や肩で挟みながらキーボード入力している パソコンを使っている時に指や手首などを痛めたことがある 指や手首、腕などに違和感がある 頭痛や目の疲れがある 歩く時間が1日30分に及ばない 休憩時間などにスマホを操作することも多い 以上の項目で当てはまるものが多いときは、パソコン腱鞘炎やスマホ腱鞘炎の疑いがあります。 加えて、医療機関でも使われる方法として、以下の方法でチェックするのもおすすめです。 【ドケルバン病のチェック方法】 フィンケルシュタインテスト:広げた手で親指を内側に折った後、反対側の手で親指を引っ張る フィンケルシュタインテスト変法:親指握った状態でこぶしを作り、手首を小指側に曲げて痛みの有無を確認 【ばね指のチェック方法】 指の付け根部分を軽く押しながら、指を曲げ伸ばす 曲げ伸ばしがスムーズにできないときは、ばね指の疑いがあります。 パソコン腱鞘炎になる原因 パソコン腱鞘炎を引き起こす主な原因は以下の通りです。 過度なタイピング操作 パソコン作業時の姿勢の悪さ マウス操作時の利き手への負担 これらの複数の要因が重なり合って症状が現れるのが一般的です。 それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。 過度なタイピング操作 過度なタイピング操作は指先に負担をかけ、パソコン腱鞘炎の原因となります。 とくに業務でのパソコン作業では、成果物の提出やメール対応などの迅速さが求められるため、早いタイピングが必要なケースも多くあります。急ぐあまりエンターキーを強めに押す人も少なくありません。 しかし、早いタイピングや強めのキーボード入力は、自然と指先に大きな負担をかけます。もしパソコン作業が毎日長時間に及ぶと、溜まった負担によって指先の腱鞘炎を発症する原因にもなりやすいです。 パソコン作業時の姿勢の悪さ 「パソコン作業時の姿勢の悪さ」も、パソコン腱鞘炎の主要な原因のひとつです。パソコン作業中は、画面やキーボードの位置を確認しながら入力などしていくため、猫背のような悪い姿勢になることもよくあります。 しかし姿勢の悪い状態で作業を続けた場合、肩や腕、手首などに負担がかかります。 猫背になると肩甲骨周りの筋肉が緊張し、肩や腕の動きが制限されてしまいます。その結果、手首に余計な負担がかかって腱鞘炎を引き起こす場合があります。 また、デスクや椅子の高さやキーボードの位置が自分に合っていないのも、パソコン腱鞘炎の原因のひとつです。とくにキーボードやノートパソコンがあまりにも手前側に置かれている状態は、直接手や手首に大きな負担を与えます。デスクや椅子の高さが合っていない状態も、手首や腕に余計な負担がかかるため、腱鞘炎を引き起こす要素となります。 マウス操作時の利き手への負担 パソコン作業中にマウスを長時間使用することで利き手に負担がかかり、これも腱鞘炎を引き起こす原因となります。クリック操作やスクロール操作では、利き手側の人指し指など特定の指に負担が集中しがちです。 加えて、マウスを操作する際は手首を反らした状態になりやすいため、手首の腱や腱鞘にも負担が集中します。 マウス操作では、両手を使うキーボード入力と異なり、利き手の特定の部位に負担が集中する傾向があります。その結果、人差し指や手首で腱鞘炎が発症するリスクを高めます。 パソコン腱鞘炎でできるセルフケア パソコン腱鞘炎の症状が現れた場合、適切なセルフケアをおこなうことで症状の悪化を防ぎ、回復を促せます。 しかし、セルフケアはあくまで補助的な要素として、症状が重い場合や長期間続く場合は医療機関を受診してください。 ここでは、パソコン腱鞘炎の症状を和らげるために自宅でできる4つの基本的なセルフケア方法をご紹介します。 痛みが出たら手を休ませる サポーターやテーピングで固定 症状に応じた温冷療法 作業中にストレッチを取り入れる これらの方法を組み合わせて実践することで、より効果的な症状改善が期待できます。 痛みが出たら手を休ませる パソコン作業で痛みが生じたときは、無理をせず手を休ませてください。早めに休憩を取れば、痛みが和らぎ症状悪化も防げます。とくに仕事中に痛みなどを感じた際には、1時間から2時間に1度は小休止を取ることをおすすめします。 逆に痛みなどがあるにもかかわらず、放置して作業を続行すると、症状がより悪化しかねません。痛みや腫れを感じたら、まずは安静にすることが大切です。 サポーターやテーピングで固定 パソコン腱鞘炎になった際には、手首や指をサポーターやテーピングで固定するのもおすすめです。サポーターやテーピングで指や手首の動かせる範囲を制限することで、患部の負担を抑えられます。 仕事などで作業を中断できない場合でも、サポーターを活用することで負担を軽減しながら作業を続けられます。 ただし、すでに腱鞘炎の症状が見られる状態であるため、こまめな休憩は欠かせません。 症状に応じた温冷療法 症状に応じた温冷療法も、パソコン腱鞘炎に対するセルフケアでよく使われる方法です。腱鞘炎の症状が見られ始めて間もない急性期には、患部を冷やします。アイスパックや氷嚢などをタオルで巻いて患部に当てると、痛みや腫れを緩和できます。 症状が落ち着く慢性期の場合は、反対に患部を温めます。患部をぬるま湯につけることで血行が改善され、症状が和らいだり腱などの柔軟性が高まったりする効果が期待できます。 作業中にストレッチを取り入れる 作業中の休憩時間にストレッチするのもおすすめです。休憩に合わせてストレッチすることで、痛みが和らいだり、血行の促進で腱の動きをスムーズにできたりします。 業務中でも短時間でできるストレッチをいくつかご紹介しましょう。 【背中のストレッチ】 座った状態で両手を前に突き出す 胸を後ろに引いた状態で背中を丸める この状態を30秒間キープする 【胸のストレッチ】 座った状態で両手を後ろで組む 肩甲骨を引いて胸を張る 背中が丸くならないように腕を上げる 胸が伸びたら、その状態で30秒間キープ 【前腕のストレッチ】 一方の腕を前にまっすぐ伸ばす 手を上側や下側に反らせる(痛みを感じない程度に伸ばす) それぞれの方向で10秒間キープ・5セットおこなう 反対の腕でもストレッチ ただし、これらのストレッチは指先や手首に強い症状や違和感があるときは、無理せずに控えてください。 パソコン腱鞘炎の予防法 パソコン腱鞘炎は長時間のパソコン作業や姿勢の悪さが原因で、指先や手首に発症します。 このため、日頃からパソコンを使った作業の時間や姿勢、作業環境などを見直すことで予防が可能です。 パソコン腱鞘炎の予防法には、主に以下の方法があります。 こまめに休憩を取る 普段から長時間パソコン作業をおこなっている方は、こまめに休憩を取ることが大切です。パソコン腱鞘炎は、指先や手首をいたわることなくパソコン作業で使いすぎると発症します。 1時間から2時間に1度、10分程度の休憩を入れて指や手首を休ませるだけでも、腱鞘炎の予防効果が期待できます。 手指のストレッチを取り入れる こまめな休憩に加えて、手指のストレッチも取り入れましょう。疲労が溜まった手指のストレッチで、血行が促されるとともに手指の腱や腱鞘の柔軟性を高められます。 パソコン腱鞘炎は手指などの腱や腱鞘が硬くなって症状が現れるため、日頃からストレッチを習慣づけることで腱鞘炎の発症を防止できます。手指のストレッチの方法は次のとおりです。 指を1本ずつ、手の甲側に反らしていく それぞれの指で何セットかこなす なお、長時間のストレッチは余計に腱鞘炎のリスクを高めるため、指1本につき10秒程度のストレッチをゆっくりとおこないましょう。 姿勢を改善する パソコン腱鞘炎の予防には、作業中の姿勢の改善も欠かせません。パソコン作業中に背中を丸める姿勢は、肩や腕、指先に負担がかかり、腱鞘炎のリスクを高めます。 姿勢を改善する際のポイントは、次のとおりです。 背筋をまっすぐ伸ばし、あごは軽く引く 椅子には深めに腰かける 肘は直角に曲げる一方、手首は曲げないようにする 足の裏はつま先からかかとまでしっかりつける(膝は90度に・足は組まない) マウスはなるべく身体に近いところに置いて操作 これらを意識して、姿勢を改善してみてください。 予防グッズなどでデスク環境を整える 姿勢の改善とともに、腱鞘炎予防グッズなどでデスク環境を整えることも有効な対策です。具体的に以下の方法があります。 デスクや椅子を適切な高さに調整(デスクは60~72cm、椅子は37~43cmの範囲で) ディスプレイは40cm以上離す(上端部分が目の少し下に来る程度に) ノートパソコンはスタンドで目線の高さを調整 リストレストやアームレストなど手や腕の負担を軽減するグッズの導入 エルゴノミクスマウス(人間工学に基づいたマウス)の活用もあり デスク環境を整えて、体への負担を軽減しましょう。 まとめ|パソコン腱鞘炎では長時間の作業は禁物 パソコン腱鞘炎は長時間のパソコン作業で、指や手首などに疲労が溜まって発症する疾患です。発症すると、仕事や日常生活に影響を与えます。 パソコン腱鞘炎になったときは、なるべく指や手首を安静にして、適度にストレッチすることが重要です。また、予防する方法として正しい姿勢を心掛けたり、デスク環境を整えたりする方法もあります。 パソコンを使うシーンが多い現代人にとって、パソコン腱鞘炎は誰もが発症する可能性のある身近な病気です。作業の合間にこまめに休憩を取るなどして、対策をしましょう。 パソコン腱鞘炎になった場合は、安静にするほかにも再生医療の治療選択肢もあります。 詳しくは、公式ラインで公開している無料の再生医療ガイドブックをご覧ください。 パソコン腱鞘炎でよくある質問 パソコン腱鞘炎が左手に発生することはある? パソコン腱鞘炎は左手に発生することもあります。 