-
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
健康診断で尿酸値が高めと書かれていてドキッとした経験はありませんか?そんなときに真っ先にイメージされる痛風ですが、実はその痛みの原因は腎臓にも関係しています。 尿酸は体内の老廃物の一種で、痛風の原因としてよく知られていますが、尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、実は腎臓にも大きな負担がかかり、放置すると腎臓の機能低下を招いて将来的に透析が必要になることもあります。 尿酸値の高い状態が続くと痛風発作を起こすだけでなく、腎臓病や高血圧、心臓病、尿路結石などさまざまな病気を発症しやすくなることがわかっています。 本記事では、尿酸と腎臓の関係や腎臓に影響をあたえるメカニズムについて解説します。尿酸と腎臓のトラブルを予防・改善するポイントを一緒に見ていきましょう。 尿酸値と腎臓との関係|さまざまな疾患への影響 尿酸値が高くなると、体内の尿酸は結晶化してさまざまな場所にたまりやすくなります。足の親指の関節に結晶がたまれば激痛を伴う痛風発作を起こし、尿路にたまると尿路結石、腎臓にたまると腎結石(じんけっせき)になります。 腎臓に尿酸の結晶が沈着すると腎臓の組織に炎症を引き起こし、腎臓の働きが低下してしまいます。尿酸によるこうした腎臓障害を痛風腎(つうふうじん)と呼びます。 さらに尿酸値が高い方は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満といった生活習慣病を合併しやすいことも知られており、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患のリスクも上昇する傾向があります。 このように尿酸値は痛風だけでなく全身の健康、腎臓の健康と深く関わっています。 尿酸と腎臓が連動する仕組み 尿酸とはプリン体という物質が分解されてできる老廃物です。プリン体は食品や体内の細胞に含まれており、それらが分解されると尿酸が産生されます。 通常、この尿酸は血液を通して腎臓に運ばれ、腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。健康な腎臓であれば体内の尿酸バランスは保たれますが、腎臓の働きが悪くなると尿酸を十分に排泄できずに血液中に溜まり、尿酸値が高くなってしまいます。 尿酸値が高い人ほど腎機能が低下している傾向は研究でも判明してますが、尿酸値が高いこと自体が腎臓を悪くする原因なのか、腎機能が低下した結果として尿酸が高くなっているのかは明確にはわかっておらず、両者が悪循環を起こす可能性も指摘されています。このように、尿酸と腎臓は密接な関係があるといえます。 検査値の見方を押さえて、尿酸値とクレアチニンの関係を知ろう 高尿酸血症と腎臓の関係を理解するには、血液検査の「尿酸値」と「クレアチニン値」に注目しましょう。 尿酸値がは高すぎると痛風や腎障害につながります。一方、クレアチニン値は腎臓のろ過機能を示す重要な指標です。 ここでは尿酸値が高くなる原因と、クレアチニン値からわかる腎機能の状態について具体的に解説します。 尿酸値が高くなる原因 尿酸値が上がる要因は生活習慣と体質(遺伝)です。まず生活面では過食・飲酒・運動不足が代表格です。ビールや内臓類・干物など高プリン体食品の多量摂取、肥満、さらには高血圧・糖尿病・脂質異常症などの併発が尿酸産生増と排泄低下を招きます。 一方、遺伝的素因も大きく、痛風患者の一親等内に家族歴があると高尿酸血症リスクは約2倍に跳ね上がると報告されています。 加えて、腎機能障害や白血病など細胞代謝が過剰に活発になる病態でも尿酸が蓄積するケースがあり、まずは食事・運動など日常習慣を整えた上で、異常が続く場合は医師の検査を受けることが大切です。 \まずは当院にお問い合わせください/ クレアチニン値が示す腎臓機能の指標 腎機能を知るカギは血液中のクレアチニン(Cre)です。クレアチニンは筋肉が動く際に生じる老廃物で、腎臓が正常なら尿へ排泄され血中濃度は低く保たれます。 男性0.6~1.0mg/dL、女性0.5~0.8mg/dL前後が目安ですが、筋肉量や年齢により変動するため数値だけで一喜一憂せず体格を加味した評価が必須です(文献1)。 Cre値と年齢・性別を組み合わせて算出するeGFR(推定糸球体ろ過量)は腎臓が老廃物をどれだけ濾過できるかを%換算した指標で、60mL/分/1.73㎡未満が3か月以上続くと慢性腎臓病(CKD)とみなされます(文献1)。 尿酸値が高い人はCre値も上がりやすいため、両指標をセットでチェックし早期に腎機能低下を掴むことが、痛風腎やCKDの進行を防ぐ第一歩になります。 痛風が腎臓に影響をあたえるメカニズム 痛風は関節だけの病気ではありません。合併症である高尿酸血症は腎臓にも深刻な打撃を与えます。血中で余った尿酸が針のように結晶化し、腎臓の細い管に詰まると、目詰まりを起こして炎症になります。 すると腎臓のろ過フィルター役割をする糸球体が痛み、老廃物を捨てにくくなるため腎機能が低下します。 さらに腎機能が低下することで痛風患者に多い肥満・高血圧・糖尿病が加わると悪循環になってしまいます。 長年放置すれば慢性腎臓病(CKD)や透析に至る恐れもありますので、尿酸値管理と生活習慣改善を早期に徹底しましょう。 痛風腎とは?放置する危険性 痛風腎(つうふうじん)とは、その名のとおり痛風(高尿酸血症)が原因で起こる腎臓障害のことです。痛風や高尿酸血症がしっかり治療・コントロールされずに長期間経過すると、尿酸塩の結晶が腎臓の深部(髄質)に析出して沈着し、腎臓の組織に慢性的な炎症を引き起こします。(文献2) 簡単に言えば、尿酸の結晶が腎臓に石のようにたまって腎臓を傷つけてしまった状態ですが、その結果腎臓の濾過機能が低下し、放置すると慢性腎不全へ進行して透析療法が必要になる可能性もあります。 痛風腎の怖いところは、これといった特有の自覚症状がない点です。尿が泡立つ(蛋白尿)・むくみが出る・血圧が上がるなど、症状が出るとすれば他の腎臓病と共通するサインばかりで、痛風腎に特有な症状はありません。 検査所見でも、尿検査でタンパク尿や尿潜血反応が出る、血清クレアチニン値が上がる等、一般的な慢性腎臓病(CKD)と同様の所見を示します(文献2)。 また、痛風のある方は前述のように高血圧、脂質異常症、耐糖能異常(糖尿病予備軍)など複数の生活習慣病を併せ持つことが非常に多いです。 そのため、痛風そのものによる腎障害(尿酸結晶による腎炎)に加えて、そうした生活習慣病が原因となる腎障害(たとえば高血圧性腎硬化症や糖尿病性腎症)が合わさり、より腎機能を悪化させているケースもしばしばあります。 痛風腎を予防・進行抑制するためには高尿酸血症を適切な治療をすると同時に、合併している生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の管理に努めることが重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ CKD(慢性腎臓病)とは CKD(慢性腎臓病)は腎機能の低下や腎障害が3か月以上続く状態で、日本では成人の7~8人に1人が該当するとされています(文献3)(文献4)。 代表的な原因は糖尿病や高血圧などで、自覚症状が乏しいため定期的な検査が重要です。CKD患者では腎機能低下により尿酸の排泄がうまくいかず、尿酸値が上昇する傾向があります。 一方で、高尿酸血症の人はCKDを合併しやすいこともわかっており、尿酸値を適正にコントロールすることが腎機能を守る上で重要です。 日本腎臓学会のガイドラインでは、高尿酸血症を伴うCKD患者に対して、血液中の尿酸値を下げるために行う尿酸降下療法の施術を考慮しても良いとされてます。尿酸と腎臓は密接に関係しているため、双方を総合的に管理することが求められます。(文献5) \まずは当院にお問い合わせください/ 痛風・腎臓病を予防する生活習慣の改善 高尿酸血症や腎臓病を予防・改善するためには、日常生活での取り組みが非常に大切です。 ここでは、尿酸値と腎臓の健康を守るために有効な生活改善のポイントをまとめます。どれも今日から実践できる内容ですので、無理のない範囲で取り入れてみましょう。 食事・水分摂取で予防する プリン体の摂取量を減らし、尿酸の産生を抑えることが基本です。 ビールなどのアルコール類やレバー・干物・魚卵といった高プリン体食品は頻度と量を控えめにし、主菜は鶏むね肉や白身魚を少量、野菜・海藻・大豆製品をたっぷり組み合わせ、タンパク質と食物繊維が豊富な食事を意識しましょう。 また、尿酸を体外へ流すには尿量の確保が不可欠です。水やお茶を1日1.5〜2リットルを目安にこまめに補給し、朝起きた直後・入浴前後・就寝前は必ずコップ1杯の水を飲むなど、ルールを決めてやってみましょう。 適度な運動・体重管理で予防する ウォーキングや早歩き、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を週3〜5回・1回30分程度続けると、エネルギー代謝が上がり肥満を防げる上、血糖値・血圧も整い尿酸値のコントロールに直結します。 筋トレはスクワットや腹筋など自重中心に無理なく行い筋肉量を維持しましょう。ただし、息を止めるような激しい無酸素運動は一時的に尿酸値を跳ね上げるため控えめに。 肥満は尿酸の産生過多と排泄低下の両方を招くので、BMI25以上の人は食事改善と運動を組み合わせ月1kgペースで減量を目標にします。 加えて高血圧・糖尿病・脂質異常症を放置すると腎臓への負担が倍増し痛風腎やCKD進行を招く恐れがあるため(文献2)、塩分を控えた食事・適正カロリー・血糖コントロールを徹底し、必要なら医師の治療を受けることが重要です。 ストレスの軽減・睡眠で予防する ストレスが強いと交感神経が優位になり、コルチゾール分泌が増えてプリン体代謝が活発化し尿酸値が上昇しやすくなります。 さらに睡眠不足が続くとホルモンバランスが乱れ、血圧上昇や食欲増進による体重増加が重なって腎臓への負担も増加します。 毎日30分の軽いストレッチや深呼吸、ぬるめの入浴でリラックスし、趣味や散歩など「自分が楽しい」と感じる時間を意識的に確保しましょう。就寝1時間前にはスマホを手放し、室内を暗めにしてメラトニン分泌を促進すると自然に眠りにつけます。 以上のポイントを実践することで、尿酸値のコントロールと腎臓の保護につながります。最初は難しく感じるかもしれませんが、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。 まとめ|尿酸値を下げて腎臓を守るために生活習慣を改善しよう 尿酸は高すぎると痛風になるだけでなく、腎臓にも悪影響を及ぼす可能性があります。 腎臓は尿酸を排泄する臓器であり、腎機能が低下すると尿酸が溜まってしまうため、お互いに影響し合う「持ちつ持たれつ」の関係にあります。尿酸値が高めと言われた方は、ぜひ一度腎臓の検査も受けてみてください。 逆に腎臓が悪いと言われた方も尿酸値の管理に注意が必要です。幸い、高尿酸血症や慢性腎臓病は生活習慣の改善や適切な治療によって予防・進行抑制が可能ですので、食事の工夫や運動習慣、定期検査など、できることから始めてみましょう。 日々の積み重ねが将来の健康につながります。もし不安なことやわからないことがあれば、遠慮せず主治医に相談してください。あなたの大切な腎臓を守り、痛風や腎不全にならないよう、今日からぜひ予防に取り組んでいきましょう。 参考文献 (文献1)腎援隊「クレアチニンやeGFRとは、どのような検査値ですか?」家族と考える慢性腎臓病サイト 腎援隊.https://jinentai.com/doctor_qas/post_14.html(最終アクセス:2025年04月22日) (文献2)日本腎臓学会「痛風腎とは?」日本腎臓学会 ホームページ.https://jsn.or.jp/global/general/_3204.php.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献3)阿部雅紀ほか.「CKD診療ガイドライン2023」『日大医誌』82(6), pp.319‑324, 2023年.https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/6/82_319/_pdf.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献4)東京都保健医療局「CKDってどんな病気?」東京都保健医療局.https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shippei/ckd/p2.html.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献5)日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2024」日本腎臓学会 ホームページ.https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch05.pdf.(最終アクセス:2025年04月29日)
2025.04.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「足先がうまく持ち上がらず、歩くたびに引っかかる」 「下垂足の症状が長引いて辛い」 つま先が引っかかりやすくなり、歩行に支障をきたすことが特徴です。早く症状を改善したいと思っても、効果的なリハビリ法がわからず悩む方も少なくありません。 本記事では、下垂足のリハビリ方法と合わせて以下についても解説します。 下垂足のリハビリにおける注意点 下垂足のリハビリ以外での治し方 下垂足のリハビリでよくある質問 下垂足は正しい方法でリハビリを継続することで、症状の改善が期待できます。下垂足に悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。 下垂足のリハビリ方法 リハビリ方法 目的 方法例 ポイント 足首・足指の運動 足関節や足趾の可動域を広げ、柔軟性と神経の働きを促進する 足首の上下運動(背屈・底屈)、足指のグーパー運動 違和感がある場合は無理せず、小さな動きから始める 筋力トレーニング 足首を持ち上げる筋肉(前脛骨筋など)を強化する チューブを使った足首の背屈運動、かかと上げ運動 正しいフォームを意識し、回数よりも一つひとつの動作を丁寧に行う ストレッチ 筋肉の緊張を和らげ、血行促進と柔軟性向上を図る ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)のストレッチ、足の甲の伸展 反動をつけず、ゆっくりと呼吸を止めずに行う 下垂足の改善には、筋肉と神経の機能回復を目指すリハビリが欠かせません。複数の運動をバランスよく取り入れるのが大切です。 足首・足指の運動 筋力トレーニング ストレッチ リハビリを実施する場合は、自己流ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 以下の記事では、下垂足の原因や治らないときの対処法を詳しく解説しています。 足首・足指の運動 種類 目的 やり方(手順) 回数目安 足首の背屈運動 足首を持ち上げる筋力の強化 椅子に座り、つま先をすね側に引き寄せて数秒キープ 10回 足首の底屈運動 ふくらはぎの筋力強化 椅子に座り、つま先を下に伸ばして数秒キープ 10回 足首の回旋運動 足関節の柔軟性向上・血流促進 椅子に座り、足首を左右にゆっくり大きく回す 各方向10回 足指の運動 足指の筋力とバランス感覚の改善 足指をグーパーしたり、タオルを足指で掴んで持ち上げる 各動作10回 (文献1) 足首や足指を意識して動かすことは、下垂足リハビリの基本です。足首をゆっくりと上下させたり、足指を握ったり開いたりする運動は、関節の硬直を防ぎます。 足首や足指の運動を正しく行うことで、筋肉への神経伝達を促します。違和感があればすぐに中止し、医師に相談してください。 筋力トレーニング 種類 目的 やり方(手順) 回数目安 タオルギャザー 足指の筋力強化、細かな動きの改善 床にタオルを置き、足指でたぐり寄せる 10回程度 チューブトレーニング 足首の背屈・底屈筋の強化 セラバンドを足にかけ、足首を上下に動かす 各方向10回程度 カーフレイズ ふくらはぎ・足首周囲の筋力強化 つま先立ちになり、かかとを上下にゆっくり動かす 10回程度 (文献2) 下垂足では、足を持ち上げる筋肉の力が低下しているため、筋力トレーニングを継続的に行う必要があります。とくに前脛骨筋や足指を動かす筋肉の運動は、歩行を安定させるのに不可欠です。 無理をすると、悪化する可能性があるため、負荷をかけすぎずに回数を増やすのがポイントです。 ストレッチ ストレッチ名 方法 ポイント ふくらはぎのストレッチ 壁に手をつき、片足を後ろに引いてかかとを床につけたまま伸ばす かかとは床につけたまま行う アキレス腱のストレッチ タオルを足裏にかけて両手で手前に引き、アキレス腱をゆっくり伸ばす ゆっくりと引きすぎないよう注意 下垂足では筋肉が硬くなり、柔軟性が低下することで歩行のバランスが乱れやすくなります。 柔軟性の低下などを防ぐには、無理のない範囲でストレッチを続けることが大切です。代表的な方法には、壁を使ったふくらはぎのストレッチや、タオルを使ったアキレス腱のストレッチがあります。 動作中に反動をつけたり無理に引き伸ばしたりするのは逆効果になるため、ゆっくりと呼吸をしながら行いましょう。 下垂足のリハビリにおける注意点 リハビリは適切な方法で実践しないと効果を得られないだけでなく、かえって状態を悪化させる可能性があります。 リハビリにおける注意点は以下の6つです。 医師の診断・指示のもと行う 無理のない範囲で行う 継続して行う 転倒に注意する 装具は正しく着用する 日常生活に気を付ける 医師の診断・指示のもと行う 項目 内容 原因の多様性 下垂足は神経障害、外傷、脳疾患など原因がさまざまで、リハビリ法も異なる 自己判断のリスク 誤ったリハビリにより、症状の悪化や回復の遅れを招く可能性がある 医師の役割 医師は原因や症状の重さ、全身状態を考慮し、リハビリ計画を立てる 実施時の注意点 リハビリ開始前に医師の診断を受け、内容・頻度・負荷量などを指示に従って実施する (文献2) 下垂足の原因は腰や神経、脳の病気などさまざまであり、それぞれに適したリハビリ方法が異なります。 自己判断で始めると症状を悪化させるリスクがあるため、必ず医師の診断と指示に基づいて行いましょう。 無理のない範囲で行う リハビリは無理をすると、かえって悪化する恐れがあります。強い違和感が出たときに我慢して続けると、炎症や筋肉の損傷を招き、回復が遅れます。 体調や症状の変化に応じて、運動量や頻度を調整するのも大切です。地道な継続が、少しずつ機能を取り戻すことにつながります。 継続して行う 下垂足のリハビリは、短期間で改善が見込めるものではありません。神経や筋肉の回復には時間がかかるため、地道な継続が重要です。 調子がよく感じる日でも無理はせず、必要以上の負荷はかけず、少しずつ取り組むようにしましょう。 転倒に注意する 下垂足の方はつま先が持ち上がりにくくなるため、ちょっとした段差でも転倒しやすくなります。転倒を防止するために、リハビリは段差や物がないことを確認してから実施します。 転倒によって骨折やさらなる神経障害が起きるリスクもあるため、無理のない範囲で取り組みましょう。 装具は正しく着用する 装具を着用する際の注意点 装具を正しく装着するべき理由 ポイント 装具は正しい方法で装着する 誤った装着はリハビリ効果を妨げ、皮膚トラブルの原因になる 医師や義肢装具士の指導に従って装着 装着時に皮膚の状態を確認する 擦れやかぶれ、発赤が起こることがある 違和感があれば装着を中止し相談 装具の自己判断による調整は行わない 個人差により適正な位置や角度が異なるため、身体への負担やトラブルの原因となるおそれがあり 必ず専門家の判断を仰ぐ 装具は定期的なメンテナンスする 装具の劣化や不衛生が、機能低下や皮膚トラブルを引き起こすことがある 使用後は清潔に保ち、定期的に点検・交換 下垂足では、足首を安定させて歩行を助ける装具(足関節装具など)の使用が推奨されます。ただし、正しく装着しなければ、十分な効果が得られない可能性があります。 誤った装着により、皮膚トラブルや姿勢の乱れを招くこともあります。装具の選定や装着は、医師の指示に従い、不調を感じた際は速やかに相談しましょう。 日常生活に気を付ける リハビリだけでなく、日常生活での足の使い方を意識するのも大切です。無理に走ろうとしたり、階段を上り下りしようとすると、転倒してしまい、症状が悪化する可能性があります。 また、長時間立ち続けたり無理な姿勢をとったりするのは避け、足は無理に使いすぎず、こまめに休憩を取りましょう。 下垂足のリハビリ以外での治し方 治療法 内容の概要 特徴 物理療法 電気刺激や温熱療法などで筋肉や神経を刺激 筋力維持や血流改善に有効。違和感の緩和も期待される 薬剤療法 ビタミンB12や消炎鎮痛薬などを使用 神経の修復や炎症を抑える効果がある 手術療法 神経の圧迫除去や腱移行術などを行う 重度の神経障害や回復困難な場合に選択される 再生医療 幹細胞やPRP療法などで神経・組織の再生を促す 新しい治療法で、組織修復を目的とする 他の治療法を試す際は、必ず医師に相談しましょう。リハビリと併用して行われる治療法は以下の4つです。 物理療法 薬剤療法 手術療法 再生医療 リハビリ以外の治療法について解説します。 物理療法 効果 詳細 神経の刺激 電気刺激を与えることで、麻痺した神経や筋肉の働きをサポート 筋肉の活性化 電気刺激で筋肉を動かし、筋力低下や萎縮の予防に役立つ 血行促進 温熱やマッサージによって筋肉がほぐれ、血流が良くなり回復しやすくなる 違和感の軽減 神経や筋肉の緊張を和らげることで、違和感の緩和が期待できる (文献3) 物理療法は、神経や筋肉に刺激を与えることで、血流や機能の回復を促す治療法です。主な方法としては、電気刺激療法や温熱療法などが用いられます。 リハビリとの併用で治癒効果の向上が期待できる一方、症状や持病の兼ね合いで行えない可能性もあるため、医師に相談した上で実施されます。また、自己流のマッサージや温熱療法は症状を悪化させる恐れがあるため、行わないようにしましょう。 薬剤療法 薬の種類 主な役割・効果 注意点 ビタミンB群製剤 神経の機能を維持・回復を助ける(B1・B12など) 副作用は少ないが、継続的な服用が必要 抗炎症薬(NSAIDsなど) 神経の炎症を抑え、違和感や腫れを軽減 胃腸障害・腎機能障害のリスクがあるため長期使用に注意 鎮痛薬 神経痛やしびれなどの不快な症状を和らげる 眠気・めまいの副作用が出ることがある 神経賦活薬 しびれ・麻痺などの神経症状を改善 効果に個人差があり、医師の判断に基づく処方が必要 (文献4)(文献5) 薬剤療法では、下垂足の原因が神経の炎症や障害にある場合に行われます。神経の働きを助ける薬やビタミン製剤などを服用し、改善に向けて取り組みます。 薬剤はあくまでも補助的な役割であり、リハビリと並行した使用が大切です。薬は自己判断で調整せず、必ず医師の指示に従って服用しましょう。 手術療法 手術の種類 主な目的・効果 メリット デメリット 神経剥離術 圧迫されている神経の周囲組織を取り除き、神経の通り道を確保する 違和感や麻痺の原因を直接除去できる 手術リスク(感染・出血)あり 神経縫合・移植術 断裂した神経をつなぐ、または別部位の神経を移植して再生を促す 神経再生が期待でき、運動・感覚の改善に役立つ 回復に時間がかかる 腱移行術 正常な腱を移動させ、麻痺した筋肉の代用とする 足首の動きを補い、歩行機能が改善されやすい 術後にリハビリが必要 (文献4)(文献5) 手術療法は、神経の圧迫や断裂などが原因である場合に検討されます。手術療法では、原因を直接的に治癒できる一方、感染症や術後にリハビリが必要になる可能性があります。 また、回復には時間がかかるため、慎重な判断と医師の説明を踏まえた選択が重要です。 再生医療 再生医療は、損傷した神経や筋肉の再生を目的としています。下垂足の原因となる神経障害の根本的な改善が目指せる可能性があり、手術を必要としないことから、感染症や出血を起こすリスクがありません。 再生医療は限られた医療機関でしか受けられないため、事前に実施施設を調べ、自分の症状が適応となるかを確認しましょう。 以下では、再生医療について解説しています。 リハビリで改善しない下垂足は医療機関を受診しよう リハビリを続けても改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。下垂足は原因によって治療法が異なり、脳卒中など重大な病気が隠れていることもあります。 「リペアセルクリニック」では、リハビリで改善しない下垂足に対して、再生医療を活用し、傷ついた神経に回復を促します。 下垂足の症状にお悩みの方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 下垂足のリハビリでよくある質問 リハビリはどのくらいの期間続ける必要がありますか? 下垂足のリハビリ期間には個人差があります。症状の原因や重症度、年齢や体力などによって回復までの期間は大きく異なります。 一概にいつまでに治ると断言はできません。リハビリのスケジュールや目標設定については、医師の診断を受けた上で段階的に進めることが大切です。 リハビリ中に違和感があった場合はどうすれば良いですか? リハビリ中に違和感やしびれなどが出た場合は、無理に続けず、すぐに中止して医療機関へ相談してください。違和感を抱えたままリハビリを継続すると、症状を悪化させる原因になりかねません。 自己判断せず、原因を確認しリハビリ内容を見直すことが大切です。 下垂足でも仕事は続けられますか 仕事の継続は、症状の程度と仕事内容によって異なります。デスクワーク中心であれば、無理な姿勢、長時間の座位は控えましょう。 立ち仕事がある場合は、医師と職場の両方に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 辻慎太郎,安部惠子.「足底および足趾運動を活用したウォーミングアップの有効性」, pp.1-9, 発行年(2022) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsehs/67/4/67_199/_pdf/-char/ja?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年4月13日) (文献2) Zacharia Isaac,(2023). Rehabilitation for Other Disorders. MSD ManualProfessional Version https://www.msdmanuals.com/professional/special-subjects/rehabilitation/rehabilitation-for-other-disorders (Accessed: 2025-04-13) (文献3) 小林 将生ほか.「腰椎椎間板ヘルニアにより下垂足を呈した症例に対する電気刺激を併用した自転車エルゴメーターの有効性」『理学療法科学』, pp.1-4, https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/31/3/31_489/_pdf (Accessed: 2025-04-13) (文献4) Kyle L. McCormick, et al. (2024). Surgical Management of Foot Drop.Orthopedic Reviews https://orthopedicreviews.openmedicalpublishing.org/article/120047-surgical-management-of-foot-drop?utm_source=chatgpt.com (Accessed: 2025-04-13) (文献5) Stella Stevoska, et al. (2021).Tendon transfer in foot drop: a systematic review.PMC Pud Central https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9925604/?utm_source=chatgpt.com (Accessed: 2025-04-13)
2025.04.30 -
- その他、整形外科疾患
