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【前十字靭帯断裂】スポーツ復帰の目安は?手術しないリスクなど現役医師が解説!
「前十字靭帯が断裂した場合、スポーツ復帰はいつ頃なのか」
「そもそも復帰できるのかが心配」と考えている方もいるでしょう。
前十字靭帯断裂が軽度であっても、放置すると他の症状が発症するリスクがあります。
本記事では前十字靭帯断裂の再建術後、スポーツ復帰できる目安や、手術しないリスクなどを解説します。
治療法や前十字靭帯断裂が起きたままスポーツをするリスクなども解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
【再建術後】前十字靭帯断裂のスポーツ復帰は半年〜1年が目安
前十字靭帯断裂の再建術後、スポーツ復帰できる目安は半年から1年です。
1週間程度(最短4日)の入院期間中は車いす生活で、退院後は松葉杖となり、きちんとリハビリを継続していれば1カ月で日常生活が可能です。
中には、最短3カ月で歩けるまで回復した患者様もいます。
国立医学図書館に掲載された情報によると、前十字靭帯断裂の再建術後、スポーツ復帰にかかる期間は「6カ月」と記載されています。
なお、研究結果によると再建術後、33〜92%もの方が1年でスポーツ復帰できたという結果もあるのです。
損傷の程度には個人差があるため、スポーツ復帰までの期間だけでなく「そもそも復帰できるのか」も変動すると把握しておきましょう。
前十字靭帯断裂の程度によって異なるスポーツ復帰できるまでの期間が気になる方は、以下のページから気軽にお問い合わせください。
そもそも前十字靭帯とは
靭帯とは、コラーゲンや弾性線維でできている多少伸び縮み可能なひも状のような部位です。
関節で骨同士をつないで、過剰に骨が離れるのを防いで関節の安定性を保っています。
膝の関節は太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの内側にある脛骨(けいこつ)、膝のお皿とよく呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)の3つから成り立っています。
大腿骨と脛骨をつないでいる靱帯は、以下の4つです。
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内側と外側側副靱帯は、膝関節の左右にあり、膝が左右にずれすぎないようにする役目をしています。
前と後十字靭帯は、大腿骨と脛骨の間で交差していて、前十字靭帯は脛骨が前に出すぎないようにしています。
前十字靭帯断裂の損傷分類
前十字靭帯の傷害を「前十字靭帯 損傷」と言います。
前十字靭帯損傷は程度によって1度から3度までに分類され、数字が大きいほど損傷の強さを表しています。
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前十字靭帯は切れておらず、軽い痛みと腫れのみ。膝の不安定さはない。 |
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前十字靭帯は部分的に断裂し、膝には不安定さが現れる。 |
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前十字靭帯が完全に断裂している。内出血も起きる。膝には不安定さがある。 |
上記のうち「前十字靭帯 断裂」は2度と3度が該当しているのです。
前十字靭帯断裂が起きる原因
前十字靭帯断裂は、強い力で脛骨だけが前に押し出されたり、膝を過剰にひねると、前十字靭帯の限界を超えるため靱帯断裂が起こります。
損傷の原因にも、大きく分けて接触型と非接触型の2種類があり、それぞれの違いは以下の通りです。
損傷の原因 |
概要 |
接触型 |
膝に強い衝撃が加わり、靭帯が切れて発症する |
非接触型 |
ジャンプの着地や方向転換で、膝を捻る動作で発症する |
上記以外にも、サッカーやバスケットボール、バレーボールなどのスポーツをする方も発症しやすいため注意が必要です。
前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯が断裂した瞬間は膝の中で紐がちぎれたような感覚になる症状があります。
- 膝が腫れたり熱を持ったりする
- 膝がぐらぐらして不安定になる
- 歩行時に膝がガクッと崩れる感覚になる
- 膝に力が入らなくなる
- 膝が伸びなかったり曲がらなかったりする(可動域が制限)
前十字靭帯が断裂すると、上記のような症状も見られます。
しばらく放置すると痛みと腫れは引いてきますが、靱帯は勝手に治ることは少なく、膝の不安定さが残ります。
