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人間ドックなどの検査で「肝血管腫疑い」と言われたら、不安になりますよね。 肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性腫瘍で、無症状かつ小さな病変であれば治療は基本的に不要です。 ただし、定期的な検査が推奨されており、万が一腹痛や吐き気、呼吸困難などの症状になった場合には積極的な治療を検討する必要があります。 この記事では、肝血管腫の症状や原因、診断後の気をつけることについて、正しい知識を得られるよう解説していきます。 肝血管腫とは? 肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性の腫瘍です。肝臓は元々血管が多い臓器であるため、血管腫ができやすいとされています。 肝血管腫は「海綿状血管腫」と「血管内皮種」の2種類に大きく分けられますが、海綿状血管腫と診断されることがほとんどです。そして、臨床上問題を生じるのも海綿状血管腫が多い傾向です。 基本的には無症状のため、昔は剖検(ぼうけん:病死した患者の遺体を解剖して調べること)で見つかることが多かったのですが、近年の画像診断技術の発展に伴い、他の病気を探すための検査や人間ドックなどで偶然発見されることが多くなりました。基本的には消化器内科で診てもらう病態です。 成人の発生頻度は5%程度で、一般的には女性のほうが男性に比べてやや多いといわれています。 その他女性に多い肝臓の病気については、下記の記事も合わせてご覧ください。 肝血管腫の原因 肝血管腫が形成される原因は明らかになっていませんが、先天的な要素が大きいと考えられています。乳児期に肝血管腫が生じる場合もありますが、通常は自然に消失していきます。 成人になって肝血管腫が発見された女性患者の調査報告では、女性ホルモン補充療法を施行したことにより肝血管腫の増大が見られ、結果として女性ホルモンとの関連が示唆されました。 女性ホルモンが実際にどのように肝血管腫に影響を及ぼしているかまでは未だはっきりと解明されていませんが、妊娠や女性ホルモン療法は肝血管腫増大のリスクになり得ると考えられています。 なお、ピルの服用が肝血管腫を増大させるかに関する研究もなされましたが、そちらでは有意に増大させないとの結果でした。ただし、ピルの長期服用は肝機能障害や肝腫瘍のリスクを上昇させる上、ピルと肝血管腫増大の関連を考える報告があるのも事実です。 肝血管腫の症状 肝血管腫は、多くの場合は無症状で、特徴的な症状はありません。ただし、腫瘍が大きくなってくると徐々に周囲の臓器を圧迫し、結果として不快感や腹痛、右上腹部の膨満感、嘔気・嘔吐などが引き起こされます。 他の関連症状としては、頻度は少ないものの、発熱や黄疸(皮膚や白眼の黄染)、呼吸困難、心不全なども確認されています。 不快感や腹痛 右上腹部の膨満感 嘔き気、嘔吐 発熱 黄疸(皮膚や白眼の黄染) 呼吸困難 心不全 また、稀に巨大血管腫を生じる「カサバッハ・メリット症候群」という病態があり、出血や多臓器不全で命に関わることがあります。カサバッハ・メリット症候群は基本的に出生児あるいは幼少時期に生じるものですが、成人になって発症する例もあります。 上記のような症状を認めた際にはすぐに医師の診察を受けましょう。 肝血管腫の検査・診断の方法 肝血管腫は、無症状のうちは血液検査での異常も見られません。そのため、肝血管腫が疑われる場合は画像的診断が行われます。主な検査方法として、以下が挙げられます。 超音波(エコー)検査 CT(造影コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 超音波(エコー)検査 超音波検査とは、体に超音波の出る機械を当て、それぞれの臓器から跳ね返ってきた超音波を画像化する検査です。 腹部超音波検査ではお腹をグッと押される感覚はありますが、被曝の恐れや痛みはありません。 低侵襲な検査で肝血管腫を発見するという点では優れますが、肝細胞癌や肝臓への転移癌と鑑別しにくいといった欠点があります。 造影超音波検査を用いることも可能ですが、患者さんの体格や術者の技量によって左右されてしまうため、通常はCT検査やMRI検査の画像と合わせて総合的に判断されています。 CT(造影コンピュータ断層撮影)検査 CT検査とは、ベッドの上に仰向けに寝た状態でトンネル状の装置に入り、X線の吸収率の違いを利用して体の断面を画像化する検査法です。 造影剤を使用しない単純CTでは肝血管腫の検出率は低いですが、造影剤を使用した造影CTであれば格段に検出率が上がります。肝血管腫は他の肝臓癌と比べて血流の流れが遅いため、造影剤を使用すると全体がゆっくり染まるのです。 ただし、過去に造影剤によるアレルギーが出た人や糖尿病薬を服用している人、腎機能障害のある人、授乳中の人などは造影剤を使用する際に注意が必要となります。 該当される方は医師にご確認ください。 CT検査は断面像が見られるため腫瘍の詳細がわかる点では優れていますが、被曝の問題や造影剤を使用しなければならない点は欠点となります。 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI検査とは、強力な磁場が発生したトンネル状の機械に入り、ラジオ波を体に当てることでさまざまな角度から断面像を作り出す検査です。超音波検査やCT検査同様、必要時には造影剤も使用できます。 造影を含めたMRI検査が肝血管腫の確定診断において最も有用であると言われています。 MRI検査は被曝の心配なく腫瘍の詳細を知るには適していますが、狭いトンネルの中に入る必要があるので狭所恐怖症の人には不向きなである点や、超音波検査やCT検査と比べてコストが高くなる点が難点です。 また、病院によっては他の検査と比較して予約が取りにくい場合もあるでしょう。 肝血管腫の治療法 肝血管腫は、自覚症状や血管腫の増大傾向、血管腫が原因の合併症などに応じて、以下の治療法が選択されます。 経過観察のケース カテーテル治療が必要なケース 手術療法が必要なケース 経過観察のケース 小さな病変かつ無症状であれば、基本的に経過観察のみと考えて良いでしょう。大きくても増大傾向がなく、かつ無症状であれば経過観察可能と判断される可能性が高いと思われます。 ただし、自覚症状があり、かつ大きい肝血管腫を指摘されている場合は、それ以上大きくならないよう、女性ホルモン補充療法やピルの中断が推奨されています。 妊娠に関しては判断が難しいところで、大きな血管腫が発見された場合には妊娠を勧めるべきでないと主張する報告もある一方で、巨大血管腫がありながらも合併症を生じることなく妊娠継続ができたとの報告もあります。 巨大血管腫があるために産婦人科領域の治療について相談したい方や妊娠をご希望の場合には、産婦人科の医師に加え、消化器内科や消化器外科の医師ともよく話し合いましょう。治療の際には、消化器内科の医師より消化器外科や放射線科の医師へ紹介され、適切な治療を検討していきます。 カテーテル治療が必要なケース 次のような条件下では、カテーテル治療や手術療法といった積極的治療が必要とされます。 カサバッハ・メリット症候群 血管腫の急速な増大 血管腫の増大とともに症状の増悪 血管腫が原因となった合併症が中等度以上 血管腫の破裂 カテーテル治療とは、血管内より血管腫に栄養を送る動脈へアクセスし、挿入した細い管を使って動脈を塞ぐ“肝動脈塞栓術”のことです。 肝動脈塞栓術は手術療法と異なり、根本的治療には至らず、多くの場合腫瘍の縮小はみられませんが、症状改善には有効とされています。 また、前段階として一旦肝動脈塞栓術を施行し、全身状態が改善されてから手術に臨む症例もあります。 手術療法が必要なケース 肝臓から腫瘍を引き剥がせると判断された場合は“腫瘍摘出術”が選択され、腫瘍摘出術が難しい場合には腫瘍を肝臓の一部とともに取り除く“肝切除術”が選択されます。 報告されている肝血管腫の手術成績は、破裂による緊急手術を除いて良好です。 なんらかの理由で手術療法が行えないと判断された場合には、放射線治療やステロイド治療も考慮されます。どちらも副作用があるため、患者に合わせて放射線量やステロイド量の適切な調整が必要です。 2024年現在は血管腫を薬で治す研究も進められており、今後の新しい治療法が期待されています。 肝血管腫の診断が出たら気をつけるべきこと 肝血管腫と診断された場合は、お近くのクリニックや内科での定期検査を必ず受けてください。そしてもし気になるような症状や異変を感じた場合には、すぐ診療してもらいましょう。 定期検診では、血管腫のサイズの変化に注目することが大切です。 ある研究において平均12カ月の経過観察を行った結果、ほとんどの症例でサイズの変化がなかったものの、少数ながら増大する症例もありました。肝血管腫は10cmを超えると破裂のリスクが高まり、そして破裂した場合には命に関わります。 日常生活においては、無症状であれば、基本的に普段通りで構いません。しかし、スポーツの最中にボールが腹部に当たって肝血管腫が破裂した例や、歩行中に足を滑らせて転落した際に肝血管腫が破裂した例などの症例報告が稀にあります。 外傷性破裂を防ぐため、高いところからの転落や腹部に強い衝撃が当たるようなリスクは避けましょう。 まとめ|肝血管腫は定期的に検査をしましょう 肝血管腫は良性腫瘍であり、基本的には怖い病気ではありません。小さく、無症状なうちは治療も不要です。 しかし、大きくなってくるといろいろな症状を招くほか、破裂の危険が出てきます。自分の身を守るためにも、定期的な検査を心掛けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 肝血管腫に関するよくある質問 肝血管腫は癌の可能性はありますか? 肝血管腫は良性の腫瘍であるため、癌になる可能性はほとんどありません。ただし、見つかった肝血管腫が20mmを超える腫瘍である場合や、腫瘍が短期間で大きくなった場合は、肝血管腫ではなく肝臓癌であった可能性があります。 肝血管腫が見つかった場合は、半年に一度は定期検査を受けることがおすすめです。 参考文献 松井昭義, 小野寺博義ほか. がん・生活習慣病検診における肝血管腫の検出状況について. 人間ドック.2007;22:35-39. Glinkova V, Shevah O, et al. Hepatic haemangiomas: possible association with female sex hormones. Gut. 2004;53:1352-1355. Ozakyol A, Kebapci M. Enhanced growth of hepatic hemangiomatosis in two adults after postmenopausal estrogen replacement therapy. Tohoku J Exp Med. 2006;210:257-261. Gemer O, Moscovici O, et al. Oral contraceptives and liver hemangioma: a case-control study. Acta Obstet Gynecol Scand. 2004;83:1199-1201. Mathieu D, Zafrani ES, et al. Association of focal nodular hyperplasia and hepatic hemangioma. Gastroenterology. 1989; 97: 154–7. Mikami T, Hirata K, et al. Hemobilia caused by a giant benign hemangioma of the liver: report of a case. Surg Today. 1998;28:948–952. Huang SA, Tu HM, et al. Severe hypothyroidism caused by type 3 iodothyronine deiodinase in infantile hemangiomas. N Engl J Med. 2000;343:185-189. Liu X, Yang Z, et al. Fever of Unknown Origin Caused by Giant Hepatic Hemangioma. J Gastrointest Surg. 2018;22:366-367. Smith AA, Nelson M. 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2024.05.16 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
肝嚢胞とは、肝臓の組織に液体がたまって袋状になったものです。 健康診断や人間ドックで発見されるケースが多く、実際に約5人に1人の割合で健康診断の検査項目に含まれる腹部超音波検査で肝嚢胞が見つかるデータもあります。(文献1) そのため、診断後に放っておいて大丈夫か、家族として何かできることはないかと心配になって情報を探していらっしゃるのではないでしょうか。 突然聞かされると驚かれるかもしれませんが、肝嚢胞は比較的よく見られるもので、多くは良性で特に症状がないケースがほとんどです。 しかし、まれに大きくなって痛みが出たり、他の病気が隠れていたりする可能性もゼロではありません。 本記事では、肝嚢胞の原因や症状などを詳しく解説します。治療法も紹介しているので、肝嚢胞の診断を受けて不安を感じている方は参考にしてみてください。 また、現在リペアセルクリニックでは、ご自身の細胞で身体が本来持つ修復力をサポートする「再生医療」についてLINEで情報を配信しております。 身体に優しく、肝臓の機能改善が期待できる治療法に興味のある方は、ぜひご登録ください。 ▼肝臓を含む内科系の改善症例をLINEで配信中 肝嚢胞(肝のう胞)とは 肝嚢胞とは、肝臓にできる液体がたまった袋状のものを指します。 肝嚢胞の種類は、大きくわけて以下の2つです。 孤発性肝嚢胞 多発肝嚢胞 「孤発性肝嚢胞」は、肝嚢胞の数が1〜3個程度で単発的に発生する肝嚢胞です。肝嚢胞の大きさが5cm以下程度の小さいものであれば無症状のケースが多くなります。 まれにサイズが5〜10cmを超えるような大きい肝嚢胞もできます。このサイズになると、周りの臓器が圧迫されてお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があるので覚えておきましょう。ただし、肝臓自体への影響は少なく、血液検査で肝機能の異常が見つかるケースはほとんどありません。 「多発肝嚢胞症」は、肝嚢胞が肝臓に多発する病気です。こちらは孤発性とは異なり、嚢胞の数が増えたり大きくなったりするケースが多く、それによる周囲への圧迫症状が見られやすくなります。また、嚢胞内の感染や出血で炎症を引き起こし発熱や肝機能異常をおよぼす可能性もあります。 肝嚢胞以外の脂肪肝や肝硬変、肝炎といった肝臓の病気には「再生医療」の治療法が効果的です。再生医療とは、人間の自然治癒力を活用し、損傷した肝臓の組織を修復する最新の医療技術です。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 以下の記事では、肝臓の働きや肝臓の病気について解説しています。詳細が気になる方は、参考にしてみてください。 肝嚢胞の原因 肝嚢胞の発生原因は、現時点では明確にわかっていません。 肝嚢胞ができるのは40歳から60歳の女性に多いことから、女性ホルモンの1種であるエストロゲンが関連しているという説があります。 以下の記事では、女性に多い肝臓の病気を解説しています。検査方法や合併症に関する情報も紹介しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 なお、肝嚢胞は、エキノコックスという寄生虫の感染によって肝嚢胞ができるケースがあります。エキノコックスは、キツネやイヌの糞に含まれており、口を介して感染します。(文献2) 肝嚢胞の症状 くりかえしですが、肝嚢胞はほとんどが良性なので、肝嚢胞そのものが体に悪い影響をおよぼす可能性は高くありません。 肝嚢胞が5cm以下ほど小さめのサイズであれば、無症状のケースが大半です。 5〜10cmを超えるような大きいサイズの肝嚢胞になると、周りの臓器を圧迫してお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があります。 また、嚢胞内の感染や出血で炎症が起これば、発熱や肝機能異常を引き起こす可能性があります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 もしもご家族の方で肝嚢胞の疑いがある場合や、まずは相談先を必要としている場合などは、当クリニックでも無料相談を受け付けております。 ▼LINEでもご相談や無料診断を実施中 >>公式LINEはこちら 肝嚢胞の検査 冒頭で述べた通り、肝嚢胞は健康診断や人間ドックの腹部超音波検査検診で見つかるケースが多い傾向にあります。つまり、腹部超音波検査検診は肝嚢胞を発見する有効な検査といえるでしょう。 ほかには、腹部CTやMRIによっても確認できます。 CTやMRIでは、嚢胞の壁や嚢胞液の性状を詳しく調べられる検査です。超音波検査で嚢胞の性状が通常と異なっている場合や、嚢胞に対して治療を検討する場合にさらに詳しい情報を得るための検査としておこなわれます。 肝嚢胞の治療法 肝嚢胞は、圧迫症状がなければ治療はおこなわず、経過観察で良いものになります。 肝嚢胞のサイズが大きく圧迫による腹部症状をきたしている場合や、嚢胞内感染などを起こしている場合には治療をおこないます。 治療方法は、注射で嚢胞内の液を吸引して肝嚢胞を縮小させる方法です。超音波で嚢胞を確認しながらおこないます。その後、エタノールを注入して嚢胞内に再び液体がたまらないようにします。 根本的な治療としては、嚢胞を切開、切除する手術です。近年では腹腔鏡による手術もおこなわれ、より体に負担の少ない治療方法が広まっています。 傷付いた肝臓組織を修復する治療法の1つに「再生医療」があります。 リペアセルクリニックでは、ご自身の脂肪由来幹細胞を用いた再生医療を提供しています。 この治療は幹細胞が持つ組織修復能力を利用し、弱った肝臓の働きを根本からサポートすることを目指します。 手術のような大きな負担なく、機能回復を期待できる再生医療についてLINEで症例なども配信しておりますので、根本的な改善を期待したい方はご確認ください。 ▼無料のオンライン診断も実施中 >>公式LINEはこちら まとめ|肝嚢胞への理解を深めて適切な対応をとろう 肝嚢胞は多くの場合、無症状で偶然見つかるもので、症状がなければ経過観察で良いものになります。したがって、肝嚢胞と診断されても極端に心配する必要はありません。 しかし、大きい嚢胞では腹痛やお腹の圧迫感の症状が現れることがあるほか、まれにがん化する事例も報告されています。気になる症状があれば早めに専門の医療機関に相談しましょう。 損傷した肝臓組織を修復を模索するなら、手術を必要としない「再生医療」がおすすめです。本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 ご自身の細胞を用いる再生医療は薬や手術とは異なるアプローチで、慢性的な肝臓のダメージや機能低下に悩む方に新たな希望をもたらす可能性があります。 ご本人だけでなくご家族も一緒に最善の道を探るために、ぜひこの情報をご活用ください。 ▼肝臓の健康と再生医療の専門情報を受け取る >>公式LINEはこちら 肝嚢胞に関するよくある質問 最後に肝嚢胞に関するよくある質問と回答をまとめます。 肝嚢胞が何センチになったら手術が必要ですか? 手術の必要性を判断する明確なサイズの基準はありません。 嚢胞のサイズよりも、症状の有無や生活への影響が重要な判断材料となります。たとえば、嚢胞が腹部を圧迫して腹痛が生じたり、胃を圧迫して食欲不振になったりするなどです。 注射で肝嚢胞の液体を吸引する治療法もあるので、専門医と相談して自分の状態に合った治療法を選択していくのが良いでしょう。 肝嚢胞になったらどうすればいいの? 肝嚢胞と診断を受けた時点で、担当医に今後の治療方針を相談しましょう。 無症状であれば、定期的な経過観察を推奨される可能性があります。肝嚢胞がほかの臓器を圧迫して圧迫感や痛みを感じる場合は、注射吸引による液体の除去や肝嚢胞を切開・切除する手術などが進められます。 肝嚢胞でがんを発症するリスクはありますか? 肝嚢胞が、がん化した事例も報告されています。(文献3) がんの場合、早期発見が重要になります。体調不良や身体の違和感が長期間続く場合は、迷わず医療機関で検査を受けましょう。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/65/1/65_15-10/_pdf 文献2:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/338-echinococcus-intro.html 文献3:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/68/3/68_3_654/_article/-char/ja/
2024.05.09 -
