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「最近腰に違和感や痛みを感じる」 「違和感や痛みが日を増して強くなっている」 スポーツ後や日常生活で腰に違和感がある場合、腰椎分離症の可能性があります。とくに野球やバレーボールなど腰を反る動作の多い競技をしている方や、若い頃の運動による慢性的な腰痛に悩む方は、早めに医療機関で状態を確認することが大切です。 本記事では、現役医師が、腰椎分離症のセルフチェック項目について解説します。記事の最後には、腰椎分離症のセルフチェックに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腰椎分離症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腰椎分離症のセルフチェック項目 セルフチェック 詳細 腰を反らす・ひねると違和感を感じる 腰椎後方の椎間関節や椎弓にストレスが集中することで生じる違和感や痛み スポーツや片脚動作で腰の不安定感がある 腰椎の安定性が低下することによる支えの弱さや力の入りにくさ 腰の中心〜片側に限局した違和感がある 分離部位周辺の局所的な炎症や筋緊張による違和感 長時間の姿勢維持で腰が疲れやすい 腰椎を支える筋肉に持続的な負担がかかることによる筋疲労や張り感 前かがみより後ろに反ると違和感が強い 腰椎後方への圧迫や分離部への負荷増大による痛みや違和感 腰椎分離症は、腰椎の一部に亀裂が生じる疾患です。初期は強い痛みを伴わないため、気づかず運動を続けることがあります。セルフチェックでは、腰を反らす・ひねる・長時間座る動作で違和感の有無を確認します。 腰の中央や片側に違和感があれば要注意です。腰の不安定感や片脚立ちでのバランスの崩れも、腰椎分離症の兆候のひとつです。軽度でも続く違和感があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 腰椎分離症の多くを占める第五腰椎分離症について、症状や基本的な考え方を整理しています。 腰を反らす・ひねると違和感を感じる 腰椎分離症は、腰椎後方の椎弓に亀裂(疲労骨折)が生じる疾患です。腰を反らす、ひねる動作では損傷部位に負荷が集中し、周囲の筋肉や靭帯が刺激されて違和感や張りを生じます。 これらの症状は骨の亀裂や炎症が原因で、スポーツや日常動作で強く現れます。放置すると痛みの増悪や分離の進行、慢性化につながる可能性があります。 違和感が続く場合は、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 スポーツや片脚動作で腰の不安定感がある 腰椎分離症は、腰椎の一部が疲労骨折を起こす疾患です。骨の不安定性により片脚立ちやジャンプ、方向転換などの動作時に不安定感や痛みが生じることがあります。 とくにスポーツ中の瞬発的な動きや体幹のねじれを伴う動作では、分離部に負荷が集中し、周囲の筋肉や靭帯に過剰な緊張が生じます。 腰の中心〜片側に限局した違和感がある 腰椎分離症では、椎弓の疲労骨折による骨の亀裂を起点に炎症や筋緊張が生じ、腰の中心から片側にかけて違和感や鈍痛、重だるさや張り感として現れます。 スポーツや日常動作による腰部への繰り返しの負荷が炎症や筋緊張を強め、負担のかかり方や骨折部位の左右差によって症状が偏る傾向がみられます。放置すると進行や慢性化するため、医療機関の受診が必要です。 長時間の姿勢維持で腰が疲れやすい 腰椎分離症では、長時間の座位・立位など姿勢保持で腰の疲労感や重だるさが強くなることがあります。椎弓の疲労骨折により腰椎が不安定となり、その分を補おうとして周囲の筋肉が過度に緊張するためです。 座位や立位の姿勢維持中に筋肉疲労が蓄積し、腰部全体に張り感や違和感が生じやすくなります。とくに腰の中心や片側に痛みが限局する場合は、分離部への負担が大きいことを示唆します。 これらの初期症状は日常生活にも影響するため、長時間同じ姿勢を避け、こまめに身体を動かして負担を減らすことが重要です。 前かがみより後ろに反ると違和感が強い 腰椎分離症では、椎弓の疲労骨折により腰椎が不安定になるため、腰を後ろに反らす動作で痛みや違和感が強く現れます。分離部に負荷が集中し、周囲の筋肉や靭帯が過度に緊張することで炎症や張り感が生じます。 初期症状は腰の中心から片側にかけての鈍痛や違和感が多く、前かがみで軽減し、後屈で悪化するのが特徴です。 スポーツや反り動作を繰り返すと症状が進行し、痛む場所がより明確になります。重症化を防ぐためにも、早期の整形外科受診と適切な治療が重要です。 腰椎分離症を放置するリスク 放置するリスク 詳細 慢性痛と合併症のリスク 分離部の炎症や変形による慢性的な腰痛や腰椎すべり症の併発 神経障害と手術の可能性 神経の圧迫による下肢のしびれや痛み、重症例での手術適応 日常動作や運動制限 腰の可動域制限や筋力低下による生活動作・スポーツ活動の支障 腰椎分離症を放置すると症状が慢性化し、周囲の筋肉や神経にも影響が及びます。 初期段階では骨の癒合が期待できますが、進行すると分離すべり症へ移行し、運動制限や下肢のしびれなどの症状が現れます。違和感が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、「腰椎分離症は治らないと言われた」場合の治療の選択肢について詳しく解説しています。 慢性痛と合併症のリスク 腰椎分離症を放置すると、椎弓が癒合せず偽関節や脊椎すべり症へ進行することがあります。腰部の慢性痛や下肢のしびれ、感覚障害といった神経症状が出現し、日常生活に支障をきたします。 これらは脊椎の不安定性を補う筋肉の過緊張や、神経圧迫が原因です。放置すると症状は慢性化し、治療が複雑化します。 早期の診断と適切な治療により、骨の癒合を促し、慢性痛や合併症のリスクを軽減できます。 神経障害と手術の可能性 腰椎分離症が進行すると、分離した椎骨がずれて脊椎すべり症へ進行し、神経を圧迫することで痛みやしびれ、感覚鈍麻、筋力低下といった神経障害が生じます。 重症例では排尿・排便障害を伴うこともあり、早期対応が必要です。これらの症状が現れた場合や保存療法で改善しない場合には手術が検討されます。 手術では分離部の固定と神経圧迫の解除を行いますが、実施は症状の程度や進行状況により判断されます。 日常動作や運動制限 腰椎分離症では、椎骨の疲労骨折により過度な動作や負担の大きい姿勢で痛みが悪化します。腰を反らす、ひねる、重い物を持つといった動作は避ける必要があります。 痛みがある間はスポーツや激しい運動を控え、医師の指導のもとで安静と段階的なリハビリが欠かせません。正しい姿勢と腰への負担軽減により、骨癒合を促し、進行や再発防止が期待できます。 【セルフチェック該当者向け】腰椎分離症の治療法 治療法 詳細 保存療法 安静・コルセット装着・理学療法による骨癒合と痛みの改善 薬物療法 消炎鎮痛薬や筋弛緩薬による炎症軽減と疼痛コントロール 手術療法 分離部の固定や神経圧迫の除去による安定性回復と症状改善 再生医療 幹細胞やPRPなどを用いた骨・組織の再生促進と自然治癒力の向上 腰椎分離症の治療は、症状の程度や年齢により異なります。基本は安静、装具の使用、リハビリテーションなどの保存療法です。 炎症や痛みが強い場合は薬物療法を併用し、神経症状を伴う場合には手術療法が検討されます。 近年では、自己修復を促す再生医療の研究も進んでおり、回復の促進が期待されています。ただし、再生医療を実施できる医療機関は限られており、すべての症例に適応されるわけではありません。そのため、治療を検討する際は医師に相談し、対応可能な医療機関を事前に確認しておくことが大切です。 保存療法 腰椎分離症の初期段階では、安静と装具療法を中心とした保存療法が基本です。腰に負担をかける動作を控え、コルセットなどで椎骨の安定を保ちながら骨の自然癒合を促します。 腰椎分離症の早期・片側例では、適切な休養・運動制限・装具使用・理学療法により骨が癒合するケースが多く、18歳未満の若年者では保存療法による骨癒合率が約81.9%です。(文献1) また、保存療法では体幹筋(腹筋・背筋)を強化し、腰を過度に反らさない姿勢や動作を習慣化することで、椎弓へのストレスを軽減し、再発を予防します。 ガイドラインでも「脊柱の安定性を高める運動+姿勢・動作指導」が中心治療とされています。(文献2) 手術は骨癒合が困難な場合や神経症状を伴う場合に検討されますが、多くは保存療法で改善し、スポーツ復帰まで平均2.8〜4.5カ月です。(文献3) 薬物療法 腰椎分離症の薬物療法は、主に痛みや炎症を和らげる目的で行われます。分離部の刺激により筋肉や靭帯が緊張して痛みが強まる場合、消炎鎮痛薬(NSAIDs)や筋弛緩薬が処方され、炎症の抑制や筋緊張の緩和を図ります。 ただし、薬物療法はあくまで補助的手段であり、骨の亀裂を治す治療ではありません。休息・装具の使用・体幹筋の強化・姿勢改善などと組み合わせて行うことが大切です。 また、NSAIDsを長期または多用すると胃腸や腎臓に影響を及ぼす可能性があり、自己判断での継続使用は避ける必要があります。実際、NSAIDsの使用による胃潰瘍や腎障害のリスクは医学論文でも報告されています。(文献4) 手術療法 腰椎分離症では、まず休養・装具・運動療法などの保存療法を行いますが、6カ月以上経過しても症状が改善しない場合には手術が検討されます。(文献5) また、椎骨の不安定性が強い場合や、腰椎分離すべり症が進行して神経圧迫によるしびれ・筋力低下・歩行障害などの神経症状を伴う場合も手術の適応となります。 手術では主に椎弓部修復や脊椎固定が行われ、若年者で椎間板損傷が少ない例では分離部の修復、すべりが進んでいる場合には金属や骨移植による椎体固定が適応です。(文献6) 再生医療 再生医療は、腰椎分離症に対する新たな治療法として注目されています。患者自身の幹細胞を用いて分離部や損傷組織の修復を促し、骨や軟部組織の再生を図ります。 幹細胞は損傷部位で新しい細胞へと分化して自然治癒力を高めるため、早期回復を目指す患者の治療選択肢のひとつです。 ただし、再生医療はすべての症例に適応できるわけではなく、研究段階の要素も含まれます。治療の適応や効果については、医師との相談が必要です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 【セルフチェック該当者向け】腰椎分離症で受診すべき診療科 受診について 詳細 整形外科 骨・関節・筋肉・神経など運動器全般の診断と治療 スポーツ整形外科 運動時の腰痛やスポーツ障害の専門的評価と治療 リハビリテーション科 姿勢改善・体幹強化・再発予防を目的とした運動療法 検査内容 X線・CT・MRIによる分離部位や進行度の詳細評価 受診の目安 腰を反らす・ひねると痛い、運動後の張りや違和感、片側の腰痛 腰椎分離症が疑われる場合は、整形外科を受診しましょう。問診や身体診察に加え、X線・CT・MRI検査で骨の状態や神経の影響を評価します。 スポーツを行う方は、スポーツ整形外科やリハビリ科を併設する施設が適しています。 腰椎分離症のセルフチェックを実施し早めの受診を心がけよう 腰椎分離症は、初期段階で発見すれば十分に回復が期待できる疾患です。セルフチェックで違和感や痛みに気づいた場合は、無理な運動を控え、整形外科を受診しましょう。 放置すると症状が慢性化したり神経症状を引き起こしたりして、治療が長期化する可能性があります。早期の診断と適切な治療が、日常生活やスポーツへの早期復帰につながります。 腰椎分離症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、腰椎分離症に対して再生医療を用いた治療を行っています。 腰椎分離症に対する再生医療は、患者自身の幹細胞を用いて損傷した椎弓や周囲組織の修復を促し、自然治癒力を高めて改善を図る治療法です。 幹細胞により骨や軟部組織の再生が促進され、症状改善が期待されます。従来の保存療法や手術療法に続く新たな選択肢として注目されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 腰椎分離症のセルフチェックに関するよくある質問 腰椎分離症は自分や家族の力だけで改善できますか? 腰椎分離症は、背骨の一部である椎弓に亀裂が入る損傷であり、筋肉痛や疲労とは異なります。そのため、自己判断や家族のサポートだけで改善は困難です。 レントゲンやCT、MRIで状態を確認し、医師の指導のもとで安静・装具・リハビリなどの保存療法を行うことが大切です。 腰椎分離症は整体や接骨院で改善しますか? 腰椎分離症は、整体や接骨院だけで根本的に改善することはできません。この疾患は背骨の一部(椎弓)に生じる疲労骨折であり、正確な診断にはレントゲンやCT、MRIなどの画像検査が必要です。 整体や接骨院では骨の状態を客観的に把握できないため、まずは整形外科を受診し、医師の診断のもとで治療方針を立てることが大切です。 腰椎分離症でやってはいけないことはありますか? 腰椎分離症では、安静期間中に無理な運動やスポーツ、腰を過度に反らす・ひねる動作、重い物の持ち上げ、長時間の同一姿勢は避ける必要があります。 これらは骨折部への負担を増大させ、症状の悪化や治癒の遅れを招きます。 以下の記事では、腰椎分離症でやってはいけないことを詳しく解説しています。 腰椎分離症は1カ月で良くなりますか? 腰椎分離症は1カ月で改善する可能性は低く、治療には一定の期間を要します。 以下は、平均年齢13.8歳の小児患者を対象とした腰椎分離症の治療期間に関する研究結果です。 病期区分 平均治癒期間 期間範囲 最初期段階 約2.5カ月 1〜7カ月 初期段階 約2.6カ月 1〜6カ月 進行期 約3.6カ月 3〜5カ月 (文献7) 治療には、安静やリハビリの継続が欠かせません。焦った運動再開は再発リスクを高めるため、医師の指導のもとで段階的に進めましょう。 以下の記事では、腰椎分離症の治療期間について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Rate and Duration of Bone Union for Conservative Treatment in Pediatric Lumbar Spondylolysis|PubMed® (文献2) Rehabilitation Guidelines for Lumbar Spondylolysis/Spondylolisthesis|UW HEALTH SPORTS REHABILITATION (文献3) Return to play after spondylolysis: An overview|PMC PubMed Central® (文献4) A Comprehensive Review of Over the Counter Treatment for Chronic Low Back Pain|PMC PubMed Central® (文献5) Lumbar Spondylolysis and Spondylolytic Spondylolisthesis: Who Should Be Have Surgery? An Algorithmic Approach|PMC PubMed Central® (文献6) Surgery for Spondylolysis|NYU Langone Health (文献7) Conservative Treatment for Bony Healing in Pediatric Lumbar Spondylolysis|PubMed®
2026.02.02 -
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「腰椎分離症がなかなか治らない」 「腰椎分離症が治らないのは本当なのか?」 腰椎分離症は、部活動や競技に打ち込む中高生・大学生に多く見られます。骨癒合が進みにくい時期に運動を再開したり、腰に負担のかかる動作を繰り返したりすると、骨の癒合が難しくなることがあります。 ただし、骨が完全に癒合しなくても、適切な安静とリハビリ、動作改善により痛みを軽減し、競技復帰を目指すことは可能です。腰椎分離症の治療には、段階的なアプローチが欠かせません。 本記事では、現役医師が治らないと言われる腰椎分離症について詳しく解説します。記事の最後には、治らない腰椎分離症に悩む方からよくある質問をまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。 腰椎分離症に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 腰椎分離症のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 腰椎分離症が治らないと言われる理由 治らないと言われる理由 詳細 初期対応と治療の問題 安静や固定の不足による骨修復の停滞。治療開始の遅れや早期復帰による偽関節化 骨と身体の状態による問題 骨癒合力の低下や筋バランスの崩れによる過負荷。体幹支持力の不足によるストレス蓄積 リハビリと復帰の問題 リハビリ不足や自己判断による再発。動作修正の不十分さによる負担再発 腰椎分離症が治らないと言われる背景には、初期対応の遅れ、骨の状態、リハビリ過程などが関係します。 発症初期に十分な安静期間を確保できず骨の修復が進まない場合や、成長期特有の骨癒合力の低下、筋力バランスの乱れによる負担の蓄積が主な要因です。 また、リハビリの中断や早期復帰による再発も少なくありません。適切な治療計画と段階的な復帰が回復に欠かせません。 なお、腰椎分離症の中でも、とくに発症頻度が高いのが「第五腰椎分離症」です。 第五腰椎分離症の初期症状や原因、治療の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。 初期対応と治療の問題 治らない理由 詳細 受傷初期の安静・固定が不十分 骨癒合を促すための安静や固定が不十分な状態。途中で運動を再開し、治癒が遅れる状態 症状が出ても運動を続けてしまう 痛みを我慢して運動を継続し、骨折部への負担が増す状態。自然治癒が妨げられる状態 治療の遅れによるもの 診断や治療開始が遅れ、骨癒合が進みにくく慢性化する状態。早期対応の欠如 腰椎分離症は腰の骨に起こる疲労骨折で、治りにくくなる主な要因は初期の安静と固定が不十分なことです。 骨癒合を促すには、受傷直後から患部を動かさず、コルセットで適切に固定することが大切です。 また、痛みを我慢して運動を続けると患部への負担が増し、慢性化の原因となります。診断や治療の開始が遅れることも、回復を妨げる要因です。違和感や痛みを感じた時点で早めに受診しましょう。 骨と身体の状態による問題 治らない理由 詳細 骨癒合しにくい時期・部位であること 骨の分離が進行し、癒合しにくい状態。進行期や終末期での偽関節化による治癒困難 姿勢や体幹筋のバランス不良 体幹筋の弱さやアンバランスによる腰椎への過負荷。姿勢不良による分離部へのストレス蓄積 (文献1) 腰椎分離症の骨癒合率は、進行段階によって大きく異なります。骨の状態は「初期」「進行期」「終末期」に分類され、初期では約90%が癒合しますが、進行期では30〜60%、終末期では偽関節化しほぼ癒合しません。 進行期以降の診断では回復が難しくなるため、早期発見が重要です。また、年齢や骨の代謝低下、筋力バランスの乱れも治りにくさに影響します。 体幹筋の強化や姿勢改善を行い、MRI・CTで経過を確認しながら治療を継続することが重要です。 リハビリと復帰の問題 治らない理由 詳細 不十分なリハビリ 安静期間中の筋力・柔軟性低下による腰部負担の増大。リハビリ不足や中断による骨癒合の遅延 復帰時期の誤り 痛みが残る中での早期復帰による再発リスク。自己判断による分離部への過負荷 段階的リハビリと競技特性に合ったプログラムの欠如 体幹安定化と姿勢改善を基盤とした段階的リハビリの不足。競技動作に応じたトレーニング不足 腰椎分離症の回復には、リハビリの質と段階的な復帰計画が欠かせません。安静中も筋力や柔軟性を維持し、腰椎への負担を減らすことが求められます。 また、痛みが残るままの早期復帰は再発の原因となるため、医師や理学療法士の評価を基に慎重に進める必要があります。 ある研究では、運動休止後に段階的復帰プロトコルを実施した20例中12例(60%)が約3カ月で競技復帰可能な状態になったと報告されています。(文献2)ただし、個人差があるため、医師の指導を仰ぐ必要があります。 腰椎分離症が治らないときの改善策 改善策 詳細 原因の再評価 安静期間中の筋力・柔軟性低下による腰部負担の増大。リハビリ不足や中断による骨癒合の遅延 医療的治療と復帰時期の見直し 骨癒合の進行に応じた安静・固定期間の再設定。低出力超音波治療(LIPUS)や理学療法による治癒促進。痛みと画像所見に基づく段階的な復帰計画の再構築 生活習慣とリハビリの改善 姿勢や動作の修正による腰部負担の軽減。腹横筋・多裂筋など体幹安定化筋の強化。股関節・下肢の柔軟性維持と十分な休養の確保 腰椎分離症が治りにくい場合は、まず原因を再評価し治療方針を見直すことが重要です。MRI・CTで骨癒合の状態を確認し、他の疾患の影響も考慮します。 その上で、骨の回復に合わせた安静期間の再設定や、低出力超音波治療(LIPUS)・理学療法による治癒促進を行います。さらに、姿勢や動作の改善、体幹筋の強化、柔軟性の向上により腰への負担を軽減することが、再発防止と回復につながります。 原因の再評価 改善案 詳細 根本原因の見直し 症状のみにとらわれず、身体全体の状態や生活習慣、スポーツ動作を含めた包括的評価 身体バランスの確認 姿勢や筋力のアンバランス、股関節・殿部機能の低下による腰部負担の把握 画像検査による再評価 レントゲンやMRIで骨癒合の進行状況、再発や悪化の有無を確認 運動・休養バランスの調整 練習量や休息の見直し、腰への負荷を抑える動作習得 チーム医療による再評価体制 医師・理学療法士が連携し、個々の状態に合わせた治療計画の立案 (文献3) 腰椎分離症がなかなか治らない場合、まず原因の再評価が必要です。 姿勢や筋力バランス、股関節・殿部の機能、生活習慣、運動内容など、全身の状態を見直し、レントゲンやMRIで骨癒合の進行や再発の有無を確認します。これにより、現段階で必要な治療やリハビリ内容が明確になり、効果的な改善計画を立てられます。 医療的治療と復帰時期の見直し 改善策 詳細 医療的治療の役割と選択肢 保存療法(安静・固定・薬物・理学療法)による骨癒合促進。神経症状や癒合困難例での手術検討。新しい治療法としての運動器カテーテル治療の導入 復帰時期の慎重な判断の必要性 症状軽減のみでの早期復帰による再発リスク。画像検査や理学的評価に基づく復帰時期の適正判断 継続した医療フォローと段階的復帰プログラム 定期診察と検査による治療効果の確認。理学療法士による段階的トレーニングと再発予防指導 治りにくい場合は、骨癒合の状態や年齢に合わせて治療内容を見直すことが重要です。 必要に応じて、装具療法や神経ブロック注射、再生医療などを組み合わせることで機能回復を促します。 また、復帰時期を早めすぎると再発の原因になるため、医師の判断に基づき、痛みや可動域を確認しながら段階的に運動量を増やす必要があります。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 生活習慣とリハビリの改善 改善策 詳細 生活習慣の改善 長時間同じ姿勢を避け、正しい姿勢を意識する生活習慣。座位や物の持ち上げ動作での腰部負担の軽減 効果的なリハビリの継続 医師の指導による股関節・下肢ストレッチと体幹筋強化の継続。痛み軽減後も段階的にリハビリを継続する重要性 自宅でできる自主トレーニングの重要性 日常的なストレッチや筋トレによる柔軟性と体幹安定性の維持。再発予防と症状緩和への効果 (文献4) 日常生活の中には、腰に負担をかける動作が少なくありません。長時間の座位や合わない寝具、重い荷物の持ち運びなどが、腰椎分離症の再発につながることもあります。 負担を減らすためには、姿勢や動作の見直しに加えて、体幹や殿部、太ももの筋肉をバランスよく鍛え、柔軟性を保つことが大切です。 生活習慣を整えることで、治療効果を高め、再発を防ぎやすくなります。専門ガイドラインでは、「少なくとも3か月間スポーツ活動を休止したアスリートは、非常に良好な結果を得る可能性が16倍高い」と報告されています。(文献5) 以下の記事では、腰椎分離症のセルフチェック方法を詳しく解説しています。 腰椎分離症の慢性化を防ぐ方法 慢性化を防ぐ方法 詳細 体幹トレーニングと柔軟性の維持 腹横筋・多裂筋など体幹深層筋の強化による腰部安定性の向上。股関節やハムストリングスの柔軟性維持による腰部負担の軽減。体幹・殿部・下肢のバランスを整える全身的トレーニング 姿勢・フォームの改善と練習量の管理 骨盤前傾や反り腰などの不良姿勢の修正。スポーツ動作に応じた正しいフォーム習得。練習量と休養のバランスを保ち、疲労蓄積を防ぐ管理 定期的なフォローアップと経過観察 医師による診察と画像検査で骨癒合や再発の有無を確認。理学療法士による姿勢・筋力の再評価。症状経過に応じたリハビリ内容の見直し 慢性化を防ぐには、治療後も継続的なケアが欠かせません。筋力を強化し、柔軟性を維持することで再発を防ぎやすくなります。 また、姿勢やフォームを見直し、腰に負担の少ない動作を身につけることも大切です。さらに、医師の定期的なフォローアップで骨や筋肉の状態を確認し、早期に異変を察知することが慢性化の予防につながります。 慢性化や重症化を防ぐためには、自己流や自己判断ではなく、医師の指導のもとで実施することが重要です。 以下の記事では、腰椎分離症でやってはいけないことを詳しく解説しています。 体幹トレーニングと柔軟性の維持 腰椎分離症の再発や慢性化を防止するには、体幹の強化と腰まわりの柔軟性維持が必要です。 体幹トレーニングは、腹筋や背筋などの深層筋を鍛えて腰椎を安定させ、負担を軽減します。プランクやブリッジ、バードドッグなどが効果的です。 また、柔軟性を保つことで筋肉の緊張を防ぎ、腰への負担を抑えます。股関節や殿部、ハムストリングスを中心としたストレッチが有効です。 これらを定期的に行うことで再発リスクを減らし、日常生活やスポーツ活動を継続できます。痛みがある場合は、無理をせず専門家の指導を受けながら取り組むことが重要です。 姿勢・フォームの改善と練習量の管理 改善策 詳細 正しい姿勢とフォームの重要性 不良姿勢や誤った動作による腰部負担の増加。正しい姿勢と丁寧な動作による腰椎ストレスの軽減。座位姿勢や荷物の持ち方の工夫による再発予防 練習量と休養のバランス管理 オーバートレーニングによる過負荷の防止。十分な休養と回復期間の確保による症状悪化の抑制。医師やトレーナーとの相談による計画的トレーニング (文献6) 腰椎分離症では、姿勢や動作の乱れが腰への負担を増やし、回復を遅らせる要因になります。正しい姿勢を意識し、丁寧な動作を心がけることで腰椎へのストレスを減らせます。 また、練習量を適切に管理し、十分な休養を取ることも重要です。無理を続けると再発や慢性化につながるため、医師やトレーナーと相談しながら計画的に取り組むことが回復に欠かせません。 定期的なフォローアップと経過観察 腰椎分離症は、治療後に痛みがなくなっても過信は禁物です。骨がしっかり癒合しているか、身体機能が十分に回復しているかは、定期的な検査と評価でしか確認できません。 保存療法のガイドラインでも、「症状が残る場合は12週間後に再撮影を検討する」とされています。(文献7) MRI・X線による骨癒合の確認に加え、筋力や柔軟性、動作の回復度を継続的に評価することが大切です。これらの情報を医療チームで共有することで「まだ復帰を控える」「段階的に再開する」といった判断ができるようになります。 長期研究では、骨癒合率の低さが報告されており、経過観察の重要性が改めて指摘されています。(文献8) 治らないと言われた腰椎分離症に再生医療という新たな選択肢 骨癒合が進みにくい慢性型の腰椎分離症には、再生医療が新たな選択肢として注目されています。 自己の血液や細胞を用いて損傷部位の修復を促す方法で、手術を避けたい方や保存療法で改善が得られなかった方にも適応が検討されます。 腰椎分離症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、腰椎分離症に対して再生医療を用いた治療を行っています。 腰椎分離症に対する再生医療は、患者自身の幹細胞を用いて損傷部位の修復を促し、痛みや機能障害の改善を目指す治療法です。幹細胞が損傷部位の組織再生を促し、痛みや機能障害の改善が期待されます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 治らない腰椎分離症に悩む方からよくある質問 腰椎分離症が治る目安を教えてください 保存療法(安静・装具・リハビリなど)を適切に行った場合、競技者の多くは3〜6カ月程度でスポーツ復帰が可能です。(文献5) しかし、以下の条件が揃っていることが前提です。 改善が見込まれる条件 詳細 発症時期が早く亀裂が進行していないこと 椎弓部の分離が軽度で、骨癒合が可能な初期段階での発見 適切な休止期間が確保されていること 腰を反らす・ひねるなどの動作を避け、過度な負荷をかけない安静の維持 体幹・股関節・下肢の機能が改善していること 体幹筋の強化と股関節・下肢の柔軟性向上による腰部負担の軽減 姿勢やフォームが整っていること 正しい姿勢と動作習得による再発防止と安定した回復の促進 一方、発見が遅れた場合や分離が両側に及ぶ場合、また骨癒合率が低い「進行期」や「終末期」では、治癒に6カ月以上を要することがあります。(文献6) 以下の記事では、腰椎分離症はどれくらいで治るのかを詳しく解説しています。 腰椎分離症の治療に手術は必須ですか? 腰椎分離症の治療は、安静やコルセット固定、理学療法などの保存療法が基本です。 多くは手術を行わずに改善しますが、長期間の保存療法で改善が得られない場合や、骨の動揺・神経症状を伴う場合には手術が検討されます。 手術は神経圧迫の除去と骨の安定化を目的とし、進行度に応じて選択されます。 以下の記事では、慢性腰痛への手術について詳しく解説しています。 子どもの腰椎分離症に親はどう向き合えば良いですか? 子どもが腰椎分離症と診断された場合、親の適切なサポートが欠かせません。 成長期の骨は未熟なため、無理な運動は避け、医師や理学療法士の指導のもとで安静やリハビリを続けましょう。日常生活では姿勢の改善やストレッチにより柔軟性を保つことが再発予防につながります。 子どもの痛みや変化を見逃さず、医療機関と連携しながら治療を進めることが大切です。 腰椎分離症は何人に1人くらいですか? 腰椎分離症は、日本の一般成人の約6%(男性8%、女性4%)に認められ、とくにスポーツに励む中高生に多い疾患です。 成長期の骨は未熟で、ジャンプや反り返りなどの繰り返し動作により腰椎に負担がかかりやすくなります。 発症予防と早期発見が必要であり、腰に違和感や痛みを感じた場合は早期に医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 成長期腰椎分離症患者におけるバランス機能特性について|J-STAGE (文献2) 発育期腰椎分離症患者のリハビリテーション・競技復帰プロトコールの検討|CiNii Research (文献3) Japanese Journal of ORTHOPAEDIC SPORTS MEDICINE|一般社団法人日本整形外科スポーツ医学会 (文献4) 腰椎分離症の競技復帰までの道のり ⾻癒合を⽬指すプラン (文献5) SANFORD ORTHOPEDICS SPORTS MEDICINE (文献6) Lumbar Spondylolysis in Extension Related Sport|Physiopedia (文献7) Lumbar Spondylolysis/ Listhesis Rehabilitation Guideline|SANFORD ORTHOPEDICS SPORTS MEDICINE (文献8) Long-term CT follow-up of patients with lumbar spondylolysis reveals low rate of spontaneous bone fusion|Springer Nature Link
2026.02.02 -
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「肩に不快感や痛みを感じる」 「もしかしたら、肩関節唇損傷かもしれない」 野球やバレーボールなどの肩を酷使するスポーツでは、肩関節唇損傷が多く発生します。肩関節唇は関節を安定させる軟骨組織であり、これが損傷すると肩の不安定感や引っかかり感が生じます。放置すれば競技復帰が遅れるため、医療機関での早期診断が重要です。 本記事では、現役医師が肩関節唇損傷テストの種類と診断の方法について詳しく解説します。記事の最後には、肩関節唇損傷テストに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肩関節唇損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷テストとは 目的 内容 損傷部位の推定 特定の動作で症状や反応を確認、前方・後方・上方など、どの部位の関節唇に異常があるか予測 画像検査の必要性の判断 徒手検査の反応をもとにMRIなどの精密画像検査が必要かどうかを判断し、不要な検査を回避 症状の再現・確認 患者が普段感じる引っかかり感や不安定感を診察室で再現、医師が症状を客観的に評価 肩関節唇損傷テストは、肩関節内の軟骨組織「関節唇」の損傷を確認するために行う徒手検査です。医師が肩をさまざまな角度に動かし、痛みや違和感の出方から損傷の部位や程度を推定します。 検査時は患者の反応を見ながら慎重に行い、強い不快感があればすぐに中止します。注射や器具を使用しないため身体的負担は少なく、検査時間も数分程度です。一時的に違和感が強まる場合はありますが、損傷の悪化はほとんどありません。 診断は問診・徒手検査・画像検査などを組み合わせて行い、必要に応じて関節鏡検査で最終確認します。検査前は、症状の経過、痛みが出る動作、過去の外傷歴、現在のスポーツ活動レベルを医師に伝えることが大切です。 肩関節唇損傷テストの種類 テストの種類 詳細 O'Brien(オブライエン)テスト 肩を前方90°挙上、内旋させて抵抗を加えた際の反応評価、上方関節唇損傷推定 Crank(クランク)テスト 肩を90°外転・肘90°屈曲し、肩関節に軸圧をかけて内外旋時のクリック音や違和感を確認、上方関節唇損傷推定 Speed(スピード)テスト 肩を90°前方挙上・肘伸展・前腕回外で抵抗を加え、肩前方の違和感有無を確認、上方関節唇損傷推定 Apprehension(不安定性)テスト 肩を90°外転し外旋運動で不安感や抜けそうな感じの有無を判断、前方不安定性や関節唇損傷推定 その他の補助的なテスト リフトオフテストやベリープレステストなど、腱板・他軟部組織の状態確認、複合的判断材料として活用 肩関節唇損傷には複数の徒手検査が用いられます。代表的なものがO'Brien(オブライエン)テスト、Crank test(クランク)テスト、Speed(スピード)テスト、Apprehension(不安定性)テストです。 これらは肩を特定の角度に動かし、関節内で音や不快感が生じるかを確認する検査です。テストによって関節唇の損傷部位(上方・前方・後方)や関節の安定性を評価できます。複数のテストを組み合わせることで診断精度が高まり、より的確な治療計画の立案が可能になります。 O'Brien(オブライエン)テスト 手順 内容 1.姿勢の確認 座位または立位で実施。腕を前方へ90度挙げ、やや内側(水平内転10〜15度)に誘導。肘は伸ばしたままの状態 2.肩の内旋 手のひらを下向きに回し、腕を内側へ寄せた姿勢を保持。拳を下向きにした状態で準備 3.抵抗動作(内旋位) 医師が腕を下方向に押し、患者がそれに抵抗して押し返す動作。痛みや違和感の有無を確認 4.抵抗動作(外旋位) 同じ姿勢で手のひらを上向き(親指を上に)にし、再度下方向への抵抗動作を実施。痛みの変化や症状の差を評価 (文献1) O'Brien(オブライエン)テストは、肩関節唇(SLAP損傷)を確認するための代表的な徒手検査です。腕を前方へ90度挙げ、内旋位(手のひら下向き)と外旋位(手のひら上向き)で抵抗動作を行います。 内旋位で痛みが出て、外旋位で軽減する場合は陽性と判断され、肩の奥の痛みは関節唇損傷、肩上部の痛みはAC関節障害が疑われます。O'Brienテストは有用ですが単独では確定診断にならず、他の徒手検査やMRI、問診と併せた総合的な評価が必要です。 Crank test(クランクテスト) 手順 内容 1.姿勢の確認 仰向けまたは座位で実施。リラックスした姿勢で肩を安定させる準備 2.肩の位置調整 医師が肩を肩甲骨面方向に約160度持ち上げ、肘を90度に曲げた状態で保持 3.軸方向への圧迫 上腕(肩から肘の部分)に軸方向の力を加え、関節を軽く押しつけるように圧をかける動作 4.回旋動作による確認 肩を内旋(手を体側へ)・外旋(外側へ)と回し、関節唇のひっかかり感や痛みの有無を確認 Crank(クランク)テストは、肩関節唇損傷の有無を確認するために行う代表的な徒手検査です。患者が仰向けまたは座位で検査を行い、腕を回旋した際にクリック音や痛みが生じた場合、関節唇の損傷や断裂が疑われます。 Crankテストは、感度91%・特異度93%と高い精度が報告されています。(文献2) ただし、すべての症例に当てはまるわけではなく、O'BrienテストやMRIなど他の検査を併用し、総合的に評価することが重要です。検査は痛みを無理に誘発しないよう、十分な問診と状態把握のもと慎重に実施します。 Speed(スピード)テスト 手順 内容 1.姿勢の確認 立位または座位で実施。肘を伸ばし、前腕を回外(手のひらを上向き)にした状態を保持 2.抵抗動作の実施 医師が腕を前方(前方挙上)に挙げさせ、その状態で下方向に抵抗をかけ、患者がそれに抗して腕を支える動作 3.痛みの確認 抵抗動作中に肩の前方や上腕二頭筋付近に痛みや違和感が出るかを確認 (文献3)(文献4) Speed(スピード)テストは、肩関節唇損傷や上腕二頭筋腱の炎症・障害を確認するために行う徒手検査です。患者は肘を伸ばし、手のひらを上に向けて腕を前方に挙げ、医師が下方向に抵抗を加えます。 この際、上腕二頭筋腱部に痛みが生じる場合は陽性とされ、上腕二頭筋腱炎や関節唇損傷の可能性が考えられます。Speedテストは感度が高く、異常の有無を見極める際に有用ですが、特異度は低く単独での診断は困難です。 そのため、O'Brienテスト、Crank test(クランクテスト)、Yergasonテスト、MRIなどと併用して総合的に評価します。検査中に強い痛みが出た場合は無理をせず中止し、症状に応じて慎重に判断します。 