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変形性股関節症の症状とチェックについて医師が詳しく解説
最近、股関節やその周りの筋肉に痛みを感じていませんか? 太腿のつっぱり感、階段の上り下り時の痛み、長時間の歩行後の重だるさ… もしかしたら、それは「変形性股関節症」の兆候かもしれません
変形性股関節症は、初期には症状が少なく、気づかないうちに進行してしまう怖い病気です。じわじわと忍び寄る痛みや違和感、徐々に狭まる可動域… 放置すれば、歩行するのも難しくなる可能性が高くなります。
実は、高齢者に多いイメージのある変形性股関節症ですが、近年若い世代にも増加傾向にあります。 アメリカ理学療法士協会整形外科部門(APTA)もその深刻さを指摘しており、早期発見・早期治療の重要性が叫ばれています。
このトピックスでは、変形性股関節症の代表的な5つの初期症状とチェックリストを利用して解説します。 股関節まわりの疼痛、動いた時の違和感、歩行時に重たい感じ、運動に制限がある、可動域の減少… これらの症状に心当たりがある方は、決して軽視しないでください。
自身の股関節の理解を深めるために、今すぐこのトピックスを読み進めて、変形性股関節症の早期発見、そして快適な生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
目次
変形性股関節症の初期症状とは?よく見る症状5つ
変形性股関節症は、初期段階ではこれといった痛みなどが現れにくい病気です。そのため、気づかぬうちに病気が進行し、手遅れになるケースも少なくありません。まるで静かに忍び寄る影のように、私たちの生活を脅かす病気とも言えるでしょう。
しかし、初期に出る症状をしっかりと理解し、早期に発見することで、症状の進行を抑え、日常生活への影響を最小限にすることが可能です。
この章では、変形性股関節症の初期症状として代表的な5つの症状を、具体的に解説します。これらの症状に心当たりがある方は、放置せずに医療機関を受診しましょう。
①股関節の痛み
健康な股関節は、動きの制限もなく、痛みもありません。しかし、変形性股関節症の初めに出てくる症状として、この滑らかな動きが失われ、股関節に鈍い痛みや違和感を感じることがあります。
この痛みは、長時間立っていたり、歩いたりした後に強くなる傾向があります。まるで股関節が疲れているような、重だるい感覚を覚えるかもしれません。じっとしていても股関節の奥の方に鈍痛のようなものを感じることもあります。
初期の頃の痛みは、常に一定ではなく、痛みが現れたり消えたりを繰り返すこともあります。このため、「気のせいかな?」と軽く考えてしまいがちです。しかし、この「気のせいかな?」を繰り返すうちに、徐々に痛みの頻度や強度が増していきます。
症状 | 説明 |
---|---|
鈍痛 | 刺すような鋭い痛みではなく、ズーンと響くような鈍い痛みです。 |
違和感 | 股関節に何かが挟まっているような、違和感です。 |
間欠的な痛み | 常に痛みがあるわけではなく、痛みが現れたり消えたりします。 |
休息時の痛み | 安静にしているときにも痛みを感じます。 |
運動後の痛み | 運動した後や長い距離を歩いた後に痛みが強くなります。 |
このような症状は、普段の生活の中で徐々に現れ始めます。例えば、朝目覚めた時に股関節が少し硬く感じる、階段の昇降が以前より辛くなった、長く歩くと股関節に違和感が出てくる、といった変化です。これらの小さな変化を見逃さずに、早いうちに対策をすることが大切です。
②動作時の関節のこわばり
健康な股関節は、自由に動き、スムーズに動作を行うことができます。しかし変形性股関節症が進行すると、股関節の動きが悪くなり、スムーズに動かせなくなることがあります。
例えば、立ち上がろうとしたときに股関節が硬く感じたり、脚を大きく広げることができなくなったりします。靴下や靴を履く、しゃがむ、正座をするといった日常的な動作もしにくくなることもあります。
このようなこわばりは、朝起きた時や、長い時間同じ態勢でいるといつもより痛みが強く現れることがあります。これは、関節内の滑液が減少したり、関節の軟骨が傷ついてすり減ることで、関節の動く範囲が狭くなるためです。