「尖足と下垂足の違いがわからない」 「尖足と下垂足の症状を見分けるポイントを知りたい」 尖足と下垂足の症状は似ていますが、原因や対処法が異なります。足の変形や歩きにくさが共通しているため、同じ症状と誤解されがちです。しかし、症状を適切に治療するには、両者の違いを知ることが大切です。 本記事では、尖足と下垂足の違いについてわかりやすく解説します。 尖足と下垂足の共通点 尖足と下垂足の違いを見分けるポイント 尖足と下垂足の治療法 違いを知ることが、正しい治療への第一歩になります。 尖足と下垂足の違い 比較項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 症状の現れ方 徐々に足首が下を向いた状態で固まり、可動域が狭くなる 急に足首が上がらなくなり、歩行時に足先が引っかかる 症状の性質 足首が過剰に下を向き、つま先立ちのような姿勢になる、関節の拘縮や変形を伴いやすい 足首の背屈ができず、足先が垂れ下がる、鶏歩や感覚障害を伴う 原因 脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィー、アキレス腱の短縮、長期臥床など 腓骨神経麻痺、坐骨神経障害、腰椎ヘルニア、脳卒中、外傷、手術による神経損傷など 尖足と下垂足の症状はどちらも足に異常が現れ、歩行が困難になる疾患ですが、原因や症状、見た目に違いがあります。 見た目の足の形や、歩き方の特徴も異なります。尖足と下垂足の原因を解説します。 尖足の症状と原因 分類 内容 見た目の特徴 つま先で歩くためバランスが悪く、段差につまずきやすく、長距離歩行が困難になる 歩行への影響 足のアーチが崩れて扁平足や凹足になり、ハンマートゥや外反母趾を併発する場合がある 起こりうるトラブル 足首や足裏に違和感が出やすく、タコやマメができ、靴が合わなくなる 可動域の制限 足首を上に反らす動き(背屈)が制限され、関節の柔軟性が低下する 原因 脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィー、糖尿病性神経障害、アキレス腱の短縮や長期臥床など (文献1) 尖足は、足首が底屈(足の裏側へ曲がる)方向に硬くなり、つま先が下を向いたまま伸びてしまう状態を指します。踵が接地しにくいのが特徴です。 主な原因としては、脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷など、脳や脊髄といった中枢神経系の障害によって起こる疾患が挙げられます。 下垂足は進行性の神経疾患の一部として現れる場合もあるので、症状が現れた段階での早期対応が大切です。 下垂足の症状と原因 分類 内容 足首の動きの制限 足首を上に反らす自力動作(背屈)ができず、足先が垂れ下がる状態になる 歩行への影響 足先が地面に引っかかりやすく、階段や段差でつまずきやすくなり、足を高く上げて歩く鶏歩になることがある 感覚障害 足の甲や外側にしびれや感覚の鈍さが現れることがあり、神経障害の影響で違和感を伴うこともある 筋力の低下 足首を持ち上げる筋肉(前脛骨筋など)の力が弱まり、足の動きが不安定になる 症状の現れ方 軽度ではつま先が少し引っかかる程度にとどまるが、重度では足首がほとんど動かせず、感覚障害や違和感が伴う場合がある 原因 脳卒中、腰椎ヘルニア、坐骨神経障害、末梢神経障害(腓骨神経麻痺など)、外傷や手術後の神経損傷など (文献2) 下垂足は、足首や足の指を持ち上げるための筋肉(前脛骨筋など)の力が弱くなり、足先がだらんと下に垂れ下がる状態です。この状態はドロップフットとも呼ばれます。 歩行時には、垂れたつま先が地面に引っかからないように、膝を通常より高く上げて歩く鶏歩(けいほ)と呼ばれる歩き方になるのが特徴です。 主な原因は、腰椎の問題(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)による神経の圧迫や、腓骨(ひこつ)神経麻痺といった末梢神経障害などが挙げられます。また、脳卒中など重大な病気の可能性もあるため、に医療機関の受診が重要です。 以下の記事では、下垂足の原因について詳しく解説しています。 尖足と下垂足の共通点 共通項目 内容 歩行困難の症状がある 足首の動きに制限があるため、正常な歩行が困難になり、転倒やつまずきのリスクが高くなる 神経や筋肉に異常が起こる 神経や筋肉に異常が起こる いずれも神経や筋肉の障害によって、運動機能のバランスが崩れる 併存リスクがある 神経疾患や中枢性疾患などにより、尖足と下垂足の両方が同時または連続して発症するケースがある 尖足と下垂足は異なる状態ですが、いくつかの共通点も見られます。いずれも筋肉や神経の障害によって足の動きが制限され、日常生活に大きな影響を及ぼします。 尖足と下垂足の共通点は以下の3つです。 歩行困難の症状がある 神経や筋肉に異常が起こる 併存リスクがある それぞれの共通点についてくわしく解説します。 歩行困難の症状がある 項目 内容 共通点 尖足と下垂足はいずれも足の変形や筋肉・神経の異常により歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まる 尖足による歩行障害 足先が常に下を向いてかかとが接地できず、つま先立ちのような歩き方になり、バランスが悪く転倒や足の違和感が起こりやすくなる 下垂足による歩行障害 足首が上がらず足先を引きずるように歩くため、段差でつまずきやすくなり、足の甲や外側にしびれや違和感を伴うことがある 尖足・下垂足ともに、歩行時のバランスが崩れやすく、日常動作に支障が出る場合があります。尖足は、かかとが浮いてつま先で歩くようになる状態です。一方で下垂足は、足先が上がらずにつまずきやすくなります。 どちらの症状も、装具やリハビリを適切に行わないまま放置すると、二次的な関節障害や転倒によるけがのリスクが高まります。 神経や筋肉に異常が起こる 項目 内容 共通点 尖足と下垂足はいずれも、神経や筋肉の異常により足首の動きが制限される共通点がある 尖足の場合 足首を下に曲げる筋肉が過剰に緊張・拘縮し、主に脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィーなどが原因になる 下垂足の場合 足首を上に反らす筋肉が麻痺し、腓骨神経麻痺、腰椎ヘルニア、糖尿病性神経障害などが神経伝達の障害を引き起こす 尖足も下垂足も、足関節周囲の神経や筋肉に異常が生じることで発症します。尖足は足首が下向きに固まり、下垂足は足首を上げられなくなる状態です。原因は異なりますが、どちらも筋肉や神経に異常が起こり、足を動かす機能が低下します。 中枢神経(脳や脊髄)から末梢神経、筋肉まで、障害の部位によって発症の仕組みは異なりますが、運動機能がうまく働かなくなる点は共通しています。 併存リスクがある 項目 内容 併存の可能性 尖足と下垂足は異なる病態ですが、同じ原因から同時に発症するリスクがある 併存の要因 脳卒中や脊髄損傷、糖尿病性神経障害、拘縮、腓骨神経麻痺などにより、筋緊張や麻痺、末梢神経の異常が生じることで、尖足と下垂足が同時に現れることがある 併存による影響 両症状が重なると歩行障害が悪化し、転倒リスクの増加や関節の変形、慢性痛などの二次障害を引き起こす可能性がある 対策 原因疾患の管理を軸に、リハビリテーションや装具療法を併用し、機能の維持と症状の進行予防を目指す 尖足と下垂足は、原因疾患によっては同時に起こることがあります。 たとえば、広い範囲に及ぶ脳血管障害や複数の神経が障害される病気では、両方の症状が併発する可能性があります。 併発した場合、診断や治療は複雑になりますが、症状ごとに適切な対応が必要です。 尖足と下垂足の違いを見分けるポイント 尖足と下垂足は見た目や歩行の様子に違いがあります。注目すべきは、足の向きや足首の動き方、歩行時のクセ、障害を受けている筋肉や神経の部位などです。 足の向き 歩行時の状態 原因となる神経や筋肉 足関節の可動域 尖足と下垂足を見分けるポイントを解説します。 足の向き 比較項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 足の向き 足先が常に下を向く(底屈したままの状態) 足先が垂れ下がる(背屈できずダランと下がる) 特徴的な姿勢 つま先立ちのような姿勢で、かかとが浮いて接地しない 足を引きずるように歩き、つま先が地面に引っかかりやすい 動かしづらい方向 上に反らす(背屈)ができない 上に持ち上げる(背屈)ができない 尖足では、足首が下に曲がったまま固定されており、かかとが浮いてつま先だけが地面に接している状態になります。つま先立ちのような姿勢が続くのが特徴です。 一方、下垂足では足先がだらんと下がってしまい、歩こうとするとつま先が地面に引っかかりやすくなり、つまずきやすくなります。 歩行時の状態 比較項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 足関節の動き 足が常に下を向く(底屈したまま)ため、背屈ができない 足が上に持ち上がらない(背屈障害)ため、足先が垂れ下がる 歩行時の姿勢 かかとが地面につかず、つま先立ちのような歩き方になる 足先を引きずらないよう、膝を高く上げて歩く(鶏歩)ようになる 歩行の特徴 歩幅が狭くなり、バランスを崩しやすい 足先が地面に引っかかりやすく、つまずきや転倒のリスクが高まる 尖足では、足首が下に向いたまま固まるため、かかとが地面につきにくく、つま先で歩くような動きが特徴です。場合によっては、足裏全体を一度に地面につけるような不自然な歩行が見られます。 一方、下垂足では、足のつま先が垂れ下がって引っかかりやすいため、膝を高く持ち上げて歩く鶏歩(けいほ)の症状が現れます。また、足を引きずるように歩くため、足音が大きくなるのも下垂足の特徴です。 原因となる神経や筋肉 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 関与する動き 足を下に向ける(底屈) 足を上に持ち上げる(背屈) 主な原因筋・神経 腓腹筋、ヒラメ筋 腓骨神経、前脛骨筋、長趾伸筋 筋肉・神経の状態 筋肉が過緊張または拘縮し、足関節が底屈位に固定される 腓骨神経の麻痺により背屈筋が働かず、足先を持ち上げられなくなる 固定される足の向き 足先が下を向いた状態に固定 足先が垂れ下がった状態になり、引きずるような歩行になる (文献3) 尖足と下垂足は、原因となる神経や筋肉の種類にも違いがあります。尖足は、脳や脊髄といった中枢神経の障害によって、ふくらはぎの筋肉が過剰に緊張する痙縮(けいしゅく)が起こり、足首が下を向きやすくなります。 下垂足は、腓骨神経などの末梢神経の麻痺や、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)など足首を持ち上げる筋肉の筋力低下が主な原因です。障害される神経や筋肉の部位が異なる点が、見分ける際の重要なポイントです。 足関節の可動域 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 足関節の状態 足関節が底屈位に固定され、背屈(足を上に上げる動き)が他動的にも制限される 足関節の背屈が自動的に困難になりますが、他動的には背屈が可能な場合がある 可動域の特徴 関節自体が拘縮しており、柔軟性が低下している(構造的な制限) 筋力低下や麻痺で動かせなくても、関節構造には異常がないことが多い(機能的な制限) 主な原因となる障害 下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋など)の過緊張や拘縮 前脛骨筋など背屈筋を支配する腓骨神経の麻痺や筋力低下 見分けるポイント 他動的に背屈も難しい。歩行時はつま先立ちのようになり、かかとが接地しない 他動運動では背屈可能。歩行時は足先が垂れ、膝を高く上げて歩く鶏歩が見られる 足首の可動域にも違いが見られます。尖足では、筋肉の痙縮により足首が硬くなるのが特徴です。 一方、下垂足では、筋力の麻痺によって自分では足を持ち上げにくくなります。足関節の動きに注目すると尖足か下垂足の症状を判断する手がかりになるでしょう。 尖足と下垂足の治療法 尖足・下垂足の治療では、原因に応じて適切な治療法が選択されます。症状の状況に合わせて、治療が行われます。 尖足と下垂足の治療法は以下の5つです。 薬物療法 装具療法 理学療法 手術療法 再生医療 尖足・下垂足の治療法についてくわしく解説します。 また、以下の記事では、下垂足のリハビリ方法について詳しく解説しているのであわせてご覧ください。 薬物療法 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 治療の目的 筋肉の過緊張や痙縮を緩和し、関節の拘縮を予防・改善するのが目的 神経の炎症や障害の進行を抑えつつ、神経機能の回復を促す 使われる薬剤 筋弛緩薬(例:チザニジン、バクロフェン)抗痙縮薬(例:ダントロレン)ボツリヌス療法(注射) ビタミンB12製剤(末梢神経修復)神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンなど)ステロイド(炎症性疾患時) 対象となる異常 筋肉の過緊張・痙縮 神経の麻痺・炎症・障害 補助的な目的 薬で筋肉の緊張を抑えることで、リハビリや装具療法を円滑に行いやすくなる 違和感やしびれを軽減し、運動療法への移行をサポートする 尖足には、筋肉の緊張を和らげる治療が行われ、内服薬やボツリヌス注射で痙縮を抑え、歩行の改善が期待できます。下垂足では、原因が神経炎などの場合に薬物療法が選ばれることがあります。 薬物療法は症状を根本的に治療するのは難しいため、他の治療法と併用するのが一般的です。また、薬物療法による副作用が現れた際は、早期医師への相談が大切です。 装具療法 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 装具療法の目的 足関節の底屈を制御・矯正し、過度な緊張や変形を防ぐ 足先の垂れ下がりを防止し、歩行時のつまずきや転倒リスクを軽減 主に使用する装具 足底板や短下肢装具(AFO)など 短下肢装具(AFO) 装具による効果 関節の可動域を保ち、拘縮の進行を防止。歩行時のバランス改善と違和感の軽減が期待できる 足先を上げる動作を補い、膝を高く上げずに自然な歩行が可能。日常生活動作(ADL)の改善に役立つ 装具療法は、足関節の動きを適切に抑え、筋肉の緊張や変形を防ぐ目的で行われます。尖足には、足首の底屈を制限し、かかとが地面につくよう補助するタイプの装具を使用します。 下垂足の場合は、足先の持ち上げを支える短下肢装具(AFO)の使用が一般的です。使用にあたっては、自己判断はせず、医師の指導に従い行います。 装具に違和感がある場合は無理に使わず、早めに医師へ相談してください。また、装具を長く使うためには、定期的な点検や調整も大切です。理学療法 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) ストレッチ アキレス腱や足底筋を中心に伸ばし、関節の柔軟性を高めて拘縮を予防する アキレス腱の柔軟性を保つことで、足の過剰な底屈を防ぎ、歩行の安定性を高める 関節運動 背屈・底屈運動を繰り返し行い、可動域を広げて足首の動きを改善する 必要に応じて足関節の他動運動を行い、柔軟性を維持しながら底屈の悪化を防ぐ 筋力トレーニング 足関節周囲の筋力を強化し、つま先立ち歩行による不安定さを軽減する 前脛骨筋など背屈に関与する筋を鍛え、足先を持ち上げる力を回復させる 歩行訓練 装具と併用しながら、正しい足の接地と重心移動を意識した歩行を反復する 装具を使用しながら、足先を引きずらない自然な歩行パターンを習得する 理学療法の効果 拘縮予防と筋力維持により、歩行能力の改善と日常生活への自立支援が期待される 筋力回復と歩行安定により、転倒リスクの軽減や生活の質の向上が見込まれる リハビリが中心となる治療法であり、ストレッチや筋力トレーニングを継続的に行うことで、症状の改善を目指します。 尖足に対しては、拘縮予防や筋緊張の緩和を目的としたストレッチが重視され、下垂足では、前脛骨筋などの機能回復を目指す筋力トレーニングや歩行練習が行われます。 リハビリを実施する際は、医師の指導のもと継続的に取り組むことが大切です。 手術療法 項目 尖足に対する手術療法 下垂足に対する手術療法 手術療法のメリット 保存療法で改善しない筋や腱の拘縮・変形を根本から矯正できる可能性がある 損傷した神経や機能を代替する筋腱を用い、背屈機能を再建する つま先立ち歩行や足の違和感を軽減し、歩行の安定性を改善する 足先を引きずる症状や転倒リスクを軽減し、歩行能力の改善が期待される 手術療法のデメリット 感染・出血・神経損傷などの手術リスクが伴う 同様に手術侵襲による合併症のリスクがある 手術後の関節の可動域制限や装具の継続使用が必要になることがある 手術後もリハビリや装具療法が不可欠で、回復に時間がかかることがある 尖足や下垂足では、保存療法で効果が不十分な場合や症状が進行している場合に手術療法が検討されます。尖足に対しては、アキレス腱や後脛骨筋腱の短縮を改善するための腱延長術が行われます。 手術療法では、変形に対して根本的な改善が期待できる一方、術後の感染や出血、神経損傷のリスクに注意が必要です。手術はリスクを考慮し、医師と相談した上で検討するのが大切です。 再生医療 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 原因 筋肉や腱の短縮・拘縮、神経障害 総腓骨神経の麻痺や損傷、筋力低下 再生医療の目的 筋肉や腱の柔軟性を回復させる、筋肉組織の再生 麻痺した神経や筋肉の再生・修復、足部の背屈機能の回復 期待される効果 筋・腱の柔軟性向上による足関節の可動域改善 足首や足指の背屈機能の回復による歩行の安定化 再生医療では、自分の幹細胞を使って、傷んだ神経の回復や筋肉の萎縮の改善を目指します。再生医療は手術を必要とせず、体への負担が少ない治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では、尖足や下垂足によって損傷した神経の再生を促します。 尖足・下垂足の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 尖足と下垂足の違いを理解し適切な治療を受けよう 尖足と下垂足の症状には似ている部分が多い一方、明確な違いがあります。原因や症状によって適切な治療法が異なるため、足に少しでも違和感があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、尖足や下垂足の原因を正確に見極めた上で、幹細胞を使った再生医療による治療も行っています。 尖足または下垂足の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 参考資料 (文献1) Joan Pellegrino. (2024). Talipes Equinovarus (Clubfoot) and Other Congenital Foot Anomalies. MSD ManualProfessional Version https://www.msdmanuals.com/professional/pediatrics/congenital-musculoskeletal-anomalies/talipes-equinovarus-clubfoot-and-other-congenital-foot-anomalies (Accessed: 2025-04-14) (文献2) 深田 亮ほか.「下垂足および足底感覚障害を有する脊髄円錐部髄内腫瘍に対し,術後早期からトレッドミル歩行練習を実施した1例*」『理学療法学 第49巻第5号』2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/49/5/49_12264/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月14日) (文献3) 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる「腓骨神経麻痺」」公益社団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html(最終アクセス:2025年4月14日)
2025.04.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「最近つま先が妙に引っかかる」 「足がもつれやすくなった」 その足のもつれは下垂足の症状かもしれません。下垂足とは、足首やつま先を持ち上げる筋肉や神経の働きが弱まり、足先が下がる状態です。 症状を重症化させないためにも、以下の内容を解説します。 下垂足とは 下垂足の原因 下垂足は治らないのは本当なのか? 下垂足の症状チェックリスト 記事の最後には、下垂足に悩む方から寄せられる、よくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。 下垂足とは 症状 詳細 足首の背屈困難 足首を上に曲げられず、足先が垂れ下がる 歩行障害 足先が引っかかり、つまずきやすくなる。引きずる歩き方やすり足、鶏歩が見られる 鶏歩(けいほ) 膝を高く上げて歩く。垂れ下がった足先が地面に引っかからないようにするための歩行様式 足のしびれや違和感 足の甲や外側にしびれや違和感が出る 筋力低下 足首や足の筋肉の力が弱まる 下垂足とは、足首やつま先を持ち上げる筋力が低下する症状です。腓骨神経の働きが弱まることで、足首が上がらなくなり、足先が垂れ下がる状態です。 具体的には、スリッパが脱げやすくなったり、つま先が地面にひっかかり転ぶことが増えたりする症状が現れます。また、下垂足の症状には、脳卒中や糖尿病性神経障害、腓骨神経麻痺などの神経疾患が隠れている可能性があるので、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。(文献1) 以下の記事では、尖足と下垂足の違いについて詳しく解説しています。 下垂足の原因 原因となる病状・状態 詳細 腓骨神経障害 足首を上げる神経(腓骨神経)が損傷して麻痺を引き起こす 代謝性|慢性疾患 糖尿病で神経がダメージを受け、足首を上げる力が弱くなる 腰椎の急性圧迫 ヘルニアなどで腰の神経の根元が強く圧迫される 血管性炎症 血管の炎症で神経への血流が悪くなり、神経がうまく働かなくなる 下垂足の症状はさまざまな原因で起こりえます。突然、足首の筋力が低下し、歩きにくいなどの症状が出た場合は、早急な医師への相談が大切です。 下垂足の原因は、以下4つです。 腓骨神経障害 代謝性|慢性疾患 腰椎の急性圧迫 血管性炎症 下垂足の原因について解説します。 腓骨神経障害 腓骨神経が傷つく原因 詳細 神経が圧迫される 日常生活や特定の状況で、神経が圧迫されて機能が低下する 長時間の足組みや正座 膝の外側で神経が圧迫され、一時的な麻痺を引き起こす 急激な体重減少 神経を保護する脂肪が減り、圧迫を受けやすくなる ギプス固定 足のケガなどでギプスを巻いた際に、その圧迫で神経が傷つく 外傷 外傷によって神経そのものが損傷を受ける 膝まわりの骨折・強い打撲 骨折や強い衝撃で、近くにある腓骨神経がダメージを受ける (文献1) 腓骨神経は足の筋肉を動かす役割があり、圧迫や損傷を受けると、つま先を上げにくくなります。圧迫の原因は、足を組む癖や長時間の正座などの習慣的な動作が挙げられます。それらの動作を習慣にしている人は注意が必要です。 また、打撲や骨折、手術の後遺症として神経が傷つき、腓骨神経障害を発症するケースもあります。腓骨神経障害が原因で引き起こる下垂足を防止するには、普段から神経に負荷をかけないことが大切です。 以下の記事では、坐骨神経痛に効くツボについて詳しく解説しています。 代謝性|慢性疾患 項目 糖尿病性ニューロパチー 腰部脊柱管狭窄症(L5神経根障害) 発症メカニズム 高血糖による末梢神経と血管の損傷により、足の神経が機能低下 脊柱管の狭まりによりL5神経根が圧迫され、筋肉の動きが弱まる 主な症状 足のしびれ、感覚の低下、下垂足 腰痛、足のしびれ、歩行時の悪化、下垂足 症状の進行 高血糖が続くと徐々に進行する 加齢やヘルニアにより徐々に進行 治療法 血糖コントロール、神経痛緩和薬、装具 薬物療法、リハビリ、装具、手術(必要に応じて) (文献2)(文献3) 下垂足は、糖尿病性ニューロパチーや腰部脊柱管狭窄症(L5神経根障害)などの慢性的な神経障害によって発症します。高血糖による神経損傷や、神経の圧迫が足の筋力低下を引き起こします。 いずれの症状も神経の圧迫や障害が原因であるため、早い段階での医療機関への受診が必要です。 以下の記事では、糖尿病の初期症状について詳しく解説しています。 腰椎の急性圧迫 項目 脳卒中(上位運動ニューロン障害) 脊髄腫瘍・円錐部病変 多発性硬化症(MS) 原因 脳内の血流障害で運動野が損傷し、下肢の麻痺を引き起こす 脊髄下部の腫瘍や病変で神経が圧迫・損傷される 中枢神経の脱髄により神経伝達が阻害される 主な症状 対側の下肢麻痺、足首や足指が上がらない 筋力低下、感覚障害、膀胱直腸障害を伴うこともある 下肢の運動障害、視力低下、感覚障害など 診断方法 MRI、CTなどで脳血流や病変を確認 MRIで腫瘍や圧迫部位を確認する MRIで脱髄の有無を確認する 治療法 血栓溶解・抗血小板療法、リハビリ 外科的切除や放射線治療 ステロイド・免疫調整療法 (文献4) 下垂足は、脳や脊髄の障害で発症します。とくに脳卒中(上位運動ニューロン障害)や脊髄腫瘍・円錐部病変は、重症化する前に早期発見が大切です。 筋力低下や感覚障害、排泄障害などの症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、脳卒中の前兆について詳しく解説しています。 血管性炎症 血管性炎症と下垂足の関係性 主な症状 血管の炎症が末梢神経への血流を妨げ、神経虚血を引き起こす 代表疾患 巨細胞性動脈炎(中型・大型血管が障害される) 神経虚血の仕組み 血管が炎症で狭くなり、酸素や栄養が届かず神経が傷つく 治療法 免疫抑制治療(ステロイド・免疫抑制薬)で炎症を抑える 治療の重要性 神経損傷は不可逆的なことが多く、早期治療が大切 (文献5)(文献6) 血管性炎症は、末梢神経に栄養を送る血管に炎症が起こり、神経がダメージを受ける症状です。中でも巨細胞性動脈炎は、下肢の神経に酸素や栄養が届きにくくなり、下垂足を発症します。 血管性炎症の疾患の中には、後遺症が出ることもあるため、少しでも異変を感じた際は早急に医療機関を受診しましょう。 下垂足の症状は治らないって本当? 分類 要因 詳細 改善が見込めるケース 原因疾患の治療 椎間板ヘルニアや脳卒中などの治療で改善できる可能性がある 血糖コントロール 糖尿病性神経障害では血糖管理で進行を抑え、改善する可能性がある 神経の回復 腓骨神経麻痺などで神経が自然に回復するケースもある リハビリ 足首の運動や歩行訓練で歩行が安定する可能性がある 改善が難しいケース 重度の神経損傷 神経が断裂・広範囲に損傷していると回復が難しい 進行性の神経疾患 慢性圧迫や進行性疾患では改善が見込めない可能性が高い リハビリ効果が限定的 筋力や関節の回復が不十分で補助具が必要になることもある (文献7) 下垂足が治るかどうかは、症状によって異なります。足を組む癖などで一時的に腓骨神経が圧迫されて起こった軽度の下垂足であれば、生活習慣を変えることで、改善する可能性があります。また、脳卒中などの重度の疾患でも早期発見し、治療を早い段階で開始すれば、症状の改善が期待できるでしょう。 一方治らないケースとして挙げられるのが、糖尿病性神経障害のように基礎疾患が進んでいる状態や、脳卒中などで後遺症の改善が難しいケースです。 原因や進行状況によって治る可能性は異なりますが「治らない」と諦めず、治療やリハビリを続けることが重要です。 下垂足の症状チェックリスト 足首が上がりにくい、つま先が引っかかる症状に加え、突然の発症または急速な悪化症状が現れたら、脳卒中や脳梗塞の可能性があるため、直ちに救急車(119番)を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。症状が進行し重症化すると命に関わる危険性があります。 突然の発症または急速な悪化 下垂足と同じ側の顔が歪む・口角が下がる 激しい頭痛・吐き気・嘔吐 尿と便が出にくい・失禁してしまう おしりの周りやサドル領域(仙骨部)がしびれる・感覚が鈍い 外傷後の激しい違和感と腫れ 以下の記事では、下垂足の症状に対して効果が期待できるリハビリ方法をわかりやすく紹介しています。 突然の発症または急速な悪化 下垂足の症状がある日突然現れたり、数時間から数日の間に悪化したりする場合は注意が必要です。突然の発症は、単なる神経障害ではなく、脳卒中や脳梗塞、脳出血の前兆である可能性も考えられます。 脳が損傷を受けると、足の動きや顔の表情、言葉の機能が急に低下し、後遺症になる場合があります。症状が突然現れ、発声や言葉がうまく聞き取れない場合は、早急に対処が必要です。 下垂足と同じ側の顔が歪む・口角が下がる 顔に歪みや麻痺の症状が現れた場合、脳に障害が起きている可能性が高いです。脳梗塞などで脳の神経が損傷されると、顔と手足を動かす神経経路が同時に障害され、結果として顔面神経麻痺が起こります。 脳梗塞や脳出血は、発症から24時間以内の治療が回復の可能性を大きく左右します。脳梗塞や脳出血で一度脳の神経細胞が壊死すると、元に戻すことはできません。 鏡を見て明らかにいつもと表情が違う、表情が動かせない場合は、早急に救急車(119番)もしくは医療機関を受診しましょう。 激しい頭痛・吐き気・嘔吐 激しい頭痛や吐き気、嘔吐が現れた場合、脳出血や脳腫瘍の可能性があります。とくにこれまで体験したことのない激しい症状であれば、すぐに救急車(119番)を呼ぶ必要があります。 突然後頭部を殴られたような激しい頭痛は、くも膜下出血の典型的な症状です。発見が遅れると命に関わる危険性があります。ただの頭痛や吐き気だと判断せずに医療機関を受診することが大切です。(文献8) 以下の記事では、吐き気を伴う頭痛について解説しています。 尿と便が出にくい・失禁してしまう 下垂足と同時に尿と便が出にくい、または失禁してしまうなどの排尿・排便に関する異常が現れた場合、腰部脊柱管狭窄症や重度の椎間板ヘルニア、脳卒中を引き起こしている可能性があります。また、症状によっては緊急手術が必要です。 放置すると排泄障害や下肢の麻痺が残る可能性があるため、早急に受診してください。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 おしりの周りやサドル領域(仙骨部)がしびれる・感覚が鈍い お尻や太ももの内側、股間まわり(自転車のサドルが当たる部分)にしびれや感覚の鈍さ、温度がわかりにくいといった症状がある場合は、馬尾症候群の可能性があります。 神経が強く圧迫されて起こる重い病気の一つで、放置すると排尿や排便の障害につながることもあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。 外傷後の激しい違和感と腫れ 外傷後に激しい違和感と腫れが現れた場合は、腰椎椎間板ヘルニアなどの可能性が高いです。 考えられる症状の中でも、馬尾症候群は膀胱や直腸に異常が出るケースもあり、発症から48時間以上が経過すると後遺症になる確率が上昇します。(文献9) 放置すると神経機能の回復が困難になる可能性があるため、自己判断はせず、救急車(119番)を呼ぶ、もしくは医療機関を受診する必要があります。 下垂足が悪化する前に早めの医療機関の受診を 下垂足が引き起こされる原因によっては、緊急性の高い症状が隠されている可能性があり、少しの異変でも医療機関を受診する必要があります。 少しの異変でも早期発見が症状の重症化を防ぐことにつながります。 「リペアセルクリニック」では、下垂足に対して、幹細胞を活用した再生医療を提供しています。少しでも気になる症状があれば、ご相談ください。当院はどんな小さな不安にも丁寧に耳を傾け、早期発見につなげるお手伝いをしています。 下垂足の症状にお悩みの方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 下垂足に悩む方からよくある質問 下垂足は自然に治りますか? 原因によって異なりますが、多くの場合は自然に回復することは難しく、適切な治療やリハビリが必要です。また、脳卒中や糖尿病性神経障害、腰椎疾患など重大な症状が隠れている場合もあるため、自己判断は禁物です。 下垂足を重症化させないためにも、早めの受診が大切です。 下垂足は再発しますか? 下垂足が再発するかどうかは、原因や再発リスクによって異なります。原因となった基礎疾患(糖尿病や腰椎疾患など)の管理が不十分だと、症状改善後に再発する可能性があります。 再発予防には、生活習慣の改善や、基礎疾患の継続的な治療などが不可欠です。 下垂足の予防法はありますか? 下垂足を確実に予防する方法はありません。しかし、下垂足を引き起こすかもしれない病気(糖尿病など)にならないように生活習慣を見直したり、原因となりやすい状況(たとえば足を長時間組むことなど)を避けたりすることが、結果的に下垂足の予防に役立つ場合があります。 下垂足はどの診療科を受診すれば良いですか? 下垂足の原因によって受診すべき診療科が異なります。以下の表を参考に、適切な診療科を受診してください。 診療科 受診の目安 整形外科 腰椎ヘルニア、脊柱管狭窄症、腓骨神経麻痺、骨折・外傷が原因の場合 神経内科 脳卒中、糖尿病性神経障害、筋ジストロフィーなど神経の病気が原因の場合もしくは、しびれ・麻痺などの神経症状がある場合 脳神経外科 脳卒中や脳腫瘍が疑われる場合 ご自身の症状に対してどの診療科を受診すれば良いのかわからない方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 公益財団法人 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる「腓骨神経麻痺」」公益財団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html(最終アクセス:2025年4月12日) (文献2) 「10章 糖尿病性神経障害」『糖尿病診療ガイドライン 2024』,pp.1-13,発行年 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/10.pdf(最終アクセス:2025年4月12日) (文献3) 「腰部脊柱管狭窄症」『整形外科シリーズ』,pp.1-2,2023年 https://www.joa.or.jp/public/sick/pdf/MO0013CKA.pdf(最終アクセス:2025年4月12日) (文献4) 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター「多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)」難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/3806(最終アクセス:2025年4月12日) (文献5) Merck & Co.Inc. Rahway,NJ,USA「血管炎疾患の分類」MSD マニュアルプロフェッショナル版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/multimedia/table/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%82%8E%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E5%88%86%E9%A1%9E(最終アクセス:2025年4月12日) (文献6) 「指定難病の診断基準等のアップデート案について情報提供のあった疾病(個票(見え消し))(第 58 回指定難病検討委員会において検討する疾病)」『第58回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会』,pp.1-204, https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001256854.pdf(最終アクセス:2025年4月12日) (文献7) Zacharia Isaac(2023),Rehabilitation for Other Disorders.MSD ManualConsumer Version https://www.msdmanuals.com/home/fundamentals/rehabilitation/rehabilitation-for-other-disorders(最終アクセス:2025年4月12日) (文献8) 公益財団法人 日本心臓財団「循環器病のトピックス」公益財団法人 日本心臓財団,2018年05月28日 https://www.jhf.or.jp/topics/2018/000943/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年4月12日) (文献9) 宮本 雅史,中嶋 隆夫 .「診療ガイドライン」『腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン 改訂第2版』巻(号),pp.1-5,2016 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/11/105_2210/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月12日)