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高血圧の薬(降圧薬)は血圧を下げる薬で、多くの種類があります。降圧薬にはどのような違いがあるのかわからず、副作用を心配する方もいるのではないでしょうか。 高血圧の治療では、まずは運動や食事管理などによる生活習慣の見直しによって血圧の改善を図ります。 しかし、それでも難しい場合は降圧薬が使用されます。降圧薬にはそれぞれ作用のメカニズムや副作用が異なるため、服用には注意が必要です。 この記事では、降圧薬の種類やその特徴について専門医が解説します。降圧薬についての正しい情報を身につけて健康な時間をすごせるよう、ぜひ最後までお読みください。 高血圧の薬(降圧薬)を飲む際の基準値 まず前提として、現在のガイドライン上では「最高血圧120mmHg/最低血圧80mmHg未満」を正常血圧としており、これが降圧薬を処方する目安の1つです。 詳細は後述しますが、よく使用される降圧薬には大きく分けて7種類あります。また、複数の種類を組み合わせた配合薬もあります。 近年ではより厳格な血圧管理が重要視されるようになり、130〜139/80〜89mmHgになると、「高値血圧」と呼ぶようになりました。さらに140/90mmHg以上になると「高血圧症」と診断されます。 高血圧の薬(降圧薬)の種類一覧と副作用 主な降圧薬の種類としては、以下の7つです。 カルシウム拮抗薬 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) 利尿薬 β(ベータ)遮断薬 α(アルファ)遮断薬 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬) ここでは、それぞれの降圧薬の特徴について詳しく解説します。 ①カルシウム拮抗薬:最も多く使われている薬 カルシウム拮抗薬は、末梢の血管を拡張させることで血圧を下げる作用の薬です。副作用が少ないため、現在国内で最も多く処方されている降圧薬です。 高血圧の治療を開始する場合、このカルシウム拮抗薬が第一選択として選ばれることが多い傾向にあります。 副作用としては、以下のような血圧の下がりすぎによる症状があげられます。 めまい感 動悸 頭痛 ほてり感 顔面紅潮 むくみ 歯茎の肥厚 など ②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB):2番目に多く使われている薬 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は、カルシウム拮抗薬に次いで多く使用されている降圧薬です。アンジオテンシンⅡ受容体は血管等に分布しており、アンジオテンシンという物質が結合して強力な血管収縮作用を持ちます。 ARBによってアンジオテンシンの結合を防ぎ、血管収縮作用を抑えて血圧の低下につながります。 この薬も副作用が少なく使用しやすい薬の一つです。治療の第一選択として使用することもあり、カルシウム拮抗薬でも十分に降圧が得られない場合に併用するケースも少なくありません。 注意すべき副作用として、内服中に血中のカリウムが上昇する可能性がある点です。 腎臓の機能が悪い方が服用する場合、定期的に腎機能やカリウム濃度等をチェックする必要があります。また、妊婦の方や授乳中の方の服用は、赤ちゃんへの悪影響があるため禁忌です。 高血圧と腎臓機能との関係性について、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味がある方はこちらもご覧ください。 ③アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)とは、ARBと似た名前のとおり、アンジオテンシン系に作用する薬です。 ARBは、アンジオテンシンⅡが結合する受容体に作用する薬です。一方でACE阻害薬はアンジオテンシンⅡ自体の産生を阻害し、血管収縮作用を抑えて血圧を低下させます。 ACE阻害薬の副作用として有名なのが、「空咳(からぜき)」です。これはブラジキニンという物質の増強作用によるもので、とくに日本人を含むアジア人に多いとされています。 この副作用を利用して、咳を誘発させることで誤嚥性肺炎を予防する目的で使用する場合もあります。 ACE阻害薬もARBと同様に、妊婦の方や授乳中の方の服用は禁忌です。 ④利尿薬 利尿薬は、塩分(ナトリウム)を含めた水分を尿として体外に排泄し、血液量を減少させて血圧を下げる薬です。血圧の話でよく「塩分の摂りすぎに注意」と聞きますが、日本人の塩分摂取量は欧米人と比較しても多いことがわかっています。 具体的に欧米人の1日の塩分摂取量は8〜9g程度なのに対し、日本人は1日10g程度とされています。塩分を取りすぎると、浸透圧によって水分が血管の中に引き込まれ、血液量が増加して血圧上昇につながるのです。 利尿薬は、高血圧だけでなく心臓の機能が悪くむくみがある方や、これまで説明した薬の効果が不十分な場合などに併用することがあります。 利尿薬は体内の水分を排泄させる作用があるため、副作用として電解質の異常をきたすことがあります。具体的には低ナトリウム血症や低カリウム血症などがあり、症状としては以下のとおりです。 ぼんやり感 倦怠感 手足の力の入りにくさ など 高尿酸血症や高中性脂肪血症など、代謝系への影響にも注意が必要です。そのほかにも、トイレに行く回数や量が増える点も副作用の1つです。 ⑤β(ベータ)遮断薬 心臓の筋肉に分布する「β受容体」を遮断させて心拍数を減少させたり、心臓の収縮力を抑制したりする作用のある薬です。β(ベータ)遮断薬は、高血圧治療の第一選択になることはあまりありません。 しかし、心筋梗塞の発症後の高血圧症や、交感神経が亢進した状態の病気(状腺機能亢進症など)に合併する高血圧症に対して積極的に使用されます。交感神経の作用で脈が速くなっている場合にも有効で、これまで紹介した降圧薬と併用して使うケースも多い薬です。 気管支喘息などの呼吸器疾患を持っており、吸入を行っている方が使用する場合、作用が変化して症状の悪化を招く危険性があり注意が必要です。 また、薬を急に中断すると狭心症や高血圧発作が起こる危険性があります。β(ベータ)遮断薬を中止する場合は、徐々に減量する必要があります。 ⑥α(アルファ)遮断薬 末梢血管に分布するα1受容体を阻害して交感神経の働きを抑え、血管を拡張させて血圧を下げる作用がある薬です。 交感神経が活性化しやすい早朝に血圧が上昇するタイプの方の場合、寝る前にα遮断薬を飲むことで朝の血圧低下が期待できます。また、褐色細胞腫による高血圧症のコントロールにも使用される薬です。 α遮断薬は自律神経に働きかける薬のため、交感神経の作用を抑えることで以下のような副作用が起こる可能性があります。 起立性低血圧 めまい 失神 α遮断薬を服用する場合は少量から開始し、副作用に注意しながら徐々に増やしましょう。 ⑦ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬) ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)は、体内で産生されるアルドステロンというホルモンの働きを阻害する作用の薬です。 本来アルドステロンは、腎臓に作用して水を体内に吸収させて血液量を増やす働きがあります。これが阻害されると体内に水分が再吸収されなくなり、血液量が減って血圧が低下しやすくなります。 また、心臓保護効果が期待できるため、心不全を合併している方の高血圧症に使用するケースも少なくありません。 MR拮抗薬は体液バランスを調節する薬のため、電解質異常をきたす可能性があり、高カリウム血症に注意が必要です。とくに糖尿病性腎症や、中等度異常の腎機能障害がある方への使用は禁忌です。 降圧薬の配合剤について 降圧薬の配合材は、これまで紹介した作用機序の異なる種類の薬を組み合わせた治療薬です。 配合薬によって飲む薬の数が減り、飲みやすくなることが最大のメリットといえます。薬が増えるのが嫌な方や、薬が多くて内服が大変な方におすすめです。 現在国内で処方可能な降圧薬の配合剤は、大きく分けて3種類です。 降圧薬の配合剤 詳細 カルシウム拮抗薬+ARB ザクラス アイミクス ミカムロ レザルタス エックスフォージ など ARB+利尿薬 イルトラ エカード プレミネント ミコンビ など カルシウム拮抗薬+ARB+利尿薬 ミカトリオ 配合薬を使用する際は、それぞれの降圧薬の副作用に注意してください。配合薬の場合、名前だけでどの薬が配合されているかがわかりにくいため、注意が必要です。 高血圧の薬(降圧薬)を服用する際の注意点 降圧薬を服用する際は、以下の点に注意しましょう。 グレープフルーツなどの柑橘類を避ける 自己判断で薬を飲むことをやめる 飲み忘れたときの対応を適切にする ここでは、それぞれの注意点を詳しく解説します。 グレープフルーツなどの柑橘類を避ける まず、降圧薬を服用した際は、グレープフルーツを含んだ柑橘類の摂取は避けてください。グレープフルーツには、フラノクマリン類という成分が含まれています。 この成分には、体内で薬物を分解する酵素の働きを阻害する作用があるとされています。酵素の働きが阻害されることで薬の効果がうまく働かず、かえって副作用のリスクを高める恐れがあるのです。 これは降圧薬だけでなく、コレステロール低下薬や抗不安薬など、さまざまな薬に対して影響があります。薬を服用する際は、柑橘類は意識的に避けましょう。 降圧薬と柑橘類の関係性についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 自己判断で薬を飲むことをやめる 自己判断で薬を飲むことをやめないでください。一時的に血圧が落ち着くことで、「もう大丈夫だろう」と薬をやめる方もいるでしょう。 しかし、途中で薬の服用をやめると、再び高血圧の状態に戻る可能性が高くなります。薬の減量・中止は自己判断で行わず、必ず医師と相談することが重要です。 また、薬を一生飲み続けないといけないのか心配になる方もいるでしょう。血圧を下げるには薬の服用が重要ですが、中には生活習慣が改善したことで徐々に減量し、降圧薬をやめられた方もいます。そのため、治療が順調であれば、薬を中止できる可能性は十分にあります。 飲み忘れたときの対応を適切にする 降圧薬を飲み忘れたときの対応は、薬の種類によって異なります。そのため、自己判断で飲むことは避け、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。 飲み忘れた場合、時間をずらして服用するケースが多いですが、1度に2回分を服用するのは必ず避けましょう。 1度にたくさんの薬を服用すると、効果が効きにくくなったり、副作用が出やすくなったりする恐れがあります。 高血圧の薬(降圧薬)以外に血圧を下げる方法 食事や運動など、生活習慣の見直しをすることで、高血圧の予防や改善が期待できます。降圧薬以外で血圧を下げる方法としては、以下のとおりです。 食事の改善 運動習慣の改善 ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。 高血圧を改善するための生活習慣(食事・運動)の工夫について、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味がある方はご覧ください。 食事の改善 食事の際は、塩分や脂肪などが多く含まれている食べ物の食べすぎは控えましょう。 とくに日本人は、高血圧の原因となりやすい塩分の摂取量が多い傾向にあるとされています。高血圧の方の場合、食塩の摂取量は6g/日未満が推奨されています。 減塩をするための工夫としては、以下のとおりです。 香味野菜や香辛料を活用する 外食や加工品を控える 食べすぎを控える 麺類のスープは飲まない また、お酒の飲みすぎも血圧を高める原因の1つです。1日あたりのアルコール摂取量の目安は、男性で20〜30ml、女性で10〜20mlとされています。 アルコール20〜30mlは、お酒で換算すると日本酒1合、ビール中瓶1本に相当します。普段からお酒を飲む方は、この目安を守りましょう。 運動習慣の改善 食生活だけでなく、運動習慣の改善もおすすめです。高血圧を改善するための運動には、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が推奨されています。 運動時は、ややきついと感じる程度の強度でかまいません。激しい運動をすると、かえって血圧が高まる恐れがあるので、軽めの強度を心がけましょう。 運動時間は毎日30分以上、週180分以上が目安です。ただし、いきなり長時間の運動をはじめると体への負担が強くなるので、最初は無理のない範囲で進めてください。 運動の時間をうまくとれない場合は、以下のような工夫をして、普段の生活内での活動量を増やしてみましょう。 エレベーターではなく階段を使う 近い場所は車ではなく歩き・自転車で移動する 定期的に立って座りっぱなしを防ぐ まとめ|高血圧の薬(降圧薬)は医師と相談しながら正しく服用しよう この記事では、たくさんある降圧薬の作用や特徴について解説しました。高血圧の治療をするためには、降圧薬を正しく継続的に服用することが大切です。 高血圧の治療が順調であれば、降圧薬を途中でやめることもできるでしょう。 また、決して自己判断で薬の服用をやめたり、飲み忘れの際に誤った対応をしたりしないように注意してください。薬の服用の際にわからない点がある場合は、必ず主治医に確認しましょう。 参考文献 American Heart Association News2022.5.23 高血圧治療ガイドライン2019
2024.05.02 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
高血圧の落とし穴!慢性腎臓病と生活習慣病の関係を内科医が解説 みなさんは「高血圧」と聞くとどのような印象を持ちますか? 生活習慣病の1つであり、放っておくと血管がボロボロになる、脳卒中や心筋梗塞といった怖い病気を引き起こすということは多くの方がご存じかもしれません。しかし、実は高血圧が腎臓にダメージを与え、じわじわと体を蝕んでいくということは案外知られていません。 健診で「血圧が高いですね」と言われたことがある方、「血圧なんて薬飲めばすぐ下がるだろう」と放置したままの方、いつのまにか腎臓の機能が取り返しのつかないところまで低下しているかもしれません。 今回は身近な病気である高血圧が腎臓にどのような影響を及ぼすのかをご紹介し、明日からの健康な暮らしに役立てていただきたいと思います。 高血圧とは 高血圧とは、一般的に「最高血圧が140mmHg以上もしくは最低血圧が90mmHg以上、またはその両方」である状態を指します。 血圧は変動しやすいため一時的にこの値を上回ることは良くあり、その場合は問題とはなりません。長期間にわたり基準値を超えたままですと、徐々に体への悪影響が出てきます。具体的には、動脈の硬化が進行し、脳卒中や心臓の病気(心筋梗塞)といった重篤な疾患を引き起こします。 高血圧の原因 血圧が上がる主な原因は喫煙や飲酒、肥満、高塩分食の摂取といった生活習慣に関わるものが大半を占めます。 高血圧の治療 高血圧の治療は、日本高血圧学会により作成された「高血圧治療ガイドライン 2019年版(参照)」に基づいて行われています。このガイドラインでは、治療でどのくらいの血圧を維持すべきなのかという降圧目標が定められており「最高血圧130mmHg/最低血圧80mmHg未満」と先ほど示した数値より低い値が目標となっています。 腎臓の働きと慢性腎臓病 腎臓は、体内の水分量を適切な状態に保ち、余計な塩分や水分を尿として体の外へ排出するという役割を担っています。ところがこの尿をつくる機能が徐々に障害されてしまう病気があり、これを慢性腎臓病(CKD)いいます。 具体的には、糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)という数値が60mL/min/1.73 m2未満に低下した状態が、3か月持続している方を指します。健康な方の糸球体濾過量は100mL/min/1.73 m2程度ですので、慢性腎臓病の方では正常の60%程度しかないことになります。 日本腎臓学会が作成した「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018(参照)」では国内に1330万人の慢性腎臓病患者が存在すると推定されており、どなたでもなる可能性があります。 高血圧と慢性腎臓病の関係 高血圧がどのようにして腎臓にダメージを与え、そして慢性腎臓病を引き起こすのでしょうか。 血圧が高くなると腎臓では塩分と水分をどんどん排泄しようとして尿がたくさん作られます。しかし、高血圧の状態が持続すると腎臓の負担が増え、作ることができる尿量が徐々に減っていきます。これが腎機能低下と呼ばれる状態で、慢性腎臓病の初期段階です。 その結果、体内の血液中には不要な塩分と水分が残り、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥ってしまいます。この「腎臓がダメージを受けることで血圧が上がり、さらに腎臓の機能を低下させる」というサイクルを繰り返し、慢性腎臓病が進行します。 慢性腎臓病の原因 慢性腎臓病の原因には様々なものがありますが、特に高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病と深く関係しています。また、加齢による腎機能低下も大きな原因の1つです。 高血圧 脂質異常症 糖尿病 加齢 慢性腎臓病の症状 慢性腎臓病の初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると息切れや倦怠感、むくみといった症状が現れます。 息切れ 倦怠感 むくみ このような症状がみられた場合、自分の腎臓が正常に機能していない状態であるため治療が必要になります。 慢性腎臓病の治療 ここでとても大切なことをお伝えします。残念ながら慢性腎臓病で徐々に低下してしまった腎機能を完全に元に戻す治療法はありません。慢性腎臓病と診断された場合に行う治療には大きく分けて、進行を抑える治療、そして悪化した腎機能を人工的に維持する治療の二つになります ①投薬治療 まず、進行を抑える治療ですが、こちらは慢性腎臓病の原因となった生活習慣病に対する投薬治療になります。具体的には、高血圧をお持ちの方であれば降圧薬という薬を内服することが一般的です。 ②腎代替療法 次に、腎機能を人工的に維持する治療ですが、こちらは腎代替療法(血液透析や腹膜透析など)と呼ばれる治療になります。先ほど紹介したような息切れや倦怠感、むくみといった症状を伴う場合にこのような治療が必要になる可能性があります。 慢性腎臓病を予防するには? 慢性腎臓病と診断された場合、低下している腎機能を元の健康な状態に戻すことはほぼ不可能ですので、そもそも慢性腎臓病にならないようにすることが大切になります。 食生活を見直す 慢性腎臓病にはさまざまな原因がありますが、そのなかでも高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は重要な原因とされています。これらの疾患を予防するために最も大切なことは、バランスの取れた食生活を送ることです。 日々の食事では炭水化物、タンパク質、脂質といった三大栄養素が大部分を占めており、現代の日本人は特に、炭水化物や脂質を摂りすぎる傾向にあります。このような食生活を続けてしまうと肥満になり、やがて糖尿病や脂質異常症を発症する恐れがあります。摂取する炭水化物や脂質の割合を減らしつつ、タンパク質をしっかり摂ることを意識しましょう。 さらに、高血圧を防ぐためには、塩分を控えた食事も大切です。高血圧や慢性腎臓病を予防するための適切な塩分量は1日当たり6g未満とされています。 ところが、日本人が1日に摂取している塩分量の平均値は「令和元年 国民健康・栄養調査の概要(参照)」によると、男性が10.9g、女性が9.3gであり、目標値を大きく上回っています。平均すると1日当たり3.3gの減塩が必要となります。 血圧計測でコントロール また、血圧については家庭用の血圧計などを用いることで簡単にチェックすることができるため、日ごろから計測することをおすすめします。日々血圧を意識しつつ、生活習慣の改善だけで下がりきらない場合には内科のある病院を受診し、降圧薬を服用しながら適切な値にコントロールする必要があります。 健康診断を受ける 慢性腎臓病を早期に発見するためには定期的に健康診断を受けることが大切です。 慢性腎臓病の初期段階では、腎機能の低下を生じていても自覚症状がみられない場合がほとんどです。そのため、早期発見のためには健康診断の血液検査で血清クレアチニン値や血中尿素窒素など、腎臓の機能に関わる項目をチェックしましょう。 これらの項目が異常と判定された場合には慢性腎臓病の可能性がありますので、早めに内科を受診し、早期の検査をおすすめします。 まとめ・慢性腎臓病を防ぐために、予防と早期診断が大切! 高血圧の状態が長く続くと徐々に腎臓の機能が下がり慢性腎臓病を発症してしまいますが、早期に発見され適切な治療を行うことで進行を防ぐことができます。まずは高血圧にならないこと、そして健康診断などで腎機能低下を早期に発見し、適切な治療を行うことが大切になります。 ぜひとも健康な生活習慣を心がけ、腎機能低下がみられた際には早期の内科受診をお願いします。 参考文献 エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018 令和元年 国民健康・栄養調査の概要 高血圧治療ガイドライン 2019年版 ▼こちらもあわせてお読みください。 ▼茗荷谷地域にお住まいの方は「みらいメディカルクリニック」様へのご相談もおすすめです。
2024.04.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「首(または腕)が痛く、1日でも早く治す方法が知りたい」 「首の痛みは日常生活にも影響するため、できるなら通院せず治したいけれど可能なの?」 頚椎捻挫が発症していると、首や腕の痛みだけでなく、しびれ、頭痛、めまいなどの症状が起きます。 早く治したい一心から、自宅でストレッチや軽い運動をしてしまうと、症状を悪化させてしまう恐れがあります。 そこで今回は現役医師の立場から、頚椎捻挫を早く治す方法をまとめました。 受傷からの期間別でどのような治療がおすすめなのかも解説したので、ぜひ最後までご覧ください。 【予備知識】頚椎捻挫を早く治す方法の前に押さえておきたい注意点 まず把握してもらいたいのが頚椎捻挫は、よく耳にする「むち打ち症」と同じ意味である点です。 自動車で運転中に追突事故に遭ったり、スポーツ中の衝突により首が過剰に動いたりすると起こる症状です。 首の筋肉や靭帯に損傷が起こる症状として知られています。そこで改めて頚椎捻挫の症状と治るまでの期間をお伝えします。 頚椎捻挫の主な症状 頚椎捻挫の症状として代表的なのは、主に首や腕の痛み、しびれなどが挙げられます。 しかし代表的な症状以外にも、以下の症状があるため注意しましょう。 腕の脱力感 肩こり 頭痛 めまい 耳鳴り 動悸 倦怠感 など 以下の表では、タイプ別で症状や考えられる発症の原因をまとめました。 タイプ 症状 発症の原因 頚椎捻挫型 首や腕の痛み 首回りの筋肉や靭帯が引き伸ばされ発症する 神経根症状型 手、指、腕のしびれ 神経が圧迫されて脳からの伝達が伝わらなくなり発症する バレ・リーウー型 頭痛、耳鳴り、吐き気、難聴、視力低下 など 事故後の安静(急性期の対応)が不十分だと発症しやすい 脊髄型 足の感覚異常、排尿と排便のしにくさ 脊髄の損傷から動きにくくなり発症する 以下の記事では、頚椎捻挫の後遺障害等級についても触れているので、あわせて参考にしてください。 頚椎捻挫を治すまでの期間 頚椎捻挫が治るまでの期間は、患者様の容態によって異なりますが、1〜3カ月で症状が軽快するでしょう。 早ければ1〜2週間の方もいれば、6カ月かけても症状が残っている方もいます。 もしも6カ月経っても治らない場合は、後遺障害としての申請をするのがおすすめです。 以下の記事では、頚椎捻挫の後遺障害等級についても触れているので、あわせて参考にしてください。 頚椎捻挫を早く治す方法 頚椎捻挫を早く治したい場合、受傷してからの期間によって対処方法が異なります。 順番に早く治す方法を解説していきます。 早めの受診がおすすめ(1週間以内) 頚椎捻挫を受傷したら、あまり症状を感じていなくても早めに受診するのがおすすめです。 時間が経ってから急速に症状が出てくるケースがあるため、痛みを感じていなくても受診を検討してください。 受傷後すぐ(急性期)は、首に負担をかけないのが望ましいため、首を固定する「頚椎カラー」の装着が1つの選択肢になります。 患部に対し、リハビリを実施してしまうと、炎症が悪化する恐れがあるため、注意しましょう。 鎮痛剤の処方をしてくれる場合もあるため、まずは病院を受診するのが早く治る方法として挙げられます。 激しい運動を控える(〜2週間) 首の筋肉や靭帯に損傷が起こっている状態のため、受傷から2週間経過するまでは症状が軽いケースでも安静にしましょう。 むやみに動かし過ぎると症状を長引かせる原因になります。 「亜急性期」と呼ばれる時期になり、理学療法士によるリハビリを開始しながら早く治していきましょう。 物理療法として、温熱や低周波などによる治療も実施するケースがあります。 どれも自宅ではできない治療法になるため、専門医から適切なアドバイスを受けるのがおすすめです。 無理のない範囲でストレッチする(6カ月前後) 痛みが落ちついてきたら痛みが出ない範囲で首や肩周りを動かしましょう。 