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PLDDの有効性と術後の痛みや経過について 首や腰の痛みを引き起こすとともに、手や足へ分布する神経を圧迫して厄介な痺れを引き起こす椎間板ヘルニア。進行すると、筋力低下をきたしたり、排尿障害を起こしたりもします。 つらいヘルニアの治療法の一つであるPLDDは、 手術療法の中でも体への負担が非常に低いとされています。傷は小さく日帰り手術もできる、一見魅力的な方法と思えますが、有効性や安全性はどうなのでしょうか。 この記事ではPLDDについての紹介や、有効性・術後の経過などについて解説します。 椎間板ヘルニアの治療とPLDD 椎間板ヘルニアの治療の基本は、 痛み止めやリハビリなどの「保存療法」です。しかし、保存療法の効果がない場合には手術が検討されます。 現在、椎間板ヘルニアの手術は多くの種類があります。特に「体への負担が少ない」とされている治療の一つがPLDDです。 PLDDはPercutaneous Laser Disc Decompressionの略称で、日本語では経皮的レーザー椎間板減圧術と呼ばれている術式です。現在、いくつかの病院で腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアに対する治療として行われています。 PLDDでは特殊な針を使って背中から椎間板の中央へとレーザーファイバーを通します。椎間板の中央部には「髄核」というゲル状の柔らかい物質があり、髄核が飛び出してくるのがヘルニアの原因です。 PLDDではこの髄核をレーザーで焼いて気化させてしまうのです。これにより、椎間板の内圧を下げることができます。焼いた部分は空洞化し、椎間板は穴を埋めようと縮むため、ヘルニアが改善するのです。 PLDDで用いる針は細く柔軟性が高いものです。局所麻酔のみで手術が可能で、侵襲(手術の傷) が少ないため、病院によっては日帰り手術も可能となっています。傷も非常に小さくて済みます。 PLDDの費用は? PLDDは公的健康保険の適応として認められていません。そのため、治療に関連する医療費全てが自費になります。 つまり、手術手技に関連した費用のみでなく、適否を見極めるための診察や検査の費用・関連した処方などもすべて患者さんの自己負担となるのです。病院によって費用は異なりますが、数十万の医療費がかかります。 かつてPLDDは厚生労働省の指定する「先進医療」であり、特定の医療機関では保険診療との併用が認められていました。この場合は手術に関連した費用のみ自費で、その他の診察や検査・処方にかかわる費用は公的保険を用いることが可能でした。 しかし、平成24年に「有効性や効率性が十分に示されていない」ということで先進医療の指定から削除されたのです。 PLDDって効果がないの? 先進医療から取り消されたということは、 効果がないということでしょうか。 PLDDの有効率は文献によってばらつきますが、おおむね70%程度と報告されています。もしかしたら、「そんなに悪くないのでは」と感じた人もいるかもしれません。 腰椎椎間板ヘルニアにおいては、診療ガイドライン上手術療法で推奨されるのは「椎間板切除術」です。椎間板切除術後、ヘルニアが再発して再手術が必要になるのは、術後5年で1.5〜8.5%と報告されています。 単純比較はできませんがPLDDはこれらよりも治療成績に劣るとされています。 もう一つ、頭に入れておかなければいけないことは、PLDDが効かないヘルニアがあるということです。先ほどの「70%の人に有効」というのは、PLDDの効果が期待できる人を選んで行った成績です。 PLDDが適しているのは、保存療法が効かない患者さんのうち、ヘルニアが「後縦靭帯」を突破していない患者さんです。 図1,2 後縦靭帯を突破していない図 引用)腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44 PLDDは,椎間板の内圧を下げることでヘルニアによる圧迫を改善させる効果があります。しかし、後縦靭帯を破って外に出てしまったヘルニアの場合はすでに椎間板内圧が下がってしまっていて、髄核を焼き飛ばしてもヘルニアは縮みません。 残念ながら適切でない方に行われるケースもあり、そうなると「効果がない」のです。 PLDDの手術中や手術後の痛みはどのくらい? PLDDは小さな針を刺すだけなので、他の手術のように手術に伴う痛みが少ないことがメリットの一つです。 最初に皮膚に局所麻酔を行うことで、針を刺すときの痛みもカバーされます。そして、切開をする必要がないため、手術後に「傷の痛みがつらい」ということがありません。 したがって、手術に関連した痛みは最小限で済む術式と言えるでしょう。 PLDDの術後の経過は? PLDDは他の手術よりも即効性には乏しいです。 ヘルニアが退縮することで、神経の圧迫が軽くなっていきますが、それには時間がかかるのです。個人差はありますが、術後1週間程度から徐々に症状が改善され、2〜3ヶ月ほどで良くなったことが実感されてきます。 そのため、すぐにでも良くしたい、という人は他の方法を選んだ方が良いでしょう。 PLDDにも合併症はあるの? 傷が小さく一見安全な手術のように思えるPLDDにも、合併症が起こるリスクがあります。 合併症の例として、感染やレーザーの影響による骨壊死などが挙げられます。 中でも、術後後遺症として長期に日常生活に深刻な影響を与えるのが神経障害です。レーザーの誤照射や針による損傷、血腫を作ることで圧迫されることで神経が傷つき、もともとあった痺れが悪化したり新規に痺れたりすることがあります。 まとめ・PLDDの有効性と術後の痛みや経過について 椎間板ヘルニアの治療法の一つであるPLDDは、低侵襲であることから、早く日常生活に復帰したい人にとっては良い選択肢かもしれません。 しかし、高額な費用負担、有効性の問題、また適応が広くないことなど手術を受ける上での問題も少なくありません。 また、いくら体への負担が少ないといっても、神経障害をはじめとした合併症リスクもあるため、慎重な選択が必要です。 なお、当院ではPLDDを含めたヘルニアの術後後遺症に対して再生医療の一つである「幹細胞治療」を提供しています。これは万能細胞である幹細胞を障害部位へ届けることで組織の再生を促すものです。 従来、神経損傷に対する幹細胞治療では点滴で幹細胞を投与してきました。当院では、点滴に加えて脊髄腔内に直接幹細胞を注入する手法も行っています。 脊髄腔内ダイレクト注射療法により、さらに多くの幹細胞を損傷した神経に届けることができるようになりました。 さらに国内でも有数の細胞加工室の高い技術により、幹細胞を凍結することなく保存しています。フレッシュな幹細胞の投与により、良好な治療成績をおさめています。 https://www.youtube.com/watch?v=5JqLxbYwLJ4&t=3s ▶PLDDの術後後遺症でお悩みであれば、ぜひ当院の最新治療をご検討ください。 参考文献 小坂理也. 整形外科看護 10(4): 329-333, 2005. 加藤昌代, 西山敬浩, 加藤篤史, 笹生豊, 大橋健二郎. 東日本整形災害外科学会雑誌 15(1): 111-114, 2003. 井上和彦, 橋本俊彦, 関根千晶, 千葉純司. 日本レーザー医学会誌 22(1): 5-14, 2001. 慢性疼痛診療ガイドライン 宮本雅史, 中嶋隆夫. 日内会誌 105:2210-2214, 2016. 佐藤正人, 石原美弥, 荒井恒憲, 菊地眞, 持田譲治. 日本レーザー医学会誌 31(2): 146-151, 2010. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. 厚生労働省 HP 腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44 ▼以下のご覧いただけます PLDD治療、そのメリット・デメリットやリスクとは?
2024.03.05 -
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「椎間板ヘルニア手術を受ける予定だけど、手術後の生活のイメージが掴めない」「仕事復帰できるのはいつ頃から?」 このような不安や疑問を抱えていませんか? 本記事では、椎間板ヘルニア手術後のリハビリや仕事の再開時期を解説します。 手術後の生活で気をつけることや注意点も紹介しているので、参考にしてみてください。 痛みやしびれの回復具合に合わせてリハビリを続け、医師の指示を受けながら徐々に日常生活へと戻していきましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活|仕事復帰までのステップ 椎間板ヘルニア手術後の生活はどのように変化するのでしょうか。 ここでは、リハビリや仕事復帰、運転などの再開までの流れや期間を解説します。 痛み・しびれ リハビリ期間 仕事復帰 運転 性行為 手術後の生活プランを立てる際の参考にしてみてください。 痛み・しびれは手術後1カ月ほど続く 手術後は、神経の修復に時間がかかるため、痛みやしびれが1カ月ほど続く可能性があります。 痛みやしびれが出ているときは、神経が敏感な状態にあるため、生活のなかで不便さを感じる場面があるでしょう。 そこで、無理に体を動かすと、症状を悪化させたり、再発につなげたりしかねません。 症状が落ち着くまでは安静に過ごす意識をもつようにしてください。 リハビリを始めるのは手術後1カ月ほど リハビリは、手術後1カ月ほどから開始します。 リハビリは手術後すぐに取り組むものというイメージがあるかもしれませんが、実際には手術後すぐにリハビリに取り組む必要性は認められていません。(文献1) 椎間板ヘルニア手術後におけるリハビリの目的は、腰回りの筋肉を強化して再発を防ぎ、日常生活への円滑な復帰を促すことです。 以下に効果的なリハビリの運動例を紹介します。 【お腹を鍛える運動】 お腹を意識しながら腹式呼吸 仰向けになって膝を立て、首を軽く起こしてお腹をのぞき込む腹筋運動 など 【お尻を鍛える運動】 仰向けになって膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げるブリッジに似た運動 うつ伏せになり曲げた片足をゆっくり上げ下げする運動 など 動作中に強い痛みがあるときは、回数や力の入れ方を調整しましょう。 仕事復帰できるのは手術後から1.5カ月ほど 手術後、仕事復帰までの期間は、受けた手術の種類や仕事内容によって異なりますが、平均すると1.5カ月程度です。 背中の患部付近を切開する従来の手術法の場合、傷口の完全な回復を待つ必要があるため、復帰までの期間が長くなる傾向にあります。一方で、小さな切開で済む内視鏡手術法の場合は、手術の回復が比較的早く、仕事復帰までの期間が短縮しやすいです。 仕事内容においては、腰を使う重労働業務の場合は、復帰までに時間がかかるケースがあります。 ある調査では、重労働業務における復職までの平均期間は44日ほどと報告されています。(文献2) 運転できるのは手術後2週間ほど 短い距離の運転なら手術後2週間ほどで、運転を再開できます。 ただし、以下のように特殊な状況がある場合は、運転の再開時期が遅れる可能性があります。 旅行や出張など長距離の運転をする場合 バスやタクシーのドライバー 農業や工事現場の重機操縦者 自己判断で運転を再開してしまうと、腰に負担がかかり症状が悪化する恐れがあります。 安全に運転を再開するためにも、医師と相談しながら慎重に復帰の時期を決めましょう。 性行為は手術後2週間ほど控える 性行為は、手術後2週間ほどは控えたほうが安心とされています。 手術後は、傷口の修復や、腰まわりの痛み・しびれが落ち着いていない場合があるためです。 少しでも違和感や痛みがあるうちは、無理をしないことが大切です。腰に負担がかかる動きは、回復を遅らせるほか、再発してしまう恐れもあります。 体の回復を優先し、無理のない範囲で行動を選びましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活でやってはいけないこと・注意点 椎間板ヘルニア手術後の生活でやってはいけないこと・注意点を解説します。 主に以下3つの行動は、回復を遅らせたり、再発リスクを高めたりする可能性があります。 リハビリの中断 腰に負担がかかる運動 腰に負荷がかかる姿勢や動作 順番に見ていきましょう。 リハビリの中断 椎間板ヘルニアの手術後にやってはいけないことは、リハビリの中断です。 手術後は安静にする時間が長くなり、体を支える筋肉が弱まりやすくなります。 続けてきたリハビリを中断してしまうと、再び体に負担がかかりやすくなり、症状の悪化や再発の原因になりかねません。 痛みが和らいだとしても、自分で判断してリハビリを中断せず、医師の指示に従って継続する意識が大切です。 なお「仕事やスポーツでリハビリの時間を確保するのが難しい」という方は、再生医療の治療を検討してみてください。主に注射または点滴を使った治療なので、手術後のリハビリや後遺症の心配はいりません。 腰に負担がかかる運動 手術後3カ月ほどは、腰に強い負担がかかる運動はしばらく控える必要があります。 無理をすると、傷口が開いたり、再発したりする恐れがあるためです。 具体的には以下のような運動は控えましょう。 腰をひねる体操 ダッシュやジャンプなどの衝撃が強い運動 ゴルフやテニスなど腰をひねる動きが多いスポーツ これらは腰部への負担が大きく、早期の復帰はリスクが高いといえます。 ただし、まったく体を動かさないのも良くありません。軽いストレッチや簡単な体操など、筋力を保つ適度な運動は回復に役立つため、医師の指導のもとで取り入れましょう。 腰に負荷がかかる姿勢や動作 椎間板ヘルニアの手術後1週間ほどは、腰に負荷がかかる姿勢や動作は避けるようにしてください。 たとえば、落ちた物を拾うときに腰を曲げてかがむのは負荷のかかる姿勢です。物を拾う際は、膝を曲げてしゃがむようにすれば、腰への負担を減らせます。 また、腰をひねる動きも症状悪化や再発のきっかけになります。 たとえば、後ろに振り向く動作は、腰にねじれの動きが入り負荷がかかります。後ろを振り向きたいときは、足を使って身体ごと向きを変えると腰への負担が少ないです。 日常生活を振り返り、腰に負荷のかかる姿勢や動作があれば、改善していきましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活で脊髄損傷が起こるリスク 椎間板ヘルニア手術後にやってはいけないことや注意点をお話ししてきましたが、手術後早期に腰を曲げたり、腰をひねったりすると、脊椎の中を通る神経の束である脊髄が傷ついてしまい、脊髄損傷を起こしてしまうリスクがあります。 脊髄損傷の主な症状は以下のとおりです。 知覚鈍麻 痛みや痺れ 麻痺脊髄損傷は一度起こってしまうと自然には治りません。手術後に脊髄損傷が疑われる症状が現れたら、すぐに手術をした医療機関に連絡をしましょう。 椎間板ヘルニア・脊髄損傷でお悩みの方へ「再生医療」を紹介 一般的に、損傷した大きな神経は修復することができません。 椎間板ヘルニア手術で脊髄損傷した場合、下肢の麻痺により、歩行困難や車いすでの生活が余儀なくされる可能性もあります。 そんな脊髄損傷の治療法の一つに、幹細胞を用いる「再生医療」があります。 幹細胞とは、体のさまざまな組織に変化できる細胞です。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身の脂肪を採取・培養した幹細胞を用いる治療を提供しております。 再生医療について気になる点などございましたら、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ まとめ|椎間板ヘルニア手術後はリハビリを継続して仕事復帰を目指そう 手術後の生活では、リハビリを続けて、日常生活で無理な姿勢や動作をしない意識を持つことが回復への近道です。 腰への負担を避け、正しいリハビリを継続すれば、再発リスクを抑えながら仕事復帰を目指せます。 本記事で紹介した注意点やリハビリ内容を参考に、ご自身のペースで回復に向けた生活習慣を整えていきましょう。 なお、椎間板ヘルニアや手術後の脊髄損傷に対しては「再生医療」という治療法もあります。 再生医療の幹細胞を使った治療では、体のさまざまな組織に変化をする幹細胞を損傷した患部に投与します。再生医療をご検討、あるいは気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 宮本 雅史,中嶋 隆夫.「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版」日本内科学会雑誌 105 巻 11 号pp1〜5 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/11/105_2210/_pdf/-char/ja (最終アクセス:2025年4月16日) (文献2) 廣田 勝也, 島﨑 功一.「腰椎椎間板ヘルニア術後における重労働者のホームエクササイズ実施状況と復職状況との関連因子の検討」日本理学療法士協会 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_H2-207_2/_article/-char/ja/?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年4月16日)
2024.03.01 -
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椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いについて 椎間板ヘルニアに対する手術治療法として、現在内視鏡を用いたPELD(PED)やMEDといった方法が普及しつつあります。いずれも内視鏡を使用した、従来よりも体への負担が小さい手術ですが、それぞれには違いもあります。 今回の記事では、そのようなPELD(PED)やMEDの違い、そして術後の後遺症に対する再生医療の可能性について解説していきます。 椎間板ヘルニアとは まずは、椎間板ヘルニアについて簡単にご説明します。 背骨である椎体と椎体の間には、椎間板というクッションのような構造があります。この椎間板は、髄核(ずいかく)というゲル状の部分と、それを包む線維輪(せんいりん)という構造からできています。 椎間板ヘルニアは、髄核を取り囲んでいる線維輪の後方部分、つまり背中側の部分が破れ、髄核が断裂した部分から背中側にはみ出してしまうことで、脊髄などが圧迫されてしまう病気のことです。 この中でも腰椎椎間板ヘルニアは、腰の骨である腰椎で起こるものです。 そして、男女比は約2〜3:1、20〜40歳代の方に多く、好発する部位は腰椎第4番と第5番の間、もしくは腰椎第5番と仙椎第1番の間が多いとされています。 後ろ側に飛び出した椎間板が脊髄や神経根などの神経を圧迫することで、下半身に痛みが生じてくるといった症状が現れてきます。また、腰椎椎間板ヘルニアの他の症状としては、急に起こる激しい腰痛や下半身の痛みがあります。 そして、ヘルニアが進行すると下半身に力が入りにくいという症状がでてきます。また馬尾という脊髄の一番下の方にある糸のような神経部分が圧迫されると、排尿や排便が障害されることがあります。 椎間板ヘルニア手術の種類とそれぞれの特徴 さて、椎間板ヘルニアについての治療法について解説していきます。 腰椎椎間板ヘルニアでは、ヘルニアによって神経が圧迫されるような場合に手術が行われます。最近では、より小さな傷で手術を行う、低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)が広がりつつあります。 例えば、経皮的内視鏡下腰椎椎間板切除術(Percutaneous Endoscopic Lumber Discectomy : PELD)や、内視鏡下ヘルニア摘出術(Micro Endoscopic Discectomy : MED)などの手術です。なお、PELDとPEDは、腰椎(つまりLumber)が入っているかどうかの違いなので、ほぼ同義と考えて問題ないでしょう。 では、従来の手術、そしてPELDとMEDについて詳しく解説しましょう。 従来の手術法 一般的な手術として、背中の側からアプローチし、椎弓(ついきゅう)という背骨の一部を切り取り、椎間板を取り除くという手術が最も行われています。 この方法は、皮膚や筋肉、骨を削り取るというもので、手術は全身麻酔が基本となり術後2〜3日後ほどで歩行を開始し、入院期間は2〜3週間程度が目安です。 PELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板切除術) PELDは、7mmほどの細い筒をまず背中側から直接ヘルニア部分まで挿入し、生理食塩水を流しながら、その筒の中へ針のような専用内視鏡を刺入していき、直接ヘルニアを摘出するというものです。 細い内視鏡でヘルニアへアプローチすることが可能であるため、筋肉や骨などの組織への負担が少ないというメリットがあります。その他の利点は、局所麻酔や硬膜外麻酔で治療可能な点、また日帰り手術も可能という点です。 また、傷口が小さいため、術後の回復が早いことも期待できます。 欠点としては、大きなヘルニアや椎体の変形が強い場合、また脊柱管狭窄症などが併存する場合には適応とならない場合があることです。 MED(内視鏡下ヘルニア摘出術) MEDは、PELDと同じように内視鏡を使う技術です。 皮膚を切開して内視鏡や器具を挿入し、ヘルニアの部分まで進めていきます。PELDよりも内視鏡の筒の径が大きくなるため、筋肉が引っ張られたり視野を確保するために骨を削ったりといった操作が加わります。そのため、PELDと比較するとヘルニアの周囲の組織への負担が大きくなるという欠点があります。 一方で、複数の椎間に渡るようなヘルニアでも手術可能なことが多く、またPELDと比較すると全国的にこのMEDの手術を行っている病院が多いという利点があります。 特徴 PELD MED 従来の手術法 皮膚の切開の大きさ 7mm程度 16mm程度 3〜4cm 麻酔の方法 局所麻酔可能 全身麻酔 全身麻酔 手術の時間 1時間程度 2時間程度 1時間程度 術後の入院期間 日帰り可能 1週間程度 1週間程度 体に与える負担 軽い 軽いがPELDに比べると骨や筋肉などに侵襲が大きい 傷口が大きいため負担になる可能性あり PELDとMED、従来の手術の違い まとめ・椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いについて 今回の記事では、椎間板ヘルニアの症状や治療法としてのPELD(PED)、MEDについて解説しました。PELDとMEDの違いについても表にし詳しく述べました。 これらのPELD、MEDといった手術は、従来のような皮膚を大きく切り、直接ヘルニア病変を摘出するという方法に比べると傷口も小さく、体への負担が少ないというメリットがあります。 一方で、どのような手術であっても脊髄損傷や神経損傷の可能性は少ないですが、一定数あり得ることには注意が必要です。また、椎間板ヘルニアが進行していた場合などは、しびれや下半身麻痺などの症状が手術後にも残ってしまうこともあるでしょう。 そのような後遺症に対する治療法を探しているという方に対して、再生医療という方法があります。 当院では、脊髄損傷に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。これは、自分の脂肪組織や血液から幹細胞を培養し、点滴で静脈注射する方法や、あるいは当院独自の技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内ダイレクト注射療法をご用意しています。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE ▶椎間板ヘルニアや、その術後の後遺症などにお悩みの方で再生医療に興味のある方は、ぜひ当院までご相談ください。 参考文献 腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン 改訂第2版.日内会誌.2016:105;2210-2214. 脊椎脊髄疾患について・主な疾患 腰椎椎間板ヘルニア 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会 腰椎椎間板ヘルニアにおける内視鏡下 ヘルニア摘出術.整形外科と災害外科.2002.51(1);47-50. 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p347 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p152 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p351 ▼椎間板ヘルニアの手術について参考記事 椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術のメリット・デメリット
