-
- 脊髄損傷
- 脊椎
中心性脊髄損傷とは、主に頚髄の中心部分が傷つくことで腕の麻痺やしびれが現れる脊髄損傷の一つです。転倒や交通事故などが原因で起こりやすく、とくに高齢者に発症するケースが多く見られます。 本記事では、中心性脊髄損傷の症状や原因、診断方法などを解説します。治療期間の目安やよくある質問もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。中心性脊髄損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 中心性脊髄損傷とは 中心性脊髄損傷とは、主に首にあたる頚髄の中心部が損傷し、手足の麻痺やしびれが現れる脊髄損傷の一種です。頚髄の中心部分には上肢の神経が多く通っているため、この部分が傷つくと腕や手の動きに障害が出やすくなります。 脊髄の損傷程度によっては、適切なリハビリの継続により日常生活動作の回復が期待できます。 中心性脊髄損傷は上肢に症状が現れやすい点が特徴です。診断後は早期に治療方針を決定し、継続的にケアを進めることが重要です。 【関連記事】 軽度の脊髄損傷とは|知っておきたい症状・治療法と後遺症の可能性を医師が解説 脊髄損傷急性期とは|症状回復の重要な期間といわれる理由や治療法を医師が解説 中心性脊髄損傷の症状 中心性脊髄損傷の主な症状には、上肢の麻痺や手・指のしびれ、感覚障害などがあります。以下でそれぞれ見ていきましょう。 上肢の麻痺 中心性脊髄損傷では、下肢よりも上肢に麻痺が現れやすい点が特徴です。脊髄は部位ごとに支配する身体の領域が決まっており、頚髄は上肢の機能と深く関わっています。脊髄の中心部が損傷すると、上肢へ向かう神経の伝達が妨げられるため、腕の動作や力の入りにくさが生じやすくなります。 物を持ち上げたり腕を動かしたりといった動きが難しくなり、日常生活に支障が出るケースも少なくありません。上肢の麻痺は中心性脊髄損傷の代表的な症状であり、特徴を把握することが治療やリハビリ方針の判断に役立ちます。 手や指のしびれ 手や指のしびれが生じるのも中心性脊髄損傷の症状の一つです。上肢に向かう感覚の神経は脊髄を通って伝わるため、この部分が傷つくと感覚が鈍くなったりしびれが現れたりします。 また、以下のような動作が困難になり日常生活に支障が出る場合があります。 ボタンを留める 箸を使う 細かな物をつまむ など なお、感覚や巧緻性(細かい動作を行う能力)の変化を確認する方法の一つが「10秒テスト」です。左右の手それぞれで10秒間グーパー動作を繰り返し、回数を測定します。20回を下回る場合、巧緻運動障害の可能性があります。 手や指のしびれの程度を把握することで、適切な治療につなげやすくなるでしょう。 感覚障害 中心性脊髄損傷では、手指を中心に温度や痛みの感じ方が変化し、感覚が鈍くなるケースがあります。感覚に関わる神経は脊髄を通って伝達されるため、損傷があると刺激を正しく受け取りにくくなるのです。 触れたときの感覚が弱くなったり、痛みを感じにくくなったりする変化がみられます。また、損傷の範囲によっては、排尿や排便といった自律的な働きにも影響を及ぼすケースがあります。 感覚が鈍くなるとケガに気づきにくくなるため、日常の動作では注意が必要です。 中心性脊髄損傷の原因 中心性脊髄損傷の原因は以下のとおりです。 転倒 交通事故 加齢に伴う脊柱管の狭窄 スポーツ中の接触や外傷 など 頚髄は衝撃の影響を受けやすく、強い外力が加わると中心部が損傷しやすくなります。転倒や交通事故は幅広い年代でみられる要因の一つです。とくに高齢者は加齢による脊柱管の狭窄があると、損傷が起きやすくなります。また、重い物を持ち上げた際の負荷が引き金になるケースも少なくありません。 外部からの衝撃だけでなく、加齢による頸椎の変化も関与するため、自身の年齢や生活環境に応じたリスクを理解しておくことが重要です。 中心性脊髄損傷の治療期間の目安 中心性脊髄損傷の治療期間は、受傷後おおむね半年〜1年が目安とされています。脊髄の機能は時間の経過とともに安定していき、回復が期待できる期間は限られているためです。 とくに受傷後数カ月〜1年の間は、動作や感覚の改善がみられるケースがありますが、その後は大きな変化が出にくくなります。ただし、年齢や損傷範囲によって回復の経過には個人差があります。 中心性脊髄損傷の診断方法 中心性脊髄損傷の診断方法には、MRIによる画像診断に加えて反射テストや知覚検査などの神経学的検査を実施するのが一般的です。以下で代表的な検査を解説するので、参考にしてください。 MRIによる画像診断 中心性脊髄損傷の診断には、MRIによる画像診断が欠かせません。MRIは脊髄や周囲の構造を詳細に描出でき、損傷の状態を正確に評価できるためです。 脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症(こうじゅんじんたいこっかしょう)の有無を確認できるほか、脊髄内部の信号変化を評価すると、損傷の範囲や重症度を把握できます。また、MRIは脊髄の圧迫や腫れの状態も評価できるため、手術適応を検討する際にも有効です。 MRIによる画像診断で得られる所見は、治療方針を検討する際の重要な情報です。 神経学的検査 神経学的検査では、反射・筋力・感覚の変化を確認し、神経損傷の範囲や程度を評価します。脊髄に損傷があると、反射の異常や筋力低下、感覚の鈍さが生じるため、身体の反応を調べることで影響の度合いが把握できます。 神経学的検査の例を下表にまとめました。 検査名 内容 反射テスト 腱や指を刺激し、反射の強さや異常反射を確認する 徒手筋力テスト 上肢の筋肉を動かす力を6段階で評価する 知覚検査 触覚・温度覚・痛覚の変化を調べる 巧緻性の評価 指先の器用さや細かな動作を確認する 上記のような複数の検査を組み合わせることで、神経の状態を総合的に判断しやすくなります。 中心性脊髄損傷の治療法 中心性脊髄損傷は早期の治療が重要です。主な治療法は、保存療法・手術療法・再生医療の3つで、損傷の程度や治療目的に応じて適切な方法が選ばれます。ここでは、それぞれの治療法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 中心性脊髄損傷の初期治療では、安静や頸椎の固定、薬物治療などの保存療法が基本です。受傷直後は脊髄への負担を最小限に抑え、炎症や腫れを広げないように管理することが重要です。 また、状態が安定した段階でリハビリを開始し、動作や筋力の改善を図ります。リハビリは機能の維持や改善に有効です。 高齢者においてもリハビリを継続した症例では歩行機能の維持が確認されており、訓練継続の有効性が報告されています。(文献1)受傷直後から適切な保存療法を進めることが大切です。 手術療法 中心性脊髄損傷では、脊柱管の狭窄や骨の変形により神経が圧迫されている場合に手術療法が検討されます。 骨の変形が強い場合や脊柱管が著しく狭窄しているケースでは、脊髄の圧迫を解除するために除圧術や固定術が行われます。ただし、中心性脊髄損傷は保存療法で改善が見られる例も多く、すべての患者に手術が推奨されるわけではありません。 手術療法は、年齢や損傷の範囲、日常生活への影響などを踏まえて慎重に判断されます。医師と相談しながら適切な治療方法を検討することが大切です。 再生医療 再生医療は、中心性脊髄損傷の治療法の一つです。自分の幹細胞を利用することで、身体が本来持つ再生能力を引き出し、炎症の抑制や組織の修復を目指します。 代表的な方法に、自己の幹細胞を用いる「幹細胞治療」や、血液中の成分を活用する「PRP療法」があります。当院では、おへその横からごく少量の脂肪を採取するだけで幹細胞を培養できる治療を採用しており、身体への負担が少ない点が特徴です。 術後の回復が比較的早いとされているため、手術に抵抗がある方や薬では十分な改善が見られない場合の選択肢として検討されます。 幹細胞治療によって頚髄損傷が改善した症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 中心性脊髄損傷は治療とリハビリの早期開始が重要 中心性脊髄損傷は、転倒や交通事故などの衝撃により頚髄の中心部が損傷し、上肢の麻痺やしびれ、感覚障害などが現れる疾患です。高齢者では脊柱管の狭窄が発症の要因になっているケースもあります。回復は受傷後半年から1年間が目安とされており、この期間にどれだけ機能改善を図れるかが重要です。 薬物治療やリハビリを早期に開始し、継続して取り組むことで日常生活への影響を軽減します。医療機関と相談しながら、自分に合った治療法を選択することが大切です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。中心性脊髄損傷で気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 中心性脊髄損傷に関するよくある質問 中心性脊髄損傷のリハビリに禁忌事項はありますか? 中心性脊髄損傷のリハビリでは、損傷部位に強い負荷がかかる動作や、頸部に過度な負担がかかる姿勢は避けたほうがよいとされています。また、血流が悪くなるような不自然な姿勢を長時間続けることも控えてください。 リハビリは本人の損傷状態に合わせた強度で進めることが重要です。医師や理学療法士の指導のもとで適切な運動量を調整しながら進めましょう。 中心性脊髄損傷にステロイドは効果がありますか? 脊髄損傷には、衝撃で神経細胞が直接傷つけられる「一次損傷」と、その後に起こる炎症反応によってさらに組織が傷つく「二次損傷」があります。神経機能の回復には二次損傷の予防が大事であり、その予防にステロイドが期待されています。 ただし、ステロイドは副作用が強く、効果にも個人差があるため、必ずしもすべての患者に有効とは限りません。医療者の間でも有効性について意見が分かれる部分があるため、使用には慎重な判断が必要です。 参考文献 (文献1) 中心性頸髄損傷リハビリテーションの実学|日本リハビリテーション医学会 学術集会
2025.12.08 -
- 靭帯損傷
- ひざ関節
- その他、整形外科疾患
「腫れて動かしづらい」 「しばらくすれば治ると思ったのに改善しない」 その靭帯の痛みが続くのであれば、靭帯損傷の可能性があります。靭帯は関節を安定させる重要な組織であり、損傷すると歩行や運動に支障をきたします。こうしたケガはスポーツだけでなく、段差での転倒や日常の動作でも起こることがあります。「全治までどのくらいかかるのか」「手術は必要なのか」といった不安を感じる人も多いでしょう。 しかし、受傷の原因や症状を正しく理解し、適切な治療やリハビリを行えば、回復までの道筋を明確にできます。 本記事では、現役医師が靭帯損傷について詳しく解説します。 記事の最後には、靭帯損傷に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 靭帯損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください 靭帯損傷とは 項目 説明 靭帯の役割 骨と骨をつなぐ強靭な線維組織。関節の過度な動きを制御し、安定性を保つ 靭帯の構造 主成分はコラーゲン線維。伸縮性は乏しく、頑丈なロープのような構造をもつ 損傷の発生機序 許容範囲を超える外力によって、靭帯線維が部分的または完全に断裂することで発生 靭帯損傷の定義 捻挫のうち、靭帯自体が損傷したもの。スポーツ活動や日常動作中にも起こり得る 主な原因 急な方向転換、他者との接触、転倒、段差の踏み外しなどによる強い負荷 主な症状 受傷時の「ブチッ」とした音や感覚、関節の腫れ、痛み、可動域の制限 靭帯損傷は、関節を安定させる靭帯が、過度な力で伸ばされたり切れたりした状態を指します。 靭帯を損傷すると関節の動きが制限され、体重をかけた際に違和感が生じます。足首・膝・手首など負荷がかかりやすい部位に多く発生します。適切な治療で回復が見込めますが、放置すると再発や慢性的な関節不安定を招くため、早めの受診が必要です。 以下の記事では、肘関節の外側にある靭帯が傷つくことで引き起こされる肘外側側副靭帯損傷について詳しく解説しています。 靭帯損傷が起こりやすい部位 部位 主な損傷部位・特徴 主な原因 足首(足関節) 外側靭帯の損傷が最も多く、内反捻挫で発生する 段差の踏み外し、着地時のバランス崩れ、スポーツ中のひねり動作 膝(膝関節) 前十字靭帯・後十字靭帯・内外側側副靭帯の損傷がみられる サッカーやバスケットボールなどでの急な方向転換や他者との接触 手首(手関節) 転倒時に手をついた際の衝撃で損傷し、骨折を伴うこともある 転倒や転落、スポーツ・日常動作での手をつく動作 指 母指MP関節側副靭帯損傷(スキーヤーズサム)などが代表的 球技での突き指、スキー中の転倒による衝撃 肩 肩関節脱臼に伴い靭帯が損傷することが多い コンタクトスポーツや転倒時の強い外力 靭帯損傷は全身の関節で起こり得ます。とくに多いのは足首(前距腓靭帯)と膝(前十字靭帯・内側側副靭帯)です。これらの部位は体重を支えながら複雑に動くため、ねじれや外力の影響を受けやすい構造をしています。 スポーツでは急な方向転換やジャンプの着地などで損傷しやすく、日常生活でも段差の踏み外しや転倒によって発生することがあります。また、肩・肘・手首なども転倒や無理な動作で負担がかかると損傷することがあります。靭帯の部位によって治療法や回復期間が異なるため、正確な診断と早期の対応が必要です。 以下の記事では、外側側副靭帯の損傷で引き起こされる、外側側副靭帯損傷について詳しく解説しています。 靭帯損傷の初期症状 初期症状 詳細 受傷時の音や違和感 「ブチッ」「プチッ」といった断裂音や関節のずれを感じる。受傷直後の違和感や不安定な感触 腫れと関節内出血 靭帯損傷による炎症反応や出血による関節周囲の腫脹。皮下出血や内出血による赤紫色の変化 関節の不安定性と運動制限 関節を支える靭帯の損傷によるぐらつきや支えにくさ。痛みによる可動域の制限 (文献1) 靭帯損傷の初期には、関節周囲に腫れや熱感が生じ、動かしにくくなります。受傷直後に「何かが切れたような感覚」や「関節を支えられないほどの違和感」が主な特徴です。 靭帯が損傷すると内部で出血や炎症が起こり、数時間以内に腫れが強くなることがあります。 軽度の損傷でも放置すると症状が悪化し、見た目の腫れが引いても関節の不安定さが残る場合があります。早期に整形外科を受診し、必要に応じて画像検査を行いましょう。 以下の記事では、靭帯損傷の初期症状に関連する内容を詳しく解説しています。 【関連記事】 膝が痛い時に疑われる病気を一覧表で解説|立ったり座ったりがつらい方は要チェック 捻挫の後遺症とは|症状のチェック項目や治し方を現役医師が解説 受傷時の音や違和感 靭帯損傷の初期には、関節の内部で「ブチッ」「プツッ」といった音がすることがあります。これは靭帯の線維が断裂する際に生じる音で、中等度から重度の損傷でみられます。ただし、音がしなくても損傷している場合があり、音の有無だけで重症度を判断できません。 受傷直後には「じんわりとした違和感」や「関節が外れたような感覚」を伴うことがあります。これは靭帯損傷による安定性の低下や内部出血、炎症反応が関係しています。 損傷部位に触れると熱を帯びているように感じることもあり、これは炎症に伴う血流増加によるものです。こうした初期症状は損傷のサインであり、放置せず早めに整形外科で診察と画像検査を受けることが重要です。 腫れと関節内出血 症状・特徴 詳細 急速な腫れの出現 受傷後まもなく関節が腫れ、張ったように感じる状態。24時間以内の腫れは関節内出血の可能性 関節の張り感・圧迫感 関節内に血液や液体がたまり、関節包が膨らむような感覚 熱感・発赤 炎症や出血により患部が温かくなり、赤みを帯びる状態 可動域制限・動かしにくさ 出血や炎症による液体貯留で関節の動きが制限される状態 振動・打撲感(鈍痛) 関節内の血液や浮遊物質が刺激となり生じる不快感や違和感 (文献2) 靭帯損傷による腫れや関節内出血は、損傷した靭帯や周囲組織から血液や体液が関節包内に流れ込み、炎症によって関節が膨らむことで起こります。 関節の張り感や圧迫感、熱感が現れ、膝や足首では皮下出血を伴うことがあり、腫れが急速に強まったり動かした際に強い痛みを感じたりする場合は関節内出血が疑われます。 出血が多いと関節内圧が高まり、軟骨や滑膜に負担がかかることもあるため、冷却と安静を保ちながら速やかに整形外科を受診しましょう。 関節の不安定性と運動制限 症状 詳細 関節の不安定性 損傷した靭帯の支えが失われ、関節がぐらつきやすくなる状態。歩行時や動作時に膝が抜けるような感覚や膝くずれを伴うこともある。関節のずれやすさによる再受傷や変形のリスク 運動制限 腫れや痛み、関節内出血による可動域の制限。関節の曲げ伸ばしが困難となり、日常生活やスポーツ動作に支障をきたす状態。炎症や損傷部位の引っかかりも要因 靭帯が損傷すると関節を支える力が弱まり、不安定性が生じます。歩行時に膝が「ガクッ」と抜けるような感覚や、足首が繰り返し捻れる症状が代表的です。 軽度では運動時のみ、重度では日常動作でも関節の不安定性や可動域制限が現れ、膝の前十字靭帯損傷では階段昇降やしゃがむ動作が困難になります。 無理に動かし続けると関節軟骨や半月板など他の組織にも負担がかかり、二次的な損傷を招きます。不安定性を感じたら装具で固定し、医師の指導のもと段階的にリハビリを進めることが重要です。 靭帯損傷の原因 原因 詳細 スポーツによる靭帯損傷 急な方向転換やジャンプの着地、他者との接触によって生じる過度な関節への負荷 転倒や事故・外部からの強い衝撃 転倒時に手足をついた際の衝撃や交通事故によって加わる急激な関節への外力 加齢や慢性的な負荷 加齢による靭帯組織の変性や、長期間の過使用によって生じる持続的なストレス 靭帯損傷は、関節に通常を超える力が加わったときに発生します。とくに急な方向転換やジャンプ後の着地、段差での踏み外しなど、関節がねじれる動作で起こりやすいのが特徴です。 スポーツ中の衝撃だけでなく、日常生活での転倒や無理な姿勢でも生じます。加齢とともに靭帯の柔軟性や強度が低下すると、わずかな外力でも損傷しやすくなります。 再発を防ぐためには、原因を理解した上で正しい動作の習得や筋力バランスの改善に取り組むことが重要です。 以下の記事では、膝の痛みについて詳しく解説しています。 スポーツによる靭帯損傷 スポーツによる靭帯損傷は、ジャンプの着地や急な方向転換、急停止などで関節に強い力やねじれが加わることで発生します。サッカーやバスケットボールなどでは、対人接触による衝撃が直接靭帯に及ぶこともあります。 筋力不足や誤ったフォーム、同じ動作の繰り返しによる疲労は靭帯損傷のリスクを高めるため、予防には正しいフォームの習得と筋力の強化、十分な休養が不可欠です。 転倒や事故・外部からの強い衝撃 原因 詳細 転倒時の関節のねじれや過伸展 階段の踏み外しや路面での滑倒による急なねじれや過伸展による靭帯損傷 交通事故やスポーツでの衝突による外力 自転車・自動車事故やコンタクトスポーツの衝突によって生じる強い外力の集中 高所からの転落による着地衝撃 高い場所からの飛び降りや転落による着地時の過度な負荷の集中 スポーツ以外の日常生活でも起こり得る 段差でのつまずきや歩行中の転倒による関節への急激な衝撃 予期せぬ外的要因で回避動作ができない 突発的な事故や不意の衝突によって防御姿勢が取れず生じる靭帯への直接負荷 転倒や交通事故など、外部から強い力が加わった場合にも靭帯損傷は発生します。とくに膝や足首、手首は衝撃を受けやすく、転倒時に手をついたり膝をひねったりすると損傷が起こります。 衝撃が大きい場合には、複数の靭帯や関節包が同時に損傷する重症例もみられます。高所からの転落やスポーツ中の接触プレーでは、一瞬で強い外力が加わるため、早期の医療介入が必要です。 外傷後に関節の腫れや動かしづらさが続く場合は、速やかに整形外科を受診してください。 加齢や慢性的な負荷 加齢により靭帯の弾力性や強度が低下し、柔軟性が失われることで、わずかな負荷でも損傷しやすくなります。関節軟骨のすり減りや筋力低下によって靭帯への負担が増し、長時間の立ち仕事や無理な姿勢の継続も損傷を進行させる要因となります。 とくに肥満や偏った動作を繰り返す場合はリスクが高く、高齢者では転倒や身体機能の低下により靭帯損傷の危険性が増すため、注意が必要です。 靭帯損傷の全治までの期間 全治までの期間 詳細 軽度|Ⅰ度 靭帯の一部が軽く伸ばされた状態。回復までの目安は約2〜4週間程度。安静と固定による自然治癒 中度の損傷|Ⅱ度 靭帯の部分断裂がみられる状態。全治の目安は約4〜8週間(1〜2カ月)。安静・固定・リハビリの併用 重度の損傷|Ⅲ度 靭帯の完全断裂が生じた状態。全治まで3〜6カ月を要することが多く、手術や集中的リハビリが必要 靭帯損傷の全治期間は損傷の程度によって異なり、軽度のⅠ度損傷では数週間で日常生活に復帰できることが多いのに対し、完全断裂を伴うⅢ度損傷では回復までに数カ月から半年以上を要する場合があります。 回復期間は損傷部位や年齢、治療開始の時期、リハビリへの取り組み方によって異なり、膝の靭帯損傷では歩行が可能になる時期とスポーツ復帰が許可される時期に差が生じます。 焦って無理をすると再損傷のリスクが高まり、回復が遅れることもあります。医師の診断に基づいて段階的にリハビリを進めることが回復への近道です。 以下の記事では、捻挫の重症度について詳しく解説しています。 軽度|Ⅰ度 軽度の靭帯損傷の全治期間は、一般的に2〜4週間程度です。膝の軽度損傷では、炎症や腫れが落ち着くと日常生活レベルの動作まで回復することが多くみられます。 ただし、この期間は固定や安静、リハビリなどの保存療法を適切に行った場合の目安です。年齢や基礎体力、栄養状態、他組織の損傷有無、治療への取り組み方によって回復速度は異なります。 軽度の損傷でも自己判断で放置したりリハビリを怠ると、関節の不安定性が残ったり慢性化したりする恐れがあります。 中度の損傷|Ⅱ度 中等度の靭帯損傷の全治期間は、一般的に4〜8週間(約1〜2カ月)が目安とされています。回復期間は損傷部位や範囲、治療の適切さに加え、血流や可動性、年齢、体力、基礎疾患などによって大きく異なります。 リハビリを早く始めたり、無理に負荷をかけたりすると治癒が遅れる場合があるため、医師の指導のもとで段階的に運動を再開することが重要です。 重度の損傷|Ⅲ度 重度の靭帯損傷の全治期間は、一般的に3〜6カ月程度を要します。重度損傷では靭帯再建術を行うことが多く、とくに膝の前十字靭帯完全断裂では回復に半年以上を要する場合があります。 若年者や体力のある方は回復が早い傾向にありますが、リハビリの質と進度が機能回復の鍵となるため、医師の指導のもと計画的に進めることが大切です。 靭帯損傷の治療法 治療法 詳細 保存療法(固定・安静・リハビリ) 損傷の軽度〜中等度に行う基本治療。ギプスやサポーターでの固定、安静の保持、段階的なリハビリによる関節機能の回復 薬物療法 炎症や痛みの軽減を目的とした治療。消炎鎮痛薬や湿布、注射薬などによる炎症反応の抑制と疼痛緩和 手術療法 靭帯の完全断裂や保存療法で改善が難しい場合に実施。靭帯再建術や縫合術による関節安定性の回復 再生医療 損傷部位の自然治癒を促す治療法。PRP(多血小板血漿)療法や幹細胞治療による組織再生の促進 軽度〜中等度の損傷では、固定・安静・リハビリを中心とした保存療法で回復を図り、必要に応じて炎症や痛みを抑える薬物療法を併用します。重度の損傷や再発を繰り返す場合は、靭帯再建術などの手術療法が検討されます。 近年では、自己修復力を高めるPRP療法や幹細胞治療といった再生医療も選択肢のひとつです。早期に正確な診断を受け、個々の状態に合わせた治療計画を立てることが回復につながります。 以下の記事では、膝の皿が痛い原因と治療法について詳しく解説しています。 保存療法(固定・安静・リハビリ) 施策 詳細 固定と安静 サポーターや装具で損傷部位を固定し、関節の動きを制限。炎症と腫れを抑え、靭帯回復を助ける治療 RICE療法(安静・冷却・圧迫・挙上) 受傷直後に患部を冷却・圧迫し、心臓より高い位置に挙上して安静を保つ処置。腫れや炎症の抑制 リハビリテーション 急性期後に行う関節可動域訓練や筋力強化、バランス訓練による段階的回復法 日常生活指導 動作の工夫や休息の取り方、再損傷防止のためのリスク管理 保存療法は軽度から中等度の靭帯損傷に有効な治療法です。靭帯は一定の修復能力を持つため、ギプスやサポーターで固定し安静を保つことで自然治癒を促します。 炎症が落ち着いたら理学療法で可動域と筋力を段階的に回復させます。身体への負担が少なく入院の必要もないため、日常生活への影響を最小限に抑えられます。過度な安静は筋力低下を招くため、医師の指導のもと計画的にリハビリを進めることが重要です。 以下の記事では、保存療法で使用される膝サポーターについて詳しく解説しています。 薬物療法 薬物 詳細 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 痛みや腫れ、炎症の抑制を目的とした内服薬や湿布の使用。長期使用時の副作用への注意 鎮痛薬 強い痛みの軽減を目的とした一時的な使用。症状に応じた用量と期間の調整 ヒアルロン酸注射(関節症や疼痛緩和など目的限定) 関節内の潤滑改善と軟骨保護を目的とした注射療法。痛み軽減への応用 薬物療法は靭帯損傷における補助的な治療法です。消炎鎮痛薬を用いて炎症と症状を抑えることで、早期のリハビリ参加を促し治癒を促進します。 しかし、薬物療法だけで靭帯を完全に再生させるのは困難です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)では胃腸障害や腎機能への影響、注射薬では感染リスクなどの副作用に注意が必要です。 手術療法 手術法 詳細 靭帯再建術 患者自身の腱(ハムストリング腱・膝蓋腱など)を用いて新たな靭帯を作成。関節鏡で行うため傷口が小さく回復が比較的早い手術法 靭帯縫合術 部分断裂や複合損傷に対して断裂部を縫合。完全断裂では適応外となる場合が多い手術法 手術後の流れと期間 リハビリで筋力と柔軟性を回復。スポーツや日常生活への復帰まで6カ月〜1年を要する経過 手術療法は、靭帯が完全に断裂した場合や保存療法で改善しない場合に実施されます。手術による靭帯再建は関節の安定性を回復させ、半月板や関節軟骨の二次的な損傷、再断裂、変形性関節症のリスクを減らします。 手術は身体への負担が大きく長期間のリハビリを要するため、生活スタイルや損傷の程度を踏まえて医師と相談し治療法を選択することが重要です。 再生医療 再生医療は、損傷した靭帯の自己修復を促す治療法です。靭帯や関節の組織は血流が少なく自然治癒しにくいですが、血小板に含まれる成長因子や脂肪由来の幹細胞を利用することで修復を促進します。 代表的なPRP療法では、患者自身の血液から血小板成分を抽出して損傷部位に注入します。成長因子が炎症を抑え、症状の軽減に寄与します。 ただし、すべての症例に適応できるわけではなく、実施できる医療機関も限られます。治療を希望する場合は、医師と相談して適応を確認しましょう。 前十字靭帯断裂に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 スポーツ外傷に対する再生医療についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。 靭帯損傷の予防法 予防法 詳細 運動前後のウォーミングアップとクールダウン 関節や筋肉を温め可動域を広げ、運動後に筋や靭帯を緩める習慣 筋力強化とバランストレーニング 関節周囲の筋力向上と姿勢制御力の向上による負荷分散 適切なフォームと装具の活用 動作の改善とサポーターなどの使用による関節保護 日常生活でのケアと体調管理 無理な動作回避と休養、疲労や体調不良時の負荷調整 靭帯損傷は、正しい知識と日常的なケアによって予防できます。運動前後のストレッチやウォーミングアップは関節や筋肉の柔軟性を高め、急な動きへの対応を助けます。筋力とバランスを整えるトレーニングも関節の安定性向上に有効です。 正しいフォームの習得やサポーターの活用によって関節への負担を軽減し、再発を防止できます。疲労をためない体調管理も重要です。 運動前後のウォーミングアップとクールダウン 靭帯損傷の予防には、日常的な準備運動と整理運動の習慣が欠かせません。ウォーミングアップで筋肉や関節を温めることで急な負荷への耐性が高まり、クールダウンは柔軟性を保ち損傷リスクを減らします。 加えて、関節周囲の筋力強化やバランストレーニングで安定性を高め、適切なフォームや装具の活用、無理のない生活と体調管理を徹底することで、靭帯への負荷を軽減できます。 筋力強化とバランストレーニング 筋力強化とバランストレーニングは靭帯損傷の予防に欠かせません。膝周囲の大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えることで関節への負担が分散され、靭帯への過度なストレスを軽減できます。 スクワットやランジ、バランスボール、片足立ち、バランスボードなどのトレーニングは、筋力と神経系の反応速度を高め、関節の安定性を向上させて転倒リスクを減らします。 筋力強化とバランストレーニングを組み合わせて行うことで相乗効果が得られ、関節の安定性が高まるため、定期的に正しいフォームで実施することが重要です。 適切なフォームと装具の活用 正しい運動フォームの習得は靭帯損傷予防の基本です。スクワットやランジでは膝がつま先より前に出ないようにし、膝が内側に入らないよう注意します。体幹をまっすぐ保ち、不適切なフォームによる靭帯へのストレスを避ける必要があります。 運動強度は自分の体力に合わせて段階的に進め、適切な休息を取り入れることが大切です。テーピングやサポーターは関節の動きを補助し、不安定な動きを制限して靭帯への負担を軽減します。 とくにスポーツ時やリハビリ初期に有効ですが、医師の指導を受けて正しく使用することが不可欠です。 日常生活でのケアと体調管理 項目 内容 RICE療法の実施 安静・冷却・圧迫・挙上の4つの基本処置で炎症と腫れを抑制 膝への負担軽減 無理な動作や長時間の立ち仕事を避け、杖やサポーターで関節を保護 栄養管理 タンパク質・ビタミンC・亜鉛を含むバランスの良い食事で組織修復を促進 十分な睡眠 疲労回復と治癒促進に不可欠な休養時間の確保 適切な運動療法 症状が落ち着いた段階でのストレッチや筋力トレーニングの継続 日常生活でのケアと体調管理は靭帯損傷の回復を大きく左右します。受傷直後はRICE療法を速やかに実施し、炎症や腫れを最小限に抑えることが重要です。 回復期には膝に過度な負担をかけず、栄養と休養をしっかり取り入れることが必要です。痛みや腫れが落ち着いた段階で、医師や理学療法士の指導のもと、痛みのない範囲で徐々に運動療法を進めます。 急な激しい運動は避け、段階的に負荷を上げることが再発防止と早期回復につながります。 靭帯損傷でお悩みの方は当院へご相談ください 靭帯損傷を放置すると慢性的な痛みや関節の不安定性につながり、将来的に変形性関節症を招く可能性もあります。早期に診断を受け、適切な治療を始めることが回復への第一歩です。 靭帯損傷の治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、靭帯損傷に対して再生医療を用いた治療をご提案しています。 再生医療は、患者自身の細胞が持つ修復力を活かし、損傷した靭帯組織の再生を促す治療法です。従来の治療法と比べて身体への負担が少なく、自然な回復を期待できるのが特徴です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 靭帯損傷に関するよくある質問 靭帯損傷は歩いて治りますか? 軽度の損傷であれば、適切な固定と安静により数週間で改善する可能性がありますが、歩行だけでは十分な治癒は得られません。 中等度以上の損傷では、無理に歩き続けると靭帯や関節に負担がかかり、治癒が遅れたり慢性的な関節不安定性を残したりする恐れがあります。 靭帯損傷の治療には、損傷の程度に応じた固定、段階的なリハビリ、医師による経過観察が不可欠です。 靭帯損傷が疑われる場合は、まず整形外科を受診し、画像検査による正確な診断を受けてください。損傷の程度を評価した上で、保存療法か手術療法かを含めた治療方針を決定します。 以下の記事では、歩けるけど痛い肉離れの症状について詳しく解説しています。 靭帯損傷でやってはいけないことは? 受傷直後に無理に動かしたり、痛みを我慢して運動を続けたりすることは避けましょう。アイシングや固定をせずに放置すると炎症が長引き、回復が遅れます。 また、自己判断でマッサージやストレッチを強く行うと組織修復を妨げる恐れがあります。受診を先延ばしにせず、早期に整形外科で診断を受けることが重要です。 以下の記事では、靭帯損傷でやってはいけないことについて詳しく解説しています。 膝の靭帯損傷の応急処置でやってはいけないことは?RICE処置の正しい方法から病院での治療まで解説 靭帯損傷を早く治す食べ物は? 特定の食品だけで靭帯損傷が早く治ることはありません。しかし、適切な栄養摂取は組織修復を支えます。 靭帯損傷の回復には、タンパク質・ビタミンC・亜鉛・鉄分・オメガ3脂肪酸を含むバランスの良い食事と十分な水分補給が重要です。 靭帯損傷でお風呂はいつから入れますか? 靭帯損傷の急性期は炎症や腫れが強いため、湯船は避けシャワーで済ませましょう。患部を温めると炎症が悪化する恐れがあります。 痛みが落ち着いた回復期には短時間の入浴が可能ですが、異常を感じた場合は冷却などの対処を行い、医師に相談してください。 靭帯断裂は自然治癒しますか? 靭帯が完全に断裂した場合、血流が乏しいため自然治癒はほとんど期待できません。放置すれば関節の不安定性が残ります。 部分断裂など軽度の損傷は固定やリハビリで回復する場合もありますが、完全断裂では手術が必要となることが多いです。 靭帯損傷は整形外科と整骨院どちらを受診するべきですか? 靭帯損傷が疑われる場合は、まず整形外科を受診してください。整形外科では画像検査により損傷の程度を正確に診断し、保存療法から手術まで適切な治療を受けられます。 整骨院では画像診断や医療行為ができないため、初期診断には不十分です。 参考文献 (文献1) 膝のねんざおよび関連する損傷(前十字靱帯断裂、半月板損傷、内側側副靱帯断裂、後十字靱帯断裂)|MSD マニュアル 家庭版 (文献2) NATIONWIDE CHILDREN'S When your child needs a hospital, everything matters.|Swelling: The Body's Reaction to Injury
