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「健康診断で不整脈の疑いがあると指摘された」 「病院を受診した方がよいのだろうが、怖い気持ちもある」 「不整脈に良い食べ物があるなら、まずはそれを試してみたい」 不整脈を患っている方の中には、このように考えている人もいるでしょう。 不整脈の抑制に効果のある食べ物や飲み物は存在します。一方で、摂りすぎると不整脈を悪化させてしまう食品も複数あるため、食事の管理は非常に大切です。 本記事では、不整脈と食事の関係について紹介します。食事での注意に加えて、病院受診の目安についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 不整脈に良い食べ物・飲み物一覧 不整脈を良くするためには、心臓の筋肉に良い食事や、不整脈の原因のひとつでもあるストレスを軽減する食事を摂ることが大切です。 不整脈に効果のある栄養素や、その栄養が多く含まれる食品を紹介します。 カリウムが多く含まれているもの カリウムは、人体に必要なミネラルの1つです。 ナトリウムを排出する働きがあるため、摂りすぎた塩分を調節する役目を担っています。 細胞や神経、筋肉が正常に機能するためにも必要な物質で、心臓の筋肉(心筋)の収縮にも関与しています。 カリウムの濃度が低下するとこういった働きに影響がでるほか、不整脈を起こすリスクも上がります。不整脈のほかにも脱力感、食欲不振などを起こす可能性があるため、積極的にとるようにしましょう。 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、カリウムの目標摂取量は男性3,000mg/日、女性は2,000mg/日です。(文献1) カリウムが多い食品として、 バナナ(1本につき454mg) ほうれん草1/4束(生で621mg茹でて311mg) 干し芋(2枚588mg) などがあります。 ただし、カリウム濃度が高くなりすぎても不整脈を招くことがあるため、食べ過ぎないようにしましょう。 マグネシウムが多く含まれているもの マグネシウムは筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整に役立ちます。 心臓の筋肉が収縮するにはカルシウムも必要な要素になります。マグネシウムはカルシウムと競合することで、心臓の収縮をちょうど良い強さに調整しているのです。 また、マグネシウムは心臓の拍動を穏やかにし、不整脈の発生を防ぐ働きもあります。 マグネシウムの1日の推奨平均摂取量は男性で約350mg、女性で約300mgとされています。(文献1) マグネシウムは以下の食べ物などに多く含まれています。 乾燥カットわかめ(1人分10gにつき460mg) 殻付きあさり(10個あたり100mg) 納豆(1個につき100mg) ノンカフェイン飲料 カフェインが含まれていない飲み物は、心拍への刺激が少ないため、不整脈が気になる方にとってはおすすめです。 寝る前にコーヒーやアルコールを飲む人は、ノンカフェイン飲料に切り替えると睡眠の質が高まり、不整脈のリスクの1つであるストレス軽減につながります。 ノンカフェインの飲み物としては、麦茶やルイボスティー、黒豆茶、小豆茶、白湯などがあげられます。 嗜好品としてコーヒーが好きな人は味が似ているデカフェをコーヒーの代用として飲むのもおすすめです。 スーパーやデパート、コンビニなどで購入できます。自分の好きな味を模索するのも良いでしょう。 不整脈のために避けたい食べ物・飲み物 不整脈を良くするためには、摂取量を減らすべき食べ物・飲み物を理解し食事の調整を行うことが重要です。 以下で紹介している避けたい食べ物・飲み物は、過度な摂取を控えれば食べても問題はありません。 塩分が多い食品 塩分を過剰に摂ってしまうと、心臓で「アルドステロン」と呼ばれるホルモンが作られやすくなります。 アルドステロンは、心臓の筋肉を硬くしたり、不整脈を誘発することが知られています。 また、塩分そのものが、心臓の正常な電気のリズムを乱す原因となり、不整脈が起こりやすい状態を作り出します。 塩分を摂りすぎると、体内の塩分濃度を下げるために血液中の水の量が増えます。その結果血液量が増加すると、心臓への負担が増えてしまい血管にも強い圧力がかかってしまうのです。 1日の適正な食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。 塩分の多い食品は以下の通りです。 カップ麺などの超加工品 ハム、ソーセージなどの加工食品 パスタ料理(ミートソースやカルボナーラなどの味の濃いソース) 漬物 塩魚(塩鮭、塩さばなど) 重要なのは、1日当たりの適正量を守ることです。極端な塩分制限は心身のストレスになる可能性があるため控えましょう。 動物性脂肪が多い食品 脂質の摂り過ぎは肥満や生活習慣病の原因となります。とくに動物性脂肪が多い食品は飽和脂肪酸が多く含まれており、血中コレステロールの増加や、心筋梗塞などの循環器疾患のリスクを高めてしまいます。 肥満および心疾患は、不整脈を引き起こす大きな原因になります。動物性脂肪が多い食品は食べ過ぎないように心がけましょう。 動物性脂肪は 脂身の多い肉 乳製品、バターやラードを多用した料理(菓子パンや洋菓子など) などに多く含まれています。 カフェイン飲料 カフェインは心臓を直接刺激して心拍数を増やし、心臓の収縮力を高める作用があります。アドレナリンのような興奮物質(カテコールアミン)の放出を促すためであるといわれています。 適量であれば不整脈の原因にはなりませんが、一日の推奨摂取量を越えると心臓の細胞に直接働きかけ、電気活動を乱してしまうことがあります。 その結果、頻脈(心拍が速くなること)、心室細動(命に関わる危険な不整脈)を引き起こすリスクが高まってしまうのです。 日本においては、カフェインの1日摂取量の目安は示されていませんが、カナダ保健省では健康な成人の場合最大400mg/1日(コーヒーをマグカップ3杯)までと設定しています。(文献2) エナジードリンクやコーヒーの多量摂取は控えましょう。 アルコール アルコールの多量摂取は心筋細胞の損傷や、自律神経を不安定にするため注意が必要です。 大量のアルコールを摂取すると、心臓に急性の電気的変化を引き起こし、心房細動と呼ばれる不整脈の発症リスクを高めてしまいます。 適切な飲酒量は、1日あたりの平均純アルコール量で男性は40g未満、女性は20g未満とされています。 純アルコール20gとは、日本酒1合、ビール500ml、缶チューハイ350ml程度の量です。 不整脈に良い食べ物を無理なく生活に取り入れる工夫 不整脈に良い食べ物を新たに取り入れることが難しいと感じる人もいるでしょう。 不整脈に良い食事習慣を長く続けるためには、少しずつ取り入れることが大切です。 普段の朝食にカリウムが豊富なバナナやマグネシウムが含まれる納豆をプラスする。 漬物を食べる量を今までより減らす。 寝る前に飲むものをノンカフェインのお茶や白湯に切り替える。 習慣としてコーヒーを飲んでいる人はノンカフェインのコーヒーに変える。 調味料を減塩タイプのものに変える。 普段の生活の中で少しずつ取り入れ、無理なく食生活を変えていきましょう。 不整脈予防・改善にはバランスの良い食事と治療が大切 不整脈に良いものを食べることから始める食生活の改善は、生活習慣病予防の観点から見ても非常に大切なことです。 不整脈の症状を改善するためには「カリウム」「マグネシウム」を食事の中で取り入れましょう。 一方で、「カフェイン」「塩分」「動物性油脂」「アルコール」は過剰に摂取すると不整脈のリスクを高めます。 心室細動と呼ばれる不整脈を引き起こすこともあり、命の危険に及ぶ場合もあります。 食生活を変えてもあまり効果を感じない、症状が長期化するといった場合は、ほかの原因も考えられます。 必要に応じて医療機関を受診しましょう。 不整脈の現状を正しく知り、食生活の改善や必要な治療といった適切な対処を行うことが症状を良くする第一歩です。 不整脈に良い食べ物に関するよくある質問 不整脈に良い飲み物の中にトマトジュースは含まれますか? トマトはカリウム量が多く(1個当たり315mg)、トマトジュースには200mlあたり546mgのカリウムが含まれています。 トマトジュースは生のトマトよりカリウム量が多いので、1日1パック程度にとどめましょう。 慢性の腎臓病がある方は、カリウムを摂り過ぎると高カリウム血症を引き起こす可能性があるため、トマトジュースは控えてください。 カリウム濃度が高すぎても不整脈が起こりやすくなってしまうため、適量を見極めることが重要です。 また、普段塩分を摂りすぎている方は減塩タイプのトマトジュースを摂りましょう。 不整脈に効くサプリメントはありますか? 不整脈に直接作用するサプリメントはありません。 カリウムやマグネシウムなど、不整脈に良い栄養を補うサプリメントは市販されています。 しかし、サプリメントは足りない栄養素を補助するものであり、サプリメントを過剰摂取すると体に悪影響を及ぼす可能性があります。 マグネシウムのサプリメントの過剰摂取は下痢や吐き気、カリウムの過剰摂取は不整脈や心電図異常、四肢のしびれなどを引き起こす可能性があります。 サプリメントの摂取を希望される方は、医師や薬剤師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年)策定検討会報告書」 2024年 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf(最終アクセス:2025年6月26日) (文献2) 厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html(最終アクセス:2025年6月26日)
2025.06.29 -
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「最近ストレスがたまっている」 「脈が飛ぶ感覚が頻繁に起こる。これはストレスによる不整脈ではないか」 「病院では異常なしといわれたが、やはり不安である」 不整脈の症状がある方の中には、このような不安を抱えている方もいるでしょう。 不整脈は心疾患が原因で起こることもありますが、「とくに異常なし」「ストレスが原因」と診断されることもよくあります。 明確な原因が見つからないと「具体的にはどのように治せばいいのか」「良くなっているのかどうかわからない」といった悩みが発生し、さらに不整脈を悪化させてしまう可能性もあります。 本記事では、ストレス性不整脈の治し方を解説します。 ストレスが心臓に与える影響や、早急に受診すべきタイミングも紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。 ストレスと不整脈の関係性 不整脈が起こる原因として、ストレスは強く関係しています。 この項目ではストレスがどうして心臓に影響を与えるのか、そのメカニズムを説明します。また、心疾患が原因となる不整脈とのちがいについても解説します。 ストレスが心臓に与える影響 強いストレスは自律神経の乱れにつながり、不整脈を引き起こす原因となります。 自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経系によって構成されています。 ストレスを受けると、活発時や緊張時に優位になる交感神経が働き、心拍数や脈拍が多くなってしまいます。 通常の状態であれば副交感神経優位に切り替わり、心拍数は正常値に戻っていきますが、強いストレス状態が続き交感神経が働き続けると、心臓に負担がかかってしまいます。 その結果、不整脈、心臓の違和感、胸の痛みといった症状を引き起こしてしまうのです。 不整脈は頻脈(脈が速くなる)や期外収縮(胸が痛い、不快感を感じる)といった比較的軽度なものがほとんどです。 しかし、放置すると心不全や脳梗塞といった重篤な疾患を発症する場合もあるため注意が必要です。 ストレス性不整脈と心疾患による不整脈の違い ストレス性不整脈と心疾患による不整脈の違いを症状だけで見極めるのは非常に難しいです。 ストレスを解消しても不整脈が治らない場合、原因が違う場所にある可能性も考えられます。 いずれにせよ放置は危険なので、まずは専門の医師に相談を行いましょう。 ストレス性不整脈 ストレス性不整脈の場合、精神的・身体的なストレスが引き金となり、自律神経のバランスが崩れることで発症します。代表的なものは「期外収縮」で、正常な拍動の間に不規則な拍動が現れます。気づかない方も多い症状です。 ストレス性不整脈の場合、原因となっているストレスを解消したり、生活習慣を改善すれば症状が緩和されることがほとんどです。 心疾患による不整脈 心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、心不全といった心疾患が原因で引き起こされる不整脈もあります。 心疾患による不整脈は長期間続く傾向にあり、動悸や息切れ、めまい、失神といった合併症状を伴うこともあります。 治療は重症度によっても変わりますが、薬物療法やカテーテルアブレーション、ペースメーカーの植込みなど、専門的な医療介入が必要となる場合もあります。 ストレス性不整脈の治し方 ストレスが原因で起きている不整脈の場合、原因であるストレスを解消しない限り完全に治ることはありません。不整脈が治らないことへの焦りや不安がさらに症状を悪化させることもあります。 ストレス性不整脈を治すポイントは、「ストレスをためこまない」「生活習慣を見直す」「睡眠の質を向上する」ことです。 それぞれ詳しく解説していきます。 ストレスをためこまない工夫をする 日々のストレスをためこまないため、日常生活での工夫が大切です。深呼吸や瞑想、ヨガなど、意識的にリラックスできる時間を作ると、副交感神経が働きやすくなります。 仕事や家事が忙しく常に慌ただしい生活を送っている方は、日々のやらなくてはいけないことから少し離れる時間を作ってみてください。 例えば、読書や旅行など自分の好きなことに没頭したり、ウォーキングや散歩など体を動かしたりすることでストレスの軽減につながります。 また、日記をつけたり、そのとき感じた感情をメモに書き留めておくと、心の中が整理され不安や焦燥感が軽減されることもあります。 それでもストレスが減らない、人間関係がストレスの原因になっている場合は、家族や友人、必要に応じて心理カウンセラーや医師などの専門家に相談してみましょう。 人と対話をすると、自分でも思いがけない感情を言葉にできることがあります。そういった対話の中で見つけた感情こそ、ストレス緩和の糸口になるかもしれません。 生活習慣を見直す ストレスと上手に付き合うためには、毎日の生活習慣をととのえることが大切です。 とくに重要視されるのは「食事」「運動」「睡眠」です。それぞれの気を付けるべきポイントをまとめました。 栄養バランスの良い食事 栄養バランスの良い食事は心臓疾患の予防になります。 無理な食事制限などは行う必要はありませんが、ジュースなど砂糖が多く含まれる食品、スナック菓子やカップ麺といった超加工食品は減らしましょう。 一方で野菜や魚、肉、大豆などの良質なたんぱく質を多く取り入れてください。 また、主食は精製されていないものを取り入れてみると効果が高まります。 普段食べている白米や白いパンは、「精製」という処理を経ています。精製を行うことで、原材料に本来含まれていた繊維質、ビタミンB、ミネラルといった心疾患の予防に有効な栄養素が失われてしまうのです。 主食を玄米や全粒粉を使ったパンなどに切り替えてみるのも良いかもしれません。 適度な運動 日常生活の中で無理のない範囲で体を動かすことが推奨されています。 運動習慣がない方や不整脈による症状がつらい方は、医師と相談のうえで軽いランニングやサイクリング、ウォーキングや散歩などから始めてみてください。 身体を動かすことに慣れ、医師の許可も出た場合は筋力トレーニングもおすすめです。いきなり高負荷の運動は避け、腕立て伏せやスクワットなど手軽に始められる自重トレーニングからはじめましょう。 ウォーミングアップとクールダウンの時間、水分補給は欠かさず行ってください。 筋力トレーニングは心理的ストレスの改善にも有効です。筋力トレーニングを行うことによって分泌される神経伝達物質が気分を安定させることがさまざまな研究で証明されています。 アルコールやカフェインの摂取を控える アルコールやカフェインの過度な摂取は、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。 適量を守り、規則正しい生活を送りましょう。 成人の1日当たりの適正飲酒量は純アルコールで約20g程度です。 ビールだと500ml、缶チューハイで350ml、ワインで200ml程度に換算されます。 また、喫煙はストレスに関係なく心臓や血管への負担を増やします。 喫煙をしている方は自分が一日あたり何本吸っているのかを理解し、できる限り禁煙を目指しましょう。 睡眠の質を高める 睡眠の質を高めることは、食事や運動と同様に心身の健康を保つ上で非常に重要です。 スマートフォンやパソコンは体内時計に影響を及ぼすブルーライトが発せられているため、就寝前の使用は控えることが望ましいです。 また、寝室環境の整備も睡眠の質を向上するために必要です。寝室や寝床の中は静かで暗い環境を保ちましょう。季節にもよりますが、室温は13~29度、湿度は40~60%程度が適切だといわれています。 また、就寝前の時間の使い方も重要です。就寝90分ほど前に、ぬるめのお風呂につかると身体が温まり眠りやすくなります。そのほか、好きな音楽を聴く、軽い読書をするといった自分がリラックスできることを取り入れることも望ましいです。 寝酒はかえって眠りを悪化させる可能性があります。適量以上の飲酒はできる限り避けましょう。 医療機関を受診すべき不整脈のサイン 不整脈の症状を感じた場合、早急に専門の医師を受診しましょう。 不整脈は突然死のリスクもあります。放置してしまうと血栓の発生や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まります。 不整脈の症状が続いている、もしくは頻度が増えている 胸痛や息切れ、めまいなどの症状が伴う もともと心疾患がある これらに該当する場合は早急に医療機関にかかり、適切な治療を受ける必要があります。 上記に該当しないものの、健康診断で「精密検査が必要」と言われた方も、早急に受診しましょう。 【緊急性のない場合】ストレス性を含む不整脈の対処法 期外収縮など緊急性の低い不整脈の場合でも、はやく治療したい方もいるでしょう。ストレス性の不整脈だと診断された場合、病院では日常生活指導を受けられます。 もし、それだけでは不安な場合、医師と相談の上、抗不整脈薬の内服や、カテーテルアブレーション治療を受ける選択肢もあります。 カテーテルアブレーションとは、足の付け根の静脈から細いカテーテル(管)を心臓まで送り込み、不整脈の発生源となる部位にカテーテルの先端を当てて、高周波電流で焼灼する手術です。 カテーテルが不整脈発生部位に届くようであれば、この治療を受けることができます。 ストレス性不整脈はセルフケアと適切な医療でコントロールしよう 不整脈は心疾患が原因で起こる場合、ストレスが原因で起こる場合で大きく2つに分かれます。 ストレスが原因であったり、一過性の場合は、生活習慣を見直すことで症状が改善される可能性があります。食生活の見直しや日常的な運動、睡眠をしっかり取り、健康な体づくりを心がけましょう。 ストレスが多い生活をしている自覚がある方は、ストレスをためないよう生活を工夫したり、人に相談するなどして抱えているストレスを減らす必要があります。 それでも不安が残る場合には、医療機関を受診して適切な治療を受ける方法もあります。専門の医師に相談し、ストレス性不整脈の軽減に努めましょう。 ストレス性不整脈に関するよくある質問 不整脈の症状で脈が飛ぶ場合すぐに病院で治療すべきですか? 一拍だけ脈が飛ぶ、一瞬胸がドキッとするといった症状の主な原因は「期外収縮」であることが多いです。 心臓に電気を送る部分である洞結節と呼ばれる部位とは別の場所から、やや早いタイミングで心臓に電気が流れることにより起こります。 期外収縮は年齢や体質、ストレスの影響などで起こることが多い症状だといわれています。 持病で心疾患を患っている、脈が飛ぶ以外の症状がある場合は急ぎ病院にかかる必要がありますが、心当たりがない場合は急いで治療する必要はありません。 一方、症状が長期間で起こっている場合や不安が強い場合は、一度精密検査を受けるべきでしょう。 動悸を抑える薬はありますか? 市販薬では存在しません。 動悸を抑える「抗不整脈薬」はありますが、医師が処方する必要があります。 不整脈や息切れに効果があるとされる市販薬はありますが、あくまで一時的に症状を緩和するのみで、不整脈に直接作用するものではありません。 一時的に症状が治まったために病院受診が遅れると、知らず知らずのうちに悪化する可能性もあります。薬を内服したい場合は、医療機関を受診しましょう。
2025.06.29 -
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「高齢の親を病院に連れて行ったら低カリウム血症と診断されました」 「低カリウム血症って何ですか?どんな治療が必要なのでしょうか?」 このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。 低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が正常値より低くなった状態です。 高齢者が低カリウム血症になる主な原因は、食事量の減少や薬の副作用などが挙げられます。 本記事では、高齢者が低カリウム血症になる主な原因や症状、治療法についてわかりやすく解説します。入院が必要になるケースや、入院にかかる費用も紹介しているので、参考にしてみてください。 高齢者が低カリウム血症になりやすい4つの原因 低カリウム血症は、以下のような高齢者の身体的変化や生活習慣の変化が原因で発症しやすくなります。 食事量の減少 薬の副作用 消化器疾患の影響 ホルモンの過剰分泌 順番に見ていきましょう。 食事量の減少 高齢者では、加齢による嚥下機能の低下や嗅覚・味覚の機能低下といった身体的変化により食欲がなくなる方も多いです。食欲がなくなれば、当然ながら食事量が減少します。 カリウムは食材に含まれる栄養素です。そのため、食事量が減少すると、カリウムの摂取量も減り、カリウム不足に陥りやすいです。 薬の副作用 低カリウム血症は、薬の副作用が原因で発症するケースもあります。 低カリウム血症の原因として注意すべきなのが、利尿作用のある薬です。カリウムは尿や汗とともに体外に排出される性質があります。そのため、利尿作用のある薬を摂取すると、体内でカリウム不足が起こりやすいです。 例えば、心不全の治療には利尿薬がよく処方されます。(文献1) 心不全では、心臓のポンプ機能が低下して血液をうまく送り出せなくなり、体内に水分が溜まりやすくなります。そのため、利尿薬を服用して余分な水分を排出し、うっ血の改善を図るのです。 また、高血圧の治療にも利尿薬が使用されます。(文献2)体内の不要な水分を尿として排出すれば、血圧を下げる効果があるからです。 高齢者は加齢とともに、心不全や高血圧といった病気にかかりやすく、薬が処方される機会も増えます。利尿作用の薬を服用している場合は、低カリウム血症のリスクも高まることを理解しておきましょう。 消化器疾患の影響 低カリウム血症の原因として、消化器感染症が影響する場合もあります。消化器感染症には、嘔吐や下痢といった症状を伴うケースが多いです。 嘔吐や下痢により体内のカリウムが失われるため、低カリウム血症を引き起こしやすくなります。 嘔吐や下痢を起こす代表的な疾患として、胃腸炎や食中毒が挙げられます。 高齢者になると免疫力が低下して、下痢や嘔吐の症状が長引くケースも少なくありません。その結果、体内のカリウム不足が深刻化する可能性があるのです。 ホルモンの過剰分泌 アルドステロンというホルモンの過剰分泌が原因で、低カリウム血症を発症することがあります。 アルドステロンとは、体内の水分を調整する働きのあるホルモンです。(文献3) 副腎からアルドステロンが過剰につくられる病気は「原発性アルドステロン症」と呼ばれ、水分の調整機能の乱れからカリウム不足につながります。 高血圧患者のおよそ5〜15%が原発性アルドステロン症という報告もあります。(文献4) 高齢者は血管の弾力性が低下して、高血圧になりやすいです。そのため、原発性アルドステロン症を発症する機会も増えて低カリウム血症のリスクが高まります。 高齢者が低カリウム血症になったときの主な症状 ここでは、高齢者が低カリウム血症になったときの主な症状について解説します。 主な症状は以下の3つです。 筋肉のだるさ・こわばり 不整脈 息苦しさ 低カリウム血症の症状は、加齢による身体変化と捉えて見過ごされやすいです。 早期治療につなげられるよう、症状の理解を深めましょう。 筋肉のだるさ・こわばり 筋肉のだるさ・こわばりは、低カリウム血症の症状の1つです。カリウムは、筋肉を収縮させる役割を担っています。そのため、体内のカリウムが不足していると、筋肉機能に異常が生じます。 だるさ以外にも、以下のような症状が現れます。 筋肉痛 つっぱり感 力がぬける感じ 参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省 高齢者は、加齢による筋肉の衰えとして、筋肉異常の変化を見過ごしがちです。 筋肉のだるさやこわばりは、転倒による怪我につながりやすいので、早期治療で症状の改善を図りましょう。 不整脈 低カリウム血症になると、不整脈の症状も現れる場合があります。 カリウムは、心臓の収縮やリズムの維持に役割を果たしています。よって、カリウムが不足すると、正常な心臓の動きを保てなくなり不整脈を誘発してしまうのです。 不整脈は加齢とともに増加する病気です。(文献5) 加齢に伴う老人性不整脈か、低カリウム血症による不整脈かによって、治療方針が変わってきます。不整脈になったら、発症した原因を特定して適切な治療を進めていく姿勢が大切です。 息苦しさ 低カリウム血症では、息苦しさも症状として現れます。 カリウムは呼吸筋を動かす機能に関与しているため、体内のカリウムが不足すれば、呼吸がうまくできなくなるのです。 重篤な場合は、呼吸筋障害による呼吸不全を引き起こします。(文献6) 呼吸不全は生命に関わる危険性を高めます。ただの息切れだろうと軽く考えずに、低カリウム血症の可能性も念頭に置いて早期受診を心がけましょう。 高齢者が低カリウム血症になったときの治療法 高齢者が低カリウム血症になったときの治療法は、症状の程度や発症した原因によって決まります。 ここでは代表的な以下3つの治療法を解説します。 食事やサプリメントでカリウムを補う 点滴や薬でカリウムを摂取する 薬の服用を中断する ご自身の状況に合った治療法を探してみてください。 食事やサプリメントでカリウムを補う 軽度の低カリウム血症であれば、食事やサプリメントで不足したカリウムを補えます。 以下の表は、カリウムが多く含まれる食品の一部を紹介したものです。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) アボカド 590 バナナ 360 ほうれん草 690 納豆 690 木綿豆腐 110 刻み昆布 8,200 参考:食品成分データベース|文部科学省 特にカリウム含有量が多いのは、刻み昆布です。刻み昆布は乾燥させて商品化されているものが多く「すき昆布」の料理で良く使われる食品です。 また、ほうれん草や納豆にもカリウムが多く含まれます。カリウムが不足しているときは、ほうれん草の和え物を作ったり、食後のデザートにバナナを食べたりすると良いでしょう。 ドラッグストアで販売されているサプリメントで、カリウムを補給する方法もあります。サプリメントを使用する際は、容量・用法・用途を守り、医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。 なお、カリウムは脳梗塞の予防や再発防止につながる栄養素でもあります。以下の記事では、脳梗塞の方向けに理想の食事を紹介しているのであわせてご覧ください。 薬や注射でカリウムを摂取する 通院している方は、カリウムの内服薬による治療を受けます。他の疾患との兼ね合いで内服が困難な方や、症状が重い方は、カリウムを注射で投与します。 注射は、カリウム製剤を血中に直接投与するため、体内に速やかに吸収されます。また、量を調整できるため、医師の判断のもと、足りないカリウムを効果的に補えます。 薬の服用を中断する 薬の影響で低カリウム血症になった場合は、薬の服用を中断する場合があります。 利尿作用のある薬は、尿とともにカリウムが流れてしまうため、服用に配慮が必要な薬剤です。 以下は、利尿作用のある薬が処方される病気や症状とその効果です。 疾患 利尿作用による効果 高血圧症 排尿によって体液量を減らすことで血圧を下げる効果がある 心不全・腎疾患による浮腫 余分な水分を排出して浮腫を改善する効果がある(文献7) 参考:高血圧治療における利尿薬の用量について|厚生労働省 担当医との相談のもと、持病と低カリウム血症の両方を考慮した治療方針を決定しましょう。 高齢者が低カリウム血症になる原因を知って適切な治療を受けよう 食事量が減少する傾向にある高齢者は、日頃からカリウム不足にならない食生活への配慮が必要です。また、持病の治療で利尿作用のある薬を飲んでいる方は、カリウムが失われる機会が多いため、服薬の継続については医師と相談しましょう。 低カリウム血症には、筋肉のだるさや息苦しさといった、加齢と混同しやすい症状が現れます。症状を見逃すと、状態が悪化してしまうリスクがあるため、本記事を参考に、低カリウム血症の判断力向上に役立ててみてください。 また、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。 これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 高齢者の低カリウム血症に関するよくある質問 低カリウム血症は治る病気ですか? 頻繁な排尿や大量の下痢といった、一時的なカリウム不足の状態であれば、早期治療で回復が見込めます。症状の長期化や重篤化している場合は、長期的な治療が必要になるケースもあります。 低カリウム血症で入院することはありますか? カリウム値が大幅に低下したり、症状が悪化したりした場合は、入院する可能性があります。 国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが公表している、低カリウムの重症度(グレード)を示した定義表では、カリウム値が3.0-2.5mEq/Lの場合を「入院を要する」と定義しています。(文献8) 低カリウム血症で入院する場合の期間や費用を教えてください 入院期間は症状の程度によって異なりますが、症状が軽度の方は数日〜1週間程度で退院できたという報告があります。 低カリウム血症における入院費用を提示する病院の情報は確認できなかったため、各病院に問い合わせをお願いします。 なお、公益財団法人生命保険文化センターの調査結果によると、入院1日あたりの入院費用は平均約20,700円です。(文献9) 参考文献 (文献1) 絹川 真太郎「慢性心不全の薬物治療」日本内科学会雑誌109巻2号 P207〜214 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/2/109_207/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献2) 国立循環器病センター高血圧腎臓内科 河野雄平 「高血圧治療における利尿薬の用量について」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1022-11c.pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献3) 長瀬 美樹,藤田 敏郎ら「3)アルドステロンと生活習慣病」日本内科学会雑誌 第97巻 臨時増刊号・平成20年 2 月20日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/Suppl/97_94b/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献4) 西川 哲男,大村 昌夫ら「2)高血圧症患者の 5~15% は原発性アルドステロン症?」日本内科学会雑誌 第97巻 臨時増刊号・平成20年 2 月20日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/Suppl/97_94b/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献5) 森 拓也「老人性不整脈」日農医誌62巻2号 136〜143項 2016.7 P136〜143 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/65/2/65_136/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献6) 吉田 雄一,柴田 洋孝ら「低カリウム血症と内分泌疾患」日本内科学会雑誌 109 巻 4 号 P718〜726 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/4/109_718/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献7) 木村玄次郎「9.利尿薬を使い分ける」日本内科学会雑誌 第102巻 第 9 号・平成25年 9 月10日 P2413〜2417 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/9/102_2413/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献8) 国立がん研究センター日本臨床腫瘍研究グループ「共用基準範囲対応CTCAE v5.0 Grade定義表」P1〜6 https://jcog.jp/assets/ChgJCOG_kyouyoukijunchi-CTCAE_50_20190905.pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献9) 公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査/直近の入院時の1日あたりの自己負担費用」 https://www.jili.or.jp/research/chousa/8946.html (最終アクセス2025年6月22日)
