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膝関節血腫を正しく理解し、効果的に治療する方法とは?

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膝関節血腫を正しく理解し、効果的に治療する方法とは

「骨折して膝関節に血がたまった」「膝関節血腫を多く繰り返して困っている」

膝関節血腫はさまざまな原因によって関節内に血がたまる症状です。なかには出血を繰り返すケースもあり、それによって関節の破壊につながる可能性もあります。どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うことで改善や予防が可能です。

この記事では膝関節血腫の知識や治療法、自宅でできる対策についてお話しします。ぜひこの記事を読んで、膝関節血腫の症状に悩まされない日々を送ってみてください。

膝関節血腫

膝関節血腫とは何か

膝関節血腫の定義や原因、症状について詳しく解説していきます。

定義と発生原因

膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血がたまることです。主にスポーツによるけがで起こる外傷性のものと、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものにわかれます。

外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や、骨折によって組織が出血することにより発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こることが多いです。

反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)の使用などにより関節内が出血しやすい状態となって再発を繰り返す症状です。原因は人工関節の手術が一番多く、手術の0.17〜1.6%  の確率で起こることがわかっています。

外傷性の症状はけがの回復とともに改善していきます。しかし反復性の症状は放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させるおそれがあるため、場合によっては手術の適応になります。

※変形性膝関節症…膝関節内にある軟骨が加齢によってすり減り、膝関節が変形する病気。膝に痛みがみられるため、膝を動かしたり、歩いたりすることが困難になる

※血友病…血を止めるしくみが生まれつき上手くはたらかず、出血しやすくなる病気

※滑膜…関節包をおおう膜状の組織。滑膜から分泌される関節液が、関節の動きをなめらかにする油のような役割をもつ

症状の特徴と診断方法

膝関節血腫の症状は膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像によって血腫の存在を確認します。

外傷性の症状は受傷後すぐにでることがほとんどですが、人工関節の手術による症状は術後数ヶ月〜数年後にはじめてでることが多いです。

膝関節血腫の治療方法

膝関節血腫は自宅でのケアや、医療機関の適切な治療法を行うことで改善が図れる症状です。以下に方法を詳しくお話ししていきます。

自宅でできる初期対応

症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。これらは膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復をはやめる効果があります。

しかし安静の時間が続くと患部の筋力低下が進んでしまうため、足首や足の指を積極的に動かして予防に努めることも大切です。

医療機関での治療オプション

医療機関では関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。しかし、これらの治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。

選択的動脈塞栓術は、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。足に局所麻酔を行った後、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管をみつけ、血を止める物質を挿入します。選択的動脈塞栓術は出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善も期待できます。

膝関節血腫の予防と日常生活での注意点

日常生活での予防策や膝を守る運動を行って、日頃から膝関節血腫にならないための対策をしましょう。それぞれ紹介していきます。

日常生活での予防策

膝関節血腫を予防するためには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つことが大切です。膝蓋骨のモビライゼーションやハムストリングス(太ももの後面についている筋肉)、大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)のストレッチを行いましょう。

  • 膝蓋骨のモビライゼーション

①膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ

②膝蓋骨を上下や左右に動かす

※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう

  • ハムストリングスのストレッチ

①両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける

②両手でタオルをひっぱりながら足首をお腹側にそらし、太もも後面の筋肉を伸ばす

③太もも後面の筋肉が伸び、痛みのない状態でで20秒キープする。繰り返しながら3セット行う

※目的とする筋肉以外の部分に痛みがでる場合は控えましょう

  • 大腿四頭筋のストレッチ

①うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる

②太もも前面の筋肉が伸びた位置で20秒キープする。繰り返しながら3セット行う

※目的とする筋肉以外の部分に痛みがでる場合は控えましょう

また、日常生活では以下の点に注意しましょう。

  • 立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けることを避ける
  • 膝まわりが熱くなったり痛みがでたりしている時は、激しい動きを避けて冷却をする

これらは生活上で膝への負担を減らすため、けがや再発の予防につながります。

膝を守るための運動方法

膝を守るために膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。太もも前後面やお尻の筋肉をきたえるハーフスクワットや、膝を伸ばしたり曲げたりする筋肉のトレーニングが効果的です。以下にご紹介しますが、実施の可否、回数については専門家と相談してみてください。

  • ハーフスクワット

①足を肩幅に広げて立つ(※この時の膝関節はつま先と同じ方向に向ける)

②股関節と膝関節を曲げながら、お尻を膝より少し上の高さまで下ろす。お尻を下ろした時に膝の位置がつま先より前方に出ないように注意する

③太もも前後面やお尻の筋肉のはたらきを感じながら10回、1日2セット行う

  • 膝関節伸筋の筋力トレーニング

①椅子に座り、膝を伸ばした時に抵抗がかかるように足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ

②ゴムバンドによる抵抗を太もも前面で感じながらゆっくり膝を伸ばす

③10回を1セットとし、1日2セット行う

  • 膝関節屈筋の筋力トレーニング

①うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける

②おもりによる抵抗を太もも後面で感じながらゆっくり膝を曲げる

③10回を1セットとし、1日2セット行う

しかし、これらの運動は膝に痛みや熱感がある時に行うと炎症を悪化させる可能性があります。症状が落ち着いている時期に無理のない範囲で行いましょう。

参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152

よくある質問とその回答

Q.膝関節血腫はいつ治りますか?

A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。反復性の症状は再発を繰り返すことから長期にわたりやすく、数ヶ月〜数年かかる可能性もあります。症状が長引くほど関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。

Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか?

A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。けがをした直後は、松葉杖で歩いていただくこともあります。反復性の場合は症状がある時はできるだけ安静に過ごし、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。

膝関節血腫のまとめ

この記事では膝関節血腫の概要や治療法、日頃から行える予防策と運動方法についてお話ししました。

  • 膝関節血腫は外傷性のものと反復性のものにわかれ、どちらも症状は膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などがある
  • 症状がでたら関節から血腫を吸引する治療を行う。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性がある
  • 膝関節血腫を予防するために、膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを日頃から行うと良い

ぜひこの記事を参考にして、膝関節血腫に悩まされない日常生活や趣味活動を送ってみてください。

監修:医師 渡久地 政尚

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