Apprehension(不安定性)テスト 手順 内容 1.姿勢の確認 仰向けまたは安定した座位で実施。必要に応じて肩甲骨を支えるように位置を調整 2.検査肢位 検査側の腕を外転90度、肘屈曲90度の位置に保持 3.外旋動作の実施 手のひらが上・外側を向くように外旋を加える動作。医師が上腕を支えながら慎重に実施 4.不安感の確認 肩が抜けそうな感覚、不安感、違和感の有無を確認。これがアプレヘンション(apprehension=不安感)の指標 5.追加操作の確認 必要に応じて前方への軽い圧迫や、後方への戻し動作(リロケーション操作)を行い、不安感や痛みの変化を確認。肩の安定性を評価 (文献5) (文献6) 肩関節の前方安定性を評価する徒手検査で、肩が抜けそうな不安感を確認します。肩を90度外転・外旋させた際に脱臼への恐怖感や逃避反応があれば陽性と判断され、前下方関節唇損傷や靭帯・関節包の損傷が疑われます。 特異度が高く前方不安定性の検出に有用ですが、感度は低く他の検査やMRIとの併用が必要です。筋緊張や他の肩疾患の影響で結果が誤ることもあり、総合的な評価が欠かせません。 その他の補助的なテスト テスト名 目的 実施法 Yergason(ヤーガソン)テスト 上腕二頭筋長頭腱の炎症・亜脱臼の有無を確認する検査 肘を90度に曲げ、手のひらを下向きに構えた状態で、検査者が前腕を上向きに回す抵抗を加え、痛みや異常な動きを確認 Anterior Slide(アンテリア・スライド)テスト 肩関節唇上方部の損傷を確認する補助的検査 両手を腰に当てて立位または座位で構え、検査者が肩を固定し、肘を前上方へ押して抵抗を確認 (文献7)(文献8)(文献9)(文献10) Yergason(ヤーガソン)テストとAnterior Slide(アンテリア・スライド)テストはいずれも、肩関節唇損傷や上腕二頭筋長頭腱の異常を確認する補助的検査です。 Yergasonテストでは、肘を90度に曲げた状態で前腕を回外させ、肩前方の溝に痛みやクリックが生じれば陽性とされ、腱炎や腱の不安定性が疑われます。 Anterior Slideテストは、両手を腰に当てた状態で上腕骨を前上方に押し、痛みや引っかかり感が誘発されればSLAP病変の可能性が示唆されます。 これらの検査は特異度が比較的高いものの感度は低く、単独では確定診断に至りません。最終的な診断は、他の徒手検査やMRI、関節鏡による評価を併用して行います。 肩関節唇損傷テスト(徒手検査)で陽性の場合に行う画像検査 画像検査 詳細 MRI・MR関節造影(MRA)検査 軟部組織の詳細描写、関節唇損傷や炎症の有無の確認、造影剤使用による診断精度の向上 X線・CT検査 骨構造の確認、脱臼の有無の評価、骨の変形や骨棘の検出 超音波(エコー)検査 リアルタイムでの腱板や関節周囲軟部組織の状態観察、非侵襲で即時評価可能 肩関節唇損傷の評価は複数の画像検査が欠かせません。MRIやMR関節造影(MRA)で軟部組織を詳細に描出し、関節唇損傷や炎症の有無を高精度に確認します。X線やCT検査では骨構造や脱臼の有無、骨の変形や骨棘を評価します。 さらに、超音波(エコー)検査では、腱板や関節周囲の軟部組織をリアルタイムで観察でき、非侵襲的に即時評価が可能です。これらの検査結果を総合的に判断し、治療方針を決定します。 MRI・MR関節造影(MRA)検査|関節唇の状態を確認 画像検査 詳細 MRI検査(非造影) 軟部組織(関節唇、腱板、靭帯など)の描出。軽度損傷は見落とす可能性あり MR関節造影(MRA) 関節内に造影剤を注入し微細損傷を明瞭化。造影剤使用による診断精度向上。注射に対する抵抗感やリスクの確認が必要 (文献11)(文献12) MRI・MRA検査では、関節唇の損傷や変性、靱帯・腱の炎症などを詳細に評価します。造影を用いることで微細な損傷を明瞭に描出できます。検査中は身体を動かさないことが大切です。 また、造影剤使用時は腎機能やアレルギー歴の申告が必要です。最終的な診断は画像所見に徒手検査や症状を加えて総合的に行います。 X線・CT検査|骨構造や脱臼の有無を確認 画像検査 詳細 X線検査(レントゲン) 骨の形状(骨折・変形・骨棘)や関節のずれ・脱臼を確認。軟部組織は写らないが迅速・低コスト CT検査(断層撮影) 骨の詳細な断層評価。骨変化や骨性損傷を詳細に把握。造影CTで関節唇の間接的評価も可能 (文献13)(文献14) 徒手検査で肩関節唇損傷が疑われた場合、骨の状態や関節の位置関係を詳しく確認するには、X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うことがあります。X線検査は、骨折や脱臼、骨変形、骨棘などを確認する基本的な検査で、短時間で実施できる利点があります。ただし、軟部組織は描出できません。 CT検査は骨の詳細構造を立体的に評価でき、骨性損傷や手術前の形状把握に有用です。さらに、関節内に造影剤を注入して撮影する関節造影CT(アルトログラフィー)では、関節唇や靱帯の損傷を間接的に確認でき、より精密な診断が可能です。 超音波(エコー)検査|腱板や軟部組織の状態を観察 項目 内容 目的・役割 肩の腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋など)、滑液包、周囲軟部組織の断裂・損傷・炎症の観察。動作時の組織変化の確認。注射治療時の針位置確認ガイドとしての利用 特徴・利点 リアルタイム観察による動作中の変化の確認。放射線被曝なしで体への負担が少ない。短時間で実施可能な迅速性・簡便性。診療所レベルでも実施可能な汎用性 限界・注意点 肩関節唇は深部構造のため、損傷の直接的確認が困難。検者の技術に依存し、観察角度や体形で視認性に差が出る。MRIやMRAなど他検査との併用が推奨 (文献15)(文献16) 超音波(エコー)検査は、肩の腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋など)や滑液包、周囲の軟部組織の断裂・損傷・炎症をリアルタイムで観察できる検査です。動作時の組織の変化も確認でき、注射治療時の針位置確認にも用いられます。 放射線被曝がなく体への負担が少ない点が特徴で、短時間で実施できる手軽さも利点です。ただし、関節唇のような深部構造の評価は難しく、体形によって精度に差が出るため、MRIなどの併用が推奨されます。 肩関節唇損傷テストで陽性の場合に行う治療法 治療法 詳細 保存療法 安静・物理療法・リハビリによる筋力回復と関節安定化の促進。投球や腕の酷使動作の制限による自然治癒のサポート 薬物療法 鎮痛薬や抗炎症薬の内服・外用による痛みや炎症の軽減。症状が強い場合はステロイド注射を併用する場合あり 手術療法 関節鏡を用いた関節唇の縫合・修復や、断裂部の再固定による安定性の回復。保存療法で改善しない中等度〜重度損傷が適応 再生医療 自己血液由来のPRP(多血小板血漿)や幹細胞を利用した組織修復の促進。自然治癒力を高め、手術を回避または回復を補助する目的 肩関節唇損傷で陽性と判断された場合、症状の程度や生活背景に応じて治療方針を決定します。軽度の損傷は保存療法で回復を目指し、高度な損傷や不安定性を伴う場合は手術を検討します。 近年は再生医療による組織修復も選択肢のひとつです。しかし、実施できる医療機関は限られており、適応は医師と相談して判断します。 以下の記事では、肩関節唇損傷の治療法を詳しく解説しています。 肩関節唇損傷の治し方|効果的な治療法やリハビリ方法について解説【医師監修】 保存療法 区分 目的 内容 注意点 安静・運動制限 炎症増悪防止 投球・オーバーヘッド動作・重い荷物の持ち上げ制限 長期完全安静による拘縮予防。炎症軽減後は軽度可動域訓練 初期段階(炎症軽減期・可動域回復期) 炎症軽減・関節柔軟維持 ゆるやかな関節可動域訓練・ストレッチ・リラクゼーション 無理のない範囲での動作継続 中間期(筋力再構築期) 筋力増強・肩関節安定 腱板筋群・肩甲帯筋群・体幹筋群の強化。姿勢・連動性改善 急な負荷増加の回避 後期(競技復帰準備期) 実践動作獲得・疲労耐性強化 段階的投球動作練習・技術修正・負荷管理 過負荷・痛み出現時の中止 再発予防・動作修正期 再発防止・肩負荷軽減 投球フォーム・姿勢制御の改善トレーニング 継続的なフォーム確認とセルフケア (文献17) 保存療法は、安静・運動制限・理学療法を組み合わせ、損傷部位の自然治癒を促す治療法です。初期には炎症を抑えつつ可動域を保ち、肩周囲の筋力と安定性を回復させます。 軽症から中等症では、適切なリハビリと段階的な運動調整により症状改善と再発予防が期待でき、競技復帰も可能です。 以下の記事では、肩関節唇損傷のリハビリ方法について詳しく解説しています。 薬物療法 薬剤・方法 目的・効果 特徴・注意点 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 痛み・炎症の軽減。関節可動の確保と拘縮予防 内服による不快感や動かしにくさの緩和。リハビリ実施の補助 ヒアルロン酸ナトリウム注射 関節潤滑性の改善と痛みの軽減、組織修復の促進 潤滑液補充による動きの滑らかさ向上。非手術的治療の一環 ステロイド注射 強力な炎症抑制。症状の短期的改善 NSAIDsで効果不十分な場合に使用。過度使用による筋力低下・軟骨障害に注意 薬物療法全体の目的 痛みや炎症の軽減。リハビリ促進。保存療法の補助的役割 症状改善を図り、手術回避および運動再開を支援 (文献18) 肩関節唇損傷に対する薬物療法は、症状の緩和と炎症の抑制を目的とした保存的治療です。主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用し、痛みや腫れを抑えることで、日常生活の質を保ちつつリハビリを円滑に進めます。 薬物療法は炎症を抑えることで理学療法の効果を高め、運動機能の回復を補助します。ただし、長期服用には副作用のリスクがあるため、医師の指示に従った適切な管理が必要です。 薬物療法は補助的手段であり、運動療法や姿勢改善との併用で効果が高まります。 手術療法 肩関節唇損傷の手術療法は、損傷部を修復し肩の安定性と機能の回復を目的とします。主に関節鏡を用いた低侵襲の関節唇修復術が行われます。 損傷の程度に応じて手術法を選択します。術後は安静とリハビリを経て、日常生活は約1カ月、スポーツは3〜6カ月で復帰を目指すのが治療の流れです。 術後は無理な動作や早期の負荷を避けながら、医師の指導下でリハビリを行うことが大切です。 再生医療 再生医療は、患者自身の細胞を利用して損傷した組織の修復を促す治療法です。関節唇や周囲組織の自然治癒を促進し、炎症を抑えながら回復を促進します。症状の軽減に効果が期待でき、場合によっては手術を回避できる可能性もあります。 ただし、すべての症例で効果が得られるわけではないため、医師による適切な診断と治療計画が不可欠です。 以下では、再生医療について詳しく解説しています。 肩関節唇損傷テストの内容を理解したうえで改善を目指そう 肩関節唇損傷は放置すると慢性化しやすい疾患ですが、適切な診断と治療で改善が期待できます。徒手検査や画像検査で原因を特定し、リハビリや薬物療法を組み合わせることで早期回復が可能です。自己判断で放置せず、医師の指導のもとで計画的に治療を行うことが重要です。 肩関節唇損傷についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、損傷組織の修復を促す再生医療も提案しています。従来の治療では難しかった部位へのアプローチが可能な治療法です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 肩関節唇損傷テストに関するよくある質問 肩関節唇損傷のテストは自分でできますか? 肩関節唇損傷の検査(O'Brienテストなど)は、肩に特定の負荷をかけて評価する徒手検査であり、専門的な知識と技術が必要です。 自己流で行うと症状を悪化させる恐れがあります。違和感や引っかかり感がある場合は、無理に動かさず整形外科を受診してください。 肩関節唇損傷の治療を受けるにはテストを受けなければいけませんか? 肩関節唇損傷の治療には、医療機関での徒手検査やMRIなどの画像検査による正確な診断が必要です。 検査によって損傷の有無や程度を評価し、保存療法や手術療法など治療方針を決定します。自己判断で治療を進めることは避け、医師の診察を受けることが重要です。 肩関節唇損傷テストの結果で復帰時期はわかりますか? 肩関節唇損傷の復帰時期は、損傷の程度や治療法、年齢、体力、リハビリの進行度などにより異なります。 一般的には、保存療法で約3〜6カ月、手術後は日常生活に約1カ月、スポーツ復帰に3〜6カ月が目安です。復帰の判断は医師が総合的に行い、焦らず段階的にリハビリを進めます。 肩関節唇損傷テストで陽性と判断された場合は手術が必要ですか? 肩関節唇損傷テストが陽性でも、まずは安静やリハビリなどの保存療法で改善を図ります。 改善が見られない場合や損傷が重度の場合に手術を検討し、最終的な治療方針は医師が総合的に判断します。 野球やバレーボールの選手に肩関節唇損傷が起こりやすい理由は? 野球やバレーボールなどでは、投球やスパイクなど腕を頭上に大きく動かす動作の反復により、肩関節唇に過度な負荷がかかり、損傷や剥離が生じやすくなります。 さらに、オーバーユースや不適切なフォームも損傷リスクを高めるため、適切な休息とフォーム改善、筋力強化による予防が必要です。 以下の記事では、野球選手の肩関節唇損傷について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) O'Briens Test|Physiopedia (文献2) A prospective evaluation of a new physical examination in predicting glenoid labral tears|PubMed (文献3) Speed's Test | Biceps Pathology Assessment | SLAP Lesion|PHYSIOTUTORS (文献4) How do you do the Shoulder Speed Test? (文献5) Apprehension Test|Physiopedia (文献6) Anterior Shoulder Instability|National Library of Medicine (文献7) Yergason's Test|Cleveland Clinic (文献8) Special Physical Examination Tests for Superior Labrum Anterior-Posterior Shoulder Tears: An Examination of Clinical Usefulness|PMC PubMed Central (文献9) Anterior Slide Test | SLAP Lesions|PHYSIOTUTORS (文献10) Diagnostic Accuracy of History and Physical Examination of Superior Labrum Anterior-Posterior Lesions|PMC PubMed Central (文献11) スポーツ肩における関節唇損傷のMRアルトロ所見|肩関節21巻 第3号409-4 (文献12) 肩関節唇断裂|MSDマニュアル プロフェッショナル版 (文献13) X線CT|関節が痛い (文献14) 関節造影検査(アルトログラフィー)|慶應義塾大学病院 KOMPAS (文献15) 超音波医学|J-STAGE (文献16) 肩徒手検査の客観性 超音波画像観察による整形外科的徒手検査の検討 (文献17) 上方関節唇損傷を合併した非外傷性腱板断裂患者の肩関節機能の特徴|J-STAGE (文献18) National Athletic Trainers’Associationポジションステイトメント:オーバーヘッドアスリートにおける上方肩関節唇損傷の評価、治療、予後、および復帰基準|NATA
2026.02.02 -
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「投球時に肩に違和感がある」 「スイング動作で痛みを感じる」 野球選手に多く見られる肩関節唇損傷は、放置するとプレーに支障をきたすおそれがあります。痛みがなくても不安定感が続く場合、復帰時期の判断は難しくなります。多くの選手が「手術を受けるべきか」「リハビリで復帰できるか」で悩みますが、治療法は損傷の程度や競技レベルによって異なります。 本記事では、現役医師が肩関節唇損傷を発症しやすい理由と手術や復帰目安について詳しく解説します。 記事の最後には、肩関節唇損傷で悩む野球選手からよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肩関節唇損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください 野球選手が肩関節唇損傷を発症しやすい理由 理由 詳細 投球動作・フォームの乱れ 運動連鎖の崩れによる肩関節への過剰負荷 外傷・脱臼の既往 関節の不安定化による再損傷リスクの増大 上腕二頭筋腱への牽引ストレス 投球時の牽引力集中による関節唇への慢性刺激 肩関節唇損傷は、投球やスイングなどで肩を酷使する野球選手に多くみられる障害です。肩関節は可動域が広い一方で構造的に不安定なため、繰り返しの投球動作によって関節内に摩耗や牽引ストレスが蓄積しやすい特徴があります。 とくに投手では、フォームの乱れや筋力バランスの崩れが関節唇への負担をさらに増大させます。加えて、外傷や脱臼の既往がある場合には関節の安定性が低下し、損傷リスクが一層高まります。これらの要因が重なることで、プレー中に肩の違和感や引っかかり感を訴える選手が少なくありません。 投球動作・フォームの乱れ 理由 状況・特徴 影響 運動連鎖の破綻 下半身や体幹の動きが使えず、肩だけで投げる状態 肩関節への負担集中、関節唇への過度なストレス 肘下がりの投球フォーム 肘が極端に下がった投球姿勢 上方関節唇へのせん断力増大、損傷リスク上昇 身体の開きの早さ 上半身が早く打者側に向く動作 肩関節唇損傷リスクの増加、制球の不安定 リリースポイントのばらつき ボールを離す位置の不安定さ 肩関節への負荷不均一、特定部位へのストレス集中 疲労時のフォーム崩れ 連投や試合後半での下半身・体幹機能低下 下肢・体幹が使えず肩主導となる代償動作 柔軟性不足 肩・肩甲骨・胸椎・股関節などの可動域制限 無理な代償動作、関節唇への負担増大 成長期の身体変化 身長や重心の変化によるフォーム不適合 成長に伴う体格変化にフォームが追随できず負担が増加 投球フォームの乱れは、肩関節へ過剰な回旋力や牽引力を生じさせ、関節唇に微細な損傷を蓄積させる原因となります。リリース時の肘下がりや体幹の回転不足は、上腕骨頭が前方へずれやすくなり、関節唇への圧迫ストレスを増大させます。 また、肩甲骨周囲筋の筋力低下や柔軟性の不足も肩の安定性を損なう要因です。これらのフォームの乱れは一過性ではなく、疲労や過度なトレーニングによって慢性化しやすいため、投球動作の分析とリハビリによるフォーム修正が欠かせません。 外傷・脱臼の既往 内容 詳細 再発リスクの上昇 損傷部位の完全回復が難しく、再負荷による再損傷や症状悪化の可能性 二次的な変化や二次損傷の恐れ 関節の不安定性や機能低下による腱板・靱帯への過剰負担、他組織損傷の誘発 外傷や脱臼の既往によるリスク増大 外傷や脱臼による構造的ダメージによる安定性低下、再発のリスク上昇 慢性的な肩痛や可動域制限の継続 関節機能の低下や可動域制限による日常生活・競技動作への支障 (文献1) 肩の脱臼や亜脱臼を経験した野球選手では、関節唇や関節包などの支持組織が損傷し、肩の安定性が低下していることがあります。 そのままプレーを続けると、再脱臼や関節唇の更なる損傷を招くため、外傷歴のある選手は痛みがなくても医療機関で画像検査を受け、関節の状態を確認することが大切です。 肩関節唇損傷の既往は再発や二次損傷のリスクを高めるため、適切な治療と定期的なフォローアップが必要です。予防には肩の柔軟性維持と筋力強化を心がけ、異変を感じた場合は早めに医師へ相談しましょう。 上腕二頭筋腱への牽引ストレス 肩関節唇の上方(SLAP領域)には上腕二頭筋腱が付着しており、この腱に加わる繰り返しの牽引ストレスが関節唇損傷の主な原因とされています。 投球動作では、コッキング期やフォロースルー期に上腕二頭筋腱と関節唇に強い張力が生じ、関節唇の剥離や裂傷を引き起こすことがあります。 とくに肩関節唇損傷は、この付着部への過度な牽引力が関与する代表的な損傷です。上腕二頭筋腱と関節唇は肩関節の安定を支える一体の構造として機能しているため、腱への負荷は関節唇損傷の進行や再発にも影響します。そのため、適切なフォーム指導と肩周囲筋のバランス強化が欠かせません。 肩関節唇損傷を発症した野球選手の復帰率・時期の目安 研究(発表年) 対象・治療法 復帰率(RTS) 成績レベル・復帰レベル(RPP) 復帰までの期間 主な特徴・補足 Paul et al.(2025) プロ野球選手(SLAP修復) 投手82.4%、野手80.6% 投打ともに成績低下なし 約9〜11カ月(投手280日、野手327日) 手術後も高い復帰率。パフォーマンスの維持も確認 Lack et al.(総説) SLAP修復・上腕二頭筋手術 投手40〜80%、野手76.3〜91.3% - - 投手よりも野手の復帰率が高い傾向。治療法により差あり Fedoriw et al.(2014) プロ野球選手(手術/非手術比較) 手術:投手48%、野手85% 非手術:投手40% 手術:投手7%、野手54% 非手術:投手22% - 投手は復帰しても元のレベルに戻る割合が低い傾向 Castle et al.(2023) MLB選手(肩関節唇修復) 投手48%、野手85% 投手7%前後 - 投手は成績復帰が難しい傾向。手術後も再発・成績低下例あり 非手術リハビリ(総説) 保存的リハビリ治療 全体53.7%、完遂者78% 全体42.6%、完遂者72% 約6カ月以内 手術なしでも一定の回復が可能。軽症例では有効 他レビュー(複数報告) オーバーヘッド動作選手全般 約50〜60%(とくに投手で低下) - - 投手では成功率がやや低く、復帰まで時間を要する傾向 (文献2)(文献3)(文献4)(文献5)(文献6)(文献7)(文献8) 肩関節唇損傷を発症した野球選手の競技復帰率(RTS)は、全体でおよそ70〜85%と報告されています。なかでも投手は40〜80%と幅があるのが特徴です。これらは、投球動作に特有の肩への負担が影響していると考えられます。 一方、野手では75〜90%と比較的高い復帰率が示されています。復帰までの期間は平均9〜11カ月(約280〜330日)とされ、リハビリを含めた長期的な治療計画が必要です。 保存療法を選択した場合、約6カ月以内に復帰できる例もありますが、再発や再手術のリスクも残るため、段階的な復帰と医師の指導のもとでのリハビリが必要です。 以下の記事では肩関節唇損傷のテストについて詳しく解説しています。 野球選手の肩関節唇損傷における手術が必要なケース 手術が必要なケース 詳細 保存療法で効果が乏しい場合 リハビリや薬物治療を続けても痛みや可動域制限が改善しない状態 損傷範囲が広く不安定な場合 肩関節唇が大きく裂け、関節の安定性が失われている状態 高い競技レベルと早期復帰を目指す場合 プロ・競技選手として高負荷の投球動作を必要とするケース 合併損傷を伴う場合 腱板損傷や上腕二頭筋腱の損傷を同時に認める状態 肩関節唇損傷では、保存療法を行っても痛みや可動域制限が改善しない場合や、損傷範囲が広く関節の安定性が失われている場合に手術が検討されます。 とくにプロ選手など高い競技レベルでの早期復帰を目指すケースでは、機能回復を優先して手術が選択されることがあります。また、腱板損傷や上腕二頭筋腱損傷などを合併している場合は、関節機能の維持や再発防止のために外科的治療が有効です。 保存療法で効果が乏しい場合 保存療法で効果が乏しい理由 詳細 損傷度が大きすぎる・進行しているため 関節唇が大きく断裂・剥離し、周囲組織も損傷している状態 負荷が肩にかかるため 投球動作によるねじれ・牽引・摩擦などの過大ストレス 肩に他の異常が一緒にあることが多いため 回旋筋腱板損傷や関節包のゆるみ(弛緩)、インピンジメントの併発 診断や治療方針が不確か・リハビリが十分でなかった可能性 原因特定の誤りやリハビリ不足による改善不良 予後を悪くする因子がもともとあるため 過去の損傷歴、可動域制限、筋力低下、年齢・競技レベルの影響 痛みや制限が長く続くと身体が変わるため 筋萎縮や拘縮による可動性低下・機能不全 野球選手には特別なレベルが求められる 全力投球・実戦復帰レベルまでの回復困難 (文献9)(文献10)(文献11) 保存療法では関節唇自体を修復することは難しく、周囲の筋力を強化して肩を支える治療となります。そのため、リハビリを続けても肩の不安定感や投球時の違和感が改善しない場合は、手術を検討します。 投球時の違和感が続き、MRIで関節唇の剥離が確認された場合、手術による修復が有効です。 損傷範囲が広く不安定な場合 手術が必要な理由 詳細 関節唇が大きく剥がれていると肩関節の安定性が著しく低下する 関節唇の断裂・剥離による関節不安定性と脱臼リスクの増大 繰り返す脱臼や亜脱臼を防止するため 関節包や靱帯への再損傷防止のための解剖学的修復 重度の損傷では自然治癒が望めず症状の慢性化を防げない 広範な断裂による慢性疼痛・機能障害の持続 スポーツ特性と年齢を考慮した早期の手術適応 若年投手における肩の安定性維持と競技力確保 関節唇の損傷範囲が広く、肩関節の安定性が低下している場合は、手術による修復が推奨されます。 損傷が大きいと関節唇が本来の役割を果たせず、不安定感や脱臼を繰り返す原因となります。保存療法では改善が難しく、自然治癒も期待できません。そのため、関節鏡視下で関節唇を縫合し、安定化を図ることが重要です。 とくに投手など肩への負荷が大きい選手では、早期の手術により関節の安定性を回復し、再発防止と競技復帰を目指します。手術による修復は、肩の正常な機能を取り戻し、長期的なパフォーマンス維持にもつながります。 高い競技レベルと早期復帰を目指す場合 手術が必要になる理由(求められるレベルが非常に厳しいため) 詳細 競技レベルで求められる肩機能の高さ 投球速度・回転数・マウンドでの安定性を維持する肩機能の確保 日常生活レベルでは不十分な回復目標 全力投球レベルへの回復に必要な構造補強・修復 耐久性・反復ストレスへの対応 シーズン中の反復投球による過大負荷への抵抗性維持 回復許容度・リスク許容度の低さ 微細な不安定性や違和感が成績低下につながる競技特性 構造的限界・不可逆的変化の進行 軟部組織の変性・線維化による柔軟性・安定性の低下 診断・治療の精度の重要性 わずかなずれやアンバランスがパフォーマンスに影響する特性 合併障害・複雑病変の併発 回旋筋損傷やインピンジメントなどの多部位損傷 手術後の復帰率・成功率の限界 SLAP修復後の復帰率50〜70%、エリート復帰率7%前後の報告 (文献12)(文献13) プロや大学レベルなど高負荷な投球を求められる選手では、機能回復を優先して手術を選択する場合があります。 ただし、SLAP修復後の投球動作を伴う選手の復帰率はおおむね50〜70%と報告されており、全員が元のレベルまで戻れるわけではありません。(文献12) とくにエリートやプロレベルでの復帰・成績維持は難しく、エリート水準まで回復できた選手は約7%にとどまるとの報告もあります。(文献13) そのため、術後は安定した可動域の獲得と競技特性に応じた段階的リハビリが重要です。 合併損傷を伴う場合 手術が必要な理由(合併損傷を伴う場合) 詳細 損傷が関節唇単独でなく複合的であるため症状が重い 腱板断裂・靱帯損傷・関節内遊離体などを伴う複合損傷 肩の安定性や可動性に対する影響が大きいため 不安定性や可動域制限の進行による関節変形リスク スポーツ復帰のためには包括的な修復が必要 合併損傷も含めた機能回復による競技パフォーマンス維持 保存療法では症状の改善や再発予防が不十分 痛みや不安定感の残存による再発・機能低下のリスク (文献14) 腱板損傷や上腕二頭筋腱損傷などの合併損傷を伴う肩関節唇損傷では、関節の安定性が大きく低下し、保存療法での改善は困難です。そのため、関節唇の修復と同時に腱板や靱帯の損傷を関節鏡下で包括的に修復し、機能回復と再発予防を図ります。とくに損傷範囲が広い場合や脱臼を繰り返す場合は、手術による安定化が不可欠です。 また、高い競技レベルでの早期復帰を目指す選手では、肩にかかる負荷が大きく、不安定感や疼痛が残るとパフォーマンスに直結して影響するため、より積極的な外科的介入が求められます。適切な手術と段階的なリハビリにより、安定性と可動域が確保された肩を再構築し、早期の競技復帰を支援します。 肩関節唇損傷に合併しやすい腱板断裂に対しては、再生医療が治療法の選択肢となるケースがあります。肩の腱板断裂に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 【野球選手向け】肩関節唇損傷のリハビリ方法 リハビリ方法 詳細 保護期|術後0週目〜6週目 肩関節の安静保持と痛み・炎症のコントロール、装具による可動域制限 中等度保護期|術後7週目〜12週目 他動運動から自動運動への移行と軽度の可動域拡大、肩周囲筋の再教育 機能回復期|術後13週目〜20週目 筋力強化と肩甲骨・体幹連動性の改善、日常動作での安定性向上 高度強化期|術後21〜26週 投球動作に近い負荷トレーニングと肩周囲筋群の持久力強化 競技復帰期|術後6カ月〜9カ月 段階的な投球プログラム再開とフォーム修正、実戦復帰に向けた最終調整 (文献14) 肩関節唇損傷の術後リハビリは、肩の安定性と機能を段階的に回復させることが目的です。術後0〜6週は安静と炎症の抑制、7〜12週で可動域の拡大、13〜20週で筋力と体幹の連動性向上を図ります。 21〜26週には投球動作に近い負荷を加え、6〜9カ月を目安に投球を再開し、フォーム修正と再発予防を行いながら実戦復帰を目指します。 以下の記事では、肩関節唇損傷のリハビリ方法について詳しく解説しています。 保護期|術後0週目〜6週目 フェーズ I(保護期) 詳細 この時期の目的 関節唇や縫合部の保護、炎症・腫れ・痛みの抑制、可動域の維持 行う運動・ケア スリング着用による肩の保護、手首・肘・手の軽運動、肩の受動運動(前方挙上90°・外旋30〜40°)、肩甲骨の可動運動、冷却と軽圧迫による炎症管理 避けること 肩の自力運動や抵抗運動、物を持ち上げる・押す・引く動作、上腕二頭筋に負担をかける動作、無理な外旋・後方引き・外転動作 次のステップに進む目安 肩の前方挙上90°・外旋30〜40°の可動確保、痛みや腫れの軽減 (文献14) 術後0〜6週の保護期は、修復した関節唇や縫合部を守りながら炎症や痛みを抑えることが目的です。この時期はスリングを着用し、肩を安静に保ちます。手首や肘の軽い運動、セラピストによる他動運動で可動域を維持し、肩甲骨の動きを保つことが重要です。 一方で、肩を自力で動かす動作、物を持ち上げる動作、上腕二頭筋に負担をかける動作は避ける必要があります。痛みや腫れが落ち着き、肩を前方に90°、外旋30〜40°まで動かせるようになれば、次の段階へ進みます。 中等度保護期|術後7週目〜12週目 フェーズ II(中等度保護期) 詳細 この時期の目的 肩関節可動域の拡大、筋力回復への準備、肩甲骨と体幹の安定性強化 行う運動・ケア 受動運動から補助運動・自動運動への移行、ゴムバンドを用いた軽い抵抗トレーニング、肩甲骨・体幹安定化トレーニング、リズミック安定化による感覚向上 避けること 外旋・外転方向への強い負荷、外転+外旋動作、全力投球やスピードをつけた動作 次のステップに進む目安 正常範囲に近い可動域の回復、痛みのない軽負荷運動の実施、肩甲骨・ローテーターカフの安定性改善 (文献14) 術後7〜12週の中等度保護期は、肩の可動域を広げながら筋力回復の準備を進める時期です。受動運動から補助付き運動、自力での運動へと段階的に移行し、ゴムバンドを用いた軽い抵抗トレーニングで肩周囲の筋肉を鍛えます。さらに、肩甲骨や体幹の安定性を高めるトレーニングを行い、投球動作に必要なバランス感覚を養います。 一方で、外旋や外転など強い負荷をかける動作や全力投球は避け、痛みのない範囲で可動域を回復させることが重要です。 機能回復期|術後13週目〜20週目 フェーズ III(機能回復期) 詳細 この時期の目的 軽い投球動作の導入、全方向への肩の安定化、スポーツ動作への移行準備 行う運動・ケア 全方向への自動運動(AROM)の拡大、ゴムバンドやウエイトによる段階的抵抗トレーニング、肩甲骨・体幹の持続トレーニング、プライオメトリック運動の導入、投球フォームの模倣と軽いキャッチボール準備 避けること 全力投球や強負荷のオーバーヘッド動作、痛みや違和感のある無理な運動 次のステップに進む目安 ほぼ正常な可動域の回復、抵抗負荷での無痛運動、十分な筋力・安定性の獲得による投球動作再開 (文献14) 術後13〜20週の機能回復期は、スポーツ動作への移行を目的とした重要な段階です。肩の可動域を広げながら、抵抗トレーニングで筋力を強化し、肩甲骨や体幹の安定性を高めつつ軽い投球やフォーム練習で実戦復帰に備えます。 この時期は全力投球を避け、痛みや違和感があれば運動を中止し、次の強化期への準備とします。 高度強化期|術後21〜26週 フェーズ IV(高度強化期) 詳細 この時期の目的 肩の筋力・瞬発力の強化、動作スピードへの適応、競技動作への移行 行う運動・ケア 片腕でのプライオメトリック運動、肩回旋筋のスピードトレーニング、投球フォームの確認と補正、段階的なインターバル投球プログラムの実施 避けること 全力投球への急な移行、痛みや違和感を無視した無理な投球 次のステップに進む目安 筋力と安定性の左右差の改善、内旋・外旋筋力バランスの回復、無痛での投球動作の実施、インターバル投球プログラムの完遂 (文献14) 術後21〜26週の高度強化期は、肩の筋力と瞬発力を高め、実戦に近い動作を取り戻す重要な段階です。メディシンボールやゴムバンドを使った片腕のプライオメトリック運動や、肩の回旋筋を素早く動かすトレーニングで動作スピードを高めます。 投球フォームを修正しながら段階的にインターバル投球を進め、スピードと強度を回復させます。全力投球を控えて筋力バランスと安定性を整えることが競技復帰の鍵です。 競技復帰期|術後6カ月〜9カ月 フェーズ V(競技復帰期) 詳細 この時期の目的 全力投球の再開、実戦復帰、肩の筋力・可動域・安定性の維持、再発予防の習慣化 行う運動・ケア マウンドでの全力投球、野手の実戦動作練習、打者を想定した投球や守備・送球練習、筋力と安定性を保つ維持トレーニング(ウエイト・バンド運動) 避けること 痛みや不安定感のある状態での全力投球、急激な練習量・強度の増加、登板間隔を詰めすぎる過負荷 復帰の判断基準 健側と同等の可動域・筋力、段階的投球での無痛、医師・理学療法士・コーチの総合判断による競技参加許可 (文献14) 術後6〜9カ月以降の競技復帰期は、全力投球を再開し実戦に戻る最終段階です。投手はマウンドでの投球、野手は守備や送球を含む実戦動作を取り入れ、実戦感覚を取り戻します。同時に、筋力・可動域・安定性を維持するためのトレーニングを継続し、再発を防ぐことが重要です。 ただし、痛みや不安定感がある場合は無理をせず、練習量や強度を段階的に調整します。肩の状態が健側と同等に回復し、医療チームとコーチが復帰を認めた段階で、競技復帰となります。 【野球選手向け】肩関節唇損傷の再発予防方法 再発予防方法 詳細 筋力・柔軟性の維持と身体機能の向上 肩関節周囲筋・体幹・下半身の強化による動的安定化と柔軟性保持、神経筋協調性・固有受容感覚の向上による再損傷防止 投球量の管理とフォームの改善 投球回数・登板間隔の適正化と、肩への負担を抑える正しいフォーム習得による関節唇へのストレス軽減 段階的復帰と身体の変化への早期対応 リハビリ進行に応じた段階的復帰計画の実施と、痛み・違和感・疲労など身体サインへの早期対応による再発防止 一度損傷した肩関節唇は再発のリスクが高く、復帰後も継続的なケアが重要です。肩や体幹、下半身の筋力と柔軟性を維持し、全身の連動性を高めることで再発を防ぎます。 また、投球量の管理やフォームの改善により、肩への負担を最小限に抑えることが大切です。リハビリ後も段階的な負荷調整と身体の変化への早期対応を心がけ、日常的なメンテナンスで長く競技を続けられる身体を保ちましょう。 筋力・柔軟性の維持と身体機能の向上 再発予防のポイント 詳細 肩関節周囲筋による動的安定化 回旋筋腱板の強化による上腕骨頭の安定保持と関節唇への負担軽減 肩甲骨周囲筋による土台の安定化 前鋸筋・僧帽筋などの機能向上による肩甲骨の安定化と力の伝達効率化 体幹・下半身筋力による全身連動 投球動作におけるエネルギー伝達と肩への負担分散 筋力バランスの維持 外旋・内旋筋のバランス(理想比3:4)による肩前方不安定性の防止 柔軟性による負荷分散 適切な可動域確保による肩関節唇へのストレス軽減 肩甲胸郭関節と胸椎の可動性 肩甲骨と胸郭の滑らかな連動による肩の可動効率向上 下半身・体幹の柔軟性維持 投球時の運動連鎖の改善と上半身への負担軽減 左右差の調整 利き腕・非利き腕の柔軟性バランス維持による再損傷リスクの軽減 固有受容感覚の改善 不安定面でのトレーニングによる肩位置感覚の再教育と制御力向上 神経筋協調性の向上 投球連動動作での正確な筋活動タイミングの再構築 疲労耐性の向上 筋持久力向上によるフォーム維持と過負荷防止 継続的トレーニングの実践 年間を通じた筋力・柔軟性・身体機能の維持管理と再発予防 肩関節唇損傷の再発を防ぐには、筋力・柔軟性・身体機能の維持が欠かせません。とくに回旋筋腱板や肩甲骨周囲筋を中心とした肩の安定性の確保、体幹や下半身の筋力による全身の連動性向上が重要です。 また、可動域の維持と左右差の調整で負担を分散し、固有受容感覚や神経筋協調性を高めることで再発リスクを軽減します。疲労耐性の向上と継続的なトレーニングにより、肩の安定性と競技パフォーマンスを長期的に守ることが大切です。 投球量の管理とフォームの改善 投球量の管理とフォームの改善は、肩関節唇損傷の再発予防に極めて重要です。まず、過剰使用(オーバーユース)ストレスの抑制が基本であり、投球回数や強度が増えるほど関節唇への微小損傷リスクが高まります。 過負荷を避けるため、球数・登板間隔の管理は再発予防の基盤です。たとえば、1試合75球超・シーズン600球超で肩肘障害リスクが上昇するとの報告があります。(文献15) また、ASMIの推奨でも日次の球数制限と休息日の設定が示されています。(文献16) 加えて、動作バイオメカニクスの健全性維持も重要です。肩関節の軌道異常や軸偏位は関節唇(ラブラム)損傷と関連しており、正しいフォームを習得することで可動性と安定性のバランスを保ち、肩への過剰なストレスを防止できます。(文献17) 段階的復帰と身体の変化への早期対応 肩関節唇損傷からの復帰では、治癒期間を守りながら段階的に負荷を高めることが、再発防止のために大切です。術後は関節唇・縫合部が脆弱なため、過負荷を避けつつ段階的リハビリで関節包・腱板などを徐々に強化し、身体の適応時間を確保します。 実際、SLAP修復後のリハビリは複数フェーズにわかれ、軽い抵抗運動から反復運動、プライオメトリクス、投球動作へと進行します。(文献18) また、投球導入時期にストレスを軽減するのも重要です。いきなり全力投球を行うと肩や肘に過大な負担がかかります。 ARTHROSCOPIC SLAP REPAIR CLINICAL PRACTICE GUIDELINEの資料では、術後12〜16週で軽い投球を開始し、6〜8か月で競技復帰を目指す段階的プロセスが推奨されています。(文献19) 肩関節唇損傷でお悩みの野球選手は当院へご相談ください 肩関節唇損傷は、早期の診断と段階的なリハビリテーションにより、野球選手でも競技復帰が十分に期待できる疾患です。ただし、復帰までの期間は損傷の程度や選手個々の競技レベルによって異なります。 治療やリハビリには時間を要しますが、焦らず段階的に進めることが重要です。諦めずに継続することで、競技への復帰を目指せます。 改善が難しい肩関節唇損傷についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、肩関節唇損傷に対して再生医療を用いた治療もご提案しています。再生医療は、損傷した組織の修復を促すことで、従来の治療では難しかった箇所へのアプローチが期待できる治療法です。選手の状態に応じて適応を慎重に判断します。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 肩関節唇損傷で悩む野球選手からよくある質問 復帰する際のリスクや再手術率はどのくらいですか? 肩関節唇(SLAP)損傷修復後の競技復帰率(RTS:Return to Sport)は、およそ60〜80%と報告されています。(文献12) たとえば、あるシステマティックレビューでは69.6%の選手が競技に復帰したとされています。(文献12) 別のシステマティックレビューでは、再手術率については、SLAP修復後で3〜15%です。(文献20) また、別の報告ではSLAP修復の再手術率は約12%であり、上腕二頭筋腱固定術(BT)では約6%と、より低い傾向が示されています。(文献21) なお、これらの数値は再発率ではなく、再手術が必要となった症例の割合を示しています。復帰後に以前と同等のパフォーマンスを維持できるかは個人差があり、術後のリハビリや肩への負担管理が不可欠です。 中学生・高校生でも手術が必要になりますか? 中学生や高校生などの思春期年代でも、肩関節唇(SLAP)損傷に対して手術が行われるケースがあります。18歳未満の患者1,349例を調査した研究では、約83.8%がSLAP修復手術を受けていました。(文献22) ただし、若年者ではまずリハビリなどの保存療法を優先し、改善がみられない場合に手術を検討するのが一般的です。手術を行った例では、競技復帰率や症状改善が良好だったとの報告もあります。(文献23) 肩関節唇損傷を経験したプロ野球選手は誰ですか? 肩関節唇損傷は、プロ野球選手の間でも発症が報告されています。発症が報告されているのは以下の選手です。 谷岡竜平(元読売ジャイアンツ投手) 福原忍(元阪神タイガース投手) 由規(元東京ヤクルトスワローズ投手) 小久保裕紀(元福岡ダイエーホークス、元ソフトバンクホークス内野手) 斎藤佑樹(元北海道日本ハムファイターズ投手) 肩関節唇損傷は引退に至る例もあるため、競技レベルを問わず適切な治療が欠かせません。 参考文献 (文献1) 投球障害肩のリハビリテーション治療|Jpn J Rehabil Med 2018 (文献2) Return-to-sport and performance outcomes after isolated superior labrum anterior to posterior (SLAP) repair in professional baseball players|PubMed (文献3) Biceps Tenodesis and SLAP Repair Show Similar Outcomes in Overhead Throwing Athletes With Baseball Pitchers Exhibiting Worse Rates of Return to Sport: A Systematic Review|Arthseopy (文献4) Return to play after treatment of superior labral tears in professional baseball players|PubMed (文献5) High Return to Play Rate and Diminished Career Longevity are Seen Following Arthroscopic Shoulder Labral Repair in Major League Baseball Players|Original Article (文献6) Return to Play Following Non-Surgical Management of Superior Labrum Anterior-Posterior Tears: A Systematic Review|ResearchGate (文献7) SLAP Tears in the Throwing Shoulder: A Review of the Current Concepts in Management and Outcomes|ResearchGate (文献8) Return to Sport After Surgery for Throwing Athletes with SLAP Tears|Justin T. 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2026.02.02 -
- テニス肘
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肘の外側に痛みを感じ、日常のちょっとした動作がつらくなっていませんか? ドアノブを回す、タオルを絞る、パソコン作業や荷物を持つなど、手首を使うたびに肘が痛むなら「テニス肘」かもしれません。 テニス肘は、スポーツをしない人にも発症する一般的な疾患で、初期には軽い違和感から始まります。 しかし、放置して悪化すると慢性的な痛みに悩まされ、手術が必要となるケースもあるため注意しなければなりません。 本記事では、テニス肘を放置するとどうなるのかを解説し、セルフチェック方法や治療法をご紹介します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、テニス肘の治療も行われている再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 肘の痛みで気になることがあれば、ぜひご登録ください。 テニス肘を放置すると症状の悪化リスクあり 肘の外側に痛みが生じる「テニス肘」を放置すると、痛みが長引いて症状が慢性化するリスクがあります。 とくに、「難治性テニス肘」へと進行するケースでは保存療法が効かず、手術が必要になるケースもあるため要注意です。 初期段階では安静や湿布などで改善する場合もありますが、炎症や腱の変性が進行すると、日常生活に支障をきたすほどの痛みになる可能性があります。 悪化を防ぐためには、早期の診断と適切な治療が重要です。 痛みを感じた段階で整形外科などの専門医を受診し、原因や状態を把握することが回復への第一歩となります。 テニス肘の原因や症状、メカニズムについて詳しく知りたい方は、以下の解説記事もご覧ください。 軽度のテニス肘は放置で治るケースもあるが油断は禁物 軽度のテニス肘であれば、安静にしていれば自然に痛みが軽減するケースもあります。 ただし、痛みが和らいだからといって安心するのは危険です。 腱そのものは自然治癒しにくく、もろくなった組織が回復しないまま放置を続けると、再発や悪化を招く恐れがあります。 炎症が慢性化すれば治療期間が長引き、難治性に進行する可能性も否定できません。 軽度だからこそ、早期に治療を始めることで重症化を防げます。 痛みが続く、あるいは繰り返すようであれば、整形外科などの医療機関を早めに受診しましょう。 テニス肘を放置すると起こる合併症 テニス肘を放置すると痛みが慢性化し、日常生活に大きな支障をきたすリスクが高まるため注意しなければなりません。 とくに、手首を動かすたびに肘へ響くような痛みが続くと、仕事や家事はもちろん、趣味やスポーツの継続も難しくなるでしょう。 さらに、無理に動かし続けると肘周辺の腱や筋肉に過度な負担がかかり、関節機能の低下などの合併症を引き起こす場合もあります。 合併症を引き起こすと治療が長期化するだけでなく、完治までに時間を要するケースも少なくありません。 軽症でも決して放置せず、早期の受診と治療が合併症の予防につながります。 テニス肘の症状をチェック!該当したら放置せず受診しよう テニス肘は、肘の外側にある骨の突起(上腕骨外側上顆)周辺に痛みが生じます。 初期段階では軽い違和感や圧痛にとどまることが多いものの、徐々に日常動作で強く痛むようになるのが特徴です。 とくに、以下のような動作で痛みを感じる場合、テニス肘の可能性があります。 ドアノブをひねる タオルを絞る フライパンやヤカンを持つ パソコン操作や筆記作業 上記の動作で痛みが出る場合、腱に負荷がかかって炎症を起こしている可能性が考えられます。 早期に整形外科を受診し、進行を防ぐために対処していくことが大切です。 テニス肘の重症度セルフチェック・テスト方法 テニス肘を疑う気になる症状があれば、セルフチェックしてみましょう。 以下の表では、テニス肘の症状を段階的にまとめたのでチェックしてみてください。 段階 主な特徴 受診のタイミング 軽症 動作の開始時だけ痛むが休めば改善する 早期受診を検討 中等症 日常動作で痛みが出て長く続く 速やかに専門家へ相談 重症 安静時にも痛み、可動域が制限されて力が入らない 早急な受診・専門治療が必要 上記の中等症や重症に当てはまるなら、医療機関の受診を推奨します。 ただし、セルフチェックはあくまで目安である点に留意しておきましょう。 以下では、テニス肘の一般的なテスト方法をご紹介します。 Chair(チェア)テスト Chair(チェア)テストとは、テニス肘の診断に用いられる理学検査のひとつです。 以下のように、椅子を持ち上げる動作で肘の外側に痛みが生じるかを確認します。 1.肘をまっすぐ伸ばした状態で座る 2.椅子(または類似の重さのある物体)を片手で持ち上げる動作を行う 持ち上げるときに肘の外側に痛みを感じたら、テニス肘になっている可能性があります。 Thomsen(トムセン)テスト Thomsen(トムセン)テストとは、肘を伸ばした状態で手首を反らす動作に抵抗を加え、痛みが出るかでテニス肘の可能性を判断するテスト方法です。 1.肘をまっすぐ伸ばした状態で保持する 2.手をグー(握りこぶし)にして、手首を上方向に曲げるよう動かす 3.自分で手首を上に曲げようとする力に対して、もう一方の手で抵抗をかける 肘の外側に痛みが出たり、抵抗に対して背屈運動しにくい感覚があったりするなら、テニス肘の可能性が疑われます。 中指伸展テスト 中指伸展テストとは、肘を伸ばした状態で中指を上に伸ばそうとする力に医師が抵抗を加え、肘の外側に痛みが生じるかをチェックするテスト方法です。 1.肘をまっすぐ伸ばした状態で保持 2.検者が中指を上から押さえつけ、中指を上方向に持ち上げようとする 中指を伸ばそうとした際に肘外側に痛みが出る、もしくは中指に力を入れにくい感じがある場合は、テニス肘の可能性があります。 なお、上記3つのテストすべてが陽性の場合、「中等症〜重症」段階に到達していると判断される可能性があります。 テニス肘の治療法 テニス肘になったら、早めの適切な処置が大切です。 ここでは、テニス肘の主な治療法を解説します。 保存療法 テニス肘の多くは、手術を伴わない「保存療法」で改善を目指すのが一般的です。 まずは、以下の対策を組み合わせながら実践してみましょう。 安静・活動制限とアイシング 重いものを持つ、手首を強く使う作業といった痛みを引き起こす動作を極力控え、腱にかかる負荷を軽減します。 炎症が強いときは1回15分程度、1日に数回アイスパックなどで冷やすと効果的です。 補助具の使用 前腕の伸筋群(手首や指を伸ばす筋肉)への張力を軽減するため、肘外側あるいは前腕部に装着するテニス肘バンドやサポーターを用いる方法があります。 テニス肘バンドは、肘の外側や内側周辺を保護する目的で開発された商品で、腱への負荷を部分的に逃がす設計になっているのが特徴です。 消炎鎮痛薬(NSAIDs等) 痛みや腫れが強いときには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を短期間用いる場合があります。 ただし、長期連用は消化器障害などのリスクがあるため、医師の判断のもとで適切に処方してもらう必要があります。 ストレッチと筋力トレーニング 保存療法では、腱・筋肉のストレッチや筋力トレーニングが有効な方法のひとつです。 痛みに耐えられる範囲で、段階的に取り入れていきましょう。 【ストレッチの方法】 ・肘を伸ばしたまま手首をゆっくり下に曲げ、前腕の外側を伸ばす ・痛みが強くなければ、1回20~30秒程度を数回繰り返す 【筋力トレーニングの方法】 ・腕を支えた状態で軽めのダンベルやペットボトルを持ち、手首を上下させる ダンベルを下ろす際など、筋肉が伸びながら力を発揮する動作を「エキセントリック運動」と呼び、テニス肘の症状改善に効果的とされています。 手術療法 保存療法で改善が見られない中等症〜重症例では、手術療法が検討されます。 6〜12カ月以上保存療法を行っても痛みが持続する場合に、手術が適応とされるのが一般的です。 手術の方法としては以下のようなものがあります。 開放手術:皮膚を横切開して、病変腱組織を切除・修復 関節鏡視下手術:小さい穴から関節鏡を使って治療 経皮的手術・超音波支援手術:超音波振動を使って病変部を除去、または壊れた組織を吸引する方法 また、手術後はリハビリが必須です。リハビリでは筋力回復・可動域改善を目的とした運動療法を段階的に行い、日常生活やスポーツへの復帰を目指します。 再生医療 近年、スポーツによる腱や筋肉の損傷では、保存療法・手術に加えて「再生医療」という治療法が行われています。 再生医療とは、体が本来もつ傷の修復プロセスに関わる細胞を活かし、腱や筋の炎症・損傷に対応する治療法です。 代表的な再生医療のひとつ「PRP療法」では、患者様自身の血液から濃縮した血小板を抽出し、損傷した部位に注入します。 血小板には炎症を抑える成長因子が多く含まれています。 早期回復を目指す方や手術を避けたい方、アスリートでも導入が進んでいます。 スポーツ外傷に対する再生医療について詳細は、以下のページをご覧ください。 まとめ|テニス肘は早期の対処が大切 テニス肘は、腕の使いすぎにより腱に炎症や損傷が起こる疾患です。 放置すれば症状が悪化し、慢性化や難治性へ進行するリスクがあります。 軽度のうちは自然に痛みが和らぐこともありますが、腱の損傷が治癒するわけではありません。 痛みが続く場合は、症状に応じた適切な対処が必要です。 重症化して手術が必要な状態になる前に、医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、テニス肘の治療でも行われている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。 気になる症状がある方は、ぜひご登録ください。 テニス肘に関するよくある質問 テニス肘は一生治らないのですか? テニス肘は、適切に対処すれば予後が良好な疾患です。 自然治癒や症状の軽減が認められるケースが多く、80~90%が1~2年以内に自然治癒すると報告されています。(文献1) ただし、放置や自己判断による対応では慢性化や再発リスクがあるため、早期に医療機関を受診し、専門医の適切な処置を受けることが回復への近道です。 テニス肘が重症化すると手術が必要ですか? テニス肘の多くは保存療法で改善しますが、日常生活に深刻な支障がある場合は手術が検討されるケースがあります。 ただし、手術を選択する前にまずは、ストレッチやリハビリ、薬物療法など複数の保存的治療を行うのが一般的です。 ゴルフ肘を放置するのと違いはありますか? テニス肘とゴルフ肘は、いずれも肘関節周囲の腱に炎症や損傷が起こるスポーツ障害ですが、発生部位が異なります。 テニス肘は肘の外側、ゴルフ肘は内側に痛みが出るのが特徴です。 いずれも放置すると炎症が進行する点では同じであり、日常生活や仕事に支障をきたす恐れがあるため、早期に医療機関を受診しましょう。 ゴルフ肘の原因や治療法に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Lateral Epicondylitis (Tennis Elbow) - StatPearls - NCBI Bookshelf|NCBI Bookshelf(National Center for Biotechnology Information)
2026.02.02 -
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肘の外側に痛みを感じ、物を持ったりタオルを絞ったりする動作がつらくなっていませんか。 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、適切なストレッチを行うことで症状の軽減が期待できる疾患です。しかし、誤ったタイミング・方法でストレッチを行うと、かえって症状を悪化させてしまう可能性があります。 本記事では、テニス肘に対するストレッチのやり方や、やってはいけないタイミング、正しいやり方、予防のためのトレーニングまで、わかりやすく紹介いたします。また、記事の後半ではストレッチに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、テニス肘の治療法の一つである再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 テニス肘について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEご登録ください。 テニス肘のストレッチをやってはいけないタイミング テニス肘のストレッチは、タイミングを誤ると症状を悪化させる危険があります。とくに発症直後の急性期には、ストレッチを避けてください。 急性期とは、炎症が強く出ている時期のことです。一般的に発症から2〜3日程度を指します。急性期にストレッチを行うと、炎症を助長し、痛みや腫れがひどくなる可能性があります。 以下のサインがある場合は、ストレッチを控えてください。 肘に熱感や腫れがある 安静にしていても痛みを感じる ストレッチをすると痛みが強まる 患部を軽く押すだけで激しい痛みがある これらの症状がある場合は、ストレッチを避け、安静とアイシングを優先してください。負担のかかる動作を避けつつ患部を冷やして、炎症の拡大を防ぎましょう。アイシングは1回15〜20分程度、1日数回が目安です。 また、痛みが強い場合や、急性期と慢性期の判断がつかない場合は、自己判断せず医療機関の受診をおすすめします。 テニス肘を改善するストレッチ テニス肘は、手首や指を動かすときに使う前腕の筋肉が、肘の外側につながっている部分に負担をかけることで発症します。前腕の筋肉が硬くなったり、繰り返し使われたりすることで炎症が起き、肘の外側に痛みを感じるのです。 ただ、前腕の筋肉をストレッチすると、筋肉の柔軟性が高められ、症状の軽減が期待できます。 自分でできるテニス肘のストレッチは、以下のとおりです。 手首のストレッチ 前腕の甲側のストレッチ 前腕手のひら側のストレッチ ただし、ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲でゆっくりと行うことが大切です。無理に伸ばすと、筋肉や腱を痛める可能性があります。 以下の記事では、テニス肘の症状や原因について詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてください。 手首のストレッチ 手首のストレッチは、前腕の伸筋群の柔軟性を高め、肘への負担を軽くします。 具体的な方法は以下のとおりです。 肘を伸ばした状態で、腕を肩の高さで前に出す 手のひらを下に向け、手首を上(背屈)に反らす 反対の手で押さえながら15秒間キープ 次に手首を下(掌屈)に倒し、同じく15秒間キープ この動作を1日4回、週5回行います 上記のストレッチにより、伸筋群の柔軟性が向上し、肘への負担が軽減されます。ただし、痛みを感じる場合には無理をせず、心地よく感じる範囲でストレッチしてください。 前腕甲側のストレッチ 前腕の甲側には、指を伸ばしたり手首を上げたりする筋肉が集まっています。前腕の甲側をストレッチすると、テニス肘の痛みを和らげる効果が期待できます。 具体的な方法は以下のとおりです。 片方の腕を、手のひらを下にして前へ伸ばす 伸ばした腕の手首を下に曲げる もう一方の手で、曲げた手首を下へゆっくりと引っ張る 肘の外側が伸びているのを感じながら、10秒間キープ 上記ストレッチを1日に5回程度行う 日常的に続けることで、前腕の筋肉の柔軟性を保ち、肘への負担を減らせます。なお、痛みを感じる場合は無理をしないようにしてください。 前腕手のひら側のストレッチ 前腕の筋肉は、手の甲側だけでなく手のひら側にもあります。甲側だけを伸ばしても、十分な効果は得られません。甲側をストレッチしたあとは、手のひら側もあわせて伸ばしましょう。 具体的な方法は以下のとおりです。 片方の腕を、手のひらが上を向くように前へ伸ばす 伸ばした腕の指先を、床を向くように曲げる もう一方の手で、伸ばした手のひら側をゆっくりと下へ押す 肘の内側が伸びているのを感じながら、10秒間キープ 上記の動きを1日に5回ほど繰り返します 前腕の両側をバランスよくストレッチすると、筋肉全体の柔軟性が高まり、肘への負担を軽減できます。痛みを感じる場合はストレッチを中止し、安静にしておきましょう。 テニス肘を予防するストレッチ・トレーニング テニス肘は再発しやすい疾患です。痛みが治まった後も、ストレッチと筋力トレーニングの習慣化が重要です。 また、「なぜ肘が痛くなるのか」という根本的な原因にも目を向けましょう。テニスやゴルフなど、身体を回転させる動作が入るスポーツでは、体幹をうまく使えないと腕や肘に負担が集中し、痛みを引き起こしやすくなります。 そのため、肘周辺だけでなく、全身の柔軟性を高めるストレッチも推奨されます。 予防に有効なストレッチとトレーニングは、以下のとおりです。 肩・太もも内側のストレッチ 股関節のストレッチ 肘周辺のマッサージ 輪ゴムを使った筋力トレーニング それぞれ詳しく解説します。 肩・太もも内側のストレッチ 肩・太もも内側のストレッチは、上半身と下半身を同時に刺激し、身体全体の連動性を高めます。日常的に行うと柔軟性が増し、スポーツによる肘への負担が軽減されます。 具体的なストレッチ方法は以下のとおりです。 両足を広げて膝を曲げ、膝の上に手を置く 太ももと床が平行になるように腰を落とす 手を動かさないようにして、上体を右にひねる 顔は後方やや上を見るようにし、左肩と内ももが伸びるのを感じながら体勢をキープ 次に、同じように上体を左にひねり、右肩と内ももを伸ばす 左右各10秒ずつ行う 上記のストレッチにより、上半身と下半身の可動域が広がり、スポーツ時の負担を軽減できます。 股関節のストレッチ 股関節のストレッチは、股関節とおしりの大殿筋(だいでんきん)を連動させ、可動域を高めます。スポーツ時のスイング動作などで身体を大きく使えるようになり、腕や肘への負担を減らせます。 具体的な方法は以下のとおりです。 膝立ち状態で四つんばいになり、背筋はまっすぐに保つ 片方の足を持ち上げ、後方に伸ばす つま先をできるだけ遠くに置くように意識する 持ち上げた足の股関節を開くように動かす(自然と膝は曲がった形になる) 膝で円を描くようにして左足を元に戻す 一連の動きをスムーズに行う 逆の足でも同様に行い、左右各5回ずつ行う 股関節の柔軟性が高まると、身体を回転させる動作時に腕への力の伝達がスムーズになり、肘への負担を減らします。 肘周辺のマッサージ 前腕の筋肉をやさしくほぐすと、血行が促進され、筋肉のこりが和らぎます。固くなった筋肉がゆるむと、肘にかかる負担を減らせるため、テニス肘の再発防止が期待できます。 具体的には、肘から手首にかけて、指の腹で円を描くようにゆっくり揉みほぐします。筋肉の流れに沿って、軽く圧をかけるのがポイントです。 また、テニスボールを使ったマッサージも効果的です。以下の手順を参考にしてください。 テニスボールを机の上に置く 手のひらを上に向け、ボールを転がすようにしながら前腕の筋肉をほぐす ただし、マッサージの際は、強く押しすぎないよう注意してください。過度な刺激は炎症を悪化させるおそれがあるため、「痛気持ちいい」と感じる程度の力加減を意識しましょう。 輪ゴムを使った筋力トレーニング 輪ゴムを使った筋力トレーニングは、肘まわりの筋肉を鍛え、テニス肘の予防に有効です。 具体的な方法は以下のとおりです。 輪ゴムを5本の指全体に引っかける 指を広げるように動す 指を広げた状態で2~3秒キープ ゆっくりと元に戻す 上記の動作を10回程度繰り返す 1日2~3セット行う 上記トレーニングを継続的に行うと、前腕の筋肉がまんべんなく鍛えられ、肘の腱にかかる負担を軽減できます。結果として、テニス肘の再発を防ぐ効果が期待できます。 ストレッチで改善しないテニス肘の治療法 ストレッチなどのセルフケアを2~4週間続けても症状が改善しない場合は、医療機関での治療を検討してください。 医療機関では、症状の程度に応じてさまざまな治療法が用意されています。 治療法 特徴 保存療法 ・リハビリテーション ・薬物療法(内服、湿布、注射) ・装具療法(サポーター) ・体外衝撃波療法 手術療法 ・保存療法で改善しない重症時に実施 ・炎症部位の切除や腱の修復(文献1) ・術後のリハビリが重要 再生医療 ・PRP療法や幹細胞治療を実施 ・自己由来の細胞や血液成分を利用する療法 ・手術を避けたい人の選択肢として検討可能 詳しい治療法については、以下の記事をご覧ください。 まとめ|テニス肘は適切なストレッチで改善しよう テニス肘は、適切なストレッチなどのセルフケアで症状の軽減が期待できる疾患です。 ただし、発症直後の急性期にはストレッチを避け、痛みが落ち着いた慢性期に開始しましょう。熱感や腫れ、安静時痛がある場合は、安静とアイシングを優先してください。 また、ストレッチは痛みを感じない範囲で、ゆっくりと丁寧に行います。手首のストレッチ、前腕の甲側のストレッチ、前腕手のひら側のストレッチを、毎日継続しながら筋肉の柔軟性を高めましょう。 なお、2~4週間ストレッチを続けても改善しない場合は、医療機関を受診してください。保存療法や手術療法、再生医療など、症状に応じた治療法が用意されています。 「手術は避けたい」とお悩みの方は、再生医療も選択肢としてご検討ください。 以下のページでは、再生医療の症例や治療内容の詳細が確認できます。 テニス肘のストレッチに関する疑問 ストレッチは1日何回行えばいい? 基本は1日3セット行うことが推奨されています。朝・昼・夜など、時間を分けて実施すると効果的です。 痛みが軽い場合は、5セット程度まで増やしても問題ありません。ただし、やりすぎると筋肉を痛める可能性があるため注意が必要です。 ストレッチはいつから始めればいい? 発症直後の急性期には、ストレッチを避けてください。炎症が強い時期にストレッチを行うと、症状が悪化する可能性があります。 ストレッチは、痛みが落ち着いた慢性期に入ってから開始しましょう。目安としては、安静時の痛みがなくなり、熱感や腫れが引いてからです。 判断が難しい場合や不安がある場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。 ストレッチで症状が悪化することはある? 急性期にストレッチを行うと、症状が悪化する可能性があります。炎症が強い時期に筋肉を伸ばすと、炎症を助長し、痛みや腫れがひどくなります。 また、無理に強く伸ばすと、筋肉や腱を痛めるおそれがあります。ストレッチは、正しいやり方で、痛みを感じない範囲で行いましょう。 参考文献 (文献1) Arthroscopic tennis elbow release|PubMed Central
2026.02.02 -
- テニス肘
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肘の外側に痛みを感じ、手や腕を使う動作がつらくなっていませんか。 テニス肘は、日常生活やスポーツ、仕事に大きな支障をきたす疾患です。放置すると慢性化し、痛みが長期間続く可能性があります。 しかし、適切な治し方を実践すれば、多くの場合で改善を目指せます。 本記事では、自宅でできるセルフケアの方法から、医療機関での専門的な治療法まで、テニス肘の治し方を詳しく解説します。 また、記事の後半ではテニス肘に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、テニス肘の治療法の一つである再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 テニス肘について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 自分でできるテニス肘の治し方はある? 軽度のテニス肘であれば、セルフケアで改善できる可能性があります。日常生活で肘にかかる負担を減らして適切なケアを継続すると、炎症を抑えられ、組織の回復を促せます。 自分でできるテニス肘の治し方は、以下のとおりです。 安静・アイシング ストレッチ マッサージ サポーター・テーピング ただし、ストレッチやマッサージの際に強い痛みを感じる場合や、実施しても症状が改善しない場合は、無理をせず医療機関を受診してください。自己判断で誤ったケアを続けると、かえって症状が悪化するおそれがあります。 以下、詳しく解説します。 安静・アイシング 発症直後の急性期には、安静とアイシング(冷却)が基本です。痛みを感じる動作を避け、患部をアイシングしながら休ませると、炎症の拡大を防げます。 アイシングは、保冷剤や氷をタオルで包み、患部に15~20分程度あてる方法が有効です。アイシングを1日に数回繰り返すと、炎症や腫れを軽減できます。 ただし、過度に冷やすと血行が悪くなるため、長時間のアイシングは避けてください。 ストレッチ 前腕の伸筋群を伸ばすストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、テニス肘の症状緩和に役立ちます。 具体的な方法は、以下のとおりです。 腕を肩の高さで前に伸ばし、手のひらを下に向ける 反対の手で、伸ばした手の指先を持ち、手首をゆっくりと下方向に曲げる 前腕の外側が伸びているのを感じながら、15秒間キープ 上記ストレッチを1日3~4回行う 痛みが強い場合は無理をせず、心地よく感じる範囲で実施してください。継続的に行うと、筋肉の緊張がほぐれ、痛みの軽減につながります。 以下の記事では、詳しいストレッチ方法を解説しています。ぜひ参考にしてください。 マッサージ 前腕の筋肉を優しくほぐすマッサージは、血行を促進し、組織の回復をサポートします。 肘から手首にかけて、円を描くように揉みほぐしてください。指の腹を使い、筋肉の流れに沿ってゆっくりと圧をかけます。 また、テニスボールを使った簡単なマッサージ法も有効です。手順は以下のとおりです。 テニスボールを机の上に置く 手のひらを上方向に向け、ボールを転がすようにしながら、前腕の筋肉をほぐす ただし、マッサージをする際は、強く押しすぎないように注意してください。過度な刺激は、かえって炎症を悪化させるおそれがあるため、「痛気持ちいい」程度の強さで行いましょう。 サポーター・テーピング テニス肘専用のサポーターは、筋肉や腱への負担を軽減し、痛みを和らげます。サポーターの正しい装着位置は、以下を参考にしてください。 局所的な圧迫に適している「バンドタイプ」:肘の少し下 肘全体につける「スリーブタイプ」:肘から前腕にかけて装着 また、テーピングで前腕を固定する方法も有効です。伸縮性のあるテープを使い、肘から手首にかけて適度な圧迫を加えることで、筋肉の動きをサポートします。 ただし、長時間の連続使用は避けてください。締めつけすぎると血行が悪くなるため、適度に外して血流を促すことが大切です。 以下の記事では、テニス肘のサポーターの付け方や注意点について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 医療機関でのテニス肘の治し方 セルフケアで改善しない場合は、医療機関での治療が必要です。症状の程度や経過に応じて、適切な治療法を選択しましょう。 医療機関でのテニス肘の治し方は、以下のとおりです。 リハビリテーション 薬物療法 装具療法 体外衝撃波療法 手術療法 再生医療 以下、詳しく解説します。 リハビリテーション セルフケアで改善が見られない場合、理学療法士による専門的なリハビリテーションが有効です。ストレッチや筋力トレーニングを通じて、患部の血流を改善し、組織が持つ治癒力向上を目指します。 また、理学療法士の指導により、正しい動作やフォームを身につけると、再発のリスクを減らせます。 薬物療法 テニス肘による痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用(貼付薬・ゲル)で鎮痛を図ることがあります。 症状が強い場合はステロイドの局所注射が選ばれることもあります。ただし、効果は短期的です。また、繰り返し注射すると腱が弱くなり断裂する危険性があるため、慎重な判断が必要です。いずれも医師の指示に従い、用量や頻度は自己判断で変更しないでください。 装具療法 装具療法とは、専用の装具(肘サポーター)で動作制限を行い、安静を保つ治療法です。 装具は、痛みの原因となる筋肉への負荷を軽減します。日常生活での無意識な動作を制限すると、患部の安静を保てるため、炎症の悪化を防げます。 装着期間は症状により異なりますが、通常は数週間から数カ月です。リハビリテーションと併用することで、より高い治療成果が期待できます。 体外衝撃波療法 体外衝撃波療法は、痛みのある部位に衝撃波をあてて血流改善を図り、組織の自然治癒を促す治療法です。 慢性期のテニス肘に有効とされており、複数回の通院で症状の改善が見込めるケースもあります。 体外衝撃波療法は比較的新しい治療法ですが、リハビリや薬物療法などで改善しない場合の選択肢として注目されています。 手術療法 十分な期間にわたって保存療法(リハビリテーションや薬物療法など)を行っても改善が見られず、日常生活に支障を来す重症・慢性化例に対して、手術療法が検討されます。 手術では、主に変性・病変腱組織の切除や腱付着部の修復を行い、痛みの原因部位を除去、または改善を目的とします。(文献1)ただし、術後にも完全な正常化を保証するものではありません。 術後は、段階的なリハビリテーションを計画的に進めることが不可欠です。適切なリハビリテーションを行うことで、可動域・筋力の回復を促し、再発リスク低減を目指します。 再生医療 保存療法による改善が見られない場合、テニス肘の治療法として再生医療の選択肢もあります。 再生医療には、主に幹細胞治療とPRP療法があります。 幹細胞治療:幹細胞を採取・培養して患部に投与する治療法 PRP療法:血液から抽出したPRP(多血小板血漿)を患部に投与する治療法 どちらも患者様自身から採取した幹細胞・血液を用いるため、拒絶反応のリスクが低いのが特徴です。 手術を避けたい方や、長引く慢性痛に対する選択肢としてご検討ください。 以下のページでは、テニス肘を含む「スポーツ外傷に対する再生医療」について、特徴や症例を紹介しています。再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。 テニス肘の再発を防ぐ方法 テニス肘は再発しやすい疾患です。一度改善しても、同じ動作を繰り返すと再び痛みが出るケースは少なくありません。 以下の日常的なストレッチと筋力トレーニングで、再発リスクを軽減できます。 ストレッチ 輪ゴムを使った筋力トレーニング それぞれ詳しく解説します。 ストレッチ テニス肘は、日々の軽いストレッチで再発リスクを軽減できます。 具体的な方法は、以下のとおりです。 腕を肩の高さで前に伸ばし、手のひらを下に向ける 反対の手で、伸ばした手の指先を持ち、手首をゆっくりと下方向に曲げる 前腕の外側が伸びているのを感じながら、15秒間キープ 朝起きたときや仕事の休憩時間など、日常生活の中に取り入れて無理なく継続しましょう。数十秒程度の短いストレッチでも、毎日の積み重ねで大きな予防効果が見込めます。 以下の記事では、テニス肘を改善・予防するストレッチ方法を紹介しています。ぜひ、参考にしてください。 輪ゴムを使った筋力トレーニング テニス肘の症状緩和に有効な輪ゴムを使った筋力トレーニングを紹介します。 輪ゴムを5本の指全体に引っかける 指を広げるように動かす 指を広げた状態で2~3秒キープする ゆっくりと元に戻す動作を10回程度繰り返す これは前腕の筋力を鍛えるトレーニングです。結果的に前腕の筋力バランスが整い、再発予防につながります。 まとめ|適切な処置でテニス肘は改善できる テニス肘は、早めのケアと正しい治療で回復が見込める疾患です。 軽度の症状であれば、安静やストレッチ、マッサージなどのセルフケアで改善できる可能性があります。ただし、セルフケアで改善しない場合は、医療機関を受診してください。 慢性的な痛みが続く場合には、手術療法や再生医療など、より専門的な治療が必要になることもあります。 「手術は避けたい」とお悩みの方は、再生医療も選択肢としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を提供しています。再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご登録ください。 テニス肘の治し方に関するよくある質問 テニス肘は放置しても治る? 軽度のテニス肘であれば、安静にすると自然に改善するケースもあります。 しかし、痛みを我慢しながら同じ動作を続けると、炎症が慢性化し、治りにくくなるおそれがあります。放置すると、日常生活や仕事に長期間支障をきたす可能性も否定できません。 早めにセルフケアを始め、改善しない場合は医療機関の受診をおすすめします。適切な治療を受けると、回復までの期間を短縮できます。 テニス肘の湿布はどこに貼ればいい? 湿布は、肘の外側の痛みを感じる部位に貼ります。 具体的には、上腕骨外側上顆(肘の外側の骨の出っ張り)とその周辺です。痛みの中心となる場所を探し、そこに湿布の中央部分がくるように貼ってください。 湿布には、炎症を抑える働きがある成分が含まれています。ただし、皮膚のかぶれや刺激を感じた場合は、使用を中止し、医師に相談してください。 テニス肘の人がしてはいけないことは? 痛みを我慢しながら、テニスや重い物を持つなどの「負荷の高い動作」を続けることは避けてください。炎症が悪化し、治療期間が長引く原因となります。 また、急激な動作や無理なストレッチも、患部に過度な負担をかけるため控えましょう。 日常生活では、手首や肘をひねる動作、雑巾を絞る動作、ドアノブを回す動作などにも注意が必要です。可能な範囲で動作を工夫し、患部への負担を減らすと、症状が回復しやすくなります。 参考文献 (文献1) Arthroscopic tennis elbow release|PubMed Central
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肘の外側に痛みを感じ、物を持ったり手首を動かしたりする動作がつらくなっていませんか。 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、手首を伸ばす筋肉を繰り返し使うことで、肘の外側に負担がかかり痛みが起きる疾患です。痛みを放置すると慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 しかし、適切なサポーターの使用で、痛みの軽減が期待できます。 本記事では、テニス肘サポーターの選び方から正しい付け方、使用上の注意点まで、詳しく解説します。 また、記事の後半ではサポーターに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、テニス肘の治療法の一つである再生医療の情報の提供と簡易オンライン診断を実施しております。 テニス肘について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 テニス肘の改善にサポーターは有効 テニス肘は、手首を伸ばす筋肉の過度な使用で、肘の外側に炎症が起きる疾患です。正式名称は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」といいます。 また、「テニス肘」と呼ばれていますが、スポーツ時だけでなく、パソコン作業や家事でも発症するケースもあります。 日常生活に支障をきたすこともあるテニス肘ですが、症状を軽減する手段としてサポーターの着用が効果的です。適切に使用すれば、痛みを和らげながら症状の改善を目指せます。 ここでは以下3点を中心に、テニス肘のサポーターについて解説します。 サポーターが痛みを軽減する理由と仕組み 医療用サポーターと市販サポーターの違い サポーターで改善できるケースと専門治療が必要なケース また、以下の記事では「テニス肘の原因や症状」を詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 サポーターが痛みを軽減する理由と仕組み テニス肘は、肘の外側にある「短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)」という筋肉の腱に過度な負担がかかることで発症する疾患です。 テニス肘用のサポーターは、前腕の筋肉を適度に圧迫して負荷を分散し、肘への負担を和らげます。圧迫によって筋肉や腱の動きをサポートし、衝撃を吸収する効果もあるため、日常動作や運動時の痛みを和らげてくれます。 医療用サポーターと市販サポーターの違い サポーターには、「一般医療機器」として届出されているものと、医療機器に該当しないもの「雑品(市販品)」があります。 両者の特徴は、以下の表を参考にしてください。 項目 一般医療機器(医療用サポーター) 雑品(市販サポーター) 分類 医療機器として国に届け出済み 医療機器に該当しない一般製品 効能・効果 関節痛の緩和、血行促進などを表示できる 明確な治療効果の表示はできない 表示項目 「一般医療機器」または「製造販売届出番号」などの記載あり(文献1) 医療機器関連の表示や番号はない 安全性・信頼性 国の基準を満たし、一定の審査を受けている 効能審査はないが、品質の良い製品も多い 主な用途 医師の指導下での装具療法や、痛みの強い場合に適する 軽度な痛みの緩和や日常的な予防に適する どちらのサポーターを選ぶべきかは、症状の重さや目的に応じて判断しましょう。痛みが強い場合や、医師から装具療法を勧められた場合は、医療機器認証品の使用をおすすめします。 軽度の痛みや予防目的であれば、市販のサポーターでも十分な場合が多いです。 サポーターで改善できるケースと専門治療が必要なケース テニス肘を発症したときは、症状の程度によって対応方法が異なります。多くの場合、テニス肘の治療はまず保存療法から開始されます。実際に、約90%の患者は手術をしない保存療法によって症状が改善すると報告されています。(文献2) 軽症であればサポーターの着用やセルフケアを含む保存療法で改善が見込めますが、痛みが強い場合や長引く場合は、医療機関での専門的な治療を検討してください。 以下の表を参考に、自分の症状に合った対応を判断しましょう。 判断基準 サポーターが有効なケース 専門治療が必要なケース 痛みの程度 動作時に痛みがあるが、安静時は軽度の痛み 安静時にも強い痛みがある 症状の期間 発症から数週間〜3カ月以内 3カ月以上痛みが続いている 改善の状況 サポーターやセルフケアで症状が軽くなっている サポーターを使っても改善が見られない 症状の変化 痛みが徐々に落ち着いてきている 痛みが悪化している、または範囲が広がっている なお、テニス肘の治療には、手術を伴わない再生医療という選択肢があります。手術を避けたい方や、長引く慢性痛に対する選択肢としてご検討ください。 以下のページでは、テニス肘を含む「スポーツ外傷に対する再生医療」について、特徴や症例を紹介しています。再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。 テニス肘サポーターの種類と特徴 テニス肘サポーターには、主に2つのタイプがあります。 バンドタイプ スリーブタイプ それぞれの特徴を理解し、自分の症状や用途に合ったものを選びましょう。 バンドタイプ バンドタイプは、肘の少し下(前腕部分)にバンドを巻き付けて使うタイプです。 痛みの原因となる筋肉の動きをサポートし、腱への負担を軽減します。コンパクトで装着がしやすく、スポーツ時にも邪魔になりにくいのが特徴です。 バンドタイプのメリットは、装着が簡単で、患部をピンポイントに圧迫できる点です。価格帯が比較的手頃な製品が多く、手軽に導入しやすいタイプといえます。 一方で、長時間の使用では圧迫部分に痛みを感じることがあり、動作中にずれやすい場合もあります。また、肘全体を広く支える効果は限定的です。 バンドタイプは、以下のような場面での使用に適しています。 テニス、ゴルフ、野球などのスポーツ時 パソコン作業やマウス操作が多いデスクワーク中 料理や家事など、手首を使う作業中 とくに、動作時だけ痛みがある「軽度から中等度の症状の方」や、「日中の特定の動作時のみサポートが必要な方」におすすめです。 スリーブタイプ スリーブタイプは、肘から前腕・上腕を筒状に包み込むタイプです。肘全体を均一に圧迫し、筋肉や関節の安定性を高めます。 スリーブタイプのメリットは、肘全体をバランスよくサポートできる点です。ずれにくく安定した装着感が得られるため、保温効果による血行促進も期待できます。 一方で、サイズが合わないと圧迫が不均一になるため、製品選定には注意が必要です。また、通気性が低いため夏場は蒸れやすく、価格はバンドタイプより高い傾向にあります。 スリーブタイプは、以下のような場面での使用に適しています。 軽作業や日常生活全般 肘全体に不安定感がある場合 冷えによる痛みの悪化を防ぎたい場合 長時間装着する必要がある場合 安静時にも肘の痛みを感じる場合や、肘周囲の保温を重視する場合におすすめです。 テニス肘サポーターの選び方 テニス肘サポーターは、選び方を間違えると十分な効果が得られない可能性があります。自分の症状や使用目的に合ったサポーターを選びましょう。 サポーター選びのポイントは、以下のとおりです。 自分の症状や使用目的に合わせて選ぶ サイズや素材を慎重に選ぶ それぞれ詳しく解説します。 自分の症状や使用目的に合わせて選ぶ サポーター選びの際は、まず自分の症状の程度と使用目的を明確にします。 以下の表を参考に、自分に合ったサポーターを選びましょう。 症状の程度 主な使用シーン おすすめのタイプ 軽度(日常生活で軽い痛み) デスクワーク、家事、育児 バンドタイプ 中等度(動作時に痛みがある) 手首を頻繁に使う作業 バンドタイプまたはスリーブタイプ 重度(しっかり固定したい) スポーツ時、手首の動きが多い作業 スリーブタイプ 痛みなし(予防目的) テニス、ゴルフなどのスポーツ バンドタイプ 冷えによる痛みがある 冷え性で肘周りの冷えが気になる スリーブタイプ(保温効果) サポーターを選ぶ際は、上記の表を参考にしながら、自分の症状や生活スタイルに最も合ったものを選択してください。自分で判断できない場合は、医療機関で医師に相談しましょう。 サイズや素材を慎重に選ぶ サポーターの効果を最大限引き出すためには、適切なサイズと素材の選定が欠かせません。 下記の表を参考に、自分の症状や使用環境に合うものを選びましょう。 項目 確認すべきポイント 選び方のポイント サイズ 前腕や上腕の太さに合っているか ・前腕の一番太い部分をメジャーで測定する ・製品のサイズ表を必ず確認する ・メーカーによってサイズが異なるため注意 通気性 長時間使用しても蒸れにくいか ・メッシュ素材や吸汗速乾性のある素材を選ぶ ・夏場や運動時はとくに通気性を重視する 素材の肌への優しさ アレルギーや肌トラブルの心配はないか ・綿混合素材や低刺激性の素材を選ぶ ・ゴムやラテックスアレルギーの方は成分を確認する 装着感 締めつけ感や動きやすさは適切か ・可能であれば購入前に試着する ・肘の曲げ伸ばしや手首の動きを確認する ・スポーツ用なら腕を振る動作も試す サポーター選びをする際は、上記すべての項目をバランスよく考慮しましょう。とくにサイズが合っていないと、十分な効果が得られないだけでなく、血行不良や痛みの原因になりかねません。 価格だけで選ぶのではなく、自分の症状や使用目的に合った製品を慎重に選びましょう。 テニス肘サポーターの付け方 サポーターは、正しい位置に適切な強さで装着してこそ、効果を最大限に引き出せます。もし装着方法を誤ると、かえって症状を悪化させる可能性もあるため注意が必要です。 それぞれ、適切なサポーターの付け方を解説します。 バンドタイプの付け方 肘の最も痛む箇所を確認する 痛む箇所から指2~3本分(約3~5cm)手首側の、前腕の一番太い部分に装着する マジックテープやベルトで締める 締め具合は「心地よいと感じる程度の圧迫感」が目安 手首を動かしてみて、痛みが軽減されていれば適切 ただし、締めすぎると血行不良や痺れの原因になるため注意してください。指先が軽く入る程度のゆとりを保ちましょう。 スリーブタイプの付け方 肘関節全体を覆うように装着する(引き上げるように装着すると、しわができにくい) 肘の曲げ伸ばしを妨げない適度なフィット感を確認する 肘の中心がサポーターの中心にくるように調整する スリーブタイプは、締め具合を調整しにくい製品も多いためサイズ選びが重要です。前腕や上腕の太さを測定し、サイズ表を確認してから購入しましょう。 テニス肘サポーターを使用する際の注意点 テニス肘サポーターは、痛みの軽減や再発防止に役立ちます。ただし、装着方法や使用タイミングを誤ると、かえって症状を悪化させるおそれがあります。 テニス肘サポーターを使用する際は、以下の注意点を理解しておきましょう。 装着位置や締め具合を適切に調整する 就寝中の使用は避ける それぞれ詳しく解説します。 装着位置や締め具合を適切に調整する テニス肘サポーターは、肘の動きを妨げない位置に装着し、痛みのある筋肉を適度に支えるように調整します。 締め具合は「心地良いと感じる程度の圧迫感」が目安です。強く締めすぎると血行不良やしびれの原因になり、緩すぎると効果が得られません。 サポーター装着後に、手首や肘を軽く動かして痛みが和らいでいれば、適切に装着できています。 就寝中の使用は避ける サポーターは日中の動作をサポートするためのものであり、就寝中の使用には適していません。 寝ている間は無意識に寝返りを打つため、サポーターがずれて意図しない部位を強く圧迫するおそれがあります。 また、長時間の圧迫は血行不良や神経麻痺(橈骨神経麻痺など)を引き起こす可能性があり、皮膚のかぶれや炎症の原因にもなります。 使用は日中の活動時に限定し、就寝前には必ず外すようにしましょう。 まとめ|テニス肘がサポーターでも改善しないときは医師に相談しよう テニス肘は、手首を伸ばす筋肉の使いすぎで、肘の外側に炎症が起きる疾患です。サポーターを使用すると、筋肉を適度に圧迫し、腱への負担を軽減してくれるため、痛みの軽減が期待できます。 テニス肘サポーターにはバンドタイプとスリーブタイプがあるため、症状や使用目的に合わせた選択をしましょう。 ただし、サポーターは補助的手段であり、根本治療ではありません。3カ月以上痛みが続く場合や症状が悪化する場合は、自己判断せず医師に相談してください。 テニス肘などスポーツによるケガの治療には、手術を伴わない再生医療という選択肢もあります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を提供しています。お気軽にご登録ください。 テニス肘サポーターに関するよくある質問 テニス肘のサポーターはどこで売ってる? テニス肘のサポーターは、ドラッグストアやスポーツ用品店、インターネット通販などで購入可能です(医療機器認証品も含む)。 ドラッグストアでは、薬剤師や登録販売者に相談しながら選べるメリットがあります。また、スポーツ用品店では、スポーツ用に特化した製品が豊富に揃っています。 さらに、インターネット通販でも購入可能です。豊富な種類から選べ、口コミを参考にできます。ただし、サイズ選びが難しいため、事前に前腕の太さを測定してから購入しましょう。 テニス肘サポーターはつけっぱなしでもいい? テニス肘サポーターは、つけっぱなしにしないでください。 長時間連続で装着すると、血行不良や皮膚トラブルの原因になります。とくに就寝中の使用は避けてください。 基本的には、痛みを感じる動作を行う時間帯に装着し、休憩時や安静時には外すことをおすすめします。1日の装着時間は、数時間から長くても8時間程度を目安にしましょう。 適度に外して血流を促すことで、サポーターの効果を維持しながら、安全に使用できます。 参考文献 (文献1) 医療機器であるかどうかを見分けるには|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (文献2) Arthroscopic tennis elbow release|PubMed Central
2026.02.02 -
「首や背中を寝違えたときにロキソニンは効く?」 「ロキソニンとカロナールどちらが良いの?」 ロキソニンは寝違えたときの痛み止めとして効果を期待できます。ただし、使用前に胃や腎臓への負担があることや、基本的に小児や妊婦には使用すべきではないなどの注意点の確認が必要です。 本記事ではロキソニンの基本的な効果と副作用をはじめとして以下を解説します。 ロキソニンとカロナールどちらが良いのか? ロキソニンを服用しても症状が改善しない場合の対処法 ロキソニン以外の対処法 ロキソニンやカロナールの服用を検討する際の基本的な注意点も解説しています。寝違え後に痛み止めの服用を検討している方は参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 長引く痛みなどお悩みの症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寝違えの痛みにロキソニンは効果的!服用+安静が基本 ロキソニンは、炎症と痛みを抑える効果が期待できます。痛みが強く首や背中の動きに制限がある場合に服用を検討してください。ただし、ロキソニンの服用は痛みを一時的に和らげる対症療法であり、寝違えの根本的な治療ではありません。 ロキソニンの服用後に痛みが改善したからといって無理に動いてはいけません。痛む部位(患部)を冷やして安静にしてください。3日経過しても痛みが改善していかない場合は医療機関を受診しましょう。 【関連記事】 寝違えとは?原因や対処法、放置してはいけない症状を解説 寝違えに湿布は効果的?正しい使い方とNG行為を解説 ロキソニンの効果と副作用 ロキソニンの主な効果と副作用は以下の通りです。 効果 ・炎症や痛みを和らげる ・熱を下げる 副作用 ・アスピリン喘息(喘息、鼻水、鼻づまりなど) ・胃腸障害(胃の不快感、腹痛、下痢、便秘、胸やけなど) 服用方法は、成人は1回1錠(ロキソプロフェンナトリウム60mgの場合)を1日3回です。頓服(症状が出たときに飲む)の場合は、1回1〜2錠(60〜120mg)を服用します。(文献1) 寝違えにはロキソニンとカロナールのどちらが良いのか? ロキソニンとカロナールは、痛みを抑える効果があるためどちらも有効な選択肢です。 しかし、ロキソニンとカロナールは以下のような違いがあるため、特徴を理解して選択する必要があります。 ロキソニン カロナール 特徴と主な効果 ・痛みや炎症、発熱を起こす物質の働きを抑える ・基本的に小児や妊婦には使用できない ・痛みの伝わりを抑えることで痛みを軽減する ・ロキソニンと比較するとリスクが低いため、小児や妊婦でも使用を検討できる 副作用 ・胃の粘膜や腎臓を保護する物質の働きも抑えてしまうため胃潰瘍や腎臓の障害などを引き起こすリスクがある ・アスピリン喘息を誘発することがある ・肝臓で分解されるため、高用量を服用すると肝臓に障害を起こすリスクがある ・アスピリン喘息を引き起こすこともあるが、低用量であれば比較的リスクが低いとされている 注意事項 ・腎臓や肝臓、心臓などが悪い方は服用しない ・胃潰瘍や喘息の既往歴がある方は服用しない ・小児や妊婦は服用しない ・1日に1500mgを超える高用量の長期服用は肝臓の障害を引き起こす恐れがある ・肝臓に障害がある方は服用しない (文献3)(文献4) 市販のロキソニンを購入する際は、薬剤師による対面販売が基本です。ロキソニンかカロナールどちらが良いか判断できない場合は、薬剤師や医師に相談することを推奨します。 ロキソニンを内服しても痛みが改善しない場合の対応法 ロキソニンなどの痛み止めを内服しても痛みやその他の症状が改善しない場合は、寝違え以外の何らかの病気を引き起こしている恐れがあります。 とくに以下のような症状が現れている場合は注意が必要です。 激しい痛み 3日以上続く痛み 発熱 手足の痺れ 脱力感 首を動かした際の手足のしびれ 以上の症状が現れている場合は、椎間板ヘルニアや脊椎炎、脊椎腫瘍などの寝違い以外の病気を引き起こしている恐れがあります。医療機関を受診して適切な検査を受けましょう。 ロキソニン以外の寝違えたときの対処法 ロキソニンなどの痛み止めを服用する以外に以下のような対処法があります。 対処法 詳細 1.安静に過ごす ・安静を優先にして過ごす ・寝違え直後に無理に動くと炎症が悪化する恐れがあるため 2.患部を冷やす ・タオルで巻いた保冷剤等で痛む部分を10分ほど冷やしたあとに、しばらく離すを3〜4回繰り返す ・患部の炎症を改善させるため これらは寝違え直後の基本的な対処法です。とくに寝違えた部分が腫れたり、熱を持ったりしている場合は冷やして安静に過ごしてください。 寝違えの基本的な予防法 寝違えの基本的な予防法は以下の通りです。 寝違えの予防法 詳細 肩周りのストレッチ 1.椅子に座り片方の肘を下ろして伸ばす 2.そのまま背中側に引き上げ20秒間静止する 3.左右両方2〜3回を目安に行う 枕の高さと硬さの調整 ・枕に頭を乗せた状態で頭の位置が自分の握りこぶしほどの高さ(6〜9cm)になる枕 ・枕に頭を乗せて沈み込む深さが20%ぐらいの硬さになる枕 (文献2) まとめ|ロキソニンを内服しても改善しない寝違えの痛みは要注意 寝違えたときにロキソニンを内服すると痛みの軽減を期待できます。ただし、痛み止めの内服は痛みを一時的に抑える対症療法です。痛みが軽減されたからといって無理な動作は行わず、患部を冷やして安静に過ごしてください。 ロキソニンは、胃潰瘍や腎臓の障害がある方は使用すべきではありません。カロナールはロキソニンと比較するとリスクが低いとされています。しかし、肝臓に障害がある方は服用を推奨できません。ロキソニンかカロナールどちらが良いか判断に迷う場合は、薬剤師や医師に相談することを推奨します。 3日以上継続する痛みや激しい痛み、発熱、手足のしびれ、脱力感、首を動かした際の手足のしびれなどの症状が現れる場合は、何らかの病気が隠れている恐れがあります。医療機関を受診して適切な検査を受けてください。 参考文献 (文献1) ロキソニン錠60mg|くすりの適正使用協議会 (文献2) SUZUKI HEALTH TOMORROW|医療法人 浩生会スズキ病院 (文献3) ロキソプロフェンナトリウム錠|第一三共株式会社 (文献4) アセトアミノフェン錠|あゆみ製薬株式会社
2026.02.02 -
「寝違えを解消できるストレッチはある?」 「そもそも寝違え後にストレッチをしても良い?」 「ストレッチをすべきではないサインは?」 寝違え直後は、炎症を悪化させる恐れがあるため、痛めた部位(患部)のストレッチはNGです。 本記事では、寝違え直後のストレッチがNGである理由をはじめとして以下を解説します。 ストレッチ以外のNG行為 首の寝違えを改善するストレッチ ストレッチを中断すべきサイン ストレッチ以外の対処法 予防のためのストレッチ2選 寝違い以外の病気が隠れていた際にストレッチを行うと、病状を悪化させることもあります。寝違えに対するストレッチの理解を深めるために本記事を役立ててください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。長引く痛みなどお悩みの症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寝違え直後のストレッチはNG! 寝違え直後のストレッチは、患部の炎症を悪化させる恐れがあります。寝違え直後は、タオルで巻いた保冷剤や氷水を入れたビニール袋で冷やして安静に過ごすことが重要です。 冷やし方は以下の通りです。 痛む部分を10分ほど冷やしたあとにしばらく離す 3〜4回ほど繰り返す 寝違え直後は、炎症を鎮めるために安静を優先してください。2〜3日後に症状が改善し始めたら軽いストレッチを少しずつ始めていきます。 その他の寝違え直後のNG行為 寝違え直後は、ストレッチ以外にも以下のことは実施すべきではありません。 患部を温める 患部のマッサージ これらを寝違え直後に実施すると、ストレッチと同様に炎症を悪化させる恐れがあります。なお、寝違えた当日は入浴も避けてください。 首の寝違えを改善するストレッチ 以下のストレッチは、首の寝違えの改善を期待できます。 手順 ステップ1 1.椅子に座り右腕を下げて肘を伸ばす 2.伸ばしたまま後ろに引き上げる 3.自然に止まった場所で20秒キープする ステップ2 1.腰の後ろに右手を当てる 2.腰に右手を当てたまま肘を後ろに引き20秒キープする ステップ3 1. 右腕を体の横に水平に上げ、天井方向に肘を曲げる(斜め上に45°くらい) 2. そのまま右腕を軽く後ろに引く 3. 20秒キープする 左側も同様の手順でストレッチを行います。改善しない場合やストレッチ中に首や肩を痛めた場合は医療機関を受診してください。 寝違え後のストレッチを中断すべきサイン ストレッチを行った翌日に痛みが強くなるのであれば中断すべきです。 その他にも、以下のような症状が現れている場合はストレッチを中断してください。 3日以上続く痛み 発熱 手足の痺れ 脱力感 首を動かすと現れる手足の痛み これらの症状が現れている場合は、椎間板ヘルニアや脊椎炎、脊椎腫瘍などの寝違え以外の病気が発生している恐れがあります。医療機関を受診して適切な検査を受けてください。 寝違えた後のストレッチ以外の対処法 寝違えた後のストレッチ以外の対処法として、痛み止めの薬の服用や湿布の活用があります。痛み止めの薬は痛みが強く、痛みにより動きが制限されているときなどに服用を検討します。服用後は安静にして過ごしてください。 湿布は以下のように活用します。 湿布の種類 活用方法 冷湿布 ・寝違え直後に痛めた部位を冷やす目的で使用する ・炎症を鎮める効果が期待できる 温湿布 ・痛みが改善傾向になったら使用する ・筋肉を温めることで血行の促進や柔軟性を向上させて、寝違えの再発予防が期待できる 【関連記事】 首や背中の寝違えにロキソニンは効く?カロナールとの違いも解説 寝違えに湿布は効果的?正しい使い方とNG行為を解説 寝違えを予防するストレッチ2選 寝違えを予防するストレッチとして以下の2つを解説します。 肩周りや肩甲骨の柔軟性を高めるストレッチ 首の斜角筋の柔軟性を高めるストレッチ それぞれの詳細を解説します。 肩周りや肩甲骨の柔軟性を高めるストレッチ 以下のストレッチは肩周りや肩甲骨の柔軟性を高め、寝違えの予防を期待できます。 手順 ステップ1 1.椅子に座り片方の肘を下ろして伸ばす 2.そのまま背中側に引き上げ20秒間静止する 3.左右両方2〜3回を目安に行う ステップ2 1. 腕を横に水平に上げ、肘を直角に曲げて手を前に向ける 2.そのまま胸を広げるように肘を背中側に引く 3.左右両方2〜3回を目安に繰り返す ステップ3 1.腕を横に水平に上げ、肘は天井に向けて90°に上げる 2.そのまま胸を広げるように肘を背中側に引く 3.左右両方2〜3回を目安に繰り返す 日々の習慣にこれらのストレッチを取り入れることで、寝違え予防を期待できます。ストレッチを行った翌日に痛みが現れる場合は中断してください。 首の斜角筋の柔軟性を高めるストレッチ 以下のストレッチは、首の斜角筋(首筋辺りの筋肉)の柔軟性を高めて寝違え予防を期待できます。 手順 斜角筋への直接的なストレッチ 1.椅子に座り左側の頭部の耳の上辺りに右手を置く 2.右耳を右肩に付けるようにゆっくりと首を横に倒す 3.無理しない程度でそのまま顔を天井方向に傾ける 4.呼吸をしながら首筋が伸びているのを感じる 5.左右両方30秒を3回ずつ行う 斜角筋への間接的なストレッチ 1.椅子に座り後ろで両手を組む 2.左右の肩甲骨を引き寄せてそのまま胸を突き出す 3.呼吸をしながら30秒間キープする 4.30秒を3回行う とくに普段から肩こりがひどい方に効果的です。ストレッチ中にしびれなどの症状が現れたら中断してください。 まとめ|寝違え直後のストレッチはNG!冷やして安静に過ごそう 寝違え直後は、痛めた部位の炎症を悪化させる恐れがあるためストレッチは実施しないでください。寝違え直後は、冷やして安静にすることが大切です。 「タオルで巻いた保冷剤等で痛む部分を10分ほど冷やしたあとにしばらく離す」を3〜4回繰り返してください。2〜3日様子を見て痛みが改善し始めたらストレッチを取り入れていきましょう。 激しい痛みや3日以上持続する痛み、発熱、手足の痺れ、脱力感、首を動かすと現れる手足の痛みなどの症状が現れている場合は、寝違い以外の病気が隠れている恐れがあります。ストレッチは実施せず医療機関を受診してください。
2026.02.02 -
- ひざ関節
- 膝の外側の痛み
- スポーツ外傷
「膝の外側が痛くて走れない」「腸脛靭帯炎が疑われるもののどう対処すれば良いのかわからない」といった悩みを抱える方もいるでしょう。腸脛靭帯炎(ランナー膝)は、膝の外側にある腸脛靭帯が炎症を起こすことで痛みが生じるスポーツ障害の一つです。悪化すると歩行や階段昇降でも痛みが出るため、適切な治療が欠かせません。 今回は、腸脛靭帯炎の症状や原因、治し方などをわかりやすく解説します。腸脛靭帯炎のときにやってはいけないことやセルフケアについてもまとめているので、膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)とは 腸脛靭帯炎は、太ももの外側を走る「腸脛靭帯」が炎症を起こすことで痛みが生じる疾患です。腸脛靭帯は骨盤からすねの骨までをつなぐ靭帯で、膝の曲げ伸ばしを支える役割があります。 腸脛靭帯炎は長距離ランナーやマラソン愛好者など、繰り返し膝を曲げ伸ばしする動作を行う人に多く見られ、走行中やランニング後に痛みが出やすい点が特徴です。このような背景から、「ランナー膝」とも呼ばれています。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の症状 腸脛靭帯炎の主な症状は膝の外側の痛みです。そのほか、特徴的な症状には次のようなものがあります。 走行中やランニング後に膝の外側がズキッと痛む 階段の昇降や膝の曲げ伸ばし動作で痛みが増す 歩行時に膝の外側に張りや違和感を感じる 膝の外側を押すと鋭い痛みが走ることがある 初期段階では軽い違和感で済むことが多いものの、痛みを我慢して走り続けると炎症が悪化し、歩行にも支障が出るほど重症化するケースもあります。そのため、腸脛靭帯炎が疑われる場合は、早めの休息と適切な対処が必要です。 関連記事:ランナー膝の治し方は?やってはいけないことや膝の外側の痛みのチェック方法も解説 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の原因 腸脛靭帯炎は、膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで腸脛靭帯と大腿骨の外側がこすれ続けることが主な原因です。こすれる回数が増えるほど摩擦が大きくなり、炎症が生じやすくなります。 腸脛靭帯炎の発症リスクを高める要因には以下のようなものがあります。 長距離ランニング 坂道走行などの負荷の高いトレーニング アスファルトなど硬い路面での練習 O脚や偏平足などの問題 太ももや股関節の筋力不足 クッション性が低い靴の使用 など これらの要因が重なると炎症を起こしやすくなるため、トレーニング環境の見直しや適切なシューズ選びなどをして、膝への負担を減らすことが重要です。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)のときにやってはいけないこと 腸脛靭帯炎は、間違った対処をすると回復に時間がかかるだけではなく、慢性化につながる可能性があります。そのため、腸脛靭帯炎のときは以下のような行動に注意しましょう。 強い痛みがある状態でランニングを続ける 長時間立ち仕事をする 長時間同じ姿勢を維持する 急な方向転換やジャンプ動作をする 痛む箇所を強く押す 必要以上にストレッチを行う 摩耗した靴を履いて走行する 炎症がある時期は安静を優先し、痛みを悪化させる行動を避けることが早期改善につながります。無理を続けると症状が長引くだけでなく、再発の恐れもあるため注意が必要です。膝の外側に痛みが生じたら運動を中止し、早めに医療機関を受診しましょう。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治し方 腸脛靭帯炎は、早期の治療と再発予防が大切です。代表的な治療法は保存療法・手術療法・再生医療の3つで、症状の程度や治療目的に応じて選択されます。ここでは、それぞれの治療法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 保存療法は、腸脛靭帯炎の治療で最も一般的な治療法です。 腸脛靭帯炎の保存的治療は、腸脛靭帯の緊張を和らげるストレッチや、筋力強化などの理学療法を組み合わせて行うのが基本です。また、必要に応じて、超音波や電気刺激などの物理療法を併用して痛みを軽減します。 なお、痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬やステロイド注射を使用するケースもあります。治療の継続によって炎症を抑え、症状を改善して運動復帰を目指します。 手術療法 手術療法は、数カ月保存療法を継続しても症状が改善しない重度の腸脛靭帯炎に限り検討されます。腸脛靭帯炎の手術では、腸脛靭帯の一部を切除し、骨との摩擦を減らすことで炎症の原因を取り除きます。 ただし、腸脛靭帯炎は保存療法で改善するケースが多く、手術はあくまで最終手段です。手術後にはリハビリが必要になるため、回復までの時間も考慮して慎重に判断されます。 再生医療 腸脛靭帯炎の治療法として、再生医療が注目されています。主にPRP療法(多血小板血漿注射)や幹細胞治療などが用いられ、自己細胞を炎症部位や損傷部位に注入して組織の修復を促します。 再生医療は手術をせずに回復を目指せる点が特徴です。そのため、ほかの治療法で十分な効果が得られていない方や手術を避けたい方の選択肢となります。ただし、再生医療は保険適用外の治療も多いため、専門医との十分な相談が不可欠です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。腸脛靭帯炎の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)を早く治すためのセルフケア 腸脛靭帯炎は治療と並行して自宅でできるセルフケアを取り入れると、より早い改善が期待できます。ここでは、腸脛靭帯炎のセルフケア方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 ストレッチでほぐして負担を軽減する 腸脛靭帯炎を早く治すためには、ストレッチでほぐして膝への負担を軽減することが大切です。ただし、痛みが強い時期に無理なストレッチをすると症状が悪化する可能性があるため、炎症が落ち着いてから行いましょう。 腸脛靭帯炎のセルフケアにおすすめのストレッチは、以下の4種類です。 ストレッチ名 方法 期待できる効果 フォワードフォールド 直立して左足を右足の後ろに交差させる 腰を前に倒し、左わき腹が伸びる位置で手を床につく その姿勢で2〜3秒キープする 元の姿勢に戻る 太もも裏・お尻・腰を伸ばす ラテラルストレッチ 壁や椅子に片手を添えて体を安定させる 壁側の足を後ろに引き、反対側の足と交差させる 壁に向かって腰を寄せ、壁側の腰まわりをしっかり伸ばす 元の姿勢に戻る 体の側面・太もも外側を重点的にほぐす 4の字ストレッチ 仰向けに寝て膝を立て、足を腰幅より少し広めに開く 右足首を左膝に乗せて「4の字」を作る 組んだ足で反対側の膝をゆっくり床方向へ押し下げる 元の姿勢に戻る お尻・股関節をほぐす タオルを使ったストレッチ 床に座り、タオルを片足にかける そのまま仰向けになり、タオルをかけた足をまっすぐ天井へ伸ばす 反対側の足のかかとが床についたままになっているか確認する 持ち上げた足をゆっくりと体の反対側へ倒して伸ばす 腸脛靭帯周辺を伸ばす これらのストレッチを日常的に取り入れることで、腸脛靭帯への負担が減り、再発予防につながります。 痛みを早く取るために、痛みがあるうちにストレッチをすることは厳禁です。かえって痛みが再発する可能性が高いです。ストレッチは走った時の痛みがないことを確認し、再発予防にストレッチを取り入れるという意識で行いましょう。 テーピングやサポーターで膝の安定性を高める 腸脛靭帯炎の改善には、テーピングやサポーターの使用もおすすめです。テーピングやサポーターを使って膝の安定性を高めると、ランニング時の摩擦や負荷を軽減しやすくなります。 テーピングは貼り方によってサポートの強さや位置を細かく調整できるため、症状に合わせやすい反面、正しく巻くには知識や練習が必要です。一方で、サポーターは着脱が簡単で初心者でも手軽に使える点が魅力です。そのため、運動時だけではなく、日常生活でも利用しやすいでしょう。 症状の程度や運動量に合わせて、ご自身に合った方法を選ぶようにしてください。 自分に合った靴を選ぶ 足に合わない靴を履いていると膝に余分な負荷がかかり、腸脛靭帯炎を引き起こす原因になりかねません。そのため、靴選びは予防・改善の上における重要なポイントです。具体的には、以下のポイントを確認して靴選びをしましょう。 つま先に適度な余裕があるか かかとがしっかり固定されるか クッション性が十分か 自分の足型(扁平足・ハイアーチなど)に合っているか 腸脛靭帯炎は自分に合った靴に変えるだけで症状が改善するケースもあります。また、日頃からソールが極端にすり減っていないか靴の状態をチェックして早めの対策に努めましょう。 関連記事:腸脛靭帯炎を早く治す方法は?やってはいけないことや何日で治るか解説【医師解説】 腸脛靭帯炎(ランナー膝)を早く治すためにも早期治療に取り組もう 腸脛靭帯炎を早く治すためには、初期の段階で適切な対処を行うことが重要です。 腸脛靭帯炎は、膝の違和感や軽い痛みの段階でランニングを中止し、ストレッチや筋力強化などのケアを行うことで、比較的早期の改善が期待できます。しかし、痛みを無視して走り続けたり、無理にトレーニングを継続すると炎症が悪化し、慢性化して回復までに長い時間がかかります。 腸脛靭帯炎からの早期回復を目指すためにも、症状が現れた時点で早めに医療機関を受診するようにしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)に関するよくある質問 腸脛靭帯炎がなかなか治らないのはなぜですか? 腸脛靭帯炎が治りにくいのは、多くの場合、使いすぎによる炎症が長期間続いているためです。痛みを我慢して走り続けたり、長時間同じ姿勢で過ごしたりすることで組織の回復が追いつかず、炎症が慢性化しやすくなります。 また、足に合わない靴の使用や筋力のアンバランスの乱れといった根本原因が改善されないことも回復を遅らせる要因です。腸脛靭帯炎がなかなか治らない場合は、原因を見極めて適切に対処する必要があります。 腸脛靭帯炎は走りながら治せますか? 腸脛靭帯炎の治療は安静が基本です。そのため、痛みを感じる段階でのランニングは推奨できません。 治療の進行度によっては軽めのジョギングを再開できる場合もありますが、歩行や階段昇降など日常動作で痛みがないか確認してから、無理のない範囲で行いましょう。 関連記事:ランニングによる膝外側の痛み|ランナー膝(腸脛靭帯炎)の直し方や予防法について解説
2026.02.02 -
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
