-
- 肘関節
- 関節リウマチ
- ひざ関節
- 股関節
- 肩関節
- 手部
- 足部
人工関節の手術を受ける場合に知っておくべき安全性と危険性を解説 股関節、膝関節、肘関節、指関節、足関節における関節疾患の多くは比較的ゆっくりと症状が進行するため、本人は症状に苦しんでいるにもかかわらず、ただ単に年齢によるものというだけで見過ごされてしまうことが往々にしてあります。 ところが、知らず知らずのうちに病気の進行が悪化してしまうと、関節患部に強い痛みや熱感を自覚して、日常生活において歩く、座る、投げる、持つ、立つなどの基本的な動作能力が低下して必要な動きが制限されてくる恐れがあることをご存知でしょうか。 このような関節の症状が出たのちに、保存療法等、種々の治療を繰り返しても元には戻りにくく、徐々に症状は進行します。そして、最終的に提案されるのが手術療法になります。 人工関節置換術 この手術が「人工関節置換術」として知られているものです。この手術は、読んで字のごとく、疾患によって悪くなって異常がある関節部分を取り除いたのちに、人工の関節に置き換える手術です。 例えば変形性膝関節症や、関節リウマチなど膝関節疾患を治療する際には、その代表的な手術療法のひとつとして人工膝関節置換術が挙げられるという具合です。 人工関節の置換術が可能な部位は膝関節や股関節、肩関節、手関節、手指関節、足関節、肘関節となっていて、置換える人工関節そのものも年々進歩しています。 材料的には主としてチタン合金、コバルトクロム合金、セラミック、ポリエチレンなどで構成されています。 人工関節置換術は、関節の疾患がもとになって起こっている疼痛の原因となっている部分を取り除くことを主眼としているため、他の治療法と違って、患者さんの慢性的症状である痛みを和らげる効果を期待するものです。 そこで今回は、そのような人工関節の手術に関して知っておきたい安全性と危険性について解説したいと思います。 人工関節置換術 治療可能部位 材料 膝関節や股関節、肩関節、手関節、手指関節、足関節、肘関節 チタン合金、コバルトクロム合金、セラミック、ポリエチレン 人工関節の手術|安全性について 人工関節置換術という手術療法は、各種の関節症、例えば変形性関節症や関節リウマチを患われている患者様に対して関節の痛みを緩和して日常生活をより快適に送れる事を目的とする治療手段として普及しています。 今や各種の関節症に対する人口関節置換手術でのアプローチは年間に約20万例前後という件数が報告されるまでになりました。このように比較的メジャーになってきた人工関節の手術は、術式としては確立されていて、置換える人工物の素材も進歩を遂げています。 ただし、手術を安全に確実に実践するためには、当たり前のことながら整形外科の専門医を始めとして、医療従事者の専門性が問われ、人工関節の特性や、軟骨などの組織が破綻するメカニズムに対する知識が不可欠です。 これら関節の再建方法などについて熟知している専門性が大切であり、これまでの経験、知見、熟練の度合いが手術に影響するとされています。 また、人工関節置換術においては、言うまでもありませんが手術そのものの安全性を高く施行するだけでなく、術前や術後における全身管理や、術後の安定した段階で早期に、個人に沿ったリハビリテーションを計画し、適切に行えることが非常に重要です。 これらの人工関節手術を安心して受けるためには、術後の体制、いわゆる人工関節の緩み、異物感染、関節脱臼やインプラント周囲組織の骨折を含めた様々な合併症が起こった際に迅速かつ、確実に対応できる医療体制の存在、あり方が必要不可欠です。 また術後のリハビリテーションに関しては、術前に担当の看護師や理学療法士などのリハビリの専門部門が積極的に患者さんに接触し、術後の早期に状態を見極めながら関節機能を中心とした全身状態の改善を目指さなければなりません。 万が一にもリハビリテーションが予定とは異なり順調に進まない時には、自宅への退院とは別途、リハビリ専門施設へ転院するような連携調整、あるいは自宅退院後の各種生活支援についてメディカルソーシャルワーカーに相談する必要があるでしょう。 このように「人工関節の安全性」は、専門性、術前、術後、リハビリなどをすべて含めて判断すべきだと考えます。 安全性は、総合的に判断 専門医(経験、知見、習熟度) 術前の全身管理 術後の対応、フォロー リハビリ計画 人工関節の手術|危険性について 人工関節置換術は、疼痛症状を緩和して関節の機能の回復を望める手術である一方、関節以外の他手術と同様に一般的なリスクとして、全身麻酔に伴う合併症や、深部静脈血栓症および肺塞栓症の発症、あるいは輸血に関する問題点などがあります。 また、人工物や手術部分の感染、患部周辺の血管や骨組織、神経などの二次的な損傷、あるいは手術中における予測不能なことがが引き起こされる懸念も考えられます。 そして、人工関節手術の術直後においては傷口の疼痛が非常に強いことが懸念されており、関節部の機能回復を阻害するのみならず、手術を受けた患者さんの満足度とも直接的に関連すると言われています。 他にも心配なのは、人工関節の耐久性です。人工物ですので永久に使えるものではないからです。いつまで使えるかということに関しては、患者さん自身の生活背景などの使い方にもよりますが概ね15年前後であると考えられています。 人生100歳時代の現代、耐久性という面から、将来に人工関節を入れかえるため、再手術の可能性があることを知っておくべきです。その際は、年齢的にも術式的にも、あらゆる面で最初より、難しさがが増す可能性があります。 従来、人工関節置換術は、およそ60歳以上の高齢者を中心に適応がある手術とされてきましたが、近年では個々の価値観やクオリティ・オブ・ライフ/QOL(*)が尊重される時代となり、2回目の手術を勘案して50歳前後でもより快適な人生を過ごすために本手術を選択される方もいらっしゃいます。 (*)QOL/生活の質や人生の質などのこと 治療を受ける患者さんの肉体的なことはもちろん、精神的なことや社会的、そして経済的など、すべてを含んだ生活の質を指す言葉です。 今回の場合では手術そのものや、その後の副作用などでリハビリを行っても手術前と同じようには生活できなくなる危険性あります。 そのことを理解した上で手術の利点と危険性に関して医師とよく相談し、リハビリも含めた治療内容全般にわたって理解するようにしましょう。そして、家族や周りの理解や、協力を得られるよう相談し、慎重に決定されることをお勧めします。 最後に手術を選択した場合の入院期間について、概ね1か月は最低必要で、年齢的なものや、術後の状態により2か月~必要な場合もあるため、日程的な融通が必要な手術です。 今回は、人工関節への置換手術について不安を感じておられる方への術前のアドバイスとして記してまいりましたが、治療法としては、「再生医療」という先端医療分野があることも知っておきましょう。 その特徴は、手術も入院も不要という治療方法で自分の自己治癒力を引き出す最先端医療です。興味がある方は、お問い合わせください。いずれにしましても先生と話し合って、聞きたいことを聞き、納得して進んでください。 まとめ・人工関節の手術で知っておくべき安全性と危険性 股関節や膝関節は、下半身の体重を支えながら日常生活で立つ、歩くなどの基本的動作を実践するうえで極めて重要な関節です。肩関節や肘関節が障害を受けると荷物が持てないなど非常に支障をきたして日常生活が大変不便になります。 その意味でも日々の健康を保ち快適な暮らしを送り続けるためにも、関節に負担の少ない優しい生活を過ごすように意識しましょう。 仮に関節症の疾患で、人工関節置換術を勧められた場合は、選択肢としてこちらの記事で記したような将来の再手術の可能性、手術そのものの危険性や、入院期間が長くなるといった手術であること知ったうえで臨んでください。 リスクは、どのような手術であっても伴うものです。ただ、上手くいけば関節の痛みが緩和されて、関節の機能が元通りに再生されるのみならず、普段の歩き方や、身体のバランスを整備することが可能な治療法です。 これからの時代、健康寿命を延伸して自分らしい快適な生活を営むためにも、関節疾患は、放置することなく、治療方法について整形外科の専門医もしくは専門院を受診して相談されるこをお勧めします。 安全性 術式としては確立 多様な部位に対応 素材の進歩 危険性/リスクを理解 クオリティ オブ ライフ 専門医の相談、納得感 家族の理解、支え 人工関節の耐久性 → 年齢から再手術の可能性を念頭に 長期入院 → 1か月~2か月 リハビリ → 長期計画 手術としての危険性(合併症、その他) 手術部位の疼痛 以上、人工関節手術に関する安全性と危険性について記しました。今回の記事、情報が少しでも参考になれば幸いです。