キーボードは両手で使用するため、右利きの方でも左手にパソコン腱鞘炎を発症します。とくに、シフトキーやCtrlキー、Tabキーなど左手で操作することが多いキーを頻繁に使う場合は、注意が必要です。 また、左利きでマウスを左手で操作する方は、左手に症状が現れやすくなります。 パソコン腱鞘炎が肘に出てくることはある? パソコン腱鞘炎が肘に現れることはあります。パソコン作業中が原因で肘に現れる腱鞘炎は、「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」と呼ばれる症状です。テニスプレーヤーに多いことで知られるテニス肘は、パソコン操作が日常的な方にとっても身近な存在です。 パソコン作業では、キーボード入力やマウス操作の際に指を頻繁に動かすと、手や手首を反らす動作が増えます。この手や手首を反らす動作に影響を与えているのが、肘の外側の筋肉です。そして日頃からパソコン作業が多くなりすぎると、肘の外側の筋肉に大きな負担がかかり、ついにはテニス肘を発症します。 とくに作業中の姿勢やデスク環境が悪い場合は、猫背などで肘に与える負荷が大きくなる分、テニス肘の発症リスクが高まるため、姿勢には注意が必要です。 パソコン腱鞘炎は労災認定されますか? パソコン腱鞘炎は、症状によっては労災認定されるケースがあります。以下の条件に当てはまる場合は、労災認定の可能性が高いです。 6ヵ月以上にわたって、職場で長時間パソコンを使った反復作業に従事している 業務内容と腱鞘炎の症状に明らかな因果関係がある 専門医による診断がある 発症の時期やきっかけがはっきりしている ただし、業務との因果関係の証明や証拠集めにハードルがあるため、労災認定が難しいケースもあります。
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
日常的にピアノを弾いている方が指先や手首に痛みを感じるようになったら、その症状はピアノ演奏が原因で発症する、ピアノ腱鞘炎の可能性かもしれません。 ピアノ腱鞘炎は普段の練習のしすぎだけでなく、演奏中のフォームの悪さなどさまざまな原因で起こる病気です。 本記事では、ピアノ腱鞘炎の症状や原因、治療法を解説します。 今後ピアノを長く続けるためにも、ピアノ腱鞘炎のことを理解しておきましょう。 ピアノ腱鞘炎の症状をチェック! 腱鞘炎の中には、ピアノの演奏が原因になる「ピアノ腱鞘炎」もあります。ピアノ腱鞘炎の症状は、主に次のとおりです。 親指の付け根・手首の痛み|ドケルバン病 ピアノ腱鞘炎の症状として、「ドケルバン病」があります。 ドケルバン病は腱鞘炎のうち、手首の親指側にある「短母指伸筋腱」と「長母指外転筋腱」という2本の腱と、それを包む腱鞘が炎症を起こす病気です。 ドケルバン病で炎症が起きる腱や腱鞘は、親指や手首の動きに関係しています。そのため、親指を曲げ伸ばしたり手首を動かしたりする際に、親指の付け根や手首に痛みやしびれを感じるのが特徴です。 指の付け根の痛み・ひっかかり|ばね指 ピアノ腱鞘炎の症状としては、「ばね指」も知られています。ばね指は腱鞘炎でも、各指の付け根部分の手のひら側にある屈筋腱と、それを覆う腱鞘で炎症が起きる病気です。 それぞれの指にある屈筋腱は、指が滑らかに曲げ伸ばしできる役割があります。しかし、ばね指になると屈筋腱で炎症が生じるため、指を曲げ伸ばす際に痛みを感じたり、ひっかかりでうまく動かせなくなったりするのが特徴です。 ピアノ腱鞘炎の原因 腱鞘炎のうち、日常生活でのピアノ演奏をきっかけに発症するものに「ピアノ腱鞘炎」があります。 ピアノ腱鞘炎の原因は、練習などでのピアノ演奏時の正しくない習慣が主です。 過度な練習による指や手首の使いすぎ ピアノ腱鞘炎の原因として、「過度な練習による指や手首の使いすぎ」が挙げられます。 ピアノの演奏では、さまざまな鍵盤を複数の指で押すため、自然と指や手首への疲労が溜まっていきがちです。 オクターブ演奏で少し離れた鍵盤を押そうとして指を大きく広げると、より指に負担がかかります。 ピアノの演奏では多種多様な指の動きが求められる分、練習時間が長いほど指や手首には重い疲労が溜まりやすくなります。 日々の無茶な練習で指や手首を酷使した結果、腱鞘炎を発症してしまうケースも少なくありません。 鍵盤を押すときに力みすぎている 「鍵盤を押すときに力みすぎている」ことも、ピアノ腱鞘炎の原因のひとつです。とくに、演奏中に音の強弱をつけようとして、つい力を入れすぎてしまうシーンが見られます。 しかし、ピアノの音量は鍵盤を押す「速さ(打鍵速度)」で決まるため、力任せにたたいても思うような音にはなりません。 それどころか、指や手首に余計な負担をかけるだけになってしまいます。力んだまま鍵盤を押すクセは無意識に出やすいため、気づいたときには腱鞘炎を発症しているケースもあります。 不適切な姿勢やピアノとの距離 ピアノ腱鞘炎は、「演奏時の姿勢」や「ピアノとの距離」も関係する要素です。 ピアノ演奏では、猫背や肩が上がっている状態などの悪い姿勢は、首や肩に大きな負担がかかります。 腕を支える肩甲骨のスムーズな動きも妨げる分、腕や指先にも気付かないうちに疲労が溜まっていく仕組みです。 加えて、体とピアノの距離が近くても離れていても腱鞘炎の原因になります。 ピアノに近すぎると、自然と背中が丸くなる分、下がってくる頭を支えるために肩や腕に余計な力が入り、手首や指にも負担がかかります。 一方でピアノと離れすぎている場合、腕を余計に伸ばさないといけなくなるため、手首や指先に負担がかかりがちです。適度な距離を保ちましょう。 ピアノ腱鞘炎の治し方 ピアノ腱鞘炎になってしまったとき、どのような治し方があるのかを知っておくと、今後ピアノと長く付き合ううえで役立ちます。 ピアノ腱鞘炎の治し方には、主に以下の方法があります。 痛みを感じたら練習は休む ピアノの練習中に指や手首などに痛みを感じたら、無理せずに練習を休むことが大切です。 長時間連続で練習を続けた場合、指や手首にさらなる負担がかかり、症状が悪化します。こまめに休憩を設けることがポイントです。 患部のテーピングや温熱療法 患部のテーピングや温熱療法も、ピアノ腱鞘炎の治し方のひとつに挙げられます。 テーピングは指や手首の動きを制限しながら、極力負担をかけずに痛みを抑える用具です。 ただし、テーピングによって肌が荒れることもあるため、心配な方にはサポーターの使用をおすすめします。 温熱療法は、すでに腱鞘炎が慢性化している方向けの方法です。練習後にぬるま湯に患部をつけて温めることで、血行の改善や腱鞘炎による症状の緩和などの効果が期待されます。 ただし、炎症が起きている急性期に温めると、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。 なお、腱鞘炎になって間もない場合は、温熱療法ではなく冷却療法が推奨されます。患部を冷やす際には、アイスパックなどをタオルに包んだ状態で患部に当てます。 力を抜いた演奏を心掛ける ピアノ腱鞘炎になったときは、力を抜いた演奏を心掛けることも治し方のひとつです。 腱鞘炎を抱えている状態で力を込めて演奏すると、肩や指先などに過度な負担がかかって、余計に症状が悪化します。 とくに不慣れな曲やフレーズを演奏する際には、つい鍵盤に力が入りがちです。1音ずつ焦らずゆっくりと弾き方に慣れることをおすすめします。 ピアノ腱鞘炎の予防法 ピアノ腱鞘炎には以下のような予防法があります。練習中の方法やフォームを見直したり、ストレッチを取り入れたりして予防を心掛けてください。 練習中に休憩をはさむ ピアノ腱鞘炎を予防するには、練習中に休憩をはさむことが大切です。ピアノ腱鞘炎は長時間にわたって休憩なしで練習するほど、指や手首に疲労が蓄積されます。 このため、途中で休憩をはさめば、指や手首に溜まった疲労を少しでも解消できる分、本格的な腱鞘炎の発症リスクを下げられます。とくに、ピアノ初心者や久しぶりに弾く方は、短時間の練習とこまめな休憩を組み合わせることがおすすめです。 練習中のフォームの見直し ピアノ腱鞘炎を予防するには、練習中のフォームを見直す必要があります。演奏中の姿勢が悪いと、肩や腕、指先などに余計な力がかかる分、腱鞘炎を発症する可能性も高まります。 ピアノ演奏の際の正しい姿勢のポイントは、次のとおりです。 鍵盤の真ん中に椅子を置く 椅子に浅めに腰掛ける(前側3分の1程度) 背筋をぴんと伸ばしつつ、肩やひじは脱力する 手首の角度は鍵盤にまっすぐ伸びている 足はつま先からかかとまで床につける 椅子の高さは肘と鍵盤が同じくらいの高さになるように 手の形は卵をもって折るイメージで ストレッチの習慣を取り入れる ピアノ腱鞘炎を予防するには、指や手首の柔軟性を保つことが大切です。そのために、練習前後にストレッチを取り入れる習慣をつけましょう。 ストレッチによって血行が促進され、筋肉や腱の柔軟性を維持しやすくなります。 腱鞘炎は、指や手首の動きが硬くなることで起こりやすくなるため、日常的なケアが予防につながります。 たとえば、手を開いたり握ったりする「グーパー運動」や、指を1本ずつ甲側に反らすストレッチなどが効果的です。 自分に合う鍵盤のピアノを選ぶ 自分に合う鍵盤のピアノを選ぶことも、腱鞘炎を予防するうえで効果的です。 重いと感じる鍵盤を日常的に押すことも、ピアノ腱鞘炎の発症につながります。鍵盤が重いほど、音を出す際に力をこめる必要があります。 ピアノ腱鞘炎を防止するには、あまり力まずに演奏できる程度の鍵盤を選ぶことが理想的です。もし、今使っているピアノの鍵盤を重く感じるときは、調律師に調律を依頼するか、軽い力で鍵盤を押せるピアノに買い替えを検討しましょう。 