2025.06.29 -
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「低カリウム血症って本当に治るの?」 「入院が必要なほど重い病気なのか知りたい」 血液検査の結果をきっかけにカリウム不足と言われ、不安になる方も多くいます。 結論から言えば、低カリウム血症の多くは、原因を見極めて適切な治療を受ければ回復が見込める病気です。 とはいえ、放置すると重症化し、入院や深刻な合併症につながるリスクもあります。本記事では、低カリウム血症はどのような病気で、どのように治療すれば治るのかについて解説します。 初期症状や原因、入院の基準や入院期間の目安を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 【結論】低カリウム血症の完治は可能 低カリウム血症は早期発見と早期治療により治る疾患です。 また、カリウムは嘔吐・下痢によっても体外に流れ出てしまいます。そのため、体調不良で嘔吐・下痢が続き一時的なカリウム不足の状態であれば、早期治療で回復が見込めます。 なお、低カリウム血症と似ている症状でギランバレー症候群があります。ギランバレー症候群の詳しい症状や原因については以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。 低カリウム血症を早く治すためのポイント 低カリウム血症の早期回復には、以下2つの要素を取り入れることで効果的な治療が可能です。 初期症状の段階から治療を始める 原因を特定する 低カリウム血症を早く治すためのポイントを見ていきましょう。 初期症状の段階から治療を始める 初期症状での治療開始が、低カリウム血症の早期回復につながります。 初期症状にも含まれる低カリウム血症の主な症状は以下のとおりです。 筋肉痛 手足のだるさ 筋肉のこわばり 手足の力が抜ける感じ 心臓のリズムが乱れる(不整脈) 参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省 初期症状を見逃してしまうと、呼吸不全や筋肉の麻痺などの重篤な合併症につながるリスクもありますので、早めに医療機関を受診しましょう。 原因を特定する 症状の原因を特定すると、早い段階で適切な処置をおこなえるため低カリウム血症を早く治せます。 原因を特定せずに自己判断で間違ったケアを進めてしまうと、症状をさらに悪化させてしまうケースもあります。 低カリウム血症を発症する主な原因は以下のとおりです。 下痢や嘔吐 薬の副作用 食事の偏りや絶食ダイエット 加齢 副腎疾患 自身の症状にあてはまる原因がないか特定していきましょう。 下痢や嘔吐 下痢や嘔吐で消化管から急激なカリウムが喪失します。 胃腸炎による下痢では、体内水分や電解質(カリウム)が失われるためです。 下痢や嘔吐による低カリウム血症は、水分とカリウムの同時補給で改善できます。また、経口補水液の使用により、入院せずに外来治療で回復も可能です。 とはいえ、症状が続く場合は早めに受診して、適切な補液治療を受けましょう。 薬の副作用 利尿薬やステロイド薬が腎臓からのカリウム排泄を増加させます。 利尿薬では服用開始から数週間で血清カリウム値が低下する場合もあります。しかし、薬剤による低カリウム血症は、薬の調整により速やかに改善可能です。 自己判断で薬を中止せず、医師と相談して薬の変更や減量をおこなうことで、副作用を回避できます。 食事の偏りや絶食ダイエット 極端な食事制限によりカリウム摂取量が不足し、体内貯蔵量が枯渇します。 1日のカリウム摂取量は成人男性では2,500mg、成人女性で2,000mgが必要とされています。(文献1) 栄養を意識した正しい食生活により、低カリウム血症は改善可能です。野菜や果物を意識的に摂取しバランスの良い食事を心がけて、健康的なダイエットをおこないましょう。 加齢 加齢により腎機能が低下し、カリウムの調節能力が弱くなります。65歳以上では腎機能が低下するとされています。(文献2) 定期的な血液検査により、早期発見と予防的治療が可能です。年齢に応じた健康管理を続けて、元気な毎日を過ごしていきましょう。 【関連記事】 血圧の正常値とは?内科医師が詳しく解説! 高齢者が低カリウム血症を発症する原因は?症状や治療法を医師が解説 副腎疾患 副腎からのホルモン分泌異常がカリウムバランスを崩します。 クッシング症候群などの疾患では、アルドステロンが増えることで腎臓に働きかけ、カリウムを体の外に出してしまいます。 このような場合でも、薬によって血圧やカリウムの値を整えることが可能です。 専門の医師と連携しながら治療を進めれば、改善が期待できるでしょう。 低カリウム血症の代表的な治療法 低カリウム血症の治療法は、発症原因や症状の程度に応じて異なります。 代表的な治療法は以下のとおりです。 カリウム量が多い食事を摂る サプリメントや内服薬を飲む 点滴を打つ 重症度や原因疾患の種類によっては入院治療する 自身の体の状態に適した治療法を医師と相談して決めていきましょう。 カリウム量が多い食事を摂る カリウム豊富な食事により、軽度の低カリウム血症は自然に改善されます。 以下は、カリウムが豊富に含まれる食材の一例です。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) アボカド 590 バナナ 360 納豆 690 木綿豆腐 110 刻み昆布 8,200 参考:食品成分データベース|文部科学省 カリウムの多い食品としては野菜や果物、大豆や海藻類などがあります。意識してカリウム量が高い食事を摂取すれば、低カリウム血症の症状改善が期待できるでしょう。 サプリメントや内服薬を飲む 中等度の低カリウム血症に対しては、医師の指導のもとで薬物療法が効果的です。 たとえば、内服薬には塩化カリウムを含む飲み薬や、カリウムの排出を抑えるカリウム保持性利尿薬などが使われます。 また、ドラッグストアで購入できるサプリメントで補う方法もあります。服用を始める前に、必ず医師や薬剤師に相談し、使用量や飲み方を守りましょう。 注射を打つ 注射は、カリウム製剤を直接血管へ入れる方法です。注射は、体内への吸収が早い特長があり、不足している量に応じて細かく調整できるため、効率的にカリウムを補給できます。 特に、血中のカリウム濃度が2.5mEq/L未満の場合、命に関わる危険な状態です。この際、緊急処置として注射を打つ治療が進められます。 重症度や原因疾患の種類によっては入院治療する カリウム値が大幅に低下したり、症状が悪化したりした場合は、入院する可能性があります。 以下は、国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが公表している、低カリウムの重症度(グレード)を示した定義表の一部です。 Grade 血清カリウム値 症状 治療 1 3.0mEq/L以上 なし なし 2 3.0mEq/L以上 ある 必要 3 3.0~2.5mEq/L ある 入院を要する 4 2.5mEq/L以下 ある 生命を脅かす 出典:JCOG共用基準範囲」に基づくGrade 定義|日本臨床腫瘍研究グループ カリウム値が3.0-2.5mEq/Lの場合を「入院を要する」と定義しています。入院により根本原因の精密検査と専門的治療も同時に実施できます。 低カリウム血症の初期症状を見逃さず早期受診を心がけよう 低カリウム血症は筋力の低下やだるさなど、一見よくある症状から始まるケースが多い病気です。しかし、初期サインを見逃さずに早めに対処すれば、外来治療のみでの改善も期待できます。 症状が続いたり、なんとなく体調がすぐれなかったりする場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。 また、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。 これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 低カリウム血症は治るのか?に関するよくある質問 低カリウム血症を治すためにおすすめの食事を教えてください カリウムは、野菜や果物、豆類に多く含まれます。 以下の表は、カリウムが多く含まれる食品の一部を紹介したものです。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) 刻み昆布 8,200 ほうれん草 690 納豆 690 バナナ 360 木綿豆腐 110 参考:食品成分データベース|文部科学省 カリウムを豊富に含む食品の中でも、特に含有量が多いのが刻み昆布です。「すき昆布」の煮物を食べると、効率良くカリウムを摂取できます。 また、ほうれん草の副菜を食事に取り入れたり、デザートとしてバナナを選んだりするのもカリウム補給におすすめです。 低カリウム血症の治療で入院になった場合の期間と費用の目安を教えてください 入院の期間は症状の重さによって異なりますが、軽い場合は数日から1週間ほどで退院できた例もあります。 低カリウム血症に特化した入院費用の目安は公表されていないため、詳しく知りたい方は直接医療機関に問い合わせてみてください。 なお、公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、入院1日あたりの平均費用は約20,700円とされています。(文献3) 参考文献 (文献1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準」,2020年 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (最終アクセス2025年6月16日) (文献2) 日本老年医学会雑誌「高齢者の慢性腎臓病(CKD)」,2014年 https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_5_385.pdf (最終アクセス2025年6月16日) (文献3) 公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査/直近の入院時の1日あたりの自己負担費用」 https://www.jili.or.jp/research/chousa/8946.html (最終アクセス2025年6月16日)
2025.06.29 -
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「手足がだるい」「筋肉がこわばる」などの症状が続いている場合は、低カリウム血症を発症している可能性があります。 カリウムは筋肉や神経、心臓の働きに関わる重要なミネラルです。血中濃度が下がりカリウムの量が減ると体にさまざまな不調を引き起こします。 重症化すると不整脈による胸痛や呼吸困難、さらには命に関わる合併症に至ることもあるため、決して軽視できない状態です。 本記事では、低カリウム血症の主な症状や原因に加え、治療法や入院の基準・期間、再発予防のポイントまでを詳しく解説します。 現在、症状に心当たりがある方や、家族の体調に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。 【重症度別】低カリウム血症の主な症状 低カリウム血症の症状は血清カリウム値によって異なります。 ここでは、重症度に応じた主な症状を以下の2つに分けて解説します。 軽度〜中等度の場合 重症化した場合 それぞれの段階で現れる症状の違いを把握して、早期発見につなげましょう。 軽度〜中等度の場合 軽度から中等度の低カリウム血症では、主に以下の症状が現れます。 筋肉痛 手足のだるさ 筋肉のこわばり 手足の力が抜ける感じ 心臓のリズムが乱れる(不整脈) 参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省 具体的には、階段を上る際に息切れしやすくなったり、重いものを持ち上げにくくなったりします。 これらの症状のサインが出た場合はカリウム不足の可能性があるため、放置しないで適切な治療を行うことが大切です。 なお、低カリウム血症と似たような症状でギランバレー症候群という病気があります。ギランバレー症候群の症状や原因については以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。 重症化した場合 低カリウム血症が重症化した場合の代表的な症状は、以下のとおりです。 胸痛 息苦しさ 意識障害 血清カリウム値が2.5mEq/L未満になると、四肢麻痺や呼吸筋麻痺といった重篤な症状を引き起す可能性があります。(文献1)命に関わる危険性が高い状態なので、症状が現れたらすぐに医療機関を受診してください。 低カリウム血症の原因 低カリウム血症の主な発症原因は以下の3つです。 薬の副作用 食事や生活習慣 慢性疾患や体の機能低下 これらの複数の原因が重なって低カリウム血症を発症する場合もあります。ご自身が該当する原因を特定し、治療方針を考える姿勢が大切です。 薬の副作用 特定の薬剤の使用が低カリウム血症を引き起こす原因の一つです。 体内のカリウムバランスを崩しやすい薬剤は以下のとおりです。 利尿薬 尿と一緒にカリウムを放出 ステロイド薬 インスリンの作用による細胞外から細胞内へのカリウムの取り込み インスリン アルドステロン作用によるカリウムの排泄促進 参考:電解質異常低カリウム血症|特定非営利活動法人日本集中治療教育研究会看護部会 服用中の薬剤について医師と相談し、定期的な血液検査でカリウム値をチェックしましょう。 以下の記事では利尿薬の効果や副作用に触れているので、あわせてご覧ください。 食事や生活習慣 偏った食事や不適切な生活習慣が低カリウム血症の発症リスクを高めます。 極端なダイエットや偏食により、カリウムを含む食品の摂取量が不足するためです。 たとえば以下の行動が、体内のカリウム喪失を促進します。 野菜や果物を避けた食事 加工食品中心の食生活 過度な飲酒 嘔吐を繰り返す摂食障害 バランスの取れた食事と規則正しい生活習慣を心がけることが予防の基本となります。 慢性疾患や体の機能低下 腎臓や消化器系の慢性疾患が低カリウム血症の背景にあります。 慢性腎不全や副腎機能亢進症などの疾患では、カリウムの調節機能が低下するためです。 原発性アルドステロン症では過剰なホルモン分泌によりカリウムが失われます。(文献2) 慢性的な下痢や嘔吐を伴う消化器疾患も同様の問題を引き起こします。 基礎疾患の適切な管理と並行して、カリウム値の定期的なモニタリングが重要です。 低カリウム血症の治療法 低カリウム血症の治療は重症度に応じて段階的に行われ、適切な方法選択が大切です。 主な治療法は以下のとおりです。 カリウムが豊富な食品を摂取する サプリメントや飲み薬で補給する 注射薬で補給する 症状や血液検査の結果に基づいた治療法を選択していきましょう。 カリウムが豊富な食品を摂取する 食生活の改善によりカリウムが豊富な食品を摂取することで、低カリウム血症の治療につながります。 以下は、カリウムが豊富に含まれる食材の一例です。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) アボカド 590 バナナ 360 ほうれん草 690 納豆 690 木綿豆腐 110 刻み昆布 8,200 参考:食品成分データベース|文部科学省 毎日の食事にこれらの食品を意識的に取り入れて、自然な形でのカリウム補給を目指しましょう。 サプリメントや飲み薬で補給する 中等度の低カリウム血症では、医師の処方による薬物療法が効果的です。 経口カリウム製剤やカリウム保持性利尿薬により、効率的にカリウム値を改善できます。代表的な薬剤は、塩化カリウム徐放錠やK.C.L. エリキシル® (塩化カリウム)などです。 ドラッグストアで買えるサプリメントでカリウムを補う方法もあります。 ただし、カリウムのとり過ぎは体に負担をかけるおそれがあるため、使用前に医師や薬剤師に相談し、決められた量と使い方を守りましょう。 注射薬で補給する 注射によるカリウム補給は、カリウムを血管に直接入れる方法で、体内にすばやく吸収されるのが特徴です。必要な量を細かく調整できるため、医師の判断により効率よく不足分を補えます。 血液中のカリウム値が2.5mEq/L未満の場合や、心電図に異常が出ている場合は、緊急の対応が必要になり、注射薬の投与が検討されます。 低カリウム血症の入院基準と入院期間 低カリウム血症の入院判断は血清カリウム値と症状の重篤度により決定されます。 国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが示している重症度の目安では、血液中のカリウム濃度が3.0〜2.5mEq/Lの場合、「入院が必要なレベル」と定義しています。(文献3) カリウム濃度の数値だけでなく、四肢の麻痺や呼吸困難などの重篤な症状がある場合も緊急入院の対象です。 入院期間は症状の程度によって異なりますが、症状が軽度の方は数日〜1週間程度で退院できたという報告があります。重度の場合は、長期的入院が必要となる可能性があります。 低カリウム血症の症状が出たら早めに受診を心がけよう 筋肉の異常や動悸、脱力感などが続く場合は、体内のカリウム不足が影響しているかもしれません。 低カリウム血症の症状は日頃の疲れや加齢による体調不良と似ているため、見逃されやすいケースが多いです。そのため、不調が続くときは低カリウム血症を疑う視点を持ち、早めに専門機関を受診することが大切です。 なお、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。 これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 低カリウム血症や症状に関するよくある質問 低カリウム血症は治療すれば治りますか? 低カリウム血症は適切な治療により改善できる疾患です。 軽度から中等度の場合、食事療法や内服薬により数日から数週間で正常値に回復します。ただし、原因となる基礎疾患がある場合は、その治療も並行して行う必要があります。 治療後も定期的な検査により再発を防ぎ、長期的な健康管理を続けていく意識が大切です。 低カリウム血症の治療期間はどれくらいですか? 治療期間は重症度と原因により大きく異なります。 軽度の場合、食事療法や経口薬により短期間での改善が多く見られます。ただし、中等度~重症例や慢性疾患が原因の場合は、入院治療や長期的な管理が必要になる場合もあります。 個人差があるため、医師と相談しながら治療計画を立て、焦らずに治療を継続していきましょう。 低カリウム血症は高齢者が発症しやすいですか? 高齢者は若年者と比較して低カリウム血症を発症するリスクが高い傾向にあります。 加齢により腎機能が低下し、カリウムの調節能力が衰えたり、高血圧・心疾患の治療で利尿薬を服用する機会が多かったりするためです。 また、食事摂取量の減少や消化吸収能力の低下も影響を与えます。 高齢の方は定期的な血液検査と適切な食事管理により、予防と早期発見に努めることが重要です。 参考文献 (文献1) Richard A Oram,Timothy J McDonaldほか「Investigating hypokalaemia」, BMJ 2013; 347: f5137 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24065427/ (最終アクセス2025年6月18日) (文献2) 難病情報センター13 内分泌疾患「原発性アルドステロン症」 https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/kenkyuhan_pdf2014/gaiyo031.pdf (最終アクセス2025年6月15日) (文献3) 国立がん研究センター日本臨床腫瘍研究グループ「共用基準範囲対応CTCAE v5.0 Grade定義表」P1〜6 https://jcog.jp/assets/ChgJCOG_kyouyoukijunchi-CTCAE_50_20190905.pdf (最終アクセス2025年6月15日)
2025.06.29 -
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
「片麻痺の影響で肩が外れかけていると言われたけど、普段どんな動きを避ければいいの?」 「介護のときに腕を引っ張ってしまっていないか心配…」 このように不安を抱える方は多いでしょう。 片麻痺のある方は、肩の筋肉の働きが弱まることで、肩関節の亜脱臼が起きやすくなります。そのため、腕を無理に引っ張る・ぶら下げる・肩より高く上げすぎるといった行為は避けるべきです。 これらの禁忌を知らずにいると、痛みが悪化したり、肩の可動域がさらに制限されたりする可能性があります。だからこそ、本人・介護者ともに正しい知識を身につけておきましょう。 本記事では、片麻痺による亜脱臼の原因や避けるべき禁忌行為を解説します。リハビリ方法も紹介しているので、片麻痺の亜脱臼に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。 片麻痺と亜脱臼の関係性 肩関節の亜脱臼は、ラグビーやバスケなどの接触が多いスポーツでみられやすいケガです。 しかし、スポーツによるケガだけでなく、脳卒中後の後遺症である片麻痺に伴って生じることがあります。とくに、脳卒中を発症して間もない弛緩性麻痺の時期に起こりやすいとされています。 弛緩性麻痺とは、体を動かそうとしても筋肉がうまく働かず、常に脱力して腕がだらりと垂れ下がってしまう状態です。 肩周りの筋肉が緩むと腕の重さを支えきれなくなり、重力によって腕全体が下方向へ引っ張られます。この持続的な力が肩の関節を正常な位置からずらしてしまい、亜脱臼を引き起こすのです。 また、感覚障害や半側空間無視(脳損傷により片側の空間を認識できなくなる症状)があると、麻痺側の肩が体の下敷きになっていても気づかず、亜脱臼につながる場合もあります。ある研究では、片麻痺の患者様の約35%に肩関節亜脱臼が見られたとの報告もあります。(文献1) 亜脱臼があるからといって必ずしも痛みが出るわけではありません。実際に、亜脱臼のある方の約50%は痛みを訴えないとの報告もあります。(文献2) その他の脳卒中における後遺症についてはこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。 【禁忌】片麻痺の亜脱臼でやってはいけない3つの行為 片麻痺によって亜脱臼が起きている場合、やってはいけない行為は以下の3つです。 腕を高く上げすぎる 腕をぶら下げる 腕を無理に引っ張る これらの行為に共通しているのは、肩関節や肩周囲の筋肉に負荷がかかる動きである点です。症状を悪化させないために日常生活でこの3つの行為を避けるよう意識しましょう。 腕を高く上げすぎる 麻痺側の腕を肩より高い位置まで無理に上げすぎる行為は避けるべきです。麻痺の影響で肩周りの筋肉が緩み、関節が不安定な状態になっているためです。 この状態で腕を高く上げると、肩関節が前方に引っ張られ、亜脱臼や脱臼を引き起こす危険性が高まります。 しかし、弛緩性麻痺で肩の亜脱臼を起こしている方は、自力で高く腕を上げられません。そのため、腕を高く上げすぎる動作は、介助者が着替えや洗体などを介助する際に注意が必要です。 腕を動かすときは、痛みや違和感のない範囲にとどめましょう。 腕をぶら下げる 麻痺側の腕をだらりとぶら下げたままにしておくことも、亜脱臼を悪化させる原因です。 とくに弛緩性麻痺の場合、腕の重さを支える筋肉が十分に働かず、立ったり座ったりしている間、常に腕の重みで肩関節が下へ引っ張られます。この状態が長く続くと、肩周りの筋肉や靭帯が伸びてしまい、関節のずれが大きくなる可能性があります。 たとえば、以下のような場合は腕が落ちてしまったり、ぶら下がったりしないようにしましょう。 車いすに座っているとき ベッドで横になっているとき クッションやテーブルの上に腕を置くなど、常に腕を安定した位置に保つ工夫が必要です。 腕を無理に引っ張る 本人だけでなく、家族や介護者の方が麻痺側の腕を無理に引っ張る行為も避けるべきです。 ベッドからの起き上がりや移乗介助の際に、腕をつかんで引っ張ってしまうと、肩関節周囲の組織が伸び、亜脱臼を悪化させる恐れがあります。 介助の際は、肘と手首のあたりを優しく支え、腕全体を肩関節の方へそっと押し込むように意識しながら動かしてください。 また、感覚障害で腕の位置がわかりにくくなっている場合も少なくありません。お腹の上やテーブルの上など、本人の視界に入る場所に腕を置いてあげることで、安心感にもつながります。 片麻痺の亜脱臼に対する4種類のリハビリ 片麻痺に伴う肩関節の亜脱臼に対しては、以下の4種類のリハビリがおこなわれます。 ポジショニング 装具療法 電気治療 運動療法 これらの方法を患者様の状態に合わせて組み合わせ、専門家の指導のもとで進めていくのが一般的です。 ポジショニング|腕を正しい位置に置く ポジショニングは、麻痺側の腕を常に正しい位置に保ち、肩関節に負担をかける禁忌姿勢を避けて関節を保護する基本的なアプローチです。 姿勢ごとのポジショニングのポイントを以下の表にまとめました。 姿勢 ポイント 椅子や車椅子に座っているとき 机やクッションに腕をのせて、だらりと垂れ下がらないようにする 仰向けで寝ているとき 体の横に対して、腕が中央に来るように枕やクッションで高さを調整する 横向きで寝ているとき 抱き枕やタオルなどを使い、腕が体の下敷きになったり、前に落ちたりするのを防ぐ 適切なポジショニングは肩への持続的な負荷を減らすため、亜脱臼の悪化以外に痛みの緩和やむくみの軽減にもつながります。 装具療法|アームスリング固定による疼痛の軽減 装具療法は、三角巾やアームスリングといった装具を用いて、肩関節を安定した位置に固定する方法です。麻痺側の腕が垂れ下がることで生じる亜脱臼の悪化や、それに伴う痛みの増強を防ぐ目的でおこなわれます。 脳卒中治療ガイドライン2021では、スリングは有用な場合もあるものの、その効果は装着している間に限られるとされています。(文献3)長期間の固定は肩や肘を動かす機会を奪うため、関節が硬くなる「拘縮」を招く原因になりかねません。 安易に装具を使用するとリハビリの妨げになる可能性もあるため、自己判断での装着は避けましょう。 理学療法士や作業療法士など専門家の評価のもと、必要な時間や場面を見極めて適切に使用する必要があります。 電気治療|電気刺激による筋の強化 電気治療は、麻痺で動きにくい肩周りの筋肉に電気で刺激を送り、筋肉の収縮を促して再教育を図る治療法です。筋肉の収縮は、肩関節を本来の位置に引き上げる助けとなります。 電気治療では、主に神経筋電気刺激が用いられ、脳卒中治療ガイドライン2021でも、肩関節亜脱臼への神経筋電気刺激は妥当とされています。(文献3) 電気治療はリハビリの一環として、他の運動療法と組み合わせて実施されるのが一般的です。 ただし、片麻痺の亜脱臼に対する神経筋電気刺激は、脳卒中の発症から間もない急性期・亜急性期での有用性は示されたものの、発症後6カ月以降の慢性期では明確な差はなかったとの報告もあります。(文献4) 運動療法|肩関節周囲の筋力強化 運動療法は、肩関節を支える筋力を強化し、関節の安定性を取り戻すための治療法です。 自動運動(自分で動かす運動)や他動運動(他の人に動かしてもらう運動)を通じて、筋力低下を防ぎ、関節が硬くなる拘縮を予防します。 肩関節を支える筋肉の中でインナーマッスルの1つである回旋筋腱板は、上腕骨を肩甲骨に引き付けて安定させる役割を担います。回旋筋腱板をバランスよく鍛えることは、肩の安定性を高めるために欠かせません。 ただし、無理な運動はかえって肩を痛める原因になりかねません。必ずリハビリの専門家の指導のもと、痛みや違和感のない範囲でおこないましょう。 片麻痺の亜脱臼における禁忌事項を把握して悪化を防ごう 片麻痺の亜脱臼に対して、やってはいけない禁忌事項を理解せずにいると、意図せず亜脱臼を悪化させてしまう危険性があります。とくに感覚障害や半側空間無視がある場合は、本人が異変に気づきにくいため家族や介護者の方の正しい知識と協力が欠かせません。 肩関節を本来あるべき位置に保つためにも、専門家の指導のもとでリハビリに取り組み、日頃から腕の位置に気を配って正しい姿勢を心がけましょう。 運動麻痺のような脳卒中の後遺症に対する治療法として再生医療も選択肢の1つです。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 片麻痺と亜脱臼に関するよくある質問 片麻痺の亜脱臼は改善しますか 適切なリハビリテーションの継続は、片麻痺の亜脱臼の改善が期待できる方法の1つです。 たとえば、神経筋電気刺激を受けた患者様は、受けなかった場合よりも亜脱臼の程度が小さくなったとの研究報告が存在します。(文献5)また、麻痺からの回復段階が進むにつれて、亜脱臼の改善が見られたとの報告もあります。(文献6) 専門家と相談しながら、自分の状態に合ったリハビリに取り組んでいきましょう。 亜脱臼を放置するとどうなりますか 片麻痺に伴う亜脱臼を放置すると、さまざまな問題につながる恐れがあります。 まず、時間の経過とともに関節が固まり、元の位置に戻すのが難しくなると考えられます。また、肩周囲の筋肉に負担がかかり続け、肩を支える重要な腱板の断裂を引き起こす可能性も低くありません。 ある研究では、50歳以上の反復性肩関節脱臼の症例の多くで腱板断裂が合併していたとの報告もあるため、亜脱臼は放置せずに適切な治療を受けましょう。(文献7) 【関連記事】 肩腱板断裂(損傷)とは?現役整形外科医師が徹底解説 肩腱板断裂の手術と入院期間について医師が詳しく解説 参考文献 (文献1) 猪飼哲夫,米本恭三ほか 「脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼の検討-経時的変化について-」 リハビリテーション医学 29 (7) , pp.569-575 , 1992年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/29/7/29_7_569/_pdf (最終アクセス2025年6月10日) (文献2) Leonid Kalichman,Motti Ratmansky 「Underlying pathology and associated factors of hemiplegic shoulder pain」 American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 90 (9) , pp.768-780 , 2011 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21430513/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献3) 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会「脳卒中ガイドライン2021[改訂2025]」, 2025年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf(最終アクセス2025年6月16日) (文献4) Jae-Hyoung Lee,Lucinda L Bakerほか 「Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation for management of shoulder subluxation post-stroke: a systematic review with meta-analysis」 Clinical Rehabilitation 31 (11) , pp.1431-1444 , 2017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28343442/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献5) Sandra L. Linn,Malcolm H. Granatほか 「Prevention of Shoulder Subluxation After Stroke With Electrical Stimulation」 Stroke 30 (5) , pp.963-968 , 1999 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10229728/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献6) 武富由雄 「脳卒中片麻痺における肩関節の亜脱臼と運動 機能回復段階に関する一考察」 肩関節 16 (2) , pp.218-220 , 1992年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/16/2/16_218/_pdf (最終アクセス2025年6月10日) (文献7) 伊崎輝昌,柴田陽三ほか 「腱板断裂を伴う反復性肩関節脱臼に対する治療成績-鏡視下Bankart修復術と鏡視下腱板修復術の併用法-」整形外科と災害外科 58 (2) , pp.188-191 , 2009年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/58/2/58_2_188/_pdf (最終アクセス2025年6月10日)
2025.06.29 -
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「肩の亜脱臼ってどうやって治すの?自分でも治せる?」 「肩を動かすと痛みと違和感がある…これって亜脱臼?」 このような疑問や不安を抱える方は多いでしょう。 結論からお伝えすると、肩の亜脱臼は保存療法・リハビリ・手術などを組み合わせることで治療可能です。 一方で、亜脱臼を自分で治す情報もありますが、関節の損傷や慢性的な肩の不安定性につながるリスクがあります。 リスクを未然に防ぐためにも、正しい治し方を理解しておきましょう。 本記事では、肩関節亜脱臼の症状や治し方、放置したときのリスクについて詳しく解説します。脱臼との違いについても紹介するので、肩の痛みや違和感でお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。 【基礎知識】肩関節亜脱臼と脱臼の違いについて 亜脱臼とは、肩の関節が正常な位置から部分的にずれた状態を指します。 肩関節の亜脱臼は関節が外れかかった後、自然に元の位置へ戻る場合がある点が大きな特徴です。そのため、「外れかかった」や「抜けかけた」と表現されることもあります。 肩関節の亜脱臼が起きた際には、瞬間的に鋭い痛みや腕が抜けるような感覚を覚えることがあります。 しかし、すぐに肩関節が元の位置に戻るため、肩がはっきりと外れたといった自覚がないケースも少なくありません。自分では亜脱臼だと気づかず、肩の違和感やだるさとして感じている場合もあります。 一方で、脱臼とは肩関節が本来の位置から完全に外れてしまった状態を指します。 ケガによって生じる肩関節の脱臼の多くは、腕の骨である上腕骨が肩の前方へ外れるタイプです。とくに以下のようなコンタクトスポーツで発症しやすい傾向にあります。 柔道 ラグビー アメリカンフットボール 亜脱臼は脱臼に比べて症状が軽く、気づかないケースも少なくありません。しかし、亜脱臼を放置すると症状の悪化や別の疾患に移行する可能性があるため、早期に治療する必要があります。 肩関節亜脱臼の治し方|全治までの期間も紹介 肩関節の亜脱臼の治療には主に以下の3つの方法が挙げられます。 保存療法 リハビリ 手術 保存療法とリハビリを中心にした治療が一般的です。しかし、これらの方法で状態がよくならない場合や、脱臼を繰り返す場合には手術が検討されます。 それぞれの治療方法を見ていきましょう。 保存療法|徒手整復と固定 亜脱臼によって肩関節が外れかかった際は、まず専門家による徒手整復(手技により関節を元の位置に戻す処置)がおこなわれます。患者様を仰向けに寝かせた状態で腕をゆっくりと持ち上げていく方法は、痛みが少なく、関節を整復できると知られています。 整復後は再脱臼を防ぐため、肩関節の固定が必要です。固定期間について明確なエビデンスはありませんが、患者の年齢や損傷程度に応じて1〜3週間おこなうケースが一般的です。 また、内旋位固定(従来の三角巾による固定)は、再発の可能性が高いと指摘されています。ある研究では、内旋位固定での再発率が42%であったのに対し、外旋位固定(気をつけの姿勢から、肘を直角に曲げ、脇を少し開いた状態で固定)では26%であったとの報告があります。(文献1) そのため最近では、肩を少し外に開いた状態で固定する外旋位固定を推奨する病院も少なくありません。 リハビリ|インナーマッスルや肩甲骨周囲 一定期間の固定が終了した後は、肩関節の機能回復を目的としたリハビリを開始します。リハビリは自己判断でおこなうと、痛みの悪化や他の筋肉を損傷する恐れがあるので、必ず医師や専門のリハビリスタッフの指導のもとで進めましょう。 適切なリハビリテーションは、肩関節の以下の能力を改善させ、安定性の獲得に大きく寄与すると報告されています。(文献2) 筋力 可動域 深部感覚 まずは硬くなった関節の可動域を広げる訓練から始め、痛みのない範囲での振り子運動から慎重に進めていきます。その後、状態を見ながら徐々に肩の安定性を高めるための筋力トレーニングへ移行します。 肩関節の安定性を高めるためには、インナーマッスル(回旋筋腱板)や、肩甲骨の動きに関わる周囲の筋肉をバランス良く鍛えるのが重要です。 回復の程度によりますが、スポーツへの復帰の目安はノンコンタクトスポーツ(テニスやゴルフなど、身体接触のないスポーツ)で4~6カ月、コンタクトスポーツ(バスケやラグビーなど、身体接触があるスポーツ)で6~8カ月と報告されています。(文献3) 手術|反復性肩関節脱臼の場合 保存療法やリハビリテーションをおこなっても、脱臼や亜脱臼を繰り返してしまうケースがあります。このように脱臼が習慣化してしまった「反復性肩関節脱臼」の状態では、手術も選択肢の1つです。 手術の目的は、脱臼の際に損傷した組織を修復し、肩関節の構造的な安定性を取り戻すことです。 現在おこなわれている手術では、損傷した関節唇と呼ばれる軟骨組織を修復する「鏡視下Bankart(バンカート)法」が選択されることが多くなっています。この手術は、関節鏡を用いるため小さな傷で済み、体への負担が少ない点が特徴です。 脱臼に対する手術の種類については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。 肩関節の亜脱臼は自分で治せるのか? 肩の関節が外れかかった際、自然に元の位置へ戻ることもあります。このため「自分で治せるのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、自分で関節を戻そうとする行為はおこなわないでください。 無理に関節を動かしたり、入れようとしたりすると、肩の周囲にある重要な神経や血管を傷つけてしまう恐れがあります。また、肩を支えるインナーマッスルである腱板を新たに損傷する原因にもなりかねません。 たとえ痛みがおさまり、自然に関節が戻ったように感じられたとしても、見えない部分で骨や軟骨が傷ついている可能性も考えられます。肩に違和感を覚えた際は自己判断で対処せず、必ず整形外科などの専門的な医療機関を受診しましょう。 肩関節の亜脱臼を放置するリスク 肩関節の亜脱臼は、自然に戻ることがあるため軽視されがちですが、放置するとさまざまなリスクを伴います。 その理由は、時間が経過すると周囲の筋肉が硬直してしまい、関節を元の位置に戻すのが難しくなるためです。場合によっては、麻酔をかけて整復処置をおこなわなければならないケースもあります。 また、一度損傷した関節の支持組織は緩み、肩が不安定な状態になりやすいです。その結果、わずかな動作で再脱臼や亜脱臼を繰り返す「反復性肩関節脱臼」に移行しかねません。このような状態は以下のような症状を引き起こすリスクを高めます。 慢性的な痛み 関節の変形 神経損傷 とくに、脱臼を繰り返すと肩を支える腱板を損傷する可能性が大きくなります。ある研究では、50歳以上の反復性肩関節脱臼の症例22例のうち、19例で腱板断裂が認められたとの報告もあります。(文献4) 症状が現れた際は放置せず、速やかに医療機関を受診しましょう。 【関連記事】 肩腱板断裂(損傷)とは?現役整形外科医師が徹底解説 肩腱板断裂の手術と入院期間について医師が詳しく解説 肩関節亜脱臼の治し方を知って適切な治療を進めよう 肩関節の亜脱臼は、関節が外れかかった状態を指し、自然に戻るため自分では気づかないケースも少なくありません。 しかし、一度起きた亜脱臼を放置すると、脱臼が習慣化して症状が悪化し、将来的には手術が必要となる可能性もあります。 肩関節亜脱臼の主な治療法は以下の3つです。 徒手整復や固定による保存療法 可動域訓練と筋力トレーニングによるリハビリ 保存療法とリハビリでも効果が見られない場合の手術の検討 肩に抜けそうな感覚や痛み、違和感を少しでも覚えた際は、自己判断で済ませずに専門の医療機関を受診してください。医師による診断のもと、自分の状態に合った治療を進めましょう。 肩の亜脱臼はスポーツ外傷としてもよく見られますが、スポーツで筋肉や靭帯を損傷した場合は、再生医療の選択肢も考えられます。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 肩関節亜脱臼と治し方に関するよくある質問 亜脱臼の痛みはどのくらい続きますか 肩関節亜脱臼や脱臼の痛みが続く期間は、関節が外れた程度によって異なります。 関節が外れかかった状態である亜脱臼の場合、痛みは1週間程度で落ち着くのが一般的です。一方で、関節が完全に外れてしまった脱臼の場合は、整復をおこなった後も2〜3週間ほど痛みが続くことがあります。 いずれの場合も、受傷後の1〜3週間程度は症状を悪化させないために安静を保ちましょう。痛みが強い際には、医師の判断のもとで痛み止めの薬を使用する場合もあります。 ただし、痛みの感じ方には個人差があるため、症状が長引く場合は必ず医療機関に相談してください。 肩の脱臼は動かせますか 肩関節が完全に脱臼した場合、自分で腕を動かすのは困難です。 脱臼の瞬間から激しい痛みに襲われ、腕をほとんど持ち上げられなくなったり、特定の位置から動かせなくなったりします。 このような状態で無理に動かそうとすると、かえって状態を悪化させる危険が伴います。肩の周囲を通っている重要な血管や神経を新たに傷つけてしまい、しびれなどの後遺症が出る可能性も否定できません。 たとえ亜脱臼で動かせるように感じても、自己判断で動かすのは避けるべきです。肩に異常を感じたら、動かさずにできるだけ早く専門の医療機関を受診してください。 参考文献 (文献1) 井樋栄二 「最新原著レビュー:肩関節脱臼後の外旋位固定は再脱臼率を低下させる−無作為化比較試験」 整形外科 61 (4) , pp.378-380 , 2010年 https://www.pieronline.jp/content/article/0030-5901/61040/378 (最終アクセス2025年6月10日) (文献2) 尼子雅敏,田村吏沙 「肩関節脱臼の治療戦略とリハビリテーションの役割」防医大誌 47 (1) , pp.1-10 , 2022年 https://www.ndmc.ac.jp/wp-content/uploads/2022/03/47-1_001-010.pdf (最終アクセス2025年6月10日) (文献3) 岩堀 裕介,花村 浩克ほか 「スポーツ選手の反復性肩関節前方脱臼の術後リハビリテーション」特集『より安全なスポーツ復帰をめざすリハビリテーション診断・治療』56 (10) , pp.752-763 , 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/10/56_56.752/_article/-char/ja/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献4) 伊崎輝昌,柴田陽三ほか 「腱板断裂を伴う反復性肩関節脱臼に対する治療成績-鏡視下Bankart修復術と鏡視下腱板修復術の併用法-」整形外科と災害外科 58 (2) , pp.188-191 , 2009年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/58/2/58_2_188/_pdf (最終アクセス2025年6月10日)
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「健康診断で心電図に異常があると指摘された」 「ときどき動悸がする」 「親も不整脈で治療していたため、自分も不整脈になったのではないか」 このような不安をお持ちの方も多いことでしょう。 心臓は電気的興奮により動き、全身に血液を送るポンプの役割を果たします。不整脈とは、電気的興奮のリズムや心拍数が一定しない状態を指します。 不整脈の原因は複数あるため、「不整脈になりやすい人の特徴」と一言であらわすことは難しいものです。不整脈の種類も複数あり、問題なく普通の生活を送れるものから、命に関わるものまでさまざまです。 本記事では、不整脈になりやすい人の特徴について、体質や生活習慣などの観点から説明します。 主な予防方法も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 不整脈になりやすい人の特徴は主に5つ 不整脈になりやすい人の特徴は、主に以下の5つです。 加齢 肥満 生活習慣 疾患および薬の影響 遺伝 加齢 年齢を重ねると、不整脈が生じやすくなります。原因は、刺激伝導系および周辺組織の老化です。 心筋と呼ばれる心臓の筋肉は、適切なタイミングで一定に動くための電気信号システムが備わっています。これが刺激伝導系です。 しかし、年齢を重ねると、刺激伝導系および周辺組織が衰えたり硬くなったりします。そのため、心臓内で電気信号がうまく伝わらないことが増えてしまい、不整脈が生じやすくなるのです。(文献1) 一般的には、60歳以上になると不整脈が増えるといわれています。(文献2) しかし、不整脈のうち期外収縮と呼ばれるものは、30代を過ぎる頃からほとんどの方に認められます。(文献3) 期外収縮とは、不整脈の中でもよく見られるタイプで、一定のタイミングから若干外れた心臓の収縮により発生するものです。 肥満 肥満は高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす原因の1つです。生活習慣病により不整脈が生じやすくなるだけではなく、肥満そのものが、不整脈の大きな要因であると示されています。 イギリスの文献においても、「体重を減らすことが不整脈の予防や改善につながる」と記されています。(文献4) 生活習慣 不整脈の原因としてあげられる主な生活習慣は以下のとおりです。 睡眠不足 疲労 ストレスの蓄積 カフェインの過剰摂取 喫煙 過度の飲酒 これらの生活習慣により活性化されるのが、自律神経の1つである交感神経です。 交感神経が活性化されると、日中に不整脈が起こりやすくなります。もう1つの自律神経である副交感神経が活性化されると、就寝中に不整脈が発生しやすくなります。(文献5) 睡眠不足や疲労、ストレスの蓄積などは、自律神経の乱れや不整脈そのものを引き起こしやすい生活習慣です。 不整脈とストレスの関係は以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 過度の飲酒習慣は、発作性の心房細動と関連があるとされています。 心房細動とは、心臓上部の心房が1分間に400~600回も不規則に動く不整脈です。発作性心房細動は、短時間だけ発生して元に戻るものを指します。(文献6) 心房細動は、心臓が不規則に動くために血流が悪くなり、血栓が生じやすい不整脈です。心房にできた血栓が全身を流れると、脳の血管を詰まらせる原因になります。その結果生じる疾患が脳梗塞であり、心疾患が由来であるため「心原性脳梗塞」と呼ばれます。 心原性脳梗塞に関しては、以下の記事をご参照ください。 疾患および薬の影響 不整脈の原因の中でも比較的多いものは、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、心不全、先天性心疾患といった心臓疾患です。 心臓疾患以外に加えて、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症も、不整脈を引き起こす原因の1つです。 甲状腺機能低下症は徐脈性不整脈、甲状腺機能亢進症は頻脈性不整脈(心拍数の増加)と関連があるといわれています。 徐脈性不整脈は心拍数が減少するもので、以下のような種類があります。 洞不全症候群 房室ブロック 徐脈性心房細動 頻脈性不整脈とは心拍数が増加するもので、主なものは以下のとおりです。 発作性上室性頻拍 心房細動 心房粗動 心室頻拍 心室細動 風邪薬や抗うつ薬、心疾患の薬によって不整脈が生じる場合もあります。不整脈と診断された方で、該当する薬を内服されている方は、必ず担当医師に伝えましょう。 遺伝 心臓の電気的な活動をつかさどる遺伝子の変異により起こる不整脈の総称が、遺伝性不整脈です。 主な遺伝性不整脈としては、以下のようなものがあげられます。 先天性QT延長症候群 ブルガダ症候群 カテコラミン誘発多形性心室頻拍 QT短縮症候群 早期再分極症候群 遺伝性不整脈は、無症状のこともありますが、心室頻拍や心室細動といった命に関わる可能性もあります。 突然死の原因になるケースもあるため、適切な診断・治療が求められる不整脈です。 命に関わる不整脈 不整脈の中には、命に関わるものも存在します。 代表的なものは以下の3つです。 心室細動 心室頻拍 完全房室ブロック 心室細動 心室細動とは、心臓の下部である心室が非常に早く不規則に興奮して、小刻みに震えてしまう状態です。この状況では、心臓が拍動しなくなるため、全身に血液を送れなくなります。 全身に血液を送り出せなくなるため脳の血流も低下し、めまいや失神を起こし、意識を失います。迅速な救命処置や治療を行わないと命に関わる、最も危険な不整脈です。 心室頻拍 心室頻拍とは、心室が速く脈を打ち過ぎて血圧がほとんど出なくなる不整脈です。症状としては、強い動悸や胸痛、めまい、失神などがあげられます。 心室頻拍の大部分は重度の心疾患を抱えている方に発生し、心室細動を引き起こす場合もあります。 完全房室ブロック 房室ブロックと呼ばれる不整脈の中で最も重症なものです。 房室ブロックとは、心房からの電気信号を心室に伝える房室結節での連絡が途絶えてしまい、心室の脈がなくなるものです。房室ブロックはⅠ度からⅢ度に分類されており、完全房室ブロックと呼ばれるⅢ度は、房室結節での連絡が完全に途絶えています。(文献7) このまま放置すると心停止に至る可能性があるうえ、脈を速くする有効な内服薬がないためペースメーカー埋め込み手術が必要です。 不整脈にならないために気をつけること 不整脈にならないために気をつけると良い3つのポイントを以下に示しました。 食生活の見直し 適度な運動 持病の管理 食生活の見直し 食生活の見直しは、不整脈予防にとっても大切なものです。 バランスの良い食事を心がけましょう。具体的には、以下の3点がまんべんなくそろっている食事です。 主食(ご飯やパン、麺類など炭水化物の供給源) 主菜(肉や魚、卵などタンパク質の供給源) 副菜(野菜や果物、きのこ類などビタミンやミネラル、食物繊維の供給源) 不整脈に良い食べ物としては、バナナやほうれん草などのカリウムが多いもの、海藻類や豆類などマグネシウムが多いものがあげられます。 不整脈に悪い食べものとしては、塩分や動物性脂肪が多い食品などがあげられます。カフェイン飲料の過剰摂取も好ましくありません。 不整脈と食生活の関係は、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 適度な運動 ウォーキングや水泳など、中程度の運動30分を週2.5時間以上行うことで、心血管疾患の予防や不整脈抑制の効果があるとされています。ただし、運動習慣がない方が急に運動したり、既に心疾患がある方が運動したりすると、不整脈が引き起こされる可能性があります。 運動習慣がない方、既に心疾患がある方は、運動を始める前に医師に相談しましょう。 アメリカの論文では、体重を10%減少させた方や体重減を維持させた方は、減らなかった方より、不整脈が起きない確率が6倍も高くなったとのデータが示されています。論文上では、体重減少により重症の心房細動が軽症になったケースも示されていました。(文献8) 同じ論文では、飲酒の習慣がある心房細動患者が禁酒したことで、不整脈の再発が大幅に減ったとの研究結果が示されています。加えて、禁煙が心房細動の予防戦略として強く推奨されています。 持病の管理 心疾患をはじめ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある方は、医師から指示を受けた薬の内服を続けて、治療を継続しましょう。 血圧の管理は、不整脈予防に効果的といわれています。 不整脈が繰り返し発生している方や、動悸・息切れといった症状がある方は、必ず医師に相談してください。 不整脈になりやすい人の特徴を理解して予防に努めよう 不整脈になりやすい人の特徴としては、「高齢である」「家族歴がある」「心疾患や高血圧、糖尿病などがある」といったことがあげられます。また、肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣も関係するといわれています。 これらの特徴に少しでも当てはまる方は、生活習慣の改善や疾患の管理などできる範囲で不整脈の予防に努めましょう。 中には命にかかわる不整脈もあるため、強い胸痛や動悸、呼吸困難などの症状が出た場合は、早急に病院を受診してください。症状がない場合でも、心電図検査で異常を指摘された方は、ホルター心電図や運動負荷心電図、心臓エコーなどの詳しい検査を受けることが望ましいでしょう。 現在不整脈でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しております。 参考文献 (文献1) 森 拓也|老人性不整脈(日本農村医学会雑誌,2016年) (文献2) 独立行政法人国立病院機構岩国医療センター|不整脈とは? (文献3) 国立循環器病研究センター|不整脈 (文献4) Kiran Haresh Kumar Patel, et al.|Obesity as a risk factor for cardiac arrhythmias(BMJ Medicine,2022) (文献5) 渡部 智紀|自律神経と不整脈(自律神経,2019年) (文献6) 日本不整脈外科研究会|不整脈とは 心房細動 (文献7) 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター|房室ブロック (文献8) Mina K. Chung, et al.|Lifestyle and Risk Factor Modification for Reduction of Atrial Fibrillation(Circulation,2020)
2025.06.29 -
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健康診断で「貧血の疑い」と言われた、あるいは血液検査の結果を見ても「どの数値が貧血を示しているのか」「自分の数値は正常なのか」分からずに不安を感じていませんか? 普段から疲れやすさやめまいを感じていて、貧血ではないかと気になっている方も多くいらっしゃいます。 この記事では、貧血に関わる血液検査の数値の見方や基準値をわかりやすく解説します。数値の見方を理解し、ご自身の状況を把握しましょう。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。再生医療について詳しく知りたい方は、公式LINEにご登録ください。 貧血の数値でわかる重症度 血液検査で貧血かどうかを調べるときに最も重要な項目が「ヘモグロビン」です。健康診断の結果表では以下のように表記されています。 Hb HGB 血色素量 ヘモグロビン どの表記でも同じ検査値を指しており、この数値を見ることで貧血の有無や重症度を判断できます。 世界保健機関(WHO)が定義しているヘモグロビン濃度の基準は、次の通りです。 対象者 貧血なし 軽度貧血 中等度貧血 重度貧血 6~59ヶ月の小児 11.0 g/dL以上 10.0~10.9 g/dL 7.0~9.9 g/dL 7.0 g/dL未満 5~11歳の小児 11.5 g/dL以上 11.0~11.4 g/dL 8.0~10.9 g/dL 8.0 g/dL未満 12~14歳の小児 12.0 g/dL以上 11.0~11.9 g/dL 8.0~10.9 g/dL 8.0 g/dL未満 非妊娠女性(15歳以上) 12.0 g/dL以上 11.0~11.9 g/dL 8.0~10.9 g/dL 8.0 g/dL未満 妊娠女性 11.0 g/dL以上 10.0~10.9 g/dL 7.0~9.9 g/dL 7.0 g/dL未満 男性(15歳以上) 13.0 g/dL以上 11.0~12.9 g/dL 8.0~10.9 g/dL 8.0 g/dL未満 (文献1) 上記のWHO基準に加えて、ヘモグロビン値ごとの症状の現れ方や治療の必要性は以下が目安です。 ヘモグロビン値 主な症状・体への影響 11〜12 g/dL ほとんど自覚症状なし 9〜10 g/dL 頭痛・だるさ・肩こり・動悸や息切れ 7〜8 g/dL 治療として輸血が必要になることがある 6 g/dL以下 息切れや息苦しさなど心不全の症状が現れることが多い 数値や症状はあくまで目安であり、年齢や持病の有無によって症状の現れ方は変わります。気になる場合は医師に相談しましょう。 血液検査における数値|貧血の基準値 健康診断や血液検査の結果を見ても、数字の意味がわからず不安を抱く方は多いのではないでしょうか。 ヘモグロビンの他にも、ヘマトクリットなどの基準値と意味を理解できれば、自分の数値がどの範囲にあるかを判断しやすくなります。 この項目では、各検査項目の数値の見方と貧血との関係について詳しく解説します。 血色素量(ヘモグロビン:Hb) ヘモグロビンは赤血球に含まれる鉄分を持つタンパク質で、体内で酸素を運ぶ重要な役割を担っています。血液検査でヘモグロビン値を確認すれば、貧血のリスクや体への影響を判断できます。 対象 基準値 15歳以上の男性 13g/dL未満 15歳以上の女性 12g/dL未満 (文献1) 症状がなくても数値が少しずつ下がっている場合は注意が必要です。 ヘマトクリット(Ht) ヘマトクリットは、血液の中で赤血球がどのくらいの割合を占めているかを示す数値です。血液の中には主に赤血球が含まれているため、ヘマトクリットを見ると赤血球がどのくらいあるかがわかります。 年齢や性別によって基準値が異なりますが、数値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 40.7~50.1% 女性 35.1~44.4% (文献2) ヘマトクリット値は月経による鉄分の損失や、男性ホルモンによる赤血球産生の違いがあるため、女性の方が男性よりもやや低い傾向にあるのが一般的です。 ヘマトクリット値が低下していると、赤血球が不足していることを示し、貧血の可能性があります。また、数値が高いときは脱水や多血症など、赤血球が相対的に増えている状態が考えられます。 赤血球数(RBC) 赤血球数(RBC)は、血液の中にどれくらい赤血球があるかを示す検査値です。赤血球は体のすみずみに酸素を運ぶ役割を持っているため、不足すると体に影響が出やすく、多すぎてもリスクがあります。 赤血球数の基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 435~555×10⁶/μl 女性 386~492×10⁶/μl (文献2) 男性の方が女性よりも数値が高めになるのは、男性ホルモンが赤血球を作る働きを活発にする点や、女性は月経で鉄分を失いやすい点が関係しています。 赤血球数が低いと、酸素を運ぶ力が不足している状態で、貧血の可能性があります。そのため、鉄分の不足や出血の有無もあわせて調べることが大切です。 また、基準値を超えて赤血球数が多い場合は、多血症が考えられます。とくに喫煙者や高地に住んでいる方は高めに出やすい傾向があります。生活習慣や体調を見直し、必要に応じて精密検査を受けましょう。 MCV(平均赤血球容積) MCVは赤血球1個あたりの大きさを示す検査値で、貧血の種類や原因を判断する手がかりになります。 MCVの基準値の目安は、以下の通りです。 対象 基準値 男性・女性 83.6〜98.2fl (文献2) MCVの数値が低い場合は赤血球が小さく、鉄が不足している可能性があります。鉄剤の補充などで数値の改善が期待できます。 一方、MCVの数値が高い場合は赤血球が大きく、ビタミンB12や葉酸不足が主な原因です。