• 頭部
  • 頭部、その他疾患

【医師監修】多系統萎縮症のリハビリ内容は?病期別の目標と具体的な訓練方法を解説

多系統萎縮症 リハビリ
公開日: 2026.07.31

「多系統萎縮症と診断されたけれど、リハビリでは実際にどのようなことをするのだろう」

と気になっている方もいるのではないでしょうか。

多系統萎縮症は、歩くときのふらつき、動作のしにくさ、話しづらさ、立ちくらみなど幅広い症状が現れるため、必要なリハビリの内容も一人ひとり異なります。

本記事では、多系統萎縮症のリハビリで行う理学療法・作業療法・言語聴覚療法などの具体的な内容を、病期ごとの目標や適切に続けるための注意点とあわせて解説します。

この記事を読めば、今のご状況でどのリハビリに力を入れれば良いかが整理できます。ぜひ最後までご一読ください。

なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな疾患や後遺症の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひご登録ください。

\公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ リペアセルクリニック 公式LINE画像

LINE限定で無料オンライン診断を実施中!
>>簡単30秒で診断してみる

多系統萎縮症の特徴と現れやすい症状

項目 MSA-C(小脳症状が中心) MSA-P(パーキンソン症状が中心)
主な特徴
  • バランスを保ちにくい
  • 手足の動きをうまく調整できない
  • 姿勢が不安定になる
  • 動作が遅くなる
  • 筋肉がこわばる
  • ろれつが回りにくくなることもある
共通して現れる症状
  • 立ちくらみ
  • 排尿障害
  • 便秘
  • 飲み込みにくさ
  • 息苦しさ
  • 息を吸うときの喘鳴

文献1)(文献2)(文献3

多系統萎縮症(MSA)は、体の動きやバランス、血圧、排尿などを調整する脳や脊髄の働きが少しずつ低下していく進行性の病気です。国の指定難病の一つで、歩行時のふらつきや動作のしにくさ、筋肉のこわばり、立ちくらみ、排尿障害などが現れます。

多系統萎縮症は、現れやすい症状によって、小脳の機能障害が目立つ「MSA-C」と、パーキンソン病に似た症状が目立つ「MSA-P」の2つに大きく分けられます。文献1

ただし、完全に分かれるものではなく、病気の進行に伴って両方の症状が重なって現れる場合もあります。また、どちらの病型でも、立ちくらみや排尿のトラブル、便秘などの自律神経症状がみられる点が特徴です。(文献2

以下の記事では、多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の違いについて詳しく解説しています。

内部リンク:7月KW(多系統萎縮症 脊髄小脳変性症 違い)

進行を止める治療がないなかでリハビリが担う役割

多系統萎縮症を含む神経の変性疾患では、変性した神経を元の正常な状態に戻したり、変性の進行を止めたりする治療法は現時点ではありません。

そのため、症状を和らげる対症療法とあわせて、生活の質を維持するためのリハビリテーションを行うことが治療の柱となります。

多系統萎縮症は比較的進行が早く、発症後平均で5年ほどで車椅子を使用し、8年ほどで臥床状態になると報告されています。(文献2

リハビリの目的は、失われた神経を取り戻すことではありません。残っている機能をできるだけ長く使い続け、転倒や誤嚥性肺炎といった二次的なトラブルを防ぐことにあります。

実際、できるだけ多くの日常生活動作を続けることが、筋力と柔軟性の維持に役立つとされています。(文献1

以下の記事では「多系統萎縮症が治った人はいるのか?」という疑問について詳しく解説しています。

内部リンク:7月執筆「多系統萎縮症 治った人」

多系統萎縮症の病期別リハビリ目標

多系統萎縮症のリハビリでは、病気の進行や現在の生活状況に合わせて目標を見直すことが大切です。

症状が軽い時期と介助が必要な時期では、優先すべきことが異なります。

以下は病期ごとのリハビリ目標の目安です。

項目 リハビリの目標
軽度 今ある機能の維持、運動習慣の定着、転倒の予防
中等度 適切な移動手段の確保、誤嚥と失神の予防
重度 関節の拘縮・床ずれの予防、意思疎通の手段の確保

実際の目標は、症状や生活環境を踏まえ、主治医や理学療法士などのリハビリ専門職と相談して決めましょう。

軽度の時期|運動習慣の定着と転倒予防

身のまわりのことや仕事、外出などを、おおむね自分で行える時期です。

この時期は、現在の身体機能や日常生活をできるだけ長く維持し、無理なく体を動かす習慣を身につけることが主な目標です。

あわせて、転倒につながりやすい場面や生活上の困りごとを早めに把握し、症状が進んだ場合にも対応しやすい環境を整えておくことが重要です。

中等度の時期|移動の安全確保と誤嚥・失神の予防

歩行や身のまわりの動作に、見守りや介助が必要になる時期です。

この時期は、自力で行うことだけにこだわらず、安全に移動して日常生活を続けられる状態を保つことが目標になります。

また、飲み込みにくさによる誤嚥や、起立性低血圧による立ちくらみ・失神にも注意が必要です。事故や体調悪化を防ぐため、ご本人の状態に合った介助方法や生活環境を整えていきます。