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③歩行時の負担感
健康な状態では、歩行時に股関節への負担はほとんど意識することはありません。しかし、変形性股関節症になると、歩行時に股関節に負担がかかり、スムーズに歩くことが難しくなります。
初期には、歩いていると股関節が重く感じたり、長距離を歩くと股関節が痛むといった症状が現れます。さらに進行すると、跛行(はこう)といって、片足を引きずるようにして歩くようになります。また、歩幅が狭くなったり、歩行速度が遅くなったりすることもあります。
④スポーツや日常生活での制限
スポーツを活発にしている方は、股関節を痛めると、パフォーマンスの低下を感じるかもしれません。走ったりジャンプなどの動作で痛みが増強し、思うように動作ができなくなることもあります。
日常生活でも、正座やあぐらがしづらくなったり、椅子から立ち上がる際に痛みを感じたりするなど、様々な動きの制限が出てきます。動作の制限により、生活もしづらくなります。
⑤股関節の動く範囲が減少
変形性股関節症では、股関節の動きが段々と悪くなっていきます。初期には軽度の制限ですが、進行するにつれて脚を自由に動かせなくなることもあります。
具体的には、股関節の屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋といった動作が制限されます。両股関節の動きに左右差が見られるときは、股関節の病変を疑わなければいけません。今までの経験では痛みが出る前に、すでに関節の可動域が悪くなっている方が多くおられました。
アメリカ理学療法士協会整形外科部門(APTA)も、股関節の痛みと可動域制限に関するエビデンスに基づいた推奨事項を示しています。変形性股関節症は進行性の疾患であるため、専門家による適切な診断とケアが重要です。初期に現れる症状を放っておかず、適切な治療を行うことで、進行を遅らせ、より長く健康な股関節を維持することができるでしょう。
変形性股関節症の初期症状チェックリストと医療機関の選び方
股関節の痛みや違和感が感じたら、それは、もしかしたら変形性股関節症の初期症状かもしれません。初期症状は他の病気と間違えやすく、分かりにくい場合も多いです。
この記事では、変形性股関節症の初期症状をセルフチェックリストで確認し、医療機関の選び方についてご紹介します。症状が見つかり、診断がつけば早いうちに治療を開始することが非常に重要ですので、ぜひご自身のこととして捉え、読み進めてください。
初期症状のセルフチェックリスト
変形性股関節症の初期症状は、下記のチェックリストで確認できます。チェックが多いほど、変形性股関節症の可能性が高まります。
症状 | チェック |
---|---|
立ち上がり時や歩き始めに股関節に痛みや違和感がある | □ |
長時間歩いたり、階段の上り下りで股関節に痛みが増す | □ |
休むと痛みが軽減する | □ |
股関節が硬く感じ、動きが悪い | □ |
靴下を履く、足を組むなどの動作がつらい | □ |
あぐらがかけない | □ |
股関節の違和感で寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めることがある | □ |
これらの症状にいくつか当てはまる場合、変形性股関節症の初期症状の可能性があります。しかし、自己判断は危険です。必ず医療機関を受診し、医師による正確な診断を受けるようにしてください。
▼変形性股関節症の初期症状について、併せてお読みください。
専門医に相談するタイミング
上記のチェックリストで複数の項目にチェックが入る場合や、股関節の痛みや違和感が続く場合は、早めに専門医に相談しましょう。特に、痛みが強くなってきたり、日常生活に支障が出始めた場合は、放っておかずに速やかに受診することが大切です。変形性股関節症は放置しておくと段々悪化していく病気で、早期の診断と介入が、将来の生活の質を大きく左右します。
検査と医療機関の選び方
変形性股関節症の検査は、整形外科で受診できます。「股関節専門外来」や「関節外科」といった専門性の高い医療機関を選ぶと、より専門的な知識と経験に基づいた診断と治療を受けることができます。
整形外科を受診すると、まず医師があなたの症状や既往歴などについて詳しく問診を行います。