同時に、受傷から6カ月以上経っても以下の症状を感じる方は要注意です。 強い痛みは無いけれど首や肩周りが突っ張る なんとなくスッキリしない など 上記のような症状を感じる方は「慢性化」している恐れがあります。 筋肉や靭帯の損傷は安静にしていれば治りますが、筋肉の緊張状態は安静にしていると、どんどん固まってしまい、緊張状態が強くなってしまいます。 つまり、慢性化しないためにも適度なストレッチが必要になるのです。 デスクワークやスマホを見る習慣が多い現代人のほとんどが負担のかかる姿勢が続いています。 姿勢を治すためには肩甲骨や胸椎(両方の肩甲骨の間にある背骨)を動かすような体操や顎を引く運動、胸前の筋肉をほぐすストレッチをしましょう。 なお、頚椎捻挫が治っていない原因を確かめるには、MRI検査が選択肢として挙げられます。 以下の記事では、MRI検査の所要時間や注意点をまとめているので、ぜひ参考にしてください。 早く治すなら週3の通院がおすすめ 捻挫を1日でも早く治したいのであれば、週3回の通院をおすすめします。 頚椎捻挫は受傷後、1週間以内の受診をおすすめしたように、時間の経過とともに急速な変化が伴うケースが大半です。 首や腕に負担をかけないよう固定したりリハビリを案内し始めたりする時期が、患者様によって異なるからです。 症状によって通院の頻度が異なるので、あくまで1つの基準として捉えてもらえると幸いです。 なお、症状や適切なリハビリなどでお困りでしたら、当院ではオンラインカウンセリングも実施しております。 「いつまでに治りそうなのか」「今の症状では何をすべきか」など、気になる方は以下からご連絡ください。 病院受診時の流れ 頚椎捻挫を早く治す方法を取り入れるため、病院の受診を検討している方に向け、実際の流れをお伝えします。 一般的な病院での受診時、以下の流れになるケースが大半です。 診断 安静 リハビリ それぞれ何を実施するのか、詳しく解説していきます。 受診 頚椎捻挫の受診は基本的に「整形外科」を選択しましょう。 整形外科は、頚椎捻挫や関節リウマチなど、慢性疾患を主に取り扱っています。 専門学校で3年間勉強し「柔道整復師」に合格した方が施術する整骨院とは異なり、医学部合格後、最低でも6年間の勉強と臨床実習が医師には必要です。 理学療法や物理療法を始め、CTやMRI検査など、正確な医学的な知識をもとに治療してもらうには、整形外科がおすすめです。 しかし、整形外科にはリハビリテーション専門のスタッフ(理学療法士や作業療法士)がいない整形外科もあります。 できれば理学療法士や作業療法士のいる整形外科を選択しましょう。 安静 頚椎捻挫を受傷したら、最初のうちは患部を安静にしておくのが無難です。 症状の重さにもよりますが、軽度であれば投薬(薬物療法)を行います。 症状が重い場合は頚椎カラーを装着し、少しでも患部を安静できるようサポートしていきます。 頚椎捻挫は症状の重さに関係なく急性期の症状を早く落ち着かせることが、早く治す方法として挙げられるのです。 リハビリ 頚椎捻挫で骨折や脱臼が発症していない限り、少しずつ痛みがない程度のリハビリを行います。 整形外科で専門的な知識と経験がある理学療法士や作業療法士になるリハビリ指導が始まります。 理学療法士や作業療法士が在籍していない整形外科の場合、温熱療法や牽引療法、電気治療を施しているので、受診時に治療方法を確認しておきましょう。 以下の記事では、頚椎捻挫の治療方法について、自宅でできる対処法を紹介しています。 悪化予防の観点から、ぜひ参考にしてください。 まとめ・頚椎捻挫をすぐに治したいなら受診してもらおう! 頚椎捻挫を早く治す方法は、すぐに受診し安静にしておくのがおすすめです。受傷直後は興奮状態で痛みを感じない場合もありますが、数日経ってから症状が出る可能性もあります。 仮に痛みを感じていなくても「受傷したら痛みがなくても受診」と考えておきましょう。 首回りの組織が損傷している可能性もあるため、スポーツだけでなくストレッチも含めて無理に首を動かすのは控えるのが無難です。 患部を動かすのは、痛みが落ち着いたらリハビリを実施しましょう。 動かさない期間が長くなってしまうと筋肉が固まってしまい、慢性化する可能性もある点に十分気をつけましょう。当院ではオンラインカウンセリングをはじめ、メール相談も承っております。 頚椎捻挫を早く治す方法を専門医からのアドバイスを受けたい方を含め、お気軽にお問い合わせください。
2024.04.29 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
むちうち症(頚椎捻挫)は、交通事故やスポーツ中の事故などにより、首の周りの筋肉や靱帯に急激に力がかかったことで痛みが生じる状態をいいます。 軽症なものであればネックカラーを装着しての安静処置やリハビリなどで徐々に軽快してきます。しかし、重症なものだと慢性的な痛みと長期間付き合っていく状態になりかねません。 そこで本記事では、むち打ち(頚椎捻挫)の治療方法と治し方を中心に、完治期間についても医師の観点から解説します。 むち打ち症(頚椎捻挫)の症状 むち打ち症の症状は、首を動かしたときの痛み・頭痛・倦怠感(だるさ)・耳鳴り・やめまい・手や腕のしびれと多岐にわたります。 中でも代表的な症状は首を動かしたときの痛みです。筋肉や靱帯に不自然な強い力がかかったことで炎症し痛みが生じます。 頭痛は脳が強く揺さぶられたことによる脳振盪症状や、頭・首・背中につながっている僧帽筋という筋肉が損傷し、全体の痛みを頭痛として捉えることもあります。 倦怠感や耳鳴り、めまいといった症状も脳振盪が原因とされ、首の損傷がさまざまな症状を引き起こします。 むち打ち症(頚椎捻挫)4つのタイプ 上記のとおり、むち打ち症には4つのタイプがあります。 最も多いのは捻挫型で、首や肩の痛み・動かしづらさを発症します。頚椎捻挫の約80%程度がこのタイプです。 神経根型は、腕や手のしびれや痛みが出現するタイプです。頸髄の神経根が筋肉や骨で圧迫されることで発症します。首を動かしたり、咳やくしゃみをしたりすると、強い痛みやしびれが出現します。 脊髄型は、下肢のしびれや知覚異常などを引き起こすタイプです。 頚椎捻挫だけでなく、脊椎椎間板ヘルニアなどが合併した場合に分類される傾向にあります。重度の場合、歩行障害や排尿困難・排便困難といった膀胱直腸障害を発症します。 Barre-Lieou型(バレー・リュー型)は首の痛みだけでなく、めまい・耳鳴り・難聴・視力障害などさまざまな症状が起こるタイプです。不眠症や不安症といった精神的な症状が合併するケースもあります。 むち打ち症(頚椎捻挫)の治療方法 交通事故やスポーツで強い衝撃が首にかかって頚椎捻挫を起こした場合、まずは意識障害や嘔吐・手足のしびれや麻痺、下半身の症状がないかを確認します。 意識障害や嘔吐がある場合、脳にも強く力がかかって調子が悪くなっている可能性があるため安静にし、必要に応じて脳神経外科の受診をします。 手足のしびれや麻痺・下半身に症状がある場合は、頚部に強い力がかかって骨の変形や骨折もありえますので、首をなるべく動かさないようにして、安静にして病院を受診します。 病院を受診した場合、まずは骨折がないかレントゲンやCTを行い確認します。もし骨折や変形があれば医療機関で治療を行い、骨折や変形がなければ、頚椎捻挫と診断されます。 頚椎捻挫は炎症が重症にならないよう、受傷直後から1〜2日程度は冷やして安静にすることが大切です。 急性期(受傷時)の治療 安静を保つ 炎症が重症にならないように注意 冷やして安静にする(受傷直後から1~2日程度) 急性の炎症が落ち着いたら、筋肉の萎縮や硬直を防ぐためにも少しずつ動かしていきましょう。最初はストレッチや可動域訓練から始め、マッサージや軽い運動を行います。また、並行して痛み止めの内服や湿布薬を使用していきます。 急性期後の治療 ストレッチ(可動域訓練) マッサージ 日常的な普段通りの生活 痛み止め(内服) 湿布薬 牽引療法や温熱療法 ハビリテーション 急性期後は整形外科クリニックなどで、牽引療法や温熱療法や通院リハビリテーションを行うケースもあります。慢性化する場合は、さらに鍼治療・漢方薬・精神療法・認知行動療法といった、補完的な治療も必要です。 また、癒着した筋膜に生理食塩水を注入するハイドロリリースや、神経根に対して局所麻酔を投与してしびれや痛みを軽快する神経ブロックなどもペインクリニックなどで検討されます。 むち打ち症(頚椎捻挫)の完治期間 症状が軽快するまで通院を行うことが一般的です。軽症であれば1カ月弱で改善しますが、数カ月通院を必要としたり場合によっては慢性化するケースもあります。 特に交通事故やスポーツ外傷の場合は保険も関わってきますから、医師とよく相談し、必要に応じて積極的な通院が必要です。 軽いものであれば自然に軽快しますが、むち打ち症(頚椎捻挫)が完治しないうちにまた強い衝撃が加われば頚椎捻挫が重症化する可能性もあります。 とくにスポーツ外傷では軽快するまでむち打ち症になりかねない激しい運動への復帰は控えましょう。 もし、むち打ち症(頚椎捻挫)後、症状がこれ以上改善しない場合は、症状固定と判断され、行為障害診断書を発行したのち後遺障害等級の認定を受けることも検討する必要があります。 後遺症は以下の通りです。 多くの場合、14級や12級で認定します。 むち打ち症(頚椎捻挫)後遺障害等級 1級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に要介護 2級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護 3級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、生涯働けない 5級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特とくに軽易な労務以外働けなくなった 7級 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外働けなくなった 9級 神経系統の機能または精神に障害を残し、就ける仕事の程度が制限された 12級 局部に頑固な神経症状を残す 14級 局部に神経症状を残す *症状固定となると、治療費、休業補償などは打ち切られますが、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料などが受け取れるようになります。弁護士や保険会社とよく相談の上、医師に認定を相談してみてください。 *症状固定とは ケガや病気を治療する上で治療を続行したとて現在の症状以上の改善を見込むことが難しいと判断された状態を指します。 まとめ|むち打ちを早く治すなら医師の指示を守ろう むちうち症(頚椎捻挫)は交通事故やスポーツ外傷で起きてしまうことが多いです。慢性化して日々痛みに悩まされることにもなりかねません。 また、むち打ち症には4つのタイプがあり(捻挫型、神経根型、脊髄型、Barre-Lieou型)、それぞれ異なる症状を示します。 治療方法としてはまず安静にし炎症を抑えることが重要です。その後ストレッチやマッサージ、湿布薬の使用などを行い、必要に応じて整形外科での治療を受けましょう。 治療期間は症状の重さによって異なりますが、一般的には数週間から数カ月かかることがあります。慢性化した場合は、補完的な治療や後遺障害の認定を受けることも考えねばなりません。 むち打ち症状を疑う場合は最寄りの整形外科医を受診するか、当クリニックにご相談ください。ちょっとした悩みでも真摯に対応いたします。
2024.04.29 -
- 内科疾患、その他
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高血圧の薬とグレープフルーツなどの柑橘類は、相互作用によって薬の効き目が強まってしまうため注意が必要です。 本記事では、高血圧の薬との飲み合わせに注意したい『柑橘類』について紹介します。 ご家族の中に高血圧の方がいる場合、「脳梗塞」や「脳出血」などの発症すると命に関わる病気につながらないように注意しましょう。 「高血圧の治療で効果が見られない」「別の治療法があれば知りたい」という場合、傷付いた血管の改善が期待できる再生医療も選択肢の一つです。 再生医療は傷付いた血管や高血圧によって発症する脳梗塞の症状改善が期待できる治療法です。 ご家族に高血圧の方がいるなら患者さまの将来のためにも、手遅れになる前に公式LINEの情報をぜひご参考ください! \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ ▼ご家族族の肝硬変が悪化して手遅れになる前に! >>【公式LINE限定】再生医療の治療法や症例を今すぐ見てみる 高血圧薬とグレープフルーツをいっしょに食べてはいけない理由は「フラノクマリンが含まれるため」 グレープフルーツと一部の薬を一緒に摂取することは避けるべきとされています。 理由としては、グレープフルーツに含まれる特定の化学成分(主にフラノクマリン類)は、人体内で薬物を分解する酵素(とくにCYP3A4というシトクロムP450酵素)の働きを阻害するからです。 この酵素は、薬物をより無害な形に分解し、体外へ排出するために重要です。しかしこの酵素の阻害は、薬物の体内での濃度を予期せず増加させ、副作用が起こるリスクを高めてしまいます。 血圧を下げる作用を持つ薬剤(降圧薬)の一群に『カルシウムチャネル拮抗薬』がありますが、こちらを一例としてご紹介します。 カルシウムチャネル拮抗薬の薬効は、血管を拡張させることで血圧を下げることです。しかし、フラノクマリン類との相互作用により、これら薬剤の効果が強まり、低血圧やめまい、倦怠感などの副作用を引き起こすリスクが高まってしまいます。 高血圧の薬にはカルシウムチャネル拮抗薬だけでなく、さまざまな作用の仕方、成分がありますが、グレープフルーツを含む柑橘類は同じく避けましょう。 これが降圧薬とグレープフルーツを一緒に摂ってはいけない理由です。 さらに、高血圧の薬以外にもグレープフルーツが影響を及ぼす薬剤として、以下のようなものが挙げられます。 高血圧治療薬(例:カルシウムチャネル拮抗薬 フェロジピン) コレステロール低下薬(例:スタチン類) 抗不安薬 免疫抑制剤 抗アレルギー薬 これらの薬剤も、CYP3A4酵素によって代謝されるため、グレープフルーツやグレープフルーツジュースとの同時摂取はとくに注意が必要です。 健康を守るためにも、薬を服用している場合は、柑橘類の摂取に関して医師や薬剤師と相談しましょう。 また、高血圧については以下の記事でも紹介していますのであわせてご覧ください。 グレープフルーツ以外のフラノクマリン含有量の高い果物(柑橘類)一覧 グレープフルーツ以外にも、高血圧治療薬と相互作用を起こしやすい柑橘類の一覧は以下の通りです。 出典:酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング それぞれ「果汁」と「果皮」でフラノクマリン類含有量が異なることもあるため、上記の柑橘類には注意しましょう。 当院の公式LINEでは、先端医療である再生医療に関する詳細や症例を公開しております。 再生医療は高血圧で傷ついた血管に対しても改善が期待できる治療方法なので、将来的な不安がある方はこの機会にぜひ知っておきましょう。 ▼傷付いた血管の治療に再生医療が注目 >>【公式LINE限定】再生医療ガイドブックを見てみる 果汁の場合 果汁ではスウィーティー、メロゴールド、バンペイユがグレープフルーツと同程度の結果でした。 そして、フラノクマリンの量が増えるとCYP3A4の活性が阻害(働きが妨げられること)される強さの度合いはほぼ比例すると報告されています。 そのため、スウィーティー、メロゴールド、バンペイユおよびレッドポメロはグレープフルーツと同様に、フラノクマリン類による相互作用に注意が必要であると考えられます。 ダイダイ、ブンタン(ザボン)についてはやや少ないですが、これらも注意が必要です。 なお、スウィーティーとレッドポメロはすでに生物の体内でもグレープフルーツと同様にCYP3A4の働きを妨げることが報告されていますが、メロゴールドについてはまだ報告されていません。 果皮の場合 また、果皮についてはメロゴールドとスウィーティー、甘夏みかんおよびサワーポメロがグレープフルーツに近い結果でした。さらに、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で、果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかりました。 レモン・オレンジは相互作用の心配が少ない柑橘類 一方で、レモンや日向夏、ネーブルオレンジ、スウィートオレンジ、温州みかん、ポンカン、イヨカン、デコポン、ゆず、カボス、すだち、キンカン、バレンシアオレンジといった柑橘類については、少なくとも果汁にフラノクマリンはほぼ含まれていない(N.D.:未検出)ので、CYP3A4との相互作用の心配は少ないのではないかと考えられます。 しかし前述したように、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかっています。果汁については心配の少ない柑橘類でも、果皮については、注意が必要です。 高血圧の薬と一緒に柑橘類を食べるときの4つの注意点 高血圧の薬と柑橘類を一緒に食べるときは、以下4つのポイントに注意する必要があります。 フラノクマリンの含有量が低い柑橘類を食べる 果物漬けやマーマレードなど加工食品にも注意を払う どうしても食べたいときは医師や薬剤師へ相談する フラノクマリンが多い果物を食べた場合は安静にし体調の変化がないか確認する フラノクマリンの含有量が低い柑橘類を食べる 柑橘類のなかには、フラノクマリンの含有量が少ないものもあります。 ミカンやオレンジなどの柑橘類で、食べたいと感じる気持ちを落ち着かせましょう。 また、先述したように皮は含有量が高い場合もあります。含有量をあらかじめ調べておくと良いでしょう。 果物漬けやマーマレードなど加工品にも注意を払う 先ほど述べたように、柑橘類の果汁よりも「果皮」にフラノクマリンが多く含まれていることがわ分かっています。そのため、果皮の果物漬けや、マーマレードなどの加工食品を食べる際にも、十分な注意が必要です。 ただし、グレープフルーツ由来のフラノクマリンなどの成分は小腸のCYP3A4に数日間影響を与えます。 そのため、降圧薬を飲む場合には、グレープフルーツジュースで薬を飲むことを避けるだけでは不十分と考えられます。 日常生活の中で、グレープフルーツジュースだけでなく、果汁やサワー、マーマレードなどの加工食品を摂取するのは避けた方が良いでしょう。 ミックスフルーツジュースを飲む際も、グレープフルーツが含まれているかどうかを確認する必要があります。 どうしても食べたいときは医師や薬剤師の意見を参考にしよう 薬剤師や医師は、高血圧薬との飲み合わせに関する専門的な知識を持っています。 薬を服用中の患者は、新しい食品やサプリメントを摂取する前に必ず医療の専門家に相談しましょう。 たとえば、主治医である血圧の診療に長けている医師や、治療薬に精通した薬剤師などは、自分の状況に合ったアドバイスをくれるでしょう。 高血圧の治療中に、自己判断で、新しいサプリメントなどを飲み始めることはあまり勧められません。 摂取すべきでない食品や飲み物、サプリメントを避けることで、高血圧の治療効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小化できるでしょう。 代替となる安全な飲み物や食品 グレープフルーツや特定の柑橘類が持つ特定の薬剤との相互作用は、高血圧治療薬を含むさまざまな薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。 しかし、柑橘類にはビタミンCをはじめとする、健康的な食生活にとって大切な食品であるという側面もあります。 そこで、柑橘類のように高血圧の薬との相互作用を避けるため、他のビタミンCが豊富な食品への代替が推奨されます。 ビタミンCは抗酸化作用を持ち、免疫機能のサポートやコラーゲンの生成に必要な栄養素です。 おすすめの代替食品 キウイ:キウイはビタミンCが豊富であり、1個のキウイで1日のビタミンC推奨量のほぼ100%を提供します。また、抗酸化物質、食物繊維、ビタミンKも豊富に含まれています。 赤ピーマン: 野菜の中でもとくにビタミンCが豊富で、グレープフルーツや柑橘類を避ける必要がある人にとって優れた選択肢です。サラダや料理の彩りも良くしてくれ、栄養も豊富なためおすすめです。 フラノクマリンの多い果物を食べてしまった場合には安静にし体調の変化を確認する もしも知らずにフラノクマリンの多い果物を食べてしまった場合には、急激な体調の変化が起こる可能性があります。 軽度のめまいや頭痛から、血圧が下がるとショック症状や心臓にかかわる症状が出るおそれもあります。 そのため、運動や外出などは避け、座ったり休んだりしながら様子を見ましょう。 明らかな体調の変化が起こった場合には、受診し医師の指示を仰ぐ必要があります。 まとめ|フラノクマリンの多い果物(柑橘類)には要注意 薬との飲み合わせが気になるけど、それでも柑橘が食べたいという時があると思います。 グレープフルーツ以外にも相互作用を起こしやすい柑橘類もありますが、その心配の少ない柑橘類もあります。 しかし、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかっています。 果汁については心配の少ない柑橘類でも、果皮については注意が必要しましょう。 柑橘類を選ぶ際には、この記事の内容をご参考にしていただければ幸いです。 また、当院(リペセルクリニック)の公式LINEでは、先端医療である再生医療に関する詳細や症例をご覧いただけます! できなかったことが再びできるようになる可能性がある再生医療について「どのような治療を行うか」ぜひ知っておきましょう。 ▼傷付いた血管の治療に再生医療が注目 >>【公式LINE限定】再生医療ガイドブックを見てみる また、高血圧の薬の種類や副作用については以下の記事でも解説しておりますのでチェックしてください。 参考文献 Bailey, D. G., Malcolm, J., Arnold, O., & Spence, J. D. (1998). Grapefruit juice-drug interactions. British Journal of Clinical Pharmacology, 46(2), 101-110. 酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング.医療薬学.2006;32(7):693-699. p696 3.高血圧 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会 グレープフルーツと薬物の相互作用 – 「 健康食品 」の安全性・有効性情報 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「Q2 グレープフルーツジュースを避けるべきくすりがあるそうですが、どんなくすりですか。」 Chambial S, Dwivedi S, Shukla KK, John PJ, Sharma P. Vitamin C in disease prevention and cure: an overview. Indian J Clin Biochem. 2013 Oct;28(4):314-28.
