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膝の内側が痛む鵞足炎は、膝の内側下部(脛骨の内側面)にある縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はくきん)・半腱様筋(はんけんようきん)が付着する「鵞足(がそく)」と呼ばれる部分の滑液包に炎症が起こった状態です。(文献1) 鵞足炎は身近な障害で、ランナーやゴルファーなどのスポーツ愛好家だけでなく、日常生活で階段昇降や歩行を繰り返す人も発症します。 とくに筋膜が硬くこわばった部分(トリガーポイント)が形成されると、膝の痛みが慢性化しやすくなります。 鎮痛剤やアイシングなどによる一時的なケアだけでは、深部にある原因へ十分に働きかけられない場合があるため、痛みをくり返さないためにもトリガーポイントは重要な要素です。 本記事では鵞足炎とトリガーポイントの関係を掘り下げることで、膝の痛みを根本から理解できるようになります。長引く膝の内側痛に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。 鵞足炎のトリガーポイント 鵞足炎は、表面的な炎症を軽減しても痛みが消えないこともあり、その背後に隠れているのが「トリガーポイント」です。トリガーポイントとは、筋膜や筋線維の一部が硬くなり、押すと響くような痛みを引き起こす部位を指します。 鵞足部に関わる縫工筋・薄筋・半腱様筋だけでなく、大腿四頭筋や内転筋群、膝周辺の複数の筋肉で硬結が生じる場合もあり、その影響で膝の内側痛が続くことがあります。代表的な筋肉と、そのトリガーポイントが生じやすい具体的部位および分類は次のとおりです。 筋肉名 主なトリガーポイント部位 分類 痛みの関連先 縫工筋(ほうこうきん) 太もも前面内側の筋腹 筋膜内(筋腹) 膝の内側(鵞足部)に刺すような痛みを飛ばすことが多い 薄筋(はくきん) 太もも内側中央の筋腹 脛骨内側(鵞足)付着部 筋膜内(筋腹)腱・骨膜付着部 内もも~膝下内側にヒリヒリとした痛みや関連痛を起こす 半腱様筋(はんけんようきん) 太もも後面中央の筋腹 脛骨内側(鵞足)付着部 筋膜内(筋腹)腱・骨膜付着部 膝裏からふくらはぎ内側にかけてズキズキと痛みが放散 大腿四頭筋(内側広筋・大腿直筋など) 内側広筋の筋腹 大腿直筋の付着部(下前腸骨棘付近) 筋膜内(筋腹)腱付着部 膝のお皿周辺や膝の前内側にうずく痛み、膝折れ感 内転筋群(長内転筋・短内転筋・大内転筋等) 股関節に近い筋腹大腿骨内側上顆付近(骨膜) 筋膜内(筋腹)腱・骨膜付着部 内もも~膝内側への深い痛み・しびれ感が出やすい 膝の内側痛がある場合、これらの筋膜・腱・骨膜付着部で形成されたトリガーポイントを適切にケアしなければ、鵞足炎の炎症が落ち着いても痛みが長引いたり再発をくり返すため注意が必要です。 「膝の内側の痛み」が長引く理由とトリガーポイントの関係 鵞足炎が慢性化しやすい背景には、筋膜のこわばりが深く絡んでいます。炎症はアイシングや安静である程度落ち着く場合がありますが、筋膜や筋繊維が硬くなった状態を放置していると、膝をかばいながら動かす状態が続いてしまうからです。 鵞足部だけでなく、太もも全体や股関節周辺でトリガーポイントが形成されると、膝を曲げ伸ばしするたびに刺激が伝わり、痛みが抜けにくくなります。 一般的な炎症ケアだけで不十分なケースも多く、痛みの原因が筋膜に潜んでいると意識しないまま過ごすと症状の長期化を招いてしまいます。 専門的な視点でトリガーポイントを捉え、膝を動かしやすい環境へ整えていくことが、痛みの根本解決へ向けた第一歩になります。 鵞足炎のトリガーポイントをセルフチェックする方法 鵞足炎によるトリガーポイントがある場合、レントゲンやMRIでは異常を発見しにくいケースがあります。 ここでは、自身で簡単にトリガーポイントの有無を確認できる方法を紹介します。 チェックポイント 解説 1.膝周辺の筋肉を指で圧してみる まずは太ももの前側、内側、膝のすぐ上あたりをやさしく押してみてください。 圧迫したとき、鋭い痛みがあるか確認しましょう。痛みを感じた場合、筋肉内のトリガーポイントの可能性があります。 2.しこりの有無を探る トリガーポイントは「筋肉にできたしこり」にたとえられます。硬く盛り上がった部分を感じる場合は、関連痛と呼ばれる周辺への痛みの広がりを伴うことがあります。 膝の内側だけでなく、大腿四頭筋や内転筋までチェックすると、思わぬ部分が痛みの引き金になっていることがわかるかもしれません。 3.レントゲン・MRIに写りにくいことを認識する トリガーポイントは画像検査で発見が難しいため、整形外科などで異常なしと診断されても、実はトリガーポイントが潜んでいる場合があります。 セルフチェックによって「ここを押すと膝の内側にビリッと響く」部分を見つけたら、トリガーポイントの存在が疑われます。 放置すると鵞足炎の回復を遅らせる一因になるので、必要に応じて専門の医師や治療家へ相談してください。 誤ったセルフケアで悪化させないために トリガーポイントが気になり、自分で強く押してしまいがちです。しかし、強い刺激を与えると筋繊維がさらに損傷してしまい、痛みが増したり炎症を誘発したりするリスクもあります。 自己流のケアはやりすぎると逆効果になりやすいため、以下の点に注意してください。 注意点 解説 過度なマッサージを避ける トリガーポイントは筋肉が敏感な状態になっています。入念に揉みほぐせば良いわけではなく、過剰な刺激が筋線維を痛め、症状を増悪させる可能性があります。 痛みが強いときは安静を優先する ある程度のセルフケアは大切ですが、痛みが強いときは膝や太ももを酷使しないよう安静を心がけましょう。 専門医へ相談する 鵞足炎が慢性化しているときや、セルフケアで改善が見られないときは専門クリニックの受診をおすすめします。 局所へ的確にアプローチする治療法がありますので、早めに適切な処置を受けると回復の見込みが高まります。 セルフチェックでトリガーポイントの疑いがあっても、自己流のケアだけで鵞足炎を根本的に解消することは難しいです。膝の内側痛が気になるときは専門医による正確な診断と、適切な治療プランのもとで対策を進めてみましょう。 なぜ鵞足炎のトリガーポイントができるのか?主な原因とリスク要因 鵞足炎は、膝の内側に集まる筋肉が使いすぎや血流不足によって硬くなりやすく、その結果トリガーポイントが形成されて痛みが長引くケースがあります。鵞足炎のトリガーポイントが生じる主な原因とリスク要因について整理します。(文献2) 主な原因 リスク要因 1.オーバーユースと筋疲労 ストレッチを怠った状態で長距離ランニングや過度な坂道走行など、膝の内側に大きな負荷がかかる運動を反復して行うと、筋肉が微細損傷や疲労を重ねて血行が悪化し、トリガーポイントを生みやすくなります。 2.姿勢の乱れや筋力のアンバランス 内股やO脚のように姿勢が乱れた状態での生活が続くと、膝に不自然な力が集中し、筋肉が過度に緊張してトリガーポイントが形成されやすくなります。 3.肥満 生活習慣が乱れ、肥満になると膝に負担がかかり、トリガーポイントを生み出しやすくなります。 4.鵞足炎以外の炎症 足首や股関節などの不調が膝に波及して鵞足炎を悪化させたり、鵞足炎と混合されやすい膝の変形性関節症を発症すると副次的に膝に負担がかかり、トリガーポイントを生み出す可能性があります。 鵞足炎の症状や原因は下記の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご確認ください。 トリガーポイントにアプローチする鵞足炎の治療法 鵞足炎による膝の内側痛を根本から改善していくには、炎症の沈静化だけでなく、筋膜や筋肉内部のトリガーポイントへ適切にアプローチする治療法が必要です。ここでは鵞足炎に対して考えられる治療方法を紹介します。 治療法 説明 トリガーポイント注射 トリガーポイント注射は、筋肉のしこりが生じている部分(トリガーポイント)へ直接薬液を注入して痛みや緊張を和らげる施術です。 トリガーポイント注射をすると、凝り固まった筋繊維をリセットし、血流を促しながら筋肉を正常な状態へ近づけられます。(文献3) 薬物療法 鎮痛剤(イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム)を内服し、鵞足炎の痛みや腫れを短期的に和らげます。(文献4) 理学療法(フィジカルセラピー) 理学療法(フィジカルセラピー)では、専門の理学療法士の指導のもとで膝周囲の筋肉の柔軟性と筋力を改善する運動をします。 ハムストリング(太もも裏)や大腿四頭筋など膝に関与する筋群のストレッチや筋力強化エクササイズによって関節の可動域や安定性を高め、痛みの軽減と再発予防が期待できます。(文献4) 装具の使用とテーピング 必要に応じて膝関節への負担を軽減するための補助具の利用を推奨されています。 足のアーチや膝の角度の問題が鵞足炎の一因となっている場合には、靴の中にインソールを入れて膝の位置関係を矯正し、鵞足部への過度な負荷を減らせます。また、膝にテーピングを貼って筋肉や腱をサポートする方法は、動作時の痛みを和らげるのに役立ちます。(文献5) 多血小板血漿(PRP)療法 近年、難治性の鵞足炎に対する新たな選択肢としてPRP注射療法が試みられることもあります。 これは患者自身の血液を採取して血小板が濃縮された血漿(けっしょう)部分を抽出し、炎症部位に注入する再生医療です。PRPに含まれる成長因子によって組織の治癒や修復を促すことが期待され、痛みの軽減への効果も認められています。(文献5) 上記の選択肢から、鵞足炎による痛みの強さや生活スタイルに合わせた治療を選ぶと良いでしょう。治療を続けやすい方法や通院ペースを考慮しながら、根本的な改善を目指してみてください。 また、当院では再生医療のスペシャリストとして上記で紹介した多血小板血漿(PRP)療法についても取り扱っておりますので、気になる方は以下の記事をご確認ください。 再発を防ぐには?トリガーポイントへの継続的なケアが重要 膝の内側に痛みが生じる鵞足炎は、筋肉や腱が硬くなった状態が長く続くと痛む部分をかばうような歩行や運動フォームがクセになってしまいます。その結果、トリガーポイントが残り一時的に治療しても痛みが再燃しやすくなります。 ハードな運動だけでなく、姿勢が悪いまま過ごすことでも膝へのストレスが繰り返され、症状がぶり返す危険もあります。痛みが軽減してきた段階でも、姿勢や柔軟性を適宜チェックし、股関節や太ももの筋力アップを図るなどのリハビリを続けましょう。 日頃から膝周りを丁寧にほぐすウォーミングアップやクールダウンを行い、ランニングシューズやインソールのサイズを見直してみてください。日常的に膝へ負担をかける動作が多い方は、とくに意識的にセルフケアやストレッチを継続すると良いでしょう。(文献6) 鵞足炎を再発させないポイントとしては、定期的な専門医のフォローや理学療法士などのサポートが挙げられます。専門家によるアドバイスを受けながら運動量を調整し、筋膜や筋肉のこわばりを早めに解消すると、膝の状態を安定させやすくなります。痛みがなくなってからも膝周囲のケアを怠らず、トリガーポイントを常に意識したメンテナンスを心がけましょう。 鵞足炎のトリガーポイントを自分でケアする!効果的なセルフケア法 鵞足炎は膝の内側で炎症が起こる状態ですが、セルフケアで緩和できるようになると、回復の手がかりをつかみやすくなります。そこで、日常生活の中で意識しやすいセルフケアの要点をいくつか挙げます。 まず、膝の内側を押したときに筋肉のこわばりや鋭い痛みがある場合は、無理に動かそうとせず休息を優先しましょう。膝に負担のかかる動作を続けると炎症がぶり返す恐れがあります。痛みが軽く感じられるようになったら、ストレッチを念入りに行い、膝周辺や太ももの内側を適度にほぐすよう心がけてください。 身体が固い方は、ウォーミングアップやクールダウンなど短時間でもこまめに伸ばす工夫をすると、筋肉が緊張しにくくなります。 アイシングも有効です。鵞足炎が疑われるときは患部を冷やして炎症を落ち着かせると楽に動かしやすくなります。ただし皮膚へ直接氷を当てるのは避け、タオルで包んだ保冷剤を1日3回まで、15分程度ずつ当てる方法が望ましいです。炎症が強いときはアイシングを優先し、痛みが落ち着いてきたら温めて血行促進を図るように切り替えると、筋肉や腱の回復を助けやすくなります。 それでも痛みが続くときは、医療機関や整体など専門家の診断を受け、状態に合わせたケア方法を学ぶのを推奨します。鵞足炎の症状を放置すると悪化のリスクがあるため、気になるときは早めの対処を心がけてください。すでに強い痛みがある方は、まずは医師の診断を受けてからセルフケアやリハビリを検討しましょう。 関連記事:鵞足炎とは?なりやすい人とは?セルフケア方法とは 鵞足炎のトリガーポイントを理解して痛みを根本から解消しよう 鵞足炎は膝の内側にある筋肉や腱が炎症を起こしやすい状態ですが、その背後にはトリガーポイントが潜んでいるケースが多いです。単に痛み止めを使用したり、しばらく安静にして炎症を落ち着かせても、根本要因であるトリガーポイントが改善されなければ、再び同じ痛みを繰り返すおそれがあります。 膝に強い負担がかかるスポーツをしている方や、年齢を重ねて筋肉が硬くなっている方こそ、トリガーポイントをほぐして血流を整えてみてください。鵞足炎が継続している方は、ハードな動作やトレーニングを一時的に控え、本記事で紹介した治療法を活用すると膝の健康を長く保てるでしょう。 膝の内側痛が慢性化している方や、従来の治療に限界を感じている方は、当院へ一度相談してみてはいかがでしょうか。症状の程度や生活スタイルに合わせた治療を行い、日々の動作やスポーツをもっと快適に楽しめるよう痛みを根本から解消する提案をいたします。 参考文献 (文献1)オクノクリニック「痛みと身体のQ&A鵞足炎(がそくえん)」慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A(オクノクリニック公式サイト)2021年公開https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/pes-anserine-bursitis.html(最終アクセス:2025年3月22日) (文献2) American Academy of Orthopaedic Surgeons (AAOS), “Pes Anserine (Knee Tendon) Bursitis” (OrthoInfo), Updated Sept 2021 https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases--conditions/pes-anserine-knee-tendon-bursitis (Accessed:2025-03-22) (文献3) 井関雅子「当院における疼痛治療 - トリガーポイント注射を中心に」(疼痛治療レポート) Trigger Point .net(ビタカイン製薬医療関係者向けサイト), 2020年 https://triggerpoint-net.vitacain.co.jp/healthcareworkers/pain-treatment/articles/vol1 (最終アクセス:2025年3月22日) (文献4) Mayo Clinic. Knee bursitis – Diagnosis and treatment. Mayo Clinic, 2022. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/knee-bursitis/diagnosis-treatment/drc-20355506 (Accessed:2025-03-22) (文献5)Cleveland Clinic. Pes Anserine Bursitis: What It Is, Symptoms & Treatment. Cleveland Clinic, 最終更新日 2025年3月5日. https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/pes-anserine-bursitis (Accessed: 2025-03-22) (文献6)大阪平川接骨院/鍼灸治療院グループ『鵞足炎(がそくえん) – ひざの内側が痛い』https://osaka-hirakawa.jp/symptom/knee/gakusokuen/ (最終アクセス日: 2025年3月22日)
2025.03.31 -
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- 膝の内側の痛み
膝の内側に生じる痛みには、さまざまな原因が隠れています。 その中でも、ももの内側にある筋肉や腱が集まる「鵞足(がそく)」と呼ばれる部位の炎症である鵞足炎は、気づかないまま進行していることも少なくありません。 正確な原因を把握できないまま自己流のケアを続けると、回復が遅れて症状が長引く可能性があります。 そのため、早めに鵞足炎かどうかを確認し、適切に対処していくことが大切です。 この記事では、自分でできる簡単なチェック方法や、鵞足炎を引き起こす原因、さらに自宅で取り組めるセルフケアについて取り上げます。 まずはセルフチェックで膝の内側の痛みを正しく捉え、専門的なケアを組み合わせながら痛みの緩和と再発予防につなげましょう。 鵞足炎のセルフチェック方法 鵞足炎は膝の内側に起こる炎症で、ランニングやジャンプなど運動強度の高い動作だけでなく、長時間の立位やデスクワークでも負担がかかるときがあります。 ただし、膝が痛いといっても別の原因が潜んでいることもあるため、早めに自分の症状が鵞足炎かどうかチェックしましょう。 ここでは、自宅やオフィスでも取り組みやすいチェック方法を2つ紹介します。痛みの位置や動作による違和感を客観的に把握し、適切な対処につなげましょう。 1.痛い方の足を一歩前に出してチェック まずは立位で行う簡単なセルフチェックです。膝の内側に違和感を覚える方は、以下のステップを試してみてください。 ステップ 説明 1.痛みを感じる側の足を前に出す まっすぐ立った状態から、膝に痛みがある側の足を軽く前方へずらします。 このとき、後ろ足に大きく重心を残し、前足には体重をかけすぎないようにするのがポイントです。 2.膝の屈伸 前に出した足の膝を少しだけ曲げ、再び伸ばす動作をゆっくりと繰り返します。膝の内側に違和感や痛みが出るかどうかを確かめてください。もし痛みが出る場合は、その強度や痛むタイミング(曲げ始め、曲げ終わり、伸ばしきったときなど)を意識してみましょう。 3.つま先の向きによる変化を見る 膝の痛みが出るかどうかは、つま先の向きによっても変わる場合があります。 つま先を正面に向ける つま先をやや外側に向ける つま先をやや内側に向ける この3種類の角度で膝の屈伸を行い、それぞれで痛みが変化するかを確認してください。鵞足を形成する筋肉は、下腿が外向きになるときに緊張が高まるため、つま先を外向きにすると痛みが出やすい傾向があります。 痛みが顕著に感じられる場合は、鵞足炎の可能性が高まります。ただし、痛みの原因がすべて鵞足炎とは限りません。もし強い痛みや腫れ、曲げ伸ばしが困難なほどの症状が出ている場合は、早めの受診をおすすめします。 2.可動域と動作の痛みの有無を確認する 膝の痛みが鵞足炎によるものかどうかを把握するには、膝がどの程度曲がるか、あるいは動作時にどのような痛みが出るのかも大切な目安になります。 鵞足炎は膝関節内そのものが腫れるわけではないため、関節自体の可動域が制限されることは比較的少ないといわれています。 チェックポイント 圧痛があるかどうか 膝のお皿(膝蓋骨)の少し下、内側の脛骨上端(膝関節より約5cm下)のあたりを指で押してみて、強い痛みや腫れ(押し返すような膨らみ)がないか確かめます。この部位に圧痛があれば鵞足炎が疑われます。(文献1) 動作時の痛み 普段の動作で、膝の曲げ伸ばしや階段の上り下り、椅子から立ち上がる動作などで膝の内側に痛みが走るか観察します。鵞足炎では運動や動作の開始直後に違和感や痛みが出現し、ウォーミングアップで一時的に和らぐものの、反復するうちに再び痛みが増すことが多いです。症状が進行すると、十分温めても痛みが引かず日常動作でも痛むようになります。 こうした可動域テストや動作チェックによって、鵞足炎をセルフチェックできます。痛みが膝の内側に集中していて、なおかつ膝関節自体の可動範囲が大きく制限されていない場合は、鵞足炎を疑い、早めの対策に取り組むことが大切です。 もし痛みや違和感が長期間続くようであれば、医療機関での診察を検討してください。すべて独力で解決しようとせず、専門家の力を借りることも重要な一歩になります。 鵞足炎の原因 鵞足炎は膝の内側にある縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はっきん)・半腱様筋(はんけんようきん)が集中する部位、いわゆる「鵞足(がそく)」と呼ばれるところで炎症が起こる状態です。 ランニングやジャンプなどの反復動作で膝を曲げ伸ばしし続けると、骨との摩擦が増えて炎症に発展しやすくなります。しかし、必ずしもアスリートだけの問題ではありません。正座・和式トイレの使用・横座りなど、膝を深く曲げる姿勢が長く続く生活習慣もリスクを高めます。 とくに下腿(かたい)が外へねじれるフォームや、膝が内側へ入りやすい姿勢で動作している人は、鵞足部への負担が大きくなります。さらに、足裏のアーチが低い(偏平足)、X脚やO脚といった足の変形、太ももの筋肉(内転筋群)や太もも裏側の筋肉(ハムストリングス)が硬い状態なども、膝の内側に負荷を集中させる原因になります。 このように、鵞足炎はオーバーユース(使いすぎ)だけでなく、足元から膝・股関節へ続く動きの癖や身体の使い方によっても発症しやすくなります。膝の内側に違和感を覚えたら、まずは生活習慣やフォームに問題がないか見直すことが大切です。(文献2) 鵞足炎の治療法 鵞足炎は軽症のうちに対処すると比較的早期に痛みが落ち着く場合が多いですが、痛みを我慢して運動や仕事を続けると慢性化や再発を招きやすくなります。早めに症状を捉えて、以下のような治療やケアを検討しましょう。 1.理学療法士による施術 身体の固さやフォームのくせが鵞足炎の大きな原因になっている場合は、理学療法士によるストレッチ指導・筋力トレーニングが効果的です。膝まわりだけでなく、股関節や足首を含めた動作全体を調整し、鵞足部への負担を減らすことを目指します。(文献1) 2.薬物療法・ハイドロリリース 痛みや炎症が強いときには、消炎鎮痛薬(内服・外用)や局所注射を用いて症状を抑えます。筋膜が硬くなっていると考えられる場合は、生理食塩水を注入して癒着を剥がす「ハイドロリリース」が有効な例もあります。 3.装具療法(テーピング・サポーター・インソール) サポーターやテーピングを用いると、膝関節のぐらつきを抑えて鵞足部への負担が減り、痛みを軽減できます。足裏のアーチを支えるインソールを作製し、歩行・ランニング時の負担を和らげられる可能性があります。 4.再生医療 難治性の鵞足炎や慢性化した痛みに対しては、幹細胞の培養を用いた再生医療の選択肢もあります。