電子ピアノにはタッチ調整機能もある 電子ピアノの場合はタッチ(鍵盤)の調整機能もあるため、こちらを選ぶのもひとつの手です。タッチ感度を調整するためのボタンを操作することで、弾くときの力の強弱や音の出方を調整できます。 今使っているピアノの鍵盤の重さに違和感があり、買い替えを考えている方には、タッチ調整機能つきの電子ピアノを選ぶのもおすすめです。 まとめ|ピアノ腱鞘炎になったら無理せず安静にしよう ピアノ腱鞘炎はピアノ演奏のしすぎや、演奏時の姿勢の悪さが主な原因です。 ピアノ腱鞘炎になったときは、練習をすぐにやめて安静にする必要があります。早く演奏を再開したい場合には、姿勢やフォーム、力の入れ方を見直し、患部への負担を減らす工夫も欠かせません。 また、腱鞘炎を予防するためには、日頃からこまめに休憩をとったり、ストレッチを習慣づけたりすることが効果的です。無理のない演奏環境を整えることが、ピアノと長く付き合っていくための第一歩といえるでしょう。 ピアノ腱鞘炎は、適切に対処しないと演奏を長期間休まなければならない場合があります。指先や手首に痛みを感じたら、無理をせず練習を中断し、早めに治療を始めることが大切です。 なお、腱鞘炎の治療法には再生医療という選択肢もあります。腱鞘炎でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 ピアノ腱鞘炎のよくある質問 ピアノ腱鞘炎が治るまでの期間は? ピアノ腱鞘炎が治るまでの期間は個人差はあるものの、早くて3週間から2ヵ月程度、重症化した場合や治療が遅れた場合は、数ヵ月から1年以上かかることもあります。 そのため、なるべく早く治してピアノ演奏を再開するには、痛みを感じてから早い段階で治療を始めることが大切です。 ピアノ腱鞘炎はオクターブも関係ある? ピアノ腱鞘炎はオクターブ演奏で発症する場合もあります。オクターブ練習では無理に手を広げようとするため、指先に負担がかかって腱鞘炎に繋がることがある点に注意が必要です。 ピアノ腱鞘炎は演奏の下手さでなる? ピアノ腱鞘炎は演奏の上手・下手に関係なく発症する人は一定数います。ただし、ピアノの初心者や演奏慣れしていない方の場合、うまく脱力できていなかったり無理な指の広げ方をしたりすることで、腱鞘炎になることがあります。
2025.06.30 -
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日々腱鞘炎に悩まされているものの、忙しいなどの理由でなかなか専門医の診察を受けられない方もいるのではないでしょうか。 腱鞘炎の改善には適切な治療が最も重要ですが、日常の食生活も回復をサポートする要素の一つです。 本記事では、腱鞘炎を早く治す食べ物を、摂取の際の注意点や他にできるセルフケアの方法とともに解説します。 食べ物の力を活用して、腱鞘炎の回復をサポートしていきましょう。 腱鞘炎を早く治すのに効果的な食べ物 腱鞘炎の治療法といえば、患部を安静にしたり薬を使ったりする保存療法が主流です。しかし、腱鞘炎は摂取する食べ物を見直すことでも、改善の効果が期待できます。 腱鞘炎をなるべく早く治すには、とくに以下の食べ物を意識的に摂るのがポイントです。 オメガ3脂肪酸が豊富な食べ物 ビタミンCやビタミンEの多い食べ物 たんぱく質を多く含む食べ物 グルコサミンなどのサプリメント オメガ3脂肪酸が豊富な食べ物|青魚や亜麻仁油など オメガ3脂肪酸は、腱鞘炎など関節の炎症を抑える効果が期待できる栄養素です。 オメガ3脂肪酸を意識的に摂取した場合、炎症を誘発する化合物である「サイトカイン」の生成量を減らせます。 オメガ3脂肪酸は青魚や亜麻仁(あまに)油、豆類・木の実類などに豊富に含まれています。より具体的な食べ物は次のとおりです。 青魚類:サーモン・イワシ・サバ・ニシン・マグロなど 植物由来の油:亜麻仁油・キャノーラ油・大豆油・クルミ油など 豆類・木の実類:クルミ・大豆・アマニ・チアシードなど ビタミンC・ビタミンEの多い食べ物|野菜・果物類など ビタミンCやビタミンEを多く含む食べ物も、腱鞘炎を早く治す際に効果的とされています。ビタミンCやビタミンEは野菜や果物類に多く含まれる栄養素です。 とくに、以下の食べ物から豊富に摂取できます。 栄養素 野菜類 果物類・ナッツ類 ビタミンC パプリカ・ブロッコリー・キャベツ・トマト など 柑橘類・イチゴ など ビタミンE ブロッコリー・ホウレンソウ など アボカド・ピーナッツ・アーモンド など ビタミンCやビタミンEは、ともに抗酸化作用があるため、腱鞘炎を早期に改善する効果が期待されます。 酸化は体内の活性酸素のはたらきによる現象で、酸化が進行すると腱鞘炎の回復に時間がかかりやすくなります。 そのため、抗酸化作用に効果が見込めるビタミンCやビタミンEの摂取も、腱鞘炎を早く治すポイントです。 加えて、ビタミンCやビタミンEの摂取は、腱鞘炎で傷ついた腱の回復を助けます。 たんぱく質を多く含む食べ物|大豆食品や肉類 腱鞘炎を早く治すには、たんぱく質を多く含む食べ物を摂取する必要があります。 たんぱく質は、腱鞘炎の原因である腱や腱鞘、筋肉の損傷を改善するうえで必須の栄養素です。同時にたんぱく質は、腱や腱鞘を構成するコラーゲン繊維の主要な材料の1つでもあるため、腱鞘炎からの早期回復に貢献します。 たんぱく質を多く含む食べ物として、大豆食品や肉類、卵などが代表的です。なかでも、大豆食品に含まれるイソフラボンは、腱鞘炎による痛みを和らげる効果があるとされています。 イソフラボンなどたんぱく質を含む食べ物は、次のとおりです。 大豆食品:納豆・豆腐・豆乳・味噌・油揚げ など 肉類:鶏肉(胸肉・もも肉・ササミ)、豚肉(豚ロース・豚肩肉・豚バラ肉など)、牛肉(牛もも肉・牛ひれ肉 など) 上記以外:卵や低脂肪牛乳 など グルコサミンなどのサプリメント グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは医療機関の処方薬ほどの効果は見込めません。 しかし、関節痛の初期段階や手や指を使う際の予防や症状の進行を抑える効果が期待されます。 ただし、グルコサミンやエクオールなどのサプリメントの腱鞘炎への効果は医学的に十分実証されておらず、個人差もあるため注意が必要です。 腱鞘炎改善に役立つ食生活の注意点 食べ物で腱鞘炎の改善を図るには、症状に効果的な栄養素を多く摂取することが大切です。その一方で、食生活を通じて腱鞘炎を改善していくには、次の点に注意する必要があります。 脂肪分の多い食べ物は避ける 脂肪分の多い食べ物は腱鞘炎の改善を図るうえで避けるべきです。揚げ物や加工食品などの脂っこい食べ物はカロリーが高い分、体内に余計な熱を持たせることで、炎症のさらなる悪化を招く可能性があります。 加えて、脂肪分の多い食べ物は、胃や腸などでの消化に時間がかかるのも特徴です。胃腸に与える負荷も大きく、腱鞘炎の改善に必要な栄養素を吸収する力が弱まるため、回復に時間がかかります。 なるべく早めに腱鞘炎を改善したいのであれば、まず脂肪分の多い食べ物を過度に摂取する習慣を改善することが大切です。 暴飲暴食は控える 腱鞘炎の改善に効果的な栄養素を多く摂取することは大切ですが、暴飲暴食はNG行為です。暴飲暴食も脂肪分の多い食べ物の過度な摂取と同じく、消化器官に大きな負担をかけてしまいます。 食べすぎや飲み過ぎは、腱や筋肉の回復に欠かせない栄養素の摂取にも時間がかかるとともに、血液など体液の流れにまで悪影響を及ぼす点でも問題です。 体液の流れが悪化すると、腱や筋肉にも栄養素が届きにくくなる分、腱や筋肉が硬くなったり回復に時間がかかったりします。 腱鞘炎に効果がある栄養素を積極的に摂取するのは良いことですが、飲食の量はほどほどにするのがポイントです。 栄養バランスを心掛ける 腱鞘炎を食生活の改善によって早期回復させるためには、バランスの取れた栄養摂取が不可欠です。 腱鞘炎の回復過程では、オメガ3脂肪酸、タンパク質、各種ビタミンなど、多種多様な栄養素が必要となります。 症状が重い場合、患部の修復には通常より多くの栄養素が消費されます。これらの栄養素は細胞内で代謝され、組織修復に必要なタンパク質などの合成材料として利用されるのです。 このように多くの栄養素が通常以上に必要となるため、野菜、肉類、魚類、大豆製品などを幅広くバランス良く摂取することが、腱鞘炎の早期回復において重要な役割を果たします。 冷たい飲み物の飲み過ぎに注意する 冷たい飲み物を飲むと、冷えによって体内の血行が悪化するため、飲みすぎに注意してください。血行が悪化すると、腱や筋肉の修復に必要な栄養素が届きにくくなり、腱や筋肉の柔軟性の低下で回復が遅れます。しかも、腱や筋肉が硬くなるために、痛みが強くなることさえあります。 なお夏場は、暑さの影響でつい冷たい飲み物を摂取しがちになるだけでなく、エアコンの風で体が冷えやすいです。他の季節以上に冷えの影響を受けやすいため、冷たい飲み物の飲み過ぎを控えることがより重要になります。 腱鞘炎を早く治すためのセルフケア 腱鞘炎を早く治す際には、食べ物以外の方法もあります。食べ物の摂取以外にできるセルフケアの主なやり方は、次のとおりです。 なるべく指や手首を安静にする 腱鞘炎のセルフケアでは、極力指や手首を安静にする方法が基本です。腱鞘炎は指や手首の酷使(使いすぎ)で炎症が生まれることで発生します。 そのため、腱鞘炎になったときには、症状が落ち着くまではできる限り指や手首を使わないことが大切です。もし、仕事などでパソコンやスマホを日常的に使う方は、30分から1時間おきに1度は指や手首を休ませてください。 パソコンやスマホの操作が長時間に及ぶと、指や手首に疲労が溜まる分、腱鞘炎を発症するリスクが高まります。 