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【医師監修】多系統萎縮症が治った人はいる?完治が難しい理由と今できる治療・支援制度をわかりやすく解説

多系統萎縮症 治った 人
公開日: 2026.07.31

ご自身やご家族が多系統萎縮症と診断され、「治った人はいるのだろうか」「本当にこの診断で合っているのだろうか」と情報を探している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、多系統萎縮症で「治った人」がいるのかという疑問にお答えした上で、なぜそうした話が生まれるのか、間違われやすい病気との違い、今できる治療、そして使える公的支援制度までを順に解説します。

この記事を読めば、今わかっていることと、まだわかっていないことの境界線がはっきりし、これから何を優先して考えれば良いかが整理できますので、ぜひ最後までご一読ください。

再生医療の対象となる疾患や治療内容について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。

多系統萎縮症が「治った人」はいるのか?

現在のところ、多系統萎縮症が完全に治ったと医学的に確認された症例は報告されていません。

一方で、インターネット上には「症状が改善した」「再び歩けるようになった」といった体験談も見られます。

ここでは、多系統萎縮症の完治が難しい理由と、「治った」という話が生まれる背景を解説します。

完全に治った症例は報告されていない

現在の医学では、多系統萎縮症そのものを根本から治す方法は見つかっていません。

多系統萎縮症は脳の神経細胞が少しずつ失われていく病気です。一度失われた神経細胞を元に戻す方法は確立されていないため、失われた神経の働きが元どおりになる「完治」の例は報告されていません。

現在の治療は、現れている症状を和らげることが中心です。(文献1

厳しい事実ですが、完治が難しいことを理解しないまま療養を進めると、根拠の乏しい民間療法に時間やお金を費やし、本来受けられるケアや支援を逃してしまうおそれがあります。

「多系統萎縮症が治った」という話が生まれる3つの理由

一方で、「症状がよくなった」「歩けるようになった」という話が見られるのも事実です。

これらは作り話とは限らず、多くは次の3つの理由で説明できます。

理由1.似た病気との誤診とその後の診断の修正

多系統萎縮症は、発症してまもない時期には他の神経の病気とよく似ており、専門医でも診断に迷うことがあります。

とくに、動作が遅くなる・体がこわばるといった症状が先に出るタイプは、パーキンソン病との区別が難しい病気です。(文献2

そのため、いったん多系統萎縮症が疑われても、その後の検査や経過観察で診断が別の病気に変わることがあります。

もともとパーキンソン病だった方が薬でよくなれば、周囲には「多系統萎縮症が薬で治った」と映ってしまうのです。

逆に、パーキンソン病と診断されていた方が、後から多系統萎縮症とわかることもあります。診断の見直し自体は珍しいことではありません。

理由2.進行が一時的に穏やかになる「プラトー」がある

多系統萎縮症は進行する病気ですが、進み方は一定ではありません。

数カ月から年単位で症状の変化がほとんど見られない、落ち着いた時期が訪れることがあり、これを「プラトー(停滞期)」と呼びます。

この時期に入ると、ご本人もご家族も「進行が止まった」と感じて「治ったのでは」という印象を持つ可能性があります。

理由3.リハビリで日常の動作が良くなることがある

3つ目は、リハビリによる改善です。

多系統萎縮症では、生活の質を保つためのリハビリが治療の重要な柱とされています。(文献3)(文献4

ふらつきで歩きにくかった方が、バランス訓練や歩行訓練、住まいの環境を整えることで、再び安定して歩けるようになることはあります。ただし、こうした変化は多系統萎縮症そのものが治ったことを意味するものではありません。リハビリは、残っている身体機能を活かし、日常生活を送りやすくすることを目的として行われます。(文献3)(文献4

そのため、「治った」という体験談を見る際は「病気が完治したのか」「リハビリによって症状や生活動作が改善したのか」を分けて考えることが大切です。

以下の記事では、多系統萎縮症のリハビリについて詳しく解説しています。

内部リンク:多系統萎縮症 リハビリ(7月執筆)

「多系統萎縮症が治った人」は診断が見直された可能性もある

「多系統萎縮症が治った」という話のなかには、病気そのものが完治したのではなく、その後の検査や経過観察によって診断が別の病気へ変更されたケースが含まれている可能性があります。