「肩の痛みが続いている」「腕を上げたときに引っかかる感じがする」といった悩みを抱えている方は、肩関節唇損傷の可能性があります。肩関節唇損傷は、肩の安定性を保つために重要な「関節唇」が損傷することで、日常生活やスポーツ動作に支障をきたす疾患です。放置すると悪化し、脱臼や慢性痛につながるため注意が必要です。 今回は、肩関節唇損傷の症状や原因、治し方などをわかりやすく解説します。リハビリ期間と復帰の目安についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷とは 肩関節唇損傷とは、肩関節の安定性を保つ重要な組織である「関節唇」が損傷した状態のことです。 関節唇は肩の受け皿を補強して関節の安定性を保つ組織で、スポーツでの強い腕の振りや反復する動作によって傷つきやすい部位です。 とくに野球やバレーボール、テニスといった腕を頭上に大きく振り上げるオーバーヘッド動作を繰り返す競技では負担が蓄積しやすく、肩関節唇損傷の発生が多いことで知られています。 肩関節唇損傷の症状 肩関節唇損傷の主な症状は、以下のとおりです。 肩の痛み 肩の不安定感 可動域の制限 など とくに腕を振り上げる動作や、背中側に手を回す動作で痛みが強くなる点が特徴です。 また、肩を動かしたときに「引っかかる感じがする」「肩が抜けそうで不安」といった違和感を覚えるケースも少なくありません。ほかにも、動作時に音が鳴ったり、力が入りにくくなったりすることもあります。 なお、これらの症状が続く場合、放置すると悪化することもあるため、早めに医療機関を受診して診断を受けることが大切です。 肩関節唇損傷の原因 肩関節唇損傷は、スポーツによる過度な負担や外傷によって引き起こされます。とくに野球やバレーボール、テニスなどのオーバーヘッド動作を繰り返す競技では、腕を大きく振り上げるたびに肩関節へねじれや牽引の力が加わり、関節唇が徐々に摩耗して損傷しやすくなります。 一方で、転倒して手をついたり相手と衝突したりする際に急激な外力が加わって、関節唇が一気に傷つくことも原因の一つです。また、肩の脱臼を起こした際に関節唇が剝がれるように損傷するケースもあり、これが反復性脱臼につながる場合もあります。 このように、繰り返しの負荷や突発的な外力などが肩関節唇損傷の主な原因となっています。 肩関節唇損傷のテスト方法 肩関節唇損傷が疑われる場合、肩を動かして痛みの出方を確認する徒手検査を実施するのが一般的です。肩関節唇損傷の徒手検査には以下のようなテスト方法があります。徒手検査や問診、画像検査を組み合わせて診断し、必要に応じて関節鏡で最終確認します。 テストの種類 概要 O'Brien(オブライエン)テスト 肩を90°前方挙上・内旋させた状態で抵抗を加え、痛みの有無を確認 上方関節唇損傷推定 Crank(クランク)テスト 肩を90°外転・肘を90°屈曲した状態で肩関節に軸圧をかけ、内外旋時のクリック音や違和感を確認 上方関節唇損傷推定 Speed(スピード)テスト 肩を90°前方挙上・肘伸展・前腕回外した状態で抵抗を加え、関節唇や上腕二頭筋腱の痛みを確認 上方関節唇損傷推定 Apprehension(不安定性)テスト 肩を90°外旋・外転した状態での不安定感や脱臼感を評価する 関節唇損傷推定 なお、複数のテストを併用することで診断の精度が向上し、より適切な治療方針を立てることが可能です。各検査の具体的な方法や特徴については、こちらの記事で詳しく紹介しています。 肩関節唇損傷の治し方 肩関節唇損傷の治療法は、損傷の程度や症状の強さ、患者の生活スタイルやスポーツ活動レベルによって異なります。まずは保存療法で炎症や痛みを抑えつつ機能回復を目指し、必要に応じて薬物療法や手術療法を検討するのが一般的です。 ここでは、肩関節唇損傷の代表的な治療法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 保存療法は、安静や運動制限、理学療法を組み合わせて損傷した関節唇の自然治癒を促す方法です。初期は炎症を抑えることを優先し、安静の確保やアイシングで肩への負担を最小限にします。また、可動域が狭くならないよう、無理のない範囲で軽いストレッチも行うことがポイントです。 痛みが落ち着いてきたら、肩周囲の筋肉を鍛えるトレーニングや、肩甲骨の動きを改善するエクササイズを取り入れ、徐々に肩の安定性を高めていきます。損傷が比較的軽度であれば保存療法のみで症状が改善し、手術を回避できる可能性があります。 薬物療法 薬物療法は、痛みや炎症を抑えてリハビリを円滑に進める保存的治療の一つです。 一般的にはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が用いられ、動作時の痛みを抑えることで、リハビリやトレーニングの効果を高められます。また、炎症が強い場合にはヒアルロン酸注射やステロイド注射を併用した治療が行われるケースもあります。 ただし、薬物療法はあくまで痛みや炎症を抑える対症療法であり、関節唇そのものを修復するものではありません。そのため、多くの場合はリハビリやほかの治療と組み合わせて実施します。 手術療法 手術療法は、損傷部を修復して肩の安定性と機能を回復させる治療法です。関節唇の損傷が大きい場合や、競技復帰を目指すスポーツ選手などの場合は、関節鏡手術による修復が選択される場合があります。 関節鏡手術は小さな傷口からカメラと器具を挿入して行う低侵襲手術で、損傷した関節唇を縫合し、肩の安定性を回復させます。術後は肩を一定期間固定して安静を保ち、段階的にリハビリを実施します。完全復帰までには数カ月を要しますが、スポーツ活動を再開したい方にとって有効な選択肢です。 再生医療 肩関節唇損傷の治療法として、従来の治療で十分な改善が見られないケースでは、再生医療が新たな選択肢となりつつあります。主にPRP療法(多血小板血漿注射)や幹細胞治療など、自身の細胞や成分を利用して損傷部位の修復を促す方法が代表的です。 再生医療は、手術せずに肩関節唇損傷を治したい方や早期のスポーツ復帰を目指す方の治療を後押しする治療法です。ただし、医療機関によって実施状況が異なるため、治療を希望する際は医師への相談が不可欠です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。肩関節唇損傷の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷のリハビリ方法 肩関節唇損傷のリハビリは、以下のように3段階で進めるのが基本です。(文献1) 1.炎症管理 痛みの軽減と可動域の維持 2.可動域拡大 可動域の改善と筋力の強化 3.動作練習 競技動作の練習 手術後の初期は安静を保ち、癒着防止のための軽い運動からリハビリを開始します。1〜2カ月で可動域と筋力の改善を図り、3カ月以降は競技動作の再習得に取り組みます。なお、肩関節唇損傷のリハビリは必ず医師や理学療法士の指導下で進めることが重要です。 肩関節唇損傷のリハビリ期間と復帰の目安 肩関節唇損傷からの回復期間は、損傷の程度や治療内容によって大きく変わります。 手術後の目安としては、日常生活への復帰まで約1カ月、スポーツや激しい運動への復帰には3〜6カ月必要とされています。軽度の損傷で保存療法が中心の場合は比較的早く回復しやすい一方、手術をする場合は一定期間の固定や段階的なリハビリが必須となり、復帰までに時間を要するのが一般的です。 また、筋力や可動域の回復度、痛みの有無によってリハビリの進度も変わるため、自己判断で負荷を増やすことは避けましょう。医師や理学療法士の指導に従って段階的に運動量を調整しながら無理のない復帰を目指すことが、結果として早期復帰につながります。 なお、肩関節唇損傷の再発予防に効果的なセルフケアについて知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。 関連記事:肩が痛いのは病気のサイン?がんの可能性や注意すべき症状を解説 肩関節唇損傷から早期復帰を目指すためには適切な治療法を選択しよう 肩関節唇損傷から早期復帰を目指すためには、早期診断と適切な治療法の選択が欠かせません。軽度であれば保存療法で改善が見込めますが、症状が強い場合や競技復帰を目指す場合は手術療法や再生医療が選択肢となります。 また、肩の安定性を回復させるためには、治療と並行して段階的なリハビリに取り組むことが重要です。自身の症状や治療目的に合わせて適切な方法を選び、無理のないペースで回復を目指しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 肩関節唇損傷に関するよくある質問 野球やバレーボールの選手が肩関節唇損傷になりやすいのはなぜですか? 野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツでは、腕を高く振り上げる動作を繰り返すことにより肩関節にねじれや牽引のストレスがかかるため、肩関節唇損傷につながりやすいと考えられます。 こうしたストレスが積み重なると、関節唇が摩耗して微細な損傷が生じやすくなり、結果として肩関節唇損傷につながるリスクが高まります。 肩関節唇損傷を放置するとどのようなリスクがありますか? 肩関節唇損傷を放置すると、肩の不安定感が強まり、脱臼や再損傷を繰り返す可能性が高まるため注意が必要です。また、痛みが慢性化すると肩の可動域が狭くなり、衣服の着脱や荷物の持ち上げといった日常動作にも支障をきたす可能性があります。 肩関節唇損傷を放置すると競技復帰が難しくなるケースもあるため、早期に診断を受け、適切な治療を行うことが重要です。 肩関節唇損傷は手術しなくても治りますか? 軽度の肩関節唇損傷であれば、安静や理学療法などの保存的治療で痛みや機能の改善が見込めます。ただし、損傷した関節唇そのものが自然に元通りに修復されることはありません。 日常生活レベルの動作で問題がなければ保存療法で対応できますが、競技への完全復帰を目指す場合や肩の不安定感が続く場合は、手術療法が選択肢になります。 肩関節唇損傷のときにやってはいけないことはありますか? 肩関節唇損傷を発症した場合、痛みをこらえて肩を無理に動かしたり、自己判断で筋トレや投球を再開したりするのは避けましょう。自己判断で負荷をかけると炎症や損傷を悪化させる可能性があるためです。必ず医師や理学療法士の指示に従い、段階的にリハビリを進めることが重要です。 参考文献 文献1 投球障害肩のリハビリテーション治療|日本リハビリテーション医学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/55/6/55_55.495/_pdf
2026.02.02 -
- 脊椎
- 腰椎分離すべり症
「腰の違和感が続く」 「前屈みで重だるい」 日常動作やスポーツ中に感じる腰の痛みは、第五腰椎分離症の可能性があります。初期段階では軽い違和感や一時的な痛みで済むこともあります。 しかし、第五腰椎分離症は放置すると進行し治療が困難になるため、早期診断と適切な治療が欠かせません。 腰の痛みや違和感を感じた場合は、自己判断せずに整形外科などの医療機関を受診することが重要です。 本記事では、第五腰椎分離症について現役医師が詳しく解説します。 第五腰椎分離症の初期症状 第五腰椎分離症の原因 第五腰椎分離症の治し方(治療法) 第五腰椎分離症で起こりうる後遺症 第五腰椎分離症の予防法 記事の最後には、第五腰椎分離症についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 第五腰椎分離症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 第五腰椎分離症とは 項目 内容 病態 腰の一番下の骨(第五腰椎)の後ろ側に起こる疲労骨折 主な原因 スポーツでの反り・ひねり・ジャンプなどによる繰り返しの負荷 起こりやすい人 成長期の中高生やスポーツを行う子ども 主な症状 運動時の腰の違和感や重だるさ 放置するリスク 骨癒合不全による慢性腰部症状や分離すべり症への進行 治療 早期発見と安静、装具療法、リハビリによる回復 予防 ストレッチや体幹強化による負担軽減、違和感時の早期受診 腰椎は、背骨の腰部分を形成する5つの椎骨(第1〜第5腰椎)で構成され、正常な状態では前方の椎体と後方の椎弓が連続しています。分離症は、この椎弓と椎体をつなぐ関節突起間部(または椎弓根部)に疲労骨折が生じ、骨のつながりが失われた状態を指します。 とくに第五腰椎に好発し、成長期のスポーツを行う子どもに多いのが特徴です。(文献1) 身体が柔らかい成長期に、ジャンプや腰の回旋などの動作を繰り返すことで生じ、外傷というよりも慢性的なストレスによって発症します。 一般の人の約5%にみられますが、スポーツ選手では30〜40%が分離症を有すると報告されています。(文献2) 第5腰椎は腰椎の最下部に位置し、構造的および力学的に「反る」や「ひねる」といった動作による負荷を最も受けやすい部位です。さらに骨癒合しにくい傾向があることも報告されています。(文献1) 腰椎分離症とすべり症の違い 比較項目 腰椎分離症 すべり症 病態 腰の骨の椎弓が疲労骨折して分離した状態 背骨の本体(椎体)が前方または後方にずれた状態 主な原因 スポーツでの反りやひねり動作の繰り返しによる疲労骨折 分離症の進行による不安定性、または加齢による椎間板や靭帯の変性 起こりやすい年齢 成長期の中高生やスポーツをしている子ども 分離すべり症は若年者、変性すべり症は中高年 主な症状 運動時の腰の違和感、重だるさ、慢性的な腰痛 腰の痛みやしびれ、歩行時の足の疲れやすさ、間欠性跛行 治療法 安静、装具療法、体幹筋トレーニングによる保存療法 保存療法または進行例での手術療法 (文献2) 腰椎分離症は、腰椎の後方部分にある椎弓が、繰り返しの負荷によって疲労骨折を起こし、骨の連続性が失われた状態です。症状が進行すると、分離した椎骨が前方にずれてしまい、腰椎すべり症へ移行する場合があります。 分離症の段階では安静やリハビリで回復が期待できますが、進行してすべり症になると神経が圧迫され、下肢のしびれや痛みが生じることがあります。 両者は進行の段階が異なる疾患であり、早期発見と適切な治療が、すべり症への進行を防止する上で大切です。 以下の記事では、腰椎すべり症について詳しく解説しています。 第五腰椎分離症の初期症状 初期症状 詳細 運動時の腰の違和感・重だるさ スポーツ中や練習後に腰の奥に感じる鈍い違和感や重だるさ 運動後や翌日のこわばり・張り感 運動の翌朝に腰の筋肉が張って動きづらくなる感覚 身体をひねる・反らすときの局所的な違和感 腰を反らす・ねじる動作時に同じ部位に生じるピンポイントの違和感 安静で軽減し再発を繰り返す違和感 休むと和らぐが、運動を再開すると再び現れる繰り返しの違和感 第五腰椎分離症の初期には、運動時に腰の奥に重だるさや違和感を覚えることが多く、運動後や翌日にかけて腰の張りやこわばりを感じる場合があります。 身体を反らしたりひねったりする際に、特定の部位へ違和感が集中するのも特徴です。 安静にすると一時的に症状が和らぐものの、運動を再開すると再び症状が現れることが少なくありません。このような症状は、早めの受診と適切な対応が必要です。 以下の記事では、腰椎分離症のセルフチェックについて詳しく解説しています。 運動時の腰の違和感・重だるさ 第五腰椎分離症では、腰の椎弓に繰り返しの負荷がかかることで疲労骨折が生じ、亀裂部位に炎症が起こります。 炎症による腫れや血流増加が違和感や重だるさを引き起こし、骨の安定性低下により周囲の筋肉や靭帯への負担が増加します。とくに腰を反らす・ひねる動作では分離部に刺激が加わり、症状が強く出やすくなります。 安静にすると症状は一時的に軽くなりますが、運動を再開すると再発しやすく、早期の診察と適切な治療が進行を防ぐために重要です。 運動後や翌日のこわばり・張り感 運動後や翌日に感じる腰のこわばりや張り感は、第五腰椎分離症の初期にみられる症状のひとつです。 運動による繰り返しの負荷で腰の筋肉が緊張し疲労が蓄積すると、硬さや張りを感じやすくなります。また、分離部の炎症や腰椎の不安定性によって筋肉や靭帯に過度な負担がかかり、張りや違和感が強まることがあります。 睡眠中に十分な回復が得られない場合は、翌朝まで症状が続くこともあり、単なる筋肉痛と自己判断してストレッチやマッサージを続けると、症状を悪化させる恐れがあります。 安静にしても違和感が取れない場合は、疲労骨折の有無を確認するため、早めに整形外科を受診しましょう。 身体をひねる・反らすときの局所的な違和感 第五腰椎分離症では、腰をひねる・反らす動作時に特定部位の違和感が生じることがあります。これは椎弓の疲労骨折部にストレスが集中し、炎症反応が生じるためです。 骨折部が偽関節化すると、局所的な不安定性が増し、動作時の違和感が顕著になります。また、炎症により周囲の筋肉・靭帯・神経が刺激されることも症状の一因です。 これらの動作では腰椎に通常より強い負荷がかかるため、骨折部周囲の組織が伸展・圧迫され、症状が増強します。このような特徴的な症状がある場合は、早期に整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 安静で軽減し再発を繰り返す違和感 第五腰椎分離症では、椎弓に生じた疲労骨折部に負担がかかることで違和感が現れます。安静にすると一時的に症状は和らぎますが、骨の癒合が不十分なまま動作を再開すると、負荷がかかり違和感が再発しやすくなります。 コルセットによる固定で一時的な安定が得られても、治癒には時間がかかるため、早期の無理な運動再開は禁物です。 また、骨が完全に癒合せず偽関節となる場合には、わずかな動きでも違和感が残ることがあります。症状を繰り返す場合は、医師の診察を受けて骨の癒合状態を確認し、適切な治療とリハビリが必要です。 第五腰椎分離症の原因 原因 詳細 繰り返される腰部へのストレスと過度な運動負荷 ジャンプ、反り、ひねり動作などによる腰椎への繰り返しの衝撃や疲労の蓄積 成長期特有の骨の未熟性と構造的脆弱性 成長期は骨が未成熟で強度が不十分なため、椎弓部に疲労骨折が生じやすい時期 体幹筋力の不足とアンバランス 腹筋や背筋の筋力低下、左右差による腰椎への過剰な負担 不良姿勢と柔軟性の低下 猫背や反り腰などの姿勢不良、股関節や太ももの筋肉の硬さによる腰部ストレスの増加 第五腰椎分離症における主な原因は、繰り返される腰部への負荷と成長期の骨の脆弱性です。とくにスポーツ中の腰を反らす・ひねる動作の反復により、椎弓部に疲労骨折が生じやすくなります。 体幹筋力の不足や柔軟性の低下、不良姿勢が加わることで、腰椎への負担はさらに増大します。競技レベルや練習量が増加する成長期は症状が進行しやすいため、適切なコンディショニングと十分な休養が大切です。 以下の記事では、野球で多い怪我のひとつである腰椎分離症について詳しく解説しています。 繰り返される腰部へのストレスと過度な運動負荷 第五腰椎分離症は、成長期の骨が未成熟な時期に腰部への反復負荷が加わることで発症します。 とくに11〜15歳頃は骨の強度が不十分で、反復する腰部への負荷によって発症しやすい時期です。 第五腰椎は上半身と骨盤の境界に位置し、体重や動作によるストレスが集中しやすいため、分離症の好発部位です。 過度な練習や休養不足により骨の修復が追いつかない場合、負荷が蓄積し症状が進行します。なお、骨格形態・柔軟性・筋力バランスなどの個人差も発症リスクに影響するため、同じ環境下でも発症有無に差がでます。 成長期特有の骨の未熟性と構造的脆弱性 第五腰椎分離症の発症には、成長期における骨の未成熟性が大きく関与しています。成長期の骨は骨化が不完全で成長軟骨が多く存在するため、反復負荷に対する耐久性が低い状態です。 また、急速な骨格の成長に対して筋肉や靭帯の発達が追いつかないことで、腰椎周囲へのストレスが増大します。とくに体重負荷や動作時のストレスが集中しやすい部位であり、未成熟な骨では疲労骨折が生じやすくなります。 過度な運動負荷や休養不足により骨の修復能力を超えた負担が継続すると、分離症の発症リスクが高まります。成長期の骨の脆弱性を理解し、適切な休養とトレーニング管理を行うことが重要です。 体幹筋力の不足とアンバランス 体幹筋は腰椎の安定性維持に重要な役割を果たしており、筋力不足や筋バランスの乱れは第五腰椎分離症の発症リスクを高めます。 腹筋・背筋のバランスが崩れると、腰椎に不均等な負荷がかかり、椎弓部へのストレスが集中します。また、体幹筋が不十分な状態でジャンプやひねり動作を行うと、腰椎の安定性が低下し、疲労骨折が生じるため注意が必要です。 背筋のみを強化し腹筋が弱い場合、腰椎の前後バランスが崩れ症状を悪化させる可能性があります。予防には、バランスの取れた体幹筋力強化と、股関節・ハムストリングスの柔軟性維持が不可欠です。 不良姿勢と柔軟性の低下 不良姿勢や柔軟性の低下は、第五腰椎分離症の発症や悪化に関与します。猫背や前かがみ姿勢、腰を反らした姿勢を長時間続けると、腰椎の特定部位に負荷が集中し、椎弓部への疲労骨折が生じやすくなります。 不良姿勢は筋バランスを崩して骨への負担を増やし、柔軟性の低下とともに腰椎へのストレスを高めるため、日常生活での姿勢改善やストレッチ、適度な運動が欠かせません。 第五腰椎分離症の治し方(治療法) 治療法 詳細 保存療法 安静やコルセット固定による骨の安定化と癒合促進、体幹筋トレーニングやストレッチによる再発予防 薬物療法 炎症や筋緊張を和らげるための消炎鎮痛薬や筋弛緩剤の使用 手術療法 骨癒合が得られず症状が持続する場合に行う椎弓固定や骨片除去などの外科的治療 再生医療 損傷部位の修復を目的とした自己由来幹細胞や成長因子を用いる再生促進療法 治療は安静とコルセットによる固定から始め、症状が軽減した後にリハビリで体幹筋を鍛えて再発を予防します。 保存療法で改善が得られない場合は薬物療法により炎症を抑制し、重症例では手術療法を検討します。 再生医療は損傷部位の修復を目的とした治療法ですが、実施可能な医療機関は限られており、すべての症例に適応できるわけではありません。受診前に実施施設を確認し、医師と相談することが重要です。 以下の記事では、腰椎分離症の治療法について詳しく解説しています。 【関連記事】 腰椎分離症はどれくらいで治る?完治の目安・安静期間を医師が解説 腰の疲労骨折を早く治す方法5選|完治までの期間も解説 保存療法 項目 詳細 骨折の自然治癒を促す 安静と負担制限によって骨の自然な癒合を促進する治療法 コルセットで骨への負担を減らす 腰を固定して骨折部への動的負荷を軽減し、痛みの緩和と骨癒合を促す方法 運動制限により骨折部の悪化防止 スポーツや過度な動作を控え、炎症や偽関節の形成を防止する治療法 リハビリで筋力強化と柔軟性維持 コルセット除去後に体幹筋を鍛え、柔軟性を保つことで再発を予防する訓練法 手術に比べ身体への負担が少ない 保存療法で多くの場合は改善し、外科的手術を避けられる低侵襲な治療法 軽度の第五腰椎分離症では、まず安静と装具(コルセット)による固定が基本です。 スポーツ活動を一時中止して骨癒合を促す期間を確保し、成長期の骨の高い修復能力を活かして腰への負荷を抑えることで、疲労骨折や分離部の自然癒合が期待できます。 初期段階の分離症に対して、装具使用・安静・体幹運動を組み合わせた保存療法により、94.3%の骨癒合率が報告されています。(文献3) 症状軽減後は、医師の指導のもと体幹筋力トレーニングを開始し、医師の許可を得て段階的にスポーツ活動へ復帰します。 薬物療法 項目 詳細 炎症と痛みの軽減 骨折部の炎症を抑え、消炎鎮痛薬(NSAIDsなど)で痛みを和らげる症状緩和法 筋肉の緊張緩和 筋弛緩薬により腰部のこわばりや違和感を軽減し、動きを改善する治療法 治療効果の促進 痛みのコントロールにより、リハビリや保存療法を継続しやすくする支援療法 重症時の追加治療 強い痛みや神経症状に対して行う神経ブロック注射などの補助的治療法 副作用と使用期間への注意 胃腸障害などの副作用防止のため、医師の指示に従い適切に使用する管理法 薬物療法は、炎症や痛みを軽減し、日常生活やリハビリを円滑に行うための補助的治療です。非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩薬により、症状の緩和と動作時の負担軽減が図れます。 症状が強い場合には、神経ブロック注射などの注射療法を併用することがあります。副作用のリスクを避けるため、服用量や期間については医師の指示に従いましょう。 手術療法 項目 内容 保存療法で治癒しない場合の最終手段 骨の癒合が得られず痛みが続く際に行う安定化のための治療法 骨の動揺を抑え、症状を改善 スクリュー固定により骨のぐらつきを防ぎ、神経圧迫や痛みを軽減する治療法 低侵襲で早期の機能回復が可能 小切開で筋肉への負担を軽減し、早期の社会復帰を目指す治療法 適応は慎重に判断 症状の強さや生活への支障を考慮し、医師が適応を決定する 第五腰椎分離症の手術療法は、保存療法で症状が改善しない場合に検討される治療法です。手術では分離した骨をスクリューで固定し、腰椎の安定性を回復させます。 第五腰椎分離症が進行して腰椎分離すべり症に移行した場合や、神経根・馬尾神経の圧迫により下肢のしびれ、筋力低下、膀胱直腸障害などの神経症状が出現した場合には、除圧と固定術が必要です。 ガイドラインでは、保存療法で改善が得られない場合、神経症状を伴う場合、高度なすべりを認める場合が手術適応とされています。(文献4) 手術の実施にあたっては、症状の程度・日常生活への影響・年齢・活動レベルなどを総合的に評価し、医師と相談の上で決定します。 以下の記事では、腰椎分離症を含む腰痛の症状に対しての手術療法について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は、患者自身の脂肪から採取した幹細胞を用い、身体が持つ自然な回復力を活かす治療法です。 幹細胞には、他の細胞へ変化する分化能という性質があり、損傷した組織の修復を促す働きがあります。こうした幹細胞の特性を活かし、第五腰椎分離症などの整形外科疾患への応用に関する研究も進められています。 ただし、再生医療を実施できる医療機関は限られており、すべての症例が適応となるわけではありません。治療を検討する際は、医師と相談することが大切です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 第五腰椎分離症で起こりうる後遺症 起こりうる後遺症 詳細 腰椎分離すべり症への進行と構造的不安定性 分離部のずれによる腰椎の不安定化や、椎体の前方すべりによる脊椎構造の変化 慢性的な腰部症状と可動域制限 長期的な腰痛やこわばりの持続、前屈・後屈など動作制限の出現 体幹の筋力低下とバランス・姿勢の変化 腰部を支える筋肉の弱化による姿勢の乱れや動作時のバランス不良 神経症状(下肢のしびれや筋力低下) 神経根の圧迫による脚のしびれ、脱力、感覚鈍麻などの神経障害症状 第五腰椎分離症では、骨の分離部が進行すると腰椎が前方へずれる腰椎分離すべり症を生じ、脊椎の構造的不安定性を招くことがあります。 その結果、慢性的な腰痛や可動域の制限、体幹の筋力低下による姿勢の乱れ、神経圧迫による下肢のしびれや筋力低下などが生じることがあります。これらを防ぐには早期の診断と適切なリハビリ・治療が欠かせません。 以下の記事では、腰椎分離症で起こりうる後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】腰椎分離症が治らないと言われたあなたへ|改善策と慢性化を防ぐ方法を解説 腰椎分離症でやってはいけないこと5つ!正しい治し方を専門医が解説 腰椎分離すべり症への進行と構造的不安定性 観点 詳細 腰椎分離すべり症への進行 椎弓の疲労骨折によって骨の連続性が失われることで、第五腰椎椎体が前方へ移動し、腰椎分離すべり症へ進行する可能性がある状態 構造的不安定性 分離部の支持力低下により腰椎の安定性が損なわれ、体幹の動作時に椎間板や周囲組織へ過剰な負荷がかかる不安定な構造的状態 第五腰椎分離症は、椎弓の疲労骨折により腰椎後方の支持構造が失われ、腰椎が不安定な状態となる疾患です。この不安定性により、第五腰椎椎体が前方へ滑る腰椎分離すべり症へ進行することがあります。 不安定な腰椎には動作時の負荷が集中し、椎間板や周囲の筋肉・靭帯に過剰なストレスがかかることで、すべりがさらに進行します。 進行により神経根や馬尾神経が圧迫されると、腰痛や下肢のしびれ、重症例では膀胱直腸障害が出現するため、早期診断と適切な治療が必要です。 慢性的な腰部症状と可動域制限 第五腰椎分離症が慢性化すると、骨癒合が得られず偽関節が形成され、持続的な炎症により慢性腰痛を引き起こします。 腰椎の不安定性によって筋肉や靭帯が過緊張し、血流低下やこわばりから可動域が制限され、骨変形や骨棘による神経圧迫で腰痛や下肢のしびれ・筋力低下が生じます。 慢性化を防ぐためには、早期診断と適切な治療、継続的なリハビリが欠かせません。 体幹の筋力低下とバランス・姿勢の変化 項目 詳細 体幹の筋力低下 腹筋・背筋の弱化による腰椎支持力の低下と骨・靭帯への負担増加 バランス・姿勢の変化 筋力不均衡による重心の乱れと反り腰・猫背など不良姿勢の形成 負荷の集中 不安定な姿勢や動作による特定部位への力の偏りと椎弓への繰り返しのストレス 再発と進行リスク 筋力・姿勢の乱れが慢性化し、腰椎の不安定化や再負傷につながる可能性 第五腰椎分離症の後遺症として、体幹の筋力低下や姿勢の乱れがみられることがあります。 体幹筋が弱まると腰椎の安定性が損なわれ、骨や靭帯への負担が増し、痛みや再発のリスクが高まります。 筋力の不均衡や不良姿勢により腰椎に偏った負荷がかかり動作時のストレスが蓄積するため、バランスの取れた筋力トレーニングと正しい姿勢の維持が大切です。 神経症状(下肢のしびれや筋力低下) 第五腰椎分離症では、骨の分離部が不安定となり炎症が生じることで、周囲に形成される骨棘が神経を圧迫し、下肢のしびれや痛みを引き起こすことがあります。 分離すべり症へ進行すると、椎体の前方すべりにより脊柱管が狭窄し、神経圧迫が増強されます。 その結果、筋力低下や感覚障害が出現し、重症化すると膀胱直腸障害をきたすこともあるため、早期診断と適切な治療が必要です。 第五腰椎分離症の予防法 予防法 詳細 体幹強化と柔軟性の向上 腹筋や背筋を中心とした体幹トレーニングにより腰椎の安定性を高め、股関節やハムストリングスの柔軟性を維持する予防法 正しいフォームと姿勢の習慣化 スポーツ動作や日常姿勢での反り腰・猫背の改善と、腰を支えるための安定した軸の維持 成長期に応じた運動量の管理 骨が未成熟な時期に過度な練習や繰り返し動作を控え、十分な休息と回復を確保する運動管理法 第五腰椎分離症の発症や再発を防止するには、腰に負担をかけにくい身体の使い方を習慣化するのが基本です。 とくに成長期のアスリートは、筋力と柔軟性のバランスが崩れやすいため、体幹の安定性を高めるトレーニングが有効です。また、フォームの乱れや 過剰な練習量もリスクとなるため、日々の姿勢と運動量の適切な管理が予防につながります。 体幹強化と柔軟性の向上 第五腰椎分離症の予防には、体幹の強化と柔軟性の向上が欠かせません。体幹の深層筋(腹横筋や多裂筋など)を鍛えることで腰椎が安定し、過度な負担や疲労骨折の防止に寄与します。 また、筋持久力を高めることで長時間の運動や姿勢保持が可能となり、股関節やハムストリングスの柔軟性を向上させることで骨盤の動きが円滑になり、腰椎への負担が軽減されます。 これらのトレーニングは正しい姿勢の維持にもつながり、第五腰椎分離症の予防に有効です。プランクやドローイン、軽いストレッチなどを日常的に取り入れることが効果的です。(文献5) 正しいフォームと姿勢の習慣化 第五腰椎分離症を予防するには、正しい姿勢とフォームの習慣化が不可欠です。正しい姿勢を保つことで腰椎の生理的前弯が維持され、骨や筋肉への過剰な負担を防止します。 長時間の同一姿勢を避け、定期的に身体を動かすことも大切です。重量物を持ち上げる際は、腰椎を屈曲させず膝関節を使用するなど、適切な動作を意識することで腰椎への負荷を軽減できます。 また、座位姿勢では、深く腰掛けて背もたれを活用することが大切です。体幹筋力と柔軟性を維持することで、正しい姿勢を保ちやすくなり、腰椎へのストレス軽減に寄与します。 成長期に応じた運動量の管理 成長期は骨の成長が急速に進む一方で、筋肉や靭帯の発達が追いつかず、腰椎への負担が増えやすい時期です。 過度な運動を続けると疲労骨折や分離症のリスクが高まるため、運動量の管理が欠かせません。十分な休養を取り入れて疲労を回復させることが予防の基本です。 また、同じ動作や種目に偏らず、多様な運動で全身のバランスを整えることも大切です。腰痛を感じた場合は早期に医療機関を受診し、骨の癒合を促す適切な治療を受ける必要があります。 改善しない第五腰椎分離症は当院へご相談ください 第五腰椎分離症で腰の違和感が長引いたり、痛みを繰り返したりする場合は、分離部が癒合していない可能性があります。 そのまま放置すると、腰椎の不安定性が進行し、慢性的な腰痛や神経症状などの後遺症を招く恐れがあります。症状が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 第五腰椎分離症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、第五腰椎分離症に対して再生医療を用いた治療を行っています。 第五腰椎分離症に対する再生医療は、損傷した椎弓に対して患者自身から採取した幹細胞を用い、身体が本来もつ自然な修復力を活かして根本からの改善を目指す治療法です。損傷した組織の修復を促すことで、第五腰椎分離症の改善が期待できます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 第五腰椎分離症に関するよくある質問 第五腰椎分離症を早く治す方法はありますか? 早く治すための近道は、焦らず「適切な安静」と「段階的なリハビリ」を行うことです。 症状が軽減しても早期に運動を再開すると骨癒合が遅延するため、医師の許可が得られるまで安静を保ちましょう。 復帰後も体幹筋力トレーニングを継続することで、再発予防と競技への円滑な復帰が可能になります。 第五腰椎分離症と遺伝は関係ありますか? 腰椎分離症は、遺伝的素因が関与している場合があります。 激しい運動歴がなくても発症することがあり、家族内発症がみられるケースでは、遺伝的要因の関与が示唆されます。 子どもが第五腰椎分離症と診断された場合に注意すべきことはありますか? 第五腰椎分離症と診断された場合、成長期の未成熟な骨を保護するため、運動量や内容を慎重に管理し、過度な負荷や腰を反らす・ひねる動作を避けるようにしましょう。 症状がある場合は早期に整形外科を受診し、医師の指示に従って安静やコルセット装着などの治療を行い、十分な休養を確保します。 また、カルシウム、ビタミンD、タンパク質を含むバランスの取れた食事と規則正しい生活習慣を維持し、全身のバランスを整える運動や柔軟性トレーニングを取り入れることで、疲労蓄積を防ぎ、回復を促進します。 参考文献 (文献1) Characteristics of lumbar spondylolysis: L5 versus non-L5|BMC Musculoskeletal Disorders (文献2) 「腰椎分離症・分離すべり症」|公益財団法人 日本整形外科学会 (文献3) Conservative treatment of spondylolysis involving exercise initiated early and sports activities resumed with a lumbar-sacral brace|PubMed® (文献4) Lumbar Spondylolysis and Spondylolytic Spondylolisthesis: Who Should Be Have Surgery? An Algorithmic Approach|PMC PubMed Central® (文献5) 腰部・体幹障害予防とアスレティックトレーニング|日本アスレティックトレーニング学会誌 第5巻 第1号 19-25(2019)
2026.02.02 -