2025.11.26 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
手足の震えや動作の遅れ、歩行のしづらさなどは「年齢のせいかも」と見過ごされがちな症状ですが、実はパーキンソン病が原因かもしれません。 進行性の神経疾患であるパーキンソン病は、早期の気づきと適切な対処が大切です。 予防や進行を遅らせるためにも、正しい知識を身につけておきましょう。 本記事では、パーキンソン病の原因や症状、診断・治療の選択肢まで、患者や家族が知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、パーキンソン病の治療で研究が進められている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 パーキンソン病とは パーキンソン病は、脳内のドパミンを産生する神経細胞が減少して発症する神経変性疾患です。 主に以下のような運動症状(体の動きに関わる症状)があります。 手足の震え 筋肉のこわばり 動作の遅れ 姿勢のバランス障害 中高年に多く見られる疾患ですが、40歳未満で発症する若年性パーキンソン病も存在するため、若い人でも油断できません。 なお、パーキンソン病は厚生労働省により「指定難病」に分類されています。 指定難病とは、原因不明で治療法が確立していない長期療養が必要な疾患のうち、医療費助成の対象とされるものを指します。 パーキンソン病の初期症状・進行期症状 パーキンソン病は進行性の神経疾患であり、症状は段階的に変化していきます。 初期には、以下のような軽微な兆候が見られるのが特徴です。 片側の手足に震えが現れる 歩行時の腕の振りが小さくなる 動作が遅くなる 表情が乏しくなる 字が小さくなる 上記の症状は加齢による変化と区別がつきにくく、見過ごされてしまう場合がある点に注意が必要です。 やがて進行すると、以下のような症状が目立ってきます。 姿勢の不安定性による転倒 筋肉のこわばり 歩行障害(すくみ足、小刻み歩行) 嚥下障害(えんげしょうがい)や言語障害 自律神経症状(便秘、起立性低血圧など) 認知機能の低下や幻覚 進行期には日常生活に大きな支障をきたすようになり、介助が必要となるケースも少なくありません。 早期発見と適切な治療が、症状の進行を遅らせる鍵となります。 パーキンソン病の初期症状や進行度別の症状については、以下の記事でも解説しているので参考にしてみてください。 パーキンソン病の原因 パーキンソン病は、中脳にある「黒質」と呼ばれる部位の神経細胞が減少し、神経伝達物質であるドパミンの分泌が低下することで発症します。 ドパミンは、脳内で運動を円滑に調整する役割を担っており、不足すると手足の震えや動作の遅れなどの運動障害が現れるのが特徴です。 しかしながら、黒質の神経細胞がなぜ壊れてしまうのか、その根本的な原因はいまだ明らかにされていません。 遺伝的要因や加齢、環境因子(農薬や重金属など)が関与する可能性が示唆されていますが、決定的な因果関係は解明されていないのが現状です。 したがって、パーキンソン病の予防法や根治療法の確立には、さらなる研究が必要とされています。 パーキンソン病の診断 パーキンソン病の診断では、特徴的な運動症状の確認に加え、複数の補助的検査を組み合わせます。 ここでは、代表的な検査法を見ていきましょう。 血液検査 パーキンソン病は血液検査の結果だけで診断できないものの、甲状腺機能異常や肝機能障害など、類似の症状が現れる他疾患の除外診断に有効です。 また、特定の医薬品の副作用としてパーキンソン病に似た症状が現れる「薬物性パーキンソニズム」の原因となる、代謝異常や感染症の評価にも用いられています。 全身状態を把握し、安全な治療方針を立てるためにも欠かせない検査のひとつです。 MIBG心筋シンチグラフィー検査 MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)心筋シンチグラフィーは、自律神経機能の低下を評価する画像検査です。 MIBGとは放射性医薬品で、心臓の交感神経系の機能を調べるために使われています。 パーキンソン病においては、心筋へのMIBG取り込みが低下する傾向がある点を利用する方法ですが、あくまで補助手段として有用な検査です。 また、脳の神経細胞にできる異常なたんぱく質の塊が神経を壊すことで発症する「レビー小体型認知症」との鑑別や、診断の裏づけとしても用いられています。 DATスキャン DATスキャンは、脳内で運動を調整する役割を持つ「ドパミン神経」がどの程度機能しているか、画像として映し出す検査です。 「核医学検査」とも呼ばれ、微量の放射性薬剤を体内に注射し、薬剤が脳内のどこにどのくらい集まるかを特殊なカメラで調べます。 とくに調べるのは、運動制御に重要な部位「線条体(せんじょうたい)」にある「ドパミントランスポーター」というたんぱく質です。 ドパミントランスポーターの数が減っていると、ドパミン神経が減少していると判断されます。 パーキンソン病ではドパミン神経が少なくなっているため、DATスキャンでその変化を捉えることが可能です。 手の震えが見られる「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」など、他の病気との区別にも役立ち、より正確な診断につながります。 頭部CT・MRI検査 頭部CTやMRIは主に、脳出血や脳腫瘍、脳梗塞など他の神経疾患による症状との区別に用いられます。 パーキンソン病では、これらの検査で明確な異常が見られないケースが多いものの、進行した症例では黒質の萎縮などが確認される場合もあるため、鑑別診断としても不可欠な検査です。 脳血流スペクト検査 脳血流スペクト検査は、脳の各領域の血流状態を評価する検査方法です。 パーキンソン病では特定の部位に血流低下が見られる場合があり、進行度の把握や認知機能障害との関連性を確認するための補助的な検査として行われています。 また、レビー小体型認知症など、他の神経疾患との鑑別にも用いられています。 パーキンソン病の治療法 パーキンソン病の治療は、ドパミンの不足によって生じる症状を改善し、日常生活の質を維持することが目的です。 現在のところ根治療法は存在しておらず、主に薬物療法によって神経伝達のバランスを整えることが基本となります。 治療内容は、病状の進行や症状の現れ方に応じて段階的に見直されていきますが、薬でのコントロールが難しくなる進行期には、手術療法やデバイス補助療法も選択肢のひとつです。 個々の症状に合わせた適切な治療計画の立案が、長期的な病状管理には不可欠となります。 薬の種類 パーキンソン病の薬物療法では、ドパミンの補充・模倣・維持を目的とした複数の薬が使われます。 以下に主な薬剤をまとめました。 薬の種類 主な役割 特徴 レボドパ製剤 脳内でドパミンに変換される 最も効果的で広く使用される第一選択薬 ドパミンアゴニスト ドパミンのように働く 効果はやや穏やかだが作用時間が長い MAO-B阻害薬 ドパミンの分解を抑える 他の薬との併用で効果を補強する COMT阻害薬 レボドパの効果持続時間を延長する 薬効の「切れ」を緩和 抗コリン薬 アセチルコリンの作用を抑制する 震えに効果があるが副作用に注意 アマンタジン ドパミン放出を促進する 初期症状やジスキネジアに効果がある 薬剤は単独または組み合わせて使用され、患者の年齢、症状の程度、副作用リスクなどを考慮して処方されます。 手術療法 パーキンソン病では、内服薬による治療で十分な効果が得られなくなった場合、手術療法やデバイス補助療法が検討されます。 代表的な手術法が、脳深部刺激療法です。 脳の視床下核などの特定部位に電極を埋め込み、電気刺激を加えて異常な神経活動を抑制し、手の震えや動作の遅れなどの症状を改善します。 また、胃に設けた小さな穴にチューブを通し、薬を直接小腸に送り続けて薬の効果を安定させるレボドパ持続経腸投与療法も治療法のひとつです。 体内の薬の濃度を一定に保ち、薬の効き目が突然切れる「オン・オフ現象」の改善を目指します。 以下の記事では、パーキンソン病に対する先進医療や研究について紹介しているので、参考にしてみてください。 パーキンソン病における「再生医療」という選択肢 パーキンソン病の研究分野では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療の開発が進められています。 iPS細胞にはさまざまな種類の細胞に変化できる「分化能」があり、細胞からドパミン神経前駆細胞を作り出して移植する臨床研究が行われているのです。(文献1) また、遺伝子を脳に注入することで、パーキンソン病の症状を改善する方法も試みられています。(文献2) 再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 パーキンソン病の予防法 パーキンソン病は原因が完全には解明されておらず、確実な予防法は確立されていません。 ただし、以下のような生活習慣が発症のリスク低減につながる可能性があります。 定期的な運動やウォーキングなどの身体活動 バランスの取れた食生活 十分な睡眠やストレスの軽減 上記のような生活習慣がパーキンソン病の発症を防げると断定されてはいませんが、健康維持の観点からも意識的に取り入れることが推奨されます。 健康的な生活を続けていくためにも、適度な運動やバランスの取れた食生活、十分な睡眠を心がけていきましょう。 まとめ|パーキンソン病は適切な対処で進行を遅らせよう パーキンソン病は進行性の神経疾患ですが、早期の診断と適切な治療、生活管理によって症状の進行を遅らせることは不可能ではありません。 現在では薬物療法が中心ではあるものの、運動や食生活、睡眠などの生活習慣や予防も含めて重要な要素です。 病気と上手に向き合い、医療機関との連携も欠かさずに生活の質を高めていきましょう。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、パーキンソン病など神経の病気でも研究が進められている再生医療を行っております。 また、公式LINEでは再生医療に関する情報を提供するとともに、簡易オンライン診断をご利用いただけますので、お気軽にご登録ください。 パーキンソン病に関するよくある質問 パーキンソン病が治った人はいますか? 現在の医療では、パーキンソン病を根本的に治す治療法は存在していません。 主な治療は症状の進行を抑えたり、生活の質を維持したりする対症療法です。 ドパミン神経細胞の減少を完全に回復させる方法は、現段階で確立されていない点に留意しておきましょう。 コーヒーはパーキンソン病の進行に影響しますか? 一部の研究では、カフェインを含むコーヒーの摂取がパーキンソン病の発症リスクを下げる可能性があるとしています。 ただし、進行を遅らせる効果が医学的に証明されているわけではありません。 予防や治療の手段として推奨されているわけでもないため、健康に配慮した上で適切な量を摂取すると良いでしょう。 コーヒー摂取の一般的な健康への影響については、以下の記事でも詳しく解説しています。 パーキンソン病になりやすい性格は? パーキンソン病の患者には、以下のような性格の傾向があるとされています。 几帳面で細かいことにこだわる 変化を好まず、新しいことに慣れにくい ただし、これらの性格が直接的な原因になるとの確証があるわけではなく、あくまで統計的な傾向にすぎません。 パーキンソン病にかかった有名人はいますか? 国内外には、パーキンソン病を公表した著名人がいます。 海外では俳優のマイケル・J・フォックスやボクサーのモハメド・アリ、日本ではみのもんたさんのほか、故・岡本太郎氏や作家の三浦綾子氏などが挙げられます。 病気と向き合いながら活動を続けた方もいるので、パーキンソン病患者の励みになっているといえるでしょう。 パーキンソン病の寿命はどのくらいですか? パーキンソン病は進行性の病気ですが、生命予後が悪いわけではありません。 統計的には、平均寿命は一般の人と比べて2〜3年程度短くなるとされています。 適切な治療やリハビリテーションにより、発症から10年以上にわたって自立した生活を送ることも可能です。(文献3) パーキンソン病は何科を受診すれば良いですか? パーキンソン病の診療は、神経内科または脳神経内科が担当します。 専門的な診断や治療が必要となるため、最初は地域の医療機関やかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらいましょう。 (文献1) Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease|Nature (文献2) パーキンソン病の病態理解と治療の最前線|J-STAGE(日本内科学会雑誌) (文献3) 6 パーキンソン病|厚生労働省
2025.11.26 -
- 足部、その他疾患
- 下肢(足の障害)
- 足部
- スポーツ外傷
- その他、整形外科疾患
「走るたびにすねの内側がズキズキとする」 「足の痛みが日に日に強くなっている」 その症状はシンスプリントかもしれません。シンスプリントは、部活動やランニングに励む人が一度は経験することが多い代表的なスポーツ障害です。運動による負担の蓄積が骨膜の炎症を引き起こす主な原因です。初期対応を誤ると競技への復帰まで時間がかかることもあります。 本記事では、シンスプリントについて現役医師が詳しく解説します。 シンスプリントの原因 シンスプリントの初期症状 シンスプリントの治し方(治療法) シンスプリントはどこで診てもらうべきか シンスプリントの予防方法 記事の最後にはシンスプリントに関する質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 シンスプリントについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 シンスプリントとは 項目 内容 主な原因 筋肉の使い過ぎや足の構造・靴の問題によって骨膜に負担がかかること 症状の特徴 運動時や安静時に、すね内側へ広がる鈍い痛みが生じる 治療と予防のポイント 安静と運動量の調整を行い、ストレッチや靴の見直しで再発を防ぐことが重要 (文献1) シンスプリントは、すねの内側下方に生じる運動関連の骨膜炎で、脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれます。ランニングやジャンプ動作を繰り返すスポーツで発症しやすく、陸上競技、バスケットボール、サッカーなどの競技者に多くみられます。 原因は、下腿の筋群が脛骨の骨膜を過度に引っ張ることで、繰り返しストレスが加わり、微小な損傷と炎症が起こるためです。 初期には運動開始時の軽い違和感にとどまりますが、放置すると疲労骨折に移行する可能性があります。早期の発見と適切な対応が、競技復帰を早める鍵となります。 シンスプリントの原因 原因 詳細 オーバーユース(過度な練習や反復動作) 長時間の練習や繰り返し動作による骨膜への過剰な負担 筋力・柔軟性・体幹機能の不均衡 下腿や体幹の筋力不足、柔軟性低下による衝撃吸収力の低下 足部アライメントやフォームの乱れ 扁平足や回内足、誤ったランニングフォームによる負担の偏り 環境・個体差による影響 硬い路面、不適切な靴、成長期や体質による負荷の蓄積 シンスプリントは、骨膜に繰り返し負担がかかることで発症するスポーツ障害です。長時間の練習や急激な運動量の増加は骨膜へのストレスを高めます。 筋力や柔軟性の低下、足部のアライメント異常、環境要因などが重なり、骨膜への負担が蓄積してシンスプリントを発症すると考えられます。 以下の記事では、シンスプリントの原因について詳しく解説しています。 オーバーユース(過度な練習や反復動作) 原因 詳細 骨膜への繰り返しストレス 走行やジャンプ動作の反復による脛骨骨膜への牽引ストレスと微細損傷の蓄積 修復と負荷のバランスの乱れ 急激な運動量の増加や休養不足による修復機能の低下とダメージの慢性化 特定動作の反復による負担集中 長距離走や方向転換動作の繰り返しによる脛骨内側への局所的ストレスの集中 シンスプリントの主な原因は、運動負荷の過剰と回復期間の不足による不均衡です。急激なトレーニング量の増加や休息を取らない反復運動によって骨膜に小さな損傷が繰り返し起こり、累積したストレスが炎症を引き起こします。 運動量の急増や硬い路面での長時間の運動などによるオーバーユースが、シンスプリント発症の主な要因とされています。 筋力・柔軟性・体幹機能の不均衡 原因 詳細 筋力不足 ふくらはぎや足底の筋力低下による衝撃吸収力の低下と骨膜への負担集中 柔軟性低下 下腿後面やアキレス腱の硬さによる骨膜への牽引ストレスの増大 体幹機能低下 体幹の不安定さによるフォームの乱れと下肢への負担の偏り シンスプリントの原因は、筋力・柔軟性・体幹機能のバランスが崩れることです。ふくらはぎや足底の筋力が不足すると衝撃を十分に吸収できず、脛骨への負担が増加します。 さらに、柔軟性の低下により骨膜への牽引力が強まり、微細な損傷が起こりやすくなります。体幹の不安定さによってランニングフォームが乱れると、片側のすねに過剰な負担が集中します。 足部アライメントやフォームの乱れ 原因 詳細 足部アライメント異常 扁平足や過回内による足のアーチ機能低下と脛骨内側の負担増加 フォームの乱れ 体幹の不安定さや偏った接地による同一部位への繰り返し負荷 微小外傷の蓄積 小さなストレスの反復による骨膜・筋付着部の損傷蓄積と炎症誘発 シンスプリントの発症には、足部のアライメント異常やフォームの乱れが大きく関与しています。扁平足や過回内では足のアーチ構造が崩れ、着地時の衝撃を十分に吸収できず、脛骨内側に負担が集中して骨膜炎を起こしやすくなります。 ランニングやジャンプ動作で体幹が不安定になり接地が偏ると、毎回のステップで同じ部位に強いストレスがかかり、とくに片脚への荷重の偏りが炎症を助長します。 こうした不適切な動作が繰り返されることで、骨膜や筋付着部に微細な損傷が蓄積し、炎症が慢性化します。予防には、正しいフォームの習得や、インソール・靴による足部アライメントの補正が不可欠です。 環境・個体差による影響 原因 詳細 運動環境の影響 硬い路面や不整地でのトレーニングにより、着地時の衝撃が増し、足部に負担が集中 運動量・強度の急激な変化 トレーニング量や強度の急増による筋肉・骨膜への過剰負荷と疲労蓄積 個体差(足の形状・筋力など) 扁平足や回内足、筋力不足や柔軟性低下による骨膜へのストレス増大 身体的・技術的要因の複合効果 体幹の不安定やフォームの乱れと環境・個体差が重なることで発症リスク上昇 シンスプリントの発症には環境要因と個人の身体特性が関与しています。硬い路面や不整地での練習、クッション性の低いシューズは着地時の衝撃を増大させます。 運動量の急激な増加、扁平足や回内足などのアライメント異常、筋力不足や柔軟性低下が過剰な負荷と疲労蓄積の原因です。体幹の不安定性やフォームの乱れが加わると、発症リスクはさらに高まります。環境調整と身体機能改善の両面から対策を講じることが重要です。 シンスプリントの初期症状 初期症状 詳細 運動時の痛み・違和感 ランニングやジャンプ動作時に感じるすね内側の鈍い痛みや違和感 運動後の痛み・不快感 運動後に現れる鈍い痛みや重だるさ、不快感の持続 すねの圧痛・筋肉の張り すね内側を押したときの痛みや、ふくらはぎ全体の張りやこわばり シンスプリントの初期には、運動時のすね内側に鈍い痛みや違和感が現れます。症状が進行すると運動後にも重だるさや不快感が残るようになります。 また、すねの内側を押すと痛みを感じ、ふくらはぎの筋肉に張りやこわばりがみられます。初期段階で適切に対応すれば改善が期待できるため、早期発見と休養が重要です。 以下の記事では、シンスプリントの症状チェックのやり方を詳しく解説します。 運動時の痛み・違和感 初期症状 詳細 運動時の痛み・違和感 運動開始直後の骨膜および筋腱移行部への牽引ストレスによる鈍い痛みや違和感 運動後の痛み・不快感 運動終了後の休息時にも続く違和感や圧痛 骨膜・軟部組織のストレス 骨膜や周囲軟部組織への繰り返しの牽引ストレスや衝撃による微細な炎症・ストレス反応 シンスプリントは、すねの骨膜に繰り返しストレスがかかることで起こる障害です。ランニングやジャンプなどの運動により骨膜に微小な炎症が生じ、とくに運動開始直後に痛みや違和感が現れます。 初期段階では体が温まると症状が軽減することがありますが、これは異常反応のシグナルと捉えるべきです。症状が進行すると運動後や安静時にも違和感や圧痛が残るようになります。この段階での違和感を軽視せず、運動量の調整や医療機関を早めに受診することが重要です。 運動後の痛み・不快感 要因 詳細 骨膜・軟部組織への微小炎症 運動による繰り返しストレスで骨膜や筋付着部に炎症が起こり、運動後に痛みや不快感が出現 筋肉疲労と牽引ストレスの残留 ヒラメ筋や後脛骨筋の疲労により柔軟性が低下し、骨膜への牽引力が持続・増強 血流変化による炎症の顕在化 運動後の血流変化で炎症が表面化し、安静時に痛みを感じやすくなる状態 シンスプリントは、すねの骨膜やその周囲組織に繰り返しストレスがかかることで発症する障害です。運動後に痛みや不快感が強くなることが初期段階の典型的なサインです。 運動を続けることで、骨膜や筋付着部には微小な炎症が生じ、疲労した筋肉が硬くなることで骨膜への牽引ストレスが残りやすくなります。実際、シンスプリントは「繰り返しストレスによって発生する足の痛み・不快感」とされ、運動後に症状が強くなることが知られています。(文献2) また、運動中は血流が活発になり炎症反応を感じにくい一方で、運動を終えると筋肉の緊張緩和や循環の変化によって炎症が顕在化し、痛みや不快感が現れやすくなります。 運動直後よりも安静時のほうが痛みを感じやすくなるため、この段階で生じる違和感を放置せず、早めに休養を取り医療機関を受診することが重要です。 すねの圧痛・筋肉の張り シンスプリントでは、繰り返しの運動によって脛骨周囲の骨膜が引っ張られ、脛骨内側の骨膜炎により圧痛が生じます。また、ふくらはぎの主にヒラメ筋や後脛骨筋が疲労して硬くなると、筋肉の柔軟性が低下し、骨膜への牽引ストレスが増加します。これが筋肉の張りや痛みの原因となり、運動中や運動後に症状が強まります。 炎症が進行する前段階では、動作時や直後に押すと痛む、筋肉が硬いといった違和感が先行することが多く、これらは早期発見の重要なサインです。 炎症の拡大が疑われる場合、自己流のマッサージや強いストレッチは避けてください。違和感が続く場合は、整形外科での診察と適切な治療を受けることが重要です。 シンスプリントの症状進行と持続痛について 段階 状態 症状の特徴 初期段階 運動中・運動後に痛みが出現 休息により症状が軽減することが多い状態 進行段階 炎症・微細損傷の慢性化 運動中の痛みが強まり、休息後も症状が残存 重症段階 組織の修復能力を上回る負荷が継続する状態 安静時にも痛みが出現し、日常生活への支障 シンスプリントは、すねの骨膜や周囲組織に繰り返しストレスが加わることで発症します。初期段階では運動中や運動後に痛みが出現しますが、休息により症状が軽減することが多い状態です。しかし、適切なケアを行わず負荷を続けると、炎症や微細な損傷が慢性化し、症状が進行します。 骨膜や筋腱は休息や修復反応によってダメージを回復させる能力がありますが、修復が追いつかないほど負荷が加わり続けると、損傷と炎症が累積します。進行段階では運動中の痛みが強まり、休息後も症状が残存するようになります。 重症化すると安静時にも痛みが生じて日常生活に支障を来し、持続痛や強い局所痛がある場合は疲労骨折へ進展するおそれもあるため、早期対応が重要です。 シンスプリントの治し方(治療方法) 治し方(治療方法) 詳細 安静と運動調整 痛みの原因となる運動を一時的に中止し、運動量や強度を段階的に調整する休養と負荷管理 炎症抑制・物理療法 炎症や痛みを抑えるためのアイシング、超音波療法、低出力レーザー治療などの実施 ストレッチ・筋力トレーニング・リハビリ 下腿や体幹の柔軟性・筋力を整え、再発予防を目的とした段階的リハビリの実施 テーピング・装具(インソールなど) 足部アライメントを整え、衝撃や負担を軽減するためのテーピングやインソールの使用 薬物療法 炎症や痛みを緩和するための消炎鎮痛剤や外用薬の使用 再生医療 慢性化した場合に用いられる、自己修復を促すPRP療法(多血小板血漿注入)などの再生治療 シンスプリントの治療は、まず安静と運動量の調整により炎症の悪化を防ぎます。急性期にはアイシングや超音波などの物理療法で痛みと炎症を抑え、回復期にはストレッチや筋力トレーニングで柔軟性と安定性を取り戻します。 足部アライメントを整えるためのインソールやテーピングも有効です。症状が強い場合は薬物療法を併用し、慢性化例では再生医療を検討する場合もあります。ただし、再生医療は適用できる医療機関が限られており、患者の症状によっては適用できないケースもあるため、事前に医師との相談が不可欠です。 以下の記事では、治らないシンスプリントの治療法について詳しく解説しています。 安静と運動調整 シンスプリントの治療において、安静と運動調整が基本です。過度な練習や反復動作で生じた炎症は、運動を続けると悪化するため、安静により炎症を鎮静化させ、組織の修復を促します。運動を完全に止めるのではなく、症状を悪化させない範囲での運動量や内容の調整が大切です。 練習強度を下げる、回数を減らす、水泳や自転車など衝撃の少ない運動へ切り替えることで、体力を維持しながら回復を図ります。発症初期には患部に負担をかけない軽いストレッチや上半身トレーニングが推奨されます。 症状が軽快しても違和感が消えてから数日経過し再発がないことを確認した上で段階的に負荷を増やし、無理な練習継続による慢性化を避ける計画的な復帰が重要です。 炎症抑制・物理療法 シンスプリントは脛骨の骨膜に炎症が生じるため、炎症抑制と物理療法が治療の中心です。急性期には患部を安静にし、アイシングや非ステロイド性抗炎症薬で炎症を鎮めます。超音波療法などの物理療法は血流を改善し、組織修復を促進します。 症状が軽減したらストレッチや筋力強化運動を段階的に行って筋肉や骨膜の回復を促し、痛みが消えた後も急に運動強度を戻すと再発のリスクが高まるため、医師の指導に従い、段階的に運動量を増やすことが重要です。 ストレッチ・筋力トレーニング・リハビリ 項目 目的・内容 注意点 ストレッチ 筋肉や腱の柔軟性向上、関節可動域の拡大、怪我予防、血流促進 痛みの手前で止める、反動をつけない、怪我部位は専門指導のもとで実施 筋力トレーニング 筋力・持久力の向上、姿勢安定、関節保護、骨密度維持、代謝改善 正しいフォームの維持、負荷の段階的増加、呼吸を止めない、持病は医師に相談 リハビリテーション 機能回復、痛みや拘縮・筋萎縮の改善、日常・スポーツ復帰支援 過負荷を避ける、医師の計画に基づく実施、痛み時は中止、継続の徹底 ストレッチ、筋力トレーニング、リハビリテーションは、シンスプリントの根本的な改善に不可欠です。ストレッチはヒラメ筋や後脛骨筋を柔らかくし、骨膜への牽引力を軽減して痛みを和らげ、再発を防ぎます。 筋力トレーニングは足部アーチのサポート力や体幹の安定性を向上させ、運動時の負担を分散します。リハビリテーションでは痛みの程度に応じて運動負荷を段階的に調整し、筋肉や骨膜の耐久性を向上させます。これらは医師や理学療法士の指導のもと、個々の症状に応じて実施が重要です。 以下の記事では、シンスプリントに対して有効なリハビリ方法を解説しています。 テーピング・装具(インソールなど) 項目 目的・効果 注意点 テーピング 関節や筋肉の安定化、損傷部位の保護、痛みの軽減、フォーム補正 強く巻きすぎない、長時間の使用を避ける、皮膚トラブルに注意、根本治療ではなく補助的手段 装具 関節の安定・保護、変形や再発の予防、動作補助、痛み軽減、歩行や姿勢の改善 長時間使用による筋力低下に注意、医師の指示に従う、装着部の皮膚状態を確認 インソール 足部アライメントの矯正、荷重分散、歩行・ランニング効率の改善、スポーツ障害の予防 サイズや靴との相性を確認、定期的な見直し、合わない場合は使用を中止 テーピングとインソールは、シンスプリントの症状軽減と再発予防に有効な補助手段です。適切なテーピングは脛骨周囲の筋肉や骨膜を適度に圧迫し、筋肉の振動や骨膜への牽引力を抑制することで、痛みの軽減と炎症の進行予防に役立ちます。 また、足部の安定性を高め、床からの衝撃や不均等な負担を分散させることで、患部へのストレスを軽減します。さらに、テーピングは関節の過度な動きを制限し、筋肉や関節の過負荷を防ぐため、スポーツ活動時の怪我予防や再発予防に効果的です。 インソールは足部アーチをサポートし、歩行や運動時の足全体のバランスを整えることで、骨膜への負担を軽減します。これらの補助手段は、根本的な治療ではありませんが、ストレッチや筋力トレーニングと併用することで、症状の改善と長期的な再発予防が期待されます。 以下の記事では、シンスプリントにおけるテーピング方法について詳しく解説しています。 薬物療法 シンスプリントは脛骨の骨膜や筋腱付着部の炎症により発症するため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による炎症抑制が症状軽減に有効です。内服薬や外用薬は炎症と痛みを軽減し、日常生活やリハビリを行いやすくします。 ただし、薬物療法は過度な炎症反応をコントロールして自然治癒を助ける補助的な役割です。安静、物理療法、リハビリテーションと組み合わせることで効果が最大化されます。 薬物療法は短期間の使用が推奨されるため、市販薬を自己判断で長期間使用することは避け、医師の指示に従って服用してください。根本的な改善のためには、薬物療法に加えて運動量の調整や筋力・柔軟性の改善など、包括的なアプローチが欠かせません。 再生医療 シンスプリントは脛骨周囲の骨膜や筋腱付着部に繰り返しストレスが加わり、炎症や微細な損傷が生じる状態です。多くは安静や運動調整で改善しますが、症状が慢性化したり再発を繰り返したりする例も存在します。 難治性の症例では、脂肪由来幹細胞による組織修復促進や血小板に含まれる成長因子による抗炎症作用が期待される再生医療が治療の選択肢となる場合があります。 ただし、再生医療を実施できる医療機関は限られており、患者の症状や状態によっては適用できないケースもあるため、治療を検討する際には医師への相談が不可欠です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 シンスプリントはどこで診てもらうべき? 項目 医療機関(整形外科) 整体・接骨院 診断 医師が診察・画像検査で原因を特定 画像検査ができず診断不可 対応内容 医学的治療・リハビリの計画 筋肉調整やマッサージ中心 適応範囲 炎症・骨膜障害・疲労骨折など幅広く対応 軽度の筋緊張緩和のみ (文献3) シンスプリントが疑われる場合、整形外科またはスポーツ整形外科の受診が基本です。自己判断でストレッチや湿布のみで対応すると、炎症が悪化して回復が遅れる可能性があります。 整形外科では問診・触診に加え、レントゲンやMRI検査などで疲労骨折との鑑別診断を行います。これにより症状の進行度を正確に評価し、適切な治療方針を決定します。 とくにスポーツ整形外科では、アスリートや運動習慣のある方を対象に、再発予防まで含めた包括的なリハビリを提供します。理学療法士が筋肉の柔軟性や体幹バランスを評価し、段階的な運動再開をサポートします。 なお、接骨院や整体などでの施術は一時的に症状が軽減したように感じられることがありますが、根本的な改善につながる医学的根拠は十分に確立されていません。まずは医療機関での正確な診断を受けることが重要です。 シンスプリントの予防方法 予防方法 詳細 運動量と休養の調整 運動量や強度を段階的に増やし、疲労を蓄積させないスケジュール管理。十分な休養日を設け、筋肉や骨膜の回復を促すバランス調整 身体機能の改善(筋力・柔軟性・フォーム) 下腿筋群のストレッチや筋力トレーニングによる衝撃吸収力の向上。ランニングフォームや着地動作の改善による負担分散 外的要因への対応(シューズ・インソール・環境) クッション性やフィット感に優れたシューズの選択。インソールによる足部アライメントの補正。