膝に血が溜まる理由とは?転んだ際の治療方法・予防する運動方法を医師が解説
公開日: 2024.06.20更新日: 2024.11.06
「膝に血が溜まる理由は?」
「転んで膝に血が溜まるときの治療方法は?」
膝関節血腫とは、さまざまな原因によって関節内に血が溜まる症状のことです。
なかには出血を繰り返すケースもあり、関節の破壊につながる可能性もあります。
どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うと改善や予防が可能です。
この記事では、膝に血が溜まる理由や治療方法を始め、自宅でできる運動の対策をお話しします。
症状があるときは必ず医療機関を受診しましょう。医師に相談しながら、予防法として日常生活での運動も取り入れてみてください。
目次
膝に血が溜まる理由とは【膝関節血腫について】
膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血が溜まる症状です。
膝関節血腫が起こる理由は、以下の2つに分けられます。
・外傷性のもの:主にスポーツによるけがで起こる ・反復性のもの:特定の要因で繰り返し起こる |
外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や骨折により組織が出血すると発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こる場合が多いです。
一方、反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)などの使用により、関節内が出血しやすい状態となり再発を繰り返す症状です。
原因は人工関節の手術が一番多く、手術で0.17〜1.6%の確率で起こるのがわかっています。
外傷性の症状は、けがの回復とともに改善していきます。
しかし反復性の症状は、放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させる恐れがあるため、場合によっては手術の適応となります。(文献1)(文献4)(文献5)
【各用語の解説】 ※変形性膝関節症:膝関節内にある軟骨が加齢ですり減り、膝関節が変形する病気。 ※血友病:血を止める仕組みが生まれつき上手く働かず、出血しやすくなる病気(文献3)
※滑膜:関節包をおおう膜状の組織。 |
関節内の出血を繰り返した際に起こる「友病性関節症」の詳細については、以下の記事が参考になります。
膝に血が溜まるときの症状と診断方法
膝関節血腫の症状は、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。
診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像で血腫の存在を確認します。
外傷性の症状は、受傷後すぐに出る場合がほとんどです。ただ、人工関節の手術による症状は、術後数カ月〜数年後に初めて出る場合が多い傾向にあります。
膝に血が溜まるときの治療方法【転んだときにも】
膝に血が溜まるときの治療方法として、自宅での初期対応のケアを始め、医療機関で適切な治療を行うと改善を図れます。
転んだときは必ず医療機関を訪れるようにしながら、今後の治療方法を知るためにも参考にしてみてください。
・自宅でできる初期対応 ・医療機関での治療オプション |
自宅でできる初期対応
症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。
初期対応ができると、膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復を早める効果が期待できます。
ただし、安静の時間が続くと患部の筋力低下が進みます。足首や足の指を積極的に動かして予防に努めるのも大切です。
医療機関での治療オプション
医療機関では、関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。
しかし、治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。
選択的動脈塞栓術とは、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。
足に局所麻酔を行ったあと、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管を見つけ、血を止める物質を挿入します。(文献2)
選択的動脈塞栓術は、出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善にも期待できます。(文献6)(文献7)
膝に血が溜まるのを予防する運動方法
膝関節血腫を予防するには、日常生活で膝を守る運動を行いましょう。以下では、自宅でできるストレッチやトレーニングの運動方法を解説します。
無理をしないように注意しながら、必ずかかりつけの医師に相談して運動を行ってみてください。
※現在、膝関節血腫の症状がある方は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、自己判断で運動をせず医師の指示にしたがいましょう
・膝蓋骨のモビライゼーション ・ハムストリングスのストレッチ ・大腿四頭筋のストレッチ ・ハーフスクワット ・膝関節伸筋の筋力トレーニング ・膝関節屈筋の筋力トレーニング |
膝蓋骨のモビライゼーション
膝関節血腫を予防するには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つのが大切です。
【膝蓋骨のモビライゼーションのやり方】
1.膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ |
※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう
ハムストリングスのストレッチ
ハムストリングスとは、太ももの後面についている筋肉です。大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)を含めてストレッチを行いましょう。
【ハムストリングスのストレッチのやり方】
1.両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける |
※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう
大腿四頭筋のストレッチ
【大腿四頭筋のストレッチのやり方】
1.うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる |
※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう
また、日常生活では以下の点に注意しましょう。
・立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けるのを避ける ・膝まわりが熱くなったり、痛みが出たりするときは、 激しい動きを避けて冷却する |
日常生活で膝への負担を減らせると、けがや再発の予防にもつながります。
ハーフスクワット
ハーフスクワットは、太もも前後面やお尻の筋肉を鍛えたいときにおすすめです。膝を守るためにも、膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。
【ハーフスクワットのやり方】
1.足を肩幅に広げて立つ(※膝関節はつま先と同じ方向に向ける) |
※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください
膝関節伸筋の筋力トレーニング
膝を伸ばすトレーニングも効果的です。
【膝関節伸筋の筋力トレーニングのやり方】
1.椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように、 |
※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください
膝関節屈筋の筋力トレーニング
【膝関節屈筋の筋力トレーニングのやり方】
1.うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける |
ただし、上記で紹介してきた運動は、膝に痛みや熱感があるときに行うと、炎症を悪化させる可能性があります。
症状が落ち着いている時期に、かかりつけの医師や専門家に相談しながら、無理のない範囲で行いましょう。
膝に血が溜まる症状に悩まれておられる方は、再生医療による治療方法もございます。
膝まわりに関して気になる症状があるときは、当院のメールや電話にてお気軽にご相談ください。
参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152(文献8)
まとめ|膝に血が溜まるのを予防するには運動が大切
膝関節血腫には、スポーツによるけがで起こる外傷性のものを始め、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものがあげられます。
どちらも、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などの症状が起こります。
膝に血が溜まる症状が出たときは状況に応じて、関節から血腫を吸引する治療などを行う流れです。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性もあります。
膝関節血腫を予防するには、かかりつけの医師に相談しながら、日常生活で膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを行いましょう。
膝まわりのお悩みを抱えている方は、当院にぜひ一度ご相談ください。
【リペアセルクリニックへのご相談方法】 |
膝に血が溜まる理由に関わるQ&A
膝に血が溜まる理由に関わる内容について、よくある質問と答えをまとめています。
Q.膝関節血腫はいつ治りますか?
A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。
反復性の症状は、再発を繰り返す点から長期にわたりやすく、数カ月〜数年かかる可能性もあります。
症状が長引くほど、関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。
Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか?
A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。
けがをした直後は、松葉杖で歩いていただく場合もあります。
反復性の場合で症状があるときは、できるだけ安静に過ごして、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。
参考文献 文献1 文献2 文献4 文献6 文献7 文献8 |