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後十字靭帯損傷と呼ばれる怪我をご存じでしょうか。後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ重要な靭帯で、膝の裏側にあります。 靭帯損傷または断裂と聞くと、スポーツで起きるイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、後十字靭帯損傷はスポーツだけではなく、転倒や交通事故によって起こるケースも少なくありません。 今回は、後十字靭帯損傷について、主な症状や診断方法、治療法について詳しく解説します。後遺症のリスクや完治までの期間などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 後十字靭帯損傷(断裂)とは 後十字靭帯損傷(断裂)とは、膝関節を構成する後十字靭帯が部分的または完全に断裂した状態のことです。 後十字靭帯が損傷または断裂すると、膝の安定性が失われ、運動時や日常生活において膝が崩れるような違和感が現れます。また、膝が腫れて痛みを感じるケースがほとんどです。 以下で、後十字靭帯の役割や損傷の原因などを解説するので、ぜひ参考にしてください。 後十字靭帯の主な役割 後十字靭帯は、膝関節の内側に位置し、大腿骨の内側顆から後方外側に向かって伸び、脛骨(すねの骨)の顆間隆起の後外方に停止します。後十字靭帯は、膝関節の安定性を保つために欠かせない靭帯です。 「後」十字靭帯と呼ばれる名前からわかるように、膝には「前」十字靭帯も存在します。膝の内部で2つの靭帯が十字型に見えることから、それぞれの名前で呼ばれています。人が膝を安定して動かせるのは、前十字靭帯と後十字靭帯が共に機能するためです。 後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太さと強度があり、脛骨(すねの骨)が後ろに脱臼しないように保持する働きをしています。また、安定して膝を捻る動作ができるよう膝を支える役目も担っています。 後十字靭帯損傷(断裂)の原因 後十字靭帯損傷(断裂)は、主に膝を曲げた状態で強く地面に打ち付けることによって発生するケガです。たとえば、交通事故でダッシュボードに膝を強く打ち付けたり、転倒して膝から転んで強い衝撃を受けたりするケースなどが、典型的な受傷機転として挙げられます。 ほかにも、スポーツでは、ラグビーやアメリカンフットボールなど、コンタクトが激しいスポーツ中に受傷するケースがあります。実際に、後十字靭帯損傷は、交通事故やスポーツ動作によるものがほとんどです。 後十字靭帯損傷(断裂)の症状 後十字靭帯損傷(断裂)の多くは、膝を打ちつけたことによって、膝の皿の下に擦り傷や打撲などの外傷が見られます。場合によっては、関節内に少量の血が溜まることもあります。 また、靭帯だけではなく、後ろの関節包(関節を包んでいる袋)も損傷している場合には、膝後方に皮下出血が見られることもあるため注意が必要です。なかには、膝窩部(膝裏)の痛みや、膝を曲げると痛いといった症状を訴える方もいます。 後十字靭帯は、一部の損傷で済むケースも少なくありません。しかし、靭帯が完全に断裂し、膝の安定性が乏しい場合は、階段の上り下りやしゃがみ込むときに膝がグラグラする感覚があります。 ▼ 膝が痛むときに疑われる病気について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 後十字靭帯損傷(断裂)の診断方法 後十字靭帯損傷(断裂)を疑う外傷があった場合、徒手検査と画像検査によって診断します。 以下で、後十字靭帯損傷の診断方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 徒手検査 後十字靭帯損傷(断裂)が疑われる場合は、まず診察を行い、膝関節の不安定性がないかどうかをチェックします。徒手検査とは、患部を動かしたり叩いたりして、患者の反応を観察し、治療すべき部位を特定するための検査です。 後十字靭帯損傷の検査として有名なものに、「後方引き出しテスト」と呼ばれる検査があります。後方引き出しテストの実施方法は、以下の2ステップです。 寝た状態で膝を曲げる 医師が脛骨(すねの骨)を後ろに押していく 後十字靭帯が機能していないと、後方引き出しテストをした際に、脛骨が後ろに落ち込んでしまうような感覚があります。 画像検査 後十字靭帯損傷(断裂)の画像診断は、レントゲンとMRIで実施します。靭帯自体はMRIだけでも評価できるものの、骨折を合併していないか確認するためにレントゲン撮影をするケースも少なくありません。 MRIでは、靱帯が完全に断裂しているのか、または部分的に損傷しているのかの評価が可能です。また、半月板や側副靱帯といったほかの部位の損傷についてもMRIで評価できます。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。後十字靭帯損傷が疑われる場合は、来院前でも良いのでぜひ気軽にご相談ください。 後十字靭帯損傷(断裂)の治療法 後十字靭帯の機能は、保存的治療でも比較的に良好に回復するとされています。そのため、一般的には保存療法が選択されるケースが多い傾向です。 以下で、後十字靭帯損傷(断裂)の治療法について解説するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 保存療法の場合は、基本的に膝関節の安定性を補助するための装具を2カ月程度使用します。保存療法は、後十字靭帯損傷が軽度で、膝の不安定感があまり強くない場合に選択する治療法です。 受傷から1〜2週間の急性期は、膝の腫脹や痛みがある時期のため、ある程度痛みが治るまでは負担をかけないように松葉杖やサポーターなどを使用します。また、痛みのない範囲で、早期から関節可動域訓練やストレッチなどを開始し、治療を進めていきます。 3週間程度で徐々に膝が動かせるようになり、装具を使用しながら筋力トレーニングやランニングなどを開始できるでしょう。その後、3カ月程度で8割を目安に筋力が回復したら、スポーツ復帰が可能です。 手術療法 後十字靭帯損傷(断裂)が重度で、保存療法では効果的な回復が見込めない場合には手術を選択します。手術は通常全身麻酔で行われます。 手術では、断裂した靱帯同士を縫合するのが難しいため、代わりにもも裏の筋肉(ハムストリング)の一部を採取し、靱帯のように形成して移植する方法が一般的です。 手術後は、膝を固定するために装具を使用し、術後3週間程度は体重をかけないようにします。入院期間は病院によって異なるものの、通常は膝に体重をかけられるようになると退院が可能です。 なお、後十字靭帯損傷の手術は、50万円前後の費用がかかるとされています。基本的には高額療養費制度の適応となるため、自己負担は軽減されます。高額療養費制度に関しては、加入している健康保険窓口で問い合わせてください。 再生医療 再生医療は、後十字靭帯損傷(断裂)を含めた膝関節の新しい治療法として注目されています。再生医療とは、損傷した靭帯や組織を修復するために体の自然治癒力を活用する治療法です。 再生医療には、主に以下の2種類があります。 幹細胞治療 患者自身から採取した幹細胞を膝関節内に注入する 炎症や痛みを抑えて、損傷部位の修復や改善を促進する効果が期待できる PRP療法 患者自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を膝関節内に注入する 成長因子の働きを利用し、損傷部位の修復を促進する効果が期待できる なお、リペアセルクリニックの再生医療では、採取する際の安全性が高く、体への負担が少ないとされている脂肪由来の幹細胞を使用しています。再生治療について詳しく知りたい方は、気軽にメール相談やオンラインカウンセリングをご利用ください。 運動療法(リハビリや筋トレ) 後十字靭帯損傷(断裂)後の回復において、リハビリテーションや筋力トレーニングなどの運動療法はとても重要です。適切な運動療法は、膝の可動域を回復させるだけではなく、筋力を強化して膝の安定性を高めることにつながります。 後十字靭帯損傷後の運動療法は、主に以下の要素を含みます。 膝関節の可動域訓練 筋力強化訓練 バランストレーニング 競技に特化した専門的なトレーニング とくに、スポーツ復帰を目指す場合はリハビリテーションが治療の中心的な役割を占めます。また、運動療法は、将来的な再発リスクを減らすためにも欠かせないプロセスの一つです。 ▼ 後十字靭帯損傷のリハビリにおける禁忌事項については、以下の記事で詳しく解説しています。 後十字靭帯損傷(断裂)の放置は後遺症のリスクを高める 後十字靭帯損傷(断裂)を放置すると、後遺症のリスクが高まるため注意が必要です。後十字靭帯損傷の主な後遺症として、以下のような症状が挙げられます。 膝の不安定性 膝の痛みの慢性化 膝のぐらつき 半月板損傷 変形性膝関節症 膝が不安定な状態のまま日常生活を送ると、大腿骨と脛骨の動きが通常よりも大きくなり、膝全体にストレスがかかります。この状態が長期間続くと、膝の軟骨や半月板などまで損傷が広がりかねません。 さらに悪化すると膝関節が変形してしまい、極端なO脚やX脚になってしまう可能性があるため注意してください。膝の痛みは放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 まとめ・後十字靭帯損傷(断裂)は早めに医療機関を受診しよう 後十字靭帯は膝を安定させるために重要な役割を果たしています。たとえ膝の痛みが軽い場合であっても、放置すると日常生活に支障が出るケースも少なくありません。 後十字靭帯を損傷(断裂)したら、損傷の程度やスポーツ復帰への希望有無など、状況に合わせて保存療法や手術療法などを選択します。そして、それぞれの治療方法に適したリハビリテーションを行い、膝の機能の回復に努めることが大切です。 少しでも膝に違和感を感じている場合は、自己判断で放置せず、早期に専門医を受診してください。 ▼ 変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 後十字靭帯損傷(断裂)の治療に関するよくある質問 ここでは、高十字靭帯損傷(断裂)の治療に関するよくある質問をまとめました。 後十字靭帯損傷(断裂)の完治にはどれくらいの期間がかかる? 後十字靭帯損傷(断裂)の完治にかかる期間は、損傷の程度によって異なります。 保存療法の場合、一般的には2〜4カ月程度のリハビリテーション期間を経て、膝の安定性が回復する傾向です。また、手術療法の場合は、最終的なスポーツ復帰までには10〜12カ月かかると考えましょう。 後十字靭帯損傷(断裂)を早く治す方法はある? 後十字靭帯損傷(断裂)を早く治すためには、 早期の受診と適切な治療がとても重要です。 後十字靭帯損傷の治療にはさまざまな方法があるものの、いずれの場合もリハビリテーションが欠かせません。医師や理学療法士などの指導のもと、早期から継続的なリハビリテーションを行うことで、早い回復が期待できるでしょう。
2023.09.11 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷を指します。 主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで他人と衝突して生じ、痛みや症状改善についてお悩みの方も多いことと存じます。 そこで本記事では、後十字靭帯損傷の治療方法やリハビリにおける禁忌事項について解説します。読者の方々の一助となるべく、分かりやすく内容をまとめているのでぜひご一読ください。 後十字靭帯損傷の治療法 後十字靭帯の単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法が行われます。 膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。 後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いです。このことから、軽度な症状の場合には先ずは保存療法を試みるようにします。 後十字靭帯損傷のリハビリにおける禁忌 後十字靭帯損傷におけるリハビリの禁忌として以下の事項が挙げられます。 しゃがみ・膝立ち 正座 膝に直接負担をかける行為は症状を悪化させる危険性があり、完治を妨げる要因ともなります。 また、後方へのストレス(不安定性)が強く、日常動作に不自由を感じる際は靭帯再建術を考慮しなければなりません。速やかに最寄りの医療機関または当クリニックにご相談ください。 なお、当院も専門領域なので、不安がある方は下記のバナーをクリックのうえ、お気軽にお問い合わせください。 後十字靭帯損傷の完治期間 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=krijmhYRz9t7Ggd_ 後十字靱帯損傷の完治までの期間・道のりとしては、ハムストリングスを用いた再建術後の理学療法、術直後には免荷で膝装具0° 固定し等尺性筋収縮運動を行います。 1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始とします。4週間で全荷重、4カ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰が可能となります。 期間 トレーニング内容 1〜2週間 部分荷重、スクワット運動開始 4週間 全荷重 4カ月 ジョギング、水泳などのスポーツ復帰 上記の期間を経て、全治までには数ヶ月を要します。 後十字靭帯損傷の予後は比較的良好とされていますが、自然治癒するわけではないことを覚えておきましょう。 