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- 膝の外側の痛み
- 半月板損傷
- ひざ関節
半月板損傷の治療と効果的なリハビリテーション 半月板という組織は、繊維軟骨でできていてCの型、まさに半月状の形をした組織です。部位は、膝関節の大腿骨と脛骨の間にあり、膝の内側と外側の場所に存在しています。 この半月板は、膝の滑らかな動きを可能にするほか、膝を安定させて荷重を分散させたり、物理的な外力による衝撃を吸収する機能を果たしています。 このような役割を持つ半月板が事故や、スポーツなどの激しい動きなどによって損傷し、万一慢性化すると将来的に変形性膝関節症を引き起こす懸念があります。 そのため本疾患に対しては、「リハビリテーション」を視野に入れながら適切に治療を行うことが重要になります。今回は、半月板損傷を慢性化させず、早く治すためのリハビリテーションについて詳しく解説していきます。 半月板損傷とは 膝の障害というと年配者のイメージがありますが若年者であっても過度な運動などによってスポーツ傷害を引き起こすリスクが危惧されており、その中でも特に頻繁に認められる疾患が半月板損傷と言っても過言ではありません。 半月板損傷は、スポーツの際に起きる怪我から発症するのみならず、加齢に伴う場合が多いのも事実です。傷つきやすくなっている半月板組織にわずかな外力が負担となって、加重されることにより、損傷し断裂を起こす症例も存在します。 半月板が損傷すると膝部に疼痛が生じて運動時や、膝を屈曲・伸展する場合に膝に引っかかり感を覚えることがあり、ひどいケースでは激痛のために歩行できなくなる、もしくは関節内部で強い炎症を引き起こして水が溜まり、膝部分が明らかに腫脹することもあります。 半月板損傷を発症した際の主な治療手段としては、「保存治療」と「手術療法」が挙げられ、特に前者では安静を保持して抗炎症薬などの薬物を内服する、あるいはリハビリテーションを実践することになります。 半月板損傷の手術後のリハビリテーションについて 半月板損傷も、治療や症状によってリハビリテーションの方法が異なります。手術による治療を行った後のリハビリテーションについても事前に確認しておきましょう。 半月板縫合術における術後のリハビリテーション 半月板縫合術による施術の場合、損傷の程度や部位によってリハビリテーションにおけるスケジュールが異なりますので注意してください。 縫合箇所が再び断裂してしまうことを防ぐため、2週間程度は松葉杖での生活になるでしょう。また、膝の曲げ伸ばしにも制限があるため、激しい運動はできません。 術後6週程度から、軽めのジョギング等の運動が可能になります。スポーツなどへの復帰は10週程度で段階を経て行っていくのが一般的です。 ただし、重症のケースや経過によってはスポーツへの復帰が半年前後かかる場合もあります。術後の経過や回復に応じて臨機応変に対応していくことがポイントになります。 半月板切除における術後のリハビリテーション 半月板切除による施術の場合、ほとんどは術後すぐに体重をかけることが可能です。2週間程度で軽めのジョギング、1ヶ月前後でスポーツへの復帰が可能になります。 手術前のリハビリテーション 術後、スムーズに回復・リハビリテーションを行っていくためにも手術を行う前からリハビリに取り組んでおくことが望ましいでしょう。 あらかじめ松葉杖の使い方や、術後に行う予定のリハビリテーションを理解しておくことで、スムーズな術後のリハビリテーションへと移行することができるでしょう。 また、術後すぐに動けない場合は、足首周りや股関節周りなど、他の箇所の関節機能を低下させないためにも手術前のリハビリは重要です。 https://youtu.be/0pKuIuYNqcA?si=1b3hWw7PRlZ0KXpS 半月板損傷の早期治療|早く治すためのリハビリテーションの3ステップ ここからはより具体的に半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションについてお話を進めて参ります。 運動器リハビリテーションの分野では、通常であれば患者さんの運動能力や生活機能を回復させて、そのレベルを維持するために、原因疾患の治療と並行して個々における生活の実態を把握しつつ、綿密な治療計画を立案して実践します。。 個々のケースによって半月板の損傷度や状態が異なるために、実際にリハビリテーションを実践するタイミングは様々です。ただ基本的なメニューは、ほとんど変わりませんので担当の理学療法士ともよく相談しながら進めていきましょう。 1)リハビリ最初の1ステップ 最初の段階では、関節可動域の訓練を行うことが多く、膝関節の曲げ伸ばしができる角度を改善するためにリハビリテーションを行います。 半月板損傷を発症すると、通常であれば膝の曲げ伸ばし動作が困難になって日常生活に多大な支障が生じますので、徐々に曲げ伸ばしできる範囲を回復させるために可動域を増やすことを目標にした理学的な訓練を実施します。 特に股関節や足関節が固まるなど拘縮すると、膝関節に代償されて膝に負荷が集中してしまい、半月板損傷を抱えた膝の部位に更に重い負担がかかってしまいます。 そのため、半月板損傷を早く治すためには「膝関節のみならず、股関節や足関節もリハビリテーション」を行うことをお勧めします。 2)リハビリ次の2ステップ 次の段階として、関節の可動域を増やしたり、維持する訓練や、股関節あるいは足関節のリハビリに慣れてきたら、並行して膝周辺の筋力そのものを増強して膝関節を支えやすいよう補助できるようなトレーニングを取り入れていきます。 半月板が損傷している状況では、膝周りにあるほかの構造物で半月板を代理して体を支えなければなりません。半月板損傷が再発しないように防止するための観点からも膝周辺の筋力を強化することで膝を安定化させて身体を支えられるようにすることは非常に大切です。 3)リハビリ最終の3ステップ そして、後半戦に入ると本来の膝領域におけるバランス感覚を取り戻すためのリハビリテーションとして「バランストレーニング」を行っていくことになります。 半月板は、膝関節を安定させる機能を有しており、半月板が損傷することで膝が不安定となり、身体を支えることができず怪我を引き起こす危険性もありますのでバランスを取り戻すための理学療法は重要なトレーニングのひとつでと考えられます。 リハビリテーション治療の最終段階になってくると、いよいよ実践的なスポーツ競技や運動動作に復帰することを見据えて行う「アスレチック・リハビリテーション」を実践する運びになります。 このリハビリテーション・プログラムでは、筋力がある程度、元のレベルに回復して、膝関節の可動域を一定以上に獲得でき、膝関節の痛みもほとんど自覚しない状態になった場合に本格的なスポーツ能力を得るために準備する理学療法となります。 ジョギングに取り組み、ひざ痛が悪化しないかを確認して特に問題を認めないようであれば、梯子を用いたラダートレーニング、両脚ジャンプなどの動作を取り入れて、最終段階では復帰したい競技に応じて特有の動きがスムーズに出来るようにリハビリを実践することになります。 まとめ・半月板損傷を早く治す!効果的なリハビリテーションの3ステップ 今回は、半月板損傷とはどのような病気なのか、半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションを3つのステップに分けて詳しく解説してきました。 半月板という組織は、膝関節の内部にある軟骨様の構造物であって、その軟骨部に負荷がかかる外からの物理的な力を和らげるための重要な役割を有しており、もし半月板を損傷した場合には、その受傷度合いに応じて個々に治療期間やリハビリテーションの内容が異なるため、具体的な内容は個別に決めなければなりません。 半月板のような軟骨組織は、完全に治癒するまでかなり時間を要します。身体機能をカバー出来るよう、患部はもちろん身体の状況を判断しながら計画的に取り組む治療がリハビリテーションです。 重要なことは、決して無理をせずにトレーナーや理学療法士と相談して適切なプログラムを行うことです。 ▼ 半月板損傷を再生医療で治療する 再生医療なら半月板損傷は、手術せずに改善できます ▼以下もご参考下さい 半月板損傷|ヒアルロン酸注射による治療の限界
2022.07.26 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
頚椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の「しびれ」という後遺症について 腰の椎間板ヘルニアは腰痛の原因として有名ですが、首の痛みには「頚椎椎間板ヘルニア」といわれるものがあります。 背骨(脊椎)のうち、首の部分を頚椎と言い、7つの骨からなります。この骨と骨とをつなぐクッションの役割をしている軟骨、座布団のような役割をしているものが「椎間板」といいます。 脊椎の中は脊髄が中心を走り、そこから手足への重要な神経の枝がたくさん出ています。 この椎間板が動くことで首を曲げたり、回すなどの動作ができる訳です。しかし、椎間板に何らかの衝撃が加わるなどすると中にある髄核と言われる組織が本来あるべき位置から外に飛び出してうことを椎間板ヘルニアと呼びます。 一般的に椎間板ヘルニアは、体の後ろ、背中側に向けて飛びだします。 困ったことに飛び出した先にあるのが脊髄という神経の束になり、本来の位置から飛び出してた髄核が脊髄を抑え込んで(圧迫して)しまうことになり、痛みや、しびれなどの症状となるわけです。 首に起こる痛みの原因は大きく二つ ・「筋肉や関節からくる肩こりや、寝違えの痛み」 ・「神経の痛みとして多いのが頚椎椎間板ヘルニア」 頚椎椎間板ヘルニアの原因 頚椎椎間板ヘルニアは、30~50歳代によく見られますので加齢だけが原因とはいえません。 「むち打ち症」などの交通事故がきっかけだったり、高所での作業中に落ちたり、鉄棒から落ちるなど、交通外傷、転落による外傷が原因となって脊髄を損傷し、ヘルニアになる事例があります。 また若い世代ではスポーツで首に負荷がかかる姿勢をとったり、普段あまり使っていない筋肉を鍛えようと運動を急にした時に、突然手足がしびれて力が入りにくくなった、という方もおられます。 頚椎椎間板ヘルニアの診断方法 患者さんの痛み・痺れがどこ領域に出ているか、それらがいつからあるかなどを診察します。 次にMRI検査を行い、ヘルニアがどこで起こっているか、神経の圧迫されている場所を確認します。 MRIは磁場で撮影しますので、CTと違って被曝の心配はありませんが、1時間程度かかる検査ですので、その間は安静を保つ必要があります。また、体内の金属が磁場に反応して発熱しますので、刺青があると火傷する可能性があるので、できません。 また、ステントや人工骨頭などの金属が入っている方は事前の確認が必要です。 頚椎椎間板ヘルニアの治療方法とは 頚椎椎間板ヘルニアにより神経の機能が障害されますので、頚椎椎間板ヘルニアの治療は、脊髄、神経を圧迫している椎間板部分を除去することが基本です。頚椎がぐらぐらして不安定な場合は、神経を圧迫しないよう椎骨を固定することも検討します。 ただ、障害されていた期間が長いほど、また年齢が上がるほど、神経機能が回復する可能性が下がります。そのため、治療の目的は神経を障害するものを除去し、本来の機能を回復する手助けをすること、が中心となります。 神経の痛みは手術後に軽減はしますが、「しびれ」に関しては改善しにくいことが多々あります。手術症状が残る人の方が多いようです。 頸椎椎間板ヘルニアに対する「再生医療」というアプローチ これまでの頸椎椎間板ヘルニアに対する治療方法は、内服や注射及びリハビリといった保存療法と手術療法が中心でした。保存療法や手術療法によって損傷した神経が自然再生することも期待できますが、時間を要することや後遺症を残すことがあります。 そこで、ご紹介するのは「再生医療(幹細胞治療)」という厚生労働省の許認可を得た新しい治療法です。まだまだ知名度は低いかもしれませんが、損傷した神経の再生に直接働きかけることを可能にする唯一の根本治療法となるものです。当院でも、頸椎椎間板ヘルニアの症状でお困りの方へ、新たな治療の選択肢として「再生医療(幹細胞治療)」を実施しています。 当院以外では、点滴で投与することが多いのですが、当院は点滴に加えてヘルニアにより傷んだ神経に対して、直接(ダイレクト)投与を行う『脊髄腔内ダイレクト注射療法』という特殊な方法を用いて治療を実施しています。同じ幹細胞治療であっても、ダイレクトに投与することで、より高い効果が期待できます。 治療方法でのお悩みなど、ご相談は、当院へお気軽にお問い合わせください。 頚椎椎間板ヘルニアの手術後の後遺症「しびれ」について 体の中の組織のうち、神経組織は回復に最も時間がかかります。 たとえば、皮膚は縫合すれば1~2週間程度でくっつきますし、骨折はギブスをあてがったり、金属プレートで骨どうしを固定することにより、およそ3~4か月程度でくっつきます。 しかし、神経組織の回復は、それよりもさらに時間がかかります。月単位でゆっくりと回復を見せ、手術後1年くらいまでは、何らかの改善がみられます。 さらに、手術前に神経がどのくらいのダメージを受けていたか、という問題もあります。 「交通事故の後遺症で・・・」という話を聞くこともあります。椎間板ヘルニアにも除去して回復できるダメージと、回復できないダメージがあります。 これはヘルニアを除去する前では経験に基づいた話はできますが、正確な予測がしにくい部分であり、手術をしてみないとわかりません。 頚椎椎間板ヘルニアの手術後の「しびれ」は、手術自体が神経そのものを治療するものではなく、圧迫状態にあった神経を圧迫から解放することが目的となるため、長期期間、圧迫状態にあった神経が変化、変性している可能性があり、手術で圧迫を取り除いたとしても神経の障害が治らず残ってしまうために「しびれ」が残ることがあります。 手術は慎重に 首は体の中でも非常に大切な部位です。治療にあたっては専門医を受診しましょう。 そして、大切なのは、自分の状態がどのような重症度なのか、そして検討されている手術により、どれくらい回復が見込まれ、手術そのものの危険性はどれくらいあるのか、ということを主治医からしっかり聞いて、納得してから手術を受けようにしてください。 わからない点や疑問点については主治医に尋ねて、しっかり理解するようにしましょう。 どの診療科に行けばいいのか 首や肩まわりなどの筋肉・関節の痛みというと、整形外科を想像される方が多いかと思います。 ここ20~30年くらいで、日本でも繊細な手術を得意とする「脳神経外科医」が頚椎椎間板ヘルニア手術を行うようになってきました。 「脊髄外科学会」という脊椎や脊髄の手術を扱う医師の学会では、脳神経外科専門医でかつ脊髄外科を専門とする医師が多くおられます。 また最近では整形外科医も顕微鏡を使って血管吻合など繊細な手術を行うようになりました。そのため、脊椎や脊髄の手術は、脳神経外科と整形外科のどちらでも高度なレベルで行われるようになってきました。 脊椎や脊髄の手術に力を入れている専門医がいる病院であれば、脳神経外科と整形外科、どちらでも安心して受診してください。 その他、新しい治療方法として再生医療とういう医療分野での治療方法もあります。これはここで書いたような従来の診療科目とはまったく異なる新たな選択肢になります。 そのため、整形外科や脳神経外科(脊髄外来)では対応できません。通常の医師では再生医療に対する知見がまだまだ乏しいのが本当のところだからです。この分野は、確かな経験と実績を持った再生医療専門医がいるクリニックや医院を探してお尋ねください。 まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の「しびれ」という後遺症について 頚椎椎間板ヘルニアは、首の痛みやしびれの原因として知られています。軟骨の損傷により椎間板が圧迫され、神経症状が生じます。原因は交通事故や急激な運動、加齢など様々です。 診断には、症状の確認とMRI検査が主に使われます。治療には保存療法や手術があり、手術後には「しびれ」の症状が残ることがあります。 最近では再生医療も注目されており、幹細胞治療が新たな治療法として導入されています。 手術を検討する際には、専門医の意見を聞き、慎重に選択することをお勧めします。 以上、頚椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の後遺症「しびれ」についてについて記しました。 以上、参考になれば幸いです。 ▼こちらの動画もご参考になれば幸いです。お困りでしたら当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5WTj47BqXbQ&t=110s
2022.07.23 -
- 肘頭滑液包炎
- 肘関節