2025.04.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「交通事故でけがをしてから、頭痛が続いている」 「首や目の奥が痛んだり、めまいを起こしたりしている」 このような症状でお悩みではありませんか? けがをしていないのにもかかわらず頭痛やめまいが急に現れて、辛い思いをされている方も多いでしょう。これらの症状は、低髄液圧症候群が原因の可能性があります。 本記事では低髄液圧症候群を発症する原因や診断基準、検査方法、治療方法などについて紹介します。 低髄液圧症候群を初めて知った方に役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。 低髄液圧症候群の原因は大きく2つに分けられる 低髄液圧症候群の原因は、大きく分けると以下の2つです。 外傷性の原因 外傷性以外の原因 外傷性の原因 文字どおり、なんらかの外傷により引き起こされるものです。主なものを以下に示しました。 交通事故による頭部打撲やむち打ち症 仕事中の事故 スポーツ時の外傷 階段昇降時の転倒 自転車運転中の転倒 低髄液圧症候群の大半は外傷によるものとされており、軽くしりもちをついただけで発症するケースもあります。 外傷性以外の原因 外傷性以外の原因としては、腰椎穿刺検査や腰椎麻酔、脳神経外科手術といった、医療行為によるものが考えられます。(文献1) 医療行為以外に原因としてあげられるものは、主に以下のとおりです。(文献2) 整体治療 出産 発熱による脱水症状 外傷性、外傷性以外にかかわらず、原因が特定できないケースもあります。 低髄液圧症候群とは 低髄液圧症候群とは、脳脊髄液の漏れにより髄液の圧力が低下して、頭痛やめまい、首や背中の痛みなどを引き起こす疾患です。しかし実際には、髄液の圧力低下が測定できないケースも存在するため、脳脊髄液減少症と呼ばれることもあります。 低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症の違いは、診断方法確立の有無です。低髄液圧症候群はMRI画像や腰椎穿刺検査などで診断されますが、脳脊髄液減少症は明確な診断方法が確立されていません。 国際的には、低髄液圧症候群が病名として主に使用されています。 脳脊髄液減少症について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。 低髄液圧症候群の特徴的な症状は起立性頭痛です。(文献1)起立性頭痛の場合、立ったり座ったりすると痛みが強くなります。 その他の症状としては、以下のようなものがあげられます。 体のだるさ 不眠 食欲の低下 集中力の低下 記憶力の低下 低髄液圧症候群は、頭痛やめまいなどに加えて、精神・心理的症状が見られるため、片頭痛や緊張性頭痛、うつ病などと誤解されやすい疾患です。(文献3) 低髄液圧症候群の診断基準 低髄液圧症候群の診断基準は、前提基準と大基準の2種類です。(文献4) 前提基準は2項目、大基準は3項目存在しており、「前提基準1項目+大基準1項目以上」に該当した場合に低髄液圧症候群と診断されます。 前提基準 前提基準の1つ目は起立性頭痛、2つ目は体位による症状の変化です。両者を表で示しました。 前提条件 詳細 起立性頭痛 頭部全体が鈍く痛む 立ったり座ったりすると、痛みが強くなる 体位による症状の変化 項部硬直(こうぶこうちょく) 耳鳴り 聴力低下 光過敏 吐き気 項部硬直とは、首から後ろにかけての筋肉のこわばりを指します。光過敏とは、少しの光でもまぶしさや不快感を覚える症状です。 大基準 大基準は、以下に示した3点です。 造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強 腰椎穿刺にて髄液圧の低値(60mmH2O以下)の所見 髄液漏れを認める画像所見 びまん性の硬膜肥厚増強とは、脳内の硬膜が広い範囲で厚くなっている状態で、MRI検査で確認できます。 髄液圧の正常値は、健康な成人の場合70~200mmH2Oとされています。(文献4) 髄液漏れを認めるための画像検査については、確立された方法がありません。CTミエログラフィーやMRミエログラフィー、RI脳槽シンチグラムなどを組み合わせて行います。 低髄液圧症候群の検査方法 低髄液圧症候群の検査としては、MRI検査や腰椎穿刺検査、RI脳槽シンチグラムなどです。これらの検査で、髄液圧や髄液漏れについて詳しく調べます。患者からの病歴聴き取りも必要な情報です。 検査方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。 低髄液圧症候群の治療法 低髄液圧症候群の治療法は、主に以下の2種類です。 保存療法 ブラッドパッチ療法 保存療法 保存療法の基本は、安静と十分な水分補給です。 自宅での水分摂取とは別に、必要に応じて、生理食塩水の点滴を1~2週間程度行う場合もあります。点滴の量は、1日1,000~2000ml程度です。 髄液は1日につき約500ml作られます。脳や脊髄を守るために必要な髄液を作るには、十分な水分補給が欠かせません。 ブラッドパッチ療法 ブラッドパッチ療法は、自分の血液を硬膜外に注入して、髄液の漏れを塞ぐ治療法です。硬膜とは、脊髄を覆っている一番外側の膜です。硬膜外から注入された血液中の成分が、のりの役割を果たします。必要に応じて、X線により注入部の様子を観察しながら行う場合もあります。 ブラッドパッチ療法は、平成28年4月から保険適用されました。(文献5) 低髄液圧症候群の原因を把握し医療機関の受診を検討しよう 低髄液圧症候群の原因は、外傷性と非外傷性の2つに分けられます。非外傷性には、原因不明(特発性)のものも含まれます。 いずれの原因においても症状は共通しており、特徴的な症状は起立性頭痛です。それ以外にも、耳鳴りや吐き気、光過敏などの症状があれば、速やかに医療機関を受診しましょう。主な診療科は、脳神経外科です。 多くの都道府県ホームページでは、検査・治療ができる医療機関を紹介しています。医療機関の受診を検討している方は、検索してみると良いでしょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。低髄液圧症候群と思われる症状でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 低髄液圧症候群の原因に関するよくある質問 低髄液圧症候群を発症した芸能人は誰ですか? 俳優の米倉涼子さんが、低髄液圧症候群を発症しました。まっすぐに歩くことや立ち上がることが困難になり、一時は芸能界引退も覚悟したとテレビ番組で話しています。 脳脊髄液減少症を発症した芸能人については、以下の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。 低髄液圧症候群は慢性疲労症候群と関連していますか? 低髄液圧症候群と慢性疲労症候群との関連は不明です。 慢性疲労症候群とは、検査や診察で異常が認められないものの、日常生活を送ることが難しいほどの重度の疲労感が続く疾患です。症状としては、強い疲労感や頭痛、集中力低下、抑うつなどがみられます。低髄液圧症候群と似ている症状も少なくありません。 慢性疲労症候群は感染性疾患や免疫の異常、遺伝や環境要因に関連していると考えられますが、はっきりとした原因は解明されていません。 ベルギーの研究者によって執筆された論文では、脳脊髄液圧の上昇と慢性疲労症候群が関与している可能性が示されています。(文献6) 参考文献 (文献1) 戸田茂樹ほか.「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」『日本医科大学医学会雑誌』3(1), pp.44-45, 2007年 https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/003010044.pdf (最終アクセス:2025年4月23日) (文献2) 脳脊髄液減少症 石川・金沢 患者家族支援の会「脳脊髄液減少症を知っていますか?」 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/nanbyou/kanjakai/documents/r6no1.pdf (最終アクセス:2025年4月23日) (文献3) 社会福祉法人恩賜財団済生会「低髄液圧症候群」社会福祉法人恩賜財団済生会ホームページ, 2014年10月22日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/intracranial_hypotension/# (最終アクセス:2025年4月23日) (文献4) 松本英之,宇川 義一.「脳脊髄液減少症」『日本内科学会雑誌』100(4), pp.1076-1083, 2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/4/100_1076/_pdf (最終アクセス:2025年4月23日) (文献5) 一般社団法人日本脳脊髄液漏出症学会「日本脳脊髄液漏出症学会公式診療マニュアル」一般社団法人日本脳脊髄液漏出症学会ホームページ https://js-csfl.main.jp/guideline.html (最終アクセス:2025年4月23日) (文献6) Mieke Hulens, et al.(2023).The Link Between Empty Sella Syndrome,Fibromyalgia, and Chronic Fatigue Syndrome: TheRole of Increased Cerebrospinal Fluid Pressure.Journal of Pain Research, 2023(16), pp.205-219. https://www.dovepress.com/article/download/81240 (最終アクセス:2025年4月23日)
2025.04.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「けがをしてから頭痛やめまいが続いている」 「ネットで検索してみたところ、脳脊髄液漏出症や脳脊髄液減少症といった病名が出てきた」 「この2つの違いは何だろう」 自分の症状を調べる中で、2つの疾患を見つけた方もいらっしゃるでしょう。 結論から申し上げますと、脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症はいくつか違いはあるものの、症状や治療法はほぼ同じです。 本記事では、脳脊髄液漏出症や脳脊髄液減少症の違いと共通点を中心に解説します。 異なる2つの病名が存在する理由がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症の違い 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症の違いとして挙げられるのは、主に以下の2点です。 疾患名の違い 病態の違い 疾患名の違い 疾患名が異なる理由として、歴史的背景や診断基準の有無があります。両者を表にまとめました。 脳脊髄液漏出症 脳脊髄液減少症 歴史的背景 1938年、腰椎穿刺後の頭痛と似た症状を示す病気として初めて報告された。 報告者は、ドイツの神経内科医ゲオルク・シャルテンブランド氏。 脳脊髄液の漏れそのものに焦点を当てたものである。 2006年9月、第65回脳神経外科学会において発表された。 論文発表者は、国際医療福祉大学熱海病院の篠永正道教授。 脳脊髄液の漏れや生産量の低下などにより、「脳脊髄液が減少した状態」に着目したものである。 診断基準の有無 診断基準あり。 画像診断により髄液の漏出が確認できた症例である。(文献1) 診断基準なし。 存在する可能性はあるが、現段階では診断方法が未確立であると理解されている。(文献2) 脳脊髄液漏出症の方が、報告および診断基準の確立が早いことが見てとれます。 病態の違い 脳脊髄液漏出症は、ひとことでいうと、脳脊髄液が硬膜の外に漏れている状態です。 主な原因としては、交通事故やスポーツ時の外傷や、腰椎穿刺検査、整体治療などがあげられます。原因不明のケースも存在します。 脳脊髄液減少症は、脳脊髄液の漏れやそれ以外の原因で、脳脊髄液そのものが減ってしまう状態です。髄液漏れがないにもかかわらず、脳脊髄液が減少する原因としては、以下の2点が考えられます。 脱水状態 髄液が体内へ多量に吸収される状態 脳脊髄液減少症は、従来「低髄液圧症候群」と呼ばれていた疾患とほぼ同じものです。 低髄液圧症候群については、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症の共通点 この章では、脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症の共通点を表形式で紹介します。 共通点 詳細 主な症状 起立性頭痛 ふわふわとしためまい 倦怠感 目の奥の痛み 首の痛み 検査方法 病歴の聴き取り 脳脊髄液の検査 頭部MRI検査 脳槽シンチグラフィー検査 治療方法 保存的治療 ブラッドパッチ 硬膜外生理食塩水注入療法 検査方法や治療方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 【関連記事】 脳脊髄液減少症のセルフチェック方法を紹介|治療方法もあわせて解説 脳脊髄液減少症の初期症状を紹介|早期発見の必要性もあわせて解説 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症が患者に与える影響 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症が患者に与える影響は、主に以下の2点です。 日常生活に支障を及ぼすことが多い 認知度が低く誤解されやすい 日常生活に支障を及ぼすことが多い 脳脊髄液漏出症や脳脊髄液減少症は、日常生活に影響を及ぼしやすい疾患です。主な症状としては、以下のようなものがあります。 起立性頭痛 ふわふわとしためまい 倦怠感 目の奥の痛み 首の痛み 起立性頭痛とは、起きたり立ち上がったりすると強くなる頭痛です。 これらの症状は天候や気圧に左右されやすく、雨が降る前や台風接近前に悪化する傾向があります。加えて、下痢や発熱、嘔吐などで脱水を起こしたときも悪化しやすいとされています。 発見や治療が遅いと慢性化しやすく、体調が不安定になりがちです。外出も難しく、ときには起き上がれなくなる場合もあります。 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症は、ともに慢性的な体調不良を引き起こし、日常生活に支障をきたしやすい疾患といえるでしょう。 認知度が低く誤解されやすい 脳脊髄液漏出症、脳脊髄液減少症ともに、認知度が低い疾患とされています。(文献3) また、他の疾患においても、頭痛やめまい、首の痛みといった症状が見られることがあります。同じような症状がある疾患は、主に以下のとおりです。 起立性調節障害 緊張型頭痛 片頭痛 うつ病 もしくは、検査で異常が見つからず「気のせい」と言われるケースもあります。原因がわかるまで病院受診を繰り返す、いわゆるドクターショッピング状態の方も少なくありません。 症状が強く、学校や職場を休みがちになると、「やる気がない」「甘えている」「怠けている」などと誤解される場合があります。(文献3) 頭痛を伴う疾患については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症の違いと共通点を理解しよう 脳脊髄液漏出症と脳脊髄液減少症の違いは、歴史的背景や診断基準の有無、病態などです。しかし、症状や検査方法、治療法はほぼ同じと考えて差しつかえありません。 2つの病気に共通していえることは、医療面での認知度が低く他の病気と誤解されがちな点です。社会的認知度は高まりつつありますが、まだ十分とは言えません。気のせい、やる気がないなどと誤解されて、二重に苦しむ方もいます。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脳脊髄液漏出症や脳脊髄液減少症の症状でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1)日本脳脊髄液漏出症学会「診断基準」日本脳脊髄液漏出症学会ホームページ https://js-csfl.main.jp/guideline.html (最終アクセス:2025年4月21日) (文献2) 長野県「脳脊髄液減少症について」長野県ホームページ, 2024年3月25日https://www.pref.nagano.lg.jp/iryo/kenko/iryo/hoken/nosekizuieki.html (最終アクセス:2025年4月21日) (文献3) 脳脊髄液減少症 石川・金沢 患者家族支援の会「脳脊髄液減少症を知っていますか?」 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/nanbyou/kanjakai/documents/r6no1.pdf (最終アクセス:2025年4月21日)
2025.04.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「数日前に交通事故でけがをしてから、頭痛やめまいが続いている」 「寝ていると楽だけれど、座ったり起きたりすると頭痛が強くなる」 「頭痛やめまいは事故の後遺症なのだろうか」 外傷後にこのような症状が出た場合、多くの方が不安に感じるでしょう。これらの症状は、脳脊髄液減少症によるものかもしれません。 結論から申し上げますと、多くの場合、脳脊髄液減少症を発症するまでの期間は外傷後30分~数週間程度です。 本記事では脳脊髄液減少症を発症するまでの期間に加えて、発症のきっかけや、医療機関受診の必要性について解説します。 不安を感じている方の助けになりますので、ぜひ最後までご覧ください。 脳脊髄液減少症を発症するまでの期間 脳脊髄液減少症の症状は、外傷後30分から数週間程度で現れることが多いとされています。(文献1) 外傷直後ではなく少し遅れて発症する主な原因としては、以下の2つが考えられます。(文献2) 血栓の消失 脳浮腫の軽減 1つ目は、外傷後、一時的に発生した血栓が関係するケースです。血栓が脳脊髄液の漏れを塞いでいた場合、血栓が消失すると再び漏れ始めます。 2つ目は、外傷およびそれに伴う脳の浮腫と関連しているケースです。外傷により脳を包む硬膜やくも膜に傷ができたとしても、脳浮腫により一時的に傷が塞がれることがあります。しかし、脳浮腫が軽減されると傷が開き、そこから脳脊髄液が漏れ始めるメカニズムです。 脳脊髄液減少症を発症するきっかけとは? 脳脊髄液減少症を発症するきっかけは、主に以下の4つです。 外傷性(けがによるもの) 医原性(医療処置が原因のもの) 突発性(原因不明のもの) その他(出産、運動後の水分補給不足など) アメリカのクリーブランド・クリニックのサイトでは、脳脊髄液減少症の約90%は外傷性であり、残りの10%は原因不明で起こるとされています。(文献3) 脳脊髄液減少症を発症するきっかけについては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳脊髄液減少症発症後の死亡率 この章では、脳脊髄液減少症後の死亡率および、寝たきりになる確率について解説します。 死亡率 2025年4月現在、脳脊髄液減少症による死亡率のデータは示されていません。 台湾の学術論文において、頭部外傷者患者10,638人を調査した結果が記されています。この研究では、外傷後に髄液漏れがあった患者は、髄液漏れがなかった患者と比べて1年以内に死亡する確率が有意に高い結果が示されました。(文献4) また、髄液が漏れ続けることで髄膜炎や脳炎などの発症につながり、ときには死亡するケースもあります。(文献4) イギリスの慈善団体「The CSF Leak Association(脳脊髄液漏出協会)」のサイトでは、「髄液漏出による死亡は極めてまれであるが、重症の場合、脳ヘルニアなどの合併症により死亡するケースがある」と記載されています。(文献5) 寝たきりになる確率 2025年4月現在、脳脊髄液減少症により寝たきりになる確率を明確に示したデータは存在していません。 アメリカのメイヨー・クリニックのサイトでは、脳脊髄液減少症が未治療の場合、髄膜炎や緊張性気脳症、硬膜下血腫などの合併症を引き起こす可能性があると示されています。(文献6)緊張性気脳症とは、脳を取り囲む空間に空気が入り、頭の中の圧力が上昇する疾患です。 治療を受けても重度の症状が続く場合は、合併症がなくても寝たきりになるケースが考えられます。 以下の記事では、髄膜炎について紹介していますので、あわせてご覧ください。 脳脊髄液減少症発症までの期間を理解して対処の遅れを防ごう 脳脊髄液減少症は、原因不明のものもありますが、多くは交通事故を含む外傷が原因です。 外傷性の場合、受傷後30分から数週間後の発症が多いとされています。明確なデータは存在しませんが、重症の場合、寝たきりになったり亡くなったりする可能性もあります。 外傷後に頭痛やめまい、倦怠感といった体調の異変が現れた場合は、脳脊髄液減少症を疑い脳神経外科や整形外科などを受診しましょう。 多くの都道府県公式ホームページでは、脳脊髄液減少症に関する情報が記載されているため、検索をおすすめします。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脳脊髄液減少症と思われる症状でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 脳脊髄液減少症発症までの期間に関するよくある質問 脳脊髄液減少症を発症するとどのような症状が現れますか? 脳脊髄液減少で特徴的な症状が、起立性頭痛です。起立性頭痛とは、起き上がったり座ったりすると発生、もしくは悪化する頭痛のことです。 その他の症状としては、首や目の奥の痛み、めまい、倦怠感などがあります。 脳脊髄液減少症は特徴的な症状が少なく病気の認知度も低いため、起立性調節障害や片頭痛、うつ病などと診断されるケースも少なくありません。 原因不明の脳脊髄液減少症は何歳ころに多く発症しますか? アメリカのクリーブランド・クリニックのサイトでは、原因不明の脳脊髄液減少症は30歳以上の方に多く、発症する平均年齢は42歳と示されています。(文献3) 男女で比較すると、女性の方が発症しやすい傾向にあります。 脳脊髄液減少症を発症してから診断されるまでの期間はどのくらいですか? 脳脊髄液減少症は診断が難しいため、診断されるまでに数年間かかる方も少なくありません。(文献5) 日本の新聞記事でも、発症から診断まで3年かかり、複数の医療機関を転々として苦しんだ方の記事が掲載されています。(文献7) 参考文献 (文献1)一般社団法人千葉市医師会「事故後に不調が続いたらすぐ病院へ「脳脊髄液減少症」」一般社団法人千葉市医師会ホームページ, 2023年4月10日 https://www.chiba-city-med.or.jp/column/152.html (最終アクセス:2025年4月20日) (文献2)Ji-Woong Oh, et al.(2017).Traumatic Cerebrospinal Fluid Leak: Diagnosis and Management.Korean J Neurotrauma, 13(2),pp.63-67. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5702760/pdf/kjn-13-63.pdf (最終アクセス:2025年4月20日) (文献3)Cleveland Clinic「Cerebrospinal Fluid (CSF) Leak」Cleveland Clinic,2022年4月26日 https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/16854-cerebrospinal-fluid-csf-leak (最終アクセス:2025年4月20日) (文献4)Kuo-Hsing Liao, et al.(2016).Risk of death in patients with post-traumatic cerebrospinal fluid leakagedAnalysis of 1773 cases.Journal of the Chinese Medical Association,79(2)pp.58-54 https://journals.lww.com/jcma/fulltext/2016/02000/risk_of_death_in_patients_with_post_traumatic.4.aspx (最終アクセス:2025年4月20日) (文献5)The CSF Leak Association「CSF Leak FAQs: Essential Information About Cerebrospinal Fluid Leaks」The CSF Leak Association https://csfleak.uk/resource/frequently-asked-questions-faqs (最終アクセス:2025年4月20日) (文献6)Mayo Clinic「CSF leak (Cerebrospinal fluid leak)」Mayo Clinic,2023年11月21日 https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/csf-leak/symptoms-causes/syc-20522246 (最終アクセス:2025年4月20日) (文献7)讀賣新聞「脳脊髄液減少症のいま<1>診断つかず医療機関転々」讀賣新聞オンライン,2022年11月19日 https://www.yomiuri.co.jp/medical/renaissance/20221118-OYT8T50024/ (最終アクセス:2025年4月20日)