必要に応じて栄養補給や治療が検討されます。 MCVの数値は単独ではなく、他の血液検査と組み合わせて判断するのが重要です。数値の傾向を把握すれば、貧血の種類や必要な対応を見極めやすくなります。 MCH / MCHC(赤血球中のヘモグロビン量・濃度) MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)とMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)は、赤血球1個あたりに含まれるヘモグロビンの量と濃度を示す検査値で、貧血のタイプや原因を把握する手がかりになります。 MCHとMCHCの数値の目安は以下のとおりです。 MCH(平均赤血球ヘモグロビン量) MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度) 男性・女性:27.5~33.2pg 男性・女性:31.7~35.3g/dL (文献2) MCHとMCHCの数値が低い場合、赤血球1個に含まれるヘモグロビンが少ないことを意味し、鉄欠乏性貧血や慢性疾患による貧血が疑われます。 また、MCHとMCHCの数値が高いときは赤血球中のヘモグロビンが濃く、脱水や血液疾患が関係している場合があります。 MCH・MCHCは、赤血球1個あたりの酸素運搬能力を知る手がかりです。数値の変化は疲れやすさや息切れなどの症状として現れることがあります。 フェリチン(貯蔵鉄) フェリチンは体内に鉄分を貯蔵するタンパク質で、主に肝臓や骨髄などに存在します。 血中のフェリチン値は体内の鉄分の貯蔵量を反映するため、鉄欠乏や鉄過剰の診断において重要な指標です。 フェリチンの基準値範囲は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 25~280 ng/ml 女性 10~120 ng/ml (文献2) ヘモグロビン値が正常でも、フェリチン値が低い場合は隠れ貧血や鉄欠乏の可能性があります。体内の鉄分が少なくなっている状態で、早めの対策が重要です。 一方、フェリチン値が高い場合は白血病や肝臓障害、感染症などが関係している可能性があります。 フェリチン値は、貧血リスクの判断材料だけでなく生活習慣の見直しにも役立ちます。 血清鉄(Fe) 血清鉄(Fe)は、血液中に存在する鉄分の量を示す検査値です。血中の鉄分は主にトランスフェリンと呼ばれるタンパク質と結合して体内を運ばれ、鉄分の利用状況を把握する手がかりになります。 血清鉄の基準範囲は、以下の通りです。 対象 基準値 男性・女性 40〜188μg/dL (文献2) 血清鉄値が低い場合は鉄欠乏性貧血の可能性があり、逆に高い場合は急性肝炎や急性白血病などが関係しているときがあります。 また、炎症性疾患や感染症で血清鉄が低下する場合があるため、ほかの検査値も踏まえて総合的に判断する必要があります。 【貧血のタイプ別】数値の見方 貧血にはいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴的な数値の傾向があります。自分の血液検査の結果と照らし合わせることで、どのタイプの貧血の可能性があるかを把握しやすくなります。 各タイプの特徴的な数値や注意点を一つずつみていきましょう。 鉄欠乏性貧血の特徴 鉄欠乏性貧血では、血液検査で特徴的な数値の変化が現れます。 主な傾向は以下の通りです。 ヘモグロビン(Hb):低下 平均赤血球容積(MCV):低下 平均赤血球ヘモグロビン量(MCH):低下 フェリチン(貯蔵鉄):低下 総鉄結合能(TIBC):上昇 上記の数値パターンは、鉄不足によって赤血球が小さく色が薄い状態になることを示しています。フェリチンの低下は体内の鉄貯蔵量の枯渇を、総鉄結合能(TIBC)の上昇は体が鉄分を取り込もうとしている状態です。 血液検査の数値を総合的に見ることで、鉄欠乏性貧血のリスクや体への影響を判断する目安になります。 隠れ貧血(潜在性鉄欠乏) 隠れ貧血は、一般的な血液検査では見つかりにくい貧血の前段階で、ヘモグロビン値が正常範囲内でも、体内の鉄貯蔵量が不足している状態を指します。 自覚症状がほとんどないことも多く、見過ごされやすいため注意が必要です。 主な数値の傾向は以下の通りです。 Hb(ヘモグロビン):正常範囲内 フェリチン(貯蔵鉄):低下 フェリチン値が低い場合、体内の鉄分が枯渇し始めており、将来的に貧血へ進行する恐れがあります。とくに、女性は月経による鉄分損失があるため、男性よりも注意深い観察が必要です。 定期的にフェリチン値をチェックしておくと、自覚症状が出る前の早期段階で鉄欠乏を発見でき、食事やサプリでの補給など適切な対策につなげられます。 悪性貧血(ビタミンB12欠乏)の特徴 ビタミンB12欠乏による悪性貧血では以下の特徴が見られます。 ヘモグロビン(Hb):低下 平均赤血球容積(MCV):上昇 葉酸:低下 ビタミンB12:低下 ビタミンB12や葉酸は赤血球の正常な形成に必要な栄養素で、不足すると赤血球が大きくなるのが特徴です。 血液検査の数値が上記に当てはまる方は、赤血球の形成に関わる栄養が不足している可能性があります。 必要に応じて医師に相談し、適切な治療を受けたり生活習慣の見直しをしたりしましょう。 慢性疾患に伴う貧血の特徴 慢性疾患に伴う貧血は、次のような基礎疾患が原因となることがあります。 感染症 悪性腫瘍 関節リウマチ 心不全 腎疾患 主に、慢性的な炎症によって鉄分がうまく利用されず、赤血球が作られにくくなる傾向にあります。血液検査ではフェリチンが正常から高値を示すことが多く、体内に鉄分はあるものの、ヘモグロビンの合成に使われにくい状態を反映しています。 根本的な改善には、原因となる疾患の治療が重要で、単純な鉄剤補充だけでは十分な効果が得られにくいことが特徴です。 血液検査の数値を総合的に見ながら、医師と相談して適切な対応を検討しましょう。 貧血の数値改善法 貧血の数値改善法は主に以下の2つです。 鉄剤内服・注射での治療 生活習慣の見直し 血液検査で貧血が疑われても、原因や程度は人によって異なります。改善のためには、医師の診断にもとづいた治療と日常生活での工夫の両方が重要です。 鉄剤内服・注射での治療 鉄欠乏性貧血と診断された場合、基本となる治療は鉄剤による補充です。一般的には内服薬が用いられますが、症状や数値によって注射が選ばれるケースも見られます。 副作用としては、便秘・下痢・吐き気・胃の不快感などがみられることがあります。 治療の優先度や検査の必要性を含め、自分の状態に合った方法を選ぶことが大切です。 生活習慣の見直し 軽い貧血の場合は、毎日の食事や生活の工夫で良くなる場合があります。 具体的なポイントは、下記の通りです。 食事:鉄分を多く含む食品を普段の食事に取り入れる。ビタミンCやたんぱく質を一緒に摂取すると鉄分の吸収が良くなる。 飲み物の工夫:食事中のコーヒーや緑茶、清涼飲料水は鉄分の吸収を妨げるため食事の前後は控えると効果的 睡眠と休養:夜更かしを避ける、休日にしっかり体を休めるなど体の回復を意識する 鉄分は、どのように組み合わせて食べるかで吸収率が変わります。赤身肉やレバーなどの動物性食品には鉄分が多く含まれているので、積極的に摂取しましょう。 一方、コーヒーや緑茶に含まれるタンニンや、清涼飲料水や加工食品に添加されることが多いリン酸塩は、鉄分の吸収を妨害する要因になるので注意が必要です。 さらに、睡眠不足はホルモンや自律神経のバランスを乱し、血液をつくる働きを妨げることがあります。夜更かしを避け十分な睡眠をとることは、貧血改善の基盤となります。 小さな工夫を積み重ねることで、数値改善につながる可能性があります。無理のないところから始めてみましょう。 貧血の受診目安 健康診断で貧血を指摘されたら、症状がなくても内科や婦人科を受診しましょう。必要に応じて、治療が推奨される場合もあります。 高齢の方では、年齢のせいと見過ごされやすい軽いめまいや疲れやすさが、実は進行した貧血のサインとなっている場合があります。 血液検査の数値は目安のひとつにすぎず、体調の変化やライフステージによって必要な対応は変わります。 数値にとらわれず、違和感を覚えたら早めに医師へ相談しましょう。 貧血と数値の関係性を理解して適切に対処しよう 血液検査の数値を確認することで、貧血の程度や必要な対処法を把握できます。 数値を見る際のポイントは、以下の通りです。 ヘモグロビンや赤血球数が基準値よりどのくらい下がっているか把握する 鉄分の貯蔵量(フェリチン)を把握する 症状がなくても再検査や医師相談が必要な場合がある 上記を把握しておくことで、自分に必要な行動を選べます。 軽い疲れやめまい、息切れもサインになることがあるので、数値だけでなく体調の変化にも注意しましょう。 健康管理では、貧血だけでなく様々な体の不調に早めに気づくことが大切です。 当院「リペアセルクリニック」のLINEでは、関節の痛みや脳梗塞、糖尿病など再生医療に関する情報をお届けしています。貧血の治療は対象外ですが、幅広い健康管理の参考として、ぜひご登録ください。 参考文献 (文献1) 貧血の診断と重症度評価のためのヘモグロビン濃度|WHO IRIS (文献2) 臨床検査基準値一覧血液検査 2016年6月版|国立がん研究センター中央病院臨床検査部
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「立ちくらみがして、そのまま倒れてしまった」「急に視界が暗くなって意識が遠のいた」 そんな経験に心当たりはありませんか?とくに女性に多い貧血は、放っておくと日常生活に支障をきたすばかりか、転倒やケガなどの事故にもつながりかねません。 本記事では、貧血で倒れてしまう原因や前兆となるサイン、倒れそうになったときの対処法、そして受診すべきタイミングについて、わかりやすく解説します。「また倒れたらどうしよう」といった不安を少しでも軽くできるよう、ぜひ参考にしてください。 貧血で倒れる原因 貧血による失神や倒れる症状には、さまざまな原因があります。もっとも多い鉄欠乏性貧血から、血圧の変化による起立性低血圧、さらには重篤な疾患に伴う貧血まで、背景はさまざまです。原因を理解すると、適切な対処と予防が可能になります。 鉄欠乏性貧血 日本で最も多くみられる貧血は鉄欠乏性貧血です。以下は検査項目における体内鉄分量の平均的な数値になります。 検査項目 数値 ヘモグロビン 2g(男性)、1.5g(女性) フェリチン 1g(男性)、0.6g(女性) ヘモジデリン 300mg ミオグロビン 200mg 組織酵素(ヘム鉄および非ヘム鉄) 150mg トランスフェリン 3mg (文献1) 鉄欠乏性貧血の主な原因は以下のとおりです。 単純な鉄の摂取不足 過多月経や慢性出血 腸の吸収不全 男性の場合:胃・十二指腸潰瘍、大腸がんなど消化器系の出血が中心 鉄欠乏性貧血はとくに女性に多く、症状は以下のとおりです。 動悸・息切れ めまい・立ちくらみ 耳鳴り 疲れやすさ 頭が重い感覚 顔色が青白い 集中力の低下 女性は月経による鉄分の損失が多いため、とくに注意が必要です。症状が続く場合は医療機関での検査をおすすめします。 起立性低血圧(脳貧血) 起立性低血圧は脳貧血や立ちくらみとも呼ばれ、血液の異常ではなく血圧の急激な低下が原因で起こります。症状は以下のようなタイミングで現れることが多いです。 朝の急な立ち上がり時 長時間の立位後 座位や臥位から急に立ち上がった際 起立性低血圧になりやすい人の特徴として、以下の要因が考えられます。 長時間立ちっぱなしの状況が多い 低血圧体質 睡眠不足が続いている 水分不足状態 特定の薬を服用中(降圧薬など) 対策としては、急な体位変換を避け、ゆっくりと立ち上がることが重要です。十分な水分摂取と適度な休息を心がけ、症状が頻繁に起こる場合は医師に相談しましょう。薬剤性の可能性もあるため、服用中の薬についても医師へ伝えることが大切です。 その他の疾患 慢性疾患やその他の疾患に伴う貧血は、基礎疾患の炎症や代謝異常により引き起こされる二次性の貧血です。原因となる主な疾患は以下のとおりです。 心不全 慢性腎臓病 全身性自己免疫疾患(関節リウマチ、SLEなど) 感染症(慢性感染症) がん(悪性腫瘍) 二次性の貧血は原疾患の治療が重要で、鉄剤の補充だけでは改善しにくいのが特徴です。基礎疾患による慢性炎症が鉄の利用を阻害するため、根本的な原因疾患の管理が必要となります。 中高年以降で原因不明の貧血が続く場合は、隠れた慢性疾患の可能性も考慮し、総合的な検査が重要です。 貧血で倒れる前のサイン 貧血では、倒れる際に前兆となるサインがあります。 感覚系の異常として、回転性のめまいやふらつき、体のバランス感覚の低下が現れます。「キーン」「ボーッ」といった耳鳴りにより外の音が遠く感じられたり、目の前が真っ暗になる、視野にちらつきが見えるなどの視覚異常も要注意です。 循環器系の症状では、心臓がバクバクする動悸や息切れ、呼吸が浅くなる症状が見られます。急に全身が冷えて冷や汗をかき、顔色が悪くなる顔面蒼白も典型的なサインです。 その他の症状として、おなかがムカムカする吐き気や腹部不快感、血の気が引くような手足の冷感や脱力感があります。集中できない、頭がフワフワするといった意識の朦朧や頭重感も現れます。 これらの症状が現れたら、すぐに座ったり横になったりすることが重要です。無理をせず、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。 貧血で倒れそうになったときの対処法 貧血の症状が現れて倒れそうになった際は、冷静に適切な対処が重要です。無理して動き続けると症状が悪化し、転倒や怪我のリスクが高まります。以下の手順に沿って、段階的に対応しましょう。 安全確保する まず最優先に行うべきは安全な場所の確保です。立っていると転倒の危険があるため、無理をせずその場でしゃがんだり、可能であれば横になったりして安全な体勢を取りましょう。 階段や道路、電車のホームなど危険な場所にいる場合は、周囲の人に助けを求めながら安全な場所への移動が大切です。頭を打つような転倒を避けるため、壁や手すりがある場所でゆっくりと体勢を低くしましょう。 一人でいる場合でも、慌てずに周囲の状況を確認し、転倒リスクの少ない場所で休息を取ることを心がけてください。安全確保は何よりも優先されるべきです。 服を緩める 安全な体勢が確保できたら、次に血流の改善を図りましょう。ベルトやネクタイ、襟元のボタンなど、体を締め付けている衣類をゆるめることで血行を促進し、症状の緩和につながります。 首周りや腹部を締め付けているものは、血液循環や呼吸を妨げる可能性があるため優先的に緩めましょう。靴のひもやブーツなども、きつく感じる場合は緩めてください。 可能であれば静かで人の少ない場所に移動し、安静に過ごすことが重要です。騒がしい環境は症状を悪化させる可能性があるため、落ち着いて休める環境を確保しましょう。リラックスした状態で休息を取ると、徐々に症状の改善が期待できます。 水分や糖分を補給する 意識がはっきりしている場合は、適切な水分や糖分補給をしましょう。脱水が貧血症状を悪化させる場合があるため、水やスポーツドリンクの摂取が効果的です。糖分不足も症状に関係する場合があるので、飴やジュースなども有効です。 ただし、意識がもうろうとしている場合は絶対に飲食させてはいけません。誤嚥の危険があり、窒息や肺炎のリスクが高まります。無理に口に含ませることは避けてください。 意識が戻らない、けいれんが起こる、呼吸困難などの重篤な症状が見られる場合は、迷わず119番通報をしましょう。これらは緊急事態のサインであり、専門的な医療処置が必要です。軽視せず、適切な判断を心がけてください。 貧血で倒れた場合の受診目安 貧血による失神や倒れるなどの症状が起きた場合、その後の対応が重要です。軽微な症状であっても、背景に重大な疾患が隠れている可能性があるため、受診の必要性を正しく見極める必要があります。以下の基準を参考に、適切な医療機関への相談を検討しましょう。 受診が必要なケースは 緊急性の高い場合は、以下のような症状がみられます。 繰り返し倒れる 失神の時間が長い けいれんがあった 頭を打った 呼吸が乱れている 意識がはっきりしない など このような状況では即座に医療機関を受診してください。 日常生活への影響が大きい場合も受診の目安となります。仕事や学校生活に支障をきたすような症状が継続する場合は、その時点で病院の受診が必要です。 貧血の原因は鉄欠乏症だけでなく、がんなどの重大な疾患が潜んでいる可能性もあります。とくに中高年で急に貧血症状が現れた場合や、通常の鉄分補給で改善しない場合は、詳しい検査が必要です。軽視せず早期の受診を心がけましょう。 何科に受診するのか 貧血症状で医療機関を受診する際は、まず内科がおすすめです。内科では血液検査や基本的な診察を通じて、貧血の原因を特定し、適切な治療方針を決定できます。 年齢や性別による選択肢として、子どもの場合は小児科、女性の場合は産婦人科でも対応可能です。女性の貧血は月経過多や婦人科疾患が原因となる場合が多いため、産婦人科での相談も良いでしょう。 受診科に迷った場合は、まずかかりつけの医療機関に相談をおすすめします。症状に応じて適切な診療科を案内してもらえます。 貧血でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。 貧血で倒れないための予防策 貧血による失神や倒れる症状を予防するには、日常生活での対策が重要です。食事や水分摂取、生活習慣の改善を通じて、体の状態を整えることで貧血リスクを大幅に軽減できます。以下のポイントを意識して、継続的な予防に取り組みましょう。 食事の見直し 基本的な食習慣の改善として、バランスの良い食事を1日3回規則正しく摂取しましょう。よく噛んで食べることで消化吸収を促進し、栄養素の効率的な利用につながります。 鉄分を多く含む食品(レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜など)を積極的に摂取しましょう。同時にタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)やビタミン類(とくにビタミンC、B12、葉酸)も重要です。ビタミンCは鉄の吸収を促進するため、一緒に摂ることが効果的です。 18歳以上の鉄の食事摂取基準(1日あたり)は以下のとおりです。 成人男性:7.0mg 成人女性:6.0mg(月経あり:10.5mg)(文献2) 注意点として、コーヒーや紅茶の飲みすぎは鉄の吸収を阻害するため控えめにし、食事と時間をずらしての摂取がおすすめです。 水分と塩分の適切な摂取 起立性低血圧の予防には、とくに朝の水分補給が重要です。起床時は血液が濃縮されているため、コップ1杯の水を飲むと血液循環を改善できます。立ち上がる際は急に動かず、ゆっくりと段階的に体勢を変えましょう。 夏場や運動時は発汗により脱水が進みやすいため、こまめな水分補給が必要です。スポーツドリンクなどで適度な塩分も同時摂取が効果的です。 食事後は消化のために血液が胃腸に集中し、起立性低血圧になりやすくなります。食後は急な立ち上がりを避け、ゆっくりとした動作を心がけてください。日常的に十分な水分摂取を維持すると、血液循環の改善と貧血症状の予防につながります。 睡眠・ストレス・運動習慣を整える 自律神経の安定が脳貧血予防のポイントです。質の良い睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを維持すると、自律神経のバランスが整い、血圧や心拍数の調整機能が正常に働きます。 適度な運動も効果的で、軽いウォーキングやストレッチなどの有酸素運動は血液循環を改善し、心肺機能を向上させます。激しい運動は避け、継続可能な範囲で行いましょう。 ストレス管理では、リラックスや趣味の時間を作ると、心身の緊張が和らぎます。慢性的なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、貧血症状を悪化させる可能性があります。深呼吸や瞑想、軽いヨガなども自律神経の安定に役立つでしょう。 生活習慣を総合的に改善すると、貧血による失神リスクを大幅に軽減できます。 貧血で倒れる頻度が多い方は放置厳禁! 頻繁に倒れる症状が続く場合は、背景に重大な疾患が隠れている可能性があります。鉄欠乏性貧血以外にも、慢性疾患や悪性腫瘍による貧血、血液疾患などが原因となることがあるため、繰り返す症状は必ず医療機関で詳しい検査を受けてください。 貧血の原因や症状は一人ひとり異なるため、個々の状況に応じた適切な治療が必要です。自己判断による対処では根本的な解決にならず、症状の悪化や合併症のリスクもあります。専門的な診断と治療を受けることで、効果的な改善が期待できます。 貧血でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 MSDマニュアル プロフェッショナル版「鉄欠乏性貧血」MSDマニュアル プロフェッショナル版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/11-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E5%AD%A6%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%85%AB%E7%98%8D%E5%AD%A6/%E8%B5%A4%E8%A1%80%E7%90%83%E7%94%A3%E7%94%9F%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%B2%A7%E8%A1%80/%E9%89%84%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E8%B2%A7%E8%A1%80(最終アクセス:2025年6月9日) 文献2 厚生労働省「鉄の食事摂取基準(mg/日)」厚生労働省ホームぺージ https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aq.pdf(最終アクセス:2025年6月9日)
2025.06.29 -
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- 肘関節
- スポーツ外傷
「肩や肘が痛いけれど、まだ投げられるから大丈夫」「チームに迷惑をかけられないから、少しくらい我慢しよう」 このような想いを抱きながら、痛みと向き合っている選手や保護者の方は決して少なくありません。 しかし、驚くべきことに高校球児の20人に1人が肩関節もしくは肘関節の手術や引退を余儀なくされるような重篤な怪我を経験しているのが現実です。(文献1) さらに、1シーズンで100イニング以上投げた選手は、投球回数が少ない選手に比べて約3.5倍の確率で重篤な怪我のリスクが高まるという研究結果も報告されています。(文献1) 野球での怪我は運や偶然で起こるものではありません。そこには必ず原因があり、正しい知識と早期対応によって多くの怪我は予防できるのです。 本記事では、野球で発症しやすい代表的な怪我の種類と症状、そして最も大切な予防法について詳しく解説します。 怪我と正しく向き合うための知識を身につけることで、長く野球を続けられる体づくりを目指しましょう。 野球で多い怪我と症状をチェック 野球は全身を使ってプレーする複雑なスポーツです。投球、打撃、守備、走塁のすべての動作で、さまざまな部位に負担がかかります。(文献2) 以下で詳しく解説する野球で多い怪我の症状や特徴を理解し、自分の症状がどのタイプに当てはまるかを把握しましょう。 野球肩 原因 投球動作の繰り返し、肩甲骨周囲筋の筋力低下、不適切な投球フォーム、体幹・股関節の柔軟性低下 症状 投球時の肩の痛み、腕を上げる際の引っかかり感、夜間痛(炎症が強い場合)、肩の可動域制限 治療法 投球中止と安静(2〜4週間)、消炎鎮痛薬、ステロイド注射、リハビリテーション、重症例では手術 野球肩は投球動作で引き起こされる肩関節周辺の障害の総称で、発症のピークは15~16歳とされており、投手と捕手に多く見られます。(文献3) 投球動作は5つのフェーズに分けられ、各フェーズで異なる負荷がかかるため、痛みの出るタイミングによって損傷部位や重症度を推測できます。 ワインドアップ期:投球動作開始からステップ脚を最も高く上げるまで アーリーコッキング期:ステップ脚が地面に着くまで レイトコッキング期:肩関節が最大外旋位に達するまで アクセラレーション期:ボールリリースまでの加速期 フォロースルー期:ボールリリース後の減速期野球肩は段階的に進行する特徴があります。 初期段階では投球後の軽い違和感程度で、数日休むと症状が改善できるため、この段階での適切な対応が最も重要ですが、無理をしてしまうと日常生活に支障をきたすようになってしまいます。 初期段階で食い止められるように、違和感がある際は無理をせず休みましょう。 野球肘 原因 投球による肘への外反・回内ストレス、成長期の骨端線への負荷、オーバーユース、不良な投球フォーム 症状 投球時・投球後の肘痛、肘の伸展・屈曲制限、急に動かせなくなる(ロッキング)、握力低下(文献4) 治療法 投球禁止と安静、内側型は保存療法中心、外側型は長期投球禁止または手術、後方型は炎症抑制治療 野球肘は投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる疼痛性障害の総称で、発症の時期により「発育型野球肘」と「成人型野球肘」に分けられます。 年代別の特徴として、11-12歳が発生のピーク年齢とされており、成長期では骨端(骨にある軟骨や成長線)への影響が大きく、成人期では靱帯や筋腱付着部の障害が中心となります。 野球肘の診断で重要なポイントとして、野球肘は前兆となる自覚症状が乏しく、痛みを訴える時には重症化していることが少なくない特徴があります。 腰椎分離症・腰痛(バッティング・投球の負担) 原因 打撃練習での体幹回旋動作、投球時の腰部負担、中腰姿勢の維持、不適切なランニングフォーム 症状 体幹後屈時の痛み、長時間立位困難、慢性的な腰痛、進行すると下肢のしびれ 治療法 早期発見時は保存療法(コルセット装着)、安静、完全分離時は手術を検討 腰椎分離症は、腰の背骨にある椎弓(ついきゅう)と呼ばれる腰椎が分離している状態のことを指します。疲労骨折が原因と言われており、発育期の代表的なスポーツ障害の一つです。 野球ではピッチングやバッティングで身体を反ったり、腰をひねる動作を繰り返し行うため、発症しやすい疾患として知られています。 日本の成人も約6%が腰椎分離症を患っていますが、未成年では小学校高学年~大学進学時の成長期のスポーツ部活生に起きることが多いとされています。 日本臨床スポーツ医学誌の研究では、大阪府で全国大会出場レベルの高校野球部に入学予定の中学3年生男子を258名研究した実験によれば、258名中55名(21.3%)が腰椎分離症を疑う初見を有しており、年齢に関係なく野球の練習に熱心な子どもは腰椎分離症を患いやすいことが判明しました。(文献5) 治療で重要なのは早期発見です。まだ骨折が早期の状態で発見できれば、手術をしない保存療法で治療を進められます。コルセットの着用など安静が正しく守れれば、骨は自然と癒合していきます。 腰椎分離症の中でも、とくに発症頻度が高いのが「第五腰椎分離症」です。 初期段階では軽い違和感程度のことも多く、見逃されやすい一方で、放置すると競技継続に支障をきたす可能性があります。 第五腰椎分離症の初期症状や治療法については、以下の記事で詳しく解説しています。 足首捻挫・アキレス腱炎 原因 急激な方向転換、不整地でのプレー、ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下、不適切なシューズ 症状 足首の痛み・腫れ、歩行困難、アキレス腱部の痛み・圧痛 治療法 RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)、テーピング、リハビリテーション 野球では走塁時の急激な方向転換や、硬いグラウンドでのプレーにより足首の捻挫が頻繁に発生します。また、ダッシュやジャンプ動作の繰り返しによりアキレス腱炎も起こりやすい怪我の一つです。 アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐアキレス腱に炎症が起こる状態です。野球では、ダッシュや方向転換の繰り返し、合わないシューズを着用することで発症しやすくなります。 野球で発症した怪我のリハビリについて 野球で発症した怪我のリハビリは、単に痛みを取り除くだけではなく、競技復帰に向けた段階的な機能回復と再発予防が重要な目的となります。 以下は野球肩と野球肘のリハビリにおいて、重要なポイントです。 野球肩のリハビリポイント 急性期:肩のアイシングと安静時のポジショニング 回復期:肩甲骨周囲筋の筋力強化、インナーマッスル強化 競技復帰期:投球動作の段階的練習、フォームチェック 野球肘のリハビリポイント 投球禁止と肘のアライメント改善 股関節・体幹の柔軟性向上 段階的な競技復帰プログラム リハビリの成功には、選手、指導者、医療スタッフの連携が不可欠です。焦らずに段階的なプログラムを遵守し、より強い状態での競技復帰を果たしましょう。 野球での怪我リスクを予防するためには 野球での怪我リスクを効果的に予防するためには、まず怪我につながる主要因への理解が重要です。 適切な投球数制限を守る まず、過度な投球数は怪我のリスクを引き上げてしまいます。 予防対策として、各年代の投球数制限のガイドラインに従って、以下の表を参考に球数制限をすると良いでしょう。 年代 投球数制限(1日) 投球数制限(1週間) 補足 小学生 4年生以下60球以内 5・6年生70球以内(文献6) - 2日間連続で投げる場合は合わせて100球以内 中学生 1日70球以内(文献7) 350球以内 週に1日全力投球しない日を設ける 連続する2日間で120球以内 高校生 - 500球以内(文献8) 投球フォームの改善 不適切な投球フォームは肩や肘に過度な負担をかける主要な原因です。 以下のようなフォームは、怪我のリスクを高め、選手生命を脅かしてしまうため改善を心がけましょう。 肘が下がったまま投げることで手投げになってしまい、肘に負担をかける 身体の開きが早く、肩関節に過度なストレスがかかってしまう 踏み出す足を投球方向に斜め、または横に踏み出すことで身体の回転を正しく使えずにフォームを崩す 癖になる前に指導者の指示に従い、修正しましょう。 股関節の柔軟性 また、股関節の柔軟性は野球での怪我予防の最重要ポイントです。股関節が固いと体を上手に使えず、その状態で野球特有のピッチングやバッティングを行うと怪我の危険性が高まります。 対策として、股関節の柔軟性向上のためのストレッチを日常的に行い、練習前には適切なウォーミングアップを実施することで、怪我のリスクを軽減しましょう。 そして、継続的な疲労の蓄積は怪我の大きな要因となるため、適切な休養により体の回復を図る必要があります。 十分な睡眠と栄養摂取により体調管理を徹底し、怪我をしにくい身体づくりを行ってください。 早期復帰が目指せる再生医療(PRP/幹細胞)について メジャーリーガーをはじめとする野球選手が取り入れている「再生医療」について紹介します。 再生医療の一つ「PRP療法」には、日帰り治療が可能で手術を回避できるというメリットがあります。 患者様自身の血液を活用する治療法のため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 もう一つの再生医療「幹細胞治療」では、患者様から採取・培養した幹細胞を患部に投与いたします。幹細胞には、他の細胞に変化する能力があり、患部にアプローチします。 PRP療法だけでなく幹細胞治療も入院を必要としないため、短期間での治療を目指せるのが特徴です。 再生医療は、野球選手の怪我治療における新たな選択肢として確立されつつある治療法です。 ただし、予防が最も重要であることに変わりはありません。怪我をする前の予防策の実施と、万が一怪我をした場合の適切な治療選択が、長い競技人生を支える両輪となります。 まとめ||再発ゼロを目指すなら専門医の伴走が近道 野球での怪我は予防が最も重要です。正しい投球フォームの習得や年代に応じた投球数制限を守り、柔軟性を保つことで多くの怪我を防げます。 万が一怪我をした場合でも、メジャーリーガーも取り入れているPRP療法や幹細胞治療などの再生医療により、野球への早期復帰が目指せます。 1週間以上続く痛み、投球時の違和感、可動域の制限といった初期症状に気づいたら、すぐに専門医に相談してください。 あなたの野球人生をより良いものにするためにも、違和感があれば一人で悩まず、専門医へ相談しましょう。長く充実した野球人生を送るため、私たちが全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 古島弘三ほか「少年野球での"投げ過ぎ"が及ぼす影響 肩や肘の重篤な故障リスクは3.5倍」Full-Count, 2022年10月14日 https://full-count.jp/2022/10/14/post1294608/(最終アクセス:2025年5月24日) (文献2) 公益財団法人スポーツ安全協会「障害予防のためのセルフチェック|スポーツ外傷・障害予防-野球編」 https://www.sportsanzen.org/syogai_yobo/baseball/page2.html (最終アクセス:2025年5月25日) (文献3) 日本整形外科学会認定スポーツ医「野球肩」 https://jcoa.gr.jp/%E6%8A%95%E7%90%83%E8%82%A9/ (最終アクセス:2025年5月25日) (文献4) 日本整形外科学会認定スポーツ医「野球肘」 https://jcoa.gr.jp/%E6%8A%95%E7%90%83%E8%82%A9/ (最終アクセス:2025年5月25日) (文献5) 栗田剛寧ほか「発育期野球選手におけるポジション別の腰椎分離症と身体特性の関連」日本臨床スポーツ医学会誌 32(3), 446-453, 2024年 https://www.rinspo.jp/journal/2020/files/32-3/446-453.pdf (最終アクセス:2025年5月25日) (文献6) 日本少年野球連盟「投球数制限ガイドライン」2021年12月 https://www.boys-fukuoka.com/download/tokyusuu_seigen/20211212_tokyuguideline.pdf (最終アクセス:2025年5月27日) (文献7) 日本中学野球協議会「中学生投手の投球制限に関する統一ガイドライン」 https://littlesenior.jp/news/48.html (最終アクセス:2025年5月27日) (文献8) 日本高等学校野球連盟「高校野球特別規則(2024年版)」2024年 https://www.jhbf.or.jp/summary/rule/specialrule/specialrule_2024_1.pdf (最終アクセス:2025年5月27日)