2021.12.20 -
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PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 「再生医療」という先端医療をご存知でしょうか?近代になって研究室での実験から、医療の現場で実施されるまでに至ってきた医療分野です。 いわゆる再生医療とは、怪我や病気によって低下あるいは喪失した生体機能を従来の医療方法では違うアプローチで治療する方法です。人為的に加工や培養して作製した細胞や組織などを用いて人体に元来備わっている修復能力を増大させて症状を改善させることが出来る可能性を秘めた未来的な治療方法です。 一昔前ならSFの世界、まともに語っていたなら「夢でも見てるの」かと夢物語にされかねない非現実的な医療でした。このような非現実的な治療方法であるだけに、実際にその治療を受けることが可能だとは、ほとんどの方がご存知ないのではないでしょうか。 それもそのはず現場の医師でさえ詳細を知る方は、まだまだ少ないのが現実なんです。そこで再生医療とは、どんな治療方法なのでしょうか? 今回は、PRP療法とAPS療法の比違いについて、比較を交えてお話しさえて頂きます。 そもそも私たちの血液中には、赤血球や白血球、あるいは血小板と呼ばれる成分が含まれていることはご存知ですね。これらの成分には、それぞれに特化した役割が存在しています。 その中でも血小板は外傷によって皮膚表面が傷ついた場合や、関節捻挫、あるいは筋肉打撲などで負傷をした際に損傷部位を治癒させる働きを有しています。つまり、自己治癒力です!傷ついたり、痛んだりした組織を自動で修復してしまう!すごい機能です。 このような働きができるのは血小板の中に含まれて、傷んだ組織部位を治す「成長因子」と呼ばれる成分のお陰お陰です。それが今回、ご紹介するAPS療法の基礎となるものです。 PRP療法とAPS療法 血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」は、昨今の再生医療の分野で大変着目されており、英語表記でPlatelet Rich Plasma(略して以下、PRP)と呼称されているものです。 さらに、Autologous Protein Solution(略して以下、APS)を用いた療法は、自己タンパク溶液として、前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したものです。このAPS治療は、目下のところ慢性的な膝関節等の疼痛に対する再生医療という新たな最先端治療として注目されているものなのです。 今回は、再生医療の新人!APS療法について解説していきましょう。 [再生医療] PRPとAPSの比較 自己多血小板血漿、注入療法とも呼ばれるPRP療法については聞き覚えのない馴染みが薄い治療法に感じられるかもしれませんね。しかし、実のところ海外においては10年以上の使用実績がある方法なのです。 ケガなど、傷ついた部位の修復に作用する血小板に含まれる成長因子を取り出すPRP療法は、私たちがもっている治癒能力や組織の修復能力、再生能力を引き出すという目的があります。 それに対してAPS治療は、患者様自身の血液成分から特殊な専用医療機器を用いてAPS成分のみを抽出します。 このAPSの抽出方法は、基本的にPRPそのものを更に遠心分離器を活用して特殊加工することによって、炎症を抑制する役割を有したタンパク質と軟骨を保護して損傷を改善させる「成長因子」を高濃度に抽出したものになります。 このような抽出背景から「APS」は、まさに「次世代型のPRP」とも表現されることがあります。 抽出したAPSを関節内などの疼痛部位に向けて成分を注射することによって関節部の疼痛や炎症の軽減のみならず、軟骨の変性進行や組織破壊を抑制することが期待されるものです。 APS治療は、現在のところ、まだ「変形性膝関節症」に痛みなどを対象疾患を限定して使用されている段階ですが、これまでのPRP治療でも難渋していた患部改善にも一定の効果を示すことが徐々に判明してきています。 尚、APS療法では患者さんご自身の血液を基準にして作るために異物免疫反応が引き起こされる可能性は極めて低確率であると考えられています。 また、本治療はPRPと同じく、手技的に採血操作と注射投与だけですので、手術などのように患者さんの身体的な負担も大幅に少なくて済むという特徴があります。 PRP療法とAPS療法の比較 ・PRP療法 「PRP療法」は血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」Platelet Rich Plasmaを略したもので、自己血液から血小板を取り出し、それを患部に注入する治療法です。 血小板には成長因子が豊富に含まれており、これらの成長因子が治癒を促進する働きがあります。具体的には、炎症を抑え、組織再生を刺激し、細胞の増殖と修復を促進します。主に関節炎や腱や靭帯の損傷、筋肉の損傷などに使用されます。 ・APS療法 「APS療法」は、Autologous Protein Solutionを略したものです。前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したもので抗炎症性のサイトカインとよばれるタンパク質と関節を健康に保つ成長因子を高濃度で取り出した⾃⼰タンパク質溶液を患部に注入する治療方法です。 再生させるという観点ではなく、現在のところ、関節内で痛みを引き起こすたんぱく質の活動を低下させることから症状緩和に焦点を当てた特化的治療といえるものです。 APS療法で期待できる効果や、実際の治療法 さて、ここからは変形性膝関節症に対してAPS療法で期待できる効果や実際の治療法などについて紹介しましょう。 ご注意頂きたいのは、APS療法は、再生医療ではありますが自己の血液から抗炎症成分のみを濃縮して抽出したあと、関節内に注射することで関節の軟骨を修復し、再生させるという観点ではなく、膝痛の症状緩和に焦点を当てた特化的治療であることです。 膝の変形性関節症では、疾患が進行することによって「半月板の損傷」や、「靭帯のゆるみ」など膝関節のバランスが崩れることで軟骨がすり減り、膝関節が変形して発症します。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水が溜まることがあります。 従来、治療としては繰り返し鎮痛剤を内服することや、ヒアルロン酸を関節内に注入するなどが代表的な治療法でした。しかし、鎮痛剤を飲み続ける是非や、ヒアルロン酸の効果が期待できなくなった変形性膝関節症の患者様の中には、このAPS治療によって症状が幾ばくかの改善を示すケースがあることが分かってきたのです。 一般的にAPS治療では、投与してからおよそ1週間から1か月程度で患部組織の修復が起こり始めて、だいたい治療してから約2週間から3ヶ月前後までには一定の効果が期待できると言われています。 海外のAPS治療に関する報告例では、APSを一回注射するだけで、最大約24ヶ月間にもわたって痛みに対する改善効果が継続するとの実例も紹介されていました。ただし、これは一例で実際の治療効果や症状が改善する持続期間に関しては、患者さんの疾患の程度、条件によって様々、個人差があり変化することをご理解ください。 また、このAPS治療は、PRPと同じく、患者さん自身の血液を活用して生成するために、通常ではアレルギー反応や免疫学的な拒絶反応は出現しないと考えられている点も良いい面でのポイントです。 APS治療の手順 1)まず約50~60mlの血液を採取 2)厚生労働省が認めている特殊な技術で処理し、血小板成分を濃縮したPRPを抽出 2)精製されたPRP物質をさらに濃縮してAPSを抽出 こうして抽出した後、痛みを自覚されている関節部位に超音波エコー画像を見ながらAPS成分を注射して投与する まとめ・PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療です。 そして、昨今特に注目されているAPS治療では、先のPRPを更に濃縮。このAPS成分を患部に注射投与してから平均しておよそ1週間から1か月程度で組織修復が促進されて更には疼痛緩和に繋がる可能性があります。 