そのため、腱鞘炎のリスクを抑えるためには、こまめな休憩を通じて指や手首に溜まった疲労を少しでも解消することが大切です。なお、スマホを使う際には両手で持つことでも、一方の手の指や手首への負担を減らせます。 サポーターなどで固定するのもおすすめ 指や手首を安静にする際には、サポーターやテーピングによる固定もおすすめです。この方法は、とくに指や手首に痛みが生じているにもかかわらず、仕方なく指などを使わなければいけないときに役に立ちます。 サポーターやテーピングで患部のある指や手首を固定すると、実際に手を使う必要のある状況でも負担を軽減できます。 ストレッチで手指の柔軟性を高める 腱鞘炎のセルフケアでは、ストレッチで手指の柔軟性を高める方法も大切です。腱鞘炎は指の腱や筋肉の柔軟性が下がって血流が悪化した結果、発症します。 逆に手指の柔軟性が高まれば、血流が改善されるとともに、腱や筋肉の回復に必要な栄養素も届きやすくなる分、早期の回復も期待できます。予防の面でも、普段からストレッチで手指や手首の柔軟性を高めておくことが大切です。 手指の柔軟性を高めるストレッチの手順は、以下のとおりです。 手首を甲・腕側に軽く曲げる 指を1本ずつなるべく伸ばし、反対側の手でつまんで甲側に軽く反らす 簡単なので、ちょっとしたスキマ時間に試してみてください。 治らないときは医療機関を受診する 腱鞘炎に効果的な食べ物を食べたり、ストレッチなどでセルフケアしたりしても治らないときは、無理せずに医療機関を受診しましょう。 医療機関では専門医の診察・診断を経て、薬物療法やステロイド注射がおこなわれます。薬物療法は以下の方法が代表的です。 外用鎮痛消炎薬:塗り薬や湿布など、痛みのある部位に直接塗ったり巻いたりする 内服薬:飲み薬として服用 もし、薬物療法でも症状の改善が見込めないときは、ステロイド剤を注射します。症状の出ている腱鞘に直接注射する方法で、数日から3週間程度で症状が緩和します。 ステロイド剤注射でもなお、症状が良くならないときは手術も治療の選択肢です。腱鞘炎の場合は、腱鞘を切り開く「腱鞘切開術」がおこなわれます。炎症で厚くなった腱鞘を切り開いて、腱が以前のように円滑に動くようにする方法です。 腱鞘炎を早く治すには「再生医療」も選択肢のひとつ 腱鞘炎を早く治す場合、「再生医療」という選択肢もあります。 再生医療には主に、幹細胞治療とPRP療法があります。 幹細胞治療は、患者様の幹細胞を採取・培養して患部に投与する治療法です。幹細胞の「分化能」という他の細胞に変化する能力を活用します。 PRP療法では、患者様の血液を採取した後、専用の遠心分離器で血小板を濃縮した液体「多血小板血漿(PRP)」を作製し、患部に注射する方法です。 手術をおこなう必要がなく、治療も最短30分程度で終わります。 再生医療に関して詳しくは、以下をご覧ください。 まとめ|腱鞘炎を早く治す食べものを取り入れて早期改善を目指そう 腱鞘炎を早く治すには、早く治すうえで効果的な栄養素の摂取が欠かせません。オメガ3脂肪酸やビタミン、たんぱく質などが重要となる分、大豆食品や野菜、肉、魚を盛り込んだバランスの良い食事が大切です。 同時に、腱鞘炎を早く治すときは、指や手首を安静にすることやストレッチなども役に立ちます。食べ物の摂取と組み合わせて、腱鞘炎の早期改善を目指しましょう。 腱鞘炎を早く治す食べ物の「よくある質問」 腱鞘炎に効く飲み物は? 腱鞘炎に効果的な飲み物は、食べ物と同じようにビタミンC・Eやたんぱく質を豊富に含んだものがおすすめです。具体的には以下のものがあります。 ビタミンC:青汁・アセロラジュース・グレープフルーツジュース・緑茶類 など ビタミンE:豆乳・アーモンドミルク・麦芽コーヒー・きな粉飲料 など たんぱく質:牛乳・豆乳・飲むヨーグルト・プロテインドリンク など ばね指に効く食べ物は? ばね指は腱鞘炎のうち、指に発症するものです。このため、ばね指に効果的な食べ物を摂取したいときも大豆食品・魚類・野菜などのような、腱鞘炎の改善に効果的とされる栄養素を多く含むものをおすすめします。 腱鞘炎は栄養不足が原因でなるの? 腱鞘炎は栄養不足で発症することもあります。腱や腱鞘は主にコラーゲン繊維で構成されているためです。同時にコラーゲン繊維も、鉄分・たんぱく質・ビタミンEを材料に生成されます。 そのため、体内で鉄分などの栄養分が不足した場合、腱や腱鞘の形成に悪影響を及ぼします。その結果、腱鞘炎を発症しやすくなる仕組みです。 腱鞘炎が治らない理由は? 腱鞘炎がなかなか治らない理由としては、以下のようなものが考えられます。 症状があるにもかかわらず、指や手首を使いすぎている 自己判断による誤ったセルフケア 暴飲暴食による胃腸の働きの低下 ホルモンバランスの乱れ 腱鞘炎を確実に治す方法は? 腱鞘炎の治療には個人差がありますが、次の方法が効果的とされています。 症状の出ている指や手首を安静にする・極力負担をかけない 専門医の診察・治療を受ける 指や手首のストレッチ(痛みを感じる場合、無理をしない) 栄養バランスの取れた食事の摂取 症状の悪化や慢性化を防ぐためにも、早めに医療機関を受診しましょう。
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
東洋医学に基づくツボ押しは、特定の部位に適度な圧力をかけることで体の不調を和らげるとされる手技療法です。 腱鞘炎の症状に対しても、日常生活の中で手軽に実践できるセルフケアの一つとして取り入れることができます。 本記事では、部位別の腱鞘炎に効果のあるツボを、腱鞘炎の予防法などとともに解説します。 ツボ押しの他に、腱鞘炎に対する治療法として、再生医療も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 腱鞘炎のツボの押し方【基礎知識】 腱鞘炎のツボ押しをする前に先に押し方を理解しておくと、より効果的にツボを刺激できます。 腱鞘炎のツボを押す際には、まずリラックスした状態で、押したいツボにゆっくりと指圧を加えることがコツです。 ツボを押す際は力を入れ過ぎずに、心地よさ(痛気持ちよさ)を感じられる程度がちょうどよいとされています。同時に指圧を加えたら、5秒程度キープするのもポイントです。 もし、「刺激が足りない」と感じるときには、指圧を加えた状態で円を描いてください。 なお、ツボ押しは、毎日継続的に行うことで、腱鞘炎の症状を和らげる効果が期待できます。 ただし、治療法ではないため、痛みが強かったり症状が落ち着かなかったりするときは、医療機関を受診しましょう。 手にある腱鞘炎のツボ 腱鞘炎の症状を和らげる効果が期待できるツボは、上半身のさまざまな場所にあります。 まずは、手にある腱鞘炎のツボから紹介します。 陽谿(ようけい) 「陽谿(ようけい)」は、親指の付け根部分、手首に近いところにあるツボです。親指の付け根と手首の境目にある穴のような部分です。 ここを刺激することで、手指や手首を使いすぎたときに生じる痛みを和らげる効果があるとされます。 ツボを押す際は、手首の力を抜いてリラックスした状態で、反対の手で手首をつかみながら親指で5秒程度軽く押します。 合谷(ごうこく) 「合谷(ごうこく)」は、親指と人差し指の付け根の間にあるツボです。親指と人差し指の骨が合わさる部分の、少し指先側のくぼみに当たります。 腱鞘炎による痛みを和らげたり、炎症を鎮めたりする効果が期待できるツボです。 加えて、肩こりや目の疲れにも効果があるとされるため、長時間のスマホ操作やデスクワークに休みを入れて刺激することもおすすめできます。ただし、妊娠中の方の場合、東洋医学では合谷への刺激が子宮の収縮を促すとされているため、避ける必要があります。 合谷を押す際には、反対の手の親指で押しながら、優しくじっくりと円を描くように刺激を与えるのがポイントです。 労宮(ろうきゅう) 「労宮(ろうきゅう)」は、ちょうど手のひらの真ん中にあるツボです。具体的には、中指と薬指を掌側に握るように曲げて先端が当たったとき、両方の指の間に位置するツボを指します。 労宮は腱鞘炎の緩和のほか、手や指の疲労を和らげるうえで効果があるとされるツボです。 とくに腱鞘炎でも、指の付け根の痛みや炎症が特徴的な「ばね指」の症状を改善するとされています。 労宮を刺激する際には、反対の手の親指をやや強めに押すのがポイントです。親指を5秒程度押した後に離す動作を、数回繰り返します。 手首にある腱鞘炎のツボ 腱鞘炎の症状改善が期待できるツボは、手首にも複数あります。 手首にある腱鞘炎の主なツボは、次の2ヵ所です。 大陵(だいりょう) 「大陵(だいりょう)」は、手首を内側に折ったときにしわができる部分の真ん中にあります。大陵を刺激すると、手の痛みやしびれを和らげる効果が期待できます。 加えて、大陵は手根管のすぐ上に位置しているため、手根管症候群の症状改善の効果があるとされるツボとしても有名です。 大陵のツボ押しでは、呼吸しながら反対側の手の親指を使って、数回軽く押す状態で刺激します。 陽池(ようち) 「陽池(ようち)」は、大陵と異なり手首でも甲側にあるツボです。手の外側(小指側)の、手の甲と手首を繋ぐ部分にある関節のくぼみに位置しています。 陽池を刺激すると、手首や腕の痛みやしびれを落ち着かせる効果が期待できます。 また、ストレスの緩和効果もあるとされるため、デスクワーク中の休憩時間など、ちょっとした時間があれば試してみてください。 陽池を刺激する際には、反対側の手の親指を使って、1,2分程度サークルを描くように指圧を加えます。 腕・肘にある腱鞘炎のツボ 腕や肘にある腱鞘炎のツボは、手三里・曲池・外関の3つです。 