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- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 脊髄損傷という言葉(あるいは「脊損(せきそん)」)を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。大まかなイメージはあったとしても、どういった原因で脊髄損傷になるのか、脊髄損傷になると、どのような症状が出現するのか?また、脊髄損傷の治療法についてよく分からない人がほとんどではないでしょうか。 この記事では、脊髄損傷とその症状および治療法について医師が解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 脊髄損傷とは そもそも脊髄損傷の脊髄とは何でしょうか?脊髄は、脳と体をつなぐ神経の束を含む組織で、脊椎と呼ばれる背骨の中を通っています。脳と身体中の神経をつなぐ重要な役割を担っているため、この脊髄がなんらかの原因によりダメージ、損傷を受けるとさまざまな、そしてしばしば重篤な症状を引き起こすことになります。 これが脊髄損傷と呼ばれるものです。 脊髄損傷の原因 脊髄損傷の原因には様々なものがありますが、その原因が脊髄そのものにある場合と、脊髄の外にある場合といった大きく二つに分けることができます。 ① 原因が脊髄そのものにある場合: 脊髄は様々な神経の束を含みますが、この神経の束に栄養を与える血管が詰まったり破れたりする病態をそれぞれ脊髄梗塞、脊髄出血などと呼びます。またHIVや梅毒など脊髄に感染を起こすものもあります。 さらに脊髄の栄養となるビタミンB12の欠乏症、脊髄腫瘍なども脊髄損傷を引き起こします。しかし、脊髄損傷の原因が脊髄そのものにある場合は稀で、ほとんどの場合は原因が脊髄の外にあります。 ② 原因が脊髄の外にある場合: 脊髄は脊椎とよばれる骨組織のなかに存在し、周囲は脊髄液と呼ばれる液体で満たされています。この脊椎周囲組織の感染や出血により、脊髄が外から圧迫されて脊髄損傷を起こすことがあります。 また、感染や出血以外にも椎間板ヘルニアや放射線、交通事故などの外傷により脊髄の外から脊髄に障害を引き起こすことがあります。 脊髄損傷の症状 脊髄損傷はその原因が様々であるのと同様に、その原因やダメージを受ける部位によって症状が大きく異なります。筋肉を動かす運動神経、触れている・熱い・冷たいなどを知覚する感覚神経といった神経の種類によって脊髄の中での分布が違います。 先に述べた脊髄そのものの原因により脊髄損傷が起きた場合にはこの脊髄の中の特定の領域が影響を受け、感覚のみが傷害される、運動のみが傷害されるといった神経の種類による障害が起きることがあります。 一方で、脊髄の特定の部位が損傷すると、脊髄の中での分布にかかわらず特定の部位の全ての種類の神経が障害されることがあります。その場合は、損傷部位より下に出ていくまたは損傷部位より下から入ってくる全ての神経の伝達が不可能になるため、下半身の運動・感覚など全てが障害を受けるいわゆる下半身不随などが起きることがあります。 脊髄損傷の治療法 脊髄損傷の治療は、その原因および目的によって多岐にわたります。今回の記事ではその治療法を、下記の3つに分けて解説します。 原因に対する治療 救命のための治療 障害の影響を減らすための治療 (1) 原因に対する治療 先に述べたように、脊髄感染症やビタミン欠乏、腫瘍などの原因がある場合はそれぞれに応じた治療を検討することになります。椎間板ヘルニアや血腫(血溜まり)・膿瘍(膿溜まり)などが原因の場合、脊髄の圧迫を減らすために手術で原因を除去することもあります。 (2)救命のための治療 頸髄など頭に近い部位の脊髄は、呼吸や血液循環など生命を維持するために必要不可欠な臓器を制御する神経を含んでいます。そのため、こういった部位で脊髄損傷が起きた場合、生命の維持が危機に晒されることになります。 その場合には原因の検索や治療に先行して、人工心肺・人工呼吸器などを使って生命の維持を目的とした治療を行うこともあります。 (3) 障害の影響を減らすための治療 最大限の治療を尽くしても、残念ながら障害が残ってしまうことがありますが、そういった場合でも、とても重要な治療があります。それがリハビリテーションを中心とした、障害とともに暮らしていくための治療です。 リハビリテーションを行うことで、障害を受けた機能をほかの機能で代替することができたり、行政や医療サポートを受けながら脊髄損傷を発症する前により近い生活を送ることができたりする可能性があります。 ▶万が一、手術後に後遺症が残ってしまった場合には、再生医療である幹細胞治療が適応になります。もし術後の後遺症にお困りであれば、ぜひ一度当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE まとめ・脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 今回の記事では脊髄損傷とその症状および治療法について解説しました。 脊髄損傷と聞くと一般的には重篤な病態でしばしば身体障害を伴うなどのイメージがあると思いますが、実際にはその原因や治療法が多岐にわたることをご理解いただけたと思います。 そのため、個々の事例によって状況が大きく異なるため、より詳しく知りたい場合は既に受診している、または最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.06.24 -
- ひざ関節
- 関節リウマチ
- 変形性膝関節症
人工関節置換術、膝の手術を決断する前に知っておくべきこと 膝関節に変形や炎症が起きたりする病気があると、膝に人工関節を入れなくてはいけない状態になることもあります。それが膝への人工関節置換術という名称の手術になります。その手術を決断する前に、手術の流れや合併症、手術に備えて準備するべきことなどを知ることは非常に大事です。 膝関節とは まず、膝関節とは何かについて述べていきます。膝関節は3つの骨で支えられています。太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨、いわゆる膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨の3つです。 その3つの骨と、太ももの筋肉である大腿四頭筋と、膝の腱である膝蓋腱で膝関節をつくっています。これらの3つの骨と筋肉、腱が支え合うことで、私たちが、走ったり、飛んだり、座ったりするときに安定するようになっています。 膝関節の病気 膝関節の病気については様々なものがあります。変形性膝関節症、膝靭帯損傷、関節リウマチなど様々な病気があります。また、スポーツ外傷でも膝の慢性的な障害を起こしたりします。それらの病気の中で、変形性膝関節症や関節リウマチは、変形や炎症が強くなった時に、人工膝関節置換術という、人工関節のための手術を行う必要のある病気です。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝が痛くなり水が貯まる病気です。最初は歩き始めに痛い程度ですが、徐々に階段を登ることが難しくなり、最終的には、休んでいる時も痛みが取れなくなるような病気です。 変形性膝関節症では、膝が変形して、伸ばすことができなくなります。変形性膝関節症の治療法は、症状が軽いうちは、炎症を抑える薬を飲んだり、膝関節にヒアルロン酸の注射をしたり、リハビリを行なったりします。しかし、重症になると、人工関節の手術をするか否かの選択が必要になります。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節内にある『滑膜』とよばれる組織が、異常に増えることが原因で、関節の中に炎症が起きる病気です。関節リウマチでは身体の中のいろいろな関節が破壊されるので、膝だけでなく、手や足など様々な関節に変形を起こします。 関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬や、炎症を抑える薬、免疫抑制剤、ステロイド剤などの薬を飲むことが一番大事です。お薬の治療に併用して、ヒアルロン酸の関節内注射やリハビリなどが行われることもあります。 関節リウマチも治療が遅れたりして重傷になると、人工関節のための手術を行うか同課の選択が必要になります。 膝の人工関節とは 膝の人工関節は、金属や、ポリエチレンやセラミックなどで作られます。変形性膝関節症や関節リウマチなどの病気で、変形し傷ついた膝関節を取り出して、手術によって膝用の人工関節を変わりに入れます。悪くなってた関節を置換えるイメージです。 この人工関節は、膝の動きを再現するために3つの部品から作られています。人工関節の3つの部品は、実際の膝を構成している3つの骨(大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部)の部分をそれぞれ担当しています。 人工関節置換術/手術 膝の人工関節を入れるためには人工関節置換術という手術が必要です。手術が必要ということは、もちろん入院も必要です。昨今の新型コロナウイルスの関係で、入院生活は、家族や友人との面会が制限されているところが多いです。 入院前に入院生活のために必要な物品や、家族や友人との連絡手段を事前に決めておく必要があります。手術は全身麻酔をかけて眠った状態で行われます。そのため、麻酔から覚めて、目が覚めると手術が終わっている状態になります。 手術自体は、膝の皮膚を切り開いて、骨が見える状態になったら、器械を使って傷のある膝の部分を削り、人工関節の形に合わせて残りの骨の形を調整します。形の調整ができたら人工関節をはめ込みます。しっかりと固定できていることを医師が確認したら、縫い合わせます。 手術の傷口にたまった血液を出すための管を入れて傷口をふさぎ手術が終わります。手術の時間は、平均2−3時間程度のことが多いですが、もともとの病気や膝の状態に応じて手術の時間は変わってきます。 人工関節置換術の術後 手術が終わればすぐに退院できるという訳ではありません。手術した関節を安定させるために、リハビリを開始します。リハビリは手術後の状態に応じて開始時期が異なりますが、早ければ手術翌日から段階的に始めることが多いです。 リハビリは、寝たまま膝を伸ばしたりして筋力をつけることから始まり、だんだんと平行棒などを使用したり、歩行器などで歩く練習などへと移行していくのが一般的です。 外来通院でリハビリを実施できる患者さんは退院が早くなりますが、外来に通院するのが難しい患者さんは、手術した病院からリハビリ専門の病院に転院してリハビリを行うことになります。 そのため入院期間は患者さんによって異なりますが、多くは2週〜4週くらいのことが多いです。 人工関節置換術(手術の合併症) 人工関節置換術を行うことで一番気をつけなくてはいけないのが、手術した場所に悪い菌が感染することです。感染すると、腫れたり、発熱したりします。 手術した場所に感染が起きると抗生物質による治療が行われますが、多くの場合、再び手術のやり直しが必要になることがあります。そのほかには麻酔によるアレルギー反応や、手術によって身体が防御反応を示し、血液が固まりやすい状態になることから血栓症の心配もあります。 手術中はもちろん、手術後にじゃ身体を動かすことができないことから、血の流れが滞ることで静脈内に血栓という血液が固まったものができる事がああります。これが深部静脈血栓症です。この血の塊が血液の中に混じって肺へ移動することで、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、生命の危機にもかかわりかねないため注意が必要です。 その他、術後としては、人工関節のゆるみや、歩けるようになったことで逆に転倒し、脱臼や、その周りの骨を骨折するという心配もあります。もちろんこれらのリスクには予防法があります。手術に際しては主治医から説明を受け、十分に納得して挑んで頂ければと思います。 人工膝関節置換術/手術の一般的なリスク 細菌による感染症(抗生物質、再手術) 麻酔によるアレルギー反応 肺塞栓症、深部静脈血栓症 人工関節は、緩むことがある 転倒による脱臼や骨折の可能性 その他 まとめ・膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 人工関節にするには、手術が必要なため入院が必要です。入院期間は短くはなってきましたが1か月ほどは見ておきたいものです。また、手術を行うことによる合併症のリスクもあります。できれば膝に違和感を感じたり、痛みを感じるようになった時は早めにリハビリや投薬などの保存的治療を受けて手術を避けることが一番です。 ただ、既に症状が進んでしまった場合は、しっかりと説明を受けて納得して手術を受けましょう。 ですが近年は医学が発達、「再生医療」という新しい先端医療を選択できる道ができました。この方法なら手術が不要で、入院も不要という興味深い方法です。 https://youtu.be/N1DJGcURhsg?si=rMtZGgghatI3U2n0 ▶山や川が好きな患者様。再生医療(幹細胞治療)を体験されたご友人にお薦めされご来院。 手術に不安をお待ちの方は、当院のような再生医療専門の医療機関に問い合わせてみても良いでしょう。いずれにしても人工関節になると、元には戻せないだけによく理解してお取組みください。 また、昨今は新型コロナウイルスの関係で面会が制限されています。家族と会えない数週間は、患者さんにとって、とても寂しくつらい期間です。手術のために入院する患者さんは、家族や友人とビデオ通話ができるように準備などをしてのぞむのも一つ方法ではないかと思います。 以上、膝への人工関節置換術、その手術を決断する前に知っておくべきことについて記載させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 ▼ 再生医療が膝関節の治療を変える! 手術不要、入院も必要ない日帰りで治療する膝関節症の新たな選択肢、再生医療
2022.06.21 -
- ひざ関節
- 膝に赤みや腫れ
- 膝の慢性障害
「階段を上るたびに膝が痛む」「しゃがむ動作がつらい」そんな症状で悩んでいませんか? 膝の上部に痛みを感じる大腿四頭筋腱付着部炎は、ジャンパー膝とも呼ばれ、スポーツ選手だけでなく一般の方にも多く見られる症状です。 大腿四頭筋腱付着部炎は、運動時の膝への負担が原因で起こることが多く、放置していると日常生活にも影響を及ぼします。 本記事では大腿四頭筋腱付着部炎の症状や原因、さらに大腿四頭筋腱炎との違いを詳しく解説します。 適切な対処法を見つけて、一日も早くスポーツを楽しめるようにしましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝)の治療も行っております。 辛い症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝)の主な3つの症状 大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝)は、膝の痛みが主な症状として現れます。 日常生活や運動時に現れる主な症状は以下の3点です。 膝の上部に激しい痛み 階段の上り下りで増す痛み しゃがむ動作で感じる鋭い痛み 本書ではそれぞれの特徴について詳しく解説いたします。 膝の上部に激しい痛みがでる 大腿四頭筋腱付着部炎の最もわかりやすい症状は、膝の上部に現れる痛みです。 痛みの特徴は、膝蓋骨(お皿)の上端部分に集中して起こります。 始めは運動時にのみ痛みを感じる程度ですが、症状が進行すると安静時でも痛みが出るようになってしまいます。 さらに、膝を曲げ伸ばしする際には痛みが強くなり、歩行困難になるケースも少なくありません。 そのため、痛みが続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。 階段の上り下りで痛みが増す 階段の上り下りで、膝の上部に強い痛みを感じるのも、大腿四頭筋腱付着部炎の特徴的な症状です。 階段を上るときは、膝を大きく曲げる必要があるため、膝蓋骨の上部に強い負担がかかります。 最初は違和感程度でも、徐々に痛みが強くなり階段の昇降が困難になる場合も多いのです。 また、下りの際も膝を支える必要があるため、痛みを感じやすくなります。 日常生活で階段の使用が避けられない場合は、手すりを使うなど膝への負担を軽減するように心がけましょう。 しゃがむ動作で鋭い痛みを感じる 床に座る際など、しゃがむ動作で膝に鋭い痛みを感じるのも大腿四頭筋腱付着部炎の特徴です。 とくに、しゃがんだ状態から立ち上がる際に強い痛みが出やすく、重症化すると「しゃがむ動作自体」が困難になることもあります。 また、長時間のしゃがみ姿勢後には、膝の痛みや違和感を強く感じる傾向にあります。 そのため、痛みや違和感を感じた場合は無理にしゃがまず、椅子を使用するなど工夫しましょう。 大腿四頭筋腱付着部炎が発症する3つの原因 大腿四頭筋腱付着部炎の主な原因は、スポーツや運動習慣によって繰り返し膝へ負担をかけているためです。 代表的な原因として以下3つが挙げられます。 バレーやバスケなどのジャンプ競技によるオーバーユース 運動不足から急に運動を始めた 筋力の弱さや体の硬さによって膝に負担をかけた 早期発見と治療には原因を理解する必要があります。 それぞれ詳しく解説しているので、自分の生活習慣と照らし合わせながら確認してみましょう。 バレーやバスケなどのジャンプ競技によるオーバーユース バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプ動作を頻繁に行うスポーツは、大腿四頭筋腱付着部炎のリスクが高まります。 ジャンプ競技で発症しやすい理由は、着地時に体重の何倍もの負荷が膝にかかるためです。 さらに負荷が繰り返し加わると、腱と骨の付着部に炎症が生じて痛みを引き起こします。 また、バレーやバスケのように「ダッシュやストップ」など急激な動作も、大腿四頭筋腱付着部炎が発症する原因となります。 スポーツによる膝の痛みについては、こちらの記事も参考にしてください。 運動不足から急に運動を始めた 普段から運動習慣がない状態から、突然激しい運動を始めるのも大腿四頭筋腱付着部炎の原因となります。 運動不足の状態では、筋肉や腱が十分な負荷に耐えられる状態になっていないため、急な負荷によって炎症を引き起こしやすくなります。 そのため、ランニングやジョギングを始める際は、徐々に距離や時間を増やしていくことが大切です。 まずは、軽い運動から始めて段階的に強度を上げていく意識を持ちましょう。 筋力の弱さや体の硬さによって膝に負担をかけた 大腿四頭筋の筋力不足や体が硬くなっていたりすると、膝への負担が増加して炎症を引き起こす可能性があります。 また、普段の姿勢の悪さや足の形態異常なども原因の1つとなります。 予防するには、適切なストレッチや筋力トレーニングを継続的に行うのが良いでしょう。 ジャンパー膝の治し方や症状のチェック方法については以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしていただけると幸いです。 大腿四頭筋腱付着部炎の診断方法 大腿四頭筋腱付着部炎の診断は、医師による問診と触診から始まります。 また、症状の程度によっては画像検査なども組み合わせながら総合的に判断するのが一般的です。 本章では、大腿四頭筋腱付着部炎における2つの診断方法について解説します。 医師による問診と触診で判断 医師による問診では、患者の症状や運動歴、日常生活の様子などを詳しく聞き取ります。 具体的には「いつから痛み始めたのか」「どのようなときに痛みを感じるのか」「他に症状はあるか」などの質問です。 また、触診にて膝蓋骨(膝のお皿)の上部を押して痛みがあるか、膝の曲げ伸ばしで痛みが増強するかなどを確認します。 問診と触診では他の膝疾患との区別も行いますので、大腿四頭筋腱付着部炎と診断された際には、適切な治療計画が立てられるでしょう。 必要に応じて超音波検査やMRI検査を行う 問診や触診だけでは症状の程度が判断しづらい場合、画像検査を行います。 代表的な検査方法が、超音波検査とMRI検査です。 超音波検査では、腱の損傷具合や炎症の状態をリアルタイムで確認できます。一方、MRI検査はより詳細な画像診断が可能です。 腱の状態や周辺組織の様子まで細かく確認できるため、的確な治療方針を立てられます。 必要に応じて検査方法も異なりますが、症状や原因を明確にできれば適切な治療へとつながります。 ジャンパー膝の診断方法については以下の記事でも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 大腿四頭筋腱付着部炎の治療法とは? 大腿四頭筋腱付着部炎の治療には、症状の程度や原因によってさまざまです。主な治療法は以下の3つです。 安静・冷却の保存療法 手術療法 PRP療法など再生医療 本章を参考に、大腿四頭筋腱付着部炎における治療法の選択肢を把握しておきましょう。 安静・冷却の保存療法 大腿四頭筋腱付着部炎の初期治療では、保存療法から開始するのが一般的です。痛みを感じる部分を休ませ、患部を冷やすことで、炎症を抑える効果が期待できます。 具体的には、1日3回程度の冷却と、ジャンプや走るなどの激しい運動を控えることがポイントです。 また、医師の指導のもと消炎鎮痛剤の服用や湿布の使用も効果的でしょう。 症状が落ち着いてきたら、ストレッチや軽い運動から徐々に活動量を増やしていきます。 手術療法 保存療法で改善が見られない場合や、重症度が高い場合には手術を検討することもあります。 腱組織の縫合や骨からの剥離、再固定などの処置を行い、損傷した腱組織の修復や付着部の状態改善を目指します。 手術を受ける場合は、重症度や術後の経過、リハビリの進行度によって変わるものの、1〜2週間ほどの入院が必要になるでしょう。 また、退院後も医師の指示に従ってリハビリを行い、スポーツの復帰までには3〜6カ月かかる可能性もあります。 PRP療法など再生医療 近年注目を集めているPRP療法は、患者さん自身の血液から作った血小板濃縮液を患部に注入する治療法です。 従来の治療で改善が見られない場合の新たな選択肢として期待されています。 血小板には成長因子が含まれており、組織の修復や再生を促進する効果があります。 そのため、腱の損傷部位に直接注入すると、自然治癒力を高める働きが期待できるのです。 ただし、PRPの治療効果については、まだ研究段階の部分も多く、保険適用外の治療となります。 費用面や治療回数など、医師とよく相談しながら検討してみてください。 また、当院でも行っている再生医療については以下の記事でも詳しく紹介しています。 まとめ|大腿四頭筋腱付着部炎は正しいケアで早期回復を目指そう 大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝)はバレーボールやバスケットボールなど、ジャンプの多いスポーツで起こりやすい症状です。 膝上部の痛みや階段での違和感、しゃがむ動作での痛みなど特徴的な症状が多く見られます。 主な原因は、スポーツでのオーバーユースや急な運動開始、筋力不足などさまざまです。 早期発見と適切な治療が回復への近道となりますので、痛みを我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療治療も行っております。ジャンパー膝の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 大腿四頭筋腱付着部炎に関してよくある質問 大腿四頭筋腱付着部炎と大腿四頭筋腱炎の違いはなんですか? 大腿四頭筋腱付着部炎は、膝蓋骨上部の付着部に炎症が生じる症状です。 一方、大腿四頭筋腱炎は、太もも前面にある腱全体に炎症が起こる状態を指します。 膝蓋骨上部に痛みが出る大腿四頭筋腱付着部炎に対し、大腿四頭筋腱炎は、太もも全体に広がる痛みや違和感が特徴です。 治療方法は似ていますが、それぞれの症状に合わせた適切なケアが必要になるでしょう。 大腿四頭筋腱付着部炎の全治期間はどれくらいですか? 症状の程度や生活スタイル、治療方法によって回復期間は大きく異なります。 一般的な目安として、軽症であれば数週間、手術が必要な重度の場合は3〜6カ月程度の治療期間が必要です。 ただし、完全に無理なく運動できるまでには、さらに時間がかかる場合もあります。 焦って早期復帰すると再発のリスクが高まるため、医師の指示に従い段階的なリハビリを行いましょう。 大腿四頭筋腱付着炎の場合、サポーターはどのように選べばいいですか? サポーターは、膝蓋骨上部をしっかり固定できるタイプで、素材は通気性が良く長時間の使用でもムレにくいものがおすすめです。 サイズは膝周りをメジャーで測り、適切なものを選択します。きつすぎると血行不良の原因になり、緩すぎると効果が期待できません。 また、活動内容に応じて固定力の異なるタイプを使い分けることで、より効果的なサポートが可能になるでしょう。 また、以下の記事でもサポーターの選び方や注意点を解説していますので、ぜひ参考にしてください。 当院では大腿四頭筋腱付着部炎の治療を行っておりますので、辛い症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。
