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【医師監修】人工関節とは|メリット・デメリットや置換術について詳しく解説
病院で人工関節の手術を勧められて、不安や迷いを感じている方も多いのではないでしょうか。
人工関節置換術は、進行した関節の変形や軟骨のすり減りに対して有効な治療の一つとされています。
一方で、手術という大きな選択を前に「本当に自分に必要なのか」「術後の生活はどうなるのか」と考える方も少なくありません。
この記事では、人工関節の仕組みやメリット・デメリット、手術後に注意すべき点などを解説します。
手術を受けるか迷っている方や、他の選択肢も検討したい方は、最後までご覧ください。
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目次
人工関節とは
人工関節とは、関節のすり減った部分を補うために使用される人工のパーツのことです。
金属やセラミック、ポリエチレンなどの素材でできており、股関節や膝関節のように体重を支える部位で使われるケースが多くみられます。(文献1)
損傷した関節面の一部または全部を人工関節に置き換える手術が「人工関節置換術」です。
ここでは、人工関節の役割と仕組み、人工関節置換術を受ける人の特徴について解説します。
今できることから段階を追って、検討することが重要です。
人工関節の役割と仕組み
人工関節は、損傷した関節の代わりに骨の端同士がスムーズに動くための「接合部」の役割を担うものです。
関節の摩耗によって軟骨がすり減ると、骨同士が直接ぶつかり、痛みがあらわれたり動作の制限が起こったりします。
人工関節は、この痛みの原因を取り除き、動きを滑らかにするために使われます。
とくに多く使用される股関節および膝関節の人工関節の仕組みは、以下のとおりです。(文献2)(文献3)(文献4)(文献5)
|
関節部位 |
置き換える部位 |
仕組み |
|---|---|---|
|
股関節 |
・大腿骨の骨頭 ・骨盤の臼蓋 |
大腿骨側に付けたボール状の部品が、骨盤側に付けたカップ状の部品内でなめらかに回転し、自然な動きを再現する |
|
膝関節 |
・大腿骨と脛骨の接合面 ・必要に応じて膝蓋骨(しつがいこつ:膝の皿) |
大腿骨側の部品が脛骨側の部品の上を転がるように滑らかに動くことで、スムーズな屈伸運動を再現する |
関節の状態に応じて、一部だけを置き換える「部分置換」や、関節全体を置き換える「全置換」などの種類が選ばれます。
これらの手術によって、関節の痛みを和らげて可動域を改善し、歩行や階段昇降といった日常動作の質を高めることが期待できます。
人工関節を置換する主な部位
人工関節置換術は、関節の痛みや変形が進行し、薬やリハビリテーションでの改善が難しい場合に実施されます。
主な置換部位は、次のとおりです。(文献1)
- 股関節
- 膝関節
- 肩関節
- 肘関節
- 足関節(足首)
- 手指関節
これらの部位を人工関節に置き換えることで、痛みの軽減や機能の回復を目指します。
人工関節を置換するメリット
人工関節の手術によって得られる主なメリットは、以下のとおりです。(文献6)
- 外出や趣味など、生活の幅が広がる
- 痛みのストレスから解放され、精神的な負担も減る
- 歩く・立ち上がる・階段を上るなどの基本動作がスムーズになる
長年痛みとともに過ごしてきた方にとっては、生活の質(QOL)を改善できるきっかけとなるでしょう。
人工関節を置換するデメリット
人工関節は、変形性関節症や大腿骨頭壊死症などに有効な治療法ですが、人工物であることから以下のような注意点とリスクがあります。(文献6)
- 寿命があるため、再手術の可能性がある
- 転倒や強い衝撃などで破損するリスクもゼロではない
- 感染症や血栓症などの合併症リスクがある
- 脱臼や早期の摩耗を防ぐため手術部位によって動きが制限されることがある
手術を受ける際は、これらのデメリットもしっかり理解した上で検討しましょう。
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変形性股関節症|人工関節手術のデメリット・リスクと治療の代替案を紹介
人工関節置換術を受ける人の特徴
人工関節置換術は、以下のような状態の方に検討されることが多い手術です。(文献1)(文献7)
- 長年の関節の痛みで、歩く、立つなどの日常生活が困難になっている
- 薬やリハビリなどの保存療法では効果が出なくなった
- 関節の変形や骨の摩耗が進んでいる
- 医師から「関節の形や仕組みに根本的な異常がある」といわれた
膝関節を例にあげると、変形や軟骨のすり減りが進んだ変形性膝関節症や関節リウマチが、この手術の主な対象となります。
【関連記事】
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人工関節置換術にかかる手術費用
人工関節置換術にかかる費用は合併症の有無や入院期間によって異なり、一般的には保険適用前で200万円前後かかるとされています。
しかし、日本では公的医療保険制度が適用されるため、自己負担額は総額の1割〜3割です。
高額療養費制度や更正医療を活用すると、さらに負担額は減り、結果的に数万円〜数十万円におさえられるでしょう。(文献8)(文献9)
人工関節置換術における入院期間の目安
入院期間は、一般的に2〜3週間ほどといわれています。
手術直後からリハビリテーションが開始となり、痛みが管理されれば、座ったり立ち上がったりする訓練が始まります。
入院中に杖を使った歩行や階段昇降の練習をおこない、自宅での生活に慣れることが目標です。
手術後の経過やリハビリテーションの進行、自宅生活の準備が順調であれば退院となります。
人工関節置換術後にやってはいけないこと
人工関節の手術を受けたあとは、生活状態によって置換部位の脱臼や人工関節の破損が起きやすくなります。
人工関節を長持ちさせるには、関節に負担をかける以下の動作は避けるようにしましょう。(文献10)
|
置換した部位 |
避けるべきこと |
|---|---|
|
股関節 |
・重いものをもつ ・深くしゃがむ、正座をする ・内股の姿勢やあぐらをかく ・急に体をひねる ・ハードな運動やスポーツをする |
|
膝関節 |
・リハビリテーションを自己中断する ・不摂生な生活で体重を増やす ・正座の姿勢をとる ・ジャンプやランニングなどの激しい運動をする ・膝に負担の大きい生活環境を放置する |
手術後は医師や理学療法士の指導に沿って、少しずつ体を慣らすことが大切です。
【関連記事】
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人工膝関節置換術後にやってはいけないこと|生活上の注意点とは?