最近では、早期の競技復帰を望むアスリートの間などで靭帯組織の修復に期待できる「再生医療」が注目されています。 ▼再生医療について詳しく見る 後十字靭帯損傷の診断方法 脛骨の後方ストレスへの不安定性とMRI画像で後十字靭帯断裂を確認し、後十字靭帯損傷を診断できます。 また、レントゲン写真では骨折の有無の判別が可能です。 くわえて、後十字靭帯損傷の診断方法のひとつにsagging(サギング)テストがあります。 脛骨が落ち、関節に窪みが生じていれば後十字靱帯断裂を疑います。 そもそも後十字靭帯損傷とは 後十字靭帯は、膝関節の中で前十字靭帯とともに関節を強固に連結している靱帯です。 大腿骨(太ももの骨)の内側と、脛骨(すねの骨)の中央をつなぎ、前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。普段は膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支えるように働いたりしています。 後十字靭帯損傷は、膝裏にあたる位置にある靭帯損傷のことであり、後十字靭帯が一部あるいは完全に断裂した状態を指します。 また、混同しやすい傷病名として「後十字靭帯断裂」が挙げられます。詳細が気になる方は、以下の記事をご確認ください。 後十字靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や交通事故などで、脛骨上端に、前から後ろへ向く大きな力が加わることで後十字靭帯が損傷するケースが多いとされています。 具体的には、以下のような受傷機転が考えられます。 交通事故 ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。 転倒 膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後ろへ押し込まれるため受傷します。 コンタクトスポーツ(ラグビーなど) 膝下にタックルを受けることで、後十字靭帯を損傷することがあります。 後十字靭帯損傷の症状 後十字靭帯損傷の症状を解説します。 急性期(受傷後3週間くらい) 膝の痛みと可動域制限がみられますが、歩ける場合が多いです。しばらくすると腫れ(関節内血腫)や、膝窩部の皮下出血が出現することもあります。 痛い部位は、膝の裏となります。また、脛骨に後方へのストレスをかけると、膝窩部に激痛がみられます。 急性期を過ぎると 痛み・腫れ・可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。下り坂やひねり動作の際に症状が顕著となります。 慢性期の症例(受傷から時間がたった場合) 前十字靭帯損傷と比べると膝の機能障害は軽度ですが、歩行やスポーツ時に脛骨の後方ストレス(不安定感)を感じます。 また、関節軟骨変性による膝蓋大腿関節や内側の関節裂隙の圧痛や、仰向けで膝関節を90度屈曲すると、脛骨近位端が後方へ移動する落ち込み徴候(サギングサイン)が確認できます。 不安定感を放置してしまうと半月(板)損傷や軟骨損傷などを新たに引き起こし、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現するおそれもあります。 まとめ|後十字靭帯損傷にお悩みの方は再生医療に注目 靱帯損傷は、靭帯の一部あるいは全部が断裂してしまうことです。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法を行っています。 後十字靭帯損傷後に膝の不安定感があったり、スポーツに早期復帰したいという方のために、膝の靭帯損傷をより早く治すために再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 参考文献 膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる プライマリケアのための関節のみかた 下肢編(2)―膝(下)[臨床医学講座より] - 医科 - 学術・研究 | 兵庫県保険医協会
2023.09.07 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
外側側副靭帯損傷|症状と原因、治療法について解説! 外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)損傷は、膝の外側にある靭帯がスポーツや交通事故で外傷による損傷する怪我です。 外側側副靱帯損傷は、いくつかある靭帯損傷の中でも、比較的まれな怪我ですが、他の靭帯と一緒に損傷することが多く、場合によっては手術が必要になります。 本記事では、外側側副靱帯の症状や原因について解説し、治療法について詳しく解説します。 外側側副靱帯損傷とは? 膝の関節は太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)、お皿の骨である膝蓋骨(しつがいこつ)からできています。比較的平らな面同士が合わさってできており、安定性に欠くため、大腿骨と脛骨の間を別の組織で補強しています。 靭帯は膝関節を補強する組織の1つで、骨同士を固い組織でつなぎ、膝の安定性を高めています。外側側副靱帯は膝の外側にあり、膝の内側からの衝撃に抵抗する靭帯です。 そのため、膝の内側から強い衝撃が加わると、外側側副靱帯にストレスが加わり、場合によって靭帯が傷ついたり、ちぎれたりして、外側側副靱帯損傷を引き起こします。 単独で損傷することはあまりなく、他の靭帯と同時に損傷する、複合靭帯損傷(ふくごうじんたいそんしょう)として生じることが多いです。 外側側副靱帯損傷の症状や原因 外側側副靱帯は靭帯損傷の中でも比較的めずらしい怪我です。 単独で生じることは少ないですが、外側側副靱帯が損傷している場合の特有の症状や原因があります。 どのような症状や原因があるのかを詳しく解説します。 外側側副靱帯損傷の症状 外側側副靱帯の損傷の症状は、膝の外側の痛みや腫れです。 また、膝から下が内側に傾くような動きが生じると、傷ついた靱帯が伸ばされるため、痛みを生じます。例えば、あぐらをかいた場合に膝の外側に痛いという状態です。 外側側副靱帯を損傷した状態で放置すると、膝がグラグラするように不安定感が生じます。 外側側副靱帯損傷の原因 外側側副靱帯損傷の原因は大きく分けて、スポーツ中の接触と交通事故に分けられます。 スポーツでは、サッカーやラグビーのタックルや柔道の足払いなどで膝の内側に強い衝撃が加わり、外側側副靱帯が強制的に伸ばされて起こります。 交通事故の場合も、スポーツ同様に膝の外側が無理に伸ばされるような衝撃を受けることで、外側側副靱帯が損傷されるのです。どちらにせよ強い衝撃が原因となるため、外側側副靱帯が単独で損傷することは少なく、他の靱帯や半月板といった組織の損傷と合わさる場合が少なくありません。 外側側副靱帯損傷の診断 外側側副靱帯が損傷しているかどうかは、以下の方法で診断されます。 診断方法 ・徒手検査(としゅけんさ) ・画像診断 それぞれの診断について具体的に解説します。 徒手検査 患者を仰向けに寝かせた状態で、膝の内側と足首の外側を持ち、膝から下を内側に動かすように力を入れて、外側側副靱帯にストレスを加える内反(ないはん)ストレステストと呼ばれる検査をします。 内反ストレステストで、痛みや関節が通常より大きく動く不安定性を認めた場合は、外側側副靱帯損傷が疑われます。 膝を軽く曲げた状態と完全に伸ばした状態といった両方の姿勢で検査を行い、膝屈曲位で症状が出た場合は外側側副靱帯の損傷、伸ばした状態で症状が出た場合は、他の靱帯の損傷も疑うことが必要です。 画像診断 外側側副靱帯の損傷はレントゲンでは異常を示しづらく、詳細な診断にはMRIを用います。 MRIだと他の靭帯や半月板などの組織もはっきりと写るため、複合損傷や合併症の確認にも有効です。 外側側副靱帯損傷の治療 外側側副靱帯の損傷の治療方法は手術を行わない保存療法と、手術を行う手術療法に分けられます。 それぞれの治療方法について具体的に解説します。 保存療法 外側側副靱帯のみの損傷で、膝の不安定感が少なく、日常生活に大きな支障がなければ、手術による外科的な治療を行わない保存療法が選択されます。 保存療法には装具療法やリハビリテーションがあります。 装具療法 外側側副靱帯損傷により、膝が不安定になれば、さらなる損傷や膝周辺の痛みを伴うリスクが高まります。そのため、装具やサポーターを着用して、膝の安定性を高めれば、外側側副靱帯へのストレスを減らすことが可能です。 また、怪我の直後は痛みや腫れが強く、膝へのかかる負担をできる限り減らすため、ギプスによる固定をする場合もあります。 リハビリテーション リハビリテーションでは、膝の安定性を高めるため筋力トレーニングを実施して、膝周辺の筋力を鍛えるトレーニングを実施します。 また、装具などで膝を固定することによる関節の動きの制限を改善するため、ストレッチや関節可動域練習を行います。 手術療法 複合靭帯損傷の場合や膝の不安定性が強い場合は、手術による治療が適応になります。手術は損傷した靱帯を他の部分の靱帯を使って再建する靱帯再建術が実施されます。 手術後は状態に合わせて段階的なリハビリテーションが必要です。その後、スポーツ復帰して試合などの通常に戻れるまでは、3〜6カ月の治療期間がかかります。 まとめ・外側側副靭帯損傷|症状と原因、治療法について解説! 外側側副靱帯損傷は、頻度が高い怪我ではありませんが、治療をせずに放置すると、膝の痛みや損傷部位の悪化を招く危険性があります。 外側側副靱帯損傷は、膝の外側に位置する靱帯が外部からの強い衝撃によって損傷する怪我です。スポーツや交通事故が主な原因であり、特に膝の内側からの強い衝撃が発生源となります。この損傷は単独で発生することは少なく、他の靱帯や半月板とともに損傷することが多いです。症状としては膝の外側の痛みや腫れ、膝の不安定感が挙げられます。 診断は徒手検査や画像診断(特にMRI)によって行われます。徒手検査では、膝の内反ストレステストが用いられ、MRIでは詳細な損傷部位や他の合併症の有無を確認します。治療法には保存療法と手術療法があり、損傷の程度や症状によって選択することになります。 保存療法では、装具療法やリハビリテーションが中心となり、膝の安定性を高めるための筋力トレーニングやストレッチが行われ、重度の損傷や複合損傷の場合には手術が必要となり、靱帯再建術が実施されます。手術後は段階的なリハビリが必要で、完全に回復するまでには数ヶ月の時間を要します。 外側側副靱帯損傷は比較的まれな怪我ですが、適切な診断と治療を受けることで、日常生活やスポーツへの早期復帰が可能です。怪我を予防するためには、適切なトレーニングと膝の保護が大切です。 膝の外側が痛んだり、膝がグラグラするような不安を感じたりした場合は、できるだけ早めに整形外科に受診しましょう。 本記事を参考にいざというときに外側側副靱帯の治療がスムーズに受けられるよう、正しい知識を身につけておきましょう。
2023.09.04 -
- ひざ関節
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「ランナー膝の治し方を知りたい」「ランナー膝の原因って何?」 ランニングなどによって膝の痛みが出るランナー膝ですが、原因や改善策を知りたい方も多いのではないでしょうか。 ランナー膝は、適切な対策を取らないと慢性的な痛みへと発展する恐れがあります。 多くのランナーが悩む症状ですが、実は自宅でも改善できる方法もあります。 この記事では、症状を軽減する方法から、予防対策まで具体的に解説していきます。最後まで読めば、ランナー膝をぜひ最後までお読みください。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)の治し方3選 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みが生じるスポーツ障害です。とくに長距離ランナーに多く見られ、初期の対処が重要です。治療法は主に以下の3つがあります。 保存療法(安静・ストレッチ・リハビリなど) 運動環境・フォームの改善療法 外科的治療・再生医療 まずは自宅でできる保存療法、次はフォームや運動環境の改善、最後に外科の治療や再生医療といった選択肢です。ここからは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。 保存療法(安静・ストレッチ・リハビリなど) 保存療法は、ランナー膝の最も一般的な治療法です。 痛みや炎症がある場合はランナー膝の原因となる運動を中止し、安静にするよう心がけましょう。膝をアイシングしたり、湿布を使ったりするのも効果的です。 炎症が改善したら、大腿筋膜張筋や股関節外側部を中心としたストレッチを行います。 リハビリで筋力を回復させることで、再発予防にもつながります。(文献1) 運動環境・フォームの改善療法 ランナー膝は、走る際のフォームや、履いているシューズを変えることで改善できる場合があります。 上半身が左右に揺れたり、膝が内側に入ったりする走り方は、ランナー膝を悪化させる原因になりかねません。そのため、体幹や股関節、足首などを強化し、膝に負担がかかりにくいフォームに矯正する必要があります。 また、着地時の衝撃を吸収してくれるインソールや、膝の動きを支えるサポーターなどを活用するのも良いでしょう。(文献2) 運動環境やフォームの改善は、ランナー膝の治療だけでなく予防にも効果的です。とくに日常的にランニングをする方は、普段から正しい走り方を意識し、膝の負担を軽減するシューズの使用がおすすめです。 外科的治療・再生医療 症状によっては外科的治療や再生医療も選択肢に含まれます。 ランナー膝の外科的治療は一般的でないものの、保存療法で効果が見られない場合や、難治性と診断された場合は手術を検討します(文献3)。 