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橋出血はどんな初期症状が出るのだろう。 橋出血になったら、助かるのかな。 この記事を読んでいるあなたは、聞きなれない「橋出血」という病気について不安を抱いているのではないでしょうか。「これからどうなるのだろう」と、心配しているかもしれません。 橋出血とは、脳の中心部にある「橋(きょう)」という部分からの出血で、脳出血全体の5〜10%を占めます。初期症状として意識障害や頭痛が出るケースが多く、状態によっては助からないケースも珍しくありません。 本記事では、橋出血の初期症状や死亡率、予防法を詳しく解説します。記事を最後まで読めば、橋出血の全容がわかり、リハビリや再出血予防を含む今後の見通しをたてられるでしょう。 橋出血の初期症状は「意識障害や頭痛」 橋出血を含む脳出血は、突然脳の血管が破れて発症し、前兆や予兆がないケースも珍しくありません。しかし、初期症状がわかれば早期治療が可能となり、出血の拡大を予防できます。 橋出血の初期症状は、以下のとおりです。 ・なん何となく受け答えが悪い(意識障害) ・強い頭痛が続く ・手足がうまく動かせない ・身体の片方だけ感覚が鈍い このような症状がある場合は、救急車の利用も考慮に入れ、できるだけ早く医療機関を受診してください。 また、当院リペアセルクリニックでは、脳梗塞や脳出血といった「脳卒中」の治療法の1つとして再生医療をおこなっています。「メール」や「オンラインカウンセリング」によるご相談も可能です。橋出血の治療法に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 橋出血における2つの症状 出血の部位や大きさによって異なりますが、橋出血の症状は「瞳孔の変化」と「四肢の麻痺」が特徴的です。また、意識障害、視覚障害、言語障害、呼吸障害などのさまざまな症状が出るケースもあります。 本章では、橋出血の特徴的な症状である瞳孔の変化と四肢の麻痺について、解説します。 瞳孔の変化 瞳孔とは、目の真ん中にある「黒目」のさらに中心にある黒い部分です。瞳孔のはたらきは、目の中に入る光の量の調整です。まぶしいときは光の取り込み量を減らすために縮小し、暗いときは取り込み量を増やすために拡大します。 脳の奥にある「橋」には、瞳孔の大きさを調整するための神経が通っています。そのため、橋出血によりこの神経が影響を受けると、瞳孔が極端に収縮するのです。両側瞳孔の高度縮小はpinpoint pupilともよばれ、橋出血に特徴的な所見です。 四肢の麻痺 橋には、四肢の運動機能を担う神経も通っています。橋からの出血がその部分を巻き込んだ場合、運動機能の調節ができなくなり、手足の麻痺があらわれます。広い範囲で出血が起こった場合は、片側だけでなく、四肢の麻痺となるでしょう。 ただし、出血量が少なければ、「片側の麻痺に留まる」「運動は保たれて感覚のみ麻痺する」などの場合もあります。片側に麻痺が出る際は、機能が失われた脳の反対側の手足に症状が出るケースが一般的です。 脳内における「橋」の役割については、以下の記事で詳しく説明しています。橋出血について詳しく知りたい方はあわせてチェックしていただければ幸いです。 橋出血の治療は「保存療法がメイン」 橋出血の治療は、原因となる血圧を下げる「血圧コントロール」「脳のむくみ予防の点滴」などの「保存療法」が基本です。 脳のほかの部位で出血したときは、血腫(出血によって生じた血の塊)を取り除く手術をするケースがあります。しかし、脳の深部にあり、正常な組織を傷つける可能性が高いため、基本的に橋出血の手術はおこなわれません。 また、身体を動かしても問題のない状態になり次第、日常生活に戻るためのリハビリもおこないます。 橋出血の治療法は、以下の記事で詳しく説明しています。 橋出血の死亡率は約50% 橋出血の死亡率は、約50%です。(文献1) 入院時の意識レベルが低い、出血が多いなどの場合は死亡率が高く、予後も不良です。場合によっては出血してから数時間で命を落とすケースもあります。 出血の範囲が小さく、量も少ない場合の予後は比較的良好で、退院後は自宅での生活に戻れる方もいます。しかし、運動麻痺や感覚麻痺などの後遺症が出る方も多いのが現実です。自宅での生活が難しければ、回復期リハビリテーション病院や病棟に移動してリハビリを続けるケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」が取り扱う再生医療は、リハビリと併用すると身体機能の回復効果を高められます。「メール」や「オンラインカウンセリング」によるご相談も可能です。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 橋出血の予後については、以下の記事も参考にしてください。 橋出血の予防には血圧コントロールが大切 橋出血のみならず、脳出血の最も多い原因は高血圧です。高血圧は一般的な病気であり、多くの人が指摘されたことがあるのではないでしょうか。 高血圧は、ほかの生活習慣病と同じく、食事、運動が基本的な治療です。とくに塩分の摂りすぎには注意した方が良いでしょう。 血圧が高い状態が続いている場合は、投薬治療が必要な場合もあるため、医師に相談してください。 脳出血が再発すると、今回無事だった部位もダメージを受け、さらに後遺症が重くなる可能性も考えられます。再発を防ぐために、できる限りの対策をおこないましょう。 まとめ|橋出血の初期症状があらわれたらすぐに受診を 本記事では、橋出血の初期症状やその後あらわれる症状、死亡率などを詳しく解説しました。 橋出血の初期症状は、意識障害や頭痛などです。脳出血はいきなり起こるため、予兆や前兆がないケースもありますが、初期症状を知っておくことで早めの受診が可能になるでしょう。 また、意識がない、出血量が多いなどの場合の死亡率は高く、助からないケースも珍しくありません。高血圧は橋出血のリスクを高めるため、減塩や運動などの生活習慣にも気をつけましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。壊れた脳細胞の再生ができれば、リハビリの効果を高める、再発防止などの効果が期待できるでしょう。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 橋出血の初期症状に関するよくある質問 橋出血の症状が出た人におこなうリハビリは何? 橋出血後に姿勢の保持が難しい、歩行時のふらつきなどの「運動失調」という後遺症が出た場合、以下のようなリハビリをおこないます。 フレンケル体操 重り負荷での運動 弾性緊縛帯 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 橋出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく説明しています。 橋出血を予防する方法は何? 橋出血はほかの脳出血と同様に、「高血圧」によって起こるケースが多くみられます。完全な予防は困難ですが、適正な血圧の維持がリスクの低下につながるでしょう。 具体的な方法は、以下のとおりです。 生活習慣の見直し:減塩・適度な運動・健康的な食生活・禁煙 適切な薬物治療:処方された薬の正しい服用 橋出血の予防・再発予防のために、血圧が高い方は早めに治療を受けるようにしましょう。 脳出血を防ぐ方法は、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参照文献 文献1 Behrouz R. Prognostic factors in pontine haemorrhage: A systematic review. Eur Stroke J. 2018 Jun;3(2):101-109. doi: 10.1177/2396987317752729. Epub 2018 Jan 8. PMID: 31008342; PMCID: PMC6460408.
2023.09.18 -
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橋出血(きょうしゅっけつ:英語名「pontine hemorrhage」)は、脳卒中の中でも、とくに生命予後の悪い疾患の1つです。 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など、脳の血管が詰まったり破れたりする病気を総称して「脳卒中」と呼びます。 「脳卒中の症状ではないから大丈夫」と安心し、症状の発見が遅れると、重症を患う恐れがあります。 脳卒中の1つ「橋出血」の重症例では、意識・呼吸障害、四肢麻痺などをきたし、急激な経過で死に至るケースもあるのです。 本記事では、橋出血の症状・原因や治療について詳しく解説をしていきます。 橋出血とは 橋出血とは脳出血の1つで、5〜10%が橋出血に該当するといわれています。 突然脳の血管が破裂する症状なので、橋出血が発症すると以下の症状が起こります。 ・意識障害が起きる ・頭痛が続く ・手足の動きや感覚が鈍い など 血栓や動脈硬化で起こる脳梗塞を含め、脳の病態は複数あるので、早急に医療機関で受診しましょう。 なお、橋出血の疑いがすでにある方はとくに、以下の記事で初期症状や診断方法などを詳しくまとめました。 予後についても解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。 橋出血の「橋」は脳幹における構造物 橋出血が起こる「橋」とは、脳の一部分である「脳幹」の1つです。 上にある中脳、下にある延髄と共に「脳幹」の構成をしています。 脳幹には、以下4つの構造物があります。 ・神経伝達路 ・神経の中継(分岐地点) ・自律神経反射中枢 ・脳幹網様体 それぞれ構造の役割とともに、橋出血による症状について見ていきましょう。 ①神経伝達路としての役割と橋出血の症状 脳幹には神経線維の束が通っており、以下の役割を果たしています。 ・大脳から運動神経の伝達 ・大脳へ感覚神経の伝達 ・脳幹の真後ろにある小脳との連絡経路 橋出血は神経の伝導路が障害されるため、運動麻痺や感覚障害が起こるのです。 運動麻痺は出血の部位にもよりますが、重症例では両方の手・足ともに動かなくなる四肢麻痺をきたすケースもあります。 四肢麻痺と顔の麻痺まで加わる特殊な形に「閉じ込め症候群」があります。 意識や感覚は保たれますが、まばたきと一部の目の動き以外の運動がすべてできません。 看護・介護を行う人とのコミュニケーションは、眼の動きのみで行うのです。 他にも橋出血が発症すると幾つかの運動失調が起こります。 以下の記事では橋出血による運動失調の種類を詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 ②神経の分岐・中継地点の役割と橋出血の症状 脳幹には、脳から直接伸びる末梢神経である脳神経核をはじめ、神経回路の分岐点や中継地点になる複数の神経核(神経細胞体の塊)があります。 橋出血が発症する「橋」にも、以下4つの脳神経核があります。 三叉神経;主に顔面の感覚を伝える 外転神経;眼球の運動の一部を支配する 顔面神経;表情筋など顔面の運動に関わる 内耳神経;聴覚や平衡感覚を司る 橋出血で障害を受けた際の症状は以下の通りです。 ・顔の感覚や運動の障害 ・眼球運動の障害 ・聴力障害 とくに三叉神経や顔面神経は舌の動きや感覚などにも関わる神経です。 橋出血が起こると飲み込み障害とも呼ばれる「嚥下(えんげ)障害」も起こる可能性があるので注意しましょう。 ③自律神経中枢の役割と橋出血の症状 自律神経は生命維持の上で必要な動作を調整する神経です。 意識せずとも呼吸をし、心拍数をコントロールしています。 明るさに応じて瞳孔の大きさを調節しているように、自律神経は、脳幹に中枢があるのです。 橋には呼吸の中枢があるため、橋出血の患者様は呼吸障害が多くみられます。 橋出血では瞳孔の異常も多く、瞳孔の縮小や瞳孔を開く交感神経の障害もあるためです。 ④脳幹網様体の役割と橋出血の症状 脳幹の中心から背中側には「網様体」と呼ばれる神経線維の束と神経細胞体が合わさった構造物があります。 