2024.02.28 -
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ヘルニア治療|PELD(PED)術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて PELD(PED)は、内視鏡を用いて腰椎椎間板ヘルニアを取り除く手術のことで、傷口が小さく、筋肉や骨に対するダメージが少ないというメリットがある一方、手術による術後後遺症のリスクもあります。 今回の記事では、PELD(PED)の術後に生じたしびれや痛みの後遺症に対する再生医療の可能性についても解説していきます。 PELD(PED)とは 経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(Percutaneous Endoscopic Lumber Discectomy:PELD)とは、椎間板ヘルニアを7mmまたは8mmという細い専用の内視鏡を用いて、生理食塩水を流しながら摘出することができる手術のことです。 細い針が直接椎間板ヘルニアに到達するため、筋肉や脊柱などのダメージを最小限に抑えることが可能です。 なお、PEDとはPELDから腰椎(英語でlumberといいます)を省いただけですので、これらの言葉はほぼ同義になります。 PELD(PED)の術後後遺症 PELDの術後の後遺症として、合併症など以下のようなものがあります。 神経根の損傷 椎間板ヘルニア病変を取り出すために針を進める時に、神経根という脊柱管から脊髄が出る部分に針が触ると、神経根に刺激を加えることで感覚障害をきたす可能性があります。これは、postoperative dysethesia(POD)といい、しびれ感などが生じてきます。 針が触ってしまっただけの場合は短期間で改善することが多いとされていますが、直接損傷してしまった場合には永続的なものになることもあります。 感染 針先で腸管損傷した際に併発する椎間板炎、腸腰筋膿瘍が報告されています。 硬膜の損傷 針の指す方法によっては、脊髄を包む硬膜を損傷してしまう恐れもあります。 髄液漏 皮膚の切開が小さいので、脳脊髄液が漏れてしまう髄液漏(ずいえきろう)を起こすことは少ないとされていますが、馬尾(ばび)という脊髄の先端部分が傷などにはまりこんでしまうことで痛みが生じることもあります。 血腫 針を刺す際に出血し、血腫が出来てしまうこともあります。 てんかん発作 手術を行う際に流す生理食塩水の圧力が高い場合や長時間の手術の場合には、頭蓋骨の中の圧力が高まり、脳への負担がかかってしまい、首や頭の痛みのあとにてんかん発作が起こることもあります。 PELD(PED)術後後遺症に対する再生医療とは それでは、PELD(PED)術後の痛みとしびれに対する再生医療について解説していきます。 再生医療の基本概念 再生医療は、体の損傷や機能の喪失を修復し、細胞や組織を再生するための革新的なアプローチです。これには、自分自身の細胞を活用する方法や、幹細胞を利用する手法などが含まれます。 再生医療と幹細胞治療のアプローチ では、実際には再生医療ならびに幹細胞治療がどのように利用されているのかを解説します。 患者自身の細胞の利用 再生医療において、患者自身の細胞を活用する方法があります。これには、自分から採取された組織や血液中の成分を使用して、治療に必要な細胞を増殖・活性化させる手法が含まれます。この一つとして、多血小板血漿(PRP)による治療もあります。 幹細胞治療 幹細胞は、さまざまな種類の細胞に分化、つまり成長する能力があります。患者の体内から採取された幹細胞が、損傷した組織や神経を修復するのに役立つ可能性があります。特に、ヘルニアや脊髄損傷の治療において、幹細胞治療が注目されています。 痛み管理 術後の痛みは、しばしば患者の生活の質を著しく低下させます。従来の痛み管理に加えて、再生医療では、成長因子や細胞治療を組み合わせたアプローチが検討されています。これにより、神経の再生や炎症抑制が期待されます。 神経保護と再生 幹細胞治療は、損傷した神経組織の再生を促進する可能性があります。これにより、術後のしびれや感覚の喪失を軽減し、機能回復が期待されます。 それぞれに適した治療が可能 自分自身それぞれの細胞などから培養された幹細胞を使った再生医療は、拒絶反応などの副作用が出にくいことが期待されます。これにより、治療の効果が最大限に発揮されることも期待できます。 まとめ・ヘルニア治療|PELD(PED)術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて 今回の記事ではPELD(PED)手術とは何か、そしてその後遺症について述べました。そして、PELD(PED)手術後の痛みやしびれの後遺症に対する最新治療として、再生医療と幹細胞治療に期待が持たれていることも解説しました。 これらの治療法は患者の生活の質を向上させ、持続的な症状の緩和を目指すことが期待されます。当院では、再生医療の治療のひとつに、自己脂肪由来幹細胞治療をご用意しています。 これは、脊髄損傷などからの神経の回復に対する効果が期待できるもので、当院では静脈注射で点滴にて投与するものと、脊髄腔内に直接注射をしていくものがあります。 特に、後者の直接脊髄腔内投与法は当院独自とも言え、今までにも脊髄や神経の損傷によるしびれや痛みなどの術後後遺症の症状が改善したという治療成績があります。 https://www.youtube.com/watch?v=5JqLxbYwLJ4 PELD(PED)手術後の後遺症にお悩みの方も、ぜひ一度当院までご相談ください。 ▼ヘルニアの手術について以下も参考にされませんか ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用とは 参考文献 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p152 再生医療の現状と展望 第3回再生・細胞医療・遺伝子治療開発協議会 令和3年1月27日 脳梗塞と脊髄損傷の再生治療
2024.02.22 -
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「椎間板ヘルニアの手術にはどんなリスクがある?」「手術の後遺症が不安……。」 椎間板ヘルニアの手術を勧められたものの、リスクが気になり決断できない人も多いのではないでしょうか。 手術には合併症や後遺症、再発のリスクが伴います。これらを正しく理解した上で、手術を受けるべきか判断することが大切です。 本記事では、椎間板ヘルニア手術のリスクとその対策を医師が詳しく解説します。リスクを理解した上で適切な治療方法を選択できるように、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。 椎間板ヘルニアの症状でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 椎間板ヘルニア手術による合併症リスク 椎間板ヘルニアの手術は、症状を改善する有効な治療法ですが、合併症のリスクも伴います。椎間板ヘルニアの手術による主な合併症リスクには以下の4つが挙げられます。 出血や血腫形成 術後感染(化膿)や骨髄炎の可能性 硬膜損傷による髄液漏れ 血栓症や癒着 本章を参考に、椎間板ヘルニアの手術にはどのようなリスクがあるのか、理解を深めておきましょう。 出血や血腫形成 手術では出血が避けられませんが、過度な出血や血腫が形成されると、神経の圧迫による痛みの悪化や運動機能の低下を引き起こす場合があります。 内視鏡下椎間板摘出術(FELD)では、止血操作が困難な場合があり、顕微鏡下手術に切り替える可能性もあります。(文献1) リスクを最小限に抑えるためには、手術中の止血処置が重要です。 また、抗凝固薬を服用している方は、手術前に医師へ相談しておきましょう。 術後感染(化膿)や骨髄炎の可能性 手術部位の感染が起こると、創部が化膿するだけでなく、重症化して骨髄炎を引き起こす場合があります。 術後の免疫力低下や傷口の管理不足が原因となる場合が多く、全内視鏡下手術(FELD)では、約0.5%の確率で細菌感染が発生すると報告されています。(文献1) 感染を防ぐためには、術後の傷口の清潔を保ち、医師の指示に従って抗生物質を適切に服用することが重要です。 硬膜損傷による髄液漏れ 椎間板ヘルニアの手術では、脊髄を包む硬膜が損傷し、髄液が漏れ出すリスクがあります。 とくに、内視鏡下手術(FELD)では、硬膜に穴が開く場合があり、術後3~30日後に髄液漏が発生する可能性もあるため、注意が必要です。(文献1) 髄液漏れが発生すると、術後に強い頭痛を伴い、場合によっては髄膜炎を引き起こすケースもあります。 そのため、硬膜損傷を防ぐためには、経験豊富な医師のもとで手術を受けるのが良いでしょう。 血栓症や癒着 術後に長時間動かずにいると、血流が滞り血栓が形成されるリスクが高まります。 たとえば、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症は重篤な合併症となる可能性があるため、注意が必要です。(文献2) また、手術部位の組織が癒着すると、神経が圧迫され、術後の痛みが長引くケースもあります。(文献5) そのため、術後のリハビリは、合併症を防ぐためにも非常に重要です。 医師の指示に従い、適切なタイミングで開始するのが良いでしょう。 椎間板ヘルニアの手術後に起こり得る後遺症リスク 手術後の経過が順調でも、しびれや痛みが一時的に残る場合があります。これは、神経が圧迫されている状態が続いていた場合、手術後もしばらく神経の回復に時間がかかるためです。 本章では、椎間板ヘルニアの手術後に起こり得る後遺症リスクとして、以下の2つを紹介します。 一時的なしびれ・痛みのリスク 神経の損傷による麻痺・筋力低下のリスク それぞれ詳しくみていきましょう。 一時的なしびれ・痛みのリスク 椎間板ヘルニアの手術後には、しびれや痛みが一時的に悪化するケースがあります。 これは、術中に神経根や神経節が圧迫されるために起こる現象です。(文献1) 術後のしびれや痛みを軽減するには、リハビリやストレッチが有効です。 神経の回復には時間がかかるため、焦らず経過を見守る必要があります。 術後1〜2カ月で症状が軽減するケースが多く、長引く場合は医師と相談し、追加の治療を検討しましょう。 神経の損傷による麻痺・筋力低下のリスク 手術時の器具操作によって神経が傷つくと、運動麻痺や筋力低下が残る可能性があります。(文献1) このリスクを減らすためには、経験豊富な医師を選ぶことが重要です。 また、術後のリハビリを積極的に行い、神経機能の回復を促すのも大切だといえます。 椎間板ヘルニアに関する手術後の後遺症や治療法については以下の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。 椎間板ヘルニア手術後の再発リスク 椎間板ヘルニアの手術は痛みを軽減する有効な手段ですが、再発の可能性があることも理解しておく必要があります。 ヘルニアの再発率は6〜10%前後といわれています。(文献1) 椎間板ヘルニアは、飛び出した椎間板の一部を取り除く手術ですが、完全に除去できるわけではありません。残った部分が再び突出することで、ヘルニアが再発するケースもあります。 また、過度な運動や姿勢の悪さ、椎間板の老化なども再発リスクを高める要因です。とくに、手術後すぐに無理な動作を行うと再発の可能性が高まります。 再発予防のためにも、適切なリハビリを行いつつ、普段の生活習慣の見直しを行いましょう。 椎間板ヘルニア手術の麻酔時のリスク 手術には麻酔が不可欠ですが、全身麻酔と局所麻酔のそれぞれにリスクが存在します。 麻酔の種類 リスク 副作用 全身麻酔 血圧低下、呼吸抑制、心肺機能への負担 術後の吐き気、めまい、のどの違和感 局所麻酔 神経損傷、麻酔が効かない場合の痛み 注射部位の違和感、軽度のしびれ 本章では、全身麻酔と局所麻酔のリスクや副作用について、さらに詳しく解説します。 全身麻酔のリスクと副作用 全身麻酔は、意識を完全に失わせるため、呼吸や血圧の管理が重要です。 麻酔の影響で血圧が低下し、心肺機能に負担をかける場合があり、術後には、吐き気やめまい、のどの違和感が生じるケースもあります。 また、これらの副作用は一時的なものですが、高齢者や持病を持つ人は注意が必要です。 手術前に医師と相談し、適切な麻酔方法を選ぶことでリスクを軽減できます。 局所麻酔によるリスクや副作用 局所麻酔は、手術部位のみに作用し、意識を保ったまま行う方法です。 全身麻酔に比べて体への負担は少ないですが、神経損傷や血圧変動が起こる可能性があります。 また、局所麻酔が十分に効かない場合、手術中に痛みを感じる場合もあるとされています。 そのため、麻酔が適切に作用しているかを医師が確認しながら進めるのが一般的です。 椎間板ヘルニア手術の後遺症には再生医療も検討しよう 手術による後遺症が出る場合、近年注目されている再生医療を検討するのも選択肢の一つです。 神経損傷や筋力低下が長引く場合には、幹細胞治療やPRP療法など、再生医療による治療が有効な可能性があります。 手術後の回復が思わしくない場合は、再生医療の専門医に相談してみるのも良いでしょう。 以下の記事では、術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて、再生医療に期待できる有効性を紹介しています。 治療法の選択肢を広げたい方は、ぜひあわせてご覧ください。 【関連記事】 ヘルニア治療|PELD(PED)術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!? まとめ|椎間板ヘルニアの手術はリスクを理解した上で医療機関を選ぼう! 椎間板ヘルニアの手術には、合併症や後遺症、再発、麻酔のリスクが伴います。 成功率が高いとはいえ、リスクを軽視すると術後のトラブルにつながる可能性があります。 そのため、手術を検討する際は、医師と十分に相談し、自身の症状に合わせた治療方法を選ぶことが重要です。 また、手術後のリハビリや生活習慣の見直しも、回復や再発予防のために欠かせません。 リスクを理解し、信頼できる医療機関を選択することで、安全かつ納得のいく治療が受けられるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。 椎間板ヘルニア手術の後遺症でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 椎間板ヘルニア手術のリスクに関するQ&A 椎間板ヘルニアの手術で失敗する確率は? 手術効果や手術の有効性は70〜80%といわれています。(文献1) そのため、「失敗」の定義にもよりますが、再発リスクを含めると20%程度はなんらかのトラブルを考慮する必要があるでしょう。 ただし、合併症の多くは一時的なものであったり、適切な処置で改善が見込めます。 ヘルニア手術はしたほうがいいですか? 手術はあくまで選択肢の一つです。 保存療法で改善が見込まれる場合は、無理に手術を受ける必要はありません。 また、手術を検討する際は、医師と相談し、他の治療法と比較した上で適切な選択をすることが重要です。 椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術に関する詳細や、メリットについては以下の記事も参考にご覧ください。 リペアセルクリニックは再生医療専門クリニックです。 椎間板ヘルニアの手術でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献 (文献1) 香川労災病院「全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出手術」 https://www.kagawah.johas.go.jp/wp-content/themes/kagawarousai/assets/doc/hospital/department/neurosurgery/department-neurosurgery_002.pdf(最終アクセス:2025年2月26日) (文献2) 日本整形外科学会「術後肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症」 https://www.joa.or.jp/public/pdf/joa_033.pdf(最終アクセス:2025年2月26日)
2024.02.19 -
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「椎間板ヘルニアの手術って、どれくらい入院するんだろう?」 「できれば短期間で済ませたいけど、どんな手術法があるのかも気になる…」 このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか? 椎間板ヘルニアの手術は、症状の程度や選択する手術法によって入院期間が異なります。 日帰りで受けられるケースもあれば、1〜2週間の入院が必要になる場合もあります。 仕事やスポーツの復帰時期を考慮したい方は、各手術の入院期間を把握しておきましょう。 本記事では、椎間板ヘルニア手術における各手法の入院期間を解説します。あわせて、手術のリスクや費用も紹介しているので、参考にしてみてください。 椎間板ヘルニア手術の入院期間|手法や費用も紹介 椎間板ヘルニア手術の種類は、複数あります。 ここでは代表的な以下5つの手術をピックアップし、それぞれの入院期間を解説します。 LOVE法 MED法(内視鏡下椎間板摘出術) PED法(経皮的髄核摘出術) 脊椎固定術 レーザー手術(PLDD) 手法や費用も紹介するので、参考にしてみてください。 LOVE法 |入院期間は約2週間 LOVE法は、背中側から皮ふを切開し、ヘルニアの周辺にある骨を少し削って、目で確認しながら患部を取りのぞく手術です。 この治療法は、日本でもっとも多く選ばれている手法です。 LOVE法の入院期間は、約2週間かかります。 手術時間は1時間程度ですが、全身麻酔を用いるため、体をしっかり休める時間が必要です。 手術・入院に必要な費用は、15万円〜30万円ほどとされています。 治療方法 背中側から皮ふを切開し、骨の一部を削ってヘルニアを目で確認しながら取りのぞく治療法 入院期間 約2週間 費用(3割負担) 15〜30万円ほど MED法(内視鏡下椎間板摘出術)|入院期間は4〜7日間程度 MED法は、椎間板ヘルニアに対して内視鏡を使って治療する方法です。 背中側を小さく切開し、カメラで映し出された映像を見ながらヘルニアを取りのぞきます。 LOVE法と似た手法ですが、目で直接見るのではなく、モニターを通じて治療を進める点が特徴です。 皮ふや筋肉への負担が少なく、手術後の痛みが和らぐ効果が期待できます。 MED法の入院期間は、約4〜7日間です。LOVE法同様に、全身麻酔を用いて治療を進めます。 手術・入院に必要な費用は、20万円〜25万円ほどです。 治療方法 小さな切開から内視鏡を使い、モニターを見ながらヘルニアを除去する手術 入院期間 約4〜7日間 入院費用(3割負担) 20〜25万円ほど PED法(経皮的髄核摘出術) |日帰りもしくは数日間入院 PED法は、局所麻酔で細い器具を体内に挿入し、レントゲンで位置を確認しながら脱出した髄核の一部を取りのぞく手術です。 神経を圧迫している部分を直接取りのぞくため、ヘルニアによる痛みやしびれが和らぐ可能性があります。 傷が小さく、体への負担も少ないため、日帰りや数日の入院で済むケースが多いです。 手術・入院に必要な費用は、20万円〜25万円ほどです。 治療方法 局所麻酔で細い器具を入れ、レントゲンを確認しながら脱出した髄核を除去する手術 入院期間 日帰りもしくは数日の入院 入院費用(3割負担) 20〜25万円ほど 脊椎固定術|入院期間は1〜2週間程度 脊椎固定術は、ヘルニアの治療のために椎間板や骨の一部を処置したあと、自家骨や人工骨、金属プレートなどを使って脊椎を安定させる手術です。 入院期間は約1〜2週間が目安で、脊椎の骨がしっかり癒合するまでには3〜6カ月程度かかります。 手術・入院に必要な費用は、3割負担の場合で30〜40万円ほどが目安ですが、症状や手術内容によって変動します。 治療方法 骨を削ったあと、骨や金属プレートで脊椎を安定させる治療法 入院期間 約1〜2週間 入院費用(3割負担) 30〜40万円ほど レーザー手術(PLDD) |入院期間は1〜2日程度 PLDDは、椎間板の内部にレーザーを照射し、ヘルニアを部分的に蒸発させて縮める治療です。 ヘルニアが小さくなると、神経にかかる圧力が弱まり、痛みやしびれの和らぎにつながります。 短時間で処置が終わるケースが多く、入院期間は約1〜2日です。 レーザー手術は保険が使えない治療に分類されており、手術・入院に必要な費用は30万円〜60万円ほどが目安です。 治療方法 椎間板の内部にレーザーを照射し、ヘルニアを蒸発・縮小させる方法 入院期間 約1〜2日 入院費用(3割負担) 30〜60万円ほど 椎間板ヘルニア手術のリスクや失敗例 椎間板ヘルニアの手術には、合併症や後遺症のリスクがあります。 椎間板ヘルニアの手術で起こりうる合併症は以下のとおりです。 出血や血腫(血のかたまり)形成 傷口経由の感染や骨髄炎 硬膜損傷による髄液漏れ 手術後の長期間安静による血栓症や組織癒着 合併症が発症すれば、追加治療や入院期間の延長が必要になる場合があります。 