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【医師監修】多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の違いとは?症状・進行・検査でわかる見分け方を解説

多系統萎縮症 脊髄小脳変性症 違い
公開日: 2026.07.31

ご家族が多系統萎縮症と診断されたものの、以前は脊髄小脳変性症と説明され、2つの病名の違いがわからず戸惑っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、この2つの病名の関係を整理した上で、症状・進行の速さ・遺伝・検査の4点から違いを解説します。読み終えるころには、医師が何を手がかりに見分けているのかがわかりますので、ぜひ最後までご一読ください。

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多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の違い【比較表】

まず、多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の違いを表にまとめたのでご覧ください。

項目 脊髄小脳変性症 (多系統萎縮症を除く) 多系統萎縮症
位置づけ ふらつきなどが出る病気の総称 脊髄小脳変性症に含まれるタイプのひとつ
制度上の扱い 指定難病18 指定難病17
遺伝 遺伝するタイプとしないタイプがある ほとんどが遺伝と無関係
中心となる症状 ふらつき、ろれつが回らない ふらつきに加えて、立ちくらみ、排尿障害、動作の遅さなどが現れる
進行の速さ ゆっくり進む 比較的速く進む

文献1)(文献2)(文献3

多系統萎縮症は広い意味では脊髄小脳変性症に含まれますが、指定難病制度では別の疾患として扱われています。

また、多系統萎縮症では、ふらつきに加えて自律神経症状やパーキンソン症状が現れやすく、比較的速く進行する点も主な違いです。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の関係と制度上の違い

2つの病名が混同されやすい理由は、両者が「並んだ別々の病気」ではなく、「大きな枠とその中身」という入れ子の関係にあるためです。

脊髄小脳変性症とは「歩くときにふらつく」「手が震える」「ろれつが回らない」といった症状が出る神経の病気の総称です。はっきりした原因がないまま、小脳とその周辺の神経細胞が変化していく病気を総称してこのように呼んでいます。

このグループは、まず遺伝するものとしないものに分けられ、患者様の約3分の2は遺伝性ではありません。この遺伝性でないグループをさらに分けたときに出てくるのが、多系統萎縮症です。

「以前は脊髄小脳変性症と言われていたのに、今は多系統萎縮症と言われる」という状況が起きるのは、大きな枠での説明から、より正確なタイプの診断へ進んだためであることが少なくありません。

ただし国の難病制度では、多系統萎縮症が「指定難病17」、脊髄小脳変性症が「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」として「指定難病18」と別々に登録されています。(文献1)(文献2

以下の記事では、多系統萎縮症と余命の関係について詳しく解説しています。

内部リンク:8月執筆「多系統萎縮症余命」

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の「症状の違い」

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症では、ふらつきや歩きにくさなど共通する症状があります。ただし、多系統萎縮症では自律神経症状やパーキンソン症状が加わることがあり、症状が現れる範囲に違いがあります。

ここからは、脊髄小脳変性症に多い症状と、多系統萎縮症で加わりやすい症状をそれぞれ確認していきましょう。

脊髄小脳変性症に多い症状

多系統萎縮症を除く脊髄小脳変性症では、主に次のような症状がみられます。

  • 起立時や歩行時にふらつく
  • 手をうまく動かせない
  • 話すときに口や舌がもつれる

日常生活では、まっすぐ歩こうとしても左右に揺れる、ボタンをかけたり字を書いたりする細かい動作がしにくい、電話で聞き返されることが増えるのが特徴です。

ふらつきが中心で、立ちくらみや排尿障害、動作の遅さなどが目立たない場合は、多系統萎縮症以外の脊髄小脳変性症が考えられます。ただし、病型によって症状の現れ方は異なり、この症状の有無だけで自己判断できるものではありません。

多系統萎縮症で加わる症状

多系統萎縮症では、ふらつきに加えて、主に自律神経症状とパーキンソン症状が現れます。

自律神経症状には、次のようなものがあります。(文献2

  • 立ちくらみや失神を繰り返す
  • トイレの回数が変わる
  • 尿が出にくくなる
  • 尿を我慢できなくなる
  • 便秘がみられる
  • 呼吸に関わる症状が現れる

パーキンソン症状には、次のようなものがあります。

  • 筋肉がこわばる
  • 動作が少なくなる
  • 動作が遅くなる
  • 動作全体が小さくなる
  • バランスを崩しやすくなり、転びやすさが増す

「多系統」という名前のとおり、脳の複数の部分が影響を受けることが、症状の幅広さにつながっています。初期はほかの脊髄小脳変性症と症状が重なることも多いため、自己判断は避けて脳神経内科を受診してください。

以下の記事では、多系統萎縮症の末期症状について詳しく解説しています。

※内部リンク:7月執筆「多系統萎縮症 末期症状」

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の「進行の速さの違い」

多系統萎縮症を除く脊髄小脳変性症では、症状は比較的ゆっくりと進みます。(文献1

年単位で少しずつ変化するため、長期間にわたって身の回りのことを自分で続けられる方もいますが、病型や症状によって進行速度には個人差があります。

一方、多系統萎縮症は、ほかの脊髄小脳変性症と比べて進行が速い傾向です。国内の230人を対象とした研究では、発症後約5年で車椅子を使用し、約8年で臥床状態となり、罹病期間は9年程度と報告されています。(文献3

これらはあくまで平均的な数値です。実際の経過には個人差があります。進行の見通しを把握しておくことで、必要になる医療・介護・住まいの準備を早めに進められます。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の「遺伝に関する違い」

ご家族が気にされる点のひとつが、遺伝の問題です。

脊髄小脳変性症には、遺伝するタイプと遺伝しないタイプの両方があります。患者様の約3分の1が遺伝性、約3分の2が非遺伝性とされています。(文献1

一方、多系統萎縮症のほとんどは遺伝とは関係なく起こり、原則として遺伝する病気ではないと考えられています。文献2

「脊髄小脳変性症」の段階では遺伝の可能性を考える余地がありますが、「多系統萎縮症」と診断された場合は、遺伝を過度に心配する必要は基本的にありません。気になる場合は、主治医や遺伝カウンセリングの窓口にご相談ください。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症を検査で見分ける方法

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の診断では、症状の現れ方や経過を確認した上で、頭部MRIや自律神経機能検査などを組み合わせます。

検査だけで直ちに病名が決まるとは限らず、症状がどのように増えていくかを時間をかけて確認することも重要です。見分ける手がかりは、主に次の3つです。

頭部MRIによる画像検査

頭部MRIでは、小脳や脳幹などの萎縮を確認します。

多系統萎縮症では、中脳・橋・小脳などに特徴的な変化が現れる場合があり、診断の手がかりになります。文献5

自律神経機能検査

自律神経機能検査では、立ち上がったときの血圧変化を調べる起立試験や、排尿機能を確認する検査などが行われます。

起立性低血圧や排尿障害などの自律神経症状が早い段階から強く現れている場合は、多系統萎縮症を考える手がかりになります。文献5

レボドパの効き方の違い

パーキンソン症状がある場合は、パーキンソン病の治療薬である「レボドパ」の効き方も参考にされます。

パーキンソン病ではレボドパによって症状が明確に改善することが多い一方、多系統萎縮症では効果が乏しい場合が多いとされています。文献3)(文献6

ただし、薬の効き方だけで診断が決まるわけではありません。多系統萎縮症でも一時的に効果がみられる場合があるため、ほかの症状や検査結果とあわせて判断されます。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の「治療・対処法の違い」

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症は、どちらも症状を和らげる治療とリハビリテーションが中心です。ただし、多系統萎縮症では自律神経症状や呼吸・嚥下障害にも対応する必要があり、重視される治療内容が異なります。