なおAPS治療を現実的に受けた当日は、入浴や飲酒、あるいは喫煙、また激しい運動やマッサージなどは出来る限り回避するように意識しましょう。 APS注射直後には、個人差はあるものの一時的に痛みや腫脹、発赤などの症状が出ることがありますが、疼痛があるために関節部位を全く動かさないと逆効果になってしまうこともあります。 ここのあたり治療後の行動については、くれぐれも十分に主治医と相談するようにしましょう。また現段階では、このAPS治療は保険適応外であり自費負担になります。 費用は、それぞれの対象医療施設や治療適応となる患部箇所などによって異なりますので、この治療法をもっと知りたい方は私どもほか、専門の外来へお問い合わせされることをお勧めします。 このAPS療法のほかにも再生医療として、私どもが推進する「幹細胞治療」という関節部分の軟骨を自己治癒力を用いて再生させるという正に未来的な治療法も存在し、この分野から目が離せません。 いずれにせよ関節に問題があって、「後は手術しかないと」言われた方は再生医療をご検討されてはいかがでしょうか。私たちは再生医療の幹細胞治療で1,600例を超える豊富な症例を有しています。いつでもご相談ください。 以上、PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法について記させていただきました。 ▼ PRP療法をさらい詳しく PRPを使った再生医療は、人間が持つ自然治癒力を活かして治療する先端医療です
2021.10.20 -
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「グルコサミンとコンドロイチンの違いは?」 「グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントに副作用はある?」 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 ただ、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントによる摂取は、研究結果によると、残念ながら痛みが軽減したエビデンスは少ないのが実情です。 今回はグルコサミンとコンドロイチンの違いを始め、サプリメントの摂取による副作用などを解説します。 思い込みによって効果を感じるプラセボ効果についても解説するので、これからサプリメントの摂取を検討されている方は参考にしてみてください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いとは? グルコサミンは、アミノ糖の一種で軟骨を始め、爪や皮膚などに分布しています。 一方、コンドロイチンは、ムコ多糖と呼ばれており、グルコサミンなどのアミノ糖が連なってできた多糖体です。 どちらも体内で自然に生成される成分、関節を構成する成分として有名です。 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 関節内では、コンドロイチンはプロテオグリカンと呼ばれ、軟骨の構成成分としてクッションのような役割を果たし、骨と骨が接触しないよう保護してくれています。 膝・腰・肩などの関節が痛む原因 膝や腰、肩の痛みは多くの場合、加齢によるものが原因です。残念なことに体の機能は、年齢を重ねるにつれて徐々に衰えます。 グルコサミンやコンドロイチンといった体内で生成される成分も、加齢で生産率は減少していき、関節内の柔軟性や弾力性がしだいに失われます。 関節を構成する成分が減ってしまうと脆くなり、軟骨がすり減って骨がぶつかり合い、周辺の神経に伝わって痛みが出てくるのです。 たとえば、重労働や激しい運動など、膝や腰、肩を使いすぎる行動を継続すると痛みの原因になります。 すでに症状があり、膝などの関節痛が治らない方は、根本的な治療を行うほうが良いケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みに関する再生医療の治療実績もございますので、まずはお気軽にメールや電話にてお問い合わせください。 グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは関節痛に効果がない 軟骨に豊富に含まれているグルコサミンやコンドロイチンは、サプリメントから補給する方法もありますが、実は関節痛には効果がないのがわかっています。 関節の痛みに効果がない理由として、口からの摂取による影響が考えられるでしょう。 消化器官を通過すると、グルコサミンやコンドロイチンの構成成分であるアミノ酸や糖質は、胃液などにより消化および分解されてしまいます。 そのまま体に吸収されるため、軟骨まで到達するとは考えにくいのです。また、軟骨には血管がほとんどなく、栄養として成分が直接届きにくいとされています。 一般的にイメージされるサプリメントの効果は、軟骨減少の改善を始め、膝や腰、肩の痛みにおける症状改善などがあげられます。 ただ、研究結果をみると、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントがもたらす効能は、科学的な根拠に乏しいのが実情です。 サプリメントの効果に関する研究論文【痛みが軽減したエビデンスは少ない】 米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が出資した主要な研究など、一部の研究によると、グルコサミンのサプリメントが痛みを軽減させたエビデンスは、ほとんどあるいはまったくありませんでした。 一部の研究発表では、コンドロイチンやグルコサミンなどの成分をサプリメントとして服用すると、膝や腰、肩の痛みを軽減する可能性があると示唆しています。 ただし、実際のところは「可能性レベル」であって、ほとんどの研究において「劇的な改善をもたらしたといえるほどの効果はない」と報告されています。 実際に大規模な研究結果でも、グルコサミンやコンドロイチンといった成分が関節の痛みに効果があるというエビデンスを示していません。 つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントが、痛みを軽減するのかは十分な証拠がない状況といえます。 関節痛にサプリメントが効くのは思い込み?プラセボ(プラシーボ)効果とは プラセボ(プラシーボ)効果とは、本来は薬としての効能がまったくない物質を摂取しているのにもかかわらず、効能が得られたと感じることです。 膝や関節に関わるグルコサミンやコンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などのサプリメントも、同様に思い込みで効果を実感している可能性もあります。 実際に摂取された方のなかには「痛みが軽くなった」「痛みが半減した」などの意見が上がっている製品もあるようです。 実際に利用者が、どの製品のサプリメントに効果があると感じたのかは正確にはわかりません。 ただ、サプリメントの摂取で、膝や関節への効果を感じている理由としては、プラセボ効果が関わっているのではないかと考えられています。 グルコサミンとコンドロイチンの服用における実験結果 アメリカの臨床研究では、関節痛などの問題を抱えている大勢の方に集まってもらい、2つのグループに分けてモニタリングを行いました。 片方のグループには、グルコサミンやコンドロイチンの「本物のサプリメント」を与えて、もう片方のグループには、まったく何の効果もない「偽のサプリメント」を与えました。 実際にそれぞれのグループに一定の期間服用させたところ、グルコサミンとコンドロイチンの成分が入っているかどうかにかかわらず、以下のような改善が見られたのです。 本物のサプリメントを与えたグループ ・症状の改善が見られた層がいた 偽のサプリメントを与えたグループ ・「痛みが緩和した」「痛みが改善した」 など症状の改善が見られた層がいた 上記はプラセボ効果によるもので、一種の「思い込みによる心理的な働き」と考えられています。 「グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは、摂取すると膝の痛みがとれる」といった情報から、思い込みやイメージなどにより、効いたように感じてしまうのです。 しかし、思い込みだとしても、実際に症状が良くなったと感じるなら、本人にとっては「痛みを改善する目的が達成できた」といった見方もできるかもしれません。 