人工関節置換え手術のリスクについて、高齢者が知っておくべきこと
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人工関節置換え手術のリスクについて、高齢者が知っておくべきこと
股関節の痛み等の症状は、進行すればするほど、従来の治療法である保存療法をおこなっても奏功しなくなります。高齢者が股関節の痛みを改善するために股関節を人工股関節へ置換える手術は、年齢的な面で大きなリスクを伴うことを知って頂きたいと思います。
そこで今回は、「高齢者の股関節の痛みや、股関節異常に対する最終的な治療は人工関節置換術しかないのか?」という点から、リスクを含めて解説させていただきます。
高齢者として手術のリスクがあるからと、股関節の痛みを放置し、歩行などの不自由にも目をつぶり、手術を選択しないのは、生活の支障をきたすばかりか、症状の更なる進行の恐れもあります。
ついては、何らかの治療をしなければなりません。ではリスクのある手術そのものを避ける方法はあるのでしょうか?
結論から申し上げると進行の度合いによるという前置きをした上で、人工股関節を避ける治療方法は存在します。
それが最近、脚光を浴びつつある新しい治療法で「再生医療」というものです。この治療補が適合するなら人工股関節の手術を避けられるばかりか、入院すら不要、日帰りでの治療が可能です。
再生医療で人工股関節の手術を避けられるのなら、そもそも手術のリスクは発生しません。安心して治療を行うことができます。この新たな選択肢である「再生医療」にも言及してまいります。
股関節を人工股関節に置換える手術は高齢者にどんなリスクがあるのか?
股関節の痛みや、異常に対する手術は、「人工股関節置換術」や「骨切り術」などがありますが、いずれの手術であっても高齢者の場合はリスクを考慮しなければなりません。
高齢者の手術におけるリスク
まず高齢者の手術におけるリスクについて、「股関節を人工股関節に置き換える手術を受ける」場合に限ってリスクが発生するわけではありません。まずは、どのような手術をおこなう場合であっても、高齢者の場合は、リスクが高くなります。
その理由としては、以下のようなことが挙げられます。
・多くの合併症を有している可能性が高い(自覚していない潜在性の合併症も含めて) ・加齢により抵抗力が低下している ・手術によってバランスが崩れてしまうと、リハビリを重ねても年齢的に修復が難しい可能性がある ・上記含め、手術に関わる条件の個人差が大きい |
特に問題なのは「基礎疾患・合併症」の問題です。
一般的に病気というものは年齢が高くなるほど発症リスクが高くなり、高齢者は様々な合併症を有しているケースが見受けられます。
例えば「糖尿病」などの免疫力に関係する疾患を有している場合は、手術によって感染症を発症するリスクを考慮しなければなりません。また、股関節の手術において、その準備段階、検査結果で疾患が見つかるというケースも珍しくありません。
医療技術が進歩したことで年齢によらず手術を実施できるケースが増えてきはしましたが、それでも合併症の存在は、今だに無視できないのです。
そのため、一般的に手術前には詳しい検査をおこなって手術をしても問題がないと判断されない限り手術が選択されることはありません。安全性を優先する一方で、「手術したくても、受けられないケースもある」ことも念頭に置く必要があります。
手術後のリスクについても考慮が必要
仮に検査で問題がなく、無事に手術を終えたとしても問題は残ります。
最たるものが「脱臼のリスク」です。一般的に、人工股関節の手術後は、脱臼が起こりやすくなっています。
手術後の日数や、経過に伴って徐々に脱臼は起こりにくくなるのですが、高齢者の場合は若年層の手術と比較して脱臼リスクが長く続くと考えるべきです。
高齢者は、老化に伴って股関節を支える筋肉が衰えるため、次第に腰が曲がって姿勢が変わることがあります。こうなると股関節の動きも従来と変わることになります。その結果として、脱臼リスクの高い姿勢になりやすくなります。
特に手術後のリハビリも若年層に比べて慎重におこなう必要があります。
なぜなら、過度なリハビリによって脱臼が発生すると、再治療が必要となり、上記の問題(リスク)を再び考慮しなければならなくなるからです。
高齢者が人工股関節の置換手術をしない!そんな選択肢である再生医療
股関節を人工股関節に置換える手術にはリスクがあり、特に高齢者の場合は、リスクが高くなることをご説明してまいりました。けして脅しではなく、最悪の場合は、手術によって体調を大きく崩す可能性もあり、その際には命に関わる可能性もあります。
では、高齢者の股関節治療には、リスクが高い「人工股関節を入れる手術」しか方法はないのでしょうか?
従来の選択肢は、保存療法と手術
股関節の痛みや、異常など関節疾患の多くは「保存療法」か、「人口関節置換術」の二択での治療を選択するケースがほとんどです。
つまり、「手術を受けない」「手術はしたくない!」とした場合、保存療法を継続することになります。保存療法とは、痛みなどの症状を薬物などで抑え、運動療法などリハビリで機能の維持と、症状の進行を防止するものです。
通院や、運動療法を実施するという手間はありますが、手術ほど体へのリスクを考慮する必要はありません。特に変形性股関節症などの初期症状において保存療法は有効で、この治療法を選択することもあります。
それならリスクを避けて保存療法で薬や、リハビリを続けていれば良いのか?・・・というと、そうでもないのです。
問題なのは、この場合、保存療法が病気の根本的な治療法にならない。完全に進行を止めることができないということです。保存療法はあくまでも「痛みなど症状の緩和」と「症状の進行を防止する」というものです。
進行を遅らせる目的で行われるだけで、残念ですが病気は徐々に「進行」します。保存療法は、病気が進行するれば、するほど効果を発揮しなくなる可能性が高いということです。
そのため、従来は保存療法が効かなくなったら、避けたくても結果的に手術を受け入れざるを得ない!ということになります。つまり、保存療法を続けていても → いつかは手術になる。という流れ、治療方針がとられていました。
そんな流れが変わろうとしています。それが「再生医療」です。
本記事の冒頭にも記しましたが再生医療は、これまで再生することが不可能だと思われてきた軟骨に対して、自分の幹細胞を使うことで再生させることが可能になった治療方法です。
幹細胞は、様々な細胞に分かれる、つまりは変身する能力を持っているため、弱った軟骨に変化し、軟骨を再生させる可能性に満ちた治療法です。
方法的にも体への負担が少なく、自らの脂肪をほんの少し採取して、その脂肪から幹細胞を抽出、培養。この幹細胞を数万から、1億以上に増やして患部に注射で投入するだけ。
人工関節置換術といった手術や、長期の入院、長期のリハビリも不要です。そればかりか日帰りで済む治療法です。
つまり、高齢者にとって一考される価値のある方法です。
▼手術をしない日帰り治療方法
まとめ・人工関節置換え手術のリスクについて、高齢者が知っておくべきこと
変形性股関節症など股関節の病気は、年齢を問わず初期であれば保存療法が有効ですが、症状自体を止めることはできません。症状が進行すると、人工股関節を自身の関節と置換える手術を検討しなくてはなりません。
しかし、人工股関節置換術などの手術は、合併症などの問題からリスクの発生を避けて通ることはできません。
ところが、昨今の医療技術の進歩により、従来は手術が難しかったケースでも手術を選択できるようになったり、手術を回避し、切らずに治療する再生医療という分野が大きく進歩してまいりました。
いずれにしてもご自身のお体ですので改善に向けて担当の医師とご年齢や、そのリスクなど納得いくまでよくご相談していただき、より良い治療方針を模索しましょう。
No.0006
監修:院長 坂本貞範
変形性股関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます