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脊柱管狭窄症とは?医師が詳しく解説

脊柱管狭窄症
公開日: 2025.02.04 更新日: 2025.02.05

足がだるくて、10分ぐらいしか歩けない。それは「脊柱管狭窄症」のサインかもしれません。 実は、世界中で約1億300万人、アメリカでは高齢者の約11%が、この脊柱管狭窄症に悩まされているという統計が出ています。

脊柱管狭窄症とは、脊髄の神経の通り道である脊柱管が狭くなっていることで、神経が圧迫され、様々な症状が現れる病気です。 特に、「間欠性跛行」は、代表的な症状です。

ここでは、症状や原因など、分かりやすく解説します。 もしかしたら、あなたの抱える不安や疑問を解消するヒントが見つかるかもしれません。 ぜひ、読み進めてみてください。

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5つの症状

脊髄神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されて様々な症状が現れます。病態を正しく理解することで、不安を軽減し、適切な治療に繋げることができます。

①間欠性跛行

これは、しばらく歩くと足やお尻にしびれや痛みが出てきて歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになるものの、再び歩くと同じ症状を繰り返すことを言います。

例えば、近所のスーパーまで歩いて行こうとしたとき、最初は順調に歩けても、10分くらいすると足やお尻にしびれや痛みが出てきて立ち止まるといった状況です。

椅子に座って休んだり、お辞儀するように前傾姿勢をとると症状が軽くなるのが特徴です。これは、前傾姿勢になると脊柱管が広がり、神経の圧迫が弱くなるからです。よく『自転車を乗ると痺れが出ない』と言われる方が多いのは、こういう理由だからです。

また、間欠性跛行は血管の病気である閉塞性動脈硬化症でも見られますが、痛む場所が異なります。閉塞性動脈硬化症では、ふくらはぎがだるくなることが多いのに対し、脊柱管狭窄症では臀部から太もも、そして足先にかけて痛みやしびれを感じることが多いです。閉塞性動脈硬化症では、足の色が悪くなったり、脈が弱くなったりすることもありますので、これらの症状が見られる場合は医師に相談しましょう。

②腰痛

脊柱管狭窄症では腰痛も出る方がいます。腰痛の程度は人それぞれで、軽い痛みで済む方もいれば、日常生活に支障が出るほどの強い痛みを感じる方もいます。痛みの種類も、鈍い痛みや、突き刺すような痛みなど様々です。

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③下肢の痛みやしびれ

狭窄により神経が圧迫されることで痛みや痺れが出ます。症状の出方は、鈍痛や鋭い痛みなど人それぞれです。症状が出てくる場所も、お尻、太もも、ふくらはぎなど多岐にわたります。

④排尿障害、性機能障害

病状が進行すると、排尿障害や性機能障害が起こることがあります。

これは、膀胱や性機能をコントロールする神経の働きがうまくいかなくなることが原因です。

Katz JNらは、腰部脊柱管狭窄症は世界で約1億300万人、米国では高齢者の約11%に影響を与えていると報告しています。

排尿障害としては、尿が出にくい、尿が近いなどの症状があります。性機能障害としては、勃起障害や性欲減退などの症状があります。

⑤症状の進行と重症度

症状は、多くの場合、ゆっくりと進行していきます。初めは、軽い腰痛や間欠性跛行の症状が出てきます。症状が進行すると、歩行できる距離が徐々に短くなり、安静にしていても痛みやしびれを感じるようになります。さらに進行すると、筋力低下や膀胱直腸障害などの症状が現れることもあります。

一般的に、筋力の低下、膀胱直腸障害の症状が出れば早期に手術を検討します。なぜなら、そのような症状を放置すると、生命に関わるのと、手術をしても神経の回復が見込めなくなるからです。ここはとても重要なところなので、必ず知っておいて欲しいところです。