肘頭の滑液包に炎症が起こった状態である肘頭滑液包炎をご存じでしょうか? 肘を頻繁に使って酷使したり、感染症が原因で起こる病気です。 肘の痛みや腫れが生じ、日常生活に支障をきたすこともあります。 「肘の皮膚がブヨブヨしている」 「これは何の病気なのか」 このように思う方は多いのではないでしょうか。 結論から言うと、これは肘頭滑液包炎(ちゅうとうかつえきほうえん)に見られる症状です。 皮膚がブヨブヨするなら、発症しているかもしれません。 今回は肘頭滑液包炎の具体的な症状や原因、治療法などを、医師の目線で解説します。 肘頭滑液包炎とは?肘が腫れてブヨブヨ痛い症状について 肘頭滑液包炎は、肘の後方にある「滑液包」で起こる炎症のことを示します。 滑液包は、関節と皮膚の間に存在し、本来なら、摩擦を軽減する役割を果たすものです。 肘頭滑液包炎の発症時の特徴として、肘の皮膚がブヨブヨになる点が挙げられます。 もちろん炎症が起こっているので、多くの場合、痛みを感じるでしょう。 皮膚がブヨブヨに感じたり、動かすと痛む症状は、肘頭滑液包炎である可能性が高いです。 もし症状を確認したら、皮膚科や整形外科、リハビリテーション科などで診てもらう必要があります。 肘の解剖 肘頭滑液包炎を理解するために必要な、肘の解剖を簡単にご説明します。 まず肘頭は、肘の先端の尖った部分です。 わたしたちが机に肘をつくときに、机に接しているところが肘頭になります。 この肘の先端である肘頭と皮膚の間には、滑液包と呼ばれる液体に満たされた薄い袋があります。 滑液包は肩、腰、膝、踵などの関節の近くにもあり、骨、筋肉、腱のクッションになります。 肘の滑液包は、皮膚が肘頭の骨の上をスムーズにスライドする動きを助けます。 肘頭滑液包炎は、肘頭の滑液包に炎症が起こった状態です。 続けて、肘頭滑液包炎の症状や原因、そして治療法を説明します。 肘頭滑液包炎の主な症状 滑液包が炎症を起こすと、まず痛みを伴うようになります。 炎症を起こした滑液包からの痛みは、突然起こることもありますし、時間をかけて徐々に悪化していくこともあります。 また最初は肘を動かしたときに痛みを感じますが、進行するとじっとしていても痛みを感じるようになります。 また肘の関節の周りに腫れや発赤が生じます。感染症が原因となっている場合は、局所に熱感を伴うこと、また発熱することもあります。 痛みや腫れなどの症状に加えて、肘頭滑液包炎が悪化すると、肘を使うことが困難になります。 慣れた日常生活の動作も、痛みのために辛くなるかもしれません。 また上述のように、肘の皮膚が腫れてブヨブヨになる現象が起こります。 これは、滑液包内に、滑液という液体が異常に分泌されることが原因です。 また液体がウイルス感染して、膿がたまるというケースも少なくありません。 肘頭滑液包炎の3つの原因 肘頭滑液包炎を発症する原因は、大きく分けて3つ挙げられます。 ・肘の過度な使用や炎症 ・細菌感染 ・外傷による刺激 特にスポーツや力仕事による疲れやけがが原因で、発症する方が多いです。それぞれ詳しく解説します。 肘の過度な使用や炎症 まず、以下のような肘の過度な使用によって、肘頭滑液包炎になることがあります。 ・日常生活での反復運動による摩擦(ガーデニング、DIYなど) ・オーバートレーニングや運動動作の反復(ボールを投げるなど) ・姿勢の悪化 たとえばテニスやゴルフなど、同じような肘の動きを何度も繰り返すスポーツは、発症の原因になりがちです。 もちろん日常生活での反復運動も、肘頭滑液包炎の原因になりえます。 また「肘つき」のような姿勢の悪さによって、発症するケースもあるでしょう。 細菌感染 細菌汚染が原因で、発症する可能性もあります。 肘に擦り傷や切り傷があると、細菌が侵入することがあります。 そして滑液包がそれに感染し、肘頭滑液包炎になるかもしれません。 厳密には「感染性滑液包炎」と呼びます。 外傷による刺激 外傷による刺激で、肘頭滑液包炎を発症することもあります。 たとえば物が当たる、転倒して肘をついてしまう、打撃を加えられるなどすると、滑液包に負担がかかります。 あまりにも刺激が強い、何度も繰り返されるなどすると、肘頭滑液包炎になる可能性が出てくるでしょう。 特にスポーツに参加していると、肘にダメージを受けることが多いです。 アスリートやその保護者は、外傷による刺激で発症するパターンを知り、対策しておいたほうが良いでしょう。 肘頭滑液包炎の治療法 肘頭滑液包炎の治療は、感染症が原因か、そうでないかでわかれます。 感染症による肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因である場合、抗菌薬による治療は必須です。 通常は1週間程度、黄色ブドウ球菌に有効な抗菌薬を飲む必要があります。 症状が良くなっても、体内に残っている病原菌を確実に除去するために、処方された期間は抗菌薬を服用する必要があります。 感染した滑液をできるだけ除去するために、針を刺して滑液包も吸引することがあります。 吸引した滑液を詳しく調べることで、病原菌がわかることもありますので、診断を目的に吸引する場合もあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因ではない場合は、自宅でもある程度治療ができます。 まず、運動や仕事で滑液包炎の原因となった腕の動きを避けることは、症状の緩和に役立ちます。 痛みを我慢して仕事をしたり、スポーツをしたりしないようにしましょう。 またNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)は、滑液包炎によって引き起こされる痛みや炎症を軽減するために役立ちます。 装具を利用して肘が動かないように固定すると、症状は改善しやすくなります。三角巾などで手を吊るだけでも構いません。 これらの治療が3~6週間経っても効果がない場合は、滑液包の周りの過剰な液体を吸引すると同時に、炎症を抑えるためにステロイド薬の注射をすることがあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎は、3~6週間程度安静にすることで治ることが一般的です。 肘頭滑液包炎は完治が期待できますので、肘に負担をかけずに仕事や学業ができるのであれば、治療中に仕事や学校を休む必要はありません。 なお肘頭滑液包炎は通常問診と診察だけで診断できますが、治療してもなかなかよくならない、あるいは再発を繰り返す場合は、X線やMRIなどを用いての画像検査を行うこともあります。 肘頭滑液包炎の手術 肘頭滑液包炎は、重症化しても手術を必要とすることはまれです。 ただし、症状が非外科的治療に反応しない場合、または抗菌薬を服用しても良くならないほど重度の感染症がある場合、手術が必要な場合があります。 手術では、炎症を起こしている肘の滑液包を切除します。 術後は、肘を固定するための装具が必要になります。回復には1カ月ほどかかります。 肘頭滑液包炎の予防・セルフケアについて 肘頭滑液包炎を予防・セルフケアするには以下の取り組みが有効です。 ・肘付きなど、肘に負担がかかる姿勢を避ける ・スポーツや重労働では、肘サポーターを装着する ・定期的に腕を伸ばすなどしてストレッチをする細菌感染を避けるため、外傷を負ったら殺菌して清潔にする 地味な取り組みですが、予防やセルフケアでは有効です。 まとめ|肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 以上、肘頭滑液包炎について、症状や原因、治療法について説明しました。 肘頭滑液包炎を予防する最善の方法は、できるだけ肘を酷使しないことです。 肘を使う激しい運動や活動のあとは、体を休め、回復するための時間を設けましょう。 また仕事や趣味で肘を使うことが多い場合は、肘当てをつけるなどして、保護具を使うと良いでしょう。 もし、それでも中々よくならない肘の痛みがある場合は、早めに整形外科をはじめ、医療機関にご相談されることをおすすめいたします。 No.078 監修:医師 坂本貞範
2022.07.18 -
- ゴルフ肘
- テニス肘
- 肘頭滑液包炎
- 肘関節、その他疾患
- 肘関節
肘を曲げると急に痛いけどなんの病気? 肘を曲げると痛いのはどうして? 肘が痛いときは病院に行くべき? 急に肘を曲げると痛みを感じて、どんな病気なのか知りたいと思っていませんか? 取り急ぎ病院に行くべきかどうか判断ができれば助かりますよね。 結論、肘が痛いときに考えられる病気は6つあり、痛みの強さや他の症状の有無によっては早期受診が必要です。 本記事では、肘が痛いときに疑われる病気と受診のタイミングについて解説します。 最後まで読み終えると、急な肘の痛みにも落ち着いて対応できるはずです。 肘が痛いときに疑われる6つの病気【原因・対策を解説】 肘が痛いとき、疑われる病気として以下の6つがあります。 上腕骨内側上顆炎 上腕骨外側上顆炎 肘頭滑液包炎 変形性肘関節症 肘の脱臼または骨折 肘の靭帯損傷 病気によって対策が異なるので、肘が痛くて心配な方は専門医に相談しましょう。 スポーツによるケガで肘が痛いなら、再生医療がお役に立てるかもしれません。 当院では、スポーツ外傷に対して再生医療を提供していますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。 お電話でのお問い合わせ 0120-706-313(受付時間:09:00〜18:00) メール相談 メール相談はこちらから(無料) 来院予約 来院予約はこちらから 上腕骨内側上顆炎(別名:ゴルフ肘) 上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)は、肘の内側に痛みが走る病気です。一般にリトルリーガー肘、ゴルフ肘とも呼ばれています。 物をもちながら肘を曲げる動作をくり返すことが原因で起こります。 原因となる動作の具体例は、以下の通りです。 野球で投球する ゴルフでクラブを振りおろす 仕事でハンマーを振る 痛みを改善する方法として、以下があります。 安静にする 患部を冷やす 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用する 始めは動かしたときだけですが、悪化すると安静にしていても痛みを感じるようになります。 安静時にも痛む場合は重症の可能性がありますので、一度専門医にご相談ください。 ▼ゴルフ肘の治し方を知りたい人は以下の記事もご覧ください。 上腕骨外側上顆炎(別名:テニス肘) 上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)は、肘の外側から手首にかけて痛みが走る病気です。テニス愛好家に起きやすいので、別名テニス肘とも呼ばれています。 主に、手首や指を伸ばす動作を繰り返すことで起こります。 テニス肘を発症する具体的な動作は、以下の通りです。 スポーツでラケットを振る 料理で重い鍋を振る 農業で草引きをする 痛みへの対策には以下があります。 安静にする 患部を冷やす 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を内服する 患部をバンドで圧迫する 理学療法を利用する 日常生活を送るのに支障があるほど痛みが強い場合は、専門医に相談するのがよいでしょう。 ▼野球肘については以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。 肘頭滑液包炎 肘頭滑液包炎(ちゅうとうかつえきほうえん)は、肘の先端にある尖った部分(肘頭)にあるクッションの役割をもつ滑液包に炎症が生じる病気です。炎症が起きているため腫れることが多く、感染症が原因になっている場合は熱感が起こることもあります。 原因には以下が考えられます。 肘への直接の打撃 長時間肘をつくことでかかる圧力 黄色ブドウ球菌による感染 リウマチなどの内科疾患 感染が起きているか否かで対策が異なります。 感染症が原因であれば、抗菌薬の内服が必要です。滑液包の内部の液体が多いときは、注射により液体を抜きます。 一方、感染症が原因でない場合の対策は以下です。 患部を冷やす 患部を圧迫する 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を内服する 肘頭滑液包は、悪化すると肘を動かすのも難しくなってしまう病気です。 痛み以外にも腫れや赤みがある場合は早めに専門医を受診しましょう。 ▼肘頭滑液包炎について詳しく知りたい人は以下の記事もご覧ください。 変形性肘関節症 変形性肘関節症は、肘の関節でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減る病気です。軟骨が摩耗する結果、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の過剰な突起物が肘の内側にできます。 骨棘が関節の動きを止めることで肘の動きが制限されるのが特徴です。また、骨棘が折れてしまうと関節内でかけらとなって引っかかるので、ますます関節の動きを止めてしまいます(ロッキング)。 治療には以下が行われます。 固定具を用いて安静にする 消炎鎮痛薬を使用する 理学療法を開始する (重症の場合)人工関節置換術などの手術を行う 肘を思ったように動かせずに困っている人は、一度専門医で検査を受けましょう。 ▼変形性肘関節症で当院の再生医療を受けた患者様のご感想は以下をご覧ください。 肘の脱臼または骨折 肘が痛い場合、脱臼や骨折を起こしている可能性があります。 痛みのほかに肘の腫れや変色など、肘周囲の見た目にも症状が現れるのが一般的です。多くの場合は激しい痛みで、肘関節を動かせなくなります。 脱臼か骨折かで対策は異なりますが、いずれもギプスなどで固定し、鎮痛薬を用います。 ギプスを外した後は、理学療法で可動域の回復を目指しましょう。 肘の靭帯損傷 肘の靭帯損傷は、肘関節にある靭帯のいずれかに発生します。部分的な断裂と完全断裂があり、肘関節の脱臼や骨折を伴うこともあります。 代表的な症状は、以下の4つです。 肘の痛み 肘関節の不安定さ 腫れ 可動域の制限 対策としては、以下があります。 肘を固定して安静にする 患部を冷やす 鎮痛薬を用いる 理学療法に取り組む 靭帯がもとに戻るには数週間固定する必要があり、手術が必要なケースもあります。 肘を曲げると急に痛いと感じたときに病院へ受診する3つの目安 急に肘を曲げると痛みを感じるようになったら、病院に受診するか迷いますよね。 ここでは、病院へ受診するタイミングを、以下の3つの目安別に紹介します。 すぐに受診が必要なケース 翌日には受診しておきたいケース 急いで受診する必要がないケース 目安を把握し、いざ受診が必要なときに慌てず受診できるようにしておきましょう。 すぐに受診が必要なケース 肘の痛みですぐに受診が必要なのは、以下のケースです。 日常の動作に支障がでるほど強い痛みがある 痛み以外の症状がある 日常生活に支障をきたすほどの痛みが強い場合、痛み以外に発熱症状がある場合は使いすぎが原因の痛みではない可能性があります。 重篤な病気が隠れていないか確認するべく、専門医を受診しましょう。 ▼肘の腱や靭帯の痛みが対象の再生医療について詳しく知りたい人は以下の記事もご覧ください。 お電話でのお問い合わせ 0120-706-313(受付時間:09:00〜18:00) メール相談 メール相談はこちらから(無料) 来院予約 来院予約はこちらから 翌日には受診しておきたいケース 翌日の診療時間には受診しておきたいケースとして、以下があります。 安静にしていても痛む ケガのきっかけに心当たりがある 2,3日安静にしていても痛みが改善しない 肘を動かしていない際にも痛みがある場合は、腱や靭帯の損傷が激しい可能性があります。 また、ぶつけるなど痛みが発生するケガをした場合や安静にしていても痛みが改善しない場合は、長引かせないためにも早期に専門家のもとで治療を始めることが大切です。 近医の診察時間内に受診して、指示をあおぎましょう。 急いで受診する必要がないケース 急いで受診する必要がないケースは、ケガのきっかけに心当たりがない場合です。 心当たりのない痛みは、同じ動作をくり返す習慣が原因となる傾向があります。 まずは動作を止めて、安静にして様子を見てみましょう。 痛みが2,3日経っても改善しない場合は、受診するようにしてください。 まとめ|肘が痛いときは安静にして病院を受診すべきか判断しよう 肘関節は日常の動作やスポーツでよく使うので、痛みを生じやすい部位です。痛みがある場合は安静にして、痛みが改善するかどうか確認しましょう。 肘の痛みは、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)や上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のように特定の動作を繰り返すことによって生じる炎症が主な原因です。ただし、以下の場合は重篤な病気が隠れている可能性があるので、早めに受診するようにしましょう。 痛みが強くて日常生活に支障がある場合 痛み以外にも症状がある場合 明らかにケガをした場合 2,3日安静にしていても痛みが改善しない場合 病院を受診する目安をもう一度知りたい人は「肘を曲げると急に痛いと感じたときに病院へ受診する3つの目安」を振り返ってみましょう。 あなたの肘の腱や靭帯の痛みが再生医療の対象になるかもしれません。 詳しく知りたい人は以下の記事をご覧いただき、当院へご相談ください。 お電話でのお問い合わせ 0120-706-313(受付時間:09:00〜18:00) メール相談 メール相談はこちらから(無料) 来院予約 来院予約はこちらから 肘が痛いときのよくある質問 Q.肘が痛いと感じる原因はなんですか。 A.多くの場合はゴルフ肘やテニス肘のように、同じ動作をくり返すことで肘周辺の腱や靭帯が傷ついて生じます。 場合によっては神経への刺激や骨の変形や感染症が原因になるので、心配な人は専門医にご相談ください。 肘が痛くなる病気は「肘が痛いときに疑われる6つの病気」で詳しく解説しています。 Q.肘を伸ばすと痛いのはなぜですか。 A.肘を伸ばすと痛いのは、上腕骨内側上顆炎(テニス肘)や肘関節の靭帯損傷が生じている可能性があります。 痛みの度合いが強い、他に症状がある場合はすみやかに受診するようにしましょう。 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい
2022.07.14 -
- 上肢(腕の障害)
- テニス肘
- スポーツ外傷
- 肘関節
テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ テニス肘をご存知でしょうか?テニスをされている方は、テニスエルボーと言った方が早いかもしれません。 テニスという名前がついていることからテニスをしない人には関係がないと思われがちなテニス肘。実は、テニスをしていても、していなくても、その経験に関係なく、頻回に繰り返し腕を使う仕事やスポーツをしている人にも発症する病気です。 ただ、最初は軽い痛みながら、放置したまま原因を絶たずにいると、悪化しかねません。 今回は、テニス肘について、治療法と症状、原因についてご説明いたします。この記事を読んでいただくことで、テニス肘に対する理解が深まり、適切に対処できるようになれば幸いです。 テニス肘とは? テニス肘とは正式には「外側上顆炎」といい、一般的には、ラケットを強く振るテニスプレーヤーが発症しやすいと言われています。しかし、肘の痛みを伴うこの症状は、スポーツ選手だけでなく、誰にでも発症する可能性があります。 特に前腕に負荷がかかる動きを繰り返すと、上腕の骨に筋肉が付着する腱が炎症を起こし、同じ動きを続けるうちに腱が変性し、最終的には切れてしまいます。 テニス肘は、腕を曲げたり、まっすぐにしたり、ものを握ったり、持ち上げたり、振ったりするときに、「肘の外側」に痛みを起こす可能性があります。早く治療したり、その症状を起こした原因を排除すれば症状を軽減させることができます。 どんな人がテニス肘になるのか? テニス肘は、30才から50才の人に多く、男女性別に関係なく幅広く発症する可能性があります。プロのスポーツ選手だけでなく、前腕、手首、手を激しく、かつ反復的に使う活動を定期的に行っている人は、誰でもテニス肘になる可能性があります。 テニス選手のほかにも、野球やソフトボールの選手、テニスやラケットボールの選手なども危険因子です。 例えば組立ラインの工場労働者や自動車整備士、肉屋、料理人、大工、清掃員、塗装工、配管工、歯科医、造園家、音楽家など、特定の職業に就いている人も、テニス肘になりやすいと言われています。 テニス肘の原因 手首や指を曲げたり伸ばしたりして、腕を繰り返し動かすと、前腕の筋肉が疲労してきます。テニス肘と関係のある腱は、「肘の外側」にある骨の隆起(上腕骨外側上顆)にこの前腕の筋肉を付着させています。 筋肉が疲労すると、腱により多くの負荷がかかるようになります。この過負荷が、腱鞘炎と呼ばれる炎症と痛みを引き起こしています。さらに時間が経つと、この過負荷は腱の変性を起こし、最終的には腱断裂につながります。 多くの場合は長期にわたる負荷が原因ですが、突然の腕や肘の怪我が原因で発症することもあります。まれに、原因不明で発症する人もいます。 テニス肘の症状 テニス肘の症状はゆっくりと現れる傾向があります。痛みは数週間から数ヶ月の間に悪化します。テニス肘の症状の多くは痛みにあり、には次のようなものがあります。 ・肘の外側の痛み、手首の痛み ・腕をひねったり曲げたりするときの痛み(ドアノブを回すときや瓶を開けるときなど) ・腕を伸ばしたときのこわばりや痛み ・肘関節の腫れ、触ると痛い ・ラケットやペン、または人の手などを持とうとしたときに痛みが出たり、握力が弱くなる テニス肘の診断 痛みを引き起こす可能性のある動作について質問します。また、肘関節の痛みや腫れなどをチェックするために身体診察を行います。診断のために、以下のような検査が行われることがあります。 ・骨折などを除外するための単純X線検査 ・超音波検査、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの画像検査を用いて、腱や筋肉の損傷の状態を評価 ・筋電図検査は、筋肉や神経の電気的活動を測定し、神経が圧迫されていないかどうかを調べる テニス肘の治療方法 テニス肘は、特別に治療をしなくても、自然に良くなることがあります。しかし、その反面、1年ほどかかることもあるので注意が必要です。 低侵襲な治療法 そこで、回復を早めることができる手術以外の方法をまずご紹介します。 ・安静:腱の治癒を待つために、数週間は痛みのある側の腕を使う活動を停止するか、作業量を減らすことを検討します ・痛み止め:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):NSAIDsは、痛みや炎症を和らげることが期待できます ・痛み止め:ステロイドの注射により、関節の痛みや炎症が一時的に緩和されます ・テニス肘用のサポーター:取り外し可能なテニス肘用のサポーターを痛みのある前腕部に装着します。この装具は、腱や筋肉の緊張を和らげるものです ・理学療法:理学療法による運動は、前腕のストレッチを含め、筋肉と握力を強化します 外科的治療法 低侵襲な療法を6~12カ月続けても症状が改善しない場合、関節鏡下または切開による手術を行います。手術では、通常、変性した腱を除去します。回復には4~6ヶ月かかることが一般的です。テ ニス肘になった後は、症状が再発しないように、サポーターなど装具の着用が必要となることもあります。 まとめ・テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ 以上、今回はテニス肘についてご説明しました。 テニスをしていない人にとっては関係がないと思われがちかもしれませんが、ご説明した通り、必ずしもテニスと関係がない方でも起こりうる病態です。もしも「肘の痛み」で悩んでいる方がおられたら、早めにかかりつけの整形外科医にご相談ください。参考にしていただければ幸いです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.07.12 -
- 膝に赤みや腫れ
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
棚障害に悩んでいるが、治し方がわからない。 棚障害を起こした場合、どのくらいで復帰できるの? このようなお悩みをお持ちではないでしょうか? 運動を日常的に行う中で、突然、膝から崩れて座り込んでしまう病気は多々あります。 そのなかでも棚障害(膝滑膜ひだ障害)は、膝関節の内側にある「滑膜ひだ」と呼ばれる部位が炎症を起こす病気です。 棚障害は、症状が軽いからと放置したままだと痛みがどんどん強くなり、手術が必要になり復帰が遅れてしまう可能性もあります。そのため早い段階で適切な治療を受けることが大切です。 今回は、棚障害の治し方をメインに、原因や症状などについて詳しく解説していきます。 棚障害(膝滑膜ひだ障害)とは「滑膜ひだの炎症」 棚障害(膝滑膜ひだ障害)は、膝の傷害で運動中に膝くずれを引き起こす病気で、膝の内側にある滑膜ひだに炎症を起こすことで発症します。 「症状が軽いから」と放置してしまう方もいるようですが、治療が手遅れになると重症になってしまい、痛みが強くなり、手術が必要な状態になってしまう病気です。 膝の病気、棚障害とはどんな病気なのか、原因と症状、その治療法について紹介していきます。 棚障害の症状 棚障害とは、『滑膜ひだ』という膝関節の内側にある『ひだ』に炎症が起きてしまう病気です。 滑膜とは、膝の動きを滑らかにする滑液という液体を作っている薄い膜です。滑膜に炎症が起きてしまうと、膝を滑らかに動かすことができなくなったり、膝を動かすと痛みを感じたりします。 最初の症状としては、膝のお皿と言われている部分である膝蓋骨の内側や下側に痛みを感じるのが特徴です。 徐々に『膝がぐらぐらする』といった、動かしにくさを自覚するようになり、痛みが出現し始めると動ける範囲内が制限されるようになるでしょう。 悪化すると数分歩行するだけで痛みが出現するようになり、歩行中や運動中、突然、膝くずれを起こしてしまうことも考えられます。 棚障害の原因 棚障害は、膝の曲げ伸ばしや、捻る動作の繰り返しによって「滑膜ひだ」が狭くなり、炎症を起こしてしまうことが原因で起こります。 大きな外傷がなくても、膝の曲げ伸ばしや、捻る動作を繰り返すことで、徐々に痛みが増すこともあります。 『棚障害』は、野球や、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールなど膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返し行う運動選手によくみられますが、運動習慣のある人は誰しも起こり得る病気です。 一般的な中高生の部活動で発症することも多くみられます。 棚障害の検査方法 診察では、棚テストと呼ばれる検査が行われます。 この検査は、膝蓋骨内側の下の方を医師が親指で押さえた状態で、膝を曲げるものです。 このときに痛みを自覚するときや、医師が『ひっかかり』を感じるときに『棚障害』が疑われます。 さらに、レントゲン検査や、超音波検査、M R I検査といった画像検査を行い、滑膜の状態を評価して総合的に診断が行われます。 また、棚障害の簡易的な診断は自分でも可能です。 膝の曲げ伸ばしをすると、お皿の周りで引っ掛かりがみられ「ポキッ、ポキッ」といったクリックしたような音が聞こえたり、膝に手を当てると感じる場合は可能性が高いと思われます。 棚障害における6つの治療法 棚障害(滑膜ひだ障害)は軽症か重症かによって、治療法が異なります。主な治療法は以下の6つです。 安静 非手術的療法 薬物療法 関節内注射 手術療法 リハビリテーション 症状に合わせた治療やリハビリテーションを行い、再発を防ぎましょう。 安静 棚障害の治療で一番大事なことは、運動を休み、膝の安静を保つことです。 多少の動かしにくさや痛みがありながらも「症状は一時的なものだ」「このくらいなら大丈夫だろう」と考えてしまうこともあるかもしれません。 しかし棚障害であるにもかかわらず運動を継続した結果、重症化してしまうケースもゼロではないため注意が必要です。 症状が重症化したあと稀ではありますが、手術も選択肢となり治療期間も長引くことになるため、違和感等を感じた際は、早めに医療機関や整形外科等を受診して専門家の判断を仰ぐべきです。 非手術的療法 非手術的療法は、滑膜の盛り上がりが大腿骨の前面を覆わない程度の場合に効果的と言われています。 非手術的療法には、以下のような種類があります。 物理療法:電気、超音波、レーザー、温熱を用いる 膝の活動調整:膝に負担のかかりにくい動かし方を指導する 装具の使用:膝の装具を使用し動きを矯正する 非手術的療法で膝の筋力を増加させたり、膝の使い方を見直したりすることで、棚障害の治療を行います。 薬物療法 棚障害の症状が軽いときには、湿布を貼ったり、炎症を抑える薬を内服したりといった薬物療法を行うケースもあります。 棚障害は、運動をやめる又は、減らして安静を保ちつつ、ストレッチや湿布等での冷却をはかり、大腿四頭筋の筋力維持訓練など、膝への負担を減らせば症状は落ち着きはじめます。 現在現れている症状を、医師に十分に説明しましょう。 関節内注射 膝の関節内にヒアルロン酸を注射して関節の動きを良くしたり、ステロイド剤を注射して滑膜の炎症を抑えたりすることで痛みが引くこともあります。 関節内注射の効果は永続的ではないため、他の治療法と組み合わせて用いられます。 手術療法 手術による治療が必要になった場合は関節鏡手術という関節の内視鏡を用いて行い、『ひだ』の切除を行います。 手術自体は20分程度で終わることが多いですが、手術による傷の確認や、腫れや副作用の確認のために入院治療が必要です。 入院期間は2日から1週間程度で行われることが多いですが、手術後の経過によって前後します。 手術の傷口が感染してしまった場合などは、再び手術が必要になってしまうこともあります。なお、手術が成功すれば、すぐに運動に復帰できるかというと、そうではありません。 リハビリが必要になるからです。運動に復帰するためには、およそ2週間から数カ月のリハビリを覚悟しなければなりません。 さらには、リハビリを行った後でも、元々のパフォーマンスがすぐに発揮できるまでは、さらに時間を要することが多いです。 リハビリテーション 痛みや炎症を抑えたあとには、リハビリテーションを行い筋力をつけたり、バランスを整えたりすることで再発を防げます。 棚障害のリハビリテーションでは、運動療法やストレッチ、バランス訓練を行い、筋肉の増強や柔軟性の向上を目指します。 主には大腿四頭筋やハムストリングスを強くする筋力トレーニングや、片足立ち、スクワットなどを医師、理学療法士の指示に基づき行います。 棚障害が重症化した場合は運動を休止し、湿布や内服、注射などの治療を開始しても痛みがひかないことが多いです。また、痛みが一時的にひいても、運動を再開したときにすぐに痛みが再発してしまう可能性もあります。 棚障害の予防やセルフケアの方法 棚障害の予防には、膝に負担をかけすぎないことが大切です。 ウォーミングアップを行い、膝周辺の筋肉を温めてから運動をしましょう。 また日頃から膝関節付近の筋肉増強に努めたり、柔軟性を向上させたりするのも効果的です。とくに大腿筋を鍛えることで、バランスが安定し、棚障害が起こりにくくなります。 また、棚障害があっても試合や練習に参加しなければいけない場合には、テーピングで膝への負担を和らげるようにしましょう。 そして、動いたあとにはアイシングを行い、膝関節を休ませる必要もあります。 日頃から棚障害を起こさないよう気をつけること、また適切なセルフケアで重症化を防ぎましょう。 まとめ|棚障害は我慢して運動を続けず、早期の受診を! 「棚障害(滑膜ひだ障害)」は膝の病気で運動選手によく起こる病気の一つで、滑膜の炎症が原因で起こります。 軽症のうちは手術を要することは少なく、安静・薬の内服などの治療を行います。 しかし治療せず痛みや動かしにくさを我慢して運動を続けると、重症化して手術が必要になることもあります。 手術した後は、リハビリを行う必要があり、すぐに運動に復帰することはできません。軽症なうちに運動を休む期間よりも、長い期間、運動ができなくなってしまいます。 いずれにしても膝の周囲の筋力強化と柔軟性を保つためのストレッチは欠かさず行うようにしましょう。 長い期間、休まないといけないのは、運動選手にとって致命的になってしまうことも少なくないでしょう。症状が気になる人は我慢して運動を続けようとせず、早期に病院を受診して治療を受けるようにしましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、棚障害を含む膝の痛みの治療として再生医療を行っています。 この記事が、棚障害の治療に悩む方の参考になれば幸いです。 また、スポーツによって膝の痛みを起こす慢性障害については、以下の記事もご覧ください。 棚障害についてよくある質問 棚障害と半月板損傷の違いは何ですか? 棚障害と半月板損傷は、いずれも膝の痛みが起こる疾患ですが、原因となる部位が異なります。 棚障害は膝の内側にある「滑膜ひだ」と呼ばれる部位の炎症ですが、半月板損傷は、膝関節の内側と外側に一枚ずつある「半月板」と呼ばれる部位が炎症を起こすことで起こります。 棚障害は冷やした方が症状が和らぎますか? 棚障害には、冷却を含む「RICE処置」が効果的です。 RICE処置とは、応急処置のやり方の1つで、以下の頭文字をとったものです。 Rest(安静):なるべく動かさない Ice(冷却):痛みや熱を持っている部位を冷やす Compression(圧迫):適度に圧迫する Elevation(挙上):患部を心臓よりも高い位置に置く 強い痛みがあったり患部が熱を持っていたりする場合は、上記を試してみてください。
2022.07.08 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
特発性膝骨壊死の原因と治療について 「膝が痛くて困っている」 「整形外科にいったけど、年のせいだと言われるばかりで、いっこうによくならない」 膝の痛みはつらいですよね。 医療の発展もあり、長生きできる時代となっています。事実、WHOが報告した2021年度の世界保健統計によると、平均寿命は日本が最長でした。しかし、長生きすればするほど、骨は弱くなり、整形疾患により自立生活を脅かされることとなります。 お爺ちゃんお婆ちゃんが「急に膝が痛くなってきた」、「足が痛くて歩けない」などと訴えることはよくあります。整形外科の外来にて「変形性膝関節症」という診断を受けている方が多くいらっしゃるはずです。 しかし、変形性膝関節症と診断された方の中には、よく調べてみると特発性膝骨壊死(とくはつせいひざこつえし)という骨の病気であったというケースがあります。そこで、ここでは「特発性膝骨壊死の原因と治療について」、これまでわかっている医学的根拠を中心に簡単に解説いたします。 特発性膝骨壊死とは 特発性膝骨壊死の正式な病名は、「大腿骨内顆骨壊死(だいたいこつないかこつえし)」と言い、大腿骨内側顆関節面に対して骨壊死が生じる病気です。発症年齢は、一般的に60歳以上の中後年の女性に多く見られます。 症状としては、変形性膝関節症と同じように、歩いているときや、階段の上り降りするときなど、膝に負担がかかる動作をしたときに痛みが生じます。特発性膝骨壊死と、変形性膝関節症の違いとしては、その症状に特徴があり、夜間や安静時であっても突然、非常に強い痛みに襲われることがあることにあります。 骨壊死の原因 特発性膝骨壊死の原因として、高用量のステロイドの長期間服用や、腎移植、過度の飲酒、血液凝固障害、度重なる放射線治療などが関係すると考えられています。 ただ医学では原因がはっきりと特定できない、分かっていない病気のことを「特発性」と言うため、特発性膝骨壊死は原因が特定できていない、ということを指しているということで、原因を明示できません。血液検査や、関節液検査では、明らかな異常所見を認めない点も特徴です。 特発性膝骨壊死の検査 診断においては画像検査を用いて行います。ただ、初期の段階ではレントゲン検査では判別できないことが多く、MRI検査で行う方が望ましいと考えます。症状は、進行度合い応じ「ステージ1(発生期)」「ステージ2(吸収期)」「ステージ3(完成期)」「ステージ4(変性期)」といった4期に分類されます。 ステージ4(変性期)になると、軟骨が削れてしまい関節と関節の隙間が狭い、もしくは無くなるような状態になってきます。 特発性膝骨壊死の治療法 治療法としては変形性膝関節症で行われる治療法と同じになり、大きく分けて2種類、「保存療法」と「手術療法」があります。 保存療法 ステージが初期のころは保存療法がおこなわれ、消炎鎮痛剤(痛み止め)を服用して痛みといった部分をコントロールしながら、ヒアルロン酸の注射や、リハビリとして筋力トレーニングを行います。 また、外反装具や足底装具、合わせて膝への免荷(体重の負担軽減)を目的として杖や松葉づえを用いることがあります。 手術療法 手術療法は、病気の進行や、痛みのコントロールが難しい場合に「減圧術」と「人工関節置換術」を検討することになります。 減圧術 減圧術では、患部の骨の一部を取り除き、小さな溝を作ることで、骨への圧力を軽減し、痛みを軽減します。その他、内反変形を矯正、関節内側面への負担を減らす「高位脛骨外反骨切り術」や、自家骨軟骨移植が行われることもあります。 人工関節置換術 人工関節置換術では、骨壊変した大腿骨先端部や脛骨を薄く削り、金属やセラミック、ポリエチレンでできた人工関節を取り付けるものです。しかし、人工関節の耐用年数は10年~20年であるため、年齢によっては再手術という可能性があることから実施には考慮も必要です。 つまり、若い患者様にとっては再手術を避ける狙いでも「再生医療」という先端医療分野を使える可能性があります。 まとめ・特発性膝骨壊死の原因と治療について 特発性膝関節骨壊死症は、あまり知られていない病気です。そのため、適切な診断を受けずに症状が悪化し、あとになって特発性膝関節骨壊死と診断されるケースが散見されます。 特発性膝関節骨壊死症は、進行すると耐え難い痛みがあるため、膝に負担を掛けないよう安静にすることが非常に大切です。そのためにも初期の痛みが少ないころ、膝の違和感等を我慢して仕事や、運動をしないよう気を付けなければなりません。 ステージ後半、痛みが顕著になればわかりやすいものの、早期発見は、なかなか難しい病気です。まずはMRI検査を踏めた正しい診断を受けることが大切です。膝に異常を感じたら、お近くの整形外科医等、医療機関を受診され、専門家にご相談をされることをお勧めします。 以上、特発性膝骨壊死の原因と治療について記してまいりました。参考になれば幸いです。 https://youtu.be/ic_6QaEU5NU?si=-qbsxIXZ0rzIox-F ▶治療方法の選択肢のひとつとして、こちらの動画も是非ご覧ください。 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝関節の治療を変える! 膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できる!