2025.04.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「立ったり座ったりすると頭痛がする」 「ふわふわとしためまいが続く」 「いつも体がだるい」 このような症状でお悩みの方も多いでしょう。これらはいずれも、脳脊髄液減少症の初期症状の1つです。 脳脊髄液減少症は、原因不明のものもあれば、外傷や疾患が原因で発症するものもあります。 本記事では脳脊髄液減少症の初期症状や、放置するリスクなどを解説します。脳脊髄液減少症を発症した芸能人の体験談も紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 脳脊髄液減少症の初期症状 脳脊髄液減少症の初期症状で特徴的なものは、起立性頭痛です。(文献1)起立性頭痛とは、立ったり座ったりすると出現・悪化する頭痛のことです。 それ以外の初期症状としては、主に以下のようなものがあげられます。 首の痛み めまい 目の奥の痛み 耳鳴り 慢性的な症状としては、頭痛や疲れやすさ、注意力・思考力の低下、腰痛などがあげられます。 特徴的な症状が少ないため、片頭痛や頚椎椎間板ヘルニア、メニエール病、うつ病といった疾患と診断されるケースも少なくありません。 脳脊髄液減少症の概要・治療法、初期症状の1つ「目の奥の痛み」について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。 【関連記事】 脳脊髄液減少症のセルフチェック方法を紹介|治療方法もあわせて解説 目の奥が痛いのは脳梗塞の前兆?目の病気との見分け方や対処法を解説【医師監修】 脳脊髄液減少症の初期症状を放置するとどうなる? 脳脊髄液減少症は、初期段階であれば、充分な水分補給と安静といった保存的治療で回復する可能性が高い疾患です。(文献1)しかし、初期症状を放置すると、慢性化、もしくは重症化する可能性もあります。 重症化した場合、頭の中に血のかたまり(慢性硬膜下血腫)ができることもあります。脳脊髄液が減少すると、脳を包む硬膜と脳の間にあるすき間が広がり、そこに血液が溜まるためです。血のかたまりが大きくなると、脳が圧迫されるため、溜まった血液を取り除く手術が必要です。 初期症状に気づいた時点で医療機関にかかることが、重症化を防ぐ大事なポイントといえるでしょう。 脳脊髄液減少症の初期症状が見られたときの受診先については、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。 脳脊髄液減少症の主な原因 この章では、脳脊髄液減少症発症の主な原因を表にまとめました。 原因 詳細・具体例 特発性 原因不明のもの 外傷性 なんらかの外傷によるもの (例) 交通事故 スポーツ中の転倒や打撲 階段からの転倒 医原性 なんらかの疾患や医療処置によるもの (例) 発熱による脱水 腰椎穿刺検査 整体治療 その他 外傷や疾患、医療処置以外によるもの (例) 出産 金管楽器を強く吹く スポーツ後の水分補給が不十分であったために、発症したケースもあります。 脳脊髄液減少症の検査方法 脳脊髄液減少症の検査方法は、主に以下の4つです。 病歴の聴き取り 脳脊髄液の検査 頭部MRI検査脳槽 シンチグラフィー検査 病歴の聴き取り 脳脊髄液減少症の検査および診断の第一歩は、病歴の聴き取りです。 もともと、片頭痛や緊張型頭痛、薬の飲み過ぎによる頭痛などがある方の場合、脳脊髄液減少症の症状と区別する必要があります。そのような頭痛がある方は、隠さずに医師へ伝えましょう。 めまいや体のだるさなど、頭痛以外の症状がある場合もていねいに伝える必要があります。 片頭痛や緊張型頭痛に関しては、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 脳脊髄液の検査 腰椎(腰の背骨)に針を刺す腰椎穿刺により、脳脊髄液の圧力を調べる検査です。最初の検査結果で、圧力が6cm水柱以下のときは脳脊髄液減少症の可能性があります。ただし、正常値であっても、脳脊髄液減少症を完全に否定できない場合もあります。(文献2) なお、腰椎穿刺により脳脊髄液の漏れが悪化する可能性があるため、この検査は必須ではありません。 頭部MRI検査 頭部MRI検査で見られる主な所見を表でまとめました。 所見 詳細 脳の下方変位 脳と硬膜との間のすき間が広がる 小脳の一部が下がる脳幹が 平たく変形する 側脳室(脳脊髄液で満たされた空間)が狭くなる 血液量増加 硬膜が広範囲で厚くなる 頭の中の静脈が太くなる 脳下垂体が大きくなる ただし、慢性期には、このような所見が見られない場合もあります。MRI検査の結果は、あくまでも参考情報の1つです。 脳槽シンチグラフィー検査 脳槽シンチグラフィーとは、髄液の流れや漏れを調べる検査です。 腰椎穿刺で特殊な物質であるインジウムを注入し、30分~1時間後のインジウム量を100%として、24時間後に、再度インジウム量を測定します。 インジウム減少量や特定の場所への貯留状況などが、脳脊髄液の流れや漏れを調べる指標です。 胸椎や腰椎において、脳脊髄液がどこから漏れているかを調べるのに適した検査とされています。 脳脊髄液減少症を公表した芸能人 芸能人の中にも、脳脊髄液減少症を発症したことを公開している方がいます。 俳優の米倉涼子さんは2019年に脳脊髄液減少症を発症し、まっすぐ歩けない、身体がだるくて立ち上がれないといった症状に見舞われました。複数の医療機関を受診して、脳ドックや脳の検査を受けた結果、ようやく病名が判明しました。2023年8月に治療を受けて、翌年5月頃から重い症状が少し改善してきたとテレビ番組で語っています。 岐阜県を中心に活動しているタレントの塚本明里さんも、脳脊髄液減少症を発症した1人です。塚本さんは、発症してから病名がわかるまでに7年間かかりました。病名がわかるまでは、周りの人に説明できず辛い思いをしたそうです。長い時間頭を立てていると倒れることもあるため、外出時はリクライニング式の車椅子を使っていると語っています。 脳脊髄液減少症の初期症状がある場合は放置せずに医療機関を受診しよう 脳脊髄液減少症は、なんらかの原因によるものもあれば、原因不明のものもあります。 主な初期症状は起立性の頭痛ですが、それ以外にも、めまいや首の痛みなどさまざまな症状があります。 早期発見により早期回復が見込めるため、本記事で紹介したような症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。多くの都道府県公式ホームページでは、検査・治療ができる医療機関を紹介しているため、症状がある方は検索してみると良いでしょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脳脊髄液減少症の初期症状が見られる方は、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 松本英之,宇川 義一.「脳脊髄液減少症」『日本内科学会雑誌』100(4), pp.1076-1083, 2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/4/100_1076/_pdf (最終アクセス:2025年4月19日) (文献2) 脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」2007年 http://www.npo-aswp.org/data/2007-0330.pdf (最終アクセス:2025年4月18日)
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
大腸がんは日本人にとって決して他人事ではない病気です。 部位別のがん発生率では、大腸がんは男女どちらも上位を占めており、死亡数においても女性では最も多いがんとなっています(文献1)。 多忙な日々を過ごし自分は大丈夫と思っていても、誰もが発症しうる身近なリスクがあります。 この記事では大腸がんの主な原因やリスク要因をわかりやすく整理して分かりやすく解説します。 また、万が一大腸がんが見つかった場合の治療法についても触れ、最後に再生医療の可能性についても簡単にご紹介します。 大腸がんの原因とリスク要因 大腸がんの発生には生活習慣が深く関わっており、日々の食事内容や運動習慣、嗜好品の摂取状況などさまざまな要因がリスクを高めることがわかっています。 年齢が上がるにつれてリスクも増加しますが、近年では若い世代での発症増加も指摘されており、その背景には現代のライフスタイルの変化があると考えられています。(文献2) ここでは主なリスク要因について、いくつかの項目に分けて詳しく見ていきましょう。 食事内容と若年化の背景 近年、日本を含む先進国では大腸がんの発症率が年々上昇傾向にあり、50歳未満の比較的若い世代での大腸がん増加が世界的に報告されています。 この背景には食生活の欧米化が一因と考えられており、肉類(とくに赤身肉や加工肉)中心で野菜や食物繊維が不足しがちな食事は大腸がんのリスクを高める可能性があります。 若年層での発症増加という深刻な傾向を食い止めるためにも、日頃の食習慣を見直しバランスの良い食事を心がけることが重要です。 運動不足と肥満 運動習慣の欠如や肥満傾向もまた大腸がんのリスクを高める要因です。身体をあまり動かさない生活が続くと腸の働きが鈍くなり、腸内に有害物質が停滞しやすくなります。 肥満そのものもホルモンバランスや慢性炎症を通じてがん発生の下地を作ると考えられており、実際に肥満の人は大腸がんの発生率が高いことが報告されています。(文献7) 喫煙と飲酒 タバコの喫煙習慣や過度の飲酒も大腸がんのリスクを上げることが明らかになっています。 喫煙といえば肺がんの原因として有名ですが、たばこに含まれる有害物質が血流を通じて全身に巡るため、大腸の細胞にも悪影響を及ぼします。 国立がん研究センターの研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べ大腸がんの発生率が高い傾向が認められています。(文献6) また、アルコールそのものと体内で代謝されてできるアセトアルデヒドには発がん性があり、大量の飲酒習慣は大腸がんの危険性を高めます。 日常的にタバコやお酒を嗜む方は、大腸がんを含むさまざまながん予防のために禁煙・節酒を意識しましょう。 遺伝と家族歴 大腸がんには遺伝的な要因も一部存在し、とくに家族性大腸腺腫症やリンチ症候群といった遺伝性疾患のある家系では若いうちから大腸がんを発症する率が高いことが知られています。 また、遺伝的要因とは別に炎症性腸疾患と総称される難治性の腸の病気(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を患っている人も、大腸に慢性的な炎症がある状態が続くため大腸がんの発生率が上がることがわかっています(文献4)。 家族歴がある方や腸の持病がある方は、より注意深く定期検診を受けるなど早期発見に努めましょう。 大腸がんの予防策 生活習慣の影響が大きい大腸がんは、日々の習慣を改善すると予防効果が期待できます。 過去の研究からも禁煙、飲酒をひかえること、バランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持が、がん全般の予防に有効であると確認されています。大腸がんにとくに有効とされるのは運動習慣で、活発に身体を動かしている人ほど発症リスクが低いことがわかっています。(文献7) 日常生活で取り組める大腸がん予防策を項目別にまとめるので、できることから少しずつ取り組んでみましょう。 食事 食習慣の見直しは大腸がん予防の柱となります。まず、食物繊維を十分に摂取するよう心がけましょう。野菜や果物、海藻、豆類、全粒穀物(玄米や全粒パンなど)には食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維の摂取量が多い人ほど大腸がんの発症リスクが16〜24%低いとの研究結果も報告されています。(文献2) 日々の食事を見直し、大腸がんになりにくい食事を意識しましょう。 運動 定期的な運動は大腸がんの強力な予防策です。運動によって腸の働きが活発化し、消化管の内容物の通過時間が短くなるため、有害物質が腸粘膜に接触する時間を減らせます。運動習慣がある人では大腸がんの発症リスクの低下が確認されてます。(文献7) 激しい運動である必要はなく、毎日30分のウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど自分に合った形で構いません。大切なのは継続ですので、ぜひ今日から意識的に体を動かす時間を作ってみてください。 体重 適正体重の維持もがん予防には欠かせません。肥満は大腸がんリスクを高める要因であると同時に、糖尿病など他の生活習慣病の原因ともなります。実際に糖尿病を持つ人は大腸がんになるリスクが1.4倍高いとの報告もあり、肥満傾向の方は早めの対策が必要です。(文献2) 予防のためにはまず自分のBMI(肥満度指数)や体脂肪率を把握し、緩やかな減量を目指しましょう。急激なダイエットは体に負担がかかりますので、バランスの取れた食事と適度な運動で無理なく減量しましょう。 禁煙 タバコを吸う人はぜひ禁煙に踏み切りましょう。喫煙は大腸がんを含むすべてのがんのリスクを高める最大要因の一つです。(文献6) タールやニコチンなどタバコに含まれる有害物質は、吸い込んだ肺だけでなく血液を介して大腸の粘膜にも届き、細胞を傷つけDNAにダメージを与えます。 禁煙によって肺がんはもちろん、大腸がんやその他のがんになる確率も時間とともに減少していくことがわかっています。(文献8) 禁煙開始直後はストレスを感じるかもしれませんが、禁煙外来の活用やニコチンパッチ・ガムなど補助剤の利用も検討し、健康な体づくりの一環として禁煙にチャレンジしてください。 飲酒 お酒を嗜む方は飲みすぎないことを肝に銘じましょう。過度の飲酒習慣は大腸がんのリスクを高めます。(文献6)一般的に節度ある適量の目安は、ビール中瓶1本または日本酒1合程度と言われますが、適量を超える量を連日飲酒する習慣は控え、飲む頻度も週に2日は休肝日を作ることが推奨されています。 お酒以外のリラックス法を見つけ、飲酒量を徐々に減らす努力が大切です。適切な飲酒量の管理は大腸がんのみならず肝臓や膵臓など他の臓器のがんにもつながりますので、飲酒量には注意しましょう。 大腸がんを早期発見するためのポイント 大腸がんは早期のうちに発見できれば、高い確率で治癒が望めるがんです。しかし初期段階では症状がほとんど出ないため、発見が遅れるケースもあります。 早期発見のためには自分の体のサインを見逃さないことと、症状がなくても定期的に検診を受けることの二つが大切です。 ここでは、大腸がんの初期に現れる可能性のある症状と、検診による早期発見の重要性について説明します。 初期症状に該当するかチェック 大腸がんは早期の段階では自覚症状がほとんどありません(文献3)。そのため少し進行してからようやく異変に気づくケースが多いです。 以下に大腸がんの代表的な症状を挙げますので、思い当たるものがないかチェックしてみましょう。 初期症状 チェックポイント 便に血が混じる、または便の表面に血が付着する 血便・下血と呼ばれる症状です。大腸がんが進行すると腸管内で出血が起こり、排泄物に鮮紅色もしくは暗赤色の血液が混ざることがあります。 痔など良性疾患でも起こる症状ですが注意が必要です 貧血の症状が出る 大腸がんからの出血が断続的に続くと慢性的な貧血状態になります。立ちくらみやめまい、動悸・息切れ、顔色の悪さなど貧血のサインが現れることがあります。 便通の変化(下痢や便秘を繰り返す)や便の形状変化 腸管が狭くなるために便秘と下痢を交互に繰り返したり、便が細くなったりすることがあります。また常に残便感(出し切れていない感じ)があるのも特徴です。 お腹の張りや痛み 腸にガスや便が溜まりやすくなることで腹部膨満感を感じたり、腫瘍が大きくなるとお腹が痛くなることもあります。 進行した場合、腸閉塞(腸詰まり)を起こして激しい腹痛や嘔吐を引き起こすこともあります。 頻度が高いのは血便や下血ですが、これらの症状は痔など良性の病気でも起こり得るため、「きっと痔だろう」と自己判断して放置してしまう例も少なくありません。 上記のような症状に心当たりがある場合は、お早めに消化器科・胃腸科・肛門科など専門医を受診しましょう。 初期症状がないからと言って油断せず、便や体調の変化には常に目を向けておくことが重要です。 健診を受けて初期段階で発見する 自覚症状だけに頼らず、大腸がん検診を定期的に受けることが早期発見には欠かせません。日本では40歳以上の男女に対し年に1回の大腸がん検診受診が推奨されています(文献3)。 市区町村によっては集団検診や職場健診で便潜血検査を実施しており、多くの場合費用の一部〜全額が公費負担となるため手軽に受けられます。 大腸がん検診の主な内容は問診と便潜血検査(後述)です。痛みもなく短時間で終わる検査ですので、「忙しくて時間がない」という方も年に一度はスケジュールを確保して受診しましょう。 大腸がんの検査方法 原因や症状を理解し、早期発見のポイントを抑えたら次は検査方法を押さえて、必要に応じて早めに検査を受けましょう。 大腸がんの検査方法は多くの医療機関で便潜血検査と大腸内視鏡検査が採用されています。どのような検査方法か具体的に見ていきましょう。 便潜血検査 便潜血検査(べんせんけつけんさ)は、便中に目に見えない微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸にがんやポリープがあると、ときに出血して便に血が混ざることがあります。 しかしその出血量はごく微量で肉眼では確認できないため、便潜血検査では専用の試薬と検査紙を用いて血液の痕跡を化学的に検出します。 検査のやり方は自宅で便を少量採取し、検査キットに塗布して提出するだけです。結果が陽性(反応あり)の場合でも、必ずしも大腸がんが見つかるとは限りません。 痔による出血や月経血の混入などで偽陽性となることもありますので、陽性と指摘された場合は落ち着いて精密検査(大腸内視鏡など)を受けることが大切です(文献3)。 逆に陰性だったからといって安心とは言えず、微小ながんがある場合など見逃しの可能性もゼロではありません。そのため便潜血検査は毎年定期的に受けることが重要です。まずは年1回の便潜血検査を習慣づけて早期発見に努めましょう。 大腸内視鏡検査 大腸内視鏡検査(だいちょうないしきょうけんさ)は、肛門から内視鏡(カメラ付きの細い管)を挿入し大腸の内側を直接観察する検査です。内視鏡を用いることで、大腸粘膜のわずかな病変も直接目で確認できるため、大腸がんの確定診断には欠かせない検査です。 便潜血検査が陽性だった場合や、大腸がんが疑われる症状がある場合には精密検査として大腸内視鏡が行われます(文献3)。検査前日から専用の下剤を服用し、腸内をきれいに空っぽにしてから検査を行います。 検査中は空気や水で腸を膨らませながら隅々まで観察するため、一時的にお腹が張る感じがありますが、最近では鎮静剤を使ってうとうと眠った状態で受けられる施設も多く、不快感に配慮した検査が可能です。 医師は内視鏡映像を確認しながら病変部位を探し、もしポリープ(腫瘍の芽)が見つかればその場で切除することもできます。採取した組織は病理検査に回し、良性か悪性か詳しく調べます。 大腸内視鏡検査は半日〜1日かかる検査ですが、早期がんなら内視鏡治療で切除して完治させられる場合もあり、検査と治療を兼ねられる点で非常に有用です。定期検診の便潜血で陽性が出たら放置せず必ず内視鏡検査を受けるようにしましょう。 また、症状が強い場合は便潜血を待たずに直接内視鏡検査を受けた方が良いこともあります。医師と相談の上、自分に必要な検査を受けてください。 大腸がんを発見後の治療内容 早い段階の大腸がん(0期〜I期)なら、お腹を切らずに内視鏡でポリープだけを切除できます。入院は2〜3日ほどで、体への負担がとても軽いのが特徴です。腸の壁やリンパ節に広がったステージI〜IIIでは、腹腔鏡手術で腫瘍と周囲のリンパ節をまとめて取り除きます。 進行状況によっては一時的に人工肛門(ストーマ)をつくりますが、術後に元の排便経路へ戻せるケースも少なくありません。手術後は再発を防ぐために、半年ほど抗がん剤や分子標的薬を使う補助化学療法を行います。 吐き気などの副作用は制吐薬や白血球を増やす薬で抑えられるため、仕事や家事を続けながら治療する人も増えています。特定の遺伝子型では、免疫のブレーキを外してがん細胞を攻撃する免疫チェックポイント阻害薬が高い効果を示すことが報告されています(文献1)。 さらに、当院「リペアセルクリニック」では患者様の免疫細胞を採取し、体外で活性化させて戻す再生医療の「免疫細胞療法」を提供しています。 免疫細胞療法について、詳細は下記のページをご覧ください。 まとめ|大腸がんの原因を理解して生活習慣を改善しよう 大腸がんは年々増加している病気ですが、多くの場合生活習慣を見直せば予防可能です。今回、大腸がんの原因となりうる要因を整理し、解説しました。 日々のストレスを減らし、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることは、大腸がんのみならず他の病気の予防にもつながりますので、忙しいからと後回しにせず、ぜひできる範囲で生活習慣を整えてみてください。 それでもすべてのリスクをゼロにするのは難しいため、40歳を過ぎたら定期検診を受けて早期発見に努めることも忘れないようにしましょう。当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療やPRP療法などの治療を提供しております。 大腸がんの治療後のケアや再発予防にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1)国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」国立がん研究センター がん情報サービス, 2024年12月16日. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献2)糖尿病ネットワーク「糖尿病の人は大腸がんリスクが高い 大腸がんは50歳未満の若い人でも増加 予防に役立つ3つの食品とは?」糖尿病ネットワーク, 2025年1月20日.https://dm-net.co.jp/calendar/2025/038744.php (最終アクセス:2025年4月22日) (文献3)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診」国立がん研究センター がん情報サービス, 2012年https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/prevention_screening.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献4)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」国立がん研究センター がん情報サービス, 2025年3月24日 https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/about.html (最終アクセス:2025年4月22日) (文献5)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」国立がん研究センター がん情報サービス, 2025年3月24日https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html (最終アクセス:2025年4月22日) (文献6)国立研究開発法人国立がん研究センター「がん対策研究所予防関連プロジェクト」国立がん研究センターお酒タバコと大腸がんの関連について, 2024年12月31日.https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/259.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献7)国立研究開発法人国立がん研究センター「がん対策研究所予防関連プロジェクト」国立がん研究センター身体活動量と大腸がん罹患との関連について, 2024年12月31日.https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/292.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献8)国立研究開発法人国立がん研究センター「プレスリリース」がんゲノムビッグデータから喫煙による遺伝子異常を同定, 2016年11月4日.https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/1104/index.html(最終アクセス:2025年4月22日)
2025.04.30 -
- 頭部、その他疾患
- 頭部
「めまいや頭痛が続いている」 「貧血が原因だと思っていたが、血液検査では異常なしだった」 「異常がないのに、なぜめまいや頭痛が続いているのだろう?」 このような不安や疑問をお持ちの方も多いでしょう。原因不明のめまいや頭痛などが続くときには、脳脊髄液減少症の可能性があります。 本記事では脳脊髄液減少症のセルフチェック項目や、病気の概要、治療法について解説します。 症状が続く不安を軽減するために、ぜひ最後までご覧ください。 脳脊髄液減少症のセルフチェック方法 この章では、脳脊髄液減少症のセルフチェック項目を表にまとめました。 セルフチェック項目 詳細 主な症状 頭痛(起立性頭痛) 首の痛み めまい 耳鳴り 見え方の異常 身体のだるさ 疲れやすさ その他の症状 顔の痛みやしびれ 意識障害 症状の現れ方 座ったり起き上がったりしてから3時間以内に症状が出現・悪化しやすい 起立性頭痛とは、立ち上がったときや座っているときなどに強くなる頭痛のことです。 当てはまる項目が多く、過去に病院で「異常なし」と診断された方は、脳脊髄液減少症を発症している可能性があります。 脳脊髄液減少症の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。 そもそも脳脊髄液減少症とは 脳脊髄液減少症とは、脳脊髄液が常に、もしくは断続的に漏れ出してしまう疾患です。(文献1)脳脊髄液の役割は、脳と脊髄を守ることです。 脳脊髄液が漏れ出て量が減ると、頭痛や首の痛み、めまい、耳鳴り、見え方の異常、体のだるさなど、さまざまな症状が現れます。 脳脊髄液減少症は、以下の2種類に分けられます。 症候性:病気やけがが原因で発症する 特発性:発症の原因が不明である 発症しやすい年齢は40歳前後であり、女性に多い疾患です。 脳脊髄液減少症は現在も研究が進められており、診断基準や治療法は確立されていません。(文献2) 脳脊髄液減少症に症状が似ている疾患 脳脊髄液減少症に症状が似ている疾患としては、以下のようなものがあげられます。(文献2) 慢性頭痛 頸椎症 頚椎椎間板ヘルニア むち打ち症 うつ病 脳脊髄液減少症は正確な診断基準が確立されていないため、別の疾患名で診断されてきたケースも少なくありません。もしくは、異常なしと診断された方も多い状況です。 原因がわからずに症状が続いたため、苦しんできた方も多いことが想定されます。 以下の記事では、脳脊髄液減少症と症状が似ている、むち打ち症について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 脳脊髄液減少症の治療方法【セルフチェック該当者向け】 この章では、セルフチェックにおいて脳脊髄液減少症の可能性が高かった方に向けて、治療方法を詳しく解説します。 保存的治療 保存的治療では、水分補給と安静が必要です。1~2週間程度は、1日1000~2000mlの水分を摂り、安静にして過ごしましょう。(文献3)脳脊髄液の減少を止める効果が期待できます。 水分補給に関しては、入院やもしくは通院により、医療機関で点滴を受けるケースもあります。 水分補給時に経口補水液が効果的という説もありますが、科学的な根拠は提示されていません。 ブラッドパッチ ブラッドパッチとは、自分の血液を髄液が漏れ出ている部分に注入する治療法で、平成28年度から保険適用されました。 注入量は漏れ出ている部分によって異なります。腰椎(腰の背骨)で20〜40ml、胸椎(胸の背骨)で15~20ml、頚椎(首の背骨)で10~15mlです。 ブラッドパッチ治療後は1週間程度の安静が望ましく、同じ場所に再度治療する場合は、3か月以上の経過観察期間を設けることが望ましいとされています。(文献1) 硬膜外生理食塩水注入療法 腰椎からカテーテルを挿入して、生理食塩水を48~72時間持続的に注入する治療法で、注入のペースは1時間につき20ml程度です。(文献2) 生理食塩水のみ注入する方法に加えて、ブラッドパッチのときに、生理食塩水を35〜50ml程度注入する方法もあります。 セルフチェックで脳脊髄液減少症を疑う際は医療機関を受診しよう セルフチェックで当てはまる症状が多かった方や、症状があるにもかかわらず、異常なし、もしくは原因不明と診断された方は脳脊髄液減少症の可能性があります。 脳脊髄液減少症は、研究段階の疾患であるため、診断・治療できる医療機関が限られていますが、出来る限り早い受診をおすすめします。 お住まいの都道府県庁ホームページ内に、脳脊髄液減少症に関する情報が記載されていることも多いため、受診を検討される方は、検索してみましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脳脊髄液減少症と思われる症状でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳脊髄液減少症に関するよくある質問 脳脊髄液減少症は何科を受診すると良いでしょうか? 脳脊髄液減少症に対応している主な診療科は、以下のとおりです。 脳神経外科 脳神経内科 神経内科 整形外科 麻酔科 ただし、「治療まで可能」、「相談・検査のみ」など医療機関によって対応が異なります。治療においても、ブラッドパッチ対応可能なところと、不可能なところにわかれます。 多くの都道府県ホームページでは、脳脊髄液減少症の医療機関に関する情報を公開しているので、検索してみましょう。 脳脊髄液減少症と起立性調節障害の違いは何ですか? 起立性調節障害とは、交感神経や副交感神経のバランスの乱れによりさまざまな症状が起こる疾患で、小学校高学年から高校生の方に多く見られます。(文献4) めまいや頭痛、立ちくらみといった症状は脳脊髄液減少症と共通していますが、脳脊髄液減少症の原因は、文字どおり脳脊髄液の減少です。そのため両者は、原因や治療法に違いがあります。 脳脊髄液減少症は難病指定されていますか? 2025年(令和7年)4月1日の時点で、国の指定難病は348種類存在しますが、脳脊髄液減少症は含まれていません。(文献5) 脳脊髄液減少症に関しては、2007年度(平成19年度)から厚生労働科学研究費補助金、2015年度(平成27年度)からは日本医療研究開発機構(AMED)において、研究が実施されています。(文献6) 脳脊髄液減少症は、さらなる研究および難病指定が求められる疾患といえるでしょう。 参考文献 (文献1) 脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」2007年 http://www.npo-aswp.org/data/2007-0330.pdf (最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 松本英之,宇川 義一.「脳脊髄液減少症」『日本内科学会雑誌』100(4), pp.1076-1083, 2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/4/100_1076/_pdf (最終アクセス:2025年4月18日) (文献3) 兵庫県神河町「脳脊髄液減少症をご存知ですか?」https://www.town.kamikawa.hyogo.jp/cmsfiles/contents/0000000/507/nouekizui.pdf (最終アクセス:2025年4月18日) (文献4) 一般社団法人 起立性調節障害改善協会「脳脊髄液減少症と起立性調節障害の違いを解説-どちらに該当するかセルフチェック」一般社団法人 起立性調節障害改善協会ホームページ, 2024年2月25日 https://odod.or.jp/kiritsusei-tohaod-6279/ (最終アクセス:2025年4月18日) (文献5) 厚生労働省「指定難病の概要、診断基準等、臨床調査個人票(告示番号1~348)※令和7年4月1日より適用」厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53881.html (最終アクセス:2025年4月18日) (文献6) 厚生労働省「脳脊髄液減少症について」厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/nanbyo/100402-1.html (最終アクセス:2025年4月18日)