外科手術のように入院の必要がなく、体にメスを入れない点もメリットです。 5.手術の選択 鵞足炎は保存的な治療で改善する例が大半ですが、骨の突出や腱鞘の狭さが原因で炎症が続く場合は、外科的に支帯を切開し、炎症を引き起こす要因を取り除く手術も検討します。 痛みが長引いて日常生活に支障が出る場合は、早めに整形外科や専門クリニックで正確な診断を受けてください。 鵞足炎は単なる膝の使いすぎだけでなく、筋肉の硬さやフォームの問題、足の骨格バランスが影響している場合があり、原因に合わせた適切な治療とリハビリが回復への近道です。リペアセルクリニックは再生医療のプロフェッショナルとして多くの実績があります。膝の再生医療についてもっと知りたい方は以下の記事をご確認ください。 鵞足炎のセルフケア方法 鵞足炎の痛みを和らげるために、自宅でもできるいくつかのセルフケア方法があります。ここでは効果的な方法を5つご紹介します。 ストレッチ 鵞足炎の痛みを和らげるには、筋肉の緊張をほぐすことが大切です。仰向けに寝た状態で、痛む側の足にタオルをかけ、膝を伸ばしたままゆっくりと足を上げてください。ももの筋肉が伸びているのを感じながら、反動をつけず15秒間呼吸を止めずに保ちます。 また、座位で行うストレッチも有効です。足の裏を合わせて座り、背筋を伸ばしたまま上体を前方に倒します。膝を左右に開いて内ももが伸びる感覚を感じながら、痛みが出ない範囲で無理のない時間を目安に続けてください。(文献3) アイシング(冷却) 炎症が強く、痛みや腫れがあるときは、氷や保冷剤などをタオルに包んで15分程度患部に当てると、痛みが緩和しやすくなります。 1日に2〜3回をめどに続けますが、眠っているあいだは避け、冷やしすぎに注意してください。 痛みが落ち着いたあとも、違和感や鈍い痛みが出たときはアイシングして痛みを緩和してください。(文献4) テーピング 膝の内側を安定させるには、動作時に鵞足部を保護するテーピングが使えます。膝を少し曲げた状態で、内側下あたりを中心に貼り、強く引っ張りすぎないよう調節しましょう。 圧迫感がきつい場合は貼り直し、皮膚がかぶれたり赤くなったりしたときは使用を中止してください。 テーピングは歩行や運動など、膝への負荷がかかる動作に限定し、長時間の連続使用は控えると良いでしょう。 筋力バランスの改善 痛みが落ち着いたら、膝周辺だけでなく、股関節や体幹を含めた下半身全体の筋力を向上させることが再発予防に役立ちます。 とくに太ももの裏側や内側が弱いと、膝の内側に負荷が集中しがちです。スクワットやヒップリフトなど軽めの筋トレを試し、痛みが出ないよう回数や姿勢を調整しながら続けてみてください。 運動のやり方がわからない場合は医療機関や専門家の指導を受けましょう。 日常生活の注意点 日常の動作や姿勢も鵞足炎の改善・再発防止に大きな影響を与えます。体重が増えると膝にかかる負担も増えるため、食事を見直して適正体重の維持を心がけましょう。 立ち上がる動作では、片足だけに過度な重さがかからないよう注意し、階段を下りるときは手すりを使うと負担を分散できます。正座や横座りなど膝を深く曲げる姿勢を長時間続けるのは避けることが大切です。 靴選びは、足に合ったサイズで衝撃を吸収しやすいものを選ぶと良く、必要に応じてインソールの活用も検討してください。 こうした日常生活での小さな工夫の積み重ねが、膝の痛みを軽減し、長期的な予防にもつながります。 長引く鵞足炎への対策 鵞足炎は、炎症だけを抑えても再発を繰り返しやすい特徴があります。なぜなら、根本的な原因として、走り方や歩き方におけるフォームの崩れ、膝の内側に偏った負荷、筋肉が収縮したまま緩めない状態(筋肉の緊張)が放置されている場合が多いからです。 とくにマラソンやサッカー、水泳などの反復動作があるスポーツでは、過度な負荷が蓄積しやすいだけでなく、瞬間的に大きな負荷がかかることで再び鵞足部を痛めてしまいかねません。 フォーム修正と筋力強化 いったん痛みがおさまっても、もとの動き方やトレーニング法を変えなければ、膝の内側が再び炎症を起こしやすくなります。 そこで、歩行やランニングフォームの修正と、筋肉の緊張を適切にゆるめながら鍛える方法が効果的です。フォーム修正では、膝が内側に入りすぎないよう股関節や足首を合わせて動かす意識を持ち、過度なねじれが起きないかを確認します。 筋力強化では、太ももの前部である大腿四頭筋を鍛える必要があります。大腿四頭筋を鍛えると太ももの骨が内側に捻れる状態を防げるため、鵞足炎の根本原因にアプローチできます。 ステロイド注射や手術 炎症が非常に強いときは、ステロイドの局所注射によって症状が急速に緩和するかもしれません。ただし、注射を繰り返し行うと結果として痛みがぶり返すケースもあるため、最終手段である位置づけが基本です。 注射後に痛みが落ち着いたからといってすぐに運動を再開すると、原因となるフォームや筋肉の緊張状態が変わっていないため、再発リスクは高いままです。 手術に関しても、骨や腱の形状的な問題や、慢性化して他の治療法では改善がみられない場合に限り検討されます。 セルフチェックで早期発見・早期ケアが大切 鵞足炎は軽い痛みから始まっても、動作のクセや筋肉の緊張、フォームの乱れなどがそのままになっていると、いつまでも症状がぶり返して慢性化しがちです。 とくにマラソンやサッカーなど膝を酷使するスポーツを続けている方は、痛みや違和感を覚えたときにセルフチェックを実施し、必要に応じて早めの受診や専門家のアドバイスを受けることが非常に大切になります。 セルフチェックでは、膝の内側を指で軽く押したときの圧痛、膝を曲げ伸ばししたときの違和感や痛み、階段の昇り降りで感じる不快感などをポイントにしてみましょう。 少しでも鵞足炎が疑われる場合は無理を続けず、適切なケアやリハビリを取り入れてください。 炎症が強いときはアイシングや安静で腫れを抑えつつ、痛みが落ち着けばストレッチや筋トレで再発を防ぐためのフォーム修正や筋力強化に移行するのが効果的です。 リペアセルクリニックでは、膝の痛みに対する再生医療を提供しております。もし長引く鵞足炎や再発を繰り返す膝痛でお悩みでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) American Academy of Orthopaedic Surgeons「Pes Anserine (Knee Tendon) Bursitis」OrthoInfo https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases--conditions/pes-anserine-knee-tendon-bursitis/ (Accessed: 2025-03-20) (文献2) Cleveland Clinic「Symptoms of pes anserine bursitis」https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/pes-anserine-bursitis(Accessed: 2025-03-20) (文献3) 医療法人社団弘人会中田病院「膝の内側の痛みについて(鷲足炎:がそくえん)」中田病院HP, https://www.nakada-hp.com/publicity/column/archive-20(最終アクセス:2025年3月20日) (文献4) Palmetto Bone and Joint「9 Self-Care Tips for Acute or Chronic Bursitis」Palmetto Bone and Joint https://www.palmettoboneandjoint.com/blog/9-self-care-tips-for-people-with-bursitis/ (Accessed: 2025-03-20)
2025.03.31 -
- 下肢(足の障害)
- ひざ関節
- スポーツ外傷
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ジャンパー膝の正しい湿布の貼り方がわからない ジャンパー膝は冷やすべきか温めるべきかわからない ジャンパー膝の湿布の貼り方に悩んでいませんか? 湿布は、ジャンパー膝の症状を改善させるのに効果的なものです。しかし湿布の貼り方や、温める方法を間違えると、適切な効果を得られません。 ジャンパー膝の湿布の貼り方 ジャンパー膝の温めるべきケース・冷やすべきケース ジャンパー膝に対する「冷湿布」の効果 ジャンパー膝に対する「温湿布」の効果 ジャンパー膝における湿布以外のセルフケア ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問 本記事では、症状を悪化させない適切な貼り方や、冷やす・温めるべきケースをわかりやすく解説します。 最後には、ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後まで読み進めていただければと思います。 ジャンパー膝の湿布の貼り方 ステップ 内容 目的 1.患部の洗浄と乾燥 膝周囲の皮膚を洗浄し、乾燥させる 汗や汚れを取り除き、湿布の密着を高める 2.湿布に切れ目を入れる 湿布の中央に縦の切れ目を入れる 膝の動きにフィットさせ、剥がれにくくする 3.湿布の貼り付け 違和感のある箇所(膝蓋骨の下部など)に貼る 患部に薬剤を浸透させる 4.固定 テーピングやサポーターで固定する 湿布の剥がれを防ぎ、効果を持続させる ジャンパー膝の湿布は、膝蓋腱の炎症を抑える目的で使用します。貼り方の手順は、患部の洗浄と乾燥→湿布の切れ目入れる→湿布の貼り付け→固定の流れで行います。 湿布を貼る前に、皮膚の汗を拭き取り、清潔にしておきましょう。また、膝は動きが多い部分なので、湿布が剥がれないように工夫する必要があります。 湿布で症状の改善がみられない場合は、医療機関の受診が必要です。 ジャンパー膝は冷やすべき?温めるべき? ジャンパー膝の症状に対して冷やすべきか、症状の種類とその時点での膝の状態によって異なります。 冷やす・温めるタイミングを間違えると、症状が悪化する可能性があるため注意しましょう。 冷湿布などで冷やすべきケース 温湿布などで温めるべきケース 症状や状況別で、解説します。 冷湿布などで冷やすべきケース ケース 理由 使用方法 急性期(発症0~6週) 炎症が進行しやすいため、冷却し、症状の悪化を防ぐ 20分間冷却し、30-40分間休憩を挟みながら繰り返す 運動直後 運動による筋肉の微細損傷を抑え、炎症を最小限に抑える 運動後すぐに冷湿布を適用し、腫れを予防する 腫れや炎症がある場合 血管を収縮させることで、腫れや違和感を抑える 腫れが引くまで定期的に冷やし、違和感が治まるか様子を見る 急激な違和感がある場合 神経の感受性を低下させ、膝への違和感の伝達を遅らせ、症状を和らげる 氷や冷湿布を布で包み、直接皮膚に触れないよう注意する (文献1) 冷湿布で冷やすべきケースは、違和感が顕著に現れて、炎症を起こした段階です。ジャンパー膝の直後は、冷湿布を使用し血管が収縮させることで、炎症の拡大を抑えます。 冷湿布の効果に関する研究では、急性期の違和感に対して冷却療法が推奨されています。(文献1) 違和感が現れた初期の段階では、冷湿布で冷やすようにしましょう。 温湿布などで温めるべきケース ケース 理由 使用方法 慢性期(発症から12週間以上) 血流を促進し、組織の回復を助けるため、慢性的なこわばりや不調に適している 15~20分程度、温湿布や温めたタオルを使用し、血流を促す 運動前のウォームアップ 筋肉の柔軟性を高め、ケガの予防や動きのスムーズさを向上させる 運動開始前に10~15分ほど温めて、筋肉の柔軟性を向上させる 筋肉のこわばりや違和感がある場合 筋肉が硬くなり、動きが制限されるとパフォーマンスが低下するため、温めることで緊張を緩和する 温めながら軽いストレッチを行い、筋肉をほぐすと効果的 冷やしても症状が改善しない場合 冷却しても症状が改善しない場合、血行を促進し、組織の修復を助ける 冷湿布で改善が見られない場合、温湿布を試して様子を見る 慢性期(発症から12週間)の場合は、血流を促進し、組織の回復力を助けるために、温湿布を使用します。 炎症が落ち着き、膝周囲の筋肉が硬くなっている段階では、冷やすよりも温めることで血流が促進され、柔軟性が向上し膝への負荷が軽減されます。 冷やしても症状が改善しない段階で、温湿布の使用を検討しましょう。 ジャンパー膝に対する「冷湿布」の効果 効果 解説 炎症による腫れや熱感を抑える 冷却効果により、血管が収縮し、炎症物質の放出を抑制 違和感を和らげる 冷たさにより神経の伝達速度が遅くなり、違和感を鈍らせる 炎症の拡大を防ぐ 血管収縮により、炎症が周囲に広がるのを防ぐ 筋肉のこわばりを緩める 冷却により筋肉の緊張が緩和され、柔軟性が向上する 冷湿布は、主に急性期の炎症症状に対して有効です。冷湿布の効果について解説します。 炎症による腫れや熱感を抑える 作用 メカニズム 効果 冷却作用 水分蒸発による患部の冷却、血管収縮、血流抑制 腫れ、熱感の軽減 鎮痛作用 メントールなどの成分による感覚神経刺激 違和感の緩和 冷湿布の冷却効果により、血管を収縮させることで、炎症を抑制させます。 冷湿布に含まれるメントールなどの成分は、皮膚の感覚神経を刺激し、鎮痛効果をもたらします。 違和感を和らげる 作用 メカニズム 効果 冷却作用による感覚麻痺 メントールなどが皮膚の温度感覚を鈍らせる 腫れなどの違和感を一時的に軽減 血管収縮による炎症抑制 患部の血管を収縮させ、炎症物質の放出を抑える 炎症が鎮まり、腫れなどの違和感を軽減 冷湿布は、ジャンパー膝で起こる膝への違和感に対して有効です。 とくに冷湿布に含まれるメントールが皮膚の温度感覚を一時的に鈍らせることで、腫れや違和感を軽減します。 炎症の拡大を防ぐ 炎症が起こると、患部の血管が拡張し、血液中の炎症物質が組織内に漏れ出します。冷湿布は炎症物質の拡大を防ぐための手段として有効です。 ただし、冷湿布は初期段階での炎症を防ぐために使われるため、炎症が落ち着いた慢性期には、冷湿布よりも温湿布が適しています。 筋肉のこわばりを緩める ジャンパー膝で起きた筋肉の強張りに対して、冷湿布の冷却は効果的です。患部を冷却すると、血管が収縮し、患部への血流が抑制されます。 また、冷却は神経の伝達速度を遅らせ、膝にかかる違和感を一時的に鈍らせるため、初期段階の対応として有効です。 冷却で筋肉の過剰な収縮を抑制できるものの、冷やしすぎると筋肉が逆にこわばる可能性があります。 冷湿布は、症状の変化を見ながら使用しましょう。 ジャンパー膝に対する「温湿布」の効果 効果 解説 血行を促進させる 温熱効果により血管を拡張させ、血流を促進させる 慢性的な違和感や筋肉のコリを和らげる 温熱効果に柔軟性の向上、筋肉の緊張緩和を促す リラックス効果 違和感の軽減や悪循環を抑える 温湿布は主に慢性期の違和感や筋肉のこわばりを和らげるために使用されます。 ジャンパー膝に対して、温湿布が有効である理由を解説します。 血行を促進させる メカニズム 効果 血管拡張 血流増加、酸素・栄養素の供給促進 血流速度増加 代謝活性化、疲労物質・発痛物質の排出促進 代謝活性化 違和感の軽減、筋肉の緊張緩和 温湿布を使用し、温まった部位が血管を広げ、血流が改善されます。 血流が改善されると、患部に栄養素や酸素が供給されやすくなり、症状の回復を促します。 ジャンパー膝の初期段階での血行促進は、炎症や違和感を悪化させる可能性があるため、温湿布は落ち着いた慢性期に使用しましょう。 慢性的な違和感や筋肉のコリを和らげる メカニズム 効果 血行促進 筋肉の柔軟性向上、疲労物質の排出促進 神経の鎮静化 違和感の緩和 心理的リラックス 筋肉の緊張緩和、違和感の軽減 温湿布は、慢性的な違和感や筋肉のコリを軽減します。注意点としては、低温やけどに注意し、長時間同じ場所に貼り付けないようにしましょう。特に寝る前に貼る場合は注意が必要です。 また、炎症がひどい状態では、症状を悪化させる可能性があるため、温湿布ではなく、冷湿布を使用しましょう。 リラックス効果 メカニズム 効果 筋肉の緊張緩和 違和感や悪循環を抑える ストレス軽減 違和感を和らげる 睡眠の質の向上 疲労回復を促進する (文献2) 温湿布には、ジャンパー膝に有効なリラックス効果があります。 温熱刺激は副交感神経に対してリラックス効果を与え、交感神経の活動を抑制します。 また、リラックス効果によるストレス軽減は、違和感に対してだけでなく、生活や睡眠の質を上げるためにも有効です。 ジャンパー膝における湿布を貼る際の注意点 項目 注意点 貼る前の準備 湿布を貼る前に、肌を清潔に、関節には目を切れさせて密着させる 貼り方 湿布はフィルムを剥がした後、軽く伸ばし、必要に応じてテープやネット包帯で固定する 剥がし方 湿布は体毛の流れに沿ってゆっくり剥がし、剥がした後は、肌を休めるために時間を空ける 使用上の注意 お風呂上りや汗で濡れている場合や、湿疹や発疹がある部位には使用しない その他 膝への違和感が続く場合は、医療機関を受診する 湿布を貼る際は、正しい使い方や、注意点を守ることが大切です。まず、炎症の状態に応じた湿布を選びます。 急性期には炎症を抑える冷湿布、慢性期には血行を促進する温湿布を選びましょう。 湿布を貼る際は、水や汗で皮膚が濡れていないことを確認し、必要に応じてテープやネットを使用します。湿布は、8~12時間を目安に交換しましょう。 湿布を貼り付けた場所にかゆみや発疹が出た際は、すぐに使用を中止します。かゆみや赤み、ジャンパー膝が続く場合は、医療機関を受診しましょう。 ジャンパー膝における湿布以外のセルフケア セルフケア 重要な理由 アイシング 炎症を抑制し、違和感を軽減する ストレッチ 筋肉の柔軟性を高め、膝への負担を軽減する サポーターの活用 膝を安定させ、負担を軽減する 安静にする 炎症の悪化を防ぎ、組織の修復を促す 湿布はジャンパー膝の症状を一時的に緩和するのに役立ちますが、根本的な改善には、ストレッチや安静などのセルフケアが必要です。 ジャンパー膝におけるセルフケアについて解説します。 アイシング 手順 内容 準備 氷や保冷剤を薄いタオルで包む 実施時間 患部に15 ~20分間程度(凍傷にならないよう注意する) 調整 当てる時間を短くする、タオルの厚さを調整する 冷やす頻度 1日に数回、とくに運動後や違和感がある時 (文献3) ジャンパー膝は、膝蓋腱の炎症によって違和感が生じる疾患です。そのため、発症時は、炎症を拡大させないためにアイシングを行います。 アイシングを行う場合の注意点としては、凍傷を防止するために氷や保冷剤を薄いタオルで包み、患部に15〜20分程度冷やします。 冷やす時間はあくまで目安なので、冷たいと感じた場合は、無理をせずに調節しましょう。 ストレッチ ストレッチ 方法 大腿四頭筋(前もも) 立った状態や横向きに寝た状態で、かかとをお尻に近づけるように膝を曲げ、太もも前側を伸ばす ハムストリングス(肉裏) 立った状態や座った状態で、足を伸ばしてつま先を上げ、太ももの裏側を伸ばす 腸腰筋(股関節付け根) 足を前後に開いて立ち、後ろ足の付け根を伸ばす ストレッチは筋肉の柔軟性向上と負担軽減する手段として有効です。ストレッチは、無理のない範囲で行うことが重要です。 運動前後のウォームアップやクールダウンに取り入れることで、筋肉の緊張をほぐし、ジャンパー膝の防止にできます。 ストレッチは自己判断ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 以下の記事では、ジャンパー膝に有効な効果的なストレッチ方法を解説しております。 サポーターの活用 効果 詳細 膝蓋腱の負担軽減 サポーターが膝蓋腱周囲を圧迫し、負担を分散 膝の安定性向上 膝のぐらつきを抑え、関節の安定性を高める。衝撃を和らげ、悪化を防ぐ 動きやすさのサポート 膝のサポートにより、正しい動作を維持しやすくなる サポーターを活用し、膝蓋腱の周囲を適度に圧迫します。 また、サポーターには、関節の安定性を高める効果があり、膝への負担を軽減するために役立ちます。 サポーターを選ぶ際は、サイズ・種類・圧迫の強さを考慮し、自身の症状に合ったものを選ぶことが大切です。 サイズが合わない、圧迫が強すぎるまたは弱すぎるなど、自分に合わないサポーターを選んでしまうと、症状が悪化するリスクがあります。 違和感や不快感がある場合は、無理に使用せずに調整や交換を検討しましょう。 以下の記事では、サポーターの注意点を詳しく解説しております。 安静にする ジャンパー膝は、膝蓋腱に何度も負荷がかかることで炎症や腫れを起こします。そのため、発症初期の段階では、安静が大切です。 しかし、一定期間が経過し、安静にしすぎると、筋力低下を引き起こします。その結果、膝蓋腱への負担が再び増加し、再発する可能性があります。 再発しないためにも、安静だけでなく、適度なリハビリやトレーニングで徐々に膝を慣らしていきましょう。 湿布で改善しないジャンパー膝は早めの受診を ジャンパー膝に対する湿布は、膝にかかる違和感や炎症を一時的に抑える応急処置として有効ですが、根本を解決するものではありません。 ジャンパー膝の症状が湿布で改善しない場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 ジャンパー膝の改善が湿布で見込めないと感じた方は当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 再生医療を活用し、膝の違和感や炎症に対して、回復を促します。 湿布で改善しないジャンパー膝でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問 湿布は1日に何回張り替えれば良いですか? 湿布の貼り替え回数は、湿布の種類によって異なります。1日1回タイプであれば、8〜10時間程度効果が持続します。 1日2回タイプの湿布の場合の効果持続は、4〜6時間程度です。(文献3) 湿布を貼ったまま運動しても大丈夫ですか? 運動によって湿布がずれたり汚れたりする場合があるため、運動後は患部を確認して新しい湿布に貼り替えるようにしましょう。 湿布とサポーターは併用できますか? 湿布とサポーターは併用できます。併用する際は、皮膚に炎症や圧迫に気をつけ、違和感を感じたら使用を中止しましょう。 湿布は寝るときに貼っても良いですか? 注意するべき点はありますが、基本的に問題ありません。湿布を使用する前に、製品の取扱説明書をよく読み、皮膚のかぶれや湿疹に注意しましょう。 皮膚に異常が現れるようであれば、就寝時は湿布を剥がすなど、工夫する必要があります。 湿布を貼るのと飲み薬(鎮痛剤)ではどちらが効果的ですか? どちらが効果的かは症状や状況によって異なります。症状が軽度であれば、湿布で十分な効果が得られる場合があります。 湿布で症状の改善が見込めない場合は、飲み薬(鎮痛剤)の服用を検討しましょう。 湿布や飲み薬を使用する際は、説明書をよく読み、用法・用量を守り、自己判断はせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。 参考文献 (文献1) 綾田 練ほか,「ジャンパー膝に対する運動後のアイシングの効果」『体力科学(2007)』pp.1-6, (2007) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/56/1/56_1_125/_pdf(最終アクセス:2025年3月15日) (文献2) 2008年から2019年に発表された温罨法に関する国内文献の検討 武田七海ほか,「〈総説〉2008年から2019年に発表された温罨法に関する国内文献の検討」pp.1-9, 2008年 https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin17_09.pdf(最終アクセス:2025年3月15日) (文献3) 宮川,羽毛田「薬の伝言版 湿布薬の使い方」, pp.1-2, 2024年 (最終アクセス:2025年3月15日)