ただ、残念ながら結果が得られなければ、この記事を思い起こしていただければと思います。 グルコサミンとコンドロイチンの副作用 厚生労働省eJIMによると、グルコサミンとコンドロイチンのどちらも、3年間継続して摂取した場合、重篤な副作用は見られない結果でした。(文献1) ただ、本人の体における状態などを始め、服用している薬との飲み合わせによっては、何かしらの副作用が出る可能性もゼロではありません。 サプリメントの摂取を行うときは、必ず医療機関で医師や薬剤師などに問題がないかを確認してみてください。 まとめ|グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントが関節痛に効く可能性は低い グルコサミンやコンドロイチンは、体の軟骨成分に豊富に含まれている物質です。 医学的にはサプリメントで成分を補ったとしても、膝や肩などの関節に届く可能性は低く、痛みに効くとは言い切れないのが現状です。 ただ、今後の臨床研究により、なんらかの効能が見つかる可能性もあるかもしれません。 現在膝や肩などの関節痛に悩まされているなら、サプリメントに頼りすぎず、ぜひ整形外科を始めとした医療機関の受診をおすすめします。 痛みには思わぬ病気が隠れている場合もあるため、早期発見と早期治療が何よりの対処法です。 体の痛みや違和感といった症状を放置せず、しっかりとした診断に基づく治療を受けてみてください。 また、膝まわりの痛みに関しては、幹細胞を使った再生医療による治療方法もございます。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節症などの治療実績もございますので、関節に関わる症状がある方は、ぜひメールや電話からお悩みをご相談ください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いに関するQ&A グルコサミンとコンドロイチンの違いに関する質問と答えをまとめています。 Q.軟骨成分のプロテオグリカンは関節痛に効果があるの? A.食事やサプリメントによる効果は期待できないと考えられています。 ただ、運動によって血流が良くなると、細胞に栄養などが届きやすくなり、プロテオグリカンの増加が促進されるのがわかっています。 プロテオグリカンと関節痛に関する詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。 Q.コラーゲンのサプリメント・ドリンクは関節の違和感などに効果があるの? A.「低分子コラーゲン」「コラーゲンペプチド」と表記があるサプリメントやドリンクは、効果が期待できるかもしれません。 低分子化したものはコラーゲンペプチドとも呼ばれており、粒子が細かく腸壁で吸収されてから血液を通り、皮膚や骨、関節などの全身に届きます。 コラーゲンのサプリメントと関節痛との関わりについては、以下の記事も参考になります。 Q.グルコサミンやコンドロイチンを含む食べ物は? A.以下の食べ物に含まれています。 ・グルコサミン:カニやエビなど(甲殻類の殻) ・コンドロイチン:牛や豚などの軟骨、干しえび、きのこ類、山芋 など 栄養素は相互作用で働くので、偏らずにさまざまな食べ物をバランス良く摂取してみてください。 参考文献 文献1 厚生労働省eJIM|海外の情報 グルコサミンとコンドロイチン
2021.10.06 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査の特徴には、①簡便かつ非侵襲的(体に傷をつけない)、②リアルタイムで観察可能、③プローブを使用するなどの特徴があります。 検査をするにあたって、場所は選ばず、特別な準備も必要ありません。そのため超音波器械さえあれば、その場で好きなときに好きなだけ検査を行うことができます。また、体の外から当てた超音波は人体には無害で痛みもありません。簡便かつ非侵襲的な診断といえるものです。 最近ではポータブルの超音波器械が普及しており、性能も十分に高いため、器械そのものを持ち込んで集団検診、疫学調査が可能となっています。 スポーツ領域では競技グラウンドや練習現場に、学校などでは集団検診の場で検査が可能であり、一度に大量のデータを集積することも可能となっています。 リアルタイムで観察が可能 超音波画像はリアルタイムで観察できるため、腱板や関節唇上腕二頭筋長頭腱の動態検査、ストレス検査による不安定性の計測が可能です。また超音波の画像をみながら、損傷部位にピンポイントで穿刺(対外から針を刺す)することも可能です。 プローブを使用する 超音波検査ではプローブを用いますが、この際プローブによる軽い圧迫で、患部の圧痛との相関がみられることがあります。腱板の検査においては特にそれが認められ、診断率を上げることが可能です。 (1)使用する装置とプローブ 肩関節の超音波診断に使用する超音波断層装置は、ある程度の上級機種であれば大差はありません。プローブは7.5MHz~10MHz程度のリニアプローブを用いるのが一般的です。 体表面が凹となっている腋窩(わきの下のリンパ節)や肩峰—鎖骨間隙では、小型のコンベックスタイプのプローブが有用です。 (2)肩関節に対する超音波検査 ①患者を坐位または仰臥位とし、肩関節を中間位で軽度伸展させます。 ②まず、上腕二頭筋長頭腱および結節間溝を中心に検索します。肩甲下筋腱は、被検者の上腕を内外旋して小結節付着部を中心に検索します。 ③プローブを頭側へ移動させると棘上筋腱前縁が確認でき、さらに後方へ長軸像のまま棘上筋腱全体を検索します。 ④短軸像でも棘上筋腱全体を調べた後、棘下筋腱を長軸像で付着部を中心に検索します。 ⑤さらに、肩甲棘の中点で棘下筋の筋幅を両側計測します。 腱板損傷の超音波像 (1)肩甲下筋腱断裂・損傷 上腕骨を外旋させ、健側と厚み形態を比較します。健側と比べ腱が非薄化しており、投球障害では頭側関節包面に低エコーを呈します。 (2)棘上筋腱断裂 腱板の表面エコーと内部エコーの変化に注意しながら検査します。 表面エコーが平坦か下方凸になっていれば小断裂の存在を、内部エコーにおいて限局した低エコーが関節包面に存在していれば関節包断裂の存在を、境界エコーが不整で直下の内部エコーが低エコーになっていないケースでは滑液包断裂を示唆します。 また超音波で異常が存在した部位に限局している圧痛を認めたら、臨床的に同部が疼痛の主因になっていることが多いです。 (3)棘下筋断裂 棘下筋は薄いため、左右を比較します。頭側に低エコーを呈することが多いです。 (4)棘下筋萎縮 棘下筋の萎縮は投球動作で出現しやすいです。棘下筋の筋腹の厚みを左右比較するとともに、経時的に観察します。 まとめ・腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査は、軟部組織を簡便かつ非侵襲的に診断できるとともに、患者自らモニターに映し出される画像をみることができるという利点があります。 最近では、超音波器機の発達に伴い画像が鮮明化し、診断の精度が向上するとともに、腱板のみならず他の部位にも応用されつつあります。 しかし、まだ診断率は検者の技量と経験に左右されるため、超音波検査の特性と限界を十分理解することが正診率を上げるうえで重要になってきます。 以上、腱板損傷における超音波・画像診断による検査についてご説明しました。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下では腱板損傷の保存療法をご紹介しています 肩の腱板損傷の症状と機能改善のための保存療法について