硬い路面や傾斜地での練習回避 シンスプリントの予防には、運動負荷と身体機能、環境要因への多角的なアプローチが必要です。まず、急激な運動量の増加を避け、十分な休養を確保することで組織の修復を促します。 次に、下腿筋群や体幹の筋力強化、ストレッチによる柔軟性向上、正しいランニングフォームの習得を行い、衝撃吸収能を高めて負荷を適切に分散させます。 クッション性に優れたシューズの選択や足部アライメントに合わせたインソールの使用、硬い路面を避けた練習環境の見直しも重要です。これらの要素を総合的に実践することで、シンスプリントの発症リスクを効果的に低減できます。 運動量と休養の調整 シンスプリントの予防には、運動量の段階的調整と適切な休養の確保が基本となります。加えて、筋力強化やストレッチによる柔軟性向上、正しいフォームの習得といった身体機能の改善により、下腿への負担を軽減できます。 さらに、足に合ったシューズやインソールの活用、硬い路面の回避など外的環境を整備することも重要です。これらの対策を総合的に実践することで、シンスプリントの発症・再発リスクを抑制し、継続的な運動が可能になります。 身体機能の改善(筋力・柔軟性・フォーム) シンスプリントの再発予防には、身体機能の総合的な改善が重要です。筋力強化では、ヒラメ筋や後脛骨筋を鍛えることで骨への負担を軽減します。ゴムチューブを用いたふくらはぎのトレーニングや足指でタオルを引き寄せる運動が効果的です。 柔軟性向上ではヒラメ筋を中心としたストレッチを運動前後に習慣化し、フォーム改善では適切な着地方法や膝の角度、姿勢を段階的に習得することで、炎症リスクと脛骨への衝撃を軽減します。 適切な運動量の調整や休養を取り入れながら実践することで、衝撃を吸収する力が高まり、筋肉への牽引ストレスが減少し、荷重のバランスも整いやすくなります。 外的要因への対応(シューズ・インソール・環境) シンスプリントの再発予防には、練習環境やシューズなど外的要因への配慮が重要です。クッション性が低下したシューズや足に合わない靴を使用すると、着地時の衝撃が脛骨へ直接伝わり骨膜への負担が増大します。 競技特性や足型に合ったシューズを選び、定期的に交換することが大切です。扁平足や過回内がある場合は、医療用またはスポーツ用インソールで足のアライメントを補正し、荷重バランスを整えることが有効です。 また、アスファルトなどの硬い路面ばかりで練習せず、芝生やゴムトラックなど柔らかい地面を取り入れることで衝撃を軽減できます。これらの外的要因を見直すことは、身体への負担を減らし再発予防を支える重要な要素です。 シンスプリントを理解して適切な対策を講じよう シンスプリントは、スポーツを続ける人に多く見られる下肢の障害で、脛骨周囲の骨膜や筋肉に炎症やストレスが生じることで発症します。初期の段階で適切に対応すれば回復しやすいため、違和感を放置せず早めにケアしましょう。 運動量の調整やストレッチ、シューズの見直しなど、日常の工夫で負担を軽減できます。症状が続く場合や再発を繰り返す場合は、整形外科での診断とリハビリが必要です。 シンスプリントの治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、患者さまご自身の細胞や血液成分を用いる再生医療を行っており、損傷した組織の修復をサポートする治療の選択肢としてご案内しています。症状や状態に応じて、適切な方法を検討しご提案いたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 シンスプリントに関するよくある質問 シンスプリントは休養期間を設ければ改善しますか? シンスプリントは、適切な休養を取ることで改善が期待できる場合があります。初期症状であれば約2週間の安静で痛みが和らぐこともありますが、無理な運動再開は再発の原因になります。 症状が続く場合は医療機関での診察やリハビリが必要です。筋力や柔軟性の改善を並行して行うことが回復への近道です。 以下の記事では、シンスプリントの休むべき期間について詳しく解説しています。 家族がシンスプリントになったときはどうすれば良いですか? シンスプリントの回復には、休養とセルフケアに加え、心身のサポートが重要です。お子さまが痛みを抱えているときは、無理に運動を続けさせず安静を保つことが大切です。 症状が落ち着いたら、自転車や水泳など負担の少ない運動に切り替え、段階的に練習を再開しましょう。アイシングやテーピング、インソールの使用も有効です。 思うように動けない時期は焦りや不安を感じやすいため、ご家族が寄り添い、前向きな気持ちで回復に取り組めるよう支えることも大切です。痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 シンスプリントは走りながら治すことはできますか? シンスプリントは脛骨周囲の骨膜や筋付着部に炎症が生じる障害です。痛みを抱えたまま走り続けると疲労骨折へ進行するおそれがあるため、推奨されません。 初期の違和感程度であれば、医師の診断を受けた上で運動強度や距離を調整し、路面やシューズを見直すことで回復を図れます。 治療は安静や物理療法、筋力・柔軟性の向上を基本とし、症状が落ち着いてから段階的に運動の再開が望まれます。 以下の記事では、シンスプリントを走りながら治せるかについて詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) シンスプリント|MSD マニュアル プロフェッショナル版 (文献2) Medial tibial stress syndrome: conservative treatment options|PMC PubMed Central® (文献3) Shin Splint: A Review|PMC PubMed Central®
2025.11.26 -
- その他、整形外科疾患
病院で人工関節の手術を勧められて、不安や迷いを感じている方も多いのではないでしょうか。 人工関節置換術は、進行した関節の変形や軟骨のすり減りに対して有効な治療の一つとされています。 一方で、手術という大きな選択を前に「本当に自分に必要なのか」「術後の生活はどうなるのか」と考える方も少なくありません。 この記事では、人工関節の仕組みやメリット・デメリット、手術後に注意すべき点などを解説します。 手術を受けるか迷っている方や、他の選択肢も検討したい方は、最後までご覧ください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 人工関節について気になることがある方は、ぜひご登録ください。 人工関節とは 人工関節とは、関節のすり減った部分を補うために使用される人工のパーツのことです。 金属やセラミック、ポリエチレンなどの素材でできており、股関節や膝関節のように体重を支える部位で使われるケースが多くみられます。(文献1) 損傷した関節面の一部または全部を人工関節に置き換える手術が「人工関節置換術」です。 ここでは、人工関節の役割と仕組み、人工関節置換術を受ける人の特徴について解説します。 人工関節の役割と仕組み 人工関節は、損傷した関節の代わりに骨の端同士がスムーズに動くための「接合部」の役割を担うものです。 関節の摩耗によって軟骨がすり減ると、骨同士が直接ぶつかり、痛みがあらわれたり動作の制限が起こったりします。 人工関節は、この痛みの原因を取り除き、動きを滑らかにするために使われます。 とくに多く使用される股関節および膝関節の人工関節の仕組みは、以下のとおりです。(文献2)(文献3)(文献4)(文献5) 関節部位 置き換える部位 仕組み 股関節 ・大腿骨の骨頭 ・骨盤の臼蓋 大腿骨側に付けたボール状の部品が、骨盤側に付けたカップ状の部品内でなめらかに回転し、自然な動きを再現する 膝関節 ・大腿骨と脛骨の接合面 ・必要に応じて膝蓋骨(しつがいこつ:膝の皿) 大腿骨側の部品が脛骨側の部品の上を転がるように滑らかに動くことで、スムーズな屈伸運動を再現する 関節の状態に応じて、一部だけを置き換える「部分置換」や、関節全体を置き換える「全置換」などの種類が選ばれます。 これらの手術によって、関節の痛みを和らげて可動域を改善し、歩行や階段昇降といった日常動作の質を高めることが期待できます。 人工関節を置換する主な部位 人工関節置換術は、関節の痛みや変形が進行し、薬やリハビリテーションでの改善が難しい場合に実施されます。 主な置換部位は、次のとおりです。(文献1) 股関節 膝関節 肩関節 肘関節 足関節(足首) 手指関節 これらの部位を人工関節に置き換えることで、痛みの軽減や機能の回復を目指します。 人工関節を置換するメリット 人工関節の手術によって得られる主なメリットは、以下のとおりです。(文献6) 外出や趣味など、生活の幅が広がる 痛みのストレスから解放され、精神的な負担も減る 歩く・立ち上がる・階段を上るなどの基本動作がスムーズになる 長年痛みとともに過ごしてきた方にとっては、生活の質(QOL)を改善できるきっかけとなるでしょう。 人工関節を置換するデメリット 人工関節は、変形性関節症や大腿骨頭壊死症などに有効な治療法ですが、人工物であることから以下のような注意点とリスクがあります。(文献6) 寿命があるため、再手術の可能性がある 転倒や強い衝撃などで破損するリスクもゼロではない 感染症や血栓症などの合併症リスクがある 脱臼や早期の摩耗を防ぐため手術部位によって動きが制限されることがある 手術を受ける際は、これらのデメリットもしっかり理解した上で検討しましょう。 【関連記事】 肩の人工関節のデメリットを医師が解説|7つのリスクと再生医療という選択肢 変形性股関節症|人工関節手術のデメリット・リスクと治療の代替案を紹介 人工関節置換術を受ける人の特徴 人工関節置換術は、以下のような状態の方に検討されることが多い手術です。(文献1)(文献7) 長年の関節の痛みで、歩く、立つなどの日常生活が困難になっている 薬やリハビリなどの保存療法では効果が出なくなった 関節の変形や骨の摩耗が進んでいる 医師から「関節の形や仕組みに根本的な異常がある」といわれた 膝関節を例にあげると、変形や軟骨のすり減りが進んだ変形性膝関節症や関節リウマチが、この手術の主な対象となります。 【関連記事】 変形性股関節症とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説 大腿骨頭壊死症の原因とは?生活習慣との関連性や予防法について紹介 人工関節置換術にかかる手術費用 人工関節置換術にかかる費用は合併症の有無や入院期間によって異なり、一般的には保険適用前で200万円前後かかるとされています。 しかし、日本では公的医療保険制度が適用されるため、自己負担額は総額の1割〜3割です。 高額療養費制度や更正医療を活用すると、さらに負担額は減り、結果的に数万円〜数十万円におさえられるでしょう。(文献8)(文献9) 人工関節置換術における入院期間の目安 入院期間は、一般的に2〜3週間ほどといわれています。 手術直後からリハビリテーションが開始となり、痛みが管理されれば、座ったり立ち上がったりする訓練が始まります。 入院中に杖を使った歩行や階段昇降の練習をおこない、自宅での生活に慣れることが目標です。 手術後の経過やリハビリテーションの進行、自宅生活の準備が順調であれば退院となります。 人工関節置換術後にやってはいけないこと 人工関節の手術を受けたあとは、生活状態によって置換部位の脱臼や人工関節の破損が起きやすくなります。 人工関節を長持ちさせるには、関節に負担をかける以下の動作は避けるようにしましょう。(文献10) 置換した部位 避けるべきこと 股関節 ・重いものをもつ ・深くしゃがむ、正座をする ・内股の姿勢やあぐらをかく ・急に体をひねる ・ハードな運動やスポーツをする 膝関節 ・リハビリテーションを自己中断する ・不摂生な生活で体重を増やす ・正座の姿勢をとる ・ジャンプやランニングなどの激しい運動をする ・膝に負担の大きい生活環境を放置する 手術後は医師や理学療法士の指導に沿って、少しずつ体を慣らすことが大切です。 【関連記事】 人工股関節手術後の生活における注意点とは?気を付けることやリハビリについて【医師監修】 人工膝関節置換術後にやってはいけないこと|生活上の注意点とは? 人工関節置換術以外の治療法 人工関節の手術は有効ですが、症状や年齢、生活環境によっては他の治療法も選択できます。 主な治療法をまとめると、次のとおりです。(文献7)(文献11)(文献12) 治療法 治療内容 保存療法 痛み止めやヒアルロン酸注射、運動療法、生活指導など 関節鏡手術 小さなカメラで関節内部を確認し、損傷部分を処置する手術 幹細胞治療 体の機能を修復する役割がある幹細胞を利用した治療(自由診療) これまでは、保存療法で十分な効果が得られなかった場合に、関節鏡手術や人工関節置換術が選択されるのが一般的な流れでした。 しかし最近では、保存療法と手術の間に位置する新たな治療として、再生医療が選択肢にあがることも少なくありません。 なかでも幹細胞を用いた治療は、他の細胞に変化する「分化能」を利用した治療法で、手術以外の方法を希望する方に検討されています。 再生医療について詳しく知りたい方は、当院リペアセルクリニックの公式LINEの登録をご提案します。 公式LINEが提供する再生医療に関する情報は、手術以外の選択肢を検討する上で役立つはずです。 【関連記事】 変形性股関節症の保存療法|手術を避けて症状改善を目指す治療法 変形性膝関節症の再生治療(PRP療法)の体験談|効果・費用も紹介 人工関節の手術を検討する前に知識をつけておこう 人工関節は、股関節や膝関節などの損傷を補い、痛みを和らげて日常生活を取り戻す治療法です。 一方で、部品に寿命があるため再手術が必要になる可能性や、動作の制限、感染などのリスクもあります。費用や入院期間も無視できない要素です。 手術以外にも、保存療法や再生医療などの選択肢を理解しておくことで、自分に合った治療法を検討しやすくなります。 人工股関節置換術を選択せず、再生医療による治療を受けた症例については、以下の記事をご覧ください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 人工関節について気になることがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 人工関節に関するよくある質問 人工関節の手術後はすぐに歩けるようになりますか? 膝や股関節の人工関節置換術の場合、杖を使用して歩けるようになるまでの期間は数日〜10日ほどです。(文献13) 手術後の状態によりますが、手術翌日からベッドの端に座る、平行棒や歩行器などの補助具を使用して歩く、杖で歩くと、段階的にリハビリテーションを進めるのが一般的です。 ただし、手術前に強い痛みによって運動が制限されていた方では筋力低下が進んでいる可能性があり、回復に時間を要するケースもあります。 人工関節を入れたら障害者手帳交付の対象になりますか? 人工関節を入れたからといって、必ず障害者手帳が交付されるわけではありません。(文献14) 以前は人工関節置換術を受けるだけで一律の等級を認定されましたが、平成26年の改正によって手術後の関節機能で判断されるようになりました。(文献14) そのため、手術後に関節の痛みや動きが明らかに改善した場合には、交付の対象とならないこともあります。 人工関節の寿命はどのくらいですか? 人工関節の技術が進歩して、パーツの寿命は延びています。 入れ替え手術が必要になる方の割合については、以下の報告があります。(文献15) 置換部位 入れ替え手術が必要な方の割合 股関節 ・術後20年:6人に1人ほど ・術後30年:4人に1人ほど 膝関節 ・術後20年:6人に1人ほど 年齢や体重、日常の活動量によって変わるため、若い方や活動量が多い方では摩耗が早まる傾向です。 関節に負担をかけない生活習慣や定期的な受診を続け、再手術のリスクを下げましょう。 参考文献 (文献1) 人工関節とは | 日本人工関節学会 (文献2) 人工股関節について - 人工股関節置換術|千葉市立青葉病院 (文献3) 新・股関節がよくわかる本Web版|公益財団法人股関節研究振興財団 (文献4) 人工膝関節手術|東京女子医科大学整形外科 (文献5) 人工膝関節置換術|焼津市立総合病院 (文献6) 人工関節②人工関節手術のメリット・デメリット|日赤和歌山情報局 Hot(ほっと) (文献7) 「変形性股関節症」|日本整形外科学会 (文献8) 高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省 (文献9) 自立支援医療(更生医療)の概要|厚生労働省 (文献10) 人工股関節置換術を受ける患者さんへ|東京医科大学病院 (文献11) 「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 (文献12) 関節鏡・脊椎内視鏡ってご存知ですか?|川崎医科大学 総合医療センター (文献13) 人工膝関節について - 人工膝関節置換術|千葉市立青葉病院 (文献14) 「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」の一部改正について|厚生労働省 (文献15) よくある質問 | 日本人工関節学会
2025.11.26 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
腰からお尻、脚全体にかけて痛みを感じる場合、坐骨神経痛の可能性が考えられます。坐骨神経痛は、その名のとおり、坐骨神経と呼ばれる末梢神経に痛みやしびれをきたす状態です。 痛みやしびれを放置すると、日常生活に支障をきたす可能性もあるため、違和感を覚えた際は早めに専門機関を受診しましょう。 本記事では、坐骨神経痛の概要や原因、症状について解説します。治療法や痛みを和らげる方法もまとめているので、坐骨神経痛の疑いがある方はぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 坐骨神経痛に関する気になる症状が見られる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 坐骨神経痛とは 坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは、腰からお尻、太ももから膝にかけて伸びている坐骨神経にあらわれる痛みの症状です。 坐骨神経は、腰椎と仙椎から出る神経根がいくつか集まってできる神経をいいます。 この神経が圧迫や炎症などの障害を受けると、お尻から脚にかけて痛みやしびれが生じます。坐骨神経痛は病名ではなく、こうした症状の総称です。 坐骨神経痛の原因 坐骨神経痛は好発年齢が幅広く、原因もさまざまです。主な原因には、以下の3つが考えられます。 腰部脊柱管狭窄症 腰椎椎間板ヘルニア 梨状筋症候群 ここでは、各症状の特徴を紹介するので、坐骨神経痛の原因が知りたい方はぜひ参考にしてください。 腰部脊柱管狭窄症 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは、背中にある神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫するときに生じる症状で、坐骨神経痛を発症する原因の1つです。原因はさまざまですが、主に加齢によって脊柱が変形し、神経を圧迫して発症するケースが多い傾向にあります。 腰部脊柱管狭窄症は、お尻から脚全体にかけて痛みやしびれなどの神経症状が生じます。悪化すると歩行が難しくなり、手術が必要になる可能性もあるため、気になる症状が見られた際は早めに医療機関に相談しましょう。 腰椎椎間板ヘルニア 坐骨神経痛は、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアが原因で生じる可能性もあります。腰椎椎間板ヘルニアは、背骨と各骨の間に存在し、クッションの役割を持つ椎間板と呼ばれる部位が圧迫されて痛みやしびれを発症する疾患です。 腰椎とは背骨のことで、5つの骨から成り立っています。ヘルニアは椎間板の飛び出し方によって種類が異なり、以下3つに分類されます。 正中型(せいちゅうがた)ヘルニア 傍正中(ぼうせいちゅう)ヘルニア 外側(がいそく)ヘルニア また、腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルは、軽度から重度までさまざまです。中等度レベル以降は、日常生活に支障をきたす場合があるため、軽度だからといって放置せず重症化する前に治療や改善を図る必要があります。 【関連記事】 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルと種類を医師が解説!手術するべき? 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを解説|疼痛期間や治し方を紹介 梨状筋症候群 梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)とは、脊椎の下部にある仙骨や尾骨全面から、太ももの骨の最上部に伸びている筋肉が圧迫されて痛みを発症する神経障害です。腰椎椎間板ヘルニアと症状が似ているため混同されやすいですが、梨状筋症候群では仙腸関節炎や椎間関節障害が原因で発症する報告もあります。(文献1) 梨状筋症候群は、デスクワークや運転など、長時間座っているときやゴルフや草むしりといった中腰で梨状筋に負担がかかる場合に、起こりやすい疾患です。また、梨状筋症候群は腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアに比べると、稀な疾患になります。 MRIやレントゲンなどの検査で見つけることが難しいため、原因がはっきりしない坐骨神経痛の場合は梨状筋症候群が原因の可能性も考えられます。 筋肉の衰え 坐骨神経痛の原因には、下肢筋肉の衰えも考えられます。腰回りやお尻を中心とした足腰の筋肉が衰えると、背骨を支える力が弱まり、坐骨神経に負担をかけるためです。 筋肉は、20歳をピークに1年に1%ずつ減少するといわれています。(文献2)そのため、加齢に伴う筋力低下も、坐骨神経痛の原因の1つです。 なお、足腰の筋力低下はロコモティブシンドロームの原因にもつながります。ロコモティブシンドロームになると、要介護や寝たきりになるリスクが高まるため、日頃から予防を心がけましょう。 坐骨神経痛の症状 坐骨神経痛の症状は人によって異なりますが、主に腰からお尻、脚全体にかけて、痛みやしびれが生じます。主な症状は、以下の通りです。 お尻や脚が痛くて眠れない 長時間立っていられない お尻の痛みにより長時間座り続けていられない 腰を反らすと痛みやしびれが生じる 中腰やかがむと痛みが強くなる 坐骨神経痛は、片肢に症状が出るケースがほとんどです。しかし、なかには両肢に症状が見られる場合もあります。症状が悪化すると日常生活に影響を与えるため、疑いがある方は早めに受診しましょう。 坐骨神経痛でやってはいけないこと 坐骨神経痛の発症や疑いがある場合、下肢に負担をかける動作は避けましょう。無理に負担をかけてしまうと、症状を悪化させる可能性があるためです。 坐骨神経痛でやってはいけないことには、次の行動が挙げられます。 重いものを持ち上げる 激しい運動をする 長時間座る 前屈みや背骨をねじる 体重を増やす など ただし、過度な安静はかえって回復を遅らせることがあるため、痛みの程度に応じて日常生活を送ることが大切です。 症状が強い場合や、どの程度動いてよいかわからない場合は、医師に相談しましょう。 坐骨神経痛の治療法 坐骨神経痛の治療法は、保存療法が一般的です。しかし、症状レベルによって治療法は異なるため、専門医に相談の上、適切な治療を行う必要があります。 坐骨神経痛では、主に次の治療法を行います。 薬物療法 神経ブロック療法 理学療法 認知行動療法 装具療法 手術療法 症状が重度の場合、手術療法が検討される場合もあります。治療には手術療法だけでなく、薬物療法や神経ブロック療法などの選択肢もあるため、自分に合った治療法を検討しましょう。 また、坐骨神経痛に対しては、再生医療が治療法の選択肢となるケースがあります。坐骨神経痛に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 【関連記事】 坐骨神経痛が死ぬほど痛いときはどうする?痛みの原因や治療法を医師が解説 坐骨神経痛の痛みを和らげるブロック注射とは?効果や費用など医師が解説 坐骨神経痛を和らげる方法 ここでは、坐骨神経痛を和らげる方法を6つ紹介します。 湿布を貼る 市販薬を服用する 温める ツボを押す ストレッチを行う 寝方を変える 痛みの緩和を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。 湿布を貼る 坐骨神経痛は、湿布を貼ることで症状の緩和が期待できます。しかし、湿布の貼る場所を間違えると、十分な効果を得られない可能性があるため、適切な位置を理解しておくことが大切です。 坐骨神経痛の痛みを軽減するのに効果的な場所は、以下の位置になります。 腰の下部 梨状筋 太ももの裏側 ふくらはぎ 湿布は、痛みやしびれを感じる部位にあわせて適切な位置に貼りましょう。また、湿布の種類は症状にあったものを選ぶのがポイントです。 市販薬を服用する 坐骨神経痛の痛みを和らげるためには、市販薬を服用するのも専門機関へすぐに行けない場合の対処法になります。坐骨神経痛に用いられる痛み止めは複数あり、その1つにタリージェがあります。 タリージェとは、坐骨神経痛の痛みを和らげるために処方される医薬品の1つです。末梢神経障害や、脊髄疾患による痛みに対して効果が期待できます。 ただし、タリージェは痛みの緩和が目的のため、服用したからといって症状が改善されるわけではありません。また、副作用がある点に留意の上、服用を検討する必要があります。 温める 坐骨神経痛は、患部を温めると痛みの緩和が期待できます。患部を温めることで、血行促進や神経の圧迫緩和などの効果が期待できるためです。 坐骨神経痛の場合、以下の部位を温めましょう。 腰部 お尻 太ももの裏側 温める際は湯船に浸かったり、使い捨てカイロを使ったりして痛みの緩和を図る方法があります。ただし、温めるのが良いのは慢性症状の場合です。発症の初期段階となる急性炎症期には、炎症を抑えるために冷やす必要があります。 ツボを押す 坐骨神経痛の痛みを和らげる方法には、ツボ押しがあります。ツボ押しでは血流や神経、筋肉など、体の働きにアプローチできるためです。 坐骨神経痛に効果的なツボは、以下の8つです。 部位 ツボの位置 お尻 環跳(かんちょう):お尻のやや外側 承扶(しょうふ):お尻の下に位置する横じわ中央部 手部 腰腿点(ようたいてん):手の甲にある人差し指と中指の間、および薬指と小指の間 合谷(ごうこく):親指と人差し指の付け根・親指にぶつかる部分 下肢 委中(いちゅう):膝裏の中央部 陽陵泉(ようりょうせん):膝の外側にある大きな骨の下部分 殷門(いんもん):太もも裏側の中央寄り 金門(きんもん):外くるぶしの後ろ上方・アキレス腱の外側 痛みを感じる部位のツボを押すと、症状緩和が期待できます。 ストレッチを行う ストレッチでは硬くなった筋肉をほぐせるため、神経への圧迫を軽減できます。坐骨神経痛を悪化させないためにも、ストレッチで血流を促すのが重要です。 痛みを和らげる方法には、次のようなストレッチがあります。 ハムストリングのストレッチ 梨状筋のストレッチ お尻のストレッチ ストレッチは体が温まっているときにやると効果的なため、お風呂上りに取り入れるのもおすすめです。ただし、ストレッチ中に痛みやしびれを感じた場合は、すぐに中断しましょう。 寝方を変える 坐骨神経痛により眠れない場合は、寝方を工夫するのが対処法です。症状が和らぐ寝方には、次の3つが挙げられます。 仰向けで膝を立てる 横向きで両膝の間にクッションを入れる 痛みを感じる部位を上に向ける 寝返りを打つ際は、仰向けの姿勢で両膝を立て、股関節を深く曲げるのがポイントです。腹筋に軽く力を入れ、上半身と下半身を同時に動かすと、寝返りで痛みを感じにくくなります。 また、体を冷やすと血行不良により痛みを感じやすいため、体を温めて眠るのも坐骨神経痛の痛みを緩和する方法です。 再生医療は坐骨神経痛の回復が見込めない場合の選択肢 坐骨神経痛の痛みやしびれを放置すると、日常生活に支障を及ぼします。下肢の神経治療には、再生医療も選択肢の1つです。 再生医療では、脂肪由来の幹細胞を用いて治療を行います。幹細胞治療とは、自身の身体から採取した幹細胞を外部で増殖させ、所定の量に達したら再び身体に戻す治療法です。幹細胞を採取する際は、おへその横からごくわずかな脂肪を取るため、身体の負担を最小限に抑えられます。 また、入院・手術を必要とせず日帰りの手術が可能な点も、再生医療の特徴です。ただし、幹細胞治療は幹細胞の培養に1カ月ほどかかります。手術せず治療を受けたい場合に、再生医療はおすすめです。 https://youtu.be/zYow3yFsNgw?si=lKQHoW3B5dgCm2po 坐骨神経痛は放置せず専門機関への受診が重要 坐骨神経痛は、下肢に生じる症状の総称です。好発年齢は幅広く、原因も人によって異なります。症状にはお尻から脚全体にかけての痛みやしびれがあり、悪化すると日常生活に支障をおよぼすため注意が必要です。 坐骨神経痛の疑いがある場合は重いものを持ち上げたり、長時間立ちっぱなしになったりといった行動は避けましょう。また、症状によって適切な治療を受けることが重要なため、痛みを感じた場合は早めに専門機関へ受診するのがおすすめです。 保存療法でも回復が見られない場合は、再生医療を選択するのも手段の1つになります。自分にあった治療方法で、坐骨神経痛の症状回復を目指しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。坐骨神経痛について気になる症状が見られる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 坐骨神経痛に関するよくある質問 坐骨神経痛は何科を受診すれば良いですか? 下肢に痛みやしびれが生じる場合、整形外科もしくは神経内科を受診しましょう。整形外科では、MRIやX線などを使用して神経の状態を確認した上で、原因を診断します。 また、神経内科の場合は、神経伝導検査や節電図検査などの神経系の検査から坐骨神経の異常や原因を特定します。 坐骨神経痛のときは歩いた方が良いですか? 坐骨神経痛のときは、歩いた方が良い場合と、悪い場合があります。症状が比較的軽度のときや、医師・理学療法士から勧められたときは、歩くなど積極的に体を動かすのがおすすめです。 ただし、歩くだけで痛みが生じるときや、日常生活に支障が出ているときは歩かず適切な治療を検討する必要があります。 坐骨神経痛による足のしびれの治し方はありますか? 坐骨神経痛による足のしびれは、セルフケアで痛みを緩和できる場合があります。主なセルフケアは、以下の3つです。 適度に運動する 正しい姿勢をとる 体を温める 症状に適したセルフケアにより、痛みを緩和できる場合もあるため、足の痛みにお悩みの方はぜひ実践してみてください。 参考文献 (文献1) J-STAGE|梨状筋症候群における発症機転についての考察 (文献2) 労働者健康安全機構|⾻格筋量増やすポイント
2025.11.26 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
