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人工膝関節置換術後にやってはいけないこと|生活上の注意点とは?

「人工膝関節置換術を受けるので、やってはいけないことを把握しておきたい」 「手術後の生活でどんなことに気をつければいい?」
このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか?
人工膝関節置換術を受けると、膝の動きが改善し、痛みが和らぐ可能性があります。
しかし、手術後の生活では、膝に負担をかける動作を避けなければなりません。
誤った行動を続けると、痛みが再発したり、人工関節が破損したりするリスクがあるためです。
本記事では、人工膝関節手術後にやってはいけないことを詳しく解説します。生活の中で避けるべき動作や注意点も紹介するので、参考にしてみてください。
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監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。
人工膝関節置換術とは|人工の関節を置き換える手術
人工膝関節置換術は、変形性膝関節症や関節リウマチなどで膝の関節が損傷し、痛みや可動域の制限が生じた際におこなわれる手術です。
この手術には、膝全体を人工関節に入れ替える「全置換術」と、損傷した部分のみを人工関節に交換する「部分置換術」の2種類があります。どちらを選択するかは、膝の損傷の程度や患者様の状態によって異なります。
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人工膝関節置換術後にやってはいけないこと5選
人工膝関節置換術後、膝に負担がかかることをすると膝の痛みが再発したり、人工関節の耐久性に影響を与えたりする可能性があります。
長期的に膝の健康を守るためにも、人工膝関節置換術後にやってはいけないことを覚えておきましょう。
- リハビリを怠る
- 膝に負担がかかる姿勢をとる
- 膝に負担がかかる運動をする
- 膝に負担がかかる環境を放置する
- 体重が増える生活を送る
それぞれ詳しく解説します。
リハビリを怠る
手術後のリハビリは、継続を怠ってはいけません。
リハビリを中断すると、膝関節の可動域の制限や筋肉の衰えにより、日常生活における動作に困難が生じる恐れがあります。そのため、継続的なリハビリテーションが不可欠です。
人工膝関節置換術後のリハビリでは、以下のような膝周辺の筋力を鍛える運動や、関節をスムーズに動かすための訓練を中心におこないます。
- 筋力増強訓練
- 関節可動域訓練
- 持久力向上運動
- 立ち上がり動作訓練
- 歩行訓練・階段昇降訓練
継続的なリハビリが、膝の機能回復を大きく左右します。
膝に負担がかかる姿勢をとる
無理な姿勢を続けると、関節に余計な負担がかかり、痛みの再発や人工関節が破損するリスクがあります。
そのため、手術後は膝に負担がかかる姿勢をできるだけ避けてください。
とくに以下の姿勢は、膝に負担がかかりやすいため注意が必要です。
- 正座
- あぐら
- 長時間の立ち仕事
- 長時間のしゃがみ込み
手術後の回復をスムーズにするためにも、膝に負担の少ない姿勢を心がけましょう。
膝に負担がかかる運動をする
手術後に膝へ大きな負担がかかる運動をすると、人工関節の緩みや破損の原因になります。
以下は膝に負担がかかりやすい運動の一例です。
- スキー
- サッカー
- ダッシュ
- バスケットボール
- 坂道を上る自転車運動
膝関節に強い衝撃やねじれの力が加わる運動は、人工関節に強い負担をかけます。
スポーツを続けたい場合は、医師やリハビリ担当者と相談しながら、適切なトレーニング開始時期やメニューを決めましょう。
一方で、膝への負担が少ない散歩や水泳などは、問題ありません。適切な運動は膝の機能回復に役立ちます。
膝に負担がかかる環境を放置する
自宅が膝に負担がかかりやすい環境の場合は、放置すると人工関節の緩みや破損につながります。
生活する環境を見直し、膝への負担を軽減しましょう。
以下に、日常生活で改善できるポイントをまとめました。
変更内容 |
改善の効果 |
---|---|
和式トイレから洋式トイレに変える |
膝を深く曲げる動作を減らし、関節への負担が軽減される |
階段に手すりを設置する |
階段の上り下りによる膝の負担が軽減される |
寝具を布団からベッドに変える |
起き上がる際の膝の負担が軽減される |
足にフィットする靴を新調する |
膝の安定性を高め、膝関節への負担が軽減される |
膝の負担を軽減する環境を整えれば、手術後の回復がスムーズになります。
体重が増える生活を送る
体重が増えると、膝への負担が大きくなり、人工関節の寿命が短くなる可能性があります。