2021.08.18 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩腱板損傷の画像診断|CT、MRI以外、関節の造影検査をご存知ですか 肩関節疾患の診断において、CTや、MRIの飛躍的な進歩にもかかわらず、造影検査は依然として重要な補助診断法の一つです。この造影検査方法には3種類あります。 1)陽性造影:ヨード製剤を用います。 2)陰性造影:空気を用います。 3)二重造影:ヨード製剤と空気の両方を用います。 この3種類の中では、「1)陽性造影」が広く行われています。 動態関節造影と肩峰下滑液包造影 それぞれの方法をご説明します。 動態関節造影 イメージ透視の映像をビデオなどに連続的に記録する方法で、造影剤のダイナミックな移動が観察でき、所見の見落としを防ぐ事もできるので、肩関節造影時に同時に行っています。 肩峰下滑液包造影 主に腱板滑液包面断裂の診断に用いられています。造影剤(ウログラフイン、イソビストなどの水溶性のもの) 5mLと1%キシロカイン5mLを混和した注射器に、23G短針を接続して、立位または座位で透視下にて、肩峰外側縁のやや下方から AHI(acromio-humeral interval:肩峰前下面の骨皮質と上腕骨頭の頂点との間の距離)の中上 1/3を目標にして、肩峰下滑液包内に刺入します。 二重造影では造影剤1mLと空気10mLを注入します。造影剤が腱板内に入り込んだり、腱板滑液包、局所に貯留したりする場合は腱板滑液包面断裂を疑います。 腱板断裂の関節造影について 関節造影について詳しくご説明します。 腱板断裂で疑われる画像所見 造影剤が肩峰下滑液包に漏出すれば、腱板の全層断裂 (full-thickness tear)の診断が確定します。外旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘上筋腱の断裂を疑い、内旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘下筋腱の断裂を疑います。 scapular Y像 腱板の断裂部への造影剤の漏出だけでなく、水平断裂像の描出も可能です。長期間経過した腱板小断裂や腱板不全断裂 (関節包面断裂や水平断裂)の描出は難しいので、他動的に肩関節をよく動かして、関節内圧を上げてから再度調べる必要があります。 動態撮影を併用すると、断裂の大きさや断裂部位がより明らかとなります。また、腱板滑液包面断裂の診断には、肩峰下滑液包造影が用いられます。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます 一般的な肩関節造影法について 以下で詳しくご説明いたします。 前方刺入法 ① 検査前にヨードや局所麻酔薬に対するアレルギー反応の有無について確認します。 ② 透視台の上に仰臥位になって貰います。 ③上肢を体側に接して透視台の上に置いた状態で外旋位になるように体位を調整します。 ④ 烏口突起を中心に広範囲に消毒をします。 ⑤ 1%キシロカイン10mLの入った注射器に21Gスパイナル針を接続。 ➅透視下にて烏口突起先端の1cm尾側で、1cm外側から関節裂隙に垂直に刺入。 ⓻少量の局所麻酔薬を注入して抵抗がないこと、上肢を少し内外旋して針先が関節内にあることを確認。 ⑥ 21Gスパイナル針を留置したまま 造影剤 (ウログラフィン、イソビストなどの水溶性のもの) 10mLと1 %キシロカイン10m Lを混和した延長チューブ付きの注射器に交換。 透視下にて確認しながら、ゆっくり注入します。(注入量は約 20rnLとされています。) ⓻造影は内旋位、外旋位および挙上位の3枚の前後像を撮影。 ⑧肩関節疾患に応じて軸射位像と scapular Y像などの撮影を追加します。 正常の画像所見 内旋位像 肩関節の前方組織が弛緩するので、内側に肩甲下筋滑液包(subscapularis bursa)、内下方に関節包前部 (anterior pouch)、および下方に関節包下部(腋窩陥凹; axillary pouchまたは inferior pouch) が描出されます。 外旋位像 肩関節の前方組織が緊張するので、肩甲下筋滑液包、関節包前部、および関節包下部は縮小します。外側に上腕二頭筋長頭腱腱鞘 (bicipital tendon sheath) が描出されます。 挙上位像 肩関節の下方組織が緊張するので、関節包下部は縮小します。上方に上腕二頭筋長頭腱腱 鞘、内側に肩甲下筋滑液位が描出されます。 軸射位像 関節窩の前縁と後縁に関節唇が三角形の陰影として描出され、前方には肩甲下筋滑液包も描出されます。 scapular Y像 前方に肩甲下筋滑液包、前下方に関節包前部、下方に関節包下部、および後下方に関節包後部 (posterior pouch)が描出されます。 以上、肩腱板損傷の画像診断について、CT、MRI以外の検査方法である関節の「造影検査」についてご説明いたしました。今回は、専門的な内容で難しかったかもしれませんが、ご不明な点があればご遠慮なくお問い合わせください。 少しでも参考にしていただけたなら幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の検査方法もご参考下さい 腱板損傷の診断法、超音波(エコー)による画像検査について
2021.08.04 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷とは 、肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板損傷になると、肩の痛みや筋力低下の症状が現れます。 腱板損傷を放置すると、痛みの増幅や 腱板断裂 の発症リスクをともなうため、早期治療が大切です。 本記事では、腱板損傷の診断に役立つテストを紹介します。自覚症状があればテストを実施し、腱板損傷の可能性を感じたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。 「腱板損傷が悪化して手術が必要になりそう…」という方は、「再生医療 」による治療を一度検討してみてください。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 腱板損傷の代表的筋力テスト4つ まずは、筋力低下の状態を確認するテストを4つ紹介します。 棘上筋(S S P)テスト 棘下筋(I P S)テスト 肩甲下筋(S S C)テスト Drop arm sign(ドロップアームサイン) 筋肉の可動域に制限が出たり、左右の動きに差が生じたりする場合は、腱板損傷の可能性があります。また、動作で痛みがともなう場合も腱板損傷を疑いましょう。 棘上筋(S S P)テスト 棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。 腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋 であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。 Full can test: 肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする Empty can test: 肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする 棘下筋(I P S)テスト 棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。 External rotation lag sign: 腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます 肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性 肩甲下筋(S S C)テスト 肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。 Lift off test: 背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるかチェックする Bear-hug test: 患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さをチェックして評価する Belly-press: 患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さをチェックし、評価する Drop arm sign(ドロップアームサイン) 検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す 患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性 このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、 実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。 例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合があります。 