2022.07.07 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝の傷病であるベーカー嚢腫は世間的にあまり周知されていない疾病です。しかし、ベーカー嚢腫は誰でも起こる可能性があり、治療が遅れると重症になりえます。 日常生活の中で『膝に違和感を感じる』といった経験をされたことはありませんか?膝の違和感と一口に言っても症状はさまざまですが、もしかするとベーカー嚢腫かもしれません。 そこで本記事では、ベーカー嚢腫について当クリニック医師が詳しく解説します。症状を理解し、早期発見・治療を心がけましょう。 ベーカー嚢腫とは?原因はなに? ベーカー嚢腫は、膝の関節の隙間の裏側に袋ができて、その中に滑液と呼ばれる膝の動きを滑らかにしている液体が溜ることで起こります。 症状が起きる原因は、激しい運動などで膝を使いすぎたり、関節リウマチや変形性関節症といった病気が誘引となって関節液が大量に作られ溜ることでベーカー嚢腫を発症します。 ベーカー嚢腫の症状 ベーカー嚢腫は、発症初期に痛みがないといった特徴をもっています。 最初は膝の裏が腫れたり曲げたときに、なんとなく違和感や不快感を感じる程度であることが大半です。この初期段階で腫れが小さくなり、自然治癒するケースも少なくありません。 しかし、痛みがないからといって自己判断の放置には注意が必要です。 膝の裏の腫れがニワトリの卵くらい大きくなると、膝の屈曲時や、正座をしようとしたときに引っかかるような感じがして姿勢を保てなくなります。 さらに悪化すると滑液を包んでいる袋が破裂し、関節液が漏れ出てきて周りの組織が炎症を起こしてしまいます。すると、膝の腫れがさらにひどくなり、腫れに対して熱や痛みを発します。 ベーカー嚢腫の好発年齢 ベーカー嚢腫は、関節リウマチや変形性関節症が起こりやすい50代~70代に多い疾病です。だからといって、若い方が発症しないと安心できるものではありません。 年齢関係なく誰でも起こりうる疾病とされ、ときには4歳~7歳くらいの子どもでも発症します。 ベーカー嚢腫の検査方法 診察では、変形性関節症や関節リウマチなどの病気が合併していないか調べることが重要です。 医師による触診や超音波検査・MRI検査などの精密な画像検査を行い、大きさや正確な発症位置を特定します。 【治し方】ベーカー嚢腫の治療 ベーカー嚢腫の治療方法は、合併している疾患の有無や重症度によって大きく変わってきます。 関節リウマチや変形性関節症などが合併している疾患があるときは、合併疾患に対して治療を行うことがベーカー嚢腫の改善にもつながります。合併している病気の治療が進まないとベーカー嚢腫を含め再発を繰り返してしまいます。 合併している病気の症状が落ち着いているときや、合併疾患がないときは、手術を伴わない治療で完結するケースが大半です。 保存療法 手術を行わない際の治療としては、湿布を貼ったり炎症を抑える薬を内服します。 また、袋の中に関節液がたくさんたまっているときは、注射器により関節液の吸引を行います。吸引を繰り返してもベーカー嚢腫が頻回してしまう際や、周囲の組織に炎症を伴うときはステロイド剤の注射を行うケースがあります。 手術療法 手術を行う場合は、膝の裏を2cm程度切り開いて行います。ベーカー嚢腫の元となる袋を取り出したり、関節から嚢腫へ関節液が漏れ出している穴を塞いだりと療法はさまざまですが、いずれの手術も全身麻酔で行われます。 術後の感染や麻酔によるアレルギー症状など、副作用の確認を行うため入院による治療となります。1~2週間の入院期間を設けることが多いですが、合併症の有無など、術後の経過によって前後します。 膝の裏には神経や血管がたくさんあり、すべての袋の除去が難しいことから、術後再びベーカー嚢腫ができてしまうケースも少なくありません。 ベーカー嚢腫に関するQ &A この項目では、ベーカー嚢腫に関するよくある質問に対しての答えを提示しています。 ベーカー嚢腫にお悩みの方は問題解決の参考にしてください。 ベーカー嚢腫は何科を受診すればいいの? ベーカー嚢腫の疑いがある場合は、整形外科を受診しましょう。お住まいの地域に整形外科院がない場合は、総合病院の受診をおすすめします。 また、当クリニックでも足の疾病に関する悩み相談は可能です。手術をしない再生医療に興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。 ベーカー嚢腫に効くストレッチは? ベーカー嚢腫には、膝周りの筋肉を伸ばすストレッチが効果的です。 ストレッチの種類は多岐にわたりますが、この項目では代表的なふくらはぎのストレッチを紹介します。 1.仰向けになり片方の足を上げます 2.上げた足にタオルをかけます 3.両手でタオルの端を持ちながら、足を伸ばした状態で45度程度まで下に引きます 4.呼吸を止めずに10秒程キープします 5.反対側の足も同様にストレッチします ベーカー嚢腫とがんの見分け方は? ベーカー嚢腫とがんを見分けるためにも、まずはお互いの特徴を把握しておきましょう。 ベーカー嚢腫 悪性腫瘍(軟部肉腫/骨腫) ・膝をの裏側が晴れる ・普段から膝を使っている ・次第に腫れが大きくなる ・初期は痛みを感じないが、悪化すると痛みや熱を発する ・膝の怪我・負担をかけていなくても発症する ・長期にわたる腫れの継続 ・痛みを伴わないことも多い 初期の段階では、いずれも痛みを感じることなく発症するケースが大半です。しかし、ベーカー嚢腫の場合は関節の隙間にできた袋から滑液が漏れ出し、炎症をきたし痛みや熱を発します。 対して悪性腫瘍(軟部肉腫)の場合はしびれや麻痺症状を伴ったり、骨腫瘍は痛みを伴う特徴をもっていることを覚えておきましょう。 いずれにせよ、一般的に区別がつきづらい症状であることから、膝の不安感を覚えたら最寄りの医療機関を受診するよう心がけましょう。 まとめ|ベーカー嚢腫(膝裏の腫れ)の放置は禁物! 発症初期のベーカー嚢腫は、痛みを伴わず自然に小さくなる傾向にあるため放置してしまいがちな病気です。しかし、悪化すると、手術が必要になることもあります。 手術には入院が伴うため誰しもが望まない治療だと思います。最近では感染対策で入院中での面会が制限され、家族や友人に会えずに寂しく辛い経験をされる方も非常に多いです。 治療が手遅れになる前に、膝の裏に違和感を感じたら自分で判断したり、放置せずに医療機関に受診し、専門家に診てもらいましょう。 また、その他膝に関するお悩みを抱いている方は当クリニックまでお気軽にご相談ください。 ▼ 再生医療の幹細胞治療に関する詳細は以下をご覧下さい 当院の再生医療は、自己脂肪由来の幹細胞治療を推進しています ▼以下も参考にしてください 膝の裏側の腫れや痛み、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因か?!
2022.07.06 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩の腱板断裂は放置では治りません!医療機関での受診が必要なことをご説明します 肩の腱板断裂(けんばんだんれつ)について どんな症状? どんな年齢層で多く起きるの? 腱板断裂を分かりやすく症状で表すと、「肩上がらない」、「肩が痛い」、「夜寝ていると、肩が痛くて眠れない」、「腕を上げようとしても力が入らない」、「腕を上げるときに肩の前の方で変な音がする」、などといったものになります。 年齢的には、40歳以上の男性に、特に60歳代の方に多くみられる病気になります。 ところが肩が痛くて、40歳以上で・・・というと、「四十肩?、五十肩!?」と思われる方が多いのではないでしょうか?では、「五十肩」とはどう違うのでしょう? 「五十肩」は別名「凍結肩」とも呼ばれているように、関節の動きが固まってしまうものです。 これに対して、「腱板断裂」では、痛みはあっても反対側の手を添えたりすると肩を動かすことができるので肩が動くか、動かないかが大きな違いになります。 腱板断裂 症状 発症しやすい年代 ・肩が上がらない ・肩が痛い ・肩が痛くて眠れない ・腕を上げようとしても力が入らない ・腕を上げると肩の前の方で変な音がする 40代以上の男性に多い 60歳代に多くみられる 肩の腱板って何ですか? 肩の腱板とは、肩関節の中にあり、いわゆる「腱」が筋肉とつながっているために板のようにみえるグループ構造のことで、肩関節の動きを支えています。 肩関節とは、鎖骨(身体の正面、首のしたで中心から左右に伸びる骨)、肩甲骨(肩の後ろの翼のような形の骨)、上腕骨(いわゆる腕の骨)に囲まれた部分です。 肩関節の動きはとても複雑なことができます。例えば、肩をぐるぐる回したり、手(腕)を上に挙げたり、手を後ろに回したり、肘は体につけて「小さく前にならえ」のような動きをしたり、様々な動きができます。 以下のような動きに関係しているのが肩の腱板です。 ・手を横に広げて上げてくる時(鳥が翼を大きく広げるような動作)には「棘上筋」 ・小さく前にならえの姿勢から手を外側に広げる時の動きは「棘下筋」「小円筋」 ・手を体の後ろで組んで少し体から離すような動きの時は「肩甲下筋」 腱板断裂のタイプには、「完全断裂」と「不全断裂」があります。これは、治療方針を決める上で大事になります。 腱板断裂はどんな時に起きるのか? 腱板断裂は、大きく分けて3つあります。 また、スポーツ選手などの活動性の高い人たちの肩の使いすぎで腱板断裂が起きることもあります。野球選手のシーズンオフのニュースなどでも時々耳にすることがあるので、「腱板断裂」という言葉は結構身近に耳にする言葉かもしれません。 (1)転んでしまった時などの怪我を原因とするもの (2)スポーツが原因となるもの (3)主に年齢が上がるにつれて腱板が徐々にすり減っていくことを原因とするもの 明らかに転んでしまった、などの怪我が原因の場合は、多くの方が整形外科を早めに受診されるので、その際にレントゲン撮影、超音波検査、MRI検査などをして診断されることが多いので、適切な治療を早めに開始することができます。 一方で、徐々に腱板がすり減っていって腱板断裂を起こしてしまった場合は、整形外科受診のタイミングを逃してしまう方も多く、「なんとなく肩が痛かったけど、騙しだまし、やってきた・・・、日常生活に不足なかったから」などの理由で放置されることが多く、それも障害がある限りは限界がきます。 そういえば、いつだったか、ずいぶん前にちょっと転んだけど、しばらくしたら痛くなくなって、病院では診てもらわずに放っておいたというのは、よく聞く話です。 こういう方々は、実際に整形外科の受診時に 「ひどい痛みで肩が動かない、、、。日常生活に支障が出てきて困っている!なんとかしてほしい!!」となることがあります。 また、スポーツで断裂が起こる場合は大きく次の3つのタイプに分かれます。 1)慢性障害 野球や、バレーボール、水泳など、肩を大きく回す動作を日常的に繰り返すことで起こります。筋肉の疲労を伴うもので完全に断裂することはあまりなく、多くは部分断裂です。 2)急性障害 急激に大きな力が掛かり急性に完全断裂が起こることがあります。ジムでの筋力トレーニングや、体操、テニス等で見られます。 3)外傷型障害 衝突や転倒により生じる症状です。スキーやスノーボード、ラグビーやサッカーなどで多く見られます。 腱板断裂は放置しないで肩に違和感があれば医療機関を受診する 腱板断裂は放っておけば断裂してしまった部分が自然に修復されるなどということは期待できません。つまり、なんらかの対策、治療や、リハビリテーションが必要となります。 痛みが無くて、日常生活に不便がない場合でも、放置した場合は、肩の機能は低下していきます。また別の病気に移行する危険性があります。 転倒や、スポーツなどの急な怪我で腱板断裂が起きてしまった場合、または肩に違和感がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。三角巾などで1−2週間安静にしていただき、強い痛みがある場合は炎症を抑えるための鎮痛剤の内服あるいは、ステロイド注射などの「薬物療法」、湿布、テーピングなども使いつつ、残った部分の腱板や肩回りの筋肉の増強に向けたリハビリテーションを行います。 これで約70%の方が状態は良くなります。しかし、肩の痛みが続き、肩の動きも思うようにままならない場合は、手術(断裂部の修復手術など)も検討しなければなりません。 まとめ・肩の腱板断裂は放置で治りません!早めに受診されることをお勧めします 腱板断裂の症状は、全ての人に痛みが強く出るものではありません。腱板断裂ではあるが痛みがなく、肩が動いて日常生活に不便がない無症候性腱板断裂という方もおられます。また、無症状ではないものの日常の生活には支障がない方もおられます。 そのような方々が腱板断裂を放置する選択をされ(痛くない、支障がない)ますが、肩の機能は低下していくため、最終的に困った状態になってから医療機関を受診されるということになります。 そうなった場合の問題は、症状が進行してしまい極端な場合は、手術による修復が難しく、太ももの筋膜の移植、人工関節手術を検討する羽目になりかねません。まだ、大丈夫と自分で判断するのは重症化のリスクをはらんでいることをご理解ください。 ここまで肩の腱板断裂と放置による危険性を記してまいりました。明らかな痛みや、症状がある場合に病院等、医療機関を受診された方は、スムーズに治療に入れるため放置にはなりません。 肩に軽い痛みや違和感があるだけでは、つい病院等に行きそびれてしまったり、あまり痛まない、肩が上がるから大丈夫などと自己判断で腱板断裂を放置すると症状が悪化することがあります。 日常生活に支障がないからと放置するのではなく、肩に痛み、違和感を感じたら整形外科等、医療機関を受診し、治療は勿論、現状の把握と万一、放置した場合のリスクについて説明を受け、ぜひ前向きに治療を開始されることをお勧めいたします。 ▼ 肩の再生医療 肩の違和感、痛み、再生医療による治療が可能な場合があります ▼こちらも合わせてご覧ください 腱板断裂と四十肩(五十肩)はどう違うのか
2022.07.05 -
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
- 靭帯損傷
膝の病気や痛みをかかえている方のなかには、定期的に膝へヒアルロン酸注射している方が多くいます。 しかし「最初は注射をすれば膝の痛みがひいたのに最近は効かなくなってきた」「効かないのは失敗が原因?」と感じた経験もあるでしょう。 そこで今回はヒアルロン酸注射をしていて、効かないと感じたり失敗を疑っている方に向けて、ヒアルロン酸の効果を解説します。 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法も紹介するので、最後までご覧ください。 膝にヒアルロン酸注射をしても効かないのは失敗が原因なの? 膝のヒアルロン酸注射が効かず、失敗を心配する方もいるかも知れませんが、病気の進行や膝の変形が重度になると効果が薄くなります。 ヒアルロン酸注射自体の問題や治療の失敗などではなく、膝自体に炎症がある場合、ヒアルロン酸注射が、効かないケースも多くあります。 膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射自体が余計に症状を悪化させてしまう症例もあるので注意が必要です。 変形性膝関節症は、年齢を重ねると進行する病気なので、誰でも変形が強くなっていく可能性はあります。 しかし体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりする方は、変形が進行する原因になるとも言われているので注意しましょう。 膝の変形性関節症における重症度や膝の組織を評価するために、レントゲン検査やMRI検査など、画像検査が行われます。 MRI検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板が傷ついていないかも診断できるため、治療方法の選択をするためにも重要な検査です。 MRI検査が重要な理由は、以下の記事で詳しくまとめました。 そもそもヒアルロン酸注射とは 「膝のヒアルロン酸注射が効かないのは失敗が原因なの?」と不安に感じる方に向けて、ヒアルロン酸注射の概要を解説していきます。 ヒアルロン酸注射の効き目を感じず失敗と捉える前に、まずは注射として期待できる効果の概要を見ていきましょう。 ヒアルロン酸注射は初期症状におすすめ ヒアルロン酸は、膝の変形性関節症における初期症状におすすめの治療方法です。 ・ヒアルロン酸注射のみで完結する軽度な治療 ・軟骨保護のような炎症緩和 など 上記のような治療目的で使用されるのがヒアルロン酸注射です。 そもそもヒアルロン酸は水分をたくさん含む物質で、主に関節の内部を満たしている液体成分を補充する目的で注射します。 膝にヒアルロン酸を注射すれば、動きをよくする潤滑油のような役割になるのです。 膝以外にも眼の乾燥としてヒアルロン酸の目薬を行います。 目に潤いを与えるためヒアルロン酸が用いられるように、短時間で効果を得たい場合に提供される治療方法としてヒアルロン酸が活用されているのです。 ヒアルロン酸注射は根本的な治療にはならない いろいろな用途に用いられるヒアルロン酸ですが「変形性膝関節症」で、膝関節の動きを滑らかにするため注射している方もいるでしょう。 注射治療になるので手術のような日常生活の支障を気にする必要もありません。 しかしヒアルロン酸注射は、液体成分なので体内に吸収されてしまいます。 持続期間は約1〜2週間程度と言われているため、時間経過とともに「注射の効果がない」「失敗した」と感じてしまうでしょう。 膝の関節にはヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液で満たされています。 滑液が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねたり外傷や他の疾患があったりすると、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ってしまうのです。 ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすのが難しくなり、結果として膝にある骨や軟骨がこすれて痛みを感じてしまいます。 ヒアルロン酸注射をしただけでは一時的な治療になり「痛みを感じにくい状態」である持続期間が切れた際「効果がない」と捉えてしまいがちなのです。 以下の記事では、ヒアルロン酸注射の有効性と限界について詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなった場合の対処法 ヒアルロン酸注射は、はじめは効いても徐々に効かなくなるケースがあります。 ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大切です。 ここからは膝のヒアルロン酸注射が効かなくなった場合の対処法として挙げられる治療法などを解説します。 適度な運動 膝のヒアルロン酸注射を必要とする代表的な症例である「膝変形性関節症」には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療があります。 たとえば体重が重い方は、体重を減量するための運動も治療として重要な方法です。 専門的な治療を施すのであれば、運動療法を実施するのをおすすめします。 規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくのが大事です。 膝をサポーターで保護し、テーピングを実施するのも推奨されています。 膝の負担を減らしながらできる運動については、以下の記事に詳しくまとめているので、ぜひ役立ててください。 ステロイド薬の投与 膝に炎症がある場合、ヒアルロン酸の注射ではなくステロイド薬を膝に注射する治療法もあります。 ステロイド薬の投与だけでなく、炎症を抑えるための薬を飲む治療法をしつつ、数カ月のリハビリなど保存療法を進めていく治療法も挙げられます。 人工関節を用いた手術 重症になった場合や注射が効かない状態が続くと手術が必要なケースもあります。 手術では関節の代用部品である「人工関節」を関節の代わりに埋め込む治療を実施します。 皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 手術は傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院が必須です。 入院自体は数日〜数週間ですが、もともとの歩行状態に戻るためには数カ月膝のリハビリが必要です。 人工関節を使った手術で知っておくべき項目については、以下の記事でまとめているので、あわせてご覧ください。 手術(人工関節)を避ける再生医療の選択肢 最近では手術の代わりに「PRP療法」や、「幹細胞治療」と呼ばれる新しい先端治療を選択できるようになってきました。 PRP療法は、患者様の血液から抽出した「血小板血漿(PRP)」を傷んでいる部位に注射する治療法です。 一方で「幹細胞治療」は、少しの脂肪を採取し、幹細胞を抽出して数千から億の単位まで培養し、増やした細胞を患部に注射で投与します。 どちらも患者様の自然治癒力を高めて治療するもので手術や入院の必要はありません。どちらも副作用はほとんどなく、患者様の身体にかかる負担が少ない治療法です。 詳しくは、お問い合わせください。 まとめ・膝のヒアルロン酸注射が効かなくて失敗を疑う前に診療を! 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために有用な治療法です。 最初効果があっても、治療の過程で「効かなくなった」「失敗した」と感じる可能性があります。 治療の失敗やヒアルロン酸注射自体の問題ではなく、膝の状態が良くない恐れも考えられます。 効果が乏しいのにもかかわらず、漫然と注射を重ねるのは良くないでしょう。 現在では再生医療(幹細胞治療、PRP療法)といった先端医療も考慮できます。 ヒアルロン酸の注射の効果が以前に比して減ったように感じている場合、専門家に相談し、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 再生医療は、先端医療であるため厚生労働省から認められている限られたクリニックでしか受けられない治療法です。 手術も入院も避けられる身体にやさしい治療法なので、気になった方は気軽にお問い合わせください。 膝のヒアルロン酸注射でよくある質問 Q.ヒアルロン酸注射に副作用はないの? A.ヒアルロン酸注射による副作用は「まったくない」とは断言できません。 ヒアルロン酸注射をしたあと、起こる可能性がある副作用は以下の通りです。 ・内出血 ・むくみや腫れ ・かゆみ ・チンダル現象 ・血管閉塞 など 上記のような副作用が起こっても、時間経過とともに回復するケースが大半です。 ただし、副作用は放置せずヒアルロン酸注射をした医療機関で専門的なケアをしてもらうのをおすすめします。 Q.何度も打ち続けるとどうなるの? A.ヒアルロン酸注射を何度も打ち続けると、ヒアルロン酸の吸収力が低下する可能性があります。 ヒアルロン酸は膝を含めた関節部分の潤滑油として働いているので、補充する目的で注射治療を施します。 しかし、初めてヒアルロン酸注射をした方は、複数回注射をしている方より吸収が早い傾向にあるので、次第に「失敗した」と捉えてしまうでしょう。 あくまで一時的な治療になるので、膝の痛みが続く方は別の治療法を検討しましょう。 Q.痛みを感じる場合失敗を疑うべき? A.ヒアルロン酸注射は、膝に注射を刺す痛みになりますが、血管注射とは異なります。 注射針を刺した後にヒアルロン酸を注入するので、人によっては痛いと感じる方もいます。 ヒアルロン酸注射をする前に麻酔テープやクリームを塗る方法もあるので、少しでも心配な方は事前に相談しておきましょう。 とくに変形性膝関節症が重度な方は、関節に注射針を刺すのが困難なケースもあります。 副作用として痛みを感じる可能性もあるので、我慢せず医師に相談するのをおすすめします。 ▼以下もご参照ください
2022.06.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 膝の慢性障害
- 関節リウマチ
- 靭帯損傷
膝の水が溜まって痛みがある。 溜まっている膝の水を、できるなら自分で抜きたい。 膝に溜まった水が気になり、抜く方法を知りたいと考えていませんか。しかし、膝の水を抜くのは癖になってしまうという話を聞いて、不安になっている方もいるかもしれません。 膝の水が溜まる原因は、炎症反応が起こっているためです。病院では、注射器を使用して膝の水を抜きます。 また、セルフケアではストレッチやマッサージで膝の水を抜く方法もあります。しかし、誤ったセルフケアは痛みや炎症の悪化につながるため、症状が強い場合は病院で適切に処置してもらった方が良いでしょう。 本記事では、病院やセルフケアで膝の水を抜く方法を詳しく解説しています。皆様が納得できる膝の水を抜いて痛みを緩和する方法の選択に役立てれば幸いです。 病院で膝の水を抜く方法 膝の水を抜く方法のひとつとして、病院での処置をイメージする方も多いでしょう。 本章では、病院での処置や注意点について解説します。本章を参考に膝の水を抜くかどうかを検討してください。 処置には注射器を使う 病院では主に整形外科にて、注射針を関節に刺して膝の水を抜く「関節穿刺」を行う場合があります。(文献1) 膝の水の正体は「滑液(かつえき)」です。滑液が膝に溜まることで関節を圧迫し、膝の痛みを悪化させる可能性があります。そのため、膝の水を抜くと症状の緩和が期待できます。 膝の水を抜く際、注射針を刺した直後以外に激しい痛みを伴うケースは稀です。ただし人によっては痛みが気になる方もいるため、処置後に違和感がある場合は、担当の医師に相談しましょう。 症状に応じてヒアルロン酸を注入する 膝の水を抜いた後や変形性膝関節症では、症状を和らげる目的でヒアルロン酸を注入することがあります。通常、週に1度あるいは数週間に1度の頻度でヒアルロン酸を注入し、効果がみられれば継続します。 病院でのヒアルロン酸の注入は保険適応になるケースが多いため、治療費を抑えられるメリットも期待できるでしょう。 ヒアルロン酸の注入は一時的に痛みや炎症を抑える効果がありますが、持続的ではないため定期的な通院が必要です。 また、根本的な原因疾患の治療でないため、医師の指示に従いリハビリや運動療法など根本的な原因を改善する治療と並行しましょう。 病院で膝の水を抜いた直後は安静にする 病院で膝の水を抜いた直後は、安静にして過ごすように指導されます。処置を行った当日は、以下の2点は行わないように注意しましょう。 激しい運動 入浴 また、処置の後には以下の合併症のリスクがあります。 合併症 症状 感染症 注射部位の腫れや熱感、痛みが長時間続く、または症状の悪化 出血 注射部位を圧迫しても止血しない 上記のような症状があらわれたら、早めに受診するようにしましょう。 膝の水を抜いた後の注意点について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 自分で膝の水を抜く方法 病院で処置してもらう以外にも、自分でストレッチやマッサージを行って膝の水を抜くことも可能です。 本章では、セルフケアで膝の水を抜く方法と注意点を解説します。 「できるなら自分で膝の水を抜きたい」という方は、本章を参考に、ストレッチやマッサージを行ってみましょう。 膝の水を抜くストレッチ・マッサージ 膝の水を抜くために効果的なストレッチ・マッサージとして、以下の4つがあげられます。 ストレッチ 足上げ運動 1. 仰向けになり、両足を伸ばす 2. 左右の足を交互にゆっくりと上げるたり降ろしたりを繰り返す パテラセッティング(膝の前側の筋肉を鍛える) 1. 床に足を伸ばして座る 2. 片側の膝下に丸めたタオルやクッションを置く 3. クッション・タオルを膝下で床に押し付ける 4. 3〜5秒経ったら力を抜き、再度3.を行う 5. 数回行ったら左右の足を交換し、2.~4.を同様に繰り返す マッサージ 膝下のほぐし 1. 片側の膝下に両手で親指を添える 2. 強めの力で押し、前後左右に動かす 3. 反対側の足も同様に1.2.を行う 太もものほぐし 1. 椅子に座る 2. 片側の外ももに手のひらを添え、押しながらゆっくり回す 3. 反対側の足も同様に1を行う 4. 両足の前ももに手のひらを添え、足の付け根から膝上まで強い力でほぐす すべて自宅で手軽にできます。無理のない範囲で、上記のストレッチやマッサージを行ってみましょう。 痛みや違和感がある場合は無理に動かさない 痛みや違和感があるときは、炎症が起こっているサインです。むやみに触ると悪化する可能性があるため、ストレッチやマッサージなどのセルフケアはおすすめできません。無理に動かさず、早めに医療機関へ行きましょう。 マッサージやストレッチは血の巡りをよくする効果が期待できますが、誤った方法で無理に行うと、症状が悪化する恐れもあります。 また、痛みを感じるときは、膝に負担をかけないよう歩行や荷物の持ち運びなどの動作にも注意しましょう。 膝の水が溜まる原因は「炎症による関節液の過剰分泌」 膝の水が溜まる原因は、炎症反応によって「関節液」が余分に分泌されるためです。 関節液は、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割をしています。関節液は常につくられながら吸収され、一定量になるよう調整されています。 しかし、なんらかの疾患によって炎症が起こると、いつもより早いペースで関節液がつくられ、膝の水が溜まります。(文献2) 膝に水が溜まる原因の病気は、以下のとおりです。 半月板損傷 変形性関節症 靭帯損傷 痛風、偽痛風 関節リウマチ 骨折 感染や外傷 これらの病気になると膝に水が溜まりやすくなります。膝の水を根本的に改善するには、水を抜く処置をして痛みを緩和しつつ、原因となる病気を治療することが大切です。 まとめ|膝の水を抜くなら医療機関に相談しよう 今回の記事では膝の水を抜く方法やセルフケアを中心に解説しました。 症状が出現した際に、自己判断で放置したり誤ったセルフケアを行ったりすると、悪化する可能性があります。膝の水を適切な方法で抜きたい場合は、医療機関に相談しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、人体に元々ある幹細胞を活用した「再生医療」による膝の痛みや変形性膝関節症の治療が可能です。 「メール相談」や「オンラインカウンセリング」も実施しているので、気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 膝の水に関してよくある質問 膝の水を抜くと癖になりませんか? 膝の水を何度も抜くのが原因で、癖になるわけではありません。 膝の水を抜いても再び溜まってしまうのは、関節に炎症が起こっている根本的な原因の病気が改善されていないためです。 原因の病気として、半月板損傷や変形性関節症などが知られています。痛みを和らげるためには、原因の病気の治療をしながら膝の水を抜くことも大切です。 膝の水は自然に抜けますか? 稀に自然治癒する場合もあります。長期期間放置しても、必ず自然治癒するわけではありません。 放置すると関節が固まって動きにくくなった「拘縮状態」に陥るリスクもあります。 拘縮状態になると膝の曲げ伸ばしが辛くなり、日常生活に支障をきたす可能性もあります。そのため、1カ月以上膝の水の溜まりを放置するのはおすすめできません。 膝の水を自然に抜けるまで長期間待たずに、早めに受診するようにしましょう。 参考文献一覧 文献1 水原寛康. 関節穿刺. 医学書院 医療情報サービス. 2024年10月18日. 文献2 斉藤 聖二,関節痛(炎):診断と治療の進歩1.関節の構造と関節痛(炎)の原因, 日本内科学会雑誌, 1994年, 第83巻, 第11号, p1871-1875
2022.06.29 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 脊髄損傷という言葉(あるいは「脊損(せきそん)」)を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。大まかなイメージはあったとしても、どういった原因で脊髄損傷になるのか、脊髄損傷になると、どのような症状が出現するのか?また、脊髄損傷の治療法についてよく分からない人がほとんどではないでしょうか。 この記事では、脊髄損傷とその症状および治療法について医師が解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 脊髄損傷とは そもそも脊髄損傷の脊髄とは何でしょうか?脊髄は、脳と体をつなぐ神経の束を含む組織で、脊椎と呼ばれる背骨の中を通っています。脳と身体中の神経をつなぐ重要な役割を担っているため、この脊髄がなんらかの原因によりダメージ、損傷を受けるとさまざまな、そしてしばしば重篤な症状を引き起こすことになります。 これが脊髄損傷と呼ばれるものです。 脊髄損傷の原因 脊髄損傷の原因には様々なものがありますが、その原因が脊髄そのものにある場合と、脊髄の外にある場合といった大きく二つに分けることができます。 ① 原因が脊髄そのものにある場合: 脊髄は様々な神経の束を含みますが、この神経の束に栄養を与える血管が詰まったり破れたりする病態をそれぞれ脊髄梗塞、脊髄出血などと呼びます。またHIVや梅毒など脊髄に感染を起こすものもあります。 さらに脊髄の栄養となるビタミンB12の欠乏症、脊髄腫瘍なども脊髄損傷を引き起こします。しかし、脊髄損傷の原因が脊髄そのものにある場合は稀で、ほとんどの場合は原因が脊髄の外にあります。 ② 原因が脊髄の外にある場合: 脊髄は脊椎とよばれる骨組織のなかに存在し、周囲は脊髄液と呼ばれる液体で満たされています。この脊椎周囲組織の感染や出血により、脊髄が外から圧迫されて脊髄損傷を起こすことがあります。 また、感染や出血以外にも椎間板ヘルニアや放射線、交通事故などの外傷により脊髄の外から脊髄に障害を引き起こすことがあります。 脊髄損傷の症状 脊髄損傷はその原因が様々であるのと同様に、その原因やダメージを受ける部位によって症状が大きく異なります。筋肉を動かす運動神経、触れている・熱い・冷たいなどを知覚する感覚神経といった神経の種類によって脊髄の中での分布が違います。 先に述べた脊髄そのものの原因により脊髄損傷が起きた場合にはこの脊髄の中の特定の領域が影響を受け、感覚のみが傷害される、運動のみが傷害されるといった神経の種類による障害が起きることがあります。 一方で、脊髄の特定の部位が損傷すると、脊髄の中での分布にかかわらず特定の部位の全ての種類の神経が障害されることがあります。その場合は、損傷部位より下に出ていくまたは損傷部位より下から入ってくる全ての神経の伝達が不可能になるため、下半身の運動・感覚など全てが障害を受けるいわゆる下半身不随などが起きることがあります。 脊髄損傷の治療法 脊髄損傷の治療は、その原因および目的によって多岐にわたります。今回の記事ではその治療法を、下記の3つに分けて解説します。 (1) 原因に対する治療 (2) 救命のための治療 (3) 障害の影響を減らすための治療 (1) 原因に対する治療 先に述べたように、脊髄感染症やビタミン欠乏、腫瘍などの原因がある場合はそれぞれに応じた治療を検討することになります。椎間板ヘルニアや血腫(血溜まり)・膿瘍(膿溜まり)などが原因の場合、脊髄の圧迫を減らすために手術で原因を除去することもあります。 (2)救命のための治療 頸髄など頭に近い部位の脊髄は、呼吸や血液循環など生命を維持するために必要不可欠な臓器を制御する神経を含んでいます。そのため、こういった部位で脊髄損傷が起きた場合、生命の維持が危機に晒されることになります。 その場合には原因の検索や治療に先行して、人工心肺・人工呼吸器などを使って生命の維持を目的とした治療を行うこともあります。 (3) 障害の影響を減らすための治療 最大限の治療を尽くしても、残念ながら障害が残ってしまうことがありますが、そういった場合でも、とても重要な治療があります。それがリハビリテーションを中心とした、障害とともに暮らしていくための治療です。 リハビリテーションを行うことで、障害を受けた機能をほかの機能で代替することができたり、行政や医療サポートを受けながら脊髄損傷を発症する前により近い生活を送ることができたりする可能性があります。 ▶万が一、手術後に後遺症が残ってしまった場合には、再生医療である幹細胞治療が適応になります。もし術後の後遺症にお困りであれば、ぜひ一度当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE まとめ・脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 今回の記事では脊髄損傷とその症状および治療法について解説しました。 脊髄損傷と聞くと一般的には重篤な病態でしばしば身体障害を伴うなどのイメージがあると思いますが、実際にはその原因や治療法が多岐にわたることをご理解いただけたと思います。 そのため、個々の事例によって状況が大きく異なるため、より詳しく知りたい場合は既に受診している、または最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.06.24 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