手三里(てさんり) 「手三里(てさんり)」は、肘を直角に曲げたときに内側にできるしわのうち、最も外側にあるものから手首のほうへ指3本分のところにあります。 腕の疲労を回復させたり、首や肩のコリをほぐしたりするうえで効果があるとされるツボです。加えて、手首や指についてもスムーズに動けるようにする効果も期待できます。 手三里を刺激する場合、反対側の手の親指で痛気持ちよく感じる程度にマッサージするのがポイントです。 曲池(きょくち) 「曲池(きょくち)」は、肘の外側にあります。肘を曲げた際にできるしわの、最も外側の端にあるツボです。首から腕に至る血流の改善効果が期待できるため、手に溜まった疲労を軽減や手首の痛み、肩こりを和らげます。 加えて、便秘や下痢にも効果があるとされるので、お通じの悩みがある方にもおすすめです。曲池のツボ押しは、親指で軽く押した状態で、円を描くようにもみほぐします。 外関(がいかん) 「外関(がいかん)」は、腕の外側でも比較的手首に近い部分にあるツボです。手と手首の境目から、指3本分ほど腕の根元側に行ったところに位置しています。手首の神経や肩の痛みを和らげるほか、ストレスが要因の体調不良や自律神経の乱れにも効果的です。 なお、ツボを押すときは、反対側の手の指を使ってゆっくりと押します。その際に息を吐くのもポイントです。 腱鞘炎を予防する方法 腱鞘炎は普段の過ごし方に気を付けるだけでも予防できます。 とくに予防で心掛けたい方法が、以下の2つです。 スマホの片手持ちなどの習慣の改善 腱鞘炎を予防する際は、まずスマホを片手で持つ習慣を改善する必要があります。 スマホを片手で持って同じ手で操作するのは、親指や手首に大きな負担をかけるためおすすめできません。 日々長時間にわたってスマホを操作した場合、指や手首を動かす腱や、腱を覆っている腱鞘に負担がかかって腱鞘炎を発症します。 このため、片手ではなく両手でスマホを持つのがおすすめです。両手でスマホを持つことで、手にかかる負担を分散できます。 加えてスマホを操作する際には、30分から1時間に1度などこまめに休憩を入れることも大切です。意識的にスマホから離れる時間を持つことで、指や手首にかかる負担を軽減できます。 スマホの片手持ち以外にも、スポーツの練習や競技での無理な姿勢を避けることもポイントです。とくに野球やテニスのように手をよく使うスポーツでは、ボールやバットを無茶な握り方で持つと、指や手首に大きな負担がかかります。 正しいフォームを身につけるとともに、練習前後のウォーミングアップやクールダウンを欠かさずに行うことが重要です。 ストレッチなどで柔軟性を高める 腱鞘炎の予防には、ストレッチなどで指や手首の柔軟性を高めるのも効果的です。習慣的にストレッチをおこなうと、筋肉の緊張がほぐれて血流が促進され、腱への負担も軽減されます。すでに腱鞘炎の症状がある方も、ストレッチを取り入れることで症状が軽くなる効果も期待できます。 指や手首のストレッチの方法は、次のとおりです。 指のストレッチ:それぞれの指を1本ずつ手の甲側に反らす動きを、何セットか繰り返す 指のグーパー運動:手を大きく広げた状態からゆっくり握りこぶしを作り、再度広げる動きの繰り返し 手首の前後ストレッチ:片方の手の指を反対側の手で掴んだ状態で、手首をゆったり前後に動かす 手首のストレッチ:机の上に手を置き、反対側の手で指を1本ずつつまみながら反らせてキープする ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲でゆっくりと行うことがポイントです。 腱鞘炎の治療選択肢のひとつ「再生医療」について 腱鞘炎の治療には、「再生医療」の選択肢もあります。 腱鞘炎に対する再生医療では、患者様から採取した幹細胞を使用する幹細胞治療と、血液に含まれる血小板を濃縮した液体を患部に注射するPRP療法が用いられます。 どちらも大きな手術は必要とせず、とくにPRP療法は所要時間が最短30分程度で済むのが特徴です。 腱鞘炎の治療に再生医療をご検討の方は、当院へお気軽にご相談ください。 【関連記事】 腱鞘炎の治し方は?自宅でできる対処法や治療法・予防法を解説 まとめ|腱鞘炎のツボ押しで手軽にセルフケアを始めよう 指や手首の使い過ぎで発症する腱鞘炎は、東洋医学に基づくツボ押しで軽減できます。 腱鞘炎の症状緩和が期待できるツボを押すことで、日々の慢性的な痛みが落ち着くことも多いです。 ツボ押しは日常生活でも気軽にできる方法であるため、腱鞘炎の痛みに悩まされるときはセルフケアの一環としてお試しください。 ただし、ツボ押しでも効果が見られないときは、無理せずに医療機関を受診してください。 腱鞘炎のツボでよくある質問 腱鞘炎のツボはドケルバン病にも効果はある? 腱鞘炎のツボのなかには、手首の腱鞘炎であるドケルバン病に効果が期待できるものもあります。陽谿や外関のような、手首付近にあるツボがおすすめです。 手首マッサージでの腱鞘炎の治し方は? 手首マッサージで腱鞘炎を治す際には、痛みのある手首を反らします。この際に指の部分を反対側の手で握りながら、手首を反らすのがポイントです。 ただし、手首マッサージは正式な治療法ではないため、症状がひどいときは医療機関の受診をおすすめします。
2025.06.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
視界にギザギザとした光やキラキラと輝く模様が現れ、徐々に拡大しながら視野の一部が欠けるような症状は「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれ、片頭痛の前兆としてよく知られる現象です。 しかし、閃輝暗点が頻繁に繰り返し起こると、「もしかしたら、何か重篤な病気の前兆ではないか」と強い不安を覚える方もいるでしょう。 本記事では、閃輝暗点が繰り返し発生するメカニズムとその背景にある要因を掘り下げて解説します。また、症状を放置すると生じる潜在的なリスクについても詳しく説明します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。 閃輝暗点が繰り返し起こる場合は要注意!早急な受診がおすすめ 閃輝暗点が一度きりの現象であれば、片頭痛の前兆として経過観察されることもあります。 しかし、閃輝暗点が頻繁に繰り返し起こる場合は、単なる片頭痛だけでなく、脳に起因する重大な疾患の可能性も視野に入れる必要があります。(文献1) とくに、これまで経験したことのない症状を伴う場合や、頭痛を伴わない閃輝暗点が続く際は、速やかに専門医の診察を受けることが重要です。また、両目に閃輝暗点の症状が現れる場合は、脳神経外科や脳神経内科への受診が推奨されます。 一方で、片目のみに症状が限定される際は、眼球自体の病気の可能性も考えられるため、眼科での受診を検討しましょう。適切な診断のもと、治療方針を決めることが大切です。 閃輝暗点を繰り返す主な原因 閃輝暗点を繰り返す背景には、さまざまな生活習慣や身体の状態が関係しています。以下では主な原因を詳しく解説します。 ストレス過多・疲労の蓄積 睡眠不足(不規則な生活) カフェイン・ポリフェノール等の特定の食材の成分の摂りすぎ スマホ・パソコンの長時間使用 ホルモンバランスの乱れ ストレス過多・疲労の蓄積 閃輝暗点が繰り返し起こる原因の一つとして、過度なストレスや慢性的な疲労の蓄積が挙げられます。 精神的・肉体的なストレスは、自律神経のバランスを大きく崩し、脳の血管の収縮と拡張をコントロールする機能に影響を及ぼし、血流に変化が生じる場合があります。(文献2) その結果、脳の血管が一時的に過度に拡張し、神経の興奮を誘発することで閃輝暗点が発生しやすくなると考えられています。 睡眠不足(不規則な生活) 睡眠不足や不規則な生活リズムは、閃輝暗点を繰り返す大きな要因となりえます。人間の体内時計は睡眠によって調整されており、そのリズムが乱れると自律神経のバランスが崩れやすくなります。 自律神経は血管の収縮・拡張を制御しているため、バランスが乱れることで、脳の血管が過敏になり、閃輝暗点が繰り返し発生しやすくなるのです。 カフェイン・ポリフェノール等の特定の食材の成分の摂りすぎ 特定の食材に含まれる成分の過剰摂取が、閃輝暗点の引き金となる可能性が指摘されています。とくに、カフェインやポリフェノール、チラミンなどがその代表例です。 食材 主な成分・栄養素 誘引のメカニズム・特徴 チョコレート チラミン、カフェイン、テオブロミン 血管を拡張し神経を刺激する チーズ チラミン 血管の収縮と拡張を引き起こす ナッツ チラミン 血管反応を変化させる コーヒー カフェイン 中枢神経を過剰に刺激する 赤ワイン ポリフェノール、チラミン 血管を刺激し神経過敏を促す これらの成分は血管に作用したり、神経伝達物質に影響を与えたりすることで、脳の血管の収縮・拡張に影響を及ぼし、閃輝暗点の発作を誘発する場合があります。 スマホ・パソコンの長時間使用 閃輝暗点が繰り返し起こる原因の一つとして、スマホやパソコンの長時間利用が挙げられます。 画面から放たれる強い光や、反射光などの眩しい光は、目に大きな負担をかけ、眼精疲労を引き起こすだけでなく、脳の視覚処理系に影響を与える可能性があります。また、長時間の集中作業による脳の疲労も、閃輝暗点の発症リスクを高める要因となります。 ホルモンバランスの乱れ 女性の場合、ホルモンバランスの乱れが繰り返す閃輝暗点の原因となる場合があります。とくに、月経周期に伴うエストロゲンの変動は、脳の血管の収縮・拡張に影響を及ぼし、片頭痛やそれに伴う閃輝暗点の引き金となりやすいです。 生理前や生理中、あるいは更年期にはホルモンレベルが大きく変化するため、この時期に症状が現れやすい傾向が見られます。 