また、PRP療法をはじめとする再生医療を実施するケースもあります。PRP療法は、自分の血液から抽出した成分を注入し組織の再生を促進する方法であり、炎症の抑制や痛みの軽減が期待できます。 膝の痛みを再生医療を用いて治療する方法は、以下の記事もご覧ください。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)における原因 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みを引き起こすランニング障害です。 主な原因は以下の2つにわかれます。 ランナー膝の原因 詳細 選手側の問題 筋力のアンバランス 柔軟性の不足 O脚(内反膝) 練習内容や環境の問題 オーバートレーニング 不適切な靴 選手側が要因となるO脚では、腸脛靭帯が大腿骨に擦れやすく炎症のリスクを高めます。 また、オーバートレーニングのほか、下り坂・不整地でのランニングも摩擦が増して症状を悪化させる要因です。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)の症状 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みが生じる症状が特徴です。 軽症の場合、スポーツ後に痛みが出る程度ですが、放置すると中等症へ進行し、プレー中にも痛みを感じるようになります。 悪化すると、スポーツをしていないときでも痛みが現れ、日常生活にも影響する可能性があります。 重症化すると手術などの外科的治療が必要になり、入院やリハビリ期間が長引く可能性が高くなるため、膝の痛みを感じたら早めに整形外科に相談しましょう。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)の診断 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、ランニングやジャンプの動作時や日常生活での痛み、膝の外側の圧痛の有無をヒアリングすることで診断されます。 また、レントゲンやMRIなどの画像診断や、「グラスピングテスト」と呼ばれる方法を用いて診断するケースもあります。 まとめ|ランナー膝は保存療法で効果が見られないなら他の治療法も検討しよう ランナー膝の治療は、保存療法だけでなく、予防対策を意識した運動環境・フォーム改善療法も並行しておこないます。再発を繰り返す場合や難治性と診断された場合は、手術療法や再生医療といった選択肢も検討しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、自己の幹細胞を用いた再生医療を提供しています。膝の靭帯部分に幹細胞を投与することで、手術なしで症状を改善できるケースもあります。 従来の保存療法や運動療法による治療で効果がみられない場合は、ぜひ当院の再生医療もご検討いただければ幸いです。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事がランナー膝の治療方法の選択肢を知るのに役立ち、治療を受けるきっかけになれば嬉しく思います。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)についてよくある質問 ランナー膝(腸脛靭帯炎)ではどこをほぐすべきですか? ランナー膝の改善には、腸脛靭帯自体を直接ほぐすのではなく、大腿筋膜張筋や股関節、大腿部前面を重点的にストレッチするのが有効です。 フォームローラーやストレッチを使い、これらの筋肉を柔らかくし、症状の緩和と再発防止につながります。 ランナー膝のストレッチについては以下の記事もご覧ください。 ランナー膝でやってはいけないことは何ですか? ランナー膝の痛みを感じた際は、無理に動かさずスポーツを中止して安静にしましょう。とくに下り坂や傾斜がきついコースでのランニングは、膝に負担をかけやすいため控えるべきです。 負荷を調整しつつ、適切なストレッチやリハビリを行うことを意識してみてください。 ランナー膝を早く改善するポイントについては以下の記事でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。 No.149 監修:医師 坂本貞範 参考文献一覧 (文献1) 日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 10.膝の慢性障害」 (文献2) 林優、林典雄ほか.腸脛靭帯炎における臨床的特徴と運動療法成績について.東海北陸理学療法学術大会誌.2006;22 (0), 38-38 (文献3) JCHO東京山手メディカルセンター|腸脛靭帯炎(ランナー膝)
2023.08.31 -
- 膝の内側の痛み
- ひざ関節
- 靭帯損傷
内側側副(ないそくそくふく)靭帯損傷は、内側側副靭帯という膝の内側の安定性を保っている靭帯が何らかの原因で損傷を受けることです。 今回は、医師の目線から、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説します。 内側側副靭帯損傷(MCL)とは? 内側側副(ないそくそくふく)靭帯損傷(MCL)とは、膝関節の裏側にある内側側副靭帯によくみられる外傷です。 靭帯が何らかの原因で損傷を受けた状態を指します。 内側側副靭帯損傷は、後述しますが珍しいものではありません。 自力での治療は難しいため、症状が疑われた場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。 また、放置してしまうと悪化する恐れがあるので、早めに受診しましょう。 内側側副靭帯の役割 内側側副靭帯は、膝の裏側にあって、関節が必要以上に開かないようにおさえる役割を果たします。 この靭帯は、膝関節に関わる大腿骨と脛骨をつないでいます。 しかし、2つの骨は、決して側面に受ける衝撃に強くありません。 しかし内側側副靭帯があることで、外部からの衝撃に耐性を発揮できます。 結果として、この靭帯により、強い衝撃があっても必要以上に関節が開かないようになります。 なお、膝関節には、前十字靭帯と後十字靭帯という靭帯があり、関節の側面には内側側副靭帯が、外側側副靭帯があります。 その中でも、内側側副靭帯は、特に膝の内側の安定性を保つ役割を持ちます。 内側側副靭帯損傷(MCL)の原因とは? スポーツ外傷や、交通事故などで、膝に外反強制(がいはんきょうせい:すねを無理に外側に向けられること)するような大きな力が加わった際に、内側側副靭帯損傷(MCL損傷)が起こりやすいとされています。 内側側副靭帯損傷は、膝の靭帯損傷の中で最も多いとされています。 メール相談:オンラインカウンセリングはこちら 内側側副靭帯損傷の4つの症状 次に、内側側副靭帯損傷に多い以下4つの症状に関して解説します。 ・痛みや腫れ ・膝の不安定感 ・運動動作が困難になる ・可動域の低下 内側側副靭帯損傷があると、上記する症状によって、スポーツへの参加や日常生活に支障が生じます。 それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。 内側側副靭帯損傷の症状①痛みや腫れ 急性期(怪我をしてから3週間頃)に、膝の痛みと可動域制限がみられます。 しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。 急性期が過ぎると、重症度にもよりますが、一般的に痛みや腫れ、可動域制限は軽快してきます。 内側側副靭帯の損傷の症状②膝の不安定感 この頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。 ひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 内側側副靭帯損傷の場合は、膝の内側の不安定感が出ます。 この状態のまま放置しておくと、新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)になってしまうこともあります。 内側側副靭帯の損傷の症状③運動動作が困難になる さらに、以下のような形で運動動作を取るのが困難になります。 ・痛みや腫れによって、ランニング、ジャンプなどがしにくくなる ・症状が重い場合は歩きにくくなる ・膝の安定感が失われ、思うように方向転換できなくなる スポーツの参加はもちろん、日常生活でも感じる方が多いです。 また、トレーニングができなくなるため、筋力が低下するという問題もあります。 内側側副靭帯の損傷の症状④可動域の低下 内側側副靭帯の損傷によって、動かせる関節の範囲が限られます。 膝をまっすぐにしたり、自由に曲げたりするのが難しくなります。 膝が固くなったようにも感じられます。その結果、足を引きずったような歩き方になるかもしれません。 内側側副靭帯損傷の重症度 内側側副靭帯損傷は、American Medical Associationの分類によって、1〜3度に分かれます。 ・1度 軽症ですが、治療とリハビリを行うことが推奨されます。 ・2度 中等症で、膝の外反動揺性つまりぐらぐら感を中程度に認めます。 初期治療(ギ プス固定、装具療法など)が重要となります。 ・3度 重症で、膝の外反動揺性が顕著であり、手術を要する場合が多いです。 内側側副靭帯損傷の検査方法 それでは、次に内側側副靱帯の検査方法について解説します。 ストレステスト 診察では膝関節にストレスを加えて緩みの程度を健側と比較します。 ① 外反ストレステスト(valgus stress test) 患者が仰向けになり、膝を伸ばした姿勢と30°膝に曲げた姿勢の2パターンでチェックをします。 医師などの検査者が膝関節の外側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に外反強制力、つまりすねを内側に向ける力を加え、膝関節の外反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で外反不安定性があれば、MCL損傷を疑います。 MCL単独損傷では伸展位での不安定性は認めません。 ② 内反ストレステスト(varus stress test) 外反ストレステストとは逆に、医師などの検査者が膝関節の内側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に内反強制力、つまりすねを外側に向ける力を加え、膝関節の内反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で内反不安定性があれば、内側側副靱帯損傷を疑います。 画像検査 画像診断ではMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像診断装置)が有用です。 X線(レントゲン)写真では靭帯は写りませんがMRIでは損傷した靭帯を描出できます。 また、半月(板)損傷合併の有無も同時に評価できます。 メール相談:オンラインカウンセリングはこちら 内側側副靭帯損傷の治療法 内側側副靭帯損傷の治療法は、損傷の程度や症状に基づいて決められます。 保存的治療 内側側副靭帯の単独靱帯損傷の場合には、手術ではなくリハビリテーション治療による保存的治療が選択されます。 受傷後急性期には、 RICE(安静または短期の固定、冷却、弾力包帯などによる圧迫、患肢の挙上)処置に引き続いて、できるだけ早期から筋力訓練を開始します。 サポーター装着 膝に不安定性がある場合は、損傷靱帯保護の目的で支柱付きのサポーター装用を考慮します。 手術療法 前十字靭帯や半月板との混合損傷や、重症度3度であり保存的治療では治らないことが予想される場合には手術療法が行われます。 膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。 関連記事:次世代の再生医療とは メール相談:オンラインカウンセリングはこちら 内側側副靱帯損傷についてよくある質問 Q1:内側側副靱帯損傷は自然に治りますか? A1 :内側側副靱帯損傷は、損傷の程度が軽い場合や部分的な断裂では、膝関節周囲の血流が豊富で栄養供給が行われやすいため、治癒しやすく保存療法が行いやすいといえます。 しかし完全な断裂など、重症の場合は自然治癒は期待しがたいので、靭帯の再腱術を行うことが必要になります。 Q2:内側側副靱帯損傷の固定期間はどれくらいですか? A2:個人差はありますが、約1〜2週間程度ギプスシーネやニーブレースなどで固定後、靭帯矯正サポーターを装着し、リハビリテーションとして可動域、歩行訓練を行っていきます。 膝装具は一般的には約6週間以上装着します。 膝の可動域と不安定性が、怪我をしていない方の膝と同じレベルまで改善したらスポーツ復帰が可能となります。 まとめ|内側側副靭帯損傷(MCL)とは?早く治す方法を現役医師が解説 今回の記事では、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説しました。 内側側副靱帯損傷が起こると、その治療には数週間を要する場合が多いです。 しかしながら、再生医療によって、治療期間や回復までの時間を短くできる可能性があります。 こちらの動画も是非ご覧ください。 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=ka6C0oujvcAaaLKY 膝の靭帯のメカニズムと再生医療について解説。 また当院では、自己脂肪由来幹細胞治療を行うことで、膝の靭帯損傷をより早く治し、筋力低下などを防ぐための再生医療を提供しています。 ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 メール相談:オンラインカウンセリングはこちら No.S146 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 膝の最前線|理学療法科学23(2):335−340,2008.p336 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/2/23_2_335/_pdf 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ligament_injury_of_th_knee.htm 膝のスポーツ外傷・障害と装具 東京女子体育大学小出清一|日本技師装具学会誌4(4):291〜295,1988.p292 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/4/4/4_4_291/_pdf/-char/en スポーツ理学療法で必要となる 整形外科徒手検査と徴候|理学療法科学23(2):337−362,2008.p361 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/3/23_3_357/_pdf スポーツにおける膝外傷・障害に対する リハビリテーション治療 p1029 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/12/56_56.1027/_pdf