2025.05.30 -
- インピンジメント症候群
- 肩関節
「肩を動かすたびに痛みが走る…」このような症状でお悩みではないでしょうか。 肩の痛みは、多くの方が真っ先に五十肩を思い浮かべがちですが、実はインピンジメント症候群という別の疾患の可能性もあります。 この2つは症状が似ているため、自己判断は困難です。 しかし、原因や治療法が異なるため、正しい診断を受けて治療を受けることが痛みの早期改善につながります。 本記事では、インピンジメント症候群と五十肩の違いについて、医師の視点から詳しく解説します。 さらに、ご自宅でできるセルフチェック方法や、それぞれの症状に適した対処法もご紹介しますので、「この痛みの正体を知りたい」「適切な治療を受けたい」とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。 インピンジメント症候群と五十肩の違い インピンジメント症候群と五十肩は、どちらも肩の痛みを引き起こしますが、その原因や症状には明確な違いがあります。 最も大きな違いは、肩の動かしやすさにあります。インピンジメント症候群の場合、痛みはあるものの肩を動かすことは可能です。 一方、五十肩では肩の可動域が著しく制限され、動かしたくても動かせない状態になります。 以下の表で、両者の主な違いを比較してみましょう。 項目 インピンジメント症候群 五十肩(肩関節周囲炎) 主な症状 腕を上げる時の痛み 肩の可動域制限と痛み 可動域 痛みはあるが動く 著しく制限される 夜間痛 あり(とくに寝返り時) あり(じっとしていても痛む) 発症年齢 傾向なし(スポーツ選手に多い) 40〜60代 原因 肩峰下での組織の挟み込み 肩関節周囲の炎症・癒着 病期 明確な段階分けなし 炎症期→拘縮期→回復期 この違いを理解し、ご自身の症状がどちらに該当するか、ある程度の見当をつけられますが、正確な診断には医師による詳しい検査が必要です。 インピンジメント症候群とは インピンジメント症候群は、肩関節内で腱や滑液包(関節の動きを滑らかにする袋状の組織)が骨と衝突し、炎症を引き起こす疾患です。 「インピンジメント(impingement)」は挟み込みや衝突を意味する英語で、まさにその名の通り、肩の中で組織が挟み込まれることによって痛みが生じます。 この症状の最大の特徴は、腕を横から上に上げる動作(外転動作)で強い痛みが現れることです。 とくに、腕が水平よりやや上の位置(60〜120度の範囲)で痛みがピークに達する「ペインフルアーク」と呼ばれる特徴的な症状を示します。 夜間痛も非常に特徴的で、寝返りを打った際や、痛む側の肩を下にして寝ようとした時に激痛が走ります。 これは、横になることで肩峰(肩甲骨の突起部分)と上腕骨頭の間のスペースがさらに狭くなり、炎症を起こした組織が圧迫されるためです。 テニスや水泳など腕を頭上に上げるスポーツ選手に多く見られますが、最近では長時間のデスクワークや猫背などの悪い姿勢による発症も増加しています。 猫背が続くと胸の筋肉が硬くなり、肩甲骨の位置がずれて筋肉バランスが崩れ、組織が骨に挟まれやすくなります。 また、40代以降は肩峰の形状変化や腱の柔軟性低下により発症しやすくなります。放置すると日常生活に支障をきたすため、早期の専門医受診が重要です。(文献1) 五十肩(肩関節周囲炎)とは 五十肩は、「肩関節周囲炎」や「凍結肩」とも呼ばれる疾患で、肩関節の周囲にある関節包や滑液包に炎症が生じ、最終的に癒着を起こすことで肩の動きが著しく制限される疾患です。(文献2) 「五十肩」という名前は、50代の方に多く発症することから付けられましたが、実際には40〜60代の幅広い年齢層で見られます。 五十肩の最大の特徴は、肩の可動域が段階的に制限されることです。 初期には痛みが主な症状ですが、徐々に肩が硬くなり、最終的には腕を上げることも後ろに回すこともできなくなります。 五十肩は3つの病期に分かれて進行します。 炎症期(急性期):この時期はジンジンする痛みが特徴で、悪化すると夜間痛が強く現れます。じっとしていても痛み、睡眠が妨げられることも少なくありません。肩を動かそうとすると激痛が走るため、自然と動かさなくなります。 拘縮期(慢性期):炎症による激しい痛みは徐々に和らぎますが、関節の癒着が進行し、可動域制限が顕著になります。痛みよりも「動かしにくさ」が主な症状となります。 回復期:癒着した組織が少しずつ緩み、可動域が改善していきます。ただし、完全に元の状態に戻るまでには相当な時間を要することが多いです。 五十肩の原因は完全には解明されていませんが、加齢による関節周囲組織の変性や、血流の悪化などが関与していると考えられています。 インピンジメント症候群との最大の違いは、五十肩では他人が強制的に腕を動かそうとしても動かない(他動運動の制限)ことです。 一方、インピンジメント症候群では、痛みはあるものの関節自体の可動域は保たれています。 セルフチェック|その痛みはインピンジメント症候群?五十肩? ご自宅で簡単にできるセルフチェック方法をご紹介します。 ただし、これらのテストはあくまで目安であり、正確な診断には医師による詳しい検査が必要です。 【インピンジメント症候群のセルフチェック】 セルフチェック方法 説明 ペインフルアークテスト 腕を体の横から頭上にゆっくりと上げてみてください。上げ始めは痛みが少なく、60〜120度の範囲で強い痛みが現れ、それを超えると再び痛みが軽減する場合は、インピンジメント症候群の可能性があります。 ホーキンステスト 肘を90度に曲げた状態で腕を前に伸ばし、そこから手首を下向きに回旋させます。この動作で肩の前面に痛みが生じる場合は陽性です。 夜間痛チェック 痛む側の肩を下にして横になった時に激痛が走る、または寝返りで目が覚めることが頻繁にある場合は、インピンジメント症候群の特徴的な症状です。 【五十肩のセルフチェック】 セルフチェック方法 説明 可動域制限テスト 腕を真上に上げる(屈曲) 腕を横から上に上げる(外転) 手を背中に回す(内旋) これらの動作で著しい制限がある場合は五十肩の可能性があります。 段階的悪化チェック 最初は痛みが主で、徐々に動かしにくくなった 夜間痛が強かった時期がある 現在は痛みより動きの制限が気になる このような経過を辿っている場合は五十肩の典型的なパターンです。 以下の症状がある場合は、より重篤な疾患の可能性もあるため、速やかに医療機関を受診してください。 腕や手に力が入らない しびれや感覚の異常がある 発熱を伴う 外傷後から症状が始まった 安静にしていても耐えがたい痛みが続く これらのセルフチェックで該当する項目が多い場合でも、自己判断での治療は避けてください。 とくに、五十肩とインピンジメント症候群では治療法が大きく異なるため、専門医による正確な診断が回復への近道となります。 原因と悪化させる生活習慣 インピンジメント症候群と五十肩の発症には、現代のライフスタイルが大きく関わっています。 とくに、長時間のデスクワークや不良姿勢は、肩関節周囲の筋肉バランスを崩し、症状を悪化させる主要な要因となります。 ここからは、インピンジメント症候群や五十肩を引き起こしやすい生活習慣について詳しく解説します。 要因を理解し、日常生活で意識的に改善して症状の予防や悪化防止につなげましょう。 姿勢・デスクワークの影響 現代社会では長時間のデスクワークが一般的ですが、この環境こそが肩の痛みを引き起こす最大の要因です。 パソコン作業のように同じ姿勢を長時間続けていると、肩関節周辺の筋肉が緊張し、血行不良を起こしやすくなります。 デスクワーカーの方は、1時間に1回は席を立ち、肩甲骨を意識的に動かすストレッチを行いましょう。 また、モニターの高さや椅子の調整により、自然と良い姿勢を保てる環境を整えることも重要です。 加齢・ホルモン・代謝疾患の関与 加齢による身体の変化も、肩の疾患発症に大きく関わっています。 40代以降になると、関節周囲の組織が衰えます。その結果、腱や靭帯の柔軟性が低下し、関節軟骨の摩耗も修復機能も衰えてきます。 そのため、若い頃なら自然に治癒していた軽微な損傷も蓄積され、やがて痛みや機能障害として現れます。 また、更年期を迎えた女性では、エストロゲン(女性ホルモン)の減少が関節周囲組織に影響を与えます。 エストロゲンには抗炎症作用があるため、その分泌が減少すると炎症が起こりやすくなり、五十肩の発症リスクが高まります。 そして、糖尿病を患っている方は、五十肩の発症率が高いことが知られています。(文献3) 高血糖状態が続くと、肩の動きを補助する腱板の損傷部分も血行不良になり、五十肩を引き起こす要因となってしまいます。 加齢やホルモンの変化は避けられませんが、自己管理と医師のサポートにより肩の疾患のリスクを軽減していきましょう。 治療の選択肢と期待できる期間 肩の痛みの治療には、症状の程度や患者さんの生活スタイルに応じてさまざまな選択肢があります。 大きく分けて保存療法と手術療法、そして近年注目されている再生医療があります。 多くの場合、まずは保存療法から始めて、効果が不十分な場合に他の治療法を検討するのが一般的ですが、それぞれの治療法について解説します。 保存療法:薬・注射・リハビリ 多くの肩の疾患で最初に選択される治療法です。以下の表にまとめました。 治療法 解説 薬物療法 痛み止めや筋弛緩薬により症状を緩和します。 注射療法 ステロイド注射やヒアルロン酸注射で直接的に炎症を抑制します。 ただし、ステロイド注射は1カ月に2〜3回程度に制限されます。 理学療法・リハビリテーション 関節の動きの改善、筋力強化、姿勢矯正を行います。 即効性はありませんが、根本的な改善が期待できる重要な治療です。 全体として、保存療法による症状の改善には3~6カ月程度を要することが多く、患者様には継続的な治療への理解と協力が必要です。 再生医療(PRP・幹細胞)の可能性 五十肩など肩の痛みに対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。 再生医療では、主にPRP(多血小板血漿)療法と幹細胞治療の二つがあります。 PRP(多血小板血漿)療法とは、自己血液から血小板を濃縮した成分を注入する治療法です。 一方、幹細胞治療とは、脂肪由来あるいは脊髄由来の幹細胞を用いる治療法です。他の細胞に変化する能力を持つ幹細胞を、注射や点滴によって患部に届けます。 重度の症例でも適応となる可能性があり、手術を避けたい方にとって選択肢の一つとなるでしょう。 再生医療について知りたい方は以下のページリンクをご覧ください。 予防とセルフケア|今日からできること 肩の痛みは日常生活のちょっとした工夫で予防できることが多く、症状が出現してからでも適切なセルフケアにより悪化を防げます。 ここでは、今日からすぐに実践できる方法を簡単にご紹介します。 まず、姿勢の改善を意識しましょう。モニターは目から40cm以上離し、画面を見る角度は水平視線より下の15〜20度に調整しましょう。 椅子は座面の高さを調整でき、背もたれを活用して耳・肩・骨盤が一直線になるよう意識します。 日本人の平均座位時間は世界最長の7時間とされており、長時間の座位は疾患リスクを高めるため、こまめに立ち上がることが重要です(文献4)。 ストレッチでは、振り子ストレッチ(Codman体操)をやってみましょう。 肩をリラックスさせて立つ 体を前に傾けて痛みのある方の腕を下げる 机などに反対の手をついて体を支える 痛む側の腕を小さな円を描くように振る 前後左右に10回転ずつ行う 症状が改善してきたら徐々にスイングの直径を大きくしていきます。 このストレッチは重力を利用して肩関節の可動域を改善するため、五十肩やインピンジメント症候群の両方に効果が期待できます。 ただし、必ず痛みのない範囲で、無理をしないでください。 まとめ|最短で肩の痛みから解放されるには 肩の痛みに悩まれている多くの方が「五十肩だろう」と自己判断されがちですが、実際にはインピンジメント症候群の可能性も十分に考えられます。 本記事でお伝えした通り、この2つの疾患は症状が似ているものの、原因や治療法が大きく異なります。 二つの違いを見分けるには、以下のポイントが重要です。 インピンジメント症候群は「痛みはあるが動く」 五十肩は「動かしたくても動かない」 セルフチェックである程度の判別は可能ですが、正確な診断には専門医による詳しい検査が不可欠です。 治療方法は保存療法の他に再生医療もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療専門のクリニックとして、一人ひとりの症状に応じた幅広い治療選択肢を提供しております。 「この痛みがいつまで続くのか不安」「仕事に支障が出て困っている」といったお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。 一日でも早く痛みから解放され、快適な日常生活を取り戻していただけるよう、全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 順天堂大学医学部附属順天堂医院「インピンジメント症候群」順天堂医院ホームページ https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/seikei/disease/disease12.html(最終アクセス:2025年5月25日) (文献2) 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html(最終アクセス:2025年5月25日) (文献3) 村木孝行.「肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン」『理学療法学』43(1), pp.67-72, 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/43/1/43_43-1kikaku_Muraki_Takayuki/_pdf(最終アクセス:2025年5月25日) (文献4) 健康管理事業センター「デスクワーク中の正しい姿勢について」健康管理事業センターニュースレター,2024年2月 https://www.kenkomie.or.jp/file/newsletter/k_202402.pdf(最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「サッカーの練習中に足のつけ根に痛みを感じるようになった」 「ランニングをしていて股関節のあたりに違和感があるけれど、病院に行くほどのことなのかな?」 激しい運動や長時間の練習を続けることで、股の付け根あたりに違和感を覚える方は少なくありません。走る、蹴る、方向転換など、瞬発的な動作を繰り返す競技では、筋肉や腱への負担が積み重なり、違和感が慢性化することがあります。 痛みを改善したいと考えても「休めば治るだろう」と放置してしまうと、症状が長引き、競技復帰が遅れるケースも見られます。 本記事では、現役医師がグロインペイン症候群の治し方について詳しく解説し、記事の最後にはよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 グロインペイン症候群について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 グロインペイン症候群における初期段階の治し方|セルフケア方法 初期段階の治し方(セルフケア) 詳細 安静・アイシングを実施する 痛みのある動作を避け、患部を安静に保つ。氷や保冷剤で15〜20分冷却し、炎症や腫れを抑える テーピングで痛みを和らげる 股関節や内ももをサポートするように貼り、動作時の負担を軽減。筋肉や腱を安定させる 股関節を覆う幅広タイプのサポーターを活用する 股関節から骨盤を包み込み、可動域を制限して痛みを軽減。股関節周囲の安定を保つ ランニング中に股関節まわりに違和感を感じた場合は、痛みが軽いうちにセルフケアを行うことが重要です。 運動前は、股関節を回す・足を前後に振るなどの動的ストレッチで筋肉を温めましょう。運動後や就寝前は、筋肉を静止した状態で伸ばす静的ストレッチで疲労を和らげます。 加えて、体幹(お腹まわり)を鍛えるプランクなどのトレーニングは、股関節への負担軽減に有効です。痛みが強い場合は無理をせず安静にし、症状が続く際は整形外科を受診してください。 安静・アイシングを実施する グロインペイン症候群の初期は、股関節や鼠径部の筋肉・靭帯に炎症が生じている状態です。この時期は無理に動かさず、安静を保ちましょう。 過度な負荷を避けることで炎症の悪化を防ぎ、自然な回復を促します。また、痛みや腫れがある場合はアイシングが有効です。冷却によって血管が収縮し、炎症や腫れを抑えることで痛みを軽減し、回復を早める効果が期待できます。 運動後や痛みが強いときに、保冷剤をタオルで包み、1回15〜20分を目安に冷やします。アイシング時は肌への直接接触を避け、低温による皮膚トラブルを防ぐことが大切です。痛みや違和感が長引く場合は、早めに整形外科などの医療機関を受診してください。 テーピングで痛みを和らげる 順番 正しいテーピングの方法(股関節まわり) 手順.1 肌を清潔にし、必要に応じて毛を剃る。テープの密着性を高めるための準備 手順.2 鼠径部(足のつけ根)から約3cm下にテープの端を固定。起点の安定化 手順.3 テープを軽く伸ばしながら、太ももの内側に沿って貼る。筋肉のサポート 手順.4 2本目を1本目に半分重ねるように平行に貼る。補強と固定力の向上 手順.5 貼り終えたら手で軽くこすって密着させる。剝がれ防止と持続性の確保 テーピングは、太ももの内側を走る筋肉に沿って貼るかどうかで、効果が大きく変わります。 テーピングをするときは、強く引っ張りすぎないように注意しましょう。 皮膚が弱い方は、アンダーラップ(肌を保護するテープ)を巻いてからテーピングを行うと良いでしょう。 関節を覆う幅広タイプのサポーターを活用する 順番 股関節を覆う幅広タイプのサポーターの装着方法 手順.1 サポーターを装着する前に、肌を清潔にし乾いた状態に整える。装着時の肌トラブル予防 手順.2 サポーターを股関節の位置に合わせ、骨盤と太ももを包み込むように当てる。正しい位置の確認 手順.3 前面または側面のマジックテープやベルトで締め具合を調整。圧迫感を感じない程度の適度な固定 手順.4 立ち上がりや軽い動作をしてズレがないか確認。安定性と動きやすさの確認 手順.5 長時間使用する場合は、1〜2時間ごとに着脱して肌の状態を確認。血流障害やかぶれの予防 グロインペイン症候群は痛みの範囲が広いため、サポーターを選ぶときは、股関節全体を覆う幅広タイプがおすすめです。 締め付けが強すぎると血行を妨げるので、立ったまま深呼吸して苦しくない程度のフィット感を基準にしましょう。 サポーター選びのチェックポイントとしては、以下の通りです。 項目 内容 素材 通気性の良いメッシュ素材 サイズ 腰まわりのサイズを正確に測定 固定力 適度な圧迫感があるもの 着脱 マジックテープタイプで調整しやすいもの 洗濯 家庭で洗えるタイプ 運動中はもちろん、通勤・通学時の長時間歩行にも有効で、痛みを感じた瞬間に着脱できるのがメリットです。 サポーターは股関節だけでなく腰や骨盤も支え、体のバランスを整える効果が期待できます。ただし、サポーターそのものが治療となるわけではなく、炎症が強い時期の補助的な役割にとどまります。 長期間の使用は筋力低下を招くおそれがあるため、症状の改善に合わせて少しずつ使用時間を減らしていきましょう。 グロインペイン症候群の医療機関での治し方|治療方法 治し方 詳細 保存療法 安静やストレッチ、リハビリを中心に行い、筋肉の柔軟性回復と炎症の軽減を図る。体幹や股関節周囲の筋力強化による再発予防 薬物療法 炎症や痛みを抑えるために消炎鎮痛薬を使用。必要に応じて湿布や塗り薬を併用。痛みの緩和と炎症抑制 手術療法 保存療法で改善がみられない場合に実施。損傷した腱や筋膜の修復、癒着の解除を行う。重症例への根本的治療 再生医療 自己の血液や細胞を用いて損傷部位の自然治癒を促す治療法。PRP療法などによる組織再生と回復促進 グロインペイン症候群の治療は、原因となる筋肉や腱への過度な負担を軽減し、損傷した組織の回復を促すことが目的です。初期段階では安静やストレッチ、物理療法などの保存療法が基本となります。 痛みや炎症が強い場合は、薬物療法で症状を抑えながらリハビリを進めます。重度や長期化した場合は手術や再生医療を検討し、症状に応じた適切な治療を医師が段階的に行うことが大切です。 自己判断で運動を再開すると再発の原因になるため、回復過程を確認しながら慎重に進める必要があります。 保存療法 グロインペイン症候群に対する保存療法は、炎症を抑えて痛みの悪化を防ぎ、自然な回復を促す基本的な治療法です。手術や注射と比べて身体への負担が少なく、軽度から中等度の症状にとくに効果的です。 炎症が落ち着いた後は、股関節まわりの筋力強化や柔軟性向上を目的としたリハビリを段階的に行い、再発予防や競技復帰を目指します。(文献1) 多くの症例で保存療法のみで改善が見られます。軽症から中等度の場合、1〜2カ月ほどの継続で症状が軽快し、長期的なスポーツ復帰が可能になることが報告されています。 薬物療法 グロインペイン症候群における薬物療法は、炎症と痛みを抑えることで日常生活の負担を軽減し、回復を促す有効な治療法です。 主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬を使用し、急性期の痛みを速やかにコントロールします。これにより、安静やリハビリといった保存療法を並行して行いやすくなり、症状の改善と機能回復が期待できます。 外用薬(湿布や塗り薬)は患部に直接作用し、副作用を抑えながら効果を発揮します。一方、内服薬を長期間使用すると、胃腸障害や肝腎機能への影響などのリスクがあるため、医師の指導のもとで適切な管理が欠かせません。 手術療法 効果・特徴 詳細 根本的な原因の解消 腱や筋肉の損傷、血管や関節の構造的異常を直接修復・除去し、原因を根本から改善 早期の痛み緩和と復帰促進 痛みを速やかに軽減し、スポーツや日常生活への早期復帰を促す。反復性の痛みに対する高い効果 長期的な改善効果 症状の持続的な改善と再発予防が期待できる。血管内治療や構造修復術による根本的アプローチ 適用条件とリスク管理 重度や慢性化した症例が対象。術後のリハビリや合併症リスクへの注意が必要 総合的な治療意義 保存療法で改善が難しい場合に有効。痛みの除去と再発防止を目的とした根本的治療法 (文献2) 保存療法や薬物療法で十分な改善が得られない場合には、手術を検討します。手術の対象となるのは、慢性的な腱の損傷や付着部の炎症が進行し、日常生活や競技動作に支障をきたしているケースです。 主な手術法には、損傷した腱や炎症組織の切除、骨付着部の修復、腱の再縫合などがあります。術後はリハビリを通じて筋力と柔軟性を回復させ、再発防止のために段階的に運動を再開します。 手術は最終的な治療選択肢であり、症状や目標に応じて医師と十分に相談した上で方針を決めることが大切です。 再生医療 グロインペイン症候群に対する再生医療は、体が本来持つ自然治癒力を高め、損傷した筋肉や腱、軟骨などの組織修復を促す治療法です。代表的な方法として多血小板血漿(PRP)注入療法があり、患者自身の血液から抽出した血小板を濃縮し、成長因子を多く含む血漿を患部に注入します。 これにより炎症の抑制と組織再生が期待されます。手術のような侵襲がなく、身体への負担が少ないことが特徴で、通常は日帰りで行うこともできます。 自己の細胞を用いるため、副作用やアレルギーのリスクが低いのも特徴です。ただし、全身状態や疾患の有無によっては適応外となる場合もあるため、事前に医師による慎重な診断と評価が必要です。 以下では、再生医療について詳しく解説しています。 グロインペイン症候群の再発予防策 再発予防策 詳細 身体機能の改善(柔軟性・筋力・動作) 股関節や体幹の柔軟性を高め、筋力バランスを整えるトレーニングの継続。正しいフォームによる動作改善 運動負荷と生活習慣の管理 急激な運動量の増加を避け、十分な休養と栄養補給を心がける。疲労の蓄積防止とコンディション維持 早期発見・早期対応 違和感や痛みを感じた時点で無理をせず、運動を中止して医療機関を受診。症状の重症化防止 グロインペイン症候群の再発を防ぐためには、股関節まわりの機能を整え、過度な負担をかけない身体づくりが大切です。 柔軟性や筋力が低下したり、フォームが乱れたりすると再発の原因となるため、ストレッチや体幹トレーニングで動作の安定性を高め、筋肉のバランスを保ちましょう。 また、日常生活では姿勢・睡眠・食生活を整えることも大切です。違和感や痛みを感じた時点で早めに対処すれば、重症化や慢性化を防げます。 身体機能の改善(柔軟性・筋力・動作) 改善ポイント 詳細 柔軟性の向上で負担軽減 股関節や内転筋の柔軟性を高め、筋肉や腱の緊張を緩和。ストレッチによる再発リスクの軽減 筋力バランスの回復で安定性強化 体幹や股関節周囲の筋力を整え、骨盤と股関節の安定性を向上。内転筋とのバランス改善 動作パターンの修正で負荷軽減 歩行・走行・キックなどの動作を見直し、正しいフォームを習得。股関節への過剰負担の予防 段階的な運動負荷調整で過剰負担の回避 運動強度を段階的に高め、組織の回復を促進。急激な運動復帰の防止 日常生活での姿勢・習慣の見直し 座り方や立ち方、荷物の持ち方を整え、股関節への負担を軽減。正しい姿勢の維持による再発防止 股関節や骨盤まわりの柔軟性を高め、動作時の負担を減らすことが再発予防の基本です。大腿内転筋や腸腰筋のストレッチを継続して可動域を広げることで、再発リスクを低下します。 さらに、体幹や下肢の筋力を鍛えて安定性を高めることも大切です。キックやランニング動作のバランスを整えることで、関節や筋肉への偏った負担を防止できます。 フォームの乱れを放置すると再発の原因となるため、リハビリや医師の指導を受けて正しい動作を習得することが欠かせません。 運動負荷と生活習慣の管理 管理のポイント 詳細 段階的に負荷を増やす 症状の回復に合わせて運動強度や時間を徐々に調整。痛みや違和感が出た場合は負荷を控える ウォームアップとクールダウンの徹底 運動前の準備運動で筋肉と関節を温め、運動後のストレッチで緊張を緩和。怪我や再発の予防 定期的な休息 運動と休養のバランスを保ち、筋肉の過度な疲労や炎症を防止。回復促進 姿勢と動作の見直し 座り方・立ち方・荷物の持ち方を整え、股関節への負担を軽減。正しい姿勢の維持 適切な休息と睡眠 十分な睡眠と休養で身体の修復を促進。疲労やストレスの軽減 バランスの良い食事 タンパク質・ビタミン・ミネラルを含む食事で筋肉と関節の回復をサポート。栄養バランスの維持 運動負荷と生活習慣の管理は、グロインペイン症候群の再発予防に欠かせません。練習量を急に増やしたり、休養を取らずに運動を続けたりすると、筋肉や腱への負担が蓄積しやすくなります。 トレーニング後はアイシングやストレッチで身体を整え、疲労を翌日に残さないようにしましょう。 また、睡眠不足や偏った食事は組織の修復を妨げるため、十分な休息と栄養バランスの取れた食生活が大切です。運動・休養・食事のバランスを保つことが、長期的なコンディション維持につながります。 早期発見・早期対応 グロインペイン症候群は、初期の違和感や軽い痛みを放置すると慢性化し、治療が長引くことがあります。早めに医療機関を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが大切です。自己判断で様子を見るのではなく、専門医による診察やMRI検査で原因を明確にしましょう。 早期に治療を始めることで回復が早まり、スポーツや日常生活への復帰もスムーズになります。さらに、痛みをかばうことで生じる腰痛や膝痛などの二次的な障害も防止できます。 グロインペイン症候群の治療においてやってはいけないこと 早く治したい一心で無理をすると、かえって症状を悪化させてしまうことがあります。痛みを我慢して練習を続けたり、強いストレッチを無理に行ったりするのは逆効果です。 グロインペイン症候群の回復を妨げるNG行動を避け、適切な休養と段階的なリハビリを行うことが重要です。 具体的なNG行動は以下の5つです。 事例 理由 1.痛みを我慢して運動を続ける 炎症の悪化による治療期間の延長 2.強すぎるストレッチ 筋肉や腱の損傷による症状の悪化 3.自己判断での湿布の長期使用 皮膚トラブルの発生や治療遅延の原因 4.マッサージの強すぎる刺激 炎症部位の刺激による痛みの増強 5.過度な安静 過度な安静による筋力低下のリスク とくに注意が必要なのは、痛み止めを服用して練習を続けることです。 痛みは身体からの警告信号であり、薬でごまかして運動を続けると、損傷が悪化するおそれがあります。 一方で、軽度の症状では動かないことも逆効果です。痛みを悪化させない範囲で軽い運動を行うことは、血流を促し筋力を維持するのに役立ちます。症状に応じた判断が必要なため、医師の診察を受けて、指示に従いましょう。 以下の記事では、グロインペイン症候群でやってはいけないことについて詳しく解説しています。 改善しないグロインペイン症候群のお悩みは当院にご相談ください グロインペイン症候群の改善には、原因を把握し、安静を保った上で段階的に運動を再開することが大切です。 2週間以上休んでも痛みが残る場合や、就寝中にも違和感がある場合は医師の診察が必要です。適切な治療を早期に受けることで慢性化を防ぎ、競技復帰が早まります。 グロインペイン症候群についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、グロインペイン症候群に対して損傷した組織の修復を促す再生医療も取り入れています。従来の治療では改善が難しかった深部の筋肉や腱にもアプローチできるのが特徴です。 患者自身の血液や細胞を用いるため、身体への負担が少なく、自然な回復力を高める効果が期待できます。保存療法やリハビリで十分な改善が得られない場合の新たな選択肢として、再生医療をご提案しています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 グロインペイン症候群の治療に関するよくある質問 グロインペイン症候群を早く治す方法はありますか? グロインペイン症候群の改善には、まず痛みのある部位を安静に保ち、炎症を抑える治療を行うことが基本です。 症状が落ち着いた段階で、専門医の指導のもと、ストレッチや筋力強化を段階的に進めていきます。即効性のある治療法はなく、無理をせず継続的に治療を続けることが重要です。 グロインペイン症候群は全治何日かかりますか? グロインペイン症候群の全治期間は症状の程度により異なります。 軽症では1~2カ月で改善することが多く、中等度では2~3カ月、重症や慢性例では半年以上かかることもあります。早期の治療と段階的なリハビリが回復を早め、再発予防にも重要です。 グロインペイン症候群は接骨院や整体でも改善しますか? 軽度の筋緊張による一時的な改善は見られることもありますが、根本的な治療には整形外科の診断が必要です。 グロインペイン症候群は筋や腱の微細損傷を伴うことが多く、画像検査やリハビリ計画が大切です。誤った施術は悪化の恐れがあるため、医師の指導のもとで適切に治療を行いましょう。 参考文献 (文献1) 11. 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)|スポーツ損傷シリーズ (文献2) 鼠径部痛症候群の定義は修正される~器質的疾患の発生要因を解明して診断・治療・リハビリ・予防を行う概念に進化する~|第27回日本臨床スポーツ医学会 学術集会 教育研修講演 8