片頭痛もちの人は閃輝暗点を繰り返しやすい 閃輝暗点は、片頭痛の前兆として現れることが多く、この視覚症状は片頭痛もちの方によく見られます。(文献3) 特徴的なのは、視界に現れるギザギザとした光の模様や点滅が数分から数十分続き、光の消失後に、多くの場合ズキズキとした拍動性の頭痛が始まる点です。 頭痛は日常生活に支障をきたすほど強く感じられることがあります。さらに、頭痛と同時に吐き気や嘔吐を伴うこともあり、普段は気にならない程度の音や光、匂いに対して異常に敏感になる症状を併発する場合もあります。 これらの症状が複合的に現れることは、片頭痛における特徴的なサインの一つといえるでしょう。 閃輝暗点を繰り返す場合は脳の病気(脳梗塞)のリスクがある 閃輝暗点が繰り返し出現する状況は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)など脳の重大な疾患のサインの可能性があります。(文献4) 閃輝暗点のパターンが普段と異なる場合や、以前とは異なる視覚症状を伴う場合は、とくに警戒が必要です。頭痛を伴わない場合でも、脳血管系の問題が関与している可能性は十分に存在します。 さらに、閃輝暗点に加えて、以下の神経症状が同時に現れた場合は、非常に緊急性が高い状態です。 顔の左右どちらかに麻痺がある 片側の手足に力が入らない 感覚が鈍い 言葉が出にくい ろれつが回らない すぐに救急車を呼ぶか、至急医療機関を受診する必要があります。脳の血流に異常が生じている可能性があるため、早期の対応が事態の悪化を防ぐためには不可欠です。 繰り返す閃輝暗点に有効な治療方法はある? 閃輝暗点には特効薬や明確な治療法はありません。 対処法として、下記の対症療法などの実践が一般的です。 片頭痛の治療薬を服用する 生活習慣を改善する 水分補給をこまめに実施する サプリメントを摂取する 安静にする(症状が出た場合) 片頭痛の治療薬を服用する 閃輝暗点が繰り返し起こる場合、片頭痛の治療薬が有効な手段の一つです。 症状が現れた際に服用するトリプタン製剤(例:イミグラン)は、片頭痛発作の進行を止め、その後の頭痛を和らげる効果が期待できます。(文献5) 加えて、症状の頻度が高い方には、塩酸ロメリジンなどの予防薬が処方されることがあります。予防薬を日常的に服用して片頭痛の発作を抑制し、閃輝暗点のリスク低減を目指します。 生活習慣を改善する 繰り返す閃輝暗点を減らすためには、生活習慣の改善が重要です。 過度なストレスは脳の血管に影響を及ぼし、症状を誘発する一因となります。そのため、ストレスを適切に管理し、心身のリフレッシュを図りましょう。 また、睡眠不足や不規則な生活リズムは自律神経の乱れにつながり、脳の過敏性を高める可能性があります。規則正しい睡眠を心がけ、生活リズムを整えることが、症状の軽減につながります。特定の食品成分の過剰摂取も誘発因子となるため、食生活の見直しも有効です。 水分補給をこまめに実施する 閃輝暗点の症状悪化を防ぐためには、こまめな水分補給が重要です。 体内の水分量が不足すると、脱水状態に陥り、血液の循環が悪くなることで脳の血管に影響を与える可能性があります。 その結果、閃輝暗点の発作や症状の悪化を招くことがあります。日頃から意識して水分を摂取して、身体が常にうるおった状態を保ち、症状を軽減しましょう。 サプリメントを摂取する 繰り返す閃輝暗点に対する補助的な手段として、サプリメントの摂取が有効な場合があります。 脳の健康維持や血管機能に寄与するマグネシウムは、片頭痛の予防にも関連が示されており、積極的な摂取が推奨される栄養素です。 また、細胞のエネルギー生成に関わるビタミンB2も、脳の働きをサポートし、閃輝暗点の症状軽減に役立つ可能性が指摘されています。加えて、神経機能に重要な役割を果たす亜鉛も、積極的な摂取が望ましい栄養素の一つです。 安静にする(症状が出た場合) 閃輝暗点の症状が発現した際には、無理をせず速やかに安静にすることが大切です。 強い光や音、動きは症状を悪化させる可能性があるため、できる限り静かで暗い場所へ移動し、目を閉じて横になるなどの対処が推奨されます。 心身を落ち着かせ脳への刺激を最小限に抑えることが、症状の持続時間を短縮し、その後の頭痛の軽減につながります。 閃輝暗点を繰り返す人によくある質問 閃輝暗点が繰り返し現れると、不安や疑問を抱える方も少なくありません。ここでは、繰り返す閃輝暗点に関してよくある質問を解説します。 閃輝暗点が毎日起こる場合は放置すると危険? 片目だけ閃輝暗点を繰り返す場合は? 閃輝暗点が毎日起こる場合は放置すると危険? 閃輝暗点が繰り返し毎日発生する状況は、身体になんらかの異常が生じている明確なサインです。 とくに、過度なストレスや疲労の蓄積が主な原因として考えられます。まず十分な休息を確保し、心身の疲労回復に努めることが重要です。 その上で、閃輝暗点に加えて以下の神経症状が見られる場合は、脳の病気の可能性も視野に入れ、直ちに専門の医療機関を受診しましょう。 激しい頭痛 片側の手足のしびれ 力が入らない 言葉がもつれる 自己判断で放置すると非常に危険なので、早めに医師の診察を受けてください。 片目だけ閃輝暗点を繰り返す場合は? 閃輝暗点が常に片方の視界のみに現れる場合、網膜剥離や眼底出血など、目の病気が原因である可能性があります。 片目だけに異常が生じている際は、失明などの重篤な状態に至る前に、速やかに眼科を受診しましょう。 まとめ|閃輝暗点を繰り返して脳梗塞が不安なら再生医療をご検討ください 閃輝暗点は片頭痛の前兆として現れることが多い症状ですが、頻繁に繰り返される場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)など脳血管系の疾患の可能性も考えられます。 また、症状が片目のみの場合は目の病気、手足のしびれや言葉のもつれを伴う場合は緊急性の高い脳疾患の兆候も考えられるため、早期の専門医の受診が不可欠です。 近年では、こうした脳血管のトラブルに対する治療法として再生医療への関心が高まっています。 当院リペアセルクリニックでは、脳梗塞の後遺症に対して丁寧にカウンセリングを行い、再生医療(幹細胞治療)を中心とした治療を、症状に合わせてご提案しております。 ご質問・ご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 日本医事新報社「一過性脳虚血発作」 https://www.jmedj.co.jp/files/item/books%20PDF/978-4-7849-5686-9.pdf(最終アクセス:2025年6月12日) (文献2) 日本視能矯正学会「片頭痛発症中に動的量的視野検査を施行し、一過性暗点を記録できた一例」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jorthoptic/46/0/46_046F106/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月12日) (文献3) 日本頭痛学会「片頭痛/片頭痛の治療」 https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_02.html(最終アクセス:2025年6月12日) (文献4) フレーミングハム研究「片頭痛の視覚的随伴症状は晩年では珍しくない」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9707189/(最終アクセス:2025年6月12日) (文献5) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会「頭痛の診療ガイドライン2021」 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/zutsu_2021.pdf(最終アクセス:2025年6月12日)
2025.06.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
閃輝暗点は視界の一部にキラキラ・ギザギザした光や模様があらわれ、徐々に拡大して視野の欠損を引き起こす症状です。 片頭痛の前兆としてよく知られる閃輝暗点ですが、必ずしも頭痛を伴うわけではありません。(文献1) 閃輝暗点を起こす有力な説としては後頭葉の血流低下が挙げられており、コーヒーの過剰摂取が発症リスクを高めるのではないかと考えられています。 閃輝暗点は眼科系疾患ではなく、脳の機能の一時的変化により引き起こされるため、発症すると脳の病気を心配する方もいるでしょう。 本記事では閃輝暗点とコーヒーの関係について解説するとともに、1日当たりの摂取目安を紹介します。閃輝暗点にお悩みのコーヒー好きの方は参考にしてください。 コーヒーが原因で閃輝暗点を引き起こすことがある コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させる作用があり、過剰摂取により閃輝暗点のリスクを高める可能性があります。 一方で、カフェインには抗酸化作用があり、血管機能の改善が見込めるためデメリットばかりではないのも事実です。 はじめに、コーヒーと閃輝暗点および血管機能との関係について詳しく解説します。 カフェインが脳血管収縮を助長することで起こる コーヒーが原因で閃輝暗点を起こす理由は、カフェインの過剰摂取により脳の血管収縮が助長されるためです。 コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させ、血液の循環を阻害する作用があります。 