2023.08.21 -
- 動作時の痛み
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スノーボード、スキーなど冬のスポーツで多い膝の怪我について解説 冬のウィンタースポーツ!シーズンになるとスキーやスノーボードを楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。 ただ、これらのスポーツは、スピードが出るために転倒や、衝突の危険性があるスポーツですので怪我のリスクについては、十分に知っておく必要があります。 本記事ではウィンタースポーツで起こりやすいスポーツ外傷、ウインタースポーツで起こりやすい膝の怪我に焦点を当てて解説していきます。 冬のスポーツ!膝の怪我で多いのは前十字靭帯損傷と半月板損傷 スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツにおいては、膝の損傷、捻挫といった怪我が多く見られます。これは滑走中に膝を捻ってしまったり、ジャンプからの着地、転倒時に大きな負担がかかってしまうためです。 膝の怪我の中で最も頻度が多いのが、「前十字靭帯損傷」「半月板損傷」です。 そこで、これら起こりやすい怪我について詳しく見ていきましょう。 前十字靭帯とは ・膝の関節の中にある靭帯のうちの一つ ・膝関節を安定化させる ・前十字靭帯は膝の捻りと前後方向のぐらつきを抑えている 前十字靭帯損傷の症状 受傷直後は激しい痛みのため、その場から動けなくなることが多いです。その際に「ぶちっ」という筋肉が切れるような音が聞こえることもあります。 受傷直後に動けていた方でも、約70%に関節内血腫(関節内に血がたまる)が生じるとされており、時間が経過するとともに、痛みや腫れが強くなり、動くことが出来なくなっていきます。。 2~3週間後には腫れや痛みは軽減されることが多いですが、下記のような症状が継続してみられることがあります。 前十字靭帯損傷の症状 ・膝の不安定感 ・膝が外れる感じがする ・膝に力が入らない ・膝がすぐ腫れてしまう ・膝が伸びない ・正座ができない 膝を使う動作、特にスポーツ競技中などの様々な動作で症状が出ます。 診断 医師による診察や、レントゲン検査で骨折の有無を確認します。MRI検査が靭帯の評価(靭帯の形状や靭帯の走行など)に有用です。 治療 前十字靭帯損傷の治療法には、保存療法と手術療法の2種類があります。それぞれについてみていきましょう。 保存療法 大腿四頭筋などの筋力訓練を行ったり、必要に応じて装具を作成して日常生活やスポーツ活動への復帰を目指します。 しかし、この場合は靭帯が完治したわけではなく、日常生活で膝が安定せず、痛みが続く場合もあります。症状が残る場合は、半月板の損傷などの二次損傷を起こすリスクが高くなります。以前はスポーツをしない場合は、保存療法を選択する場合も多かったですが、現在では膝の老化の進行を早める可能性があり、若年者でも手術を勧められることが多くなっています。 手術療法 靭帯は自然に修復されることはなく、再建術が行われます。再建術は膝の後内側にある屈筋腱を移植する自家移植が一般的に行われます。手術後はリハビリが必須となりますが、術後10~12か月後に元のスポーツに復帰できることが多いです。 前十字靱帯損傷を放置すると、膝が安定性を失い、膝崩れといいガクッと崩れ落ちてしまったり、膝があらゆる方向に捻じれやすくなります。前十字靱帯損傷によって膝が安定しない状態が続くと、クッションの役割をしている半月板や、関節軟骨に負荷が多くかかってしまいます。その結果、半月板損傷など二次的な障害が生じることがあります。 半月板損傷とは 半月板とは膝関節の大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨のことです。内側と外側にそれぞれにあり、膝にかかる衝撃を吸収する働きがあります。 症状 症状としては膝の曲げ伸ばしが困難になることが挙げられます。また、動かそうとしたときに激しい痛みを伴うこともあります。重症の場合には、膝に水(関節液)が溜まり腫れてしまったり、激痛を伴って関節が動かせなくなる「ロッキング」という症状が現れ、歩行困難になることもあります。 検査 医師による診察やMRIが行われます。また、状況に応じて、関節の中に内視鏡を入れて調べる、関節鏡検査を行う場合もあります。 治療法 半月板損傷の主な治療法には、保存治療と手術療法の2種類があります。 保存療法 サポーターなどで患部を固定し、抗炎症薬などの薬物療法やリハビリなどを行います。保存療法を行っても痛みや、ロッキングなどの症状が続く場合には手術を行います。 手術療法 断裂部位の幅が 1 cm以上と大きい場合や、保存療法を行っても症状が持続する場合は手術療法が検討されます。手術法には、損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術の2種類があり、関節鏡を使った鏡視下手術を行います。 切除術の場合は、半月板を取り除くことで膝軟骨の消耗が進んでしまうことがあるため、近年では縫合術が選択されることもあります。ただし、損傷した半月板の状態によって縫合が難しいと判断された場合は切除術を行います。 手術後はリハビリが必須であり、スポーツへ復帰できるタイミングは、半月板切除術で約3ヵ月、半月板縫合術で約6ヵ月程度とされています。 まとめ・スノーボード、スキーなど冬のスポーツで多い膝の怪我について解説 スキーや、スノーボードを行う際にはプロテクターを着用するようにしましょう。これにより、怪我のリスクが格段に下がります。また自分の実力に見合った楽しみ方をすることも重要です。 治療後はケガをした時と同じ動作を続けると、再び膝を損傷する可能性があるため、スポーツの際などは特に注意が必要です。また、股関節や足首など下肢全体の関節が柔軟だと、膝へかかる負担が軽減されやすくなり、再発予防にもつながります。 下肢の筋力トレーニングも必須です。特に大腿四頭筋とハムストリングスを強化することが重要です。普段からストレッチや筋トレを習慣づけ、運動する際には、準備運動や整理運動をしっかり行うようにして、体全体の柔軟性を保つようにしましょう。 スキーやスノーボードを行う際は、怪我のリスクについても備えておくことが重要です。膝の怪我は日常生活にも影響が出ることが多いので、安全にスポーツを楽しみましょう。この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考にしてください 膝の痛みを引き起こすスポーツ上の慢性障害について
2023.02.01 -
- 動作時の痛み
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「前十字靭帯が断裂した場合、スポーツ復帰はいつ頃なのか」 「そもそも復帰できるのかが心配」と考えている方もいるでしょう。 前十字靭帯断裂が軽度であっても、放置すると他の症状が発症するリスクがあります。 本記事では前十字靭帯断裂の再建術後、スポーツ復帰できる目安や、手術しないリスクなどを解説します。 治療法や前十字靭帯断裂が起きたままスポーツをするリスクなども解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 【再建術後】前十字靭帯断裂のスポーツ復帰は半年〜1年が目安 前十字靭帯断裂の再建術後、スポーツ復帰できる目安は半年から1年です。 1週間程度(最短4日)の入院期間中は車いす生活で、退院後は松葉杖となり、きちんとリハビリを継続していれば1カ月で日常生活が可能です。 中には、最短3カ月で歩けるまで回復した患者様もいます。 国立医学図書館に掲載された情報によると、前十字靭帯断裂の再建術後、スポーツ復帰にかかる期間は「6カ月」と記載されています。 なお、研究結果によると再建術後、33〜92%もの方が1年でスポーツ復帰できたという結果もあるのです。 損傷の程度には個人差があるため、スポーツ復帰までの期間だけでなく「そもそも復帰できるのか」も変動すると把握しておきましょう。 前十字靭帯断裂の程度によって異なるスポーツ復帰できるまでの期間が気になる方は、以下のページから気軽にお問い合わせください。 そもそも前十字靭帯とは 靭帯とは、コラーゲンや弾性線維でできている多少伸び縮み可能なひも状のような部位です。 関節で骨同士をつないで、過剰に骨が離れるのを防いで関節の安定性を保っています。 膝の関節は太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの内側にある脛骨(けいこつ)、膝のお皿とよく呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)の3つから成り立っています。 大腿骨と脛骨をつないでいる靱帯は、以下の4つです。 内側側副靱帯 外側側副靱帯 前十字靭帯 後十字靭帯 内側と外側側副靱帯は、膝関節の左右にあり、膝が左右にずれすぎないようにする役目をしています。 前と後十字靭帯は、大腿骨と脛骨の間で交差していて、前十字靭帯は脛骨が前に出すぎないようにしています。 前十字靭帯断裂の損傷分類 前十字靭帯の怪我を「前十字靭帯損傷」と言います。 前十字靭帯損傷は程度によって1度から3度までに分類され、数字が大きいほど損傷の強さを表しています。 1度損傷 前十字靭帯は切れておらず、軽い痛みと腫れのみ。膝の不安定さはない。 2度損傷 前十字靭帯は部分的に断裂し、膝には不安定さが現れる。 3度損傷 前十字靭帯が完全に断裂している。内出血も起きる。膝には不安定さがある。 上記のうち「前十字靭帯断裂」は2度と3度が該当しているのです。 前十字靭帯断裂が起きる原因 前十字靭帯断裂は、強い力で脛骨だけが前に押し出されたり、膝を過剰にひねると、前十字靭帯の限界を超えるため靱帯断裂が起こります。 損傷の原因にも、大きく分けて接触型と非接触型の2種類があり、それぞれの違いは以下の通りです。 損傷の原因 概要 接触型 膝に強い衝撃が加わり、靭帯が切れて発症する 非接触型 ジャンプの着地や方向転換で、膝を捻る動作で発症する 上記以外にも、サッカーやバスケットボール、バレーボールなどのスポーツをする方も発症しやすいため注意が必要です。 前十字靭帯断裂の症状 前十字靭帯が断裂した瞬間は膝の中で紐がちぎれたような感覚になる症状があります。 膝が腫れたり熱を持ったりする 膝がぐらぐらして不安定になる 歩行時に膝がガクッと崩れる感覚になる 膝に力が入らなくなる 膝が伸びなかったり曲がらなかったりする(可動域が制限) 前十字靭帯が断裂すると、上記のような症状も見られます。 しばらく放置すると痛みと腫れは引いてきますが、靱帯は勝手に治ることは少なく、膝の不安定さが残ります。 そのまま生活していると、膝関節の中にある半月板や軟骨も傷み、変形性膝関節症も発症するので注意しましょう。 以下の記事では、前十字靭帯断裂が軽度な方に向け、受診の目安や治療法を解説しました。 「軽度でも手術が必要なの?」と気になる方は、ぜひ参考にしてください。 前十字靭帯断裂の検査方法 前十字靭帯断裂が起きているか検査したい場合、MRI検査がおすすめです。 従来では関節鏡で前十字靭帯断裂を起こしているか確認していましたが、近年はMRI検査の技術が進歩しているため、ある程度は検査可能です。 また、膝の不安定さや力が加わるとどう痛みが出るか、触って確認するなど検査も行います。 当院でも検査を受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。 前十字靭帯の治療方法 前十字靭帯が断裂すると、自然に修復されません。 将来スポーツを行う可能性がある場合には、靱帯を再建する手術療法、将来的にスポーツなどをしない方であれば運動療法を行うのが一般的です。 それぞれの治療法について、詳しく解説していきます。 1.自家腱移植 「自家腱移植」は、自分の組織を用いて再建する方法です。 膝の内側にある腱(ハムストリング腱)や、前面の腱(膝蓋骨を割った骨付きの膝蓋腱)を使います。 手術は関節鏡を用いて、小さな切開を行います。 大腿骨と脛骨をつなぐトンネルをつくり、加工した腱を通して上下を金具で固定する手術です。 最低限の切開で、早くリハビリを始められる点からスポーツ選手がよく採用しています。 2.保護的早期運動療法 将来的にスポーツなどをしない方であれば、前十字靭帯専用の装具を装着して、リハビリをする治療を選択する場合もあります。 