2022.06.20 -
- ひざ関節
- 膝の外側の痛み
- 半月板損傷
スポーツをする方や高齢者の中には、膝を痛めて半月板損傷になった方もいらっしゃるでしょう。手術によって本当に治るのか、悪化や再手術にならないのか治療に対し不安を抱える方もいるかもしれません。 半月板損傷の手術は、変形性膝関節症のリスクを減らせるメリットがある一方で、再手術の可能性があるデメリットもあります。メリットとデメリットを考慮し、医師と相談の上で手術するかどうかを検討すると良いでしょう。 本記事では、半月板損傷の手術の種類やメリットデメリットについて詳しく解説しています。本記事が半月板損傷になった方が手術を検討する材料となれれば幸いです。 半月板損傷はスポーツマンや高齢者に多い 半月板損傷は高齢者やスポーツマンに多くみられる外傷です。 半月板は膝の内側と外側に位置し、膝関節に起こる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。加齢とともに弱くなるため、半月板損傷は老化現象のひとつとして普通に起こりうることです。 また、スポーツにおいては、急に体を曲げたりひねったりする動作を繰り返すと、半月板への負担が増して損傷するリスクが高まります。 半月板が損傷すると膝の曲げ伸ばしが不安定になったり、痛みや腫れで膝が動かなくなったりする場合もあります。 半月板損傷の原因や症状について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 半月板損傷の手術半月板損傷における2つの手術方法 半月板損傷後は、手術が必要な場合と不要な場合があります。最終的には損傷のレベルや年齢など個人の状態に合わせて手術を検討します。 半月板損傷の手術の種類は下記の2種類です。 縫合術 切除術 自分自身でもどのような手術があるのかを理解して、医師に相談して決めましょう。 軟骨をつなげる「縫合術」 「縫合術」は、その名の通り損傷した軟骨を縫い合わせて修復する手術です。 一般的に縫合術は以下の手順で行われます。 膝の蓋近くに数か所穴をあける 手術に関節鏡(小型カメラ)と使用する器材を体内に入れる 関節鏡で患部を確認しながら縫い合わせる 縫合術は傷ついた軟膏を取り除く「切除法」と比べて、半月板の温存しやすいメリットがあります。そのため、縫合術が可能な状態であれば、こちらが優先的に選択されます。 その反面、考えられるリスクは半月板の再損傷と再手術です。半月板の再発は高くて5人に1人と低い確率ではありません。(文献1) その他、下記の合併症のリスクの可能性があります。 感染症 関節水腫(関節液が関節にたまり腫れ・痛みを生じる) リスクも踏まえて慎重に検討しましょう。 損傷した部分を取り除く「切除法」 切除法は、文字通り半月板で損傷している部分を切除し取り除く手術です。損傷部位の縫合が難しい場合、多くの場合は切除術が選択されます。 一般的に切除法は、下記の手順で行います。 膝の蓋近くに数か所穴をあける 手術に関節鏡(小型カメラ)と使用する器材を体内に入れる 関節鏡で患部を確認しながら少しずつ専用のハサミで切除する 半月板の損傷状態によっては、傷ついた軟骨のみ取り除いて正常な部分は残す方法も選択されます。 縫合術よりも感染症の合併リスクが少ない一方で、ロッキングの繰り返しが多くなり変形性膝関節症のリスクが高まるリスクもあります。 半月板の治療についてより詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 半月板損傷の手術をするメリットは「変形性膝関節症のリスクを減らせる」 半月板損傷の手術を受けることで、半月板損傷が重症化して起こる「変形性膝関節症」のリスクを低減できる可能性があります。 変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が摩擦によって変形することで膝の腫れや痛みを伴う病気です。加齢や肥満により膝関節に負担がかかって発症するケースが多くみられます。 変形性膝関節症の症状によっては、人工関節を入れる手術が必要になることもあります。 半月板損傷の手術は、長期的な目線で見ると、このような2次的な病気を防げるメリットがあるといえるでしょう。 半月板損傷の手術をするデメリットは「再手術の可能性がある」 半月板損傷は、早期の手術により慢性的な膝関節の病気を防げるのがメリットである一方、再手術のリスクがあるのがデメリットです。 手術により半月板の痛みや損傷が一時的に改善しても、再度激しい運動の繰り返しや加齢によって再発し、再手術となる可能性も否定できません。 膝の変性に伴う半月板損傷の場合、切除法は縫合術よりも変形性膝関節症へ進行する可能性が高まります。 半月板損傷の手術を検討する上で、どのようなリスクがあるのか不安がある方は、かかりつけの医師に相談しましょう。 半月板損傷の手術によって歩けるまでの期間が違う 半月板損傷をする場合、治療期間の目安は以下のとおりです。 縫合術 切除術 入院期間 約2週間 約4日間 歩行可能期間 術後約2週間 術後の翌日から スポーツ復帰 術後約3カ月 術後約1~2カ月 退院後はリハビリが必要になるため、定期的な通院が必要です。医師や理学療法士の指示に従って適切なリハビリを行いましょう。 半月板損傷の術後のリハビリについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 まとめ|半月板損傷の手術に臨む前にメリットとデメリットを考えましょう 半月板損傷の手術には、メリット・デメリットがそれぞれ存在します。これらを十分に理解した上で、手術を受けるべきか検討しましょう。 また、手術を受けても膝の痛みが改善されない場合、治療法の選択肢として、「再生医療」が挙げられます。 とくに幹細胞治療は、ご自身の脂肪から幹細胞を抽出し培養、患部に投与すると膝の痛みの改善が期待できる可能性があります。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による半月板損傷の治療が可能です。メールやオンラインでの無料カウンセリングも実施しているので、気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 また、膝の症状を改善する再生医療が気になる方は、下記リンクも参考にしていただければ幸いです。 半月板損傷の手術に関してよくある質問 手術にはどのくらいの費用がかかりますか? 手術にかかる費用は、病院や治療内容によって変動します。半月板損傷の治療は健康保険適応です。3割負担の方の場合、負担金は7〜20万円程度と考えられるでしょう。 いずれにしても、手術にかかる費用は高額です。負担が大きい場合は、高額療養費制度や限度額適用認定証の活用で費用の負担を減らすことも可能です。(文献2)(文献3) 費用を減らせる金額は自身の収入や加入している保険区分によって変動します。詳しく知りたい方は、自身が加入している健康保険組合に問い合わせてみてください。 半月板損傷で手術をしない選択肢はないのでしょうか? 半月板損傷になっても、必ず手術しなければいけないわけではありません。半月板損傷が軽度の場合は、手術をしない方法を選択できます。 手術をしない治療法の例として、以下があります。 ヒアルロン酸の注入 関節穿刺(かんせつせんし) 鎮痛剤の服用 このほか、近年では自身の幹細胞を利用した再生医療による治療も可能です。当院「リペアセルクリニック」でも、再生医療による膝の痛みを対象とした治療を行っています。メールやオンラインでの無料カウンセリングも実施しているので、気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献一覧 (文献1) 緒方 悠太, 佐藤 孝二, 木内 正太郎, 田渕 幸祐. 外側半月板縫合術後3 ヵ月における身体機能の特徴. J-STAGE]. 2022年11月. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyushupt/2022/0/2022_54/_article/-char/ja/, 2024.11.10. (文献2) 高額療養費制度を利用される皆さまへ. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html, 2024.11.10. (文献3) マイナ保険証または限度額適用認定証をご利用ください . 全国健康保険協会.https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat550/1137-91156/,2024.11.10.
2022.06.18 -
- ひざ関節
- 関節リウマチ
- 変形性膝関節症
膝の痛みは多くの方が悩まされている症状のひとつです。 膝は座る・立つ・歩くといった日常動作に深く関わるため、症状が強くなると日常生活への影響は大きなものになります。とくに「朝寝起きに膝が痛い」といった症状をご経験された方も多いことと存じます。 そこで本記事では、寝起きで生じる膝の痛みを中心に医師の見解からご紹介します。 寝起きに膝が痛む原因 寝起きに膝が痛む症状は「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」疾患の特徴です。それでは、なぜこのような症状が起きるのでしょうか。 関節は骨と骨のつなぎ目ですが、そこにはクッションの役割を果たす「軟骨」と、潤滑油の役割を果たす「関節液」があります。 関節リウマチや、変形性膝関節症といった疾患ではこの軟骨に障害が及んだり、関節液の量の調整がうまくいかなくなったりする結果、しばらく関節を動かさないと朝起きたとき時や、動き始めのとき時にこわばりや、痛みを感じることがあります。 関節を動かしてしばらく経つと、関節液の量が自然に調節されて症状が改善することがあります。ここからは、これらの主な原因となる関節リウマチと変形性膝関節症について解説していきます。 原因①|関節リウマチ 関節リウマチは膝を含む全身の関節に起こる炎症を特徴とする疾患です。その原因には不明なところが残っているものの、関節組織に対する自己免疫の関与が考えられています。 一般的には手足の指の関節から始まることが多く、左右対称制の症状、朝のこわばりなどの典型的な症状が知られています。自己免疫の関与が考えられている関節リウマチですが、関節外に目や血管に症状をきたすこともあります。 関節リウマチの診断 関節リウマチの診断は、関節症状などの病歴だけで判断しません。レントゲン上での関節裂隙の狭小化などの所見、全身の炎症を反映した血液検査でのリウマチ因子・特殊抗体などを総合的に判断してなされます。 関節炎などの症状が出た場合は整形外科などへの受診をまずは考えますが、関節リウマチは膠原病内科やアレルギー内科などが専門となることがあります。適切な診療科も含めて、気になる症状がある場合はかかりつけまたは最寄りの医療機関に相談してみましょう。 関節リウマチの治療 自己免疫の関与が考えられている関節リウマチの治療法は、消炎・鎮痛といった一般的な関節痛にも共通する治療だけでなく、過剰な自己免疫を制御する免疫調整薬の使用が必要になることがあります。 このような治療は専門家の詳細な評価を必要とする場合が多いため、かかりつけ医の意見をよく聞いて治療を進めるようにしましょう。 原因②|変形性膝関節症 変形性膝関節症は主に加齢により発症すると考えられており、膝関節の痛みやこわばり、関節可動域の制限などといった症状が認められます。変形性関節症は膝以外にも手足や脊椎に発症します。 変形性膝関節症の診断 典型的な症状や病歴があれば必ずしも画像などによる検索は必要ではないとされています。 しかし、非典型的な症状を伴う場合には同様の症状をきたす別の疾患を想定して画像検査や血液検査を必要とします。 レントゲンでは関節裂隙の狭小化や骨棘などといった所見を認めることがありますが、血液検査では変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 変形性膝関節症の治療 変形性膝関節症は基本的には加齢による変化であり、痛みの制御を目的とした治療が主となります。具体的には消炎・鎮痛薬の使用を症状に応じて行うことになります。 しかし、加齢による変化そのものは不可逆性です。消炎・鎮痛薬の使用で症状がコントロールできない場合などは人工関節置換術といった手術による治療を考慮する必要もあります。 関節リウマチと変形性膝関節症の違い 関節リウマチ 変形性関節症 関節を動かさないと症状が悪化 朝のこわばりを発症する 関節の摩耗で症状が悪化 夜の疼痛 今回紹介した関節リウマチと変形性膝関節症は、同じ膝関節の痛みを生じる疾患ですが異なる特徴もあります。 症状については、一般的には関節リウマチは関節を動かさないと症状が悪化する特徴があるため、朝のこわばりが特徴です。一方で変形性膝関節症は摩耗が溜まることで筋肉が緩み、関節に圧力が加わるため夜の痛みが特徴と言われています。 また、関節リウマチは全身の炎症を起こすため血液検査で異常が出ることがありますが、変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 寝起きの苦痛を解消しよう!膝の痛みの予防・対処法 寝起きに膝が痛む原因や治療法などを理解いただいたところで、本項目では予防や対処法といった具体例を紹介します。 寝起きの膝痛に悩まされている読者の皆さんには必見の内容です。 関節リウマチの予防・対処法 関節リウマチの予防 関節リウマチの対処法 食生活の改善 喫煙習慣の改善 安静にする 関節の保温 関節リウマチの発症を抑えるためにも、食生活の改善は必須です。 体重増加の元となる脂質・糖質類を摂りすぎには注意しましょう。また、喫煙もリウマチが発症・悪化する要因とされているため、控えておくべきです。 発症後の具体的な対処法としては、安静治療が基本です。心身の疲れを溜めないよう心がけましょう。また、関節を冷やす行為は悪化の要因となりえます。日頃から適度な保温を意識しましょう。 変形性膝関節症の予防・対処法 変形性膝関節症の予防 変形性膝関節症の対処法 生活習慣の改善 靴の見直し 軽度な運動 サポーターの装着 変形性膝関節症の予防策として、体重管理(適度なダイエット)が挙げられます。体重が増えると、膝への負担が増加するのも必然です。生活習慣の見直しからスタートしてみましょう。 また、普段から履いてる靴が適切なものでないと膝に負担がかかります。ハイヒールやサイズが合っていない靴は極力避ける努力も必要です。 対処法としては、適切かつ軽度な運動やサポーターの装着が挙げられます。運動は膝周りの筋肉を伸ばすストレッチなどが適切で、安静にしすぎて筋力が衰えしまわないよう無理ない範囲で行いましょう。 また、サポーターの装着も膝周りの不安感を解消してくれる心強い味方です。 まとめ|寝起きに膝が痛む方はお気軽に相談ください! 今回の記事では朝起きると膝が痛み、歩きはじめ膝に違和感を感じたときに想定される疾患である関節リウマチと、変形性膝関節症の症状と治療法について解説しました。 二つの疾患は類似点もありますが、診断や治療など、大きく異なる点もあります。より詳しく知りたい場合は既に受診している整形外科、または最寄りの医療機関に問い合わせてみましょう。 また、膝に関するお悩みは当クリニックでも受け付けています。ぜひ、お気軽にご相談ください。
2022.06.17 -
- 上肢(腕の障害)
- ゴルフ肘
- 肘関節
- スポーツ外傷
日常生活の何気ない動作で肘に違和感を覚えたことがある方も多いのではないでしょうか。 重い荷物の持ち運びや繰り返しの手作業を行うことで、肘の内側に痛みを感じることがあります。 ゴルフをしない方でもゴルフ肘を発症します。 正式には上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)と呼ばれ、肘の使いすぎによって炎症が起こる疾患の一つです。 本記事ではゴルフ肘の原因や症状、治療法について詳しく解説します。 近年注目されている、手術に頼らない治療法の再生医療や、自分でできるストレッチ法についても紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。 【基礎知識】そもそもゴルフ肘とは ゴルフ肘と呼ばれる病気の正式名称は「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」です。 上腕骨とは、肩から肘の間にある骨で、内側上顆は、肘の内側にあります。 上腕骨の内側上顆にある筋肉や腱に炎症が起こった場合に発症するのが「上腕骨内側上顆炎」つまり「ゴルフ肘」です。 ゴルフでクラブをスイングをした際、肘に痛みを感じることがあるため、ゴルフ肘と呼ばれるようになりました。 しかし、この疾患はゴルフに限らず、テニスなど他のスポーツ、さらには日常的な肘の使いすぎによっても発症することがあります。 ゴルフをしてない人がゴルフ肘になる原因 ゴルフ肘は、ゴルフをしている人だけが発症するものではありません。 実際には、手のひらを内側に向けて動かす動きや、物を握るような動きなど、腕のあらゆる動作が原因となり、ゴルフをしていない人にも発症することがあります。 ゴルフ肘の主な原因は、腕の使い過ぎ・筋肉量が少ないこと・ゴルフの3つです。 これらの原因について深掘りしていきます。 腕の使い過ぎ ゴルフをしていないにもかかわらず、ゴルフ肘を発症する原因の1つとしてあげられるのは、日常生活や仕事での腕の使い過ぎです。 手首や肘を頻繁に使う動作を繰り返す作業が多い場合、気付かないうちに肘へ過度な負担をかけてしまっている可能性があります。 たとえば、以下のような作業が伴う人は注意してください。 パソコンのキーボードを長時間打つ 重い荷物を持ち上げる 繰り返しの手作業を行う これらの動作は、肘の内側にある筋肉や腱にストレスを与え、ゴルフ肘を引き起こす原因となります。 さらに、家事や趣味での活動、庭仕事、DIYなどでも、同様に腕を酷使するため、ゴルフ肘を誘発する可能性があります。 加齢や筋肉量の少なさ ゴルフをしていないのにゴルフ肘を発症する原因には、加齢や筋肉量の少なさもあります。 年齢を重ねると筋肉や腱の柔軟性が低下し、回復に時間がかかりやすくなります。結果として、小さな負荷でも負傷しやすくなるのです。 また筋肉量が少なくても、日常の動作でも肘にかかる負担が大きくなり、ゴルフ肘を引き起こすリスクが高まります。 とくに、定期的な運動をしていない人や、筋力トレーニングを行っていない人は注意が必要です。 日常生活においても腕の使い過ぎを避け、適度な休息と運動を心がけることが重要です。 ゴルフをしている人でも発症可能性がある ゴルフ肘という名前から、ゴルフをプレイする人だけが罹患するものと誤解されがちですが、実はゴルフをしてない人でもゴルフ肘にかかる可能性は十分にあります。 ゴルフのスイング動作は、肘にかかる負担が大きく、繰り返しの動作によって筋肉や腱にストレスが蓄積されるため、ゴルフ肘の原因となります。 また、クラブの握り方やスイングの方法が正しくないと、肘に余計な力がかかりやすくなるため、注意が必要です。 ゴルフを始めたばかりの初心者から中級者に起きやすい症状のため、スイングフォームの見直しから始めましょう。 以下の記事では、ゴルフ肘を含めて急に肘が痛み始めた人向けに具体的な対策を解説しています。 ゴルフ肘の症状と診断方法 ここからは、ゴルフ肘の症状と診断方法について解説していきます。 ゴルフをしていない人も、肘の痛みを感じる場合はぜひご覧ください。 