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【腸腰筋のストレッチ】効果やほほぐし方を現役医師が解説
「腰痛が続いている」
「股関節になんとなく違和感がある」
「腸腰筋のストレッチが良いと聞いたけれど、効果はあるの?」
腸腰筋のストレッチは、股関節の可動域改善や慢性腰痛緩和の手段の1つです。
腸腰筋は、起き上がりや歩行、姿勢保持といった日常生活動作にも関わる大切な筋肉であるため、ストレッチは健康維持に役立ちます。しかし、腸腰筋ストレッチはすべての方に有効ではありません。中には、ストレッチを行わない方が良い方もいらっしゃいます。
本記事で分かること
- 腸腰筋がどこにある何をする筋肉か
- 自分の腸腰筋が硬いかどうかを確かめる方法
- 寝ながら・座ったまま・立ったままの手順(秒数つき)
- ほぐしたあとに鍛える方法
- ストレッチを控えたほうがよい状況
本記事では、腸腰筋ストレッチの効果や方法に加えて、やってはいけない状況について解説します。ストレッチを試すかどうか迷う方の参考になりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
腸腰筋とは|どこにある何をする筋肉か
腸腰筋は、背骨と骨盤から太ももの骨にかけて走る筋肉です。体の深いところにあり、上半身と下半身をつないでいる唯一の筋肉とされています。(文献3)
お腹の奥にあるため外から触れにくく、鏡を見ても確認できません。そのため硬くなっていても気づきにくい筋肉です。
腸腰筋を構成する3つの筋肉
腸腰筋は単一の筋肉ではなく、3つの筋肉をまとめた呼び名です。(文献3)
| 筋肉の名前 | どこからどこへ | 主な働き |
|---|---|---|
| 大腰筋(だいようきん) | 背骨(腰椎)から太ももの骨の内側へ | 背骨と太ももを直接つなぐ。腰の反りの維持と歩行時の脚の振り出し |
| 腸骨筋(ちょうこつきん) | 骨盤の内側から太ももの骨の内側へ | 太ももを持ち上げる動きに特化している |
| 小腰筋(しょうようきん) | 背骨から骨盤の前方へ | 持たない人も多い筋肉。大腰筋の補助にあたる |
大腰筋と腸骨筋は途中で合流し、太ももの骨の同じ場所につきます。
日常の動きでいうと、階段をのぼる、椅子から立ち上がる、つまずかないように足を持ち上げるといった場面で働いています。
この筋肉が硬くなると、骨盤が前に傾いて腰の反りが強まります。その結果として腰への負担が増え、股関節の付け根にもつまり感が出やすくなります。
腸腰筋が硬いかどうかを確かめる方法
ストレッチを始める前に、自分の状態を確かめておくと変化に気づきやすくなります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1.仰向けになる | 硬めのベッドや床の端に仰向けで寝る |
| 2.片膝を抱える | 片方の膝を両手で抱え、胸のほうへゆっくり引き寄せる |
| 3.反対の脚を観察する | 抱えていないほうの脚がどうなるかを見る |
判定の目安は次のとおりです。
| 反対の脚の状態 | 考えられること |
|---|---|
| 太ももの裏が床についたまま動かない | 腸腰筋の柔軟性は保たれている |
| 太ももが床から浮き上がる | 腸腰筋が硬くなっている可能性がある |
| 浮き上がるうえに膝も曲がる | 硬さが強い可能性がある。低い負荷の種目から始める |
あくまで目安です。痛みが出る場合は無理に確認せず中止してください。
左右で差が出ることもよくあります。浮き上がりが大きいほうを重点的にほぐすと、左右のバランスが整いやすくなります。
腸腰筋ストレッチの効果
この章では、以下の3点について解説します。
- 腸腰筋ストレッチで期待できる効果
- 腰痛や股関節の違和感に腸腰筋が関わる理由
- 腸腰筋が硬くなるメカニズム
腸腰筋ストレッチで期待できる効果
腸腰筋ストレッチの効果は、筋肉を柔らかくしたり、股関節前面の動きを整えたりするなどです。立ち上がりや歩行などの動作を楽にする効果も期待できます。
筋肉をゆっくり伸ばした体勢を維持する静的ストレッチは、関節可動域を改善する効果が期待されています。ストレッチの目安は、一動作につき15〜30秒間です。2〜4回程度繰り返すと良いでしょう。(文献1)
慢性腰痛では運動など非薬物療法が推奨される流れがあり、ストレッチはその一部として位置づけられます。(文献2)
腰痛や股関節の違和感に腸腰筋が関わる理由
腸腰筋は腰椎に位置する長いリボン状の筋肉で、腰や股関節を動かすために使われるものです。(文献3)
日常生活における腸腰筋の役割としては、起き上がる、歩く、走る、姿勢を維持するなどがあります。