2024.04.25 -
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40代、50代になってから急に血圧が高くなったのはなぜ? 血圧とホルモンバランスには関連はあるの? このような悩みを持つ女性も多いのではないでしょうか。 高血圧は生活習慣病の一つとして広く知られていますが、女性の場合は更年期障害が原因のケースもあります。 女性ホルモンであるエストロゲンの減少により、血圧が下がりにくくなるためです。 本記事では、女性に多い高血圧の原因や、自分でできる対処法について解説します。 記事を最後まで読めば、女性由来の高血圧について正しい知識が身につくでしょう。 また、高血圧の改善について、専門科に相談したいという方はぜひ当院「リペアセルクリニック」の「メール相談」「オンラインカウンセリング」をご活用ください。 40代・50代女性の高血圧は「更年期による女性ホルモン減少」が原因 更年期の変化によって生じる高血圧を「更年期高血圧」と呼びます。 高血圧を放置しておくと、心臓病や脳血管障害につながることもあります。 本章を参考に、なぜ更年期になると高血圧が起こるのかを理解し、きちんと対策をしましょう。 女性ホルモンの減少によって生じる更年期障害 女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。更年期になると卵巣機能が低下し、それに伴い女性ホルモンも減少します。このうちエストロゲンの減少が、更年期障害の発症に大きく関わっていると考えられています。 更年期になると卵巣機能が低下し、それに伴い女性ホルモンも減少します。 ホルモンバランスを保てなくなったことに対して、脳がそれを補おうと必死に身体にさまざまな命令を送り、それが更年期症状として現れてしまうのです。 多岐にわたる更年期症状ですが、高血圧以外には以下のようなものが挙げられます。 血管運動に関わる症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸、息切れ、むくみなど) 精神症状(頭痛、不眠、不安感、イライラ、抑うつ、無気力など) 消化器症状(便秘、下痢、胃の不快感、胸焼け、吐き気など) 皮膚症状(かゆみ、湿疹など) 運動器に関わる症状(肩こり、腰痛、背中の痛み、関節痛など) そのほか(疲労感、排尿トラブル、不正出血など) 症状が軽度で済む人もいれば、日常生活に支障が出るくらい重い症状が出る人もいます。軽度の場合は更年期症状、症状が重くなると更年期障害となります。(文献1) 主にエストロゲンの減少が高血圧を招く 私たちの身体は、常に一定の血圧を保持できるよう機能しており、高くなりすぎず、低くなりすぎないように調整されています。 エストロゲンは、その調整因子の一つであり、血管を広げて血圧を下げる働きをしています。更年期による卵巣機能の低下によってエストロゲンが減少すると、血圧が下がりにくくなってしまうのです。 また、自律神経の乱れも更年期高血圧に大きく関わる因子です。 自律神経には、交感神経と副交感神経があります。活発な時や緊張状態の時には交感神経が優位となり、血管が収縮して血圧が上昇します。 逆に休んでいる時や就寝中は副交感神経が優位となり、血管は拡張して血圧が下がります。 このように血圧調整にとても大切な自律神経ですが、女性ホルモン低下に追いつけないことでパニックになった脳は、さまざまな命令を身体に送る中で、自律神経も乱してしまうのです。 自律神経の乱れは血圧変動のみならず、上記に述べたような精神症状や身体症状の原因にもなっています。 このようにエストロゲンの減少と自律神経の乱れは、本来私たちに備わっている血圧調整の歯車を狂わせ、結果的に更年期高血圧を引き起こすのです。 更年期の女性がやるべき高血圧の対策7選 今日からご自身で始められる、更年期高血圧の対策は以下の7つです。 血圧測定を習慣化する 塩分を控える 体重管理を行う 運動習慣を取り入れる 睡眠時間を十分に取る ストレスを溜めない イソフラボンを摂取する 本章では、各項目について解説します。 血圧測定を習慣化する 血圧は普段の状態と、高くなっているときの違いを探すことが大切です。 以下のポイントを意識して、血圧の測定を行いましょう。 血圧上昇が一時的なものなのか 血圧が高い状態がずっと続いているのか どのような時に高くなるのか 外出時は精神的・身体的・環境的因子が血圧に影響することも多いため、自宅での血圧測定を推奨します。 なお「高血圧治療ガイドライン2019」では、血圧測定は、手首型の機器よりも二の腕で測るタイプを勧めています。(文献2) 定期測定は起床時と就寝前の2回、そしてめまいや動悸など、上記の更年期症状が出た際にも血圧を測定し、血圧の推移とともにどのような状況で血圧が上がったのかを書き留めておくと良いでしょう。 自分の状況を把握するだけでなく、医師からの診察の際にも役立ちます。 塩分を控える 塩分過多は高血圧の原因として最も多いとされています。 塩分を多く摂ると、血液中の塩分濃度が上がるため、それを薄めようと血管内の水分が増えます。そのため、血管を押し拡げる力が強くなり、血圧が上がってしまうのです。 近年はとくに、インスタント・冷凍食品の改良化や食事のデリバリー事業などが進み、便利な時代となりました。しかし、既製品や外食は塩分量とカロリーが高くなる傾向にあります。減塩調味料の使用や野菜多めの食事を心がけるようにしましょう。 体重管理を行う 血圧の管理には、体重管理も大切です。 肥満の人は食べ過ぎによるインスリンの出過ぎから、交感神経が刺激されカテコールアミンという物質が分泌され、血圧を上げてしまいます。さらに、脂肪細胞が肥大してアンギオテンシノーゲンという物質が出ることでも血圧上昇を引き起こします。 食事や運動を組み合わせてカロリーを調整し、BMI25以下を目指すようにしましょう。 また、食べ過ぎで塩分を過剰摂取してしまい、血圧上昇につながっている可能性もあります。日頃から減塩を意識して食事を摂りましょう。 運動習慣を取り入れる 仕事や家事に追われて、なかなか運動の時間をとるのが難しい方もいらっしゃいます。 1日の中で、少し早起きしてウォーキングをしてみる、10分のエクササイズ動画を真似してみる、休日にスポーツセンターに行ってみる、一駅分歩いてみる、など小さなことで構いません。自分のできる範囲内で何か始めてみましょう。運動するとイライラした気持ちも収まり、身も心もスッキリします。 睡眠時間を十分に取る 睡眠不足は交感神経を刺激し、高血圧を引き起こします。 しかし更年期障害の一つに不眠もあり、夜なかなか寝付けない人もいるかと思います。 具体的な方法は以下の通りです。 就寝時間の2時間前までに食事を摂り終える 布団に入ったらスマートフォンはいじらない 夜にカフェインやお酒は控える リラックス効果のある香りや音楽をつける ここまでの対策は自身でできることですが、やはり重症化予防の鍵は早期受診となります。 高血圧を適切に治療しなかった場合、心臓や脳の血管に障害を生じ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がります。こうならないためにも、適切な治療を受けることが必要です。 ストレスを溜めない 体や心にかかるストレスは交感神経を興奮させ、血圧を上昇させます。 ストレスが強い、長く続いているという方は要注意です。 自分に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスを溜めないことも血圧管理には大切です。 ストレス解消法の一例は、以下の通りです。 体を動かす 趣味に没頭する 日光を浴びる 好きな音楽を聴く 動物と触れあう 自分なりのストレス解消法を見つけ、高血圧を予防・改善させましょう。 イソフラボンを摂取する イソフラボンは、更年期に減少する女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをします。そのため、イソフラボンを摂取すると、更年期障害による心や体の症状の改善が期待できます。 イソフラボンは大豆、豆腐、納豆などのマメ類に多く含まれます。 さらに、LDLコレステロールを下げる働きもあり、動脈効果を防ぎます。そのため、動脈硬化による血圧上昇の予防にもなるのです。(文献3) まとめ|更年期女性の高血圧はエストロゲン減少が原因!医療機関の受診も検討しよう 更年期高血圧は、更年期を迎える女性の身体の変化に伴って生じるものです。 更年期を過ぎると血圧が元に戻ることもありますが、多くの場合は加齢の変化と相まって高血圧のままとなります。命を脅かす病気に発展しないよう、血圧のコントロールを行うことが大切です。 毎日の生活習慣を改善し、早期に病院を受診しましょう。このコラムがご参考になれば幸いです。 血圧が高くなってきて悩んでいる方は、当院の「メール相談」「オンラインカウンセリング」もぜひご活用ください。 また、高血圧とストレスについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。 参考文献 (文献1) 公益社団法人 日本産科婦人科学会,更年期障害 (文献2) 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019. (文献3) 久保田芳郎 ほか. 大豆イソフラボンアグリコンの更年期障害に対する効果について. 公益社団法人 日本人間ドック学会. 2002:17(2), p172-177
2024.04.22 -
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高血圧の予防と改善!高い血圧を下げるには食事・運動・薬でコントロール! 高血圧を放置すると、脳卒中・心疾患・腎臓病など命に関わる病気に発展するリスクがあります。 それにもかかわらず、国内で4300万人と推計されている高血圧罹患者のうち、適切に血圧がコントロールされているのはたった3分の1といわれています。残りの3分の2の方はコントロール不良あるいは未治療、その半数は自分が高血圧であることに気づいてすらいないのです。 高血圧は、気がつかない間に重大な病気を引き起こし得るため「サイレントキラー」とも呼ばれています。 血圧を予防・改善するには何をすれば良いのでしょうか。鍵となるのは、食事や運動の見直しと適切な薬の使用です。 本記事では、高血圧の原因や症状、基準値などの基本的な情報とともに、効果的な対策法を分かりやすく解説していきます。 高血圧の原因:何が血圧を上げるのか 高血圧には、原因別に「二次性高血圧」と「本態性高血圧」の2つがあります。 二次性高血圧 二次性高血圧は、特定の病気が原因で血圧が上昇するケースを指します。 その病気を治療することで、高血圧を改善することが期待できます。 本態性高血圧 本態性高血圧は、複合的な原因で起こる高血圧のことです。 原因として、体質や遺伝的な要素に加え、不適切な食事・肥満・運動不足・喫煙などの生活習慣が関係しています。特に日本人は塩分をとりすぎやすく、血圧上昇に大きな影響があります。血圧を下げるためには減塩をはじめとした生活習慣の改善に取り組むことが必要です。 二つの高血圧のうち、圧倒的に多いのは本態性高血圧です。この記事でも主に本態性高血圧について取り上げていきます。 高血圧診断の基本:血圧の基準値とは 高血圧の診断は、診察室と自宅それぞれの血圧測定で行います。 まず、診察室血圧が【収縮期血圧140/拡張期血圧90mmHg以上】であれば自宅で血圧を測定します。 自宅の血圧が135/85mmHgであれば高血圧の確定診断となります。自宅での血圧が測定できない場合は、診察室の血圧だけでも「高血圧」と考えます。 では、基準値より低ければ正常かというと、そうではありません。 「正常血圧」は、診察室で測った血圧が120/80mmHg未満、自宅で測った血圧が115/75mmHg未満の場合を指します。 高血圧でなくても、正常血圧より高いグレーゾーンがあるのです。 病院での測定値で120〜139/80〜89mmHg、家庭血圧で115〜134/75〜84mmHgの場合が、以下のグレーゾーンに該当します。 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019 高血圧の診断を満たさなくとも、血圧が高くなるにつれて脳卒中や心筋梗塞などの「脳心血管の疾患」が起こりやすいのです。また、グレーゾーンの方は生涯のうちに「高血圧」の基準を満たす可能性も高くなります。たとえ診断に至らなくても、血圧が高めの方は対策をとることをおすすめします。 また、自宅での血圧が高血圧に該当しなくても、診察室血圧のみが高血圧の基準を満たす場合は「白衣高血圧」といいます。白衣高血圧の方は高血圧でない方と比べて、将来的に脳心血管の病気を起こすリスクが高く、要注意です。 自宅血圧測定の方法:計測する時間帯や回数 自宅で血圧を測定することは高血圧の診断に重要ですが、それ以上に治療においても重要です。家庭血圧が降圧治療の一番の指標になるからです。 家庭血圧が正常範囲になることが、高血圧対策が有効と判断する重要な材料になるのです。高血圧と診断されたら、家庭血圧を毎日測って把握することが治療の第一歩になります。 では、家庭で血圧を測定するときのポイントをお伝えします。 家庭血圧測定のポイント 1日の中で血圧を測る時間帯は、朝と夜の両方が基本です。 朝は起きてから1時間以内に測ります。朝ごはんを食べる前、薬を飲む前、トイレに行った後が良いです。測定前に水分を取ることは構いません。夜は寝る前に測定しましょう。 血圧測定時は、1〜2分間じっと落ち着いてから行います。測る前に深呼吸をしてリラックスしましょう。急いで測定すると、正確な血圧が出ないことがあります。 血圧は原則的には、都度2回測定します。2回の結果はどちらとも記録しておきましょう。つまり、朝2回、夜2回、計4回測ります。 起床後 1時間以内に2回 就寝前 2回 2回測った血圧の値は、平均値で判断します。 高血圧の診断や治療の効果を判断するには、5〜7日間の血圧の平均値を用います。そのため、毎回の血圧測定毎に「高かった」「今日は下がっている」と一喜一憂することはあまり意味がありません。 家庭血圧測定で一番大事なことは、継続することです。ご自身の生活スタイルに合わせて測定時間を調整しましょう。 毎日決まった時間に測定することが望ましいですが、難しい場合は担当医師と相談しましょう。 高血圧の自覚症状:頭痛・肩こりとの関係と潜むリスク 高血圧のみでは自覚症状がないことが多いです。人によっては、血圧が高いと軽度の頭痛や肩こりなどの症状が現れることがあります。 一方で、血圧が急激に高くなることによって危険な状態に陥る場合もあります。それが、「高血圧緊急症」です。脳・心臓・腎臓・大きな血管などに障害をきたし、放置すると命に関わります。多くの場合は180/120mmHg以上の高度の血圧上昇により起こるものです。 高血圧緊急症の例として次のような疾患が含まれます。 〈高血圧緊急症の例〉 高血圧性脳症 脳卒中 急性大動脈解離 急性心不全 急性心筋梗塞 急性腎不全 とくに「高血圧性脳症」は耳慣れない言葉かもしれません。これは急激に血圧が上昇することで、脳の血流が必要以上に増加して脳が浮腫む病気です。 そのまま放置すると脳出血や昏睡状態を引き起こし、命を落とす危険性もあります。急激な血圧上昇に加えて悪化する頭痛・吐き気・嘔吐・視力の障害・意識障害・痙攣などの症状は、緊急で受診をする必要があります。 高血圧対策!生活習慣の見直しで予防・改善 高血圧は生活習慣病であり、生活習慣を見直すことは高血圧の予防・改善の第一歩です。 具体的に改善すべき点の例を以下に挙げます。 〈高血圧対策において見直すべき項目〉 塩分を控えめにしているか 食事の内容は野菜・果物・魚などが中心になっているか 運動習慣があるか 適正な体重(BMI 25kg/m2未満)を維持できているか お酒を飲み過ぎていないか(エタノールで男性20-30mL/日、女性で10-20mL/日以下) タバコを吸っていないか このような項目の1つだけを見直したとしても、一気に10mmHgも20mmHgも血圧が下がるものではありません。2つ、3つと可能な限り複数合わせて取り組むことで、大きな効果をもたらす可能性はあります。 降圧薬を飲んでいる状況でも、生活習慣を改善することで薬を減らすことができるかもしれません。それぞれの項目は互いに関連することも多いため、まずはできることから始めましょう。 食事療法で高い血圧を下げるには 食事で血圧を下げるのに重要な見直しポイントは「減塩」と「食事の内容と量」です。また、「飲酒量のコントロール」も大切です。一つずつ解説していきましょう。 減塩について 減塩については、1日に6g未満を目標にします。 厚生労働省の令和元年国民健康・栄養調査によると日本人の1日の塩分摂取量の推定は10.1gとされています。多くの日本人にとって6g未満の塩分量の食事は、非常に薄味に感じるでしょう。 医療機関では尿検査で1日の塩分量の推定をすることができます。あくまで推定値で誤差はありますが、自分がどのくらいの塩分を取っているかを知る一つの目安になるでしょう。気になる方はかかりつけの病院や最寄りの医療機関で相談してみてください。 減塩のポイントは、出汁やスパイス、お酢などを上手に使うことです。また、漬物やハム・ソーセージなどの加工食品には食塩が多く含まれるためなるべく避けましょう。味噌汁やラーメン・うどんなどの汁は飲み干さないようにしましょう。 食事の内容と量 食事の内容としては、野菜・果物・魚を積極的に摂り、肉類など動物性の脂肪は控えめにすることが重要です。 野菜や果物に多く含まれるカリウムは、塩分に含まれるナトリウムを排出させて血圧を下げることがわかっています。ただし、カリウム摂取については腎臓病の方は制限が必要な場合もあります。通院中の方は主治医の指示に従いましょう。 肉や高脂肪の乳製品などに多く含まれる飽和脂肪酸が過多になると、血中のコレステロールが増え動脈硬化が進み血圧が上がります。一方で魚や多くの植物性油脂・ナッツなどに多く含まれる不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らし血圧を下げる効果があります。 そして、どんなに体に良い食事でも食べ過ぎは肥満のもとです。肥満は血圧上昇とも関連するため、腹八分目を心がけましょう。 飲酒量のコントロール 飲酒習慣は血圧を高くします。節酒も血圧を下げるのに有効です。高血圧がある方の飲酒量の目安は1日あたりエタノールで男性20-30mL、女性で10-20mL以下です。 〈1日あたりの飲酒量の目安:男性の場合〉 日本酒 1合 ビール 中瓶1本 焼酎 0.5合 ウイスキー ダブル(約60mL) ワイン 2杯 ※女性はこの半分を目安にしてください。 運動療法で血圧は下がる?有酸素運動のすすめ 運動は血圧を下げるだけでなく、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防や改善にも効果があります。 おすすめは有酸素運動です。ウォーキングやジョギング、エアロビクス、水泳など、ご自身が楽しいと感じるものが継続しやすいでしょう。 「少しきつい」と感じるくらいの運動強度で、1日30分以上行ってください。 毎日続けるのが難しい場合は、まずは週に1回でも運動習慣を作るところから始めてみてはいがかでしょうか。 薬物療法による高血圧のコントロールについて知ろう 高血圧の薬は様々な作用機序で血圧を下げます。代表的なものは以下の通りです。 〈代表的な降圧薬〉 ACE阻害薬、ARB:血圧を上昇させるホルモンの作用を阻害する カルシウム拮抗薬:血管を拡張させて血圧を下げる 利尿薬:余分な水分やナトリウムを体外に排出する β遮断薬:交感神経を抑制して心収縮を抑えて血圧を下げる 血圧を下げる薬を内服する上で大切なことがあります。それは、血圧が下がっても自己判断で中止しないことです。 どのような降圧薬であっても、効果はあくまで一時的なものです。飲み始めて血圧が下がったからと内服をやめてしまうと、元の高い血圧に戻ってしまいます。ただし、生活習慣を良くしていくことで徐々に減薬・中止をすることができる方もいます。薬の調整は、運動や食事に気をつけながら、家庭血圧の測定結果をもとに医師と相談して決めましょう。 まとめ・高血圧は食事・運動・薬でコントロール! 本記事では高血圧の原因をはじめとした基本情報と、効果的な対策について説明しました。 高血圧の多くを占める本態性高血圧では、塩分のとりすぎをはじめとした生活習慣が大きく関わっています。症状がないからといって高血圧を放置すると、命に関わる病気を起こしかねません。 血圧が気になるのであれば、まずは定期的な血圧測定を行い日々の血圧がどのくらいかを把握するように努めましょう。 高血圧対策の第一歩は生活習慣を改善することです。一気に運動も食事も改善しようとするのが難しければ、できるところから始めてみましょう。薬をすでに処方されている方は、しっかり続けることもお忘れなく。 本コラムが皆様の健康的な生活に少しでも役立ちますと幸いです。 参考文献 厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.04.15 -
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「ストレスで血圧が上がるのは本当?」「ストレスによる高血圧はどうしたらいい?」と疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。 実際、ストレスは血圧に大きな影響を与える原因の1つです。 この記事では、医師監修のもとストレスが血圧を上げるメカニズムや、高血圧を予防する生活習慣について解説します。 本記事を読めば、ストレスと血圧のメカニズムを正しく理解し、健康管理に役立てることができるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では高血圧によって引き起こされる疾患の治療も行っております。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 ストレスで血圧が上がる3つのメカニズム 日常生活でストレスを感じると、体はさまざまな反応を示します。その中でも血圧の上昇は代表的な症状の1つです。 ストレスによって血圧が上がる原因として、以下の3つが挙げられます。 ストレスホルモンが血管を収縮させる 交感神経が活発になる 血管が収縮し血圧が上昇 本章では、ストレスが交感神経を刺激し、ホルモンの分泌や血管の収縮を引き起こすメカニズムを解説します。(文献1) ストレスホルモンが血管を収縮させる ストレスを感じると、体内でコルチゾールやアドレナリンといったホルモンが分泌され、血管を収縮させます。 体をストレスから守るために必要な一方で、血管を収縮させる作用も持ち合わせているため、血管が細くなり、血圧が上昇します。 たとえば、大きなプレッシャーを感じた時、心臓がドキドキしたり、顔が赤くなったりするのは、ストレスホルモンが分泌され血管が収縮しているサインです。 この作用が血圧上昇の要因となります。 交感神経が活発になる ストレスを感じると、自律神経の1つである交感神経が活発になります。 交感神経は、人が活動する際に働き、心臓の動きを速めたり血管を収縮させたりします。 ストレス時には交感神経が過剰に働き、心拍数の上昇や血管の収縮が起こり、結果的に血圧が上がる仕組みです。 こうした反応は自然な防御反応ですが、長期間続くと健康への悪影響が懸念されます。 そのため、ストレスをうまく管理する習慣が、健康維持には必要だといえるでしょう。 血管が収縮し血圧が上昇 ストレスを感じると、血管が収縮して血液が流れる抵抗が強くなり、血圧が上昇します。 この状態が長引くと、心臓や血管に負担がかかり生活習慣病のリスクが高まる可能性もあります。 血圧の急上昇を防ぐためには、深呼吸や軽い運動などで血管をリラックスさせる時間を設けることが大切です。 また、高血圧と生活習慣病の関係については以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしていただけると幸いです。 【測定時】ストレスで血圧が変動する2つのケース 血圧を測定するときの環境や状況によっても、数値が変動することがあります。主なケースは以下の2つです。 職場高血圧 白衣高血圧 それぞれの原因を理解し、血圧変動を和らげる対策を見つけましょう。 仕事のストレスにより血圧が上昇する「職場高血圧」 職場高血圧とは、勤務中や仕事に関連したストレスによって血圧が高くなる状態を指します。 仕事のプレッシャーや締め切りへの焦りは交感神経を活性化させる原因です。心拍数が上がることで血管が収縮し、高血圧を引き起こします。 職場高血圧を防ぐためには、仕事の合間に適度な休憩をしたり、深呼吸をしたりすることを心がけましょう。 リラックスできる環境作りが、「職場高血圧」対策の第一歩となります。 病院での緊張により血圧が上昇する「白衣高血圧」 病院で測定するときだけ血圧が高くなる場合、白衣高血圧の可能性があります。 医師や看護師の前で緊張することで、交感神経が活発になり血圧が一時的に上がる現象です。測定後には自然に戻るケースが大半ですが、放置すると日常的な高血圧につながる恐れもあります。 対処法として、深呼吸をしてリラックスした状態で測定したり、普段から自宅で血圧を測る習慣を付けたりすることが挙げられます。 ストレスに左右されない状況下で、正確な血圧の数値を把握しておきましょう。 ストレスによる高血圧は「生活習慣の改善」で予防できる ストレスによる血圧上昇は、放置すると高血圧につながる恐れがあるものの、生活習慣の見直しによる予防が可能です。 本章では、ストレスによる高血圧を予防するための、具体的な生活習慣の改善策を5つご紹介します。 適度な運動をする バランスの取れた食事を摂る 睡眠をしっかりとる 禁煙やアルコールを控える リラックスする時間を作る できることから始めて健康な毎日を目指しましょう。 また、以下の記事では、高血圧の薬(降圧薬)の種類と副作用に関する情報をまとめています。高血圧の治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。 適度な運動をする 適度な運動は、ストレス解消につながります。