保存的治療ではいずれは日常生活やレクリエーションレベルの動作は可能ですが、競技スポーツへの復帰は困難とされています。 また前十字靭帯損傷後に手術を行わなかった場合、約6割の患者が変形性膝関節症になる報告がされているため注意しましょう。 治療を選択する際、きちんと損傷の程度を理解し、術後の生活やスポーツへの影響を考えて決める必要があるでしょう。 まとめ・前十字靭帯断裂をしてスポーツ復帰を早めたいなら適切なリハビリを! 前十字靭帯断裂は、膝の中の靭帯が切れた状態です。 とくにスポーツをしているときに多く発生する外傷です。 受傷直後は傷みや膝の腫れがありますが、時間が経てばその症状は軽くなります。 ただし、何も治療をしないと膝が不安定なままになったり、将来「変形性膝関節症」を発症する可能性もあります。 前十字靭帯断裂の可能性がある場合は、早期に整形外科を受診するのが重要です。 以下の記事では、前十字靭帯断裂が治るまでの期間について解説しました。 ぜひ、あわせてご覧ください。 前十字靭帯断裂のスポーツ復帰に関するよくある質問 ここからは、前十字靭帯断裂で1日でも早くスポーツ復帰したいと考える方に向け、よくある質問を取り上げます。 前十字靭帯断裂の手術をしないとどうなるの? 前十字靭帯断裂したままスポーツするリスクは? 前十字靭帯断裂の手術をしないで済むリハビリ方法はあるの? それぞれ回答しながら回答していくので、ぜひ参考にしてください。 前十字靭帯断裂の手術をしないとどうなるの? 前十字靭帯断裂で手術せず放置すると、変形性膝関節症が発症するリスクがあげられます。 軽度の場合、安静にしていると痛みや腫れが軽減される症例もあるため、いつも通りの日常生活に戻ってしまう方もいるでしょう。 しかし前十字靭帯断裂は自然回復する可能性が低く、慢性的な痛みや腫れが起きてしまいます。 そもそも前十字靭帯断裂は、靭帯が切れている状態なため、スポーツ復帰後に再断裂する可能性もあります。 スポーツ復帰するためにも、適切な手術を受けるのがおすすめです。 前十字靭帯断裂したままスポーツするリスクは? 前十字靭帯断裂したままスポーツすると、半月板損傷が起きるリスクを高めてしまいます。 膝のクッションが断裂し、軟骨に傷をつけてしまうため、ギプスをつけても自然回復が難しくなってしまうのです。 慢性的な症状が発症しないよう、早期の発見と治療を検討しましょう。 前十字靭帯断裂の手術をしないで済むリハビリ方法はあるの? 前十字靭帯断裂の手術をせず放置すると、変形性膝関節症や半月板損傷のリスクがあり、手術以外でスポーツ復帰は難しいと言えます。 しかし、中には競技を控えている方がテーピングで応急処置している方もいるでしょう。 前十字靭帯が完全に断裂している場合、手術以外で再生する可能性は限りなく低いため、適切な手術とリハビリが重要です。 「手術は傷が残るから……」と気になる方は、再生医療がおすすめです。 再生医療を用いれば、注射のみになるため、入院が不要になります。 前十字靭帯断裂の手術をしようと決断された方は、再生医療も1つの選択肢にあげてみてはいかがでしょうか。
2022.11.02 -
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- ひざ関節
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スポーツ選手の大きな怪我としてよく耳にする「前十字靭帯断裂」。 前十字靭帯断裂とは 、膝の関節内にある前十字靭帯が断裂するケガです。 受傷された場合、全治がいつになるのか気になる方も多いのではないでしょうか。とくに、スポーツの復帰までの時間が心配な方もおられることでしょう。 そこで今回は、前十字靱帯断裂で全治までにかかる期間について解説します。入院やリハビリの期間も紹介しているので、全治までの流れを知りたい方は参考にしてみてください。 前十字靭帯断裂は全治8〜10カ月 前十字靱帯の断裂または損傷の全治は、約8カ月〜10カ月とされています。 これは、スポーツ選手の場合、前十字靱帯断裂後に手術してからリハビリを終えて復帰するまでの目安です。一般人でなら日常生活が問題なく送れるようになるまでは術後約11カ月程度です。 前十字靱帯損傷で損傷部分が少なく、症状があまり見られなければ、手術しなくても通常の日常生活を送れる場合もあります。 しかし、本来、前十字靱帯が担っている膝を安定させる機能が低下してしまうため、膝にかかる負担が大きくなってしまいます。その結果、膝にある半月板などの別の組織を傷めたり、老後に関節の変形を生じたりする可能性が高くなります。 前十字靱帯の治療は手術以外にも選択肢があります。その1つが「再生医療 」です。 再生医療とは人間の自然治癒力を活用した医療技術です。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 前十字靱帯断裂における手術の入院期間 前十字靭帯断裂の手術では、関節鏡(かんせつきょう)を使って断裂した靱帯を体の腱(けん)と呼ばれる部分に移植します。 関節鏡を使用した手術では、数ミリほどの穴からカメラを侵入させて手術するため傷口が小さくて、入院期間が短くなります。入院期間は短い場合で、手術後 4 〜 7 日間を目安に退院が可能です。 この時点ではまだ全体重をかけて歩けない場合が多いので、松葉杖を使った状態で退院になります。しっかり歩けて、日常生活が送れるようになるまでは約1カ月程度入院する場合もあります。 しかし、前十字靱帯断裂は学生など若い年代に多いため、学校や仕事を1カ月も休めば生活に大きな支障を及ぼします。そのため、短い期間で退院をして、通院しながらリハビリや競技復帰を目指す場合が多いです。 前十字靱帯断裂の手術後にかかる全治までのリハビリ期間 手術直後からスポーツ復帰までの流れを時系列で紹介します。 手術からの時期 リハビリ内容 手術直後 ・膝周辺の組織の柔軟性を確保する ・膝は完全に伸ばさないように装具を着用 ・膝関節の動きを伴わない筋力トレーニング ・膝以外の部分の筋力トレーニング 1週間 ・体重1/3の荷重練習 ・関節の動きを改善する運動を開始 2〜3週間 ・全体重をかける練習 ・軽く曲げる程度のスクワットなど体重をかけながらのトレーニング 4〜6週間 ・自転車などマシーンでの運動 ・より積極的に体重をかけたトレーニングを進める 3カ月 ジョギング開始 4カ月 両足ジャンプ、ターン開始 6カ月 スポーツ練習開始 8カ月 競技復帰 術後は移植した腱を保護しながらのリハビリが必要になります。 腱が負担に耐えられるようになるまでは3カ月ほどかかるため、それまでは無理な運動は避けます。 3カ月以降ジョギングやジャンプなどのスポーツ動作を開始して、8カ月以降のスポーツ競技復帰を目指します。 また、前十字靭帯断裂はスポーツでのジャンプや切り返しといった動作で発生しやすいため、それらの動作時に膝が内側に入らないようにするなど、再発を予防するための動作を習得するのも重要です。 以下の記事では、前十字靭帯断裂を受傷してから日常生活やスポーツに復帰できる期間を詳しく解説しています。復帰までのイメージを掴みたい方は、参考にしてみてください。 手術がいらない 「再生医療 」なら、リハビリする必要がありません。再生医療における前十字靭帯断裂の治療法を知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお問い合わせください。 まとめ|前十字靱帯断裂の全治に向けて焦らずリハビリを進めよう 前十字靭帯断裂は、手術によって治療が進められるケースが多い傾向にあります。 そして手術後に正しい順序でリハビリをおこなえば、スポーツへの復帰が可能になります。しっかり医師や理学療法士などの専門スタッフから指導を受けながら、正しい治療で全治を目指しましょう。 前十字靭帯断裂には「再生医療」の治療法も効果的です。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。手術による傷跡や後遺症の心配もないので、安心して治療を受けられます。 前十字靱帯断裂後に関するよくある質問 最後に前十字靱帯断裂後に関するよくある質問と回答をまとめます。 サッカーで前十字靭帯断裂した場合、全治にどれくらいかかりますか? 損傷の程度によって、全治に要する期間は異なります。前十字靱帯断裂における全治までの一般的な期間は、8 カ月〜10 カ月ほどです。 なお、サッカーで前十字靭帯断裂を受傷した場合、再生医療による「スポーツ医療」も効果的です。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。 前十字靭帯損傷と半月板損傷は合併しやすいんですか? 前十字靭帯を損傷すると半月板損傷を併発するケースもあります。なぜなら、前十字靭帯損傷によって膝が不安定になると、半月板に負担がかかって損傷するリスクが高まるからです。 半月板損傷を併発したら、早期に治療を開始し、半月板を温存する方向で進めていくのが一般的です。 以下の記事では半月板損傷の原因や症状を解説しています。半月板損傷の理解を深めたい方はあわせてご覧ください。 半月板損傷の全治にはどれくらいかかりますか? 手術の種類によって、全治までにかかる期間は異なります。 損傷した部分の半月板を切り取る切除手術の場合、全治までは約3カ月です。損傷した部分を縫い合わせる縫合術の場合は、全治まで6カ月ほどです。 前十字靭帯損傷で復帰できる最短期間はどれくらいですか? 回復には個人差があるため、最短期間を一概には言い切れません。 一般的な全治期間は約8カ月〜10 カ月といわれています。国立医学図書館に掲載されている情報によると、スポーツ活動の復帰にかかる期間は「術後6カ月」との記載もあります。 損傷の程度や個人差によって、回復期間は変動するでしょう。 出典: 国立医学図書館 前十字靱帯断裂の手術後、歩けるまでにどれくらいかかりますか? 松葉杖を使用すれば、一般的に翌日から歩けます。松葉杖を使用しないで歩くには、2〜4週間ほどかかります。 身体にメスを入れない「再生医療」による治療であれば、術後のリハビリは不要です。 「具体的な治療内容や効果が知りたい」方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にご相談ください。症状を詳しく診断し、個々に合った再生医療の進め方をご提案いたします。 前十字靱帯断裂の手術後、どれくらいで走れるようになりますか? 個人差がありますが、術後3カ月くらいから走れるようになります。急に走り出すと再断裂のリスクが高まるため、最初は様子を見ながら軽いジョギングから始めていきましょう。 前十字靱帯断裂の手術後、どれくらいで仕事復帰できますか? デスクワークや軽作業といった身体的負担の少ない仕事であれば、1カ月ほどで仕事復帰できます。歩き回ったり、重いものを運んだりするような仕事であれば仕事復帰までに3カ月ほどはかかります。 前十字靱帯断裂の手術費用はどれくらいですか? 手術や入院にかかる費用は、手術の方法や入院期間、入院中の治療内容などによって異なります。 目安として手術・入院費などを含めて 25万円〜30万円ほど必要になるケースが多いです。 病院によって幅があるので、入院前におおよその目安を確認しておきましょう。早めに退院する場合でも、リハビリの継続は必要です。 とくに全治してスポーツ競技に復帰できるまでは、8カ月程度が目安になるため、それまではリハビリなどの費用が必要になります。 監修:医師 加藤 秀一
2022.10.24 -
- 動作時の痛み
- ひざ関節
- 靭帯損傷
スポーツをしていて、膝を捻った経験がある人は多いでしょう。そんな人がインターネットで症状を検索したとき、前十字靭帯損傷が多くヒットするはずです。 前十字靭帯損傷になると手術をしないといけないとの情報も多くみられ、不安になる人もいるかもしれません。 結論、軽度の前十字靱帯損傷では、膝の不安定感をはじめとした症状がみられます。前十字靱帯損傷からスポーツに復帰する場合には手術が推奨されていますが、損傷の程度が軽度であれば、手術せず治療できる可能性あるのです。 この記事では、前十字靭帯損傷が軽度だった場合の症状や対処方法などを解説します。前十字靭帯損傷かもしれないと不安に思っている方の参考になれば幸いです。 前十字靱帯損傷の軽度の症状は「膝の不安定感」 前十字靭帯とは、膝関節を支える4つの靭帯のうち、大腿骨(太ももの骨)の前方から脛骨(すねの骨)の後方に向かって伸びる靭帯です。 前十字靱帯損傷は、スキーやサッカーなど膝を捻る動作が多いスポーツで多くみられるケガです。損傷した靭帯は自然と元に戻ることはほぼないと考えられています。 重症であれば動かすのが困難なほどの痛みがありますが、軽度では痛みは少なく、歩けるケースも珍しくありません。 しかし膝を支える靭帯が損傷すると膝の支えが弱くなり、力が入らない・グラグラするなど膝の不安定感がみられるようになります。とくに歩いているときなどに急に膝が折れる「膝くずれ」は前十字靭帯損傷の特徴です。 受傷直後は軽度でも「プツッ」と靱帯が切れる音がする 前十字靭帯損傷は、受傷した瞬間、靱帯から「プツッ」と切れる音がするのが特徴です。 靭帯損傷の度合いにかかわらず、切れた直後から痛みを感じ、膝関節周囲の腫れなど炎症が起きます。 炎症反応は数週間続きますが、ほとんどのケースでは1カ月程度で落ち着くでしょう。 しかし、前述したとおり損傷した靭帯が元に戻ることはほぼありません。前十字靭帯損傷の程度が軽度であっても靭帯の支えが弱くなり、膝くずれをはじめとした膝の不安定感がみられるようになります。損傷が重度であるほど不安定感は強くみられるでしょう。 なお、こちらの記事でも前十字靭帯損傷について解説しています。詳細を知りたい人はぜひチェックしてください。 重症の場合は痛みの増悪や膝を動かせる範囲が狭まることも 前十字靭帯損傷が重度の場合、膝の動く範囲が狭くなったり、痛みが生じたりすることがあります。 