網様体の役割は主に以下3つです。 脳幹内の自律神経中枢と連絡し、生命維持機能を果たす 筋肉の緊張をコントロールする 大脳へ刺激を与えて意識を保つ 重症の橋出血だけでなく、網様体の障害でも呼吸・循環障害をきたします。 網様体の損傷により、「意識障害」の症例もあり、重症例では急激な経過で昏睡状態に陥っているケースもあるため、注意が必要です。 橋の網様体には眼球の運動の中枢もあるので、出血部位や程度により、さまざまな眼の動きの異常が認められます。 代表的な症例は、眼の動きがまったくできず、真ん中で固定される眼球の正中固定位が挙げられます。 眼球が真下に急に動き、ゆっくり真ん中に戻ってくる「眼球浮き運動」が認められるケースもあるので注意しましょう。 なお、橋出血を含め脳卒中は、手術しなくても治療できる時代です。 詳しくは以下のページをご覧ください。 橋出血が起こる2つの原因とそれぞれの治療法 橋出血の原因として、高血圧と血管奇形の2つが挙げられます。 原因により治療法が異なるので、それぞれ解説していきます。 高血圧で起こる橋出血と治療 橋出血の最大の原因は高血圧です。 橋への栄養動脈が、高い圧により破綻してしまいます。 橋は小さい中に重要な構造物が詰まっているところなので、出血が一気に広がり損傷が起こると、短時間で致命的になるので要注意です。 損傷を受けた脳幹の回復は難しく、手術は基本的には行いません。 可能な限り血圧を下げ、呼吸や循環などの生命維持のサポートをするのが治療の中心です。 血管奇形で起こる橋出血と治療 高血圧性の橋出血よりも若い方に多いのが、脳の血管奇形(赤あざ)によるものです。 代表的なものに「海綿状血管腫」と呼ばれる血管の塊があります。 生まれつき静脈の成分が拡張した場合によくみられ、発症場所や大きさなどは人によって異なります。 海綿状血管腫を持っている一部の患者様は、局所的な出血を起こすケースが大半です。 出血は少量で、重篤になりにくい反面、何度も繰り返すリスクがあります。 出血が落ち着いているときに手術が考慮されるケースもあるので注意してください。 橋出血についてよくあるQ&A Q , 橋出血の検査はどのようなものがありますか? A , 橋出血に限らず疑わしい症状があれば、CT撮影をします。 脳は灰色に映りますが、出血がある部分は白くなります。 なお、血管奇形の診断にはMRI も有用です。 近年では脳ドックなどにより症状がないまま発見されるものも多くあります。 Q , 海綿状血管腫は必ず手術が必要ですか? A , 症状のない海綿状血管腫が出血を起こすのは、年間で1,000人中4〜6人程度です。 手術の合併症リスクの方が高く、全員におすすめできません。 ただし、一度出血を起こすと、2年以内の再出血リスクが高くなります。手術のメリットとリスクを比較しつつ、手術ができない場合は、放射線治療が考慮されるケースもあります。 橋出血の後遺症や予後について、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 まとめ・橋出血の症状を理解して適切に治療しよう! 橋出血は、重症例では命にかかわりかねない恐ろしい病気の1つです。 「橋」と呼ばれる部位でもあるため、神経伝達や自律神経においての重要な役割を果たしています。 高血圧は重症の橋出血のリスクになるため、しっかりと治療を受けるのがおすすめです。 症状を見つけるタイミングも当然早い方が良いので、少しでも不安に感じた方は医療機関でのカウンセリングを検討しましょう。 ▼以下もご参考下さい <参考文献> 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 茂木陽介, 川俣貴一. 日本臨牀. 80(増刊号2): 320-324, 2022. 医学書院 標準解剖学 第1版 メディックメディア 病気がみえるvol7. 脳・神経 第1版 中外医学社 イラスト解剖学 第7版 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.14 -
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橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は非常に致死率の高い病気です。 かつて脳卒中は、日本人の死因の1位でした。しかし、医療技術が進歩するにつれて、脳卒中による死者数は徐々に減少しています。2022年においては死因の第4位でした。 橋出血は、その中でもいまだに生存率が低いとされており、発症すると半分近くの方が亡くなるという報告もあります。 本記事では、致命的になることの多い橋出血の予後の予測、また後遺症の回復について、解説をしていきます。 橋出血が重症化しやすいのはなぜか? 橋出血の最大の原因は高血圧です。高い血圧がかかり続けると、血管が急に破れてしまうことがあります。 血管をホース、血圧を水の勢いと考えてみてください。高血圧による脳出血は、勢いよく水を出しているホースが途中で破れてしまった状態と同じです。破れたところから、水はさらに激しく飛び散るでしょう。 脳は柔らかい組織で、一度出血すると簡単に止血できず、機能が急激に失われていきます。橋は意識や生命維持のための機能のコントロールを行う場所です。そのため、橋出血は死に直結することも少なくありません。 橋出血の生命予後に関わる症状とは? 重症の橋出血で起こる症状には次のようなものがあります。これらの症状は、橋出血において生命予後不良であることを示すものです。 ・発症早期の高度の意識障害 橋を含む脳幹は大脳へ刺激を与え、意識を保ちます。橋出血によりその刺激ができなくなると、昏睡状態など、高度の意識障害を認めます。 ・四肢麻痺 橋は大脳からの運動の伝達経路です。大脳の損傷でも麻痺は起こりますが、基本的には片麻痺(左右どちらかのみの麻痺)です。橋の広い範囲の出血では、運動神経が一気に障害されるので、四肢麻痺を呈します。 ・除脳硬直 意識障害下に、痛み刺激を加えると、手足が強く緊張して伸びたような姿勢になります。橋を含む脳幹のダメージにより、筋肉の緊張をコントロールすることができなくなるからです。 ・眼球正中位固定 橋には眼球の動きを司る部分があります。この障害により、目が真ん中から動かなくなります。 ・対光反射の消失 対光反射とは、瞳孔に光を当てた時、瞳孔の大きさが小さくなることです。この反射の中枢の「動眼神経」は橋の上の中脳にあります。橋出血の範囲が広いと中脳まで影響がおよび、対光反射は消失します。 ・失調性呼吸 脳幹の呼吸中枢が障害されるために起こる不規則な呼吸です。リズムも、一回ごとの呼吸の量も、バラバラで、呼吸が止まる直前の状態と考えられます。 ・中枢性過高熱 体温の調節中枢は脳幹のすぐ上にある間脳の視床下部というところです。広範な橋出血により、間脳までダメージが広がると、高い熱が出ます。 後遺症の治療について 重症にならず命が助かっても、出血で脳が傷つくと、後遺症が残ってしまうケースもあります。 例えば、神経の伝達経路の損傷による片麻痺、感覚障害などです。 橋は小脳という動作のコントロールに重要な部分と密接に関連しているため、運動失調によりふらついたり、動作がスムーズにいかなくなったりする方もいます。 また、物を飲み込む力が弱くなる嚥下障害も、頻度の高い後遺症です。飲み込みに関わる神経の多くは、橋をはじめとする脳幹から、顔・頸などに直接のびているからです。 後遺症のために、すぐに自宅に帰ることができなくなる方も多くいらっしゃいます。そのような場合に行うのが、リハビリテーションです。 急性期(発症直後の体の状態が安定しない時期)からリハビリが始まりますが、それだけでは不充分なことも多いです。そのため、患者さんの多くは、急性期がすぎると回復期病院(病棟)に移動し、集中的にリハビリを受けることになります。 リハビリの種類 理学療法・作業療法・言語聴覚療法の3種類があります。 ・理学療法 ・作業療法 ・言語聴覚療法 理学療法は、基本的な動作能力の回復を目指すリハビリです。 作業療法は日常生活に必要な作業の訓練を行います。同じリハビリでも、理学療法は立つ・歩くなどの基本的な動作、作業療法は着替え・入浴など応用的な動作が主体です。それぞれ、理学療法士・作業療法士という専門のスタッフがいます。 言語聴覚療法の担当は、言語聴覚士というスタッフです。構音障害などコミュニケーションの障害に対してリハビリを行います。また、橋出血に多い嚥下障害へのアプローチも行います。 リハビリの目標と後遺症の回復の見通しについて リハビリの最終的な目標は、個人個人の後遺症の具合、また退院後の生活環境を踏まえて決定していきます。そして、機能予後、つまり後遺症の回復見通しを勘案しながら、リハビリテーション計画を考えます。 では、回復の見通しはどのように立てるのでしょうか。 脳卒中全般で、発症時の重症度、画像の所見、入院時の日常生活動作(ADL)など、初期の評価からの機能予測についての研究が複数行われています。 また、急性期の回復の具合から、最終的な回復の見通しを立てる方法も模索されています。その中で、最初の1ヶ月での回復具合が大きいほど、最終的に自立した生活につながりやすいことが示されているのです。状態が許せば、早いうちから積極的なリハビリを行なうことは、回復につなげるために非常に重要です。 麻痺が回復するのは発症後どのくらいまでか 一般的に麻痺の回復は、3〜6ヶ月程度までと言われています。そのため、発症して早いうちから、集中的にリハビリに取り組むことが重要です。 この期間を過ぎてしまっても、リハビリを続ける意味がないわけではありません。麻痺の無い側でうまく補ったり、補助具を使ったりする訓練ができます。 まとめ・橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は現在の医療の進歩をもってしても、いまだに生命予後の悪い病気です。 また、後遺症も残りやすく、回復には時間がかかります。早いうちにリハビリに集中的に取り組むことで、麻痺などの後遺症が軽くなる可能性がありますので、諦めないことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考ください 橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 〈参考文献〉 奥田佳延 他. Neurosurg Emerg 13:63-71,2008. 木村紳一郎 他. 脳卒中の外科. 39: 262-266, 2011. 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 佐藤栄志. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 373-375, 2014. 厚生労働省.令和4年(2022)人口動態統計月報年計の概況. 結果の概要. (閲覧2023年6月28日). 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.03 -