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「寝違えのよくある原因や一般的な症状は?」 「放置してはいけない症状や対処法はある?」 寝違えとは、筋肉や関節周囲の組織が炎症することで現れる痛みのことです。不自然な姿勢による睡眠によって引き起こされることが多いです。 本記事では、寝違えの概要をはじめとして以下を解説します。 寝違えの原因 一般的な症状と放置してはいけない症状 寝違え以外で考えられる病気 寝違え後の対処法3選 繰り返さないための予防法 首や背中の痛みには、寝違え以外の病気が隠れていることもあります。適切に対処するために本記事を役立ててください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。長引く痛みなどお悩みの症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寝違えとは筋肉や関節周囲の炎症による痛み 寝違えとは、筋肉や関節周囲の組織に炎症が起こり、痛みが生じることです。睡眠中の不自然な姿勢などにより血流が滞って炎症が起きると考えられています。 数日中に痛みが改善していく場合は問題ありません。しかし、痛みが長期間続いている場合や激しい痛みが現れている場合は、他の病気の可能性がないか調べる必要があります。 首や背中を寝違える原因 寝違えの主な原因は以下の通りです。 不自然な姿勢による睡眠 精神的なストレス 頭と枕の高さの不一致 慢性的な肩こりや筋肉の疲労 これらが筋肉の硬直や筋肉への血流不足を招き寝違えを引き起こします。 一般的な原因として知られているのは、不自然な姿勢による睡眠です。飲酒後や疲労が溜まっているときなどに、不自然な姿勢で睡眠をとってしまいます。 寝違えの一般的な症状 寝違えの一般的な症状は、寝違えた部分に現れる鈍い痛みです。また、寝違えには以下のような特徴があります。 首を動かすと肩や首に痛みが発生する 決まった方向に首を動かすと痛みが強くなる 首を傾けた姿勢になってしまう 寝違えの痛みは数日経過すると改善していきます。しかし、重度の寝違えの場合は、安静時の首の痛みや腕と肩の重苦しさ、しびれなどが現れます。 寝違えで放置してはいけない症状 以下のような症状が現れている場合は、ただの寝違えではない恐れがあります。 激しい痛み 3日以上続く痛み 発熱 手足のしびれ 脱力感 首を動かすと現れる手足の痛み これらの症状が現れている場合は、椎間板ヘルニアや脊椎炎などの寝違え以外の病気が発生している恐れがあります。医療機関を受診して適切な検査を受けてください。 寝違え以外で首や背中に痛みが生じる病気 寝違え以外で首や背中に痛みが現れる病気には、以下のようなものがあります。 首や背中に痛みが生じる病気 詳細 椎間板ヘルニア ・背骨のクッションである椎間板がはみ出して神経を圧迫する病気 ・頚椎(首の骨)の場合は首や肩甲骨、腕などに痛みが現れる ・悪化すると手足の痺れが現れる 脊椎炎 ・感染症などにより脊椎(背骨のこと)に炎症が起きる病気 ・背中に鋭い痛みが現れ、体を動かすと痛みが悪化する ・発熱や全身のだるさ、背中と腰の動きの制限などの症状が現れる 脊椎腫瘍 ・脊椎の中に腫瘍が発生する病気 ・頚椎に腫瘍ができた場合は、首や肩、腕に痛みや痺れが現れる ・尿失禁や便失禁、急激に手足が動かなくなるなどの症状が現れることがある 疑われる症状が現れている場合は、速やかに医療機関を受診してください。 首や背中の痛みを引き起こす疾患の一つである椎間板ヘルニアに対しては、再生医療が治療法の選択肢となるケースがあります。当院の再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 寝違えたときの対処法3選 寝違えたときの主な対処法として、以下の3つが挙げられます。 前提として安静に過ごす 痛みがある部分を冷やす 痛み止めの薬や湿布を活用する それぞれの詳細を解説します。 1.安静に過ごす 前提として、寝違え直後は安静にして炎症を鎮めることが優先です。 以下のような行為を寝違え直後に実施すると、悪化させる恐れがあるため避けてください。 患部を温める 患部のマッサージやストレッチ 患部を温める行為は、寝違える前であれば予防効果を期待できますが、寝違え直後に実施すると炎症を悪化させる恐れがあります。寝違え直後の患部のマッサージやストレッチも、炎症を悪化させる恐れがあるため行わないでください。 2.痛みがある部分を冷やす 寝違えたあとに、痛みや腫れ、熱感などがある場合は患部を冷やします。 具体的な方法は以下の通りです。 タオルで巻いた保冷剤または氷水を入れたビニール袋を用意する 痛む部分を10分ほど冷やしたあとにしばらく離す 3〜4回ほど繰り返す 一般的に3日ほど経過すると痛みは改善していき、1週間ほどで完治します。痛みが長引く場合は医療機関を受診してください。 3.痛み止めの薬や湿布を活用する 痛み止めの薬や湿布の活用も有効です。痛みの程度が強く動きに制限が出る場合は、痛み止めの薬を服用して安静にしてください。副作用があるため、用法・用量を守って使用しましょう。 湿布には、冷湿布と温湿布があります。寝違え直後は、冷湿布を貼って患部を冷やしてください。温湿布は、寝違えの痛みが改善し始めた際に、筋肉が固まるのを予防する目的で使用します。 【関連記事】 首や背中の寝違えにロキソニンは効く?カロナールとの違いも解説 寝違えに湿布は効果的?正しい使い方とNG行為を解説 寝違えを繰り返さないための予防法 寝違えを繰り返さないための予防法には、以下のようなものがあります。 ストレッチを取り入れる 枕の高さや硬さを調整する それぞれの詳細を解説します。 ストレッチを取り入れる 寝違えを予防するには、ストレッチにより肩周りの柔軟性を高めることが大切です。 例えば、以下のようなストレッチです。 椅子に座り片方の肘を下ろして伸ばす そのまま背中側に引き上げ20秒間静止する 左右両方2〜3回ずつを目安に行う ストレッチを行った翌日に痛みが増す場合は実施するのを中断してください。 枕の高さや硬さを調整する 首の寝違えを予防するには、枕の高さや硬さの調整も大切です。枕の高さや硬さが合っていないと、寝違えを引き起こす原因になる恐れがあるためです。 以下を参考にして、自分に合った枕を選択してください。 枕を選ぶポイント 高さ 枕に頭を乗せた状態で、頭の位置が自分の握りこぶしほどの高さ(6〜9cm)になる枕 硬さ 枕に頭を乗せて、沈み込む深さが20%ぐらいの硬さの枕 上記はあくまでも一例です。日頃から自分が楽と感じる枕の高さや硬さを選んでください。 まとめ|寝違えの痛みが長引く場合は医療機関を受診 寝違えが長引く場合は、ほかの病気を発症している恐れがあります。とくに激しい痛みや発熱、手足の痺れ、脱力感、首を動かすと現れる手足の痛みなどの症状が現れている場合は、医療機関を受診してください。 寝違えたときの基本的な対処法は、安静にして冷やすことです。タオルで巻いた保冷剤で痛む部分を10分ほど冷やしたあとにしばらく離すを3〜4回繰り返してください。 痛み止めの薬や湿布を活用するのも有効です。繰り返さないためには、ストレッチを取り入れて肩周りの柔軟性を高めることや、枕の高さや硬さを調整することが大切です。 寝違えに関するよくある質問 寝違えたら温めても良い? 寝違えた直後は温めてはいけません。患部の炎症を悪化させる恐れがあるためです。痛みが改善して炎症が治まってきた際に温めると、血流を良くなり寝違え予防の効果を期待できます。 寝違えが治らない原因は? 寝違えが治らない原因は、不自然な姿勢での睡眠や頭と枕の高さの不一致、慢性的な肩こりなどさまざま原因が考えられます。3日以上持続する首や背中などの痛みは、他の病気も考えられるため医療機関を受診してください。 寝違えを早く治す方法は? 寝違えを早く治す方法は、以下の前述した対処法を適切に行うことです。 安静にして患部を冷やす 痛みが引いてきたら温湿布などで温める 痛みが続く場合や温めるタイミングなどがわからない場合は、医療機関に相談しても良いでしょう。
2026.02.02 -
- その他、整形外科疾患
「最近、指がこわばる」「膝の痛みで階段の上り下りがつらい」 このような症状に心当たりがある方もいらっしゃるでしょう。 関節の痛みや腫れが続くとき、考えられる原因の一つが関節炎です。 関節炎は年齢を問わず起こり得る病気で、放置すると関節の変形や機能障害につながるかもしれません。 一方、早期に原因を知って適切に対処すれば、進行を防げて日常生活の質(QOL)を保てます。 この記事では、関節炎の基本から、原因、症状、治療法、悪化予防のポイントまで解説します。自分の症状が関節炎かもと疑っている方は、ぜひ参考にしてください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節炎について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 関節炎とは 関節炎とは、関節の内部で炎症が起きている状態を指します。炎症が生じると、次のような症状があらわれます。(文献1) 関節が腫れる 赤みや熱感を伴う 動かすと痛みが強くなる 関節炎は、関節内に炎症が生じている状態の総称です。臨床では「化膿性関節炎」「乾癬性関節炎」など、原因に基づく疾患単位が診断名として用いられます。 関節炎と混同されがちなものが、関節痛と関節リウマチです。それぞれの違いを見ていきましょう。 関節炎と関節痛の違い 関節炎は炎症を伴う病気の状態、関節痛は症状といった違いがあります。 項目 関節炎 関節痛 定義 関節に炎症が起きている状態 関節に感じる痛みの症状 特徴 痛みや腫れ、赤み、熱感などを伴う 炎症の有無にかかわらず起こる つまり、関節痛は「関節炎によって引き起こされる症状の一つ」といえます。 関節痛については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。 関節炎と関節リウマチの違い 関節痛と同様に、関節炎と混同されやすいのが関節リウマチです。 両者の違いは、以下のとおりです。(文献2) 関節炎:関節に炎症が起こる状態の総称 関節リウマチ:自己免疫が関与して、慢性的に関節炎を引き起こす病気 関節リウマチは、早期に診断して治療を開始すると、その後の寛解率(症状がおさまる確率)が改善するという報告もあります。(文献3) そのため「関節炎かもしれない」と感じた場合は、速やかに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることが重要です。 【関連記事】 関節リウマチとは?初期症状・原因・診断・治療・生活上の注意 膝の関節炎とリウマチの違いとは?症状と治療法などを現役医師が解説 関節炎が起こる主な原因と症状 関節炎はさまざまな原因によって生じ、以下のように異なる症状があらわれます。(文献4)(文献5)(文献6)(文献7)(文献8)(文献9)(文献10)(文献11) 原因 おもな症状の例 関連する病気 外傷(ケガ) ケガをした関節の腫れ・炎症 スポーツや事故などによる半月板損傷 細菌・ウイルス感染 発熱、関節の強い腫れや痛み 化膿性関節炎、ウイルス性関節炎など 自己免疫異常 手指のこわばり、左右対称の関節の腫れ 関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)など 結晶沈着(尿酸・カルシウム) 足の親指の激しい痛みや腫れ、熱をもつような強い炎症 痛風・偽痛風など 遺伝的要因 背中から腰のあたり(脊椎や仙腸関節)の慢性的な痛みや違和感 脊椎関節炎、強直性脊椎炎など 変形性関節症は、関節リウマチのような「炎症」から始まる病気とは異なり、主に軟骨がすり減る「関節症」です。 ただし、症状が進行すると関節を包む膜(滑膜:かつまく)に炎症が起き、関節炎の状態を伴うことがあります。 つまり、変形性関節症は「炎症が原因の病気」ではなく「軟骨のすり減りが原因で、結果的に炎症も起こりうる病気」と理解すると良いでしょう。 関節炎の治療法 関節炎の治療は、薬物療法やリハビリテーションが中心です。 そのほか、関節炎の原因や状態によっては手術や切開といった処置をおこないます。 ここでは、一般的におこなわれる薬物療法とリハビリテーション、そして再生医療という選択肢について解説します。 薬物療法 薬物療法は、関節炎の一般的な初期治療としておこなわれます。痛みと炎症を和らげて、病気の進行をおさえることが目的です。 たとえば以下のように、原因や症状に合わせた薬を使用します。(文献5)(文献8) 原因・症状 使用する薬の例 化膿性関節炎 ・原因となる病原体に応じた抗生物質 痛風発作 ・炎症をおさえる薬(消炎鎮痛薬やコルヒチン) ・尿酸を下げる薬(発作が治まってから) 関節リウマチ ・抗リウマチ薬 ・生物学的製剤 そのため「関節が痛いから痛み止めを飲もう」と自己判断で痛み止めの服用をつづけると、原因に合っていない場合、症状が進行してしまうかもしれません。 関節炎を疑う症状があらわれたら、まず受診して正しい診断を受けましょう。 リハビリテーション リハビリテーションは、原因を問わず関節炎において大切な治療法です。 動かさないでいると関節の動く範囲が狭くなり、筋力が低下してますます関節に負担がかかるためです。 具体的なリハビリテーションの内容は、以下のとおりです。 リハビリテーションの内容 目的 温熱療法・電気刺激療法 血流改善によって炎症を緩和 筋力トレーニング・ストレッチ 関節を支える力の強化 歩き方・正しい姿勢・体重管理 関節に負担のかけない生活の習慣化 リハビリテーションと薬物療法と並行しておこなうことで、関節炎の進行防止が期待できます。 運動の種類や方法は、医師や理学療法士と相談して決めていきましょう。 【関連記事】 化膿性関節炎のリハビリは何をすれば?日常生活上での注意点を解説 仙腸関節炎(仙腸関節炎障害)の治し方・痛みを和らげるケア【医師監修】 再生医療 薬やリハビリテーションで改善が難しい関節炎に対して、再生医療という新しい選択肢があります。 たとえば、当院リペアセルクリニックでおこなう再生医療の特徴は、以下のとおりです。 患者自身の脂肪から採取した幹細胞を使用する 日帰り治療が可能 採取した幹細胞を、骨や神経などの特定の組織へ変化させている 再生医療に関して詳しく知りたい方は、当院リペアセルクリニックの公式LINEへのご登録をおすすめします。 再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しておりますので、ぜひご活用ください。 関節炎を悪化させないために意識したい生活習慣 関節炎の治療と並行して大切なのが、日常生活の過ごし方です。 関節への負担を軽くし、炎症を悪化させないための生活習慣を意識して、免疫機能の維持・全身状態の管理を図り、症状の増悪を抑制しましょう。 バランスのとれた食事を意識する 骨や関節を健康に保つには、栄養バランスのとれた食事が欠かせません。 なかでも「ビタミンD」は、免疫力やカルシウムの吸収力の向上が期待できます。(文献12) ビタミンDが含まれる食材は、以下を参考にしてください。 食材 具体的な食品の例 きのこ類 干ししいたけ、まいたけ、しめじなど 魚類 サケ、サンマ、イワシなど 卵 とくに卵黄 乳製品 ビタミンD強化牛乳、ヨーグルト、チーズなど 脂溶性ビタミンのビタミンDは、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。少量のオリーブオイルやごま油を使用して、炒め物にするのがおすすめです。 また、日光を浴びることで体内でも生成されるため、「食事+日光浴」を意識すると良いでしょう。(文献12) 無理のない運動とストレッチを習慣化する 「関節が痛いから動かさないほうが良い」と考える方もいますが、適度な運動は症状の改善に役立ちます。 運動によって関節を支える筋力が維持でき、関節の炎症の改善が期待できるためです。 たとえば、以下の運動がおすすめです。 ウォーキング 軽いストレッチ ヨガ 水中歩行 関節を守るために、痛みの強くならない範囲で始めましょう。 体重を管理する 体重が増えると、膝関節や股関節などの負担も増えるため、適正体重の維持は欠かせません。 適性体重からどのくらいオーバーしているかの指標として、「BMI」が用いられます。(文献13) 健康診断をきっかけに知る方もいますが、覚えていない方は身長と体重から算出できるため一度計算してみてください。 <BMIの計算方法> BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m)) BMIが25を超えると、オーバーウェイトとなります。 まずは今の自分の体重を把握し、日常の食事や運動習慣を見直すきっかけを作りましょう。 睡眠時間を確保する 睡眠不足は炎症を悪化させる要因となり得ます。 海外では、睡眠時間が長いほど関節炎の新規発症リスクが低くなるという報告が得られており、睡眠はなんらかの形で関節炎に関係している可能性があるのです。(文献14) そのため、十分な休養をとり、生活リズムを整えることで、関節への負担を軽減しやすくなるでしょう。 関節炎は悪化する前に早期受診を心がけよう 関節炎は、自己免疫疾患や感染、痛風など、原因が多岐にわたる病気です。 症状も指のこわばり、膝や股関節の痛み、発熱を伴う関節の腫れなどさまざまで、人によって異なります。 自然に治りそうに思えても、放置してしまうと関節の変形や機能障害へと進行するケースも少なくありません。 症状が軽いうちに原因を明らかにする、適切な治療を受ける、日常生活で予防・改善を心がけるなどが、快適な生活を取り戻すことにつながります。 もし「関節炎かもしれない」と感じたら、自己判断せずに早めに専門医へ相談しましょう。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 関節炎について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 関節炎に関するよくある質問 関節炎を放置するとどうなりますか? 関節炎を放っておくと関節の変形や機能障害が進み、歩行や日常動作が難しくなる恐れがあります。 重症化すると滑膜切除術や人工関節置換術といった外科的処置が必要になるため、疑わしい症状があったら受診をおすすめします。 関節炎が治るまでの期間はどのくらいですか? 軽度の炎症であれば数週間で改善する場合もありますが、慢性化すると数年単位で治療が必要になることもあります。 原因や治療法によって大きく異なるため、受診時に医師へ確認してみましょう。 あちこちの関節が痛いのは関節炎でしょうか? 身体中の関節の痛みの原因が、必ずしも関節炎とは限りません。 加齢や疲労による関節痛の場合もあります。 ただし、複数の関節が左右対称に腫れたり痛んだりする場合は、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の可能性があります。 正しく対処するために、整形外科を受診しましょう。 関節炎の原因にストレスはありますか? ストレスそのものは、関節炎を起こす直接の原因ではありません。しかし、ストレスは免疫や自律神経に影響を与え、炎症を悪化させることがあります。 そのため、十分な睡眠をとりストレスを溜めない・うまく解消することが、関節炎の予防や症状緩和につながります。 参考文献 (文献1) 続編:関節の具合はどうですか?―関節の痛みが続くとき、どのような病気を考えるか?最近の治療の動向は?|独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 (文献2) 関節リウマチ|公益財団法人日本リウマチ財団 (文献3) 関節炎の鑑別診断|宮坂信之 (文献4) 膝半月板損傷|順天堂大学医学部附属順天堂医院 (文献5) 関節リウマチ(RA) | 一般社団法人日本リウマチ学会 (文献6) 乾癬性関節炎(PsA) | 一般社団法人日本リウマチ学会 (文献7) 全身性エリテマトーデス | 一般社団法人日本リウマチ学会 (文献8) 痛風 | 一般社団法人日本リウマチ学会 (文献9) 偽痛風(ぎつうふう)をご存知ですか|新潟労災病院 (文献10) 脊椎関節炎(SpA) | 一般社団法人日本リウマチ学会 (文献11) 強直性脊椎炎(指定難病271)|難病情報センター (文献12) ビタミン(脂溶性ビタミン)|厚生労働省 (文献13) 身長から、自分の適正体重を知る|日本医師会 (文献14) Sleep duration and the risk of new-onset arthritis in middle-aged and older adult population: results from prospective cohort study in China|PMC
2026.02.02 -
- 上肢(腕の障害)
- テニス肘
- 肘関節
- スポーツ外傷
「肘に違和感や痛みを感じる」 「肘の痛みで日常生活に支障をきたしている」 物を持つ、ペットボトルのふたを開けるといった動作だけでもつらい場合はテニス肘かもしれません。テニスをしていなくても、パソコン作業や家事など日常動作の繰り返しで発症します。 放置すると悪化して家事や仕事、趣味のスポーツに支障をきたすため、早期に原因を見極め、適切に対処することが重要です。 本記事では、現役医師がテニス肘について詳しく解説します。 テニス肘の初期症状 テニス肘の原因 テニス肘の治療法 テニス肘の予防法 記事の最後にはテニス肘に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 テニス肘について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください テニス肘とは 項目 内容 主な原因・仕組み 手首や肘の繰り返し動作による腱への負担。加齢による腱の弱化と炎症の発生。周囲組織の関与による痛みの増強。物を持つ・絞る・回す動作での肘外側の痛み。進行による握力低下と夜間痛 診断の考え方(整形外科) 問診で痛みが出る動作や経過を確認。トムゼンテストやチェアテストなどで痛みを誘発する検査。レントゲンやMRIで腱や関節内の状態を確認する評価 早めの対応が重要な理由 保存的治療で改善が期待できる早期介入の重要性。放置による慢性化や生活への支障のリスク。早期治療による回復促進と再発予防の可能性 (文献1)(文献2) テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、繰り返しの負荷により、肘の外側にある骨の出っ張り部分「外側上顆」に付着する伸筋腱に微小な損傷、変性が生じる疾患です。手首を反らす・指を伸ばす動作で使われる前腕の筋肉が酷使されることで発症します。 診断には、手首を反らした状態で抵抗をかけた際に肘の外側に症状が出るか確認するトムゼンテストや、椅子を持ち上げる動作で症状が再現されるか調べるチェアテストなどが用いられます。 テニスプレーヤーに多いことから名づけられましたが、実際にはパソコン作業や家事、重い荷物の運搬などの日常動作でも発症し、放置すると物を持つ、ドアノブを回すといった軽い動作にも支障をきたすため、早期の対処が不可欠です。 以下の記事では、テニスをしていないのにテニス肘を発症する理由を詳しく解説しています。 テニス肘の初期症状 初期症状 詳細 肘の外側の違和感 肘の外側に軽い張りや重だるさを感じる状態。動かすと違和感が出る初期段階 特定動作時の不快感 物を持ち上げる、タオルを絞る、ドアノブを回すなどの動作で生じる痛みや不快感 朝のこわばりと動作後の疲労感 起床時の肘周囲のこわばりや、作業後のだるさ・重さを感じる状態 肘の可動域の変化 肘を伸ばす・曲げる際の動きに制限や引っかかりを感じる状態 テニス肘の初期症状は軽微なため見過ごされやすく、早期発見が改善の鍵となります。多くの場合、肘の外側の軽い違和感から始まり、運動後や作業後のみ感じる程度です。 しかし、放置すると朝のこわばりや動作後の疲労感の増加、肘の可動域の制限といった症状が進行し、安静時にも痛みが現れるようになります。 特定の動作時に限定的な不快感を覚える段階であれば、組織の損傷が軽度であるため、適切な対処で早期改善が見込めます。日常動作に支障をきたす前に、早めの対応が重要です。 以下の記事では、突然発症するテニス肘について詳しく解説しています。 肘の外側の違和感 テニス肘の初期症状として、肘の外側に張りや違和感が現れます。これは手首を反らす筋肉(短橈側手根伸筋)の腱が、繰り返しの負担により炎症や微細な損傷を起こすためです。 初期段階では強い症状を伴わず、動かすと軽い引っかかりや重さを感じる程度です。ペットボトルを持つ、ドアノブを回す、物を持ち上げるといった動作で違和感が出やすくなります。 腱の炎症によって周囲の筋肉や神経が刺激され、不快な感覚が生じ、肘の外側を通る橈骨神経が圧迫されると違和感やしびれが現れることもあります。微小損傷が進行すると安静時にも違和感が持続するため、早期対応が不可欠です。 以下の記事では、肘の痛みについて詳しく解説しています。 【関連記事】 外側の肘が痛いときの治し方|痛みのレベル別で対処法を解説 朝起きたら肘の外側が痛い原因を医師が解説|治療方法や受診目安も紹介 特定動作時の不快感 テニス肘では、特定の動作時に肘の外側へ不快感が生じるのが特徴です。安静時には症状が現れず、動作によって誘発されます。 代表的な誘発動作は、物を持ち上げる動作です。買い物袋、フライパン、ペットボトルなどを持つ際、肘の外側にピリッとした感覚や重だるさが現れます。握力を使う動作は腱に大きな負担をかけるため、初期症状が出やすくなります。 手首を反らす動作(パソコン作業やテニスのバックハンドなど)で肘外側に不快感が生じるのは、手首を反らす筋肉の腱が肘外側に付着しているためです。さらに、握力の微妙な低下を自覚することもあります。力が入りにくい、しっかり握れないといった症状は、腱の損傷や炎症による機能低下のサインです。 初期段階では動作時のみ症状が現れ、安静時には気づかないこともあります。この段階で適切にケアすれば症状の進行や慢性化を防止できます。 朝のこわばりと動作後の疲労感 テニス肘では、朝のこわばりと動作後の疲労感が特徴的な症状として現れます。起床時に肘の外側が硬くこわばったように感じることがあります。 就寝中は関節や腱が長時間動かないため血流が低下し、炎症部位の代謝が滞ることが原因です。動かし始めると次第にこわばりは軽減しますが、症状進行のサインとして注意が必要です。 また、仕事やスポーツで腕を使った後、肘の外側に重だるさや疲労感が残るのも典型的な症状です。繰り返す動作により腱や筋肉に微小な損傷が蓄積し、炎症反応が一時的に強まるためです。動作中は気にならなくても、後からずっしりとした違和感が出ることがあり、進行すると長時間持続します。 朝のこわばりは休息後に硬くなるサイン、動作後の疲労感は使いすぎのサインであり、どちらも進行前に気づける重要な初期症状です。 以下の記事では、朝に起こる肘の痛みについて詳しく解説しています。 肘の可動域の変化 段階 特徴 初期段階 肘の曲げ伸ばしに大きな制限のない状態。手首背屈や物を持つ動作での違和感や動かしづらさ。使用時の抵抗感や不快感の出現 進行段階 肘伸展終末域での肘の外側の張り感。伸ばしきる際の引っかかりや重だるさ。前腕筋の硬化による柔軟性低下と動作の滑らかさ減少 慢性・重度 関節周囲組織の硬化による可動域狭小化。物を持ち上げながら肘を伸ばす・手首を使いながら動かす動作での制限自覚。日常生活動作への支障 ポイント 初期は違和感による動かしにくさ。進行期は肘伸展終末域での張りや制限。慢性期は関節可動域の実際の減少 テニス肘が進行すると、肘を伸ばす・曲げる・ひねる動作で違和感や引っかかりを感じるようになり、とくに肘を伸ばしきる動作や手のひらを上下に返す動作で症状が出やすくなります。それらは腱の炎症や変性によって周囲の組織が硬くなることが原因です。症状をかばうことで筋肉が緊張し、可動域がさらに狭まります。 その結果、高い場所の物を取る、服を着替える、洗髪するといった動作が困難になることもあります。左右の動きに差がある場合や日常動作に支障がある場合は、早めに医療機関で評価と治療が欠かせません。 テニス肘の原因 原因 詳細 繰り返し動作による過度な負荷 物を持つ、ドアノブを回す、パソコン作業、スポーツでのスイングなどによる手首や肘の反復使用による腱への負担蓄積 加齢による腱の変性 年齢に伴う腱の柔軟性低下と血流減少による構造の脆弱化および炎症が生じやすい状態 フォーム・道具・筋力の問題 不適切な動作姿勢や合わない道具の使用、前腕筋力不足による腱への過剰な負担 テニス肘は、肘の外側にある腱が繰り返しの負荷により損傷し、炎症や変性を起こすことで発症します。手首を反らす・物を握る・ひねるといった動作の反復により、前腕の伸筋群から続く腱に張力がかかることが主な原因です。 繰り返し動作による過度な負荷、加齢に伴う腱の変性、不適切なフォームや道具の使用、前腕の筋力不足など、複数の要因が組み合わさって引き起こされます。テニスやゴルフなどのスポーツ愛好家、パソコン作業が多い職種、調理や育児で手を頻繁に使う方などはリスクが高いため、原因を理解し生活習慣を見直すことが予防と改善の第一歩です。 繰り返し動作による過度な負荷 要因 詳細 使用回数が多すぎる 作業時間や練習量の急増による肘・前腕への負担蓄積 間隔が短すぎる 休憩不足による回復時間の欠如と腱への過労状態 負荷が強すぎる 重い物の持ち上げや強い握り込み、固いグリップによる過度な負荷 姿勢・フォームの問題 手首の過伸展や前腕のみで動作を行う不良フォームによる負担集中 道具の不適合 グリップサイズや重さ、ガットの硬さが身体に合わないことによるストレス増大 全身要因 肩や体幹の安定性低下、連動不足による前腕への負荷偏り テニス肘の最も一般的な原因は、手首や前腕を使う動作の繰り返しによる過度な負荷です。肘の外側には手首を反らす・指を伸ばす筋肉の腱が付着しており、物を握る、持ち上げる、手首を反らす動作を反復すると、腱に微小な損傷が蓄積されます。 損傷が回復する前に負荷をかけ続けると、腱が硬くなって違和感や張りが生じ、周囲の筋肉が緊張して同じ部位に負担が集中する悪循環が起こります。買い物袋やフライパンを持つ、ドアノブを回す、雑巾を絞るといった日常動作のほか、マウス操作やキーボード入力などの長時間作業、テニスのバックハンドやゴルフのスイングなどが代表的な原因動作です。 予防には、動作の量・間隔・強度の調整、手首を反らしすぎない姿勢の維持、体に合った道具の選択、前腕のストレッチと筋力強化が有効です。 以下の記事では、日常生活やスポーツで起こりうる肘の症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 テニス肘|テニス未経験でテニス肘と診断されたのですが? パソコン腱鞘炎の症状とは?原因や治し方・予防法も徹底解説! 加齢による腱の変性 年齢を重ねると、筋肉と骨をつなぐ腱のコラーゲン線維が徐々に変性し、柔軟性や強度が低下します。その結果、若い頃と同じ負荷でも腱に損傷が入りやすくなり、修復にも時間がかかるようになります。 とくに40代以降でテニス肘の発症が増えるのは、加齢による腱の変性が進み、手首を反らす・物を持つ動作での肘外側への負担に耐えにくくなるためです。 また、加齢による腱の変性が問題となる理由は以下の通りです。 修復力の低下により若い頃なら自然に回復していた小さな損傷が治りにくくなる 柔軟性の低下により衝撃や負担を吸収しにくくなる 一度痛めると治りにくく同じ動作で繰り返し悪化しやすい 加齢による変性は避けられませんが、適度な運動やストレッチで腱の柔軟性を保つことが予防につながります。 フォーム・道具・筋力の問題 要因 詳細 フォームの問題 手首に頼りすぎた動作による肘外側への負担集中。身体全体を使わずに手首や前腕だけで行う動作による腱への過剰なストレス 道具の問題 合わないラケットや道具の使用による前腕への余分な負担。グリップサイズの不一致やガットの張りすぎ、道具の重さによる腱への負荷蓄積 筋力不足の問題 前腕・肩・体幹の筋力低下による衝撃分散の不十分。前腕伸筋群の弱化による腱の引っ張られやすい状態。筋力バランスの乱れによる疲労や違和感の出現 テニス肘は、不適切なフォームや道具の使用、前腕の筋力不足などが原因で起こります。これらの要因によって腱に過剰な負担がかかり、発症のリスクが高まります。スポーツでは、フォームの乱れが腱に大きなストレスを与えることがあります。 たとえば、テニスでバックハンドを手首だけで打つ場合や、ゴルフで肘を伸ばしたままスイングする場合、さらにラケットのグリップが細すぎたり太すぎたりする場合などです。日常生活では、パソコンのマウスやキーボードの配置が悪い、包丁の持ち方が不適切、重い荷物を片手で持つといった習慣が問題となり、前腕の筋力不足により腱が筋肉の役割を代償し過剰な負荷がかかります。 テニス肘を予防・改善するためには、フォームの見直し、適切な道具の選択、筋力トレーニングを組み合わせることが効果的です。 テニス肘の治療法 治療法 詳細 保存療法 負荷軽減と休養、ストレッチ、温熱・冷却による組織回復環境の整備 薬物療法 消炎作用や血流改善を目的とした外用薬・内服薬・注射による症状緩和 装具療法 前腕特定部位への圧迫や支持による腱負担軽減のためのバンドやサポーター使用 手術療法 保存療法で改善が見られない場合の損傷部修復や変性組織除去 再生医療 自己細胞や血液成分を利用した損傷組織修復促進 テニス肘の治療は、症状の程度や発症からの期間により選択肢が異なります。軽症〜中等症では保存療法が第一選択です。保存療法で効果が得られない場合や、症状が重度の場合には、より専門的な治療法を検討します。 治療の基本は、腱への負担を減らしながら組織の修復を促すことです。安静、薬物療法、装具の使用、リハビリテーションなどを組み合わせて進めます。 近年では、保存療法や手術に加えて、再生医療も選択肢のひとつとして注目されています。ただし再生医療は提供されている医療機関が限られており、症状によっては適応できないケースもあるため、事前に医師と相談する必要があります。 以下の記事では、テニス肘の治し方について詳しく解説しています。 保存療法 療法 詳細 リハビリテーション(運動療法) 痛みの軽減後に理学療法士の指導のもと行う前腕のストレッチや筋力強化による肘への負担軽減と再発予防 ストレッチ 前腕の筋肉や腱を伸ばして柔軟性を高め、硬化した組織をほぐし炎症再発を防ぐ習慣 物理療法(電気治療・超音波治療など) 超音波・温熱・電気刺激による血流改善と炎症・痛みの軽減、組織修復の促進 安静と負担軽減の重要性 急性期における肘の安静とサポーター・テーピング使用による腱への負担軽減と炎症抑制 保存療法の意義 身体への負担が少なく、リハビリ・ストレッチ・物理療法の継続による回復促進と再発予防 保存療法は、手術を行わずに症状の改善を目指す治療法です。多くの場合、適切な保存療法により自然治癒が期待できます。 初期段階では患部への負荷を減らし安静を保ちながら炎症を抑え、温熱療法や物理療法により血流を改善して組織の回復を促し、医師の指導のもと段階的にストレッチや筋力回復訓練を取り入れることで、症状の慢性化を防げます。 薬物療法 治療内容 詳細 薬物療法が有効な理由 痛みや炎症の速やかな緩和による症状軽減。保存療法との併用によるリハビリや日常動作継続の支援、強い症状期での緩和の重要性 鎮痛薬・消炎薬 消炎鎮痛薬(NSAIDs)や湿布剤による炎症抑制と速効的な症状緩和。軽度から中等度症状への有効性、副作用予防のための長期使用制限 ステロイド注射 強い痛みや生活への支障時の局所注射による強力な炎症抑制と即効性。1〜2カ月程度の効果、腱断裂リスク回避のための使用回数・頻度制限 治療上の位置づけ 症状コントロールに有用だが、根本治療は保存療法やリハビリによる総合的計画の実施 薬物療法は、薬剤を用いて炎症や痛みを抑え、患者の苦痛を軽減するとともに、身体の自然治癒力が発揮しやすい状態を整える治療法です。テニス肘では、主に炎症のコントロールと痛みの緩和を目的として行われます。症状が落ち着くことで、日常生活の質が向上し、リハビリテーションにも取り組みやすくなります。 治療には、症状の程度に応じて内服薬や外用薬(湿布・塗り薬)などの消炎鎮痛薬(NSAIDs)が用いられ、炎症が強い場合にはステロイド注射で局所の炎症を抑えることもあります。薬物療法は、痛みを一時的に緩和する補助的な治療であり、根本的な改善にはリハビリや保存療法との併用が必要です。 以下の記事では、薬物療法で使用するステロイド注射について詳しく解説しています。 装具療法 項目 説明 サポーターの効果 肘外側上顆より手首側の前腕筋肉部分を圧迫し、筋肉の過度な緊張を抑えることで腱への負担を軽減 装着位置 肘の骨の出っ張り(外側上顆)から指2本分ほど手首側の筋肉部分に圧迫パッドを当てる位置。骨の出っ張りに直接当てると逆に症状を悪化させる可能性 装着時の注意点 きつすぎると血流を妨げ、緩すぎると効果が得られない適度な圧迫感の維持。動作時のみ装着し、安静時や就寝時は外すことの推奨 テーピングの役割 筋肉や腱の動きをサポートし、過度な伸縮や負荷を防ぐ効果。症状の軽減や炎症悪化の予防。医師による正しい方法の習得が重要 装具療法の限界 あくまで補助的な治療法であり、根本的な改善にはリハビリや薬物療法との併用が必要 サポーターの装着は、肘の腱にかかる負担を軽減し、日常生活やスポーツ時の再負担を防ぐのに有効です。装具の種類や装着位置は、症状や動作内容によって適切に使い分けることが大切です。 自己判断での使用は効果が不十分な場合や、誤った装着によってかえって負担を増やすおそれがあります。そのため、専門家の指導のもとで選択・装着することが望まれます。また、長時間や過度の使用は筋力低下を招くことがあるため、適切な使用時間と休息を心がけましょう。 手術療法 項目 説明 手術の利点 長引く症状の改善と肘の機能回復や再発予防への期待。保存療法で効果が不十分だった場合の有効な選択肢 手術のリスク 感染・神経損傷・可動域制限などがまれに起こる可能性。手術には一定のリスクを伴う点 術後の経過 リハビリテーションが必須で、回復には数カ月から半年程度の期間が必要 効果の個人差 すべての患者に確実な効果があるわけではなく、改善度には個人差がある テニス肘は通常、保存療法で改善が見込めますが、症状が1年以上続き、強い痛みが改善しない場合や日常生活に大きな支障を来す場合には手術が検討されます。手術が必要となるケースは全体の約5〜10%とされています。 手術は損傷した腱の修復や炎症部位の除去を目的とし、開放手術や関節鏡視下手術などの低侵襲な方法が選択されます。開放手術では、肘の外側を約3〜5cm切開し、損傷した腱の一部を切除・修復します。神経の圧迫がある場合には、神経剥離術を併用することもあります。 関節鏡視下手術は、数mmの小さな切開から内視鏡を挿入し、腱の修復や滑膜の切除を行う方法です。傷が小さく身体への負担が少ないことが利点で、入院や全身麻酔を要することがありますが、開放手術に比べて術後復帰は早い傾向にあります。(文献1) 術後はリハビリを通じて肘の可動域と筋力の回復を図り、長期的な予後を良好に保つためには、適切な術後管理と再発予防が欠かせません。 再生医療 再生医療は、損傷した腱や組織の修復をサポートし、身体の自然な治癒力を引き出すことを目的とした治療法です。テニス肘では、炎症や変性がみられる腱に対し、患者自身の血液や脂肪から採取した成分を用いて施術を行います。 PRP療法では血液中の血小板に含まれる成長因子の働きを利用し、幹細胞治療では脂肪由来の幹細胞を培養して使用します。いずれも入院や手術を必要とせず、日帰りでの施術が可能です。治療内容や適用は医師と十分に相談の上で決定します。 以下では、再生医療について詳しく解説しています。 テニス肘の予防法 予防法 詳細 ストレッチと筋力強化 前腕筋や腱の柔軟性維持と筋力向上による腱耐久性の強化、負荷吸収力の改善 フォームと道具の見直し 動作姿勢やテクニックの改善と適切な道具選択による肘への負担軽減 サポーターの活用 肘周囲の圧迫による負担分散と動作時の安定性向上、再発防止への補助 適度な休息 継続的負荷の回避と回復時間確保による腱修復促進 テニス肘の予防では、腱への負担を軽減し、前腕の筋力と柔軟性を保つことが重要です。発症してから治療するよりも、日常生活やスポーツの中で予防を実践する方が効果的です。 とくに、過去にテニス肘を経験した方や、肘に負担のかかる動作を繰り返す方は、積極的な予防が再発防止につながります。日々の小さな工夫や習慣の積み重ねが、肘の健康維持に役立ちます。 ストレッチと筋力強化 項目 詳細 ストレッチが有効な理由 前腕伸筋群を柔軟に保ち腱への負担を減らし、血流改善で修復を促進し炎症の長期化を防ぐ。柔軟性向上により動きが滑らかになり、余分な力みを軽減する 筋力強化が有効な理由 前腕・肩・体幹の筋力を整えて衝撃を分散し、疲れにくい身体にすることで腱の使い過ぎを防ぐ。筋力が十分になることで安定したフォームを維持し、肘を守る ストレッチと筋力強化は、テニス肘を防ぐための基本です。前腕の筋肉を柔軟で強く保つことで、腱への負担が分散され、発症のリスクを減らせます。 ストレッチは、手首を反らす伸筋と曲げる屈筋の両方を対象に、無理のない範囲で行うことが大切です。運動前後だけでなく日常的に続けることで、肘への負担を軽減し、予防効果を高めることができます。 フォームと道具の見直し フォームと道具の見直しは、テニス肘予防において欠かせません。誤ったフォームでスイングを続けると、肘の筋肉や腱に過剰な負担がかかり、炎症や損傷の原因となります。正しいフォームを身につけることで、肘にかかるストレスを減らし、症状や再発の予防につながります。 