2025.03.31 -
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ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、スポーツによる膝への繰り返しの負担で炎症が起きる疾患です。 本来であれば安静やリハビリで回復が見込める症状ですが、痛みが慢性化し、数カ月経っても治らないケースも少なくありません。 しかし「この膝の痛み何とかしたい」「予防法を知りたい」と、お悩みの方も多いのではないでしょうか? 本記事ではジャンパー膝が治らない理由から予防法まで、解説しています。 ジャンパー膝は適切な治療とケアで改善が見込めますので、ぜひ参考にして運動や仕事に復帰しましょう。 \手術を避けてスポーツに復帰するための再生医療という選択肢/ また当院(リペアセルクリニック)では、自己由来の幹細胞やPRP(多血小板血漿)を用いた再生医療を通じて、損傷した腱の修復を促進し、回復力そのものを引き出す治療をご提供しています。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 慢性化してしまった症状を完治させたい 薬剤アレルギーが心配で治療ができていない 定期的にステロイド治療を続けている スポーツをしていて早期治療を希望したい 怪我の後遺症は、競技者のキャリアに深刻な影響を与えることがあります。 当院(リペアセルクリニック)では、早期の競技復帰を目指し、最高のパフォーマンスを発揮できるよう、最適な治療を提供しています。 治療法や症例について知りたい方は、当院(リペアセルクリニック)の無料カウンセリングにてご相談ください。 ▼ジャンパー膝が治らないとお悩みの方は、まずは無料相談 ジャンパー膝が治らない理由 原因 詳細 症状の重さ 腱の損傷が大きく、回復に時間がかかる場合がある オーバーユース 膝への過度な負荷が継続し、回復を妨げる 誤った対処法 不適切なストレッチや運動、休息不足が症状を悪化させる 柔軟性・筋力不足 膝周りの筋肉の柔軟性や筋力不足が、膝への負担を増加させる 安静・休息不足 十分な休息を取らないことで、組織の修復が遅れる ※タップで該当箇所へスクロールします ジャンパー膝の症状が重度だと、治るまでに2〜3カ月以上かかります。これから紹介する内容が1つでも当てはまる場合、膝に負担をかけないようにする改善が必要です。 以下の記事では、ジャンパー膝の症状と効果的なストレッチ・テーピングについて詳しく解説しています。 症状が重い 進行度 症状 初期 運動後、運動中に軽度の違和感 中期 運動中、運動後に強い疼痛。日常生活に支障をきたす場合がある 後期 安静時にも疼痛。運動困難 症状の進行が中期〜後期の状態は、運動中にも膝に強い違和感があり、日常生活にも支障をきたします。 膝蓋腱への負担がかかり、炎症や微細な損傷が慢性化すると、治癒力が低下し、症状の改善が困難になります。 中期〜後期の段階は、セルフケアやリハビリだけでなく最悪の場合、手術が必要です。症状が悪化する前に、適切な治療と休息を取り入れるようにしましょう。 オーバーユース(膝の酷使) 項目 詳細 腱の修復遅延 膝蓋腱は負荷を受けると微細な損傷が生じ、適切な休息があれば修復される 炎症悪化と腱の変性 炎症悪化に加え、腱組織の変性を誘発する。変性腱は脆弱化し、再損傷リスクが増加する 疼痛の悪循環 疼痛による庇護動作が膝への負担を増大させ、疼痛を悪化させる 不適切な動作の継続 原因となる不適切な動作(誤った跳躍・着地など)の反復が、症状慢性化を招く スポーツや立ち仕事など、膝の酷使は症状回復を遅らせます。 とくに過度な走り込みやジャンプなど、負荷のかかりやすい行動です。その結果、腱に微細な損傷が蓄積し、炎症や違和感を引き起こします。 膝蓋腱への反復負荷は、修復を阻害し、症状長期化を招きます。膝への負担を減らすためにスポーツや立ち仕事を制限し、改善しない場合は、医療機関への受診を行いましょう。 誤った対処法を実践している 誤った対処法 治癒を妨げる理由 過度な安静 膝周りの筋力低下、腱への負担増大、柔軟性低下、血行不良による修復遅延 疼痛下での運動継続 炎症悪化、損傷拡大、腱の変性 不適切なストレッチ・マッサージ 症状悪化、炎症増強 誤ったアイシング 血行不良による治癒遅延 不適切なサポーター使用 血行不良、筋萎縮 自己判断での薬剤使用 根本的解決の阻害、副作用のリスク 誤った運動フォーム 膝への過剰な負担、症状悪化 誤った対処法を実施すると、回復が遅延する恐れがあります。 自己流で行うリハビリや、医師の許可なく薬の服用を中断してしまうと、回復の遅延だけでなく、症状が重症化するリスクがあります。 症状の改善には、医師の指導に基づく適切な処置が大切です。自己判断での対処法は避けましょう。 柔軟性不足、筋力不足 要因 治りにくい理由 膝蓋腱への過剰な負荷 柔軟性や力が不足すると、ジャンプや着地の際に膝蓋腱への負担が増加し、微細な損傷が生じる 衝撃吸収能力 筋力や柔軟性が不足すると衝撃を分散できず、膝蓋腱に直接負担がかかる 膝関節の不安定性 筋力不足により膝の安定性が低下し、膝蓋腱への負荷が増大する 動作の悪化 筋力が不足すると、正しいフォームでの動作が困難となり、膝蓋腱への負担が増加する 柔軟性が不足すると筋肉や腱の可動域が狭くなり、膝蓋腱への負荷が増加します。筋力が不足すると膝関節の安定性が低下します。 柔軟性と筋力は相互に影響し、一方が不足すると他方も低下し、改善の遅延につながります。柔軟性と筋力を維持するには、適度なストレッチと膝に負担のかからないリハビリが大切です。 安静や休息を怠っている 症状の程度 回復期間の目安 対処法 軽度 2~4週間 安静、アイシング、ストレッチ、セルフケア、筋力トレーニング、リハビリ 中程度 4~8週間 運動制限、物理療法、ストレッチ、筋力トレーニング、段階的な運動再開 重度 3カ月以上 保存療法、手術(必要時)、数カ月のリハビリ 症状の程度によりますが、軽度の場合でも2〜4週間は安静や通院が必要です。これらを怠ると、重症化するケースもあるので、膝に負荷のかかる運動や立ち仕事は控える必要があります。 また、睡眠不足や栄養不足でも、回復を妨げる要因になります。睡眠は組織修復を促し、栄養は、腱の構成要素であるコラーゲンの生成に必要不可欠です。 適切な安静と休息、栄養バランスを考慮した食事を日々取り入れましょう。 ジャンパー膝が治らない際の改善策 改善策 詳細 医療機関での治療 物理療法、薬物療法、手術(重度の場合)など、個々の症状に合わせた治療を行う 正しいリハビリテーション 専門家の指導のもと、適切なストレッチ、筋力トレーニング、運動療法を実施する 焦らずに休息を取る 症状の程度に応じた適切な安静期間を確保する ※タップで該当箇所へスクロールします ジャンパー膝を改善するには、膝への負担を減らしながら適切なケアの継続が大切です。また、改善しない場合は専門機関での治療が必要になります。 ジャンパー膝が治らない際の改善策を解説します。 医療機関での治療 ジャンパー膝は、適切なケアなしでは完治しにくい傾向があります。そのため、症状の程度に関わらず、医療機関の受診が必要です。 軽度の症状であれば、保存療法や薬物療法と並行し、医師の指導に基づく運動療法で改善を目指します。重度では、保存療法などに加え、場合によっては手術療法も視野に入れる必要があります。 早期の医療機関受診と適切な治療により、早期回復と再発防止を目指しましょう。 以下の記事では、ジャンパー膝の治療期間について詳しく解説しています。 正しいリハビリテーション リハビリ内容 詳細 目的 ストレッチ 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋などの柔軟性向上 膝周辺の可動域拡大、柔軟性向上 筋力トレーニング 大腿四頭筋、ハムストリングスなどの筋力強化 膝への負担軽減、膝関節の安定性向上 動作指導 跳躍、着地、膝への負担軽減を目的とした動作の習得 適切な動作パターンの習得、再発予防 段階的運動復帰 膝に抱える違和感に合わせた運動強度の段階的増加 運動復帰、再発リスクの最小化 リハビリでは、大腿四頭筋の筋力改善や柔軟性向上を目指します。ジャンパー膝の症状は安静や休息だけでは、再発予防にはつながりません。 そのため、適切なリハビリを適度に取り入れる必要があります。無理な負荷をかけず、少しずつ症状の改善を目指しましょう。 焦らずに休息を取る 症状の程度 回復期間の目安 主な治療法 軽度 2〜4週間 安静、アイシング、ストレッチ、セルフケア 中程度 4〜8週間 運動制限、物理療法、ストレッチ、筋力トレーニング、段階的な運動再開 重度 3カ月以上 保存療法(効果が見られない場合は手術)、手術後のリハビリ 症状の程度に合わせて、休息を取ることで、ジャンパー膝の重症化を防げます。重度かつ、保存療法で改善が見られない場合が手術を検討する必要があります。 休息期間の終了は自己判断ではなく、医師の指示を仰ぐようにしましょう。 ジャンパー膝の予防法 ジャンパー膝を発症させないためには、適切な予防を行うことが大切です。 運動前後のストレッチ・ウォーミングアップ・クールダウン 適切なトレーニング 炎症を悪化させる食品は避ける 同じ姿勢や無理な姿勢を続けない 正しい予防法を身につけ、発症や再発を防ぎましょう。 運動前後のストレッチ・ウォーミングアップ・クールダウン ケアの種類 効果 具体例 運動前ストレッチ 筋肉・腱の柔軟性向上、可動域拡大、負荷軽減 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋の静的ストレッチ(各20~30秒保持) ウォーミングアップ 体温上昇、血流増加、筋肉の柔軟性・反応性向上、傷害リスク低減 軽いジョギング、サイクリング、動的ストレッチ(各10~15回) 運動後クールダウン 筋肉の緊張緩和、疲労物質蓄積の抑制、筋肉痛の軽減、疲労回復を促進 軽いジョギング、サイクリング、静的ストレッチ(各20~30秒保持) ジャンパー膝の予防には、運動前後の適切なストレッチ、ウォーミングアップ、クールダウンが不可欠です。 運動の前後でウォーミングアップやストレッチを行うことで、筋肉や腱が温まり、柔軟性が向上し、怪我のリスクを軽減します。 また、運動後のクールダウンは運動によって緊張した筋肉をリラックスさせることで、血液の促進を促し、疲労物質の排出を助けます。 運動前後のケアは、ジャンパー膝の予防につながるため、継続的に行いましょう。 適切なトレーニング トレーニング内容 具体例 目的 フォームの改善 ジャンプ、着地、スクワットなどの動作フォーム確認 膝蓋腱への局所的負荷集中回避、広範囲への負荷分散 筋力トレーニング 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋の強化 膝関節の安定性、衝撃吸収能力向上、膝蓋腱への負担軽減 柔軟性トレーニング 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋のストレッチ 膝関節の安定性、衝撃吸収能力向上、膝蓋腱への負担軽減 バランストレーニング 片足立ち、バランスボール、アジリティトレーニング 膝関節の安定性、動作の正確性向上、再発予防 膝周りの筋肉、とくに大腿四頭筋やハムストリングスを正しく鍛えることで、膝蓋腱にかかるストレスを軽減できます。 急激な負荷増加は、膝蓋腱の組織を傷つけ、症状を誘発させるため、医師の指導のもと適切なトレーニングで改善を図ります。 トレーニング中に膝に違和感や炎症が現れた場合は、すぐに中断しましょう。 炎症を悪化させる食品は避ける 成分 食品例 説明 糖分 菓子類、清涼飲料水、白砂糖、果糖ブドウ糖液糖など 高糖分食品は炎症を促進し、症状を悪化させる可能性がある 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸 揚げ物、加工肉、スナック菓子、マーガリン、ショートニングなど 炎症を引き起こす可能性がある オメガ6脂肪酸 コーン油、ひまわり油、マヨネーズなど 過剰摂取は炎症を促進させる可能性がある 加工食品 インスタント食品、レトルト食品、ハム、ソーセージ 精製炭水化物は体内での炎症を引き起こすことがある アルコール 各種アルコール飲料 過剰摂取は炎症の悪化や、組織の修復を阻害する可能性がある 一部の乳製品 牛乳、チーズ、ヨーグルト 人によっては、炎症を誘発する可能性がある (文献1) 特定の成分や食品の摂取が、ジャンパー膝を誘発させるわけではないものの、過剰摂取は回復の妨げになる恐れがあります。 糖分や加工食品など、一切食べてはいけないのではなく、偏った食事をしないことが大切です。 炎症を抑えるタンパク質(肉、魚、豆類など)やビタミンC(柑橘類、イチゴ、ブロッコリーなど)を中心とした食事が、ジャンパー膝の改善につながります。 同じ姿勢や無理な姿勢を続けない 同じ姿勢や無理な姿勢は、膝蓋腱に持続的な負荷がかかり、症状を誘発させる可能性があります。猫背や身体の歪みは、膝への負担を増大させ、症状の慢性化を招くため、注意が必要です。 デスクワークや長時間の立ち仕事であれば、姿勢をこまめに変え、ストレッチを取り入れることで、膝への負荷を軽減できます。 ジャンパー膝が治らないときは医療機関を受診しよう! ジャンパー膝は、症状の程度に関わらず、医療機関を受診しましょう。ジャンパー膝は軽度の段階であれば、2~4週間ほどで症状を改善できます。 しかし、自己流などの間違った方法を継続してしまい、重症化してしまうと、手術が必要になるケースもあるので注意が必要です。 当院(リペアセルクリニック)では、従来の保存療法だけでは改善が難しいジャンパー膝に対し、再生医療を提供しています。 治療法 方法 PRP療法 患者自身の血液から血小板を採取し、痛みの部位に注射 幹細胞治療 患者自身の脂肪から幹細胞を採取・培養し、膝関節内に注入 PRP療法は、炎症の抑制や痛みの軽減が期待され、日帰りで受けられることから軽度の症状や発症初期の段階で選ばれることが多い治療法の一つです。 幹細胞治療は、損傷組織の修復・再生を促すことにより、再発防止や手術回避が期待され、中〜重度の症状や再発を繰り返す方が検討するケースもあります。 >>PRP療法・幹細胞治療についての詳細はこちら メール相談やオンラインカウンセリングも行っていますので、ジャンパー膝は治らないと諦める前に一度ご相談ください。 なかなか治らないジャンパー膝に関してよくある質問 なかなか治らないジャンパー膝に関してよくある質問と回答は以下の通りです。 ジャンパー膝は治らないですか? ジャンパー膝は後遺症が残りますか? ジャンパー膝になったら運動は完全に中止すべきですか? ジャンパー膝でやってはいけないことはありますか? ジャンパー膝は治らないですか? 適切な治療とリハビリテーションを行えば、多くの場合は改善が見込めます。しかし改善に時間がかかることや、適切な対策を行わないと再発する可能性もあります。 ジャンパー膝は、自然治癒や自己判断で治る症状ではありません。医師の診断を受け、適切な対応を行いましょう。 ジャンパー膝は後遺症が残りますか? 重症化すると後遺症が出る可能性があります。具体例として、膝機能の低下や膝への違和感が慢性化するなどが挙げられます。 軽度でも自己判断せず、医師の診断を受けることが大切です。 ジャンパー膝になったら運動は完全に中止すべきですか? 症状の程度によります。しかし多くの場合は運動を控える必要があります。ジャンパー膝は膝の使いすぎによって生じるため、膝に違和感を覚えたら、医療機関を受診しましょう。 無理な運動の継続や、放置は重症化につながる可能性があるので、注意が必要です。 ジャンパー膝でやってはいけないことはありますか? ジャンパー膝でやってはいけないことは、以下の通りです。 違和感を抱えたまま運動を続ける 自己流でストレッチやマッサージをする 長時間の立ち仕事や歩行 治癒を自己判断で中断する 安静期間を守らない ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、膝蓋腱に繰り返し強い負荷がかかることで炎症や痛みが起こる症状です。 痛みを軽視して無理をすると、慢性化や再発につながるため注意が必要です。 またジャンパー膝における、やってはいけないことや再発防止策については、以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) Bhavin Mistry,(2023). 5 Types of Food to Avoid With Tendonitis,CARESPACE https://carespace.health/post/5-types-of-food-to-avoid-with-tendonitis/(Accessed: 2025-03-15)
2025.03.31 -
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ジャンパー膝がどれくらいで治るのか ジャンパー膝でやってはいけないことを知りたい ジャンパー膝と診断されたものの、いつ治るのか、どう治療するべきかを悩んでいませんか。ジャンパー膝が治る期間には、個人差があります。 医療機関での正しい治療とケアを行えば、ジャンパー膝の症状は改善できます。 しかし、症状の放置や誤った方法でのリハビリは、回復を遅らせるだけでなく、再発するリスクがあるため、正しい知識と治療を行うことが大切です。 ジャンパー膝が治る期間 ジャンパー膝でやってはいけないこと ジャンパー膝の改善法 ジャンパー膝を治したい方からよくある質問 ジャンパー膝の治療でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 【結論】ジャンパー膝が治る期間にはバラつきがある! 症状の程度 回復期間の目安 軽度 1~2カ月程度 重度 2~3カ月以上 ジャンパー膝の回復期間は症状の重さによって異なります。軽度の場合はおおよそ1~2カ月程度、重度の場合は2~3カ月以上、症状が改善するまでに時間がかかります。 症状の程度にかかわらず、自己判断はせず、医療機関への受診を受けることが大切です。 軽度の場合|1~2カ月程度 改善方法 目的 具体的な内容 注意点 安静 膝への負担を軽減 スポーツ活動の一時中止、日常生活での膝への負担軽減 過度な安静は筋力低下を招くため、医師と相談しながら期間を決める アイシング 炎症抑制 1回15~20分、1日数回、患部を冷却 タオルで包む、感覚がなくなったら中止する ストレッチ 膝周りの柔軟性向上 大腿四頭筋、ハムストリングス、大腿筋膜張筋などのストレッチ 違和感のない範囲でゆっくりと行う、反動をつけない 筋肉トレーニング 膝周りの筋力強化 大腿四頭筋、ハムストリングスなどの筋力トレーニング 負担をかけずに軽い負荷から始める、正しいフォームで行う 症状が軽度の場合、改善に1~2カ月程度かかります。主な治療法として、適切な安静とリハビリを行います。 リハビリやストレッチは自己判断せず、医師の指導のもと、段階的に負荷のかからない程度に行いましょう。 重度の場合|2~3カ月以上 対処法 目的 内容 注意点 医師の診察と診断 正確な状態把握と適切な治療計画 整形外科を受診し、MRIや超音波検査などで膝の状態を確認する 自己判断せず、専門家の指示に従う 保存療法 炎症と違和感の軽減、組織の修復促進 安静、アイシング、物理療法(電気治療、超音波治療など)、薬物療法(鎮痛薬、湿布など)、リハビリテーション 自己判断せず、症状に合わせて、医師の指導のもと行う リハビリテーション 膝周りの筋力強化、柔軟性向上、動作改善 ストレッチ、筋力トレーニング、バランス訓練、動作指導 段階的に負荷を上げていく 運動制限 膝への負担軽減、悪化防止 ジャンプ、ランニング、急な方向転換など、膝に負担のかかる運動を避ける 運動再開時期や運動の種類は、医師と相談して決める 手術療法 保存療法で改善しない場合 関節鏡手術などで、炎症を起こしている組織を切除または修復 手術後のリハビリも重要 症状が重度の場合、改善に2~3カ月以上かかります。また保存療法やリハビリを継続しても改善が見込めない場合は、手術を検討するケースもあります。 手術後の回復期間は、手術方法や個人の状態によって異なるため、自己判断はせず、医師の指示に従いましょう。 早く治すためのジャンパー膝でやってはいけないこと やってはいけないこと 理由 具体例 違和感を抱えたまま運動を続ける 炎症が悪化し、回復が遅れる 違和感のある状態で、ジャンプやランニングを続けるなど 自己流でストレッチやマッサージをしてしまう 症状を悪化させる可能性がある 違和感を我慢して無理なストレッチ、炎症部位を強く揉むなど 長時間の立ち仕事や歩行 膝への負担が大きくなり、回復を妨げる 立ちっぱなしの作業、長距離の歩行 治癒を自己判断で中断する 再発のリスクを高める 違和感が引いたからといって、医師の指示なしに運動を再開する 安静期間を守らない 炎症が治まらず、回復が遅れる 医師から指示された安静期間を守らず、運動を行う ジャンパー膝を早く治すために、やってはいけないことを把握しておくことが大切です。 やってはいけないことについて、詳しく紹介します。 違和感を抱えたまま運動を続ける 症状悪化の要因 具体的なリスク 詳細 炎症の悪化 慢性化、治癒遅延 運動による継続的な負荷が膝蓋腱の炎症を悪化させ、違和感が長期間続く状態になる 腱の損傷進行 部分断裂、完全断裂、手術の必要性 炎症の進行により腱の微細な損傷が拡大し、重度の損傷に至るリスクが高まる 違和感の慢性化 日常生活への支障 我慢して運動を続けることで違和感が慢性化し、日常生活にも影響を及ぼす可能性がある 回復の遅延 組織修復の妨げ 安静期間が不足すると、組織の修復が妨げられ、回復が遅れる 膝に違和感を抱えたまま運動を継続すると、炎症が悪化する恐れがあります。 医師の診断後、治療で改善が見られたとしても、自己判断で運動を再開すると、症状が再発する可能性があります。 膝に違和感がある場合は運動を中止し、医療機関を受診しましょう。 