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「寝ても寝ても眠い状態が続く」 「眠いのは貧血も関係していると聞いた」 「貧血の検査を受けた方が良いのだろうか」 このように悩まれている方は多いでしょう。女性の場合、月経前後や月経中に眠気が強くなる方も少なくありません。 本記事では、貧血で眠くなる理由や対処法を解説します。セルフケアを続けても眠気が続く場合や、眠気が強くなる場合は、専門医に相談してみましょう。 いつも眠い理由は貧血のせいかもしれません! 眠気が続く原因として、貧血が考えられます。 貧血が眠気を引き起こす理由は、主に以下の3つです。 血液中の酸素不足 睡眠の質の低下 月経の影響 血液中の酸素不足 貧血とは、赤血球の中にあるヘモグロビンの量が不足した状態です。ヘモグロビンは、血液に酸素を行きわたらせる働きがあります。 貧血によりヘモグロビンが不足すると、血液中の酸素が不足し、その影響で脳の活動も低下します。眠気は、脳の活動低下によるものです。そのほかにも判断力の低下や頭がぼんやりするなどの症状があらわれます。 貧血の方は、体内への酸素運搬能力が低下しているため、筋肉や他の組織もエネルギー不足の状態です。そのため、通常の日常生活でも疲れやすくなっています。 貧血の症状については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 睡眠の質の低下 貧血が原因で、睡眠の質が低下するケースもあります。代表的なものが、むずむず脚症候群です。 むずむず脚症候群とは、脚の奥に不快な感覚が生じるものです。不快な感覚としては、主に以下のようなものがあげられます。 むずむずする ピリピリする 虫が這っているような感じがする かゆみがある むずむず脚症候群の特徴は、安静にしていると症状が出現もしくは増強し、足を動かすと症状が軽減される点です。 夜に症状が出現しやすいため、寝付けなかったり、何度も目が覚めたりします。そのため睡眠の質が低下して、眠い状況が続くのです。 月経の影響 女性の場合は、月経も眠気に関連しています。 女性は月経による出血が毎月あるため体内から鉄分が失われることが多く、鉄欠乏性貧血を引き起こしやすいです。そのため、体内で酸素不足が起きやすく、眠気を生じやすいといえます。 1回の月経による出血量は、20〜140mlが正常範囲であり、140ml以上の出血があると月経過多状態とされます。(文献1) また、月経前の2週間はとくに眠気を生じやすい時期です。ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れ、体温変動の少なさなどが、理由としてあげられます。 貧血が原因で眠いときの対処法 貧血が原因で眠いときの対処法としてあげられるのは、主に以下の2つです。 生活リズムの見直し 食生活の見直し 生活リズムの見直し 眠いときの対処法の1つが、生活リズム、とくに睡眠リズムの見直しです。 起床後すぐに日光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整います。 日中、光を多く浴びることにより入眠前に「メラトニン」が適切に分泌されます。メラトニンは、就寝の1~2時間前に眠気をもよおすホルモンです。(文献2) 眠気が出てきたタイミングで寝室に入り、静かな環境で就寝すると、質の良い睡眠が得られます。睡眠の質が高まると、眠気の改善に繋がります。 就寝前にスマートフォンやタブレット、パソコンなどの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されて、睡眠が妨げられます。スマートフォンやタブレットを寝室に持ち込むことは、睡眠の質低下につながるため、おすすめできません。 食生活の見直し 貧血の多くは、体内の鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。毎日の食事を通じて、鉄分やビタミンB12、ビタミンC、葉酸、タンパク質など赤血球やヘモグロビンの材料になるものを摂り続けましょう。 貧血が改善されると、眠気が軽減する可能性も高まります。 食生活の見直しについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 医師に相談すべき眠気の症状 前章で紹介した対処法を試してもなお眠気が続く場合や、この章で紹介する症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 眠気のため気絶してしまう 貧血が重度の場合、強い眠気や疲労感が生じます。血液中の酸素不足により、脳の血流量が低下し、結果として脳が正常に機能するためのエネルギーが失われるためです。 脳の血流量が減少すると、一時的に意識を失ってしまうこともあります。いわゆる「気絶」「失神」と呼ばれる症状です。 眠気以外に動悸や息切れといった症状がある 平担な道を歩いているだけで動悸や息切れがする場合は、貧血が重症化している可能性があります。 貧血が進行すると、体内への酸素供給量も低下し、平地を歩くといった軽い動作でも体に負担がかかります。酸素供給量を増やすため、平常時よりも心臓の動きが速くなったために生じるのが動悸です。 酸素供給量低下によるもう1つの症状が、息切れ(呼吸困難)です。貧血の方は、血液中の酸素量を増やすため、速く深い呼吸になっています。 貧血で強い眠気を感じる場合は専門医に相談しよう 貧血は血液中のヘモグロビン値が低下して、身体が酸素不足になっている状態です。身体が酸素不足であるために、結果として脳の活動も低下して、眠気につながります。 貧血によりむずむず脚症候群が引き起こされると、睡眠の質が低下します。これも眠気につながる原因の1つです。 女性の場合、月経のために鉄欠乏性貧血を起こしやすく、月経周期の関係で眠くなることもあります。 本記事で紹介した対処法を実践しても眠気が続く場合や、気絶する、動悸・息切れが強いときなどは、貧血が重症化していることが考えられるため、医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、貧血治療に関するご相談にも対応いたします。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 貧血と眠気に関するよくある質問 貧血のため眠いと感じるときは何科を受診すると良いでしょうか 最初は内科を受診すると良いでしょう。血液検査で、ヘモグロビンや赤血球数といった貧血関連の数値を調べて、必要であれば総合病院や大学病院などの血液内科を受診する流れです。この場合、内科医師が紹介状を書くことが一般的です。 女性の方で、「生理中に貧血のような症状がある」「生理中に眠気が強くなる」などの状況であれば、婦人科受診も選択肢として考えられます。 貧血で眠いのは鉄剤の副作用でしょうか? 鉄剤の主な副作用は、吐き気や胸やけ、腹痛といった消化器症状です。他にも湿疹や皮膚のかゆみなどの副作用があります。 眠いのは、貧血による影響が強いと考えられます。 薬について不安や心配ごとがある場合は、主治医もしくは薬剤師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部 保健室「月経時、出血量が多く悩んでいませんか?」2024年 https://www.sapporo-otani.ac.jp/wp/wp-content/themes/sapporo-otani/images/campuslife/support/hokehshitu_letter_2411.pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 厚生労働省「眠りのメカニズム」健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~, 2023年01月23日 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002(最終アクセス:2025年4月18日)
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「貧血があるので食事に気をつけてくださいと言われた」 「貧血に良い食べ物を知りたい」 このような状況の方も多いことでしょう。 貧血に良い食べ物としては、鉄分やビタミンB12、葉酸などを多く含むものがあげられます。本記事では、貧血に良い食べ物や献立例などを中心に解説します。 貧血に悪い食べ物も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。 貧血に良い食べ物 貧血に良い食べ物は、主に以下の5種類に分類できます。 鉄分を多く含むもの ビタミンB12を多く含むもの 葉酸を多く含むもの ビタミンCを多く含むもの タンパク質を多く含むもの これらをまんべんなく摂るためには、栄養バランスの良い食事が必要です。 鉄分を多く含むもの 1日に必要な鉄分推奨量を以下に示しました。(文献1) 18~74歳の女性:5.5mg 18~29歳の男性:7.0mg 30~49歳の男性:7.5mg 50~74歳の男性:7.0mg 鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。両者の主な違いは、体内への吸収率です。 以下の記事でも、鉄分に関して詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 ヘム鉄 ヘム鉄は、鉄分の中でも吸収率が15~20%程度と高いもので、肉類や魚介類などの動物性食品に多く含まれます。(文献2) ヘム鉄を含む主な食品は、レバーや牛肉、あさりなどです。 非ヘム鉄 非ヘム鉄は、鉄分の中でも吸収率が2~5%程度と低いもので、野菜や海藻類、大豆製品などの植物性食品に多く含まれます。(文献2) 非ヘム鉄を多く含む食品は、納豆やほうれん草、のり、ひじきなどです。 ビタミンB12を多く含むもの ビタミンB12は、正常な赤血球を作るために必要な栄養素で、魚介類やチーズ、のりなどに多く含まれます。 日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、1日のビタミンB12摂取推奨量は、18歳以上の男女ともに4.0㎍です。(文献3) 葉酸を多く含むもの 葉酸も、ビタミンB12同様、正常な赤血球を作るために必要な栄養素で、ブロッコリーや納豆、ほうれん草、卵黄などに多く含まれます。 1日の葉酸摂取推奨量は、18歳以上の男女ともに240㎍です。(文献4) 妊娠を計画している女性、あるいは妊娠中の女性は、サプリメントなどを通じて付加的に葉酸を1日あたり400µg程度の摂取が望まれています。胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減するためです。 ビタミンCを多く含むもの ビタミンCには、鉄の吸収率を高める働きがあり、レモンやオレンジ、柿などの果物、ブロッコリーやパプリカなどの野菜類に多く含まれます。 成人における1日のビタミンC摂取推奨量は100㎎程度であり、食品からの摂取が基本です。(文献5) タンパク質を多く含むもの タンパク質は、血液中の赤血球やヘモグロビンを作る材料で、肉、魚介類、大豆製品に多く含まれます。1日の摂取推奨量は、以下のとおりです。(文献6) 18~64歳の男性:65g 65歳以上の男性:60g 18歳以上の女性:50g タンパク質は体の中にためておけないため、毎食食べる必要があります。 貧血に良い食べ物を使用した献立 ここでは、貧血に良い食べ物を使ったメニューとして、主食・主菜・副菜を3種類ずつ紹介します。 主食 ここで紹介するのは、以下の3つです。 あさりと水菜のパスタ ほうれん草と卵のチャーハン 雑穀入りご飯 詳しくは、下記の表をご覧ください。 献立名 主な材料 作り方 あさりと水菜のパスタ パスタ あさりの水煮缶 水菜 オリーブオイル しょうゆ 塩、こしょう 1.たっぷりの沸騰したお湯の中にパスタを入れて、所定の時間でゆでる 2.刻んだ水菜とあさりの水煮をフライパンで炒めてから、ゆであがったパスタを加える 3.しょうゆと塩、こしょうなどで味をととのえる (味付けはお好みで) ほうれん草と卵のチャーハン ごはん ほうれん草 卵 サラダ油 しょうゆ 塩、こしょう 1.溶きほぐした卵をフライパンで炒める 2.粗く刻んだほうれん草とご飯を加えて、しょうゆと塩、こしょうで味をととのえる 3.ひき肉やソーセージ、ツナ缶などを入れても良い 雑穀入りご飯 米 雑穀 1.洗った米に雑穀を合わせて、水を加える 2.30分ほど吸水させてから、炊飯する あさりやほうれん草で鉄分、卵でタンパク質を摂取できます。雑穀には、鉄分やタンパク質などの栄養素が豊富に含まれています。 主菜 ここで紹介するのは、以下の3つです。 レバーのカレー粉炒め 厚揚げと小松菜の炒め物 鮭のホイル焼き 詳しくは、下記の表をご覧ください。 献立名 主な材料 作り方 レバーのカレー粉炒め レバー 小松菜 サラダ油 カレー粉 しょうゆ 酒 塩、こしょう 1.食べやすい大きさに切ったレバーを水か牛乳に5分程度つけて下処理する 2.下処理をしたレバーをしょうゆと酒につけて下味をつける 3.フライパンでレバーと小松菜を炒めて、カレー粉と塩、こしょうで味をととのえる 厚揚げと小松菜の炒め物 厚揚げ 小松菜 サラダ油 しょうゆ 塩、こしょう 1.食べやすい大きさに切った厚揚げと小松菜をフライパンで炒める 2.しょうゆや塩、こしょうで味をととのえる 鮭のホイル焼き 鮭 生しいたけ しめじ えのきだけ 玉ねぎ バター塩、こしょう 1.鮭は塩、こしょうで下味をつける 2.玉ねぎやきのこ類は食べやすい大きさに切る 3.鮭と玉ねぎ、きのこ類をアルミホイルに載せて包み、フライパンで焼く レバーには鉄分が豊富に含まれています。小松菜はビタミンCや葉酸、鉄分を多く含む野菜です。鮭や厚揚げには、良質なタンパク質が含まれています。 副菜 ここで紹介するのは、以下の3つです。 切り干し大根とわかめの味噌汁 ほうれん草のおひたし ひじきの煮つけ 詳しくは、下記の表をご覧ください。 献立名 主な材料 作り方 切り干し大根とわかめの味噌汁 切り干し大根 わかめ 油揚げ だし汁 味噌 1.切り干し大根は、水でもどしてから食べやすい大きさに切る 2.油揚げも食べやすい大きさに切る 3.だしが入った鍋に、切り干し大根、油揚げ、わかめを入れてから味噌を溶きながら加える ほうれん草のおひたし ほうれん草 だし汁 みりん しょうゆ 1.ほうれん草をサッと水洗いして汚れを落とす 2.沸騰したお湯の中にほうれん草を入れて30秒ほどゆでる 3.ゆであがったほうれん草を食べやすい大きさに切る 4.だしとしょうゆ、みりんを合わせたつけ汁の中にほうれん草を入れて、15分程度ひたしておく ひじきの煮つけ ひじき にんじん 油揚げ だし サラダ油 しょうゆ 砂糖 酒 みりん 1.水で戻したひじきと、食べやすい大きさに切った人参と油揚げを、フライパンで炒める 2.だし、しょうゆ、砂糖、酒、みりんを入れて、煮汁がほとんどなくなるまで煮る ひじきには、鉄分や葉酸が豊富に含まれています。切り干し大根も葉酸が豊富に含まれる食品です。副菜に野菜を多く入れると、ビタミンCを多く摂れるでしょう。 貧血に悪い食べ物や飲み物 ここでは、貧血に悪い食べ物や飲み物について詳しく解説します。 緑茶 緑茶やコーヒー、紅茶に含まれる成分であるタンニンは、鉄分の吸収を妨げます。食事中や食後に飲むのは控えましょう。 食事中や食後の飲み物は、水や麦茶など、タンニンが含まれていないものがおすすめです。 玄米 玄米に含まれている不溶性食物繊維は、鉄分を吸着して便として排泄させてしまうため、貧血には逆効果です。 不溶性食物繊維が含まれる食品としては、玄米のほかにおからや、根菜類、豆類などがあります。根菜類や豆類にはビタミンCやタンパク質も含まれているため、貧血に良い食品でもありますが、毎食食べると食べ過ぎにつながります。 根菜類や豆類を入れた献立は、1日1~2食までにとどめましょう。 加工食品 ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工食品、インスタント食品、スナック菓子などに含まれるリン酸塩は鉄分の吸収を阻害する成分です。貧血予防のためには、控える方が良いでしょう。 加工食品やインスタント食品を購入する際には、なるべくリン酸塩が添加されていないものを選びましょう。リン酸塩の過剰摂取は、貧血だけではなく骨や関節にも良くない影響を与えます。 リン酸塩を多く含む食品については、以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。 食生活を改善しても貧血が続く場合は当院にご相談ください 貧血の多くは血液中の鉄分が不足する鉄欠乏性貧血であり、貧血に良い食べ物を意識して摂ることにより改善する可能性が高いとされています。 食生活を改善しても貧血が続く場合は、鉄剤の内服や注射といった治療が必要です。貧血には、鉄欠乏性貧血以外にも、慢性疾患や造血機能低下によるものも考えられます。 食生活を改善しても貧血が続くときは放置せず、当院にご相談ください。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しております。 貧血に良い食べ物に関するよくある質問 チョコレートは貧血に良い食べ物ですか? チョコレートの中でも、ダークチョコレートと呼ばれるカカオの含有率が高いものは、鉄分が多く含まれているため、貧血に良い食べ物とされます。 しかし、チョコレートは糖質や脂質も多いため、食べ過ぎは禁物です。1日量の目安は5~10g程度とされています。 貧血に良い食べ物に即効性はありますか? 貧血に良い食べ物は数多くありますが、あくまでも食品であり医薬品ではないので、即効性は期待できません。毎日の食事で適量を食べ続けましょう。食べ続けても貧血の症状が続く場合は、医療機関を受診して、必要な治療を受けてください。 参考文献 (文献1)公益財団法人長寿科学振興財団「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年2月26日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-tetsu.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献2)国立がん研究センター東病院 栄養管理室「貧血がある方のお食事」2018年 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/nutrition_management/info/seminar/recipe/recipe209.pdf (最終アクセス:2025年4月17日) (文献3)公益財団法人長寿科学振興財団「ビタミンB6/B12の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年2月21日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b6.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献4)公益財団法人長寿科学振興財団「葉酸の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット,2024年12月17日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-yousan-biotin.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献5)公益財団法人長寿科学振興財団「ビタミンCの働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年2月21日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-c.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献6)公益財団法人長寿科学振興財団「三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年3月3日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html (最終アクセス:2025年4月17日)
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「めまいや息切れが続いている」 「健康診断で貧血と言われたけれど、とくに症状はない」 「病院を受診するかどうか迷う」 このようなお悩みを抱えている方も多いことでしょう。 貧血の症状はさまざまであり、中には無症状の方もいます。しかし、貧血を放置しておくことは危険を伴います。重大な疾患が原因で引き起こされる貧血もあるためです。 本記事では、貧血の症状を中心に、原因や治療法についても詳しく解説します。貧血でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 貧血の症状一覧 貧血の症状には、主に以下のようなものがみられます。 息切れ 動悸 めまい 倦怠感 血色不良 爪の異常 中には、肌や口内が荒れる、髪の毛が抜けやすくなる、氷を食べたがるといった症状が出る方もいらっしゃいます。貧血症状の現れ方には個人差があり、人によってはまったく症状がない場合もあります。 貧血症状が現れる原因は、体内の酸素不足および、それを補うために心臓や肺が働きすぎることです。 そもそも貧血とは そもそも貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンといった成分が少ない状態を指します。立ちくらみやめまいなどが起きたときに「貧血を起こした」と訴える方もいますが、これは重力の影響で脳の血流が減ったことに伴うもので、貧血とは異なります。 WHO(世界保健機構)の定義によると、成人男性ではヘモグロビン値13.0g/dl以下、成人女性ではヘモグロビン値12.0g/dl以下の状態が貧血とされます。(文献1) 貧血を診断するためには、自覚症状の聴き取りだけではなく、血液検査も必要です。 貧血の原因 貧血の原因としては、主に以下の4つがあげられます。 鉄分不足 体内での出血 慢性疾患 造血機能低下 鉄分不足 体内の鉄分不足が原因の、いわゆる「鉄欠乏性貧血」は、貧血の中でも最も頻度が高いものです。(文献2) 鉄欠乏状態が続くと、体内に貯蔵されている鉄分が減ります。次に、血液中の鉄分である血清鉄が減少します。最終的にヘモグロビン内の鉄分が減少して、貧血を発症する流れです。(文献3) 体内で鉄分を必要とする理由や鉄分不足の症状については、以下の記事でも紹介しています。 あわせてご覧ください。 体内での出血 胃や大腸といった消化管からの出血や、婦人科疾患による出血による貧血も存在します。 消化管からの出血としては、胃潰瘍や胃がん、大腸がん、痔などがあげられます。出血の原因となる婦人科疾患は、子宮筋腫や子宮がんなどです。 女性の場合、月経による出血も貧血を引き起こす要素の1つです。なんらかの原因で月経時の出血量が多い場合は、自覚症状がないまま貧血が進行するケースもあります。 慢性疾患 慢性腎臓病や関節リウマチなどの慢性疾患により、貧血を起こす場合もあります。 腎臓の機能が低下すると、造血ホルモンであるエリスロポエチンが作られにくくなり、その結果貧血を引き起こします。いわゆる「腎性貧血」です。(文献4) 関節リウマチの場合、体内で炎症が起きており、その影響で体内での鉄代謝に異常が生じて貧血を引き起こしやすいとされています。関節リウマチについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 造血機能低下 体内で血液を作り出す機能(造血機能)が病気によって低下した結果、貧血を発症する場合もあります。原因になる主な疾患を、表にまとめました。 疾患名 病態 再生不良性貧血 骨髄にある造血幹細胞(血液細胞の材料)が減少してしまい、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞が減ってしまう病気 骨髄異形成症候群 造血幹細胞に異常が生じて、正常な血液細胞が作られなくなる病気 白血病 いわゆる「血液のがん」 造血幹細胞ががん化してしまい、白血病細胞が増えてしまう病気 骨髄異形成症候群から白血病に移行する場合もある このように、重大な病気が隠れている可能性もありますので、貧血症状がある場合は、早めの医療機関受診が大切です。 貧血とヘモグロビン値 ここでは、公益社団法人日本人間ドック・予防医療学会によるヘモグロビン値について紹介します。 貧血に関係する検査結果は、以下の3種類です。 異常なし 要再検査・生活改善 要精密検査・治療(ヘモグロビン低値) 詳細を表に示しました。 検査結果 男性 女性 異常なし 13.1~16.3g/dl 12.1~14.5g/dl 要再検査・生活改善 12.1~13.0g/dl 11.1~12.0g/dl 要精密検査・治療 12.0g/dl以下 11.0g/dl以下 表に示した以外の検査結果として、「軽度異常」があります。数値は以下のとおりです。 男性:16.4〜18.0g/dl 女性:14.6〜16.0g/dl ヘモグロビン値が基準より高いために、軽度異常とされています。加えて、ヘモグロビン値が軽度異常よりも多い場合も、要精密検査・治療に該当します。多血症や脱水が疑われる状況です。 貧血の治療法 貧血の治療法は、主に以下の3つです。 食事療法 薬物療法 原因疾患の治療 食事療法 食事療法で大切な点は、効率よく鉄分を摂ることです。鉄分の多い食材に加えて、鉄の吸収を助けるビタミンCや、造血作用があるビタミンB12も摂取しましょう。 鉄分やビタミンC、ビタミンB12を豊富に含む食品は、以下のとおりです。 鉄分:レバーや魚介類、大豆製品、野菜・海藻類など ビタミンC:果物や野菜・海藻類など ビタミンB12:肉や卵など 良質なタンパク質もあわせて摂りましょう。タンパク質は、赤血球やヘモグロビンの材料として大切な栄養素です。肉や魚介類、大豆製品、卵などに多く含まれています。 薬物療法 鉄欠乏性貧血の薬物療法は、鉄剤の内服や静脈注射が一般的です。 内服:フェロミア錠、リオナ錠、インクレミンシロップなど 静脈注射:フェジン、モノヴァーなど 鉄剤を内服すると、吐き気や食欲不振といった消化器系の副作用を生じることも少なくありません。その場合は、静脈注射に切り替える場合もあります。 腎臓の機能低下による貧血では、腎性貧血治療薬(ESA:赤血球造血刺激因子製剤)の投与も行われます。 原因疾患の治療 消化器系疾患や婦人科系疾患に伴う出血のため貧血が生じている場合は、原因疾患を治療する必要があります。リウマチや慢性腎臓病由来の貧血でも、同じく治療が必要です。 リペアセルクリニックでは、貧血症状や、原因疾患の治療に関するご相談にも対応いたします。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 貧血の症状がある場合は放置せずに医療機関を受診しよう 貧血の症状は個人差があり、中にはまったく症状がない方もいらっしゃいます。 貧血の原因の多くは鉄分の欠乏ですが、重大な疾患が隠れている場合もあります。そのため、貧血の症状があるときや、健康診断や人間ドックで貧血を指摘されたときは、放置せずに医療機関を受診しましょう。 貧血症状改善のためには、一人ひとりの原因に合った治療が重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 貧血の症状に関するよくある質問 貧血が続くとどうなるのでしょうか 貧血は全身の酸素が不足している状態です。少ない酸素量で身体機能を維持するため、全身に血液を送る心臓の負担が増えます。また、脳に運ばれる酸素量も減少します。貧血が続くと、心筋梗塞や記憶力の低下を引き起こす可能性があると覚えておきましょう。 病気が原因の貧血では「貧血が続く=病気が進行している」可能性があります。貧血が続く場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 貧血になりやすい人の特徴は何ですか 女性はとくに、鉄欠乏性貧血になりやすいといえます。月経や、妊娠・出産、授乳など、鉄分を失うことが多いためです。 過度なダイエットをしている方や、偏食の方も鉄欠乏性貧血を起こしやすいといえるでしょう。栄養バランスが乱れ、結果として貧血を起こす可能性が高いといえます。 慢性疾患や造血機能低下が原因の貧血の場合は、目立った特徴は見られません。 参考文献 (文献1) 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「貧血の原因は?」国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターホームページ https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/11.html (最終アクセス:2025年4月16日) (文献2) 大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座「鉄欠乏性貧血のはなし」大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座ホームページ https://www.med.oita-u.ac.jp/syuyou/ida.html (最終アクセス:2025年4月16日) (文献3) 張替秀郎「鉄代謝と貧血」『日本内科学会雑誌』107(9), pp.1921-1926,2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/9/107_1921/_pdf (最終アクセス:2025年4月16日) (文献4) 鶴屋和彦,平方秀樹「慢性腎臓病と貧血」『日本内科学会雑誌』104(7), pp.1414-1424,2015年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/7/104_1414/_pdf (最終アクセス:2025年4月16日)
2025.04.30 -
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- 肘関節
- スポーツ外傷