また、グリップのサイズやラケットの硬さが合っていない場合も、手首や肘に負担を与えやすいため、適切な道具選びが欠かせません。さらに、肩や体幹を含めた全身の動作バランスを整えることで、力を分散させ、肘への負荷を根本的に軽減できます。フォーム改善は予防だけでなく、症状の悪化防止にも有効です。 サポーターの活用 項目 説明 サポーターの役割と効果 肘の関節や筋肉・腱を物理的にサポートし、過度な負担や衝撃を軽減。前腕の筋肉や腱へのストレスを分散させ、炎症部位の症状や負担を和らげる 怪我の予防と再発防止 スポーツや日常生活で肘を頻繁に使う際、関節を安定化し筋肉や腱への負担を軽減。一度発症した方の怪我や症状の再発防止に有効 症状軽減と患部保護 肘の曲げ伸ばしや物を持つ動作での症状がある場合、患部の動きを制限し炎症の悪化や症状の増強を防ぐ効果。適度な圧迫・安定化による症状の緩和 正しい装着方法 肘の骨の出っ張りよりも手首側の筋肉部分に巻くことで筋肉の負担を軽減。適切な位置への装着が効果を最大化 他の治療法との併用 リハビリや薬物療法と組み合わせることで、症状のコントロールや機能回復を補助。医師の指示に従った使用の重要性 注意点 あくまで補助的手段であり、装着だけでは根本的な治療にならない点。長時間連続使用による血流低下や筋力低下のリスク。正しい位置・締め付け具合での使用の必要性 サポーターは、テニス肘の予防と症状の軽減に有効な補助具です。前腕に巻くエルボーバンドは、肘の少し下に装着して腱への張力を分散し、スポーツや日常動作時の負担を軽減します。手首用サポーターも有効で、手首の過度な動きを抑えて前腕の筋肉への負担を減らします。 ただし、常時使用は筋力低下を招く恐れがあるため、必要な時のみ装着します。ストレッチや筋力強化、フォーム改善と併用することが効果的です。 適度な休息 項目 詳細 損傷部位の回復を促す 腱の微小断裂が繰り返し起こることで悪化する状態。適度な休息により腱や周囲組織の修復時間を確保し、炎症や違和感の慢性化を防ぐ効果 オーバーユース(使いすぎ)を防ぐ 長時間の作業や練習を休みなく続けることで、腱の損傷が回復する前にさらに負荷がかかる状態。負荷→回復→強化のサイクルを守るための適切な休息の必要性 症状の悪化を防ぐ 違和感やこわばりを無視して使い続けることで、軽度の炎症が慢性の腱変性に移行する可能性。症状が軽いうちに休むことでの早期回復と長期的な治療の回避 精神的リフレッシュの効果 症状がある状態で無理をすることへの不安の軽減。適度な休息による心身のリセットと回復意欲の向上 注意点 休みすぎによる筋力低下のリスク。完全な安静ではなく症状が出ない範囲での軽いストレッチや運動の組み合わせの推奨 適度な休息は、腱の修復と健康維持に欠かせません。繰り返し動作で負担が蓄積すると、腱の回復が追いつかなくなります。作業や運動の合間に休息を取り、筋肉の疲労をためないことが大切です。 痛みや違和感を感じたら早めに動作を中止し、負荷を減らすことで悪化を防げます。身体のサインに気づき、無理をせず休むことが、テニス肘の予防と長期的な健康維持につながります。 改善しないテニス肘は医療機関を受診しよう テニス肘はテニスをしていない人にも起こりうる疾患です。放置すると悪化し最悪の場合、手術が必要になることもあります。セルフケアや保存的な対応を続けても症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。 テニス肘の治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、テニス肘に対して、損傷部位へのアプローチが期待できる再生医療を治療法のひとつとして提供しています。患者様の症状や状態に応じて適切な方法を提案いたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 テニス肘に関するよくある質問 テニス肘を放置するとどうなりますか? テニス肘を放置すると、炎症や腱の損傷が慢性化し症状が強くなります。日常生活の基本動作(物を持つ、ドアノブを回すなど)が困難になり、握力低下や肘の可動域制限も生じることがあります。 進行すると腱が断裂するおそれがあり、手術が必要になる場合もあるため、早期の治療と適切な対処が重要です。 テニス肘と似た症状はありますか? テニス肘と似た症状は以下が該当します。 疾患名 特徴・症状 ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) 肘の内側に炎症や痛みが生じる疾患 野球肘 投球動作による肘関節の障害(靱帯損傷・骨や軟骨障害を含む) 肘部管症候群 肘の内側で尺骨神経が圧迫され、小指側のしびれや握力低下が出現 橈骨頭障害 肘外側の骨(橈骨頭)の損傷による痛みや可動域の制限 頸椎疾患(頸椎症性神経根症など) 首の神経圧迫による肘や前腕への放散痛やしびれの出現 これらは痛む部位や誘発動作が異なるため、自己判断せず医師の診察を受けることが重要です。 以下の記事では、テニス肘と似た症状について詳しく解説しています。 テニス肘は自分で治せますか? 軽度であっても、自分で治そうとするのはおすすめできません。無理を続けると慢性化や再発の恐れがあるため、整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 テニス肘は治らないというのは本当ですか? テニス肘は適切な治療と生活習慣の改善により、多くの場合治癒が期待できます。回復期間は通常6〜12週間、長くても半年ほどです。 ただし、放置したり無理を続けたりすると慢性化や再発の原因となります。そのため、医師の指導のもとで治療を進めることが重要です。また、回復後もストレッチや筋力強化を継続することで、再発を防止できます。 参考文献 (文献1) Arthroscopic tennis elbow release|PubMed Central (文献2) 「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」|公益財団法人 日本整形外科学会
2026.02.02 -
- 内科疾患
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「線維筋痛症の方が食べてはいけないものとは?」 「症状を和らげる食べ物はある?」 線維筋痛症とは、体のさまざまな部位に痛みやこわばり、疲労感などが現れる原因不明の病気です。関節リウマチと同様、女性の発症が多い傾向です。 本記事では、線維筋痛症の症状に配慮し、控えた方がよい可能性がある食べ物をはじめとして以下を解説します。 症状を和らげる食べ物 食事内容や食べ方に関する注意点 1日の食事例 具体的にどのような食品を避けるべきか推奨されるのかを解説しています。線維筋痛症の症状の悪化や改善につながる可能性のある食品について知りたい方は参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節の痛みなどの症状にお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 線維筋痛症の方が食べてはいけないもの一覧【6つの食品カテゴリー】 線維筋痛症において、摂取を控えた方がよい可能性がある食品の一例を紹介します。 食品カテゴリー 例 糖質の多い食品 清涼飲料水、ケーキ、菓子パン 加工油脂 マーガリン、ショートニング、サラダ油 精製された穀物 パン、白米、うどん 乳製品 牛乳、ヨーグルト、チーズ アルコール・カフェイン飲料 ビール、コーヒー 添加物の多い食品 インスタント食品、スナック菓子 それぞれの食品について詳しく解説します。 糖質の多い食品|清涼飲料水、ケーキ、菓子パン 線維筋痛症の発症または悪化には、糖化が関連していると考えられています。糖化とは、食事から摂取した余分な糖質が体内のたんぱく質と結びつき、細胞を劣化させる現象です。 糖化は血糖値スパイクにより進行しやすいです。血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急激に上昇・下降する現象であり、糖質の多い食事が原因で引き起こされます。 糖質が多く血糖値スパイクを起こしやすい食品を挙げると、以下のようなものがあります。 清涼飲料水 ケーキ 菓子パン スナック菓子 白米 血糖値スパイクを予防するには、早食いや運動不足の改善も重要です。 加工油脂|マーガリン、ショートニング、洋菓子 線維筋痛症は、体に明らかな炎症や損傷が見られない原因不明の病気とされていました。しかし、近年では脳や脊髄内の炎症が原因の可能性があるとの報告があります。(文献1)加工油脂に含まれるトランス脂肪酸は、体内の炎症を促進する成分の1つです。 トランス脂肪酸は、主に以下のような食品に含まれています。 マーガリン ショートニング スナック菓子 インスタント食品 洋菓子 揚げ物 牛乳やサラダ油などにも、微量のトランス脂肪酸が含まれています。気になる方は、トランス脂肪酸がほとんど含まれていないオリーブオイルなどに置き換えましょう。 精製された穀物|パン、白米、うどん 精製された穀物は、食物繊維が少なく消化と吸収が早いため血糖値が上昇しやすい特徴があります。血糖値が上昇しやすい食品を摂取すると糖化を促進させて、病状に悪影響を与えるおそれがあります。 精製された穀物とは以下のような食品です。 パン 白米 うどん 血糖値の急上昇を予防するには、主食を玄米や全粒粉パンなどに置き換えることが望ましいです。 乳製品|牛乳、ヨーグルト、チーズ 乳製品を控えることは、線維筋痛症の症状の改善につながる可能性が示唆されています。ただし、明確な因果関係が得られているわけではなく、すべての人に当てはまるものではありません。 乳製品の一例を挙げると以下のようなものがあります。 牛乳 ヨーグルト チーズ バター 生クリーム カルシウムの十分な摂取は大切です。医師と相談しながら自身の体調に合わせて摂取しましょう。 アルコール・カフェイン飲料|ビール、コーヒー アルコールやカフェインは、睡眠の質を低下させて痛みの感受性を高めるとされています。 とくに就寝前は以下のような飲料を避けてください。 アルコール飲料 ビール、日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデーなど カフェイン飲料 コーヒー、エナジードリンク、紅茶、緑茶など 添加物の多い食品|インスタント食品、スナック菓子 以下のような添加物が含まれる食品は、線維筋痛症の症状を悪化させるおそれがあります。 インスタント食品 加工肉 清涼飲料水 菓子パン スナック菓子 コンビニ弁当 実際に線維筋痛症患者様37人を対象に食品添加物を除外した食事を4週間続けてもらったところ、84%の方の症状が一定改善したと報告があります。(文献2) 一方、添加物と線維筋痛症の症状に因果関係はないとの報告もあります。双方の報告がありますが、添加物の多い食品は、糖質やトランス脂肪酸が多く含まれているケースが多いため、取り過ぎは控えましょう。 線維筋痛症の症状を和らげる食べ物一覧 線維筋痛症の症状を和らげる可能性がある食べ物として、以下のようなものが挙げられます。 ビタミンDが豊富な食品 マグネシウムが豊富な食品 食物繊維が豊富な食品 オメガ-3脂肪酸が含まれる食品 抗酸化物質が含まれる食品 ただし、これらは過剰に摂取すれば良いわけではありません。医師と相談しながらバランス良く摂取するのが重要です。それぞれについて詳しく解説します。 ビタミンDが豊富な食品 ビタミンDが足りていないと、線維筋痛症の症状が悪化するおそれがあります。実際に、ビタミンD不足の女性に対して、20週間ビタミンDを摂取してもらったところ痛みが軽減されたとの報告があります。(文献3) ビタミンDが豊富な食品の一例は以下の通りです。 サンマ サケ ブリ イワシの丸干し 干し椎茸 乾燥きくらげ 以上のようにビタミンDは、魚類やきのこ類に豊富に含まれています。 マグネシウムが豊富な食品 マグネシウムは、痛みの緩和に役立つ可能性が示唆されています。ただし、研究結果は一貫性がないため注意が必要です。 マグネシウムが豊富な食品は以下のようなものが挙げられます。 カボチャの種(ロースト) アーモンド(ロースト) カシューナッツ(乾煎り) 豆乳(プレーン) ほうれん草(ボイル) 積極的に摂取するかは医師と相談してからにしましょう。 食物繊維が豊富な食品 食物繊維は、線維筋痛症の症状の改善に役立つ可能性が示唆されています。 食物繊維が豊富な食品は以下が挙げられます。 さつまいも 切り干し大根 ごぼう かぼちゃ たけのこ ブロッコリー ひじき これらは一食あたり食物繊維が2〜3gと豊富に含まれているためおすすめの食品です。(文献4) オメガ-3脂肪酸が含まれる食品 オメガ-3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、線維筋痛症の痛みの改善に有効である可能性が示唆されています。 実際に、フィッシュオイル(EPAとDHA混合)1,500mg/日を4週間摂取したところ、痛みや疲労、抑うつ症状が改善したとの報告があります。(文献2) オメガ-3脂肪酸が豊富な食品は以下のような青魚や貝類です。 イワシ サバ サンマ カニ カキ 魚介類以外では、亜麻仁油やエゴマ油などにも豊富に含まれています。 抗酸化物質が含まれる食品 抗酸化物質の摂取は、線維筋痛症の症状の改善に有効と報告があります。抗酸化物質には、細胞を傷つける酸化ストレスを抑制する働きがあるためです。抗酸化作用がある具体的な栄養は、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEなどです。 これらのビタミン類が豊富に含まれている食品は以下のようなものが挙げられます。 にんじん かぼちゃ キャベツ ブロッコリー トマト 小松菜 ほうれん草 その他にも、抗酸化物質の1つであるコエンザイムQ10も有効とされており、青魚や牛肉、豚肉、ナッツ類に含まれています。 線維筋痛症における食事の注意点 線維筋痛症における食事の注意点として、以下が挙げられます。 主食を低GI食品に置き換える 早食いをしない 食物繊維から摂取する 良質なたんぱく質を摂取する 炭水化物は最後に食べる それぞれについて詳しく解説します。 主食を低GI食品に置き換える 低GI食品は血糖値の急上昇を予防できます。GIとはGlycemic Index(グリセミックインデックス)のことであり、食品が血糖値に与える影響を数値化したものです。 GIは低いほど血糖値の上昇がゆるやかで、以下のように分類されています。 分類 GI値 食品 高GI食品 70以上 白米、白パン、スナック菓子、ジャガイモ、里芋、にんじんなど 中GI食品 56〜69 オートミール、ライ麦パン、サツマイモ、パイナップル、アイスクリームなど 低GI食品 55以下 玄米、雑穀米、全粒粉パン、そば、豆乳、牛乳、バター、いちご、リンゴなど とくに主食を玄米や雑穀米、全粒粉パンなどに置き換えることはおすすめです。 早食いをしない 早食いは、血糖値を急上昇させ血糖値スパイクを引き起こすリスクがあります。血糖値スパイクは糖化を進行させて線維筋痛症を悪化させるおそれがあります。 噛む回数は1口30回が望ましいです。「白米ではなく噛みごたえのある玄米を主食にする」などの工夫をすれば、自然と噛む回数を増やせます。 食物繊維から摂取する 食物繊維が豊富な食品などを最初に食べると、血糖値の急上昇を抑制できます。食物繊維を先に摂取すると消化管を通る時間が延長されて、その後に摂取する主食などの糖質の吸収もゆるやかになるためです。 インスリンの分泌量も減少するため、糖尿病予防に効果的です。食事は野菜やきのこ、海藻から食べましょう。 良質なたんぱく質を摂取する 良質なたんぱく質は、線維筋痛症に有益な効果があると示唆されています。良質なたんぱく質とは、アミノ酸がバランス良く含まれている食品のことです。 肉類や魚介類、卵類、大豆などの一般的な食品から摂取できます。これらの食品をバランス良く摂取するのが重要です。 炭水化物は最後に食べる 炭水化物を最後に食べることで血糖値の上昇を緩やかにできます。 具体的には以下の順番で食べると血糖の急上昇を抑えられます。 順番 食事内容 1.食物繊維 野菜、きのこ、海藻など 2.たんぱく質 魚類、肉類、大豆製品、卵など 3.炭水化物 米類、麺類など 線維筋痛症の方が食べてはいけないものを避ける1日の食事例 線維筋痛症の方が控えた方がよい可能性のある食べ物を避ける食事例として、以下のようなメニューが挙げられます。 朝食 血糖値を安定させる低GIメニュー 昼食 抗炎症作用のある食材を取り入れたメニュー 夕食 消化に優しく睡眠の質を高めるメニュー 間食・飲み物 避けるべきものと代替品 それぞれの具体的なメニュー例とポイントについて解説します。 朝食|血糖値を安定させる低GIメニュー 血糖値の急上昇を予防する食事は、糖化を予防して線維筋痛症の悪化予防が期待できます。 メニュー例 玄米おにぎり、味噌汁(わかめ・豆腐)、焼き鮭、ほうれん草のおひたし ポイントは以下の通りです。 白米ではなく玄米を選び血糖値の急上昇を防ぐ 鮭でオメガ-3脂肪酸とビタミンDを摂取する 味噌汁の具材で食物繊維とマグネシウムを補う 昼食|抗炎症作用のある食材を取り入れたメニュー 炎症を抑制する食事は、線維筋痛症の悪化予防に役立ちます。 メニュー例 雑穀米、サバの塩焼き、ブロッコリーとトマトのサラダ(オリーブオイル)、きのこの味噌汁 ポイントは以下の通りです。 青魚(サバ)で抗炎症作用のあるオメガ-3脂肪酸を摂取する ブロッコリー・トマトで抗酸化物質を補給する ドレッシングは市販品を避けオリーブオイルと塩で代用する 夕食|消化に優しく睡眠の質を高めるメニュー 睡眠の質を高める食事は、痛みの感受性を低下させる効果が期待できます。 メニュー例 玄米、鶏むね肉のソテー、温野菜(かぼちゃ・にんじん)、わかめスープ ポイントは以下の通りです。 夕食は消化に負担のかからない鶏むね肉を選ぶ 温野菜で体を冷やさず胃腸への負担を軽減する 就寝3時間前までに食べ終え睡眠の質を確保する 間食・飲み物|避けるべきものと代替品 間食や飲み物は以下のように置き換えましょう。 避けるべきもの 代替品 スナック菓子 素焼きアーモンド、くるみ 清涼飲料水 ルイボスティー、白湯、麦茶 菓子パン・ケーキ バナナ、ベリー類、高カカオチョコ(70%以上) コーヒー(過剰摂取) カフェインレスコーヒー、ハーブティー ポイントは以下の通りです。 空腹時は血糖値が乱れやすいためナッツ類で良質な脂質を補う カフェインは1日1〜2杯程度に抑え午後以降は控える 甘いものが欲しいときは果物や高カカオチョコで代用する まとめ|食生活を改善して線維筋痛症の症状を和らげよう 糖質の多い食品や加工油脂、精製された穀物などを避けることは、線維筋痛症の症状の改善が期待できます。具体的な対策としては、主食は低GI食品である玄米や雑穀米、全粒粉パンに置き換えるなどがあります。 ビタミンD不足の方は、十分に摂取することで症状の改善に役立つことがわかっています。体に必要な栄養が含まれる特定の食品を極端に減らすまたは増やせば良いわけではありません。医師と相談しながら自分に合った食事内容に調整するのが重要です。 当院「リペアセルクリニック」では、関節の痛みなどに対して再生医療を行っています。気になる症状がある方は、お気軽にご連絡ください。 線維筋痛症における食事に関するよくある質問 Q.食事療法だけで痛みは改善する? 線維筋痛症の症状は、食事療法だけで改善は期待できません。薬物療法や運動療法によって症状をコントロールするのが一般的です。 Q.サプリメントは痛みの改善に効果がある? ビタミンDなどのサプリメントに一定の有効性が示されています。とはいえ、栄養は食事からの摂取が基本です。サプリメントの利用は医師に相談してからにしましょう。 Q.食べてはいけないものは絶対に摂取してはいけない? ここまで紹介した食品は完全に禁止するものではありません。症状が改善するかどうかは個人差があります。医師と相談しながら栄養バランスの整った食生活を心がけることが重要です。 参考文献 (文献1) 線維筋痛症における慢性疼痛発症メカニズムの解明 ~固有感覚異常による疼痛誘導とミクログリアによる疼痛記憶~|名古屋大学 研究成果発信サイト (文献2) 線維筋痛症診療ガイドライン2017|日本線維筋痛症学会 (文献3) 線維筋痛症|厚生労働省 (文献4) 食物繊維の必要性と健康
2026.01.31 -
- その他、整形外科疾患
「ボルタレンってどんな薬?」 「具体的な効果や副作用を知りたい」 ボルタレンとは、痛みや炎症、発熱を軽減するために処方される薬です。関節リウマチや腱鞘炎、急性腰痛などさまざまな病気に対して用いられます。 本記事では、ボルタレンの効果・成分・他の鎮痛薬との違いをはじめとして以下を解説します。 副作用と対処方法 服用してはいけない方【禁忌】 一緒に飲んではいけない薬 正しい飲み方と効果が現れるまでの時間 服用する際の注意点 投与方法の種類と、それぞれの使用用途についても詳しく解説しています。ボルタレンについて理解を深めたい方は参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな病気の治療に応用されている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節リウマチや腱鞘炎などの痛みに悩んでいる方は、ぜひ一度公式LINEをご利用ください。 ボルタレンとは|効果・成分・他の鎮痛薬との違い まずはボルタレンの基礎知識である以下について解説します。 成分と作用機序 投与方法の種類と使用用途 適応症一覧 ロキソニンとの違い 基礎知識を深めるために参考にしてください。 ボルタレンの成分と作用機序 ボルタレンの成分や効果は以下のとおりです。 成分 ジクロフェナクナトリウム 分類 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) 効果 ・鎮痛作用(痛みを和らげる) ・消炎作用(炎症を鎮める) ・解熱作用(体温を下げる) (文献1) ボルタレンは痛みや炎症、発熱に関わるプロスタグランジンという物質の合成を阻害します。その結果、鎮痛・消炎・解熱作用がもたらされます。 ボルタレンは病気の原因を治癒するものではありません。あくまでも症状を和らげる対症療法です。 ボルタレンの投与方法の種類と使用用途 ボルタレンには以下のような種類があります。 種類 投与方法と使用用途 効果 内服薬 ・口から飲むタイプ ・比較的効果の出現が早く全身に作用が及ぶ 鎮痛・消炎・解熱作用 座薬 ・肛門から投与するタイプ ・吐き気により服用が困難な方も利用できる テープ ・痛みのある部位に貼るタイプ ・長時間効果を持続できる 関節痛、筋肉痛、腰痛などの軽減 ゲル ・痛みのある部位に塗るタイプ ・べたつきが少なく乾きが早いため使用感が良い ローション ・痛みのある部位に塗るタイプ ・広い範囲に塗るときに便利である ボルタレンの適応症一覧|どんな痛みに効く? ボルタレンは以下のような病気に処方する薬です。 分類 病名 整形外科領域 関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛 内科領域 膀胱炎、前眼部炎症、急性上気道炎 産婦人科領域 月経困難症(生理痛)、後陣痛、骨盤内炎症 急性の痛み 抜歯後の痛み、術後の痛み ボルタレンとロキソニンの違い ボルタレンとロキソニンの効果や対象となる病気はほとんど共通です。 主な違いは以下のとおりです。 ボルタレン ロキソニン 成分 ジクロフェナクナトリウム ロキソプロフェンナトリウム 効果の強さ 強い 中 即効性 遅い 早い 血中濃度のピーク 約2.7時間後 約30分後 (文献1)(文献2) ロキソニンはボルタレンよりも即効性があります。ボルタレンはロキソニンよりも効果は強いですが、薬の効果がピークになるまで時間がかかります。効果が強い分、ボルタレンのほうが消化管の副作用が現れやすい傾向です。 ボルタレンの副作用と対処方法 ボルタレンには以下のような副作用があります。 重大な副作用 アナフィラキシーショック、消化管潰瘍など その他の副作用 食欲不振、吐き気、嘔吐など それぞれの副作用と対処方法について詳しく解説します。 重大な副作用|アナフィラキシーショック、消化管潰瘍 ボルタレンの重大な副作用には以下のようなものがあります。 重大な副作用 詳細 アナフィラキシーショック ・薬に対するアレルギー反応であり、多くは服用後30分以内に症状が現れる ・急激な血圧低下により意識障害や脱力感などが現れる 消化管潰瘍 (しょうかかんかいよう) ・胃や腸に傷または穴ができた状態 ・激しい腹痛、胸焼け、吐き気などの症状が現れる 消化管の狭窄・閉塞 ・胃や腸の通り道が狭くなるまたは閉じてしまった状態 ・激しい腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が現れる この他にも、重度の貧血や腎臓の障害、喘息発作などの副作用が現れることがあります。ボルタレンの服用後に、意識障害や息苦しさ、胸の苦しさ、激しい腹痛などの症状が現れた場合は直ちに救急受診が必要です。 その他の副作用|食欲不振、吐き気、嘔吐 その他の副作用には、以下のようなものがあります。 食欲不振 吐き気 嘔吐 胃の痛み 腹痛 下痢・便秘 喉の渇き 口内炎 発疹 頭痛 眠気 これらの症状が現れている場合は医師に相談してください。 ボルタレンを服用してはいけない方【禁忌】 以下に該当する方はボルタレンを服用してはいけません。 禁忌となる既往歴 起こりうるリスク 消化性潰瘍 潰瘍の症状の悪化 重篤な血液の異常 血液異常の悪化 重篤な腎臓の障害 腎機能の悪化 重篤な肝臓の障害 肝機能の悪化 重篤な高血圧 血圧の上昇 重篤な心不全 心臓の機能の悪化 ボルタレンへの過敏症 (過敏に反応すること) 重大な副作用の出現 アスピリン喘息 喘息発作の誘発 インフルエンザによる脳炎や脳症 予後不良の確率の上昇 妊婦または妊娠の可能性がある方も、胎児の心臓の血管などに重大な影響を及ぼすリスクがあるため、服用してはいけません。授乳婦も乳汁中に移行する可能性があるため、服用の中止を検討する必要があります。 ボルタレンと一緒に飲んではいけない薬 ボルタレンと一緒に飲んではいけない薬は、トリアムテレンという利尿薬です。併用すると、急性腎障害が現れるおそれがあります。 また、以下の薬はボルタレンと併用する際に注意が必要です。 レボフロキサシン ジゴキシン アスピリン プレドニゾロン フロセミド ワルファリン 併用に注意すべき薬は他にもあります。服用している薬は事前に医師に申告しておきましょう。 ボルタレンの正しい飲み方と効果が現れるまで時間 成人のボルタレンの用法・用量は以下のとおりです。 対象 用法・用量 痛み・炎症 1日量75〜100mgとして、原則3回に分けて服用する 発熱 1回量25〜50mgを1日2回(最大100mg)までとして頓用する 消化管障害のリスクが高まるため空腹時に服用してはいけません。また、ボルタレンが食道に留まると食道潰瘍を起こすおそれがあるため、服用時は多めに水を飲んでください。 ボルタレンを服用する際の注意点 ボルタレンを服用する際は以下のことについて注意してください。 長期間服用する際は定期的に検査を受ける 持病がある方は医師に必ず報告する それぞれの注意点について詳しく解説します。 長期間服用する際は定期的に検査を受ける ボルタレンは副作用として、重篤な肝臓の障害が現れることがあります。そのため、長期間服用する方は、血液検査や尿検査を定期的に受けてください。 とくに肝臓に障害がある方、関節リウマチや変形性関節症などの慢性疾患がある方は、定期的な検査が推奨されています。 持病がある方は医師に必ず報告する 以下のような既往歴がある方は、ボルタレンの服用を慎重に検討しなければなりません。 SLE(全身性エリテマトーデス) 潰瘍性大腸炎 クローン病 食道通過障害 気管支喘息 感染症 肝硬変(腹水を伴う) これらの病気に対してボルタレンを服用すると、病状が悪化するおそれがあります。既往歴は医師に必ず報告しましょう。 関節痛・慢性疼痛に対する再生医療 ボルタレンはあくまで痛みを軽減する対症療法です。関節痛・慢性疼痛にお悩みの方は、治療方法の一つとして再生医療の選択肢があります。 再生医療とは、自己の細胞を患部(病気の部位)に投与して、体が持つ自然治癒力を引き出す治療方法です。 具体的な再生医療の治療方法は以下のとおりです。 再生医療の種類 詳細 幹細胞治療 (かんさいぼうちりょう) 組織の修復に関わる働きを持つ「幹細胞」を患部に投与する治療方法 PRP療法 血液中の血小板に含まれる成長因子などが持つ、炎症を抑える働きや組織修復に関与する働きを利用した治療方法 実際の再生医療の症例について詳しく知りたい方は、以下を参考にしてください。 【症例紹介】 関節リウマチで膝関節の痛みが取れない・40代女性 関節リウマチ・高濃度PRPで手首の痛みが激減! まとめ|ボルタレンの効果や副作用を十分に理解して服用しよう ボルタレンは、強力な鎮痛・消炎・解熱作用のある薬です。関節リウマチや腱鞘炎、変形性関節症などさまざまな病気に対して用いられます。 しかし、あくまでも対症療法であるため注意が必要です。ボルタレンは、内服薬や座薬、ゲルなどさまざまな投与方法があり、それぞれ用途に合わせて使用します。 効果が強い一方、消化管の副作用が現れやすい傾向です。「空腹時の服用は避ける」「多めの水で服用する」などの対策も重要です。意識障害や息苦しさ、激しい腹痛などが現れた場合は、重大な副作用の疑いがあるため速やかに医療機関を受診してください。 当院「リペアセルクリニック」では、関節リウマチや腱鞘炎に対して再生医療を行っています。気になる症状がある方は、お気軽にご連絡ください。 ボルタレンに関するよくある質問 頭痛や歯痛、生理痛には効果がある? ボルタレンは頭痛や歯痛、生理痛にも効果があります。その他にも、後陣痛や抜歯後の痛みなど幅広い痛みに対して効果があります。 ロキソニンとどっちが強い? 一般的に、ロキソニンよりもボルタレンのほうが効果は強いとされています。副作用もボルタレンのほうが現れやすい傾向です。 眠気を引き起こす? ボルタレンは、眠気やめまい、眼のかすみなどの副作用が現れることがあります。ボルタレンの服用中は、自動車運転や危険を伴う機械操作などは控えてください。 参考文献 (文献1) ボルタレン錠25mg|医薬品医療機器情報提供ホームページ (文献2) ロキソプロフェンナトリウム錠|日本薬局方
2026.01.31 -
- その他、整形外科疾患
「ロラゼパムの具体的な効果や副作用は?」 「効果が出るまでの時間や離脱症状について知りたい」 ロラゼパム(ワイパックス)は抗不安薬に分類され、不安や緊張を鎮めるために用いる薬です。服用する場合は副作用だけでなく、急に薬をやめると現れる離脱症状について理解しておくことも重要です。 本記事ではロラゼパムの効果と作用機序をはじめとして、以下を解説します。 副作用と対応方法 離脱症状と減薬方法 正しい飲み方と効果が出るまでの時間 服用する際の注意点 処方を検討する病気や障害 ロラゼパムと似た効果を持つ他の薬について一覧で解説しています。「似たような薬があってよくわからない」と悩んでいる方は、参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、さまざまな病気の治療に応用されている再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEをご利用ください。 ロラゼパム(ワイパックス)の効果と作用機序 ロラゼパムの主な効果は以下の通りです。 効果 詳細 抗不安作用 不安や緊張を和らげる 鎮静・催眠作用 穏やかな眠りに導く 筋弛緩作用 筋肉の緊張を和らげる ロラゼパムは、脳の興奮を静めるGABAという物質の作用を高めることで、不安や緊張を和らげます。 ロラゼパムの副作用と対応方法 ロラゼパムには以下のような副作用があります。 重大な副作用 依存性、錯乱、呼吸抑制など その他の副作用 眠気、動悸、吐き気など ここからは、ロラゼパムの副作用の詳細と対応方法について解説します。 重大な副作用|依存性、錯乱、呼吸抑制 ロラゼパムの重大な副作用として、以下のようなものが挙げられます。 重大な副作用 詳細 依存性 ・薬の長期使用により薬なしではいられなくなる ・急にやめると不安やふるえなどの症状が現れる 興奮・錯乱 ・イライラして興奮する ・時間や場所がわからなくなる 呼吸抑制 ・呼吸する力が弱まり、呼吸の回数が減少したり息苦しさが現れたりする ・重症化すると命に関わることもある これらの重大な副作用が現れた場合は直ちに医療機関を受診してください。 その他の副作用|眠気、動悸、吐き気 その他の副作用を一部紹介すると以下の通りです。 眠気 不眠 ふらつき めまい 立ちくらみ 頭痛 頭の重だるい感覚 吐き気 下痢 便秘 これらの副作用が現れたら減薬を検討する必要があります。疑われる症状が現れたら、医療機関を受診しましょう。 ロラゼパムの離脱症状と減薬方法について ロラゼパムを長期間の服用している場合は、急に服用を中止すると離脱症状が現れることがあります。離脱症状とは不安や不眠、けいれんなどのことです。 薬をやめるには、例えば以下のように時間をかけて徐々に減らしていく必要があります。 減薬方法 詳細 量を減らす方法 2〜4週間ごとに4分の1くらいずつ薬の量を減らしていく 頻度を減らす方法 2〜3日に1回、数日に1回と服用の頻度を減らしていく (文献1)※減薬は必ず医師と相談のうえで進めてください。 上記はあくまでも一例であり、自己判断で減薬または服用の中止をしてはいけません。医師に「減薬をしても良いのか」「薬を辞めても良い状態であるのか」「どのように減薬していくか」を必ず相談してください。 また、薬だけに頼らないために規則正しい生活習慣やストレス対処法を取得するのも重要です。 ロラゼパムの正しい飲み方と効果が出るまでの時間 ロラゼパムの成人の標準的な用法・用量は、1日1〜3mgを2〜3回に分けた服用です。年齢や症状によって調整します。不安が強い際に頓服として処方されるケースもあります。 ロラゼパムの服用後、血液中の薬の濃度がピークを迎えるのは約2時間後です。つまり、約2時間以内には効果が出るということです。服用後、約12時間後には半減期を迎えて、24時間後には消失します。(文献2) 半減期とは、服用してから血液中の薬の濃度が半分になるまでの時間のことです。半減期の時間によって薬の作用時間が分類され、ロラゼパムは中時間作用型にあたります。 ロラゼパムを服用する際の注意点 ロラゼパムを服用する際の注意点は以下の通りです。 運転や危険な作業は控える 持病のある方は医師に必ず報告する 妊婦や授乳婦は服用しない それぞれの注意点について詳しく解説します。 運転や危険な作業は控える ロラゼパムは副作用として、眠気やふらつき、注意力・集中力の低下などの症状が現れることがあります。そのため、自動車の運転、高所作業、機械操作など危険が伴うことは控えてください。 また、ロラゼパム服用中に飲酒をすると、眠気やふらつき、注意力・集中力の低下を増強させるおそれがあります。ロラゼパムを服用している方は飲酒を控えましょう。 持病のある方は医師に必ず報告する 持病がある方がロラゼパムを服用すると、以下のようなリスクがあります。 障害 服用によるリスク 脳の障害 薬の効果の増強 心臓の障害 病気の症状の悪化 中等度以上の呼吸不全 病気の症状の悪化 腎臓の障害 薬の排泄の遅延 肝臓の障害 薬の排泄の遅延 その他にも、ロラゼパムと併用してはいけない薬もあります。既往歴や現在治療中の病気がある場合は、必ず医師に申告してください。 妊婦や授乳婦は服用しない 妊婦や授乳婦は以下のような理由により服用は避ける必要があります。 服用を避けるべき理由 妊婦 ・新生児に口唇裂(こうしんれつ:唇に裂け目がある状態)が起こるリスクがある ・新生児に哺乳困難や活動性の低下、呼吸抑制などの症状が現れるリスクがある 授乳婦 ・ロラゼパムが乳汁中に移行するリスクがある ・ロラゼパムが移行した乳汁を乳児が飲むと、意識障害や体重減少などの症状が現れるリスクがある 妊婦または妊娠している可能性がある方は、薬を飲むメリットとデメリットを比較して、メリットのほうが大きい場合に服用を検討します。 ロラゼパムの処方を検討する病気や障害 ロラゼパムの処方を検討する病気や障害は、以下のようなものが挙げられます。 神経症 心身症 高次脳機能障害 更年期障害 それぞれについて詳しく解説します。 神経症 神経症とは以下のような病気のことです。 神経症 特徴 社会不安障害 「人に注目される」「恥ずかしい思いをする」などに対して極端に恐怖を感じる病気 強迫性障害 「戸締りやガス栓を何度も何度も確認する」などにより生活に支障をきたす病気 パニック障害 理由もなく突然激しい不安に襲われて、動悸やめまいなどの症状が現れる病気 ロラゼパムは、これらの神経症に対する不安や緊張、抑うつなどの症状の改善に効果を期待できます。 心身症 心身症とは、心理的・社会的ストレスの影響により、発症または悪化する身体の病気のことです。 代表的な病気は以下の通りです。 心身症 特徴 過敏性腸症候群 ストレスにより下痢や腹痛などの症状が悪化する病気 機能性ディスペプシア ストレスによりみぞおち辺りの腹痛や焼けるような感覚、食後の胃もたれなどの症状が現れる病気 本態性高血圧 生活習慣の乱れやストレスなどにより発症する高血圧 ロラゼパムにより不安や緊張を和らげることで、心身症の症状の改善が期待できます。 高次脳機能障害 高次脳機能障害とは、脳梗塞や脳卒中、頭部外傷、アルツハイマー病などが原因で起きる認知機能障害のことです。不安や動悸などの症状が現れている際にロラゼパムの処方が検討されます。ロラゼパムは依存性があるため、抑制障害(衝動的な行動や言動を制御できない状態)が強い場合は服用を控えます。 脳卒中の後遺症に対する再生医療 高次脳機能障害の原因となる脳卒中の後遺症に対する治療法として再生医療があります。再生医療とは人が本来持つ「再生する力」を活用した治療方法です。 以下のような後遺症が治療対象です。 会話がスムーズにできず意思疎通が難しい 食事の際にむせやすく十分に食べられない 見る力や考える力の変化でこれまでの生活が送りにくい 排泄に問題があり外出や人との交流が減っている その他にも、再発予防のための治療を行っています。脳卒中の後遺症や再発予防についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 更年期障害 更年期障害とは、40歳以降辺りから起きる性ホルモンの分泌量の低下により現れる症状の総称です。 更年期障害は以下のようなさまざまな症状が現れます。 不安 イライラ 抑うつ 情緒不安定 頭痛 のぼせ めまい 肩こり 疲労感 更年期障害による不眠や不安に対して、ロラゼパムが処方されるケースがあります。 【関連記事】 男性更年期障害とは?症状・原因・治療法をわかりやすく解説 更年期障害になりやすい女性の特徴とは?体質・性格・生活習慣でわかるリスクを紹介 ロラゼパムと似た効果を持つ他の薬 抗不安薬はさまざまな種類がありますが、抗不安作用や鎮静作用、筋弛緩作用など効果は基本的に共通しています。主な違いは効果が現れるまでの時間や消失するまでの時間です。 以下は代表的な抗不安薬です。 一般名(商品名) 効果が出るまでの時間 半減期 クロチアゼパム (リーゼ) 約1時間以内 約6時間後 ブロマゼパム (レキソタン) 約1時間以内 約20時間後 アルプラゾラム (ソラナックス) 約2時間以内 約14時間後 ジアゼパム (セルシン) 約1時間以内 約9〜96時間後 クロキサゾラム (セパゾン) 約2〜4時間以内 約11〜24時間後 メダゼパム (リボトール) 約0.5〜1.5時間以内 約51〜150時間後 ロフラゼプ酸エチル (メイラックス) 約1時間以内 約122時間 (文献3) それぞれの薬について詳しく解説します。 クロチアゼパム(リーゼ) クロチアゼパムは心身症の他に、自律神経失調症によるめまいや肩こり、食欲不振などの症状に処方する薬です。服用後、約1時間以内で効果が現れ、約6時間後には半減期を迎えるため短時間作用型の薬です。 ブロマゼパム(レキソタン) ブロマゼパムは神経症や心身症の他に、うつ病の不安や緊張などの症状に処方する薬です。服用後、約1時間以内に効果が現れ、約20時間後に半減期を迎えるため中時間作用型の薬です。 アルプラゾラム(ソラナックス) アルプラゾラムは主に心身症に対して処方する薬です。服用後、約2時間以内に効果が現れ、約14時間後に半減期を迎えるため中時間作用型の薬です。 ジアゼパム(セルシン) ジアゼパムは神経症や心身症の他に、うつ病による不安や緊張、脳脊髄の病気のけいれんや痛みなどの症状に対して処方する薬です。服用後、約1時間以内に効果が現れます。半減期は9〜96時間後と文献により異なりますが、長時間作用型に分類します。 クロキサゾラム(セパゾン) クロキサゾラムは、主に神経症と心身症に処方する薬です。投与後、約2〜4時間以内に効果が現れます。約11〜24時間後に半減期を迎えるため長時間作用型に分類します。 メダゼパム(リボトール) メダゼパムは主に神経症や心身症に処方する薬です。服用後、約0.5〜1.5時間以内に効果が現れます。半減期は約51〜150時間後と幅がありますが、長時間作用型に分類します。 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス) ロフラゼプ酸エチルは主に神経症や心身症に処方する薬です。服用後、約1時間以内に効果が現れます。半減期は約122時間後で超長時間作用型に分類します。 まとめ|ロラゼパムの効果や副作用を十分に理解して服用を検討しよう ロラゼパムの主な効果は、不安や緊張を和らげる作用や穏やかな眠りに導く作用などです。主に神経症や心身症に対して処方されますが、脳卒中の後遺症として現れる高次脳機能障害などの症状に対して処方するケースもあります。 重大な副作用として、依存性や錯乱、呼吸抑制があります。これらの副作用が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 ロラゼパムを長期間服用している方は、急に薬をやめてはいけません。不安や不眠、けいれんなどの離脱症状が現れることがあるためです。調子が良くなっても、自己判断で薬の量を調整しないで、医師に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の後遺症などに対して再生医療を行っています。気になる症状がある方は、お気軽にご連絡ください。 ロラゼパムの効果に関するよくある質問 Q.イライラに効果がある? ロラゼパムは不安だけでなくイライラにも効果があります。その他にも、過呼吸やドキドキ、緊張などを鎮める効果を期待できます。 Q.パニック障害に効果がある? ロラゼパムはパニック障害に効果があります。抗うつ薬との併用で治療を始めるのが一般的です。 Q.痩せる効果がある? ロラゼパムに直接的な体重減少の効果はありません。副作用の食欲不振や吐き気により食事量が減る可能性はあります。 Q.飲み過ぎるとどうなる? 飲み過ぎると副作用が強く現れるおそれがあります。誤って多く飲んだ場合は直ちに医療機関を受診してください。 参考文献 (文献1) 睡眠薬や抗不安薬を飲んでいる方にご注意いただきたいこと|東京女子医科大学病院 (文献2) ロラゼパム錠0.5mg「サワイ」|医薬品医療機器情報提供ホームページ (文献3) 睡眠薬一覧(内服・外用)|愛媛大学医学部附属病院