3つの原因

原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。

一体何が原因で脊柱管が狭くなってしまうのでしょうか? 原因を知ることで、漠然とした不安を少しでも和らげ、今後の対策に役立てていただければと思います。

①加齢による椎間板や靭帯の変性

私たちの背骨は、積み木のようにたくさんの骨(椎骨)が積み重なってできています。椎体の間には、クッションの役割をする椎間板があります。この椎間板は、水分を多く含んでおり、弾力性があるため、背骨の動きをスムーズにし、衝撃を吸収する役割を担っています。しかし、年を重ねるごとに、この椎間板は水分が失われて弾力を失い、崩れていきます。そして潰れた椎間板が神経を圧迫します。

また、椎骨をつないでいる靭帯も、加齢とともに厚く硬くなってしまいます。靭帯は、背骨を支える大切な役割を担っていますが、厚く硬くなると、脊柱管を圧迫して狭くしてしまうのです。

さらに変形すると、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の突起ができることがあります。これは、骨が変形してトゲのように尖った部分が生じる現象です。この骨棘も、脊柱管を狭くする原因の一つです。まるで、狭い通路にさらに物が置かれて、通りにくくなってしまうようなものです。

これらの変化は誰にでも起こる加齢現象ですが、その進行には個人差があります。

②遺伝的要因

脊柱管狭窄症は、遺伝的な要因も関係していると考えられています。両親や兄弟姉妹など、血縁者に脊柱管狭窄症の方がいる場合、発症するリスクが高くなるという研究結果もあります。

遺伝的な要因があると聞くと、「もうどうしようもない」と感じる方もいるかもしれません。確かに、遺伝子を変えることはできません。しかし、遺伝的要因はあくまでも「なりやすさ」に関係しているだけで、必ずしも発症するとは限りません。

遺伝的な要因に加えて、生活習慣などの環境要因が重なることで、初めて発症すると考えられています。つまり、遺伝的要因があっても、生活習慣に気を付けることで、発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりすることができる可能性があるのです。

③外傷や生活習慣

加齢や遺伝的要因以外に、外傷や生活習慣も原因となることがあります。

例えば、交通事故やスポーツなどによる腰への強い衝撃は、椎骨や靭帯を損傷し、脊柱管を狭くしてしまう可能性があります。これは、地震で建物が壊れるのと似ています。強い衝撃は、背骨にも大きなダメージを与え、変形や炎症を引き起こす可能性があるのです。

また、長時間のデスクワークや重いものを持ち上げる作業なども、リスクを高めます。特に、中腰での作業や猫背などの悪い姿勢は注意が必要です。毎日同じ姿勢を長時間続けることで、筋肉や靭帯が硬くなり、背骨のバランスが崩れ、神経が圧迫されやすくなります。これは、毎日同じ方向にばかり寝ていると、体が歪んでしまうのと似ています。

適度な運動することで、筋肉を増やし、そして、身体を柔らか苦することが重要です。

▼脊柱管狭窄症の予防と原因、対処法について併せてお読みください。

4つの治療法

どのような治療があるのか、不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。まず、保存療法」と「手術療法」の2種類があり、それぞれ説明します。

①保存療法

Katz JNらの研究では、保存療法を3年間継続した患者のうち、約3分の1が症状の改善を報告しています。

一方で、約半数は症状に変化がなく、残りの約10~20%は悪化を報告しています。このことから、保存療法は症状の進行を遅らせる効果はあるものの、必ずしも症状が改善するとは限らないことが分かります。ご自身の症状や治療への反応をよく観察し、医師と相談しながら治療方針を調整していくことが重要です。

1. 薬物療法

痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛みには、鈍い痛み、ジンジンする感じなど、様々な種類があります。炎症は、体を守るための反応ですが、過剰な炎症は痛みや腫れを引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。しかし薬物療法では、劇的に痛みが取れる方と、残念ながら、全く効果がない方がおられます。