「練習後にいつも肘の外側が痛む」 「思い切りボールを投げられない」 日々野球に打ち込む中で、肘の外側に違和感はありませんか。その症状は、野球肘かもしれません。 野球肘とは、投球動作によって引き起こされます。野球肘の主な原因は、オーバーユースや投球フォームの乱れにあります。本記事では、外側が痛む野球肘について解説します。 外側が痛む野球肘の原因 外側が痛む野球肘の治し方 外側が痛む野球肘を治す方法 外側が痛む野球肘を再発させないための予防法 野球肘は適切な治療と予防策をしっかり守れば、改善する症状です。外側が痛む野球肘の症状でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。 外側が痛む野球肘の原因 野球肘(外側)は、投球動作の繰り返しによって肘の外側にストレスがかかることで発症します。 とくに成長期の段階は、骨や軟骨が未発達なため、損傷を起こしやすいのも特徴です。野球肘で外側が痛む原因は以下の3つです。 不適切な投球フォーム オーバーユース(使いすぎ) 成長期の骨・関節の未成熟 野球肘(外側)の原因を解説します。 また、野球肘が野球以外のスポーツでも発症する可能性ついて解説した参考記事もあわせてご覧ください。 不適切な投球フォーム フォームの種類 動作の特徴 肘への影響 肘下がりのフォーム 投球時に肘が肩よりも下がる 肘の外側に過度な外反ストレスが加わる 手投げのフォーム 下半身や体幹を使わず腕だけで投げる リリース時に肘関節へ瞬間的な高負荷 体の開きが早いフォーム 上半身が先に開くことでリリースが不安定になる 腕のしなりが失われ、肘が遅れて出てくる ステップ不足のフォーム ステップが小さい、動きが止まる、前足が早く着地する 上半身主導になり肘が遅れて出る (文献1) 肘に過度な負担をかける投球フォームは、野球肘(外側)を引き起こす原因です。手投げになる、肘が下がるフォームなどは、肘の外側の小さな骨や軟骨に繰り返し牽引力や圧迫力を生じさせます。フォームの歪みが長年積み重なることで、損傷が蓄積し、肘の違和感として現れます。 予防には、指導者による適切なフォーム指導や、自身のフォームを見直すことが大切です。 オーバーユース(使いすぎ) 試合や練習での投球過多は、肘関節に繰り返しダメージを与え、野球肘を引き起こします。疲労が蓄積すると組織が回復しきれず、炎症や損傷の負担を増加させます。 とくに、投球数や練習時間の管理が不十分な場合、野球肘を引き起こしやすくなるため、注意が必要です。オーバーユースを防止するには、投球数の制限(1日70球程度など)や、ウォーミングアップ・クールダウンの時間を設けることが大切です。 成長期の骨・関節の未成熟 項目 内容 原因部位の特徴 成長期の骨には骨端線(成長軟骨)があり、ストレスに弱い構造をしている 成長期のリスク 骨端軟骨は未成熟で、機械的ストレスに対して脆弱 野球肘(外側)との関連 投球による圧迫で上腕骨小頭に微小骨折や血流障害が起き、離断性骨軟骨炎を発症しやすい 成長期の段階では、骨や関節が完全にできあがっていないため、強い力が加わると損傷を起こしやすくなります。この時期に過度な負荷がかかると、骨端線と呼ばれる成長軟骨帯を損傷し、野球肘を発症する原因になります。 野球肘を引き起こさないためにも、年齢や発育に応じた投球管理が大切です。 外側が痛む野球肘の治療方法 治療法 内容 特徴・ポイント 適応されるケース 保存療法 安静、投球中止、装具の使用などで自然回復を目指す 体への負担が少なく、多くの初期症状に対応できる 軽症~中等症、骨に大きな損傷がない場合 薬剤療法 炎症や違和感を抑える薬(消炎鎮痛薬など)を使う 違和感を和らげ、回復をサポートする補助的な治療 違和感が強いとき、保存療法と併用されることが多い 手術療法 損傷した骨・軟骨を除去、骨片の固定、関節鏡手術など 根本的な修復が必要な場合に有効だが、リハビリが必要 保存療法で改善しない中等度〜重症の場合 再生医療 自己由来の幹細胞やPRPを用いて組織の再生を促す治療 身体への負担が少なく、回復力を高める治療法 手術を避けたいケースや、早期復帰を目指す場合 野球肘(外側)は、症状に合わせた適切な治療が求められます。野球肘の症状が重度の場合、手術を行うケースもあります。 外側が痛む野球肘の治し方は以下の4つです。 保存療法 薬剤療法 手術療法 再生医療 野球肘(外側)の治療法について解説します。 以下の記事では肘のクリーニング手術について詳しく解説しています。 保存療法 治療の目的 治療方法 内容・ポイント 炎症の抑制 安静 投球中止や日常生活での肘の使用制限。負担を避けることで炎症を抑える アイシング 1回15〜20分、1日数回の冷却で腫れ・違和感を軽減。投球後や違和感が強い時に有効 薬剤療法 NSAIDsなどの消炎鎮痛薬を医師の指示で服用する。炎症と違和感をコントロール 組織の修復 安静(継続) 靭帯や軟骨の自然回復を促す。違和感が取れるまでは無理な動作を避ける 機能回復 リハビリテーション 肘周囲の筋力・柔軟性を高め、再発予防。専門家の指導で段階的に進める 装具療法 サポーターやテーピングで肘を固定・安定化。運動中や回復期に使用する 初期の野球肘(外側)に対しては、保存療法で症状の改善を目指します。野球肘(外側)の治療は、安静、アイシング、リハビリ(ストレッチ・筋トレ)、投球フォーム修正などを、違和感の程度や状態に合わせて組み合わせて行います。 リハビリは自己判断せず、違和感が再発した場合は、すぐにリハビリを中止し、医師に相談してください。 薬剤療法 項目 内容 ポイント・補足 治療の目的 違和感の緩和 炎症や違和感を抑え、日常生活やリハビリをスムーズに進めるために使用 炎症の抑制 組織の回復を促進し、治癒までの時間を短縮する効果 薬剤の種類 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) 内服・塗り薬・湿布など(例:ロキソプロフェン、ジクロフェナク) ステロイド注射 炎症が強い場合に使用。効果は高いが副作用リスクあり(関節内注射など) ヒアルロン酸注射など 関節の滑らかさを保ち、痛みを和らげる補助的な治療法 注意点 根本的な治療ではない 薬だけでの完治は難しく、投球フォームの改善や休養が不可欠 副作用の可能性 胃腸障害やアレルギーなど。自己判断での使用は避ける 医師の指示が必須 症状に応じた薬の選択が重要。医療機関で診察を受けること 違和感が強く出る場合には、炎症を抑えるための外用薬や内服薬が用いられることがあります。 しかし、薬剤療法はあくまで症状を緩和するためのものであり、根本的な治療ではありません。副作用が出る可能性もあるため、医師の指導のもと、薬を服用しましょう。 手術療法 項目 内容 補足・ポイント 手術療法の位置づけ 原則は保存療法が優先される 症状が軽度~中等度なら、まずは安静・アイシング・リハビリで経過をみる 保存療法で改善が見られない場合に手術を検討 とくに骨軟骨が損傷している場合や関節内に遊離片がある場合 手術が必要となる原因 離断性骨軟骨炎の進行 剥がれた骨軟骨が関節内で動き、引っかかりや痛みを引き起こす 骨軟骨の損傷 投球による負荷で軟骨が損傷し、自然治癒が難しい状態になる 手術法 関節鏡手術 関節内を小さなカメラで確認しながら遊離片の除去や修復を行う。傷が小さく回復も早い 骨軟骨移植術 広範囲の損傷に対して、自身の骨軟骨を別部位から移植して再建する方法 保存療法で症状が改善しない場合は、手術療法が検討されます。野球肘(外側)の手術では、剥離した骨片や軟骨片の摘出、損傷した靭帯の修復といった処置が行われます。 手術療法は、後遺症や感染症のリスクを伴う可能性があるため、治療を選択する際には医師との十分な相談が不可欠です。(文献2) 再生医療 患者自身の血液や骨髄由来の成分を患部に注入し、組織の修復を促進します。再生医療は、従来の治療法と比較して、薬の副作用が少ない、あるいは手術に伴うリスクを軽減できる利点があります。 現時点では、再生医療を提供できる医療機関は限られているため、再生医療を検討している方は、再生医療を取り扱っている医療機関での受診が必要です。 以下では再生医療について詳しく解説しています。 外側が痛む野球肘を早く治す方法 医師の指導に従いながら、適切に肘のケアを行うことは、治療効果を高める上で大切です。 野球肘(外側)を治す方法は以下の4つです。 安静期間を守る アイシングを行う 適度なリハビリを行う 投球フォームを見直す 野球肘を治す方法について解説します。 安静期間を守る 効果 内容 補足・ポイント 炎症の悪化を防ぐ 肘の使いすぎで生じた炎症を悪化させないために安静が必要 炎症を悪化させないためには安静が必要。違和感が軽減しても内部の炎症は残っていることが多く、早期復帰は再発リスクを高める 組織の修復を促進 靭帯や軟骨、骨などの損傷した組織が自然に回復する時間を確保 動かし続けると修復が遅れ、治療期間が長引く可能性がある 慢性化を防ぐ 十分な休養を取ることで、症状の長期化や重症化を防げる 放置すると慢性痛や可動域制限に進行し、手術が必要になるケースも 違和感を無視して投げ続けると、炎症や損傷が悪化し回復が長引く可能性があります。安静期間を守ることで、炎症が悪化するのを防ぎ、組織の修復を促します。 違和感が治まるまでの間は、投球練習や肘に負担のかかる動作は避けるべきです。焦らず身体を休ませ、復帰時期は医師と相談し、指示に従うようにしましょう。 アイシングを行う アイシングの手順 内容 ポイント・注意点 手順1.用意するもの 氷または保冷剤、薄手のタオル、タイマー 保冷材は凍結しすぎないものが望ましい(冷却ジェルなども可) 手順2.氷を包む 氷や保冷剤をタオルで包む 凍傷を防ぐために直接肌に当てないようにする 手順3.肘の外側にあてる 違和感や腫れがある部分を中心に冷やす 肘の外側(外側上顆〜関節周囲)を広く覆うようにあてる 手順4.時間を計る 1回15〜20分を目安に冷却 長時間の冷却は避ける。間隔を空けて1日数回行う 手順5. 使用後のケア 肌の状態を確認し、赤みや感覚異常があれば中止 湿布など他の冷却法との併用は医師の指示に従う 患部の違和感や炎症を軽減するには、冷却処置であるアイシングが効果的です。練習後や入浴後など、肘に熱感があるときに行います。 冷やしすぎると凍傷の恐れがあるため、タオルを巻いた氷嚢などを使い、違和感のある部分を冷やします。 冷却は1回につき15〜20分を目安に行い、無理のない範囲で、やさしく冷やすことが大切です。 適度なリハビリを行う 効果の観点 内容 ポイント・補足 機能回復と柔軟性向上 関節や筋肉の硬さを防ぎ、肘の動きをスムーズに保つ 早期復帰を目指すために、安静だけでなく積極的な可動域訓練が必要 筋力低下の防止・再発予防 肘周りの筋力を維持・強化し、再発リスクを減らす 長期間の安静後は、段階的な筋トレが再発防止に重要 違和感のコントロールと回復促進 軽い運動で血流を促し、組織の修復を助ける ストレッチや軽負荷の運動で症状を悪化させずに進められる 投球フォームの改善 誤ったフォームを修正し、肘への負担を減らす 医師の指導のもと、再発防止につながる正しいフォームを習得 違和感がある程度改善した段階で、医師の指導のもと、段階的にリハビリを進めていきましょう。リハビリでは、肘周りの柔軟性を取り戻すストレッチや、違和感がでない範囲での軽い筋力トレーニングを実施します。 無理のない範囲で徐々に運動強度を上げていくことが大切です。リハビリは自己流ではなく、医師の指示に従いながら行いましょう。 投球フォームを見直す 期待できる効果 内容 ポイント・補足 肘への負担軽減 誤ったフォーム(肘下がり・手投げ)は外側に過度な負荷をかける 正しいフォームで全身の力を使うことで、肘の負担が大幅に軽くなる 早期回復と再発予防 症状が治っても誤ったフォームでは再発リスクが残る 原因そのものを見直すことで改善を目指す 全身のバランス改善 肘だけでなく肩・体幹・下半身の連動が大切 フォーム改善により全身の動きがスムーズになり、肘の負担を分散できる 投球パフォーマンス向上 肘の負担を減らしながら球速やコントロールが向上 怪我を防ぎつつ、より良い投球フォームが身につく 誤ったフォームでの投球は肘へ負荷をかけるだけでなく、症状を再発させる恐れがあります。フォームは自分だけでは改善しにくい部分が多く、医師や指導者のアドバイスが不可欠です。 正しいフォームを身につけることで、改善後の再発を防ぐだけでなく、投球パフォーマンスの向上が期待できます。 外側が痛む野球肘を再発させないための予防法 再発防止には、日頃の投球環境や身体の状態を整えることが欠かせません。野球肘(外側)の症状を再発させないための予防法は以下の7つです。 正しい投球フォームの習得 投球数の制限と適切な休息 ウォーミングアップとクールダウンの徹底 筋力トレーニングとストレッチを怠らない 栄養と休養をしっかり取る 定期的なメディカルチェックを受ける 投球後のアイシングを怠らない 以下では、外側が痛む野球肘を再発させない方法をくわしく解説します。 正しい投球フォームの習得 項目 内容 期待できる効果 肘の位置が肩と同じ高さ以上 投球時、肘が肩より下がらないようにする 肘下がりを防ぎ、外側へのストレスを軽減 体幹の回旋を使う 腕だけで投げず、体幹をひねって投げる 肘の負担を分散し、全身の力で投げられる 下半身主導のフォーム 踏み出し足で地面を蹴り、腰を先行させて投げる 手投げを防ぎ、肘の過負荷を防止 ステップの幅を確保 ステップが小さすぎないようにする 軸足のパワーを十分に使えて肘に負担がかかりにくい リリース時の肩・肘・手の連動 肩→肘→手の順に、自然な連動意識が大切 肘に不自然なねじれが加わらず、損傷リスクを低減 柔軟性の確保 肩・股関節・胸郭の柔軟性を高める スムーズなフォームの維持と筋肉疲労の予防 (文献1)(文献3) 野球肘を再発させないためには、正しい投球フォームの習得が不可欠です。重要なのは、肘を肩より下げない、肘下がりの防止です。肘下がりは肘の外側に大きなストレスがかかり、再発リスクが高まります。 ステップの幅やリリース時の肩・肘・手のスムーズな連動も大切な要素であり、肩や股関節、胸郭の柔軟性を高めることでスムーズな動作ができるようになります。体の軸を意識し、下半身の力を十分に伝えるフォームを習得すれば、肘への負担を軽減できます。 投球数の制限と適切な休息 過度な投球は肘へのストレスを与える原因になります。肘へストレスを与えないためにも投球制限と適切な休息を取ることが大切です。 とくに成長期の連投や過度な練習は、未発達な肘に大きな負担をかけます。連日の投球は避け、身体のサインを見逃さないことも再発防止につながります。 ウォーミングアップとクールダウンの徹底 分類 目的 内容 期待できる効果 ウォーミングアップ 筋肉・関節の準備 軽い運動で身体を温め、関節の可動域を広げる 肘や肩を動かしやすくし、怪我を防ぐ 血流の促進 全身の血行をよくする 酸素や栄養が筋肉・腱に行き渡り、負担を軽減 神経系の活性化 動作の反応や協調性を高める 投球フォームの安定につながり、再発予防になる クールダウン 疲労物質の除去 軽い運動やストレッチで血流を促す 疲労回復を早め、筋肉痛や炎症を防ぐ 筋肉の柔軟性維持 運動後のストレッチ 筋肉の硬化を防ぎ、次回の投球もスムーズに行える 炎症の抑制 アイシングなどで局所を冷却 肘関節の炎症を抑え、損傷の進行を防ぐ (文献4)(文献5) 練習前には、全身の筋肉を温め、関節の可動域を広げるウォーミングアップを丁寧に行いましょう。また、練習後には、クールダウンとしてストレッチや軽い運動を実施し、筋肉の疲労回復を促すことで、野球肘の防止につながります。 ウォーミングアップとクールダウンは、毎回忘れずに徹底しましょう。 筋力トレーニングとストレッチを怠らない 分類 目的 内容 期待できる効果 筋力トレーニング 肘や肩周りの安定性強化 チューブを使った肩のインナーマッスル強化(ローテーターカフ)前腕の回外・回内筋の筋トレ 投球時に関節を安定させ、肘への過剰な負荷を防ぐ 体幹の強化 プランク、ヒップリフトなどの体幹トレーニング 下半身~上半身の力の伝達をスムーズにし、手投げフォームの防止 下半身の強化 スクワット、ランジ、カーフレイズ 投球のパワー源を腕に頼らず、下半身から生み出すことで肘の負担を軽減 ストレッチ 柔軟性の向上 肩関節・胸郭・前腕・手首の静的ストレッチ 可動域を広げ、無理のないスムーズな投球動作を促す 疲労回復と再発予防 投球後のリカバリーストレッチ(上腕三頭筋、前腕伸筋群) 投球による慢性負荷の蓄積を防ぐ (文献6) 肘周りだけでなく、肩や体幹の筋力強化は、投球動作の安定性を高め、肘への負担を軽減します。筋肉や腱の柔軟性が低下すると、投球時に肘にかかる負担が増大し、野球肘を引き起こす原因になります。 筋力低下を防ぐため、医師の指示に従い、筋トレやストレッチを継続的に行いましょう。 以下の記事では、野球肘におすすめのストレッチ方法を解説しております。 栄養と休養をしっかり取る 項目 内容 具体例・補足 バランスの取れた食事 組織修復と体づくりに必要な栄養を摂る タンパク質(鶏むね肉・卵)炭水化物(ごはん・バナナ、脂質(ナッツ・アボカド)ビタミン類(緑黄色野菜・牛乳) 十分な睡眠 成長と回復を促すホルモンの分泌を助ける 7〜8時間睡眠、就寝前のスマホは控える、入浴・ストレッチでリラックス 水分補給 血流・代謝を保ち、炎症を防ぐ 運動前後に水やスポーツドリンクをこまめに飲む、のどが渇く前に補給 バランスの取れた食事と十分な睡眠は、骨や筋肉の成長、疲労回復に不可欠です。偏った食事や睡眠不足は、身体の回復力を低下させるだけでなく、怪我のリスクを高める原因になります。 とくに成長期は骨や筋肉が発達する重要な時期であるため、たんぱく質やカルシウムなどの栄養素をしっかり摂り、睡眠時間の確保が大切です。 定期的なメディカルチェックを受ける メディカルチェックを受ける目的 期待できるメリット 補足 早期発見・早期治療 自覚症状が出る前に、異常を見つけられる 画像検査(レントゲン・エコー)や触診で、関節の異常や初期炎症を早期発見が可能 重症化を防ぎ、早期の競技復帰が期待できる 状態に応じた保存療法・リハビリを早期に開始できる 再発リスクの軽減 肘の状態だけでなく、柔軟性・筋力・フォームの問題もチェックできる 肘に負担がかかるフォームや体の使い方の改善指導が受けられる 投球動作全体を見直す機会になり、再発を予防できる フォーム改善はパフォーマンス向上にも直結する (文献6) 無症状でも関節や軟骨に損傷が起きていることがあります。また、野球肘と診断された後も定期的にメディカルチェックを受けることで、症状の悪化や再発リスクを軽減できます。 また、成長期の段階は、骨や軟骨が未発達なため、野球肘(外側)を発症しやすいため、メディカルチェックで適切な投球制限やトレーニング指導を受けることが大切です。 症状改善後も、メディカルチェックで肘、柔軟性、筋力、投球フォームを定期的に確認し、再発予防に努めましょう。 投球後のアイシングを怠らない アイシングの目的 期待できる効果 補足 炎症の抑制と違和感の軽減 血管を収縮させて炎症を抑え、違和感を軽減 投球による微細な損傷の広がりを防ぎ、回復を早める 疲労回復の促進 筋肉や腱の緊張を緩和し、疲労をリセット 肘の柔軟性を保ち、翌日の投球への負担を軽減 組織修復の促進 損傷した組織の修復を助ける 回復力を高め、再発予防につながる アイシングは、血管を収縮させて炎症を抑え、違和感を抑え、回復を助けます。筋肉や腱の緊張を緩和し、疲労回復を促します。 投球後のアイシングは、野球肘の予防・治療において欠かせないケアです。アイシングを行う際は、凍傷に注意し、長時間の冷却や強い冷却は避けましょう。 外側が痛む野球肘は放置せずに専門医にご相談ください 投球時の肘の違和感は、野球肘(外側)の可能性があります。放置すれば、症状は進行し、プレーを続けるのが困難になるだけでなく、日常生活に支障をきたす恐れがあります。症状が悪化する前に早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、野球肘の症状に対して、幹細胞を活用した再生医療を提供しています。改善しない野球肘の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 「野球肘」『手外科シリーズ』, pp.1-2 https://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/18yakyu.pdf(最終アクセス:2025年4月12日) (文献2) 公益財団法人 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる「術後感染症」」公益財団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/postoperative_infection.html(最終アクセス:2025年4月12日) (文献3) 富田一誠,渡邊幹彦「成長期投球障害予防に関する日本野球協議会の取り組み」『第30回日本臨床スポーツ医学会学術集会』, pp.1-3,2020 https://www.rinspo.jp/journal/2020/files/28-3/420-422.pdf(最終アクセス:2025年4月12日) (文献4) 荒井秀典ほか.「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(案)」『健康づくりのための身体活動基準・ 指針の改訂に関する検討会』, pp.1-46, 2023年 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf(最終アクセス:2025年4月12日) (文献5) 「5章 部活動中における健康面での留意事項」, pp.1-19, https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kyoiku/guideline_06(最終アクセス:2025年4月12日) (文献6) 山根将弘ほか.「スポーツにおけるけがの予防野球肘検診の取り組み」『特集 輪・和・話』, pp.1-4, 2020年 https://www.town.tobetsu.hokkaido.jp/uploaded/attachment/14974.pdf(最終アクセス:2025年4月12日)
2025.04.30 -
- 肘関節、その他疾患
- 肘関節
肘外側側副靭帯損傷とは、肘関節の外側にある靱帯が傷つき、痛みや不安定感が現れる状態を指します。原因や治療法がわからず、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。 本記事では肘外側側副靭帯損傷の症状や原因、治療法についてわかりやすく解説します。簡単にできるセルフチェック方法も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。 肘外側側副靭帯とは 肘外側側副靭帯(ひじがいそくそくふくじんたい)は、肘関節の外側に位置し、輪状靱帯とともに橈骨(とうこつ)を包み込むように支えている靱帯の総称です。 重いものを片手で持ち上げたり、腕をひねったりすると、肘には多方向からの負荷がかかります。肘外側側副靭帯の役割は多方向からのストレスに抵抗して肘関節を安定させることです。 なかでも、外側尺側側副靱帯(がいそくしゃくそくそくふくじんたい)は重要な部分で、肘の外側から後ろ側を支える位置にあります。外側尺側側副靱帯が損傷すると、関節が不安定になるリスクも少なくありません。 肘外側側副靭帯損傷の症状 肘外側側副靭帯を損傷すると、肘だけでなく肩や腕にも痛みが広がる場合があります。とくに、肩の前側から二の腕に症状が出るケースがほとんどです。 以下で、軽度から重度までの症状を解説します。 軽度から重度までの症状 肘外側側副靭帯損傷には、靱帯が少し伸びている程度のものから、完全に断裂してしまう重度のものまでさまざまな段階があります。 以下に、主な症状の例を重症度ごとにまとめたので、参考にしてください。 損傷の程度 症状 軽度(靱帯が軽く伸びた状態) 肘を伸ばしたまま荷物を持ち上げたときに痛む 手を後ろに回す動作で痛む ボールを投げるときに痛む 動いていなくても肩の前側がジンジンする 中度(靱帯が部分的に断裂している状態) 肘を動かすと関節がぐらつく感覚がする 肘に強い痛みがある 重度(靱帯が断裂している状態) 力こぶの位置が肘の近くに寄っている 反対の腕と比べて力こぶの位置がずれている 肘に激しい痛みがある 痛みの感じ方や肘の不調は人によってそれぞれ異なります。軽度の症状に見えても、自己判断せず早めに医師に相談しましょう。 自分でできる症状チェックの方法 肘の痛みや違和感が気になる方は、以下の項目をチェックしてみてください。複数当てはまる場合は、肘外側側副靭帯の損傷が起きている可能性があります。 症状の種類 具体的なチェック項目 動かしたときの痛み 肘を伸ばしたまま力を入れると痛む 手を背中側に持っていくと痛む 腕を振る動作で肘が痛む 押したときの痛み、腫れ 肘の外側を押すと痛む 肘の外側が腫れている 安静時の痛み 肩の前側から二の腕にかけてうずくように痛む 動いていなくても肩の前側に鈍い痛みがある 不安定感、筋肉の異常 肘の関節にぐらつくような不安定感がある 力こぶの位置が左右で異なっている 気になる症状が続くときや、普段の生活で不便を感じる場合は、早めに病院に行きましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。肘の痛みが気になるときはお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肘外側側副靭帯損傷の原因 肘外側側副靭帯損傷の原因には主に以下の2つがあります。 転倒や外傷によるダメージ 肘への過度な負担 以下で、それぞれ見ていきましょう。 転倒や外傷によるダメージ 転倒した際に手をついてしまい肘に力が加わり、肘外側側副靭帯を損傷してしまうケースがあります。または、肘を直接ぶつけてしまったり、交通事故で肘に怪我を負ってしまったりして損傷するのも一例です。 事故や転倒によって靱帯が引き伸ばされ、無理なひねりが加わると損傷が生じる可能性があります。 肘に強いストレスが加わると、意図せず靱帯に大きな負担がかかるため注意が必要です。 肘への過度な負担 肘外側側副靭帯損傷の原因のもう一つは、野球やテニスなどのスポーツによる肘への過度な負担です。肘の一部分に慢性的に強い力やひねりなどの負担がかかると、靱帯を損傷してしまうケースも少なくありません。 無理なフォームでプレイを続けたり、肘を使いすぎる状態が続くと肘外側側副靭帯に負担をかけ、損傷につながる恐れがあります。 靱帯への負担を減らすために、適度な休養やセルフケアを心がけることが大切です。 肘外側側副靭帯損傷のリハビリ・治療方法 肘外側側副靭帯の損傷を治療するには主に、リハビリやギプスによる固定などの保存療法や手術療法、再生医療があります。 以下でそれぞれ詳しく解説しますので、治療法に悩んでいる方は参考にしてください。 保存療法 軽度の靱帯が軽く伸びた状態の症状があるときには、まずは保存療法で治療を行います。保存療法には冷湿布や包帯による圧迫処置、リハビリなどの方法があります。 軽度の靱帯損傷では、保存療法が選ばれることがほとんどです。 以下に、代表的な保存療法の内容をまとめました。 保存療法の種類 内容・目的 冷湿布 炎症や痛みを抑える 包帯による圧迫処置 腫れを抑え、肘を安定させる ギプス固定 関節の動きを制限し、靱帯の回復を促す リハビリ 可動域や筋力を回復させる いずれの方法も、医師の判断のもとで正しく治療することが大切です。 手術療法 靱帯の損傷が重度で肘関節が安定しない場合には、手術が選択されるケースがあります。保存療法では改善が難しいケースや、自然な回復が見込めない状態だと、外科的な処置が選ばれる場合も少なくありません。 手術では、切れた靱帯を縫い合わせたり、剥がれた部位を固定したりします。術後は一定期間固定して、そのあと肘の可動域、筋力を回復するためにリハビリを行うことが一般的です。 再生医療 肘外側側副靭帯の損傷では、保存療法や手術以外に再生医療と呼ばれる新しい治療法も選択肢の一つです。再生医療には、自分の脂肪から取り出した幹細胞を使って損傷した組織の回復を促す幹細胞治療や、血液を使ったPRP療法などがあります。 薬やリハビリでも効果が出にくいときに検討される治療で、手術のように体への負担が大きくない点も特徴です。 再生医療の具体的な治療法や症例については、以下のページで詳しく解説しています。 また、本院ではメール相談やオンラインカウンセリングを行っております。お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肘外側側副靭帯損傷の診断方法 ここでは、肘外側側副靭帯損傷の診断方法について解説します。診断方法は大きく分けて下記の2つです。 ストレステストによる診断 画像による診断 それぞれ、診断方法の特徴を確認しましょう。 ストレステストによる診断 損傷の診断方法の一つにストレステストがあります。ストレステストとは、肘に負荷をかけながら、靱帯がしっかり働いているか、関節が安定しているかを確認する検査です。 関節にぐらつきや不安定性が認められた場合は、靱帯損傷の可能性があると診断されます。 無理に動かすと症状を悪化させるおそれがあるため、専門医の診察を受けることが大切です。 画像による診断 肘外側側副靭帯の損傷を診断するために、主にレントゲンやストレスレントゲン、MRIの3つの画像検査が用いられます。 検査名 特徴・目的 レントゲン 骨折や脱臼の有無を確認する ストレスレントゲン 力を加えた状態で撮影し、靱帯損傷による関節の不安定性を評価する MRI 靱帯や筋肉などの損傷を詳しく確認できる レントゲンでは靱帯の損傷がわかりづらく、正確に診断するのが困難なケースもあります。肘の痛みやぐらつきなどの自覚症状がある場合は、MRI検査も視野に入れて医師に相談するとよいでしょう。 肘外側側副靭帯損傷の症状や治療法を理解し適切に対応しよう 肘外側側副靭帯損傷の症状は軽度から重度まであります。痛みの度合いによって治療法も異なるため、自身の症状を正しく理解することが重要です。 症状が軽い場合は湿布や圧迫包帯の処置で緩和されるケースもありますが、自己判断せずに必要に応じて医師に相談してみてください。 肘に痛みや違和感を感じたら、無理をせず安静にし、日ごろから肘に負担をかけないように心がけましょう。