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「視床出血の症状や後遺症は何があるの?」 「視床出血のリハビリ方法は?」 視床出血は、脳の中でも脳内ネットワークの中心となる視床で起こる出血です。 脳の中心である視床に出血が起きると、片麻痺や感覚障害、また運動失調の原因にもなります。 この記事では、視床出血で運動失調が起こる理由を始め、特徴や治療方法、リハビリなどを解説します。 再生医療の可能性も解説するので、視床出血後の症状に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。 視床出血とは【脳の視床で起こる出血】 視床出血は、脳卒中と総称される脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の中でも、脳の中の視床で起こる出血です。 主な原因は高血圧で、脳出血の中では、被殻(ひかく)出血の次に視床出血の頻度が高いとされています。(文献1)(文献2) 視床と被殻は隣にあり、視床出血は脳室とも隣接しています。視床出血と被殻出血は、脳室にまで出血が広がるかどうかが違いのひとつです。 また、視床出血は、重症度によってI〜IIIに分類されます。 その中でも、脳室穿破(せんぱ:脳室と呼ばれる脳脊髄液がある部分まで出血が及んでいるか)の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類できるのがポイントです。 視床に限局しているものをⅠ、内包に進展したものをⅡ、視床下部または中脳に進展したものをⅢとしています。 簡単に述べると、出血が大きくなるほど、数字も大きくなるようなイメージで良いでしょう。 視床出血による症状 視床は、脳内ネットワークの中心になる場所で、感覚神経をはじめ、さまざまな神経線維がここを経由しています。 視床出血によって、以下のようにさまざまな症状が起こるのが特徴です(文献3) ・片麻痺 ・瞳孔径の縮小 ・顔面神経麻痺(病変と反対側に起こる) ・知覚障害 ・病変側への共同偏視 ・外転神経麻痺 ・半盲 ・嘔吐 ・運動失調 など 他にも、視床出血では失語症や半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害が起こる場合もあります。(文献4) また、他の脳卒中と同じように症状が出たばかりの急性期には、視床出血が原因となり、嚥下障害(食べ物の飲み込み運動に支障が出る)が起こる可能性もあるでしょう。(文献5) 嚥下運動は、大脳から脳幹に至るまでの複雑なネットワークによって成り立っているからです。 視床出血による運動失調が起こる理由 運動失調とは、動作や姿勢保持などの協調運動に起こる障害です。 運動麻痺がないときもあれば、軽症の運動麻痺があるケースも含まれます。 視床出血で失調症状がでるのは、小脳の運動機能調節に重要な経路に小脳や視床、大脳皮質、橋があるためです。 上記のいずれかが障害されても、小脳性運動失調を生じるのです。 また、視床出血によって、深部感覚が障害されるのも原因のひとつと考えられています。 【失調と麻痺の違いとは?】 失調と麻痺の違いは、筋力の低下があるかどうかです。 視床出血による運動失調だと、意識障害や片麻痺を伴う場合が多い傾向にあります。協調運動障害や不随意運動、感覚障害が認められる場合は少ないとされています。 つまり、運動失調の症状があっても、四肢の麻痺によるものなのか判別がつきにくいと考えられるのです。(文献6) 視床出血の種類と特徴 運動失調の種類には、以下のようなものがあります。 視床出血の失調症状では、四肢の失調症状や歩行の異常が認められます。 視床出血の治療方法 視床出血が起こったときの治療は、血圧を下げるのが中心となります。視床は脳の深部にあるため、手術適応にはなりにくいのです。 また、視床出血によって、水頭症と呼ばれる脳室に脳脊髄液がたまる症状になってしまう場合があります。 水頭症を放置しておくと、脳ヘルニア(脳の一部が頭蓋骨の外側に飛び出してしまう状態)になる危険性があるのです。 呼吸障害などが起こり生命に関わるため、シャント術の手術を行い、余分な髄液を脳室から腹腔にまで流します。 視床出血後のリハビリについて【後遺症が出る場合】 視床出血では、発症後から感覚障害があった場合、感覚障害の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。 運動失調が残る場合を始め、出血が大きいときは、片麻痺の後遺症が出る可能性もあるでしょう。 視床出血後、ある程度落ち着いた段階で、作業療法や理学療法などのリハビリを行います。 ・作業療法 ・理学療法 作業療法 作業療法では、麻痺している上肢(肩口から先の手)を積極的に使い、日常生活への復帰を目標とします。 たとえば、麻痺側の手を中心に動かして、食事に必要なお箸の使い方などを訓練する流れです。 リハビリは毎日続けて行うと、身体機能をサポートする働きかけにつながります。 理学療法 理学療法では、以下のように、日常生活を送る上で必要な動作の練習をします。 ・重り負荷 ・弾性包帯による圧迫 ・フレンケル体操 ・立ち上がりや立位時の荷重負荷練習 ・視覚誘導 視床出血後には片麻痺が出て、運動障害と運動失調症状が同時に起こる場合もあるでしょう。 そのため、視床出血後のリハビリの一つとして、免荷式(めんかしき)トレッドミルの機械を使い、歩行のリハビリを行います。 上記の方法は、体を上から吊るしてハーネスで体を支えると、足にかかる体重を調整できて、バランス感覚を鍛える働きかけにつながります。(文献8) 視床出血に関するリハビリについては、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 まとめ|視床出血による運動失調はリハビリと再生医療の治療法もある 視床は脳内ネットワークの中心で、視床出血が起こると運動失調などの症状が出る場合もあります。 視床出血は後遺症が残ってしまう可能性が高い疾患です。 ただ、当院ではリハビリに再生医療を組み合わせて、脳神経細胞の修復や身体機能の改善への取り組みを行っています。 また、関連する内容として、当院の患者様で視床出血後に左半身の麻痺があり、膝の強直における幹細胞治療の実績もあります。 脳卒中後の後遺症に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献 文献1 加齢の面からみた脳出血の部位 文献2 脳血管障害による脳室内出血症例の臨床的検討一脳室内出血の重症度評価と転帰についてー 文献3 脳出血部位と症状 (CM Fisher)|秋田大学 大学院医学系研究科 文献4 原著視床出血の高次脳機能障害 文献5 急性期脳出血における摂食・嚥下障害の検討 文献6 運動失調を主徴とした左視床出血の1例 文献7 神経メカニズムから捉える失調症状 文献8 運動失調に対するアプローチ
2023.07.27 -
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橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 橋という脳の一部に出血が起こった後には、運動失調という後遺症が残ることがあります。 今回は、橋出血後の運動失調とはどのようなものか、そしてどのようなリハビリプログラムがあるのか解説し、最新治療法の一つである、再生医療の可能性にも触れていきます。 ぜひ参考にしてみてくださいね。 橋出血とは?どのような症状が出るの? 橋出血(きょうしゅっけつ)とは、脳幹という脳の一部分の中の橋で起こる出血のことです。 脳幹は、中脳・橋・延髄に分けられますが、構造や機能は脳幹全体が同じようなものとなっています。橋出血は脳出血の中の約10%で、脳幹出血の中では橋出血が多くみられます。そのため、脳幹出血と橋出血が同じような意味で用いられるようです。 橋は大部分の脳神経の出入口であり、運動や感覚をつかさどる神経が通り、睡眠や覚醒、呼吸運動や循環機能などの自律運動をつかさどっている重要な部分です。 そのため、橋出血が起こると、以下のような重篤な症状が生じることがあります。 1)高度の意識障害 2)高熱 3)両側の瞳孔縮小 4)片側・両側の四肢麻痺、異常反射、知覚障害 5)高血圧 6)呼吸異常 7)眼球運動障害 8)運動失調 運動失調は、小脳の障害で現れることが典型的ですが、橋と小脳が連絡繊維を持っているため、橋出血を起こすと運動失調も生じます。 橋出血による運動失調の症状はどんなものがある? それでは、まずは運動失調の分類について解説し、その後橋出血による運動失調についても説明していきます。 運動失調の症状とは 運動失調とは、運動麻痺はない、または軽度であるにもかかわらず、動作や姿勢保持などの協調運動ができなくなるという状態のことです。 運動失調は、起立・歩行時のふらつきといった症状が代表的なものです。 その他にも、手の細かな動作も障害され、字を書くのが下手になったり、水を満たしたコップを持つと手が震えてこぼしてしまったり、またボタンをかけたり箸を使ったり、食事をすることがスムーズに行えなくなります。 また、むせるようになる、呂律が回らなくなるといった症状も出ます。 運動失調障害の分類 運動失調障害は、障害される部位によって、以下の3つに大きく分けられます。 1)小脳性運動失調 2)感覚性運動失調 3)前庭性運動失調 これらの3つは、以下のような特徴を持ちます。 引用)2 神経メカニズムから捉える失調症状 この中でも、先ほども述べたように、橋の出血でも小脳と橋が神経繊維で連絡をしているため、小脳性運動失調をきたすことがあります。 橋出血後のリハビリプログラムについて 橋出血後に、運動失調障害に対するリハビリプログラムをご紹介します。 フレンケル体操 フレンケル体操は、運動失調に対して古くから行われている治療法です。 反復訓練と、その訓練に集中することを基本としています。 身体の動きを目で見ながら、つまり視覚を使いながらの身体の動きのコントロールをします。 そのコントロールを反復して練習することで、協調運動を再びできるようになることを期待しています。 重り負荷での運動 足関節や手関節、または腰部に重りをつけ、固有感覚入力の強化、つまり感覚を強めると、過剰な運動を抑える力が働き、運動失調が軽減するというものです。 弾性緊縛帯 重り負荷での運動と同様の発想です。 上肢・下肢の近位部を弾性包帯で圧迫し、感覚入力の強化をすることで、上下肢の過剰な運動を抑えられ、運動失調が軽減することを目的としています。 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) これは、筋肉や皮膚、関節などにある感覚の受容体を刺激しながら、体を動かしていくという手技です。 治療者(セラピストなど)が患者の関節を交互に動かし、 患者はその抵抗に打ち勝つように、 その関節を常に特定の位置に保つように指示します。 治療の効果の持続性は短時間ですが、毎日反復して行うことで、機能の回復が期待できるという報告もあります。 橋出血による運動失調についてよくある質問 Q1. 運動失調と麻痺の違いは? A1. 何かの運動をしようとする際に障害があるという状態を運動障害といいます。 運動障害には、「運動麻痺」と「運動失調」があります。 運動麻痺は、筋肉そのものや、筋肉に命令を送る大脳皮質や脊髄・末梢神経の障害によって、筋肉を自分の意思で動かせなくなった状態をさします。 一方、運動失調は、運動に関わる筋肉の動きを調整する機能が失われたため、スムーズな運動が難しくなった状態のことをさすという違いがあります。 Q2. リハビリの効果を高めるための方法はあるの? A2. リハビリは確かに失われた機能を改善する効果が期待できますが、一方で橋出血により死んでしまった脳細胞を再生させることは難しいです。 また、発症から時間が経つにつれて、リハビリの効果は現れにくくなることもあります。 一方、自己脂肪由来幹細胞の投与をすることで、脳神経細胞が修復再生し、運動失調からの回復や、リハビリの効果を高める効果も期待できます。 まとめ・橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 今回は、橋出血による運動失調の特徴やリハビリプログラムなどを解説しました。 急性期のみならず、発症から時間がたっている場合でも、再生医療を組み合わせてリハビリを行うことで、運動失調の改善が期待できます。 運動失調に今お悩みの方や、身近で困っている方がいる場合には、ぜひ一度当院の再生医療のご相談を受けてみてくださいね。 ▼以下もご参考下さい 橋出血とは?症状、原因、治療法を医師が分かりやすく解説 参考文献 脳の機能と構造 「危ないめまい」, 後頭蓋窩の急性脳血管障害 (その1) 2 神経メカニズムから捉える失調症状 症状|(疾患・用語編) 運動失調症|神経内科の主な病気 失調症の リハビリテーション 4 小脳性運動失調のリハビリテーション 医療―体幹・下肢について―
2023.07.24 -