症状 ゴルフ肘の症状は、主に肘の痛みです。 痛みの程度や発生するタイミングは人によって異なりますが、重い荷物を持ち上げる際や、包丁を使うなどの繰り返し動作をしているときに痛みを感じることが大半です。 特に、腕や手首を頻繁に使う作業を続けると、症状が悪化することがあります。 テニス肘との違い ゴルフ肘とテニス肘の違いは、肘の痛みが「内側なのか・外側なのか」の違いです。 多くのケースでゴルフ肘は内側で、テニス肘は外側で痛みを感じます。また、発症頻度の違いもあり、テニス肘を罹患されるケースが多い傾向にあります。 しかし、発症の原因となったスポーツで病名が決まっているわけではありません。ゴルフ肘もテニス肘も、正式名称は「上腕骨外側上顆炎」です。 あくまで原因となったスポーツの名称からの名残りとして呼ばれていると把握しておきましょう。 テニス肘については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 診断方法 ゴルフ肘は、いわゆる肘の使い過ぎによって起こる病気です。 そのため、医師の診察でも、肘の曲げ伸ばしを日常的に繰り返ししているが診断の材料になります。診察では「誘発試験」と呼ばれる身体検査をおこないます。 具体的な誘発試験流れは、以下の通りです。 手のひらを上に向けた状態でテーブルの上に置く 医師が手首を押さえ、手首を上に向けてあげようよう指示をする 肘の内側が痛くなるならゴルフ肘が疑われる 他にもレントゲン検査や、超音波検査、MRI検査などの画像検査で総合的な診断も可能です。 ゴルフ肘の治療法 ゴルフ肘の治療法は、痛みの重症度によって異なります。 保存療法 手術療法 再生医療 これらの治療法についてそれぞれ詳しく解説します。 保存療法 ゴルフ肘の保存療法で実施されている方法は、主に以下の通りです。 安静にする 患部を冷やす テーピングや肘用ベルトを使用して負担を軽減する 鎮痛剤・湿布で痛みや炎症を抑える 安静にしても痛みが改善されなかった場合は、薬物療法や注射療法、理学療法などを実施します。 ステロイド薬の使用や痛み止めの服用をしながら、患部に湿布を貼って治療する方法が、初期段階の治療法です。 手術療法 ゴルフ肘の痛みが収まらない場合や重症の場合は、手術療法が選択肢としてあげられます。手術によって損傷した組織の修復や除去を行うことで、痛みが改善される場合が多いです。 ただし、手術には感染症などの合併症が生じるリスクもあるため、慎重な判断が求められます。 再生医療 再生医療ではPRP療法(血小板豊富血漿療法)を用いることで、腱に悪影響を与えることなく、痛みを軽減できます。 PRP療法では、患者様自身の血液から抽出した血小板を患部に注入することで、腱の修復を促進します。 再生医療は手術を必要とせず、回復期間の短縮を目指せる点がメリットです。 詳細については以下のリンクからご確認ください。 ゴルフ肘を自分で治すストレッチ法 日々忙しく医療機関での受診が難しい人に向け、おすすめのストレッチ法を紹介します。 【腕前面のストレッチ】 片方の腕を前方に伸ばし手のひらを上に向ける 反対の手で伸ばした手を添える 添えた手を手前に引く もう片方の腕も実施する 肘の筋肉を伸ばすストレッチになるので、休憩時間に実施してみてください。 今回紹介したストレッチ以外にも、以下の記事で網羅的にまとめているので、あわせてご覧ください。 まとめ・ゴルフ肘の症状がある人は早めに受診しよう ゴルフ肘は、ゴルフをしていない人でも起こりうる病気です。 早く治すためには、早期の発見と治療が大切です。 治療が遅れると悪化し、結果として手術を選択しなければならないケースもあるので「この程度なら」との自己判断は禁物です。 「自分はゴルフをしないから大丈夫だ」と考えず、肘に違和感を感じたら、すぐに医師の診察を受けましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/
2022.06.16 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
ちょっと立ったり座ったりするにも不自由する膝の痛み、嫌なものですね。膝の痛みに悩む方の中には、膝に水が溜まっている方も多くいらっしゃいます。 「水を抜く治療を勧められたけれど、抜いて大丈夫?」 「抜いたらどんな注意が必要なの?」 「水を抜かない治療方法はないの?」 と気になる方もいるのではないでしょうか。 この記事では、膝に溜まった水を抜いたあとの注意点について医師が解説します。また、水を抜かない治療法についてもお伝えするので参考にしてください。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しています。個別の事象については各自で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。 膝の水を抜いた後の注意点 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがあります。この診療行為を、医療用語で「関節穿刺」といいます。関節穿刺により、膝の痛みや突っ張り感の改善が期待できます。 一方で、関節穿刺を行っても水が溜まる原因はなくなりません。関節穿刺は根本的な治療にはならないことは、知っておきたい注意点の一つです。 また、関節穿刺によって別の症状や病気、つまり合併症が起きる可能性もあります。関節穿刺後の注意点について解説します。 膝の痛みの根本的な治療にはならない 膝が痛み、水が溜まるのにはなんらかの原因があります。 たとえば変形性膝関節症では、関節の軟骨がすり減ることで痛みが起きたり、炎症が起きて水が溜まったりします。水を抜くだけでは原因が残ったままのため、再度溜まってしまうかもしれません。根本的に解決するには、筋力をつけて膝を安定させたり、重度なら手術を検討したりといった対策が必要です。 他の病気でも同様に、原因が残っていれば痛みが消えない場合や、再び水が溜まる場合もあります。 感染症のリスクが上がる 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺によって体の表面にいた細菌が関節内に入ってしまうことがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱を持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺の後数時間は穿刺による痛みが生じることがありますが、痛みが長引く場合は感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 出血する可能性がある 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、あるいは太い血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 薬剤の影響でアレルギー反応が見られる 関節内に薬剤を注射した場合などには、薬剤による合併症が起きる場合もあります。たとえば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症するため医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。帰宅後に症状が現れた場合は、速やかに処置を行った医療機関へ相談してください。 まれに神経や靭帯を傷つける 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷もまれな合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことはまれですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 神経が損傷すると、強い痛みやしびれ、電気が走るような痛みなどを伴います。靭帯や腱が損傷すると、関節が不安定になったり、痛みが持続したりする可能性があります。異常を感じたときは、処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 そもそも膝の水がたまる原因とは? 膝の関節の中には、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。 ところが疾患やケガが原因となって、関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。すると「膝に水が溜まる」という症状が起きるのです。 変形性膝関節症 変形性膝関節症では、膝の軟骨がすり減ることで痛みが出て、水が溜まってしまいます。関節軟骨の老化によって起きることが多く、性別では女性に多い病気です。膝の外傷や感染症の後に発症することもあります。 変形性膝関節症の初期症状は、膝がこわばる、曲げ伸ばしの際に引っ掛かりを感じる、歩き始めに痛みがあるといったものです。早い段階で発見できれば、後述する運動療法などで悪化を防げる可能性があります。 半月板損傷・靭帯の損傷 スポーツや交通事故などで膝に強い衝撃が加わると、半月板や靭帯を損傷することがあります。これにより膝の内部で炎症が起きると、関節液の分泌が増加して水が溜まります。関節内で出血が起きれば血液が溜まることもあります。 増加した関節液は、損傷部位を守ったり、修復に必要な栄養素を運んだりといった役目を持つと考えられるため、悪いものとは言い切れません。しかし多すぎたり長期化したりすると、慢性的な痛みや関節の機能低下といった問題を引き起こします。 関節リウマチ・痛風 関節リウマチは、関節内部に慢性の炎症が起きる病気です。症状は手や足の指に出やすいですが、膝関節にも現れることがあり、水が溜まると動かしにくくなります。30〜40代の女性に多く発症し、原因は免疫システムの異常と考えられています。 痛風で炎症が起きる原因は、血液中の尿酸値が上昇し、関節内に尿酸炎の結晶ができることです。親指の付け根が痛む発作がよく知られていますが、膝関節でも発作が起きたり、水が溜まったりすることがあります。生活習慣が原因となるほか、腎機能や薬剤が原因のケースもあります。 抜いた水の色で予測される病気 正常な関節液はやや黄色がかった透明で、わずかな粘り気があります。しかし病気やけがになると、以下のように特徴的な色の変化が見られます。 水の色 予測される病気 濃いめの黄色 変形性膝関節症 赤色・褐色 半月板損傷、靭帯の損傷など 白濁 関節リウマチ、痛風など 変形性膝関節症の場合は、関節液の色がやや濃く、粘り気は少なくなります。赤や褐色の関節液は、けがによる内出血が原因のケースが多いです。混濁が見られる場合は、関節リウマチや痛風のほか、感染症の可能性もあります。 このように、関節液の色から病気を推測することで、適切な治療につながります。 膝の水を抜かない治療法 症状が軽度なら、関節穿刺以外の治療も選択肢です。ここでは運動療法と温熱療法を紹介します。どちらも膝の状態を評価した上で、適切な方法で行うのが大切です。 運動療法 運動療法では、膝周りの筋肉の強化や関節可動域の改善、鎮痛効果などが期待できます。体重のコントロールや全身の健康状態を維持する効果も期待でき、とくに変形性膝関節症では積極的に勧められる方法です。 運動の種類は、筋力トレーニングやエアロビクス、太極拳、ヨガ、水中での運動など多岐にわたります。継続すれば徐々に筋力がつき、膝が安定するでしょう。 膝に負担がかかりすぎないように、運動の種類や量、時間について医師や理学療法士と相談しながら行ってください。 物理療法(温熱) 変形性膝関節症や関節リウマチでは、温熱療法も効果的です。膝を温めることで、筋肉の緊張が和らいで動きやすくなったり、血流が増えて代謝が促進されたりといった効果が期待できます。冷えていると痛みを感じやすいため、温めることで鎮痛効果も期待できます。 温める方法としては、超音波を照射して関節の内側から温める超音波療法や、ホットパックを当てて表面から温める方法など、いくつかの方法があります。適切な温度に設定することで、軟骨成分の合成が促進されるとも考えられています。 まとめ|膝の水を抜いた後の注意点を正しく理解しよう 今回の記事では膝に溜まった水を抜いたあとの注意点について解説しました。 水を抜いた後には、感染症や出血をはじめとする合併症が起きる可能性があります。一般的には、関節穿刺により生じた痛みなどの症状は、数時間から1日程度で消失します。これ以上持続する場合や、処置から時間が経っていなくてもどんどん悪化する場合は、速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。時間外などで相談できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 また、水を抜くだけでは根本的な治療にはならず、再び痛みが出たり水が溜まったりすることがある点にも注意が必要です。当院では膝の軟骨を再生させる幹細胞治療を行っており、痛みの原因に対する治療が可能です。膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。 膝の水を抜く際によくあるQ&A 膝の水を抜いた後の安静期間はどのくらいですか? 膝の水を抜いた後に、とくに安静期間は必要ありません。通常の生活を送って大丈夫ですし、積極的な運動療法も可能です。 膝の水を抜くことで関節が動きやすくなり、運動もしやすくなると期待できます。安静にしすぎると、かえって膝が動きにくくなることもあるため、無理のない範囲で動かしましょう。 膝の水はどういう時に抜くのか? 関節穿刺の主な目的は、水が溜まる原因を調べる「診断」と、膝の痛みを和らげる「治療」です。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断): 膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。 関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療): 膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。 そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。 この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。
2022.06.10 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
腱板断裂と五十肩(四十肩)はどう違うのか 肩が痛む時に診断される病気として、「五十肩(四十肩)」と「腱板断裂」とがあります。 『なんだか最近肩が痛いな、年齢のせいかな』『最近肩を動かし過ぎたせいかな』『時間が経てばそのうち治るかな、様子をみよう』などと考え、五十肩(四十肩)だろう…と思って放置していると、実は腱板断裂で治療が必要な状態ということもあります。 そこで、腱板断裂と五十肩はどう違うのかについて比較していこうと思います。 ちなみに「四十肩も五十肩も基本的に同じ」ものです。この名称は、40代〜50代で発症することが多いため、四十肩または、五十肩という名称で呼ばれています。 五十肩(四十肩)とは?!(肩関節周囲炎) 年齢を重ねると肩の動きが悪くなって、手をあげる時や、髪の毛を洗う時などに肩が痛みを感じたり、肩の動きが悪くなったり、肩が強張ることがあります。これを世間では四十肩・五十肩と言いますが、『肩関節周囲炎』という診断名が正式名称です。 原因は、『四十』『五十』と言う文字の通り、加齢による影響と、過度に肩を使ったりした際の過労と言われています。それらの原因が、肩関節を構成している骨や軟骨、靭帯、腱などを痛めて肩関節の周りの組織に炎症を起こすことが原因と言われています。 四十肩で動きが悪くなる原因としては、肩関節の動きをよくするための袋(肩峰下滑液包)や関節を包み込んでいる袋(関節包)が、『くっつくこと』と言われています。 四十肩は、世間でも『そのままにしておいても時が来れば治る』と考えられているように、自然に治ることもあります。しかし放置しておくと、先ほど述べたような関節の周りにある『袋のくっつき』が強くなって余計に動かしにくくなることもあるのです。 そのため、症状の進行に合わせて様々な治療を用いることがあります。三角巾などで安静を保つことも治療法の一つです。また、炎症をおさえる薬を使用することもあります。 炎症をおさえる薬は内服をしたり、肩に注射をしたりします。その他には、温めたり、入浴などといった温熱療法を行ったり、関節がかたくなるのを予防したり、筋肉をつけたりといったリハビリが治療のために必要なこともあります。しかし、これらの治療でよくならない時は手術が必要なこともあります。 腱板断裂とは 腱板断裂も中年以降の肩の病気として有名です。腱板断裂はその診断名が表しているように『腱板』が『断裂する=切れて裂ける』病気です。 四十肩と異なり肩の関節の動きが悪くなることは少なく、肩をあげることは可能であることが多いですが、肩の運動痛、肩の夜間痛といった症状は多いと言われています。 腱板断裂で病院に来る患者さんの理由としては、夜も肩に痛みがあり眠れないというのが、いちばん多いようです。また、肩をあげる時に肩の前で『ジョリジョリ』という音が聞こえるという症状がみられることもあります。 腱板断裂の原因としては外傷のことは少なく、はっきり原因がないのに、日常生活の中で少しずつ断裂が起きていくと言われています。利き腕に多いと言われているので、肩を過度に使い過ぎることも原因の一つなのではないかと言われています。 腱板断裂の治療については、三角巾を用いて安静を保つことが大事です。1週間から2週間を安静で保つことで70%は改善するとも言われています。また、肩にヒアルロン酸や副腎皮質ホルモンの注射を打ったりすることもあります。それらの症状で改善しない時は手術が適応となることもあります。 手術では関節鏡という機械を使用して行うものと、直接切って開いて行うものとあります。 関節鏡を用いる手術の方が、傷口は小さく、手術の後の痛みも少ないです。しかし、断裂が大きくなると、縫うことが、関節鏡による手術では難しくなり、直接切り開く方法を取られることが多いです。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違い 腱板断裂と四十肩は非常に似ています。症状も似ていますし、発症する年齢もどちらも四十代〜五十代の中年世代が多いです。 腱板断裂と五十肩では何が違うのか 自分でわかる範囲内の症状としては、先ほど触れたように『腱板断裂は四十肩に比べて、肩の動きが悪くなることが少ない』『腱板断裂は四十肩に比べて夜間の痛みが多い』『腱板断裂ではジョリジョリという音が聞こえる』と言った程度でかなり似ています。 診断の場面でも、身体診察だけではどちらの疾患かわからないことが多いのです。そこで実際の診療では、腱板断裂、四十肩どちらも、レントゲンやM R Iを行って診断していきます。 腱板断裂ではレントゲンを撮影して、肩峰という骨と骨頭の間が狭くなっていたりします。 また腱板断裂ではM R Iを撮影すると骨頭の上が白く光ったりします。一方で、四十肩を診断する時は、レントゲンやM R Iなどで、このような所見がないことを確認することが大事と言われています。 まとめ・腱板断裂と五十肩(四十肩)はどう違うのか 何度も述べているように、自分でわかる症状では腱板断裂と四十肩はかなり似ています。『四十肩と思って放置していたら、実は腱板断裂だった』『症状がどんどん悪くなっていってしまい治療が遅れた』『治療が遅れたため、なかなか良くならずに手術が必要になってしまった』などのことはよく耳にします。 腱板断裂と四十肩は症状が似ていても、別々の病気です。自分の判断でどちらかと決めずに、手遅れになる前に、症状が出た際は早めに専門科に相談するのが良いでしょう。 以上、腱板断裂と四十肩はどう違うのかについてご説明させて頂きました。参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼こちらもご参考にしてください 五十肩・四十肩の腕を上げると肩関節が痛む症状におすすめの治療法
2022.06.10 -
- 脊椎
- 腰椎分離すべり症