人工関節置換術、膝の手術を決断する前に知っておくべきこと 膝関節に変形や炎症が起きたりする病気があると、膝に人工関節を入れなくてはいけない状態になることもあります。それが膝への人工関節置換術という名称の手術になります。その手術を決断する前に、手術の流れや合併症、手術に備えて準備するべきことなどを知ることは非常に大事です。 膝関節とは まず、膝関節とは何かについて述べていきます。膝関節は3つの骨で支えられています。太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨、いわゆる膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨の3つです。 その3つの骨と、太ももの筋肉である大腿四頭筋と、膝の腱である膝蓋腱で膝関節をつくっています。これらの3つの骨と筋肉、腱が支え合うことで、私たちが、走ったり、飛んだり、座ったりするときに安定するようになっています。 膝関節の病気 膝関節の病気については様々なものがあります。変形性膝関節症、膝靭帯損傷、関節リウマチなど様々な病気があります。また、スポーツ外傷でも膝の慢性的な障害を起こしたりします。それらの病気の中で、変形性膝関節症や関節リウマチは、変形や炎症が強くなった時に、人工膝関節置換術という、人工関節のための手術を行う必要のある病気です。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝が痛くなり水が貯まる病気です。最初は歩き始めに痛い程度ですが、徐々に階段を登ることが難しくなり、最終的には、休んでいる時も痛みが取れなくなるような病気です。 変形性膝関節症では、膝が変形して、伸ばすことができなくなります。変形性膝関節症の治療法は、症状が軽いうちは、炎症を抑える薬を飲んだり、膝関節にヒアルロン酸の注射をしたり、リハビリを行なったりします。しかし、重症になると、人工関節の手術をするか否かの選択が必要になります。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節内にある『滑膜』とよばれる組織が、異常に増えることが原因で、関節の中に炎症が起きる病気です。関節リウマチでは身体の中のいろいろな関節が破壊されるので、膝だけでなく、手や足など様々な関節に変形を起こします。 関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬や、炎症を抑える薬、免疫抑制剤、ステロイド剤などの薬を飲むことが一番大事です。お薬の治療に併用して、ヒアルロン酸の関節内注射やリハビリなどが行われることもあります。 関節リウマチも治療が遅れたりして重傷になると、人工関節のための手術を行うか同課の選択が必要になります。 膝の人工関節とは 膝の人工関節は、金属や、ポリエチレンやセラミックなどで作られます。変形性膝関節症や関節リウマチなどの病気で、変形し傷ついた膝関節を取り出して、手術によって膝用の人工関節を変わりに入れます。悪くなってた関節を置換えるイメージです。 この人工関節は、膝の動きを再現するために3つの部品から作られています。人工関節の3つの部品は、実際の膝を構成している3つの骨(大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部)の部分をそれぞれ担当しています。 人工関節置換術/手術 膝の人工関節を入れるためには人工関節置換術という手術が必要です。手術が必要ということは、もちろん入院も必要です。昨今の新型コロナウイルスの関係で、入院生活は、家族や友人との面会が制限されているところが多いです。 入院前に入院生活のために必要な物品や、家族や友人との連絡手段を事前に決めておく必要があります。手術は全身麻酔をかけて眠った状態で行われます。そのため、麻酔から覚めて、目が覚めると手術が終わっている状態になります。 手術自体は、膝の皮膚を切り開いて、骨が見える状態になったら、器械を使って傷のある膝の部分を削り、人工関節の形に合わせて残りの骨の形を調整します。形の調整ができたら人工関節をはめ込みます。しっかりと固定できていることを医師が確認したら、縫い合わせます。 手術の傷口にたまった血液を出すための管を入れて傷口をふさぎ手術が終わります。手術の時間は、平均2−3時間程度のことが多いですが、もともとの病気や膝の状態に応じて手術の時間は変わってきます。 人工関節置換術の術後 手術が終わればすぐに退院できるという訳ではありません。手術した関節を安定させるために、リハビリを開始します。リハビリは手術後の状態に応じて開始時期が異なりますが、早ければ手術翌日から段階的に始めることが多いです。 リハビリは、寝たまま膝を伸ばしたりして筋力をつけることから始まり、だんだんと平行棒などを使用したり、歩行器などで歩く練習などへと移行していくのが一般的です。 外来通院でリハビリを実施できる患者さんは退院が早くなりますが、外来に通院するのが難しい患者さんは、手術した病院からリハビリ専門の病院に転院してリハビリを行うことになります。 そのため入院期間は患者さんによって異なりますが、多くは2週〜4週くらいのことが多いです。 人工関節置換術(手術の合併症) 人工関節置換術を行うことで一番気をつけなくてはいけないのが、手術した場所に悪い菌が感染することです。感染すると、腫れたり、発熱したりします。 手術した場所に感染が起きると抗生物質による治療が行われますが、多くの場合、再び手術のやり直しが必要になることがあります。そのほかには麻酔によるアレルギー反応や、手術によって身体が防御反応を示し、血液が固まりやすい状態になることから血栓症の心配もあります。 手術中はもちろん、手術後にじゃ身体を動かすことができないことから、血の流れが滞ることで静脈内に血栓という血液が固まったものができる事がああります。これが深部静脈血栓症です。この血の塊が血液の中に混じって肺へ移動することで、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、生命の危機にもかかわりかねないため注意が必要です。 その他、術後としては、人工関節のゆるみや、歩けるようになったことで逆に転倒し、脱臼や、その周りの骨を骨折するという心配もあります。もちろんこれらのリスクには予防法があります。手術に際しては主治医から説明を受け、十分に納得して挑んで頂ければと思います。 人工膝関節置換術/手術の一般的なリスク ・細菌による感染症(抗生物質、再手術) ・麻酔によるアレルギー反応 ・肺塞栓症、深部静脈血栓症 ・人工関節は、緩むことがある ・転倒による脱臼や骨折の可能性 ・その他 まとめ・膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 人工関節にするには、手術が必要なため入院が必要です。入院期間は短くはなってきましたが1か月ほどは見ておきたいものです。また、手術を行うことによる合併症のリスクもあります。できれば膝に違和感を感じたり、痛みを感じるようになった時は早めにリハビリや投薬などの保存的治療を受けて手術を避けることが一番です。 ただ、既に症状が進んでしまった場合は、しっかりと説明を受けて納得して手術を受けましょう。 ですが近年は医学が発達、「再生医療」という新しい先端医療を選択できる道ができました。この方法なら手術が不要で、入院も不要という興味深い方法です。 https://youtu.be/N1DJGcURhsg?si=rMtZGgghatI3U2n0 ▶山や川が好きな患者様。再生医療(幹細胞治療)を体験されたご友人にお薦めされご来院。 手術に不安をお待ちの方は、当院のような再生医療専門の医療機関に問い合わせてみても良いでしょう。いずれにしても人工関節になると、元には戻せないだけによく理解してお取組みください。 また、昨今は新型コロナウイルスの関係で面会が制限されています。家族と会えない数週間は、患者さんにとって、とても寂しくつらい期間です。手術のために入院する患者さんは、家族や友人とビデオ通話ができるように準備などをしてのぞむのも一つ方法ではないかと思います。 以上、膝への人工関節置換術、その手術を決断する前に知っておくべきことについて記載させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 ▼ 再生医療が膝関節の治療を変える! 手術不要、入院も必要ない日帰りで治療する膝関節症の新たな選択肢、再生医療
2022.06.21 -
- ひざ関節
- 膝に赤みや腫れ
- 膝の慢性障害
ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 スポーツ選手は日常的に、身体を動かし、気がついたら慢性的に身体にダメージを与えていることも少なくありません。スポーツ外傷と呼ばれるものです。 走ったり、ジャンプしたりなど多くのスポーツで行う動作を慢性的に繰り返すことで起こる病気の中で、『ジャンパー膝』と呼ばれる、「大腿四頭筋腱付着部炎」と呼ばれる病気があります。 この記事では、通称『ジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)』について、その症状および治療法について医師が監修し解説します。なお、本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝とは、スポーツを日常的に行い膝に負担がかかる人が起こりうる病気で、いろいろなスポーツが原因で起こります。 ジャンプしたり着地したりの動きを多く繰り返すスポーツ(バレーボールやバスケットボール、走り高飛びなどの陸上競技など)で多く起こります。また、突然走ったり止まったりを繰り返すスポーツ(サッカー、ラグビー、アメフトなど)でも起こりやすいです。 野球やソフトボール、テニス、バトミントンなどのスポーツでも生じることが多いと言われており、走ったり、ジャンプしたりをたくさんするスポーツならどのようなスポーツでも発症する可能性はあります。 競技のレベルや強度が上がってくる中学校以降の学生だけでなく、日常的にスポーツを行なっているプロスポーツ選手でも見られ、サッカー元日本代表の内田篤人選手もこの疾患に苦しんだと言われています。 膝蓋骨に付着する腱のオーバーユース(使いすぎ)による炎症であるジャンパー膝は、その炎症部位により以下の2つに分類されます。 ・大腿四頭筋腱の膝蓋骨付着部=膝蓋骨の上に付着する腱の炎症 ・膝蓋腱の膝蓋骨付着部または脛骨粗面付着部=膝蓋骨の下に付着する腱の炎症 いずれの場合も、腱のオーバーユースによる炎症という原因は変わりませんが、障害部位によって原因となる動作や症状、治療法は異なると言われています。日常的な腱のオーバーユースによる障害のため、通常は徐々に症状が進行していくためほとんどの患者は症状が出現してから数ヶ月後に受診するのが現状です。 ジャンプや走るなどの動作で慢性的に膝に力が加わると、膝の靭帯に負担がかかります。この膝への靭帯の慢性的な負担によって、靭帯や腱に炎症を起こしたり、筋繊維などを傷つけてしまうことが原因でジャンパー膝が起きると言われています。 ジャンパー膝の症状 症状は、最初は軽症のことが多いですが、徐々に悪化してきます。 最初の症状としては、世間で、『膝のお皿』と呼ばれている部位である『膝蓋骨』の下側を押すと痛みを感じたり、膝を動かした後に痛くなったりする程度のことが多いです。多くの場合では、スポーツの後に痛みが悪化することが多いです。 注意すべきは、痛みが強くても、走ったりジャンプしたりはできることが多いため、スポーツ選手は痛みを我慢して、運動を続け、どんどん症状が悪化してしまうということが非常に多いということにあります。 最初のうちは、スポーツは普通に行うことができ、スポーツの後に膝に違和感や、痛みを感じる程度のことから始まります。しかし、その痛みを我慢し、膝を使い続けて、徐々に悪化してしまうと、スポーツ中にも痛みを感じるようになります。そのような段階になると、膝蓋骨の下側を押すと、顔をしかめてしまうほどの激痛で、しばらくその場から動けなくなるようなことも多いようです。 それでも痛みを我慢して、スポーツを続けると、スポーツなど運動中だけに関わらず、日常の歩行をはじめ、常に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、痛みでスポーツを継続することが困難になります。さらにスポーツを続けると腱や靭帯が千切れてしまうこともあります。 ジャンパー膝の検査 ジャンパー膝は、症状が出るに至った動作・経緯である病歴とその症状から診断されることが多く、診断自体には画像検査などの特殊な検査を要しないことがほとんどです。膝関節の屈曲や伸展によって誘発される、膝蓋骨の直上または直下の違和感や痛み・熱感が一般的な症状です。 しかし、膝をぶつけたなど明らかな外傷がある場合や病歴、症状が典型的でない場合は膝関節の超音波検査やMRIといった特殊な検査を要する場合もあります。 あくまでこの診断は専門家による評価を前提としているため、安易に自分や非専門家による判断を下さず、整形外科などの医療機関での評価を推奨します。 ジャンパー膝の治療 治療は重症度によって大きく変わってきます。 保存療法 症状が比較的軽症の人は、膝を休めて、安静・休養をとることだけで治ります。しかし、実際には軽症のときは、スポーツ後のみの痛みで、スポーツのプレー自体に影響がないので、そのままスポーツを続けて悪化させてしまうことが多いのが現状です。 スポーツを続ける場合でも、スポーツでの膝への負担を減らし、スポーツを行う前にストレッチを行うことや、アイシングなどで冷やし炎症を抑えることも治療の一つであると言われています。 また、状況に応じては、ステロイドという薬を傷んでいる場所に注射して炎症を抑えることもありますが、腱自体を弱くしてしまい、腱を千切れさせてしまうこともあると言われています。またヒアルロン酸を注射するという治療方法もあります。 ジャンパー膝の治療はリハビリテーションが中心となります。前に述べた通り、ジャンパー膝を含むオーバーユースによる腱の炎症の治療は一般的には以下のような過程があります。 1)原因となる動作の制限:膝関節の屈曲・伸展を中心とした炎症となる原因の動作を、理想的にはやめることが推奨されますが、やめることが困難な場合には頻度や負荷を減らすことで炎症の鎮静化を図ります。 この原因動作の制限は治療の基本となり、症状が出た後にも原因動作を続けることはしばしば症状の悪化や長期化を引き起こします。疑わしい症状が出た場合は速やかに原因動作を中止し安静を保ちながら専門家に相談しましょう。 2)鎮痛:痛みが強い場合にはそのほかの動作に支障をきたすこともあるため、症状に応じて鎮痛薬を内服したり、場合によっては膝関節周囲に注射したりすることもあります。しかし、多くの場合は原因となる動作の制限が鎮痛の効果も果たすため、原因動作の制限でも症状が改善しない場合や痛みが強い場合に鎮痛薬の使用を考慮することになります。 3)原因となる動作への復帰:炎症の改善の経過を見ながら、徐々に膝関節の使用を再開します。ジャンパー膝の治療を行う医療機関では、症状に応じたリハビリテーションプログラムを使用することが多く、早期に競技へ復帰するためにこのリハビリテーションは必要不可欠となります。多くの場合は、軽い負荷から徐々に通常または重い負荷をかけて膝関節の運動を行っていきます。負荷の制御は専門のリハビリテーションプログラムに基づくステップアップを要するため、受診している医療機関での継続的な評価を受けるようにしましょう。 手術療法 それでも重症になってしまい、膝の靭帯や腱が千切れてしまうと、膝を伸ばすことができなくなります。このような段階になってしまうと、手術を行わなくてはなりません。 手術では膝を切り開いて行う必要があります。そのため、全身麻酔という、寝た状態で行う手術が行われることが多いです。手術した傷が感染してしまう可能性もありますし、全身麻酔でのアレルギーなどの副作用が生じる可能性もあり、1−2週間入院をする必要があります。 ただし、手術を行い退院したからといって、すぐにスポーツに復帰できるわけではありません。手術直後は歩行するのにも練習が必要な状態です。歩けるようになった後も、リハビリを行う必要があり、スポーツへの復帰までに3−6ヶ月以上は覚悟せねばなりません。 まとめ・ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝はスポーツを行う人にとって誰でも起こりうる病気です。 ジャンパー膝は、「大腿四頭筋腱」または、「膝蓋腱」のオーバーユース(使いすぎ)による炎症で、ジャンプ・着地、走る・止まるなどの急激な動作を繰り返すスポーツ外傷では比較的よく知られた疾患です。 重症度によって治療の方法は異なり、早く治療を開始することで重症化を防ぐことができる病気です。『症状が軽いから大丈夫』『スポーツが継続してできるから大丈夫だ』と考えて、無理してスポーツを継続すると、重症化してしまい、スポーツへの復帰がかえって長引いてしまいます。 個々の事例によって状況が大きく異なるため、膝に違和感を感じたら早めに医療機関等、病院を受診して医師の診察を受けることを推奨します。 以上、今回の記事ではジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)とその症状および治療法について解説しました。参考にしていただければ幸いです。 ▼ ジャンパー膝をはじめとしたスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.06.20 -
- ひざ関節
- 膝の外側の痛み
- 半月板損傷
半月板損傷の手術!メリットと、デメリットについて解説 半月板損傷は、激しく走ったり、ジャンプをしたりするアスリートの膝にとって、つきものであるとも言える外傷です。また加齢などによって組織がもろくなる高齢者にも起こります。 治療のためには、手術が必要となることがありますが手術には、メリットとデメリットが存在します。 この記事では膝の半月板について概要をご説明した上で手術が必要な場合、手術を受ける場合のメリットとデメリットもご説明します。 納得して治療をお受けいただくための一助になればと記しました。半月板損傷に治療に対してご参考にして頂ければ幸いです。 半月板損傷について わたしたちの膝には、膝の内側に大きい内側半月板、膝の外側に外側半月板という2つの半月板が存在します。この半月板は上から見るとアルファベットの「C」の型をしています。 材質的なイメージはゴムのように、衝撃に対するクッションとして膝関節に起こる衝撃吸収材として機能しています。 そのほかにも膝の半月板には、接触する面の形状が異なっている脛骨と大腿骨の接触面積が増加し、互いにフィットしやすくなります。そのために、膝関節がより安定するようになり、正しい荷重配分する役割を担っています。 また、半月板は大腿骨と脛骨の間にあるため、両方の骨と骨が直接こすれ合うのを防いでいます。半月板の損傷は、スポーツをされる人にとって、起こりがちな症状ですので注意が必要です。 急に体をひねったり、曲げたり、衝突やジャンプを繰り返していると、半月板の負担が増して損傷する危険性が高くなります。 また、高齢者にとって半月板は加齢とともに弱くなり、損傷したり、断裂しやすくなります。事実、半月板の断裂は、老化現象として普通に起こりうることです。 半月板が損傷すると、膝を曲げたり、伸ばしたりする動作が不安定になり、痛みや腫れが生じて膝が動かなくなったりすることがあります。 半月板損傷の手術 半月板を損傷しても、手術が必要な人もいれば、そうでない人もいます。 その判断は、保存的治療での状況に加え、どのような損傷を受けているのか(損傷の大きさ、部位)、また受傷した方の年齢、活動レベル、ライフスタイルなどをもとに検討します。同時に靭帯損傷の有無や臨床症状も考慮されます。 関節鏡下 半月板手術の種類 半月板損傷に対する手術は、一般的に関節鏡を用いて行われます。その手術は大きく分けて2種類があります。 まずは損傷された軟骨の断裂した部分を縫い合わせ、自然治癒するように修復する半月板修復術(ラスピング、縫合術)です。しかし、損傷のタイプや、損傷部位への血液供給の関係で、修復可能な事例は多くはありません。 もうひとつは、損傷した軟骨を切除し、損傷を受けていない半月板組織を残す、半月板切除術、あるいは半月板部分切除術です。 半月板損傷の手術の種類 1)半月板修復術(縫合術、ラスピング) 2)半月板切除術、部分切除術 https://youtu.be/qH46jDFK9Mc?si=hBwHXPr4IxFpdBZ8 痛みを軽減または、ほぼ取り除ける可能性があります。その結果、リハビリを経てスポーツやその他の活動に復帰できる可能性が高まります。 半月板を外科的に修正することで関節損傷のリスクが軽減される、また損傷部位からの関節炎の発症を防ぐ、または遅らせることも期待できます。 半月板の手術には、切除術と、修復術の二つの種類があります。 半月板損傷、手術の種類 1)切除術 ・文字通り半月板で損傷している部分を切除し取り除く手術 ・損傷部位の縫合が難しい場合に行われ、多くの場合がこちらが選択される 2)縫合術 ・半月板の損傷部位を縫合する手術 ・切除と比べ半月板の温存が可能 ・縫合が可能ならこちらが選ばれる ・注意:再断裂という可能性が高い ・注意:その際は再度手術が必要 手術のメリット それでは、膝半月板手術のメリットをご説明します。 メリット:「変形性関節症への進行を遅らせ、人工膝関節置換術を減らせる」 手術を行うメリットについて、実例から検証された結果についてご説明します。 これによると平均74ヶ月の追跡調査において、半月板を切除する手術群では40%、保存的治療を行った群では27%が人工膝関節置換術を必要としました。 しかし、半月板修復(ラスピング、縫合術)群では人工膝関節全置換術を必要とするほど進行した人はいませんでした。更に変形性関節症の進行を遅らせる可能性がありました。 事例 2020年に「American Journal of Sports Medicine」に掲載された論文で外傷により半月板を損傷した45人のうち、保存的治療を受けた15人、半月板切除術を受けた15人、半月板修復術(ラスピング、縫合術)を受けた15人を観察。 事例(平均74ヶ月の追跡調査) ・保存的治療群:15人 ・半月板切除術群:15人 ・半月板修復術群(ラスピング、縫合術):15人 上記について「人工膝関節置換術」を必要とした割合 ・保存的治療群: 27% ・半月板切除術群:40% ・半月板修復群 :進行しなかった。変形性関節症の進行を遅らせる可能性が高い また2019年に「American Journal of Sports Medicine」に掲載された研究では、半月板修復術、半月板切除術、および保存的治療結果を比較した過去の論文を、科学的手法を用いて厳格に検証するメタアナリシスが実施されました。 この論文では、半月板修復術を受けた229人、半月板切除術を受けた74人、手術を行わずに保存的治療を行った41人が対象となっています。 