また、運動によって血行が促進され、血管が柔らかくなることで血圧の安定も期待できます。 ウォーキングやジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動を生活に取り入れるのがおすすめです。 毎日30分のウォーキングを習慣にすると、心身ともにリフレッシュでき、血圧コントロールにも役立つでしょう。 バランスの取れた食事を摂る バランスの取れた食事は、高血圧予防に欠かせません。 塩分を摂りすぎると、血液中の塩分濃度が高くなり、血管が収縮して血圧が上昇しやすくなります。高血圧を予防するには、塩分控えめを意識しましょう。 カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ると、体内の余分な塩分を排出する効果が期待できます。 また、食物繊維を多く含む食品も、血圧の安定に役立ちます。 毎日の食事内容を見直し、バランスの取れた食生活を心がけましょう。 睡眠をしっかりとる 質の良い睡眠は、ストレスを軽減し血圧を安定させるために重要です。 睡眠不足はストレスホルモンの分泌を促し、交感神経を活発にするため、血圧上昇の原因となります。 高血圧を予防するには、毎日同じ時間に寝起きし、7〜8時間の睡眠を確保するのが理想的です。 また、寝る前にカフェインを摂取するのを控えたり、リラックスできる環境を整えたりするのも効果的です。 質の高い睡眠を確保し、高血圧予防に努めましょう。 喫煙やアルコールを控える 喫煙や過度なアルコール摂取は、血圧を上昇させる要因となるため、控えるのが望ましいでしょう。 タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧を上昇させる働きがあります。また、アルコールの過剰摂取も、血圧の上昇や睡眠の質を低下させる原因になります。 禁煙に取り組む、あるいは飲酒量を減らすだけでも、血圧コントロールにつながるでしょう。 リラックスする時間を作る ストレスを溜め込まないためには、意識的にリラックスする時間を作るのも大切です。 音楽やアロマ、入浴など、自分に合った方法でリラックスしましょう。 また、瞑想や深呼吸などのリラックス法も効果的です。 自分に合ったリラックス方法を見つけ、日々の生活に取り入れてみてください。ストレスをうまく解消できれば、結果的に高血圧の予防にもつながります。 高血圧の予防方法については以下の記事でも解説していますので、興味がある方はぜひご覧ください。 高血圧の原因 高血圧は一次性と二次性の2タイプに分かれますが、主な違いは以下のとおりです。 一次性高血圧 ほとんどの高血圧はこのタイプに該当 明確な原因は特定されていないが、遺伝・食生活・生活習慣など複数の要因が関連していると考えられている 二次性高血圧 なんらかの病気や状況が原因で血圧が高くなるケース 腎臓病・内分泌異常・特定の薬剤の使用などが原因 また、高血圧の発症には以下の5つの要因が関係します。 高血圧の発症リスク 内容 加齢 加齢により血管が硬くなり、血流の調整が難しくなる。とくに中高年以降で発症率が上昇。 性別 男性は中年期に高血圧が多く、女性は閉経後にリスクが高まる傾向がある。 遺伝 遺伝的要素が影響しやすく、親族に高血圧の方がいる場合、発症リスクが高まる可能性がある。 生活習慣の乱れ 塩分の多い食事や運動不足が血圧上昇の原因。肥満や喫煙、アルコールもリスク要因となる。 ストレス 精神的な負荷が交感神経を刺激し、血圧を一時的または慢性的に上昇させる場合がある。 表のとおり、高血圧の原因にはさまざまな理由が挙げられます。 とくに、生活習慣の見直しやストレス軽減など、自己管理によって改善できる部分は意識してみましょう。 また、高血圧の原因についてはこちらの記事でもさらに詳しく解説しています。 血圧でお悩みの方は参考にしていただけると幸いです。 まとめ|高血圧を予防するためストレスを溜めない生活を心がけよう この記事では、ストレスが血圧を上げるメカニズムや、高血圧を予防するための生活習慣について解説しました。 ストレスは身体にさまざまな影響を与え、血圧を上昇させる要因の1つです。 しかし、事前知識や適切な対策によって血圧をコントロールし、高血圧を予防できます。適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけることが重要です。 本記事を参考に、リラックスする時間を持って健康な毎日を過ごしていきましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、高血圧が原因となる脳出血や脳梗塞の治療も行っています。気になる症状がある方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 ストレスと血圧に関するよくある質問 ストレスで血圧はどれくらい上がりますか? ストレスを感じた際、一時的に10〜20mmHg程度血圧が上がる場合があります。(文献2) 慢性的なストレスが続く場合、持続的な高血圧につながる可能性があるため注意が必要です。 メンタルと血圧は関係ありますか? メンタルの状態と血圧は密接に関係しているため、ストレスや不安が続くと交感神経が過剰に働き、血圧が上昇します。 一方、リラックス状態では副交感神経が優位となり血圧が安定します。 そのため、心の健康を保つことは血圧を安定させる上で重要です。 当院「リペアセルクリニック」では、高血圧が引き起こす疾患に効果が期待できる再生治療も行っています。「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献一覧 文献1 日本高血圧学会_高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)作成委員会 文献2 社会医療法人 春回会_高血圧とストレス
2024.04.10 -
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リゾトミーの術後後遺症にお悩みですか?日帰り最新医療のご紹介 「つらい腰痛が良くなると思って受けた治療で、後遺症が残ってしまった…」 そのようなお悩みはありませんか。 リゾトミーは慢性難治性腰痛の原因となる神経の伝達を遮断し、痛みをとる方法です。体への負担は少ないとされていますが、医療行為である以上は合併症のリスクからは逃れることはできません。人によっては後遺症が長期化してしまうこともあり得ます。 この記事では腰痛に対するリゾトミーの詳細と、術後後遺症としての神経損傷について、そして最新の後遺症治療の「再生医療」について解説しています。 リゾトミーとは?高周波熱凝固療法について解説 リゾトミーは英語でrhizotomyと表記されます。主に脊椎の椎間関節の痛みをもたらす脊髄神経後枝内側枝に対する「高周波熱凝固療法」のことです。整形外科、あるいは疼痛を専門に扱う「ペインクリニック」で行われています。 この高周波熱凝固療法の技術は、従来の神経ブロック注射で効果が一時的である慢性難治性疼痛に用いられるものです。リゾトミーにおいては、椎間関節ブロックによって痛みが椎間関節由来だと診断された場合に行われます。 高周波熱凝固療法では、ターゲットの神経のすぐ近くにピンポイントで高周波(ラジオ波)を流す特殊な針を刺します。ラジオ波が神経組織内のイオン分子を高速振動させることで神経組織が高温となり、熱で変性するのです。変性した神経は痛みを伝える機能を失うため、痛みを感じなくなります。 このような治療は、神経の伝達を遮断して痛みが脳に伝わらないようにするため「神経破壊法」と呼ばれています。神経を破壊するというと恐ろしく感じるかもしれませんが、長期に痛みを抑える優れた治療法として広く用いられています。 従来、リゾトミーはX線による透視画像を見ながらターゲットになる神経を探していました。一部の施設では内視鏡の技術を用いたリゾトミーも行われています。この内視鏡とは、坐骨神経痛などを起こす椎間板ヘルニアの手術(PELD手術)で実用化されているものです。内視鏡で直接ターゲットの神経を探すことで、より確実にねらった神経を遮断することができます。日本国内ではまだできる病院やクリニックは少ないですが、今後普及していくかもしれません。 リゾトミーの術後合併症としての神経損傷 リゾトミーの合併症のうち、後々まで問題になりやすいのが神経損傷です。滅多に起こることではありませんが、神経を傷つけてしまうことで、痺れ・痛み・麻痺などが起こります。 傷ついた神経の再生は非常に困難です。確実に治るという治療法はなく、内科的な投薬治療やリハビリテーションを組み合わせて自然に良くなるのを待つことになります。徐々に改善する方もいますが、症状が長期にわたって続く場合も残念ながら存在します。 術後後遺症に再生医療 術後後遺症が良くならない場合の選択肢として、「幹細胞治療」が期待されています。幹細胞治療とは、臓器や器官の機能再生を目的とした再生医療のひとつです。 幹細胞治療では、「幹細胞」と呼ばれる万能細胞を用います。幹細胞は自分自身を複製できる能力(自己複製能)と体の様々な臓器・組織の細胞に変化できる能力(分化能)をもつ細胞のことを指します。 幹細胞治療では幹細胞のもつ分化能を利用しています。傷ついた部位に幹細胞を投与することでその臓器や器官が「再生する力」を引き出しているのです。 これまで、幹細胞治療は多くの疾患への可能性が示唆されてきましたが、神経もその一つです。従来、傷ついた神経組織は回復が非常に困難と考えられていました。しかし、最先端の再生医療では、この神経の修復もできるのではと期待されています。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE 日帰り再生医療の実際 当院では様々な神経損傷に対して幹細胞治療を提供しています。実際の治療の流れを3ステップでご説明します。 ①脂肪採取 診察や各種検査の結果から、幹細胞治療を行うことが決定したら、まずは幹細胞の採取を行います。当院では、患者様ご自身の脂肪から幹細胞を採取しています。お臍の下あたりから、脂肪を米粒2~3粒ほどの少量を採取します。傷は1cmほどと小さく、局所麻酔で可能な上、痛みもほとんどありません。 ②細胞培養・増殖 取り出した脂肪から、幹細胞を取り出して培養していきます。当院の細胞加工室の技術は国内トップクラスです。他施設で用いられる牛などの血清でなく、患者様ご本人の血清を用いた培養をすることで、感染症やアレルギーのリスクを抑えています。輸送や保存の際に幹細胞を凍結しないため、フレッシュで生き生きとした状態で細胞の投与が可能です。 ③患部への投与 4〜6週間かけて幹細胞を培養したら、患者様に投与を行います。当院では点滴だけでなく、「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行なっています。背中から細い針を刺して、幹細胞を脊髄のすぐ近くに直接注入する方法です。直に幹細胞を届けることができるため、神経の再生能力がより高まることが期待されます。投与は局所麻酔下で行い、当日にご帰宅いただけます。 まとめ・リゾトミーの術後後遺症にお悩みですか?日帰り最新医療のご紹介 リゾトミーと術後後遺症、また合併症治療の最先端についてご紹介いたしました。 つらい神経障害の後遺症に対してお困りであれば、幹細胞治療をご検討されてはいかがでしょうか。 当院ではしっかりご納得いただいた上で治療を選んでいただくことを大切にしております。お電話やメールでの無料相談も受け付けております。 気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。 参考文献 伊達久. 医学と薬学. 77(1): 31-37, 2020. 山口忍, 吉村文貴, 松本茂美, 竹中元康, 飯田宏樹. 日本臨床麻酔学会誌. 34(7): 938-946, 2014. 濱口眞輔, 山田哲平. 麻酔 68(9): 959-965, 2019. 奥田泰久. 日本臨床麻酔学会誌 38(5): 622-626, 2018. 金子和生, 田口敏彦. 日本腰痛学会雑誌 12(1):72-76, 2006. 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 Chen KT, Kim JS, Huang AP, Lin MH, Chen CM. Current Indications for Spinal Endoscopic Surgery and Potential for Future Expansion. Neurospine. 2023 Mar;20(1):33-42. doi: 10.14245/ns.2346190.095. Epub 2023 Mar 31. PMID: 37016852; PMCID: PMC10080449. 再生医療ポータル 再生医療について 再生医療の現状と展望 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.03.29 -
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慢性腰痛の治療に!Rhizotomy(リゾトミー)とは 「腰の痛みがつらい」「慢性的な腰痛の治し方を知りたい」と思いませんか? 慢性腰痛とは、3ヶ月以上続く腰痛のことです。治るわからない慢性的な痛みは日常生活に支障をきたし、心身ともに大きなストレス をもたらします。 マッサージや 薬でもリハビリでも良くならず、ブロック治療を考えた方や実際に試された方もいるでしょう。 「 ブロック治療の効果ってすぐ切れちゃうんでしょう?」 そう思った方は、椎間関節ブロックの効果が一時的であった場合に考慮される「リゾトミー」について知っておくと良いでしょう。 本記事では、リゾトミーの概要や どのような人に有効なのか、 費用や合併症などについても説明していきます。 リゾトミーってなに? リゾトミー(rhizotomy)とは、腰痛に対して行われる痛みを伝える神経を遮断する治療法で、高周波熱凝固法とも呼ばれます。 高周波熱凝固法は、特定の神経をラジオ波と呼ばれる高周波電流を用いて焼き固める治療です。特に 「リゾトミー(rhizotomy)」と呼ぶ場合は椎間関節の痛みに対して行われる「facet rhizotomy」を指すことが多く、ターゲットとなる神経は腰椎の「椎間関節」を支配する脊髄神経後枝内側枝です。 もともと、腰痛はいわゆる「背骨」の構成要素である椎骨や間に挟まった椎間板、その中を通る脊髄から伸びる神経など様々な要素が関わる病態です。中でも特に椎骨同士が連結する関節である「椎間関節」由来の痛みは腰痛の大きな原因を占めます。日本国内の研究では、腰痛患者の5人に1人は椎間関節性の疼痛であると報告されているのです。 椎間関節由来の痛みに有効なのが、脊髄神経の後枝内側枝に局所麻酔薬を投与する神経ブロック(椎間関節ブロック)です。しかし、局所麻酔薬の効果は一時的で、短期間に繰り返しの投与が必要になることもあります。何度も繰り返してしまう場合、神経自体を変性させてしまうことで痛みの伝達を遮断する方法が用いられます。それがリゾトミーなのです。 リゾトミーにおいて、 痛みを伝える神経だけをピンポイントで変性させるため使われるのは特殊な針です。針の先端部以外は絶縁体で覆われ、針先のみ金属が露出しています。X線透視画像と患者様の症状を確認しながら、この針先をターゲットの神経のすぐ近くに移動します 。そして、針端の金属部分から高周波のラジオ波電流を流します 。 ラジオ波電流は神経組織のイオン分子を高速で振動させ、熱を生じます。こうして高温になった神経の変性が起こり、痛み情報が脳へと伝達されなくなるのです。 リゾトミーが有効なのはどんな人? 腰椎の椎間関節ブロックが一時的に効くが、何度も痛みが繰り返してしまい良くならない人に対して適応があります。リゾトミーは、ピンポイントではあるにせよ神経を変性させてしまう処置です。あらかじめ「特定の椎間関節の痛み」であると診断されていることが前提となります。そのため、腰椎関節ブロックが効くことがわかっている必要があるのです。 リゾトミーの費用は?保険は利くの? リゾトミー(高周波熱凝固法を 用いた腰椎後枝内側枝神経ブロック)の費用は、 公的健康保険の対象です。 手技にかかる費用としては保険点数で340点、つまり3400円が算定されます。1割負担の方では340円、3割負担の方では1020円の窓口負担です。 ただし、各種診察や検査、ほかに処方された薬剤などについての諸費用が加算されるため、実際にはもう少し高額になります。また、保険を使うためにはさまざまな制約があります。 一方、自由診療で行なっている施設もあります。自由診療の場合は健康保険を使用する場合と異なり、制約がありません。自由診療では医療機関側が価格を設定できるため、それぞれ費用が異なります。30~60万円程度が相場ですが、詳細は医療機関にお問い合わせください。 リゾトミーの合併症ってあるの? リゾトミーは比較的安全とされていますが、危険性はゼロではありません。針を血管や神経に刺してしまい出血や神経損傷が起こる、針を刺したところに感染が起こるなどが主 です。熱凝固を行う際に穿刺部の痛みを生じることがあります 。また、体内に埋め込まれた金属があると火傷の恐れがあるため、適応外になります。 たとえばペースメーカーや心臓のステント、手術で用いられる釘などがある場合などが挙げられます。 また、非常に稀な合併症に、脊髄梗塞が挙げられます。脊髄の栄養血管が何らかの理由で虚血に陥ることで起こる合併症です。梗塞を起こした神経が支配する部分が痛み、筋力低下や感覚が障害されます。なぜ起こるのかはわかっていません。過去には頚椎後枝内側枝の熱凝固療法時に脊髄梗塞を起こした例が報告されています。 このような合併症で後々まで問題になりやすいのが神経の障害です。神経が傷つくと、新たな痛みやしびれ・麻痺などの後遺症に悩まされることになります。従来はこれらに対してできることは対症療法のみでした。 しかし、最近では最先端の再生医療である幹細胞治療が神経の障害にも有効である可能性が示されています。幹細胞という万能細胞を投与することで、傷ついた神経の再生を促すのです。幹細胞治療を受けることで、神経障害により不自由になった生活を元どおりに戻すことができる人が増えています。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE ▶こちらの動画でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。 リゾトミーの弱点とは?これからの可能性について リゾトミーは神経を変性させるため、効果は永続的と考えるかもしれません。 実際は、しっかりと焼き切れていないと神経が再生して痛みが繰り返し てしまうため、長期に効果が続くわけではありません。 しかし、新たな手法により、この弱点をカバーできるかもしれません。それはPELD(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy :経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)という最先端のヘルニア治療で使われる技術を応用した「内視鏡的リゾトミー」です。 PELDでは7mm程度のとても細い筒状の内視鏡を用いてヘルニアの手術を行います。この内視鏡を、リゾトミーで焼く神経を定めるのに使うのが、内視鏡的リゾトミーです。内視鏡で実際に神経を確かめるため、より確実な神経の焼灼ができます。 実際に海外の研究では、椎間関節の内視鏡的リゾトミーは、従来の透視下で行う方法よりも効果がある期間が長かったという報告がされています。日本で内視鏡的リゾトミーを行なっている施設はまだ少ないのが現状ですが、今後普及すればより確実に腰痛を治療することができるようになるでしょう。 慢性腰痛について、気になるQ&A Q:腰痛は温めるのと冷やすのではどちらが良いの? A:慢性腰痛でははっきりとどちらが良いということは分かりません。ただし、急性・亜急性腰痛では温熱療法が痛みの緩和に良い可能性が示されています。ただし、やりすぎは禁物です。皮膚が赤くならない程度にしましょう。 Q:腰痛に対する鍼灸やあん摩・マッサージ・ヨガなどの効果は? A:これらは効果のほどを確かめる研究が難しく、医学的に効果があるかをはっきりと証明することが難しい部分があります。研究の多くは海外からの情報で、日本の実情と異なる可能性も否定できません。そのため、医療者としてこれらの効果に対して言及することは困難です。なお、鍼灸については公的健康保険の対象になることがありますが、医師の同意が必要です。 Q:リゾトミーは内科?整形外科?どこの病院で受けることができるの? A:多くはペインクリニック専門医という痛みの緩和を行う医師が行なっています。また、一部の整形外科でも行なっていることがあります。リゾトミーだけでなく、「高周波熱凝固法」や「ラジオ波焼灼脱神経化」など様々な呼び名で紹介されているため、お探しの際にはご注意ください。 まとめ・慢性腰痛の治療法!Rhizotomy(リゾトミー)とは リゾトミーについて、どのような治療なのか、またリスクや今後の可能性について解説しました。 腰痛の方全員にリゾトミーが必要なわけではありません。しかし、条件が合えば、長く続く辛い腰痛から解放される可能性がある治療と言えるでしょう。 当然ですが、どのような治療法にもリスクは伴います。治療を受ける前にはしっかりとした情報収集と、医師との相談が必要です。 なお、当院ではリゾトミーの術後後遺症に対する幹細胞治療を行っております。術後後遺症でお悩みであれば、まずはカウンセリングを受けてみませんか? 参考文献 福井 晴偉, 大瀬戸 清茂, 塩谷 正弘, 有村 聡美, 多久島 匡登, 大野 健次, 唐沢 秀武, 長沼 芳和. 日本ペインクリニック学会誌. 3(1): 29-33. 1996. 伊達久. 医学と薬学. 77(1): 31-37, 2020. 山口忍, 吉村文貴, 松本茂美, 竹中元康, 飯田宏樹. 日本臨床麻酔学会誌. 34(7): 938-946, 2014. 濱口眞輔, 山田哲平. 麻酔 68(9): 959-965, 2019. 大瀬戸清茂. 日本ペインクリニック学会誌. 16(3): 301-301, 2009. 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 全国健康保険協会 はり・きゅう、あん摩・マッサージのかかり方 出沢 明. 臨床整形外科. 58(9): 1167-1172, 2023. Chen KT, Kim JS, Huang AP, Lin MH, Chen CM. Current Indications for Spinal Endoscopic Surgery and Potential for Future Expansion. Neurospine. 2023 Mar;20(1):33-42. doi: 10.14245/ns.2346190.095. Epub 2023 Mar 31. PMID: 37016852; PMCID: PMC10080449. ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.03.25 -