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脳幹出血の後遺症|運動失調の特徴とメカニズム 脳幹は意識を保ち、呼吸や循環を調整する役割を果たしています。脳幹出血が起こると、重度の場合は四肢麻痺や呼吸障害・意識障害をきたし、亡くなることもあります。その一方で、一部の方では出血が軽度で済むことがあります。しかし、軽症であっても、日常生活に支障をきたす後遺症を残してしまうことがあります。 脳卒中の後遺症として思い浮かぶものは何でしょうか。一般的には麻痺や感覚の障害、あるいは注意や記憶・遂行能力などにかかわる高次脳機能障害のイメージが強いと思います。 脳幹出血の後遺症でも、顔面神経麻痺や片麻痺(体の左ないし右半身どちらかの麻痺)、感覚障害などをきたします。さらに、「運動失調」に悩まされる方もいます。 今回の記事では、この「運動失調」について、どのような症状が起こるのか、なぜ脳幹出血で起こるのかについても解説していきます。 運動失調とはなにか? 運動失調とは、筋肉同士の連携がうまくいかず、姿勢やバランスを保ったり、動作をスムーズに行ったりすることができない状態を指します。 運動失調は原因により、次のように分けられます。 ・小脳性 小脳は運動のコントロールを行う場所です。協調運動に関与する領域が侵されることで運動失調が起こります。 協調運動とは、動作を行う際に必要な関節・筋肉などを調整しながら活動することです。これができなくなることで、手足の細かい動きの調整ができなくなったり、歩くときにふらついたりなど多彩な症状が出現します。 ・前庭迷路性 バランスをとるための平衡感覚に重要な前庭器官や、そこから情報を伝える神経の障害により起こります。そのため、立ったり歩いたりする際にバランスがとりづらいという症状が目立つようになります。 ・脊髄性 脊髄に障害が起こると、筋肉の伸び縮みの具合や関節の状態についての感覚(深部感覚)が障害されます。その結果、自分の筋肉や関節の状態がうまく把握できず、ふらつきが起こります。一部は視覚情報で補完できるため、目をつぶるとふらつきが強くなり、立っていられなくなるという特徴があります。 ・大脳性 大脳は小脳とともに協調運動に関わります。そのため、小脳性失調と症状が類似しています。 ・その他 末梢神経の障害などによっても運動失調をきたすことがあります。 脳幹出血で運動失調が起こるメカニズムとは 脳幹出血で運動失調が起こるのはなぜでしょうか。 脳幹は小脳の前面にあり、神経線維でつながっています。脳幹出血が起こると小脳との連絡経路に障害が起こります。そのため、脳幹出血では、小脳性失調の症状を認めることがあるのです。 また、脳幹には前庭から情報を受け取る前庭神経核という部分があります。脳幹出血により前庭神経核が障害を受けると、前庭迷路性失調をきたします。 どのような症状が起こるのか 脳幹出血で起こる運動失調では、例えば次のような症状が認められます。 ・体幹失調 体幹のバランスをとることができず、歩くときに足を広く開いて歩くようになります。また手足の動きがバラバラになり、まるで酔っ払っている時のような歩き方になります。体幹失調が強いと、座っている時も状態がぐらぐらと揺れてしまいます。 ・構音失調 話し言葉のリズムが乱れ、音の高さや大きさがバラバラになります。そのため、酔っ払っているときのような呂律の回らない喋り方になります。 ・四肢失調 手足の動きを目的のところで止めることができなくなる測定障害が起こります。結果、目の前に置いてあるものを上手く掴めなくなります。 また、反復拮抗運動障害と言って、素早く反復する動きを繰り返すことが苦手になります。例えば、手首を素早く裏表に返すような動作、「お星様キラキラ」のジェスチャーが上手くできなくなります。 ・眼球失調 目の動きを上手くコントロールできず、ものが二重に見えたり、めまいが起こったりします。 ・企図振戦 振戦とは震えのことです。何かをしようとしたときに手が震えます。特に、目的のものに手が届きそうになったときに震えが強くなります。 ・嚥下障害 ものを飲み込むことは複雑な動作の組み合わせです。運動失調が起こると、噛んだり舌で食べ物を送ったり、喉の筋肉を動かしたりという動きが上手に調整できなくなるとされています。 脳幹出血の運動失調についてよくあるQ&A Q, 運動失調と麻痺の違いは? A, 麻痺とは、医学的には運動麻痺のことを指すことが多いです。脳やそこから伸びる神経の障害により、手や足などの体の部分が自分の意思通りに動かせない状態です。「思ったように力が入らないので動かない」という状況になります。 一方、運動失調とは、運動麻痺がないのにも関わらず、筋肉が協力してうまく働かないことを指します。その結果、姿勢を保ったり、円滑に動作をしたりすることができなくなります。「ふらふらする」「スムーズに動くことができない」という状態です。 脳幹出血では、出血の部位や程度により、この両方がさまざまな程度で起こり得ます。 Q, 運動失調と協調運動障害の違いは? A, 協調運動障害は、運動失調の一つの形と捉えることが多いようです。特に、手足の運動が上手くできないことを協調運動障害と呼ぶことが多いです。 Q, 脳幹出血後の運動失調の治療は? A, 脳幹出血により傷ついてしまった神経を取り替えることはできません。そのため、失われた機能の回復と、残っている機能の維持のためのリハビリテーションが行われます。 リハビリを行う際は、上肢・体幹・下肢など部位ごとに、どのような症状がどの程度あるのかの検査・評価を行い、目標を設定していきます。個々人の目標毎にプログラムを組むため、焦りすぎず、セラピストと相談しながら継続しましょう。 まとめ・脳幹出血の後遺症|運動失調の特徴とメカニズム 脳幹出血後により運動失調が起こると、回復のためには長期的な訓練が必要になります。これまで無意識下にできていた動作が難しくなり、そのままでは日常生活に大きな影響を及ぼすからです。 目の前のコップをとる、まっすぐ歩くなど、これまで何気なく行っていたことができず辛い思いをされる方も多いです。 リハビリでは、失った機能を取り戻したり、残っている機能を伸ばして補完したりする訓練をしていきます。問題なく生活できるようになるまでには時間がかかりますが、少しずつ確実に継続していくことが大切です。 以上、脳幹出血の後遺症で運動失調の特徴とメカニズムについて記載させていただきました。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考下さい 脳幹出血の原因とは?今すぐ見直せる3つの生活習慣で予防を! 参考文献 渡邊裕文. 関西理学. 6:15-19. 2006. 水澤英洋. 日内会誌. 101:669-674.2012. 後藤淳. 関西理学.14:1-9.2014. 望月仁志、宇川義一. Jpn J Rehabil Med 2019;56:88-93 福岡達之、道免和久. Jpn J Rehabil Med 2019;56:105-109
2023.07.20 -
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脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ! 脳幹出血を起こすと、重度の場合は意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などをきたします。軽度の出血でも、片麻痺や感覚障害、運動失調、嚥下障害や高次脳機能障害などの後遺症を残します。看護が必要なくなっても、元の生活に戻るまでには長い時間が必要です。少しでも後遺症を軽減し、寝たきり状態を防ぐために、リハビリテーションが重要となります。 リハビリテーションの内容は、発症からの時期により変わってきます。リハビリでは、「急性期」「回復期」「生活期(維持期)」という3つの時期に分けてプログラムを組みます。脳幹出血の具体的なリハビリテーションを、3つのステージ別に見ていきましょう。 急性期;早期からの介入が大切! 急性期とは、脳幹出血が起こって、まだ完全に状況が落ち着いていない時期を指します。発症から概ね2週間〜1ヶ月程度です。治療と併行しながらリハビリを進めていきます。 まず目指すのは、早い段階でベッドから離れる「早期離床」です。脳幹出血をはじめとした脳卒中では、体の状態に問題がなければ、24〜48時間以内にリハビリ介入をする方が、回復が早いとされています。 最初に行うことは、寝返りや、体を起こして座ることです。可能であれば、立ち上がり、補助具で歩くリハビリに進みます。着替えなどの日常生活に直結する動作を行うセルフケア訓練も開始します。 また、脳幹出血の患者さんでは、ものを飲み込む力が落ちる嚥下障害を伴っている方が多いです。肺炎予防のためにも、早くから嚥下の評価と口腔ケアを開始します。 一方で、重度の脳幹出血例では、呼吸や血液循環の障害を認めます。脳の周りにまで出血して、髄液の流れに影響する水頭症になることもあります。状況が落ち着かないと早期離床はできません。この場合はベッド上でできるリハビリを行います。 例えば、関節が固まらないように動かしていく関節可動域訓練などが該当します。 回復期;リハビリが中心の生活! 急性期から脱して体の状態は安定していますが、後遺症が固まりきっていない時期です。失われた機能を回復し、残っている機能を高める訓練をします。 多くの脳卒中患者さんは「回復期リハビリテーション病棟」というところに移ります。リハビリを専門にしている病院や病棟です。 理学療法士や作業療法士・言語聴覚士といったリハビリスタッフが多くいます。1日最大で3時間のリハビリが可能です。施設によっては、休日も含めてほぼ毎日リハビリを行っているところもあります。 一口に脳幹出血といっても、人により後遺症の内容や程度はさまざまです。症状別のリハビリは急性期から少しずつ始まります。回復期病棟ではそれをさらに掘り下げ、一人一人に合った詳細なリハビリプログラムを組んでいきます。ここでは一例を紹介します。 〈症状別のリハビリの例〉 運動麻痺 筋肉や関節の動きを自分の意思通りに動かせるよう、繰り返し訓練します。麻痺は3〜6ヶ月程で回復が止まってしまいます。症状が固定した後でも、麻痺のない部分でカバーしたり、装具や杖などを利用したりして動く訓練も行なっていきます。 運動失調 筋肉同士の協調性が失われ、運動をスムーズに行えない状態を運動失調といいます。 運動失調のリハビリでは、例えば、目で確認しながら何度も動作の練習をします。重りを使い、固有感覚(身体の位置や力の入れ具合を感じる感覚)を刺激して、運動のコントロールを行う訓練も行います。一つの動作をいくつかに区切って行うことも効果的です。 嚥下障害 急性期に引き続き、嚥下障害へのリハビリも続けます。どのくらいの固さのものが食べられるのか、一口量はどのくらいが適切かなど、詳細な評価を行います。飲み込む力を強化する訓練をしながら、少しずつ食事の形態を調整していきます。 構音障害 呂律が回らない、声の大きさのコントロールがつかないなど、喋りづらさ(構音障害)を抱える方が多いです。正しい発音の練習や、話すスピードを調整する訓練によって、コミュニケーションが取りやすいようにしていきます。 綿密なリハビリテーションを続けながら、自宅への退院、社会復帰に向けた支援も行なっていきます。 生活期(維持期);家に帰った後も重要! 実際の生活に戻った上で、訓練を続けていく時期です。活動度を維持・向上させ、可能な範囲で自立した生活ができるように考えていきます。 リハビリができる施設に通ったり、訪問リハを受けたりすることで、体力や機能の維持・向上を図ります。 また、脳幹出血の最大の要因は高血圧です。運動習慣をつけることは、血圧を下げ、再発防止にも役に立ちます。 脳幹出血のリハビリについてよくあるQ&A Q, どうして急性期と回復期で病院(病棟)が変わるのですか? A, できれば同じところでリハビリを続けたいですよね。でも、場所が変わることにはきちんと理由があります。 発症直後に入院する「急性期病院(病棟)」の目的は、体の状態を落ち着かせることです。リハビリのための時間や人手には制約があります。治療がひと段落すれば、よりリハビリに特化した場所に移る方が良いのです。 次に急性期病棟に入院が必要な方にベッドをあけるためにも、状況が落ち着いてくれば行き先の調整を考え始めます。 Q, どのくらいの期間、入院が必要ですか? 麻痺などの回復が一定の段階に達し、日常生活に必要な動作ができるようになれば退院を考えます。どこまでできるようになるかという目標は患者さん毎に異なります。 ただし、回復期リハ病棟の入院は脳卒中の場合は最大で150日(高次脳機能障害がある場合は180日)までと決まっているため、これを超えることはありません。 まとめ・脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ 脳幹出血後は、早期からアプローチをすることにより、後遺症を軽減し、もとの生活に近い状態に戻ることを目指していきます。とても時間がかかりますが、しっかりとリハビリテーションを続けていきましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下も参考にされませんか 脳幹出血後の後遺症(麻痺や障害)に「最新の治療法」という選択肢! 参考文献 標準リハビリテーション医学第4版【電子版】 医学書院. 2023年.東京 日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2021. 後藤淳. 関西理学.14:1-9.2014. 福岡達之、道免和久. Jpn J Rehabil Med. 56:105-109. 2019. 藤島一紘. ブレインナーシング 39(2): 320-323. 2023.