2025.05.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「最近、鼠径部の痛みが強くなってきているけれど、どんな動きが良くないのだろう?」 「このまま練習を続けても大丈夫なのかな?」 「YouTubeで見たストレッチをやってみたけれど、本当に効果があるのか不安だ...」 このような悩みを抱えている学生さんは多いのではないでしょうか。 グロインペイン症候群は、一度発症すると長期化しやすく、間違った対処をしてしまうと症状が悪化して競技復帰が遅れてしまう可能性があります。 しかし、適切な知識を持って正しく対処すれば、症状の悪化を防ぎながら段階的に競技復帰を目指すことも十分可能です。 本記事では、グロインペイン症候群でやってはいけない具体的な動作、症状の見極め方、そして本格復帰するためのステップについて、医師の視点から詳しく解説いたします。 ぜひ最後までご覧いただき、あなたの症状改善と競技復帰にお役立てください。 グロインペイン症候群でやってはいけないこと グロインペイン症候群を悪化させる行為は、痛みを我慢しながら無理に競技を続けることです。 とくに急性期と回復期では避けるべき動作が異なりますので、それぞれの段階に応じた注意点をしっかりと理解しておきましょう。 急性期(痛みが強いとき)にやってはいけないこと 急性期は炎症が強く出ている時期であり、この段階で無理をすると症状が慢性化しやすくなります。 以下の5つの動作は避けてください。 1. 痛みを無視して練習や試合を続行 痛みは体からの重要なサインです。無視して活動を続けると、炎症が悪化し、組織の修復が遅れてしまいます。 急性期はとくに、痛みを悪化させる動作を避け、適切な休息を取ることが大切です。 2. ランニングやダッシュなどの反復走行 鼠径部に繰り返し負荷がかかる走行動作は、炎症を増強させる危険な動作です。 全力ダッシュや方向転換を伴う走行は、股関節への負担が非常に大きくなりますので、避けてください。 3. キック動作 サッカーの基本動作であるキックは、鼠径部の筋肉や股関節に強いストレスをかける動作です。 軽いキックでも炎症部位を刺激してしまうため、急性期にボールを蹴る動作は避けましょう。 4. 急激な方向転換や体をひねる動き 切り返し動作やターン動作は、炎症を悪化させます。日常生活でも、急に振り返ったり、身体をひねったりする動作は慎重に行ってください。 5. 痛むカ所に負担をかける姿勢やストレッチ 痛くても伸ばした方が良いという考えは間違いです。急性期で正しい知識がないまま行うストレッチは炎症を悪化させ、回復を遅らせる原因となります。 これらの動作がなぜ禁止なのかというと、グロインペイン症候群の痛みの根本原因である恥骨結合や内転筋への過度なストレスを増強し、炎症の悪化と慢性化を招くためです。 回復期(痛みが軽い時)の注意点 痛みが軽減してきた回復期は、実は注意が必要な時期です。多くの選手がこの段階で誤った判断をして再発してしまいます。 痛みがなくなっても身体の内部では、回復途中の状態が続いてますので、段階的に負荷をあげていきましょう。 とくに、股関節周りの痛みや柔軟性だけでなく、体幹の安定度や可動域のチェックを入念に行なってください。 「試合が近いから」「レギュラーを取られたくないから」といった理由で、いきなり全力の練習に戻ってしまうケースも見られますが、段階的な復帰プログラムを無視すると、高い確率で再発してしまいます。 再発してしまうと痛みが慢性化し、2〜3カ月さらに復帰に時間がかかってしまうため、注意が必要です。 症状をチェック|グロインペイン症候群の見分け方 鼠径部の痛みがそのままグロインペイン症候群になるとは限りません。 適切な治療を受けるためには、まず自分の症状が本当にグロインペイン症候群に該当するかどうかを見極めることが大切です。 グロインペイン症候群は、鼠径部周辺にさまざまな原因で発生する痛みの総称であり、恥骨結合炎、大腿内転筋付着部炎、股関節炎、鼠径ヘルニアなど、複数の病態が含まれます。 そのため、正確な診断には専門医による詳しい検査が必要ですが、以下のセルフチェック方法で、グロインペイン症候群の可能性を確認できます。 アダクタースクイーズ(両脚を閉じるテスト) このテストは、内転筋の機能と痛みの有無を確認する最も基本的なチェック方法です。 テスト方法 仰向けに寝て、両膝を軽く曲げた状態で股関節をやや開きます。 膝の間にタオルやクッションを挟み、両脚で力を入れて挟みます。 この動作で鼠径部に痛みが生じたり、力が抜けてしまったりする場合は、グロインペイン症候群の可能性が高いです。 確認ポイント 痛みの場所(鼠径部の内側、恥骨周辺、内転筋など)を確認してください。 また、左右差がある場合も注意が必要です。 健康な状態であれば、この動作で痛みが生じることはありません。 両脚開脚テスト 股関節の可動域と内転筋の柔軟性をチェックするテストです。 テスト方法 仰向けに寝て、両膝を軽く曲げ、足裏を床につけます。 そのまま両膝を外側に開いていきます。 正常であれば、膝が床に近づくまで開脚できますが、グロインペイン症候群のがある場合は途中で痛みが生じたり、十分に開脚できなかったりします。 注意点 無理に開脚しようとすると症状が悪化する可能性があるため、痛みを感じたらすぐに中止してください。 このテストは股関節の可動域制限も同時にチェックできる有用な方法です。 股関節抱え込みテスト 腸腰筋の機能と股関節前方の痛みをチェックするテストです。 テスト方法 仰向けに寝て、片方の膝を胸に向かって抱え込みます。 この動作で鼠径部前方や股関節前面に痛みが生じる場合は、グロインペイン症候群の可能性があります。 とくに腸腰筋や股関節の問題が原因となっている場合に、この動作で痛みが誘発されやすくなります。 確認ポイント 必ず左右両方で行い、痛みの程度や場所を比較してください。 健康な状態であれば、膝を胸に近づけても痛みは生じません。 重要な注意点 これらのセルフチェックで痛みや異常を感じた場合は、グロインペイン症候群の可能性が高いと考えられます。 しかし、鼠径部の痛みには鼠径ヘルニア、股関節炎、恥骨の疲労骨折、さらには内臓疾患など、さまざまな原因が考えられます。 そのため、セルフチェックで異常を感じた場合は、必ず専門の医療機関を受診して正確な診断を受けることが重要です。 グロインペイン症候群でも競技を続けたい方へ 「休むとポジションを失ってしまうかもしれない」「大事な試合が近いから練習を休めない」 このような思いを抱えている選手の気持ちは、よく理解できます。しかし、グロインペイン症候群に対する適切な理解があれば、必ずしもすべての活動を止める必要はありません。 重要なのは「完全に休む」か「今まで通り続ける」の二択ではなく、症状に応じた調整を行うことです。 痛みが強い急性期は安静が必要ですが、痛みが軽減している時期であれば、痛みが出ない範囲での代替トレーニングで体力を維持しながら治療を並行も可能です。 練習を止めないとダメ?それとも工夫次第? この判断は症状の程度によって大きく異なります。 完全休止が必要なケース 日常生活でも痛みがある 軽い歩行でも痛みが増す 炎症症状(熱感、腫れ)が強い 発症から間もない急性期 これらの場合は、無理に活動を続けると慢性化のリスクが高まるため、安静にする必要があります。 工夫次第で継続可能なケース 安静時に痛みがない 特定の動作でのみ痛みが生じる 炎症症状が落ち着いている 適切な治療を並行して受けている このような場合は、以下のような代替トレーニングで体力を維持できます。 代替トレーニングの例 有酸素運動の代替 ランニング → エアロバイク(座位) ダッシュ → プール歩行(浮力を利用) 技術練習の代替 キック練習 → 戦術理解・映像分析 激しい動き → 基本技術の反復練習 筋力トレーニングの調整 痛みが出る動作を避けた部位別トレーニング 体幹強化(痛みが出ない範囲で) 最も重要なのは痛みが悪化しない範囲内で活動することです。 活動後に痛みが増したり、翌日に痛みが残ったりする場合は、その活動は現段階では適切ではありません。 このような判断は個人では難しいため、必ず医師に相談して適切な活動レベルを決めてもらいましょう。 診察を受けて身体の状態を確認し、医師の指導のもとで段階的に負荷を上げていくことが大切です。 また、必ずチームの指導者や医療スタッフとの相談も重要です。短期的な休養によるパフォーマンスの低下を恐れるより、長期的な視点で競技人生を考える必要があります。 適切な対応によって、症状を悪化させることなく可能な限り競技を続けながら回復を目指せるでしょう。 本格復帰するまでの段階別リハビリ グロインペイン症候群から競技に本格復帰するには、症状の程度に応じて段階的にリハビリを進めることが不可欠です。 本記事では、2つのステージに区切って説明していきます。 ステージ1|痛みを抑えながら筋肉を目覚めさせる このステージの目的は、炎症を悪化させずに筋肉の機能を回復させることです。 痛みがある状態でも低負荷のトレーニングから開始しましょう。 主なトレーニング内容 基本的な体幹安定化エクササイズ プランク(20-30秒から開始) サイドプランク(痛みが出ない範囲で) ブリッジ(お尻を上げる運動) 腹横筋の活性化 仰向けで膝を立て、へそを背中に近づけるように軽く力を入れる 呼吸と連動させて10回×3セット 内転筋のストレッチ 股割り 伸脚 ペアを組んで内転筋のストレッチ このステージでの注意点としては、痛くない範囲で必ず行うことです。運動後に痛みが増すようであれば、強度を下げるか一時中止しましょう。 継続性を重視し、毎日少しずつでも症状に応じて2週間〜4週間続けます。 痛みの改善とともに、これらの運動が楽に行えるようになったら次のステージに進んでください。 ステージ2|負荷を上げて競技動作に近づける ステージ1で基本的な筋機能が回復したら、より競技に近い動作への適応を図ります。(文献1) 主なトレーニング内容 内転筋の段階的強化 チューブを使った内転筋トレーニング 横向きでの脚上げ運動 動的な体幹安定化 プランクからの手脚上げ キック動作を確認する スポーツ動作の導入 軽いジョギングから徐々にダッシュへ ボールを使ってパスを短い距離から徐々に長くする 負荷は段階的に上げるのがポイントですが、どのように上げていけば良いのかなどわからないことがある場合は専門医に相談しましょう。 このステージは個人差が大きいため、症状の変化を注意深く観察しながら進めましょう。 グロインペイン症候群の治療選択肢「再生医療」について 再生医療は、スポーツ選手の腱や筋肉の損傷に対して適用されており、競技復帰を目指すアスリートにとっても選択肢となる治療法です。 ただし、再生医療を検討する場合でも、基本的なリハビリは継続する必要があります。 再生医療と並行してリハビリを実施して、スポーツへの早期復帰を目指しましょう。 再生医療について詳細は、以下をご覧ください。 まとめ|痛みを繰り返さないために出来る最後のひと押し グロインペイン症候群は決して治らない病気ではありません。適切な知識と対処法があれば、症状の悪化を防ぎ、競技復帰が可能です。 グロインペイン症候群かな?と思ったら、セルフチェックで現在の痛みの場所や程度を正確に把握しましょう。 そして、重要なのはやってはいけない動作を徹底的に避けることです。急性期の無理な運動継続、回復期の急激な競技復帰は、症状の慢性化と再発の要因になってしまいます。 痛みがなくなりリハビリのフェーズに入ったら、医師に相談の上で症状が悪化しない範囲内で改善を目指します。 自己判断で症状を悪化させる前に、スポーツ整形外科や再生医療に詳しい医療機関を受診し、あなたの競技人生を守るために、今できることから始めましょう。 リペアセルクリニックでは、グロインペイン症候群などのスポーツ外傷に対して再生医療を提供しております。症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 グロインペイン症候群に関するよくある質問 グロインペイン症候群はどのくらいで治りますか? 症状の程度と治療開始時期によって大きく異なります。 軽症の場合は適切な安静と保存療法で1-2カ月で改善することが多いですが、重症の場合や慢性化している場合は数カ月かかることもあります。 早期発見・早期治療が回復期間を大きく左右するため、症状を感じたら早めに専門医を受診しましょう。 また、単に痛みが取れるだけでなく、根本的な原因(筋力バランス、柔軟性、動作パターン)を改善することで、再発を防げます。 効果的なストレッチはありますか? 急性期に痛みが出るようなストレッチは症状を悪化させる可能性があるため避けてください。 回復期以降は、内転筋のストレッチが効果的とされていますが、痛みが出ない範囲で行うことが重要です。 具体的には、座位での股割りストレッチや、仰向けでの内転筋ストレッチなどがありますが、必ず専門家の指導のもとで正しいフォームで行ってください。 間違ったストレッチは症状を悪化させるリスクがあるため、自己流ではなく専門医やトレーナーに相談をおすすめします。 自転車でのトレーニングは続けても良いですか? 自転車トレーニングは、一般的にグロインペイン症候群に対して比較的負担の少ない運動とされています。 ただし、症状の程度と自転車の乗り方によって判断が変わります。痛みが出ない回復期であれば、エアロバイクでの軽度な有酸素運動は体力維持に有効です。 しかし、ペダルを強く踏み込む動作や、前傾姿勢での長時間のサイクリングは鼠径部に負担をかける可能性がありますので、まずは短時間・低強度から始めて、症状の変化を注意深く観察してください。 運動後に痛みが増すようであれば一時中止し、専門医に相談をおすすめします。 参考文献 (文献1)日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 11.鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」2023年 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s11.pdf (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「かかとが痛いって言ってるけど、大会まで2週間しかない...」 「このまま休ませるべき?それとも様子を見ながら続けさせても良いの?」 お子さんのかかとの痛みに悩まされている保護者の方は少なくありません。 実は、少年サッカーで急増している"かかと痛"の多くはシーバー病と呼ばれる成長期特有の疾患が原因です。 シーバー病は適切に対処すれば数週間で復帰できる一方で、放置してしまうと半年以上の長期離脱につながるリスクがあります。 本記事では、シーバー病について正しく理解し、お子さんのサッカーを休ませるかどうかの判断がつくようになる具体的な方法をお伝えします。 さらに、復帰を早めるための4つの方法や家庭でできるセルフケア、再発予防策まで詳しく解説します。 お子さんの将来のサッカー人生を守るために、ぜひ最後までご覧ください。 シーバー病でサッカーを休むべき?チェックリストで判断しよう シーバー病でサッカーを休むかどうかの判断は、痛みの程度と日常生活への影響度で決まります。 シーバー病とは成長期の子どもの踵骨(かかとの骨)に起こる炎症で、10歳から15歳のスポーツをする子どもに多く見られる疾患です。(文献1) 痛みの程度によって対応方法が変わるため、以下のチェックリストを使って、お子さんの現在の状態を確認してみましょう。 症状レベル 痛みの特徴 対応方法 復帰目安 軽度 練習後のみ痛む、歩行は正常 軽い練習のみ、アイシング継続 4-6週間(文献2) 中度 練習中も痛む、歩き方がおかしい サッカー休止、セルフケア重視 8-12週間 重度 日常生活でも痛む、足を引きずる 完全休養、医療機関受診 半年以上 とくに注目していただきたいのは歩き方の変化です。 お子さんが普段と違う歩き方をしていたり、足を引きずるような仕草を見せたりする場合は、中度以上の症状と判断してサッカーを休ませることをおすすめします。 また、朝起きたときの一歩目で強い痛みを訴える場合も、症状が進行している可能性が高いため注意が必要です。 判断に迷った場合は、痛みがあるときは休むことで、長期離脱を防げます。 休まずサッカーを続けると悪化するリスクあり かかとの痛みを我慢してプレーを続けることで起こるリスクについてみていきましょう。最も深刻なのは、症状の重症化による長期離脱です。 軽度のシーバー病であれば4週間程度で復帰できますが、無理を続けると重度まで進行し、完全に痛みが取れるまで半年以上かかるケースもあります。 さらに心配なのは、かばう動作により他の部位に負担がかかることです。 かかとの痛みをかばって歩いたり走ったりすると、慢性的に足への負担が増加し、二次的な怪我のリスクが高まります。 実際に、シーバー病を放置した結果、歩行困難になったり、かかとの骨が変形するお子さんも見られます。 また、痛みがある状態でのプレーは集中力を欠き、思わぬ接触事故や転倒につながるでしょう。 成長期の骨は大人に比べて柔らかく、継続的な負荷により骨の変形や成長障害を起こす危険性もあるので、お子さんの将来のサッカー人生を考えると、短期間の休養は決して無駄ではありません。 今しっかり休ませることで、お子さんがより長くサッカーを楽しめるようになります。長期的な視点でお子さんの様子を見守りましょう。 シーバー病からサッカーへの本格復帰を早める4つの方法 シーバー病からの復帰を早めるためには、段階的なアプローチが重要です。 ここでは4つの方法をご紹介します。 これらの方法を組み合わせることで、本格復帰が期待できます。具体的な実践方法と注意点をみていきましょう。 その1.アイシング アイシングは、シーバー病の痛みと炎症を抑える基本的で効果的な方法です。 炎症を起こしているかかとの骨の成長軟骨部分を冷やすことで、血管が収縮し、炎症反応を抑制できます。 氷嚢または冷却パックを使用し、かかと周辺を1回15分〜20分程度冷やしてください。 タオルなどで氷嚢を包み、直接肌に当てないよう注意しましょう。 実施タイミングは、練習後すぐに行なってください。 練習後のアイシングは、運動により高まった炎症反応を速やかに抑制するため非常に重要です。アイシング後は温度感覚が鈍くなるため、お子さんが痛くないと言っても無理な運動は控えましょう。 その2.ストレッチ ふくらはぎと足首周りの柔軟性向上は、シーバー病の改善と再発予防に欠かせません。 筋肉の緊張が踵骨への牽引力を増加させ、シーバー病の症状を悪化させます。 効果的なストレッチ方法をご紹介します。 まず、ふくらはぎのストレッチです。 壁に手をついて立ち 痛い方の足を後ろに下げ かかとを地面につけたまま体重を前にかける ふくらはぎの筋肉が伸びている感覚があれば正しくできています。 30秒間キープし、これを3セット行ってください。 次に、ボールを使った足裏のストレッチです。 テニスボールを用意する 椅子に座った状態で足裏にボールを挟んで痛くない程度に圧迫する 前後に動かす ストレッチは無理のない範囲で毎日継続することが重要です。痛みが強い時期でも、痛みが出ない範囲でストレッチは継続してください。 ストレッチにより筋肉の柔軟性が向上すると、踵骨への負担が軽減されます。 その3.筋力トレーニング 休養期間中の筋力低下を防ぎ、復帰後のパフォーマンス維持につなげるため、適切な筋力トレーニングが重要です。 ただし、かかとに強い負荷をかけるトレーニングは避けるために、体幹部のトレーニングを中心に行いましょう。 まず、地面に座った状態で両膝をかかえ、お腹と太ももの距離を一定にしたまま前後に揺れてください。腹直筋が鍛えられ、姿勢の改善にも役立てられます。 このトレーニングは体幹が鍛えられることと、足に負担が少ないトレーニングですので、シーバー病を患っていてもトレーニング可能です。 トレーニング中に痛みが出現した場合は、すぐに中止し、痛みが完全に治まってから再開しましょう。焦らず段階的に進めることが、本格復帰への近道です。 その4.痛みがなくなってから段階的に強度を上げる 完全に痛みが消失してからの復帰プロセスが、再発防止の鍵となります。いきなり元の練習強度に戻すのではなく、段階的に負荷を上げていきましょう。 まずは平地での軽いウォーキングとストレッチから始め、この段階で痛みが再発しないことを確認してください。 痛みがなければ、ジョギングを行なったり、ボールを使ってドリブルをしてみたりと、サッカーに近い動きを少しずつ取り入れていきましょう。 ここでも痛みや違和感がなければかかとに負担のかかるジャンプやシュートなど、サッカーで使う動きを取り入れてみてください。 すべての段階で痛みがなければ、通常の練習に復帰可能ですが、もし痛みや違和感があれば前の段階に戻ってください。 専門医との相談も重要ですので、復帰時期の判断に迷った場合は医師の意見を求めましょう。 家庭でできるシーバー病のセルフケアと再発予防 シーバー病の治療と再発予防において、家庭でのセルフケアは非常に重要な役割を果たします。 とくに重要なポイントはふくらはぎの柔軟性維持とかかとへの衝撃軽減の2つです。 毎日継続できる簡単で効果的な方法はテーピングとストレッチ、インソールを活用することです。これらを取り入れることで、症状の改善と再発防止の両方を実現できます。 テーピング・ストレッチ テーピングは、かかとへの負担を軽減し、痛みを和らげる効果的な方法です。 正しいテーピングにより、踵骨への牽引力を分散させ、炎症の悪化を防げます。 家庭でできるテーピング方法やストレッチについては、以下の記事にて詳しく紹介しています。興味ある方はあわせてご覧ください。 インソール選び:踵パッド vs. フルカスタム インソール選びは、シーバー病の症状軽減と再発防止において重要な要素です。 市販品とオーダーメイドのカスタム品、それぞれの特徴と効果について詳しく解説します。 まず、市販のインソールの特徴です。 踵パッドタイプは2,000円から3,000円程度で購入でき、すぐに使用できる利便性があります。 衝撃吸収材としてジェルやシリコンが使用されており、かかとへの負担を20-30%軽減できます。 一方、フルカスタムインソールは20,000円から30,000円と高額ですが、個人の足型に完全に合わせて作製されます。 効果と費用の比較表をご確認ください。 項目 市販品(踵パッド) カスタム品 価格 1,000-3,000円 20,000-30,000円 効果 負担軽減 スポーツの特性に合わせた足への負担軽減 子どもの足の形に合わせた足への負担軽減 フィット感 合う形があればフィット 完全個別対応 耐久性 6-12カ月 2年以上 入手期間 即日 60分〜1週間 市販品は軽度から中度のシーバー病に適しており、症状の初期段階では十分な効果が期待できます。 とくに、アーチサポート機能付きの市販品は、足全体のバランスを整え、かかとへの負担を効果的に軽減します。 カスタムインソールは、機能としては申し分ありませんが、コストがかかるため、重度の症状や再発を繰り返すケースで使うと良いでしょう。 足の形状、歩行パターン、体重分布まで考慮して作製されるため、症状改善効果が高く、長期的な再発防止に優れています。 選択の目安として、軽度の症状なら市販品から始め、効果が不十分な場合や重度の症状にはカスタム品を検討してください。 どちらを選ぶにしても、定期的な交換と適切なメンテナンスが効果を維持する鍵となります。 シーバー病の治療方法|保存療法と再生医療について 症状が重度に進行し、セルフケアだけでは改善が困難な場合は、医療機関での専門的な治療が必要です。 シーバー病の医学的治療は、主に保存療法が第一選択となります。 保存療法には、これまでご紹介したアイシング・ストレッチ・インソールに加えて、消炎鎮痛剤の内服や外用薬の使用があります。 痛みが強い場合には、ステロイド注射による局所的な炎症抑制も検討されます。 また、シーバー病に対する治療法には、再生医療のPRP療法もあります。 PRP治療は、患者様自身の血液から血小板を濃縮した成分を患部に注入し、自然治癒力を高める治療法です。 早期復帰を希望される場合には、当院のような再生医療専門医に相談をおすすめします。 治療方法の選択は、症状の程度、お子さんの年齢、競技レベル、家族の希望などを総合的に考慮して決定されますので、お気軽にご相談ください。 まとめ|痛みを放置しない勇気が未来のプレーを守る シーバー病は、正しい知識と適切な対応により、比較的短期間で改善できる疾患です。 本記事でお伝えした判断基準を活用し、お子さんの症状に応じた適切な対応を取ることが重要です。 軽度の症状であれば、アイシング・ストレッチ・インソールの組み合わせで数週間での改善が期待できますが、症状を放置したり、痛みを我慢してプレーを続けさせたりすると、半年以上の長期離脱につながるリスクがあります。 今だけ我慢するような考えは、結果として大切な試合や大会を棒に振ることになりかねませんので、家庭でのセルフケアを継続し、段階的な復帰プログラムを実践して、確実な復帰を果たしましょう。 治療法としては、保存療法の他にPRP療法という再生医療も治療の選択肢です。 お子さまの将来のサッカー人生を守るために、あとで後悔しないために正しい判断ができる手助けになると幸いです。 痛みや症状についてご不安な点がございましたら、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1)済生会「踵骨骨端症(アポフィサイティス)」https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/ (最終アクセス:2025年5月24日) (文献2)South Dublin Podiatry「How Long Does Sever's Disease Last? A Guide for Parents and Young Athletes」South Dublin Podiatry, 2024年9月23日 https://www.southdublinpodiatry.com/tips-and-advice/b/how-long-does-severs-disease-last-a-guide-for-parents-and-young-athletes (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「練習中にかかとが痛いっていうけれど、本当に休ませた方が良いの?」「このまま放っておいて悪化したらどうしよう」 お子さんのかかとの痛みで、このような不安を抱えていらっしゃる保護者の方は少なくありません。 シーバー病は、成長期のお子さんに多く見られるかかとの痛みで、正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」といいます。(文献1) とくにサッカーやバスケットボールなど、走ったり跳んだりするスポーツをしているお子さんに起こりやすい症状です。 多くの保護者の方が心配されるのは「いつまで痛みが続くのか」「どうすれば早く治るのか」「いつスポーツに復帰できるのか」という点でしょう。 本記事では、シーバー病を早期に改善するための具体的な方法と、復帰までの期間について専門医の視点から詳しく解説いたします。 適切な対処法を知ることで、お子さんの痛みを軽減し、万全の状態でスポーツへ復帰させましょう。 ぜひ最後までご覧いただき、お子さんの早期回復にお役立てください。 シーバー病を早く治す方法を3ステップで解説 シーバー病の治療は、痛みの程度と時期に応じて段階的に進めることが重要です。 ただ安静にするだけでは、筋力低下を招いてしまい、かえって復帰が遅れる可能性があります。 ここでは、効果的な回復のための3つのステップをご紹介します。各ステップを適切なタイミングで実施し、痛みの軽減と早期復帰を目指しましょう。 ステップ1:安静にして炎症を抑える シーバー病の初期段階では、まず炎症を抑えることが最優先です。シーバー病は基本的に手術を必要とせず、保存療法で改善が期待できます。 発症初期の対応が、その後の回復期間を大きく左右するため、適切な安静期間を設けましょう。 痛みが強い急性期には、以下の対処を行ってください。 対処法 説明 アイシングの実施 練習後や痛みを感じたときは、氷嚢や保冷剤をタオルで包み、かかとに15~20分程度当てて冷やします。 1日に数回実施すると、炎症を抑制し痛みの軽減が期待できます。 運動制限の徹底 痛みがある間は、走る・跳ぶ動作を控え、日常生活でも必要以上の歩行は避けましょう。 学校生活では階段の上り下りを最小限にし、体育の授業は見学をおすす勧めします。 適切な靴選び クッション性の高い靴を選び、硬い地面での活動を避けることで、かかとへの衝撃を軽減できます。 この時期に無理をしてスポーツを続けると、症状が悪化し回復期間が長引く可能性があります。 お子さんには「今しっかり休むことで、早くサッカーに戻れるよ」と説明し、理解を得ることが大切です。 ステップ2:ふくらはぎストレッチ&マッサージ 急性期の痛みが落ち着いてきたら、ふくらはぎの柔軟性を高めるストレッチとマッサージを開始します。 シーバー病の根本的な原因の一つは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)が硬くなることで、アキレス腱を通じてかかとの骨に過度な牽引力が加わることです。 ストレッチ種類 手順 壁押しストレッチ 壁に手をつき、痛みのある足を後ろに引いて、ふくらはぎを伸ばします。 30秒間キープし、これを1日3回程度行います。 