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慢性腰痛治療のリゾトミー、メリット・デメリットはある?医師が解説します 「 慢性的な 腰痛にいい治療法はないの?」「痛の治療を知りたい」このような疑問や悩みはありませんか?! 慢性痛に対する治療方法として、「リゾトミー」をご存知でしょうか? しかしリゾトミーについては情報が少なく、具体的な治療について知らない方も多いでしょう。本記事ではリゾトミーの詳細として、適応となる腰痛や治療の方法、メリット・デメリットを解説します。 腰痛の治療方法について気になる方は参考にして頂ければと思います。 リゾトミーとは リゾトミーとは、変形した椎間関節で起こる痛み、神経が過敏状態(痛みが感じやすくなっている)を治療するために行う手術です。この手術は、過敏になっている知覚神経にある枝をラジオ波という高い周波数を発生する熱で焼灼して痛みを軽減させるものです。 リゾトミーの適応 リゾトミーは、長く続く治りにくい腰痛(慢性腰痛:まんせいようつう )に対する治療です。 慢性難治性腰痛はさまざまな原因がありますが、背骨の関節である椎間関節(ついかんかんせつ)の変形により増殖した知覚神経が原因となっている腰痛の場合、リゾトミーが適応になります。 ここでは椎間関節の変形による腰痛と、 リゾトミーの適応となる腰痛について詳しく解説します。 椎間関節とは? 背骨は椎骨(ついこつ)というブロックのような骨 が積み重なってできています。椎骨の背中側には、 関節突起(かんせつとっき)と呼ばれる出っ張りが上下にあります。 積み重なった上下の椎骨にある関節突起が重なってできた関節が、 椎間関節です。 背骨の動きは、この 椎間関節によって作られます。 椎間関節の変形により起こる腰痛 加齢や運動、衝撃などで繰り返し腰に負担がかかると椎間関節に変形が生じます。 椎間関節が変形すると、知覚神経と呼ばれる痛みを感じる神経が過剰に増えてしまいます。知覚神経は感覚神経とも呼ばれ、痛みを感じる神経でもあります。 上記のように知覚神経の過剰な増殖により痛みを感じやすくなってしまう状態が、慢性腰痛の原因の1つです。 知覚過敏による慢性腰痛がリゾトミーの適応 椎間関節の変形により知覚神経が過剰に増えて 、腰痛が慢性化してしまうと、コルセットや薬物療法などの保存療法では改善しない場合があります。 慢性腰痛 に対して、痛みの原因となっている知覚神経へアプローチ して痛みの改善を図るのがリゾトミーによる治療です。 リゾトミーの具体的な方法 リゾトミーとは、痛みに敏感になった知覚神経の枝が、変形した椎間関節に入り込んでいる所に対して、ラジオ波と呼ばれる高周波数で発生する熱を利用して焼いてしまいます。その結果、神経の過敏状態の改善が図られることで、 疼痛が緩和されるのです。 ラジオ波の照射には皮膚を切開する必要はなく、針のような電極を刺してレントゲンで透視しながら患部にあてます。針は鉛筆やボールペンよりも細いため、大きな傷を作ることなく治療が可能です。 もし椎間関節の変形が複数あり、複数箇所にラジオ波の照射が必要な場合でも、局所麻酔で同時に治療できます。局所麻酔下で治療が可能ですので 、短時間かつ日帰りで手術できます。 リゾトミーのメリット リゾトミーは、 保存療法では改善されない難治性の腰痛に対して改善が期待できる点が大きなメリットです。 また治療内容に関しても以下のようなメリットがあります。 メリット 短時間の治療 入院するケースが少ない 治療による傷が少ない 手術の時間は短く、15分〜30分 程度で終了します。 局所麻酔による手術ですので入院の必要がなく、術後は1時間程度安静にした後、 歩いて帰宅することが可能です。 また、2mm〜5mm程度の大きさの傷(ラジオ波を照射する針を刺すときにできる傷)のみで、皮膚を切開しないため、術後に縫合する必要もありません。 複数箇所行う場合でも、上記の大きさの傷が4箇所程度で済むため体に対する負担の少ない手術です。 リゾトミーのデメリット リゾトミーは保険が適用されない自由診療の治療です。 腰痛に対する自由診療の手術として、他にもPELD(内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術)やMEL(内視鏡下脊柱管拡大術)などの治療方法があります。 どの治療方法も自由診療だと全額自己負担になるため、治療費が高額になります。リゾトミーの治療費の相場はは60万円〜70万円 です。 また、どの病院でも治療が可能なわけではなく、日本では脊柱を専門とする一部の整形外科で実施されています。そのため、リゾトミーに 関する知識や技術を持った医師がいる施設で、自由診療でしか治療を受けられない点はデメリットです。 リゾトミーを受けるためには、治療とに必要な高額な費用 と施対応している医療機関が少ない設を探す手間 が必要な点は理解しておきましょう。 なお、リゾトミーの術後後遺症として以下のようなものがあります。 デメリット 術後の血腫 術部の感染 神経損傷/li> 血栓症 自由診療で健康保険の適用外 治療費が高額(60~70万円) 術後後遺症として神経損傷による障害が残った場合は、再生医療(幹細胞治療)が適応となります。術後後遺症に対する再生医療(幹細胞治療)についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE まとめ・リゾトミーは難治性慢性腰痛の治療として自由診療で可能 リゾトミーは、 薬物療法やリハビリなどの保存療法では改善できなかった慢性的な腰痛の改善が期待できる手術です。 この手術は、過敏になった知覚神経をラジオ波で焼灼することで、痛みを軽減させるものです。特に、椎間関節の変形によって引き起こされる腰痛に効果的で、保存療法では改善しない場合に適用されます。 この治療法の大きなメリットは、短時間で済む手術であり、入院の必要がなく、日帰りでの治療が可能な点です。手術自体も皮膚を大きく切開する必要がないため、体への負担が少なく、術後の回復も早いです。 また、リゾトミーは複数箇所に対して同時に治療が可能であり、局所麻酔で行われるため、患者への負担がさらに軽減されます。 一方で、リゾトミーにはデメリットも存在します。まず、保険が適用されない自由診療であるため、治療費が高額になります。治療費の相場は60万円から70万円とされており、全額自己負担です。 また、日本ではこの治療を提供している医療機関が限られているため、適切な施設を探す手間と費用が必要です。さらに、術後に血腫や感染、神経損傷、血栓症などのリスクも存在する点も理解しておくことが必要です。 総じて、リゾトミーは慢性腰痛に悩む患者にとって有効な治療法ですが、その高額な費用と限られた実施医療機関、術後のリスクを考慮する必要があります。 治療を検討する際は、医師と十分に相談し、自分に適した最善の方法を選択することが重要です。 慢性腰痛でお悩みの方は、リゾトミーのメリット、デメリットをよく理解した上で、適切な判断を行うよう心がけましょう。 尚、術後後遺症の治療に対しては、再生医療(幹細胞治療)も適応となるので、詳しくはお問い合わせください。 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.03.22 -
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慢性腰痛とは、一般的に「12週間以上持続する腰痛」のことです。多くの場合、治療が効かずに慢性化してしまっており、痛みを一気に解決する方法はなかなか見つかりません。 しかし、腰痛によってあまり動けない状態が続くと、体幹や全身の機能が低下していきます。日常生活や仕事への影響が拡大する前に、何とか治したいと考える方は多いでしょう。 腰痛の治療は保存的療法が基本ですが、手術が有効なケースもあります。 この記事では、手術が有効な可能性がある腰痛の種類と、主な手術方法について解説します。また、手術以外の選択肢として再生医療についても紹介しますので、長引く腰痛に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。 慢性腰痛の治し方として手術が有効かは症状による 慢性腰痛の治療には、手術以外にもさまざまな保存的治療があります。(文献1) 治療項目 詳細 運動療法 ・全身を鍛えることで腰が安定する ・腰の負担が軽くなる 薬物療法 内服薬や神経ブロック注射で痛みを軽減する 物理療法 マッサージや鍼治療、温熱療法、経皮的電気刺激(TENS)などで痛みの軽減を図る 腰痛教室 ・腰痛のメカニズムを知る ・動作上の注意点や腰痛体操といった予防策を学ぶ 認知行動療法・心理面のケア ・痛いから何もできない、といった思い込みを解消する ・ストレス対策、カウンセリングなど 症状によっては、運動療法と心理面のケアを組み合わせれば、手術と同等の効果があるともいわれます。(文献2)手術はあくまで選択肢の一つであることを知っておきましょう。 手術が有効な治療法となる慢性腰痛の原因・症状 手術が有効となりえるのは、神経が圧迫されて腰痛が生じている場合です。(文献2)病名としては以下が挙げられます。 椎間板ヘルニア 腰椎すべり症 腰椎分離症 変形性脊椎症 など こうした病気でも、最初は保存的治療により様子を見ます。しかし、痛みやしびれ、排泄障害などによって日常生活への支障が大きい場合は手術を検討します。 一方で、神経を圧迫する明らかな狭窄やすべり症を伴わない慢性腰痛の場合は、慎重な判断が必要です。少なくとも脊椎固定術については、効果は限定的とされており、積極的には行いません。(文献2) 慢性腰痛における手術での治療方法を紹介 ここでは慢性腰痛の治療で検討される代表的な手術方法を紹介します。 リゾトミー(高周波熱凝固法) 脊椎固定術 全内視鏡下脊椎手術 再生医療 手術以外の選択肢として再生医療についても解説するので、ぜひ参考にしてください。 リゾトミー(高周波熱凝固法) リゾトミーは神経ブロックの一種で、高周波の熱を使って痛みの原因となる神経を焼き切る治療法です。神経を完全に殺すわけではなく、数か月ほどで再生します。 局所麻酔薬による神経ブロックが効くけれど、長持ちせず困っている方に良い適応となります。とくに神経根の圧迫による痛みに対して効果があるとされています。 リゾトミーを行う手順は以下のとおりです。 手術台にうつ伏せになっていただき、対象となる腰椎の横突起関節(おうとっきかんせつ)の皮膚を洗浄・滅菌する 局所麻酔薬を注射し、皮膚とその下の組織の痛覚を抑える X線で確認しながら、腰椎へ特殊な針を挿入し、腰痛の原因と考えられる神経に針先を向ける 針に小さな電流を流して、筋肉のひきつれや痛みの誘発をテストし、正しい神経に届いていることを確認する 針を通して高周波エネルギーを送り、神経を加熱して焼き切る 針を抜き、挿入部位を包帯で覆う これでリゾトミー治療は終了です。しばらく経過観察した後、その日のうちに帰宅できます。 脊椎固定術 脊椎固定術とは、不安定になったり変形したりしている脊椎を固定する手術です。脊椎をボルトで固定し安定を図る方法(脊椎固定術)と、狭くなった背骨の間にスペーサーを挟んで整える方法(LIF:椎体間固定術)があります。 両者を併用する場合も多く、総称して脊椎固定術と呼ぶこともあります。 神経を圧迫している明らかな狭窄がある場合や、腰椎すべり症により背骨がずれている場合は、脊椎固定術の良い適応です。腰痛の原因が椎間板障害だとわかっている場合は、脊椎固定術で痛みが軽減する可能性があります。(文献3) 脊椎をボルトで固定する手術は、一般的に背中側から行います。狭くなった脊椎にスペーサーを挟む手術は、おなか側から手術する方法(ALIF)、背中側から手術する方法(PLIF・TLIF)、内視鏡を使って脇腹を経由する方法(LLIF)に大きく分けられます。(文献4) どの方法で手術する場合も、入院して全身麻酔で行うのが一般的です。 全内視鏡下脊椎手術 内視鏡だけで完結する脊椎の手術が、全内視鏡下脊椎手術です。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症といった一部の慢性腰痛症に適用となります。飛び出している椎間板を切除する手術や、スペーサーを挟んで椎間を広げる手術などが、内視鏡だけで可能です。 内視鏡手術の利点として、傷が小さく痛みも少ない、筋肉や内臓を触ることによる合併症が起きにくい、といった体への負担の少なさが挙げられます。治療内容や病院の対応状況によっては、局所麻酔で手術可能な場合もあります。また、入院期間も短く済むのが一般的です。 なお、過去の手術により癒着が起きている恐れがある場合や、脊椎周辺の靱帯が全体的に硬くなっている場合など、内視鏡では対応できないケースもあります。ただし、たとえば背中からの手術歴がある方に、脇腹経由で再手術できるケースもありますので、主治医とよく相談してみてください。 再生医療 再生医療は手術ではありませんが、保存的治療とも異なります。さまざまな細胞に分化できる幹細胞の性質を活かした、体への負担がの少ない治療法です。入院の必要はなく、日帰りの処置と注射で治療が完結します。 再生医療は、慢性腰痛の手術をどうしても避けたい方や、事情があって手術を受けられない方でも行える可能性があります。また、手術を受けたけれど症状が変わらない方や、再発・悪化した方も検討可能です。 当院「リペアセルクリニック」での再生医療「幹細胞治療」の流れは以下のとおりです。 患者様の腹部から、米粒2~3粒程度の脂肪組織を採取する 脂肪組織から幹細胞を抽出し、約1カ月間培養する 増やした幹細胞を、点滴または脊髄腔内に直接注射して投与する 脊髄腔内への投与は注射により、傷ついた神経の近くに直接幹細胞を届けられます。 慢性腰痛の手術治療における費用目安・治るまでの期間 慢性腰痛の手術治療の費用感(自己負担額)と、およその入院期間をまとめました。症状や治療内容によって異なるため、あくまで目安とお考えください。 手術の種類 費用目安(検査や入院費用も含む) 入院期間 リゾトミー(高周波熱凝固法) ・保険診療:数千円 ・自由診療:約30~60万円 日帰り可能 脊椎固定術 約60〜85万円 7日~2週間 全内視鏡下脊椎手術 約25〜40万円 5日~7日 リゾトミーを保険で行うには条件があるため、自由診療で治療を行う医療機関もあります。 脊椎固定術では一般的に、術後3カ月ほどコルセットの着用が必要です。 どの手術においても、完全な痛みの軽減を実感するまでには個人差があり、数週間から数カ月かかることがあります。治療後は、手術を受けた医療機関へ定期的に通院し、必要なフォローアップを受けたり、リハビリテーションに取り組んだりしましょう。 慢性腰痛に対する各手術のリスク 慢性腰痛の手術にはリスクも伴います。先に紹介した手術の主なリスクについてまとめました。 手術の種類 主なリスク リゾトミー(高周波熱凝固法) ・感染 ・軽度の熱傷 ・迷走神経反射(血圧低下などの自律神経反応) 脊椎固定術 ・一時的な筋力低下や感覚障害(手術中に筋肉に触った場合) ・腎臓、尿管、大腸などの損傷や、動静脈損傷 ・下肢麻痺、下肢知覚鈍麻、排尿排便障害 ・硬膜の損傷、脳脊髄液の漏出 ・髄膜炎 全内視鏡下脊椎手術 ・一時的な筋力低下や感覚障害(手術中に筋肉に触った場合) ・下肢麻痺、下肢知覚鈍麻、排尿排便障害 ・硬膜の損傷、脳脊髄液の漏出 ・髄膜炎 リゾトミーは、重い合併症の発現率が0.92%と低く、安全性が高い手術とされています。(文献2) 脊椎固定術と全内視鏡下脊椎手術は、どちらも手術操作に伴う合併症のリスクがあります。長時間にわたり同じ姿勢で手術を受けるため、下になっていた皮膚の損傷や、皮膚の神経麻痺が起きる可能性もゼロではありません。 まとめ|慢性腰痛の治療で手術が有効か気になる場合は専門医へ相談 慢性腰痛の原因が、椎間板ヘルニアや腰椎すべり症などによる神経への圧迫の場合、手術が有効なケースがあります。しかし、手術には多額の費用がかかるほか、さまざまな合併症のリスクも伴います。 慢性腰痛の治療方法は手術だけではありません。運動療法や薬物療法、心理療法といった保存的治療や、再生医療も選択肢となります。慢性腰痛に悩んでいれば、医療機関へ相談しましょう。どの治療が適しているか、医師としっかり相談して治療していくのが大切です。 また、手術をどうしても避けたい方や、手術の結果が思わしくない方は、再生医療が力になれるかもしれません。慢性腰痛の再生医療に興味のある方は、当院へお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 村田淳ほか.「慢性腰痛の疼痛管理─リハビリテーションの視点で」『日本腰痛会誌』10(1), pp.23-26, 2004年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/10/1/10_1_23/_pdf(最終アクセス:2025年4月19日) (文献2) 真興交易(株)医書出版部「慢性疼痛診療ガイドライン」2021年 https://www.jhsnet.net/pdf/totsu_guideline_jp.pdf(最終アクセス:2025年4月19日) (文献3) 一般社団法人 日本腰痛学会「腰痛に関する手術治療」日本腰痛学会ホームページ https://www.jslsd.jp/medical/surgical-treatment/(最終アクセス:2025年4月19日) (文献4) 上田茂雄ほか.「側方経路椎体間固定術のメカニズム─手術適応と合併症の回避」『脊髄外科』32(2), pp.143-150, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/32/2/32_143/_pdf(最終アクセス:2025年4月19日)
2024.03.19 -
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この記事を読んでいる方は「椎間板ヘルニアのPLDD手術で失敗したらどうなるのだろう」と不安になっているのではないでしょうか。 椎間板ヘルニアのPLDD手術は、メスを使わないため出血が少なく、全身麻酔の必要もないため、患者さんの負担の少なさが特徴です。しかし、適応できるヘルニアは限られ、自分の状態に合うかをよく見極める必要があります。 本記事では、椎間板ヘルニアのPLDD手術について、失敗と言われる例や失敗を防ぐポイント、失敗した際の対処法などを詳しく解説します。記事を最後まで読めばPLDD手術の注意点がわかり、より失敗の少ない施術を検討できるでしょう。 【効果なし?】ヘルニアのPLDDが失敗だったと言われる3つの例 椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が飛び出して神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす病気です。その治療法として、経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD:Percutaneous Laser Disc Decompression)が注目を集めています。 しかし、PLDDはすべての患者さんにとって最適な治療法とは限りません。 「ヘルニアのPLDDが失敗だった」と言われる主な例は以下の3つです。 十分な効果が得られずに痛みが続く 合併症や後遺症が起こる ヘルニアが再発する 本章の内容をもとに、PLDDが失敗だったと言われる例を確認しておきましょう。 なお、PLDD手術の詳細は、以下の記事で詳しく説明しています。 十分な効果が得られずに痛みが続く もともと効果が期待できない人が手術を受けた場合、術後も痛みが続いて「PLDDに失敗した」と思う可能性があります。 PLDDは、局所麻酔で1ミリmm程の穴から針を挿入し、レーザーを椎間板中心部に照射します。髄核を一部蒸発させて内圧を下げることで、神経を圧迫していたヘルニアが引き戻され、腰痛やしびれが改善する手術です。 適するヘルニアの大きさや症状には限りがあり、残念ながら他の手術法の方が良い方におこなわれて「効果がなかった」となるケースもあります。 PLDDが適するヘルニアの種類については、記事の後半で説明します。 合併症や後遺症が起こる PLDDはリスクが少ないと言われていますが、以下のような合併症が起こるケースもあります。 手術後の感染 レーザーの影響による骨壊死 レーザーの誤照射や針による損傷 どんな手術にもリスクは存在します。メリットだけでなくデメリット・リスクなども事前によく確認するようにしましょう。 ヘルニアが再発する 手術後に痛みが改善しても、その後ヘルニアが再発して「PLDDは失敗だった」と思うケースも考えられます。 PLDDの治療成功率は約70%で比較的高い傾向ですが、約5%の確率で再発するといわれています。(文献1) ただしPLDD以外の手術であっても、手術後の再発リスクはゼロではないことが多いでしょう。 手術を受ける前に再発リスクについて確認し、PLDDを受けるべきか検討することが大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、椎間板ヘルニアのPLDDにおける後遺症の治療に再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。従来の点滴による投与方法のほかに、より神経の再生にアプローチしやすい「脊髄腔内ダイレクト注射」も選択可能です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 ヘルニアのPLDD手術で失敗しないためのポイント3選 リスクが少ないといえども、PLDD法が失敗する可能性はあります。治療を後悔しないために大切な内容は、以下のとおりです。 自分のヘルニアにPLDD手術が適しているかチェックする 費用や期待できる効果を事前に確認する 手術後の注意点を守る 本章の内容をもとに、PLDDの失敗を防ぐための知識を身に着けておきましょう。 自分のヘルニアにPLDD手術が適しているかチェックする 椎間板ヘルニアには、PLDDが適するものと適さないものがあります。 ここからの内容をもとに、自分のヘルニアが、PLDDに適しているかどうかを確認しましょう。 症状が似ている「脊柱管狭窄症」とヘルニアの見分け方については、以下の記事をごらんください。 PLDDが適している可能性が高いケース 椎間板ヘルニアに対してPLDDが適する可能性が高いケースは、以下のとおりです。(文献2) 内容 詳細 神経根の圧迫による症状である 以下の典型的な症状がある: 下肢への放散痛(坐骨神経痛) 腕への放散痛など 画像診断でヘルニアが確認され、症状と一致する 椎間板の突出が神経根を圧迫しているのが明確である とくに椎間板が全体的に膨らんだような形になっているヘルニア(膨隆型:ぼうりゅうがた)は良い適応 保存的治療(薬物療法、物理療法など)で十分な改善が見られない 数週間から数カ月の保存的治療後に効果が不十分な場合、PLDDを検討することがある 医師の説明を良く聞き、相談した上で手術を受けるか検討するようにしましょう。 腰椎椎間板ヘルニアについては、以下の記事で詳しく解説しています。 PLDDが適していない可能性が高いケース PLDDが適さない可能性が高いケースは、以下のとおりです。 内容 理由・解説 椎間板の破裂や大きな脱出がある PLDDは椎間板の小さな突出に対して効果的だが、大きな脱出や破裂には適さないため 重度の椎間板狭窄や脊椎管狭窄がある PLDDによる改善が難しく、他の手術的治療が必要な可能性があるため 椎間板感染症や腫瘍がある PLDDの適応外であるため 椎間板以外の原因による症状がある 椎間板ヘルニア以外の原因で症状が出ている場合は、PLDDが適さないため 例) 筋肉の緊張 関節の問題など PLDDの適応は状態や症状によって異なるため、専門医による詳細な診断と評価が欠かせません。他の治療方法との比較検討も含めて、専門医と十分に相談しましょう。 PLDD以外の手術法については、以下の記事で詳しく説明しています。 費用や期待できる効果を事前に確認する PLDD手術を受ける前は、以下の4点を確認しておきましょう。 費用 期待できる効果 副作用 治療後の経過観察やリハビリの必要性 痛みがつらいときは、「早く痛みを取り除きたい」という一心で手術を決断しがちです。しかし、手術後のトラブルや失敗を減らすには、費用や副作用、術後のケアなども事前に確認すべきです。 気になる点は必ず質問し、疑問を残さないようにしましょう。 PLDDの費用については、以下の記事で解説しています。 手術後の注意点を守る PLDDは、身体に与える負担が小さい治療です。しかし、治療後には以下のような注意点を守る必要があります。 術後は安静にし、医師の指示に従って徐々に活動を再開する 痛みやしびれが再発した場合は、早めに医師に相談する 定期的な通院やリハビリなどのフォローアップを受け、症状の変化に注意する 手術後の不十分なケアによる再発防止にも、注意点は大切な役割を果たします。 PLDDの有効性や手術後の痛みについては、以下の記事も参考にしてみてください。 ヘルニアのPLDDで失敗したら再生医療を検討しよう PLDDは、ヘルニアによる短期的な痛みの軽減に有効であると考えられます。しかし、変性した椎間板そのものの修復はできません。 PLDDの他に、椎間板ヘルニアに対する治療選択肢としては、再生医療があります。 再生医療の一つである「幹細胞治療」は、身体から採取した幹細胞を培養して投与する治療法です。椎間板ヘルニアによる神経損傷や変性した椎間板に対する治療として実施されています。 また、PLDDと再生医療を組み合わせることで、椎間板ヘルニアの痛みの軽減と椎間板の修復・再生の両方を目指すアプローチとなる可能性があります。。 ただし、再生医療は治療費が高額になる可能性があるため、費用と効果のバランスを考慮する必要があります。 まとめ|ヘルニアのPLDDで失敗しないためのポイントを知っておこう PLDDは、椎間板ヘルニアの治療に有効な選択肢ですが、すべての患者さんに適するわけではありません。 治療を受ける前には、自分の状態がPLDDに適するかを理解し、医師と十分に相談することが重要です。また、治療後の適切なケアとフォローアップも欠かせません。 患者さんご自身が積極的に情報を収集し、自分に適した治療法を選択することが、後悔しないための鍵となるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、ヘルニアにおけるPLDDの失敗や後遺症に関して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 もし術後の後遺症にお困りであれば、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にご相談ください。 PLDDのヘルニア手術の失敗が気になる人によくある質問 PLDDを失敗しない名医を探す方法はありますか? どんな手術にもリスクはあります。 そのため、「絶対失敗しない名医」ではなく、「自分が信頼できる医師」を探す方が現実的ではないでしょうか。 医療機関を探す際は、以下のポイントを確認しましょう。 病院や医師の実績 納得できる説明がされたか なお、PLDDは自由診療のため、金額をはじめとする詳細は医療機関によって異なります。他の手術方法も念頭に置き、自分に合う治療法・医師を探してみてください。 PLDDが失敗する確率はどのくらいですか? 文献によってばらつきがありますが、PLDDが有効な症例に対して行った場合の成功率は75~89%というデータがあるため、失敗する確率は11~25%程度とわかります。(文献3) しかし、効果がなく、失敗する確率が高いヘルニアの人にPLDDがおこなわれる可能性を考えると、正確な失敗率は何とも言えません。 自分の症例にどの程度の確率でPLDDの効果が期待できるかは、医師へ確認してみるのが良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、PLDD手術の失敗例や後遺症に対して再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。相談は無料で受け付けておりますので、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」まで気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 石井克典ほか,椎間板ヘルニア髄核組織の光学特性の算出と経皮的レーザー椎間板減圧術の最適波長に関する一考察.2010;31(2):152-157 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslsm/31/2/31_2_152/_pdf(最終アクセス:2025年2月25日) (文献2) 中溝 寛之ほかレーザーによる経皮的椎間板減圧術 (PLDD法) の経験.中四整会誌.1997;10 (2): 229-233. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsoa1989/10/2/10_2_229/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年2月17日) (文献3) Hellinger J. ,Technical aspects of percutaneous laser disc decompression (PLDD),Lasers in Surgery and Medicine, 1999.Dec;16(6):325-31. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10204439/(最終アクセス:2025年2月17日)