腰椎すべり症のつらい症状に悩まされ「治らないのだろうか」「手術はしなければならないんだろうか」と不安を抱える方も多いでしょう。 結論からいえば、腰椎すべり症は自然には治らないものの、適切な治療によって改善する可能性があります。 非外科的治療で効果がみられない場合のみ、手術も検討します。 本記事では、腰椎すべり症の症状や治療法などについて具体的に解説します。 ぜひ本記事を参考に、腰椎すべり症の治療を前向きに検討してみてください。 【結論】腰椎すべり症は自然に治ることはないが治療によって症状を緩和できる 腰椎すべり症は自然に治ることはほとんどありません。 しかし、医療機関にて適切な治療をすることで症状を緩和できる病気です。 腰椎すべり症の方が医療機関で行える治療は、次の2つあります。 非外科的(手術しない)治療 外科的(手術する)治療 それぞれ詳しく解説します。 腰椎すべり症の非外科的治療 腰椎すべり症の治療は、手術しない「非外科的治療法」から始めるのがほとんどです。 主に、以下の方法で症状を緩和させます。 安静にする:腰の負担を軽減し、必要に応じてコルセットを併用 鎮痛薬を使用する:通常は非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)を使用 神経根ブロック(注射)を行う:神経の根元に局所麻酔薬やステロイド薬を注射し、症状を緩和 つらい症状が落ち着いてきたら、お腹と背中を鍛える筋肉トレーニングやストレッチを行い、病状の進行を防ぎます。 腰椎すべり症(腰椎分離症)で注意すべきことは以下の記事でも解説しているので参考にしていただければ幸いです。 腰椎すべり症の外科的治療 以下のいずれかに該当する場合は、手術による治療も検討が必要です。 腰椎すべり症の程度が非常に強い 非外科的治療を行っても症状が改善されない 腰椎すべり症の治療で行われる手術は、主に以下の2つです。 脊椎の減圧術:神経の圧迫をとり、症状を和らげることで腰椎の回復を目指す 腰椎の固定術:腰椎を固定し、不安定な腰椎の安定と骨同士をくっつける(文献1) どのような手術の方法を選ぶのかは、医師が骨の状態をみて判断します。手術が不安である際は、一度医師に相談してみましょう。 腰椎すべり症とは「腰椎の骨同士がずれてしまう病気」 腰椎は腰の骨です。5つの小さな骨が縦にくっつき、腰を支えています。 腰椎をつくっている小さな骨同士がずれてしまう病気が「腰椎すべり症」です。 ここからは、腰椎すべり症の症状と原因、診断について詳しく解説します。 腰椎すべり症の主な症状 腰椎すべり症の主な症状は腰痛です。 腰椎が必要以上に動くため脊髄神経が圧迫され、腰痛や足の痛みを引き起こす可能性があります。 個人差はありますが、脊髄神経が圧迫されることで以下の症状も伴う場合があります。 太もも裏の筋肉のけいれん 背中のこわばり 歩行や立つことが困難 足のしびれ 腰椎すべり症の初期は、症状が現れない場合もあります。 腰椎すべり症の原因 腰椎すべり症の原因は、主に次の2つです。 変形すべり症:椎骨のクッションである椎骨板の水分が加齢により失われ薄くなり、椎骨がずれやすくなる病気 分離すべり症:生まれつき脊椎の一部が不完全、または体操のような腰に負担をかける運動の繰り返しで、脊椎の分離が起こりやすくなる病気 腰椎すべり症(腰椎分離症)の原因については以下の記事でも解説しているので参考にしてください。 腰椎すべり症の診断 問診や診察によって腰椎すべり症が疑われる場合、画像検査を行い腰椎すべり症かどうかを判断します。 医療機関では、一般的に以下のような画像検査を行います。 X線検査(レントゲン):腰椎のずれがあるかどうかを確認 CTスキャンやMRI:脊椎の様子をより詳しく観察、あるいは椎間板や神経組織の状態を確認 まとめ|適切な治療で腰椎すべり症の症状を緩和しよう 腰椎すべり症は適切な治療を行えば、症状が改善して以前の生活に戻れることも期待できます。 腰椎すべり症の初期は症状が出ない場合もあるため、今回解説した症状が出たら早めに受診しましょう。 腰椎すべり症に関してよくある質問 腰椎すべり症は手術が必要ですか? 腰椎すべり症の治療では、必ず手術するわけではありません。 最初は鎮痛剤やブロック注射で症状を緩和し、腰の負担を減らすために安静に過ごして様子をみる場合がほとんどです。 症状の度合いが強すぎる、または鎮痛剤や静養で改善されない場合は手術の必要性があります。 手術に不安を感じる場合は、治療法について一度主治医に相談してみましょう。 腰椎すべり症は発症からどのくらいで治りますか? 腰椎すべり症は自然に治らないため、一度発症したら継続的に通院や治療が必要です。 個人差はありますが、腰椎すべり症で手術した場合は約10日間で退院する場合がほとんどです。 退院後も約2週間は自宅で静養し、手術から約1カ月間経過してから通勤・通学が許可されます。 ただし、入院期間や通勤・通学の再開時期は個人差があります。
2022.06.09 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板断裂(腱板損傷)とは、肩の関節を安定させるための筋肉(腱板)が傷ついたり、腱組織が断裂して切れていたりする病気です。 腱板は、肩のなかで最も損傷を受ける部位であり、腱板が損傷すると腕の力が入らなくなり、とくに腕を上げようとしたときに痛みを引き起こします。また、夜に激しく痛み、眠れなくなる経験をした方もいるのではないでしょうか。 本記事では、肩に激しい痛みを起こす腱板断裂(腱板損傷)において、やってはいけないことや先端医療による治療について詳しく解説します。 日常生活の動作が原因となることもあるため、どのような動作を避けて安静を保つと良いのか、この記事を参考に取り入れてみてください。 腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないこと4つ 腱板損傷直後は基本的に、肩周囲の安静を保つべきです。通常は三角巾を用いて、腕の動きを最小限にするように配慮します。 安静は急性期における対処法ですが、急性期が過ぎた後も、できる限り避けた方が良い動作があります。腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことは、以下の4つです。 頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作 首の後ろで腕を動かす動作 上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作 肩を後方に回した位置で行う運動腱板損傷後に避けるべき動作を紹介しますので、一つずつチェックしながら症状を悪化させないようにしていきましょう。 頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作 腱板損傷を発症した後、とくに発症初期は以下のような動作や運動は控えたほうが良いでしょう。 頭上に手を持っていく動作 頭上へ重いモノを持ち上げる動作(重い荷物を上げたり、高所から下すような動作) また、ボールを投げるような動きや、ジムでバーベルを頭の上に持ち上げるなどのウェイトトレーニングは、しばらく行わないようにします。これらの動きは、肩に過度のストレスを与えるだけでなく、損傷した部位にさらなる傷害と痛みを引き起こす可能性があるのです。 したがって、腱板損傷後は「オーバーヘッドでボールを投げること」「重いボールを上半身の力に頼って投げること」「水泳のクロールや背泳のように、頭上に右手を持ってきて力を入れて引き下げる」ようなストロークを避ける必要があります。 首の後ろで腕を動かす動作 バーベルやバーなどを、頭や首の後ろで上下させる運動も避けるべき動作のひとつです。 この運動は、腱板に過度の負担をかけ、さらなる肩の問題や慢性的な痛みを引き起こす危険性があります。この動作の問題は、肩の「外旋(骨を外側にねじるような運動)」にあります。 頭や首の後ろで上下させる運動では、肩をしっかりと外旋させる必要がありますが、これは肩にとって非常に負担のかかるポジションです。 この動きをすると、関節を構成する組織をさらに損傷してしまい、治癒までの時間が非常に長くなりかねません。 上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作 別名アップライトローと呼ばれる動作のことです。 アップライトローはジムでよく見かけるエクササイズのひとつですが、このエクササイズのメカニズムを見れば、なぜこの動作が腱板損傷後に避けるべき動作であるか、理解できるでしょう。 アップライトローは、上半身を起こした状態で肩を開き、両手に持ったバーベルなどの重りを首元まで引き上げ、持ち上げる動作です。 このエクササイズの問題は、腕を置かなければならない位置にあります。この位置は「内旋」と呼ばれ、アップライトローをするために腕を挙上させると、腱板が肩の骨に挟まれます。これは腱板損傷を引き起こす原因となる動作そのものでもあります。 肩を後方に回した位置で行う上運動 ベンチディップスとも呼ばれるエクササイズが該当します。 具体的には、椅子などに両手をついた状態で腰を座面よりも低い位置まで落とし、肩を後方に回した状態で、主に二の腕に相当する上腕三頭筋に負荷をかける運動です。 ベンチディップスは、腰を落としすぎて上腕が肩と平行な位置以上になってしまうと、肩関節に過度な負荷がかかります。 肘を開きすぎても閉じすぎても、上腕三頭筋に負荷がかかるため、腱板損傷後には避けるべき動作のひとつです。 腱板断裂(腱板損傷)が改善しない場合は再生医療による治療の可能性 腱板損傷は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着きますが、放置すると悪化する恐れがあり、最悪の場合、完全断裂のリスクがあります。症状が改善されなければ、手術が必要になることも考えなければなりません。 しかし、近年では身体への負担が大きい手術を回避でき、入院や長期間のリハビリが不要の「再生医療」といわれる先端医療で、損傷した腱板の再生を期待できます。 もしも、あなたが腱板損傷の症状が改善されていない、手術が必要な状況でしたら、再生医療を検討されても良いかもしれません。 このように再生医療による治療の可能性はありますが、まずは放置せず、手遅れになる前に整形外科医を受診して、適切な治療を進めていきましょう。 まとめ|腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことに注意して負担を減らそう! 本記事では、腱板損傷後に避けるべき動作、やってはいけないこと4つをご説明しました。 腱板損傷後は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着いていきます。外傷後や症状がなかなか改善しない場合は、どうしても手術を検討しなければなりません。しっかりと安静を保ち、保存的治療に反応すれば、完治も期待できます。 術後も含め、治療の一貫でリハビリを行うこともありますので、もし避けるべき動作についてさらに詳しく知りたい場合は、リハビリの機会などを活用して相談してみることをおすすめいたします。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷をはじめとする肩に関する病気にお悩みの方を対象に、無料相談を実施していますので、お気軽にご相談ください。 腱板断裂(腱板損傷)やってはいけないことのよくある質問 腱板断裂(腱板損傷)を放置するとどうなる? 放置した場合、肩の機能が低下し、別の病気に移行する可能性があります。腱板断裂を放置しても自然に治ることは期待できず、治療やリハビリが欠かせません。 放置をして、症状が進行すると手術による修復が難しいだけでなく、人工関節手術を検討する可能性もあります。 以下の記事で、腱板断裂を放置するリスクなどについて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 腱板断裂(腱板損傷)はどれくらいで治る? 損傷の程度によって異なりますが、日常生活できるまでは2〜3カ月が目安です。 肩周囲に多くの負担をかけるスポーツや重労働の場合は、6カ月を目安としてください。 治療方法によっても回復期間は変わるため、専門医と相談しながら適切な対応が重要です。
2022.06.09 -
- 上肢(腕の障害)
- テニス肘
- 肘関節
- スポーツ外傷
テニス肘は、テニスの経験がなくてもテニス肘と診断されることがあります テニス肘(テニスエルボー)は、手首や腕の反復運動によって肘の腱に負荷がかかり、痛みを伴う疾患です。通常はテニスをされる人に多く見られる状態です。しかし、テニスを一度もしたことがないのに、テニス肘と診断されることがあるのです。 この記事では、テニス肘について説明し、テニスが未経験であっても、どのような状況になるとテニス肘を発症するのか?ご説明してまいります。 テニス肘とは? テニス肘について簡単に説明します。テニス肘はテニスエルボーとも言われます。その痛みは、主に前腕の筋肉の腱が肘の外側にある骨の隆起に付着する部分に発生します。また、前腕や手首に痛みが広がることもあります。 通常安静にしているときには痛みは感じませんが、例えばドアノブを回す、タオルを絞る、またキーボードを操作するなどのように、手首を捻ったり反らせたり、また指を伸ばす動作をすると、肘の外側に痛みが誘発されます。場合によっては、コーヒーカップを持ち上げるだけでも痛みを感じることがあります。 症状が進行すると、安静時でも肘に痛みを感じるようになり、なかなか痛みが消えなくなります。 テニス肘の原因 テニス肘には、腕の使いすぎと筋肉疲労が背景にあります。原因は、手首を動かしたり、指を曲げたり伸ばしたりするための前腕筋を、繰り返し収縮させることです。 手首を反らせたり、手で握ったりすると、前腕の筋肉(伸筋)が収縮します。繰り返される動作と組織へのストレスにより、前腕の伸筋が上腕骨の肘の外側にある骨の突起に付着する部位に傷がついてしまい、炎症が起きることがあります。 この骨の突起は、「上腕骨外側顆」、前腕の筋肉は「短橈側手根伸筋」という名前がついています。尚、テニス肘の正式名称は「上腕骨外側顆炎」と呼ばれるものです。 テニス肘は、その名が示すようにテニスプレーにおいて、特にバックハンドストロークを技術が未熟なうちから、繰り返し行うことで肘の外側部分に負担を掛けてしまうことが原因で起こります。しかし、テニス以外、他の多くの一般的な腕の動きでも、テニス肘を引き起こす可能性があります。 なお、テニス肘は発症してからの時間が経つにつれて、炎症を抑えることができなくなります。そのような状況になると筋肉や腱の繊維組織はその強度を失ってしまいます。繊維組織はもろくなり、折れたり、傷つきやすくなったります。 そして繊維組織は傷つくたびに、瘢痕を形成します。やがて、腱は瘢痕組織によって肥厚していきます。 このような状況になると、腱はもはや正しく機能せず、痛みが続くようになり、運動していないときでさえ痛みが生じるようになります。 テニス肘は発症後時間が経つと進行すると 炎症を抑えることができなくなり、筋肉や腱の繊維組織は強度を失っていきます。 繊維組織がもろくなり、折れたり、傷つきやすくなり、瘢痕を形成します。 腱は瘢痕組織によって肥厚します。 腱は正しく機能せず、痛みが続くようになる。 運動していない場合でも痛みが生じるようになる。 テニス肘の治療 安静と鎮痛薬で、テニス肘の痛みが和らぐことが一般的です。痛みが激しい場合は、炎症が起こっている肘の周囲にステロイド薬を注射することもあります。 症状が慢性化すると、定期的なストレッチを含む理学療法が有用だと言われています。このような保存的治療が効かない場合や、症状が重篤な場合は、手術が必要となることもあります。 テニス未経験なのにテニス肘と診断されることがある 手首や腕の使いすぎが原因となっているテニス肘は、テニスをする人によくみられる状態であることは間違いありません。しかし、テニスのほかにも同じような動作を繰り返すような動作を行えばテニス肘を発症することになりかねません。 次に、どのような場合にテニス以外にテニス肘がみられるのか、ご紹介します。 腕をよく使うスポーツ 一部のスポーツを除き、頻繁に腕を使うスポーツは多くあります。そのなかでも特にテニスと同じようにラケットを使うスポーツであるバドミントンや卓球、スカッシュでも、テニス肘はよく起こります。 そのほかにもゴルフや、ウェイトリフティングでも、同様の症状がみられることがあります。 腕をよく使う職業 その名前にもかかわらず、テニス肘を発症するのは、アスリートだけではありません。テニス肘になるような職業もあります。特に力を入れて手首や腕を動かす必要のある、配管工、塗装工、大工などが、テニス肘を発症しやすい職業として知られています。 そのほかにも、特に肉を切るように力を入れて包丁を扱ったり、重い鍋を持って動かしたりする料理人、また特に体を動かすわけでもないタイピングやマウス操作を繰り返し行う人も、テニス肘を発症することがあります。 テニス肘の危険因子 そのほか、テニス肘の発症リスクを高める要因としては、以下のようなものがあります。 年齢:テニス肘はすべての年齢層で発症しますが、特に30~50歳の成人に最も多くみられます 職業:手首や腕の動きを繰り返すような仕事をしている人は、テニス肘になりやすい 例えば、配管工、塗装工、大工、料理人などが挙げられます 特定のスポーツ:ラケットを使用するスポーツに参加すると、テニス肘のリスクが高まります。 まとめ・テニス肘は、テニス未経験でもそう診断されることがあります テニス肘の概要、またテニスをしたことがなくても、どのような状況であればテニス肘を発症することがあるか、ご説明しました。 抵抗に逆らって手首を反らせると痛い、肘の外側の骨のあたりを押すと圧痛がある場合は、このテニス肘の可能性が高いと考えられます。しかし、テニス肘は、最終的には医療機関で正確な診断を受ける必要があります。 もし肘の痛みを感じる方がおられるようであれば、慢性化して治療が困難となる前に、整形外科医の診療を受けることをお勧めします。以上、テニス肘は、テニス経験がないのにテニス肘と診断されることがあるについて記させて頂きました。参考になれば幸いです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 再生医療は、生活の質を守る治療です(詳しくは(詳しくはこちらから)
2022.06.08 -
- PRP治療
- 免疫細胞療法
PRP療法(多血小板血漿療法)とは、患者様自身から採取した血液から『多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)』を抽出し、損傷部位に注射して治療を行う再生医療の一種です。 PRP療法の対象は、関節や筋肉、腱、靭帯の疾患・外傷をはじめ、骨治癒の促進や手術創部の治療補助、美容医療における肌のシワ・たるみまで多岐に渡ります。侵襲の少なさから世界的にも注目されている治療法です。 さまざまな分野で行われるPRP療法ですが、以下の疑問を持つ方もいるでしょう。 「良い話ばかり見るけれど、デメリットはないの?」 「本当に効果はあるの?痛みはどれくらい?」 「実は費用が高いのでは?」 この記事では、PRP療法の6つのメリットと4つのデメリットを解説します。治療に不安のある方は、ぜひ参考にしてください。 PRP療法のメリット|患者様の声も合わせて紹介 最初にPRP療法のメリットを見てみましょう。 認可を受けたクリニックだけが施術できるから安心 施術できる部位(肩・肘・膝・手首・足首など)が多い 副作用(アレルギー反応・合併症など)のリスクが少ない 手術を行わないので最短30分で施術が完了 通院だけで治療でき日常生活に復帰しやすい プロアスリートの成功症例も多数あるので信頼がおける 患者様の声も交えて、この6項目について紹介します。 1.認可を受けたクリニックだけが施術できるから安心 再生医療の一種であるPRP療法は、厚生労働省の認可を受けたクリニックだけが行える治療法です。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」によって、「再生医療等提供計画(治療)」を作成して審査を受け、厚生労働大臣へ提出するよう定められています。 リペアセルクリニックも「第二種・第三種再生医療提供計画」を厚生労働省に届出し、受理されています。PRP療法は第三種に分類されており、以下のページで届出内容を確認可能です。 参照:届出された再生医療等提供計画(治療)の一覧|厚生労働省 2.施術できる部位(肩・肘・膝・手首・足首など)が多い PRP療法は、以下のように幅広い部位・疾患に対応できるのが特徴です。これらは一例であり、書かれていない疾患や、難治性の疾患にも対応可能な場合があります。 部位 疾患 肩 四十肩・五十肩 肩腱板損傷 インピンジメント症候群 肘 肘内側(ゴルフ肘)上顆炎 肘外側(テニス肘)上顆炎 手首 手首の靭帯損傷 TFCC損傷 股関節 変形性股関節症 膝 変形性膝関節症 半月板損傷 膝靭帯損傷 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) オスグッド・シュラッター病 足首 アキレス腱炎 足首靭帯損傷 足底腱膜炎 筋肉 肉離れ(筋断裂) またPRP療法は、肌の再生作用にも効果があります。PRPに含まれる成長因子が皮膚組織の修復や再生にはたらくため、美肌治療としても受けていただけます。 3.副作用(アレルギー反応・合併症など)のリスクが少ない PRP療法は、患者様自身から採取した組織・細胞で自分を治す方法です。 ワクチン接種のような身体に異物を注射するものとは異なり、アレルギー症状などの拒絶反応は引き起こしにくく、副作用は非常に少ないとされています。 また、PRP療法は手術を伴わないため、全身麻酔によるアレルギー症状や手術部の感染など合併症の心配もありません。PRP療法は手術と比較し、安全性の観点でメリットが多い治療法です。 患者様からも、以下のメリットを感じるとの声が挙げられています。 手術自体のリスクや、感染症の不安が無い 副作用が少ない 4.手術を行わないので最短30分で施術が完了 PRP療法において、患者様の体への負担は「血液の採取」と「患部への注射」だけです。手術を行わないため、施術は最短30分で完了します。 身体にメスを入れて切ったり、開いたりといった複雑な操作をしないため、安全に配慮した処置ができます。処置の痕が残りにくいことも特徴です。 実際にPRP治療を行った患者様からは、以下の感想をいただくことがあります。 注射だけの処置で、処置の痛みも一瞬だった 処置がすごく短時間で簡単に終わったのでびっくりした 5.通院だけで治療でき日常生活に復帰しやすい PRP療法は通院による治療が可能です。さらに、PRP療法は実施後から日常生活に戻れるため、患者様への負担が非常に少ない治療法です。 処置当日は、施術部位の感染予防のために入浴やシャワーなどを控えていただくことが多いですが、翌日からは入浴やシャワーも可能になります。激しい運動は数日間控える必要はありますが、軽い動作は問題ありません。 手術を行う場合は、数日から数週間の入院期間に加え、リハビリ期間も必要なことから、日常生活への負担も大きくなりがちです。一方PRP療法では、日常生活への影響を最低限に抑えて治療できます。実際に治療を受けた患者様からは、以下のような声も多く聞かれます。 入院の必要が無い 通院だけで処置を終えることができ、家族の心配や仕事に支障をきたさない 学生の場合は、入院による学業の遅れや、単位の不足など進学や留年の心配がない 家族や友人との時間を犠牲にしない 6.プロアスリートの成功症例も多数あるので信頼がおける PRP療法は、けがをしたプロアスリートにも選ばれています。 プロアスリートは、治療の効果だけでなく、治療後にパフォーマンスを維持できるかも重視しています。彼らに選ばれるPRP療法は、信頼できる治療法といえるでしょう。プロアスリートとPRP療法について興味のある方は、以下の記事をご覧ください。 PRP療法のデメリット ここからは、PRP療法のデメリットを紹介します。以下の順で確認していきます。 効果の程度・現れるまでの期間に個人差がある 処置部位に腫れ・痛みが出ることがある 治療にかかる費用負担が大きくなりやすい 一部の条件に該当する方は治療を受けられない 1.効果の程度・現れるまでの期間に個人差がある PRP療法の効果の程度や現れる時期、効果の持続時間には個人差が見られます。 ただ、個人差自体はどのような治療にも存在しており、PRP療法に特有のデメリットではありません。むしろ、PRP療法は患者様自身の血液を利用するため、この個人差は副作用のリスクが少ないメリットの裏返しとも考えられます。 2.処置部位に腫れ・痛みが出ることがある PRP療法を実施した後の数日間は、処置した部位に痛みや腫れ、発赤などの症状が出ることがあります。この痛みや腫れについても個人差があり、まったく腫れや痛みを実感しない方もいれば、数日間腫れが続く方もいます。もっとも、腫れや痛みは一過性のものであり、抗生物質などの治療を行わなくても自然経過によって改善するケースが多いといわれています。 まれに処置部位が感染するケースもあり、抗生物質による加療が必要なこともあります。ただし、このリスクはPRP療法に限らず、ワクチン接種などの注射を伴う医療行為全般に共通するものです。 腫れや痛みが出る可能性はありますが、PRP療法は手術を伴わないため、手術療法で起こり得る再手術や入院期間の延長といったリスクがありません。この点から、腫れや痛みはデメリットではあるものの、手術の副作用と比べると軽微です。 3.治療にかかる費用負担が大きくなりやすい 再生医療であるPRP療法は、まだ新しい治療法であるため、現在の日本では健康保険の適応がない疾患が多いです。PRP療法の処置のほか、処置後にリハビリテーションを行う場合も自費負担になることもしばしばあります。 例としてリペアセルクリニックの治療費用を見てみましょう。すべて自由診療で治療しており、PRP療法を1回行った場合の費用は165,000円(税込)です。このほか、専門医による初回診察や感染予防のための血液検査にも費用がかかります。 しかし、PRP療法は入院しなくても処置ができます。保険適用の手術でも、入院費用も含めると高額になる傾向があります。それらを踏まえると、保険適用の手術よりPRP療法の処置費用の方が安く済むケースもあります。 4.一部の条件に該当する方は治療を受けられない PRP療法は安全性の高い治療法ですが、すべての方が受けられるわけではありません。以下に当てはまる方は、治療を受けられない場合があります。 心臓や肝臓に疾患がある方 感染症や血液疾患がある方 妊娠をされている方 その他、カウンセリングで医師が不適当と判断した方 最終的には、患者さん一人ひとりの状態を慎重に見極め、医師が判断します。気になることがありましたら、遠慮なく担当医へご相談ください。 まとめ|PRP療法のメリット・デメリットが気になる方はお気軽にお問い合わせください PRP療法は、手術と比べて合併症や副作用のリスクが少なく、安全性が高い点が大きなメリットです。入院不要で施術時間も短いため、日常生活への影響も最小限で済みます。 一方で、効果の個人差や費用面など、PRP療法にもデメリットがあります。どんな治療法でもいえることですが、受診した医療機関や主治医から十分な説明を受けて、自分なりに理解した上で決めていきましょう。 リペアセルクリニックでも、PRP療法に関するご相談を受け付けています。患者様ごとのメリット・デメリットについても丁寧にご説明しますので、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/