自己流でストレッチやマッサージをしてしまう 悪化の要因 具体例 リスク 炎症の悪化 炎症部位への過度な刺激(強いマッサージ、無理なストレッチ) 違和感や炎症の拡大 腱の損傷進行 腱の付着部への強い牽引力や圧迫、無理なストレッチ 腱の断裂、回復遅延 誤った運動方向 正しい運動方向や負荷を無視した自己流ストレッチやマッサージ 症状の悪化、回復遅延 ジャンパー膝の早期回復を目指す際にストレッチやマッサージを自己流で行なってはいけません。 誤った方法でマッサージを行なってしまうと膝に抱える違和感の増大や、炎症の拡大を引き起こす恐れがあります。(文献1) ジャンパー膝のストレッチやマッサージは自己判断ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 長時間の立ち仕事や歩行 要因 詳細 リスク 持続的な負荷 立ち仕事、歩行による膝蓋腱への反復負荷 違和感や炎症の拡大 血行不良 長時間同一姿勢による膝周りの血行阻害 組織修復遅延、違和感の慢性化 筋肉疲労 膝周り筋肉の疲労蓄積 腱への負担増大、損傷リスク増加 長時間の立ち仕事や歩行は、症状回復の妨げになります。とくに同じ姿勢で長時間過ごすと、膝への負担が増大し、膝への違和感や炎症が拡大する恐れがあります。 立ち仕事が多い場合は、座れる業務への変更を職場に相談してみましょう。 治癒を自己判断で中断する リスク 詳細 結果 炎症の悪化と慢性化 炎症が治まる前に運動を再開 慢性的な違和感、運動能力低下 腱の損傷の進行 安静期間を守らない 腱の断裂、手術のリスク増加 回復期間の長期化 安静期間を守らずに運動を再開 症状の再発、回復遅延 ジャンパー膝の治療を自己判断で中断すると、症状の再発や回復を遅らせる恐れがあります。 とくに膝蓋腱は、血流が少なく回復に時間がかかる部位であり、医師の指示に従い、継続的な治療とリハビリが行われなければなりません。 違和感や炎症が治ったとしても、一時的なものである可能性が高いため、症状が緩和しても、一度医師に指導を仰ぐようにしましょう。 安静期間を守らない 安静期間を守らないと、症状の悪化や慢性化を引き起こす可能性があります。 膝蓋腱は血流が少なく、回復に時間がかかる部位なので、安静期間を守らず、自己判断で復帰してしまうと、症状が再発する可能性が高いです。 とくに症状が重度の場合、6週間以上の安静が求められることがあります。 また、安静期間を守らずに症状が悪化してしまうと、最終的には手術が必要になる可能性があるので、自己判断での復帰はやめましょう。 ジャンパー膝の改善法 改善法 詳細 目的 注意点 RICE処置 安静(Rest)冷却(Ice)圧迫(Compression)挙上(Elevation) 炎症の抑制、違和感の軽減 冷却は15~20分を目安に行う、冷やしすぎに注意する リハビリテーション ストレッチ、筋力トレーニング、物理療法 膝周りの柔軟性向上、筋力強化、組織修復促進 負荷のかからない範囲で、専門家の指導のもと行う 医療機関での受診 医師の診察、診断、治療 正確な状態把握、適切な治療計画 自己判断せず、専門家の指示に従う ジャンパー膝は正しい改善法を行うのが大切です。これから紹介する内容は、自己判断ではなく、医師の指導のもと実践するようにしましょう。 RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上) 処置 詳細 目的 注意点 安静(Rest) 運動や活動を中止し、膝への負担を軽減 炎症の悪化を防ぎ、組織の修復を促進 過度な安静は筋力低下を招くため、医師と相談しながら期間を決める 冷却(Ice) 1回15~20分、1日数回、患部を冷却 炎症と違和感を抑制 冷たすぎる場合はタオルで包む、感覚がなくなったら中止 圧迫(Compression) 弾性包帯などで患部を圧迫 腫れや内出血を抑制 締めすぎに注意し、血行を阻害しない 挙上(Elevation) 膝を心臓より高い位置に挙上 腫れや内出血を抑制 クッションなどを利用し、楽な姿勢で行う (文献2) ジャンパー膝の応急処置として、RICE処置は有効な手段です。RICE処置は、炎症の拡大を防ぎ、膝に対する違和感の軽減に役立ちます。 RICE処置は症状を改善するものではなく、最悪を防ぐための緊急対応です。適切に行うことで進行を抑えられますが、根本的な治療ではないため、必要に応じて医療機関を受診しましょう。(文献2) リハビリテーション リハビリの目的 内容 具体的な方法 筋力バランスの改善 大腿四頭筋とハムストリングの筋力を整え、膝蓋腱への負担を軽減 スクワット・ランジなどの筋力強化エクササイズ 柔軟性の向上 ストレッチで筋肉や腱の柔軟性を高め、膝蓋腱のストレスを軽減 大腿四頭筋やハムストリングのストレッチ 正しい動作の習得 ジャンプやランニングの正しいフォームを習得し、再発を防ぐ フォーム指導で膝への負担を最小限にする (文献3) ジャンパー膝は、膝蓋腱への過剰な負荷によって引き起こされるため、リハビリを通して、膝周りの状態を改善させることが大切です。 リハビリでは、膝周りの筋力を強化し、柔軟性を高めることで、膝蓋腱の負担を軽減し、大腿四頭筋とハムストリングのバランスを整えます。 また、リハビリでは一時的な改善ではなく、再発を起こさないように長期的な部分を視野に入れて行います。 リハビリは、自己流ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 医療機関での受診 治療法 内容 保存療法 運動制限やストレッチ、消炎鎮痛剤の使用で症状の改善を目指す 物理療法 超音波や低周波などの物理的な刺激で、炎症を軽減し組織の修復を促す 再生医療 自身の血液から成長因子を抽出後、患部に注入し修復を促進する ジャンパー膝の症状は医療機関での受診をしましょう。ジャンパー膝の症状の程度は、状況や症状によって個人差があります。 医療機関で正しい診断を受けることで、適切な治療やリハビリを受けられます。症状の程度に関わらず、医療機関の受診が大切です。 以下の記事では、ジャンパー膝の症状改善に役立つ再生医療について詳しく解説しています。 ジャンパー膝の再発防止策 対策 詳細 目的 アイシング 運動後や入浴後に膝周りを冷却 炎症の抑制、疲労回復促進 運動メニューの見直し 運動環境やメニューを調整 膝への負担軽減、適切な運動負荷 膝への負担軽減 膝に負担のかかる動作を避ける 膝蓋腱への負荷軽減、再発防止 体重管理 適正体重を維持 膝や、関節への負荷軽減 ジャンパー膝の治療は短期的ではなく、再発などを引き起こさない長期的な対策が大切です。 ジャンパー膝の再発を防ぐためには、1つだけでなくすべての対策を継続的に実践しましょう。 運動後や入浴後に膝周りをアイシングする 項目 内容 炎症の抑制 血流を抑制し、炎症の拡大を防ぐ 違和感の緩和 神経の働きを鈍らせ、違和感を軽減する 筋肉のクールダウン 筋肉の緊張を和らげ、疲労回復を促進する 冷却時間 1回15~20分を目安に行う、冷やしすぎに注意 冷却方法 氷嚢や保冷剤をタオルで包み、直接肌に当てない 冷却頻度 運動後や入浴後、違和感を感じたときに実施 (文献4)(文献5) 運動や入浴後は、膝周りの血流が増加し、炎症が起こりやすくなります。アイシングは、温度を下げる役割があり、炎症の抑制や疲労回復を促します。 アイシングを行う際は、保冷剤を直接当てるのではなく、タオルなどで包み、凍傷を防ぐように行いましょう。 また予防のためにアイシングだけでなく、合わせて運動前のストレッチや、適切なリハビリも行うのが大前提です。(文献6) 運動環境やメニューを見直す 対策 内容 運動環境の改善 柔らかい地面で運動、温度・湿度管理を行い、筋肉の柔軟性を保つ 運動メニューの改善 運動時間や強度を調整し、膝への負担をコントロールする ジャンパー膝を再発させないためには、運動環境やメニューを見直すことが大切です。 固い地面でのトレーニングや、過度な負担のかかるメニューは、筋肉に負担をかけ、炎症を引き起こすリスクがあります。 運動量は医師と相談し、徐々に増やしていきましょう。 膝に負担のかかる動作を避ける ジャンパー膝の再発を防ぐためには、膝に負担のかかる動作を避けることが大切です。膝蓋腱に過剰なストレスを与えると、炎症を引き起こし、再発する恐れがあります。 ジャンパー膝は炎症が治っていない状態で、無理をすると再発しやすい症状です。 そのため、症状が治っても、自己判断で立ち仕事やスポーツに復帰はせず、医師の指示に従うようにしましょう。 適正体重を維持する 要素 内容 適切な運動 膝に負担をかけすぎない有酸素運動(ウォーキングや水中運動)を取り入れ、筋力を維持しながら体重を管理する 食事管理 オメガ3脂肪酸(サバ、イワシ、サーモンなど)や、抗酸化作用のある野菜(トマト、ブロッコリー、ほうれん草など)を積極的に取り入れる (文献7) ジャンパー膝の再発を防止するには、適正体重の維持が大切です。歩く際に膝にかかる負荷は体重の約3倍と言われています。そのため、1kg体重が増えるだけで、膝への負担が約3kg増加します。 極端な体重増加を起こさないように、運動不足や不摂生は控え、適切な体重管理を心がけましょう。 バランスの良い食事と膝に負担の少ない運動を取り入れることが、ジャンパー膝を再発させない上で大切です。 ジャンパー膝の回復期間を知り悪化を防ぐことが大切 ジャンパー膝は回復期間を知り、悪化を防ぐことが大切です。ジャンパー膝は軽度であれば、おおよそ1~2カ月程度で改善に向かいますが、重度の場合、手術が必要になるケースもあります。 ジャンパー膝の症状に対して、手術を行うことに抵抗がある方は、当院リペアセルクリニック」にご相談ください。 手術を必要としない、再生医療を活用し、膝への回復を促します。ジャンパー膝の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 ジャンパー膝を治したい方からよくある質問 ジャンパー膝は自然に治りますか? ジャンパー膝の症状が自然に治ることはありません。適切な治療をしないと症状が慢性化し、悪化する可能性があります。 症状が軽度でも、医療機関を受診しましょう。 ジャンパー膝になったときにお風呂は入っても良いですか? 湯船に長時間浸かるのは控えましょう。湯船に長時間浸かることで、血行が促進され、炎症が悪化する恐れがあります。 湯船に浸かる場合は熱いお湯は避け、38~40℃のぬるめのお湯に15~20分程度浸かるようにします。 また、違和感がある場合は、無理に入浴せず、安静にしましょう。 ジャンパー膝にサポーターは有効ですか? サポーターの使用は、再発予防には有効です。しかし、根本的な治療にはなり得ない部分は認識しておく必要があります。 また、サポーターは自分の膝に合うサイズや、正しい装着方法で実践しないと効果が得られません。 自分に合うサポーターがわからない方は、医師に相談し、選ぶようにしましょう。 ジャンパー膝は何科を受診すれば良いですか? 整形外科(スポーツ整形外科やスポーツ医学科)の受診が適切です。 整形外科(スポーツ整形外科やスポーツ医学科)では、画像診断(MRIや超音波検査)を用いて腱の状態を詳細に評価し、患者に合わせた治療計画を提供します。 参考文献 (文献1) 「運動器疾患とスポーツ外傷・障害」『膝蓋腱炎(ジャンパー膝)』(1)pp.1-2 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/vol.1_%E8%86%9D%E8%93%8B%E8%85%B1%E7%82%8E.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献2) 一般社団法人 日本臨床整形外科学会事務局「スポーツでケガをしたら、どうすれば良いの?」一般社団法人 日本臨床整形外科学会 https://jcoa.gr.jp/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%9B%B8%E8%AB%87/%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%92%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB/%E5%BF%9C%E6%80%A5%E5%87%A6%E7%BD%AE/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%A7%E3%82%B1%E3%82%AC%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%89%EF%BC%9F/#:~:text=%E5%BF%9C%E6%80%A5%E5%87%A6%E7%BD%AE%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E3%81%AF,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年3月14日) (文献3) 原 賢二.「ジャンパー膝の機能的評価と鍼治療の効果に関する 研究」『TulipsR』, pp.1-193, 2013年 https://files.core.ac.uk/download/pdf/56658805.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献4) 綾田 練ほか.「ジャンパー膝に対する運動後のアイシングの効果」『体力科学』, pp.1-6, 2007年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/56/1/56_1_125/_pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献5) 塩田 真史.「Osgood-Schlatter 病の病態と治療 発症から復帰までの現状と今後の課題」『日本アスレティックトレーニング学会誌』4(1), pp.1-6, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/4/1/4_29/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月14日) (文献6) 一般社団法人 千葉市医師会「運動時の膝の痛み「ジャンパー膝」かも?」一般社団法人 千葉市医師会, 2023年7月11日 https://www.chiba-city-med.or.jp/column/155.html#top(最終アクセス:2025年3月14日) (文献7) 独立行政法人日本スポーツ振興センター,ハイパフォーマンススポーツセンター「ハイパフォーマンスを発揮して勝つ!アスリートのためのトータルコンディショニングハンドブック」2024年 https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/hpsc/TCRP/handbook.pdf(最終アクセス:2025年3月14日)
2025.03.31 -
- ひざ関節
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プロテオグリカンが膝関節痛に効果があるのかを知りたい プロテオグリカンのサプリメントを試したいけれど副作用が気になる 本記事では、以下について解説します。 膝関節におけるプロテオグリカンの重要性 プロテオグリカンと膝関節痛の関係 プロテオグリカンが膝関節に与える影響 プロテオグリカンの副作用とアレルギー反応 プロテオグリカンサプリメントが膝関節痛に与える効果 プロテオグリカンと膝関節痛に関するよくある質問も紹介していますので、膝関節痛やプロテオグリカンについて知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。 膝関節におけるプロテオグリカンの重要性 プロテオグリカンとは、コアたんぱく質に糖鎖がブラシ状に結合した糖タンパク質のことです。(文献1) コアタンパク質が木の幹とすると、糖鎖がブラシ状の枝というイメージになります。 プロテオグリカンの役割は、ヒアルロン酸やコラーゲンなどと協力して、肌や軟骨を支えることです。 プロテオグリカンが多く含まれている場所を以下に示しました。(文献2) 軟骨 皮膚 靭帯 体の内側を覆う膜 プロテオグリカンは、スポンジのように水分をたくさん抱える性質があり、関節の動きをスムーズにしたり、肌の水分を保ったりするはたらきがあります。 プロテオグリカンは関節軟骨成分の約10%を占めているもので、水分を抱え込みクッション性を高める成分です。(文献3) 軟骨のクッション性が高まると、衝撃吸収力も高まります。逆に、軟骨のクッション性が低下すると、衝撃を吸収しやすくなり、関節の痛みや動きにくさにつながります。 プロテオグリカンは軟骨、ひいては関節を守る重要な役割を果たしている成分です。 プロテオグリカンと膝関節痛の関係 この章では、膝関節痛の主な原因と、プロテオグリカンが膝関節に与える影響を解説します。 膝関節痛の主な原因 膝関節痛の主な原因になる疾患としてあげられるのは、以下の3つです。 変形性膝関節症 急性関節炎 関節リウマチ ここでは、それぞれの疾患について解説します。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ったり、変形したりすることが原因で、痛みや腫れ、動かしにくさといった症状が出るものです。初期症状としてあげられるものが、立ち上がりや歩き始めでの痛み、正座のしにくさなどです。進行すると、O脚が進行して、平地を歩くことも難しくなります。 膝を押したときの痛みや、曲げ伸ばしの制限といった症状も現れます。 急性関節炎 急性関節炎は、急に膝が腫れて熱を持ち、痛みが生じている状況です。 急性関節炎の原因として、主に以下の3つが考えられます。 偽痛風 痛風 化膿性膝関節炎 偽痛風は、ピロリン酸カルシウムという結晶が膝関節に付着して起こるもので、原因としては、加齢や脱水などがあります。(文献4) 痛風とよく似た関節炎の症状がありますが、痛風とは異なり、血液中の尿酸値は高くなっていません。(文献5) 偽痛風の半数以上は膝関節痛を起こすとされています。 痛風は、血液中の尿酸値が高くなり、尿酸が結晶化したことにより痛みを生じるものです。足の親指が痛むことで有名ですが、膝関節痛を生じることもあります。 化膿性関節炎は、歯周病や肺炎などの感染症を引き起こした細菌が、血流により関節に炎症を起こすものです。皮膚や脂肪、骨への感染が、関節に影響を及ぼす場合もあります。 関節リウマチ 関節リウマチは、免疫の異常のために関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、機能低下を引き起こすものです。(文献6) 進行すると関節が変形する場合もあります。 手足の指や手首に症状が出ることも多いのですが、膝関節痛を引き起こすケースもあります。40代から60代での発症が多い関節リウマチですが、最近は高齢者の発症も増えてきている状況です。 プロテオグリカンが膝関節に与える影響 プロテオグリカンが膝関節に与える主な影響は、以下のとおりです。 膝の軟骨を守り痛みを和らげる 炎症を抑えて腫れを改善させる 軟骨細胞の再生をサポートする 膝関節の潤滑力を高める 膝の軟骨を守り痛みを和らげる イギリスの出版社サイトに掲載された論文では、以下のような結果が示されました。(文献7) 「サケの鼻軟骨由来プロテオグリカンを1日10mg摂取することは、膝に不快感がある人たちの軟骨の健康を改善する可能性がある」 「サケの鼻軟骨由来プロテオグリカンを1日10mg摂取により、軟骨に多く含まれているII型コラーゲンの分解を抑制し、合成を促進することで、軟骨を守る効果が期待できる」 引用:Evaluation of the effect of salmon nasal proteoglycan on biomarkers for cartilage metabolism in individuals with knee joint discomfort: A randomized double‑blind placebo‑controlled clinical study この結果からも、プロテオグリカンに軟骨保護作用や関節の健康維持・改善効果が期待されていることがわかります。 炎症を抑えて腫れを改善させる プロテオグリカンには抗炎症作用もあることが、複数の研究により明らかにされています。(文献8)(文献9) 消化されにくいプロテオグリカンの構造は、腸内細菌バランスの変化や腸内環境改善と関係しています。(文献8) 腸内環境が改善されると、特定の脂肪酸が作られやすくなり、それが抗炎症作用を発揮しているメカニズムです。 軟骨細胞の再生をサポートする プロテオグリカンは軟骨細胞の1つですが、それだけではありません。軟骨細胞そのものを活性化させるはたらきもあります。軟骨成分のもとになる軟骨前駆細胞を増やし、軟骨の減少を押さえるはたらきが確認されています。 このことからプロテオグリカンは、軟骨細胞の再生をサポートする成分といえるのです。 膝関節の潤滑力を高める プロテオグリカンがとくに活躍するのは、時速0.3mm以下のゆっくりとした速度で関節が動くときや、関節に強い力がかかるときです。プロテオグリカンは、ヒアルロン酸と協力して、関節の表面同士が接触しないように摩擦を最小限に抑えるはたらきがあります。 アメリカの医療従事者向けサイトでは、「人工的に作ったプロテオグリカン(rhPRG4)を関節に注入することで、関節の潤滑力改善や、軟骨の保護効果が期待されている」と記載されています。(文献10) プロテオグリカンの副作用とアレルギー反応 ここでは、プロテオグリカンの副作用とアレルギー反応について、詳しく解説していきます。 プロテオグリカンの副作用 プロテオグリカンは、サケの鼻軟骨から抽出される成分です。 2025年2月27日現在、消費者庁および、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所から、プロテオグリカンに関する副作用は報告されていません。 日本食品化学学会誌に掲載された研究論文においても、プロテオグリカン複合体80というサプリメントを摂取しても、副作用は見られなかったとの報告があります。(文献11) プロテオグリカンによるアレルギー反応 プロテオグリカンはサケの鼻骨由来の成分であるため、魚介アレルギーを引き起こす可能性もあります。魚介アレルギーのある方は、プロテオグリカンを使用する前に医師に相談しましょう。 魚介アレルギーの症状としては、口腔内の違和感、じんましん、急速なアレルギー症状である「アナフィラキシーショック」などがあります。(文献12) プロテオグリカンサプリメントが膝関節痛に与える効果 プロテオグリカンのサプリメントを摂取しても、膝痛に直接の効果があるとは考えにくいでしょう。 プロテオグリカンの主成分はタンパク質です。タンパク質は、食事やサプリメントで口から摂取したあと消化吸収されて、身体を作る要素の1つ、アミノ酸に分解されます。 分解されたアミノ酸が、再度プロテオグリカンとして生成されるかどうかは断言できません。もしプロテオグリカンが生成された場合でも、膝の軟骨部分は血管組織が少ないため、膝に直接届く可能性は低いものです。 