「背中や腰がズキズキ痛む」「発熱が続いて体を動かすのもつらい」などの症状に悩んでいる方は、化膿性脊椎炎を患っている可能性があります。 化膿性脊椎炎とは、細菌の感染によって脊椎や椎間板が炎症を起こす疾患です。早期に治療をおこなえば回復が見込めますが、放置すると骨の破壊や神経障害などを伴い、長期的な治療が必要になるケースもあるため注意が必要です。 今回は、化膿性脊椎炎の症状や原因、治療法をわかりやすく解説します。完治期間の目安や再生医療の可能性についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎とは 化膿性脊椎炎とは、主に細菌感染によって脊椎やその周囲の組織に炎症が起こり、骨の破壊や膿の形成が進行する疾患です。発症部位は腰椎が最も多く、次いで胸椎、頚椎にもみられます。 化膿性脊椎炎は、高齢者や基礎疾患がある方、免疫が低下している方の発症リスクが高い傾向にあります。 化膿性脊椎炎の主な病型 化膿性脊椎炎の主な病型は、急性発症型、亜急性発症型、慢性発症型の3つです。痛みの程度や発熱の有無など、それぞれの病型の特徴を下表にまとめました。 病型 特徴 急性発症型 腰背部の激しい痛みと高熱を伴う 発症直後から腰背部痛や高熱によって動けなくなる 亜急性発症型 腰背部の痛みと微熱を伴う 原因不明または直近の病気が完治した後に微熱が続く 慢性発症型 腰背部の軽微な痛みと間欠的な発熱を伴う 腰背部痛が慢性的に続く 化膿性脊椎炎は、同じ疾患でも病型によって症状の現れ方が異なります。痛みが軽い場合でも炎症が広がっている可能性があるため、自己判断で放置せず、違和感を感じた時点で早めに医療機関を受診しましょう。 化膿性脊椎炎の症状 化膿性脊椎炎を発症すると、主に以下のような症状が現れます。 頚部痛、背部痛、腰痛などの痛み 発熱 倦怠感 背部の腫れや圧痛 神経症状(しびれ、筋力低下、歩行障害) 排尿・排便障害 前述のとおり、化膿性脊椎炎の代表的な症状は腰背部痛や高熱です。しかし、化膿性脊椎炎が進行すると、膿が形成されて神経を圧迫し、麻痺症状が現れる可能性もあります。また、重症化すると排尿や排便障害を引き起こすケースもあるため注意が必要です。 化膿性脊椎炎の原因 化膿性脊椎炎の主な原因は細菌感染です。多くの場合、血液の流れを介して細菌が脊椎に到達する「血行性感染」によって発症します。血液中に侵入した細菌が椎体や椎間板に感染すると、炎症して骨の破壊や膿の形成を引き起こします。 原因菌として最も多いのは黄色ブドウ球菌です。ほかにも、大腸菌や緑膿菌、肺炎球菌などが原因となる場合があります。これらの細菌は、皮膚の傷口や尿路、肺炎、手術や注射の際の感染など、体内のさまざまな部位から血液の流れに乗って脊椎に到達するケースが一般的です。 また、以下のような方は感染リスクが高くなるため注意が必要です。 高齢者 糖尿病や腎不全などの基礎疾患がある方 長期間ステロイドや免疫抑制剤を使用している方 免疫力が低下している方 人工関節やカテーテルなどの医療機器を使用している方 これらの要因が重なると、体内で細菌が繁殖しやすくなり、脊椎への感染リスクが高まります。とくに原因不明の背中の痛みや微熱が続く場合は、初期の化膿性脊椎炎が疑われるでしょう。 化膿性脊椎炎における完治期間の目安 化膿性脊椎炎の完治までの期間は、一般的に約6週間が目安とされています。(文献1)ただし、感染の進行度や病型、治療開始のタイミングや基礎疾患の有無によって回復までの期間には個人差があります。 発症から早期に適切な治療を開始できた場合は、6〜8週間程度の静養で回復するケースも珍しくありません。一方で、感染が広がって骨や椎間板の破壊が進行している場合には、長期の入院や手術が必要になる場合もあります。 化膿性脊椎炎は、早期発見と迅速な治療が予後を左右する疾患です。腰背部痛や発熱が長引く場合は放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 化膿性脊椎炎の診断基準 化膿性脊椎炎は、問診と身体所見に加えて血液検査や画像検査、細菌学的検査を組み合わせて診断するケースが一般的です。(文献2) 血液検査 血液検査では、体内で感染や炎症が起きていないかを詳しく調べます。 化膿性脊椎炎が疑われる場合、CRP値(C反応性タンパク)が診断基準の一つになります。CRP値が上昇している場合は、体内で細菌感染や炎症が起きていると判断できるためです。 なお、血液データは化膿性脊椎炎の経過観察に活用し、治療効果の判定にも役立てられます。 細菌学的検査 細菌学的検査では、椎間板や椎体周囲の組織、あるいは血液から採取した検体を培養し、感染の原因となっている細菌を特定します。これにより、どの抗菌薬が最も効果的かを判断でき、治療の精度を高めることが可能です。 また、培養結果は感染の広がりや再発リスクの評価にも役立ちます。化膿性脊椎炎の治療では、細菌学的検査を基に抗生剤の種類や投与期間を決定し、より安全で効率的な回復を目指します。 画像診断 画像診断は、化膿性脊椎炎の早期発見と治療方針の決定に不可欠です。 とくに、MRI検査は椎間板や椎体の炎症、周囲組織への膿瘍形成の有無を詳細に把握でき、初期段階でも感染部位の変化を検出できる点が特徴です。一方、X線検査は骨の破壊や変形など進行した病変を確認するのに有効ですが、初期の炎症や微細な損傷は映りにくいため、早期診断にはMRIが推奨されます。 化膿性脊椎炎の診断後には、これらの検査結果を総合して治療計画が立てられます。 化膿性脊椎炎の治療法 化膿性脊椎炎の治療の目的は、主に感染の制御と脊椎の安定化です。以下で、化膿性脊椎炎の主な治療法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 抗生剤の投与 化膿性脊椎炎の基本治療は、抗生剤を使った保存療法です。(文献2)抗生剤の投与によって原因菌を早期に抑制できると病変の進行を防げます。 投与方法 治療初期には点滴で集中治療をおこなう 症状が落ち着いたら内服薬に切り替える場合もある 投与期間 通常6週間以上にわたって投与する 症状や感染の広がりによって投与期間を延長する場合もある 抗生剤の選択 血液検査や細菌培養の結果を参考に抗生剤を選択する 治療の経過に応じて抗生剤を変更する場合もある 化膿性脊椎炎の治療では、発症初期に適切な抗生剤を使用して症状の改善を図ると、骨や神経へのダメージを最小限に抑えられます。ただし、抗生剤の投与はアレルギー反応や消化器症状といった副作用のリスクもあるため、定期的に治療効果を確認しながら治療を進める必要があります。 コルセット療法 コルセット療法は、化膿性脊椎炎の治療において脊椎への負担や痛みを軽減するための補助的手段です。装具を使って背中や腰を固定すると、炎症部位の安静を保てるほか、日常動作や歩行時の痛みを和らげられます。 ただし、コルセットを長期間使用すると体幹の筋肉を十分に使わずに姿勢を支えることになるため、関節の柔軟性や筋力の低下を招くリスクがある点に注意が必要です。 そのため、医師や理学療法士の指導のもとで使用期間やコルセットの締め付け具合を調整し、必要に応じてリハビリテーションを組み合わせる必要があります。 リハビリテーション 化膿性脊椎炎の治療では、理学療法士や作業療法士が介入してリハビリテーションをおこないます。とくに、回復期のリハビリテーションは日常生活への復帰に向けて欠かせません。炎症が落ち着いたあとも、筋力の低下や関節の硬さが残る場合があり、放置すると動作制限や再発のリスクが高まるためです。 急性期はまず安静を保ち、主にベッド上で手足の関節を軽く動かす運動から始めます。その後、関節可動域訓練や段階的な歩行訓練を実施し、筋力やバランス機能を回復させます。また、日常生活での安全な動作や姿勢の指導も実施し、自宅復帰を目指す流れが一般的です。 継続的なリハビリテーションにより、再発リスクを抑えつつ、早期の日常生活への復帰が期待できます。 手術療法 化膿性脊椎炎によって麻痺症状が現れたり骨破壊が進行したりしている場合は、手術療法も検討されます。抗生剤の投与で改善が難しい症例においては、手術によって脊椎の安定化や感染の進行防止を図る必要があるためです。 化膿性脊椎炎における手術療法には、主に2つの方法があります。 手術方法 内容 脊椎固定術 病変部の脊椎を金属などで固定する 脊椎の安定化や変形防止などを目的におこなう 経皮的病巣掻爬洗浄術(けいひてきびょうそうそうはせんじょうじゅつ) 感染部位の膿や壊死組織を除去する 感染の進行防止や炎症の軽減などを目的におこなう なお、手術後も抗生剤の投与を継続することで、化膿性脊椎炎の再発防止と回復促進につながります。 化膿性脊椎炎の治療における再生医療の可能性 近年、化膿性脊椎炎の治療においても再生医療が注目されています。再生医療には、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液から血小板を分離して作製した多血小板血漿(PRP)を利用するPRP療法があります。 再生医療は、手術せずに化膿性脊椎炎を治したい方や従来の治療法で期待した効果が得られない方の選択肢になるでしょう。 ただし、保険適用外の治療も多いため、専門医との十分な相談が必要です。なお、当院の幹細胞治療では、米粒2〜3粒ほどの脂肪から治療に必要な量の細胞を培養でき、身体への負担が少なくて済みます。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。化膿性脊椎炎の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎は早めに受診して重症化を防ごう 化膿性脊椎炎は、細菌感染により脊椎や周囲組織に炎症が起こる疾患で、腰痛や発熱、手足のしびれなどの神経症状が現れます。 化膿性脊椎炎が疑われる場合は、早期に検査し、適切な治療を受けることが重症化の予防につながります。化膿性脊椎炎の治療は、抗生剤の投与をはじめ、コルセット療法やリハビリテーションなどの保存療法が基本です。ただし、重症化した場合には、必要に応じて手術療法や再生医療などを検討しなければなりません。 症状の改善と日常生活へのスムーズな復帰を目指すためにも、化膿性脊椎炎は早めに受診して重症化を防ぎましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。化膿性脊椎炎の症状でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎に関するよくある質問 化膿性脊椎炎になると後遺症が出ますか? 化膿性脊椎炎では、手足のしびれや痛み、運動能力や筋力の低下、排尿障害などの後遺症が出る場合があります。(文献3)とくに、膿の形成によって神経が圧迫されている場合は症状が長引く傾向にあります。 化膿性脊椎炎の後遺症を防ぐためには、早期に適切な抗生剤治療やリハビリをおこない、日常生活への影響を最小限にすることがポイントです。 化膿性脊椎炎で寝たきりになることがありますか? 化膿性脊椎炎は、治療が遅れると激しい腰背部の痛みや発熱に加え、神経障害が進行して歩行が困難になり、長期間寝たきりになるリスクがあります。とくに、高齢者や基礎疾患がある方は重症化しやすいため注意が必要です。 しかし、早期に適切な抗生剤治療やリハビリテーションをおこなうことで、症状の改善や回復が期待できます。 参考文献 (文献1) 化膿性脊椎炎の診断におけるMRIの有用性:3例報告|日臨救急医会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/20/6/20_757/_pdf (文献2) 四肢麻痺を呈した頸部化膿性脊椎炎の1例|日救急医会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/18/9/18_9_671/_pdf (文献3) 化膿性脊椎炎と診断されて手術に至った30症例の検討|日本ペインクリニック学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/32/6/32_24-0044/_pdf/-char/ja
2025.11.26 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した結果、肝臓に線維化が起こり機能が低下する病気です。初期段階では自覚症状が見られないため、症状が現れた時には既にかなり進行していることがあります。 肝機能の悪化や肝がんへの進行を防ぐには、早期発見・早期治療が重要です。 本記事では肝硬変の原因・症状・治療法・予防法について解説します。 なお、肝硬変を含む肝臓疾患に対しては再生医療という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しているので、肝臓疾患でお悩みの方はぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肝硬変とは?肝臓が線維化して機能が低下する重篤な疾患 肝硬変とは、肝臓が長期に及ぶ慢性的な飲酒やさまざまな疾患などにさらされた結果、肝臓が線維化と再生結節の形成により機能が衰える疾患を指します。肝臓は再生能力の高い臓器で、約7割を切除しても再生されるのが特徴です。 ただ、飲酒や疾患の影響で日常的に損傷を受け続けた場合、肝臓に炎症が発生します。炎症が発生した際にも修復は進むものの、その際にたんぱく質の一種であるコラーゲンが生成されます。コラーゲンが過剰に増えて肝臓自体が全体的に線維化が進んだ状態が肝硬変です。 肝硬変の原因 肝硬変の原因には、さまざまな要素が考えられるため、日頃から十分な注意を要します。肝硬変の原因としてよく挙げられるものが、以下のものです。 長期の過剰なアルコール摂取 乱れた生活習慣 ウイルス感染 薬物による肝障害 以上の原因をあらかじめ知った上で、肝硬変のリスクを下げることが大切です。 長期の過剰なアルコール摂取 肝硬変の原因の一つに、長期にわたる過剰なアルコールの摂取があります。 アルコールは肝臓で代謝されますが、その過程でアセトアルデヒドという有害物質が生成され、肝細胞を傷つけます。継続的な大量飲酒により肝細胞の損傷が繰り返されると、肝臓に慢性的な炎症が生じ、やがて肝硬変に進行します。 アルコール性肝疾患は段階的に肝硬変に進行する疾患です。まず肝臓に脂肪が蓄積するアルコール性脂肪肝が起こり、飲酒を続けることでアルコール性肝炎へと進行、最終的にアルコール性肝硬変に至ります。 なお、2018年から2021年の調査によると、日本国内における肝硬変の原因の内訳は以下のとおりです。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) このように、近年はアルコール性肝疾患が肝硬変の大きな原因となっています。(文献1) 肝硬変に進行する前のアルコール性肝炎の初期症状について解説している以下もご覧ください。 乱れた生活習慣 乱れた生活習慣も肝硬変の原因の一つです。具体的には、日頃の過度なストレスや運動不足、バランスの取れていない食生活などが挙げられます。 生活習慣が乱れて肥満や糖尿病のような生活習慣病を発症すると、肝臓に脂肪肝ができるケースがあります。この脂肪肝も何の対策もせずに放置すると、肝炎を経て肝硬変に発展するリスクがあるため、注意が必要です。 ウイルス性肝炎 ウイルス性肝炎から肝硬変への進行は、一般的に感染から20~30年程度の経過を経て起こります。とくにC型肝炎が肝硬変まで進行した場合、肝がんへの進展リスクが高くなるため注意が必要です。 近年、C型肝炎に対する抗ウイルス薬治療の進歩により、ウイルスの排除が可能となっています。早期にウイルスを排除することで、肝硬変や肝がんへの進行を大幅に抑制できるため、感染が判明した場合は専門医による適切な治療を受けることが重要です。 B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎は、肝硬変の主要な原因の一つです。これらのウイルスが長期間にわたって肝臓に炎症を起こし続けることで、肝細胞の壊死と再生が繰り返され、最終的に肝硬変に進行します。 とくに、高齢者や糖尿病の方は肝臓がんまで進行するリスクが高いため、注意が必要です。 薬物による肝障害 薬物の影響で発症した肝障害が肝硬変の原因になる場合があります。医薬品やサプリメントなどを適正用量を超えて摂取すると、肝臓は損傷を受けます。 また、薬物性肝障害には個人の体質が大きく関わるケースが多く、同じ薬剤でも人によって反応が全く異なります。体質に合わない薬剤では、服用量に関係なく肝障害が起こることがあり、事前の予測は非常に困難です。 肝硬変の症状 肝硬変は進行度により「代償性肝硬変」と「非代償性肝硬変」に分類されます。 代償性肝硬変とは、肝臓の一部が損傷を受けていても、残った健康な肝細胞が機能を補っている状態のことです。この段階では重篤な症状は現れず、多くの患者さんは無症状です。ただし、倦怠感・疲労感・食欲不振などの軽微な症状を感じることがあります。 これらの症状は風邪や日常的な疲労と区別がつきにくく、肝硬変と気づかずに見過ごされることが多いため、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。 病気がさらに進行し非代償性肝硬変になると、以下のような症状が現れます。 腹水 黄疸(おうだん) 食欲不振や体重減少 くも状血管腫 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) こむら返り 女性化乳房 これらの症状について解説します。 腹水 腹水はお腹を包む膜(腹膜)とお腹周りの臓器の間にある腹腔に、過剰に水が溜まる症状です。肝硬変の場合、門脈(血管)における圧力の高まりと、血液中のアルブミンの低下が腹水の主な要因です。 肝硬変の進行によって肝臓の機能が衰えると、消化器官から肝臓に向かう血管である門脈の圧力が高まって、流れが悪くなります。すると血液に含まれる成分の血漿(けっしょう)が血管の外に漏れるため、腹水を生じます。 また、肝機能の低下は、血液に含まれるアルブミンと呼ばれるたんぱく質を減少させます。アルブミンには血液中の水分を維持するはたらきがあるのが特徴です。もしアルブミンが減少すると、水分が血管から腹腔に漏れ出て腹水が発生します。 黄疸(おうだん) 黄疸とは、疾患の影響で皮膚や、目の白い部分である眼球結膜が黄色くなる症状です。黄疸もまた、肝硬変の症状が進んだ際に見られます。 黄疸の発生には、赤血球に含まれるビリルビンと呼ばれる色素が関係しています。血液に含まれる赤血球は古くなって機能しなくなると、肝臓で分解されるのが一般的です。赤血球の分解で現れたビリルビンは体外に排出されますが、肝臓の機能が衰えると血液中のビリルビンが増加します。そのために皮膚や眼球結膜が黄色くなります。 なお、皮膚などが黄色くなるほかにも、尿が異常に濃い点や便が白くなる点も特徴です。 食欲不振や体重減少 肝機能が低下した結果、食物に含まれる栄養素の消化吸収能力が衰えるとともに、食欲不振も起こります。十分な栄養を摂取できないため、体重減少や筋肉量の低下、慢性的な疲労・倦怠感が生じます。 くも状血管腫 くも状血管腫とは、皮膚上に発生する、毛細血管が赤い点からクモの足のように広がって見える症状です。肝硬変の場合、首や肩、二の腕などの上半身に起こります。 肝硬変によってくも状血管腫が発生する流れは、具体的には解明されていません。ただ、肝機能の低下でホルモンの代謝が進まなくなったことで発生すると考えられています。 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) 手掌紅斑(しゅしょうこうはん)とは、手の親指や小指の付け根部分をはじめ、手のひらに生じる赤い斑点です。紅斑自体に痛みなどの特別な症状はないものの、肝硬変が進んでいるサインとして出現するケースがあります。 こむら返り 夜中寝ている間などに足がつるこむら返りも、肝硬変によって生じる症状です。肝硬変の進行で肝機能が低下すると、体内の水分のバランスや電解質の調整がうまくいかなくなります。 加えて、肝硬変が進むと必須アミノ酸メチオニンの消費量が減ります。メチオニンは筋肉を動かす際に欠かせないタウリンやカルニチンを生み出すのに必要です。しかし、メチオニンの消費量が減る分、2つの物質の生成量も減るため、こむら返りが起きるケースが増えると考えられています。 以下の記事では、こむら返りと肝硬変との関係性について解説しているので、あわせてご覧ください。 女性化乳房 女性化乳房とは、男性の乳房や乳首が肥大化する症状です。男性にも女性ホルモンのエストロゲンはあるものの、通常であれば肝臓の機能によって分解されるため、乳房などは肥大化しません。 しかし、肝硬変を抱えている男性の場合、エストロゲンの分解能力も衰えています。このため、残ったエストロゲンのはたらきによって、男性の乳房や乳首が肥大化する女性化乳房が発生する仕組みです。 肝硬変患者の余命|腹水が溜まった場合は? 肝硬変を診断された際の余命は、病気の進行度によって大きく異なります。腹水が溜まるなどの症状が見られる場合は、肝硬変がある程度進行した状態です。 医学的な重症度分類に基づいた研究では、肝硬変患者の3年後も生存している割合は以下のように報告されています。(文献2) 症状が中程度まで進んだ場合:約71% 症状が重度まで進んだ場合:約31% ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、腹水などの症状が現れていても、適切な治療を継続することで症状の改善や病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変の検査・診断方法 肝硬変への対策には、こまめに検査や診断を受けることが大切です。肝硬変に対して用いられる検査や診断には、次のような方法があります。 血液検査 画像診断 腹腔鏡検査・肝生検検査 それぞれの検査や診断の特徴を知り、有効活用しましょう。 血液検査 血液検査では、肝機能に関する複数の指標を測定し、肝硬変の診断や病態の評価を行います。主な検査項目と基準値は以下のとおりです。 指標 指標が意味するもの 正常値 異常値 AST ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 13~36U/L 51U/L以上 ALT ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 8~36U/L 51U/L以上 γ-GTP ・アルコール性肝障害 ・胆汁の分泌がうまくいっているかどうか 9~47U/L 101U/L以上 血小板数 ・肝臓の線維化の程度 ・門脈圧亢進の指標 15.8~34.8 10⁴/μL 9.9以下・40.0以上 10⁴/μL アルブミン値 ・肝臓でつくられるたんぱく質の量 4.1~5.1g/dL 3.6g/dL以下 (文献3)(文献4) なお、血液検査は会社や自治体、学校の健康診断の一環でも行われています。定期的な健康診断の受診も、肝硬変対策として大切です。 画像診断 血液検査で肝機能の数値に異常がある場合、より精密な画像診断が必要です。画像診断はCTやMRI、腹部超音波など専門の機械によって確認されます。 診断時に撮影された画像をもとに、肝臓のサイズの変化や表面の凹凸、異常な血管の有無をチェックします。肝臓のサイズや形、表面がゴツゴツしているなどの変化が見られる場合、肝硬変の疑いが考えられます。 腹腔鏡検査・肝生検 画像診断とともに腹腔鏡検査や肝生検も行われます。腹腔鏡検査ではお腹に穴を空けた上で、腹腔鏡(内視鏡)を入れて、肝臓の状況を医師が映像で確認する検査方法です。この方法と今までの他の診断結果から肝硬変かどうかを総合的に判断します。 一方、肝生検は、肝臓組織の一部を採取して顕微鏡で観察する方法です。ただし、現在では画像や映像、超音波を用いた方法が主流になっており、肝生検には出血リスクがあることから採用されるケースは必要性が高い場合に限られています。 肝硬変の治療法 肝硬変の診断を受けた場合は、なるべく早い段階での治療が重要です。主な治療法として、以下の方法が挙げられます。 生活習慣の見直し 肝炎の治療 腹水の治療 肝臓の移植 再生医療 肝硬変の治療法を知れば、今後どのように肝硬変を治していくのかをイメージできます。 生活習慣の見直し 肝硬変の治療では、生活習慣の見直しが欠かせません。肝硬変になった際に生活習慣を見直す方法として、以下が挙げられます。 禁酒 食事療法 軽めの運動 肝硬変になっている場合は、禁酒が重要です。とくにアルコール性肝硬変を診断された場合は、それ以上の飲酒は症状をさらに悪化させ、合併症や命の危険のリスクを高めます。肝機能の数値が正常値に下がるまでお酒は控えましょう。 また、肝硬変を改善するためには普段の食事内容の見直しも大切です。野菜や果物でビタミン・食物繊維を、大豆類で良質なタンパク質を摂取しましょう。1日3回、腹八分目でよく噛んで食べると肝臓への負担を軽減できます。 とくに腹水やむくみが見られる場合は、これ以上腹水が増えないように1日に摂取する水分や塩分の制限も大切な要素です。水分は1日1リットル、塩分は1日5~7gに抑えます。(文献5) 運動は軽めに留めることが大切です。肝機能が低下している状態では、激しい運動は体調悪化を招く可能性があります。ただし、休んでいるだけでは筋肉が衰えるため、軽い体操などで筋力を維持しましょう。 肝炎の治療 肝硬変の治療では、原因に応じた肝炎の治療も行います。一言で肝炎といってもさまざまな原因があるため、それぞれに対して適切な方法で治療する必要があるためです。(文献6) 原因 投与する薬剤 B型肝炎ウイルス 抗ウイルス薬の投与: エンテカビルやテノホビルアラフェナミドフマル酸塩など C型肝炎ウイルス 経口抗ウイルス薬 (医師との相談が必要) 脂肪性肝炎 禁酒・食事療法・運動療法 自己免疫性肝炎(免疫異常による肝炎) 副腎皮質ステロイドの投与 なおB型肝炎やC型肝炎の原因ウイルスに対して抗ウイルス薬の効果が見られないときは、肝細胞の破壊を抑える薬剤の投与や、体内の鉄分を減らす瀉血(しゃけつ)療法がとられます。 腹水の治療 腹水が溜まっている状況であれば、塩分の制限とともに、利尿内服薬やアルブミン剤も投与されます。利尿内服薬は尿の生成を促し、体内の余分な水分の排出が期待できる薬剤です。もし通常の利尿内服薬で効果が見込めない場合は、より強力な利尿作用があるトルバプタンなどを使用します。 アルブミン製剤も腹水の改善によく使われる薬剤で、点滴で投与するのが一般的です。腹水を発症している状態は体内の水分量を調整するアルブミンが減少しているため、補うことで腹水の改善効果が期待できます。 肝臓の移植 薬剤の投与などの方法で症状の改善が期待できないときは、肝臓移植を行います。条件に合致する健康な親族の肝臓の一部を移植し、肝硬変自体の改善を図る方法です。 移植の判断は、病状の深刻度や移植しなかった場合に予想される死亡率をもとに判定されます。 再生医療 肝硬変の治療には再生医療をもあります。再生医療では「幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」と呼ばれる手法が一般的です。 幹細胞治療では、患者様の脂肪から採取した幹細胞を培養してから、患部に投与します。また、PRP療法は患者様の血液から採取した血漿を遠心分離によって血小板の濃度を高め、患部に注射する治療法です。 幹細胞は培養に1カ月ほどかかりますが、施術はどちらも短時間で終了します。入院・手術を必要としないのも特徴です。 当院リペアセルクリニックの肝硬変に対する治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 また、再生医療についての詳細は、以下のページをご覧ください。 肝硬変の予防法 肝硬変を予防し、肝疾患の進行を防ぐには、日常生活での取り組みが重要です。 以下の予防法を実践して、肝臓の健康を守りましょう。 適量の飲酒 バランスのとれた食事 定期的な健康診断の受診 これらの生活習慣を継続することで、肝疾患のリスクを大幅に減らせます。 適量の飲酒 普段から飲酒の習慣がある方は、飲む量の調整が欠かせません。多量のアルコールは肝臓を傷つけるとともに、脂肪肝から症状が進行すれば肝硬変になるリスクがあります。 発症のリスクを抑えるには、お酒と上手に付き合うことが大切です。1日に飲むお酒の量に上限を設けたり、週に1、2日は休肝日を設けて肝臓をいたわるのがポイントです。 なお、厚生労働省では「節度ある適度な飲酒」として、アルコール度数5%のビールであれば1日に中瓶1本分(500ml)、アルコール度数15%の清酒であれば1合180mlとしています。(文献7) バランスのとれた食事 無理な飲酒を抑えるとともに、栄養バランスのとれた食事を心掛けることも肝硬変の予防に役立ちます。 食事のメニューは主食・主菜・副菜の組み合わせを意識し、食物繊維や良質なたんぱく質の多い食材を使った料理を食べることが大切です。 なお食べる量や回数も、すでに肝硬変を発症している場合と同じく、1日3回・腹八分目を心掛けます。 一方で脂肪や塩分の多い食事は、肝臓を傷つける恐れがあるため、なるべく避けるべきです。添加物を多く含むインスタント食品も推奨できません。 定期的な健康診断の受診 肝硬変を予防するために、定期的な健康診断を受けましょう。肝硬変は症状が現れにくいため、血液検査により脂肪肝や慢性肝炎の段階で早期発見することが大切です。 健康診断で肝機能異常が見つかった場合は、専門医による詳しい検査を受けて原因を特定します。 脂肪肝であれば生活習慣の改善により改善可能で、ウイルス性肝炎の場合は抗ウイルス薬による治療でウイルスを排除できます。これらの治療により、肝硬変への進行を防ぐことができます。 年1回の健康診断を欠かさず受診し、異常が指摘された場合は早めに医療機関を受診しましょう。 まとめ|肝硬変の治療は早めの定期検診や生活習慣の見直しで対策を 肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した病気です。症状が進行するまでほとんど自覚が無く、黄疸や腹水などのはっきりした症状が現れる頃には、病気が進行しています。さらに肝硬変まで進行すると完治が難しく、命にもかかわることがあるため、定期的な健康診断による早期発見・早期治療が重要です。 肝硬変の治療法には、食事や飲酒量などの生活習慣の改善や薬剤の投与、肝臓移植、再生医療などの手段もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、肝硬変を含む肝臓疾患に対する再生医療を提供しております。肝硬変でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEにご登録いただき、再生医療に関する症例をご確認ください。 肝硬変に関するよくある質問 肝硬変の原因で最多のものは? 近年の研究では、国内で発症する肝硬変の原因として過剰なアルコール摂取が最多である結果が出ています。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) 肝硬変を予防するためには、アルコールの摂取量を適切な範囲に抑えることが大切です。 肝硬変で死ぬ前は苦しい? 進行した肝硬変では多くの場合、苦しさを伴う症状が現れます。 肝硬変の末期症状は腹水や黄疸、浮腫(むくみ)などが深刻化している状態です。なかでも腹水は症状の進行によって腹部が膨らみ、呼吸困難さえも引き起こします。 また肝機能の低下で体内のアンモニアが分解されないまま脳に達すれば、肝性脳症に陥る場合もあります。肝性脳症では昏睡状態になるケースさえあるほど危険な症状です。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021”| Hepatol Res. (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会 (文献4) 判定区分 2025年度版|日本人間ドック・予防医療学会 (文献5) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献6) 肝臓病の理解のために |日本肝臓学会 (文献7) アルコール|厚生労働省
2025.11.26 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