2022.06.08 -
- ひざ関節
- 関節リウマチ
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
- 膝部、その他疾患
膝関節は、大腿骨、脛骨および腓骨、また膝蓋骨などが組み合わさって作られています。日常生活でスムーズかつ自由な伸展運動ができるよう、半月板や靭帯をはじめとする周囲の構造物が膝関節を補助しています。 何気ない動作において、「膝の裏に痛みを感じる」「ピキッと音が鳴る」といった違和感を覚えた経験がある方もいるでしょう。 膝を形成している組織が、スポーツなどの外傷や加齢、自己免疫異常などによる異常をきたして損傷が起こると、膝の裏の部位で疼痛(痛み)が生じます。 今回は、膝の裏が痛い原因やピキッと鳴るときに考えられる病気と対策を解説します。医療機関での治療法のほか、セルフケア方法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 膝の裏がピキッと痛むときに考えられる9つの病気 膝の裏が痛む際に原因として考えられる疾患には、変形性膝関節症や関節リウマチのほか、膝部位に存在する靱帯の損傷などがあります。 膝の裏が痛い場合に考えられる疾患 変形性膝関節症 半月板損傷 ベーカー嚢腫(のうしゅ) 関節リウマチ 靭帯の損傷(事故や、スポーツなど) 以下で、それぞれ詳しく解説していきます。 ▼ 膝の痛みを放置するリスクについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 1.変形性膝関節症 変形性膝関節症は、中高年の女性によくみられます。 関節の軟骨がすり減って膝の内側や裏からふくらはぎにかけて痛くなり、正座がしにくくなります。変形が進行して症状が悪化するとO脚になり、末期になると歩行が困難になって人工関節の手術が必要です。 変形性膝関節症によって膝の関節が硬くなると、膝を伸ばすときに裏が痛くなります。また、膝を曲げ伸ばしする際に「ミシミシ」「ゴリゴリ」といった音が鳴るケースも珍しくありません。 ▼ 変形性膝関節症によるO脚の例 また、膝関節が炎症して水が溜まると、膝の裏から太ももの前側にかけて全体的に痛みを感じるようになります。(文献1) ▼ 変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 2.半月板損傷 膝の裏がピキッと痛む原因として考えられる疾患の一つが、半月板損傷です。 半月板は膝関節におけるクッションの役目があり、スポーツや事故による怪我、あるいは加齢に伴う変性によって損傷することがあります。 半月板が損傷すると、膝の裏側に痛みを感じるケースも珍しくありません。また、膝が動かなくなるロッキングを起こしたり、曲げ伸ばししづらくなったりします。 3.ベーカー嚢腫 ベーカー嚢腫も、膝の裏がピキッと痛むときに考えられる疾患の一つです。 ベーカー嚢腫とは、なんらかの原因で膝関節が炎症を起こし、関節液が増えて膝裏の滑液包に流入してできた袋状のコブを指します。 ゴルフボールぐらいのサイズに大きく腫れることもあり、膝の裏が突っ張った感覚を覚えます。 放置しているうちに腫れが治る場合もありますが、痛みが強いときは、針で水を抜くケースも少なくありません。なお、ベーカー腫瘍は主に変形性膝関節症や半月板損傷、関節リウマチ、化膿性関節炎などが原因とされています。(文献2) ▼ ベーカー嚢腫について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。 4.関節リウマチ 関節リウマチの患者数は、現時点でおおむね80万人といわれており、発症原因は自己免疫系統の異常とされています。自分自身の軟骨組織や骨成分を攻撃・破壊して関節部位に炎症を引き起こすと、膝裏に疼痛症状をもたらすと考えられます。(文献3) 関節リウマチを発症しやすい年齢は、30~50代前後の中高年層です。また、性別に関しては男性よりも女性で発症率が高いことが指摘されています。 なお、関節リウマチの初期段階では、手指の関節領域が左右対称に腫れるほか、倦怠感や食欲不振など自覚症状を引き起こす懸念があります。 ▼ 関節リウマチの対処方法を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 5.靭帯損傷 靭帯損傷のなかでも、とくに後十字靱帯の損傷の場合、膝裏を伸ばしたときにピキッとした痛みを感じることも少なくありません。(文献4) 膝関節には4つの靱帯があり、重要な役割を担っています。膝の左右両側にあるのが内側側副靱帯と外側側副靱帯で、前後部位には前十字靱帯と後十字靱帯が走行しています。 たとえば、交通事故に遭ったり、スポーツ活動中に怪我を負ったりして、物理的に大きな衝撃が膝関節に負荷となってかかると、膝の靱帯が損傷・断裂して強い痛みを伴うでしょう。 とくに、靭帯を損傷してから3週間前後の発症して間もない頃には、膝裏の痛みのほか、伸展運動がしにくいといったサインも認められます。 受傷後1か月ほど経過した段階では、膝関節内部に血腫が貯留して腫れの所見が目立つこともあれば、損傷部位によっては膝関節の不安定さが少しずつ顕著になるケースもあります。 6.膝裏の筋肉の損傷 膝の裏側に位置する膝窩筋(しつかきん)の損傷も、ピキッと痛む原因の一つです。膝窩筋とは、膝裏の奥にある小さな筋肉で、膝を屈曲する際に重要な役割を果たします。 過度な負荷や無理な動きによって筋肉や腱が損傷すると、次のような症状が現れます。(文献5) しゃがむと痛い しゃがんで立つと膝の裏が痛い 膝を伸ばすとふくらはぎや太ももの裏が痛い 膝を曲げると膝裏が痛い 階段を上り下りする際に膝の裏からふくらはぎにかけて痛い 膝窩筋が損傷すると、膝裏にピキッと痛みを感じることが多く、とくにしゃがむ動作や立ち上がる動作で痛みが顕著になります。症状が悪化するとふくらはぎや太ももの裏など、周辺の筋肉にも痛みが波及するため注意が必要です。 7.腰椎ヘルニア・坐骨神経痛 太ももの後ろからふくらはぎにかけて痛みがある場合は、腰椎ヘルニアや坐骨神経痛も考えられます。神経の圧迫によって膝裏に痛みが放散され、痺れやズキズキした痛みを感じることがあります。 腰椎ヘルニアや坐骨神経痛による膝裏の痛みは、とくに立ったり歩いたりしているときに痛みが強くなることが特徴です。また、安静時にも痛みを感じる場合があり、睡眠中に痛みで目が覚めるケースも珍しくありません。 腰椎ヘルニアや坐骨神経痛が痛みの原因の場合は、腰部の治療が不可欠です。膝裏の痛みがひどくなる前に、早めに理学療法や薬物療法を行ってください。 8.リンパによる膝の裏の痛みや腫れ リンパ液の流れが悪化することによる膝裏の痛みや腫れも、ピキッと音が鳴る原因の一つです。 リンパ管は体内の老廃物を運ぶ役割を担っており、通常、筋肉の収縮や体の動きなどによって流れています。しかし、同じ姿勢で長時間過ごしたり、食生活が偏ったりしてリンパの流れが悪くなると、膝裏に痛みや腫れが生じます。 なお、リンパ液が滞った状態を放置すると、膝周辺が硬くなりさらに痛みを伴う可能性が高いため注意してください。 適度な運動やマッサージ、適切な食事をしてリンパの流れを改善・促進することが大切です。 9.反張膝 反張膝(はんちょうひざ)が原因で、膝裏がピキッと痛む場合があります。 反張膝は、膝関節が角にそり返った状態を意味します。通常、膝はまっすぐに伸びているのが正常です。しかし、班長膝の場合は膝が後ろに飛び出るような形に曲がるため、結果として膝裏に圧力がかかり、痛みが生じます。 なお、反張膝は太ももの前後の筋肉バランスの悪さや、大腿四頭筋や腸腰筋、前脛骨筋などの筋力の低下によって起こります。反張膝を放置すると、膝への負担が蓄積され、関節の変形や痛みの慢性化につながるため注意が必要です。 膝の裏がピキッと痛むときの治療法 ここでは、膝の裏がピキッと痛むときの具体的な対処法や治療法を解説します。 幹細胞やPRPによる再生医療 膝裏がピキッと痛むときの治療法として、最近では幹細胞やPRPによる再生医療が注目されています。再生医療とは、自然治癒力を最大限に引き出すための医療技術で、幹細胞や血小板の投与によって高い治療効果が期待できることが特徴です。 たとえば、変形性膝関節症が原因で膝の裏が痛む場合、初期段階ではヒアルロン酸注射やリハビリテーション、内服で様子を見ます。しかし、変形が進むと、人工関節置換術などをすすめられる場合がほとんどです。幹細胞やPRPによる再生医療は、手術を避けたい場合の新しい選択肢だといえるでしょう。 再生医療は、変形性膝関節症のほか、半月板損傷や腰椎ヘルニアなどの治療としても期待されています。 リペアセルクリニックでは、再生医療による膝の痛みの治療を行っています。なお、メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、ぜひ気軽にご連絡ください。 ▼ 再生医療で膝の痛みを治療する 膝の痛みは、再生医療なら入院や手術をせずに改善を目指せます 手術治療とリハビリテーション 膝裏に重度の痛みを感じる場合や保存療法が効果を示さない場合には、手術を検討します。 とくに、変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯断裂などが原因で膝裏に痛みがある場合は、手術治療が必要になるケースも珍しくありません。 また、術後には理学療法士やトレーナーなど専門職と相談しながら、状況に応じて適切なストレッチやリハビリテーションを実践し、早期回復に努めます。リハビリテーションは、膝の再受傷や二次的な外傷を回避するために以下の内容を中心に行われます。 体幹を鍛える 柔らかいボールなどを膝下で転がすように動かす 座位の状態になって膝を伸展させる 大腿部の筋肉を鍛える など なお、手術治療の方法は、膝の痛みの根本的な原因によって異なります。早期回復を目指す場合には、最小限の切開で済む膝関節鏡による手術をすることが一般的です。 膝の水抜き 膝の裏の痛みと同時に水が溜まっているときは、膝の水抜きをします。膝に水が溜まる原因には、変形性膝関節症や半月板損傷、ベーカー嚢腫などがあります。 膝の水が自然になくなるケースもありますが、膝裏の腫れや突っ張り、違和感があるときには水を抜くことが一般的です。 膝に水が溜まるのは、膝関節内で炎症が起こり、関節液が過剰に分泌されるためです。膝の水を抜くことで、痛みを軽減できます。ただし、膝の水抜きは一時的な効果にすぎないケースも多いため、原因に対する根本的な治療もあわせて行う必要があります。 ▼ 膝の水を抜く方法を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 病勢進行の抑制 膝の裏が痛む原因によっては、病勢の進行を抑制するための治療をします。とくに、関節リウマチや変形性膝関節症など、進行性の疾患においては、症状を抑えるだけではなく、関節の損傷や変形を防ぐために以下のような治療が必要です。 抗炎症薬の使用 関節内注射(ステロイド注射やヒアルロン酸注射など) 生活習慣の改善 など 早期に適切な治療ができれば、生活する上で困らない程度まで痛みを軽減できるでしょう。 病勢進行を可能な限り抑制し、痛みを少しでも改善させるためには、普段から膝に大きな負荷をかけないように意識しながら対策することが大切です。 膝の裏がピキッと痛む場合のセルフケア方法 膝の裏がピキッと痛む場合は、早めの対応が痛みの軽減や早期の回復につながります。 以下で、膝裏の痛みに対するセルフケア方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 安静にする 膝の裏にピキッとした痛みを感じたら、まずは無理に動かさず、安静を保つことが大切です。膝に負担をかけすぎると、痛みが悪化する可能性があるため注意しましょう。とくに、急性の痛みがある場合は、できるだけ安静にするようにしてください。 安静にする際は、膝を高く保つと腫れや血流の滞りを防げます。横になるときにはクッションや枕などを使用し、膝を軽くあげると良いでしょう。安静にすることで、膝の炎症や筋肉の過度な緊張を抑えられるため、早期の回復につながります。 ストレッチをする 膝の裏がピキッと痛むときには、ストレッチも効果的です。 膝の裏のストレッチをすることで、筋肉に柔軟性を持たせて血流を促進します。膝裏の痛みに対しては、以下のストレッチがおすすめです。 ふくらはぎのストレッチ 太ももの後ろ(ハムストリング)のストレッチ 膝窩筋のストレッチ ストレッチをする際の注意点として、無理に引っ張ったり、痛みを感じるまで伸ばしたりするのは避けましょう。また、痛みを感じたときにはすぐにストレッチを中止し、かかりつけの医師に相談してください。 ▼ 以下の動画では、ふくらはぎと太ももの後ろの筋肉を中心にストレッチのやり方を紹介しています。 マッサージをする 膝の裏の痛みには、ストレッチと同様にマッサージも効果的です。膝の裏や周辺の筋肉を軽くマッサージすることで、筋肉の緊張をほぐし、血流が促進されます。 膝の裏がピキッと痛む場合は、膝の後ろからふくらはぎにかけて、手のひらで円を描くようにマッサージするのがおすすめです。 ふくらはぎを軽く揉むことで、膝裏にかかる圧力が軽減されると、痛みが和らぐ場合があります。 マッサージをする際は、痛みが悪化しないよう、力を入れすぎないことがポイントです。 テーピングやサポーターを使用する 膝の裏がピキッと痛むときには、テーピングやサポーターの使用も有効です。膝の安定性を高めることで無理な動きを制限したり負担を減らしたりすることで、痛みの軽減に役立ちます。 とくにテーピングは、膝を固定しつつ可動域を制限しないための適切な方法で行うことが大切です。テーピングの方法には専門的な知識が必要になるため、最初は専門医に相談するようにしてください。 テーピングやサポーターは膝への負担を軽減するために役立つものの、長時間使用しすぎると、筋力の低下や血行不良につながるリスクもあります。かかりつけ医に相談しながら適切にテーピングやサポーターを使用しましょう。 まとめ・膝裏のピキッとした痛みが長引くときは迷わず専門医に相談しよう 今回は、膝の裏がピキッと痛むときに考えられる病気と対策について詳しく解説しました。膝裏部が痛む原因としては、主に変形性膝関節症や関節リウマチ、膝靱帯損傷などが考えられます。 たとえば、関節リウマチは薬剤の治療成績が著しく向上し、初期段階できちんと診断して的確な治療を実践すれば治癒が期待できる病気になってきました。また、膝の靱帯を損傷した際は、早期的なアイシング(冷却)や患部固定で症状緩和につながります。 自分なりに対処策を実践しても症状が軽快しない場合や膝裏部の疼痛症状がひどくて悪化するような場合は、早めに整形外科などの専門医を受診しましょう。 膝裏のピキッとした痛みに関するよくある質問 ここでは、膝裏のピキッとした痛みに関するよくある質問をまとめました。 膝の裏は歩きすぎると痛みやすい? 長時間の歩行は膝に負担がかかるため、膝裏の痛みを引き起こす可能性があります。とくに、硬い地面を歩いたり、無理なペースで歩行したりすると痛みがでやすいでしょう。 長時間歩くときには、適切な靴を履き、歩行姿勢に気をつけることがポイントです。また、歩行する前後でストレッチや軽いマッサージをすると、筋肉の緊張を和らげて膝への負担軽減につながります。 膝の裏が痛むときに専門医に相談すべき目安は? 膝の裏が痛むときは早めに医師へ相談するべきです。 膝の裏が痛むときに考えられる原因はさまざまで、比較的軽度なものから、自身では気づけないような重度な疾患まで存在します。自己判断して膝の痛みを放置してしまうと、日常生活に支障をきたす恐れがあります。症状が悪化すると歩行が困難となり、治療後に後遺症が残ってしまう可能性もゼロではありません。 膝の裏の痛みは軽視せず、最寄りの医療機関を受診するか、リペアセルクリニックのメール相談やオンラインカウンセリングまで気軽にご連絡ください。 膝裏のピキッとした痛みは予防できますか? 膝裏の痛みに対する予防には、筋力トレーニングやストレッチが効果的です。 大腿四頭筋やハムストリング、ふくらはぎなどの筋肉を鍛えて柔軟性を保つことで、膝の安定性を維持しやすくなります。また、正しい歩行姿勢を保ったり適切な体重を維持したりすることも、膝への負担を軽減し、痛みの予防につながります。
2022.06.07 -
- ひざ関節
- 膝に赤みや腫れ
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
