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後十字靭帯損傷(断裂)の症状と治療法について現役医師が詳しく解説

後十字靭帯断裂
公開日: 2023.09.11 更新日: 2025.02.12

後十字靭帯損傷と呼ばれる怪我をご存じでしょうか。後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ重要な靭帯で、膝の裏側にあります。

靭帯損傷または断裂と聞くと、スポーツで起きるイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、後十字靭帯損傷はスポーツだけではなく、転倒や交通事故によって起こるケースも少なくありません。

今回は、後十字靭帯損傷について、主な症状や診断方法、治療法について詳しく解説します。後遺症のリスクや完治までの期間などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

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後十字靭帯損傷(断裂)とは

後十字靭帯損傷(断裂)とは、膝関節を構成する後十字靭帯が部分的または完全に断裂した状態のことです。

後十字靭帯が損傷または断裂すると、膝の安定性が失われ、運動時や日常生活において膝が崩れるような違和感が現れます。また、膝が腫れて痛みを感じるケースがほとんどです。

以下で、後十字靭帯の役割や損傷の原因などを解説するので、ぜひ参考にしてください。

後十字靭帯の主な役割

後十字靭帯は、膝関節の内側に位置し、大腿骨の内側顆から後方外側に向かって伸び、脛骨(すねの骨)の顆間隆起の後外方に停止します。後十字靭帯は、膝関節の安定性を保つために欠かせない靭帯です。

「後」十字靭帯と呼ばれる名前からわかるように、膝には「前」十字靭帯も存在します。膝の内部で2つの靭帯が十字型に見えることから、それぞれの名前で呼ばれています。人が膝を安定して動かせるのは、前十字靭帯と後十字靭帯が共に機能するためです。

後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太さと強度があり、脛骨(すねの骨)が後ろに脱臼しないように保持する働きをしています。また、安定して膝を捻る動作ができるよう膝を支える役目も担っています。

後十字靭帯損傷(断裂)の原因

後十字靭帯損傷(断裂)は、主に膝を曲げた状態で強く地面に打ち付けることによって発生するケガです。たとえば、交通事故でダッシュボードに膝を強く打ち付けたり、転倒して膝から転んで強い衝撃を受けたりするケースなどが、典型的な受傷機転として挙げられます。

ほかにも、スポーツでは、ラグビーやアメリカンフットボールなど、コンタクトが激しいスポーツ中に受傷するケースがあります。実際に、後十字靭帯損傷は、交通事故やスポーツ動作によるものがほとんどです。

後十字靭帯損傷(断裂)の症状

後十字靭帯損傷(断裂)の多くは、膝を打ちつけたことによって、膝の皿の下に擦り傷や打撲などの外傷が見られます。場合によっては、関節内に少量の血が溜まることもあります。

また、靭帯だけではなく、後ろの関節包(関節を包んでいる袋)も損傷している場合には、膝後方に皮下出血が見られることもあるため注意が必要です。なかには、膝窩部(膝裏)の痛みや、膝を曲げると痛いといった症状を訴える方もいます。

後十字靭帯は、一部の損傷で済むケースも少なくありません。しかし、靭帯が完全に断裂し、膝の安定性が乏しい場合は、階段の上り下りやしゃがみ込むときに膝がグラグラする感覚があります。

▼ 膝が痛むときに疑われる病気について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

 

後十字靭帯損傷(断裂)の診断方法

後十字靭帯損傷(断裂)を疑う外傷があった場合、徒手検査と画像検査によって診断します。

以下で、後十字靭帯損傷の診断方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。

徒手検査

後十字靭帯損傷(断裂)が疑われる場合は、まず診察を行い、膝関節の不安定性がないかどうかをチェックします。徒手検査とは、患部を動かしたり叩いたりして、患者の反応を観察し、治療すべき部位を特定するための検査です。

後十字靭帯損傷の検査として有名なものに、「後方引き出しテスト」と呼ばれる検査があります。後方引き出しテストの実施方法は、以下の2ステップです。

  • 寝た状態で膝を曲げる
  • 医師が脛骨(すねの骨)を後ろに押していく

後十字靭帯が機能していないと、後方引き出しテストをした際に、脛骨が後ろに落ち込んでしまうような感覚があります。

画像検査

後十字靭帯損傷(断裂)の画像診断は、レントゲンとMRIで実施します。靭帯自体はMRIだけでも評価できるものの、骨折を合併していないか確認するためにレントゲン撮影をするケースも少なくありません。

MRIでは、靱帯が完全に断裂しているのか、または部分的に損傷しているのかの評価が可能です。また、半月板や側副靱帯といったほかの部位の損傷についてもMRIで評価できます。

リペアセルクリニックでは、メール相談オンラインカウンセリングを実施しています。後十字靭帯損傷が疑われる場合は、来院前でも良いのでぜひ気軽にご相談ください。

後十字靭帯損傷(断裂)の治療法

後十字靭帯の機能は、保存的治療でも比較的に良好に回復するとされています。そのため、一般的には保存療法が選択されるケースが多い傾向です。

以下で、後十字靭帯損傷(断裂)の治療法について解説するので、ぜひ参考にしてください。

保存療法

保存療法の場合は、基本的に膝関節の安定性を補助するための装具を2カ月程度使用します。保存療法は、後十字靭帯損傷が軽度で、膝の不安定感があまり強くない場合に選択する治療法です。