2024.03.15 -
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腰椎椎間板ヘルニアによる慢性的な痛みやしびれに悩む方の中には「手術は避けたいが、痛みを改善したい」と思う方も多いでしょう。 放置すると症状が悪化し、歩行困難や日常生活への影響が深刻になることもあるので、適切な治療を選んで早めに対処することが重要です。とくにPLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)は、低侵襲で回復が早い治療法として注目されています。 手術よりも身体的負担が少なく、日帰りも可能ですが、効果や後遺症のリスクも気になるでしょう。 この記事では、PLDDのメリット・デメリット、後遺症の可能性、費用感について詳しく解説します。治療方法の参考にしてください。 メリット・デメリットを理解するための PLDD治療に関する基礎知識 PLDD(Percutaneous Laser Disc Decompression経皮的レーザー椎間板減圧術)は、レーザーを使用して椎間板内の圧力を低下させ、神経への圧迫を軽減する治療方法です。 具体的には、皮膚とその下の筋肉に局所麻酔を施した後、非常に細い針(0.4㎜)を背中から椎間板に挿入します。その針の中にレーザーファイバーを通し、レーザーを照射して椎間板内の髄核の一部を蒸発させます。この過程により、椎間板が縮小するため圧力が下がり神経への圧迫が軽減する手術です。 PLDDは主に頚椎や腰椎のヘルニア治療に用いられ、従来の手術に比べて侵襲性(体への負担)が低いのが特徴です。 PLDD治療のメリット PLDD治療のメリットは4つあります。 直接神経に触れない治療のため安心して受けやすい 切開をほとんど伴わず手術後に日帰りできる 局所麻酔で手術可能なので身体への負担が少ない 再生医療とPLDD治療を併用しやすい それぞれ詳しく解説します。 直接神経に触れない治療のため安心して受けやすい PLDD治療は、直接神経に触れることなく施術を行えるのがメリットです。レーザーファイバーを椎間板内に直接挿入し、神経から十分に距離をとった状態で処置を行うため、手術中の神経損傷を起こしにくく安全性が高いとされています。 従来の外科手術に比べて出血も少なく、身体への負担が軽減できるため、高齢者や体力に不安がある方でも安心して受けやすい治療法です。また、局所麻酔で行うため、全身麻酔ほどのリスクがありません。 ただし、すべてのヘルニアに適応できるわけではなく、効果にも個人差があるため、事前の画像診断や診察による適応判断が重要です。 切開をほとんど伴わず手術後に日帰りできる PLDD治療は、直径0.4㎜程度のレーザーファイバーを挿入するだけであり、切開をほとんど伴わない治療法です。施術時間は30〜60分程度と短く、多くの場合は手術当日に退院できます。 皮膚を大きく切開しないので感染症のリスクが低く、術後の回復もスムーズです。術後の痛みも少なく、歩行や軽い日常動作はすぐにできます。入院が不要なため、以降の仕事や家庭への影響はほとんどありません。 保存療法でなかなか改善しない方、高齢で大がかりな手術が難しい方などにおすすめの治療方法です。 局所麻酔で手術可能なので身体への負担が少ない PLDD治療は、局所麻酔で手術が可能なため、身体への負担が少ない治療法です。全身麻酔のリスクを避けられるため、手術中の負担を軽減できます。高齢者や全身麻酔が困難な方でも、安心して治療を受けることが可能です。 局所麻酔による手術は、術後の回復が早く、長時間の入院も不要です。とくに持病を抱えている方や体力に不安がある方に適しています。全身麻酔が不要なため、術後の体調管理も容易です。痛みが比較的少なく、社会復帰もスムーズに進められます。 身体への負担を抑えながら、効果的な治療を受けたい方におすすめです。 再生医療とPLDD治療は併用しやすい PLDD治療は、レーザーで椎間板の圧力を下げて神経の圧迫を和らげやすい低侵襲の治療法です。再生医療と組み合わせることで、さらに治療効果を高められます。 PLDD後に幹細胞を注入すると、神経の修復が促進され、炎症の軽減や組織の再生が期待できます。PLDDは皮膚を小さく穿刺するだけで負担が少ないため、再生医療との相性が良好です。 細胞の修復能力を活用することで術後の回復が早まり、痛みの再発リスクも抑えられます。ヘルニアの再発を防ぎたい場合、PLDDと再生医療の併用が有効です。 PLDD治療のデメリット(リスク) PLDD治療のデメリットは以下の5つがあります。 効果が即効性に乏しい 治療にかかる費用が全額負担になる ヘルニアの状態・種類によって治療を適用できない場合がある 手術後に後遺症が出ることがある ヘルニアが再発するリスクがある それぞれ解説します。 効果が即効性に乏しい PLDDは即効性に乏しい点がデメリットです。手術後すぐに症状が改善するわけではなく、1週間程度経過してから徐々に効果が現れます。完全に改善するまでには2〜3カ月ほどかかることが一般的です。ヘルニアの状態によっては、痛みの軽減が十分でない場合も考えられます。 レーザーによる椎間板の減圧が少しずつ進むため、即効性を求める方には向いていません。日常生活への影響を抑えながら治療を受けられる反面、効果を実感するまでに時間が必要です。そのため、改善までの期間を考慮した治療計画を立てることが大切です。 治療にかかる費用が全額負担になる PLDDの治療費は自己負担となり、保険が適用されません。病院によって費用は異なりますが、30〜50万円程度が相場です。自由診療のため、高額療養費制度は利用できません。 治療を検討する際は、費用と想定される効果を考慮し、納得した上で選ぶことが大切です。クレジットカード払いや医療ローンを利用できる場合もあるため、支払い方法について事前に確認すると安心でしょう。 また、PLDD治療費は他の医療費と合わせて年間10万円を超える場合、医療費控除の対象となり還付金を受け取れる可能性があります。ただし、医療費控除を受けるには確定申告が必要なので注意してください。 ヘルニアの状態・種類によって治療を適用できない場合がある PLDDは、すべての椎間板ヘルニアに適用できるわけではありません。ヘルニアの状態や種類によっては、治療を行えないか効果が限定される場合があります。 たとえば、椎間板の変性が進んでいると、PLDDのレーザー照射による減圧が十分に機能しない可能性が高いです。 また、大きく突出したヘルニアや、神経を強く圧迫しているケースでは、手術が必要になる場合もあります。骨の変形を伴うヘルニアや脊柱管狭窄症がある場合も、適応外となる可能性があります。 このようなケースがあるため、事前に画像診断を受けることが大切です。適用範囲に制限がある点を理解した上で治療を検討しましょう。 手術後に後遺症が出ることがある PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)は低侵襲な治療法ですが、手術後に後遺症が出ることがあります。主な後遺症は以下の通りです。 症例 概要 神経障害 神経の損傷や圧迫によるしびれや感覚異常が生じることがあります。 炎症の持続 手術後の炎症が長引き、痛みが続くケースもあります。 症状の再発 PLDDは根治治療ではなく、時間の経過とともに症状が再発することがあります。 椎間板の損傷 レーザーによる熱ダメージで椎間板が脆くなり、損傷が広がる可能性があります。 感染症 低侵襲手術とはいえ、感染リスクが少なからずあります。 PLDDは侵襲性が低いものの、少なからず後遺症のリスクがあります。 これらの後遺症に対し、再生医療が適用できます。再生医療の幹細胞治療により、損傷した組織の回復を促すことが可能です。症状に応じた適切な治療を受けることで、改善が見込めます。 ヘルニアが再発するリスクがある PLDDの有効率は、文献によって異なりますが、約70%と報告されています(文献1)。一方、一般的に行われる椎間板切除術では、術後5年で再発率が1.5〜8.5%です(文献2)。単純な比較はできませんが、PLDDはこれらより治療成績が劣ると考えられます。 PLDDは、椎間板の内圧を下げることでヘルニアの圧迫を改善する治療法です。しかし、ヘルニアが後縦靭帯を突き破っている場合、すでに椎間板内圧が低下しているため、レーザーで髄核を焼いてもヘルニアが縮小しません。そのため、PLDDの適応は保存療法が効かず、後縦靭帯を破っていないヘルニアに限られます。 頸椎・腰椎ヘルニア・狭窄症の治療や後遺症には再生医療をご検討ください 頸椎・腰椎のヘルニア・脊柱管狭窄症は、十分な改善が得られず手術後も後遺症が出ることがあります。 当院リペアセルクリニックでは、幹細胞を脊髄の損傷部位へ直接投与する再生医療を提供中です。この治療法は、国内ではほとんど届出されていない先進的な治療方法で、損傷部位の神経修復を目的としています。 脊髄の神経が損傷し、慢性的なしびれや痛みが続く方におすすめです。リハビリと組み合わせることで、症状の改善や生活の質の向上も期待できます。 従来の治療で十分な改善が見られなかった方、治療後に後遺症が出てお悩みの方はぜひ当院の再生医療をご検討ください。 PLDD治療のデメリットが気になる方は再生医療もご検討ください PLDDは、低侵襲で回復期間が短いため日帰りで手術を受けられるのがメリットの治療法です。 検討する際は適応やリスクを十分に理解し、他の治療法と比較することが重要です。再生医療と組み合わせることを選択肢の一つとして検討するのも良いでしょう。 また、症状によっては再生医療のみでも高い治療効果が出ています。 当院では、脊髄損傷や椎間板の変性に対する再生医療として、自己脂肪由来幹細胞治療や脊髄腔内ダイレクト注射療法により直接投与する方法を提供しております。 椎間板ヘルニアや術後の後遺症にお悩みの方は、一度リペアセルクリニックまでご相談ください。 参考文献 (文献1) 佐藤 正人ほか.「レーザー照射が椎間板細胞に与える影響ーPLDDへの警鐘ー」『日本レーザー医学会誌』 31(2),pp.146-151, 2010. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslsm/31/2/31_2_146/_pdf/-char/ja (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2) 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版」2021年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b (最終アクセス:2025年3月20日)
2024.03.12 -
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ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!? PLDDは、頚椎および腰椎の椎間板ヘルニアの手術のなかでも最小と言っていいほど体への負担が少ない術式です。 しかし、どんなに画期的な手術であっても、術後に後遺症が残る可能性はゼロではありません。特に懸念すべきは神経障害による痺れ、痛み、麻痺などの症状です。 神経障害を改善するために行なった手術で神経障害が悪化してしまうのは不幸なことです。こうした術後後遺症に対して、最新治療である「再生医療」が吉報となるかもしれません。 本記事では、PLDDの概要と起こりうる術後後遺症、そして後遺症に対する最新治療についてご説明します。 椎間板ヘルニアの機序と治療、手術になるのはどんな時? 脊椎の中には、 太い神経の束である脊髄が走っています。脊髄からは運動や感覚を司る神経が出ています。重なる脊椎と脊椎の間には椎間板というクッション材が挟まっており、 椎間板の中央部には柔らかいゲル状の「髄核」があります。 椎間板ヘルニアとは 、この髄核が椎間板の外に飛び出す疾患です。飛び出したヘルニアが脊髄から伸びる神経の根本を圧迫してしまうと、「びりっ」とした痛みを感じるようになります。 症状が進行すると神経へのダメージが大きくなり、感覚障害や麻痺を起こしたり排尿障害が起こることもあります。しかし、重症化することはごく稀です。椎間板ヘルニアの多くは自然に縮小していく疾患 です。 たとえば、 腰椎椎間板ヘルニアは症状がある人の60%以上で吸収されると言われています。頚椎でも腰椎でもほとんどの椎間板ヘルニアと診断された方は、手術を受けることはありません。3ヶ月ほどの保存療法で自然と痛みが取れてくるのです。 では、不幸にも良くならなかったらどうなるのでしょう。保存療法でも改善しない痛みが続く場合や、麻痺・排尿障害をきたす場合は手術が行われます。 手術となると、「全身麻酔が大変」「術後は安静にしなければならない」「傷の痛みに耐えながら回復を待つ 」というイメージがあるかもしれません。 しかし、そのイメージと全く異なり、体への負担を最小限に抑えられる術式があります。それは、PLDD:Percutaneous Laser Disc Decompressionです。日本語では「経皮的レーザー椎間板減圧術」と呼ばれています。 PLDDってどんな手術? PLDDはレーザーを用いて椎間板の中央部にある髄核に照射して 、椎間板内の圧力を減少させる手術です。髄核が焼かれた後の空洞は縮もうとするため、時間経過とともにヘルニアは自然と小さくなっていきます。 椎間板内にレーザーを照射するのみであれば、メスや針・糸は不要です。細い針を刺せばレーザーファイバーを通すことができます。そのため、PLDDを行ってもほんの小さな刺し傷しか残りません。 安静も短くて済むため、日帰り手術をしている医療機関 も少なくありません。 PLDDの合併症について 体への負担の少なさについて強調されがちなPLDDですが、医療行為である以上は治療の合併症とは切っても切り離せない関係にあります。 特に深刻な術後後遺症を残すのが神経障害です。本来は神経の圧迫を改善するための手術なので、時間経過とともに痺れ・痛みなどは良くなるはずです。症状が術後に悪化している場合には神経障害の可能性が考えられます。 神経障害が起こる要因にはいくつかの可能性があります。ひとつはレーザーファイバーを入れる際に針で神経を傷つけてしまうことです。 次に、レーザーの誤照射により、神経がレーザーに当たってしまう可能性も否定できません。他に懸念されるのは、レーザーの熱などの間接的な要因でも神経障害が起こる可能性です。 実際にレーザー照射を直接受けていないはずの近くの骨が壊死を起こしてしまった例が報告されています。 術後後遺症の神経障害に対する再生医療の可能性とは 最新の再生医療である「幹細胞治療」がPLDD術後後遺症への新たな希望となるかもしれません。 従来、神経が傷ついてしまうと完全にもとに戻すことは難しいとされてきました。そのため椎間板ヘルニアの術後後遺症が残ってしまっても、薬やブロック注射などの対症療法を行うことしかできませんでした。 しかし、最新治療の幹細胞治療が神経を回復させてくれるのではないかと期待されています。幹細胞治療では、どんな細胞にも変化できる万能細胞の「幹細胞」 を使用します。幹細胞を投与することにより、傷ついた組織の再生が促されるのです。 まとめ・PLDD術後後遺症に対する最新治療とは! PLDDの概要と合併症のリスク、そして術後後遺症に対する最新治療についてご説明しました。 合併症が起こらないことが一番ですが、万が一起こってしまった時にどのような治療の選択肢があるか知っておくことは重要です。 当院では、PLDDをはじめとした椎間板ヘルニアの術後後遺症に対して、幹細胞治療を行っております。当院ではフレッシュで生き生きとした細胞を多く届けることができるように2つの工夫をしております。 ひとつは細胞の保存や輸送のプロセスにおけるものです。細胞を凍結せずに保存・輸送を行なっているのです。多くの病院の細胞加工室では細胞を保存、輸送する際に凍結してしまいます。 しかし、冷凍された幹細胞は弱くなり、 解凍時の生存率が大きく低下します。 当院では細胞の凍結を行わないため、新鮮で強い細胞が投与可能なのです。 もうひとつは細胞の投与方法です。当院では損傷した脊髄に対して直接幹細胞を投与できる「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行なっております。従来は脊髄の障害があるときの幹細胞投与は点滴でした。 当院では点滴の他に「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行うため、脊髄に届く幹細胞の数がより多くなります。 https://www.youtube.com/watch?v=5JqLxbYwLJ4&t=3s ▶PLDDをはじめ、椎間板ヘルニアの手術における術後後遺症でお悩みであれば、一度当院へご相談ください。 参考文献 日本整形外科学会 パンフレット 「整形外科シリーズ2 腰椎椎間板ヘルニア」 佐藤正人, 石原美弥, 荒井恒憲, 菊地眞, 持田譲治. 日本レーザー医学会誌 31(2): 146-151, 2010. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. 宮本雅史, 中嶋隆夫. 日内会誌 105:2210-2214, 2016. Tonami H, et al. AJR Am J Roentgenol 173 : 1383―1386, 1999. ▼以下もご欄になりませんか PLDDの有効性と術後の痛みや経過について
2024.03.08 -
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PLDD治療と費用、再生医療の可能性について解説します 椎間板ヘルニアは多くの人々が抱える健康問題であり、その治療法は常に進化を続けています。そこで近年、注目を集めているの先進医療をご紹介いたします。それが「PLDD(Percutaneous Laser Disc Decompression )」といわれるもので日本語に直すと「経皮的レーザー椎間板減圧術」といわれるものです。 この治療法は、レーザーを用いて椎間板の圧力を軽減し、痛みを和らげるもので、従来の手術に比べて身体への負担が少ないことが特徴というものです。 本記事では、PLDDについてと、その治療メカニズムと併せて気になる健康保険の適用や医療費控除の適用、費用に関する解説をします。 また後遺症の治療における再生医療の可能性について詳しく解説します。 PLDDとは PLDDは、1980年代初頭に開発されたレーザーを用いた最新の治療法です。主に頚椎や腰椎の椎間板ヘルニアに対して行われます。 治療は局所麻酔のもと、針を椎間板に挿入し、レーザーを照射して椎間板内の圧力を低下させ、ヘルニアを小さく縮ませることで神経の圧迫を押さえて痛みを軽減させるものです。 この方法の大きな利点は、局所麻酔下で行うことができるので入院の必要がなく、日帰りで行えるため、患者の負担が少ないことです。従来の外科手術に比べて侵襲が少なく、術後の回復も早いという利点もあります。また針を刺して行うため傷口が大きくならない点も利点です。 手術もレーザー用の注射痕程度になるため、感染による合併症の心配も少ないと言えます。 PLDDが最も適応するのは、「膨隆型(ぼうりゅうがた:椎間板が膨らんだような形になり、神経を少し圧迫しているタイプのヘルニア)」とされています。 ただし、椎間板の変性が進んでしまったケースでは、PLDDを行っても椎間板ヘルニアの症状が改善しないことがあるようです。 PLDDの利点 治療:レーザーによる手術 入院:不要(日帰りで可能) 手術痕:レーザーを照射するための針穴のみ 手術:局所麻酔 手術:合併症(細菌感染等)の可能性が低い レーザー治療の仕組み PLDD治療は、局所麻酔のもとで行われます。まず、針を椎間板に挿入し、その後レーザーをファイバーを通して照射します。レーザー光によって椎間板内の水分が蒸発し、ヘルニアが縮小するため、神経への圧力が減少します。これにより、神経根への圧迫が緩和され、痛みが軽減されるという仕組みです。 治療時間は約30分程度で、多くの場合は日帰りでの治療が可能です。 PLDDの費用と保険適用の現状 PLDDの費用は、クリニックによって異なりますが一般的には30万円から50万円程度が相場とされています。現在、PLDDは日本では健康保険の適用外となっています。そのため、治療費は全額自己負担となりますが、医療費控除の対象となる可能性があります。 医療費控除とは、一定期間内に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた分について所得税から控除される制度です。PLDDの治療費も、他の医療費と合わせて年間10万円を超える場合は医療費控除の対象となる可能性があります。しかしながら、医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。 健康保険:適用外 費用感:30万円~50万円 先進医療とPLDD 頚椎椎間板ヘルニアに対するPLDDは、厚生労働省による先進医療の指定を受けていましたが、数年前に取り消されています。 その理由としては、PLDDは日本での普及がまだ進んでいないからといったものです。 しかし、その後もPLDDの効果や安全性については多くの臨床研究によって実証されており、今後は保険適用の対象となることが 期待されています。 PLDDはどんな病院で受けられるのか PLDDを受けられるクリニックは全国にありますが、施設によって技術や設備に差があります。 治療を受ける際には、事前に情報を収集し信頼できる施設 を選ぶことが重要です。また、治療後のフォローアップ体制も確認しておくと安心です。 後遺症の治療と再生医療 PLDD治療は、傷口も少なく身体に与える負担はとても小さい治療です。そのため、PLDDそのものによる後遺症はほとんどないと考えられます。 その一方で、ヘルニアそのものによる症状が残ることもあり、後遺症となってしまう場合があります。このようなヘルニアの後遺症に対しては、脊髄神経の再生を目的とする再生医療 による治療が有効な場合があります。 再生医療では、患者自身の幹細胞を用いて損傷した脊髄神経の再生を目指します。具体的には、患者様ご自分の血液や脂肪を採取し、培養「自己間葉系幹細胞 」として損傷部位に投与するものです。 この自己間葉系幹細胞 には、脊髄神経の再生を促したり 、部分的に再生したりするといった能力があるとされますが、厚生労働省の許認可が無ければできない先端医療です。 脊髄の再生医療では、手術やPLDD治療ではできない、脊髄神経そのももの再生が可能となるのです。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE まとめ・PLDD治療と費用、再生医療の可能性について 今回は、PLDDはどのようなものなのか、費用、保険適用、医療費控除、どのような病院で受けられるのか、そして後遺症の治療における再生医療の可能性について解説しました。 PLDDは、レーザーを活用した医療技術として、椎間板ヘルニア の治療に新たな選択肢を提供しています。費用は自己負担となりますが、医療費控除の対象となる可能性があります。 治療を検討する際には、クリニック選びやフォローアップ体制にも注意が必要です。PLDDは今後、さらなる普及と発展が期待される治療法です。 一方で、PLDDを行っても頚椎あるいは腰椎の椎間板ヘルニアによる後遺症が残ってしまうこともあります。こうした場合には、再生医療による治療も選択肢として上がります。 当院では、脊髄損傷 に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。 これは、自分の脂肪組織や血液から幹細胞を抽出、培養し、点滴で静脈注射、 あるいは当院独自技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内 ダイレクト注射療法もあります。 再生医療にご興味のある方や、治療を考えたいという方は、 ぜひ一度当院までご相談ください。 参考文献 レーザーによる経皮的椎間板減圧術 (PLDD法) の経験.中四整会誌.1997;10 (2): 229-233. Hellinger J. "Technical aspects of percutaneous laser disc decompression (PLDD)." Lasers in Surgery and Medicine, 1999.Dec;16(6):325-31. 【保険適用外の手術費用の補助】保険適用外の手術(ヘルニアのレーザー手術)を受けたのですが、その費用(約50万円)は高額医療費として一部支給されないのでしょうか?また、支給を受けるためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか? | よくある質問 | 日本アイ・ビー・エム健康保険組合 既存の先進医療に関する保険導入等について 平成 22 年1月 20 日 先進医療の各技術の概要|厚生労働省 Mochida J, et al. "Regeneration of intervertebral disc by mesenchymal stem cells: Potentials, limitations, and future direction." European Spine Journal,2006 Aug;15(Suppl 3): 406–413. ▼以下もご参照いただけます ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!?
