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胸椎椎間板ヘルニアで背中や胸が痛み始めた方へ!症例や予防策を医師が解説!
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「背中が痛い」「胸が痛む」などの症状でお悩みの場合、実は「胸椎椎間板ヘルニア(きょうついついかんばん)」の可能性があるのはご存知でしょうか。
胸椎椎間板ヘルニアは、老化が原因の1つだと考えられています。
他の椎間板ヘルニアと比べて発症する確率は少ない珍しい疾患ではあります。
しかし痛みを放置すると「足が動かない」「尿や便が出なくなる」など、重大な問題が発生する疾患でもあります。
本記事では、胸椎椎間板ヘルニアとは、どのような疾患なのか、予防策や治療法などを解説します。
背中や胸の痛みが気になる方、最近になって足に力が入らない、しびれがあるなどで歩きにくさを感じている方はぜひ参考にしてください。
目次
胸椎椎間板ヘルニアとは
胸椎椎間板ヘルニアとは、老化や強い衝撃を受けて脊椎の胸部にある椎間板が飛び出た状態を指した症状です。椎間板とは、脊椎と脊椎の間にあるクッションのような組織であり、飛び出ると周囲の神経や脊髄を圧迫して脱力感やしびれなどの症状が出ます。
胸椎椎間板ヘルニアが発症する年齢は40~50歳、かつ男性が多い傾向にあります。
胸椎椎間板ヘルニアは「椎間板ヘルニア」の中でも起こりにくい疾患です。
胸椎は肋骨とつながっており安定しているため、椎間板ヘルニアになりにくいと考えられています。
痛みの原因
胸椎椎間板ヘルニアで痛みを感じる原因は、以下の要因が考えられます。
- 老化
- 過度なスポーツ
- 肉体労働
- 長時間の運転 など
どれも姿勢の悪さや背中の筋肉、背骨に問題が生じると胸椎椎間板ヘルニアが発症します。
そもそも胸椎とは「胸」とあるので胸部をイメージする方が多いのですが、実は背骨の一部分が胸椎です。
背骨は首から腰まで合計24個あり、胸部分にある8本の骨が胸椎です。
多くの患者様が外傷は見られないため、背中を押すと痛みを感じたり、太ももやふくらはぎが痛み出したりします。
痛みを放置すると歩行障害や重症化の恐れがあるため、早期の発見と治療が大切です。
「胸椎の痛みかわからないけれど、これって胸椎椎間板ヘルニアなの?」と少しでも気になる点がある方は、当院へ気軽にご連絡ください。
診断方法
胸椎椎間板ヘルニアを診断するにはMRI検査が有効です。
レントゲン検査ではとくに異常が目立たなくても、MRI検査を行えば椎間板ヘルニアの有無や脊髄の圧迫具合などが確認できます。
また、手術を行う場合には、CT検査などを行うケースもあります。
症状を具体的に把握し、適切な診断を受けるためにも、まずはMRI検査を行うのがおすすめです。
以下の記事では、現役医師の立場からMRI検査が必要な理由をまとめているので、あわせてご覧ください。
胸椎椎間板ヘルニアの予防策や治療法
ここからは胸椎椎間板ヘルニアで感じる痛みを避けたい方に向け、予防策を解説します。
胸椎椎間板ヘルニアの進行度によって異なる治療法についても紹介していきます。
安静にしておくのが無難
胸椎椎間板ヘルニアを予防するために、痛みを感じてもストレッチせず安静にしておくのが無難です。
自宅でできる予防法はなく、自己判断でストレッチを実施すると、炎症の悪化や骨折するリスクが高まるからです。
胸椎に痛みがあり、整骨院で施術をしたいと考える方もいるかも知れません。
しかし胸椎椎間板ヘルニアは、進行度によって治療法が異なるため、MRI検査で適切な診断を行う必要があるのです。
歩行障害が進行している場合、手術せず放置すると歩けなくなる事態まで発展する恐れがあります。
適切な診断が終わるまでは、自己判断で胸椎の痛みを改善しようとせず、安静にしておきましょう。
予防におすすめのストレッチ法
現役医師の立場から胸椎椎間板ヘルニアの予防が期待できるストレッチを紹介します。
今回は横になった状態でできるストレッチをお伝えします。
胸椎椎間板ヘルニアに罹患していると猫背になりやすいので、以下のストレッチを実施してみてください。
- 左側が下になるよう両膝を抱える(背筋を伸びているかを意識する)
- 両肘を胸の前でまっすぐ伸ばし両手を合わせる
- 右手で頭上を通りながら半円を描くイメージで動かす