腱板損傷の有無はその他のテストも併用してチェックしましょう。 腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検査者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかをチェックし評価します。 ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 腱板損傷の痛む場所を特定する2つのテスト 次に、痛みの部位の特定や状態を確認するテストを2つ紹介します。 インピンジメントサイン ペインフルアークサイン 動作に痛みを感じれば、腱板損傷の可能性があります。 インピンジメントサイン 1) Neer test: 検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。 これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性 2) Hawkins test: 検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。 これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。 ペインフルアークサイン 患者さんの力により外転方向に挙上する。 棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。 紹介したテストを実施して、腱板損傷の可能性があれば病院を受診しましょう。腱板損傷を放置して、無理に肩を動かせば症状が悪化するリスクがあります。 下記の記事では、腱板損傷の人がやってはいけない動作について解説しています。病院で腱板損傷の診断を受けた方は、日常生活での過ごし方の参考にしてみてください。 腱板損傷の3つの画像診断方法 腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。 M R I検査 腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。 M R I検査とは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。 M R I検査では、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。 超音波(エコー)検査 超音波検査 では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。 また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。 レントゲン検査 レントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、 腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。 また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。 検査して重症と診断されれば、手術になる可能性があります。「手術の傷跡が残るのが嫌だ」「仕事があるから入院やリハビリをしたくない」という方には「再生医療」がおすすめです。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした細胞を再生する医療技術です。手術のように身体を切開しないので、入院やリハビリをする必要がありません。 再生医療なら弊社 『 リペアセルクリニック 』にご相談ください。再生医療の症例数8,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりにあった治療プランをご提案いたします。 まとめ|腱板損傷の疑いがあればテストを受けて確かめよう! 腱板損傷を評価するためのテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。 ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。 現在、腱板損傷の治療法のひとつとして「再生医療」 が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。
2021.04.01 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷のリハビリには、損傷を受けていない腱や筋肉の機能向上や患部に負担をかけないための動作改善といった効果があります。 しかし、リハビリを進めていくにあたりいくつか注意点があります。症状の悪化を防ぐためにも、リハビリの正しい実践方法を覚えましょう。 本記事では、腱板損傷におけるリハビリの効果や代表的なリハビリプログラムを解説します。リハビリをとおして、腱板損傷の症状を緩和させたい方は参考にしてみてください。 腱板損傷はリハビリだけで治るのか? 腱板損傷は、損傷の範囲が狭ければリハビリで症状の改善を期待できます。しかし、完全断裂や広範囲の断裂の場合は、リハビリのみでの回復が難しく手術が選択肢に入ってきます。 そもそも、腱板とは肩に付いている筋肉(腱)で「棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋」の4つからなります。腱板損傷では、これらの筋肉のいずれかが損傷し、あるいは複数の筋肉が断裂している状態です。 損傷の程度は筋肉の一部分が損傷している「部分断裂」と、完全に切れてしまった「完全断裂」とに分けられます。 現在、腱板損傷の治療法の1つとして「再生医療」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 腱板損傷におけるリハビリの目的や期間 腱板損傷におけるリハビリの目的は、損傷していない筋や腱の機能向上や損傷した部位に負担をかけないための動作改善です。 腱板損傷のリハビリ期間の目安は、日常生活への復帰なら2〜3カ月程度、スポーツや重労働の仕事への復帰であれば6カ月程度です。 個々の状態によっても、リハビリ期間は変わってきます。自身の状態を把握したい方は、以下の記事で紹介している腱板損傷の筋力や痛み確認テストを試してみてください。 腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラム ここでは、腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラムを紹介します。 ・筋力トレーニング ・ストレッチ ・日常生活の訓練 順番に見ていきましょう。 筋力トレーニング 機能低下が認められた腱板に対しては、リハビリとして積極的なトレーニングを指導します。 腱板は体の深いところに位置するため「インナーマッスル」と呼ばれます。そのため、腱板損傷のリハビリを目的とした筋トレは、インナーマッスルに焦点を当てたトレーニングが効果的です。 たとえば、腱板を鍛えるトレーニングでは、筋トレ用のゴム製チューブやタオルを活用して、対象部位を効果的に鍛えるやり方が有効です。 ただし、腱板に収縮時痛(力を入れたときの痛み)や、伸張痛(ストレッチのように筋肉が伸ばされたときの痛み)が出現し、断裂が疑われる腱板に対しては積極的なトレーニングはおこなわず、ほかの腱板に対する運動をおこなうようにします。 ストレッチ ストレッチには、腱板の可動域を広げたり、筋肉の緊張状態をほぐしたりする効果があります。 たとえば、肩の上げ下げや肩回しの動きは腱板損傷の回復に効果が期待できます。 痛みを伴うような過剰なストレッチは、病態の悪化や筋の防御性収縮を招き逆効果となりますので、深呼吸とあわせて実施するなどリラックスをしながら無理のなく進めましょう。 日常生活の指導 腱板損傷の症状を悪化させないために、日常生活における動作の指導もおこなわれます。 以下は、日常生活のなかで腱板に負荷がかかりやすい動作の一例です。 ・衣服の着脱 ・荷物の持ち運び ・寝るときの姿勢 損傷を起こしている部位や症状の程度に応じて、個々に合った動作指導がおこなわれます。 腱板損傷のリハビリでやってはいけない3つのNG行為 腱板損傷のリハビリに取り組む際、やってはいけない行為があります。 ・発症直後に無理をして動かすこと ・焦って負荷をかけすぎること ・リハビリを怠ること 順調な回復を図るためにも、紹介する3つのポイントをおさえてリハビリに臨みましょう。 発症直後に無理をして動かすこと 発症直後は、可動域制限や筋力の低下が認められても、関節内での炎症が強く、無理に関節を動かすと疼痛を助長させてしまうリスクがあります。そのため、発症直後は三角巾を含む固定具を用いて患部の安静を第一優先しなければなりません。 段階的回復を目指すためにも、リハビリは患部の炎症が落ち着いてから進めましょう。 現在、腱板損傷の治療法として「再生医療」が注目されています。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 焦って負荷をかけすぎること リハビリ開始時は、自動介助運動(患者自身が力を入れ、セラピストが補助をする運動)から開始し、徐々に自動運動へと移行します。 自動運動でも痛みを感じずに運動できれば、抵抗運動のように腱板筋に負荷をかけていきます。 ただし、腱板損傷をした肩関節の挙上動作の獲得は、スポーツにたとえると一度覚えたフォームを改善するのと同じように時間を要する場合があります。 そのため、リハビリは焦らず取り組んでいきましょう。 リハビリを怠ること 腱板損傷を発症してから長期間が経過している場合は、関節包の硬化による筋肉の伸張性低下や、疼痛による関節拘縮を起こすケースが多くなります。 リハビリを怠ると症状が慢性化する可能性があるので、医師の指示に従って継続的にリハビリを実施しましょう。 肩の腱板断裂を放置するリスクについてはこちら▼ まとめ|腱板損傷に効果的なリハビリを覚えて回復を目指そう 腱板損傷では受症してからの経過により症状が異なるため、病態に合わせたリハビリが必要です。そして腱板損傷に対するリハビリでは、いかに残存している機能を引き出すか、また残存している機能で日常生活動作を獲得させるかがポイントとなってきます。 本記事で紹介した代表的なリハビリのプログラムを中心に、専門医の指導のもと無理のない範囲で進めていきましょう。 もし手術を勧められ迷われている場合は、切らない治療の「再生医療」という選択肢もあります。 以下の動画で再生医療の詳しい説明をしているので、治療の進め方や効果が気になる方は参考にしてみてください。 https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=bKupVfsXpHM&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Ffuelcells.org%2F&source_ve_path=Mjg2NjY
2021.03.22 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩腱板断裂の痛みを少しでも和らげたい」「自分で肩腱板断裂の痛みに対処する方法はない?」 そんな思いを抱えていませんか? 肩腱板断裂は腕を上げるたび鋭い痛みが走るケガであり、夜も眠れないほどの不快感に悩まされている方も多いはずです。日々の生活で痛みを我慢し続けるのは、心身に大きな負担がかかるでしょう。 結論からいえば、肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法によって軽減することも可能です。 今回は、肩腱板断裂の痛みを緩和する5つの方法をご紹介します。 最後までご覧いただくことで、痛みの負担を少しでも軽減できるきっかけになるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。 肩腱板断裂の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 肩腱板断裂の痛みを和らげる5つの方法 肩腱板断裂の痛みを和らげるには、以下5つの方法があります。 温冷療法 姿勢と腕の位置の矯正ストレッチ 枕の高さのを調整 消炎鎮痛剤や湿布 これらは自宅でも実践できる方法ですが、医師の指導のもと症状や生活スタイルに合わせて取り入れていきましょう。 本章ではそれぞれの対処法を詳しく解説していきます。 また、以下の記事では肩腱板断裂が放置では治らない理由を紹介していますので、気になる方は参考にしていただけると幸いです。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 温冷療法は、症状や時期によって温めたり冷やしたりすることで効果的に痛みを軽減する対処法です。 ケガをしてから48時間以内の急性期は冷やすことで炎症を抑制し、それ以降は温めて血行を促進します。 冷却には氷嚢やアイスパックを、温めるにはホットパックや入浴を活用しましょう。 ただし、15分以上の連続使用は避けて皮膚を保護するためにタオルを必ず挟むのがポイントです。(文献1) 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 日常生活では、正しい姿勢や腕の使い方を工夫すると肩への負担を大きく軽減できます。 とくに気をつけたいのは以下の3点です。 腕を上げすぎない 同じ姿勢を長時間続けない 重いものを持たない デスクワークでは、肘を机につけて支えると肩の負担を減らせます。 また、パソコン作業時はキーボードを体の正面に置き、マウス操作は肘を開きすぎないよう注意しましょう。 こまめに休憩を取り軽く肩を回すのも効果的です。 痛くない範囲でのストレッチ 痛くない範囲で行うストレッチは、肩周りの柔軟性を保ち痛みの軽減に期待できます。 まずは、壁に手をついて体を少しずつ前に傾けるストレッチから始めましょう。 ここでも痛みが出ない程度にゆっくりと動かし、無理な姿勢は避けます。 1回のストレッチは10秒程度を目安に、1日3回ほど実施するのがおすすめです。 徐々に可動域を広げていくと、日常生活での動きやすさも改善していきます。 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 肩腱板断裂の痛みが夜間に強くなる場合、枕の高さが合っていないのが原因の1つとして挙げられます。 枕が高すぎると肩に負担がかかり、痛みが増す可能性があるためです。 そのため、適切な高さの枕を選ぶと肩が自然な位置に保たれ負担が軽減します。 また、横向きで寝る際は肩を下にせず、クッションで支えると楽になるはずです。 夜間の痛みは睡眠の質を低下させて日中の活動にも影響を及ぼすため、枕の高さを調整して痛みの緩和対策をしましょう。 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える 肩腱板断裂の痛みを一時的に抑えるには、消炎鎮痛剤や湿布も有効です。 薬局で購入できる市販の痛み止めや湿布は、炎症を抑える効果があるためです。 湿布は冷感タイプと温感タイプがあるため、症状に合わせて使い分けましょう。 たとえば、炎症や腫れが強い場合は冷感タイプ、慢性的な痛みや筋肉のこわばりが気になる場合は温感タイプが適しています。 ただし、痛みを緩和する一時的な対策であり根本的な治療ではありません。 したがって、長期間使用する際は症状や治療方針について医師への相談をおすすめします。 肩腱板断裂の主な原因3つ 肩腱板断裂が起こる原因は大きく分けて3つあります。 加齢による腱板組織の老化 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 過度の使用(オーバーユース) 年齢や生活習慣、事故などさまざまな要因で発症する可能性があります。 本章では肩腱板断裂の主な3つの原因を詳しく解説していきます。 加齢による腱板組織の老化 加齢に伴う腱板組織の老化は、肩腱板断裂の最も一般的な原因です。 40代後半から徐々に腱板の組織が弱くなり始め、50代以降で断裂のリスクが高まります。 年齢とともに腱板を構成する組織の弾力性が低下し、血行も悪くなるため、日常生活での些細な動作でも断裂を引き起こすことがあります。 加齢による腱板組織の老化は、定期的なストレッチや適度な運動によって、ある程度の予防が可能です。(文献2) 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 転倒やスポーツで肩を強打した際に腱板が損傷することがあるため、外傷が直接的な原因となるケースも少なくありません。 とくに高齢者は転倒時に受け身が取りづらく、肩に衝撃が集中しやすいためです。 