重度の時期|拘縮・褥瘡の予防と意思疎通の維持

ベッドで過ごす時間が長くなり、日常生活の多くに介助が必要となる時期です。

この時期は、身体機能を高めることよりも、関節が固まる拘縮や床ずれ、呼吸器の合併症などを防ぎ、苦痛を減らすことが主な目標になります。

あわせて、ご本人が希望や体調を周囲に伝えられるよう、意思疎通の手段を確保することも重要です。話しにくさが強くなる前から、今後のコミュニケーション方法について、ご本人・ご家族・専門職で話し合っておきましょう。

以下の記事では、多系統萎縮症の末期症状について詳しく解説しています。

内部リンク:7月KW(多系統萎縮症 末期症状)

\無料オンライン診断実施中!/

無料の再生医療ガイドブックはこちらから!>>

多系統萎縮症のリハビリで行う具体的な訓練

多系統萎縮症のリハビリでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職が、症状や生活上の困りごとに応じた訓練や指導を行います。文献1

それぞれ担当する領域は異なりますが、複数の専門職が連携し、一人ひとりの状態に合わせてリハビリの内容を組み立てます。

理学療法(PT)|ふらつき・歩行障害・姿勢異常への対応

理学療法では、立つ・歩く・起き上がるといった基本的な動作を支えます。

ふらつきに対しては、手首や足首に軽い重りをつけたり、弾性のあるバンドを体幹に巻いたりして、自分の体の位置を感じ取りやすくする方法がよく用いられます。

動作の遅さやこわばりに対しては、「いつもより大きく足を上げる」「大きく腕を振る」というように、あえて動作の幅を大きくする練習が行われ、小さくなりがちな動きを意識的に補うという考え方です。

また、体が前に強く曲がる、首が下がるといった姿勢の変化は、一度固まると戻しにくくなります。

背中を伸ばす訓練や、鏡で姿勢を確認しながら整える練習を早くから続けることが大切です。

作業療法(OT)|日常生活動作と自助具・住環境の工夫

作業療法では、食事・着替え・入浴・トイレといった動作を、できるだけ自分の力で安全に行えるようにすることを目指します。

手が動かしにくくなった場合は、柄を太くしたスプーンや縁の高い食器、滑り止めマットを使うことで、自分で食べられる期間を延ばせることがあります。

また、住まいの環境整備も重要な役割です。手すりの設置や床の段差の解消で転倒を防ぎます。

どこにどのような手すりが必要かは体の状態で変わるため、実際の生活場面を見てもらいながら決めるのが確実です。

言語聴覚療法(ST)|話しにくさ・飲み込みにくさへの対応

言語聴覚療法では、「話す」と「飲み込む」という、生活の質に直結する2つの機能を支えます。

話しにくさに対しては、声を出し続ける練習や、話す速さを一定に保つ練習が行われます。

ゆっくり区切って話す習慣は、聞き取ってもらいやすさにつながります。

飲み込みにくさについては、あごを軽く引いた姿勢をとるといった姿勢の調整や、飲み物にとろみをつける、ゼリー状の食事に変更するといった食べ物の形態の調整を行います。

飲み込みにくさへの対症療法は診療ガイドラインでも項目として扱われており、経過に応じた判断が必要な領域です。(文献4

「むせる回数が増えた」「食事に時間がかかる」「体重が減ってきた」といった変化があれば、早めに主治医に相談してください。

呼吸リハビリテーション|息苦しさ・痰への対応

多系統萎縮症では、呼吸や飲み込みの障害、息を吸うときの喘鳴(吸気性喘鳴)がみられることが知られています。文献3

胸まわりの動きを保つ運動や、痰を出しやすくするための介助などを行います。

とくに睡眠中の喘鳴やいびきの変化は重要なサインですので、ご家族が気づいた場合は必ず主治医に伝えてください。

\無料オンライン診断実施中!/

無料の再生医療ガイドブックはこちらから!>>

多系統萎縮症のリハビリを適切に続けるための注意点

多系統萎縮症のリハビリには、他の病気にはない固有の注意点があります。

とくに自律神経の症状は、運動そのものを危険なものに変えてしまうことがあるため、知っておくことが欠かせません。

起立性低血圧による立ちくらみ・失神を防ぐ

もっとも注意が必要なのが起立性低血圧です。

立ち上がったときに血圧が下がり、立ちくらみや、ときには失神を起こします。前ぶれなく意識を失うこともあるため、骨折につながる転倒の大きな原因になります。

対策として、塩分と水分の摂取量を増やすことが大切です。血液の量が増え、血圧の上昇に役立ちます。また、ゆっくり立ち上がることも急激な血圧低下の予防になり、腹帯や弾性ストッキングの着用も助けになることがあります。