前十字靭帯は膝のクッションである半月板とつながっており、半月板にも損傷が及んでいる可能性があるためです。 半月板には膝の動きを滑らかにする働きがあり、損傷すると膝の動きが悪くなりやすくなります。 膝を支える靭帯が損傷し、クッションとなる半月板の働きも悪くなると、膝に痛みを感じたり、可動域が狭まるケースがあるのです。 前十字靱帯損傷の主な原因は「スポーツや交通事故」 前十字靭帯損傷の主な原因はスポーツや交通事故です。 膝の中には前十字靭帯と後十字靭帯があり、それぞれの靱帯が絡まるように大腿骨と脛骨をつなげることで膝を安定させています。スポーツや交通事故で膝が強制的に捻られると、前十字靭帯と後十字靭帯が引っ張られてしまい、損傷につながります。 なお前十字靭帯損傷の原因については、以下の記事でも詳しく解説しています。興味がある人はぜひご覧ください。 ちなみに、当院「リペアセルクリニック」では、前十字靱帯損傷にも効果が期待できる再生医療をおこなっています。膝の痛みにお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談いただければ幸いです。 前十字靱帯損傷では軽度でも病院に行くべき理由 結論から言えば、前十字靭帯損傷では軽度であっても病院の受診をおすすめします。 前十字靭帯は血流が乏しいため、自然治癒が難しいと考えられている組織です。放置することで膝の不安定感が残ったり、変形性膝関節症などにつながったりする可能性があります。 なお、損傷の程度はMRIやエコー検査ではっきりするケースがほとんどです。損傷の程度を知るためにも、前十字靭帯損傷が疑われる状態であれば整形外科の受診をおすすめします。 【要チェック】前十字靭帯損傷で受診すべき基準 前十字靭帯損傷が疑われたときに、受診すべき基準は以下の症状が見られるかどうかです。 ケガをしたときに「プツッ」という靱帯が切れるような音(ポップ音)があった 歩行など膝くずれがある 体重をのせたときに力が入りにくい 痛み・腫れがある 可動域(膝を動かせる範囲)の制限がある ポップ音や膝くずれは前十字靭帯損傷の特徴的な症状であるため、これらの症状がみられるときは整形外科の受診をおすすめします。 また力の入りにくさや痛み・腫れ・可動域制限は、前十字靭帯損傷以外にも、捻挫など別の疾患が疑われる可能性もあるでしょう。 病院で検査しないと診断名がわからないケースも多いため、これらの症状に心当たりがある人は受診を検討してみてください。 前十字靱帯損傷の治療における2つの選択肢 前十字靭帯損傷の治療には「手術療法」と「保存療法」の2種類があります。 もし軽度の前十字靭帯損傷である場合には、保存療法が一般的です。しかし、スポーツに復帰するといったケースでは手術を進められる可能性があります。 本章では、前十字靱帯損傷の治療における選択肢やその内容を詳しく解説していきます。 なお、前十字靭帯損傷の手術についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。手術を検討したい人はチェックしてみてください。 スポーツを続けたいなら「手術療法」 前十字靱帯損傷の場合、軽度であっても損傷した靱帯は自然治癒しないケースがほとんどで、膝の不安定感は残り続けます。 放置すると膝への負担が強まり、半月板の損傷や関節の変形などにつながるかもしれません。そのため、スポーツに復帰をしたり、膝に負担のかかる仕事をしたりする場合は手術がおこなわれます。 また、損傷が重度だったり、他の部分の損傷を合併したりして、日常生活でも膝くずれを繰り返すような場合も手術を検討する必要があるでしょう。 手術療法では、前十字靱帯の代わりに使用する人工的に靱帯を使用する再建術(さいけんじゅつ)がおこなわれます。 靱帯の再建には筋肉が骨につく部分である腱(けん)の使用が一般的で、手術に使われる筋肉は太ももの前(大腿四頭筋腱)と後ろ(半腱様筋腱)があります。 手術後は8〜10カ月後にスポーツに復帰可能とされていますが、リハビリをしないといけません。 日常生活に支障がないなら「保存療法」 長期的な視点では、靱帯が損傷したままだと将来の怪我につながったり、活動的な動きが制限されたりするため、年齢が若い場合は靱帯の再建手術をするケースが多いです。 しかし、活動量が低く損傷が軽度であれば、日常生活に支障がなく過ごせることも少なくありません。そのため、中高齢者で日常生活に支障がなかったり、スポーツや仕事で膝に負担をかけなかったりする場合は手術をせず保存療法のみ行うこともあります。 保存療法としては、膝の関節を支える装具やサポーターを使用したりして膝を安定させて、膝にかかる負担を少なくします。 膝周辺の筋力を鍛えて自身の力で膝を支えることも重要です。とくに太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力強化が重要といわれています。この筋肉は膝を伸ばす筋肉ですので、前十字靱帯損傷後にみられる膝くずれの予防に有効です。 なお、当院「リペアセルクリニック」では手術以外の治療法として「再生医療」を提供しています。前十字靱帯損傷の治療の選択肢を広げたい方は、一度「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」からご相談いただければ嬉しく思います。 まとめ|前十字靭帯損傷は軽度でも適切な治療が大事!迷ったら早めに受診しよう 今回の記事では軽度の前十字靭帯損傷について詳しく解説しました。 前十字靭帯損傷は軽度であっても自然治癒が見込めないため、年齢や生活スタイルに応じて適切な治療を受けることが大切です。 また、前十字靭帯損傷を放置しておくと、膝の不安定感や力が入りにくいといった後遺症が出る可能性があります。もし前十字靭帯損傷が疑われるようなケガをした場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。 当院「リペアクリニック」では膝の治療として再生医療に取り組んでいます。国内で初めて特許を取得した「分化誘導による関節の再生医療」は従来より高い再生能力を持った幹細胞による治療です。幅広い膝疾患への効果が期待できるため、手術をしたくない人におすすめの治療といえます。 もし前十字靭帯損傷で手術以外の治療を選択したい人は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」からご相談ください。 この記事が少しでも前十字靭帯損傷でお悩みの人のお役に立てれば光栄です。 前十字靭帯損傷についてよくある質問 前十字靭帯損傷は安静にしていたら自然治癒しますか? 前十字靭帯は自然治癒が見込めない組織なため、安静ではもとに戻らない可能性が高いでしょう。 放置すると、膝の不安定感から突然膝が折れ曲がる「膝くずれ」がみられたり、膝の変形につながったりするリスクがあります。 前十字靭帯損傷の症状が軽度でも手術が必要ですか? 前十字靭帯損傷は軽度でも膝の不安定感などの後遺症が出るため、スポーツをしたい場合の治療には手術の選択が一般的です。 スポーツをせず、日常生活で支障がない場合には、手術をせず保存療法のみ行うこともあります。
2022.10.21 -
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
- 靭帯損傷
膝の病気や痛みをかかえている方のなかには、定期的に膝へヒアルロン酸注射している方が多くいます。 しかし「最初は注射をすれば膝の痛みがひいたのに最近は効かなくなってきた」「効かないのは失敗が原因?」と感じた経験もあるでしょう。 そこで今回はヒアルロン酸注射をしていて、効かないと感じたり失敗を疑っている方に向けて、ヒアルロン酸の効果を解説します。 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法も紹介するので、最後までご覧ください。 膝にヒアルロン酸注射をしても効かないのは失敗が原因なの? 膝のヒアルロン酸注射が効かず、失敗を心配する方もいるかも知れませんが、病気の進行や膝の変形が重度になると効果が薄くなります。 ヒアルロン酸注射自体の問題や治療の失敗などではなく、膝自体に炎症がある場合、ヒアルロン酸注射が、効かないケースも多くあります。 膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射自体が余計に症状を悪化させてしまう症例もあるので注意が必要です。 変形性膝関節症は、年齢を重ねると進行する病気なので、誰でも変形が強くなっていく可能性はあります。 しかし体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりする方は、変形が進行する原因になるとも言われているので注意しましょう。 膝の変形性関節症における重症度や膝の組織を評価するために、レントゲン検査やMRI検査など、画像検査が行われます。 MRI検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板が傷ついていないかも診断できるため、治療方法の選択をするためにも重要な検査です。 MRI検査が重要な理由は、以下の記事で詳しくまとめました。 そもそもヒアルロン酸注射とは 「膝のヒアルロン酸注射が効かないのは失敗が原因なの?」と不安に感じる方に向けて、ヒアルロン酸注射の概要を解説していきます。 ヒアルロン酸注射の効き目を感じず失敗と捉える前に、まずは注射として期待できる効果の概要を見ていきましょう。 ヒアルロン酸注射は初期症状におすすめ ヒアルロン酸は、膝の変形性関節症における初期症状におすすめの治療方法です。 ・ヒアルロン酸注射のみで完結する軽度な治療 ・軟骨保護のような炎症緩和 など 上記のような治療目的で使用されるのがヒアルロン酸注射です。 そもそもヒアルロン酸は水分をたくさん含む物質で、主に関節の内部を満たしている液体成分を補充する目的で注射します。 膝にヒアルロン酸を注射すれば、動きをよくする潤滑油のような役割になるのです。 膝以外にも眼の乾燥としてヒアルロン酸の目薬を行います。 目に潤いを与えるためヒアルロン酸が用いられるように、短時間で効果を得たい場合に提供される治療方法としてヒアルロン酸が活用されているのです。 ヒアルロン酸注射は根本的な治療にはならない いろいろな用途に用いられるヒアルロン酸ですが「変形性膝関節症」で、膝関節の動きを滑らかにするため注射している方もいるでしょう。 注射治療になるので手術のような日常生活の支障を気にする必要もありません。 しかしヒアルロン酸注射は、液体成分なので体内に吸収されてしまいます。 持続期間は約1〜2週間程度と言われているため、時間経過とともに「注射の効果がない」「失敗した」と感じてしまうでしょう。 膝の関節にはヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液で満たされています。 滑液が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねたり外傷や他の疾患があったりすると、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ってしまうのです。 ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすのが難しくなり、結果として膝にある骨や軟骨がこすれて痛みを感じてしまいます。 ヒアルロン酸注射をしただけでは一時的な治療になり「痛みを感じにくい状態」である持続期間が切れた際「効果がない」と捉えてしまいがちなのです。 以下の記事では、ヒアルロン酸注射の有効性と限界について詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなった場合の対処法 ヒアルロン酸注射は、はじめは効いても徐々に効かなくなるケースがあります。 ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大切です。 ここからは膝のヒアルロン酸注射が効かなくなった場合の対処法として挙げられる治療法などを解説します。 適度な運動 膝のヒアルロン酸注射を必要とする代表的な症例である「膝変形性関節症」には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療があります。 たとえば体重が重い方は、体重を減量するための運動も治療として重要な方法です。 専門的な治療を施すのであれば、運動療法を実施するのをおすすめします。 規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくのが大事です。 膝をサポーターで保護し、テーピングを実施するのも推奨されています。 膝の負担を減らしながらできる運動については、以下の記事に詳しくまとめているので、ぜひ役立ててください。 ステロイド薬の投与 膝に炎症がある場合、ヒアルロン酸の注射ではなくステロイド薬を膝に注射する治療法もあります。 ステロイド薬の投与だけでなく、炎症を抑えるための薬を飲む治療法をしつつ、数カ月のリハビリなど保存療法を進めていく治療法も挙げられます。 人工関節を用いた手術 重症になった場合や注射が効かない状態が続くと手術が必要なケースもあります。 手術では関節の代用部品である「人工関節」を関節の代わりに埋め込む治療を実施します。 皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 手術は傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院が必須です。 入院自体は数日〜数週間ですが、もともとの歩行状態に戻るためには数カ月膝のリハビリが必要です。 