  • 痛み止め:痛みを和らげ、日常生活動作を楽にします。

  • 抗炎症薬:炎症を抑え、痛みや腫れを軽減します。炎症が強い時期には特に有効です。

  • 神経障害性疼痛治療薬:神経の痛みやしびれを和らげます。神経が圧迫されることで生じる痛みやしびれに効果があります。

これらの薬は、症状に合わせて医師が処方します。副作用が出る場合もあるので、医師に相談しながら服用することが大切です。

2. 理学療法

ストレッチや筋力トレーニングなどの運動療法や、温熱療法、マッサージなどを行います。

例えば、ストレッチは筋肉を伸ばし、柔軟性を高める効果があります。筋力トレーニングは、腹筋や背筋などの体幹を支える筋肉を強くします、温熱療法は、血行を促進し、炎症を抑えます。

3. 装具療法

コルセットなどの装具を装着することで、腰を安定させて、症状を抑えます。装具の種類や装着時間は、症状や生活スタイルに合わせて医師が適切なものを選びます。装着時間は医師の指示に従うことが大切です。

▼脊柱管狭窄症におすすめのストレッチ方法と、やってはいけない方法について併せてお読みください。

②手術療法

保存療法で効果がない場合や、症状が重い場合は手術療法が検討されます。

手術療法では、圧迫の原因となる、椎間板や靭帯を取り除いて、症状を改善することを目的としています。

Zaina Fらのメタ分析研究では、手術を受けた患者は、保存療法を受けた患者と比較して、2年間の経過観察で改善が見られたと報告されています。

ただし、手術には合併症のリスクがあるので、医師とよく相談しましょう。

1. 除圧術

脊柱管を狭くしている骨や靭帯の一部を取り除きます。これにより、症状を改善を期待します。

除圧術には種類があり、椎弓切除術は、椎弓と呼ばれる骨の一部を取り除く手術です。椎間板ヘルニア摘出術は、飛び出した椎間板を取り除く手術です。黄色靭帯切除術は、肥厚した黄色靭帯を取り除く手術です。病態によって、これらの手術を組み合わせます。

2. 固定術

脊椎を固定することで、骨の動きを安定させて痛みをとる手術です。しかし、固定術を行うと、背骨の動きの範囲が低下する可能性もあります。そのため、固定術を行うかどうかは、患者さんの状態や生活スタイルなどを考慮して慎重に決定する必要があります。

③再生医療

狭窄症の手術をしても、しびれ、傷み、筋力低下、膀胱直腸障害などのつらい後遺症に対して、リペアセルクリニックでは、国内ではほとんどされていない、『脊髄腔内への幹細胞投与』の治療を厚生労働省に受理されています。この治療で、多くの方に、治らないと言われた後遺症の改善が見られています。

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参考文献

  1. Deer T, Sayed D, Michels J, Josephson Y, Li S, Calodney AK. “A Review of Lumbar Spinal Stenosis with Intermittent Neurogenic Claudication: Disease and Diagnosis.” Pain medicine (Malden, Mass.) 20, no. Suppl 2 (2019): S32-S44.
  2. Bydon M, Alvi MA, Goyal A. “Degenerative Lumbar Spondylolisthesis: Definition, Natural History, Conservative Management, and Surgical Treatment.” Neurosurgery clinics of North America 30, no. 3 (2019): 299-304.
  3. Patel EA, Perloff MD. “Radicular Pain Syndromes: Cervical, Lumbar, and Spinal Stenosis.” Seminars in neurology 38, no. 6 (2018): 634-639.
  4. Katz JN, Zimmerman ZE, Mass H, Makhni MC. “Diagnosis and Management of Lumbar Spinal Stenosis: A Review.” JAMA 327, no. 17 (2022): 1688-1699.
  5. Zaina F, Tomkins-Lane C, Carragee E, Negrini S. “Surgical versus non-surgical treatment for lumbar spinal stenosis.” The Cochrane database of systematic reviews 2016, no. 1 (2016): CD010264.

監修者

坂本 貞範(医療法人美喜有会 理事長)

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)

Sadanori Sakamoto

再生医療抗加齢学会 理事

再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。

「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。

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