その後、股関節のレントゲン検査を行い、関節の隙間や骨の状態などを確認します。レントゲン検査では、骨棘の形成や関節裂隙の狭小化といった変形性股関節症の特徴的な所見を捉えることができます。
必要に応じて、MRI検査やCT検査を行うこともあります。MRI検査では、軟骨や靭帯、関節包などの軟部組織の状態を詳細に評価することができます。CT検査は、骨の三次元的な構造を把握するのに役立ちます。
知っておきたい治療方針と選択肢
変形性股関節症の治療は、保存療法と手術療法に大きく分けられます。
保存療法は、内服治療、理学療法、生活指導など、手術を行わずに症状を改善させる治療法です。
内服治療では、ロキソニンなどの痛みを抑える薬が用いられます。
理学療法では、ストレッチや筋肉トレーニングにより関節の痛みを和らげて動きを良くします。
生活指導では、体重管理や適切な運動方法など、普段の生活で気をつけるべき点について指導を受けます。
▼変形性股関節症の保存療法について、併せてお読みください。
病態が進行している場合や、保存療法でも痛みが良くならない時には、手術療法が検討されます。
人工股関節置換術は、変形性股関節症に対して一番よく行われている手術です。この手術では、軟骨がすり減ってしまった股関節そのものを、金属製の人工物で関節を入れ替える手術をします。これにより痛みを軽減し、関節の機能を回復させます。
どの治療法が適切かは、患者さんの症状の程度、年齢、生活スタイル、全身状態などを総合的に考慮して決定されます。医師とよく相談し、ご自身にとって最適な治療法を選択することが重要です。
気がついたときにはすでに変形性股関節症の病期の後期になっていることもよくあり、疾患修飾薬による効果を期待できる時期を逃している場合が多いという現状も認識しておく必要があります。
手術しない新しい選択肢 再生医療
今までは、保存療法で痛みが取れないときには人工関節術しか選択はなかったのですが、最近では再生医療による変形性股関節症の治療も行われるようになりました。医療機関によって、再生医療の治療法は様々あります。
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患者支援団体や参考情報の活用方法
変形性股関節症に関する情報は、インターネットや書籍などで入手できます。信頼できる情報源から、病気への理解を深めるようにしましょう。患者支援団体では、同じ病気を持つ患者さん同士が交流したり、情報交換したりすることができます。このような団体に所属することで、精神的な支えを得たり、病気に対する不安や疑問を解消したりするのに役立ちます。
まとめ
初期症状に気づきにくい変形性股関節症ですが、この記事でご紹介した5つの症状(股関節の痛みや違和感、動作時のこわばり、歩行時の負担感、日常生活の制限、可動域の減少)に心当たりがある方は、放置せずに医療機関を受診しましょう。
セルフチェックリストを活用し、複数の症状に当てはまる場合や、日常生活に支障が出ている場合は、特に早めの受診が大切です。
整形外科、特に「股関節専門外来」や「関節外科」などを検討し、レントゲン検査などの精密検査を受け、医師と治療方針についてしっかり相談しましょう。
参考文献
- Cibulka MT, Bloom NJ, Enseki KR, Macdonald CW, Woehrle J, McDonough CM. “Hip Pain and Mobility Deficits-Hip Osteoarthritis: Revision 2017.” The Journal of orthopaedic and sports physical therapy 47, no. 6 (2017): A1-A37.
- 変形性関節症:臨床実践における最新情報ガイドライン
- The clinical and radiographic course of early knee and hip osteoarthritis over 10 years in CHECK (Cohort Hip andCohort Knee).
監修者
坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。