椎間板ヘルニアの手術後に出る可能性のある後遺症は以下のとおりです。 後遺症 要因 一時的なしびれや痛み 手術中に神経が刺激されたり、長く圧迫されたりする影響 手足のまひや筋力の低下 手術中に神経を傷つけてしまうことによる影響 手術中に神経を傷つけてしまい、後遺症が残ったことで医療裁判を起こしたケースもあります。 椎間板ヘルニアの手術を検討する際は、これらのリスクを理解した上で、信頼できる医師を探して治療を進めていく姿勢が大切です。 なお、手術を伴わない治療法に「再生医療」の選択肢があります。入院や後遺症の心配が不要な治療法です。 詳しくはメール相談もしくはオンラインカウンセリングにて、お気軽にご相談ください。 椎間板ヘルニアを手術なしで治療する方法 ここでは、椎間板ヘルニアを手術なしで治療する方法を5つ紹介します。 温熱療法 運動療法 薬物療法 ブロック療法 再生医療 症状が比較的軽度で、保存的治療に適している方は、手術なしでの改善を目指してみてください。 温熱療法 温熱療法は、痛みやしびれを和らげるために体の一部を温める治療法です。 温めることで血の流れが良くなり、筋肉のこわばりがほぐれて、痛みがおさまりやすくなります。 治療の対象は症状が出ている部分で、椎間板ヘルニアの原因そのものを治す方法ではありません。 一時的に症状を楽にするための対処療法として使われています。 運動療法 運動療法は、ストレッチや体操などによって血の流れを改善して痛みを和らげる治療法です。 痛みを軽くしながら、筋肉を強化し関節の可動域を広げる目的もあります。 運動療法は、病院以外に接骨院や整形外科クリニックなどでもおこなわれています。 こちらも根本的に椎間板ヘルニアが治るわけではありません。 薬物療法 薬物療法は、腰や背中の痛みに対して飲み薬や湿布を使い、症状を和らげる方法です。 椎間板ヘルニアの原因自体を治すものではなく、あくまで対症療法です。 飲み薬には炎症をおさえる薬や痛み止めがあり、湿布は痛む部分に直接貼って痛みや炎症をおさえる効果があります。 薬は主に病院で処方されますが、医師の指導があれば、市販薬の利用も可能です。 ブロック療法 ブロック療法は、神経の近くに痛み止めの注射を打ち、強い痛みを一時的に和らげる方法です。 こちらも椎間板ヘルニアの原因を取りのぞく治療ではないため、根本改善にはつながりません。 対処療法の1つとして覚えておくと良いでしょう。 なお、ブロック療法は、人によっては注射の効果が出にくい場合もあります。 再生医療 椎間板ヘルニアの治療や手術の後遺症における治療法に「再生医療」の選択肢が挙げられます。 再生医療とは、幹細胞やPRP(多血小板血漿)を用いる治療法です。 椎間板ヘルニアの症状である手足のしびれ・歩きにくさに対してのアプローチをしていきます。 当院では、脊髄腔内に直接幹細胞を注射するダイレクト注射療法を提供しており、脊髄損傷の部位に幹細胞を投与できます。 詳しい治療法については、再生医療を専門とする当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。 まとめ|椎間板ヘルニア手術の入院期間を把握して準備を進めよう 椎間板ヘルニアの手術方法は多様で、選択する手術法によって入院期間が大きく異なります。 入院期間の目安 LOVE法:約2週間 MED法:4〜7日間 PED法:日帰りから数日 脊椎固定術:1〜2週間 レーザー手術:1〜2日程度 それぞれ費用や身体への負担も異なるため、ライフスタイルや症状に合わせた選択が重要です。 また、手術にはリスクや後遺症の可能性があることも理解しておきましょう。 手術以外にも運動療法や薬物療法、再生医療など手術に頼らない選択肢もあります。 治療法を検討する際は、入院期間や回復時間、費用、リスクなどを総合的に考慮して、専門医と相談しながら最適な方法を選びましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 椎間板ヘルニア手術に関するよくある質問 椎間板ヘルニアの手術後における痛みはいつまで続きますか? 手術後の痛みは、通常の回復の場合、1カ月ほど続きます。 大きく体を動かしたり、重い物をもったりするような場合は、3カ月程度かかるでしょう。 椎間板ヘルニアの手術後はどのような生活になりますか? 手術後の生活では、体に無理のない日常を意識する必要があります。 手術後すぐは安静を保ちつつ、専門家の指示を受けながら、少しずつリハビリや軽い運動を始めます。 日常生活においては、腰に強い負担がかかる姿勢や動きは控え、再発を防ぐために正しい体の使い方を身につける意識が大切です。 たとえば、椅子に長時間座るときは背すじを伸ばし、重い荷物を運ぶときは腰ではなくひざを使うなど、生活の中で意識的に工夫をしていきます。 手術後におけるリハビリの継続や正しい姿勢の意識が、早期回復につながります。 椎間板ヘルニアで手術するレベルはどれくらいですか? 日常生活や仕事に支障が出る状態になった場合、手術が検討されます。 椎間板ヘルニアではまず保存療法で様子を見ますが、症状が改善しないケースでは手術の判断が必要になります。 たとえば、以下のような状況です。 保存療法を試しても回復しない 腰の痛みで睡眠が妨げられる 足のしびれが悪化し歩行が困難になる 生活や仕事をする上で症状がつらいと感じた場合は、早めに専門医に相談し、適切な治療法を検討しましょう。
2024.02.14 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療は早期発見が鍵!初期症状を見逃さないために 膝に痛みを及ぼす疾患が変形性膝関節症です。 変形性膝関節症になると、人間の基本的な動作である「歩行」に影響をもたらすことで、活動量が減るなど日常生活に支障を及ぼします。その原因は、靭帯や半月板の怪我からくる場合を除いて、ほとんどは加齢に伴った関節軟骨の摩耗がきっかけです。 特に40代以降の女性に多く発生するため、中高年で感じる膝の痛みのほとんどは、変形性膝関節症からくる痛みだともいわれています。そんな変形性膝関節症の治療方針は、膝に負担のかかる生活スタイルを見直し、膝周囲の筋肉を鍛える運動療法に取り組むことです。 そうした保存療法の継続が、関節を安定させ、これまで通りの痛みのない日常につながるのです。そのためには、いかに早期に発見できるかがポイントです。そこで今回は、変形性膝関節症の初期症状から、もし当てはまった場合には、実際にどういった行動に移せば良いのかまで紹介していきます。 https://youtu.be/9VSwPk2W00c?si=IYMgxnvpsV2MHmJB 変形性膝関節症の進行度と症状 変形性膝関節症の自覚症状は、前期>初期>中期>末期の4つの段階を踏んで進行していきます。前期では、膝にほとんど痛みはありませんが、初期になると軟骨がすり減り始め、膝に痛みや違和感や感じるようになります。 進行が進んだ中期になると膝に変形がみられ、さらに進行した末期になると痛みから立つ・歩くなどの日常生活を過ごすのが困難になり、手すりや杖などに頼らないと姿勢を保てない状態になります。 症状 変形性膝関節症・進行度 前期:ほとんど痛みを感じない 初期:軟骨にすり減り、痛み、違和感を感じ始める 中期:膝に変形がみられる 末期:日常生活が困難になる、手すり杖が必要になる 変形性膝関節症の初期に現れやすい症状 変形性膝関節症は早期発見が大切です。そのためには進行が始まり、「痛み」や「違和感」を感じだす前段階で発見することが重要になります。 この段階で異変に気づき病院を受診され、変形性股関節症を早期に発見できれば、治療の選択肢が増えるだけでなく、積極的に運動療法に取り組め、重症化を防げる可能性が高くなります、。 初期症状を見逃さないポイント 朝起きた時に膝にこわばりを感じる 膝を伸ばそうとすると引っ掛かりを感じる 椅子から立ち上がろうとすると痛みが走る 歩き出しに痛みがある 正座をすると「ズキっ!」と痛みを感じる 早期発見が治療の選択肢を増やす 変形性膝関節症に早期に気づき、運動療法に取り組むことで悪化を防ぐことができます。運動療法で痛みが引かない場合、薬物療法や物理療法、装具療法などで痛みを抑えながら、運動療法に取り組めるよう工夫します。 あらゆる手を尽くしても効果がみられない場合には、観血療法という選択肢がありますが、手術の種類によっては進行しすぎていると実施できないケースがあります。 たとえば、体への侵襲が大きな人工関節置換術や高位脛骨骨切り術を、「今はしたくない」場合には、負担が少なく、術後の回復も早い関節鏡視下手術という選択肢があります。 しかし、変形が進行した状態では、関節鏡視下手術をしたところで、改善が見込めない場合があるので注意が必要です。 変形性膝関節症の初期は運動療法で悪化を防ぐ 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法ですが、初期から実施するのと、末期から実施するのでは大きな違いがあります。初期の運動療法には悪化を防ぐ目的があり、継続して行うとこれまで通りの生活を送れる可能性があります。 一方、発見が遅れた末期では、痛みが強く日常生活をまともに送るのは難しい状態です。そのため、満足に運動療法に取り組めず、これまで通りの生活を送れる可能性は低くなることから、早期発見が変形性膝関節症の治療において大切です。 変形性膝関節症と診断されるまで 中高年以降で、膝に「痛み」や「違和感」を感じたら整形外科の受診をおすすめします。 変形性膝関節症の診断は、問診・視診・触診・画像診断などの検査を複合して判断されます。問診では家族歴・半月板や靭帯損傷などの怪我の既往歴を聞き、視診では歩行状態から進行の程度を確認、触診では膝の変形具合や水がたまっていないかなどを確認します。 変形性膝関節症の進行の程度は、X線検査の後、Kellgren-Lawrence分類によって分けられます。関節の隙間が確保されているグレード0から、関節の隙間がなくなってしまった状態のグレード4まで分けられます。 しかし、必ずしも画像診断の進行度合いと自覚症状が一致するとは限りません。画像診断では進行していても、自覚症状があまり強くない場合や、その逆の場合もあります。 そのため、軽度の痛みや、ちょっとした違和感でも変形性膝関節症が進んでいる可能性があることから、注意が必要です。 変形性膝関節症と似た病気 膝に痛みがあっても、全ての膝の痛みが変形性膝関節症ではありません。膝関節以外の痛みや発熱の有無など、問診や触診の情報を元に、「関節リウマチ」「痛風」「化膿性関節炎」などを疑います。 検査では血液検査や関節液の成分を検査し、検査結果を元に変形性膝関節症以外の病気である要素を取り除いた上で、はじめて変形性膝関節症と診断されます。 まとめ・変形性膝関節症の治療は早期発見が鍵!初期症状を見逃さないために 変形性膝関節症は中高年以降の女性に多く発生する病気で、膝の痛みの多くは変形性膝関節症からだといわれています。 変形性膝関節症の症状は、痛みと変形が特徴です。初期には強い痛みや変形を感じることは少ないものの、変形性膝関節症は進行性の病気です。放っておくと取り返しがつかないところまで進行するケースがあります。 そうならないためにも、早期に変形性膝関節症に気付くことが治療の選択肢を増やし、悪化を防ぎます。 変形性膝関節症の早期発見ができれば、保存療法(運動療法、薬物療法など)や手術療法というように、あらゆる選択肢の中から、膝の状態や自分自身の意向に沿って治療に取り組めるのです。 そのため、「軽度な痛み」や「違和感」程度でも放ったらかしにしないで、整形外科を受診しましょう。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症の治療する 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せず、入院不要で症状を改善する ▼以下も参考にしてください 変形性膝関節症の進行度合!症状のステージを自覚症状から分類する
2024.02.14 -
- 再生治療
- 幹細胞治療
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「ヘルニアの内視鏡手術って本当に安全なの?」 「PELDやPEDってよく聞くけど、デメリットもあるのかな?」 このような疑問をお持ちではないでしょうか? 腰椎椎間板ヘルニアの代表的な手術に、 PELD(経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)とPED(経皮的内視鏡下椎間板摘出術) があります。 これらの手術は、傷口が小さく回復が早いというメリットがありますが、すべての患者様に適しているわけではありません。 たとえば、再発のリスクや適応範囲の限界 など、事前に知っておくべきポイントがあります。 そこで本記事では、ヘルニアの内視鏡手術(PELD・PED)のデメリットについて詳しく解説します。手術の詳細がわかれば、後悔のない選択ができるでしょう。 【前提知識】椎間板ヘルニアの内視鏡手術PELD(PED)とは? 椎間板ヘルニアを手術する方法のひとつに、経皮的内視鏡下椎間板摘出術(Percutaneous Endoscopic Discectomy:PED)があります。 PEDのうち、特に腰椎に対して行うものを経皮的内視鏡的腰椎椎間板摘出術(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy:PELD)と呼びます。 この手術は7mmか8mmの細い内視鏡を使い、生理食塩水を流しながらヘルニアを取り除きます。 手術の目的は、神経を圧迫しているヘルニアの部分だけを取り除くことです。健康な椎間板はできるだけ残すため、手術後に腰痛が起こるリスクを減らせます。 この手術が適応となる疾患には、主に神経根型の椎間板ヘルニアなどの変性疾患や、化膿性椎間板炎という炎症性疾患があります。 PED/PELDは神経を圧迫しているヘルニアの突出部分を取り除き、痛みやしびれを軽減することを目的としています。 ただし、これらの手術は、すべてのヘルニア患者に適しているわけではありません。 手術を受ける前には、詳細をよく理解し、医師としっかり相談することが大切です。 なお、椎間板ヘルニアの治療においては「再生医療」も選択肢として挙げられます。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した医療技術で、自身の幹細胞を培養して患部に注射し、損傷している組織の修復と再生を促します。 具体的な治療方法が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお問い合わせください。 椎間板ヘルニア内視鏡手術のデメリット 内視鏡手術は体への負担が少なく、回復が早いとされていますが、いくつかのデメリットもあります。 後悔しない治療選択をするために、注意すべきポイントを5つ紹介します。 手術後に合併症や後遺症が出る可能性がある 再発のリスクがある 手術ができないケースもある 手術できる病院が限られる 1回で2箇所以上の手術ができない 手術を検討している方は、リスクも含めてしっかりと理解しておきましょう。 手術後に合併症や後遺症が出る可能性がある 頻度としては低いものの、ヘルニアを摘出する際の神経損傷や脊髄損傷が起こり、後遺症として手足のしびれや麻痺などが出てしまう場合があります。 また、椎間板の再突出などの合併症が生じる可能性もあります。 再発のリスクがある 椎間板ヘルニアの内視鏡手術を受けたとしても、症状が再び現れる可能性はゼロではありません。 なぜなら、手術で取り除けるのは、あくまでも飛び出した椎間板の一部だからです。 手術後に、残った椎間板に負担がかかったり、別の場所が新たに飛び出したりすると、再び痛みやしびれなどの症状があらわれることがあります。 手術ができないケースもある 内視鏡手術は、すべての椎間板ヘルニアに適用できるわけではありません。 PELDは細い内視鏡を使用するため、ヘルニアの突出が大きい場合は、手術ができない場合があります。 また、骨の変形がひどいと、内視鏡を正しい位置に挿入できず、手術自体が危険になる可能性があります。 そのため、PELDを受ける前には、MRIを含む画像検査でヘルニアの状態を詳しく調べ、医師とよく相談した上で手術方法を決める意識が大切です。 手術できる病院が限られる 内視鏡手術は、どの病院でも受けられるわけではありません。 高度な技術が必要なため、経験豊富な医師がいる医療機関でのみ対応しています。専門的な知識と技術が求められ、設備が整っていない病院では対応が難しいです。 通院可能な範囲に手術ができる病院があるとは限らず、遠方まで行く必要がある場合もあります。 手術を希望する場合は、対応している病院を事前に調べ、適切な医療機関を選びましょう。 1回で2箇所以上の手術ができない 椎間板ヘルニアの内視鏡手術では、一度に2箇所以上の手術ができない場合があります。 手術は身体への負担が大きく、一度に多くの場所を手術すると、回復に時間がかかったり、合併症のリスクが高まったりするからです。 椎間板ヘルニアが2箇所以上にある場合は、症状がとくにひどい場所から手術をおこないます。そして、手術後の状態を見ながら、症状が改善しないようであれば、数カ月後に別の場所を手術する流れがよく採用されます。 椎間板ヘルニア内視鏡手術のメリット 次に、椎間板ヘルニア内視鏡手術における主なメリットを解説します。 体に与えるダメージが低い 脊柱周囲のダメージを抑えられる 局所麻酔下でも手術が行える 日帰りで手術が行える 手術成績が良好である メリットを把握すれば、手術を決断した際の不安が軽減されるでしょう。 体に与えるダメージが低い 内視鏡手術は、体への負担が少ない治療法です。 皮膚の切開が小さく済むため、傷跡が目立ちにくく、回復も早くなります。 開放手術では大きく切開するため、術後の痛みが強くなる傾向がありますが、内視鏡を使う方法なら最小限のダメージで済みます。そのため、日常生活への復帰もスムーズに進みやすいです。 負担の少ない治療法を選びたい方に適しているでしょう。 脊柱周囲のダメージを抑えられる 内視鏡手術は、背骨の周りの筋肉や組織へのダメージを最小限におさえられます。内視鏡を使ってヘルニアの部分に直接アプローチできるからです。 従来の切開手術では、背骨の周りの筋肉を大きく切開する必要がありました。しかし、内視鏡手術では小さな穴から内視鏡を挿入するだけで済みます。 手術後の筋肉や組織のダメージが少ないため、入院期間が短縮され、早期の社会復帰が期待できます。 局所麻酔下でも手術が行える 内視鏡手術では、部分的な麻酔(局所麻酔)で手術が受けられる場合があります。 麻酔は、高齢者や肥満の方に負担がかかります。そのため、局所麻酔を選択できるのは、麻酔が負担になる患者さんにとって大きなメリットといえるでしょう。 ただし、局所麻酔では、手術中に痛みを感じれば、治療を中断せざるを得ません。強い痛みを伴う場合は、全身麻酔が推奨されます。 日帰りで手術が行える 日帰り手術が可能な点も、内視鏡手術のメリットです。内視鏡手術は、小さな切開で済むため、入院せずに治療を終えられる可能性があります。 長期の入院が難しい人や、仕事や家庭の都合で休みを取りづらい人にとって、大きな利点となるでしょう。 手術成績が良好である 多くの研究で内視鏡手術の高い成功率が報告されています。とくに、足のしびれや痛みの緩和に効果が高いです。 身体への負担が少ない手術なので、合併症のリスクも低いことがわかっています。 椎間板ヘルニアの治療や術後の後遺症には「再生医療」の選択肢もある 椎間板ヘルニアの治療や術後の後遺症における治療法に「再生医療」の選択肢が挙げられます。 再生医療とは人間の自然治癒力を活用した新しい医療技術です。 椎間板ヘルニアの症状である手足のしびれ・歩きにくさが改善した症例が数多く報告されています。 当院リペアセルクリニックでは、椎間板ヘルニアの治療についてご相談を受け付けております。メール相談やオンラインカウンセリングより気軽にお問い合わせください。 まとめ|椎間板ヘルニアの内視鏡手術のデメリットも理解した上で手術を検討しましょう 内視鏡手術が失敗してしまう可能性は低いと考えられていますが、脊髄損傷や神経損傷の可能性は「0」ではありません。 しかし、内視鏡手術は体への負担が少ない手術なので、早期の社会復帰が期待できます。 手術のメリット・デメリットの両面を理解した上で治療方針を固めていくと、不安が軽減されるでしょう。 体に負担の少ない治療においては再生医療も選択肢として挙げられます。 椎間板ヘルニアの治療や後遺症などにお悩みの方で再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。 参考文献 尾原裕康ほか「経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望」『脊髄外科』VOL30(2)pp.152-158 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/2/30_152/_pdf(最終アクセス:2025年2月21日) 平野仁祟ほか「腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界」『脳外誌』:26(5)pp.346-352. p347 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/26/5/26_346/_pdf(最終アクセス:2025年2月21日) 平野仁祟ほか「経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy:PELD)の現状と今後の展望」『脊髄外科』VOL28(3)pp.310-312 2014年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/28/3/28_310/_pdf(最終アクセス:2025年2月21日)
2024.02.08 -