とくに多系統萎縮症とパーキンソン病は、初期に似た症状が現れることがあるため、診断が難しい場合があります。

ここでは、両者の主な違いと、診断に疑問を感じたときの相談先について解説します。

多系統萎縮症とパーキンソン病の違い

多系統萎縮症とパーキンソン病は、動作の遅さや筋肉のこわばりなど共通する症状がある一方、手のふるえ、自律神経症状、レボドパへの反応などに違いがあります。

項目 多系統萎縮症 パーキンソン病
目立ちやすい症状 歩行のふらつき、立ちくらみ、排尿障害、動作の遅さ 手のふるえ、筋肉のこわばり、動作の遅さ
手のふるえ 目立たないことが多い 安静時にみられることがある
自律神経症状 早い段階から強く現れやすい 比較的軽いことが多い
レボドパへの反応 効きにくい、または効果が一時的なことが多い 効果が現れやすく、持続しやすい
進行 比較的速い傾向がある 多系統萎縮症より緩やかなことが多い

ただし、すべての患者様に典型的な特徴が現れるわけではありません。実際の診断では、症状の経過や神経学的診察、MRIなどの検査結果を組み合わせて総合的に判断します。(文献1)(文献2

以下の記事では、パーキンソン病について詳しく解説しています。

【関連記事】

【医師監修】パーキンソン病とは|初期・進行期の症状・原因・治療法を解説

【医師監修】パーキンソン病の初期症状とは?セルフチェック法や受診の目安を解説

診断に疑問を感じたときの相談先

「説明を受けた症状と実際の状態が異なる」「治療を続けても診断や今後の見通しに納得できない」など、不安や疑問がある場合は、まず主治医に相談しましょう。

診断時には確認できなかった症状や検査所見が、その後の経過で明らかになることもあります。

必要に応じてセカンドオピニオンを受ける方法もあります。自己判断で治療を中断せず、これまでの検査結果や服薬歴を持参して相談することが大切です。

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多系統萎縮症に対して行われている治療・対処法

多系統萎縮症を根本的に治す治療法は確立されていませんが、症状を和らげたり、生活機能を維持したりするための治療は行われています。

薬物療法だけでなく、リハビリや飲み込み・呼吸への対応などを組み合わせることが重要です。

ここでは、現在行われている主な治療や対処法を解説します。

症状に合わせた薬物療法

根本的に治す薬はまだありませんが、それぞれの症状を和らげるための薬が使われています。

主な症状 使われる薬 働きと注意点
ふらつき・話しにくさ セレジスト ふらつきなどの改善を目的に使われます。
動作の遅さ・こわばり レボドパ 効果が乏しい場合や、効果が続きにくい場合があります。
立ちくらみ 血圧を上げる薬 血圧の低下を抑えます。横になったときに血圧が上がりすぎないよう、調整が必要です。
排尿障害 排尿症状に応じた薬 尿が出にくい、尿が近いなど、症状のタイプに応じて使い分けます。

文献1)(文献2)(文献3

薬価は毎年の改定で変わるため、費用は医療機関や薬局にご確認ください。

自己判断で薬の量を増減させるのは危険です。気になる点がある場合は、必ず主治医か薬剤師にご相談ください。

飲み込みや呼吸の問題への対応

病気が進むと、飲み込みにくさや、睡眠中の呼吸の問題が出てくることがあります。

飲み込みにくさは肺炎の原因になるため、食事の形を変えたり、食べるときの姿勢を工夫したりする対応が必要です。

十分に食べられず栄養を保てなくなった場合は、胃に直接栄養を送る方法である胃ろうが検討されます。呼吸の問題に対しては、マスクを使った呼吸の補助などが検討されます。

いずれも、ご本人の意思とご家族の生活をふまえた話し合いが必要な選択です。早い時期から主治医と方針を共有しておくと、いざというときに落ち着いて判断しやすくなります。

患者様とご家族が使える公的支援制度【一覧表】

項目 主な対象 受けられる支援 相談・申請窓口
特定医療費(指定難病)受給者証 診断基準を満たし、認定された方 ・医療費の自己負担の軽減
・月額上限の設定
・保健所
・都道府県の窓口
介護保険 40歳以上で要件を満たす方 ・訪問介護
・訪問看護
・デイサービス
・福祉用具のレンタル
・住宅改修など
・市区町村の介護保険窓口
・地域包括支援センター
身体障害者手帳 障害の程度が等級の基準に該当する方 ・補装具の購入費用の助成
・税の優遇
・各種割引など
・市区町村の障害福祉窓口
障害者総合支援法のサービス 障害の状態や支援区分などの要件を満たす方 ・居宅介護
・重度訪問介護などの福祉サービス
・市区町村の障害福祉窓口