人工関節置換術以外の治療法
人工関節の手術は有効ですが、症状や年齢、生活環境によっては他の治療法も選択できます。
主な治療法をまとめると、次のとおりです。(文献7)(文献11)(文献12)
|
治療法 |
治療内容 |
|---|---|
|
保存療法 |
痛み止めやヒアルロン酸注射、運動療法、生活指導など |
|
関節鏡手術 |
小さなカメラで関節内部を確認し、損傷部分を処置する手術 |
|
幹細胞治療 |
体の機能を修復する役割がある幹細胞を利用した治療(自由診療) |
これまでは、保存療法で十分な効果が得られなかった場合に、関節鏡手術や人工関節置換術が選択されるのが一般的な流れでした。
しかし最近では、保存療法と手術の間に位置する新たな治療として、再生医療が選択肢にあがることも少なくありません。
なかでも幹細胞を用いた治療は、他の細胞に変化する「分化能」を利用した治療法で、手術以外の方法を希望する方に検討されています。
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【関連記事】
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変形性膝関節症の再生治療(PRP療法)の体験談|効果・費用も紹介
人工関節の手術を検討する前に知識をつけておこう
人工関節は、股関節や膝関節などの損傷を補い、痛みを和らげて日常生活を取り戻す治療法です。
一方で、部品に寿命があるため再手術が必要になる可能性や、動作の制限、感染などのリスクもあります。費用や入院期間も無視できない要素です。
手術以外にも、保存療法や再生医療などの選択肢を理解しておくことで、自分に合った治療法を検討しやすくなります。
人工股関節置換術を選択せず、再生医療による治療を受けた症例については、以下の記事をご覧ください。
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人工関節に関するよくある質問
人工関節の手術後はすぐに歩けるようになりますか?
膝や股関節の人工関節置換術の場合、杖を使用して歩けるようになるまでの期間は数日〜10日ほどです。(文献13)
手術後の状態によりますが、手術翌日からベッドの端に座る、平行棒や歩行器などの補助具を使用して歩く、杖で歩くと、段階的にリハビリテーションを進めるのが一般的です。
ただし、手術前に強い痛みによって運動が制限されていた方では筋力低下が進んでいる可能性があり、回復に時間を要するケースもあります。
人工関節を入れたら障害者手帳交付の対象になりますか?
人工関節を入れたからといって、必ず障害者手帳が交付されるわけではありません。(文献14)
以前は人工関節置換術を受けるだけで一律の等級を認定されましたが、平成26年の改正によって手術後の関節機能で判断されるようになりました。(文献14)
そのため、手術後に関節の痛みや動きが明らかに改善した場合には、交付の対象とならないこともあります。
人工関節の寿命はどのくらいですか?
人工関節の技術が進歩して、パーツの寿命は延びています。
入れ替え手術が必要になる方の割合については、以下の報告があります。(文献15)
|
置換部位 |
入れ替え手術が必要な方の割合 |
|---|---|
|
股関節 |
・術後20年:6人に1人ほど ・術後30年:4人に1人ほど |
|
膝関節 |
・術後20年:6人に1人ほど |
年齢や体重、日常の活動量によって変わるため、若い方や活動量が多い方では摩耗が早まる傾向です。
関節に負担をかけない生活習慣や定期的な受診を続け、再手術のリスクを下げましょう。
参考文献
新・股関節がよくわかる本Web版|公益財団法人股関節研究振興財団
人工関節②人工関節手術のメリット・デメリット|日赤和歌山情報局 Hot(ほっと)
関節鏡・脊椎内視鏡ってご存知ですか?|川崎医科大学 総合医療センター

