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腰椎椎間板ヘルニアのPELD(PED)内視鏡下手術ついて つらい腰椎椎間板ヘルニアの症状にお困りではありませんか? 「薬もリハビリも効かず、根本的に良くしたい」「でも、できれば体に大きな負担がかかる手術はしたくない」 そう思っておられる方も多いでしょう。そんな方でも、近年技術の進歩が目覚ましい内視鏡を用いた負担の少ない手術なら、抵抗感が少ないかもしれません。 本記事では、内視鏡による椎間板ヘルニアの手術の一つである「PELD(PED)」の概要についてご説明します。PELD(PED)の費用や合併症、術後のしびれ、痛みなどの後遺症への治療についても解説をしていきます。 腰椎椎間板ヘルニアの内視鏡手術について 腰椎椎間板ヘルニアは、痛み止めやリハビリなど保存療法を行なっているうちに自然に改善する可能性のある疾患です。多くの場合、3ヶ月以内にはヘルニアは吸収されると言われています。ところが、一部の方は症状が残ってしまうことがあります。また、ヘルニアが神経を圧迫し、足の運動麻痺や排尿障害をきたすなど日常生活に影響を及ぼすケースもあるのです。 「早期の症状改善を希望する場合」「保存療法の効果が不充分である場合」「神経の症状が出た場合」は手術療法を行います。 手術療法の適応 早期の症状改善を希望する場合 保存療法の効果が不充分である場合 神経の症状が出た場合 その中でも、内視鏡による手術は手術の創(手術でできる傷)が小さく、体に負担がかかりにくいため注目を集めています。 内視鏡による椎間板ヘルニアの手術は、PELD(PED)とMED(※)と呼ばれる二つの術式に分かれます。とりわけ、手術侵襲が最小限に抑えられるのがPELD(PED)です。病院によっては日帰り手術が可能としているところもあるくらいです。 PELD(PED)とは PELD(PED)はPercutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy (Percutaneous Endoscopic Discectomy)の略です。日本語では、経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術と呼びます。おおよそ7mm程度のとても細い筒状の手術器具を用います。内視鏡を見ながら椎間板内に直接アプローチして脱出したヘルニアそのものを摘出する手術です。 なお、PELDとPEDの2つの違いはなく、どちらも同じものを指します。 近年は、同様の手術手技の適応が広がっています。ヘルニア以外の疾患の治療や、腰椎ではなく頚椎の疾患にも用いられることもあるのです。そのため、腰椎という意味の”Lumbar”ではなく、脊椎という意味の「スパイン」“Spine”という単語を使ってFESS: Full Endoscopic Spine Surgery(あるいはFED: Full Endoscopic Discectomy)とも呼ばれます。 PELD(PED) の適応 PELD(PED)は従来の手術よりも小さい手術の傷のみで手術ができます。そのため、体への負担が軽いです。また、全身麻酔を用いることもありますが、局所麻酔のみでも行う病院もあります。術後の安静が必要な期間も短く、日帰り〜数日の入院のみで退院できます。 PELD(PED)中は内視鏡の映像のみで進めていきます。視野を見やすくするため内視鏡の使用時には生理食塩水を流し続けます。そのため、従来の内視鏡を用いた手術よりも術後の癒着が起こりにくいです。 これらの特徴から、PELD(PED)は学業や仕事を休みにくい若い人・早く復帰をしたいスポーツ選手・全身麻酔のリスクが高いお年寄りや肥満の患者さんには良い治療法です。 PELD(PED)が向いている人 学業や仕事を休みにくい若い人 早く復帰をしたいスポーツ選手 全身麻酔のリスクが高いお年寄りや肥満の患者さん また、全身麻酔が必ずしもいらないので、急速に神経症状が進んだり排尿障害が起こったりなど緊急を要する場合にも良い選択肢となります。 PELD(PED)の弱点 一方で、PELD(PED)の手術に用いる器具がとても細いがゆえの弱点もあります。 まず、狭い筒を介してアプローチすることになるため、大きくて固いヘルニアに対応するのは困難です。 また、内視鏡をヘルニアに入れられる方向にも制限が生じるため、ヘルニアの飛び出し方によっては不向きと判断されることもあります。 PELD(PED)が不向きな人 大きくて固いヘルニア ヘルニアの飛び出し方の状態 上記のように、病状によっては不向きなことがあります。 PELD(PED)の手術費用 PELD(PED)は、公的医療保険の対象となっています。手術を受ける方の状況により1〜3割負担で治療を受けることができます。さらに「高額療養費制度」を使うことができるため、医療費は最終的に上限額を超えることはありません。 保険適応の場合の最終的な費用負担は、数万〜20万円程度と考えられます。手術の内容や入院の有無・期間、患者さんの世帯の収入などによって負担額は異なりますので注意が必要です。 ただし、病院によっては自費診療でPELD(PED)を行なっているところもあります。自費診療のほうが柔軟な対応ができるのです。公的保険は検査の日程や手術器具などにおいて様々な制約が生じます。 一方で自費診療では高額な費用がかかります。その金額もそれぞれの病院が設定するため、一概にいくらとは言えません。さらに、自費診療の場合、高額療養費制度の対象外となります。 PELD(PED)の合併症 PELD(PED)は比較的体への負担が少ない手術ではありますが、どのような手術でも合併症の可能性はあります。 特に注意すべき合併症は次の4つです。 注意したい合併症 神経障害 硬膜損傷 術後血腫 感染 ひとつずつ解説していきます。 神経障害 まず、神経障害が挙げられます。手術中にヘルニアの近くの脊髄やそこから伸びる神経の根本(神経根)を触ってしまうことで、神経の損傷が起こることがあります。足がしびれたり痛んだり、足の筋力が落ちたり、排尿機能の障害が起こったりすることがあるのです。 硬膜損傷 硬膜損傷とは、脊髄を包んでいる硬膜が手術手技により破れてしまうことです。脊髄神経は硬膜に包まれて、脳脊髄液に浮いています。硬膜が破れると、そこから脳脊髄液が漏れ出します。とくに起き上がった時に脳脊髄液が漏れ出して脳や脊髄を引っ張ることが多く、頭痛の原因になります。 術後血腫 また、手術後に出血がコントロールできずに血の塊(血腫)を作ってしまうことがあります。血腫が脊髄から出てくる神経を圧迫してしまうとやはりしびれ・痛みや麻痺などの原因となるのです。 感染 さらには、手術の傷が感染を起こすことがあります。ただし、PELD(PED)は非常に傷が小さく、しかも手術中に生理食塩水を流し続ける術式です。創の感染は他の術式に比べて非常に少ないとされています。 合併症による後遺症に対する再生医療の可能性 PELD(PED)による合併症が起こった時に心配すべきは、後遺症が残ってしまうことです。特に神経の損傷が起こると、しびれや痛み・麻痺などが残ってしまう可能性があります。 従来、神経が傷つくと再生は困難と言われていました。しかし、最先端の再生医療である幹細胞治療は組織の再生力を高めることができます。 再生医療により、治らないとされていた脊髄損傷など神経の障害も、改善する可能性が出てきたのです。PELD(PED)の術後後遺症も幹細胞治療の適応です。 当院では脊髄損傷後の後遺症に対して、幹細胞治療を行っております。当院の細胞加工室は細胞を冷凍することなく輸送・保存しています。そのため、生き生きとした幹細胞を大量に投与することが可能です。 さらに、点滴投与に加えて、損傷した脊髄に対して直接幹細胞を投与できるように脊髄腔内ダイレクト注射療法を行なっております。点滴単独よりも脊髄に届く幹細胞の数が多くなります。 「フレッシュな細胞」を「より多く」損傷部位に届けることで、脊髄損傷の治療において良好な治療成績をおさめてきました。 さらに、患者さん本人の脂肪細胞・血液を培養に用いることで、アレルギーや感染などのリスクを極力減らして安全性の高い治療を提供しております。 まとめ・腰椎椎間板ヘルニアのPELD(PED)内視鏡下手術とは PELD(PED)手術は、ヘルニアのつらい症状に対して有効な治療法の一つです。内視鏡を使用して行う治療で、傷は小さく体への負担も最小限です。手術後の安静期間も短く、早い社会復帰も望めます。 ただし、病状によっては不向きなこともあります。また、どんなに体への負担が小さいといっても、手術による合併症のリスクが全くないわけではありません。術前に事前情報をしっかり把握し、納得した上で受けましょう。 ▼何も起こらないことが一番ですが、万が一後遺症が残ってしまった場合には最先端の再生医療である幹細胞治療が適応になります。もし術後の後遺症にお困りであれば、ぜひ一度、当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE 参考文献 八木 貴, 木内 博之. 日本医事新報 (4843): 54-54, 2017. 平野 仁崇, 伊藤 康信, 水野 順一, 沼澤 真一, 渡邉 貞義, 渡邉 一夫. 脊髄外科, 28(3):310-312, 2014. 平野 仁崇, 水野 順一, 沼澤 真一, 伊藤 康信, 渡邉 貞義, 渡邉 一夫. 脳神経外科ジャーナル, 26(5): 346-352, 2017. 南出晃人. 整形外科看護 25(11): 1094-1099, 2020. 出沢明. Loco CURE 5(2): 156-163, 2019. 日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. ▼ヘルニアの治療法について 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルとは?医師が詳しく解説
2024.02.05 -
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減圧症による脳障害:その症状と後遺症に対する治療法を解説します ダイバーや潜水を仕事にしている方にとって気をつけなければいけない減圧症。重症になると脳障害を起こすことはご存知でしょうか。 減圧症による脳障害は適切な治療で回復することが多いです。しかし、一部の患者さんでは治療を行っても後遺症が残ってしまいます。後遺症はダイビングや潜水作業のみならず日常生活にも支障をきたす可能性がああります。 本記事では減圧症による脳障害で起こる症状、およびその「後遺症と治療法について解説」していきます。ぜひ最後までお読みください。 減圧症とは 血液や組織に出現した気泡が血液の流れを阻害したり、直接的に組織・臓器にダメージを与えたりするのが減圧症のメカニズムです。 高い圧のかかる場所では窒素などの気体が血液や組織中に溶解してしまいます。低い圧の場所に移動すると、これらの気体が溶けきれなくなります。これが減圧症の原因となる気泡です。 体にかかる圧が急激に減少する場合に起こることが「減圧症」という名前の理由です。代表的なケースは潜水から急浮上するときであるため、「潜水病」とも呼ばれます。 減圧症の重症症状 減圧症は重症度別に軽症のⅠ型と重症のⅡ型の2つに分けられます。 Ⅰ型では肘や肩などを中心とした関節痛、皮膚の発赤や痒み、疲労感などの軽い症状が多くみられます。 一方、重症度の高いⅡ型では次のような重篤な症状を認め、時に命にも関わります。 脳の損傷 頭痛 意識障害 痙攣 片麻痺 脊髄の障害 肢麻痺 排尿障害 内耳の障害 めまい 吐き気 肺の障害 呼吸困難 咳 なお、同様に急激な減圧により起こる動脈ガス塞栓症という病気もあります。こちらは圧変化により肺の一部が破れ、その気泡が血液内に入り臓器血管を閉塞してしまうことで起こるものです。肺が破れる気胸などとともに心筋梗塞や脳梗塞をきたします。 動脈ガス塞栓症は減圧症との区別がつきにくく、同時に起こることもあるため注意が必要です。治療方針は一緒であるため、とくに重症例では動脈ガス塞栓症も合併している可能性を念頭に置きます。 減圧症による脳障害の症状 気泡が脳実質に障害を起こしたり、脳の小さな血管の血流障害を起こしたりすることで脳障害をきたします。 症状は障害を受けた脳の部位により多種多様です。 例えば、次のようなものが挙げられます。 脳障害の症状例 記憶障害 ふらつき(失調) まぶたや指の震え 片麻痺症状 いつもと異なる異常な言動 意識障害 通常の脳梗塞と異なり、早期に適切な治療を行えば症状を残さずに回復する可能性があります。しかしながら広範囲のダメージを受けてしまうと、後遺症が残り、最悪の場合は死に至ることすらあります。 減圧症が起こった場合の治療 減圧症発症時は、100%の酸素投与とともに、全身状態を落ち着けることが必要です。全身状態により、輸液・昇圧薬投与・人工呼吸など必要な処置を行います。 同時に、発症の早いうちに再圧療法が必要です。治療ができる医療施設は限られているため、専門施設へ紹介をされて搬送されることになります。 再圧療法とは、高い濃度の酸素と高い圧をかけることができる特殊な装置を用いる治療です。気泡を再び血液や組織中に溶け込ませるとともに、酸素を投与して血流障害が起こっている組織の回復を目指すものです。 基本的には初回の治療で完治を目指すことが原則です。ただし、神経症状が残ってしまった場合は追加治療を行います。 後遺症の可能性と治療について 前述のように、一般的な脳梗塞と違って適切な治療で症状が改善することが多いです。しかし、脳の広範囲にダメージが起こった場合や適切な治療時期を逃してしまった場合などは、障害を残すことがあります。 麻痺や失調・高次脳機能障害などが固定化してしまった場合は、リハビリテーションを行う必要があります。時間をかけて徐々に機能回復できる場合もありますが、不便さが残る可能性も高いです。 減圧症について気になるQ & A 減圧症(潜水病)に関してよくお聞きする質問を以下に記しました。 Q:減圧症を起こさないために注意すべきことは? 潜水当日の体調不良は減圧症のリスクを高めるといわれています。体調を万全に整えておきましょう。 急激な浮上を行ったり、1日に何回も潜ったりすると窒素が気泡化しやすくなるため、手順を守って過剰に潜ることは避けるべきです。 また、潜水直後に飛行機に乗ることは危険です。上空は圧が低いので、より減圧症が発症するリスクが高くなるからです。 Q: 減圧症と減圧障害の違いはなんですか? 減圧症は圧の急激な変化により窒素などの気泡が生じて組織障害をきたす疾患です。減圧障害とは、減圧症と動脈ガス塞栓症の2つの状態を合わせたものです。 とくに脳障害をはじめとした重症例ではこの2つの病態の鑑別が難しいことも多くあります。また、基本的な初期対応も同じです。そのため、近年では2つを合わせた「減圧障害」の呼び方がより一般化してきています。 まとめ・減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について 減圧症の脳障害は重篤で、後遺症が残ってしまう可能性もあります。ひとたび後遺症が残ると、根気強いリハビリが必要です。 ダイビングや潜水に関わるお仕事をされている場合はしっかりと減圧手順を守るとともに、「おかしいな」と思ったらすぐに受診をしましょう。 なお、当院では最新治療の一つとして注目されている幹細胞治療を用いて、脳卒中など脳の障害による後遺症の治療を行っています。減圧症による脳障害の後遺症でお困りであれば、再生医療専門の当院にぜひ一度ご相談ください。 ▼以下もご覧いただけます 減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説! 参考文献 高谷陽一. 医学のあゆみ 276(4): 291-294, 2021. 梅村武寛, 堂籠博. 日本医事新報 (5120): 40-41, 2022. 工藤大介. 日本医事新報 (5062): 78-79, 2021. 日本高気圧環境・潜水医学会. 減圧症に対する高気圧酸素治療(再圧治療)と大気圧下酸素吸入. 2018年9月28日 土居浩, 朝本俊司, 荒井好範. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 2020; 55: 26-33. 鈴木直子.柳下和慶, 外川誠一郎, 山見信夫, 岡崎史紘, 芝山正治, 椎塚詰仁, 山本和雄, 眞野喜洋. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 2012; 50: 1-9. 合志 清隆, 森松 嘉孝, 玉木 英樹, 村田 幸雄, 合志 勝子, 石竹 達也, 井上 治. 医学のあゆみ 263(3): 261-262, 2017. 小濱正博 レジデントノート 8(5): 667-674, 2006.
2024.01.25 -
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減圧症の治し方と後遺症に対する最新の治療法を医師が解説 減圧症とは、高圧環境下で血中や組織中に溶解していた窒素などの空気が、急激な減圧により気泡化して起こる疾患です。潜水からの急浮上に伴うものが代表的であるため、「潜水病」と呼ばれることもあります。 軽い関節痛や痒み・発疹などの軽症から、脳障害や脊髄損傷をきたして死に至る重症まで症状は多様です。 本記事では発症直後の応急処置や再圧治療について解説します。後遺症に対する最新治療としての再生医療の可能性についてもご説明していきます。 減圧症の応急処置 回復体位 recovery position 減圧症をきたした際、専門的な治療ができる医療機関へ搬送を待つ間にできる応急処置をご紹介します。 もし患者さんに意識がなく、呼吸が止まっている状態であれば、速やかに胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸といった心肺蘇生を行う必要があります。AEDが準備できるのであれば速やかに装着しましょう。 脳の障害をきたすこともある減圧症では、脳圧をあげないために頭を下げる体勢は厳禁です。意識があれば仰向けで休ませましょう。 意識がなく、呼吸のみある状態であれば回復体位(上図)をとります。舌の付け根が喉を塞いだり嘔吐物で窒息をしたりしないために、下顎を突き出して横を向くような体勢にします。 呼吸の有無に関わらず必要なのが高濃度の酸素投与です。酸素には組織の窒素の洗い出し効果があるためです。設備があれば一刻も早く開始してください。 意識があれば水分補給を行いましょう。もし医療系の資格を持つ人がいて器材があれば点滴を行います。また、体を冷やしすぎないように保温に努めてください。 意識がなく、呼吸が止まっている状態 胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸で心肺蘇生する 意識がなく、呼吸のみある状態 回復体位をとる(上図参照) 意識がある場合 仰向けで休ませる 水分補給を行う 器材があれば点滴を行う(医療資格保持者がいる場合) 注意点 設備があれば呼吸の有無に関わらず高濃度の酸素を投与する 頭を下げる体勢は厳禁 体を冷やさないように保温する なお、再度潜水をして症状軽減をはかる「ふかし」は絶対に行ってはいけません。 ふかしは、空気を使用するため、酸素投与と比較しても窒素の洗い出し効果の効率が悪いためです。再度浮上した時に症状が再燃したり、場合によっては増悪したりするリスクがあります。 減圧症の治療 治療の原則は「再圧治療」です。 再圧治療とは 治療を受ける人は、専用の治療タンク内に入ります タンク内の気圧は水中でかかるくらい高い圧まで上がります その中で患者さんは純酸素を吸入します 高い気圧により気泡は圧縮され、再度血液や組織中に溶け込みます その結果、血流の回復が期待できる治療法です さらに高濃度酸素を投与することで、組織へ効率よく酸素が運ばれてきます。 組織に酸素が届くと、窒素が洗い出されます。窒素は肺へ集まり、体外へ排出されるのです。 一定時間、高い気圧をかけたら、その後はゆっくり減圧行います。こうすることで、再度気泡ができることを防ぎます。 高い気圧をかける時間や減圧については、世界的に標準治療として使用されている「米海軍酸素再圧治療表6」に従って行うことが原則です。 初回で可能な限り症状をなくしてしまうことが重要であるため、経過を見ながら治療時間の調整が行われます。それでも症状が残ってしまった場合は、症状の回復の可能性があるのであれば複数回の再圧治療を行うこともあるのです。 減圧症の後遺症 減圧症により脳や脊髄の障害が起こっても、早期に適切な治療が行われれば症状の消失が期待できます。しかしながら、治療が遅れたり適切な治療がなされなかったりすると後遺症を残す可能性があります。 後遺症の症状は障害部位により多様です。以下に代表的な後遺症をお示しします。 内耳障害 聴覚と平衡感覚に関わる第Ⅷ脳神経の障害です 基本的には適切な治療で改善します。 減圧症と気づかずに治療が遅れると耳鳴りやふらつきが残ります 対麻痺 主に下肢の両側に左右対称に起こる運動麻痺です 脊髄の障害による後遺症です。 膀胱直腸障害 脊髄の障害により、排尿や排便のコントロールが困難になります 尿がうまく出なくなったり、失禁を起こしたりします 感覚障害 脊髄および脳の障害いずれでも起こる後遺症です 痺れたり、感覚がわからなくなったりします 脳障害の後遺症として起こる場合は障害部位と反対側に認められます。 一方、脊髄の障害の場合は障害された部位より下に両側に起こることが一般的です。 片麻痺 脳の障害により起こります。 対麻痺と異なり、片側の手足の運動麻痺です。 これらの後遺症によりダイビングへの復帰が出来なくなるだけでなく、導尿が必要になったり車椅子生活を余儀なくされたりするケースもあるのです。 このような場合にはリハビリを行い、少しでも生活しやすくなるように工夫するより他にありません。 また、急性期の症状は回復して残らずとも、のちに骨壊死を起こすことがあります。減圧症により骨の循環障害が起こることで骨の一部が壊死してしまうのです。 もっとも多いのは大腿骨頭壊死です。発症直後は無症状ですが、徐々に骨頭が潰れていくため股関節痛が起こります。最終的には関節が破壊され、歩行が困難になってしまいます。 骨壊死が起こってしまうと症状の進行を止めることはできず、生活に支障が出れば手術が必要になるのです。 減圧症(潜水病)の後遺症は治せるのか?再生医療の可能性について 現在、最新の治療である幹細胞治療がさまざまな分野で注目を浴びています。減圧症の後遺症についても同様のことが言えるでしょう。 幹細胞治療は、「間葉系幹細胞」と呼ばれる色々な細胞に変化できる万能細胞の特性を活かした治療法です。幹細胞を採取して培養を行い、障害部位に投与することで組織の再生を促します。 一般的に回復しないとされていた脳卒中や脊髄損傷により傷ついた神経や、従来手術しかないと考えられてきた変形した関節の治療などが対象です。そのため減圧症の後遺症についても、幹細胞治療が役に立つ可能性があるでしょう。 ▼脊髄損傷に対する幹細胞治療についてはこちらの動画をご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE まとめ・減圧症の治し方と後遺症に対する最新の治療法とは!医師が解説! 減圧症発症後の各段階での治療について解説をしました。 減圧症の後遺症は後の生活に大きな支障を及ぼします。まずは起こさないことが一番です。 不幸にして発症してしまった場合でも、速やかな治療により後遺症が残る可能性を抑えることができます。応急処置のための酸素の準備・心肺蘇生法の習得・搬送先の把握なども、潜水をする上で重要な準備と言えるでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下も潜水病に関する情報を記載しています 減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について 参考文献 鈴木 信哉:潜水による障害,再圧治療. 高圧酸素治療法入門第6版. 日本高気圧環境・潜水医学会. 2017; 147-174. 小濱正博. レジデントノート 8(5): 667-674, 2006. 小島泰史, 鈴木信哉, 新関祐美, 小島朗子, 川口宏好, 柳下和慶. 日本渡航医学会誌 13(1): 27-31, 2019. 梅村武寛, 堂籠博. 日本医事新報 (5120): 40-41, 2022. 工藤大介. 日本医事新報 (5062): 78-79, 2021.