プラシーボ効果により、「サプリメントで膝がよくなった」ケースも考えられますが、摂取した方全員に効くとは限りません。 プラシーボ効果とは、効果がない薬の内服、もしくはサプリメント摂取でも実際に効果が認められる現象で、自己暗示の影響が大きいとされるものです。(文献13) まとめ|プロテオグリカンで膝関節痛が改善しないときは医療機関を受診しよう プロテオグリカンは、関節や軟骨を守るはたらきがあり、一定の効果を示す有効な成分です。 プロテオグリカンはサケの鼻軟骨から抽出される天然成分であるため、副作用がないといわれています。魚介アレルギーの方は、念のため使用する前に医師へ相談しましょう。 膝関節痛に一定の効果があるとされるプロテオグリカンですが、サプリメント摂取による直接の効果があるとは考えられにくいものです。 プロテオグリカンを摂取しても膝関節痛が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。医療機関で行われる膝関節痛の治療としては、薬物療法や手術療法、再生医療などがあります。 当院「リペアセルクリニック」では、変形性膝関節症や急性関節炎、関節リウマチなどによる膝関節痛を和らげる再生医療を行っています。 メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 プロテオグリカンと膝痛に関するよくある質問 ここでは、プロテオグリカンと膝痛に関するよくある質問を3つご紹介します。 プロテオグリカンと他の膝用サプリメントを併用しても問題ありませんか? プロテオグリカンと、グルコサミンやコンドロイチンといった関節成分の併用で相乗効果が期待できるとされています。 しかし、本文でも述べたように、サプリメントによる膝痛改善効果は薄いものです。 サプリメント併用により、特定成分の過剰摂取につながる可能性もあるため、心配な場合は使用前に医師に相談しましょう。 膝関節におけるプロテオグリカン以外のセルフケアはありますか? 膝関節痛における、プロテオグリカン以外のセルフケアは、主に以下の4つです。 食生活の見直し 姿勢の改善 適度な運動 体重管理 食生活を見直すときには、タンパク質やカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを積極的にとりましょう。タンパク質やカルシウムは、筋肉や骨を作る材料でもあり、関節を守り支える役割を果たします。ビタミンDやビタミンKは骨づくりを助けます。 姿勢の改善も大切なセルフケアです。膝を伸ばして歩く、立っているときや座っているときは背筋を伸ばすなどを意識しましょう。 適度な運動は、筋肉量の維持につながり、膝関節痛の悪化防止になります。毎日少しずつでも筋トレやウォーキングなどの運動を続けましょう。 体重管理も大切なポイントです。 体重を2kg減らすと、歩くときの負担が4〜6kg減少し、階段の上り下りでは10~14kgもの負担が減少するとされています。(文献14) 日頃の運動や食事管理などで、適正体重を保つように心がけましょう。 プロテオグリカンを摂取すると癌になるというのは本当ですか? 「プロテオグリカン=癌になる」ではありません。 がん細胞は、プロテオグリカンを利用して成長したり、他の場所に移動したりします。(文献15) しかし、プロテオグリカンの種類や構造によって、がん細胞に与える影響は異なります。がんを促進するものもあれば、抑制するものもあるのです。 参考文献 (文献1) 日本応用糖質科学会「食べてキレイを守る“新習慣”サプリメント SUNVS (サンブイエス)」『日本応用糖質科学会誌』7(2), pp113, 2017 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献2) 高橋達治.「サケ鼻軟骨由来プロテオグリカン摂取による関節保護効果」『Functional Food Research』14, pp.36-43, 2018 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献3) 高橋謙治.「関節軟骨細胞の老化とストレス応答を利用した変形性関節症治療」『日本医科大学医学会雑誌』7(4), pp.150-155,2011 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献4) 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「膝関節の痛みと治療について」 国立研究開発法人国立長寿医療研究センターホームページ (最終アクセス:2024年2月17日) (文献5) 一般社団法人日本リウマチ学会「偽痛風」一般社団法人日本リウマチ学会, 2022年5月22日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献6) 一般社団法人日本リウマチ学会「関節リウマチ(RA)」一般社団法人日本リウマチ学会, 2022年5月22日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献7) SPANDIDOS PUBLICATIONS「Evaluation of the effect of salmon nasal proteoglycan on biomarkers for cartilage metabolism in individuals with knee joint discomfort: A randomized double‑blind placebo‑controlled clinical study」Experimental and Therapeutic Medicine, 2017年5月11日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献8) 後藤昌史ほか.「サケ鼻軟骨熱水抽出物の経口摂取による日焼け抑制効果―無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―」『応用糖質科学』6(2), pp.138-146, 2016 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献9) 工藤重光ほか.「プロテオグリカンを主成分とするサケ鼻軟骨粉末の安全性評価」『日本食品科学工学会誌』58(11), pp.542(26)-547(31), 2011 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献10) HCP LIVE 「Lubricin: New Promise for Joint-Preserving Therapy」, 2013年7月31日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献11) Tatsuya Wada, et al.(2023).Safety evaluation of excessive intake of Proteoglycan Complex 80 from salmon nasal cartilage―a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group study―.日本食品化学学会誌,30(3)pp.165-177. (最終アクセス:2024年2月17日) (文献12) 長崎大学病院皮膚科・アレルギー科「魚介アレルギー」長崎大学病院皮膚科・アレルギー科 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献13) 井澤美苗ほか.「脳が決める効果: プラセボ効果の要因解析からわかること」『日本香粧品学会誌』37(3), pp.197-200ページ, 発行年(2013) (最終アクセス:2024年2月20日) (文献14) 東京医科大学病院「東京医科大学病院市民公開講座 変形性膝関節症~予防と治療~」 東京医科大学病院, 2018年6月 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献15) Glyco forum「がん生物学から見たコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの機能 コンドロイチン硫酸の糖鎖構造依存的な細胞内シグナルの制御とがん化」 Glyco forum, 2019年8月1日 (最終アクセス:2024年2月17日)
2025.02.28 -
- ひざ関節
膝がポキポキ鳴る… 誰しも一度は経験のあるこの音、実はただの老化現象や運動不足と安易に考えて放置すると、将来的な膝のトラブルにつながる可能性があることをご存知ですか? 階段の上り下り、立ち上がり、何気ない動作で鳴るこの音。 その原因は関節液の気泡、関節構造の問題、靭帯や腱の動きの3つに大きく分けられます。 世界中で推定6億5400万人が罹患している変形性膝関節症も、初期症状としてこのポキポキ音が挙げられるケースがあり、45歳以上の方で活動時に膝の痛みや朝のこわばりがある方は特に注意が必要です。 この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を詳しく解説し、適切な対処法や自宅でできるストレッチ、日常生活での注意点まで、健康な膝を維持するための情報を網羅的にご紹介します。 膝がポキポキ鳴る原因3選 膝がポキポキ鳴る、という症状、多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。 椅子から腰を上げる時や、ふとした拍子に膝を屈伸させるときなど、日常生活の様々な場面で経験する、ありふれた症状です。 実は、このポキポキ音、ただの老化現象や運動不足と考えずに、きちんと原因を探ることが大切です。 なぜなら、放置すると将来的に大きな問題につながる可能性があるからです。 この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を3つのカテゴリーに分けて解説します。 原因を正しく理解することで、適切な対処法を見つけ、健康な膝を維持することにつながります。 ①膝がポキポキ鳴るメカニズム 膝がポキポキ鳴る原因のメカニズムは、大きく分けて以下の3つに分類できます。 関節液の中の気泡 膝の関節の中には、関節液という滑液があります。これは関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割を果たしています。 関節を動かすと、この関節液の圧力が変化し、小さな気泡が発生することがあります。この気泡が弾ける時に、「ポキッ」という音が鳴るのです。 炭酸飲料の蓋を開けた時にプシュッと音が鳴るのと似ています。これはキャビテーションと呼ばれ、特に問題のないケースが多いです。 関節の構造的な問題 膝の関節は、骨、軟骨、靭帯、腱など、様々な組織で構成されています。 これらの組織に何らかの異常があると、関節を動かす際にポキポキと音が鳴ることがあります。 例えば、軟骨部分が磨耗していたり、半月板に傷みが生じていたりすると、関節の表面がデコボコになり、音が鳴りやすくなります。 これは、ギシギシいうドアを無理やり開けるようなイメージです。スポーツによるケガや加齢などが原因で起こり得ます。 靭帯や腱の動き 靭帯や腱は、骨と骨をつないで関節を安定させる役割を担っています。 これらの組織が骨の上を滑る時に、ポキポキと音が鳴ることがあります。 これは、運動不足や筋肉のバランスが崩れている人に多く見られます。 椅子に座りっぱなしのデスクワークや、同じ姿勢を長時間続ける作業などで、特定の筋肉が硬くなってしまうと、靭帯や腱の動きが制限され、音が鳴りやすくなります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ②運動不足と膝がポキポキ鳴る関係 運動不足と膝のポキポキ音には、密接な関係があります。 運動不足になると、膝関節周辺の筋肉が衰え、関節を支える力が弱まります。 すると、関節のバランスが崩れ、関節液の中に気泡ができやすくなってポキポキ音が鳴りやすくなるのです。 また、筋肉の力が衰えると関節が硬くなり、靭帯や腱の滑らかな動きが阻害されるため、これもポキポキ音の原因となります。 例えば、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が弱くなると、膝のお皿(膝蓋骨)の位置がずれ、関節面との摩擦が増えて音が鳴りやすくなります。 さらに、運動不足は変形性膝関節症のリスクも高めます。 変形性膝関節症は、軟骨がすり減って骨同士がぶつかり、痛みや炎症を引き起こす病気です。 ③加齢による軟骨の摩耗 加齢もまた、膝がポキポキ鳴る原因の一つです。 年齢を重ねると、どうしても軟骨がすり減ってきます。 クッションの役割を担う軟骨が徐々に薄くなることで、骨同士が擦れ合う状態となり、関節を動かすたびにパキパキやコリコリという音が聞こえるようになります。 このような症状は、膝の変形性関節症が始まっているサインかもしれません。 運動不足で起こる膝のトラブル5選 膝がポキポキ鳴る、なんとなく違和感がある… それ、もしかしたら運動不足が原因かもしれません。 放っておくと、将来大きなトラブルにつながる可能性も。 今回は、運動不足が原因で起こる膝のトラブルを5つご紹介し、それぞれの症状や対処法をわかりやすく解説します。 ①膝の痛み 運動不足になると、膝周りの筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)や後ろの筋肉(ハムストリングス)が弱くなってしまいます。 椅子に座りっぱなしの生活を想像してみてください。これらの筋肉はあまり使われていませんよね。するとどうなるでしょうか? 筋肉は、膝関節を支える重要な役割を担っています。 筋肉の力が衰えると、支える機能が低下し、膝関節への重みがかかりやすくなります。これが痛みの原因となるのです。 最初は、立ち上がったり、階段を上り下りする時に軽い痛みを感じる程度かもしれません。 しかし、そのまま運動不足の状態が続くと、歩くだけでも痛むようになり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 痛みを感じ始めたら、まずは運動を控え、膝を安静にすることが重要です。 痛みが強い場合は、整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。 ▼おすすめの膝サポーターについて、併せてお読みください。 ②関節の違和感、こわばり 運動不足は、膝関節の周りの筋肉や靭帯を硬くしてしまいます。 筋肉や靭帯は、関節をスムーズに動かすために必要不可欠な組織です。 これらの組織が硬くなると、どうなるでしょうか? 関節の動きが悪くなり、「膝が重だるい」「何となく動きが悪い」といった漠然とした違和感を感じ始めます。 さらに、朝起きた時に「膝が硬くて曲げづらい」といった明らかなこわばりを感じることもあります。 これは、関節液の循環が悪くなっていることも原因の一つです。 関節液は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たしていますが、運動不足になるとこの循環が悪くなり、こわばりを引き起こすのです。 このような症状は、特に運動不足の人に多く見られます。日頃から意識的に体を動かす習慣をつけることが大切です。 ③関節の可動域制限 関節の違和感やこわばりが進むと、関節の可動域、つまり膝を曲げ伸ばしできる範囲が狭くなります。 最初は正座がしづらくなるなど、特定の動作で制限を感じる程度かもしれません。 しかし、悪化すると歩く、しゃがむといった日常の動作にも支障が出てきます。 これは、関節の軟骨がすり減り、骨の表面がデコボコになることが原因の一つです。 なめらかに動いていた関節が、古い扉のように固くぎこちなくなってしまいます。 さらに、関節周囲の筋肉や靭帯が硬くなることで、関節の動きが制限されることも原因として挙げられます。 関節の可動域制限も、運動不足が大きな原因の一つです。 適切な運動を継続することで、関節の柔軟性を維持し、可動域制限を予防することができます。 ④筋力低下、バランス能力の低下 運動不足は、膝関節を支える筋肉、特に大腿四頭筋やハムストリングスの筋力低下を招きます。 これらは、膝の安定性を確保する上で、極めて大切な役割を持っています。 筋肉が弱くなると、膝関節が不安定になり、バランス能力も低下します。 その結果、つまずきやすくなったり、転倒のリスクが高まったりします。 高齢者の場合、転倒は骨折などの大きな怪我につながる可能性があるため、特に注意が必要です。 ⑤変形性膝関節症のリスク増加 運動習慣の不足により膝の周りの筋力が低下すると、軟骨にかかる圧力が増し、磨耗が加速します。 また、運動不足による体重増加も加わることで、膝関節への負荷がさらに大きくなっていき、変形性膝関節症のリスクを高めます。 ある研究では、膝のポキポキ音がいつも鳴る人は、全く音がしない人に比べて変形性膝関節症の発症リスクが3倍高いというデータもあります。 運動不足が続くと、膝の違和感や痛み、こわばり、可動域制限といった様々なトラブルを引き起こす可能性があります。 これらのトラブルは、日常生活の質を低下させるだけでなく、将来的に変形性膝関節症などの深刻な病気を引き起こすリスクも高めます。 日頃から適度な運動を心がけ、健康な膝を維持しましょう。 膝がポキポキ鳴る時の対処法3選 膝がポキポキ鳴ると、不安になりますよね。 もしかしたら病気のサイン?放っておいて大丈夫?と心配になる方もいるでしょう。 この記事では、膝がポキポキ鳴る時の対処法を4つご紹介します。 安心できる情報をお届けしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。 具体的な治療方法(運動療法、薬物療法、手術) 膝のポキポキ鳴る原因や症状によって、適切な治療方法は異なります。 主な治療法は以下の3つです。 運動療法 膝周りの筋肉を鍛えることで、関節を安定させ、痛みを軽減します。 ストレッチで関節の柔軟性を高めることも効果的です。 例えば、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることで、膝のお皿(膝蓋骨)の動きを安定させ、ポキポキ音を軽減することができます。 薬物療法 痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めやヒアルロン酸注射などがあります。 ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする役割を果たしています。 手術 人工関節置換術など、重症の場合にのみ行われます。 変形性膝関節症が進行し、日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合に検討されます。 人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に入れ替える手術です。手術により痛みを軽減し、関節の機能を回復させることができます。 保存的治療(運動療法や薬物療法)で効果がない場合や、半月板の異常などの明確な疾患が背景にある状況では、手術が必要となることもあります。 半月板は、膝関節にあるC型の軟骨で、クッションの役割を果たしています。 半月板が損傷すると、膝の痛みや引っかかり、ポキポキ音などの症状が現れます。 ▼半月板断裂と損傷の違い、痛みの特徴や原因・治療法ついて、併せてお読みください。 家庭でできるストレッチ、運動 家庭でできるストレッチや運動をご紹介します。 膝下ストレッチ:椅子に座り、両足を床につけた状態で行います。 膝から下の骨を内側にねじるように動かします。左右10回ずつ繰り返します。 ふくらはぎの筋肉を伸ばし、膝関節の柔軟性を高める効果があります。 膝曲げ伸ばし運動:椅子に座り、片方の足をまっすぐ伸ばします。 伸ばした足をゆっくりと曲げ、また伸ばします。左右10回ずつ繰り返します。 大腿四頭筋を強化し、膝関節の安定性を高める効果があります。 フロッグ:仰向けに寝て、両膝を曲げ、足の裏を合わせます。 かかとをお尻に近づけ、両膝を床に近づけるようにします。 10秒間キープし、5回繰り返します。 内ももの筋肉を伸ばし、股関節の柔軟性を高める効果があります。 ランジ:足を前後に開き、両膝を90度に曲げます。 前の膝がつま先より前に出ないように注意します。 10秒間キープし、左右5回ずつ繰り返します。 太ももの筋肉を鍛え、バランス能力を高める効果があります。 これらの運動は、膝周りの筋肉を強化し、関節の柔軟性を高める効果があります。 毎日続けることで、膝のポキポキ音を軽減し、膝の健康を維持することができます。 日常生活での注意点 日常生活で気を付けるべきことをご紹介します。 体重管理:適正体重を維持することで膝への負担を軽減します。 肥満は膝関節への負担を増大させ、変形性膝関節症のリスクを高めるため、注意が必要です。 適切な運動:ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ない運動を選びましょう。 激しい運動は、膝関節に大きな負担をかけるため、避けるべきです。 ストレッチ:毎日、入浴後などにストレッチを行いましょう。 ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、関節の動きをスムーズにする効果があります。 靴の選び方:低いヒールで、クッション性のある靴を選びましょう。 高いヒールやクッション性のない靴は、膝関節への負担を増大させるため、避けるべきです。 長時間同じ姿勢を避ける:デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽い運動をしましょう。 同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が硬くなり、関節の動きが悪くなるため、注意が必要です。 膝のポキポキ音は、必ずしも病気のサインではありませんが、放置すると将来的に大きな問題につながる可能性もあります。 日頃から膝のケアを心がけ、健康な膝を維持しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Lavie CJ, Ozemek C, Carbone S, Katzmarzyk PT, Blair SN. "Sedentary Behavior, Exercise, and Cardiovascular Health." Circulation research 124, no. 5 (2019): 799-815. Duong V, Oo WM, Ding C, Culvenor AG, Hunter DJ. "Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review." JAMA 330, no. 16 (2023): 1568-1580.