2026.01.31 -
- 足部、その他疾患
- 足部
ふくらはぎに痛みを感じ、「筋肉痛かもしれないけれど、何か病気だったらどうしよう」と不安になっていませんか。 とくに片方だけがズキズキ痛む場合や、痛みが長引いている場合は、このまま様子を見て良いのか判断に迷うものです。 ふくらはぎの痛みは、筋肉疲労のような一時的なものから、血管や神経の病気が原因となっているケースまでさまざまです。原因によって適切な対処法が異なるため、まずは痛みの出方や続く期間などの特徴を確認し、ご自身の症状を整理することが大切です。 本記事では、ふくらはぎが痛くなる主な原因と症状別の対処法、病院を受診する目安について詳しく解説します。ふくらはぎの痛みにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ふくらはぎの痛みでお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ふくらはぎの痛みは様子見でいい?対処法の見極め方 ふくらはぎに痛みを感じたとき、「病院に行くべきか、様子を見て良いのか」を判断するには、痛みのきっかけや強さ、続く期間などの確認が重要です。 以下の表を参考に、ご自身の症状を確認してみてください。 判断の目安 症状の例 様子見できる痛み ・運動や長時間の立ち仕事の後に痛む ・両足に同じような痛みがある ・2〜3日で徐々に軽くなる 注意が必要な痛み ・きっかけがなく突然痛み出した ・片足だけ腫れや熱感がある ・数日経っても改善しない ・日に日に悪化している 運動後の筋肉痛のように原因がはっきりしており、数日で自然に治まる痛みであれば、セルフケアで対処できる場合が多いです。 一方、明らかなきっかけがないのに突然痛み出した場合や、片足だけ腫れ・変色・熱感を伴う場合は、血管や神経に問題が生じている可能性があります。このような症状がみられるときは、早めに医療機関を受診しましょう。 次の章では、ふくらはぎが痛くなる具体的な原因について解説します。 ふくらはぎが痛くなる主な原因7選 ふくらはぎの痛みを引き起こす原因は多岐にわたります。ここでは、代表的な7つの原因を紹介します。 筋肉疲労・筋肉痛による痛み 肉離れ(筋挫傷)による急激な痛み こむら返り(有痛性筋痙攣)後の痛み 下肢静脈瘤による慢性的な痛み 血栓性静脈炎による違和感 閉塞性動脈硬化症による歩行時の違和感 坐骨神経痛によるしびれを伴う痛み それぞれ詳しく解説します。 原因①筋肉疲労・筋肉痛による痛み ふくらはぎの痛みで最も多いのが、運動や日常動作による筋肉疲労(筋肉痛)です。 運動後や立ち仕事、階段の上り下りなどで筋肉に負荷がかかると、筋繊維に微細な損傷が生じます。この損傷が修復される過程で炎症反応が起こり、痛みとして感じられます。 とくに、普段使わない筋肉を急に使ったときや、過度な運動を行ったときに発症しやすいのが特徴です。 筋肉疲労は両足に起こることが多く、通常は数日で自然に治まります。 原因②肉離れ(筋挫傷)による急激な痛み 肉離れは、筋肉が急激に引き伸ばされたり収縮したりして、筋繊維が部分的または完全に断裂する状態を指します。 スポーツ中の急な加速や方向転換、ジャンプの着地時などに発症することが多く、「ブチッ」という音や感覚とともに激痛が走ります。 肉離れの主な症状は以下のとおりです。 受傷した瞬間の激しい痛み 患部の腫れや内出血(青あざ) 押すと痛む(圧痛) 歩行困難 肉離れは片足に発症するケースが多く、重症度によって軽度・中等度・重度の3段階に分類されます。軽度であっても2〜3週間の治療期間が必要となるため、自己判断で放置せず、整形外科を受診しましょう。 以下の記事では、ふくらはぎの肉離れについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 原因③こむら返り(有痛性筋痙攣)後の痛み こむら返りは、ふくらはぎの筋肉が突然異常収縮を起こし、激しい痛みを伴う症状です。夜間や明け方に発症することが多く、数秒から数分間痛みが続きます。 また、痙攣が治まった後も、筋肉痛のような鈍い痛みが数時間から数日残ることがあります。 こむら返りの主な原因は以下のとおりです。 脱水や電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)のバランスの乱れ 冷えによる血行不良 筋肉の疲労 加齢による筋肉量の低下 肝臓の機能低下(文献1) 中高年や妊婦に多くみられ、頻繁に繰り返す場合は、肝臓や腎臓の機能低下が隠れている可能性もあります。(文献1) 以下の記事では、こむら返りの原因について詳しく解説しています。こむら返りの症状に心当たりがある方は、ぜひ参考にしてください。 原因④下肢静脈瘤による慢性的な痛み 下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、足の静脈にある逆流防止弁が正常に機能しなくなり、血液が足に溜まってしまう病気です。 血管がボコボコと浮き出て見えるほか、以下のような症状を伴います。 ふくらはぎのだるさや重さ むくみ 鈍い痛み 足のつり 立ち仕事の方に多く、夕方になると症状が悪化する傾向があります。 下肢静脈瘤は放置すると徐々に進行し、皮膚の色素沈着や潰瘍を形成することもあるため、早めに血管外科や心臓血管外科を受診しましょう。(文献2) 以下の記事では、下肢静脈瘤の注意点などを解説しています。ぜひ参考にしてください。 原因⑤血栓性静脈炎による違和感 血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)は、皮膚に近い表在静脈に血栓(血の塊)ができて炎症を起こす病気です。 ふくらはぎの表面に沿って赤く腫れ、硬いしこりやひも状のふくらみが現れることがあります。血栓性静脈炎を発症しやすい方の特徴は以下のとおりです。 静脈瘤がある方 点滴や注射の後 長時間同じ姿勢で過ごすことが多い方 多くの場合は、皮膚の近くで起こる炎症にとどまります。ただし、まれに深部静脈へ広がり、深部静脈血栓症に進行することもあります。違和感に気づいたら医療機関で相談しましょう。(文献3) 以下の記事では、血栓性静脈炎の原因や治療法などを解説しています。少しでも違和感がある方は、ぜひご覧ください。 原因⑥閉塞性動脈硬化症による歩行時の違和感 閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)は、動脈硬化により足の血管が狭くなったり詰まったりして、血流が悪くなる病気です。 代表的な症状は「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれるもので、一定の距離を歩くとふくらはぎが痛くなり、少し休むと痛みが治まって再び歩けるようになります。 そのほか、以下のような症状がみられることがあります。 足の冷感やしびれ 足の皮膚の色が悪い(蒼白、紫色) 傷が治りにくい 糖尿病や高血圧、脂質異常症のある方や喫煙者に多く、50代以上の男性に好発します。進行すると安静時にも痛みが出るようになるため、早期発見・早期治療が重要です。 以下の記事では閉塞性動脈硬化症の症状について解説しています。もしも当てはまる症状がある方は、記事をご覧ください。 原因⑦坐骨神経痛によるしびれを伴う痛み 坐骨神経痛は、腰から足にかけて走る坐骨神経が圧迫・刺激されることで生じる痛みやしびれの総称です。 腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)が原因となることが多く、腰からお尻、太もも裏、ふくらはぎへと放散する痛みが特徴です。 坐骨神経痛の主な症状は以下のとおりです。 腰から足にかけての痛みやしびれ ピリピリ、ジンジンとした感覚 足に力が入りにくい 長時間座っていると悪化する 片足に発症することが多く、前かがみや後ろに反る動作で悪化する場合があります。症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。 以下の記事では坐骨神経痛について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 症状別|ふくらはぎが痛い時の対処法4選 ふくらはぎの痛みは、原因や症状によって適切な対処法が異なります。ここでは、症状別に4つの対処法を紹介します。 運動後の筋肉痛にはアイシングとストレッチ むくみを伴う痛みには足上げと軽い運動 こむら返り後には水分・ミネラル補給と温め 慢性的な痛みには生活習慣の見直し それぞれ具体的に解説します。 対処法①運動後の筋肉痛にはアイシングとストレッチ 運動後の筋肉痛や、炎症が疑われる急性期の痛みには、まずアイシング(冷却)が基本です。 アイシングの目安は以下のとおりです。 項目 目安 冷やす時間 1回15〜20分程度 頻度 1〜2時間おきに数回 期間 痛みや腫れがある最初の24〜48時間 なお、氷や保冷剤を直接肌に当てると凍傷の恐れがあるため、タオルで包んでから使用しましょう。 炎症が落ち着いてきたら、ふくらはぎの筋肉を優しく伸ばすストレッチを行うと、血流が促進され、回復を助けます。 ただし、痛みが強いときに無理にストレッチを行うと逆効果になるため、「心地よく伸びる」程度にとどめてください。 対処法②むくみを伴う痛みには足上げと軽い運動 むくみを伴うふくらはぎの痛みは、血液やリンパ液の流れが滞っている状態です。血流を促すために、以下の対処法を試してみてください。 足上げ 横になった状態で、足を心臓より高い位置に上げる クッションや枕を足の下に置き、15〜20分程度キープ 就寝時や休憩時に取り入れてみましょう。 また、長時間同じ姿勢でいると血流が滞りやすくなるため、軽い運動も血流を促すのに効果的です。 デスクワーク中はこまめに足首を回したり、かかとの上げ下げを行ったりして、ふくらはぎの筋肉を動かしましょう。 対処法③こむら返り後には水分・ミネラル補給と温め こむら返りが起きた後の痛みには、水分とミネラルの補給、そして筋肉を温めることが有効です。 こむら返りは脱水や電解質バランスの乱れが原因となることが多いです。汗をかいた後や就寝前は、ナトリウムやカリウム、マグネシウムを含むスポーツドリンクや経口補水液を摂取しましょう。 また、痙攣が治まり、急性期の炎症がない状態であれば、蒸しタオルや入浴でふくらはぎを温めると、血流が促進され、筋肉の緊張がほぐれます。 なお、こむら返り直後に強くマッサージすると筋肉を傷める可能性があります。マッサージをする場合は、痛みが落ち着いてから、優しく行うようにしましょう。 対処法④慢性的な痛みには生活習慣の見直し 原因がはっきりしない慢性的なふくらはぎの痛みやだるさは、生活習慣が影響している可能性があります。 以下のポイントを意識して、日常生活を見直してみてください。 見直しポイント 具体的な取り組み 長時間の同一姿勢を避ける 1時間に1回は立ち上がる、軽いストレッチを行う 適度な運動を習慣にする ウォーキングや軽いジョギングでふくらはぎの筋肉を使う 冷えを防ぐ 靴下やレッグウォーマーで保温する、冷たい飲み物を控える 入浴で血流を促す シャワーだけで済まさず、湯船に浸かる習慣をつける なお、これらの習慣改善を続けても痛みが軽減しない場合は、なんらかの疾患が隠れている可能性があります。医療機関への受診を検討しましょう。 片方のふくらはぎだけが痛む場合の注意点 ふくらはぎの痛みが片方だけに現れる場合、筋肉疲労以外の原因が隠れている可能性があるため注意が必要です。 片足だけ痛む原因として考えられる主な疾患を、以下の表にまとめました。 疾患名 特徴的な症状 肉離れ 運動中の急な痛み、内出血、腫れ 深部静脈血栓症 片足の腫れ、熱感、皮膚の変色(赤みや紫色) 血栓性静脈炎 表面の静脈に沿った赤み、硬いしこり 閉塞性動脈硬化症 歩行時の痛み、冷感、皮膚の色調変化 坐骨神経痛 腰から足にかけてのしびれ、放散痛 とくに注意が必要なのは「深部静脈血栓症」です。足の深い部分にある静脈に血栓ができる病気で、血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こし、命に関わることがあります。(文献4) 以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。 片足だけが急に腫れた 皮膚が赤黒く変色している 熱感を伴う痛みがある 長時間の移動や手術の後に症状が出た 片方のふくらはぎだけが痛む場合は、自己判断で放置せず、早めに医師の診察を受けましょう。 ふくらはぎの痛みに関する治療の選択肢 ふくらはぎの痛みが続く場合、原因に応じた適切な治療を受けることが大切です。ここでは、保存療法と、近年注目されている再生医療について紹介します。 保存療法 慢性的な痛みへの新しいアプローチ「再生医療」 ふくらはぎの痛みがひどい場合は、ぜひ参考にしてください。 保存療法 ふくらはぎの痛みの治療は、原因や症状の程度によって異なりますが、まずは保存療法が選択されることが一般的です。 主な保存療法 内容 安静・固定 患部を動かさず、必要に応じてサポーターやテーピングで固定する 薬物療法 消炎鎮痛剤(内服・外用)で炎症や痛みを抑える リハビリテーション ストレッチや筋力トレーニングで機能回復を図る 物理療法 温熱療法、電気刺激療法などで血流改善や痛みの緩和を促す なお、保存療法で改善がみられない場合や、血管・神経の疾患が原因の場合は、専門的な治療や手術が検討されることもあります。 症状が長引く場合は自己判断で対処を続けず、医療機関で原因を特定した上で、適切な治療を受けましょう。 慢性的な痛みへの新しいアプローチ「再生医療」 保存療法を続けても慢性的な痛みが残る場合、近年では再生医療が治療の選択肢として検討されることもあります。 再生医療とは、人間が本来持っている自己修復力を活かす治療法です。患者様ご自身の細胞や血液成分を用いるため、拒否反応のリスクが少ないのが特徴です。 「保存療法では十分な変化を感じにくいが、手術は避けたい」とお考えの方は、再生医療を選択肢の一つとして検討してみてください。 再生医療について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。 まとめ|ふくらはぎの痛みは早めの対処と原因の見極めが大切 ふくらはぎの痛みは、筋肉疲労のような一時的なものから、血管や神経の病気が関係しているケースまで、原因はさまざまです。 セルフケアで和らぐこともありますが、痛みが長引く場合や腫れ・変色を伴う場合は、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供や簡易オンライン診断を行っております。 ふくらはぎの痛みでお悩みの方は、ぜひご登録ください。 ふくらはぎの痛みに関するよくある質問 ふくらはぎが片方だけズキズキ痛むのは危険? 片方のふくらはぎだけがズキズキ痛む場合、肉離れ、深部静脈血栓症、坐骨神経痛などが原因として考えられます。 とくに以下の症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。 急な腫れや熱感がある 皮膚が赤黒く変色している 痛みが日に日に強くなっている 長時間の移動や安静の後に発症した 原因がはっきりしない片側の痛みは、自己判断で様子を見続けず、医師への相談をおすすめします。 ふくらはぎの痛みにマッサージは効果がある? ふくらはぎの痛みに対してマッサージが効果的な場合と、避けるべき場合があります。 マッサージが効果的な症状 マッサージを避けるべき症状 筋肉疲労によるだるさ 深部静脈血栓症(血栓を飛ばす危険性) むくみによる重さ 肉離れの急性期(炎症を悪化させる) 慢性的な筋肉のこわばり 強い炎症や腫れがあるとき セルフマッサージを行う際は、足首からひざ裏に向かって、下から上へ優しくさするのが基本です。強く揉んだり叩いたりすると、かえって筋肉を傷めることがあるため注意してください。 原因がわからない痛みや、腫れ・熱感を伴う痛みには、自己判断でマッサージをせず、医師に相談してから行いましょう。 ふくらはぎが痛くて歩けない時はどうすればいい? 歩けないほどの痛みは、重症度が高い状態であることを示しています。「そのうち治るだろう」と放置せず、整形外科や血管外科など、症状に応じた専門の医療機関を受診しましょう。 なお、以下の症状を伴う場合は、早急に医療機関を受診してください。 症状 考えられる疾患 急に激しい痛みが出て動けない 肉離れ、アキレス腱断裂 片足だけ急に腫れて熱を持っている 深部静脈血栓症 足の色が紫色や白っぽくなっている 血流障害 発熱を伴う 感染症 参考文献 (文献1) 日本消化器病学会,日本肝臓学会.「肝硬変診療ガイドライン2020|日本消化器病学会ガイドライン」 (文献2) 下肢静脈瘤|国立循環器病研究センター (文献3) Treatment for superficial thrombophlebitis of the leg|Cochrane Database Syst Rev. (文献4) エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)に関するQ&A|日本呼吸器学会
2026.01.31 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
股関節の痛みは、歩く・立ち上がる・階段を上るといった日常動作に支障をきたし、生活の質を大きく低下させる症状です。 股関節が痛くなる原因は、筋肉の疲労から関節の変形、神経の圧迫までさまざまです。原因によって適切な対処法が異なるため、自己判断だけでは改善が難しいケースもあります。 本記事では、股関節が痛いときに確認すべきポイント、考えられる原因と受診の目安、自宅でできる応急処置とストレッチについて詳しく解説します。痛みを放置すると症状が悪化する可能性があります。まずは原因を整理し、適切な対処につなげていきましょう。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 股関節の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 股関節が痛いときに確認すべき3つのポイント 股関節の痛みを医師に相談する際、痛みの特徴を整理しておくと診察がスムーズに進みます。以下3つのポイントを確認しておきましょう。 痛みの場所を特定する(鼠径部・外側・後ろ側) 痛みが出るタイミングを確認する(動作時・安静時・夜間) 痛みの種類を見極める(鋭い痛み・鈍痛・しびれ) それぞれ詳しく解説します。 1.痛みの場所を特定する(鼠径部・外側・後ろ側) 股関節の痛みは、痛む場所によって考えられる原因が異なります。 痛みの場所 考えられる主な原因 鼠径部(足の付け根の前側) ・変形性股関節症 ・股関節唇損傷 ・腸腰筋の炎症 股関節の外側 ・中殿筋・小殿筋の炎症 ・大転子滑液包炎 お尻・後ろ側 ・坐骨神経痛 ・梨状筋症候群 ・腰椎疾患からの関連痛 「股関節が痛い」と感じていても、実際には腰や臀部の筋肉、神経が原因となっているケースもあります。痛みの場所を具体的に言語化しておくと、診察時に医師へ伝えやすくなります。 2.痛みが出るタイミングを確認する(動作時・安静時・夜間) 痛みが出るタイミングも、原因を推測する重要な手がかりです。 痛みのタイミング 考えられる状態 動き始めに痛い ・関節のこわばり ・変形性股関節症の初期 動作中・歩行中に痛い ・筋肉の疲労 ・関節への負担 安静時も痛い ・炎症が強い状態 ・疾患の進行 夜間に痛みで目が覚める ・関節の変形が進行している可能性 ・大腿骨頭壊死症 とくに、安静にしていても痛みが続く場合や、夜間に痛みで目が覚める場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 3.痛みの種類を見極める(鋭い痛み・鈍痛・しびれ) 痛みの「質」も、医師が原因を考える上で重要な情報となります。 痛みの種類 特徴と考えられる原因 ズキッとした鋭い痛み ・急性の炎症 ・関節唇損傷 ・骨の異常 重だるい鈍痛 ・筋肉の疲労 ・慢性的な炎症 しびれを伴う痛み 神経の圧迫(坐骨神経痛、腰椎疾患) これらの情報はあくまで原因を考える際の参考です。自己判断で病名を決めつけず、気になる症状がある場合は医療機関を受診しましょう。 股関節が痛いときの主な原因と病院を受診すべき症状 股関節の痛みを引き起こす原因は多岐にわたります。ここでは、代表的な5つの原因と、それぞれの受診すべき症状について解説します。 筋肉の疲労や炎症による痛み 腰椎疾患からの関連痛 変形性股関節症による痛み 関節リウマチによる痛み 大腿骨頭壊死症による痛み 以下の記事では、股関節に関連する病気を一覧で解説しているので、ぜひ参考にしてください。 筋肉の疲労や炎症による痛み 股関節周辺の筋肉(腸腰筋、中殿筋、大腿四頭筋など)に過度な負担がかかると、疲労や炎症によって痛みが生じます。 以下の表を参考にし、医療機関への受診を検討してください。 項目 内容 主な原因 ・運動のやりすぎ ・長時間の同じ姿勢 ・準備運動不足 症状の特徴 ・動かすと痛い ・押すと痛い箇所がある ・安静で改善 受診すべき症状 ・2週間以上痛みが続く ・徐々に悪化 ・日常生活に支障 なお、筋肉疲労による痛みは、安静やストレッチで改善することが多いです。ただし、痛みが長引く場合は他の疾患が隠れている可能性があるため、医療機関を受診しましょう。 腰椎疾患からの関連痛 股関節が痛いと感じていても、実際には腰椎の疾患が原因となっているケースがあります。これを「関連痛」と呼びます。 腰椎疾患からの関連痛に関しては、以下の表を参考に判断してください。 項目 内容 主な原因 ・腰椎椎間板ヘルニア ・脊柱管狭窄症 ・坐骨神経痛 症状の特徴 ・腰・太もも・ふくらはぎにも痛みやしびれ ・股関節を動かしても痛みが変わらない 受診すべき症状 ・しびれが強い ・足に力が入りにくい ・排尿・排便に異常 なお、腰椎疾患が原因の場合、股関節だけを治療しても改善しません。腰部の症状を伴う場合は、整形外科でMRI検査などを受け、適切な診断をしてもらいましょう。 変形性股関節症による痛み 変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、股関節の軟骨がすり減り、骨同士が接触することで痛みや動きの制限が生じる疾患です。中高年の女性に多くみられます。(文献1) 変形性股関節症による痛みの特徴や受診すべき症状は、以下の表を参考にしてください。 項目 内容 主な原因 ・加齢 ・臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん) ・過去の股関節疾患や外傷 症状の特徴 ・動作開始時の痛み ・長時間歩くと痛む ・朝のこわばり ・靴下が履きにくい 受診すべき症状 ・可動域の制限が進行 ・歩行距離が短くなる ・夜間痛 変形性股関節症は進行性の疾患です。早期に発見し適切な治療を受けることで、症状の進行を遅らせることが期待できます。 変形性股関節症について詳しく知りたい方は、以下の症例記事をご覧ください。 関節リウマチによる痛み 関節リウマチは、免疫系の異常により自分自身の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患で、進行すると関節の破壊につながる可能性があります。そのため、早期発見・早期治療が重要です。 関節リウマチの主な原因や症状は、以下のとおりです。 項目 内容 主な原因 免疫系の異常(自己免疫疾患) 症状の特徴 ・朝のこわばりが30分~1時間以上 ・複数の関節が同時に痛む ・関節の腫れや熱感 受診すべき症状 ・朝のこわばりが続く ・複数の関節に症状 ・微熱や全身倦怠感 複数の関節に症状がある場合は、早めにリウマチ科や整形外科を受診しましょう。 以下の記事では関節リウマチの症例を紹介しています。ぜひ参考にしてください。 大腿骨頭壊死症による痛み 大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭への血流が途絶え、骨組織が壊死する疾患です。早期であれば保存療法や骨切り術などの治療の選択肢がありますが、進行すると人工関節置換術が必要になることもあるため、早めの受診が重要です。 大腿骨頭壊死症の主な原因や症状の特徴は以下のとおりです。 項目 内容 主な原因 ・ステロイド薬の長期使用 ・過度の飲酒 ・外傷 ・特発性(原因不明) 症状の特徴 ・初期は無症状 ・進行すると急激な鼠径部の痛み ・荷重時の痛み 受診すべき症状 ・突然の強い痛み ・歩行困難 ・安静時も痛みが続く 股関節に「突然の強い痛み」がある場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 以下の記事では、大腿骨頭壊死症の治療法について詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。 急に股関節が痛くなったときの応急処置4ステップ 急な股関節痛に見舞われたとき、適切な初期対応が症状の悪化を防ぎます。具体的には、以下の4ステップで対処しましょう。 ステップ1:患部を安静にして負担を減らす ステップ2:痛みの程度に応じて冷却か温熱を選ぶ ステップ3:市販の鎮痛剤を活用する ステップ4:痛みが引かない場合は早めに受診 それぞれのステップを具体的に解説します。 ステップ1:患部を安静にして負担を減らす 股関節の痛みがひどい急性期は、基本的に痛みがある動作を避け、股関節への荷重を最小限にしましょう。 具体的には、以下の内容を参考にしてください。 項目 内容 具体的な方法 ・横になって休む ・杖や歩行補助具を使用 ・階段の利用を控える 安静期間の目安 ・急性期は48〜72時間を目安に負担を避ける ・それ以降は徐々に活動を再開 注意点 長期間の完全安静は筋力低下を招くため、痛みの範囲内で軽い動きは維持する 痛みを我慢して無理に動くと、患部の炎症が悪化する可能性があります。まずは安静を優先しましょう。 ステップ2:痛みの程度に応じて冷却か温熱を選ぶ 痛みの状態によって、冷やすべきか温めるべきかが異なります。 冷却か温熱の判断基準は、以下を参考にしてください。 対処法 状態 方法 冷却 ・急性期(発症後48時間以内) ・腫れや熱感 ・鋭い痛み 氷嚢や保冷剤をタオルで包み、15〜20分間当てる(1日数回) 温熱 ・慢性的な痛み ・筋肉のこわばり ・鈍い痛み 温湿布や入浴、ホットパックで温める なお、冷却時は凍傷に注意し、長時間の使用は避けてください。 ステップ3:市販の鎮痛剤を活用する 痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤(内服薬や湿布)の活用で、一時的に痛みを和らげられます。 項目 内容 使用できる薬 ・消炎鎮痛剤(内服薬) ・湿布 ・塗り薬 使用時の注意 ・用法・用量を守る ・食後に服用 ・長期間の使用は避ける 重要な点 鎮痛剤は痛みを抑えるものであり、原因を治療するものではない なお、痛みが一時的に和らいでも、根本的な原因が解決したわけではありません。 ステップ4:痛みが引かない場合は早めに受診 応急処置をしても痛みが改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。受診の目安は以下を参考にしてください。 項目 内容 受診の目安 ・2〜3日経っても改善しない ・徐々に悪化している 緊急受診が必要な症状 ・歩けないほどの激痛 ・発熱や腫れ ・しびれや脱力感 ・外傷後の痛み 受診する診療科 ・基本は整形外科 ・月経関連や下腹部痛を伴う場合は婦人科も検討 受診時に伝えること ・痛みの場所 ・タイミングやきっかけ ・既往歴 ・服用中の薬 鎮痛剤を自己判断で長期間使い続けず、改善しない場合は早めに専門医へ相談することが大切です。 股関節痛を和らげる3つのストレッチ 股関節周辺の筋肉をほぐすストレッチは、痛みの緩和や予防に効果が期待できます。ここでは、自宅で簡単にできる3つのストレッチを紹介します。 椅子に座りながら行う股関節ストレッチ 寝ながら行う股関節ストレッチ うつ伏せで行う股関節ストレッチ なお、痛みが強い場合(急性期、炎症が強い時期)は、ストレッチを行わないでください。無理にストレッチをすると、症状が悪化する可能性があります。 痛みが落ち着いてから、無理のない範囲で行いましょう。 椅子に座りながら行う股関節ストレッチ 椅子に座ったままできる「股関節の可動域を広げるストレッチ」です。オフィスや自宅で、仕事の合間に取り入れてみましょう。 具体的な手順は、以下を参考にしてください。 用意するもの:テニスボール1個(少し空気の抜けた柔らかい状態のものがおすすめ) 椅子に座り、片方のお尻の下にテニスボールを置く お尻の出っ張り(坐骨)のやや外側にボールが当たるように位置を調整する 可能であれば、前後左右に体をゆっくり揺らしてお尻の筋肉をほぐす 10秒程度続ける 反対側も同様に行う 朝・昼・晩と1日3回行うと効果的です。強く押しすぎると筋肉を傷める可能性があるため、「痛気持ち良い程度」の圧で行いましょう。 痛みが強い場合は、無理をせずに中止してください。 寝ながら行う股関節ストレッチ 寝た状態で行う、股関節の外側を伸ばすストレッチです。腰への負担が少なく、初心者の方にもおすすめです。 具体的なストレッチの手順は、以下を参考にしてください。 床やマットの上に仰向けになり、手のひらは自然に床につけてリラックスする 両膝を曲げて立て、足の裏をしっかり床につける(足は肩幅よりやや広めが安定する) 息を吐きながら、両膝をそろえたまま左右にゆっくり倒す 倒した方向の股関節外側がじわっと伸びるのを感じる 胸や肩が床から浮かないように意識する 左右交互に5〜10回ずつ繰り返す 膝を倒すときは、上半身をねじりすぎないことが大切です。胸や背中が床から離れないように意識しながら行いましょう。 痛みがある場合は無理をせず、心地よく伸びる範囲で行ってください。 うつ伏せで行う股関節ストレッチ 「あぐらがかきにくい」「股関節の動きが片方だけぎこちない」と感じる方におすすめのストレッチです。股関節の「内旋(内側にねじる動き)」を改善します。 ストレッチの手順は、以下を参考にしてください。 四つん這いになり、手と膝は肩幅・腰幅くらいに開いて安定させる 片脚をまっすぐ後ろに伸ばす 伸ばした脚を、内側にひねるようにゆっくり動かす 元の位置に戻し、反対の脚も同様に行う 左右3回ずつを目安に繰り返す 上記ストレッチで股関節の「ねじれ」を調整すると、日常の動作がスムーズになりやすいです。また、お尻の深部にある筋肉(梨状筋など)が刺激され、腰痛予防にも効果が期待できます。 以下の記事では股関節のストレッチ方法を詳細に解説しています。ぜひ参考にしてください。 股関節の改善しない痛みに再生医療という選択肢 股関節の痛みは、ストレッチや保存療法を続けても十分な効果が得られない場合があります。 そのようなケースでは、手術以外の選択肢として「再生医療」が検討されることがあります。 再生医療とは、人間が本来持っている自己修復力を活かす治療法です。患者様ご自身の細胞や血液成分を用いるため、拒否反応のリスクが少ないのが特徴です。 保存療法では思うように改善せず、かといって手術には抵抗がある方は、再生医療を選択肢の一つとして検討してみてください。 股関節の再生医療について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。 まとめ|股関節が痛いときは原因の整理と早めの対処が大切 本記事では、股関節が痛いときの原因と対処法について解説しました。 股関節の痛みは、筋肉の使いすぎによるものから、関節や神経の異常が関係しているケースまで、原因はさまざまです。痛みの場所や出るタイミング、症状の特徴を整理することで、原因の見極めにつながります。 なお、急な痛みの場合は安静や冷却などの保存療法が基本ですが、数日経っても改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供や簡易オンライン診断を行っております。 股関節の痛みでお悩みの方は、ぜひご登録ください。 股関節が痛いに関するよくある質問 股関節が右(左)だけ痛い場合はどうすればいい? 股関節が片側だけ痛む場合は、生活習慣の影響が多いものの、病気が隠れていることもあるため注意が必要です。 股関節の痛みが右または左のどちらか一方だけに現れることは珍しくありません。 原因としては、足を組む、片足に体重をかけて立つといった生活習慣のクセや、筋力の左右差、片側に負担がかかるスポーツや作業などが挙げられます。 一方で、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症は、初期段階では片側から症状が出ることもあります。 まずは日常生活で左右均等に体重をかけることを意識し、生活習慣を見直しましょう。それでも痛みが2週間以上続く場合や悪化する場合は、整形外科を受診し、レントゲンやMRI検査で原因の確認が大切です。 股関節が痛いときにストレッチはしてもいい? 股関節が痛いときにストレッチをして良いかどうかは、痛みの状態によって異なります。 痛みの状態 ストレッチの可否 急性期(発症後48時間、炎症が強い時期) ストレッチは避け、安静と冷却を優先 慢性期(鈍痛、筋肉のこわばり) 痛みの範囲内で軽いストレッチは有効 なお、ストレッチ実施時には、以下の点に注意してください。 痛みが増す場合はすぐに中止する 反動をつけない 無理に伸ばさない ストレッチをして良いかどうかの判断に迷う場合は、医師や理学療法士に相談してから行いましょう。 子どもが股関節が痛いと言うときはどう対応する? 子どもの股関節痛は、一時的な炎症など安静で自然に改善するケースが多いです。 軽い痛みで元気がある場合は、1〜2日様子を見ても問題ありません。ただし、以下のような症状がある場合は、早めに小児科または整形外科を受診しましょう。 発熱を伴う 歩けない、歩きたがらない 片足を引きずる 痛みが数日経っても改善しない 子どもは症状をうまく言葉で伝えられないことが多いため、「いつもと様子が違う」と感じたら、一度医師に相談しておくと安心です。 参考文献 (文献1) 「変形性股関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
2026.01.31