2024.01.22 -
- 幹細胞治療
- 脊髄損傷
- 再生治療
- 脊椎
減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説 減圧症は、ダイビングなどで深いところから突然浅いところに浮上した際、高圧の環境で血液や組織に溶け込んでいた窒素が、減圧に伴って気泡を作り、様々な症状をもたらす病気です。気泡によって脊髄が損傷を受け、神経症状を起こしてしまうこともあります。 今回は、この減圧症についてわかりやすく解説していきます。 減圧症とは 減圧症とは、周りの圧力の低下に伴って、身体の中に溶解していた不活性ガス(主に窒素)が気化し気泡となることが原因となり、さまざまな症状が現れる病気です。 高気圧環境での労働や、高い場所での減圧によるものが知られているのですが、近年はダイビングによる発症が増加し、減圧症全体の20%以上を占めると言われています。 中高年のダイバーが増えている一方で、減圧症に対する知識の教育不足や治療環境が十分に整っているとは言えません。 さて、この減圧症は潜水後に発症することが多いために、潜水病と呼ばれることもあります。症状としては、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害といったものがあります。 減圧症の症状 減圧症では、身体の中にたまっていた窒素が気泡となり、膨張することで身体の組織を傷つけたり、血管を塞いだりすることでさまざまな症状が現れてきます。 脳の血管が気泡で詰まることで、脳卒中のような症状が現れてしまうこともあります。例えば、身体の片側の筋力低下、めまい、発語困難などです。また、窒素の気泡が生じると組織に炎症が起こり、筋肉や関節、腱の腫れや痛みも起こります。 さて、減圧症は大きく以下の2つのタイプに分けられます。 Ⅰ型(比較的軽症) 皮膚や筋肉の症状のみ。 腕や脚の関節、背中などに痛みが生じます。 初めは軽い痛みですが、徐々に増強し、鋭い痛みとなります。 軽度な症状であっても全てが自然治癒するわけではなく、徐々に症状が重くなることもあるので注意が必要です。 Ⅱ型(比較的重症) 呼吸器や循環器の症状、中枢神経症状を呈するもの。 軽いしびれから、重度の麻痺や死亡にまで至る場合もあります。 特に脊髄が障害を受けやすいとされています。脊髄が損傷を受けた場合は、腕や脚のしびれ、痛み、筋力の低下がみられます。 減圧症によって脊髄損傷を受けると、後遺症が残る場合もあります。つまり、治療が遅れてしまうか、十分に行われない場合に永続的な神経障害となる恐れもあり、減圧症による症状が治らないということになってしまうのです。 このⅡ型減圧症では、脊髄損傷が最も多いとされています。 脊髄は硬い硬膜で覆われているのですが、脊髄内に発生した気泡によって組織内の圧力が上昇し、血流障害などによって脊髄損傷が起こるとされています。 下位胸髄から腰髄、そして上部から中部胸髄が好発部位とされており、窒素と結びつきやすい脂質が多く含まれている部位が障害されやすいです。 症状は軽い痺れなどの異常感覚から、排尿・排便が難しくなる膀胱直腸障害を含む完全な四肢麻痺まで、さまざまです。 報告によっても異なりますが、日本では33-62%の脊髄損傷の方で後遺症が残ってしまうともされてます。 減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死があります。骨壊死が進むと、日常の生活のレベルが著しく低下し、人工関節置換術などの手術も必要となることがあります。 さらに、減圧症では肺にも障害が現れることがあるのです。気泡が肺に及ぶと、咳や胸の痛み、呼吸困難が起こり、まれに死に至ることもあります。 減圧症の治療法 減圧症の治療法として最も大切なのは、高気圧酸素療法です。 重症であるⅡ型減圧症では、以下のような方法が用いられます。 高気圧酸素療法 ①水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入 ②5分のインターバルを挟んで3回繰り返す ⇩ ③水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入 ④15分のインターバルを挟んで2回繰り返す 水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入を5分のインターバルを挟んで3回繰り返します。そしてその後、水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入を15分のインターバルで2回行い、減圧します。 この治療法は以下のような作用があります。 血液や組織の中で気泡となった窒素を、血液や組織に再び溶解させる作用 窒素を身体から排泄させる作用 血液の流れが悪い部位に酸素を行き渡らせる作用 脊髄損傷において、高気圧酸素治療を繰り返すことで回復するケースもみられます。 高気圧酸素治療を行なっても、運動機能や知覚障害が残る場合、ステロイドの点滴治療や、歩行訓練・バランス訓練といった理学療法を行っていきます。 減圧症の予防法 ダイビングをするダイバーは、ガイドラインで決められているような減圧停止を行いながら浮上することで、減圧症を予防することができます。 また、注意点として、ダイビングをしてから12〜24時間以内に飛行機に乗ると減圧症のリスクが高まると言われています。そのため、ダイビングを行ったあとは飛行機に乗ったり高地に行ったりする前に、海抜0メートル地点に12-24時間ほど滞在することが勧められています。 まとめ・減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説 今回の記事では、ダイビングを行う上では知っておくべき潜水病について解説しました。 脊髄損傷の後遺症が残ってしまった場合の最新の治療法として、再生医療があります。 当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられています。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE 参考文献 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p454 減圧症 (げんあつしょう)とは | 済生会 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p456-457
2024.01.18 -
- 幹細胞治療
- 頭部、その他疾患
- 股関節、その他疾患
- 脊椎、その他疾患
「水中世界を楽しみたいけれど、ダイビング後の体調不良が心配……」 「高地登山は魅力的だけど、体調が悪くなったらどのように対処したら良いの?」 ダイビングや登山などのレジャーに伴う体調変化について、不安や疑問を感じている方もいるでしょう。 減圧症は、潜水や高地登山などで急激な気圧変化が起きた際に発症する場合があり、放置すると深刻な後遺症を残すケースも珍しくありません。 本記事では、減圧症を発症する仕組みや症状について解説します。誰にでもできる予防法も紹介するので、正しい知識を身につけ、安心してアウトドアを楽しみましょう。 減圧症とは?発症する仕組み 減圧症とは、周囲の気圧が急激に低下する環境において、体内に吸収されていた窒素などの不活性ガスが気泡となり、体内組織や血管内で問題を引き起こす現象です。 急激な気圧変化が起こる状況としてよく挙げられるのは、スキューバダイビングや急激に18,000ft(約5,500m)以上まで上昇する高地登山などです。 私たちの体は呼吸を通じて空気中の窒素ガスを取り込みますが、気圧や水圧が高い場所では、通常よりも多くの窒素ガスが血液や体組織に溶け込みます。 急激に気圧や水圧が低い場所へ移動すると、体内に溶け込んでいた窒素を気体の状態に戻し、気泡を発生させる原因へとつながります。 気圧変化によって発生した気泡は、血管を塞いだり神経を圧迫したりするため、しびれやめまいなどの症状を引き起こすケースも少なくありません。 気圧変化の大きいスキューバダイビングや高地登山をする際には、適切な知識と慎重な行動が求められます。減圧症を予防できるよう、発症のメカニズムを理解しておきましょう。 減圧症の症状と分類をわかりやすく解説 軽度の減圧症で発症する症状は、以下のとおりです。 関節や筋肉の痛み 皮膚の湿疹やかゆみ 疲労感 吐き気や頭痛 注意力散漫 ただし、減圧症は症状の現れ方や重症度によってⅠ型とⅡ型に分類されます。重症度で影響を受ける部位や対処法が異なるため、症状の特徴を理解するのが重要です。 ここでは「Ⅰ型減圧症」と「Ⅱ型減圧症」について、具体的な症状を交えながら詳しくみていきましょう。 減圧症の症状については、こちらの記事も参考にしてください。 Ⅰ型減圧症 Ⅰ型減圧症は比較的軽度の症状が中心で、主に筋肉や関節、皮膚およびリンパ管に異常が現れます。典型的な症状は、以下のとおりです。 関節の痛みや筋肉痛 かゆみ 皮膚の斑点や発疹 腕のむくみ 胸部や腹部の腫れ 極度の疲労 Ⅰ型減圧症の場合、腕や脚の関節・背中・筋肉に痛みを感じます。痛みが出る部位をはっきりと特定できないケースも珍しくありません。 初期段階での痛みは軽く断続的ですが、徐々に強く感じるようになり、動かすと悪化します。また、リンパ系が影響を受けると、腕や脚の腫れが見られるケースがあるのも事実です。 Ⅰ型は一見すると疲労や打撲に似た軽い違和感から始まるため、見逃されやすい傾向がありますが、早期に発見すれば大きな後遺症は残りません。 症状が軽度であっても放置せず、潜水・登山歴や行動内容と照らし合わせて慎重に評価する必要があります。 Ⅱ型減圧症 Ⅱ型減圧症はⅠ型よりも重篤で、神経系や呼吸器系、循環器系に深刻な影響を及ぼす可能性がある危険な状態です。具体的な症状は以下のとおりです。 めまい ろれつが回らない 手足のしびれや麻痺 視覚障害 聴覚障害 記憶障害 胸の痛みや咳と 不整脈 ショック状態 上記をはじめとするII型減圧症の症状は、脊髄や脳、心臓、肺などの重要な器官の血管が気泡によって閉塞したり、組織が圧迫されたりすると引き起こされます。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害を引き起こすケースもあります。骨障害は、肩関節や股関節に起こる症例が多いのも事実です。なかでも、大腿骨頭壊死が起こると歩行障害などの影響が出るだけでなく、重症な場合には手術が必要となるケースも珍しくありません。 Ⅱ型減圧症は、迅速かつ専門的な治療を必要とする病気です。後遺症が出るリスクもあるため、疑わしい場合は直ちに医療機関を受診しましょう。 減圧症の治し方 減圧症を発症した場合、体内で生じた気泡を縮小させ、組織への酸素供給を改善する治療が基本です。症状の重症度や種類に応じて治療法は異なりますが、主に専門的な医療機関での処置が必要です。 ここでは、減圧症の代表的な治療法である「高気圧酸素療法」と「再圧治療」について、特徴と効果を詳しく解説します。 減圧症の応急処置や治療方法については、こちらの記事も参考にしてください。 また、後遺症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 高気圧酸素療法 高気圧酸素療法は、患者様を「高気圧酸素治療装置(チャンパー)」と呼ばれる装置内に入れ、大気圧よりも高い気圧環境下で高濃度の酸素を吸入させる治療方法です。 高い気圧によって、体内の気泡は物理的に圧縮され小さくなります。また、高濃度の酸素を吸入すると血液中に溶け込む酸素量が増加し、気泡によって酸素不足に陥った組織への酸素供給を促進します。 高気圧酸素療法は、Ⅰ型減圧症からⅡ型減圧症まで、幅広い症状に対して有効性が認められており、多くの医療機関で採用されている治療方法です。治療は早期に実施するほど効果が高く、神経症状の改善や回復時間の短縮が期待できるでしょう。 再圧治療 再圧治療は、とくに重症なⅡ型減圧症や高気圧酸素療法だけでは十分な改善が見られない場合に選択される、より強力な治療方法です。 症状が消失するか大幅に軽減する気圧を「再圧チャンパー」と呼ばれる治療装置内で再現し、ゆっくりとした速度で慎重に減圧していきます。徐々に減圧すると、体内に残る気泡を確実に縮小させ、再度溶解させる効果が期待できます。 再圧治療を実施できる施設は限られていますが、重篤な神経症状や意識障害を伴うケースでは、救命や後遺症軽減のために重要な治療方法です。 減圧症の予防ポイント6つ 減圧症は正しい知識と行動で十分に予防できる疾患です。とくに、ダイビングや高地登山などの気圧差の大きな環境下では、事前準備と行動の工夫が減圧症発症のリスクを大きく左右します。 ここでは、減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説するので、ダイビングや登山の予定がある方はぜひチェックしてください。 ①潜水前の注意 潜水前には体調を整え、十分な睡眠を取るのが大切です。前日はアルコールを控え、疲労を残さないように注意してください。 風邪や鼻づまりがあると、周囲の水圧と体の圧力を同じに保つための耳ぬきをはじめとする圧平衡(あつへいこう)が上手くできず、気圧変化の影響を強く受けるため、無理な潜水は避けることをおすすめします。 また、以下のリスクがある方は、医師に事前に潜水をして良いか、確認しましょう。 卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 疲労 肥満 高齢 経験やスキルレベルに見合った無理のない深度や潜水時間で潜水を計画するのが大切です。 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 潜水中はゆっくりとした下降と浮上を心がけ、急激な圧力変化を防ぐのが重要です。浮上する際は、ダイビングの種類によって1分間に9~18メートルを最大浮上速度とします。さらに、水深3~4m地点で3~5分間の安全停止時間を設けるのも、水圧の平衡を保つために推奨されています。 深く長く潜るほどリスクは高まるため、無理のない計画が必要です。体調に異変を感じたら、無理せず速やかに安全な方法で潜水を中止し、バディやインストラクターに知らせてください。 ③潜水後の注意 潜水直後は激しい運動や高所への移動を避け、身体を休ませる時間を確保します。 潜水回数や深度によって異なりますが、潜水後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まるといわれています。潜水後、飛行機に乗る予定がある場合は、12〜24時間ほど海抜0mの場所にとどまり、一定期間の休息が取れるようにしましょう。 潜水後は体調変化に十分注意を払い、万が一、関節痛や皮膚のかゆみ、しびれ、めまいなどの減圧症を疑う症状が現れた場合は、速やかに専門の医療機関に相談してください。 ④高地登山の適切な計画 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、減圧症が引き起こされるケースがあります。急激に標高を上げるのではなく、数日かけて徐々に体を高地の気圧に慣らしましょう。 登山中も、常にゆっくりとしたペースを心がけ、呼吸が乱れないように注意しましょう。十分な睡眠と休息も、高所での体調管理には欠かせません。 万が一、頭痛や吐き気、めまい、息切れなどの高山病の初期症状や、減圧症を疑う症状が現れた場合は、無理をせず直ちに下山を開始するのも重要な対処法です。 ⑤十分な水分摂取 十分な水分摂取は、体内の水分バランスを整えるだけでなく、減圧症の予防において重要です。 脱水状態に陥ると、血液のねばり気が高まります。血液がドロドロになると血流が悪化し、体内に溶け込んだ窒素ガスが気泡となった際に体外へ排出されにくくなったり、血管内で詰まりやすくなったりする減圧症のリスクが高まります。 活動中だけでなく、活動前後も意識的に水分を摂取するのが大切です。とくに、活動中はこまめに水分補給を行い、喉の渇きを感じる前に飲むように心がけましょう。 摂取する飲み物は、水やスポーツドリンクがおすすめです。アルコールやカフェインを多く含む飲料は利尿作用があり、かえって脱水を引き起こす可能性があるため、控えるようにしてください。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山などの活動前には、専門の医師や指導者・ガイドなどに相談し、適切なアドバイスを受けましょう。個人の体調や経験値に応じたアドバイスを受けられるため、より確実な予防が可能です。 以下の条件に当てはまる方は、潜水や高地登山前に潜水医学や高山医学に詳しい医師の診察を受けるのをおすすめします。 健康状態に不安がある方 循環器系や呼吸器系に持病がある方 過去に減圧症を発症した経験がある方 また、経験豊富な指導者やガイドは、個々のスキルレベルや経験に応じた安全な計画と、現地状況や特有のリスクに関する情報を提供してくれます。 自己判断に頼らず、専門家のアドバイスを受ける行動が重要です。 まとめ|減圧症の予防ポイントを押さえて安全なダイビング・登山をしよう 減圧症は、体内に溶け込んだ窒素が急激な気圧変化で気泡化することで起こる病気です。 Ⅰ型は関節痛や皮膚の異常など比較的軽度な症状が多く、Ⅱ型は神経や呼吸器に深刻な影響を及ぼします。治療には高気圧酸素療法や再圧治療が用いられますが、いずれも早期対応が重要です。 減圧症予防には、活動前後の体調管理や水分補給、安全な活動計画などを徹底しましょう。 しかし、適切な予防法を心がけても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションやステロイドなどの薬物治療が一般的ですが、根本的な治療方法はありませんでした。 当院では、幹細胞治療として、ご自身の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。 減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ1度当院までご相談ください。
2024.01.17 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 股関節
減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説! レジャーダイバーや潜水作業をされている方で以下のような症状に思い当たりはありませんか? 「股関節が痛む」 「歩きにくい」 これは、もしかしたら「減圧症による骨頭壊死」かもしれません。 減圧症のなかでも、骨頭壊死は「慢性減圧症」とも呼ばれます。急激な圧変化が起きた直後ではなく、時間が経ってから症状が現れる疾患です。日本で潜水を仕事にする人の骨壊死は、欧米諸国と比べて発生頻度が高いことが分かっています。 仕事ではなく、レジャーとしてダイブを楽しむ場合、事前の正しい教育や潜水時間の短縮、そして減圧症発症時における対応、すなわち速やかに治療を行う大切さを知ることで骨壊死を減らせることが分かっています。 しかし、レジャーダイブの増加もあり、安直な教育で知識に乏しい中、ダイブが行われている場合があり、いまだダイブ後、骨壊死が発症する例が後を絶ちません。 そこで、本記事では減圧症による大腿骨頭壊死をはじめとした骨壊死について、その原因や症状・治療について解説をするとともに、減圧症の確かな知識を身に着けて頂くことを念頭に記してまいります。 減圧症とは? 高い圧がかかる環境下では、より多くの空気が組織や血液中に溶け込みます。空気が溶け込んでしまった状態で急激に圧の低い場所に行くと、組織・血液内の空気は飽和状態となります。溶けきれなくなった空気はそのまま気体に変化するため「気泡」が発生するのです。 この気泡が直接的に血管に入ったり組織を傷つけて血栓を作りやすい状態にしたりします。こうして全身にダメージを及ぼす病態が「減圧症」です。 減圧症が起こりうる代表的な状況は、海底で作業をしたのち急浮上をしたときです。このため、「潜水病」とも呼ばれています。 減圧症による骨壊死がおこるメカニズムと好発部位 減圧症による骨壊死発症の原因として考えられているのは、気泡や血栓が起こり骨の栄養動脈に十分な血液が行き届かなくなることです。また、骨髄内圧が上昇することにより、静脈の流れが阻害されることも関わるとする説もあります。 動脈が詰まったり、静脈の流れが阻まれたりして血液が回らなくなると、やがてその部分の骨は壊死に至ります。 骨は本来、体重や運動による力がかかっても壊れない強さをもつものです。ところがひとたび壊死をしてしまうと、体重や力が掛かった部分は潰れてしまいます。 壊死が起こりやすいのは、骨の端の部分です。多くの骨は他の骨との間で「関節」を形成しています。つまり、壊死して骨が潰れてしまうことで「関節の痛み」「関節の変形」が起こります。 とくに大腿骨頭(股関節の足側)や上腕骨頭(肩関節の腕側)がダメージを受けやすい場所です。他に膝や肘・骨盤などにも認めることがあります。 骨壊死はどんな症状? 壊死のみでは基本的には目立った症状はないことが多いです。壊死した部分が潰れていくと、痛みを自覚するようになります。 例えば最も多い大腿骨頭壊死の場合は股関節痛です。進行すると、足を引きずるようになり日常生活にも大きな支障が出ます。 骨壊死はどのようにして診断するの? レントゲンは基本的な検査で、骨が潰れて関節が壊れているかを見ることができます。しかし、早期の壊死は発見できません。 レントゲンではっきりしない場合でもMRIを撮影すると壊死がわかります。壊死した部分を取り囲むようにできた血管が豊富な部分が帯状にみえるのが特徴です。 なお、一ヶ所に壊死が見つかると他の部分にもできている可能性があります。その場合は骨シンチグラムという全身の骨の代謝をみる検査を行うことがあります。 骨壊死の治療について 残念ながら、従来の医学では壊死をきたしてしまうと回復できないとされてきました。 壊死が部分的であったり力がかかるところから外れたりしている場合には、鎮痛薬や生活指導などを行いつつ様子を見ることもあります。 また、骨頭に穴をあけて骨髄内圧を下げる「骨穿孔術」をしたり、血管柄つきの骨を移植したりする方法もあります。しかし、いずれも進行例にはあまり効果がありません。 壊死が広かったり壊死部に力がかかりやすかったりする場合や、進行して関節が壊れていく場合は骨切り術や人工関節置換術が行われます。 骨切り術 骨切り術とは、関節面を傷んでないところに調整して負担を減らす手術です。股関節や膝関節などで多く行われており比較的早期例に選択されます。手術直後は患部に力をかけられず、注意しながら生活を送る必要があります。 人工関節置換術 人工関節置換術とは傷んでしまった部分を人工物に変える手術です。関節の一部のみを置換する部分置換術と、全部を取り替える全置換術に分けられます。骨切り術と違い、早いうちから力をかけることができますが、長期経過すると人工物が消耗してしまう可能性があります。 まとめ・減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説! 骨壊死がいったんおこってしまうと、残念ながら現代の医学では進行を止めることはできません。最大の予防は適切な減圧手順を守ることです。 また、他の減圧症を起こしてしばらくしてから発症することが多いです。軽症であっても、減圧症を起こした後は股関節痛などを認めたら早期に受診をしましょう。 減圧症などの原因のない「特発性大腿骨頭壊死」のガイドラインでは、幹細胞を用いた再生医療が、今後期待される治療であると述べられています。とくに関節破壊が進んでいない早期例に骨穿孔術などと併用していくつかの研究が行われ、良好な治療成績が示されてきました。 減圧症による骨壊死の治療選択肢としても広がっていく可能性は充分にあるでしょう。減圧症による骨壊死でお悩みの方は、再生医療専門の当院にお問い合わせください。 ▼減圧症の予防についてご覧になりませんか 減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 参考文献 川嶌眞人, 田村裕昭, 佐々木誠人, 永芳郁文, 高尾勝浩, 山口喬, 丸尾勉, 宮田健司, 加茂洋志, 鳥巣岳彦. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 41(2): 73-76, 2006. 川手健次. 整形外科看護 11(6): 597-604, 2006. 川嶌眞之, 川嶌眞人, 田村裕昭, 永芳郁文, 本山達男, 古江幸博, 尾川貴洋, 片山隆之, 樋高由久, 高尾勝浩, 山口喬, 宮田健司, 清水正嗣. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 46(4): 268-268, 2011. 伊藤伸一, 樋口富士男. 整形外科看護 12(1): 31-35, 2007. 小田義直, 香月一朗, 牛島正博, 筒井秀樹, 杉岡洋一. 整形外科と災害外科 38:(4)1431~1436,1990.