2025.02.15 -
- ひざ関節
膝の痛み...それを解消する強力なアイテムとなるのが「膝サポーター」です。 日本では、特に高齢化社会に伴い、膝のトラブルを抱える方が増加しており、その対策としてサポーターへの注目が集まっています。 しかし、ドラッグストアやネット通販で手軽に買えるようになった反面、種類が多すぎてどれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? ここでは、最新の研究データに基づいたエビデンスも交えながら、サポーターの効果と限界についても明らかにしていきます。 自分にぴったりのサポーターを見つけることで、痛みを軽減し、快適な日常生活を取り戻す第一歩を踏み出しましょう。 膝サポーターの種類と特徴 膝の痛みや違和感を感じた時、多くの方がまず手にするのが膝サポーターではないでしょうか。 ドラッグストアやスポーツ用品店、オンラインショップなど、様々な場所で手軽に購入できるため、利用されている方も多いと思います。 しかし、一口に膝サポーターと言っても、その種類は実に様々です。ご自身の膝の状態に合わないものをつけると、かえって逆効果となります。 この章では、様々な種類のサポーターの特徴を一つずつわかりやすく解説していきますので、サポーター選びの際の参考にしていただければ幸いです。 スポーツ用サポーター(バスケットボール、サッカー、バレーボールなど) スポーツ用サポーターは、膝への負担を和らげたり、ケガを未然に防いだりするために使われます。スポーツの種類によって、求められる機能も大きく異なります。 例えば、バスケットボールのようにジャンプや着地動作が多いスポーツでは、いかに膝への衝撃を少なくするかが大事となります。 厚みのあるパッドが付いたサポーターや、特殊な素材で衝撃を分散させる機能を持つサポーターを選ぶと良いでしょう。 サッカーでは、急な方向転換やストップ動作が頻繁に行われます。 このような動作は、膝関節にねじれの力を加え、靭帯を痛めてしまいます。膝関節をしっかりと固定し、不意のねじれから保護するタイプのサポーターがおすすめです。 バレーボールでは、ジャンプの着地時だけでなく、レシーブの際に床に滑り込むなど、膝を捻るリスクが非常に高い競技です。 2023年に発表されたシステマティックレビュー(※複数の臨床研究をまとめて分析したもの)でも、膝蓋骨脱臼に対する手術療法と非手術療法の有効性について、依然として明確な結論が出ていないことが示されています。 つまり、サポーターによる予防が非常に重要であると言えるでしょう。バレーボールでは、膝のお皿(膝蓋骨)の周囲をサポートし、脱臼を防ぐサポーターが有効です。 スポーツ用サポーターを選ぶ際には、行うスポーツの特徴を考慮し、適切な機能を持つサポーターを選びましょう。 また、通気性の良い素材を選ぶことで、汗による不快感を軽減し、快適にスポーツを楽しむことができます。 日常生活用サポーター 日常生活用サポーターは、家事や仕事、買い物など、日常生活での膝の痛みや不安定感を少なくする効果があります。 高齢になると、膝の軟骨がすり減り、変形性膝関節症を発症する方が多くいらっしゃいます。 初期は動き始めが痛いだけですが、放置すると歩行時や夜間にも痛みが出てしまい、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 ▼変形性膝関節症の治療について、併せてお読みください。 具体的には、階段の上り下りや、椅子からの立ち上がり動作が楽になるようにサポートしてくれるサポーターや、膝のぐらつきを抑えて安定感を高めるサポーターなどがあります。 装着が簡単なものや、薄手で服の下に着けても目立ちにくいものなど、多種多様の製品があり、ご自身の生活スタイルや好みに合わせて選ぶと良いでしょう。 また、最近では関節の動きをサポートするだけでなく、保温効果を高めたものや、通気性に優れた素材を使用したものなど、機能性も重視されています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 医療用サポーター 医療用サポーターは、変形性関節症や靭帯損傷などの特定の疾患に対応するために使用されます。一般的には、医師の指導のもとで使用します。 変形性膝関節症では、膝関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接擦れ合うことで炎症や痛みが発生します。 医療用サポーターは、膝関節を安定させることで痛みを軽減し、変形の進行を遅らせる効果が期待できます。 靭帯損傷は、スポーツなどでの急激な動作や外力によって、膝の安定に必要な靭帯がケガすることです。 前十字靭帯や内側側副靭帯の損傷は特に多く、初期治療が大切です。サポーターは、損傷した靭帯を保護し、関節の安定性を高めることで、怪我を治す期間を縮めてくれます。 ▼前十字靭帯、その症状は軽度?重度?こちらも併せてお読みください。 機能別サポーター(保温、固定など) 膝サポーターは、その機能によっても分類することができます。代表的な機能として、保温機能と固定機能が挙げられます。 保温機能を重視したサポーターは、膝周りの保温性を高めることで、血行を促進し、痛みを和らげる効果があります。冬季のスポーツ時や冷えから膝を守りたい方におすすめです。 固定機能を重視したサポーターは、膝関節をしっかりと固定することで、関節の安定性を向上させます。 スポーツ時の怪我予防や、膝の不安定感が強い方、靭帯損傷後のリハビリテーション時などに使用されます。 最近では、保温と固定の両方の機能を兼ね備えたサポーターも販売されています。 素材別サポーター(ネオプレン、ナイロンなど) 膝サポーターは、素材によっても特徴が異なります。 ネオプレン素材のサポーターは、保温性と伸縮性に優れているため、フィット感が良く、膝関節をしっかりと包み込むような装着感が特徴です。保温効果が高いことから、冷え性の方や、冬季のスポーツに適しています。また、水に強く、汚れにくいというメリットもあります。 ナイロン素材のサポーターは、軽量で通気性が良く、速乾性にも優れているため、暑い季節でも快適に使用できます。耐久性も高く、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいというメリットがあります。 膝サポーターの効果とデメリット、選び方のポイント 膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させる悩ましい症状です。歩くのも、階段の上り下りも、椅子から立ち上がるのも、痛みが伴うと億劫になってしまいますよね。 自分に合ったサポーターを装着することで、ケガを予防してくれたり、症状の悪化を防いでくれます。しかし、その種類は多岐にわたり、自分に合わないものをつけてしまうと、痛みが増強することもよくあるので注意しましょう。 この章では、膝サポーターの効果とデメリット、そして選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。ご自身にぴったりのサポーター選びの参考になれば幸いです。 膝サポーターの効果:痛み軽減、関節の安定化、怪我予防 膝サポーターの効果は大きく分けて「痛み軽減」「関節の安定化」「怪我予防」の3つです。 まず「痛み軽減」についてですが、サポーターを装着することで膝関節を適度に圧迫し、保温効果によって血行が促進されます。温かいタオルで患部を温めると痛みが和らぐのと同じですね。また、圧迫によって、関節内の炎症によって生じた腫れを抑える効果も期待できます。 次に「関節の安定化」ですが、膝関節が不安定な状態だと、少しの動きでも痛みを感じたり、転倒のリスクが高まったりします。サポーターは、関節を外部から支えることで安定性を高め、ぐらつきを抑えてくれます。不安定な積み木にそっと手を添えるように、サポーターが膝関節をサポートしてくれるイメージです。 最後に「怪我予防」についてです。スポーツや重労働などで膝に大きな負担がかかる際、サポーターは関節や靭帯を保護し、怪我のリスクを軽減するのに役立ちます。膝への負担が大きい動作を行うスポーツでは、サポーターによる保護が重要です。 膝サポーターのデメリット:締め付けによる不快感、皮膚トラブル、筋力低下 膝サポーターは多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。 まず、サポーターによる締め付けが強すぎると、不快感や痛み、血行障害などを引き起こす可能性があります。また、サポーターの素材によっては、皮膚にかぶれやかゆみなどのアレルギー反応が生じることもあります。特に、汗をかきやすい夏場や、長時間サポーターを装着している場合は注意が必要です。 さらに、サポーターに頼りすぎることで、膝周りの筋肉をあまり使わなくなり、筋力が低下する可能性も懸念されます。これは、怪我をした際にギプスで固定し続けると、その部分の筋肉が衰えてしまうのと同じ原理です。サポーターはあくまで補助的な役割であり、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 『膝のサポーターをするととても楽です』と言われる患者様には、必ず、『サポーターをつけると、筋肉が落ちるので、必ず筋トレも忘れずにしましょうね』と言います。筋トレをせずにいて、筋力低下を起こすと、ますますサポーターがなくては生活ができなくなるという悪循環に陥るので注意が必要です。 サイズの選び方:適切なサイズで効果を最大化 膝サポーターは、サイズが合ってないと、関節を痛めることとなり、さらに締め付けによる不快感や血行障害を引き起こす可能性があります。 サポーターのサイズを選ぶ際は、必ず膝周りのサイズを正確に測り、商品ごとのサイズ表と照らし合わせて選びましょう。一般的には、膝のお皿の上約10cmの太ももの周囲の長さを基準とします。メジャーを使用して、立った状態で計測するのがおすすめです。 膝サポーターに関するエビデンスと研究データ 膝サポーターは、スポーツ選手から高齢者まで幅広く利用されています。その効果について、様々な意見を耳にすることがあるかもしれません。「効果がある」という人もいれば、「効果がない」という人もいます。一体どちらが正しいのでしょうか? 実は、膝サポーターの効果については、多くの研究が行われており、その結果も様々です。この章では、科学的根拠(エビデンス)に基づいて、膝サポーターの効果と限界について、わかりやすく解説します。 具体的な研究データに基づいた解説 膝サポーターの効果を検証した研究は、世界中で数多く行われています。例えば、サッカー選手を対象とした研究では、膝サポーターが前十字靭帯(ACL)損傷の予防に役立つ可能性が示唆されています。ACLは膝関節の中にある靭帯の一つで、これが損傷すると、歩行やスポーツに大きな支障をきたします。特に、急な方向転換やジャンプの着地時など、膝に大きな負担がかかる動作で、サポーターの効果が期待できるという研究結果が出ています。 また、ランナーを対象とした研究では、サポーターがランニング中の膝の安定性を向上させる可能性が示唆されています。これは、サポーターが膝関節を外部から支えることで、関節のぐらつきを抑え、安定性を高めるためだと考えられます。 さらに、変形性膝関節症の患者さんを対象とした研究では、サポーター装着によって痛みや歩行機能が改善したという報告もあります。 スクワット時の膝への影響 スクワットのように、膝を深く曲げる運動をするとき、膝サポーターはどのような影響を与えるのでしょうか? 研究によると、スクワット時の膝への負担は、膝の曲げ角度によって変化し、特に60~90度の屈曲で大きくなる傾向があります。サポーターはこの負担を軽減する効果があるとされています。 しかし、一方でサポーターの過度な使用は、膝周りの筋肉のトレーニング効果を弱める可能性も指摘されています。これは、サポーターが膝関節を支える役割を果たすため、筋肉が本来担うべき役割を奪ってしまうためと考えられます。サポーターはあくまで補助的な役割として使用し、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 動的膝外反への効果 動的膝外反とは、運動中に膝が内側に入ってしまう状態のことです。ジャンプの着地時やランニング中などに、膝が内側に倒れこむように曲がってしまうと、膝関節や靭帯に大きな負担がかかり、痛みや怪我につながる可能性があります。 研究によると、適切なエクササイズと併用することで、サポーターは動的膝外反の改善に役立つ可能性があると考えられています。特に、シングルレッグスクワットやシングルレッグランディングといった片足での運動時に効果的です。これらの運動は、バランス能力や体幹の安定性を向上させる効果があり、動的膝外反の予防・改善に繋がります。サポーターは、これらの運動を行う際に、膝の怪我の予防に活躍してくれます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Pereira PM, Baptista JS, Conceição F, Duarte J, Ferraz J, Costa JT. "Patellofemoral Pain Syndrome Risk Associated with Squats: A Systematic Review." International journal of environmental research and public health 19, no. 15 (2022). Smith TO, Gaukroger A, Metcalfe A, Hing CB. "Surgical versus non-surgical interventions for treating patellar dislocation." The Cochrane database of systematic reviews 1, no. 1 (2023): CD008106. Alentorn-Geli E, Myer GD, Silvers HJ, Samitier G, Romero D, Lázaro-Haro C, Cugat R. "Prevention of non-contact anterior cruciate ligament injuries in soccer players. Part 1: Mechanisms of injury and underlying risk factors." Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA 17, no. 7 (2009): 705-29. Wilczyński B, Zorena K, Ślęzak D. "Dynamic Knee Valgus in Single-Leg Movement Tasks. Potentially Modifiable Factors and Exercise Training Options. A Literature Review." International journal of environmental research and public health 17, no. 21 (2020).
2025.02.11 -
- 頭部
- 内科疾患
- ひざ関節
- スポーツ外傷
- その他、整形外科疾患
突然の頭痛、生理痛、歯痛…痛みは日常生活を大きく阻害する悩みの種です。 ドラッグストアには様々な痛み止めが並び、どれを選べば良いか迷う方も多いのではないでしょうか? この記事では、ロキソニン、ボルタレン、トラムセット、カロナールなど、代表的な痛み止め薬の種類と効果を分かりやすく解説します。 それぞれの薬の特徴、副作用、そしてNSAIDsやステロイド、オピオイドといった分類についても詳しく医師が解説します、 さらに、市販の痛み止め「ロキソニン」と「カロナール」の徹底比較を説明し、それぞれの特徴、効果的な症状、価格、そして副作用のリスクまで、幅広くお伝えします。 例えば、ロキソニンは、筋肉の痛みや生理痛に対してとても有効ですが、胃腸への負担が懸念されます。 一方、カロナールはロキソニンに比べて副作用は弱いが、その分、効き目も弱くなります。 さらに、最新の研究結果に基づいた、2歳未満の乳幼児への服用に関する情報や、妊娠中・授乳中の方への注意点も詳しく解説。薬剤師への相談の重要性も改めて強調します。 この記事を読むことで、痛みから解放されるための知識が得られます。 さあ、痛みと賢く付き合う方法を学びましょう。 痛み止めの種類とその効果、副作用 皆さんは、急な頭痛や発熱時、どの市販薬を選べば良いか迷ったことはありませんか? この章では、市販薬の選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。 ロキソニン ロキソニンは「ロキソプロフェンナトリウム水和物」という成分の鎮痛剤で、炎症を抑える作用が強い非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種です。 頭痛、歯痛、生理痛、腰痛、筋肉痛、関節痛、手術後や外傷後の痛みなど、様々な痛みに効果を発揮します。 炎症とは、体を守るための反応で、発赤、腫れ、熱感、痛みなどの症状を伴います。 ロキソニンは、この炎症を引き起こす物質の生成を抑えることで、痛みを和らげるのです。 即効性があり、効果も比較的長く持続するのが特徴です。 市販薬としても入手できますが、胃への負担があるため、空腹時の服用は避け、食後に服用することが推奨されます。 また、胃腸の弱い方や、過去に胃腸障害を起こしたことがある方は、特に注意が必要です。 ボルタレン ボルタレンは「ジクロフェナクナトリウム」という成分のNSAIDsで、ロキソニンと同様に炎症を抑える作用が強い痛み止めです。 ロキソニンと同じく、様々な種類の痛みに効果があり、坐薬、テープ剤、ゲル剤など、様々な形態で利用できるのが特徴です。 例えば、炎症を起こしている関節にボルタレンのテープ剤を貼ることで、その部分に直接薬剤が浸透し、効果的に痛みや炎症を抑えることができます。 また、坐薬は、飲み薬を服用できない場合や、吐き気がある場合などに有効です。 トラムセット トラムセットは「トラマドール塩酸塩」と「アセトアミノフェン」という2種類の成分を配合した痛み止めです。 トラマドールは、オピオイド系鎮痛薬に分類され、脳内の痛みの伝達を抑制する作用があります。 アセトアミノフェンは、解熱鎮痛作用を持つ成分で、2つの成分の相乗効果により、中等度から高度の痛みに効果を発揮します。 カロナール カロナールは「アセトアミノフェン」を主成分とする痛み止め、解熱剤です。比較的穏やかな効き目があり、子供から高齢者まで幅広く使用できます。 副作用が少ないため、安全性が高いとされています。市販薬としても入手しやすく、風邪による発熱や頭痛、生理痛などの痛みによく使われています。 セレコックス セレコックスは「セレコキシブ」という成分のNSAIDsの一種です。他のNSAIDsと比べて、胃腸への負担が少ないという特徴があります。 そのため、胃腸の弱い方や、他のNSAIDsで胃腸障害を起こしやすい方に向いています。 リリカ リリカは「プレガバリン」という成分の薬で、神経障害性疼痛という、神経の損傷によって起こる痛みやしびれに効果があります。 帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、線維筋痛症などの治療に使用されます。 ステロイド ステロイドは、副腎皮質ホルモン剤と呼ばれる薬で、強力な抗炎症作用と免疫抑制作用があります。 様々な炎症性疾患やアレルギー疾患、自己免疫疾患の治療に使用されます。 オピオイド オピオイドは、モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬の総称です。 非常に強い鎮痛作用があり、がんなどの強い痛みをコントロールするために使用されます。 注意すべき副作用:アスピリン喘息について アスピリン喘息は、アスピリンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を服用することで喘息発作が誘発される特殊な病態です。 この疾患は成人の喘息患者の約10%に見られ、通常は成人期に発症します。 特徴的なのは、アスピリンだけでなく、ロキソニンやボルタレンなどの一般的な痛み止めでも発作が引き起こされることです。 これらの薬を服用すると、重度の喘息発作や呼吸困難に加えて、鼻水、くしゃみ、鼻づまりといった症状が現れます。 また、多くの患者さんが慢性的な副鼻腔炎や鼻ポリープを合併しています。 この病気の患者さんが痛み止めを使用する必要がある場合、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノールなど)が比較的安全とされています。 ただし、初めて使用する際は少量から開始し、医師に相談しながら使用することが推奨されます。 成分から分類した痛み止めの種類 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) 作用:炎症、痛み、発熱を抑制 メカニズム:プロスタグランジン生成を抑制(COX阻害) - ロキソニン(ロキソプロフェン) - ボルタレン(ジクロフェナク) - モートリン(イブプロフェン) - バファリン(アスピリン) アセトアミノフェン - 作用:主に痛みと発熱を抑制(抗炎症作用は弱い) - メカニズム:中枢神経系に作用 - 胃への負担が少なく、妊婦や小児にも使用可能 - 代表的な製品: - カロナール - タイレノール - ピリナジン イブプロフェン(NSAIDsの一種) - 作用:炎症、痛み、発熱を抑制 - メカニズム:他のNSAIDsと同様(COX阻害) - 代表的な製品: - EVE(イブ) - バファリンEX - ブルーレット ・モートリン(イブプロフェン) 主な使い分け: - 炎症を伴う痛み → NSAIDs - 発熱や軽い痛み → アセトアミノフェン - 胃が弱い人 → アセトアミノフェン - 生理痛 → イブプロフェンまたは他のNSAIDs 痛み止めランキング 数ある市販薬の中でも、ロキソニンとカロナールは特に知名度が高く、多くの方に利用されています。 ここでは、痛み止めランキング上位にある、ロキソニンとカロナールの違いについて比較します。 ロキソニンとカロナールの違い ロキソニンは頭痛、歯痛、生理痛、腰痛、筋肉痛などによく服用されます。 患部で炎症を引き起こす物質であるプロスタグランジンの生成を抑える効果があります。 一方、カロナール(一般名:アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されており、脳神経に直接働きかけて炎症を止めます。 ロキソニンと比較すると作用は穏やかで、小児や高齢者、妊娠中・授乳中の方にも使用できる場合があります。 2歳未満の乳幼児における発熱や疼痛の治療において、アセトアミノフェンとイブプロフェンはどちらも広く処方されていますが、最新の研究では、イブプロフェンの方が24時間以内の体温低下と疼痛軽減効果が高いという結果が出ています。 ただし、安全性は両剤とも同等とされています。 薬剤名 主な作用 適した症状 注意点 ロキソニン 炎症を抑える、痛みを抑える 頭痛、生理痛、歯痛、腰痛、筋肉痛など 胃腸障害に注意、空腹時の服用は避ける カロナール 熱を下げる、痛みを抑える 熱、頭痛、歯痛など 肝臓に負担があるため、過剰摂取に注意する 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 値段比較とコストパフォーマンス ロキソニンとカロナールの価格を比較すると、一般的にロキソニンの方がややコストがかかります。 