閃輝暗点は後頭葉に送られる血流量の減少により発症リスクが増加すると考えられており、カフェインの過剰な摂取は脳の血管を収縮させ、閃輝暗点のリスクを高める可能性があります。 カフェインは神経を鎮静させるアデノシンと似た構造を持つのも特徴です。 カフェインを過剰摂取すると、本来であればアデノシンが結合するはずの受容体にカフェインが結合し、神経の鎮静作用が阻害されます。(文献2) コーヒーを飲み過ぎると睡眠の質が低下すると言われるのは、カフェインの過剰摂取により神経が興奮状態に陥るためです。 睡眠不足も自律神経のバランスを乱して血管の収縮を起こすため、閃輝暗点の発症リスクを高める一因となります。(文献3) クロロゲン酸の抗酸化作用で血管機能の改善が見込める コーヒーにはカフェイン以外にも多くの成分が含まれていますが、なかでもクロロゲン酸には高い抗酸化作用があり、血管機能の改善が見込める点がメリットです。 クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、LDLコレステロールの酸化を抑制し、動脈硬化の予防に役立つことで知られています。 クロロゲン酸による血管機能の改善効果は、FMD値(血流依存性血管拡張反応)を調べることで明らかになります。 FMD値に関して462名の高血圧患者を対象に、コーヒー摂取量と血管機能についての評価が行われました。 その結果、コーヒーを摂取した群では非摂取群に比べ、FMD値に有意な増加が見られました。(文献4) カフェインの過剰摂取は血管収縮のリスクを高めますが、1日あたりコーヒー2杯(400ml)程度であれば、むしろ血管拡張作用が得られるとわかります。 閃輝暗点はコーヒー以外のカフェインにも起因する 閃輝暗点はコーヒーだけでなく、カフェインを含むその他の飲料にも起因するため注意が必要です。 カフェインが含まれる主な飲料および含有量の目安は以下のとおりです。(文献5) 飲料 カフェイン含有量(100mlあたり) コーヒー 60mg ほうじ茶 20mg ココア 14mg ウーロン茶 20mg 紅茶 30mg 抹茶 48mg コカ・コーラ 9.5mg エナジードリンク 32~300mg エナジードリンクのなかにはカフェイン含有量が多い商品もあるため、閃輝暗点を起こしやすい方は注意が必要です。(文献6) 眠気覚ましにエナジードリンクを気軽に飲む方もいますが、1本飲むだけでコーヒー2〜3杯分のカフェインを摂取するケースもあるため、何本も飲まないようにしましょう。 エナジードリンクの過剰摂取は閃輝暗点のリスクを高めるだけでなく、糖尿病の発症リスクも増加するため注意する必要があります。(文献7) コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるコツ コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるコツは以下の2つです。 1日に摂取するコーヒーは2杯(400ml)ほどに留める コーヒーの合間に水分を意識的に補給する それぞれについて解説します。 1日に摂取するコーヒーは2杯(400ml)ほどに留める コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるためには、1日の摂取量を400ml(カップ2杯分)程度にとどめるのがポイントです。 1日400ml程度のコーヒーであれば、クロロゲン酸の作用によりFMD値が増加し、血管機能の改善が見込めるとわかっています。 一方、カフェインの過剰摂取は心拍数や血圧を増加させ、心血管疾患のリスクを高めることも示唆されています。 ACCアジアで発表された研究では、1日に400ml以上のコーヒーの摂取が自律神経に重大な影響を与え、心拍数と血圧を徐々に増加させるとわかりました。(文献8) 適量のコーヒーは心身に良い影響をもたらしますが、過剰摂取は健康被害のリスクを高めると覚えておきましょう。 コーヒーの合間に水分を意識的に補給する コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるためには、水分を意識的に補給するよう意識しましょう。 コーヒーに含まれるカフェインは腎臓で行われる水分の吸収を妨げる作用があるため、摂取量が増えると排尿の回数が増加しがちです。(文献9) 排尿の回数が増えると血液中に含まれるカフェインの濃度が相対的に上昇するため、閃輝暗点のリスクを高めやすくなります。 コーヒーを常飲する方は合間に意識的に水分を補給し、血中カフェイン濃度が上がり過ぎないよう注意してください。 コーヒーの利尿作用に悩まされる方には、カフェインを取り除いたデカフェがおすすめです。 コーヒーの飲み方を改善しても閃輝暗点を繰り返すなら脳の病気の疑いあり 上記の対策を講じても閃輝暗点を繰り返す方は、脳の病気の疑いもあると覚えておいてください。 閃輝暗点は片頭痛の前兆としてよく知られていますが、脳梗塞などが原因で発現する例も見られるためです。 閃輝暗点の後に片頭痛の発作が見られない場合、脳梗塞や脳腫瘍、一過性脳虚血発作(TIA:transient ischemic attack)の疑いがあると考えられています。(文献10) 一過性脳虚血発作(TIA)を発症すると突然の言語障害や感覚障害など脳梗塞と似た症状があらわれますが、通常は24時間以内に消失します。しかし、症状が消失したからといって安心はできません。一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞に移行する可能性が高いため注意が必要です。 なお、閃輝暗点が脳梗塞の前兆である可能性は低いと考えられているため、過度に心配する必要はありません。 脳の病気が疑われる閃輝暗点が気になるなら早急に受診しましょう 脳の病気が疑われる閃輝暗点をたびたび繰り返す方は、早急に専門の医療機関を受診しましょう。 閃輝暗点の原因の一つである脳梗塞を発症すると、身体の片側のしびれや麻痺、ろれつが回らない、手にしたコップを取り落とすなどの症状があらわれます。 閃輝暗点だけでなく上記の症状が見られる方は、脳神経外科や脳神経内科、神経内科などを受診してください。 脳梗塞の発症から時間が経過するほど脳細胞が破壊され続けるため、一刻も早く専門医による治療を受けることが大切です。(文献11) まとめ|閃輝暗点が落ち着くようにコーヒーの飲み方を調整しよう 閃輝暗点を発症すると視界の一部にキラキラ・ギザギザした光や模様があらわれ、徐々に拡大して視野の欠損を引き起こします。 片頭痛の前兆としてよく知られる現象の一つですが、閃輝暗点の後に頭痛の発作が起きないケースでは、脳梗塞や脳腫瘍、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性も疑われます。 コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させる作用があるため、頻繁に閃輝暗点を起こす方は摂取量の調整が必要です。 健康な成人であれば1日に400mgのカフェインを摂取しても問題ないとされますが、妊婦や妊娠の可能性がある女性、授乳中の女性は300mgまでにとどめてください。 閃輝暗点の原因でもある脳梗塞の治療法として、近年になり再生医療への関心が高まっています。 リペアセルクリニックでは脳梗塞の後遺症治療・再発予防に再生医療(幹細胞治療)をご提案しております。ご質問やご相談がございましたら、気軽に無料カウンセリングまでお越しください。 (文献1) 徳島県医師会「閃輝暗点」 https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/1663-2018-11-22-00-41-33(最終アクセス:2025年6月18日) (文献2) 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html(最終アクセス:2025年6月18日) (文献3) 溜池山王伊藤眼科「急に視界の一部が見えない:閃輝暗点の原因・症状・対処法」 https://ts-itoeyeclinic.com/diary/scintillating_scotoma/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献4)血管 Vol47 No.2「高血圧患者におけるコーヒー摂取:血管機能に与える影響について」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcircres/47/2/47_1/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月18日) (文献5) 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html(最終アクセス:2025年6月18日) (文献6)ニューロテックメディカル「コーヒー摂取と閃輝暗点発症の関係性とは」 https://neurotech.jp/medical-information/coffee-intake-and-the-development-of-scintillating-scotoma/#1link(最終アクセス:2025年6月18日) (文献7)NHK「「エナジードリンク」 飲みすぎの危険性とは」 https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nhkjournal/iry20250319.html(最終アクセス:2025年6月18日) (文献8)AMERICAN