痛みのない範囲の実施が重要です。 タオルストレッチ 床に座り、足を伸ばした状態でタオルをつま先にかけ、手前に引っ張ります。 ふくらはぎとアキレス腱の伸びを感じながら、30秒間保持します。 ゴルフ(テニス)ボールマッサージ ゴルフボールやテニスボールを足の裏において、ゴロゴロと踏みながら転がしてください。 痛みを感じない範囲で実施しましょう。 これらのケアを継続して筋肉の柔軟性が向上すると、再発リスクの軽減にもつながります。 ただし、ストレッチ中に痛みが増強する場合は、すぐに中止して様子を見ましょう。 ステップ3:テーピングとインソールで負荷分散 痛みが軽減してきた段階で、テーピングやインソールを活用してかかとへの負荷を分散させます。 これらの方法は、日常生活での痛みを軽減し、スポーツ復帰を順調に進めるために有効です。 かかとテーピングの方法としては、50mmの市販の硬めのキネシオテープまたは、伸縮テーピングを用意しましょう。かかとの下から足首にかけてテープを貼り付けます。 かかとのテーピング手順 テープの端を小指の付け根に貼る 足の裏を通り、かかとの内側へ向かうように貼る かかとの内側へと軽く引き上げる 斜め上へと向かうように上げて、足首を巻きつけるように貼って完了 テーピングでかかとへの衝撃を和らげられますが、注意点としてテーピングは1日中貼ったままにせず、就寝時は外すようにしてください。 インソールの活用も重要なポイントです。シーバー病の原因は成長期特有の子どものかかとが軟骨でできていて、脆い状態であることに起因しているからです。 そこで、かかとの衝撃を吸収するインソールを使うことで復帰のサポートや再発予防にもなります。 選び方のコツとしては、足裏のアーチサポートがあることと、かかとにクッション性のあるインソールを選びましょう。 アーチサポートとは、土踏まずの働きを手助けし、かかとにかかる衝撃を分散してくれます。 また、クッション性があるインソールかどうかも確認してください。スポーツに復帰したときを想定し、長時間運動しても足への負担を少なくして万全の状態で競技に復帰しましょう。 インソールは靴のサイズに合ったものを選び、違和感がある場合は無理せず使用を中止してください。 これらの補助具は、完全に痛みがなくなるまで継続して使用をおすすめしますが、シーバー病はあくまで成長期特有の症状です。 症状の改善と身体の成長に合わせて段階的に使用を減らしていきましょう。 シーバー病はどのくらいで治る?回復期間と復帰チェックリスト シーバー病の回復期間は、症状の重症度や発見の早さによって大きく異なります。 適切な治療を行った場合の一般的な回復期間の目安は以下の通りです。 症状の程度 期間 説明 軽症の場合 4~6週間 痛みが軽度で、早期に適切な対処を行った場合は、比較的短期間での回復が期待できます。 中等度の場合 2~3カ月 痛みが顕著で、かかとの痛みが日常生活にも支障をきたしている場合は、やや長期間の治療が必要となります。 重症の場合 6カ月以上 痛みが強く、歩行困難な状態まで悪化した場合は、長期間の治療が必要になることがあります。(文献2) 問題なくスポーツへ復帰するためには、以下の条件をすべて満たすことが重要です。 □ 日常生活で痛みを感じない □ かかとに熱感や腫れがない □ つま先立ちができる □ 軽いジョギングで痛みが出ない □ 方向転換動作で痛みがない □ ジャンプ動作で痛みがない これらの項目がすべてクリアできた段階で、段階的にスポーツ活動を再開します。 まずは軽いランニングから始め、徐々に強度を上げていきましょう。 復帰を急ぎすぎると再発のリスクが高まるため、医師や理学療法士と相談しながら進めることをおすすめします。 身長が伸びる時期との関係 シーバー病が治っても、身長が伸びている間は再発するのか?そんな疑問をお持ちの保護者の方も多くいらっしゃいます。 結論としては、シーバー病は身長が伸びる時期に再発する可能性はありますが、「オーバーユース」の管理をすれば再発予防は可能です。 オーバーユースとは、使いすぎにより、かかとに負荷がかかりすぎることです。 そのため、運動量を調節して適切に負荷を管理するほか、テーピングやインソールなどを使ったセルフケアにより、身長が伸びている時期でも症状をコントロールできます。 「身長が伸びているからシーバー病が再発する」と考える方もいますが、これは誤解で身長が伸びている時期と一致しているだけです。 オーバーユースに注意して、お子さんの成長過程に合わせた長期的な視点でケアを続けましょう。 シーバー病で通院は必要?再生医療×保存療法の選択肢 シーバー病の基本的な治療は手術をしない保存療法ですが、症状の改善が思わしくない場合は専門医への相談をおすすめします。 とくに以下のような状況では、早めの医療機関受診を検討してください。 セルフケアを続けても改善しない 痛みが徐々に強くなっている 日常生活に大きな支障をきたしている 他の部位にも痛みが広がっている シーバー病においては、アキレス腱付着部の炎症や微細な損傷に対して、PRP療法が適用となる場合があります。 PRP療法は、患者様の血液から血小板を濃縮した血漿を抽出し、患部に注入する再生医療の治療法の一つです。 再生医療のメリットとしては、ご自身の血液を使用するため、アレルギー反応のリスクが低く、組織の自然な修復過程を促進できる点です。 ただし、再生医療はすべての患者様に適応となるわけではなく、症状や年齢などを総合的に判断して治療方針を決定します。まずは基本的な保存療法をしっかりと実践し、それでも改善が見られない場合に検討しましょう。 治療選択肢についてご不明な点がございましたら、当院へお気軽にご相談ください。 まとめ|シーバー病からの早期復帰を目指して今すぐ行動を シーバー病からの早期復帰には、早期発見と適切な保存療法の実践が最も重要です。 発症初期の対応が回復期間を大きく左右するため、お子さまがかかとが痛いと訴えた時点で、適切な対処を行なってください。 本記事でご紹介した3ステップ、安静、ストレッチ、負荷分散を段階的に実践し、焦らずに治療に専念しましょう。 また、痛みが軽減したからといって、すぐにスポーツに復帰させるのは危険です。 復帰チェックリストをしっかりと確認し、すべての項目をクリアしてから段階的に活動を再開してください。 それでも改善が見られない場合は、再生医療などの新しい治療選択肢も検討する価値があります。 お子さまの将来のスポーツ活動のために、今できることから始めてみてください。 適切な対処で、シーバー病の改善を目指しましょう。 シーバー病に関するよくある質問 テーピングやインソールは成長への悪影響はありませんか? 短期間使用であれば、成長への悪影響はほとんどありません。 ただし、長期間の継続使用は避け、痛みの根本的な改善を目指すことが重要です。 使用前には必ず整骨院や整形外科に相談し、お子さまの年齢や体重に適した処置を実施してください。 インソールやテーピングはいつまで続ける必要がありますか? インソールやテーピングは、完全に痛みがなくなり、スポーツ復帰が安定するまで継続をおすすめします。 一般的には症状改善後も1~2カ月程度は使用し、徐々に使用頻度を減らしていきましょう。 あくまでかかとへの負担を減らすことが目的ですので、段階的に減らしていくことが大切です。 「成長すれば自然に治る」は本当ですか? 成長が止まれば症状が軽減することは事実ですが、放置すると重症化や慢性化のリスクがあります。 痛くても我慢すれば大丈夫という考えは間違いで、適切な治療を行わないと長期間にわたって痛みが続く可能性があります。 早期の適切な対処が、お子さんの将来のスポーツ活動を守ることにつながります。 参考文献 (文献1)社会福祉法人恩賜財団済生会「踵骨骨端症(セーバー病、シーバー病)」済生会ホームページ, 2015年8月31日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/(最終アクセス:2025年5月24日) (文献2)South Dublin Podiatry「How Long Does Sever's Disease Last? A Guide for Parents and Young Athletes」South Dublin Podiatry, 2024年9月23日 https://www.southdublinpodiatry.com/tips-and-advice/b/how-long-does-severs-disease-last-a-guide-for-parents-and-young-athletes (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
「脊髄損傷でも歩ける可能性はある?」「脊髄損傷で治療を受けていれば歩ける?」 上記のように、脊髄損傷でも歩けるようになるのか気になっている方もいるでしょう。脊髄損傷とは「脊髄」と呼ばれる部分が損傷する状態を指します。 本記事では、脊髄損傷と歩行の関係性を紹介します。レベル別の症状や治療法なども解説しているので、興味がある方はぜひご覧ください。 【結論】脊髄損傷でも歩ける可能性はある 結論からお伝えすると、脊髄損傷になっても歩ける可能性はあります。人間が歩行するには、筋肉がリズミカルに動かなくてはなりません。脊髄が損傷すると、全身の筋肉が協調的に動かなくなってしまいます。 対して、歩行に関するリハビリテーションを続けると、麻痺した筋肉の機能が部分的に回復する可能性があります。軽度の麻痺であれば、適切なリハビリテーションにより歩行機能の回復が期待できるのです。 脊髄損傷と歩行の関係性 脊髄損傷で歩行を再開するには、脊髄損傷の程度により異なります。なかでも、脊髄損傷には、完全損傷と不完全損傷があります。 ここでは、脊髄損傷と歩行の可能性を詳しく見ていきましょう。 完全損傷|歩ける可能性は極めて低い 脊髄損傷のなかでも完全損傷は、脊髄の機能が完全に失われ、歩ける可能性は極めて低い状態を指します。脳からの命令が届かないだけでなく、脳へ命令を送ることもできなくなります。そのため、感覚知覚機能も失われるのが完全損傷の特徴です。 しかし、感覚知覚機能が失われるからといって、痛みを全く感じなくなるわけではありません。怪我をした部位より下の麻痺した部分には、痛みや異常な感覚を覚えます。 不完全損傷|歩ける可能性がある 不完全損傷とは、脊髄の一部の機能が損傷した状態であり、歩ける可能性があります。感覚知覚機能が残った重度の人もいれば、軽度の運動機能が残った状態の人もおり、症状は人によって異なります。 受傷してから6カ月以内に適切なリハビリや治療を受ければ、歩行の回復が見込まれるケースもあるため、できるだけ早めの対処が大切です。 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事が参考になります。 脊髄損傷のレベル別の症状 脊髄損傷はレベル分けがされており、レベルによって症状が異なります。ここでは、脊髄損傷のレベル別の症状を紹介します。 頚髄損傷(C1-C8) 頚髄損傷は、脊髄損傷のなかで最も深刻な症状を引き起こします。C1からC8までレベルがあり、各レベルによって引き起こされる症状は異なります。 レベル 症状 C1〜C4 ・呼吸機能に障害が出る ・全身麻痺に加え、話したり首から下の動きだったりが制限される C5 ・肩と肘の動きは可能だが、手首以外の動きは制限される ・自力での食事は不可能 C6 ・手首の伸展は可能 ・精密な手首の伸展は不可能なものの、日常生活の多くで介助が必要 C7 ・肘の伸展が可能になり、多くの自立が可能 ・精密な動きはできないため、日常タスクの一部で介助が必要 C8 ・手足の一部の動きが可能 ・食事や筆記などが可能になるが、一部は支援が必要 多くのレベルで日常生活の制限を受けるため、介助や支援が必要になります。またリハビリテーションには、個々のニーズに合わせたアプローチが必要不可欠です 胸髄損傷(T1-T12) 胸髄損傷は、胸部にある脊髄が損傷する状態を指します。体幹や下肢の機能に影響を与え、レベルごとの症状は以下の通りです。 レベル 症状 T1-T6 ・上半身の筋力が低下する ・体幹の制御が困難になり、座位を保つのが難しくなる ・長時間座位を維持するには、サポートが必要 T7-T12 ・体幹機能が損なわれ、立位や歩行が困難になる ・車椅子を使用した生活が一般的 胸髄損傷は、リハビリテーションを行い、できるだけ患者が自立した生活を送れるようサポートをします。家族や専門家のサポートが必要不可欠です。 腰髄損傷(L1-S5) 腰髄損傷(仙髄損傷)は、主に下半身に影響をもたらします。レベルごとの症状を見ていきましょう。 レベル 症状 L1-L2 ・腰から下の機能が失われ、歩行困難になる ・下半身に痛みやしびれが生じる可能性もある L3-L5 ・足首の運動に制限がかかるものの、膝の制御が部分的に可能 ・リハビリテーションが必要だが、装具を用いた歩行が可能になるケースもある S1-S5 ・膀胱と直腸の機能に影響を与え、排泄管理が必要 ・足の裏や会陰部の感覚障害がみられる可能性もある リハビリテーションをして、機能回復や生活の質の向上を目指します。 歩けるようになるまでのステップ|脊髄損傷の治療法 脊髄損傷で歩けるようになるには、適切な治療を受けなくてはなりません。適切な治療は、急性期と慢性期によって異なります。 急性期では、脊髄を固定したり、生命維持を優先したりするのが一般的です。一方で、慢性期では症状の程度に応じて、長期的な視点を持ち治療を進めます。それぞれの主な治療法は、以下の通りです。 急性期 慢性期 ・ギプスや装具固定 ・ステロイド治療 ・リハビリテーション ・抗生物質の投与 ・ビタミン剤の投与 ・放射線治療 ・外科手術 脊髄損傷の治療法について詳しく知りたい方は、以下記事もご覧ください。 脊髄損傷で歩けるようになるには再生医療も選択肢のひとつ 脊髄損傷の治療法は、ステロイド治療や放射線治療だけでなく、再生医療も選択肢にあげられます。脊髄損傷の再生医療は、骨髄由来の幹細胞や脂肪由来の幹細胞を使用します。脊髄損傷の治療法をお探しの方は、再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、脊髄損傷の再生医療を提供しています。詳しくは、以下からお問い合わせください。 脊髄損傷と歩行の関係性を知って治療に挑もう 脊髄損傷は、損傷の程度によっては歩けるようになる可能性があります。受傷後に歩けるようになるには、適切なリハビリテーションや治療を受けることが大切です。また慢性期の治療法は、放射線治療や外科手術があげられますが、近年では再生医療も選択肢の1つになっています。 脊髄損傷の治療法をお探しの方は、再生医療を検討してみてはいかがでしょうか。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度リペアセルクリニックにご相談ください。
2025.05.30 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
軽度の脊髄損傷と診断され、「後遺症は残るのか」と不安を抱えている方もいるでしょう。損傷レベルが軽度でも、早期の治療や継続的なケアが回復の程度や後遺症の有無に影響します。 本記事では、軽度の脊髄損傷に関する症状や原因、治療法をわかりやすく解説します。後遺症が出る可能性についても触れているので、ぜひ参考にしてください。 脊髄損傷とは 脊髄損傷とは、脳からの指令を体に伝える脊髄が外傷や病気などで損傷を受けた状態を指します。交通事故や転倒といった外傷が主な原因です。 脊髄は、背骨(脊椎)に保護されるかたちで脳幹の直下からみぞおちの下あたりまで伸びています。脊髄は部位ごとに区別されており、損傷した場所によって症状の現れ方が異なります。 脊髄の部位と損傷した際の主な症状例は以下の通りです。 部位 損傷部位の位置 主な症状の例 頚髄(C) 首のあたり(C1~C8) 両腕と両脚の麻痺(全身麻痺の可能性もある) 呼吸障害の可能性もある 胸髄(T) 首の下~胸のあたり(T1~T12) 下半身麻痺 体幹の感覚障害 腰髄(L) 腰まわり(L1~L5) 両脚の麻痺やしびれ 排泄機能の障害 仙髄(S) お尻の上~尾てい骨あたり(S1~S5) 排泄機能の障害 会陰部の感覚障害 表の通り、損傷部位によって運動機能や感覚、自律神経機能に障害が生じます。上部の脊髄を損傷するほど症状が重くなる傾向があり、損傷の程度によっても体への影響や回復の見込みには差があります。 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事が参考になります。 軽度な脊髄損傷の症状 軽度な脊髄損傷では、しびれや麻痺、運動障害などの症状が現れます。以下でそれぞれの症状について詳しく見ていきましょう。 しびれや麻痺 脊髄損傷した部位により、軽度なしびれや麻痺の症状が出るケースは珍しくありません。脊髄は運動や感覚をつかさどる神経が集中しているため、軽度の損傷でも症状が現れる可能性があります。 基本的な動作はできるものの、細かい作業に支障をきたしたり動きによってはスピードが遅くなったりする場合があります。 しびれや麻痺の程度によっては、仕事や家事などの日常生活に影響を与えるため、適切な対応が重要です。 運動障害 軽度の脊髄損傷では、歩行や手の動きなどに支障をきたすケースもあります。脊髄の損傷により、神経の伝達がうまくいかず、筋肉が正確に動かせなくなるためです。 たとえば、足に力が入りづらく階段の昇り降りでふらついてしまう、体のバランスがとりにくいなどの症状が見られます。 運動機能の低下は見落とされやすいものの、放置すると悪化するリスクがあるため、早期の診断と必要に応じたケアが重要です。 感覚障害 軽度な脊髄損傷でも、触覚や温度、痛みなどの感覚に異常が出るケースも少なくありません。脊髄の損傷によって、感覚の伝達が鈍くなります。 手や足に触れても感覚が弱く感じる、冷たいものや熱いものに気づきにくいといった症状が一例です。 感覚の異常は日常生活のなかでも思わぬケガややけどの原因につながりかねないため、注意しましょう。 自律神経障害 自律神経の働きが乱れることも、軽度な脊髄損傷の症状の一つです。自律神経は、血圧・体温・排泄・発汗など体の機能を無意識に調整しているため、脊髄の損傷でバランスが崩れる可能性があります。 たとえば、異常に汗をかく、身体が冷えやすくなる、排尿の感覚があいまいになるといった症状が現れるケースも珍しくありません。一方で、汗をかきにくくなるケースもあり、体の中に熱がこもって熱中症のような症状が出る場合もあるため注意が必要です。 自律神経の乱れは症状があいまいなため、軽視されやすい傾向にあります。しかし、放置すると慢性的な体調不良につながる恐れがあるため、違和感を覚えたら早めに医療機関を受診しましょう。 脊髄損傷の症状については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。 軽度な脊髄損傷の原因 軽度な脊髄損傷の原因は、外的要因がほとんどです。脊髄は背骨(脊柱)に守られているものの、転倒や交通事故などで、脊柱の骨折や脱臼により圧迫されたり損傷したりする可能性があります。 交通事故以外にも、高齢者が転倒して腰や背中を強く打った場合やスポーツ中の衝突などで、軽度の脊髄損傷を負うケースも少なくありません。とくに、加齢により骨が弱くなっている場合は、見た目は軽い転倒でも脊髄を損傷している恐れがあるため注意が必要です。 強い痛みがない場合でも、神経が傷ついている可能性があります。軽度なうちに適切な処置を受けるためにも初動が大切です。 脊髄損傷の原因について詳しく知りたい方は、以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。 軽度な脊髄損傷の診断方法 軽度な脊髄損傷は、以下の診断方法が一般的です。脊髄損傷は部位や神経への影響によって、症状が異なるため正確な判断が求められます。 診断方法 内容・目的 画像診断 レントゲンやMRI、CTを使って脊髄や周辺の組織がどの程度傷ついているのか詳しく調べる 神経学的検査 電気の刺激で神経の反応や伝達機能を調べる 臨床評価 筋力や反射、皮膚の感覚などをチェックして、脊髄損傷の範囲や程度を確認する これらの検査結果をもとに、損傷部位や重症度レベルを把握し、適した治療や必要に応じてリハビリを実施します。とくに、軽度の脊髄損傷では見落とされやすいため、早期の診断と適切な対応が不可欠です。 脊髄損傷が軽度な場合の治療方法 脊髄損傷が軽度な場合の治療法は、急性期と慢性期によってそれぞれ異なります。とくに、発症直後の対応は、そのあとの回復や後遺症の有無に影響を与えるため、適切な治療が重要です。 以下で、詳しく解説するので参考にしてください。 急性期の治療法 脊髄損傷の急性期とは、発症してから2~3週間程度の期間を指すのが一般的です。急性期は、外的要因からの直接的な損傷(一次損傷)や炎症や腫れ、血流障害といった体内変化(二次損傷)が進行する時期でもあります。 急性期では、二次損傷の進行をできるだけ抑える治療が重要です。軽度の脊髄損傷では、以下の治療が行われます。 治療法 目的 安静 症状の悪化を防ぐ 薬物療法(ステロイド系抗炎症薬など) 炎症や二次損傷を防ぐ コルセットや固定装置の装着 脊髄を安定させ、損傷の拡大を防ぐ 理学療法 運動機能を維持し、合併症のリスクを減らす 急性期の治療は、その後の回復に大きく影響するため重要です。自覚症状が軽くても、早期の対応が後の回復に影響します。 慢性期の治療法 損傷からある程度時間が経過し、急性期を過ぎた後の慢性期では、症状の回復を目的とした治療やリハビリが中心となります。軽度の脊髄損傷でも、違和感やしびれが残る可能性があるため、継続的なケアが必要です。 慢性期に行われる治療法には以下のようなものがあります。 治療法 目的 理学療法 筋力・柔軟性の回復、運動機能の維持のため ビタミン剤の投与 神経の修復に役立つため リハビリは、残存機能を最大限に活かしながら日常生活を取り戻すためには欠かせません。また、神経の修復や再生をサポートする目的で、補助的にビタミン剤を投与するケースもあります。 適切なリハビリと経過観察を続けることが、身体機能の維持と回復には重要です。 脊髄を損傷した場合のリハビリやトレーニングについては、下記の記事を参考にしてください。 脊髄損傷が軽度な場合の後遺症の有無について 脊髄損傷が軽度な場合は、適切な治療とリハビリによって後遺症を残さずに回復するケースがあります。軽度の損傷であれば、神経へのダメージが比較的少ないためです。治療やリハビリを早期に開始できれば、運動や感覚などの機能が回復する可能性があります。 しかし、損傷部位や度合いによっては適切な治療やリハビリを行っても、必ずしも後遺症が出ないとは限りません。 脊髄損傷が軽度であっても、後遺症がまったくないとは言い切れないため、違和感を放置せず早期の対応と継続的な治療が大切です。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脊髄損傷で悩みがあるときはお気軽にご相談ください。 軽度な脊髄損傷は適切な治療とリハビリで回復に期待できる 軽度な脊髄損傷はしびれや麻痺、運動障害が症状として現れる場合があります。違和感を覚えたら放置せずに適切な治療を受けることが大切です。 脊髄損傷が軽度であれば、適切な早期治療とリハビリで回復に期待ができるでしょう。一方で、症状が軽度に思えても、損傷のレベルや部位によって後遺症が出るケースもあります。 早めに医師の診断を受け、継続的なケアを続けることが重要です。リペアセルクリニックでは、脊髄損傷に対する新たな治療選択肢として、幹細胞を用いた再生医療を行っております。軽度な脊髄損傷でお悩みの方はご相談ください。
2025.05.30 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷には、急性期・亜急性期・慢性期の3つの時期があります。急性期は症状回復を左右する重要な期間のため、診断を受けた上で適切な治療が大切です。 とはいえ、急性期は症状が発生したばかりの期間となり、身体的にも精神的にも不安定になりやすいでしょう。不安やストレスを軽減するには、急性期について理解を深めることがポイントです。 この記事では、脊髄損傷急性期とはどのような期間か解説します。症状回復に重要な期間といわれる理由や治療法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 脊髄損傷急性期とは 脊髄損傷急性期(せきずいそんしょうきゅうせいき)とは、脊髄損傷が発生した時期をいいます。ここでは、急性期の期間や、亜急性期(あきゅうせいき)・慢性期(まんせいき)との違いについて解説します。 脊髄損傷で急性期と診断された方は、今後の治療プランを検討するためにもぜひ参考にしてください。 期間 脊髄損傷の急性期とは、脊髄損傷が発生してから2〜3週間ほどの期間をいいます。一般的に脊髄損傷の原因は、内的要因と外的要因の2つです。 内的要因の場合、脊髄自体に問題が生じて損傷が起こります。脊髄梗塞や脊髄出血、椎間板ヘルニアなどが内的要因の原因に該当します。 また、外部から強い衝撃が加わり脊髄を損傷した場合は外的要因です。外的要因には、交通事故や転倒などがあります。ラグビーや柔道などのスポーツも外部要因の一つで、脊髄損傷は幅広い世代が発症する疾患です。急性期は脊髄損傷の回復を左右する期間になるため、迅速かつ適切な治療が重要です。 亜急性期・慢性期との違い 脊髄損傷は急性期・亜急性期・慢性期の3つの時期に分類され、各期間に適した治療が必要です。各期間には、以下の違いがあります。(文献1) 期間 特徴 主な治療法 急性期 脊髄損傷を発生して間もない時期で、回復を左右する期間 保存療法 リハビリテーション 亜急性期 急性期の炎症が収まり、血管新生や組織修復反応が起こる期間 リハビリテーション 慢性期 神経細胞の活性が低下し、治療への効果が弱くなる期間 リハビリテーション 放射線治療 手術 各期間の特徴から、適切な治療を検討しましょう。 脊髄損傷急性期の症状 脊髄損傷急性期の症状は、多岐にわたります。急性期では脊髄が損傷した直後から身体の異変が起こり、症状が急速に進行するためです。 主な身体の反応には一時損傷と二次損傷があり、双方の違いは以下の通りです。 一時損傷 外力による組織の損傷 二次損傷 一時損傷に続き、損傷が周辺組織に広がり、炎症反応や血液の循環不全による神経細胞の損傷 実際に、急性期には下肢に電気が走るような強い痛みや手足のしびれなどの症状が見られています。(文献2)また、損傷が進行すると運動機能が完全に失われるだけでなく、排せつのコントロールができなくなったり生命にかかわったりするリスクが生じます。 脊髄損傷急性期に正確な診断を受けるべき理由 脊髄損傷の回復には、急性期に二次損傷を抑える治療が重要です。急性期は症状が急速に進行するため、適切な治療を受けなければ周辺細胞が損傷し、神経伝達が低下します。 神経伝達の低下は運動機能が失われる要因となり、まったく動かせない状態に陥るケースも少なくありません。そのため、急性期の診断では以下の点をチェックした上で適切な治療を行います。 損傷の進行状態 影響を受けている神経の特定 脊髄損傷の種類や程度、影響を受けた範囲の把握が機能回復において重要です。損傷を最小限に抑えるためには、急性期で正確な診断を受ける必要があります。 脊髄損傷急性期の主な治療法 脊髄損傷急性期の治療は、症状回復に影響を与えます。代表的な治療法は、以下の3つです。 保存療法 手術 再生医療 急性期の治療法について理解を深めたい方は、参考にしてください。 保存療法 保存療法は手術以外の方法で、症状を改善する治療法です。脊髄損傷急性期の場合、主に以下の保存療法がおこなわれます。 薬物療法(ステロイド治療) 固定装置の使用 リハビリテーション また、脊髄損傷急性期に不用意に身体を動かすと損傷の拡大や合併症のリスクが生じる可能性があるため、安静が重要です。脊髄を安定させるために、正しい位置や姿勢の維持が必要になります。 一般的にはギブスなどの固定装置を使用して、脊髄を安定させます。適切な安静は炎症が抑えられ、神経組織の修復が進むため症状回復に効果的です。 脊髄損傷の急性期は、生活動作が自分でできない辛さや回復への不安など、精神的なサポートも重要になります。安静は心身のリラックス効果もあるため、回復へ向けて気持ちを前向きにする役割も期待できます。 手術 急性期では一般的に保存療法を行います。しかし、脊髄損傷の原因となる圧迫因子の除去や二次損傷の予防など、症状が悪化する可能性がある場合に手術を行います。 急性期に行う主な術式は、以下の2つです。 術式 内容 除圧術 脊髄や神経根などへの圧力を除去し、神経損傷の抑制と症状緩和を図る 固定術 金属のプレートやネジを使用して脊椎を固定し、自然治癒を促進する 症状の進行状況によって異なりますが、診断から手術を検討するのも手段の一つです。 再生医療 脊髄は脳とつながる太い神経の束で、損傷すると麻痺や感覚障害、自律神経障害などさまざまな障害が生じます。急性期には固定装置の使用やリハビリテーションを実施しますが、再生医療も治療法の一つです。 再生医療の幹細胞治療は、患者自身の細胞を活用する医療技術になります。脊髄損傷の再生医療の場合、骨髄由来と脂肪由来の幹細胞の2つがあります。なかでも、脂肪由来の幹細胞は体への負担が少ない点がメリットです。また、再生医療は入院の必要がなく、日帰りで治療を受けられます。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療を行っております。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、脊髄損傷の治療法として再生医療を検討している方はお問い合わせください。 脊髄損傷急性期におけるリハビリテーションの内容 脊髄損傷は、急性期からリハビリテーションの実施が重要です。ここでは、脊髄損傷急性期から行われる代表的なリハビリテーションを3つ解説します。 呼吸訓練 関節可動域訓練 床ずれ予防・離床訓練 回復へ向けたリハビリテーションの内容が知りたい方は、参考にしてください。 呼吸訓練 脊髄損傷は損傷の部位によって、呼吸器官に麻痺が起こります。また、首を損傷した場合、息を吐く力が弱くなり、痰づまりや肺炎を起こすケースも少なくありません。 そのため、急性期では呼吸理学療法がおこなわれます。呼吸理学療法は症状のレベルによって異なりますが、リハビリ内容は以下の通りです。 沈下性肺炎の予防 人工呼吸器管理による短時間自発呼吸の獲得 人工呼吸からの離脱訓練 呼吸訓練には、胸郭を広げるエクササイズや息を吐き切るトレーニングなどがあります。セルフトレーニングもあるため、呼吸力向上へ向けて急性期から行うことが大切です。 関節可動域訓練 関節可動域訓練とは、関節を動かせる範囲を広げるリハビリテーションです。脊髄損傷で麻痺した部分は、関節が硬くなります。関節が硬くなると次第に可動域が狭まり、床ずれや車いすへの移動、起き上がりなど日常生活においてさまざまな支障をきたします。 とくに脊髄損傷では、以下の関節ケアが重要です。 肩関節 股関節 足関節 該当の部位は、車いす操作や立位保持などにも影響を与えます。関節可動域訓練は、全身の機能維持において必要な訓練です。 床ずれ予防・離床訓練 急性期には、床ずれ予防や離床訓練を行います。脊髄損傷急性期では、全身の筋肉の緊張が低下し、床ずれを起こしやすくなるためです。 そのため、早期に体位の変換やクッション選びなどの対策をとる必要があります。また、全身が安定している場合は、ベッドに座った状態を維持する離床訓練の実施が大切です。座れるようになると、食事や排せつ、車いすの使用など日常生活へ戻る訓練を進められます。 症状の回復には、急性期にベッドから起きていられるよう体を慣らすリハビリテーションがポイントです。 脊髄損傷の急性期は回復に影響を与える重要な期間 脊髄損傷急性期は発生してから2〜3週間ほどの期間で、症状回復に影響を与えます。重要な期間となるため、早期に診断を受けて適切な治療を受けることが大切です。 脊髄損傷急性期の主な治療法には、安静やリハビリテーションなどがあります。症状回復を目指せるよう、診断から脊髄損傷の種類や程度、影響を受けた範囲を把握しましょう。 また、脊髄損傷急性期の治療法の選択肢として、体への負担が少ない再生医療も検討できます。当院リペアセルクリニックでは、脊髄損傷の再生医療を行っています。急性期における適切な治療法を検討中の方は、ぜひお問い合わせください。 また、頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事が参考になります。 脊髄損傷の急性期に関するよくある質問 脊髄損傷の急性期に起こる合併症は何ですか? 脊髄損傷では麻痺以外に、呼吸器合併症や循環器合併症など、さまざまな合併症が発生します。なかでも、急性期では消化器合併症が起こりやすいため注意が必要です。 急性期にはストレス性胃潰瘍や十二指腸潰瘍のほか、胃腸の働き低下により腸閉塞となるケースもあります。いずれも生命にかかわる重要なものばかりなので、早期治療が重要です。 脊髄損傷を発症した場合に回復見込みはありますか? 脊髄損傷は原因や症状、損傷位置によって回復が見込めるか異なります。症状が軽度の場合は、治療次第で回復が見込めます。 しかし、重度の場合は回復の見込みが低く、完治しないケースがほとんどです。脊髄損傷は時期によって治療法が異なるため、早めに診断を受けましょう。 脊髄損傷の急性期における看護のポイントは? 脊髄損傷の急性期では、家族のサポートが重要です。急性期では症状が発生し、身体への異変や生活動作が自分でできない辛さ、回復への期待などから精神面が不安定になりやすい時期といえます。 そのため、周囲からの励ましが生きる希望につながります。不安やストレスを軽減するほか、治療へ積極的な取り組みを促すためのサポートが看護のポイントです。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「急性期脊髄損傷の治療を目的とした医薬品等の臨床評価に関するガイドラインについて」独立行政法人 医薬品医療機器総合機構2019年 https://www.pmda.go.jp/files/000230373.pdf(最終アクセス:2025年5月20日) (文献2) 松本浩子,泉キヨ子.「脊髄損傷患者の急性期における体験」『日本看護研究学会雑誌』30巻(2号), pp.77-85, 2007年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/30/2/30_20070125006/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月20日)