腸腰筋の一部である大腰筋は腰椎の安定に関係する筋肉です。そのため腸腰筋が硬いと腰痛や股関節および鼠径部(股関節の付け根)の違和感、足のだるさにつながる可能性があります。
腸腰筋が硬くなるメカニズム
デスクワークを中心とした座り仕事や、家事および介護などによる中腰姿勢で股関節を曲げた時間が長いと腸腰筋が短くなり、「縮んで硬い」感覚が出やすくなります。(文献4)
腰回りを柔らかくしようとして無理に腰を反らしたり伸ばしたりしても、腸腰筋のケアにはつながりません。かえって腰に負担がかかってしまいます。
座っている時間そのものが原因になります。同じ姿勢が1時間を超える場合は、途中で立ち上がって歩くだけでも意味があります。
寝ながらほぐせる腸腰筋ストレッチ

この章では、寝ながらほぐせる腸腰筋ストレッチを2種類紹介します。ストレッチの際は、痛みが出るまで動かさないようにしましょう。
| 種目 | 手順 | 秒数と回数の目安 |
|---|---|---|
| 【方法1】片膝抱え | あお向けに寝る/片方の膝を抱えて軽く胸に近づける/逆側の脚はかかとを遠くに押し出すように伸ばす | 15〜30秒保持/左右2〜4回(文献1) |
| 【方法2】脚回し | あお向けに寝て片膝を立てる/逆側の脚を円を描くように大きく回す/反対側の脚も同じ要領で回す | 左右5〜10回ずつ |
方法1は伸ばす種目、方法2は動かす種目です。朝起きたときのこわばりには方法2から始めると取り組みやすくなります。
注意点を以下に示しました。
- 腰を反らさない
- 呼吸を止めない
- 反動をつけない
座ったままほぐせる腸腰筋ストレッチ

この章では、座ったままほぐせる腸腰筋ストレッチを2種類紹介します。痛みが出るまで動かさないようにしましょう。
| 種目 | 手順 | 秒数と回数の目安 |
|---|---|---|
| 【方法1】座位で膝抱え | 椅子に浅く座る/片方の膝を抱えて軽く胸に近づける/反対側も同様に行う | 15〜30秒保持/左右2〜4回(文献1) |
| 【方法2】座って足踏み | 椅子に浅く座る/座りながら足踏みをする/足踏みのときは両腕も大きく動かす | 20〜30回程度 |
腰を反らしたり反動をつけたりしないなど、注意点は寝たままほぐせるストレッチと同じです。ストレッチ時は呼吸を止めないようにしましょう。
デスクワークの合間に取り入れやすい種目です。1時間に1回を目安に、短時間でも座り姿勢をリセットすると硬さが定着しにくくなります。
立ったままほぐせる腸腰筋ストレッチ

この章では立ったままほぐせる腸腰筋ストレッチを紹介します。仕事の休憩中にもできる、比較的簡単なものです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1.支えをつくる | 椅子の背もたれや壁に手をつく |
| 2.脚を引く | 片足を半歩後ろへ引く |
| 3.骨盤を押し込む | 骨盤を前に押し込んで胸を引き上げる |
| 4.かかとを上げる | 後ろ足のかかとを上げる |
| 5.保持する | 15〜30秒保持/左右2〜4回(文献1) |
腰を反らしたり反動をつけたりしないなど、注意点は寝たままほぐせるストレッチと同じです。ストレッチ時は呼吸を止めないようにしましょう。
事故防止のため、滑りやすい場所でのストレッチは避けてください。
腰を反らして胸を張ると、狙った筋肉が伸びません。下腹部を軽く締めたまま、骨盤ごと前へ移すように行いましょう。
腸腰筋を鍛える方法

腸腰筋は硬くなるだけでなく、使われずに働きが落ちることもあります。ほぐして動く範囲が広がったあとに鍛えると、その範囲を使えるようになります。
とくに、つまずきやすくなった、階段で脚が上がりにくいという場合は、柔らかさよりも働きのほうが課題になっている可能性があります。
| 種目 | 手順 | 回数の目安 |
|---|---|---|
| 寝ながら脚上げ | あお向けに寝て両膝を立てる/片脚を伸ばしたまま床から30cmほど持ち上げる/ゆっくり下ろす | 左右10回×1〜2セット |
| 座って膝上げ | 椅子に浅く座り背すじを伸ばす/片方の膝を太ももの付け根から持ち上げる/ゆっくり戻す | 左右10〜15回×1〜2セット |
腰が反ったり、反動を使ったりすると別の筋肉が働きます。ゆっくり行うことが大切です。
腰に違和感が出る場合は中止してください。とくに寝ながら脚上げは、腰が床から浮くと腰への負担が増えます。下腹部を軽く締めた状態を保てる高さにとどめましょう。
ストレッチと同じく、痛みを我慢して続けるものではありません。回数を増やすより、正しい姿勢で続けることを優先してください。
腸腰筋ストレッチのポイント