また、重い物を持ち上げた際に腱板が急激に引っ張られて断裂する場合もあります。 したがって、外傷による損傷を防ぐためには、転倒防止の対策や筋力トレーニングが効果的です。 万が一、外傷を受けて肩腱板断裂が疑われる際には、早めに医療機関で診察を受けましょう。 体にメスを入れて関節の手術をするということは、術後の関節部の癒着が起こります。この癒着は術後のリハビリで対応しますが、完全に癒着が取れずに関節の可動域が悪くなりそれに伴い痛みが出ることが多々あるのです。痛みは、四十肩・五十肩に似ています。 過度の使用(オーバーユース)腱板の再断裂 日常的に肩を酷使する動作を続けていると、腱板がダメージを受けやすくなります。 たとえば、テニスや野球などのスポーツや、肩を頻繁に動かす職業や趣味を持つ人は注意が必要です。 腱板に休息が取れない状態が続くと、小さな損傷が断裂につながることがあります。 そのため、適切な休息を取り、筋肉をサポートするストレッチやトレーニングを取り入れると良いでしょう。 肩を労わりながら、長く健康を保つ意識が大切です。 また、腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。 肩腱板損傷の検査方法は4つ 肩腱板断裂が疑われる場合、適切な治療のために正確な診断が必要です。 検査方法は主に以下の4つがあります。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 それぞれの検査には特徴があるため1つずつ詳しく見ていきましょう。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) ドロップアームテストは、診察の初期段階で実施することが多い検査方法です。比較的短時間で検査が可能であり、特別な機器も必要なく実施できるのが特徴です。 腕を横に90度上げた状態からゆっくりと下ろしていく動作で、肩腱板の状態を確認します。 健康な場合は腕をスムーズに下ろせますが、腱板断裂があると途中で腕が落ちてしまいます。 また、痛みを伴う場合は必ず検査前に医師に伝えましょう。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨の状態を確認する基本的な画像診断です。 腱板断裂に伴う骨の変形や、肩峰下の石灰沈着の有無を調べられます。 また、年齢による骨の変化も同時に確認できるため、治療方針を決める重要な情報となります。 レントゲン検査の時間は数分程度で済み、基本的に痛みもほとんどありません。 ただし、軟部組織である腱板自体は直接見ることができないため、他の検査と組み合わせて診断を行います。 超音波検査 超音波検査は、腱板の状態を動きながら観察できる便利な検査方法です。 肩を動かしながらリアルタイムで腱板の様子を確認でき、断裂の有無や範囲を詳しく調べられます。 体への負担が少ない検査なので、高齢者でも気軽に受けられるのが特徴です。 また、検査時に医師と対話しながら痛む部位を直接確認できるため、より正確な診断につながります。 MRI検査 MRI検査は、最も詳細に腱板の状態を確認できる検査方法です。 腱板の断裂の有無はもちろん、断裂の大きさや周囲の組織への影響まで把握できます。 検査は専用の装置の中で、約20〜30分ほど静かに横になっているだけで済みます。 放射線は使用せず痛みもないため、体への負担は最小限です。 ただし「心臓ペースメーカーや人工内耳・中耳」など、金属を体内に入れている方は検査できない場合があるため、事前に医師に相談しましょう。 また、CTやMRI以外で行う関節の造影検査については以下の記事でも詳細に解説しています。 肩腱板断裂の3つの治療法 肩腱板断裂の治療は症状の程度や年齢、生活スタイルによって選択していきます。 主な3つの治療法は以下のとおりです。 治療法 特徴 保存療法 投薬やリハビリテーションを中心とした非手術的な治療 手術療法 断裂した腱板を修復する外科的な治療 再生医療 幹細胞などを用いた新しい治療 それぞれの特徴やメリットを詳しく解説します。 保存療法とは、痛みの軽減と肩の機能回復を目指し、投薬やリハビリテーションを組み合わせて進める治療法です。 具体的には、消炎鎮痛剤の服用や温冷療法、ストレッチなどを行います。 治療期間は3〜6カ月程度が一般的で、65歳以上の方や部分断裂でも保存療法が推奨されます。 症状が軽減するまで時間はかかりますが、根気強く続けることで日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。 手術療法 手術療法は、保存療法で改善が見られない場合や、完全断裂で症状が重い場合に検討される治療法です。 代表的なのは、断裂した腱板を縫い合わせて肩の機能を回復させる「関節鏡を使った手術」です。 手術後にはリハビリが必要となりますが、しっかり行えば機能が改善する可能性が高まります。 そのため、手術療法はリハビリ期間も含めて医師と十分に相談した上で選択してください。 再生医療 再生医療は、患者さん自身の血小板や幹細胞を利用して、損傷した腱板の修復を促進する治療法です。 従来の手術に比べて身体への負担が少なく回復も早いのが特徴で、手術を避ける選択肢として近年注目を集めています。 また、手術をされた方にも再生医療は有効です。 腱板に再生医療を併用することで、再断裂のリスクを抑えるだけでなく、傷口の修復や術後に起こり得る疼痛の軽減にも期待されます。 再生医療に関する詳細は以下のページでも詳しく解説しています。 また、当院では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。肩腱板断裂の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 まとめ|肩腱板断裂の痛みについては専門医に相談してみよう 肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法で和らげることができます。 自宅でできる温冷療法やストレッチ、姿勢の改善から医療機関での治療まで症状に応じた選択肢があります。 ただし、自己判断での過度な運動や負荷は症状を悪化させる可能性もあるので注意が必要です。 まずは専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 早期発見・早期治療が、痛みの軽減と日常生活への早期復帰につながります。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療の提供もしていますので、肩腱板断裂の痛みでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肩腱板断裂に関するQA 腱板断裂でやってはいけないことはなんですか? 肩腱板断裂で最も避けたいのは、無理に肩を使い続けることです。 腕を頭上に上げる動作や、重いものを持ち上げたり、我慢して運動を続けるのも「やってはいけない動作」だといえます。 また「様子を見れば治るだろう」と放置してしまうのも要注意です。 適切な治療を受けないまま症状が進行してしまうと、より複雑な治療が必要になったり、回復までの期間が長引いたりするケースもあります。 少しでも痛みが気になる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。 また、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけない動作については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 肩腱板損傷はどのくらいで治るのですか? 肩腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。 軽度であれば数週間から数カ月ですが、完全断裂の場合は手術が必要となるため、術後のリハビリも含めると半年から1年ほどかかるでしょう。 したがって、早期発見・早期治療が重要ですので、痛みがあれば我慢せずに早めの受診をおすすめします。 また、肩腱板損傷を放置する危険性については以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてください。(文献2) 参考文献一覧 (文献1) 物理療法系専門領域研究部会_寒冷療法 (文献2) 公益財団法人 日本整形外科学会_「肩腱板断裂」
2021.03.16