人工関節を使った手術で知っておくべき項目については、以下の記事でまとめているので、あわせてご覧ください。 手術(人工関節)を避ける再生医療の選択肢 最近では手術の代わりに「PRP療法」や、「幹細胞治療」と呼ばれる新しい先端治療を選択できるようになってきました。 PRP療法は、患者様の血液から抽出した「血小板血漿(PRP)」を傷んでいる部位に注射する治療法です。 一方で「幹細胞治療」は、少しの脂肪を採取し、幹細胞を抽出して数千から億の単位まで培養し、増やした細胞を患部に注射で投与します。 どちらも患者様の自然治癒力を高めて治療するもので手術や入院の必要はありません。どちらも副作用はほとんどなく、患者様の身体にかかる負担が少ない治療法です。 詳しくは、お問い合わせください。 まとめ・膝のヒアルロン酸注射が効かなくて失敗を疑う前に診療を! 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために有用な治療法です。 最初効果があっても、治療の過程で「効かなくなった」「失敗した」と感じる可能性があります。 治療の失敗やヒアルロン酸注射自体の問題ではなく、膝の状態が良くない恐れも考えられます。 効果が乏しいのにもかかわらず、漫然と注射を重ねるのは良くないでしょう。 現在では再生医療(幹細胞治療、PRP療法)といった先端医療も考慮できます。 ヒアルロン酸の注射の効果が以前に比して減ったように感じている場合、専門家に相談し、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 再生医療は、先端医療であるため厚生労働省から認められている限られたクリニックでしか受けられない治療法です。 手術も入院も避けられる身体にやさしい治療法なので、気になった方は気軽にお問い合わせください。 膝のヒアルロン酸注射でよくある質問 Q.ヒアルロン酸注射に副作用はないの? A.ヒアルロン酸注射による副作用は「まったくない」とは断言できません。 ヒアルロン酸注射をしたあと、起こる可能性がある副作用は以下の通りです。 ・内出血 ・むくみや腫れ ・かゆみ ・チンダル現象 ・血管閉塞 など 上記のような副作用が起こっても、時間経過とともに回復するケースが大半です。 ただし、副作用は放置せずヒアルロン酸注射をした医療機関で専門的なケアをしてもらうのをおすすめします。 Q.何度も打ち続けるとどうなるの? A.ヒアルロン酸注射を何度も打ち続けると、ヒアルロン酸の吸収力が低下する可能性があります。 ヒアルロン酸は膝を含めた関節部分の潤滑油として働いているので、補充する目的で注射治療を施します。 しかし、初めてヒアルロン酸注射をした方は、複数回注射をしている方より吸収が早い傾向にあるので、次第に「失敗した」と捉えてしまうでしょう。 あくまで一時的な治療になるので、膝の痛みが続く方は別の治療法を検討しましょう。 Q.痛みを感じる場合失敗を疑うべき? A.ヒアルロン酸注射は、膝に注射を刺す痛みになりますが、血管注射とは異なります。 注射針を刺した後にヒアルロン酸を注入するので、人によっては痛いと感じる方もいます。 ヒアルロン酸注射をする前に麻酔テープやクリームを塗る方法もあるので、少しでも心配な方は事前に相談しておきましょう。 とくに変形性膝関節症が重度な方は、関節に注射針を刺すのが困難なケースもあります。 副作用として痛みを感じる可能性もあるので、我慢せず医師に相談するのをおすすめします。 ▼以下もご参照ください
2022.06.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 関節リウマチ
- 膝の慢性障害
- 靭帯損傷
膝の水が溜まって痛みがある。 溜まっている膝の水を、できるなら自分で抜きたい。 膝に溜まった水が気になり、抜く方法を知りたいと考えていませんか。しかし、膝の水を抜くのは癖になってしまうという話を聞いて、不安になっている方もいるかもしれません。 膝の水が溜まる原因は、炎症反応が起こっているためです。病院では、注射器を使用して膝の水を抜きます。 また、セルフケアではストレッチやマッサージで膝の水を抜く方法もあります。しかし、誤ったセルフケアは痛みや炎症の悪化につながるため、症状が強い場合は病院で適切に処置してもらった方が良いでしょう。 本記事では、病院やセルフケアで膝の水を抜く方法を詳しく解説しています。皆様が納得できる膝の水を抜いて痛みを緩和する方法の選択に役立てれば幸いです。 病院で膝の水を抜く方法 膝の水を抜く方法のひとつとして、病院での処置をイメージする方も多いでしょう。 本章では、病院での処置や注意点について解説します。本章を参考に膝の水を抜くかどうかを検討してください。 処置には注射器を使う 病院では主に整形外科にて、注射針を関節に刺して膝の水を抜く「関節穿刺」を行う場合があります。(文献1) 膝の水の正体は「滑液(かつえき)」です。滑液が膝に溜まることで関節を圧迫し、膝の痛みを悪化させる可能性があります。そのため、膝の水を抜くと症状の緩和が期待できます。 膝の水を抜く際、注射針を刺した直後以外に激しい痛みを伴うケースは稀です。ただし人によっては痛みが気になる方もいるため、処置後に違和感がある場合は、担当の医師に相談しましょう。 症状に応じてヒアルロン酸を注入する 膝の水を抜いた後や変形性膝関節症では、症状を和らげる目的でヒアルロン酸を注入することがあります。通常、週に1度あるいは数週間に1度の頻度でヒアルロン酸を注入し、効果がみられれば継続します。 病院でのヒアルロン酸の注入は保険適応になるケースが多いため、治療費を抑えられるメリットも期待できるでしょう。 ヒアルロン酸の注入は一時的に痛みや炎症を抑える効果がありますが、持続的ではないため定期的な通院が必要です。 また、根本的な原因疾患の治療でないため、医師の指示に従いリハビリや運動療法など根本的な原因を改善する治療と並行しましょう。 病院で膝の水を抜いた直後は安静にする 病院で膝の水を抜いた直後は、安静にして過ごすように指導されます。処置を行った当日は、以下の2点は行わないように注意しましょう。 激しい運動 入浴 また、処置の後には以下の合併症のリスクがあります。 合併症 症状 感染症 注射部位の腫れや熱感、痛みが長時間続く、または症状の悪化 出血 注射部位を圧迫しても止血しない 上記のような症状があらわれたら、早めに受診するようにしましょう。 膝の水を抜いた後の注意点について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 自分で膝の水を抜く方法 病院で処置してもらう以外にも、自分でストレッチやマッサージを行って膝の水を抜くことも可能です。 本章では、セルフケアで膝の水を抜く方法と注意点を解説します。 「できるなら自分で膝の水を抜きたい」という方は、本章を参考に、ストレッチやマッサージを行ってみましょう。 膝の水を抜くストレッチ・マッサージ 膝の水を抜くために効果的なストレッチ・マッサージとして、以下の4つがあげられます。 ストレッチ 足上げ運動 1. 仰向けになり、両足を伸ばす 2. 左右の足を交互にゆっくりと上げるたり降ろしたりを繰り返す パテラセッティング(膝の前側の筋肉を鍛える) 1. 床に足を伸ばして座る 2. 片側の膝下に丸めたタオルやクッションを置く 3. クッション・タオルを膝下で床に押し付ける 4. 3〜5秒経ったら力を抜き、再度3.を行う 5. 数回行ったら左右の足を交換し、2.~4.を同様に繰り返す マッサージ 膝下のほぐし 1. 片側の膝下に両手で親指を添える 2. 強めの力で押し、前後左右に動かす 3. 反対側の足も同様に1.2.を行う 太もものほぐし 1. 椅子に座る 2. 片側の外ももに手のひらを添え、押しながらゆっくり回す 3. 反対側の足も同様に1を行う 4. 両足の前ももに手のひらを添え、足の付け根から膝上まで強い力でほぐす すべて自宅で手軽にできます。無理のない範囲で、上記のストレッチやマッサージを行ってみましょう。 痛みや違和感がある場合は無理に動かさない 痛みや違和感があるときは、炎症が起こっているサインです。むやみに触ると悪化する可能性があるため、ストレッチやマッサージなどのセルフケアはおすすめできません。無理に動かさず、早めに医療機関へ行きましょう。 マッサージやストレッチは血の巡りをよくする効果が期待できますが、誤った方法で無理に行うと、症状が悪化する恐れもあります。 また、痛みを感じるときは、膝に負担をかけないよう歩行や荷物の持ち運びなどの動作にも注意しましょう。 膝の水が溜まる原因は「炎症による関節液の過剰分泌」 膝の水が溜まる原因は、炎症反応によって「関節液」が余分に分泌されるためです。 関節液は、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割をしています。関節液は常につくられながら吸収され、一定量になるよう調整されています。 しかし、なんらかの疾患によって炎症が起こると、いつもより早いペースで関節液がつくられ、膝の水が溜まります。(文献2) 膝に水が溜まる原因の病気は、以下のとおりです。 半月板損傷 変形性関節症 靭帯損傷 痛風、偽痛風 関節リウマチ 骨折 感染や外傷 これらの病気になると膝に水が溜まりやすくなります。膝の水を根本的に改善するには、水を抜く処置をして痛みを緩和しつつ、原因となる病気を治療することが大切です。 まとめ|膝の水を抜くなら医療機関に相談しよう 今回の記事では膝の水を抜く方法やセルフケアを中心に解説しました。 症状が出現した際に、自己判断で放置したり誤ったセルフケアを行ったりすると、悪化する可能性があります。膝の水を適切な方法で抜きたい場合は、医療機関に相談しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、人体に元々ある幹細胞を活用した「再生医療」による膝の痛みや変形性膝関節症の治療が可能です。 「メール相談」や「オンラインカウンセリング」も実施しているので、気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 膝の水に関してよくある質問 膝の水を抜くと癖になりませんか? 膝の水を何度も抜くのが原因で、癖になるわけではありません。 膝の水を抜いても再び溜まってしまうのは、関節に炎症が起こっている根本的な原因の病気が改善されていないためです。 原因の病気として、半月板損傷や変形性関節症などが知られています。痛みを和らげるためには、原因の病気の治療をしながら膝の水を抜くことも大切です。 膝の水は自然に抜けますか? 稀に自然治癒する場合もあります。長期期間放置しても、必ず自然治癒するわけではありません。 放置すると関節が固まって動きにくくなった「拘縮状態」に陥るリスクもあります。 拘縮状態になると膝の曲げ伸ばしが辛くなり、日常生活に支障をきたす可能性もあります。そのため、1カ月以上膝の水の溜まりを放置するのはおすすめできません。 膝の水を自然に抜けるまで長期間待たずに、早めに受診するようにしましょう。 参考文献一覧 文献1 水原寛康. 関節穿刺. 医学書院 医療情報サービス. 2024年10月18日. 文献2 斉藤 聖二,関節痛(炎):診断と治療の進歩1.関節の構造と関節痛(炎)の原因, 日本内科学会雑誌, 1994年, 第83巻, 第11号, p1871-1875
2022.06.29 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 関節リウマチ
- 靭帯損傷
- 膝部、その他疾患
膝関節は、大腿骨、脛骨および腓骨、また膝蓋骨などが組み合わさって作られています。日常生活でスムーズかつ自由な伸展運動ができるよう、半月板や靭帯をはじめとする周囲の構造物が膝関節を補助しています。 何気ない動作において、「膝の裏に痛みを感じる」「ピキッと音が鳴る」といった違和感を覚えた経験がある方もいるでしょう。 膝を形成している組織が、スポーツなどの外傷や加齢、自己免疫異常などによる異常をきたして損傷が起こると、膝の裏の部位で疼痛(痛み)が生じます。 今回は、膝の裏が痛い原因やピキッと鳴るときに考えられる病気と対策を解説します。医療機関での治療法のほか、セルフケア方法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 膝の裏がピキッと痛むときに考えられる9つの病気 膝の裏が痛む際に原因として考えられる疾患には、変形性膝関節症や関節リウマチのほか、膝部位に存在する靱帯の損傷などがあります。 膝の裏が痛い場合に考えられる疾患 変形性膝関節症 半月板損傷 ベーカー嚢腫(のうしゅ) 関節リウマチ 靭帯の損傷(事故や、スポーツなど) 以下で、それぞれ詳しく解説していきます。 ▼ 膝の痛みを放置するリスクについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 1.変形性膝関節症 変形性膝関節症は、中高年の女性によくみられます。 関節の軟骨がすり減って膝の内側や裏からふくらはぎにかけて痛くなり、正座がしにくくなります。変形が進行して症状が悪化するとO脚になり、末期になると歩行が困難になって人工関節の手術が必要です。 変形性膝関節症によって膝の関節が硬くなると、膝を伸ばすときに裏が痛くなります。また、膝を曲げ伸ばしする際に「ミシミシ」「ゴリゴリ」といった音が鳴るケースも珍しくありません。 ▼ 変形性膝関節症によるO脚の例 また、膝関節が炎症して水が溜まると、膝の裏から太ももの前側にかけて全体的に痛みを感じるようになります。(文献1) ▼ 変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 2.半月板損傷 膝の裏がピキッと痛む原因として考えられる疾患の一つが、半月板損傷です。 