ここでは、両疾患に共通する治療の考え方と、それぞれで必要となる対応を解説します。

また、以下の記事では「多系統萎縮症の治った人はいるのか?」という疑問について詳しく解説しています。

内部リンク:7月執筆「多系統萎縮症 治った 人」

治療の中心は症状を和らげることとリハビリ

前提として、どちらも病気の進行を止める治療はまだ確立していません。(文献1)(文献2

そのため、治療では現在困っている症状を和らげ、日常生活をできるだけ維持することが重視されます。

リハビリテーションも重要な治療のひとつです。多系統萎縮症では、短期集中的なリハビリによって運動機能やふらつきが一時的に改善したとの報告があります。(文献4

ただし、無理な運動は転倒や疲労につながる可能性があります。症状や体力に合わせて、医師や理学療法士などと相談しながら取り組むことが大切です。

以下の記事では、多系統萎縮症のリハビリについて詳しく解説しています。

※内部リンク:7月執筆「多系統萎縮症 リハビリ」

症状別にみる主な治療と対処法

対症療法の中身は、どちらの病気かによって重点が変わります。

症状 脊髄小脳変性症 (多系統萎縮症を除く) 多系統萎縮症
ふらつき タルチレリン水和物などの薬やリハビリを行う 薬やリハビリを行う
パーキンソン症状 主な問題にならない病型も多い レボドパなどを使用するが、効果が乏しい場合が多い
立ちくらみ 症状に応じて対応する 血圧を上げる薬や生活上の工夫が必要になる
排尿障害 症状に応じて対応する 薬物療法や自己導尿などを検討する
呼吸・嚥下障害 病型や進行に応じて対応する 呼吸管理や嚥下障害への対応が必要になる場合がある

文献1)(文献2)(文献3)(文献5

多系統萎縮症では、ふらつきへの対応に加えて、自律神経症状と呼吸・飲み込みの管理が並行して必要になる点が大きな違いです。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症で利用できる支援制度

多系統萎縮症は指定難病17、脊髄小脳変性症は指定難病18に該当します。重症度などの条件を満たした場合は、指定難病の医療費助成を受けることが可能です。

医療費助成を利用すると、1カ月に支払う医療費の自己負担額に、所得に応じた上限が設けられます。上限に達した後は、その月の対象となる医療費について、原則としてそれ以上の自己負担は発生しません。(文献8

また、多系統萎縮症と脊髄小脳変性症は、いずれも介護保険の特定疾病に含まれています。文献7

そのため、40歳から64歳の方でも、病気が原因で要介護・要支援状態になり認定を受けた場合は、訪問看護や訪問リハビリ、福祉用具のレンタルなどの介護保険サービスを利用できます。

このほか、症状や障害の程度によっては身体障害者手帳などの支援を受けられる場合があり、利用できる制度は状態により異なるため、自治体の窓口や医療ソーシャルワーカーに相談してください。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の違いを理解して早めに受診・支援の準備を進めよう

多系統萎縮症は広い意味で脊髄小脳変性症に含まれますが、指定難病制度では別の疾患として扱われています。

主な違いは次の4点です。

  • 症状:多系統萎縮症では自律神経症状などが加わる
  • 進行:多系統萎縮症の方が速い傾向がある
  • 遺伝:脊髄小脳変性症には遺伝するタイプがある
  • 検査:MRIや自律神経機能検査などで見分ける

どちらも治療は対症療法とリハビリが中心です。ふらつきに加えて立ちくらみや排尿の変化、動作の遅さがみられる場合は、早めに脳神経内科を受診しましょう。

なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな疾患や後遺症の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひご登録ください。

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の違いに関するよくある質問

多系統萎縮症と脊髄小脳変性症の診断に時間がかかるのはなぜですか?

初期には、両疾患の症状が重なりやすいためです。

日本で多い多系統萎縮症のタイプはふらつきなどの小脳症状から始まるため、この段階では、ほかの脊髄小脳変性症との区別が難しい場合があります。(文献3文献4

その後、立ちくらみや排尿障害、パーキンソン症状などが現れることで、診断が徐々にはっきりしていきます。

多系統萎縮症とパーキンソン病の違いは何ですか?

多系統萎縮症は、初期にパーキンソン病と似た症状が現れることがあります。主な違いは次のとおりです。

比較ポイント パーキンソン病 多系統萎縮症
安静時の震え みられやすい 比較的少ない
進行の速さ 比較的ゆっくり 比較的速い
レボドパの効き方 効果がみられやすい 効果が乏しい場合が多い
立ちくらみ・排尿障害 進行後に目立つことが多い 早期から現れる場合がある

文献3)(文献6

症状だけでは見分けにくいため、経過や検査結果を含めて脳神経内科で総合的に判断されます。

参考文献

(文献1)

脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)(指定難病18)|難病情報センター

(文献2)

多系統萎縮症(3)シャイ・ドレーガー症候群(指定難病17)|難病情報センター

(文献3)

多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)|難病情報センター

(文献4)

多系統萎縮症(2)オリーブ橋小脳萎縮症(指定難病17)|難病情報センター

(文献5)

多系統萎縮症(MSA)|MSDマニュアル プロフェッショナル版

(文献6)

パーキンソン病|MSDマニュアル家庭版

(文献7)

特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省

(文献8)

指定難病患者への医療費助成制度のご案内|難病情報センター