販売店や容量によって異なりますが、ロキソニンは1箱12錠入りで約1,000円前後、カロナールは1箱12錠入りで約800円前後が相場です。 薬剤名 1箱(12錠)あたりの価格 コストパフォーマンス ロキソニン 約1,000円 やや低い カロナール 約800円 やや高い しかし、価格だけで判断せず、症状や体質、そして副作用のリスクも考慮して選ぶことが重要です。 ロキソニンは胃腸障害のリスクがあるため、胃腸の弱い方はカロナールを選ぶ方が良い場合もあります。 薬局で購入する際のポイント 市販薬を購入する際は、自己判断せず、薬剤師に相談することを強くお勧めします。 薬剤師は、あなたの症状や体質、他の薬との飲み合わせなどを考慮し、適切な薬を提案してくれます。 薬の効果や副作用、服用方法など、疑問があればどんな些細なことでも相談しましょう。 特に、妊娠中・授乳中の方、持病のある方、高齢の方は、注意が必要です。 急性痛の治療には、NSAIDs(ロキソニンなど)、アセトアミノフェン(カロナールなど)、メタミゾール、コルチコステロイドなど、様々な薬剤が使用されます。 これらの薬剤はそれぞれ異なる作用機序と臨床応用を持ち、最新の科学的エビデンスに基づいて使用されるべきです。 例えば、グラピプラントという生薬も抗炎症作用を持つことが報告されており、NSAIDsのような副作用が少ないとされています。 薬剤師や医師と相談し、ご自身の症状に最適な薬剤を選択することが重要です。 症状別のロキソニンとカロナールの効果比較 痛みは、私たちにとって非常に不快な感覚であり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 上手に痛み止めを選び、痛みをコントロールし、より快適な生活を送ることが可能になります。 ここでは市販薬として購入できるロキソニンとカロナールについて、どちらが効果的なのか、医師の視点から分かりやすく解説します。 頭痛に対する効果の違い ズキズキ、ガンガン、締めつけられるような…頭痛の症状は実に様々です。 片頭痛のように血管が拡張することで起こる頭痛、緊張型頭痛のように筋肉の緊張が原因となる頭痛など、その種類は多岐に渡ります。 ロキソニンは、炎症を伴う頭痛、例えば風邪に伴う頭痛や副鼻腔炎による頭痛などに高い効果があります。 一方、カロナールは、解熱鎮痛薬であり、緊張型頭痛や片頭痛など、炎症を伴わない頭痛に適しています。 筋肉痛に対する効能 筋肉痛は、身体活動後に筋肉に微細な損傷が生じることで起こります。 損傷した筋肉は炎症を起こし、発痛物質が放出されることで痛みを感じます。 ロキソニンは、こういう筋肉痛にはよく効きます。 一方、カロナールは筋肉痛への効果は限定的です。 腰痛や関節痛への効果 腰痛や関節痛の原因は多様であり、加齢による変形性関節症や、急に発症するぎっくり腰、スポーツによる外傷など、様々な要因が考えられます。 これらの痛みの原因や病態に応じて薬を選定しましょう。 ロキソニンの抗炎症作用は強く、炎症を伴う腰痛や関節痛、例えばぎっくり腰や変形性関節症などに効果があります。 変形性関節症では関節軟骨がすり減り、炎症が生じることで痛みが発生します。この時はロキソニンがよく効きます。 一方、カロナールですが、近年、変形性関節症の疼痛と機能改善において、アセトアミノフェン(カロナール)は、従来考えられていたほど効果的ではない可能性が示唆されています。 痛みが軽い場合や、ロキソニンを服用できない場合に代替薬として処方されることもありますが、ロキソニンと比較すると効果は劣る可能性があります。 ▼関節症の痛み止め「ステロイド」の使用について、併せてお読みください。 ロキソニンとカロナールの副作用と注意点 痛みや熱が出た時、身近な薬として頼りになるロキソニンとカロナール。ドラッグストアで手軽に手に入りますが、その効果の違いや副作用について正しく理解しているでしょうか? 適切な薬を選ぶことは、症状の改善を早めるだけでなく、副作用のリスクを減らすことにも繋がります。 この章では、ロキソニンとカロナールの副作用と注意点について、医師の視点から詳しく解説します。 一般的な副作用とその対処法 ロキソニン(ロキソプロフェン)は、抗炎症作用は強いのですが、副作用として腎障害に注意する必要があります。 吐き気、胃痛、胸やけといった症状が現れる可能性があり、特に空腹時に服用すると副作用が出やすいため、食後や胃を保護する薬と一緒に服用することが推奨されます。 稀に、ですが、肝機能障害や腎機能障害といった副作用を認めることがあります。 早期に分かれば、内服するのを中止すると大抵は正常に戻ります。 カロナール(アセトアミノフェン)は、解熱鎮痛薬として広く使用されており、比較的副作用が少ない薬です。 主な副作用としては、発疹やかゆみなどのアレルギー症状が挙げられます。 稀ではありますが、重症の皮膚障害である中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群など重篤な副作用が発生する可能性も否定できません。 服用後に皮膚に異常を感じた場合は、直ちに中止してかかりつけ医に受診しましょう。 薬の種類 主な副作用 対処法 ロキソニン 吐き気、胃痛、胸やけ、肝機能障害、腎機能障害 食後に服用、胃薬と併用、症状が続く場合は医師に相談 カロナール 発疹、かゆみ、重症の皮膚障害 服用を中止し医師に相談 また、2歳未満の乳幼児における発熱や疼痛に対する使用については、イブプロフェン(ロキソニンの成分)の方がアセトアミノフェン(カロナールの成分)よりも効果が高いという研究結果も出ています。 24時間以内の体温低下と疼痛軽減効果において、イブプロフェンの優位性が示されています。 ただし、重篤な副作用はどちらの薬も稀であり、安全性は同等と考えられています。 妊娠中・授乳中の服用に関する注意事項 妊娠中や授乳中の薬の服用は、胎児や乳児への影響を考慮する必要があります。 ロキソニンは、妊娠後期に服用すると、胎児の動脈管収縮や陣痛抑制といった影響を及ぼす可能性があるため、服用は避けるべきです。 特に妊娠32週以降は、早産や胎児への影響のリスクが高まるため、ロキソニンを含むNSAIDsの使用は禁忌とされています。 カロナールは、妊娠中や授乳中に服用しても比較的安全とされています。 ただし、あくまで「比較的」安全であるというだけで、全く影響がないわけではありません。 他の薬との飲み合わせについて ロキソニンやカロナールは、他の薬と一緒に飲むことで、抗炎症作用の効果が落ちたり、副作用が強くなることがあります。 特に、ワーファリンなどの血液をサラサラにする薬や、喘息治療薬、一部の抗うつ薬などとの飲み合わせには注意が必要です。 ▼薬とフルーツの飲み合わせについて、併せてお読みください。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Tan E, Braithwaite I, McKinlay CJD, Dalziel SR. "Comparison of Acetaminophen (Paracetamol) With Ibuprofen for Treatment of Fever or Pain in Children Younger Than 2 Years: A Systematic Review and Meta-analysis." JAMA network open 3, no. 10 (2020): e2022398. Richard MJ, Driban JB, McAlindon TE. "Pharmaceutical treatment of osteoarthritis." Osteoarthritis and cartilage 31, no. 4 (2023): 458-466. Antiinflammatory Drugs.
2025.02.01 -
- 下肢(足の障害)
- ひざ関節
- オスグッドシュラッター病
- スポーツ外傷
「ジャンパー膝とオスグッド病の違いは何?」 「スポーツを続けるために必要な方法は?」 ジャンパー膝とオスグッド病は症状がよく似ていて、見分けがつかないケースも多いのではないでしょうか。 どちらもジャンプ競技で繰り返し膝を使うことで発症しますが、痛みが出る膝の部位が異なります。 この記事では、ジャンパー膝とオスグッド病の原因と症状の違いや、それぞれの治療法について解説していきます。 ジャンパー膝とオスグッド病の一般的な見分け方や対処法についても紹介するので、ぜひ最後までお読みください。 ジャンパー膝とオスグッド病の違い【比較表】 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプスポーツが原因で膝まわりの痛みが出るため似たような疾患に見えがちです。 しかし、発症する原因や影響を受ける膝の部位が異なります。それぞれの定義や原因、症状を比較表で整理しました。 項目 ジャンパー膝 オスグッド病 定義 膝蓋腱の炎症 脛骨粗面の剥離(はくり) 原因 ジャンプ動作や走行が多いスポーツ ジャンプ動作や走行が多いスポーツ 症状 スポーツ時の膝蓋腱の痛み・腫れ 脛骨粗面の突出、スポーツ時の脛骨粗面の痛み・腫れ 影響を受ける部位 膝蓋腱(膝蓋骨の下の靭帯) 脛骨粗面(膝蓋骨の下にある突出している骨) はじめに、それぞれの原因の違いについて説明していきます。 【関連記事】 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは?症状チェックと効果的なストレッチ・テーピング技術 オスグッド・シュラッター病|成長期の少年の膝に発症するスポーツ障害 ジャンパー膝とオスグッド病の原因の違い ジャンパー膝とオスグッド病は、いずれも膝への負荷が強いスポーツで起きやすい点が共通しています。 しかし、主に痛む場所は成長期特有の影響があるかどうかなど、発症の仕組みには違いがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 バレーボールやバスケットボール、サッカーなどのスポーツで多くみられ、繰り返し行うジャンプ動作が主な原因です。 ジャンプスポーツによる膝の使いすぎ(オーバーユース)が続くと、膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の原因 オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)は小学校高学年から中学生の成長期に、脛骨粗面(膝蓋骨の下にあるわずかに突出している骨の部分)の軟骨が剥がれる疾患です。 原因はジャンパー膝と同じで、ジャンプや走行、ボールを蹴る動作などで膝を頻回に使うことで生じます。 この時期は軟骨から骨に成長する時期なので、膝を伸ばす動作の繰り返しで脛骨粗面の軟骨が剥がれることにより痛みが増します。 ジャンパー膝とオスグッド病の症状の違い ジャンパー膝とオスグッド病に見られる主な症状は、どちらもスポーツ中の膝まわりの痛みです。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝の症状 ジャンパー膝に見られる典型的な症状は、ジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに見られる膝蓋腱の痛みです。 膝蓋腱の痛みは程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 重症度 痛みの程度 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始期と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 重症化して膝蓋腱に断裂がある場合は、手術が必要になる可能性もあります。 軽症や中等症のうちは専門家と相談した上でスポーツの継続が可能ですが、症状を悪化させないためにも、毎日ケアを続けることが大切です。 オスグッド病の症状 オスグッド病に見られる症状は、脛骨粗面の痛みや腫れ、突出です。 痛みはスポーツ中に見られ、休んでいるときに軽快する点がジャンパー膝とよく似ています。 症状は脛骨粗面以外の部位には見られません。症状が悪化すると、剥がれた骨片を取り出す手術が必要になる可能性もあります。 ジャンパー膝とオスグッド病の発症部位の違い ジャンパー膝とオスグッド病の発症部位はそれぞれ膝蓋腱と脛骨粗面です。どちらの疾患も、膝の曲げ伸ばしによる大腿四頭筋の作用が影響して発症します。 以下に詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の発症部位 ジャンパー膝で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる膝蓋腱です。膝蓋腱は大腿四頭筋の伸び縮みに伴って脛骨(すねの骨)や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしを可能としています。 スポーツをしている時のジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し行っているため、膝蓋腱の負担も大きいのです。 この状態が続くと膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の発症部位 オスグッド病で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋の下端が付着する脛骨粗面です。膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、大腿四頭筋の伸び縮みによって脛骨粗面に刺激が加わります。 小学生から中学生にかけて骨が成長している時期は、この刺激により脛骨粗面の軟骨が急激に剥がれやすくなるのです。 軟骨が剥がれると、脛骨粗面まわりに炎症が起き、痛みや腫れを発症させます。 ジャンパー膝とオスグッド病の診断方法と治療方法の違い ジャンパー膝やオスグッド病が疑われる場合は、整形外科で問診や触診、画像診断などの診断と鎮痛薬や外用薬の投与による治療を行います。 それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝の診断方法と治療方法 ジャンパー膝の診断では問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。膝蓋腱をゆびで圧迫した時に痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断となります。 ジャンパー膝の治療は、患部の安静や練習量を減らすこと、炎症を抑えるための鎮痛剤や外用薬を使用することです。膝蓋腱に負担のかかるジャンプやダッシュの練習を減らすだけでも、症状の改善に効果があります。 また、医薬品は市販ではなく医師に処方されたものを使用しましょう。症状によってはステロイド注射を行うこともあります。 オスグッド病の診断方法と治療方法 オスグッド病の診断は問診や触診、レントゲン検査で可能です。問診で実際の話を聞きながら、痛みが出るときの状況や、痛みが出る部位を確認します。 脛骨粗面の状態を触診やレントゲン検査で確認し、痛みや腫れ、突出、軟骨の剥離が認められると確定診断になります。 オスグッド病の症状を治すためには、スポーツを控えて安静にすることが大切です。軟骨から骨に成長する3〜6カ月間は痛みが出やすい時期なので、負担をかけないようにできるだけ休息をとりましょう。 痛みが強いようなら、医師から処方された飲み薬やぬり薬などを使用することもあります。 なお、膝の痛みの治療には「再生医療」の選択肢が挙げられます。再生医療は、損傷を起こしている骨や細胞に幹細胞を投与する治療法です。 再生医療について詳しく知りたいという方は、メール相談、オンラインカウンセリングも承っておりますので、ぜひご活用ください。 ジャンパー膝とオスグッド病の予防策の違い ジャンパー膝やオスグッド病の予防策には、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、膝蓋腱バンドの装着などがあります。 痛みの症状に悩んでいる方は、専門医と相談しながらこれらの方法を行うようにしましょう。詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の予防策 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋のストレッチや筋力トレーニングが大切です。症状を管理しながらスポーツを続けていく場合は、スポーツ直後のアイシングや、スポーツ中の膝蓋腱バンドの装着も必要になります。 過去の論文ではジャンパー膝の予防策に、傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。(文献1) ジャンパー膝の予防に重要な、片脚立ちスクワットや大腿四頭筋のストレッチの方法について見ていきましょう。 【片脚立ちスクワット】 ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ (※傾斜台がなければ、スロープやタオルを使用して、立った姿勢で踵の位置が上がるように工夫する) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続で行い、1日3セットほど行う。きつく感じるようであれば、必要に応じて手すりを持ちながら行う 【大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法)】 ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う 【大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げても痛みがでない場合の方法)】 ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う オスグッド病の予防策 オスグッド病の予防策と管理方法は、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、ベルトの装着です。 オスグッド病は痛みが出なければスポーツが可能ですが、症状を悪化させないためにこれらを継続して行うことが大切です。 【アイシング】 練習直後にアイシングを15〜30分ほど行いましょう。激しい運動の後は脛骨粗面のまわりにより炎症が起こりやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。氷を入れた袋を患部に持続的に当てるか、弾性包帯で巻きつけて固定すると効果的です。 【バンドを装着する】 ジャンパー膝やオスグッド病の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツ中の膝蓋腱や脛骨粗面に対する過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 まとめ|ジャンパー膝とオスグッド病の違いを把握して判断に役立てよう ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプ競技で膝を伸ばす動作を繰り返すことで起こる症状です。 似ている疾患ですが、以下のように発症部位や診断方法、治療方法などに違いがあります。 疾患 発症部位 診断方法 治療方法 ジャンパー膝 膝蓋腱(膝蓋骨の下の靭帯) 問診 触診 MRI 超音波検査 安静 練習量を減らす 鎮痛剤 外用薬(湿布など) オスグッド病 脛骨粗面(膝蓋骨の下にある突出している骨) 問診 触診 レントゲン検査 安静 内服薬 外用薬 どちらの症状でも違和感を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。スポーツを継続するためには、早期発見・早期治療が大切です。 また、身体的な負担が少ない治療法として、再生医療も選択肢の1つです。 再生医療では、入院を必要としません。患者様自身から採取した脂肪や血液に加工を施し、患部に注射・点滴を行います。 再生医療について詳しくは、当院リペアセルクリニックにお気軽にお問い合わせください。 ジャンパー膝とオスグッド病の違いに関するよくある質問 ジャンパー膝とオスグッド病はどれくらいで治りますか? ジャンパー膝の回復期間は、痛みの度合いや腱へのダメージ具合で異なります。 軽症なら1〜2カ月ほどで落ち着く例がある一方、炎症が強まると2〜3カ月を要するケースも珍しくありません。 オスグッド病は骨の成長段階が関連し、半年で改善する例から2年ほどかかる例まで幅広い経過を示します。成長期特有の個人差も影響し、同じような症状でも回復期間にばらつきが見られる点が特徴です。 いずれの場合も痛みが続くときは無理をせず、医師の指示に従いリハビリを続けてください。 ジャンパー膝とオスグッド病でやってはいけないことを教えてください ジャンパー膝でやってはいけないことは、以下の通りです。 痛みを我慢しての練習や試合の継続 膝への負担が大きいジャンプ動作の繰り返し 適切な休息を取らずに連日のトレーニング また、オスグッド病では以下の行為はやってはいけません。 成長期の過度な筋トレや運動の継続 素人判断での自己流マッサージや処置 どちらの症状も初期段階では適切な休息と負荷軽減で回復可能ですが、無視して運動を続けると骨の変形や痛みの慢性化を招くリスクがあります。 違和感や痛みを感じたら、すぐに運動強度を調整し、症状が続く場合は早めに専門医を受診しましょう。 参考文献 (文献1) Visnes, H., Hoksrud, A., Cook, J., & Bahr, R. British Journal of Sports Medicine 39巻 11号 pp847~850 2005年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16244196/(最終アクセス:2025年4月19日)
2024.10.02 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