2023.07.17 -
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脳幹出血は、命に関わる深刻な病気です。脳幹には生命維持に関わる機能が集中しているため、ここで出血が起こると最悪の場合、突然死を招く場合もあります。 本記事では、脳幹出血で突然死する可能性について解説しています。早期発見につながる前兆サインも紹介しているので、健康管理に力を入れたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血は突然死を起こす可能性がある【余命が短いケースも】 脳幹出血とは脳の脳幹部分に出血を引き起こす脳出血の一種です。 脳幹は人間の生命活動をつかさどる中枢で、呼吸・心拍のコントロールや視覚・聴覚の処理、ホルモン分泌などを担当しています。 この部位で出血が起きると、四肢麻痺や意識障害など深刻な後遺症を残す可能性があり、最悪の場合は突然死を招き余命が短くなるケースもあります。 一方で、出血量が少ない場合は、症状が軽く予後が良好なケースもあります。重症化を防ぐためにも、以降で紹介する脳幹出血の前兆サインを覚えて、早期発見に努めましょう。 以下の記事では、脳幹出血の後遺症について解説しています。後遺症の種類や症状を詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 なお、後遺症の治療には人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が効果的です。再生医療により身体の機能(後遺症)が回復した症例は数多く報告されています。具体的な症例が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血で突然死のリスク警戒となる3つの前兆サイン 脳幹出血は、突然死のリスクを伴う怖い病気です。早期発見のためには、以下3つの特徴的な前兆サインを知っておくのが大切です。 ・めまい ・いびき ・視覚の異常 順番に見ていきましょう。 めまい めまいは、脳幹出血の症状の1つです。そのため、普段と異なる激しいめまいを感じた際は、脳幹出血の疑いがあります。 めまいが起こる原因は、脳幹内の体全体のバランスを調整する機能が出血により破綻するためです。(文献1) 脳幹出血によるめまいは、同時に目や手足の麻痺、顔のしびれなどを含む複数の症状が現れるケースが多いです。複数の症状が同時に現れた場合は、脳幹出血である可能性がより疑われるため、医療機関を受診して検査してもらうと良いでしょう。 早期の対応で命を守れる可能性が高まります。 いびき 脳幹出血における前兆のサインとして、いびきが大きくなることがあります。脳幹は呼吸や血圧を調整する機能があり、その機能に問題が生じると、大きないびきが発生するのです。 以下のように、いびきに変化が見られたら体からの警告サインかもしれません。 ・いつもより大きないびきをかく ・段いびきをかかないのに急に大きないびきをかく 「こんないびきはおかしい…」と感じたら、脳幹出血の疑いを視野に入れて医療機関の受診を検討してみましょう。 視覚の異常 脳幹は視覚情報を処理する役割も担っているため、出血が起きると視覚に関わる症状が現れることがあります。 たとえば以下のような症状です。 ・視野が狭くなる ・視力の低下する ・ものが二重に見える ・光がいつもよりまぶしく見える 視覚の異常は、目の問題だと思ってしまうケースも多いため、脳の異常に気づくのが遅れる場合もあります。早期に対応できるよう、視覚異常も脳幹出血の症状の1つであると覚えておきましょう。 脳幹出血に有効は2つの治療法 ここでは、脳幹出血に有効な治療法を2つ紹介します。 ・保存療法 ・再生医療 治療内容をそれぞれ詳しく見ていきましょう。 保存療法 脳幹出血では、保存療法が中心となります。 まず優先されるのは、血圧を下げて安定させることです。さらなる出血を防いで、脳へのダメージをできるだけ少なくするためです。入院中は安静にしながら、点滴を使って血圧を下げる薬を投与します。 ほかの部分の脳出血では、たまった血液(血腫)を取り除く手術をおこなう場合があります。しかし、脳幹出血の場合、手術は基本的に選択されません。 脳幹は、生命維持に関わる機能が集中しており、手術には大きなリスクがあるためです。また、脳幹はとても狭い空間にあるため、手術自体が困難です。 そのため脳幹出血では、血圧の管理や脳のむくみを抑える保存療法が一般的な治療法となります。 再生医療 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 再生医療では、麻痺や意識障害といった脳幹出血の後遺症の回復を早めたり、脳卒中の再発を予防したりする効果が期待されています。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング まとめ|脳幹出血における突然死のリスクを把握して前兆サインを見逃さないようにしよう 脳幹出血は命にも影響を及ぼす怖い病気ですが、早期発見・早期治療で重症化のリスクを軽減できる可能性があります。 早期発見の鍵は、前兆サインの理解です。本記事で紹介した3つのサインを心に留めておき、普段と違う症状を感じたら、早めに病院への受診をご検討ください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血に関するよくある質問 最後に脳幹出血に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血を起こしやすい人はいますか? 脳幹出血は、高血圧が主な原因となる病気です。また、血管の病気や脳血管奇形をもつ人にも起こる可能性があります。 また、以下のような生活習慣も脳出血のリスクを高める要因です。。 ・喫煙 ・過度なアルコール ・運動不足 ・ストレス ・肥満 ・高脂血症 生活習慣の見直しと改善をおこなえば、脳幹出血の予防につながります。 脳幹出血のリハビリテーションにはどんなものがありますか? 脳幹出血のリハビリは、どのような症状が出ているかによって患者さんごとにプランが立てられます。大きくは、以下3つにわけられます。 プラン 内容 理学療法 ・筋力の強化やバランス能力の改善を目指す ・歩行練習・軽めの筋力トレーニングをおこなう 作業療法 ・食事や着替え、入浴といった日常生活動作の獲得を目指す ・指先や手を動かす訓練をおこなう 言語療法 ・言語障害や嚥下障害の改善を目指す ・発声発語訓練・舌の体操をおこなう 精神的なサポートや心理療法も大事なリハビリです。個々の患者さんの病態にあわせて、いろいろな角度からリハビリをおこなっていきます。 以下の記事では、脳幹出血のリハビリプログラムを解説しています。リハビリの進め方を 詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら余命はどれくらいですか? 脳幹出血の発症後における、公的データは見つかりませんでした。 ただし、脳幹出血の予後を調べたとある研究結果によると、70歳以上の死亡率が79%、70歳未満の死亡率が57%となっています。(文献2) 脳幹は生命の維持を司る部位のため、発症すれば生命に関わる危険性があると覚えておきましょう。 以下の記事では、脳幹出血の余命について詳しく解説しています。脳幹出血の予後への理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 【参考文献】 文献1:https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051111092.pdf 文献2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/1/30_1_38/_pdf
2023.07.13 -
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脳幹出血になったら回復の見込みはあるの? 回復にはどのような治療やリハビリが必要? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血を起こした人が無事に回復できるのか、不安を抱いているのではないでしょうか。 どのような治療やリハビリが必要になるか疑問に思っているかもしれません。 結論、脳幹出血から回復する見込みがあるかは、出血の度合いをはじめとする重症度によって異なります。重度の脳幹出血は回復の見込みがなく、重い障害が残る、あるいは死に至るといったケースも珍しくありません。 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療について、詳しく説明します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の生存率や治療がわかり、今後の見通しを立てられるでしょう。 脳幹出血の回復の見込みは重症度によって異なる 「脳幹」は、脳の中心部にあり、以下のような役割を果たす組織です。 循環 呼吸 眼球運動 体温調節 消化液分泌 自律神経の中枢 どの役割も、人間の生命維持に欠かせないものです。そのため、出血によって脳幹の機能が失われると、手足の麻痺や意識障害、呼吸停止などの重篤な症状を起こす可能性があるのです。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識の有無などの「重症度」によって大きく異なります。 重度の場合は回復が難しい可能性が高いものの、軽度〜中程度の場合は回復が期待できるケースもあります。 脳幹出血は助からない人が半分以上 脳幹出血は半分以上の人が助からないという、以下のような調査結果があります。(文献1) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 発症時に呼びかけや痛みなどの刺激を与えても反応しない意識レベルの場合、回復の見込みは難しいかもしれません。 一般的には、意識レベルの評価指標である「GCS:グラスゴー・コーマ・スケール」が7点以下の場合は、予後不良とされています。 また、意識レベルの低さに加えて、以下のような症状がある場合も予後は悪いといわれています。 高熱 呼吸障害 瞳孔・眼球の異常 手足の麻痺や過緊張 ただし、脳幹出血後の死亡率は、調査によってばらつきがあります。 別の調査では、死亡率を31%や40〜50%としているものもあるため、具体的な回復の見込みは担当の医師へ確認しましょう。(文献2)(文献3) 脳幹出血の死亡率・生存率は発症時の意識状態が重要 脳幹出血の回復の見込みは、「意識レベル」「全身状態」「重症度」など、複数の要因が関係します。 