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「最近、お腹のハリや便通の変化が気になるけど、忙しいし、年齢的にもまだ大丈夫だろう」。そう思ってスルーしていませんか? 大腸がんは現在、日本人の罹患率・死亡率ともに高い主要ながんの一つです。若い世代での発症も増加傾向にあり、2018年時点で男性の死亡原因第3位、女性では第1位となっています。(文献1) ただし、がんの進行速度は一律ではなく、年齢、がんのタイプ、生活習慣、遺伝的背景などによって進み方は人それぞれです。 本記事では、年代別にみた大腸がんの進行速度の特徴、速度を左右する主な要因、そして早期発見・治療のポイントを解説します。 不安を感じている方も、知れば怖くなくなるように大腸がん対策の第一歩として、ぜひ最後までお読みください。 年代別に見る大腸がんの進行速度や特徴について 大腸がんは全年代で発生し得ますが、年代によって発症しやすさや進行の速さに特徴的な傾向があります。基本的には年齢そのものよりもどんなタイプのがんか(悪性度)が進行速度を左右します。 しかし結果的に年代ごとに進行パターンに違いがみられるケースもあります。ここでは若年層・中年層・高齢者それぞれの年代について、大腸がんの進行速度や特徴を見ていきましょう。 若年層(30代)の進行速度と特徴 若い世代での大腸がん発症は多くはありませんが、近年増加傾向にあります。実際、数十年前と比べると若年者(50歳未満)の大腸がんリスクは約3倍に上昇し、現在の30代のリスクは数十年前の50代と同程度とも言われています。(文献2) この背景には食生活の欧米化や運動不足など生活習慣の変化が影響していると考えられます。若年層の大腸がんでは、進行が速く転移しやすいタイプの大腸がんが発生しやすい傾向があります。 たとえば他のがん種の例ですが、胃がんなら分化度の低いタイプが30代など若い人にできやすいことが知られており、大腸がんでも若年発症例では進行の早いものが見られることがあります。 また、日本では大腸がん検診は通常40歳以上を対象としており、30代以下では定期検診の機会が少なくなりがちです。その結果、自覚症状が出にくい早期の段階では発見されず、症状が出てから受診した時には進行がんに至っているケースもあります。 実際に30代の大腸がんは初期症状が乏しく、腹痛や便通異常、血便などの明らかな症状は進行してから現れることが多いです。 まだ若いから大丈夫と思わず、家族に大腸がんの人がいる場合などリスクが高い方は、30代でも違和感を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 中年層(40~60代)の進行速度と特徴 40~60代は大腸がんの罹患が増えてくる年代です。とくに50代以降になると発症リスクが高まり、生活習慣病の蓄積や体の老化も相まって大腸がんが増えてきます。大腸がんの多くはポリープ(大腸粘膜のできもの)が徐々に大きくなってがん化するため、一般的には数年から十数年かけて進行するとされています。 したがって、この年代では早期発見・早期治療を行えば十分にがんの進行を抑え込めます。40代以上を対象とした定期的な大腸がん検診により早期の段階で発見できれば、内視鏡によるポリープ切除や外科手術で根治が期待できます。 働き盛りの世代でも決して悲観せず適切な治療を受けましょう。一方で、60代になると次第に免疫力が低下し細胞の修復力も落ちてくるため、同じタイプの大腸がんでも若い頃より進行が早まる可能性が指摘されています。 なぜなら、免疫の監視機能が弱まることでがん細胞の増殖を許しやすくなるためです。幸いこの年代は健康診断や人間ドックを受ける方も多く、検査で早期に指摘されれば治療開始も早くできます。 まとめると、40~60代は発症しやすくなる年代である分、検診などを活用して早期に発見しやすい年代と言えるでしょう。定期検診を怠らず、指摘を受けたら速やかに精密検査・治療につなげることで、大腸がんの進行を食い止められる可能性が高まります。 高齢者(70代~90代)の進行速度と特徴 高齢になるほど大腸がんの発症率は高まり、70代以降での診断例が突出します。背景には長年の細胞老化によるDNA損傷の蓄積、加齢や生活習慣病による免疫力低下があり、がん細胞を排除しにくくなる点が大きいと考えられます。 ただし高齢者の大腸がんが必ずしも急激に悪化するわけではなく、比較的おとなしい高分化型が出やすいとの報告もあります(文献6)。 一方、発生部位は右側の上行結腸に偏りやすく、血便など自覚症状が乏しいため気付いたときには進行期になっているケースが目立ちます。加えて高血圧・心疾患・糖尿病などの併存症が多く、手術や抗がん剤の適応に制限が生じやすいことも進行を許す要因となっています。 したがって70代以降でも便潜血検査を年1回行い、陽性なら必ず内視鏡で精査が欠かせません。体調に違和感があれば年のせいと済ませず受診し、治療方針は体力に合わせて腹腔鏡手術や低用量抗がん剤、免疫療法など負担の少ない選択肢を医師と検討しましょう。 大腸がんの進行速度が変わる理由 大腸がんの進行速度には個人差があり、いくつもの要因が絡み合っています。では具体的にどのような理由で進行の速さに差が出るのでしょうか。 主な理由として、生活習慣(食事内容や運動習慣)の違い、遺伝的素因や免疫力、基礎疾患(合併症)の有無が挙げられます。ここではこれらのポイントについてもう少し詳しく見てみましょう。 生活習慣・食事・運動不足の影響 脂肪や赤身肉中心の“欧米型”食は大腸がんリスクを押し上げます。若年発症例の増加要因として飲酒・喫煙や加工肉の過剰摂取、運動不足と肥満。抗生物質乱用による腸内細菌バランスの崩れが報告されています。逆に定期的な運動、野菜・果物の食物繊維やカルシウムの十分な摂取は発症リスク低減に有効です。 つまり高脂肪食と過度の飲酒・喫煙を控え、野菜を増やし、毎日よく動くことが予防策です。とくに若年層は生活習慣の影響が大きいため、将来の進行がんを防ぐ第一歩として早めの改善が重要です。 遺伝・免疫力・合併症リスク 大腸がんは家族歴があると発症リスクが上昇します。代表例がリンチ症候群で、若年発症かつ生涯で約80%が大腸がんになると報告されています。多発・多臓器発がん、進行の速さが特徴で、半年ごとの内視鏡検査が推奨されます。 もう一つの遺伝性疾患家族性大腸腺腫症(FAP)では10代から多数のポリープが出現し、60歳までに90%ががん化するため予防的手術も選択肢となります。このように遺伝性大腸がんは発症年齢が若く進行も早いため、家族歴が多い場合は遺伝子検査や専門医に相談しましょう。 また、免疫機能も進行速度に影響します。体にはがん細胞を排除する免疫監視機構がありますが、加齢やストレス、糖尿病・ステロイド使用などで機能が低下するとがんの増殖を許しやすくなります。十分な睡眠と運動、バランスの良い食事は免疫維持に有効です。 さらに炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は長期炎症が粘膜に傷を作り発がんリスクを高めます。 肝硬変やコントロール不良の糖尿病など基礎疾患がある場合も全身の状態が悪化することによって、治療効果が下がり進行を許してしまいます。 合併症が多いと手術や抗がん剤が制限される点も見逃せません。このように遺伝と免疫力と基礎疾患が掛け合わさると、進行の速さを左右します。家族歴や持病がある方は定期検診を怠らず、違和感があれば早期に専門医へ相談しましょう。 早期発見とさまざまな治療法 大腸がんは早期に発見さえできれば、適切な治療で根治(完治)も十分に期待できる病気です。進行した大腸がんであっても、治療によって進行を遅らせたり症状を和らげられます。 ここでは主な検査方法と早期発見のメリット、そして大腸がん治療のアプローチについて解説します。とくに近年注目されている免疫細胞療法(体の免疫の力を利用した治療)や再生医療(幹細胞を利用した新しい医療)も含めた治療法について説明します。 主な検査方法と早期発見のメリット 大腸がん早期発見の入口は便潜血検査です。便中の微量出血を調べるだけで痛みがなく低コスト、40歳以上は年1回実施が推奨されています。陽性時は大腸内視鏡検査へ進み、粘膜を直接観察しつつポリープや早期がんをその場で切除できます。 便潜血検査と内視鏡の組み合わせは死亡率を有意に下げることが複数の研究で確認され、日本老年医学会の大腸がん予防ガイドラインでも年1〜2回の受検が強く勧められています。(文献4) 大腸がんは早期発見、早期治療が現状一番の解決策です。 がんが粘膜内にとどまる早期がんなら、内視鏡切除や局所手術で5年生存率は約90%。一方、遠隔転移を伴うステージⅣでは約20%まで低下し、早期か進行期かで明暗がわかれます。(文献5) 小さな腫瘍なら開腹せずに治療でき、切除範囲も狭く体への負担が軽いのも利点です。さらに大腸がんの約8割は良性ポリープが出発点とされ、ポリープ段階で取り除けばがんそのものを起こさせない究極の予防になります。 ポリープががん化するまでには数年〜10年程度余裕があるため、定期的に内視鏡を受けて発見して切除できれば、大腸がんで命を落とす確率は大幅に減らせます。 大腸がんの治療アプローチ(免疫療法など) 大腸がん治療の柱は手術・抗がん剤・放射線の三大療法で、早期なら手術のみ、進行例では手術と抗がん剤、直腸がんでは放射線も加える組み合わせが標準です。腹腔鏡手術や副作用対策の進歩で、高齢者や通院治療の負担も軽減されています。(文献4) 免疫療法では、がん細胞のブレーキ信号を外して免疫を活性化させる免疫チェックポイント阻害薬が遺伝子変異の多いタイプの大腸がんで保険適用となり、進行・再発例でも長期生存例が報告されています。 さらに光免疫療法は薬剤投与後に特定の光を当て、がん細胞だけを選択的に破壊する日本発の新技術として開発されており、今後の発展に期待が持てます。 また、患者自身のリンパ球を培養して戻す免疫細胞療法も一部で行われ、新しい治療法として注目を集めています。 当院「リペアセルクリニック」ではがん予防を目的とした免疫細胞療法を提供しております。 免疫細胞療法に関する詳細は、以下のページをご覧ください。 まとめ|大腸がんの進行速度はさまざまな要因で決まる!違和感を感じたら早期受診を 大腸がんの進行速度は人によって異なり、年齢やがんのタイプ、生活習慣、遺伝的素因、免疫力など実にさまざまな要因で決まります。若い人でも油断はできませんし、高齢だからといって必ずしも急激に悪化するわけでもありません。 それでも共通して言えるのは、早期発見・早期治療が最も有効な対策です。大腸がんは早く見つかれば高い確率で治せる病気ですので、仮に進行していても適切な治療で進行を遅らせられます。 普段からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、大腸に限らず検診の指摘や体調の違和感を軽視せずに、おかしいと思ったら年齢に関係なく早めに医療機関を受診しましょう。 皆さんにお伝えしたいのは、大腸がんは怖がりすぎず正しく恐れ、早期発見ができれば決して怖い病気ではありません。不安な気持ちがある方は一人で抱え込まず専門医に相談し、適切な検査と対策で大腸がんから自分自身を守っていきましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1)国立がん研究センター「がんの統計’18 図表編」2018年.https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2018_date_J.pdf.(最終アクセス:2025年4月29日) (文献2)Bailey CE, et al. (2015). Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States, 1975-2010. JAMA Surgery, 150(1), pp.17-22. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25372703/(最終アクセス:2025年04月29日) (文献3)Sung H, et al. (2024). Colorectal cancer incidence trends in younger versus older adults: an analysis of population-based cancer registry data. The Lancet Oncology, 26(1), pp.1-??.https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045%2824%2900600-4/fulltext?(最終アクセス:2025年04月29日) (文献4)田中秀典, 田中信治. 「高齢者の大腸がんの特徴と治療」『日本老年医学会雑誌』57(4), pp.423-430, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/57/4/57_57.423/_pdf (最終アクセス:2025年04月22日) (文献5)国立がん研究センター「大腸がん患者数統計」国立がん研究センター がん情報サービス,https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c02#h-title (最終アクセス:2025年04月22日) (文献6)Chou C-L, et al. (2011). Differences in clinicopathological characteristics of colorectal cancer between younger and elderly patients: an analysis of 322 patients from a single institution. American Journal of Surgery, 202(5), pp.574-582. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21872205/(最終アクセス:2025年04月29日)
2025.04.30 -
- 肘関節、その他疾患
- 肘関節
「肘が痛い、とくに外側がズキっとする......」そんなときの治し方がわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。 たとえば、手首をひねる動作で痛みを感じる場合、軽度であれば安静にすると回復する場合がほとんどです。 今回は、外側の肘が痛いときの治し方を痛みのレベル別にわかりやすく解説します。痛みを緩和するストレッチ方法や、よくある質問への回答も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 外側の肘が痛い原因 日常生活においてふとした瞬間に外側の肘が痛む理由には、主に以下の原因が考えられます。 テニス肘の可能性 テニス肘以外の疾患や原因がある可能性 以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。 テニス肘の可能性 外側の肘が痛いと感じたら、一番に疑われる原因は「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」です。テニスラケットを振る動作で、肘の外側を痛める人が多い理由から「テニス肘」と名付けられたといわれています。 テニス肘と呼ばれていますが、テニス経験がない方にも起こる可能性がある症状です。日々の動作のなかで、腕や肘に負荷がかかる状態が続くと、痛みを引き起こすおそれがあります。 テニス肘の症状や原因については、以下の通りです。 主な症状 手首を反らせたりひねったりする動作で、肘の外側から前腕まで痛みが出る パソコンのマウス操作を長時間続けると、手首や肘に痛みが生じる 症状が進行すると、動かさなくても肘が痛む 主な原因 腕を酷使すると肘の付け根部分(外側上顆)に負担がかかり、腱が傷つき炎症や痛みが生じると考えられている 加齢により筋力が低下し、肘の腱の強度も弱くなり発症しやすくなる 発症しやすい年齢 30~50代以降に多くみられる 肘は日ごろからよく使う部位なので安静が難しく、一度発症すると慢性化する例も珍しくありません。 肘の外側に痛みや違和感を感じた場合は、原因を見極めることが大切です。 テニス肘について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。 それ以外の疾患が原因の可能性 テニス肘だけでなく、他の疾患によって肘の外側に痛みが生じている、以下のケースもあります。 病名 症状 原因 変形性肘関節症 肘を動かすと痛む 肘の可動域が狭くなる 加齢や長年の肘の酷使による軟骨の摩擦 野球や建設作業による肘の酷使 骨折や転倒による外傷 橈骨近位端骨折(とうこつきんいたんこっせつ) 肘の痛みや腫れ 肘や前腕の筋力低下 スポーツや転倒、事故による外傷 橈骨神経症候群 肘の外側や前腕に鋭い痛み 手や指のしびれ 前腕の手首や腕を伸ばす筋肉による橈骨神経の圧迫 過度な前腕の使用 変形性肘関節症とは、関節への長年の負担によって肘の軟骨がすり減り、骨が変形する病気です。進行すると、肘の内側を走行する神経が圧迫され指のしびれが起こるケースも少なくありません。 また、橈骨神経症候群は、テニス肘と症状が似ており自己判断でテニス肘と誤解されるケースがあるため注意が必要です。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。外側の肘の痛みでお困りの方は、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 【レベル別】外側の肘が痛いときの治し方 外側の肘に痛みがある場合、主に以下のような治療・ケアが行われます。 過度な肘の使用を避け安静にする サポーターの活用やストレッチをする 日常生活に影響が及ぶようであれば、手術療法や再生医療を視野に入れる ここでは、痛みの強さに応じて軽度・中度・重度の症状をそれぞれ解説します。 【軽度】肘に違和感がある|安静にする 肘の外側に軽い違和感やハリ感、手を動かすとわずかな痛みを感じるときは無理をせずに腕を休めます。軽度の痛みだと、日ごろから腕の使い過ぎは控え、安静にすると痛みが和らぐケースがほとんどです。 安静にしても、痛みがひかないときは氷で10~15分ほど冷やします。アイシングは炎症や腫れを軽減させる効果が期待できます。 仕事中や何かの作業中に、肘に痛みや違和感が出始めたらこまめに休憩をとり腕を休ませましょう。 【中度】肘の痛みが続く|ストレッチやサポーターをつける 肘の痛みがなかなかおさまらない場合、ストレッチやサポーターを活用してみましょう。必要に応じて痛み止めの内服薬を併用すると、痛みの緩和が期待できます。 動いていないときでも違和感がある場合や、痛みが引かないときは中度の症状が疑われます。重たい荷物を持ったときに鋭い痛みが走ったり、握力が弱くなって物が持ちにくくなったりするのは、中度の症状の一例です。 ストレッチをすると前腕伸筋群を伸ばせるため、腕の痛みの緩和が期待できます。以下にストレッチ方法を紹介しますので、参考に行ってみてください。 右腕を伸ばして、左手で右腕を持つ 左手で右手首を手のひら側に曲げる 手首を曲げたままで、指も曲げる 反対側の腕も同じようにストレッチする それぞれ30秒を3セットずつ行う ストレッチは、痛みを感じたら無理に伸ばさないようにしましょう。 また、サポーターの装着もおすすめです。肘専用のサポーターを使うと、肘にかかるストレスを減らし痛みの軽減にもつながります。サポーターはきつく締めれば、より効果があるわけではないので締めすぎには注意が必要です。 【重度】日常生活に支障が出る|手術療法や再生医療を検討する 外側の肘の痛みが重症化した場合は、専門的なリハビリや、必要に応じて手術や再生医療の治療も選択肢として考えましょう。薬の服用やセルフケアを続けても改善がみられず、日常生活にも支障が出てきている場合は、治療の選択肢を広げる必要があります。 症状が悪化すると、肘の外側が腫れたり肘の可動域が狭くなったり、物を持つことが困難になります。さらに、痛みを放置すると腱が断裂するおそれがあり、手術を要する可能性も否定できません。 手術療法を選択される場合には、「関節鏡視下手術」か「腱切離手術」があります。「関節鏡視下手術」は肘の関節内にカメラを入れて痛みの原因になっている組織を取り除く手術です。 「腱切離手術」は炎症を起こしている腱を手術で切除する方法です。ただし、手術後に残存痛が生じるリスクがあるため、最終手段として選択されます。 また、近年注目されている再生医療は、手術以外の選択肢として有効な手段の一つです。幹細胞治療やPRP療法などによって、肘の痛みの根本にアプローチできます。 肘の痛みの治療に関しては下記の記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。 外側の肘の痛みが続く場合は医療機関を受診しよう セルフケアを行っても症状の改善がみられない場合は、医師の診察を受けましょう。 外側の肘に違和感や痛みがあっても、自然におさまる場合はありますが、放置すれば慢性化して治りにくくなるおそれがあります。炎症が広がると手や肩にまで痛みが及ぶおそれがあり、最悪の場合、腱が損傷して手術になる例も珍しくありません。また、長期間腕を酷使して負担をかけていると骨や関節にも影響が出てしまいます 医療機関では、痛みや炎症を抑える保存療法が行われており、テニス肘と診断された方の80~95%は保存療法で回復するともいわれています。 痛みが長引くようであれば、早めに医師の判断を仰ぐことが大切です。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。肘の痛みが続いている場合は、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 外側の肘が痛いときの治し方まとめ 外側の肘が痛いとき、腕の酷使を控え安静にすることが基本です。それでも、痛みが続くようであればストレッチやサポーターを試してみましょう。 荷物を持ったときに激しい痛みがあったり、握力が弱くなったりしたときは、無理をせず医療機関を受診するようにしてください。 痛みを放置すると症状が慢性化し、治りにくくなることもあるため早めの対処が大切です。 外側の肘が痛いときによくある質問 肘の外側の痛みに湿布は効きますか? 肘の外側が痛いときに、湿布を使うと痛みの緩和が期待できます。炎症が原因と考えられる痛みに対して、消炎鎮痛成分が配合された湿布が症状の緩和に役立つ可能性があるので、一度使ってみるのもよいでしょう。 湿布を貼る場所は、痛みを感じる肘の外側にある骨の出っ張りあたりを目安に貼ります。 また、湿布は長時間貼り続けると、肌がかぶれることがあるため注意してください。 肘の骨を押すと痛い原因はなんですか? 肘の骨を押すと痛みを感じる場合、テニス肘が疑われます。肘の関節は目立った腫れや赤みが現れにくいため、症状があっても気づきにくいことが特徴です。 とくに、肘の外側にある骨の出っ張り(外側上顆)が痛い場合はテニス肘の症状といえるでしょう。 肘の外側が痛いのは「50肘」の可能性もありますか? 外側の肘に出る痛みの一因として「50肘」の可能性も考えられます。「50肘」とは正式名称ではなく、俗称です。正式には「上腕骨外側上顆炎(テニス肘)」と呼ばれています。50代前後の中高年に発症することから、50肘と呼び名がついています。 テニス経験の有無に関わらず、腕を酷使する仕事や重労働をしていると発症につながるおそれがあります。痛みが継続するようであれば、早めに医師に相談してみてください。
2025.04.30 -
- 肘関節、その他疾患
- 肘関節
「肘の外側がかゆい」「肘の外側がかゆくてボコボコする原因は?」 上記のように、肘の外側がかゆいと悩んでいる方もいるでしょう。肘の外側がボコボコする原因は、湿疹や蕁麻疹、汗疱などさまざまな原因が考えられます。 本記事では、肘の外側がボコボコしてかゆい原因を詳しく解説します。肘の外側がかゆくてボコボコする際に、やってはいけないことや、対処法も紹介しているので、肘のかゆみに悩んでいる方は、ぜひご覧ください。 肘の外側がかゆくてボコボコする場合に考えられる原因一覧 肘の外側がかゆくてボコボコする場合に考えられる原因は、以下があげられます。 湿疹(しっしん) 接触性皮膚炎 蕁麻疹(じんましん) アトピー性皮膚炎 汗疱(かんぽう) 皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん) 毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん) 原因を1つずつ詳しく見ていきましょう。 湿疹(しっしん) 湿疹(しっしん)とは、皮膚にかゆみが生じる炎症を指します。皮膚炎とも呼ばれており、皮膚が赤くなったり、ブツブツや水ぶくれが出たりするのが特徴です。湿疹にはさまざまな症状がありますが、強いかゆみが生じる点は共通しています。 原因としては、内的要因と外的要因の2つが重なり合い発症するのが特徴です。内的要因は、皮膚のバリア機能が低下していたり、皮脂や汗による影響だったりが考えられます。一方で外的要因は、薬剤や化学物質との接触、気候変化などがあげられます。 湿疹を予防するには、思い当たる内的要因と外的要因を取り除き、適切な治療を受けなくてはなりません。 接触性皮膚炎 接触性皮膚炎とは、皮膚に何らかの刺激物が触れ、アレルギー反応を起こす炎症です。かぶれとも呼ばれており、赤みやブツブツ、湿疹などさまざまな症状が生じます。水ぶくれや腫れなどが生じるケースもありますが、刺激物に触れた部位のみ、炎症を起こすのが特徴です。 また、接触性皮膚炎の原因は、刺激性接触皮膚炎・アレルギー性皮膚炎・光接触皮膚炎の3つがあげられ、特徴は以下の通りです。 刺激性接触皮膚炎 バリア機能の許容範囲を超えた刺激物が肌に触れることで発症する アレルギー性皮膚炎 肌に触れた物質に対して体の免疫システムが、アレルギー反応を起こすことで発症する 光接触皮膚炎 光や紫外線が当たることで、アレルギー反応を起こして発症する 接触性皮膚炎を予防するには、炎症を起こす原因となる物質を特定し、触れないようにしましょう。 蕁麻疹(じんましん) 蕁麻疹(じんましん)とは、皮膚に円形または地図状の膨疹(ぼうしん)が生じ、かゆみが伴う炎症です。蕁麻疹の原因は明確になっていませんが、何らかの要因によってかゆみ物質である「ヒスタミン」が放出されると、蕁麻疹を発症するとされています。 基本的に蕁麻疹は、数時間~24時間で消失します。かけばかくほど、かゆみが広がったり、湿疹化したりする恐れがあるため、かかずに安静に過ごしましょう。 ごくまれに、蕁麻疹と共にめまいや吐き気などのアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。アナフィラキシーショックの症状が生じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎とは、乾燥した赤い湿疹が生じる炎症です。良くなったり悪くなったりするのが特徴的で、患部をかいてしまうと、ジュクジュクした状態になり、最終的には皮膚がゴワゴワになってしまいます。首や肘などに症状が現れやすく、左右対称に症状が生じます。 アトピー性皮膚炎は、もともと皮膚のバリア機能が弱い方が、汗やアレルゲンなどの刺激物に触れることで、過剰反応を起こすのが原因です。アレルゲンや高温多湿を避けることで、アトピー性皮膚炎を予防できます。 汗疱(かんぽう) 汗疱(かんぽう)とは、小さな水ぶくれが一部に集中して生じる皮膚の病気です。水ぶくれは1〜2mm程度と小さく、中が透き通っているのが特徴です。基本的には、時間経過とともに体内に吸収され、古い角質として剥がれ落ちます。 小さな水ぶくれ以外に、赤みが生じたり、強いかゆみを伴ったりする場合は「異汗性湿疹」である可能性が考えられるため、注意が必要です。なお、汗疱の原因は、解明されていません。 多くの場合は、自然に完治するため、かかずに安静にしていましょう。かきむしってしまうと、湿疹化してしまう恐れもあるため、できるだけ触れないことが大切です。 皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん) 皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)とは、肌表面の皮脂が不足し、皮膚が乾燥する病気です。乾燥が悪化すると、かゆみが生じたり、湿疹化したりする恐れもあるため、「乾燥湿疹」と呼ばれるケースもあります。 主な原因は、皮膚の乾燥のため、皮脂欠乏湿疹を防ぐには、こまめに保湿をするのがおすすめです。とくに秋や冬は乾燥しやすいため、お風呂上がりには保湿剤を塗りましょう。 毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん) 毛孔性苔癬とは、毛穴に発疹ができる皮膚の炎症です。発疹は、ザラザラした触り心地で痛みを伴うことはありません。肩や背中、太ももなどに生じやすい傾向にあります。 毛孔性苔癬の原因は、毛穴にある毛孔が毛包(もうほう)の細胞が、異常な早さで角化するとブツブツが生じます。通常、毛包細胞が角化したとしても、垢として剥がれ落ちますが、毛孔性苔癬は、異常な早さで角化するため、毛穴に詰まってしまうのが特徴です。 基本的には、自然治癒するため、特別な治療はありません。医療機関によっては、サリチル酸や尿素を使用したピーリングを提案されるケースもあります。 肘の外側がかゆくてボコボコする際にやってはいけないこと 肘の外側がかゆくてボコボコする際に、かきむしったり、乾燥を放置したりすると、悪化する恐れがあります。かゆみが悪化すると、化膿したり傷跡が残ったりするリスクもあるため、安静に過ごすよう意識しましょう。 ここからは、肘の外側がかゆくてボコボコする際にやってはいけない行動を3つ紹介します。 かきむしる 肘の外側がかゆくてボコボコする際、患部をかきむしるのは控えましょう。かゆみが気になり、つい掻いてしまいがちですが、爪で皮膚を傷つけると、皮膚のバリア機能が破壊され、さらなる炎症を起こすリスクが高まります。 また、かきむしる刺激によって、皮膚は防御反応としてより厚く・硬くなるケースもあり、ボコボコとした状態を悪化させる原因にもなりかねません。 かゆみを感じた場合は、かくのではなく、冷やしたり、優しく押さえたりするのがおすすめです。 乾燥を放置する 肘の外側がボコボコしてかゆい部分の乾燥を放置するのも控えましょう。乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなるため、かゆみを引き起こしやすくなります。乾燥を放置すると、症状を悪化させるだけでなく、慢性化させる原因にもつながります。 空気が乾燥する季節や、入浴後などは皮膚の水分が失われやすいため注意が必要です。かゆみやボコボコが見られる場合は、保湿剤をこまめに塗り、皮膚のうるおいを保ちましょう。 汗や皮脂などを放置する 汗や皮脂、汚れなどが皮膚に付着したまま放置すると、かゆみを悪化させる可能性があります。汗や皮脂は、皮膚の刺激となる可能性があり、とくにアレルギー体質の方や敏感肌の方は注意が必要です。 また、汚れが付着したままで過ごしていると、皮膚の細菌が繁殖しやすくなり、炎症や感染を引き起こすリスクが高まります。 運動後や汗をかいた後や、長時間同じ衣類を着用している場合は、速やかにシャワーを浴びるか、清潔なタオルで汗を優しく拭き取るようにしましょう。 肘の外側がボコボコしてかゆい場合の対処法 肘の外側がボコボコしてかゆい場合は、患部を冷やしたり、乾燥を防ぐために保湿したりするのが効果的です。放置していると、かゆみが悪化したり、化膿したりする恐れもあるため、できるだけ早い段階で対処しましょう。 ここからは、肘の外側がボコボコしてかゆい場合の対処法を4つ紹介します。 患部を冷やす 肘の外側がボコボコしてかゆい場合、まずは患部を冷やしましょう。患部を冷やすと、皮膚の炎症を抑え、かゆみを鎮める効果が期待できます。 冷たいタオルや保冷剤をガーゼなどで包み、患部に優しく当てて冷やすのがおすすめです。 ただし、冷やしすぎると凍傷などのトラブルを引き起こす恐れがあるため、長時間冷やすのは控え、保冷剤と患部の間にタオルやガーゼを挟むのがポイントです。 保湿をする 皮膚の乾燥が原因となり、肘の外側がボコボコしてかゆくなっている場合は、保湿しましょう。保湿ケアは、皮膚のバリア機能を回復させ、外部からの刺激を受けにくくさせる効果を期待できます。 保湿剤は、セラミドやヒアルロン酸などが配合されているアイテムがおすすめです。 入浴後は、とくに肌が乾燥しやすいため、積極的に保湿しましょう。入浴後以外にも、肌が乾燥していると感じたタイミングで、こまめに保湿してください。かゆみの軽減やボコボコの改善につながる可能性があります。 市販薬でケアをする 肘の外側がボコボコしてかゆい場合、症状によっては市販薬で対処する方法もあります。ドラッグストアには、かゆみを抑える成分(抗ヒスタミン成分)や、炎症を鎮める成分(ステロイド成分)が配合された塗り薬などが販売されています。用法・用量を守って正しく使用しましょう。 なお、市販薬を一定期間使用しても、症状が改善しない場合や悪化する場合は、自己判断で使用を続けずに医療機関を受診してください。 原因と思われるものを避ける 肘の外側がかゆい場合は、原因となっている可能性のあるものを特定し、できる限り避けるのも大切です。たとえば、特定の化粧品や洗剤、衣類などに触れることで症状が悪化する場合は、化粧品などの使用を中止するのがおすすめです。 汗をかいたり、紫外線にさらされたりすると、かゆみを引き起こすケースもあるため、日常生活や生活習慣を振り返り、原因を探しましょう。 原因が特定できない場合は、皮膚科を受診してアレルギー検査などを受けると、より早く原因を突き止められます。 肘の外側がボコボコしてかゆい際の受診目安と診療科 肘の外側がボコボコしてかゆい際の受診目安は、以下の通りです。 日常の動作に支障がでるほど、かゆみがある 症状が悪化している 症状の範囲が広がっている 安静にしていても、症状が改善されない場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。医療機関を受診する際は、皮膚科がおすすめです。 「市販薬を塗り続ければ治るのでは?」と考える方もいますが、なかには市販薬がきっかけでかゆみが悪化するケースもあります。かゆみが悪化すると、かきむしってしまい傷跡が残るリスクもあるため、改善が見られなかったり、悪化したりしている場合は、速やかに皮膚科を受診しましょう。 肘の外側がボコボコしてかゆい際は再生医療もご検討ください 肘の外側がボコボコしてかゆいと悩んでいる方は、再生医療もご検討ください。リペアセルクリニックでは、脂肪由来幹細胞を用いた肌の再生医療を提供しています。 従来の治療では、肘のかゆみが収まらなかったり、再発に悩んでいたりする方は、ぜひ一度リペアセルクリニックにご相談ください。 また、リペアセルクリニックでは、オンラインカウンセリングやメールにてご相談を受け付けています。遠方にお住いの方でも、ご相談いただけるため、再生医療に興味がある方は、以下ページをご覧ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肘の外側がボコボコでかゆい原因はさまざま!専門医に相談しよう 肘の外側がボコボコでかゆい原因は、湿疹や接触性皮膚炎、蕁麻疹などが原因として考えられます。患部をかきむしってしまうと、症状が悪化する恐れがあるため、かきむしらず、患部を冷やしたり、保湿したりして対処しましょう。 また、肌に触れる日焼け止めや洗剤などが原因で、肘にかゆみが生じているケースもあります。かゆみが生じた際は、日常生活を振り返り、かゆみの原因がないかも見直してみましょう。 リペアセルクリニックでは、肌に対する再生医療を提供しています。「従来の治療では治らなかった」「何度もかゆみを繰り返している」と悩んでいる方は、ぜひ一度オンラインカウンセリングやメールにてご相談ください。 【関連記事】 肘頭滑液包炎とは?肘が腫れてブヨブヨ痛い症状・治療法について現役医師が解説 外側の肘が痛いときの治し方|痛みのレベル別で対処法を解説