2024.01.11 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
減圧症(潜水病)は、水圧の急激な変化によって体内に気泡が発生することで発症します。 とくにダイビングや潜水後に起こる可能性がある障害で、軽度であれば自然に回復するケースもありますが、症状を見極めた適切な対処が大切です。 本記事では、軽度の減圧症に見られる症状や自然治癒のセルフケア、そして治療法や予防策までをわかりやすく解説します。 減圧症(潜水病)とは?軽度なら自然治癒も可能 減圧症は、水中から水面浮上時に起こる急激な気圧環境の変化によって、体内に溶け込んだ窒素などのガスが急激に気泡化し、関節、筋肉、神経、皮膚、血管などに悪影響を及ぼすことで発症します。 減圧症の症状は、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害など多岐にわたり、症状の重さによって大きく2つに分類されます。 I型減圧症(軽度): 命に関わらない比較的軽い症状が中心で、場合によっては自然に回復するケースもあります。 例:関節痛や皮膚のかゆみ、疲労感、皮下浮腫(浮腫性減圧障害)など II型減圧症(重度): 神経系や循環器系に影響が及び、重篤な症状を引き起こすため、早急な治療が必要です。 例:意識障害や麻痺、呼吸困難など 軽度の減圧症は自然治癒する場合もありますが、自己判断で放置すると思わぬ悪化を招くこともあります。 正しい知識を持ち、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。 軽度の減圧症のチェックリストとセルフケア 減圧症は、症状の程度によって対応が異なります。 本章では、軽度の減圧症によく見られる症状のチェックリストと、症状が出たときにできるセルフケアについて解説します。 軽度の減圧症に見られる主な症状|チェックリスト 減圧症は軽度の場合、自然治癒が期待できるケースもありますが、早期発見と適切な対応がなにより重要です。 以下は、軽度の減圧症に該当する可能性がある代表的な症状です。 ダイビングや潜水後に当てはまるものがないかセルフチェックしてみましょう。 【症状セルフチェックリスト】 関節や筋肉の痛み(鈍い痛みや違和感を含む) 皮膚の発疹やかゆみ(特に上半身) 強い疲労感やだるさ 吐き気、頭痛、軽いめまい 注意力の低下や集中できない感じ 上記の症状が1つでも現れた場合は、「軽度だから大丈夫」とは考えず、速やかに適切な対応を取りましょう。 軽症の減圧症で自然治癒に向けたセルフケア 軽度の症状が見られた場合でも、放置せず次の対応を取ることで自然回復が期待できます。 ◆症状の確認と潜水の中断 自分に該当する症状があるか冷静に確認しましょう。 症状が出た時点で、すぐに潜水を中止し、水中から浮上します。 ◆酸素吸入の応急処置 ダイビング中にフェイスマスクで酸素吸入できる準備がある場合は、迷わず活用してください。 これは、体内の窒素を早く排出するのに役立ち、症状の悪化防止にもつながります。 可能であれば100%酸素を吸入することが推奨されています。 ◆医療機関の受診 症状が軽くても長引く場合、あるいは少しでも不安がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 自己判断に頼りすぎると、症状が悪化し重症化する可能性も否定できません。 軽度の減圧症は、初期対応が適切であれば自然に回復することもありますが、油断は禁物です。 「軽い症状でも酸素」「不安なら医師に相談」という基本を忘れず、安全を第一に行動しましょう。 重度の減圧症に見られる主な症状 減圧症の中でもII型減圧症と呼ばれる重症タイプは、神経系や呼吸器、循環器などの重要な臓器に障害を及ぼす可能性があり、生命に関わるケースもあります。 本章では、重度の減圧症に見られる以下、4つの症状を紹介します。 脳型減圧症 脊髄型減圧症 呼吸器の減圧症(チョークス) 減圧性骨壊死 脳型減圧症 脳型減圧症は、体内で気泡が血流を妨げたり、直接的に脳組織を損傷することで発症します。 正確なメカニズムは完全には解明されていないものの、脳卒中に似た神経症状が現れるのが特徴です。 脳型減圧症の主な症状は、次の4つです。 強い頭痛 複視(二重に見える) 発話のしづらさ(言葉が出てこない) 錯乱や意識の混濁 上記の症状が出た場合は、ただちに医療機関を受診する必要があります。 脊髄型減圧症 脊髄型減圧症は、II型減圧症の中でもとくに多く見られるタイプで、脊髄に気泡ができることで神経伝達が阻害されます。 初期は軽いしびれや痛みであっても、対応が遅れると麻痺や排泄障害に進行する危険があります。 脊髄型減圧症の主な症状は、次の4つです。 筋力の低下(動きにくい、力が入らない) 手足のしびれや痛み 腹部や背中の痛み 排尿・排便のコントロールができない(膀胱直腸障害) 時間の経過とともに悪化するケースが多いため、違和感を覚えた段階で専門医の診察を受けることが重要です。 呼吸器の減圧症 呼吸器の減圧症(通称:チョークス(chokes))はまれですが、重篤な症状を引き起こす可能性があります。 肺に気泡が生じることで肺水腫を起こし、酸素と二酸化炭素のガス交換が正常に行えなくなるため、酸素不足に陥る危険性があります。 呼吸器の減圧症の主な症状は、次の3つです。 胸の痛み 息切れや呼吸困難 咳(とくに泡状の痰が出る場合) 肺の細い血管が詰まり、全身への血流が阻害されると、最悪の場合致命的になる可能性もあるため、ただちに高気圧酸素治療を要します。 減圧性骨壊死 重度の減圧症の中には、長期間を経て発症する遅発性の合併症もあります。 代表的な合併症に減圧性骨壊死があり、これは、繰り返し潜水したり、短期間に高圧環境に頻繁に出入りすることで、骨の血流が障害され壊死が起こる状態です。 主に影響を受ける部位は次の2つで、進行すると関節の動きが制限されたり、痛みで日常生活に支障が出ることがあり、場合によっては手術が必要になることもあります。 肩関節 股関節(大腿骨頭) とくに職業的に潜水を行う人は、定期的な健康チェックが推奨されます。 減圧症の治療 減圧症の治療で、まず行うべき処置は、100%酸素の吸入です。 体内に気泡化した窒素を早く排出するため、フェイスマスクなどで高濃度の酸素を吸うことが推奨されます。 あわせて、脱水対策として水分補給も行います。 口からの摂取が難しいときは、点滴による水分・電解質の補充が必要です。 症状が持続する、または重度の減圧症が疑われる場合は、専門医療機関での「高圧酸素療法(再圧治療)」が行われます。 高圧酸素療法は、高気圧環境で100%酸素を吸入することで、体内の気泡を縮小・除去し、損傷組織への酸素供給を促す治療です。 とくに、神経症状や呼吸器症状が出ている場合は早急な実施が求められます。 また、意識障害や心肺停止が見られる場合には、心臓マッサージや人工呼吸などの救急対応が必要になります。 軽度の症状でも自然治癒に任せず、医療機関での診断と治療を受けることが大切です。 減圧症の予防策 減圧症は、正しい知識と対策を講じることで、発症リスクを大きく減らすことができます。 とくにダイバーや潜水作業者は、事前の準備と潜水後の対応を徹底することが重要です。 以下表は、減圧症を予防するために押さえておきたい基本的な行動です。 予防策 内容 潜水前後の体調管理 疲労・脱水・風邪などがあると減圧症のリスクが高まるため、体調が万全でない日は潜らない 減圧停止の遵守 浮上時に段階的に停止し、体内の窒素を安全に排出する 無理のない潜水計画 潜水深度・時間を事前に計画し、無理のないスケジュールで行動する 潜水後すぐの飛行を避ける ダイビング後は最低でも12〜24時間、飛行機搭乗を控えることが推奨されている ダイブコンピューターの使用 減圧停止や浮上スピードを正確に管理し、安全性を高める 減圧症の予防は、潜水時の注意だけでなく、日常生活の中でも取り組める習慣がいくつかあります。 頻繁に潜る場合は間隔を十分に空ける 水分補給をこまめに行い、脱水を防ぐ 飲酒や喫煙は潜水前後には控える 定期的に減圧症の知識を学び直す(講習会・安全講座など) 肥満、循環器疾患、糖尿病などの持病がある人は医師と相談する 安全に水中活動を楽しむためにも、常にリスクを意識し、正しい手順と知識に基づいた行動を心がけましょう。 まとめ|軽症でも油断禁物!適切な対応を知ることが再発や後遺症を防ぐ鍵 本記事では、初期に現れる軽症状から、神経系や呼吸器系に深刻な影響を及ぼす重症例まで幅広く解説しました。 減圧症は、軽度であっても油断は禁物です。 軽度の減圧症であれば、チェックリストを活用した早期の気づきと、酸素吸入や潜水の中止など適切な初期対応によって、自然治癒が期待できるケースもあります。 しかし、症状を見逃したり、対応が遅れたりした場合には、脊髄損傷などの後遺症が残る可能性があり、完治が難しいケースもあるのが現実です。 とくに脊髄型減圧症による麻痺などは、これまで有効な治療法が限られていました。 そうした中で、脂肪由来幹細胞を用いた再生医療が、新たな治療法の選択肢として考えられています。 この治療では、自身の脂肪から培養した幹細胞を脊髄に直接注入します。 万が一、減圧症による後遺症に悩んでいる方や再生医療に興味のある方は、ぜひ一度当院「リペアセルクリニック」までご相談ください。
2024.01.08 -
- 脊椎
- 胸椎椎間板ヘルニア
「背中が痛い」「胸が痛む」などの症状でお悩みの場合、実は「胸椎椎間板ヘルニア(きょうついついかんばん)」の可能性があるのはご存知でしょうか。 胸椎椎間板ヘルニアは、老化が原因の1つだと考えられています。 他の椎間板ヘルニアと比べて発症する確率は少ない珍しい疾患ではあります。 しかし痛みを放置すると「足が動かない」「尿や便が出なくなる」など、重大な問題が発生する疾患でもあります。 本記事では、胸椎椎間板ヘルニアとは、どのような疾患なのか、予防策や治療法などを解説します。 背中や胸の痛みが気になる方、最近になって足に力が入らない、しびれがあるなどで歩きにくさを感じている方はぜひ参考にしてください。 胸椎椎間板ヘルニアとは 胸椎椎間板ヘルニアとは、老化や強い衝撃を受けて脊椎の胸部にある椎間板が飛び出た状態を指した症状です。椎間板とは、脊椎と脊椎の間にあるクッションのような組織であり、飛び出ると周囲の神経や脊髄を圧迫して脱力感やしびれなどの症状が出ます。 胸椎椎間板ヘルニアが発症する年齢は40~50歳、かつ男性が多い傾向にあります。 胸椎椎間板ヘルニアは「椎間板ヘルニア」の中でも起こりにくい疾患です。 胸椎は肋骨とつながっており安定しているため、椎間板ヘルニアになりにくいと考えられています。 痛みの原因 胸椎椎間板ヘルニアで痛みを感じる原因は、以下の要因が考えられます。 老化 過度なスポーツ 肉体労働 長時間の運転 など どれも姿勢の悪さや背中の筋肉、背骨に問題が生じると胸椎椎間板ヘルニアが発症します。 そもそも胸椎とは「胸」とあるので胸部をイメージする方が多いのですが、実は背骨の一部分が胸椎です。 背骨は首から腰まで合計24個あり、胸部分にある8本の骨が胸椎です。 多くの患者様が外傷は見られないため、背中を押すと痛みを感じたり、太ももやふくらはぎが痛み出したりします。 痛みを放置すると歩行障害や重症化の恐れがあるため、早期の発見と治療が大切です。 「胸椎の痛みかわからないけれど、これって胸椎椎間板ヘルニアなの?」と少しでも気になる点がある方は、当院へ気軽にご連絡ください。 診断方法 胸椎椎間板ヘルニアを診断するにはMRI検査が有効です。 レントゲン検査ではとくに異常が目立たなくても、MRI検査を行えば椎間板ヘルニアの有無や脊髄の圧迫具合などが確認できます。 また、手術を行う場合には、CT検査などを行うケースもあります。 症状を具体的に把握し、適切な診断を受けるためにも、まずはMRI検査を行うのがおすすめです。 以下の記事では、現役医師の立場からMRI検査が必要な理由をまとめているので、あわせてご覧ください。 胸椎椎間板ヘルニアの予防策や治療法 ここからは胸椎椎間板ヘルニアで感じる痛みを避けたい方に向け、予防策を解説します。 胸椎椎間板ヘルニアの進行度によって異なる治療法についても紹介していきます。 安静にしておくのが無難 胸椎椎間板ヘルニアを予防するために、痛みを感じてもストレッチせず安静にしておくのが無難です。 自宅でできる予防法はなく、自己判断でストレッチを実施すると、炎症の悪化や骨折するリスクが高まるからです。 胸椎に痛みがあり、整骨院で施術をしたいと考える方もいるかも知れません。 しかし胸椎椎間板ヘルニアは、進行度によって治療法が異なるため、MRI検査で適切な診断を行う必要があるのです。 歩行障害が進行している場合、手術せず放置すると歩けなくなる事態まで発展する恐れがあります。 適切な診断が終わるまでは、自己判断で胸椎の痛みを改善しようとせず、安静にしておきましょう。 予防におすすめのストレッチ法 現役医師の立場から胸椎椎間板ヘルニアの予防が期待できるストレッチを紹介します。 今回は横になった状態でできるストレッチをお伝えします。 胸椎椎間板ヘルニアに罹患していると猫背になりやすいので、以下のストレッチを実施してみてください。 左側が下になるよう両膝を抱える(背筋を伸びているかを意識する) 両肘を胸の前でまっすぐ伸ばし両手を合わせる 右手で頭上を通りながら半円を描くイメージで動かす 3の動きに合わせて頭も動かす 水平に後ろまで動かした手の動きを5回繰り返す 反対側(左側)も同様の動きを5回繰り返す 胸椎椎間板ヘルニアの痛みを悪化させないためにも、痛みがない程度にゆっくりストレッチを行いましょう。 以下の記事では、今回紹介したストレッチ以外の予防策をまとめています。 胸椎椎間板ヘルニアの治し方や、より詳しいストレッチ法が気になる方は、ぜひご一読ください。 胸椎椎間板ヘルニアの治療法 胸椎椎間板ヘルニアの治療法は、大きく分けると「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。 進行度によって異なる治療法の違いは、以下の通りです。 症状の程度 治療内容 保存療法 比較的軽度 膝の筋肉低下や排尿障害がない場合適用 コルセットや内服薬 手術療法 痛みが進行している 歩行障害やしびれがある場合適用 背骨の一部を除去 以下の記事では、胸椎椎間板ヘルニアの治療後に実施するリハビリ内容を解説しているので、あわせてご一読ください。 なお、現在は胸椎椎間板ヘルニアが進行していても、手術なしで治療できる時代になっています。 胸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状 ここからは胸椎椎間板ヘルニアの症状について解説します。 自身に当てはまる症状があれば医師に相談するようにしましょう。 背中や胸の痛み 胸椎椎間板ヘルニアが発症したときの代表的な症状が背中や胸の痛みです。 しかし、ヘルニアが発生する部位によって圧迫される神経やダメージを受ける神経が異なるため、痛みやしびれを感じる部位も異なります。 また、胸椎椎間板ヘルニアが肋間神経を圧迫すると「肋間神経痛」の痛みが現れるので注意してください。 肋間神経は背中から胸に向けて走っているため、背部痛や胸痛、わきの下あたりの痛みやしびれなどを引き起こします。 肋間神経痛の痛みは、ぴりぴりと焼けつくような感覚であったり、鈍い痛みとして感じる症例が大半です。 肋間神経痛による胸の痛みは、心臓が原因の胸痛と間違えられる場合があります。 しかし、胸椎椎間板ヘルニアによる胸の痛みは、体の動きや姿勢の変化により変動するため、多くのケースで心臓が原因の胸痛と区別できます。 以下の記事では胸椎椎間板ヘルニアの症状を、より詳しく解説しているのであわせてご覧ください。 その他の症状 胸椎椎間板ヘルニアが発症すると、背中や胸の痛み以外にも、以下の症状が伴う可能性があります。 太ももやふくらはぎの痛み、しびれ、脱力感 歩行障害(ふらつきや足のもつれ) 膀胱直腸障害 排便障害 など とくに太ももやふくらはぎの痛みは、胸椎椎間板ヘルニアの初期症状として認められるケースが大半です。 痛みを放置すると急激に足が動かしにくくなり、歩行障害につながる恐れがあります。 歩くときに足がもつれ、階段を昇り降りで手すりを持つようになった方は、胸椎椎間板ヘルニアの可能性があるため注意しましょう。 また、胸椎椎間板ヘルニアを発症すると、力をこめて便や尿を出そうとしても出せない状態(膀胱直腸障害)になる場合もあります。 胸椎の背中側にある脊髄は、便や尿を出す自律神経をコントロールする神経が走っています。 胸椎椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、突然便や尿が出ない症状が起こるのです。 胸椎椎間板ヘルニアと神経痛の違いについては、以下の記事で詳しくまとめているので、ぜひご一読ください。 まとめ・胸椎椎間板ヘルニアで背中や胸が痛みを感じたなら早めの受診を! 胸椎椎間板ヘルニアは40~50歳の方に多く発症する疾患です。 代表的な症状として背中の痛みや胸の痛みがあげられ、肋間神経痛による焼けつくような痛みや鈍痛も認めています。 初期症状としては下肢のしびれや痛みなどがあり、薬物治療やリハビリなどでは歩きにくさを改善できません。 歩きにくさを感じている方は、手術療法を検討してください。 手術には神経麻痺や手術後の痛み、しびれなど術後後遺症の恐れもありますが、放置すると病状が進行して歩けなくなる可能性があります。 少しでも胸椎椎間板ヘルニアを疑う症状に気づいた方は、速やかに専門の医療機関で受診するようにしましょう。
2024.01.04 -
- 脊椎
- 胸椎椎間板ヘルニア