側弯症(そくわんしょう)とは、背骨が左右に曲がり、ねじれが加わった状態を指します。 とくに、思春期の子どもに多く見られ、見た目に明らかな変化が出る一方で、痛みが少ないため見過ごされるケースも少なくありません。 進行して症状が重度になると、生活に支障が出る恐れもあり注意が必要です。 本記事では、側弯症の定義や種類、症状、診断方法、治療法、日常生活での注意点までを詳しく解説します。 正しい知識を身につけて、子どもの健やかな成長を支えてあげましょう。 なお、側弯症の進行に伴う神経症状や手術後の神経損傷に対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご登録ください。 側弯症とは 背骨が本来のまっすぐな状態から左右に曲がり、ねじれも加わって骨格が変形する状態が「側弯症」です。 とくに、成長期の子どもに多く見られ、放置すると曲がりが進行し、姿勢の悪化や将来の健康に影響を及ぼす可能性があるため注意しなければなりません。 学校検診の前屈検査で発見されることが多く、早期発見が治療の鍵です。 側弯症には、大きくわけて以下のような種類があります。 種類 特徴 特発性側弯症 原因不明。全体の約6~7割を占め、思春期の女子に多く見られる(文献1) 先天性側弯症 背骨の形成異常により、生まれつき曲がっている 神経・筋原性側弯症 脳性麻痺や筋ジストロフィーなどに伴って起こる 側弯症の種類によって対応が異なるため、専門医による正確な診断が必須です。 側弯症の原因 側弯症の原因はひとつではなく、いくつかのタイプに分類されます。 種類によって発症の背景が異なるため、適切な治療を行うには原因の特定が欠かせません。 構築性脊柱側弯症 特発性側弯症 ・原因が明らかではない側弯症 ・10〜15歳の女子に多く、成長期に急速に進行する場合がある 症候性側弯症 ・先天的な背骨の奇形や、筋ジストロフィー・脳性麻痺などの病気に伴って起こる ・基礎疾患への対応も必要 機能性側弯症(構築性ではない側弯症) ・背骨自体に異常はなく、姿勢や脚長差、痛みなど一時的な要因で背骨が曲がって見える ・原因が解消されると、自然に改善する 上記のように、側弯症が構造的な問題によるものか、一時的な状態かを区別し、原因に応じた対処が大切です。 側弯症の原因については、以下の記事でも詳しく解説しています。 側弯症の症状 側弯症は、進行しても痛みを感じにくい特性があります。 本人や家族が気づかないまま、見過ごされるケースも少なくありません。 ただし、見た目に明らかな変化が現れる場合もあり、以下のような代表的な外見上の変化を見逃さないように注意しましょう。 肩の高さが左右で異なる 肋骨や肩甲骨の片側が突出して見える ウエストラインが左右で不均等になっている 骨盤の高さが左右非対称になっている 上記のような変化は、学校の前屈検査や保護者によるセルフチェックで気づくケースが多く、早期発見のきっかけになります。 なお、側弯症が進行して背骨の湾曲で胸郭が変形すると、以下のような健康上の問題が起こる可能性があるため注意が必要です。 肺が圧迫され呼吸が浅くなる、息切れしやすくなる 心臓や肺の機能が低下する また、胃や腸が圧迫されて消化不良や便秘を引き起こすなど、まれに消化器系に重度な影響が生じるケースもあります。 大人の側弯症の症状 大人の側弯症は、思春期に発症して成長後もゆっくりと進行するケースと、大人になってから新たに発症するケースに分けられます。 大人になってから発症するケースは、加齢に伴う骨や椎間板の変性、姿勢の崩れなどが原因です。 背骨のゆがみにより体のバランスが崩れ、以下のような症状が現れる場合があります。 腰や背中の慢性的な痛み 長時間の立位や歩行での疲労感 身体の左右差による服のずれ 神経圧迫による足のしびれや筋力低下 大人の側弯症は、見た目の変化よりも日常生活への影響が現れやすい点が特徴です。 痛みや不調を感じた場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 側弯症の症状や治療法については、以下の記事でも詳しく解説しています。 側弯症の診断 側弯症の診断では、まず問診と身体検査を行い、X線で背骨の湾曲の程度を確認するレントゲン検査で確定診断されます。 身体検査は、背中の左右差や隆起の有無を観察する「前屈検査(前屈テスト)」が基本です。 レントゲン検査では背骨の曲がりの程度を示す「コブ角」という角度を測定し、湾曲の程度を数値化することで、治療方針を決定します。 なお、全国の中学校では2016年度から「運動器検診」が導入されており、検診をきっかけに医療機関を受診する児童生徒が増加しています。(文献2) とくに、成長期の子どもは側弯症が進行しやすいため、学校検診の結果を軽視せず、整形外科で正確な評価を受けましょう。 側弯症の治療法 側弯症の治療は、発症年齢や側弯の進行度によって異なります。 主に「思春期特発性側弯症」と「変性側弯症」に分けて治療方針が立てられ、次の治療法があります。 装具治療:進行を抑える目的で使用され、成長期の子どもに有効 運動療法:筋肉のバランスを整えるリハビリやストレッチ 手術:重度の湾曲や症状が進行した場合に検討 以下で、それぞれ詳しく解説します。 思春期特発性側弯症の治療法 思春期特発性側弯症は、成長期に突然現れる原因不明とされる側弯症です。 多くは痛みがなく、学校検診がきっかけで発見されるケースが少なくありません。 治療方針は主に、背骨の曲がりの角度「コブ角」によって決まります。 軽度(おおむね20度未満):定期的な経過観察 中等度(おおむね20〜40度):装具による治療 重度(おおむね40度以上):進行防止のため、進行状況で個別に手術を検討(文献3) とくに、成長期の子どもは軽度な状態で早期に治療を開始することで、進行を抑えられる可能性が高くなります。 中程度の場合は、装具を使用しながら日常生活を過ごせます。 ただし、重度になると手術が検討されるため、やはり早期発見と治療が欠かせません。 変性側弯症の治療法 変性側弯症は、加齢による椎間板や関節の変形が原因で、背骨が徐々に曲がっていく病気です。 中高年に多く見られ、慢性的な腰痛や神経症状を伴うケースがあり、状態に応じて以下のような対処法が検討されます。 初期〜中等度:痛みの緩和を目的とした薬物療法や運動療法 重度または神経症状あり:神経の圧迫を除去する手術を検討 治療は、症状の程度や日常生活への影響をもとに個別に判断されます。 定期的な整形外科の受診とあわせて、筋力を維持するための運動が進行予防に役立ちます。 側弯症でやってはいけないこと|腰痛に注意 側弯症は、軽度であれば日常生活に大きな制限はありませんが、日常の行動が腰痛を発症させる場合があります。 とくに、中高年の変性側弯症では、以下のような行動を避けてください。 避けるべき行動 理由 長時間の同じ姿勢 座りっぱなしや前かがみの姿勢は、背骨に負担をかける 過度な運動や重い荷物の持ち運び 左右非対称な負荷が、背骨をさらにゆがませる可能性がある 柔軟性の低いマットレスや寝具 体にフィットしない寝具は、腰や背中に悪影響を与えることがある 上記のような行動を避けるのとあわせて、痛みが出ている場合は無理せず整形外科で適切な指導を受けましょう。 側弯症でやってはいけないことについては、以下の記事も参考にしてみてください。 まとめ|側弯症が気になるから早めに受診しよう 側弯症は、正しく理解して適切に対処すれば、日常生活に大きな支障をきたさずに過ごせます。 とくに思春期特発性側弯症は、成長期に進行を抑えることが重要です。 学校検診やセルフチェックを通じて早期に気づいたら、整形外科を受診してください。 もし側弯症と診断されても、過度に不安になる必要はありません。 今回の記事を参考にしていただき、正しい知識と行動で改善を目指しましょう。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、側弯症の進行に伴う神経症状や手術後の神経損傷に対して再生医療による治療を行っています。 公式LINEでは、再生医療に関する情報や簡易オンライン診断をご利用いただけますので、 ぜひ登録してお試しください。 側弯症に関するよくある質問 側弯症に美人が多いという噂は本当ですか? 「側弯症の人は美人が多い」という説には、医学的な根拠は一切ありません。 思春期特発性側弯症は、やせ型の女子に多い傾向があるため、体型的な特徴からそのようなイメージが広まった可能性があります。 このような噂は一部の印象に過ぎず、科学的なデータに基づくものではない点を理解しておきましょう。 側弯症は老後に悪化することはありますか? 側弯症は、老後に悪化するケースがあります。 思春期に発症した側弯症が軽度でも、高齢期に入ると背骨や椎間板の変形により、少しずつ湾曲が進行する場合があるのです。 加齢による筋力の低下と、姿勢の悪さが主な要因となります。 定期的な整形外科でのチェックと適度な運動、正しい姿勢を保つ意識が大切です。 側弯症は寿命に影響しますか? 側弯症そのものが、直接寿命を縮めるという医学的根拠はありません。 しかし、進行して重度になると、肺や心臓の機能低下、慢性的な腰痛や姿勢の悪化による活動量の低下など、間接的に健康に影響を及ぼす可能性があります。 とくに、高齢期に入ってからの側弯症悪化は、転倒や骨折のリスクにもつながるため注意が必要です。 早期発見と適切な治療、日常生活での管理が健康寿命を延ばすことにつながります。 側弯症はスポーツ禁止ですか? 側弯症だからといって、スポーツが全面的に禁止されるわけではありません。 むしろ、適度な運動は筋力の維持や姿勢の安定に役立つとされています。 医師による個別の指示がある場合を除き、痛みがなければ問題ありません。 ただし、片手で行うスポーツや左右非対称な動きが多い競技(テニス、ゴルフ、野球の投球など)は、背骨に偏った負荷がかかる傾向があります。 運動を継続する際は整形外科医と相談しながら、体に無理のない範囲で行いましょう。 側弯症でクッションを活用できますか? 長時間の座位が続くと、背骨に負担がかかりやすくなります。 姿勢を安定させるための骨盤サポートクッションや低反発クッションを使用すると、腰や背中への負担を軽減できる場合があるので試してみましょう。 ただし、クッションは補助的なアイテムとして活用するものであり、根本的な治療には医師の診断と指導が欠かせません。 関東地方で側弯症の名医を教えてください。 側弯症に関する治療実績が豊富な医師は存在しますが、「名医」と断定することは難しいのが現状です。 信頼できる医療機関を探すには、日本側彎症学会の公式サイトが参考になります。(文献4) 専門医が所属する医療機関一覧が掲載されており、関東地方などの地域や病院名から検索が可能です。 参考文献 (文献1) 「側弯症」|日本整形外科学会 (文献2) 学校での運動器検診|運動器の健康・日本協会 (文献3) SRS|Surgery (文献4) 医療機関一覧|日本側彎症学会
2025.10.15 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「痛風って腎臓にも悪いって本当?」 「尿酸値が高いって言われたけど、腎臓にどんな影響があるのか不安…」 このような疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。 痛風は関節に関わる疾患のイメージが強いかもしれませんが、実は腎臓とも深い関係があります。具体的には、腎機能の低下や痛風腎・尿酸結石などの腎臓系の病気を引き起こす可能性があるのです。 腎臓の状態を良好に保つためには、定期的な検診を受け、腎臓に負担のかからない生活を送ることが大切です。 本記事では、痛風と腎臓の関係や発症しうる腎臓病を詳しく解説します。尿酸値・クレアチニン値が示す健康状態や腎機能を低下させない方法、治療法も紹介するので、参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 「痛風による腎臓病」について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 痛風と腎臓の関係 痛風は単に関節の問題だと思われがちですが、実は腎臓とも密接な関わりがあります。 ある調査では、26,753名の痛風患者のうち、7,245名(27.1%)が腎機能低下と判定されました。(文献1) 痛風患者では、以下のようなプロセスを経て、腎機能が低下していきます。 血中尿酸値の上昇 尿酸塩結晶の形成 腎臓への尿酸塩結晶の蓄積 腎臓の炎症・組織の硬化 腎機能低下 痛風患者の体内では、尿酸が過剰に産生されるか、十分に排出されないことで血液中の尿酸値が上昇します。尿酸値が高くなると、尿酸は血液中で溶けきれなくなり、尿酸塩と呼ばれる結晶の形で沈殿するのです。 この尿酸塩の結晶が腎臓の細い管(尿細管)に詰まると、尿の流れを妨げたり、腎臓の組織に炎症を引き起こしたりします。炎症が起こると、腎臓の組織が傷ついて硬くなりやすいです。これらの変化が長期間続くと、徐々に腎臓の機能が低下していきます。 さらに、血中尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、それ自体が腎臓の血管を傷つける可能性も指摘されています。 このように、痛風は腎臓に深刻なダメージを与える恐れがあるため、早期発見と適切な管理が重要です。痛風によって引き起こされる高尿酸血症と尿酸塩結晶の蓄積は、さまざまなメカニズムを通じて腎機能の低下を招きます。 痛風で発症しうる腎臓の病気 痛風の影響で発症しうる腎臓の病気は以下の3つです。 痛風腎 尿酸結石 腎炎 病気の特徴を順番に見ていきましょう。 痛風腎 痛風腎は、痛風または痛風と同等ほどの高い尿酸値が長時間持続することで発症する疾患です。 高い尿酸値により腎臓がダメージを受けはじめた段階では、無症状であるケースが多いです。 しかし、腎臓に負担のかかる状態が続き、腎機能が低下していくと、関節の痛みやむくみ、倦怠感といった症状が現れるようになります。 尿酸結石 尿酸結石とは、尿が通る尿路に結石ができる疾患です。 痛風で尿酸値が高くなると、尿が酸性となります。酸性は水に溶けにくい性質があるため、尿酸結石ができやすくなります。 とあるデータでは、痛風患者312例のうち、23.7%に相当する60例に腎結石が認められたと報告されています。(文献2) 尿酸結石の主な症状は、わき腹や下腹部の強い痛みや血尿です。 小さな結石であれば、薬物療法を中心に自然と体外に排出されるのを待ちます。大きな結石の場合は、内視鏡治療で、結石を砕く治療が選択されます。 腎炎 腎炎とは、腎臓が炎症を起こしている状態です。 尿酸値が高いと体内で、尿酸塩結晶が形成されます。この尿酸の結晶が関節や腎臓に溜まることで、炎症や組織の損傷を引き起こすのです。 主な症状は、発熱や腰痛です。慢性化すると、食欲不振や多尿などの症状が現れます。 痛風の腎臓機能低下と関連のある2つの数値 痛風で腎臓機能が低下した場合「尿酸値」「クレアチニン値」の変化が重要な指標となります。 それぞれの値がどんな意味を持つのか、見ていきましょう。 尿酸値 尿酸は、プリン体と呼ばれる物質から生成されます。体内でプリン体が分解される段階でできた老廃物が尿酸で、通常は尿から排出される仕組みです。 尿酸値とは、体内の尿酸濃度を示す数値です。尿酸値は、7.0mg/dLまでは正常値内とされています。(参考3)それ以上の値になると、高尿酸血症となり、痛風や腎臓病の発症リスクを高めます。 尿酸値は血液検査で調べられるので、健康診断や内科の受診を通して検査を受けましょう。 【関連記事】 尿酸値と痛風の関係性|8.0mg/dLはやばい?高い原因と治療法を解説 尿酸値を下げて腎臓の健康を守る!今すぐ始めたい痛風・腎臓病予防の生活習慣 クレアチニン値 クレアチニンは、筋肉を動かすエネルギーを生み出したあとに産生される老廃物です。主に腎臓から排出されますが、腎機能が低下していると体内に残りやすくなります。 クレアチニン値は血中のクレアチニン濃度を示した数値です。 クレアチニン値の正常基準値は以下のとおりです。 男性:0.61〜1.04(mg/dL) 女性:0.47〜0.79(mg/dL) 数値が上昇すると、疲労感や食欲不振、むくみといった症状が現れます。 クレアチニンは血液検査や尿検査を組み合わせて総合的に評価されます。健康診断や自主的な検査の機会で、クレアチニン値の変化をチェックしてみてください。 痛風で腎機能を低下させない方法 ここでは、痛風で腎機能を低下させない方法を解説します。 主な方法は以下の4つです。 食生活を改善する 適度な運動をする 禁煙する 高血圧・糖尿病の治療をする 普段の生活を見直し、腎機能の維持・改善につなげましょう。 食生活を改善する 腎臓を保護するための食事では、以下の点に気を付けましょう。 食事の工夫 説明 プリン体の多い食品を控える 肉類、魚介類、ビールなどのプリン体を多く含む食品は、尿酸値を上昇させるため、摂取を控えめにする。 プリン体の少ない食品を選ぶようにしましょう。 塩分や蛋白質の摂取を控えめにする 塩分や蛋白質の過剰摂取は、腎臓に負担をかけるため、適量を心がける。 塩分は1日6g未満、蛋白質は体重1kgあたり0.8gを目安に摂取しましょう。 十分な水分を摂取する 水分補給は尿酸の排泄を促進し、腎臓の負担を軽減するために重要。 1日1.5~2リットルの水分摂取を心がけましょう。 野菜や果物を積極的に取り入れる 野菜や果物に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維は、腎機能の維持に役立つ。 1日に350g以上の野菜や果物を摂取するようにしましょう。 アルコールは控えめにする アルコールは尿酸値を上昇させ、腎臓に負担をかけるため、摂取は控えめにする。 1日の飲酒量は、ビールなら500ml、日本酒なら1合未満を目安にしましょう。 管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事の計画を立てることが大切です。バランスの取れた食事を心がけ、腎臓にやさしい食生活を送りましょう。 適度な運動をする 腎臓の健康を守るには、適度な運動と体重管理が大切です。 適度な運動は体重管理に役立ち、血圧を安定させる効果があります。これにより腎臓への負担が軽減され、腎機能の保護につながります。 肥満は高尿酸血症や腎臓病のリスクを高めます。標準体重を目指し、必要に応じて医師や栄養士に相談しましょう。 禁煙する 喫煙は、腎臓の血管を収縮させ、腎機能を低下させる可能性があります。そのため、喫煙している方は禁煙を検討しましょう。 以下は禁煙の方法です。 禁煙外来で専門家に相談する ニコチンパッチやガムを使う たばこを吸いたくなったときの気分転換方法を見つける 急に断ち切る必要はありません。少しずつたばこの本数を減らし、無理のないペースで禁煙を進めてみてください。 高血圧・糖尿病の治療をする 痛風と高血圧を併発している人は、腎臓に負担がかかりやすくなります。 高血圧によって腎臓の血管が傷つき、尿酸の結晶がたまりやすくなるためです。血圧のコントロールが悪いと、腎臓の障害がさらに進行してしまう可能性があります。 また、糖尿病も腎臓病のリスクを高める重要な因子です。血糖値が高い状態が続くと、腎臓の細い血管が損傷を受け、機能が低下していきます。 高血圧・糖尿病を患っている方は、それらの疾患を適切に治療することで痛風や腎機能低下の根本治療につながるケースも少なくありません。 糖尿病治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、詳しい治療方法を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 痛風における腎臓病の治療法 痛風で腎臓病を発症した場合、適切な治療を進めていく必要があります。 腎臓病における代表的な治療法は以下の3つです。 薬物療法 透析治療 再生医療 順番に見ていきましょう。 薬物療法 痛風による腎臓病の際に用いられる薬物療法では、尿酸値を下げたり、腎機能を保護したりする治療が行われます。 主な薬物療法の種類と効果を以下にまとめました。 治療法 説明 尿酸値を下げる薬物療法 アロプリノール、フェブキソスタットなどの薬を使用し、尿酸値をコントロールする。 尿酸の産生を抑えたり、排泄を促進したりすることで、尿酸値を下げる。 腎機能を保護する薬剤 腎臓の血管を保護し、タンパク尿を減らす働きのある薬を使用し、腎臓の機能低下を防ぐ。 代表的な薬には、血圧を下げる作用もあるACE阻害薬やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)などがある。 医師の診断と指導のもとで患者様の状態にあった治療法が選択されます。 透析治療 腎機能が著しく低下し、老廃物が体内に蓄積した場合は、透析治療が検討されます。 透析治療では、腎臓の代わりに尿として排出されるはずの余分な水分や老廃物を取り除きます。 2008年のあるデータでは、痛風腎による新規透析導入数は100人で、透析治療患者全体の0.3%とそこまで高い数値ではありませんでした。(文献4) 透析療法では水分制限や食事制限なども開始されるため、担当医と相談しながら患者様のペースで治療を進める流れが多いです。 再生医療 痛風による腎機能低下の治療法には再生医療の選択肢もあります。 再生医療とは、人間の組織や血液を活用する治療法です。自身の細胞を使用するため副作用も少なく、注射や点滴による治療が多いため、身体への負担が少ないのが特徴です。 再生医療を専門とするリペアセルクリニックでは、無料のメール相談またはオンラインカウンセリングを受け付けております。再生医療の詳しい治療内容や症例を知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。 痛風と腎臓の関係性を知って腎機能を高める生活を送ろう 痛風と腎臓は深く関係しているため、日々の生活で腎機能を守る工夫が必要です。 高尿酸血症のコントロール、腎臓にやさしい食事療法、生活習慣の改善など、さまざまな角度からのアプローチが求められます。 また、定期的な医療チェックと継続的なケアを通じて、合併症の早期発見と適切な対処を心がける必要があります。 痛風と腎臓病を抱える患者さんには、医療従事者とのパートナーシップを大切にしながら、積極的に健康管理に取り組んでいきましょう。 腎臓病の治療の選択肢に再生医療があります。 再生医療を提供している当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っております。再生医療について詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 痛風患者における腎障害の関連因子の検討|GoutandNucleicAcidMetabolismV (文献2) 原著2痛風患者における腎結石の有病率|J-STAGE (文献3) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版|日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン訂正委員会 (文献4) 腎予後に及ぼす高尿酸血症の影響|琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部 (文献5) 痛風|MSD マニュアルプロフェッショナル版 (文献6) 健康を考える皆さまへ|千葉県栄養士会 (文献7) 高尿酸血症・痛風の食事療法|順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部 (文献8) 高尿酸血症/痛風|日本生活習慣病予防協会 (文献9) 「高尿酸血症/痛風」|日本生活習慣病予防協会 (文献10) 高尿酸血症・痛風ハンドブック|沢井製薬株式会社 (文献11) 腎臓の病気について調べる 6.全身性疾患に伴う腎障害 7.痛風腎|日本腎臓学会 (文献12) 痛風(高尿酸血症)|愛知県薬剤師会 (文献13) 腎臓の病気について調べる 7.治療|日本腎臓学会 (文献14) 腎臓の病気について調べる 11.腎代替療法|日本腎臓学会
2025.09.30 -
- ヘバーデン結節
- 手部
「ヘバーデン結節の具体的な原因は?」 「職業柄発症しやすい人はいる?」 「ヘバーデン結節を疑う代表的な症状は?」 ヘバーデン結節の主な原因は、過剰な指への負担やホルモンバランスの変化などが挙げられます。 本記事ではヘバーデン結節の主な原因をはじめとして、以下を解説します。 職業別の原因と症状 主な予防法と治療方法 ヘバーデン結節における再生医療 ヘバーデン結節の予防または悪化を防ぐには、発症の原因と疑われる症状の理解が大切です。本記事をヘバーデン結節の理解を深めるために役立ててください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ヘバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ヘバーデン結節の主な原因 ヘバーデン結節の主な原因は、以下の2つが挙げられます。 過剰な指への負担 女性ホルモンの減少 それぞれの詳細を解説します。 ヘバーデン結節の症状や治療法なども含めて包括的な解説は「【医師監修】へバーデン結節とは|症状・原因・治療法を解説」の記事をご覧ください。 1.過剰な指への負担 ヘバーデン結節の主な原因は、過剰な指への負担です。(文献1) 家事や仕事により過剰な指への負担が続くと、以下のような流れでヘバーデン結節を発症する恐れがあります。 軟骨がすり減る 関節に炎症が起きる ヘバーデン結節を発症する なお、女性は男性と比較して、軟骨が柔らかく関節を支える筋力も弱いです。そのため、女性は軟骨のすり減りが起きやすく、ヘバーデン結節を発症するリスクが高いです。 日頃から過剰に指への負担がかかる作業を行っている方は、適宜休憩を入れて指への負担の軽減をしましょう。 2.女性ホルモンの減少 女性は40歳を過ぎると女性ホルモン(エストロゲン)が減少します。 女性ホルモンが減少すると、以下のような流れでヘバーデン結節を発症する恐れがあります。 女性ホルモンが減少して関節に炎症が起きやすくなる 指の関節の痛みや腫れを引き起こしやすくなる ヘバーデン結節を発症する 女性は、女性ホルモンの減少に加えて、軟骨の柔らかさや筋力の弱さも関係して、ヘバーデン結節を発症しやすいです。(文献1)妊娠や出産時のホルモンバランスの変化によって、ヘバーデン結節を発症するケースもあります。 ヘバーデン結節の原因と症状【職業別】 ヘバーデン結節の職業別の原因は以下の通りです。 職業 原因 主婦 家事による手指の酷使 音楽関係 演奏による手指の酷使 介護関係 介助による手指の酷使 美容関係 道具の使用や施術による手指の酷使 電気工事関係 配線整備や工具の使用による手指の酷使 IT関係 パソコン作業による手指の酷使 スポーツ選手 プレーにおける手指の酷使 それぞれの原因と代表的な症状を解説します。 主婦|家事による手指の酷使 掃除や洗濯、料理、庭の手入れなどの家事全般は、細かい作業が多く指に負担がかかることが多いです。指への負担が蓄積すると、ヘバーデン結節を発症するリスクが高まります。 家事による手指の酷使によりヘバーデン結節を発症すると、以下のような症状が現れるケースが多いです。 洗い物をする際に指が痛む 洗濯物を取り出す際に指が痛む お皿を持つと指が痛む 財布から小銭を出すときに指が痛む 子どもや孫と手をつなぐと指が痛む 家事の合間に適宜手指を休めることが大切です。 音楽関係|演奏による手指の酷使 ピアニストやチェロなどの演奏家は、ヘバーデン結節に悩まされることが多いです。演奏家は指先を曲げて力を入れる動作を繰り返すことが多いためです。 以下のような症状が現れている方は、ヘバーデン結節を疑ってください。 演奏が終わると指がズキズキと痛む 演奏をすると指が痛む 楽器の弦を指の痛みで押さえられない 思う通りに指を動かすことができない 指の違和感や痛みを放置したまま演奏を続けると、症状を悪化させてしまう恐れがあります。医療機関を受診して適切な治療を進めることが大切です。 介護関係|介助による手指の酷使 介護職は、ヘバーデン結節を発症しやすい傾向があります。高齢者を支えるために指に力を入れることが多いためです。 介護中に以下のような症状が現れている場合は、ヘバーデン結節を疑ってください。 利用者様とベッドの間に手を入れた際に指が痛む 利用者様の体を支えると指が痛む 手を握られた際に強い痛みがある 40代以降の女性の介護職員は、ヘバーデン結節を発症しやすくなる恐れがあります。手に違和感のある介護職員は医師に相談してみましょう。 美容関係|道具の使用や施術による手指の酷使 美容師やネイリストなどは、手先の細かな作業や指を曲げて力を入れる作業が多いため、ヘバーデン結節を引き起こしやすいです。 代表的な症状は以下の通りです。 ハサミやペンを持つと指が痛む お客様の髪を洗うと指が痛む 工具を持とうとしても指の痛みで落としてしまう 以上のような症状が現れている場合は、ヘバーデン結節を疑いましょう。 電気工事関係|配線整備や工具の使用による手指の酷使 電気工事関係の仕事は、指先に力を入れることが多いためヘバーデン結節の発症リスクがあります。また、電気工事関係の仕事をしているのは男性の方が多く、ヘバーデン結節を発症していても痛みを我慢している場合が多いです。 そのため、実際に医療機関を受診するころには症状が進行し、強い痛みや腫れを伴っているケースが見られます。 以下のような症状が現れている場合は、ヘバーデン結節を疑ってください。 電気の配線を抑える際に指が痛む 機材や工具を持つと指が痛む 指が痛くて車の運転ができない 指の痛みにより、思わぬ事故につながる恐れもあります。疑われる症状が現れている場合は、我慢しないで医療機関を受診してください。 IT関係|パソコン作業による手指の酷使 IT関係などのパソコンを長時間使う仕事は、指の負担が積み重なりやすく、ヘバーデン結節を発症するリスクがあります。疑われる症状は以下の通りです。 タイピングをすると指が痛む カバンを持ったときに指に痛みが走る 近年では、仕事にパソコンを使う機会が増えているため、指の痛みを経験する方が増えている傾向です。疑われる症状が現れている方は、悪化する前に医療機関を受診してください。 スポーツ選手|プレーにおける手指の酷使 柔術や柔道などの指先に力を入れることが多い格闘技で、ヘバーデン結節の発症が見られています。格闘技以外にも、ゴルフやバレーボールなどのスポーツにおいても発症するケースがあります。 練習や試合をする中で以下のような症状が現れている場合は、ヘバーデン結節を疑ってください。 指先をひねるような力を加えると痛む 相手の胴着をつかんで手前に引くと指が痛む ゴルフの練習後に指がジンジンと痛む 格闘技においては、とくに初心者が発症している傾向です。 ヘバーデン結節の予防法 ヘバーデン結節の予防法は以下の通りです。 予防法 詳細 指に負担をかけすぎない 1時間ごとに10分の休憩を入れるなどの工夫をして、指への負担を軽減する。 症状が現れたら早期受診をする 疑われる症状が現れたら悪化する前に受診する。 強くマッサージをしない 強度の高いマッサージやストレッチは悪化をまねく恐れがあるため行わない。 大豆イソフラボンを摂取する 大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールは、女性ホルモンに似た働きがあり、予防に役立つ可能性がある。 ヘバーデン結節の治療方法 ヘバーデン結節における主な治療方法は以下の通りです。 治療方法 詳細 保存療法 テーピングや装具による安静の保持や痛み止めの軟膏の塗布。炎症や痛みが強い場合には、少量のステロイド薬を注射することもある。軟骨や腱をもろくする恐れがあるため頻回には実施しない。 手術療法 ゴツゴツとした関節の変形などが現れている場合は、骨膜切除術や骨棘切除術(こつきょくせつじょじゅつ)を検討する。 手術療法は、日常生活に支障をきたす場合や痛みが改善しない場合に検討されますが、ヘバーデン結節において手術を行うケースは少ないです。(文献2) ヘバーデン結節は年齢によるものと放置されることがあります。しかし、関節リウマチなどの似ている病気を発症している恐れもあるため放置してはいけません。症状を悪化させないためにも、適切な診断と治療を受けてください。 ヘバーデン結節における再生医療 ヘバーデン結節の治療方法として再生医療という選択肢があります。再生医療とは、人が本来もつ自然治癒力を高める治療法です。 再生医療には主に二つの治療法があります。 一つ目はPRP療法で、患者様自身の血液から抽出した血小板の濃縮液を注射により投与する療法です。血小板は、傷ついた組織や細胞を修復する働きがあり、自己治癒力を高めることが可能です。 二つ目は幹細胞治療で、患者様ご自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、患部に投与する治療法です。幹細胞は様々な細胞に分化する能力を持つ細胞で、患者様自身の細胞を利用するため、拒否反応のリスクが低いのが特徴です。 どちらの治療も手術・入院を必要としません。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。 公式LINEでは、再生医療の情報提供や症例紹介、簡易オンライン診断を実施しております。ヘバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひチェックしてみてください。 まとめ|ヘバーデン結節の原因を理解して予防につなげよう ヘバーデン結節の原因は、過剰な指への負担や女性ホルモンの減少です。とくに指への長時間の負担がヘバーデン結節の主な原因です。職業柄、過剰に指へ負担をかける方は、注意しなければなりません。 ヘバーデン結節を発症させないためにも「1時間に10分は休憩を入れる」など、指を休ませる時間を設けることが大切です。なんらかの作業中に指の痛みや腫れ、違和感などが現れている場合は、放置しないで医療機関を受診してください。 ヘバーデン結節の治療には、再生医療という選択肢もあります。再生医療が気になっている方は、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) ヘバーデン結節の症状|ヘバーデン結節学会 (文献2) 手指の病気「ヘバーデン結節」と「母指CM関節症」|千葉医師会
2025.08.31 -
- ヘバーデン結節
- 手部