2025.05.30 -
- その他、整形外科疾患
「抗がん剤による末梢神経障害は治るのか」「しびれや痛みが続いている」など、不安に感じている方も多いでしょう。 抗がん剤による末梢神経障害は、多くのがん患者様に見られる副作用の一つです。 症状が進行・長期間続くと、歩行が困難になる、細かい作業がしづらくなるなど、生活の質(QOL)に影響を及ぼすことがあります。 今回は、抗がん剤による末梢神経障害の原因や対処法、治療薬について現役医師がわかりやすく解説します。 また従来の治療法では、末梢神経障害の改善が見られないという方は再生医療も選択肢の一つとして注目されています。 \末梢神経障害の改善が期待できる再生医療とは/ 再生医療は、損傷した神経に対してアプローチできる新しい治療法で、これまで根治が難しかった抗がん剤による末梢神経障害の改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 抗がん剤による末梢神経障害の改善を目指したい 手足のしびれや痛みを早く治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない >>再生医療専門の「リペアセルクリニック」に無料相談する 当院(リペアセルクリニック)の「静脈注射(静脈点滴)」は、幹細胞を血液を通じて全身に運ばれることで、直接注射できない部位や臓器の修復、機能回復を促進する役割を果たします。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 抗がん剤による末梢神経障害を完全に治すのは難しい 抗がん剤による末梢神経障害は、有効な予防法が確立されておらず、症状を完全に抑えるのが難しい疾患です。(文献1) そのため、症状の進行を抑えたり、日常生活を維持したりするためのケアや対処に努めることが重要です。 なかには、抗がん剤の中止後に症状が改善するケースもあります。 一方で、しびれや痛みが長年にわたって残ることも少なくありません。 抗がん剤による末梢神経障害が疑われる場合は、医師との連携や早期対応が大切です。 また近年では、こうした末梢神経障害に対して、再生医療という新たなアプローチも注目されています。 再生医療とは、患者様ご自身の細胞を用いて、損傷した神経や組織の修復をサポートすることを目的とした治療法です。 https://youtu.be/iHqwMDfKID8?si=BoFAVgEeHtH-nEID 「抗がん剤治療後も、しびれや痛みが続いている方」「日常生活に支障が出ている方」という方は、一度、当院(リペアセルクリニック)へご相談ください。 抗がん剤による末梢神経障害の症状 抗がん剤の副作用によって運動神経や感覚神経、自律神経がダメージを受けると、末梢神経障害として以下のような症状が現れます。(文献2) 神経の種類 主な症状 運動神経 手足の筋力低下 細かい動作の困難 歩行困難 など 感覚神経 手足のしびれや痛み 灼熱感 冷感過敏 感覚麻痺 など 自律神経 起立性低血圧 発汗異常 便秘 排尿障害 など なお、症状の現れ方には個人差があり、日常生活や社会活動に支障をきたすケースも少なくありません。 これらの症状に悩まされている方にとって、従来の薬物療法やリハビリに加え、自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療という選択肢も存在します。 当院(リペアセルクリニック)の幹細胞治療では、患者様ご自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、損傷した神経組織の修復・再生を促します。 【治療の特徴】 幹細胞が損傷した神経組織に働きかけ、機能回復をサポート 患者さま自身の細胞を使用するため、拒絶反応やアレルギーのリスクが低い 日帰り治療が可能で、手術による負担が少ない 抗がん剤による末梢神経障害でお困りの方、日常生活への影響にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。 専門スタッフが患者様の症状やご状況を丁寧にお伺いし、再生医療が適応となるか、どのような効果が期待できるかを詳しくご説明いたします。 抗がん剤による末梢神経障害が起こる原因 抗がん剤による末梢神経障害は、薬剤が末梢神経系にダメージを与えることによって生じるとされています。 抗がん剤による末梢神経障害の原因は、すべてが解明されているわけではありませんが、軸索あるいは神経細胞体への影響が考えられます。(文献1)それぞれのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。 軸索障害 軸索障害とは、末梢神経の軸索(じくさく)が抗がん剤の攻撃を受けて生じる障害です。 軸索とは、神経細胞から伸びる長い神経線維のことです。次の細胞に情報を伝達するための役割を担っているほか、軸索には栄養素などを運ぶための微小管(びしょうかん)と呼ばれる細胞骨格があります。 抗がん剤のなかには、がん細胞の微小管を攻撃して増殖を抑える薬があります。このとき、軸索の微小菅が攻撃を受けて正常な働きができなくなると、神経の末端に必要な栄養や酵素が届かず、変性の進行につながりかねません。 長い軸索を持つ神経ほど、抗がん剤によるダメージを受けやすいのが特徴です。そのため、足先や手指などの遠位部を中心に、しびれやチクチク感、痛み、感覚鈍麻といった症状が現れやすくなります。 神経細胞体障害 神経細胞体が直接抗がん剤の攻撃を受けて、障害が生じるケースもあります。 神経細胞体とは、神経の中核部分で、タンパク質の合成や代謝、情報処理といった神経の生命維持に欠かせない機能を担っているのが特徴です。 抗がん剤の攻撃によって神経細胞体に障害が起こると、そのほかの部分も二次的にダメージを受け、神経全体の機能が失われやすくなります。 また、細胞体のダメージは神経再生能力の低下を招くとされています。一度損傷を受けると回復までに長期間を要したり、慢性的な神経障害としてしびれや異常感覚、感覚過敏といった症状が残存したりするケースも少なくありません。 そのため、神経細胞体への影響は、末梢神経障害の予後に大きく関与する重要な要素と考えられています。 末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤の種類 末梢神経障害の症状は、抗がん剤の種類や投与量によって個人差があります。 ここでは、末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤の種類をまとめました。 殺細胞性の抗がん剤 殺細胞性の抗がん剤は、化学物質を用いて細胞増殖が盛んながん細胞を死滅または抑制させる薬のことです。殺細胞性の抗がん剤は、主に以下のような種類があります。(文献1) 一般名 商品名 主な症状 パクリタキセル タキソール パクリタキセル 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ パクリタキセル (アルブミン懸濁型) アブラキサン 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ ドセタキセル タキソテール ワンタキソテール ドセタキセル 手足のしびれ 感覚の鈍さ カバジタキセル ジェブタナ 運動のまひ 感覚のまひ 手足のしびれや痛み ビノレルビン ナベルビン ロゼウス 知覚異常 腱反射減弱 対象になるがんの種類によって、ほかにもさまざまな種類の殺細胞性の抗がん剤があります。なお、殺細胞性抗がん剤は正常な細胞にも影響を及ぼすため、副作用の発生頻度が高い薬です。 分子標的型の抗がん剤 分子標的型の抗がん剤は、がん細胞に特異的に存在する分子を狙って、増殖や生存を抑制する薬です。代表的な分子標的型の抗がん剤として、以下のような薬が挙げられます。(文献1) 一般名 商品名 主な症状 ボルテゾミブ ベルケイド 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ 起立性低血圧 便秘 トラスツズマブエムタンシン カドサイラ 手足のしびれや痛み ブレンツキシマブベドチン アドセトリス 運動のまひ 感覚のまひ 手足のしびれや痛み サリドマイド サレドカプセル 手足のしびれや痛み 起立性低血圧 レナリドミド レブラミドカプセル 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ 起立性低血圧 分子標的型の抗がん剤は、正常な細胞には影響しないとされており、副作用の軽減が期待できます。(文献3) 抗がん剤による末梢神経障害は治る?ケアと対処法 抗がん剤による末梢神経障害では、手足のしびれや痛みなどの症状が現れます。 日常生活において症状とうまく付き合っていくためには、適切なケアや対処が必要です。 抗がん剤による末梢神経障害の対処法について解説するので、ぜひ参考にしてください。 医師に相談して治療薬を投与する 循環を良くする 寒冷刺激を避ける 転倒やケガに注意する 医師に相談して治療薬を投与する 抗がん剤による末梢神経障害が疑われる場合は、できるだけ早く医師に相談しましょう。 末梢神経障害に対しては、神経障害性疼痛に有効な薬剤による対症療法がおこなわれるのが一般的です。また、抗がん剤による治療中に末梢神経障害が悪化した場合は、原因となる薬剤の投与延期や減量、中止が検討されます。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。抗がん剤治療後に続くしびれや痛みなどでお困りの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 循環を良くする 抗がん剤による末梢神経障害のケアとして、血液の循環を良くするのもポイントです。とくに、末梢部の血流を良くすると、しびれや痛みが軽減する場合があります。 たとえば、入浴時にマッサージをしたり、手を握ったり開いたりする動きを取り入れることで、末梢の血行が促されます。また、無理のない範囲で軽い運動をするのもおすすめです。体調に応じて医師と相談の上、無理のない範囲でマッサージや軽い運動を継続しましょう。 寒冷刺激を避ける 抗がん剤による末梢神経障害は、寒冷刺激によって症状が悪化するケースがあります。とくに、急性の末梢神経障害は、寒冷刺激によって強いしびれや痛みが誘発されるといわれています。 日常生活において以下のような工夫をして、寒冷刺激を避けましょう。 冷たい飲み物を避ける 冬場や冷房の効いた部屋では手袋や靴下で保温する 炊事や洗濯の際はゴム手袋を着用する 皮膚が濡れたときはすぐに水分を拭き取る 冷たい床などに直接座らない 寒冷刺激を避けることは、抗がん剤による末梢神経障害の症状の悪化を防ぐポイントの一つです。 転倒やケガに注意する 抗がん剤による末梢神経障害は、手足のしびれや痛みのほか、筋力やバランス感覚の低下を引き起こす場合があります。そのため、転倒やケガには十分な注意が必要です。 とくに、高齢者の場合、転倒によって骨折すると入院や寝たきりの状態が長期化するリスクもあります。転倒やケガを防ぐためにも、以下のような点を中心に、住環境を見直しましょう。 床に物を置かない コード類をまとめる 滑りにくい靴やスリッパを履く 手すりを設置する 段差を解消する 夜間は足元灯を使用する 神経障害による感覚異常がある場合は、自覚しにくい小さなケガにも注意が必要です。 【症例紹介】末梢神経障害に対する再生医療の可能性 再生医療は、末梢神経障害の治療における選択肢の一つです。 再生医療とは、幹細胞や血小板の投与によって自然治癒力を最大限に引き出し、症状改善を目指す治療法です。 ここでは、両足のしびれに長年悩まされてきた80代男性の症例をご紹介します。 >>症例紹介はこちら 【患者様の情報】 80代男性 40年以上の糖尿病歴 内科主治医より「糖尿病性末梢神経障害」と診断済み 80代の男性は、40年来の糖尿病患者で、内科主治医から糖尿病性末梢神経障害と診断されていました。 薬物療法や食事・運動療法により、血糖値のコントロールはある程度良好でしたが、両足の症状はなかなか改善が見られず、再生医療による治療を決めました。 当院では、患者様の状態に応じた幹細胞治療を行っており、本症例では、1億個の幹細胞を3回に分けて点滴投与。治療前後の状態としては以下の通りです。 治療前の状態 10年以上続く両足のしびれ 知覚鈍麻(感覚の鈍さ) 既存の治療法による効果は限定的 治療後の変化 両足のしびれが大幅に軽減 日常生活の質の向上 健康増進への積極的な姿勢の芽生え 治療に対する前向きな発言 当院の幹細胞治療は、米粒2〜3粒ほどの脂肪を採取するだけで、十分な量の細胞を培養できるため、身体への負担が少ない点が特徴です。 https://youtu.be/NeS1bk2i5Gs?feature=shared なお、リペアセルクリニックでは、末梢神経障害の治療法でお悩みの方に対して無料電話相談も行っておりますので、ぜひ気軽にご相談ください。 こちらの症例について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 抗がん剤による末梢神経障害を治すには早期発見・対処に努めよう 抗がん剤による末梢神経障害の症状は、薬の種類や治療期間によって個人差があり、完治が難しい場合もあります。しかし、早期に症状を発見し、適切な対処をおこなうことで、進行を抑えたり症状を軽減したりできます。 抗がん剤による末梢神経症状の主な対処法は、治療薬の投与や日常的なセルフケアなどです。医師の診断のもと、適切なケアや対処法を組み合わせることで、しびれや痛みといった症状を和らげ、生活の質を保つことにつながります。 抗がん剤治療後に手足にしびれや感覚の鈍さが現れた場合は、早めに信頼できる医師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 静岡県立静岡がんセンター「抗がん剤治療と末梢神経障害」 https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2016/02/sonota_mshinkei.pdf (最終アクセス:2025年5月20日) (文献2) 公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院「末梢神経障害 -症状とセルフケアについて- 」 https://www.kchnet.or.jp/kchnet/wp-content/uploads/departments/pdf_chemopamphlet_6.pdf (最終アクセス:2025年5月20日) (文献3) 横浜市立大学附属病院 化学療法センター「抗がん剤」 https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/section/central_section/chemotherapy/anti-cancer_agent.html (最終アクセス:2025年5月20日)
2025.05.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「最近、かかとが痛いと子どもが言い出した」「練習後はつま先で歩いている気がする」 このようなお悩みを持たれている保護者の方もいらっしゃることでしょう。 お子さまのかかとの痛みは、多くの場合シーバー病と呼ばれる成長期特有の疾患が原因です。 適切な知識と対処法を身につけることで、お子さまの痛みを和らげ、スポーツを継続できるようになります。 本記事では、シーバー病の原因・症状・治療法から、再発防止やスポーツ復帰のポイント、そして当院で受けられる再生医療まで詳しく解説いたします。 保護者の皆さまが抱える不安を解消し、お子さまの健やかな成長をサポートするための情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。 シーバー病とは?成長期の子どもに多いかかとの痛み シーバー病は、成長期の子どもに特有のかかとの痛みを引き起こす疾患です。 正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」と呼ばれ、10歳前後の活発な男の子に多く見られます。(文献1) この病気の特徴は、踵骨(かかとの骨)の成長板と呼ばれる部分に繰り返し負荷がかかることで炎症が生じ、痛みや腫れを引き起こすことです。 成長期の骨は大人の骨と異なり、踵骨軟骨と呼ばれる軟骨のため、運動による繰り返しの負荷によって炎症を起こしやすくなっています。 シーバー病の痛みは、運動中や運動後に現れることが多く、安静にすると症状が軽減されますが、朝起きたときの一歩目や、長時間座った後に立ち上がるときにも痛みを感じることがあります。 多くの保護者はこのまま放置して大丈夫なのかを心配されていると思いますが、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。 適切な対処を行わずに放置してしまうと、痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたす可能性がありますが、正しい知識を手に入れ、対処法を実践すれば多くの場合で症状の改善が期待できます。 シーバー病の原因と発症メカニズム シーバー病の発症には、いくつかの要因が複合的に関与しています。 最も大きな原因は、成長期のかかとの骨に対する過度な負荷です。 アキレス腱・足底腱膜の牽引ストレスとは? アキレス腱や足底腱膜は、かかとの骨に直接付着している重要な組織です。 これらの組織が硬くなったり緊張したりすると、運動時にかかとへの牽引ストレス(引っ張る力)が増加します。 アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ太くて強い腱で、走ったり跳んだりする動作のたびに、この腱がかかとの骨を強く引っ張ります。 足底腱膜は、足の裏全体に広がる膜状の組織で、歩行時の衝撃を吸収する役割を担っており、成長期の子どもは、骨の成長に対して筋肉や腱の成長が追いつかないことがあります。 この成長のアンバランスにより、アキレス腱や足底腱膜の柔軟性が低下し、かかとへの牽引ストレスが強くなりやすい状態になってしまします。 このストレスが繰り返されることで、成長期の柔らかい踵骨の成長板に炎症が生じ、シーバー病を発症してしまいます。 また、偏平足や足の形状、不適切な靴の使用なども、かかとへの負担を増加させるリスク要因となります。 とくに、靴選びは重要です。クッション性の乏しい靴や、サイズが合わない靴を使用すると、さらに症状が悪化する可能性があります。 どんな症状が出る?家庭でできるセルフチェック シーバー病の症状を早期に発見するためには、保護者の方が日常的にお子さまの様子を観察することが大切です。 以下のような症状やサインが見られる場合は、シーバー病の可能性を疑いましょう。 チェック項目 症状の詳細 かかとを押したときの痛み 親指でかかとの後ろ側を軽く押して痛がる 朝起きたときの痛み ベッドから起き上がる最初の一歩で痛がる 運動後の痛み 練習や試合の後にかかとを痛がる 歩き方の変化 つま先立ちで歩いたり、歩き方がおかしい 長時間座った後の痛み 椅子から立ち上がるときに痛がる 運動後の痛み 運動後にかかとに痛みを感じるのは、シーバー病の最も典型的な初期症状の一つです。 とくに、サッカーやバスケットボール、陸上競技など、ジャンプや走る動作を繰り返すスポーツに取り組んでいるお子さまに多く見られるので、練習や試合が終わった後にかかとの痛みを訴えたり、つま先立ちで歩いている場合は要注意です。 初期段階では軽い違和感程度かもしれませんが、放置すれば痛みは徐々に悪化し、やがて日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。 とくに疲労が蓄積しやすい連続した練習日や、練習量が急に増えた時期には注意が必要です。 ので、お子さまが運動後の違和感を口にした場合は、それを見逃さずに適切な対処を始めることが予防の第一歩となります。 朝一番の痛み 朝起きた直後に感じるかかとの痛みも、シーバー病の代表的な症状の一つです。 これは、睡眠中に筋肉や腱が硬くなり、起床して最初に動作を行うときに成長板への張力が急激にかかることで生じています。 ベッドから起き上がって最初の一歩目に痛みがある場合は、炎症がある程度進行しているサインでもあります。 多くの場合、歩いているうちに痛みは軽減しますが、症状が繰り返すようであれば、セルフケアだけでなく医療機関へ相談しましょう。 朝の痛みを放置すると、日中の活動にも支障をきたすようになり、お子さまの生活の質に大きな影響を与える可能性があります。 歩き方の変化 シーバー病の進行に伴い、お子さまの歩き方に変化が現れることがあります。特徴的な変化は、かかとの痛みを避けるためにつま先歩きをするようになる点です。 痛いかかとに体重をかけることを本能的に避けようとする自然な反応ですが、長期間このような歩き方を続けると症状の悪化を引き起こします。保護者や指導者の方は注意深く観察しましょう。 観察するポイントは以下の通りです。 つま先立ちで歩いている 片足をかばうような歩き方をしている 歩く速度が遅くなった 階段の昇り降りを嫌がるようになった これらの異常が見られた場合には、早期に専門医の診察を受けましょう。 シーバー病はどのくらいで治る?回復までの期間と注意点 シーバー病の回復期間は、症状の程度や対処法の適切さによって大きく異なりますが、一般的には数カ月から1年程度とされています。 ただし、これはあくまで目安であり、個人差が非常に大きい疾患です。 軽度の場合では、適切なケアを行うことで1〜2カ月程度で症状が改善する場合もありますが、症状が進行してから治療を開始した場合や、不適切な対処により症状が悪化した場合は、回復に1年から数年程度かかることもあります。 回復期間を左右する重要な要因として、以下の点が挙げられます。 要因 回復への影響 発見の早さ 早期発見ほど回復が早い 運動の調整 適切な休息で回復促進 成長段階 成長期真っ盛りは時間がかかりがち 個人の体質 治りやすさに個人差がある 早期発見と適切な対処が何より大切です。お子さまのSOSと真剣に向き合ってあげることで、回復期間を大幅に短縮できます。 また、痛みがなくなったからといって完全に治ったわけではありません。 運動を再開する際は、段階的に進めることが重要です。ウォーキングやストレッチからはじめて、徐々に負荷をあげ、最終的には元の運動量に戻しましょう。 そして、シーバー病は成長に伴う疾患であるため、お子さまの成長が完全に終了するまでは再発の可能性も考慮してください。 シーバー病を早く治すための保存療法とセルフケア シーバー病の早期改善には、保存療法とセルフケアの適切な組み合わせが効果的です。 手術が必要になることはほとんどありません。多くの場合で手術をしない保存治療により症状の改善が期待できます。 保存療法の基本は、患部の安静を保ち、必要に応じてアイシングを行い、テーピングやインソールを使用してかかとへの負担を軽減しましょう。 セルフケアとしては、ふくらはぎや足底筋膜のストレッチ、足裏のマッサージが効果的です。これらの方法を組み合わせることで、シーバー病の症状を早期に改善し、再発を防げます。 重要なのは、一つの方法に頼るのではなく、複数のアプローチを並行して行うことです。お子さまの症状や生活スタイルに合わせた組み合わせを見つけましょう。 テーピングとアイシングの使い方 テーピングとアイシングは、シーバー病の症状軽減に非常に有効な手段です。テーピングは、かかとへの負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。 適切な巻き方を習得すると、日常生活や軽い運動時の痛みを大幅に軽減できるため、以下の基本的なテーピングの手順を抑えておきましょう。 基本的なテーピング手順は以下の通りです。 足首の力を抜いて、つま先を内側に入れる。 小指の付け根からテーピングの端を貼り付け、かかとに巻き込んでピンと張る様に貼り付ける。 余った部分は足を巻き込むように斜め上に上げて貼り付ける。 テーピングは毎日交換し、皮膚のかぶれに注意しながら使用してください。 アイシングは炎症を抑え、痛みを軽減するために重要な処置です。運動後や痛みが強いときに、かかと中心に15〜20分程度のアイシングを行うことで、症状の悪化を防げます。 これらの方法を適切に組み合わせて、早期回復を促進しましょう。 ストレッチと靴・インソールの工夫 シーバー病の予防や症状改善には、ストレッチとインソールの工夫が大きな役割を果たします。 アキレス腱やふくらはぎのストレッチは、牽引ストレスの軽減につながり、かかとへの負担を大きく減らします。 足首ストレッチ 椅子に座り、片足をもう片方の太ももの上に乗せて、足首を手でつかみます。 もう片方の手で足の指と手の指を組んで、ゆっくりと大きく足首を回してください。痛みのない範囲で20回程度回したら、逆足も同様に行います。 階段ストレッチ かかとはふくらはぎの筋肉と密接につながっているため、ふくらはぎが硬いとシーバー病のリスクが高まります。 うつ伏せになって腕立て伏せの姿勢を取り、片足をもう片方の足首の上に乗せます。下の足のかかとを床につけることで、ふくらはぎとアキレス腱の心地良い伸びを感じられます。 20秒キープして、逆足も同様に行ってください。 靴に関しては、クッション性が高く踵をしっかりとサポートできる構造のものを選ぶことが重要です。 適切な靴選びのポイントは以下の通りです。 かかと部分にしっかりとしたクッションがある 足のサイズに正確に合っている アーチサポート機能がついている 古すぎずクッション性が保たれている インソールの活用も重要です。市販のクッション性インソールや、必要に応じて医療用インソールの使用を検討してください。 これらの対策を組み合わせることで、症状の改善と再発防止の両方を実現できます。 シーバー病の再発防止とスポーツ復帰時の注意点 シーバー病は適切な治療により症状が改善しても、フォームやトレーニング内容を改善しないままだと再発するリスクが高い疾患です。 再発防止のためには、根本的な原因への対処と、段階的なスポーツ復帰を考えておきましょう。 痛みが無くなったらまずは軽いウォーキングとストレッチからはじめ、問題なければジョギング、そして習っているスポーツの動作練習と移行していき、最終的には通常練習へと復帰するのが理想です。 定期的に痛みの確認を行い、各段階で痛みが出現した場合は前の段階に戻って様子を見ましょう。一般的には1〜2カ月でこれまで通りスポーツができるようになります。 保護者の方は、お子さまがもう大丈夫と言っても、組織の回復には時間がかかることを理解し、長期的な視点でサポートしてあげてください。 また、指導者との連携も大切です。お子さまの状態を正確に伝え、無理をさせないよう配慮を求めてください。 シーバー病の受診のタイミングと当院の再生医療の選択肢 シーバー病の症状が現れた場合、適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。 以下のような受診すべき症状がないかチェックしてください。 2週間以上痛みが持続している 歩行にも支障が出ている 片足ではなく両足に痛みがある 安静にしていても痛みが続く 痛みが徐々に強くなっている これらの症状がある場合、セルフケアだけでは改善が困難な可能性があります。 一般的な保存療法で改善しない場合、リペアセルクリニックでは、PRP(多血小板血漿)を用いた再生医療もご案内可能です。 PRP療法の特徴として、以下の点があげられます。 患者さま自身の血液から血小板を濃縮した液体を精製する治療 細胞の代謝プロセスに関与する成長因子を豊富に含む 入院を必要とせず治療期間が短い 副作用のリスクが少ない 当院の再生医療は、お子さまの成長段階や症状の程度を十分に考慮した上で治療プランをご提案します。PRP療法について知りたい方は以下のリンクをご確認ください。 まとめ|シーバー病は早期発見と正しいケアが重要です シーバー病は、成長期の子どもによく見られる疾患ですが、放置してしまうと症状が長引き、お子さまのスポーツ活動や日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 しかし、適切な知識と対処法を実践することによって、多くの場合で症状の改善が期待できる疾患でもあります。 早期発見のためには、運動後の痛み、朝起きたときの痛み、歩き方の変化など、お子さまの日常の変化に注意を払うことが大切です。 家庭でのセルフケアとしては、適切なストレッチ、アイシング、テーピング、そして靴・インソールの工夫をしましょう。 そして、再発を防ぐためには正しいフォームの習得、段階的なスポーツ復帰、そして継続的なリハビリを意識した運動習慣の見直しが必要です。 症状が長引く場合や、通常の治療で改善が見られない場合は、再生医療などの選択肢もあるので、シーバー病でお悩みの方は当院にお気軽にご相談ください。 適切な診断と治療により、お子さまが再び元気にスポーツを楽しめるよう、全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 済生会「踵骨骨端症(アポフィサイティス)」 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/ (最終アクセス:2025年5月24日)
2025.05.30