2025.04.30 -
- 肘関節、その他疾患
- 肘関節
「朝起きたら肘が痛い」「肘の外側が痛い原因は?」 上記のように、朝起きたら肘の外側が痛いと悩んでいる方もいるでしょう。肘の痛みは、スポーツによる影響や、日常生活での負荷などさまざまな原因があげられます。 本記事では、朝起きたら肘の外側が痛い場合の原因を詳しく解説します。治療方法や予防方法、受診の目安なども紹介しているので、肘の痛みに悩んでいる方は、ぜひご覧ください。 朝起きたら肘の外側が痛い原因 「朝起きたら肘の外側が痛い」と感じる場合の原因は、さまざまな疾患や炎症の可能性が考えられます。最近では、長時間のスマートフォン使用による負担で、関節に痛みを抱えている方も少なくありません。 まずは、朝起きたら肘の外側が痛い際に考えられる原因を5つ紹介します。 テニス肘 朝起きた時に肘の外側に痛みを感じる場合の要因として考えられるのが上腕骨外側上顆炎、いわゆるテニス肘です。上腕骨外側上顆炎は、上腕骨外側上顆に付着する腱が炎症を起こすことで発生します。 テニス肘は、日常生活で手首を伸ばしたり、手のひらを上に向けたりする動作を頻繁に行う方に、発症しやすい傾向があります。 パソコン作業や家事、重い物の持ち運びなどの繰り返しにより、腱に微細な損傷が蓄積し、炎症と痛みを引き起こします。 症状は、肘の外側を中心とした痛みが代表的であり、患部の外側を押すと圧痛があり、進行すると、安静時や夜間にも痛みが現れるのが特徴です。 ゴルフ肘 朝起きた際、肘に痛みを感じる場合、上腕骨内側上顆炎、通称ゴルフ肘の可能性も考えられます。ゴルフ肘は、肘の内側にある骨の隆起部分、上腕骨内側上顆に付着する腱が炎症を起こす疾患です。 テニス肘との違いは、上腕骨の内側か外側の炎症を起こす部位にあります。手首を手のひら側に曲げたり、指を強く握ったりする動作を繰り返す方に、発症しやすい傾向です。 主な症状は、肘の内側を中心に痛みが生じますが、関節の外側や前腕にかけて広がるケースもあるため、関節の外側が痛い場合でもゴルフ肘の可能性が考えられます。 野球肘 野球肘は、肘の内側や外側、もしくは後方に痛みや違和感が生じる症状の総称です。投球動作を繰り返すことで関節にストレスがかかるため、野球選手によく見られます。関節にストレスがかかり、靱帯や軟骨が損傷を起こすのが野球肘の原因です。 また、野球肘は、ボールを投げる動作をする際に、痛みが生じるケースが多い傾向にあります。症状が進行すると、日常生活にも痛みや違和感が生じたり、関節を伸ばしきれないなどのトラブルが発生します。 野球をしていない方で、肘が痛い場合は、野球肘以外の要因が当てはまる可能性が高いでしょう。 変形性肘関節症 変形性肘関節症は、肘関節周辺に痛みが生じます。肘関節を動かしたり、ものを持ったりした際に、痛みが生じるのが特徴です。痛みだけでなく、肘を完全に曲げ伸ばしできなかったり、引っかかる感じがしたりなどの違和感も生じます。 変形性肘関節症の主な要因は、スポーツによる反復動作や重い荷物を持つ仕事などによって、肘関節の軟骨がすり減ることがあげられます。加齢により、軟骨細胞の再生力が衰えると、小さな負荷でも変形性肘関節症を引き起こすケースも少なくありません。 スマホ肘 朝起きたら肘が痛い場合は、スマホ肘の可能性も考えられます。スマホ肘とは、長い時間のスマートフォン使用による負担により、関節に痛みが生じる炎症です。スマートフォンを使っている時間が長ければ長いほど、スマホ肘を発症しやすくなります。 スマホ肘は、肘の外側や前腕にかけて、じんじんした痛みが生じるのが特徴です。長時間スマートフォンを利用しており、肘に痛みを抱えている方は、できるだけスマートフォンを使う時間を短くするよう心がけましょう。 肘の外側が痛む疾患の治療法 肘の痛みを放置していると、痛みが慢性化する恐れがあるため、保存療法や手術療法などで治療をする必要があります。軽症であれば、伸ばしたりもみほぐしたりすると、改善を期待できるケースもあるため、早めに医療機関を受診するのがおすすめです。 ここからは、肘の外側が痛む疾患の治療法を3つ紹介します。 保存療法 肘の痛みが軽度である場合は、保存療法が行われます。保存療法とは、手術をせずに症状を改善させる治療法であり、主に以下のような方法があげられます。 患部を冷やす テーピングやベルトで関節の負担を軽減させる 鎮痛剤で痛みや炎症を押さえる 患部を冷やしたり、テーピングで負担を軽減させたりする他に「NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)」を用いて、痛みや炎症を抑えるケースもあります。内服薬や注射などで症状が改善されなかった場合は、手術療法が検討されます。 手術療法 保存療法で関節の痛みが改善されない場合は、手術療法が検討されます。手術療法では、損傷した組織を修復したり、除去したりして改善を目指します。 手術療法には、主に「オープン法」と「関節鏡視下手術」の2種類があり、それぞれメリットやデメリットが異なります。オープン法は、炎症を起こしている部分を切開し、損傷した組織を取り除く手術方法です。一方で、関節鏡視下手術は、内視鏡を使って損傷した組織を取り除くため、傷跡が小さく済みます。 他にも、体外衝撃波や経皮的手術などさまざまな手術療法があるため、担当医とよく話し合った上で手術方法を決めましょう。 再生医療 肘の外側の痛みは、再生医療で改善を期待できるケースもあります。再生医療は、PRP療法(血小板豊富血漿療法)や幹細胞治療などがあげられます。肘に痛みを抱えており、治療を受けているけれど効果を実感できない方は、再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、肘の痛みに対する再生医療を提供しています。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度オンラインカウンセリングやメールにてご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肘の外側が痛む疾患の予防方法 肘が痛む疾患を予防するには、こまめに手首や肘のストレッチをお行ったり、サポーターやテーピングで関節を保護したりするのが効果的です。運動をしている方は、運動時のフォームを見直すのもおすすめです。 ここからは、肘が痛む疾患の予防方法を3つ紹介します。 ストレッチで手首や肘を伸ばす 肘の外側に痛みが生じる疾患を予防するには、日頃から手首と肘の柔軟性を保つストレッチを行うのが効果的です。運動前後のウォーミングアップやクールダウンに加え、日常でもこまめに行いましょう。 手のひらを上に向け腕を伸ばし、反対の手で指先を体側に反らせるストレッチは、手首の伸筋群を伸ばし、肘外側の腱への負担を軽減できます。 痛みを感じない範囲で、ストレッチを毎日続けることで、肘の痛む疾患のリスクを低減できます。柔軟性を維持できると、繰り返しの動作による損傷を防げるため、意識的にストレッチを取り入れましょう。 サポーターやテーピングで関節を保護する サポーターやテーピングを活用するのも、肘の痛み対策に効果を期待できます。サポーターやテーピングをすると、肘関節や周囲の筋肉、腱にかかる負担を軽減し、運動時や作業時の衝撃を吸収できます。 肘のサポーターは、市販で販売されているものを使用しても問題ありませんが、自分に合ったサポーターが欲しい方は、医療機関に相談するのがおすすめです。サポーターやテーピングは、関節を補強して怪我や痛みを予防する効果もあるため、痛みに悩んでいる方は、積極的に装着しましょう。 運動時のフォームを見直す 肘に負担のかかるテニスや野球、ゴルフなどをしている方は、運動時のフォームを見直すことも重要です。不適切なフォームを続けていると、肘の一部分に過度なストレスを与え、腱や筋肉の損傷、炎症を起こす可能性が高まります。 たとえば、テニスでは全身を使ったフォーム、野球ではスムーズな投球フォーム、ゴルフでは体の回転を意識したスイングを身につけましょう。専門のコーチやトレーナーにフォームのアドバイスをもらい、正しいフォームを身につけるのがおすすめです。 朝起きたら外側の肘が痛い場合の受診目安 朝起きたら外側の肘が日常生活に支障が出るほど痛かったり、2,3日安静にしても痛みが改善されなかったりする場合は、医療機関を受診するのがおすすめです。 ここからは、朝起きたら外側の肘が痛い場合の受信目安を紹介します。 日常生活に支障が出るほど痛いケース 朝起きた際に肘の外側に強い痛みを感じ、日常生活に支障をきたすほどである場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。たとえば、物を持ち上げたり、着替えをしたりする際に、強い痛みを感じる、または痛みによって動作を行えない場合が該当します。 放置してしまうと、症状が悪化し、回復に時間がかかる恐れがあるため、医療機関を受診しましょう。 また、自己判断で無理に動かしたり、誤った対処法を行ったりすると、状態をさらに悪化させるリスクもあるため、注意が必要です。 2,3日安静にしていても痛みが改善しないケース 朝起きた肘の外側の痛みが、2〜3日程度安静にしていたにもかかわらず、まったく改善しない、またはむしろ悪化しているように感じる場合も、医療機関を受診する目安です。 軽度の筋肉痛や一時的な炎症であれば、数日の安静によって症状が軽減しますが、痛みが持続する場合や悪化している場合は、より深刻な要因が潜んでいる可能性があります。 痛みが長引く場合は、自己判断せずに専門医の診察を受けることで、慢性化を防ぎ、早期回復を目指せます。 起床時におこる肘外側の痛みの放置は要注意! 朝起きたら肘の外側が痛い原因は、テニス肘や野球肘、変形性肘関節症などが考えられます。なかには、長時間スマートフォンを使うことで発症する「スマホ肘」の可能性もあります。 肘の外側の痛みによって、日常生活に支障が生じたり、安静にしても改善されなかったりする際は、速やかに医療機関を受診するのがおすすめです。 症状に応じて治療法は異なりますが、保存療法や手術療法などがあげられます。症状が軽度であれば、鎮痛剤やサポーターなどを使用した保存療法で改善を期待できます。また、従来の治療で改善できない場合は、再生医療もおすすめです。 リペアセルクリニックでは、肘の外側の痛みに対する再生医療を提供しています。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度オンラインカウンセリングやメールにてご相談ください。
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
乳がんの治療において、放射線治療は手術後の再発リスクを減らすために重要な役割を果たします。しかし、いざ治療を受けるとなると「副作用は大丈夫だろうか」「どんな影響が出るのか」と不安に感じる方も多いでしょう。 本記事では、乳がんに対する放射線治療で起こりうる副作用や、症状が出る時期、対処法について詳しく解説します。不安を少しでも和らげ、安心して治療に向き合えるよう、正しい知識を身につけていきましょう。 乳がん放射線治療とは?副作用が起こる仕組み 乳がんの放射線治療は、高エネルギーの放射線を乳房に照射し、がん細胞を狙って再発を防ぐ方法です。しかし、放射線は正常組織にも影響するため、副作用が生じることがあります。 ここからは、その治療の概要と副作用の仕組みを見ていきましょう。 放射線治療の基本概要 放射線治療とは、高エネルギーの放射線を利用して、がん細胞を破壊する治療法です。乳がんの場合、手術後の再発予防を目的として行われるケースが多く、とくに乳房温存手術後に実施されることが一般的です。 治療は週5回のペースで4~6週間ほど続けられ、その間、乳房全体に照射するとともに、必要に応じてリンパ節周辺なども対象となります。(文献1) 放射線が当たる領域を適切に設定すれば、再発リスクを抑える効果が期待できるでしょう。患者さんの状態によって照射範囲や回数が異なる場合もあり、副作用や負担をできるだけ軽減しながら進められるよう工夫されています。 なぜ副作用が起きるのか? 放射線治療では、がん細胞だけでなく、周囲の正常な細胞にも一定の影響が及びます。ダメージを受けた正常細胞は自己修復されますが、その回復過程で炎症や腫れなどの症状が出現し、副作用として現れる仕組みです。 体質や治療範囲、照射量などの違いによって、副作用の程度は人によって大きく異なります。副作用には、治療期間中や直後に起こる「急性」と、数カ月から数年後にあらわれる「晩期」があり、症状もそれぞれ異なる場合があります。医師や放射線技師の指導を守りながら適切にケアをすれば、リスクを最小限に抑えることが可能です。 乳がん放射線治療の主な副作用と発症時期 乳がんの放射線治療では、高エネルギーの照射でがん細胞を狙う一方、正常細胞にも影響が及ぶため、副作用が生じることがあります。症状がいつ、どのように現れるかを理解しておくことは大切です。ここからは主な副作用と発症時期について、短期と長期に分けて見ていきましょう。 短期的(急性)副作用 短期的(急性)副作用には、治療中や照射後数週間以内に起こるものが含まれます。たとえば、照射部位の皮膚炎で、赤みやかゆみ、ひりひり感、乾燥などが挙げられ、とくに2~4週間後から目立ち始めます。(文献2) 体力が大きく落ちるわけではありませんが、「なんとなくだるい」と疲労感を訴える方も少なくありません。 乳房の腫れや張り感が出現し、一時的に圧迫感を覚えることもあるため注意が必要です。これらの症状は治療が進むにつれて徐々に軽快する場合が多いですが、強い痛みや不快感が続く際は医師や看護師に相談しましょう。 正しいスキンケアや休養を心がけることで症状の悪化を防ぎ、より快適に治療を続けやすくなります。 長期的(晩期)副作用 長期的(晩期)副作用は、放射線治療後しばらく経ってから現れる症状です。たとえば、照射部位の皮膚が数カ月〜数年後に黒ずんだり硬化したりする色素沈着が起きることがあります。(文献2) 乳房に線維化が進んで硬さや凹みを生じ、しこりのように触れる場合もあります。 リンパ浮腫も晩期の合併症の一つで、腕がむくんだり重だるさを覚えたりすることもあります。これは手術によるリンパ節切除の影響も重なるためとくに注意が必要です。 リハビリや圧迫スリーブの着用など、適切なケアをすれば症状の進行を抑えられる場合もあり、定期的な経過観察が重要です。いずれの症状も日常生活に支障をきたす可能性があるため、気になる変化は早めに医師へ相談しましょう。 副作用を軽減・予防するためにできること 副作用を軽減・予防するには、日々のケアと早期の対処が大切です。症状の悪化を防ぐには、肌や体調をいたわる習慣を日々意識しながらの生活がポイントになります。小さな変化を見逃さないよう、定期的なセルフチェックはとくに大切です。 ここからは、具体的な対策や注意点を詳しく見ていきましょう。 日常生活で意識したいケア 日常生活では、まず照射部位をいたわるスキンケアが重要です。低刺激の保湿剤を使って毎日保湿するほか、肌を強くこすらないように注意しましょう。締め付ける服装も刺激の原因になりやすいため、ゆったりとした衣類を選ぶと安心です。 紫外線対策として帽子や長袖、日焼け止めを活用し、外出時の直射日光を避けることもポイントです。疲れを感じたらこまめに休息を取り、睡眠をしっかり確保すると体力の消耗を抑えられます。 無理のない範囲で軽い運動を取り入れると、血行や免疫力を維持しやすいでしょう。とくに肌の状態は日々変化するため、継続的なケアが効果を高めます。 こうした対策をこまめに行うことで、副作用のリスクを軽減しやすくなります。 医療機関に相談するタイミング 副作用への対処で迷ったときや症状が強まったときは、医療機関に相談しましょう。 皮膚に痛みや腫れ、水ぶくれが出てきた場合でも、治療が終了すれば2週間ほどで回復します。放射線が肺にあたっている場合、肺炎が起こる場合もあります。医療機関を受診する際には、放射線治療を受けたことを伝えましょう。(文献1) 多くの副作用は自然に消失しますが、症状が進行すると治療期間の延長や日常生活への影響が大きくなる可能性があります。遠慮せず相談して、専門的なケアや適切な処置を受けることが必要です。 副作用が出たときの具体的な対処法 乳がんの放射線治療中、なんらかの副作用を感じたら、まずは自己判断で対処せず専門家の助言を仰ぐことが大切です。症状を悪化させないためにも、皮膚トラブルや疲労感、リンパ浮腫など、それぞれに合ったケアや医療機関への相談を早めに行いましょう。 皮膚トラブルが起きたら 放射線治療すると、皮膚の赤みやひりひり感、水ぶくれなどの症状が出現することがあります。 処方された外用薬(ステロイド軟膏など)がある場合は、指示どおりに使用し、過度にこすらないよう注意します。肌にやさしい素材の衣類や下着を選ぶことも大切です。コットンやシルクなど、通気性や刺激の少ないものを身に着けると快適に過ごしやすくなります。 万が一、皮膚がただれてしまったり痛みが強いときは、無理をせず早めの受診を心がけ、適切なケアを受けましょう。 疲労感が強いとき 疲れが抜けずにだるさが続く、普段できていたことが億劫になるなどの疲労感が強いときは、休息時間を十分に確保し、家事や仕事のペース調整が大切です。 食事面でも、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど栄養バランスに気を配り、適度な水分補給を心がけてください。睡眠リズムを整えるために、寝る前のスマホ使用を控えたり、リラックスできる時間を確保したりする工夫も効果的です。 リンパ浮腫の初期症状が出たら 腕にむくみや重だるさ、肌の張り感を覚えるなど、リンパ浮腫の初期症状が疑われるときは、すぐに専門スタッフ(リンパ浮腫外来など)へ相談しましょう。 症状の進行を抑えるには、圧迫療法(専用のスリーブや包帯)やリンパマッサージなど、専門的なケアを早めに始めることが重要です。無理に重いものを持ち上げる動作は腕への負担を大きくするため、日常生活でも注意が必要です。 普段から腕の状態を観察し、小さな変化でも異変を感じたら自己判断せず、医師や看護師に報告して適切なアドバイスを受けましょう。リンパ浮腫は適切に管理すれば進行を遅らせ、生活の質を守れます。 安心して治療に臨むために大切なこと 不安や疑問を抱えたまま治療を続けると、心身の負担が増します。だからこそ、医療スタッフや専門家に無理なく声をかけ、信頼できる情報を得ることが大切です。一人で悩まず、適切なサポートを受ければ、安心感を得られます。 ここからは、不安を解消しながら治療に臨むための具体的なポイントを見ていきましょう。 不安を感じたら医療チームに相談する 治療に対する不安や疑問を感じたら、まずは医療チームへ相談しましょう。看護師や医師、病院の支援センターなど、話を聞いてくれる窓口は意外に多いものです。 一人で抱え込むと、些細な悩みでも大きく感じやすくなり、心身のストレスが高まります。感情の変化や落ち込み、睡眠の質の低下など、精神面での不調も早めに伝えることが肝心です。 医療スタッフは、患者さんの気持ちを把握すると、治療方針の調整や適切なケアの提案をしやすくなります。小さな不安でも遠慮なく相談し、周囲のサポートを積極的に活用して、安心して治療を受ける体制を整えましょう。 正しい情報を得て自分を守る 情報過多の時代だからこそ、正確な知識を得ることが自分を守る近道です。 とくにインターネット上では、誤った情報や根拠のあいまいな噂が広まりやすく、混乱のもとになりがちです。信頼できる医療機関の資料や、国の公的機関が運営するサイトなど、公平性の高い情報源を積極的に活用しましょう。 国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」などは専門医が監修しており、正確なデータや最新の治療法をわかりやすく提供しています。必要な知識を身につけることで、治療の進め方や副作用の程度をある程度予測でき、心の準備がしやすくなるでしょう。情報を正しく整理すれば、不安を必要以上に大きくせずに済みます。 不安なことや心配事は主治医へ聞くのが一番の方法と言えます。 乳がん放射線治療の副作用を正しく知り、不安なく治療にのぞもう 乳がんの放射線治療には、副作用が現れることがあります。しかし、多くの副作用は軽度であり、適切なケアを行うことで十分にコントロールが可能です。副作用が起こる仕組みや、現れやすい症状について事前に理解しておくと、心の準備ができ、落ち着いて対処できるようになります。 副作用のサインに早く気づき、適切なタイミングでの対処が、症状の悪化を防ぐポイントです。ひとりで悩まず、少しでも気になる症状があれば、すぐに医療チームに相談しましょう。副作用への備えは、安心して治療を続けるためにとても大切です。 乳がんの手術後の痛みでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 治療」がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html#blockskip(最終アクセス:2025年4月13日) 文献2 日本乳癌協会「Q36.乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用はどのようなものですか。」日本乳癌協会 ホームページ https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q36/(最終アクセス:2025年4月13日)
2025.04.30 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
胸にしこりのようなものを感じていながら、病院に行くのをためらっていませんか。 しこりがあると「乳がんかもしれない」と不安になる方も多いでしょう。 しかし、乳がんの兆候はしこりだけではありません。実は全部で12種類のチェックポイントがあります。日頃から体の変化に目を向け、気になる症状があれば乳腺外科または婦人科などで検査を受けることが大切です。 本記事では、乳がんかもしれない12の症状についてわかりやすく解説しています。最後までご覧いただくことで病院へ行くべきかどうかの判断材料が得られ、乳がんのセルフチェックにお役立ていただけるでしょう。 乳がんかもしれない12の症状一覧 乳がんが疑われる症状は、以下の12個です。本章では、これらの症状について詳しく解説します。 乳房のしこり 乳房の形や大きさの変化 乳房のへこみやツッパリ 乳房全体のはりや痛み 乳房の皮膚のあざ 乳房全体の固さ 乳頭からの分泌物 乳頭のただれや湿疹 脇の下のしこりや腫れ オレンジの皮のような皮膚 乳頭のへこみ 乳房全体の重だるさや違和感 ご自身によるセルフチェックにぜひお役立てください。 乳房のしこり 乳房にしこりを感じた場合は、痛みの有無にかかわらず注意が必要です。入浴時や就寝前など、リラックスした状態で乳房全体をやさしく触り、異物感があれば早めに受診しましょう。 ただし、しこりだけでは乳がんと断定することはできません。しこりは乳腺炎や線維腺腫(せんいせんしゅ)など別の病気でもあらわれる場合があります。(文献1)そのため、セルフチェックだけで自己判断せず、必要に応じて受診するようにしましょう。 乳房の形や大きさの変化 左右の乳房に明らかな差が出てきた場合や、急に乳房の形が変わった場合は受診を検討しましょう。 とくに片側だけが急激に大きくなる、変形するなどの変化が見られたら、なんらかの内部変化が起きている疑いがあります。鏡の前で日常的にチェックするようにしましょう。 乳房のへこみやツッパリ 乳がんが皮膚近くにできた場合、乳房の皮膚が内側に引っ張られ、へこみやツッパリとしてあらわれることがあります。さらにいつもは違和感がなくても、皮膚を軽く引っ張ったときに症状が出る場合もあります。 表面が不自然にへこんだり、引っ張られる感じがしたりする場合は、異常のサインの可能性もあるため注意が必要です。 乳房全体のはりや痛み 乳房のはりや痛みは、女性ホルモンの変動や乳腺症など、乳がん以外が原因となる場合もあります。(文献2)とくに、生理周期による女性ホルモンの変動が原因の場合、乳房のはりや痛みが周期的にあらわれたり自然におさまったりすることもあります。 ただし、痛みが1カ月以上続く場合は、医療機関で検査を受けるようにしましょう。 乳房の皮膚のあざ 乳がんの初期症状のひとつに、乳房の皮膚に原因不明のあざができるケースがあります。これは乳がんの腫瘍が血管を圧迫し、血流が悪くなることで生じることがあります。(文献3) とくに、ぶつけた記憶がないあざがある場合は注意が必要です。色の変化が数日で消えない場合は早めの受診をおすすめします。 乳房全体の固さ 乳房が全体的に硬くなったと感じる場合は、ホルモンの影響や乳腺症などが原因であるケースも多く見られます。(文献4) ただし、乳房を触っても動かないほど硬い場合は、腫瘤が乳腺内で広がっている疑いがあります。異常な硬さの場合は、病院で一度詳しい検査を受けるようにしましょう。 乳頭からの分泌物 乳頭からの分泌物の多くは、がん以外の原因によるものです。(文献5)ただし、赤や褐色など血液が混ざったような液体である場合は、乳がんの初期症状の疑いもあるため医師の診察を受けましょう。 少量でも油断せず、ティッシュやコットンなどに分泌物をつけて色を確認してみてください。また、下着に分泌物が付着して気が付くケースもあるため、見逃さないよう注意が必要です。 乳頭のただれや湿疹 乳頭に異常なただれやかゆみ、湿疹のような皮膚症状があらわれる場合も、乳がん初期症状の可能性があります。 もともと乳頭は皮膚が敏感で、トラブルが起きやすい部位です。塗り薬の使用で改善するケースもありますが、症状が長引いたり悪化したりする場合は、専門医の診察を受けるようにしましょう。 脇の下のしこりや腫れ 脇の下はリンパ節が多く集まっているため、他の部位よりもしこりができやすい場所です。 風邪やワクチン接種後などで一時的に腫れる場合もありますが、乳がんが原因の場合はリンパ節への転移の疑いもあります。痛みの有無にかかわらず、脇の下もチェックしましょう。 オレンジの皮のような皮膚 乳房の皮膚が赤みを帯び、オレンジの皮のようにザラザラ・ブツブツとした質感になることがあります。これは炎症性乳がんに見られる症状の一つです。 いつもの肌と明らかに違う質感に気づいた場合は、その下に腫瘍があるケースも考えられるため、速やかに医療機関を受診しましょう。(文献6) 乳頭のへこみ これまでなかったのに乳頭が突然へこんで見える場合は、乳頭の奥に腫瘍ができ、皮膚が内側から引っ張られている可能性があります。 生まれつきの陥没乳頭とは異なり、急な変化が見られる場合は医師の診察を受けることをおすすめします。着替えの際や入浴前後など、定期的に乳頭の状態にも目を向けてチェックしましょう。 乳房全体の重だるさや違和感 はっきりとした痛みやしこりがなくても「なんとなく乳房が重い」「はりが続く」といった違和感がある場合は注意が必要です。 腫瘍が大きくなると周囲の組織を圧迫し、乳房全体に不快感としてあらわれることがあります。わずかな変化でも見逃さず、放置せずに対応することが大切です。 乳がんかもしれないと思ったら病院で検査をしよう 乳がんかもしれないと感じた場合は、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。診断前の段階では、以下のような検査が必要に応じて行われます。 視診や触診 マンモグラフィー 超音波(エコー)検査 病理検査(細胞を採取して調べる検査) これらの検査により、乳がんの有無や治療の必要性が判断されます。そのため、乳がんかもしれないと感じたら、早めの受診を心がけしましょう。 また「いきなり病院に行くのは不安」「誰に相談すれば良いかわからない」と感じる方は「がん相談支援センター」の利用もおすすめです。専門の相談員が対応してくれるため、一人で悩まずにまずは相談してみましょう。 乳がんかもしれない12の症状で早期発見を心がけよう 乳がんは、早期発見により治療の選択肢が広がり、予後の改善が見込まれる病気です。そのためには、日頃から自分の乳房の変化に意識を向け、変化を見逃さないことが大切です。しこりだけではなく、皮膚や乳頭の状態など、さまざまなサインを見逃さないようにしましょう。 自分でチェックしてみて「乳がんかもしれない」と感じたときは、一人で抱え込まず、医療機関の受診や専門家への相談を検討してください。 乳がんのリスクを減らすためには、セルフチェックと定期検診に加えて、日頃から免疫力を整えることも大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、免疫力を高めることでがんの予防・再発予防を目的とした免疫細胞療法を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を実施していますので、気になる方はぜひ当院までお気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんかもしれない12の症状に関してよくある質問 どのような人が乳がんになりやすい? 乳がんにかかりやすい人の特徴の一例に、以下の項目があります。(文献7) 40歳以上である 未婚である 初産年齢が高い 初めての生理が早かった 閉経が遅い 親戚に乳がんの人がいる 閉経後で肥満である 良性の乳腺の病気にかかったことがある これらの要因に心当たりがある方は、定期的なセルフチェックと検診を心がけましょう。 乳がんの手遅れとはどういう状態ですか? 乳がんが「ステージ4」と診断されてがんが他の臓器に転移している状態では、完治を目指すことが難しく、治療は延命や症状の緩和が中心になることがあります。 代表的な症状には強い痛みや全身の倦怠感、原因不明の発熱などが挙げられます。がんの進行を防ぐためにも、早期に発見し、速やかに適切な治療を受けることが大切です。 参考文献 (文献1)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房腫瘍(乳房のしこり)」,2022年 3月改訂https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房腫瘍-乳房のしこり (文献2)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房痛」, 2022年3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房痛 (文献3)近藤優,石黒清介ほか.「乳房内出血をきたした80歳以上乳癌の2例」『日本臨床外科学会雑誌』77巻(2号), p296-p302,2016年,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/2/77_296/_pdf (文献4)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房疾患の評価」,2022年 3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房疾患の評価 (文献5)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳頭分泌物」,2022年 3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳頭分泌物 (文献6)稲本俊.「IX.乳房とリンパ節」『日本内科学会雑誌』89巻(12号), p2469-p.2476, 2000年https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/89/12/89_12_2469/_pdf (文献7)厚生労働省「乳がんの危険因子」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000113424.pdf
2025.04.30