なお、塩分や水分の適切な量は、心臓や腎臓の状態によって変わるため、自己判断で大きく増やさず、必ず主治医の指示に従ってください。

誤嚥性肺炎を防ぐ姿勢と食事の工夫

飲み込む力が落ちてくると、食べ物や唾液が気管に入り、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。

食事の際は「あごを引いた姿勢を保つ」「体が傾かないように座る」「一口の量を減らす」「テレビを消して集中する」といった工夫が大切です。

食後すぐに横にならないこと、口の中を清潔に保つことも予防につながります。

自宅でのリハビリと家族の介護負担を軽減する方法

通院や通所でのリハビリだけでは、機能を維持するには十分でないことがあります。

日々の暮らしのなかで体を動かし続けることが、結果的に大きな差につながります。

自宅で続けやすい運動の例

椅子に座った状態での足踏み、手すりやテーブルにつかまっての立ち座りの繰り返し、肩や首をゆっくり回すストレッチなどは、体調に合わせて調整しやすい運動です。

そして何より、できるだけ多くの日常生活動作を続けること自体が、筋力と柔軟性の維持に役立ちます。文献1

着替えや洗面など、これまでどおりの動作を時間がかかっても自分で行うことが、自然なリハビリになります。安全な範囲で「代わりにやってあげる」よりも「見守りながらやってもらう」ことを意識してみてください。

ただし、病期によって避けるべき動きがあるため、内容は必ず主治医やリハビリ専門職に確認してください。

介護するご家族の負担を軽くする工夫

多系統萎縮症の療養は長期にわたり、進行とともにご家族の負担も増していきます。

介助を自己流で続けていると、腰を痛めるなど、ご家族自身が体を壊してしまうことも少なくありません。移乗や入浴の介助は、訪問看護師やリハビリ専門職から正しい方法を学んでおくことをおすすめします。また、抱え込まないことも重要です。

訪問リハビリ、デイサービス、ショートステイなどを組み合わせれば、ご家族が休息をとる時間を確保できます。

「まだ大丈夫」と思える段階からケアマネジャーに相談しておくほうが、いざというときに慌てずに済みます。

多系統萎縮症は病期に合ったリハビリを継続しよう

多系統萎縮症のリハビリは、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などを組み合わせ、病期に応じて目標を切り替えながら進めていくものです。

軽い時期には機能の維持と転倒予防を、介助が必要な時期には安全な移動と誤嚥・失神の予防を、重度の時期には合併症の予防と意思疎通の維持を目指します。

神経の変性そのものを止める治療法はありませんが、対症療法とリハビリテーションによって生活の質を維持していくことが治療の中心とされています。文献2

とくに、起立性低血圧と誤嚥への対策は、リハビリを適切に続ける上で欠かせません。

不安を感じたときは、ひとりで抱え込まず、主治医やリハビリ専門職、ケアマネジャーに相談しましょう。関わる専門職が増えるほど、選べる工夫の幅は広がります。

なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな疾患や後遺症の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひご登録ください。

\無料オンライン診断実施中!/

無料の再生医療ガイドブックはこちらから!>>

多系統萎縮症のリハビリに関するよくある質問

多系統萎縮症のリハビリでやってはいけないことはありますか?

すべての方に共通する禁忌はありませんが、症状や病期に合わない運動は避ける必要があります。

とくに、起立性低血圧がある状態で急に立つことや、ふらつきが強い状態で一人で歩行訓練を行うことは危険です。息苦しさや強いめまい、むせが現れた場合は中止し、主治医や理学療法士などのリハビリ専門職に相談してください。

以下の記事では、多系統萎縮症になりやすい人の特徴について詳しく解説しています。

内部リンク:8月KW(多系統萎縮症余命)

多系統萎縮症のリハビリはどこで受けられますか?

多系統萎縮症のリハビリは、脳神経内科やリハビリテーション科のある病院・診療所で受けられます。

通院が難しい場合は、訪問リハビリや通所リハビリを利用できることもあります。対応できる施設や内容は地域によって異なるため、主治医や病院の地域連携室、ケアマネジャーに相談して受け入れ先を探してください。

多系統萎縮症のリハビリには入院が必要ですか?

多系統萎縮症のリハビリに、必ず入院が必要なわけではありません。症状が安定している場合は、外来や訪問、通所で継続できます。

一方、歩行や嚥下機能の詳しい評価、補助具の選定、家族への介助指導などが必要な場合は、短期入院が検討されることもあります。

参考文献

(文献1)

多系統萎縮症(MSA)|MSDマニュアル家庭版

(文献2)

脊髄小脳変性症|済生会

(文献3)

多系統萎縮症(MSA)|MSDマニュアル プロフェッショナル版

(文献4)

脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018|日本内科学会雑誌