人工関節を長持ちさせるためにも、手術後は、栄養バランスのとれた食事と軽い有酸素運動を取り入れて健康的な体重を維持しましょう。
散歩や水中ウォーキングなどの膝への負担が少ない運動を継続することで、無理なく体重をコントロールしやすくなります。
人工膝関節手術後の生活における3つの注意点
ここからは、人工膝関節手術後の生活における注意点を紹介します。
- 合併症を発症するリスクがある
- 手術後に人工膝関節が緩むケースがある
- 思うような改善が見られない可能性もある
手術後の経過を良好に保つためにも、事前にリスクを理解しておきましょう。
合併症を発症するリスクがある
手術後は、体が出血を防ぐために血を固まりやすくする働きをします。
また、手術中や手術後に足を動かせない状態が続くと、血液の流れが悪くなり、「血栓(けっせん)」と呼ばれる血のかたまりができやすくなります。
この血栓が血流に乗って肺の血管に詰まると「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」という合併症を引き起こす可能性があるのです。
このリスクを防ぐために、手術前には血流の状態を検査し、手術中や手術後には血栓予防のストッキングや空気ポンプの使用が推奨されます。さらに、必要に応じて血栓を防ぐ薬を服用する場合もあります。
なお、人工膝関節の全置換手術を受けた後、下半身が腫れる症状は避けられません。
この腫れが長引くと、体の回復や動きに影響を与える可能性があります。そのため、手術後は足先をこまめに動かすリハビリが大切です。
関連記事: 人工関節手術で知っておくべき安全性と危険性
手術後に人工膝関節が緩むケースがある
人工膝関節が緩む主な原因は、体重の増加による関節への負担です。
とくに、肥満の状態が続くと、人工関節に過剰な負担がかかり、摩耗や緩みを引き起こす可能性があります。
また、肥満が原因でなくても、スポーツや激しい動作を繰り返すことで、人工関節が摩耗し、耐久性が低下する場合があります。
退院後は、定期的に医師の診察を受けましょう。レントゲン検査や血液検査をして、人工関節の異常や緩みの有無を確認しながら、適切な管理を続けることが大切です。
思うような改善が見られない可能性もある
人工膝関節手術は、必ずしも思い通りの改善が見られるわけではありません。
たとえば、手術後も痛みが残るケースがあります。これは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる症状です。
また、膝の腫れやこわばりが原因で、思うように曲げられない状態になる場合もあります。
こうした症状は、多くの場合、時間の経過とともに改善します。
リハビリを取り入れれば、早い回復を期待できるため、無理のない範囲で膝を動かし、少しずつ改善を目指してください。
関連記事: 人工関節置換術後の痛みが取れない原因は?対処法などを現役医師が解説
膝関節疾患の治療には「再生医療」の選択肢もある
膝の痛みを和らげる治療には「再生医療」の選択肢もあります。
変形性膝関節症や半月板の損傷などに対し、手術をせずに改善を目指せる治療法の1つです。
再生医療における幹細胞治療は、体内の幹細胞(組織を修復する働きを持つ細胞)を利用し、傷んだ膝の組織を再生へ導く治療です。
注射による治療のため体への負担が少なく、人工関節手術を避けられる可能性があります。
当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療の一環として「関節内ピンポイント注射」を採用しています。
この方法では、エコーやレントゲンを用いて膝の傷んだ部分を詳しく確認し、特殊な針を使って幹細胞を直接注入します。患部に的確に届くよう調整できるのが特徴です。
当院では無料のメール相談を承っております。再生医療の詳しい内容については、お気軽にお問い合わせください。
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まとめ|人工膝関節置換術後のやってはいけないことを守って早期回復を目指そう
人工関節を長持ちさせ、痛みの少ない生活を維持するためには、膝への負担を最小限に抑える意識が大切です。
適度な運動や生活習慣の見直しを心がけ、早期回復と健康維持を目指しましょう。
「できるだけ身体に負担の少ない治療を進めたい…」という方に、選択肢の1つとして考えてほしいのが「再生医療」という新しい治療法です。
再生医療は、手術や入院を必要としません。体への負担が少ないのが特徴です。
詳しい治療法や効果が気になる方は、再生医療を専門とする当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。

膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。