COLLEGE of CARDIOLOGY「慢性的なカフェイン摂取は活動後の心拍数や血圧に影響を与え、CVDのリスクを高める」(英文による解説)」 https://www.acc.org/Latest-in-Cardiology/Articles/2024/08/14/16/39/Chronic-High-Caffeine-Consumption-Impacts-Heart-Rate-BP(最終アクセス:2025年6月18日) (文献9) ウィスパー「【医師監修】コーヒーと頻尿の関係」 https://www.whisper.jp/article-top/learn-urinary-incontinence/coffee/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献10) 横濱もえぎ野クリニック「閃輝暗点」 https://www.ymc3838.com/scintillating-scotoma/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献11) 名古屋徳洲会総合病院「脳梗塞」 https://www.nagoya.tokushukai.or.jp/wp/depts/neurosurgery-2/disease-3/cerebral-infarction(最終アクセス:2025年6月18日)
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パーキンソン病は進行性の疾患であり、完治しない病気として知られています。 しかし、遠くない未来、パーキンソン病が「完治する」時代がくるかもしれません。 近年の研究では、パーキンソン病の新たな治療法が模索されています。 iPS細胞を活用した研究や、再生医療による治療など、既存の治療とは異なったアプローチがなされています。 この記事では、パーキンソン病に対する先進医療や研究について紹介します。 パーキンソン病が治る時代は来るのか?治らないとされている理由 パーキンソン病が治らないとされている理由は、根本原因の解明が困難であるからだと言われています。 パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が減少することで発生します。 脳内の細胞の観察は極めて困難であるため、完治するための対策が立てられないのです。 現在は減少するドパミンを補うための薬物療法や手術療法が主流ですが、いずれも症状の緩和が目的です。 ドパミンの減少を止める治療法はいまだ見つかっていません。 パーキンソン病の根本治療を叶える先進医療の研究 パーキンソン病の治療法はさまざまな角度から研究がなされてきました。 その中でも注目を集めているのは、iPS細胞を活用した「再生医療」、L-ドパの効果を補うことが期待されている「遺伝子治療」です。 それぞれのどのような治療なのか解説します。 iPS細胞を用いた研究 パーキンソン病の根本治療を目指す研究の中で、とくに注目されているのがiPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用したアプローチです。 iPS細胞は、皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで作られる、あらゆる細胞に変化できる能力を持つ画期的な細胞です。 このiPS細胞を活用し、失われたドパミン神経細胞を体外で作り出して脳内に移植する治療法や、病気のメカニズムを詳しく解明する研究が活発に進められています。 iPS細胞を実際の治療に用いた事例 2025年4月、パーキンソン病の患者の脳にiPS細胞から作り出した細胞を移植する治療法を開発、研究している京都大学の研究チームが行った治験で、同治療の安全性と有効性が示されたという発表がありました。(文献1) この治験は50歳から69歳の男女7名の患者を対象に行われ、ヒトのiPS細胞から作ったドーパミンを作る神経細胞を脳に移植しました。 その結果、すべての患者で健康上の大きな問題は見られなかった上、治験患者のうち6名は移植した細胞からドーパミンが作り出されていることが確認されています。(文献1) iPS細胞を用いたパーキンソン病の病態研究 順天堂大学医学部ゲノム・再生医療センターでは、パーキンソン病患者のドパミン神経細胞からiPS細胞を作製し、その細胞をもとにさまざまな研究を進めています。 iPS細胞を用いることで、原因解明が困難であるとされていた発症のメカニズムの研究や、iPS細胞を用いた薬の効果の検証などを効率的に行うことが可能となりました。 今後パーキンソン病の根本治療法が見つかる可能性もあります。(文献2) 遺伝子治療 パーキンソン病の遺伝子治療とは、特定の遺伝子を脳に注入することで症状の改善を目指す治療法です。(文献3) パーキンソン病の原因であるドパミン減少を補うため、ドパミンを生成する効果のある酵素を脳に送り込み、L-ドパの効果を助ける役割を担います。 L-ドパとは、脳内でドパミンに変換され、パーキンソン病の症状を緩和する代表的な治療薬です。 遺伝子治療によってL-ドパから効率よくドパミンが生成されるようになり、症状が改善することが期待されています。 現状治験段階であるため、実際の治療として確立されるまではまだ時間がかかる治療だといえます。 パーキンソン病を改善するために「今」できること この記事で紹介した先進医療が実際に治療法として浸透するまでにはまだ時間はかかります。 現在できるパーキンソン病の改善策としては、減少したドパミン神経細胞を補う薬物療法や、手術療法が有効です。 そのほか、適度な運動や栄養バランスの取れた食事、十分な水分補給といった生活習慣の見直しも効果が見込めます。 とくに運動は身体の筋肉の動かしづらさを改善するだけでなく、うつや不安症状を改善する精神ケアの役割も担っています。医師と相談のもと、無理のない範囲で生活に取り入れてみましょう。 パーキンソン病が治る時代は近い?治療の可能性について 現在研究は進んでいるものの、これらの研究が実際の治療に用いられるまでは長い年月が必要です。 一般的には治験を進めて結果が出るまで数年以上かかる場合もありますし、その後医療の現場に浸透してすべての患者に治療が広まるのがいつになるのかはまだわかりません。 その一方、京都大学の研究チームによって行われたiPS細胞を用いた治療は、実際に患者の症状も緩和され、調査の結果安全性、有効性が証明されたと発表されています。 今後新たな治療として、導入される未来も遠くないかもしれません。 症状緩和に期待される再生医療の可能性 https://www.youtube.com/watch?v=2oF89MxTXnY パーキンソン病の完治は現在も困難とされていますが、症状の改善や進行抑制を目指す再生医療技術が着実に進歩しています。 iPS細胞を用いた治療や遺伝子治療といった先進的なアプローチは、根本的な問題に対処する可能性を秘めています。 これらの再生医療技術は、失われた神経細胞の機能を回復させることで、患者の生活の質を大きく向上させることが期待されています。 完治には至らなくても、症状の進行を遅らせ、日常生活をより快適に送れるようになる未来が見えてきました。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 まとめ|パーキンソン病は「治らない病気」から「治る可能性のある病気」へ変化している パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であるため、完治はできないと言われています。 しかし、近年、根本治療に向けた先進医療の研究が進み、今までとは異なった新たな治療法が模索されています。 注目されているのはiPS細胞による再生医療と遺伝子治療です。とくにiPS細胞を用いた脳内移植の治験では、安全性と有効性が確認されており、今後の実用化が期待されています。 遺伝子治療もL-ドパの効果を高める方法として注目されており、今後の研究が待たれます。 しかし、新たな治療が確立されるのがいつになるのかは不透明です。現在パーキンソン病を患っている人は、薬物療法や運動、食事療法の中で症状の緩和に努めましょう。 治療の実現までは時間がかかるものの、遠くない未来にパーキンソン病は「治る病気」になるかもしれません。 参考文献 (文献1) NHK「iPS細胞を用いたパーキンソン病治療 治験で“有効性” 京都大」NHKニュースウェブ 2025年4月17日 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250417/k10014781301000.html(最終アクセス:2025年6月26日) (文献2) 順天堂大学「iPS細胞を用いた再生医療の実現に向けた研究を推進」Juntendo Research 2024年5月20日 https://www.juntendo.ac.jp/branding/report/genome/(最終アクセス:2025年6月26日) (文献3) 厚生労働省「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」2019年(2023年一部改訂) https://www.mhlw.go.jp/content/001077219.pdf(最終アクセス:2025年6月24日)
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