一般的には、以下の要因があると回復の見込みは低いといわれています。 麻痺が重い 出血の範囲が広い 意識不明など、発症時の意識状態が悪い また、脳幹出血の死亡率は、発症時の意識状態や出血量とも関係があります。海外の調査では以下のような死亡率が示されています。(文献4) 意識障害が低く、出血量が少ない場合:2.7% 意識障害が高く、出血量が多い場合:状態によっては100% 重篤な意識障害がみられ、出血量も多い場合は、助からない可能性が高いといえるでしょう。 後遺症の重さは受診スピードやリハビリの進行度によって変わる 脳幹は生命の維持に関わる重要な部位のため、機能が失われると重篤な後遺症が出る可能性があります。 元々の症状の重さに加え、発症後に受診までの時間がかかった場合や、リハビリテーションが進まない場合も後遺症が重くなりやすいでしょう。 しかし、重い後遺症が残ったとしても、諦めないことが大切です。失われた脳細胞や神経の再生は困難ですが、神経細胞群には新たなネットワークを築いて機能が改善する「可塑性」が期待できるからです。(文献5) 医師や理学療法士らの指導のもと、できる限りのリハビリテーションを行いましょう。 なお、半年後に歩けるようになるかは、発症後1カ月の状況で見通しがつくという報告もあります。(文献6) 脳幹出血の治療 出血直後である急性期のおもな治療法は、以下の2つです。 降圧療法:出血部位を拡大させないための治療 全身管理:呼吸や脈拍などをモニタリングして管理する 脳幹出血は他の脳出血と異なり、血腫を除去する手術はあまり適応されません。脳幹は脳の深い位置にあるため、手術の負担が大きく、メリットが少ないためです。 ただし、出血部位が広く、脳内の「脳室」という部位が拡大する「水頭症」になっている場合は、脳内の圧力を下げる「ドレナージ手術」を行うケースがあります。 また、意識状態が悪くて呼吸がうまくできない場合は、人工呼吸器による呼吸管理が必要です。症状が落ち着いて自力で呼吸ができるようになれば人工呼吸器を外しますが、自力で呼吸ができない場合には人工呼吸器を外せないケースもあります。 なお、症状によっては「気管切開」を行い、人工呼吸器の代わりに肺に空気を送るチューブを気管支につなぐこともあります。 【ステージ別】脳幹出血のリハビリの内容 脳幹出血の治療では、薬物治療に加えて、脳や身体の機能を回復させる「リハビリテーション(以下リハビリ)」も非常に重要です。 脳幹出血のリハビリ内容は、以下3つの時期で大きく異なります。 急性期(~3カ月) 回復期(3~6カ月) 生活期(6カ月以降) 本章の内容をもとに、リハビリの流れや概要を理解しておきましょう。 急性期のリハビリ 急性期のリハビリは「二次的合併症の予防」と「早期の機能回復」に重点をおきます。 最初は関節が固まらないためのリハビリを行い、麻痺が回復してきたら自力で動くための訓練へ移行します。具体的なリハビリの例は、以下の通りです。 座位訓練 嚥下訓練 移乗訓練(車いすに移る訓練) 立位歩行訓練 言語機能の回復訓練 近年、早くからリハビリを始めて寝たきりの時間を減らした方が、予後や後遺症の経過が良いといわれています。 脳幹出血は他の脳血管疾患よりも安静度が高いため、初期に行えるリハビリは限られますが、できる範囲で積極的に行います。(文献7) 回復期のリハビリ 急性期のリハビリで回復しなかった場合、「回復期リハビリテーション病棟」で集中的なリハビリを行います。(文献8) また、回復期には「痙縮 (けいしゅく)」という手足の筋肉が緊張して突っ張る症状があらわれます。そのため、ストレッチや筋弛緩薬による適切な対応も重要です。 リハビリを行っても機能回復が困難な場合は、装具の使用やできる方法での動作練習、環境の調節などを行い、自立した生活ができるよう目指します。 生活期のリハビリ 発症6カ月以降の「生活期」は、症状が安定したあとの維持が目的です。 筋肉の痙縮をやわらげる治療や装具の訓練・調整をしながら、日常生活を送れるように環境を整えます。 また、デイケアや訪問リハビリテーションなどの、介護保険を使用したサービスもよく使われます。 まとめ|脳幹出血は程度によって回復の見込みあり!リハビリをしっかりと行おう 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療、リハビリなどを詳しく解説しました。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識状態などの重症度によって異なります。軽症の場合は回復するケースもありますが、意識不明や呼吸障害などがある重症の場合は助からないケースが半分以上です。 脳幹出血のおもな治療は「降圧治療」と「全身管理」です。命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリテーションをできるだけ早期から開始します。 当院「リペアセルクリニック」では、再生治療(幹細胞)による脳卒中の再生医療を実施しています。再生治療は、脳幹出血の再発防止やしびれ、麻痺の改善が期待できる治療です。 もしあなたが脳幹出血の再発予防や治療の選択肢を広げたいと考えているなら、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 この記事が脳幹出血の回復の見込みを知るのに役立ち、今後の見通しを立てる助けになれば幸いです。 脳幹出血の回復の見込みについてよくある質問 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがありますか。 脳幹出血の代表的な後遺症は、以下の通りです。 麻痺 痙縮 感覚障害 言語障害 嚥下障害 排尿障害 高次機能障害 どのような後遺症が出るかは、脳幹出血によってダメージを受けた部位や程度によって異なります。 脳幹出血にならないようにするにはどうしたら良いですか。 脳幹出血は、高血圧が引き起こす「動脈硬化」が大きなリスクとされています。そのため、脳幹出血を防ぐには、高血圧を招く以下の内容を避けることが大切です。 塩分の摂りすぎ 暴飲暴食 運動不足による肥満 脳幹出血の予防については、以下の記事も参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 原発性脳幹出血患者の予後因子,Clinical Neurology and Neurosurgery,Volume 115, Issue 6, June 2013, Pages 732-735 文献2 急性期脳血管障害の臨床的研究,急性期脳血管障害の臨床的研究, 脳卒中, 1980, 2 巻, 4 号, p. 326-332, 文献3 特発性脳幹出血の外科的治療,Medicine (Baltimore). 2019 Dec; 98(51): e18430. 文献4 原発性脳幹出血:予後因子と外科的治療のレビュー,Front Neurol. 2021; 12: 727962.Published online 2021 Sep 10. doi: 10.3389/fneur.2021.727962 文献5 脳の機能回復と神経可塑性,石田和人,玉越敬悟,高松泰行,理学療法学, 40 (8 ) p535-537,2013 文献6 脳幹出血患者の予後予測,木村紳一郎,光眞邦哲ら,脳卒中の外科 39:262-266,2011 文献7 脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針,日本脳卒中学会「脳卒中急性期リハビリテーションの均てん化および標準化を目指すプロジェクトチーム」 文献8 脳卒中理学療法ガイドライン,日本神経理学療法学会
2023.07.10 -
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脳幹出血は、四肢麻痺や意識障害など重篤な後遺症が出る可能性のある病気です。 早めにケアをおこなえば回復が見込めるケースもあるので、後遺症が出たら早期リハビリを検討しましょう。 本記事では脳幹出血の後遺症の種類や治療方法を解説します。脳卒中の後遺症に対する有効な治療法「再生医療」も紹介しているので、治療方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがあるのか? そもそも脳幹出血は、脳幹という脳の中でも呼吸活動を司ったり、血圧を保ったりといった、生命活動にとって根幹となる機能をもつ部位に生じる出血のことです。 脳幹出血が起こると、命が助かったときでも後遺症が出る場合があります。 たとえば、両手足が動かなくなる四肢麻痺や、認識力や判断力が低下する意識障害、食事や水の呑み込みが難しくなる嚥下障害などがあげられます。(参考1) また、脳幹の一部である橋(きょう)の場所で出血が起こると、意識障害や全身の麻痺が起こり、出血が広がると呼吸困難となり、重篤な状態になる可能性もあります。ときに、出血量が多い場合には命が助からないケースもあり得るのです。 以下の記事では脳幹出血の後遺症の1つである「運動失調」について詳しく解説しています。具体的な症状や治療法も紹介しているので、運動失調の理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に効果的なリハビリや治療法 ここでは脳幹出血における後遺症の治療に有効なリハビリと再生医療について解説します。それぞれの目的や効果について紹介していくので、後遺症の治療方針を決める際の参考にしてみてください。 リハビリ 脳幹出血による後遺症のリハビリは、発症から以下3つの時期にわけてプログラムを組んでいきます。 ・急性期:発症から約2週間 ・回復期:急性期後、体の状態が安定した時期 ・維持時:回復期後、自宅に戻って生活をはじめる時期 急性期は、早期リハビリが推奨されています。安静状態でベッドに長期間とどまっていると「廃用症候群」(寝たきりによって筋肉の衰えや関節の硬化が起こる症状)を引き起こす可能性があるためです。そのため、急性期は廃用症候群の予防として、ベットの上で手足のストレッチや体位の交換といった軽い運動をおこなうケースが多い傾向にあります。 回復期は、後遺症により失われた機能を回復させるために本格的なリハビリを開始します。症状や重症度は個々によって異なるため、一人ひとりに合わせたプログラムの作成が必要です。リハビリ専門のスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の指導のもと、退院後の自宅での生活や会社復帰に向けた訓練をおこないます。 維持期は退院後、回復した機能の維持や向上を目指すリハビリを継続します。外来リハビリへの通院や自宅でのトレーニングを通して、機能の維持・改善を図っていく流れが一般的です。 以下の記事では脳幹出血のリハビリプログラム について詳しく解説しています。症状別のリハビリ 例も紹介しているので、気になる方は是非参考にしてみてください。 再生医療 脳幹出血の後遺症への治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 脳幹出血の後遺症に対する再生医療では、主に以下3つの効果が確認されてます。 ・脳神経細胞の再生による身体機能の回復 ・脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 ・脳血管の修復による再発予防 順番に解説していくので、詳しく見ていきましょう。 効果1. 脳神経細胞の再生により身体機能が回復する 傷ついた脳細胞を再生医療で修復すれば、麻痺や呂律困難などの後遺症の回復が期待できます。 再生医療に使われる幹細胞は、神経、血管、骨、軟骨などに変化する能力があり、炎症をおさえ症状の痛みや後遺症の痺れを緩和させる効果もあります。 自己の細胞を使用するため、身体への負担が少なく安全な治療が可能です。 効果2.脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 再生医療とリハビリと組み合わせれば、より高い回復効果が期待できます。