「ヘバーデン結節を予防する具体的な方法は?」 「マッサージやストレッチは予防に有効?」 ヘバーデン結節を予防するには、指へ過剰な負担を与えないことが大切です。とくに職業柄指に長時間の負担がかかる方は注意してください。 本記事ではヘバーデン結節の予防法5選をはじめとして、以下を解説します。 なりやすい人 痛みや腫れが現れた際の対処法 主な治療方法 40代以降の女性はヘバーデン結節を発症しやすいとされています。発症を予防するために本記事を役立ててください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ヘバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ヘバーデン結節の予防方法5選 ヘバーデン結節とは、指の第一関節の軟骨がすり減ることで、関節の腫れや痛みなどが引き起こされる病気です。 ヘバーデン結節を予防する主な方法として、以下の5つが挙げられます。 指に負担をかけ過ぎない 指の第一関節に痛みや腫れが現れたら早期受診をする 強くマッサージをしない 偏った食生活をしない 大豆イソフラボンを摂取する それぞれの詳細を解説します。 1.指に負担をかけ過ぎない ヘバーデン結節を予防するには、指に負担をかけ過ぎないことが大切です。 指に負担がかかる作業には、以下のようなものが挙げられます。 掃除や洗濯、庭の手入れなどの指を使う家事全般 重い物を持つ行為 指に負担のかかるスポーツ パソコン仕事や楽器の演奏などの長時間にわたる指の細かな動き (文献1) このように指の使いすぎや指に力を入れる作業を積み重ねると、軟骨がすり減ってヘバーデン結節を発症するリスクが高まります。1時間につき10分は休憩を入れるなど、指への負担を減らす工夫をしましょう。 2.指の第一関節に痛みや腫れが現れたら早期受診をする ヘバーデン結節が悪化する前に、疑われる症状が現れたらできるだけ早く受診することも大切です。ヘバーデン結節を発症すると、指の関節の曲がりにくさや腫れ、骨の変形、水ぶくれのようなコブなどの症状が現れます。 また、以下のような痛み症状も現れます。 指を軽くぶつけるだけで強く痛む 何もしていないのに指がズキズキと痛む 髪を洗うときに指が痛む 指の関節が赤くゴツゴツと腫れている キーボードを打つと指が痛む 指先の痛みで力が入らない (文献1) ヘバーデン結節は重症になると、日常生活に支障をきたします。これらの症状が現れている場合は、医療機関を受診してください。 3.強くマッサージをしない 違和感があるからといって、自己流で強度の高いマッサージやストレッチを行うことは推奨できません。万が一ヘバーデン結節を発症していた場合に、痛みや腫れを悪化させてしまう恐れがあるためです。(文献1) 指に違和感および痛みや腫れがある場合は、まずは医療機関を受診することが大切です。マッサージを行うにしても、入浴中などに指先をやさしく擦る程度が良いとされています。 4.偏った食生活をしない ヘバーデン結節を予防するには、偏った食生活をしないことも大切です。偏った食生活は変形性関節症(ヘバーデン結節を含む)の発症リスクを高める恐れがあるためです。 例えば、脂質を摂り過ぎると、軟骨に脂質が蓄積されて、軟骨の劣化や炎症を引き起こすリスクが高まります。(文献2)その他にも、以下のような食生活の乱れなどにより発症する生活習慣病は、変形性関節症のリスクを高める危険性があります。 病気 変形性関節症のリスクを高める理由 肥満症 肥満は軽度の全身の炎症を引き起こす 糖尿病 高血糖の状態は軟骨の機能に障害を与える ヘバーデン結節を予防するには、食生活の乱れの改善をはじめとして、生活習慣病を引き起こさないことも大切です。 5.大豆イソフラボンを摂取する ヘバーデン結節の発症の主な原因として考えられているのが女性ホルモンの減少です。大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールは、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをすると言われており、ヘバーデン結節の予防に役立つ可能性があります。(文献3) 大豆イソフラボンは以下のような大豆製品全般に含まれています。 豆腐 おから 油あげ 納豆 豆乳 日頃の食生活の中で、これらを取り入れてみても良いでしょう。 ヘバーデン結節になりやすい人 ヘバーデン結節を予防するには、なりやすい人の特徴を理解しておくことも大切です。ヘバーデン結節は、1対10の割合で女性に多く、40代以降に発症することが多いです。(文献4) 女性の発症割合が多いのは以下のような理由が挙げられます。 女性は男性と比べて軟骨が柔らかく関節を支える筋力も弱いため軟骨のすり減りが起きやすい 40代以降になると女性ホルモンが減少していくため関節の炎症が起きやすくなる また、音楽家や美容師、プログラマー、介護士など指へ負担をかけることが多い職業の方も、ヘバーデン結節になりやすいとされています。日常的に指に過剰な負担をかけてしまう方は、適宜休憩などを取り入れて、指への長時間の負担を軽減しましょう。 ヘバーデン結節による痛みや腫れが現れた際の対処法 ヘバーデン結節による痛みや腫れなどの症状が現れた際の対処法は以下の通りです。 現れている症状 対処法 手順 指の痛み テーピング 1.テーピングする部位をよく洗う 2.痛みのある指の第1関節をテーピングでグルグルと巻く 3.爪の色が紫色になっていないか確認する ※爪の色が紫色になっている場合は強く巻き過ぎであるため巻き直す 指の強い痛み、腫れ アイシング 1.氷のうを用意する 2.痛みや腫れがある部位を約20分間冷却する ※長時間冷やすと凍傷の原因になるため注意する 手のこわばり 温浴 1.洗面器などにお湯を張る 2.手を約10分浸す (文献5) テーピングは、指を使い過ぎているときに安静を保持する目的としても有効です。ヘバーデン結節は年齢によるものと放置されることもありますが、リウマチなど症状が似ている他の病気を発症している恐れがあります。 指に痛みや腫れ、変形、赤みなどが現れている場合は、医療機関を受診して適切な診断を受けることが大切です。 ヘバーデン結節の治療方法 ヘバーデン結節の主な治療方法は以下の通りです。 治療方法 詳細 保存療法 基本的な保存療法はテーピングや装具による安静の保持や、痛み止めの軟膏の塗布など。少量のステロイド薬を注射することもある。 手術療法 関節の変形などが現れている場合は骨棘切除術(こつきょくせつじょじゅつ)や骨膜切除術を検討する。関節を固定する関節固定術を行うこともある。 手術療法は、保存療法により痛みが改善しない場合や、日常生活に支障をきたす場合などに検討されます。 ヘバーデン結節における再生医療 保存療法により症状が改善しない場合は、再生医療も選択肢の一つです。 再生医療とは、病気やケガにより機能障害となった組織や細胞などを元に戻すために、人が本来もっている「再生する力」を用いた治療方法です。 具体的な治療方法としては、幹細胞治療とPRP療法が挙げられます。 当院の幹細胞治療は、患者様自身の脂肪細胞から幹細胞を採取・培養し、患部へ投与する治療法です。 PRP療法では、患者様自身の血液を遠心分離機にかけ、血小板を濃縮した液体を患部に注射します。血小板には、傷ついた組織や細胞の修復を促進させる働きがあります。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。 公式LINEでは、再生医療の情報提供や症例紹介、簡易オンライン診断を実施しております。ヘバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひチェックしてみてください。 まとめ|適切な方法を実施してヘバーデン結節を予防しよう ヘバーデン結節を予防するには、指に負担をかけ過ぎないことが大切です。とくに40代以降の女性や職業上、指に過剰な負担をかけてしまう方は、ヘバーデン結節になりやすい傾向です。 1時間につき10分は休憩を入れるなど、指への負担を減らす工夫をしましょう。指に違和感および痛みや腫れが現れた際の対処法として、テーピングやアイシング、温浴などがあります。 しかし、関節リウマチとの鑑別のためにも、まずは医療機関を受診して正しい診断を受けることが大切です。ヘバーデン結節には、再生医療という選択肢もあります。再生医療が気になっている方は、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) ヘバーデン結節の症状|ヘバーデン結節学会 (文献2) What is the evidence for a role for diet and nutrition in osteoarthritis?|National Institutes of Health (文献3) 広報 ほんじょう 12|本庄市 (文献4) ヘバーデン結節|徳島県医師会 (文献5) 手指のはれ・痛み〜ヘバーデン結節について〜|医療法人社団めぐみ会
2025.08.31 -
- ヘバーデン結節
- 手部
ヘバーデン結節を治療している間、繰り返し現れる痛みや腫れに悩まされる方もいるかと思います。これらの痛みや腫れから少しでも楽になれる方法を模索する方もいるのではないでしょうか。 ヘバーデン結節による痛みや腫れを緩和する簡便な方法として、テーピングがあります。テーピングは症状の緩和や進行を遅らせる効果が期待できるため、検討する価値はあるでしょう。 本記事では、ヘバーデン結節でのテーピングの方法やその効果・注意点を解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ヘバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ヘバーデン結節のテーピング方法・やり方 ヘバーデン結節の診断を受けた後、日常生活の中で襲ってくる痛みを何とかしたいと感じる方は多いです。ヘバーデン結節の痛みに対処する方法はいろいろとあり、なかでもテーピングはよく使われます。 ただ、テーピングの方法がよくわからない方もいるかと思います。テーピングは関節に巻くか、手首まで固定して巻く方法が主なものです。 関節部分への基本的な巻き方 関節部分にテーピングする場合、第1関節にテープを巻くように貼ります。貼るテープの長さは、関節の周りを2~3周する程度です。 なお、関節部分のテーピングでは、テープそのものを引っ張りすぎない点がポイントです。引っ張りすぎない程度に貼ることで、関節を安静な状態で保てます。 手首まで固定する巻き方 手首まで固定して巻くテーピングの場合、手順は以下のとおりです。 手の甲を上に向けた状態で、親指の第2関節からテープを貼る(爪の先で折り返すようにして、指先をも覆う) テープを親指から小指側の手首まで延ばす形で貼った後、手首を一周する 2本目として、親指の第1関節より上から巻き、第2関節の上まで巻く 第2関節の上まで巻いた後、小指側の手首まで延ばして手首を一周する 手首を一周した後は、再度第2関節に戻って、もう1度手首を一周する形で貼る 手首まで固定する巻き方は、スポーツでは痛みを予防する手段としてもよく使われます。 ヘバーデン結節へのテーピングの効果 ヘバーデン結節へのテーピングで期待できる効果は以下の通りです。 関節の痛みや炎症を和らげられる 指の変形の進行を抑えられる それぞれの効果について解説します。 関節の痛みや炎症を和らげられる テーピングした場合、ヘバーデン結節による関節の痛みや炎症を和らげられます。テーピングは第1関節の動きを制限する分、指の動きで生じる痛みを緩和する上で便利とされる方法です。 指への負担が軽くなるとともに、第1関節の軟骨への衝撃が弱まるため、痛みや炎症が落ち着きます。同時に痛みに注意しながら指は使える分、日常生活への支障もなるべく防げます。 指の変形の進行を抑えられる 加えて、テーピングはヘバーデン結節による指の変形の進行を遅らせる効果も期待できる手段です。ヘバーデン結節における指の変形は、症状が出て数年から10年で見られるようになります。 指の変形まで発生した場合、症状で指を使った細やかな動きが難しいだけでなく、見た目の美しさも損なわれかねません。このため、ヘバーデン結節の症状が見られ始めた段階でテーピングを施せば、初期症状の進行を遅らせる分、指の変形の速度も抑えられます。 ヘバーデン結節でのテーピングの注意点 ヘバーデン結節の治療でテーピングする際、注意点もいくつかあるため、事前に知っておくことが大切です。主な注意点として、次の点が挙げられます。 テーピングはあくまでも対処療法 慢性期の貼りっぱなしは避ける 肌トラブルのある方はテープの選び方に注意 それぞれの注意点を、ひとつずつ見ていきましょう。 テーピングはあくまでも対処療法 ヘバーデン結節に対するテーピングは、あくまでも対処療法です。つまり、痛みや腫れを和らげたり、症状の進行を遅らせたりするだけで、ヘバーデン結節自体の根本的な解決策にはなりません。 このため、ヘバーデン結節に対処するにはテーピングだけでなく、薬物療法やステロイド注射のような他の治療法との併用が大切です。 慢性期の貼りっぱなしは避ける ヘバーデン結節のテーピングでは、症状が落ち着いた慢性期に長時間テープを貼り続けることは避けましょう。 慢性期では関節の動きを改善するリハビリが重要です。テープを貼りっぱなしにしていると、関節が固まって動きが悪くなり、周囲の筋肉も弱くなってしまいます。 適切な対処法として、痛みの強いときだけテーピングを行い、症状が落ち着いている慢性期は定期的にテープをはがして関節を動かしましょう。これにより、日常生活での手の機能を維持できます。 肌トラブルがある方はテープの選び方に注意 もし、ヘバーデン結節に加えて肌のトラブルを抱えている場合は、テープの選び方に注意が必要です。テープによっては、使われている粘着剤の影響で指の肌がかぶれたりただれたりする場合があります。 肌荒れがある状態でテーピングしたいときは、自己判断はせずに医師に相談の上で判断しましょう。 ヘバーデン結節におすすめのテープ ヘバーデン結節にテーピングで対策する際に、どのようなテープを選べばいいのかで悩む方もいるかと思います。ヘバーデン結節対策のテープとして役に立つのが次の2つです。 キネシオテープ ビニールテープ キネシオテープ スポーツの世界でケガの応急処置や再発防止によく使われるキネシオテープは、ヘバーデン結節のテーピングで一般的です。直接肌に貼れるうえ、貼った後に指の動きに沿うため、ヘバーデン結節の治療のかたわらで指を動かす際に向いています。 加えて、テープ自体に目盛りが記されているため、長さを測った上で切って使えます。指に貼る際に目安となる長さは幅1~2cm程度(2マスから3マス程度)です。なお、キネシオテープはドラッグストアやスポーツ用品店で入手できます。 テーピングで改善しないときは医療機関へ もし、ヘバーデン結節でテーピングしていても、症状に改善が見られないときは、早めに医療機関で診察を受けることをおすすめします。テーピングはあくまでも補助的な対処法にすぎないため、なかなか症状が落ち着かないときには医師による診察や本格的な診療が欠かせません。 病状によっては、ステロイド注射や手術のようなより抜本的な手段が必要なケースもあります。テーピングで効果が見込めない時は、テーピングによる対処は諦めて医療機関の受診が大切です。 ヘバーデン結節の主な治療法 テーピング以外に選べるヘバーデン結節の主な治療法は次のとおりです。 治療法 概要 患部の安静 装具を用いて第1関節を固定して、患部への負担を抑える。 アイシング 腫れや熱感の緩和で、痛みを軽減。 薬物療法 消炎鎮痛剤などを投与し、痛みや腫れを和らげる。 ステロイド注射 痛みが強いときに関節内に少量のステロイドを注入。 手術療法 ヘバーデン結節治療で根本的な方法。関節固定術や関節形成術がある。 再生医療 体内から採取した血液から血小板を抽出・濃縮して患部に投入。 基本的には患部の安静やアイシング、薬物療法が用いられます。しかし、根本的に治療する際には手術をおこなう流れです。 再生医療も治療選択肢の一つ ヘバーデン結節の治療では、再生医療も選択肢の一つになります。再生医療で用いられる治療法は、幹細胞治療とPRP療法の2つです。 PRP療法は、患者様から採取した血液を遠心分離器にかけ、血液中の血小板の濃度を高めた後、患部に注射する治療法です。手術に頼らない方法であるため、体への負担も小さく、短時間で終了します。 一方、幹細胞治療は、患者様の体内から採取した幹細胞を培養したうえで、患部に注入する治療法です。幹細胞治療もPRP療法と同じく手術に頼らないため、入院も不要です。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療についてお問い合わせや相談を受け付けています。ヘバーデン結節でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 まとめ|テーピングはヘバーデン結節の症状緩和に使える ヘバーデン結節の治療でテーピングは、痛みを和らげたり症状の進行を遅らせたりする効果があります。毎日のように痛みに悩まされているものの、なかなか医療機関に行く余裕がない場合は、テーピングしながら様子を見ると良いでしょう。 ただし、テーピングは根本的な治療法ではないため、症状が改善しない場合や悪化する場合は、医療機関での診察を受けることが大切です。 テーピングの方法も、基本的には第1関節にテープを巻くだけの簡単な手順です。ただし、テーピングを続けても症状が改善しない場合は、なるべく早めに医療機関を受診し、根本的な治療を検討する必要があります。 ヘバーデン結節のテーピングでよくある質問 寝るときのテーピングは避けるべき? テーピングに絆創膏を使ってもいい? ヘバーデン結節用のテープは100均やドラックストアにある? 寝るときのテーピングは避けるべき? テーピングは起きているときだけでなく、寝るときの使用もおすすめです。指は寝ている間も無意識に動き、自然と力がかかります。ヘバーデン結節の場合は、寝ている間に指にかかる力によって、夜中に痛みや腫れで起きてしまう可能性もあります。 ヘバーデン結節を発症した後もなるべく熟睡するには、寝るときもテーピングしておくことで、痛みや腫れを抑えた状態にするのがポイントです。 テーピングに絆創膏を使ってもいい? 絆創膏は伸縮性があるため、ヘバーデン結節のテーピング・関節の固定には不向きです。 また、絆創膏は貼っている間に患部が蒸れる場合があることから、肌トラブルに悩む方は使うべきではありません。 ヘバーデン結節用のテープは100均やドラックストアにある? ヘバーデン結節に使われるテープは、種類によっては100均やドラッグストアで扱われています。キネシオテープはドラッグストアでも一般的に販売されているため、入手も簡単です。 また100均や書店で購入できるビニールテープでもテーピングに使えます。お肌が弱い方はぜひご検討ください。
2025.08.31 -
- ヘバーデン結節
- 手部
指の第1関節の痛みや変形が特徴的なヘバーデン結節。医師からヘバーデン結節の診断を受けて「本当に治るのだろうか」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 ヘバーデン結節は確かに完全な治癒は困難とされていますが、適切な治療により症状の緩和や進行の抑制は十分可能です。また、早期発見・早期治療により、重篤な変形を防ぐことも期待できます。 本記事では、ヘバーデン結節の治療可能性を中心に、症状の特徴、診断方法、治療法、そして日常でできる予防法まで詳しく解説します。 指先の症状でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ヘバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ヘバーデン結節は治るのか? ヘバーデン結節を診断された後に調べて、「ヘバーデン結節は治りにくい」といった情報を目にして、不安に駆られている方もいるのではないのでしょうか。 ヘバーデン結節の治療可能性について正しく理解することで、適切な対処法を選択し、症状の改善や進行の抑制を図ることができます。まずは治癒の可能性について詳しく見ていきましょう。 完治は難しいが症状の緩和は図れる ヘバーデン結節は完全な回復は難しい病気とされています。発症の原因は完全には解明されていませんが、加齢による軟骨の変性や遺伝的要因、女性ホルモンの減少などが関与していると考えられています。 治療は、薬物療法などの対症療法で対応するのが一般的です。症状が進んだ場合は指の変形まで見られ、元に戻らないケースもあります。 初期段階での治療が大切 ヘバーデン結節の症状を極力軽微に抑えるには、初期段階での治療が大切です。症状としてよく取り上げられる指の変形やこぶは、ある程度症状が進んだ場合に見られます。 指の変形やこぶは見た目にも直接影響するため、指をきれいな状態に保つには、痛みや腫れなどの違和感を感じた時点で医師の診察を受けることが重要です。 ヘバーデン結節の初期症状・診断方法 ヘバーデン結節が治るのかどうかを知るには、初期症状に当てはまるのかを見ていく必要があります。初期症状の特徴としていくつかの点が挙げられるため、知っておくと便利です。あわせて診断方法もご紹介します。 初期症状は指の第1関節の腫れや発赤など ヘバーデン結節の初期症状として挙げられるのが、指の第1関節(DIP関節)の腫れや発赤(はっせき)などです。それぞれの指にある爪の下の部分で症状が見られます。 第1関節が腫れるとともに、皮膚には赤みまで現れます。場合によっては、腫れた部分が痛んだり熱感を伴ったりするケースがあるのも特徴です。 加えて、第1関節付近に水ぶくれのようなものができることもあります。「ミューカスシスト」と呼ばれる水ぶくれ(粘液嚢腫:ねんえきのうしゅ)で、関節内部の液体が炎症によって漏れ出た結果、発生するものです。 症状が進むと指の屈曲・固定も 症状が進んだ場合、患部の痛みや腫れが強くなるだけでなく、指の屈曲や固定まで見られます。関節の痛みが強くなると、日常生活でもお箸を使ったり皿洗いをしたりするなどの、指を使った細かい動きに支障が出ます。 症状が10年程度続くと、関節や骨まで変形する点も注意が必要です。指が曲がったり関節が固まったりすると、指の曲げ伸ばしまで困難になります。 ヘバーデン結節の診断方法 ヘバーデン結節の診断では主に第1関節における異常の有無のチェックや、X線診断が用いられます。 医師の診察では、視診や触診によって腫れや熱感、痛みの有無を直接確認する方法が一般的です。 異常が見られた場合、X線診断で第1関節の部分の異常をさらに細かくチェックします。X線写真を見て、軟骨のすり減りや骨がトゲのようになっている骨棘(こっきょく)が確認されれば、ヘバーデン結節と診断されます。 なお、関節リウマチなど他の関節疾患との鑑別も重要で、必要に応じて血液検査なども行います。 ヘバーデン結節の主な治療法を紹介 ヘバーデン結節の主な治療法は、次のとおりです。 治療法 内容 保存療法 患部を極力安静にする。テーピングやサポーターによる固定も活用。 薬物療法 消炎鎮痛剤や漢方薬の使用。 ステロイド注射 関節内に少量のステロイドを注射。急性期に活用。 手術療法 関節自体を固定する関節固定術や、こぶ化した関節を切除する関節形成術。 再生医療 患者様の体内から採取した血液や幹細胞を採取、血液の濃縮や幹細胞の培養を経て患部に注入。 なお、最後に挙げた再生医療については、当院リペアセルクリニックでも相談ができますので、興味のある方は気軽にお問い合わせください。 ヘバーデン結節の新しい治療法|動脈注射と再生医療 ヘバーデン結節にさまざまな治療法があるなか、新しい治療法も登場してきています。ここでは新しい治療法である動脈注射と再生医療をご紹介しましょう。 動脈注射 動脈注射は「動注治療」とも呼ばれる方法で、ヘバーデン結節の炎症によって患部付近に発生するモヤモヤ血管への対応策として活用されます。モヤモヤ血管は通常の血管よりも細く、いびつな形状をしているのが特徴です。しかも、モヤモヤ血管は神経とともに形成されるため、炎症の部位からの痛みをも脳に伝達します。 動脈注射は点滴で使われるような極細のチューブを使って、モヤモヤ血管ができている部位に薬剤を注入する方法です。薬剤の注入でモヤモヤ血管を減らすことで、痛み・炎症の緩和や症状の進行を遅らせる効果があると考えられています。 再生医療 再生医療もヘバーデン結節の治療の選択肢です。 再生医療には「幹細胞治療」という治療法があります。 幹細胞は他の細胞に変化する「分化能」という能力を持ちます。幹細胞治療は、患者様の脂肪から採取した幹細胞を培養して増やし、患部に投与する治療法です。 再生医療では、患者様から採取した血液から血小板を抽出し、遠心分離器で濃縮した液体を患部に注入する「PRP治療」もあります。血小板に含まれる成長因子には、損傷した組織の修復を促進し、結果として炎症を抑制して患部を落ち着かせる働きがあります。PRP治療は手術によらない方法で、最短30分で施術が終わるのが特徴です。 当院リペアセルクリニックでは、幹細胞治療やPRP療法のご相談やご質問をいつでも受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。 ヘバーデン結節が治るまでの期間目安 ヘバーデン結節が治るまでの期間は症状や治療方法により異なりますが、早くて数カ月、時間がかかれば数年かかるとされています。 ただし、早期の適切な治療により、指の変形など症状の進行を止められる可能性は高まります。 なお保存療法を選択する場合は、3~4週間はテープなどによる患部の固定が大切です。それでも病状が改善しない場合は、手術療法などが検討されます。 ヘバーデン結節の予防法 指先の痛みや変形などの症状が厄介なヘバーデン結節ですが、日常生活でできる予防法がいくつかあります。 主な予防法は次のとおりです。 指先への負担を減らす 大豆を使った食品やサプリメントの摂取 指のマッサージで柔軟性を維持 これらの予防法を継続的に実践することで、ヘバーデン結節の発症リスクを軽減し、指の健康を維持しましょう。 指先への負担を減らす工夫 ヘバーデン結節を予防したいのであれば、指先への負担を減らすことが基本です。仕事やプライベートでパソコンやスマホの使用が多いときは、こまめに休憩を入れるなどして長時間の利用を避けましょう。 すでに指先の痛みのような症状が出始めている方は、テーピングなどで指をいたわりながら、指の酷使を避ける工夫が大切です。 大豆を使った食品やサプリメントの摂取 ヘバーデン結節の予防には、大豆由来の食品やサプリメントを活用する方法もあります。 実は近年の研究でヘバーデン結節の発症が、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの加齢による減少と関係していることが明らかになってきました。具体的にはエストロゲンの減少で、指の関節を包む膜が損傷する度合いが増すとされています。 減少したエストロゲンを補う方法として、大豆食品などがおすすめです。大豆に含まれるイソフラボンは体内で代謝されると、「エクオール」と呼ばれるエストロゲンと構造がよく似た成分に変化します。エストロゲンとよく似たはたらきをする分、指の関節の柔軟性を維持やヘバーデン結節の予防効果も期待できます。 指のマッサージで柔軟性を維持 指先の軽いマッサージもヘバーデン結節の予防に役立つ方法です。軽めにマッサージすれば、指の血流を改善するとともに、指先の柔軟性が維持されるため、痛みが緩和されます。手順は以下のとおりです。 お湯や蒸しタオルなどで手を温める マッサージしたい指を、反対の手の親指と人差し指で優しく包み、くるくる回す 1本の指につき10回ずつ、毎日3セット行う とくに朝起きたときに痛みやこわばりを感じる場合は、起床直後に行うのがおすすめです。 ただし痛みが強い場合や腫れがひどい場合は、マッサージを控え、必ず医師に相談してください。 まとめ|ヘバーデン結節は治る可能性が十分ある病気 ヘバーデン結節は指の変形まで見られた場合は、完全に治すのが難しい病気です。 しかし、発症して間もない初期の段階であれば、患部を安静にしたり手術をおこなったり、再生医療を試みたりするなどの方法で治せる可能性が十分にあります。 加えて発症を防止するために、日頃から指への負担を減らすことや、大豆食品の積極的な摂取も効果的とされる方法です。ヘバーデン結節は症状があまり進んでいなければ十分に対抗できるため、発症したら早い段階で治療を始めましょう。 ヘバーデン結節治るでよくある質問 ヘバーデン結節を自分で治す方法は? ヘバーデン結節を自分で治したいのであれば、まずは指先への負担を減らしながら、テーピングや装具で関節を安定させる方法があります。 加えて、大豆食品の積極的な摂取によるエクオールの生成や、簡単なマッサージでの血流改善などもおすすめです。ただし、自分で治そうとしても症状が改善しないときは、医療機関を受診しましょう。 ヘバーデン結節にコーヒーがおすすめなのは本当? ヘバーデン結節とコーヒーの関連性は、医学的に証明されていません。そのため、ヘバーデン結節の治療にコーヒーがおすすめなのかは不明です。 一方ネット上でよく見る「コーヒーを飲む人がヘバーデン結節になりやすい」話も根拠のないものです。 ただし、コーヒーに含まれるカフェインによって血流が悪化して、痛みが生じる可能性はあります。 加えてコーヒーに砂糖を入れて飲む際に、その量が多すぎると内臓や細胞に炎症ができて、関節の痛みや腫れを悪化させるケースがあります。気になる方はカフェインレスのコーヒーを選んだり、砂糖のとりすぎに注意したりすると良いでしょう。 ヘバーデン結節の治療でやってはいけないことは? ヘバーデン結節の治療中にやってはいけないこととして、以下の行為があります。 患部を強い力でのマッサージ 症状が出ている間の長時間のパソコンやスマホの操作 重い物の持ち運び いずれの行為も、患部の症状をさらに悪化させかねないため、症状が落ち着くまでは避けるべきです。 ヘバーデン結節はほっとくとどうなる? ヘバーデン結節を放置した場合、数年から10年かけて症状が進みます。痛みや腫れが日常化するだけでなく、指の変形も少しずつ進んでいくために注意が必要です。 症状が進めば、物を持つなど指を使った細かい動きに支障が出ます。しかもほかの指にまで症状が広がるケースがあるため、早めの治療が欠かせません。