10年後のフォローアップでは 変形性関節症へ進行率 ・半月板修復群では53.0% ・半月板切除群では99.3% ・非手術群では95.1% 人工膝関節置換術の実施率 ・半月板修復術群33.5% ・半月板切除術群51.5% ・非手術群45.5%でした。 対象者 ・半月板修復術を受けた229人 ・半月板切除術を受けた74人 ・手術を行わずに保存的治療を行った41人 10年後のフォローアップでは、半月板修復群では53.0%、半月板切除群では99.3%、非手術群では95.1%に変形性関節症の進行が認められました。また人工膝関節置換術の実施率は、半月板修復術群33.5%、半月板切除術群51.5%、非手術群45.5%でした。 このことから、半月板修復術が非手術群や半月板切除術より、関節損傷や関節炎のリスクを低減することが期待できます。できる限り半月板の完全性を維持することで、より長期的に大きなメリットを得られることが期待できます。 結果より 半月板修復術は、非手術群や半月板切除術より、関節損傷や関節炎のリスクの低減できる可能性 半月板の完全性を維持すれば、長期的に大きなメリットを得られる可能性 半月板手術のデメリット 過去数十年の間に、半月板をできるだけ多く保存することの重要性が明らかになってきました。 先に説明したように、半月板は膝への衝撃を吸収するために非常に重要な役割を担っています。半月板が破壊されると、関節軟骨の接触圧が増加するため、変形性膝関節症の進行が早まる可能性があります。 加齢などによる変性に起因する内側半月板損傷に対し、関節鏡下半月板切除術と保存的治療の臨床的・放射線学的結果を比較した研究があります。 この研究では、146人の患者(半月板切除術群、90人、保存療法群、56人)を評価対象としています。治療後、すべての臨床結果は両群で有意に改善されましたが、変形性膝関節症は、半月板切除群で有意に進行していました。 先に紹介した外傷による半月板損傷に対する治療結果の論文も含め、変性に起因する半月板損傷半月板損傷であっても半月板切除術は、変形性膝関節症をきたすデメリットがあります。 半月板損傷の手術:デメリット 切除術 ・変形性膝関節症へ進行する可能性 ・人工関節への再手術の可能性がある ・ 縫合術 ・半月板を温存できる ・変形性膝関節症へ進行を遅らせる ・再断裂の可能性があり、再手術(切除術の可能性が高い)が必要 まとめ・半月板損傷の二つの手術!そのメリットと、デメリット 半月板損傷に対する手術のメリットと、デメリットをご説明しました。 ほんの数十年前までは、一般的に半月板損傷後は、半月板を完全に切除していましたが、最近は残された半月板を温存すること、できる限り半月板を修復することが一般的です。 半月板損傷の結果手術が必要だと判断された場合は、しっかりと担当医と相談し、メリット・デメリットを理解して手術に臨まれることをお勧めいたします。 手術を受けたがそれでも改善されないなら、再生医療という最新の医療を考慮することが可能です。特に幹細胞治療は、ご自身の脂肪から幹細胞を抽出し培養、患部に投与することで膝の状態を大きく改善できる可能性があります。 手術の経過が思わしくない、手術をしたくないという場合を含め興味があればいつでもご相談ください。 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の治療の新たな選択肢、再生医療で手術せずに症状を改善できます ▼以下もご参照下さい 膝半月板損傷の治療法と手術のリスクを徹底解説
2022.06.18 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
膝の痛みは多くの方が悩まされている症状のひとつです。 膝は座る・立つ・歩くといった日常動作に深く関わるため、症状が強くなると日常生活への影響は大きなものになります。とくに「朝寝起きに膝が痛い」といった症状をご経験された方も多いことと存じます。 そこで本記事では、寝起きで生じる膝の痛みを中心に医師の見解からご紹介します。 寝起きに膝が痛む原因 寝起きに膝が痛む症状は「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」疾患の特徴です。それでは、なぜこのような症状が起きるのでしょうか。 関節は骨と骨のつなぎ目ですが、そこにはクッションの役割を果たす「軟骨」と、潤滑油の役割を果たす「関節液」があります。 関節リウマチや、変形性膝関節症といった疾患ではこの軟骨に障害が及んだり、関節液の量の調整がうまくいかなくなったりする結果、しばらく関節を動かさないと朝起きたとき時や、動き始めのとき時にこわばりや、痛みを感じることがあります。 関節を動かしてしばらく経つと、関節液の量が自然に調節されて症状が改善することがあります。ここからは、これらの主な原因となる関節リウマチと変形性膝関節症について解説していきます。 原因①|関節リウマチ 関節リウマチは膝を含む全身の関節に起こる炎症を特徴とする疾患です。その原因には不明なところが残っているものの、関節組織に対する自己免疫の関与が考えられています。 一般的には手足の指の関節から始まることが多く、左右対称制の症状、朝のこわばりなどの典型的な症状が知られています。自己免疫の関与が考えられている関節リウマチですが、関節外に目や血管に症状をきたすこともあります。 関節リウマチの診断 関節リウマチの診断は、関節症状などの病歴だけで判断しません。レントゲン上での関節裂隙の狭小化などの所見、全身の炎症を反映した血液検査でのリウマチ因子・特殊抗体などを総合的に判断してなされます。 関節炎などの症状が出た場合は整形外科などへの受診をまずは考えますが、関節リウマチは膠原病内科やアレルギー内科などが専門となることがあります。適切な診療科も含めて、気になる症状がある場合はかかりつけまたは最寄りの医療機関に相談してみましょう。 関節リウマチの治療 自己免疫の関与が考えられている関節リウマチの治療法は、消炎・鎮痛といった一般的な関節痛にも共通する治療だけでなく、過剰な自己免疫を制御する免疫調整薬の使用が必要になることがあります。 このような治療は専門家の詳細な評価を必要とする場合が多いため、かかりつけ医の意見をよく聞いて治療を進めるようにしましょう。 原因②|変形性膝関節症 変形性膝関節症は主に加齢により発症すると考えられており、膝関節の痛みやこわばり、関節可動域の制限などといった症状が認められます。変形性関節症は膝以外にも手足や脊椎に発症します。 変形性膝関節症の診断 典型的な症状や病歴があれば必ずしも画像などによる検索は必要ではないとされています。 しかし、非典型的な症状を伴う場合には同様の症状をきたす別の疾患を想定して画像検査や血液検査を必要とします。 レントゲンでは関節裂隙の狭小化や骨棘などといった所見を認めることがありますが、血液検査では変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 変形性膝関節症の治療 変形性膝関節症は基本的には加齢による変化であり、痛みの制御を目的とした治療が主となります。具体的には消炎・鎮痛薬の使用を症状に応じて行うことになります。 しかし、加齢による変化そのものは不可逆性です。消炎・鎮痛薬の使用で症状がコントロールできない場合などは人工関節置換術といった手術による治療を考慮する必要もあります。 関節リウマチと変形性膝関節症の違い 関節リウマチ 変形性関節症 ・関節を動かさないと症状が悪化 ・朝のこわばりを発症する ・関節の摩耗で症状が悪化 ・夜の疼痛 今回紹介した関節リウマチと変形性膝関節症は、同じ膝関節の痛みを生じる疾患ですが異なる特徴もあります。 症状については、一般的には関節リウマチは関節を動かさないと症状が悪化する特徴があるため、朝のこわばりが特徴です。一方で変形性膝関節症は疲労が溜まることで筋肉が緩み、関節に圧力が加わるため夜の痛みが特徴と言われています。 また、関節リウマチは全身の炎症を起こすため血液検査で異常が出ることがありますが、変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 寝起きの苦痛を解消しよう!膝の痛みの予防・対処法 寝起きに膝が痛む原因や治療法などを理解いただいたところで、本項目では予防や対処法といった具体例を紹介します。 寝起きの膝痛に悩まされている読者の皆さんには必見の内容です。 関節リウマチの予防・対処法 関節リウマチの予防 関節リウマチの対処法 食生活の改善 喫煙習慣の改善 安静にする 関節の保温 関節リウマチの発症を抑えるためにも、食生活の改善は必須です。 体重増加の元となる脂質・糖質類を摂りすぎず、良質なタンパク質の摂取を心がけましょう。また、喫煙もリウマチが発症・悪化する要因とされているため、控えておくべきです。 発症後の具体的な対処法としては、安静治療が基本です。全身を休ませる意識をもって心身の疲れを溜めないよう心がけましょう。また、関節を冷やす行為は悪化の要因となりえます。日頃から適度な保温を意識しましょう。 変形性膝関節症の予防・対処法 変形性膝関節症の予防 変形性膝関節症の対処法 生活習慣の改善 靴の見直し 軽度な運動 サポーターの装着 変形性膝関節症の予防策として、体重管理(適度なダイエット)が挙げられます。体重が増えると、膝への負担が増加するのも必然です。生活習慣の見直しからスタートしてみましょう。 また、普段から履いてる靴が適切なものでないと膝に負担がかかります。ハイヒールやサイズが合っていない靴は極力避ける努力も必要です。 対処法としては、適切かつ軽度な運動やサポーターの装着が挙げられます。運動は膝周りの筋肉を伸ばすストレッチなどが適切で、安静にしすぎて筋力が衰えしまわないよう無理ない範囲で行いましょう。 また、サポーターの装着も膝周りの不安感を解消してくれる心強い味方です。 まとめ|寝起きに膝が痛む方はお気軽に相談ください! 今回の記事では朝起きると膝が痛み、歩きはじめ膝に違和感を感じたときに想定される疾患である関節リウマチと、変形性膝関節症の症状と治療法について解説しました。 二つの疾患は類似点もありますが、診断や治療など、大きく異なる点もあります。より詳しく知りたい場合は既に受診している整形外科、または最寄りの医療機関に問い合わせてみましょう。 また、膝に関するお悩みは当クリニックでも受け付けています。ぜひ、お気軽にご相談ください。 ▼こちらも参考にしてください 膝の裏が痛い?その原因と対策、考えられる病気について
2022.06.17 -
- ゴルフ肘
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
- 肘関節
ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 肘に違和感があるな・・・と思い、病院を受診した際に、「ゴルフ肘」との診断されることがあります。これは、ゴルフの経験がない場合にもおこります。なぜゴルフの経験がないの「ゴルフ肘」との診断を受けるのでしょうか?ひょっとして『診断が間違っているのでは?』などと考えてしまうかもしれません。 しかし実際、ゴルフ肘という症状はゴルフをする人に限った病気ではなく、誰でも起こりうる病気なのです。この記事を読んで『この症状はゴルフ肘かも?』と思ったら、早く治すためにも治療が手遅れになる前に、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 ゴルフ肘とは 通称、ゴルフ肘と呼ばれる病気は、正式名称は『上腕骨内側上顆炎』と言います。 『上腕骨』とは、肩から肘の間の骨のことで、『内側上顆』とは、肘の内側のことを言います。手のひらヘソの方向にむけた際に、同様にヘソの方向をむく肘の場所のことを言います。 その上腕骨の内側上顆にある筋肉や腱に炎症が起こった場合に発症するのが、「上腕骨内側上顆炎」つまり、「ゴルフ肘」です。ゴルフでクラブをスイングをした際、肘に痛みが出現することから、ゴルフ肘と呼ばれるようになったといいます。 ゴルフ肘で炎症が起こる内側上顆という場所に付いている筋肉は、手のひらを内側に向けて動かす動きや、物を握るような動きなど、腕のあらゆる動作に関わっています。そのような腕の動作を何度も繰り返し行ったり、使いすぎると、筋肉が引っ張られ、炎症を起こし、ゴルフ肘を発症すると言われています。 この病気ですが、ゴルフの他にもテニスに選手にも発症すると言われています。しかし、実際には、スポーツが原因の人は少ないと言われています。肘の関節を曲げたり、伸ばしたりする動作を繰り返したり、肘関節をたくさん使うような職業の方は誰でも起こりうる病気です。 さらに、仕事をしていない方でも、日常的に肘を酷使している場合、主婦などの一般人にも生じる病気なのです。 ・上腕骨:肩から肘の間の骨を指す ・内側上顆:肘の内側のこと ゴルフ肘の症状と診断 ゴルフ肘の症状は、肘の痛みですが、痛みは、日常生活の過ごし方によって、様々な形で出現します。ゴルフ以外のスポーツ、テニスであれば、ラケットのグリップを強く握った時や、強くラケットを振った場合に痛みを感じると言われています。 日常的に仕事で肘を使う人でしたら、例えば、重い物の積み下ろしを繰り返し行ったり、釘を打ったりする動作を繰り返す時に痛みを感じます。そのため、引っ越し業や大工さんにもよく発症すると言われています。 主婦の方は、料理で包丁を使う動作などの反復作業の中で症状が出現することもあります。ゴルフ肘は、いわゆる肘の使い過ぎによって起こる病気です。そのため、医師の診察でも、肘の曲げ伸ばしを日常的に繰り返ししているか聞かれ、診断の材料になります。 実際の診察現場では、手のひらを上に向けた状態で、テーブルの上に置き、医師が手首を押さえ、手首を上に向けてあげようよう指示をした際に、肘の内側が痛くなるような時に、ゴルフ肘が疑われます。 さらに、レントゲン検査で骨が変形していることや、超音波検査やM R I検査などの画像検査を行い、炎症を確認して総合的に診断が行われます。 ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘の治し方、治療法は、その重症の度合によって変わります。 ほとんどの場合で、肘の使い過ぎをやめ、安静を保てば痛みがひくことが多くあります。肘をなるべく使わないようにすることが必要になるため、場合によってはサポーター等の装具や、テーピングなどを行い、肘を安定させ、肘の安静を保つようにします。 肘を使わないことで自然と炎症が治り、症状が改善してまいりますが、安静を保つことに加えてストレッチや、筋力トレーニングなどのリハビリを併用して行うこともあります。 ただ、痛みが酷い場合などは、薬物による治療も行われます。ステロイドと呼ばれる薬剤を傷んでいる場所に注射したり、痛み止めの薬を服用します。また炎症を抑える薬を飲んだり、湿布を行ったりする治療を行います。 ゴルフ肘の治し方(治療) ・サポーター(装具)肘を安定させ、安静に保つ ・リハビリによる保存療法(ストレッチ、無理のない筋力トレーニング) ・痛み止め、湿布などの薬物の使用 ・悪化すると手術の可能性もあり しかし、治療が遅れたり、症状がよくならない、重症である場合は、手術という選択も行われることがあります。手術などしたくないものですが酷くなると、腱が傷ついていたり、千切れたようになることもあり、そうした場合は、手術が必要になります。 手術を行えば、ほとんどの場合、痛みは改善することが多いのですが、注しなければならないこととして、手術は皮膚を切って傷ついた腱を修復します。そのため、手術することで合併症など傷が感染するリスクもあります。また、少ないながら麻酔によるアレルギーや、副作用の出現もあり得ない話ではありません。 また手術を行った場合は、入院での加療となることで仕事への影響や、ご家族様の負担が増えてしまうのは遺憾ともしがたいものです。 いずれにしましても、このような心配をしなくても良いように、肘に違和感を感じたら早く治すために積極的に医療機関に足を運び治療を開始するようにしましょう。 それでも悪化して手術という場合に、手術を避ける方法があります。それは、再生医療という最新の治療法です。再生医療なら手術をせずに、入院も不要という新しい方法です。興味があれば以下のリンクから詳細を知ることができます。 ▼筋・腱・靭帯損傷に対する再生医療 再生医療は、手術を避けて入院も不要な最新治療方法です まとめ・ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘は、ゴルフを行わない人でも誰でも、起こりうる病気です。 早く治すためには、早く治療に入ることが大切です。手遅れになって重症化しないうちに治療を開始しましょう。治療が遅れると悪化し、結果として手術を選択しなければならないこともあるので、「この程度なら」との自己判断は禁物です。 手術自体、症状の改善以外の部分、感染症のリスクなどもあり、手術後には痛みもあります。さらには昨今の新型コロナウイルスの関係で入院中は面会もできない病院が多く、入院は、辛い体験だったと感じる患者さんも少なくないといいます。 『自分はゴルフをしないから大丈夫だ』と考えず、肘に違和感を感じたら、スポーツ以外、仕事であっても我慢したりせず、手遅れになる前に病院等にて医師の診察を受けられることをお勧めします。 以上、ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのかについて記させていただきました。参考にして頂ければ幸いです。
2022.06.16 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝にたまった水を抜いたあと、注意したいことを解説します 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。 膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものです。 この症状のある方の中には医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が多くあります。この記事では、主に膝の水を膝にたまった水を抜いたあとの注意点について医師が解説します。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節の中には、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されていますが、何かの原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起きるのです。 膝の水はどういう時に抜く? 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断): 膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。 関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療): 膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。 そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。 この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。 https://youtu.be/IyBCkOjTPi8?si=23I9BOV3hdtvHVQq ▶こちらの動画でも詳しく解説しています。是非ご覧ください。 膝の水を抜いた後の合併症 関節穿刺を行った後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。関節穿刺後の一般的な合併症について解説します。 ①感染 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺を行うことで体の表面にいた細菌が関節内に移行することがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ③その他 そのほかの合併症として、特に関節内に薬剤を注射した場合などに起こりやすいものもあります。例えば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症しますので医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意する観察項目 関節穿刺後に気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目についても解説します。 ・症状の持続時間が長い: 通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。 しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなる: 処置からあまり時間が経っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。 通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝にたまった水を抜いたあとに注意したいこと 今回の記事では膝に溜った水を抜いたあとの注意点について解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の痛みに対する新たな選択肢、再生医療は切らずに症状を改善させます ▼併せてお読みください