受傷から1〜2週間の急性期は、膝の腫脹や痛みがある時期のため、ある程度痛みが治るまでは負担をかけないように松葉杖やサポーターなどを使用します。また、痛みのない範囲で、早期から関節可動域訓練やストレッチなどを開始し、治療を進めていきます。

3週間程度で徐々に膝が動かせるようになり、装具を使用しながら筋力トレーニングやランニングなどを開始できるでしょう。その後、3カ月程度で8割を目安に筋力が回復したら、スポーツ復帰が可能です。

手術療法

後十字靭帯損傷(断裂)が重度で、保存療法では効果的な回復が見込めない場合には手術を選択します。手術は通常全身麻酔で行われます。

手術では、断裂した靱帯同士を縫合するのが難しいため、代わりにもも裏の筋肉(ハムストリング)の一部を採取し、靱帯のように形成して移植する方法が一般的です。

手術後は、膝を固定するために装具を使用し、術後3週間程度は体重をかけないようにします。入院期間は病院によって異なるものの、通常は膝に体重をかけられるようになると退院が可能です。

なお、後十字靭帯損傷の手術は、50万円前後の費用がかかるとされています。基本的には高額療養費制度の適応となるため、自己負担は軽減されます。高額療養費制度に関しては、加入している健康保険窓口で問い合わせてください。

再生医療

再生医療は、後十字靭帯損傷(断裂)を含めた膝関節の新しい治療法として注目されています。再生医療とは、損傷した靭帯や組織を修復するために体の自然治癒力を活用する治療法です。

再生医療には、主に以下の2種類があります。

幹細胞治療

  • 患者自身から採取した幹細胞を膝関節内に注入する
  • 炎症や痛みを抑えて、損傷部位の修復や改善を促進する効果が期待できる

PRP療法

  • 患者自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を膝関節内に注入する
  • 成長因子の働きを利用し、損傷部位の修復を促進する効果が期待できる

なお、リペアセルクリニックの再生医療では、採取する際の安全性が高く、体への負担が少ないとされている脂肪由来の幹細胞を使用しています。再生治療について詳しく知りたい方は、気軽にメール相談オンラインカウンセリングをご利用ください。

運動療法(リハビリや筋トレ)

後十字靭帯損傷(断裂)後の回復において、リハビリテーションや筋力トレーニングなどの運動療法はとても重要です。適切な運動療法は、膝の可動域を回復させるだけではなく、筋力を強化して膝の安定性を高めることにつながります。

後十字靭帯損傷後の運動療法は、主に以下の要素を含みます。

  • 膝関節の可動域訓練
  • 筋力強化訓練
  • バランストレーニング
  • 競技に特化した専門的なトレーニング

とくに、スポーツ復帰を目指す場合はリハビリテーションが治療の中心的な役割を占めます。また、運動療法は、将来的な再発リスクを減らすためにも欠かせないプロセスの一つです。

▼ 後十字靭帯損傷のリハビリにおける禁忌事項については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

後十字靭帯損傷(断裂)の放置は後遺症のリスクを高める

後十字靭帯損傷(断裂)を放置すると、後遺症のリスクが高まるため注意が必要です。後十字靭帯損傷の主な後遺症として、以下のような症状が挙げられます。

  • 膝の不安定性
  • 膝の痛みの慢性化
  • 膝のぐらつき
  • 半月板損傷
  • 変形性膝関節症

膝が不安定な状態のまま日常生活を送ると、大腿骨と脛骨の動きが通常よりも大きくなり、膝全体にストレスがかかります。この状態が長期間続くと、膝の軟骨や半月板などまで損傷が広がりかねません。

さらに悪化すると膝関節が変形してしまい、極端なO脚やX脚になってしまう可能性があるため注意してください。膝の痛みは放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。

まとめ・後十字靭帯損傷(断裂)は早めに医療機関を受診しよう

後十字靭帯は膝を安定させるために重要な役割を果たしています。たとえ膝の痛みが軽い場合であっても、放置すると日常生活に支障が出るケースも少なくありません。

後十字靭帯を損傷(断裂)したら、損傷の程度やスポーツ復帰への希望有無など、状況に合わせて保存療法や手術療法などを選択します。そして、それぞれの治療方法に適したリハビリテーションを行い、膝の機能の回復に努めることが大切です。

少しでも膝に違和感を感じている場合は、自己判断で放置せず、早期に専門医を受診してください。

▼ 変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 

後十字靭帯損傷(断裂)の治療に関するよくある質問

ここでは、高十字靭帯損傷(断裂)の治療に関するよくある質問をまとめました。

後十字靭帯損傷(断裂)の完治にはどれくらいの期間がかかる?

後十字靭帯損傷(断裂)の完治にかかる期間は、損傷の程度によって異なります。

保存療法の場合、一般的には2〜4カ月程度のリハビリテーション期間を経て、膝の安定性が回復する傾向です。また、手術療法の場合は、最終的なスポーツ復帰までには10〜12カ月かかると考えましょう。

後十字靭帯損傷(断裂)を早く治す方法はある?

後十字靭帯損傷(断裂)を早く治すためには、 早期の受診と適切な治療がとても重要です。

後十字靭帯損傷の治療にはさまざまな方法があるものの、いずれの場合もリハビリテーションが欠かせません。医師や理学療法士などの指導のもと、早期から継続的なリハビリテーションを行うことで、早い回復が期待できるでしょう。

監修者

坂本 貞範(医療法人美喜有会 理事長)

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)

Sadanori Sakamoto

再生医療抗加齢学会 理事

再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。

「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。

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