この記事に辿り着いたあなたは、突然膝が腫れ、原因がわからず悩んでいるのではないでしょうか。 心当たりがないのに、膝の赤みや熱感、痛みがひどくなり、不安になる方もいるかもしれません。 膝の腫れは、炎症反応によるもので、なんらかの病気によるものが隠れている可能性も考えられます。 場合によっては、長期的な治療を必要とするものもあるでしょう。 本記事では、膝が腫れる原因の病気と対処法について詳しく解説しています。本記事が膝の腫れを改善させるきっかけとなれれば幸いです。 膝が腫れる原因は病気による炎症の可能性あり 膝が腫れて炎症が起こっている原因には、以下のような病気が隠れている可能性があります。 変形性膝関節症 半月板損傷 関節リウマチ 痛風 その他の病気(糖尿病や感染症) 本章では、膝が腫れる原因の病気について解説します。紹介した症状に心当たりのある方は、受診を検討しましょう。 また、膝に水が溜まっている感じがする方は、下記の記事も参考にしてみてください。 変形性膝関節症 膝が腫れて痛む有名な病気としては「変形性膝関節症」があげられます。 変形性膝関節症の原因は、加齢や遺伝的要因、もしくは体重増加による膝関節への過度な負担です。膝関節に負担がかかると関節軟骨が摩擦ですり減り、強い痛みを感じやすくなります。 初期症状は軽度(膝のこわばりや違和感)の場合があり、病気に気づきにくいケースもあります。 悪化すると、膝の可動域が狭くなり、歩行や正座など日常の動作が痛みでつらくなるでしょう。 末期には動いていないときでも痛みを感じ、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。 変形性膝関節症の初期症状や治療法は、以下の記事も参考にしてください。 半月板損傷 膝の腫れを伴う症状として「半月板損傷」も疑われます。半月板は膝関節の中にある三日月の形をした軟骨組織です。膝にかかる負荷を和らげるクッションの役割を果たしています。 スポーツや事故などにより膝に急激な負担や強い衝撃を与えると、半月板損傷になる可能性があります。 変形性膝関節症のほとんどは高齢者であるのに対し、半月板損傷は激しいスポーツをする若年層でも多くみられるのが特徴です。 半月板損傷になると、膝の痛みや腫れで動かしにくくなり、スイッチが入ったように膝関節が動かなくなる「ロッキング」が起こります。 関節リウマチ 「関節リウマチ」は、軟骨や骨組織が「免疫異常」によって攻撃されて関節部位の炎症が起こる病気です。この炎症反応により、関節の腫れ・強い痛みを自覚することもあるでしょう。 関節リウマチの症状の特徴は、手足の指の関節が左右対称性に腫れることです。 初期段階では指のような小さい関節に多くみられますが、膝や股関節など大きな関節に出る場合もあります。(文献1) そのため、関節リウマチによって膝が腫れることも考えられるでしょう。 関節の症状に加えて発熱や倦怠感、貧血など全身症状を伴う場合もあります。また、病気が進行すると軟骨の破壊が始まり、関節の曲げ伸ばしがつらくなる場合もあるでしょう。 関節リウマチについてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。 痛風 膝関節部が腫脹を認める疾患として「痛風」も考えられます。痛風は尿酸値が高い「高尿酸血症」に付随する症状のひとつです。 生体内で尿酸成分が過剰に貯留されると、膝関節を始めとする関節部位に尿酸の結晶が溜まり、炎症を引き起こして腫れを生じます。 痛風は足の親指が有名ですが、膝関節にも症状があらわれるケースもあります。 痛風を放置すると関節の激痛や腫れを繰り返し、最終的には腎不全にまで進行する可能性も考えられるでしょう。放置せずに適切な処置をとることが大切です。 尿酸はビールや甲殻類に多く含まれる「プリン体」が体内で分解されてつくられる成分です。そのため、カロリーの高い食事やアルコールの過剰摂取など食生活の乱れは痛風の一因と考えられています。(文献2) 痛風が出る部位や症状について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 その他に考えられる病気 糖尿病や感染症なども膝が腫れる一因として考えられます。 手術やケガなどでできた傷口から細菌が入り、炎症を引き起こします。 症状が悪化すると敗血症のリスクがあるため注意が必要でしょう。(文献3) 感染症により膝の腫れを引き起こす「化膿性関節炎」について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 日常生活に関する習慣性によって膝が腫れる場合もあります。 普段から立ち仕事や激しいスポーツなど膝への負担が多い場合は注意が必要です。無理をせず適当なタイミングで休憩するようにしましょう。 また、肥満状態は膝に大きな負担をかけています。肥満による体重増加は、膝の腫れを悪化させる大きな要素です。 バランスの良い食事や定期的な運動で適正体重を保つように注意しましょう。 膝が腫れて痛い場合は冷やして安静にする 膝に熱感があり、腫れて痛い場合は冷やして安静にして様子をみましょう。 自宅や突然膝の腫れを感じた場合の応急処置は、下記の「RICE」が基本です。(文献4) R(Rest):患部を固定して安静にする I(Ice):氷をアイスバッグや袋に入れて、患部を冷やす C(Compression):テープや包帯などで患部を圧迫ぎみに固定する E(Erevation):患部を心臓より高い位置に挙げる 上記はあくまですぐにできる応急処置です。不安があれば翌日または当日に受診をしましょう。 また、冷やすことで膝の痛みが悪化する場合は、筋肉の凝りや血流の悪化からきている可能性があります。その場合は冷やさず、湯船やカイロなどで温めましょう。 何科に受診すべきか悩むときは整形外科へ 膝の腫れで受診する際、何科に受診するか悩んだ際は「整形外科」を受診しましょう。 整形外科では今回解説した「変形性膝関節症」「半月板損傷」「痛風」など膝の症状があらわれる病気を対象に診療しています。 関節リウマチの特徴がみられる場合は、専門診療科の「リウマチ科」を受診しても良いでしょう。関節リウマチも他の病気と同様で、整形外科で診てもらうことも可能です。 また、膝の腫れや痛みで受診を悩む場合もあるでしょう。下記のいずれかに該当する場合は病院で診察を受けることをおすすめします。 突然膝の腫れや痛みが出た 膝の腫れが数日間も続く 冷やしても改善しない スポーツやケガなど、膝が腫れた原因が思い当たらない だるさや発熱など、他の症状もあらわれている 膝が動かしにくい、または動かない 上記に限らず膝の腫れや痛みに不安を感じる場合も、専門医に診てもらい適切な処置を受けましょう。 病院では手術・リハビリで治療する場合もある 膝の腫れに対する治療は、原因によってさまざまです。症状や医師の判断によっては、病院でリハビリや手術による治療を行う場合があります。 膝の腫れや痛みが生じる病気の治療は、以下のような処置がとられます。 症状・病気 治療の一例 手術 変形性膝関節症(文献5) 生活習慣の指導 膝関節を固定 ヒアルロン酸を注入 あまり行われないが、場合によっては手術の可能性あり> 半月板損傷 鎮痛剤の服用 膝関節の固定 リハビリ(筋肉の状態により) 手術の可能性あり 半月場縫合術 半月板切除術 ※手術によりスポーツの復帰が難しい可能性あり(文献4) 関節リウマチ(文献1) メトトレキサート(免疫抑制剤)の服用 鎮痛剤の服用または注射 リハビリ リハビリや鎮痛剤で症状が緩和しない場合は手術も検討する 人工関節置換術 関節形成術 痛風(文献2) 尿酸を下げる薬の服用 鎮痛剤や抗炎症薬の服用 患部の感染や関節機能の異常が大きい場合は手術する場合もある いずれの疾患でも、医師と患者の両者の意見に基づいて治療方針が決まります。病気の治療に不安があれば、主治医に相談してみましょう。 まとめ | 膝が腫れる原因がわからないときは医療機関に相談しよう 膝が腫れる原因は、関節の病気や外傷などさまざまです。 膝の腫れで受診した際には、症状出現前後のイベント、スポーツや立ち仕事など心当たりのあることを医師に伝えてください。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 膝が腫れるときによくあるQ&A 運動後に膝が腫れるのはなぜですか? 運動により膝が腫れるのは「半月板損傷」である可能性が高いです。 下記のようなスポーツ種目は、膝のひねりや無理のある方向転換により半月板損傷になる可能性があります。 マラソン ゴルフ バレー バスケ 野球 定期的にスポーツをされる方は、無理な膝の使い方をすると半月板を傷めやすいので注意しましょう。 膝の腫れはどのくらいで治りますか? 膝の腫れが治る期間は、原因の病気や程度によってさまざまです。数カ月で治る場合もあれば、数年以上かかることもあります。 早期に適切な処置を行うことで比較的早めの改善も期待できます。膝の腫れに違和感があれば早めに専門医に診てもらいましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療にて膝の腫れや変形性膝関節症の治療が可能です。気になる方は下記のページも参考にしてください。 膝が腫れてブヨブヨで痛いのですが… 膝に水が溜まっている可能性があります。 普段は関節の潤滑油として役割を果たしている「関節液」が炎症反応により過剰につくられているため、膝に水が溜まる現象が起こります。(文献6) 病院で水を抜く処置をしてもらうと、ブヨブヨの解消が期待できるでしょう。 また、場合によっては水を抜いた後に痛みや炎症を抑える目的でヒアルロン酸を注入する治療も可能です。受診した際に相談してみてください。 膝と同様、肘にも炎症が起こる「肘頭滑液包炎」の可能性があります。詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 日本リウマチ学会. 関節リウマチ診療ガイドライン2020. , 診断と治療社, 数カ月2021年,初版, p171 文献2 日本痛風・尿酸核酸学会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン[2022年追補版]. 第3版, 診断と治療社, 2022年, p73 文献3 Steven Schmitt, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University. 感染性関節炎.MSDマニュアル家庭版. 2022.6. 文献4 日本整形外科スポーツ医学会広報委員会.3.スポーツ外傷の応急処置(RICE). スポーツ損傷シリーズ, 2023.5. 文献5 日本整形外科学会診療ガイドライン実行委員会/変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 初版, 株式会社南江堂, 2023, p147 文献6 斉藤 聖二,関節痛(炎):診断と治療の進歩1.関節の構造と関節痛(炎)の原因, 日本内科学会雑誌, 1994年, 第83巻, 第11号, p1871-1875
2022.06.07 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
腰に小さな痛みや違和感があり、「ぎっくり腰なのではないか」と不安を覚えていませんか? ぎっくり腰は、歩けなくなるほど痛いと言われることも多く、できれば悪化させたくないと考えている人もいるでしょう。 結論、「なんとなく腰が痛くなりそうな違和感」は、ぎっくり腰の前兆の可能性があります。 この記事では、ぎっくり腰になりそうなときの対処法や、病院を受診したほうが良いケースを解説します。 ぎっくり腰の不安の解消や、症状の緩和にお役立てください。 ぎっくり腰の前兆は「なんとなく腰が痛くなりそうな違和感」 ぎっくり腰の前兆については、明らかなものがないと言われています。 しかし、以下のようなタイミングで「なんとなく腰が痛くなりそうな違和感」があれば、ぎっくり腰の前兆の可能性があります。 重いものを持ち上げたとき 座ったり歩いたりしているとき 前かがみになったとき 咳やくしゃみをしたとき 寝ているとき 身体を起こしたとき 前兆を見過ごしてしまうと、症状が悪化してぎっくり腰になってしまうかもしれません。 ぎっくり腰を未然に防ぐためにも、次の章で解説する対処法を試してみましょう。 【前兆】ぎっくり腰になりそうなときの対処法4つ 腰に違和感があり、ぎっくり腰になりそうなときには、以下4つの対処法を試してみてください。 無理な姿勢を避ける 痛みがある場合は冷やす 身体を軽く動かす ストレスを解消する 各対処法について、ぎっくり腰の原因とともに詳しく解説していきます。 無理な姿勢を避ける ぎっくり腰になりそうなときは、無理な姿勢を避けましょう。 ぎっくり腰の正式名称は「急性腰痛症」といい、腰や背骨を支える組織に傷が付いて痛みを引き起こすと言われています。 腰や背骨を支える組織は、椎間板、椎間関節、骨膜、筋肉・筋膜、靭帯、血管などさまざまで、どの部分に原因があるかは感覚だけではわかりません。 そのため、まずは無理な姿勢を避けて、腰周りに負担をかけないことが大切です。 痛みがある場合は冷やす ぎっくり腰の前兆である「なんとなく腰が痛くなりそうな違和感」を通り越して、すでに痛みがある場合は、湿布や氷枕などで患部を冷やしましょう。 痛みの原因は腰周りの組織の炎症であるため、冷やすことで症状の改善に効果があると言われています。 ただ、冷やしすぎると皮膚を刺激し、かえって痛みが悪化してしまうおそれがあるため注意しましょう。 身体を軽く動かす ストレッチなどで身体を軽く動かすのも、ぎっくり腰になりそうなときの対処法として有効だと言われています。 ぎっくり腰の症状は、安静にしすぎると治りが遅くなる可能性があるためです。 ストレッチで腰周りにある筋肉の緊張をほぐし、血行が促進されたり可動域が広がったりすることで、腰椎への負担を減らせます。 痛みがない、または痛みが引いたら、無理のない範囲で身体を動かしてみましょう。 また、マッサージの良否は症状によって異なるため、自己判断で実施せず医師に相談してください。 ストレスを解消する ぎっくり腰になりそうなときは、ストレスを解消することも大切です。 ストレスは筋肉の緊張や血流の悪化を引き起こすため、ぎっくり腰の原因のひとつだと考えられています。 すべてのストレスを解消することは難しいかもしれませんが、十分な睡眠や休息を取るなど、リフレッシュできるよう心がけてみてください。 ぎっくり腰になると「耐えられないほどの激痛」が走ることも 前兆を放置し、ぎっくり腰になってしまうと「耐えられないほどの激痛」が走ることもあります。 正式名称である「急性腰痛症」という文字のとおり、急激に発症するのが、ぎっくり腰の怖いところです。 重いものを持ち上げたときや、前かがみになったときなどのタイミングで腰に激痛が走った場合、ぎっくり腰の可能性が高いでしょう。 ぎっくり腰の症状や原因については、以下の記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。 ぎっくり腰ではない?病院を受診したほうが良い3つのケース ぎっくり腰やその前兆のような症状が出ており、以下のような状態の場合は、一度病院を受診してください。 痛みが2週間以上続いている・しびれがある 高齢である 発熱がある 「ぎっくり腰かと思いきや、骨折や他の病気だった」という可能性があります。 それぞれの症状について、詳しく解説します。 痛みが2週間以上続いている・しびれがある 腰周りの痛みが2週間以上続いている、またはしびれがある場合は、以下の病気が隠れている疑いがあります。 椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう) そのままにしておくと痛みが長引いたり、手術が必要になったりするおそれがあるため、早めに病院を受診することが大切です。 高齢である 高齢でぎっくり腰のような痛みがある場合、「圧迫骨折」で背中の骨が折れている可能性があります。 高齢者は「骨粗しょう症」の人が多く、骨が折れやすいためです。 骨折が原因で寝たきりになってしまうこともあるため、ただのぎっくり腰だと自己判断せず、一度背中や腰の状態を診てもらいましょう。 発熱がある 腰の痛みに加えて発熱がある場合に考えられるのは、細菌やウイルスへの感染です。 脊椎が細菌に感染する「化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)」の可能性もあります。 感染は抗生物質などの薬で治療する必要があるため、発熱がある場合は病院を受診しましょう。 そのまま入院となるような、重大な病気が隠れているケースもあります。 以下の記事では、ぎっくり腰で病院を受診する目安に加えて、病院に行く前の応急処置を紹介しています。 まとめ|ぎっくり腰の前兆は4つの対処法で乗り切ろう 「なんとなく腰が痛くなりそうな違和感」は、ぎっくり腰の前兆の可能性があります。 重いものを持ち上げたときや前かがみになったとき、咳やくしゃみをしたときなど、前兆が現れるタイミングはさまざまです。 ぎっくり腰になりそうなときには、無理な姿勢を避けるなど、この記事で解説した4つの対処法で乗り切りましょう。 2週間以上続く痛み・しびれ・高齢者・発熱を伴うなどの場合は、ぎっくり腰ではない病気が隠れているおそれがあるため、一度病院を受診してみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、腰痛治療の選択肢として再生医療を提供しています。 ぎっくり腰の前兆についてよくある質問 ぎっくり腰の前兆を感じたらどうしたらいいですか? ぎっくり腰の前兆に有効な対処法は、「無理な姿勢を避ける」「身体を軽く動かす」「ストレスを解消する」です。 痛みがある場合は、まず患部を冷やし、腰回りの組織の炎症を抑えましょう。 ぎっくり腰になりそうなときにやってはいけないことは? 重い物を持ち上げたり、痛みがあるのに無理に動いたりと、腰に負担がかかることは避けましょう。 症状が悪化し、激痛が走るぎっくり腰になってしまうおそれがあります。
2022.06.06 -
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
「肩が痛くて夜眠れない……」 「肉体労働をしているから早く症状を改善したい」などと悩んでいませんか。 その症状、石灰沈着性腱板炎の可能性があります。 本記事では、石灰沈着性腱板炎の症状や発症原因、治療法などを解説します。 「できる限り早く改善したい」と考えている方は、治療までの期間も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。 石灰沈着性腱板炎とは 石灰沈着性腱炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)とは、筋肉や腱にカルシウムが沈着して起こる病気です。 石灰沈着性腱板炎に発症するのは、40〜50代の女性が多く、女性ホルモンが関係していると言われています。 部位的には体のどこにでも起こる可能性がありますが、通常は「肩の腱板」で起こる症例が多く「石灰沈着性腱板炎」と呼ばれます。 腱板は、上腕を肩につなぐ筋肉と腱の集まりです。 腱板にカルシウムが蓄積すると、腕の可動域が制限されるだけでなく、激しい痛みも生じるようになります。 石灰沈着性腱板炎の症状 石灰沈着性腱板炎の症状は主に、ひどい肩の痛みに伴って腕を動かせなかったり、眠れなかったりする方がいます。 石灰沈着性腱板炎の痛みは夜間に突発的に生じるケースが多いため、痛みで起きてしまうこともあります。 なお、石灰沈着性腱板炎の症状には、出現時期によって特徴や痛みの感じ方が異なるため、以下の表で詳しくまとめました。 時期 出現時期(発症後) 痛みの特徴 急性期 1〜4週間 ・針で刺されたような痛みがある ・安静にしていても痛む ・日常生活がままならない方もいる 慢性期 6カ月〜 ・特定の動きをする際に筋肉痛のような痛みがある ・後ろに手を回せない 上記のように、悪化すると痛みで腕を動かせない、髪をとかす、洗濯物を干すなどの腕を上げる動作で痛みを伴うケースもあります。 石灰沈着性腱板炎の原因 石灰沈着性腱板炎が発症する主な原因は、肩の使い過ぎとリン酸カルシウムの結晶化です。 それぞれ石灰沈着性腱板炎が発症する原因を、詳しく解説していきます。 原因1:肩の使い過ぎ 石灰沈着性腱板炎は、肩に負担のかかる動作を頻繁にしていると起こりやすい病気です。 重い荷物を持ち上げたり、野球やテニスのようなスポーツをしていたりする方は石灰沈着性腱板炎が生じやすい傾向にあります。 学生時代に野球やテニスをしており、社会人になっても続けている方は、腱板への負担が大きくなるため注意が必要です。 日常生活での洗濯やパソコン作業でも、肩にストレスがかかります。また、加齢に伴う腱の柔軟性の低下も発症しやすくなる要因です。 肩の使い過ぎではなく、加齢による痛みを疑っている方は、以下の五十肩・四十肩に関する記事もあわせてご覧ください。 原因2:リン酸カルシウムの結晶化 石灰沈着性腱板炎が発症する原因の1つに、腱板へのリン酸カルシウムの沈着があります。 ただし、なぜリン酸カルシウムの沈着が起こるかはまだ解明されていません。 リン酸カルシウムの結晶は、最初はミルク状ですが、徐々に歯磨き粉のような状態を経て、最終的に硬く大きくなります。 なお、リン酸カルシウムの沈着は、遺伝的素因や糖尿病などの代謝性疾患に伴うと知られています。 石灰沈着性腱板炎の診断方法 石灰沈着性腱板炎の診断方法はまず、腕を上げたり、腕を回したりして、可動域の制限を確認します。可動域制限の診察終了後、カルシウムの沈着やその他の異常がないか調べるために、画像検査を行います。 超音波検査を利用するケースもあり、X線検査では見逃された小さな沈着物を見つけ出せるのが特徴です。 石灰化した沈着物の大きさや場所を正確に評価するためにCT検査を、腱板断裂が合併していないか確認するためにMRI検査をする診断方法もあります。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 事前に相談しておきたい方や治療の流れなどが気になる方は、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 石灰沈着性腱板炎の治療法と予後 石灰沈着性腱板炎は多くの場合、手術をせずに治療できます。 ここからは石灰沈着性腱板炎の治療法と、予後について解説していきます。 薬物療法 石灰沈着性腱板炎の薬物療法では、炎症や痛みの緩和を目的に、以下の薬を処方しています。 薬ごとの種類や特徴は以下の通りです。 薬の種類 詳細 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) ・薬物療法の第一選択肢 ・炎症を抑え痛みを和らげる効果が期待できる ・ロキソニンやボルタレン、湿布などが該当する ・痛みが軽度なら内服薬、重い場合は外用薬が適用されるケースが多い 鎮痛剤 ・非ステロイド性抗炎症薬では痛みがある場合に処方される ステロイド薬 ・痛みに対する強めの薬 ・肩への局所麻酔するケースもある ・長期使用は腱を弱める可能性があるため要注意 理学療法(リハビリ) 薬物療法で痛みに十分対処したのち、中等度または重度の症例では、可動域を回復させるために理学療法(リハビリ)をおこないます。 リハビリの種類 詳細 ストレッチ ・肩の可動をスムーズにするため実施 ・実施しないと肩の動きが制限や痛みが発生しやすい 筋肉トレーニング ・肩周辺の関節や筋肉強化が目的 ・関節の安定につながり再発予防が期待できる 運動療法 ・ボールやタオル、ゴムバンドなどを使った運動 ・日常生活の動作をスムーズにさせるために実施 手術をしない場合は、肩の動きを回復するために穏やかなリハビリを行います。振り子のように腕をわずかに振るリハビリがよく行われているリハビリです。 時間をかけて、アイソメトリック運動や軽い負荷をかけた運動などを行う場合もあります。 リハビリについては、以下の記事で具体的な方法を紹介しているので、あわせてご覧ください。 注射療法 石灰沈着性腱板炎の注射療法は、薬物療法や理学療法で改善されなかった場合に検討される治療法です。直接的に肩へ注射する治療法のため、高い効果が期待できる反面、長期的な使用には注意が必要です。 注射の種類 詳細 ステロイド注射 ・痛みに対する強めの薬 ・即効性はあるがステロイド薬同様、長期使用する上で注意が必要 ヒアルロン酸注射 ・肩の関節の可動域をスムーズにしたいケースでおこなう 局所への注射だけでなく、急性期にミルク状のリン酸カルシウムを吸引するケースもあります。肩に局所麻酔を施した後に腱板まで針を刺し、固まる前のリン酸カルシウムを手動で吸引し、除去できます。 針を正しい位置に誘導するために、超音波で確認しながらおこなうケースもある治療法です。 手術療法 薬物療法や理学療法などで石灰沈着性腱板炎の改善が見られない場合は、リン酸カルシウムの沈着物を除去するための手術が治療法として挙げられます。とくに慢性期で日常生活に支障をきたすほどの痛みが続いている方は、手術が必要となります。 