この章では、腸腰筋ストレッチ実施にあたって覚えておくと良いポイントを3点紹介します。
- 強さの目安
- 時間と回数および頻度の目安
- 正しいフォーム
以下の記事では、慢性腰痛に適したストレッチをタイプ別に紹介しています。あわせてご覧ください。
強さの目安
強さの目安は、「痛むまで伸ばさない」です。軽く引っ張られるような感覚を感じながらストレッチしましょう。痛みが出たら強度を下げるか中止してください。
ストレッチの目的は、強く伸ばすことではなく腸腰筋へ適切な刺激を入れることです。反動をつけたり、呼吸を止めたりしないでください。
時間と回数および頻度の目安
腸腰筋ストレッチのような静的ストレッチの場合、15〜30秒保持×2〜4回がよく用いられる目安です。(文献1)
週2〜3日以上を基本ペースで継続してみましょう。ストレッチで痛みが出たら強度を下げるか中止してください。
変化を感じるまでには時間がかかります。1回で柔らかくなるものではないため、数週間単位で続けることを前提に考えてください。
正しいフォーム
正しいフォームのポイントを以下に示しました。
- 腰を反らさないように下腹部を軽く締める
- お尻を軽く締める
- 肋骨を反らしすぎない
腰の中央に違和感がある場合は、フォームが間違っている可能性があります。
高齢者が腸腰筋ストレッチに取り組むときの注意点
腸腰筋は加齢とともに衰えやすい筋肉です。働きが落ちると足を持ち上げる動作が浅くなり、わずかな段差でつまずきやすくなります。
そのため高齢の方にとっては、柔らかさを保つことと働きを保つことの両方に意味があります。一方で、転倒のリスクには十分な配慮が必要です。
| 確認する点 | 取り組み方 |
|---|---|
| どの種目から始めるか | 仰向けか座位から始める。立って行う種目は慣れてから |
| 支えの有無 | 立って行う場合は必ず壁や椅子の背もたれに手をつく |
| 床で行うかどうか | 床からの立ち上がりが不安な場合はベッドや椅子で行う |
| 強さの目安 | 痛みのない範囲にとどめる。伸びを強く感じる必要はない |
| 持病がある場合 | 人工関節を入れている方や骨粗鬆症がある方は、事前に主治医へ確認する |
関節に痛みがある場合でも、運動そのものを避ける必要はありません。公的な資料では、変形性股関節症の日常生活の注意点として股関節周辺の筋トレとストレッチ、水中ウォーキングが挙げられています。(文献5)
痛みの原因を確認したうえで、自分の状態に合った方法を選ぶことが大切です。
腸腰筋ストレッチをやってはいけない状況
腸腰筋ストレッチをやってはいけない状況としてあげられるのは、以下の3点です。
- 強い痛みやしびれがある
- 股関節疾患の可能性がある
- 坐骨神経痛の可能性がある
強い痛みやしびれがある
以下のような状況の場合、自己流の腸腰筋ストレッチを続けず中止しましょう。
- 痛みが強くなる
- 安静にしていても腰痛が続いて辛い
- 下半身のしびれが強くなっている
- しびれの範囲が広がっている
排尿や排便の異常、会陰部(えいんぶ)の感覚異常、両脚の筋力低下などがあるときは、腰部脊柱管狭窄症や馬尾症候群などの可能性があります。医療機関を受診して、原因を把握しましょう。
これらの症状は、症状が軽くても早めの対応が必要とされています。(文献6)様子を見ずに整形外科を受診してください。
股関節疾患の可能性がある
鼠径部に鋭い痛みがある、歩行すると痛みが悪化するなど関節可動域制限が強い場合、原因は腸腰筋だけとは限りません。変形性股関節症や股関節脱臼など、股関節疾患が疑われます。
変形性股関節症では、歩き始めや立ち上がりのときに痛みが出やすく、進行すると爪切りや靴下を履く動作が難しくなるとされています。(文献5)
ストレッチで痛みが増える場合は中止し、原因疾患を確定するため医療機関を受診しましょう。
なお、股関節の疾患があるとストレッチができないわけではありません。公的な資料では運動療法が保存療法のひとつに挙げられています。(文献5)自己流で続けるのではなく、診断を受けたうえで方法の指導を受けることが大切です。
坐骨神経痛の可能性がある
脚に電気が走るような痛みやしびれ、放散痛など、坐骨神経痛のような症状があるときは、ストレッチで症状が悪化する可能性があります。この場合も、無理に継続しないでください。
坐骨神経痛の原因としては、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症によるものが多いとされています。(文献6)腰に原因がある場合、腸腰筋をほぐしても症状は変わりません。
排尿や排便の変化、会陰部のしびれ、進行する筋力低下などの症状がある場合は、医療機関での原因把握が優先です。
ストレッチで改善しない腸腰筋の症状は医療機関の受診を推奨