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「指がカクッとなる」「朝、指が動かしづらい」「曲げ伸ばしが痛い」 指の不快な状態は「ばね指」かもしれません。家事やパソコン作業など、手をよく使う人に多く見られるのは、ばね指です。軽く見て放置してしまう人もいますが、症状が進行すると手術が必要になる場合があります。 本記事では、ばね指の症状や原因をはじめ、保存療法や注射、手術といった治療法をわかりやすく解説します。 「今の自分の症状にはどんな治療が合っているのか」「病院に行くべきなのか」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ばね指の症状でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ばね指の治療法|一覧表 ばね指の治療には、大きく分けて保存治療・注射治療・手術治療・再生医療の4つがあります。 治療法 概要 効果 適応 保存治療 指の安静、テーピング、装具固定、消炎鎮痛薬の内服や湿布などで炎症を抑える方法 症状の軽減や自然治癒を促す 軽症〜中等症、発症初期 注射治療 炎症部位にステロイド薬を注射して腱鞘の腫れを抑える 即効性があり、痛みや動きの改善が期待できる 保存療法で改善がない場合 手術治療 腱の通り道(腱鞘)を切開して動きを改善する外科的治療 高い改善率。再発が少ない 重症例、長期間改善がない場合 再生医療 自分の血液や細胞から抽出した成分を患部に注入し、組織の修復を促す 根本的な回復を目指せる可能性 他の治療で改善が乏しい場合 症状の進行度や日常生活への支障度、既往歴や合併症の有無によって、選択する治療法が異なります。 軽症の場合はまず保存治療から始め、改善が見られない場合に注射や手術を検討するのが一般的です。自己の細胞を利用した再生医療も選択肢の1つになっています。 ばね指の原因や症状に関しては、「【医師監修】ばね指とは|症状・原因・治療まで詳しく解説」の記事をご覧ください。 ばね指の保存治療 ばね指の治療は、症状が軽い場合や発症初期には保存治療から始めるのが一般的です。 保存治療とは、手術を行わずに日常生活での工夫や物理的なケアによって症状の改善を目指す方法です。ここからは、保存治療の方法と特徴を詳しくご紹介します。 安静 ばね指の初期段階では、指をできるだけ使わないようにして安静を保つのが重要です。 指の使い過ぎは腱や腱鞘に負担をかけ、炎症を悪化させます。パソコン作業やスマートフォン操作、手芸やスポーツなど、指を酷使する動作はできる限り控えましょう。 急性期には「RICE療法(安静・冷却・圧迫・挙上)」が有効で、安静の意識が改善につながります。 安静期間中は手全体の血流を妨げないよう注意し、無理に動かさないことがポイントです。 装具療法 装具療法では、サポーターを装着し、指を固定して腱の動きを制限します。 指を休ませることで炎症が鎮まりやすくなり、痛みや引っかかりが軽減されます。市販のサポーターもありますが、医療機関で作成する装具はフィット感が高く、症状に合わせて調整可能です。 就寝中のみ装着する場合や、日中の作業時に使用する場合など、使用時間は症状や生活習慣によって異なります。 自己判断で長時間固定すると関節が硬くなることがあるため、必ず医師の指示を守りましょう。 ストレッチ ストレッチは、関節の柔軟性を保ち、腱の動きをスムーズにするための大切なケアです。痛みのない範囲で指を曲げ伸ばししたり、反対の手で優しく伸ばすことで、動かしにくさの改善や再発予防が期待できます。 安静や装具療法で一定期間指を使わなかった後は、関節や腱が硬くなりやすいため、医師やリハビリスタッフの指導を受けて正しい方法を行いましょう。 無理に強く伸ばすと炎症を悪化させることがあるため、回数や強さは少しずつ増やしていきます。 冷却・温熱療法 冷却療法(アイシング)は、炎症や腫れが強いときに有効です。氷や冷却パックをタオルで包み、患部に当てることで痛みを和らげます。 温熱療法は血流を促し、組織の修復を促します。温かいタオルや温熱パックを使って手全体を温めると、こわばりが取れやすくなります。 急性期は冷却を優先し、炎症が落ち着いてから温熱へ移行するのが一般的です。どちらも長時間行うと逆効果になるため、適切な時間と頻度を守ることが大切です。 薬物療法 薬物療法では、炎症や痛みを抑えるための薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を飲み薬や塗り薬として使用するのが一般的です。急性期の痛みや腫れを軽減し、日常生活が送りやすくなります。 薬の使用は短期間で効果を発揮することが多いですが、長期使用による胃腸障害や副作用のリスクがあるため、医師の指示に従って適切に使用しましょう。 薬はあくまで症状を抑えるものであり、原因そのものを取り除く治療ではないことも理解しておくことが大切です。 リハビリ リハビリは、指の可動域を回復し、再発を予防するための重要な治療です。手術後や長期間固定を行った後は、指や手首の関節が硬くなっている場合が多く、専門的な可動域訓練が必要となります。 リハビリでは、ストレッチやマッサージ、筋力トレーニングを組み合わせて行い、腱の動きを滑らかにします。 自己流で無理に動かすと炎症が再発する場合があるため、理学療法士や作業療法士の指導を受けながら進めることが望ましいです。 再生医療 再生医療は、患者様自身から採取した幹細胞を培養し、患部に投与する治療法です。幹細胞が持つ、他の細胞に変化する能力「分化能」を利用します。 再生医療では、ご自身の幹細胞を活用するため副作用のリスクが少なく、手術や入院も必要としません。「手術は避けたい」とお考えの方にとって、新たな選択肢となる可能性があります。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療について詳しく知りたい方のために公式LINEで情報提供および簡易オンライン診断を行っております。 詳しくは以下をご確認ください。 ばね指の注射治療 注射治療は、炎症を起こしている腱鞘にステロイド薬を直接注入し、腫れや痛みを抑える方法です。 ばね指に対するコルチコステロイド注射の研究によると、2回目の注射では約39%の患者で長期的な症状緩和が得られ、症状が再発するまでの期間の中央値は約1年(371日)でした。3回目の注射でも同程度の成功率(39%)が報告されています。(文献1) ただし、ステロイドの副作用(腱の脆弱化や局所的な副作用)や効果の減弱があるため、注射回数には制限があります。注射で改善が得られない場合は、手術療法が検討されます。 ばね指の手術治療 ばね指が重症化している場合や、保存治療や注射治療でも改善がみられない場合は、手術治療が検討されます。 手術では、腱の通り道である腱鞘を切開して指の動きを改善します。この方法は高い改善率が期待でき、再発も少ないのが特徴です。 代表的な方法には、皮膚を切開して行う「腱鞘切開術」と、皮膚を大きく切らずに行う「経皮的腱鞘切開術」の2つがあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、症状や生活スタイルに合わせて医師と相談し、自分に合った方法を選びましょう。 腱鞘切開術 腱鞘切開術は、ばね指の手術治療でもっとも一般的な方法です。局所麻酔を行い、指の付け根部分の皮膚を切開します。 次に、腱が通るトンネル状の組織である腱鞘の一部を切開し、腱の動きを妨げている圧迫を取り除くと、指の引っかかりや痛みが改善され、スムーズに動かせるようになります。 手術は日帰りで行えることがほとんどです。術後は縫合部が治るまで安静を保ち、その後リハビリで可動域を回復させます。再発の少ないのが特徴です。 経皮的腱鞘切開術 経皮的腱鞘切開術は、皮膚を大きく切らずに行う低侵襲の手術方法です。 局所麻酔のもと、エコー(超音波)で腱と腱鞘の位置を確認しながら、針のような細い器具で皮膚の上から腱鞘を切開します。手術時間も短く、術後の痛みや腫れが軽減されやすいのがメリットです。 経皮的腱鞘切開術も日帰りで行えることがほとんどです。適応は症状や医師の判断によって異なります。 ばね指を治療する上でやってはいけないこと ばね指の改善には、治療だけでなく日常生活での注意も重要です。次のような行為は症状を悪化させる原因となるため避けましょう。 やってはいけないこと 理由 無理な伸縮 痛みや炎症がある状態で指を強く伸ばしたり曲げたりすると、腱や腱鞘を傷つけ悪化する 必要以上のマッサージ 自己流で長時間揉むと炎症が助長され、腫れや痛みが強くなる場合がある 放置 症状を放っておくと進行し、最終的に手術が必要になる可能性がある 詳しい注意点や改善のポイントは下記の記事をご覧ください。 ばね指になったら適切な治療方法を選択しよう ばね指は、症状の進行度や生活への支障度に応じて、保存治療・注射治療・手術治療など複数の選択肢があります。早期に適切な方法を選べば、悪化を防ぎ、回復を早めることが可能です。しかし、自分にはどの治療が合っているのかわからない方も少なくありません。 リペアセルクリニックでは、受診前でも情報を得られるよう、LINEで再生医療に関する情報や、ばね指の簡易オンライン診断のご案内を行っています。まずは専門的な知識を得ることが、納得のいく治療の選択につながります。治療に迷ったら、ぜひLINEからお気軽にご相談ください。 ばね指の治療に関するよくある質問 ゴルフのやりすぎでばね指になりますか 手や指を酷使するスイングや練習を繰り返すと、腱や腱鞘に負担がかかり、ばね指になる可能性があります。長時間の練習や、握力を強く使うショットが多い場合は要注意です。 痛みや違和感があるときは無理をせず、安静やストレッチでケアし、早めに医療機関で相談しましょう。 授乳中でもばね指の治療はできますか 授乳中は薬の使用に制限がありますが、固定や軽い指の運動、温めによる血流改善などで対応できます。症状によっては、装具療法やストレッチ、物理療法を中心に治療を進めます。 痛みが強い場合でも、母乳への影響を避けつつ安全な治療法を選べますので、必ず医師に相談してください。 ばね指を自分で治すストレッチ法を教えてください 腱鞘ストレッチや親指の腱鞘ストレッチ、指全体のストレッチが有効です。関節や腱の柔軟性を保つことで、症状の改善や再発予防につながります。痛みのない範囲で行い、無理に伸ばさないことが重要です。 正しい方法や回数は医師や理学療法士の指導を受けるとより効果的です。 詳しくは下記の記事をご覧ください。 ばね指の手術はどのような状態だと選択されますか 痛みで仕事や家事に常に支障がある場合や、弾発現象(カクンと跳ねるような現象)が強く自力で指が伸ばせない場合、固定療法や注射でも改善しない場合に検討されます。症状が長期化して関節が硬くなってきたケースでも、早めに手術を行うことで回復がスムーズになることがあります。 ばね指の原因はビタミン不足ですか? 直接の原因ではありませんが、栄養不足が炎症や回復力に影響し、症状が悪化しやすくなる可能性はあります。ビタミンB群、C、Eなどは腱や神経の健康に関わります。偏った食生活が続くと改善が遅れることがあるため、日常的にバランスの取れた食事を心がけることが大切です。 詳しくは下記の記事をご覧ください。 参考文献 (文献1) Long-Term Effectiveness of Repeat Corticosteroid Injections for Trigger Finger|PubMed
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「朝、指がスムーズに動かない」「曲げた指が戻らない」「カクンと弾けるような感覚がある」 その症状は、ばね指かもしれません。ばね指は指の腱が炎症を起こし、動かしづらくなる症状です。使いすぎや加齢が原因と思われがちですが、実は「ビタミン不足」も関係している可能性があることをご存じでしょうか。 本記事では、ばね指の症状や原因をわかりやすく解説するとともに、ビタミンBやミネラルなど、ばね指と関係の深い栄養素について詳しくご紹介します。 「病院に行く前に自分でできる対策を知りたい」「食事やサプリで改善できる?」と気になる方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ばね指について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ばね指とは?症状と原因の基本知識 ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に腱と腱鞘の間で炎症が起こり、スムーズに動かせなくなる状態です。 初期は軽い痛みやこわばりから始まり、進行すると「カクッ」と引っかかるばね現象が見られるようになります。症状の出方や進行具合は人によって異なり、原因も複数あります。 ここでは、代表的な症状と主な原因について詳しく見ていきましょう。 ばね指の主な症状 ばね指の初期症状は、指の付け根に痛みや腫れ、熱感が現れることです。朝方に症状が強く出やすく、日中は指を動かしているうちに軽くなる場合もあります。 しかし、炎症が続くと腱の動きが妨げられ、指を曲げ伸ばしするときに「カクッ」と引っかかるばね現象が起こります。さらに悪化すると、指がまったく動かせない状態になることも少なくありません。 症状の進行を防ぐためには、早めのケアと生活習慣の見直しが重要です。 ばね指の主な原因5つ ばね指は、手や指の使い方、年齢や体の変化、さらには栄養状態や持病など、さまざまな要因が重なって発症します。 下の表では、代表的な5つの原因とその具体的な内容をまとめました。 主な原因 詳細 手や指の使い過ぎ ・家事やスポーツ、スマホ、パソコン作業などによる酷使 ・日常的に手指を多用すると腱や腱鞘に大きな負荷がかかり、炎症を起こしやすくなる 加齢 ・年齢を重ねると腱や関節の動きが低下 ・少しの負担でも炎症が起こりやすくなり、ばね指を発症するリスクが高まる ホルモンバランス ・50歳前後の女性や妊娠中・産後に多い(文献1) ・女性ホルモンの変動により腱が傷みやすくなり、血流も悪化して発症リスクが上昇 栄養不足 ・鉄、タンパク質、ビタミン不足により腱の健康が損なわれる ・ビタミンB1不足は手のしびれの原因にもなり、さまざまな手指症状に影響 持病の影響 ・関節リウマチ、糖尿病、人工透析などで血流が悪化しやすい ・腱や腱鞘への栄養供給が不足し、ばね指のリスクが高くなる ばね指のセルフチェックや対処法については、こちらの記事もご覧ください。 ばね指とビタミン不足の関係 ばね指は、腱や筋肉、神経の健康状態に大きく影響を受けます。中でもビタミン不足は修復力や血流を低下させ、炎症やしびれを長引かせる要因です。ビタミンB12や食生活の偏り、全体の栄養バランスは回復に直結します。 ここからは、ばね指とビタミン不足の関係と改善ポイントを紹介します。 ビタミンB12の不足 ビタミンB12は、神経の正常な働きや赤血球の生成に不可欠な栄養素です。 不足すると神経の伝達がうまくいかず、手先のしびれや感覚の鈍化が生じることがあります。また、腱や筋肉に十分な酸素や栄養が行き渡りにくくなり、炎症や痛みが長引く原因になることもあります。 ビタミンB12が不足する主な原因は、加齢による吸収力の低下、胃の手術歴、偏った食生活などです。高齢者やベジタリアンの方は、意識してビタミンB12を多く含む食品を摂取しましょう。魚介類、レバー、卵、乳製品などを日常的に取り入れると、不足を予防し、ばね指の悪化防止にもつながります。 バランスの悪い食事が体に及ぼす影響 外食やコンビニ食、加工食品中心の生活は、ビタミンやミネラル不足を招きやすく、腱や神経の健康維持に必要な栄養が慢性的に欠ける原因になります。糖質や脂質の過剰摂取は血流を悪化させ、腱や腱鞘への栄養供給を妨げます。 その結果、炎症が治りにくくなったり、再発しやすくなったりします。忙しい生活の中でも、野菜や果物、魚、豆類、海藻などを取り入れたバランスの良い食事の意識が、症状改善や予防のために重要です。 栄養バランスの良い食事が大切な理由 栄養は、体の修復力や免疫力の基盤となる土台です。 腱や筋肉、神経の健康は日々の食事から得られる栄養によって支えられています。不足が続くと組織の修復スピードが落ち、炎症やしびれが長引きやすくなります。 ばね指の改善には、安静やストレッチなど外側からのケアに加え、内側からの栄養補給が欠かせません。 タンパク質、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラルをバランス良く摂ると、血流や代謝が整い回復が早まります。毎日の食事を見直すことが、予防と改善の両面で効果的です。 ばね指の改善や予防に役立つ栄養と食材 食事は日々の習慣として取り入れやすい改善策です。 ここでは、ばね指に関わる栄養素と、それを含む具体的な食材を紹介します。 ビタミンB12を含む食材 ビタミンB12は神経や血液の健康を維持し、腱や筋肉への栄養供給を助ける重要な栄養素で、以下の食品に多く含まれます。 魚介類(鮭、サンマ、イワシ) レバー 卵 乳製品 植物性食品ではほとんど含まれないため、ベジタリアンや高齢者は不足しやすく注意が必要です。 ビタミンB12は水溶性で加熱や茹でこぼしにより失われやすいため、煮汁ごと食べられる料理(スープや煮込み料理)や、加熱しすぎない調理法を選ぶと効率よく摂取できます。 週数回の魚料理や、卵や乳製品を朝食に取り入れると、日常的に摂取しやすくなります。 血流を促進する食材 血流が良くなると、腱や筋肉の修復が促され、炎症の回復もスムーズになります。血管を広げ、血液をサラサラに保つ働きがあるのは以下の食材です。 納豆 玉ねぎ にんにく しょうが 緑黄色野菜 しょうがやにんにくは体を温める作用があり、冷え性や末端の血行不良の改善にも効果的です。 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー、パプリカなど)には、抗酸化作用を持つビタミンCやβカロテンが豊富に含まれ、血管の健康維持に関わります。 緑黄色野菜は、炒め物や煮物、スープなどに加えやすく、日々の食事に取り入れやすいのが特徴です。継続して摂取することが、血流改善を習慣化するためのポイントです。 サプリメントの活用 食事だけで十分な栄養を摂るのが難しい場合、サプリメントを上手に取り入れるのも一つの方法です。 ビタミンB群、鉄、亜鉛は神経や血流の健康維持に欠かせません。忙しい方や食事制限のある方、高齢者では不足しやすいため、補助的に摂取すると症状改善のサポートになります。 ただし、栄養素によっては過剰摂取が健康被害を招くことがあるため、用量を守ることが大切です。可能であれば医師や管理栄養士に相談し、自分に不足している栄養を見極めた上で選びましょう。 ただし、サプリメントはあくまで補助であり、基本はバランスの良い食事の摂取が重要です。 ばね指を和らげるための対処法 症状の軽減には、栄養だけでなく日常のケアも欠かせません。 ここでは、自宅でできる簡単な対処法を紹介します。 ストレッチ 指や手首のストレッチは、腱や腱鞘の柔軟性を高めて引っかかりを軽減します。朝方や作業の合間など、こわばりやすいタイミングに行うのがおすすめです。痛みのない範囲で、指を反らすストレッチやグーパー運動をゆっくり行いましょう。 手首を回す、上下に反らす動きも血流改善に効果的です。しかし、炎症が強いときは無理せず安静にし、落ち着いてから再開しましょう。短時間でも毎日続けると、指の動きがスムーズになり日常動作が楽になります。 詳しいストレッチ方法については、下記の記事をご覧ください。 マッサージ 手のひらや指の付け根をやさしくほぐすと、血流が促進され腱鞘周囲の緊張が和らぎます。クリームやオイルを使って摩擦を減らし、指一本ずつ根元から先端へ、次に手のひら全体、手首へと順に行います。 痛みのある部分は避け、心地良い強さで行うのがポイントです。お風呂上がりなど体が温まっているときに行うとより効果的です。 サポーターやテーピング 患部の動かしすぎを防ぎ安静を保つため、サポーターやテーピングを活用します。指を軽く曲げた状態で固定できるタイプが適しており、初心者は装着が簡単な市販サポーターがおすすめです。 テーピングは動きを細かく制御できますが、誤った巻き方は血流を妨げるため、最初は医療機関で指導を受けると安心です。長時間の装着は関節の硬直や血行不良を招くため、適度に外すことも大切です。 湿布 湿布は痛みや腫れを軽減します。急性期は冷感湿布で炎症を抑え、慢性期は温感湿布で血流を促進します。かぶれを防ぐため、1日1回の貼り替えが基本です。入浴直前や直後は避け、皮膚の状態も確認しましょう。 湿布は対症療法であり、ストレッチや食生活改善など根本対策との併用が重要です。市販品で効果が乏しい場合や長引くときは、医師の診断を受けて適切な治療を行いましょう。 冷却と温熱 急性期は冷却が有効で、炎症や痛みを抑えます。保冷剤や氷嚢をタオルで包み、患部に当てます。慢性期やこわばりには温熱が適しており、蒸しタオルや入浴で温めると血流が促進されます。温めたあとにストレッチやマッサージを行うと効果的です。 症状に合わない方法は悪化の原因となるため、状態を見極めて使い分けることが大切です。判断が難しい場合は医師に相談しましょう。 ビタミン不足によるばね指は食生活を改善しよう ビタミン不足は、腱や神経の修復力や血流を低下させ、炎症が長引いたり症状が悪化したりする要因となります。 ビタミンB群、鉄、亜鉛などは腱や神経の健康維持に不可欠ですが、外食やコンビニ食、偏った食事が多い生活では、不足しやすくなるため注意が必要です。 ビタミン不足が続くと、ばね指の治りが遅くなるだけでなく、再発のリスクも高まります。改善には、肉や魚、卵、野菜、海藻、豆類などをバランス良く組み合わせた食事の継続が大切です。忙しくても栄養を意識した選択を心がけ、必要に応じてサプリメントを補助的に活用するのも良い方法です。 日々の食生活を整えることが、ばね指の症状改善と予防の近道になります。痛みやしびれが長引く場合は、自己判断せず早めに医療機関へご相談ください。 参考文献 (文献1) ばね指とは?症状や原因、自力でできる治し方4選を詳しく解説!|たけだ整体院・整骨院
2025.08.31 -
- 半月板損傷
- ひざ関節
膝の曲げ伸ばしや歩行時に感じる痛みや違和感......それは半月板損傷のサインかもしれません。 半月板は膝関節の安定と衝撃吸収に欠かせない重要な組織であり、損傷すると日常生活やスポーツに大きな支障が生じます。 中高年の加齢が原因となる場合もありますが、若年層でもスポーツや事故による急性損傷が起こる可能性があるため注意が必要です。 本記事では、半月板損傷の原因や症状、治療法などを詳しく解説します。 半月板損傷の治療で悩んでいる方はもちろん、今後の予防に活かしたい方は参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、治療の選択肢の一つ「再生医療」の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 半月板損傷とは 半月板損傷は、太ももの骨とすねの骨の間にある「半月板」と呼ばれる軟骨組織が傷ついた状態を指します。 半月板は膝の内側と外側に1つずつ存在し、衝撃吸収や関節の安定化、荷重分散の役割を担っている部分です。 スポーツでの急な方向転換やジャンプしての着地、交通事故などの外傷によって損傷するケースが多いほか、加齢による半月板の劣化や立ち上がりなどの日常動作でも損傷が起こる場合があります。 主な症状としては、以下のような状態が挙げられます。 膝の痛みや腫れ 動作時の引っかかり感 可動域の制限 また、損傷の程度や部位によっては、膝が動かなくなる「ロッキング現象」を伴う場合もあります。 適切な診断と治療を行わないと膝関節の変形や機能低下につながる可能性があるため、早期の受診が重要です。 半月板損傷の原因 半月板損傷には、急性損傷と慢性損傷があります。(文献1) 急性損傷は、主にスポーツや事故などで膝に強い外力が加わった際に起こるのが特徴です。 サッカーやバスケットボールなどの競技で急に方向転換をしたり、ジャンプ後に着地した際に膝をひねったりする動作によって半月板が損傷します。 また、ラグビーやスキーなど接触や転倒が多いスポーツでも膝関節に瞬間的なねじれや圧迫が加わり、半月板が裂けたり断裂したりするため要注意です。 一方、慢性損傷は加齢や長期間の膝の酷使によって半月板が徐々に劣化し、わずかな動作でも損傷が起こります。 とくに、40代以降では半月板の水分量や弾力性が低下し、階段の昇降やしゃがみ動作、荷物の持ち上げといった日常生活の動作でも裂けや損傷が生じやすくなるのが特徴です。 慢性損傷は膝の変形性関節症とも関連が深く、進行すると軟骨や周囲組織にも悪影響を及ぼします。 急性・慢性どちらの損傷も、膝関節の安定性や衝撃吸収機能を損なうため、原因に応じた早期の対応が欠かせません。 半月板が亀裂・損傷する原因については、以下の記事でも詳しく解説しています。 半月板損傷の症状チェック・痛み 半月板損傷の症状は、損傷の程度や部位によって異なります。 主な症状の一つが膝の痛みです。 急性損傷では、損傷直後から膝の内側または外側に鋭い痛みが生じ、歩行や荷重が困難になる場合があります。 一方、慢性損傷は鈍い痛みや動作時の違和感として現れ、階段昇降やしゃがみ動作で悪化しやすい傾向があるのが特徴です。 関節内で炎症が起こると、膝に水が溜まって腫れやすくなり、動かしづらくなるケースがあります。 また、損傷部位が関節の動きに引っかかり、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなる「ロッキング現象」が起きると、膝が途中で止まったようになり、無理に動かすと強い痛みを伴います。 さらに、歩行中や方向転換時に膝が突然くずれるような状態になる場合もあり危険です。 なお、半月板損傷では必ずしも症状が出るとは限らず、加齢による変性損傷では無症状のまま経過するケースもあります。 ただし、症状が軽くても放置すると関節軟骨の摩耗や変形性膝関節症へ進行する可能性があるため、膝に違和感や腫れがある場合は早期に受診しましょう。 半月板損傷の痛みについては、以下の記事でも解説しています。 半月板損傷の診断 半月板損傷では、問診や身体所見に加え、画像検査を組み合わせて診断します。 医師が受傷の経緯や症状を確認したあと、膝の状態を直接確認する画像検査でより詳しく調べるのが一般的です。 ここでは、半月板損傷の検査方法について詳しく見ていきましょう。 徒手検査(としゅけんさ) 徒手検査とは、医師が膝を曲げ伸ばししたり、ひねる動作を加えたりして痛みや異常な引っかかりの有無を調べる検査方法です。 代表的なものに以下のようなテスト方法があります。(文献2) 徒手検査の種類 検査方法 マックマレーテスト 膝をしっかり曲げた状態で、すねをひねりながら伸ばして痛みを確認 アプレー牽引テスト うつ伏せで膝を直角に曲げ、太ももを固定してすねを引っ張り上げた状態で痛みを確認 アプレー圧迫テスト うつ伏せで膝を直角に曲げ、足を押し込みながらすねを捻って痛みを確認 ただし、徒手検査は短時間で行える反面、損傷の有無や詳細な状態を確定するには画像検査との併用が必要である点に留意しておきましょう。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨の状態を画像で確認するために行われます。 半月板自体は写りませんが、骨折や骨の変形、関節の隙間の狭まりなど、損傷に伴う二次的な変化を把握できるのが特徴です。 とくに、変形性膝関節症の有無や進行度を確認するのに適しています。 ただし、半月板損傷の確定診断には、さらに直接的な画像で確認できるMRI検査が必要です。 MRI検査 MRI検査とは、強力な磁石と電波で体の内部を画像化する検査方法です。 X線を使用しない画像検査であり、脳や脊髄、関節、血管などさまざまな部位の診断で利用されています。 半月板損傷においても、半月板や靱帯、軟骨などの軟部組織を詳細に映し出せるのが特徴です。 損傷の位置や範囲、形態まで確認でき、手術の必要性や治療方針の決定に役立ちます。 放射線被曝がなく繰り返し検査できますが、撮影に時間がかかるほか、費用の高さがデメリットです。 半月板損傷の治療・早く治す方法 半月板損傷の治療は損傷の程度や場所、症状の強さを考慮して「保存療法」と「手術療法」から選択します。 軽度で膝の安定性が保たれている場合は、保存療法が第一の選択肢です。 安静や抗炎症薬などの薬物療法に加えて、サポーターを使った装具療法やリハビリでの痛み・腫れのコントロールにより、機能回復を目指します。 リハビリでは、可動域の回復と大腿四頭筋・ハムストリングスなどの筋力強化を段階的に行い、日常生活やスポーツができる状態に整えます。 一方、痛みが強く日常生活に支障をきたしており、画像で断裂が明らかな場合に検討されるのが手術療法です。 傷んだ部分を最小限に整えるべく、関節鏡視下で断裂した半月板を取り除く「半月板切除術」や、縫い合わせる「半月板縫合術」が代表的な手術方法になります。 手術を行った場合は、術後の腫れや痛みの管理に加え、リハビリの継続が再発予防と機能を回復させるために必須です。 ただし、運動を再開する際は自己判断を避け、医師や理学療法士の指導のもとでセルフケアやリハビリに取り組みましょう。 半月板損傷の治療法やリハビリについて、以下の記事でも詳しく解説しています。 治療法で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。 半月板損傷の手術を避けたい方の選択肢「再生医療」 半月板損傷で手術を回避したい場合は、自己組織を活用する再生医療が候補になります。 再生医療には、主に幹細胞治療とPRP療法があります。 治療法 内容 幹細胞治療 他の細胞に変化する「分化能」という能力がある幹細胞を患部に投与する治療法 PRP療法 血液に含まれる血小板を濃縮した液体を作製して患部に投与する治療法 どちらも手術不要で、入院する必要もありません。 手術による体への負担や将来的な関節機能への影響を考慮し、手術を避けたい方は再生医療も治療選択肢の一つとしてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、半月板損傷に対する再生医療の症例を紹介しています。あわせてご覧ください。 半月板損傷でやってはいけないこと|ストレッチやリハビリの意義 誤った治療や対処は回復を遅らせるだけでなく、症状を悪化させる恐れもあります。 半月板損傷の改善を目指すには、損傷部位や症状に応じた安静と適切なストレッチやリハビリが必要です。 半月板損傷でやってはいけないことは以下の通りです。 長距離・長時間の歩行 正座や深くしゃがみ込む姿勢 激しい運動やジャンプ 急な方向転換 膝に強い衝撃を与える動作 自己流のストレッチやリハビリ サイズの合わない靴での歩行 体重増加(適正体重の維持が重要) 半月板損傷を改善するためには、必ず専門家の指導を受けながら安全にストレッチやリハビリを行いましょう。また、運動習慣や食生活を見直し、膝関節への負担を軽減することも大切です。 半月板損傷でやってはいけないことは、以下の記事でも詳しく解説しています。 半月板損傷にテーピングは有効なのか テーピングは半月板損傷に対して、膝関節のぐらつきやねじれを抑える補助として役立ちます。 膝蓋骨の上下を囲うようにテープを貼り、前後方向を安定させるのが基本です。 安定性が不足する場合は、Y字に切ったテープを膝蓋骨下から左右に沿わせて貼り、側方の安定性を高めてください。 ただし、テーピング自体は半月板を直接治療する方法ではありません。医師の診断やリハビリを最優先し、活動量や症状に合わせて併用しましょう。 また、皮膚トラブルや締めすぎを避けるために貼付前後の皮膚状態を確認し、違和感があれば直ちに中止してください。 まとめ|半月板損傷の症状を見極めて適切に治療しよう 半月板損傷は膝の痛みや腫れ、引っかかり、膝のくずれなど、さまざまな症状を引き起こします。 放置すると関節の変形や機能低下につながる恐れがあるため、症状の程度や損傷部位に応じて適切な治療を選択することが重要です。 手術を避けたい方には、ご自身の細胞を活用した「再生医療」という選択肢もあります。 とくに、関節の変形リスクが心配な方は検討してみましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、PRP療法や幹細胞治療による再生医療をご提供しております。 また、公式LINEでは再生医療に関する情報や簡易オンライン診断を実施しております。半月板損傷に対する再生医療について、不明な点があればお気軽にご利用ください。 参考文献 (文献1) 半月板損傷について|横浜南共済病院 (文献2) 半月板損傷|丸太町リハビリテーションクリニック
2025.08.31 -
- 変形性股関節症
- 股関節
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減って、痛みや動きの制限が起こる進行性の関節疾患です。 初期には歩き始めや立ち上がりの際に違和感を覚える程度ですが、進行すると階段の昇降や長時間の歩行が困難になるケースもあるため注意しなければなりません。 とはいえ、早期に発見して適切な治療や生活改善を行えば、症状の悪化を抑えながら日常生活の質を保つことも可能です。 本記事では、変形性股関節症の原因や症状、治療法、セルフチェック方法を詳しく解説します。 股関節の痛みや違和感が気になっている、もしくは予防したい方は、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ぜひ公式LINEにご登録いただき、股関節の危険度診断や症例をチェックしてみてください。 変形性股関節症とは|どんな痛みなのか 変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減ることで炎症が起こり、関節の動きが悪くなる疾患です。 加齢や関節の使い過ぎなどによる「一次性変形性股関節症」と、生まれつき股関節を構成するカップ状のくぼみ「寛骨臼(かんこつきゅう)」の受け皿が浅いことが原因の「二次性変形性股関節症」があります。(文献1) 初期には立ち上がりや歩き始めに股関節が痛み、休むと改善しますが、進行すると安静時にも痛みを感じるようになるのが特徴です。 とくに、階段の昇り降りや長時間の歩行が困難になりやすく、ひきずり足歩行になるなど日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。 また、股関節の可動域が狭くなり、「靴下を履く」「足の爪を切る」といった動作も困難になります。 痛みの感じ方は個人差がありますが、鈍く重い痛みや刺すような痛みが見られるのが一般的です。 変形性股関節症の原因 変形性股関節症の発症には、以下のような原因が考えられます。 加齢で軟骨がすり減る 体重増加で股関節に負担がかかっている 遺伝が要因で発症する なかでも、加齢に伴う関節軟骨のすり減りは、発症の大きな要因のひとつです。 股関節は体重を支える重要な関節であり、長年酷使されて軟骨が摩耗し、関節の滑らかな動きが失われていきます。 さらに、体重の増加による股関節への負担増大や、関節への圧力が増すことで軟骨の損傷が進行するのです。 とくに、肥満傾向のある方は、発症リスクが高まる傾向があります。 日常生活での姿勢や歩き方も、股関節への負担を左右する要素です。 生まれつき股関節が脱臼しているなど、遺伝的な要因によって変形性股関節症を発症するケースも見逃せません。 家族に同様の疾患がある場合は、とくに注意が必要です。 そのほか、股関節や膝に負担が大きな過重労働をしていたり、日常的に激しいスポーツをしていたりすると、変形性股関節症の発症要因になります。 変形性股関節症の原因と治し方については、以下の記事でも詳しく紹介しています。 変形性股関節症の主な症状 変形性股関節症では、初期の段階から股関節に違和感や痛みが生じるのが特徴です。 関節軟骨がすり減って関節の滑らかな動きが損なわれると、立ち上がりや歩き始めなどの動作時に脚の付け根が痛むようになります。 痛みは休息で一時的に軽減する場合がありますが、病気が進行するにつれて、関節の可動域が徐々に狭くなっていきます。 その結果、「靴下を履く」「足の爪を切る」「正座する」といった日常的な動作が困難になり、階段の昇り降りや長時間の歩行がつらくなるケースも少なくありません。 進行すると、安静にしているときにも痛みを感じるようになります。 さらに、夜に寝ているときに感じる「夜間痛」が現れ、睡眠に影響を及ぼす点も懸念材料です。 股関節の機能低下によって、体全体のバランスがくずれて体をかばうような歩き方になるため、「跛行(はこう)」と呼ばれる肩を前に出しながら足を引きずる歩行が見られるようになります。 上記のように、変形性股関節症を一度発症すると進行して日常生活に大きな支障をきたすようになるため、早期の発見と対応が欠かせません。 以下の記事でも変形性股関節症の症状について詳しく解説しているので、参考にしてみてください。 変形性股関節症の治し方 変形性股関節症の治療は、症状に応じて以下の対処法が検討されます。 保存療法 手術療法 リハビリ 初期段階では、手術せずに進行を抑える保存療法が基本です。 症状が強く、日常生活に支障が出てきた場合には手術療法が検討されます。 また、いずれの治療においても、股関節周囲の機能回復や動作改善を図るリハビリが欠かせません。 では、それぞれの治療法について詳しく解説していきましょう。 手術せず治療するなら「保存療法」 変形性股関節症の初期から中期では、関節の状態を保ちつつ痛みを軽減するべく保存療法が用いられます。主な方法は以下の3つです。 方法 内容 薬物療法 消炎鎮痛薬(NSAIDs)で痛みや炎症を抑える 運動療法(ストレッチ) 関節に負担をかけずに可動域と筋力を維持 生活習慣の見直し 体重管理、正しい姿勢、関節に優しい動作を心がける 保存療法では、痛みを抑えながら関節機能を維持し、進行を遅らせる薬物療法が基本です。 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や湿布薬、必要に応じて関節内ステロイド注射などが用いられます。 運動療法では、水中歩行やストレッチなど股関節に負担の少ない運動がおすすめです。 