「ヘルニアに効果的な筋トレはある?」「ヘルニアは筋トレをしないほうがいい?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。 ヘルニアと診断されると、運動や筋トレを控えるべきか不安になる方も多いかもしれません。 結論からいえば、適切な筋トレを行うことでヘルニアの症状の改善・緩和が期待できます。 この記事では、ヘルニアの負担を軽減する筋トレメニューや、筋トレを行うときの注意点を解説します。 記事を最後まで読めば、ヘルニアに効果的な筋トレ方法が分かり、症状の緩和・改善を目指せるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。ヘルニアの辛い症状でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 【目的別】ヘルニアの改善に効果的な筋トレメニュー 筋トレを行う際には、自分の目的にあったメニュー選びが重要です。ヘルニア改善に役立つ筋トレメニューは以下の通りです。 種類 効果 負担の大きさ おすすめの運動 体幹トレーニング 腰を支える筋力を強化し、負担を軽減 低い ドローイン プランク バードドッグ 下半身トレーニング 下半身を鍛えて腰の負担を分散 中程度 ヒップリフト レッグプレス ウォールシット 本章を参考に、自分に必要な筋トレメニューを取り入れてみましょう。 体幹を安定させる筋トレメニュー ヘルニアの症状を軽減するには、体幹を鍛えることが重要です。 体幹を鍛える具体的な筋トレメニューの一例は以下のとおりです。 トレーニング名 やり方 ポイント ドローイン 仰向けで膝を立て、深く息を吸ったあと、息を吐いてお腹をへこませてキープ 1回5秒キープし10回繰り返す プランク うつ伏せで肘をつき、体を一直線にキープ 20〜30秒キープを目安に実施 バードドッグ 四つん這いの状態で対角の手足を伸ばす 片側10回ずつゆっくり行う これらの運動は、腰に大きな負担をかけずに体幹を鍛えられるため、ヘルニアの改善に適しています。 最初は短時間から始め、徐々に時間を延ばしていくと良いでしょう。 下半身を強化する筋トレメニュー 下半身の筋力を強化すると、腰への負担を分散できるため、ヘルニアの痛みを軽減しやすくなります。 とくに、太ももやお尻の筋肉を鍛える運動が効果的です。 下半身トレーニングメニューの一例は以下のとおりです。 トレーニング名 やり方 ポイント ヒップリフト 仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げる お尻を締めながらゆっくり上げ下げ レッグプレス ジムのマシンを使い、足でプレートを押す 負荷は軽めで、ゆっくり押し戻す ウォールシット 壁にもたれながら膝を90度に曲げ静止 20〜30秒キープし3セット実施 これらの運動は、スクワットのように腰に大きな負担をかけず、効率よく筋力を鍛えられます。 無理のない範囲で継続し、ヘルニアの痛みを和らげる習慣を作りましょう。 ヘルニアの症状は筋トレで緩和できる可能性がある 適切なトレーニングによって筋力を強化すれば、椎間板への負担を軽減し、ヘルニアの症状を改善できる可能性があります。 また、血行促進により、ヘルニアの症状の回復を促す効果も期待できます。 ただし、過度な負荷は症状を悪化させる可能性もあるため、やり方に注意しましょう。 本章では、筋トレによるヘルニアの症状改善の効果について解説します。 筋力の強化で椎間板への負担軽減が期待できる ヘルニアの症状を和らげるためには、腰を支える筋肉を鍛えることが重要です。 腹筋や背筋の強化によって、椎間板への負担を分散させ、痛みの軽減が期待できます。 ヘルニアの症状改善を目指して筋トレをする場合は、腰に過度な負担をかけず体幹や下半身を鍛えられるメニューを取り入れましょう。 また、最初は軽めの負荷から始めるなど、正しい筋トレを習慣化し、椎間板への負担を減らすことが大切です。 血流が良くなりヘルニアの回復が促進される 筋トレを行うと、血流が良くなりヘルニアの回復を助ける効果が期待できます。 血流が滞ると、筋肉が硬くなり、腰への負担が増えヘルニアが悪化する場合があります。 運動によって血流が改善されると、酸素や栄養が筋肉に行き渡りやすくなり、炎症の鎮静や組織の回復促進が期待できるでしょう。 ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、血流を良くしながら無理なく筋力を鍛えられるトレーニングがおすすめです。 こうした運動は関節や筋肉に負担をかけにくく、継続しやすいというメリットもあります。 過度な負荷は症状を悪化させる可能性も 筋トレはヘルニアの症状を和らげる効果が期待できますが、過度な負荷をかけると逆効果になります。 とくに、重い負荷をかける筋トレや誤ったフォームでのトレーニングは、椎間板に余計な圧力をかけ、症状を悪化させる原因になります。 たとえば、バーベルを使ったスクワットやデッドリフトは、腰に大きな負担がかかるため注意が必要です。 また、反動をつけた腹筋運動や、腰を大きく反らす動作も、椎間板を圧迫しやすく、痛みを悪化させる可能性があります。 トレーニングを行う際は、まず低負荷のメニューから始め、体の状態を確認しながら徐々に強度を上げるのが理想的です。 痛みを感じたらすぐに中断し、無理なく続けられる範囲でトレーニングを進めましょう。 ヘルニアで筋トレを行うときの注意点 ヘルニアを抱えている場合、筋トレのやり方には十分な注意が必要です。 間違ったフォームや過度な負荷は、症状を悪化させる原因になります。 高負荷なスクワットやデッドリフト 腹筋運動(上体起こし) 腰を強く反らす運動 ここでは、避けるべきトレーニングとその理由について解説します。 高負荷なスクワットやデッドリフトは正しいフォームを意識する スクワットやデッドリフトは全身を鍛える効果がある一方で、腰に大きな負担をかけるため注意が必要です。 ヘルニアの症状がある場合、無理な動作が炎症を悪化させる可能性があります。 とくに、重いバーベルを使用するスクワットやデッドリフトは、腰椎への圧力が強く、ヘルニアの症状を悪化させる原因になります。 これらの動作を行う際は、軽い負荷で正しいフォームの意識が大切です。 腰をしっかり支えられない場合は、マシンを使ったレッグプレスなどの代替運動を選ぶのが良いでしょう。 腹筋運動(上体起こし)は避ける 腹筋を鍛えるのは大切ですが、クランチやシットアップなどの状態起こしの動作は、腰への負担が大きいため注意が必要です。 とくに、勢いをつけた腹筋運動はNGです。 腰椎に強い圧力がかかり、痛みや炎症を引き起こす原因になります。 代わりに、ドローインやプランクといった体幹を安定させるトレーニングを取り入れると、安全に腹筋を強化できます。 腹筋を鍛えたい場合は、腰に負担をかけない方法を選び、無理のない範囲で継続しましょう。 腰を強く反らす運動は無理に続けない 腰を大きく反らす動作は、椎間板に過度な圧力をかけるため、ヘルニアの悪化につながる可能性があります。 とくに、ブリッジやバックエクステンションなどの運動は注意が必要です。 腰を反らしすぎると、椎間板が圧迫されて神経を刺激し、痛みが強くなる場合があります。 代わりに、軽いストレッチや腰に優しい体幹トレーニングを取り入れると良いでしょう。 痛みを感じた場合はすぐに運動を中止し、無理に続けないことが大切です。 ヘルニアの再発を防ぐための3つの対策 ヘルニアは症状が落ち着いても、再発のリスクは残ります。(文献1) 再発を防ぐためには、日常生活での姿勢や負担のかかり方に注意し、適切な筋トレやストレッチを取り入れることが大切です。 本章では、ヘルニアの再発を防ぐための具体的な対策を3つ紹介します。 普段から姿勢や腰への負荷に注意する 無理のない範囲で筋トレを習慣化する ストレッチで柔軟性もUPする それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。 普段から姿勢や腰への負荷に注意する ヘルニアの再発を防ぐには、普段から姿勢を意識しておくのも重要です。 猫背や反り腰などの悪い姿勢は、腰に過度な負担をかけ、再発の原因になります。 たとえば、デスクワーク中は背筋を伸ばし、椅子の背もたれを活用するなどの意識付けが大切です。 また、長時間同じ姿勢を続けると筋肉が硬くなるため、1時間に1回は立ち上がり、軽いストレッチを行うと良いでしょう。 また、重いものを持つときは、膝を使い、腰に負担をかけないよう注意してください。 ヘルニアの再発を防ぐポイントについては、以下の記事も参考にしていただければ幸いです。 無理のない範囲で筋トレを習慣化する 適度な筋トレを続けることで、腰を支える筋肉を強化し、ヘルニアの再発リスクの軽減に期待できます。(文献2) ただし、無理な負荷をかけると逆効果になるため、自分に合ったメニュー選びが大切です。 おすすめは、体幹を鍛えるプランクやバードドッグです。 これらのトレーニングは、腰に負担をかけずに筋力を高められるため、初心者でも取り組みやすいでしょう。 また、下半身を鍛えるヒップリフトも、腰への負担を減らす効果が期待できます。 大切なのは、無理なく続けることです。週に数回、短時間でも良いので、習慣化する意識を持ちましょう。 ストレッチで柔軟性もUPする 筋肉の柔軟性が低下すると、腰への負担が増え、ヘルニアの再発リスクが高まります。 そこで、日常的にストレッチを取り入れ、筋肉を柔らかく保つことが重要です。 とくにおすすめなのが、ハムストリング(太もも裏)を伸ばすストレッチや、キャット&カウ(四つん這いで背中を丸めたり反らしたりする動作)です。 これらのストレッチは、腰周りの筋肉をほぐし、負担を軽減する効果があります。 筋肉を柔らかくすることで、腰を支える力が向上し、ヘルニアの再発を防ぎやすくなります。 ヘルニアに効果的なストレッチのやり方は、以下の記事を参考にしてみてください。 【関連記事】 胸椎椎間板ヘルニアの痛みに!ストレッチで痛みを和らげる方法 頚椎ヘルニアに効くストレッチ5選!予防ポイントも解説【医師監修】 腰椎椎間板ヘルニアのストレッチ5選!悪化・再発防止になる方法を医師が解説 まとめ|ヘルニアで筋トレする際は無理のない範囲で行おう ヘルニアの症状を緩和し、再発を防ぐには、適切な筋トレやストレッチを取り入れることが大切です。 とくに、体幹や下半身を鍛えると、腰への負担を軽減できます。ただし、誤ったトレーニングは症状を悪化させる原因になります。 無理をせず、正しい方法で筋トレを続けることが重要です。日常生活の姿勢や習慣にも気をつけながら、ヘルニアと上手に付き合っていきましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。 ヘルニアの手術後に、後遺症でお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 ヘルニアの筋トレに関するよくある質問 ヘルニアで筋トレはいつからできますか? ヘルニアの回復状況によりますが、痛みがなくなり、日常生活に支障がない状態になってから始めるのが理想です。 一定の安静期間を設け、その後、医師やリハビリ専門家と相談しながら再開するのが安心でしょう。 体幹を鍛える軽めの運動から始めると、安全に筋力の回復に期待できます。 痛みが残っているうちに無理をすると、症状が悪化する恐れがあります。 焦らずに、軽いストレッチやウォーキングから始めることを意識しましょう。 ヘルニアでも筋トレマシンは使用できますか? ヘルニアでも適切なマシンを選べば、安全に筋トレを行うことができます。 ただし、腰に負担がかかるマシンは避ける必要があります。 そのため、筋トレを行う際は、負荷を軽めに設定し、正しいフォームを意識することが重要です。 リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。 ヘルニアの手術や術後のお悩みがある方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献 (文献1) 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第 3 版」 https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/cervical_spine_200915.pdf (最終アクセス:2025年2月19日) (文献2) 伊佐整形外科「腰椎椎間板ヘルニア(リハビリテーション)」 https://www.isaseikei.or.jp/img/disease/kosi/010.pdf (最終アクセス:2025年2月19日)
2023.12.29 -
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この記事を読んでいる方は、背中や胸の痛みが肋間神経痛なのか分からず悩んでいるのではないでしょうか。 肋間神経痛は「背中や胸の痛み」が特徴です。しかし胸椎椎間板ヘルニアの症状と見分けがつきにくく、セルフチェック方法を知りたい方も多いかもしれません。 肋間神経痛のチェックには、背中だけでなく体幹や下半身にも痛みやしびれがないかを確認することが大切です。 肋間神経痛は背中や脇腹、胸の痛みが特徴ですが、胸椎椎間板ヘルニアの場合は太もも・ふくらはぎにも痛みやしびれを感じる場合があります。 本記事では、肋間神経痛および胸椎椎間板ヘルニアの症状について解説し、症状の違いについて解説します。 記事を最後まで読めば、肋間神経痛の原因や症状についての理解を深められるでしょう。 肋間神経痛の原因と症状をチェック! 肋間神経痛とは、胸椎椎間板ヘルニアのような病名ではありません。「肋間神経」という肋骨に沿って走っている神経が、何らかの要因で障害を受けたことで突発的に生じた痛みのことを指します。 痛みは身体の片側に起こることが多く、深呼吸や咳、そして身体の向きや位置を変えたりすることでも強くなることがあります。 帯状疱疹や神経の圧迫により起こることが多い 肋間神経痛の主な原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる「帯状疱疹」です。 水痘・帯状疱疹ウイルスは、肋間神経の神経節という部分に潜んでおり、免疫力の低下によって再活性化し、痛みを引き起こします。帯状疱疹による肋間神経痛は、鋭く激しい痛みが片側の肋骨に沿って現れ、水ぶくれを伴う、赤い発疹もできるのが特徴です。 また、胸椎椎間板ヘルニアや側弯症で脊髄から肋間神経が出る部分が圧迫された場合や、肋骨骨折で肋間神経が妨げられた場合も、肋間神経痛が起こることがあります。 さらに、まれではありますが、肺がんなどの胸の手術時に使用した器具が肋間神経を圧迫し、術後に肋間神経痛として残ることもあります。 肋間神経痛の治療は、原因がある場合にはその病気の治療をしていきます。一方で、特に原因となるような病気がない場合には、肋間神経ブロックという痛み止めの注射を行ったり、鎮痛薬の内服をしたりなどして症状を抑えることとなります。 胸椎椎間板ヘルニアとの違いは「体幹や下半身の異常の有無」 肋間神経痛と胸椎椎間板ヘルニアの違いは「背中や胸だけでなく、体幹・下半身にも症状があるか」です。 肋間神経痛は背中や胸の痛みを指すため、体幹や下半身の痛みやしびれを感じることはありません。 一方、胸椎椎間板ヘルニアでは、背中や胸部の痛みが出るケースもありますが、主な症状は「体幹から下半身にかけての筋力低下や感覚の異常」です。 したがって、肋間神経痛と胸椎椎間板ヘルニアの痛みを見分けるときは、背中や胸以外に違和感があるかをチェックしてみましょう。 【セルフチェック】肋間神経痛・胸椎椎間板ヘルニアの症状一覧 胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛は、同じように背中や胸部の痛みを引き起こします。 しかし2つの症状には違いもあるため、自分の症状がどちらに近いか以下のチェックリストで確認してみましょう。 《肋間神経痛が疑われる症状・特徴》 □背中から脇腹にかけての鋭い痛みがある □呼吸をすると痛みが強い □姿勢を変えると痛みが強い □胸や背中に帯状の発疹や水ぶくれが見られる(帯状疱疹による症状) □肋骨骨折の既往がある □胸や背中の手術経験がある 《胸椎椎間板ヘルニアが疑われる症状・特徴》 背中の痛みがある(ない場合も) □太ももやふくらはぎのしびれがある □足の脱力感がある □歩くときに足がもつれる □階段を降りるときに不安で手すりを持つ □用を足そうとしてもすぐに尿が出ない、残尿感がある ただし上記はあくまでもセルフチェックに留め、背中や胸の痛みが続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。 肋間神経痛は放置せず、早めの受診を! 肋間神経痛だと思っていても、別の疾患が隠れているケースがあります。 たとえば、以下のような病気が挙げられます。 狭心症・心筋梗塞などの心臓の病気 肺梗塞・気胸などの肺の病気 逆流性食道炎 胃・十二指腸潰瘍 大きな病気を見逃さないためにも、自己判断で終えず、早めに医療機関へ相談することが大切です。 まとめ|自分の痛みを知り、早めの対処を 肋間神経痛は、背中や胸の痛みを指します。胸椎椎間板ヘルニアの症状と見分けるときは、体幹や下半身の痛みがあるかをチェックすることが大切です。 また、症状が続く場合や痛みが強い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、再生医療専門クリニックです。 椎間板ヘルニア術後の脊髄の障害に対しても、脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。幹細胞治療とは、自分の脂肪から培養した幹細胞を脊髄腔内に注射または点滴投与するものです。 胸や背中の痛みの治療において、再生医療を検討している方はぜひメール相談やオンラインカウンセリングもご活用ください。 また、胸椎椎間板ヘルニアについては以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧いただければ幸いです。 【関連記事】 胸椎椎間板ヘルニアの症状レベルは?チェックリスト付きで医師が解説 肋間神経痛についてよくある質問 肋間神経痛は何科に行くべきですか? 症状によって異なります。 もし過去に胸や背中にけがをしたことがある場合は整形外科、帯状疱疹のような赤い発疹があれば、皮膚科を受診しましょう。 肋間神経痛のとき、やらない方がいいことはありますか? 体を急激に動かしたり、ストレスが溜まったりすると痛みが強くなる可能性があります。安静にし、体を休めましょう。
2023.12.25 -
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- 胸椎椎間板ヘルニア
胸椎椎間板ヘルニアの症状とはどのような病気? どのような症状があるの? 今の症状がどのようなレベルか知りたい このように思っている方は多いのではないでしょうか? 胸椎椎間板ヘルニアの症状はさまざまで、程度にも振れ幅があります。 さらにほかの疾患とも見分けにくく、発症に気づかないことも。 この記事では胸椎椎間板ヘルニアの症状や特徴、症状レベルやチェックリストを解説します。 同疾患に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。 【予備知識】胸椎椎間板ヘルニア症状の特徴と症状 まず、胸椎椎間板ヘルニアの特徴と症状に関して解説します。 胸椎椎間板ヘルニアとは、胸椎と胸椎(あるいは一番下の胸椎と一番上の腰椎)の間にある「椎間板」が胸椎の後ろに飛び出してしまうことを示します。 腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアと比べると、症例が少なく、稀な疾患です。 椎間板は、椎骨が動くときに衝撃を吸収するクッションの役割があります。 体をひねる・前に曲げる・後ろに反るなどの動作ができるのは、一つ一つの椎骨が滑らかに動くから。 ところがヘルニアを発症すると、椎間板の変性により線維輪が壊れて中の髄核が飛び出してしまいます。 特に胸椎椎間板ヘルニアでは、髄核はまっすぐ真後ろに飛び出すことが多いことがわかっています。 飛び出した髄核は、ときに真後ろに走る脊髄を圧迫し、足の痺れや感覚の低下が起こります。 病状が進行すれば歩行障害が起こることも。 なお、腰椎や頚椎では後側方に飛び出したヘルニアが、脊髄から伸びる神経の根本を圧迫して「神経根痛」とされる、「ビリビリッ」とした痛みを起こすことがあります。 一方の胸椎椎間板ヘルニアでは神経根痛が目立ちません。 その原因となる横方向に飛び出すことが多くないからです。 ただし、肋間神経痛(脇腹の痛み)が生じることもあります。 ただし、患者さん全員にすべての症状が起こるわけではありません。 また、特異的な症状はなく、別の病気でも同様の症状が起こることがあります。 胸椎椎間板ヘルニアの症状レベル【チェックリスト付き】 胸椎椎間板ヘルニアの症状には振れ幅があり、程度によって取るべき対応が異なります。 しかし程度を判断できず、適切な対応が取れない場合も。 また胸椎椎間板ヘルニアはほかの病気と見分けにくく、発覚が遅れ、早期に治療できないケースもあります。 そこで今回は、胸椎椎間板ヘルニアの症状レベル一覧と、症状チェックリストを紹介します。 胸椎椎間板ヘルニアの症状レベル 胸椎椎間板ヘルニアの症状レベルは、大まかに初期、中期、後期にわけられます。 各期で生じる症状は以下のとおりです。 症状レベル 具体的な症状 初期 わずかな下半身の痛み わずかな感覚の鈍麻 太ももの軽度の痺れ 腰痛 中期 背中の痛み 脇腹の痛み(肋間神経痛) はっきりとしたしびれ 後期 下半身の筋力低下 歩行困難 排尿障害 感覚の喪失 重大な麻痺 初期では無症状であり、発見が遅れることがあります。 症状があれば、痛み止めの投与などがおこなわれます。 この段階では、活動や運動はさほど制限されません。 中期になると、痛みやしびれをはっきりと感じます。 運動の困難などを感じることもあるでしょう。 後期になると症状は重篤になり、歩くのもむずかしくなります。 また保存療法が意味をなさず、日常生活にも影響します。 後期に入る前に治療するのが重要でしょう。 重篤な症状は手術で治すのが一般的ですが、現在では再生医療を用いて、より負担が軽い方法で完治を目指すことも増えてきました。 興味がある方はぜひ再生医療に関して学びましょう。 胸椎椎間板ヘルニアの症状チェック 続いて、胸椎椎間板ヘルニアの症状をチェックしましょう。 背中が痛む 脇腹が痛む 腰が痛む 体のどこかの感覚が鈍い 何となく力が入りにくい 足がもつれて歩きにくい 階段を降りるのが不安定で怖くなった 排尿がむずかしい 尿漏れがある 排便がむずかしい 胸や背中に不快感がある 一つでも当てはまれば、胸椎椎間板ヘルニアを発症している可能性があります。 該当する場合は速やかに医師の診察を受けるのをおすすめします。 診断はどのようにしておこなうか 疑わしい症状があれば、MRIを撮影して椎間板の逸脱がないかを調べます。 レントゲンでは診断はつきませんが、骨折など他の病気を探すためにMRIに先行しておこなうことが多いです。 ただし、胸椎椎間板ヘルニアは非常に稀な病気である上に、腰椎の病気と似た症状を起こすことが多いです。 そのため、最初は腰椎の検査をされ、のちに胸椎椎間板ヘルニアだったと判明することもあります。 胸椎椎間板ヘルニアは自然治癒するの?可能性と注意点 結論から言うと、椎間板ヘルニア全般に自然治癒はあり得ます。 もちろん胸椎椎間板ヘルニアも、ごく軽症であれば自然と治るかもしれません。 しかし胸椎椎間板ヘルニアは症例が少なく、自然治癒の事例もさほど多くありません。 自然治癒を期待して、治療を受けず放置していると症状が悪化し、歩行・排尿機能の障害が生じるリスクがあります。 したがって自然治癒に期待しすぎず、医師の診断を受け、指導のもと治療に臨むようにしましょう。 胸椎椎間板ヘルニア|自然治癒の可能性と注意点 ▼可能性 胸椎椎間板ヘルニア:稀な疾患、自然治癒の報告例僅か 腰椎や頚椎の椎間板ヘルニア:自然消失例の報告例有 胸椎椎間板ヘルニア:一部の軽症例で自然治癒の可能性がある ▼注意点 ✕ 自然治癒を過剰に期待するのはNG ✕ 自己判断で放置すると歩行・排尿障害に陥る「リスクが大きい」 定期的な受診を怠らず、歩きづらさを感じたら、早急な受診をお勧めします。 <関連記事> 胸椎椎間板ヘルニアの保存療法!リハビリの種類や具体的な内容を解説 胸椎椎間板ヘルニア|症状と自然治癒の可能性について 胸椎椎間板ヘルニアは予防できる? 胸椎椎間板ヘルニアの発症を予防するのはむずかしいです。 できることとして以下があげられるでしょう。 普段から正しい姿勢を保つ 中腰での作業を避ける 重たい荷物を持ち上げるなど腰に負担のかかる運動を避ける 同じ姿勢を取り続けないようにする 背筋を鍛える このような工夫により、多少は発症を予防できます。 とはいえ胸椎椎間板ヘルニアは突発的に起こるものであり、完全な予防は困難であることを知っておきましょう。 まとめ・胸椎椎間板ヘルニア症状と自然治癒の可能性について 胸椎椎間板ヘルニアはまれな病気です。 軽症の場合は対症療法のみで様子を見ることができる一方、足の麻痺などが出てしまうと手術を行わなければいけないことがあります。 自然治癒の可能性もありますが、一方で急激な進行を認めるケースがあるのも事実です。 すぐに手術しない場合でも通院を怠らず、症状の変化に気をつけて過ごしてください。 この記事が参考になれば幸いです。 ▼こちらも参考にされませんか 胸椎椎間板ヘルニアの痛みに!ストレッチで痛みを和らげる方法 ヘルニアの種類と後遺症に再生医療という新たな治療法 参考文献 大場哲郎, 波呂浩孝.日本医事新報 (5084): 42-42, 2021. 岡田英次朗.日本医事新報 (4994): 40-40, 2020. 小西明, 藤井基広, 増本眞悟, 石井秀典, 今井健, 角南義文. 整形外科と災害外科 48:(1) 10-12, 1999. 公益社団法人日本整形外科学会|「胸椎椎間板ヘルニア」