手術では、関節鏡手術を実施しており、術後1週間以内には日常生活に復帰できるケースが大半です。 しかし、痛みが続いて日常生活が制限される場合もあります。術後の完全回復に向けてリハビリを実施しますが、患者様によっては3カ月以上かかる可能性もあるのです。 石灰沈着性腱板炎の予後 石灰沈着性腱板炎は痛みを伴うことがありますが、早期に治癒しやすい病気です。 最終的に自然に消失する傾向はあるものの、治療せずに放置すると合併症を引き起こす可能性もあります。 石灰沈着性腱板炎の合併症には、腱板断裂や四十肩などを含みます。 早期の治癒に向け、適切な治療を施していきましょう。 石灰沈着性腱板炎には再生医療が1つの選択肢になる 石灰沈着性腱板炎の治療は、再生医療で改善が期待できます。 従来の治療法では、10%の方が手術をしなければならず、痛みを抑えるためにおこなっても、傷跡が気になる方がいるでしょう。 最近では手術をしない治療法である再生医療を選ぶ方もいます。再生医療は、体への負担が少ない治療法のため、石灰沈着性腱板炎を含めた病気で実施されています。 石灰沈着性腱板炎の治療において、従来の保存療法や手術療法に加えて、再生医療も治療の選択肢の一つとして挙げられます。 再生医療では、患者様自身の幹細胞を用いて、組織の修復を促す治療を行います。この治療法は手術のように大きな切開を必要としないため、体への負担が比較的少ないことが特徴です。 再生医療について興味がある方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 石灰沈着性腱板炎かも!?|肩の痛みが続く場合は適切な診断を 本記事では、石灰沈着性腱板炎の症状や原因、治療法などを解説しました。 石灰沈着性腱板炎は腱板断裂や四十肩とも症状が似ているため、十分に認識されていない方もいます。 仮に、肩の痛みがなかなか治らない、肩の痛みの原因を知りたいなど、肩の痛みにお悩みの方は、無理をせず医療機関を受診しましょう。 治療の選択肢としては、薬物療法や手術の他に再生医療という選択肢もあります。 再生医療の診療を行う当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 事前に相談しておきたい方や治療の流れなどが気になる方は、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 石灰沈着性腱板炎に関するよくある質問 石灰沈着性腱板炎がコーヒーと関係するのは本当? 石灰沈着性腱板炎とコーヒーは、直接的な因果関係については現状、証明されていません。 「普段コーヒーをよく飲むから不安…」と感じる必要はありません。 しかし、コーヒーをミルクと混ぜて飲む方はリンを多く含んでいるため、以下の食品も含めて注意しましょう。 カップラーメン 冷凍食品 食品添加物を含む食品 食事の内容が直接関係していなくても、なるべくビタミンやCやEが豊富な野菜・果物の摂取が推奨されています。 石灰沈着性腱板炎になった場合は仕事を休む必要があるの? 石灰沈着性腱板炎になった場合、痛みが激痛であれば仕事を休むのがおすすめです。とくに肩を使う動きの多い肉体労働をしている方は、症状を悪化させてしまう可能性があるため注意してください。 治療法や個人の回復力にもよりますが、2〜3カ月の休業が伴うケースがあります。しかし、長期の休業は経済的な負担がかかるものです。 長期休業になるため、医師の診断書をもとに休業補償を受けられるか、会社に確認しておきましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 事前に相談しておきたい方や治療の流れなどが気になる方は、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 石灰沈着性腱板炎はどのくらいで治る? 石灰沈着性腱板炎は多くの場合、薬物療法で改善しています。 薬物療法や注射療法を実施して、約3カ月で改善される方もいれば、4年経過しても痛みが残ったケースもあります。(文献1) なかには、痛み止めの内服で2週間程度で改善される方もいるため、治療期間は人によって異なると把握しておきましょう。 参考文献 (文献1) Wolk T, Wittenberg RH. Calcifying subacromial syndrome: clinical and ultrasound outcome of non-surgical therapy. Z Orthop Ihre Grenzgeb. 1997;135(5):451-457. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9446439/ ▼肩が痛む症状についてこちらのご覧ください
2022.06.06 -
- 糖尿病
- 内科疾患
Ⅱ型糖尿病、妊娠糖尿病はライフスタイルの見直しで予防や改善ができる 糖尿病にはその発症状況から、いくつかのタイプがあることが判明しています。 日頃の生活習慣が関与している「2型糖尿病」、あるいは妊娠を契機に発症する「妊娠糖尿病」はライフスタイル(生活習慣)を見直すことで、それらの発症自体や、症状悪化を一定の割合で回避することが可能であると考えられています。 そのような観点から今回は、「Ⅱ型糖尿病」や「妊娠糖尿病」において、規則正しい食生活は勿論のこと日常生活に運動、身体を動かすことを実践し、ストレスを出来るだけ発散できるように努めることで予防や改善ができることを詳細に紹介していきます。 その一方で、大変残念なのですが、主に自己免疫の異常によって引き起こされる「1型糖尿病」については現在のところ改善や予防できる方法は見つかっていません。 以下、明記しない場合の糖尿病の表示は2型並びに妊娠糖尿病に向けた情報になります。 1型糖尿病 改善、予防が難しい 2型糖尿病 妊娠糖尿病 ライフスタイル(生活習慣)を見直せば予防、改善、予防が可能 糖尿病の予防、改善には運動が有効 運動を継続的に実行することは、食事による療法と並んで糖尿病における治療の中で大きな基本となっています。特に、糖尿病の発症要因として「肥満体形、過食傾向、運動不足」の関与が強く疑われています。 なぜ運動が必要かというと、運動することでエネルギーを消費して、肥満を解消できるのみならず、運動を行うことで筋肉活動量が向上してインスリン機能を改善する効果が期待できるからです。 食事摂取直後には運動をなるべく控えるほうがよいですが、食後1時間程度経過してから運動を行うことで食事から取り込まれたブドウ糖や脂肪成分の利用が効率的に促進されて血糖値が有効的に下降する可能性も指摘されています。 1型糖尿病の場合には、2型糖尿病と異なってインスリンを分泌する膵臓細胞が壊れてしまうことで発症するため、インスリン機能そのものが回復することによる治療効果はあまり期待できませんが、運動することで心身の健全な発達やストレス解消に貢献します。 ただし、血糖値を良好にコントロールしてその状態を維持するには運動と食事に関する治療どちらか一方が欠けてもうまく制御できませんので、毎日運動するからという理由で入念な食事療法は怠らないように心がけましょう。 糖尿病の発症原因 肥満体形、過食傾向、運動不足 なぜ運動が必要か? 運動でエネルギーを消費し、肥満を解消できる(脂肪を減らす) 運動で筋肉活動量が向上し、インスリン機能の改善を期待できる 運動の種類について 一般的に、糖尿病を抱えている患者様の場合には、ダンベルや重りなどの器具を用いて筋肉に過剰な負荷をかける筋肉トレーニングに代表されるレジスタンス運動よりも、ウォーキングやジョギング、水泳などを始めとする全身を使う有酸素運動が適合しています。 その背景には、有酸素運動を継続して実践することで、インスリンの働きがよくなって血糖値を上手く調整しやすいと考えられているからです。 したがって、糖尿病における運動療法の目標としてはまずは有酸素運動で身体の不活動を改善させて、余裕があれば次のステップでレジスタンス運動を検討しましょう。 ✕ 器具を使って筋力に負荷をかけるトレーニング(レジスタンス運動) 〇 身体を動かす有酸素運動が最適(有酸素運動) レジスタンス運動とは 具体的には、有酸素運動として可能であれば少なくとも週に3回程度、それぞれ30分から60分間行うように意識して実施することが重要であると伝えられています。 この有酸素運動は、週当たり150分(2時間30分)以上かけて実施することがひとつの目標とされています。 通常では、糖代謝の改善期間は運動してからおよそ半日から3日間前後持続することが知られていますので、血糖値を上手く制御するためには運動行為を少なくとも1週間のなかで3日間は実践することが理想的です。 運動療法の効果は数々考えられており、運動することで血液中のブドウ糖が筋肉にとり込まれやすくなることでブドウ糖などの利用が促される結果、血糖値が下がる現象が認められますし、特に2型糖尿病では低下したインスリン機能が改善すると伝えられています。 また、糖尿病のみならず高血圧や脂質異常症の改善にも役立ち、エネルギー消費のバランスが安定化して減量に繋がって肥満を防止することにも貢献します。 運動を実行することは加齢に伴って引き起こされやすい筋肉の衰弱や骨粗鬆症を回避する期待が込められていますし、関節や骨が強靭化する以外にも心肺機能が高まるのみならず爽快感が向上してストレスを解消させる効果も併せて考慮できます。 運動をしなければと、精神的に追い込まない。逆にストレスがたまらないような取り組みも大切です。 実際に、運動療法を実践する時には準備運動やストレッチを丹念に行って軽動作から開始して、徐々に運動強度を増やしていくように意識しながら、適宜体調に合わせて、無理をしないように継続できる運動の種類を選択するように心がけましょう。 運動の実行にあたって 無理せず、継続することが大切 軽めの運動から、徐々に始める 体調に気を配る ストレスを発散、運動が逆にストレスをためることにならないように まとめ・Ⅱ型糖尿病、妊娠糖尿病はライフスタイルの見直しで予防や改善ができる 今回は糖尿病を予防して改善するためのライフスタイル(生活習慣)の見直しについて詳しく紹介しました。 糖尿病には様々なタイプがありますが、Ⅱ型糖尿病や妊娠糖尿病においては、ライフスタイルの見直しによって予防や改善が可能です。特に規則正しい食生活、適度な運動、ストレスの管理などが重要になることを知り真剣に取り組むことで改善が可能になります。 また、運動は、血糖値の調整やインスリン機能の改善に大きく寄与します。中でも有酸素運動が大切で週に3回程度、30分から60分間行うことが効果的です。ただし、これらの運動は無理せず継続することが大切で、体調やストレスに配慮しながら行うようにしましょう。 糖尿病の予防や改善には、食事療法と運動の両方が欠かせません。 糖尿病の発症を防ぎ、症状を改善させるために運動は有効的であり、特に有酸素運動である歩行運動をする際には1日あたり1万歩以上を目標にして、1週間に少なくとも3日間以上の頻度でウォーキングエクササイズを実行することがお勧めされています。 いつでも、どこでも、一人だけでも実践しやすい歩行運動などは常日頃から多忙でまとまった時間が確保できない方でも通勤や通学中などでも行うことが可能ですし、どこまで運動強度を上げていいか不安に感じる患者さんはかかりつけ医ともよく相談してみましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼糖尿病の合併症が心配な方への先端医療|最新の「再生医療」は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています ▼運動療法をさらに詳しく以下もご参考にしていただけます 糖尿病!運動療法なら改善はもとより予防にも効果を発揮
2022.06.02 -
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
五十肩・四十肩|腕を上げると肩が痛む症状、原因と治療法について 五十肩について、そもそも「五十肩(四十肩)」という言葉は、正式な病名ではなく、ぎっくり腰などと同様に日常会話で用いられる俗称です。 五十肩(四十肩)になると、肩甲骨と上腕骨で構成されている肩関節部に痛み症状が出現するため、腕を色々な方向に挙上するような動作が難しくなり、特に肩関節を外側に回旋させる際には強い疼痛※を自覚することになります。この状態になると、ただ肩に痛みがあるだけでなく、普段なら簡単に行えるような動作が難しくなり、日常生活に支障をきたして不便を感じる場合も少なからず存在します。 今回は、この「五十肩(四十肩)」とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 ※疼痛:医学用語で「痛み」のこと 五十肩(四十肩)の原因 五十肩(四十肩)は、肩関節にある腱板組織が損傷して関節包領域まで炎症が広がることによって発症すると考えられています。その背景には、加齢に伴って筋肉や腱などの筋骨格系組織における柔軟性や伸展性が失われて健常に動作できなくなることが原因と考えられていますが、実際には本疾患の明確な原因は判明していないところが本当です。 一般的に五十肩(四十肩)は、「肩関節周囲炎」と言われることが多いのですが、詳細には腱板組織に炎症が起こる「腱板炎」や、上腕二頭筋の一部に炎症が認められる「上腕二頭筋長頭腱炎」、あるいは腱板疎部と呼ばれる肩前方部位に炎症が惹起される「腱板疎部炎」も含まれています。 五十肩(俗称)の正式な病名 肩関節周囲炎 腱板炎 上腕二頭筋長頭腱炎 腱板疎部炎 五十肩(四十肩)の症状 五十肩(四十肩)における典型的な症状としては、肩関節や上腕部を真上に挙上(上げる)する、腕を背中に回す、肩を開いて回旋させるときに全方向への動作で痛みが出て、可動域が制限されることを自覚します。 特に初期段階から肩の痛みが出現しやすいのが肩の前方部に位置する腱板疎部と呼ばれる部位であり、五十肩(四十肩)を罹患した直後では肩関節の前方部分に疼痛症状を自覚するケースが多いと言われています。 また、五十肩(四十肩)では「炎症期、凍結期、回復期」とい3段階の順で症状が変動していくと考えられており、最初は強い炎症に伴う痛み症状を認めたのちに肩関節の拘縮症状が引き起こされ、次第にその拘縮具合も軽快していくとされています。 典型的な症状の進行 炎症期 凍結期 回復期 一方で、このような3段階にわたるといった典型的な症状様式に進行していくケースは必ずしも多くないとも推察されます。 個々の事例によって初期から痛みが強くない場合もあれば、強度の拘縮所見を呈して日常生活に支障をきたす場合もあります。また、特に対策を行わずとも自然に、数ヶ月の単位で症状が改善する場合があったり、その反対に年単位で症状に苦悩されるといったケースもあります。 症状は様々 初期から痛みが強くない場合 強度の拘縮所見を呈して日常生活に支障をきたす場合 自然に数ヶ月単位で症状が改善する場合 年単位で症状に苦悩される場合 五十肩(四十肩)おすすめの治療方法 ここからは、「五十肩(四十肩)に対する治療」「治し方」について解説してまいります。 まずは、肩関節部の強い痛みによって夜も眠れない、或いはほとんど肩を動かせない状態と判断された場合には、その強い炎症を鎮めるために消炎鎮痛剤などの薬物を服用することをお勧めすることになります。 具体的には、炎症を抑える作用があるステロイドを主に肩関節内に関節注射として投与する、あるいは副作用がそれほど強くない非ステロイド系の消炎鎮痛剤を飲み薬として投薬することが多いです。 肩関節部の強い炎症がある程度落ち着いて痛みといった症状が比較的改善された段階になり、肩関節の可動域制限が認められた場合、肩が拘縮した状態を改善させるために、リハビリテーションを実践することになります。 これらのリハビリテーション加療を実施しても、どうしても可動域が改善せずに疼痛症状がしつこく付きまとってくる場合には、関節鏡下授動術と呼ばれる内視鏡を用いた比較的低侵襲な手術を検討することになります。 肩関節部の可動域が悪化している原因は炎症に伴って癒着して肥厚した関節包であると考えられていますから、関節包の状態を実際に観察しながら電気メスで患部を切開することで、術後には肩関節の可動域がほぼ正常範囲まで改善することが期待されます。 五十肩の治療 痛み:炎症を抑える関節内注射や、消炎鎮痛剤の服用 痛みが治まればリハビリの実施 リハビリで改善しない場合、手術が選択肢となる まとめ・五十肩・四十肩|腕を上げると肩が痛む症状、原因と治療法について 今回は、五十肩(四十肩)とはどのような病気なのか、五十肩を発症すると多くの場合、痛くて、ある一定の限度以上に上げることができなくなります。 そんな場合の原因、症状、おすすめの治療方法や治し方について詳しく解説してきました。 一般的に、年齢を重ねるごとに誰しも肩関節が昔のようにスムーズに動作できなくなり、関節痛を覚えることがあるかと思いますが、このような症状を呈する状態を「五十肩(四十肩)」と呼んでいます。 本状態における特徴的な所見として、肩関節部の痛みと共に肩を挙上する、あるいは水平に保つ動作をするのが困難となるため、洗濯物が干しづらくなる、もしくは背中のファスナーが開けられないなど日常生活に支障が出現します。 もしも、普段の生活で肩を動かした際に痛みを覚える、以前のようにスムーズに腕を背中側に回せない、肩が挙上しにくいなどの症状を自覚している人は、症状が悪化する前に専門医療機関を受診してご相談されることをお勧めいたします。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼肩の痛み、以下も参考にされませんか 石灰沈着性腱板炎とは、肩が痛む原因と症状、治療法について
2022.05.25 -
- 糖尿病
- 内科疾患
50代女性で糖尿病の初期症状はどんなものがある? 50代になってから、健康診断で血糖値やHbA1cが高いと指摘されてしまった。対策は? この記事を読んでいる方は、50代女性で糖尿病になると、どんな初期症状があらわれるのか気になっているのではないでしょうか。 血糖値が高いと指摘されても、具体的にどんな症状が出るのか、どんな危険性があるのか想像がつきにくい人もいるかもしれません。 50代は糖尿病のような生活習慣病が増えてくる年代でもあります。特に女性の場合は更年期から発症するケースもあるため、初期症状を見逃さないようにしましょう。 本記事では、糖尿病の初期症状について、50代女性に特化して解説します。 記事を最後まで読めば、50代女性における糖尿病の初期症状が分かり、適切な対策法を考えられるでしょう。 当院リペアセルクリニックでも、糖尿病の症状や治療法についてのご相談を受け付けております。メール相談やオンラインカウンセリングより気軽にお問い合わせください。 糖尿病の初期症状は「のどの渇きやだるさ」 血液の中の糖が多くなると、体にさまざまな異変を感じます。 しかし、糖尿病には「進行しないと症状が出にくい」という特徴があります。つまり、初期症状が出る頃には、すでに糖尿病が進行している状態ともいえるのです。 糖尿病の初期症状としては、以下が挙げられます。(文献1) のどが乾く 尿の回数が多い 体のだるさを感じる 体重が減ってくる 血液の中の糖を薄めるために頻回に水を飲みたくなったり、その影響で尿の回数が増えたりします。 また、血糖をエネルギーに変えて、血糖値を下げるホルモンの分泌が悪くなり、疲れやすい、体重が減るといった症状にもつながります。 糖尿病が進行してくると、体には様々な合併症が現れます。糖尿病の主な合併症は以下の通りです。(文献2) 糖尿病の合併症の例 症状 糖尿病性神経障害 手足のしびれ、感覚の鈍りなど 糖尿病性網膜症 目のかすみ、視力低下など 糖尿病性腎症 むくみ、高血圧、尿毒症など もし糖尿病のような症状が気になっている場合には、早めの受診をお勧めします。 【女性向け】糖尿病の初期症状チェックリスト 「甘いものが止められない」「食事のバランスが偏っている」といった糖尿病になりやすい生活習慣を持っている方は、自分が糖尿病ではないか気になりますよね。 以下は、女性向け糖尿病の初期症状チェックリストです。(文献3)(文献4) のどが渇きやすい 尿の回数が多い 疲れやすい 目がかすむ 体重が減ってきた 手足のしびれや痛みがある 感染症にかかりやすい 傷が治りにくい 当てはまる項目が多い場合は、糖尿病の初期症状の可能性も考えられます。 ただし本表はあくまでもセルフチェックに留め、気になる症状は、早めに医療機関に相談しましょう。 糖尿病の初期症状については、以下の記事もぜひご覧ください。 糖尿病患者の9割は「2型糖尿病」 糖尿病は、生活習慣病とも関連する注意すべき病気です。血糖値を降下させる作用のある、インスリンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下する、もしくはインスリンの働きが悪くなり発症します。 糖尿病は、大きく「1型」と「2型」に分類されます。 「1型糖尿病」は、自己免疫の異常によって、インスリンを産生する膵臓の細胞が攻撃を受け発症するタイプです。生活習慣の乱れなどはあまり発症に関与しません。一方、糖尿病患者の約9割以上が「2型糖尿病」と言われています。 主な原因は、ストレスや肥満体型、運動不足や暴飲暴食など日々の生活習慣の乱れです。生活習慣の乱れが続くと、インスリンの分泌が少なくなったり、効きが悪くなり、血液中の糖が細胞に十分に取り込まれなくなります。 2型糖尿病でインスリンが出にくくなる、効きが悪くなる原因の多くは、高脂肪、高カロリーなどの食習慣です。また、糖質の取り過ぎや顕著な運動不足が続くとインスリンの働きが弱まり、徐々に血糖値が上昇していきます。 そのほか、妊娠や更年期を契機に発症するパターン、あるいは膵炎や膵臓がんなど膵臓疾患に合併して発症するパターンなども挙げられます。 2型糖尿病について、詳しく以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。 50代女性の糖尿病リスクが高い理由 50代女性の糖尿病リスクが高い理由は、更年期が関係しています。 一般的に、女性は40代頃から更年期と呼ばれる時期に入ります。この時期は体がほてって疲労を感じやすいなど症状があらわれることが多いです。 更年期の症状は、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌量低下によるものです。 