発症から数年が経過した患者さんでも、幹細胞治療とリハビリの併用で症状改善の可能性が広がります。 再生医療をはじめたからといって劇的に後遺症がなくなるわけではありません。しかし「車椅子の方が杖で歩けるようになった」「呂律困難があったがスムーズな会話が可能となった」といった段階的な改善効果の希望がもてる治療法といえます。 効果3.脳血管の修復による再発予防 脳卒中の怖いところは再発率が高いことです。はじめは軽い症状でも、再発を繰り返せば後遺症が重症化していくリスクが高まります。 再生医療は傷ついた脳細胞を再生させるだけでなく、今後、脳出血や脳梗塞になるかもしれない傷ついた血管を予防的に修復させて、再発をおさえてくれます。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血の後遺症に対する理解を深めて適切な訓練や治療を受けよう 脳幹出血による後遺症の代表的な治療は、リハビリです。回復過程と個人の状態に合わせた適切なプログラムを実施すれば、段階的な症状の改善が期待できます。 近年では、脳幹出血における後遺症の治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、脳細胞の機能回復を促進します。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング 脳幹出血の後遺症に関するよくある質問 最後に脳幹出血の後遺症に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血で後遺症なしの確率はどれくらい? 厚生労働省の調査では、18歳から65歳の脳卒中患者1,584名のうち、後遺症がまったくないと回答した人は344名でした。 つまり、約2割の脳卒中患者は後遺症が出ず、約8割の患者には脳卒中によるなんらかの影響が出ている結果となっています。 以下の記事では、脳出血で後遺症が残らない確率について詳しく解説しています。脳卒中に関する調査結果を複数紹介しているので、理解を深めたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら回復の見込みはあるの? 回復の見込みは、患者さん一人ひとりの状態によって変わってきます。回復見込みを把握したい方は、担当医に聞いてみると良いでしょう。 以下の記事では脳幹出血の回復見込みに関する情報をまとめています。軽度または重度における障害の程度も解説しているので、理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 再生医療のメリット・デメリットが知りたい 再生医療のメリットは、患者さん自身の体から採取した組織を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低く、安全性の高い治療であることです。 また、従来の治療法(薬物療法や手術)が症状の安定化を主な目的としているのに対し、再生医療では損傷した血管の修復や新しい血管の形成を促すのが目的です。そのため、後遺症の根本的な症状改善が期待できます。 一方で再生医療のデメリットは、再生医療は2024年11月現在、保険適用外の自費診療となっているため、治療費が高額になる可能性があります。また、治療効果には個人差があるため、医師との十分な相談のもと慎重な判断が必要です。 【参考文献】 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/49/5/49_5_755/_pdf
2023.07.06 -
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脳幹出血になったら余命はどのくらい? どんな症状だったら余命に影響するの? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血になった人の余命がどのくらいなのか気になっているのではないでしょうか。 「今の症状だと、余命はどのくらいなのだろう」と、不安になっているかもしれません。 結論、脳幹出血の余命は症状の重さによって変わります。 脳幹出血のみの余命を調べたデータはないものの、重症の場合は発症後数時間から数日で亡くなるケースも少なくありません。ただ、発症した年齢が若い場合や出血量が少ない場合は、比較的余命に影響が出にくいこともあります。 本記事では、脳幹出血の余命や予後について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の余命が症状ごとにわかり、現在の状況や今後の見通しの理解を深められるでしょう。 脳幹出血の余命に関する正確なデータはないが予後は悪い 脳幹出血だけの余命を調べた正確なデータはありませんが、予後は全体的に悪いといわれています。 重篤な脳幹出血が起こると急激に容体が悪化し、発症後数時間〜数日で亡くなる方も珍しくありません。 脳幹出血は「脳出血」の一種で、脳内にある「脳幹」という部位から出血する病気です。おもな原因は高血圧によって脳の血管が破れることで、脳出血の約1割ほどが脳幹出血といわれています。 脳出血後の余命は、調査対象の年齢や病状が異なるため、研究ごとにややばらつきがあります。生存率に関するデータは、以下の通りです。(文献1)(文献2) 脳出血を起こした人の平均余命は12年 脳出血を起こした人の10年生存率は24.1% 初めて脳出血を起こした人の1年生存率は38%、5年生存率は24% 初めて脳卒中を起こした年齢が50歳以下の人は、70歳以上の人よりも5年生存率が高い つまり、脳出血を起こした人の4人に3人は、余命が10年未満といえます。脳幹出血は上記に示した脳出血のなかでも予後が悪い病気のため、余命は比較的短いと考えられるでしょう。 脳幹出血の後遺症について解説した記事はこちら 脳幹出血の回復の見込みとその期間について解説した記事はこちら 脳幹出血の余命が短くて助からない人が多い理由 脳幹出血の余命が短い理由は、脳幹の機能が失われると生命の維持が難しいからです。 脳幹は「中脳」「橋」「延髄」の3つの部位から成り立つ器官で、以下のように生命維持に重要なさまざまな役割を果たしています。 意識を保つ 呼吸や血液の流れを調節する 身体が受けた刺激を脳へ伝える 手足を動かす信号を脳から出す 脳幹が行っている「呼吸や意識の保持など」が不可能になると、生命の維持は難しくなります。そのため、出血が起こり脳幹の機能が失われると、余命が短いケースが多いのです。 なお、脳幹のなかでも「橋」という部位で起こるケースが多いため、脳幹出血は「橋出血」とほぼ同じ意味となります。 【重症度別】脳幹出血の症状と余命への影響 脳幹出血の重症度は、余命に大きな影響を与えます。具体的には「出血量」は重症度に大きくかかわり、出血量が少なければ軽症、多ければ重症です。 本章で、脳幹出血の症状と余命への影響を理解しておきましょう。 軽症の場合 以下のような症状のみの場合は、軽症で余命への影響は小さい可能性があります。 嚥下の障害 顔の感覚や運動の障害 手足の運動や感覚の障害 複視(ものが二重に見える) 運動失調(バランスが取れずにふらつく) これらの症状は、脳幹出血の前兆で気付いたときや脳出血・脳梗塞など他の脳血管疾患でもみられます。 また、血管の奇形による脳幹出血の場合は軽症で済みやすく、一度の出血で命にかかわることはほとんどありません。 しかし、奇形のなかでも「海綿状血管腫」は出血をくり返して大きくなりやすいため、いずれ重い後遺症が出る可能性があります。 早めの受診で悪化を防ぎ、予後を改善できる可能性を高められます。もし紹介したような症状を感じたら、迷わずに当院へメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてご相談ください。 重症の場合 以下のような症状が出ている場合は、出血の多い脳幹出血の重症例と考えられます。生存率は低く、余命は短いケースが多いでしょう。 両手両足の麻痺 異常な呼吸パターン 重篤な意識障害:昏睡など 中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高熱 除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態 瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼の大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など 救急車を呼んだときは意識あり・自発呼吸ありだったにもかかわらず、急激に悪化して短時間で命を落とすケースもあります。 脳幹出血の治療 高血圧による脳幹出血は手術の適応があまりなく、基本的には血圧を下げて体の状態を保つ「保存的治療」が最優先されます。出血でダメージを受けた脳幹に対しては、手術が状況をより悪化させる危険性が高いためです。 ただし、血管奇形が原因の脳幹出血の場合は、時期をみて手術を検討するケースもあります。 脳幹は手術による合併症リスクの高い部位です。手術するべきか、どのタイミングで手術をするべきかなどは、状況をみて慎重に判断します。 なお、命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリも重要です。近年、リハビリはできるだけ早い時期から始めると予後が良いとされるため、ベッド上でできるものから少しずつリハビリを行います。 脳幹出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 まとめ|脳幹出血の余命は短い人が多い 本記事では、脳幹出血の余命や、余命が短いといわれる理由などを詳しく説明しました。 脳幹は生命維持に欠かせない器官のため、脳幹出血によって機能が失われると余命が短いケースが多くみられます。ただし、軽症や前兆段階で気付いた場合、血管の奇形による脳幹出血の場合は、余命への影響が小さい可能性もあります。 手術のリスクが大きいため、積極的な治療ではなく保存的治療が原則となるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、厚生労働省に届出を行い、再生医療(幹細胞)治療による脳幹出血後の治療を提供しています。 再生医療は脳神経細胞の修復・再生や脳の血管を新しく再生する作用により、後遺症の回復や脳幹出血の再発予防が期待できる治療です。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事が脳幹出血の余命を知るのに役立ち、今後の生活を再建するきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくあるQ & A Q.脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか。 A.入院日数に関する脳幹出血単独のデータはありません。 ただし、厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般の平均入院期間は77.4日となっています。入院期間が比較的長いのは、脳卒中により神経にダメージが起こるからです。(文献3) 神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかることも大きいでしょう。 Q.脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。 A.一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。 すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。 脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありませんが、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。 Q.脳幹出血になったら助からないのでしょうか。 A.脳幹は生命維持に不可欠な器官のため、脳幹出血により機能が失われると助からないケースは珍しくありません。 ただし、脳幹出血で助かるか助からないかは重症度によって異なります。出血量が少なく障害の程度が低い軽症であれば、回復例もみられます。 助かるかどうかは、脳幹出血を初めて起こしたのか、再発なのかによっても異なるため、回復の見込みは医師に確認するのが確実です。 参考文献一覧 文献1 人口ベースのレジストリにおける脳内出血の発生率と10年生存率 Simona Sacco, MD, Carmine Marini, MD, Danilo Toni, MD, Luigi Olivieri, MD, and Antonio Carolei, MD, FAHAAuthor Info & Affiliations Stroke Volume 40, Number 2 文献2 初めての脳卒中から5年生存,Dzevdet Smajlović 1, Biljana Kojić, Osman Sinanović,Bosn J Basic Med Sci. 2006 Aug;6(3):17-22. doi: 10.17305/bjbms.2006.3138. 文献3 厚生労働省. 令和2年(2020)患者調査の概況. 3退院患者の平均在院日数等