2024.03.07 -
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PLDDの有効性と術後の痛みや経過について 首や腰の痛みを引き起こすとともに、手や足へ分布する神経を圧迫して厄介な痺れを引き起こす椎間板ヘルニア。進行すると、筋力低下をきたしたり、排尿障害を起こしたりもします。 つらいヘルニアの治療法の一つであるPLDDは、 手術療法の中でも体への負担が非常に低いとされています。傷は小さく日帰り手術もできる、一見魅力的な方法と思えますが、有効性や安全性はどうなのでしょうか。 この記事ではPLDDについての紹介や、有効性・術後の経過などについて解説します。 椎間板ヘルニアの治療とPLDD 椎間板ヘルニアの治療の基本は、 痛み止めやリハビリなどの「保存療法」です。しかし、保存療法の効果がない場合には手術が検討されます。 現在、椎間板ヘルニアの手術は多くの種類があります。特に「体への負担が少ない」とされている治療の一つがPLDDです。 PLDDはPercutaneous Laser Disc Decompressionの略称で、日本語では経皮的レーザー椎間板減圧術と呼ばれている術式です。現在、いくつかの病院で腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアに対する治療として行われています。 PLDDでは特殊な針を使って背中から椎間板の中央へとレーザーファイバーを通します。椎間板の中央部には「髄核」というゲル状の柔らかい物質があり、髄核が飛び出してくるのがヘルニアの原因です。 PLDDではこの髄核をレーザーで焼いて気化させてしまうのです。これにより、椎間板の内圧を下げることができます。焼いた部分は空洞化し、椎間板は穴を埋めようと縮むため、ヘルニアが改善するのです。 PLDDで用いる針は細く柔軟性が高いものです。局所麻酔のみで手術が可能で、侵襲(手術の傷) が少ないため、病院によっては日帰り手術も可能となっています。傷も非常に小さくて済みます。 PLDDの費用は? PLDDは公的健康保険の適応として認められていません。そのため、治療に関連する医療費全てが自費になります。 つまり、手術手技に関連した費用のみでなく、適否を見極めるための診察や検査の費用・関連した処方などもすべて患者さんの自己負担となるのです。病院によって費用は異なりますが、数十万の医療費がかかります。 かつてPLDDは厚生労働省の指定する「先進医療」であり、特定の医療機関では保険診療との併用が認められていました。この場合は手術に関連した費用のみ自費で、その他の診察や検査・処方にかかわる費用は公的保険を用いることが可能でした。 しかし、平成24年に「有効性や効率性が十分に示されていない」ということで先進医療の指定から削除されたのです。 PLDDって効果がないの? 先進医療から取り消されたということは、 効果がないということでしょうか。 PLDDの有効率は文献によってばらつきますが、おおむね70%程度と報告されています。もしかしたら、「そんなに悪くないのでは」と感じた人もいるかもしれません。 腰椎椎間板ヘルニアにおいては、診療ガイドライン上手術療法で推奨されるのは「椎間板切除術」です。椎間板切除術後、ヘルニアが再発して再手術が必要になるのは、術後5年で1.5〜8.5%と報告されています。 単純比較はできませんがPLDDはこれらよりも治療成績に劣るとされています。 もう一つ、頭に入れておかなければいけないことは、PLDDが効かないヘルニアがあるということです。先ほどの「70%の人に有効」というのは、PLDDの効果が期待できる人を選んで行った成績です。 PLDDが適しているのは、保存療法が効かない患者さんのうち、ヘルニアが「後縦靭帯」を突破していない患者さんです。 図1,2 後縦靭帯を突破していない図 引用)腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44 PLDDは,椎間板の内圧を下げることでヘルニアによる圧迫を改善させる効果があります。しかし、後縦靭帯を破って外に出てしまったヘルニアの場合はすでに椎間板内圧が下がってしまっていて、髄核を焼き飛ばしてもヘルニアは縮みません。 残念ながら適切でない方に行われるケースもあり、そうなると「効果がない」のです。 PLDDの手術中や手術後の痛みはどのくらい? PLDDは小さな針を刺すだけなので、他の手術のように手術に伴う痛みが少ないことがメリットの一つです。 最初に皮膚に局所麻酔を行うことで、針を刺すときの痛みもカバーされます。そして、切開をする必要がないため、手術後に「傷の痛みがつらい」ということがありません。 したがって、手術に関連した痛みは最小限で済む術式と言えるでしょう。 PLDDの術後の経過は? PLDDは他の手術よりも即効性には乏しいです。 ヘルニアが退縮することで、神経の圧迫が軽くなっていきますが、それには時間がかかるのです。個人差はありますが、術後1週間程度から徐々に症状が改善され、2〜3ヶ月ほどで良くなったことが実感されてきます。 そのため、すぐにでも良くしたい、という人は他の方法を選んだ方が良いでしょう。 PLDDにも合併症はあるの? 傷が小さく一見安全な手術のように思えるPLDDにも、合併症が起こるリスクがあります。 合併症の例として、感染やレーザーの影響による骨壊死などが挙げられます。 中でも、術後後遺症として長期に日常生活に深刻な影響を与えるのが神経障害です。レーザーの誤照射や針による損傷、血腫を作ることで圧迫されることで神経が傷つき、もともとあった痺れが悪化したり新規に痺れたりすることがあります。 まとめ・PLDDの有効性と術後の痛みや経過について 椎間板ヘルニアの治療法の一つであるPLDDは、低侵襲であることから、早く日常生活に復帰したい人にとっては良い選択肢かもしれません。 しかし、高額な費用負担、有効性の問題、また適応が広くないことなど手術を受ける上での問題も少なくありません。 また、いくら体への負担が少ないといっても、神経障害をはじめとした合併症リスクもあるため、慎重な選択が必要です。 なお、当院ではPLDDを含めたヘルニアの術後後遺症に対して再生医療の一つである「幹細胞治療」を提供しています。これは万能細胞である幹細胞を障害部位へ届けることで組織の再生を促すものです。 従来、神経損傷に対する幹細胞治療では点滴で幹細胞を投与してきました。当院では、点滴に加えて脊髄腔内に直接幹細胞を注入する手法も行っています。 脊髄腔内ダイレクト注射療法により、さらに多くの幹細胞を損傷した神経に届けることができるようになりました。 さらに国内でも有数の細胞加工室の高い技術により、幹細胞を凍結することなく保存しています。フレッシュな幹細胞の投与により、良好な治療成績をおさめています。 https://www.youtube.com/watch?v=5JqLxbYwLJ4&t=3s ▶PLDDの術後後遺症でお悩みであれば、ぜひ当院の最新治療をご検討ください。 参考文献 小坂理也. 整形外科看護 10(4): 329-333, 2005. 加藤昌代, 西山敬浩, 加藤篤史, 笹生豊, 大橋健二郎. 東日本整形災害外科学会雑誌 15(1): 111-114, 2003. 井上和彦, 橋本俊彦, 関根千晶, 千葉純司. 日本レーザー医学会誌 22(1): 5-14, 2001. 慢性疼痛診療ガイドライン 宮本雅史, 中嶋隆夫. 日内会誌 105:2210-2214, 2016. 佐藤正人, 石原美弥, 荒井恒憲, 菊地眞, 持田譲治. 日本レーザー医学会誌 31(2): 146-151, 2010. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. 厚生労働省 HP 腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44 ▼以下のご覧いただけます PLDD治療、そのメリット・デメリットやリスクとは?
2024.03.05 -
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「椎間板ヘルニア手術を受ける予定だけど、手術後の生活のイメージが掴めない」「仕事復帰できるのはいつ頃から?」 このような不安や疑問を抱えていませんか? 本記事では、椎間板ヘルニア手術後のリハビリや仕事の再開時期を解説します。 手術後の生活で気をつけることや注意点も紹介しているので、参考にしてみてください。 痛みやしびれの回復具合に合わせてリハビリを続け、医師の指示を受けながら徐々に日常生活へと戻していきましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活|仕事復帰までのステップ 椎間板ヘルニア手術後の生活はどのように変化するのでしょうか。 ここでは、リハビリや仕事復帰、運転などの再開までの流れや期間を解説します。 痛み・しびれ リハビリ期間 仕事復帰 運転 性行為 手術後の生活プランを立てる際の参考にしてみてください。 痛み・しびれは手術後1カ月ほど続く 手術後は、神経の修復に時間がかかるため、痛みやしびれが1カ月ほど続く可能性があります。 痛みやしびれが出ているときは、神経が敏感な状態にあるため、生活のなかで不便さを感じる場面があるでしょう。 そこで、無理に体を動かすと、症状を悪化させたり、再発につなげたりしかねません。 症状が落ち着くまでは安静に過ごす意識をもつようにしてください。 リハビリを始めるのは手術後1カ月ほど リハビリは、手術後1カ月ほどから開始します。 リハビリは手術後すぐに取り組むものというイメージがあるかもしれませんが、実際には手術後すぐにリハビリに取り組む必要性は認められていません。(文献1) 椎間板ヘルニア手術後におけるリハビリの目的は、腰回りの筋肉を強化して再発を防ぎ、日常生活への円滑な復帰を促すことです。 以下に効果的なリハビリの運動例を紹介します。 【お腹を鍛える運動】 お腹を意識しながら腹式呼吸 仰向けになって膝を立て、首を軽く起こしてお腹をのぞき込む腹筋運動 など 【お尻を鍛える運動】 仰向けになって膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げるブリッジに似た運動 うつ伏せになり曲げた片足をゆっくり上げ下げする運動 など 動作中に強い痛みがあるときは、回数や力の入れ方を調整しましょう。 仕事復帰できるのは手術後から1.5カ月ほど 手術後、仕事復帰までの期間は、受けた手術の種類や仕事内容によって異なりますが、平均すると1.5カ月程度です。 背中の患部付近を切開する従来の手術法の場合、傷口の完全な回復を待つ必要があるため、復帰までの期間が長くなる傾向にあります。一方で、小さな切開で済む内視鏡手術法の場合は、手術の回復が比較的早く、仕事復帰までの期間が短縮しやすいです。 仕事内容においては、腰を使う重労働業務の場合は、復帰までに時間がかかるケースがあります。 ある調査では、重労働業務における復職までの平均期間は44日ほどと報告されています。(文献2) 運転できるのは手術後2週間ほど 短い距離の運転なら手術後2週間ほどで、運転を再開できます。 ただし、以下のように特殊な状況がある場合は、運転の再開時期が遅れる可能性があります。 旅行や出張など長距離の運転をする場合 バスやタクシーのドライバー 農業や工事現場の重機操縦者 自己判断で運転を再開してしまうと、腰に負担がかかり症状が悪化する恐れがあります。 安全に運転を再開するためにも、医師と相談しながら慎重に復帰の時期を決めましょう。 性行為は手術後2週間ほど控える 性行為は、手術後2週間ほどは控えたほうが安心とされています。 手術後は、傷口の修復や、腰まわりの痛み・しびれが落ち着いていない場合があるためです。 少しでも違和感や痛みがあるうちは、無理をしないことが大切です。腰に負担がかかる動きは、回復を遅らせるほか、再発してしまう恐れもあります。 体の回復を優先し、無理のない範囲で行動を選びましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活でやってはいけないこと・注意点 椎間板ヘルニア手術後の生活でやってはいけないこと・注意点を解説します。 主に以下3つの行動は、回復を遅らせたり、再発リスクを高めたりする可能性があります。 リハビリの中断 腰に負担がかかる運動 腰に負荷がかかる姿勢や動作 順番に見ていきましょう。 リハビリの中断 椎間板ヘルニアの手術後にやってはいけないことは、リハビリの中断です。 手術後は安静にする時間が長くなり、体を支える筋肉が弱まりやすくなります。 続けてきたリハビリを中断してしまうと、再び体に負担がかかりやすくなり、症状の悪化や再発の原因になりかねません。 痛みが和らいだとしても、自分で判断してリハビリを中断せず、医師の指示に従って継続する意識が大切です。 なお「仕事やスポーツでリハビリの時間を確保するのが難しい」という方は、再生医療の治療を検討してみてください。主に注射または点滴を使った治療なので、手術後のリハビリや後遺症の心配はいりません。 腰に負担がかかる運動 手術後3カ月ほどは、腰に強い負担がかかる運動はしばらく控える必要があります。 無理をすると、傷口が開いたり、再発したりする恐れがあるためです。 具体的には以下のような運動は控えましょう。 腰をひねる体操 ダッシュやジャンプなどの衝撃が強い運動 ゴルフやテニスなど腰をひねる動きが多いスポーツ これらは腰部への負担が大きく、早期の復帰はリスクが高いといえます。 ただし、まったく体を動かさないのも良くありません。軽いストレッチや簡単な体操など、筋力を保つ適度な運動は回復に役立つため、医師の指導のもとで取り入れましょう。 腰に負荷がかかる姿勢や動作 椎間板ヘルニアの手術後1週間ほどは、腰に負荷がかかる姿勢や動作は避けるようにしてください。 たとえば、落ちた物を拾うときに腰を曲げてかがむのは負荷のかかる姿勢です。物を拾う際は、膝を曲げてしゃがむようにすれば、腰への負担を減らせます。 また、腰をひねる動きも症状悪化や再発のきっかけになります。 たとえば、後ろに振り向く動作は、腰にねじれの動きが入り負荷がかかります。後ろを振り向きたいときは、足を使って身体ごと向きを変えると腰への負担が少ないです。 日常生活を振り返り、腰に負荷のかかる姿勢や動作があれば、改善していきましょう。 椎間板ヘルニア手術後の生活で脊髄損傷が起こるリスク 椎間板ヘルニア手術後にやってはいけないことや注意点をお話ししてきましたが、手術後早期に腰を曲げたり、腰をひねったりすると、脊椎の中を通る神経の束である脊髄が傷ついてしまい、脊髄損傷を起こしてしまうリスクがあります。 脊髄損傷の主な症状は以下のとおりです。 知覚鈍麻 痛みや痺れ 麻痺脊髄損傷は一度起こってしまうと自然には治りません。手術後に脊髄損傷が疑われる症状が現れたら、すぐに手術をした医療機関に連絡をしましょう。 椎間板ヘルニア・脊髄損傷でお悩みの方へ「再生医療」を紹介 一般的に、損傷した大きな神経は修復することができません。 椎間板ヘルニア手術で脊髄損傷した場合、下肢の麻痺により、歩行困難や車いすでの生活が余儀なくされる可能性もあります。 そんな脊髄損傷の治療法の一つに、幹細胞を用いる「再生医療」があります。 幹細胞とは、体のさまざまな組織に変化できる細胞です。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身の脂肪を採取・培養した幹細胞を用いる治療を提供しております。 再生医療について気になる点などございましたら、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ まとめ|椎間板ヘルニア手術後はリハビリを継続して仕事復帰を目指そう 手術後の生活では、リハビリを続けて、日常生活で無理な姿勢や動作をしない意識を持つことが回復への近道です。 腰への負担を避け、正しいリハビリを継続すれば、再発リスクを抑えながら仕事復帰を目指せます。 本記事で紹介した注意点やリハビリ内容を参考に、ご自身のペースで回復に向けた生活習慣を整えていきましょう。 なお、椎間板ヘルニアや手術後の脊髄損傷に対しては「再生医療」という治療法もあります。 再生医療の幹細胞を使った治療では、体のさまざまな組織に変化をする幹細胞を損傷した患部に投与します。再生医療をご検討、あるいは気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 宮本 雅史,中嶋 隆夫.「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版」日本内科学会雑誌 105 巻 11 号pp1〜5 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/11/105_2210/_pdf/-char/ja (最終アクセス:2025年4月16日) (文献2) 廣田 勝也, 島﨑 功一.「腰椎椎間板ヘルニア術後における重労働者のホームエクササイズ実施状況と復職状況との関連因子の検討」日本理学療法士協会 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_H2-207_2/_article/-char/ja/?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年4月16日)
2024.03.01 -
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椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いについて 椎間板ヘルニアに対する手術治療法として、現在内視鏡を用いたPELD(PED)やMEDといった方法が普及しつつあります。いずれも内視鏡を使用した、従来よりも体への負担が小さい手術ですが、それぞれには違いもあります。 今回の記事では、そのようなPELD(PED)やMEDの違い、そして術後の後遺症に対する再生医療の可能性について解説していきます。 椎間板ヘルニアとは まずは、椎間板ヘルニアについて簡単にご説明します。 背骨である椎体と椎体の間には、椎間板というクッションのような構造があります。この椎間板は、髄核(ずいかく)というゲル状の部分と、それを包む線維輪(せんいりん)という構造からできています。 椎間板ヘルニアは、髄核を取り囲んでいる線維輪の後方部分、つまり背中側の部分が破れ、髄核が断裂した部分から背中側にはみ出してしまうことで、脊髄などが圧迫されてしまう病気のことです。 この中でも腰椎椎間板ヘルニアは、腰の骨である腰椎で起こるものです。 そして、男女比は約2〜3:1、20〜40歳代の方に多く、好発する部位は腰椎第4番と第5番の間、もしくは腰椎第5番と仙椎第1番の間が多いとされています。 後ろ側に飛び出した椎間板が脊髄や神経根などの神経を圧迫することで、下半身に痛みが生じてくるといった症状が現れてきます。また、腰椎椎間板ヘルニアの他の症状としては、急に起こる激しい腰痛や下半身の痛みがあります。 そして、ヘルニアが進行すると下半身に力が入りにくいという症状がでてきます。また馬尾という脊髄の一番下の方にある糸のような神経部分が圧迫されると、排尿や排便が障害されることがあります。 椎間板ヘルニア手術の種類とそれぞれの特徴 さて、椎間板ヘルニアについての治療法について解説していきます。 腰椎椎間板ヘルニアでは、ヘルニアによって神経が圧迫されるような場合に手術が行われます。最近では、より小さな傷で手術を行う、低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)が広がりつつあります。 例えば、経皮的内視鏡下腰椎椎間板切除術(Percutaneous Endoscopic Lumber Discectomy : PELD)や、内視鏡下ヘルニア摘出術(Micro Endoscopic Discectomy : MED)などの手術です。なお、PELDとPEDは、腰椎(つまりLumber)が入っているかどうかの違いなので、ほぼ同義と考えて問題ないでしょう。 では、従来の手術、そしてPELDとMEDについて詳しく解説しましょう。 従来の手術法 一般的な手術として、背中の側からアプローチし、椎弓(ついきゅう)という背骨の一部を切り取り、椎間板を取り除くという手術が最も行われています。 この方法は、皮膚や筋肉、骨を削り取るというもので、手術は全身麻酔が基本となり術後2〜3日後ほどで歩行を開始し、入院期間は2〜3週間程度が目安です。 PELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板切除術) PELDは、7mmほどの細い筒をまず背中側から直接ヘルニア部分まで挿入し、生理食塩水を流しながら、その筒の中へ針のような専用内視鏡を刺入していき、直接ヘルニアを摘出するというものです。 細い内視鏡でヘルニアへアプローチすることが可能であるため、筋肉や骨などの組織への負担が少ないというメリットがあります。その他の利点は、局所麻酔や硬膜外麻酔で治療可能な点、また日帰り手術も可能という点です。 また、傷口が小さいため、術後の回復が早いことも期待できます。 欠点としては、大きなヘルニアや椎体の変形が強い場合、また脊柱管狭窄症などが併存する場合には適応とならない場合があることです。 MED(内視鏡下ヘルニア摘出術) MEDは、PELDと同じように内視鏡を使う技術です。 皮膚を切開して内視鏡や器具を挿入し、ヘルニアの部分まで進めていきます。PELDよりも内視鏡の筒の径が大きくなるため、筋肉が引っ張られたり視野を確保するために骨を削ったりといった操作が加わります。そのため、PELDと比較するとヘルニアの周囲の組織への負担が大きくなるという欠点があります。 一方で、複数の椎間に渡るようなヘルニアでも手術可能なことが多く、またPELDと比較すると全国的にこのMEDの手術を行っている病院が多いという利点があります。 特徴 PELD MED 従来の手術法 皮膚の切開の大きさ 7mm程度 16mm程度 3〜4cm 麻酔の方法 局所麻酔可能 全身麻酔 全身麻酔 手術の時間 1時間程度 2時間程度 1時間程度 術後の入院期間 日帰り可能 1週間程度 1週間程度 体に与える負担 軽い 軽いがPELDに比べると骨や筋肉などに侵襲が大きい 傷口が大きいため負担になる可能性あり PELDとMED、従来の手術の違い まとめ・椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いについて 今回の記事では、椎間板ヘルニアの症状や治療法としてのPELD(PED)、MEDについて解説しました。PELDとMEDの違いについても表にし詳しく述べました。 これらのPELD、MEDといった手術は、従来のような皮膚を大きく切り、直接ヘルニア病変を摘出するという方法に比べると傷口も小さく、体への負担が少ないというメリットがあります。 一方で、どのような手術であっても脊髄損傷や神経損傷の可能性は少ないですが、一定数あり得ることには注意が必要です。また、椎間板ヘルニアが進行していた場合などは、しびれや下半身麻痺などの症状が手術後にも残ってしまうこともあるでしょう。 そのような後遺症に対する治療法を探しているという方に対して、再生医療という方法があります。 当院では、脊髄損傷に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。これは、自分の脂肪組織や血液から幹細胞を培養し、点滴で静脈注射する方法や、あるいは当院独自の技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内ダイレクト注射療法をご用意しています。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE ▶椎間板ヘルニアや、その術後の後遺症などにお悩みの方で再生医療に興味のある方は、ぜひ当院までご相談ください。 参考文献 腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン 改訂第2版.日内会誌.2016:105;2210-2214. 脊椎脊髄疾患について・主な疾患 腰椎椎間板ヘルニア 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会 腰椎椎間板ヘルニアにおける内視鏡下 ヘルニア摘出術.整形外科と災害外科.2002.51(1);47-50. 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p347 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p152 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p351 ▼椎間板ヘルニアの手術について参考記事 椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術のメリット・デメリット
2024.02.28