2023.12.21 -
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「背骨を押すと痛い」「背骨の胸あたりを押すと痛む」部分を胸椎(きょうつい)といいます。 首と腰の間にある部分で、胸椎は12個の骨から成り立っており、それぞれが左右12本ずつある肋骨(ろっこつ)とつながっています。 背骨を押すと痛みを感じるとき、ただの疲れや姿勢の問題だと考えられがちですが、実は神経や骨に関連する病気の可能性もあります。 本記事では、背骨に痛みを感じたときに考えられる5つの病気や改善方法などを専門医ができるだけわかりやすく解説します。最後まで読めば、痛みが悪化する前に適切な行動ができるようになるはずです。 背骨(胸椎)を押すと痛い原因 背骨を押すと痛い原因はさまざまですが、姿勢の悪さや筋肉、骨の問題であることがほとんどです。 例えば、主婦や事務労働をする方であれば、背中が丸まったような悪い姿勢(猫背)が主な原因として考えられるほか、年齢に伴う椎間板の老化なども挙げられます。 冒頭でもお伝えしましたが胸椎は肋骨と繋がっています。背中の真ん中あたり、肋骨に近い背骨を押すと、胸椎の後ろにある突起部分(棘突起:きょくとっき)に圧力がかかり、痛みの原因となるのです。 特に胸椎のあたりに痛みがある場合は、神経や筋肉、骨に関わる病気の可能性があります。 背骨(胸椎)を押すと痛いときに考えられる5つの病気 背骨(胸椎)を押すと痛いときに考えられる5つの病気は以下の通りです。 脊椎過敏症 胸椎椎間板ヘルニア 肋間神経痛 強直性脊椎炎 胸椎骨折 各疾患の症状などをできるだけ簡単に説明します。痛みがどの症状に当てはまるのか、チェックしながら読み進めていきましょう。 ①脊椎過敏症(せきついかびんしょう) 背骨を押すと圧痛が生じる病態として、脊椎過敏症があります。この病気の症状としては、背部や棘突起のあたりの痛みや押した際の痛み(圧痛)が出ます。 脊椎過敏症では、背部の痛み以外には特に症状はなく、予後も比較的良好です。この脊椎過敏症は、20歳代の女性、特に事務労働者や主婦に多く、背中が丸まったような悪い姿勢などの原因が あるのではないかと考えられています。数ヶ月から数年の間で自然に治っていくことが普通です。 ②胸椎椎間板ヘルニア(きょうついついかんばんヘルニア) 胸椎椎間板ヘルニアは、胸椎の椎体と椎体との間にあるクッションのような構造である椎間板が変性し、脊椎の外側に飛び出し、脊髄を圧迫する病気です。 胸椎椎間板ヘルニアの症状として、背部痛(背中の痛み)が生じることもあります。その他の症状として、体幹から下半身の感覚が低下することや、筋力低下がみられます。胸椎椎間板ヘルニアは、外傷などの明らかな原因がない場合がほとんどです。 また胸椎椎間板ヘルニアは腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアと比べてその頻度は少なく、歩行障害などの症状が現れた場合には手術を要することが多いです。 放置すると重症化の恐れがある胸椎椎間板ヘルニアの概要や症状について、以下の記事でさらに詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。 なお、胸椎椎間板ヘルニアなどの痛みは、手術を必要としない再生医療によって改善が期待できます。興味のある方は、再生医療による回復の事例などを紹介した以下の動画もご覧ください。 ③肋間神経痛(ろっかんしんけいつう) 胸椎椎間板では、椎間板の中にある髄核(ずいかく)という構造が脊髄の真ん中を圧迫するですが、左右方向に髄核が飛び出すと神経根という脊髄から神経が出ていく部分を圧迫することもあります。すると、肋間神経痛の症状が現れます。肋間神経痛の症状としては、背中から胸にかけて、肋骨に沿ったような鋭い痛みが生じるというものです。 なお前述の胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛は、いずれも背中に痛みが出ますが、痛みの場所であったり症状だったりが異なります。 以下の記事で胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛の違いについて詳しく解説したので、こちらも合わせてご覧ください。 ④強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん) 強直性脊椎炎は、仙腸関節という関節や腰、背中、首の脊椎の靱帯付着部に炎症が生じる病気です。さらに、胸椎の椎間関節にも炎症は起こります。 症状の多くは腰痛やお尻の痛みから始まり、徐々に背中全体や首にまで広がっていきます。症状が進むと、体を曲げ伸ばしすることが難しくなり、前屈みの姿勢となっていきます。 体のだるさや疲れやすさ、体重減少、微熱、高熱などの全身の症状がでることもあります。 また、4人に1人の確率で目の病気である虹彩炎(こうさいえん)が起こりますが、早めに眼科治療を受ければ予後は良好です。 ⑤胸椎骨折(きょうついこっせつ) 骨粗鬆症や、腫瘍が骨に転移した際に、背骨が圧迫骨折をきたすことがあります。この場合にも、圧痛や体動時痛といった症状が生じることがあります。 骨折の程度によっては、脊髄損傷をきたすこともあり、胸椎と腰椎の移行部に骨折が生じた場合には、両下肢の麻痺症状などを引き起こす可能性もあります。 骨折の原因が骨粗鬆症などで軽度の圧迫骨折を来している際には、安静と簡易コルセットなどの外固定をすることで、3〜4週間でほとんどの症状が改善するとされています。 転移性骨腫瘍が原因である場合には、癌そのものに対する化学療法やホルモン治療が行われます。骨転移による痛みが強い場合には、放射線治療が有効な場合もあります。骨破壊が進行しており、脊髄への圧迫がみられるような際には、脊椎固定術も行われます。 脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。 背骨(胸椎)を押して痛いときの改善方法 背骨(胸椎)を押して痛いときの改善方法として以下の3つが挙げられます。 医療機関を受診する 正しい姿勢を意識する 普段の姿勢やストレッチなどで痛みを緩和できるかもしれませんが、まずは専門医の診断を受けることをおすすめします。 医療機関を受診する 前述してきたとおり、背骨の胸のあたりにある「胸椎」を押して痛い場合にはさまざまな原因があります。脊椎過敏症のように、胸椎を押したときの痛み以外に特に症状がなく、治療をしなくても自然に改善していくこともあります。 一方で、胸椎椎間板ヘルニアなどは、下半身の筋力低下や感覚低下といった神経症状がみられます。こうした場合、基本的には手術が必要となりますので、早めに整形外科などの専門医療機関を受診することをお勧めします。 背骨(胸椎)を押して痛いときは、自己判断せずに医療機関に相談しましょう。当院「リペアセルクリニック」では、胸椎の痛みなどに関する再生医療や幹細胞治療を得意としていますので、まずはお気軽にご相談ください。 正しい姿勢を意識する 正しい姿勢は背骨にかかる負担を減らすことができます。特に猫背は背骨に負担がかかるので、背筋を適切に伸ばした状態をキープするようにしましょう。 日常の中で特に猫背になりやすい体制として、以下の3つが挙げられます。 スマホを操作するとき デスクワークをするとき 寝るとき 日常生活には背骨への負担がかかる場面が多くあるので、上記を参考にできることからはじめていきましょう。 まとめ|背骨(胸椎)に痛みを感じたらすぐに受診を! 本記事では、背骨(胸椎)を押して痛い原因や5つの病気、治療などについて解説しました。 胸椎椎間板ヘルニアなどの神経を圧迫する疾患では、治療が遅れると脊髄の神経が傷つき、麻痺が完全に治らない場合もあります。現在の医療では、一度傷ついた神経細胞を完全に修復することは難しいですが、当院は自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療を、脊髄損傷にも応用しています。 背骨(胸椎)を押して痛い病気の中には、後々まで症状が残る場合もあるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。 再生医療に少しでもご興味のある方は、当院「リペアセルクリニック」までご相談ください。 背骨(胸椎)の痛みに関するよくある質問 Q.背骨(胸椎)が痛むときにストレッチをしても大丈夫ですか? A.痛みや症状によってはストレッチを避けて安静にするのが良いです。 例えば、胸椎自体の痛みがある場合は、骨折や脊椎炎などが考えられ、このような場合はストレッチは避けるのが無難です。 また、胸椎椎間板ヘルニアの場合は、ヘルニアを押し戻すような効果として、猫のポーズが有効な場合があります。 このように、自己判断でストレッチをすると症状を悪化させてしまいかねませんので、医療機関を受診しましょう。 なお、胸椎椎間板ヘルニアの痛みを予防するストレッチについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 参考文献 胸背部痛.日内会誌.2010;99:1686-1689. 脊椎過敏症 (medicina 14巻13号) | 医書.jp 胸椎(せなか)の症状一覧 - 日本整形外科学会 強直性脊椎炎(指定難病271) - 難病情報センター 「脊椎椎体骨折」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「転移性脊椎腫瘍」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
2023.12.18 -
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胸椎椎間板ヘルニアは、痛みやしびれを引き起こし、日常生活に大きな影響を与えます。「動くたびに痛む」「肩こりと勘違いして放置していたら悪化した」「手術しないと治らないのか」と悩む人も多いでしょう。 しかし、適切な治療とストレッチを取り入れると、症状の軽減が可能です。この記事では、胸椎椎間板ヘルニアの治し方や痛みを和らげるストレッチ方法を解説します。 胸椎が痛む場合は、胸椎椎間板ヘルニアが疑われる可能性があるため、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 「胸椎椎間板ヘルニア」とは?背中から胸にかけて痛みが出る疾患 背中から胸にかけて痛みや、脚のしびれなどの症状がある場合は、胸椎椎間板ヘルニアの疑いがあります。(文献1) 背骨の首の部分を頚椎、腰の部分を腰椎、頚椎と腰椎に挟まれた背中の部分が胸椎です。そして、椎骨と椎骨の間には、衝撃を吸収するクッションの役割をもつ椎間板があります。 ヘルニアは、椎間板の中にあるゼリー状の髄核(ずいかく)が、椎間板から飛び出てしまい、近くの神経を圧迫している状態です。そのため、胸椎の椎間板で生じるヘルニアを胸椎椎間板ヘルニアと呼びます。 ただし、胸椎は首や腰に比べて動きが少ない部分のため、実はヘルニアになりにくい場所でもあります。 胸椎椎間板ヘルニアの原因 椎間板ヘルニアは加齢や繰り返しかかる負担で椎間板が変化したり断裂したりして起こる疾患です。繰り返し椎間板に負担がかかる作業といえば、重い荷物を抱えたり、運転など長時間座ったりする作業があります。 また動きや接触の激しいスポーツ、事故などの衝撃もヘルニアの原因です。 前述のように胸椎は動きが少なく、頚椎や腰椎に比べると上記のような原因でヘルニアになるケースは少ないです。 胸椎椎間板ヘルニアの症状チェックリスト 胸椎椎間板ヘルニアの症状は以下のようなものがあります。 症状例 脚がしびれる 脚に力が入らない 歩くとふらつく お腹がしめつけられる 背中や脇腹が痛む 背中から胸にかけて痛む おしっこや便が出にくい、漏らしてしまう 太ももやふくらはぎに痛みがある 胸椎椎間板ヘルニアによってうまく歩けなかったり、ふらついたりするのは、脚の筋力が低下してしまい、力が入りにくいためです。 筋力低下が起こる原因は、ヘルニアにより背骨を通る神経が圧迫されて筋肉に指令が伝わりにくくなるからです。 麻痺が進行すると、排尿を支配する神経も障害されるため、尿が出にくいなどの症状が出ます。しびれなどの感覚障害も症状の1つですが、痛みを伴うケースは少ないです。まれに、神経の障害の影響で背中や脇腹のあたりが痛む場合もあります。このような痛みを肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)と呼びます。 腰椎のヘルニアでよく見られるような、腰から脚に広がる神経痛は胸椎椎間板ヘルニアでは少ないです。 【関連記事】 胸椎椎間板ヘルニアで背中や胸が痛み始めた方へ!症例や予防策を医師が解説! 胸椎椎間板ヘルニアの症状レベルは?チェックリスト付きで医師が解説 胸椎の痛みが胸椎椎間板ヘルニアであるかを診断する方法 胸椎椎間板ヘルニアの診断にはMRI検査が有効ですが、CTが用いられるケースもあります。 MRIでは椎間板、神経、靭帯を詳細に抽出できるため、椎間板の状態や神経の圧迫の有無を詳しく調べられます。しびれや痛みなどの症状がある際に、MRIを用いて脊椎の状態を確認可能です。放射線を使用せずに軟部組織を抽出できます。 一方、CT検査は骨の詳細な構造を短時間で確認が可能です。そのため、手術を行う場合にはCT検査を用いて骨の異常や椎間板の位置を把握する場合があります。 胸椎椎間板ヘルニアの痛みの治療方法 胸椎椎間板ヘルニアの治療方法は「保存療法」と「手術療法」があります。治療の概要は表の通りです。 治療方法 内容 保存療法 胸椎をできるだけ動かさないように安静にします。 また、猫背を軽減するためのストレッチを実施します。 手術療法 背骨の一部を除去し、症状の軽減を図ります。 痛みや歩行障害がある場合に適用されます。 保存療法と手術療法の具体的な内容は、以下で解説します。 保存療法 ヘルニアがあっても症状が軽く、脚の筋力低下や排尿の障害などが伴わない場合は、コルセットや内服薬で痛みの軽減を図ります。ヘルニアは症状が自然に治る場合もあり、症状が軽い場合は、まず保存療法で様子を見ます。 手術療法 胸椎椎間板ヘルニアの症状が進行し、麻痺の症状が見られると保存療法での治療は困難です。放置すると症状が徐々に進行するため、早めに手術が行われます。 手術は側方から椎間板を摘出して骨を移植する「前方固定術」、後方から椎間板を切除する「後方除圧術」を実施します。症状の悪化が見られる場合、手術も視野に入れましょう。 再生医療 再生医療は、身体の治癒力を利用した新しい医療です。 再生医療のうち「幹細胞治療」は、さまざまな細胞に変化できる幹細胞を患者様から採取・培養した後、患部に戻します。自分の身体から採取した細胞なので、アレルギーや拒絶反応が起こりにくいのがメリットです。 当院「リペアセルクリニック」では、椎間板ヘルニアの後遺症に対して幹細胞治療を行っています。一般的に用いられる方法では、幹細胞を一度にまとめて培養後、冷凍したものを複数回に分けて投与します。しかし、当院では投与の度に幹細胞を培養するため、新鮮な幹細胞の投与が可能です。 再生医療について興味がある方は、無料のメール相談やオンラインカウンセリングを承っておりますので、お気軽にご相談ください。 胸椎椎間板ヘルニア(予防)におすすめのストレッチ2選 胸椎椎間板ヘルニアの予防や、痛みの緩和をするためにおすすめのストレッチを2つ紹介します。 特別な道具も必要なく自宅でも簡単にできる方法ですので、日頃の生活に取り入れてみましょう。 横になってする胸椎ストレッチ まずは寝た状態でできる胸椎のストレッチです。 胸椎が固くなると猫背になり、胸の前側が固くなります。 このストレッチでは胸の前側の筋肉を伸ばし、姿勢の改善が期待できます。 横になって行う胸椎ストレッチ 1. 左側が下になるように両膝を曲げて背筋を伸ばした状態で横になる 2. 両肘を胸の前でまっすぐ伸ばし、両手のひらを合わせる 3. 右手を大きな半円を描くように頭上を通りながら水平に後ろまで動かす (このとき手の動きを追うように頭も動かす) 4. 右手を元の位置に戻して5往復程度繰り返す 5. 反対も同様に行う ゆっくりと動作を行い痛みが出ない程度の範囲で行いましょう。 四つ這いでする胸椎のストレッチ 四つ這いになって背骨の柔軟性を高めるストレッチを紹介します。 胸椎のストレッチに加えて、背骨を支える筋肉を働かせるためトレーニングの効果も期待できる運動です。 四つ這いで行う胸椎ストレッチ 1. 背中をまっすぐにして四つ這いになる 2. おへそをのぞき込みながら背中を丸めるようにゆっくり動かす 3. 目線を少し上にして両方の肩甲骨寄せながら背中をそらすようにゆっくり動かす 4. 5往復程度繰り返す 最初の姿勢では肩の下に両手を肩幅に広げておき、腰の真下に膝がくるように動かします。また背骨を一つずつ動かすような意識でゆっくりと実施するのがポイントです。 胸椎椎間板ヘルニアが疑われる際にやってはいけないこと 胸椎椎間板ヘルニアでは、身体を丸める動きに注意が必要です。たとえば、中腰姿勢、重い荷物を持ち上げる、猫背の姿勢を続けるなどは椎間板に負担がかかります。 身体を丸める動作は、椎間板や髄核が飛び出る方向に動いてしまうため、できるだけ避けましょう。 胸椎の痛みの正しい治し方・ケア方法を知って適切に対処しよう 胸椎椎間板ヘルニアは症状が進行すると歩くのが難しくなり、排尿・排泄が障害される疾患です。 症状が軽い場合は安静や薬による治療を行いますが、症状が重い場合は手術を検討します。 また、椎間板ヘルニアの後遺症に対しては、再生医療という治療方法も選択肢のひとつです。 当院「リペアセルクリニック」では、椎間板ヘルニアに対して再生治療を行っています。ヘルニアの症状や術後後遺症でお悩みの方は、ぜひ一度リペアセルクリニックへご相談ください。 参考文献 文献1 公益社団法人 日本整形外科学会「胸椎椎間板ヘルニア」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_disc_herniation.html (最終アクセス:2025年2月22日)
2023.12.14