数週間ストレッチを続けても症状が続き、フォームや強度・頻度を見直しても改善されないようであれば、医療機関受診を検討しましょう。ストレッチ後に痛みやしびれなどの症状が悪化している場合も、受診をおすすめします。
排尿や排便の異常や会陰部の感覚異常などは、早急な医療機関受診を必要とするサインです。
ストレッチで変わらない理由は、やり方ではなく原因の側にある場合があります。腰や股関節そのものに変化が起きているとき、筋肉をほぐすだけでは届きません。原因を確認することが次の一歩になります。
当院では、股関節の痛みに対する再生医療を治療選択肢のひとつとして検討できます。実際の経過については以下の症例をご覧ください。
腸腰筋ストレッチの効果とポイントをおさえて正しいやり方で実施しよう
腸腰筋ストレッチは、強さや時間、回数の目安および正しいフォームなどのルールを意識しながら行うことが大切です。
本記事では、寝ながらほぐせるもの、座った姿勢でほぐせるもの、立ったままの姿勢でほぐせるものを紹介しました。基本的なポイントを守りながらのストレッチにより、さまざまな効果が期待できます。
ただし、強い痛みやしびれ、排尿・排便の異常などがあるときは、無理せず中止してください。ストレッチを進めても症状が改善しなかったり悪化したりする場合は、医療機関を受診しましょう。
腸腰筋ストレッチは、自分の身体と相談しながら行っていきましょう。
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腸腰筋ストレッチに関するよくある質問
腸腰筋ストレッチは寝ながらできますか?
腸腰筋ストレッチは寝ながらでも行えます。本記事でも「寝ながらできる腸腰筋ストレッチ」を2種類紹介しているので、参考になさってください。
ただし、痛みやしびれが強い場合は、ストレッチを中止した上で医療機関を受診しましょう。
腸腰筋ストレッチは高齢者にも役立ちますか?
腸腰筋ストレッチは、姿勢の改善や歩行の安定、腰痛緩和などの効果があるとされており、高齢者にも役立ちます。本記事で紹介した、寝たままや座ったままでのストレッチであれば取り入れやすいでしょう。
ただし、痛みやしびれが強いときには無理に行わないようにしてください。
腸腰筋はマッサージでほぐせますか?
お腹の上から押してほぐそうとする方法が紹介されることがありますが、腸腰筋の前には腸などの臓器があります。強く押し込む方法は避けてください。
自分で行う場合は、押すよりも伸ばす、動かすほうが体への負担が少なくなります。本記事で紹介したストレッチと、脚を大きく動かす種目を組み合わせる方法をおすすめします。
道具を使いたい場合も、お腹側ではなく太ももの付け根の外側にとどめ、痛みや脚のしびれが出たら直ちに中止してください。
どのくらい続けると変化を感じますか?
静的ストレッチで柔軟性の変化が定着するまでには、一定の期間が必要です。1回で柔らかくなるものではありません。
週2〜3日以上を数週間続けることを前提に考えてください。立ち上がりが楽になった、階段で脚が上がりやすくなったという日常動作の変化のほうが先に感じられることもあります。
数週間続けても変化がない、あるいは症状が強くなっている場合は、原因が別のところにある可能性があります。医療機関にご相談ください。
参考文献
(文献1)
CURRENT CONCEPTS IN MUSCLE STRETCHING FOR EXERCISE AND REHABILITATION|International Journal of Sports Physical Therapy
(文献2)
American College of Physicians issues guideline for treating nonradicular low back pain|ACP
(文献3)
Psoas Muscle|Cleveland Clinic
(文献4)
A Cross-sectional Study on Association of Iliopsoas Muscle Length with Lumbar Lordosis Among Desk Job Workers|Indian Journal of Occupational and Environmental Medicine
(文献5)
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)とは|済生会
(文献6)
坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは|済生会
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