生活習慣の見直しは、股関節にかかる負荷を減らす重要な取り組みとなります。 とくに、体重管理は予後に大きく影響するため、日頃から注意しなければなりません。 上記の保存療法の組み合わせにより、長期的に関節を守りながら快適な日常生活を目指せます。 以下の記事では、変形性股関節症に効くストレッチや生活習慣、治療法を検討する際のポイントを紹介していますので、参考にしてみてください。 日常生活に支障が出る重症なら「手術療法」 保存療法で症状が改善しない、もしくは日常生活に支障をきたすほど症状が進行している場合には、手術療法が検討されます。 代表的な手術には、「骨切り術」と「人工股関節置換術」の2種類があります。(文献2) 骨切り術は関節を温存できるため、自分自身の骨を活かせるのが大きなメリットです。 ただし、リハビリに時間がかかる傾向があります。 人工股関節置換術は、傷んだ股関節を人工関節に置き換えて痛みを大幅に軽減させる手術方法です。 比較的リハビリ期間が短く、社会復帰を目指しやすい治療法とされています。 どちらかを選択する際は、股関節の状態や患者の年齢・職業、生活環境などさまざまな点を考慮しながら、医師と相談しましょう。 人工関節手術のリスクについては、以下の記事でも詳しく解説しています。 手術後の「リハビリ」も大切 手術療法を受けたあとは、リハビリが重要です。 リハビリは、関節の可動域を回復し、筋力を強化して再発を防ぐ目的で行われます。 術後数日以内から歩行訓練や関節の動きを促す運動を開始し、日常生活に必要な動作を徐々に回復させていく方法が一般的です。 太ももやお尻、腹筋など股関節周辺の筋力強化も、股関節の負担軽減には欠かせません。 術後の状態に適した、無理のない筋力トレーニングや体操も取り入れていきましょう。 適切なリハビリの継続は再手術のリスクを減らし、長期的な機能維持につなげるために大切です。 変形性股関節症の治し方については、以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 人工関節手術を避けたい方の選択肢「再生医療」 変形性股関節症の治療では人工股関節置換術が選択される場合がありますが、手術への不安や身体への負担を理由に避けたいと考える方も少なくありません。 手術をしない新たな選択肢として注目されているのが再生医療です。 治療法の一つ「幹細胞治療」では、患者様から採取した幹細胞を培養して股関節に注入します。 幹細胞の「分化能(さまざまな細胞に変化する性質)」を活かした治療法です。幹細胞は米粒2~3粒程度の脂肪から採取できるため、体の負担は大きくありません。 治療の選択肢を広げたい、もしくは人工関節を入れるような大がかりな手術を避けたい場合は、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、変形性股関節症に対する再生医療の症例を紹介しています。再生医療について知りたい方は、ぜひご覧ください。 変形性股関節症でやってはいけないこと 変形性股関節症では、股関節に負担をかける動作を避けなければなりません。 以下の点に注意するように心がけましょう。 長時間立ち続けない 重い荷物を持ち運ばない 膝を深く曲げない 正座やあぐらを組まない 長時間立ち続けると関節に大きな圧力をかけ、軟骨の摩耗を促進するので控える必要があります。 同様に、重い荷物の持ち運びも股関節への負担が増し、炎症や痛みを悪化させる原因になるため注意しましょう。 また、買い物や移動の際はできるだけ荷物を分けて持つ習慣を心がけるほか、キャリーカートの使用もおすすめです。 さらに、膝を深く曲げる動作は股関節の可動域を超えて負荷を与えやすく、関節内の圧力が急激に上がるため避けましょう。 とくに、正座やあぐらの姿勢は、股関節を大きく開いたり曲げたりするため、軟骨や周囲組織へのストレスが強くなります。 関節変形を進行させる可能性があるため、なるべく椅子に腰かけるようにしてください。 日常生活の中で上記のような動作を意識的に避ければ、痛みを抑えながら関節の状態をより良く保つことにつながります。 変形性股関節症でやってはいけないことについては、以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。 変形性股関節症の症状セルフチェック方法 変形性股関節症を早期発見するためには、次のような症状や状態がないかセルフチェックしてみましょう。 運動したあと、太ももの付け根が痛い 寝ているときに、股関節が痛い 階段を上りづらい 車を乗り降りで太ももの付け根が痛い 歩く際に体が左右に揺れている 歩きはじめに、太ももの付け根が痛い 寝返りをうつと、太ももの付け根が痛い ズボンやスカートの丈に左右差がある あぐらをかくのがつらい 靴下が履きづらい 正座しにくい 足の爪が切りにくい 日常生活で感じる違和感や痛みの有無をまずチェックし、気になる症状がある場合は、専門医の診察を受けましょう。 変形性股関節症の進行スピードは原因や体重、生活環境などによって異なりますが、一度進行がはじまると一気に軟骨が減っていく恐れがあります。 悪化させないためには、少しでも早く発見することが大切です。 まとめ|早期に治療をはじめて症状をコントロールしよう 変形性股関節症は、初期の段階で適切に対処すれば進行を遅らせ、日常生活への影響を最小限に抑える効果が期待できます。 痛みや動きの制限、歩行時の違和感など小さなサインも見逃さず、早めに整形外科を受診することが重要です。 また、正しい姿勢や動作の工夫、体重管理も大切です。 早期治療と日々のセルフケアで、長く快適に動ける体を守っていきましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、PRP療法や幹細胞治療などの再生医療による治療を行っています。 公式LINEでは、再生医療に関する情報や簡易オンライン診断をご利用いただけます。 ぜひ登録してお試しください。 参考文献 (文献1) 手術・治療|あいちスポーツ・人工関節クリニック (文献2) 変形性股関節症|済生会
2025.08.31 -
- 関節リウマチ
- 内科疾患
関節の腫れや痛み、朝のこわばりが続いて「もしかしてリウマチ?」と、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。 関節リウマチは自己免疫の異常によって関節に炎症が起こる慢性疾患で、進行すると関節の破壊や変形につながるケースがあるため注意が必要です。 本記事では、関節リウマチの特徴や原因、診断方法、治療の選択肢などをわかりやすく解説します。 症状の悪化を防ぎながら生活の質を維持したい方、予防したい方は参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、治療の選択肢の一つ「再生医療」の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節リウマチとは 関節リウマチとは、自己免疫の異常によって関節の滑膜(関節を包む薄い膜)に炎症が起こり、腫れや痛み、こわばりを生じる慢性疾患です。 炎症が続くと軟骨や骨が破壊され、関節の変形や機能障害が進行します。 手指や手首、足首など小さな関節から症状が現れるケースが多く、全身の倦怠感や微熱を伴うことも少なくありません。 とくに女性に多く、30〜50歳代での発症が目立つのが特徴です。 関節リウマチの治療には長い期間を要する場合があるものの、早期に診断・治療を開始すれば、関節の破壊を予防して日常生活の質を維持できる可能性があります。 なお、似ている言葉に「リウマチ熱」がありますが、リウマチ熱は溶連菌感染が原因で起こる病気であり、関節リウマチとの関係性はありません。 関節リウマチの初期症状 関節リウマチは、発症初期から指の関節のこわばりや関節の腫れといった、体に特徴的なサインが現れます。 もっとも多いのが指の関節のこわばりで、とくに朝起きた直後に手指が動かしにくくなる「朝のこわばり」が典型的な初期症状です。 こわばりは30分以上続く場合もあり、症状が進むと日常動作に支障をきたします。 また、関節の腫れも初期からよく見られる症状です。 手指や手首、足首などの小関節が赤く腫れて押すと痛みを伴うほか、倦怠感や微熱、食欲低下など全身症状が併発するケースもあります。 炎症によって関節が熱を持ち、左右対称に症状が出るのも特徴です。 指や手首の違和感や腫れが数週間以上続く場合は、早めにリウマチ専門医を受診しましょう。 初期段階で適切な治療を開始すれば、関節破壊や変形の進行防止を目指せます。 以下の記事では、関節リウマチの初期症状についてさらに詳しく解説しているので、参考にしてみてください。 関節リウマチの原因・メカニズム 関節リウマチを発症する原因には、おもに以下3つの要因が考えられています。 自己免疫疾患 滑膜(かつまく)の炎症 遺伝的な素因 関節リウマチは自己免疫疾患の一種であり、本来は体を守る免疫が誤って自分自身の組織を攻撃し、発症します。 関節を覆う滑膜が標的となり、炎症が持続するのが特徴です。 滑膜は関節の動きを滑らかに保つ役割を持ちますが、炎症によって厚く腫れると関節内に炎症細胞や異常な組織が増殖します。 炎症が続くと組織が軟骨や骨を破壊し、関節の破壊や変形を引き起こすのです。 さらに、炎症物質が血流を介して全身に広がると、倦怠感や微熱、貧血などの全身症状を伴うケースもあります。 発症には遺伝的な素因も関与しており、特定のHLA遺伝子型を持つ人では発症リスクが高いことが知られています。 ただし、遺伝だけでなく喫煙や感染症、ホルモンバランスの変化など環境要因も複雑に関係している点も見逃せません。 また、やや専門的になりますが、体内で炎症が起こると「IL-6」や「TNFα」などのサイトカインという物質が過剰に分泌され、さらに炎症を悪化させる点も押さえておきましょう。 なお、関節リウマチの原因については以下の記事でも詳しく解説しています。 関節リウマチになりやすい人 関節リウマチは誰にでも発症の可能性がありますが、特定の年齢層や生活習慣を持つ人で発症率が高いことが知られています。 遺伝的素因と環境要因の組み合わせが影響しており、生活習慣や性別、年齢によってリスクが異なるのです。 ここでは、関節リウマチになりやすい人の特徴を解説します。 30~50代の女性 関節リウマチを発症する男女比は約1:4と女性に多く、とくに30〜50代の発症が目立ちます。(文献1) 女性が多い背景には、女性ホルモンの変動が関係していると考えられています。 女性ホルモンのエストロゲンには免疫調整作用がありますが、分泌が減少すると免疫異常が起こりやすくなるのです。 妊娠や出産、更年期などでホルモンバランスが変化する時期には、関節リウマチの早期発見に敏感になることも対策の一つといえるでしょう。 喫煙している人 喫煙は、関節リウマチの発症リスクを高める重要な要因の一つと考えられています。 タバコの煙に含まれる有害物質が免疫細胞を刺激し、自己抗体の産生を促進するとされているのです。 また、喫煙は発症後の病状悪化や治療効果の低下とも関連します。 禁煙すればリスクを低下させる効果が期待できるため、予防や症状管理の観点からも有効です。 喫煙が関節リウマチに与える影響については、以下の記事でも詳しく解説しています。 関節リウマチの診断基準 関節リウマチの診断には、米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が2010年に策定した分類基準が用いられます。(文献2) 診断は以下の表のように臨床所見と血液検査、症状の持続期間を点数化し、合計6点以上で関節リウマチと診断されます。 項目 内容 点数 関節の腫脹 1関節〜10関節以上で加点 0〜5 血清学検査 RFや抗CCP抗体の有無・値 0〜3 炎症反応 CRPや赤沈(ESR)の異常 0〜1 症状の持続期間 6週間以上で加点 0〜1 ただし、上記の診断基準は、あくまで早期から治療を開始するための目安であり、必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありません。 実際には、医師による総合的な判断によって診断されます。 関節リウマチの検査 関節リウマチの検査では、症状の確認に加えて複数の検査を組み合わせます。(文献1) 早期発見・治療のためには、血液検査や画像検査などを総合的に評価することが重要であるのが理由です。 ここでは、関節リウマチのおもな検査方法を紹介します。 血液検査 血液検査は、炎症の有無や自己抗体の存在を調べるために行われます。 代表的な検査項目は以下の通りです。 検査項目 目的 リウマトイド因子 自己抗体の値を確認するため 抗CCP抗体 免疫異常の有無をチェックするため CRP(C反応性タンパク) 関節リウマチによる関節炎の度合いを確認するため 赤沈 慢性炎症の有無を評価するため 以下の記事では、関節リウマチにおける血液検査の種類や数値について医師が詳しく解説しています。 尿検査 尿検査は関節リウマチそのものの診断よりも、病気や治療による腎機能への影響を確認する目的で行われ、蛋白尿や潜血の有無を調べて腎臓の健康状態を評価します。 とくに、抗リウマチ薬や生物学的製剤を使用している場合は、副作用の早期発見に有用です。 画像検査 画像検査は、関節や骨の状態を直接評価する方法です。 X線やCT検査は、おもに治療開始後の関節破壊を評価するために行われます。 MRIは、より早期の炎症や骨の損傷を捉えられるのに役立ち、超音波検査は滑膜の炎症や関節液の貯留をリアルタイムで観察可能です。 上記のさまざまな画像検査の組み合わせにより、発症初期から進行度までを的確に把握し、治療方針を決定します。 関節リウマチの治療 関節リウマチの治療は、日常生活の質を維持しながら関節の破壊を防ぐことが主な目的です。薬による治療が中心ですが、生活習慣の改善や自然療法、さらには再生医療まで選択肢は広がっています。 ここでは、「薬物療法」「自然療法」「再生医療」について見ていきましょう。 薬物療法 関節リウマチの治療は、炎症を抑えて関節破壊を防ぐのが目的であり、薬物療法が基本です。 以下のような薬を用います。 抗リウマチ薬:免疫の異常を根本的に抑える 非ステロイド性抗炎症薬:炎症や痛みを軽減する 副腎皮質ステロイド:急性期の症状緩和に用いる また、近年は生物学的製剤やJAK阻害薬など、特定の炎症物質に作用する治療薬も選択肢となっています。 関節機能を長く保つには、これらの薬を症状や進行度に応じて組み合わせ、早期に治療を開始することが必須です。 関節リウマチの薬については、以下の記事でも取り上げています。 「薬を飲まないとどうなのか」なども詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。 自然療法 関節リウマチの治療には、以下の3つの方法による自然療法もあります。 方法 内容 炎症コントロール 抗炎症食材(青魚、野菜など)を積極摂取し、炎症を悪化させる赤身肉、加工食品は控える 腸内環境の改善 免疫細胞の約7割が集まる腸を整えることで、免疫システム全体の正常化を図る。プロバイオティクスや消化酵素の補充が有効。 免疫システムの調整 ホルモンバランスの調整、デトックス、薬用キノコ(椎茸など)による免疫バランスの正常化を行う。 これらのアプローチは数ヶ月単位の継続が必要ですが、体質改善を目指せます。 再生医療 再生医療では、患者様自身の幹細胞や血液を利用する治療法です。 治療法 内容 幹細胞治療 患者様から幹細胞を採取・培養して患部に投与 幹細胞が他の細胞に変化する「分化能」という能力を活用する治療 PRP療法 患者様の血液から血小板を濃縮した液体を作製して患部に投与 血小板に含まれる成長因子が炎症を抑える働きを活用する治療 PRP療法は炎症に対するアプローチであり、根本的な原因に対する治療ではないという点には注意が必要です。 以下では関節リウマチに対する再生医療について紹介しています。あわせてご覧ください。 関節リウマチのしてはいけない10項目 関節リウマチでは、日常生活での工夫が症状の悪化や関節破壊の進行を防ぐうえで重要です。 とくに以下に挙げた10項目は、関節に負担をかけたり、炎症を悪化させたりする可能性があります。 1.激しい運動を避ける 2.関節を冷やさない 3.和式トイレを使わない 4.高さのある枕を使用しない 5.体重増加に気を付ける 6.正座しない 7.重い物を持たない 8.ストレスを溜めない 9.喫煙しない 10.加工食品の摂取を控える 激しい運動や重い物を持つ動作は、関節に大きな負担をかけます。 また、冷えや過剰な体重は炎症を悪化させる要因となるため、十分に注意しなければなりません。 日々の生活習慣においては喫煙や加工食品の摂取を避け、ストレスをためないように心がけることも大切です。 避けるべき生活習慣を見直すことは、結果的に炎症や関節破壊の進行を抑え、日常生活の質を維持しやすくなります。 とくに症状が不安定な時期は、無理をせず関節をいたわる生活を心がけましょう。 関節リウマチのしてはいけない生活習慣については、以下の記事でも詳しく解説しています。 より理解を深めたい方はチェックしてみてください。 まとめ|関節リウマチは早期に対処しよう 関節リウマチは自己免疫の異常で関節に炎症が起こり、進行すると関節破壊や変形を引き起こします。 しかし、早期診断と適切な治療により、症状の改善や進行抑制を目指すことも可能です。 指や手首のこわばり、腫れが続く場合には放置せず、速やかに医療機関を受診しましょう。 また、関節の機能を守るための生活習慣の見直しも欠かせません。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。 再生医療についての疑問や気になる症状があれば、以下のLINEボタンからお気軽にお問い合わせください。 関節リウマチに関するよくある質問 何科を受診すれば良いですか? 関節リウマチが疑われる場合は、専門的に診療できるリウマチ科を受診しましょう。 また、整形外科や内科から専門医を紹介してもらう方法もあります。 関節リウマチに市販薬はありますか? 薬局では痛み止めを購入できますが、長期的な症状緩和を目的に市販薬を使い続けることは避けてください。 かえって症状を悪化させる恐れもあるため、必ず医師の診断と治療を受けましょう。 関節リウマチは発熱しますか? 関節リウマチでは、炎症の影響で微熱や発熱を伴う場合があります。 発熱が続くなら感染症の可能性も考慮し、早めに受診し医師の診断を受けましょう。 参考文献 (文献1) 関節リウマチ|大正製薬 (文献2) 関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)|慶應義塾大学病院 健康情報ひろば・KOMPAS
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「手首にしこりがあって病院を受診したところ、ガングリオンと診断された」 「しこり以外に症状はないが、放置していても大丈夫だろうか?」 「ガングリオンが再発したけれど、このままにしていて良いのだろうか?」 ガングリオンと診断された方や再発した方の場合、このような不安を抱える場合も少なくありません。 ガングリオンは良性のしこりであり、無症状であれば放置していても問題ないものです。 しかし、しこりがガングリオンであるかどうかを確認するためには、医療機関での検査が必要です。そのため、完全に放置するのではなく、一度は医療機関を受診する方が望ましいでしょう。 本記事では、ガングリオンの放置可能なケースと治療を要するケースの違い、治療方法、治療後の再発について解説します。 ガングリオンと悪性腫瘍の違いにも触れていますので、しこりが不安な方はぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ガングリオンについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ガングリオンにおける放置の可否はケースによって異なる ガングリオンは、関節を包む膜から漏れ出た関節液がゼリー状になってたまった良性のしこりです。多くの場合、手首や指の付け根に発生します。 ガングリオンができた場合、そのまま放置しても良いケースと、早期の治療が必要なケースがあります。この章では両者の違いについて解説します。 以下の記事で、ガングリオンの概要について紹介していますので、あわせてご覧ください。 放置可能なケース しこりのみで痛みやしびれなどの症状がない場合、治療せずに経過を見るだけでも問題はありません。 しかし、手首や指の付け根、足首などにしこりができる疾患は、ほかにも存在します。しこりができた場合は、ガングリオンであるかどうかを確認するために整形外科を受診してください。 整形外科では、MRIや超音波といった画像検査や、しこりに針を刺して内容物を調べる穿刺(せんし)などによりガングリオンの有無を診断します。 治療が必要なケース ガングリオンにおいて治療が必要なケースは、しこり以外になんらかの症状がある場合です。 一例を以下に示しました。 しこりが大きくなっている 痛みやしびれが強い 運動麻痺がある 感覚麻痺がある これらの症状がある場合は、放置せずに医療機関で治療を受けましょう。 ガングリオンの治療方法 ガングリオンの主な治療方法は、保存療法と手術療法です。治療方法の選択は、症状によって異なります。 保存療法 痛みやしびれがない場合は、保存療法が選択肢となります。ガングリオンにおける保存療法の基本は、経過を観察しながら消えるのを待つことです。 しこりに力を加えて押しつぶす圧搾(あっさく)や、しこりに針を刺して内容物を吸引する穿刺吸収(せんしきゅうしゅう)も保存療法に含まれます。 穿刺吸収を複数回行っても内容物がたまるようであれば、手術も選択肢に入ります。 手術療法 手術療法が行われるのは、保存療法を続けても内容物がたまり、しこりが何度もできる場合です。主な手術方法としては、切開法と鏡視下手術があります。 切開法は、ガングリオンそのものを切開して除去する方法です。鏡視下手術は、関節鏡を用いて関節液の漏れにつながっている茎を除去する方法です。 しかし、手術で完全に治るとは限りません。手術により神経や血管の損傷を招いたり、術後に再発したりするケースもあります。 手術を受けるときは、医師や家族と十分に話し合い、納得した上で受けるようにしましょう。 ガングリオンの手術については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 ガングリオン再発時は放置せず早めの対応を アメリカ合衆国の論文では、ガングリオンの手術後再発率は1~50%と非常に幅があると報告されています。(文献1) 別の論文では、ガングリオンが再発して2度目の手術を受けた方のうち、15%が再再発したとのデータが示されました。(文献2) ガングリオンは関節だけではなく、骨や筋肉、神経にもできることがあります。ガングリオンができる場所によって症状も異なります。 ガングリオンが再発した部位によっては、初回より痛みやしびれが強くなることがあり、神経や関節に悪影響を及ぼす可能性もあります。そのため、手術や穿刺吸収療法後にガングリオンが再発した場合は、放置せず医療機関を受診しましょう。 ガングリオンを放置する前にまずは医療機関を受診しよう ガングリオンは良性のしこりであり、無症状であれば放置して経過を見ていても問題はありません。 痛みやしびれ、関節の動かしにくさなどの症状が出た場合は、悪性の腫瘍である可能性も否定できないため医療機関を受診しましょう。 しこりが急激に大きくなった、強い痛みがあるといったときは、早急に整形外科や手の専門外来に受診してください。 無症状のガングリオンでも不安な場合は、医療機関の受診が望ましいでしょう。 ガングリオンをはじめとする手の疾患でお悩みの方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください。 メール相談やオンラインカウンセリングも行っております。 ガングリオンの放置に関連するよくある質問 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方は何ですか? ガングリオンは、放置していると自然に消えることが多く、大きくなる場合も速度はゆっくりです。 これに対し、悪性腫瘍は急速に大きくなり、しこりが周りと分離して動く場合があります。感触も両者で異なり、ガングリオンは柔らかいものですが、悪性腫瘍は硬くてゴツゴツしている点が特徴です。 以下の記事では、ガングリオンと悪性腫瘍の違いを詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 ガングリオンができやすい人の特徴は何ですか? ガングリオンは女性に多くみられ、発症率は男性の3倍程度といわれています。 年齢的には、20代から50代に多い疾患ですが、まれに子どもの発症例もあります。 手を多く使う方が発症しやすいと思われがちですが、必ずしもそうとは言えず、手の使用頻度とガングリオン発症の因果関係は不明です。 ガングリオン発症のメカニズムも、現段階では明らかになっていません。 参考文献 (文献1) Factors Impacting Recurrence Rate After Open Ganglion Cyst Excision|HAND (文献2) Recurrence of Ganglion Cysts Following Re-excision|Archives of Bone and Joint Surgery
2025.08.31 -
- 手根管症候群
- 手部
「手や指先が、ずっと痛んだりしびれたりしている」 「整形外科を受診したところ、手根管症候群と診断された」 「何が原因で私は手根管症候群になったのだろう」 手根管症候群と診断された方の中には、このような疑問や悩みを持たれている方も少なくありません。手は日常生活で頻繁に使う部位であるため、不調が続くと生活に大きく支障をきたします。 手根管症候群の多くは原因不明です。しかし中には、女性ホルモンの乱れや手の使い過ぎにより発症する方もいます。 本記事では、手根管症候群を発症する原因および、悪化させる原因について解説します。 治療方法についてもよくある質問内で紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 手根管症候群について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 手根管症候群発症の主な原因 手根管症候群は、手首から手の中にある正中神経と呼ばれる神経が圧迫されて、さまざまな症状が生じる疾患です。多くの場合、発症の原因は不明です。 手根管症候群の概要や症状については、以下の記事をご覧ください。 【関連記事】 手根管症候群とは|症状・原因・治療法からセルフチェックのやり方まで現役医師が解説 手根管症候群の症状とは?セルフチェックの仕方や治療方法を現役医師が解説 女性ホルモンの乱れ 手根管症候群の原因の1つとして、女性ホルモンの乱れがあげられます。この疾患は女性に多く、とくに妊娠・出産期や更年期など、女性ホルモンのバランスが乱れやすい時期での発症が多いためです。 女性ホルモンが乱れると、関節や腱の周りにある滑膜(かつまく)が増加します。滑膜が増えると、手首内の限られた空間である手根管内の圧力が高まり、圧迫に弱い正中神経(せいちゅうしんけい)が平たく押しつぶされます。その結果生じるのが、指のしびれや痛みといった症状です。 手の使い過ぎ 仕事やスポーツ、パソコンおよびスマホの長時間使用、家事などによる手の使い過ぎも、手根管症候群の原因です。 手を使いすぎると、腱を覆う腱鞘(けんしょう)がむくんだり、炎症を起こしたりします。腱鞘のむくみや炎症も正中神経の圧迫につながり、手根管症候群を引き起こすきっかけとなります。 基礎疾患の影響 腎臓疾患や糖尿病、甲状腺機能低下症といった基礎疾患も、手根管症候群発症に影響する要因の1つです。 腎臓疾患患者の中でも、人工透析を受けている方は、手根管症候群を引き起こしやすい状況です。人工透析により、アミロイドと呼ばれる変性タンパク質が沈着し、手根管が狭くなることで手根管症候群を引き起こしやすくなります。(文献1) 血液透析の合併症に関する論文では、透析歴10年以上の患者の場合、手根管症候群合併例が多いと記されていました。(文献2) 糖尿病の合併症である神経障害を有する方の場合、少しの圧迫でも正中神経にダメージが生じてしまい、手根管症候群を発症しやすいとされています。また甲状腺機能低下症患者では、約7%で手根管症候群の発症が報告されています。(文献1) 手根管症候群予防のためには、定期的な診察や血糖値・甲状腺ホルモン値の管理が重要です。 手根管症候群を悪化させる原因 手根管症候群を悪化させる原因としてあげられるのは、主に以下の3点です。 手を酷使する 症状を放置する 症状があっても対症療法で済ませてしまう 手根管症候群を発症した場合に、やってはいけないことも存在します。 以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 手を酷使する スマホ操作時の「フリック入力」や、手首を酷使する長時間のパソコン操作は手首に負担をかけるため、手根管が圧迫されやすくなります。 1週間に20時間以上パソコンのマウス操作は、手根管症候群を悪化させるとされています。(文献1) 手根管症候群悪化の要因としてあげられるその他の動作は、主に以下のとおりです。 頻回に手首を曲げたり伸ばしたりする タオルや雑巾をしぼる 瓶のふたを開ける 症状を放置する 指のしびれや痛みといった症状を放置すると、徐々に悪化する可能性があります。 症状が悪化すると、親指の付け根の筋肉がやせてきて、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。具体的には、箸を使う、字を書く、衣服のボタンをかけるといった動作が難しくなるといった状況です。 さらに進行すると、手の感覚が低下して、痛みや熱さに気づかなくなる可能性もあります。 症状があっても対症療法で済ませてしまう 痛みやしびれといった手根管症候群の症状があった場合、市販の痛み止めを飲んだり湿布を貼ったりする対症療法で済ませる方も少なくありません。 しかし、対症療法だけでは根本的な治療にはなりません。手根管症候群と思われる症状が現れた場合、必ず医療機関を受診し、自分の症状に合った治療を受けましょう。 手根管症候群の原因を知り発症や悪化を防ごう 手根管症候群は原因不明のことが多い疾患ですが、女性ホルモンの乱れや手の使い過ぎ、人工透析や糖尿病などの影響も原因として考えられます。 手の使いすぎは、症状悪化の原因でもあるため、手首に負担をかけない、基礎疾患の治療を続けるなどの予防行動が必要です。 症状を放置したり、自己判断による対症療法で済ませたりする行為は適切ではありません。手の痛みやしびれ、感覚低下といった症状が現れた場合は、放置せず医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでも手根管症候群に関する相談を受け付けています。原因や治療法について知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。 メール相談やオンラインカウンセリングにも対応しております。 手根管症候群の原因に関するよくある質問 男性に多い手根管症候群の主な原因はなんですか? 男性の場合、主な原因として基礎疾患の影響があげられます。 日本整形外科学会の公式英文誌では、男性患者では、糖尿病や高血圧、人工透析の並存率が女性より有意に高いとのデータが示されました。(文献3) 男性では、手を多く使う力仕事や、手首骨折後、変形した状態での治癒も手根管症候群に関連するとされています。 手根管症候群が気になるときは何科を受診すると良いですか? 手根管症候群の主な受診先は整形外科です。 整形外科の中でも、手の外科専門医の診察を受けることが望ましいでしょう。手の外科専門医とは、手根管症候群をはじめとする、手や指、肘関節を専門に診断・治療する医師です。 一般社団法人日本手外科学会ホームページでは、手外科の専門医名簿がありますので、検索してみることをおすすめします。 手の外科専門医が近くにいない場合は、整形外科を受診して、症状や経過について相談しましょう。 手根管症候群の治療方法はどのようなものですか? 保存的治療として、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服薬および湿布薬が処方されます。 また、手の負担軽減のため、仕事や家事を控えて安静にする、サポーターや装具で手首を固定するといった日常生活面の指導も治療の一環です。 保存療法での回復が難しい場合は、手術適応となります。主な手術方法は、内視鏡を用いた手根管開放術や、小切開による直視下手根管開放術などです。 治療法の選択は症状の程度や生活への影響を踏まえて、医師と相談しながら決めていきましょう。 参考文献 (文献1) 標準的神経治療:手根管症候群|日本神経治療学会 (文献2) 血液透析の長期合併症とその対策|国立医療学会誌「医療」 (文献3) Differences in characteristics of carpal tunnel syndrome between male and female patients|Journal of Orthopaedic Science
2025.08.31