治療と同じくらい大切なのが、支援制度を漏れなく活用することです。経済的・身体的な負担が軽くなれば、療養環境を整えることに力を注ぎやすくなります。

多系統萎縮症は指定難病に定められているため、認定を受けると医療費の助成が受けられます。文献5

申請には難病指定医が作成する診断書が必要です。診断がついたら、早めに主治医へ相談しましょう。

また、40歳から64歳の方でも、条件を満たせば介護保険のサービスを申請できます。要件や運用は自治体によって異なる場合があるため、詳しくは各窓口にご確認ください。

多系統萎縮症は「治った人」を探すより今できることに目を向けよう

多系統萎縮症を完全に治した例は、現在のところ報告されていません。

インターネット上で見かける「治った」という話の多くは、診断が別の病気に変わったケース、進行が一時的に落ち着くプラトーの時期、リハビリで生活動作がよくなったケースとして説明できます。

一方で、症状を和らげげる薬やリハビリは整備されており、進行を抑えることを目指した研究も進んでいます。医療費の助成や介護保険を使えば、療養に伴う負担を軽くすることも可能です。

進行の速さには大きな個人差があります。診断名や平均的な数字だけで将来を決めつけず、今できることを一つずつ整えていきましょう。

気になることがあれば、遠慮なく主治医や相談窓口に声をかけてみてください。

なお、再生医療の対象となる疾患や治療内容について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。

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通話料無料/受付時間 09:00~18:00

「多系統萎縮症が治った人」に関するよくある質問

多系統萎縮症が治った人の体験談やブログは信頼できますか?

体験談やブログは、療養生活やリハビリの工夫を知る参考にはなりますが、病気が完治した根拠にはなりません。

「治った」と表現されていても、リハビリによって日常動作が改善したケースや、一時的に進行が落ち着いているケース、その後に診断が別の病気へ変更されたケースなどが考えられます。

体験談だけで治療法の効果を判断せず、診断名や治療内容、医学的な根拠が示されているかを確認しましょう。

多系統萎縮症でも長生きする人はいますか?

多系統萎縮症でも、一般的に示される生存期間より長く生活する方はいます。

多系統萎縮症の患者を対象とした研究では、症状が現れてから死亡するまでの期間の中央値は約8.6年と報告されていますが、実際の経過には個人差があります。文献6

発症年齢や、早期に現れる自律神経症状の重さなどによって生存期間は異なるため、中央値だけで個人の寿命を判断することはできません。症状や合併症に応じた治療・ケアを続けることが大切です。

以下の記事では、多系統萎縮症と余命の関係について詳しく解説しています。

内部リンク:多系統萎縮症余命(8月KW)

多系統萎縮症の進行速度には個人差がありますか?

多系統萎縮症の進行速度や経過には個人差があります。症状が比較的早く進む方がいる一方で、平均的な経過より長く生活する方もいるため、診断名だけから個人の経過を正確に予測することはできません。

研究では、発症時の年齢が高いことや、発症から3年以内の転倒、膀胱症状、早期からみられる起立性の症状、強い自律神経障害などが、生存期間の短さと関連する要因として報告されています。文献7

一方、多系統萎縮症の病型による生存期間の明確な差は認められませんでした。

定期的に症状を確認し、状態に応じて薬物療法やリハビリ、生活環境の調整を行うことが大切です。

以下の記事では、多系統萎縮症になりやすい人の特徴について詳しく解説しています。

内部リンク:8月KW(多系統萎縮症になりやすい人は)

多系統萎縮症の末期にはどのような症状が現れますか?

多系統萎縮症には明確に統一された「末期」の定義はありませんが、病気が進行すると、自力での歩行や姿勢の維持が難しくなり、車椅子での生活や寝たきりの状態になることがあります。

さらに、飲み込みにくさが強くなり、むせや誤嚥性肺炎、栄養不足が起こる場合があります。声帯の動きに障害が生じると、睡眠中などに息を吸う際の高い呼吸音である「吸気性喘鳴」や、呼吸障害が現れることもあります。

以下の記事では、多系統萎縮症の末期症状について詳しく解説しています。

※内部リンク:7月執筆「多系統萎縮症 末期症状」

参考文献

(文献1)

多系統萎縮症(MSA)|MSDマニュアル家庭版

(文献2)

多系統萎縮症(MSA)|MSDマニュアル プロフェッショナル版

(文献3)

脊髄小脳変性症|済生会

(文献4)

脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018|日本内科学会雑誌第113巻第6号

(文献5)

多系統萎縮症(2)オリーブ橋小脳萎縮症(指定難病17)|難病情報センター

(文献6)

Multiple System Atrophy: Prognostic Indicators of Survival|PMC

(文献7)

Clinical features and autonomic testing predict survival in multiple system atrophy|PubMed