2022.06.10 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
腱板断裂と五十肩(四十肩)はどう違うのか 肩が痛む時に診断される病気として、「五十肩(四十肩)」と「腱板断裂」とがあります。 『なんだか最近肩が痛いな、年齢のせいかな』『最近肩を動かし過ぎたせいかな』『時間が経てばそのうち治るかな、様子をみよう』などと考え、五十肩(四十肩)だろう…と思って放置していると、実は腱板断裂で治療が必要な状態ということもあります。 そこで、腱板断裂と五十肩はどう違うのかについて比較していこうと思います。 ちなみに「四十肩も五十肩も基本的に同じ」ものです。この名称は、40代〜50代で発症することが多いため、四十肩または、五十肩という名称で呼ばれています。 五十肩(四十肩)とは?!(肩関節周囲炎) 年齢を重ねると肩の動きが悪くなって、手をあげる時や、髪の毛を洗う時などに肩が痛みを感じたり、肩の動きが悪くなったり、肩が強張ることがあります。これを世間では四十肩・五十肩と言いますが、『肩関節周囲炎』という診断名が正式名称です。 原因は、『四十』『五十』と言う文字の通り、加齢による影響と、過度に肩を使ったりした際の過労と言われています。それらの原因が、肩関節を構成している骨や軟骨、靭帯、腱などを痛めて肩関節の周りの組織に炎症を起こすことが原因と言われています。 四十肩で動きが悪くなる原因としては、肩関節の動きをよくするための袋(肩峰下滑液包)や関節を包み込んでいる袋(関節包)が、『くっつくこと』と言われています。 四十肩は、世間でも『そのままにしておいても時が来れば治る』と考えられているように、自然に治ることもあります。しかし放置しておくと、先ほど述べたような関節の周りにある『袋のくっつき』が強くなって余計に動かしにくくなることもあるのです。 そのため、症状の進行に合わせて様々な治療を用いることがあります。三角巾などで安静を保つことも治療法の一つです。また、炎症をおさえる薬を使用することもあります。 炎症をおさえる薬は内服をしたり、肩に注射をしたりします。その他には、温めたり、入浴などといった温熱療法を行ったり、関節がかたくなるのを予防したり、筋肉をつけたりといったリハビリが治療のために必要なこともあります。しかし、これらの治療でよくならない時は手術が必要なこともあります。 腱板断裂とは 腱板断裂も中年以降の肩の病気として有名です。腱板断裂はその診断名が表しているように『腱板』が『断裂する=切れて裂ける』病気です。 四十肩と異なり肩の関節の動きが悪くなることは少なく、肩をあげることは可能であることが多いですが、肩の運動痛、肩の夜間痛といった症状は多いと言われています。 腱板断裂で病院に来る患者さんの理由としては、夜も肩に痛みがあり眠れないというのが、いちばん多いようです。また、肩をあげる時に肩の前で『ジョリジョリ』という音が聞こえるという症状がみられることもあります。 腱板断裂の原因としては外傷のことは少なく、はっきり原因がないのに、日常生活の中で少しずつ断裂が起きていくと言われています。利き腕に多いと言われているので、肩を過度に使い過ぎることも原因の一つなのではないかと言われています。 腱板断裂の治療については、三角巾を用いて安静を保つことが大事です。1週間から2週間を安静で保つことで70%は改善するとも言われています。また、肩にヒアルロン酸や副腎皮質ホルモンの注射を打ったりすることもあります。それらの症状で改善しない時は手術が適応となることもあります。 手術では関節鏡という機械を使用して行うものと、直接切って開いて行うものとあります。 関節鏡を用いる手術の方が、傷口は小さく、手術の後の痛みも少ないです。しかし、断裂が大きくなると、縫うことが、関節鏡による手術では難しくなり、直接切り開く方法を取られることが多いです。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違い 腱板断裂と四十肩は非常に似ています。症状も似ていますし、発症する年齢もどちらも四十代〜五十代の中年世代が多いです。 腱板断裂と五十肩では何が違うのか 自分でわかる範囲内の症状としては、先ほど触れたように『腱板断裂は四十肩に比べて、肩の動きが悪くなることが少ない』『腱板断裂は四十肩に比べて夜間の痛みが多い』『腱板断裂ではジョリジョリという音が聞こえる』と言った程度でかなり似ています。 診断の場面でも、身体診察だけではどちらの疾患かわからないことが多いのです。そこで実際の診療では、腱板断裂、四十肩どちらも、レントゲンやM R Iを行って診断していきます。 腱板断裂ではレントゲンを撮影して、肩峰という骨と骨頭の間が狭くなっていたりします。 また腱板断裂ではM R Iを撮影すると骨頭の上が白く光ったりします。一方で、四十肩を診断する時は、レントゲンやM R Iなどで、このような所見がないことを確認することが大事と言われています。 まとめ・腱板断裂と五十肩(四十肩)はどう違うのか 何度も述べているように、自分でわかる症状では腱板断裂と四十肩はかなり似ています。『四十肩と思って放置していたら、実は腱板断裂だった』『症状がどんどん悪くなっていってしまい治療が遅れた』『治療が遅れたため、なかなか良くならずに手術が必要になってしまった』などのことはよく耳にします。 腱板断裂と四十肩は症状が似ていても、別々の病気です。自分の判断でどちらかと決めずに、手遅れになる前に、症状が出た際は早めに専門科に相談するのが良いでしょう。 以上、腱板断裂と四十肩はどう違うのかについてご説明させて頂きました。参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼こちらもご参考にしてください 五十肩・四十肩の腕を上げると肩関節が痛む症状におすすめの治療法
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- 脊椎
- 腰椎分離すべり症
腰椎すべり症のつらい症状に悩まされ「治らないのだろうか」「手術はしなければならないんだろうか」と不安を抱える方も多いでしょう。 結論からいえば、腰椎すべり症は自然には治らないものの、適切な治療によって改善する可能性があります。 非外科的治療で効果がみられない場合のみ、手術も検討します。 本記事では、腰椎すべり症の症状や治療法などについて具体的に解説します。 ぜひ本記事を参考に、腰椎すべり症の治療を前向きに検討してみてください。 【結論】腰椎すべり症は自然に治ることはないが治療によって症状を緩和できる 腰椎すべり症は自然に治ることはほとんどありません。 しかし、医療機関にて適切な治療をすることで症状を緩和できる病気です。 腰椎すべり症の方が医療機関で行える治療は、次の2つあります。 非外科的(手術しない)治療 外科的(手術する)治療 それぞれ詳しく解説します。 腰椎すべり症の非外科的治療 腰椎すべり症の治療は、手術しない「非外科的治療法」から始めるのがほとんどです。 主に、以下の方法で症状を緩和させます。 安静にする:腰の負担を軽減し、必要に応じてコルセットを併用 鎮痛薬を使用する:通常は非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)を使用 神経根ブロック(注射)を行う:神経の根元に局所麻酔薬やステロイド薬を注射し、症状を緩和 つらい症状が落ち着いてきたら、お腹と背中を鍛える筋肉トレーニングやストレッチを行い、病状の進行を防ぎます。 腰椎すべり症(腰椎分離症)で注意すべきことは以下の記事でも解説しているので参考にしていただければ幸いです。 腰椎すべり症の外科的治療 以下のいずれかに該当する場合は、手術による治療も検討が必要です。 腰椎すべり症の程度が非常に強い 非外科的治療を行っても症状が改善されない 腰椎すべり症の治療で行われる手術は、主に以下の2つです。 脊椎の減圧術:神経の圧迫をとり、症状を和らげることで腰椎の回復を目指す 腰椎の固定術:腰椎を固定し、不安定な腰椎の安定と骨同士をくっつける(文献1) どのような手術の方法を選ぶのかは、医師が骨の状態をみて判断します。手術が不安である際は、一度医師に相談してみましょう。 腰椎すべり症とは「腰椎の骨同士がずれてしまう病気」 腰椎は腰の骨です。5つの小さな骨が縦にくっつき、腰を支えています。 腰椎をつくっている小さな骨同士がずれてしまう病気が「腰椎すべり症」です。 ここからは、腰椎すべり症の症状と原因、診断について詳しく解説します。 腰椎すべり症の主な症状 腰椎すべり症の主な症状は腰痛です。 腰椎が必要以上に動くため脊髄神経が圧迫され、腰痛や足の痛みを引き起こす可能性があります。 個人差はありますが、脊髄神経が圧迫されることで以下の症状も伴う場合があります。 太もも裏の筋肉のけいれん 背中のこわばり 歩行や立つことが困難 足のしびれ 腰椎すべり症の初期は、症状が現れない場合もあります。 腰椎すべり症の原因 腰椎すべり症の原因は、主に次の2つです。 変形すべり症:椎骨のクッションである椎骨板の水分が加齢により失われ薄くなり、椎骨がずれやすくなる病気 分離すべり症:生まれつき脊椎の一部が不完全、または体操のような腰に負担をかける運動の繰り返しで、脊椎の分離が起こりやすくなる病気 腰椎すべり症(腰椎分離症)の原因については以下の記事でも解説しているので参考にしてください。 腰椎すべり症の診断 問診や診察によって腰椎すべり症が疑われる場合、画像検査を行い腰椎すべり症かどうかを判断します。 医療機関では、一般的に以下のような画像検査を行います。 X線検査(レントゲン):腰椎のずれがあるかどうかを確認 CTスキャンやMRI:脊椎の様子をより詳しく観察、あるいは椎間板や神経組織の状態を確認 まとめ|適切な治療で腰椎すべり症の症状を緩和しよう 腰椎すべり症は適切な治療を行えば、症状が改善して以前の生活に戻れることも期待できます。 腰椎すべり症の初期は症状が出ない場合もあるため、今回解説した症状が出たら早めに受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、自然治癒力を活かした治療が可能です。 メールによる無料相談やオンラインカウンセリングも受け付けておりますので「症状が繰り返される」「手術の後遺症がつらい」などお困りの方は、ぜひ当院までご相談ください。 No.S081 監修:医師 加藤 秀一 腰椎すべり症に関してよくある質問 腰椎すべり症は手術が必要ですか? 腰椎すべり症の治療では、必ず手術するわけではありません。 最初は鎮痛剤やブロック注射で症状を緩和し、腰の負担を減らすために安静に過ごして様子をみる場合がほとんどです。 症状の度合いが強すぎる、または鎮痛剤や静養で改善されない場合は手術の必要性があります。 手術に不安を感じる場合は、治療法について一度主治医に相談してみましょう。 腰椎すべり症は発症からどのくらいで治りますか? 腰椎すべり症は自然に治らないため、一度発症したら継続的に通院や治療が必要です。 個人差はありますが、腰椎すべり症で手術した場合は約10日間で退院する場合がほとんどです。 退院後も約2週間は自宅で静養し、手術から約1カ月間経過してから通勤・通学が許可されます。 ただし、入院期間や通勤・通学の再開時期は個人差があります。 参考文献 文献1 水野正喜ほか.腰椎固定術の基礎と低侵襲手技の発展.脳神経外科ジャーナル.2017.26 (5), 353-361
2022.06.09 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板断裂(腱板損傷)とは、肩の関節を安定させるための筋肉(腱板)が傷ついたり、腱組織が断裂して切れていたりする病気です。 腱板は、肩のなかで最も損傷を受ける部位であり、腱板が損傷すると腕の力が入らなくなり、とくに腕を上げようとしたときに痛みを引き起こします。また、夜に激しく痛み、眠れなくなる経験をした方もいるのではないでしょうか。 本記事では、肩に激しい痛みを起こす腱板断裂(腱板損傷)において、やってはいけないことや先端医療による治療について詳しく解説します。 日常生活の動作が原因となることもあるため、どのような動作を避けて安静を保つと良いのか、この記事を参考に取り入れてみてください。 腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないこと4つ 腱板損傷直後は基本的に、肩周囲の安静を保つべきです。通常は三角巾を用いて、腕の動きを最小限にするように配慮します。 安静は急性期における対処法ですが、急性期が過ぎた後も、できる限り避けた方が良い動作があります。腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことは、以下の4つです。 ・頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作 ・首の後ろで腕を動かす動作 ・上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作 肩を後方に回した位置で行う運動腱板損傷後に避けるべき動作を紹介しますので、一つずつチェックしながら症状を悪化させないようにしていきましょう。 頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作 腱板損傷を発症した後、とくに発症初期は以下のような動作や運動は控えたほうが良いでしょう。 ・頭上に手を持っていく動作 ・頭上へ重いモノを持ち上げる動作(重い荷物を上げたり、高所から下すような動作) また、ボールを投げるような動きや、ジムでバーベルを頭の上に持ち上げるなどのウェイトトレーニングは、しばらく行わないようにします。これらの動きは、肩に過度のストレスを与えるだけでなく、損傷した部位にさらなる傷害と痛みを引き起こす可能性があるのです。 したがって、腱板損傷後は「オーバーヘッドでボールを投げること」「重いボールを上半身の力に頼って投げること」「水泳のクロールや背泳のように、頭上に右手を持ってきて力を入れて引き下げる」ようなストロークを避ける必要があります。 首の後ろで腕を動かす動作 バーベルやバーなどを、頭や首の後ろで上下させる運動も避けるべき動作のひとつです。 この運動は、腱板に過度の負担をかけ、さらなる肩の問題や慢性的な痛みを引き起こす危険性があります。この動作の問題は、肩の「外旋(骨を外側にねじるような運動)」にあります。 頭や首の後ろで上下させる運動では、肩をしっかりと外旋させる必要がありますが、これは肩にとって非常に負担のかかるポジションです。 この動きをすると、関節を構成する組織をさらに損傷してしまい、治癒までの時間が非常に長くなりかねません。 上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作 別名アップライトローと呼ばれる動作のことです。 アップライトローはジムでよく見かけるエクササイズのひとつですが、このエクササイズのメカニズムを見れば、なぜこの動作が腱板損傷後に避けるべき動作であるか、理解できるでしょう。 アップライトローは、上半身を起こした状態で肩を開き、両手に持ったバーベルなどの重りを首元まで引き上げ、持ち上げる動作です。 このエクササイズの問題は、腕を置かなければならない位置にあります。この位置は「内旋」と呼ばれ、アップライトローをするために腕を挙上させると、腱板が肩の骨に挟まれます。これは腱板損傷を引き起こす原因となる動作そのものでもあります。 肩を後方に回した位置で行う上運動 ベンチディップスとも呼ばれるエクササイズが該当します。 具体的には、椅子などに両手をついた状態で腰を座面よりも低い位置まで落とし、肩を後方に回した状態で、主に二の腕に相当する上腕三頭筋に負荷をかける運動です。 ベンチディップスは、腰を落としすぎて上腕が肩と平行な位置以上になってしまうと、肩関節に過度な負荷がかかります。 肘を開きすぎても閉じすぎても、上腕三頭筋に負荷がかかるため、腱板損傷後には避けるべき動作のひとつです。 腱板断裂(腱板損傷)が改善しない場合は再生医療による治療の可能性 腱板損傷は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着きますが、放置すると悪化する恐れがあり、最悪の場合、完全断裂のリスクがあります。症状が改善されなければ、手術が必要になることも考えなければなりません。 しかし、近年では身体への負担が大きい手術を回避でき、入院や長期間のリハビリが不要の「再生医療」といわれる先端医療で、損傷した腱板の再生を期待できます。 もしも、あなたが腱板損傷の症状が改善されていない、手術が必要な状況でしたら、再生医療を検討されても良いかもしれません。 このように再生医療による治療の可能性はありますが、まずは放置せず、手遅れになる前に整形外科医を受診して、適切な治療を進めていきましょう。 まとめ|腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことに注意して負担を減らそう! 本記事では、腱板損傷後に避けるべき動作、やってはいけないこと4つをご説明しました。 腱板損傷後は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着いていきます。外傷後や症状がなかなか改善しない場合は、どうしても手術を検討しなければなりません。しっかりと安静を保ち、保存的治療に反応すれば、完治も期待できます。 術後も含め、治療の一貫でリハビリを行うこともありますので、もし避けるべき動作についてさらに詳しく知りたい場合は、リハビリの機会などを活用して相談してみることをおすすめいたします。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷をはじめとする肩に関する病気にお悩みの方を対象に、無料相談を実施していますので、お気軽にご相談ください。 腱板断裂(腱板損傷)やってはいけないことのよくある質問 腱板断裂(腱板損傷)を放置するとどうなる? 放置した場合、肩の機能が低下し、別の病気に移行する可能性があります。腱板断裂を放置しても自然に治ることは期待できず、治療やリハビリが欠かせません。 放置をして、症状が進行すると手術による修復が難しいだけでなく、人工関節手術を検討する可能性もあります。 以下の記事で、腱板断裂を放置するリスクなどについて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 腱板断裂(腱板損傷)はどれくらいで治る? 損傷の程度によって異なりますが、日常生活できるまでは2〜3カ月が目安です。 肩周囲に多くの負担をかけるスポーツや重労働の場合は、6カ月を目安としてください。 治療方法によっても回復期間は変わるため、専門医と相談しながら適切な対応が重要です。