エストロゲンには血糖値を調整する働きがあり、通常は女性を糖尿病から守る役割を果たしています。エストロゲンの分泌量は40代頃から減少し始め、50代の閉経期には急激に低下することから、更年期以降は糖尿病を発症するリスクが高まっていくのです。 更年期には自治体の定期検診や、勤務先の企業健診の結果に注目しましょう。 特に以下の値が基準値を超えている場合は、糖尿病の可能性があるため、医療機関での受診をおすすめします。 空腹時血糖値:126mg/dl以上 HbA1c:6.5%以上 (文献5) また、尿検査で糖が検出される場合も、糖尿病の可能性を示唆する重要なサインとなります。 50代女性が糖尿病を予防する4つのポイント 50代女性に起こりやすい糖尿病は「2型糖尿病」で、生活習慣の乱れが主な原因です。糖尿病を予防し、健康でいられるための4つのポイントをまとめました。 糖尿病予防のために意識したいポイントは、以下の通りです。(文献6) 食事を改善する 運動習慣をつける ストレスを溜めない 禁煙をする この章では、各ポイントについて詳しく解説します。 1.食事を改善する 食事はバランス良く、適量を摂ることが大切です。 糖分や脂質の多い食事は血糖を上昇させたり、体重を増加させたりします。野菜や果物、魚、豆類、雑穀類などを意識して摂ると、急な血糖値の上昇を防げるでしょう。 また、食事を抜くと次の食事で血糖値がいきなり上昇し、体に負担を与えてしまいます。時間がない、忙しいなどの理由で食事がとれない場合があっても、少しでも何か何かを口にすることから始めましょう。 間食もなるべくヘルシーなこんにゃくやゼリーにすると効果的です。 2.運動習慣をつける 有酸素運動は、血糖を筋肉に取り込みやすくする効果や、インスリンの働きも良くする効果があります。 週3回以上、週合計150分以上を目標に、無理のない範囲で行いましょう。 ウォーキングやサイクリングなど、またなるべく階段を使う、ラジオ体操をするなど「日常でプラス10分動く習慣」を作ることもおすすめです。 3.ストレスを溜めない ストレスは、ノルアドレナリンやコルチゾルといったホルモンを分泌させ、血糖値を上げる働きがあります。(文献7) 家事や育児、仕事などでストレスを感じている場合は、趣味を楽しむ、誰かと話す、ゆっくり呼吸をしてみるなど、意識して休む時間を作りましょう。 4.禁煙をする 喫煙はインスリンの働きを弱めるため、血糖値が下がりにくくなってしまいます。 禁煙することで、糖尿病のリスクを下げるだけでなく、他の生活習慣病やがんの予防にもつながるでしょう。全身の健康を保つために、禁煙を検討することをおすすめします。 まとめ|50代女性は糖尿病のリスクが高まる!生活習慣を見直そう 糖尿病は血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気です。 50代女性は更年期のエストロゲン減少によって、血糖値のコントロールがうまくいかなくなり、糖尿病を発症することがあります。 普段から特段の自覚症状がなくても、知らぬ間に高血糖になる可能性があるため周囲が必要です。女性の場合は、更年期前後は生活習慣に特に意識を向けてみましょう。 当院では、膵臓(すいぞう)の再生医療を通じて糖尿病の進行を遅らせる治療も取り入れています。詳しくはこちらのページをご参考ください。 膵臓の再生医療について詳しく知りたいという方は、メール相談、オンラインカウンセリング も承っておりますので、ぜひご活用ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 女性の糖尿病についてよくある質問 糖尿病は遺伝しますか? 2型糖尿病には、遺伝的要因もあります。 両親から受け継いだ遺伝子の性質により、インスリンの分泌が少なく、糖尿病になりやすい方もいます。 血の繋がった家族に糖尿病がいる方は、食べ過ぎや運動不足など、糖尿病のリスクを高めないように、とくに注意しましょう。 糖尿病は何科を受診すればよいですか? 基本的には内科を受診しましょう。 病院によっては「糖尿病内科」「内分泌科」といった糖尿病に特化した科を持っているところもあります。 また、もし合併症が現れている場合には、眼科や泌尿器科などの専門科の受診も必要です。 参考文献 (文献1) 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病とは」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html (文献2) 一般社団法人 日本糖尿病学会「糖尿病合併症について」 https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3 (文献3) 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「糖尿病|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ」 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/diabetes/ (文献4) 東京都保健医療局「糖尿病発症予防ガイドブック 今日から予防!糖尿病」 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/tonyo/citizen/6leaflet.html (文献5) 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン 2024」 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf (文献6) 厚生労働省「みんなで知ろう! からだのこと」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202411_006.html (文献7) 大下咲子 ほか「<研究報告>2型糖尿病患者のストレスとストレス対処行動」 https://isns.jp/journal_pdf/03-1/03-1-2_rr01.pdf
2022.05.24 -
- 糖尿病
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糖尿病とは、血液中の血糖値が慢性的に高値を示す病気です。 糖尿病にかかると、慢性的に高血糖が続くために、喉が渇きやすくなり、尿量増加、体重減少などの身体のサインが現れる場合もありますが、顕著な自覚症状が認められないケースも少なくないと言われている点で注意が必要です。 万が一、「糖尿病の初期症状」に気が付けば早期の食事療法などで健康状態を維持することが可能ですが、糖尿病は、進行すると様々な合併症を引き起こすことが知られていますので専門医療施設で精密検査を必要に応じて受けることが重要です。 今回は、糖尿病を初期の段階で知り、早期治療を開始するための「初期症状」と、その際に現れる「身体のサイン」、そして初期症状が出現した際の対処法に関する情報を中心に詳しく解説していきます。 糖尿病の初期症状|気を付けるポイントは? 糖尿病にかかると、慢性的に高血糖が続くために、喉が渇きやすくなり、尿量増加、体重減少などの症状が現れます。しかし、自覚症状が認められないケースも少なくないです。 万が一、糖尿病の初期症状に気がつけば食事の改善などで健康状態を維持することが可能ですが、糖尿病は、進行するとさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。 この記事では、糖尿病の初期症状や症状のチェックリストを中心に解説します。 このような身体のサイン(症状)に気が付いたら医療機関へ のどが渇きやすくなった 尿の量が増加します 体重が減少した 空腹が満たされない 足がつったり、しびれる 足にひび割れや、乾燥しやすくなった すぐに風邪をひくなど体が弱くなった 体重が減る 糖尿病の症状では、体重減少が見られます。この減少は、体内でインスリンの働きが不十分になることが原因です。通常、インスリンは細胞にブドウ糖を取り込み、エネルギーとして使用しますが、糖尿病ではこの機能が低下します。 その結果、身体はエネルギー不足を補うために、脂肪や筋肉を分解してエネルギー源とします。この過程で体重は減少し、また、多尿によって体液が失われることも体重減少の要因です。 のどが渇きやすくなる 糖尿病の症状の一つにのどの渇きがあります。これは、血糖値が高くなることによって体内の水分バランスが崩れ、多尿状態が引き起こされるためです。高血糖の状態では、腎臓が血液中の余分な糖を排出しようとしますが、同時に大量の水分も一緒に排出されるため、体内の水分が不足してのどが渇きやすくなります。 喉の渇きが続くと、さらに水分を摂取するため、トイレに行く回数も増えます。 尿の回数が増える 糖尿病では頻尿の症状が見られます。血糖値が高くなると、身体が余分な糖を排出するために、大量の水分が必要です。 結果として、尿の量や回数が増えるだけでなく、強い喉の渇きも引き起こされます。多尿は身体から水分が多く失われるため、脱水状態にもつながりやすくなります。 疲れやすくなる 糖尿病の症状として疲れやすくなることが挙げられます。これは、体内でインスリンが十分に働かず、糖分がエネルギー源として細胞に取り込まれにくくなるためです。通常、食事で摂取した糖分はエネルギーとして使われますが、糖尿病ではこのエネルギーの供給がうまくいかず、体が疲労を感じやすくなります。 また、高血糖状態が続くことで、血液の循環が悪化し、酸素や栄養が体の隅々まで行き渡りにくくなることも原因の一つです。 足がつるなどの症状が見られる 糖尿病では、足がつる症状が見られます。これは糖尿病による神経障害(糖尿病性ニューロパチー)が主な原因です。高血糖状態が長期間続くと、末梢神経が損傷を受け、過剰な興奮を引き起こします。その結果、筋肉が正常に機能せず、けいれんを引き起こしやすくなります。 また、糖尿病の影響で血液循環が悪化し、筋肉への酸素や栄養供給が不十分になることも、足がつる原因です。 感染症にかかりやすくなる 高血糖は白血球の働きを弱め、細菌やウイルスに対する防御力が低下します。 また、糖尿病患者では血流が悪くなるため治りにくい特徴も、あります。とくに皮膚や尿路、肺などの感染症が起こりやすく、足の傷が化膿しやすい糖尿病性足潰瘍や、肺炎、尿路感染症などが代表的な感染症です。 空腹感を感じやすくなる 体内でインスリンが十分に働かず、血糖値がコントロールされないため空腹感を感じやすいです。 通常、食事から摂取した糖分はインスリンの働きで細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。しかし、糖尿病ではこの過程が機能しないため、細胞がエネルギー不足の状態になります。その結果、身体がエネルギーを求め、空腹感を感じやすくなるのです。 初期症状を感じたら早めの受診がおすすめです。 糖尿病が進行すると現れる症状|3つの合併症が隠れている 糖尿病が進行すると現れる症状は3つあります。 手足に現れる症状(手足しびれ、痛み) 目に現れる症状(目がかすむ、視力が落ちる) 腎臓が悪化して現れる症状(足のむくみ) それぞれ詳しく解説します。 手足に現れる症状(手足しびれ、痛み) 糖尿病が進行すると、手足にしびれや痛みが現れます。これは糖尿病性神経障害と呼ばれ、末梢神経がダメージを受けると起こります。症状が進行すると、痛みやしびれが悪化し、手足の感覚が鈍くなるため、傷や感染に気づきにくいです。 これが原因で、傷口が悪化しやすく、最終的には潰瘍や壊疽を引き起こすリスクが高まります。 目に現れる症状(目がかすむ、視力が落ちる) 進行すると、目に影響を及ぼす糖尿病性網膜症が出現する場合があります。糖尿病網膜症は、血糖値の高い状態が続くと、網膜の血管が損傷を受け、視力に障害をもたらす疾患です。初期段階では自覚症状は少ないものの、進行すると視力低下、視野のぼやけ、飛蚊症などの症状が現れます。 さらに重症化すると、網膜剥離や硝子体出血などが引き起こされ、失明するリスクが高いです。 腎臓が悪化して現れる症状(足のむくみ) 糖尿病が進行すると、腎臓がダメージを受ける糖尿病性腎症が現れる場合があります。これは糖尿病によって血糖値が高い状態が続き、腎臓の血管が傷つけられるためです。腎臓は血液をろ過して老廃物を排出する役割がありますが、腎機能が低下するとこの機能がうまく働かなくなります。 その結果、足のむくみや疲労感、尿量の変化などが見られ、進行すると血液中に老廃物が蓄積される尿毒症に至る可能性があります。 その他の症状(立ちくらみ、冷や汗) 糖尿病は、自律神経障害を合併する場合があります。自律神経は、心臓、消化器、呼吸器、血管などの器官を調整する重要な神経です。糖尿病が悪化すると、高血糖によって神経が損傷され、この調整機能が正常に働かなくなります。 自律神経障害の症状には、立ちくらみ、冷や汗、消化不良、便秘や下痢、頻尿や失禁などがあり、日常生活に大きく影響します。 糖尿病の初期症状が出ているかセルフチェック|当てはまる方は要注意 糖尿病の症状が出ているかセルフチェックしてみましょう。 トイレの回数が増えた 頻繁に喉が渇く 手足のしびれや痛みがある めまいや立ちくらみをおこしやすい 視力低下や目のかすみがある 体重が急に減少している 食べても満腹感が得られない 上記の症状に当てはまる場合、早めの対策が大切です。 まとめ|糖尿病の初期症状を把握して予防に努めよう 糖尿病は、慢性的に血糖値が高い状態が継続する疾患です。 のどの渇き、頻尿、足がつるなどの初期症状を放置して血糖値が高い状態が継続すると、糖尿病性神経障害・網膜症・腎症のリスクにつながります。 今回ご紹介した症状がある場合、リペアセルクリニックへ来院ください。 糖尿病についてよくあるQ&A 糖尿病の自覚症状が出たらもう手遅れですか? 糖尿病の自覚症状が出たからといって、必ずしも手遅れではありません。しかし、自覚症状が現れる段階では、血糖値がすでに高くなっている可能性があり、早期治療が重要です。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、わずかな症状でも早期に医療機関を受診しましょう。 適切な治療と生活習慣の改善を行うと、症状をコントロールし、合併症の進行を防げるでしょう。 糖尿病は一生治りませんか 糖尿病は現時点で完治が難しい慢性疾患ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、血糖値をコントロールし、健康を保てます。1型糖尿病は自己免疫の影響でインスリンの分泌がなく、一生涯インスリン治療が必要です。2型糖尿病は生活習慣が原因で発症する場合が多く、食事や運動の改善で症状を改善できる場合があります。 ただし、糖尿病が進行してた場合、治療を中断すると再び血糖値が上昇し、合併症のリスクが高まるため、継続的な治療が必要です。
2022.05.23 -
- 肝疾患
- 内科疾患
健康診断や定期検査で脂肪肝と診断されたとき、どのような食事をすれば良いか気になる方もいるのではないでしょうか。 脂肪肝を改善するためには、避けるべき食べ物を把握しておくことが重要です。栄養バランスが整った食生活を意識すれば、そのほかの病気のリスク軽減にもつながります。 この記事では、脂肪肝になった後に食べてはいけないものや、食事の際のポイントをご紹介します。食生活を見直し、生活習慣を整えることで、脂肪肝の改善につながるでしょう。 【一覧】脂肪肝の食事で食べてはいけないもの 脂肪肝とは、脂質のひとつである中性脂肪が肝臓内に多く蓄積している状態のことです。 脂肪肝の食事で食べてはいけないものとしては、糖質や脂質を多く含まれているような食べ物です。これらの食べ物は脂肪肝を悪化させるだけでなく、メタボリックシンドロームをはじめとしたさまざまな疾患を引き起こす恐れがあります。 また、アルコールの摂取を控えることも重要です。脂肪肝には、過食や過剰飲酒が原因で起こるアルコール性のものと、それ以外の非アルコール性のものがあります。 このように、脂肪肝にとってだめな食事は多くあり、それらを避けることが大切です。 肝臓の病気に対する新たな治療法として、再生医療が注目を浴びています。再生医療について気になる方がいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。 脂肪肝を改善する食事のポイント7つ 脂肪肝を改善するには、以下のような食べ物を避けることを意識しましょう。 糖質を多く含んでいる食べ物 ジュース類 駄菓子 果物 脂質を多く含んでいる食べ物 揚げ物 肉の脂身 ドレッシング マヨネーズ ※調理油は植物性が望ましい(オリーブオイル、菜種油、大豆油など) アルコール 1日あたり純アルコール20g(※)まで ※ビール中瓶(500ml)1本程度に相当 ここでは、避けるべき食べ物に加えて、脂肪肝を改善するための食事のポイントを解説します。 1.摂取エネルギーを抑える 1つ目は、糖質をはじめとした摂取エネルギーを抑えることです。食事から過剰摂取した糖質は、中性脂肪に変換されて脂肪肝の発症につながります。 ポイントとしては、摂取エネルギーの目安を把握した上で、それを超えないように食事制限する点です。 一般的な摂取エネルギー量の目安としては、以下のとおりです。 自分の摂取エネルギー量を計算した上で食事管理をして、理想的な標準体重を目標にしましょう。 2.糖質を控える 糖質の摂取もできるだけ控えましょう。 白米や十六穀米などの穀類に含まれる糖質は、比較的肝臓への影響が少ないと考えられています。そのため、1食につきお茶碗1杯程度なら大きな問題にはつながりません。 それよりも注意すべき食べ物が、お菓子や果物です。ジュース類や駄菓子に含まれているショ糖、果物に豊富な果糖は、穀物と比較すると中性脂肪が肝臓に蓄積しやすい特徴があります。 普段の食生活でもできるだけ間食を避け、糖質が多く含んでいる食べ物はなるべく摂取しないように心がけましょう。 3.脂質を控える 脂肪肝を改善するには、脂質を控えることも重要です。とくに、揚げ物やマヨネーズなどの脂質が豊富な食べ物には注意が必要です。 食べ物を調理する際は、なるべく動物性ではなく植物性の油の使用を心がけましょう。1日あたりの油の使用量は、大さじ1杯程度までに抑えるのが理想的です。 脂質の過剰摂取は肝臓に中性脂肪がたまる原因となりますが、極端な制限は必須脂肪酸の欠乏につながります。そのため、適度な脂質の制限が重要です。 食事の目安として、脂質を多く含むものを摂取する機会を週に1〜2回程度に抑えるように調整しましょう。 4.たんぱく質を適度に摂取する 糖質や脂質を控えめにする一方で、たんぱく質はなるべく意識的に摂取しましょう。 たんぱく質は、筋肉を作る上で欠かせない栄養素です。たんぱく質の過不足は、脂肪肝を悪化させるとされています。適量を確保するためには、良質なたんぱく質の摂取が大切です。 良質なたんぱく質を含む食べ物は、おもに以下のとおりです。 豆腐 納豆 牛乳 肉類(牛、鶏、豚) 魚介類(あじ、サバなど) 食事の際は、これらの食べ物を取り入れてみましょう。 5.アルコールの考え方 アルコールは肝臓で脂肪に合成されやすく、脂肪肝の悪化につながる恐れがあります。 可能なら禁酒が望ましく、飲むとしてもアルコール度数の高いお酒や、糖質の多い発泡酒などはなるべく控えましょう。 アルコールを摂取する際は、1日平均2ドリンク(純アルコールで20g)程度までに制限し、週に2日以上は休肝日を設けることが推奨されています。 お酒ごとの純アルコールの目安としては、以下のとおりです。 お酒の種類 目安量 純アルコール量 ビール 中瓶1本(500ml) 20g 日本酒 1合(180ml) 22g ウイスキー・ブランデー ダブル(60ml) 20g 焼酎 1合(180ml) 50g ワイン 1杯(120ml) 12g 6.野菜などの食物繊維が多いものから摂取する 野菜に多く含まれている食物繊維の摂取も重要です。 食物繊維は食後の血糖値の上昇をゆるやかにして、コレステロールの増加を防ぐ働きがあるとされています。そのほかにも、満腹感を得られるようになり、エネルギーの摂りすぎ防止も期待できます。 1日の野菜の摂取量は、約350gが目安です。食物繊維は野菜だけでなく、海藻やきのこ類などにも豊富に含まれているので、これらの食べ物も意識的に取り入れてみましょう。 7.食事の仕方に配慮する 食べ物だけでなく、食事の仕方にも工夫が必要です。具体的なポイントは、以下のとおりです。 1日3食を規則正しい時間で食べる 夜遅くの食事は控える ゆっくり良く噛んで食事をする 主食・主菜・副菜のバランスを整える 不規則な時間帯での食事は、脂肪をため込む原因となります。また、ゆっくり良く噛むことで消化が良好となり、満腹中枢が刺激されて満腹感を得やすくなります。 栄養バランスを整え、偏った食事にならない点も注意が必要です。 まとめ|食事習慣を整えて脂肪肝の改善をしよう! 脂肪肝とは、肝臓を構成している肝細胞表面に脂肪が沈着して蓄積される病気です。 本疾患の原因として、肥満や糖尿病、過度のアルコール摂取などがあげられます。食事内容を見直すことで、脂肪肝の改善が期待できます。 脂肪肝を放置すると肝臓の機能が悪くなるだけでなく、肝硬変や肝臓がんなどの深刻な病気につながる恐れもあるでしょう。病状が悪化する前に、早めに医療機関にご相談ください。 脂肪肝の食事に関する良くある質問 ここでは、脂肪肝の食事に関する良くある質問についてお答えします。脂肪肝について疑問がある方は、ぜひ参考にしてみてください。 脂肪肝に良い食べ物は? 脂肪肝の方におすすめなのが、良質なたんぱく質を含む食べ物や食物繊維が豊富な食べ物です。 たんぱく質は普段不足しがちなので、肉類や魚類などの質の高い栄養源は積極的に摂り入れることをおすすめします。 また、食物繊維には脂肪の蓄積を防ぐ作用が期待できます。野菜やきのこ類など、食物繊維が豊富な食べ物を意識的に食べましょう。 脂肪肝は糖質制限すべき? 糖質制限は、脂肪肝に対して大きな効果が得られるわけではないとされています。 海外の研究によると、減量するには糖質や脂肪などの特定の栄養素ではなく、摂取カロリーの制限が大きく関係しているとされています。(文献1) そのため、糖質や脂質などの栄養素よりも、摂取カロリーを意識した食生活を心がけましょう。 ただ、栄養素の偏りは健康に悪影響を及ぼす恐れがあるので、糖質や脂質を控えめにしつつ、たんぱく質を意識的に摂り入れてみてください。
2022.05.19