化膿性関節炎の術後は、関節を切除している場合、関節が不安定になってしまいます。 日常生活に戻るためには、適切なリハビリが重要です。 「早く復帰したい」と考え、無理なリハビリをおこなってしまうと、感染症や炎症の悪化につながる可能性があります。そこで本記事では、化膿性関節炎のリハビリやリスク、日常生活での注意点を解説します。 また、ハイキングやランニングでおすすめの筋トレも紹介しているため、ぜひご覧ください。 【基礎知識】化膿性関節炎の概要 化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。 まずは化膿性関節炎が発症する原因と具体的な症状について紹介していきます。 化膿性関節炎が発症する原因 化膿性関節炎は、主に細菌が関節内に侵入することによって発症します。 細菌は肺炎、尿路感染、手術後の感染、関節内注射などを通じて関節に到達することがあります。とくに、股関節・膝関節・足関節など、下肢に発症しやすい傾向にあります。 また、免疫力が低下している人や、肥満・糖尿病などがある人も化膿性関節炎を発症する可能性があります。 以下の記事では膝関節が腫れた人向けに、痛みの原因や対処法を解説しているので、ぜひご覧ください。 化膿性関節炎の症状 化膿性関節炎の主な症状は、関節の痛み・発赤・腫脹・熱感などがあり、進行すると関節や骨の破壊、発熱などの症状が現れます。 「関節炎」は、炎症を伴う関節の痛みや腫れを特徴とする病気の総称で、化膿性関節炎はその中でもとくに急性で重篤な症状を示します。 化膿性関節炎を放置すると、関節の破壊や機能障害を引き起こす可能性があるので注意してください。 他にも大腿部や膝、肩の関節に多く発生し、患部の運動が制限されるケースが大半です。 迅速な治療が求められるため、疑わしい症状が現れた場合は、速やかに医療機関での受診をおすすめします。 治療は主に、抗生物質の投与と、場合によっては関節内の膿を排出する外科的処置が行われます。また、治療後のリハビリテーションも重要で、関節の機能回復を目指した適切なケアが必要です。 化膿性関節炎を予防するためには、日常生活での感染予防や、免疫力の向上が大切です。 化膿性関節炎の治療法と術後のケア 化膿性関節炎の治療法は、感染の原因となる細菌を特定するために関節液の採取と培養がおこなわれた上で、適切な抗生物質が投与されます。 また、感染によって関節に溜まった膿を除去するために、関節の洗浄が必要となるケースもあります。 治療後は、関節の可動域を回復させるためのリハビリが重要です。 リハビリを通じて、痛みの管理や筋力の回復を図り、日常生活における関節の負荷を軽減できるかが求められます。 化膿性関節炎は、早期に適切な治療を受けると、予後が良好になる可能性が高く、症状が疑われる場合には早急な対応が必要です。 以下の記事では、より具体的に治療法を解説しているので、あわせてご覧ください。 化膿性関節炎のリハビリ内容 化膿性関節炎のリハビリは、痛みや炎症の管理・可動域訓練・筋力増強訓練の3つを軸におこないます。 とくに、痛みや炎症を悪化させないのが大切になるため、順番に解説していきます。 痛みや炎症の管理 化膿性関節炎のリハビリにおいて、炎症の管理が非常に重要です。 炎症が関節の痛みや腫れを引き起こして可動域を制限するため、リハビリ初期では炎症を抑えることに重点を置きます。 具体的なリハビリ内容は、冷却療法を用いた方法が一般的です。 氷や冷却パックを患部に当てる方法で、一時的に痛みを和らげる効果が期待できます。 可動域訓練 化膿性関節炎で手術による関節内洗浄と骨の一部を切除した場合などは、可動域訓練が重要です。 骨の切除により関節は少なからず不安定になっており、関節固定術を実施した人は関節可動域が制限されやすいためです。 リラクゼーションも併用し、組織の柔軟性を高める必要があります。 近年では、切開範囲の小さい手術が多いものの、術創部付近はとくに硬くなりやすいため、入念に可動域訓練やリラクゼーションをおこないましょう。 筋力増強訓練 化膿性関節炎の術後では、筋力増強訓練も大切です。 手術後で固定期間が長くなるほど筋力は低下します。 とくに、下肢の筋肉は日常生活で欠かせないため、筋力を回復させることが重要です。 術後すぐは、可能な範囲で等尺性筋力増強訓練を実施します。炎症が落ち着いて関節が動くようになれば、自動運動・抵抗運動などを進めていきます。 リハビリの期間と予後 化膿性関節炎でおこなうリハビリの期間は、どのような治療をしたかによって異なります。 数週間から数カ月と、リハビリ期間の幅が広いのは、抗生物質の投与のみで治療が完了する患者様もいるからです。 一方で、関節や骨の破壊まで進行しており、切除した場合は、より時間がかかります。 参考として以下に、リハビリの期間や流れ、予後をまとめました。 リハビリ期間 リハビリの内容 術後翌日~1週間 関節周囲組織のリラクゼーションにより組織の柔軟性を高める 他動的な関節可動域訓練により拘縮の予防 等尺性筋力訓練により関節に負担をかけずに筋力強化 術後1~2週間 自動運動で関節の動きに伴う筋収縮の練習 荷重訓練により感覚入力を促して動作につなげる 術後2週以降 日常生活動作を練習し、元の生活になれる 応用動作練習で、バランスも取り入れた難易度が高いリハビリを行う ※炎症状態や年齢などの要因がかかわるため、リハビリの内容や期間は異なる場合があります。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 日常生活での注意点 化膿性関節炎のリハビリをする際、日常生活での注意点は、関節に負荷をかけないことが重要です。 ここからは、化膿性関節炎のリハビリを順調に進められるよう、注意点について詳しく解説していきます。 関節への負荷を減らす 化膿性関節炎になった人は、日常生活上での動作を工夫すると、関節への負荷を減らせます。 たとえば、立ったまま家事し続けるのではなく、合間に座って足を休めるのがおすすめです。 また、重量物を持ち上げるときに身体の近くで持ち上げると、各関節への負担を減らせます。動作にプラスして、サポーターを着用すると関節への負荷が軽減します。 サポーターは、関節周囲を圧迫して感覚入力を促し、関節を安定させる機能があるため効果的です。 ストレッチや筋トレをする ストレッチや筋トレをすると、負荷を分散しやすくなるため、関節を保護や再発予防ができます。 ストレッチをすることで、筋肉や股関節の柔軟性が増し、負荷が分散しやすくなります。また、筋力が少ないと関節が不安定になりやすいため、負荷も増加しやすくなるでしょう。 筋トレをおこなう際は、正しいフォームと適切な重量設定が重要です。無理をせず、医師や理学療法士の指導のもとでおこないましょう。 初期段階では、軽めの重りや自重を使ったエクササイズから始め、徐々に負荷を増やしていくのが理想的です。 活動性が高い趣味を楽しむための工夫 化膿性関節炎の術後でもハイキングやランニング、スポーツなど、活動性が高い趣味を再びやりたい人は多いでしょう。 ハイキングとランニングを例に、実施しておきたい筋トレを紹介します。 ハイキングでおすすめの筋トレ ハイキングでは、不整地を歩くためのバランス訓練、長距離を歩くための持久力訓練が大切です。 とくに、不整地で歩くのは足首によるコントロールが必要なため、柔らかいマット上で片脚立位を保持する練習が効果的です。 通常の地面よりバランスの難易度が高く、足首の協調性に向いています。 また、持久力訓練としてはハイキングに行くまでに実際に歩きたい距離を無理なく歩けるようにしておきましょう。 歩道で同じ距離を歩けないと、不整地に行ったときに疲れやすくて怪我のリスクも高まります。 ランニングでおすすめの筋トレ ランニングでは、関節に負荷がかからない筋トレがおすすめです。 そもそもランニングは、下肢への強い負荷が繰り返しかかります。 活動性の高いランニングを楽しむためには、立ち座りの動作をゆっくりおこなう訓練を取り入れましょう。ゆっくりおこなうと、股関節・膝関節・足関節周囲の筋肉を協調的にコントロール可能です。 リハビリでも改善しない化膿性関節炎はお気軽にご相談ください 化膿性関節炎は細菌が原因になるため、抗生物質の投与・関節内洗浄などの治療が重要です。 一方で、再び日常生活に戻り趣味を楽しむためには、適切なリハビリが必要になります。 リハビリでは、術後すぐは関節が固まらないようにリラクゼーション・関節可動域訓練を実施したのちに、徐々に筋力訓練を開始します。 また、日常生活レベルに戻れたとしても、退院後の定期的な筋トレも重要です。 ハイキングやランニングのような、活動性の高い趣味がなかったとしても、日常生活で不便に感じないよう、効果的なリハビリを実施しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。 化膿性関節炎のリハビリに関連したよくある質問 そもそも化膿性関節炎は何科で受診してもらうべきなの? 化膿性関節炎の受診は、多くの場合で整形外科での受診が推奨されています。 整形外科は骨や関節に関する疾患を専門とするため、化膿性関節炎の症状や進行状況を的確に評価し、必要な治療を提供できます。 また、化膿性関節炎が疑われる場合、迅速な診断と治療が重要であるため、初期症状を感じたら早急に医療機関で受診してもらうのをおすすめします。 化膿性関節炎は放置すると、関節の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期の医療介入が鍵となります。 どの診療科を選ぶかは、症状や状態に応じて柔軟に考えるのが重要ですが、整形外科を起点にするのが一般的です。 リハビリをする上での注意点は? 化膿性関節炎のリハビリをする上で注意しておきたいポイントは、再感染と炎症の悪化です。 術後すぐに術創部に菌が入ると、再感染や別の感染症を引き起こす可能性があるため、触れないように注意しましょう。 また、早期から関節を動かしすぎると炎症につながるケースもあり、過度なリハビリは避けましょう。 その他、関節破壊が進んでおり、関節の手術をおこなった場合、荷重開始時期を慎重に決める必要があります。 以下の記事では、治療を早めるべき理由について深掘りしているので、あわせてご覧ください。
2024.09.30 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
関節の痛みや腫れ、発熱などの症状があり、日常生活に支障をきたしていませんか? これらの症状は、細菌が関節に侵入して発症する「化膿性関節炎」が原因かもしれません。 放置すると、関節の機能障害や敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性がありますが、早期治療によって改善に期待ができます。 この記事では、化膿性関節炎の原因や症状、治療法と予防法まで詳しく解説します。 化膿性関節炎は早期発見・早期治療が重要となるため、ぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みの新たな治療法として、関節の幹細胞治療を行っています。膝の痛みや腫れの症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 化膿性関節炎とは「細菌が侵入して起こる感染症」 化膿性関節炎は、細菌が関節に侵入して炎症を起こす病気です。 主な原因として、黄色ブドウ球菌をはじめとした細菌感染が挙げられます。また、免疫力が低い高齢者や持病がある方も、感染リスクが高い傾向があります。 早期に治療を始めないと、関節の機能障害や後遺症を招く場合もあるため、感染経路や予防策を知ることが大切です。 本章では、それぞれの要因について詳しく解説していきますので参考にしてください。 主な原因菌は黄色ブドウ球菌 化膿性関節炎の原因として多いのが「黄色ブドウ球菌」と呼ばれる細菌の感染です。 普段は皮膚や鼻の中に存在する細菌ですが、免疫力が低下すると体内に侵入して感染を引き起こします。 近年では抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌による感染も増加傾向にあり、治療が困難になるケースも出てきました。 化膿性関節炎に感染すると、関節の痛み・腫れ・発熱などの症状が現れるため、早急な治療が必要となります。(文献1) 皮膚の傷や注射・手術部位から発症 化膿性関節炎は、皮膚の傷や医療処置による傷口から細菌が侵入して発症するケースもあります。 とくに手術後や注射部位は感染リスクが高まりやすい状態です。 また、体の別の部分で起きた感染症から血液を通じて関節に細菌が運ばれることもあります。 感染を防ぐためには、傷口を清潔に保つなど適切な消毒が欠かせません。些細な傷でも丁寧なケアを心がけましょう。 高齢者や持病がある方は感染リスクが高い 高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある方は、免疫力が低下していることが多く、化膿性関節炎のリスクが高まります。 たとえば、関節リウマチなどで免疫抑制剤を使用している方や、人工関節を入れている方は注意が必要です。 高齢者や持病がある方は、日頃からの体調管理や手洗い・うがいの徹底、定期的な健康チェックを意識しましょう。 関節痛はもちろん、体調の変化を感じたら早めに医療機関を受診してください。 化膿性関節炎の主な3つの症状 化膿性関節炎の主な症状には以下の3つが挙げられます。 関節の激しい痛みと腫れ 38度以上の発熱と全身のだるさ 関節を動かすと痛みが強くなる 放置すると悪化して関節に後遺症が出る場合があるため、症状を早期に把握し適切な治療を受けることが重要です。 化膿性関節炎の代表的な症状についてそれぞれ詳しく解説します。 関節の激しい痛みと腫れ 化膿性関節炎の最も特徴的な症状は、関節の激しい痛みと腫れです。 通常、膝や足首などの大きな関節に現れやすく、腫れた部分を触ると熱を持っているケースが大半です。 また、片方の関節に集中して現れるのも特徴的で、痛みが夜間に悪化する場合もあります。 化膿性関節炎の早期発見のためにも、これらの症状に気づいたら医師に相談してください。 38度以上の発熱と全身のだるさ 化膿性関節炎は関節症状と同時に、38度以上の高熱がでるのも特徴です。 感染により体内で炎症が起きているため、発熱と共に全身のだるさも感じるようになります。食欲不振や吐き気を伴うこともあるでしょう。 高熱が続く場合は重症化のサインかもしれませんので、すぐに医療機関を受診しましょう。 関節を動かすと痛みが強くなる 関節を動かすと痛みが増すのも、化膿性関節炎の特徴的な症状です。 歩行や階段の上り下りなど、日常生活の動作で痛みが悪化します。 また、痛みによって関節の可動域が制限され、思うように動かせなくなることもあります。 我慢して動かし続けると症状が悪化する恐れがあるため、痛みが強い場合は安静にして医師の診察を受けましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では関節痛の新たな治療法として、再生医療を提供しています。 辛い症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 化膿性関節炎における3つの診断方法 化膿性関節炎の診断には、以下のようにいくつかの検査が必要です。 検査方法 目的 関節液の検査 細菌感染の有無を確認する 血液検査 CRPと白血球を調べる レントゲン、MRI 関節の状態を確認する また、関節液の検査や血液検査、画像検査など、複数の検査を組み合わせることで正確な診断が可能になります。 ここからは、それぞれの診断方法について詳しく紹介いたします。 関節液の検査で細菌を確認 関節液の検査は、化膿性関節炎を診断する上で重要な検査方法です。 細い針を使って腫れている関節から液体を採取し、顕微鏡で細菌の有無を調べます。 検査では細菌の種類も特定できるため、適切な抗生物質の選択にも役立つのがメリットです。 ただし、痛みを伴うこともあるため、局所麻酔を使用するケースもあります。 しかし、正確な診断のために必要不可欠な検査なので、医師の指示があった場合は受けるようにしましょう。(文献2) 血液検査でCRPと白血球を調べる 血液検査では、炎症の程度を示す「CRP」や、体内で細菌やウイルスと戦う「白血球」の値を確認します。 化膿性関節炎では、これらの値が通常よりも大幅に上昇するのが特徴です。 正常時の値や数値の解釈については以下の表でまとめています。 正常値 単位 数値の解釈 白血球 3.3~8.6 10³/μL 白血球は細菌やウイルスから感染を防ぐ役割があり、感染症やストレスで増加します。 赤沈(赤血球沈降速度) 男性:2~10 女性:3~15 mm/1h 血液内で赤血球が沈む早さを調べます。 炎症によりフィブリノゲンやグロブリンが増加すると赤血球沈降速度が早くなります。 CRP(C反応性蛋白) 0.14以下 mg/dL 炎症や感染、組織損傷により血液中に増えるタンパク質量のことです。 また、血液培養検査では血液中に細菌が侵入しているかどうかの確認もできます。 そのため、血液検査は化膿性関節炎の診断だけでなく、重症度を判断するためにも役立つといえるでしょう。 レントゲンとMRIで関節の状態を確認 レントゲンやMRIなどの画像検査では、関節の状態を詳しく調べることは可能です。 レントゲンは骨の異常や関節の破壊状態を確認するため、MRIは軟部組織の炎症や膿の貯留状態を詳細に把握するために実施します。 診断だけでなく、治療経過の確認にも重要な役割を果たしており、定期的に撮影して状態の変化を観察していきます。 画像検査の詳細や必要性については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしていただけると幸いです。 化膿性関節炎の3つの治療法 化膿性関節炎の代表的な治療法は以下の3つです。 抗生物質の投与 手術による関節内の膿の洗浄 リハビリテーション 症状や重症度に応じて、これらを組み合わせた治療を行い良好な回復が期待できます。 本章では、それぞれの治療法を詳しく解説しますので事前に理解しておきましょう。 抗生物質の投与 化膿性関節炎の治療では、抗生物質により原因菌を殺菌し、炎症を抑えます。 通常は2〜3週間ほど点滴で投与されますが、症状が改善すれば内服薬に切り替えることもあります。 ただし、効果が見られない場合や症状が重い場合は追加の治療が必要です。 手術で関節内の膿を洗浄 関節内に膿が溜まっている場合は、手術による洗浄が必要です。 化膿性関節炎の手術では、局所麻酔や全身麻酔で行われ、関節内の膿を除去して炎症を抑える効果に期待できます。 手術後には抗生物質の投与を継続し、安静にして関節の回復を促します。 リハビリテーション 治療の最終段階として、関節の可動域を広げ、筋力を回復させるためにリハビリテーションを行います。 理学療法士の指導のもと、初期は軽い運動からはじめ、徐々に負荷を増やすメニューに切り替えていきます。 焦らず段階的にリハビリを続けていけば、より確実な回復が期待できるでしょう。 また、化膿性関節炎のリハビリテーションについては、以下の記事でも紹介しています。詳しく知りたい方は併せてご覧ください。 化膿性関節炎が治るまでの期間や早期発見の重要性 症状の重さや治療の開始時期によって差はありますが、化膿性関節炎が治るまでの期間は基本的に6週間程度です。 早期発見と適切な治療で回復につながりますが、放置すると骨の破壊や敗血症などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。 本章では、化膿性関節炎の治療期間や早期発見の重要性について解説します。 基本的な治療期間は6週間程度 化膿性関節炎の標準的な治療期間は約6週間です。 抗生物質による治療から始まり、症状の改善に合わせてリハビリテーションを進めていきます。 ただし、症状の程度や個人の体力によって治療期間は変動するのが一般的です。 完全な回復には個人差がありますが、医師の指示を守り焦らずに治療を続けていきましょう。(文献3) 骨が破壊され後遺症が出るケースがある 化膿性関節炎を放置すると、細菌の感染により関節の軟骨や骨が徐々に破壊されていきます。 いちど破壊された骨や軟骨は完全な回復が難しく、関節の変形や動きの制限など後遺症として残る可能性があります。 痛みや腫れを感じたら、我慢せずに速やかに医療機関を受診しましょう。 敗血症を引き起こすリスクもあり 化膿性関節炎の危険な合併症の1つが敗血症です。 関節内の細菌が血液中に入り込み、全身に広がることで生命の危険も伴う深刻な状態に陥る可能性があります。 敗血症は、高齢者や免疫力が低下している方はとくにリスクが高く、発熱や関節の痛みが続く場合は要注意です。 早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、疑わしい症状があれば迷わず医師に相談してください。 また、当院「リペアセルクリニック」では関節痛の新たな治療法として、再生医療を提供しています。 関節の痛みや炎症といった症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 化膿性関節炎を防ぐ4つの予防対策 化膿性関節炎を予防するためには、日頃からの適切なケアが重要です。 主に以下の4つを予防対策として意識してみましょう。 傷口は清潔に保つ 免疫力を高める生活を心がける 関節に負担をかけ過ぎない 日常的にストレッチを実施する 効果的な予防対策についてそれぞれ解説します。 傷口は清潔に保つ 傷口から細菌が侵入すると化膿性関節炎を発症するリスクが高まります。 そのため、傷を負った場合はすぐに流水で洗い流し、消毒液で適切な処置を行ってください。 とくに手術後や注射の跡は感染リスクが高いため、医師の指示に従って丁寧なケアが必要です。 また、包帯を使用する場合は定期的に取り替えて清潔に保ちましょう。 免疫力を高める生活を心がける 免疫力が低下すると、細菌感染のリスクが高まります。 そのため、バランスの良い食事と十分な睡眠を心がけ、適度な運動で体力の維持に努めてください。 ストレス解消も大切ですので、趣味や休養を適度に取り入れて生活リズムを整えていきましょう。 関節に負担をかけ過ぎない 過度な運動や無理な姿勢は、関節に余計な負担をかけてしまいます。 そのため、高齢者や関節に持病がある方は、無理のない範囲で活動する意識が大切です。 長時間同じ姿勢を続けることも避け、適度に休憩を取りながら活動してください。 また、過度な体重は関節への負担となりますので、適正体重の維持を心がけましょう。 日常的にストレッチを実施する 適度なストレッチは関節の柔軟性を保ち、血行を促進する効果があります。 朝晩の簡単なストレッチで、関節周辺の筋肉をほぐすことをお勧めします。 ただし、痛みを感じるような無理なストレッチは逆効果ですので、自分の体力に合わせて、ゆっくりと丁寧に行ってください。 ストレッチの継続によって、徐々に関節の可動域が広がり体調も整っていくでしょう。 まとめ|化膿性関節炎は早期発見が重要なので早めの受診を検討しよう 化膿性関節炎は、細菌感染によって引き起こされる病気で、関節の痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。 治療が遅れると、関節の機能に影響を及ぼす可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。 日頃から傷口を清潔に保ち、免疫力を高める生活を心がけ、関節に負担をかけすぎないように注意しましょう。 本記事を参考に、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。 また、リペアセルクリニックでは、膝の痛みに対する新たな選択肢として関節の幹細胞治療を提供しています。 膝関節の違和感にお悩みの方は「メール相談」や「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 化膿性関節炎に関するQ&A 化膿性関節炎は何科を受診すれば良いですか? 化膿性関節炎の治療は、整形外科の受診が適切です。 ただし、夜間や休日に急な症状が出た場合は、まず救急外来を受診しましょう。 また、原因となる感染症によっては内科医とも連携して治療を進めていきます。 かかりつけ医がいる場合は、担当医に相談して適切な医療機関を紹介してもらうのも良い方法です。 化膿性関節炎の入院期間はどのくらいですか? 化膿性関節炎の入院期間は通常2〜4週間程度ですが、症状の程度や治療経過によって変動します。 最初の1週間程度は抗生物質の点滴治療が中心で、症状が落ち着いてきたら徐々にリハビリを開始していきます。 退院後も通院での治療やリハビリが必要となりますが、仕事や日常生活への復帰時期は担当医と相談しながら決めていきましょう。 また、化膿性関節炎でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 参考文献一覧 文献1 外務省 海外安全ホームページ_薬剤耐性(AMR)について 文献2 日本医事新報社_化膿性関節炎[私の治療] 文献3 J-Stage_化膿性関節炎の治療経験(第1報― 膝関節)
2024.09.27