そのまま生活していると、膝関節の中にある半月板や軟骨も傷み、変形性膝関節症も発症するので注意しましょう。
以下の記事では、前十字靭帯断裂が軽度な方に向け、受診の目安や治療法を解説しました。
「軽度でも手術が必要なの?」と気になる方は、ぜひ参考にしてください。
前十字靭帯断裂の検査方法
前十字靭帯断裂が起きているか検査したい場合、MRI検査がおすすめです。
従来では関節鏡で前十字靭帯断裂を起こしているか確認していましたが、近年はMRI検査の技術が進歩しているため、ある程度は検査可能です。
また、膝の不安定さや力が加わるとどう痛みが出るか、触って確認するなど検査も行います。
当院でも検査を受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
前十字靭帯の治療方法
前十字靭帯が断裂すると、自然に修復されません。
将来スポーツを行う可能性がある場合には、靱帯を再建する手術療法、将来的にスポーツなどをしない方であれば運動療法を行うのが一般的です。
それぞれの治療法について、詳しく解説していきます。
1.自家腱移植
「自家腱移植」は、自分の組織を用いて再建する方法です。
膝の内側にある腱(ハムストリング腱)や、前面の腱(膝蓋骨を割った骨付きの膝蓋腱)を使います。
手術は関節鏡を用いて、小さな切開を行います。
大腿骨と脛骨をつなぐトンネルをつくり、加工した腱を通して上下を金具で固定する手術です。
最低限の切開で、早くリハビリを始められる点からスポーツ選手がよく採用しています。
2.保護的早期運動療法
将来的にスポーツなどをしない方であれば、前十字靭帯専用の装具を装着して、リハビリをする治療を選択する場合もあります。
保存的治療ではいずれは日常生活やレクリエーションレベルの動作は可能ですが、競技スポーツへの復帰は困難とされています。
また前十字靭帯損傷後に手術を行わなかった場合、約6割の患者が変形性膝関節症になる報告がされているため注意しましょう。
治療を選択する際、きちんと損傷の程度を理解し、術後の生活やスポーツへの影響を考えて決める必要があるでしょう。
まとめ・前十字靭帯断裂をしてスポーツ復帰を早めたいなら適切なリハビリを!
前十字靭帯断裂は、膝の中の靭帯が切れた状態です。
とくにスポーツをしているときに多く発生する外傷です。
受傷直後は傷みや膝の腫れがありますが、時間が経てばその症状は軽くなります。
ただし、何も治療をしないと膝が不安定なままになったり、将来「変形性膝関節症」を発症する可能性もあります。
前十字靭帯断裂の可能性がある場合は、早期に整形外科を受診するのが重要です。
以下の記事では、前十字靭帯断裂が治るまでの期間について解説しました。
ぜひ、あわせてご覧ください。
前十字靭帯断裂のスポーツ復帰に関するよくある質問
ここからは、前十字靭帯断裂で1日でも早くスポーツ復帰したいと考える方に向け、よくある質問を取り上げます。
- 前十字靭帯断裂の手術をしないとどうなるの?
- 前十字靭帯断裂したままスポーツするリスクは?
- 前十字靭帯断裂の手術をしないで済むリハビリ方法はあるの?
それぞれ回答しながら回答していくので、ぜひ参考にしてください。
前十字靭帯断裂の手術をしないとどうなるの?
前十字靭帯断裂で手術せず放置すると、変形性膝関節症が発症するリスクがあげられます。
軽度の場合、安静にしていると痛みや腫れが軽減される症例もあるため、いつも通りの日常生活に戻ってしまう方もいるでしょう。
しかし前十字靭帯断裂は自然回復する可能性が低く、慢性的な痛みや腫れが起きてしまいます。
そもそも前十字靭帯断裂は、靭帯が切れている状態なため、スポーツ復帰後に再断裂する可能性もあります。
スポーツ復帰するためにも、適切な手術を受けるのがおすすめです。
前十字靭帯断裂したままスポーツするリスクは?
前十字靭帯断裂したままスポーツすると、半月板損傷が起きるリスクを高めてしまいます。
膝のクッションが断裂し、軟骨に傷をつけてしまうため、ギプスをつけても自然回復が難しくなってしまうのです。
慢性的な症状が発症しないよう、早期の発見と治療を検討しましょう。
前十字靭帯断裂の手術をしないで済むリハビリ方法はあるの?
前十字靭帯断裂の手術をせず放置すると、変形性膝関節症や半月板損傷のリスクがあり、手術以外でスポーツ復帰は難しいと言えます。
しかし、中には競技を控えている方がテーピングで応急処置している方もいるでしょう。
前十字靭帯が完全に断裂している場合、手術以外で再生する可能性は限りなく低いため、適切な手術とリハビリが重要です。
「手術は傷が残るから……」と気になる方は、再生医療がおすすめです。
再生医療を用いれば、注射のみになるため、入院が不要になります。
前十字靭帯断裂の手術をしようと決断された方は、再生医療も1つの選択肢にあげてみてはいかがでしょうか。