2023.07.03 -
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脳幹出血の原因は何? 脳幹出血にならないための予防策はある? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血という病気に対して不安を抱いてるのではないでしょうか。 「今からできる予防法を知りたい」と思っている人もいるかもしれません。 結論、脳幹出血は動脈硬化が原因で起こるケースが多く、再発もしやすい病気です。しかし原因を知れば、適切な予防法を取れます。 本記事では、脳幹出血の原因や予防法について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血にならない方法がわかり、病気のリスクを軽減できるでしょう。 脳幹出血とは「脳幹(小脳・橋・延髄)で起こる出血」のこと 「脳幹」は、小脳・橋(きょう)・延髄という脳の部分を合わせた部位です。「呼吸」「体温調節」「ホルモン分泌」など、人間が生きるために重要な働きをしています。 脳幹出血によってそれらの機能が損なわれると命に関わることもあるため、あらかじめ原因や予防法に関する知識をつけておくことが大切です。 本章では、脳幹の働きや脳幹出血について説明します。脳幹出血の治療や生存率については、以下の記事も参考にしてください。 脳幹は生命の維持に不可欠な働きをしている 「脳幹出血」とは、脳出血の一種です。具体的には、脳のうち「脳幹」という部位の血管が破れて出血することを指します。 脳幹は、「小脳」「橋(きょう)」「延髄」からできており、心臓や呼吸などの生命維持に大きく関わります。各部位の働きは以下のとおりです。 部位 働き 小脳 ・筋肉の緊張や姿勢をコントロールする ・注意・言語・感情などの精神機能をコントロールする 橋(きょう) ・中脳や大脳、延髄などをつないでいる ・呼吸調節に関係する 延髄 ・呼吸や心臓の動きをコントロールする ・咳、くしゃみ、発生、発汗などにも関係する 脳内で出血すると血管からの酸素や栄養が供給されなくなり、脳はダメージを受けます。 また、脳内に血液があふれることで周りの脳細胞が圧迫される、出血により脳内の圧力が高まるなども、脳がダメージを受ける原因です。 出血により脳幹がダメージを受けると、意識不明の重体や寝たきり、ひどい場合は死に至るケースも珍しくありません。 脳幹出血は再発しやすい 脳幹出血を含む「脳出血」は、再発しやすい病気です。 具体的には、脳出血を10年以内に繰り返す確率(10年再発率)は55.6%というデータがあります。つまり、2人に1人の割合で、10年以内に脳出血の再発が起きています。(文献1) 出血によってダメージを受けた脳は、通常の医療技術による回復・修復は困難です。 また、脳出血を再発すると、初回はダメージを受けなかった部分もダメージを受けます。よって再出血時はさらに広い範囲の脳がダメージを受け、重い後遺症が出るケースもあります。 脳幹出血の主な原因は「高血圧による動脈硬化」 脳幹出血の主な原因は、「高血圧による動脈硬化」です。ただし、血圧に問題の無い人の場合、血管の奇形が原因のケースもあります。 本章の内容をもとに、脳幹出血の正しい基礎知識を身につけておきましょう。 脳幹出血後の回復については、以下の記事を参考にしてください。 動脈硬化は高血圧が原因で起こることが多い 脳幹出血を起こす「動脈硬化」は、主に高血圧によって起こると考えられています。 高血圧が動脈硬化を起こして脳幹出血に至る流れは以下のとおりです。 高血圧によって脳の血管に圧力がかかり続ける 動脈硬化が進み、血管がもろくなる 脳の血管が破れて出血が起こる 高血圧は「塩分の取りすぎ」「食生活の乱れ」「ストレス」「喫煙習慣」など、複数の要因が重なって起きるといわれています。(文献2) 「血圧が高くても体調は問題ない」と放置すると、脳出血につながる恐れもあるため、高血圧と診断された場合は医師の指導のもと早めに治療しましょう。 血管奇形が原因のケースもある 脳出血は、「脳動静脈奇形」という脳の血管奇形によって起こるケースもあります。脳動静脈奇形とは、脳の動脈と静脈をつなげる部分が「ナイダス」と呼ばれるとぐろを巻いたような固まり(奇形)になっている病気です。 奇形の部分は正常な血管よりも壁が薄いため破れやすく、20〜40代の若い人が脳出血になる原因の一つといわれています。 なお、奇形自体が痛みなどの症状を起こすことは、ほとんどありません。「脳出血」「頭痛」「てんかん発作」などの病気が出て見つかる、偶然受けた脳の検査で見つかるなどのケースが一般的です。 【今すぐできる】脳幹出血を予防する4つの方法 今すぐできる脳幹出血の予防方法は、以下の4つです。 減塩する 大量飲酒・喫煙を控える 肥満を解消する ストレスを溜めない 本章の内容をもとに脳幹出血の原因となる「高血圧」「動脈硬化」などのリスクを減らし、脳幹出血を予防しましょう。 減塩する 脳幹出血の大きな原因である「高血圧」の予防には「減塩」が有効です。 食塩摂取量の目標は、「健康日本21(第三次)」の目標値では7.0g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。(文献3)(文献4) 日本人は、食生活のなかで食塩の量が多くなりがちです。 以下に、厚生労働省が発信している減塩のコツを紹介します。ぜひ参考にして、毎日の食生活を見直してみてください。 1.漬物は控える 自家製浅漬けにして少量に 2.麺類の汁は残す 全部残せば2~3gの減塩になる 3.新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理 4.具だくさんの味噌汁にする 同じ味付けで薄味の調理 5.むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う 6.低ナトリウムの調味料を使う 酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングを上手に使う 7.香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう、七味、ショウガ、柑橘類の酸味を組み合わせる 8.外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する 引用: e-ヘルスネット(厚生労働省) 大量飲酒・喫煙を控える 大量の飲酒は、脳出血はもちろんのこと、脳梗塞やくも膜下出血のリスクも上昇させます。お酒の飲みすぎは避けましょう。 1日あたりの飲酒量の目安を、以下に紹介します。 ビール:中瓶1本500ml 清酒:1合180ml ウイスキー・ブランデー:ダブル60ml また、たばこの煙に含まれる有害物質は動脈硬化を起こし、脳出血をはじめとする脳の病気のリスクを高めます。(文献5) たとえば、たばこを吸う人は吸わない人に比べ、男性で1.3倍、女性で2.0倍脳卒中(脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞)になりやすいというデータもあります。 お酒の飲みすぎとたばこは、どちらも控えるようにしましょう。 肥満を解消する 肥満の解消も、高血圧に伴なう動脈硬化や脳出血のリスク軽減に役立ちます。 具体的には以下の内容を試してみてください。 週に2~3回、20~30分程度の運動を行う(ウォーキング・息が上がらない程度のジョギング・サイクリング・水泳など) バランスの良い食生活を心がけ、高脂肪、高炭水化物の食事は避ける ストレスを溜めない 過剰なストレスは血管の収縮を引き起こし、血圧を上昇させるため、脳出血の原因となります。 また、ストレスを溜めると、高血圧の原因になる暴飲暴食や過剰な飲酒、喫煙などにつながり、脳出血の間接的な原因になりかねません。(文献6) ストレスを溜めないよう「生活習慣を整える」「困ったことがあれば誰かに相談する」などを、心がけてみてください。 脳出血とストレスの関係については、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|生活習慣を見直して脳幹出血を未然に防ごう 本記事では、脳幹出血の概要や主な原因、予防策などを詳しく解説しました。 「脳幹出血」は脳出血の一種で、呼吸や言語機能に関連する「脳幹」から出血する病気です。最大のリスクは高血圧による動脈硬化ですが、血管の奇形によって起こる人もいます。 脳幹出血を防ぐには、高血圧にならないことが重要です。日頃から食生活や運動などに気を配ると良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療(幹細胞治療)による脳卒中の再生医療を実施しています。通常の保険診療では難しい壊れた脳細胞の再生も、再生医療なら可能です。 当院ではメール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、お気軽にお問い合わせください。 この記事が脳幹出血の基本的な知識を知るのに役立ち、効果的に予防できるきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくある質問 脳幹出血を起こしても助かりますか。 少しでも早く治療を受けることが大切です。脳幹出血は、その部位の役割や特徴から、生命に直結する危険性もある病気です。ただ、早く治療を開始できれば、命が助かる可能性ももちろんあります。 日頃から、高血圧予防などの生活習慣改善に努め、健康診断などを受けて体調管理をしておくことがおすすめです。 脳幹出血は再発するとどうなりますか。 脳幹出血が再発すると、さらに重い後遺症が出ると考えられます。今までダメージが最小限に抑えられていた部分もダメージを受けると、より言語や呼吸の機能が低下するからです。場合によっては、命に関わるケースもあります。 再発を防ぐために、脳幹出血になったことのある人は、医師の指示にしたがってしっかりと血圧のコントロールを行いましょう。 参考文献一覧 文献1 Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Mar;76(3):368-72. doi: 10.1136/jnnp.2004.038166. 文献2 e-ヘルスネット(厚生労働省) 文献3 健康日本 21(第三次)推進のための説明資料 厚生労働省 文献4 日本人の食事摂取基準(2020 年版)厚生労働省 文献5 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について 国立がん研究センター 文献6 舛形尚 ほか.高血圧外来患者の精神的ストレスと血圧コントロールの関係.日本病院総合診療医学会雑誌 2017:12(2)p13-17
2023.06.29