- 3の動きに合わせて頭も動かす
- 水平に後ろまで動かした手の動きを5回繰り返す
- 反対側(左側)も同様の動きを5回繰り返す
胸椎椎間板ヘルニアの痛みを悪化させないためにも、痛みがない程度にゆっくりストレッチを行いましょう。
以下の記事では、今回紹介したストレッチ以外の予防策をまとめています。
胸椎椎間板ヘルニアの治し方や、より詳しいストレッチ法が気になる方は、ぜひご一読ください。
胸椎椎間板ヘルニアの治療法
胸椎椎間板ヘルニアの治療法は、大きく分けると「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。
進行度によって異なる治療法の違いは、以下の通りです。
症状の程度 |
治療内容 |
|
保存療法 |
比較的軽度 膝の筋肉低下や排尿障害がない場合適用 |
コルセットや内服薬 |
手術療法 |
痛みが進行している 歩行障害やしびれがある場合適用 |
背骨の一部を除去 |
以下の記事では、胸椎椎間板ヘルニアの治療後に実施するリハビリ内容を解説しているので、あわせてご一読ください。
なお、現在は胸椎椎間板ヘルニアが進行していても、手術なしで治療できる時代になっています。
胸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状
ここからは胸椎椎間板ヘルニアの症状について解説します。
自身に当てはまる症状があれば医師に相談するようにしましょう。
背中や胸の痛み
胸椎椎間板ヘルニアが発症したときの代表的な症状が背中や胸の痛みです。
しかし、ヘルニアが発生する部位によって圧迫される神経やダメージを受ける神経が異なるため、痛みやしびれを感じる部位も異なります。
また、胸椎椎間板ヘルニアが肋間神経を圧迫すると「肋間神経痛」の痛みが現れるので注意してください。
肋間神経は背中から胸に向けて走っているため、背部痛や胸痛、わきの下あたりの痛みやしびれなどを引き起こします。
肋間神経痛の痛みは、ぴりぴりと焼けつくような感覚であったり、鈍い痛みとして感じる症例が大半です。
肋間神経痛による胸の痛みは、心臓が原因の胸痛と間違えられる場合があります。
しかし、胸椎椎間板ヘルニアによる胸の痛みは、体の動きや姿勢の変化により変動するため、多くのケースで心臓が原因の胸痛と区別できます。
以下の記事では胸椎椎間板ヘルニアの症状を、より詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
その他の症状
胸椎椎間板ヘルニアが発症すると、背中や胸の痛み以外にも、以下の症状が伴う可能性があります。
- 太ももやふくらはぎの痛み、しびれ、脱力感
- 歩行障害(ふらつきや足のもつれ)
- 膀胱直腸障害
- 排便障害 など
とくに太ももやふくらはぎの痛みは、胸椎椎間板ヘルニアの初期症状として認められるケースが大半です。
痛みを放置すると急激に足が動かしにくくなり、歩行障害につながる恐れがあります。
歩くときに足がもつれ、階段を昇り降りで手すりを持つようになった方は、胸椎椎間板ヘルニアの可能性があるため注意しましょう。
また、胸椎椎間板ヘルニアを発症すると、力をこめて便や尿を出そうとしても出せない状態(膀胱直腸障害)になる場合もあります。
胸椎の背中側にある脊髄は、便や尿を出す自律神経をコントロールする神経が走っています。
胸椎椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、突然便や尿が出ない症状が起こるのです。
胸椎椎間板ヘルニアと神経痛の違いについては、以下の記事で詳しくまとめているので、ぜひご一読ください。
まとめ・胸椎椎間板ヘルニアで背中や胸が痛みを感じたなら早めの受診を!
胸椎椎間板ヘルニアは40~50歳の方に多く発症する疾患です。
代表的な症状として背中の痛みや胸の痛みがあげられ、肋間神経痛による焼けつくような痛みや鈍痛も認めています。
初期症状としては下肢のしびれや痛みなどがあり、薬物治療やリハビリなどでは歩きにくさを改善できません。
歩きにくさを感じている方は、手術療法を検討してください。
手術には神経麻痺や手術後の痛み、しびれなど術後後遺症の恐れもありますが、放置すると病状が進行して歩けなくなる可能性があります。
少しでも胸椎椎間板ヘルニアを疑う症状に気づいた方は、速やかに専門の医療機関で受診するようにしましょう。