半月板は膝関節におけるクッションの役目があり、スポーツや事故による怪我、あるいは加齢に伴う変性によって損傷することがあります。 半月板が損傷すると、膝の裏側に痛みを感じるケースも珍しくありません。また、膝が動かなくなるロッキングを起こしたり、曲げ伸ばししづらくなったりします。 3.ベーカー嚢腫 ベーカー嚢腫も、膝の裏がピキッと痛むときに考えられる疾患の一つです。 ベーカー嚢腫とは、なんらかの原因で膝関節が炎症を起こし、関節液が増えて膝裏の滑液包に流入してできた袋状のコブを指します。 ゴルフボールぐらいのサイズに大きく腫れることもあり、膝の裏が突っ張った感覚を覚えます。 放置しているうちに腫れが治る場合もありますが、痛みが強いときは、針で水を抜くケースも少なくありません。なお、ベーカー腫瘍は主に変形性膝関節症や半月板損傷、関節リウマチ、化膿性関節炎などが原因とされています。(文献2) ▼ ベーカー嚢腫について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。 4.関節リウマチ 関節リウマチの患者数は、現時点でおおむね80万人といわれており、発症原因は自己免疫系統の異常とされています。自分自身の軟骨組織や骨成分を攻撃・破壊して関節部位に炎症を引き起こすと、膝裏に疼痛症状をもたらすと考えられます。(文献3) 関節リウマチを発症しやすい年齢は、30~50代前後の中高年層です。また、性別に関しては男性よりも女性で発症率が高いことが指摘されています。 なお、関節リウマチの初期段階では、手指の関節領域が左右対称に腫れるほか、倦怠感や食欲不振など自覚症状を引き起こす懸念があります。 ▼ 関節リウマチの対処方法を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 5.靭帯損傷 靭帯損傷のなかでも、とくに後十字靱帯の損傷の場合、膝裏を伸ばしたときにピキッとした痛みを感じることも少なくありません。(文献4) 膝関節には4つの靱帯があり、重要な役割を担っています。膝の左右両側にあるのが内側側副靱帯と外側側副靱帯で、前後部位には前十字靱帯と後十字靱帯が走行しています。 たとえば、交通事故に遭ったり、スポーツ活動中に怪我を負ったりして、物理的に大きな衝撃が膝関節に負荷となってかかると、膝の靱帯が損傷・断裂して強い痛みを伴うでしょう。 とくに、靭帯を損傷してから3週間前後の発症して間もない頃には、膝裏の痛みのほか、伸展運動がしにくいといったサインも認められます。 受傷後1か月ほど経過した段階では、膝関節内部に血腫が貯留して腫れの所見が目立つこともあれば、損傷部位によっては膝関節の不安定さが少しずつ顕著になるケースもあります。 6.膝裏の筋肉の損傷 膝の裏側に位置する膝窩筋(しつかきん)の損傷も、ピキッと痛む原因の一つです。膝窩筋とは、膝裏の奥にある小さな筋肉で、膝を屈曲する際に重要な役割を果たします。 過度な負荷や無理な動きによって筋肉や腱が損傷すると、次のような症状が現れます。(文献5) しゃがむと痛い しゃがんで立つと膝の裏が痛い 膝を伸ばすとふくらはぎや太ももの裏が痛い 膝を曲げると膝裏が痛い 階段を上り下りする際に膝の裏からふくらはぎにかけて痛い 膝窩筋が損傷すると、膝裏にピキッと痛みを感じることが多く、とくにしゃがむ動作や立ち上がる動作で痛みが顕著になります。症状が悪化するとふくらはぎや太ももの裏など、周辺の筋肉にも痛みが波及するため注意が必要です。 7.腰椎ヘルニア・坐骨神経痛 太ももの後ろからふくらはぎにかけて痛みがある場合は、腰椎ヘルニアや坐骨神経痛も考えられます。神経の圧迫によって膝裏に痛みが放散され、痺れやズキズキした痛みを感じることがあります。 腰椎ヘルニアや坐骨神経痛による膝裏の痛みは、とくに立ったり歩いたりしているときに痛みが強くなることが特徴です。また、安静時にも痛みを感じる場合があり、睡眠中に痛みで目が覚めるケースも珍しくありません。 腰椎ヘルニアや坐骨神経痛が痛みの原因の場合は、腰部の治療が不可欠です。膝裏の痛みがひどくなる前に、早めに理学療法や薬物療法を行ってください。 8.リンパによる膝の裏の痛みや腫れ リンパ液の流れが悪化することによる膝裏の痛みや腫れも、ピキッと音が鳴る原因の一つです。 リンパ管は体内の老廃物を運ぶ役割を担っており、通常、筋肉の収縮や体の動きなどによって流れています。しかし、同じ姿勢で長時間過ごしたり、食生活が偏ったりしてリンパの流れが悪くなると、膝裏に痛みや腫れが生じます。 なお、リンパ液が滞った状態を放置すると、膝周辺が硬くなりさらに痛みを伴う可能性が高いため注意してください。 適度な運動やマッサージ、適切な食事をしてリンパの流れを改善・促進することが大切です。 9.反張膝 反張膝(はんちょうひざ)が原因で、膝裏がピキッと痛む場合があります。 反張膝は、膝関節が角にそり返った状態を意味します。通常、膝はまっすぐに伸びているのが正常です。しかし、班長膝の場合は膝が後ろに飛び出るような形に曲がるため、結果として膝裏に圧力がかかり、痛みが生じます。 なお、反張膝は太ももの前後の筋肉バランスの悪さや、大腿四頭筋や腸腰筋、前脛骨筋などの筋力の低下によって起こります。反張膝を放置すると、膝への負担が蓄積され、関節の変形や痛みの慢性化につながるため注意が必要です。 膝の裏がピキッと痛むときの治療法 ここでは、膝の裏がピキッと痛むときの具体的な対処法や治療法を解説します。 幹細胞やPRPによる再生医療 膝裏がピキッと痛むときの治療法として、最近では幹細胞やPRPによる再生医療が注目されています。再生医療とは、自然治癒力を最大限に引き出すための医療技術で、幹細胞や血小板の投与によって高い治療効果が期待できることが特徴です。 たとえば、変形性膝関節症が原因で膝の裏が痛む場合、初期段階ではヒアルロン酸注射やリハビリテーション、内服で様子を見ます。しかし、変形が進むと、人工関節置換術などをすすめられる場合がほとんどです。幹細胞やPRPによる再生医療は、手術を避けたい場合の新しい選択肢だといえるでしょう。 再生医療は、変形性膝関節症のほか、半月板損傷や腰椎ヘルニアなどの治療としても期待されています。 リペアセルクリニックでは、再生医療による膝の痛みの治療を行っています。なお、メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、ぜひ気軽にご連絡ください。 ▼ 再生医療で膝の痛みを治療する 膝の痛みは、再生医療なら入院や手術をせずに改善を目指せます 手術治療とリハビリテーション 膝裏に重度の痛みを感じる場合や保存療法が効果を示さない場合には、手術を検討します。 とくに、変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯断裂などが原因で膝裏に痛みがある場合は、手術治療が必要になるケースも珍しくありません。 また、術後には理学療法士やトレーナーなど専門職と相談しながら、状況に応じて適切なストレッチやリハビリテーションを実践し、早期回復に努めます。リハビリテーションは、膝の再受傷や二次的な外傷を回避するために以下の内容を中心に行われます。 体幹を鍛える 柔らかいボールなどを膝下で転がすように動かす 座位の状態になって膝を伸展させる 大腿部の筋肉を鍛える など なお、手術治療の方法は、膝の痛みの根本的な原因によって異なります。早期回復を目指す場合には、最小限の切開で済む膝関節鏡による手術をすることが一般的です。 膝の水抜き 膝の裏の痛みと同時に水が溜まっているときは、膝の水抜きをします。膝に水が溜まる原因には、変形性膝関節症や半月板損傷、ベーカー嚢腫などがあります。 膝の水が自然になくなるケースもありますが、膝裏の腫れや突っ張り、違和感があるときには水を抜くことが一般的です。 膝に水が溜まるのは、膝関節内で炎症が起こり、関節液が過剰に分泌されるためです。膝の水を抜くことで、痛みを軽減できます。ただし、膝の水抜きは一時的な効果にすぎないケースも多いため、原因に対する根本的な治療もあわせて行う必要があります。 ▼ 膝の水を抜く方法を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 病勢進行の抑制 膝の裏が痛む原因によっては、病勢の進行を抑制するための治療をします。とくに、関節リウマチや変形性膝関節症など、進行性の疾患においては、症状を抑えるだけではなく、関節の損傷や変形を防ぐために以下のような治療が必要です。 抗炎症薬の使用 関節内注射(ステロイド注射やヒアルロン酸注射など) 生活習慣の改善 など 早期に適切な治療ができれば、生活する上で困らない程度まで痛みを軽減できるでしょう。 病勢進行を可能な限り抑制し、痛みを少しでも改善させるためには、普段から膝に大きな負荷をかけないように意識しながら対策することが大切です。 膝の裏がピキッと痛む場合のセルフケア方法 膝の裏がピキッと痛む場合は、早めの対応が痛みの軽減や早期の回復につながります。 以下で、膝裏の痛みに対するセルフケア方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 安静にする 膝の裏にピキッとした痛みを感じたら、まずは無理に動かさず、安静を保つことが大切です。膝に負担をかけすぎると、痛みが悪化する可能性があるため注意しましょう。とくに、急性の痛みがある場合は、できるだけ安静にするようにしてください。 安静にする際は、膝を高く保つと腫れや血流の滞りを防げます。横になるときにはクッションや枕などを使用し、膝を軽くあげると良いでしょう。安静にすることで、膝の炎症や筋肉の過度な緊張を抑えられるため、早期の回復につながります。 ストレッチをする 膝の裏がピキッと痛むときには、ストレッチも効果的です。 膝の裏のストレッチをすることで、筋肉に柔軟性を持たせて血流を促進します。膝裏の痛みに対しては、以下のストレッチがおすすめです。 ふくらはぎのストレッチ 太ももの後ろ(ハムストリング)のストレッチ 膝窩筋のストレッチ ストレッチをする際の注意点として、無理に引っ張ったり、痛みを感じるまで伸ばしたりするのは避けましょう。また、痛みを感じたときにはすぐにストレッチを中止し、かかりつけの医師に相談してください。 ▼ 以下の動画では、ふくらはぎと太ももの後ろの筋肉を中心にストレッチのやり方を紹介しています。 マッサージをする 膝の裏の痛みには、ストレッチと同様にマッサージも効果的です。膝の裏や周辺の筋肉を軽くマッサージすることで、筋肉の緊張をほぐし、血流が促進されます。 膝の裏がピキッと痛む場合は、膝の後ろからふくらはぎにかけて、手のひらで円を描くようにマッサージするのがおすすめです。 ふくらはぎを軽く揉むことで、膝裏にかかる圧力が軽減されると、痛みが和らぐ場合があります。 マッサージをする際は、痛みが悪化しないよう、力を入れすぎないことがポイントです。 テーピングやサポーターを使用する 膝の裏がピキッと痛むときには、テーピングやサポーターの使用も有効です。膝の安定性を高めることで無理な動きを制限したり負担を減らしたりすることで、痛みの軽減に役立ちます。 とくにテーピングは、膝を固定しつつ可動域を制限しないための適切な方法で行うことが大切です。テーピングの方法には専門的な知識が必要になるため、最初は専門医に相談するようにしてください。 テーピングやサポーターは膝への負担を軽減するために役立つものの、長時間使用しすぎると、筋力の低下や血行不良につながるリスクもあります。かかりつけ医に相談しながら適切にテーピングやサポーターを使用しましょう。 まとめ・膝裏のピキッとした痛みが長引くときは迷わず専門医に相談しよう 今回は、膝の裏がピキッと痛むときに考えられる病気と対策について詳しく解説しました。膝裏部が痛む原因としては、主に変形性膝関節症や関節リウマチ、膝靱帯損傷などが考えられます。 たとえば、関節リウマチは薬剤の治療成績が著しく向上し、初期段階できちんと診断して的確な治療を実践すれば治癒が期待できる病気になってきました。また、膝の靱帯を損傷した際は、早期的なアイシング(冷却)や患部固定で症状緩和につながります。 自分なりに対処策を実践しても症状が軽快しない場合や膝裏部の疼痛症状がひどくて悪化するような場合は、早めに整形外科などの専門医を受診しましょう。 膝裏のピキッとした痛みに関するよくある質問 ここでは、膝裏のピキッとした痛みに関するよくある質問をまとめました。 膝の裏は歩きすぎると痛みやすい? 長時間の歩行は膝に負担がかかるため、膝裏の痛みを引き起こす可能性があります。とくに、硬い地面を歩いたり、無理なペースで歩行したりすると痛みがでやすいでしょう。 長時間歩くときには、適切な靴を履き、歩行姿勢に気をつけることがポイントです。また、歩行する前後でストレッチや軽いマッサージをすると、筋肉の緊張を和らげて膝への負担軽減につながります。 膝の裏が痛むときに専門医に相談すべき目安は? 膝の裏が痛むときは早めに医師へ相談するべきです。 膝の裏が痛むときに考えられる原因はさまざまで、比較的軽度なものから、自身では気づけないような重度な疾患まで存在します。自己判断して膝の痛みを放置してしまうと、日常生活に支障をきたす恐れがあります。症状が悪化すると歩行が困難となり、治療後に後遺症が残ってしまう可能性もゼロではありません。 膝の裏の痛みは軽視せず、最寄りの医療機関を受診するか、リペアセルクリニックのメール相談やオンラインカウンセリングまで気軽にご連絡ください。 膝裏のピキッとした痛みは予防できますか? 膝裏の痛みに対する予防には、筋力トレーニングやストレッチが効果的です。 大腿四頭筋やハムストリング、ふくらはぎなどの筋肉を鍛えて柔軟性を保つことで、膝の安定性を維持しやすくなります。また、正しい歩行姿勢を保ったり適切な体重を維持したりすることも、膝への負担を軽減し、痛みの予防につながります。
2022.06.07